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SS

【小説っぽい】思い出巡り【SS】

 ▼ 1 カ◆Ibi/.BQaas 16/07/13 20:17:07 ID:j8bPCGAQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
注意、キャラ崩壊、ポケモンの言葉は通じない


全部書いてますが、長いので何日かに分けて投稿します。

本編次レス
 ▼ 43 カ◆Ibi/.BQaas 16/07/14 20:50:35 ID:R/eg5kdo [1/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「レッド様。グレンタウンのカツラ様でしたら、炎タイプの使い手でございますし、引き受けて下さいますかもしれませんよ」

「カツラさんか。……確かにそれも良いかもな。ここからセキチク経由で海を渡ることになるけど」

「レッドさま。承知してらっしゃるとは思いますが、セキチクから向かうとなると、ふたごじまを越えなければなりませんが」
 ▼ 44 カ◆Ibi/.BQaas 16/07/14 20:51:06 ID:R/eg5kdo [2/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「あぁ、分かってるさ。あとは、そうだな波乗りが出来るポケモンを連れて行かないとな。ナツメは流石に出来ないだろう ?」

 当然だろ。猫型のポケモンは水が嫌いなんだよ、ボクは炎タイプだし尚更だ。

でも、そうか。海が見れるのは悪くないね。テレビで見たやつは、とても綺麗だったから。

「兎も角、ありがとうエリカ。じゃあ……またな」

「ええ、さようならレッド様。お気をつけて」

 さて、先ずはセキチクだっけ ?そこのジムリーダーさんはどうな人かな。

「セキチクに向かうなら、サイクリングロードだな。ナツメ、自転車のカゴに入ってもらってもいいか ?」

 構わないさ、そのくらい。でも、安全運転で頼むよ。
 ▼ 45 カ◆Ibi/.BQaas 16/07/14 20:54:08 ID:R/eg5kdo [3/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〈グレンタウン・カツラ〉


「さぁここだ、サイクリングロード。駆け降りるぞ、落ちるなよナツメ」

 長い下り坂だね、先が見えないや。ここを降りるのか……落とさないでね。落とされたら、ボク一生恨むから。

 レッドが自転車に跨り、ボクをカゴに乗せる。大地を蹴ると、忽ちスピードが増し、景色が飛ぶように過ぎていく。

 うわわ、速い、早過ぎるよ !ちょっと飛ばし過ぎじゃないの。……でも、少し楽しいかもコレ。

慣れてきたら気持ちが良いし。うん、なかなか良いね。
 ▼ 46 カ◆Ibi/.BQaas 16/07/14 20:57:57 ID:R/eg5kdo [4/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 あっという間にサイクリングロードを越え、セキチクの少し手前。急にレッドが止まる。

「お、見てみろよナツメ。マトマの実だ。今年も真っ赤だなぁ」

 真っ赤ね。確かに、レッドの帽子の色よりも深みがある気がする。

レッドの色であり、炎タイプのボクの色でもある。

きっとボクが見る色とレッドが見るものは違うんだろうけれども、コレが『真っ赤』っていうのは覚えたよ。

「食べてみるか ?辛いから俺はいいけど」

 ボクも好きな味じゃないし、遠慮するよ。

「はは、いらないか。じゃあ、セキチクでラプラスを手持ちに入れてグレンへ向かうか」
 ▼ 47 カ◆Ibi/.BQaas 16/07/14 21:00:20 ID:R/eg5kdo [5/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 セキチクに着くと、先ずはポケモンセンターで休憩を取り、夜を明かした。

次の朝、ラプラスを引き出し19番水道へ向かう。

 ポケモンセンターの隣にはこの町のジムがあった。寄らないのか、と意思表示をすると、レッドが苦笑して答える。

「あー、セキチクジムはなぁ。今はアンズがやってるんだっけ ?あんまり面識が無いんだよ」

 成る程ね。ふーん、レッドも関わりが薄い人っているんだ。いや、当たり前だけどさ、顔が広いから違和感がね。

 19番水道が近くなると、ざあざあという音が聞こえた。海が近いのだろう。

向かうに連れて、音はごうごうという轟音に変わる。

 な、何だこの音は。……これが海。うわー広いなぁ。本当、全てを飲み込んでしまいそうなくらい、大きい。

「さぁ渡るぞ。出てこいラプラス !」

 レッドがラプラスをボールからだし、ボクを抱え上げる。

 え、ちょ、無理無理ムリむり !

