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グルーシャ「おかえり、ウルップ」

 ▼ 1 ルシアン@ハギギシリのは 23/02/07 22:45:58 ID:2DWUbA3w [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
何かがおかしい、とグルーシャはずっと感じていた。

グルーシャの視線の先では、ジムの挑戦者がこれから雪山を滑り降りるべく、見たことのないライドポケモンに乗って開始時間を待っている。

やる気に満ちた彼女の表情をぼんやりと眺めながら、グルーシャは今朝から続く違和感の正体を探っていた。

◇◇

今朝は、数日のあいだ降り続いた大雪が嘘だったかのように晴れ渡っていた。
喧しく騒ぎ立てる目覚まし時計を止め、顔を洗い、ポケモン達の食事を用意し、自分も朝食を摂る。

そんな変わり映えのない毎朝のルーティンの中で、グルーシャはふと昨夜の夢を思い出した。

ポケモン勝負の夢だ。
自分ではなく、他のトレーナー達による勝負だった。

そこにいたポケモンはケケンカニ、ドリュウズ、そしてユキノオー。 
ドリュウズは、ここパルデアでは見る事のないポケモンだ。

しかしドリュウズを知らない人はパルデアにはいないだろう。
あまりにも有名なトレーナーの切り札ポケモンだからだ。


グルーシャがナッペ山ジムに着くと、数人のジムスタッフはすでに出勤し、建物周りの雪かきをしていた。

「グルーシャさん、おはようございます」

「おはよう。早くからお疲れさま」

挨拶を交わし、グルーシャもシャベルを持って雪かきに参加する。
 ▼ 2 ラルフリーザー@サーナイトナイト 23/02/07 22:47:25 ID:2DWUbA3w [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ねえ、見た?今日の特集の」

「ああ、伝説のおっさんの事だろ?」

スタッフ達は忙しなく手を動かしながらも会話に興じている。

グルーシャは必要以上の会話を好まない。
それが分かっているからか、周りもグルーシャにはなしかけようとはしなかった。

「今はカロスにいるんだよね。なんでだろ?」

「特集では何も言ってなかったな。ただ噂で、友達を探してるって聞いたことがある」

「二人の共通の友達?」

「さあなー、そこまでは」

グルーシャはどきりとして思わず聞き耳を立ててしまっていた。

会話に出てきたおっさんとは、グルーシャが見た夢に出てきたポケモントレーナーだったからだ。


伝説のおっさん。
正確には、伝説の二人のおっさん。
親愛を込めてハラコンと呼ばれる事もある。

豊満な肉体と、ポケモン勝負の確かな腕前。
少し変わった口癖は、彼らの魅力を引き立てるほんの少しのスパイス。

パルデアの人々は、そんな愛くるしい二人のおっさんを心の底から愛しているのだ。


だからジムスタッフが伝説のおっさんについて語らうことは何も不思議ではない。
しかしグルーシャはその会話に引っかかりを感じた。

何かがおかしい──でも、何が?

違和感の正体を掴めないまま雪かきは終わり、スタッフ達は散り散りになってジムに挑戦者を迎え入れる準備を始めた。
 ▼ 3 レキッド@ふるさとマフィン 23/02/07 22:48:02 ID:3lqImOWc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
いつものウルハラコンの人だ!
 ▼ 4 ラミドロ@トウガのみ 23/02/07 22:48:49 ID:FUWIZqLA NGネーム登録 NGID登録 報告
楽しみ。支援
 ▼ 5 ォクスライ@きぼんぐり 23/02/07 23:05:36 ID:2DWUbA3w [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
◇◇

思い返してみても、やはり分からない。
小さな違和感ではあるが、まるでミガルーサの小骨が喉元に引っかかっているようで気持ち悪い。

そうしていると、わっという歓声が耳に入ってきた。
先程の不思議なライドポケモンに乗った挑戦者が無事にジムテストをクリアしたようだ。

「…ぼくも行かないと」

ハラコン。
伝説の二人のおっさん。
何もおかしな事なんてないじゃないか。

自分にそう言い聞かせ、グルーシャはバトルコートへと向かった。



グルーシャがバトルコートに着くと、片側だけの三つ編みを揺らした挑戦者の少女がすでに待っていた。

登録された名前はアオイ。

形式的な挨拶を交わし、勝負が始まる。

アオイは最初に繰り出したポケモンはユキノオーだった。
グルーシャの手持ちにはいないが、ナッペ山にも生息する馴染み深いポケモンだ。

しかしなぜ、この場でユキノオーを?

