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【スワップSS】少年の冒険

 ▼ 1 めつのねがい◆5oP7VYU6fg 18/10/22 15:33:24 ID:Z1dghVhg [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
家から自転車で10分ほどのご近所にある大洞窟。


その洞窟の中は、夏の放課後に半袖で訪れるには少し肌寒く。音も光もない新月の夜を演出していた。

まだ立ち漕ぎもままならない頃、初めて自転車にのって遠出したあの日の自分にとって、そこはあまりに不安で恐ろしい空間。

何者の侵入も許さぬ一本道を列車とともに駆ける。頭上から響くそれを僕らは、洞窟の奥に棲む怪物の鳴き声と錯覚した。


── カラカランッ ──木の葉の足音が聞こえれば、風とともに思い出が吹き込む。


「よーし! 準備オッケー!」

冒険への入口となるのは高架下の陰。
そこに立つのは一人の少年と、二匹のポケモンで構成される幼い探検隊。

彼らは冒険のリハーサル中だ。
"敵を知ることが勝利への近道"。冒険を成功させるために擬似的な夜を体験している。

夜は子ども一人での外出を許されない。
僕らは夜の世界を、通学路を、なにも知らなかった。


だから行くのだ。
知られざる世界を、そこにある謎を暴くため……!
少年たちは夜に立ち向かう!


── これは、ある夏の小さくて大きな冒険 ──
 ▼ 2 めつのねがい◆5oP7VYU6fg 18/10/22 15:45:36 ID:Z1dghVhg [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


このSSはこちらの企画に参加しています
http://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=897810
二レス目以降はシャッフルした別の方が書きます。

 ▼ 3 VRAQyUbsp6 18/10/24 23:42:34 ID:L2XIuM/2 NGネーム登録 NGID登録 報告
続き任されたよー
出だしポケモン要素ほぼ皆無の小説で、ちと焦ってます
1レスの意向無視上等で続き書くんでみてねー
 ▼ 4 VRAQyUbsp6 18/10/25 21:00:46 ID:lrzARPsw [1/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
レオ「えっ...夏休みの宿題...?」

小学校に通っているオレ。名前はレオという。
明日から夏休み...宿題があるなんてのは常識中の常識。
...だから、知らなかったとは言えない。

レオ「あぁ!あれだよなアレ!...クイズ、アレとはなーんだ?」

友「なんで俺から聞いたのに聞き返されてるんだよー。答えは自由研究でしょ?」

レオ「せ、せーかい!」

...らしい。
男子は単純、知ってることは答えたくなるのだ。

レオ「自由研究...何をすれば」

友「それもクイズ?テーマは[ポケモンとの思い出]でしょ?」

レオ「おぉ!よく知ってるねー」

聞いてもないのに答えてくれた!
やっぱ持つべきは「友」か!

...あまのじゃくだな、オレ。
 ▼ 5 VRAQyUbsp6 18/10/25 21:14:11 ID:lrzARPsw [2/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「友」という名の友達と別れ、一人で帰路につく。

まぁ、ここまでの適当を見れば分かるが、仲のいい友達というのはいない。

クラスメート全員とそこそこ喋れて、溶け込める。
ただそれだけで、相手の心の領域には入らないし、自分の領域にも入れない。

そんな付かず離れずが得意なオレ。
実際、人間関係はそんなもんでいい...小学生ながらひねくれた考えを持っていた。

あまのじゃくを自負しているし、直す気もない。

そんなぼっちとも言える人間の夏休みは楽しいものだろうか、そう思うだろう。

案外、楽しみがあるんだ。こんなオレでも。

レオ「自由...研究...!」


そう、ポケモンが一緒だから。
 ▼ 6 VRAQyUbsp6 18/10/25 21:28:23 ID:lrzARPsw [3/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
レオ「ポケモンとの思い出ねぇ...」

