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【スワップSS】あかねいろに染まるとき

 ▼ 1 tgqAAlSPpw 18/10/21 21:01:55 ID:PpM6UIM2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ねえ……絶対、絶対だよ?」

「ああ」

「約束、したよ?」

「約束だ」

「本当の本当に、だからね?」

「勿論だ」


……あれは、いつのことだっただろう。

見上げたエンジュの空が、綺麗な茜色を見せてくれた事を覚えている。

その空を、彼女と一緒に眺めていた事を覚えている。

だけど、でも……


どうしてだろう、ぼくは彼女の顔を、思い出せない。

ただ、彼女との約束だけが、ぼくの脳裏に木霊する。


『いつか将来、大人になったとき……またここで、会いましょう。

そのとき、私は、私は…………』
 ▼ 3 ボミー@くろいてっきゅう 18/11/04 13:11:04 ID:.pUMLxJg NGネーム登録 NGID登録 報告
今日でラストやよ!
ってか、生きてる?
 ▼ 4 WZienuer1k 18/11/07 19:10:43 ID:.VZ2lPG. NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
リーリエ「私は……」

リーリエ「…………」

リーリエ「……うーん」

リーリエ(私は……一体何を約束したんでしょう)

リーリエ(大人になって、再会してからじゃなきゃ叶えられないこと……)

リーリエ(飲酒、はロマンスに欠けますし、タイムカプセルはちょっと古すぎますよね……)

リーリエ「うぅーん……私は……」

リーリエ(告白、は少し違う気がするし、結婚は文脈的におかしいですよね……いっそ最初からきちんと書き直して……)

リーリエ「…………」

リーリエ(でも、この謎めいていてどこか切ない感じの書き出し、我ながらとてと素敵に出来ていると思うんです。あまり変えたくないな……)

リーリエ(となれば続きを書くしかないわけですが、一体どうしたものでしょう……)

リーリエ「…………」

リーリエ「……いや、バトルはちょっと違いますよね」

リーリエ「うーん……」

リーリエ「私は……ン゛ッ」

リーリエ「ん゛ぬ゛うううぅぅぅ……」

ミヅキ「リーリエ、パソコンと睨めっこして何してるの?」

リーリエ「ふえぇ……!みじゅきしゃあん……!!!!」ギュッ

ミヅキ「わ、わあっ!?リーリエ!?」

リーリエ「小説の続きが全然思い浮かばないんですぅ……!」

ミヅキ「え、えっ?」

ミヅキ「……しょ」


ミヅキ「小説……?」

 ▼ 5 WZienuer1k 18/11/10 11:26:56 ID:Oh0QCXdM [1/34] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告

ミヅキ「バレンタイン小説大賞?」

リーリエ「そうです。実はカントーの方で恋愛小説のコンテストが開催されてて……大賞の商品がずっと欲しかったものだから、参加する事にしたんです」

ミヅキ「なるほど……だから小説を書いてるんだね」

リーリエ「はい。でも……続きが全く想い浮かばなくて。まだ最初の方しか書いてないのに……」

ミヅキ「少し見てもいい?」

リーリエ「は、はい!どうぞ……少し、恥ずかしいですが」

ミヅキ「ありがとう!えっと……うーん……」

リーリエ「どうでしょうか……」

ミヅキ「どう、と言われても……これだけだと『ステキな書き出しだなー』くらいしか分からないよ」

リーリエ「あ、ありがとうございます」

ミヅキ「ねぇリーリエ、これってどういうお話になるの?」

リーリエ「えっと……主人公の男性が、幼い頃に約束を交わした少女と再会するために故郷に帰るんです。少女が誰なのか分からないまま約束の日まで待つんですが、その時ポケモンがきっかけである女性と出会って……仲良くなるんです。で、実はその人があの日の少女で……みたいな話にしようと思ってて」

ミヅキ「へぇ!王道でいいね!私、そういうの好きだよ!」

リーリエ「本当ですか!?私も好きなんです!でも……肝心の約束が決まらなくて」

ミヅキ「約束かぁ……告白とか、そういうのじゃないの?」

リーリエ「告白は……少しありきたり過ぎるというか、大人になってからいうほどの事でもない気がして……」

ミヅキ「確かにそうだね。じゃあ……一緒に旅がしたい!っていうのは?」

リーリエ「お、大人になってから旅をするんですか?」

ミヅキ「ありゃ、駄目かな……小さい時は駄目だったから、って感じならいけると思ったんだけど」

リーリエ「うーん……難しいですね……」

ミヅキ「そうだね……小説ってとっても難しいよ……」
 ▼ 6 WZienuer1k 18/11/10 11:27:14 ID:Oh0QCXdM [2/34] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
リーリエ「そうなんですよ……我ながら無謀な事をしてしまったなって……」

ミヅキ「物語を作るって、大変なんだね……ん?」

リーリエ「ミヅキさん?どうしました?」

ミヅキ「ねぇ……いっそのこと、ここでプロローグを終わっちゃうのはどう?」

リーリエ「……というと?」

ミヅキ「えっとね、敢えて"約束"を伏せてちゃうんだよ!」

リーリエ「約束を……明記しないという事ですか?」

ミヅキ「うん。その方が何なのか気になるし、どんどん読み進めたいと思わない?」

リーリエ「確かに……それは一理ありますねぇ!ミヅキさん、ナイスアイデアです!続きが気になって、書く文章も減る素敵な発想ですね!」

ミヅキ「ほ、ほんと?リーリエのためになったら、それで良いんだけど……」

リーリエ「ありがとうございますミヅキさん!よーし、このままどんどん書き進めちゃいますよ!」

ミヅキ「うん!頑張って!」
 ▼ 7 WZienuer1k 18/11/10 11:27:43 ID:Oh0QCXdM [3/34] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告

