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【ホワイトデーSS】 催花雨の代わりに

 ▼ 1 oxtmyvjwlY 18/03/01 17:54:16 ID:I498LYIA [1/10] NGネーム登録 NGID登録 報告




桜花



俺は君に恋をした。



雨が苦手なこの俺に、



あなたを咲かせられますか?



 ▼ 2 oxtmyvjwlY 18/03/01 17:54:50 ID:I498LYIA [2/10] NGネーム登録 NGID登録 報告



2月


今日も天気は雪だ。

全く、これだから雪国は困る。

外にはすでに雪が積もっているし、雪遊びはとうに飽きてしまった。

こう毎年降られたんじゃ、遊びも尽きてしまう。

それに俺はほのおタイプだ。

遊んでいるうちに溶かしてしまうこともある。


そんなこんなで、雨宿りの出来る俺の快適な寝床で、ちらつく雪を見ながらふて寝をしていた。

 ▼ 3 oxtmyvjwlY 18/03/01 17:55:29 ID:I498LYIA [3/10] NGネーム登録 NGID登録 報告


「ヒコザルー!ちょっと入れてくれよー!」


聞き慣れた声と共に、雪景色の中から一匹のポケモンが姿を現わす。

それは一瞬にして俺の寝床に侵入し、羽音を立てて後静止した。


ムックル「全く、雪ってのは本当厄介だよな。」


俺の友達のムックルだ。

こいつはひこうタイプだから、俺以上に雪については良く思っていないんだろうな。


ヒコザル「そりゃそうだ。ろくに散歩も行けねーし。」

ムックル「それは僕のセリフだよ! ここまで来るの大変だったんだから。」


そう言って体についた雪を落とし始めた。


まて、ここでやるな。

俺は落とされた雪に向かって小さな炎を出して溶かした。


ムックル「なあなあ、そういやもうすぐバレンタインだな。」

ヒコザル「ん? そうなのか?」

ムックル「おい、お前もしかしてずっとここに引き込もってたのか?」

ムックル「ニンゲン共がよく噂してるってのに。」


ああ、そうだったのか。

それにしてもこんな雪が続く中出ていけるって、ニンゲンってのは大した奴らだな。

 ▼ 4 oxtmyvjwlY 18/03/01 17:55:56 ID:I498LYIA [4/10] NGネーム登録 NGID登録 報告


ムックル「で、今年は貰えるのか?」

ヒコザル「今年はじゃなくて、今年もだろ。」

ムックル「え!? 去年は1つも貰えてなかったじゃん。」

ヒコザル「だから、今年も貰えないんだよ。」

ムックル「……そんな悲しいこと言うなよ。」


明らかに哀れみの目を向けられたが、俺は知っている。

こいつも毎年貰っていない。


ヒコザル「そういうお前はどうなんだよ。」

ムックル「……恐らくなしかな。」


やっぱりな。

だろうと思ったよ。


ヒコザル「全く……俺たちは一体何やってんだろうな。」

ムックル「で、でも! 貰いたいポケモンは居るんだ!」

ヒコザル「好きなポケモンが出来たのか?」

ムックル「うん……///」


おい、聞いてねーぞ。

てか顔を赤らめるな。見ているこっちが恥ずかしい。

 ▼ 5 oxtmyvjwlY 18/03/01 17:56:22 ID:I498LYIA [5/10] NGネーム登録 NGID登録 報告

ムックル「と言ってもさ、別に何かアピールしたとかじゃないんだよね……。」

ヒコザル「駄目じゃん。それじゃ今年も無しだな。」

ムックル「うっ……。」

ムックル「ヒ、ヒコザルは貰いたいポケモンとか居ないの?」

ヒコザル「可愛いコなら誰でもいいかな。」

ムックル「えぇ……。まあ、ヒコザルらしいか。」


その後、ムックルの好きなポケモンについて色々話を聞いた。というか問いただした。

そうしているうちに雪が止んだのでムックルは帰っていた。

あいつに引き込もってたのかと聞かれたのが妙に癪に触ったので、少し出掛けることにした。

 ▼ 6 oxtmyvjwlY 18/03/01 17:58:44 ID:I498LYIA [6/10] NGネーム登録 NGID登録 報告



ヒコザル「うわー、だいぶ積もってやがるな。」


当たり一面真っ白だ。

茶色い道も、緑の植え込みも、上から雪を被って白くなっている。

歩く度にザクザクと音がし、足が雪に埋まる。