家に着き、一息つく。

夏休みの宿題。今回は、オレに嫌な印象を与えなかった。

要は、ポケモンと遊んでればいいんだろ?それを後で研究っぽくまとめれば、一丁あがり。

簡単な宿題だ。

そして、案はすでに決めていた。



レオ「オカルト探し...!!」
 ▼ 7 VRAQyUbsp6 18/10/25 21:41:24 ID:lrzARPsw [4/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
突然だが、オレが好きなのはポケモンだ。特にオレの相棒二匹。

そして次に、謎だ。 気になることは片っ端から首を突っ込むタイプ。

「身近に眠る闇ー君のちかくにオカルトー」

なんて本を読んじゃったからか。今モーレツにオカルトに興味が湧いている。

しかもどういうわけか、この本はこの町周辺の謎ばかり取り上げている。

都合いい?うさんくさい?
そんなの、行ってみなきゃ分からないさ。

レオ「てことで...」

相棒にも教えよう。夏休みは...オカルト探しだ!

レオ「出てこい!」

ポン!
 ▼ 8 VRAQyUbsp6 18/10/25 22:07:47 ID:lrzARPsw [5/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
イーブイ「ぶぅー!」

イーブイ「ふぃー!」

レオ「ただいま!イーブイたち!」

オレの相棒、イーブイの二匹だ!

...分かりにくい?んなわけあるか。

オレは物心ついた時からコイツらと一緒にいる。兄弟だが、見分けるくらい簡単だ。

二匹とも大好きだからな。

...それでも分からない?じゃあ...特徴は鳴き声、「ぶぅ」と鳴くのが兄、「ふぃー」と鳴くのが弟だ。

イーブイ兄「ぶぅー」

イーブイ弟「ふぃー」

とすれば分かりやすいか?
 ▼ 9 VRAQyUbsp6 18/10/25 22:46:04 ID:lrzARPsw [6/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
とにかくだ!

レオ「イーブイ、これから夏休みは...オカルト探しだ。」

イーブイ兄「ぶぅ!」

レオ「さっそく明日から動くぞぉ。...そーだな。近所にある謎の大洞窟!ここのオカルトに迫る!」

イーブイ弟「ふぃー」

レオ「いいか、オレたちは...これから探検隊として活動する!イーブイ隊員、心するように!」

イーブイ兄「ぶぅーぶぅー!」

イーブイ弟「ふぃーふぃー」


...兄はブーイング、弟は話を聞いてない風にきこえてるが、了承してくれたらしい。
...してくれたことにしないと困る。
 ▼ 10 ゲハント@マゴのみ 18/10/27 14:46:11 ID:vsVsBjJ2 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
近所にある大洞窟の謎。これは以下の通りである。


ーその大洞窟、奥に進むにつれ少女の悲鳴が。そして奥にたどり着いたら...ー


読んで分かるように、女のお化けだ。
何故これを選んだかというと...日中に行けるからである。

このオカルト本を読んで見ると、ほとんど夜に現象が起こる。
もちろんひねくれながら小学生であるオレは...そう簡単に夜に出れない。

そこで、洞窟は暗いからか
夜縛りがないため、チャレンジ可能なのだ。
 ▼ 11 VRAQyUbsp6 18/10/27 15:10:11 ID:vsVsBjJ2 [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
レオ「楽しみだな...」

お化けはいようがいまいが、怖くない。
むしろいたら、お化けをビビらせたいくらいだ。
つくづく、あまのじゃくである。

レオ「よし、明日に備えて今日はね...」

ママ「レオー!ごはんよー!」

レオ「...はいはい」

渋々リビングに行った後、お腹が鳴ったのは内緒だ。
 ▼ 12 VRAQyUbsp6 18/10/27 16:13:49 ID:TfAwaDE2 [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
ー次の日ー

