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【SS】 彼女はクイーンに帰り咲く

 ▼ 1 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/03/27 23:46:30 ID:cl0gaXH. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

【SS】 サトシ(18)「同窓会?」
https://pokemonbbs.com/poke/read.cgi?no=645958&l=1-


上記SSの続編です。

サトシのカロス旅から5年後をイメージしており、サトシ、セレナ、シトロンは18歳、ユリーカは13歳の設定です。

あらすじをご覧いただければ、上記SSを読む必要はありません。

なお、上記SSの「140レス目以降」は あらすじとして短く纏めることが困難だったため、当SS冒頭に再掲します。

 ▼ 90 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/06 02:10:50 ID:rSMQxeNw [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



いま思うと、この時が、一番幸せな時だったかもしれない。

カロスクイーンになれて、サトシに相応しい女性に一歩近付けたと喜んだ、この時が。


この3か月後に、私の日常は、一変してしまった。



 ▼ 91 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/06 02:11:11 ID:rSMQxeNw [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



続きは後日。



 ▼ 92 トベター@フリーズカセット 20/04/06 08:35:18 ID:mUAE2cWU NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
しえん
 ▼ 93 ニガメ@オッカのみ 20/04/06 15:48:13 ID:xTJUthiI NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 94 カルゲ@サイキックメモリ 20/04/07 16:47:54 ID:j6HQPDSM NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
支援
 ▼ 95 マガル@ちからのねっこ 20/04/08 17:28:44 ID:9XnEWiXU NGネーム登録 NGID登録 報告
しえん
 ▼ 96 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/10 00:15:25 ID:8P4IHSdg [1/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



カロスクイーンになって3カ月。

クイーンとしての仕事、立ち振る舞いにも、だいぶ慣れてきた頃だった。


この日、私は とある大学の学園祭で、パフォーマンスを披露した。勿論、お仕事として。

そのパフォーマンスは無事に終わり、控室で帰る準備をしていると、女の子が1人、入って来た。


 *** 「あのっ、セレナさん!」

 セレナ 「はい……なんでしょう?」

 *** 「私、サミコって言います。この大学の新1年生で、セレナさんのステージ、最高でした!」

 セレナ 「ふふっ、ありがとうございます」

 サミコ 「実は、急なことで申し訳ないんですけど、セレナさんに お願いがあるんです」

 セレナ 「お願い……ですか?」

 サミコ 「私、とあるポケモン研究グループに所属しているんです」

 セレナ 「研究グループ? この大学のサークルですか?」

 サミコ 「いえ。色んな大学のメンバーで構成されてる……有志の研究グループです」

 セレナ 「凄いですね。有志の研究グループなんて」

 サミコ 「それで、その研究グループに、是非ともセレナさんを招待したいなって」

 セレナ 「私を?」

 サミコ 「私たち、ポケモンのメガシンカについて研究してるんです」
 ▼ 97 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/10 00:16:04 ID:8P4IHSdg [2/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
彼女――サミコさんは、研究について話を続ける。



何故ポケモンはメガシンカするのか。何故メガシンカするポケモンがいるのか。

メガシンカするポケモンの多くは、最終進化系や、元から高い能力を持っている。

何故、元から強いポケモンが、さらに強くメガシンカするのか――、そのメカニズムを明らかにしたい。

そして、それが明らかになれば、現在メガシンカが発見されていないポケモンも、メガシンカできるようになるのではないか。

弱者に分類されるポケモンであっても、メガシンカすれば強くなる。生態系の下位のポケモンも、強くなることができる。

これまで強者に怯えて暮らして来た弱者の野生ポケモンが、もう怯えなくて済む。縄張り争いや食糧調達に苦労しなくて済む。

全てのポケモンが平等に暮らしていける環境を実現させたい――。


研究グループの目標は、“全てのポケモンをメガシンカさせること”である。



 ▼ 98 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/10 00:18:50 ID:8P4IHSdg [3/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 セレナ 「確かにメガシンカするポケモンって、元から強いポケモンが多いですもんね」

