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【スワップSS】ラグラージ「俺はキモくなんかない!」

 ▼ 1 たちまる◆G0g6sKo3hA 18/10/20 10:14:43 ID:WNUgVyec NGネーム登録 NGID登録 報告
ラグラージ「キモクナーイ、キモク、ナーイ…」ポロポロ

俺はラグラージ。なぜか、きもいきもい言われている。
…俺、何にもしてないよな……
それなのに、どうして…ううっ……

ラグラージ「…」

いや
まだ俺は諦めない!絶対に評価を覆して見せるぞ!

ラグラージ「俺は」

ラグラージ「俺はキモくなんか」

ラグラージ「ないんだ!」
 ▼ 22 ネッコ@あくのジュエル 18/11/06 19:37:42 ID:JepE9/l. [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
探偵には観察眼や記憶力も大事だということか。

正直、ちょっと甘かったかもしれない。

反省しつつもさっきの光景を必死に思い出す。

正直自身はないが……


ラグラージ「シャラシティ……か? なんかそんな感じだった気がする……」

ライチュウ「ふーん。確かめて来いよ。廊下出て左、奥から二番目だぞ?」


ドキリとする。

間違えた、か?

冷や汗を垂らしながら廊下へ出た。

出題された絵の前に立ち、もう一度よく見る。



描いてあるのは海に囲われたマスタータワー。



ライチュウ「おめでとう。よく見ているもんだな。」


後ろから拍手をしながらライチュウが歩いてくる。

……良かった。本当に。
 ▼ 23 け忘れごめん◆TOg35azcXc 18/11/06 19:53:18 ID:JepE9/l. [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ライチュウ「次は街に出てもらおうか。この地図の場所に封筒を運んでもらおう」

ラグラージ「……了解。」


本当にいくつ試験があるのだろう。

先程のような不意打ちがまたあるかもしれないと思うと気が張り詰める。

探偵になるってこういうことか。イメージ通りではあるけれど、やはり甘かった。


ただ、イメージ通りであるがゆえに益々やる気が出るってものだ。


探偵はやはり格好いい。絶対になってやる。



ライチュウ「いいか? 先方にしっかりと届けるんだぞ?」


念を押されてしまった。それだけ大事なことなのか。

一層気が引き締まる。
 ▼ 24 TOg35azcXc 18/11/06 23:56:20 ID:JepE9/l. [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ラグラージ「こ、ここか……」


ライチュウに指示された通りにの場所へ向かったが、その建物を前にして躊躇してしまう。

開かれた場所だ。ひとの出入りもある。しかしどうにも入り辛い。

しかしこれもまた試験の一貫。ここでの一挙手一投足が判断材料になるのかもしれない。



ええい、ままよとそこへ踏み込んだ。


フラージェス「いらっしゃい。――あら? ここはあなたが来るようなとこじゃないわよ?」

カウンターに立っていた女性はラグラージを一目見るなり、歓迎しないと言った。

そりゃそうだろう。理解はできる。しかしめげるわけにはいかない。


ラグラージ「あの、探偵から『ママ』に封筒を預かっています。ここにいると伺ったのですが……」

フラージェス「ああ、そうだったの。受け取るわ。……でも、今度は自分で持ってきなさいって伝えといて」

目的があってここにいることが伝わったようで居心地悪さが少し和らぐ。

どうやら無事『ママ』に封筒が渡ったことにほっと息を吐いた。



フラージェス「それにしても、ツケをこんな子に払わせに来させるなんて、ライチュウも墜ちたものね」



そう、ここは酒場。そしてラグラージは現役高校生、つまり未成年である。

呑みに来た訳じゃなくとも後ろめたいものだ。
 ▼ 25 詰まっては来た◆TOg35azcXc 18/11/07 23:36:19 ID:p5QEWzfo [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ラグラージ「って…… これ全部酒代なのか?」

機密文書とかじゃなかったのか…… やけに分厚いんだが……

フラージェス「ツケ、よ。うん、ちゃんと耳を揃えてきたみたいね」

実際に封筒から札束を取り出して数え、フラージェスは頷いた。



フラージェス「あら、少額だけど過払いがあるわ ……貴方、何か飲む?」

ラグラージ「へ? いやいや、俺未成年ですって」

フラージェス「アルコールなんて出さないわよ。そうね、コーヒーなんていかが?」

ラグラージ「あ、ああ。それなら、頂こうかな」

提案されたことに一瞬耳を疑ったが、相手は良識的な大人であったようだ。

勘違いしたのが少し恥ずかしい。

フラージェス「で、なんで君はアレにこんなことやらされてるのかしら?」

コーヒーを淹れ終えたフラージェスは、自然に切り出してくる。……お、美味。


ラグラージ「ご馳走様でした」

コクのあるコーヒーの所為か酒場の雰囲気からか、フラージェスには色々と話を聞いてもらってしまった。

お代わりもしてしまったが、ライチュウのツケで足りているみたいだ。

フラージェス「ええ。またのご来店をお待ちしているわ」

フラージェスの営業スマイルに見送られて店を出た。
 ▼ 26 題は書き切れるか◆TOg35azcXc 18/11/07 23:36:45 ID:p5QEWzfo [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ライチュウ「おー。お疲れさん。どうだった? ママ、怒ってなかったか?」

事務所に戻ると、気楽な声で迎えられる。

ラグラージ「次は自分で持って来い、と。あと未成年を酒場に送るなんてない考えてんだとも」

ライチュウ「かかっ。相変わらずお堅いこって。柔らかいプロポーションしてんのにな」

ラグラージ「や、やわっ!!?」

フラージェスの整ったスタイルを思い出してつい赤面してしまった。

ライチュウ「お? なんだ、その反応。童貞か?」

ラグラージ「どっ…… どどど童貞ちゃうわ!」

……嘘である


……というか高校生で非童貞って都市伝説じゃねえの?

