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【スワップSS】ボク「また世界が停止する日?」【ポケダン】

 ▼ 1 WcMFxDln0I 20/04/07 23:08:04 ID:Wp6smWFI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あのさくらの花が散る頃に、僕たちは出会ったんだ。ギルドから見える大きなさくらの木。

ボクは昔、とあるチームでプクリンのギルドにいた。そこを卒業して、チームは解散ししばらく一人で旅していた。

そしてたどり着いたこの街。この世界でも有数の規模と言われるギルドに入団したボクは、ある日さくらの木の下で今のパートナーと出会った。

とても明るくて、繊細で、元気いっぱいなパートナー。

でも、この時はまだこれから起こる再び世界が停止するかもしれない日のことなど、知らなかった──


このSSはスワップ企画に参加しています。この続きは別の方が執筆されますので、お待ち下さい。
https://pokemonbbs.com/sp/poke/read.cgi?no=1189712
 ▼ 104 27pJN4xS/A 20/04/27 20:49:52 ID:1eDALJe2 [1/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ルガルガン「まず一緒に住んでる家を改築したいよね!」

ラビフット「狭い方が落ち着くんだけどなぁ」

ルガルガン「ギルド本部くらいでっかいの建てよう!」

ラビフット「それは無理でしょ」

ルガルガン「他にも、2匹で世界一周とかしたいし」

「世界で一番美味しいセカイイチを探して、見つけたら一緒に食べたいし」

「世界中の絶景ダンジョンを巡って、色んな世界を見てみたいし……」

「いつかガーディと一緒にダンジョン攻略もしたいよね〜!」

ラビフット「ああ……」


相棒は語りながら、どんどん目を輝かせていく。
見上げている夜空は真っ暗なのに、
まるで星の数を数えてるみたいだった。


ルガルガン「他にはね〜、えーっと」


少年のように夢を語る彼に、
今までちゃんと応えようとしなかった罪悪感が再び湧いてくる。
目を逸らしながら、謝罪の言葉を口にしようとした。
しかしそれは彼の大声で遮られた。


ルガルガン「見て! 星があるよ!」

ラビフット「えぇ?」


せっかく勇気を出したのに阻止されて、
うんざりしながらも彼の指す方を見る。
そして目を見開いた。
 ▼ 105 27pJN4xS/A 20/04/27 20:50:34 ID:1eDALJe2 [2/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

そこには確かに、小さな星があった。


ラビフット「ホントだ。見える……!」

ルガルガン「うわぁすごい! なんでだろ!」

ラビフット「きっと雲の切れ間なんだよ。偶然それが見えるところで空が停止したんだ」


曇天に塗り固められた空の隙間から覗く。
それは本当に小さな星だった。
多分他の星があれば気にもとめないほど。
しかし星がひとつもない暗い空しか見ていなかったボクらは、
そんな微かな星ひとつでも感動をした。

太陽も、月も、他の星たちも見えなくなったものの、
光が完全に失われたわけではなかった。


ルガルガン「あのね」

ラビフット「うん?」

ルガルガン「こんなこと言っちゃダメなのかもしれないけど、本当は"星の停止"も僕らだけで解決したいんだ」

ラビフット「……2匹だけで?」

ルガルガン「5年前のポケダンズみたいに。たった2匹で世界の危機を救えたら、かっこいいでしょ?」

ラビフット「ああ。たしかに」

ルガルガン「それで僕らの手で取り戻した太陽に、アレキパンドライトをかざすんだ」

ラビフット「……」

ルガルガン「ワガママなのはわかってるんだよっ。実際のところはピカチュウとルカリオに助けられっぱなしだしさ。そんなの……」

ラビフット「やろうよ」

ルガルガン「え?」


ルガルガンの目を見て、応える。
今まではボクのワガママで、
きっと彼にたくさん我慢をさせてきたから、
今度はボクが、彼の夢を叶えていく番だ。
 ▼ 106 27pJN4xS/A 20/04/27 20:51:08 ID:1eDALJe2 [3/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ラビフット「ピカチュウとルカリオがいても構いやしないよ。一緒に"星の停止"を止めよう。時限の塔へ行って、世界を救うんだ」

ルガルガン「ラビフットぉ……!」

ラビフット「いいだろ?」

ルガルガン「うん!」


顔を見合わせて笑った後、もう一度空を見上げる。
さっき見つけた星が一人ぼっちで輝きを放っていた。
こんなにボロボロで真っ暗な世界なのに、
それでも光は見つかるものだった。


ラビフット「さて、そろそろボクらも寝ようか」

ルガルガン「……」

ラビフット「ルガルガン?」

ルガルガン「……」

ラビフット「おい? どうした!?」


ルガルガンがピクリとも動かなくなった。
呼びかけても、揺らしても、毛先ひとつ動かない。
輝いた目で空を見上げたまま固まっている。


ラビフット「なあルガルガン! どうしたんだよ!」


嫌な予感が頭をよぎる。
"生物の停止"……。
空や植物といった自然の停止から始まり、
"星の停止"がポケモンまで停止させ始めたことだ。

急いでピカチュウとルカリオの方を見にいく。
眠っているが、ちゃんと呼吸に合わせた体の動きをしていた。


ルガルガンだけが、完全に停止していた。
 ▼ 107 27pJN4xS/A 20/04/27 20:51:49 ID:1eDALJe2 [4/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ラビフット「う、嘘だ……! そんなわけない!」


相棒の肩を掴んで揺らす。
いくら動かしても、硬直したままだ。


ラビフット「なんでっ! 約束したばっかりだろ!」


『一緒に"星の停止"を止めよう』『世界を救おう』
ボクが言うと、君は嬉しそうに応えた。
ついさっきの笑顔が蘇ってくる。


ラビフット「一緒に頑張ろうって言っただろ! なのになんで……っ! まだお前に何も返せてないのに……」


腐っていたボクが前向きに戦えるようになったのは、
ルガルガンがずっと引っ張ってくれたお陰だ。
苦しむみんなの為に戦うガーディや
何とか生き抜こうと戦うルガルガンの姿を見て、
いつもの日常がどれだけ大切なものだったのかがわかった。
それを守るために戦おうと思った。
全部ルガルガンのお陰だ。

こんなボクの隣にずっと居てくれたから……。


ラビフット「まだ何もしてやれてないのに……!」


ピカチュウ「ラビフット?」

ルカリオ「何かあったのか。……っ!」


声で2匹を起こしてしまった。
ルカリオはすぐに異変に気づいたらしい。


ルカリオ「ルガルガンから、波動を感じない……」

ピカチュウ「えっ、どういうこと?」

ルカリオ「彼の時が停止しているんだ」

 ▼ 108 27pJN4xS/A 20/04/27 20:52:04 ID:1eDALJe2 [5/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