──あれから、十数年もの月日が流れた。

ぼくは長い間ポケモントレーナーとして各地を旅して回っていたが、あの約束だけはどうしても忘れることが出来なかった。

旅先で色んな事があり、時間が過ぎていくごとに記憶は風化していく。

大人になるにつれて、彼女が誰だったのかも、いつそんな約束をしたのかも朧げになっていたが、

「また会おう」

の一言は何故かぼくの中で残り続けていた。

そんなぼくは今、久方ぶりにエンジュシティへ帰るため、アサギシティ行きの船で一人海を眺めていた。

「ナッツ!」

「ああ、ヒマナッツ。お前も里帰りが嬉しいんだね」

古い相棒のヒマナッツが、俺の足に擦り寄る。彼もまた、里帰りに思うところがあるのだろう。

長らく旅をしていたぼくが故郷に戻る事を決めたのは、ハナダの岬で夕日を見た時である。

「今から丁度十年後、ぼくらが大人になったら。空があかねいろに染まるとき、やけたとうの裏庭でまた会おう」

忘れもしない、十年前の2月14日。

旅に出る前日であり、彼女と最後に会ったあの日に、自分がそう言った事を鮮明に思い出したのだ。

ちょうど先日──2月1日の事である。

それから、ぼくは彼女との約束を叶えるために。

最後まで聞けずじまいだった願い事を聞くために。

そして、彼女が誰なのかを思い出すために。

遠いホウエン地方から、幼少期を過ごしたエンジュシティへ戻る事になったのだ……
 ▼ 8 WZienuer1k 18/11/10 11:29:13 ID:Oh0QCXdM [4/34] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


〜マラサダショップ〜

リーリエ「……むむ」

リーリエ「むぅ……」

リーリエ「…………」

リーリエ「……ん゛ぬ゛うぅぅぅ」

ハウ「リーリエ、何してるのー?」

リーリエ「きゃっ!?は、ハウさん!?」

ハウ「あ、ごめん。何か見ちゃいけないやつだったー?」

リーリエ「ご、誤解です!そんなものじゃありません!そんなのじゃありませんから!!」ガシッ

ハウ「う、うん……分かったよー、だから肩を離してー?」

リーリエ「ファッ!?す、すみません……」

ハウ「それで、パソコンで何してたのー?」

リーリエ「えっとですね……実は小説のコンテストに応募しようと思って」

ハウ「小説ー?そういえば、リーリエって小説好きだったよねー」

リーリエ「は、はい!読むのは好きですが、書くのは初めてで……」

ハウ「へー、なんか面白そうー!」

リーリエ「実は私、どうしても大賞が欲しいんです。無茶な事だとしても、少しでも可能性があるならチャレンジしてみたくて」

ハウ「それで、続きが全然書けなくて悩んでるんだねー」

リーリエ「ぐっ、は、はい。そうです……」

ハウ「どういう話なのー?おれにも見せてよ」

リーリエ「あ、はい。どうぞ。まだ全然書けてませんが……」

ハウ「ありがとうー」
 ▼ 9 WZienuer1k 18/11/10 11:29:33 ID:Oh0QCXdM [5/34] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


リーリエ「…………」

ハウ「…………」

リーリエ「…………」

ハウ「……なんだー、まだ全然書けてないじゃん」

リーリエ「ぐっ……それはそうですよ。何も思い浮かばないんですから」

ハウ「リーリエ、主人公の男の人ってどんな人なのー?」

リーリエ「えっ?主人公の人の事、ですか?」

ハウ「うん。これって、トレーナーの人のお話なんでしょ?」

リーリエ「そ、それは……ほとんど考えていませんでした」

ハウ「えー?だから続きが思いつかないんじゃないのー?」

リーリエ「言われてみれば、確かにハウさんの言う通りですね。物語というのは、登場人物の生き様なのに……よし、今から考えてみます!」

ハウ「あ、今から考えるんだー」
 ▼ 10 WZienuer1k 18/11/10 11:44:31 ID:Oh0QCXdM [6/34] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告

〜数分後〜

テーブルの上には、空になった皿が山積みになっている……▼

ハウ「ふぅ……マラサダ全部食べちゃったよー」

リーリエ「…………」

ハウ「……リーリエ?」

リーリエ「ん゛っ」

ハウ「だ、大丈夫ー!?」

リーリエ「ん゛ぬ゛ううぅぅぅぅ……」

ハウ「もしかして、ダメだったー?」

リーリエ「はい。若いポケモントレーナーで、相棒がヒマナッツってところまでは決められたんですが、性格が全然決められなくて……」

ハウ「性格かー。リーリエが好きな性格でいいんじゃないのー?」

リーリエ「む、無理です!それはちょっと恥ずかしいというか……一応主人公視点で書くので、私が感情移入しやすい性格がいいですね」

ハウ「リーリエが感情移入しやすい性格か……うーん」

リーリエ「私が書きやすい性格のキャラクターとは……」

ハウ「……ねぇ、リーリエ」

リーリエ「ハウさん?」

ハウ「いっそのこと、ヒロインのキャラクターから決めるなんてどうー?」

リーリエ「ヒロインの、キャラクター?」

ハウ「うん。恋愛小説ならー、男の人と女の人の掛け合いがメインでしょ?片方の性格が決まれば、もう片方の方もイメージ湧くと思うんだよねー」

リーリエ「……ああ!なるほど!確かにそうですね。その手がありましたか」

ハウ「男の人よりも女の人の方が、リーリエも悩まないんじゃないのー?」

リーリエ「はい!仰る通りです、ハウさん!こうしてはいられません!早速キャラ作りに取り掛からなければ……!」

ハウ「おー!がんばってー!じゃ、おれはロイヤルドームに行ってくるよー」

リーリエ「はい!お互い頑張りましょうね!」
 ▼ 11 WZienuer1k 18/11/10 11:46:19 ID:Oh0QCXdM [7/34] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


〜数日後〜

リーリエ「…………」

リーリエ(ヒロインは、主人公と同い年の和菓子職人。エンジュシティの一角にあるお菓子屋さんで働いています)

リーリエ(今は元気ですが、幼い頃は身体が弱く、本当は主人公と一緒に旅をしたかったけどついていく事が出来ませんでした)

