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SS

【ホワイトデーSS】貴女に涙色のチョコを

 ▼ 1 6ngK9o9r.. 18/02/17 19:18:20 ID:EZQgiT9Y [1/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


2月17日


ニンフィア「はい、これ」

ヨーテリー「……何?」

ニンフィア「ハートスイーツっていうチョコレート。バレンタインだったからって、お姉さんがくれたの」

ヨーテリー「バレンタイン?」

ニンフィア「うん……その、お世話になってるコに、お礼をあげるんだって」


……晴れた日だった。
草むらの中で、ニンフィアとヨーテリーが向かい合って座っていた。ニンフィアの方が、器用にもヨーテリーにチョコレートを差し出していた。彼女の頬が微妙に染まっていることには、ヨーテリーは気づいていなかった。
ニンフィアの体は綺麗で汚れはなかったが、ヨーテリーの方はそれなりに薄汚れていた。
 ▼ 2 6ngK9o9r.. 18/02/17 19:18:58 ID:EZQgiT9Y [2/14] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ニンフィアが差し出しているチョコレートは、現在の彼女の飼い主が周囲に配るために態々手作りしたものに手を加えて、ポケモンでも食べられるようにしたものだった。
彼女は貰ったそれに殆ど手をつけず取って置き、飼い主がチョコを配りに出た隙を見てここまで持ってきたのだった。


ヨーテリー「……ふーん」


ヨーテリーは、どう反応すればいいのかも分からず、取り合えずそれを受け取った。彼は野生のポケモンだった。咥えてみるだけで、今まで知らなかった濃い甘さが口に溢れた。そして、一口。


   パリッ

ヨーテリー「……美味しい」


一口、少しかじるだけでそう思った。しかし全部食べようとはせず、ヨーテリーはそれを地面におく。ニンフィアが首を傾げた。
 ▼ 3 6ngK9o9r.. 18/02/17 19:19:18 ID:EZQgiT9Y [3/14] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ニンフィア「……全部、食べないの?」

ヨーテリー「あ、いや、後でじっくりと、ね」

ニンフィア「そう……」


……下手に人間の味に慣れると野生でやっていけなくなるから、とは、口が裂けても言えなかった。
ニンフィアはヨーテリーの言い訳に安心し微笑む。


ニンフィア「なら、良かった」

ヨーテリー「……」

ニンフィア「……じゃあ、またね。また、お話ししてね」

ヨーテリー「……うん」


そして彼女は背を向けた。ヨーテリーは何も言わずにそれを見送る。また会おう、という言葉に対して、確約することは出来なかった。
 ▼ 4 6ngK9o9r.. 18/02/17 19:20:22 ID:EZQgiT9Y [4/14] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
───

ヨーテリー「……」


さて、どうしたものか。ヨーテリーはチョコを運びながら困っていた。
食べられないからといって、チョコを捨てるのは不味い。倫理的にもそうだが、まだ年端もいかない幼ポケモンが食べれば、その刺激的過ぎる味を知ってしまい、普通の食べ物では満足できなくなる。というかヨーテリー自身、全部食べたら多分モモンの実の甘味程度では満足できなくなりそうだった。


ヨーテリー「……」

「……おい」


ヨーテリーはチョコを咥えたまま歩く。自分らの巣への道を辿っていたが、チョコを持ち帰るわけにもいかなかった。
 ▼ 5 6ngK9o9r.. 18/02/17 19:21:38 ID:EZQgiT9Y [5/14] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「おい」

ヨーテリー「……ん?」


そこでヨーテリーはようやく、後ろから誰かが声をかけていることに気がついた。彼は慌てて振り替える。
一匹のガーディがいた。体つきからして、誰かの手持ちポケモンだろうと推測できた。