すぐに2匹が駆け寄ってきて、
ルガルガンの様子をたしかめていた。


ピカチュウ「まさか、本当に」

ラビフット「ああ。これから一緒に世界を救おうって、約束したばっかなのに」

ルカリオ「ラビフット……」


硬直した体に触れる。
彼の体毛は分厚くて触り心地が良くて、背中に乗るたびに手や顔を埋めたりしていた。
しかし今、そんな柔らかさは欠けらも無い。
ただ石像のように固いだけだ。

涙が零れて、ルガルガンの手に落ちる。
泣くなんて久しぶりの感覚だった。


ラビフット「やりたい事があるんじゃなかったのかよ……っ!」


『僕は限界まで生きてから死ぬって決めてるんだ。生きて生きて生きて、やりたい事全部やってから死ぬ!』
『時が止まって中途半端に終わるなんて、絶対に嫌だ!!』


ラビフット「ルガルガン……」


時が止まったルガルガンの前でひとしきり泣いたあと、
呼吸を落ち着けていると、
ルカリオとピカチュウがボクに目線を合わせて、手を握った。


ルガルガン「まだ、世界の終わりじゃない」

ピカチュウ「まだ助けられるよ!」

ラビフット「う、ううっ……くっ」


腕で涙を拭って、立ち上がる。
そうだ。まだ終わりじゃない。今ならまだ間に合う。
ルガルガンも、太陽も、全部取り戻すんだ。
ボクたちの手で。
ルカリオ、ピカチュウと改めて顔を見合わせて、頷く。


ラビフット「行こう。時限の塔へ」

 ▼ 109 27pJN4xS/A 20/04/27 20:52:57 ID:1eDALJe2 [6/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ピカチュウとルカリオの案内で、時限の塔へ向かう。
と言っても時限の塔を探す手間はなかった。
森の砦からでもその場所がわかったからである。

時限の塔がある幻の大陸は、本来時の狭間に隠されていたはずだが、ディアルガがいなくなったことで狭間から現世に顕現していた。


空が破け、そこから巨大な大陸が海を砕いてビーチへせり出している。
近づけば近づくほどその大きさを実感して、
異様な光景に目が丸くなった。
かなりの距離を歩いて、破れた空の足下まで到着する。


ラビフット「これどうやって登るんだ?」

ピカチュウ「僕たちの時はラプラスに乗せて行ってもらったんだけど、この様子だとあの頃のことはあんまり参考にならなそう」

ルカリオ「正攻法に構っていられないな」

ピカチュウ「わっ。ちょっと!」


ピカチュウを小脇に抱えて、大地の壁を登っていく。
それに置いていかないようにロッククライミングする。

最後は先に上に行っていたルカリオに引き上げてもらい、
いよいよ幻の大地に上陸した。


ピカチュウ「この先に時限の塔がある。急ごう!」


とにかく今は時間が惜しい。
塔が崩壊しきった時点で"星の停止"完了する。
それまでに時の歯車を塔の頂上に納めなければならない。

ルガルガンの件から、
生物の停止が始まるほど塔の崩壊が進んでいるであろうこと。
塔が壊れきってなくとも、この中の誰が今この瞬間に停止してしまってもおかしくないこと。

それを確認したボクらは幻の大地のダンジョンを、
なるべく敵との戦闘を避けて、最速で駆け抜けた。
 ▼ 110 27pJN4xS/A 20/04/27 20:53:59 ID:1eDALJe2 [7/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

まぼろしのだいち おくち


ラビフット「はあっ……はあっ……こんな長いダンジョン初めてだ……」

ルカリオ「この先に遺跡があって、さらに先に行けば時限の塔がある」

ピカチュウ「うん。頑張ろう」

ルカリオ「肩貸すか?」

ラビフット「いや、大丈夫……」


他に類を見ないほどの規模のダンジョンに、
猛毒を抱えたまま挑んでいる。
その負担は想像上のものだった。
モモンの実で騙し騙しやっても、限界がある。
それでもなんか奥地まで進み、遺跡に入った。
中ににはディアルガとパルキアが描かれた壁画などがある。
遺跡を出るとようやくダンジョンを脱出し、開けた空間に出る。
広い草原に、黄色い空。

ピカチュウ「ふい〜……。あと、もう少しだよ」

ラビフット「ここは?」


目の前には綺麗に整備されて、
如何にも神聖な趣の壇が待ち受けていた。
その階段を登ろうとしたその時。


ルカリオ「危ないっ!」

ラビフット「!?」

カンッ!


咄嗟に腕を掴まれ、引き戻された。
そしてさっきまで立っていたところには、紫色の針が転がっている。


ラビフット「こ、これは!!」


奴は夜空を背に、壇の上で待ち構えていた。


アーゴヨン「よォ、ひさしぶりだなァ? チビどもォ会いたかったぜ」

ルカリオ「アーゴヨン! ということはまさか、コバルオンとケルディオを……」

ラビフット「なっ……!!」


アーゴヨンのニタァっとした笑いに悪寒がする。
 ▼ 111 27pJN4xS/A 20/04/27 20:54:57 ID:1eDALJe2 [8/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ピカチュウ「だけどガブリアスがいないぞ。ガブリアスはどうした!?」

アーゴヨン「アイツならこの先の時限の塔の上にいるぜ。まァ、今のテメェらじゃオレを倒せるかもどうか疑問だがなァ。毒でキツくてしょうがねえだろ?」

ラビフット「それでも倒さなきゃいけない。お前を倒して、時限の塔へ……!」


オンバーン「ちょぉっと待ったあああああ!!!」

ドゴォンッ!!


ボクらが臨戦態勢に構えた時、
空からオンバーンが飛来して、隕石の如くアーゴヨンに突進した。


ガラガラ……


オンバーン「あなたたち、先に進みなさい! こいつには私の方から話があるのよ」

ラビフット「オンバーン!?」

ピカチュウ「あれは誰?」

ラビフット「元パートナー……じゃなくてっ、探検隊仲間だ」

ルカリオ「元パートナーなのか」

ラビフット「うん……オンバーンは、アーゴヨンとチームを組んでた。騙されていた一番の被害者だよ」

ルカリオ「成る程……」


土煙の中からアーゴヨンが立ち上がるのを確認すると、
オンバーンは距離をとってこちらへ降りてくる。


オンバーン「遅れてごめんなさい。ケルディオから報告を受けて来たわ」

ラビフット「ケルディオから!?」

ルカリオ「ってことは生きてるのか?」

オンバーン「生きてると言っていいのかどうか……」

ラビフット「え?」


オンバーンの話によると、ケルディオはコバルオンに生かされてギルド本部に助けを呼びに来た。
ずっと敵と思っていた為、流石に警戒したものの。
報告の内容と彼の説得を受けて、
オンバーンとケルディオが幻の大地へ出動することにしたという。