レオ「よーし!」

朝9時、学校より遅く起きるという夏休みの醍醐味を堪能しつつ、早めに起きて準備した。

レオ「いくぞ!イーブイたち!」

イーブイ兄弟「ぶぅー!(ふぃー)」

ポンッと勢いよく出て、答える。
コンディションもバッチリだ。


レオ「ママー、いってくるー」

ママ「ちょっとレオー、お昼には帰ってくるのー?」

レオ「うーん、わかんなーい。はやくかえるよー!」ガチャン


ママ「レオー!...たくもう。仕方ない子なんだから」
 ▼ 13 VRAQyUbsp6 18/10/27 18:14:30 ID:TfAwaDE2 [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
レオ「よし!乗れよ!」

新品同様であるピッかピかの自転車に跨がる。
実は、最近まで自転車に乗れなかった。
それが悔しくて、猛練習したんだっけ。

イーブイ兄「ぶぅ!」
イーブイ弟「...。ふぃー」

兄が前カゴ、弟は荷台に乗っかる。
...弟よ、荷台は辛かろう。兄に先に取られたのは分かるけど...不憫すぎる。
というか、兄がずぶといんだよなー。

レオ「...行くか」

意外な兄弟関係を見たとこで、自転車をこぎだした。

今度こそ、出発だ。
 ▼ 14 VRAQyUbsp6 18/10/27 18:18:22 ID:TfAwaDE2 [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
(もし失踪したら誰か書く人いる?)
 ▼ 15 VRAQyUbsp6 18/10/30 19:36:21 ID:CqPsNuvY NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
スワップ先の者ですが失踪しまーす
モチベ持たんかった
一応言うと、ポケコロを意識したストーリーにするつもりでした

続き書く人いるか分からんが、後は頼んだ
 ▼ 16 dr9zmlhZrM 18/10/31 23:15:37 ID:gF4waL5Q [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
七月の終わり。

夏真っ盛りの快晴。

陽を反り返すアスファルトが、みるみる後方へ滑っていく。

頬を撫でる湿った風と、鋭い針みたいな日差しの中を、めいっぱい上げたギアで駆けていった。

絶好の探検日和だ。
 ▼ 17 リ違えました◆9SheepC5C6 18/10/31 23:32:02 ID:gF4waL5Q [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「しっかり掴まってろよ!」

前後の二匹にそう言った後、運転を立ち漕ぎに切り替えて、上り坂に突入した。

左右交互に車体を揺らしながら、青空に向かって駆け上がる。

「ぶぅ」

「ふぃー」

「ぶぅ」

「ふぃー」

前後からも、揺れるたびに声が上がった。


やがて坂を上り切り、息を吸うために顔を上げると、目の前に広大な世界が現れた。

ずっと向こうに見える山々の上から入道雲がこちらを覗いている。

その景色にしばらく見とれた後、今度は下り坂を降りていった。
 ▼ 18 9SheepC5C6 18/11/04 23:55:22 ID:xcMYRlcM [1/12] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
通いなれた道を進み、並木道の公園を横切って、鳴り出した踏切を駆け抜ける。

10分ほどかけて、目的の場所へ到着した。


高架下の暗闇。ひたひたと湿った空気の流れる場所に、ぽっかりと口を開ける洞窟がある。

頭上を東西に走る線路は、僕が降りてきた丘の南側に隣接していた。

その丘の内部へ潜るように、舗装されたコンクリートの壁の途切れ目から、緩い傾斜が現れるのだ。


路肩に自転車を止めて、タイヤに鍵をかけた。

背中からしよっていた荷物を降ろし、中をよく確認する。

懐中電灯、替えの電池、ハンカチ、ティッシュ、水筒、おやつ、二匹のボール、絆創膏……。

忘れ物はない。


「よーし! 準備オッケー!」


そう言って僕は二匹と頷きあい、洞窟の入り口へ顔を向けた。
 ▼ 19 9SheepC5C6 18/11/04 23:55:59 ID:xcMYRlcM [2/12] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
入り口の高さはオレの身長より少し高いくらい。