しばらく宛もなくぶらぶらしていたが、景色はあまり変わらず、散歩も飽きてきた。


ヒコザル「あーあ。さっさと帰ってまた寝るか。」


そう言って来た道を戻ろうとした時、急に背筋がゾクッとした。

寒さからではない。

何か嫌な予感がする。

本能がそう悟った。


慌てて後ろを振り向くと、木の下で小さな物が動いている。


ヒコザル「ポケモンか……?」


よく見ようと目を凝らすと、微かにミシッと音がした。

そのポケモンの頭上の、雪が乗っている枝が揺れる。


やばい。

俺はすでに走り出していた。



このままだとあいつの上に雪が落ちる。

 ▼ 7 oxtmyvjwlY 18/03/01 17:59:08 ID:I498LYIA [7/10] NGネーム登録 NGID登録 報告


意外と距離がある。

走っている間に「にほんばれ」をした。

これで万一の時に少しでも落ちる雪が少なくなればいい。


ヒコザル「離れろ!」


そう叫んだ瞬間、木の枝がポキリと音を立てた。


ヒコザル「かえん……ほうしゃ!」


俺はその場で跳ね、雪に向かって技を放った。

間一髪、枝は雪共々炎に当たり焼失した。

そのポケモンは俺の声を聞いて離れたらしく、上がった煙の中に姿はなかった。


「わあ!ありがとうございます!」


煙が収まると、背後からそう言われた。


 ▼ 8 oxtmyvjwlY 18/03/01 17:59:29 ID:I498LYIA [8/10] NGネーム登録 NGID登録 報告


ヒコザル「いやいや別に俺は……。」


思いの外可愛い声に少し照れが入る。

声のする方を向くと、まさに「満開の笑顔」をしたポケモンがいた。

周りが白いなかピンク色をしたそのポケモンは、少し早い春を運んできたようだった。


ヒコザル「それより、大丈夫……だった?」


「はい、大丈夫です!」


と言ってもう一度笑ったその笑顔に、俺は確実に心を奪われていた。

ただ、こんなポケモンはこの辺で見たことがない。

遠いところから来たのだろうか。

思わず見とれていると、急に彼女の視線が揺れ始め、そわそわしだした。


ヒコザル「ん?どうかした?」


「ううん、なんでも!」

「わたし、用事があるからもう行くね!」

「またお礼は別の機会に……。」


そう言って、慌ててどこかへ去ってしまった。

礼なんて別にいいんだけどなあ。


 ▼ 9 oxtmyvjwlY 18/03/01 17:59:56 ID:I498LYIA [9/10] NGネーム登録 NGID登録 報告


ムックル「ふーん。で、惚れたわけか。」

ヒコザル「そ、そんなんじゃねーよ。」

ムックル「いいやそうだね。認めたらどうだ?」

ヒコザル「…………惚れた。」

ムックル「これでヒコザルも、やっと初恋かあ……!」

ヒコザル「う、うるせーー!」


後日、俺はその日の出来事をムックルに話した。

話したのは失敗だったかもしれない。

いや、かもではない。失敗だ。

今俺はこうしてムックルから色々と問いだたされている。

以前俺もそうしたので、これについては文句は言えない。

 ▼ 10 oxtmyvjwlY 18/03/01 18:00:14 ID:I498LYIA [10/10] NGネーム登録 NGID登録 報告


ムックル「どんなやつだ?」

ヒコザル「ピンク色で、なんか花みたいなやつだったな。」

ムックル「花?」

ヒコザル「ああ。あれは桜じゃないかなあ。春って感じだった。」

ムックル「今は冬だぞ。」

ヒコザル「分かってるよ。しばらくここにいるが、見たのは初めてだ。」

ムックル「桜みたいなポケモンねえ、僕も見覚えないなあ。」


決して引きこもりではないので、この辺りにいるポケモンは熟知しているつもりだった。

それはムックルも同じなはずだ。

ムックルは空を飛べるから、俺より行動範囲も広い。

それでも知らないと言うのだから、そうとう珍しいポケモンなのかもしれない。


 ▼ 11 ィアンシー@ひかるおまもり 18/03/01 21:57:10 ID:0475BKsI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 12 oxtmyvjwlY 18/03/02 17:26:27 ID:dfC8J9uY [1/6] NGネーム登録 NGID登録 報告



