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レッド「メガシンカ……か……」ミヅキ「余っちゃった」

 ▼ 2 mTQB7XkZdk 17/08/14 01:06:03 ID:U8HXovp2 [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
ボールを握り呼び掛け、カルムはニンフィアを戦闘から離脱させた。

「よし!」

ニンフィアでは現状、ボスゴドラに太刀打ちすることは出来ない。

かといってエーフィを以てしても、ボスゴドラ相手では相性が悪すぎる。

だが、露骨にボスゴドラへの対抗策を打って出ても、その対抗策の対抗策をアイリスに後だしされては無意味だ。

ここは、ボスゴドラに"程よく善戦できる"ポケモンを出すのが吉とカルムは知る。

思考の末、カルムは繰り出した。

「いけ!」

「"ゲッコウガ"!」

小さなボールから解き放たれる一匹の忍者。

細身の蛙のような姿のそのポケモンの名は"ゲッコウガ"という。

"みず"と"あく"タイプを持ち、俊敏な動きで天地を巡って敵の目を攪乱する。

特筆すべきは、カルムのゲッコウガが所持する特性・"へんげんじざい"だ。

"へんげんじざい"は、自分が出した技のタイプに自分が"なる"というもの。

例えばゲッコウガが、"こおり"の"れいとうビーム"を使ったとする。
 ▼ 3 mTQB7XkZdk 17/08/14 01:06:50 ID:U8HXovp2 [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
するとそのゲッコウガのタイプは、技発動時に"こおり"タイプになるのだ。

タイプ一致によるダメージの上昇量は侮れない。

上手く使いこなせれば、かなり強力な一体だ。

「ゲロォォッ」

「ゴォォッ」

青き忍が、鋼の巨兵・ボスゴドラと相対する。

が、ボスゴドラの目は未だ泥にまみれ塞がったままであった。

「……ゴォォッ!」

「落ち着いて、ボスゴドラ」

アイリスの宥める声によって、なんとか彼はまだ平静を保てているらしいが。

奪われた視界、眼前に広がる暗黒の中に一匹取り残されてしまったボスゴドラは既にパニック寸前。

敵を捉えることができず、もどかしいという思いに悶えているようである。

(ナイスだぜレッド、エーフィ!)

パートナーが作ってくれたこの好機を、カルムは無駄にはしない。

「ゲッコウガ、ボスゴドラに"ハイドロポンプ"!」
 ▼ 4 mTQB7XkZdk 17/08/14 01:07:42 ID:U8HXovp2 [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ゲロッ!」

好きだらけの怪物に、激流の砲撃・"ハイドロポンプ"をお見舞いする。

"みず"の中でもかなりの高威力を誇るこの技で、まずは先制ダメージを狙う。

「ボスゴドラ、横に体をズラして!」

「ゴォッ」

対してこの技を食らって欲しくないアイリスは、"避けろ"とは言わずにただ横へ移動しろとだけボスゴドラに伝えた。

視力を失っている今のボスゴドラに回避を指示しても、どこから来るのか分からない攻撃など避けようがない。

だが、移動するだけなら彼にも出来るハズ。

……なのだが。

「トロいんだよ!」

「ゲロッ!」

アイリスはこの時、甘く見すぎた。

ゲッコウガの"ハイドロポンプ"を。

そう。

"移動するだけ"で避けられるなら……きっと、誰も苦労はしないのである。
 ▼ 5 ンプラー@ピーピーマックス 17/08/14 05:46:16 ID:iIG9ue6w NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 6 クロー@サーナイトナイト 17/08/14 06:55:56 ID:FGqzH/gE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
次スレきてた!
支援
 ▼ 7 mTQB7XkZdk 17/08/15 02:55:29 ID:gRk0IoFw [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……ゴォォォッ!!?」

腐ってもチャンピオン、そのポケモン。

そんじょそこらのゲッコウガとは鍛え方が違う。

彼の放つ"ハイドロポンプ"の速度に、ただでさえ鈍足なボスゴドラが加速のない単なる移動で避けられる訳が無かった。

が、この"ハイドロポンプ"の直撃の後。

「くっ……流石ねっ」

「でも!」

アイリスは、不敵な笑みを浮かべる。

"何がおかしい"と、目元を強ばらせたカルム。

ふと彼は、ボスゴドラの方に目をやる。

すると。

「……ゴォォッ!」

ボスゴドラの目を覆っていた泥が、先程の水圧砲によって綺麗さっぱり剥がれ落ちていた。

水浸しになった鋼の装甲には、一点の汚れもない。

アイリスの笑みの理由は、これだった。
 ▼ 8 mTQB7XkZdk 17/08/15 02:56:07 ID:gRk0IoFw [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
ボスゴドラは"ハイドロポンプ"の痛みと引き換えに、鮮明な視界を取り戻したのである。

「ゴォォッ!!」

忌まわしき黒の世界に別れを告げたボスゴドラは、非常に晴れ晴れとしていた。

気持ちの昂りは即ち、士気の高揚。

カルムとしては、ダメージこそ与えられたが複雑な所だろう。

だがどの道、あの泥は戦いの中でいずれは剥がれ落ちる脆い妨害策。

その時期が早かっただけ……そう考えれば、然程気落ちはしない。

寧ろ、ここからだ。

ここから今の良コンディションのボスゴドラを圧倒すれば、アイリスの余裕を一気に崩せる。

カルムは畳み掛けを狙う。

(一気に決めるぞ!)

「ゲッコウガ、"みずしゅりけん"!」

「ゲロッ!」

ゲッコウガの放つ水の忍法・"みずしゅりけん"。

両手を重ね水を集約し、手裏剣のように鋭利な投擲武器をその水にて作り出す。
 ▼ 9 mTQB7XkZdk 17/08/15 02:56:49 ID:gRk0IoFw [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
それを、数回に渡って敵に連射。

手裏剣が、水しぶきを撒き散らしながら宙を走ってボスゴドラとの距離を食らっていく。

「ゴォッ!?」

一撃目。

「ゴォァッ!?」

二撃目。

「ゴォォォォァッ!!?」

三撃目。

「まだまだ!」

「ゲロゲロォッ!」

手裏剣の怒濤のシャワーを、ゲッコウガは容赦なくボスゴドラに撃ち込んでいった。

「ゴォォォッ!!」

一つ一つの威力は大したことなくとも、塵も積もれば山となるとはよく言ったものである。

蓄積される小さなダメージは、確実にボスゴドラの体力を削り取っているのだ。

だが、ボスゴドラとて鉄壁の守りを誇るポケモン。
 ▼ 10 パー@ペアチケット 17/08/15 02:58:47 ID:g6bKhK6E NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
おおおお!来たぜ
大支援
 ▼ 11 ラスル@みずたまリボン 17/08/15 08:19:22 ID:yoYtdo1I NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 12 ンダース@レインボーパス 17/08/15 13:13:22 ID:olvHt6D6 NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 13 Hope◆SCP948ZBFs 17/08/15 13:40:44 ID:XrUuTPdQ NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 14 mTQB7XkZdk 17/08/16 02:48:25 ID:2IBzt2t2 [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
ここで耐え抜かねば、いつ耐え抜く。

この程度の攻撃など無にしかならんとばかりに、ボスゴドラは徐々に前進を始めた。

「いいよっ!ボスゴドラ!」

「ゴォッ!!」

アイリスが見惚れる程の、逞しい行進である。

対してカルムからしてみれば、厄介と言う他ない。

(ジワジワ攻めてるだけじゃ、何時倒せるか分かったもんじゃないな……)

焦るのは愚作だが、かといってモタついてても仕方がない。

ここはやはり、隙を見て一発デカいのをかました方が良いだろう。

「ゲッコウガ、攻撃やめ!」

「ゲロッ!」

カルムの指示に応え、ゲッコウガは"みずしゅりけん"の猛攻をピタリと止めた。

「そこ!」

と、アイリスはそれを隙と見なす。

「ボスゴドラ、"のろい"!」
 ▼ 15 mTQB7XkZdk 17/08/16 02:49:54 ID:2IBzt2t2 [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ゴォッ」

アイリスの指示、しかしそれは攻撃の一手ではなかった。

"のろい"とは、使用者にメリットとデメリットの両方を与える補助技の一種である。

まずメリットは、"こうげき"と"ぼうぎょ"の上昇。

そしてデメリットは、"すばやさ"の降下。

要するに、動きが更に鈍くなる代わりに力と装甲をより強めてくれるという訳だ。

この技は、元々が鈍足なポケモンが使うと効果的とされる。

(これで、奴の一撃が余計に重くなったって訳か)

だが、カルムに動揺の色は無い。

(ま、当たらなけりゃ同じだ)

(それに、"ぼうぎょ"も上がったところで俺のゲッコウガの特殊技の前じゃ意味が無えしな)

"ぼうぎょ"のステータスは、相手の物理攻撃にしか作用しない。

特殊攻撃に対応するためには、"とくぼう"のステータスを高くする必要がある。

しかし"のろい"では、その"とくぼう"を上げることは出来ないのだ。

つまり実質ボスゴドラは、恩恵としては単に火力を上げただけ。
 ▼ 16 mTQB7XkZdk 17/08/16 02:54:06 ID:2IBzt2t2 [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
それと引き換えに余計に鈍足になってしまったのでは、逆に犠牲の方が大きかったと言えるだろう。

攻撃は、そもそも当たらなければダメージにはならないのだから。

「やるぜゲッコウガ、"ハイドロポンプ"!」

「ゲロォッ!!」

そして、鈍足の弊害は技の命中率の低下だけにあらず。

同時に敵の攻撃を避けることが困難になり、技の回避率が悪くなってしまう。

ハイドロポンプの勢いは最高潮だ。

まるで、大海の荒波をそのまま凝縮して一本の柱にしたような見た目の凄烈なレーザー砲が、ボスゴドラ目掛けて迸る。

(これは避けらんねぇ)

(決まりだぜ)

と、そう確信したカルム。

……しかし。

「ボスゴドラ、踏ん張って!」

「最大パワーっ!"アイアンヘッド"!」

「ゴォォォッ!!」
 ▼ 17 ガヤミラミ@ドラゴンメモリ 17/08/16 07:52:37 ID:NyYpLXSk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 18 ガカイロス@カビゴンZ 17/08/16 19:13:10 ID:pJEtGc4Y NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
追いついた!支援
 ▼ 19 ビルドン@ゲンガナイト 17/08/16 19:15:05 ID:w//98M4Q NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 20 ダック@ちからのねっこ 17/08/16 22:43:01 ID:X567wXug NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 21 mTQB7XkZdk 17/08/17 03:44:30 ID:cca619tc [1/3] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
次の瞬間、カルムは目を疑うような光景を目の当たりにすることになる。

「……何ッ!?」

「ゲロッ!?」

驚愕のあまり、彼らは声を荒げた。

「ゴォォォォァァァァッ!!」

そして、ボスゴドラが響かせたその咆哮は、聞いた者の鼓膜に雷のような衝撃を突き刺す。

ボスゴドラの剣幕は凄まじい。

彼が今行っているのは、またしても"行進"である。

だがその迫力は、先程の比ではない。

ボスゴドラは行進すると同時に、押している。

ゲッコウガの"ハイドロポンプ"を。

岩をも砕く程の威力を持つハズのそれを、"アイアンヘッド"で。

その水圧は、彼の鋼を打ち砕けない。

(……そうか)

と、ここでカルムはあることに気付く。
 ▼ 22 mTQB7XkZdk 17/08/17 03:46:21 ID:cca619tc [2/3] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
(あの子は、決して火力を底上げするためだけに"こうげき"を上げたんじゃない)

(同時に、"相殺する力"を高める目的もあったんだ)

(あと、相殺する際にあの鈍足は恐らく枷にはなっていない)

(寧ろあの鈍足のおかげで踏ん張る力が上昇し、後押しになってるまであるかもな……)

"相殺する力"を高める。

即ちアイリスの狙いは、パワーでゲッコウガに勝ることだった。

どの道あの足では、ゲッコウガの迅速に繰り出される技の数々を避けることなど到底できない。

だが、だからと言って来る技を全て受けていたら当然負けてしまう。

ならばどうするか。

そう考えた時、アイリスはこの決断を下した。

動きで回避できないなら、圧倒的な力で捩じ伏せれば良い。

要はダメージさえ最小限に抑えられれば、それで。

(厄介だな、やっぱ……)

なかなかどうして、一筋縄ではいかない。

特殊攻撃のエキスパートであるゲッコウガを繰り出したことで一気に形勢を逆転できるとばかり思っていたカルム。
 ▼ 23 mTQB7XkZdk 17/08/17 03:48:09 ID:cca619tc [3/3] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
しかし現実は、その思惑とは裏腹であった。

こちらが対策を講じれば、それに呼応するようにして相手も更に対策を重ねてくる。

イタチごっことも言えるような戦況がこのまま延々と続くのは正直言って厳しい。

ゲッコウガは火力こそ凄まじいが耐久はそれほどでもないので、何とかして短期決戦に持ち込まねばボスゴドラより先にバテてしまう可能性がある。

カルムの腕が試されるところだ。

…………

……

「……タブンネ、"かみなり"!」

「タブゥ!」

タブンネが落とす無数の黄色い電光は、ガラス面に直撃すると今度は衝撃波となりて全体に広がる。

もしアレに触れれば、感電は免れないだろう。

更にここは、まるで"平坦"のお手本のような、そんな極めてフラットなバトルフィールドなため、その電気の衝撃波は端という端まで満遍なく行き届く。

厄介なことこの上無しだ。

「フィオッ!フィィッ」

レッドのエーフィは、既にそれらを避けるだけで精一杯のようである。
 ▼ 24 パルダス@ぼうごパッド 17/08/17 08:25:48 ID:sAdrnESw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 25 ィ@クサZ 17/08/18 16:25:23 ID:LN4lXRhE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援す
 ▼ 26 mTQB7XkZdk 17/08/19 01:44:03 ID:xhMmceNo [1/3] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
だがそんな中でもレッドは、攻撃することを諦めなかった。

「くっ……エーフィ、避けつつ"サイコキネシス"で攻めていけ!」

「フィオッ!」

回避の合間合間に、攻撃の指令を挿入していく。

だが、タブンネはその余地すら与えてくれない。

「タブゥッ!」

間髪入れずに次なる電撃を放つ。

「フィッ……!?」

攻撃しようとしたエーフィだったが、その雷が身を掠めた時、その意志は途切れてしまった。

「エーフィ!……」

「……だけど、良く耐えてくれた!」

「フィオ?」

突然自分を誉めた主に、エーフィはハテと首を傾げる。

「"かみなり"はそう何度も連発できる技じゃない」

「もうそろそろ"PP"が尽きてきた頃だろう」
 ▼ 27 mTQB7XkZdk 17/08/19 01:44:56 ID:xhMmceNo [2/3] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
「彼は"かみなり"の出力を節約することで連射を可能にしていたみたいだけど……それも限界のハズだ」

"かみなり"は高威力の"でんき"技である反面、技を発動する際に消費する"PP"の最大値が他の技と比べ極端に少ない。

一度のバトルで撃てる回数はかなり限られている。

レッドの分析によると、Nはそのデメリットを技の省エネに努めることで抑えていたようだが……。

「……見破られたか」

「タブゥ」

その思惑も、そして"かみなり"の限界が近いことも、どうやら図星だったらしい。

(出来ればこれを使い切る前に仕留めたかったが……思った以上にすばしっこい)

(……ならば)

Nが何かを企む一方で、レッドはこの好機を逃さない。

「エーフィ、タブンネに"サイコキネシス"!」

「フィォォッ!!」

すかさず、強力な念力の波動を放った。

「タブッ……!?」

そして"サイコキネシス"は、タブンネに見事命中する。
 ▼ 28 mTQB7XkZdk 17/08/19 01:46:22 ID:xhMmceNo [3/3] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
タブンネはサイコパワーによって身動きを封じられた。

「よし!」

先程まで防戦一方だった分、ようやく敵を捉えることができた嬉しさはひとしおというもの。

レッドはガッツポーズで喜びを露にする。

「そのまま持ち上げて、突き落とせ!」

「フィオッ!」

と、エーフィは念力で捕縛したタブンネを操り、まずは空中へと誘う。

「タブゥ……ッ」

為されるがまま、タブンネは連れていかれる。

そして、彼女が十分な高さに達したのを見計らうと……。

「フィオッ!」

エーフィはそこから一気に念力を解き放ち、スナップをかけてタブンネを野球のピッチングの如く投げた。

「タブンネ!」

Nの叫びが響く間に、タブンネは急スピードにて落下を終えてガラス面へ激突。

「タブッ……!?」
 ▼ 29 ンドパン@カードキー 17/08/19 08:41:13 ID:ZCBgJW1Q NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 30 mTQB7XkZdk 17/08/20 01:08:42 ID:47BdhiIk [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
強い衝撃を受け、タブンネはダメージを負った。

「タ……ブゥ!」

しかしタブンネはその痛みに耐え、何とか身を起こし、戦う意志を周囲に見せつける。

例え念力で体の自由を奪われ、地に叩きつけられようとも。

彼女は、心に宿りし翼で逞しく羽ばたき、見事な戦線復帰をしてみせた。

彼女が破れれば、Nにはもう出せるポケモンが居ない。

だからこそ、タブンネにはとてつもない重責が課せられているといえよう。

だがそれは決して、彼女の身を縛るしがらみとはなっていない。

寧ろ、彼女が更に強くなるために後押しをする追い風となっている。

トレーナーの最後の希望になれることは、このタブンネにとってはとても誉れ高きことだった。

これまで"狩猟対象"としか見られなかったタブンネに、優しく手を伸ばしたN。

自らを認めてくれたこの人に、決して苦汁を舐めさせはしない。

戦いの中で、その決意は更なる成長を果たす。

悠々と浮かぶ雲の海、その中心でタブンネは叫んだ。

「タブゥゥゥゥッ!!」
 ▼ 31 mTQB7XkZdk 17/08/20 01:09:13 ID:47BdhiIk [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
この声は、反撃の狼煙と同義である。

「タブンネ……!」

Nは彼女のあの様子を見て、確信した。

今のタブンネの士気は、最高潮であると。

そして今なら……負ける気がしない、と。

「……よし」

「ならばタブンネ、"マジカルシャイン"!」

「タブゥ!!」

純白の闘気を高め、タブンネは極限の光を己の体から解放した。

瞬間、辺りは白き妖精の光輝に包まれる。

「フィオ!?」

"マジカルシャイン"を食らった者の魂は浄化される。

その際、より邪気が多ければ多い程、伴うダメージはデカくなる。

だが邪気と言っても、それがあるからと言って決してその者が悪であるとは限らない。

生きとし生ける者全員が生まれながらに持つ、感情を持つ生物が故の邪気……それを祓うのだ。
 ▼ 32 mTQB7XkZdk 17/08/20 01:11:44 ID:47BdhiIk [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「フィォォォッ……」

"マジカルシャイン"は全体に効果が及ぶ技。

よってエーフィだけでなくゲッコウガにも、この浄化の光は差す。

「ゲロッ!」

だが、光あればこその影と人は言う。

影に潜む者たるゲッコウガは光の襲来を察知すると刹那、自発的に身を隠し逃れようとした。

しかし……。

「ゲロッ……!?」

このまっ平らな戦場に、ゲッコウガの盾となってくれそうな影……を生み出す障害物は無かった。

「ゲロォォォッ」

あえなくゲッコウガもまた、この光の餌食となる。

そしてその瞬間は、ゲッコウガの確かな隙となった。

「今よボスゴドラ、"もろはのずつき"!!」

「ゴォォッ!!」

レッド達を照らしつける破邪の瞬きの中、鋼の怪物は岩を纏って突進する。
 ▼ 33 ニゴーリ@そうこのカギ 17/08/20 06:35:56 ID:UbxrCKi2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 34 mTQB7XkZdk 17/08/21 01:30:41 ID:q4evnsd. [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ゲロッ……!!」

"マジカルシャイン"に目を眩まされたゲッコウガは、その攻撃を前にして避けるなどの防御行動を取れないでいた。

動きたいのは山々なのだが、今は技による衝撃を受けているせいで体が言うことを聞いてくれない。

ただひたすら、ボスゴドラが打ち鳴らす力強い足音に耳を震わせるのみだった。

今にもガラス面が割れそうな程の震動が、彼らの足元を伝っている。

「ゴォォッ!!」

ボスゴドラの重量級たる体躯から放たれたその一撃は、やがて射程距離に突入すると_____

「……ゲロォォッ!!?」

_____ゲッコウガを、あたかも車で人を轢くかのようにして……穿ったのだった。

「ゲッコウガッ!!」

まさに痛恨の一撃。

ゲッコウガは、後方へ大きく吹っ飛ばされてしまう。

(まずい!このままだと場外に……!)

と、カルムはゲッコウガの絶体絶命を目の当たりにし、すぐそこまで迫って来ている"敗北"の二文字を脳裏に過らせる。

だが。
 ▼ 35 mTQB7XkZdk 17/08/21 01:43:16 ID:q4evnsd. [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ゲロォォォ……ッ!!」

ガラス面へと打ちつけられるようにして豪快に落下したゲッコウガは、その後も転がっていったものの……。

……摩擦により何とかブレーキが効いて、幸いにもギリギリのところで止まることができた。

後少し落下が遅かったら、そのブレーキも間に合わなかっただろう。

「ほっ……」

即リタイアという最悪な事態を免れたことで、一先ずカルムは安心する。

だが、胸を撫で下ろすのも束の間。

時間は容赦なく、ポケモン達を戦地へと駆り立てる。

「運が良かったわね……でも、もう一度食らわせてあげる!」

「ボスゴドラ、"ストーンエッジ"!」

「ゴォッ!!」

崖っぷちのゲッコウガに追い討ちをかけるべく、アイリスが仕掛けてきた。

ボスゴドラは石をどこからともなく出現させると、それらを研磨して徐々に鋭利な武器へと変えていく。

そして次の瞬間、その石の刃……"ストーンエッジ"を、ゲッコウガ目掛けて飛ばした。

「ゲッコウガ、立てるか!?」
 ▼ 36 mTQB7XkZdk 17/08/21 01:53:57 ID:q4evnsd. [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ゲロッ!」

カルムの声を聞き、ゲッコウガは立ち上がる。

「よし、なら"みずしゅりけん"で応戦するんだ!」

「ゲロォゥ!」

ゲッコウガは、自らが生み出した水を瞬時に手裏剣の形に変形させ、投擲武器として投げつけて"ストーンエッジ"を迎え撃つ。

彼の狙いは的確だった。

手裏剣の一つ一つが、無駄なく石を破砕していく。

そしてついに、最後の石までもが粉微塵に砕け散った。

ゲッコウガは運を味方につけたのち、巧みな技で敵の急襲を防ぎ切ったのである。

ならば、次に起こすべきは"反撃"だ。

この機を逃さず、カルムは声をあげる。

「ゲッコウガ、"シャドーボール"!」

「ゲロッ!」

ゲッコウガの放つ次なる一撃は、影の弾丸・"シャドーボール"。

掌を合わせ力を集約し、暗黒のエネルギーを生成、そしてそれを一気に凝縮する。
 ▼ 37 ングース@ザロクのみ 17/08/21 02:04:05 ID:3uqQRbC6 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
ケッコウがってシャドボ覚えるっけ?
 ▼ 38 mTQB7XkZdk 17/08/21 02:17:49 ID:q4evnsd. [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
>>37
すいません覚えませんでした。ミスです。

設定ガバガバなの本当申し訳無いです……。
 ▼ 39 イケンキ@ミストシード 17/08/21 02:22:42 ID:3uqQRbC6 [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
>>38
大丈夫っす!誰にでもミスはありますし。
それにこのss最初からずっとリアルタイムで読ませていただいてます、
完結まで頑張ってください!ゼンリョクで応援してます!
 ▼ 40 クライ@うみなりのスズ 17/08/21 09:29:11 ID:xKsqjam. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 41 ジーロン@おまもりこばん 17/08/21 21:44:38 ID:KuEwyQoU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 42 mTQB7XkZdk 17/08/22 03:24:32 ID:uh3.W7pI [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
※ゲッコウガの「シャドーボール」は、「かげぶんしん」に置き換えます。

「ゲッコウガ、"かげぶんしん"!」

「ゲロッ!!」

白き大海を背にするゲッコウガは、印を結ぶと刹那、突如として"煙"に包まれた。

もくもくと立ち込めるその煙はやがて、空に吸い込まれるようにして姿をゆっくり消していく。

しかし、その晴れ渡った先に彼の忍者は居なかった。

「……!」

ふとアイリスは、複数の気配を感じて上空を見上げる。

視界に広がっている雲は、あたかも峰のような形を成していた。

が、そんな壮大な景色にポツポツと点在せし影がある。

「ゲロッ!」

「ゲロゲロッ!」

「ゲロォォッ!!」

ゲッコウガだ。

それも大勢。
 ▼ 43 mTQB7XkZdk 17/08/22 03:34:40 ID:uh3.W7pI [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
これこそ、数多の忍者の物語にて幾度となく登場する伝説の大忍術……"かげぶんしん"だ。

この複数のゲッコウガの正体は、彼が高速に移動することで発生している"残像"である。

特定のポイントを目にも止まらぬ速度で往来しつつ敵との距離を詰めるその技は、忍術の王道にして最高クラスの難度を誇る。

「ゴォッ!?」

突然出現した無数の影。

それに惑わされたボスゴドラは、無意識の内にゲッコウガを目で追おうとしてしまう。

だが、そこが彼の命取りだった。

極限にまで俊敏さを洗練したこの神業は、初見では絶対に見破れない。

まして、自分自身がかなりの鈍足のボスゴドラならなおのことである。

これを追随しようとするのはまさに愚の骨頂だ。

暗愚な策は隙と化し、こちらに付け入る隙を与えてくれる。

「今だ、ゲッコウガ!」

「"ハイドロポンプ"!」

「ゲロゲロッ!」

今や大軍となったゲッコウガ達。
 ▼ 44 mTQB7XkZdk 17/08/22 03:55:42 ID:uh3.W7pI [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
彼らはそれぞれ精神を統一し、技を発動するにあたって"気"を高めていく。

徐々に彼らの周りに、どこからともなく水流が呼び寄せられていった。

響くせせらぎが何とも心地良い。

「ゲロォォォッ」

彼ら一匹一匹が放つ"ハイドロポンプ"は、若干威力が分散されるために通常より弱まってしまうだろう。

だがその代わり、全ての"ハイドロポンプ"が直撃した暁には、普通に当てていてはあり得ない程の極大ダメージを叩き出してくれる。

その大技は、この機を以て放たれる。

「やれッ!」

「ゲロッ!」

「ゲロゲロッ!」

大空から放たれた水の砲撃。

響き渡る掛け声は、まさに童謡の"カエルのうた"が如しだった。

彼らの合唱は共鳴し、音色豊かなハーモニーを奏でて圧倒的水圧の激流と共に驀進する。

「ゴォッ____」

これまでの一直線の攻撃だったら、ボスゴドラは押し返すことができた。

だが、この多方面からの攻撃は、もはや鈍足な彼では防ぎようがない。
 ▼ 45 アルヒー@リピートボール 17/08/22 08:08:52 ID:WYgpkrww NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
なるほど…
支援
 ▼ 46 mTQB7XkZdk 17/08/23 02:41:36 ID:W1Jg9y8I [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
複数の水色の線が、その点で交わる。

「____ゴォォォァッ!!?」

鮮烈な"ハイドロポンプ"の集中攻撃が、ボスゴドラに見事命中した。

しかも、全弾である。

「ゴォォ……オオッ……」

鋼鉄の鎧は、無数の水砲によって貫かれた。

甚大なダメージを負ったボスゴドラは、もはや立てるだけの気力すら残っておらず、その場で崩れ落ちてしまう。

膝を地に着け、やがて彼は動かなくなった。

そして、彼の力を強めていた"メガシンカ"の能力変化も解ける。

「……」

沈黙する巨兵。

これ以上、ボスゴドラが戦闘を続行することは不可能のようだ。

「ボスゴドラ、戦闘不能!」

審判の判決が下されると、アイリスは……。

「……ありがとうボスゴドラ」
 ▼ 47 mTQB7XkZdk 17/08/23 02:52:14 ID:W1Jg9y8I [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「貴方はよく頑張ったよっ」

「……」

……称賛の言葉をボスゴドラに贈り、彼をボールへと戻した。

その際、ふとボスゴドラは一瞬だけ見せる。

"無念"と言いたげに強張る、悲痛を訴えしその表情を……。

「……私も残り一匹、か」

「だったら……」

後がないイッシュチャンピオン、アイリス。

年端もいかぬ彼女の背には、イッシュの民の期待と希望という計り知れない重荷が乗っかっている。

だがアイリスは、それを苦とはしない。

常に明るく振る舞い、そして勇敢に立ち向かい、彼女はチャンピオンとしての責務と宿命を果たそうとしている。

責務とは、民の希望を叶えること。

宿命とは、強者と戦い続けること。

若さゆえ、彼女にはまだ"限界"なんてモノは存在していない。

だから彼女は、最強への階段をひたすらに駆け上がる。
 ▼ 48 mTQB7XkZdk 17/08/23 02:58:08 ID:W1Jg9y8I [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
決意が灯った。

アイリスの、美しき褐色の指先が一つのモンスターボールを取る。

その中に潜む者は、彼女の魂とも言える存在。

幼少期より共に過ごし、共に困難を乗り越えてきた唯一無二のパートナー。

「……行って!」

「"オノノクス"!」

彼はふたたび推参する。

「……オノォゥ!」

遥かなる永遠の絆を結んだ、この主のために。

黄金の鱗を纏い、顎に巨斧が如くの牙を携えて。

彼が戦場にもたらすは"戦慄"。

恐れ戦け、戦士達。

「オノォォォゥ!!」

その咆哮は、この場にいる全ての者を一瞬凍てつかせた。

 ▼ 49 シェード@むげんのふえ 17/08/23 22:48:21 ID:5vXHKDbA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
さすオノ
 ▼ 50 ングース@さざなみのおこう 17/08/24 06:31:01 ID:KJgLTBr6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 51 mTQB7XkZdk 17/08/25 03:04:17 ID:Awvftnr6 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
不屈の竜、オノノクスの登場。

ゲッコウガは束の間の休息を終わらせ、身構える。

「……このオノノクスは強敵だ」

「気を引き締めていくぞ」

「ゲロッ」

二人は互いに頷く。

昨日の戦いでダイゴのメガメタグロスを沈めたあの力は本物だ。

とてつもなく強大な力で来襲してくることは間違いない。

ボスゴドラを倒したからといって、まだまだ気は抜けないのである。

…………

……

「エーフィ、"めいそう"!」

「フィオ!」

一方、レッドはここで一旦積みに入る。

それまで続けていたタブンネへの攻撃を中止し、エーフィに"めいそう"をさせた。
 ▼ 52 mTQB7XkZdk 17/08/25 03:27:04 ID:Awvftnr6 [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
「隙を見せたね」

「タブンネ、"れいとうビーム"!」

「タブッ!」

この瞬間を突き、Nが動く。

"かみなり"、"マジカルシャイン"と来て、タブンネ第三の技・"れいとうビーム"が発動した。

このタブンネは、タイプ的にかなり多様性に富んだ技構成であることが窺える。

「……タブゥッ!」

タブンネは掌を前に突き出し、魔力を込めて氷の光線を発射した。

白銀に輝きしそのレーザーは、"めいそう"中のエーフィ目掛けて一直線に大空を駆け抜ける。

だがこの時、攻撃を受ける側のレッドには余裕があった。

("めいそう"の効果でエーフィの"とくぼう"が上がり、タブンネの技の威力は軽減されるハズ)

(ダメージは手痛いが、同時に"とくこう"も上がるから倍にして返してやれば良い)

レッドの作戦は、"めいそう"のステータス上昇効果による恩恵がまず前提である。

つまり早い話、"めいそう"で火力と耐久を同時に上げて、多少ダメージを受けてしまっても構わず高い打点で相手を倒す……ということだ。

なので、タブンネの放つ"れいとうビーム"は、レッドからしてみれば謂わば一つの"代償"。

言い方次第では、勝利への過程とも。
 ▼ 53 ラードン@エレベータのキー 17/08/25 06:29:27 ID:Q0t95khQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 54 mTQB7XkZdk 17/08/26 03:22:57 ID:WL8d9H6M [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
「フィオッ……」

そして"れいとうビーム"は、ゾーンに入ろうとするエーフィを遮るかのようにして直撃。

だが、"めいそう"によって上昇した特殊防御力がここで活きて、そのダメージは軽減される。

レッドの思惑通りだ。

……そう。

ここまでは。

「……フィオッ?」

ふとエーフィは、自らの"足"に違和感を感じる。

足を動かそうとしても、動かせないのだ。

まるで何かに縛られているかのような感覚である。

エーフィは恐る恐る、自分の足元に目をやった。

するとそこには、なんと……"氷"があった。

「フィオッ!?」

そしてその氷は、みるみる内にエーフィの体を侵食して膨大していく。

あたかもガラスが砕け散るかのような音を立てながら、氷は最終的にエーフィの全身を覆ってしまった。

「フィ____」
 ▼ 55 mTQB7XkZdk 17/08/26 03:33:39 ID:WL8d9H6M [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
途切れた鳴き声。

エーフィの動きは、完全に停止したのだった。

状態異常の一つ……"こおり"である。

「しまった……エーフィ!」

哀れにもレッドはこの時、ツイていなかった。

"こおり"に限らず、技の追加効果による状態異常やステータス下降を受けてしまうというのは結構な不運。

技のダメージを負う上に更に追い討ちをかけるようにして何らかの自由を封じられるわけなのだから、発生するディスアドバンテージはとても侮れたモノではない。

そういった事象は時として、一つの試合の命運を分けることもある。

だが、エーフィとてタダでは転ばなかった。

「……タブッ!?」

ここでエーフィの特性・"シンクロ"が発動する。

この効果によりタブンネは、エーフィの"こおり"状態をコピーされてしまう。

「タブゥゥゥッ!」

一瞬にして氷像と化した天使。

水晶が如くの輝きを放ちながら、タブンネはエーフィからの報復を受けたのだった。
 ▼ 56 リゲイツ@グラウンドメモリ 17/08/26 05:48:27 ID:IDmQOffk NGネーム登録 NGID登録 報告
こおりはシンクロ適応されないぞ
 ▼ 57 ジュマル@サーナイトナイト 17/08/26 07:41:09 ID:KsfJiMjA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>56
初めて知った…

支援
 ▼ 58 クロム@リバティチケット 17/08/26 09:51:54 ID:ezd79NDc NGネーム登録 NGID登録 報告
適用された方がssとしておもしろい
支援
 ▼ 59 マゲロゲ@ふうせん 17/08/26 09:53:53 ID:cn8H91yI NGネーム登録 NGID登録 報告
それはあれだよ、レッドとエーフィの絆が可能にしたとかそういうので
 ▼ 60 タージャ@しろいビードロ 17/08/26 11:10:51 ID:dcJTyQts NGネーム登録 NGID登録 報告
適用されないっけ?
 ▼ 61 ジギガス@マスターボール 17/08/26 12:12:37 ID:fOREZ0y6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
てかまずやけど状態なのでは?
 ▼ 62 メール@こだわりスカーフ 17/08/26 14:05:23 ID:2GTPwnmk [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
>>61
火傷はゾロアークじゃね
 ▼ 63 ィ@ボイスチェッカー 17/08/26 14:06:33 ID:2GTPwnmk [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
>>62
ごめん間違えたエーフィが火傷ってことか
 ▼ 64 mTQB7XkZdk 17/08/27 03:18:54 ID:Qu1maJzU [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
シンクロの件並びに、元からやけど状態だったのを忘れてしまっていました……申し訳ありません。

タブンネがれいとうビームを撃った所から書き直します。
 ▼ 65 mTQB7XkZdk 17/08/27 03:38:55 ID:Qu1maJzU [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
タブンネの放った"れいとうビーム"が、エーフィに直撃する。

「フィオッ……!」

瞬間、エーフィの体は一気に冷え込み、凍り付きそうになってしまう。

だがその時、先程のゾロアークとの戦いで負っていた"やけど"が彼を守った。

未だエーフィの中で密かに燃えている小さな火が、外から流れ込んでくる冷気をはね除ける。

まさに怪我の功名。

「フィォォッ」

そして無事に"めいそう"を終えたエーフィは、卓越せし能力を手にする。

火力面でも、耐久面でも、今やメガシンカしたタブンネに引けを取らない。

「……」

Nにとって、ここでエーフィの能力値がタブンネのそれに追い付いてしまうというのは非常に難儀。

また、予想以上にエーフィが粘っていることも彼の不利を呼ぶ一因となっている。

おかげでタブンネの消耗は加速するばかり。

(……もう、タブンネではエーフィに太刀打ち出来ないかもしれない)

(ならばここは、彼女に任せるべきか……)
 ▼ 66 ョロモ@しんかいのウロコ 17/08/27 07:54:38 ID:PFd9JFFM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 67 ロボーシ@こだいのきんか 17/08/27 11:46:23 ID:Ybj.03RE NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 68 コザル@まがったスプーン 17/08/27 11:47:14 ID:paXuYit6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
その場その場で書いてるよね
 ▼ 69 mTQB7XkZdk 17/08/28 03:29:30 ID:rH1yGkL6 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
「アイリス!」

Nにとってタブンネは、この後の戦いにおいて必要不可欠な存在。

それを、相手の先鋒によって早々に倒されるわけにはいかない。

そこでNは、パートナーであるアイリスに頼った。

「!」

「……おっけー!」

自分の名を呼ぶNのその一声で、アイリスは彼の要求の全てを察する。

なぜならアイリスもまた、自らが相対するゲッコウガに手をこまねいていた所だったから。

故に今こそ、互いの標的を交換するとき。

「タブンネ、"マジカルシャイン"!」

「ボスゴドラ、エーフィに"もろはのずつき"!」

二人の指示が交差する。

「タブッ!」

タブンネは、妖精の聖なる光を。

「ゴオッ!」

ボスゴドラは、身を捨てた岩石の突進を。
 ▼ 70 mTQB7XkZdk 17/08/28 03:46:20 ID:rH1yGkL6 [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
それぞれ、照準を変えて解き放った。

「!」

ボスゴドラが、レッドのエーフィのもとへ猛進を始める。

だが、決して避けられない速度ではない。

この二人の突然の指示により多少面食らったものの、レッドとエーフィにはこれに対応するだけの余力がまだ残されている。

レッドは落ち着いて対処した。

「"サイコキネシス"で対抗しろ!」

「フィォ!」

それは、この地点で最善と言える指令だった。

……だが、ベストを尽くしたからといって常に状況が好転するとは限らない。

時には、どう策を講じても免れることのできない窮地というものがある。

「……フィッ!?」

たった今雲海を照らしたこの極光こそが、まさにそれだった。

タブンネの放った"マジカルシャイン"である。

白き閃光の衝撃が、エーフィとゲッコウガの次の行動、そして思考を遮る。

両者は共に揃って目が眩んでしまい、身動きが取れなくなってしまった。
 ▼ 71 ルリル@ヘビーボール 17/08/28 07:28:47 ID:1/rqiYn2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 72 リープ@ぼんぐりケース 17/08/28 07:39:52 ID:9qP5g1T. NGネーム登録 NGID登録 報告
オノノクスー支援
 ▼ 73 グザグマ@ぎんのおうかん 17/08/28 07:41:11 ID:GBSzipAM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ボスゴドラなの?
 ▼ 74 ロモリ@クロスメール 17/08/28 17:03:46 ID:2gr3MKLo NGネーム登録 NGID登録 報告
オノノー
 ▼ 75 リーザー@むしのジュエル 17/08/28 23:10:16 ID:dGV0rN6o NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少し休んだ方が良いんじゃないか?
 ▼ 76 レセリア@ふっかつそう 17/08/30 22:16:02 ID:mcCjPdLY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
1週間くらい休んでみたらどうですか?
ミスも目立つし疲れもあると思いますよ!
 ▼ 77 ダイトス@ウルトラボール 17/09/03 09:28:53 ID:a91X04Sw NGネーム登録 NGID登録 報告
上げつつ待ってますよ
 ▼ 78 ーリキー@ロックメモリ 17/09/03 11:40:32 ID:/DtTU70s NGネーム登録 NGID登録 報告
ミスヘの対応が素晴らしい

2日かけて追い付いた
 ▼ 79 mTQB7XkZdk 17/09/07 23:56:06 ID:Bcx6.ZuE NGネーム登録 NGID登録 報告
長期間にわたり更新を止めていて申し訳ありません。

ご指摘通り、かなりミスが目立つようになってしまいましたので、物語が完結するまで書き溜めることにしました。

時間がかかると思いますが、待っていただけると嬉しいです。

どうか、お願いします。
 ▼ 80 トム@たまむしプレート 17/09/07 23:59:14 ID:TRF65laY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
頑張れ、支援
 ▼ 81 レシー@ありふれたいし 17/09/08 07:08:34 ID:/aMp1zbE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 82 マシュン@たいようのふえ 17/09/08 11:12:49 ID:wRQYoQqA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
頑張って 楽しみにしてます
 ▼ 83 ンパッパ@ポイズンメモリ 17/09/09 21:23:44 ID:r2erXmIU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 84 レセリア@アンノーンノート 17/09/14 21:02:43 ID:GRDEsbcw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しえぬ
 ▼ 85 Alt◆1cA0V6snZw 17/09/16 23:31:18 ID:iP9WHaH2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
保守
 ▼ 86 ンドラー@ヨプのみ 17/09/21 21:59:46 ID:Pbu4W6VI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
保守
 ▼ 87 ジロン@カビゴンZ 17/09/22 14:02:16 ID:ZLz5TZA2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援ネ
 ▼ 88 ガバシャーモ@ぎんのこな 17/09/23 23:58:13 ID:kFfWxdoc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しーえん
 ▼ 89 ャランゴ@くろいメガネ 17/09/24 00:00:14 ID:kBdc1OjE NGネーム登録 NGID登録 報告
この人前にも一度一ヶ月くらい居なくなってたし待ってる
 ▼ 90 ウオウ@カイロスナイト 17/09/25 06:55:56 ID:8S1L9upk NGネーム登録 NGID登録 報告
定期あげ
 ▼ 91 mTQB7XkZdk 17/09/26 10:59:55 ID:/qRynmkY [1/22] NGネーム登録 NGID登録 報告
お久しぶりです。

この度、今使ってるスマホを替えることにしたので、データを消す前に今日まで書いてきた分を一旦投稿することにしました。

まだそれほど文章の見直しをしてないまま投下するので色々とおかしい部分があると思いますが、温かい目で見てくれると嬉しいです。
 ▼ 92 mTQB7XkZdk 17/09/26 11:00:45 ID:/qRynmkY [2/22] NGネーム登録 NGID登録 報告
「オノノクス、エーフィに"ドラゴンクロー"!」

