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SS

【SS】不要な性別【ぷ】

 ▼ 1 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/22 22:59:26 ID:NQIp6uQs [1/14] NGネーム登録 NGID登録 報告


 私は産まれた時、その瞬間から不要だった。


 一般的に、子供というのは愛情の副産物であり、望まれる望まれないに関わらず、『愛情』という生々しく醜い、性欲が形を変えたものの元に作られる。

 私は、『望まれて』産まれた『望まれない』子供だ。
 ▼ 22 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/22 23:30:10 ID:NQIp6uQs [2/14] NGネーム登録 NGID登録 報告
「なんで私があなたを助けたのか、不思議?」


 ! ……表情に出ていただろうか?


「私、観察力には自信があるの。……そうだなぁ、野生のポケモンって野生での生き方をしっかりと知ってて、街に出ることはあまりないから、かな。

 あなたが街で倒れていたから、きっと……そうなんだろうなぁって」


 少し表現を濁らせる。


「信じられない。1匹じゃ生きられないポケモンを自分勝手に扱うなんて。

 ……ねぇ、よかったらあなた、ここに住まない? このまま外に出てもまた倒れちゃうだろうし」
 ▼ 23 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/22 23:31:15 ID:NQIp6uQs [3/14] NGネーム登録 NGID登録 報告
 私は首を横に振った。女性から悪意は感じられなかった。純粋に、私のことを心配している。

 でも、だからこそ、私は断った。

 幼ながらに信じたくなかったのだ。無償の優しさを。裏表も下心もない優しさを。

 私が棄てられて数日間。私に差し伸べられた手は、優しさは、全て悪意の裏返しだった。


 私は優しさが怖かった。

 ▼ 24 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/22 23:32:53 ID:NQIp6uQs [4/14] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……そう。でも、やっぱりダメ。私の所が嫌なら、今私が関わっているポケモンの孤児院に……って言っても分からないかな? あなたと似たような境遇の子が集まる施設があるの」

「そこならどう?」


 女性が私の顔を覗き込む。

その目にはしっかりと私が映っていた。

 俯くように目を逸らす。
 ▼ 25 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/22 23:34:46 ID:NQIp6uQs [5/14] NGネーム登録 NGID登録 報告
 沈黙の後、女性が口を開いた。


「まぁ、とにかく今日は私の家に居なさい。どうするかは明日、決めましょう」


 それだけ言って、女性は目が覚めた時にいた机についた。

 私は板から流れる音を聞きながら、漠然とどうするかを考えた。
 ▼ 26 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/22 23:40:01 ID:NQIp6uQs [6/14] NGネーム登録 NGID登録 報告
 次の朝、私が目を覚ました頃には女性は既に起きていた。

 おはよ、と声を掛けてくる。


「どうするのか、決めた?」


 頷いた。……ここには住まない。

 身振り手振りでそれを伝える。

 『声』によると、どうやらこの女性、あまり裕福ではないようだ。それなのに、私を部屋に置こうとしている。

私は、その優しさを信じたくなかった。
 ▼ 27 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/22 23:45:00 ID:NQIp6uQs [7/14] NGネーム登録 NGID登録 報告
「そっか。分かった、じゃあちょっと待ってて。昨日言ってた孤児院に連絡するから」


 女性が何かの機会を取り出し、それに話し始めた。


「おはようございます。いつもお世話になっております、任天出版のイチカワ ユキです。

はい。はい。あ、いえ、今回はお話を伺うのではなくて、別件でそちらを訪ねてもよろしいでしょうか? 

その、引き取って頂きたい子がいるんです。……大丈夫ですか!

 ありがとうございます。では、3時頃に伺いたいと思います。」


 最後に一言、もう一度礼を言ってユキと名乗った女性は機械をしまった。
 ▼ 28 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/22 23:46:06 ID:NQIp6uQs [8/14] NGネーム登録 NGID登録 報告
「大丈夫だって。院長さん、すごくいい人だから、きっとよくしてくれるよ」


 ユキが笑った。

 ふと、ユキの後ろに見えた写真が目に入った。

 写真の中で、ユキは長身の男性と今と同じ様に笑っている。

 私が視線を後ろへやっていることに、ユキが目敏く気付いた。観察力に自信がある、というのは本当の様だ。
 ▼ 29 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/22 23:47:31 ID:NQIp6uQs [9/14] NGネーム登録 NGID登録 報告
「あぁ、それ。私のお兄ちゃんなの。一人暮らし始める前の写真。……最後にあったのは、もう3年くらい前かなぁ。──行方不明になってるの」


 ユキの表情が翳る。


「この部屋、ずっとテレビがついてるでしょう。お兄ちゃんのことが流れないかなって。……馬鹿みたいだよね。そんなこと、ある筈無いって分かってるのに。

 ……ごめんね、急にこんなこと言っちゃって。

そうそう、私のお兄ちゃん、『空』って書いて『うつほ』って読むんだよ。かわってるでしょ」

 そう言って、また、笑う。

それは泣いているような、諦めているような、乾いた笑顔だった。
 ▼ 30 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/22 23:48:37 ID:NQIp6uQs [10/14] NGネーム登録 NGID登録 報告
「さぁ、3時に行くって言っちゃったし、ご飯食べて少ししたら出ましょう」


 昼食を食べ終え、私はユキに連れられて孤児院に向かった。

 途中、逃げ出そうかと考えたが、ユキが言ったようにまた倒れるだけになりそうなので、やめた。

 孤児院についた。前に、柔和な笑みを浮かべた少し年配の女性がいる。

 ユキが言っていたように「すごくいい人」そうだ。
 ▼ 31 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/22 23:49:45 ID:NQIp6uQs [11/14] NGネーム登録 NGID登録 報告
「いらっしゃい。待っていたわ。その子が話してたニャスパーちゃん?」


 私の方に目をやり、微笑む。優しく丸い声とは逆の黒い『声』が頭に響く。


(こちとらわざわざ貰ってやってんだ。少しは宣伝しろよ)


 どうやら保護しているポケモンに応じて国から助成金というものが出るらしい。

 私は安心した。やはり、優しさというのは、こうあるべきだ。

優しければ優しい程、その裏には、触ると凍てつきそうな位の冷たさがあるべきだ。
 ▼ 32 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/22 23:50:39 ID:NQIp6uQs [12/14] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ええ、急にご無理を申してすみません。でも、放って置けなくて」