特性どころかタイプ相性すら知らないのか──いや、アオイの勝ち気な表情は、すべてを承知でユキノオーを出したことを悟らせるには充分だった。

「舐められたもんだな。……モスノウ、むしのさざめ──」

その瞬間、今朝の夢がグルーシャの脳裏をよぎり、直後に大きな衝撃となってグルーシャを襲った。
 ▼ 6 ミッキュ@カンポーやく 23/02/07 23:07:13 ID:2DWUbA3w [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>3
すみません、いつもの人じゃないです
 ▼ 7 ラマネロ@カットミニトマト 23/02/07 23:09:52 ID:2DWUbA3w [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
モスノウは主が不自然に言葉を止めたことに戸惑ってちらりと後方を窺い、
その隙を突いたアオイのユキノオーのいわなだれで戦闘不能に追い込まれた。

グルーシャは愕然として相手のユキノオーを見つめる。


夢の中のポケモン勝負。
ケケンカニ、ドリュウズ、ユキノオー……そう、ユキノオーを使うトレーナーがいたはずだ。

顔も名前も思い出せない。
でもユキノオーによく似た肥満体の、三人目のおっさん……。

どうして忘れていたんだろう。

◇◇

ジム戦はアオイに負けた。
試合中は動揺で集中力を欠いてしまった事は否めないが、彼女の実力であればジムバッジを渡しても問題ないだろう。

それよりも、今はおっさんの事が気になる。


わざマシンを渡し会話を早々に切り上げ、グルーシャはすぐさま自身のスマホで「伝説の三人のおっさん」と検索した。

まず目に飛び込んできたのは「伝説の二人のおっさん ではありませんか?」という文章。
心臓がどくんと音を立てた気がした。

目についた幾つかのページに目を通すも、書かれているのはハラとヤーコン、二人についてのみ。
画像検索に切り替えたが、映っているのはやはり二人だけだった。

三人目のおっさんの痕跡はどこにも無い。
 ▼ 8 ルスワン@とつげきチョッキ 23/02/07 23:32:56 ID:0sD6cos2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あれだよ、支援だよ
 ▼ 9 ジスチル@1ごうしつのカギ 23/02/08 21:54:05 ID:qXowV/MY [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グルーシャはジムスタッフに掴みかかった。

「ねえ、あんた、今朝おっさんの話してただろ!?」

スタッフは驚いたようだったが、構っていられない。

「伝説のおっさんだよ、三人いたでしょ?ハラとヤーコンと、あとユキノオーやクレベースを使う人がもう一人!」

「待って、グルーシャさん、落ち着いてください! おっさんは二人ですよ。
私が子供の頃に持ってた絵本にも、仲良し二人組として登場してました。間違いありませんよ」

「そんな……」

じゃあ、あれは誰だ。
こおり使いの、あのおっさんは。


その時、

「グルーシャさん」

後ろから名前を呼ばれた。
グルーシャが振り向くと、そこには硬い表情のアオイが立っていた。

「あんたは……まだ帰ってなかったのか。風邪ひく前に早く──」

「グルーシャさん、お話があります。おっさんの事で」
 ▼ 10 メラ@ストレンジボール 23/02/08 21:55:41 ID:qXowV/MY [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
人前では話せないというアオイを伴い、グルーシャはジムの控室に戻ってきた。
アオイは珍しそうにきょろきょろと部屋の中を見回している。

「ここなら話せる?」

「はい。……グルーシャさんは伝説のおっさんが三人いることを知ってるんですね」

「知ってるというより、さっきあんたが出したユキノオーを見て思い出した。今朝からずっと違和感はあったんだけど」

アオイは納得したように頷いた。

「さっきはごめんなさい。舐めプしたつもりはなかったんですが、サブロムで二週目なのでこおりタイプ縛りしてるんです」

「言ってる事がよく分からないな。あんたちょっと変わってる。……知ってる事を教えてもらえる?」

「……おっさんは確かに三人いました。三人目はこおりタイプを専門にするカロス地方のジムリーダーです。
ですが今、その三人目はすべての人の記憶や記録から消えています。存在自体が始めからなかった事になってるんです」

