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SS

【旅SS】女「コータス達とぶらり旅〜!」

 ▼ 1 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/08/09 14:20:12 ID:qgGnG1kQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
───ミアレシティ。

カロスの中心に位置する、技術と芸術のメトロポリス。


女「飛行機で来た」

女「……今まで旅してきた街で一番大都会かもしれません」

女「私がいるのはノースサイドストリートにある、ミアレ美術館です」


───フロア3階の中央。そこに展示されている壁画を、彼女は眺めていた。


音声ガイド『タイトルは王とポケモンそしてカギ。別れたはずのフラエッテがそばにいるなど、史実との相違が見られるものの、用いられた技術が歴史的に価値の高い作品。』

女(美術の学があるわけじゃないけど、なんだか、この絵を見てると落ち着かない感じがする)

女(大切なものがそばにあるのに、気付かずそれをこわしてしまいそうな、そんな感じ)

女「……美術鑑賞もそこそこにして、そろそろお買い物に行きましょうか」



 ▼ 131 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/12/20 17:59:48 ID:oLRA5Cio [1/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
めちゃめちゃに暴れて、めちゃくちゃに傷つきながら1羽1羽を叩きのめしていき、そして。

総数の4分の1も倒しきらぬ前に、力尽きて倒れた。



ムックル(こいつらとこんな風になったのはいつからだったかな)

ムックル(顔を合わせればにらみあいになって、けたたましく鳴きやがるからぶっとばした)

ムックル(気付いたら、どいつとも顔を合わせればケンカになるのが当たり前になっていた)

ムックル(なるほど、そうやって過ごしてきた果てがこれか)

ムックル(まぁいいや、最期くらいいさぎよく迎えてやらぁ)


ムックルズ「「「「「「「「「「「「ヒャッハァ死にさらせこのダボがァーッ!!!」」」」」」」」」」」」ポカポカポカポカポカポカポカポカポカポカポカポカポカポカポカポカポカポカポカポカポカポカポカポカポカポカポカポカポカポカポカポカポカポカポカ

ピッピにんぎょう「イタイヨーイタイヨー」

ムックルズ「「「「「「「「「「「「えっ」」」」」」」」」」」」

ピッピにんぎょう「イタスギワロエンガオガエンウッヒョーwwwwww」




女「いきなり使うとは思わなかった……」ゼェゼェ
 ▼ 132 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/12/20 18:00:50 ID:oLRA5Cio [2/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「ここから最寄りのポケセンまでだいたい半日しないくらいだから、残りのむしよけスプレーとピッピにんぎょうでだいたい……」

ムックル「……ぴぃ」

女「あ、目、覚めた?」

ムックル「ぴぃッ?ぴ、ぴる……ぴぴ???」

女「よかった……暴れるかも、と思って縛ったんだけど、そんな元気ないみたいだね。急ぐね」スタスタスタ

ムックル「……ぴぴぴぃぴ、ぴぴ、ぴぴぃ?」

女「ごめん、コータスしまってるから何言ってるのか全然わかんない」

ムックル「」

女「でも、ありがたがってないのはわかる」ハァ、ハァ……


───たかが早歩きでも息の上がってしまう自分の体力に、ほとほと呆れながらも、しかし歩みは止めない。

むしよけスプレーの時間は有限だ。


女「私もビックリしてはいるんだ」

女「探し回ってもムックルが全然いないから、どこに行ったんだろうって思った」

女「そしたら、あわてふためいて走っていくコロボーシがたくさんいるのに気づいたんだ」
 ▼ 133 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/12/20 18:01:46 ID:oLRA5Cio [3/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「だからもしかして、と思って」ヒィ、フゥ