「いいのよぉ。私も、好きでやってるんだから。いつでも、頼ってね」


 その後少しのやり取りの後、正式に私の入院が決まった。
 ▼ 33 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/22 23:52:05 ID:NQIp6uQs [13/14] NGネーム登録 NGID登録 報告
 院の外観は木材を主に使った造りで、三階建ての移住スペースがあるというものだった。

 その院から渡り廊下で繋がった所にガラス天井の大きなドーム状の建物がある。

そこはポケモンの運動スペースとなっていて、昼間はそこで過ごすのが主のようだ。

 院全体はぐるりと囲われており出口は鉄製の柵がある。ポケモンはとにかく、ヒトの侵入は難しいだろう。
 ▼ 34 一旦終わり◆iTFigG3P7M 17/02/22 23:52:52 ID:NQIp6uQs [14/14] NGネーム登録 NGID登録 報告



 不要な私は、同じく不要なポケモンと共にこの院で生活することとなった。


 ▼ 35 アセロラジュース◆YOerWI2lvg 17/02/23 00:10:06 ID:BanThF7Y NGネーム登録 NGID登録 報告
支援&期待&一旦乙
 ▼ 36 サニーゴ@おいしいシッポ 17/02/23 01:56:25 ID:G2UZyUtE [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
新作か支援
 ▼ 37 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 16:47:11 ID:2A3QO3tY [1/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
 そんな風に始まった院生活も2年が経った。私はここでの生き方を身につけ、適応していた。


 この院は、ポケモンを成長させ野生に返すこと、或いは引き取り手を探して引き取ってもらうことを目的としている。

 1日1回はトレーニングの時間があり、私はこの2年間でニャオニクスへ進化した。テレパシーの力も大分コントロール出来るようになった。
 ▼ 38 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 16:47:59 ID:2A3QO3tY [2/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
 一定数の生物が集団で生活するとき、必ずそこには序列が生まれる。

この院も例外ではない。

 この院はオスメス合わせて7つのグループがある。メス4つとオス3つだ。

 メスは最上位の集団と、二番目の中間層。3つ目の底辺層。そしてその底辺からもあぶれた迫害層がある。
 ▼ 39 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 16:49:02 ID:2A3QO3tY [3/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
 私は上位層に位置している。

 上位層はジャノビー、モココ、私の3匹でその中で最も力があるのがジャノビーだ。

メスはみんな、ジャノビーの顔色を見ながら狭い空間を少しでも生きやすいものにしようとしている。
 ▼ 40 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 16:50:15 ID:2A3QO3tY [4/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
 私の『声』を聴く力はコミュニケーションにおいて多大な力を発揮する便利なものだった。


 思うに付き合いというのはワークブックの穴埋め問題に似ている。相手が何を言って欲しいのか、どうして欲しいのか、その空欄に答えを埋めていく作業だ。私はそれの答えを見ることが出来る。


 そうだ。生き物というのは、口に出す言葉の大半は、相手が言って貰いたがっている言葉であって、自分自身のものではない。私はそれを分かっていた。
 ▼ 41 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 16:51:58 ID:2A3QO3tY [5/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
 オスの集団は、メスと比較的関わりの多い、所謂『リア獣』と呼ばれるような集団。普通の集団。そして、いつも隅にいる目立たない集団だ。

 オスのグループの関係はグループ内で完結しているようで、メスのようにグループ間での複雑な力関係もなければ、ドロっとした生々しさもない。

 オスのリア獣グループに属しているリザード、ルクシオ、ワルビルの内のリザードはジャノビーと付き合っている。


 限られた範囲で限られた行動しか出来ない院のポケモンにとって、恋愛というのは分かりやすく手軽な娯楽なのだ。
 ▼ 42 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 16:56:03 ID:2A3QO3tY [6/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ニャオちゃん」


 モココが私を呼んだ。


「ん? なぁに?」

「ニャオちゃんも恋ポケ作りなよ。いるんでしょ? 1匹くらい、好きなオス」


 ハァ、と内心溜息をつく。最近モココはこの話題ばかりだ。


「いないよぉ。そういうのは、この院を出て、野生の中で考えるの」


 半分嘘で、半分本当。

 好きなオスはいない。でも、野生でそれを作る気もない。
 ▼ 43 メガハッサム@あおぼんぐり 17/02/23 17:00:05 ID:G2UZyUtE [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
いい感じなシリアス具合
支援
 ▼ 44 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 17:00:29 ID:2A3QO3tY [7/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
 私は、オスが嫌いだ。自分の性別を強く意識するから。

 メスに対して不自然なまでに優しくしたり、おちゃらけたり、すましたり。その内心は体を繋げることしか考えていない。

それが内心だけでなく外側へ滲み出ているのも滑稽だし、魅力を感じないメスにはどこまでも冷めているのも滑稽だ。

 オスは、メスを商品と思っているかのように、値踏みするような目線で私たちを見る。

 とはいえ、私はメスが好きなわけでもない。根本的に、生き物が嫌いなのだろう。

 性別に『不要』のレッテルを貼られたのだから、当然かもしれない。
 ▼ 45 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 17:01:27 ID:2A3QO3tY [8/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
「うっそだぁー。絶対隠してる。……誰にも言わないから、ねっ? 実は、私も好きなオスいるし」


 このやり取りも3回ほどしている。秘密と言っているモココの好きなオスは、リザードだ。


 『声』でも分かるのだが、モココは明らかに態度にも出ている。

 リザードと楽しそうに笑うジャノビーを憎々しげに眺めるなどがそうだ。
 ▼ 46 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 17:02:33 ID:2A3QO3tY [9/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
 3回も同じ問題を出されたので、私は諦めてその空白に答えを書き入れた。


「……実は。……秘密だよ? 絶対、誰にも言わないでね」


 声を潜める。モココが顔を輝かせ耳を傾けた。

 私は、そっと呟く。


「ルクシオ」

「えっー。ルクシオぉ? 何で何で?」


 大げさな声をあげ、尋ねる。

自分と被ってないことに安堵しているのが丸わかりだ。
 ▼ 47 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 17:03:34 ID:2A3QO3tY [10/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
 理由。少し考える。

