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SS

【SS】スピアー「幼女にゲットされたようだ」

 ▼ 1 鳥田のカツどん 18/03/16 20:40:07 ID:QF9Sla3o NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
─カロス地方、メイスイタウン─

ガチャッ

「お兄ちゃん」
「なんだ?リンコ」
「・・・ボール。ボール貸して」
「ボールって、モンスターボールの事?えっお前、ポケモン捕まえるの?マジで?」
「うっさい。なんでもいいから早く!」
「へいへい。・・・っと、余ってたこいつで良いかな。ほれ」
「あんがと」

バタム

「あいつがポケモン捕まえるなんてなぁ。意外過ぎる」







よお、俺だ。スピアーだ。

「グマァァ!」
「スピッ」ブゥゥ…ン

むし・どくタイプのどくばちポケモン。
カロス生まれカロス育ち。

「ピアッ!」ギュアッ
「グォ!?」

もっと詳しく言うと、ハクダンの森ってとこだな。ちょっと南の方にあるそこそこの規模の森。

「スピィィッ!」ズドォッッ
「グラオォォ…」ドズゥゥ…ン

え?
なんでさっきから戦闘の音が聞こえるのかって?

簡単な事だ、リングマと戦ってた。
戦闘とは言うけど俺が一方的にミサイルばり→どくづきのコンボで沈めたんだけどな。

といってもただ縄張り争いしてた訳じゃあ無い、ちょっと理由がある。

野生のリングマは基本はきのみを食べてるんだけど、たまーにミツハニーとビークインの巣にあるミツを狙う事がある。分かる分かる美味いもんなアレ。
ミツハニーもビークインも戦闘が得意な訳では無いんだ。当然というかなんというか他のポケモンに助けを求める。

で、少し前にもそんな事があって、たまたま通りかかったのが俺だったって訳だな。

それからは実力を買われてその巣に『雇われてる』…つまり傭兵みたいなもんだな俺は。

ちなみに報酬はミツハニーのミツ。どくで動けないリングマの目の前ですすると甘いんだなぁこれが。
 ▼ 761 鳥田のカツどん 23/02/01 00:09:12 ID:4FYMBmzI [1/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

──でも!!それは!!





ゴンッ!!





もっとダメだ!!

「スピアー!?」

自分で自分の頭を殴る!!脳を無理やり叩き起す!!

しっかりしろ!!俺!!リンコの言葉を思い出せ!!





『正々堂々戦います!!応援よろしくお願いします!!』





正々堂々やるんだろ!?そうだろ!?

体にダメージがあっても!!心に闘志が残ってるなら!!

限界まで動け!!

「立ち上がるか。いいね」

こっちは真っ直ぐ立つのもやっとだってのに、向こうは相変わらずドッシリしてやがる。まるで山だ。

「ストーンエッジ!!」

その山を、打ち砕かないといけないんだ。
 ▼ 762 鳥田のカツどん 23/02/01 00:12:44 ID:4FYMBmzI [2/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ゴゴゴゴッ!!

飛び出してくる岩の槍を避けながら考える。さっきのネガティブな方向と逆の向き、戦闘の方向に脳を回転させる。

ドリルライナーのために近付いたら直接叩かれる。だったら遠くから防御をこじ開けて、一気に飛び込んでぶち込む!

どうやる!?ミサイルばりはまだ撃てるが、ただのミサイルばりじゃ無理だ!何か仕掛けが必要!

バカになれ、スピアー。お前は自分で自分の体を痛めつけた。槍を折って頭をぶん殴った。もうお前はバカなんだ。やるならバカを突き通せ。バカみたいに抗え!!

思い出せ…!これまでの強敵はどうやって突破してきた!?



『回転の力を意識しろ』

『イメージしろ。お前のドリルライナーがどういう向きに回っているのかを。ドリル、と名前に付くがこの技は障害物を…敵を打ち砕くだけじゃない』



そうだ、ただ砕くんじゃない!こじ開けるんだ!ここからでもドリルライナーを届かせる方法は…!