「タブンネ、"マジカルシャイン"!」

「オノッ!」

「タブッ!」

二人の指示と二匹の攻撃が、交差する。

「!」

レッドとカルムは、イッシュ代表コンビが互いに攻撃の照準を入れ替えたことに多少面食らったものの。

「させるな、エーフィ!」

「ゲッコウガ、ヤツを逃すな!」

「フィオッ!」

「ゲロッ!」

そうはさせまいと、すぐに対抗策を繰り出した。

エーフィとゲッコウガは駆け出し、それぞれタブンネ、またはオノノクスのもとへと向かっていく。

だが。
 ▼ 93 mTQB7XkZdk 17/09/26 11:01:23 ID:/qRynmkY [3/22] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……フィオッ!?」

「ゲロッ……!」

そこへ、タブンネのマジカルシャインが、立ち向かう彼らの視界を無情にも根こそぎ奪い去った。

その、圧倒的輝きを持つ光にて。

極光に照らされたエーフィとゲッコウガは、あまりの眩しさに目が眩み、動きを止めてしまう。

その隙にオノノクスとタブンネは、各々の立ち位置の変換を行い。

「オノッ!」

オノノクスは、エーフィのもとへ。

「タブッ!」

タブンネは、ゲッコウガのもとへ。

「オノォォォォッ!!」

そしてすぐ、未だ目映い光が雲海を包み込むなかで。

オノノクスは迅速にガラス面を駆け抜け、何も見えず戸惑っているエーフィに近付いていく。

「ノォックス!」

やがてエーフィとの距離を十分に詰めた彼は、次の瞬間、竜の蒼炎を宿せし鋭爪を思いっきりふり下ろした。
 ▼ 94 mTQB7XkZdk 17/09/26 11:02:04 ID:/qRynmkY [4/22] NGネーム登録 NGID登録 報告
数股に分かれし刃の一撃は、殺傷という言葉の具現とも錯覚する程に高威力で。

「フィオオッ!?」

そしてこの攻撃が、エーフィの致命傷となった。

「フィッ……」

エーフィはまだ、この"ドラゴンクロー"に関して言えば耐え抜いていたのだが。

この後追い討ちをかけるかの如く襲ってきた"やけど"による持続ダメージが……。

「……フィオッ」

……最終的に、エーフィに止めを刺すこととなった。

力尽きたエーフィはその場で倒れ、地にひれ伏す。

「エーフィ!」

とうとうやられてしまった助っ人。

レッドは声を大にして、彼の名を叫んだが……。

……やがてエーフィのこの姿が審判の目に留まると。

「エーフィ、戦闘不能!」

無慈悲、しかし適切な判断が彼女の手によって下されたのだった。

「……エーフィ、よくやってくれた」
 ▼ 95 mTQB7XkZdk 17/09/26 11:02:46 ID:/qRynmkY [5/22] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ゆっくり休んでくれ」

「フィオッ……」

レッドは、エーフィの奮戦を称えた。

よくぞここまで、と。

ゾロアークを倒し、連戦のメガタブンネ相手にもかなりの善戦ぶりを見せたエーフィ。

彼のこのバトルにおける功績はとても素晴らしいと言える。

エーフィが応えてくれた分、レッドもまた、彼に応えなければならないだろう。

このバトルに勝利して。

「……お前が頼みだ」

「いくぞ!」

レッドは、次の闘士に全ての希望を託し、モンスターボールを放った。

「"フシギバナ"!!」

リザードン、カメックスと並ぶカントー御三家の一角。

草木をその背に生い茂らせ、巨体を揺らして地に降り立つ。

怪力と毒の技で敵を一掃する、蛙の如き巨獣。
 ▼ 96 mTQB7XkZdk 17/09/26 11:03:38 ID:/qRynmkY [6/22] NGネーム登録 NGID登録 報告
"フシギバナ"。

「フッシィ!」

この瞬間、フシギバナの特性が発動する。

あのハンター戦でも猛威をふるった"ようりょくそ"だ。

この効果により、晴れの場では、フシギバナの素早さは二倍にまで膨れ上がる。

雲海は、太陽の光が強く差し込む戦場。

故に、"ようりょくそ"を持つフシギバナと雲海の相性は抜群である。

"ほのお"の火力が晴れによって飛躍的に高まるリザードンを出すという手もあったが……。

("ほのお"の威力が高くなるとはいえ、相手がそれを半減する"ドラゴン"じゃそれほどの恩恵は受けられない)

(なら、圧倒的なスピードからの"ヘドロばくだん"で攻めることができるフシギバナの方が勝手が良いだろう)

そうしなかったのは、オノノクスとのタイプ相性を考えた上での判断。

「さあ、覚悟しろ!」

「フシィ!」

満を持して、レッドとフシギバナは出撃する。

栄光を勝ち取るために。
 ▼ 97 mTQB7XkZdk 17/09/26 11:04:16 ID:/qRynmkY [7/22] NGネーム登録 NGID登録 報告
「オノノクスに、"ヘドロばくだん"!」

「フシィ!」

そして美しき花々から放たれるは、妖しき紫紺の猛毒爆弾。

戦慄を纏いし竜に狙いを絞り、砲撃を開始する。

響いた爆音の先にいるオノノクスはこれに対し。

「"ドラゴンクロー"で弾き返して!」

「オノォ!」

避けずに、敢えて迎え撃つ。

先程もエーフィを葬った竜の奥義・"ドラゴンクロー"が、迫り来る毒の玉を引き裂かんと唸りをあげた。

そして毒に触れた爪は、瞬く間にそれを容易く貫いていき。

「オノォッ!」

彼の視界を覆おうとした"ヘドロばくだん"を、見事細切れにしたのだった。

恐るべき竜の力。

「フシィ……」

かたや、己の渾身を放ったつもりだったフシギバナ。
 ▼ 98 mTQB7XkZdk 17/09/26 11:04:50 ID:/qRynmkY [8/22] NGネーム登録 NGID登録 報告
思わぬ強敵の登場に、ふと彼の額を冷や汗が伝う。

だが、フシギバナはこの程度の局面を過去に幾度となく経験し、そしてその度に乗り越えてきている。

そう簡単には狼狽えない。

逆境を、力に変えていく。

「まともに攻めても攻略はできない」

「オノノクスはかなり手強い敵だが……手は残されている」

レッドもまた、勝ち筋を見失ってはいない。

「ならこれでどうだ!"ねむりごな"!」

「フシィ!」

フシギバナはここで、自らの背中に乗っている巨大な花から、大気に向けて花粉を放射した。

"ねむりごな"である。

"ねむりごな"は、吸引した者の眠気を誘う特殊な花粉。

レッドは、オノノクスを眠らせてから攻略をするつもりだ。

だが、この技は効果こそ強力だが、命中率が悪い。

「オノノクス、避けて!」
 ▼ 99 mTQB7XkZdk 17/09/26 11:05:18 ID:/qRynmkY [9/22] NGネーム登録 NGID登録 報告
「オノォ!」

なので、簡単にかわされてしまう。

オノノクスはバックステップで軽やかに"ねむりごな"から距離を取り、安定感のある回避を見せた。

しかし、フシギバナの行動はこれで終わらない。

「そこだ!」

レッドは、ここから更なる指示を繰り出す。

「フシギバナ、オノノクスにもう一度"ヘドロばくだん"!」

「フシィ!」

再び"ヘドロばくだん"。

禍々しき猛毒の弾丸が再来する。

「避けてる時の隙を狙ったのね……だけど!」

「そのくらい、オノノクスなら簡単に対処できるんだよっ!」

と、アイリスはレッドの狙いを看破した上で、この"ヘドロばくだん"を防ぐことを宣言した。

その豪語の矢先。
 ▼ 100 mTQB7XkZdk 17/09/26 11:05:44 ID:/qRynmkY [10/22] NGネーム登録 NGID登録 報告
「オノッ!!」

言葉が、現実になる。

オノノクスはバックステップの着地時に、踵に思いきり力を込めた。

すると急ブレーキがかかり、オノノクスの上半身に大きな反動が発生する。

それをバネにしてオノノクスは、両腕を前方に突き出した。

そしてフシギバナの"ヘドロばくだん"はその瞬間、彼の腕と激突。

刹那、強い衝撃が爆弾全体を伝い、刺激する。

それによって"ヘドロばくだん"は内部組織を拡散され、やがて散り散りに消滅してしまった。

「オノォ」

オノノクスが、勝ち誇ったような笑みを見せる。

だが……。

「フシッ!」

……そんな彼の背後には既に、フシギバナの影があった。

「オノッ!?」

オノノクスは気付いていなかった。
 ▼ 101 mTQB7XkZdk 17/09/26 11:06:15 ID:/qRynmkY [11/22] NGネーム登録 NGID登録 報告
いや……気付く暇がなかったと言う方が正しいか。

フシギバナが、自らの後方にいつの間にか回り込んでいたことを。

「早い!?」

その速度は、アイリスの目にも留まらない程。

晴れの状況下では、フシギバナはまさにスピードスター。

他の追随を許さない驚異の早業が炸裂する。

「そこだ、"ねむりごな"!」

「フシッ!」

そして見事に敵の不意を突いたレッドは、すかさず"ねむりごな"を指示。

睡魔を呼び寄せる魔性の粉を、オノノクスに撒き散らす。

「オノォッ……!」

これをまともに食らったオノノクスは、顔面を咄嗟に手で覆い隠し、一瞬うずくまった。

その後すぐに体を動かして、必死に粉を振り払おうとするも、技は既に命中しているので無意味。

「……オノッ……!」

オノノクスを、強烈な眠気が襲う。
 ▼ 102 mTQB7XkZdk 17/09/26 11:06:49 ID:/qRynmkY [12/22] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……Zzz」

やがてオノノクスは、眠ってしまった。

「オノノクス!!」

アイリスは大声をあげて、彼を起こそうとする。

だが、オノノクスの瞼は固く閉ざされていて、目を覚ます気配が全く無い。

深い眠りに堕ちてしまっている。

"ねむり"状態になったポケモンは、しばらくの間行動が完全に停止する。

その隙に敵ポケモンから袋叩きに遭えば、致命的なダメージは免れない。

オノノクス、万事休す。

……すると、そこへ。

「タブンネ、頼む!」

「タブゥ!」

アイリスとオノノクスのピンチを察知したNが。

「"いやしのすず"!」

タブンネに、その技を繰り出させた。
 ▼ 103 mTQB7XkZdk 17/09/26 11:08:07 ID:/qRynmkY [13/22] NGネーム登録 NGID登録 報告
瞬間、あたりを柔らかな桃色の波紋が突き抜ける。

「……オノッ!」

そうしたらなんと、オノノクスが目を覚ました。

「何!?」

タブンネの放った"いやしのすず"は、使った者の仲間全員にかかっている状態異常を治すという強力な技。

これによって、先程まで眠りに就いていたオノノクスは、刹那の睡眠を切り裂いて覚醒へと至った。

そして。

「オノォッ!!」

目覚めしオノノクスは、そこからアイリスの指示を待たず、すぐさま背後のフシギバナに向かって振り向き様のパンチを食らわす。

「フシャァ!?」

彼のカウンター攻撃は見事にヒット。

フシギバナの巨体が衝撃に押し出され、二匹間の距離は再び広がった。

「なんてことだ……あんな技を隠し持っていたなんて」

ようやく判明したタブンネの第四の技が、よりにもよってこの技とは……と、レッドは思った。

これだと、カルムのゲッコウガがタブンネを倒さない限りは、オノノクスを眠りにすることは困難である。

しかしそのゲッコウガは、現在タブンネに苦戦を強いられていた。

「ゲロッ……」
 ▼ 104 mTQB7XkZdk 17/09/26 11:08:49 ID:/qRynmkY [14/22] NGネーム登録 NGID登録 報告
晴れのフィールドは、"みず"のゲッコウガにとって厳しい環境。

"みず"タイプの技が永続的に半減されるために、本来の火力を出せないでいる。

しかしそれでも、なんとかボスゴドラまでは突破できたのだ。

タブンネだって倒せるハズだ。

だが如何せん、連戦によるスタミナの消耗が激しい。

「くっ……"かげぶんしん"!!」

「ゲロォ!」

分身を幾つも作り、敵を翻弄する作戦に出ようとする二人。

しかし……。

「……ゲロォッ」

既にゲッコウガは、もう片手で数えられる程度の数の分身しか作れない。

「そんな……」

長期戦が仇となった。

カルムとゲッコウガは、絶体絶命のピンチに追いやられる。

「終わりだよ」
 ▼ 105 mTQB7XkZdk 17/09/26 11:09:16 ID:/qRynmkY [15/22] NGネーム登録 NGID登録 報告
Nは、フィニッシュサインを決める。

「タブンネ、ゲッコウガに"マジカル____」

「させるかぁぁっ!!」

「_____!!」

……そのとどめの宣言を遮ったのは、レッドの声だった。

「フシギバナ、タブンネに"ヘドロばくだん"!!」

「フシャァ!!」

「タブッ!?」

レッドはカルムのゲッコウガを助けるべく、タブンネが"マジカルシャイン"を放つ直前のギリギリのタイミングで、フシギバナに攻撃の指示を繰り出した。

だが、これはかなり危険な策だ。

今この状況でオノノクスから注意を逸らしたら、フシギバナは無防備の状態で彼の攻撃をまともに受けてしまうことになる。

「甘いね!お兄さん!」

「オノノクス、フシギバナに"ドラゴンテール"!!」

……しかし。
 ▼ 106 mTQB7XkZdk 17/09/26 11:09:48 ID:/qRynmkY [16/22] NGネーム登録 NGID登録 報告
「甘いのは……君の方さ」

「えっ!?」

レッドはアイリスにそう言い放つと、次の瞬間……。

「フシギバナ____」

「____やっぱりオノノクスに撃ってくれ!」

「フッ……フシ!」

……なんと。

「フシャァ!!」

攻撃の宣言をした刹那、その対象となるポケモンを咄嗟に"すり替えた"。

そしてフシギバナは機転を利かせ、このレッドの注文に素早く対応してみせる。

タブンネの居る方角を向いて溜められていた"ヘドロばくだん"のエネルギーを、体を回転させることで方向転換。

矛先を変えて、その猛毒の爆弾は放たれた。

「オゥ……」

「……オォォォッ!!」
 ▼ 107 mTQB7XkZdk 17/09/26 11:10:09 ID:/qRynmkY [17/22] NGネーム登録 NGID登録 報告
鮮烈な酸の痛撃が、見事にオノノクスに命中。

「オオッ……オオッ!」

「そ、そんなのズルいよー!」

"タブンネに"と言っておきながら、その直後に攻撃対象の変換を行い騙し討ちをしたレッドの作戦を、アイリスは卑怯だと真っ向から非難する。

しかし、当のレッドに悪びれている様子は全くなく……。

「ふふっ」

「騙される方が悪いのさ!」

寧ろ堂々とアイリスにそう言い切って、批判を跳ね返した。

「うぬぬぅ〜っ」

"汚い"。

アイリスは、胸中にてその言葉を秘める。

「アイリス!!」

一方、彼女達の危機にNは、眼前の敵から反射的に目を逸らしてしまう。

その瞬間を、カルムは見逃さなかった。

「!!」

一瞬の隙に、狙いを定める。
 ▼ 108 mTQB7XkZdk 17/09/26 11:10:46 ID:/qRynmkY [18/22] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ゲッコウガ!!"れいとうビーム"!!」

「ゲロォォ!!」

カルムにそう指示された時、ゲッコウガは既に"覚悟"を決めていた。

もはや、分身すら数体しか作れぬ程に彼の体力は枯渇している。

それを考慮すれば、恐らくこの攻撃が最後の一撃になるだろう。

その確信を基にして形成される、"捨て身の覚悟"。

「ゲロォォォッ!!」

ゲッコウガは、刺し違えるつもりだ。

刺し違えてでもタブンネだけは倒すという意志を、彼は固めていた。

この"れいとうビーム"に、残りの体力全てを注ぎ込んで。

何もかも、命までも賭して。

彼が放った渾身の"れいとうビーム"。

「ゲロォォォァァァッ!!」

それは、きらびやかなる白銀の吹雪となりて。

タブンネに、襲いかかった。

「タブッ!?」
 ▼ 109 mTQB7XkZdk 17/09/26 11:11:14 ID:/qRynmkY [19/22] NGネーム登録 NGID登録 報告
絶対零度の永久凍土。

白き天使は誘われ、刹那の内に迷いこむ。

そして、宙を舞いし無数の雪は、彼女の気力を激しく貪っていき。

「タッ……タブゥ……!!」

タブンネの柔和な体を、鮮烈に痛みつける。

メガシンカが成した絆の奇跡も、この極寒の渦の中では無力だった。

やがて雪が失せ、寒風が過ぎ去った頃には。

「……タ……ブ……」

既にタブンネは、瀕死の状態だった。

「タブンネ、戦闘不能!」

……また。

「ゲッ……」

全ての力を出し尽くしたゲッコウガもまた、タブンネと同様地にひれ伏し、目を回して気絶してしまう。

「並びにゲッコウガ、戦闘不能!」

こうして二匹は同時に、試合続行不可能を言い渡されたのだった。
 ▼ 110 mTQB7XkZdk 17/09/26 11:12:06 ID:/qRynmkY [20/22] NGネーム登録 NGID登録 報告
「タ……タブンネ!!」

カルムとNは、相討ちにて共に脱落。

これで勝負はついに、レッドとアイリスの一騎討ちに。

「オノォッ」

「フシャァ!!」

怒りに目覚めし戦慄の竜・オノノクス。

猛毒を携えし不可思議なる巨獣・フシギバナ。

重量級ポケモン二体による迫力ある一戦は、現状として晴れの恩恵を受けるフシギバナの方に分がある。

追い風は、レッドの背後にて吹いていた。

だが、一回戦の攻防でも逆境を乗り越えたオノノクスの、火事場の底力は侮れない。

下手に追い詰めていては、逆に強烈なしっぺ返しを貰う可能性がある。

ここは一気に攻めたてたいところだが……。

(……カルムのゲッコウガがやられてしまった以上、オノノクスに対して弱点をつける技がこちらには無くなってしまった)

(これはかなり手痛いぞ……)

"れいとうビーム"を使えるゲッコウガは、対オノノクスにおいてかなり有利に働くカードだった。
 ▼ 111 mTQB7XkZdk 17/09/26 11:12:38 ID:/qRynmkY [21/22] NGネーム登録 NGID登録 報告
だが、そんな彼が失われた今、カロス代表に残された攻撃札はフシギバナのみ。

そして、"くさ"を半減するオノノクスにまともにダメージを与えられる技は、等倍威力の"ヘドロばくだん"しかない。

しかしそれでは、たかだか一撃や二撃でオノノクスを討つのは不可能。

最後の最後で、再び長期戦の予感が走る。

だが、ここさえ勝ち抜けば、いよいよ決勝への道が拓ける。

レッドは、ここで負けるわけにはいかない。

幸いこちらには、"ようりょくそ"による素早さ上昇効果がある。

残されている勝機を如何に信じ、そして如何に活かしていくか……だ。

(タブンネが居なくなった今なら、"ねむりごな"でオノノクスの眠りを狙える)

(ヤツさえ無力化できれば、勝ったも同然だ)

(焦らず、攻めていこう)

勝利への道標が、レッドの脳内にてうっすらと浮かび上がる。

オノノクスを、眠らせてから一気に叩くという作戦。

それこそが、現状において最もシンプルかつ確実な方法である。

だが、これを完遂するにあたり、レッドは一つの"注意点"に気付いた。
 ▼ 112 mTQB7XkZdk 17/09/26 11:13:11 ID:/qRynmkY [22/22] NGネーム登録 NGID登録 報告
(……まずいな)

("ねむりごな"で眠らせるのは良いが……)

(……もし、眠らせる前に"ヘドロばくだん"の効果でオノノクスが"どく"状態になってしまったら)

……オノノクスは、眠らなくなる。

なぜなら、一体のポケモンにかかる状態異常は一つまでと決まっているからだ。

この制約のせいで、レッドは迂闊に"ヘドロばくだん"を撃つことができない。

しかし……。

(フシギバナの残りの技は、"ハードプラント"と"にほんばれ")

("にほんばれ"は意味が無いし、"ハードプラント"は使用後の反動が重い上に効果が今一つ)

(これじゃあ、まともに戦えやしない……)

……"ヘドロばくだん"以外の技が、ここにきて腐ってしまっている。

勿論、"ヘドロばくだん"を当てたからといってオノノクスが毒に侵される確率自体はそう高くはない。

だが、そうなるリスクは確かに存在している。

このリスクを避ける方法は、たった一つ。

"ねむりごな"を……いきなり当ててしまうことだ。

(どの道、あの子には既に俺の手の内が割れていることだろう)

(下手に隙を突こうとしても、返り討ちに遭うのが関の山だ)
 ▼ 113 シャーモ@クチートナイト 17/09/26 11:54:49 ID:Ai7lwo4s NGネーム登録 NGID登録 報告
週更新にしたら安定するんじゃね?
支援
 ▼ 114 ンパッパ@いかりまんじゅう 17/09/26 12:26:40 ID:pu9iau6s NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
さすがの文章だわー
支援
 ▼ 115 メイル@たいようのふえ 17/09/27 22:38:20 ID:DadVjos6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニンフィア残ってなかったっけ? 支援
 ▼ 116 プリン@そうこのかぎ 17/09/28 19:32:14 ID:ztVcWpHw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>115
俺もそう思って確認した
メガボスゴに相性悪いからボールに戻しただけでまだ残ってるよな
 ▼ 117 Alt◆1cA0V6snZw 17/10/04 00:15:07 ID:cVLgJvns NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
保守
 ▼ 118 スマス@マッハじてんしゃ 17/10/04 21:47:21 ID:kXjW.xGA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ちょっと複雑でわからんくなってきた
 ▼ 119 ーナイト@しんかいのウロコ 17/10/05 19:05:39 ID:jzi4t8xo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
(´∀`∩)↑age↑
 ▼ 120 Alt◆1cA0V6snZw 17/10/08 02:14:37 ID:.kUkK1aM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
(∩゚∀゚)∩age
 ▼ 121 Alt◆1cA0V6snZw 17/10/11 19:04:25 ID:bTf47W4. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
保守
 ▼ 122 ェリム@おいしいシッポ 17/10/13 21:14:41 ID:Xy6r0.1g NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
保守(´・ω・`)
 ▼ 123 ウワウ@ウッディメール 17/10/16 09:55:05 ID:ObE11Ke6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 124 Alt◆1cA0V6snZw 17/10/21 23:24:05 ID:NB3ygF1c NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ほしゅあげ
 ▼ 125 ガサメハダー@ナモのみ 17/10/27 23:09:57 ID:IwKZnNrA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
保守
 ▼ 126 シギソウ@すごいつりざお 17/11/02 02:08:58 ID:Ci0wtXuU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しえんぬう
 ▼ 127 オガエン@のんきのおこう 17/11/03 08:14:34 ID:BhK2MSPU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
やったぜ
 ▼ 128 テノ@マグマブースター 17/11/11 20:54:22 ID:M5TQ6tvA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
保守
 ▼ 129 イリュー@オレンのみ 17/11/12 16:05:32 ID:xaTUsbzs NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
失踪したな(確信)
 ▼ 130 ゲピー@はつでんしょキー 17/11/13 00:34:26 ID:DCjQXsdU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
保守
 ▼ 131 メハダー@スキルコール 17/11/18 12:33:02 ID:1XpnfFic NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
保守
 ▼ 132 ポッコ@プロテクター 17/11/19 23:25:59 ID:8hXoQU0A NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
保守ろひゅう!
 ▼ 133 ンリキー@ちかのカギ 17/11/20 21:13:29 ID:yQg4lS/M NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 134 ゲキ@アンノーンノート 17/11/21 23:20:43 ID:/1N3XWj2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
帰ってこないね>>1
 ▼ 135 ケンカニ@ジーエスボール 17/12/03 09:48:21 ID:0oSF2upE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
保守
 ▼ 136 ガルカリオ@デンリュウナイト 17/12/06 23:59:24 ID:IMiIu9jo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
保守
 ▼ 137 ガミュウツーX@フォーカスレンズ 17/12/14 00:35:26 ID:FxGGXHFc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
保守
 ▼ 138 トベター@サンのみ 17/12/17 02:01:48 ID:mXu//RhQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しえんご
 ▼ 139 クーン@ウルトラボール 17/12/26 01:23:29 ID:LWzJF4Jg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しえーん
 ▼ 140 mTQB7XkZdk 17/12/28 00:59:58 ID:3dii2Fkg [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
ニンフィア忘れてました……申し訳ありません

流石にここからニンフィア出すのは違和感あるので、時系列を一旦>>109まで戻してそこからニンフィアを登場させます、本当にすみませんでした

…………

……

タブンネとゲッコウガが、同時に戦闘不能となった。

これでNは脱落となるが、カルムにはまだニンフィアがいる。

「ボクのトモダチが……全滅……ッ!?」

「よくやった、ゲッコウガ……後は任せたぞ!ニンフィア!」

「ふぃああっ!」

一時撤退していたニンフィアが、戦場に再び躍り出た。

フシギバナとニンフィア対、オノノクス。

これは、アイリスにとってはかなり不利な状況だ。

ダブルバトルにおいて、相方のパーティが全滅するというのはかなり致命的なディスアドバンテージ。

ここまで来ると、最早勝敗は決したと言っても良いぐらいだ。

二体からの総攻撃は、一体のポケモンが受け切るにはかなり重いものがある。
 ▼ 141 mTQB7XkZdk 17/12/28 01:01:36 ID:3dii2Fkg [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
「Nのお兄ちゃんがやられちゃうなんて……マズいよぉ〜!」

流石のアイリスもこれにはかなり余裕を奪われたようで、露骨なまでに動揺を晒している。

「すまない、アイリス……」

Nは謝った。

自らの力不足を詫びた。

しかし。

「……ううん!良いんだよNのお兄ちゃん!」

「結果はどうあれ、貴方が全力を出し切ったのならきっとアタシも悔いは無いから!」

それにも関わらず褐色の肌の少女は、淀みなく笑った。

そして言い切った。

『悔いは無い』と。

「いくよオノノクス!」

「オノォッ!」

少女はこれより、最後の戦いを始める。

(まずはフェアリータイプのニンフィアから仕留めないと!)

「オノノクス!"アイアンテール"!」
 ▼ 142 トベトン@ルームキー 17/12/28 01:02:44 ID:N4Ft0Nbo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
うおおお! おかえり 支援
 ▼ 143 ットレイ@くろいてっきゅう 17/12/28 08:31:42 ID:XJ3/G2uw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 144 mTQB7XkZdk 17/12/28 23:57:10 ID:VUOVEKRE [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「オノォォァッ!」

吼えたオノノクスは、自らの尻尾を鋼鉄へと変えてそれをぶん回した。

狙いはニンフィア。

飛びかかり、回転する"アイアンテール"を彼女にぶつけようとする。

(フェアリー対策の"はがね"技ってか……!)

「ニンフィア、避けろ!」

「ふぃあ!」

カルムの指示にあわせ、ニンフィアはひらっと身を浮かせるようにして回避した。

彼女が纏っている愛らしいリボンが、オノノクスをまるで挑発するかの如く靡く。

そしてすかさず。

「"ハイパーボイス"ッ!!」

「ふぃあああ!」

必殺十八番、"ハイパーボイス"。

思い返すと、今回のバトルにおいてニンフィアは未だこの技しか使用していないのだ。

まだ、更なる奥の手を隠しているのだろうか。
 ▼ 145 mTQB7XkZdk 17/12/28 23:58:08 ID:VUOVEKRE [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「続けフシギバナ!"ヘドロばくだん"!」

「フシャァ!」

ニンフィアを補助すべく、レッドのフシギバナもまた技を放つ。

紫色をした毒のボムは弧を描いて宙を走り、オノノクスを襲う。

妖精と毒という対極的な組み合わせの連携技が、今ここに完成した。

これを迎え撃つオノノクスは、アイリスの指示を待つ。

(この二つをまとめてかわすのは大変だよね)

(だったら……弾き返せば!)

「オノノクス!"ドラゴンクロー"で"ヘドロばくだん"を思いっきりかっ飛ばして!」

「オノゥ!」

オノノクスは右手に竜の闘気を宿し、精神をまず研ぎ澄ます。

静かに気持ちを昂らせ、次に放つ一撃に己の全身全霊を込める。

竜の爪・"ドラゴンクロー"は、禍々しき毒の攻撃にその刃を向けた。

接触、刹那に衝撃が発生。

一瞬の間行われたぶつかり合いを制したのは――オノノクスだった。
 ▼ 146 mTQB7XkZdk 17/12/28 23:59:06 ID:VUOVEKRE [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「オノォァッ!」

オノノクスはアイリスの指示通り、"ヘドロばくだん"を弾き返すことに成功。

反射された爆弾は、今度は"ハイパーボイス"の軌道上へと侵入する。

すると。

「何ッ……!?」

"フェアリー"に対し有利を取る"どく"の属性の爆弾は、その妖精の咆哮を粉微塵にかき消してしまった。

広がる爆煙、失われていく視界。

雲海のバトルフィールドは、一瞬にして灰色の景色となる。

「くっ、前が見え――!?」

と、カルムが目を眩ませて身悶えしている隙に。

竜は、自らの健脚によって己の道を照らしていく。

「オノォ!!」

オノノクスは、この灰の霧の中を駆け抜けていた。

そして、駆けることによって風圧を巻き起こし、豪快に霧払いしていく。

暗闇の道は、光差すロードへ。
 ▼ 147 mTQB7XkZdk 17/12/29 00:00:01 ID:4QjkeQww [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「危ないカルム!……ニンフィアを守ってくれ、フシギバナ!!」

「バナァ!」

ニンフィアの危機を察知したレッドは、すぐさまニンフィアを庇うようにフシギバナに指示を出す。

しかし……これは恐らく間に合わない。

オノノクスの走るスピードの方が圧倒的に早いからだ。

「ふぃあ……!?」

そして、ニンフィアのもとに迫った戦慄の影。

「トドメよオノノクス……"アイアンテール"!!」

「オノォォッ!!」

万事休す。

次の一撃でニンフィアはかなりの大ダメージを負うことになるだろう。

(ここまでか……!)

カルムはここで、自らの敗北を覚悟した。

……だが。

その状況下でも彼は、自らが勝利する未来を望む。
 ▼ 148 mTQB7XkZdk 17/12/29 00:01:33 ID:4QjkeQww [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
(……だったら、後は任せたぜレッド!)

カルムはニヤリと笑い、そして……。

「ニンフィア!」

「"あまえる"だ!」

「ふぃあああっ!」

……置き土産の一手を放ったのだった。

「えっ!?」

「オノォ!?」

"あまえる"、それは――

「……ふぃぁ〜♪」

――敵に、あざとくも可愛らしく甘えて。

「オノッ――」

――敵のハートをキュンとときめかせて。

敵の"こうげき"のステータスを、がくっと下げる技である!

オノノクスの攻撃は止まらない。
 ▼ 149 mTQB7XkZdk 17/12/29 00:04:09 ID:4QjkeQww [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
鋼鉄の凪ぎ払いは、ニンフィアにモロに直撃した。

ズカンッ……という、何とも痛々しい音を立てて。

だが、ニンフィアの最後の"あまえる"は確かに効いた。

オノノクスの"アイアンテール"の威力は、大幅にダウンしているハズ。

「……ふぃぅ……」

それでも、効果抜群の"はがね"技はニンフィアの残存していた体力を根こそぎ奪い去っていったようで。

ニンフィアは目を回して、地にひれ伏していた。

「ニンフィア、戦闘不能!」

「よってカルム選手、脱落です!」

こうしてニンフィアはここでやられてしまった、が……。

「……オノォォォッ!」

それでもなお、ニンフィアの愛くるしい姿はオノノクスの脳裏に鮮明に焼き付いている。

オノノクスの"こうげき"は、ニンフィアが倒れた後も下がったままなのだった。

「カルム……!」

レッドは、カルムというポケモントレーナーに感服するばかりだ。
 ▼ 150 mTQB7XkZdk 17/12/29 23:19:16 ID:f53GTqis [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
例え負けるその時でも、何がなんでも爪痕を残していくのが彼のバトルスタイル。

その勇姿は、レッドの心に確固たる勇気の炎を灯した。

今の攻防……もしあのレッドの指示が無ければ、カルムはまだ負けていなかったかもしれない。

だからこそ、そのことにふと気づいたレッドは負けられない。

燻る拳に闘志を沸き立たせ、レッドはカルムの意思を受け継いだ。

「……俺達が、戦局を覆してみせる」

「フシィ……!」

と言っても、実際の状況は已然としてカロスサイドが有利のままだ。

何故なら、カルムのニンフィアが散り際に放った"あまえる"が効いているから。

"あまえる"によって火力を大幅に抑えられている今のオノノクスには、先程までの勢いが無い。

土壇場に差し掛かるこのタイミングで、オノノクスは失速したのだ。

これはレッドにとって大きなチャンス。

(これなら、敢えて奴を眠らせる必要はない)

("ヘドロばくだん"だけで十分押し切ることができる!!)

「フシギバナ、"ヘドロばくだん"!」
 ▼ 151 mTQB7XkZdk 17/12/29 23:20:46 ID:f53GTqis [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「フシャァ!」

フシギバナは、渾身の毒の砲撃を打ち上げる。

爆音の後、その紫色の物質は周辺に毒液を撒き散らしながらオノノクス目掛けて飛んでいった。

「オノノクス、さっきみたいに打ち返して!」

「オノッ!」

オノノクスも負けじとこれに対抗し、先程同様"ドラゴンクロー"によって技の反射を試みる。

しかし……。

「……オノォ……!?」

オノノクスは、思うように技に力を込めることができない。

がくっと下がってしまった攻撃力では、ツメに竜の力は宿らない。

頭にちらつくニンフィアの姿は、なおも彼の進撃を妨げる。

そして、"ヘドロばくだん"はまもなく襲来。

オノノクスのツメに激突する。

当然、その衝撃にオノノクスは……耐えることができなかった。

「オノォォォォ!?」

直撃を食らう。
 ▼ 152 mTQB7XkZdk 17/12/29 23:21:20 ID:f53GTqis [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
刹那、吹っ飛ばされる。

フシギバナが誇る毒爆弾は、その毒性だけでなく威力もまた脅威的。

いくら歴戦の竜といえど、これを受けては無傷ではいられない。

「オノォ……!」

雲の上を転がり回って、それでも何とか持ちこたえたオノノクスだが、その体勢は大きく崩れている。

おまけに脱力状態にあるためか、立ち上がるスピードも前と比べて格段に遅い。

「オノノクス……!」

「……オノォ!!」

アイリスの心配、しかしオノノクスはなおも雄叫びをあげる。

必死にもがいて、ニンフィアの記憶をかき消そうとする。

しかしその煩わしい記憶は、それにも関わらず無情にもオノノクスの力を奪っていく。

彼はまるで、鎖に繋がれた猛獣のようだった。

そして、その猛獣に鞭を打つは深き緑の獣。

「まだまだ!"ヘドロばくだん"!」

「フシィ!」
 ▼ 153 mTQB7XkZdk 17/12/29 23:22:02 ID:f53GTqis [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
絶え間なき毒の霧雨。

雲の上の世界は極めて快晴なのに、それに不釣り合いな紫の雨粒が幾つも空中に舞い散っている。

そしてその一つ一つが、オノノクスの体力を削っていく。

「オノゥ!?」

「オノォ!?」

「オノォァァァァッ!!!?」

苦悶のラッシュ。

毒が鱗に染み込み、手足を犯していく。

この感覚には、一切の生温さも無い。

あるのは、ただひたすらの苦しさのみ。

「……オノォォ!」

戦く竜、再び窮地へと追い込まれる。

「……っ」

度重なる毒の連撃。

アイリスは既に、ただ息を飲んでオノノクスを見守ることしか出来なくなっていた。
 ▼ 154 ワガノン@グラスメモリ 17/12/30 08:55:30 ID:HiVJm29M NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 155 mTQB7XkZdk 17/12/30 23:03:14 ID:kMDQ8.7c [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
"指をくわえて待つ"とは、まさにこの事を言うのだろう。

まだ幼き彼女の心……ただでさえオノノクスが酷く傷ついている中で、最早本来の平静さは欠片も残っていない。

結果、彼女は燻って、思うような采配をすることができないでいる。

「……くぅぅ」

トレーナーとポケモンの心は、すれ違ったままだ。

「これで終わりだ……いけ、フシギバナ!!」

「フシャァ!」

フシギバナは、満を持してトドメの"ヘドロばくだん"をぶちかます。

今のレッドとフシギバナは一心同体。

アイリスをここまで追い詰めたのは、紛れもなくこの息のあったコンジネーションだ。

そして、このまま彼女はレッドにやられてしまうのか。

誰もがそう思い、息を飲んだその時。

「……オノォォォッ!!」

オノノクスが、突然駆け出した。

強襲する"ヘドロばくだん"に、真っ向から突っ込んでいく。
 ▼ 156 mTQB7XkZdk 17/12/30 23:04:35 ID:kMDQ8.7c [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「オノノクス!?」

アイリスの指示を待たず行動したオノノクス。

そして彼女には、彼のあの無謀な行動の真意が読み取れない。

勝てない勝負と分かって、自らやられに行ったのか。

……いや。

そんなわけはない。

アイリスは分かっている。

オノノクスはそんな腑抜けた奴じゃないと。

ならばなぜ、彼は今……。

……自ら脅威のある方へと、立ち向かっていくのか。

「っ……」

その理由は……已然として、分からない。

しかし、彼女はそんなオノノクスの姿を見て思い出していた。

逆境の中でも抗おうとする、活力の強さを。

そしてその活力こそが、自分の最大の武器であったハズであることを。
 ▼ 157 mTQB7XkZdk 17/12/30 23:06:15 ID:kMDQ8.7c [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「オノノクス……」

回想、そして……反省。

「オノォァァッ!!?」

オノノクスは、レッドが"トドメ"と言い放った"ヘドロばくだん"をモロに受けた。

……だが。

「…………」

「オノォォォッ!!」

彼は耐えた。

耐えてみせた。

"そんなモノか"と豪語するかのように笑いをあげつつ、腰を踏ん張ってしっかりとそこに立ち続けている。

"トドメ"が、"トドメ"ではなくなった。

「……はは、しぶといなぁ、あのオノノクスは」

「フシィ」

例え残り一匹になろうとも。

例え攻撃力が格段に下げられたとしても。
 ▼ 158 mTQB7XkZdk 17/12/30 23:09:21 ID:kMDQ8.7c [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
オノノクスは立ち向かい続けてきた。

そう、例え――

――トレーナーであるアイリスでさえ、その戦意を喪失させてしまった時でも。

相棒である彼が最後まで抗い続けることによって、再びアイリスに勇気を注ぎ込んだ。

そして、反逆の狼煙はあがる。

「……ありがと、オノノクス」

「オノゥ!」

オノノクスの望みは顕現した。

もう、アイリスに迷いはない。

「……いくよ、オノノクス!」

「オノォォァァッ!!」

勝てる可能性は、もう無いかもしれない。

だが、それは諦める理由にはならない。

少なくとも、あのオノノクスにとっては。
 ▼ 159 mTQB7XkZdk 17/12/30 23:12:33 ID:kMDQ8.7c [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
勝負は勝ってこそ、ではなく。

やり遂げてこそ。

それが、彼の信条。

「最大パワーで――"げきりん"ッ!!」

「オノゥゥゥゥッ!!」

力が奪われていようが、関係ない。

これまでの度重なる痛み……その全てを怒りへと変えれば。

運命だって変えられる。

決死の"げきりん"が炸裂した。

猛き炎の演舞は、雲の上にて燃え盛る。

大気を揺るがす凄まじい咆哮。

「……!」

それに対峙するは、レッドとフシギバナ。

「っ……」

ふとレッドは思い出す。

あの時のグリーンの言葉を。
 ▼ 160 ンパッパ@フリーズカセット 17/12/31 21:38:03 ID:zIutJf16 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
おかえり
しえんぬ
 ▼ 161 ーナイト@あなぬけのヒモ 18/01/01 20:03:15 ID:TafX.MPk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
やっと追い付いた。
面白い
 ▼ 162 mTQB7XkZdk 18/01/02 00:29:59 ID:x9DETpL6 [1/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
『精々、アイツのヒーローでいてやるこったな』

ヒーロー。

それは羨望の的であり、絶対的な強さを持つ存在。

コルニにとってのヒーローになれ……と、あの時グリーンは言った。

(……俺達はヒーローになる)

(見ていてくれ……コルニ!)