女「ほら、タイプ相性的に考えて、ひこうタイプのいるところから逃げてるのかなって」ザッザッ

女「これだけ探しても見つからないのなら、どこかに集まってるはず。だから、コロボーシがそこから離れるのでは?って考えたら」

女「そこにいくしかないって思った」

女「そしたら君がいるかもしれないでしょ?」

女「はぁ……ふぅ……」ニコ

女「で、あんなことになってるんだもんね……ッ」ヨイセッ

女「間に合ってよかった」

ムックル「」ウツラウツラ

女「においとか嫌かもしれないけど、まだまだ我慢してね」プシュー



女「ッ……ッ……!」ヒョコッ、ヒョコッ


───逃走を初めて数時間が経った。

足を踏み出すたびに顔が一瞬歪む。
 ▼ 134 ーパーパンプ人◆kIHk8l4MgY 16/12/20 18:01:48 ID:F0k3OfEI [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
待ってた!更新ご苦労様
 ▼ 135 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/12/20 18:03:23 ID:oLRA5Cio [4/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
早足の行軍に慣れていないことくらい、ムックルでもわかった。

靴擦れでもしてしまったか、力むような息づかいになるときがある。


「ピィーッ!!」

女「ぐっ!!」


───いつの間に追い付かれていたのか、背中から突き飛ばされた。

踏ん張ろうとした瞬間、ここ数十回の波で一番の痛みが、かかとから脳天を突き抜けた。

背中の鈍痛とかかとのするどい痛みに涙目になりながら、思わず膝をついた瞬間。

ぶわっと、灰色の群体が彼女におおいかぶさった。


「ピィーーーーーーーーーーーーーーーッぴ!!」「ぴぴるぴぴぴぴるぴぴぴぴるぴぴ!!!」「ぴぴぴぴぃいいいいいい!!!」「ぴぴ!ぴぴ!!ぴぴ!!!ぴぴ!!」「ぴぴぴぴぴぴぴ!!!」「ピィャアーッ!!!ピピピピルルピピルル!!!!!」「ピィピピィピピィピピィピ!!!!!!」「ピッピッピ!!ぴぴぴぴぴぴるるるりぃ!!ぴぴぴぴるぴぃぃぴぴぃ!!!」「ぴぃーーーーーーーーー!!!!!!」「ぴぃぴぃぴぃぴぃぴぃぴぃぴぃぴぃぴぃぴぃぴぃ!!!!」「ぴるるぴるるぴるるぴぴるるるるるる!!!!!」「ぴ」「ぴぴいぴいいるるぴるるぴ!!ぴいぴいぴいるるぴぴぴぴるるぴ!!!」「ピィーーピルピーーー!!!」「ぴるるぴっ!!ぴいぴるぴいぴるぴいぴぴるる!!」「ぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴっぴ にんぎょう に むちゅうだ!!
 ▼ 136 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/12/20 18:05:09 ID:oLRA5Cio [5/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「」ヨロッ

女「むしよけスプレーの効果が切れてるのに……気付かなかった」フラッ

女「ピッピにんぎょうはもうないから……スプレーの効果に注意しなきゃ」

女「身体中痛い……」

女「!」

コリンク「」ジイッ……

女「……」ヒョコッ、ヒョコッ


───再びむしよけスプレーを使ったから、もうしばらく野生のポケモンに絡まれずに済むはずだ。

ピッピにんぎょうのおかげで逃げられたとはいえ、それを取り出すまでの間に、つつかれ引っ掻かれ噛まれを何度となく食らった。

泣きっ面に蜂とはこの事だ。

旅立ってまだ次の町にたどり着いてすらいないのに、こんなにボロボロになるなんて、想像以上だった。

でも、こんな目に遭っているのに、なぜだろう。


女(この子を見捨てて逃げるなんて、思い付いても全然実行する気にならない)

女(ふくろだたきにされてるムックルを見た瞬間、ピッピにんぎょうを投げてた)
 ▼ 137 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/12/20 18:06:00 ID:oLRA5Cio [6/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女(なんでだろう)

女(研究所でなかよくなったナエトルとヒコザルとポッチャマは、旅に付き合わせたくないって思ってたのに)

女(なんでだろう、どう考えたって矛盾してる……けれ)

女(私はこのムックルと旅がしたい)


───弱々しい足取りで、彼女は進む。


















女「……見えたッ」
 ▼ 138 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/12/20 18:07:09 ID:oLRA5Cio [7/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
───町の入り口と、その向こうにはポケモンセンターの看板が見える。


