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【1レス目企画】夜桜の誓い

 ▼ 1 oxtmyvjwlY 19/03/21 15:45:55 ID:WNEADoew [1/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


──ここはどこだろうか?

肌寒い感覚が意識を浮上させる

抉れた地面、無造作に投げ捨てられたもう使えないであろうモンスターボール……

どれも全て、見覚えがない

──自分は誰なのか?どうしてここにいる?

必死に思い出そうとしたが、何も思い出せない

記憶の糸はどこかで途切れてしまっていた……


ふと、何かの気配がした

荒れ果てた景色の中で存在感を示す、蕾をつけた桜の木

そのそばに、誰かが倒れているのだ──


 ▼ 2 oxtmyvjwlY 19/03/21 15:46:48 ID:WNEADoew [2/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


「き、君! 大丈夫?」


慌てて声をかけつつ、立ち上がろうとした。

が、力が上手く入らない。

手を付きながらも何とか側に寄る。


「しっかりして! ねえ!」


体を揺するが、何の反応も無い。

周りを見渡してみても、他には誰もいないようだ。

自分が何とかするしかない。


もう一度強く揺する。


自分達しかいない恐怖。

何も覚えていない恐怖。

ここは、どこだ。

そして、君は誰だ。

手がかりになるかもしれないのに。

起きて。

早く。

 ▼ 3 ャオブー@PPかいふくポン 19/03/21 15:47:19 ID:m7zoDoYc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ポケダンかな
 ▼ 4 oxtmyvjwlY 19/03/21 15:47:24 ID:WNEADoew [3/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


「・・・・・・んっ・・・・・・?」


何度も揺すっていると、彼女の目がピクリと動いた。

ビックリして思わず手を止める。


「あ・・・・・・れ・・・・・・?」


口から可愛い声が漏れ出る。


「ここ・・・・・・どこ?」


周りを見渡してから、僕と目が合った。


「・・・・・・あなたは?」



僕は──


答えかけて、言葉に詰まる。

記憶を無くした僕に、答えなどない。


「見たところ・・・・・・ヒノアラシ、じゃないかしら」


そこで初めて、僕は自分の体を見た。

薄黄色の手足。

背中は・・・・・・見えない。


 ▼ 5 oxtmyvjwlY 19/03/21 15:47:52 ID:WNEADoew [4/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


ヒノアラシ「僕、本当にヒノアラシ?」


自分で確信が持てないのが、なんとも歯痒い。



「ええ」


「ところで、私は何に見える?」



君は・・・・・・。

緑と黄色のスカート。

頭には大きな2つの綺麗な花が付いてるよ。


見たままに答える。

じっくり見ても、やっぱり君のことは記憶に無い。


「そう、じゃあきっと」


「私はキレイハナだわ」


そういって、彼女は笑った。


 ▼ 6 oxtmyvjwlY 19/03/21 15:48:20 ID:WNEADoew [5/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


それにしても。

キレイハナも記憶が抜けているらしい。

僕は心底がっかりして、大きな木にもたれて座った。


改めて周りを見渡してみるが、酷い有り様だ。


この木は、街の広場の象徴らしい。

木の周辺は広いスペースが設けられ、

その広場を囲むように、家が建っている。

その家々も焼け落ちて廃墟と化している。


キレイハナ「木は、まだ生きてる」


彼女もぼくの隣に腰かけてそう言った。


キレイハナ「家はこんなにボロボロなのに」


キレイハナ「桜・・・・・・咲いたらきっと綺麗ね」


彼女は立ち上がって、幹に触れた。

その間、僕は落ちていたモンスターボールの1つを拾う。


ヒノアラシ「人、まだどこかにいないかな」


僕の声に彼女は振りかえる。


キレイハナ「探しましょ」

キレイハナ「桜のために、街を復活させたいわ」


馴染みの無い街だ。

でも、僕もそうしたいと思った。


 ▼ 7 oxtmyvjwlY 19/03/21 15:48:53 ID:WNEADoew [6/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


