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SS

【SS】あなたは完璧

 ▼ 1 AYr1xkow/g 18/02/24 13:01:11 ID:M21VhvTQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「新しいキャプテンは、彼に決まりましたぞ!」

師匠の声が、どこか遠くから聞こえてくるようだった。

てっきり自分がキャプテンになるものだと思っていた。ここリリィタウンで、島キングであるハラの元で修行しているトレーナーの中で、自分が一番強いはずなのに。

「ククイくん、またなれなかったねー。せっかく推薦してもらったのに。もう十九でしょ?厳しいよねー」

「いや、いいんだよ。ぼくは他にやりたいことがあるからね!」

「それ、なんか前も言ってたよね。やりたいことってなんなの?」

近くで話している先輩トレーナーたちの声が、酷く耳障りだった。

オレはまだ十四歳だ。キャプテンにちょうどいい年齢じゃないか。

少年は俯き、涙をこらえて唇を噛みしめた。

今年は、少年が島巡りを終えてから、初めてメレメレ島のキャプテンが入れ替わる年だった。前任のキャプテンが二十歳の誕生日を迎えたのだ。

チャンスはあと六年。しかし、今回キャプテンに就任したトレーナーは、十七歳だ。つまり、あと三年経たないと、この席は空かない。

「クソ……クソックソッ、何やってんだ、グズマ……!」

少年は、頭を抱え、歯ぎしりしながら唸り声を上げた。
 ▼ 53 AYr1xkow/g 18/09/04 00:28:38 ID:QCtkC0ss NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ポータウンに、一人の草臥れた男が入ってきた。

屋敷に隠れるようにして住んでいる子供たちは、その様子を怪訝な顔で見つめていた。男は、空き家に向かって歩いている。

子供たちは目を見合わせた。島キングがいなくなり、不穏な噂の飛び交うようになったこの街に今になって越してくるなんて、正気の沙汰じゃない。

三人の子供たちは、男の方へと向かっていった。

「ヨーヨー、冷やかしに引っ越してきたんなら出てけよー」

一人の少年が大声を上げた。男が顔を上げる。

「マジそういうの余計なお世話。大人ってそういうことしては勝手に落胆するって分かってるんだってば」

少女も肩をすくめて言った。男は黙ったままこちらを見つめている。それを見て、もう一人の少年がハッと息を呑んだ。

「おい、あの制服……警察じゃね?」

その言葉に、二人も固まる。

「なっ……でも俺たち、悪いことなんてしてねえよ!」

「も、もしかして監視かなんかでもするつもり?島キングがいなくなってもうしょんぼりだけど意味ないよ、だってうちら置いてきぼりだから」

少女が早口に言う。しかし、男は小さく首を横に振った。

「別にそんなつもりないよ」

男は面倒臭そうに口を開く。

「おじさん、ただの酔狂者だからよ」

男はそう言うと、にやりと笑った。
 ▼ 54 AYr1xkow/g 18/09/06 22:50:14 ID:DlU2mCLo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
自分で言っちゃうんですが>>46の思考と記憶を司るヤミカラスという描写は北欧神話のフギンとムニンをイメージしたもので、>>53の少女の台詞は韻を踏んでいます
 ▼ 55 AYr1xkow/g 18/09/10 16:35:02 ID:MgdsmJZE [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グズマが再びメレメレ島で修行するようになってから、早くも三年が経過しようとしていた。

以前よりリーダーシップは増したところではあったが、結局ウラウラ島でもキャプテンになれなかったことからかなり焦りを感じていたグズマは、より一層乱暴なバトルをするようになっていた。

「グソクムシャ!トドメだ!ぶっ壊せ!」

「グシャァア!」

グソクムシャの鋭い爪先が、相手のドーブルの柔らかそうな腹を切り裂く。ドーブルは激しい痛みに呻き声を上げて、やがてその場に力なく倒れた。

「……」

審判係の少年は試練と言えどやりすぎなくらいな攻撃にしばらく絶句していたが、ハッと我に返り、声を上げた。

「しょ、勝者、グズマ」

「……フン」

グズマは鼻を鳴らすと、踵を鳴らしながらその場を去った。

「……グズマ!」

「あ?」

背後から声をかけられ、ギロリと睨みつけるように後ろを振り向く。そこにはその瞳に圧倒されることのない唯一の人物、ハラが立っていた。
 ▼ 56 AYr1xkow/g 18/09/10 16:36:20 ID:MgdsmJZE [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「……なんだよ」

