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【SS】浅き夢見しギャンブラー

 ▼ 1 nfYyot98RE 18/12/11 20:04:24 ID:18iQU8u6 [1/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
赤き刃。
血塗られたようにも見えるその赤のハサミがばっくりと開いてはバクーダの喉元に迫る。

「……! あぶねえ、バクーダ!」

が、すんでのところで地ならされて回避される。
ハッサムが体制を崩し攻撃を外す。

チィ……当たんなかったか。
ハッサムが膝を着いた。

「ふんか!」

「気合いで避けろォ!」

バクーダが背中から熱を放出する。
ただの熱源なんかじゃねえそれは地に唸りながらハッサムに降り注ぐ。

俺は地鳴りに視界を歪めながら相棒が逃げ惑い……次には倒れているところを見ていた。

「チィ……終いか」

ご苦労さん、と労いの言葉をかけながらハッサムをボールに戻してやる。
不意にハッサムは目が覚めては申し訳なさそうな顔をしてやがった。
いいから休んでおけと俺はやや強引にボールのボタンを押した。

「よっしゃあ! あんちゃん賞金倍ってこと忘れんなよ!」

「……分かってらぁ」

あぁ……今日は貧乏飯だな。
そんなことをふと考えていた。
 ▼ 2 nfYyot98RE 18/12/11 20:05:09 ID:18iQU8u6 [2/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ご覧の通り俺はギャンブラーよ。
その日暮らしに賭博に生きつつ、でっかい夢を追いかける男っちゅうわけだな。

夢って何だって?
そりゃあおめぇ、あれよ。

「ねーちゃんと酒と金に困んねえ生活がしてえな……」

つい零れちまった。

まあそういうことよな。人は皆夢追い人って言うもんな。

ねーちゃんと酒と賭けに使える金がありゃ俺は人生もう満足。そういうドリームを求める男なのさ。
 ▼ 3 nfYyot98RE 18/12/11 20:07:45 ID:18iQU8u6 [3/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「はっさむ」

唐突に隣を歩くハッサムが俺に頭を下げた。
控えめなコイツにはありがちな行動だった。さてはお前さん、さっきの敗けを気にしてんな?

「……だからよー! 気にしてんなよ、俺はこの通り元気なのよ、ピンピンよ!」

ハッサムはびくついたが素直に俺に肩を揺すぶられた。

そういう堅苦しいのが苦手な俺はこうしてついつい勢い任せなコミュニケーションを取っちまう。悪い癖かもしれん。

「はっさむ?」

ハッサムが少し恥ずかしげに笑う。

「おっ、そうだ景気づけに一杯やるか!」

「はっさむ……」

ハッサムはどこか不安げな顔をしていた。金か? 大丈夫一杯だけよ、ほんの一杯。
 ▼ 4 nfYyot98RE 18/12/11 20:11:06 ID:18iQU8u6 [4/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
俺は思いついたら直ぐに行動に移すタイプでよぉ。
言うだろ思い立ったら吉日、ってよ。
そんなもんで繁華街のテキトーに目に付いた飲み屋で飲んでいた。

「おいおっちゃん、生ハイ追加な」

「おっ景気がいいねえにいちゃん」

「まあな」

俺はグビっとビール瓶をあおった。
飲み屋のおっちゃんが奥に引っ込んで生ハイを追加で持ってくる。

「おいハッサムよォ、お前も食えや」

「はっさむ?」

「ほらよ」

俺はそう言ってツマミの串焼きを渡す。
 ▼ 5 nfYyot98RE 18/12/11 20:12:05 ID:18iQU8u6 [5/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「はっさむ」

最初は遠慮して受け取らなかったが、しばらくして串焼きにかぶりつく。

「美味いか?……バトル後の飯は」

「はっさむ!」

ハッサムは飛びっきりの笑顔で答えた。

ああ、それよ。やっぱり人間もポケモンも笑顔が一番なのよな。

俺はその笑顔を見て景気を良くしちまって酒を飲んでは飲み、飲み開けちまった。
 ▼ 6 nfYyot98RE 18/12/11 20:14:04 ID:18iQU8u6 [6/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「げっ……やっべえ、すっからかんじゃねえか」