2月14日 バレンタインデー



寝床に引きこもること数時間。

日が沈み始め、辺りはオレンジ色になっていた。


ヒコザル「はあ……。」


正直期待した。

いつかのあのコに貰えると思っていた。

寝床に居ればすれ違うこともなく、確実に貰える。

そう思っていた。

だがもう時刻は夕方だ。

もうそろそろ諦めた方が良いのかもしれない。

食料の在庫も尽きてきた。

これだと夕飯は足りないかもしれない。

やっとのことで立ち上がり、寝床を出ようとした時、


「あ、あ、あの…………!」


出入口の穴から一匹のポケモンが姿を現した。

 ▼ 13 oxtmyvjwlY 18/03/02 17:26:53 ID:dfC8J9uY [2/6] NGネーム登録 NGID登録 報告


「あ、ヒ、ヒコザルさん!」

「良かった……。まだ、居た……。」


ヒコザル「……チェリム?」


紫色の葉みたいなもので顔を隠し、少しきょどった様子で近づいてくる。

声もかなり震えている。


チェリム「こ、この前はありがとう。」

チェリム「こ、こ、これ!良かったら……!」


そう言って、ピンク色の小袋を渡された。

バレンタインに物を貰ったのは初めてだ。


ヒコザル「ああ、ありがとう。」

チェリム「ほ、本当はチョコにしようかと思ったんだけど……。」

チェリム「ヒコザルさんだと、チョコ、溶かしちゃいそうで。」

ヒコザル「そう、かもな。うん、お気づかいありがとう。」

チェリム「じゃ、じゃあ!ば、バイバイ!」


そう言って、チェリムは逃げるように去っていった。


 ▼ 14 oxtmyvjwlY 18/03/02 17:27:14 ID:dfC8J9uY [3/6] NGネーム登録 NGID登録 報告


正直俺は困惑していた。

貰ったことに関しては、まあ悪い気はしない。

ただ、あのコではなく、あまり喋ったこともない様なコに貰ったことに驚いていた。

そいつの言う「この前」がいつのことか思い出せない。

正直、俺の中でチェリムは地味メン過ぎて最近会った記憶が消えている。

地味過ぎて気づいていないのか、本当に会ったのかは分からない。


袋の中身はクッキーだった。

これについては何も文句はない。

かなり美味しかった。

そもそもお菓子なんて普段食べない。

それもあってか、少し感動したまである。

 ▼ 15 oxtmyvjwlY 18/03/02 17:27:36 ID:dfC8J9uY [4/6] NGネーム登録 NGID登録 報告



次の日、朝早くから俺の寝床にムックルが遊びに来た

まあ、どうせ昨日の話だろう。


ムックル「なあ、僕駄目だった……。」

ヒコザル「ふーん。」

ムックル「冷たくない!?」

ヒコザル「初めから分かってたことだろ?」

ムックル「そ、そういうヒコザルはどーなのさ?」

ヒコザル「貰ったよ。」

ムックル「!?」

ヒコザル「チェリムに。」

ムックル「あっ……。」


何かを察したように黙りこむ。

ムックルのところも、チェリムはそういうイメージのようだ。

 ▼ 16 oxtmyvjwlY 18/03/02 17:28:00 ID:dfC8J9uY [5/6] NGネーム登録 NGID登録 報告


ムックル「で、でもそれならすごいよね!」

ヒコザル「何が?」

ムックル「普段大人しくてうじうじしてるような子が、勇気を出して渡せるほど好きってことなんだから。」

ヒコザル「好き、なのか?」

ヒコザル「何か礼を言われたけど、好きとは言われてないぞ?」

ムックル「わざわざバレンタインデーの日を選んだんだから、好きに決まってるじゃないか!」

ヒコザル「そうか?」

ムックル「そうだよ!ただのお礼なら、お返しの日のホワイトデーで良いだろ?」

ヒコザル「でもそれは男が返す日だろ?」

ムックル「つまり、チェリムは君からのお返しを待ってるんだよ。わざわざホワイトデーを避けたんだから。」

ヒコザル「深読みにもほどがあると思うけど……。」

ムックル「でも貰ったんだから返さなきゃだよ。」

ヒコザル「まあ、そうだよなあ……。」


 ▼ 17 oxtmyvjwlY 18/03/02 17:28:22 ID:dfC8J9uY [6/6] NGネーム登録 NGID登録 報告


お返し、か……。

俺はあいつとはあまり話したこともなく、好みも全く分からない。

メスとの接点も全く無い俺にはお返しのプレゼントなど全く思い付かなかった。