リーリエ(だから、大人になったらもう一度ここで再会して、今度こそ旅について行きたい……そう主人公と約束を交わし、それが主人公の忘れた約束でもあります)

リーリエ(性格は、気さくで明るく、それでいてユーモアに富んだ……風変わりだけどステキな女性です。相棒のマリルとは幼い頃からの付き合いで、彼女の正体の伏線になります)

リーリエ(主人公は、彼女が約束した相手と気付かぬまま、彼女に心惹かれていく……)

リーリエ(……名前は、ジョウト地方でお世話になったまいこはんの名前をお借りしてサクラにしましょう)

リーリエ「よし、こんなものですかね。」

リーリエ「……さて」

リーリエ(主人公は……)

リーリエ(10歳の時にエンジュシティを出て、各地を回り続けたエリートトレーナーです。彼女の約束を思い出した事で、久し振りに里帰りをします。相棒はヒマナッツ。ヒロインのマリルとはとても仲良しでした)

リーリエ(名前は……やけた塔で恋煩いしていたやまおとこさんの名前をお借りして、ナツミさんにしましょう)

リーリエ(それで、性格は真面目で寡黙。あまり多くは語りませんが、好奇心旺盛で心優しい性格です)

リーリエ(茶目っ気のある女性と、寡黙で穏やかな男性の恋愛模様……これは、名作の予感がしますねぇ!)

リーリエ「よーし!早速書きますかァ!」

グラジオ「邪魔するぞ」コンコン

リーリエ「兄様?」
 ▼ 12 WZienuer1k 18/11/10 11:47:18 ID:Oh0QCXdM [8/34] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
リーリエ「どうしましたか?」

グラジオ「悪いな、作業中なのに」

リーリエ「いえいえ、とんでもない。で、何の用ですか?」

グラジオ「…………」

リーリエ「……兄様?」

グラジオ「……ミヅキが、欲しがっているものとか……そういうの、知らないか?」

リーリエ「ミヅキさんが欲しいもの……?どうしてそんな事を知りたいんですか?」

グラジオ「…………」

リーリエ「……あっ」

グラジオ「気が早いかもしれないが、出来るだけきちんとしたものを用意したいんだ。バレンタインデーに多く売り出されるようなやつじゃなくて、もっと……特別なものをな」

リーリエ「兄様、それはちょっと重過ぎませんか?」

グラジオ「フッ……別に普通だろ」

リーリエ「いやいやいやいや!どう考えても普通じゃありませんよ!だってまだ10代ですよ?あんまり高いの用意するとミヅキさんも困りますって」

グラジオ「困る?喜ぶんじゃなくてか?」

リーリエ「想像力が足りないですね、兄様。あんまりにも高そうなものを渡されれば、バレンタインデーの告白も断ろうにも断れないじゃないですか!」

グラジオ「……ほう、それもそうだな」

リーリエ「いい事聞いたみたいな顔してますね、兄様。怖いですよ」

グラジオ「それで、ミヅキが欲しがっているものというか……プレゼントに相応しいアクセサリーのアイデアが欲しい。思い当たることはあるか?」

リーリエ「そうですね……」

グラジオ「…………」
 ▼ 13 WZienuer1k 18/11/10 11:48:22 ID:Oh0QCXdM [9/34] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
リーリエ「……なら、条件があります。プレゼントの指南をする前に、私の質問に答えてください」

グラジオ「オレに協力してくれるなら、別に構わないが……何を聞くつもりだ?」

リーリエ「……兄様。恋に落ちるって、どういう感じなんですか?」

グラジオ「随分と直球だな、リーリエ」

リーリエ「ええ。私が書いているのは恋愛小説ですからね。実際に恋をしている、兄様の意見をお聞きしたいのです」

グラジオ「創作のネタって事か、分かった。それにしても、このオレが愛を語る日が来るとはな……少し、話す事を整理しても?」

リーリエ「はい。大丈夫ですよ」

グラジオ「…………」

リーリエ「…………」

グラジオ「……恋は、甘いものなんかじゃない。醜いし、苦しいと思う」

リーリエ「恋が……苦痛なんですか?」

グラジオ「オレの場合は、そうだな。ましてや相手はチャンピオンだ。オレが相応しいかどうか卑屈にもなるし……何より、この想いを拒まれるのが恐ろしいんだ」
 ▼ 14 WZienuer1k 18/11/10 11:49:14 ID:Oh0QCXdM [10/34] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
リーリエ「……恋が、人を臆病にさせるんですか?」

グラジオ「そういう見方もできるな。本気だからこそ、慎重になるものだ。慎重さが行き過ぎれば、臆病と呼ぶ事も出来るだろう」

リーリエ「なるほど……本当に好きだからこそ慎重になるんですね

グラジオ「ああ。本気で愛しているからこそ、オレもあいつに愛されたいんだ。嫌われたくない。醜い心を覗かれたくないってな」

リーリエ「醜い心?」

グラジオ「……ああ。人を好きになれば、その分人を妬んだり、熱に浮かされて倫理観が薄れる事だってあるんだ」

リーリエ「…………」

グラジオ「趣味の悪い部屋だとは言ったが、氷漬けにされたポケモン達……母さんの気持ちは、分からなくもない」

リーリエ「兄様?」

グラジオ「自分の一方的な愛を受け入れられ、その証がコレクションとして永遠に残るのは……少し、羨ましいとも思う」

リーリエ「あの、兄様?」

グラジオ「そのせいか、いけないとわかっていても……ミヅキに足枷をつけてやりたいと思う時があるんだ」

リーリエ「えっ?」

グラジオ「オレに繋ぎ止めて、どこにも消えないようにすれば……本当の意味で満たされるんじゃないかって」

リーリエ「……」

グラジオ「お前もそう思わないか?リーリエ。愛するものに、存分に愛を注げるんだ」

リーリエ「…………」

リーリエ「ごめんなさい。聞いた私が馬鹿でした」
 ▼ 15 WZienuer1k 18/11/10 11:49:47 ID:Oh0QCXdM [11/34] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