ヒノアラシ「でも・・・・・・」


どこへ向かおうか周りを見渡す。

360度あまり代わり映えのしない、荒れた景色だ。


キレイハナ「あっちに向かって風が吹いてるから、あっち」


そんな理由で、僕らは歩き出す。


ヒノアラシ「モンスターボール、たくさん落ちてた」

キレイハナ「きっと、人同士の争いがあったんだわ」


ぼくは拾った1つを訳もなくいじる。

壊れていて入ってしまう心配はない。


ヒノアラシ「壊れてボールに戻れなくなった皆は、どこに行ったのかな」

キレイハナ「逃げたんじゃない? 」

ヒノアラシ「トレーナーを置いて?」

キレイハナ「ええ。争いをするトレーナーなんか嫌だもの」


僕だったらどうするだろう。

トレーナーに従って戦うか。

反抗して離れるのか。

トレーナーに逆らう勇気なんて、僕には無いだろうな。


 ▼ 8 oxtmyvjwlY 19/03/21 15:49:45 ID:WNEADoew [7/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


街を出ると森だった。

木がたくさん生えていて、遠くまで見えない。


キレイハナ「自然豊かな所なのね」


でも、森は静かだ。

僕らが歩く音、木が風に揺れる音しか聞こえない。


ヒノアラシ「野生のポケモン・・・・・・いないのかな」

キレイハナ「もっと奥に行けばいるかもね」


僕らは奥を目指して歩くことにした。


 ▼ 9 oxtmyvjwlY 19/03/21 15:50:19 ID:WNEADoew [8/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


ヒノアラシ「・・・・・・」

キレイハナ「・・・・・・」



僕らはしばらく無言だった。

思えば僕らは友達でも何でもない。

たまたま桜の近くで一緒に倒れていて。

たまたま2匹とも記憶が無くて。

1匹より2匹の方が安心できる。

それだけの理由で一緒にいた。


ヒノアラシ「ねえ、キレイハナ」

キレイハナ「何かしら?」

ヒノアラシ「記憶を無くす前、僕らは知り合いだったと思う?」


キレイハナは無言で考えていた。

が、すぐに首を縦に振った。


キレイハナ「あんなに近くに倒れてて、無関係だったとは言いにくいわね」

キレイハナ「でも、長い付き合いがあったかどうは分からないわ」

キレイハナ「タイプの相性だって私が不利だし、仲良くなれたかしら?」


ヒノアラシ「もし、同じトレーナーのポケモンだったら?」

キレイハナ「私たちを捨てたトレーナーを心底軽蔑するわ」

ヒノアラシ「そこ?」


 ▼ 10 oxtmyvjwlY 19/03/21 15:51:28 ID:WNEADoew [9/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


僕はここまでキレイハナと歩いてきて、嫌な気分はしなかった。

だから、関わりはあったんじゃないだろうか。

少なくとも、良い方向で。

理由が単純すぎるかもしれないけど。


「お、お前は! キレイハナじゃないか!」


唐突なその声に、僕らは揃って足を止めた。

二人してキョロキョロしていると、右前の草むらが揺れる。

出てきたのは、かなり歳を取ったお爺さんだった。


爺さん「キレイハナ! 無事だったんじゃな!?」


知り合い?

そう聞こうとして、やめた。

記憶が無いことを思い出したからだ。

キレイハナは困った顔でお爺さんを見上げている。

この様子だと、記憶は戻っていないようだ。
 ▼ 11 oxtmyvjwlY 19/03/21 15:51:59 ID:WNEADoew [10/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


キレイハナ「あの、どちら様で・・・・・・?」

爺さん「そんな顔して。怖かったじゃろう? もう大丈夫じゃ」


僕らの言葉は、人間には届かない。

分かってはいるけど、中々に不便だ。


爺さん「そこのいるのはヒノアラシじゃな?」

爺さん「この辺じゃ見ないポケモンだが、お前も大変だったじゃろう」


キレイハナとは知り合いでも、僕は違うのか。


ヒノアラシ「僕ら、知り合いじゃなかったのかも?」

キレイハナ「そうみたいね」


なぜか、少し残念な気がした。


 ▼ 12 oxtmyvjwlY 19/03/21 15:52:28 ID:WNEADoew [11/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


爺さん「あの街は焼けてしもうたが、皆はこっちに避難できとるんじゃ」

爺さん「ほれ、2匹ともおいで」


ヒノアラシ「皆無事みたいで良かったね」

キレイハナ「ええ、そうね」

ヒノアラシ「・・・・・・なんか、冷たくない?」

キレイハナ「だって、顔も浮かばないもの」

ヒノアラシ「会ったら思い出すかもよ?」

キレイハナ「どうかしら」


街のポケモンじゃなかった僕はともかく、

キレイハナは帰る場所が見つかったみたいだ。

いや、まあ僕も置いてもらえるみたいだけれど。


キレイハナだけでも、早く記憶が戻りますように。

そんなことを、こっそり願った。



 ▼ 13 oxtmyvjwlY 19/03/21 15:52:52 ID:WNEADoew [12/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