ライチュウ「気にすんな。正直そんないいもんじゃねえし」

あー。さいですか。

ってか経験済みアピールかよ。羨ましいな畜生。



ラグラージ「どんだけツケてんだよ。しかもそれをお使いさせるってさ…… で、次の試験は? ていうかあと何個試験あんの?」

つい投げやりに聞く。次は何をやらされるってんだ?

ライチュウ「んー…… なんかもういいや。なあ、ラグラージ」

ライチュウも投げやりだ。あれ? 失敗した?



ライチュウ「おめでとさん。思った以上だったわ」

どうやらお眼鏡に適ったらしい。

ライチュウ「明日からよろしくな、明日も学校だろ? 放課後に来てくれればいいから」
 ▼ 27 TOg35azcXc 18/11/08 22:22:10 ID:U/8MK0yg [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
翌日、バイトに受かったこともあり、浮かれて登校する。

変わってやる。颯爽と事件を解決する名探偵になって、評価を覆してやるんだ。

意気揚々と教室に入った。が。


ゴロンダ「おは―― うえ!? ラグラージじゃん! 挨拶しかけちまったよ!!」

ニャオニクス「うわ、どんまい。てか何アイツ…… 朝からにやついて、キモイんだけど」


…………ぐは

ちょっと変な妄想してた俺も悪いかも知れないけどそれはないんじゃないですかねえ

クラスメイトは辛辣で、朝からテンションが駄々下がりだ。

溜息を吐いて席に着く。


担任が現れ、HR。いつも通り適当に流して終わりかと思ったが、

カクレオン「ああ、そうだ。ラグラージ。後で職員室に来なさい」

……俺? 何故?
 ▼ 28 TOg35azcXc 18/11/08 22:23:46 ID:U/8MK0yg [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

カクレオン「何で呼び出されたか、解るか?」

言われた通りに担任の所へ行くと、なぜか詰問するような口調で言われる。

ラグラージは宿題も忘れたことはないし無断欠席も今までない。怒られる心当たりなんてなかった。

ラグラージ「いえ、わかりません。」

本当に解らないからそう答えると、担任は諭すように言う。

カクレオン「あのな、子どもの飲酒ってのは禁止されてるんだよ。大人ぶりたい気持ちはわかるが、節度は守ろうな」

ラグラージ「へ? 酒なんて飲んだことねえっすよ?」

頓狂なことを言われて驚く。しかし担任はこちらを冷たい目で見るばかり。

なんでそんな勘違いをされているんだ? ……あ!


ラグラージ「もしかして昨日酒場にいた件すか? あれは職場の上司の頼まれごとで――」

カクレオン「言い訳として最底辺だな。今時そんなことあるわけないだろう」

……駄目だこれは。担任の中でラグラージは『反省しない若造』になっている。

物分かりのいいような口調だが、分かってくれる気がないことが解る。


一時限目開始のチャイムが鳴り解放されたが、結局理解は得られなかった。

「アイツ何で呼び出されてたの?」
「なんか酒飲んでたんだって」
「高校生のくせに?」
「しかも反省してないらしいよ」
「うっわ、不良じゃん」

クラスメイト達の話が聞こえる。噂が広まるのって早いな……

「全く、これだから『ラグラージ』は……」
「やっぱ『ラグラージ』だな。キモ」

誰も彼も。ラグラージを信じて味方してはくれないらしい。
 ▼ 29 TOg35azcXc 18/11/08 22:25:51 ID:U/8MK0yg [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
なんで どうして侮辱されなきゃならないんだ

その種族だからってだけで それだけで否定されて

なんて酷く生き苦しい

こんな気持ち味わうくらいなら 産まれてこなければよかった



それでも ここにいる以上は 抗うしかない

そうだ これは復讐だ 自分を否定してくる奴らに認めさせてやる

誰も無視できない大きなことを成し遂げて

目にもの見せてやる さあ 覚悟しろ
 ▼ 30 TOg35azcXc 18/11/08 23:17:10 ID:U/8MK0yg [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
冷たい視線やひそひそ陰口に耐えながらもなんとか授業をこなし放課後になった。

ラグラージはそそくさと帰りの準備をするとすぐに探偵事務所へと向かう。



ライチュウ「お、待ってたぜ。早速出掛けるとするか」

ライチュウは飄々と言ってラグラージに何かの紙片を渡すと歩きだす。

描かれているのは、簡単な地図だ。

どこかの道を表しているようだが、流石に情報が少ない。

ラグラージ「……これは?」

ライチュウ「今日のお前の仕事は失せ物捜しだ。真珠の指輪を捜してもらう」

なるほど、中々高価そうな失せ物だな。さぞかし困っているのだろう。

ライチュウ「依頼主は先日、この道を通っている最中野良バトルに出くわし、その過程で指輪を落としたという。一度依頼主自身が軽く捜したそうだが発見には至らず。探偵に頼る形になったそうだ」

ラグラージ「なるほど。探偵ぽいっちゃぽいが、まるで便利屋だな」

ライチュウ「全くだ。最近の奴らはこの職業を何でも屋だと勘違いしてやがる」

全く嘆かわしい、と呟くライチュウ。


ライチュウ「というわけでこれはお前に任せた」


ラグラージ「は? 丸投げ? あんたは?」

ライチュウ「俺には別にやることあんの。なあに、新人に任せる仕事位考えてるさ。こんなんEランクだっての。じゃ、宜しく」


なんかゲームみたいな単語が飛び出してきた…… 楽な仕事ってことか?