リーリエ「はぁ……」

リーリエ(流石は母様の息子……最高にいかれていますね)

リーリエ「…………」

リーリエ(……でも)

グラジオ『本気で愛しているからこそ、オレもあいつに愛されたいんだ』

リーリエ「…………」

リーリエ(参考資料としては……案外悪くなかったかもしれませんね)
 ▼ 16 WZienuer1k 18/11/10 11:50:26 ID:Oh0QCXdM [12/34] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告



こうして、商店街を歩くのも十年ぶりだ。エンジュの建物は長い歴史から保護されているものも多く、ぱっと見の街並みこそは変わらないが、中の店舗が入れ替わっている場所は多かった。
少年時代、よく土産屋の菓子を買わずに眺めていたなと懐かしみながら通りを歩いていると、ヒマナッツが急に走り出した。

「お、おい、ヒマナッツ!どこに行くんだ!?」

引き止めようとするぼくに構わず、ヒマナッツはどんどん道を進んでいく。

幸い、人通りは少なく見失う事はなかったが、ヒマナッツは中々足を止めない。

もう少しで追いつく、その時、ヒマナッツはある菓子店の中に飛び込んだ。

「こら、ヒマナッツ!」

ぼくは少しばかり声を荒げ、菓子店のドアを開けると、そこには床でマリルとじゃれるヒマナッツの姿があった。

二匹は初めて会ったとは思えぬほど気が合うようで、まるで再会を喜ぶように跳ね回っていた。

ヒマナッツを抱え上げようとした時、店の奥から女性の声が聞こえる。

「こーら!駄目だよ、お店の中で暴れちゃ……ん?」

奥から出てきた女性は、ぼくを見ると一瞬だけ動きを止める。

艶やかな黒髪を一つに束ねて、きれいな瞳を丸くしてぼくの方を見ていた。

「ああ、ごめんなさい。もしかしてその子……貴方のヒマナッツでしたか?」

「えっ?ああ……はい」

ぼくを客と思ったのか、女性は態度を改める。どこか気まずい二人の空気をよそに、ポケモン達は楽しそうにじゃれあっていた。

「ふふっ、うちのマリル……普段はこんなにやんちゃではないんですけどね」

そう言って、ポケモン達を止める事なく彼女は笑った。

彼女の笑顔が、記憶の中の何かと重なった気がした。
 ▼ 17 WZienuer1k 18/11/10 11:51:12 ID:Oh0QCXdM [13/34] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


リーリエ「……よし」

リーリエ(いい感じですねぇ……)

リーリエ(二人はヒマナッツとマリルの再会をきっかけによく会うようになり、次第に仲を深めていきます)

リーリエ(そして約束の日、二人は約束の場所で鉢合わせて……という流れですね)

リーリエ(ラストは先に書き終えてあります。後は仲を深める過程を書き込むだけですが……)

リーリエ「…………」

リーリエ(……これはいけない)

リーリエ(あまりに書きたいシチュエーションが多すぎて……)

リーリエ(全て書こうとしたら〆切に間に合わなくなってしまう……!)

ルザミーネ「精が出るわね、リーリエ」

リーリエ「母様……」

ルザミーネ「ふふっ、どうしたの?そんなにわたくしのことを見つめて……恋の相談かしら?」

リーリエ「恋の相談は私よりも兄様の方が必要だと思います。それより母様……!」ギュッ

ルザミーネ「ど、どうしたのリーリエ?貴方が抱きついてくるなんて……」

リーリエ「助けてください!!好きなシチュエーションが多過ぎるんです!!」

ルザミーネ「えっ……」

ルザミーネ「……えっ?」
 ▼ 18 WZienuer1k 18/11/10 11:51:56 ID:Oh0QCXdM [14/34] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


〜エーテルパラダイス1F〜

ルザミーネ「そう……賞を狙って恋愛小説を書いているのね」

リーリエ「はい。実は知り合ってから仲を深めるまでの過程を詰めたいのですが……」

ルザミーネ「恋愛の一番面白い時期だから、シチュエーションが選べないと」

リーリエ「そうなんですよ……!あれもこれも胸キュン過ぎて!絞れ!ないんです!!」

ルザミーネ「ところでリーリエ、話は変わるけど貴方ってどんなシチュエーションが好きでして?」

リーリエ「好きなシチュエーションですか?そりゃあ勿論膝枕ですよ!愛しい人を膝に乗せて、寝顔を眺めたいなって」

ルザミーネ「まぁ……その気持ち、とても分かるわリーリエ。愛する人の寝顔は格別です。私もよく夫の寝顔を眺めては、恥ずかしがられたものです」

リーリエ「へぇ……!そうだったんですね。あ、あと、あれも好きです!あーんって食べさせてあげるやつ!ラストにチョコレートを食べさせてあげるシーンがあるんですけど、やっぱり餌付けは最高ですよね!」

ルザミーネ「そうね……愛する人に食事を与えるのは幸せそのものです。自分が食べさせたものが、相手の血となり肉となる……まるで、わたくしの色に染め上げるような錯覚に陥ってしまうわ」

リーリエ「わかる!わかりみ!わかります!流石母様!話がわかっていらっしゃる!」

ルザミーネ「当然です。わたくしは貴女の母ですもの。ああ、それと、わたくしはあれも好きよ。愛する人に洋服を繕ってあげるのも好きよ」

リーリエ「……分かります。その人に合う洋服を考える時間だけでも幸せですよね」

ルザミーネ「結局のところ、愛する人の事を考える事自体が幸せなのよ。愛する人の幸せは自分自身の幸せだもの」

リーリエ「そうですよね。物語的には進まないかもですが、その辺りの掘り下げならいくらでも書けそうな気がします」

ルザミーネ「まあ、そんなに?あとは……二人の共通点を探す事とかかしら?」

リーリエ「あ!あ!あ!!良い!!良いですぅ!!」

ルザミーネ「ふふっ、貴女もわかるのね。実は私もそれが好きで……」
 ▼ 19 WZienuer1k 18/11/10 11:53:19 ID:Oh0QCXdM [15/34] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告

ミヅキ「…………」

ミヅキ(リーリエに呼ばれたのはいいけど……)


リーリエ「……そうしたら、いつか二人が溶け合って一緒になるんじゃないかって」

ルザミーネ「ええ、そうよ。二人が混ざり合って」


ミヅキ(なんか、怖い話をしている……!)