ヒコザル「なあ、メスが好きそうなプレゼントってなんだ?」

ムックル「うーん、僕も分からないよ……。」

ムックル「無難にチョコで良いんじゃないかなあ。」

ヒコザル「まあ、ホワイトデーだしなあ。」

ムックル「チョコなら、その辺の町で売ってると思うよ。」

ヒコザル「マチ?」

ムックル「うん。たまにそこの上を飛ぶんだけど、バレンタイン近くはそこそこ賑わってたよ。」


どうりでこいつはニンゲンに詳しかったのか。

マチにも訪れていたとは。

俺はムックルに町までの道を教えてもらい、チョコを探しに度々行くことにした。


 ▼ 18 oxtmyvjwlY 18/03/03 21:11:08 ID:YVncgMBg [1/8] NGネーム登録 NGID登録 報告



3月


何度目かの町からの帰り道。

雪が溶けかかった道を、俺はとぼとぼと歩いている。

町は凄かった。

ニンゲンがたくさんいて、少し萎縮してしまった。

チョコも確かにあったが、買うには当然カネがいる。

町に住み慣れたポケモンが、愛嬌で餌を貰ってる光景も目にしたが、俺には無理だろう。

何度行っても町に慣れることはできず、チョコも手にいれられなかった。


ヒコザル「あいつもああやってクッキーを手にいれたのかな。」


そんなことを考えながら、寝床に向かって歩いていた。

 ▼ 19 oxtmyvjwlY 18/03/03 21:11:33 ID:YVncgMBg [2/8] NGネーム登録 NGID登録 報告


ヒコザル「……?」


ぽつりと頭に水滴が落ちてきた。

するとすぐに、雨が降り始める。


ヒコザル「マジかよっ。」


辺りを見渡す、雨宿りが出来そうな窪みが壁に出来ているのが見えた。

慌ててそこに向かい、すでに濡れてしまった体を震わせて水滴を飛ばした。


ヒコザル「早く止んでくれねえかなあ。」


その想いは届かず、しばらく経ってもなかなか止まなかった。


ヒコザル「あーあ、どうするよこれ?」


ざあざあと降る雨の音に耳を傾けていると、雨の音以外に、ぴちゃぴちゃとした音が聞こえ始めた。

それは誰かの足音のように聴こえた。


ヒコザル「こんな雨の中誰だ?」


音のする方を向くと、紫色のシルエットが、雨の中でぼんやりと映った。


チェリム「あっ……。」


目が合ってしまったのか、向こうも気づいたようだ。

 ▼ 20 oxtmyvjwlY 18/03/03 21:11:52 ID:YVncgMBg [3/8] NGネーム登録 NGID登録 報告


ヒコザル「何してんだよ。濡れてるぞ、入れよ。」


チェリムが雨の下で突っ立ってしまったのが見ていられず、思わず声をかける。


チェリム「あ、いや、その……。」


それでもチェリムは動こうとしなかった。

少しイラっとしたので、俺の方からわざわざ窪みを出て、チェリムを引き入れようとした。

濡れてしまったが気にしない。


チェリム「あの!!」


掴もうとした時、唐突にチェリムが大きな声を出した。

俺は驚いて手を引っ込める。

変な沈黙の間、二人は濡れながら立ち尽くしていた。

 ▼ 21 oxtmyvjwlY 18/03/03 21:12:22 ID:YVncgMBg [4/8] NGネーム登録 NGID登録 報告


チェリム「あ、あの……。」

チェリム「催花雨、って言うんです。こういう雨。」


唐突にチェリムが語りだした。

俺は、どこかで聞いた声な気がした。

バレンタインの時の震えた声ではない。

もっと、前に、どこかで……。


チェリム「と言っても、普通の雨とそんなに大差はないのですけど……。」

チェリム「あっ……急にごめんなさい。変なこと言って。」

チェリム「それと、私、雨が気持ちよくて、敢えて濡れてたんです。」

チェリム「だから、その……。」

ヒコザル「そ、そうなんだ。こっちこそ悪かった。」

チェリム「いえ。ヒコザルさんが濡れてしまったのは私のせいです……。」

ヒコザル「いや、気にしなくて良いよこれくらい。」


俺はそう言って濡れた体を再び震えさせた。

雨が降っているから無駄なことだと分かっていた。

だが、俺が体を震わせてすぐに、俺に当たる滴は少なくなっていた。


雨が、止んだ。

 ▼ 22 oxtmyvjwlY 18/03/03 21:13:02 ID:YVncgMBg [5/8] NGネーム登録 NGID登録 報告


ヒコザル「ッ……!」


雲の切れ目から、眩しい光が降りそそいだ。