グズマは低いドスの効いた声で言った。

「その態度は、いかんですな」

ハラの言葉に、グズマは舌打ちをした。

「グズマよ……ウラウラで、一体何を学んできたのですかな?」

知らねーよ。学んだのは、島キングも守り神も、あてにならねえってことくらいだ。

グズマは黙ったままだった。

「以前より更に乱暴で、相手のことを敬わないバトルをしておる。そんな様子では強くなれんぞ」

グズマはまだ黙っていたが、苛立ちを隠せず、落ち着きのない右足が絶え間なく地面を蹴った。

「もっと落ち着いて自分を見つめ直すのだ」

知るかよ。

「バトルとは、相手のことをただ打ち負かすことが目的なのではないのですぞ」

あーあー、もう、何もかもめんどくせえ。

「自分の力を誇示するだけで相手と互いに高め合おうとしないようであれば、いつまで経ってもキャプテンなどにはなれぬ」

「うるせえよ!!!」
 ▼ 57 AYr1xkow/g 18/09/10 16:37:58 ID:MgdsmJZE [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
凄まじい勢いで怒鳴り返したグズマを見たハラは、一瞬驚いたような顔を浮かべたが、やがて鬼のような形相に変わっていった。

「グズマ……」

唸るように弟子の名を呼ぶハラの体は、怒りに震えている。

その向こう側には、母親に連れられて四歳になったハウがよたよたと歩いているのが見えた。

「じーちゃ……」

「いい加減にせんかこの馬鹿者が!!!」

ハラがヴェラ火山のごとく噴火したその瞬間、祖父のすぐ近くまでやってきていたハウがピタリと立ち止まった。

「はっ……」

気配に気がついたハラが振り返る。そこには、瞳に涙を溜めて今にも泣き出しそうなハウがちょこんと立っていた。

「お、おお、ハウよ!元気だったか?」

「うっ……うっ……」

慌てて優しい声を取り繕ったハラだったが、その努力も虚しくハウの涙のダムは決壊してしまった。

「う……うあああぁぁぁああああーーーぁぁあああーーーうわぁぁあああああぁぁああああーーー!!!」

「おお、おお……ハウ、すまない……泣くな泣くな……」

ハラがハウを抱き上げようとするが、ハウは嫌がった。

「ぁぁあああーーー!!じーちゃんこあいぃぃぃいいいいいい」

「悪かった悪かった……お前には怒っとらんぞ、ほーれ、ベロベロバー」

「台無しじゃねえかよ」

先程は師の威厳に本気でたじろいだグズマだったが、呆れ気味にそう呟いた。

必死に孫をあやすハラを見て、アセロラを思い出す。今頃どうしているのだろうか。唯一の肉親までもを亡くしてしまった彼女は、エーテル財団というポケモン保護団体の管理する養護施設に引き取られることになったと聞いた。

「……クソッ……何やってんだ……」

グズマはそう言うと、自分の頭を拳で思いきり殴った。
 ▼ 58 AYr1xkow/g 18/09/13 19:46:06 ID:XskU7zDU [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グズマは、唾をゴクリと飲みこんだ。

現任のメレメレのキャプテンが、二十歳の誕生日を迎えた。つまり、今日は三年ぶりに迎えるキャプテン選考日だ。

大丈夫だ。ここにいる誰よりも、オレが一番強い。

ウラウラでもキャプテンにもなれなかったが、あれはもう、仕方がない。今回こそ。今回こそ、絶対にキャプテンになってみせる。

もう、十七歳になってしまった。きっとこれが、ラストチャンスだろう。

グズマは、緊張の面持ちでハラの言葉を待った。
 ▼ 59 AYr1xkow/g 18/09/13 19:46:43 ID:XskU7zDU [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「さて、それでは発表しますかな。新しいキャプテンは、彼女に決まりましたぞ!」

