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SS

【SS】殺さずの混色

 ▼ 1 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 15:32:54 ID:XSWUElLY [1/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
『色』は、

お互いに助け合い、美しくなる。

それは『人間』も同じ。

どの色を殺しても駄目なのだ。


──どの色も、生かさなければ。


                 - 武者小路実篤 -
 ▼ 2 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 15:33:15 ID:XSWUElLY [2/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
──ハァ、ハァ……。


「奴がいたぞ、捕らえろッ!」

「生かすワケにはいけない、必ず……仕留めなくてはッ!!」


アローラ地方 ウラウラ島のマリエシティ。
いつもならばその街は、カントーやジョウトだとかいったオリエンタルな雰囲気を醸し出し、そのため観光客や地元民が足を運び、大いに賑わっているのだ。

……しかし、今はそうではない。

既に、時刻は夜の2時を回っている。
照らす役目を終えた太陽は朝の始まりを静かに待ち侘び、欠けた月が寂しげに夜天に佇む、そんな光景。


「しつこ過ぎるぞ……諦めてくれ」


そして謎の男たちに追われているのは、これまた謎だらけの男。
黒帽子と黒いコートを身に纏い、その帽子からは、黄緑色の縮れた前髪を覗かせている。


《フリソス》


それが、彼の名前であった。
一部の“輩”に広くその名が知られつつある、彼の名前であった。
 ▼ 3 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 15:33:42 ID:XSWUElLY [3/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「おい、出番だぞ……相棒」

フリソス、一個のモンスターボールを懐より取り出す。
どこかしら幾何学的な装飾が施された、そのボールからは……。


ポ ン ッ !


「……行けっ、ズガドーン!」

『ボッボボーママッシュッ!!!』

奇怪な鳴き声を唸らせ、その細身の、まるで道化師のような風貌のポケモンが、姿を現した。

「お前たちはなぜ、俺を追いたがるんだ?」

「UB(ウルトラビースト)を繰り出したぞ……『Fall』めッ!!」

誰もフリソスの疑問には応じず、一斉にポケモンを繰り出し臨戦態勢に入る。

「『Fall』、か。何と呼ばれようが別に構わないし、その意味も知らんが……。聴くたびに感じるのは、あまり良い響きじゃないなってことだ。……“シャドーボール”ッ!!」

フリソス、ズガドーンに指示を出す。
 ▼ 4 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 15:34:02 ID:XSWUElLY [4/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
『マーママッ……スママーシュ!!』

ズガドーンの掛け声と共に、世の怨念が篭ったかのような黒色の念弾が、“輩”目がけて発射された。

「迎え撃て、ラッタ!」

「交わして奴に“かぜおこし”だ、ピジョン!」

流石にこの程度の攻撃では“輩”は怯まず、各々のポケモンに指示を出すが。


……コロ、コロ…………。


「ん、なんだこりゃ?」

「ボール、いや……これは、今のUBの……と う  ぶ」



 ボ オ ォ オ ン ッ ! ! !



「!!!?」


しかし突然に、その爆発は起こったのだ。
 ▼ 5 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 15:34:22 ID:XSWUElLY [5/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「“ビックリヘッド”」


フリソスが、その技名を口に出す。

先程の“シャドーボール”は、この技を繰り出すための囮である。
“輩”が気を取られている内に、ズガドーンの頭部を“輩”の元に転がし、爆破させたのだ。


『マァボー……』

「そうだな、あまり連続してこの技は使えない。……さぁ、退こうッ!!」


──バササッ。


「うぅ……。鳥ポケモン……逃げられた、か……」

「我ら『RRR』をまたもや出し抜くとは……クソッ、“ボス”に報告だ!」


数刻も経てば また太陽が昇り、一日の始まりを告げるだろう。
月は役目を一旦終え、また、夜空に輝く。



……果たして“太陽”や“月”は、“彼ら”を照らしてくれるのだろうか。
 ▼ 6 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 15:34:42 ID:XSWUElLY [6/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アローラ有数の都市であるカンタイシティでは、社会の出来事の様々な報道・批判が連日飛び交う。
そして今、人々の注目を惹きつけている話題がある。

……それは、かつてカントーの某企業を占拠したとされる、ポケモンマフィア ロケット団。
とあるトレーナーによってその野望は阻止されたハズだが、組織の残党一派が団を再編し、今度はアローラ地方に宣戦布告を行ったのだ。


《我らは、『R(リボーン)R(レインボー)R(ロケット団)』! メレメレ島を RRR に明け渡せ!! さもなくば……》


「さもなくば? なんだと言うのだ……クソッ!」

……その赤髪の青年は、眺めていた新聞を握りしめ、突然にも口調を荒げた。

「相棒、君はロケット団の話題になると感情的になるな。……君の境遇はわかるが……」


青年を相棒と呼んだのは、彼とは対象的な年輩の男性。
常夏のアローラにも関わらず 薄茶色のコートを身に纏い、その腕にモーモーミルクとアローラ名物のマラサダを抱えている。少し昔の刑事風な出で立ちだ。