翌朝、隣の宿屋で起きた俺は素寒貧になっちまったことを今更ながら知る。

「まあ昨日敗けて飲んじまったからな……今日は勝たねえと明日が来ねえ」

「はっさむ!」

ハッサムは気合い十分という感じか。
俺も負けていられねえな。

「旦那……お金に困ってると見ましたが?」

俺が立ち尽くしているとそれを見透かしたみてえな口調でボロボロのじいさんが話しかけてきた。

ちとばかし嫌だなと思ったがまあ話してみなきゃわかんねえ。
じいさんに向き直る。

「ここらでいい仕事がありますぜ……ただしそいつの頑張りが鍵を握りますがね」

そう言うじいさんは顎でハッサムを指した。

「ポケモンバトルってことかい」

「お察しがいいねぇ」
 ▼ 7 nfYyot98RE 18/12/11 20:15:45 ID:18iQU8u6 [7/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ここから少し離れた小さなスタジアムでは毎夜隠れて賭けバトルが行われておりましてな……それはそれはすごい賑わいなんですぜ」

「ほう! 賭博かい」

賭博と聞いて俺のテンションは上がり調子になっちまった。
思わず声が弾む。

「ええ、旦那ぁ賭博はやるクチかい? そいつぁ都合のいい話だ……その新人ファイターを探していてねぇ」

「俺ぁ賭博で生きながらえてきたとも言える男よ……で、俺たちがそのファイターになりゃいいわけか」

「ええ……勝ちゃもう普通のバトルの比じゃないくらいには稼げますぜ……」

ひひひ、と笑っては手をまごねているじいさん。

薄気味悪いが賭けと稼ぎという気持ちいい響きに俺はとうに夢中になっちまった。
 ▼ 8 nfYyot98RE 18/12/11 20:17:06 ID:18iQU8u6 [8/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
だが一方で冷静な俺もいてよ。

そんだけ盛り上がるっつう賭けバトルの中敗けた時のリスクがどんなものか考えてやがる。縁起でもねえ。

「俺ぁギャンブラーよ……考えることはいつもは勝利の栄光とさらなる賭けのみ」

自分に今までだって十二分に言い聞かせたつもりだったんだがな。
こういう“いざ”って時にゃ不安さんが顔を出さきゃ気がすまんらしい。

「敗けたら……?そりゃ、うっひっひ……語るまでもないですぜ……」

「まあそうよな……しかしそんなリスクがあってこその賭博よ……! 勝った時の至福感と報酬、敗けた時の見るも無惨な姿……どちらに転ぶか分からないそのジレンマに身を委ねてこそギャンブラー……!」
 ▼ 9 nfYyot98RE 18/12/11 20:18:23 ID:18iQU8u6 [9/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「それじゃあ旦那ぁ、この件を引き受けてもらえるということで?」

「ああ、やってやるぜ」

「うひひ……交渉成立ですな」

俺はじいさんの手を取った。
しわがれて痩せこけた細い手だった。

「はっさむ……」

隣を見るとハッサムがまーた顔を暗くしてやがる。

「なんだ? 心配か? 大丈夫よおめーの強さは俺がいっちゃんよく知ってるからよ」

「だからどーんと構ときな、次はしっかりと勝たしてやるからよぉ」

俺はにっかりと笑ってとんとその肩を叩いてやった。

「……さむっ!」

今度も俺の笑顔に応えるように笑ってくれた。いつ見ても純真で見てるこっちが眩しい相棒だなったくよぉ。
 ▼ 10 nfYyot98RE 18/12/11 20:19:35 ID:18iQU8u6 [10/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「賭けバトルの会場ってのはこんなこじんまりとした場所なのかい、もっと派手派手なのを想像してたぜ」

俺たちはじいさんの案内で少し繁華街からは外れたボロっちいバトルスタジアムに来ていた。
ここで毎夜熱い賭けバトルが繰り広げられてるっつう話じゃないの。

全くよ、ここの奴らも隅に置けねえな。

「まあ隠れてですからねぇ……夜になりゃ人がごみごみと集まりやすぜ」

「ほう、そいつぁいい」

「賭けバトルは1対1で行われやす……旦那はやっぱりそいつで参加するんで?」

「おうよ、俺のハッサムは強いぜ? 並大抵の奴はコテンパンよ」

「はっ……はっさむ」

俺に強いと言われてハッサムは少し照れくさそうにしていた。どこまでもウブな奴だぜ。
 ▼ 11 nfYyot98RE 18/12/11 20:21:45 ID:18iQU8u6 [11/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「そいつぁ楽しみでさぁ……旦那はきっと今夜の目玉ですぜ」

「おうよ、大目玉になってやろうじゃあないの、な!」

そう言うと俺はハッサムの肩を抱いた。

「はっさむ」

「そんじゃあたしは話をつけてきますんで……また夜に会いやしょう、それまでこの辺でも見ててくだせえ」

そう言い残すとじいさんはこの場を後にした。
 ▼ 12 nfYyot98RE 18/12/11 20:23:05 ID:18iQU8u6 [12/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「にしてもこの辺りにそんな大規模な賭けバトルが行われてるなんてよ……誰か俺に教えてくれても良かったのにな」

「ま、なんか流れでおもしれえことになってきたからいいが」

「はっさむ……」

ハッサムは何やら訝しんだ顔をしていた。
もしかしてあのじいさんの話を疑ってんのか?