 ▼ 31 TOg35azcXc 18/11/09 22:28:57 ID:guZEiz0c NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ラグラージ「やっと…… 見つかった……」

太陽がその姿を地の向こうに隠しそうになる頃、ラグラージは酷い恰好で真珠の指輪を握っていた。もう全身ドロドロである。





指示された狭い範囲なら捜索なんてすぐだと最初は高を括っていた物だった。

しかし何往復かしても、目を皿のようにして見てもどこにもない。

考えてみれば、狭い自室みたいなところでも失せ物捜しってのは大変だ。

限られてるとは言え、ある程度の距離の街道ではその大変さは比にならない。


しかも、『あると思われる』だ。


本当はここで落としたのではないのかもしれない。もう誰かに拾われてしまったのかもしれない。考え出してみればどんどんこのまま見つからない気が強くなる。


……無駄なことしてんのかな。

孤独に探し続ける状況が思考をどんどんドツボに嵌める。

それでもなお諦めず捜し続けることが出来たのは、面白いことにこの状況のお蔭だった。

自分しかいないからこそ、誰かに投げられない。

更にはライチュウはEランクと言った。

なん段階あるか解らないが、多分低い。そんなこともできないようでは探偵など務まらないだろう。……諦めたくは、なかった。



もう一度道を辿ってよく観察する。

昨日野良バトルがあったという場所はここか。

近くの建物の壁が傷ついていたり、道が凹んでいたりと中々大変な状況だ。

どれだけ激しい戦闘だったのだろうか。そんなのに巻き込まれたら堪ったもんじゃないな。もしここで大事な指輪を落としても気付かないかもしれない。


……きっと、ここらへんだ。

ある程度の確信をもって見渡してみるとソコに――側溝に目が向いた。


ラグラージ は どぶさらい を おぼえた !

やってけるかな、俺……
 ▼ 32 TOg35azcXc 18/11/10 00:05:08 ID:sQ3kPGyc [1/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ライチュウ「おう。お疲れ。ちゃんと取ってきたか?」

ドロドロになった身体と指輪を丹念に洗って綺麗にしてから事務所に戻ると、先にいたライチュウがさわやかな笑顔で出迎えてくる。

ラグラージ「ああ。これだよな? 依頼の品って」

ライチュウ「そう。それそれ。いやー、初仕事お疲れさん。これで依頼主も喜ぶわ」

ラグラージ「そりゃよかった。頑張った甲斐もあったってもんだ」

ライチュウ「もう上がってもいいぞ。こんな時間だし。乙」

ラグラージ「あ、ああ。お疲れ様でした」

上がりだと言われればバイトが長居する理由はない。事務所の入り口扉に手を掛けた。



……なんか引っかかるな。

ライチュウの態度。変にテンポのいい口調。なんだこの違和感。


ラグラージ「なあ、今日の、結構きついもんだな」

ライチュウ「おう。頑張れ。どぶさらいなんざそう何度もねえから」


この受け答えで確信した。そりゃあれEランクって言う訳だ。



ラグラージ「へえ。『今日の』だけでよく俺がやってたことがわかるな。臭いも残さないぐらい丹念に洗ってから来たってのに」

……指輪の場所、知ってやがったな?

その上でやらせたと。
 ▼ 33 TOg35azcXc 18/11/10 00:27:06 ID:sQ3kPGyc [2/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ライチュウ「お? 探偵か? よく解ってんじゃねえか。」

ラグラージ「バイトだよ」

ライチュウ「勘のいい餓鬼は好きだぞ、俺は」

ラグラージ「……お誉めに預かり光栄ですよ」


おだてるってことは、正解か。やりたくないことはやらせるスタンスかよ。


ライチュウ「あんなん、Aランクに格上げしてもいいぐらいだぜ」

ラグラージ「そこまでやりたくねえのかよ……」

ライチュウ「かかっ。これも一つのお勉強だわな。大人ってのは汚いところがあるもんだ。煌びやかな都会のどぶだけにな」


……巧いなんて思わないんだからねっ。


ラグラージ「へーへー。そーですか。……こっちがどぶさらいしてる間、あんたは何を?」

ライチュウ「ん? 野良バトルおっぱじめた連中への聞き込みだよ。臭かったからな。どぶだけに」


……巧くねえな。


ライチュウ「それはともかく、次の仕事は明後日の朝から。ミアレ広場に集合な」

ラグラージ「判った。目覚まし掛けとく。今度こそ、お疲れ様」

ライチュウ「寝坊すんなよー」
 ▼ 34 TOg35azcXc 18/11/10 11:19:04 ID:sQ3kPGyc [3/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そして指示された日がやってきた。

今日は祝日。学校は休みだ。

そして祝日のミアレ広場はとてつもない賑わいを見せている。


ラグラージ「そうか、今年も祭りの時期か」


綿あめ、焼きそば、射的などおなじみの屋台が勢ぞろいしていて見ているだけで気分が高揚する。

……それにしてもポケモンってこんなにいるんだな。ごった返してて何が何やらだ。


チルタリス「おはようございます。ラグラージさん、こちらです」


ふと背後から涼やかな声が掛けられる。


ラグラージ「おはようございます。よくあんな混雑でみつけられましたね」

チルタリス「所長の指示に従っただけです」

ライチュウ「おう、おはよう。無事合流できたな」

ラグラージ「こんなスムーズにいくとか、あんた本当に何者だよ」


事前連絡ではそこまで詳しい待ち合わせはしてなかった。今朝この場所に来たときちょっと後悔していたくらいなのに。


ライチュウ「かかっ。ミアレで俺に知れねえことなんざチル子の夜の顔ぐらいなもんだ」

チルタリス「セクハラです」

ライチュウ「おーおー、お堅いねえ。硬くしちゃうよ?」

チルタリス「セクハラはやめてください」

ライチュウ「お? 今の、どこら辺をセクハラだと思った? ん?」

チルタリス「そういうのがセクハラというのです」


チルタリスの口調は終始素っ気無くて、どこか突き放すようだ。いや、まあ、今のはライチュウも悪いが。

……やっぱ苦手なタイプだ。

いや、それより今日、何で呼び出されたんだって話だよ。
 ▼ 35 TOg35azcXc 18/11/10 11:20:29 ID:sQ3kPGyc [4/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ラグラージ「なあ、ライチュウ」

ライチュウ「ん? どした? 昨夜もフラージェスで抜いてしまったラグラージ君?」


ちょ!? な、何故それを!!?


