▼  |  全表示197   | << 前100 | 次  |  履歴   |   スレを履歴ページに追加  | 個人設定 |   ▼   
                  スレ一覧                  
SS

ゴウ「最近、コハルの様子が……」

 ▼ 1 ガクチート@ずがいのカセキ 22/04/29 10:06:06 ID:z8FMeTQ2 [1/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 おかしい。
 コハルの、最近の態度はおかしい。

 俺に対する態度が変わった訳じゃない。変化したのは、俺の隣───サトシに対する態度だ。

 そのきっかけは明々白々だ。
 あの日の会話。コハルは天地がひっくり返ったかのような、大袈裟なリアクションをしたんだ。

「ええええぇ──!!? サトシってコンテストに出た事があるの!?」

 コハルのポケモンコンテストデビューの日の夜。カントーの研究所に戻り、サクラギ所長が録画していたコハルのパフォーマンスを見返しながら談笑していた時の事だ。

 なんで見に来てくれなかったのか。コハルは大遅刻をした俺達にねちっこく不満をぶつけ、俺達はしきりに謝罪を繰り返していた。
 そもそもサトシが……と俺が口にした事が、話の方向を決めてしまったと思う。

「急いでるっていうのに、バトルなんて始めるから……」

「悪い悪い。だって、売られた勝負は受けて立つしかないだろ? それに、あのコンテストマスターのミクリさんならなおさら…」

「コンテストマスター?」

 サトシの発言に目の色を変えるコハル。普段ならサトシの話には適当に相槌を打つだけだったのが、この時は違った。

 きっと、自らコンテストに出場した事で関心が高まっていたのだろう。コハルはそれがどんな人物で、どういった経緯でサトシとバトルする事になったのかを興味津々といった様子で尋ねた。

 すると、サトシの口から飛び出たのが「ミクリカップ」という大会の話だった。

「シンオウ地方を旅してた頃にミクリさんと出会って…」

「ヒカリと交換したブイゼルで参加することにしたんだ」

 ヒカリがかつてのサトシの旅仲間だという事は、既に周知のこと。俺はサトシがヒカリとポケモン交換をしていた事実に内心驚いていたが(サトシはそんな事は滅多にしない)、コハルはサトシのコンテスト出場にこそ目を皿にするのだった。
 ▼ 2 ゲボウズ@スキルコール 22/04/29 10:07:36 ID:z8FMeTQ2 [2/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「サトシって、バトルにしか興味ないと思ってた…」

 実は俺もそう思ってたのは、内緒。

「はは…まあ、あの頃の経験から、俺はコンテストには向かないって思ったんだけどな」

「でも二次審査には進めたんだろ? それも、色んな地方から強豪が集まるような大会でさ。それってやっぱ、すごくね?」

「すごいよ絶対! 私なんて、一次審査止まりだよ?」

 俺もコハルも、サトシの成績は「向いてない」なんて評するには謙遜すぎると口を揃えた。より詳しく聞くと、それが初挑戦という訳ではなく2度目の参加、非公式を含めれば3度目だという事も判明した。そしてそれ以前は……

「ホウエンを旅してた頃は、ハルカって子と一緒で……。いつもコンテストの試合観戦してたし、特訓に付き合ったりしてたから、ちょっとは経験ついていたのかもな」

 サトシは懐かしむように、半分このメダルを取り出して見せた。非公式のコンテストでそのハルカと引き分け優勝した際に、半分こにして互いに分け合った思い出の品だという。

 コハルは信じられないと言わんばかりの表情でサトシに聞き返した。

「サトシ…ハルカって言った…? ホウエンで…ハルカって……」

「ホウエンの舞姫ね!」

 キクナさんの言い当てで、場が一気に盛り上がる。いわく、ハルカと言えば、コンテストファンの間ではその名を知らぬものはいないほど熱烈な人気を誇るコーディネーターだという。そのコーディネーターと知り合いで、旅立ちの頃を共にした先輩……そして非公式とはいえ、優勝を分け合った相手……それがサトシだというのだ。
 全く、恐れ入るとはこの事だ。

 ちなみに、コハルがコンテストで着た衣装はまさしく"ホウエンの舞姫コレクション"の一つなのだそうだ。それを選ぶなんて、なんて偶然なんだ…。

「はっはっは。サトシ君の話にはいつも驚かされるなぁ」

 サクラギ所長が快活に笑う。レンジさんもすごいトレーナーたと褒めちぎる。照れるサトシに対して、俺はサトシの話に驚かされるなんてもう慣れっこだよ、と自慢にならない自慢をして、またみんなどっと笑うのだった。

 そう、サトシの話は、びっくり仰天な内容ばかりなのだ。中には、サトシの口から言われなきゃとても信じられないような物語まである。しかし、どれだけの冒険をしてもサトシは飾らず、威張らず、ありのままの自分で周りに接する。そういう所が、サトシの魅力なんだ。