「い、痛いナツメ !爪 !爪立ってる !」

 レッドが暴れるボクをラプラスの上に乗っける。ここでは逃げ場が無い。

どうしようもなく、ボクは真ん中で小さくなる。
 ▼ 48 カ◆Ibi/.BQaas 16/07/14 21:07:21 ID:R/eg5kdo [6/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
『そんなにならなくても、海は襲ってこないよ』

 ラプラスがボクに、そう話しかけてきた。

『そうは言ったって、こんなに大きくて底が見えないんだもの、いつ飲み込まれたっておかしく無いよ。キミも陸に上がった方が良いんじゃない ?』

 ボクが応えると、ラプラスが笑いながら言う。

『確かに、海はその位の力を持っている。けれどもとても穏やかで、襲ってくることなんて無いさ』

 そんなボク達の会話に割って入るように、レッドがラプラスに乗り、告げる。

「ラプラス、出発してくれ。場所はグレンタウン。取り敢えずふたごじまだな」

『りょーかい』そう言い、ラプラスが話を切り上げ、泳ぎ始める。

 本っ当にだいじょーぶ ?ボク怖いんだけど。
 ▼ 49 カ◆Ibi/.BQaas 16/07/14 21:13:34 ID:R/eg5kdo [7/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 進み始めると、ラプラスは意外と速く、セキチクはすぐに地平線へと消え、周りは海だけになった。

 輝く太陽。どこまでも広く、青い海。

字面は良いけど実際はそこまで良いものじゃ無いね。むしろ苦痛だよ。

やっぱり、憧れは憧れのままが1番良くて、それに具体的な形が定まると一気にその輝きを無くしちゃうな。
 ▼ 50 カ◆Ibi/.BQaas 16/07/14 21:20:06 ID:R/eg5kdo [8/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 激しい轟音にようやく慣れてきた頃。太陽は燦々と輝いているのに、少し肌寒さを覚えた。辺りの気温が下がっている。

「ふたごじまが近づいてきたな」レッドが1人呟く。

 寒い。

寒気という曖昧な物が、明確な寒さに急速に変わっていった。

 寒くて周りが水だなんて、僕からしたら最悪だよ、ここは。

 ぼんやりと、遠くに島が見えた。冷気による濃霧に包まれ、何処か神秘的で無骨なその島は、周りの冷気を従えているようにも見える。

 実際に従えているのは、島の中にいる鳥さんらしいけどね。伝説のポケモンに鳥さんは失礼かな ?

でも、寒くするなんて、全く迷惑な奴だよ。するならもっと住みやすいようにして欲しいもんだね。
 ▼ 51 カ◆Ibi/.BQaas 16/07/14 21:21:31 ID:R/eg5kdo [9/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「さぁ、上陸するぞ。ここを越えたら、グレンタウンだ」
 島に着くと、レッドはラプラスをボールにしまった。
「ありがとう、ラプラス。また頼むな」

 島の入り口の洞窟からは、より一層と鋭い冷気が吹き出している。

 うぅ寒い……ボクは寒いのが苦手なんだ。肉球が凍傷になっちゃう。

 急にレッドがボクを持ち上げる。

「ここは起伏が激しいからな。抱えてやるよ」

 ありがとう。でも、無理はしないでね。
 ▼ 52 カ◆Ibi/.BQaas 16/07/14 21:23:28 ID:R/eg5kdo [10/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 洞窟に入り、早速レッドはハシゴを降り始めた。降り終わると、すぐにまた違うハシゴを降りる。

さらにもう一回ハシゴを降りると、今度は入り組んだ迷路のような形状の場所。

 何だか、進入を拒んでるみたいだね。

 その迷路の様な場所を少し歩くと、下に続く場所が見えた。

「ここを降りると、フリーザーがいるんだ」

 レッドの声が洞窟内にこだまする。

 この寒さの元凶かぁ。見てみたいけど、凍らされそうだから良いや。

 会わない方が良い、というのはレッドも同じ様で、また歩き始める。

どうやらさっきのも、会いたいか ?ではなく、ただ伝えたというだけらしい。
 ▼ 53 カ◆Ibi/.BQaas 16/07/14 21:27:27 ID:R/eg5kdo [11/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 そこからいくつか角を曲がり、開けた場所に着いた。2つあるハシゴの手前側を登り始める。