「うん、ぼくも思い出すまでは何の疑いなく二人だと思ってた」

「こうなったのは最近です。どうして三人目が消されたのかは分かりません。でも私は犯人に心当たりがあります」

「犯人?」

「アルセウスです」
 ▼ 11 ズモー@グランドコート 23/02/08 21:57:13 ID:qXowV/MY [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アルセウス。グルーシャには聞き覚えのない名前だった。
それを察したようにアオイは説明する。

「アルセウスは宇宙を創造した神と言われるポケモンです。シンオウ地方に創造神話が残っています」

「どうしてそんな大層なポケモンがおっさんを?」

「さっき言ったように、理由は分かりません。でもアルセウスには人さらいの前科があります」

なぜアオイがさも当然のように話すのか、グルーシャには理解できなかった。  

「なんでそんな事知ってるんだ」

「グルーシャさんは、自分が観測されている、と考えた事はありますか?」

「は?」

グルーシャは思わず聞き返したが、アオイは構わずに続けた。

「さっきのジム戦でも、観測者はずっとグルーシャさんを見てました。
観測者は私が見聞きした事を通じて、このパルデア地方を知る事ができます」

あまりにも突飛な内容だった。

「私のような人間は他の地方にもいます。前世と言い換えてもいいかもしれません」

「前世……」

胡散臭いと感じたのが顔に出てしまったかもしれない。
アオイはなぜかスマホロトムを取り出し、カバーに指を走らせた。

「前世ではカロス地方で三人目のおっさんに会い、別の前世ではアルセウスに拉致されて過去の世界に飛ばされました」

「……で、その前世と同じようにおっさんもアルセウスに拉致された、と」

「そう思います」
 ▼ 12 イタラン@てつのかけら 23/02/08 21:58:10 ID:qXowV/MY [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「助ける方法はある?」

グルーシャが尋ねるとアオイは少し驚いたようだった。

「私の話、信じるんですね」

「完全に納得したわけじゃないけど、今のところおっさんが三人いた事を知ってるのはあんただけだから。賭けてみるよ」

そう答えると、アオイは嬉しそうに笑った。


「おっさんを助けるなら、まずはシンオウ地方に行ってください」

アオイはそう切り出した。

「テンガン山の頂上にやりのはしらという遺跡があります。そこがアルセウスの居場所に繋がってます。登山、頑張ってください」

「待ってアオイ、あんたは行かないのか?」

「私が一緒に行けば、絶対に観測者にこの事がバレます」

「バレたらどうなるんだ」

「これがバグなら協力してくれる、かもしれませんけど、おっさんがいない今を正常な状態として固定されないとも限りません。
自分から干渉した事がないので分かりません」

危ない橋は渡れないという事か。仕方ない。

「明日テーブルシティに来てください。アルセウスに会うのに必要な笛を渡します。やりのはしらに着いたら笛を吹いてください」

グルーシャは頷いた。

「分かった。ちなみに、シンオウ地方に空飛ぶタクシーは」

「ありません。歩いてください」

「歩いて山登るの……?」

「ポケッチというローテク機器に専用のアプリを入れると、野生のムクホークを洗脳して行った事がある場所に連れて行ってもらえます」

「なにそれこわい」
 ▼ 13 クリン@パイルのみ 23/02/08 22:03:29 ID:qXowV/MY [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そして翌日。
テーブルシティでアオイから笛を受け取ったグルーシャは、シンオウ地方行きの船に乗り込んだ。

ハラとヤーコンに並ぶ三人目、ユキカブリの実のように可憐なはずのその容貌を、グルーシャはまだ思い出せない。

それでも助けたいのだ。取り戻したいのだ。
波が描く船の軌跡を見つめながら、グルーシャは固く決意していた。
 ▼ 14 ガラティオス@こころのせきばん 23/02/08 22:05:16 ID:qXowV/MY [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シンオウ地方、ミオシティ。
船を降りたグルーシャを待っていたのは、予想外の人物だった。