グラジオ「……どうした、ミヅキ」

ミヅキ「うぇっ……ぐ、グラジオ?どうしてここに?」

グラジオ「自分の家に居たら悪いか」

ミヅキ「あ、そういえばそうだったね……」

グラジオ「お前こそ何故ここに?」

ミヅキ「えっと、リーリエに呼び出されたんだけど……」

グラジオ「……?」

ミヅキ「その……なんというか……」


リーリエ「ふふっ、やっぱり、思う存分愛を与えるのが一番幸せですね!」

ルザミーネ「ええ。己すら溺れてしまいそうなほど、深い愛で包む……それが最高の幸せよ」


ミヅキ「リーリエも……やっぱりルザミーネさんの娘だったんだなぁって思うと、割り込めなくて」

グラジオ「……まあ、そうだな。ところでミヅキ」

ミヅキ「ん?なあに?」

グラジオ「今月の14日……時間あるか?」

ミヅキ「うん。今のところ予定はないけど……」

グラジオ「なら、その日は空けておいてくれ」

ミヅキ「どうして?」

グラジオ「……たまには、挑戦者としてではなく、個人的にお前とバトルがしたい。それだけじゃ理由にならないか?」

ミヅキ「いいよ!私、そういう気分転換大好きだから」

グラジオ「そうか。なら決まりだな。次会う時は思う存分戦おう」
ミヅキ「うん!」

 ▼ 20 WZienuer1k 18/11/10 11:53:39 ID:Oh0QCXdM [16/34] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告

ルザミーネ「…………」

リーリエ「……母様?どうしましたか?」

ルザミーネ「いえ、何でもないわ」

ルザミーネ「…………」

ルザミーネ(ふふっ……バトルをだしに取るなんて、やるじゃない)
 ▼ 21 ガイアス@シーヤのみ 18/11/10 14:16:13 ID:Oh0QCXdM [17/34] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告

リーリエ(『ぼくの膝で無防備に眠る彼女は、普段よりもずっと幼く見えて。ゆっくりと頬を撫でるたびに、愛おしさがこみ上げてくる』)

リーリエ「…………」

リーリエ(『ぼくは、サクラの身体をゆっくりと抱き寄せる。服越しに彼女の体温は心地よくて、いつか溶け合ってひとつになってしまうように思えた』)

リーリエ「…………」

リーリエ「……はぁ」

ミヅキ「……リーリエ?どうしたの?」

リーリエ「……なんか、書いてて思うようになったんですけど」

ミヅキ「ん?」

リーリエ「男の人って……好きな人の頬を撫でて気持ちが満たされたり、抱きしめて溶け合うような感覚が素敵だと思ったりするんですかね」

ミヅキ「リーリエ、どうしたの急に」

リーリエ「その……私の記憶の限りでは、男性の作者さんが書かれる恋愛小説ってもっと淡白な気がするんですよね。なんというか、こう……薄いわけじゃないけど」

ミヅキ「うーん、恋愛小説はあまり読まないから分からないな……」

グリーン「よっ!お困りかいベイベー?」

レッド「…………」

リーリエ「グリーンさん!レッドさん!」

グリーン「バトルツリーのマルチ以来だな!まさかこんな所で会うとは。席、ご一緒しても?」

ミヅキ「勿論!リーリエ、いいよね?」

リーリエ「はい!喜んで!」

グリーン「おーおー、二人に喜んで貰えるなんて男冥利に尽きるぜ。な、レッド?」

レッド「……!」←頷いてる

店員「ご注文はお決まりでしょうか?」

グリーン「じゃ、ケーキセットを4つで」

店員「かしこまりました」

ミヅキ「あれ?グリーンさん、ケーキ、4つも食べるんですか?」

グリーン「いいや、4つのうち2つは君達の分だよ。俺達からの、少し早いバレンタインプレゼント……かな?」

リーリエ「バレンタイン、プレゼント……」

ミヅキ「わぁ……!ありがとうございます!ここのケーキ、とっても美味しいですよね!」

グリーン「おう!喜んで貰えるなら嬉しいぜ……って、リーリエ?」

リーリエ(〆切は、バレンタインデーの一週間前。残された期間は、あとわずか……それなのにまだ、こうして悩んでるなんて)

レッド「……?」
 ▼ 22 WZienuer1k 18/11/10 14:17:18 ID:Oh0QCXdM [18/34] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


グリーン「なるほど、コンテストに出す小説を書いてるってわけか」

リーリエ「はい。でも……書いているうちに、男の人ってこんな風に考えるのかって分からなくなって」

レッド「…………」

グリーン「ん、お前も読み終わったか?レッド」

レッド「……///」←意味もなく照れてる

グリーン「……まあ、俺も読ませて貰ったが、確かにリーリエの言う通りな所はあった」

リーリエ「そう、ですよね……」

グリーン「でも、所詮は小説だ。生々しい事実を書くより、多少現実離れしていても面白い方が正義なんだろ?そういう意味じゃ、上出来だと思うがな」

リーリエ「そ、そうですか?それは嬉しいですけど……」

ミヅキ「やっぱり、気になっちゃう?」

リーリエ「……はい。書いている時は無我夢中で分からなかったんですけど、後から見直す余裕が出てくると、なんだか独りよがりな内容だなって」

グリーン「だから、もう少し現実に寄り添いたいってわけか」

リーリエ「はい。だから……男の人がどんな風に女性を見たり、好きになったりするか……教えて頂けませんか?」

グリーン「……だってよ、レッド」

レッド「…………」

ミヅキ「……レッドさん?」

レッド「…………」チョイチョイ

リーリエ「えっ?パソコンをお貸しすればいいんですか?」

レッド「…………」コクリ

リーリエ「わ、分かりました……どうぞ」

レッド「…………」カタカタ

グリーン(……へぇ、自分で書いて手本を示す気か。どんな文を書くつもりだ?)