 ボクを抱えながらじゃあ大変そうだけど、ボクはハシゴを登れないから。ゴメンよレッド。

 そんなボクの視線に気付いた様で、レッドが「気にするなよ。全然平気だから」そう、言った。

 登った先の所から、もう2回ハシゴを登ると、出口が見えた。

暗い洞窟の終わりを告げる、明るく白い光。

「ふぅ〜。ようやく抜けたな。あー寒かった」

 もう2度と御免だね。……で、また海を渡るのかぁ。
 ▼ 54 カ◆Ibi/.BQaas 16/07/14 21:31:28 ID:R/eg5kdo [12/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 嫌がるボクとは関係無しに、レッドはラプラスを繰り出した。

 例によって嫌がるボクを、レッドは傷だらけになりながらラプラスに乗せる。

 ボクだって悪いとは思ってるんだからね。ただ体が勝手に、本能ってやつ ?

「さぁグレンタウンはすぐそこだ。ラプラス、頼む」

 レッドに応える様にラプラスは進み始める。あぁ、陸が恋しい。

 しばらくすると、遠くにグレンタウンが見えてきた。

グレンタウンは火山島だ。ジムリーダーは炎タイプの使い手らしい。

「着いた〜。ふぅ、ありがとうラプラス。ゆっくり休んでくれ」

 レッドがラプラスをボールに戻す。
 ▼ 55 カ◆Ibi/.BQaas 16/07/14 21:32:38 ID:R/eg5kdo [13/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「さて、グレンジムに向かうか」

 何もないから、寄り道するところもないね。ん ?あれがジムかな。誰か立ってるよ。
「カツラさーん」

 レッドが駆け寄る。どうやらあの人がジムリーダーらしい。

「おお、レッド。エリカきら話を聞いてな。そろそろかのぅ、と思って待っておったんじゃ。して、そいつが預かって欲しいポケモンか ?」

「はい、ニャビーっていう種族で、ニックネームは『ナツメ』です」

「儂は構わんのじゃが、手持ちのポケモンがどうだかわからんでな。こればかりは相性じゃからのぅ」

 レッドからは陽気な人だと聞いていたんだけど、案外真面目だね。
 ▼ 56 カ◆Ibi/.BQaas 16/07/14 21:34:23 ID:R/eg5kdo [14/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 カツラが手持ちのポケモンを外に出す。右から、ウインディ、ギャロップ、ブーバー、ガーディだ。

「あれ ?ガーディは新参ですか ?前は居ませんでしたよね」

「そうじゃな、今は修行中じゃ」

 ガーディって、ボク達の宿敵の犬型ポケモンじゃないか。

 そのガーディが低く唸る。

『何だよ、やるのか犬っころ』

『うるさい !お前なんかくるんじゃない !ここにお前の居場所なんて無いし、ご主人はもう一杯一杯なんだ !』
 ▼ 57 カ◆Ibi/.BQaas 16/07/14 21:35:36 ID:R/eg5kdo [15/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 慌てて、レッドがボクを抑え、カツラがガーディを叱り付ける。

「これ !止めんかガーディ !」

 クゥーンとガーディが項垂れる。こいつらは主人には従順なんだ。

 ガーディが呟く。

『ご主人は、ご主人は、俺みたいに傷ついたポケモンの世話で一杯一杯なんだ。更にもう一匹なんて……それに、お前みたいにボールに入らない変わり者なんて』

 こいつもボクと似た様な過去があるのかな ?

