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SS

【SS】夢といっしょに

 ▼ 1 キャット◆qsBYGjqx5E 18/12/15 02:43:14 ID:Rod6vmcU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 『歩き続けて、どこまで行くの?』


この世の全てを消し飛ばすかのように、風が吹き荒れる。
ポケモン達はどこかへ消え去り、緑豊かな景色は瞬く間に歪む。
何もかもが、壊れていく。

ああ。あんなに綺麗な、青空だったのに。

灰色になった空の真ん中。大きな穴が開き、私の意識を吸い込んでいく。

無かった。何も、無かったんだ。

もう、夢は終わり。

さようなら──
 ▼ 39 キャット◆qsBYGjqx5E 18/12/16 20:14:21 ID:BraAFaeM [1/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「……あ、こんな所にボール落ちてるー! 」

思いっきり話を逸らされた。

……落ちていたのは、野球のボール。
向こうで短パンの男の子が野球の練習をしている。こっちにボールを投げてしまったのかな。

男の子が、こっちに向かって何かを叫んでいる。

「まったく、しょうがないなー!!」

そこまで言うと、女の子はハイ、と私にボールを渡す。
……投げて、って目で訴えてる。ボールを投げるの、苦手なのかな。

私も得意な方では無いけど……。

不思議と、断る気にはならなかった。
 ▼ 40 キャット◆qsBYGjqx5E 18/12/16 20:17:13 ID:BraAFaeM [2/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
無意識の内に、ボールを握り締める。

……届けっ!

「……あーあ、どこに投げてんの、もう……」

真っ直ぐ投げたはずのボールは、何故か左の方へ進んでいった。
男の子がネズミみたいに速く動いてくれたから、すぐにキャッチしてくれたけど……。

──あれ?
前にも、こんなこと──

「ん? どうしたの?」

「ああ、前にポケモンを──」

──ポケモン?

「ふふっ、君、いっつもポケモンのことばかり話してるよねぇ」

「そ……そう?」

確かに、私の好きなゲームだけど……。
そんなに四六時中、ポケモンのことを話してるわけじゃ……。

──どうして今、ポケモンのことを思い出したんだろう。
どうして、私──

「どーしたの?」

「……何でもないよ!」

──誰かと話していても、この違和感は忘れられなかった。
 ▼ 41 キャット◆qsBYGjqx5E 18/12/16 20:18:56 ID:BraAFaeM [3/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


それから、家に帰って。

夜になったら、晩ご飯を食べて、お風呂に入って、宿題をして、布団に入って。

朝になったら、着替えて、顔を洗って、朝ご飯を食べて。

肩にカバンを掛けて、スニーカーを履いて。帽子は被らずに、学校へ向かって。

そんな日常が、何度も繰り返された……けど。


──何かが、足りない。

不思議な違和感と喪失感が、いつも意識の奥でくすぶる。

それだけは、変わらなかった。


……大人になったら、忘れられるかな。

──早く大人になりたいな……。

 ▼ 42 キャット◆qsBYGjqx5E 18/12/16 20:21:18 ID:BraAFaeM [4/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「……」

ぼんやりと目を開ける。

いつもと同じ景色。いつもと同じ空。いつもと同じ、この感覚。

──そういえば最近、夢を見てない。

少し前は、もっと色々見ていたような気がするけど……。
いつの間にか、自然と見なくなるものなのかな──


ジリリリリリリリリッ!!!

相変わらずうるさい目覚まし時計。
……これのおかげで、目は覚めるけど。

……早く起きなきゃ。
重い体を無理やり起こし、朝の支度を始めた。
 ▼ 43 キャット◆qsBYGjqx5E 18/12/16 20:24:21 ID:BraAFaeM [5/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「あら、これポケモンじゃない」

朝ご飯の最中。
お母さんの言葉を聞いて、私はテレビの方を見る。

『ポケットモンスターシリーズ最新作!』

それは、新作のポケモンのゲームを紹介するCMだった。

「あんた、またコレ買うの?」

ポケモン。小さい頃から大好きで、新作が出るたび必ず買っていたゲーム。
……でも……。
 ▼ 44 キャット◆qsBYGjqx5E 18/12/16 20:26:07 ID:BraAFaeM [6/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「……これからは、買わないよ」

