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【SS】微笑みの鑑定士

 ▼ 1 nfYyot98RE 18/12/08 01:26:13 ID:4R/MWZY2 [1/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「『試み』……こりゃ贋作だな」

男が持つ絵画は時価数億円の名画と言われるものだ。
そんな名画を盗みこうしてルーペでまじまじと見つめては「贋作」と言い放ったこの男は……怪盗と呼ばれる。

「して……その根拠は?」

そう言って怪盗に新しいロズレイティー入りの茶器を運ぶ冷静な女性は彼の助手である。隣では彼女の手持ちのサーナイトが微笑み混じりに空いた茶器を回収している。

「剥落がなさすぎるし、しかもラピスのはずの色が褪せてる……確定だろう」

怪盗はルーペを外し伏し目に一息ため息をつく。

「また外れか」

つい数日前に二人が某博物館から盗んだ作品であったが……贋作を引くのは三度目であった。
 ▼ 2 nfYyot98RE 18/12/08 01:28:15 ID:4R/MWZY2 [2/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
前作
【SS】微笑みの怪盗
http://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=881465
 ▼ 3 nfYyot98RE 18/12/08 01:31:07 ID:4R/MWZY2 [3/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「チッ……僕を欺くとはな、いい贋作師がいるらしい」

「最近上手くいきませんね?」

助手がその涼しげな顔つきを特に変えずに言う。怪盗がその一言にむせてゲホゲホと咳をした。

「随分とストレートに言ってくれるな……そうだな」

「『異本』を盗んだことで怪盗から世紀の大怪盗に格上げされたからな」

怪盗が「試み」の贋作を粗雑に側に置いた。

「その分こうして警戒もされるようになりましたが」

助手が怪盗が粗雑に置いたキャンバスを持っては言う。
怪盗が贋作というその絵画は助手にはそれでも重々しいものに思えた。

「仕方ない、あの国際警察が絡む中『名もなき異本』なんて特級にヤバいアーティファクトを盗んでしまえたからな……コレクターや美術館長共が恐れるのも無理ない」

怪盗が再びロズレイティーを口に運ぶ。
その顔つきは一年ほど前の世間的大騒動を思い出してはそんなこともあったなと噛み締めるようであった。
 ▼ 4 nfYyot98RE 18/12/08 01:32:39 ID:4R/MWZY2 [4/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「それで……どうします? とりあえず再び潜伏しなければいけないのは確かかと」

「そうだな、僕としてもこの『試み』にそこまで執心している訳ではあるまい……身の安全が第一だ」

「ですね」

怪盗はあっさりと逃亡の選択を公言した。助手もその選択に異論はないようだった。

「ところで……一つ君にお使いを頼みたいのだが」

怪盗が人差し指をそれとなく突き立てては言う。

「お使いですか」

「ああ……ちょいと面倒だが」

「何でございましょう」

怪盗は立ち上がり、自室にしている小さな部屋へと引っ込むと大きなケースをどっかりとテーブルへ置いた。
 ▼ 5 nfYyot98RE 18/12/08 01:34:30 ID:4R/MWZY2 [5/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「これを綺麗な金にしてきてくれ」

そう言って怪盗が取り出したのは布で覆われた四角い物体。
半年ほど前に盗んでは贋作と判定した絵画だった。

「売品ですか」

「ああ、ここらの美術商にちょいと顔見知りがいてね」

「日曜日、市の角にある美術鑑定士を訪ねろ……そしたらそいつにラティツの女中だと断れ」

“ラティツ”は怪盗が使い分けている顔の一人だった。
未婚の資産家で絵画を中心とした美術コレクターという設定の老年の男性だ。

「さすれば無事ロンダリングしてくれるだろう……裏オークションと繋がりがある」

「裏オークションですか」

何やら怪しげな雰囲気漂うワードに助手が聞き返す。
 ▼ 6 nfYyot98RE 18/12/08 01:36:32 ID:4R/MWZY2 [6/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「まあ普段なら変装した僕が行くところだが、今回ちょっと別件があってね」