『言われなくても、ボクだって願い下げだね。それにお前のご主人は良いって言ってるじゃないか。

お前は、自分の意見をご主人様を使って押し付けてるだけで、そんなのただのエゴだよ。

それにご主人ご主人って、そんな他人行儀な呼び方、本当に信頼関係があるのかも疑問だね』
 ▼ 58 カ◆Ibi/.BQaas 16/07/14 21:37:22 ID:R/eg5kdo [16/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
『うるさいうるさい !ご主人を馬鹿にするなら俺が黙っちゃいないぞ !それに、ご主人の事を言うならお前だって。お前の主人、凄く嫌な臭いがする『黙れ !!』

 遮る様に怒鳴る。構わずにガーディは続ける。

『凄く嫌な臭い。もう、長くは無いような臭いが』

『ボクは黙れって言ってるんだ !!』

 ガーディに飛びかかる。が思っている様な軌道は描かない。3年戦って無いんだ。当然だろう。

 飛びかかろうとするボクをレッドが抱え上げて止める。

「ナツメ !止めるんだ」

「これ !お前はもうボールに戻ってろ !」

 ガーディがボールにしまわれる。いい気味だ。
 ▼ 59 カ◆Ibi/.BQaas 16/07/14 21:38:56 ID:R/eg5kdo [17/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「なんか、何まり歓迎されて無い感じですか ?」

「そうじゃ、な。こいつらも、儂が老い先短いから心配なんじゃろ」

 ハハッ、とレッドが苦笑いを浮かべる。

こういったブラックジョークは笑えないよね。レッドは特に。

「まぁ、難しそうですね。すいません、迷惑かけました」

 ジムを出てレッドが独りごちる。

「こっからだと、マサラか。あー結局ナツメの引き取り手が見つからなかったなぁ」

 しょうがないよ。ボクが断ってるんだからさ。
 ▼ 60 カ◆Ibi/.BQaas 16/07/14 21:39:36 ID:R/eg5kdo [18/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 レッドはグレンの南側の海でラプラスをボールから出し、マサラに戻る旨を伝えた。

『新しい主人は見つからなかったのかい』

『ボクが嫌だったからね。レッドの人徳の問題じゃ無いよ』

『そんな事は分かってるよ』

「さぁナツメ、乗るぞ」

 うぅまた海か。

 なるべく暴れ無い様我慢をし、何とかラプラスに乗った。爪は立ってたけど。

「お〜えらいえらい。もう慣れたかな」

 馬鹿にしないでよ。それに、慣れるわけ無いじゃないか。

レッドの為を思って我慢したんだから、褒めるんじゃなくて感謝して欲しいものだね。
 ▼ 61 カ◆Ibi/.BQaas 16/07/14 21:41:09 ID:R/eg5kdo [19/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〈マサラタウン・旅立ち〉


 ラプラスに乗って、ボク達はグレンタウンを北上する。

長い時間周りが海だけの景色の中を過ごし、マサラに着いた。

 はぁ、ボクもう海はこりごりだよ。何も良いところが無いじゃないか。

「ラプラス、ありがとう」

 レッドはラプラスをボールにしまい、ボクと一緒に自宅へ帰った。

「ただいま〜」

 返事はない。レッドのママは職場に居るのだろう。

レッドは自室で眠りに着いた。
 ▼ 62 カ◆Ibi/.BQaas 16/07/14 21:42:16 ID:R/eg5kdo [20/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 次の日、レッドはゴハンも食べずに、ずっと横になっていた。

そういえば、旅に出ている時も、レッドは殆ど食べてなかった気がする。

 レッドのママが心配して尋ねる。

「レッド、どうしたの ?」

 どうやらレッドは、自分の事をママにも伝えてなかったみたいだ。

「あ、母さん。俺、旅に出る前にタマムシ大学の病院に行ったろ ?その時に、さ、医者に言われたんだ、肝臓癌だって」

 ママの眉間に皺がよる。

「癌 ?嘘でしょ」

「本当……3年前の時は特に何もなかったのになぁ」

 どうやら、肝臓の癌はとても難しいらしい。

それを聞いたレッドは治療は辞退し、旅に出ることを決めたそうだ。
 ▼ 63 カ◆Ibi/.BQaas 16/07/14 21:42:52 ID:R/eg5kdo [21/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ボクがボールに入らないから、置いておくと家に一匹になるのを心配したらしい。

ボクは一匹でも平気なのに、レッドは心配性が過ぎるよ。

 それから遅くまで、レッドとママは話していた。
 ▼ 64 カ◆Ibi/.BQaas 16/07/14 21:43:49 ID:R/eg5kdo [22/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 次の朝、レッドが急に提案する。

