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【お仕事SS】炎の花

 ▼ 1 ラダリ◆6.CdiwQWv2 20/08/19 23:11:38 ID:rW5UHANY [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
蒸し風呂のような熱帯夜の中、団扇をひたすら振り続ける。

道に並ぶ屋台の群れの向こうに、エンジュのシンボル、焼けた塔がぼんやりと映った。

ふと、町並みから腕時計に目を落としてみると、午後の7時32分。

俺たちの仕事、花火大会の始まりが近いことを意味していた。
 ▼ 2 ラダリ◆6.CdiwQWv2 20/08/19 23:12:22 ID:rW5UHANY [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……もうすぐだな、バクフーン」

「ックフーン!」

俺を包む熱の要因の7割、俺の相棒のバクフーンは、背中に猛る炎をいつもより輝かせていた気がした。

「さっ、持ち場に行くか…………」

俺はバクフーンをボールに戻し、祭りに酔いしれる人の海に駆け出していった。
 ▼ 3 ラダリ◆6.CdiwQWv2 20/08/19 23:13:16 ID:rW5UHANY [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
ーーーーーーーーーーーー

「準備完了。8時丁度に打ち上げられますよ」

コンロの炎に塩を撒くと、炎が黄色になるように、様々な成分によって、炎の色は七変化するのだ。

俺の目の前にある花火玉も、そして人も、ポケモンもそうだ。
 ▼ 4 ラダリ◆6.CdiwQWv2 20/08/19 23:13:58 ID:rW5UHANY [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
火薬が、色の素となるものに触れ、色とりどりの炎となって爆発する。

開いた花は、きっと美しいのだろう。

……………きっと。

「………バクフーン」

ふと俺を襲う寂しさから逃れようと、バクフーンをボールから出す。

「俺は…………誇れる人間か?」

俺は昔、悪に触れた、黒色の炎だ。夜空に、黒い炎の花は映らないように、俺の命は輝くものではない。
 ▼ 5 ラダリ◆6.CdiwQWv2 20/08/19 23:16:45 ID:rW5UHANY [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「バックフッ」

バクフーンにほんの少しの火の粉を吐かれた。

「あっつ……………あっ、赤い」

赤。ずっと俺の隣にいた、赤い炎。

「………そうかよ、ありがとな」

忘れてた。俺にはこいつがいたんだった。

赤と黒の混じり合った花弁たち……

まるで、3000年程前、遠く離れたカロスの伝説にある、「永遠の花」のような、燃える命の花。

そうだ。俺は生きている。例え黒い炎が夜空に映えずとも、生きている限り朝日は昇り、黒すら輝く世界がやってくる。

俺は、下を向けた顔を上げ、腕時計に戻した。

午後7時43分。あと17分で、花火の打ち上げ……

「………うし!やってやるか!」

俺の大仕事が、始まる。さあ、あの空にドカンと、炎の花を咲かせてやろうじゃないか。
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