「キレイハナ!? 無事だったのね!?」

「おお!キレイハナじゃないか! よく生きてたな!」


お爺さんに連れて来られた場所は、森の少し開けた場所だった。

そこには老若男女、たくさんの人が生活している。


キレイハナ「・・・・・・」


急にたくさんの人に囲まれ、キレイハナは困惑している。

それを争いの時からの不安と解釈した人間たちが、

慰めようとご飯を勧めている。


ヒノアラシ「あっ」


僕たち、いつからご飯を食べてないんだろう?

何日間あそこで倒れていたのかな。

そんなことを考える間もなく、僕は空腹で倒れこんだ。

1度意識してしまったら戻れない。


そんな僕を見て、さっきのお爺さんが、僕にご飯を用意してくれた。

街の皆はキレイハナばかりに目が行っているみたいだけれど、このお爺さんは違った。


爺さん「ほれ、お前さんもたくさんお食べ」


この森で採れたであろう木の実がたくさん。

僕はお言葉に甘えてたくさん食べてしまった。


爺さん「ほっほ。良い食べっぷりじゃ」


・・・・・・なんか恥ずかしいな。


 ▼ 14 oxtmyvjwlY 19/03/21 15:53:24 ID:WNEADoew [13/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


キレイハナの方を見ると、もうご飯を食べていなかった。

けれど、やはり人間に囲まれていて大変そう。


キレイハナ「あの、私記憶なくて・・・・・・」

キレイハナ「皆さんのこと分からないんで、その」



必死に説明しているみたいだが、人間はお構い無し。

久々に会えた喜びを全面に出している。


ふとキレイハナがこちらを振り向く。

声は聞こえなかったが、口では、

「なんとかしなさいよ」

そんなことを言っている気がした。


 ▼ 15 oxtmyvjwlY 19/03/21 15:53:51 ID:WNEADoew [14/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


そこへ、人間たちだけでなくポケモンも集まってきた。

ムックルやナゾノクサ、マダツボミたち。

キレイハナは彼らに、僕たちが記憶喪失だと説明する。

すると、キレイハナには悲しそうな目を向け、

僕には不思議そうな目を向けた。

数匹は僕の周りを囲み、物珍しそうに見る。


ヒノアラシ「僕のこと知らない?」


皆一斉に知らないと答えた。


なんだろうこの疎外感。


キレイハナ「残念だったわね」

ヒノアラシ「ねえ、やっぱり冷たくない?」

キレイハナ「あなたもさっき助けてくれなかったじゃない」

ヒノアラシ「それは・・・・・・ごめん」


 ▼ 16 oxtmyvjwlY 19/03/21 15:54:19 ID:WNEADoew [15/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


爺さん「そうじゃ、お前さんら。桜は見たかね」


僕らは同時にうなずく。


爺さん「そうか。どうじゃったか、もう駄目かね」


今度は同時に首を横に振った。


キレイハナ「とても立派な桜よ。まだ蕾だけれど」


そして笑った。

僕や他の人間には冷たいけれど、桜には優しい。

この街で育った、自然が好きなポケモンなんだろう。

言葉は通じなくても、気持ちは通じる。

キレイハナの笑顔を見て、お爺さんの顔も綻んだ。


爺さん「そうか。そりゃ良かった」

爺さん「それにしても、あの火をよく耐えたもんじゃな」


僕も想像してみた。

あの街がほとんど廃墟になるぐらいの火を。

桜が燃えずに残ったのは、きっと奇跡に近い。


 ▼ 17 oxtmyvjwlY 19/03/21 15:56:09 ID:WNEADoew [16/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


「そうだ! 思い出したぞ!」


急に、一人の青年が叫んだ。


「あの火はお前のだろ!!」


そして、僕を指した。


ヒノアラシ「・・・・・・え?」


背筋が凍る。

普段は、というか記憶を無くしてから、

僕の背には火がついていない。

そんなこと、関係ないだろうけど。


「ここは森が近いから、炎タイプなんて滅多にみないんだ」

「お前、ここのじゃなくて、トレーナーのだろ!」


確かに、この森に集まってきたポケモンは僕を知らない。

桜の近くに散らばったモンスターボール。

僕が・・・・・・燃やしたのか?

