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【SS】ザングース「俺の恩返し」

 ▼ 1 1◆v1GnTfaqxg 18/08/03 18:09:55 ID:2g66pWM. [1/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



小さな町の片隅にある、草がぼうぼうと生え散らかる空き地……


その空き地の隅に積み上げられた土管の中、一匹のザングースが寝転がっていた……



ザングース「……」



季節は夏……例年以上の猛暑と言える今年は、彼のような野良ポケモンをジリジリと追い詰めていた……


コンクリートで出来た土管は、日光を浴びてどんどん熱くなっていく……


ザングース「あ、あっちぃな……」

 ▼ 12 1◆v1GnTfaqxg 18/08/03 18:26:42 ID:2g66pWM. [2/39] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


ザングースがじっと様子を伺っていると、突然おばあさんはザングースの顔をぐいと掴み、あらゆる方向から見つめた……



おばあさん「なんだい、目つきの悪い……ぶっさいくなポケモンだねぇ」


ザングース「は!? 誰がぶっさいくだと!? 目つきが悪いのはお前もだろうが!! このクソババァ!!」



ザングースは毛を逆立てて威嚇する……



おばあさん「ふんっ! なんだい、助けてもらった癖に恩を仇で返す気かい?」


ザングース「!」



確かに、助けられた身なら……そんな事はしてはならない。


ザングースもそれくらいの常識は弁えていた。

 ▼ 13 1◆v1GnTfaqxg 18/08/03 18:28:07 ID:2g66pWM. [3/39] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



ザングース「うぐぐ……悔しいけど、助けてもらった身だ……」



ザングースはなんとか怒りを堪えると、すぐそばの縁側に向かって歩き出した……



おばあさん「なんだい、助けてもらった癖に恩返しもしないのかい? 最近のポケモンは恩知らずだねぇ」



嫌味な言い方のおばあさんにザングースの怒りは爆発しそうだ。



ザングース「あんのクソババァ!! 恩人じゃなけりゃあぶっ殺してるってのにぃ!!」



ギリギリと歯を食いしばり、睨み返そうとしたが……また、おばあさんに嫌味を言われそうだったので、再びザングースは怒りを堪えた。

 ▼ 14 1◆v1GnTfaqxg 18/08/03 18:31:55 ID:2g66pWM. [4/39] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



おばあさん「本当に、最近の若者もポケモンも……まったく……」



おばあさんはブツブツと聞こえる声で文句を言いながら、部屋を出ていった……


どうしていいかわからずに、ザングースは畳の上に座り、縁側から見える外の世界を見ていた……



ザングース「帰らせてもくれないって、どうすりゃいいんだよ……」



ため息をつく……


そのため息を風鈴の音と、扇風機の風が掻き消した……



ザングース「ほんと、ムカつくババアだ……」


 ▼ 15 1◆v1GnTfaqxg 18/08/03 18:33:56 ID:2g66pWM. [5/39] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


その時、おばあさんが部屋に戻ってきた。


その手には大きなお盆……その上には、これまた大きな……いくつかに切り分けられたカイスの実が……



ザングース「!」



おばあさんは机の上にお盆を置くと、切り分けられたカイスの実を一つ手に取り、大きな口でかじった。



おばあさん「……ま、ぼちぼちの味だねぇ」


ザングース「……う、うまそう……」



しかし、ザングースには見ている事しかできなかった……


もちろん、あんなものを食べにいったが最後、このおばあさんにブツブツ文句を言われるに決まっているからだ……


 ▼ 16 1◆v1GnTfaqxg 18/08/03 18:35:23 ID:2g66pWM. [6/39] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



ザングース「うぅ……腹減った……こりゃいったい何の拷問だよ……」



ザングースはおばあさんに背を向けて腹をさする……


すると、おばあさんはわざとらしく大きな音をたててカイスの実を食べ出した……



ザングース「!」



水分を多く含んでいるであろう、そのカイスの実……おばあさんが一口、また一口と食べ進めるたび、ザングースの腹は鳴る……


いつの間にか、口からよだれが垂れている事に気付き、ザングースは急いでそれを拭った……

 ▼ 17 1◆v1GnTfaqxg 18/08/03 18:36:13 ID:2g66pWM. [7/39] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


目の前で美味しそうな物を食べられる……それは、今のザングースにとって、あまりに残酷な刑だった。



ザングース「……うぅ」



帰る事も許されず、食べる事も許されず……あまりの事に、ザングースは泣きたくなった……


その時、おばあさんが聞こえる程にわざとらしい、大きなため息をついた。



おばあさん「いつまでそこでグズグズしてんだい! こんな量、年寄りの私に全部食えって言うのかい!? 気の利かないポケモンだねぇ!」


ザングース「!」



振り返ると、ザングースのすぐ後ろ、皿にのった大きなカイスの実が……


 ▼ 18 1◆v1GnTfaqxg 18/08/03 18:37:07 ID:2g66pWM. [8/39] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


ザングース「い、いいのか……?」



ザングースはおばあさんの顔を見る……



おばあさん「グズグズしてんじゃないよ! 早く食べな! その皿を洗えないだろう!?」


ザングース「!」



ザングースは急いで皿の上のカイスの実を手に取り、ガブガブと食べた……


水分を多く含んでいたそのカイスの実は、まともな水を最近飲めていなかったザングースの身体に染み渡った……


 ▼ 19 1◆v1GnTfaqxg 18/08/03 18:38:26 ID:2g66pWM. [9/39] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


ザングースはあっという間に食べ終えた。



おばあさん「残ったらもったいないからね、残りも全部食べときなよ!」



おばあさんはそう言いながら、皿を持って部屋を出ていった……



ザングース「(あのババア……いい奴なのか? ……まぁ、性格は悪そうだけど、食わせて貰えるなら食うだけだ!)」



ザングースは息もつかずに残ったカイスの実を食べ続けた……

 ▼ 20 1◆v1GnTfaqxg 18/08/03 18:40:28 ID:2g66pWM. [10/39] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


ザングース「ふぃー! 食った食った!」



三日ぶりの食事に満足したザングースは扇風機の前に寝転がった……


風鈴の音が響く縁側……


扇風機の風が心地いい……



ザングース「……あのババアさえいなけりゃ、ここにずっといたいんだけどな……」



そこに、皿洗いを終えたおばあさんが帰ってきた。



おばあさん「ほら、さっさとどきな! そこは私の場所だよ!」



おばあさんはザングースを押しのけると、扇風機の前を陣取った。



ザングース「……いちいち腹の立つババアだな……」


 ▼ 21 1◆v1GnTfaqxg 18/08/03 18:41:44 ID:2g66pWM. [11/39] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