 モテている上位層のオスから選んだだけだ。名前を適当あげただけで、これといったエピソードも思いつかない。


「……好きなものは好きなのっ!」


 恥じらいを装い、もういいでしょう、と態度で示す。


「ふーん。そっか、ルクシオか。ライバル多いけど、ニャオちゃんならきっと上手くいくよ。頑張って。応援してる」


 『応援』。よく耳にする単語だが、具体的な行動が伴うことはあまりない。『秘密』というのも、当てにはならないだろう。
 ▼ 48 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 17:04:10 ID:2A3QO3tY [11/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
「あー、ニャオ、モココ! ちょっと聞いてよ。リザードの奴がさぁ」


 ジャノビーがやってきた。会話に入ってくる。

 愚痴る体で、自分のメスとしての価値を高め、同情の言葉を求め、それによってベタベタと更に自分を『商品』へ変えていく。そんな自慰に近い行為に私達は利用される。
 ▼ 49 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 17:05:04 ID:2A3QO3tY [12/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
 私のように『商品』として見られることを嫌うものは少ない。多くの場合、そのような言動は僻みとして捉えられるだけだ。

 それよりも、商品であることを積極的に受け容れ、そこにプライドを置くメスが殆どだ。

 特に、自分の商品価値に自信のある上位メスはそうだ。
 ▼ 50 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 17:06:38 ID:2A3QO3tY [13/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
 私は淡々と穴埋め問題を解いていく。


「そうだね」「ひどい」「別れなよ」


 中身の無い薄い言葉に赤丸がついていく。


「でも、私のこと好きって言ってくれるの、リザードだけなんだもん。

 あーブス過ぎて死にたい。ツタージャ族なのに鼻も低いし、目も小さいし」


 すかさずモココが言葉を重ねる。


「そんなことないよぉ。ジャノちゃん、すっごくキレイだし、そのスベスベの肌とか羨ましい。私なんて毛がちりぢりでボサボサだし」

 今度は私の番だ。


「えー、モココちゃんすっごく毛並みサラサラじゃん。目もパッチリしてるし」


 自分を貶める事で、逆説的に自らを主張し、賛辞の言葉という甘い蜜を舐める。

 早く終わって欲しいが、メスにとってこの時間が最も楽しい時間らしく、こうなると長時間これが続く。
 ▼ 51 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 17:09:53 ID:2A3QO3tY [14/34] NGネーム登録 NGID登録 報告


 キャー


 離れた場所から甲高い歓声が聞こえた。


「あ、あいつらまたバトルしてんのかな? ホント、オスってそういうの好きだよね。何が楽しいのかしら? 痛いだけでしょ」


 メスから歓声を浴びる事が楽しいのだろう。

 声の元凶はリア獣グループのルクシオとワルビルだ。戯れでバトルをしているらしい。
 ▼ 52 ニドリーノ@いでんしのくさび 17/02/23 17:10:18 ID:LXiNpHRU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 53 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 17:13:15 ID:2A3QO3tY [15/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ねぇねぇニャオちゃん。ルクシオたちじゃない? 見に行かなくていいの?」


 モココが早速秘密の範囲を広げようとしている。

 ジャノビーが目敏く反応した。


「ん? ルクシオがどーかしたの?」


 モココが戸惑いながら気まずそうにこちらを見てくる。

 私は相応に頬を赤らめ声小さめに言った。


「わ、私ルクシオが好き、なの」

「えっ! ルクシオ? あー、そっか。モテるもんね、あいつ。へぇ」


 行ってきなよ。とジャノビーが言うので、私は仕方なく歓声の上がる方へ向かった。
 ▼ 54 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 17:16:58 ID:2A3QO3tY [16/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
 ルクシオとワルビルのバトルは中間メスに群がられるように観戦されていた。少し離れた所で底辺メスが更に見ている。

 ルクシオがパフォーマンスのようにバク転をした。同時にメスから声が上がる。

 ルクシオの背中からもワルビルからも、明らかにメスを意識している事が伝わってきて、生々しく、馬鹿らしかった。
 ▼ 55 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 17:19:58 ID:2A3QO3tY [17/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
 中間メスは急に現れた上位メスの私に、少し戸惑っているようだ。

 中間メスと上位メスは互いに足を引っ張り合うような関係で、仲は良くない。


「あっ! ニャオちゃーん」


 底辺メスの1匹から声が上がった。フシギソウだ。

 この院は一部屋の居住スペースに2匹のポケモンが住む。フシギソウは私のルームメイトだ。

 私はフシギソウのいる底辺メスの方へ向かった。

 中間メスと違い底辺メスと上位メスは仲が良い。

自らの立場を脅かさない存在に対し、メスはどこまでも寛容だ。
 ▼ 56 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 17:24:37 ID:2A3QO3tY [18/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
 底辺メスグループはホルビー、ユキワラシ、フシギソウの3匹で構成されている。


「どうしたの? 普段こっちにはあまり来ないのに」


 フシギソウが尋ねてきた。適当に誤魔化す。

 後ろで一際大きな歓声が上がった。遅れて底辺メスも騒ぐ。


「もう、本当にワルビル君ってカッコいい!」


 ホルビーがそれとなく言った。


「ねー! ライバル多いけど、憧れるなぁ」


 ユキワラシが同調した。


「聞いて聞いて、アタシ今日ルクシオ君と目があったんだよ!」


 フシギソウがはしゃぐように報告した。いいなぁ、と他2匹が声を上げ、我も我もと報告を始める。

 それも、ワルビル君と〇回すれ違ったと言うような些細なものだ。
 ▼ 57 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 17:28:24 ID:2A3QO3tY [19/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
 この子たちの恋愛はひどく大人しい、と思った。

フシギソウと部屋で恋愛について話すことは少ないので新鮮だった。

 私は暫くその会話に耳を傾け、観察した。

 それでねそれでね、と1匹が報告すると、他2匹が羨ましがった後、また報告していく。

 聞いている分には、どうやら好きであっても行動に起こす気は無いようだ。
 ▼ 58 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 17:31:34 ID:2A3QO3tY [20/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
 遠巻きに見つめて、その日の内に何度〇〇君と目があった、だとかすれ違った、だとかを報告する。