横幅は、オレとイーブイたちが横に並んでちょうど通れるくらいだ。

正直、どうしてこんなものが何の手も加えられずに置いてあるのかは疑問だけれど、まあいいだろう。


日当たりの悪い丘の陰。

入り口から十歩も入れば、もうそこは暗闇だ。

懐中電灯のスイッチを入れる。


「じゃ、行くか……」

ごくりと生唾を飲み込んで、俺がそうつぶやいた途端、「ぶぅ!」という声とともにイーブイ兄が洞窟へ入っていった。

「ふぃー!」と、慌てた様子の弟もそれに続く。

「あ、おい! 待てよ!」

オレの声が、奥の方で反響して聞こえた。
 ▼ 20 9SheepC5C6 18/11/04 23:56:30 ID:xcMYRlcM [3/12] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
懐中電灯の光へ向かって追いかけっこを始めた二匹を追うように、緩やかな坂道を駆け降り、薄寒い洞窟へ侵入した。

「待ってって!」

ポケモンの足に追いつくのは、そう容易いことではない。

僕がもたもたとしている間に、二匹はどんどん洞窟の奥へと進んでいく。

暗闇ではぐれては大変だ。

僕は二匹を見失わないよう、必死に二匹の背を見つめて走った。


「待ってよ!」

その背中に向けて大声で叫ぶと、ひときわ大きな反響が岩壁にこだます。

すると次の瞬間、前を走る二匹が不意に足を止めたのだ。

あれ、止まってくれたのかな。と思いながら、走り続けて二匹に近づく。

どちらともその場所で、あたりをきょろきょろと見まわしていた。


「おーい。二匹とも」

どうしたのか。と、尋ねようとしたそのときだ。

僕の鼓膜を、不気味な音が震わせていった。
 ▼ 21 9SheepC5C6 18/11/04 23:56:59 ID:xcMYRlcM [4/12] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
キィキィ……キャキャァ……。


「な、なんだこの音……?」

頭上から聞こえてきたその音に、追いついたオレも立ち止まる。

"少女の悲鳴"

オカルト本に書いてあったあの文句が、オレの脳裏をよぎる。


たしかに、聞きようによっては幼い女の子の悲鳴のようにも聞こえるが……、

「でもこれ、上の線路の音だよな……」


金属の擦れ合う、あの不愉快で気味の悪い音。

それが僅かながら、この洞窟内にも聞こえてきているのだ。

高架下の洞窟なのだから、当然と言えば当然だけれど。

「なんだ。オカルトの正体はこれだったのか」


とくせい"きけんよち"の兄が、この音を聞いて足を止め、後ろから来た弟もそれを察知して急停止したのだろう。

二匹とも上を見上げて、怪訝な顔つきをしていた。


「大丈夫。これは電車の音だから、バケモノの悲鳴なんかじゃない」

オレはそう言って、二匹に諭す。

「ぶぅ……?」

兄はまだ少し不安なようだったが、弟が「ふぃー!」と、これ見よがしに兄を追い抜いて走り出すと、それを追うようにまた洞窟の奥へと駆けて行ってしまった。
 ▼ 22 9SheepC5C6 18/11/04 23:57:29 ID:xcMYRlcM [5/12] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「あんまり離れて行かないでよー」

あの音を聞いて多少は慎重になったのか、二匹ともだんだん落ち着いてきてはいたが、それでもずんずんと僕の前を進んでいく。

あれからしばらく歩き続けた。

洞窟は深くなるほど広がっているようだった。

天井も、入り口近くに比べて高くなっている。

道は曲がりくねって続いてはいたが、特に分かれ道などもなく、足元にさえ気を付ければ歩き続けられそうだ。

僕は自分がわくわくし始めていることに気が付いた。

初めは恐ろしかった暗くて広いこの世界も、闇に慣れて何も無いと分かってしまえば、後に残るのは謎に対する好奇心だけだ。


幾分軽くなった気持ちで、二匹の方を見る。

二匹はちょうど、並んで角を右に消えていくところだった。

早く追いつこうと思った僕が、大股の一歩を踏み出そうとしたその時、前方から驚いたような鳴き声が聞こえてきた。
 ▼ 23 9SheepC5C6 18/11/04 23:57:58 ID:xcMYRlcM [6/12] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ふぃー! ふぃー!」

