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【スワップSS】七夜の願い星

 ▼ 1 かちう◆Xq21k6pIJA 18/10/21 19:00:04 ID:8Rxg2PX2 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
……目を開く。

大きな欠伸をし、辺りを見回した。

……ここも変わってしまったな。


ボクはジラーチ。

1000年に一度、一週間だけ目覚める。

その間、ボクは誰かの願い事を叶えるのだ。


今年は……誰の願い事を叶えようか。


ふと、少し先を見ると、何か悩んだような顔をしたポケモンを見つけた。


……決めた。

ボクはそのポケモンに駆け寄り、言う。


ジラーチ「キミの願いをなんでも叶えるよ!」
 ▼ 2 かちう◆Xq21k6pIJA 18/10/21 19:00:35 ID:8Rxg2PX2 [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
このSSは、スワップSS祭
(http://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=897810)
に参加しています

続きは他の方に書いて頂きます
 ▼ 3 XSB9B4V/6I 18/10/24 20:27:13 ID:uIyQ95MU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
このSSを書かせていただくことになりました
頑張るぞー
 ▼ 4 かちう◆Xq21k6pIJA 18/10/24 20:35:01 ID:p2xU4wCA NGネーム登録 NGID登録 報告
>>3
よろしくお願いします!
楽しみにしています
 ▼ 5 ブカス@せいれいプレート 18/11/04 13:11:38 ID:.pUMLxJg NGネーム登録 NGID登録 報告
頑張れぇ!
 ▼ 6 XSB9B4V/6I 18/11/04 23:53:08 ID:9FzAWjIs NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
書き溜めが間に合いませんでしたが今晩中に投稿したいと思います
 ▼ 7 XSB9B4V/6I 18/11/05 00:46:48 ID:gDuEhcIg [1/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
――――


赤々とした砂の大地に、そのポケモンは一人佇んでいた。


「……」


吹き付ける砂嵐にも微動だにせず、ただそこに生えた巨木のように静かに空を見上げている。



帽子を目深に被った旅人を模したような姿。

名をノクタスと言った。


「……」


彼は深い思案に浸っていた。

日が沈み、空に星が瞬いても、決してその場所から動こうとしなかった。





そんな彼の元に、上空から1匹のポケモンが舞い降りた。


「キミの願いをなんでも叶えるよ!」


明るく朗らかな声に、ノクタスは呪縛が解かれたかのように動き出す。

虚ろな目がジラーチを捉えると、一瞬だけそこに何かが浮かんだ。

だが、


「失せろ」


ノクタスは吐き捨て、背を向けて立ち去った。
 ▼ 8 XSB9B4V/6I 18/11/05 00:48:36 ID:gDuEhcIg [2/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「え、待ってよ!」


思わぬ言葉と態度にジラーチは戸惑った。

今までジラーチが出会ってきた者たちは、皆願いを叶えて貰おうと必死に募り、それが叶うときには必ず幸福な表情を浮かべていた。


「本当だよ。ボクはジラーチ、どんな願い事も叶えることができるんだ」


再びノクタスの前に躍り出てジラーチは無垢な瞳を向ける。

そして頭の短冊を示し、にっこりと微笑んで促しの言葉をかけた。


「ねえ、キミの願いを教えてよ」


ノクタスは暫し固まった。

感情の読めない鋭い目がスッと細められ、閉じられていた口が開く。


「……あるとしたら、」

「あるとしたら?」


ジラーチは期待で目を輝かせる。



「お前が消えていなくなることだ」


しかし、告げられた言葉はあまりにも冷たく無慈悲ものだった。
 ▼ 9 XSB9B4V/6I 18/11/05 00:49:22 ID:gDuEhcIg [3/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
すっかり落ち込んだジラーチは、あてもなく砂の荒野を彷徨った。


(絶対に何か悩んでいたはずなのに、どうしてあんなことを言うんだろう……)


ジラーチは千年に一度眠りから目覚め、七日間の間に三つの願い事を叶える。

他の生き物たちが日々食事と排泄と睡眠を繰り返すのと同じように、それがジラーチにとって生きるサイクルだった。


(……他に困っている子はいないかな?)