チルタリス「セクハラはやめなさい。そろそろ本気で怒りますよ」

ライチュウ「へいへい。カマかけただけじゃんよ。そっかー、ママはそんなに魅力的に映ったか」



ラグラージ「……それで、今日の依頼は何なんだよ」

ライチュウ「誤魔化しやがった。……祭りの警備と起こる問題の迅速な解決だ。探偵は何でも屋じゃねーぞぅ」

嘆くように天を仰ぐライチュウ。そして二本の襷をそれぞれに渡してにやりとする。

ライチュウ「ってことで、任せた。その襷は警備班の証だ。バディでの行動をきっちりするこったな。ランクはB。よろしく。俺はフケる」

ラグラージ「はあ!? 任せるってなんだ!?」



本当にあっという間に去りやがった。追いかけようにもポケモンが溢れていて難しい。

チルタリスと二匹だけにするのは勘弁してくれ。

フケるってなんだ。働け。

ランクB? いきなり跳ね上がったじゃねえか。祭りの警備だけでなんでそんなんなってんだよ?


色々と突っ込みたかったがその前に視界から消えた。どうなってんだ畜生。

チルタリス「では行きましょうか」

いつの間にやら襷をきっちり装備したチルタリスに言われ、ラグラージも気合を入れ直す。

……やるか。仕事は仕事なんだから。
 ▼ 36 TOg35azcXc 18/11/10 11:21:55 ID:sQ3kPGyc [5/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
……ポケモンがこれだけ集まると、本当、色々起こるもんだ。

迷子や失せ物は茶飯事。そのすべてを解決するなんて土台無理なわけで。それぞれのセンターに送るのが精一杯。

ウェイ系の兄ちゃんたちが暴れたり、おばちゃんのクレームが相次いだり、ボヤ騒ぎなんかも起こったり。これがBランクって奴か……

ラグラージ「大変ってもんじゃねえぞ…… ライチュウも手伝ってくれりゃいいのに……
 なんかどんどん探偵のイメージ壊れてくんだけど」


ついぼやいてしまう。


チルタリス「多分ですが、所長、見てますよ。こっちの様子。そんな暇ないかも知れませんけれども」


ただぼやいただけなのに返答があったことに驚いた。

ライチュウの肩を持つ発言であることにも驚く。ちょっと理解が及ばない。


ラグラージ「どういう意味?」


チルタリス「おちゃらけているように見えて、自分の仕事に責任と誇りを持っているお方です。私たちに仕事を任せてもフォローはしてくれるんですよ。といっても忙し過ぎて手一杯なのかもしれませんが」



Bランクですからね。チルタリスは呟きつつも回りに光らせた目は止めていない。

ラグラージは呆気に取られてしまった。

色々見えていなかったようだ。ライチュウが探偵である所以もそうだし、チルタリスも上司想いのいい奴っぽい。

……怖がってたのがなんか恥ずかしい。
 ▼ 37 TOg35azcXc 18/11/10 11:23:05 ID:sQ3kPGyc [6/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ラグラージ「ところでライチュウの言うランクって何なんだ?」

チルタリス「さあ。あまり気にしない方がいいみたいですよ。所長の基準と独断で決まってるだけみたいですし。実際やってみるまで難度が画一に決められるほど、物事は単純じゃありません」

言われてみればそうだ。

じゃあランク分けって結局何なんだとは思うが、チルタリスがそう言うなら気にするだけ無駄なのだろう。


チルタリス「私からも質問良いですか。貴方、中々レベル高いですよね。それだけの力があれば先程の暴徒も楽に抑えられたと思いますが、手間取っていたのは、何故?」


……さっきのウェイ系か。確かにあのレベルの奴なら一捻りにもできたろうが。


ラグラージ「逆だ。高レベルだからこそだよ。こんなとこで技出して回り巻き込んだら大変だろ」


暴徒の鎮圧より安全の優先。そりゃ当然だろうに。

ラグラージの答えを聞いたチルタリスは満足そうに頷いた。
 ▼ 38 わる気しない◆TOg35azcXc 18/11/10 15:45:19 ID:sQ3kPGyc [7/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そうして警備して回った後、昼休憩という名目で屋台巡りをした。

味や手間の割に高すぎる食料群は、でもやっぱり屋台で食うと美味い気がして。

自分の姿とそっくりな綿がしを一心不乱に食べていたチルタリスに頬が緩んでしまったり。

何気なく勝ったベビーカステラの中に当たりがあって水ポケモンのくせに火を噴いたり。

なんか、仕事ではあるんだけど、祭り来てよかったなって思った。



化粧を直す形で一旦チルタリスと別行動になり、改めて祭りの風景を眺める。

お祭り騒ぎ、という言葉が身に染みて分かるような賑やかさだ。

笑顔で溢れている。はしゃぐ子ども。笑う大人。様々だ。


……と、見たくないものまで目に入ってきたかもしれない。

あっちで騒いでる集団。

見知った顔が沢山いると思ったら、ラグラージのクラスメイト達だ。

驚くことにラグラージ以外の全員がいる。皆で予定組んできたんだな。

ラグラージは仕事がある所為でそこには混ざれない。だから気にするほどではないかもしれないが……


……声、掛けてもらった覚えねえんだけど。


……あ、なんか泣きそう。わかってたことなのによ。



そんな気分でいたからか、目を逸らした拍子に、今度は別の存在が目に飛び込む。

何故、そんな悲しそうな目をしているのだろうか。

水のような美しさのある見たことのないポケモン。この雑踏の中、離れた位置にも関わらず魅入ってしまう。

ポケモンの口が動いた。誰に向けて喋ったのかもなんて言ったのかもわからなかったが、何故か気になってしまう。
 ▼ 39 TOg35azcXc 18/11/10 15:47:37 ID:sQ3kPGyc [8/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
チルタリス「ラグラージさん! 急いできてください! 緊急事態です!」