 それは、恋バナというよりも、むしろ私達上位メスが普段している自慰のような会話と似ていた。

 誰かに本当に恋をしているのではなく、コミュニケーションとしての『恋』。

 だからその『恋』は成就してはならないだろう。何故なら、『コミュニケーションとしての恋』というハリボテが『真実の恋』になるから。

だから、手が届かないオスを対象に選ぶ。
 ▼ 59 支援 17/02/23 17:32:54 ID:tMSwnwuY NGネーム登録 NGID登録 報告
なんでや! ニャオニクス可愛いやろ!
(勝ち気発動してもギャラマンダ落とせない模様)
 ▼ 60 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 17:33:11 ID:2A3QO3tY [21/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
 また歓声が上がった。勝負がついたらしい。中間メスがそれぞれ思い思いの方へ向かう。

 勝ったのはワルビルの方だ。タイプ相性を考えたら当然の結果だろう。

 フシギソウが落胆する仕草を見せる。

 私もここに居る理由はない。勝負を見届けたのだから、もういいだろう。


「じゃあフーちゃん、またね」


 そうフシギソウに言って、ジャノビーの所へ戻った。
 ▼ 61 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 17:34:53 ID:2A3QO3tY [22/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
「あ、どうだった? ルクシオと話せた?」


 戻ってきた私にジャノビーが尋ねた。


「うんん、見てただけ」

「ふーん。まぁ、焦る必要もないし、いいんじゃない?」


 興味なさげに、そう言った。
 ▼ 62 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 17:38:57 ID:2A3QO3tY [23/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
 夜、私達は居住区で睡眠をとる時間だ。

 この時間が、唯一の私1匹の時間でもある。

 ルームメイトのフシギソウは早々に寝息を立てており、一応『声』で起きてないか確認してから、部屋を出た。


 この院には、院のポケモンを引き取りにきたトレーナーが手続きをする場所がある。

そこは、ヒトのトレーナーが連れた子供が待つためのキッヅスペースも併設しており、絵本が置いてある。
 ▼ 63 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 17:41:09 ID:2A3QO3tY [24/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
 私は字は読めないが、そこから一冊を取り出して、眺める。

 明るい色で一杯なその本は、私のいる世界とは対極だ。

 この本の中にはドロドロとした生々しさも、欲も、序列も無い。



 明るく彩られた暖かい世界。


私はそれを、暗い夜に、冷たい現実の中から眺める。
 ▼ 64 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 17:46:08 ID:2A3QO3tY [25/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
 『声』が聞こえた。ヒトが近くにいる。あまり遭遇することはないが、今日は久しぶりに見回りと鉢合わせたようだ。本を持って近くの部屋に逃げ込む。

そこで暫くやり過ごすことにした。

 ……また、『声』を感じた。私は物陰に隠れた。近づいてくる。

『声』の主は扉の前で止まった。部屋に入ってくる。

 コノハナだった。オスの、いつも隅にいる底辺グループに属している。
 ▼ 65 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 17:53:41 ID:2A3QO3tY [26/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
 私は隠れるのをやめ、コノハナに話しかけた。


「ねぇ」


 コノハナが体を震わせた。


「だ、誰だ? ……ニャオニクス?」

「こんな所で何してるの?」

「お前こそ」

「こっちが聞いてるのに……まぁいいや。私は、絵本を読んでたの」

「えほん?」


 1文字ずつ伸ばすようにコノハナが発音する。
 ▼ 66 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 18:02:48 ID:2A3QO3tY [27/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
「お前、字が読めるのかよ」


 殆ど話したこのがないのに、コノハナは大分失礼な物言いをする。


「読めない。眺めるだけ」

「楽しいのか? それ」


 コノハナがぶっきらぼうに呟いた。


「オレも似たようなもんだよ。院長の本を読みに来たんだ」

「院長の本?」

「お前の後ろに沢山あんだろ」


 後ろを振り向くと、大きな壁のような本棚に、沢山本が詰まっていた。

 暗い部屋の中でそれは、不気味な威圧感を放っている。


「本当だ」


 ここは、院長室らしい。
 ▼ 67 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 18:03:34 ID:2A3QO3tY [28/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
「なんかちょっといつもと雰囲気違うな。いつものお前はもっとバカっぽくてリア獣感がするのに」


 『いつもの私』。穴埋め問題を解くためだけに作られた私は、他の目にはどう映っているのだろうか。


「いつもの私って、どんな感じ?」

「今言ったろ。それにしらねぇよ。いつも一緒にいるジャノビーとかモココに聞けよ」
 ▼ 68 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 18:04:11 ID:2A3QO3tY [29/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
「コノハナはいつもここに来てるの?」

「あぁ、ほぼそうだな。この院、つまんねーし。本読むくらいしか楽しみねーよ」

「面白いの?」

「お前も読んでんじゃねーか」

「私は、眺めるだけだから」

「同じだろ」

「ふぅん」

 コノハナはいつもここに来ているらしい。でも、なら何故『声』を聞き取れなかったのだろうか? 本に集中しすぎて、『声』をあまり出してないのかもしれない。
 ▼ 69 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 18:05:04 ID:2A3QO3tY [30/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
「なんで、コノハナは本が読めるの? ……読めてるのよね?」

「そんなの、……どうでもいいだろ。読めるから、読めるんだよ」


 コノハナが私に向かって歩いて来た。そのまま後ろの本棚から本を取り出し、机にあったスタンドに電源を入れた。


「明かりをつけたら、見回りにバレるんじゃないの?」

「明かりなしにどうやって読むんだよ」

「どうって、……普通に」

「あー、お前は猫科だから、夜目が効くんだな。オレは見えねぇんだよ」
 ▼ 70 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 18:05:44 ID:2A3QO3tY [31/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
 私は電気を消した。


「何す「静かに」


 コノハナに言葉をかぶせる。

 見回り人の『声』が聞こえたのだ。それが、1分ほどで遠くなる。


「もういいよ」


 コノハナにそう告げる。


「……お前、なんで分かったんだ?」

「わからなかったの? いつも、よくバレなかったね」

「いつもは1匹だから気づくんだよ」


 コノハナが気まずそうにする。
 ▼ 71 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 18:06:41 ID:2A3QO3tY [32/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
「で、なんで分かったんだ?」

「だから、普通に」

「息を潜めた時間からして、足音が聞こえる距離じゃないだろ。なのに、気付いた」

「だって、『声』が聞こえるもん」

「声?」


 コノハナが不思議そうな声をあげた。


「心の声」

「……テレパシーってやつか。オレの声も、聞こえてるのか?」

「うんん、聞こうと思えば、聞けるけど」
 ▼ 72 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 18:07:27 ID:2A3QO3tY [33/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
「なんだ。なら、聞こうとすんなよ。心が覗けるなんて、気味悪りぃ」