「心得ました、相手方の身体的な特徴などはありますか?」

「胡散臭い顔しているよ」

怪盗は神妙な顔でそう言うとロズレイティーをあおった。

「それはミスターも同様では?」

「失敬だな……君はハンサムという言葉を知らないのか?」

「……哀れにも私たちの担当になって、見事とり逃した国際警察のコードネームでしょう?」

助手の回答に怪盗が吹き出しそうになる。ふふと笑みを深めては言う。

「そうだな……アイツは哀れだったよ」

助手は怪盗のいかにも憐れんだ顔から分厚いロングコートを着込んでいた難しげな顔の男性を思い出す。
 ▼ 7 nfYyot98RE 18/12/08 01:37:45 ID:4R/MWZY2 [7/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ハンサムがしっくりこないならイケメンでもいいんだがな」

「ええ、そうですね……本当にそう、間違いなくそれはそうですよ異論なしですね」

助手がうんうんと何度も確かめるように頷いている。
さながら機械仕掛けの人形のようだ。

「酷い棒読みだな……相変わらずの愛嬌のなさで安心したよ」

「お褒めに預かり光栄ですね、天才的なのでしょう?」

「……ああ、天災的だな」

やれやれと言った面持ちで大袈裟にため息を付いた怪盗だった。
 ▼ 8 フレシア@レインボーパス 18/12/08 09:19:05 ID:8UtMZkk6 NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 9 nfYyot98RE 18/12/09 20:23:39 ID:X3Uc1rqs [1/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「地図によると……あそこですね」

助手はサーナイトとともに怪盗に言われた市の角にやって来ていた。

大きな手荷物片手に眺めていると進化の石だとか怪しいお香を勧められた。
助手がそれらをかしこまった態度で断ると、そろそろ目的の質屋が目の前に迫る。

人が雑多にいる市だが、この周りには比較的年齢層も階級も上の人々が集っているようだった。

「もしもし……鑑定士の方で?」

市の一番角に位置する戸を軽く叩いた。
 ▼ 10 nfYyot98RE 18/12/09 20:25:05 ID:X3Uc1rqs [2/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「どうもこんにちはお嬢さん……売品かい? 前の彼氏のくれたアクセサリーかねぇ?」

壮年の鑑定士の男が微笑む。
ぬっと出てきた、皺をたくさん顔に浮かべた男は怪盗の言う通り胡散臭い笑みを浮かべていた。

「ラティツの女中です……ご主人様に代わっての来訪、誠に失礼します」

男からふっと笑みが消える。
急にかしこまったその顔には先ほどまでとは打って変わって商売相手としての真剣味を感じる。

「ああ、承知した……では早速商品を」

「はい」

助手はその様子を確認すると硬く綴じられた布をサーナイトに手伝ってもらいながら解き始める。
 ▼ 11 nfYyot98RE 18/12/09 20:26:44 ID:X3Uc1rqs [3/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「これです」

そう言って差し出すのは一本の樹が描かれたキャンバス。

「生命の樹」というタイトルが付けられ、伝説のポケモンの姿が描かれているらしいこれはいわゆる名画だ。
……本物であれば、の話だが。

あまり芸術に造詣が深くない助手でもこの絵画には見覚えがあった。

だからこそ盗みに成功した際には歓喜に身を弾ませ、贋作と判断された時にはがっくりと肩を落としたものだった。

そんな「生命の樹」が鑑定士の手に渡る。
 ▼ 12 nfYyot98RE 18/12/09 20:28:16 ID:X3Uc1rqs [4/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ほうほう……やはりよく出来ている」