「集中攻撃!」

ドガァッ

鋭い岩の花が咲く。これまで右か左か前に避けていたそれを、後ろ方向に避ける。

「わっ」

ガシッ

勢い余ってリンコに受け止められる。肩と体を支えてくれるリンコの手が、俺に力を分けてくれる。

「…決めるんだね!?」

ああ!最後の一発を当てに行く!!

「ゴルルゥ…!」

ボスゴドラが低い唸り声を響かせる。睨み付けるようにこちらを見ている。

ザッ

フィールドの中央を挟んで向かい合う。
これまで幾度となく感じた、「次の一撃で終わる」感覚。その何倍も何十倍も大きいものが、俺の本能を突き刺している。

グググッ

ギュルルルル…ッ

右槍を背中に、左槍を正面に。そして両方でドリルライナーを準備。
左槍のダメージは技にまで影響を及ぼしているようで、そちら側のドリルライナーはうまく回ってくれない。左槍の直接攻撃は厳しい。
 ▼ 763 鳥田のカツどん 23/02/01 00:13:50 ID:4FYMBmzI [3/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ギュウーーーーーンッ

それでも回転を続ける。次第に甲高い音を発し、空気を切り裂くようにかき混ぜていく。

「攻撃タイミングは任せるよ。一度撃ったら踏み込んでいい」
「ゴドルァッ」

見ろ、ボスゴドラ。渾身のドリルライナーを目に焼き付けろ。

「スピアー…!!」

キィーーーーーーンッ





────ボゴッ





────今!!





バッ!!

俺が立っていた場所を正確に狙った一撃。それを横に跳躍してかわす。

ボスゴドラが見える。引き延ばされた感覚の中でゆっくりと、少しづつこちらに向かって来ている。

ピタッ

左右の槍を正面に合わせる。互いの槍をくっつける。

右の槍はミサイルばりを。左の槍はドリルライナーのまま。

ドリルに接したミサイルが回転を始める。緑色のオーラが回り、回り、回る。

まもなく体が地面に達する。全てがスローに感じる。
 ▼ 764 鳥田のカツどん 23/02/01 00:14:26 ID:4FYMBmzI [4/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





マニューラ、ルナトーン、フライゴン。テツヤ、リンコ。





これまで出会った全てのポケモン達。
これまで出会った全ての人々。





───俺を、導いてくれ。





ドシュッ!!





ミサイルばりを、撃った。





 ▼ 765 鳥田のカツどん 23/02/01 00:15:21 ID:4FYMBmzI [5/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


(射撃…!数は一発だけ、スピードは早い。威力が高められている可能性がある。まともに食らうと影響が出るかもしれない。僕のボスゴドラは体力低下状態、外皮は深刻な状態ではない。受けるなら正中線以外だ、それでいて動きの邪魔にならない場所。片腕で防いで最小限に抑える。ボスゴドラの防御力は…未だ健在!!)



「腕で防いで相殺!!」

ダイゴの鋭い声。

「ゴドラッ!」

ドシンッドシンッドシンッ

走りながらボスゴドラが左腕を構える。盾のように。

パンッ

あっけない音と共に、ミサイルばりが弾けた。防御された。

「グオオオオオオッ!!」

勝ちを確信したようなボスゴドラの咆哮。





「グ…ガァァァァァッ!?」





その声は、すぐ悲鳴に変わった。
 ▼ 766 鳥田のカツどん 23/02/01 00:16:21 ID:4FYMBmzI [6/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「!?」

驚愕するダイゴ。無理もない。





ギリリリィッ…!!





ボスゴドラの左腕が、まるで捻り上げられているように不自然に曲がっているからだ。





「アガッ、ガッ、ガァァァッ!?」

「これは…!?」

パニックのボスゴドラ。やっと狼狽えた表情を見せてくれたダイゴ。

「スピアー、GO!!!」

ブゥンッ!!!