 サミコ 「メガシンカのメカニズムを明らかにして、全てのポケモンをメガシンカさせる。そして、野生ポケモン達に平等な生息環境を提供する――。これを目指してるんです」

 セレナ 「凄いです。本当にポケモンのためを思った研究なんですね」

 サミコ 「けど……、現実は、そんなに簡単ではないんです」

 セレナ 「えっ?」

 サミコ 「私たちは、あくまで有志の研究グループです。スポンサーもいなければ、公的な補助も受けていません」

 セレナ 「そっか……、研究には、お金がかかりますもんね」

 サミコ 「いやらしい話ですけど、セレナさんのような有名人が研究グループに入ってくれれば、スポンサーがついてくれるかもしれません。研究費が沢山あれば、この研究は、もっと捗ると思うんです」

 セレナ 「なるほど……」

 サミコ 「勿論、無理にとは言いません。あ、良かったら見学だけでも来て貰えませんか? 大歓迎しますよ!」


メガシンカの研究と聞くと、サトシたちと旅していた頃を思いだす。

たびたび顔を合わせたプラターヌ博士も、メガシンカの研究をしていて、私たちにも研究のことを話してくれた。


 セレナ 「それじゃあ、少しだけ見学しても良いですか?」

 サミコ 「えぇ、喜んで!」


だから私は、サミコさんたちのメガシンカ研究に、とても興味が湧いてきた。

私と同じ世代の研究グループということも興味深いし、応援してあげたい。カロスクイーンと言う私の立場が研究の役に立てるなら、それも誇らしいことだ。
 ▼ 99 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/10 00:27:24 ID:8P4IHSdg [4/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


一旦家に帰って、再びサミコさんと合流する。


私は――と言うか、カロスクイーンやジムリーダーと言った有名人がプライベートで外出する時は、変装しなければならない。エルさんもそうだったように。

変装と言っても、帽子とダテ眼鏡くらい。パフォーマンスの衣装のイメージが強いから、私服にまで拘ることは無いし、ミアレのような都会だと、道ゆく人は他人に無関心だ。


 サミコ 「じゃあ、行きましょうか」

 セレナ 「はい。よろしくお願いします」



私は てっきり、ここミアレシティの中に研究施設があると思ったけど、そうではないらしい。


サミコさんに案内されたのは、ミアレを出た14番道路の森の中。いわゆる“街道”から離れて、滅多に人が通らないような獣道を進んで行く。


 セレナ 「こんな森の中で研究してるんですか……?」

 サミコ 「あはは……。少しでもお金を節約するためなんです」


 ▼ 100 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/10 00:32:15 ID:8P4IHSdg [5/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


そうして辿り着いたのは、鬱蒼とした森の中に佇む、古い屋敷。

レンガ調の2階建て、外壁はボロボロでツタが張っているけど、昔は立派な お屋敷だったと感じられる出で立ちだ。

ただ、その周囲は工事用のフェンスで囲まれている。


 サミコ 「ここです」

 セレナ 「ここって……」

 サミコ 「驚きましたよね。ほぼ廃墟だった家を借りてるんです。見た目はアレですけど、中は普通ですよ」



なんだか見覚えのある お屋敷だな――なんて考えていると、サミコさんはフェンスの隙間から敷地内に入っていく。

慌てて追いかけ、屋敷の扉を開けると。


 セレナ 「わぁ……」

 サミコ 「ようこそ。私たちの研究所へ」


外観からは想像できないほど、室内は綺麗だった。

玄関ホールの絨毯は鮮やかな赤、正面の階段は手摺までピカピカ、左手に見えるドアは塗り直したのか、艶のある木目調。


 セレナ 「凄く綺麗ですね。ビックリしました」

 サミコ 「綺麗好きで几帳面なメンバーが居るんです。研究部屋は左です」
 ▼ 101 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/10 00:40:53 ID:8P4IHSdg [6/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サミコさんがドアを開けると、そこは まさしく研究施設と言った感じだった。