「皆を呼ぼう。この旅で世話になったナツメ、エリカ、カツラさんをこの家に」

 ボクは良いと思うよ。何より、何もしないよりかはずっと良い。

「突然訪ねた理由も説明しなくちゃいけないしな」
 ▼ 65 カ◆Ibi/.BQaas 16/07/14 21:44:39 ID:R/eg5kdo [23/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 それから数日後、最初に来たのはカツラさんだった。

「レッドや、辛いだろう。仲間を置いて去るというのは。世の中上手くいかないものじゃな」

「ええ、それだけが心残りです。贅沢かもしれないけど、もう少し、皆と一緒に居たかった」

「老い先の短い儂ではなく、お前さんの様な若者とはな……」


 それから、積もる話を話をいくつかして、カツラは帰った。
 ▼ 66 カ◆Ibi/.BQaas 16/07/14 21:45:50 ID:R/eg5kdo [24/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 次に来たのは、ナツメさん。

この人は初めから気付いていたみたいだ。心が読めるなら、当然だろう。

「食事は、摂っているの ?」

「あぁ、もちろん」

「嘘ね、食べた方がいわよ。少しでも生きたいならね」

「はは、確かに、生きてはいたい。でも延命は嫌かな、俺は。俺は俺らしくいたい」

「それで死んだら、元も子もないでしょっ !

……ごめんなさい、知っていても、目の当たりにすると、どうしても冷静になれない。

……帰るわ。気が利いたことが言えそうにないから。

でもお願い。どうか、生きて。あなたが死んだら悲しむ人が大勢居るから」

 そう言い去っていくナツメさんの目には涙が浮かんでいた。
 ▼ 67 カ◆Ibi/.BQaas 16/07/14 21:46:59 ID:R/eg5kdo [25/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 それから、1週間。

その間もレッドの『よくない臭い』はどんどん増していった。

 ようやく、エリカがやって来た。

「レッド様、お体の調子はどうでしょうか。……まず、言っておかなければならない事がございます。

病人に聞かせる話ではないのかも知れませんが。

 そちらのナツメちゃんはタマムシ大学の研究室に居た事は以前お話ししたと思いますが」

「うん、言ってたね」

「実は、当時の研究室では調査という名目で、生態や耐性、性質を調べる為、ポケモンを小さな檻へ閉じ込め、様々な実験を行っておりました。

かなり、無理矢理。だからナツメちゃんはボールを嫌がるのでしょう。昔自分の居た、小さな檻を連想させるから」
 ▼ 68 カ◆Ibi/.BQaas 16/07/14 21:48:28 ID:R/eg5kdo [26/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「それで、今その研究室はどうなってるの ?」

「今は、その体制が否定され、研究室自体は残っておりますが、改善はされている様です。当時の教授は免職となりましたが」

「そして、ナツメちゃんのその足についてです。当時、逃げたナツメちゃんを捕獲する時に、失敗し、その時に負ったものだと思われます。失敗はそのままにして。……すいません。どうしても知らせなくては、と思いまして」

「そうだったのか。……ありがとう、教えてくれて。」

「……怒らないのですか ?先日は黙っていたのに」

「だって、そのお陰でナツメと出会えたんだろ ?それに、エリカは関係無いよ」

 その点についてはボクも同意だね。

何も持ってなかったボクに、初めて与えてくれたのはレッドだったんだ。名前も、住処も、気を許せる存在も。

ボクの持っているものは全て、レッドがくれたものだ。むしろ感謝するよ。

それに、そもそも覚えてないしね。

 エリカは、1番最後にきたけど、1番長くレッドと話し、夜タマムシに帰っていった。
 ▼ 69 カ◆Ibi/.BQaas 16/07/14 21:49:43 ID:R/eg5kdo [27/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「皆、自分の事が忙しい中、来てくれてるんだ。ありがたいよな、ナツメ」