リンコの一声で、待ってましたとばかりに飛び出す俺。

キュルルルルッ

相手に近付けば近付くほど見えてくる、不可解な攻撃のタネ。



「あれは、スピアーの槍!?」



ダイゴも気付いたようだ。それは、ボスゴドラの左腕に突き刺さって回転し続ける──俺の左槍の先端。
リンコに受け止めてもらったとき、右の槍に刺しておいた。背中で庇いながら回転させ、前に出すときはミサイルばりで覆って存在を隠す。
ボスゴドラはきっと防御すると思った。外側のミサイルが爆ぜても、中身の槍が残ってくれれば!

「ウガ…ガァ…!!」

回転は伝播し、ヤツの腕を使用不可能にしてくれる!!
 ▼ 767 鳥田のカツどん 23/02/01 00:18:11 ID:4FYMBmzI [7/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





「ボスゴドラッ」





相手のボディは、もう目の前。





「ドリル!!ライナァァァァァッ!!」





「ガァァァァァァァッ!!!!!」





ドゴンッ!!





───ぐ、は。





右腕の、パンチ。





左半身が、潰れるような、感覚。





右槍が、届かない。視界が、体が、回転する。




 ▼ 768 鳥田のカツどん 23/02/01 00:18:56 ID:4FYMBmzI [8/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





地面が背中に。敵の、アゴが目の前に。





アゴ。傷。俺が付けた傷。





───ここだ。





ドギャッ!!





 ▼ 769 鳥田のカツどん 23/02/01 00:19:56 ID:4FYMBmzI [9/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
槍で突いた反動。地面に落下する。

視界が効かなくなる。暗くなっていく。

ボスゴドラが、ゆっくりと、ゆっくりと、倒れ込んでいく。


もう、何も、




見えな──








 ▼ 770 鳥田のカツどん 23/02/01 00:20:47 ID:4FYMBmzI [10/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
次の更新で完結予定です
 ▼ 771 ニラン@きんのいれば 23/02/01 18:51:16 ID:FsRkyKSI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 772 ースター@トロピウスのはっぱ 23/02/01 19:14:49 ID:2ZL6xvqk NGネーム登録 NGID登録 報告
5年か長かった
 ▼ 773 ノクラゲ@クラフトキット 23/02/01 19:16:01 ID:9RC2inkA NGネーム登録 NGID登録 報告
俺も読み始めたときと比べて年取ったな…
なんか成長を実感するわ
最後までがんば、支援
 ▼ 774 鳥田のカツどん 23/02/27 23:54:53 ID:YKDg1JAk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
明日更新します
 ▼ 775 鳥田のカツどん 23/02/28 23:30:17 ID:aQ0IPpp. [1/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




『あなたがいいのよ。私のポケモンさん』



『ここまで気合い入れたんだから、勝たないとね』



『正々堂々戦います!!応援よろしくお願いします!!』



───リンコ。



 ▼ 776 鳥田のカツどん 23/02/28 23:32:03 ID:aQ0IPpp. [2/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




テンテンテロリン♪



はっ!

『おヤ』
「起きたな」
「ふりゃ!(スピアーさん!)」
「マニュ!(ししょー!)」

皆。ここは…控え室か。

「あの後、すぐにバトル終了。このあと表彰式と閉会式で、リンコは打ち合わせに行ってる」

そうか。…そうなのか。

『いかがなさいましタ?』

いや、終わっちゃったなぁと思って。

「長く感じたか?」

そうだな。でも、今思うとあっという間だった。
あっ!