…………

……

「レッド……頑張って!」

「くわぉん!」

コルニの声援が響く。

「……っ」

一方で、お隣さん――もといカルムがやられたことで、若干落ち込みぎみになっているセレナ。

「大丈夫だよセレナさん!レッドは強いから、このバトルも勝てるよ!」

「コルニさんは、彼のことを心から信頼しているのね」
 ▼ 163 mTQB7XkZdk 18/01/02 00:30:52 ID:x9DETpL6 [2/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
「勿論っ!」

コルニにとってレッドは、羨望の的。

絶対的な強さを持つ存在。

そう……まさにヒーロー。

レッドは既になっているのだ。

コルニにとっての……最強のヒーローに。

だからコルニは、レッドのことを心より応援できる。

絶対に勝てる……そう信じることができる。

「ふふっ……なんか良いなぁ、そういうの」

「懐かしくて……羨ましいな」

そんな明るいコルニとは対称的に、セレナはどこか遠い目でコロシアムの中心を見つめていた。

「セレナさん……」

切ない心境を覗かせる彼女の瞳に、コルニも釣られて悲しげな表情を浮かべる。

「……戦局が動きますよ、二人とも」

「!」

ズミの言葉でハッとなる。
 ▼ 164 mTQB7XkZdk 18/01/02 00:32:43 ID:x9DETpL6 [3/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
今、あの場所で高く燃え上がっている反逆の炎。

そのオノノクスの猛攻に対抗するレッドは、これからフシギバナに恐らく最後となる指示を繰り出す。

彼女たちにとっては見逃せない場面だ。

これで、カロス対イッシュの決着がつく。

「レッド……!」

…………

……

「いくぞフシギバナ!」

「フシャァ!」

襲い来る灼炎に、レッドとフシギバナは答えを出した。

「"ハードプラント"!!」

それは、"くさ"タイプ最終奥義。

究極にして至高、しかしそれでいてその代償も計り知れない。

一定時間動けなくなる代わりに、極大威力の"くさ"属性ダメージを敵に与える。

「フシャァァァッ!!」
 ▼ 165 mTQB7XkZdk 18/01/02 00:35:06 ID:x9DETpL6 [4/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
フシギバナは、全身全霊の力を最大限に解放する。

すると雲の下から――

――巨大な"木"が、圧巻の迫力を以てして生えてきた。

天まで届いた大木……その様はまるで、童話の世界に登場する"豆の木"のよう。

フシギバナに呼び出された巨木の数々は、それぞれ先端が非常に鋭利になっている。

そしてこれからその一つ一つが、オノノクスを貫く槍となって発射される。

「フッシッ!」

フシギバナの号令と共に、トリガーは引かれた。

Zワザとはまた違う、最強の名に相応しい威力の大技が炸裂する。

そして"ハードプラント"と"げきりん"は、遂に……衝突した。

「オノゥ!?」

凄まじい音だ。

この轟音は、二匹の放つ魂のビート。

敵同士ながらもそのハーモニーは力強く、戦場に相応しい旋律を奏でている。

雲は荒れ狂い、衝撃波は暴発し。

天界は滅茶苦茶に崩落していく。
 ▼ 166 mTQB7XkZdk 18/01/02 00:36:00 ID:x9DETpL6 [5/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
勝つのはフシギバナか。

オノノクスか。

「オノォォォォォァァッ!!」

オノノクスが最後の力を振り絞る。

限界まで力を引き出し、内に眠りし能力を全て呼び覚ます。

『自分はまだ行ける』、『絶対に負けない』……対抗心を極限にまで燃やして。

感情の炎を、全て現実の力へと昇華させて。

『届け』と願う。

全ては、そう……トレーナーの為に。

アイリスの為に。

「オノォォォッ!!」

「フシャッ……!?」

押した。

オノノクスが……フシギバナを押した。

だが。
 ▼ 167 mTQB7XkZdk 18/01/02 00:37:42 ID:x9DETpL6 [6/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
「いけぇぇぇぇっ!!フシギバナァァァァッ!!」

「フシャァァァァッ!!」

――トレーナーの為に勝たねばならないのは、フシギバナとて同じ。

今、彼の主人は愛する少女の為に全力を尽くして戦っている。

フシギバナは、そんなレッドの熱意に同調し、そして力になりたいと思った。

かつては人里離れたシロガネ山で、泡沫の夢を無気力に眺め続けていたレッド。

だけど今はこうして、また共に命を燃やすことができている。

グリーンに誘われ、コルニに付き添われ、カルムに認められ。

確かなる進化の道を、共に辿っていけている。

かつての仲間と、新しい仲間と。

昔みたいに、これからもずっと。

だから負けられない。

フシギバナは止まらない。

レッドと見るべき夢が、そこにある。

その夢に向かって突き進む。

「フシャァァァァッ!!」
 ▼ 168 mTQB7XkZdk 18/01/02 00:38:50 ID:x9DETpL6 [7/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
押されそうなら、押し返せ。

根性見せろ。

自分にそう言い聞かせる。

「オノォァッ……!?」

やがてフシギバナは、この状況を覆していった。

"ハードプラント"はより強く、より長く伸びていき。

オノノクスの渾身の"げきりん"をも跳ね返して――

「――オノォォォォッ!?」

――オノノクスを、彼方まで吹き飛ばした。

「オノノクスーーー!!」

その炎はたった今燃え尽きて、儚く煙を立ち込ませる。

沸騰していた竜血は平温にまで下がり。

つり上がっていた深紅の瞳は、力を失って閉ざされてしまった。

そしてオノノクスは堕ちていく。

雲の下……遥かなる地上の世界へと。
 ▼ 169 ウマージ@カードキー 18/01/02 01:23:52 ID:E4jA1TCw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
おひしゃ
 ▼ 170 ガメタグロス@きんのはっぱ 18/01/02 01:29:16 ID:kVgOPNkE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
流石主人公
 ▼ 171 mTQB7XkZdk 18/01/02 23:52:28 ID:x9DETpL6 [8/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
その瞬間、オノノクスは自動的にアイリスのボールの中へと戻っていった。

オノノクス、コースアウトにより脱落。

よって、戦闘不能。

「オノノクス、コースアウト!」

「よって勝者は……カロス代表に決定!!」

決着。

「やったな、フシギバナ」

「フシィ」

一滴も残さず全力を出し切った不屈のコンビに、観客からは惜しみ無い拍手が送られた。

「やったー!」

「くわぉーんっ!」

コルニとルカリオは嬉しさのあまり跳びはね。

「サンキューレッド、フシギバナ」

途中でリタイアを喫してしまったカルムは、見事に勝ってくれた二人に礼を述べ。
 ▼ 172 ーランス@こうてつプレート 18/01/02 23:53:19 ID:r9ngQBqU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援するしかない
 ▼ 173 mTQB7XkZdk 18/01/02 23:57:01 ID:x9DETpL6 [9/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
「あぁ……負けちゃった」

「でも、よく頑張ったねオノノクス……ありがとっ」

敗北したアイリスは、悔しがるのも程ほどに、オノノクスに労いの言葉を贈った。

そして……。

「……負けた、か」

「トモダチの力を、僕は……引き出すことが出来なかった」

一番最初に脱落してしまったNは、自らの無力さを嘆いていた。

「また次、頑張れば良いじゃん!」

「Nのお兄ちゃんは、まだまだ強くなれるんだから!」

「アイリス……」

『君って奴は』、とNは思った。

(ポケモンと人間は、本当に深い絆で結ばれている)

(この子を見ていると、心からそう思えるよ)

(あと……レッド君とカルム君)

(前の試合で戦ったダイゴさんとミクリさんも……皆、ポケモンと通じあっていた)

ふとNは、これまで出会ってきた強豪トレーナーとそのパートナーとの絆を思い返す。
 ▼ 174 mTQB7XkZdk 18/01/03 00:01:02 ID:XxQXqlwo [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
(……僕は何故、彼らから最愛のトモダチを奪おうとしたのだろう)

(彼らの絆を引き裂くことに、何の意味があったんだ……?)

自らの過去の行いに対する、罪悪感の海に浸る。

呆然となりながら、気持ちを沈ませていく。

……しかし。

そんな彼の暗くなっていく心を、呼び覚ます者がいた。

「――良い勝負だった」

「君からは、ポケモンへの深い愛情を感じた」

「また、戦おう」

レッドだった。

いつの間にかNの正面に歩み寄っていたレッドは手を差しのべ、彼に握手を求めている。

「――!」

「……うん、そうだね」

Nはこれに応じた。

二人は互いに掌を固く握りしめ、再戦の誓いを立てる。
 ▼ 175 mTQB7XkZdk 18/01/03 00:01:43 ID:XxQXqlwo [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
両者共に、ポケモンをこよなく愛する者同士。

通じ合うところがあったのだろう。

(……こうして、これからも多くのトレーナーと心を通わせていけたら良いな)

Nは気づく。

絆や友情は、決してポケモン達との間だけで育まれるモノではない。

自分が今まで出会ってきた人々との間にもまた、等しく絆は生まれていくのだと。

(僕はなれたのだろうか)

(彼の……"トモダチ"に)
 ▼ 176 mTQB7XkZdk 18/01/04 01:29:20 ID:Ci0ysahs [1/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
…………

……

カロス代表とイッシュ代表の戦いは、カロス代表の勝利で幕を閉じた。

これで、本日の対戦プログラムは終了である。

決勝戦は明日。

いよいよクライマックスといったところだ。

今日の戦いを終えた参加者達は、各々の帰路に着くべく待合室で支度を済ませる。

「いよいよここまで来たな、レッド」

「うん」

決勝戦を明日に控えるのは、カロス代表とアローラ代表。

レッド&カルム、ミヅキ&ゴールドのコンビだ。

「あと一歩で優勝だよゴー君!どうしよ!」

「あまり気を緩めないでくださいよミヅキさん」

白星で浮かれるミヅキと、それを諌めるゴールド。

渋い表情の彼は、明日の決勝戦を案じていた。
 ▼ 177 mTQB7XkZdk 18/01/04 01:35:08 ID:Ci0ysahs [2/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
(……レッドさん、あの時よりも遥かに強くなっているな)

(勿論僕も日々強くなっているつもりだけど……あの人の実力には底知れないものがある)

ゴールドが最も警戒の目を置いていたのはレッドだった。

レッドと以前戦った経験を持つ者として、彼は今改めてその強さに身震いを起こしている。

(あと――)

(――以前よりも、何だか明るくなっていたな)

(初めてあの人と会った時は、終始無言だったのに……)

レッドが以前と比べてまた違った強さを手に入れたことに、ゴールドは気づく。

だがゴールドはまだ知らない。

レッドがこのカロスの地で遂げていた、更なる成長を。

彼の新たなる力、メガリザードンYを。

…………

……

場所は移って、コロシアム内のとある通路。

待合室を後にした直後のレッドとカルムは、グリーンとワタルのコンビと合流し、ここを歩いていた。
 ▼ 178 mTQB7XkZdk 18/01/04 01:36:25 ID:Ci0ysahs [3/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
そして暫く進むと……。

「あ、レッドー!」

「コルニ」

「ピカッ!」

向かいから金髪を揺らしてコルニがやって来た。

「……あ!貴方は確か、グリーンのパートナーだった――」

「ワタルだ、君がコルニちゃんだね」

「レッド君の彼女と聞いて驚いたよ」

「あ、あはは……なんだか照れちゃいます」

ワタルは今、感慨深い気持ちに浸っていた。

かつては四天王の一人として、レッドの前に立ちはだかったワタル。

そんな彼からしてみれば、レッドに彼女ができたなんて話を聞けば何となくニヤケてしまうのだろう。

ワタルに少しからかわれて、コルニは若干タジタジになっていた。

「……」

……ふとコルニは、カルムの方に目をやる。
 ▼ 179 mTQB7XkZdk 18/01/04 01:38:44 ID:Ci0ysahs [4/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
(……カルムはどう思っているんだろう、セレナのこと)

あの後、結局セレナと帰り道を別にしたコルニ。

『ごめんねコルニさん、私まだ心の準備が――』

そんなようなことを言ったのを最後に、セレナはカルムと会う意思を見せないまま去っていったのだ。

コルニとしては、セレナの心境が気がかりなばかり。

……だが。

「それじゃあ行こう、コルニ」

大好きなレッドの声を聞くと。

「あ……うん!」

結局、彼のことしか考えられなくなるコルニなのであった。
 ▼ 180 ジョンド@みずのいし 18/01/04 09:04:20 ID:4lg8huKU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 181 mTQB7XkZdk 18/01/04 22:36:16 ID:Ci0ysahs [5/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
…………

……

その夜のこと。

ここは、ミアレシティのとある町外れにある高台。

芝が茂り風に靡くこの場所で、帽子を逆向きに被っている少年は一人、高台の下の夜景を見下ろしていた。

その表情はどこか物憂いの雰囲気を纏っている。

「……明日は決勝戦、か」

少年……ゴールドは、明日に控える決勝戦への想いを募らせていた。

彼の脳内では今、目一杯の期待と否めない不安が交錯している。

勝てるだろうか、果たして僕は。

あのレッドさんに……と。

確かにゴールドはあの時、一度レッドに勝った。

だが、ゴールドはその時の勝利にさえ徐々に疑いを持ち始めている。

(あの時戦ったレッドさんは――本当に"レッドさんソノモノ"と言えるトレーナーだったのだろうか)

(今になって考えてみると、とてもそうには思えない)
 ▼ 182 mTQB7XkZdk 18/01/04 22:39:36 ID:Ci0ysahs [6/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
あの日戦ったレッドというトレーナーは、レッドであってレッドじゃなかった。

ゴールドはそう考える。

(少なくとも今の彼は、優しくて落ち着きがあって、誰に対しても明るく振る舞える……そんな、立派な人格を持ったトレーナーだ)

(だが、僕があの時あの山で出会ったレッドさんは……何というか無口で、まるで血が通っていないかのような冷徹な雰囲気の人だった)

(あれから今日という日まで、どのような変化がレッドさんにあったのかは分からない)

(けれど、これだけは言える)

「――今のあの人は、間違いなく強い」

……と。

思っていたことをいつの間にか声に出していたゴールド。

そこへ、あの少女がやってきた。

「あ、ゴー君!よーやく見つけたぁ」

「ミヅキさん」

アローラ代表、ミヅキ。

「やっほ、オーダイル君」

「オダッ」
 ▼ 183 mTQB7XkZdk 18/01/04 22:41:20 ID:Ci0ysahs [7/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
ミヅキはゴールドと鉢合わせするや否や、彼とオーダイルの物憂いの時間に割って入ってきた。

そのことについては特に、ゴールドもオーダイルも不快感を示すことは無かったのだが……。

「……明日は決勝戦なんですから、ゆっくり休んでいてくださいよ」

「僕なんかに構ってないで」

夜更かしによって決勝戦に支障をきたすことを危惧したゴールドは、若干突き放すような言い方でミヅキとの距離を置こうとする。

しかし。

「あーんゴー君つめたいっ!」

「構って構って!」

何を考えているのかミヅキは、ゴールドにめっちゃ構って欲しそうなのである。

「……」

彼女の構ってアピールに若干イラッとしたゴールドだが、彼女があそこまで頼んでるのにそれを無下にするのも悪いと思い。

「……まあちょうど僕も退屈していたところですし、良いですよ」

「やった!」

仕方なく、付き合ってあげることにしたのだった。
 ▼ 184 mTQB7XkZdk 18/01/04 22:43:17 ID:Ci0ysahs [8/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
…………

……

「はいゴー君、コーヒー!」

「オーダイル君も!熱いから気を付けてね?」

というわけで、そこにあったベンチに座り込んだ三人。

ミヅキから缶コーヒーの差し入れを貰ったゴールドとオーダイルはそれぞれお礼を言い、軽く吐息で冷ましてからそのコーヒーをすする。

今ミアレで流行っている、酸味の強い系統の味わいが口一杯に広がった。

それは芳醇の一言に尽きる。

戦いに疲れた心が安らいでいく……。

「今日は綺麗な三日月だねぇ」

「ええ……」

ふとベンチから見上げた夜空。

数多に散らばる星々、その海の上で浮かんでいたのは美しい三日月だった。

月の光陰が生み出せしその形には、満月とはまた違った魅力によって引き込まれる。

彼らが暫く大空を見上げていると……。
 ▼ 185 mTQB7XkZdk 18/01/04 22:44:12 ID:Ci0ysahs [9/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
「おやっ?」

……急になぜか、ミヅキのバックがガサゴソと揺れ始めた。

「あらあら、あなたもお外に出たくなったの?……仕方ないなぁ」

「……ミヅキさん?」

ミヅキはどうやら、バックの中に潜んでいる者に話しかけているようだ。

恐らく、バックの中のモンスターボールに入っているポケモンと対話しているのだろう。

「ゴー君にも紹介するね」

「出て来て……"ルナアーラ"!」
 ▼ 186 mTQB7XkZdk 18/01/06 00:49:06 ID:wMYfIY3I [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
――三日月が照らす宵に、一匹の獣が翼をはためかせて降臨する。

アローラ地方の伝説に刻まれし、月輪の使者。

影の中に光を生む者。

この世界と異次元を往来すると言われており、その性質上出会うことはまずない。

しかし彼は今、ミヅキの手の中にある。

"ルナアーラ"。

ミヅキと絆を結び、彼女のためにその力を解き放つ。

「ルナァ!」

ボールから出されたルナアーラは、真っ先に三日月の方へと向かって羽ばたいていった。

「ルナアーラ……?」

「そ!アローラ地方の伝説のポケモンだよ!」

「え!?本当ですか!?」

伝説のポケモン。

それは、各地方にそれぞれ古くから言い伝えられている、比類なき強さを持つポケモンのこと。
 ▼ 187 mTQB7XkZdk 18/01/06 00:52:24 ID:wMYfIY3I [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
例えばカントー地方なら、人によって作られ凶暴な心を持った最強の遺伝子ポケモン・"ミュウツー"。

ジョウト地方なら、虹色の翼にて黄金の焔を操る"ホウオウ"と、純白の翼によって白銀の突風を生み出す"ルギア"。

ホウエン地方なら、遥か太古の時代に覇権を争った二匹のポケモン……陸の"グラードン"と海の"カイオーガ"。

シンオウ地方なら、時空を司る神々にして、この世の理に関わりし者……時間の"ディアルガ"と、空間の"パルキア"。

イッシュ地方なら、白と黒の二つの宝玉にそれぞれ封印された一対の英雄竜……真実を求める"レシラム"と、理想を問う"ゼクロム"。

カロス地方なら、かつて世界の滅亡を目論んだ者が求めた二つの大いなる力……永遠の命を与える"ゼルネアス"と、永劫の破壊を続ける"イベルタル"。

そして……アローラ地方の伝説のポケモンが、あの"ルナアーラ"というわけだ。
 ▼ 188 フレシア@かざんのおきいし 18/01/11 19:01:09 ID:E9h3FfcQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しえんぬ
 ▼ 189 クーダ@においぶくろ 18/01/21 15:37:52 ID:MHpPZiSc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
お前が!支援!するんだよぉ!!
 ▼ 190 シボン@ひかるおまもり 18/02/01 00:19:15 ID:79hRtXsQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援するぜ
 ▼ 191 ギギシリ@ひみつのカギ 18/02/09 06:55:48 ID:dX4hF0ds [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 192 ガヤミラミ@ホエルコじょうろ 18/02/09 06:56:43 ID:dX4hF0ds [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 193 チルゼル@ヘビーボール 18/02/09 06:57:51 ID:dX4hF0ds [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 194 アコイル@たまむしプレート 18/02/12 09:31:42 ID:2ABMmeUY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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支援えん
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 ▼ 202 ージュラ@サイコソーダ 18/03/17 23:54:38 ID:o.X3psRE NGネーム登録 NGID登録 報告
支援

○〜
 ▼ 203 ノクラゲ@するどいくちばし 18/03/24 17:13:24 ID:qG2YlcZ. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 205 ルディオ@ペアチケット 18/04/13 23:35:34 ID:jXuLcGJ2 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 206 クリン@ムーンボール 18/04/13 23:38:35 ID:jXuLcGJ2 [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
帰ってきませんね…
 ▼ 207 ルガー@リバティチケット 18/04/18 19:54:58 ID:/.XZh0oU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
まぁモチベ保つのキツイか…
いい作品だったんだがなぁ…
 ▼ 208 ドラ@おうえんポン 18/04/28 22:53:37 ID:5CmGOPxw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しえ
 ▼ 209 ラス@あおぼんぐり 18/05/02 23:56:34 ID:Vg0WCxSo NGネーム登録 NGID登録 報告
逃げたかな?
 ▼ 210 イボルト@ぎんのはっぱ 18/05/06 01:46:05 ID:HcMAiMn. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ▼ 211 ゾノクサ@ねっこのカセキ 18/05/12 20:42:51 ID:8f5Hr6eg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
してん
 ▼ 212 ロデスナ@ザロクのみ 18/05/12 20:45:56 ID:yzPWdJKc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
これ最近見ねぇなぁと思ったら未完で終わりそうだったのか…
 ▼ 213 マージョ@パイルのみ 18/05/20 01:14:46 ID:KMwwJxCE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ▼ 214 イクン@ユキノオナイト 18/05/20 20:10:22 ID:wdSA0P9s NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しっかりと完結させて、どうぞ
 ▼ 215 ワムラー@シルフスコープ 18/05/24 22:35:47 ID:DI5Z0QRc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
最後に書いたの1月なのか…
 ▼ 216 mTQB7XkZdk 18/05/31 19:50:20 ID:iknRLcHY [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「るなぁぁっ」

ルナアーラはミアレを照らす月光を浴びて、気持ち良さそうに飛行を楽しんでいる。

もしもこの光景が誰かの目につくようなことがあれば、即ネットニュースのトップにドドンと掲載されることになるだろう。

伝説の、それも他地方のポケモンが出現したということが判明すれば、街中が大騒ぎだ。

が、そんな懸念も一瞬にして忘却されてしまう。

なぜなら、今ゴールドの目の前で起こっていることは、その不安にも勝る感動の瞬間だったからだ。

彼の瞳が、ルナアーラの放つ神秘の光によって潤んでいく。

他の生物を超越する、伝説と唱われしポケモンとの出逢いは、ゴールドの人生にとって最高峰の一つに数えられる記憶となった。

「今回、ルナアーラは出場出来なかったんだ」

「伝説のポケモンはダメって言われちゃって」

「あー……」

伝説のポケモンは、強大すぎる力を持つゆえ、大会のパワーバランスという名の秩序を乱す一因になりかねない。

そういった理由によって、伝説のポケモンの参加が不可能となっている大会は実際数多くある。

PWTもその内の一つというわけだ。
 ▼ 217 mTQB7XkZdk 18/05/31 19:50:53 ID:iknRLcHY [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「でも、私達の心はいつだって一つ!」

「参加こそできなくても、ルナアーラはちゃんと私と一緒に戦ってくれているんだよっ!」

それでもミヅキは、ルナアーラとの共闘を諦めてはいない。

二人の心同士で繋がっている絆を、ミヅキは信じている。

「……そうですか」

「良いですね、そういうの」

ルナアーラを想うミヅキの純粋な言葉に、ゴールドは心を突き動かされ、無意識に微笑んでしまう。

「ゴー君も、きっとルナアーラと仲良くなれるよ!」

「おーい、おいでよルナアーラ!私の新しい友達を紹介するからさー!」

「るなぁ!」

ミヅキに呼ばれたルナアーラは、威厳あるべき伝説のポケモンとは思えぬ程に無垢な笑顔で反応して、直ちにミヅキのもとへと飛んできた。

そしてゴールドは、接近してきたルナアーラに思わず圧倒され、驚きと同時に少し怯えたような仕草をしてしまう。

近くで見てみるとやはりもの凄い迫力だ、と。

ルナアーラは全体的に見ると、まるで三日月のような形の翼を持っている。

近くに寄ってきたルナアーラの体を、ゴールドは暫く夢中になって眺めた。
 ▼ 218 mTQB7XkZdk 18/05/31 19:52:09 ID:iknRLcHY [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
ルナアーラが持つ数々の特異な外見的特徴の中でも、一際ゴールドの目を引いたのは、ルナアーラの頭部にある、まるで宇宙空間の星々ような不思議な模様だった。

その模様は、よおく見てみると少しずつ動いている。

ゴールドはそれをじっと観察し続けてみた。

すると、まるで本物の宇宙に吸い込まれたかのような感覚を彼は覚える。

無限に広がる紫の空。

あまねく煌めく星に見惚れてしまった彼は、数秒ほどその幻惑の中に幽閉された。

やがてハッと気づいた時、ゴールドは見慣れた地上の景色に何となく安堵する。

そんなゴールドの少しぎこちない様子を見て、ルナアーラはクスクスと笑った。

「るなるなぁ!」

「ははっ」

この瞬間ゴールドは思った。

伝説とは言っても、普通のポケモンとは全くの別次元ということは無いと。

こうしてルナアーラが普通に笑っているところを見ると、そこに壁なんて無いんだなと感じる。

ゴールドも、これまでの旅で色々な伝説のポケモンを見てきたが、これ程表情が豊かなのはルナアーラをおいて他にはいない。

ゴールドは何となく嬉しかった。

こうして自分と関わりを持つことによって、伝説と言われるポケモンがこんなにも喜んでくれたことに。

彼はそのルナアーラの無邪気な姿に、とても励まされた。
 ▼ 219 mTQB7XkZdk 18/05/31 19:53:22 ID:iknRLcHY [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「僕はゴールドっていうんだ」

「よろしくね、ルナアーラ」

「るなぁ!」

ゴールドとルナアーラの邂逅を横から眺めていたミヅキは、嬉しさからかニコッと笑う。

アローラ代表の面々は、和やかな時間を過ごしたのだった。

明日に迫った決勝戦を前に、多少暢気ではあるかもしれないが、最後の息抜きという意味では充実の一時だったと言える。

そして彼らは月明かりに誓うのだった。

明日の聖戦に勝利し、世界最強の座を勝ち取ってみせると。

月輪の化身たるルナアーラは、そんなやる気に満ちた二人を見て、彼らが大いなる戦果を残すことを確信する。

世紀の決戦の日は近い。

…………

……

「コルニ」

「んっ?」

ホテルの部屋で、レッドがコルニに声をかける。

反応したコルニは、それまで見ていたテレビ番組のボリュームをリモコン操作で下げてから、彼の話に耳を傾けた。
 ▼ 220 mTQB7XkZdk 18/05/31 19:53:57 ID:iknRLcHY [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「良かったら、今から練習がてらポケモンバトルをしないか?」

「最後の試合の前に、もう一度だけコルニのルカリオと戦っておきたいんだ」

既に夜遅くの時刻ではあるが、それはレッドからコルニへの練習試合の申し込みであった。

突然の誘いにコルニは少し驚いたものの、他ならぬレッドの頼みであるからか、すぐにテレビの電源を落として立ち上がり、こう言った。

「良いよ!アタシも、今のレッドと全力で戦ってみたい!」

「決まりだな」

レッドの誘いを快諾したコルニ。

戦意高ぶる二人は部屋を後にし、ホテルの外の敷地に設けられているバトルスペースへと移動した。

…………

……

ホテルのバトルスペースもまた、ポケモンが戦うにはうってつけの広さと平坦さを兼ね備えている。

更に整備も十分行き届いていて、缶やタバコなどのゴミは一切無い。

この戦場ならば思う存分戦うことがてきる。

そして、レッドとコルニは既に、お互いの全力をここでぶつけ合っていた。

「リザードン、“かえんほうしゃ”!」

「ルカリオ、“インファイト”!!」
 ▼ 221 クリン@ミックスオレ 18/05/31 20:09:24 ID:8O22QriM NGネーム登録 NGID登録 報告
おお!
更新されてる!?
 ▼ 222 クーダ@りゅうのウロコ 18/06/01 22:18:18 ID:uiGa9bqA NGネーム登録 NGID登録 報告
待ってたァ!
 ▼ 223 mTQB7XkZdk 18/06/02 00:50:10 ID:rmyqOpLQ [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
メガシンカしたリザードンとルカリオが、それぞれ死力を尽くして体力を削り合っている。

メガリザードンYの特性“ひでり”によって、夜であるにも関わらず小さな太陽が戦場を熱く照らしていた。

そんな灼熱地獄の中、リザードンはこの環境を追い風にして炎の技でルカリオを攻め立てる。

火竜の怒涛の猛攻に、ルカリオも負けじと不屈の心で立ち向かった。

月光のもとで激昂を続ける両者が繰り広げる死闘。

リザードンもルカリオも、共に旅を続けていく中でこんなにも成長していた。

少なくとも、この戦いに割って入れる者は世界でもそうはいないと言える程に。

レッドもコルニもはじめは練習試合のつもりだったが、想像以上に“ムキになった”二匹を見ていたら自然と昂ぶってしまったようで。

「負けるなリザードン!」

「そこだっ!いけぇルカリオッ!」

いつの間にか、凄まじく熱量が上がってしまっていた。

そして……。

「グォォォォッ!!」

「くわぁっ……!?」

リザードンの火炎の咆哮が轟いた瞬間、ルカリオの鋼鉄の肉体が爆風によって吹き飛んだ。

「くわぁぁっ!?」
 ▼ 224 mTQB7XkZdk 18/06/02 00:50:49 ID:rmyqOpLQ [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
あまりにもヒートアップし過ぎて放たれたリザードンの渾身の一撃。

常を超えた威力の“オーバーヒート”が、この熾烈なる勝負にピリオドをうった。

「くわぁ……」

「ルカリオっ……あちゃあ。負けちゃったか」

「ありがと!ゆっくり休んでね」

気絶したルカリオに声かけをしながら、敗北したコルニは彼をボールに戻す。

金の髪をわしゃわしゃと搔き、参ったといった感じの表情を浮かべた。

そして、勝利したレッドもまた、リザードンをボールに戻し、コルニのもとへと駆け寄る。

「ありがとうコルニ」

「こんな夜遅くに付き合わせちゃってごめん」

「えへへ、レッドの頼みならこれくらいなんてことないよ」

「アタシの方こそ、ルカリオの良い経験になって感謝してるんだしさ」

試合の後、礼を交わした二人はホテルに戻るため歩みを始める。

その帰路の途中でコルニはふと思い立ち、レッドに聞いた。

どうして、さっき急にバトルしようなんて言い出したのかと。
 ▼ 225 ガサーナイト@たてのカセキ 18/06/02 00:50:58 ID:rL72OhLU NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 226 mTQB7XkZdk 18/06/02 00:51:18 ID:rmyqOpLQ [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
するとレッドはこう答えた。

“明日の答えを見つけるため”だと。

そして、その答えは見つかったとも言った。

「答え……?」

「うん」

「これで俺達は明日……勝つことができる」

発見したその答えがあれば、明日の勝利は確実。

レッドはそう断言したのだった。

また、次に彼はこのように言い放つ。

「コルニ」

「さっきの君とのバトルは……本当に“面白かった”」

満面の笑みで、面白かったと口にしたレッド。

コルニは彼の笑顔に思わず胸がときめき、心臓を踊らせた……が。

(……レッド……?)

彼女は同時に、彼のその“面白かった”という言葉には隠された意味があることを悟る。
 ▼ 227 mTQB7XkZdk 18/06/02 00:52:25 ID:rmyqOpLQ [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
その意味が何なのかは分からない。だが……。

……その隠された意味こそが、つまりレッドの言っていた答えとやらなのではないか、と、コルニは推測した。

…………

……

……翌日のPWT会場は、最高潮の盛り上がりを見せていた。

来場者数はここ数日の中で最多を既に記録しており、快晴という天候もあって凄まじい熱気が観客席を覆っている。

人々の汗と声が交錯する中、コルニとルカリオ、ズミ、セレナはそれぞれの想いを胸に、この最後の決戦を見届けるべく席について時を待っていた。

「……やっぱりセレナさんも、カルムのことが気になるんだね」

「何だかんだ言ってもね、……はぁ」

一度は決別したとはいえ、かつての恋人の晴れ舞台となれば気をかけてしまうものなのか、セレナは憂鬱そうにしながらもカルムの登場を待ちわびている。

「ズミさんも、今まで散々好き放題言ってたけど、結局は見に来るんですね〜?」

「……それが何か?」

「べっつにぃ」

そして、ズミに対しては皮肉を込めまくった言い方で挑発的に喋るコルニ。

これまでの会話で彼女にすっかり反感を買われてしまったズミ、しかし当の彼には悪びれている様子はほとんど無い。
 ▼ 228 mTQB7XkZdk 18/06/02 00:52:59 ID:rmyqOpLQ [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
相変わらずのプライドの高さにふくれた様子を見せるコルニ、だが最後くらいは気持ちよく観戦したいという思いもあるため、これ以上は彼に話しかけなかった。

「……皆様、大変長らくお待たせいたしました!」

「間もなく、PWT決勝戦――」

「――カロスvsアローラの試合が始まります!」

大会進行役の意気揚々とした声が、会場にて響き渡る。

そして瞬間、それをも遥かに凌駕する音量の歓声が巨獣の咆哮のように大気を揺るがしながら轟いた。

だが、これから始まる戦いはこれすらも上回る迫力の激闘となるだろう。

その地方を代表して出場した最強のポケモン同士のぶつかり合い、それはまさしく究極のバトル。

ここまでの激戦を勝ち上がってきた猛者達は今ここに集う。

そして、世界最強を賭けた決戦に満を持して臨む。

アローラとカロス、勝つのはどちらになるのか。

…………

……

「さてさて、準備はいいか?レッド」

「勿論」
 ▼ 229 mTQB7XkZdk 18/06/03 23:59:05 ID:7jb1doXM NGネーム登録 NGID登録 報告
メガシンカしたリザードンとルカリオが、それぞれ死力を尽くして体力を削り合っている。

メガリザードンYの特性“ひでり”によって、夜であるにも関わらず小さな太陽が戦場を熱く照らしていた。

そんな灼熱地獄の中、リザードンはこの環境を追い風にして炎の技でルカリオを攻め立てる。

火竜の怒涛の猛攻に、ルカリオも負けじと不屈の心で立ち向かった。

月光のもとで激昂を続ける両者が繰り広げる死闘。

リザードンもルカリオも、共に旅を続けていく中でこんなにも成長していた。

少なくとも、この戦いに割って入れる者は世界でもそうはいないと言える程に。

レッドもコルニもはじめは練習試合のつもりだったが、想像以上に“ムキになった”二匹を見ていたら自然と昂ぶってしまったようで。

「負けるなリザードン!」

「そこだっ!いけぇルカリオッ!」

いつの間にか、凄まじく熱量が上がってしまっていた。

そして……。

「グォォォォッ!!」

「くわぁっ……!?」

リザードンの火炎の咆哮が轟いた瞬間、ルカリオの鋼鉄の肉体が爆風によって吹き飛んだ。
 ▼ 230 mTQB7XkZdk 18/06/04 00:03:09 ID:MYv2ZEg. [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
ミスしました。申し訳ありません。

試合前の最後の調整を終えた二人は、早速バトルフィールドへと足を進める。

一方、二人が歩むその先では、アローラ代表が一足早く準備を完了して戦いの時を待っていた。

レッドはゴールドの姿を確認すると、そこで一旦足を止める。

そしてじっと目を細め、ゴールドを見つめた。

レッドは過去にゴールドとシロガネ山で戦った経歴を持つ。

だがこの時レッドは思うのだった。

今そこに立っている彼は、昔戦ったその人物とは見違えてしまうくらいの強者になっていると。

あの時から既にゴールドはレッドをも超える力を有していたが、更にかなり腕を上げているのがレッドには一目瞭然だった。

今の彼にはもはや、かつての挑戦者だった時の面影はなく、あるのは立ちはだかる者が如く風格である。

今となってはむしろ、レッドの方が挑戦者なのだろう。

原点は現在、頂点にあらず。

レッドは今改めて悟るのだった。

この戦いこそが、自らが真に最強の名を取り戻すための、またとない機会なのだと。

一方でゴールドもまた、自らの視界で立ち止まるレッドを見て思う。
 ▼ 231 mTQB7XkZdk 18/06/04 00:03:45 ID:MYv2ZEg. [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
(レッドさん……この大会をここまで勝ち上がるなんて)

(やはりあの人はとんでもないポケモントレーナーだ)

ゴールドは、最初にレッドと再会したとき、実はそこまで感動を覚えなかった。

なぜなら、いくらかつての強敵だったとはいえ、自分が一度勝った相手だったからだ。

かなりの実力者であったことは記憶しているものの、レッドとの戦いにはそれなりに自信があった。

だが、これまでのレッドとカルムの戦いぶりを見てきたゴールドの心には、既にそれまでの余裕は無くなっていた。

互いが互いを最強の相手と認め合った瞬間は刹那に過ぎ去り、二人の目線は交差して離れる。

各々の定位置につき、自らがこの日のために鍛え、選び抜いたポケモンが入ったモンスターボールを構える。

そして、レッドの隣に立つカルムも、この試合にかける自身の想いに胸を昂ぶらせていた。

(ついにこの時が来た)

(あの時レッドをスカウトして本当に正解だったと、今なら胸を張って思える)

(最強のパートナーと共に、最強のライバルに戦いを挑むんだ)

カルムの胸に募るのは、至高の誇り。

カロス地方のチャンピオンは今、レッドとの出逢いに心から感謝する。

今日まで共に戦ってきたレッドとの絆を、そして、ポケモンとの愛を信じて、カロスに住む人々の希望と期待を背負い。

若くして彼は、多くの者の願いをその身に宿す。
 ▼ 232 mTQB7XkZdk 18/06/04 00:04:17 ID:MYv2ZEg. [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
だが、そんな彼はその重みに挫けることはない。

なぜなら、芯まで信頼をおける仲間がいるから。

情熱を注ぎ合える友ができたから。

カロスの王たるカルムを縛り付けるモノは何もない。

――そして、無論彼女も。

(ゴー君やポケモン達と一緒にここまで来れたこと、本当に嬉しいな)

(後はこれで勝てれば、きっと最高だよね)

(レッドさんもカルムさんもかなりの強敵だけど……私達には敵わない)

(この勝負……最後に勝つのは私達だ!)

アローラ地方初代チャンピオン・ミヅキは、パートナーのゴールドとの間に芽生えた友情と、これまで培ってきたポケモン達との信頼関係を噛み締めながらこの試合に臨む。

彼女もまた、カルムと同じようにチャンピオンとして大勢の人々の“勝ちたい”という気持ちを背負っている。

それも、“初代”という重大な肩書きを付け加えられてだ。

アローラ地方にとってミヅキは、偉業を成し遂げてもらうべき存在なのだ。

そしてミヅキはその為に、ここまで勝利を積み重ねてきた。

現に彼女は初代の名に恥じない卓越した実力でカントーの選手を下した。
 ▼ 233 mTQB7XkZdk 18/06/04 00:04:55 ID:MYv2ZEg. [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
柔和な雰囲気に隠した知能と闘志は未だ未知数。

彼女を含めた計四人の眼前には既に、勝利の杯がある。

それを手に取るのは果たしてどちらのチームか。

女神に微笑まれるか、はたまた見捨てられるか。

負けた者が汚泥を舐める。

勝った者が栄光を手にする。

それが、弱肉強食たる自然の掟。

頂点をめぐる究極のサバイバルバトルの果てに、ついに彼らは雌雄を決する。

四人の「いけっ!」という声の後。

それぞれが望みを託したポケモン達が一斉に飛び出す。

カロス代表の二人は。

「ピカチュウ!」

「ゲッコウガ!」

疾走せし雷電“ピカチュウ”と、水面の忍者“ゲッコウガ”。

「ピカァッ!」

「ゲロッ!」
 ▼ 234 mTQB7XkZdk 18/06/04 00:05:22 ID:MYv2ZEg. [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
どちらも、速度の能力がずば抜けて高いポケモンだ。

並のポケモンでは攻撃を当てることはおろか、目でその姿を追うことすら難しいだろう。

レッドとカルム、それぞれの敏腕トレーナーのもとで練り上げられた技はその塾度によって真価を発揮する。

そして、対するアローラ代表の二人は……。

「“メガヤンマ”!」

「“ジュナイパー”!」

……まるで薄暗い森を彷彿とさせるような、深緑の狩人達を繰り出す。

片方は、時を過ごす毎に飛行速度を増す、蜻蛉のような姿をしたポケモン“メガヤンマ”。

原始の力を得た“ヤンヤンマ”というポケモンが進化して辿り着く境地であり、その実力は、年月の経過によって失われた能力を全て取り戻したことにより、ヤンヤンマの頃とは見違えるように強くなっている。

そしてもう片方は、森の奥深くにて獲物を狩猟する、影の暗殺者……“ジュナイパー”。

音を、気配を、感情を、全て消して放つ彼の弓矢の如く羽の一閃は、影を縫って敵を貫く。

彼は、ミヅキがアローラで最初に手にしたポケモンであり、今日まで彼女と共に育んできた彼女との絆は誰よりも強い。

古くから共に戦い、共に成長してきたミヅキとジュナイパー。

二人が切り拓くのは、二人がまだ見ぬ世界。

レッドとカルムに挑戦することによって、その世界に飛び込む。
 ▼ 235 ヤ顔イーブイ 18/06/04 00:12:30 ID:NwHYLbrY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
 ▼ 236 mTQB7XkZdk 18/06/05 00:11:49 ID:OQ7Vrtg2 [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
彼女達がやりたいように。

彼女達の思うがままに。

「さぁ!決勝戦に相応しいエンバイロメントを制定致しましょう!」

PWTでは慣習のエンバイロメントシステムが、実況の声によって作動する。

バトルスタジアムの無機質なコンクリートの床は、白い煙に包まれて一旦その姿を消し。

軽い地面の揺れを伴って、戦場は姿形を変えていく。

これまでは天候が深く関係したバトルフィールドだったが、霰、雨、砂嵐、晴れときて、未使用の天候はもう無い。

いや、厳密に言えば無いことも無いのだが、後残っているのは、伝説のポケモンのみが巻き起こせるという、天候というよりはもはや災害に近い事象のみだ。

なので、これから制定されるエンバイロメントの全容は誰にも予測不可能。

皆が息を呑んでその不確定の戦場が現れるのを待つ。

そして……立ち込めていた煙がついに消え去った。

観客達が目を見開いて、眼下の景色を刮目する。

すると彼らの目に映ったのは……至ってフラットな空間だった。

だが、それでいてどことなく荘厳な雰囲気を感じさせる。

紫や白といった寒色系の配色が、空間に独特の静けさのようなものを形作っており、そこに立つ者にえも言われぬ緊張感を与える。
 ▼ 237 mTQB7XkZdk 18/06/05 00:12:25 ID:OQ7Vrtg2 [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
また、全体を見回してみると、円形のフィールドを囲むように漆黒の柱が何本も建っているのが確認できた。

その柱には真っ赤な炎が揺らめく松明が飾られており、まるでトレーナーとポケモンを鼓舞するかの如く燃え盛っている。

この、戦いと静寂を織り交ぜたような不思議な空間。

ごく一部の人間とポケモンは、この雰囲気に何となく見覚えがあった。

すると、選手用観客席にてシロナが次の瞬間、この戦場の見た目について感想を述べる。

「この空間……」

「……まるで、“チャンピオンの間”のようね」

この感想はどうやら的を射たようで、彼女の周りで同じく試合を観戦する選手達が全員納得したのだった。

そう、レッド達がこれから戦うこの空間は、チャンピオンが挑戦者を待つ部屋をイメージして作られたモノ。

旅を始めたトレーナーが、激戦の末最後に辿り着く、終焉の、あるいは決着の地。

今回のPWT挑戦者なら誰もが通った場所だ。

「決勝戦の舞台はこの、“ラストステージ”!」

「最後の戦いに相応しい、シンプルな実力を競える戦場です!」

決勝戦だからこそなのか、天候も地形も関係なく、単純な力と力のぶつかり合いが行える場所が選定された。

戦いは頂点にして原点に立ち返る。
 ▼ 238 mTQB7XkZdk 18/06/05 00:15:47 ID:OQ7Vrtg2 [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
頂きへの挑戦者達にとっては、これは好都合な展開と言えよう。

何も難しいことは考えず、思いっきり、のびのびと戦えるわけなのだから。

「では――」

「――バトルスタート!」

ついに始まった。

全世界の王者を決める、歴史的な聖戦が。

この戦に勝利を収めし者が、歴史に栄光を刻む。

彼らが欲するのは、ただ一つのもの。

“最強の称号”、それだけだ。

「いくぞ、ピカチュウ!」

「ピカァッ!」

一足早く声を張り上げたのは、シロガネ山の主にしてカロス地方を歩む冒険者、レッド。

相棒のピカチュウに、このバトル最初の指示を繰り出す。

「メガヤンマに、10まんボルト!」

「ピカァァッ!」

ピカチュウが鳴き声をあげた瞬間、彼の周りを黄色の電波が覆う。
 ▼ 239 mTQB7XkZdk 18/06/05 00:16:41 ID:OQ7Vrtg2 [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
バチバチと音を立ててその電力は上がっていく。

電圧が10万Vに達した時、それは電撃となって唸りをあげた。

宙を走る10まんボルト。

疾風怒濤の一撃は目線の追随を許すことなくメガヤンマに襲いかかる。

「メガヤンマ、サイコキネシス!」

「ヤンッ!」

だが、この速度に追いつくポケモンがここに一匹。

オニトンボポケモン・ヤンヤンマは羽音のテンポを加速させながら強力な念力を発する。

空間を捻じ曲げるサイコキネシスは、10まんボルトの行く手を阻む障壁となった。

電流は空間上のその特異点にて動きを停止し、やがて行き場を失って辺りに電力を分散させる。

ピカチュウの速攻は、メガヤンマによって相殺されてしまった。

これが、PWTラストバトルのスピード。

「おい、なんつー速さだアレ……」

「一生かけても追いつける気ィしねぇぞ……!」

それは、一般的なトレーナー達に、己が追いつくことを完全に諦めさせるレベル。
 ▼ 240 コン@かえんだま 18/06/05 16:32:16 ID:GQMVrHHc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
まってた
支援
 ▼ 241 mTQB7XkZdk 18/06/06 00:47:57 ID:XVnmy0Q. [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
類稀なる才能を持ち、血の滲むような努力を重ね、数多の死線を掻い潜った猛者のみが辿り着ける次元。

同じ世界の住人とは到底思えぬぐらいにデタラメな能力者同士がぶつかり合うことによって、その戦いは常人にとって最高に燃えるショーとなる。

「ゲッコウガ、ジュナイパーにみずしゅりけん!」

ゲッコウガの両手に、水のエネルギーが集まっていく。

そのエネルギーは徐々に、古来より忍者が扱う武器・手裏剣の形を成していった。

そしてその鋭利な刃は、ゲッコウガによって水飛沫を散らしながら数回に渡って撃ち放たれる。

空を裂く多段攻撃が、ミヅキのジュナイパーに迫る……!