「あぁ、“ハンサム”さんよ。アンタには分からないだろうさ」

「……“ダンディ”」

「あと、そのコードネームで呼ぶなッ!!」

顔を赤らめ、青年は再度 口調を荒げる。
 ▼ 7 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 15:35:04 ID:XSWUElLY [7/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「しかし、あの“事件”から……ちょうど5年だ。そしてそんな磁気に、またもやRRR……いやロケット団……」

「あぁ、『嫌な予感』……ベタだけど、な。アイツらはこの5年を節目に、このアローラで何か しようと企んでいる……」


赤髪の青年と年輩の男性は、共に『国際警察』のメンバーだ。

年輩の男性のコードネームは、“ハンサム”。自称だが、皆がそう呼んでいるから……だとか。
青年の方のコードネームは……先程の通りである。ハンサムが命名したらしい。


「……決して許すワケには、いけない」

ハンサムは、古びたモンスターボールを握りしめる。

「そうか。アンタの相棒も……あの事件の被害者だったよな」

「あぁ。殉職だ。二階級昇進さ。私より、お偉い立場になってしまった──」


“相棒”……。
そのモンスターボールは、かつてハンサムのポケモンがそこに入っていた、いわば形見なのだ。


「……ハンサムさん。ちょっと休もうか。ほら、そこに喫茶がある。それにあまりプンプンと警察のオーラを醸し出していても、街の住人や観光客に引かれるぜ」

「お、おぉ。済まない。私は、そんなに力んでいたか……」

(ポケモンを持たないアンタを護ることも、俺の役割だからな)
 ▼ 8 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 15:35:28 ID:XSWUElLY [8/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そして二人は喫茶にて一息つき……。


「この事件も、気にならないか?」

青年が先程くしゃくしゃにした新聞を広げ、ハンサムは青年に言った。

「ウラウラのマリエで、深夜に謎の爆発音……」

「まぁこれも、ロケット団による仕業かもしれないが……何か、引っかかるな」

「あぁ。奴らが何のメリットもない行動をわざわざ起こすとは考えにくい」


そんなやり取りを、二人がしていた時だった。


「ん、ハンサムさん。大事なボール……落としてるぜ」

「む……?」


二人が座るテーブルの下に、一個のモンスターボールが転がっている……。


「いや、私はちゃんと持っている。……誰かの忘れ物ではないか?」

「その誰かには悪いが、ちょっと、開けてみようか……」


ポ ン ッ !
 ▼ 9 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 15:35:52 ID:XSWUElLY [9/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
『ドダァーーーッ!!』


「ウオォッ……!?」

「このポケモンは……ドダイトス……?」


ボールの中から表れたのは、威勢の良い鳴き声を挙げる巨大なポケモン。
これはまた珍しいポケモンだな、と。青年が思った時。


「おじさんたち、観光に来たのー?」


「!!」


二人はその声の方を、見上げる。
そう。見上げたのだ。……ちょこんとドダイトスの甲羅に、その声の主は腰掛けていた。


「このアローラ……案内しよっか? でも値段は張るよー。ね、“ヴァース”♪」

「君は……」


声の主は、一人の少女だった。
齢は10歳前後といったところだろうか。

どちらかと言えば痩せ型の体型で、白のハットとワンピースの服装。無邪気な瞳をこちらに向け、おどけたようにニコリとはにかむ。幼いながらに、整った顔つきだ。
銅色掛かった可愛らしいショートヘアは、ふんわりと風でたなびいている。
 ▼ 10 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 15:36:15 ID:XSWUElLY [10/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「……君、いつから」

ハンサム、一番の疑問点を彼女に問うが。

「“どうちゃん”って、呼んで」

「え……?」

二人揃って言葉を詰まらし。

「髪の毛が銅色だから、どうちゃん。ま、それだけだけど……。ほら、お互いにさ、まだ何もわかってないワケだし! ニックネームで呼び合うのが、友好を深めるのにもいいかなー……って!!」

「はぁ……」

頷くことしか出来なかった。

「じゃ、じゃあ私たちも……。私はハンサム」

「俺は、ダン……いや、シルバーだ」

「……わぁ! もうニックネーム、考えてくれたの?」

「い、いや、俺のシルバーってのは、本名だけど」

そして彼女のペースに翻弄される男たちである。

「そ、それでは ど、どうちゃん……。私たちは『国際警察』の者なのだが……」

「けいさつ……?」


……その時。
彼女の朗らかだった表情が、何故か、曇った。
 ▼ 11 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 15:55:03 ID:XSWUElLY [11/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
(ハンサムさん……?)