おばあさんは扇風機の前に寝転がりながら、テレビを見ている……



ザングース「そろそろ……帰っていいかな……」



そう思い、暗い縁側に向かおうとすると……



おばあさん「逃げようたって、そうはいかないよ。あんたにはまだ、恩返ししてもらってないんだからね……」


ザングース「っ!」


おばあさん「恩返しするまで、私のそばから離れるんじゃないよ……いいね……?」


ザングース「……」



ザングースはおそるおそる、先程座っていた定位置に戻った。


 ▼ 22 1◆v1GnTfaqxg 18/08/03 18:43:30 ID:2g66pWM. [12/39] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


おばあさんは扇風機の前、テレビを見ながらこちらに背中を向けている……



ザングース「恩返し……か……」



文句を言おうにも、自分は確かにこのおばあさんに倒れていた所を助けられているし、カイスの実もご馳走になってしまった……


ただで帰る訳にいかないのは、ザングースもわかっていた……


けど、何もない自分に出来る事など……



ザングース「……」




考えているうちに……だんだんと……




目の前が……真っ暗……に……




……








 ▼ 23 1◆v1GnTfaqxg 18/08/03 18:44:25 ID:2g66pWM. [13/39] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


ザングース「っ!」



気がつけば、いつの間にかザングースは畳の上に寝転がっていた……


どうやら、考えているうちに眠ってしまったらしい……



ザングース「!」



ザングースは自分の腹にタオルケットがかけられている事に気づいた……


この家には、あのおばあさんの他には誰もいないと思われる……


なら、このタオルケットをかけてくれたのは……



 ▼ 24 1◆v1GnTfaqxg 18/08/03 18:45:23 ID:2g66pWM. [14/39] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


あのおばあさんはやはり、こちらに背を向け寝転がり、扇風機の風を受けながらテレビを見ている……


おそるおそるおばあさんの顔を覗き込むと、おばあさんは静かに寝息をたてていた……



ザングース「ババア……」



布団も何も使わず、扇風機の風を直に受けている……このままでは、いくら夏と言えど風邪をひいてしまうかもしれない……



ザングース「……ふん、世話が焼けるババアだ……」



ザングースは自分の身体にかかっていたタオルケットを寝ているおばあさんの身体にかけた……


 ▼ 25 1◆v1GnTfaqxg 18/08/03 18:47:04 ID:2g66pWM. [15/39] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



ザングース「ババア……正直お前の性格は気にいらねぇ……けど、行き倒れてた所を助けてもらったんだ、それなりに感謝はしてるぜ……」



ザングースは忍び足でテレビまで歩き、そっとテレビの電源を落とすと……ゆっくりと縁側に向かった……


そして、風鈴の音が響く中……小さく呟いた……



ザングース「ババア……ありがとな……」



ザングースが縁側から外に出ようとした……その時背後から声が……



お前、まさかこんな事で恩返ししたとでも思っているのかい?


 ▼ 26 1◆v1GnTfaqxg 18/08/03 18:48:03 ID:2g66pWM. [16/39] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


ザングース「っ!?」



振り返れば、おばあさんは身体を起こしてこちらを見ている……



おばあさん「人がテレビを見てたってのに、勝手に消すなんていい度胸だね……」


ザングース「はぁ!? さっきまで寝てたじゃねぇか!!」


おばあさん「ふん! こんな事して恩返しなんて、私を舐めているのかい!」



おばあさんの睨むようなその目付きに、ザングースの怒りは限界を超えそうだ。



ザングース「こんのクソババァ!!」


おばあさん「なんだい!? その目は!!」


 ▼ 27 1◆v1GnTfaqxg 18/08/03 18:48:55 ID:2g66pWM. [17/39] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


おばあさんとザングースはしばらく睨み合っていたが……



おばあさん&ザングース「ふん!」



おばあさんはテレビの前に……ザングースは縁側に寝転がった……



おばあさん「ちっ、恩知らずが……」


ザングース「けっ、クソババアが……」



ぼんやりと浮かぶ月の明かりは、そんな1人と一匹を平等に照らしていた……




続く


 ▼ 28 1◆v1GnTfaqxg 18/08/03 18:51:18 ID:2g66pWM. [18/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
って訳で1話目おしまい。

一応今度の暑い日企画用に向けて書いた物になります。

最低一日1話更新でいきます。

よろしくお願いします。
 ▼ 29 ラブカス@ラッカのみ 18/08/03 20:38:49 ID:qugQtFbg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あの人か
支援
 ▼ 30 バクガメス@ふしぎなタマゴ 18/08/03 21:10:20 ID:08Ok0DNs NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 31 レジロック@ビアーのみ 18/08/03 22:16:29 ID:IYegEAlE NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
支援
 ▼ 32 1◆v1GnTfaqxg 18/08/03 22:17:27 ID:2g66pWM. [19/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





んん……暑い…………



風鈴の音……いや、その程度じゃあこの暑さは……



あいも変わらず、風ひとつ吹いてねぇし……



ほんと、嫌になっちまう夏だ……



 ▼ 33 1◆v1GnTfaqxg 18/08/03 22:18:43 ID:2g66pWM. [20/39] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



ザングース「っ……」



ザングースは暑さと眩しさのあまり、縁側で目を覚ます……


高く昇った太陽がザングースをジリジリと照らしつけていた。



ザングース「あっちぃ……」



照りつける太陽から逃げるように、寝転がったまま日陰になっている畳部屋までゴロゴロと転がって避難した……


 ▼ 34 1◆v1GnTfaqxg 18/08/03 22:19:28 ID:2g66pWM. [21/39] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


畳敷きの部屋まで来ると、ザングースは付けっ放しの扇風機の前に寝転がった。



ザングース「はぁ……結局、この家で一日過ごしちまったな……」



部屋を見渡すも、あのおばあさんの姿が無い……



ザングース「……どこ行きやがったんだ? あのババア……」



その時どこからか、ビシャ……ビシャ……と、不思議な音が……



ザングース「……? 何の音だ?」



ザングースはだるそうに起き上がると、その音の聞こえる方へ歩き出した……

 ▼ 35 1◆v1GnTfaqxg 18/08/03 22:20:10 ID:2g66pWM. [22/39] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告