とくせい"にげあし"の弟イーブイが、声を響かせながらオレの方へ走ってくる。

「ど、どうしたんだよっ」

オレの腕に飛び込んできた弟に尋ねるたが、「ふぃーふぃー」と目を瞑って震えているだけだった。

何かに相当驚いたらしい。


「おい、何があったんだ」

俺が困惑していると、続いて兄イーブイの方が、暗闇から姿を現した。

「ぶぅ! ぶぅぶぅ!」

毛を逆立てながら、しきりにオレに吠えている。

何かを伝えたいようだった。


この先に何かが在る。……いや、居る?

分からない。引き返すべきだろうか。

オレは、弟イーブイを抱きかかえたときに天井を向いてしまっていた懐中電灯を、再度洞窟の奥の方へと向け直す。


と、その瞬間、奥へ向けた懐中電灯の光が、あるものを映し出してしまった。

緑色の丸い頭に大きくて黒い瞳。

黄色いくちばしがあって、体にはカラフルな模様が描かれている。

オレがそこまで認識したところで、そいつは急に強い光を放ち始めた。


「うわぁっ!」「ぶぅ!」「ふぃぃー!」

眩しくて目を瞑ったが、すでに何かされたらしい。

地面がぐにゃりと沈む感覚に襲われた。


「トゥートゥー」

という鳴き声が反響しているのを聞きながら、オレの意識は闇に飲まれていった。
 ▼ 24 9SheepC5C6 18/11/04 23:58:24 ID:xcMYRlcM [7/12] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
────



薄暗い闇の中を、右に左にずんずんと進んでいた。

隣を歩くポケモンと、後ろから届く光とが、安心感を確かなものにしているように感じられる。

そのひんやりと湿った洞窟は、飛び回れそうなほど広かった。

ただひたすらに右往左往を繰り返しながら、さらなる深部を目指す。

岐路のない大洞窟は、幾度曲がってもその表情を変えなかった。

それでも何かに突き動かされるように、奥へ奥へと翼をはためかせる。


ふと、視界の端に色を感じた気がした。

前を見ると、前方右手に闇が見える。

その角を曲がった先に見た景色に、私は意図せず声をあげてしまった。
 ▼ 25 9SheepC5C6 18/11/04 23:58:39 ID:xcMYRlcM [8/12] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
そこは、切り立った崖の上のようにも思える、ある空間への入り口だった。

……入り口というより、窓といった方が相応しいかもしれない。

道が急にそこで途切れ、不思議な光景が出現するのだ。


見えたのは、目を疑うほどに巨大な地下空間。

その広大な闇の中に、散りばめられて輝く大小彩色さまざまな光。

まるで高層ビルから眺める街の夜景のようだった。

本来上空にあるはずの星空が、眼下にどこまでも広がっているような、そんな景色だ。


その光たち以外の闇の部分にも、よく見れば立体的な輪郭があるのが分かる。

どれも真っ黒なことを除けば、四角い影、三角の陰、高い影、低い影。と、これもまた統一感がない。

それは本当に、真っ黒いビル群、或いは住宅街のようにも思え、あるときオカルト本で読んだような、地下文明や古代都市を彷彿とさせた。

信じられない話だが、向こうの方には地平線が見える。

左を見ても右を見ても、その空洞に壁は見えなかった。

街一つが、そっくりそのまま地下に埋没してしまったかのような、現実離れした光景がどこまでもどこまでも続いていたのだ。



────
 ▼ 26 9SheepC5C6 18/11/04 23:58:54 ID:xcMYRlcM [9/12] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
────