「ふーん」

いつまでも、ゲームなんてやってちゃダメだよね。
勉強だって、これから大変になるし。


──一瞬、とても大事な何かが抜け落ちたような、変な喪失感が体を駆け巡った。


「何してるの?」

「……ううん、何でもない」

……気のせいかな。
頭から払い切れない違和感を、パンと一緒に押し込んだ。
 ▼ 45 キャット◆qsBYGjqx5E 18/12/16 20:30:03 ID:BraAFaeM [7/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「ねぇ、あの男子さぁ……」

学校での休み時間。教室で過ごしていると、この前放課後に話した子がまた話しかけてきた。

その子の指さす先には。
赤い服を着た男の子が、椅子に座っていた。

「……私、あの子のことよく知らないな」

「え〜っ、そうなの? 結構な有名人だけどなぁ」

「どんな子なの?」

「あの男子はねぇ……すんごいゲームオタクなの! めっちゃゲームが上手いらしいんだけど、家には引く程ゲームがあるんだって! おまけに超コミュ障で、一っ言も話さないの!」

──凄い子だな。自分に一直線で……。
私はそう思ったんだけど、どうやら皆からの評価はあまり良くないらしく。
 ▼ 46 キャット◆qsBYGjqx5E 18/12/16 20:32:26 ID:BraAFaeM [8/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「あたしはあの男子、無理だな〜! 話さないとか、つまんなそう!」

……そんな大声で言ったら聞こえちゃうんじゃないの?

「ねぇ、そう思うよね!」

「……私は良いと思う、自分をしっかり持ってるし」

「……まぁ考え方は人それぞれだけど、とにかくあたしは無理!」

……ゲームが好きな人って、周りの人から変な風に見られたりすることが多い気がする。
学校でも、やたらゲームはダメって言われるし。

それでも、自分の好きなこととか、やりたいことを貫けるのは、凄いことだと思う。


──私には、出来ないな……。
 ▼ 47 キャット◆qsBYGjqx5E 18/12/16 20:36:07 ID:BraAFaeM [9/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
やりたいことは何も無いし、得意なことも特に無い。
趣味は……前はゲームをやってたけど、今はほとんどやらないし……。


──私は夢を持ってない。

ずっと周りに流されて、ぼんやりと生きてきたから。
自分を貫くなんてこと、してこなかったから。

──あの男の子も、きっと素敵な夢を持ってるんだろうな……。

……あれ? じゃあ、私は──


「あ、それより! 昨日のテレビがね……」

「……あっ! うん、何?」

いけない、またぼんやりしてた。

最近、なんか調子がおかしい。
しっかりしないと……。
 ▼ 48 キャット◆qsBYGjqx5E 18/12/16 22:32:16 ID:BraAFaeM [10/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「何なのこれは!」

バンっと机に叩きつけられた答案用紙。
点数の欄には、赤いペンで42と書かれている。

……こんなに悪い点数を取ったのは初めてだった。
最近、授業に身が入らなかったからかな……。

「あ、あのお母さん」

「あんたの言い訳は聞かないから!」

……弁明は出来そうに無い。

こうなったら、静かになるまでひたすら待つしかない。
怒られることは薄々気付いてたし。何とかやり過ごせば──
 ▼ 49 キャット◆qsBYGjqx5E 18/12/16 22:53:26 ID:BraAFaeM [11/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
その瞬間。

私の奥で眠っていた違和感が。
意識の奥に抑え込んでいた喪失感が。

お母さんの突き刺すような声で、たたき起こされた。


「あんた、何で勉強やってるの?」

──何で


「あんたは、何のために勉強やってるのよ?」

──何の、ために


「周りにたくさん迷惑掛けて、それでようやくあんたは勉強が出来てるのよ?」

──そんなの


「良い? 勉強は、自分のために……」

──そんなの──!


分からないよっ!!

 ▼ 50 キャット◆qsBYGjqx5E 18/12/16 22:56:48 ID:BraAFaeM [12/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

どうして私は、勉強をしているの?

どうして私は、ここに居るの?

私は一体、何がしたいの?


頭の中で、たくさんの疑問がぐるぐると回る。

今にも頭が爆発しそうで。

気が付くと、家の外へ逃げ出していた。
 ▼ 51 キャット◆qsBYGjqx5E 18/12/16 23:01:19 ID:BraAFaeM [13/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
何かを掴みたくて。何かを見つけたくて。

だけど、だけど。どこにも、私の探しているものは無くて。

誰も、私に答えてくれない。
誰も私を、見ていない。


──私に生きてく意味はあるの?