突然後ろから叫ばれて急いで気持ちを切り替える

緊急? 一体何事だ?


会場の中、一部騒然となっている。

何者かが技を使っているようだ。

……ったく。何者だよ。皆が作っている楽しい空間を邪魔しやがって。

現場に駆け付けたラグラージは、思わぬ光景に目を疑う。

倒れているポケモンがいる。怪我の様子は、よく解らない。

暴れているポケモンがいる。暴れているポケモンはとても奇怪な笑みを浮かべている。


そのどちらも、肩から襷を掛けているのだ。


ラグラージ「警備員が、暴徒だと?」


信じがたい。鎮める側の彼らが何故。しかし現実起こっているのだから何とかしなければ。


ラグラージ「何やってんだ! 止まれ!!」

ガメノデス「なんだ? 僕の邪魔する気かー?」

相手のポケモンはその身を護る殻を武器にして攻撃を重ねてくる。


ラグラージは腕を盾にして守りながら、相手の身体を抑え込んだ。

ラグラージ「お前、こんなことしてタダで済むと思うのか! 何が目的でこんなことをする!?」

ガメノデス「……よくみたら、君、『ラグラージ』じゃないか。ねえ、君も嫌にならないかい? この世界が」

ラグラージ「は? 何だって?」

ガメノデス「種族が差別対象になるなんておかしいでしょ? なんでそんなんで否定されなくちゃならないんだろうね? 僕は産まれてきちゃいけなかったのかい? 君はどう思う?」


ギクリとする。本音を見透かされたような気がした。

確かに考えたことがない訳ではなかった。

だが、コイツはより狂気的だ。同意はできない。


ラグラージ「知らねえよ。自分で決めろ」

ガメノデス「ふふっ そうだね だから僕は決めた 僕を否定する世界なんていらない 否定し返してやる 君も手伝ってよ ねえ しゃる うぃ だんす?」
 ▼ 40 TOg35azcXc 18/11/10 17:03:07 ID:sQ3kPGyc [9/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
不気味な笑みを浮かべた相手ポケモンは意味不明なことを言うなりラグラージに背を向ける。

そして殻の刃を掲げるなり、自分の胸へと突き込んだ。

行動が突飛過ぎて読めない。

倒れかける相手をラグラージは慌てて支えた。


ガメノデス「わ……私は、何……を?」


突然笑みを消し顔面蒼白になったガメノデスは信じられないとばかりに一言呟くと、ダメージとショックで気を失った。


……全っ然ついていけねえよ。なんだこりゃ。理解不能。意味不明。

目の前の事象を整理しようとしていると、頭がショートするように痛くなってきた。


いや、マジで痛え。頭がグワングワンする。

ラグラージは目の前が真っ暗になった。

身体と心が切り離された気がした。



――――
―――
――


ライチュウ「よう。なにがあったか覚えているか?」

気が付いたら、どこかの長椅子の上に寝かされていた。腕が縛られている。

……いや、ほんとなんだこれ。さっきから急展開過ぎねえか。
 ▼ 41 TOg35azcXc 18/11/10 17:54:06 ID:sQ3kPGyc [10/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ラグラージ「取り敢えず解いちゃくれないか。この体制のままってのは間抜けだ」

ライチュウ「ん。いいだろう」


言葉通り解いてくれる。ラグラージは椅子に掛け直した。

回りを見る余裕も出てくる。どうやら以前にも来たことのある場所だ。


ラグラージ「気い失ってたんだから文句言うのは筋違いかもしれないが、もっと他の場所はなかったのかよ。事務所とか」

ライチュウ「ん? どうしてだ? 何が気に食わないんだよ。愛しのママの店だろうが」

ラグラージ「……やめろ」

ママの店。酒場だ。ライチュウのからかいも相まってラグラージは苦い顔になる。

不思議そうなライチュウに先日学校であったことを掻い摘んで話した。



ライチュウ「はあ? ママの店で未成年飲酒なんてマネさせねえしできねえよ? 酒場にいるのは酒呑むためだなんてバカバカしい。偏見だぜ。これだから世間を知らねえ坊ちゃん共は……」

フラージェス「何言ってんのよ。ここに連れてくる時点で疑われてもしょうがないってのよ。あんたがおかしいんでしょ」


店の奥からフラージェスが二杯のカップを持ってやってくるなり叱り飛ばす。

ライチュウは不服そうな顔をしながらもコーヒーを受け取って飲み始めた。
 ▼ 42 マルス@エレベータのカギ 18/11/10 18:05:59 ID:AXb6obsc NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 43 に合わなかった◆TOg35azcXc 18/11/10 20:26:02 ID:sQ3kPGyc [11/16] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ラグラージ「……酒じゃねえんだな」