 それは、レッドの人徳の賜物だよ。むしろ誇るべきさ。

「さぁ、ナツメ。もう今日は遅いし、寝るぞ」

 レッドはそう言い、布団に潜り込んだ。

 その夜、レッドは外へ向かっていた。

ボクはレッドの前に姿を現す。

 どこに行くんだい ?ボクを連れて行かないなんて、許さないよ。
 ▼ 70 カ◆Ibi/.BQaas 16/07/14 21:51:10 ID:R/eg5kdo [28/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ナツメ……はぁ。お前も一緒に来るか ?言っとくけど、結構危ないぞ」

 それはレッドも同じだろ。

ボクはレッドと共に行く。例えどんな所でもね。

レッドが、ボクを預ける話を断られた時、少し嬉しそうにしてたの、ボク知ってるんだから。離れられるわけ無いだろう。

それに、死に際に姿を眩ますなんて、普通ボクがやる事だよ。

 愛するものに、自分の抜け殻を見せたく無いのは分かるけどね。

それを見せなければ、自分はその人の中で死なないから。

思うに、死ぬっていうのは、その人の事を諦める事、気持ちに踏ん切りをつける事なんだ。

だから、行方不明者は死なない。

そして、だから死に際に姿を眩ませる。
 ▼ 71 カ◆Ibi/.BQaas 16/07/14 21:52:18 ID:R/eg5kdo [29/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 外は、涼しかった。夏の終わり、秋が近づいている。

 ボクとレッドはトキワへ向かい、そこの西側に足を運んだ。ジョウトの境を越え、シロガネヤマへ。

 ここも、月が綺麗だね。山頂が白いあの山に三日月がよく映えている。
 ▼ 72 カ◆Ibi/.BQaas 16/07/14 21:53:47 ID:R/eg5kdo [30/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 叢を掻き分け山の麓へ着くと、レッドがボクを抱えようとした。咄嗟に身を引く。

 馬鹿にしないでよ。一匹で歩けるさ。激しい戦闘が出来ないだけだよ。

「大丈夫なのか ?かなり険しいぞ」

 それはこっちの台詞だよ。

 起伏の激しいこの山を登るにつれて、段々と気温が下がっていく。

ボク等は山の中腹で一旦休憩をした。主にボクの為に。

そしてまた、歩き始める。

まるでブレーキの壊れた車の様に、自身が壊れるまで。ずっと。ずっと。
 ▼ 73 カ◆Ibi/.BQaas 16/07/14 21:54:54 ID:R/eg5kdo [31/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 丁度夜明けの頃、山頂に着いた。

 すごい……… !

 山頂から見る日の出により、まるで新しい別の世界にいる様な錯覚を覚える。

 それを見たレッドは満足そうにし、倒れた。

「ナ……ツメ」

『何だい ?ボクは、ここに居るよ。ずっと、レッドの側に居るよ』

「ナ……ツメ。あ、りが……と」

『礼を言うのはボクの方さ。3年前、あの夏の真ん中。夏の目の奇跡が無ければ、ボクは死んでいたんだ。あの奇跡を、ボクは、忘れないよ』

 言葉は通じない。それでも、言いたかった。今、この瞬間だけでも言葉が通じたなら。

 レッドは少し微笑み、それから、もう、動かなかった。

『レッド…………れっどぉ……』

 ボクの声は、明るい光に飲み込まれ、こだまする事もなかった。
 ▼ 74 カ◆Ibi/.BQaas 16/07/14 21:57:16 ID:R/eg5kdo [32/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 あぁ、レッド。君はボクに沢山のものをくれたね。名前も、住処も、気を許せる存在さえ。

 レッド、ボク達は沢山のものを見たね。

 暗くて明るいトキワの森。青く輝く美しい月。
ヒトとビルばっかりのヤマブキシティ。
レッドに化けたモノマネムスメ。暖かい素敵なテレビ。
心が読めるナツメさん。おっきなデパート。
そこの屋上の景色。花による色の洪水。
おしとやかなエリカさん。
景色が飛ぶ様に過ぎるサイクリングロード。
ボクとレッドの色の真っ赤なマトマの実。
大きくて恐ろしい海。寒くて凍えるふたごじま。
生意気なカツラさんのガーディ。
白銀の山頂に映える三日月。
まるで別の世界の様な日の出。