鑑定士はその胡散臭い微笑みでキャンバスを手に取ってはルーペを使いまじまじと細部まで見つめた。

その瞳には贋作にも関わらず、真剣と尊愛が浮かんでいるように助手には見えた。

「これならオークショナー達の目も欺けるだろう……お値段はそうだな、これくらいの見積もりでいかがだろうか」

そう言って書き渡した小切手には、助手が怪盗から聞いていた値段と見劣りしないものが書き込まれていた。

「了承しました、では売却で」

助手がそう言ってはサラサラとサインを書いていく。

「どうもありがとうねぇ……ご主人によろしく、次は直接お会いしたいとね……元お嬢さん」

小切手を受け取り、足早に去ろうとする助手であったが最後の言葉に眉間にシワを寄せた。

「……失礼致します」

一抹の不安を胸に質屋をあとにする助手とサーナイトであった。
 ▼ 13 nfYyot98RE 18/12/09 20:29:46 ID:X3Uc1rqs [5/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「さて、夕飯の材料でも見つつ帰りましょうかサーナイト」

「サナ」

やや不安を胸にしかしまた慌ただしい日常へと帰ろうと隣のサーナイトに話しかけたその時だった。

背後の物陰から影が伸び出る。

物陰から不意に白銀の刃が突き出す。

鋭利な光を放つ切っ先が助手を目掛けて振りかざされる。

「……! きゃっ」

助手の小さな悲鳴がざわめく市に響いた。
咄嗟に頭を庇った腕が鮮血で濡れていた。その痛々しい姿に周りの人々が気づき、悲鳴を上げた。
 ▼ 14 nfYyot98RE 18/12/09 20:31:11 ID:X3Uc1rqs [6/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「サナ……!」

「サーナイト! 大丈夫……傷は浅いですよ」

サーナイトが助手を庇うように前に立ち塞がる。その戸惑い心配する顔を見て助手が言う。

「キリキザン……このポケモン、私を狙って……?」

刃の正体はポケモンであった。
両腕と頭の刃が硬質な光を放っている。キリキザンは助手への不意打ちを掠めると軽やかに後ろへと距離を取った。

突如始まったこの異様なバトルに周りにも野次馬が湧き始めた。

キリキザンは助手に向かって駆け出し、再び斬撃の体制を取った。

「……サーナイト! テレポート!」

助手とサーナイトが刃に掠る寸前で消え失せた。攻撃対象を失ったキリキザンはチラと周りを散見すると、周りに捕まるよりもはやく赤い光に捕捉されこの場から姿を消した。
トレーナーなら見慣れたモンスターボールの光だった。
 ▼ 15 nfYyot98RE 18/12/09 20:33:22 ID:X3Uc1rqs [7/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「……やはりサーナイトがいるとダメか」

そう呟くのはこの騒動を陰から見下ろしていた男。
スコープを外してはため息混じりに野次馬の集まった市の角地を見る。

「退くぞキリキザン……まだ仕事は始まったばかりだ」

「キリリィ」

隣りにいるのは先ほどまで助手へと斬りかかっていたあのキリキザン。

「出来れば二人仲良く地獄に叩き落ちてもらいたいがな……」

そう呟くとほとんど灰になっていた煙草の火を消した。
男は人やポケモンを抹殺するのを生業にしている……いわゆる殺し屋だった。
 ▼ 16 イティオ@デンリュウナイト 18/12/09 21:22:40 ID:FcOk3ZDg NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 17 nfYyot98RE 18/12/09 21:31:33 ID:X3Uc1rqs [8/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「帰ったか……ってその怪我は」

怪盗が読んでいた本から目を上げると急に掛けていたロッキングチェアから立ち上がった。
心做しか青ざめたように助手には見えた。

「ええまあなんとか……騒ぎになるのはよろしくないのでテレポートを繰り返して帰ってまいりました、で小切手ですが……」

斬られた腕を抑えながら助手はお使いの成果を取り出そうとする。

「おいおいそれよりもまず傷の手当だろう? よし、僕がやってやる」
 ▼ 18 nfYyot98RE 18/12/09 21:33:01 ID:X3Uc1rqs [9/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「いえ結構です……お構いなく」