グズマの頭が、真っ白になった。

ハラに指名されたのは、十五歳の少女。

グズマよりも年下のトレーナーだった。

「……は……」

グズマは、絶望的な思いで立ち尽くしていた。

もう、チャンスはない。彼女が何らかの理由で途中でキャプテンを辞めない限り、もうグズマはそこに立つことができない。

周りの声が、やけに遠く感じる。

もう、何も考えられなかった。
 ▼ 60 ツドン@オボンのみ 18/09/14 06:46:11 ID:h6ncoRU6 NGネーム登録 NGID登録 報告
支援!イリマじゃないんだね
 ▼ 61 AYr1xkow/g 18/09/14 15:32:25 ID:S.JQz776 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イリマはもう少し年下だと思っているので5年後に次のキャプテンに任命されます
一応このSSに登場くるキャラは本編でグズマが24歳、ククイとライチとマーレインが29歳、ハウとアセロラが11歳になるように年齢設定しています
イリマは現時点で8歳くらいのイメージですね
 ▼ 62 ッスグマ@ホロキャスター 18/09/14 16:50:03 ID:xTwI38Yw NGネーム登録 NGID登録 報告
>>61
なるほどそうか。ありがとうございます
 ▼ 63 AYr1xkow/g 18/09/17 22:24:24 ID:Dwgcz0EU [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「クソッ!クソがっ!!グズマァ、何やってんだぁあ!!!」

リリィタウンを出て、浜辺でグズマは絶叫しながら頭を何度も砂に打ちつけた。

ここは、かつて秘密の修行場として使っていた自分だけの場所だった。メレメレ島には生息していないはずのコソクムシを見つけたのもここだ。

でも、この場所も必要なくなってしまった。もう、修行したって、何の意味もない。

「クソッ……もう、もうオレは……」

「……グズマ」

「!!」

グズマは勢いよく振り向いた。そこには、ハラが立っている。なんでここにいるんだ?この場所は誰にも教えていないはずなのに!

「グズマ、残念であったな」

グズマはハラから目を逸らし、海を見た。お前が決めたくせに、何言ってやがる。

「お前には、決定的に足りないものがある」

グズマは歯軋りをした。知るか、知るか、知るか!

「だが……お前には確かに才能がある。……それを引き出してやれなかったわしにも、また何かが足りなかったのやもしれぬ……すまなかった、グズマ」

「は……?」

グズマは思わず振り向いた。ハラは、申し訳なさそうに目を伏せていた。

「お前だけを責めるつもりはない。また共に高め合うとしましょうぞ。わしの教えられることは、すべて教えよう」

「……」

グズマは、無言でハラから再び視線を逸らした。

もう、ここで得られるものは、何もない気がしていた。
 ▼ 64 AYr1xkow/g 18/09/17 22:25:33 ID:Dwgcz0EU [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「……して、グズマよ」

ハラの声色が変わる。

「……なんだよ」

「最近は家に帰っていないようですな。ご両親も心配しているのではないか?」

「……」

グズマが家に帰っていないのは、事実だった。居心地が悪いのはもちろん、元々大柄だった上にここ数年で更に身長が伸びたせいか、ベッドが窮屈でよく眠れないというのが理由だった。

「今日は帰りなさい。そして、お前の言葉で、すべて話すのですぞ」

ハラはそう言うと、グズマの返事を待たずに浜辺を出ていった。
 ▼ 65 AYr1xkow/g 18/09/17 22:27:14 ID:Dwgcz0EU [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
惨めな思いで二番道路にある実家へと戻ると、母親が嬉しそうに迎えてくれた。

母親が夕食の準備をしている間、グズマは自分の部屋を虚ろな瞳で眺めていた。

部屋に飾られたいくつかのトロフィー。ほとんどがブロンズで、ひとつだけシルバーだ。ゴールドのトロフィーは、ひとつもない。

大きなコンポスピーカーの上には、子供の頃からよく聴いていたロックバンドのCDが積まれている。

ベッドの上で横たわっても、もう足を伸ばせそうにない。

机の上には、島巡りをしていた時に集めていたヌシールが光っていた。グズマはそれを見て顔をしかめると、乱暴な手つきで机の引き出しの中にしまいこんだ。

一枚だけ、グズマの手から離れてひらひらと落ちていったが、グズマは気がつかなかった。

「グズマくん、ご飯よー!」

扉の向こうから、声が聞こえてくる。

「ああ……」

グズマは唸るようにそう返すと、部屋を出ていった。
 ▼ 66 AYr1xkow/g 18/09/21 19:20:21 ID:w1rE.n/6 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「今日は、新キャプテン任命日だっただろう」