おいおいこんな初対面の少女に、突拍子もなく警察だと打ち明けるなよと思う。しかも“国際”……そんなのいきなり信じられないだろう。
シルバーは危惧する。

「私たちは今、RRR なる組織を追っている。新聞……名は知っているだろ? しかし今、奴らの居場所の手がかりは……全くと言っていい程 0 なんだ」

「……こくさい、けいさつ」

「なにか知っていれば……どうちゃん、教えてほしいんだ」

(あーあー)


ほら見ろ、“知らないよ”って顔で、まるで『怪しげな性癖もち』で『ハァハァ言ってる変態男』を見るような目つきになっているじゃないか。

こんな所でこの少女に通報でもされて、変に騒ぎでもなったらどうするんだ。


「知ってるよ、ロケット団のこと」


「!!」


しかし“どうちゃん”の返答は、そんなシルバーの心情に反していた。


「知っているのか……どうちゃん! 何でもいいのだ……些細なことでも、私たちに教えてほしい──」

「……でも、ダメ」

「え……?」
 ▼ 12 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 15:55:19 ID:XSWUElLY [12/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「アタシ、いや、アタシとヴァースは……あ、ヴァースってこのドダイトスのことね……。警察の人、キライなの」

『ダァ……』

ヴァースもまた、同調するかのように鳴き声を挙げる。

「そ、そう、か……」

「……行こうぜ、ハンサムさん」

──二人は会計を済ませ、また、先程の席へと戻る。

「あ、あぁ……じゃあどうちゃん、私たち……は……。
 ……え?」


声を掛けようと、少女とドダイトスの方を見ると……。
そこにはもう、彼女らの姿は無かったのだ…………。


「既に、立ち去ってしまったか……」

「もう俺たちに会いたくないってことなのかもな」

「私はただ、警察だと打ち明けただけなのだが……」


この仕事は些細なことであっても、気に病むことばかりだ。しかし、そこで挫けていては、精神的に参ってしまうぞ。
難しくは考えないこと、敢えての『記憶力の欠如』も、この仕事……警察には、大切なのだよ。


(ハンサムさん、アンタが俺にそう言ってくれたんだぜ。しっかりしろよな)

シルバー、ハンサムの肩に手をポンとやる。
そして二人は、カンタイのとあるホテルへと入室した。
 ▼ 13 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 15:55:45 ID:XSWUElLY [13/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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「俺、ただ、その……『フリソス』って男に頼まれて……。金を渡されて……船に。客の情報……漏らすワケに……は」

「だってさ、“エゾ”」

「そうなの、“ギグ”」


少し前。ウラウラ島 マリエシティの船場にて、状況は動いていた。
とある傷だらけの船乗りらしき男が、三人の男女に囲まれている。


「エゾにギグ。コイツがフリソスを船に乗せ、ウラウラから逃走させたんだってことはわかるな。でも、『今はヤツはどこだ?』とか、『他に仲間はいたか?』とか、ありきたりな質問をするのはムダだから、やめろよな」


エゾと呼ばれたのは、黒ずくめの衣服を纏った少年。一方のギグもまた、同じような出で立ちの少女。
彼らの衣服には、『R』の装飾が施されていた。

二人の顔は良く似ている。なぜなら、二人は双子の姉弟なのだ。


「俺たち“RRR”の下っ端では、奴を捉えるのは無理だった……。ならば、俺たちが直々に動く他にないだろう。あぁ面倒くさい」


エゾとギグに語りかけているのは、強面の男性だ。
ギョロりとした目つきをサングラスの奥から覗かせ、オールバックの黒髪を手で整える。黒の迷彩柄を主とした服装であった。


「だから、このRRRの暫定首領“バーベナ”が、テメェ如きに直々に質問をしてやるんだ。……『死にたくないだろ?』」

………
……
 ▼ 14 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 15:56:01 ID:XSWUElLY [14/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
《……》


事実上の拠点であるホテルにて、ハンサムとシルバーは、“国際警察”の指示を受けることとなる。
指示は、ビデオテープとして郵送されていた。……が。


「このビデオ……何も映らないのだが」

「からかっているのだろうか……。お偉い方々は、何も手かがりがないというこちらの事情を知っているのだろうか……?」

「何も知ってなどないだろうさ。このヤマが成功すりゃあ最低限の報酬を、失敗すりゃあクビを刎ねればいいだけなんだろ?」

「あまり目上の者を悪く言うべきではないぞ」


二人が不可解に感じていた、その時。


《ピンポーン……》


「ん……?」

……部屋のインターホンが鳴る。

「おいおい、俺たちの居場所を知ってる奴なんて……」

「シルバー、ポケモンを繰り出しておけ……」


敵かもしれない。
二人は用心しながら、扉を開けた……。
 ▼ 15 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 19/06/13 15:56:18 ID:XSWUElLY [15/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「やっ、お二人さん!」

『ドダ〜』

「おいおい、お前は……」


扉の前に居たのは、あの喫茶での少女“どうちゃん”。
ついでに、ヴァースも……。少女は案の定、ヴァースに乗っている。


「なぜ、ここが」

「さっきはごめんねー。アタシ警察は嫌いだけど、あなたたちのことはなんだか、好きになれそうな感じだったからさー」

「君は……情報を提供しに来てくれたのか? そしてなぜ君は、警察を嫌っているのだ?」

「……」

少女、一度 口をつぐむが。


「いいよ、話したげる……アタシは──」


「えっ……?」


二人とも、その先の“告白”に、唖然となる。
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