「マニュ?(何です?)」

そういえば、勝敗はどうなったんだ?あのままバトルが終わったってことは、まさか…。

「それはだな」

ガチャ

「…本人の口から聞くといいぜ」
「あ、スピアー」

リンコ!お疲れさま。

「お疲れ〜。体の調子はどう?」

問題ないけど、ちょっとだけダルいかな。

「うんうん。回復機は精神的な回復はできないから、家に帰ったらしっかり休まないとね」
「リンコ、スピアーが聞きたいことがあるってよ」
「うん?」

そうだ、ボスゴドラ達との試合の結果が知りたくて。

「なんと…




 ▼ 777 鳥田のカツどん 23/02/28 23:32:57 ID:aQ0IPpp. [3/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
引き分けでした!」



「つまり、あなたの一撃でボスゴドラは完全に気絶。でもあなたも体力を使い果たしてダウン。ビデオ判定とかいろいろやって、引き分けって判定になったの」

表彰式への道すがら、リンコが説明してくれた。
うーむ、勝ち越しは出来なかったか。

「やっぱり勝ちたかった?でも相手は現役チャンピオンだよ〜?」

そうは言っても、あと一匹だったからなぁ。

「でも今回のダイゴさん、大会側が用意したポケモンで戦って手持ちは三匹でメガシンカ禁止で戦って…めちゃくちゃハンデあったよねぇ」

その条件でやっと引き分け。やっぱりチャンピオンって超強いんだな…。

「な、なんか寒気が」

ゾッとするぜ。
というか。



勝ちたかったのはお前もだろ?



「あ。バレた?」





フィールドに設けられた表彰台。俺とマニューラとルナトーン、そしてフライゴンもボールから出ている。
そこでリンコは金色のトロフィーと、メガシンカに必要な道具──キーストーンとメガストーンを受け取った。



ワァァァッ!!



万雷の拍手が俺たちを包む。リンコは優勝商品を渡してくれたダイゴと握手を交わしていた。二人とも尊敬の念を相手に向けていたのと同時に、どこかギラリとした目付きをしていた。まるで「次は負けないぞ」と言っているような。

いつかあるかもしれないダイゴとの再戦。それに思いを馳せつつ、俺たちの大会は幕を閉じた。
 ▼ 778 鳥田のカツどん 23/02/28 23:33:33 ID:aQ0IPpp. [4/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




一ヶ月後。



俺は、一人でぼーっとしていた。

ここがどこかというと、ハクダンの森。俺とリンコが出会った場所だ。
大会が終わってからもあっちこっち移動していたので、今日は完全オフ。リンコからのんびりしてくるように言われた。

ピピピ…

頭上をヤヤコマが飛んでいく。いい天気だ。
ふと、槍を見下ろす。

リンコにはこっぴどく怒られた。実は相当取り乱していたみたいだ。
よく考えればリンコはこのリトルリーグが大会初出場だったわけで…そこでこんな無茶をしてしまったのはさすがに反省しないといけない。
とにかく俺の負傷については、ダイゴの手厚いサポートと医療技術のおかげでなんとかなった。折れた槍の根本と先端を専用のギプスで固定しているのだが、そのギプスにはダイゴが発見した金属が使われている。
もうしばらくすると槍が完全にくっつき、以前と同様の戦いぶりに戻れるらしい。

そうそう、ダイゴについて…ホウエン地方に戻ってからはチャンピオンの仕事に精を出しているようだ。涼しい顔してチャレンジャーをなぎ倒しているらしいし、大会の時の手持ちの事情は知れ渡っていたから立場にはなんの問題もないみたいだ。

あとはそうだな、ワルビアルを使っていたあのトレーナー。
厳しい処罰が下されて、長期間の大会参加禁止と謹慎処分、そして罰金。あのやり口はさすがに警察のラインを越えたらしい。妥当だな。

キィィーン…

さっきのヤヤコマより遥かに高いところを、小さな飛行機のシルエットが飛んでいく。

そうそう、俺達はここ数週間で雪山に行ったり別の地方まで行ったりしたんだ。
───前者はマニューラの出身地、後者はルナトーンがかつて暮らしていた場所へ。
 ▼ 779 鳥田のカツどん 23/02/28 23:34:14 ID:aQ0IPpp. [5/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