ヨーテリーは彼を何度か見かけていた。今まで話こそしたことはなかったが、ニンフィアと会うときには、何故か大体彼も見かけた。


ガーディ「それ、何だ」

ヨーテリー「ん? あ、あ……チョコレートだって」

ガーディ「そんなのは分かってるんだよ。何で、その、ニンフィアからそれを貰ったんだ」
 ▼ 6 6ngK9o9r.. 18/02/17 19:22:09 ID:EZQgiT9Y [6/14] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ガーディはそう問った。目付きは嫌になるほど鋭かった。ヨーテリーはそれを何となく察していたが、人間がバックにいるポケモンと喧嘩になるのは命取りだったので、刺激しないようにそれについては言わなかった。


ヨーテリー「その……日頃のお礼って」

ガーディ「……そうか」


ガーディは、ヨーテリーからの言葉を幾らか咀嚼してから、唐突にヨーテリーのチョコを奪った。そして一言。


ガーディ「寄越せよ」

ヨーテリー「え?」

ガーディ「お前が食っても後々辛いだろ? だからって捨てるのも勿体ないだろうし、俺が食ってやるよ」
 ▼ 7 6ngK9o9r.. 18/02/17 19:22:41 ID:EZQgiT9Y [7/14] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ヨーテリーは暫くぽかんとしていた。ガーディは許可を得ることもなく、どこかドヤ顔でチョコを食べていく。


ヨーテリー「……ありがとう」

ガーディ「──そうかよ」


ヨーテリーは一言礼を言って、ガーディから離れようとした。実際その感謝は皮肉でも何でもなく本心だった。確かに、捨てるよりかは誰かの口に入れた方が、チョコレートだって本望だろう。
逆にガーディは、ヨーテリーが礼を言われるなんて思っていなかったのか愕然としていた。彼としては、ヨーテリーは悔しがると思っていたのだが、そうはならなかった。


ガーディ「なあ」

ヨーテリー「……?」


それが少し悔しくて、ガーディはヨーテリーを呼び止めた。ヨーテリーはどこか鬱陶しげに顔だけ振り向く。
 ▼ 8 ッポウオ@きりのはこ 18/02/17 19:24:19 ID:KvlyO4QQ NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 9 6ngK9o9r.. 18/02/17 19:27:20 ID:EZQgiT9Y [8/14] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ガーディ「ホワイトデー、って知ってるか」

ヨーテリー「いや、全然」

ガーディ「バレンタインにチョコを貰ったオスが、それよりも高いチョコを用意してメスに返すイベントなんだってさ」

ヨーテリー「……」

ガーディ「ちゃんと、返さなきゃ駄目だからな?」


……ヨーテリーは、その声には返事が出来なかった。これまで野生での生活で、チョコレートを手に入れたことはなかった。人間の食べ物を得るなんて難しすぎた。しかも彼には、チョコレートの価値なんて分からなかった。
……しまった、とヨーテリーは思った。しかし返事はせず、どうすればいいのだろう、と思いながら家路を急ぐ。

ガーディは去っていくヨーテリーを見送り、チョコを完食して、町の方へと戻っていった。
 ▼ 10 6ngK9o9r.. 18/02/17 19:27:49 ID:EZQgiT9Y [9/14] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
───





   ガサガサッ

ヨーテリー「……ただいま」

「あ、お帰りなさい!!」


……ヨーテリーの家は、低木の茂みの中にある窪みを押し広げた物だった。帰ってきたヨーテリーを、まだ幼いイワンコが、右足を引きずりながら出迎える。
ヨーテリーは、彼女と同居していた。しかし付き合っているという訳ではなく、ヨーテリーがイワンコを養っている、といった状況だった。


イワンコ「今日の晩御飯はチーゴの実でいいですか?」

ヨーテリー「構わないよ」

イワンコ「体濡れてませんか? 風邪引くと大変ですよ?」

ヨーテリー「大丈夫だよ」
 ▼ 11 6ngK9o9r.. 18/02/17 19:28:25 ID:EZQgiT9Y [10/14] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
イワンコはいそいそとヨーテリーの体調を確認する。そして、家の中の奥まった物置から、木の実を二つ取り出した。