元は大広間だったのか、柱の無い広い空間に、デスクとパソコンが並んでいる。その奥にはよく分からない機械が沢山置かれていて、起動音が微かに聞こえる。

水回りの傍には、試験管やビーカー、顕微鏡や薬品が並んでいて、理科実験室のようだ。


そんな研究部屋に居たのは、白衣を着た男性が2人と女性が1人。

みんなサミコさんと同い年くらいで、大学生の有志の研究グループというのは本当だった。


 スワミ 「あなたがセレナね。噂は聞いてるわ。私はスワミ」

 カツマ 「僕はカツマ。この研究グループの事務全般を受け持ってるんだ」

 サミコ 「カツマのお陰で、この研究所は いつも綺麗なんですよ」

 セレナ 「セレナです。よろしくお願いします」

 スワミ 「まさかホントにカロスクイーンが来てくれるとはね」

 セレナ 「メガシンカの研究と聞いて、私も興味があったので。凄いですね、皆さん若いのに」

 スワミ 「あ、あそこでパソコンやってるのがオカヤよ。ほら挨拶しなさいよ!」


 オカヤ 「ちょっと待って。いま遺伝子配列の確認中……」


 スワミ 「まったく研究オタクは……」

 サミコ 「オカヤは研究熱心で、メガシンカしないポケモンをメガシンカさせたいって考えたのは、彼なんです」
 ▼ 102 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/10 00:50:22 ID:8P4IHSdg [7/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 オカヤ 「正確には、“全ての水タイプのポケモン達を”メガシンカさせたい、だよ」


パソコンの手を止めて、オカヤと呼ばれた男性が口を開いた。


 オカヤ 「初めまして、オカヤです。セレナさんの活躍は、スワミから聞いてます」

 セレナ 「あっ、ありがとうございます」

 オカヤ 「突然だけど、水タイプのポケモンって美しいとは思いませんか?」

 セレナ 「美しい……?」

 オカヤ 「そう! 水も滴る良いポケモン! 水のように滑らかで、しなやかで、変化に富んだ生態と能力。透き通るような声、透明感のある艶やかな佇まい、凛とした雰囲気。水タイプこそ、生命の幻術さ!」

 セレナ 「あっ、確かに、水タイプのポケモンは綺麗な子が多いですよね。ミロカロスとか、ジュゴンとか、アシレーヌとか」

 オカヤ 「そう! セレナさん良いセンスしてる!」

 セレナ 「あはは……」

 オカヤ 「僕はね、そんな美しい水タイプのポケモンを、さらに美しく! さらに芸術的に! まさしく完璧な姿へと導くために、メガシンカの可能性を探っているんだ」


  サミコ (オカヤの話は、聞き流して大丈夫です)

  セレナ (それは失礼な気がしますけど……)
 ▼ 103 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/10 00:50:51 ID:8P4IHSdg [8/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 オカヤ 「メガカメックス、メガラグラージ、メガギャラドス、メガサメハダー、メガヤドラン。皆、元から美しい、強い、魅力的なポケモンではあるけど、メガシンカすることで、さらに美に磨きがかかるんだ。なら見たみたいとは思わないかい? 他の水ポケモンたちがメガシンカしたら、どれほど美しい姿に生まれ変わるか……」


  スワミ (オタクは得意分野になるとマシンガントークだから、マジで適当に頷いとけば大丈夫よ)

  セレナ (でも、夢中になれることに全力で取り組むって、良いことだと思いますよ)


 オカヤ 「水ポケモンたちは皆、メガシンカする可能性を秘めている――。それに気付いた僕は、4年間の研究を経て、ようやく完成に至ろうとしているんだ。あぁ、早く美しい姿を目にしたい! 僕の水ポケモンたちを、さらに魅力的に生まれ変わらせてあげたい!」