しかしここに向かう道中でケルディオに異変が起きた。
まるで石像のように、ピクリとも動かなくなってしまったのだ。
 ▼ 112 27pJN4xS/A 20/04/27 20:55:13 ID:1eDALJe2 [9/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ラビフット「くっ、ケルディオまで……っ!」

ルカリオ「生物の停止が着々と進行しているということか」

オンバーン「そういえば、ルガルガンがいないけど、どうしたの?」


そこまで訊いて、ハッと気づいたように口を覆った。


ラビフット「あいつも動かなくなったよ。置いてきた」

オンバーン「そう……だからってまたベソかいたりしてないでしょうね」

ラビフット「し、してねえよ」

オンバーン「……ガーディくんも、待ってるわよ」

ラビフット「!!」

オンバーン「ルージュラが敵になって、みんなが追い詰められてる中で、ウインディに進化して私たちを助けてくれた」

ラビフット「そうか。ガーディのやつ……!」

オンバーン「今はギルドで凍らされたポケモンたちを何とかするので手いっぱいだけど。こっちに来たがってたわ」

ラビフット「だろうな」

オンバーン「進化したあの子に会う為にも、ルガルガンを助ける為にも、早く行きなさい。ここは私に任せて」

ラビフット「ありがとう!」

 ▼ 113 27pJN4xS/A 20/04/27 20:55:35 ID:1eDALJe2 [10/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

アーゴヨン「チィッ、次々と邪魔が入るなァ全く」

オンバーン「私のことは眼中に無いのね」

アーゴヨン「あァん? ああ。騙しやすい女だと思ってたよ」

オンバーン「私を誑かした男はみんな後悔するのよ」


オンバーンが再びアーゴヨンと激突したのを皮切りに、
時限の塔へ走る。その時、立ち止まった無事にピカチュウが小さく呟いた。


ルカリオ「どうした?」

ピカチュウ「僕は、ここに残ってオンバーンと一緒に戦うよ」

ラビフット「な、なんだよ急に」

ピカチュウ「アーゴヨン相手に1対1で戦うのは厳しいし。それに………」

ルカリオ「……」

ピカチュウ「僕の攻撃はガブリアスには全く効かないんだ。そっちに行っても、多分あまり役に立てないと思う。ここに残る方が良い。だから先に行っててくれ」

ラビフット「待って。それならボクだって同じようなものだ!」

ピカチュウ「君はルガルガンとの約束があるじゃないか」

ラビフット「……!! わかったよ……」

ルカリオ「了解した。ピカチュウ、後は任せてくれ」

ピカチュウ「ありがとう、ルカリオ」


背を向けざまに、ピカチュウは言った。


ピカチュウ「ラビフット、ルカリオをお願い」

ラビフット「うん……!」


お互いに背中を向けて、足を進める。
ピカチュウはその足を徐々に速く、オンバーンが戦ってる方へ向かう。
 ▼ 114 27pJN4xS/A 20/04/27 20:56:24 ID:1eDALJe2 [11/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


暗黒の空を舞台に、2匹のドラゴンが飛び交う。


オンバーン「おかしいわね。お互い接近戦は苦手じゃなかった……!?」

アーゴヨン「それはテメエの相棒の話だろ?」


近接技を持たないオンバーンに対し、
肉薄しようとするアーゴヨン。
近接技を持たないオンバーンは、逃げ回ることしか出来なかった。
2体のスピードはほぼ互角である。

しかしオンバーンの視界外に入り、
ほぼノーモーションで発射した毒針が、
間一髪で命中するまではいかなくとも、
その体勢を崩させた。


アーゴヨン「隙アリィ!」


その一瞬の先を突いて、ドラゴンクローをヒットさせた。
オンバーンは短い悲鳴をあげながら落下する、

ドゴォン!

そしてトドメの毒針が発射された。
墜落して再びはばたくよりも先に刺さろうとした毒針を、
庇うように飛び出したピカチュウの体が受け止めた。


オンバーン「あ、あなたは! どうして!?」

ピカチュウ「くっ、ギリギリ間に合った……」

アーゴヨン「あァ? またこのパターンかよ」


ピカチュウ「1匹じゃ厳しいと思って、助けに」

オンバーン「あ、ありがとう。だけど毒が……」

ピカチュウ「元々猛毒を受けてるから変わらないよ。それより作戦があるんだ……!」

オンバーン「……!!」
 ▼ 115 27pJN4xS/A 20/04/27 20:57:38 ID:1eDALJe2 [12/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

痺れを切らしたアーゴヨンが竜の波動を放つ。
それに対して竜の波動を放つ
2つの波が衝突し、中心で巨大な衝撃波を放った。

風に怯むことなく、オンバーンが空へ舞う。
敵より上空に上昇し、あえて見下ろして攻撃を放つ。


オンバーン「エアカッター!!」


バサバサッと羽ばたかせ、風の刃をいくつも作る。
勢いよく襲い掛かったそれを、
針の糸を通すように巧みに避けきるアーゴヨン。
そして再び接近戦に持ち込まんと両手にドラゴンクローを構えた。


アーゴヨン「カッカッカッ、また突き落としてやらァ!」

オンバーン「来たわね……!」


戦いの最中で心底楽しそうに迫ってくるアーゴヨンに、
逃げる以外で対抗する策をオンバーンは用意していた。

空中で姿勢を立て直し、迎え撃つ体勢をとる。

アーゴヨンが振った攻撃のタイミングが外れるように、あえて敵の懐に飛び込む。
そしてアーゴヨンの巨体に正面から抱きついた。


アーゴヨン「あァ!? 何のつもりだァ!?」

オンバーン「失礼。愛するパートナーとの再会に思わずテンションが上がっちゃったみたい」


これなら角度的に毒針は当てられない。
しかし2本のドラゴンクローが、オンバーンの腹を両サイドから遠慮なく突き刺した。


オンバーン「ぐはっ! ……行って!」


隠れていたピカチュウが、オンバーンの背中から飛び出す。
そして肩から腕を伝ってアーゴヨンの背中に乗り換えた。
 ▼ 116 27pJN4xS/A 20/04/27 20:58:00 ID:1eDALJe2 [13/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

アーゴヨン「コイツッ!? どっから出てきやがった!」


背中を向けられなかったのは、
彼を乗せていることがバレないようにだった。
ホールドしていたアーゴヨンを突き放す。
 

オンバーン「今よ!!」


合図と同時にしがみついたピカチュウが、眩く煌めいた。


ピカチュウ「10万ボルト!!」


バリバリッ!


