【SS】がんばらないアシマリ

僕はアシマリ。

バトルが大好き。

でも、一つ悩みがあるんだ。

大きな悩み。

それは……。


アシマリ「僕は、進化したくなーい！」

そう。

僕はオシャマリやアシレーヌに進化したくない。

だって……僕はオスだから、あんなかわいい見た目になりたくない。

僕、かわいくないもん！


……でも、僕はバトルが大好き。

だけれど、バトルをすると、進化しちゃう。


アシマリ「どうしようー！！」

支援

メッソン「どうしたの、アシマリ……？」


と、僕の友達のメッソンが声をかけてきた。


アシマリ「そろそろ進化しそうでさ……僕進化したくないんだよ」

メッソン「あー……なるほどね……」

メッソン「うーん……それなら、がんばらなければいいんじゃない……？」

アシマリ「がんばらない？」

メッソン「そこまで頑張らなければ、バトルしても進化しないかも……」

アシマリ「なるほど！」


ナイスアイデアだ！　メッソン！！

がんばらない。

そうだ、がんばらなければいい。


そういや前に、マナフィになりたいフィオネなんかに会ったけど……。

彼女は、ちょっと天然で抜けてたけれど、がんばりやだったなぁ……。


それと真逆のことをすればいいんだ！

……とは思ったけど。


アシマリ「ねぇメッソン！　がんばらないって具体的にどうすればいいの……！？」


そう。

僕の種族アシマリは、"お調子者で頑張り屋"って言われてる。

お調子者かはわからないけど……どう頑張っても頑張っちゃうんだ！

あれ、どう頑張ってもって時点で頑張ってる……？　まあいいや。


どうしようぅぅぅー！！

メッソン「うぅーん……ぼくはあんまりがんばれないからなぁ……」

アシマリ「んー……」


メッソンは、かなりの臆病者。

何をするにもビクビクで……。

そんな彼がほっとけなくて、いつもそばに僕がいるんだ。


メッソン「まぁ……気を抜く……とか？」

アシマリ「気を抜くかぁ……やってみるよ！」


ありがとう！　と声をかけ、僕はメッソンの元を離れた。

支援

アシマリ「はっ！　とぉっ！」ﾄﾞｺﾞｯﾄﾞｺﾞｯ

アシマリ「うーん……ダメだぁ。どうしても力が入っちゃう」


がんばらな方をがんばる……。

うーん、どうすればいいんだろう……？


あのフィオネはどうしてるのかなぁ……。


フィオネ「やっほ、アシマリ！」

アシマリ「わぁっ！！」


ご本人登場！？

あの時のフィオネだ……！

アシマリ「フィオネ、調子はどう？　まだマナフィにはなれてないみたいだけど……」

フィオネ「今もマナフィさんになるためにがんばってるよ！　今日は、憧れのマナフィさんとバトルをするの！」

アシマリ「ということは……あの後、マナフィに会えたんだね！」

フィオネ「うん！　あの時は教えてくれてありがとね、アシマリ！」


そう。

フィオネがマナフィになるために悩んでいたところに、僕が「マナフィの家に行ったらどう？」と教えてあげたのだ。


……フィオネはまだマナフィになるためにがんばり続けてるんだなぁ。

素直に尊敬だ。

フィオネ「アシマリは何をしているの？」

アシマリ「それがね……がんばらないようにがんばってるの」

フィオネ「へ？　がんばらないようにがんばってる……？」

アシマリ「うん」

フィオネ「あははっ！　なにそれおもしろーい！」

アシマリ「笑わないでよ……こっちは真面目に考えてるんだから」

フィオネ「ごめんごめん！」


といっても、確かにおかしいな、これ。

うーん、それでも僕はバトルをしたい！

けど進化したくない。

うーん……。

フィオネ「なんにもしないってのも、からだがなまっちゃうよねー」

アシマリ「そうなんだよねぇ……」

メッソン「あ、アシマリ……と、フィオネさん……！」

フィオネ「あ、メッソン！　やっほー！」

メッソン「こんにちは……」

フィオネ「そんな堅苦しくなくていいのにー」


メッソンがこっちに来たみたいだ。


アシマリ「どうしたの、メッソン？」

メッソン「いや、アシマリどうしてるかなって気になって……」

アシマリ「様子を見に来てくれたのか、ありがとう」

メッソン「う、うん……」

支援

メッソン「あ……フィオネさんは……すごいですよね……」

フィオネ「ふぇ？」


メッソンがフィオネに声をかける。

メッソン、知らないポケモンに声をかけるの苦手なのに……凄い！


メッソン「いや……こんなにもがんばれてて……」

メッソン「その……ぼく、がんばれないから……」

アシマリ「メッソンはがんばってるよ！」

メッソン「え？」

アシマリ「今、フィオネに声をかけた。それだけでも、がんばったじゃん！」

メッソン「でも……それって普通……」

アシマリ「メッソンなりにがんばったでしょ！？　それでいいじゃん！」

メッソン「……！！」

アシマリ「あ、ごめん、話遮って……」