助手は素っ気なく答えた。
怪盗があまりそうした応急手当が得意でないのを知っていたからだった。

「こんなもの見せられたら構うに決まってるだろ……どこまで僕を無情な男と思い込んでいる? ほらそこでじっとしていろ」

怪盗がそれでも負けじと椅子を指さし命令口調で言う。

「大丈夫ですよ傷は浅いですから」

「なんだ? 僕の優しさはさっきの贋作より高くつくぞ……貰えないなら買ってもらうからな」

「もう……分かりましたよ」

助手は諦めて袖を捲った。
傷は確かに浅いがやはり痛々しいその生傷に怪盗が顔を歪ませた。
 ▼ 19 nfYyot98RE 18/12/09 21:36:03 ID:X3Uc1rqs [10/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そこにあった椅子に座らされた助手。
サーナイトが包帯などの入った救急箱を怪盗に手渡す。
サーナイトが心配そうに見つめる中黙々と消毒作業が行われていき、赤くなったコットンがテーブルに積み重なっていく。

「……襲われたのか」

怪盗が重々しく問う。

「そうですね」

「そうか……こんなんじゃお使いもろくに頼めやしないな」

「全くですね、申し訳ありません……不注意でした」

「で、そのお使いはどうなった?」

「これですね」

助手はもう片方の腕で持っていたカバンから小切手を取り出し、テーブルの上へと載せた。
 ▼ 20 nfYyot98RE 18/12/09 21:37:33 ID:X3Uc1rqs [11/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
それをコットンをピンセットで摘みながら怪盗が見る。

「まあこんなものか……この後アイツが倍近い値段を裏オークションで稼ぐと考えると些か腹がたつが」

「宜しいのですか? 」

「何が」

「あの鑑定士……私達の正体を掴んでますよ」

「そりゃそうだろ……盗品なんてすぐに足がつく、それでも敢えて僕らの寄越す贋作を売りさばくのが奴らだ」

怪盗は意外にも呆気なく答えた。

「ま、お互いブラックで不干渉な関わりさ……都合がいいだろう?」

「左様ですか……」
 ▼ 21 nfYyot98RE 18/12/09 21:39:23 ID:X3Uc1rqs [12/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「しかしまあ、君が襲われたタイミングから考えて襲った奴と繋がりがありそうだな……何か向こうからアプローチはあったか?」

「ええ、次は直接お会いしたいと言っていましたよ」

「ふうん……直接、ね」

怪盗は些か苦い面持ちで唇を噛んだ。

「奴め……この怪盗から甘い汁を啜るだけ啜ってあとは知らん振りするつもりか、果たしてそう上手くいくかな」

「強盗、かと思いましたがやはりそっちの方なんですかね?」

「まさかうら若い女性が名画の贋作を売って高い金稼いでるとは普通思うまい……」

「まあいい、探りを入れたいしこちらにもプライドがある……会ってやろうじゃないか贋作流しの鑑定士さんよ」

怪盗がそう言ってくつくつと笑うと助手に巻いた包帯をキツく縛る。
 ▼ 22 nfYyot98RE 18/12/09 21:42:22 ID:X3Uc1rqs [13/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
手当が終わり包帯の巻かれた腕を助手が眺めていた。

「ありがとうございます」

立ち上がり、助手が怪盗へと頭を下げる。

「まあ気まぐれな僕の優しさをとくと噛み締めるがいいさ」

怪盗はそんな助手を見て満足そうに微笑んだ。

「そういえば……話を逸らしますが、別件は済んだんです?」

「……ああ! すっかり忘れていたが何も無いかと思いきや思わぬ収穫があったぞあの金庫」

怪盗が指をパチンと鳴らした。
その無邪気そうな笑顔から察するに何か良い収穫が得られたようだった。

「金庫……? 」

「ほら、ここに初めて来た時にギルガルドが守っていた……あの金庫」

「ああ、ありましたねそんなの」

助手はぼんやりと錆びれて使い物にならなくなった金庫を思い出す。
怪盗が過去にあれこれと解錠の試行錯誤をしていた金庫だ。
 ▼ 23 nfYyot98RE 18/12/09 21:44:04 ID:X3Uc1rqs [14/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「どうしても開かなくて今日鍵開けをしてもらいに行ったんだが、なかなか面白いものが見つかってな」