イワンコ「……で、誰と会ってたんですか?」

ヨーテリー「──」


……ヨーテリーは、唐突に出されたその質問の返事に詰まった。ニンフィアと会っていた、と言うことは憚られた。それだけの、とある理由があった。


イワンコ「ヨーテリーさん、時々誰かと会ってますよね。女のコと」


そう言いながら、イワンコはヨーテリーの体を嗅ぐ。彼女にとって、微妙に嗅ぎ覚えのある臭いだった。
 ▼ 12 6ngK9o9r.. 18/02/17 19:29:04 ID:EZQgiT9Y [11/14] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
イワンコ「……人に飼われているポケモンに近づいたら、危ないですよ」

ヨーテリー「知ってるよ」


そう言った。イワンコは、誰かに飼われているポケモンが嫌いだった。ヨーテリーはそれを知っていたが、素っ気ない返事しか出来なかった。


イワンコ「ヨーテリーさんまで死んじゃったら、私、もう生きていけません」

ヨーテリー「……そうだね」


比喩でもなんでもなかった。ヨーテリーはイワンコの右足に目をやる。彼女の足は、生まれつき上手く動いてくれなかった。彼女は、長距離歩くだけで激しい痛みに襲われ、数日間何も出来なくなる。そんな病気だった。当然そんな個体は、誰の助けもなければすぐに死んでしまうのは明白だった。


ヨーテリー「まあ、気を付けるよ」

イワンコ「……はい」


ヨーテリーはそう言って誤魔化した。
ついでに問う。


ヨーテリー「……そういえば、今、家にチョコレートってあったっけ?」

イワンコ「ありませんよ、そんなの。どうしてですか?」

ヨーテリー「……いや、別に」


当たり前のことだった。
当たり前の日常だった。
 ▼ 13 6ngK9o9r.. 18/02/17 19:29:44 ID:EZQgiT9Y [12/14] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
───





ヨーテリー「……」


夜になった。ヨーテリーは再び家を出て、食料を探し始める。
昼のうちは小さなポケモンを狙うポケモンや、見境なくポケモンを襲っては倒すタイプのトレーナーが多いため、それらを避けようと思えば自然と食料探しは夜に限定された。

ヨーテリーは、知らず知らずのうちにチョコの匂いを探していた。ホワイトデー。それが重く肩にのし掛かった。チョコを返すのが約束事であるのならば、どうにかして果たさないといけない。そう、思った。


「……なあ、ヨーテリー」

ヨーテリー「……ん?」
 ▼ 14 6ngK9o9r.. 18/02/17 19:32:03 ID:EZQgiT9Y [13/14] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
名前を呼ばれて振り返った。一匹のイーブイが、ヨーテリーの背後にいた。


イーブイ「今日、あいつと会っただろ」

ヨーテリー「……何で、分かったの?」

イーブイ「足跡で分かるさ。あと、臭い」


そう語るイーブイは、明らかに嫌そうな、道端に放置されたガムを見るような目をしていた。ヨーテリーはその目が、しかめ面の中に鎮座する嫌な目が自分自身ではなく、今日あったニンフィアに向けられているものだと知っていた。


イーブイ「あいつに関わるなって、何度も言っただろ。あいつは俺たちを忘れた。俺たちの兄さんを目の前で殺した人間に媚を売った!! 何だよニンフィアって!! 何で仇に尻尾を振れる!!」

ヨーテリー「……」

イーブイ「……悪い、熱くなっちまった」


イーブイはそう言って俯いた。
ヨーテリーは彼を気の毒に思った。昔はもっと笑っていたのに、と。……現在、イーブイは一匹で暮らしている。かつて沢山の兄弟がいた広い家に、一匹で。親兄弟は皆消えた。人間に、奪われた。
 ▼ 15 6ngK9o9r.. 18/02/17 19:32:29 ID:EZQgiT9Y [14/14] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
イーブイ「……だからさ。お前はあいつと関わるな。お前が死んだら、イワンコが悲しむだろ」