第二話 ひまわりの記憶







 ▼ 36 1◆v1GnTfaqxg 18/08/03 22:20:59 ID:2g66pWM. [23/39] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


玄関を出ると、すぐそこにおばあさんの姿があった……


おばあさんは、バケツにくんだ水を柄杓で辺りに撒いている……



おばあさん「ほう、やっと起きたのかい? 穀潰し」


ザングース「ああん!? 俺の名前はザングースだ! 穀潰しじゃ……」



いや……今の所、特に恩返しもできていない……穀潰しで間違っていないだろう……



ザングース「う、うぐぅ……」


 ▼ 37 1◆v1GnTfaqxg 18/08/03 22:21:40 ID:2g66pWM. [24/39] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


おばあさん「水を撒くと少しは涼しくなるかと思ってね……こうして打ち水してたのさ」



そう言って、おばあさんはザングースにバケツと柄杓を強引に押しつけた。



おばあさん「ほら、続きはあんたがやりな! 私は買い物に行かなきゃならないからね!」


ザングース「えっ!? おい!」



おばあさんはどこからともなくカバンと財布を取り出すと、そのままスタスタと歩いて行ってしまった……



ザングース「えぇ……やらなきゃダメなのか……? これ……」



 ▼ 38 1◆v1GnTfaqxg 18/08/03 22:22:41 ID:2g66pWM. [25/39] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


ザングースはしばらく立ち尽くしていたが……



ザングース「やらないと、またブツブツ言われるんだろうな……仕方ねぇ」



仕方なく、見様見真似で水撒きを始めたザングース……



ザングース「あっちぃ……こんな天気じゃ、また倒れちまう」



見上げれば、昨日より強い日差し……


水は撒いたそばから蒸発してしまう……



ザングース「くっそ……意味あるのか? これ……」


 ▼ 39 1◆v1GnTfaqxg 18/08/03 22:23:33 ID:2g66pWM. [26/39] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


そんな事をしていると、突然ザングースのもとに2人の女学生が走り寄ってきた。



女学生1「きゃー! 見て見て! このポケモン水撒きしてるよー!」


女学生2「見てよ! このふてぶてしい顔! めちゃくちゃ可愛いー!」



女学生達はザングースの頭を撫でたり腹を揉んだりと……でも、ザングースもそう悪い気はしていなかった……



ザングース「え? 俺、可愛い……? えへへ……///」



いや、悪い気どころか、いい気分みたいだ……


 ▼ 40 1◆v1GnTfaqxg 18/08/03 22:24:23 ID:2g66pWM. [27/39] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


女学生1「水撒きしてたって事は、この子誰かポケモンなのかな……」


女学生2「っ! この家……もしかしてこの子……あのおばあさんのポケモン!?」


ザングース「それがどうかしたのか?」



ザングースがキョトンとしていると、女学生はキャーキャーと喚きだした。



女学生1「いやー! この子可哀想! こんなに可愛いのに、よりによってあのおばあさんに捕まってるなんて……」



女学生はザングースを優しく撫でた……



女学生2「あのおばあさんには気をつけなよ? この町のみんなから嫌われてる意地悪ばあさんだからね?」



 ▼ 41 1◆v1GnTfaqxg 18/08/03 22:25:19 ID:2g66pWM. [28/39] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告




誰が意地悪ばあさんだって……?




女学生1「っ! こ、この声!」


女学生「もしかして……」



振り返ると、いつの間にか彼女らの背後におばあさんが……



女学生達「ひいっ!!」


ザングース「げっ!? もう帰ってきたのかよ! 買い物早すぎだろ!」


おばあさん「そいつの邪魔するんじゃないよ! あっちに行きなっ!」



おばあさんはザングースの手から柄杓を奪うと、それで女学生達に水をかけた。



女学生達「す、すみませーん!」



女学生達は走って逃げて行ってしまった……


それを見送ると、またおばあさんはブツブツと文句を言い出した……



おばあさん「まったく、最近の若者は……」



 ▼ 42 1◆v1GnTfaqxg 18/08/03 22:26:48 ID:2g66pWM. [29/39] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



ザングース「せっかく俺の事、可愛いって言ってくれたのに……」


おばあさん「それにしても、こんなに暑いと水撒きも意味が無いねぇ……」



おばあさんはブツブツ文句を言いながら家へと向かう……



ザングース「じゃあ、なんでやらせたんだよ……」


おばあさん「ほら、そんなとこに突っ立ってたらまた倒れちまうよ! さっさとうちにあがりな!」


ザングース「はぁ!? お前が水撒きしろって言ったんだろうが! このクソババァ!」



悪態をつきながら、ザングースはおばあさんの後を追った……



 ▼ 43 1◆v1GnTfaqxg 18/08/03 22:28:16 ID:2g66pWM. [30/39] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


畳部屋にあがると、おばあさんは買い物カバンからひまわりの花束を取り出した……



おばあさん「また……この花の季節が来たね……私はこの花が大嫌いだよ……」



そう呟くと、その花束をタンスの上の小さな写真立ての前に置いた……



ザングース「……? 何してんだ?」



ザングースがおばあさんをジッと見つめていると、おばあさんが睨み返して来た。



おばあさん「何見てんだい! 私は見世物じゃないよ!」


ザングース「な、なんだよ……」



ザングースもそろそろ怒られ慣れて、怒り返す気もしなくなって来た……



 ▼ 44 1◆v1GnTfaqxg 18/08/03 22:28:52 ID:2g66pWM. [31/39] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


おばあさんはその写真立てを手に取ると、遠い目で見つめた……



おばあさん「ふんっ……あんたがくたばってから、もう何年たつのかね……」


ザングース「その写真の人間……あんたの旦那か?」



おばあさんは写真を戻すと、縁側へ向かった……



おばあさん「ひまわりの好きな男だったんだ」


ザングース「……?」



 ▼ 45 1◆v1GnTfaqxg 18/08/03 22:29:32 ID:2g66pWM. [32/39] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告





あいつは、私なんかと違って人付き合いが上手な男だった……




この町の町内会の会長を務め、人望もあった……





今でも思う……なんで、こんな私なんかと……





きっと、とんでもない変わり者だったんだろうね……





 ▼ 46 1◆v1GnTfaqxg 18/08/03 22:30:25 ID:2g66pWM. [33/39] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告