「ぶぅ!」「ふぃー!」

「ぐえっ」


突如腹部で生じた圧迫感に驚いて目を開ける。

オレは仰向けで横になって、洞窟の天井を見上げいた。

お腹の上で、イーブイたちが神妙な顔をしているのも見えた。

ハッとして上体を起こす。

「オレ、寝てたっ?」

イーブイたちは、首を横には振らなかった。


マズい。

どのくらいの間寝ていたのだろう。

洞窟の中では時間も分からない。

時計があったとしても、予期せぬ失神に遭ったのでは、針の指す時間を信用はできない。


とにかく、一度洞窟を出なくては。


先ほどのポケモン、あれはたしか"ネイティオ"というポケモンだった。

急に目の前に現れて、正直恐ろしさを覚えたし、どうしてこんな場所にという謎も残る。

それから、さっき夢の中で見たあの景色。

あれはいったい何だったのだろうか。


……がしかし、オレの家にはもっと恐ろしいものがいる。

怒ったママだ。心配を一寸でもかけようものなら、金輪際この洞窟へ通うことは敵わなくなってしまうだろう。


そんなわけだからオレは、ここまで歩いてきた坂道を、イーブイたちとともに駆け上がっていった。
 ▼ 27 9SheepC5C6 18/11/04 23:59:14 ID:xcMYRlcM [10/12] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
キィィ……キャァ……キィィ……

登るににつれて大きくなるあの音と、徐々に狭くなっていく洞窟が、出口の近さを教えてくれる。

最後の角を回ると、坂の上の方に出口が見えた。


そこから見える外の世界は、相変わらず薄暗かったが、夜の暗さというにはまだ明るいようだった。


勢いよく飛び出ると、湿った暖かさに鼻を撫でられる。

留めていた自転車は路肩にちゃんと置いてあった。

空を見上げる。

太陽は、丘の真上に浮かんで見えた。


「もう昼か」


朝から洞窟へ入って、出てきたのは正午ごろ。

体感ではもっと長い間居たようにも思えたが、時間としておかしいことはないだろう。


とにかく、早く帰らなくては。


僕は自転車のカギを外し、帰路を勢いよく漕ぎ出した。
 ▼ 28 9SheepC5C6 18/11/04 23:59:33 ID:xcMYRlcM [11/12] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ふぃー!」

「ぶぅ」

「ふぃー!」

「ぶぅ」


行きとはとは逆の順番に、揺れに合わせた声があがる。

弟よ、今度は前カゴを獲ることができたのだな。


鳴り終わった踏切を抜け、公園を横切り、帰りなれた道を進み、丘を登ってまた降りる。

七月の終わりの昼時の暑さは、朝以上のものだった。


我が家の見える道に出る。

家の庭に、ママがいるのが見えた。

向こうもこちらに気づいたようだ。


「もうお昼ご飯よー。帰ってきなさーい」

ママに呼ばれ、安堵する。

どうやら寝ていたのは少しの間だけだったらしい。

……気絶したのは、果たして言うべきだろうか。


「はーい」と返事をしながら、オレは自転車の速度を落とし、家のガレージで自転車を止めた。

玄関の方へ回り、ドアの前に立つ。

幾度となく開いた無駄に重い扉を引き、昼食の良い香りがする我が家へと帰り着いた。
 ▼ 29 9SheepC5C6 18/11/04 23:59:48 ID:xcMYRlcM [12/12] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
────


昼食を食べ終われば、午後は午前より自由な時間が長い。

途中で帰ってきてしまったが、洞窟探索を再開しなくては。

あの景色はいったい何だったのか。

洞窟の先に行けばあるのか。

資料を探して調べるよりも、自分の目で直接確かめたかった。


食後の休憩もほどほどに、僕は再度自転車に跨ると、朝と同じ道をまたあの洞窟へ向かっていった。
 ▼ 30 9SheepC5C6 18/11/05 00:00:10 ID:QaF2YXFA [1/4] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
先ほどと同じ位置、同じ向きに自転車を留める。