……イーブイはそう言って、返事を聞くこともなく去っていった。


ヨーテリー「……そうだね」


ヨーテリーは小さく呟いて、空を見上げた。満天の星空……と言うには、近くの町の光が邪魔すぎたが、それなりに星を見ることは出来た。


ヨーテリー「ホワイトデーで、最後にするよ」


これで最後にする、何度そう言っただろうか。ヨーテリーはそう思いかけたが、止めた。
今度こそ、最後だ。これで、最後だ。
最後に──


貴女に告別のチョコを。
 ▼ 16 キノオー@こだいのうでわ 18/02/17 20:35:45 ID:jfq0/4I6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 17 6ngK9o9r.. 18/02/19 17:23:05 ID:bdEcZBEA [1/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


2月19日


───
──


『なあ、ヨーテリー』

『駄目だよ!! 死んじゃ駄目だよ兄さん!!』


その日、血を見た。


『……イワンコを頼む』

『駄目だって!! 目を開けてよ!!』


その日、涙を見た。


『ああ……あと、イーブイちゃんと、仲良くしてやれよ』

『死なないでよ……!!』


彼は後悔を知った。
彼は懺悔を知った。
彼は絶望を知った。
その日、一匹のポケモンの、全てが終わった。


──
───
 ▼ 18 6ngK9o9r.. 18/02/19 17:23:44 ID:bdEcZBEA [2/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





イワンコ「……起きて、起きてくださいヨーテリーさん」ユサユサ

ヨーテリー「……ん、ああ……」


ヨーテリーは、うなされていた。半泣きでうなされていた。そして、イワンコに揺り起こされた。
ヨーテリーは朦朧とする頭を振り、目を擦る。


イワンコ「おはようございますヨーテリーさん。大丈夫ですか?」

ヨーテリー「あ、ああ……うん、大丈夫」

イワンコ「……悪い夢でも、見たんですか?」

ヨーテリー「……まあね」

イワンコ「お父さんの、夢ですか?」

ヨーテリー「……集会に行ってくるよ」


ヨーテリーは返事もそこそこに、何も食べずに家を出た。イワンコの問いに、答えることは出来なかった。
 ▼ 19 ラエナ@はねのカセキ 18/02/19 17:24:42 ID:s1pFpg56 NGネーム登録 NGID登録 報告
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(犬にチョコ……?)
 ▼ 20 6ngK9o9r.. 18/02/19 17:25:43 ID:bdEcZBEA [3/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
───

朝露を踏みつけながら、ヨーテリーはさっきまで見ていた懐かしい夢に思いを馳せた。鼻に入る早朝特有の湿った空気が、彼の心を落ち着かせた。


ヨーテリー「……兄さん」


かつて、ヨーテリーには兄がいた。これといった取り柄のない、ただのハーデリアだった。取り柄はなかったが、それなりに幸せだった男だった。姉のような立場だったルガルガンと結ばれ、一人娘を作っていた。その一人娘があのイワンコだった。

……しかしもういない。彼は既に、人間に倒された。ヨーテリーの目の前で倒された。外にいたときに人間に見つかり、逃げることもままならず経験値になった。
……その原因は他の誰でもない。ヨーテリー自身だった。

ヨーテリーは首を振る。今それを思い出すと何も出来なくなりそうだったから、彼は過去に蓋をした。
 ▼ 21 6ngK9o9r.. 18/02/19 17:27:43 ID:bdEcZBEA [4/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告





ヨーテリー「あっ……ついた」

「おう、遅かったな」

ヨーテリー「すいません……」


いつの間にやら、ヨーテリーは草むらの中のある程度広いスペースにやって来ていた。七日に一度、近隣の中型ポケモンがここに集まって集会を行うきまりになっていた。
ヨーテリーが見渡せば、かなりのポケモンが既にいた。昨日のイーブイも当然いた。


グラエナ「何、構うことはねぇさ……よし、揃ったな。んじゃ始めるか」


コミュニティの一応のリーダーを勤めているのはグラエナだった。彼は周囲を見渡しながらそう言い、近くのポケモンから順に最近あったことを聞き始める。
 ▼ 22 6ngK9o9r.. 18/02/19 17:28:21 ID:bdEcZBEA [5/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ポチエナ「あー、今日も異常はねぇよ。人間が侵入してくるエリアに変化はなく、近辺で異常な特訓を行うトレーナーもいない」