「する訳ないじゃん。興味ないし」

「ならいいけど……お前変わってるな」

「何が?」

「何がって……テレパシーってのは、殆どのポケモンは持ってない特性なんだよ。エスパータイプだからって誰彼構わずできる訳じゃなねぇ。珍しい特性なんだよ」

「特性?」

「お前、そんなことも知らねぇのか」

「うん、教えて」

「特性ってのは、ポケモンが種族ごとに持ってる能力みたいなもんだよ。ニャオニクスなら、『すりぬけ』と『するどいめ』だっけか。

 とにかく、テレパシーなんて普通じゃねぇの。いいよな、リア獣はこんなん知らなくても、適当にオスと番になれば生きていけるんだから」


 コノハナの毒づきを無視して、私はさらに尋ねた。


「じゃあ、どうして私は『声』が聞こえるの?」

「そんなん、オレが知るか」


 私からしたら字が読めるというコノハナの方が変わっているように思えるが。
 ▼ 73 続きは夜◆iTFigG3P7M 17/02/23 18:08:14 ID:2A3QO3tY [34/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
 結局その日はもう遅いので、寝ることにした。

 自室へ戻ると、フシギソウが寝ている。

 フシギソウの顔に開いた大きな黒く、暗い穴から、一筋の光の滝が流れ出ていて、それが寝床にシミを作っていた。

 私は寝床で丸くなり、そっと目を肉の蓋で塞いで、意識を闇へ投げ込んだ。
 ▼ 74 ガルーラ@はかせのふくめん 17/02/23 18:46:59 ID:Tp0oqxSU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ユキ……
前作と繋げてるってすごいです
全部の作品が繋がってるんですね

支援
 ▼ 75 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:02:21 ID:iZHkOkbw [1/44] NGネーム登録 NGID登録 報告
 それから、私はコノハナを意識して見るようになった。

 いつも隅で数匹固まっているだけだと思っていたコノハナは、それでいて他のオスグループを遠巻きに眺めていて、そのグループについて行動していた。
 ▼ 76 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:03:46 ID:iZHkOkbw [2/44] NGネーム登録 NGID登録 報告
 私はルクシオという便宜上作った好意を寄せるオスを作ったことで、ジャノビーやモココとハリボテの傷を舐め合う行為から逃れることが出来るようになった。

 以前のようにルクシオ達が何かをしていると、それを見に行くことが許された。実際本当に観に行く訳なのだが、私はそこで観察する楽しさを知り始めた。

 狭い空間で自分の価値を上げる為に奔走する彼等を観察するのは、自分が1つ上の視点に立っているようで、心地よかった。
 ▼ 77 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:08:39 ID:iZHkOkbw [3/44] NGネーム登録 NGID登録 報告
 上位オスのワルビルの下品な笑い声が聞こえる。迫害メスのエレブーがその中心にいた。


「オレ今エレブーさんといい感じなんだから、邪魔すんなよな」


 ワルビルがわざとらしく大きな声でそう言うと、周りで笑いが起こる。エレブーも、笑っていた。

 私は、エレブーが自分の価値を勘違いしてないかと思ったが、それはないようだ。

 エレブーが笑っているのは表情だけで、目の奥は深く暗い。どうやら自分の立場をしっかりと弁えているようだ。

 コノハナ以下底辺オスはそれを見て、ボソボソと何かを言っている。
 ▼ 78 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:09:13 ID:iZHkOkbw [4/44] NGネーム登録 NGID登録 報告
 狭い世界で自らの価値を精一杯に主張するオス。それに同調する周囲のオス。無価値という値札を貼られたメス。

 私は観察するのが楽しかった。上位メスが出題する問題を解く何倍も。
 ▼ 79 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:10:03 ID:iZHkOkbw [5/44] NGネーム登録 NGID登録 報告
 その日の夜も、私は絵本をもって院長室へ向かった。部屋には明かりがついていた。

 部屋に入ると、コノハナが気付いたようだ。


「なんだ、ニャオニクスか」

「また本読んでるの?」


 見た所、この前とは違う本のようだ。


「……あぁ、まぁな」


 私も本を広げた。明るい色彩が中から飛び出す。

 それを眺めながら、どんな話だろう、と想像する。
 ▼ 80 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:11:26 ID:iZHkOkbw [6/44] NGネーム登録 NGID登録 報告
 私が作るストーリーは日によって変わる。私の読む(見る)本は、毎日違うストーリーだ。

 部屋に無音が鳴り響く。私がページの捲る音以外、なにも存在しない。

 私の作るストーリーは毎回違う。毎回違うが、結末は同じだ。必ず1つの結末に収束する。

 話の中で、必ず私は死ぬのだ。この絵本の最後のページはヒトの女の子とその両親と思われる2人の男女がニコニコと笑っている。

 温かみのある絵なのに、私にはそれが寒々しく冷たく見える。

 この絵の中で、私は死んでいる。それを、どこか心の奥底で願っているのかもしれない。
 ▼ 81 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:12:44 ID:iZHkOkbw [7/44] NGネーム登録 NGID登録 報告
 コノハナとは殆ど会話はない。ちゃんと話したのは最初の一回だけだ。


 私たちの間の空気は、震えずに静かにたゆたっていた。


 ▼ 82 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:13:40 ID:iZHkOkbw [8/44] NGネーム登録 NGID登録 報告
 私がコノハナと同じ部屋で本を読むようになって、そして、観察を楽しむようになって、一週間が経った。

 ルクシオとワルビルが、また自己顕示欲に塗れたバトルをしている。

 中間メスグループがそれを見ながら話していた。


「私この前ぇ、思い切ってワルビル君にトレーニングの時間に、一緒に組もうって誘ってみたんだぁ」


 えー うそー だいたーん


 中間メスが次々に声を上げる。
 ▼ 83 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:14:27 ID:iZHkOkbw [9/44] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ルクシオ君と組むからって断られたんだけどぉ、そのときチョー優しくて」


 キャー それ絶対脈あるって 誘ってみなよぉ〜

 聞いているぶんには、明らかに脈無しに見えるし、囃し立てて煽っている連中も分かっているだろう。

メス達はライバルを消すために煽っているようにしか見えない。


 メスの付き合いは、ドロドロとした嘘で作られている。
 ▼ 84 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:15:25 ID:iZHkOkbw [10/44] NGネーム登録 NGID登録 報告
 そんなやり取りの数日後、事が起きた。