父親の声に、思わず身構える。

「どうだったんだ?グズマ」

グズマは唇を噛みしめた。その瞬間、父親の表情が曇る。

「まさか……またダメだったのか!?」

「チッ……うるせえよ……!」

グズマが言い返すと、父親はダンと机を叩いた。

「グズマ、何やってるんだ!!!」

父親が大きな声を上げる。子供の頃は威圧的に感じていた父親の怒鳴り声も、もう怖くなくなっていた。

「お前はそうやって、時間を無駄にして……!ウラウラに行ったのも、結局意味がなかったじゃないか!」

「だから、あれは仕方なかったっつったろ!島キングが死んじまったんだからよ!」

グズマは何度も繰り返した言葉をまた叫んだ。母親は、二人の喧嘩を止めることができず、不安げながらもどこか諦めているような表情を浮かべている。

「バトルを観に行ってもいつも情けなく負けるところしか見たことがない。もういい、どこにも行くな。家に帰ってきなさい。父さんがみっちりお前に教えてやる」

「はあ!?親父に教わることなんて何もねえ」

「親に向かってその口の利き方はなんだ!」

「いくらでも言ってやるよ!!」

グズマが勢いよく立ち上がって吠えた。その気迫に、父親がたじろぐ。

「観に来ても邪魔なだけだ!いつもいつもうるせえし……こんなところにいたって強くなれるわけねえんだよ!」

「そんなことないでしょ?グズマくんが強いってことは、お母さんよく知ってるわ」

「あんたは何も知らねえだろうがよ!」

母親はグズマの形相に目を丸くして、何も言わなくなった。

彼女は一度もバトルを観に来たことがない。今となってはもうどうでもいいことだが、小さい頃は少し寂しかった。
 ▼ 67 AYr1xkow/g 18/09/21 19:24:25 ID:w1rE.n/6 [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「……グズマ、座りなさい」

父親が、抑えたような声で言う。グズマは従わなかった。父親は、深い溜息をついて続けた。

「ハラさんのところをやめて、家に帰ってきなさい」

グズマは父親を見下ろしたまま黙りこんでいる。

「いいか?返事をしなさい。父さんの言うことを聞くんだ」

父親はそう言ったが、何も言わず、指示も聞かないグズマを見て、とうとう立ち上がった。

「グズマ!いい加減にしろ!!」

そして、拳を握った右手を、グズマめがけて振り下ろす。

「あなた――」

母親が息を呑んだ。しかし、父親の拳はグズマには届かなかった。グズマが素早く動いて父親の腕を掴んで、攻撃を食い止めたからだ。

グズマは、据わった目で父親を睨みつけた。両親は、愕然としてグズマを見つめている。

もうここに用はない。何もかもぶっ壊してやる!

グズマは乱暴に父親の腕を離すと、リビングの隅に置かれている父親のゴルフクラブに視線を移した。それから、僅かに震えている様子の父親を一瞥して、ゴルフクラブの方へと歩いていく。

「グズマ?何をするつもりだ?」

「……はあ」

グズマは溜息をついた。なんだかんだで、両親に直接手を出すのは憚られる。自分の中にまだそんな感情があっただなんて、不思議な気持ちだ。

グズマはゴルフクラブを一本掴み取り、無言のまま二人に見せつけるようにして手に持つと、両手に力をこめた。

バキッ!