ジラーチは広い大地を空から見渡す。

以前この地は豊かな緑に恵まれた場所で、様々なポケモン達が数多く暮らしていた。

しかし今では見渡すばかりの砂の大地であり、生き物の姿も殆ど見受けられない。


ジラーチは暫く寂しい荒野を彷徨っていたが、やがてとあるポケモンの姿を見つけた。



「キミの願いをなんでも叶えるよ!」
 ▼ 10 XSB9B4V/6I 18/11/05 00:50:34 ID:gDuEhcIg [4/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「……うん? 何か聞こえたような?」


大きな甲羅を背負ったポケモン――コータスは、緩慢な動きで周囲を見渡しては小首を傾げた。

どうやら見た目に違わず高齢なポケモンのようで、耳が遠いらしい。

ジラーチは目の前に降り立つと、張りのある大声を上げた。


「ねえ、おじいさん! 何か困っていることはない?」

「うおおっ!なんじゃ、ビックリしたわい」


コータスは思わず甲羅の中に身を隠し、首だけを出して抗議した。


「えへへ、ごめんね」


ジラーチはぺろりと舌を出して謝った。


「……で、なんだったかの?」


思わずずっこけそうになったジラーチだったが、めげずに同じ台詞を繰り返した。


「えっとね、何か困っていることやお願いごとはない? ボクがなんでも叶えてあげるよ!」

「困っていることとな?……そうじゃのぉ……」


先程のノクタスよりもずっと長い沈黙が訪れ、ジラーチはじれったさを堪えてひたすら待っていた。
 ▼ 11 XSB9B4V/6I 18/11/05 00:51:54 ID:gDuEhcIg [5/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「旨いきのみが食べたいのぉ。ここらの森が朽ちて以来数年……いやもう十年以上になるか。毎日毎日石炭ばかりで、きのみを全く食べとらんのじゃ。死ぬ前にもう一度味わえたら……」

「任せて!」


話の概要が分かるや否や、コータスがまだ話し終える前にジラーチは両手を合わせて目をつむった。

瞬間、ジラーチの体は不思議な光に包まれる。


「むむっ、一体なんじゃ?」


コータスは突然の光に驚いて身を伏せる。

眩しさに視界を阻まれながらも目を凝らすと、そこには神秘の光景が広がっていた。


光り輝くジラーチから、雫のようなものが一滴、乾いた地面へと落ちる。するとそこから芽が飛び出し、瞬時に成長し始めた。

ジラーチが上空へ舞い上がり、その芽に光の雨を降らせた。

みるみると植物は大木となり、青々とした葉を茂らせ、その枝の先端にたわわな果実を実らせた。


「……こ、これは……!?」


コータスは唖然として言葉を失っていた。

ジラーチはそんな様子に気がつかず、摘み取ったきのみを差し出して微笑んだ。


「さあ、どうぞ召しあがれ!」
 ▼ 12 XSB9B4V/6I 18/11/05 00:53:06 ID:gDuEhcIg [6/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「……それじゃあ、お前さんはあのジラーチなんじゃな?」

「そうだよ!」


元気一杯に肯定したジラーチはまるで無邪気な子供のようで、コータスはどう接してよいものか戸惑った。

この地に伝説のポケモン、ジラーチが眠っているという言い伝えは、この辺りで知らぬ者はいない程有名な話だ。

かなりの長寿であるコータスも、それは幼子の頃から聞かされていた。


そんな生きる伝説が今、自分の目の前に現れて奇跡を起こした。


(まさか、本当にこの目で見るとは……)


にわかに信じがたいことであり、死の間際の幻なのではないかと思っていまいそうだった。


「よぉし、これで一つ目の願いは叶えたぞ」


だが、目の前ではしゃぎまわるジラーチの姿も、先程味わった不思議なきのみも、全て確かな現実だった。
 ▼ 13 XSB9B4V/6I 18/11/05 00:54:21 ID:gDuEhcIg [7/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「……それにしても、貴重な願いの一つをこんなちっぽけなことに使ってしまうとは……勿体ないことをしてしまったのぉ」


コータスは星型の実をつけた大木を見上げ、溜息を漏らす。

ジラーチの叶えられる願いは、一度の目覚めで三回だけ。

頭の短冊に願いごとが全て書き記されたら、再び千年の眠りにつくのだ。


「ちっぽけなんかじゃないよ。この木を見つけたポケモンは、みんなお腹いっぱいで幸せになれるんだもん」


ジラーチはにこにこと笑ってきのみを頬張った。

頭の右側に下がった短冊には『みんながお腹一杯食べられる、幸せのきのみの木』と書かれていた。


「そうかもしれんが……どうせ願うなら、この地の緑を蘇らせて貰えばよかったわい。あいつもそれが本望だったじゃろうて……」

「あいつって?」

「ノクタスじゃよ」


思わぬ名が出てきて、ジラーチは驚いてコータスの顔を見つめた。
 ▼ 14 XSB9B4V/6I 18/11/05 00:57:28 ID:gDuEhcIg [8/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「昔、この辺りには豊かな森があったんじゃ」