女「もう少しだからね」

「───ッ!」

女「!!」クルッ


───群れが迫ってきている。

むしよけスプレーはもうない。


女「もう少し……なのにッ」

女「──────」フー……

女「ぐっ……ん゛んッ!!!」ダッ


───ラストスパート。


たかが数百メートルだ。ここまでの道のりに比べればあと少し。
 ▼ 139 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/12/20 18:09:22 ID:oLRA5Cio [8/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
よろけながら、ずきん!と痛みを発する足に涙目になりながら、早歩きともいえないようなスピードで、背後の迫り来る声を振りきるように、必死に走る。



ばさばさと無数の何かが空を叩く音が聞こえた。

町の入り口だ。
 ▼ 140 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/12/20 18:10:00 ID:oLRA5Cio [9/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
人口の多い場所に入って数が減ったからか、ほんの少し静かになった。

あと15メートル。



 ▼ 141 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/12/20 18:10:37 ID:oLRA5Cio [10/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しかしまだ、けたたましく追いすがる声が続く。

あと10メートル。



 ▼ 142 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/12/20 18:11:20 ID:oLRA5Cio [11/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
後ろに引っ張られるような感触を覚えた。

あと8メートル。



 ▼ 143 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/12/20 18:12:09 ID:oLRA5Cio [12/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
身体中を、爪を立てて掴まれたようなチクチクとした感触がおおう。

残り6メートル。



 ▼ 144 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/12/20 18:12:43 ID:oLRA5Cio [13/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
引っ掻かれながらも、腕の中の彼に届かすまい、と背を丸めた。

残り4メートル。



 ▼ 145 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/12/20 18:13:22 ID:oLRA5Cio [14/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
立ちふさがるように灰色の影が目の前に降りてきた。

3メートル。



 ▼ 146 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/12/20 18:14:21 ID:oLRA5Cio [15/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少しでも"走る"以外のことをしたら脚はもう動かなくなるに違いなかった。

目の前の灰色はよけられない、2メートル。




こちらをにらむ、するどいめが語っている。




そいつを俺たちによこせ、と。




そいつの命は俺たちのものだ。




体が持ち上げられるような感覚がした、1メートル。
 ▼ 147 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/12/20 18:15:19 ID:oLRA5Cio [16/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告















女「この子は───私のだッ!!」












 ▼ 148 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/12/20 18:17:00 ID:oLRA5Cio [17/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
もふっ、という感触を顔面いっぱいに食らいながら、後先考えずまっすぐつっこんでいた。


タイル張りの床に倒れ込みながら、少しけものくさい、と思った。



──なにこのむっくるのむれ!──

──おんなのこにむらがってるぞはらえはらえ──

──むくばーど、かぜおこし!──

──あなた!あなた!いしきはありますか!もしもし!もし!──


ゆめうつつの中にいるような気分で、声だけが遠くから、混濁した意識を指の先でかすめるように聞こえた。

疲労から言葉の意味を認識できないまま、身体中が痛みでしびれるような感覚の中、ただ、腕の中の温もりだけが彼女に安堵をもたらした。

辿り着いた、と。

混沌と化したポケモンセンター内で、少女はムックルを抱きしめながら意識を手放した。





「「「「「「「「この子いったい何したん!!??」」」」」」」」アビキョウカン
 ▼ 149 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/12/20 18:18:17 ID:oLRA5Cio [18/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




女「はっ」

女「白い天井、やわらかいふとん……」

女「夢だった……のか」

ジョーイ「夢じゃありませんよー?」ビキビキ

女「おわっ」



ジョーイ「見た目がひどいだけで大きな怪我はないですけれど……あんな無茶をして!」バリバリダー!