ライチュウ「ばか。仕事中だぞ。そうじゃなくとも俺は元々酒は好かねえんだ。変に苦いだろ、あれ」

ラグラージ「いや、俺に言われても」

未成年者に同意を求めるのってどうなんだ。



ライチュウ「それで、繰り返しになるが。なにがあったか覚えているか?」

ラグラージもまたコーヒーに口を付けたのを確認してか、ライチュウは口を開く。

ラグラージ「いんや。ガメノデスが自害を図ったところまでだ。なんで縛られてたのか全く解んねえ。……そうだ! あのガメノデスどうなった!?」

ライチュウ「無事だよ。いや、無事ってのもあれだな。全治三か月の重傷だよ」

ラグラージ「死んじゃあないってことか…… 良かった」



ライチュウ「……お前もあんな風に暴れた後自害しようとしてたんだよ」

ラグラージ「……は?」


耳を疑う。


ライチュウ「ああ、慌てんな。お前自身を危ねえ奴だと思ってるわけじゃねえ」

ラグラージ「いや、でも、縛ってたじゃ……」

ライチュウ「あの状態のときじゃ話通じねえからな」


あの状態。その言葉を聞いてガメノデスを連想した。

あれは正気の沙汰じゃなかった。ラグラージもああなっていたのだろうか。
 ▼ 44 結は目指す◆TOg35azcXc 18/11/10 20:29:51 ID:sQ3kPGyc [12/16] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ライチュウ「お前だけじゃねえ。最近攻撃的になる奴が何件か目撃されてて、原因が解んねえんだ。近いところで言や、指輪の件の時の野良バトルしてた連中もそうらしい」

フラージェス「今回で通算20件目ね。しかも誰も暴れる前後の記憶を有してないらしいわよ」

ラグラージ「マジか……」


原因不明。誰が、いつなるのかも予測不能。そんなん、おちおち出歩けもしねえ。


ライチュウ「だから目下探偵中ってところだ。SSランク、俺の全霊で以て挑むべき問題って奴だよ。少しでも情報が欲しい。何か覚えてねえか」

ラグラージ「何かって言われても…… 本当に何も……」

ガメノデスが倒れた後のことは、記憶がない。


ラグラージ「いや、変な感覚だったな。ただ気を失うってんじゃなく、目の前が真っ暗になった。『感覚がなくなった』っていう方が正しいか。」

ライチュウ「ほう。そいつは初耳だな。そういう感覚的な事態は話してくれる奴がいない」

……まあ、こんなんが探偵の役に立つとは思えないしな

ライチュウ「他は? 事件に直接関わることじゃなくてもいい。気になったことや今までなかったことはないか?」

気になったこと、か。そう言われると。

ラグラージ「祭りの最中、知らないポケモンを見かけた。ここらへんには住んでないってだけの意味じゃない。なんてポケモンか、どんな種類かもわからない。そういう意味だ」

ライチュウ「それ、絵で表せるか?」


素朴な疑問を投げられ、頷く。

フラージェスに紙とペンを借り、思い出しながら描き表してみた。
 ▼ 45 TOg35azcXc 18/11/10 20:52:11 ID:sQ3kPGyc [13/16] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
描けた絵は、我ながら特徴をよく捉えたものになったと思う。

しかしそれを見たライチュウは眉を顰める。


ライチュウ「ママ、これなんてポケモンか解るか?」


どうやらライチュウも見たことがないらしい。

水を向けられたフラージェスは絵を受け取ると少しの驚愕を顔に浮かべた。


フラージェス「あら。本当にこのポケモンがいたの?」

ライチュウ「そんなに珍しい奴なのか」

フラージェス「ええ。貴方たちが知らないのも無理はないわ。この子は幻に分類されるポケモン。フィオネっていうの」

ライチュウ「そいつはどんな特徴を持っている?」

フラージェス「幻だもの。私も多くの情報は持っていないわ。確かな情報って言うと一つだけ。海洋ポケモンマナフィの同胞だってことくらいかしら」


ライチュウはそこまで聞くと微笑む。


ライチュウ「流石ママ。いい仕事してる。……ツケといてよ」


残りのコーヒーを呷ったライチュウはそのまま店を出ていく。

ラグラージは、正直今のやり取りについて行けず何が何やらである。
 ▼ 46 TOg35azcXc 18/11/10 21:55:03 ID:sQ3kPGyc [14/16] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ライチュウ「よし、フィオネ捜すぞ。チル子も呼ぶ。お前はさっきの絵を持って聞き込みして来い」

ラグラージ「待て待て待て。ちょっと説明をくれ。あの子がなんか事件と関わっているのか? 何を? どうやって?」


ラグラージは混乱している。


ライチュウ「多分な。ポケモン凶暴化の件、ただの催眠とは違うようで仕組みが解らなかったんだが、さっきの話を聞いてしっくりくる仮説が出来ちまった」

ラグラージ「仮説?」

ライチュウ「ああ。マナフィというポケモンはな、ポケモン同士の心、中身を入れ替える、ハートスワップって技を覚えるんだ」


ハートスワップ…… そんな技が…… あの、狂気の権化が、中に?

ぞっとする。他者の中に入り、他者の振りして悪意を撒き散らす。

そんなことされたら、世界はあっという間に疑心暗鬼になって壊れてしまう。


ライチュウ「こんな事態が起きてる時に、幻の同胞の幻がいるなんて、偶然な訳がねえ。そいつはまず間違いなく『手掛かり』だ。絶対に見つけ出せ」


説明を受け、ラグラージにもやっと理解が及ぶ。同時に、危機感も沸き起こった。


ラグラージはフィオネを見つけ出すため、駆け出した。
 ▼ 47 TOg35azcXc 18/11/10 22:26:48 ID:sQ3kPGyc [15/16] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ラグラージは手に持った絵を見せて街行くポケモン達にフィオネの情報を聞く。