 セレナ 「凄いですね。4年間も研究を重ねて……、それで、その、メガシンカしないポケモンをメガシンカさせる技術が、完成したんですか?」

 オカヤ 「75%と言ったところさ。これも全て、カイド君のお陰だ。僕の研究に着目して、素晴らしさを共感してくれて、全面的に協力してくれたんだから」

 セレナ 「カイド君……?」

 オカヤ 「僕の研究を支えてくれる青年さ。そして、僕の研究の正しさを、証明しようとしてくれている!」

 セレナ 「正しさ? 証明?」










  『ビギャアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァッ!!!』







 ▼ 104 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/10 00:56:26 ID:8P4IHSdg [9/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 セレナ 「えっ……なに!?」


突然響き渡った、悲鳴のようなポケモンの鳴き声。

2階から聞こえた気がするけど……、おかしい。



 スワミ 「また失敗かしら?」

 オカヤ 「だから言ってるだろ。水タイプ向けの研究だって」

 サミコ 「またカツマの仕事できちゃったわね……」

 カツマ 「まぁ、綺麗にするのが僕の役目だからね」



こんな尋常じゃない悲鳴を聞いたのに、サミコさんたち、ここに居る4人は、平然な顔をしているのだ。



失敗?

水タイプ向けの研究?

カツマさんの仕事?

綺麗にする?



ねぇ待って。

これらから連想することって、一つしかないよ……。

 ▼ 105 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/10 00:57:01 ID:8P4IHSdg [10/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



続きは後日。



 ▼ 106 ロリーム@メガグローブ 20/04/16 20:26:09 ID:4Z3ou3Bk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 107 ガボスゴドラ@ガルーラナイト 20/04/16 21:37:24 ID:8ypwZYBo NGネーム登録 NGID登録 報告
しえん
 ▼ 108 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/17 22:08:02 ID:CZtQaDVw [1/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 *** 「お、セレナじゃん」


白衣を着た男性が、部屋に入って来た。

彼も20代前半と思われる若い人。ワックスで決めた茶髪と、耳にはピアス。あまりにも白衣が似合わない。


 スワミ 「カイド、またダメだったの?」

 オカヤ 「だから水タイプ向けだって。他のタイプで試そうとしないでくれよ」


カイドと呼ばれた彼は、モンスターボールを手にしていた。

そしてそれを、カツマさんに渡す。


 カイド 「じゃあこいつ、よろしく」

 カツマ 「OK。処分しておくよ」


 セレナ 「処分……?」

 カイド 「新カロスクイーン、セレナ。歓迎するぜ」
 ▼ 109 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/17 22:08:34 ID:CZtQaDVw [2/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 セレナ 「どういうこと? 有志でメガシンカの研究してるって聞いたのに、処分?」