「フン、おまえがグルーシャか」

「わしらの友を助けるためにパルデア地方から来られたとの事。感謝しますぞ」

「えっ……え?」

自分に声をかけてきた二人のことを、グルーシャはもちろん知っている。

伝説のおっさんのうちの二人、ハラとヤーコン。
幼い頃からメディアや絵本、怪談などで慣れ親しんできた二人だ。

そんな二人が、なぜ。

「パルデアのチャンピオンが、おまえを助けてやって欲しいとワシのジムに連絡を寄越してきたからな。
他地方とはいえチャンピオンの頼みを無下にする理由にもいかんさ」

「チャンピオン……オモダカさんが?」

「アオイと名乗っておりましたな。いや、どの地方も若者がすくすくと育っていますな」

あの子はもう、チャンピオンランクになったのか。

「昼間の月、夜の太陽。見えなくても存在するものに思いを馳せられるかどうか。
きみはその素質を持っているようです。このハラ、喜んで協力しますぞ」

「フン、おまえがあいつを助けるならオレ様も協力してやる。人生はギブアンドテイク!」
 ▼ 15 カグース@あかぼんぐり 23/02/08 23:56:48 ID:5dzc7aJw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
面白そう!支援
 ▼ 16 ルキア@テラピースこおり 23/02/13 10:42:06 ID:xP6Y.SKc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 17 スキッパ@ひでん:にがスパイス 23/02/13 11:55:25 ID:cMTgNqro NGネーム登録 NGID登録 報告
まーた新進気鋭のウルハラコン作家かよ
いいぞもっとやれ
 ▼ 18 ライドン@ソルガレオZ 23/02/13 12:04:12 ID:Hpuk1ox6 NGネーム登録 NGID登録 報告
ユキカブリの実のように可憐なはずのその容貌で草
 ▼ 19 クタン@コマタナのやいば 23/02/14 09:11:11 ID:tInooXxA [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
翌日、一行がミオシティを出発しコトブキシティを通り抜け、クロガネシティに入った頃にはすでに夕方になっていた。

今日はここで休む事になっている。
三人はポケモン達を回復させるためポケモンセンターに入った。

ポケモンを回復させている待ち時間、ハラが「足は大丈夫ですかな」とグルーシャに尋ねてきた。
足を庇う歩き方になっていた事を気付かれていたようだ。

「フン!軟弱な若者よ。足手まといになるようなら置いていくぞ」

「こやつはこんな物言いはしますが、いわゆるツンデレでしてな、本意ではないからあまり気にされるな」

このやりとりだけでも仲の良さが伝わってくる。

「ねえ、消えたおっさんはどんな人だったの?」

グルーシャが尋ねると二人のおっさんは思い出すように目を閉じた。
 ▼ 20 ッカネズミ@トレジャーメール 23/02/14 09:12:07 ID:tInooXxA [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「心に傷を負ったポケモン達からも慕われる優しい奴だった」

「わしらは時に競い合い、時には盛り合い、切磋琢磨したものです」

そしてハラはグルーシャに温かい眼差しを向けた。

「グルーシャ、きみにもいずれそんな友ができる日が来るでしょう」

「……そうだね」


預けていたポケモンを受け取ると、クロガネ炭鉱を見学したいというヤーコンと、それに付き合うというハラと別れ、グルーシャは一足先に宿を取った。


明日はテンガン山を登る事になる。
早めに寝て、しっかり身体を休めておこう。

ベッドの中で、グルーシャはふと先程のハラの言葉を思い出した。

──きみにもいずれ、そんな友ができる日が来るでしょう。

「友達いないのバレてた……」

グルーシャは頭から布団を被った。

「おっさんこわい」
 ▼ 21 ヤップ@にばいづけ 23/02/14 09:14:57 ID:tInooXxA [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
翌日早朝にクロガネシティを出発した三人は、予定通りの時刻にテンガン山を登り、山頂に辿り着いた。