突然の事さ……あの年の夏だ……




あの夏も、今年の様に「うん十年に一度の猛暑」って言われていた……




いつも通りの生活をしていた私のもとに飛び込んで来たのは、あまりに突然過ぎる別れだった……




そう、あの男は暑さにやられてしまったんだ……




どうしてか、近所のひまわり畑の中に倒れていたんだってさ……





バカな男だよ……





 ▼ 47 1◆v1GnTfaqxg 18/08/03 22:31:34 ID:2g66pWM. [34/39] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告




病院にあたしが向かった時には、もう遅かった……




一輪のひまわりを手に、動かなくなったその姿……今でもはっきり覚えているよ……




後悔はしてないよ……少しだけしかね……




……




少しでも奴に心を開いてしまったから、あの日、泣いてしまったんだ……




それならもう、誰かと関わりなんて……




ふん、そのせいであのザマさ……





 ▼ 48 1◆v1GnTfaqxg 18/08/03 22:32:29 ID:2g66pWM. [35/39] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告




おばあさん「さっきの奴らの言葉、聞いてたろ? 意地悪ばあさんだって……」


ザングース「……」


おばあさん「ふん、そりゃそうだろうねぇ……みんなそう思うだろうさ……」





でも、それでいいのさ……





ザングース「?」



おばあさんは縁側に腰掛けた。



おばあさん「それなら……あたしがこの世を去る時、誰も悲しまなくてすむだろう……?」




 ▼ 49 1◆v1GnTfaqxg 18/08/03 22:33:08 ID:2g66pWM. [36/39] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



縁側に座るおばあさんのその言葉は、夏の空に吸い込まれる様に消えた……


おばあさんはその細い目で、どこまでも続く青空……ずっと遠くを見つめていた……



ザングース「ババア……お前わざと……」


おばあさん「あんたもそうだよ? 簡単に誰かに心を開いちゃならないよ? 自分も相手も……いつか後悔する事になるからね……」


ザングース「……」





 ▼ 50 1◆v1GnTfaqxg 18/08/03 22:34:10 ID:2g66pWM. [37/39] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



ザングースは縁側まで歩くとおばあさんの隣に座り、おばあさんのシワだらけの細い細い手の上に、大きな手を重ねた……



おばあさん「あんた、今の話聞いてたのかい?」


ザングース「……」


おばあさん「そんな毛むくじゃらの手をのせられたら暑いんだよ! ただでさえ暑いのに!」



おばあさんは手を引き抜こうとするが、ザングースはその手を強く握りしめた……


おばあさんはザングースの顔を見る……


ザングースは目を合わせる事なく、遠くの空を見ていた……



 ▼ 51 1◆v1GnTfaqxg 18/08/03 22:35:03 ID:2g66pWM. [38/39] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



おばあさん「……バカだね……さすが、こんな暑い日に行き倒れている様な奴だ……」





あの男と一緒だから……あんたを助けちまったのかね……





ザングース「……けっ」


おばあさん「ふんっ……」




おばあさんもザングースも……互いに目を合わせる事なく、いつまでも縁側から見える夏空を見ていた……





続く


 ▼ 52 1◆v1GnTfaqxg 18/08/03 22:37:47 ID:2g66pWM. [39/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
第2話おしまい。

明日は朝と夜に1話ずつ更新します。

>>29
あの人がどの人を指してるのか知りませんが、気づかれてるみたいですね……今回もよろしくお願いします。
 ▼ 53 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 05:10:07 ID:Tfw6EdAU [1/58] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



その日の深夜……


ザングースは一匹、縁側から見える月を見ていた……



ザングース「……」



ふと振り返れば、おばあさんはまた、テレビをつけたまま眠っている……


きっと、テレビを消したらまた怒られるだろうと思ったザングースは、今度は放っておく事にした……


 ▼ 54 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 05:11:05 ID:Tfw6EdAU [2/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



ザングースは再び月を見つめる……



ザングース「……」



今日の月はとてもとても綺麗な丸い月……いわゆる満月……


昼の暑さを知らない月は、この町を涼しげに照らす……



 ▼ 55 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 05:11:50 ID:Tfw6EdAU [3/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



ザングース「にしても、あのババア……」



昼のおばあさんの言葉を思い出す……



ザングース「……俺に対するあの態度も、町の人達に対する態度も……全部……」



なんだか、その胸が苦しくなった……



ザングース「助けてもらったってのに、俺は……恩知らずだな……」



その呟きに、返事が返ってきた……




そうかい? 私はそうは思わないけどなぁ……




 ▼ 56 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 05:12:34 ID:Tfw6EdAU [4/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



ザングース「!」



その声に振り返る……しかし、おばあさんは寝ている……


そもそも、おばあさんの声じゃない……



ザングース「? 空耳か……?」



ザングースが視線を前に戻すと、そこに1人の人間がいた。



おじいさん「やぁ、こんばんは」


ザングース「ぎゃああ!!」


 ▼ 57 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 05:13:18 ID:Tfw6EdAU [5/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



腰を抜かしたザングースに、そのおじいさんは手を差し伸べた……



おじいさん「いやぁ、驚かせる気は無かったんだけど……大丈夫かい?」


ザングース「い、いや……別に大丈……」



ザングースは差し出されたその手を掴もうとしたが……ザングースの手はおじいさんの手をすり抜けた。



ザングース「……え?」



おじいさん「ああ、ごめんごめん! 私は幽霊なんだ!」



ザングース「は? え? ……えええええええええええええっ!?」



 ▼ 58 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 05:14:02 ID:Tfw6EdAU [6/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告






第三話 真夜中の約束






 ▼ 59 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 05:16:01 ID:Tfw6EdAU [7/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



再び腰を抜かしたザングース……



ザングース「は、はひゃ……ほへ……」


おじいさん「いやぁ、本当にごめんよ。まさかこんなに驚くなんて……」


ザングース「そ、そう言えばなんであんたは俺の言葉を……!?」


おじいさん「さぁ? 死んだ以上、もう人間ではないからでないかな?」


ザングース「幽霊だから……ってこれ、夢じゃないのか!?」


おじいさん「そうだねぇ、夢かもしれないし……夢じゃないかもしれないね!」



おじいさんはそう言って笑った。



 ▼ 60 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 05:16:44 ID:Tfw6EdAU [8/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