レッド「…………」カタカタ
 ▼ 23 WZienuer1k 18/11/10 14:18:21 ID:Oh0QCXdM [19/34] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


ねっとりと舌を絡め、唇を離せば、二人の間に淫靡な銀糸がしたり落ちる。

そのまま僕は彼女の背を服越しに撫ぜ、ゆっくりと、女の本能を引き摺り出していく。

耳に舌を這わせ、首筋をなぞってやれば、サクラは声を押し殺して僕の胸に己の躰をこすりつけた。

まるで誘うかのようにくねる腰をがっつり掴むと、僕は耳の穴に流し込むように囁いた。

「まだ何もしてないのに……気持ちいいの?」

返事はない。

代わりに、ぴくりと震える肩が全てを物語っていた。

その拍子に柔らかな胸がむっちりと押し付けられ、僕も思わず喉を鳴らす。

僕は薄いシャツの下に手を入れ、絹のような柔肌を堪能しながら、手をショーツの中へ……
 ▼ 24 WZienuer1k 18/11/10 14:19:58 ID:Oh0QCXdM [20/34] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


グリーン「やめないか!」バチイイン

レッド「!!」

グリーンの平手打ちが レッドに直撃する!▼

リーリエ「あ、あの、レッドさん!?一体何を!?」

グリーン「悪いな、お子様には見せられないような破廉恥な文章を書いてやがった」

レッド「…………」←親父にもぶたれたこと無いのに!という顔

ミヅキ「は、破廉恥って……一体何を書いたの……?」

グリーン「と、まあ。男ってのはな、このレットのようにすけべでどうしようもない生き物なんだよ。だから、気持ちが満たされるってのもなくはないが……表情よりも、肉体的な魅力に引っ張られるところはある」

リーリエ「な、なるほど……だから男性作家の恋愛小説は淡白な感じがするんですね」

グリーン「淡白かどうかは知らないが、女性よりも肉体的な繋がりが大事だからな。小説だと精神面よりいやらしい方に力が入るのはあるかもしれないぜ」

リーリエ「……肉体的な魅力、ですか」

グリーン「ああ。女性の身体ってのは、多分女性本人が思ってるより男には魅力的に映ってるもんなんだぜ」

レッド「……!」←すごく同意してる

リーリエ「なるほど……ちょっと大人な話ですが、とても勉強になります」

グリーン「そうか。なら良いんだが……一応言っておくが、って、なんだよレッド」

レッド「…………」チョイチョイ

グリーン「……リベンジか?」

レッド「…………」コクリ 

リーリエ「あ、はい。じゃあワープロ使ってください」

レッド「♪」

グリーン「……今度変なこと書いたらその瞼縫い合わすぞ」

レッド「…………」
 ▼ 25 WZienuer1k 18/11/10 14:21:09 ID:Oh0QCXdM [21/34] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


男女の濃密な空気に、二人の息は次第に上がっていく。

「はあっ、はあっ……」

しっとりと汗ばんだ肌を、男の舌と手が這う。

柔らかな膨らみを無造作に掴むと、女はたまらないと言った様子で甘い声を上げ、腰を押し付けると秘めやかな花園に……
 ▼ 26 WZienuer1k 18/11/10 14:22:49 ID:Oh0QCXdM [22/34] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


グリーン「やめないか!」バチイイイン

レッド「!!!」

グリーンの平手打ちが レッドに直撃する!▼

レッド「!!!!」←怒りのアフガン

グリーン「お前!言ったそばから何書いてんだよ!てか書くの早いな!?」

リーリエ「で、でもすごい速筆……一瞬で文章がこんなに……」

グリーン「お、おいリーリエ!読んじゃ駄目だぞ!あとレッドは暴れるんじゃない!埃が立つぞ!」

ミヅキ「リーリエ、グリーンさんも言ってるし削除しよ?」

リーリエ「あ、は、はい!すみませんでした!」カチカチッ

レッド「……ハァ、ハァ」

グリーン「……ふぅ。まあ、こいつのせいで何話そうとしたかは忘れたが、とにかくリーリエ。全部だとやり過ぎたが、もう少し容姿の方に目がいく描写を増やすとそれっぽくなるぞ」

リーリエ「はい、分かりました。そういう方向性で修正しておきますね」

グリーン「ま、男も女も同じ人間だ。多少差異はあっても、幸せを感じるのは変わらないだろう」

リーリエ「やっぱり……そういうものですか?」

グリーン「ああ。恋愛も色々あるけどよ……結局、好きな奴が幸せならそれで十分幸せなんだ。単純じゃないけど、難しいことじゃないぜ」

リーリエ「!」

ミヅキ「グリーンさん……」

レッド「…………」
 ▼ 27 WZienuer1k 18/11/10 14:24:08 ID:Oh0QCXdM [23/34] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
グリーン「しかし、顔を忘れた少女との再会を求め戻った故郷で、見知らぬ女性と恋に落ちる。約束の場所へ向かったら、恋に落ちた女性こそがあの日の少女だった……か」

レッド「…………」

グリーン「随分王道な展開なんだな。ま、これくらいベタだと逆に潔くて俺は好きだぜ」

リーリエ「そ、そうですか?ありがとうございます……」

グリーン「……でもさ、仮にサクラが約束した女の子じゃなくても、絶対勘違いするよな」

リーリエ「勘違い、ですか?」

レッド「…………」コクリ

グリーン「ああ。約束した相手が分からない上に、謎の女性と偶然仲が深まるときた。俺なら絶対、彼女があの日の少女だと誤解するだろうね」

ミヅキ「それは……どういうことですか?」

グリーン「単純な話さ。男って生き物は、好きな女を運命と思いたくなるのさ」

リーリエ「……運命、ですか」

レッド「…………」←何言ってんだこいつ、という顔

グリーン「ああ。特別な人は、特別な存在だと思いたいんだよ。ロマンってやつだよ」

リーリエ「ロマン……」

ミヅキ「なんだか、深いですね……私、全然話についていけないです」

グリーン「付いて行けなくて良いんだよ。それもミヅキの良さだからな」

ミヅキ「……えっ?」

リーリエ「…………」

リーリエ(何度か思い浮かんだけど、結局形にならなかった展開がある)