ジョーイ「あそこで居合わせたトレーナー達はいきなりの事態に面食らって、それでもあなたを助けようとしてくれたのよ?」

ジョーイ「ポケモンセンターに野生のポケモンの群れを連れてくるなんて前代未聞です!」

ジョーイ「ポケモンセンターはメチャクチャ!あなた達を助けようと奮闘してくれた人達にも少なからず怪我人が出ました」

ジョーイ「みんな、あなたほど大事ではありませんけどね」

女「すみません」

ジョーイ「羽毛やらフンやらが散らかって、インテリアや設備もかなり汚されました。掃除が大変でした。まだ終わってません」ゲンナリ
 ▼ 150 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/12/20 18:19:33 ID:oLRA5Cio [19/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「ごめんなさい」


ジョーイ「だいたい、あんなに怒ったムックルの群れなんて、わたしは初めて見ました!何をしたらあそこまで怒るのか、興味深……じゃない、好奇心を……じゃない!!!!」ウガー


女「」ビクッ


ジョーイ「ともかく、あなたのとった行動はたくさんの人やポケモンに迷惑をかけました」


ジョーイ「ポケモントレーナーを志すなら、重々反省しておくこと」


女「はい……」シュン


ジョーイ「でも、それだけの迷惑や被害を差し引いてもなお、あなたの勇気は称賛に値するものです」


ジョーイ「ムックルはすっかり元気になりましたよ」
 ▼ 151 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/12/20 18:20:40 ID:oLRA5Cio [20/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「ほんとにすっかり元気だね」ボロッ

ムックル「」ツーン

ジョーイ「その子、あなたのポケモンではないわよね」

女「はい」

ジョーイ「なのにどうして、そこまでして助けようとしたの?」

女「これから仲間にする予定だったので」

ジョーイ「」

ジョーイ「え、それだけ?」

女「はい」

ジョーイ「……」キョトン

ジョーイ(普通、そこまでする前に、他のポケモンにしようって思うものなのだけれど……)

ジョーイ(なりふりかまわないって、凄まじいわね)


───2日前。

ポケモンセンターがムックルの群れによってカオスゾーンと化したのは、もう一昨日のことだそうだ。
 ▼ 152 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/12/20 18:21:37 ID:oLRA5Cio [21/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
その時群れを追い払うのに助力してくれたトレーナー達は、ほとんどがもういなくなってしまっていた。

それでも、残っていた人達にお礼と謝罪をして回って、残っていた掃除にも参加した。


女「驚きだったのは、誰も私に対して怒らなかったことでした」

女「むしろ誉めてくれた」





『あんな群れに襲われたら、新人トレーナーなんかひとたまりもないものよ?君、ガッツあるじゃないの』

『ポケモンセンターに駆け込んだのはいい判断だったよ。怪我はしたけど、君たちを守れてよかった』

『そのムックルを助けるために頑張ったんだろ?揃って大事にならなくてよかったよ』

『……よくやったな』ポン





女「……よかった」
 ▼ 153 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/12/20 18:23:29 ID:oLRA5Cio [22/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
───ひとやすみ。


ムックル「……ぴぃ(助けられた礼は言っておくぜ。借りも返そう)」

コータス「ありがとう、この借りは返す、ってさ」

女「」クルッ

コータス「周りに人、いないよ」

女「……やっと、ちゃんとお話しできそうだね」

ムックル「ぴいっ(義理があるからな、話くらいはしてやる)」

女「───図鑑説明で、ムックルは群れるポケモンってあった。実際、ほとんどのムックルは群れで行動してた」

女「でも君は昨日一匹だった」

女「加えて、異常なまでに人間を嫌ってる……考えられる理由はそんなに多くない」

女「君が、他のムックルからリンチされていたのを見て、本に書いてあった一文を思い出したよ」

女「ポケモンセンターに向かう道すがら、いろんなポケモンから白い目で見られて、確信した」

女「人間にひどい目に遭わされたのは間違いない。且つ、202番道路のポケモンまるごとから敵視されていたという事実からして」

「それが現在の君のぼっち状態に起因するものであるなら」
 ▼ 154 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/12/20 18:24:13 ID:oLRA5Cio [23/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
───『野生のポケモンは、人間の飼うポケモンに強い敵意を向けることがあります。』


女「捨てられたんだよね、人間に」

ムックル「」ムスッ

 ▼ 155 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/12/20 18:25:23 ID:oLRA5Cio [24/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ほんの少し前まで、俺は人間に飼われていた。