人に迷惑を掛けて、怒らせて。
そのくせ、周りに流されてばかりで。


夢も無い。やりたいことも無い。得意なことも無い。

──何も無い。

私には、何も無い。

空っぽの存在なんだ。
 ▼ 52 キャット◆qsBYGjqx5E 18/12/16 23:03:54 ID:BraAFaeM [14/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
──じゃあ、生きてく意味だって無いじゃない。

そうだ。心のどこかで気づいてた。こんな私に、意味なんて無いと。

もう、終わりにしよう。

さようなら、私──


そうして。高台に登って、全てを終わらせようとした時。


──真っ青な空が、目に飛び込んできた。

 ▼ 53 キャット◆qsBYGjqx5E 18/12/16 23:06:16 ID:BraAFaeM [15/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


あの日。初めてポケモンに出会った日。

あの日も、こんな青空だった。


まだ私が小さかった頃。

周りの皆がやり始めて、それでやり始めたゲーム、ポケットモンスター。


最初は、何とも思ってなかった。
どうせすぐ飽きるって、皆から言われた。
 ▼ 54 キャット◆qsBYGjqx5E 18/12/16 23:07:43 ID:BraAFaeM [16/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
でも。
やればやる程、楽しくて。進めば進む程、続きが気になって。

──ほんの少し遊んだだけで、私はポケモンの虜になっていた。

だって。
こんなに楽しいって思ったの、初めてで。
こんなに幸せって思ったの、久しぶりで。


あの日。
灰色だった私の世界に、一瞬で光が溢れた。

何も無かった私に、“夢”をくれた。


あんなに綺麗な青空を見たのは、あの日が初めてだった。

 ▼ 55 キャット◆qsBYGjqx5E 18/12/17 14:44:56 ID:m6nQ7z9o [1/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

どうして忘れていたんだろう。
……ううん、違う。

忘れてなんかいない。ずっと、思い出せなかったんだ。


ポケモンのこと。旅のこと。
誰かと一緒にいる、幸せのこと。

探しても、見つからない訳だよ。
だって、私がずっと探していたものは。
……足りないと思っていたものは。


このポケットに。ずっと、入っていたんだから。
 ▼ 56 キャット◆qsBYGjqx5E 18/12/17 14:50:54 ID:m6nQ7z9o [2/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ポケットからモンスターボールを取り出し、握り締める。
──願いを込めて。

そっと開く。光が溢れる。

……フシギダネ。

「ダネっ!」

いつもと同じ、変わらない笑顔。それがとても愛おしくて。

いつの間にか、私達は抱き合っていた。


ああ。こんなにも幸せで。こんなにも暖かくて。

──意味が無い訳、ないじゃない。
 ▼ 57 キャット◆qsBYGjqx5E 18/12/17 14:52:55 ID:m6nQ7z9o [3/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

旅も、勉強も、ポケモンも。
どれもかけがえの無い、私の人生なんだから。

例え思い出せなくても。一夜限りの夢であっても。
そんなもの達が、私の心を作っているのだから。


私のポケットの中で。
私の一部となって、いっしょに生きてくものなのだから。

私の見たこと、聞いたこと、したこと全てが。
かけがえの無い、“夢”になるから。


だから。
意味の無いことなんて、何一つ無いんだ。


ありがとう、フシギダネ。ありがとう、ポケモン。

大切なことに、気付かせてくれて。
 ▼ 58 キャット◆qsBYGjqx5E 18/12/17 14:55:27 ID:m6nQ7z9o [4/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

──でも。これで終わりじゃない。

私にはまだ、やらなきゃいけないことがある。

せっかくポケモンがくれた、一度きりのチャンス。
無駄にしちゃいけないから。


「フシギダネ──お願い」

「もう一度、私に……夢を見させて」


「……ダネ!」
 ▼ 59 キャット◆qsBYGjqx5E 18/12/17 14:56:33 ID:m6nQ7z9o [5/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

にっこりと笑うフシギダネ。

そして。

きらきらと輝く緑色のそれは。
ゆっくりと私に降りかかり。

しびれる感覚と、心地よい眠気。


そのまま仰向けに倒れ込み、空を見る。

瞼を閉じる直前。視界には、どこまでも青い空が広がっていた。


「────」

私はそのまま、夢の入り口に向かって眠りに落ちていった。

 ▼ 60 キャット◆qsBYGjqx5E 18/12/17 14:59:59 ID:m6nQ7z9o [6/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