リーリエ(王道から外れて面白いと思ったけど、自分の中で展開が繋がらず書き起こす事ができなかった)」

グリーン「……ん」

リーリエ(もし、主人公が勘違いをしていたら)

リーリエ「……もし、サクラがあの日の少女じゃなかったら」

レッド「……?」

リーリエ(今の私なら……それが書ける気がする)

ミヅキ「……リーリエ?」

リーリエ「ごめんなさい、レッドさん、グリーンさん!ミヅキさん!お先に帰りますね!」

ミヅキ「え、えっ!?どうしたのいきなり」

リーリエ「……小説を、書き直すんです」

リーリエ「一から、全部!」
 ▼ 28 WZienuer1k 18/11/10 14:24:43 ID:Oh0QCXdM [24/34] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告



──2月14日。約束の日が、訪れた。


 ▼ 29 WZienuer1k 18/11/10 14:26:10 ID:Oh0QCXdM [25/34] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


〜エーテルパラダイス1F〜

リーリエ「…………」

グラジオ「……お前も、ここに来ていたのか」

リーリエ「兄様……」

グラジオ「確か、今日が発表なんだっけか。バレンタイン小説大賞」
リーリエ「はい。まあ……期待はしてませんが。それより、兄様こそバレンタインデーの告白はどうだったんですか?」

グラジオ「邪魔が入ったが、プレゼントは渡せたから問題ない。どちらにせよ……本格的な告白は、明日するつもりだったからな」

リーリエ「えっ?邪魔が入ったんですか?」

グラジオ「ああ。ミヅキの父親に会った」

リーリエ「……ミヅキさんの、お父様に?」

グラジオ「そうだ。どうもアローラに来ていたみたいでな。道に迷っているところでオレ達を見つけたらしい」

リーリエ「そんな事が……あの、ミヅキさんのお父様ってどんな方でしたか?」

グラジオ「目元がそっくりだった。真っ直ぐに見つめてくるところが瓜二つで……少し、笑いそうになったな」

リーリエ「へぇ、ミヅキさんのお父様……私もお会いしたいですね」

グラジオ「…………」

リーリエ「……ん?兄様?」

グラジオ「……結局、内容はどうなったんだ」

リーリエ「えっ?」

グラジオ「小説だよ。あれから色々、お前の仕事を肩代わりしてやったんだ。知る義理はあるだろ」

リーリエ「そうですね……中盤まではあまり変わりませんね。主人公のナツミとヒロインのサクラが和菓子屋さんで出会って、ポケモン達の仲がいいのをきっかけに、約束の日まで仲を深めていくんです」

グラジオ「中盤までは、と言うことは終盤は変わったのか?」

リーリエ「はい。やっぱり、サクラが約束を交わしたあの少女ではない、という展開に変えました」

グラジオ「……ほう、思い切ったな」

リーリエ「中盤以前の修正は、その辺りの調整ですね。サクラをナツミより年下にしたり、サクラの人間関係を変更したりしました」

グラジオ「で、終盤は?」

リーリエ「それは……」
 ▼ 30 WZienuer1k 18/11/10 14:27:17 ID:Oh0QCXdM [26/34] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告



冬の太陽が空の天辺で大地を照らす中、ぼくは約束の場所で一人佇んでいた。

昨日から緊張でなかなか眠れず、早く来すぎてしまった。

日の入りが早い冬とはいえ、彼女が来るであろう時間までは大分時間があった。

他の場所で時間を潰そうか、そう思って別の場所に行こうとした時、人影が現れた。

それは、心のどこかで来る事を望んでいた人だった。

「君は……」

サクラはぼくを見ると、一瞬だけ目を丸くしたが、瞬きすればまたいつもの笑顔に戻っていた。

「……やっぱり、ナツミさんだったんですね」

どこか納得したような様子で、サクラはぼくに近付いていく。

まさか、サクラがあの日の……そう思った時だった。

「先に断っておきます。私は……十年前なナツミさんと約束した、あの少女ではありません」

その言葉に、ぼくは思ったより驚かなかった。

当然の事である。彼女はぼぬより4つほど年下で、十年前はまだ6歳。約束を交わした少女は、そんなに幼い少女ではなかったはずだ。

残念に思う義理なんてない。

ぼくが勝手に、サクラの中に彼女の面影を見出そうとしていただけに過ぎなかったのだ。

 ▼ 31 WZienuer1k 18/11/10 14:27:35 ID:Oh0QCXdM [27/34] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告

リーリエ「ナツミは、サクラと付き合っていくにつれて、彼女があの日の少女じゃないかと思うようになっていたんです。でも……」

グラジオ「違うと言われ、夢から醒めた。そういう事か」

リーリエ「……はい、そんな感じです。ナツミは傷付くのではなく、現実に戻るんです」
 ▼ 32 WZienuer1k 18/11/10 14:27:54 ID:Oh0QCXdM [28/34] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


ただ、ぼくは疑問に思った。

あの少女ではないのに、何故サクラがぼくと彼女の約束を知っているのか。

「それじゃあ……何で君がここに?」

ぼくがそう尋ねると、サクラは意を決したように目を伏せた。いつになく、神妙な顔つきだった。

「……先輩に、頼まれたんです」

サクラが、遠い空を見つめる。

「もし約束の日まで生きられなかったら、貴女が私の代わりに全てを話してって」

冬の空気が、息を止めた気がした。

 ▼ 33 WZienuer1k 18/11/10 14:30:11 ID:Oh0QCXdM [29/34] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告

リーリエ「そして、サクラから約束の少女が虚弱体質だった事。大人になって元気になったら一緒に旅をしたいと思っていたこと……サクラにとっては自分の先輩だったけど、先月子供を産み落とした時に死んだ事が語られるんです」