頼りないトレーナーだったが、待遇はよかったからな。こいつについていくのも悪くない、そう思っていた。

だが、ある時バトルで負けて、そいつは本性をあらわした。

相手は図体のでかい強気なやつでよ。

いるだけで肩が凝るような威圧感があった。

ソイツは、俺のトレーナーにこうもちかけた。

「お前のムックル俺にくれよ」

大事そうにしているのに目をつけてそう言ったんだろう。

断じて、欲しくなったわけじゃない。

ただの嫌がらせだったにちがいないんだ。

バカだった俺は、それくらいわかるはずだ、って思ってた。

それはできない、と言うことくらいできるだろうって。



 ▼ 156 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/12/20 18:26:25 ID:oLRA5Cio [25/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
何にも抵抗せず、俺は差し出された。

「いいよ。あげる」ってよ。

ボールを持つ手が恐怖で震えていたのは覚えている。

あいつの顔はもう覚えてねぇ。



新しいトレーナーは、勝負にこだわるやつだった。

バトルに関しちゃ入念に準備するタイプだったし、強さにも執着があった。

いくらかマシだったな、最初の方は。

だかそいつは、自分より強そうなトレーナーに挑む、ということは決してしなかった。

「今の俺じゃかなわないからな。努力してりゃいつかは倒せるようになるさ」

いつまで経ってもそうはならなかった。

そいつはいくぶんか強いばっかりに、守りに入っていた。

手の届く範囲でしか腕を磨かず、自分の勝てる相手としか勝負をしない。

「俺はいつかチャンピオンになるのさ」

そう言いながらなーなーで日々を過ごしてやがった。
 ▼ 157 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/12/20 18:27:32 ID:oLRA5Cio [26/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そんな毎日が繰り返されてた。

そんなある日、何の前触れもなく、突然のことだった。

たぶん、いつかそうなるってだけの話だった。

むしろちょっと遅かったくらいだ。

「なんか飽きたわ」

俺だってとうの昔に飽きれ果ててたよ。

俺は捨てられた。
















女「そっか」
 ▼ 158 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/12/20 18:28:29 ID:oLRA5Cio [27/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「じゃあ、君がそうなのもしかたないね」

ムックル「」フン

女「───君は、このあとどうしたい?」

女「202番道路に帰る?」

女「それとも、他のところに行く?」

ムックル「」ケッ

ムックル(見るからに、「それでもいいよ」って言いたげだ)

ムックル(よくなんかねぇくせに、そう言う)

ムックル(だから人間は嫌いだ)

ムックル(本音を隠して、そのくせプライドはありやがるから体裁を整えて)

ムックル(自分に都合のいい空気をつくって、遠回しにことを運ぼうとしやがる)

ムックル(こちとらもううんざりなんだよそういうのは)

ムックル(これだから人間はろくでもねぇ)

女「私は───」
 ▼ 159 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/12/20 18:29:15 ID:oLRA5Cio [28/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ムックル(さぁ、俺が後ろ髪引かれそうな態度を少しでもとってみろ)

ムックル(その瞬間目ンタマくりぬいてやる)ギッ























女「私は、そうしてほしくないんだけど」

ムックル「」
 ▼ 160 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/12/20 18:30:15 ID:oLRA5Cio [29/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「私は君が欲しい」

女「私は、この借りを利用してでも君をゲットしたいって思ってる」

女「義理とか貸し借りとか、超気にするタイプっぽいし」

女「しめた、と思ってる」

ムックル「」ポカーン

女(前にナナカマド博士に言われた)



ナナカマド『君は、どうも自分の主張や希望、考えや願いを口にするのをためらうきらいがある』

ナナカマド『へりくだったり、にごしたりする必要はない。君の真心をそのまま口にすれば、相手にはきっと伝わる。だから……』



女(勇気をもって言葉にする)

女「私の仲間になって」
 ▼ 161 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/12/20 18:31:20 ID:oLRA5Cio [30/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「〜♪」フカフカ

ムックル「」

女「羽毛柔っわぁ……」デレデレ


───ボールに入れときゃいいのに、なんでわざわざ抱きかかえてんだ?