そう言って怪盗は着ていたスーツのポケットから袋に入った何かを取り出す。
助手がそれに目をやる。

「鍵……ですか」

やはり錆びれた小さな鍵。
金庫から出てきたというそれを袋越しに眺める。

「一体何の鍵なんでしょう」

「さあ? 分からんがなんだかワクワクしないか? ここの屋敷をもう一度掃除し直した方がいいかもしれないな」

「もう一度……ですか」

「ああ、もちろん君の役目だな」

うーん、と唸っては自分のいるこの広い屋敷を見渡す助手。
怪盗と助手が一年前に発見した幽霊屋敷は度々隠れ家にされていた。
 ▼ 24 nfYyot98RE 18/12/09 21:45:45 ID:X3Uc1rqs [15/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「さて……奴と会わねばならんわけだが、どうしたものか」

「一つ気になったのですが」

助手がそれ言わんとばかりに怪盗へと問う。

「あの鑑定士、どうして贋作を取り扱っているのでしょう……当然リスクも高いですのに……それほど金にがめつい感じでもなかったように見えますが、やはりお金なのでしょうか」

「何故、か気にかけてもいなかったがそう言われると不思議と興味が湧いてくるものだな」

「洗ってみるか、奴の経歴を……その周辺を」

立ち上がるとノートパソコンを手に自室へと引っ込んだ怪盗。
 ▼ 25 ワライド@あかいくさり 18/12/09 22:35:01 ID:3tEonxbo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援!!
 ▼ 26 ラチーノ@サメハダナイト 18/12/10 15:44:38 ID:GKPMI9oQ NGネーム登録 NGID登録 報告
支援するしか無いですね
 ▼ 27 リテヤマ@バコウのみ 18/12/10 23:21:01 ID:C4gkdBfA NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 28 nfYyot98RE 18/12/11 01:48:14 ID:18iQU8u6 [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ロトトー! 帰って来ていたんだロトね」

助手の前に現れたのはどこかの地方のポケモン図鑑。
図鑑の電子音で助手に話しかけたこのポケモンはロトム。怪盗の手持ちの一体である。

こうして日常生活時にはポケモン図鑑に入り怪盗や助手と会話もしてみせる。

「ええ、ただいま戻りました」

「ロト!? その腕はどうしたんロト!?」

「ええ……ちょっとした襲撃に会いまして」

「それは大変だったロトね! 怪盗が気が気じゃないのも納得だロトー!」

「気が気じゃない……あの人が? そんな大袈裟な」

「それが大袈裟じゃないんだロト……怪盗は助手がいない時に寂しくて……ロト!?」

「僕が……何だって? え? 勝手にどこかに行ったと思ったら助手に好き勝手嘯いてんな?」

何やら悪い顔で語り始めたと思ったロトムだったが、丁度いいタイミングで怪盗が後ろからロトム図鑑を鷲掴みにしていた。

 ▼ 29 nfYyot98RE 18/12/11 01:49:44 ID:18iQU8u6 [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「モゴゴー!? 離してロトー!」

「いいや!解放されたきゃ今すぐ図鑑から出るんだな!」

「まあなんです……仲が宜しいようで何よりです」

「フー……?」

引っ込んだと思いきや再び出てきた怪盗。
彼と共に部屋から出てきた手持ちの一体であるフーディンが助手の斬りつけられた腕を指差す。

「これは……ロトムに話した通りですよ」

フーディンは少々驚いた顔を見せた。
そしてしばらくやや難しい顔をしては持っていたスプーンをへなりと曲げて考えるのをやめた。

サイコキネシスである物を助手の前に持ってくる。
 ▼ 30 nfYyot98RE 18/12/11 01:51:37 ID:18iQU8u6 [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「あ、くれるんです……? 」