元々、マニューラとはそういう約束だった。強くさせる。強くなって今のボスを見返す。
その後が未定だとしても、とりあえずはあいつのルーツに戻る必要があった。

マニューラのコロニーはすぐに見つかった。息を潜める俺たちからマニューラが離れていくとき、俺は少しばかりの不安を感じた。
今のマニューラは強い。野生のポケモンのほとんどを赤子のように扱えてしまう。そしてあいつの境遇を考えると、現在のコロニーを荒らしまくってしまうのでは?と。

だが、その不安は的中しなかった。

しばらくすると、一番大きい巣穴からマニューラが逃げ出してきた。大量のマニューラとニューラを連れて。
訳も分からぬまま俺たちも一緒になって逃げて、山の麓になってやっと群れをまくことができた。

事情を聞くと。

『マニュ、ニュマ(最初にお父さんからもらった爪を埋めて)』

『マニュラ、ニュラ(その後こっそり群れの様子を見てたんですけど、特に問題ないように見えたんです)』

『ニュラ…ニュラ、ニュラッ(最近生まれたばかりのニューラもいたみたいで…そこに乗り込んで全部ぶっ壊すのも、なんか違う気がして)』

『マニュニュ!ニュラッ(だから、とりあえず今のボスをひっぱたいて来ました!それとあっかんべーも)』

それを聞いたリンコは無言でマニューラを抱きしめ、マニューラもリンコを抱きしめた。
マニューラのやつ、なんだか大人っぽくなってたな。
 ▼ 780 鳥田のカツどん 23/02/28 23:35:37 ID:aQ0IPpp. [6/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


その後、俺たちはホウエン地方に向かった。ダイゴに会いにいったのではなく、ルナトーンの住んでいた場所に向かうために。
地図を見たときは本当に驚いた。ルナトーンがあんなに遠い距離を孤独に旅してきたなんて、かなりびっくりだ。

件の街に付いたあと、早速ルナトーンの住んでいた家を訪ねたのだが…。
その家は無慈悲にも取り壊され、更地となっていた。

『・・・』

言葉が出ないルナトーンに俺たちはなんと言えばいいか分からなかった。そもそも街並みはルナトーンの記憶とだいぶ違っており、情報を集めるのにも苦労しそうだった。
諦めのムードが漂い始めた、その時。

『そのルナトーン!もしかして、あの人のポケモンかい!?』

声のした方を見ると、初老の女性が立っていた。俺たちは全く面識のない人物だったが、ルナトーンはすぐに気付いた。

『もしや、あのパン屋の娘さんでしょうカ?』
『そうだよ!久しぶりだねぇ〜!』

どうやら知り合いだったらしい。その人に事情を尋ねようとすると、別の方向に案内された。
そこは女性の営むパン屋さん。ルナトーンの記憶と全く変わらない位置にあったらしく、明らかにテンションが上がっていた。

『これなんだけど』

打って変わって真面目な雰囲気で持ち出された箱を、ルナトーンがサイコキネシスで受け取る。

『あの人がね。ルナトーンにもし会えたら渡してほしいって。相当無理したみたいでね、過労で・・・』

その箱の中には、手紙と、木製の片目用眼鏡──モノクルが入っていた。
 ▼ 781 鳥田のカツどん 23/02/28 23:36:12 ID:aQ0IPpp. [7/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



『ルナトーン、悪い。遅くなった。

なんとか借金は返し終わったが、少々無理をし過ぎた。お前を探しに行ける体力があるとは言えない。

だから、これを作った。受け取ってほしい。罪滅ぼしにもならないかもしれないが、どうか俺を忘れないでくれ。

岩タイプのポケモンは長寿だ。身の振り方は任せる。

また会おうと言ったのは俺だったのに、ごめんな。元気でいてくれよ』



『・・・ボール』

読み終わったルナトーンは、一言呟いた。

『リンコ殿のモンスターボールに入ったときから、薄々感づいていたのでス。もはや叶わない再会であることヲ』


墓参りをしたその日の夜、ルナトーンは一晩中砂浜を漂い続けた。日付が変わり、夜が開けて、俺たちが迎えにいくと。

『・・・出発の前に、失礼』

ルナトーンは、モノクルを装着した。

『中々の付け心地ですな、職人としての腕は衰えていなかったようデ。それでは参りましょうカ』
『いいの?ルナトーン』
『何がでス?』
『残る選択肢はあるよ』
『・・・』