眩しいので、つい腕で目を隠す。

雨で冷えた体が温もっていく。

腕を外すと、そこにチェリムの姿は無かった。

そこに居たのは、いつかのあのコだった。


ヒコザル「えっ……?」


あのコが立っていたのは、先程までチェリムが居た場所。


「ほらね、催花雨だったでしょ?」


雨の中で聞いた声と同じ可愛い声だった。

 ▼ 23 oxtmyvjwlY 18/03/03 21:13:26 ID:YVncgMBg [6/8] NGネーム登録 NGID登録 報告


ヒコザル「チェリム……?」

チェリム「うん!」


そうだ、あれはチェリムだったんだ。

俺が助けたのも、お菓子をくれたのも、全部。

どうして気付かなかったのか。

鈍感な俺が情けない。


ヒコザル「そっか……。」

ヒコザル「クッキー、ありがとな。旨かった。」

チェリム「わあ!食べてくれたんだね、嬉しい!」


何となく……いや、ほぼ間違いないが、

開花した時の方が性格が明るいな。


ヒコザル「姿が変わるポケモンなんて珍しいな。」

チェリム「うん……この辺ではあまり見ないね。」


 ▼ 24 oxtmyvjwlY 18/03/03 21:13:48 ID:YVncgMBg [7/8] NGネーム登録 NGID登録 報告


ヒコザル「……あっ。」


さっきまで出ていた太陽が、再び雲に隠れてしまった。

それと同時に、チェリムが普段の姿へと戻る。


チェリム「もう終わっちゃった……。」


残念そうに空を見上げる。

それにつられて、俺も空を見る。

雲に隠れて見えない太陽を、探すように。



チェリム「あ、じゃあ私そろそろ……。」


ヒコザル「ま、待って!」

ヒコザル「ホワイトデーの日なんだけど……。」

チェリム「えっ……?」

ヒコザル「予定、空いてるかな。」

チェリム「……うん!空いてるよ!」

ヒコザル「そっか、じゃあ……。」

ヒコザル「またここで会ってくれないかな。」

チェリム「……うん!」


ホワイトデーの日に会う約束をして、俺たちは別れた。

 ▼ 25 oxtmyvjwlY 18/03/03 21:15:33 ID:YVncgMBg [8/8] NGネーム登録 NGID登録 報告




ムックル「で、チョコは手に入ったの?」

ヒコザル「いいや、全然。」

ムックル「おいおい、大丈夫なのか?もう日が無いぞ?」


ホワイトデーまで一週間を切っていた。

俺はもう、町に足を運ばなくなっていた。


ヒコザル「お返しは、チョコじゃなくたっていいんだろ?」

ムックル「まあそうだけど……。」

ムックル「僕が貰ってきてあげようか?」

ヒコザル「いや、いいよ。もう渡すもの決めたからさ。」

ムックル「えっそうなの?何々?」

ヒコザル「ん、内緒だ。」

ムックル「ええ!? なんで!?」

ヒコザル「まあまあ良いだろ。」

ヒコザル「それよりもさ、聞いて欲しいことがあんだけど……。」


俺は、この前チェリムと会ったことや、助けたコがチェリムだったことを話した。

そして俺はどちらのチェリムも好きだと、自分に言い聞かせながら、そう宣言した。


ムックル「そっか……。まあ、頑張れよ。」

ムックル「なんか上手く行きそうな気がするよ。」


 ▼ 26 oxtmyvjwlY 18/03/04 20:24:07 ID:9rj2Booo [1/7] NGネーム登録 NGID登録 報告



3月14日 ホワイトデー



あれだけ積もっていた雪が、今では少しを残すのみだ。

雲1つ無い青空で、でもまだ少し肌寒い。


俺は約束をした場所についた。

まだチェリムは来ていない。


ヒコザル「何か忘れてることは無いかな……。」


そう思って体のあちこちを見渡すが、いつもの俺だった。

手には何も持っていない。

少し毛を整えたぐらいだ。


ヒコザル「少し早く着きすぎたかな。」


暇なのでこの気持ちのよい空を眺めていた。

 ▼ 27 oxtmyvjwlY 18/03/04 20:24:28 ID:9rj2Booo [2/7] NGネーム登録 NGID登録 報告


ヒコザル「……ん?」


空を見上げていると、青い空に白いものがちらつく。


ヒコザル「雪……?」


曇ってもいないのに、確かに雪が降っていた。

なんだか不思議な感じだ。



チェリム「風花ですっ……!」


空を見上げていて気付かなかったが、もう近くにチェリムが来ていたようだ。