アーゴヨン「うがあああああああ!!!」


逃れようのない電撃が、アーゴヨンを襲う。
悲鳴と共に激しい稲妻が空にかけ巡った。


アーゴヨン「クソッ! クソがッ! 離れろチビがッ! コノォ!」


必死に空を飛び回って振り落とそうとするが、
ピカチュウは決して離れない。
そして……


オンバーン「私もいることを忘れてないかしら?」

アーゴヨン「テんメェッ!」


苦し紛れに毒針を放つが、
そんな見え見えの攻撃が当たるはずもない。


オンバーン「エアスラッシュ!!」


電撃を受け続けるアーゴヨンを、風の刃が次々と切りつける。
さらに渾身の竜の波動が炸裂し、
ついにアーゴヨンは力無く落下した。

落ちる前に引き剥がされたピカチュウを空中で助け出す。


ピカチュウ「う、上手くいった……?」

オンバーン「ええ。あなたの作戦通りよ。ありがとう」

ピカチュウ「良かった……」
 ▼ 117 27pJN4xS/A 20/04/27 20:58:23 ID:1eDALJe2 [14/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

アーゴヨン「まだだァァッ!」


土煙の中で、血反吐を吐きながら叫んだ。
疲労困憊のピカチュウを置いて、声に近寄る。


アーゴヨン「オレはァ、まだ……ッ!」


地を這いずってでも向かってくる元パートナーの姿に、
思わず目を背けそうになった。


オンバーン「いいえ。これで終わりよ。サヨナラ……!」


唇を噛み締めて、今度こそトドメの一撃を放つ。


オンバーン「"ばくおんぱ"」


耐えきれぬほどの爆音に包まれて気絶する。
小さくため息をついて、ピカチュウの横に座り込んだ。


オンバーン「あとは塔の方がどうなるかね」

ピカチュウ「今からでも、追おうか」

オンバーン「ダメよ。あなたボロボロじゃない」

ピカチュウ「でも」

オンバーン「彼らを信じるの」

ピカチュウ「……うん」


ピカチュウは刹那の彼女の瞳に、憂いの感情を見た。
その寂しげな目が見つめる先は、
この星の命運を分ける時限の塔である。

 ▼ 118 27pJN4xS/A 20/04/27 20:58:47 ID:1eDALJe2 [15/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

数分前。その塔の足元に2匹のポケモンが辿り着いた。


ラビフット「もうだいぶ崩壊が進んでるな……」

ルカリオ「ああ。事は急を要する」


すでに塔の下半分が完全に崩壊しており、塔の瓦礫がパズルのピースみたいに宙に散らばっていた。そして残った半分から上の部分も真っ暗な亀裂が入っているのが見える。


ラビフット「瓦礫を足場にしていけば、上の方までいけそうだ」


崩壊は下から進んでいるらしく、
下になるほど瓦礫が細かくなったり粉々に散っていた。
そのためボヤボヤしていては、
登るための足場が完全に無くなってしまいそうだ。


ラビフット「行こうルカリオ……」


幸いボクらは2匹とも身軽で、
こういう動きは得意なポケモンだった、
さっそく時限の塔(瓦礫)に手をかけて、後ろを向く。


ラビフット「ルカリオ……?」

ルカリオ「……」



まさかと思って目を見開いた。
動かない。
そう悟って心臓が、キュッと絞められるような感じがする。

立ったまま微動だにせず、返事もない。
一応動かないか確認してみる。

彼は耳を触られるのが大嫌いなのを砦で知った。
その辺を触ったりしたら……
もしかしたら何かの拍子に動き出すかも。
なんて、ありえないのはわかっていても、
淡い期待が、祈りに近い感情が、そう思わせずにはいられない。


ラビフット「そんなぁ……」
 ▼ 119 27pJN4xS/A 20/04/27 20:59:36 ID:1eDALJe2 [16/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

さっきまで普通に話していたポケモンが、
突然マネキンのように動かなくなる。
その恐怖もさることながら、
星の命運が懸かったこの場所に1匹取り残されたことで、
不安と焦燥の濁流が胸と頭の中に押し寄せた。

それと同時に、それだけ精神がルカリオを頼っていたことを自覚する。
ルカリオがいれば、何とかなると思っていた。
泉の時にガブリアスを圧倒してみせた最強の味方なんだから、
絶対大丈夫だと……。

しかしそのルカリオがいなくなった今、
戦えるのはボクだけだ。
たった1匹であのガブリアスと戦うなんて無茶だ。

そうじゃなくても、
"星の停止"を阻止して皆を救う。なんて
ボクには到底背負えない大きすぎる使命である。


ラビフット「だけど……」


今は責任感だけじゃない。
自分の意思でここに来た理由を思い出すんだ。
もはやそれは探す必要が無いほど大きな思いになっている。

これからもルガルガンと生きていく為、
ウインディに進化したガーディに会う為、


ラビフット「また、あいつらに会いたい……!」


たとえ無謀でも、行くんだ。
少しでも光に近づくために手を伸ばさなきゃ。

ルカリオが持つ時の歯車を受け取って、
自分の黄色いバッグに入れる。


そして塔に向き直ると、
一つだけちょうどいい高さにあった瓦礫に登る。
塔の残骸は思ったより安定していた。
見上げて届きそうな足場を探すと、次の瓦礫へジャンプして、
少しずつ上へ登っていく。
 ▼ 120 27pJN4xS/A 20/04/27 20:59:58 ID:1eDALJe2 [17/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


毒による不調をものともせず、汗を滲ませながら空を跳躍する。


ラビフット「はあ……はあ……」


時間もわからず、たった1匹で夜空へ上がっていく。
時々眠りそうな時のように孤独感が襲ってきた。

そうしてしばらく登り続けた末。
塔を空中の足場を渡って登るラビフットは、
汗ようやく半分、つまりかろうじて塔の形を残っている高さまで辿り着いた。


ラビフット「あと半分……!」


休憩がてらにリンゴとモモンをかじりながら考える。
ここから先のダンジョンには敵のポケモンもいるはずだから、
心して進まねば……。


 ▼ 121 27pJN4xS/A 20/04/27 21:00:53 ID:1eDALJe2 [18/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


────




ピカチュウ「僕のことはいいから、オンバーンだけでも塔の方に行ってあげなよ」

オンバーン「私も疲れて動けないから」


おもむろにバッグの中からオレンの実を取り出して、
体育座りしているオンバーンに差し出す。


オンバーン「それは自分で食べて」

ピカチュウ「塔にはガブリアスがいるって言ってた。君が行った方がいいよ。空も飛べるし」

オンバーン「……」


無言で顔をそむけられて、手を引っこめる。


ピカチュウ「じゃあオンバーンは、"星の停止"を望んでるの?」

オンバーン「は!? そんなわけ……」


咄嗟に否定かけるが、少し考える。


オンバーン「望んでるわけじゃない。だけど、ラビフットと別れて、アーゴヨンにまで裏切られて、疲れたのかしら。自分から頑張る理由が見つからないのよ」

ピカチュウ「……ラビフットとはなんで別れたの?」

オンバーン「ただの喧嘩よ。あんなに大好きだったのに、ただの喧嘩で別れちゃった」


オンバーンはヒバニーだった頃の彼を回想する。
出会った頃のヒバニーは、
今よりずっと明るくて、快活な少年だった。


オンバーン「一緒に探検隊になって、彼のことはリーダーって呼んでた」
 ▼ 122 27pJN4xS/A 20/04/27 21:01:15 ID:1eDALJe2 [19/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ある日、ダンジョンの中で2匹がはぐれて、オンバットがモンスターハウスに遭遇してしまったとき。ヒバニーはすぐに駆けつけてボロボロになりながらオンバットを助けた。