「ここがやりのはしら……」

物々しい雰囲気に呑まれないよう、気を張りながら奥へ向かう。
先は開けた空間になっていた。

いつの間にか、アオイから預かった笛がひとりでに鳴っている。

グルーシャは笛を取り出し、吹き鳴らした。
この世のものとは思えない音が響き渡り、それに呼応して天上から光の階段が降りてくる。

「……行こう」

そして誰ともなしに階段を登り始めた。
 ▼ 22 リゴンZ@ガケガニスティック 23/02/14 09:15:25 ID:tInooXxA [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
◇◇

階段の上は緑色に輝く不思議な空間だった。
そしてそこに、四足の白いポケモンが一匹。

「あんたがアルセウス?」

アルセウスは応えない。

「ぼくの言葉は分かる?あんた、おっさんを一人消しただろ?返して欲しいんだ」

「あなたの言う通り、あの者を消したのは私です」

不思議な、頭の中に直接響いてくるような声だった。

「どうして!なぜあいつを消した!」

怒りを隠そうともせずにヤーコンが叫んだが、アルセウスの声はあくまで冷静だった。

「あの者の存在は人にとって有害です。
人々は常に彼に思いを馳せ、彼について語らい、彼を象った作品を創造し、祭祀を行うようになってしまった。
人の心に強く刻まれすぎています」

「じゃあなんで、おっさんに関するぼくの記憶を、曖昧ではあっても残したの?」

それはグルーシャがずっと疑問に思っていた事だった。
 ▼ 23 イオーガ@うみなりのスズ 23/02/14 09:20:49 ID:m/GU/sUQ NGネーム登録 NGID登録 報告
あのお方アルセウス説やめろ
 ▼ 24 ウマージ@ねっこのカセキ 23/02/14 22:27:19 ID:JOowWijc [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「あんたのしたい事が分からないよ」

「あなたの記憶を少しだけ残しておく事で、あなたがどのような行動に出るか知りたかったのです」

「なんでぼくなんだ……。あの人とまったく関わりがない、会った事もないのに」

「あなたはこおりタイプを使い、あの者と親和性が高い。
更に交友関係が非常に乏しく、違和感について自分の中で突き詰めて考える時間があった事でしょう」

「ぼくがぼっちだって言いたいの?」

「しかし結果あなたはあの少女と結託し、こんなにも早くここへたどり着いてしまった」

更にアルセウスはハラとヤーコンにも視線を向けた。

「あなたがた二人の記憶は完全に消したはずでした。よもや二人とも、造作もなく記憶を取り戻すとは」



「やはりあの者は危険です。完全に消し去ります」



「ふざけるな!そんな事が許されると思ってるのか!」

「とんだ邪神ですな」

二人がアルセウスを睨む。
アルセウスはまるで威嚇するように全身を屈撓させ──

それが攻撃の合図だった。


集中砲火と言うべきか。
ポケモンを出す暇もない、こちらの死すら厭わないような攻撃。
これが神と呼ばれた存在に歯向かう事なのか、とグルーシャは今更にして痛感した。

恐怖が全身を侵食し、絶望へと塗り替わっていく。
逃げる事しかできない、無限にも等しい時間。
 ▼ 25 ーディ@ヨロイこうせき 23/02/14 22:30:53 ID:JOowWijc [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
不意にアルセウスが攻撃を止めた。
グルーシャは瞬時に周囲に目を走らせる。
ハラもヤーコンも無事だ。

アルセウスはひと言「彼女が来る」と呟き、改めてグルーシャに向き直った。

「あなたはもう知っているでしょう。観測者の存在を」

「……アオイが言ってた事?」

「そう。この宇宙を創った私でさえ観測されています。私にとってはまばたきにも等しい時間。
それなのに、はっきりと感じ取る事ができます。
今この瞬間に観測されるために、私は全知全能の創造主と定められたのだと」

「……」

アルセウスの言葉が理解できない。
アオイはこんな世界を見ているというのか。

その時、少女の声が響いた。

「みなさん!」
 ▼ 26 ャヒート@アイテムドロップ 23/02/14 22:44:07 ID:JOowWijc [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「アオイ!? なんでここに」