まだ祭りの喧騒の中にある街では、回りへの関心が薄いのか、全然情報が集まらない。

それどころか、大多数のポケモンがこちらを不審な目で見てくる。


何度「キモイ」という暴言を聞いたことだろう。


何度技を使って追いやられそうになっただろう。


それでもなお地道に手掛かりを求めて。


ラグラージ「やっと…… 見つけた……」


太陽がその姿を地の向こうに隠しそうになる頃。

ラグラージはその綺麗な幻のポケモンの下へ辿り着いていた。
 ▼ 48 TOg35azcXc 18/11/10 23:18:24 ID:sQ3kPGyc [16/16] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
フィオネ「わたしに何か……ご用ですか?」


訊かなきいけないことは、多分いっぱいあった。

事件のこと。マナフィのこと。その関係性。


ただ、ラグラージの口から飛び出したのはそのどれでもなく。



ラグラージ「どうしてそんな、悲しい目をしているんだ?」



酷く場違いにも思える、素朴な疑問だった。





フィオネ「悲しい目……ですか? そう……ですね。わたしが……すべての元凶……ですから。」


元凶……。穏やかじゃないな。やっぱり事件と関わっているのか。


ラグラージ「君が? 意外だな。マナフィの方だって聞いてたんだが……」

フィオネ「はい。マナフィ……です。」


なるほどなるほど。そこはライチュウの推理通りか。


フィオネ「わたしが……マナフィ……なんです。元凶……です。……はい。」


なるほ ……ん?
 ▼ 49 TOg35azcXc 18/11/11 00:06:51 ID:nvUYy5rE [1/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
よく解らない話になってきたな。フィオネがマナフィ?


ラグラージ「君は『フィオネ』という種類のポケモンだろ?」


フィオネ「身体は……そう……です。」


ハートスワップって奴か。


ラグラージ「なるほど。じゃあ、元凶である君を今ここで捕まえれば、問題は解決?」

フィオネ「……ごめんなさい。そうは……なりません。わたしはもはや……何の役にも立ちません。」


これはまた自虐的な。一体どういうことなんだろう。

フィオネ「わたしがいたから……あの子は産まれて……不幸になりました。あの子は……ずっと……『フィオネ』であることを……蔑まれて生きてきました。」


幻のポケモンでもそんなことがあるのか? ……あるんだろうな。


フィオネ「あの子は……自分を嫌いました。苦しみました。わたしは……一時でも解放してあげようと……力を使いました。それがどういう訳か……繋がりは絶たれ……力も……身体も……持っていかれました。わたしには……どうすることも……出来ないんです。」


酷く悲し気な口調で幻はそう語る。

同胞の暴虐と自分の無力さに打ちひしがれているようだ。
 ▼ 50 TOg35azcXc 18/11/11 10:46:44 ID:nvUYy5rE [2/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
産まれた種族が『そう』であるというだけで嫌われるのは辛い。

変えようのない事実で否定されるなんて酷いもんだ。

それをラグラージはよく知っている。



でも。


だからといって否定を否定で返すなんてやっちゃいけない。


それでは永遠に解り合うことなんてできやしないんだ。



フィオネ「お願い……します。探偵さん……! あの子を……止めて……!」

ラグラージ「依頼、承りました」

まずはライチュウたちと合流だ。



ライチュウ「見つけたか。よくやった。では早速質問させてもらうが、いいか?」

フィオネ「……はい。勿論……です。」

フィオネを連れて戻ると、いきなり話が始まる。

ライチュウのおちゃらけた雰囲気はどこへやら、すっかり探偵の顔だ。



ライチュウ「ハートスワップという技は、どこまで効果がある?」
 ▼ 51 TOg35azcXc 18/11/11 10:47:41 ID:nvUYy5rE [3/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
マナフィ「やあ、いらっしゃい よく見つけたね? 君も絶望したのかい?」

ライチュウ「いいや。お前を止めに来た」


月が中天へ辿り着きそうな頃、ライチュウはマナフィの下へと辿り着いていた。


マナフィ「なんでここだって判ったかな? 折角隠れていたのに」

ライチュウ「ハートスワップという技には効果範囲があるんだろ? 使用者と対象者はそこまで離れている筈がねえ。技の使用中はお前自身は無防備になる。そんな身体を雑踏の中に置いておくことも難しいだろう。なら、身体をどこに置くか?ここしかねえと踏んだよ」

ライチュウは自分の推理を語って聞かせる。彼曰く、探偵は語りたがり屋らしい。

ライチュウ「ま、技の効果が入れ替えじゃなく乗っ取りになってたり、事件から時間が立ち過ぎていたりと不確定要素もいくつかあったが。今までの案件からお前自身が場所を移しないことに賭けた。ビンゴだな。
この街で起こった事件は、みな、このミアレタワーから見下ろせる位置だった。そうだろ?」


マナフィ「正解 おめでとう でもね 間違いもある ハートスワップは入れ替えのままだよ? この身体はね 目も見えないしほとんど動かないんだ」

ライチュウ「ほーん。それでか。教えてくれてありがとよ。解んなかったとこも繋がったぜ」



マナフィ「僕は世界を壊す 僕を否定して マナフィにこんな酷いことをした世界を 
君も手伝ってよ ねえ しゃる うぃ だんす?」


マナフィの奇怪な言葉の後、ライチュウが不気味な笑みを浮かべ始める。
 ▼ 52 TOg35azcXc 18/11/11 12:02:14 ID:nvUYy5rE [4/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ラグラージ「確保!」