波のさざめきが、しばらく聞こえたあと。

『一つの縁が終わり、次の縁が始まったということでしょうナ。岩のように頑固な身ですが、今後ともよろしくお願い致しまス』

ルナトーンは、俺たちと過ごすことを決めた。
パン屋の女性に定期的な来訪を約束し、俺たちはカロスへと戻った。
 ▼ 782 鳥田のカツどん 23/02/28 23:37:31 ID:aQ0IPpp. [8/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


そういうわけで、このハクダンの森には俺一人で来たわけではない。少し離れたところにマニューラもルナトーンもフライゴンも、リンコと共にいるはず。
今後もあいつらと一緒に過ごせるっていうのは、すごく嬉しいな。濃密な期間を過ごした仲だし、二人ともいい戦いっぷりだったし。

岩に寝そべって伸びをする。昼寝でもしようかな。



ブゥ…ン



ん?

今の音。聞き覚えがある。

いや覚えがあるっていうか、あれは俺の羽音じゃないか?

でも俺は羽なんて動かしてないし。

・・・あっ!



ブゥゥゥンッ



そうか。あいつだ。音がした方向に急いで飛ぶ。

木々を避けるように飛行していると、すぐにその姿が見えた。
白い槍、黄色い体、黒い線の入った腹部。間違いない!

おーい!

「スピ?(うん?)」

久しぶりだなぁ!忘れちまったか?

「スピ!スピピッ?(あ、お前か!忘れてないよ、元気してたか?)」

しばらくこの森で二人で行動してたもんなぁ。俺がゲットされるよりもっと前か。

「スピ。スピピッ、スピ?(そうだな。いやちょっと待て、なんだよそれ?)」

そいつが指したのは、俺の槍を固定しているギプス。そこには、俺たちの激闘の証───キーストーンが埋め込まれている。

「スピ!(怪我してんじゃん!)」

これか?平気さ、そのうち治る。
それよりお前、俺より先にゲットされただろ。どんな暮らしぶりよ?

「スピピ。スピッ(ああ、その人が畑の管理人でさぁ。それを手伝ってるよ、美味い木の実を食わせてもらってる)」

へぇー、良い人間にゲットされたな。

「スピ。スピ?(おう、ぼちぼちな。お前は?)」

俺か?俺は・・・。
 ▼ 783 鳥田のカツどん 23/02/28 23:39:56 ID:aQ0IPpp. [9/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





「ちょっとマニューラ!?」





お、来た来た。



「ポフレ食べすぎ!食べくずこぼしてるし!」
「マニュ〜(別にいいも〜ん)」
「ふーりゃっ!(駄目ですよマニューラさん!)」
「あとフライゴンも!太るよ!」
「ふりゃっ・・・!?(ふとっ・・・!?)」
「この子の先輩なんだから、皆しっかりしてよ〜」
『確か、ジグザグマというポケモンでしたナ?』
「そうそう。ホウエン地方にも生息してるんだよ!」
『道理で、見たことがあると思いましタ』



皆だ。マニューラ、ルナトーン、フライゴン、リンコ、彼女が抱える新しい仲間のジグザグマ。



「ふりゃ!(あ、いました!)」
「マニュー!(ししょー!)」



皆がこっちに気付く。俺を呼んでいる。



「スピ。スピ〜(お前の仲間か。なんか楽しそうだな〜)」





ああ。さっき言いそびれたけど、俺はな。





最高のトレーナーにゲットされたぜ!