アオイだった。
水色のポリバケツを抱えて階段を駆け上がってくる。

「おお、これはパルデアのチャンピオン」

「嬢ちゃんか。よく来たな」

ハラとヤーコンが口々に労った。

「大丈夫?あんたずっと観測されてるって……」

「観測者は条例の1時間よりも長くゲームしてたので今は親に怒られてます。今のうちです!」

アオイはポリバケツを差し出した。
中には金色に輝く手のひらサイズの玉が大量に詰まっている。

「シズメダマです。前世の一人に作り方を教わってきました。
これをアルセウスに投げつけてください!」

アオイの言葉に、三人はそれぞれシズメダマを手に取った。

「よくやった!」

「行きますぞ!」

「早く、グルーシャさんも!」

「うん……!」

臨戦態勢の四人に向かって、アルセウスは厳かに告げた。

「これは私が初めて、自分の意志で為そうとしている事。邪魔はさせません」
 ▼ 27 ビフット@あかぼんぐり 23/02/14 22:46:02 ID:JOowWijc [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
その言葉とともに再び始まった攻撃は、激しさを増していた。

静止状態のアルセウスを中心にして可視化された衝撃波が広がる。
幾多の火球が降り注ぎ、質量を持つ光に追尾される。
物理法則を超える攻撃。

それらすべてを視認できている事を自覚したとき、グルーシャはアルセウスの意図を理解した。

──あなたがどのような行動に出るか知りたかったのです。

アルセウスは、こちらを殺すつもりはない。
ただ、試している。


それなら、やる事は一つだ。


 ▼ 28 ガクチート@クリアチャーム 23/02/14 22:47:02 ID:JOowWijc [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しばらく攻撃を避けながら観察すると、おおよその攻撃パターンを予測する事ができた。

攻撃の隙を突いて何度も何度もシズメダマを投げつける。
そうしてシズメダマが底を突いたとき、アルセウスも攻撃を止めた。

「……」

誰も動かない。
しかしアルセウスが攻撃を再開してもすぐに動けるよう、全員が息を切らしながらもアルセウスの行動を注視していた。

静寂が降りてきた。

アルセウスから視線を逸らさぬまま、グルーシャは祈るような気持ちになっていた。

どうか届いて──ぼくたちがどれだけあの人に会いたいと願っているか、どうか伝わってくれ──。

長い沈黙を破り、アルセウスは静かに言った。

「分かりました。あの者はお返しします」
 ▼ 29 ガルーサ@パチリスのけ 23/02/16 22:18:18 ID:T9/kbklw [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
その言葉を聞いた瞬間、全員が沸き立った。

それぞれの口から「やった!」「本当でしょうな?」「フン、礼は言わんぞ」など思い思いの言葉が漏れる。

「あなた方が危険を顧みず、ここまで彼のために力を尽くすのなら、私もその心を信じてみましょう。
人々の 理 性 に賭けてみましょう」

アルセウスの言葉が終わるとともに、一人のおっさんが音もなく目の前に出現した。

豪快ないびきを立てるその人物は、紛れもなく四人が追い求めていたその人だった。

グルーシャの中で蜃気楼のように曖昧だった像が線を結び、明確な形となって目の前のおっさんと重なった。

けたぐりが効きそうな慎ましい巨体から伸びるふくよかな手足、雪のように白く豊かな髪。
閉じられた瞼の奥の瞳は、青空を切り取ったような爽やかな色を宿しているはず。
パルデア中が愛した寝顔だ。

「グルーシャさん、私が言ったこと、信じてくれてありがとうございます。私、行動してよかった」

「うん、ぼくも……ありがとう、アオイ」

これ以上ないくらい晴れやかな心地だった。

「二人とも、よくやりましたな」

ハラがグルーシャとアオイの肩に手を置いて二人を労う。

「そして、わしらも」

ハラとヤーコンは顔を合わせて笑い合い、互いの健闘を称えた。
 ▼ 30 ノハナ@コリンクのキバ 23/02/16 22:21:17 ID:T9/kbklw [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そんな四人の様子を見ていたアルセウスが折りを見たように言った。