「ヒッ」

両親が息を呑むようにして悲鳴を上げる。

グズマは、真っ二つに折れたゴルフクラブを投げ捨てると、そのまま家を出た。
 ▼ 68 チート@ちかのカギ 18/09/22 13:58:24 ID:J1Fgx4.Y NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 69 AYr1xkow/g 18/09/23 18:40:24 ID:aEOARIgg [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
気がつけば、グズマはウラウラ島にやってきていた。

三年前のあの日々が、懐かしくなっていたのかもしれない。迷わず向かったのは、やはりポータウンだった。

雨の降りしきる十七番道路を越えてやってくると、グズマは、三年前とは随分雰囲気が変わっていることに気がついた。やけに暗く感じるのは、雨雲のせいだけではなさそうだ。

チランジの屋敷を中心に、街の人たちと支え合いながら和気藹々と暮らしていたトレーナーたちの姿は一切見えない。街の住民たちは、みんな屋敷を睨みつけながら、避けるようにして歩いていた。

「……?」

グズマは首を傾げながら、真っ直ぐに屋敷へと向かった。興味深げにグズマを見ていた中年女性が、グズマが屋敷に向かっていると気づいた途端、顔を歪めてさっさと立ち去っていく。失礼な奴だな、そう思いながらグズマは屋敷の扉を開けた。

屋敷の中には、誰もいなかった。

「おい、誰もいねえのか?」

グズマは大声を上げた。シャンデリアの電気が、チカチカと点いたり消えたりしている。

「え、もしかして、グズマさん……?」

か細い声が聞こえてくる。グズマは声のした方を見た。少年が、食堂の扉を少しだけ開けて、恐る恐るこちらを見ている。グズマは頷いた。
 ▼ 70 AYr1xkow/g 18/09/23 18:41:51 ID:aEOARIgg [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ワァー!グズマさんだー!!」

「えっマジ?マジ?マジだー!」

「グズマさん、お久しぶりですー!!」

瞬間、トレーナーたちが至るところから飛び出して駆け寄ってきた。

「おっ、おお?どうしたんだよ」

グズマはいきなり集まって嬉しそうに声を上げる彼らに気圧されながらも声を上げた。随分とトレーナーの数が減ってしまったようだ。グズマのことを慕っていた、あまり強くないトレーナーたちばかりが残っている。

「久しぶりだね」

懐かしい声がして、グズマは顔を上げた。

「プルメリか!久しぶりだな」

グズマはニヤッと笑った。

「ほんとにね」

プルメリはそう言いつつも、嬉しそうだ。

「三年間ずっと顔を見せに来ないなんて、バカだね」

「ああ?バカじゃねえよ」

「……バカだよ。でも、会えてよかったさ」

プルメリは切ない声でそう言った。
 ▼ 71 AYr1xkow/g 18/09/23 18:43:10 ID:aEOARIgg [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「しかしよぉ、一体どうしたんだ?こんな隠れるみたいに暮らして……」

グズマが問うと、再会の喜びに騒いでいた一同の表情が曇った。

「……カプがチランジさんを粛清したって噂が立ち始めてから、俺たちもなんかコソコソ言われるようになって……」

「すっかり除け者ですよ。ひどくないすか?うちらは不気味な組織に所属してた怪しい奴ら扱い」

「もーどーしよもねーから、悪いことばっかりするよーになっちゃいました」

「悪いことって言っても、大したことは何もできないですけどねぇ」

口々に不満を言うトレーナーを見て、プルメリも溜息をついた。

「このままじゃ良くないってことは分かってるけど、こいつらを見捨てることもできないしね……」

一同の言葉に、グズマは唖然としていた。

こいつら、そんな目に遭っていたのか。

「……もうあたいだけの力じゃ、こいつらを守りきれないよ」

プルメリが、弱々しい声を上げた。

グズマは、仲間たちを見つめた。ふつふつと腹の底から、何かが湧き上がってくるのを感じる。

一体、人々は何を求めているのだろうか。勝手に理想を押し付けて、それが違っていたと分かるや否や、掌を返す。怒鳴りつける。失望する。そんなの、人の勝手だ。

じゃあ、こっちもこっちの勝手でやらせてもらおう。もう我慢する必要はない。自分のやり方が合っているのか間違っているのかなんて、そんなことはどうでもいい。ただ、何かが許せなくて、堪えきれなくて、吐き出したいだけだ。そう、すべてを。どうにもならない未来への思いを。