「なんだ? おめーは相変わらず心配しいだな」

「大丈夫だっての、勝ちゃあいいんだからよ……今夜こそ俺のグッドラックとお前の強さに盃を上げようぜ」

「はっさむ!」
 ▼ 13 nfYyot98RE 18/12/11 20:25:01 ID:18iQU8u6 [13/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
夜になったスタジアムはそれはもう昼間とは打って変わった乱雑さだった。

人でごった返すスタジアム。
中央のフィールドにはポケモンが一体一で競り合っていた。

そのポケモンたちに向かってやれ右に避けろだの、もっと手数を増やせだの野次が八方から飛び交う。

全く、トレーナーからすりゃ迷惑で仕方がねえな。

片方のポケモンが倒れる。
会場は途端に歓喜と怒号と悲鳴に塗れた。
……次は俺たちか。

「おいじいさん……あんたは俺に賭けるんだろ?」

「さあ……どうでございやすかねぇ……さあさあ旦那、幕ですぜ」

おう分かってらぁ。俺はハッサムと共に堂々とフィールドへ赴く。
 ▼ 14 ろむ◆2..t9mQ0hQ 18/12/11 20:25:10 ID:FfIA7hYY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 15 nfYyot98RE 18/12/11 20:26:32 ID:18iQU8u6 [14/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「本日の大目玉様のご登場よ」

「ほう……お前か、のこのこと敗北を期しにやってきた間抜け面は」

相手の男はベテラントレーナーって感じの出で立ちをしていた。口ぶりも負けちゃいねえ。

「随分と腰の高い野郎だな、嫌いじゃないがその達者な口だけで終わってくれるなよ」

「ふん……今に分かるさ」

「ではでは、今宵も大詰め……皆様己が気運を祈りましょうぞ……バトル……スタート!」

そう言ってじいさんがしわがれた右手を振りかざした。

「頼むぜ相棒!」

「はっさむっ!」

ハッサムが前に躍り出る。

少し緊張した面持ちだ。大丈夫だ、力抜いていけやと俺は頷く。
頷き返すハッサム。
 ▼ 16 nfYyot98RE 18/12/11 20:29:11 ID:18iQU8u6 [15/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「行け……ヘルガー」

男がボールを投げる。
モンスターボールからスラリとした体躯のポケモンが舞い降りる。

ヘルガーを見て俺に賭けたであろう奴らが大きく聞こえんばかりのため息をついた。

「げえ、ヘルガー! またほのおタイプかよ!」

「……さむ」

ハッサムも相手を見て身構える。
俺にまだ勝負は始まっていないとガッツポーズをして見せた。

「分かってらあ、それでも勝てるのがおめーと俺の強さよ!」

「おっと……お前たちの相手はヘルガーじゃないが」

男は何やらクリスタルが着いたバングルを空へと翳す。
クリスタルが直に見れねえ程に眩く光る。
光は束になってヘルガーへと注がれていく。

「お前たちを負かすのは……このメガヘルガーだっ!」

光に包まれ解き放たれたヘルガーの骨格が大きくなる。ダークポケモンの名に恥じぬ邪悪な見た目をしてやがる。
 ▼ 17 nfYyot98RE 18/12/11 20:30:22 ID:18iQU8u6 [16/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「おいおい……噂にゃ聞いたことがあるがマジかよ」

俺は思わぬサプライズの連続に大きく天を仰いだ。

このメガシンカっつうのは、俺の故郷の風習と同様にとある地方で独自に発達した新たな進化方法だよな。

こうしてお目にかかるのは初めてだ。

「メガシンカねぇ……異郷の文化が相手とはこりゃ相手にとって不足なしだな……燃えてきたよなハッサム!」

「さむっ!」

「やれ! メガヘルガー!」

「かえんほうしゃ!」

「突っ込め! バレットパンチ!」

絶対的な先制攻撃、バレットパンチが通る。
その勢いでハッサムが危なげなく火炎を回避する。

「ひひひ……メガヘルガーとハッサム……相性は最悪、賭けなんて成立しないくらいに勝敗は手に取るように分かる……さてこれをどうひっくり返したもんですかねぇ旦那?」
 ▼ 18 nfYyot98RE 18/12/11 20:32:31 ID:18iQU8u6 [17/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「チッ……もっとよく狙え!」