「ジュナイパー、リーフブレード!」

「ジュナ」

だが、それに対抗するはジュナイパーの技。

鋭い葉を幾つも重ね合わせ一本の刀を作りそれを振り払って攻撃する、リーフブレード。

ジュナイパーが薙ぐそれは威力が別段に高く、ゲッコウガが放った水の手裏剣を軽く斬り伏せてしまう。

真っ二つに割れた手裏剣は勢いを失ったことで単なる水となり虚しく辺りに飛び散っていっていく。

その後もジュナイパーはバッサバッサとみずしゅりけんを立て続けに斬っていき、最後までその身を守り切った。

この速く鋭いジュナイパーの動きに、カルムは驚きのあまり思わず息を飲んでしまう。
 ▼ 242 mTQB7XkZdk 18/06/06 00:48:23 ID:XVnmy0Q. [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ゲッコウガのみずしゅりけんを、こうもあっさり割るか……!」

みずはくさに対して確かに不利であるが、いくらなんでもこんな簡単に技が破られてしまっては敵わない。

だが、攻撃が防がれてしまった今、次にカルムが意識を向けるべきは敵の反撃だ。

「今度はこっちの番だね!ジュナイパー、かげぬい!」

「ジュナァ」

カウンターを仕掛けるミヅキが打ち出した策は、かげぬいという聞き慣れない技。

初見の技なだけに警戒するカルム。

すると次の瞬間彼の目に映ったのは……。

「これは……影!?」

影。

今、ゲッコウガの影が大きく拡大している。

不穏かつ不自然な光景だ。

もしこれがかげぬいの前兆であるなら、絶対にこの影から注意を逸してはならない。

「気をつけろ、ゲッコウガ!」

「ゲロッ」
 ▼ 243 mTQB7XkZdk 18/06/06 00:48:51 ID:XVnmy0Q. [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
ゲッコウガに警戒を促すカルム。

そして。

「今だよジュナイパー!撃って!」

「ジュナッ」

ミヅキの指示と同時に、ジュナイパーはどこからともなく木と草でできた一本の矢を取り出した。

すると次に彼は、左腕を突き上げる。

この時彼の左手は、自身の胸部から生えているロープ状の部位を引っ張っており、全体的にまるで弓のような形を作っている。

そして彼は、先程取り出した矢を弦のように伸びている部分に引っ掛けると、それを……。

……弓矢の如く引き絞って、射った!

「かわすんだ!」

「ゲロッ!」

この矢による攻撃がかげぬいという技なのだと認識するや否や、カルムはすぐさまゲッコウガに回避の指示を出す。

矢の速度は決して速くはなく、ゲッコウガの俊敏さならば余裕でかわせる。

ゲッコウガはしっかりと矢の軌道を確認したうえで、的確な回避をとった。

だがこの時、不可解なことが起こる。
 ▼ 244 mTQB7XkZdk 18/06/06 00:49:23 ID:XVnmy0Q. [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
ゲッコウガの影が、先程までいた地点から移動した地点まで、まるでゴムのように伸びているのだ。

そして放たれた矢は、最終的にその影に突き刺さる。

すると……。

「……何!?」

「ゲロォォッ!?」

ゲッコウガが突然、悲鳴をあげた。

矢が当たっていないのにだ。

ゲッコウガの体には何一つとして損傷の痕跡は無い。

にも関わらず、ゲッコウガは今、確かなダメージを受けている。

「ふふっ」

作戦通りにいったということか、ミヅキはしてやったりという表情で微笑んだ。

「バカな、矢はゲッコウガに当たっていないのに何で……!?」

一方でしてやられたカルムは、今目の前で起こっている不可思議な現象に焦る様子を見せる。

だがこの時、カルムの脳裏をあの影の存在が過る。

そう、この現象にからくりがあるとすれば、あの影がそうだ。
 ▼ 245 mTQB7XkZdk 18/06/06 00:49:54 ID:XVnmy0Q. [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
かげぬいの指示と同時に膨張を始めたゲッコウガの影に、カルムは今一度目をやる。

すると、ゲッコウガの影にはジュナイパーの放った矢が突き刺さっていた。

あの時は単に矢が外れただけだとばかり思っていたが……。

……もし、矢が最初から狙っていたのがこの影だったとすれば。

その推測をした瞬間、カルムの中で渦巻いていた謎が晴れ渡った。

「……待てよ、まさかこの影に矢が刺さったことで、ゲッコウガにダメージが及んでいるのか!?」

「あっ、バレちゃった」

矢が影を介してゲッコウガにダメージを与えていたことが判明する。

「ゲロッ……!」

「クソ、大丈夫かゲッコウガ!」

ここでカルムは、かげぬいという技の本当の意味を知る。

このように“影を縫い付ける”から“かげぬい”なのだと。

「流石カロスのチャンピオンさん!洞察力が普通の人とは桁外れだね」

「貴方の言う通り、かげぬいは相手の影を矢で縫い付けて攻撃する技」

「だから本体が居なくてもそこに影さえあれば、攻撃を当てることは可能なの!」
 ▼ 246 ツベイ@タンガのみ 18/06/10 10:48:52 ID:hA3wgdl. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
鳥肌たった
 ▼ 247 ブネーク@4ごうしつのカギ 18/06/11 23:54:58 ID:gxcoMWPw NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 248 モネギ@ピジョットナイト 18/06/15 00:59:05 ID:IFZA54Us NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 249 レセリア@おはなのおこう 18/07/04 20:41:28 ID:W0qI.MS. NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 250 ソクムシ@カイスのみ 18/07/13 18:46:50 ID:YD.sARQ6 NGネーム登録 NGID登録 報告
しえん
 ▼ 251 ルード@するどいキバ 18/07/26 15:13:33 ID:0r2cj2pU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援ネ
 ▼ 252 アームド@たまむしプレート 18/08/01 09:38:45 ID:WYTQ6o0U NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 253 ェリム@リザードナイトY 18/08/16 18:09:04 ID:uhmY1ZOQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 254 リージオ@みどりのプレート 18/08/16 18:29:33 ID:Ju6YbTXM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
まだかな?
 ▼ 255 トツキ@みずたまリボン 18/08/17 20:34:32 ID:ET4Qzu.. NGネーム登録 NGID登録 報告
追いついた
 ▼ 256 イロス@プレミアボール 18/08/23 09:40:08 ID:bwqgxeP. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
完結してくれ
 ▼ 257 ルット@ぼんぐりケース 18/08/29 08:14:26 ID:.TAUUaVU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
展開面白くなってきてるなこれ
 ▼ 258 ジョッチ@ゴールドスプレー 18/09/06 10:56:08 ID:vwFANvbo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 259 mTQB7XkZdk 18/09/07 13:31:38 ID:.NMcugvs [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
長く更新が空いてしまって申し訳ありませんでした。再開します。


――“かげぬい”の照準に合わせられるのは、そのポケモンではなく、そのポケモンが足元でちらつかせている影なのだ。

ジュナイパーの放つ矢には恐ろしい霊力が宿っており、その霊力が矢の刺さった影を通してその影の主にダメージを与える。そして……。

「そうそう!それとたった今この瞬間、貴方のゲッコウガは交代が出来なくなったよ!」

「影が縫い付けられている限り、刺さった矢はゲッコウガを逃しはしないんだからっ」

……一度影を縫い付けられたそのポケモンは、そのバトルでは逃げることができなくなるという。……つまり、交代ができなくなったということだ。

(クソ……かなり厄介な技だな、コイツは)

ミヅキからその聞くだけで嫌気が差してくる説明を受けたことでカルムは思わず耳を塞ぎたくなったが、今は目の前の事態から逃避している場合ではない。

交代ができないということはつまり、このままゲッコウガで戦い続けるしかないということ。

今は何としてでも、出来る限りゲッコウガを生き延びさせなければならないのだ。

見た目的にジュナイパーというポケモンのタイプは、少なくとも一つ目は“くさ”であることが分かる。

そうすると、タイプ相性的に不利なジュナイパーと戦うことは避けたいところ。どうにかして対戦相手を“こおり”で弱点を突けるメガヤンマに切り替えたい場面ではあるが……。

(……ジュナイパーから眼を反らした地点で、ゲッコウガはジュナイパーにやられる)

(だがこのまま戦ってても勝ち目がない……さて、どうするか)

メガヤンマを選ぼうとすれば、ジュナイパーへの注意が完全に逸れ、かといってジュナイパーを選ぼうとすれば、還付なきまでに叩き潰される未来が見える。どちらを選んでも敗北ルートが濃厚だ。
 ▼ 260 mTQB7XkZdk 18/09/07 13:32:17 ID:.NMcugvs [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
ならばいっそゲッコウガを捨て、残り一体に全てを託すのも手段の一つだが、カルムは……。

(……いや)

(ゲッコウガを捨て駒にするなんてできない)

……その道を選ぶことは無かった。

自らその道を断絶した。

ゲッコウガを捨て石にするということは、それはゲッコウガへの侮辱行為と同じ。

カルムはあくまで、ゲッコウガで戦うことを最後まで諦めはしなかった。

ならばどうするか。

こんな時は……。

「――レッド!」

……相棒を頼れば良い。

「カルム? ……!」

「……なるほど。 分かった!」

カルムの呼び声の意図を瞬時に理解したレッド。

瞬間、レッドはメガヤンマと戦うピカチュウに指示を下す。

「ピカチュウ、ジュナイパーに10まんボルト!」
 ▼ 261 mTQB7XkZdk 18/09/07 13:33:02 ID:.NMcugvs [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ピカッ!」

それは、ゲッコウガをジュナイパーの魔の手から救う為の指示だった。

「ピィカァ……チュゥゥゥッ!!」

10万Vの電撃がピカチュウの叫びと共にジュナイパーへ向けて放たれる。

大気をも痺れさせる電気の光線は、美しき直線を描いて迸った。

「ジュナァ……ッ!?」

そしてその攻撃はジュナイパーに見事命中。

ダメージこそ今ひとつだが、牽制の一手としては十分な役割を果たした。

今なら、ゲッコウガはジュナイパーから抜け出せる。

「サンキュー!レッド、ピカチュウ!」

「いくぜゲッコウガ!メガヤンマにれいとうビームだッ!」

「ゲロッ!」

そしてとうとうジュナイパーの影地獄からついに脱出したゲッコウガは、ここぞとばかりに必殺のれいとうビームをメガヤンマに向かって放出した。その白銀の光線は雪の結晶を纏いながら突き進んでいく。

対してメガヤンマはこの奇襲に対応することが……。

「……ヤマッ!」

……できてしまった。
 ▼ 262 mTQB7XkZdk 18/09/07 13:34:16 ID:.NMcugvs [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
メガヤンマはゲッコウガのれいとうビームをいとも容易く避けてしまう。

メガヤンマの特性は“かそく”。時間経過によって“すばやさ”のパラメータが増大していく強力なスキルだ。これのおかげで今やメガヤンマは“神速”と呼ぶに相応しいスピードの持ち主となっている。

ゲッコウガの攻撃速度を以てしても、彼を捉えるのは容易なことではない。

「攻撃対象を僕のメガヤンマにしたところで、状況が良くなることはありませんよッ!」

「そう簡単にはいかないことは知っているさッ!」

そう。

例え対戦相手をメガヤンマにすり替えたところですぐにメガヤンマを倒せるわけはない。

カルムもそのことは元から承知のうえだ。

だが、勝てる可能性はジュナイパーより断然高い。

トレーナーとして最善の選択はした。

後はゲッコウガの持つ力に、全身全霊で賭けるのみ。

一方でゲッコウガの盾となったピカチュウは、ジュナイパーと対峙する。

バチバチと静電気を頬で鳴らす今のピカチュウの表情は非常に好戦的であり、あの小さい体にとびっきりの闘志が宿っているのが分かる。

「君の相手は俺の相棒だ。 ジュナイパー」

「ジュナァ……!」

「慌てないでジュナイパー。 やっつける順番が変わっただけだよ」
 ▼ 263 ルジーナ@マグマブースター 18/09/07 18:47:40 ID:5WJc2nIo NGネーム登録 NGID登録 報告
大・支・援
 ▼ 264 mTQB7XkZdk 18/09/08 13:01:38 ID:pfWAbOKA [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
してやられたハズのミヅキはそれでも依然として余裕な態度を改めようとはしない。

至って平然としている彼女にレッドは「言ってくれるな」と少しムッとした。

「とりあえず君の影も縫っておこうかな?」

「ジュナァッ!」

ミヅキの指示によって再びジュナイパーがかげぬいを撃つ。今度の狙いはピカチュウだ。

「でんこうせっかで間合いを詰めつつ切り抜けろ。 ピカチュウ!」

「ピカァ!」

対するレッドのピカチュウは、迫り来る暗黒の矢に単純な回避行動は取らず、敢えてまずは素早い動きで迫ることに。

でんこうせっかは相手より早く動いて攻撃が出来る技。

かげぬいは効果こそ強力だが、弾速は普通の矢のそれと同じ。

この二つが相まみえる時、速度で勝るのは前者となる。

ピカチュウは目にも止まらぬ早業で矢を難なくかわし、ジュナイパーとの距離を喰らい尽くす。

そして。

「ピカァァッ!」

ピカチュウの超速体当たりがジュナイパーに直撃――
 ▼ 265 mTQB7XkZdk 18/09/08 13:02:14 ID:pfWAbOKA [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……ピカッ?」


――しなかった。

驚くべきことに、ピカチュウの攻撃はジュナイパーの体をスルリと通り抜けてしまった。

「何だと……!?」

この予想外の出来事にレッドは“一瞬だけ”動揺する。

しかしこの現象……これまで幾多もの戦いを勝ち抜いてきたレッドにとっては謎でも何でもなかった。

「……ま、まさか」

そう。

ノーマルタイプのでんこうせっかが効かなかった、ということは……。

「あれ、知らなかったの?」


「ジュナイパーのタイプは“くさ”、“ゴースト”だよ!」


……「初めて見るポケモンだったから」。

理由としては極めて正当なものだろう。

きっと誰もレッドのことを非難したりはしない。
 ▼ 266 mTQB7XkZdk 18/09/08 13:03:04 ID:pfWAbOKA [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
しかし、だからといって先程までの自分の采配ミスは帳消しにはならない。

何故ならこの大会は、ポケモンに関する“知”を競い合う戦いでもあるのだから。

レッドは自分らしからぬ初歩的なミスに思わず無言になってしまう。

さて、タイプ相性によって技が無効化された場合、大抵の場合は危機的状況に陥り、焦るべき瞬間が訪れるものである。

だが、今レッドの目の前で広がっているこの光景……。

これは、“位置関係”という観点で見た場合……。


……“敵の後ろを取った”……ということにならないだろうか。


「……フッ」

決してレッドは謀ったわけではない。

これはあくまで偶然が生み出した産物だ。

だが殆どのトレーナーはこの絶好のチャンスを逃す。

何故なら失敗したという事実にばかり囚われ、目の前の景色から目を背けてしまうからだ。

だが、レッドの場合は違う。

彼はこの状況を……逆に利用する!
 ▼ 267 mTQB7XkZdk 18/09/08 13:04:47 ID:pfWAbOKA [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ピカチュウ、体勢をすぐに立て直せ!」


「そして……ボルテッカーだッ!」


「ピッカァ!」

自らの一瞬の直感を掴み取り、それを指示へと即座に反映させる。

簡単なようでこれが実に難しい。

また、仮にトレーナーがそれを出来たとしても、相棒のポケモンが指示通りに動けなければ結局その戦略は失敗に終わる。

要はトレーナーとポケモンの力量が並んで優れていなければならないわけだ。

どちらかだけが凄くても意味はない。

しかし、共にカントーとジョウト、カロスと、数々の地方の色々な景色を見てきたレッドとピカチュウならば……。

「ピカッ!」

……その相性はバツグン。

例え如何なる局面であろうとも、レッドが指示した通りにピカチュウは動くことが出来る。

ピカチュウはでんこうせっかが空振りして一瞬無防備状態になっていたにも関わらず、着地した時には既に完璧な受け身の体勢になっていた。

恐るべき適応能力である。
 ▼ 268 mTQB7XkZdk 18/09/09 23:17:23 ID:OIGAU05w [1/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
――そして今、ピカチュウは確かにジュナイパーの背後に回っている。

基本的に敵の正面から技をぶつけるよりは後ろからの方が大きなダメージが出るので、この位置関係はまさに絶好の好機だ。

この時ミヅキは鮮明なまでに焦りを覚え、この試合で初めて汗を垂らす。

「しまった」と、心の底から思った。

すぐさまジュナイパーに回避の指示を出そうとするが、しかしその声が出る前に、雷音が他の全ての音をかき消して轟き渡る。

……ミヅキはこの時、確かにレッドに遅れを取ったのだった。

彼女の一瞬の逡巡が、仇となった。

彼女を黄色く照らしつける稲妻の光は、やがてジュナイパー目掛けて激烈な速度で駆け抜けていく……!

……ビリビリ、ピカピカ、そんな可愛らしくも激し過ぎる音を遠慮なく響かせながら、閃光の電撃弾丸は地を刳り返し、旋風を纏って、ジュナイパーに襲来する!

「――ジュナァァァッ!!?」

――必殺ボルテッカー、炸裂!

その美しく咲いた黄色の巨大花火は球状に広がり、凄まじい爆雷を巻き起こしながら壮大かつ幻想的な景色を生み出す……!

……一方で吹き飛ばされたジュナイパーは柱に勢いよく激突し、その衝撃で柱は音を立てて倒壊してしまう。

この時、観客達の瞳は目の前の圧巻の光景に釘付けにされ、コルニもまたあの黄色の小さな英雄から目が離せないでいた。

「ピカチュウ……カッコいい……っ!」
 ▼ 269 mTQB7XkZdk 18/09/09 23:17:56 ID:OIGAU05w [2/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
この時コルニがピカチュウから貰ったのは、ありったけの……“勇気”。

圧倒的な力を見せつける相手にも全く怯まず、諦めず立ち向かう姿は、まさしく誰もがかつて憧れた“ヒーロー”そのもの。

あんなにも小さいのに、本当ならこの戦いでは進化途中のポケモンは力不足のハズなのに。

レッドのピカチュウは何故、あんなにも強いのか。

だけどその答えはもうコルニが既に彼から受け取って握りしめている。

ピカチュウがくれたこの“勇気”こそが、彼の並外れた強さの秘密なのだ。

規格外で、常識外……。

……しかしだからこそ、その英雄は他の誰よりもステージで燦然と輝ける!

「……あーもう最高だよぉっ! レッドもピカチュウもぉぉっ!」

「……貴女って、本当に彼氏愛で溢れてるわね」

コルニの全身から溢れ出る彼らへの愛は、傍らのセレナの呆れを買ってしまう程に大きすぎる。

そんな彼女の抱えきれないくらいのエールを受けるレッドとピカチュウだが、今彼らはまさにそれに応えるが如くの快進撃を見せていた。

技に続く技。

絶え間なき電撃の嵐……!

……先刻にピカチュウが使用した“ボルテッカー”という技は、その絶大なまでの破壊力と引き換えにピカチュウ自身の体にも大きな反動を与える技なのだが……ピカチュウの放つ技の数々は未だに色褪せていない。
 ▼ 270 mTQB7XkZdk 18/09/09 23:18:22 ID:OIGAU05w [3/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
ジュナイパーに反撃の隙を全く与えない素早い猛攻はしかし、一撃一撃の威力が足りておらず。

だがそれらは着実且つ高速でダメージを蓄積させていっている。

対して翻弄される側のミヅキは、今の戦況に驚きを見せていた……。

……だけど。

(まさか私達がここまで追い詰められるなんて……)

(やっぱり世界って、広いなぁっ!)

それを彼女の中で上回るのは、やはりというか……“ワクワク”だった。

(とにかく今はジュナイパーを失うわけにはいかないよねっ)

(だったらここは、あの子で……っ!)

現実的に考えて、ジュナイパーでは速度でピカチュウに追いつくことが出来ないことをミヅキは悟る。

絶対とまでは言わないが、少なくとも今のピカチュウの韋駄天が如し連続攻撃を止められる自信は無い。

ならばここは……“交代”すべき局面だろう。

ミヅキは次の瞬間、ジュナイパーにこう命じた。

「ジュナイパー!」


「《とんぼがえり》!」
 ▼ 271 mTQB7XkZdk 18/09/09 23:18:52 ID:OIGAU05w [4/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……ジュナァッ!」

……《とんぼがえり》は、相手に突進攻撃を仕掛けた後に控えのポケモン一体と交代する技。

単に交代をさせるよりも相手に打撃を与えられる分、アドバンテージを稼ぎやすい。

覚えられるポケモンは限られるが、便利な技だ。

「ジュナッ!」

ジュナイパーはこの技さえ成功させれば暫く休めるという安心からか、ここでひと踏ん張りして何とかピカチュウの猛攻から抜け出すことに成功する。

……そして。

「ジュ……ナァッ!」

すぐさまターンして、ピカチュウに突進攻撃を……仕掛けた!

「ピカッ!?」

背後から衝突されたピカチュウは不意を突かれ、うつ伏せに倒れてしまう。

しかしこれ自体は大したダメージでは無く、ピカチュウはすぐに起き上がるが……。

「よしオッケー! 戻ってジュナイパーっ!」

「ジュナッ」

……ジュナイパーはこの機会をモノにし、逃走に成功する。

ミヅキが差し出したモンスターボールに戻り、その中に収まった。
 ▼ 272 mTQB7XkZdk 18/09/09 23:19:38 ID:OIGAU05w [5/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
レッドは「逃したか……」と悔しそうな顔を浮かべるが、同時に彼女の計算を崩している実感を得られた為に満更でも無いような気分も同時に秘めるのであった。

「あなたのピカちゃん、本当に凄いねぇ」

「あんな子が居るなんて驚きだよっ!」

ミヅキはここでレッドのピカチュウの実力を改めて褒める。

「ピッカァ〜♪」

対するピカチュウは照れ臭くなったのか、赤面しながら自分の頭を撫で始めた。

「でも……」

……しかし次の瞬間、ミヅキの声色が……変わる。

それまで楽しげで愉快な感じだった彼女の声は、一変して……。


「……この子には、勝てないよ」


……静かなる闘将のそれと、なった。


「ッ!!」

レッドは瞬間、身震いして汗を額から夥しく流し出す。

その恐ろしげな感覚は突如として、ゾワリと襲来した。
 ▼ 273 mTQB7XkZdk 18/09/09 23:21:33 ID:OIGAU05w [6/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
アレが先程までマイペースな雰囲気の少女だったとは到底信じられない。

まるでアレは、例えるなら……“異次元”の強さを持つ未知の強敵。

この世の言葉では言い表せないような、理から外れた概念の持ち主。

次の瞬間、彼女は一つのモンスターボール……のような何かを、取り出す。

それは青を基調とした網目調のデザインのボールで、四方に黄色い突起物がアクセントとしてか取り付けられているのが確認できる。

明らかに我々が見たことのない、他に類を見ない意匠が施された謎のボールだ……。

……ミヅキはそれを満を持して、投げる。

解き放たれしそのポケモンの正体は――

「出てきて……」


「……《アーゴヨン》ッ!」


――異世界より召喚されし、超獣。

コードネーム――《UB:STINGER》。

見た目は紫色の蜂のような姿で、だがそのシルエットは同時に竜も彷彿とさせる。

体内に数百リットルの毒液を持っているとされ、その強烈極まる毒をあの槍の如く鋭利な針から噴射するという。
 ▼ 274 mTQB7XkZdk 18/09/09 23:24:23 ID:OIGAU05w [7/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
その毒竜はしかし、この世界の生物に非ず。

異界より迷い込みし生命体――《ウルトラビースト》と呼ばれし存在。

その異質な能力はこの世界のポケモン達を遥かに圧倒する。

まさに別次元の強さを持った……モンスター。

紫毒を操りし凶暴竜、その真名は……《アーゴヨン》!。


「――ブォォォァァァァッ!!」


異形の咆哮が、会場を戦慄によって歪曲させる……!

……誰も見たことのない未知のポケモンは今、ミヅキの手によって参戦を果たした。

「あのポケモンは……ッ!?」

レッドは初見のアーゴヨンに対し、これまでのポケモンとは違う“何か”を感じ取る。

あの謎のポケモンと対峙した瞬間、今までの常識が覆されていくような感覚を覚えた。

自分は今、未知との遭遇という場面に立ち会っている。
だがこの時、レッドの心はワクワクよりもハラハラが上回ってしまった。

解析不能のイレギュラーを前にして、レッドはその先に何を見るのか……!
 ▼ 275 mTQB7XkZdk 18/09/10 23:04:08 ID:QY7YQFgc [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
ポケモンを誰よりも愛している彼が、こんなにもポケモンに対し潜在的な恐怖を覚えるのは極めて珍しい。

無論それは、カルムや味方のゴールドでさえ同じことであった。

そんな震慄の最中、ミヅキだけはただ一人、その真剣極まる表情を崩さないでいる……。

「どう? この子が私の切り札……アーゴヨンだよ」

「この子は別世界のポケモン……《ウルトラビースト》って言ってね。 この世界のポケモンよりも遥かに強い力を持っているんだ」

ウルトラ……ビースト。

その聞いたこともないような用語をミヅキの口から聞かされたレッドだったが、未だに彼の脳はその事実に追いつけていない。

異世界だなんだという概念は小説や漫画の中だけの物かと思っていたが、まさか本当にそんなものが存在していたとは。

レッドは驚きを通り越して、最早呆然とするしかなかった。

「……だってさピカチュウ。 どうするか?」

「ピカピー……」

そんなこと聞かれても……とばかりに半笑い混じりの困った顔を浮かべるピカチュウ。

レッドもピカチュウも、この戦いばかりは身に迫る恐怖感が否めない。

……だけど同時に、段々と戦意が昂ぶってくるのも感じている。

結局彼らは、好敵手との手に汗握る激闘を望んでしまっているのだ。
 ▼ 276 mTQB7XkZdk 18/09/10 23:05:51 ID:QY7YQFgc [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
例え相手が異世界の怪物だとしても、この純粋な想いは抑制が効かない。

トレーナー魂に火が付いたが最後、決着が付くまでは誰も彼らを止められはしないのだ。

「……よしッ!」

「受けて立ってやるッ! 来い……アーゴヨンッ!」

「ピカピカァッ!」


「……そう来なくっちゃ、ね♪」


……雄々しく翼をはためかせ空を飛ぶアーゴヨン。

見た目からしてタイプは〔ドラゴン〕とプラス何かといったところか。

〔ひこう〕を持っている可能性もあるが、と見せかけて特性が【ふゆう】なんてパターンもあったりするので断定はできない。

……というかまず、異次元の生命体である彼にそもそも“タイプ”なんて概念が存在するのだろうか。この世界の常識の全てが彼に通用するハズはない。何にしても、まずは戦ってみなければ分からないことだ。

「……よし! ピカチュウ、《アイアンテール》だッ!」

「ピッカァ!」

まずは小手調べの一撃。

アーゴヨンを〔ドラゴン〕タイプのポケモンだと仮定した場合、〔でんき〕の技では威力が不足する。
 ▼ 277 mTQB7XkZdk 18/09/10 23:06:23 ID:QY7YQFgc [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
一方で〔はがね〕の属性の《アイアンテール》なら等倍ダメージが入り、それなりの打撃となるハズだ。

ピカチュウは尻尾を鋼の如く硬質化させて跳び上がり、その鈍い銀色の鞭を振るってアーゴヨンに襲いかかる。

「――アーゴヨン、《りゅうのはどう》ッ!」

「ブォォォッ!」

対抗するアーゴヨンは顎を開き、眼前に荒ぶる竜のオーラを結集させる。

蒼き輝きに満ちたオーラはやがて一つの巨大な弾丸と化した。

アーゴヨンはそれを迫り来るピカチュウに向かって、光線にしてぶっ放した……!

「ピカッ!?」

異次元の毒竜の初手は、激昂の閃光――《りゅうのはどう》。

彼の魂を込められし波導に、ピカチュウは見事に捉えられてしまった。

そして……直撃……!

「ピ……ピカァッ!?」

ピカチュウの《アイアンテール》を軽く凌ぐ威力で、《りゅうのはどう》はピカチュウの技を無効化してしまう。

弾き返されたピカチュウは宙を舞い、放物線を描いた後にやがて……地に墜落した。

レッドの呼び声が響く中、ピカチュウは一瞬の沈黙の後に……再び、立ち上がる。

「ピカ……ピカ、ピカチュッ‼」
 ▼ 278 mTQB7XkZdk 18/09/10 23:06:55 ID:QY7YQFgc [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
掠れつつあるピカチュウの声。

“威勢”が“虚勢”になりつつある現状。

しかしここで諦めないのがレッドの相棒たる所以である。

ボロボロになったって立ち上がる……それが彼のポリシーだ。

「良いね、良いね! レッドさんのピカちゃん、ほんっとうに最高だよっ!」

「そんな良い子さんには……更なる“大試練”を用意してあげるっ!」

ミヅキはこのピカチュウの果敢さ極まりし勇姿に心底惹かれたようで、心が躍る様子をこれでもかと見せる。

しかしそんな彼女は次の瞬間、そのお気に入りのピカチュウに、敢えて……“絶望”を捧げるのだ。

“大試練”という言葉が彼女の台詞にあったが、これはアローラの“島巡り”という伝統の中で核となる要素の一つのことである。

島巡りをするトレーナー達はその大試練を突破し、新たなZワザを使う為の“Zクリスタル”を手に入れる。

どの大試練も、かつて島巡りをするトレーナーの一人だったミヅキにとっては全てが悪戦苦闘の極みであった。

だがその絶望の数々を乗り越えて来たからこそ、今の彼女達がある。

そして、その絶望を味わってきた彼女達が課す大試練は、当然レッド達にとってもまた絶望として立ちはだかるであろう。

レッド達はこの大試練に……打ち勝てるか。


「アーゴヨン……」

「……《わるだくみ》」
 ▼ 279 mTQB7XkZdk 18/09/10 23:12:14 ID:QY7YQFgc [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
――《わるだくみ》。それは頭脳をフル回転させ数多の謀略を発想することにより【とくこう】のステータスを大幅に上昇させる技。

特殊攻撃の分類に属する技を撃つ際は、単純な力よりは内在的な精神力を要とする。

つまりそのポケモンの知能指数が上がれば上がるほど、特殊攻撃の威力は比例して上がっていくのだ。

「――ブォォォォァァッ!!」

アーゴヨンの脳内は今、悪巧みの嵐となっている。

次から次へと策略が思いつき、叡智が極限の境地にまで至る。

熟されていく頭脳、高まりしその練度は天井知らず。

やがて、《わるだくみ》によるブレインアップが……完了した……!

「ブォォォォォォォオオオッ!!」

「……冗談……だろ……?」

覚醒せし異次元超獣・アーゴヨンは激烈なる咆哮を辺り全体に撒き散らし、レッド達の鼓膜を容赦なく劈く。

これ以上無き震慄と共に巻き起こる突風に扇がれ、彼らの身と心が激しく靡く。

その凄惨な有り様はまるで台風直下の風景のようであった。

強大過ぎる敵の爆誕に、誰もが恐れ慄く。

「ブォォォ……ッ!」

――レッド達の大試練、開始……!
 ▼ 280 プリン@カビゴンZ 18/09/11 16:39:20 ID:N73gxjMU NGネーム登録 NGID登録 報告
わるだくみZはあかんて
 ▼ 281 mTQB7XkZdk 18/09/11 22:55:59 ID:qFUcammg [1/9] NGネーム登録 NGID登録 報告


……かつてない試練に挑むレッドとピカチュウ。

「ピカピィ……ッ!」

体躯も、力量も、双方の間には圧倒的な差が開いていてしまっていた。

まさに、“天と地ほどの差”……というヤツである。

「……ピカァッ!」

だが、どんなに危機的状況に陥ったって、ピカチュウは、そう……。

「ピカァァァッ!!」

……絶対に、相手に背中を見せない。

戦闘中に、“にげる”のコマンドは使えない……!

「……フッ」

「だよな……ピカチュウッ!」

「ピカァッ!」

この二人の闘志は……不滅だ!


「――じゃあ、そろそろ行くよ?」
 ▼ 282 mTQB7XkZdk 18/09/11 22:56:43 ID:qFUcammg [2/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
「アーゴヨン、《ヘドロウェーブ》ッ!」


「ブォォォァァァァッ!!」


――次の瞬間、アーゴヨンの尾の針から深き紫色の猛毒液が大量に溢れ出す。

やがてその劇毒は大海を作り、荒波を立たせながら目の前の彩り豊かだった世界を飲み込んでいく。

そしてその毒の海は次第に激流となり、最終的には、巨大なる大津波を……出現させた!

〔どく〕タイプの大技、《ヘドロウェーブ》……!

(これでは避けられない……ッ!)

禍々しい紫紺の大海原と化した戦場で、ピカチュウはあの大波と対峙する。

しかし、眼前に迫り来る波は明らかに巨大過ぎる。

あれではどんなに速く動いても波が落ちる範囲から抜け出さない。

ならばあれは不可避の攻撃となってしまうのか……。

……いや。

(……待て)

(ヘドロウェーブは〔どく〕タイプの技……ということは)

……避けるのは無理でも、何とかして切り抜けなければ直撃を受けた地点でピカチュウを即行で瀕死状態にさせてしまう。
 ▼ 283 mTQB7XkZdk 18/09/11 22:57:21 ID:qFUcammg [3/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
ではどうするか。

その時レッドが導き出した答えは……。

「……ピカチュウ、覚悟を決めろ」

「《アイアンテール》で……道を切り拓けッ!」

「……ピカァッ!」

……“突破”だ。

タイプ相性上、〔どく〕タイプは〔はがね〕タイプに対してダメージを与えることが出来ない。

レッドはその性質を利用する。

どんなに【とくこう】の数値を上げた所で、無力化してしまえばダメージは無しになる。

仮に一億の数値があったとしても、そこに0を掛けてしまえば0になってしまうのと同じだ。

故に《アイアンテール》により鋼の性質を得た尻尾なら、《ヘドロウェーブ》を無効化することができるハズだ。

ピカチュウは《アイアンテール》を使い、《ヘドロウェーブ》の波を……斬り裂いた!

「ピッカァ!」

紫紺の飛沫が舞った刹那、覆われたと思われたピカチュウが波の向こう側から現れる。

ミヅキはその光景を見て、俄然ピカチュウに興味を抱くのだった。
 ▼ 284 mTQB7XkZdk 18/09/11 22:57:53 ID:qFUcammg [4/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
「わお……っ!」

超威力の《ヘドロウェーブ》すら凌いだピカチュウの粘り強さは半端なものでは無い。

今の攻防は世界視点で見ても見事なモノだと評せるレベルだ。

そして、紫の海はとうとう干潮を迎え、フィールドは元の姿を取り戻す。

ピカチュウが床に降り立った瞬間、会場を包み込んだのは……歓声だった。

『ワァァァァーーッ』……という人々の絶賛の雄叫びが、騒がしくも爽快に響き渡る……!

「流石だね、ピカちゃん」

「ピカチュ〜!」

ミヅキも、彼らのように騒ぎ立てはしないものの、ピカチュウに対する称賛の心は同じだった。


「……だけど」


……その逆説の後、ミヅキが目を配ったのはレッドの隣側。

その方向にはカルムが居たのだが……。

……レッドも彼女と同様にカルムに目をやった瞬間……。


……信じられない光景が、そこにはあった。
 ▼ 285 mTQB7XkZdk 18/09/11 22:58:25 ID:qFUcammg [5/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ゲ……ゲッコウガ……ッ!」


……ゲッコウガの名を掠れた声で呼ぶカルム。

そしてその目の前には……瀕死状態のゲッコウガが……地に横たわっていた……!

「ゲ……ゲロッ……」

……彼は目を回しながら、その体勢からピクリとも動く気配を見せない。

いつの間にメガヤンマにやられたんだ? とレッドが考えていたその時……彼はハッとなる。

そしてようやく理解した。

ミヅキのあの《ヘドロウェーブ》の本当の狙いを……!

「《ヘドロウェーブ》は全体攻撃……」

「あなたのピカちゃんだけじゃなく、カルムさんのゲッコウガ君もまとめて倒すつもりだったんだけどね」

「ピカちゃんはこれを潜り抜けちゃうんだもん……本当に凄いなぁ」

……「しまった」という後悔の念がレッドに深く刻まれた瞬間であった。

すっかりあのアーゴヨンとの一騎打ちにのめり込んでいたせいで、これがダブルバトルであることを一瞬だけ忘れてしまっていた。

《ヘドロウェーブ》が使用者以外の場にいるポケモン全てに及ぶことは知っていたのに。

ゲッコウガに配慮すれば、そもそもあの《ヘドロウェーブ》は撃たせるべきでは無かった。

自分がもっと警戒していれば……!
 ▼ 286 mTQB7XkZdk 18/09/11 22:58:52 ID:qFUcammg [6/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
「――レッド!」


……と、様々な後悔を脳内に巡らせていたレッドの耳を、突如としてカルムの呼び声が突き刺す。

「……カルム」

その彼の怒声を契機に、レッドは冷静さを取り戻した。

「レッド、これはお前のせいじゃない」

「俺は奴から完全に注意を逸らしていた」

「見ろ。 俺のゲッコウガはやられたが、ゴールドのメガヤンマはアレをかわしている」

……確かに、ゴールドの操るメガヤンマはあの大惨事の後でも何事も無かったかのように生き残っている。

《ヘドロウェーブ》の指示が出た瞬間、すぐさま回避の指示をゴールドが出したのだろう。

特性【かそく】によって【すばやさ】のステータスが上がっていることもあって、アレを避け切るのに然程苦労は無かったに違いない。

「ちょっとミヅキさん! 急に全体攻撃なんて使わないで下さいよッ!?」

「僕のメガヤンマがやられていたらどうする気だったんですかッ!?」

「ヤダなぁ、ゴー君っ! これくらい君達なら難なくかわせるって私信じてたんだよ?」

「実際そうしてくれたしっ!」

「ですが……ッ!」
 ▼ 287 mTQB7XkZdk 18/09/11 22:59:30 ID:qFUcammg [7/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
……ミヅキの破天荒な戦術にゴールドはほとほと困惑し切っているようではあったが、それでも二人の息はピッタリだった。

対してカルムのゲッコウガはただ一匹、あの《ヘドロウェーブ》を受けてしまった……。

……これは、カルムの手腕不足に他ならない。

「……すまなかったゲッコウガ。 この償いは必ずする」

「ゲロォ……」

カルムは自らの過ちを謝罪し、そして贖罪することをゲッコウガに誓った。

ボールに戻されたゲッコウガは、カルムにこの勝負の命運を託して散る。

残すところ最後の一匹……カルムは、どのポケモンを繰り出すのか。

「……アイツの遺志を継いでくれ」

彼が取り出したのは一つのモンスターボール。

そのボールからは……“蒼焔”が滲み出ていた。

「いけ……」


「……《リザードン》ッ!」
 ▼ 288 mTQB7XkZdk 18/09/11 23:00:11 ID:qFUcammg [8/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
――その飛竜は、烈火の使徒。

その紅き魂に焔を宿し、主に歯向かいし敵を悉く焼き払う。

業火の後、舞うは灰色の塵芥。

カロスチャンピオンのもう一つの切り札――《リザードン》!

「リザァァァァッ!!」


……そして、それは更に進化を……超える!!


「――その身と精神を焦がし尽くし、全てを破壊する黒龍となれ……ッ!」

「……《メガシンカ》ッ!!」
 ▼ 289 mTQB7XkZdk 18/09/11 23:00:35 ID:qFUcammg [9/9] NGネーム登録 NGID登録 報告
――カルムの《メガリング》が、リザードンとの“絆”と共鳴する時。

それは、産声という名の爆炎をあげて誕生する……!

「――リザァァァァァッ!!」

焔竜を超えた“蒼焔黒竜”。

極限の温度に達せしその蒼き焔で燃やせないものはこの世に存在しない。

橙だった体は黒へと変貌を遂げ、まるで彼の内なる凶暴性が曝け出されたかのようである。

メガシンカをすることにより、彼が元より有している炎属性に加え、真の“竜”の属性も新たに宿される。

更にその“爪”も大きな進化を遂げ、より巨大に、より鋭利に……!

……規格外の覚醒を遂げしその竜に刻まれし烙印の名は……“X”!

《メガリザードンX》……ここに降臨!