 中間メスのゲコガシラが、煽りに乗ってワルビルを呼び出した。


「あの、ワルビル君、ちょっといい?」


 上位オスと取り巻きの中間オスが盛り上がっている中、ゲコガシラが割って入る。

 ヒューヒューという、テンプレートな茶化し声に押され、ワルビルとゲコガシラはその場を離れた。

 結果は、当然惨敗。

ワルビルは優しくゲコガシラをフったそうだ。
 ▼ 85 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:16:42 ID:iZHkOkbw [11/44] NGネーム登録 NGID登録 報告
 この件について、ジャノビーとモココは、ワルビルはメスに優しいからね、と言っていた。振られた側も笑っている。

 ところでさぁ、とジャノビーは話題を転じた。


「あたしらもそろそろ、こっから出て野生に行く頃じゃん? あの子みたいにそろそろルクシオに自分の気持ち伝えたら?

 まぁ、外に出たらここのオスよりもっと良いのがいるかもしんないけどさ」


 そうだ。私たちはそろそろ施設を出る。もう、その位に成長していた。


「うん……そうだね」


 私は曖昧に返事をした。

 モココが、隣で神妙な面持ちをしていた。
 ▼ 86 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:17:26 ID:iZHkOkbw [12/44] NGネーム登録 NGID登録 報告
 その夜も、私はコノハナと一緒に本を読んだ。

 ふと、昼のジャノビーの言葉が耳に蘇る。


──そろそろ、こっから出て野生に行く頃じゃん?


 この本も、あと少しで読めなくなる。
 ▼ 87 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:18:58 ID:iZHkOkbw [13/44] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ねぇ、コノハナ」


 コノハナから返事はない。仕方なく体を摩る。


「うわっ」


 コノハナが驚いてのけぞった。

「んだよ」と顔をしかめる。


「私に絵本、読んでくれない?」

「はぁ? 何でまた急に」

「この冬が終わったら、私たちは施設を出るじゃん。その前に、この本の内容を知りたいの。文字、読めるんでしょう?」


 コノハナが狼狽えた。


「……んなこと、急に言われても」

「お願い」

「……たく、貸してみろ」

 コノハナが本を取る。開いて沈黙した。
 ▼ 88 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:19:28 ID:iZHkOkbw [14/44] NGネーム登録 NGID登録 報告
「どうしたの?」

「ん……あぁ」


 再び沈黙。


「ねぇ」

「わかってるから急かすな!」


 そういうので黙っていると、コノハナが口を開いた。
 ▼ 89 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:20:23 ID:iZHkOkbw [15/44] NGネーム登録 NGID登録 報告
「 男の子がいました。

 男の子は自分のお母さんとお父さんの顔を知りません。

何故なら、男の子は育て屋さんで産まれたからです。

 育て屋さんというのは、ポケモンの卵を作って、それをトレーナーさんに渡す所です。

 男の子のトレーナーさんは男の子の入ったタマゴの受け取りを断りました。

だから、男の子は育て屋さんで孵化して育てられました。

 男の子の生まれた時には、男の子のお父さんとあ母さんは、もう育て屋さんから出て行っていたので、顔を知らないのです。

 男の子はすぐに孤児院という所に預けられました。

そして、そこで生活することになりました」


 そこでコノハナが本を閉じた。
 ▼ 90 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:20:55 ID:iZHkOkbw [16/44] NGネーム登録 NGID登録 報告
「終わり? 絵本に書かれてたのは女の子じゃないの?」

「細かいところはどうでも良いだろ。続きは今度だ。こういうのは少しづつ読むんだよ」


 コノハナが本を突き返してきたので、それを受け取り、もう何度も見返した絵をまた眺める。

 その日は、その後何事もなく部屋に戻った。
 ▼ 91 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:21:37 ID:iZHkOkbw [17/44] NGネーム登録 NGID登録 報告
 次の日、ルクシオとワルビルがバトルしていたので、例によって私は底辺メスのグループの中にいた。

 次第に院を出る日が近づいていることもあってか、はたまた、昨日ワルビルをゲコガシラが呼び出した事が関係しているのか、いつも眺めるだけだった底辺メスにも動きが出始めた。


「私、思い切ってルクシオ君に告白しようかなぁ」


 フシギソウがそう言った。


 えー ホント? がんばって


 応援に熱が篭ってないのはどのグループも同じらしい。
 ▼ 92 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:22:18 ID:iZHkOkbw [18/44] NGネーム登録 NGID登録 報告
 退屈であたりを見渡すと迫害メスのエレブーが厳しい顔つきで、同じく迫害メスのドテッコツに何かを言っていた。ドテッコツは俯いている。

 下は下で色々大変なんだなぁ、と思った。

 恐らく、エレブーは自分が最下位でない事に安心を得ているのだろう。必死に自分の下を作ろうとしている。
 ▼ 93 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:22:51 ID:iZHkOkbw [19/44] NGネーム登録 NGID登録 報告
 ルクシオとワルビルのバトルに決着がついた。珍しくルクシオが勝ったようだ。


「私ちょっと行ってくる」


 フシギソウが走り出した。残された底辺メスのユキワラシとホルビーがすかさず陰口を叩く。


「さすがにちょっとムボウだよねー?」

「ねー、夢見すぎって感じというか、身の程知らずというか」


 1匹がグループから抜け出すとこうなるのも、メスに共通のようだ。
 ▼ 94 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:23:56 ID:iZHkOkbw [20/44] NGネーム登録 NGID登録 報告
 数分後、フシギソウが帰ってきた。少し興奮気味で鼻息が荒い。


「ねぇねぇ!」


 信じられないくらい大きな声で主張し始めた。

口から出た泡が床に染み込む。


「お疲れ様って言ったら、ありがとうって言われちゃったー。絶対! 意識してるよね!?」

 えー! ホントー? ウンウン、絶対そうだって!