オンバーン「彼の姿は眩しくて、まるで太陽のようだった。だけどあの日以降変わってしまった……」

ピカチュウ「変わった?」

オンバーン「一緒にダンジョンに行った仲間が死んじゃったの。それからはずっと無力感に浸ってるような、暗い性格になっちゃった」

ケルディオ「それで失望した?」

オンバーン「ええ。明るくてみんなを照らしてくれる彼が好きだったから……。それで喧嘩して、別れちゃった」


彼女は自分の寂しさを埋めるように、
羽の中に足を抱き寄せて三角に座った。


ピカチュウ「僕が見るかぎり今の彼は、また違うと思うよ」

オンバーン「わかってるわよ。くだらない意地だと思う。でももう何年も張りっぱなしで、どうすればいいかわからないの」


オンバーンは何かを待つような、
渇望するかのような目で時限の塔を見つめていた。

 ▼ 123 27pJN4xS/A 20/04/27 21:02:33 ID:1eDALJe2 [20/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
────


一方で、時限の塔の上では。


ラビフット「はあ……ふう……とりあえずスタートラインってとこかな」

ガブリアス「来たか……」


遂に頂上へ辿り着き、
そこに待ち構えていたガブリアスと対峙する。


ガブリアス「なんだ。他の仲間たちはどうした?」

ラビフット「みんな止まっちまってね……」

ガブリアス「なるほど。それで1匹で死にに来たと」

ラビフット「違う。お前を倒して、みんなを助けに来たんだ!」

ガブリアス「……いいね」


ガブリアスの後ろには、
窪みが5つ空いた石版のようなものが立っていた。
おそらくあそこに時の歯車を納めれば、
塔の崩壊と星の停止は防げる。

しかしその為には、
手前に立ち塞がるカブリアスを倒さなければならない。


ガブリアスは怯えるでも見下すでもなく、
ただ敵を認めた真っ直ぐな目でこちらを見据える。
その黄色の眼光に対抗して、こちらも紅い目で敵を睨み返した。
わずかに相手の迫力に押され、顔を仰け反りそうなるものの、
ぐっと堪えて前に屈みに突進の姿勢をとる。



ラビフット「勝負だ! ガブリアス!!」


脚をバネのように縮める。
地面から体を打ち出して、高くへと跳躍する。

ガブリアスの巨体が見上げるほどの高さ。
その顔面を狙って、足が炎を放った。

 ▼ 124 27pJN4xS/A 20/04/27 21:03:39 ID:1eDALJe2 [21/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ラビフット「ブレイズキック!!」

ガブリアス「ドラゴンクロー!」


青いオーラをまとった手刀と、
炎の足が衝突する。

赤と青が飛び散る。

わずかに青の勢いが勝り、
ラビフットの体を軽々とはじき飛ばした。


ガブリアス「ヌゥアアァーッ!」


着地するその瞬間を狙われる。
急接近するガブリアスへ、空中から"かえんほうしゃ"で牽制する。

しかし炎を受けてもなお、止まることなく、
着地直後のボクの腹を鋭く突いた。


ガブリアス「っ!? 飛ばないだと!?」

ラビフット「捕まえた……!」


腹に突き刺さった腕を両手で掴み、
逃げられないガブリアスのこめかみに炎の蹴りをお見舞する。
弧の軌道を描いた攻撃は、たしかに手応えがあった。
しかしガブリアスは衝撃で吹っ飛ぶことどころか、
怯むことすらなく、平気な顔でボクを睨んだ。


ガブリアス「その程度かぁっ!?」

ラビフット「ぐあっ!!」


技ですらない腕のただの薙ぎ払いで、
体が簡単に浮き、飛ばされる。

敵にこっちの攻撃が効かないのは、
タイプ相性も関係しているのだろう。
しかしそれ以上に純粋な力の差が大きすぎた。


ガブリアス「もう少しやれると思ったんだが……見込み違いだったか?」

ラビフット「くっ!」

ガブリアス「ならこれならどうだ?」


ガブリアスがニヤリと笑って、夜空へ高く吼える。
塔のあちこちから屋上へと黄色い砂が吹き上がり、
旋風と共に激しい砂嵐が吹き荒れた。
 ▼ 125 27pJN4xS/A 20/04/27 21:04:31 ID:1eDALJe2 [22/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ラビフット「ま、まずい……!」

ガブリアス「おぉら!」


視界が黄色く濁り、敵の姿が消える。
目を凝らして敵を探していると、正体不明の攻撃で肩が打ち上げられた。
よろめいた次は膝を打たれ、地面に崩れる。


ラビフット「くそっ……!」

ガブリアス「つまんねえな」


敵の位置がまるで分からないまま、
全身に攻撃を打ちつけられ、
ただ体を庇うことしか出来なかった。


ラビフット「うっ、ぐッ! うあああっ!」


敵の攻撃に為す術もない悔しさが、
それこそ砂塵のように心をザラザラと支配する。
何か、反撃の糸口を見つけなければ、
直接攻撃できなくとも少しでも状況を変えなければ……。


ラビフット「どこだ! 出てこいコノヤロォーッ!」


ガブリアスを探しているふりをして、
キョロキョロ周囲を観察する。

するとある方向に、
この砂と攻撃の嵐から抜け出す方法を見つけた。
吹き荒れる砂嵐に打たれながら何とか立ち上がる。
そして足に炎を纏わせる。
イメージするのはロズレイドさんのような軽快な跳躍だ。
最初と同じ要領で、バネのように足を縮めて体を打ち出した。

真上方向へぶっ飛ぶ。
砂嵐の中では自分が今、
どこに立っているのかすら分からなくなる。 
その時上を見ると砂塵が薄いことに気づいた。

どうやら砂嵐地帯の広さは確保できても、
高さは確保できなかったらしい。
砂嵐を抜けて空のど真ん中に飛び出す。
視界が自由になり、
砂粒が肌に当たらないだけでも爽快であった。
 ▼ 126 27pJN4xS/A 20/04/27 21:05:47 ID:1eDALJe2 [23/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

しかしここからどうするかは何も考えていない。


ガブリアス「上に逃げるってのは良い判断だ」

ラビフット「ッ!?」

完全に油断している耳元で呟く。
いつの間にか真後ろに飛んできていたガブリアスが、
手刀を振り上げる。空中では避けようが無い。


ガブリアス「だがそれまでだ」


ドスッ!!!