 今回の話も、最終的には「サトシのすごいエピソード」の一つで終わるだろう……俺はそんな風に思っていた。

 コハルの中で、サトシの見方がどう変化していたかなんて……その時は微塵も気付かなかった。
 ▼ 3 ガプテラ@かいのカセキ 22/04/29 10:09:24 ID:z8FMeTQ2 [3/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「それじゃあ、行ってきます!」

「って、サトシ。頬に食べ残しあるよ?」

「え、ホント? ここ?」

「違うよ。もう、吹いてあげるから」

「へへ、サンキュー」

「帰ったらまた色々、話を聞かせてね」

「ああ! いいぜ!」

 コハルがサトシをやけに気にかけるようになった。話をする回数も、増えたように思う。

 初めはいい兆候だと思った。以前のコハルは、どことなくサトシへの当たりがよそよそしいというか、慣れない感じがしていたからだ。

 それはまあ、無理もない。サトシと出会った頃のコハルは、ポケモンへの関心の低いごく普通の学生。対してサトシは俺と同様(…いや、俺以上だな…)、ポケモン=日常の全てという少年だった。二人の馬が合わないのは当然の事と言えた。

 しかし、コハルも少しずつポケモンと触れ合う機会が増していくうちに、二人の溝のようなものは解消されていき……サトシのペースについていけない事もままあれど、何気なく会話できるくらいにはなった。

 俺はサトシが周りに受け入れられていくのを見るのが好きだった。サトシを学校に連れていき、クラスメイトに紹介したりした事もある。変わり者だけど、スゴイやつ……そんなサトシが、認知されるのが何だか誇らしかった。
 コハルもようやく、サトシと打ち解けたのだと思った。

 けれど、あの日以降のコハルの変化は……少し過剰なんじゃないかという気がしていた。

 サトシとの会話を心待ちにしている。関係を深めようとしている…。そんな印象がする…。
 この前も、定期撮影でサクラギパークを一緒に周っていた時、いやにサトシの隣にいようとしてるように見えた…。

 自分でも不思議だったが、俺はそれを見過ごす気にはなれなかった。
 好奇心なのか、猜疑心なのか、まだ分からなかった。
 ▼ 4 ナギラス@あかいビードロ 22/04/29 10:13:32 ID:z8FMeTQ2 [4/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「なあ、コハル……」

「うん?」

 ある日、俺は思い切ってコハルに尋ねてみようと思った。

 俺とコハルはベンチに腰掛けながら、サトシのポケモン達との特訓を一緒に見物していた。よくよく思えば、これも以前には全く見られなかった構図だ。サトシの特訓をコハルが見に来る事など、用事が無い限り皆無だったはずだ。

 サトシはこちらには全く注意を払わず、ポケモン達への指示に集中している。コハルはそんなサトシの背中を見ながら、普段からこんなに特訓をして、サトシってバトルにすごく真剣なんだね、とあからさまに尊敬の念を込めた言葉を呟いていた。

「私、まだあんな風に我武者羅になれるものって見つけてないけど…ヒカリやセレナが夢を追う上でサトシに勇気づけられたって話、ちょっと分かる気がしてきたな…」

 コハルがコンテストへ参加するきっかけとなった二人のコーディネーター、ヒカリとセレナ。二人と仲良くなったコハルは、以後も連絡を取り合って、色々な話を……特に、サトシとの旅の話を聞かされたという。

「きっと、ホウエンの舞姫も……」

「なあ、コハル……」

 不意に話を遮った俺に、コハルが顔を向ける。俺は前方のサトシに視線を向けたまま、慎重に言葉を紡いだ。

「コハル、最近サトシの事めっちゃ話すようになったよな?」

「え…そ、そうかな?」

 思いもしなかった指摘に照れたように、視線をそらすコハル。緊張した時に髪をいじる癖が現れた。
 返事とは裏腹に、自覚はしてる証拠だった。

 俺は次は調子を変えて、コハルの警戒心を解く作戦に出た。

「本当だぞ。サトシと出会った頃の俺みたいじゃん」

 俺は自嘲するように笑みを浮かべる。同じ心境を持った事があると伝える事で、コハルの安心を引き出そうとしたのだ。
 ▼ 5 トウモリ@やみのいし 22/04/29 10:14:46 ID:Q2HQAQmg [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
滅茶面白そうなssだけどスレ主は

【サトコハ】ごめんね、セレナ…【SS】

https://pokemonbbs.com/sp/poke/read.cgi?no=1662100
を書いてる人?
 ▼ 6 リリダマ@つりざお 22/04/29 10:15:25 ID:z8FMeTQ2 [5/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「あー…そういえば、ゴウ、そんな感じだったね」

 コハルの表情が崩れ、朗らかに微笑む。上手く行ったのを確信した。
 伊達に幼なじみじゃないな、と心の中で自画自賛なんてしてしまう。

「あの頃はゴウのポケモン好きに付き合わされて、可哀想だな〜って思ったりもしたけど…実際にはサトシが引っ張ってる側だったなんて、思いもしなかったよ」

「そうそう。俺もまさか自分よりポケモン好きなすげー奴に出くわすとは思わなかったよ」

「最初はすごいなんて全然思わなかったよ。初めて会った時は研究所の前で黒焦げになって倒れてる所だったし…そう言えば、あの時つい見なかった事にして通り過ぎたの、今も謝ってないなぁ」