「あくのはどう、連打!」

「つるぎのまい……っ! 舞え! そのステップで躱せ!」

ハッサムは空中で舞い踊りながら華麗に相手の攻撃を躱してみせた。
俺たちの常套手段だった。

「ほう……自身の攻撃を上げつつ回避もこなすとはやりますねぇ旦那の相棒」

「おうよ」

俺はじいさんになんて事ない風に言ってのける。……実際は大の大ピンチだがな。
しかし、こうピンチであればあるほど燃えてきやがる。やはり、俺もギャンブラーである以前に一人のトレーナーらしい。

「かえんほうしゃだ」

間髪入れずに次の攻撃がくる。
メガヘルガーが焼き払うように全面を炎で覆いつくそうとする。
 ▼ 19 nfYyot98RE 18/12/11 20:34:13 ID:18iQU8u6 [18/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「むしくい……! 地面に突き立てろ!」

ハッサムは地面へと右腕を叩き込む。
割れた地面が疎らに隆起する。
簡易ストーンエッジと言ったところか。
それらが炎を防いだ。

「ええいまどろっこしい……とにかくアイツに当てろ! かえんほうしゃ!」

「バレットパンチだ」

先制攻撃がメガヘルガーの顔面にヒットする。かえんほうしゃが阻止された。

「小癪な……かえんほうしゃ、もう一度」

「炎はやべえ、からとにかく躱せハッサム!」

「かえんほうしゃ!」

「バレットパンチで躱しに行け!」
 ▼ 20 nfYyot98RE 18/12/11 20:35:11 ID:18iQU8u6 [19/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「今だ、切り替えろかみくだく!」

今まで遠距離で応戦してきたメガヘルガー。
そいつがいきなりの近距離カウンターを仕掛けてきた。

バレットパンチはヒットした。

だが、咄嗟の切り替えに対応出来ずにハッサムがかみくだくを受ける。

「さむっ!」

「ハッサム!」

がっちりと右腕を噛まれ、動けなくなったハッサム。

不味い……ハッサムは半分動けないのに対し、メガヘルガーはこの状態からも出せるわざがある。

「左でむしくいだ!」

「かえんほうしゃ!」

むしくいを発動するよりも先にメガヘルガーの口からかえんほうしゃがあふれ出る。
チィ……効果はバツグンだ。
 ▼ 21 nfYyot98RE 18/12/11 20:38:23 ID:18iQU8u6 [20/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ぐっ……ハッサム……ッ!」

「ははは、効果はバツグン……致命傷だな? 一方でそちらは攻撃を上げても掠る程度」

「もう気づいてるだろう? この試合が最初から仕組まれてたってことは」

男が余裕綽々ってな感じに言ってくれる。
一連にわいのわいのと騒ぐ外野がうるせえ。

「……あぁ、あんまり考えたくにゃなかったんだがな、やっぱりてめえらグルか」

新人ファイターだってのに特にフューチャーされることもなく、俺に賭けた奴がほとんどいないことからもそれは明らかだった。

俺はチラリとじいさんの顔を見る。
薄気味悪い顔をさらに歪ませていた。

 ▼ 22 nfYyot98RE 18/12/11 20:40:28 ID:18iQU8u6 [21/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ひひひ……ポケモンバトルは目が合った時から始まっている……そうさね?」

「ま、ハッサムを連れ歩いてた俺の落ち度っつうわけか」

ふぅ、とひと息つく。

チラリとハッサムを見る。効果はバツグン、致命傷を受けボロボロになった身体でフィールドに楯突いていた。

「でもまだ敗けてねえぜ」

「ハッサムは……まだ敗けてねえ……!」

メガヘルガーは何食わぬ顔でハッサムを見下ろしていた。

「燃やせ、かえんほうしゃだ」

「もう一度……つるぎのまい」

「終わりだ!」

メガヘルガーがハッサムよりも早く、食らいつき地へと捻じ伏せる。
絶対不可避の状況下での渾身の一撃をもらっちまった。
 ▼ 23 nfYyot98RE 18/12/11 20:41:26 ID:18iQU8u6 [22/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「……ッッ! ハッサムーッ!」

ハッサムのいた場所から黒煙が出ていた。どうなった。ハッサムは!?