 この子たちも、どこまでも『メス』だった。

 私も、同じメスであることを思い出し、気分が悪くなる。

 早く、本を読みたい。

あの時だけ、私は不要であることを忘れられる。本の最後には、いなくなる事が出来る。
 ▼ 95 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:24:31 ID:iZHkOkbw [21/44] NGネーム登録 NGID登録 報告


 底辺メス達の、自分で他者の世界の中に妄想的に意味のある場所を作り上げる、という絶望的な営みを見ながら、私は静かにその場を立ち去った。

 ▼ 96 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:25:24 ID:iZHkOkbw [22/44] NGネーム登録 NGID登録 報告
 夜。私はいつものように院長室へ本を持って向かった。

 その途中、『声』が聞こえたので身を隠すと、リザードと、……モココがいた。2匹でくっついて歩いている。

 私は身を隠すのをやめ、話しかけた。


「モココ?」


 モココが肩を震わせる。


「あ、ニャオちゃん。……ゴメン! ジャノビーには内緒にしてて! 彼も正直うんざりしてるみたいなの。だから、野生に出たら一緒に暮らそうって決めてて──」


 何も聞いてないのに、1匹で話し始める。モココからは秘密にする気も、悪気も感じられなかった。
 ▼ 97 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:25:57 ID:iZHkOkbw [23/44] NGネーム登録 NGID登録 報告
 そこにあるのは絶対的な優越感で、上位メスのトップのジャノビーからオスを奪った喜びが滲み出ている。

 お互い低い位置で綱渡りを楽しんでいるようで、すぐに終わるだろうな、と直感的に思った。


「うん。わかってるよ。誰にも言わない」

「ありがと、ニャオちゃん大好き。おやすみ」


 就寝時間に出歩いている私には触れる事なく、モココとリザードは去っていった。

 そんな姿に嫌悪感を覚え、それから逃れるように院長室に駆け込んだ。
 ▼ 98 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:26:30 ID:iZHkOkbw [24/44] NGネーム登録 NGID登録 報告
 コノハナはもう先に来ていた。本を差し出す。


「続き読んで、早く」


 コノハナが顔をしかめながら、本を手に取り、読み始めた。
 ▼ 99 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:27:15 ID:iZHkOkbw [25/44] NGネーム登録 NGID登録 報告
「 孤児院は男の子と似たような子供が沢山いました。

そしてみんな笑ってました。

 男の子は笑いませんでした。なんで笑えるのかも、分りませんでした。

 いつも男の子は院の隅っこにいたので、院長さんが「みんなと一緒に遊びなさい」と言いました。

 仕方なく男の子はおとなしそうな子と一緒にいることにしました。
 ▼ 100 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:28:06 ID:iZHkOkbw [26/44] NGネーム登録 NGID登録 報告
 ある日院長さんが院長さんの部屋で本を読んでいるのを、見つけました。

 男の子がそれをじっと見ていると、院長さんが言いました。

「これはね、『本』っていうの。いろんな人の話や物語が詰まっているのよ。だから、とっても素敵なものなの」

 男の子にはよく分りませんでした。

 院長さんが言いました。

「一度しかない人生で、いろんな人生が沢山楽しめるの。それって、とっても素敵でしょう?」

 男の子は、本を読むと別の生き方が楽しめるという事を知りました。

 そして、男の子は他のみんなが寝ている時にこっそりと抜け出して、本を読みました。
 ▼ 101 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:28:37 ID:iZHkOkbw [27/44] NGネーム登録 NGID登録 報告
 男の子は字が読めません。

 でも、男の子は本の中に、顔も知らない筈の男の子のお父さんとあ母さんが、自分と一緒に幸せな生活を送っているのが見えました。

 本の中は男の子の夢の世界だったのです。

 男の子は本に夢中になりました」
 ▼ 102 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:29:15 ID:iZHkOkbw [28/44] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……今日はここまで」


 コノハナがパタンと本を閉じる。


 これは。……この話は。


 私は何も言わずに静かに本を受け取った。

コノハナも、何も言わなかった。
 ▼ 103 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:29:58 ID:iZHkOkbw [29/44] NGネーム登録 NGID登録 報告
 そろそろ寝ようと、部屋から出ようとした時、コノハナに呼び止められた。


「おいっ! ……お、オレ。お前の事……馬鹿みたいだけどさ」
 ▼ 104 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:30:53 ID:iZHkOkbw [30/44] NGネーム登録 NGID登録 報告


 あぁ、やめて。その先は。それ以上は。


 ▼ 105 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:32:11 ID:iZHkOkbw [31/44] NGネーム登録 NGID登録 報告
すぅ、とコノハナが息を吸う。


「お前の事、好き、かもしれない」


 不器用で、自分勝手な告白を受けた。


「い……嫌」


 とてつもない嫌悪感に襲われた。

 今まで、何度か院内で告白を受けたことはある。でもそれは、私が問題の空白を埋めるために作った私に対するもので、こんな気分にはならなかった。

ルクシオが好き、と言ったときもそうだ。

 でも、素の私に向けられた好意を、私は受け容れられなかった。

 私は咄嗟に拒んでしまった。
 ▼ 106 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:33:10 ID:iZHkOkbw [32/44] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……ハハ。そうか、やっぱりそうだよな。お前は、お前も一緒だ。そこらへんのリア獣と。下の奴らは見えてないリア獣と。……悪かった。じゃあな」


 コノハナは私の前を通り過ぎ、部屋から出ていった。

 理不尽な怒りに聞こえるそれは、全くそうではない。

 そして、言ったコノハナ自身も、今の発言は本意ではないだろう。

 『声』を聴かなくても伝わった。


 私は暫くボーっとして、ノロノロと自分の部屋に戻った。
 ▼ 107 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:34:20 ID:iZHkOkbw [33/44] NGネーム登録 NGID登録 報告
 次の日、ジャノビーとモココと私の3匹で話していたのを途中で抜け出しコノハナを探したが、見つからなかった。

 結局その日の夜、コノハナは院長室にこなかった。




 朝、モココとジャノビーが睨み合っていた。野次馬が遠巻きに見ている。


「オスを盗るなんて、サイテー。信じらんない」


「何よ! リザード君もジャノビーにはうんざりしているわ。盗られる方が悪いんじゃないの?」


 パンっ、と軽い破裂音が弾ける。ジャノビーがモココをぶった。


「……何よ。痛いわね!」


 2匹が取っ組み合いを始めた。

さすがにまずいとルクシオとワルビルが止めに入る。当事者のリザードは素知らぬ顔だ。
 ▼ 108 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:35:14 ID:iZHkOkbw [34/44] NGネーム登録 NGID登録 報告
 どうやらモココは私以外のポケモンにも目撃されていたらしい。いや、目撃させたのかもしれない。そして、それがジャノビーに伝わったのだ。