─完─
 ▼ 784 鳥田のカツどん 23/02/28 23:48:14 ID:aQ0IPpp. [10/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
【あとがき】
約5年間も続いてしまった本作でしたが、いかがだったでしょうか。見切り発車だったスピアー達の物語が完結までこぎつけたのも、閲覧してくださった皆様やコメントしてくださった皆様、この作品に関わってくださった全ての皆様のおかげです。本当にありがとうございました。
今後のことですが、作品全体に誤字脱字や誤表現が残っておりますのでそれを修正したものをpixivかハーメルンにでも上げようと考えています(本筋を大きく変えたりはしないと思います)。次回作の案はあるにはあるのですが、しばらくは羽根を伸ばして書きたくなったら再び筆を執ろうかと思っています。
完結させてあげることができて本当に嬉しいです。本作が皆様を少しでも楽しませることが出来たら幸いです…。
 ▼ 785 ラバリー@だいすきメール 23/03/01 00:21:58 ID:TumkazCE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
5年間お疲れ様でした!
 ▼ 786 ローン@カジッチュのミツ 23/03/01 00:36:08 ID:z2QgLpA. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙!
完走おめでとう!
 ▼ 787 ノンド@ガラナツのえだ 23/03/01 00:43:42 ID:V5jw7eEE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しっかりと、そして定期的にSS書けるのはすごいと思う
完結乙
 ▼ 788 ノヤコマ@ダイゴへのてがみ 23/04/01 19:53:00 ID:qWFYPPBk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あげ
 ▼ 789 ュプトル@トロピカルメール 23/05/07 10:53:32 ID:lhckdkg. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あげ
 ▼ 790 ソクムシャ@いわのジュエル 23/05/19 02:20:12 ID:jSLQaMpg NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
完結乙です
 ▼ 791 オガラス@おだんごしんじゅ 23/05/20 17:29:56 ID:jh.cmf0I NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
2018年の3月からあるのか
こりゃ凄い
 ▼ 792 サナン@なんごくかいがら 23/05/30 21:23:00 ID:rmZ.6wMI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ここまで書き切った事が立派
 ▼ 793 スモッグ@まんぷくおこう 23/07/04 10:41:54 ID:hL5EaHxE NGネーム登録 NGID登録 報告
あげ
 ▼ 794 ポエラー@せいなるはい 23/07/04 11:37:20 ID:q0is3McQ NGネーム登録 NGID登録 報告
んん?
 ▼ 795 ルメタル@ユキワラシのけ 23/08/05 21:31:11 ID:/EhUacag NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
残しておきたい
 ▼ 796 ンプラー@ドラメシヤのこな 23/08/27 21:32:00 ID:phHsHIOY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
未来への遺産
 ▼ 797 ワパレス@しんちょうミント 23/08/27 23:12:43 ID:nTXgSRrM NGネーム登録 NGID登録 報告
ほんとこいつどうにかならんのか

【R18】そばにいてくれた君に【サトマオ】

https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=1745488&l=173

【R-18】サトシ「マオやめてっ・・・もう出ない!!」 マオ「もっと出るでしょ〜?シコシコミルク出しちゃえ♪」シコシコ

https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=1910231&l=39

サトシ「もうやめてくれアセロラ・・・」 アセロラ「くすっ・・・またアセロラちゃんでこんなにおっきくしたんだ・・・」

https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=1912879&l=23

ナンジャモ「ハルト氏好き好き好き好き好き好き好き好き好きスキ」【SS】

https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=1941863&l=80

【SS】男子「やーいwwwタロの眉毛フトマユゲーwww」 タロ「う、うるさいなあ……」

https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=1971099&l=63

安価SS ゴウ「ダンデさん……人気が欲しいです」ダンデさん「任せておけ!!!」

https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=1770425&l=681
 ▼ 798 カルゲ@いきいきイナホ 23/09/28 22:36:09 ID:xG4.YEEY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あげ
 ▼ 799 ウマージ@チルットのはね 23/09/28 22:39:37 ID:S7HYDIS6 NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
なぜあげる
 ▼ 800 ガピジョット@ポケモンのふえ 23/11/06 12:24:59 ID:BIicX/Qc NGネーム登録 NGID登録 報告
あげ
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