「――リザァァァァッ!」

――クロスした絆は、もう誰にも止められはしない……!
 ▼ 290 mTQB7XkZdk 18/09/12 20:37:24 ID:S6LEZz.E [1/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
***

――漆黒の眼光を鋭く敵に向けるメガリザードンXのクールな姿に、観客席全体が激しい熱気と歓喜の声によってこれ以上無い騒々しさに包まれていた。

「出た……カルムの切り札、メガリザードンX!」

カルムの最後の一匹にして、最強のポケモン。

真打ちの登場に、観客席のコルニ達はゴクリと息を飲む。

「……お隣さんのリザードンは、相変わらずオーラが違うわね……」

セレナもまた、彼のリザードンの強さを知る人物の一人である。

その口ぶりからして、彼女もカルムのリザードンには何度も打ちのめされた記憶があるのだろう。

セレナの口調からは、リザードンへの“畏怖”のようなモノが……感じられた。

「……我らがチャンピオンが誇る最強のポケモンですからね」

「先程のあの失態も、彼ならば……一瞬にして返せるでしょう」

……と、ズミは相変わらずカルムに対しては依然として辛口な評価を出しつつも、その一方でリザードンの実力については心から認めているようであり……。

「ここから先は……そう」

「“メインディッシュ”と呼んで差し支えない戦いを期待しても良い……!」

……ここに来て、ズミは……この大会で初めて、頬を緩ませた。
 ▼ 291 mTQB7XkZdk 18/09/12 20:38:02 ID:S6LEZz.E [2/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
その表情はまるで、フルコースの主役を心待ちにする高貴な貴族のそれであり、そして彼がこんな表情をするのは極めて異例のこと。

彼は常に辛辣だが、故に、稀にこのような笑みを見せた時には……疑いようのない快挙が間もなくやって来ると心から人に信じさせる。

コルニとルカリオ、セレナの三者は互いに小さく頷き、ここからの戦局に大きな期待を抱くのだった……。

***

「さあ……始めようぜ」

……カルムは帽子の鍔をつまみ、その位置を調整した。

その何でもないような仕草一つに、得も言われぬ“覇気”のようなモノが宿っている。

ゴールドとミヅキは、これまでとは一味違う強敵の出現に気を引き締め直す。

……だが一方でレッドは、これ以上なく頼もしい味方の出現で一気に心が軽くなった。

かつての特訓で、カルムのリザードンに還付なきまでにボコボコにされた苦い経験を持つレッドだからこそ、味方に回した時の心強さを誰よりも味わえている。

メガリザードンXが出てきたその瞬間から、レッドは確信したのだった。

……この戦いに、一つの“革命”が起こると。

「……リザードン、《りゅうのまい》だ」

「存分に、荒々しく……舞い踊れッ!」

リザードンの出陣にあたり、まず行われるのは……開戦の儀式。
 ▼ 292 mTQB7XkZdk 18/09/12 20:38:55 ID:S6LEZz.E [3/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……リザァッ!」

リザードンは黒翼をはためかせ、瞬間、蒼焔を纏って回転しながら上昇した。

その咆哮をまるで歌のごとく奏で、風の音でハーモニーを作り……。

……猛り狂えるドラゴンのレクイエムを、嵐が如く舞踏に乗せて……!

「――させると思いますか!?」

「メガヤンマ、《エアスラッシュ》!」

「ヤンマッ!」

……例え妨害が入ろうとも……。

「――リザォォォッ!」

「ヤンマァ……ッ!?」

……その舞は、決して崩れることはない!

「バカな……!?」

「おいおい、野暮なことするなよ……ギャラリーが興醒めしたらどうするんだ?」

リザードンの舞は、メガヤンマの起こした旋風刃すら軽く粉々にしてしまう程に激し過ぎた。

ゴールドの邪魔立ては虚しく弾き返され、舞は滞ることなくやがてフィナーレへと至る。
 ▼ 293 mTQB7XkZdk 18/09/12 20:39:43 ID:S6LEZz.E [4/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
リザードンは、激しくも美しく踊り……ついに、《りゅうのまい》を完成させた!

リザードンの【こうげき】と【すばやさ】のステータスが、上がる……!

「リザァァァァァッ……!」

極限まで戦意が満ちた黒竜は、眼前のメガヤンマを“獲物”として認識する。

獲物は狩人にとって、喰らい尽くすべき対象。

逃すことなく、骨の髄まで……!

……この破壊衝動は、カルムの引く引き金によって開放される!

「リザードン、《ニトロチャージ》」

「さあ……暴れて来いッ!」

「リザァッ!」

……その時。

「……ヤンマ……ッ?」

メガヤンマは、リザードンの姿を捉えることが……。


「リザァァァッ!!」


……出来なかった。
 ▼ 294 mTQB7XkZdk 18/09/12 20:40:21 ID:S6LEZz.E [5/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
「――ヤンマァァァッ!?」

その速度は、戦闘機にも勝る……!

一筋の黒い流星がメガヤンマを捉えた時、次の瞬間彼を襲ったのは凄絶なる焔の衝撃だった。

体がへし折れ、大きく吹き飛ばされるメガヤンマ。

やがて彼は背面の床に激突し、砂煙を撒き散らしながら地に陥没する。

その攻撃は、一瞬にして絶大。

更に《ニトロチャージ》の特殊効果が発動……リザードンの【すばやさ】が更に上がる。

「メガ……ヤンマ……!?」

ゴールドには最早、今の攻防を目視することすら叶わなかった。

リザードンがどのように動き、どのようにメガヤンマに攻撃を仕掛けたのかもまるで把握できていない。

リザードンはそんな困惑する彼をただ静かに見下ろすのみであったが……。

「……リザァ」

……この時リザードンは、確信を伴って勝ち誇ったのだった。

「ヤ……ヤン……マ……ッ!」

元々が虫である彼に“虫の息”なんて言葉を使うのはやや間違いがあるだろうが、今の彼の状態はまさにそんな感じであった。
 ▼ 295 mTQB7XkZdk 18/09/12 20:41:02 ID:S6LEZz.E [6/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
しかし致命的なダメージを受けてもなお、メガヤンマは何とか余力を振り絞って瓦礫を掻き分け起き上がる。

圧倒的な力の差を見せつけられたにも関わらず、メガヤンマは未だその闘志を絶やさないでいた。

「リザァ……」

対してリザードンの眼差しは、彼が持つ炎の属性とは対照的に実に冷ややかなモノである。

その冷酷な瞳に映るメガヤンマは彼にとっては単なる“獲物”でしかない。

先程までゲッコウガが苦戦していたハズの強敵をも遥かに凌駕する力をリザードンが手に入れた後の攻防は、まさに圧倒的であった。

このフィールドの強者の領域が、あっという間にアーゴヨンからリザードンのモノへと変わる……。

「もう一度だ……やれ、リザードンッ!」

「……リザァッ!」

……主に従い、リザードンはトドメの《ニトロチャージ》を発動。

黒き体に紅蓮のオーラを憑依させ、刹那、神速が如し超突進を……仕掛けた!

「リザァァッ!!」


「――ヤァァァマッ!!?」


――直撃!

「メ……メガヤンマァーッ!」
 ▼ 296 mTQB7XkZdk 18/09/12 20:42:34 ID:S6LEZz.E [7/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
ゴールドの叫びが、湧き上がる歓声に一筋の亀裂をもたらす。

しかしその呼び声は虚しく弾け散り……。

「ヤ……マ……ッ」

……火だるまになって転げ落ちたメガヤンマは、やがて完全にその力を失ってしまう。

火は燃え尽き、硝煙が漂い、残ったのは黒焦げの蜻蛉。

目を回し、【ひんし】の状態異常に陥ってしまう。

メガヤンマの戦いに今、ピリオドが打たれた。

よって……!

「……メガヤンマ、戦闘不能!」

……リザードンの勝利である!

「リザァ……!」

これぞ、圧倒的強者が織り成す蹂躙劇。

天下無双の蒼炎黒竜・メガリザードンX……主の勝利を確定させし王者!

何者も彼の覇道を阻むことは出来ないのか……!?
 ▼ 297 ランセル@ねらいのまと 18/09/13 19:17:53 ID:qXYoBwnQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援!
 ▼ 298 mTQB7XkZdk 18/09/13 21:22:42 ID:DA1YcTT. [1/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
――ゲッコウガの意志を継いで参戦したメガリザードンXの活躍は、まさに快進撃と呼んで差し支えない程圧倒的なモノだった。

リザードンは、あれだけ素早かったメガヤンマの速度を一瞬にして追い抜き、たった二発の《ニトロチャージ》で彼を鎮める。

一方で、カルムとリザードンにリードを奪い返されてしまったゴールドは、リザードンのその無類の強さに思わず息を飲んでいたのだった。

「つ……強い……ッ!」

ゴールドはその彼の卓越した実力を前に、既に狼狽しかけている。

これが、カロスチャンピオンの本気なのか。

ゴールドは、カルム達がこの地方の覇者である“所以”を見せつけられた。

この絶対的な力を持つ竜王を前に、ゴールドは次にして最後のポケモンを誰にするのだろうか。

「……どうだ、オーダイル」

「お前から見てあのリザードンは……勝てる相手か」

ゴールドは、自身が今も連れ歩いているオーダイルに対してそんな問いを投げかけてみる。

するとオーダイルは……。

「……オウダッ!」

……まず、両拳を気合十分にぶつけ合った。

そして次に、ニヒルな笑みを浮かべ……。

……そして、最後には。
 ▼ 299 mTQB7XkZdk 18/09/13 21:23:16 ID:DA1YcTT. [2/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
「オダァッ!」

威勢良く、自信満々の声を……高らかに張り上げた!

「……聞くまでも無かったか」

ゴールドは知っている。

彼ならば必ず、どんな強敵にも果敢に立ち向かい、そして勝利を収めてくれると。

ゴールドが率いる仲間達の中で最も白星が多いのは、ダントツでこのオーダイルだ。

かつてゴールドがジョウト地方やカントー地方を旅をしていた時でも、このオーダイルは何度も彼のピンチを救ってきた。

このオーダイルはゴールドの最大の相棒であり、最強の……“救世主”なのである。

「よしッ!」


「いけ! ……《オーダイル》ッ!」


ゴールドは人差し指を突き出し、彼に出陣を命じた。

そして満を持して登場するのは、大顎を携えし激流の猛者。

その強靭な牙で如何なるモノも噛み砕き、力ずくで縄張りを死守する。

更に牙だけでなく、後ろ足の筋肉もまた半端なく強い。

彼が一度地面を蹴ればそこは抉り返され、彼が駆け抜ければその大地には裂け目が出来上がる。
 ▼ 300 mTQB7XkZdk 18/09/13 21:24:38 ID:DA1YcTT. [3/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
ジョウト地方御三家の一角……水の使い手の、《オーダイル》!

「オダァァイルッ!」

二足歩行のワニが、眼前に立つ黒竜に向かって威嚇の咆哮をあげた。

対する黒竜は、その静かなる強者の風格を崩す気配を全く見せない。

相まみえる双方の間に、早くも一触即発の空気が流れる……。

「……カルム」

「ゴールド君のオーダイルは、これまで彼が使ってきたどのポケモンとも比較にならないくらい強い」

「そのことは俺がその名に賭けて断言できる……気をつけろ」

……レッドは知っている。

ゴールドが使うオーダイルには、比類なき強さが秘められていることを。

何故なら彼もまた、かつて……あのオーダイルによって倒された者の一人だからだ。

ゴールドのパーティの中でも、あのオーダイルだけは飛び抜けた実力を有している。

レッドはあのオーダイルに、自分の最強だったハズの仲間達を撃破された。

あれから数年が経った今、オーダイルが更に腕を上げているとすれば……彼がこの戦場で巻き起こす活躍の程度は計り知れない。

「……相手がどんな奴だって、俺達は油断なんてしない」

「だが……その忠告は有り難く受け取っておくぜ。レッド」
 ▼ 301 mTQB7XkZdk 18/09/13 21:25:09 ID:DA1YcTT. [4/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
カルムはレッドに礼を言った後、目線を再びオーダイルに移す。

確かに彼の言う通り、あのオーダイルからは明らかに別次元のオーラが漂っている。

一筋縄ではいかない感じが……プンプンしている……!

「……オーダイル、《りゅうのまい》!」

「オダァッ!」

ゴールドの先手は、カルムのリザードンの初手と同じく《りゅうのまい》。

使用ポケモンの【こうげき】と【すばやさ】を上昇させる、ドラゴンポケモン秘伝の奥義だ……!

「悪いが、パクって貰っては困るな……!」

「リザードン、《ドラゴンクロー》!」

対するカルムは、猿真似はするなとばかりに妨害の一手を講じる。

《りゅうのまい》はもたらす効果こそデカいが、反面、相手に見せる隙もまたデカい。

先程のリザードンのような規格外のパターンは例外として、普通は発動させるタイミングが重要となる技だ。

このように妨害されてしまうと、折角パワーアップを遂げてもその間に受けたダメージが致命的になってしまう場合が多い……。

……のだが。

「――ゴー君の邪魔はさせないよっ!」

「アーゴヨン、リザードンに《りゅうのはどう》!」
 ▼ 302 mTQB7XkZdk 18/09/13 21:25:46 ID:DA1YcTT. [5/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ブォァァッ!」

……その妨害を更に妨害することによって、何の代償も伴わず《りゅうのまい》を完成させることが出来る。

これがダブルバトルの特色の一つだ……!

「……リザッ!?」

〔ドラゴン〕タイプの《りゅうのはどう》は、同じく〔ドラゴン〕タイプのメガリザードンXに対して効果抜群。

直撃を受ければ、いくらカルムのリザードンでもタダでは済まない。

リザードンは反射的に《りゅうのはどう》をかわし、事なきを得たが……結局、オーダイルの《りゅうのまい》を阻止することは出来なかった。

「――オダァァァァアアアッ!!」

吹き荒れる竜巻、風の流れにて迸る赤黒い稲妻。

オーダイルは〔ドラゴン〕のタイプこそ持ってはいないが、彼の内に秘められし竜の遺伝子が、彼にこの舞を踊らせる。

古の竜の極意……《りゅうのまい》が、ついに終結を迎えた……!

オーダイルの【こうげき】と【すばやさ】が、上がった!

「くっ……!」

苦渋のあまり言葉を詰まらせるカルム。

尤も、【こうげき】一段階、【すばやさ】に至っては三段階上昇しているリザードンに比べればステータス上昇値自体はオーダイルはリザードンに遅れを取っている。

だがそれでも、【こうげき】のステータスは肩を並べている以上、一撃一撃の重さは双方共に凄まじい。
 ▼ 303 mTQB7XkZdk 18/09/13 21:26:23 ID:DA1YcTT. [6/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
リザードンの方が【すばやさ】が遥かに勝っているとはいえ、安心は決して出来ない。

先程のようにアーゴヨンが妨害をしてくるなら尚更だ。

「君の相手は俺達だ……アーゴヨンッ!」

「ピカァッ!」

アーゴヨンについては、レッドとピカチュウに任せる他ない。

今カルムとリザードンが最も注意を向けるべきは……このオーダイルだ!

「リザァ……!」

「オダァ……!」

二匹の戦いの火蓋が、今……切って落とされる!


「――リザァァァァァッ!!」

「――オダァァァァァァッ!!」


――吠えた両者の距離は一気に喰らい尽くされ。

黒と蒼の拳は交差する。

重なり合った衝撃に互いが怯むことは無い。
 ▼ 304 mTQB7XkZdk 18/09/13 21:26:53 ID:DA1YcTT. [7/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
「リザァァッ……!」

「オダィル……ッ!」

二匹の攻撃力は同等……!

「……リザァァッ!」

次にリザードンが繰り出したのは、その鋭さを極めし竜の刃……《ドラゴンクロー》。

ここでメガリザードンXの特性《かたいツメ》が発動。

直接攻撃の技の威力が三割アップ……!

「リザァァァドッ!」

その速度は隼をも遥かに凌駕する。

電光石火の一撃は、誰の目から見ても不可避に思われた。

だが……。

「……ダァィル……!」

……オーダイルは、なんとこれを……かわしてしまった!

「リザッ……!!」

リザードンが振り下ろした竜爪が斬り裂いたのは虚空。

オーダイルはあの一瞬で、リザードンのすぐ側方にまで回避を遂げていた。
 ▼ 305 mTQB7XkZdk 18/09/13 21:27:51 ID:DA1YcTT. [8/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
この時オーダイルが真価を発揮したのは、単純な速度ではなく、“五感”。

……つまりオーダイルは、己の野生的な“感覚”を駆使して、リザードンの速攻を避け切ったのだ。

敵を直接目で追うのではなく、心の目で感じ取る。

類稀なる才能と、人並み……いやポケ並みならぬ努力があってこそ成せる戦いの極意だ。

「オダァァイルッ!」

そして次の瞬間、オーダイルが放ったのは《アクアジェット》という技。

〔みず〕タイプの技で、相手よりも必ず先制して攻撃できる。

オーダイルは目にも止まらぬ動きで、水を纏った突進攻撃をリザードンに仕掛けた……!

「リ……ザァッ!」

リザードンはメガリザードンXにメガシンカしたことで〔ドラゴン〕タイプを得ている為、〔みず〕タイプの技は弱点では無くなっている。

しかしそれでも、彼を牽制する一手としては十分の威力を《アクアジェット》は持っていた。

そしてそこからオーダイルは更なるコンボを繋げる。

「オダァァイルッ!!」

次の攻撃は、滝を昇るが如く勢いで敵に猛烈な体当たりをする強力な技……《たきのぼり》だ!

そしてこの瞬間、オーダイルの特性《ちからずく》が発動……技の追加効果が無くなる代わりに、技の威力が三割アップ!
 ▼ 306 mTQB7XkZdk 18/09/13 21:28:32 ID:DA1YcTT. [9/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……リザァァッ!」

しかしリザードンは飛翔して、その攻撃をギリギリのところでかわした。

「オダァイッ!」

だがオーダイルは次の瞬間、床が陥没してしまうくらいに地面を強く蹴り、垂直に跳躍した。

そしてなんとオーダイルは、空を飛ぶリザードンをその跳躍の力だけで追跡してみせる……!

……水流を纏いながら重力に逆らうその姿は、まさに“鯉の滝登り”。

翼を持たずして空中戦に参戦するイレギュラーに対し、リザードンはしかしそれを面白く思ったのか、ニヤリという不敵な笑みを浮かべた。

リザードンはオーダイルの《たきのぼり》に対し、今度は回避ではなく技で対抗する。

そんな温い水如き蒸発させてやる……とばかりにリザードンが次の瞬間その身に宿したのは、猛炎の闘気。

発動の度に使用者を加速させる〔ほのお〕タイプの必殺技……《ニトロチャージ》!

水と炎の相反する二属性が、鍔迫り合いを始める!

「……リザァッ!」

「オダァァッ……!」

だが、これも互角だ。

互いの渾身の突進がぶつかり合ったが、その衝撃によって散ったのは水飛沫と火の粉だけ。

ここで《ニトロチャージ》の効果発動……リザードンの【すばやさ】ランクがもう一段上がる。
 ▼ 307 mTQB7XkZdk 18/09/13 21:29:01 ID:DA1YcTT. [10/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
だがこのオーダイルを前にしてそのステータスは最早飾りと同然。

今ここで本当に競われるのは、双方が持つ単純な“力”だ。

……やがて跳躍の力が限界に達したオーダイルは、残りの滞空時間を降下で過ごす。

それを追うリザードンは、次なる《ドラゴンクロー》の構えに移っていた。

やがてオーダイルが地に降り立った時、彼の眼前に迫っていたのは竜の鋭爪。

鮮烈なる蒼の輝きに満ちたその一撃は、オーダイルに直撃する……!

「……オダァッ!」

……だがオーダイルは寸前のところで腕を前方にクロスさせ、これをガードしてしまった。

威力は大幅に軽減され、オーダイルの体をほんの少し後ろに突き動かす程度に留まる。

ここまでの攻防は、一進一退の繰り返しといったところ。

互いのレベルは既に常軌を逸しているが、それでいて同格。

故に、想像を絶する凄まじい戦いであると同時に、均衡が保たれた戦闘でもある。

しかしその均衡に、この少年……ゴールドは。

「……流石ですね、カロスチャンピオン」


……異を唱える。
 ▼ 308 mTQB7XkZdk 18/09/13 21:29:31 ID:DA1YcTT. [11/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
「だけど、僕達だって負けられません」

「僕もオーダイルも、勝つ為なら――」


「――何だってやるッ!」


……“一石”を、投じる!


「……オーダイル」

「《りゅうのまい》、《アクアジェット》……」


「……同時発動ッ!!」
 ▼ 309 mTQB7XkZdk 18/09/13 21:29:52 ID:DA1YcTT. [12/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
……ゴールドのその指示が会場に響き渡った時。

カルムは一瞬、瞠目のあまり意識が飛んだ。

“同時発動”……この言葉の意味を理解するのに数秒かけ、カルムはようやく目の前の戦闘に意識を戻す。

自己強化技の《りゅうのまい》と、攻撃技の《アクアジェット》を同時にやれ……という意味で、ゴールドは先程の指示を出したのか。

カルムはそう仮定した瞬間……“不可能”だと思った。

一度に二つの技を行うポケモンなど、見たことが無い。

また、聞いたことも無い。

だから、あり得ない。

そう思い込んだ。

……だが、それは単なる“憶測”であったことを次の瞬間カルムは思い知らされることとなる。

ゴールドが打ち出したこの秘策は果たして、戦局をどのように変えてしまうのか……!
 ▼ 310 ロア@バコウのみ 18/09/14 11:31:50 ID:FJ.cm9l2 NGネーム登録 NGID登録 報告
ガルーラ「同時…だと…!?」
 ▼ 311 mTQB7XkZdk 18/09/14 23:30:21 ID:/0X2hclo [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
――『勝つ為なら何だってする』……そう言い放ったゴールドが繰り出した策は、カルムの度肝を抜く代物であった。

それは、《りゅうのまい》と《アクアジェット》……この二つの技を同時に使い、自己強化と攻撃を並行して行おうというモノ。

あまりにも無茶な作戦だ。

そんなの絶対に成功するハズがない……カルムは依然としてそう思っている訳だが、目の前の敵――オーダイルは、どうやら本気のようであった。

「――オダァァァイルッ!」

オーダイルはまず、竜の闘気をその身に宿して《りゅうのまい》の構えに入る。

この地点で普通ならば、発動者は舞以外の行動が制限されるハズだ。

だが次の場面で、オーダイルは……カルム達が想像だにしなかった“御業”を披露する。

「オダァァァッ!!」

オーダイルは赤黒い稲妻が迸るそのオーラを纏いながら雄叫びを上げて、今度はなんと……水流までも呼び寄せてしまった!

「何だと……ッ!?」

赤、黒、蒼の三種のエネルギーが、オーダイルを包み込んでいく。

その凄まじい光景に、カルムは驚きのあまり思わず歎声を上げてしまう。

こんなことがあって良いのだろうか。

オーダイルは本当に、《りゅうのまい》と《アクアジェット》を同時にやるつもりなのだ……!
 ▼ 312 mTQB7XkZdk 18/09/14 23:30:58 ID:/0X2hclo [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「くっ……リザードン、奴のパワーアップを阻止するんだッ!」

「リザァァァァァッ!」

カルムは早急にこれを対処すべく、リザードンに妨害の司令を下す。

リザードンは彼の命令に呼応し、地を蹴って一気に加速した。

地面スレスレで滑空し、一瞬の速度でオーダイルに接近する……が、しかし。

「……リザッ!?」

リザードンがその鋭い爪を振り下ろしたその時には、既にオーダイルの姿は……消えていた。

斬り裂かれた虚空は微かにそよ風を起こすだけ。

逃げられた……リザードンの妨害は刹那にも勝る速攻だったが、完成したオーダイルの《アクアジェット》はそれすら更に上回ってしまったのだ。

そして程なくして、彼方から激流が流れる音がする。

リザードンがその方向に目線を向けるとそこには、禍々しい竜の波動と、透き通る美しさの水の波動の両方を纏って宙を猛進するオーダイルの姿があった。

混沌のエネルギーを宿して宙を翔けるオーダイルは、地上にいるリザードンにそのまま突進攻撃を仕掛ける。

リザードンはこれを迎え撃つべく、黒き瞳をギラリと見開いて、その迫力ある表情で《ドラゴンクロー》の構えに移った。

彼が使うそれは、自身の爪を蒼焔で研磨し、その殺傷能力を極限にまで高めて放つ……選ばれし強者のみが放てる至高の《ドラゴンクロー》。

オーダイルが“重ねがけ戦法”で攻めてくるなら、リザードンは一つの技を徹底的に極めて対抗する……!
 ▼ 313 mTQB7XkZdk 18/09/14 23:31:31 ID:/0X2hclo [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「オダァッ!!」

「リザァァァッ!!」

リザードンの激情を乗せた《ドラゴンクロー》と、オーダイルの《りゅうのまい》の力が籠められた《アクアジェット》が、ついに……激突した!

瞬間、壮烈なる爆風が鋭い衝撃波を作り出し、フィールドに巨大な亀裂を刻み込む。

頑丈なハズの地形が、こうも簡単且つ無惨に破壊されてしまうなど、常軌を逸しているにも程がある。

この凄惨な光景は、まさに、二匹の強過ぎる力の証明だ。

そして、戦場をも大きく揺るがすその闘争に、観客席の熱気はとうに最高潮にまで達していた。

声援の嵐に巻き込まれながら、リザードンとオーダイルは今もなお壮絶かつ大迫力のバトルを繰り広げている……。

……だが。

「……リザッ……!」

……ここでほんの少しだけ、リザードンの表情がオーダイルよりも先に歪み始めた。

その理由は、互いの現在の【こうげき】ランクの違いにある。

と言うのも、《りゅうのまい》を二回にかけて発動した今のオーダイルの【こうげき】ランクは、現在二段階目。

対するリザードンの【こうげき】ランクは、一段階目。

つまり、現地点において単純な火力で上回っているのは実はオーダイルの方なのだ。
 ▼ 314 mTQB7XkZdk 18/09/14 23:32:05 ID:/0X2hclo [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
ランクは一つ違うだけでも、出す技の威力が大幅に増減する。

リザードンが若干劣勢に追いやられたのは、その違いが顕著に表れた結果だ。

「オッ……ダァ……!」

「リザッ……ァァッ!」

だがそれでも、双方共に疲労の色はもう完全に隠し切れていない。

互いの汗が、吹き荒れる熱風によって蒸発し、水蒸気が二匹の間で立ち込めている。

リザードンも、オーダイルも、意識は既に戦意の深淵にある。

謂わば……“ゾーン”に入っている状態なのだ。

今、二匹の間では時間がゆっくりと流れている。

まるで、精神と肉体が切り離されて、それぞれ違う時の中で動いているかのような感覚だ。

自我が追いつかない内に、体が技を次々と発動させていき、気付いた時には既に全身傷だらけ……それが、今の彼らの状態だ。

「……リザァァァァァッ!!」

「……オダァァァァアアアッ!!」

そんな二匹は、今一度交戦を再開する。

今の二匹の死闘に割って入れるポケモンなど、世界広しと言えど一匹とていやしない。

飛竜と水竜の熾烈を極めた一騎打ちは、それから更に続くこととなる……!
 ▼ 315 ロエッタ@つららのプレート 18/09/15 08:54:15 ID:7LHYJb/U NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ▼ 316 mTQB7XkZdk 18/09/15 23:09:17 ID:8YTA4OIQ [1/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
***

……リザードンとオーダイルが、その命を賭けて、戦いをより激化させていく一方で、レッドのピカチュウはミヅキのアーゴヨンに対し、完全に遅れを取っていた。

「ピカァ……ピッカァ……!」

ピカチュウの吐息は荒く、足は笑い、腕は震え……まさに満身創痍。

ゲームなどによくある“体力メーター”的なモノがもし現実にあったとしたならば、きっとピカチュウの現在のメーターの色は赤色――つまり、絶体絶命のピンチということである。

しかしピカチュウは、ボロボロになっているその小さな体に自ら鞭を打ち、無理矢理にでも足を突き動かしてアーゴヨンと戦う意志を示す。

「ブォォォ……」

対するアーゴヨンは、まるで諦めようとしないピカチュウの姿を見て、感嘆のあまりため息をつた。

次に彼は首を横に振り、己に立ち向かってくる相手に対して脱帽と同時に痛惜の念も覚える。

アローラ地方で《ウルトラビースト》と呼ばれ恐れられてきたアーゴヨンをここまで手こずらせたピカチュウの実力は、対戦相手であるアーゴヨンでさえ素直に認めざるを得ず、まさに疑いようが無い。

だが、それでも……アーゴヨンには遠く及ばない。

彼らが元々住んでいた次元が違っていたように、彼らの戦闘力の次元もまた、遥かに違っていた。

まして進化途中のポケモンであるピカチュウが相手ならば尚更、その違いはより著しく表れる。

力の差は歴然であり、現にピカチュウはアーゴヨンの力に追いつけていない。

最早勝負は決まったようなモノだ……いくら諦めない心を持っていようとも、この現実には逆らいようが無い。

ピカチュウの敗北は、既に確定しているも同然なのだ。
 ▼ 317 mTQB7XkZdk 18/09/15 23:09:54 ID:8YTA4OIQ [2/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
そんなピカチュウの毛並みを撫でるのは、遥か彼方から吹いてきた冷たいそよ風。

その風は同時に、ピカチュウの体に幾つも刻まれている傷跡に容赦なく刺激を入れる。

しかしそれでもピカチュウは、鋼の精神で持ち堪え、しっかりとアーゴヨンだけを見据えている。

一体何が、彼をあそこまで突き動かすのか。

「……ピカチュウ」

レッドはそんなピカチュウを心配し、ふと名前を呼んでみる。

するとピカチュウは、傷でボロボロな見た目とは裏腹に……これ以上無く良い笑顔で振り向いて。


「……ピッカァ!」


……そう、鳴いてみせた。

「……分かった」

……レッドの考えでは、もう、ピカチュウにこれ以上の無理はさせないつもりだ。

しかしだからといって、ここでピカチュウを下げるのもそれはそれで違う気がする。

では、どうするか。

ピカチュウの戦意を汲みつつ、ピカチュウにゆっくりと休んでもらう方法……。

……一つだけ、ある。
 ▼ 318 mTQB7XkZdk 18/09/15 23:10:36 ID:8YTA4OIQ [3/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
だがそれはピカチュウにとって捨て身の手段であり、実行したが最後、ピカチュウは力尽きて戦闘不能になる。

だが、アーゴヨンにこのまま技を決められるよりはその方がピカチュウは納得できるだろう。

無論、それはレッドのエゴではない。

ピカチュウもまた、レッドがその指示を出してくれることを密かに期待していた。

「ピッ……カァ……!」

この戦いにおいて自分がもう長くないことなど、ピカチュウはとうに理解している。

故にピカチュウは、ならばせめて少しでもレッドに報いる道を選びたいという一心であった。

そしてその為だったら……この身すら犠牲にできる。

その覚悟こそが、ピカチュウのレッドに対する絆の証明なのだ……!

「ピカチュウ……お前の全てを、奴にぶつけてこい」

「ピカッチュゥ……ッ!」

レッドには、ピカチュウを言葉で鼓舞することくらいしか出来なかったが。

それがピカチュウにとっては、何よりの“闘志の火種”だった。

そこにくべるのは“想い”という名の燃料。

ピカチュウの、レッドに対する想いが高まれば高まる程、よりその勢いは強くなる。

そして、その勢いが最大限にまで高まった時……。
 ▼ 319 mTQB7XkZdk 18/09/15 23:11:45 ID:8YTA4OIQ [4/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「――ピカァァ……ッ!」


……最後に限界を超えるのは、“友情”の雷を纏った不滅の聖火だ!


「ピカチュウ……」

「……全力全開で、《ボルテッカー》だッ!」


「ピカァァァァッ!!」


ピカチュウは最後の力を振り絞り、玉砕覚悟の最終奥義――《ボルテッカー》を発動する!

ピカチュウの体内で眠っていた稲妻は、彼が上げた雄叫びと同時に一気に爆発し、凄絶なる黄金のオーラとなってピカチュウを包み込んでいく。

辺りに凄絶なる雷音を轟かせながら、ピカチュウの闘志はみるみる内に漲っていき、この一瞬だけではあるものの、彼は自らの臨界点を突破することができた。

今のピカチュウの姿はそう、例えるならば……極東の地の伝説において語り継がれし“雷神”。

己の残りの体力を全て擲って、この一撃――《ボルテッカー》に、命運を託す!

「……ブォォォ!」

そしてそれを迎え撃つは、異次元より来訪せし魔獣……アーゴヨン!

「……『避けて』なんて言っても聞かないよねっ」

アーゴヨンのトレーナーであるミヅキは、これは避けるのが最善策だと考えていた。
 ▼ 320 mTQB7XkZdk 18/09/15 23:12:37 ID:8YTA4OIQ [5/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
しかしそれは、アーゴヨンの望むところではない。

そしてミヅキは、そんなアーゴヨンに対して、回避を無理強いすることはなかった。

勿論、トレーナーとして勝つ為の指示を出すのは当然のことであり、時としてそれこそ無理強いしてでもそれを通さなくてはならないこともある。

だが、今この瞬間は……“その時”ではない。

何故なら、今という一瞬は、自分のポケモンにとって一生忘れることのできない、かけがえのない感覚を味わえる……またとない唯一の機会なのだから。

確実に勝てる道よりも、アーゴヨンが一番勝負を楽しめる道を選ぶ。

ミヅキは、アーゴヨンの意志を汲んだ。

彼女らもまた、その互いに通じ合っている心を武器にして、立ち向かってくるピカチュウに真正面から向き合う……!
 ▼ 321 mTQB7XkZdk 18/09/15 23:12:57 ID:8YTA4OIQ [6/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「アーゴヨン……《りゅうのはどう》!」

「ブォォォァァァァッ!!」

アーゴヨンの口元――砲口に、昂ぶる竜のエネルギーが装填されていく。

紫色の粒が集まり、それはやがて巨大な砲丸となり……凄まじい激昂のオーラを帯びる。

竜の逆鱗に触れし勇者に、紫紺の波導が、今……放たれる!

「――ブォォォォォォォオオオオッ!!」

竜の叫びは、大気に波紋をもたらし。

龍の閃光は、軌道上に破滅の魔力を撃ち抜き。

ドラゴンの怒りは、金色の挑戦者に容赦なく……襲いかかる。

必殺――《りゅうのはどう》、炸裂!

今、電撃と竜光線……その二つの瞬きが満を持して交わる!

果たして勝つのは……どちらだ!?
 ▼ 322 ルホッグ@ミュウツナイトY 18/09/16 00:22:36 ID:3EKE29tY NGネーム登録 NGID登録 報告
おっきてる
支援
 ▼ 323 mTQB7XkZdk 18/09/16 23:40:05 ID:xvzcbvME [1/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
――ピカチュウとアーゴヨンの戦いは、いよいよクライマックスに突入する。

《ボルテッカー》と《りゅうのはどう》の猛然たる衝突……この撃ち合いを制した者が、この激闘の勝者となろう!

「……ピカァァァァァッ!!」

ピカチュウの眼前にて迫り来る、滅びの光芒。

しかし、ピカチュウの決死の突撃が揺らぐことは無い。

そのまま一直線の軌道を描いたまま、ピカチュウは空を貫いていく。

そして、ついに……!

「ピッ……カァ……ッ!」

……《ボルテッカー》と《りゅうのはどう》が、激突した!

金と紫の衝突は、混沌の爆発を巻き起こし、辺りに旋風を舞い上がらせる。

一陣の風が、トレーナー達の頬を掠めた。

その風は戦慄を運び、彼らの意識をあのピカチュウとアーゴヨンの鍔迫り合いに集中させる。

それは、見る者の鼓動を際限無く早めてしまう程に凄絶なる闘争だった。

雷電を纏いし者――ピカチュウは、アーゴヨンがその絶大な力を以て解き放った《りゅうのはどう》を突破すべく、限界まで電力を振り絞り。

紫毒を携えし者――アーゴヨンは、ピカチュウがその渾身の気合を込めて炸裂させた《ボルテッカー》を反射すべく、極限まで竜力を出し切る。
 ▼ 324 mTQB7XkZdk 18/09/16 23:40:56 ID:xvzcbvME [2/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ピカァァァチュゥゥゥゥッ!!」

「ブァァァブォァァァァァッ!!」

互いのポケモンがこんなにも死力を尽くして戦っている中で、その姿を見守りしレッドとミヅキは今……何を思うのか。

「……ピカチュウ」

――ピカチュウの名を零すレッドは、今のピカチュウの姿を心から誇りに思っていた。

レッドのピカチュウは、進化系である《ライチュウ》に進化することこそ、結局無かったが……。

……それは、ピカチュウ自身が選んだ道であった。

敢えて“進化”という手段を取ることなく、ピカチュウはレッドと共に“最強”をこれまで目指してきた。

そして今ここにある景色は、まさにその道の……“終点”、なのだろうか。

今のピカチュウは、まさに“世界最強のピカチュウ”と呼ぶに相応しい程の比類なき強さを得ている。

誰の目から見ても、彼より強いピカチュウが居るなどとは到底思えないだろう。

……だが、レッドはそれでも、あのピカチュウは今よりもっと……もっと強くなれると信じている。

ピカチュウがレッドの仲間になったあの時からずっと、その想いは変わりはしない。

レッドとピカチュウの不朽の絆は、この瞬間を以て更に進化を遂げるのだ。

そう……ここは、“終点”なんかじゃない。

今よりももっと……それこそ、“異次元”にまで届くくらいに、強くなる。
 ▼ 325 mTQB7XkZdk 18/09/16 23:41:57 ID:xvzcbvME [3/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
これからも……ずっと……!

「……負けるな、ピカチュウッ!」

「アーゴヨンにも、自分自身にも、そして……“未来”にも!」

「そして、これからも“限界”を超え続けてくれッ!」

「俺もお前と一緒に、お前の限界に挑み続けるッ!」

「だから――」


「――ずっと俺の側で……輝き続けてくれぇッ!!」


「――ピカッチュウウウウッ!!」


……共に!
 ▼ 326 mTQB7XkZdk 18/09/16 23:42:24 ID:xvzcbvME [4/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……アーゴヨン」

……一方で、ミヅキがその名を呼ぶのは、異次元の超獣――アーゴヨン。

かつてアローラを旅する少女であったミヅキと、異世界よりの来訪者であったアーゴヨンの邂逅は、ある日突然に訪れた。

その時はアーゴヨンはまだ《アーゴヨン》に進化する前であり、今よりももっと小さな姿であった。

まるで好奇心旺盛な子供のようだったかつての彼は、ミヅキと出会い、この世界で様々なモノを彼女と共に見てきた。

ミヅキと色々な“初めて”を経験し、何かを変える為、無我夢中で走ったあの日々が、今、ミヅキとアーゴヨンの心に蘇る。

あの時見つけた“夢の一欠片”を……今、ミヅキとアーゴヨンは力へと変える。

これからも、二人で色々なことを学び、知る為に……!

「……あなたがこの世界に来てから、私の毎日は凄く楽しいのっ!」

「アーゴヨン……! この世界で私と出逢ってくれて、本当にありがとう!」

「私……あなたのことが大好きだから――」


「――あなたには、私が……一生ついているからっ!」


「――ブォォォォゥゥウウウウッ!!」


……歩み続ける!
 ▼ 327 mTQB7XkZdk 18/09/16 23:43:07 ID:xvzcbvME [5/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
そして、稲妻と竜撃の鍔迫り合いに、今……終わりが訪れようとしていた!

黄金と紫紺に輝く閃光の果てに、勝利をもぎ取ったのは――

「ブォォォ……ッ!?」


「ピカァァァッチャァァァァッ!!」


――ピカチュウだった!

雷光を纏って疾走せしその勇者は、竜の波導を打ち破り、そしてアーゴヨンへと迫る!

超速で天を駆け抜け、その雷撃――《ボルテッカー》は、ついに……アーゴヨンに命中した!

「ブォォォァァァッ……!?」

「アーゴヨンッ!?」

ピカチュウの渾身の体当たりを受け、アーゴヨンは苦悶の表情を曝け出しながらその巨体を震撼させる。
 ▼ 328 mTQB7XkZdk 18/09/16 23:44:07 ID:xvzcbvME [6/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
対するピカチュウは、あらん限りの叫びと共に必死の思いでアーゴヨンにぶつかり続けた。

「ピカァ……ピカチュゥゥッ!!」

例えその身が張り裂けそうになっても、ピカチュウはこの電撃を止めようとはしなかった。

まだアーゴヨンは倒れてはいない。

ここで自分が先に反動で倒れてしまっては、自分の負けになる。

ピカチュウは、そう自分に言い聞かせ、弱音を吐きそうになっている自分の声帯に鞭を打ち、ただひたすら哮り続け、アーゴヨンに肉薄し続けた。

……だが。

「……ピカァァァ……!」

……ついに、ピカチュウの体力は限界――“零”に、達した。

アーゴヨンの忍耐の前にとうとう弾き返されたピカチュウは、その身体に黒い焦げ跡を幾つも残して、後方に吹き飛ばされる。

彼の決死の健闘は、果たして……虚しく砕け散ってしまうのか!?
 ▼ 329 クオング@ウイのみ 18/09/17 09:32:01 ID:ckQoqZes NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 330 ードラン@ねばりのかぎづめ 18/09/17 18:57:54 ID:.LGEizEk NGネーム登録 NGID登録 報告
 ▼ 331 ゴーム@ブロムヘキシン 18/09/17 23:55:35 ID:hbf.h6NE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ちょっと中二病感がありすぎて逆にいい。
支援
 ▼ 332 mTQB7XkZdk 18/09/18 00:27:54 ID:MAgkjbKY [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
――《ボルテッカー》と《りゅうのはどう》の熾烈を極めた激突の末、その競り合いを見事制したのは……ピカチュウだった。

だが、その後ピカチュウはアーゴヨンに《ボルテッカー》を直撃させたにも関わらず、アーゴヨンを倒す前に《ボルテッカー》の反動ダメージによって体力がついに底をついてしまう。

《ボルテッカー》の反動の果てに力尽きたその姿は、誰の目から見ても“勇姿”として映った。

勿論、この少年……レッドにとっても。

「ピカチュウ……!」

レッドは、地に墜落せしピカチュウを受け止めるべく、フィールドを全速力で駆け抜ける。

レッドが差し伸べたその両腕に、やがてピカチュウが飛び込んできた。

レッドはピカチュウを、その手でがっちりと受け止める。

そして最後に、彼はピカチュウの顔をゆっくりと見下ろして……優しい笑顔を見せた。

「……よくやったな。 ピカチュウ」

「やっぱりお前は……俺の“最高の相棒”だ!」

「ピカァ……!」

……その言葉をピカチュウと交わした後、レッドは審判に一礼し、元の立ち位置に戻る。

瞬間、審判の口からピカチュウの戦闘不能を告げる言葉が響き渡った。

レッドはその言葉を確認するや否や、すぐにピカチュウに《かいふくのくすり》を使い、彼の体力を回復させる。

するとピカチュウは瞬く間に元気を取り戻し、再び元気な声で鳴いてみせた。
 ▼ 333 mTQB7XkZdk 18/09/18 00:28:27 ID:MAgkjbKY [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……あなたのピカちゃんは本当に凄かったよ」

「でも……私のアーゴヨンの方が一つ上手だったね」

対するミヅキは、余裕綽々の態度でレッドにそう言い放った。

だがレッドは、そんな彼女の牽制にも関わらず、その心を揺らがせることは無い。

寧ろ、彼は次の瞬間……笑ってみせた。

「……それはどうかな?」

「アーゴヨンの姿を、よく見てみると良い」

「え……?」

……ミヅキは、レッドに言われるがままに、アーゴヨンの姿を見てみる。

すると、彼の――アーゴヨンの体に、とある“異変”が起こっていたのが確認できた。

それは……。

「……ブォォォ……!」

……アーゴヨンの体に幾つも纏わりついている、この電流。

これは……【まひ】状態にアーゴヨンが陥っている確固たる証拠だ!