「……なあ、お前ら」

グズマが低い声で唸った。一同は顔を上げ、そして、グズマの瞳がギラギラと輝いているのを見て、息を呑んだ。

グズマはハイパーボールからグソクムシャを繰り出した。そして、大きく息を吸うと、街中に響き渡るような声で叫んだ。

「全部ぶっ壊せ!!!!!」
 ▼ 72 AYr1xkow/g 18/09/23 18:43:53 ID:aEOARIgg [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

グズマに導かれたトレーナーたちは、ポータウンに住む人々を追いやり、建物を制圧して、たった一晩にしてポータウンを乗っ取ってしまった。
 ▼ 73 ガクチート@カイスのみ 18/09/25 19:28:13 ID:t9FYxvDI [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
更新きてた!支援
 ▼ 74 マシュン@ふといホネ 18/09/25 19:28:30 ID:t9FYxvDI [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
悲しい背景があったんだね。
 ▼ 75 ブリボン@しあわせタマゴ 18/09/25 19:28:45 ID:t9FYxvDI [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
悲しい背景があったんだね。
 ▼ 76 AYr1xkow/g 18/09/28 15:56:58 ID:IDuUUVTc [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ほとんどがグズマの功績だったにしろ、彼らは、一瞬、自分は特別な人間なのかもしれないと思うことができた。だって、こんなにすごいことを成し遂げてしまったのだから。

彼についていけば、きっと、このやり場のない感情をどうにかできるのかもしれない。それに、また昔みたいに楽しくやれるかも。真夜中に酒を飲んでお菓子を食べて、一緒に朝までゲームをして、たまにバトルを教えてもらう。いいじゃないか。それが悪いことだって言うなら、もういい。いくらだっていけないことをしてやる。
 ▼ 77 AYr1xkow/g 18/09/28 15:58:01 ID:IDuUUVTc [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「グズマさん!ずっと、ここにいてくださいよ」

トレーナーの一人が声を上げた。

「あ?」

グズマが振り向く。

「そうそう!俺たちの、リーダーになってください!」

「グズマさんになら、どこまででもついていきます!」

「グズマさん強えしかっけーし、超頼りになります!」

「好きです!!」

「誰だ今どさくさに紛れて告白した奴」

トレーナーたちは口々にグズマを賛辞し始めた。グズマは若干圧倒されてはいたものの、こっそりほくそ笑んだ。まあ、嫌な気はしない。
悪くねえかもな。グズマはそう考えた。

自分にそんな資格があるのだろうかとも一瞬思ったが、なんの拠り所もなくなってしまった彼らに対して、断ることの方がよっぽど酷なことに思えた。それに、実際に彼らを扇動してこの街を乗っ取ったのは自分だ。責任は取るべきだろう。

「ああ、やってやるぜ……」

グズマは芝居掛かった声でおおげさに首を縦に振った。トレーナーたちの瞳が、ぱあっと輝く。

「お前ら、オレについてこい。今日からオレが……オレさまがボスだ!!!」

「イェーーッッ!!!」
 ▼ 78 AYr1xkow/g 18/10/03 16:03:11 ID:MryEhfsU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女は、出ていった息子の部屋を掃除していた。

息子が今どこで何をしているのかは知らない。最近よく悪さをしているという不良集団に関する噂を聞いた時に息子の名前が聞こえたような気もしたが、まあ、気のせいだろう。私の完璧なグズマくんが、そんなことするわけないわ。

