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SS

【クリスマスSS】黒いサンタクロースは少年にどんな夢を運ぶのか?

 ▼ 1 キノ◆zBLfAqPIVA 17/12/22 20:23:53 ID:/dTDEsLM [1/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カロス地方北部のとある田舎では、既に雪が降り始めている。

飾り程度にしか植えられていないであろう街路樹は、その輪郭が見えなくなるほど白い綿のような雪に覆われていた。

────音も何もかも呑み込んでしまいそうなそんな冬景色の中、一人の少年の声が、凛と響いている。


ユキ「ジングルベール、ジングルベール、すずがーなるー」


母「……あら、ユキったら随分と気が早いのね。クリスマスはまだ来月なのに、もうその歌うたってるの?」


ユキ「だってだって、すごく楽しみなんだもん! お父さんもその日はお仕事休みだし、みんなで美味しいケーキを食べるんだ! サンタさんが来るのも、もちろん楽しみだよ!」


母「うふふ、サンタさんは良い子のところにしか来ないのよ。悪い子でいるとね、代わりに黒いサンタさんが来て、悪い子にお仕置きしちゃうんだって」


ユキ「え……嫌だよ。ボク、お仕置きされたくない……」


母「……クスッ、お母さん意地悪なこと言っちゃったわね。ユキ君はとーっても良い子だから大丈夫。お母さんが保証するわ」


ユキ「えへへ……」


母「それに、黒いサンタさんも悪い人じゃないのよ? 悪い子にはお仕置きするけど、悪くない子にはちゃんと祝福を与えてくださるんだって」


ユキ「へぇ、お母さん物知りだねぇ……」


手はかじかみ、震えてくる。頬は自然に赤くなり、痛みさえ覚える。
厳しい寒さを堪えながらも、ユキ少年は幸せを噛み締めながら歩いていた。

それもこれも全て、隣に大好きなお母さんがいるから……。
 ▼ 2 ドンメル@ポケモンのふえ 17/12/22 20:24:33 ID:Tvnq3wjo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 3 キノ◆zBLfAqPIVA 17/12/22 20:25:14 ID:/dTDEsLM [2/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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────ガシャアン!

だが、少年の幸せは、薄氷が割れるのと同じようにあっさりと壊れてしまったのである。



「ちょっと! 誰か階段から転げ落ちたわよ!?」


「ひっでぇ怪我だ、早く救急隊呼べぇ!」


「ハピナス大学附属病院に繋いだぞ。おい、この女性の身内はどこかにいないのか!?」




ユキ「……お、おかあさん?」

ユキ「お、起きてよ。ねぇ、お母さん、お母さん」


目の前が真っ暗になる。
何度も何度も少年は母の体を揺する。
だがそれは、まるで意味がない行為だった。


お願いだから、返事して。ねぇ、お願い、お願い、お願い────


母「ユ…キ……────」


ユキ「お母さん!!!!!!」
 ▼ 4 キノ◆zBLfAqPIVA 17/12/22 20:28:42 ID:/dTDEsLM [3/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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神父「我らが創造主よ、一つの魂がまた天へと還った。せめてもの情けに、かの魂に暫くの安寧をお与えください……」


近くの教会から来た神父が何やら呪文のような祈りの言葉を唱えている。
お母さんの墓前にはたくさんの人のすすり泣きがあった。

しかし、少年の耳にはそれらすらもただの雑音にしか聞こえなくなっていた。



「この歳で母親を亡くすなんて可哀想に……」


「誰か声かけてやれよ」


「無理に決まってんだろ、なんて言えばいいんだよ……」




ユキ「……」


あらゆる音が耳の中を滑り抜け、闇の中に融けていく。
足が地に着かないという感覚を、少年は生まれて初めて味わった。
 ▼ 5 キノ◆zBLfAqPIVA 17/12/22 20:30:25 ID:/dTDEsLM [4/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
母の死から、数週間後。
クリスマスがまさに目前に差し掛かった頃のことだった。


父「ユキ、父さんはこれから仕事だ。ご飯は冷蔵庫に入ってるから、昼になったら食べてくれ」


ユキ「……うん」


父「……じゃあ、行ってくる」


この日もユキ少年は家の中で一人で過ごした。
焚き木がパキパキと暖炉で音を立てるのを聞きながら、窓から静寂に包まれた街を見つめる。

しばらくして、静かなはずの外から、家族の楽しげな会話が聞こえてきた。



リエ「クリスマスー!クリスマスー!プーレゼントー!」


リエ母「いい、リエちゃん? 早めにプレゼント買ってあげる代わりに、ポケモンスクールの勉強頑張るのよ?」


リエ「分かってるって!フォッコ、早くお店行こ!」


フォッコ「ふぉこぉ!」



声の正体は近隣に住む少女とその一家だった。
一連の会話を聞き、ユキ少年は肩を落とす。


ユキ「……クリスマスか」

それは、今の彼が最も聞きたくない言葉だった。

 ▼ 6 キノ◆zBLfAqPIVA 17/12/22 20:31:42 ID:/dTDEsLM [5/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
その夜、少年は悪夢を見た。