「……そんな……アーゴヨンッ!?」

「ブォォォ……!」
 ▼ 334 mTQB7XkZdk 18/09/18 00:29:01 ID:MAgkjbKY [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
全身を苛む【まひ】に、苦しむ様子を見せるアーゴヨン。

これは、ピカチュウが放った《ボルテッカー》に含まれる追加効果。

一割という低確率で、相手を……【まひ】させる!

「……これは、“奇跡”だ」

「俺のピカチュウの、“決して諦めない心”が引き寄せた……“運命”だ!」

「俺のピカチュウは、確かに君のアーゴヨンに……一矢報いてみせたぞッ!」

レッドはミヅキを指差し、そう勝ち誇ってみせた……!

電光雷轟の勇者――ピカチュウは、散り際に奇跡を残したのだった……!

……一方でミヅキは、真にこのアーゴヨン対ピカチュウの試合で勝利した側であるにも関わらず、これ以上ない敗北感をレッドに叩きつけられる結果に。

ミヅキは頬に汗を一筋垂らし、一歩だけだが後退る。

彼女はレッドの気迫に僅かながらも気圧されたのか、または、このアーゴヨンの【まひ】状態に対して戦局的に危機感を覚えているのか、それともその両方か、はたまた、それらとは全く異なる思考が巡っているのか。

だがミヅキは、“これだけ”は身を以て味わった。

やはりあのピカチュウは……半端な実力の持ち主では無かったのだと。

だからこそ、今になって彼女は思う。

ここで彼を倒せた事こそが、逆に……自分達にとって“奇跡”だったのかもしれない、と。
 ▼ 335 mTQB7XkZdk 18/09/18 00:29:25 ID:MAgkjbKY [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……認めるよっ」

「あなたのピカちゃんは、私の記憶の中で、“強敵”として何時までも永遠に残り続ける……」

「……でも、あなただって何時までも余韻に浸ってはいられないんじゃないかな?」

ミヅキはレッドの主張を認めたうえで、彼に対し早く次のポケモンを出すように言外にて促す。

レッドはそれに応え、既に用意していた一つのモンスターボールを手に構えた。

「……俺が次に出すポケモンも、君にとって“そういう存在”になることだろう」

「俺も、この大会でコイツを出す日を……心待ちにしていた」

「君に見せてやろう、ミヅキ」

「コイツが……俺の“切り札”だ」

レッドはそのポケモンに対し、無二の信頼を寄せていた。

レッドは、そのポケモンをこの世界最高峰の戦いで披露する時をずっと待ち望んでいた。

そしてその時は、ついに訪れる。

この天下分け目の熱戦に満を持して参戦するのは……レッド軍団における最強の戦士!

その名も……!

「君に……決めたッ!」


「《リザードン》ッ!」
 ▼ 336 mTQB7XkZdk 18/09/18 21:06:34 ID:H7GAOJYY [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
――不滅の炎を尾に宿し、紅蓮の鱗に身を包む灼熱の飛竜。

彼がレッドと共に刻んできた物語は、かけがえのない絆の詩でもある。

他の個体とは一線を画すその実力を裏付けているのは、彼がレッドに抱きしその熱烈な想い。

レッドが求めし勝利の為に、彼はこの戦場に降り立ち、未来永劫消えることの無い“戦慄”という名の業火を敵の記憶に焼き付ける。

猛れ、火よ。

太陽が如し灼焔の力を振りかざして。

日照りせし大地にて……返り咲け!

《リザードン》!

「――グォォォァァァァァッ!!」

……更に!

一族の頂点に達せしその竜は、新たなる絆の力によって、従来までの限界を超越した進化を、もう一度遂げる!

想いの……その先へ……!

「……《メガシンカ》ッ!」
 ▼ 337 mTQB7XkZdk 18/09/18 21:07:05 ID:H7GAOJYY [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
レッドの最愛の恋人――コルニが、レッドに心を込めて縫い合わせた、彼女の“恋歌の結晶”――《メガマフラー》が、今、レッドの首元でリザードンとの絆とリンクする。

瞬間、リザードンの全身が眩い極光に包まれた。

リザードンの内にて今も流れ続けている遺伝子の波動に、極限の衝撃が響き渡る。

そしてその光の果てでリザードンが習得したのは……業火を超えた獄焔の力。

緋色に煌めくその終焉の炎は、彼を見下ろしている天にもう一つの太陽を昇らせる。

その力の名は【ひでり】――彼の大地の化身《グラードン》も所持している強力な特性。

戦場に燦々と輝く太陽の光を差し込ませることによって、〔ほのお〕の威力を強め、〔みず〕の威力を弱める。

その恐るべき力の前では、大地の潤いは枯渇し、燃え盛る炎のみが天下を支配するのだ。

双璧を成す《メガリザードンX》が“闇を纏いし蒼焔の黒竜”ならば、彼は“光を宿せし緋焔の紅竜”。

“Y”の称号を与えられし、絶類抜群の天空の覇王……!

……《メガリザードンY》!


「――グガォォォォォォォォォッ!!」


……大地の裂け目で、焔が踊る。

光炎万丈の戦場を照りつけし彼の太陽は、あの澄み切った蒼天をも黒く焦がさんとしている。

メガリザードンYは、黒煙の向こう側からアーゴヨンを覗く。

己がまだ知り得ていない、未知の敵との遭遇を果たしたリザードンはしかし、動揺する様子を少しも見せず、依然として冷静な佇まいのまま陽炎の中で立ち続けていた。
 ▼ 338 mTQB7XkZdk 18/09/18 21:07:33 ID:H7GAOJYY [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……ブォォォ」

対してアーゴヨンは、灼熱地獄と化していく戦場で、【まひ】の状態異常を引きずりながらこれからの戦局を憂いている。

【まひ】にかかると、不定期のタイミングで強烈な痺れが襲うようになり、たまに動けなくなってしまう。

また、痺れにより速度も遅くなる。

つまり……【すばやさ】のステータスが著しく低下してしまうのだ。

言うまでもないが、この負の効果がもたらす影響は大きい。

【まひ】になった地点で、戦局的にはかなり不利な状況に立たされる。

そんな中で、万全のメガリザードンYを相手取るのはかなり苦しい展開だ。

《わるだくみ》により【とくこう】のステータスが二段階上がっているとはいえ、【まひ】のディス・アドバンテージを抱えている分アーゴヨンは劣勢であると言って良い。

「……まさか、決勝のコンビの切り札が両方共リザードンだったなんてね」

「紅と黒の“Wリザードン”……燃える展開だね〜!」

……しかし、そんなアーゴヨンのピンチでも、ミヅキのその溌剌極まるハートが冷え込むことは無かった。

寧ろ、先程のレッドとのやり取りを経て、今までよりも更にその熱さは高まっている。

熱くて、熱くて、熱すぎて……しまいには。

「……ええーいっ!」

……なんと、頭に被っていた赤いニット帽を、その場で脱いでしまった。
 ▼ 339 mTQB7XkZdk 18/09/18 21:08:17 ID:H7GAOJYY [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ミ、ミヅキさん!?」

普段は隠れていて見えないミヅキの黒髪の全貌が露わになったことで、横にいたゴールドは思わずドキッとしてしまう。

汗が滴るその黒髪は、艶が美しい光沢を放っており、その髪質が良いことを証明している。

ミヅキにその美しき黒髪は、ゴールドは勿論、レッドとカルムから見てもよく似合っており、ニット帽を外した今の姿なら、その魅力はより映える。

「アーゴヨン……ここが正念場だよ!」

「ブォォォォッ!!」

心機一転、新たに戦意を固めたミヅキに呼応し、アーゴヨンの闘志もまた復活を遂げる!

「……グォォォ」

ミヅキ達のその姿を、今初めて目の当たりにしたリザードンは、不敵な微笑みを浮かべた。

こんなにも純粋な挑戦者と対峙したのは、リザードンにとっても久しいことであり、それは嬉しくもあれば面白くもある。

リザードンもまた、ミヅキ達と同様に……燃えてきた!

「……やるぞ、リザードン!」

「グォォァァッ!!」

レッドとリザードンの進撃が、今、幕を上げる……!

「熱く燃え滾れ……《かえんほうしゃ》ッ!」

「グォォォッ!」
 ▼ 340 mTQB7XkZdk 18/09/18 21:08:40 ID:H7GAOJYY [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
開戦の雄叫びは、戦場を紅蓮の炎で焼き尽くす《かえんほうしゃ》。

リザードンの砲口から放たれし火炎の光線は、アーゴヨンに向かって一直線に伸びる。

「ゼンリョクで行くよ! ……《りゅうのはどう》っ!」

「ブォォォォォゥッ!!」

対するアーゴヨンは、逆鱗に触れられし竜が解き放つ煌めき――《りゅうのはどう》でこれを迎え撃つ。

赤と紫の流動が、今、一点で交わる……!

……その威力は、互角だった!

互いに相殺されたその技は交点で同時に爆発四散し、火炎と竜波の残骸を辺りに無惨に撒き散らす……!
 ▼ 341 メール@ふしぎのプレート 18/09/18 22:35:24 ID:pzZYu8Pw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミヅキはまだZ技使ってないよね?
支援
 ▼ 342 ednkiNQ3/2 18/09/20 00:12:44 ID:kAZUqkTo [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
――ついに始まりを告げた、リザードンとアーゴヨンの戦い。

そして互いが繰り出した初手の攻撃は、引き分けで終わった。

だが、ここまでは小手調べの戦い……次からが、本腰を入れた真の戦いなのである。

「まだまだっ! アーゴヨン、《ヘドロウェーブ》!」

「ブォォォァァァァァッ!!」

次なるアーゴヨンの一手は、劇毒の荒波――《ヘドロウェーブ》。

紫色に揺れるその波濤は、全てを腐食させる惨毒の大災害。

強烈極まりなき全体攻撃が、アーゴヨン以外の全てを襲う……!

「オダァッ」

「リザッ」

ゴールドのオーダイルとカルムのリザードンは、これを見切って難なくかわした。

そして、レッドのリザードンも……。

「かわせ! そして……《エアスラッシュ》!」

「グォォォッ!」

……これを回避させる手段に出る。

そしてそこからの攻撃をスムーズに繰り出せるように、攻撃技の指示も同時に行った。
 ▼ 343 mTQB7XkZdk 18/09/20 00:13:29 ID:kAZUqkTo [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「グォォァァァッ!」

リザードンはまず、素早い飛行で波の射程圏外に脱出し……。

「グォゥゥゥゥッ!」

その滑空状態から流れるような動きで、翼で空を斬りつけ真空波を巻き起こす技――《エアスラッシュ》を放つ!

「ブォッ……!?」

ヘドロウェーブを出した直後の硬直によりこれを避けることが出来なかったアーゴヨンは、《エアスラッシュ》の直撃を受けてしまった。

「アーゴヨンっ!」

「ブォォォ……ッ!」

ミヅキの心配からの呼びかけに対し、アーゴヨンは気迫を込めて応える。

鋭い旋風を受けてもなお、アーゴヨンは怯まずに体勢を整えた。

「よし……アーゴヨン、リザードンに《りゅうのはどう》!」

「ブォッ……!」

そして今度はアーゴヨンの反撃……。

……かと思われた、その時だった。

「……ブオッ!!」

ここで【まひ】の持続効果――不定期のタイミングで動けなくなる効果が、発動してしまう!
 ▼ 344 mTQB7XkZdk 18/09/20 00:14:03 ID:kAZUqkTo [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「そんな、アーゴヨンっ!」

「ブォォァァ……!」

ピカチュウが残した置き土産は、ここぞという時にアーゴヨンに致命的な隙を与えた……!

「サンキュー、ピカチュウ!」

「ピッカァ!」

誇らしげにフンスと鼻を鳴らすドヤ顔のピカチュウに、レッドは心からの感謝の言葉を贈った。

そしてレッドは、この決定的な攻撃のチャンスに、この技を叩き込む……!

「よし、リザードン!」

「《りゅうのはどう》を、お返ししてやれッ!」

「グォォォゥゥゥッ!」

……竜の血統に受け継がれし技――《りゅうのはどう》を使えるのは、アーゴヨンだけではない。

リザードンが放つ《りゅうのはどう》もまた、強力無比の大技。

レッドのピンチを、これまで何度も救ってきた。

そして今度の《りゅうのはどう》は、〔ドラゴン〕タイプのアーゴヨンにとって効果抜群の大打撃。

「――グォァァァァァァッ!!」

当たれば、致命傷は免れない!
 ▼ 345 mTQB7XkZdk 18/09/20 00:14:56 ID:kAZUqkTo [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
リザードンはこの一撃でアーゴヨンにトドメを刺すつもりで、その技を渾身の力で解き放った……!

「避けてっ! アーゴヨンっ!」

「ブォッ……ォォォ……ッ!」

ミヅキの必死の呼びかけに、しかしアーゴヨンは動きたくても動くことが出来ない。

まるで、死の危険が迫っていても金縛りに遭っているせいで逃れることのできない悪夢の中にいるかのように、アーゴヨンはこの【まひ】に打ち勝つことができないまま……。

……その一撃を。

「――ブォォァァァァァァッ!?」

……受けてしまった!
 ▼ 346 mTQB7XkZdk 18/09/20 00:15:17 ID:kAZUqkTo [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「アーゴヨン……っ!」

滅竜光線――《りゅうのはどう》、炸裂!

技の直撃をモロに食らったアーゴヨンは、声帯が張り裂けそうなくらいに悲鳴をあげながら、地上に墜落する。

黒煙を吐きながら地にへばり付くアーゴヨン。

「ブオッ……ブォォァァ……ッ!」

ギリギリ耐えたようではあるものの、そのダメージは致命的であった。

一気に体力をすり減らされ、激痛に打ちひしがれるアーゴヨンは、震えながらも何とか飛行状態に再び体勢を整える。

だが、この満身創痍の体ではどの道、近い未来に彼は倒れるだろう。

アーゴヨンはそのことを既に予見している。

自らの力を過信するような真似はせず、ならばどうするべきかをアーゴヨンは冷静に考え始めた。

……それは、やはり……。

……あの絶体絶命のピンチに瀕していようとも諦めずに自分に立ち向かってきたあの小さな勇者に、倣うべきであろう。

「……ブォァァァァァッ!!」

諦めなければ奇跡が起きると言うのなら……。

……アーゴヨンもまた、それを信じてみることにした。

故にアーゴヨンは……不屈の精神で立ち上がってみせる!
 ▼ 347 mTQB7XkZdk 18/09/21 02:14:19 ID:sYgce3g6 [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
――効果抜群の《りゅうのはどう》を真正面から浴びせられたアーゴヨンは、そのデカ過ぎるダメージにも関わらず、堅忍不抜の心意気で起き上がってみせた。

「アーゴヨン……よぉしっ!」

ミヅキはそんなアーゴヨンの真摯な姿勢を目の当たりにして、自らの戦意もまた引き締め直すのであった。

これから始まるのは、アーゴヨンの……反逆劇である。

「ブォォォォォォォッ!!」

それは咆哮という名の鐘により……始まりを告げる!

「ブォォォォォァァァァァァッ!!」

アーゴヨンの反骨心は、やがて紫色の光線となりてリザードンに襲いかかる。

必殺《りゅうのはどう》が、全方の大気を焦がしながら突き進んでいく。

「グォォゥ」

しかしこれを軽い一瞥のみで見切ったリザードン。

素早くかつ短い動作で《りゅうのはどう》の射程圏外に出て、これを難なくやり過ごす。

「グォォォァァァッ!」

そして今度はリザードンが、しっぺ返しの《かえんほうしゃ》を吐き出した。

灼熱たる炎天下で放たれしその火炎は、一直線にアーゴヨンに向かっていく。
 ▼ 348 mTQB7XkZdk 18/09/21 02:16:11 ID:sYgce3g6 [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告

「ブォォォ……ッ!」

今も【まひ】に苛まれるアーゴヨンだが、彼はその痛みを……耐えた。

そして真上に飛翔し、《かえんほうしゃ》を回避してみせる。

【まひ】の効果で【すばやさ】が落ちているにも関わらず、今のアーゴヨンの動きは“俊敏”と呼んでも問題無いくらい速い。

火事場の馬鹿力というヤツだろうか。

逆境に陥れば陥る程、秘めたる力はその片鱗を覗かせていく。

戦いの中で続けられるは、限り無き成長……。

……成し遂げるべきは、限界への反抗。

一線の向こう側への片道切符を、ぎゅっと握り締めながら……。

「……グォォォォッ!」

……上空に舞うアーゴヨンに誘われるが如く、リザードンもまた飛翔して彼を追うのだった。

そして両者は、次から次へと互いの技を交互に披露していく。

《りゅうのはどう》、《かえんほうしゃ》、《ヘドロウェーブ》、《エアスラッシュ》……。

その一撃一撃が、受ければ致命傷となり得る超威力の大技。

そんなハイレベルな技の応酬が、彼らの闘志を更に空へと舞い上げる。

彼らの戦いの舞台は、ついに……雲までも突き抜けてしまった。
 ▼ 349 mTQB7XkZdk 18/09/21 02:16:39 ID:sYgce3g6 [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「グォォォォッ……」

「ブォォォォォゥッ……」

観客どころか、それぞれのトレーナーの指示すら届かない――天空の白き平原。

大空を飛べる者しか辿り着くことのできないこの境地で、二匹は今も火花を散らしている。

……ふと気づけば、アーゴヨンの【まひ】は跡形もなく消えていた。

ミヅキに心配をかけまいと、アーゴヨンがこの痛みに抗い続けた結果、アーゴヨンはこの激痛を……克服してみせたのだ。

「グォォォォッ」

そのリザードンの笑みは、アーゴヨンのその根性への称賛によるものか、それとも、自らの戦意の高ぶりによるものか。

どちらにせよ、リザードンはこの戦いを心から楽しんでいた。

この胸を熱くときめかせるワクワクは、既に終点を通り過ぎている。

焦熱の想いは、やがて煉獄の力を生み出す。

リザードンは次の一撃を以て、アーゴヨンの健闘に終止符を打とうとしていた。

レッドの声がリザードンに届かない中、しかしこの状況でレッドが選ぶであろう技をリザードンは正確に感じ取る。

そして……その技を放った!
 ▼ 350 mTQB7XkZdk 18/09/21 02:17:01 ID:sYgce3g6 [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……グォォォォォォォォッ!!」

己の中に眠る“壁”を、その内なる業火で破壊し、焼き尽くす。

その燃え盛りし臨界点を超えるのは、己自身。

自分にとって最大の敵は、自分。

その敵に挑み、戦い続けた達人の炎使いのみが習得できる、極限火炎奥義。

全てを灰燼に帰せ……不朽の猛火よ。

その技の名は……《オーバーヒート》!
 ▼ 351 mTQB7XkZdk 18/09/21 21:17:20 ID:Mf8AMn/Y [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
――戦いの舞台は、大空へ。

熾烈な空中戦の果てに、完全なる一騎打ち状態となったリザードンとアーゴヨン。

リザードンはこの勝負の白星を掴み取る為、自身の最強の威力を誇る大技――《オーバーヒート》をぶちかましたのであった!

「……ブォォォォォゥッ!!」

対するアーゴヨンもまた、ミヅキが今も出しているであろう指示を直感により確認する。

研ぎ澄まされた五感が受け取ったその指示は、《ヘドロウェーブ》であった。

が、このままではリザードンの《オーバーヒート》を超えることはできない……アーゴヨンはそう確信していた。

ならばどうするのか……。

……それは。

「……ブォォォォォァァァァァァッ!!」

……あのミヅキの想像すらも、自分が超えるしかない。

《ヘドロウェーブ》最大出力……それを更に超越して解き放つ。

不可能を可能にしなければ、この戦いを制することはできない。

今見えているその壁を……壊さなくては。

何も得ることは……叶わないのだから。
 ▼ 352 mTQB7XkZdk 18/09/21 21:17:47 ID:Mf8AMn/Y [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ブォォォォォォォォッ!!」

ギリギリまで……《ヘドロウェーブ》のエネルギーを溜め……。

……そしてその莫大なる毒の力を……一点に凝縮させ……。

……圧縮し……一つの巨大な弾丸へと……変える!

この世界の“穢れ”を全て捩じ込み、その塊を、敵を滅殺する蠹毒の大砲へと昇華させたのがこの技。

これはもう《ヘドロウェーブ》ではない。

それすらも遥かに超えた威力の、〔どく〕タイプ最強奥義――《ダストシュート》!

「……ブォォォッ」

……だがこの時、アーゴヨンは思った。

仮にこれを普通に真正面から撃ったとして、あの飛竜の一撃に打ち勝てるのかと。

もし結果が否であった場合、自分は主に何を報いることができるのかと。

では、真に主に報いることのできる道は何だろうか。

そう考えた時、アーゴヨンはその《わるだくみ》により鍛えられた頭脳を一瞬の内に使い果たして、答えを導き出した。

それは……確実にこれをリザードンに当てる手段でもあった。

そしてアーゴヨンは、今……その答えを現実のモノにすべく、証明を開始する。
 ▼ 353 mTQB7XkZdk 18/09/21 21:18:20 ID:Mf8AMn/Y [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
先程のあの電気ネズミとの戦いでは、自分の意思を汲んでもらった。

今度は……自分がミヅキに報いる番。

「……ブォォァァッ!」

瞬間、アーゴヨンは至極の毒弾――《ダストシュート》を、咆哮と共に腕を振り下ろして発射した……!

……だが、その弾は、あたかも野球のカーブボールの如く曲折した軌道を描き、飛んでいく。

「……グォォァァァァァァッ!!」

対するリザードンもここで《オーバーヒート》を放ったが、その爆炎の行く手を《ダストシュート》は阻まず寧ろ絶妙に避け、リザードンのもとへと向かっていく。

「グォォォォッ……!」

この地点でリザードンは、アーゴヨンの思惑を察知した。

これは、自分とは真っ向勝負をせず、アーゴヨン自身が既に散る覚悟で、自分に大打撃を与えるというアーゴヨンの捨て身の手段。

この時リザードンは、単純な技の威力ではアーゴヨンよりも優っているという絶対の自信を持っていたが……知能に関しては完敗を喫したと、心からアーゴヨンを認めるのであった。

だが、リザードンはもう止まれない。

ならばせめて、この一撃でアーゴヨンを確実に葬り去る。

自分の全てを賭けて……!
 ▼ 354 mTQB7XkZdk 18/09/21 21:18:54 ID:Mf8AMn/Y [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「グォォォォァァァァァァァッ!!」

リザードンは、自らが放つ《オーバーヒート》の火力を、極限を超えて引き出す!

その真紅の炎に自らもまた飲まれ、だけどその中でも“勝利”という唯一無二の目的地を見失わないように、懸命に力を振り絞る。

リザードンは叫び、その煉獄火炎に 活火激発せし己が弾をありったけ注ぎ込んだ……!

……そして。

「――ブォォォゥゥゥゥゥァァァァッ!!?」

アーゴヨンはついに、このリザードンの渾身の奥義を……モロに受けたのであった……!

「ブォォォォォッ!!?」

刹那、アーゴヨンの周囲を包み込むは、炎威の渦。

巻き込んだ者を一瞬にして黒く焦がし染める地獄の業火は、アーゴヨンの体を容赦なく漆黒に塗り潰していく。

火花の散る音とアーゴヨンの阿鼻叫喚が入り混じり、その光景はまさに純然たる“惨状”そのもの。

やがて全ての炎が天へと消え、黒煙がそこに立ち込め始めた時、アーゴヨンは……。

「……ブォォォ……」

……目を回して気絶し、その瀕死状態のまま……雲の中へと堕ち、リザードンの視界から姿を消すのであった。

「グガォゥ……」

そしてリザードンは、ついにあの強敵――アーゴヨンを撃破することに成功した訳なのだが……。

……次の瞬間には既に、アーゴヨンが散り際に放った《ダストシュート》が……迫っていたのだった。
 ▼ 355 mTQB7XkZdk 18/09/21 21:19:14 ID:Mf8AMn/Y [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
リザードンはこの瞬間になって初めて思う。

アレが当たる前にアーゴヨンが倒れるのを確認できたのは、自分にとってかなり運の良いことであると。

そのおかげでリザードンは……。

「……グォォォォッ……!」

……覚悟を決めることが、出来たのだから。

アーゴヨンが倒れてからコンマ数秒のインターバルを経て、《ダストシュート》は……リザードンに直撃する。

「――グガァァォォァァァァアアアッ!!?」

刹那、リザードンを襲ったのは、激甚たる猛毒の狂飆。

惨たらしい悲鳴をあげながら、リザードンは紫色の悪夢へと誘われる。

全身を苛烈にまさぐる劇毒の侵蝕。

リザードンは頭を抱えながら、苛まれし肉体と精神にひたすら痛み悶え続けた。

「グォォォッ!?」

「グガオッ!?」

「グワァァォォォッ!!?」

やがてリザードンは翼をはためかせることも忘れ、徐々に下降を始める。

そして、この瞬間を以て、ようやくこの天空の戦場から……彼の姿が消えたのであった……。
 ▼ 356 mTQB7XkZdk 18/09/22 23:17:39 ID:Ck8g3at2 [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
***

――白雲の上の世界でリザードンとアーゴヨンが繰り広げた戦いは、ついに終局を迎えた。

結果はリザードンの勝ちではあったが……彼もまた、アーゴヨンの《ダストシュート》を受けたことによって、決して無視できない深手を負わされてしまう。

猛毒に侵されたリザードンは、身悶えしながら落ちていき、やがてその天空の戦場を後にしたのであった……。

……その頃、地上にいるトレーナー達はここで、ようやく空から堕ちてきたアーゴヨンの姿を確認する。

「アーゴヨン……!」

長らくアーゴヨンの姿を見ていなかったミヅキは、その瞬間はひとまず安心したものの……。

……彼が黒煙を吐きながら既に倒されているという事実を認識した時、その表情はすぐに焦りへと変わった。

「アーゴヨンッ!?」

このままだとアーゴヨンは地に叩きつけられる。

ミヅキはすぐさま落下地点辺りまで足を進め、アーゴヨンのモンスターボールを構えた。

そして、アーゴヨンの地上との距離が差し迫ったタイミングで、ミヅキはモンスターボールのボタンを押す。

するとボールから、赤い光線がアーゴヨンに放たれ、彼を捕捉する。

アーゴヨンはその光に誘導されるように、体を収縮されながら無事にボールに戻されたのであった。

審判がアーゴヨンの戦闘不能を認める前ではあったが、明らかに彼が試合を続行できる状態では無かったのは、誰の目から見ても明白であった。
 ▼ 357 mTQB7XkZdk 18/09/22 23:21:06 ID:Ck8g3at2 [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「アーゴヨン、戦闘不能!」

故に審判は、この地点でアーゴヨンに戦闘不能の処置を下すのであった。

審判のその判断にミヅキは、一切異論を出さず、コクリと頷いて定位置に戻る。

一方でレッドはこの時、リザードンの“完全勝利”を確信していた。

「流石リザードンだ……あのアーゴヨンをあそこまで叩きのめしてしまうとは」

地上にいた彼らからすれば、空の上で起こっていた激闘が如何なる内容のモノであったかなど知る由もない。

だが、相手よりも先に落ちてきたのがアーゴヨンで、しかもそのアーゴヨンがズタボロの状態で戦闘不能になっていたとなれば、勝負はリザードンの圧勝だったとレッドが迷いなく信じ込んでしまうのも無理はないだろう。

しかし、レッドのその歓喜もやがて、数秒後には……“ぬか喜び”であったことが判明する。

何故ならこれは、リザードンの“完全なる勝利”ではなく……。

……“難戦の果てにようやくもぎ取った勝利”……だったのだから。

そう。

リザードンは、“完全”ではなく、寧ろ山のように積み上がった“代償”を背負って、強敵――アーゴヨンを撃墜させたのである。

そして彼のトレーナーであるレッドは、その時の彼の奮闘ぶりを知らない。

それ故だろう。

次の瞬間、リザードンがようやく空から降りてきた時には……。
 ▼ 358 mTQB7XkZdk 18/09/22 23:21:39 ID:Ck8g3at2 [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「リザー……」


「……ドッ……!?」


……レッドの心は、まるでハンマーで叩かれたガラスのように……粉々に打ち砕かれたのであった。 

「グガォォォォォ……!」

おどろおどろしい紫色の瘴気に蝕まれながら、リザードンはゆっくりと地上に下降してくる。

レッドは、リザードンのその異常な有り様に、動揺のあまり思わず目を奪われた。

その炎獣の悲鳴は、ただ聞いているだけでも、その苦しみが他者に移りそうなくらいに酷く生々しい。

それでもリザードンは何とか露命を繋いでいるようであるが、その形相は、まさに生き地獄の真っ只中といったところ。

体のそこかしこに血管が浮かび上がっている中、リザードンはひたすらに頭を抱えながら、その辛苦を極めし思いを叫んでいた。

「リザードンッ!」

「おい……リザードンッってば!」

「グォァァァァァァァッ!!」

レッドはリザードンに、懸命に声かけを行ったものの、その声はリザードンの慟哭によって悉くかき消されてしまう。

リザードンが【どく】の状態異常にかかってしまっていて、それを原因として苦しんでいることは、レッドの目から見ても一目瞭然であった。
 ▼ 359 mTQB7XkZdk 18/09/22 23:22:01 ID:Ck8g3at2 [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
そして、リザードンが現在進行形であげているこの喚声は、今のところ静まる目処が立たない。

レッドはこの時、自分の先程までの浮かれ様を心の底から恥じた。

もしこの場に《あなをほる》を覚えたディグダが居たなら、きっとレッドは即刻ディグダに命じて穴を掘らせ、そこに逃げ込んでいることだろう。

それくらい、レッドの心は今、自らへの失望の念によって充満している。

「……グォォ……ォォォ……!」

一方でリザードンは、何とかレッドの心配を振り払うべく、不撓不屈たる闘志を今ここに復活させようとして、ひた向きな思いでこの侵蝕に真っ向から立ち向かっていた。

そしてそんな自分との悪戦苦闘の末、リザードンは、自身の頭を押さえていたその手をやっとの思いでどかすことに成功し、目線も再び前方に向けてみせる。

未だに毒泡が彼の周りでブクブクしてはいるものの、体勢を整え直すことにはどうにか成功したのであった。

「……無理はしないでくれよ、リザードン」

「グォォ……ッ!」

……“無理”なら、とっくの前からし続けてしまっている。

だがリザードンは、哭声をあげ続ける自らの体に尚も負担をかけることを止めない。

彼はまだ、ここで果てるわけにはいかないのだから……。
 ▼ 360 mTQB7XkZdk 18/09/24 21:56:44 ID:sycUNEhA [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
――【どく】の状態異常に心身ともに苛まれるリザードン。

それでも何とか、この塗炭の苦しみにも彼は持ち堪えてみせるが……果たして、それもどこまで続くか。


「……私のアーゴヨンを倒しちゃうなんて、本当にあなたのポケモン達は強いんだねぇ」

かたやミヅキはというと、そのリザードンの凄まじいまでの胆力と力量に、悔しさを通り越して感心の言葉を漏らしてしまう。

彼女は一つため息を吐き、まずは二人のここまでの健闘を心から讃えた。

そして即時に、その表情を再び真剣なモノへと変える。

「……私も、この子が最後の砦だよ」

「ここまで追い詰められたのは……いつ以来だったかなぁ」

アローラ地方の初代チャンピオンは、この一瞬という時の間に、最後に自分が窮地に追いやられたワンシーンを記憶の底から引っ張り出そうとしてみる。

だが……その記憶すらも残念ながら霞んでしまうくらいに、この戦いは過去最高の壮絶具合に達しているのだ。

今のミヅキは、まさに剣が峰に立たされし者。

後ろを向けば絶海が広がる、孤島の断崖が如し光景が、今にも浮かび上がってくるようである。

「……“最後まで、ゼンリョク”」

「それが私のポリシー!」

「そして、最後に決めてくれるのはやっぱり“この子”だと、私は信じているよ!」

背水の陣にて、ミヅキはその手にボールを握りしめた。

彼女に残されたチャンスも、残すところ一度きり。

彼女はこのポケモンに……己がゼンリョクを受け継がせるのであった。

「もう一度、私に力を貸して……!」

「……ジュナイパー!」

――それは、再び戦場に舞い降りし影の翼。

彼が出現する時、標的は既に彼の瞳の中に閉じ込められている。

その冷徹な双眸で、彼は全ての獲物に正確無比の矢を放つ。

例え、その者が何キロ……何十キロと離れていようとも……。

……必ず、《ジュナイパー》は射抜いてみせる。

「……ジュナァ……」

再臨せしジュナイパーは、ピカチュウとの戦いによって既に手負いの身である。

しかしながら、今のレッドのリザードンよりは、ボールの中で休んでいた分、いくらかマシなコンディションとなっている。

〔くさ〕タイプのジュナイパーは〔ほのお〕タイプのリザードンに対し不利を取るが、それでも〔ゴースト〕タイプの技で攻めれば、ジュナイパーがリザードンに勝つ見込みは十分にある。

故にリザードンは、タイプ相性で有利であるジュナイパーが相手でも決して油断はできない。
 ▼ 361 mTQB7XkZdk 18/09/24 21:57:04 ID:sycUNEhA [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
ここが最後にして、最大の山場なのだ……!

「……ゴー君」

……と、ここでミヅキは、今もカルムのリザードンと戦うオーダイルに指示を出しているゴールドに対し、声をかける。

ゴールドは、出来る限り目の前の戦いから意識を反らさないように、取り敢えず一瞥のみでそれに反応した。

「今から私が、ジュナイパーに出来る限りの《Zパワー》を注ぎ込むから……」

「……少しの間だけ、ゴー君のオーダイル君に“時間稼ぎ”をして貰ってくれないかな?」

……ミヅキが出したその案は、このバトルを終結へと向かわせるだけの効力を秘めていた。

《Zパワー》は、《Zワザ》を出す為のエネルギー。

それを最大限にまで溜めて放つ為に、ミヅキはゴールドのオーダイルに時間を稼いでもらうよう、ゴールドに願った。

一方で、自分のポケモンが囮にされるということに、ほんの少しだけ表情に難色を示したゴールドであったが、一瞬の悩みの末、彼女のその妙案に……コクリと、首を縦に動かしたのであった。

「……オーダイル」

「俺達で……少しの間だけ、時間を稼ごう」

「オダッ!」

ゴールドのその頼みに、囮になる本人であるにも関わらず、オーダイルは即答で頷いた。

それがゴールドの決断であるならば、オーダイルは“今更”躊躇ったりしないのである。

このオーダイルは、ゴールドと共に今日まで数え切れない程の苦難を乗り越え、その度に無茶な作戦だって幾度となくやってのけた。

故に、自らが囮になることくらい、それが自分達が勝利する為に成功させるべき作戦だというならば、なんて事はない。

戦うポケモンにとって、“敗北”以上の屈辱など無いのだから……!

「……ありがとう」

「オダァッ!」

オーダイルはゴールドの礼を、今は弾き返す。

本当の礼は……自分達が勝利するその時まで、とっておくべきだろうから。

ゴールドはそんな彼の流儀に思わず苦笑するも、『だよな』と同調する。

こうして、お互いの意志は固まった。

後は……自分達が成すべきことに、ゼンリョクであたるのみ!
 ▼ 362 mTQB7XkZdk 18/09/26 17:53:18 ID:Jdz69wVI [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
***

……一方でカロス陣営のカルムは、アローラ代表の不穏な動きにいち早く気がついていた。

(……ミヅキのあの構え……まさか)

カルムは、自分が操りしリザードンに今も指示を出しながら、同時にミヅキが何やら見覚えのあるポージングを取っているのを確認する。

両手を前方に突き出した状態でクロスさせる、あのポーズ……アレは、アローラ代表対カントー・ジョウトの戦いでもミヅキが披露していたハズだと、カルムの中に眠りし記憶が必死に訴えかけた。

そう……アレは、《Zワザ》のポーズだ。

彼女が交差させた両手の、その交点に光が集まっている。

恐らく、今のところは《Zワザ》を撃つためのエネルギーを溜めているといったところだろう。

カルムは自らの推測をそう結論づけ、それを妨害するべきだと判断した。

《Zワザ》は、放たれれば一撃必殺の超奥義となりて自分達に襲いかかる。

そうなる前に、エネルギー充填を阻止しなければ、自分達の敗色はかなり濃厚になってしまうだろう。

よってカルムはここで、自分のリザードンに標的の変更を命じる。

「リザードン、ジュナイパーに《ニトロチャージ》!」

「リザァッ!」

オーダイルと交戦中だったリザードンの狙いは、急転換する。

目標をオーダイルからジュナイパーに改め、リザードンは疾風怒濤の炎の突進――《ニトロチャージ》で、ジュナイパーに向かって爆走した。

……だが。

「させませんよ! オーダイル、《アクアジェット》で追いつけ!」

「オダァァッ!」

そのカルムの計略は、オーダイルの水流を纏った全力疾走――《アクアジェット》によって阻まれてしまう。

リザードンの攻撃がジュナイパーに直撃するあと一歩のところで、オーダイルはリザードンのその一撃を相殺することに成功した。

水が炎に当てられたことで、水蒸気が大気にて離散する。

この時カルムは、『ゴールドはミヅキを守った』と認識した。

《Zワザ》の構えに入るミヅキと、それを守ろうととするゴールド……カルムは、二人の思惑を読み取る。

ゴールドのオーダイルが囮になることで、ミヅキがジュナイパーに《Zワザ》を撃つためのエネルギーを注ぎ込める時間を稼いでいるのだろう。

だが、彼女が《Zワザ》のポーズに移ってから既に数秒経っているにも関わらず、《Zワザ》は未だに発動していないところを見ると……彼女は、ギリギリまで、オーダイルの時間稼ぎが続く限り、力をジュナイパーに溜めさせようとしているのだろうか。

だとしたら、中々のチャレンジャーだと言える訳だが……逆に言うと、その一撃でこのバトルに決着を着ける気で居るのだろう。

もし、《Zワザ》が撃たれた場合、カルム達になす術はあるのか?

カルムは考える。
 ▼ 363 mTQB7XkZdk 18/09/26 17:53:41 ID:Jdz69wVI [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
今、レッドのリザードンは【どく】状態で、既に満身創痍。

そしてカルムのリザードンも、彼程では無いとはいえ手負いの身だ。

《Zワザ》の直撃を受ければ、“瀕死”は免れることができない。

では避けるか?

……いや、《Zワザ》の射程や弾速は未知数だ。

いざ放たれた時に、それが避けられる程遅いか、あるいは狭いかなんてことは判断のしようがなく、端から回避する算段で行った場合、もしもその《Zワザ》が避けられるような攻撃では無かった時、二匹のリザードンは何も出来ずにまとめてぶちのめされることとなる。

仮にそうなった場合……カルム達は、最後まで全力を出しきれないままやられることとなる。

そんなのは絶対に嫌だと、カルムはその未来を忌避した。

故に、避けるという選択肢は無い。

……ならば。

対抗するしか……手は残されていない。

しかし、普通の技では勿論《Zワザ》を打ち負かすことなど到底不可能。

あと、カルム達は地上にいた為知らないが、レッドのリザードンは天空でアーゴヨンに放った《オーバーヒート》の副作用で【とくこう】のランクが二段階下がってしまっている。

唯一頼りに出来るのは、カルムのリザードンだが……彼だけで《Zワザ》を突破出来るかと言われたら、微妙なところだろう。

以上の理由より、どう考えても、カロス陣営に《Zワザ》に勝る技を持っているポケモンなど存在しないことが分かる。

……尤も。

それはあくまで、“単騎で《Zワザ》に挑んだ場合”……の話であるが。

「……オーダイルが倒れれば、どの道奴は撃ってくる」

「逆に言うと、その直前が……迎撃態勢を整えることのできる最後のチャンスだ」

……カルムの熟考は、やがて完結へと至った。

「レッド!」

そして彼は、レッドに声をかける。

マフラーに首を包むその少年は、カロスチャンピオンの呼びかけに答えた。

彼が自身の頭脳を捻り倒した末に導き出したその方程式は、果たして“勝利”という名の解を得ることが出来るのであろうか。
 ▼ 364 ミツルギ@するどいキバ 18/09/27 18:55:14 ID:FFskGhHQ NGネーム登録 NGID登録 報告
支援!
 ▼ 365 ニャット@ちりょくのハネ 18/09/28 16:23:22 ID:/cocIq.. NGネーム登録 NGID登録 報告
支援っ!
 ▼ 366 mTQB7XkZdk 18/09/29 00:01:35 ID:ajvQDHgE [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
***

――この勝負に勝つ為に、何が出来るか……それをカルムは考え抜き、そしてとある“作戦”を編み出した。

「カルム……?」

「レッド。よく聞け」

「今から俺が言う作戦には、お前と、お前のリザードンの力が必要不可欠だ」

勝者のみが手にすることを許されるその杯に、カルムは少しでも近づくべく、レッドに協力を要請する。

「ミヅキは今、《Zワザ》を撃とうとしている」

「《Zワザ》に勝つ為には、俺とお前の“Wリザードン”の力を一つに合わせなければならない」

「《Zワザ》が“個の力”を極めているのならば……俺達は、そう」


「――“合体技”で、攻めていこう」


「そうすれば……勝てる見込みが、少しはあるっ!」

……全ての技の中で最強の威力を誇る《Zワザ》と互角に渡り合う為には、二匹の力を合わせた連携攻撃――“合体技”が有効であると、カルムは理論を展開する。

黒竜の使い手が持ちかけたその提案に、レッドは……一筋の希望を見出した。

それならば……イケるかもしれないと。

「俺達はまず、オーダイルを片付ける」

「幸い、お前のリザードンの【ひでり】のお陰で、俺のリザードンは有利だ」

「絶対に奴に勝ってみせる。だからお前は、リザードンに……出来る限りのパワーを溜めさせてくれ」

……レッドは、カルムのその言葉を……信じた。

「分かった」

「次の一撃に、俺のリザードンは全てを賭ける」

そして、そう誓った。

「頼りにしてるぜ……レッド、リザードン!」

こうして、カントーとカロスの二大王者は、今ここに“勝利への盟約”を結んだのであった。

そしてカルムは、再びゴールドの方へと目線を向ける。

その表情に浮かべるのは、何らかの確信を得た笑み。

次の瞬間、カルムは、『自分達が勝つ』という絶対的な自信を掲げながら、ジョウト地方を踏破せし少年に対して牽制の言葉をぶつけた。

「決着……着けようぜ」

眼光炯々として、蒼炎の猛獣使いはゴールドの心までもその視線で穿つ。

対するゴールドもまた、この波打つように暴れている己の鼓動に自ら今一度喝を入れ、乱れた拍を整える。

そして、こう言い返してみせた。
 ▼ 367 mTQB7XkZdk 18/09/29 00:03:21 ID:ajvQDHgE [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「最後に勝つのは……僕たちですよ」

……メガリザードンX対オーダイル……この戦いは、今、最終局面へと突入する!