助手の前に浮遊するのはオボンのみだ。落ちる前に手のひらで受け取る。

「ポケモンではありませんから……きのみでは回復しませんがお気持ち嬉しく思います……ありがとうございます」

フーディンは助手の言葉に静かに笑んだ。

「フーディン、酷いロト! それはロトムが取っておいたオボンのみだロトー! ひとのものを取るのはドロボーだロト!」

「え」

助手が短く驚くと、フーディンは流し目になった。

ロトムの必死な叫びにフーディンは少し申し訳なさそうな顔をしたが、それだけするとあとは知らん振りをした。

 ▼ 31 nfYyot98RE 18/12/11 01:52:45 ID:18iQU8u6 [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ざまあないな」

「怪盗ー!? それが自分の手持ちポケモンに言うことロトかー!?」

「うるさいな、そんな僕をトレーナーに選んだのは君たちだぞ」

「そうだけどだロト! あんまりだロト! やっぱり人格破綻者だロト!」

「人格破綻者だと……食わせてもらってる身で何を偉そうな」

どこまで本気なのか分からないくらいに掛け合う怪盗とロトム。
フーディンはやれやれといった具合にため息をついた。
 ▼ 32 nfYyot98RE 18/12/11 01:55:08 ID:18iQU8u6 [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「……ふふ」

いつも通りの日常だった。
見ていると先ほどまでの心中の不安も霧散するようだった。
その日常に安心した助手が密かに微笑む。

「さて……私たちも動き出しましょう」

助手は立ち上がり、隣で一連の流れに苦笑いを浮かべていたサーナイトに話しかける。
それにサーナイトが頷いた。

胡散臭い微笑みの鑑定士を暴くべく二人は動き出した。

 ▼ 33 グカルゴ@たんけんこころえ 18/12/11 07:11:29 ID:YoSE5lmo NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 34 nfYyot98RE 18/12/12 19:44:23 ID:tKaQwEXw [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「君の着眼点には鋭いものがあったらしい」

そう言う怪盗はノートパソコンに映った胡散臭い微笑みの鑑定士を見る。

二人がそれぞれの調査に動き出して一週間が経ったある夜のことだった。

「……と言いますと?」

助手は古ぼけたソファーに座り、その膝にどっかりと寝そべる怪盗のゾロアークにブラッシングを施していた。

「奴は何故贋作を取り扱うのかという話だが……経歴を洗っていくうちに興味深い点が見えてきた」

「これだ、アイツが過去に自分も芸術家だったという点は見過ごせない」

怪盗がノートパソコンを助手に見せる。

画面には二十年以上前の絵画コンテストの佳作対象者が連ねてあった。
その中には助手がこの一週間何度も見た鑑定士の名前”キブシ“が確かにそこにあった。
 ▼ 35 nfYyot98RE 18/12/12 19:48:49 ID:tKaQwEXw [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「昔は品定めされる側だったんですね……あの贋作を見る目にも何となく納得がいきます」

「青年期は何度も選考に応募した形跡があった……相当な熱心な絵画の愛好家だと伺える」

「そうなんですか、それで鑑定士に」

「ああ、そうらしい……そっちはどうだった?」

「こちらの件ですが……どうやら当たりのようですよ」

助手がゾロアークをそっと揺すると、やや不満げな顔をしては助手の膝から退いた。

助手は立ち上がり、ブラッシングしていたブラシを置くと予め用意していたであろうホッチキス止めされた書類を怪盗に渡した。

「……本当か」

「ええ、鑑定士がこれまでに買い取った品と過去に裏オークションに出品された品を一通り調べましたが……絵画に限っては数点、裏オークションに出品されていません」

怪盗がそれらが照合され、まとめられたプリントを一枚一枚舐めるように見て確かめる。
 ▼ 36 nfYyot98RE 18/12/12 19:51:05 ID:tKaQwEXw [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「そうか……やはりそういうことか」