 私と交わした秘密も、最初から秘密ではなかった。


「どうしたのジャノちゃん」


 ジャノビーにそう尋ねる。


「あいつ……モココの奴、リザードを誘惑したのよ。信じられないくらい。リザードもリザードよ。そんなんに乗せられるなんて、こっちから願い下げだわ」

「それは……ひどいね。サイテーだ」


 私は淡々と感情を機械的に込め、同情した。


「ありがと。やっぱり信じられるのはニャオだけだわ」


 ジャノビーが少し笑った。
 ▼ 109 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:35:48 ID:iZHkOkbw [35/44] NGネーム登録 NGID登録 報告
 基本的に昼はリザードと行動していたジャノビーは、リザードが居なくなりモココも絶交状態の為、必然私と一緒に行動することになった。

 ジャノビーがいるせいで、コノハナを探そうと思っていたが、できなかった。
 ▼ 110 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:37:00 ID:iZHkOkbw [36/44] NGネーム登録 NGID登録 報告
 その日の夜、自室でフシギソウが言った。


「凄かったねモココちゃんとジャノちゃん。もう私達も施設を出る頃だもんねぇ。想いを伝えたいよねぇ」


 粘ついた口調でフシギソウがウンウンと首を振る。

 ──コンコン。

 ノック音が部屋に響いた。


「誰だろ」


 フシギソウが戸を開く。

 ドアの先にはルクシオが居た。
 ▼ 111 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:39:35 ID:iZHkOkbw [37/44] NGネーム登録 NGID登録 報告
「えっ! ルクシオくん!? ……あぁ、ニャオちゃん? ちょっと待ってて」

「いや、お前に」

「え!?」


 フシギソウが嘘でしょ、と言うようにルクシオを凝視する。


「ちょっと外……まぁいいか。お前さ、オレに気があるみたいだけど」


 フシギソウがブンブンと首を振る。

 『声』が聞こえる私には、その先に続く言葉がわかった。

「ゲコガシラがワルビルにやったみたいなこと、絶対にすんなよ。オレあんなのマジ勘弁だかんな。マジで。ブスはブスらしく隅で大人しくしてろ」


 へ? とフシギソウが固まった。
 ▼ 112 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:42:09 ID:iZHkOkbw [38/44] NGネーム登録 NGID登録 報告
「じゃあな」


 ルクシオが戸を閉めた。10秒ほどの硬直の後、フシギソウが怒鳴った。


「なぁによー! それ! ハァ!? 意味わかんないんだけど! 許せない許せない許せない」


 ブツブツと1匹で呟いた後、急にこちらを向いて言った。


「ねぇ!? ニャオちゃん」

「う、うん。そうだね。今のは少し、酷いね」

「少しじゃないよぉ。サイテー。あーイライラする」


 フシギソウに付き合わさせられ、その日本を読みに行くことは出来なかった。
 ▼ 113 ダイケンキ@するどいくちばし 17/02/23 20:42:12 ID:8eFVSgo6 NGネーム登録 NGID登録 報告
支援もないし誰にも読まれてないのを淡々とやってるの見ると悲しくなるな
 ▼ 114 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:42:48 ID:iZHkOkbw [39/44] NGネーム登録 NGID登録 報告
 それからずっと、夜、コノハナは院長室にやって来なかった。

 私は、絵本の続きを聞くことは出来なかった。
 ▼ 115 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:43:46 ID:iZHkOkbw [40/44] NGネーム登録 NGID登録 報告
 コノハナが来なくなって7日目。ジャノビーが怒りを露わにして話しかけてきた。


「ねぇ、ニャオ。アンタ」

「何?」

「アンタ、モココとリザードが一緒にいたの、見てたんだって?」

「えっ……?」

「何で言ってくれなかったの? 信じてたのに! ニャオだけは」

「ジャノちゃん」

「呼ばないで! さっさとどっか行けよ! クソ野郎」


 しょうがないので私はその場を離れた。チラリと振り返ると、モココとジャノビーが話していた。
 ▼ 116 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:44:34 ID:iZHkOkbw [41/44] NGネーム登録 NGID登録 報告
 合点がいった。モココがジャノビーと仲を持ち直すために共通の敵を作ったのだろう。

 でもそのおかげで、私はジャノビーから解放されコノハナを探せるようになった。
 ▼ 117 ランターン@ピンクのバンダナ 17/02/23 20:45:04 ID:tqmxrOX2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
面白い
 ▼ 118 シルヴァディ@クリティカッター 17/02/23 20:45:10 ID:sm6Ei6EE NGネーム登録 NGID登録 報告
こっそり支援
 ▼ 119 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:45:21 ID:iZHkOkbw [42/44] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ねぇ」


 近くのメスにコノハナを見てないか尋ねた。


「…………」


 そのメスは気まずそうにこちらを見て、そそくさと去って行った。

 あぁ、私は迫害メスになったのだ。そう理解した。

 油断していた。傷つけられることのない、安全範囲。狭い金魚鉢のような、生温かく甘ったるい水の中で、私の危機感は麻痺していた。

 自分が誰かの敵となる、ということを意識してなかった。
 ▼ 120 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:46:02 ID:iZHkOkbw [43/44] NGネーム登録 NGID登録 報告
 1匹でコノハナを探した。『声』を聴けば早いが、やめた。コノハナに聞くな、と言われていたから。

 苦労の末、コノハナを見つけた。もともと限られた範囲だ。そこまで時間はかからなかった。

 コノハナはいつもの底辺オスグループと一緒にいたが、御構い無しだ。


「コノハナ。今日、来て」


 短く伝え、去る。コノハナの周りのオスが信じられない、と言うようにコノハナを見つめていた。
 ▼ 121 ぷしー◆iTFigG3P7M 17/02/23 20:47:00 ID:iZHkOkbw [44/44] NGネーム登録 NGID登録 報告
 その夜、部屋でフシギソウが言った。


「ごめんねニャオちゃん。ジャノちゃんに言われて……」


 フシギソウにも、コノハナを探している途中無視されたので、そのことだろう。


「うんん。気にしてないよ。しょうがないもん」


 私とジャノビー、敵にするなら私の方というのは当然だろう。
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