「リザードン、《ドラゴンクロー》で衝撃波を起こせ!」

「リザッ!」

カルムの指示に、蒼炎を宿せし暗黒の獣は呼応する。

彼は右の掌に竜のパワーを集約させ、紫色に輝くその爪を勢い良く振り下ろした。

するとその爪が描いた軌道が、鋭い空気の刃と化して、飛ぶ。

リザードンは俊敏に動くことによって、三連続でこの攻撃を繰り出すことに成功した。

合計三発……竜の力を得た真空波が、オーダイルに続々と殺到する。

「かわすんだ!」

「オダァ!」

対するゴールドの指示は、回避。

オーダイルは、《りゅうのまい》によって上昇した【すばやさ】を活かし、これらをかわしていく。

……だが。

「……オダァッ!?」

全ては避けきれなかった。

衝撃波の三発目が水獣の胸部を見事に捉え、命中する。

その波状の剣は、オーダイルの肉体に直撃した瞬間、離散し、消滅する。

残るのは、それが肉体に刻みこんだ痛烈なる切り傷だけ。

「オダッ……ァァッ!」

獰猛な生物として恐れられている彼でも、この深傷には、文字通り、胸が張り裂けるような激痛を禁じ得なかった。

「大丈夫か!?」

「オッ……オダァ!」

ゴールドの呼びかけに応え、膝をつきながらも懸命に辛抱するオーダイル。

例え肉体に耐え難き苦痛が降りかかろうとも、精神を強靭にすれば、まだ戦える。

オーダイルはそう自分に言い聞かせ、敢然と立ち上がってみせた。

「よし……反撃だ!」

「《アクアジェット》!」

「オダァィルッ!」

ゴールドはそのオーダイルの不屈の信念を頼りに、水の超速突進――《アクアジェット》を指令した。
 ▼ 368 mTQB7XkZdk 18/09/29 00:03:36 ID:ajvQDHgE [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
オーダイルの、水流を味方につけた一撃が、リザードンに猛烈な勢いで強襲する。

その速度は、並の肉眼で捉えられるようなモノではなく、まさに一瞬に等しい突撃。

リザードンはこれに反応することがまるで出来ないまま、直撃を受けた。

……だが。

「……リザァ」

……次の瞬間、リザードンが浮かべたのは、苦悶ではなく余裕の微笑み。

この《アクアジェット》は、リザードンにとって大した痛手とはならなかった。

レッドのリザードンの特性――【ひでり】の効果で、現在、フィールドは【はれ】の天候となっている。

この時、〔ほのお〕の威力は高まるが、〔みず〕の威力は低下してしまう。

その影響により、オーダイルの《アクアジェット》が与えるダメージは大幅に軽減されてしまったのだ。
 ▼ 369 ギルダー@だっしゅつボタン 18/09/29 10:32:59 ID:DPvoRN4w [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
やったぜ。
 ▼ 370 ンカラス@サイコシード 18/09/29 15:43:15 ID:B1DAFApg NGネーム登録 NGID登録 報告
しえーん
 ▼ 371 ロピウス@モーモーミルク 18/09/29 22:18:17 ID:DPvoRN4w [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
次の更新で決着つきそうか?
楽しみ
 ▼ 372 mTQB7XkZdk 18/09/30 00:23:44 ID:wkcoBjOo [1/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
***

――燦々と照る【はれ】の天候は、オーダイルにとって強過ぎる向かい風となり、彼の力を大きく弱体化させる。

それまではカルムのリザードンを幾度となく怯ませてきた《アクアジェット》も、この炎天下では最早、子供が撃つ水鉄砲同然。

その上、体力の消耗も著しく早く、時間が経過するにつれて、オーダイルの機動力はみるみるうちに低下していった。

そんなオーダイルに対して、逆に【はれ】の恩恵を存分に受けているリザードンは、まさに悠然たるその姿を得意気にオーダイルにこれみよがしに見せつけている。

「リザァ〜?」

「オダァ……!」

その炎竜の鼻をへし折るべく、オーダイルは何度も《アクアジェット》を繰り出しては、それらを全部当てていったのだが……。

「リザァ……」

……リザードンは、その全てを軽く受け流していた。

先程からリザードンは、オーダイルの攻撃がヒットする度に、まるで彼を挑発するかのような響きの鳴き声を出しており、オーダイルの戦意はそれに応じて昂ぶると同時に、荒ぶり始めてもいる。

攻撃が通用しないイライラが積もることで、リザードンへの行き過ぎた対抗意識が、彼の脳内を侵食し、彼を盲目にしていく。

やがて、その感情によって精神が完全に支配された時。

「――オダァァァァッ!」

……その者が行う攻撃は、単調になる。

「まずい……!」

実はゴールドは、さっきからずっとオーダイルに一時撤退することを呼びかけていた。

だがその声は、オーダイルには届かなかった。

そして今、オーダイルはこれ以上ない程の大きな隙を見せている。

天候による蒸し暑さと、リザードンの巧みな挑発……この二つが合わされば、怒りが沸点を超えるのに然程時間は要さない。

そのことを、カルムのリザードンは理解した上で、カルムの具体的な指示が無くともそうなるように仕向けた。

この時ゴールドは、改めて確信するのである。

あのリザードンは、戦闘のプロだと。

常に変わる戦局を一瞬にして見抜き、戦いの駆け引きを優位に進めていく術を熟知していると。

一体、どんな育成の仕方をしたらあんな嫌なヤツになるんだろう。

ゴールドは一度でも良いから、カルムにそう尋ねたい気持ちでいっぱいだった。

だが今はゴールドとて、そのカルムの育成技術に脱帽している場合ではない。

恐らく今のオーダイルにはもう、自分の声は届かないだろう。

一発あのリザードンから何らかの技を貰わない限りは、オーダイルは暴走を止めない。

なら、ゴールドの思考はこの地点で『次の場面をどうするか』というテーマに移行するべきだろう。
 ▼ 373 mTQB7XkZdk 18/09/30 00:24:48 ID:wkcoBjOo [2/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
取り敢えずゴールドは、この局面は静観することを選んだ。

「オダァァァァイルッ!!」

そして、激昂に心を囚われし猛獣――オーダイルは、リザードンに次なる《アクアジェット》を仕掛ける。

……この瞬間だった。

「……リザァ」

焦げた鱗の竜が、その微笑みを更に歪ませたのは。

「オダッ……!?」

リザードンのその企みの破顔に、オーダイルはここでようやく自らが掘り進めていた“墓穴”に気づき、瞠目しながらも冷静な思考回路を取り戻す。

だが、時すでに遅し。

《アクアジェット》によって加速し切ったその体は、もうブレーキが利かない。

そしてそのまま、前方で待ち構えていたリザードンの策略に……嵌ってしまうのであった。

「リザァ!」

リザードンはまず、突進してくるオーダイルを、僅かに体を横にずらすことでギリギリ回避し、

「リザザァッ!」

リザードンの真横をオーダイルが通り過ぎる直前で、彼はオーダイルの尻尾を……掴んだ!

「オダッ!?」

尾を拘束されたことで、オーダイルの《アクアジェット》の勢いは急激に抑制される。

彼が纏っていた水流のオーラは、やがて遅くなっていった《アクアジェット》の時速と共に消え去っていく。

とうとう、オーダイルの突進は完全に失速してしまった。

そして、身動きの取れなくなった彼を、リザードンはその腕を存分に振るって……回す!

「リザァァァァァァァッ!」

「オダァァィィッ!?」

ぐるぐる、回して回して……回しまくる!

「オーダイル……ッ!」

「よし、良いぞリザードン!」

このリザードンが魅せるパフォーマンス――“ジャイアントスイング”に、カルムは熱狂し、反対にゴールドは動揺の色を隠せない。

黒竜が旋回の速度を増す毎に、彼ら二匹の周囲に荒々しい竜巻がその勢力を強めていく。

塵芥を舞い上げながら、竜王が巻き起こす激烈なる颶風はやがて極限の速度にまで達するのであった。

そして。

「……リザァァッ!!」

遠心力を最大限にまで高めきったリザードンは、ハンマー投げの如く、オーダイルを彼方まで投げ飛ばす!
 ▼ 374 mTQB7XkZdk 18/09/30 00:26:10 ID:wkcoBjOo [3/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「オダァァァァァァーーッ!!」

凄まじいスピードで、オーダイルは背面の壁に吸い寄せられる。

一瞬の内にその距離は縮まり、やがてオーダイルの体は壁に激突。

刹那、襲い来る衝撃が彼の肉体を好き放題に軋ませ、痛覚は何のお構いも無しに吠え叫ぶ。

「オダァッ……ァァァッ!」

直面する窮地を、オーダイルは倒れ込みながらも必死に威嚇して追い払おうとするが、それは依然としてオーダイルのもとに迫っている。

【はれ】の天候が、想像以上に彼の戦闘を妨げていた。

逆に、カルムのリザードンにとってアレは追い風である為、双方の戦力の差は最早歴然となっている。

はじめは互角だったのに、今となってはオーダイルが完全に劣勢だ。

このままだと、確実に負けてしまう……。

……そうオーダイルが、己の敗北を危惧し始めた、その時だった。

「……オダッ?」

オーダイルはふと、徐々に日差しが弱くなっていく空を不思議に思って、上方を見やる。

すると……【はれ】の天候が、徐々に元に戻っていくのが確認できた。

メガリザードンYが作り出した偽りの太陽は、唐突な点滅を皮切りにその光度を立ちどころに弱めていく。

炎天下は今、その栄光の幕を閉じた。

やがて天には、茜色の夕焼けが広がっていく。

あの太陽の影響で、先程までは異常なまでの日差しが地上を照らし尽くしていたが、それが消えた今、かの天穹が映すは真実の景色。

時刻はとうに夕暮れ。

逢魔が時に相応しい、黄昏の優しくも淡い光が、戦場を包み込む。

「……まだ諦めるなってことさ。オーダイル」

「……オダァッ!」

差した光明に希望を見出したゴールドとオーダイル。

「あちゃぁ、もうそんなに時間経ってたか……まぁ、それでもやることは変わらねえぜ」

「まだまだ全力全開でいけるよな? リザードン!」

「リザァァッ!」

一方でカルムとリザードンは、自分達の試合を優位に進めてくれていた味方を失ったことで若干名残り惜しそうにはしたものの、動転することなく、変わらない闘志を保ち続けている。

「さぁて……そろそろ、決めるとすっか!」

「ええ……お互い、時は満ちました」

カロス地方最強の実力を有するキングと、カントー並びにジョウトで偉業を達成したヒーローが、雌雄を決する時がきた。

両者共に力と叡智の限りを尽くしたこの決闘に、今、ピリオドが打たれる。
 ▼ 375 mTQB7XkZdk 18/09/30 00:26:53 ID:wkcoBjOo [4/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
この戦いを制した者が……それぞれのパートナーと最後の連携をすることができる。

その権利を掴み取ることが出来れば、それはまたとない好機となる。

ここだけは、絶対に譲ることが出来ないのだ。

勝者は唯一無二の存在。

その座を争ってきた二人の想いは、この瞬間にてその全てが次に放つ技につぎ込まれる。

何もかもを擲った、究極の大勝負……いよいよ、開幕!

「リザードン……」

「……《フレアドライブ》ッ!」

――それは、活火激発の暴走列車。

蒼炎のとばりに包まれた黒き飛竜は、自らの肉体を犠牲にして、筆舌に尽くし難い程に自身の覇気を大きく且つ激しいモノへと変えていく。

揺らめく糸遊が魅せるは、この世界で尚も第一線を駆け抜ける――絢爛たる暁闇の輝き。

彼は誇示する。

自分自身の実力の、他の追随を許さない所以を。

そして彼は信じる。

そんな自分をここまで使いこなしてみせる――卓越した采配能力を持つ己が主を。

この二つが、X――“クロス”する時。

炎の超絶奥義――《フレアドライブ》が、世界最高峰のこの舞台で、最も強い存在感を遺憾なく発揮しながら爆走する。

「オーダイル……《アクアブレイク》ッ!」

――それは、轟々と流れし奔流の如き水の力をその身に纏って放つ技。

響き渡りしせせらぎと共に、川の流れそのものになって突進攻撃を仕掛ける。

その水圧は凄まじく、まるで、流された者の命までも無慈悲に洗い流してしまう巨大な瀑布のよう。

鰐は己が有する力を洗いざらい出し切って、この最後の一撃――《アクアブレイク》を炸裂させるのであった。

そして、両者が誇る最強の技は……ついに激突する。

「リザァァァァッ!」

「オダァァァァァッ!」

両者が織りなす技の色合いは、どちらも蒼。

しかしその性質は対極。

全てを燃やし尽くす灼熱の炎と、全てを飲み込む激浪の雫。

【ひでり】の効力が無くなった今、タイプ相性的にはオーダイルの《アクアブレイク》に分がある。

だが、単純な技の威力で勝っているのはリザードンの《フレアドライブ》だ。
 ▼ 376 mTQB7XkZdk 18/09/30 00:28:36 ID:wkcoBjOo [5/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
この戦いは、今のところ五分五分の競り合い。

火が水を蒸発させ、水が火を鎮める……その絶え間なき応酬が、二匹の衝突をより鮮やかなものへとしていく。

「リザァァッ……ァァァッ!」

「オダァッ……オダッ! オダァッ!」

意気軒昂たる両者の極限の力比べ。

この命懸けの格闘に、二匹はかつて無いほどの鼓動の高鳴りを感じる。

天命に選ばれたかのように巡り逢い、ここまで激闘を繰り返してきた双方の間には、言葉では言い表せない不思議さを持った“友情”のようなモノが既に芽生えていた。

相手がより強大な力をつける度に、リザードンも、オーダイルも、喜んでいた。

この戦いを、心から楽しんでいた。

これぞポケモンバトルだと、胸を張って思えた。

「オダァァァァァイルッ!」

「リザッ……!?」

ここで若干、リザードンが圧されてしまう。

後方に少し追いやられ、踏ん張る足が床を陥没させる。

リザードンはこの時、オーダイルが放つ気迫に一瞬だけだが狼狽させられた。

自分が想像だにしない、他者が発揮する本気の――その強さを見せつけられた瞬間に得る感覚は、全身に身震いを起こさせる。

だが、同時に、その予想以上の本気に立ち会った者は……きっと、心のどこかでその事を嬉しくも思うのだ。

こんなにもコイツは、真剣に自分と向き合ってくれていたのか……と。

……そして。

その気持ちを、自分もまた同じくしていた場合は。

その興奮は……より強いモノとなる!

「……リザアァァァッ!」

『面白い』……この胸が躍る感覚を、リザードンはしかと自らの記憶に焼き付けた。

生半可なタトゥーなんかよりも、ずっと深く……。

「リザァァォォォォォゥゥゥッ!!」

……より熱く。

その身が焦げてしまうくらいに。

黒き“X”の烙印を、未来永劫消えないように……刻み込む!

「オダッ……!?」

「リザァァァァーーーッ!!」
 ▼ 377 mTQB7XkZdk 18/09/30 00:32:21 ID:wkcoBjOo [6/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
――灯滅せんとして、光を増す。

消えかかった炎は、今一度進化を超えて、閃光を解き放つ。

逆境の数だけ、戦いに身を置く者はより強くなれる。

その成長は……“無限大”。

リザードンの熱き思いの丈は、今、《フレアドライブ》に新たな力を与える……!

「リッザァァァァァァァァッ!!」

……灼熱が蒼の極みに達した時、その炎に龍が宿る。

その瞬間こそ、鱗に宿された怒りに触れし勇士に訪れし“裁きの刻”。

自我も計算も捨てて開放されるその力は、“七つの死に至る罪”の内が一つ――“憤怒”のそれである。

「……やれやれ」

「この戦いでは、理性を保っていられる《フレアドライブ》の方が実用的だと思ったから、それは忘れさせたんだがな」

「結局……そうなっちまうか」

忘却の海に沈みし激情の欠片よ、今ここに集結し、一振りの剣となりて敵を殲滅せよ。

この蒼き不滅の刃に与えられし名は――《げきりん》!

「ォ……」


「……オダァァァァァァァァァァァッ!!?」


……オーダイルは、その黒竜がぶちかました奥義の前に、最早対抗する手段を持っていなかった。

渾身の力で放った《アクアブレイク》だったが、これは見事に撃ち抜かれてしまう。

そして彼は、ゴールドの鼓膜さえ貫かんばかりの悲鳴をあげると同時に……。

「オ……ダ……」

吹き飛ばされ……墜落

「……ダ……」

程なくして……力尽きる。

「……オーダイル、戦闘不能!」

審判のその声は、遠慮も容赦も無く響き渡る。

一瞬、静まり返る会場。

だがその静寂は……すぐに打ち破られることとなる。

「……ォォォォォォオオオッ!!」

観客達が、歓声を、これでもかと言うくらいけたたましく轟かせた。

だが、そんな拍手喝采の嵐のさなか、その台風の目とも言える立ち位置にいるゴールドは、オーダイルのその地にひれ伏している姿を見て、立ち尽くすことしかできなかった……。
 ▼ 378 ィ@セシナのみ 18/09/30 20:06:26 ID:mV56oodc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 379 ミロル@ぎんのはっぱ 18/10/01 16:55:02 ID:405Af6.E NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援!
 ▼ 380 mTQB7XkZdk 18/10/02 00:20:28 ID:BFw6EiIw [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……オーダイル……」

とうとう自分達は、負けてしまった。

あのカロスチャンピオンに、届かなかった。

ふと気づいてみると、ゴールドの額や背中には、びっしりと滝のような汗が流れ、そして染み込んでいた。

彼ら二匹の戦いが繰り広げられていた時に、自然と湧き上がっていたその熱狂の雫は、今、少年の熱くなっていた身体を急激に冷やしこむ。

震える目、揺れる視界。

戻らない時に想いを馳せそうになった自らの心に、しかし彼はブレーキをかけた。

バラバラになった心の欠片は、簡単には戻りそうにも無いが……今は、心の修復よりもまず先にするべきことがある。

それは……。


「……よくやったな」

「やっぱお前は、僕の一番の相棒だ」

「……オダッ」


……ここまでゼンリョクで戦い抜いてくれた、自分の盟友への……“感謝”。

こうして、そのゴールドの想いを無事に受け取ったオーダイルは、悔いを残すことなく、暫し意識を彼方に飛ばすことができる。

やがて訪れた睡魔に、オーダイルは抗う事なく……身を委ねたのであった。
 ▼ 381 mTQB7XkZdk 18/10/02 00:21:04 ID:BFw6EiIw [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
***

「……ありがとっ。ゴー君、オーダイル」

「おかげさまで……準備は万端だよ」

……カルムのリザードンが、見事にゴールドのオーダイルを撃破するのと同時に、ついにミヅキが、《Zワザ》の発動準備を完了させた。

彼女の《Zリング》がきらびやかに瞬きながら、ジュナイパーに《Zパワー》を余すことなく注ぎ終え、エネルギー充填率はマックスに到達。

そしてそのZの波動は、今、彼女の“舞い”によって……解き放たれる!

「私達のゼンリョクは……潰えないっ!」

「貫いて……」


「……《シ ャ ド ー ア ロ ー ズ ス ト ラ イ ク》ッ!!」


「……ジュナァ!」

最大規模のZパワーを抱えたジュナイパーが、技の発動と同時に天高く飛翔する。

やがて、そこから会場全体を見下ろせるくらいの高さに到達した彼は、次に翼を限界まで広げた。

すると、彼の周囲の虚空から、禍々しい黒色の矢が続々と出現していく。

そしてそれらの矢は、列をなしてジュナイパーを中心に回転する。

その回転の速度は急速に上昇していき、それに応じてジュナイパーを包む暗黒のオーラも増大していった。

「狙いは、カルムさんのリザードン君に定めたよ」

「彼さえ倒せれば、後はもう、レッドさんのボロボロのリザードン君だけだからね」

「……それでね、この技は超高威力なうえに、絶対に避けることのできない必中の攻撃なの」

「だから、逃げようとしても無駄なんだからねっ?」

ミヅキは、カロス代表の二人に、このタイミングでそう忠告する。

もしも、二人が始めからこれを避ける前提で動いていた場合、今頃は彼女のその言葉に慌てふためいていたことだろう。

やはり、あの時のカルムの判断は実に賢明だったのだ。

彼は、予測不可能な《Zワザ》の真価を甘い憶測で断定せず、堅実に迎撃の準備をすることを選択した。

彼が怠ることなく敷いておいたその伏線は、今、最後の希望となってこの窮地に光を差し込ませる。

「“逃げる道”なんてモンは、俺の方から断ち切ってやったさ」

「それに……君達のゼンリョクに打ち勝ってこそ、真の“最強”ってヤツだろう?」

超えること――それ即ち、“最強”への道。
 ▼ 382 mTQB7XkZdk 18/10/02 00:21:26 ID:BFw6EiIw [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……なるほど。あなた達は初めから私のジュナイパーと勝負する気だったんだねっ」

「その作戦に踏み切ったその勇気は、本当に凄いと思うよ」

「一発でその答えに行き着くなんて、よっぽど勘が働かないと無いと出来っこないことだから」

その道を最後まで駆け抜ける為には、実力や才能は勿論のこと、戦いの中で一瞬の直感を掴み取ることのできるセンスも必要になってくる。

カルムは、それをバッチリ持っていた。

ミヅキはそのことを改めて確認すると、決勝戦の相手が彼らであったことを、心から天に感謝する。

自分達の最高の舞台で、こんなに凄い人達と巡り逢えたこの奇跡……。

「でも、結局……」

ミヅキは、この二度と訪れない夢の瞬間で……。


「……勝つのは、私達なんだよね」


……“完璧なる勝利”を、収めたいのである!


「さぁ……行って!ジュナイパー!」

「ジュナッ!!」

ジュナイパーは、意を決して、カルムのリザードンに照準を定める。

幽魂の羽衣を纏って、自らの身体さえも矢へと変えて。


「……ジュナァァァァァァァッ!」


――彼女達の絆の力が、暗夜のZと共鳴する時、それは一条の黒き矢となる。

ジュナイパーのみが会得、そして使用することのできる、彼固有の《Zワザ》。

宵闇に光りし流星――《シャドーアローズストライク》。

常世と幽世を繋ぐきざはしは、今、その深緑の狙撃士の眼下に現出する。

彼はそれを辿りながら急降下し、蒼き獄炎の竜に向かって、疾風怒濤が如し全速力を惜しみなく発揮し尽くす。

その彗星に託された願いは……“栄光”!
 ▼ 383 グラージ@サイコシード 18/10/02 19:01:31 ID:4pJIJxOA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
燃える…燃えるぞっ!
 ▼ 384 クリン@ルームキー 18/10/03 22:23:42 ID:xSB6jGbw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
とうとう完結か…
 ▼ 385 mTQB7XkZdk 18/10/04 01:10:04 ID:pGwM5c0U [1/32] NGネーム登録 NGID登録 報告
「リザードンッ!」

「リザァァッ!」

それに対抗するは、未だ逆鱗に触れられた怒りに囚われ、忘我の境地に精神を預けし暴竜――リザードン。

蒼炎を操る竜戦士は、鳴り止むことのない激昂の咆哮を轟かせながら、眼前に迫りしZワザ――《シャドーアローズストライク》に、真っ向から立ち向かった。

目には目を、突進には突進を。

黒と蒼の双閃は、正面衝突によって互いの底力を競い合う。

「ジュナァァァァァッ!!」

「リザァァッ……!?」

だが、その鍔迫り合いは互角では無い。

気迫も、威力も、何もかもが別の次元にある。

《Zワザ》は、一度撃てばその戦いでは二度と使うことの出来ない、まさに必殺の一撃。

儚いからこそ、その短き命は何よりも強い輝きを放つ。

いくらリザードンの《げきりん》が強力といえど、強さの単位が規格外な《シャドーアローズストライク》が相手では、あまりに分が悪い。

このままでは……リザードンは負ける。

だが……この瞬間こそが、カルムが最も待ち望んでいた絶好の好機。

切り札を解禁するなら……今しかない!

「……今だ」


「レッド、リザードンッ!」


この時の為だけにカルムが温存しておいた、カロス代表最後のカード。

この策は、戦況をまるごとひっくり返す起死回生の力を得るか。

「グォォォ……ッ!」

リザードンは、毒竜が残した置き土産に未だに苛まれながらも、この地点でかなり膨大な量のエネルギーを溜めていた。

だがその分、身体にかかる負担もまた大きい。

それこそ、“過剰”と呼ぶに相応しい程の甚大さだ。

恐らく、この一撃がリザードンがこの試合で撃てる最後の技となるであろう。

その彼の決死の思いを間近で見ていたレッドは、そのことを既に悟っていた。

今からリザードンが放つ技は、彼の技の中で最強の威力を誇る技――《オーバーヒート》。

レッドの目の前で燃え滾っているその焔は、前述の通り、十分過ぎるほどの火力を有している。

だがそれはあくまで、“一般的観点”から見た場合での話だ。
 ▼ 386 mTQB7XkZdk 18/10/04 01:10:48 ID:pGwM5c0U [2/32] NGネーム登録 NGID登録 報告
これを、“レッドのリザードン”が放つ《オーバーヒート》という基準で見ると、その焔は……いささか、心許ない。

レッドはここで、リザードンの【とくこう】ランクが低減してしまっている事実を見抜く。

アーゴヨンと繰り広げたあの天空の戦いで、リザードンは一度《オーバーヒート》を使ってしまい、そのせいで、リザードンは満足に力を発揮することが出来ないのだと。

……尤も、それが分かったところで……。


「リザードン」

「お前なら、やれる」


……今更、何かを諦める訳でも無いのだが。

「……グォォォォォォッ!!」

能力が弱体化していようが、関係ない。

いつだって全身全霊を以て技を繰り出している以上、それがもたらす結果に不満を抱くこともない。

自分達が戦う理由は色々あって、どれが一番かと言われても絞れないが……この状況でなら、一つだけ特筆して書き記すことができる。

それは……『勝てるから』だ。

そう。

今この瞬間、リザードンに《オーバーヒート》を指示したのだって、それをすればリザードンが勝てるから、レッドはそうしたのだ。

『リザードンならやれる』……レッドのその言葉には、気休めやお世辞といった戯けた意味合いは全くもって含まれていない。

彼が常に胸に抱き続けている、真摯過ぎる真っ直ぐな信念……それしか、無い。

故にレッドは……もう一度、言う。

「……やれるさ、リザードン」

「お前なら!!」


「グォォォォォォッ!!」


そう信じて止まない二人がかけるラストスパート。

思うがままに、橙色で描く。

戦場という名のキャンパスに、世紀の名画が如く奮戦の景色を。

この世界の歴史に……名を刻め。

《オーバーヒート》……炸裂!
 ▼ 387 mTQB7XkZdk 18/10/04 01:11:22 ID:pGwM5c0U [3/32] NGネーム登録 NGID登録 報告
***

(……やっぱり貴方達は凄いわね。お隣さん)

(私達がどんなに努力しても、どんなに工夫しても越えることのできなかった……最強のチャンピオン)

(私はそんな貴方が憎らしくもあったけど……それ以上に、大好きだった)

……黒竜の使い手にして、この地方の頂点に君臨する王者――カルムに、その想いを胸中にて零すのは、彼のかつての恋人だった少女――セレナ。

(今となっては終わってしまった関係だけど……やっぱり、貴方達が活躍する所は見ていて飽きないわ)

(見れば見る程、もう一度貴方に惹かれていくの……)

……その想いに、嘘はつけない。

(……もう、私に、貴方の横にいる資格はないけど)

(でも……この瞬間だけは……)

……見届けさせて欲しい。

そう願う彼女の眼差しを阻む者は、誰一人としていない。

ふと流れたその涙を、咎める者もいやしない。

視界が潤んでも、彼の最高の晴れ舞台はこの上なく彼女の記憶に焼き付けられる。

蒼きその輝きによって……。

「……カルム」

「頑張って……!」
 ▼ 388 mTQB7XkZdk 18/10/04 01:12:00 ID:pGwM5c0U [4/32] NGネーム登録 NGID登録 報告
***

(……ミヅキさん)

(僕は貴女と出逢ってから、何かと貴女に振り回されてきましたね)

……この勝負に単騎で挑むアローラ初代チャンピオン――ミヅキの姿を隣で見つめながらそう心の声で話しているのは、カントーとジョウト地方の伝説にその名を残せし者――ゴールド。

(初めは、そんな貴女が少しだけ苦手だった)

(自分の感情を貴女の掌の上で転がされているような気がして……何となく、癪だった)

(でも……そんな日々を過ごしていく内に、それも悪くないかななんて、思えたりして)

(……ちょっと、変ですよね)

“ゴー君”なんて気の抜けたあだ名で呼ばれ、変に可愛がられ、からかわれながら彼女と共にここまで上り詰めてきたゴールド。

ミヅキと一緒に歩んできたこの数日間……ゴールドはそれを今振り返ってみて、ふと、“とある気持ち”が芽生えていることに気づいた。

(今では貴女にあだ名で呼ばれる度に、その、ドキドキしてしまうというか)

赤面と、早まる鼓動。

脈打つ度に、その心はより躍る。

ミヅキを想う毎に。

ミヅキを視界に入れる度に。

ゴールドは、まるで自分が自分じゃなくなってしまうような感覚を、無理矢理彼女に覚えさせられた。

この不可思議極まる心悸の亢進を、ゴールドは無意識の内にこう結論付ける。

そう、これは……。

「……好き、なのかな」

「貴女のことが」

……“恋”。

ゴールド自身は、その言葉をミヅキが聞こえないくらい小声で紡いだつもり……だったのだが。

ミヅキの口角はこの時、ほんの僅かにだが、確かに……吊り上がったのだった。
 ▼ 389 mTQB7XkZdk 18/10/04 01:12:32 ID:pGwM5c0U [5/32] NGネーム登録 NGID登録 報告
***

(……レッド)

(やっぱりアナタは、いつだってアタシにとって憧れの存在だよ)

(とてつもなく純粋で、どこまでもポケモンのことが大好きで)

(それが時々子供っぽくも見えたけど……そんなアナタも愛おしくて)

(……アナタに告白された時は、本当に嬉しかったな)

……その恋歌を、レッドに向けて織り成すのは、カロス地方のジムリーダーの一人にして、メガシンカの継承者の少女――コルニ。

「レッド……!」

彼女は、少年の名を呼ぶ……ただそれだけで、胸が苦しくなるほど熱くなる。

自分自身でも御せない、心拍の早まり。

こんなにドキドキして、息も荒くなって……だけど、この恋慕は止められないし、止めたくない。

ずっと、永遠に続いてほしい。

例え冷める時が来るとしても、その度に息を吹き返して欲しい。

そう、何度でも。

レッドが諦めない限り。

コルニも……とことん諦めない。

「レッドぉ……っ!」

彼との思い出を、ふと振り返る。

自身のトレーナーとしての腕を高める為の武者修行に出た彼女が、その旅路の途中で巡り逢った、運命の人――レッド。

彼と共に時針を刻み、彼と共に日録を記してきたあの日々。

これから先も、それが途絶えてしまわないように……。

……コルニは、叫ぶ。

「……レッドーーッ!」


「大好きだよぉーーーっ!!」


誰よりも、大声で。

何者よりも、涙ぐんで。

一線を画したその恋情で。

彼への溢れ出る愛を……ありったけ。
 ▼ 390 mTQB7XkZdk 18/10/04 01:12:58 ID:pGwM5c0U [6/32] NGネーム登録 NGID登録 報告
***

(……やっぱ、お前ら反則だわ)

(あん時は俺が、いつだってお前の先をいっていたハズなのによぉ)

(カントーチャンピオンの座も、ジムリーダーの仕事も、メガシンカも……俺が先回りして、お前よりも早く、全部手に入れてきた)

(だが、彼女と、世界最強の地位は……お前に先を越されちまったな)

……嫉妬のようなその言葉の数々を吐き捨てるのは、元カントー地方チャンピオンにして、現トキワシティジムリーダー――グリーン。

(お前の今の“目”……俺は誰よりも知っているぜ)

(俺がお前に今度こそ勝てそうだと思った時……俺は、お前のその“目”に何度も覆されてきた)

(今思い出しても腹が立ってくるぜ……チートかってんだよッ!)

グリーンは、かつてのレッドとの戦いにおいて、何度もその“目”を前にして逆転負けを喫してきた。

彼はその苦い惜敗の思い出を回想したことでむかっ腹が立ち、そのレッドの勝負強さを、ゲームにおける反則行為――“チート”に例えて非難する。

……だが、だからこそグリーンは“確信”していた。

誰よりもその屈辱を味わってきた彼からしてみれば、この試合がどのような結果に終わるのかは既に一目瞭然のこと。

自分自身――超絶強いこの俺様――でさえ、この局面ではどうにもできなかったのだ。

ミヅキとて、これに抗うことはできまい。

グリーンは、自分の力に絶対の自信がある。

故に、その力を幾度となく上回ってきたレッドの実力に関しては、自分の名に賭けて太鼓判を押すことができる。

そしてグリーンは、このバトルの結末を悟るのだった。

(喜べ、レッド)

(この勝負、お前の……)


(……“勝ち確”だ)


……レッドの最強のライバルは、誇りを胸にこの試合を見届ける。

最早、信じるとかそういう次元ではない。

彼にとって、レッドの勝利は……神が定めた“確定的未来”なのである。

これが、レッドと共に切磋琢磨してきた者が最後に行き着いた……“真理”であった。
 ▼ 391 mTQB7XkZdk 18/10/04 01:13:44 ID:pGwM5c0U [7/32] NGネーム登録 NGID登録 報告
***

――願いは、それぞれのトレーナーのもとに。

茜の空より霧雨の如く降りかかる幾千の恐怖――《シャドーアローズストライク》と、王者の君臨せし地より反旗を翻すべく飛び上がった竜王の奮迅――《げきりん》は、依然として殺伐激越とした轟音で戦場を支配しながら、衝突による嵐を巻き起こしていた。

「リザァァァァァァッ!!」

「ジュナァァァーーッ!!」

矢が風を裂く音。

怒りが大気を割る音。

交錯せしその響を、しかし彼らが放つ雄叫びはそれらを圧倒的に凌駕して、人知を超えた激熱のビートを刻み、人々の記憶にこの一瞬という時を焼き付ける。

その焼印は、一生剥がれ落ちることはない。

全てが霞む程に、ポケモン達は……咲き誇ってみせる。

そして、その一度きりの晴れ舞台をより鮮やかに彩るのは、彼ら――トレーナーの仕事だ!

「……リザードン」

「あと少しで……“世界”に辿り着けるぞ」

「どうする?」

……《オーバーヒート》が撃たれる寸前、レッドはそんなことをリザードンに聞いていた。

その彼の、少し妙な問いに、リザードンは咆哮で返す。

音の波動に、レッドの髪は強烈に吹かれ、揺れまくった。

その一陣の風は、まるでレッドに『何が言いたい?』と問い返しているかのよう。

レッドはそれを感じ取り、次に出す言葉にはより強く意味を宿らせた。

「……お前を見てるとさ」

「超えてしまいそうなんだ……その“世界”すら」

「そしてその先に一体何があるのか……お前と一緒に確かめたくて」

「……お前は、行きたいか?」


「“世界”の先にある……そのまた別の世界へ」


……レッドは、既に“最強”じゃ飽きたらなくなっていた。

返り咲くだけじゃ、もう。

故にレッドはリザードンを、試した。

自分が求めるその世界へ、足を踏み入れる勇気はあるか……と。

だが、その合否は分かりきっている。

レッドがリザードンと……いや、ヒトカゲと逢ったあの日から。
 ▼ 392 mTQB7XkZdk 18/10/04 01:14:22 ID:pGwM5c0U [8/32] NGネーム登録 NGID登録 報告
彼は……その少年と一緒に歩み、飛び、そして……超えてきたのだから。

「……グォォォゥッ!」

どこまでも行こう。

お前となら……やれる。

その双眸に、嘘偽りは……ない!

「……《オーバーヒート》じゃ、足りない」

「もっとやれる。そう、もっとだ」

「この一撃で……」


「……この世界に、別れを告げるぞ!」


少年と火竜……決して焦げ落ちることのないその絆は、次なる世界へ飛び込む。

この世界の手土産――“勝利”を、その手に握り締めて。

進化を超えた進化を……更に超えろ。

真価を発揮して……!

神火を……滾らせて!

「グォォォァァァァ……ッ!」

――橙色のその輝きは、やがてこの次元を揺るがす天地鳴動の爆発となる。

これによって抉り返され、引き裂かれた大陸より、悠久なる暗闇を覗かせし断崖が出現する。

そしてその深淵からは、まるで地球があげた悲鳴の如く、凄絶な地鳴りが解き放たれた。

天変地異が全てを蹂躙するさなか、一匹の竜は、称号を失ったその少年の生涯に、再び命の芽を吹かせる。

これから先、彼が過ごす日々が少しでも幸せなモノになるように。

竜――リザードンは。

少年――レッドに。

積み重ねてきた努力を、築き上げてきた絆を……惜しまず、躊躇わず、賭け、擲つ!

この瞬間こそ、リザードンの真骨頂。

……いや、それすらも超える。

そして、またそれも超える!

超えて、超えて……超えて!

やり過ぎ? でも構わない!

これが、リザードンの――
 ▼ 393 mTQB7XkZdk 18/10/04 01:15:02 ID:pGwM5c0U [9/32] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……グォォォォォァァァァァァーーーーーッ!!」


――“原点にして頂点”たる、“所以”!

「いけぇっ! リザードンッ!」


「《ブ ラ ス ト バ ー ン》ッ!!」


「グガォォォォォオオオオオーーッ!!」


熾せ。

無限に超越せしその希望を。

届け。

その竜が少年と共に生きてきた証は、今ここに……!

「……リザァァァッ!!」

カルムのリザードンは、受け取る。

そして、融合させる。

蜜柑色のそのオーラを、自身が纏う――絶海の如き蒼の闘気と。

一対の豪の竜が創造したその合体奥義に、名はいらない。

その業に求められたるは、敵を撃滅する力だけ。

「……リザォォォォォォォァァァアアアッ!!」

XとYの辿る運命は、交わりて、今、終焉の“Z”へと到達する。

……いや。

もう、彼らが止まれる場所は無い。

彼らは既に、ブレーキペダルを蹴破ってしまっているのだから。

故に、これから先は突き抜けるのみ。

その飛躍に、カンスト値は存在しない。

“Z”よりも、遥か壮大に煌めいて、世界を熱く照らせ。

“Mega Evolution”!

「――リザァァァァァァァッ!!」

「――グォォォゥゥゥゥゥッ!!」


“Wリザードン”の絶技は、閃となって迸る……!
 ▼ 394 mTQB7XkZdk 18/10/04 01:15:42 ID:pGwM5c0U [10/32] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……ジュナッ!?」

《ブラストバーン》の力を受け継いだ《げきりん》は、やがてジュナイパーの《シャドーアローズストライク》を押し返していく。

暗夜の霊力に満ちしその黒矢でも、その友情が成した神髄には劣勢を強いられた。

突き上げられる黒竜の拳。

彼の腕から、凄烈なるドラゴンのエナジーが焔となって溢れ出る。

その緋炎は龍の頭を形作り、大きな顎を存分に開いて、ジュナイパーを矢ごと覆い隠した。

「ジュナッ……ジュナァァァァッ!!」

ジュナイパーは、眼前に迫り来るその巨獣にも臆せず、懸命にZパワーを振り絞る。

だが、己が矢に宿されている漆黒のオーラをも、その化身竜が極限の爆光によってかき消していく様を目の当たりにしたことで、自然とジュナイパーは悟っていくのだった。

「……ジュナァァァァッ……!!」

……『勝てない』と。

「ジュナァァッ!!」

認めたくなかった。

自分は、アローラ最強のあの少女のポケモンなのだ。

誰にも負けるハズなんてない。

そんなこと、あっていいハズが無い。

だが……。

「……ジュナァ……!」

……認めざるを、えない。

勝つのは……この二匹だ。

「リザァァッ!!」

「グガォォゥッ!!」

YとXの咆声が轟く。

瞬間、緋と蒼の双焔を燦々と煌めかせし巨竜が、ついに、暗影の狙撃手を……。


「……ジュナァァァァァァァアアアッ!!?」


……食らった!

少女の彼を呼ぶ叫び声も、彼があげた凄惨なる悲鳴と響き渡る空間を同じくしては、虚しく、そして儚く弾け散ってしまう。

竜に狩られた狩人は、彼方に吹き飛び、その先にあった壁に衝突。

石膏が割れる音がゴシャッと鳴り轟く。
 ▼ 395 ガバシャーモ@かえんだま 18/10/04 01:16:16 ID:dlYUhB1k NGネーム登録 NGID登録 報告
は?
 ▼ 396 mTQB7XkZdk 18/10/04 01:16:23 ID:pGwM5c0U [11/32] NGネーム登録 NGID登録 報告
吹きすさぶ砂煙。

積み上がった瓦礫。

暫く静寂と共に時間が流れ、ジュナイパーが墜落した場所から砂煙が消え去ったが……彼がそこから再び姿を現すことは無かった。

少女――ミヅキは、彼を呼びながらそこまで駆け寄る。

そして、その細腕で瓦礫を必死に持ち上げようとするが……中々上がらない。

するとそこへ、彼女のパートナーであるゴールドが手を貸した。

ミヅキとゴールドは二人で瓦礫の山をどかしていき、ジュナイパーの姿を確認しようとする。

そして……。

……ようやく見つけ出せた彼は、しかし……目を回して気絶してしまっていた。

だが、ミヅキは悲しむでも悔しがるでもなく、ただ一つ、ふっと笑うのである。

それは、自らの敗北を認めて込み上がったモノなのか、それとも、ジュナイパーが生きていたことへの安堵の表れなのか。

ゴールドにはどちらがミヅキの真意なのかは分からなかったが……そんな彼女の微笑みを見た瞬間、彼もつられて笑みを浮かべるのであった。

「ジュナイパー、戦闘不能!」

「よって、優勝は……」


「カロス地方代表――カルム&レッド!!」


「ウォォォォォォォォォォッ!!」

審判の判決と、祝勝の想いを雄叫ぶ観客一同。

『凄い』、『素晴らしい』、『歴史に残る』……などなど、到底羅列し切れない程のありとあらゆる感嘆の声が、この祭典に熱狂の渦を巻き起こす。

各地方の傑物が集って、世界最強の座を争うこの激闘――《ポケモン・ワールド・トーナメント》。

その幕が今、閉じられる。

この時、勝者の栄冠を手にしていたのは……。

「……やったな、レッド」

「ああ……!」

……この、カロスの二大英雄――レッドとカルムであった!