「それでは、あなたがたを元の場所へ戻します。ですが今回の事は忘れることになるでしょう」

アルセウスの言葉に、アオイが「なんでですか!」と食ってかかる。

「全てを元に戻します。存在しないはずの今は忘れてもらわなければなりません」

「そんな事ができるのか?」

ヤーコンは腕を組み、ふんぞり返った。

「そいつが消えたときもワシはすぐに思い出したぞ!またすぐに思い出してやる」

「わしも忘れるつもりはありませんな」

「私だって忘れません!」

ハラとアオイもそう宣言した。
それは何とも力強い言葉だ。

グルーシャは目の前の寝顔に目を向けた。

──ぼくだって忘れたくない。ぼくはずっと、この人に会いたかったんだ。

そして、意識が飲み込まれていった。
 ▼ 31 クロム@オーキドのてがみ 23/02/16 22:23:20 ID:T9/kbklw [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
◇◇

何かがおかしい、とグルーシャはずっと感じていた。

ナッペ山ジムへの通勤中の道すがら、グルーシャは目覚めたときから続いている違和感の正体を探る。

よく晴れた朝だった。
降り積もった雪が朝陽を浴び、キラキラと輝いている。

喧しく騒ぎ立てる目覚まし時計を止め、顔を洗い、ポケモン達の食事を用意し、自らも朝食を摂る。
変わり映えのない毎朝のルーティンの中で覚えた、小さな違和感。

何が大切なものを忘れているような気がした。

「……」

ナッペ山ジムが見えてきた。
リーグ側から最強であることを課されているこのジムで、グルーシャは今日も、身の程知らずな挑戦者を完膚なきまでに凍えさせる。

いつもと同じだ。
何もおかしな事はない。

グルーシャがジムの近くまで来ると、ジムの方向からスタッフが走ってくるのが見えた。

「グルーシャさん!お客さんが来てます!」
 ▼ 32 ョロボン@ヒメリのみ 23/02/16 22:24:04 ID:T9/kbklw [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
顔を紅潮させてスタッフは叫んだ。

「お客さん?ぼくに?」

まったく心当たりがない。
首をかしげるグルーシャを見て、スタッフはじれったそうにグルーシャの背を押した。

「ちょっと、何?」

「早く行ってください!おっさんが来てるんです!」

──おっさん?

そして、“彼”がグルーシャを見た。

れいとうビームに身体を貫かれたような衝撃が走った。
「伝説のおっさんですよ!グルーシャさん、知り合いだったんですか?」というスタッフの声が、どこか遠く聞こえた。
 ▼ 33 ンリキー@コンパンのキバ 23/02/16 22:25:13 ID:T9/kbklw [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「おまえさんがグルーシャだろ。
あれだよあれ、ここに来れば会えるんじゃないかと思ったんだよ」

「な……」

言葉が出なかった。

なんでここにいるの、なんでぼくを知ってるんだ──

言いたい事は山ほどあるような気がする。
それなのに、喉の奥でベトベターのように言葉がこびり付いてしまっていた。

「なんで……」

ようやくその一言だけを絞り出すと、彼は笑ってみせた。

「あれだよ、おまえさんの声はずっと聞こえていたよ。──ありがとう」

「なにそれ……ずっと寝てたくせに、サムいんだけど」

そう言いながらも、グルーシャは顔が綻ぶのを抑える事ができなかった。

「おかえり、ウルップ。やっと会えたね」



おしまい
 ▼ 34 ウワウ@ダイキノコ 23/02/16 22:26:50 ID:OwukQ/uQ [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ハピエン乙!
観測者………条例………さては観測者(プレイヤーさん)
香川県民か??
 ▼ 35 オニューラ@マチスのサイン 23/02/16 22:30:45 ID:f0E63sXU NGネーム登録 NGID登録 報告
またしょーもないウルハラコンネタSSかと思ったら神SSでしたな
物言いの余地がありませんぞ
 ▼ 36 リヤード@サファイア 23/02/16 22:33:45 ID:T9/kbklw [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
終わりです。
初めてのSSで読みにくい部分も多かったと思います。
あとけっこう設定を盛ってしまって痛々しいかなとも感じていましたが、
とりあえず最後まで書くことができした。
支援や感想など嬉しかったです。
ありがとうございました。
 ▼ 37 ククラゲ@ふっかつそう 23/02/16 22:35:35 ID:OwukQ/uQ [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
初だとはとても思えない!
まさかの初と聞いてこれで初とかほんとこれからにすごく期待してしまう
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