フィオネ「大丈夫ー」

メッソン「……」


と、メッソンが黙っている。

あれ、僕悪いこと言っちゃったかな……？


アシマリ「メッソン……？　大丈夫……？」

メッソン「……がんばれてるんだ」

アシマリ「！」

メッソン「ぼく、がんばれてるんだ！」

アシマリ「そうだよメッソン！」

フィオネ「そう！　だからもっと自信を持って！」

メッソン「うん！　ありがとう、アシマリ、フィオネさん！」


メッソンが自分の問題を一つ、乗り越えたみたいだ。

よかった。

本当によかった。

支援

メッソン「それで……アシマリの問題だよね」

アシマリ「うーん……」


僕らは三匹で悩む。


マナフィ「お、フィオネ。こんなところにいたのか！」

フィオネ「あ、マナフィさん！」

アシマリ、メッソン「ま、マナフィ……！」


わ、本物のマナフィだ……！

初めて見た……！

支援

アシマリかわいい、しえん

マナフィ「フィオネが来ないから、探してみたら……君たちと居たんだね」

フィオネ「行けてなくてすみません、アシマリの悩みを一緒に考えてて……」

マナフィ「悩み？　何か悩みがあるのかい？」

アシマリ「実は……」


僕は、マナフィさんに全部話した。


マナフィ「なるほどね……」

マナフィ「それなら、"かわらずのいし"っていう石があるよ！」

アシマリ「"かわらずのいし"？」

マナフィ「うん。この石を持っていると、進化しないんだ！」

メッソン「そんな便利なものが……！」

マナフィ「ちょうどここに一つ持っているんだ。ほら、これ」ｽｯ

アシマリ「くれるんですか……？」

マナフィ「うん。君は頑張っているみたいだからね」

アシマリ「ありがとうございます……！」

メッソン「よかったね、アシマリ……！」

アシマリ「……うん」


うん。よかった。

これで、よかったんだ。


フィオネ「じゃあ、私はマナフィさんとのバトルしてくるねー！」

アシマリ「うん、じゃあねー！」


挨拶を交わし、マナフィさんとフィオネは、海の神殿へと行ってしまった。

メッソン「やったね、アシマリ！　これでがんばっても進化しないよ！」

アシマリ「うん。うーん……」

メッソン「……どうしたの？」

アシマリ「なんかあっさりだなぁと言うか」

メッソン「あっさり？」

アシマリ「もやもやするんだよね」


そう。

なんだか、もやもやする。


自分では、何にもしてないじゃないか。

支援

支援
あの人か

メッソン「でも……マナフィさんに努力は認められたし……これでいいんじゃないの？」

アシマリ「そうだけど……」

アシマリ「……っ」


よし。

覚悟を決めた。


僕は、ポーイと"かわらずのいし"を投げ捨てる。


メッソン「えええええええっ！！　どうして！？」

アシマリ「いいんだ。がんばって進化したなら、それはそれで」

メッソン「最初と言ってることが違うじゃないか……」

アシマリ「いいのいいの。なんか、頑張らないと僕じゃないみたいだから」

アシマリ「進化しない方法を考えてたはずなのに、がんばらないのをがんばってたら、進化してもいいかなぁって思えてきちゃってさ」

メッソン「なんだかよく分からないけど……アシマリの中で完結したならいいかな」

アシマリ「色々ありがとね、メッソン」

メッソン「こちらこそ！　アシマリのおかげで、変わることができた！」

アシマリ「へへ、これからもよろしくね、メッソン！」

メッソン「うん！」


そうだ。

どんな姿だって、進化したっていいや。

進化は僕の成長の証だ。


でも、がんばらないことをがんばってたのも意味が無いわけじゃない。

だって、この事実に気づくことが出来たんだもん！


そういや、かわらずのいしはどこに行ったんだろう。

もっと必要としている誰かの元に行っているといいなぁ……。


──────

ポッチャマ「いてっ！」ｺﾞﾂﾝｯ

ポッチャマ「なんだよ……石……？」

ポッチャマ「って、かわらずのいしじゃないかー！！」

ポッチャマ「ずっと探してたんだー！　やったー！！」

……数日後。

僕はオシャマリになりました。

……メッソンは、まだ進化できてないみたい。

だけど、僕と毎日特訓してるから、すぐ進化できるはず！


僕は、アシレーヌになることを決めた。

見た目なんて気にしない。

ってか、アシレーヌも普通にかっこよく見えてきたし？


ただ……オシャマリになったことで、色々言われるんだ。

「あ、オシャマリかわいい！」

「似合ってるぞー、かわいい！」


うぅー……。

僕はかわいくないもん！！










〜おしまい〜

これにて完結です。
アシマリやメッソンの特徴を生かして書いてみました。
このSSは、御三家SS企画
(http://pokemonbbs.com/sp/poke/read.cgi?no=973976)
に参加しています。

乙！

乙