と、ムックルは思っていたが、甘んじて受け入れてやっていた。

自分はこいつにことごとく負けてしまったのだから、多少勝手にされるのは仕方ないことなのだ、と思って。

断じて、 だっこされるのも撫でられるのもひさしぶりで案外心地よい、とか、そんなことは思っていない。

つもり。


女「私は君をゲットできて嬉しいよ」ギュッ

ムックル「ぴっ!!!!」ズキュゥゥン

ムックル「カァァァァァァァ」

女「?? ヤミカラスでもあるまいに……」ナデナデ

コータス「………………!」ピコーン

コータス「」ニタァ
 ▼ 162 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/12/20 18:32:52 ID:oLRA5Cio [31/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「なんか悪い顔してるし……」

ムックル「」チチチチッ

女「ん、どっかかゆいの?」

ムックル「ぴぃ」

女「なんて?」

コータス「「最近シラミがついててうぜぇんだよ。別にかゆくはねぇんだが目につく。ケンカに勝ったときとか妙にスッとするようになったんだが……」」

女「別に、何にもないけど……」ハテ

女「するどいめでよく見えるんだろうか」

女「てか、「スッとする」ってのは?」

コータス「「ケンカ1回あたり気持ち2倍強くなってる気がする」って」

女「何それ怖い」


───どのみち、しばらくはここで安静にしていろと言われている。

明日ちゃんと診てもらおう、と思った彼女だったが。

その頃には、その"シラミのような何か"はただのニコちゃんマークと成り果てていたのであった。
 ▼ 163 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/12/20 18:35:36 ID:oLRA5Cio [32/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
初ゲットの話、終わり
 ▼ 164 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/12/20 18:36:09 ID:oLRA5Cio [33/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



───旅に出るちょっと前。


ナナカマド「む。アルバイトをさがしているのか?」

女「はい」

女「居候でお金も納めないのは、ご迷惑かと思って」

ナナカマド「……君、ほかにやりたいことはないのかね?」

女「やりたい?」

女「………ここを出ては行く宛もありませんから、ここにいたいです」

女「ご厚意でお世話になってますけど、これ以上ここにいるなら家賃は納めないと、とは思っています」

ナナカマド「……君は、同じくらいの歳の子どもが旅立っていくのを見て、どう思う?」

女(そういえば、よくそんな子どもも来てるか)

女「これから大変だろうな、と思います」

女「でも、彼らには追いかける夢があるのですから、その険しい道に挑むことは彼らにとって幸せなことなんだろうな、って」

女「ヒコザル、ポッチャマ、ナエトルを連れていく子達は、みんな笑顔ですから」
 ▼ 165 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/12/20 18:37:05 ID:oLRA5Cio [34/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナナカマド「無縁なことのように話すのだな」

女「実際無縁ですし、やる意味がないと思います……私では」

ナナカマド「……トラブルが多く、イレギュラーも頻発し、何が起こるかわからない、そんな旅をすることは、君にとっては無意味かね?」

女「目的もありませんし……はい。意味が見出だせません」

ナナカマド「……」ウーン

女「私がここにいるのは、駄目でしょうか」

ナナカマド「……いかんな」

ナナカマド「君は、旅に出た方がいい」

女「」

女「え」



 ▼ 166 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/12/20 18:37:45 ID:oLRA5Cio [35/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
───ナナカマド博士。

ポケモンの進化研究の第一人者であり、ポケモン研究家としてはオーキド博士の先輩にあたる。

メガシンカ研究でおなじみのプラターヌ博士は教え子である。

無愛想で言葉数が少ないため、見る人によってはいつも怒っているようだが、その実世話焼きで。

彼と交遊の深い人々には、無類の子ども好きであることも知られている。
 ▼ 167 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 16/12/20 18:38:30 ID:oLRA5Cio [36/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
まだつづく!
 ▼ 168 ドグラー@サイコシード 16/12/20 18:45:00 ID:F0k3OfEI [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
更新乙でした
また楽しみにしてるから無理せず頑張ってね
 ▼ 169 ネコ@こうこうのしっぽ 16/12/21 18:06:55 ID:qDnZbVEk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
こころあったまる
支援
 ▼ 170 ニスズメ@かえんだま 16/12/22 00:41:28 ID:SfyW0DsA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
更新きてたぁ!!やばい、うれしい(*:ヮ:)
ムッくんかわい過ぎる!!

ポケセンにたどり着いたときのセリフ、グッときた!!
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