生きている普通の人間の様に振る舞うおじいさんに、ザングースもなんとか落ち着きを取り戻した。



ザングース「……それで、あんたは誰だ?」


おじいさん「私かい? 私は昔、この家に住んでいた者だよ」


ザングース「っ!」



そう言えば、昼に見た写真立ての写真……あの写真の人間にそっくりだ……



ザングース「って事は……あんたは……」


おじいさん「そうだよ。あのばあさんの旦那さ……」


 ▼ 61 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 05:17:31 ID:Tfw6EdAU [9/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



おじいさんはザングースの隣に腰掛けた。



ザングース「なんだ? なんで俺なんかの前に……」


おじいさん「……君に……お願いがあるんだ」


ザングース「?」


おじいさん「ばあさんを、この町の外れにあるひまわり畑まで連れて行って欲しいんだ」



 ▼ 62 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 05:18:15 ID:Tfw6EdAU [10/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



ザングース「え? ちょっと待てよ……ばあさん、ひまわりが大嫌いって言ってなかったか?」


おじいさん「そうだね……今のばあさんはひまわりが大嫌いだ……けど、昔はひまわりが大好きだったんだよ」


ザングース「昔……は?」


おじいさん「さっきばあさんから聞いたろう? 私が亡くなった理由……」


ザングース「ああ……確か、暑さにやられて……」


おじいさん「そう……私はあの日、ばあさんの誕生日プレゼントとして、ばあさんの大好きなひまわりの花を探しに行ったのさ」


 ▼ 63 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 05:18:48 ID:Tfw6EdAU [11/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


何にもない、小さなこの町の唯一の自慢……それは、町外れにある美しいひまわりの花畑なんだ……


ばあさんは、この町のひまわりが大好きだった。


だから私は、そのひまわりの花畑まで花を取りに行ったんだ……


けど、その年の日差しは強かった……


私は歳のせいもあり……志半ば、花畑の中に倒れてしまった……


朦朧とする意識の中、最後の力を振り絞り……とびきり綺麗なひまわりの花を掴んだ所で、私の意識は遠のいて行った……


 ▼ 64 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 05:19:37 ID:Tfw6EdAU [12/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



しばらくして私は、聞き覚えのある泣き声を聞いて目を覚ましたんだ……



それは、ばあさんの声……



辺りを見渡せば、どこかの病院の一室……私はベッドの上に横になっていた……


私は、どうして泣いているのかとばあさんに声を掛けたんだが……どうしてか、その声は聞こえていない様だった……


不思議に思った私は、ばあさんの手を握ろうとした……



でも、その手はすり抜けてしまったんだ……



その時、やっと気づいたよ……私は死んでしまったんだと……



 ▼ 65 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 05:20:53 ID:Tfw6EdAU [13/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



私の抜け殻を前に、ばあさんはただただ泣き続けていた……



あんなに泣いていたばあさんを見たのは、私も初めてだったよ……



それでも、ばあさんに私の姿は見えていない……



私は、泣いているばあさんを見ている事しか出来なかったんだ……



最高の誕生日のプレゼントを探しに行ったのに、最悪のプレゼントをしてしまったって訳さ……



 ▼ 66 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 05:21:54 ID:Tfw6EdAU [14/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



それから何年たっただろう……



私がいなくなり、ばあさんは一人ぼっちになった……



この家で、何も話さず……誰にも会おうとせず……



この家に近寄ろう者がいるなら、あらゆる手段で退けさせた……




私にはわからなかった……


ばあさんが、何を考えているのか……



ただ、これだけはわかっていた……



ばあさんがこうなってしまったのは、全部私のせいだと……


ばあさんは、ひまわりのせいで私が死んだと……そう思い込み、ひまわりが大嫌いになってしまったと……


 ▼ 67 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 05:22:57 ID:Tfw6EdAU [15/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



そんな日が続いて……昨日のことだ。



この家の前、ばあさんは倒れている君を見つけた……



あれからずっと1人で生きてきたばあさんは、どうしてか君を助けた……




暑さに倒れた君の姿と私の姿が重なって見えたからだろう……




たったそれだけの偶然が重なって……誰とも関わりを持とうとしなかったばあさんは、少しだけ君に心を開いたんだ……



ずっとばあさんをそばで見てきたが……私が死んでから、こんな事は初めてだったよ。



 ▼ 68 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 05:23:36 ID:Tfw6EdAU [16/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



そして、先程ばあさんは君に打ち明けた……


私も聞いていたよ……



私ですら長年聞き出す事が出来なかったばあさんの気持ちを、君のおかげで聞き出す事が出来た。



私もやっと、ばあさんが心に閉ざしていた全てを理解できたんだ……




全部、君のおかげだよ……




 ▼ 69 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 05:24:24 ID:Tfw6EdAU [17/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



おじいさん「君のおかげでここまでこれたんだ……感謝しているよ……」


ザングース「……」


おじいさん「何の偶然かわからないが、丁度明日はばあさんの誕生日なんだ……」


ザングース「!」


おじいさん「だからあと一つだけ、最後のお願いだ……ばあさんにあの日、渡す事が出来なかったひまわりを……君に頼みたいんだ……」


ザングース「……」


おじいさん「身勝手だとは承知の上だ……」



ザングースは月を見上げた……



ザングース「けっ……ここまで聞いちまったんだ……連れてってやるよ」


おじいさん「! ……いいのかい?」


ザングース「いいも何も、俺はあのばあさんに助けられた……だから、恩返しをしないとならねぇからな」


おじいさん「……ありがとう」


 ▼ 70 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 05:25:22 ID:Tfw6EdAU [18/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



月の明かりに照らされるおじいさんは、テレビの前で眠るおばあさんをみつめた……



おじいさん「ばあさん……ごめんよ……私のせいで」


ザングース「なぁ、ばあさんも言ってたけど……なんであんたはばあさんに惚れたんだ……?」


おじいさん「……そうだね……ばあさんのひまわりの様な笑顔に惚れたんだろうね……」


ザングース「ひまわりの様な……? このばあさんが?」


おじいさん「ああ……」



おじいさんは立ち上がると、畳敷きの部屋にあがり、あの写真立てから写真を抜き取った……



ザングース「!」



写真立ての中に入っていた小さな写真は半分に折られた物だった……


残り半分……外側から見えていなかったら部分に、おばあさんの顔も写っていた……


その笑顔……まるで、ひまわりの様な……



 ▼ 71 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 05:26:07 ID:Tfw6EdAU [19/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