 カイド 「研究には犠牲が付き物。これ常識」

 セレナ 「犠牲って……」

 カイド 「聞いてるだろ。オレたちの研究目標は、“全てのポケモンをメガシンカさせる”ことだ」

 セレナ 「えぇ。全てのポケモンを平等に暮らせるように」

 カイド 「んなの建前に決まってんだろ」

 セレナ 「………」

 カイド 「オレたちは、ポケモンをメガシンカさせる薬を作ってるんだ。メガストーンも、絆も関係なしにな」

 セレナ 「薬……」

 カイド 「言っちまえば、ポケモンを強化させる薬だよ。一時的に肉体を刺激して、パワー、スピード、闘争心もアップさせる。メガシンカに匹敵するくらいにな」

 セレナ 「………」

 カイド 「元々はオカヤの独自研究だったんだ。水タイプのポケモンの、メガシンカの可能性を調べるってテーマでな」

 オカヤ 「その通り。僕は4年前に見たあの美しい姿を忘れられなくてね。それ以来ずっと、水タイプのメガシンカについて研究を続けてきたんだ」

 スワミ 「それにカイドが注目して、全てのポケモンをメガシンカさせる研究に発展させたのよね」

 カイド 「水タイプのポケモンで出来ることなら、全てのポケモンでも出来るはずだろ? そんでこの研究チームを作って、ずっと研究してきたワケよ」

 オカヤ 「カイド君たちの手助けは有難かったよ。こんな研究施設を用意してくれて、金銭面でも、かなり助けてくれたからね」

 スワミ 「ま、ここは廃墟をリフォームしただけだから、実質タダよね」

 オカヤ 「そして、ようやくポケモンをメガシンカさせる試薬の完成に目途がついたんだ。まずは水タイプ向けだけど、全タイプに使えるよう、実験を続けてるんだ」


 セレナ 「実験……、それって要するに、ポケモンを使った人体実験、ってこと?」


 ▼ 110 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/17 22:09:14 ID:CZtQaDVw [3/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 カイド 「ビンゴ。その試薬をポケモンに投与して、メガシンカと同等の反応を得られるかをチェックしてるんだ。……まぁ、先は長そうだけどな」

 オカヤ 「実験を通じて、問題点を探り、改良し、再度実験する。研究とは、その繰り返しなのさ」

 スワミ 「まぁでも、実験台には困らないのよね。この辺の野生ポケモンを使えばいいだけだし」

 セレナ 「そんなの……、間違ってる! ポケモン保護法違反だし、野生ポケモンが可哀想だと思わないの!?」

 カイド 「実験には犠牲が付き物って言っただろ。それに処分っつっても、殺す訳じゃねぇ。ここの足が付かない場所に捨てるんだ。そうすればレンジャーに保護されて、死ぬことはねぇからな」


カイドたちは、淡々と言う。あまりにも淡々と。

全てのポケモンをメガシンカさせたい――という研究テーマは良いと思う。

でも、完成されていない、安全も確認されていない薬を、野生ポケモンを実験台にするなんて許せることじゃない。さっきの悲鳴を聞く限り、薬によって野生ポケモンが傷つけられていることは明らかだ。

しかも、その野生ポケモンを捨てに行くなんて……。


 スワミ 「そんな怒ることじゃないでしょ?」

 サミコ 「そうですよセレナさん。この薬が完成したら、私たち、一生に困らないですよ」

 セレナ 「どういうこと?」

 スワミ 「決まってるでしょ。この薬で一儲けするのよ」
 ▼ 111 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/17 22:09:49 ID:CZtQaDVw [4/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 セレナ 「お金のため……!? 学会で発表とかじゃなくて!?」

 カイド 「んなことしたら後が面倒だろ。この薬は、裏ルートで売り捌くんだ」

 セレナ 「裏ルート……」

 カイド 「全てのポケモンをメガシンカ……すなわち、どんなポケモンでも強化できるんだ。欲しい奴は山ほど居るだろ? ハンターとか、マフィアとかな」

 セレナ 「そんな……!」

 カイド 「この薬の効果を見れば、高値で売れるだろうな。そういう連中、金は持ってるから、良い商売になるぜ?」

 スワミ 「そしたら遊んで暮らせるわよ」

 オカヤ 「まぁ、僕は水ポケモンをより魅力的に進化させることが出来れば、金なんて関係ないけどね」

 カイド 「へへっ。オカヤの研究はヤベェよ。メガシンカしたポケモンの遺伝子配列を分析して、それに近付ける遺伝子操作を、薬で出来るようにしたんだからな」

 オカヤ 「通常は、“遺伝子を含むDNA断片を分離し、遺伝子を切り出して、他のDNAの部分に導入する”って手順を踏む必要があるけど、この薬を投与すれば、対象のポケモンの遺伝子が、勝手に変化していくんだ。メガシンカに見られる配列にね。メガシンカして姿が変わり、能力が格段に上昇し、さらにはタイプまで変わる現象は、そのポケモンの遺伝子が一時的に変異すると考えられたから、それを応用したまでさ」

 カイド 「それを注射1本で可能とか、ホント、研究オタクは凄ぇよ」


有り得ない……こんなの有り得ないよ!