何も無い、真っ白な空間。

その真ん中に。

水色のノースリーブに赤いミニスカート、ルーズソックスに、白い帽子の。

──私じゃない、もう一人の“私”が立っていた。


“私”は何も話さない。でも、何が言いたいのかは分かる。

ずっと私が、“私”が、悩んでいたこと。
意識に浮き上がってくる度、無理やり奥へと押し込んでいた疑問。


 『歩き続けて、どこまで行くの?』


──それは

 分からない。
 ▼ 61 キャット◆qsBYGjqx5E 18/12/17 15:02:51 ID:m6nQ7z9o [7/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

私は何をしたいのか。
それは今でも分からない。


──だから。

それを探すために。見つけるために。


 私は、歩き続けたい。


もしかしたら、見つけることは出来ないかもしれない。
どんなに努力しても、報われないかもしれない。


──それでも。

夢を見ることが、どれだけ楽しいか。
夢と共に歩くことが、どれだけ幸せか。

私は、知っているから。


きっと、無駄にはならないから。
必ず、意味はあるはずだから。

大切な、私の一部となるから。


だから。もう少しだけ。

──私に、“夢”を見させて。

 ▼ 62 キャット◆qsBYGjqx5E 18/12/17 15:04:50 ID:m6nQ7z9o [8/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「…… ……」

“私”は相変わらず何も話さなかった。……でも。

一瞬、ふっと笑ったような気がした。


優しい風が吹いてくる。
どこからかポケモン達が姿を現し、少しずつ、緑豊かな景色が広がっていく。

きらきらと輝く青空の真ん中。大きな穴が開き、私の意識を吸い込んでいく。


ああ。また、始まるんだ。
私の、“夢”が。


ありがとう、ポケモン──

 ▼ 63 キャット◆qsBYGjqx5E 18/12/17 15:06:54 ID:m6nQ7z9o [9/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ポケモンセンターの一室。

ベッドの上で、私は目を覚ます。

窓から差し込む朝の光。机の上に置かれたバッグ。


──そして。
私の、大切な──
 ▼ 64 キャット◆qsBYGjqx5E 18/12/17 15:09:01 ID:m6nQ7z9o [10/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


「お預かりしたポケモンは、元気になりましたよ」

「ありがとうございます」

モンスターボールを受け取り、外に出る。
……とっても気持ちの良い朝。


無意識に握り締めていた、モンスターボール。
願いを込めて、そっと開く。

「ダネ!」

私の大切なパートナー、フシギダネ。

「フシギダネ、おはよう! 良い朝だね」

「ダネ」

そう言って笑い掛けると、フシギダネも笑い返してくれる。

ポケモンが隣に居てくれる。それは、とても幸せなこと。


今日の朝は、幸せと光に溢れていた。
 ▼ 65 キャット◆qsBYGjqx5E 18/12/17 15:11:14 ID:m6nQ7z9o [11/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

……ふと、昨日のことを思い出す。


 『歩き続けて、どこまで行くの?』


そよ風が、ささやくように尋ねた。


──歩き続けて、どこまで行こうか。


空を見上げて、そう答える。

大丈夫。
この旅が、ポケモンが。私に必要だって、分かってるから。
 ▼ 66 キャット◆qsBYGjqx5E 18/12/17 15:13:04 ID:m6nQ7z9o [12/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

フシギダネをボールに収納する。
帽子をぎゅっと被るのが、冒険の始まる合図。


──もう一度、歩き出そう。

パートナーをポケットにしまう。


どこまでも続く、青い空の下。
風が、そっと背中を押してくれる。


ポケットに、心に。ありったけの夢を詰め込んで。


風と、空と。夢といっしょに。

大地を踏みしめ、どこまでも。


──目指したあの“夢”を、掴むまで。

 ▼ 67 キャット◆qsBYGjqx5E 18/12/17 19:20:57 ID:m6nQ7z9o [13/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


──旅を始めてから、どれだけの時間が経っただろう。

ふと、後ろを振り返る。
そこには、今まで歩いてきた道が広がっていた。

あの頃流行っていたスニーカーも、今では数々の冒険を乗り越えてきたボロボロの靴。

時間が経つのは、あっという間だった。


私達は、あれからずっと歩き続けた。

いくつもの出会い、いくつもの別れを繰り返して。
たくさんの思い出と夢を、ポケットに詰め込んで。

私は、ポケモンから沢山のことを学んだ。
もう、十分ってくらいに。


──そう。もう、十分。
 ▼ 68 キャット◆qsBYGjqx5E 18/12/17 19:22:18 ID:m6nQ7z9o [14/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