メガヘルガーが黒煙から離れる。

ハッサムは……やけどをした身体で、プスプスと黒煙を上げる焼け焦げた身体で……僅かにのみ残る力でそれでもフィールドに立っていた。

そう、立ち上がったのだ。

……感謝しなくちゃな、ハッサムと幸運の女神さんによ。

「耐えた、だと? 馬鹿な……特性サンパワーのかえんほうしゃなんだぞ!?」
 ▼ 24 nfYyot98RE 18/12/11 20:42:51 ID:18iQU8u6 [23/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「よくやってくれたハッサム……! お前の思い、しかと受け取った!」

俺は大きく息を吸い込み吐き出した。
握りこぶしを二つ作る。

「いくぜ俺たちのゼンリョク!」

「あれは……あの構えは……」

俺は大きく両腕で円を描きそして、宙へと何度も何度も正拳突きをした。
すると俺からは不思議な光が溢れそいつは一気にハッサムへと流れ込む。

ハッサムが呆然としたメガヘルガーに見えない程の拳を叩き込む。

「全力無双激烈拳!!!」

俺の掛け声がハッサムの激烈拳を後押しするが如く響いた。
 ▼ 25 nfYyot98RE 18/12/11 20:43:58 ID:18iQU8u6 [24/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
スタジアムが地鳴る。
わなわなと揺れ響いたフィールドは土煙が晴れると共に静まった。

「……ヘルガー!? そんな」

「へっ、持ち物なしなんて……ひとっことも言ってないぜ?」

見るとじいさんがわなわなと震えていた。

「……へ、ヘルガー戦闘不能……よって勝者……」

「ハッサムとギャンブラーの旦那!」

予期せぬ俺の勝利に右往左往会場は沸き立った。
缶を投げ捨てられたり、数少ねえ俺の支持者達からは涙を流して握手をされたりと存分に感謝された。
 ▼ 26 nfYyot98RE 18/12/11 20:45:14 ID:18iQU8u6 [25/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「そうか……お前さん、継承者か」

一連を見ていたじいさんが噛み締めるように言う。
継承者……なんて柄じゃねえんだがな。

「まあ昔取った杵柄よ……っとハッサム!」

ハッサムはその勝利に微かに微笑むと崩れ落ちた。
それはすんででそれを抱き抱えた。

「ハッサム……! ありがとうな」

相棒の大きなハサミを力いっぱい握る。
その赤いハサミにはやけどの跡が伺えた。
それを見ると俺はすぐさまボールへと戻してやった。

 ▼ 27 nfYyot98RE 18/12/11 20:46:34 ID:18iQU8u6 [26/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「チィ……あたしたちのポカですや、まさかそれまでの使い手とは知りやせんでしたぜ……今回は旦那の腕と相棒さんのタフネスに敗けときやしょうかねぇ……」

罵声が飛び交う中、じいさんがしみじみと言って俺に膨らんだ封筒を寄越してきた。

「おうよ……おお! こりゃマジで儲けもんじゃあねえか!」

「旦那……これからはどうするんで?」

「なぁに、今日稼いだ金でこの金で飲んで食ってまた賭けだ」

「そうかい」

「そうだぜ……俺はギャンブラーだからよ」
 ▼ 28 nfYyot98RE 18/12/11 20:47:57 ID:18iQU8u6 [27/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
風の吹くまま気の向くまま……今日も今日とて賭博にささやかな夢を追い生きる。

そんな俺はギャンブラー。

「かぁー! やっぱり勝ったあとの酒は美味えな!」

グビーッと生ハイを一気飲みし、追加オーダーをしつつツマミをたらう。
あー、あとはここにねーちゃんがいりゃ完璧なんだがなぁ。

「はっさむ!」

隣には笑顔で串かつを頬張るハッサム。

「おう、美味いか?」

「はっさむ! はっさむ!」

ハッサムは何度も何度も笑顔で頷いて
見せた。

「そうかいそうかい!」

金と酒と……
まあこいつがいりゃあ……ねーちゃんはいなくてもいいかもな。

相棒と共に……気ままに人生という一大ギャンブルを生き抜いていくぜ俺ぁ。




─了─
 ▼ 29 ワンナ@ふしぎなアメ 18/12/11 23:31:25 ID:Tswsands NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ギャンブラーの手持ちっぽくない性格のハッサムすこ
 ▼ 30 ンシカイオーガ@パワーベルト 18/12/12 18:55:25 ID:ONmUCLHo NGネーム登録 NGID登録 報告
乙!
 ▼ 31 ーケン@プレシャスボール 18/12/17 01:06:07 ID:f0IsEN/Q NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙 です
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