「うん、ボクが前に起きた頃もそうだったよ」


コータスはゆっくりと昔話を始めた。それを聞くジラーチは一見子供のようだが、そのコータスよりもずっと長生きである為対等な相槌を返していた。


「森には色んなポケモン達が暮らしておった。ワシもそうだが、ノクタスもその一匹じゃった」

「砂漠のポケモンなのに?」


ジラーチは小さな疑問を抱く。

ノクタスは乾燥した砂漠地帯に暮らすポケモン。てっきり、森が砂漠になってから住み着いたのかと思っていたのだ。


「森と言っても小さなオアシスのような所でな。近くに砂漠もあったし、鉱山もあった。色んなポケモン達が集う場所だったのじゃよ」


ふぅん、と呟くとジラーチはその光景を想像してみた。

千年のスパンでしか世界を見れないジラーチにとって、自分が眠っている間の変化は夢物語のようであった。



「ノクタスには仲の良いポケモンがおって、その子と暮らすために森に移ったのじゃ」
 ▼ 15 XSB9B4V/6I 18/11/05 01:01:24 ID:gDuEhcIg [9/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


「……そっか。だからノクタスはずっとあの場所にいるんだね」


長い長い話が終わると、ジラーチは目に涙を溜めていた。


「ああ……未だに忘れられないのじゃろう。かつて過ごしたあの森での暮らしが」


コータスもしんみりとした口調で呟く。

その横顔からは、自分自身もまた同じ気持ちであるということが見てとれた。


「でもボクの願いごとは三つ。全部違う子の願いじゃなきゃダメなんだ」


ジラーチは頭の短冊を指し示して言った。

コータスの願いは既に叶えてしまった。
この地の緑を蘇らせるには、ノクタス自身に願いを託されるか、あるいはまた別のポケモンを見つけなければならない。



「ならば、あやつに会うとよかろう」


コータスは遠くの地を見つめると、その名を告げた。
 ▼ 16 XSB9B4V/6I 18/11/05 01:02:20 ID:gDuEhcIg [10/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
――――


「こんにちは、キミがボスゴドラかい?」

「ああ、そうだが……お前は一体誰だ?」

「ボクはジラーチ。キミの願いを叶えに来たんだよ!」

「……何?」


ジラーチが訪れたのは荒地の山。

かつては木々が生い立っていたこの場所も、やはり緑を失い、岩と砂だけの山となっていた。

そんな荒れ果てた地にひとり住んでいたのが、このボスゴドラだった。


「まさか、本当にお前がジラーチだとは……」


初めは全く信じていなかったボスゴドラだったが、ジラーチがこれまでの経緯を話し、その話の中にコータスの名を出すと彼はようやく納得した。


「成程。確かに俺の願いはこの地に緑を取り戻すことだ。……コータスの爺さんも人の良いこった」

「これでキミの願いも、ノクタスの願いも一緒に叶えられるね!」


ボスゴドラの言葉にジラーチは喜び、さっそくその願いを叶えようと手を組んだ。



「ちょっと待ってくれ。その前に、見て欲しいもんがあるんだ」
 ▼ 17 XSB9B4V/6I 18/11/05 01:03:51 ID:gDuEhcIg [11/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「俺は長い間この場所を守ってきた。もう無駄だと仲間に諭されても、俺は絶対にこの山を見捨てたりしなかった」


ボスゴドラに連れて来られた場所には、いくつかの植物が残っていた。

そのどれもが弱々しく痩せ細り、強い風が吹いただけで今にも折れてしまいそうに見えた。

ジラーチは、こんな繊細な命をボスゴドラの無骨な手でどうやって守ってきたのだろうと、疑問と感心を抱いた。


「お前の願いで全部再生される前に、俺はこれまで守ってきたこいつらを誰かに見て貰いたかったんだよ」


そう言ってボスゴドラはしゃがみ込むと、優しげな視線を足元に落とした。


「そっか。キミは願いを叶えるために、ずっとひとりで頑張ってきたんだね」


ジラーチはその苦労を労うと、同じように足元の植物に目を向けた。

痩せこけた土に根を張り、必死に生き続ける命。


それにとある面影を重ねると、ジラーチは目を閉じて祈りを始めた。
 ▼ 18 XSB9B4V/6I 18/11/05 01:04:47 ID:gDuEhcIg [12/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジラーチは再び全身に光を宿すと、上空高くに飛び去った。