ラビフット「がっ、は……!?」


容赦なくドラゴンクローが振り下ろされる。
その衝撃に耐えられず、攻撃の勢いのままに殴り飛ばされた。

体が言うことを聞かず、宙を舞う流れに全く抵抗できない。
こちらを見下すガブリアスの眼が遠ざかっていき、
塔の壁が端に見え始めた。
どうやら体は塔の外側へはじけ出されて、
そのまま落下していたようだった。


ラビフット「し、ぬ……」


そう思った。
あそこまで完膚なきまでにやられれば納得というか、
これじゃあ仕方ないな。と笑って逝けるというものだ。
死を覚悟して、目を瞑った。


『ダメに決まってるだろ!!』


胸の奥から、誰かの声が響いた。
 ▼ 127 27pJN4xS/A 20/04/27 21:07:59 ID:1eDALJe2 [24/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
なんでだよ。
もう充分頑張って生きただろう。


『そんなことないよ! まだ女の子とキスしたことないし!』


ああ、そうか。ルガルガンの声だ……。
正体に気づいた時、ふと、目を開ける。

真っ逆さまに落ちていく最中、視界に広がるのは真っ暗な空だ。
ただ一点を覗いて……

……曇天の夜空に輝く、唯一の星があった。
それは在りし日のルガルガンと見つけた星だ。


決して強い光ではないものの、
太陽も、月も、夜空も奪われた暗闇の世界では、
眩いほどの一等星。

それを見た瞬間、
稲妻的にルガルガンの顔が脳内に過ぎる。
彼が、隣で目を輝かせながら笑っている顔が。

さらに一つの星がトリガーとなって、
あらゆる記憶が電流のように全身を駆け巡った!

ガーディとチェリムの仲睦まじい様子や、
ロズレイドが子どもたちを可愛がる姿、
そしてまだヒバニーだった頃のボクと、
オンバットが仲良く星を見上げている姿。

電流がバチバチと火花を散らす。

これは走馬灯ではない。
これはボクが取り戻さなければいけないものだ。
ボクらが求めていた。
太陽が昇った世界での眩いくらいの明るい日々だ。

ボクは、それが欲しい! 
立派に戦ったから死んでもいい、なんて嘘だ!
ボクはあの燦燦たる光を掴むために、ここまで来たんだ!


ラビフット「まだだぁぁーッ!!!」


離れていく星へと右手を伸ばして、
その夜光を力強く握りしめた。


その瞬間、掲げた拳が、カァッ!と光を放つ。
発光は手に留まらず、順番に腕が光り、
胸へと連鎖的に光り始める。
さらに胸から全身へと燃え広がるように発光していった。

やがて全身を包み込んだそれは、
ポケモンの強き思いに答えた"進化の光"である。
 ▼ 128 27pJN4xS/A 20/04/27 21:08:23 ID:1eDALJe2 [25/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


──── その光は塔の周囲だけでなく、
幻の大地全域を眩く照らした。


ピカチュウ「あの光は!?」


時限の塔の付近の空で何かが、
白と青が入り混じったような光を放っている。


オンバーン「ラビフットよ……!」

ピカチュウ「!」


その光を見て、オンバーンが瞳の奥を輝かせている。
彼女は世界を照らす太陽のような光に、
かつて自分を救ってくれたヒバニーの炎を重ねていた。


オンバーン「私、行かないと……」

ピカチュウ「はい、どうぞ」


引っ込めていたオレンの実を差し出す。
それをひと口でたいらげて、大きな翼を羽ばたかせた。


オンバーン「ありがとう、ピカチュウ」

ピカチュウ「行ってらっしゃい」


翼が上下するたびに、ぶおん!ぶおん!と突風が起き、
巨大な体躯が上昇する。
そして自慢のスピードを持って、眩い光に向けて翔ける。

 ▼ 129 27pJN4xS/A 20/04/27 21:09:20 ID:1eDALJe2 [26/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


──── 強すぎるほど眩しい光の中、
身体が尋常ではないほど熱い灼熱に満たされているが、それも不思議と心地好かった。

腕が、脚が、体全体が大きく変化していく感覚。
そして新しい形になった自分の腕が、光を突き破る。


パァンッ!!


光が弾けて自分の姿が顕になった。

これが"エースバーン"……。


エースバーン「あっ!!」


しかし悠長なことを言ってる暇はない。
進化しても以前ボクは落下中なのだから。
長くなった手足で塔の瓦礫を掴もうとするが、
あともう少しのところで届かない。

このままでは結局地面に墜落して、進化損になってしまう。
 ▼ 130 27pJN4xS/A 20/04/27 21:09:44 ID:1eDALJe2 [27/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

と思ったそこへ。
甲高い鳴き声とともに、
巨大な翼を持ったドラゴンがこちらへ飛んで来るのが見えた。


バサッ!バサッ!


オンバーン「掴まって!!」

エースバーン「わかった!」


オンバーンがわずか下を通過したところに、
しっかりと掴まる。
背中に乗ったボクを確認すると浮いている瓦礫を躱して、塔の真下を横断した。


エースバーン「この上に時の歯車を納める石版がある! だけど先にガブリアスを倒さないといけない! 一緒に戦ってくれるかい?」

オンバーン「もちろんよリーダー」


「しっかり掴まってて!」と叫ぶと同時に、
オンバーンの体が縦になり、急上昇する。

言われた通りしがみつくのに必死でいるうちに、
あっという間に塔の頂上へ到着した。

しかしそこは砂嵐が吹き荒れており、
ガブリアスの場所もわからなければ、立ち入ることもできない状況だった。


エースバーン「気をつけて、ガブリアスは"砂隠れ"で砂嵐に紛れてしまう」

オンバーン「そういうことなら、任せて!」


オンバーンが何度も翼を羽ばたかせると、
"暴風"を起こして砂嵐を跡形もなく吹き飛ばしてしまった。


エースバーン「す、すごい……!」

オンバーン「見つけたわよ。ラスボス」


ガブリアス「そうこなくちゃあな」
 ▼ 131 27pJN4xS/A 20/04/27 21:10:39 ID:1eDALJe2 [28/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


砂塵の中から現れた敵に挨拶代わりの"ばくおんぱ"を放つ。


ガブリアス「ぐぅっ!」


敵が怯んだところで、エースバーンが追撃する。
背中から跳躍して、炎のボールを作り出した。


エースバーン「"かえんボール"!!」


新技がガブリアスに炸裂したことで、
時限の塔最上階が炎燃え盛るフィールドに様変わりした。


ガブリアス「今のは効いたぜ……」


それでもどこか余裕を感じさせる表情に、
2匹はにわかに焦る。
今オンバーンと上ってきてわかったが、
塔はほぼ壊滅状態であり、残すはこの最上階と下1Fほどのみだった。
完全に塔が壊れる前に時の歯車を納めなければいけない。