この若者の発言で、周りの人の目がみるみる厳しくなった。

僕は恐怖で体が動かない。

記憶はない。

だから、やってないとは言い切れない。

ここに来ちゃいけなかったんだ。


若者が近づいてくる。

逃げなきゃ。


さっきまで動かなかったのが嘘のように、軽く感じた。

僕はその場から必死で逃げ出した。


 ▼ 18 oxtmyvjwlY 19/03/21 15:56:40 ID:WNEADoew [17/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


ヒノアラシ「はあ・・・・・・はあ・・・・・・」


息が詰まって、僕はゆっくり停止した。

始めは来た道を戻ろうと思っていたけれど、

飛び出した瞬間に道を見失った。


ヒノアラシ「ここどこだ・・・・・・?」


記憶が無いのに、分かるはずもない。

僕は半分諦めた気持ちで周りを見渡した。

鬱蒼とした木々が立ち並んでいる。

そんな木々の合間から、見えた。


あの桜の木が。



ヒノアラシ「そんなに遠くまで来てなかった・・・・・・」


安心して、僕は座り込んだ。

息を整える。


とりあえず、あの桜を目指そう。


 ▼ 19 oxtmyvjwlY 19/03/21 15:57:08 ID:WNEADoew [18/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


ヒノアラシ「もし、僕があの街を燃やしたとしたら」


歩きながら考える。

一直線に桜を目指して。


もし、僕が燃やしたのなら。

桜が無事なのはどうして。

なぜ、僕は燃やそうとした?

そして、僕はどこから来た?


やっぱり有力なのは、トレーナーのポケモン説。

この街出身じゃないトレーナーがここに来た。

若者も言っていたし、ほぼ確実だ。

じゃあ、トレーナーの目的はなんだ?


ヒノアラシ「・・・・・・」


何も思い付かない。

人の考えることは分からないな。


でも分かることは。


ヒノアラシ「トレーナーに逆らえない弱いポケモンってこと」


自分にがっかりした。

何やってんだよ、記憶を無くす前の僕。


 ▼ 20 oxtmyvjwlY 19/03/21 15:57:51 ID:WNEADoew [19/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


桜の下に着く頃には、辺りはすっかり赤くなっていた。

夕方だ。


僕は桜にもたれて座り、また考えを巡らせる。


これだけモンスターボールが落ちてたら、

トレーナーは一人じゃなかったのかも。


とか。


この中に、僕のボールもあるんだろうな。


とか。



無駄な考えをいくつも展開しては、

結局「わからない」と途中で考えを打ち切る。



ヒノアラシ「寂しいな」


キレイハナは、今頃どうしているだろう。



 ▼ 21 oxtmyvjwlY 19/03/21 15:58:31 ID:WNEADoew [20/32] NGネーム登録 NGID登録 報告




キレイハナ「・・・・・・やっぱりここね」


ヒノアラシ「うわっ!?」


本気でビックリした。

体が震え上がり、まだ心臓が激しく鼓動している。



キレイハナ「あなた、ご飯はどうするつもりだったの?」

キレイハナ「というか記憶喪失の私を置いていくなんて」

キレイハナ「あなたの方がよっぽど冷たいわよ?」


彼女はかごに木の実をたくさん持っていた。


ヒノアラシ「これ・・・・・・僕のために?」

キレイハナ「私のもあるけど?」

ヒノアラシ「ああ、そっか、ごめん」


彼女は隣に座り、僕に木の実を1つくれる。


ヒノアラシ「美味しい」

キレイハナ「それは良かったわね」


 ▼ 22 oxtmyvjwlY 19/03/21 15:58:59 ID:WNEADoew [21/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


ヒノアラシ「でも、皆を置いてきていいの?」

キレイハナ「構わないわ。どうせ知らない人たちだもの」

キレイハナ「お爺さんが、ここまでの道を教えてくれたわ」


ついでにもう1つ頬張る。

歩いてきたからお腹が空いた。


キレイハナ「・・・・・・本当に美味しい」

ヒノアラシ「味わっても、記憶はまだ?」

キレイハナ「まだね。そもそも戻るものなのかしら?」

ヒノアラシ「さあ・・・・・・?」



僕らはしばらく無言で木の実を食べ続けた。


 ▼ 23 oxtmyvjwlY 19/03/21 15:59:34 ID:WNEADoew [22/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