グラジオ「急展開なんだな」

リーリエ「一応伏線や描写は徹底的に計算しましたから、その辺は大丈夫だと思います」

グラジオ「そうか。まあ、お前のことだ。」

リーリエ「ラストは、サクラが『別れ際に、バレンタインデーのチョコをあげたかった』という先輩の願いを叶えるために、ナツミと手作りのチョコレートを分け合うんです。勿論……自分の想いを伝えるため、もあるのでしょうけど」

グラジオ「チョコレート?」

リーリエ「はい。カントーやジョウトのバレンタインは、女性が男性にチョコレートをあげるのが主流なのだそうです。まあ、アローラのように仲のいい友達にあげることも多いそうですけどね」

グラジオ「なるほどな……バレンタイン小説らしいラストシーンだが、二人はどうなるんだ?」

リーリエ「…………」

グラジオ「……リーリエ?」

リーリエ「……兄様は、小さい頃に父様と食べたチョコを覚えていますか?」
 ▼ 34 WZienuer1k 18/11/10 14:32:13 ID:Oh0QCXdM [30/34] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告

グラジオ「ああ。随分懐かしい話をするんだな……大きくなってから分かったが、かなり高級なチョコレートだったよな」

リーリエ「実は、私が欲しかった賞品は……そのブランドのチョコレート一ヶ月分なんです」

グラジオ「……チョコレートが欲しかったのか?」

リーリエ「はい。あのブランドは、バレンタインデーの時にしかチョコレートを作っていないから……滅多に手に入る代物じゃありません。だから、沢山手に入れるならどうしても大賞を取るしかなかったんです」

グラジオ「だが、一ヶ月分のチョコレートをどうするつもりなんだ?一人で食べきれないだろう」

リーリエ「まさか。皆さんに配るつもりだったんです。最初は……今までお世話になってきた人にステキなチョコレートを贈りたい。そう思っていました」

グラジオ「今は、違うという事か」

リーリエ「はい。小説を書いていて……気付いたんです。今こうして文章を書けるのは、偏に本を沢山読んできたからだけじゃないんです。色んな人と話して、色んな人を知り……それが、登場人物や世界観として生きていく。私が小説を書ききれたのは、私の力だけではなく……今まで自分の人生に関わってきた人達が糧となっているんだって」

グラジオ「……そうか」

リーリエ「仮に私が賞を取れたら、それは私だけの賞ではなく、皆で勝ち取った賞なんです。だから、その賞品を皆で分かち合いたいと思っているんです」

グラジオ「フッ……青臭いな」
 ▼ 35 WZienuer1k 18/11/10 14:33:01 ID:Oh0QCXdM [31/34] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告

リーリエ「…………」

グラジオ「…………」

リーリエ「思えば……ほしぐもちゃんとの旅では、本当に、色んな人に会いました」

グラジオ「そうか……」

リーリエ「人はそれぞれ、皆違うんです。だから、何が幸せなのか。何がゴールなのかもきっと違うと思います」

グラジオ「……そうだな」

リーリエ「結ばれることが幸せなのか、過去に区切りをつけられたのが幸せなのか。結婚を至高とするのか、それとも……一時の温もりしか望まないのか」

グラジオ「…………」

リーリエ「だから、ラストは敢えて決めなかったんです。彼らが幸せである事は確かだけど、後は読者の受け取り方に任せることにしました」

グラジオ「人の幸せや愛情に、答えなどない、ということか……」

リーリエ「……ごめんなさい。物語としては、少し不十分だったでしょうか」

グラジオ「いや、悪くない答えだ。なんというか……人間臭くてオレは好きだ」

リーリエ「えへ……ありがとうございます」

グラジオ「……きっといい結果が出るさ」

リーリエ「そうでしょうか」

グラジオ「ああ。お前の物語は、きっと独りよがりなものではない。皆の事をしっかりと考えている。文字は人を写す鏡。読み手にも……それが伝わるはずだ」

リーリエ「兄様……」
 ▼ 36 WZienuer1k 18/11/10 14:33:36 ID:Oh0QCXdM [32/34] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告

グラジオ「……そういえば、作品のタイトルを聞いていなかったな。なんて言うんだ?」

リーリエ「えっとですね……あ、通知が来てる」

グラジオ「ん?」

リーリエ「少し待ってくださいね……ハッ」


リーリエは 携帯電話を開いた▼


リーリエ「…………」

グラジオ「……?」

リーリエ「はああああっ!!」

グラジオ「……リーリエ?どうした」

リーリエ「兄様!見てください!これ!これ!!」

グラジオ「ん……?」
 ▼ 37 WZienuer1k 18/11/10 14:33:59 ID:Oh0QCXdM [33/34] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告



▼アローラの空は、綺麗なあかねいろに染まっていた


 ▼ 38 WZienuer1k 18/11/10 14:35:59 ID:Oh0QCXdM [34/34] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
僭越ながら◆SSSSSSSS2s様に代わって続きを書かせて頂きました。乱文によるお目汚し、失礼致しました。
 ▼ 39 tgqAAlSPpw 18/11/10 19:53:55 ID:csbk9C6Q NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
なにこれめっちゃ素敵
書き上げてくださってありがとうございます!
 ▼ 40 ザンドラ@にじいろのはな 18/11/12 16:39:02 ID:9.PcoZvA NGネーム登録 NGID登録 報告
乙!
 ▼ 41 トラポット◆Pcf6Vw29GM 18/11/14 19:32:25 ID:XNjM8V9s NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙です!
小説の書き出しにするって発想がすごいなぁ
雑ですが挿絵(?)描かせてもらったので上げます
このシーンが特に好きですね
 ▼ 42 WZienuer1k 18/11/14 21:49:11 ID:nbSc6YzY NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
>>39
こちらこそ、素敵な一レス目の続きを書かせて頂けた事を光栄に思っております。ありがとうございます

>>41
他の作品に引き続き、素敵な挿絵を頂き誠に有難うございます。テトラポット様には心から感謝の意を申し上げます。
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