おじいさんは写真を戻すと、おばあさんを見つめた……



おじいさん「あれだけ強そうに振舞っているが、本当はとても優しく、臆病な人なんだ……」


ザングース「……そうなのか」



おじいさんは縁側から外に降りると、振り返る……



おじいさん「それじゃあ、私はそろそろ行くよ」


ザングース「……」


おじいさん「ひまわりの花畑は町外れの海岸のそばにある……」


ザングース「おう」


おじいさん「では、ばあさんの事をよろしく頼んだよ……」



月明かりの下……おじいさんの姿は音もなく消えた……



 ▼ 72 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 05:26:46 ID:Tfw6EdAU [20/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



ザングース「……任せとけよ……じいさん……」



ザングースは振り返るとおばあさんを見た……


おばあさんはまだ、テレビの前でいびきをかいている……



ザングース「はぁ……流石にもう寝ただろ……」



ザングースはそっとテレビを電源を落とし、部屋の明かりを消した……



 ▼ 73 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 05:27:27 ID:Tfw6EdAU [21/58] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



ザングース「……」



そして、縁側に寝転がる……


月明かりが優しく照らす中、ザングースはそっと目をつむった……



ザングース「(……じいさん、安心しな……)」



ぬるい風を受けて、軒下の風鈴が鳴る……


その風に涼みながら、ザングースの意識は闇に飲み込まれた……




続く


 ▼ 74 サワムラー@なんでもなおし 18/08/04 07:33:26 ID:uetICXXM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
超支援
 ▼ 75 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 09:47:57 ID:Tfw6EdAU [22/58] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



そんなこんなで、いつもの朝が来た……



ザングース「……」



また、縁側に座って空を見上げているザングース……


青い空を見つめながら、昨日の夜の事を思い出していた……



ザングース「花畑……か……」



おじいさんの言葉……そして、 おばあさんの事を思い出す……


実感は湧かないが、偶然が重なった奇跡的と言える今、自分がやるべき事は……



ザングース「……ちっ」



ザングースはだるそうに立ち上がると、玄関へと走り出した。



 ▼ 76 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 09:49:04 ID:Tfw6EdAU [23/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告








第四話 同じ空の下






 ▼ 77 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 09:49:48 ID:Tfw6EdAU [24/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告




軋んだ玄関の引き戸を開ける……


そこに、探していた影はあった。



おばあさん「……」



相変わらず不機嫌な顔のおばあさんはまた、あまり意味の無い打ち水をしていた……



おばあさん「ほんとに……なんだい、この天気は……」



撒いたそばから水は蒸発していく……


太陽はジリジリと、おばあさんを照らす……



おばあさん「ほんとに、やになっちまうねぇ……」



おばあさんは汗を拭うと、また打ち水を再開した。


 ▼ 78 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 09:50:25 ID:Tfw6EdAU [25/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



ザングース「おい」



その存在に気づいたおばあさんは振り返ると、ザングースの顔を見るなりため息をついた。



おばあさん「なんだい寝坊助、やっと起きたのかい?」


ザングース「俺の名前は寝坊助じゃねぇ」



ザングースが睨めば、おばあさんも睨み返す……



おばあさん「なんだい! その目は! 寝坊助の木偶の坊の恩知らず!」


ザングース「んだとぉ!?」


 ▼ 79 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 09:51:01 ID:Tfw6EdAU [26/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


しばらく睨み合っていたが……やがて、ザングースは痺れを切らせて……



ザングース「あー! もう! なんだっていいから! こっちこい!」



ザングースはおばあさんの手を強引に掴んだ。



おばあさん「な、なんだい!? ひぇっ!?」



急に引っ張られ、掴んでいた柄杓が宙を舞う……


構う事なく、ザングースはおばあさんを引っ張り走りだした。



 ▼ 80 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 09:51:46 ID:Tfw6EdAU [27/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


夏の日差しが照りつける小さな町を、おばあさんの手を引きザングースは走る……



おばあさん「なにするんだい! ろくでなし!」



ザングースの手を振りほどこうとするおばあさん……


ザングースは手を離さぬよう強く握りしめると、おじいさんの言葉を思い出した。



ザングース「(花畑は町外れの海岸のそばにある……か……)」



鼻をひくつかせれば、遠くから微かに潮の香りが……



ザングース「多分こっちだ! 行くぞ! クソババア!」


おばあさん「このろくでなしぃぃぃぃ!!」



ザングースは自分の嗅覚だけを頼りに町の外れへと向かった……


 ▼ 81 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 09:52:32 ID:Tfw6EdAU [28/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



汗を飛ばしながら町を走るザングース……


そして、その手に引かれ、つまづきそうになりながらもなんとか追いかけるおばあさん……



おばあさん「あたしをどこに連れてこうってんだいっ!?」


ザングース「うるせぇ!! 黙ってついてこいっ!!」



罵り、喚く彼ら……近所の家々の窓から住民が顔を出す……



 ▼ 82 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 09:53:06 ID:Tfw6EdAU [29/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



男「なんだ? あのばあさんポケモン飼い始めたのか?
」


女「ポケモンはともかく、あのおばあさん、私苦手だわ……」



女の子「あのポケモンさんこわーい……」



女「しっ! 聞こえるわよ!」




 ▼ 83 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 09:53:38 ID:Tfw6EdAU [30/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



おばあさん「あんた達うるさいよ! 全部聞こえてるんだよ!!」



その声に、家々の窓から顔を覗かせていた人々は一瞬でひっこんだ。



おばあさん「ふんっ、まったく……」


ザングース「くそ! ほんとにうるさいババアだ!」



ザングースはうんざりしながらも走り続ける……



 ▼ 84 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 09:54:33 ID:Tfw6EdAU [31/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



ザングースとおばあさんが見えなくなると、また近所の家々の窓から人々が顔を覗かせた。



男「あんなに急いでなにしに行くんだ?」


女「こんな暑い日にマラソンなんて……バカみたいね」



ザングースとおばあさんが走って行った道を、彼らはぼーっと見つめていた……その時、いつの間にか近所の女の子が道に飛び出した。



女の子「私、ついて行ってみる!」


女「あっ! また文句言われるわよ!」


女の子「隠れてついて行くから大丈夫!」



女の子はザングースとおばあさんが消えた方角へと走って行った……


残された男と女は窓から遠ざかる女の子を見ていたが……



女「私達もバレない程度についてってみる?」


男「だな……あのばあさんが走ってるくらいだから、何があるのか気になるし」



彼らも窓を閉め、家を飛び出した。



 ▼ 85 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 09:55:05 ID:Tfw6EdAU [32/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告