グランブル「同じやな。平穏で良いことやね」

ルクシオ「そうだね。こっちも同じ感じ」

コジョフー「同意。状態、良好」

ヨーテリー「……うん。大丈夫」


何時もと変わりはない。それが、概ねの結論だった。例え人間の世界がどうであれ、野生ポケモンにとってはそれはどうでもいいことだ。彼らはバレンタインデーもホワイトデーも、知るつもりはなかった。
 ▼ 23 6ngK9o9r.. 18/02/19 17:29:03 ID:bdEcZBEA [6/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
グラエナ「成程な。……んじゃ最後、イーブイ」

イーブイ「……人間のポケモンの侵入が見られる。交流は避けるべきだと」

ヨーテリー「……」


その空間で、イーブイだけが苛立っていた。彼は顔にシワを刻みながら、ニンフィアの件を大雑把に報告する。とあるメスのポケモンが一匹で侵入して、近辺を徘徊したと。ヨーテリーが一緒にいたことを伝えなかったことだけは、彼の良心だった。


イーブイ「……と、言うわけだ」

グラエナ「分かった。お前ら気を付けろよ。下手に人のポケモンと近付きすぎると、後々で軋轢を招く。俺達は無力だ。あいつらと正面からぶつかれば、勝てない。だからな……生きたければ、あいつらに関わるな」


そこで、今日の集会はお開きとなった。
 ▼ 24 6ngK9o9r.. 18/02/19 17:29:33 ID:bdEcZBEA [7/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
───





『イーブイちゃんと、仲良くしてやれよ』

『お前はあいつと関わるな。お前が死んだら、イワンコが悲しむだろ』

『また、お話ししてね』

『生きたければ、あいつらに関わるな』

ヨーテリー「……」


ヨーテリーは、ニンフィアのことを思い出していた。
彼女は元々、ここのポケモンだった。人間に捕まえられて、ニンフィアに進化した。それでも彼女は、トレーナーの元を抜け出してはヨーテリーに会いに来る。
……どうすれば、良いのだろうか。
 ▼ 25 6ngK9o9r.. 18/02/19 17:30:39 ID:bdEcZBEA [8/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ガーディ「おい」

ヨーテリー「……キミは」


ガーディがいつの間にか立っていて、ヨーテリーに声をかけていた。ニンフィアが居ないところで見るのは、初めてだった。


ガーディ「チョコレート、用意したいんだろ」


ガーディは唐突に、ぶっきらぼうにそう言った。
チョコレート。それは確かにヨーテリーの頭の中に重くのし掛かっていた。せめて用意はしなければと思うが、見つかるあてはなかった。


ヨーテリー「……そうだね」

ガーディ「お前らみたいな野良ポケモンだと、チョコレートなんか見つからねぇだろ」

ヨーテリー「……まあ、そうだね」

ガーディ「……ついてこいよ。チョコレート、沢山あるところを教えてやるよ」


そう言うガーディの顔は、どこかイキイキとしていた。
 ▼ 26 6ngK9o9r.. 18/02/19 17:31:27 ID:bdEcZBEA [9/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
───





ガーディ「……ほらよ。ここだよ」

ヨーテリー「……」


ヨーテリーは、ガーディを断れずに共に歩いていた。彼に連れられて十数分歩くだけで、二匹は巨大なビルの前にやって来ていた。
いわゆる、デパートと呼ばれる建物だった。何人もの人間が、出入りを繰り返していた。どこからともなく、甘い香りが漂っていた。


ガーディ「……じゃあな。後は好きなように頑張れよ」

ヨーテリー「ああ、うん」
 ▼ 27 6ngK9o9r.. 18/02/19 17:32:39 ID:bdEcZBEA [10/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ガーディはヨーテリーにそう言って離れていく。彼は雑踏に紛れて適当に曲がり角を曲がり、目立たない路地裏に入って……そして、ヨーテリーの姿を見つめ始める。
ガーディはとても気になっていた。ヨーテリーがどんな選択をするのか。