 ボクはそれ等を忘れないよ。だから安心して。

ボクが持ってるのは全てレッドのものだ。でも、レッドが居なくなってもそれは無くならない。

永遠の財産をくれたんだ。例え、住処が無くなり、野生に戻ってもボクは、レッドがくれた名前と思い出がある。

もう、何も持ってないなんて事は無い。本当にありがとう。

レッド。
 ▼ 75 カ◆Ibi/.BQaas 16/07/14 21:58:20 ID:R/eg5kdo [33/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 それから、ゆっくりとボクは下山した。野生のポケモンも見守ってくれていた。

 マサラに着いて家に入ると、レッドのママが飛びついてきた。

「ナツメ、レッドは、レッドは !?」

 レッドは、旅に出たよ。また新しい関係をそこで築いていくだろう。

 当たり前の事だけど、全ては空で繋がっている。

ボク達とレッドも、この空で繋がっているんだ。



 これが、ボクとレッドで残したレポートだ。



 ▼ 76 カ◆Ibi/.BQaas 16/07/14 21:59:05 ID:R/eg5kdo [34/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〈エピローグ〉


 レッドの死後、それなりの年月が経った。

ボクももうおじいさんだ。もう、レポートを書き残す事も無いだろう。

 そろそろ旅に出ようかな。

 外に出ると、野に小さな花が咲いていた。

レッドの教えてくれた、『真っ赤』な花。

ボクと、レッドの色。

ボクはそれを咥えて、シロガネヤマへ向かった。
 ▼ 77 カ◆Ibi/.BQaas 16/07/14 21:59:44 ID:R/eg5kdo [35/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ボクではもうシロガネヤマを登れない。最後にあの日の出を見たかったな。

 山の麓に花畑が広がっていた。真ん中に立っているのはレッド。

「やぁナツメ。元気にしてたかい ?」

「やぁ、レッド。それって、とんでもない皮肉だね。レッドこそ、元気かい ?……ねぇレッド。ボクも、もうそろそろ、そこへ逝くよ。待っててくれるかい ?」

「当然だろ」
 ▼ 78 カ◆Ibi/.BQaas 16/07/14 22:01:36 ID:R/eg5kdo [36/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 あぁ、ボクは今レッドと話せている。やっと、お礼が言える。

「レッド、ありがとう。君は何も持ってなかったボクに沢山のものをくれた。名前も、住処も、気を許せる存在さえ。そして、あの旅で見たもの。

 暗くて明るいトキワの森。青く輝く美しい月。
ヒトとビルばっかりのヤマブキシティ。
レッドに化けたモノマネムスメ。暖かい素敵なテレビ。
心が読めるナツメさん。おっきなデパート。
そこの屋上の景色。花による色の洪水。
おしとやかなエリカさん。
景色が飛ぶ様に過ぎるサイクリングロード。
ボクとレッドの色の真っ赤なマトマの実。
大きくて恐ろしい海。寒くて凍えるふたごじま。
生意気なカツラさんのガーディ。
白銀の山頂に生える三日月。
まるで別の世界の様な日の出。

 ボクは絶対に忘れないよ。これは全部君がくれたものだ。誇っていいよ」

 レッドが微笑む。
 ▼ 79 カ◆Ibi/.BQaas 16/07/14 22:02:11 ID:R/eg5kdo [37/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ボクは旅に出る。もうレポートを書き記す事も無い。

でも、これは悲しいことでは決して無いんだ。

また、旅の先で新たな関係を築き、出会い、そして別れる。

 ボク達の旅は始まったばかりだ。

fin
 ▼ 80 カ◆Ibi/.BQaas 16/07/14 22:03:36 ID:R/eg5kdo [38/38] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
終わりです
ちょっといつもと趣向を変えた感動系です
結構伏線張ってあるので、探しがてらに読み返していただけると幸せます。
 ▼ 81 デンネ@ロメのみ 16/07/14 22:08:06 ID:52K4VFaA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ▼ 82 オラント@シルフスコープ 16/07/15 00:35:14 ID:jt9B/opA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
面白かった 乙
タイトルに小説っぽいってつけるのやめた方がいいんじゃない?
君のSSってだけで読まない人が多いんじゃないかな?俺もそうだったし
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https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=344960
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