お腹も膨れてきて、木の実を取る手が止まった。


ヒノアラシ「キレイハナも、僕がやったと思う?」


キレイハナ「どうかしら。あなたにそんな力があると思えないけど」



もうすぐ日が沈みそうだ。

今日は色々あって疲れたし、もう寝ることにした。

桜に寄り添いながら。



 ▼ 24 oxtmyvjwlY 19/03/21 16:00:04 ID:WNEADoew [23/32] NGネーム登録 NGID登録 報告




「さあ、今夜こそこの桜を切り倒してやろうじゃねえか」


「もう、失敗は許さねえぞ?」



「・・・・・・あ? 何か居やがるな」


「あれは」


「ヒノアラシじゃねえかあああああ」


「てめえ! よくも邪魔してくれやがったなあ!?」




体を掴まれる感覚で目が覚めた。

目の前に知らない人の顔。


ヒノアラシ「えっ、な、何!?」


男「てめえが邪魔しなけりゃ、わざわざ出直す必要も無かったんだよ!」


もの凄い重力を感じて、僕は投げ飛ばされた。

痛みで動けない。



 ▼ 25 oxtmyvjwlY 19/03/21 16:00:38 ID:WNEADoew [24/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


ヒノアラシ「キレイハナ!」


まだ寝ているであろう彼女に声をかける。

男はキレイハナにも近づこうとしている。


ヒノアラシ「駄目っ!」


自然と技が出た。

かえんほうしゃだ。


男「あっつ!?」

男「野郎共、やれ!」


男の背後に控えていた人たちが、次々とポケモンを繰り出した。


僕は慌ててキレイハナに駆け寄る。

痛みなど忘れていた。


キレイハナ「な、なんなのよ、こいつら?」


彼女ももう起きていた。


男「また邪魔するか、お前ら」

男「・・・・・・やれ」


ポケモン達が構えた。


僕は1歩前に出る。

僕が・・・・・・


僕が、守らなきゃ。

桜も、キレイハナも、この街も。


 ▼ 26 oxtmyvjwlY 19/03/21 16:01:12 ID:WNEADoew [25/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


僕はとりあえずえんまくをした。

だが、トレーナーもポケモンも全く動じない。


男がポケモン達に目配せすると、一気に襲ってきた。

僕はかえんぐるまで距離を取る。


キレイハナは、桜の近くで震えていた。


しかし、体が小さいポケモン一匹でかなうはずもない。

僕はすぐに囲まれて、ぼこぼこにされてしまった。



男「へっ・・・・・・今度こそちゃんとお仕置きしてやらあ」


僕の周りを囲んでいるポケモン達が少しずつ近づいてくる。

かなり近くまできた時、背中が熱いことに気がついた。


僕の背から、大きな炎が出ている。


「もうか」が発動したのだ。


僕は周りに大きな炎を繰り出す。

囲んでいたポケモン達は慌てて遠ざかった。

炎の勢いは止まらない。

僕の全身が炎を纏う感覚。


そして、


「「思い出した・・・・・・!」」


2匹同時に呟いた。



 ▼ 27 oxtmyvjwlY 19/03/21 16:01:52 ID:WNEADoew [26/32] NGネーム登録 NGID登録 報告




僕はこの男のポケモンだった。

そして、この街を潰す目的でここに来たのだ。


具体的に何がしたかったのかは知らされなかった。

ただ、桜を切り倒すと聞いた時、僕は嫌になった。


大勢繰り出されたポケモンの中に、僕もいた。

しかし、僕は街を襲わなかった。

反抗したのだ。


しかし全く敵わず、体力はどんどん減少。

そして、「もうか」が発動した。

急な力の増大に我を失った僕は、

ポケモン共々街を焼きつくしたのだ。


完全に僕のせいだった。



 ▼ 28 oxtmyvjwlY 19/03/21 16:02:33 ID:WNEADoew [27/32] NGネーム登録 NGID登録 報告



キレイハナ「あの日、あなたは守ろうとしたわ」


炎の中で、澄んだ声が聴こえる。


キレイハナ「今度は・・・・・・ちゃんとやんなさいよ」



僕はまた思い出していた。

どうして桜だけ燃えなかったのか。

それは、キレイハナが必死に守っていたからだ。

燃え拡がる炎の中、渾身の技で

桜だけはと必死で炎を遠ざけていた。




もう、そんな目には会わせない。

僕はトレーナーに向き直った。

今なら勝てる。

我を失っていない今の僕なら。


 ▼ 29 oxtmyvjwlY 19/03/21 16:03:12 ID:WNEADoew [28/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