ユキ「待ってよ、お母さん……ねぇ、どこ行くの? お母さん!!」


夢の内容はとても単純だ。

お母さんが微笑みながら、遠くへ離れていくだけ。
だがたったそれだけでも、少年は悲しくてどうしようもなかった。


ユキ「置いてかないでよ、お母さん。ボク、寂しいよ。クリスマスは一緒にパーティするって、約束したじゃないか!!」



ユキ「……っはぁ!」


少年は夜中、何度も悪夢から目覚めた。


ユキ「はぁっ、はぁ……ううぅ……ぐすっ、えぐっ」


闇夜の空に楕円の月が輝く。
雪をも煌かせるそれの光に照らされながら、少年はただ泣くことしか出来ない。
 ▼ 7 キノ◆zBLfAqPIVA 17/12/22 20:33:47 ID:/dTDEsLM [6/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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「ちくしょう、逃がしちまった……あの厄介者め!!」


「アンタ、それ以上追いかけない方がいいよ。奴はあの『ダークライ』だよ? 関わるとロクなことにならないって」


「馬鹿野郎、アイツのせいでうちの娘が悪夢に悩まされたんだぞ! 腹が立って仕方ない!! 何度か攻撃はしたが、あの野郎め、今度見かけたら首根っこ捕まえて……」


気温は既に氷点下に達していた。

その寒さを堪えながら、一匹のポケモンは傷だらけになって、深夜の街を徘徊する。

人から逃げるように。あるいは、何か大切なものを求めるかのように。



ダークライ「……ラァイ」

ダークライ「ラ、イ……」ドサッ




かのポケモンの名は、ダークライ。

 ▼ 8 キノ◆zBLfAqPIVA 17/12/22 20:36:04 ID:/dTDEsLM [7/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
=クリスマス2日前=



父「じゃあ行ってくる、お留守番よろしくな」


ユキ「うん、お父さんも仕事頑張ってね」


今日もお父さんは仕事に出かける。

帰ってくるのはいつも通り真夜中になるだろう。

そうまでして働かなければ、今の生活を維持できないというのが現状だ。


ユキ(家の前だけでも雪かきしとくか……)


昨日、幅を利かせていた吹雪は想像以上に街に変化を与えていたようだ。
ドアを開けるとそこは一面の銀世界。

スコップを両手に、少年は雪かきに没頭する。



ユキ(昨日もよく眠れなかったなぁ……最近変な夢ばかり見る)


欠伸をしながら、積もった雪を立方体に切り取り、運ぶ。

何度も何度も機械のようにそれを繰り返す。



その時だった。
 ▼ 9 キノ◆zBLfAqPIVA 17/12/22 20:37:25 ID:/dTDEsLM [8/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
────ゴスッ


ユキ「……ゴス?」


鈍い音が鳴ったのだ。
それは決して氷や岩にスコップが衝突したとかそういう音ではない。


もっと、無機質じゃない何か────何やら嫌な予感を覚えたユキ少年は、慌てて両手で雪の中をほじくり返した。すると、そこから出てきたのは……。


ユキ「えっ、ポケモン!?」



それは、白い頭と黒い胴体が印象的な見知らぬポケモンであった。
 ▼ 10 キノ◆zBLfAqPIVA 17/12/22 20:39:23 ID:/dTDEsLM [9/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
本日はここまで。
また明日更新です。
日曜日完結予定。
 ▼ 11 シキジカ@こおったきのみ 17/12/22 20:43:11 ID:n5B5mTEY NGネーム登録 NGID登録 報告
面白くなりそう
支援
 ▼ 12 ウソハチ@ナナのみ 17/12/22 23:06:38 ID:5I0tY6X2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 13 メガヘラクロス@ジガルデキューブ 17/12/22 23:10:53 ID:nLQM4UTI NGネーム登録 NGID登録 報告
支援あげ
 ▼ 14 キノ◆zBLfAqPIVA 17/12/23 00:03:04 ID:87Nyx8ZY [1/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
パチ…パチ……

焚き木がまるで拍手をしているようだ。

じんわりと身体を癒すが如く伝わる熱に包まれながら、ダークライはようやく目を覚ました。


ダークライ「────ライ?」


ユキ「あ、起きたんだね。良かったぁ、雪に埋もれてたから心配したよぉ」

ダークライ「ッ!」ビクッ


少年は微笑む。

ダークライは人慣れしない子猫のように、ぴくりと身体を震わせた。


ユキ「とりあえず、モーモーミルクを温めたのがあるんだけど、飲む? 身体冷えてると思うし」


ダークライ「……!」
 ▼ 15 キノ◆zBLfAqPIVA 17/12/23 00:05:46 ID:87Nyx8ZY [2/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ユキ「とりあえず、モーモーミルクを温めたのがあるんだけど、飲む? 身体冷えてると思うし」