光を放出させると、その光の雨が荒れ果てた大地に降り注ぐ。

大地が割れ、その隙間から次々と新たな命が芽吹き出した。



ボスゴドラは目の前で起こる奇跡に息を呑む。

彼が守り続けた草花達も、みるみると元気を取り戻していった。



数刻の間に、辺りはかつての自然を取り戻した。


「ふぅ……これで、キミの願いは叶ったね。それから、ノクタスやこの地に住んでいたポケモン達の願いも……」


ジラーチはよろめきながら地上へと降り立った。

流石に使った力が大きかったのか、かなり消耗した様子だった。

左側の短冊には『この地の緑を蘇らせる』と書かれていた。



「ああ、有難うな」


ボスゴドラは両手でジラーチを抱えると、小さく礼を述べた。
 ▼ 19 XSB9B4V/6I 18/11/05 01:06:22 ID:gDuEhcIg [13/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ボスゴドラは、疲れ切ったジラーチを一晩休めてあげた。

翌朝、残った一つの願い事をノクタスに叶えさせてあげるために、ジラーチは再び空へと飛び立った。


『この花を持って行ってやれ。奴の細君が昔好きだったんだ』


出かけ際に渡された花を握りしめ、ジラーチはノクタスの姿を探した。



砂の大地はすっかり美しい森に様変わりしていたため、その中を探すのは容易ではない。

それでもジラーチは諦めずに探し続けた。


単にノルマとして願いを三つ叶えるだけならば他に出会ったポケモンでも構わないはずだが、ジラーチはどうしてもあのノクタスの願いを叶えてあげたかった。

千年の眠りにつく間、ジラーチの無意識に浮かぶのはこれまで願いを叶えてあげた者達の笑顔なのだ。

コータスとボスゴドラから事情を聞くうちに、その想いは更に深まっていた。






〜♪



森の中を彷徨うジラーチは、心地良い音色を聞いた。

思わず手に持った花を落としてしまうが、その先には探し求めていた相手の姿があった。
 ▼ 20 XSB9B4V/6I 18/11/05 01:07:36 ID:gDuEhcIg [14/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
――――


「これは……どういうことだ?」


荒野に緑が芽吹いていく様子を前に、ノクタスは呆然と立ち尽くしていた。

夢ではない。今自分は確かに起きている。


(それならば、もしやあのポケモンの力なのか)


ノクタスの脳裏に浮かんだのは、あの無垢なジラーチの姿だった。


「……」


ノクタスは葛藤した。

かつての森が蘇っていくことに喜びを感じるとともに、この力を使ったポケモンへの恨みの感情が込み上げてきたのだ。




足元に広がる緑に戸惑いながらも、ノクタスは思い出の残る場所へと歩み出した。
 ▼ 21 XSB9B4V/6I 18/11/05 01:08:29 ID:gDuEhcIg [15/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
美しい花や木々に囲まれた泉のほとり。

ノクタスは一つの木に背を預けると、星空を映した泉をぼんやりと眺めた。

ここは彼にとって大切な思い出の地だった。



遠い昔、ノクタスはこの泉の前で愛する相手に出会ったのだ。

彼女に想いを告げたのもこの場所だった。

険しい鉱山から想い人によく似た花を摘み取り、待たせてしまった彼女に不安一杯で差し出した。



懐かしい思い出に浸ると、ノクタスは自分を嘲るように小さく息を漏らした。
 ▼ 22 XSB9B4V/6I 18/11/05 01:09:12 ID:gDuEhcIg [16/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
心を晴らしたくて、ノクタスは木の枝から一枚の葉を千切り取って口元に当てた。


〜♪


澄んだ音色が森に響く。

これは彼女に教えて貰った草笛だった。

一度たりとも忘れたことはなかったが、森が失われてしまったために、今日までずっと吹くことができなかったのだ。



パサツ


調べに混じって、微かに何か小さなものが落ちた音がした。


「……!」


それに視線を向けた瞬間、ノクタスに衝撃が走る。





「キミの願いを叶えに来たよ」
 ▼ 23 XSB9B4V/6I 18/11/05 01:12:17 ID:gDuEhcIg [17/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
――――