その瞬間に潜んでいたラグラージはマナフィの身体を抑えた。


ライチュウ「あれ? なんだ? なにをする気? 僕はこっちなのに、マナフィの身体を抑えて?」

ラグラージ「ハートスワップはマナフィの力なんだろ? こっちさえ押さえりゃ何とでもなるさ。1対1でしか効果ないんだから、複数で囲い続ければお前は何もできない」


フィオネに聞いた内容から分かった、相手の能力の弱点。

そしてそこから導き出したこの事件の解決法。


ライチュウ「やめろ やめろやめろやめろ 僕は 僕は やめろおおおお」


焦った様子の相手は思い切りゼンリョクの電撃を撒き散らし始めた。だが。



ラグラージ「知らなかったか? 『ラグラージ』は電撃の効かない水タイプなんだぜ?」



ラグラージの前では、そんなもの意味をなさない。
 ▼ 53 TOg35azcXc 18/11/11 12:03:07 ID:nvUYy5rE [5/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ラグラージ「無駄な悪足掻きはやめろ。お前はもう終わりだ」

ライチュウ「おわり おわりおわりおわり? わかった おわりにしよう ……くっ」

ライチュウは笑みを止めると頭を押さえながら膝をついた。



そしてラグラージの顔が笑みを浮かべだす


ラグラージ(俺の身体を乗っ取りやがった!?)

ラグラージ「いいだしっぺの君が手伝ってよ ねえ しゃる うぃ だんす?」

ラグラージの意思とは関係なく、口が開き足が動く。

マナフィの身体を抱えたまま、上へ、上へ。



そして展望台の窓に思い切り体当たりしてぶち割ると宙天へと身を投げた。


ラグラージ「それじゃ ばいばい さようなら」


そう言うなりラグラージはマナフィの身体を振りかぶり、思い切り地面へ投げた。

この高さで、勢いまでプラスされたら、確実に死んだな。

諦めの境地に至ったところで、俺は意識を失った。
 ▼ 54 TOg35azcXc 18/11/11 12:03:44 ID:nvUYy5rE [6/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
チルタリス「大丈夫ですか? ラグラージさん」



声を掛けられ、意識が戻る。

夜風が冷たい。俺は今チルタリスの背に乗って空を飛んでいるようだ。


ラグラージ「あれ…… 俺、なんで? マナフィ――フィオネは?」

チルタリス「同時には拾えませんでした。マナフィの身体は、残念ながら」


沈鬱な声が響く。

そうか……。救えなかった、か。


チルタリス「所長たちが待っています。降りますよ」
 ▼ 55 TOg35azcXc 18/11/11 12:04:47 ID:nvUYy5rE [7/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
地上に戻ると、マナフィの亡骸を抱えたライチュウと、泣きそうな顔のフィオネが待っていた。


ライチュウ「お疲れ。チル子も、よくやった。依頼は解決だ」

事務的な淡々とした口調だ。まるで言い聞かせてるように聞こえる。

そりゃそうだ。こんなもの……

ラグラージ「解決なもんかよ…… 死んで終わりなんざあまりにも…… キモイよな、俺。勝手に息巻いて、結局救えなかった。探偵失格だ」

自嘲の声が漏れる。解ってるさ。俺は――



フィオネ「そんなこと……ないです!」



自分の思考に沈みそうになった時、力強い声が響いた。


フィオネ「だって貴方は……あの子を止めてくれた。わたしを……解放してくれた。キモくなんか……絶対……ありません。格好良かった……です。」



遠くの地面から、太陽が顔を出してきていた。

もう、朝の時間か。
 ▼ 56 TOg35azcXc 18/11/11 12:06:38 ID:nvUYy5rE [8/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
――――
―――
――

あれからいくらかの時間が流れた。

ラグラージは相変わらず学校では一匹ぽっち。日に数回かは「キモい」という言葉を耳にする。

でも。

探偵事務所では気を置かなくて済む。いい仲間たちと共に活動が出来ている。

相変わらずライチュウにこき使われたり色んな案件に駆けまわったり、大変な日々だが、充実している。



ああ、そうそう。探偵事務所に新たなメンバーが参入した。

彼女は俺を認めてくれる。

「キモくない」と、そう言ってくれる存在がいるだけで案外この世界も悪くないと思わせてくれる。



さて、今日も一日、頑張るか。






                    ――ラグラージ「俺はキモくなんかない!」 fin
 ▼ 57 ンナ@グラスシード 18/11/11 20:47:54 ID:yPI6XQnE NGネーム登録 NGID登録 報告
乙!
すごくよかった
 ▼ 58 設定◆TOg35azcXc 18/11/11 23:00:22 ID:nvUYy5rE [9/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
――ランク

Easy  簡単な
Difficult  難しい方の
Calculation  頭脳労働的な
Busy  忙しない
Antipathy やりたくない(主にライチュウ側の都合で)

Slueth 探偵の(誇りを持って臨むべき)
SuperSlueth 名探偵の(より重要な、同上)
Fool サイホーンでもできる
 ▼ 59 トラポット◆Pcf6Vw29GM 18/11/17 01:34:15 ID:76rctiAU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙です!
いやぁこういうバイトやってみたいなぁ……ライチュウのかっこよさとラグラージの男子高校生感が好きです
雑ですが挿絵(?)描かせてもらったので上げます
 ▼ 60 TOg35azcXc 18/11/17 11:57:51 ID:Ah9QR98s NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>59
素敵な挿絵をありがとうございます

既に挿絵の送られていた 僕「お! ポケモン、懐かしいなぁ」 と
ご自身が執筆された 俺の“一人”旅 を除く
27作品の挿絵お疲れさまでした



ポケモンに抱くイメージってひとそれぞれですよね
個人的にコッペパン氏はピカ様に前を任せる度量のあるナイスガイなんです
それが巧く表現できていたらいいなと

そしてそれを見事に絵にしてくれたことに感謝しきりです
 ▼ 61 たちまる◆G0g6sKo3hA 18/11/17 23:44:58 ID:JxLgVlCI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

>>59
ありがとナス!
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