掃除機をかけていた女は、ふと机の下に何かが落ちていることに気がつき、掃除機の電源を切った。

「何かしら?」

腕を伸ばして、拾ってみる。それは、金色に輝くシールだった。どこかに貼ってあったのを剥がしたもののようで粘着力は少し落ちていたが、まだ使えそうだ。

「まあ、綺麗なシールね!」

女はニコニコ笑ってそう言うと、一旦掃除をやめてリビングに戻った。そして、冷蔵庫の扉に、金色のシールをぺたりと貼りつけた。


〈了〉
 ▼ 79 ッパ@ミミッキュZ 18/10/03 16:07:05 ID:P76.DI6w NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙!
 ▼ 80 ワーク@キズぐすり 18/10/03 16:30:30 ID:WR.g5SHM NGネーム登録 NGID登録 報告
 ▼ 81 クレオン@ウルトラボール 18/10/03 16:40:15 ID:5yXUbNRM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
おつおつ!
 ▼ 82 ンニュート@たつじんのおび 18/10/03 16:52:34 ID:uEQ.DLG6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
おつ!
 ▼ 83 ガカイロス@マグマブースター 18/10/03 17:20:52 ID:ZeMcY9aw NGネーム登録 NGID登録 報告
乙!
 ▼ 84 デンネ@ほのおのいし 18/10/03 21:00:27 ID:qHLUD7D. NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
乙です
切ねえなあ、グズマ…
 ▼ 85 AYr1xkow/g 18/10/04 23:29:26 ID:e52A5yVo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
読んでくれた方々、ありがとうございます。
グズマが主人公のシリアスなSSを書いてみたいなとはずっと思っていたのですが、USUMのグズマの実家の冷蔵庫にヌシールが貼られていたのを見て、「あれ絶対シールが何なのか分かってない母親が適当に貼ったやつだ!」と勝手に思ったのでそんなちょっと切ないお話を書いてみることにしました。
いつもより少し短めになりましたが、楽しかったです。
最後までお付き合いくださりありがとうございました!
 ▼ 86 クリン@とんでもこやし 18/10/05 13:56:37 ID:Ldt62aM. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙です
歴代の悪の組織と比べて町一つ占領してるとはいえ弱くて崇高な目的も無くて規模も小さいスカル団だけどシナリオ進めるごとに見える団員達の現実に在りそうな感じの挫折の仕方を見ると闇の深さはトップクラスに凄まじいんだよな
使ってくるポケモンも本当に序盤とかで手に入れる事が出来る系統のポケモンが多かったりするのも島巡りに挫折したって考えると納得出来た
ポケモンリーグが出来て少しでも改善するといいんだけどな
 ▼ 87 ーマンダ@ミアレガレット 18/10/05 21:21:11 ID:6YYoJIoA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>85
作者さんの他の作品読んでみたいです!
自分はSS読むの趣味なので。(書かないけど)
 ▼ 88 ドグラー@きんのいれば 18/10/05 21:22:45 ID:VFk.ic1g [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 89 ピンロトム@あかぼんぐり 18/10/05 21:23:16 ID:VFk.ic1g [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 90 AYr1xkow/g 18/10/05 23:49:54 ID:9Fbo06sQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>87
ありがとうございます。
せっかくそう言っていただけたので、今までに書いたSSをご紹介させていただきます

【SS】「私はロケット団で最も冷酷と呼ばれた男」
http://pokemonbbs.com/sp/poke/read.cgi?no=503492
長編 ランスがロケット団に入ってから組織が解散するまでの話

【SS】ママ「ほら、早く起きなさい!」【リメイク】
http://pokemonbbs.com/sp/poke/read.cgi?no=656366
長編 オリジナルキャラがオリジナル地方を冒険します

【SS】ルザミーネ「グズマに愛されるためのレッスン」
http://pokemonbbs.com/sp/poke/read.cgi?no=687714
短編 サンムーンから数年後のグズルザの話

【SS】グズマと魔法のランプ
http://pokemonbbs.com/sp/poke/read.cgi?no=725596
短編 ディズニー映画「アラジン」パロのグズルザ

コジョンド「ねえ、私のこと好き?」ハッサム「好きだぞ!」
http://pokemonbbs.com/sp/poke/read.cgi?no=885602
初めてプロットも何も考えずに勢いで書いてみたSSです。これのみ現行スレとなっております

よろしくです!
 ▼ 91 ールル@ちからのハチマキ 18/10/06 03:18:55 ID:5WTogf8E NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
あんた めっちゃ描いてるな


グズマのドロップアウトするまでのよかった

グズマにはそばにいてくれる女がいればいいんだけどなぁ
 ▼ 92 キノオー@マスターボール 18/10/06 12:37:08 ID:ZHHobe4g NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>90
読んで見ます
ありがとうございます
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https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=779736
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