ノクタスは思い出の花を握りしめると、憎々しげにジラーチを見上げた。


「言っただろう。俺の願いはただ一つ、お前が消えることだと」


その言葉に、ジラーチは悲しげにノクタスを見つめる。


「……どうして? キミは大好きだったあの子にまた会いたいと思わないの?」


ジラーチは視線をノクタスの手元に移す。

棘だらけの手は、繊細な一輪の花を傷つけまいと大切に持っていた。


「ボクは願いをなんでも叶えてあげられる。枯れ果ててしまった森を蘇らせることができるし、死んでしまったポケモンを生き返らせることもできる。キミのために短冊は一つ残しておいたのに、どうして拒むの?」


ジラーチの言葉に、ノクタスは顔を伏せた。

僅かに残った迷いを悟られないように。



「お前はこの森が失われた理由を知っているか?」
 ▼ 24 XSB9B4V/6I 18/11/05 01:14:05 ID:gDuEhcIg [18/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「どんな願いも叶えてくれる幻のポケモン……そんなムシのいい存在を狙うヤツは腐るほどいた」


しゃがれた声で語り出したその話は、ジラーチにとって思ってもみなかったことだった。


「ポケモン同士が争う分にはまだいい。互いに傷を負って少しばかり周りに飛び火するくらいだからな。けど、人間共は違う」


ノクタスは拳を握りしめた。

棘で傷付いた花がひしゃげ、花弁が地へと落ちていく。



「奴らはお前を手に入れるために全てを壊した。森を焼き払い、山に毒を撒き、ポケモン達を殺し回った」


顔を上げたノクタスの表情には、もう迷いが消えていた。





「お前が存在する限り、何度失ったものを蘇らせてもまた滅びるだけなんだ」
 ▼ 25 XSB9B4V/6I 18/11/05 01:15:15 ID:gDuEhcIg [19/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
――――


(そうだ。ノクタスは初めから願っていたんだ)


ノクタスの前から姿を消し、ジラーチは上空から森を見下ろした。

かつてこの場所で起きた惨劇に思いを馳せ、一粒の涙をこぼす。



〜♪


不意に、微かにあの心地良い音色が聴こえてきた。

これは永い眠りにつくジラーチへ向けた、最期の子守唄なのだろう。



(わかったよ。ボクはキミの願いを叶えるよ)



ジラーチは覚悟を決めて目を閉じた。

その額に下がった短冊には、既に願い事が書かれていた。



『もう二度と、ボクを巡って争いが起きませんように』










ジラーチは はめつのねがいを みらいにたくした
 ▼ 26 XSB9B4V/6I 18/11/05 01:18:14 ID:gDuEhcIg [20/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
――――――

――――

――





その言い伝えは、ポケモン達の住むこの森に残っています。

かつて人間達が欲望を追い求め、この森を破壊したこともありました。

けれど、今ではもう誰も思い出すことはないそうです。





豊かな森の真ん中にある大樹。

幻のきのみが生るこの木の下には、いつも沢山のポケモン達が集っています。


『私たちが飢えず幸せに暮らせているのは、ここに眠るポケモンのおかげなの』

きのみを与えるとき、親達は必ず子に言い聞かせました。

子供達は感謝の意を込め、そのポケモンが大好きな子守唄を歌います。



ここに眠るポケモンは、もう二度と目覚めることはありません。

彼は、幸せなポケモン達の笑顔に囲まれ、安息の眠りに包まれているのです。





そして七夕の夜が来る度に、大樹の近くどこからか優しい草笛の音が響くのだそうです。




 ▼ 27 XSB9B4V/6I 18/11/05 01:20:00 ID:gDuEhcIg [21/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
終わりです。
遅刻失礼しました。

ぴかちう◆Xq21k6pIJAさん、素敵な一レス目をありがとうございました!
 ▼ 28 ィ@あかいいと 18/11/05 01:24:01 ID:Mbb6y47I NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ▼ 29 かちう◆Xq21k6pIJA 18/11/06 20:38:50 ID:SYQIGwGc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
私の一レス目から、とても綺麗な物語に繋げて下さり、ありがとうございます……!
物凄く感動しました……!
 ▼ 30 トラポット◆Pcf6Vw29GM 18/11/07 00:11:29 ID:w8P6TdUg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙です!
最初はなんでノクタスがジラーチを嫌っていたのか疑問に思いながら読んでいましたが、森が失われた原因にジラーチを絡めてきたところが流石だなと思いました
(こういうのってジラーチ自体はあんまり事件の中心にいない場合が多いので)
雑ですが挿絵(?)描かせてもらったので上げます
 ▼ 31 XSB9B4V/6I 18/11/07 15:07:46 ID:RdDs35Tg NGネーム登録 NGID登録 報告
>>30
わぁ素敵な挿絵……
ありがとうございます
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