時に、表の通りを走り……




時に、家々の並ぶ細道を抜け、人々の視線を浴びながら潮の香りを辿る……




どの道を選べど、太陽の光に照らされ続ける……




そんな太陽に体力を削られながらも、少しずつではあるが、確かにその場所へは近づいていた……




 ▼ 86 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 09:55:39 ID:Tfw6EdAU [33/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



おばあさん「はぁ……はぁ……ダメだよ、もう走れない……」



息を切らせたおばあさんはとうとう立ち止まった……


立ち止まると、どっと疲れが溢れ、ぼとぼとと汗が落ちる……



おばあさん「ほんとに……こんな事してただで済むと思うわない事だね! このろくでなしの木偶の坊の……」



顔を上げたおばあさんは言葉を失った……


そこは、海沿いに広がる……広い広いひまわりの花畑……


どこまでも続く……黄色い海……


 ▼ 87 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 09:56:36 ID:Tfw6EdAU [34/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



ザングース「はぁ……はぁ……ど、どうだ? クソババア……あんたの大嫌いなひまわりの花畑だぜ……?」



ザングースはそう言うと、疲れのあまり、花畑に仰向けに寝転がった……



おばあさん「ここは……どうして……」



その時、強く風が吹き……ひまわりの花びらが宙を舞った……



おばあさん「!」



宙を舞う花びらの向こうにおばあさんが見たのは……愛していた、世界にたった1人の旦那の姿だった……



おじいさん「ごめんよ、こんな形での再開になって……」


 ▼ 88 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 09:57:10 ID:Tfw6EdAU [35/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



おばあさん「な、なんで……なんであんたがここに……!」



疲れでよろける足で歩み寄り、その手を掴もうとしたが……やはり、その手を握る事は叶わなかった……



おじいさん「わかっているだろう……? 私はもう……」


おばあさん「……ふん、知っていたさ……」



おばあさんは少し悲しげに目をそらした……


 ▼ 89 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 09:57:50 ID:Tfw6EdAU [36/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



おばあさん「なら、なんで今更私の前に出てきたんだい?」


おじいさん「そうだね……元のばあさんに戻って欲しいから……かな」


おばあさん「元のあたしだって?」


おじいさん「あれから私は、ずっとばあさんをそばで見ていたよ……」


おばあさん「……ふん、見てたのかい」


おじいさん「ああ……ずっと見て来たからこそ言いたい事があるんだ」


おばあさん「……なんだってんだい」



おじいさんはおばあさんに優しく微笑みかけた……



おじいさん「ばあさん、1人で生きて行く必要なんてないんだよ?」




 ▼ 90 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 09:58:26 ID:Tfw6EdAU [37/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



おばあさん「!」


おじいさん「ばあさんは、自分が死んでしまったその時に、誰かを悲しませたくなかったんだろう?」


おばあさん「……」


おじいさん「私もその気持ちはわかるさ……私だって、ばあさんを泣かせてしまったのだからね」


おじいさん「けど、そんな事は寂しすぎると思わないかい?」


 ▼ 91 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 09:59:01 ID:Tfw6EdAU [38/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



もし、自分が死んだその時……誰も悲しんでくれなかったら……誰にも思われずにこの世から去るなんて、あまりにも寂しすぎるよ……



せっかくこの世界で生きて来たのに、その記録を一つも残さずに去って行くなんてしちゃあダメだ。



誰か、1人でもいい……心から思ってもらえるように……なりたくはないかい?



私は嬉しかったんだよ? ばあさんがあんなにも私の事を思って泣いてくれて……



それだけ強く思ってくれていたんだって……私なんかの事を愛してくれていたんだって……



あの時、ばあさんのおかげで……私はこの世界に生まれ、生きて来て良かったと心から思えたのだから……




 ▼ 92 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 09:59:45 ID:Tfw6EdAU [39/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



おじいさん「それに、例え死んだとしても……その魂は、自分を思ってくれた人の中で生き続ける……」


おばあさん「魂が……」


おじいさん「ばあさんの中にも、私の魂が生きているだろう?」



おばあさんは胸に手を当てた……



おじいさん「これを伝えれたら……それだけでいいんだ」



 ▼ 93 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 10:00:37 ID:Tfw6EdAU [40/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



おばあさん「じいさん……」


おじいさん「覚えているかい? 笑顔の作り方……」


おばあさん「……」



おばあさんはおじいさんから目をそらした。



おじいさん「きっとそうだろうと思ったから、そのポケモン君の協力のもと、ばあさんをここに呼び出したんだ……」



おじいさんは花畑を見渡した……



おじいさん「ばあさんの笑顔はひまわりのようだったからね……きっとここにこれば、思い出せると思ったんだ……」


おばあさん「……」



おじいさん「遅くなってしまったけど……これが、私からの最後のプレゼントだ」


 ▼ 94 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 10:01:08 ID:Tfw6EdAU [41/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告










ばあさん、誕生日おめでとう。








 ▼ 95 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 10:01:52 ID:Tfw6EdAU [42/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



その言葉を吐き出すと、おじいさんの姿は透け始めた……



おばあさん「!」


おじいさん「あの笑顔さえあれば、きっと町の人々とも仲良くなっていけるだろうよ……」


おばあさん「……じいさん……」



おばあさんは消えてゆくおじいさんをしばらく見つめていたが……やがて、あの写真のような笑顔を返してみせた。



おばあさん「ありがとう……」



おじいさんも笑顔を返した……



おじいさん「……いい笑顔だ」


 ▼ 96 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 10:02:29 ID:Tfw6EdAU [43/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告




私が大好きなのは、ひまわりじゃないよ。君のひまわりの様な笑顔さ。




その笑顔……沢山の人に分けてあげるんだよ?