ガーディ「……出来れば、へまをして殺されてほしいもんだなぁ……」


そんな声が、小さく漏れた。





ヨーテリー「……どうしようか」


ヨーテリーは困惑する。着いてきてしまったが、ここまで人間が周囲に溢れていると怖いものがあった。
誰も足元のポケモンになど目を向けはしないし、こんな街中でポケモンバトルを開始しようとも思わないためヨーテリーが襲われる恐れはほぼなかったが、ヨーテリーの足はいつの間にやら震えていた。蓋をしたはずの過去が溢れてきそうで、ヨーテリーはまた首を振った。
 ▼ 28 6ngK9o9r.. 18/02/19 17:33:15 ID:bdEcZBEA [11/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ヨーテリー「……」


通行人『ねぇねぇお返し何くれるのー?』

通行人『そうだなぁ……チョコレートなぁ……』

通行人『結局買ってしまった……』

スピーカー『バレンタインセール実施中!! ホワイトデーにも!!』

通行人『リア充爆発しろ……』


ヨーテリー「人、多いなぁ……」


しかし、ここまで来て何もしなければそれこそ無駄というもの。帰り道は覚えているが、どこを歩けばここまで来れるかも覚えていられる自信はない。何より、ここまで連れてきたガーディの怒りを買うのが恐ろしかった。
 ▼ 29 6ngK9o9r.. 18/02/19 17:34:33 ID:bdEcZBEA [12/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ヨーテリー「……やるか」


ヨーテリーは少しばかり移動して、手近な看板の影に隠れた。鼻に神経を集中させれば、通行人の手の袋の中にどんな物が入っているかは用意に看破できた。
傾向として、人々の左手に持たれている半透明の小さな袋の中にチョコレートがあることが多かった。ヨーテリーには知るよしはなかったが、それはデパート内の洋菓子店の袋だった。

タイミングを見計らう。計画は簡単だった。飛び出して、人々の手の袋を奪い、全力で逃げる。それだけ。
看板の前を、一人の女性が通りがかった。


ヨーテリー「3、2……1!!」

   ダッ


覚悟を決めて飛び出す。歯を剥く。袋の持ち手に食らいつく。手から袋をもぎ取る。その一連の動作は、まるでスローモーションのようにヨーテリーには思えた。
 ▼ 30 6ngK9o9r.. 18/02/19 17:36:51 ID:bdEcZBEA [13/13] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
女性『あっ、ええっ!?』


袋は奪い取った。動揺する女性を尻目に、ヨーテリーは走る。
人々の目が、街道を突き抜ける彼に集中していた。誰かがカメラを構える。誰かが笑う。それが、どうしようもなく恐ろしくて、もう二度とこんなことはしたくないとぼんやり思った。

───





ヨーテリー「ぜぇ、ぜぇ……」


どうにか、逃げ切った。ヨーテリーがそれを確信したのは、自らの巣をその目に漸く認めてからだった。
しかし、自分の巣に袋を隠すわけにもいかない。彼は近くの茂みに袋を隠し、砂をかけて外から見えないようにする。そうして彼はついに安心した。


ヨーテリー「……ふぅ」


彼の心には安心感が満ちていた。体にかなりチョコレートの匂いはついてしまったが、それは後で水浴びでもすれば取れるだろう。

ニンフィアの顔を思い浮かべた。兄の顔も勝手に脳裏に浮かんできた。
とうとう、終わりに出来るのだろうか。


貴女に笑顔でチョコを。
 ▼ 31 ーテング@ひでんのくすり 18/02/20 01:44:48 ID:ld6ZZcsE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
クイサレ氏……?
ともかく支援
 ▼ 32 クリュー@ひきかえけん 18/02/22 00:17:07 ID:9zvLAUHg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 33 ッキング@ピーピーマックス 18/02/23 17:08:37 ID:uWUqSlZg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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