怪盗は指をパチン、と鳴らした。

「……あの鑑定士はわざと贋作を鑑定している?」

助手が指鳴らしに続いて問う。

「ああ、そしてアイツは……おそらく本物の絵画を数点、贋作と鑑定し自分の元に持ち帰っている」

「つまり自分の美術愛好欲を満たす為に贋作を取り扱っていると……」

怪盗が頷く。
助手は腕を組み何やら思案しているらしかった。

「一応まだ推論の域を出ないがな、そこは確実にする必要がある」
 ▼ 37 nfYyot98RE 18/12/12 19:52:41 ID:tKaQwEXw [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「とは言いますがしかし……どうやって確かめるんです」

「次の土曜日に僕は「砂漠の太陽」の贋作を奴に売りに行くわけだが」

「砂漠の太陽」もまた怪盗が掴まされた贋作の一つだった。

助手は、怪盗から本物はウルガモスと砂漠の荒涼感のコントラストがそれはもう素晴らしいのだと熱烈に語られたことがあったのを思い出す。

「あれですか」

「その際にこれを仕込もうと思う……それで何かボロを出すかもしれない」

怪盗が取り出したのは二人にはお馴染みのピンマイク程度の盗聴器。

「盗聴器ですか……相手はこちらの正体を知っています、そう上手くいくでしょうか」

助手は相変わらずの無表情だったがしかし些か不安の浮かんだ瞳であった。
 ▼ 38 nfYyot98RE 18/12/12 19:54:09 ID:tKaQwEXw [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「まあ……そこは僕らの怪盗としての腕にかかっているかもな」

怪盗はそれを言うとふぅ、とため息をついた。

「この怪盗を敵に回すとどれだけ恐ろしいか、あの胡散臭い爺さんに丁寧にも教えてやるとしよう……」

「心得ました……作戦を」

「ああ、よく聞いてくれよな?」

怪盗は毎度の如く人差し指を突き立てては作戦の概要を話し始めた。

姿勢を正す助手。
隣で半ば寝ぼけ眼になっていたゾロアークがしゃんとして聞き入る。

「分かりました……では次の土曜日に?」

「ああ……次はこちらのターンだ」

そう言うと怪盗は緩まっていたネクタイを引っ張り締め直した。
 ▼ 39 ろむ◆2..t9mQ0hQ 18/12/12 21:43:12 ID:5fPUIQdc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 40 nfYyot98RE 18/12/15 19:51:00 ID:01UM8JOc [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
土曜日の市は全体的に見れば賑やかさを増していた。中でも少し高級なこの角地には服装や見た目が落ち着いた人間がやはり多いらしい。

時刻は夜、辺りの人々は家内への土産もの見繕ってもらっていたり、小さなカフェでミルクセーキをお供にお互いの近況報告に花を咲かせている頃合いだった。

「さて時間だな」

「はい旦那様」

個人経営の喫茶店にてロズレイティーを嗜む老紳士とフーディン。その前に座るのはその女中に扮し、いつもよりやや格式張った服の助手だ。

「役作りは結構だがね……くれぐれも気をつけたまえよ、例の襲撃もあっただろう」

老紳士に扮した怪盗がいつもよりも低く長閑やかな声で囁く。

「自分の身は自分で護ります、そして護身ならお任せを……私は貴方の助手ですから」

その言葉を聞いてか助手の前には髭を弄りながら微笑む老紳士がいた。

「ならば良し……では一行参るとしよう」

 ▼ 41 nfYyot98RE 18/12/15 19:55:52 ID:01UM8JOc [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「キブシ君……お久しゅうございますな」

「ラティツのご主人、今日は遠路はるばるどうもありがとうございます」

老紳士ことラティツに扮した怪盗が扉を開け、丁寧に頭を下げて見せる。隣にいるフーディンも心做しか物腰低めだった。
鑑定士がそれにつられて立ち上がりペコペコとした。

「いや、私も身元の整理をする歳頃と思いましてな……前回は女中を遣わしてしまい申し訳ない、何か粗相はなかったかね?」

老紳士は襟元を触ってはしみじみと言った。さながら郷愁に耽るように。

「いえいえ……とんでもございませんしっかりと買い取らせていただきました」

「ならばいいが……」

「ではご主人、早速ですが品を」

鑑定士が怪盗の持っていた大きなキャンバスケースを手で指す。
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