だから。
私にはもう、ポケモンは──

必要ない。


──大丈夫。
例えポケモンから離れてしまっても。
この旅が終わってしまっても。


見つけた夢も、出会った皆の暖かさも。
ポケットに、心にしまって。ちゃんと持って帰るから。

私の中で、生き続けるから。
 ▼ 69 キャット◆qsBYGjqx5E 18/12/17 19:25:07 ID:m6nQ7z9o [15/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ポケットにしまったモンスターボールに、そっと触れる。


もう、振り返らない。

前を見つめて、私は生きる。


きらきらと輝く青空の真ん中。大きな穴が開く。


──ハロー。マイ、ドリーム。


吸い込まれる意識の中で、私は静かに眠りに落ちた。

 ▼ 70 キャット◆qsBYGjqx5E 18/12/17 19:25:50 ID:m6nQ7z9o [16/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



──それ以来、私がポケモンの夢を見ることは無かった。


 ▼ 71 キャット◆qsBYGjqx5E 18/12/17 19:30:29 ID:m6nQ7z9o [17/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


私は、ゲームが大好き。

好きになったきっかけは、小さい頃に出会ったゲーム。

「ポケットモンスター」、通称ポケモン。

ポケモンをやっている間は、まるで夢の中のように、楽しくて幸せで。
子供だったときは、毎日何かを探して、文字通り夢中で遊んでいた。


──もう一度、あの日に戻れたら。

時々、夢を追いかけていたあの頃が、恋しくなったりもする。


──でも。
大人になった今でも、ポケモンは大好きなまま。

だって。あの頃ポケットに詰め込んだ“夢”は。
今でも時々、顔をのぞかせて──
 ▼ 72 キャット◆qsBYGjqx5E 18/12/17 19:32:27 ID:m6nQ7z9o [18/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ねぇ、ここバグがあったみたいだから、直しといてくれるー?」

「あ、うん!」

立ち上がる。と、無意識のうちに、顔の前で手が空を切る。


……被ってもいないのに、帽子を被ろうとする。昔からの癖。
思わずマウスを握りしめてしまうのも、昔、ボールを握りしめる癖があったからかもしれない。


「そういえば、アイツまた優勝したんだってー」

「そうなんだ……昔から凄かったけど、やっぱり今でも凄いね」

「でも、あーやって大会なんかがあるのも、全部あたしらのお陰だけどね!」

「私達はそんな立派なものはまだ作れないけどね……」
 ▼ 73 キャット◆qsBYGjqx5E 18/12/17 19:34:35 ID:m6nQ7z9o [19/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そう。私はまだ、発展途上。


夢を叶えても、そこはゴールじゃない。
私の旅は、まだまだ続くんだ。


私は今でも、歩き続けている。


今度は、皆の“夢”を願って。

あのポケモンみたいに。
誰かの人生を光で照らせるような。誰かを夢中にさせられるような。

そんな“夢”を作れるように。
 ▼ 74 キャット◆qsBYGjqx5E 18/12/17 19:36:52 ID:m6nQ7z9o [20/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


──今夜。世界中の人々が、素敵な夢を見られるように。


それを願って。


私は、これからも。

ずっと、歩き続ける。



 夢といっしょに。



 ▼ 75 キャット◆qsBYGjqx5E 18/12/17 19:40:04 ID:m6nQ7z9o [21/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
このSSはこれで完結になります。
最後まで読んで下さった方々、ありがとうございました。


こちらの企画に参加しています。

【SS企画】Dream short stories【本スレ】
https://pokemonbbs.com/poke/read.cgi?no=911303
 ▼ 76 ルセウス@フェアリーZ 18/12/17 19:59:36 ID:NvxgS88c NGネーム登録 NGID登録 報告
乙!!
 ▼ 77 ノセクト@すごいキズぐすり 18/12/20 22:53:05 ID:5F.QnRCE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ありがとう。

大切なこと、思い出させてくれて。
 ▼ 79 リゴン@ドリームボール 19/01/26 01:29:46 ID:Em9Q.iwI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙!
曲を踏襲してあって凄い面白かった
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