ガブリアス「さぁ最期の時まで楽しもうぜ!!」

エースバーン「絶対に終わらせない!」
 ▼ 132 27pJN4xS/A 20/04/27 21:11:44 ID:1eDALJe2 [29/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

そこからはまさに互角の戦いだった。
2対1で戦っても勝ち切れないガブリアスの強さに、
焦りが生まれ、徐々に戦況はガブリアスの優勢に傾いていった。
それでも何とか勝ち筋を探そうとする中、
オンバーンがストーンエッジで撃ち落とされた。
絶望的な窮地に陥る。


エースバーン「くっ、うう……」

ガブリアス「はあ……はあ……良い戦いだった。こんなにダメージを負ったのは久々だぜ。強かったよ。お前ら」

エースバーン「ま、まだだ……」

ガブリアス「いいや、終わりだ」


背負っていたバッグがはぎ取られる。
その中に時や歯車が入っているからだ。


ガブリアス「これが無ければ、"星の停止"を止めるすべは無くなるよな」


そう言ってバッグをひっくり返す。
中から5つの歯車が落下し、地面に落ちて砂に変わった。


ガブリアス「は……?」

エースバーン「あの時のお返しだ」

ガブリアス「偽物!? まさか最初から!」


振り向くと、
オンバーンが石版に本物の時の歯車を填めていく。
気づいたが時すでに遅し。

すでに4つの歯車が納められており、
最後のひとつを石版に填める。


ガブリアス「やめろォーッ!!」

オンバーン「……」


オンバーンの手が、時の歯車も持ったまま石版の前で止まる。
いや、停止する。
 ▼ 133 27pJN4xS/A 20/04/27 21:12:41 ID:1eDALJe2 [30/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

エースバーン「オンバーン、どうしたの……?」

オンバーン「……」

ガブリアス「ハハッ。ハハハハハハッ! どうやら神は俺に味方をしたらしい」

エースバーン「……な、なんで……」

ガブリアス「お前が囮になって、歯車を託したポケモンはあと一歩のところで時の停止に見舞われたらしい」

エースバーン「そんな……」

ガブリアス「最後は俺の勝ちだ」

エースバーン「ニトロチャージ!」


時の歯車を回収しに行こうとするガブリアスにしがみつく。
まとった炎は弱々しく燃える。


ガブリアス「往生際が悪いぜ」

エースバーン「うぐっ!」


殴られて、無理やり引き剥がされても、
再度立ち上がって突進する。


エースバーン「ニトロチャージ!!」

ガブリアス「ああ!? 大人しく寝てろってんだよ!」

エースバーン「絶対行かせない……!!」

ガブリアス「……!」


何度引き剥がしても、何度殴り倒しても、
炎をまとって立ち上がる。
力尽きるどころか。
立ち上がる度にスピードは速くなり、
立ち上がる度に炎は熱く揺らめく。


ガブリアス「ど、どうなってやがる……何故だ! なぜ倒れねえ!?」

エースバーン「……ファーストキスが、まだだから」
 ▼ 134 27pJN4xS/A 20/04/27 21:13:46 ID:1eDALJe2 [31/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ガブリアス「はっ……!?」

エースバーン「絶対にお前を倒して、みんなを元に戻す!」


そのニトロチャージでついに、ガブリアスを押し倒す。


ガブリアス「馬鹿なっ……こんな……!」

エースバーン「これで終わりだ! フレアドライブ!!!」


業火をまとい、自分と共に相手を焼き尽くす。
その炎は随分長く燃え続け、ガブリアスが声すらあげなくなった頃、ようやく消えた。

自分へのダメージも激しく、その場に倒れる。

しかしまだやらなきゃいけないことがある。


最後の力を振り絞り、時の歯車を石版にはめ込んだ。

そして気を失った。


その体をエメラルドグリーンの光の粒が照らす。
時限の塔が全体がそのような光を放って、
粉々になった建造物をゆっくりと再生していった。


 ▼ 135 27pJN4xS/A 20/04/27 21:14:14 ID:1eDALJe2 [32/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



エースバーン「……ん……んん……」

オンバーン「あっ! おきたわねっ!」

エースバーン「オンバーン?」


エースバーンは目の前にある顔を見て、
その意味を理解するまで少し時間を要した。


エースバーン「オンバーン! 戻れたの!?」

オンバーン「あ、あーヴヴん! あなたのお陰さまでね」


エースバーンは時限の塔の頂上で、
怪我も毒も完治した状態で目覚めた。


オンバーン「私がふっかつのタネで助けてあげたの」

エースバーン「そうなんだ。ありがとう。オンバーン」

オンバーン「……!? と、とにかく。塔は元の形に戻って、私もこの通りよ。降りて他のポケモンたちのことも見に行きましょう」

エースバーン「あ、待って!」 

オンバーン「なに?」

エースバーン「星が見えるよ」


空が時を刻み始めたことで曇天は晴れ。
見上げるとさっきまでの真っ暗闇が嘘のように、
山盛りの星が煌めいていた。


オンバーン「わあ……! すごい!」

エースバーン「星ってこんなに綺麗だったんだね……ビックリするくらい」

オンバーン「本当にね……」


しばらく星空を堪能した後、塔を降りると。
下にいるルカリオも元に戻っており、
ボクらが見に行く前にピカチュウと合流していた。

全員しっかり揃って、幻の大地を出る。
時限の塔が再生したからか破れていた時空の狭間は、少しづつ戻っていった。
 ▼ 136 27pJN4xS/A 20/04/27 21:14:40 ID:1eDALJe2 [33/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ギルド本部に向かう前に森の砦に立ち寄る。
その最上階には、星空を見つめるルガルガンの姿があった。

そのシルエットを見て一瞬止まったままかとドキッとしたが、
彼はボクの方を向いて、驚くような素振りを見せた後ニコリと笑った。
すぐさまそこに駆け寄る。
オンバーンたちは空気を読んで近づいてこなかった。