ダークライ「……!」


ユキ(警戒されてるのかなぁ。そもそもボクも初めて見るポケモンだから、なんて呼べばいいか分からないし)


ミルクを片手に困惑するユキ少年。

すると驚くべきことに、ダークライが突然彼に話しかけてきたのである。



ダークライ『……キサマはニンゲンなのに、オレをオソワナイのか?』


ユキ「え……しゃ、喋ったぁ?!」


ダークライ『イマ、テレパシーでキサマにカタリカケている。シャベッたわけではない』


不思議な感覚だ。

────確かに、耳に直接音が届いているわけではない。頭の中に言葉が刻みつけられているような……そんな感じ。
 ▼ 16 キノ◆zBLfAqPIVA 17/12/23 00:07:48 ID:87Nyx8ZY [3/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ユキ「い、いやいやいや。そ、それでも凄いよ。ポケモンと会話するなんてボク、初めてだ」


ダークライ『……キサマは、オレをオイハラワナイのか? コワくないのか?』


ユキ「怖いわけないじゃないか。どうして追い払う必要があるの? ほら、それよりもホットモーモーミルクだよ、温まるから飲んで」


ダークライ「……」


怖くないという気持ちは本心だった。

恐怖とか怪訝とかよりも、未知を目にした時の興奮や興味が勝っている。

それに気づいたわけではないだろうが、ダークライはようやっと警戒を解き、ゆっくりとホットモーモーミルクを口にした。
 ▼ 17 キノ◆zBLfAqPIVA 17/12/23 00:15:29 ID:87Nyx8ZY [4/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ダークライ「……ゴクッ」


ユキ「どうお、美味しい?」


ダークライ『ウマい……』


五臓六腑に染み渡るような温かさがダークライを癒した。

心がとても落ち着く。
しかしそれはもしかすると、モーモーミルクのおかげだけではないのかもしれない。


ユキ「良かったぁ。僕はユキって言うんだ、キミは……」


ダークライ『……ダークライ、ヒトからはそうヨバレテいる』


ユキ(当然だけどボクの知らない名前のポケモンだ……。珍しいポケモンなのかな? 人の言葉を扱えるくらいだし……)
 ▼ 18 キノ◆zBLfAqPIVA 17/12/23 00:17:11 ID:87Nyx8ZY [5/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ダークライ『ユキはぜんぜんモノオジしないんだな。ホントウにオレがコワくないのか?』


ユキ「まぁ……怖いものは、ほかにいっぱいあるから」ボソッ


ダークライ「?」


ユキの言葉の意味がダークライには分からなかったようだ。

ダークライは静かに首を傾げた。
 ▼ 19 キノ◆zBLfAqPIVA 17/12/23 00:26:04 ID:87Nyx8ZY [6/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ユキ「実は……夜までお父さんお仕事でね、今日は家に僕一人なんだ。ダークライ、良かったらでいいんだけど……。しばらく僕の話し相手になってくれないかい?」


ダークライ『オレが、ハナシアイテ?』


ユキ「ダメ……かな」


ダークライ『まぁ……べつにイイが』



ダークライも『最初』は、ユキ少年の家に長居する気などサラサラ無かった。

それが心変わりしたのはつい先程のこと。

ユキ少年と会話を交わす途中で、彼は気づいてしまったのだ。

────この子から確かな《悪夢のエネルギー》を感じる、と。


ダークライ(……)


少しだけ、この少年の様子を見ておくべきか?
ダークライはふと、そんなことを思った。

自分を怖がらないニンゲンというのも珍しい。
とにかくダークライは、興味本位でユキの側にいることにしたのだ。

そう、全ては彼のただの気紛れから始まったのである……。
 ▼ 20 キノ◆zBLfAqPIVA 17/12/23 00:26:20 ID:87Nyx8ZY [7/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
またあとで更新します
 ▼ 21 1◆zBLfAqPIVA 17/12/23 21:46:48 ID:87Nyx8ZY [8/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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ユキ「────そういえば今日の夕食の材料を買わなきゃいけないや。ちょっと出かけないと」


しばらくして後、ユキ少年はボソリと呟いた。

母親が亡くなって以来、仕事に出かけっぱなしの父親の代わりに家事をこなすのは彼の仕事だ。


ユキ「ダークライは……家の中にいた方が良いよね。怪我もしてるみたいだし」


ダークライもそれに同意した。

怪我もあるのだが、ダークライにはもう一つ、外を出歩きたくない理由があったからだ。
 ▼ 22 1◆zBLfAqPIVA 17/12/23 21:48:03 ID:87Nyx8ZY [9/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ダークライを家に残し、少年は外に出た。