ヒノアラシ「かえん・・・・・・ほうしゃ!」


特大の炎がポケモン達を襲う。


キレイハナ「私も加勢するわ。 はなふぶき!」


桜を守っている時に使っていた技だ。

すぐに周囲が花で覆われる。


男「ぐっ・・・・・・これじゃあ前と同じだ!」


男「退散だ!」



ヒノアラシ「させない! もう2度と来させるもんか!」

ヒノアラシ「フレアドライブ!」


───────


────


──



 ▼ 30 oxtmyvjwlY 19/03/21 16:04:10 ID:WNEADoew [29/32] NGネーム登録 NGID登録 報告



気づくと、トレーナー達は居なくなっていた。


キレイハナ「あら、起きたの? 記憶は?」

ヒノアラシ「うん・・・・・・大丈夫」


でも、何でまた倒れてるんだ?


キレイハナ「体力少ないのにフレアドライブって、本当ばか」


そうか、反動で僕まで倒れてたのか。


ヒノアラシ「トレーナー達は!?」

キレイハナ「あなたの技で逃げてったわよ」

キレイハナ「ポケモン達が皆倒されて、ね」


そっか。

僕、ちゃんと守れたのか。


ふと心地よい風が吹いてた。

そして、目の前に桜の花びらが1枚。


ヒノアラシ「桜・・・・・・?」


僕はビックリして桜の木を見上げた。


まだ蕾だったはずの桜が、咲いていた。


 ▼ 31 oxtmyvjwlY 19/03/21 16:04:49 ID:WNEADoew [30/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


キレイハナ「きっと、炎で気温が上がったからだわ」


そんなことがあるのだろうか。

でも、実際に桜は咲いている。

夜桜だ。


キレイハナ「やっぱり、咲いたら綺麗ね」


優しい目で桜を見つめる。

守れて良かったと、本気で思った。



ヒノアラシ「僕さ───」


キレイハナ「ん?」


ヒノアラシ「これからも守り続けるよ。この桜を」


ヒノアラシ「そして、君を」


ヒノアラシ「街を復活させて、皆で桜を見たい」


ヒノアラシ「・・・・・・どうかな?」


キレイハナは冷静な顔で僕の話を聞いていた。

そして、にこりと笑う。


キレイハナ「いいんじゃない?」


「「夜桜に誓って」」




 ▼ 32 oxtmyvjwlY 19/03/21 16:05:26 ID:WNEADoew [31/32] NGネーム登録 NGID登録 報告






あの日から、5年が経った。

僕はマグマラシとなり、今もこの街に住んでいる。


マグマラシ「今年も咲いたね、桜」

キレイハナ「私が世話してるのよ。当然でしょ?」


そうだった、と僕らは笑った。


5年間で、この街はかなり復旧した。

建物が耐火性になった。

それでも都会には成りきらず、自然はそのままだ。


キレイハナが僕の側に居てくれたお陰で、

僕はこうして、街のポケモンとして生きていける。



マグマラシ「これからも、桜が咲き続けますように」


キレイハナ「これからもずっと、ね」






【1レス目企画】夜桜の誓い 〜完〜



 ▼ 33 oxtmyvjwlY 19/03/21 16:06:19 ID:WNEADoew [32/32] NGネーム登録 NGID登録 報告



当SSは、1レス目企画(http://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=949147)に参加しています。

ポケモンBBS、5周年おめでとうございます!!



 ▼ 34 SS主催者◆nkH/UxNEwQ 19/03/21 20:14:11 ID:vOkEFhrQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
こちらもポケモン同士のSSでしたね
ボロボロの街、人間同士の争い
キレイハナの独特のキャラは読んでいて微笑ましく感じました
また、ヒノアラシが記憶を喪失する前の出来事やキレイハナが注目を浴びる理由を考えたりするところでは、楽しませていただきました
ヒノアラシ、かっこいいですね
それによって悲劇が起こってしまいましたが……
お疲れ様でした!
 ▼ 35 ガハガネール@きのみプランター 19/03/28 10:42:16 ID:XP.6vA6s NGネーム登録 NGID登録 報告
乙です
綺麗なお話だった
 ▼ 36 ンメル@ダイゴへのてがみ 19/03/28 16:26:01 ID:lmK2abFQ NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
おつ
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