「……リザァッ」

「グォォッ!」

赤きリザードンと黒きリザードンは、互いの健闘を認め合い、握り拳をぶつけ合って、この感無量の気分を共有する。

双方ともに、肉体は既に切り傷や打撲だらけという満身創痍の状態。

だが、勝利を握り締めるこの感情の昂ぶりは、いかに全身が苦痛を訴えていていようとも鳴り止む気配を見せない。

そして何より、彼ら自身がまだ、この感動を手放すことを心から惜しんでいる。
 ▼ 397 mTQB7XkZdk 18/10/04 01:16:41 ID:pGwM5c0U [12/32] NGネーム登録 NGID登録 報告
故に彼らは、凱歌の代わりに、叫んだ。

「……リザァァァァァァッ!!」

「グォォォォゥゥゥッ!!」

その一瞬で手に入れた喜びの……全てを、ありったけ。

「……負けたよ。レッドさん、カルムさん」

……そんな勝者たちのもとへ、惜しくも負けを喫してしまったミヅキとゴールドが、レッド達を改めて祝福する為に歩み寄る。

「本当に二人共、強かったよ〜」

「ていうか強過ぎですよ。あのミヅキさんのZワザを打ち負かすなんて……」

ミヅキもゴールドも、カロス代表コンビの真骨頂の前に倒れた者。

それ故に、その彼らの力を認めると同時に、少し妬いてもいたが。

「……PWT優勝、おめでとっ!」

「おめでとうございます。僕達の……負けです」

……その言葉だけは、しっかりと、その口で伝えたのであった。

「……ありがとう。ミヅキさん、ゴールド君」

「ピッカァ!」

「ふっ……お前達も中々だったぞ」

「……なんてな。ありがとさん」

その彼らの言葉を素直に受け取るレッドと、少し変化球で返してきたカルム。

それぞれ紡ぎ方こそ違ったが、その感謝する想いの形は同じであった。

そして……。

「リザッ!」

「グォォッ!」

二人の為に最後まで戦い抜いた、二匹の竜が、今……それぞれの主のもとへと帰還する。

この時、レッドとカルムの言葉は……。

「……おかえり」


「リザードン」


……見事に、重なったのだった。
 ▼ 398 mTQB7XkZdk 18/10/04 01:19:37 ID:pGwM5c0U [13/32] NGネーム登録 NGID登録 報告
次回投稿分で、最終回を迎えたいと思います。

出来れば、最後までお付き合いの方をしていただければ。

どうか、よろしくお願い致します。
 ▼ 399 ェルダー@ポケじゃらし 18/10/04 01:29:49 ID:IjpgQiT. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
おつ!
 ▼ 400 ワンテ@レッドカード 18/10/04 06:14:42 ID:QBVsTti2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援! 頑張ってね!
 ▼ 401 ルチャイ@キズぐすり 18/10/04 07:22:19 ID:CzJY61A2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
やっべぇ・・・
最後の支援!
 ▼ 402 mTQB7XkZdk 18/10/04 20:35:16 ID:pGwM5c0U [14/32] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
***

……PWTの試合が全てのプログラムを終え、カロス代表が頂点に立った表彰式も無事に閉幕。

そしてスタジアムを後にしたレッド達を、選手用出入り口前で最初に待ち受けていたのは、生中継であの試合を放映していたテレビ番組の報道陣であった。

レッドとカルムの優勝を祝う言葉を挨拶代わりに述べたのち、すぐさま彼らは、やれ試合後の感想や、やれ試合中に意識したことなど、多種多様の質問を、いっぺんに、ひっきりなしに、二人にぶつけまくる。

レッドはそんな報道陣の少し強引な質問攻めに、若干辟易していたが、カルムは手慣れた雰囲気でレッドの分も全て答えてみせた。

「俺達は、ポケモン達の力を引き出したに過ぎません」

「本当に頑張っていたのは、アイツらです。褒めるなら……ポケモン達にしてください」

ドヤ顔でキザな台詞を言い放つカルムに、レッドは『おおっ』と、憧憬の念をほんのり抱く。

確かにカルムの言う通りだと、レッドは思った。

自分達がこうして頂に上り詰めることができたのも、ポケモン達が奮闘を惜しまなかったお陰だ。

本当に称えられるべきは彼らのハズ……だと。

そしてレッドは、ボールに眠っている自分の仲間達を想って、瞬間……意を決する。

「……来てくれ、皆!」

レッドのその行動は、報道陣は勿論、あのカルムの度肝すらも……抜いてみせた。

「グォォッ!」

「フシャァッ!」

「ガメェッ!」

「メレッ!」

「ふぃぉ〜!」

レッドが、この大会でこれまで使ってきたポケモン達――リザードン、フシギバナ、カメックス、メレシー、エーフィ。

皆、レッドの手によってモンスターボールから解き放たれた!

「ピッカァ!」

もともとボールからは出ていて、レッドの方に乗っかっているピカチュウも、自分もいるぞとばかりに、元気一杯に鳴いてみせる。

レッドは言った。

このポケモン達全員が、一丸となって、優勝という一つの目標に向かって走り抜いたからこそ、今の自分達があるのだと。

そのことをより力強く伝える為に、レッドはいささかこんなあまりに熱意のあり過ぎるやり方を取ってしまったが……逆に一周回って、記者たちにはウケたのであった。

また、カルムもカルムで、レッドらしいなとは思いつつ、密かにレッドに脱帽させられていた。

こんなにもポケモンへの愛に溢れている奴は、そうはいない。

そんなコイツと共に戦い、そんなコイツの隣で、二人で夢見た景色をこうして眺めることが叶った。
 ▼ 403 mTQB7XkZdk 18/10/04 20:35:41 ID:pGwM5c0U [15/32] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
そしてそれは、とても光栄なことなのだ。

カルムは、嘘偽りない自らの心で、そう思う。

ここまで純粋に誰かを尊敬する想いに駆られたのも、いつぶりだろう。

……カルムはここで、一つの“願望”を胸に抱く。

コイツと――レッドと、もっと一緒に走れたら。

……と。

「……レッド」

「ここは俺に任せて、お前はコルニやグリーンの所へ行ってやれ」

そんなことを思いつつ、カルムはレッドのことを考えて、耳打ちでそう彼に伝える。

『良いの?』と問いかけるかのような彼の眼差しを受け、カルムは……ふっと笑ってみせた。

『任せろ』と。

……レッドはカルムに、頷きによって礼を言い、一旦ピカチュウ以外のポケモン達を全てボールの中に戻すと、刹那、報道陣の間を縫い、仲間達の待つ場所へと駆け抜ける。

彼の突然の脱走に、マスコミ達は慌てふためくも、そんな彼らの注目を、この男……カルムは、一瞬にして全て掻っ攫うのであった。

「いやぁ、すみません! 彼も多忙な身の上でして」

「でも俺は暇してるんで、“朝まで”……お付き合いしますよ?」

……そしてこの発言の後、カルムは後悔することになる。

『朝まで』なんて言ってしまったことを、心底……。

……とまあ、それはさておき。

レッドはそんなカルムの尊い犠牲のお陰で、ようやく会うことができる。

彼がトレーナーになってから、ずっとその腕を競い合っている、無二のライバルにして親友の――グリーンと。

彼がカロス地方に来てから、ずっと互いに惹かれ合い、恋い焦がれ、今もその愛しい感情を共に抱き続けている少女――コルニに。
 ▼ 404 mTQB7XkZdk 18/10/04 20:36:34 ID:pGwM5c0U [16/32] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
***

……石畳の上で足音を踏み鳴らし、風の如く人々の間を縫って、少年――レッドは、ミアレの街を駆け抜ける。

彼の視界の右手にある、スタジアムの一般用出入り口……そこを目指して。

自らの心が、仲間達と今すぐにでも会いたがっているのを、レッドは走りながら感じる。

この、どうしようもなく湧き上がってくる感情を、誰よりも早く……彼女達に伝えたい。

今、レッドの胸の内を熱くするのは、そんな、どこまでも純粋な願いばかりであった。

そしてついに、レッドの瞳に……その二人が映る。

「へっ、ようやく来やがったか」

「お帰りー! レッドぉっ!」

緑髪のツンツンヘアーを格好つけのように風に靡かせながら、腕を組んで柱に寄りかかっていた――グリーン。

金髪のトリプルテールをわさわさと揺らしながら、レッドの胸に全力で飛び込んで抱きつき、屈託なきその笑顔を彼に見せた――コルニ。

レッドは、このあり得ない程の幸せを噛み締めながら、彼らのもとで凱旋を果たしたのであった。

レッドが、コルニのその髪を優しく撫でる。

そんな時、ふと、彼の中で懐かしく思えたことがあった。

それは、レッドがコルニにプロポーズをしたあの夜のこと。

互いに恋慕を確かめ合った二人が交わした抱擁……その瞬間、レッドはコルニを思う存分抱き締め、彼の人生史上無二の喜びを見に染みて実感した。

あの時はそれがレッドにとって貴重だったからこそ、彼の感情は最大級の高ぶりを極めたが、今ではこうして当たり前のように、レッドは彼女と気兼ねなく触れ合えている。

そう思うとレッドは、しかし同時にこれに“慣れていくこと”への恐怖を覚えていった。

もしこのやり取りが日常的なモノになっていった場合、もしかしたら今感じている感動でさえ、自分にとって当然のことになって、次第に感謝すらしなくなってしまうのではないのだろうか……と。

するとレッドは途端に不安になってきて、やがてはコルニを抱くその腕が若干強く、そして……。

(……へっ!?)

……積極的になっていく。

(レ、レッド!? そんな、こんな人が大勢いる中でそれ以上は、さささ、流石に……っ!?)

(あ、あぁっ……ダメぇっ!?)

レッドは、コルニの腰に本格的に腕を回して、ぎゅうっと、これ以上ないくらいに彼女と体を密着させた。

当のコルニは、思考こそ流石にこれ以上は公衆の面前ではマズいと必死に彼女の理性に呼びかけていたものの……。
 ▼ 405 mTQB7XkZdk 18/10/04 20:37:02 ID:pGwM5c0U [17/32] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
(……レッドぉ……っ)

……最終的には、堕ちてしまった。

……しかし、そこへ。

彼らのその度を超えたイチャつきに、天誅が降りかかる。

「いい加減に……」


「……しろぉっ!」


グリーンの《からてチョップ》!

「いっ!?」

レッドの頭に効果は抜群だ!

「あっ……」

会心の一撃がグリーンの手によって叩き込まれたことで、コルニはようやくレッドと離れる。

彼女はあろうことかこの展開にガッカリしていたが、倫理上はこれで良かったことは言うまでもない。

「おいレッドてめー、この公衆の面前で何をおっ始めようとしてやがった?」

「ち、違うんだグリーン……気づいたらその、手が勝手に伸びていて」

「それで許されると思ってんならお前の脳内はキレイハナだなぁオイ。 いつからそんな思春期真っ盛りの男子になったんだ? えぇ?」

……結局レッドは、言い返す言葉も見つけられないまま、グリーンの説教を甘んじて受け入れる。

(……レッドも、結構男の子なんだ……)

そしてコルニは、レッドのそんな一面を目の当たりにして、驚きこそしたものの、それによって今までよりも更に胸をときめかせてしまっていた。

人より消極的だったハズのレッドが、自分をこんなにも求めてくれているなんて……と。

「……えへへ」

コルニは嬉しさのあまり、だらしなくも可愛げのある声を漏らす。

そんな彼女をふと見て、レッドもまた赤面しつつ、自身の中にある彼女への愛を再確認するのであった。

やがて日は、地平線に沈み、今度は月がその顔を覗かせる。

これから訪れる夜に向けて、彼ら三人は、今日という日の全てを……悔いを残すことなく語り尽くすと、決めた。
 ▼ 406 mTQB7XkZdk 18/10/04 20:37:31 ID:pGwM5c0U [18/32] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
***

……ミアレシティ、夜の章。

月明かりとビルの電灯、並びに街灯、それぞれ個性豊かな光が、各々の色合いで、世界最高峰の決戦の終結を迎えたこの街を彩る。

行き交う人々の談笑は、PWTで得た未だ冷めない熱狂を帯びていて、放つ言葉の一つ一つが爆発的な感動に溢れていた。

そんな喧騒で満たされた都市で、この二人――ミヅキとゴールド、そしてもう一匹――オーダイルは、それぞれ横に並んで歩みを進めていたのであった。

「ゴー君っ! 今夜は寝かせないよっ!」

「へっ?」

「朝まで私とお話ししたり、遊んだりしよう!」

「いや、流石にキツいですってそれは」

ミヅキのその無茶じみた提案に、ゴールドは引き笑いを浮かべながら拒否する意思を彼女に示す。

『えーっ!?』とぶうたれたミヅキ。しかしゴールドは『流石に朝までは……』と、夜通し遊び倒すことへの不安の念を零した。

どこかのカロスチャンピオンと違って、ゴールドは賢明な判断をする。しかし頬を膨らませまくるミヅキは、この程度では引き下がらなかった。

何故なら……。

「……私、明日になったらもう帰っちゃうんだよ……?」

……ゴールドとミヅキがいれるのは、今日が最後であるからだ。

「……あっ」

ゴールドはここでようやく、ミヅキの真意を悟る。

ミヅキは、残りの時間を、出来るだけ長くゴールドと過ごしたいのだ。

ここまで彼女の意思表示がストレートなモノだと、自惚れなど滅多にしない――悪く言ってみれば鈍感なゴールドですら、彼女の好意に気づいてしまう。

「ね? だから……」

「……私と一緒に、いて?」

上目遣い。

ゴールドには効果抜群。

これが一昔前のギャグマンガなら、ゴールドは今頃、ときめくあまり鼻血を出していた頃だろう。

だが勿論、実際は興奮したからといって鼻からブラッディ・ビームは出ない訳で。

しかし、この制御しようのない赤面だけは、恋愛漫画の如くカァァァッと湧き上がってきてしまう。

「オダァ」

オーダイルはそんなゴールドを見て、まるで息子の成長を見守る父親のような、そんなどこか達観した笑みを浮かべている。
 ▼ 407 mTQB7XkZdk 18/10/04 20:38:24 ID:pGwM5c0U [19/32] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
「……あ、ああ、朝までは……無しです」

「真面目かっ!」

それでもそこだけは譲らなかったゴールドに、ついにあのミヅキが珍しくツッコミに回った。

よく言えば真面目君だが、悪く言えばヘタレ野郎。

そう、ゴールドはこういったコトに関して言えばかなり奥手、かつ免疫なし。

致命的なまでに舞い上がりすぎてしまうのである。

「……好きって言ったじゃんっ」

それは、ミヅキの小声の抵抗。

「へっ?」

だが、それはゴールドには届かない。

「オダァ……」

『鈍感なヤツめ……』、そんなオーダイルの声が聞こえてくるかのよう。

「……何でもないっ」

「分かったよゴー君、じゃあ、日が変わるまでなら良い?」

……まあ、そんな真面目な所がゴールドの良いところでもある。

ミヅキは渋々自分にそう言い聞かせ、彼の意思を飲み込んだ。

「……分かりました!」

「夜通しとまでは行きませんが、今夜はミヅキさんに付き合いますよっ!」

ゴールドもそれならと、今宵はミヅキとの時間をとことん楽しみ尽くすと決めた。

「付き合っ……!」

ミヅキはそのワードに若干……いや、大いに敏感に反応しつつも。

「……う、うんっ!」

「ありがと、ゴー君っ!」

この少年――ゴールドに赤面させられながら……破顔、そして共に夜の街を駆けるのであった。

(……やっぱり物足りないよ、ゴー君)

(私はもっと、君と……)

……この後に続く言葉は、言うことなおろか、思うことすら中々できないけれど。

確かなる願望は、今、ミヅキの胸の中にある。

この気持ちに、嘘はつけない。
 ▼ 408 mTQB7XkZdk 18/10/04 20:38:47 ID:pGwM5c0U [20/32] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
「……ゴー君は明日から、カロス地方を旅して回るんだよね」

「はい! 僕も早くレッドさんやカルムさんみたく、メガシンカを手にいれたいんです!」


「……そっか」


……ミヅキはこの瞬間、決意した。

例えこの決断が、誰に迷惑をかけることになっても。

例え、“初代アローラチャンピオン”という肩書きを捨ててでも。

ミヅキは、そうすると誓った。

この時、月はそんな恋い焦がれる一人の少女を眼下に置いて、微笑むかのように燐光で彼女を照らす。

明日、彼女は……アローラには戻らない。
 ▼ 409 mTQB7XkZdk 18/10/04 20:39:34 ID:pGwM5c0U [21/32] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
***

……暁に煌めくミアレの街並み。

その朝は人々に営みの始まりを告げ、既に起きている者も、未だに寝ている者も、それぞれの時間が動き出す。

そして、彼ら――レッド、コルニ、グリーンの三人もまた、それぞれがそんな時の旅人の一員であった。

レッドとカルムが世界一のコンビとなりはや一夜が明け、いよいよ、レッド達はカロスでの旅を再開する。

ミアレシティはノースサイドストリート、14番道路へと続くゲート前にて、三人は並んで、ミアレシティを後にする前に今一度、この街の風景を見納めるべく振り返って顔を上げていた。

最強に返り咲くという夢は叶えたレッドだったが、それでもまだまだやりたいことは残っている。

一つ、カロス地方のポケモンジムを全て制覇すること。

二つ、チャンピオン――カルムに、今度こそ勝つこと。

三つ、そして……《Zワザ》という未知の次元を探求すること。

その他盛りだくさん。

レッドは世界に触れ、改めてシロガネ山に引きこもっていた頃の自分を回想し、恥じる。

世界はこんなにも広いのに、何故自分はあそこで終わろうとしてしまったのだろう……と。

かけがえのない仲間も、誰よりも大切なあの子も、思えばあの時、親友であるグリーンが自分の手を引っ張ってくれなければ……手に入らなかったモノだ。

レッドはこの時、グリーンの姿を一瞥して、『ありがとう』と胸中で零す。

自分をここまで連れ出してくれて……と。

……さあ、行こう。

レッドは二人に、そう呼びかける。

二人は頷き、呼応し、彼の後を追った……。

……と、その時。

彼らを呼び止める者が、一人。

「待たれよ、お三方」

妙に畏まった口調、しかしその声色は凄く記憶に新しい。

「……カルム!?」

レッドは彼の名を呼ぶ。

その青年――カルムは、まるでレッド達がここを通ることを看破していたかの如く、この場所で彼らを待ち伏せしていた。

ちなみに余談だが、その時、彼は滅茶苦茶眠たそうな顔を浮かべていた。

これは昨晩、レッドと別れた後、報道陣に願われるがままに一晩中密着特番の撮影に付き合わされていた為である。

『朝まで』などと記者たちに豪語したカルムに降りかかったのは、純然たる夜通しという名の悪夢なのであった。
 ▼ 410 mTQB7XkZdk 18/10/04 20:40:37 ID:pGwM5c0U [22/32] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
とまあそれはさておき、『どうしてここに』と、レッドは彼に説明を求める。

と言うのも彼らは、ここに来る前、カルムに一言挨拶してからミアレシティを発とうとして、彼が経営するメンズファッションのブティックへと足を運んだのだが、その時店員の青年から『店長は旅に出た』と、あまりに突然過ぎる通達を受けていた。

彼が旅に出る理由も、そして何故彼が自分達に何も伝えないまま旅立ってしまったのかも分からずじまいのまま、仕方なく街を出ようとしていたレッド達が、その直前で当の彼と鉢合わせしたのだから、そりゃあ驚くに決まっている。

しかしカルムは、そんな驚くレッド達の理解を待つことなく、自身の用件を単刀直入に述べるのであった。

「……PWTでレッドとコンビを組んでから、俺もレッドと旅をしたくなってな」

「どの道、新たなメンズファッションの着想を得る為に、どこかへ旅立とうと思っていたところだった」

「だからどうせなら、お前達と一緒に……行かせてくれないか?」

……それは、カルムからの急過ぎる願いであった。

レッドは未だ困惑したままで、勿論断る理由なんか無いけれど……聞きたいことが山程あり過ぎるせいで、すぐにこれに対する答えを出してしまって良いのか悩む。

……取り敢えず、ブティックの方には既に許可を貰っているのは分かる。

だが、彼はただのブティックの店長ではない。彼は――カルムは、カロス地方にたった一人しかいないチャンピオンなのだ。

挑戦者が来れば、それを迎えてやらねばならないだろう。その時はどうするのか。レッドはカルムに尋ねた。

「前に言ったハズだぜ? 困った時はズミさんの出番よ」

「この《ホロキャスター》さえあれぱ、いつでも挑戦者出現の通知をズミさんから受け取れるようになっている」

「その時だけは一時離脱するが、終わったらすぐに合流するから」

「な? これなら問題ないだろ」

カルムは、《ホロキャスター》――立体映像を受信して映し出すことのできる通信機――を取り出して、これを利用してチャンピオンとしての責務もちゃんと果たすと明言する。

このカルムの説明に対するレッドの率直な感想は、こうだった。

『自由すぎる』。

そして、彼の話を聞きながら、コルニもコルニで何となく理解した。

ズミがカルムに対し若干当たりを強くしている、その理由を。

ズミはズミなりに、こんなカルムの自由奔放ぶりに振り回されてきたのだ。

今なら分かる。

ズミが今まで、如何に彼によって苦悩を強いられてきたのかを。

と、そんなコルニのズミに対する同情の念など露知らず、カルムは熱意を込め、改めてレッドに願う。

『俺を仲間に入れてくれ』、と。

……最早、これ以上の迷いは不要だと、レッドは思った。

そしてレッドは次の瞬間、ふっと笑うと……。

「……勿論」

「歓迎するよ、カルム」

……カルムを、受け入れたのであった。
 ▼ 411 mTQB7XkZdk 18/10/04 20:41:29 ID:pGwM5c0U [23/32] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
「へっ、全く。随分と自分勝手なチャンピオン様だなぁ?」

「それ、グリーンが言えたことぉ?」

「ギクッ」

カルムが仲間に加入してそうそう、グリーンは棘のある台詞で彼を突っついたが……瞬間、その刃をコルニによってくじかれてしまう。

カルムが『何のことだ?』と首をかしげていると、コルニが事の顛末を、グリーンの必死の制止をガン無視して彼に教えた。

それは昨日行われた――グリーンとワタルの、こんな電話のやり取りであった。

*

『君はまだジムを放っておく気なのか!? グリーン君っ!』

『何度も言わせるなこのドラゴンオタクがぁ! 俺は当分あそこには戻らねーよ!』

『いつまでもそうやって子供のままでいられると思うなよ!? さあ、俺と一緒にカントーに戻るんだ!』

『実際、俺はまだ未成年だっつの! 人生は一度きりしかないんだからよ、俺様の好きにさせやがれってんだ!』

『この……分からず屋がっ!』

『分からず屋でケッコー! あばよ!』

『あ、待てグリーン君! おい、グリーン!』

*

ワタルは、最終的には呼び捨てでグリーンを説得しようとしたが、彼の言葉はいずれもグリーンには届かなかった。

やがてワタルはあの後、諦めてカントーに戻ったようだが……今頃グリーンの処置がどのようなモノになっているのかは、想像はつくがしたくない。

「ほお……つまりグリーンは、晴れて無職になった分際でこの俺を煽ったと?」

「まだ無職になったと決まった訳じゃねえし!」

「いやそれガチの解雇パターンだからな? 俺でさえ、同じような感じで迫ってきたズミにそんなことを言った覚えは無いぞ」

ズミに同じように迫られたことがあるのか……と、レッドは密かに思う。

全く、つくづく自由なトレーナー達だ。

周りの迷惑も省みず、自分がやりたいままに自分の人生を謳歌し尽くす。

だが、そんな彼らの心をここまで吸い寄せてしまっているのは、紛れもなくこの少年――レッドなのだ。

「……もう」

「仕方ないな、二人共」

「ホントにねっ」

呆れるあまり、半笑いを浮かべながらため息をつくレッド。

コルニもそんな彼に同調する。

……尤も、そんな彼女もまた、レッドに惹かれ、自分の受け持つジムを祖父に任せている身の上なので、グリーンやカルムと結局同類な訳なのだが。
 ▼ 412 mTQB7XkZdk 18/10/04 20:42:00 ID:pGwM5c0U [24/32] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
そんな少し残念なチャンピオン、並びにジムリーダー二人だが、彼ら以外にもう一人、自らの責務を他の誰かに託して、欲求のままに行動する不届き者がいる。

その人は時を同じくして、レッド一行と同様に、ミアレシティはノースサイドストリート、14番道路と繋がっているゲート前へと訪れていた。

「……それにしても、まさかミヅキさんのお友達がカロス地方に来ていたなんて」

「うん! あの子に会わずにアローラに帰るなんて、ありえないね!」

「ただ、その人が何処にいるのか本当に分からないんですか?」

「そう! 分からないんだよ!」

……“一応”がついてしまうが、アローラ初代チャンピオン――ミヅキ。

彼女こそが、そのもう一人の問題児なのである。

ミヅキはあれから、如何にしてゴールドと共にカロス地方を旅するか、ひいてはそうする為の口実を昨晩、考えに考えまくった。

そして彼女が導き出した答えは、簡潔にまとめると以下の通り。

『カロス地方に生き別れの親友がいると言って、チャンピオンの仕事よりも優先すべき旅の目的を作り、ゴールドにそのことを納得させたうえで彼の旅に同行する作戦』。

言うまでもないが、ここカロス地方には、ミヅキのかつての親友などいない。

全て、合法的にゴールドと旅に勤しむ為の嘘だ。

色々と、倫理的に……というか人としてこれはいかがなものかと、ミヅキ自身思いもした。

そして、もしこれがゴールドに嘘だとバレるようなことがあれば、その時は間違いなくゴールドに失望されるだろうとも。

しかしミヅキは……ヤバいと思ったが、欲望を抑えきれなかった。

ちなみに、アローラチャンピオンの座については、現在代理で、“とある少年”が務めている。

と言うのもその少年は、ミヅキがチャンピオンの座を電話の口頭で譲ると持ちかけるや否や、まさかの即答でそれを受け入れ、大はしゃぎの大喜びで、栄えあるハズのアローラチャンピオンに就任してしまったのだ。

そんな実に単純すぎる友をまんまと丸め込み、『チョロいぜ』と内心思いつつもミヅキは、かくして虚構で固められた理由を盾にカロス地方での残留権を得て、今に至る。

もう、後には引き下がれない。

例え誰に罵られようと、誰に否定されようとも。

ミヅキは……ゴールドと共にいると決めたのだから。

「オダァ〜」

しかしオーダイルだけは、彼女のついた嘘を見抜いていた。

というか、こんなあからさまな嘘に何故自分の主は気づかないのか? もしかしてバカなのか?

オーダイルはそんなことを思いながら、呆れ果てため息をついた。

……とまあ、そんなミヅキの悪足掻きの軌跡は置いておいて。

ここでゴールドは、彼らと同じスタート地点から再び旅を始めようとしていたレッド一行の姿を、目撃した。
 ▼ 413 mTQB7XkZdk 18/10/04 20:42:43 ID:pGwM5c0U [25/32] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
「……あっ!」

「おーい! レッドさーんっ!」

そして瞬間、旅立つ前に最後の挨拶をしておこうと、ゴールドはレッド達のもとへと駆ける。

ミヅキは突然自分と離れてしまうゴールドの姿にハッと驚き、動揺のあまり一瞬その場で足踏みしたが、『待ってよー!』と彼を呼び止めようとしながら、その後を追った。

「あ……ゴールド君!」

「ん? ミヅキもいるな……てっきりアローラに帰ったとばかり思っていたが」

レッドがゴールドとの再会に喜ぶ一方で、カルムはミヅキが未だに彼と行動を共にしていることについて疑問符を頭に浮かべる。

やがてレッド一行と合流したゴールドとミヅキ。そしてレッドはゴールドに問う。『これからどうするのか』と。

ゴールドは答えた。

「自分もメガシンカを手に入れる為、カロス地方を旅するんです」

「おお……それは良いね!」

そう。ゴールドがこのカロス地方に訪れた当初の目的――それは、『メガシンカを手に入れること』。

ゴールドにとってPWTはあくまで、本題よりもいささか壮大すぎた寄り道に過ぎない。

本来の宿願を叶えるまでは、ゴールドもまたレッド達と同じように、一人の普通の旅人としてこのカロスの地で遍歴を重ねていく所存なのだ。

レッドはそんなゴールドの姿勢に感銘を受け、自らの心もまた奮い立たされる。

メガシンカ習得は、かつてレッドも追った夢だった。だからこそ、レッドはゴールドに心からのエールを送る。

『共に頑張ろう』と。

……“共に”。

そのレッドの言葉を聞いたとき、ゴールドの中でふと湧き上がってくる感情があった。

「……っ!」

レッドが差し伸べた右手が、今、ゴールドの目の前にある。

レッドにとってその手は、友情の証――“握手”の為に出したモノであったが。

この時、ゴールドの目にはそれは――『自らを引き入れんとする手』のように見えてしまった。

屈託なく笑みを浮かべるレッドのその目に、ゴールドは自然と吸い寄せられる。

やがて彼の手を取ったとき、ゴールドは……無意識の内に、こう言ったのだった。

「……レッドさん」

「僕も一緒に……ついていって良いですか」

……ゴールドの、唐突極まるその言葉に、誰もが一度沈黙を喫した。
 ▼ 414 mTQB7XkZdk 18/10/04 20:43:56 ID:pGwM5c0U [26/32] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
「えっ……ゴ、ゴー君?」

「オダァ?」

ミヅキは現状が理解出来ないあまり、その声色を震わせながら、今一度ゴールドの発言の意図するところを聞こうとする。

それに対しゴールドは……。

「……あっ」

「ぼ、僕……っ! ごめんなさい! 今のは……その」

……なんと、彼自身ですら自分の言ったことを理解できていないかのような様子であった。

レッドは、ゴールドが無自覚の内にさっきああ言ってしまったことを悟ると、一瞬、答えに迷う。

『えっと』以外の言葉が出てこない。

見たところ彼には、ミヅキがいる。

それはレッドでも分かる。

だからここで自分が『いいよ』と頷いてしまっても、それはミヅキの気持ちを蔑ろにするのと同じことだ。

レッドは取り敢えず、ミヅキに目線をやってみる。

レッドの目に映った彼女はひどく動揺していて、『何故……』と、ゴールドにその悲壮を極めた表情で訴えていた。

「今のは、忘れてくださいっ! つい思ってたことが口に出てしまったというか」

「さ……さあ行きましょうミヅキさん! 僕らの旅もいよいよ始まりますよ!」

……一方で、当のゴールドも、決してミヅキのことを忘れていた訳ではない。

寧ろ彼は、今も変わらぬ恋心をミヅキに抱き続けている。

だがそれとは別に、かつての自分の憧憬だった人物が、こうしてトレーナーとして更なる成長を果たしたことが、何よりも感慨深かっただけなのだ。

故に、つい漏らしてしまった。

『この人と一緒に旅をしたい』……そんな純粋な想いを。

だが、ふと我に返ったゴールドはここでようやくわきまえ、これから始まるミヅキとの二人旅に心を“能動的に”躍らせる。

だが、そんな彼の複雑な真意など知る由もないミヅキは、ショックを受けたまま少し呆然としてしまう。

……と同時に、『これで本当に良いのか』とも思った。

自分が今、この少年の“やりたいこと”を塞いでしまってまで向かおうとしている旅は……それは、本当に“良い旅”になると言えるのだろうか。

答えは……否だろう。

自分はあくまで、ズルをしてゴールドと共にいる身の上。

逆に考えると、もし自分がズルをせずに本当にアローラに帰った場合、独り身のゴールドは何の遠慮もなくレッド一行に加われたのだ。
 ▼ 415 mTQB7XkZdk 18/10/04 20:44:17 ID:pGwM5c0U [27/32] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
だから、ここでゴールドの選択肢を断ち切ってしまっては、それ即ち、ミヅキの選択はゴールドにとって障害になるということ。

彼女の理想は、今でも間違いなく“ゴールドとの二人旅”だ。

しかし、今この瞬間、本当に優先されるべきは――“ゴールドの理想”。

ミヅキは……選んだ。

「……奇遇だねゴー君!」

「私も、レッドさん達とも旅をしたいと思っていたところなんだよっ!」

……その願いが承諾されるかどうかは別として。

ゴールドの意思に同調する……それが、ミヅキの答えであった。

「ミヅキさん……!」

そして、ミヅキのこの判断は英断であった。

ゴールドのミヅキに対する好感度は、この瞬間を以て更なる急上昇を開始する。

自らの意思を汲んでくれたミヅキに、ゴールドは心から感謝した。

「……オダァ」

オーダイルも、今回ばかりはミヅキを見直すのであった。

そしてレッド達は、そんな二人の懇願を受け、それぞれ頷き合う。

彼らの答えは、勿論……。

「……君達が望むなら、是非ついて来てくれ」

「旅は道連れ、世は情け……って言うからね」

……レッドは、分かったような顔をしながらも、本当は……『いてくれて嬉しい』、そう思ったのだった。

「随分と大所帯になったなぁ、オイ」

賑やかになったパーティのメンツを改めて見渡し、その運命の数奇さに笑うしかないグリーン。

「まさか俺以外にも新メンバー追加とはな。逆に俺、霞んでね?」

ゴールドとミヅキが加入したことで、自らの存在感が薄れてしまうことに危機感を覚えるカルム。

「ありがとうございます皆さん! これからよろしくお願いします!」

「よろしくですっ! ……ふふっ、それにしてもゴー君ったらはしゃいじゃって」

「ダァィル!」

自分達を受け入れてくれたレッド達に、誠意を込めてお礼の言葉をお辞儀と共に贈るゴールドと、そんな彼の姿を見て、もはや吹っ切れて愛しく思うミヅキ。

無論オーダイルだって、仲間が増えたことは素直に嬉しい。
 ▼ 416 mTQB7XkZdk 18/10/04 20:45:24 ID:pGwM5c0U [28/32] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
そして……。

「……レッドってば、本当に人気者だね」

「ちょっと妬いちゃうなー……なんて」

「ははっ……参ったな」

「ふふ、冗談だよっ」

……一瞬にして、一気に三人ものトレーナーを仲間に惹き込んでみせたレッドを、コルニはヤキモチからか少しからかってやった。

対して当のレッドは、自身の頭をさすりながら、コルニには敵わないといった感じ。

そんな彼の姿に、コルニも思わず笑みを零す。

「……そうだっ!」

「これ……大会が終わったら、レッドに渡そうと思っていたんだ!」

「え……?」

……そう言うとコルニは、バッグの中から一つのレジ袋――カルムのブティックのお洒落なロゴが描かれている――を取り出し、その中に入っていたモノをレッドに渡す。

これは――レッド一行とカルムがブティックで邂逅を果たした、あの日。

*

『……そういえばコルニ』

『んっ?』

『お前のその袋……お前も何か買ったのか』

『あっ!……これはね』

『……ううん!内緒!』

『んだよケチ、教えろよ』

『なっ!ケ、ケチは無いでしょ!?』

『じゃー見せろよー』

『嫌ですよーだ!』

*

――コルニがカルムのブティックで購入し、その中身を見せる見せないでグリーンと下らない言い争いを繰り広げた、今となっては懐かしい過去の品。

あの時コルニは、グリーンの執拗な無理強いすら跳ね除けて頑なにその中身を秘密にしていたが……。

……今、それを彼女は、レッドの眼前で解禁し、明らかにする。

黒を貴重とした長方形のシックな箱。その封を開け、レッドに捧げる。

中に入っていたのは……“ブレスレット”だった。
 ▼ 417 mTQB7XkZdk 18/10/04 20:46:00 ID:pGwM5c0U [29/32] NGネーム登録 NGID登録 報告
銀色のチェーンに通された――焔をかたどった紅のジュエル。

そしてその中に一つだけ、緋色のパーツ――


――リザードンのシルエットをモチーフにした、極めて精巧かつきらびやかなアクリルパーツが、一際その圧倒的な存在感を放っている。


そう。これはコルニがレッドの為にカルムの店で購入した――プレゼントだったのだ。

「……リザードン……カッコいい!」

この、レッドのハートのドストライクを貫いた至極の逸品に、彼は興奮のあまり思わず声を張り上げながら、早速これを右手首にはめた。

それは見事にレッドに似合っており、まさにレッドとベストマッチのアクセサリー。

「ありがとう! コルニ!」

「一生大切にするよ……!」

己が生涯をかけてこれを大事にし続けると、レッドは少し涙ぐみながらもコルニにそう感謝の意を伝える。

コルニも、そんなレッドの喜ぶ姿を見て満足したのか、穏やかな笑みを、にっこりと……赤面混じりに浮かべたのであった。

……レッドがそのブレスレットをうっとりと見つめていると、段々レッドは“アイツ”に会いたくなってきたのか、一つのモンスターボールを取り出す。

そして次の瞬間、レッドはそれを投げ、彼を……呼んだ!

「出てこい!」

「リザードン!」


「グォォォォォッ!」


――チーム・レッドの筆頭戦士――《リザードン》。

レッドの召喚に応じ……ここに見参!

火竜は翼を大きく広げ、レッドと向かい合う格好で彼を見下ろす。

対してそんなリザードンを見上げるレッドは、リザードンにこんな言葉をかけるのであった。

「見てくれ、リザードン」

「今の俺は、こんなにも沢山の仲間達に恵まれているんだ」

「あの雪山に籠もってたままじゃ決して手に入れることのできなかった……友達」

「これからはそんなかけがえのない友と、一緒に、かけがえのない旅ができる」

「俺さ……こんなに幸せなことはないんだよ」

……リザードンは、彼の話を聞きながらふと思う。

考えても見れば、あのシロガネ山で修行という名の引きこもり生活をしていたあの頃のレッドは……今じゃ考えられないくらい無口だったハズだと。
 ▼ 418 mTQB7XkZdk 18/10/04 20:46:34 ID:pGwM5c0U [30/32] NGネーム登録 NGID登録 報告
それが、現在のレッドはどうだろう。

あのレッドが、こんなにも饒舌に仲間達のことを語る日が来ようとは。

そう思うと、それはどこかおかしくもある。

と同時にリザードンは、お喋りなレッドを見ていると……自分がレッドにしてやれなかったことを、あの人間達はやってみせたのだと、改めて実感する思いにも駆られた。

もう、あの頃の寂しげだったレッドはいない。

今のレッドは……。

『よろしくな、ヒトカゲ!』

『カゲェッ!』

……初めて自分と出逢った頃のような。

いや、寧ろそれ以上に、ポケモントレーナーという――自らが身を置く世界を、心から楽しみ、謳歌していた。

故にリザードンは、人間の言葉こそ話せないが、レッドにこんな想いをぶつける。


『俺もだ』


――これ以上ないくらい幸せなのは、お互い様だと。

「……行こう、リザードン、ピカチュウ!」

「コルニ、グリーン、カルム!」

「ゴールド君、ミヅキさん、オーダイル!」

……少年の呼び声に、彼の仲間達はそれぞれの言葉で返す。
 ▼ 419 mTQB7XkZdk 18/10/04 20:47:00 ID:pGwM5c0U [31/32] NGネーム登録 NGID登録 報告
彼らが次に目指すのは、“Z”の先にある――未知なる世界。

今までいた次元への別れは、とうに済ませてある。

あとはひたすら、前進するのみ。

日々進化していく、彼らの旅。

ポケットモンスター……縮めて、《ポケモン》。

大地に、大海に、大空に……この広い世界の、至るところに。

もしかしたらワンチャン、あの子のスカートの中にもいるかもしれない……そんな不思議な生き物達。

そしてこの少年――レッドと、その仲間達の物語は、これからもずっと続いていく。

進め。

時に走り、時に歩き。

そうした進化の軌跡は、やがて、その先にある未来へと繋がっていくから。

過去も、今も、未来も。限界も、想像も。

何もかも。

全て超えていけ。

「……メガシンカ……か……」

「……ありがとう」


「お陰で俺も、ようやく……進化できたよ」


レッド達の旅は……まだまだ続く。

永遠に……!


〜 fin 〜
 ▼ 420 mTQB7XkZdk 18/10/04 20:53:41 ID:pGwM5c0U [32/32] NGネーム登録 NGID登録 報告
僭越ながら、あとがきを最後に残させて頂きます。

このSSを最後まで読んでくださった読者様の皆様、本当にありがとうございました。

こうして無事に完結できたのは、何より皆様の応援のおかげです。

それと途中、技構成やバトル展開等が乱雑になってしまった部分があったことを、遅ればせながらここで改めてお詫び申し上げます。本当に申し訳ありませんでした。

休ませていただいては投稿させていただいて、その繰り返しでしたが、それに際する支援や応援コメント、ご指摘のコメント、その全てに支えられ、ここまで書き終えることができました。

重ね重ね、御礼申し上げます。

これでこのSSは終わりです。長文失礼いたしました。

最後になりますが……ご愛読頂いて、本当に、ありがとうございました!
 ▼ 421 グザグマ@ドラゴンメモリ 18/10/04 22:08:31 ID:7Y4gdGiU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
おつかれさまでした!
 ▼ 422 イボルト@アップグレード 18/10/04 23:25:50 ID:wX.2y.5U NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
お疲れ様です!!
楽しませていただきましたわ

 ▼ 423 ワパレス@ふたのカセキ 18/10/04 23:58:56 ID:Htq.FFa. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙でした
 ▼ 424 キカブリ@むしよけスプレー 18/10/05 00:23:15 ID:ya0Yhvus NGネーム登録 NGID登録 報告
これでようやくbbsを引退できるありがとう
 ▼ 425 ニューラ@あかぼんぐり 18/10/05 00:51:38 ID:mzYo4PQ. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
メガオーダイルが来るって信じてる
 ▼ 426 ットロトム@むげんのふえ 18/10/05 06:42:51 ID:opGUpT3g NGネーム登録 NGID登録 報告
乙!
 ▼ 427 ンプク@なぞのすいしょう 18/10/05 08:14:14 ID:15LMkrlk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
素晴らしいSSでした
お疲れ様です!
 ▼ 428 ガラグラージ@インドメタシン 18/10/05 21:30:25 ID:CLmkMYIU NGネーム登録 NGID登録 報告
乙です!
番外編でレッドとコルニのイチャイチャデート編欲しいなぁ(チラチラ

エロはいらない
 ▼ 429 ックラー@おおきなキノコ 18/10/06 17:13:55 ID:DTMkQR7E NGネーム登録 NGID登録 報告
2年間おつかれさまでした!こんなに燃えたSSは久々でした!!
 ▼ 430 ーリキー@クチートナイト 18/10/09 18:30:46 ID:x1iwS/1o NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
完結したのか 乙
 ▼ 431 リンク@ホエルコじょうろ 18/10/09 21:14:11 ID:hCgQjwqo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
絶対他のサイトに出しなって!プロ入りも夢じゃないよ!
 ▼ 432 ーゴート@きのはこ 18/10/14 21:21:34 ID:/kkIGVM. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
最後のバトルシーンは鳥肌もんだった
これからもゆっくり色々執筆してみてくれ!
素晴らしいSSをありがとう!
このページは検索エンジン向けの機能制限版の旧ページです。
下URLから閲覧下さい。
https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=653705
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