野生ポケモンの実験だけでも許せないのに、その目的が、お金儲けだなんて!

しかも、ハンターやマフィアに売る? 反社会勢力を強化するようなこと、絶対に許せない!
 ▼ 112 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/17 22:10:41 ID:CZtQaDVw [5/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 カイド 「それで……だ。サミコから話は聞いてるよな?」

 セレナ 「なんのこと?」

 カイド 「お前をウチの研究チームに誘った理由だよ。カロスクイーンのセレナさんよぉ」

 セレナ 「……スポンサー。私の名前を使えば、研究に使う お金が、たくさん手に入るってことね」

 カイド 「そうだ。この試薬は まだ完全なものじゃない。何パターンもの試薬を大量に作って、実験を繰り返す必要がある。すなわち金が必要なんだ」

 サミコ 「セレナさんの協力があれば、この研究は更に加速します。薬が完成すれば、本当に、一生困らないですよ」

 スワミ 「この歳で遊んで暮らせるなんて最高だと思わない?」


 セレナ 「ふざけないで!」


 カイド 「は?」

 セレナ 「まっとうな研究だと思ったから見学に来たのに、お金儲けのために野生ポケモンたちを傷付けて、そんなの協力できる訳ないでしょ!?」

 カイド 「ふん。それがお前の答えか」

 スワミ 「バカね。楽して暮らせるチャンスを、自分から捨てるなんて」

 セレナ 「失礼するわ」


もう、この人たちに関わる必要はない。

何と言われようとも、人の道を外すようなこと、私には出来ない。


 カイド 「待てよ」
 ▼ 113 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/17 22:11:30 ID:CZtQaDVw [6/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 セレナ 「なに?」

 カイド 「お前、この研究のことチクるつもりだろ」

 セレナ 「……当然よ。野生ポケモンへの虐待、許されることじゃないわ」

 カイド 「で、オレらの研究を潰そうって訳か」

 セレナ 「当たり前じゃない! こんな研究を知って、黙って見過ごす訳には いかないわ!」

 スワミ 「チッ!」

 サミコ 「残念です、セレナさん」

 カイド 「お前さ、勘違いしてねーか?」

 セレナ 「勘違い?」

 カイド 「セレナ。お前が“この研究所に居た”事実は、もう変わらないんだぜ?」

 セレナ 「……どういうこと?」

 カイド 「お前がこの件をチクるって言うんなら、“セレナもこの研究に加担してた”って、オレらは答えるぜ」

 セレナ 「なっ……!?」

 カイド 「カロスクイーンの不祥事……、マスコミは喰い付くだろうなぁ?」

 セレナ 「そんな……そんなデタラメ通用しないわよ! 私は正々堂々と否定するわ!」
 ▼ 114 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/17 22:12:23 ID:CZtQaDVw [7/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 スワミ 「分かってないわね、マスコミの怖さ」

 カイド 「否定すれば良い。けどよ、“疑惑”は人間にとって最高のネタなんだぜ?」

 スワミ 「“カロスクイーンが、ポケモンの違法な研究に携わっていた。本人は否定”――。皆が皆、信じると思う?」

 カイド 「そんなヤバいこと、普通は否定するよな。けど、それを証明する術は無い。現にお前、この研究所に こうして居るんだからよ」

 セレナ 「っ……!」


確かに、考えてみればその通りだ。

いくら否定したって、それを証明できる術は……無い。カイドたち全員が“私もメンバーの一員だ”って言えば、そっちの方が信憑性がある。


 カイド 「もう一度、聞いてやる。オレらの仲間になれ」

 セレナ 「……嫌よ! こんな研究に加担するなんて、絶対に出来ない!」


でも私は、自分の信念を曲げるつもりは無い。

ダメなことはダメ。これは犯罪。ポケモン虐待だ。
 ▼ 115 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/17 22:13:10 ID:CZtQaDVw [8/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 カイド 「そうか。じゃあテメェには用は無い。とっとと帰れ」