二度目の洞窟には、先ほどよりも緊張感なく入っていくことができてしまった。

イーブイ二匹も、追いかけっこなどしないで、オレの後ろを慎重に着いてきている。

前回驚かされたネイティオに出会ったら、今度は徹底抗戦するつもりなのだ。

そのために、そろりそろりと坂を下っていく。


やがてオレたちは、先ほどネイティオと出会ったあたりまで降りてきた。

慎重に、ゆっくり辺りを確かめる。

特に何者かの影もなければ、ポケモンの鳴き声も聞こえなかった。


ごくりと唾を飲む。

いっそう慎重になりながら、オレたちは一緒に歩を進めた。


ネイティオのいた辺りからすこし進むと、不意に右手へと続く曲がり角が現れる。

そこへ近づいていくにつれ、オレはあることに気がついた。

朝の探索で見たあの夢。あれで見た洞窟の景色は、たしかにここから始まっていた。

そうだ、やはりあの夢は、この洞窟の内部を見せていたのだ。

つまり、ここを進んでいけば、あの景色、あの不思議な空間が本当にある。……かもしれないのだ。


どうやらイーブイたちは、この曲がり角まで来ていたらしい。

この角を曲がった先でそこにいたネイティオに出会い、驚いて逃げてきたのだ。

だが、あると分かっていれば怖いものではない。


ゆっくり、落ち着いて覗いていけば大丈夫。

そう自分に言い聞かせながら、オレは慎重にその角の先を覗く。

そこには、誰もいなければ、特に何があるというわけでもなかった。


「あっ」
 ▼ 31 9SheepC5C6 18/11/05 00:00:28 ID:QaF2YXFA [2/4] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
何もない。

何もないから、僕は驚嘆した。

そこにはもう、あの不思議な空間はおろか、その先への道すらなかったのだ。


「ど、どうして……」

後ろを振り向いて、着いてきていた二匹にも問いかける。

ネイティもモグリューも、こちらを見たまま首を傾げていた。


どういうことなのだろう。

僕は確かに、この二匹とともにあの景色を見たのだ。

まだ鮮明に思い浮かべることができる、あの光と影の景色。

僕は確かに、あの景色に「夜」を感じた。

追い求めても知ることのできなかった、あの夜の街。

だが、洞窟の道は無慈悲にもそこで途絶え、それ以上先を見せてくれようとはしない。

押しても引いても、それは固い岩の壁だった。

モグリューに潜って探索を頼んでも、見つけることは敵わず、結局その日は暗くなる前に諦めて帰ることにした。
 ▼ 32 9SheepC5C6 18/11/05 00:00:45 ID:QaF2YXFA [3/4] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
それから毎日のように僕はあの洞窟へ通っている。

10年経った今もそう。

もう「夜」は普通に見られるようになって、若干目的は変わったが、それでも僕の探求心は、あの景色を求めることをやめようとはしなかった。

小さいころからずっと一緒だったネイティオとドリュウズに、交代で見張りを頼み、一日の勤めが終わったら、洞窟へ赴き探索をする。

あれがオカルトか事実かなんて、今となっては分からない。

いろいろ調べた化れど、僕が肌であの空気を感じたこと以外、手掛かりは何もなかった。


ある日のことだ。

その日の見張りだったネイティオが、僕に緊急を報じた。

あの洞窟に侵入者? 何もないことは、もう誰しもが知っているはずなのに。

僕は急いで洞窟へ向かう。

もう10年も前から通いなれた道を行く。

夕刻も近づいた洞窟の入り口で、僕はちょうど今そこから出てきた少年を見つけた。


二匹のイーブイをつれ、少し不服そうな顔をしたその少年。

その元気そうな少年に僕は、小さかった頃の自分の姿をふと重ねてしまった。
 ▼ 33 9SheepC5C6 18/11/05 00:01:42 ID:QaF2YXFA [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
終わります。
すみませんでした。
 ▼ 34 トラポット◆Pcf6Vw29GM 18/11/07 20:10:55 ID:w8P6TdUg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙です!
不思議な話でしたね
一体どこまでが夢でどこからが現実だったのか……少年の不思議な思い出になったことでしょう
あとイーブイかわいい
雑ですが挿絵(?)描かせてもらったので上げます
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