ルガルガン「いつの間にか、星がたくさん出ててね……話したいことが、いっぱいだよ」

エースバーン「うん、ボクも……」

ルガルガン「君が助けてくれたんだよね……止まっちゃった僕を」

エースバーン「うん……」

ルガルガン「そっか……う、うぅん。よかった。みんな無事で……ぐすっ」


すすり泣く肩を、ギュッと抱き寄せる。
この姿じゃ安心させるどころか余計不安にさせるかもしれないけれど……。


エースバーン「勝手に進化してごめんよ。勝手に全部終わらせちゃってごめんよ」

ルガルガン「な、んで……謝るのさ。君は悪くないのに」

エースバーン「ボクもルガルガンと歩みたかったから……」

ルガルガン「優しいね、変わったよ……」

エースバーン「それも、ごめん」

ルガルガン「うう……これから僕ら、また一緒に歩めるかな……?」

エースバーン「うん。きっと。ボクもそうしたい」


ルガルガンも一緒に、ギルド本部へ帰る。
本部ではウインディがいつの間にか優秀なお手伝いさんとして可愛がりており、すっかり馴染んでいた。


ルガルガン「すごい! 進化したんだね!かっこいいよ!」

エースバーン「変わったなぁ〜」

ウインディ「そっちも人のこと言えないでしょ……ありがと。ラビフットの言葉のお陰でみんなの力になれたよ」

エースバーン「どういたしまして」
 ▼ 137 27pJN4xS/A 20/04/27 21:15:28 ID:1eDALJe2 [34/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ロズレイド「おや、新しい伝説の探検隊のお帰りのようだ」

ルガルガン「ろ、ロズレイドさん!!」

エースバーン「そういう言い方やめてくださいって」

ロズレイド「君たちのおかげで世界が救われたのだから、当然だろう」

ウインディ「ロズレイドさん! レントラーさんの体温が安定して、目を覚ましましたよ」

ロズレイド「まあ、ウインディ君は本当によく働いてくれる良い子ね。素晴らしいわ。うふふっ」

ルガルガン「!?」

ウインディ「よし、もっとがんるぞー!」

ルガルガン「えっ、えっ、何今の?」

オンバーン「あー実はね……」


ルガルガンがいなかった間本部であったことを話す。


ルガルガン「……ウインディ!」

ウインディ「えっ? な、なに?」

ルガルガン「僕は君のことを子どもだと見くびっていたよ……。これからは君を僕のライバルとみなす!」

ウインディ「お、おおお! ライバル……! ついにルガルガンたちにまで認められてるってことかオレ……!?」

エースバーン「なんかすごい勘違いしてない……?」
 ▼ 138 27pJN4xS/A 20/04/27 21:15:52 ID:1eDALJe2 [35/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ロズレイドさんの手の花は、
この後太陽が昇るようになって次第に元に戻っていった。
花の香りを嗅げないイライラを、
チェリムやウインディで癒していたから、
ルガルガンが凄まじく嫉妬していた。

ちなみにアーゴヨンの毒の問題は、
しばらくすると特効薬が作られて解決した。
というのも……


ルージュラ「ああ! 美しきロズレイド様! 私は貴方の下僕です! 何なりとお申し付けください!!」

ロズレイド「毒の治療薬を作りなさい。あと私の半径5m以内に近づかないで」

ルージュラ「承知しました!!」


という具合だそうで。
ディアルガ殺害事件は大変な事件だったけど、
少しずつみんなが元の生活に戻り始めていて、ホッと一安心していた。

 ▼ 139 27pJN4xS/A 20/04/27 21:16:29 ID:1eDALJe2 [36/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


そんなある日の夕方、
ボクはオンバーンに呼び出されてギルド本部の裏まで来ていた。


オンバーン「急に呼び出してごめんなさい。話したいことがあって……」

エースバーン「どうしたの? なんか愛の告白みたいだね」

オンバーン「ち、違うわよ! ただ、その人前では話しづらいから」

エースバーン「そっか。何?」

オンバーン「ずっと、冷たく当たってきてごめんなさい!」

エースバーン「……え?」

オンバーン「ラビフットになった時のこと覚えてる?」

エースバーン「うん。忘れもしないよ」


ダンジョンのポケモンに仲間が殺された。
その時、怒りとか悲しみとか憎しみとか、
そういうネガティブな感情が爆発して進化した。

それがラビフットの始まりだった。


オンバーン「あんなことがあって貴方が一番辛かったはずなのに……私は私の勝手な気持ちを押し付けて、失望した」

エースバーン「……」

オンバーン「ずっと謝りたかったの! でも私頑固だから」

エースバーン「うん。大丈夫。言ってくれてよかったよ」

オンバーン「……やっぱりラビフットの頃の方が良かったかも」

エースバーン「えっ! なんで!?」

オンバーン「優しくなりすぎて気持ち悪い」

エースバーン「酷いなぁ……。そうだ。今日は僕からも提案があるんだ」

オンバーン「提案?」

エースバーン「ボクの探検隊に入らない?」

 ▼ 140 27pJN4xS/A 20/04/27 21:16:48 ID:1eDALJe2 [37/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

この度、ボクが進化したことでルガルガンとの関係性がギクシャクしたことから、心機一転。
チームをリニューアルしてゼロからやり直そう話し合っていた。


エースバーン「というわけで、オンバーンが新生チームのメンバーになることになりました!」

オンバーン「よろしくお願いします」

ルガルガン「いえーい」

エースバーン「これからは3人編成の探検隊として活動していきます!」

オンバーン「ところで家はどうすんの?」

エースバーン「その件だけど、メンバーが増えるせっかくの機会だから、家を建て替えちゃおうかなって。でっかいやつに」

ルガルガン「やったあぁーっ!!!」

 ▼ 141 27pJN4xS/A 20/04/27 21:17:18 ID:1eDALJe2 [38/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ギルド本部くらい、とまではいかないにしても、
前までの小さく殺風景な家に比べると、
かなり豪華な家を建てた。
ちゃんと3匹ごとの部屋も別れている。
後はチームの看板を立てるだけだ。


エースバーン「と、新生探検隊のチーム名だけど。何にする?」

オンバーン「正直どうでもいいわ」

ルガルガン「はい! 案あるよ!」

エースバーン「どうぞ」


ルガルガン「2匹の名前が被ってるから、"バーンバーン"!」

オンバーン「却下よ」

エースバーン「そうだね」



オンバーン「前の名前はどうだったの?」

エースバーン「前は『ムーン』だった。月って意味のムーン」

オンバーン「じゃあ、今回は太陽でいいんじゃない? どう?」

ルガルガン「僕はいいと思うよ」

エースバーン「じゃあそれで行こう。今日から探検隊『タイヨウ』始動だ!」

「「おー!」」


木の良い香りが漂う新築の、
入口の横にポストと看板が立てられた。


チーム名『タイヨウ』

メンバー
『エースバーン、ルガルガン、オンバーン』




【スワップSS】ボク「また世界が停止する日?」【ポケダン】


──────────── 完。
 ▼ 142 るナ◆3HuqJ/xx.U 20/04/27 22:09:33 ID:HtzARCuo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙!
 ▼ 143 ルップル@みどりのプレート 20/04/28 16:23:48 ID:9sDAb8BM NGネーム登録 NGID登録 報告
とてもいいSSだった!乙!

……アーゴヨンにラスターカノンは効果抜群じゃないよ(ボソッ)
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