 スワミ 「そのまま返すワケ!?」

 カイド 「馬鹿だな。痛めつけたりしたら“オレらの仲間”って言えなくなるだろ」

 スワミ 「あぁ、なるほどね」

 カイド 「セレナ。お前は無事に帰してやる。けど覚えとけよ。このこと言いふらしたら、カロスクイーンの立場は消え去るからな」

 セレナ 「っ!」


私はカイドたちに背を向ける。


 スワミ 「って言うか、パフォーマー資格剥奪されてもおかしくないわね」

 カイド 「そんくらいの処分は有り得るな。あばよセレナ。賢い選択を期待するぜ」


そして、研究所を後にした。

カイドたちの冷たい言葉を、背中に受けながら。


 ▼ 116 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/17 22:13:59 ID:CZtQaDVw [9/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 セレナ 「どうしよう……」


家に帰って、私は、ことの重大さを再認識した。


悔しいけど、カイドたちの言う通りだ。

いくら私が“無関係”と叫んでも、私があの研究所に居た事実がある以上、その疑惑を晴らすことは不可能に近い。

カロスクイーンと言う立場の人間の疑惑……、ひとたびマスコミに知れ渡ったら、それを払拭する術は無い。

そして、“世間を混乱させた”という名目の元、カロスクイーンから降ろされ、最悪、パフォーマーとしての資格を剥奪されてしまうかも……。


 セレナ 「どうすればいいの……」


ヤシオさんにも教えられた。

カロスクイーンと言う立場は、芸能人のようなもの。スキャンダルは避けなければならない、と。


 セレナ 「グスッ、なんで、こんなことに……」


憧れのカロスクイーン。

夢だったカロスクイーン。

やっとサトシに相応しい存在になれたと思ったのに……。
 ▼ 117 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/17 22:14:37 ID:CZtQaDVw [10/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





その日から、私はスランプに陥った。



悩みがある状態のパフォーマンスでは、人を感激させることは出来ない。



テールナーたちも、私の不安を汲み取って、パフォーマンスに身が入らない。





私の初の防衛戦は、散々な結果で終わってしまった。





私はもう、二度と、カロスクイーンになれないかもしれない。




 ▼ 118 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/04/17 22:14:59 ID:CZtQaDVw [11/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



続きは後日。



 ▼ 119 ブライカ@あかぼんぐり 20/04/17 22:35:56 ID:NYBsy3f2 NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 120 グマッグ@プレシャスボール 20/04/20 23:40:11 ID:G9sg41xw NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
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 ▼ 121 オラント@こおったきのみ 20/05/04 00:40:42 ID:AasYstt6 NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 122 ングラー@ねばねばこやし 20/05/21 01:35:30 ID:VaLYElmU NGネーム登録 NGID登録 報告
応援してます。
頑張ってください!
 ▼ 123 ラマネロ@パイルのみ 20/06/11 06:26:25 ID:bOjAdeC6 NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
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 ▼ 124 ドリーノ@ピジョットナイト 20/07/02 21:13:05 ID:1GVcmu1c NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
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 ▼ 125 ママ@リゾチウム 20/08/06 21:17:28 ID:9eP2aHyU NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
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 ▼ 126 フキムシ@コスメポーチ 20/09/02 03:06:03 ID:Cpbc38eo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 127 ツロイド@ゆれないおまもり 20/10/05 23:55:45 ID:mLqgc.eY NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
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 ▼ 128 アル@ピーピーマックス 20/11/06 06:44:06 ID:T2Rk8hL. NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
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 ▼ 129 タチ@ともだちてちょう 20/11/21 20:37:43 ID:z3V2XNdk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
超支援!甲州街道さんのssは僕の中で公式と同じ
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