────出来るだけ早く帰らないと。
少年は常に急ぎ足で行動する。


〜商店街・青果店〜

ユキ(……あれ、フエンせんべいが安売りされてる。……これも買っておくか)


ユキ少年は袋づめされたフエンせんべいを籠に入れ、他にも幾つかの木の実と野菜を運んで会計へと向かう。


「おや、坊ちゃん一人で買い物たァ偉いねェ。明後日はクリスマスだがその用意かい? 親御さんは?」


青果店の主人がユキ少年に話しかけてきた。
白髪混じりの顔中に笑いジワが刻まれた優しいおじさんだ。


ユキ「いや、これはその……」


ユキ少年は困惑する。

おじさんに悪意がないのは分かるが、親のことを聞かれると、何と言葉を返していいか分からなかったのだ。
 ▼ 23 1◆zBLfAqPIVA 17/12/23 21:49:37 ID:87Nyx8ZY [10/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
それを見た青果店の婦人が、慌てて横から口を出してくる。


「────あっ、馬鹿! アンタさ、あの子は例の事故で母親を亡くした子なんだよ……」ボソボソ


「こ、こりゃいけねぇ、余計なことを言っちまった」ヒソヒソ


「ぼ、坊ちゃん、オレンの実お安くしとくよ。えへへ、今後ともごひいきにな」


ひそひそ話聞こえてますよー、と思いつつ、少年は精一杯の苦笑いを浮かべた。


ユキ(値下げは嬉しいけど、あんまり気を遣われるのも困りものだなぁ)



ひとまず、青果店での買い物も終わったし、さっさと家に帰ろう。
何より、ダークライのことが心配だった。


空を見上げ、灰色の曇天に白い息を吐き、少年は歩み始める。

その道中であった。ある井戸端会議が彼の耳に入ってきたのは────
 ▼ 24 1◆zBLfAqPIVA 17/12/23 21:50:14 ID:87Nyx8ZY [11/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
主婦1「それにしても物騒な世の中ねぇ。聞きましたぁ? 隣町で危険なポケモンが現れたって話」


主婦2「知ってるわよ。悪夢を見せて人を殺すポケモン! 怖いわねぇ。確か名前は……」


主婦1「ダークライよ、奥様!」



ユキ(……え?)

 ▼ 25 1◆zBLfAqPIVA 17/12/23 21:51:45 ID:87Nyx8ZY [12/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
────帰り道。
ユキ少年は複雑な気持ちで帰路についた。


ユキ(ダークライは悪いポケモンなの? 悪夢を見せて殺すなんて……)


正直、信じられないという気持ちが強い。

短い間しか話をしてないし、あくまで第一印象に過ぎないのだが、それでもダークライが悪いポケモンだとは全く思えなかったのだ。



坊主頭「────おい、ユキィ! 何だてめぇ美味そうなもん持ってンじゃねぇか」


ユキ(き、近所のガキ大将……)

その時、突然現れたのは、町内でも指折りの問題児。

とっても意地悪でイタズラ好きで、彼を嫌う子供は多い。

今日も相棒のズバットを連れて我が物顔で闊歩しているようだ。

出来ることなら会いたくなかった。

だって彼は……。



坊主頭「ズバット、あの食い物奪ってこい! 俺ァ腹減ってンだよ!」


彼は気の弱いユキ少年を、いつもイジメの対象にしていたのだ。
 ▼ 26 1◆zBLfAqPIVA 17/12/23 21:52:33 ID:87Nyx8ZY [13/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ズバット「ズババァ!」


ユキ「や、やめてよ! これは今日の晩御飯もあるんだ!」


坊主頭「うるせぇよ、どうせてめぇ母親いないんだから余らかすンだろうが、果物の一つや二つケチケチすんなっ!」


遠慮というものを彼は全く知らない。

本当なら今すぐにでも降参して逃げ出したかった。

でも、『これ』はダメだ。
『これ』は渡しちゃいけない────!!



ユキ「〜〜っ!! やだ!!」


坊主頭「あぁ、めんどくせぇわお前。ズバット、痛めつけてや────」


ズバット「ズ、バッ……!?」ビクッ
 ▼ 27 1◆zBLfAqPIVA 17/12/23 21:53:14 ID:87Nyx8ZY [14/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
その時、突然ズバットが硬直した。

まるで誤作動を起こしたロボットのように、ズバットはピクリともその場から動かなくなってしまったのだ。


ユキ「……?」


坊主頭「……お、お前。後ろのそれ、な、何なんだよ……」


ガキ大将も全身を震わせながらその場で立ち止まっている。

寒さのせいで震えているのではなかろう。おそらく、それは恐怖によるもの。

彼は何かを恐れている────
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