チェリム「ホワイトデーの日に雪なんて、素敵ですね!」


恥ずかしそうに、こちらを見て笑った。

 ▼ 28 oxtmyvjwlY 18/03/04 20:24:52 ID:9rj2Booo [3/7] NGネーム登録 NGID登録 報告


ヒコザル「うん、本当に素敵だな。」


ヒコザル「催花雨も、風花も。」


チェリム「はい……!」


俺たちはしばらく、口を開かずにこの景色を眺めていた。

晴れ間に降る珍しい雪を楽しんでいた。


ふいに、チェリムが体を震わせる。


チェリム「でも、雪は寒いので少し苦手です。」


ヒコザル「……俺もだ。」


ヒコザル「雨も、俺にはちょっと似合わない。」


チェリム「ほのおタイプですもんね。」


ヒコザル「ああ。それに……。」


ヒコザル「晴れてないと、お前も咲けないだろ?」



チェリム「……え?」


 ▼ 29 oxtmyvjwlY 18/03/04 20:25:15 ID:9rj2Booo [4/7] NGネーム登録 NGID登録 報告



ヒコザル「俺からの、ホワイトデーのお返しは。」



ヒコザル「お前の満開の笑顔だよ。」



そう言って、俺はにほんばれを繰り出した。


陽射しが強くなり、雪が止む。


そして、チェリムがフォルムチェンジした。




チェリム「わっ……!」




驚いたように目を丸くすると、


こちらを向いて、にこりと笑った。


 ▼ 30 oxtmyvjwlY 18/03/04 20:25:43 ID:9rj2Booo [5/7] NGネーム登録 NGID登録 報告


チェリム「暖かい……。」


強くなった陽射しを見上げて目を細める。




ヒコザル「なあ、チェリム」


チェリム「ん?なーに?」



ヒコザル「俺は、雨も雪もそんなに得意じゃないけどさ……。」


ヒコザル「お前と一緒なら、楽しめる気がするんだ。」


ヒコザル「咲いてるお前ももちろん好きだし、普段のお前も好きだ。だから……。」




ヒコザル「だから……俺と、付き合ってくれないかな。」




チェリム「……!」




チェリム「うん!!喜んで!」


 ▼ 31 oxtmyvjwlY 18/03/04 20:26:15 ID:9rj2Booo [6/7] NGネーム登録 NGID登録 報告



陽射しがまた弱くなってきた。


チェリムが元に戻る。


雨が降りだす。


「にほんばれ」で気温が上がったからか、雪はもう降って来なかった。


慌てて、いつかの日に雨宿りした窪みに二人で入る。




ヒコザル「催花雨か?」


チェリム「ですね。」


完全な催花雨の代わりにはなれない。

それでも、俺は出来るだけあなたを咲かせたい。

ただ、今だけは……。



その雨がまた彼女を咲かす時を、俺達はただ待っていた。





【ホワイトデーSS】催花雨の代わりに 〜完〜

 ▼ 32 oxtmyvjwlY 18/03/04 20:28:33 ID:9rj2Booo [7/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
当SSはこちら(http://pokemonbbs.com/sp/poke/read.cgi?no=768396)の企画に参加しております。

読んでくださった方々、ありがとうございました。
 ▼ 33 ーリキー@きぼんぐり 18/03/04 20:34:10 ID:FIXCrm0g NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
お疲れさまでした
 ▼ 34 バット@べにいろのたま 18/03/04 21:19:07 ID:LL6v0wBs NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ▼ 35 リジオンの人◆QhqpxfPSAI 18/03/04 23:12:17 ID:zq5DFmW2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
素敵な話でした
乙です
 ▼ 36 ーバー@パワフルハーブ 18/03/04 23:24:20 ID:boBkqXvI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
お疲れさま
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