きっと、みんなが幸せになれるだろうから……




だから……




だからばあさんには、いつまでも笑っていてほしいんだ……




 ▼ 97 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 10:03:07 ID:Tfw6EdAU [44/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



おばあさん「じ、じいさん……」


おじいさん「じゃあ、またいつか……それまでお別れだ」




強い風が吹く……また、ひまわりの花びらが舞い上がる……







また、ばあさんの笑顔が見える日……楽しみにしているからね……







その花びらの向こう……おじいさんの姿は消えた……




 ▼ 98 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 10:03:40 ID:Tfw6EdAU [45/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



おばあさん「っ……」


ザングース「ババア……じいさんの言葉は心に届いたか?」



おばあさんはしばらく立ち尽くしていたが……やがて、静かに微笑むと、来た道を戻り出した……



おばあさん「本当に……馬鹿な男だよ……」



その目に、小さな涙が見えた……




 ▼ 99 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 10:04:13 ID:Tfw6EdAU [46/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


おばあさん「ほら、帰るよ。ろくでなし」


ザングース「だから、俺の名前はろくでなしじゃねぇ!」



おばあさんの後をザングースもつけて歩く……




その時……



おばあさん「……っ」



突然、おばあさんが花畑に倒れた……




 ▼ 100 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 10:04:59 ID:Tfw6EdAU [47/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



ザングース「っ!」



ザングースは倒れたおばあさんに立ち寄ると、その身体を揺する……


おばあさんは目を開かず……苦しそうな顔をしている……


見上げれば、やはり照りつける太陽……



ザングース「やべ……このままじゃ、あのじいさんと同じ……」



その時、ザングースの視界がグニャリと……



ザングース「あれ……? これって、あの時と……」



ザングースの視界は真っ暗に……





ドサっ……





続く




 ▼ 101 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 10:06:00 ID:Tfw6EdAU [48/58] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
第四話おしまい。

もう今日中に完結いけそうですね。

少々お待ちください。
 ▼ 102 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 10:22:16 ID:Tfw6EdAU [49/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告




俺は、目を覚ました……



どこまでも続く、真っ暗な闇の中で……




ザングース「ここは……」




そこがどこかもわからないまま立ち尽くしていると、遠くに真っ白な光が見えた……



ザングース「っ!」



その光から、懐かしい声が聞こえた……



 ▼ 103 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 10:22:52 ID:Tfw6EdAU [50/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告








おう、弟よ……お疲れさん……









 ▼ 104 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 10:23:27 ID:Tfw6EdAU [51/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



ザングース「こ、この声……兄貴!?」



眩しい光の中、目を凝らすと……微かに見覚えのある姿が……



兄ザングース「お前までやられちまうなんてな……今年の夏はやべぇな!」



そう言いながらヘラヘラと笑う兄を見て、ザングースは懐かしさと、ほんの少しの寂しさを感じていた……




 ▼ 105 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 10:24:05 ID:Tfw6EdAU [52/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



ザングース「兄貴……って事は、俺は死んだのか……」



兄はザングースの前まで歩いてきた……



兄ザングース「ま、正確には死にかけてるって感じだけどな」



兄はザングースの頭に手を置き、その目を見つめる……



兄ザングース「お前は……これでおしまいでいいのか?」


ザングース「……」


兄ザングース「現世でやる事が終わったのなら、今すぐお前をあっちに連れてってやるぜ?」


ザングース「!」


 ▼ 106 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 10:24:47 ID:Tfw6EdAU [53/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



ザングースは俯き、暫く黙り込んでいたが……すぐに顔を上げた。



兄ザングース「どうだ? 答えは出たか?」


ザングース「俺は……俺は、まだ死にたくない! まだ、あのクソババアに恩返しできてねぇんだよ!」



その答えに兄はニヤリとした。



兄ザングース「さすが、俺の弟だ……俺の望んだ答えをそっくりそのまま言ってくれやがる……」



 ▼ 107 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 10:25:35 ID:Tfw6EdAU [54/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


兄は納得した顔をして、遠くに見える光に向かい歩き出した……



兄ザングース「じゃあな、あのばあさんによろしく言っといてくれよ」


ザングース「あ、兄貴!」



呼べど、兄は立ち止まる事なく歩いていく……



兄ザングース「弟よ……生きてる事を楽しみな……」





お前の土産話、楽しみにしてるぜ……





その言葉と共に、兄は白い光の中に吸い込まれていった……



ザングース「あ、兄貴……兄貴ぃ!!」



次の瞬間、強い光が真っ黒な闇を吹き飛ばし……




 ▼ 108 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 10:26:44 ID:Tfw6EdAU [55/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



ザングース「兄貴!! ……あれ?」



少し混乱しながらも、ザングースは辺りを見渡す……


シンプルな壁紙に、ふかふかのベッド……鼻をつく薬品の嫌な臭い……


どうやらここは、とある病室のようだ……



ザングース「そうだ! あのババアは!?」



ザングースは辺りを見渡す……


カーテンを挟んだ向こう側から、物音が聞こえた……



ザングース「そこにいるのか!?ババア!!」



ザングースはベッドから飛び降りて走りると、カーテンを勢いよく開けた。



 ▼ 109 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 10:27:18 ID:Tfw6EdAU [56/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



カーテンの向こう側には、ベッドに横たわる、あのおばあさんの姿があった……



ザングース「お、おい! ババア!」



ザングースが駆け寄り、その身体を揺するも……おばあさんは目を覚ましそうもない……



ザングース「起きろ! おい! おいって!」



何度揺すれど、動かないものは動かない……



 ▼ 110 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 10:27:52 ID:Tfw6EdAU [57/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



ザングース「う、うそだろ……?」



頭の中が真っ白になった……


次第に込み上げてきた涙がポロリと落ちた……



ザングース「なんで死んじまうんだよ!! なんで!! まだ恩返しもできてねぇのに!!」


おばあさん「……」



ザングース「あんたの笑顔をみんなに見せてやるんじゃなかったのかよ!!」


 ▼ 111 1◆v1GnTfaqxg 18/08/04 10:28:53 ID:Tfw6EdAU [58/58] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



その時、おばあさんのまぶたがピクリと動いた……



ザングース「!」


おばあさん「……なんだい、うるさいねぇ……」



身体を起こすおばあさんに、ザングースは驚き、そして、喜びを隠せなかった。



ザングース「クソババア!! この野郎!!」



ザングースはおばあさんに抱きついた。



おばあさん「っ! ひっつくんじゃないよ! 暑苦しいんだよ!」



そう言っていつものように文句をたれるおばあさんだったが……どこか、嬉しそうな顔をしていた……


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