「コハルも酷い奴だなー」

「ふ、不審者だと思っちゃっただけだし…」

 何気ない思い出話のつもりで、コハルは談笑に興じる。けれど俺はつぶさにコハルの様子を窺っていた。

 やっぱり、サトシの話を楽しげに語っている。コハルはたまに誤解されるけれど、裏表はあまり無い性格だ。嬉しい事は素直に喜ぶし、嫌な事は普通に嫌な顔をする。怒った時ははっきり気持ちを伝えるし、行動で示す事さえする。初めの頃にあったサトシへの塩対応も、自分の感情に素直であるがゆえの結果だった。

 だからこそ、今こうしてサトシへの接し方が180度変わったかのような振る舞いに、意味を感じずにはいられなかった。ただ、直接的に問い質すような真似はしない。さすがのコハルも、"そんな感情"があったところでバカ正直に口にはしないだろうから。

 だが、そろそろ頃合いだ。俺は大きく勝負に出る。

「だったらさ、コハル。サトシと一緒に活動してみたら?」
 ▼ 7 ルキー@こだいのツボ 22/04/29 10:19:23 ID:z8FMeTQ2 [6/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「え……えっ!?」

 言われた事を一瞬飲み込めなかったように、遅れて驚愕をしてみせるコハル。何を突然言い出すのかと、腕を振り回して慌てふためいた。

「だってよ、コハルって今までサトシとあんまりつるもうとしなかったけど、今は普通に仲良くなってんじゃん?」

「そ、それは…前に比べたら確かにそうだと思うけど…」

「もうすぐ学校もゴールデンウィークで休みだろ? だったら、サトシと一緒にあちこち行って、サトシの事をもっともっと深く知るチャンスっしょ!」

「ふ、深く知るって…な、何言ってるの、ゴウ…!」

 段々と顔が赤らんでいくコハルに、今度は嫌味っぽくしたり顔で返した。

「なんだなんだ? 俺がなんか変な事言ったか? それとも、コハルが変な想像してるのか?」

「そ、そんな訳ないじゃん! というか、普通に変だよ!」

 耳まで真っ赤にして、全く説得力がない。これだけでも反応として十分に小気味良かったが、俺は最後のひと押しをする事にした。サトシに聞こえないようにとわざとらしく手を口の横に立てて(どうせ聞こえないとは思うけど…)、小声で提案する。

「それじゃあさ…サトシに聞いてみるってのはどうだ? コハルについてきて欲しいと思うかどうかをさ」

「ダ、ダメだよ…! そんなの……ずるいよ!」

「なんでだよ」

「だ、だって…その…サトシは…」

 横目で彼を見ながら、コハルは俯いて人差し指を合わせていた。言われなくても、コハルの考えは手に取るように分かった。

 サトシが拒む訳が無い。そもそもサトシは頻繁にコハルをゲットやリサーチに誘っているくらいだ(勿論、純粋な意味で)。NOと言われる確率は限りなく0…いや、全くの0%だと断言できる。

 そしてもしサトシがコハルについてきて欲しいと言ったならば……"今のコハル"に、それを断る事は出来ないと言いたい訳だ。だからずるいという話……。

 そう、それは今のコハルが"俺が想像した通りのコハル"であるという事の何よりの証拠だった。
 もしそうでなかったのなら、断って終いに出来るはずなのだから…。
 ▼ 8 ーケオス@ゴールドスプレー 22/04/29 10:21:00 ID:z8FMeTQ2 [7/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 答えは得られた。後はもう詰めるだけだった。
 俺は自分の予感が確かだったことに満足しながら、悠然と立ち上がった。

「そっか。じゃ、別にいいか」

「えっ?」

 俺がいきなりあっさりと提案を引っ込めた事で、コハルはクスネにつままれたように呆気にとられた。そんなコハルを尻目に、俺はサトシを大声で呼ぶ。

「おーいサトシー! もう暗くなってきたし、そろそろ帰ろうぜー!」

「分かったー!」

 サトシは了解の返事をし、ポケモン達に終了の合図を出してボールに戻す。そしてピカチュウと共に俺たちの方に駆け寄ると、じゃあ帰るか、と屈託のない笑顔で言った。

 夕飯が楽しみだなーと、帰り道でいつも通り呑気な事を話すサトシ。俺とコハルのやり取りは案の定聞こえていなかったようだ。
 俺はサトシとだべりながら歩く。隣で何かに悩むようにずっと無言のコハルは、あえて放っといて……。


 そして研究所の手前。コハルの自宅との分かれ道に差し掛かった所で───

「…………さ、サトシ! あ、あのね…ちょっと、考えてたんだけど……」

 ───果たして俺の計算通り、コハルは自らサトシに話を切り出した。
 ▼ 9 ガサメハダー@ルナアーラZ 22/04/29 10:21:42 ID:z8FMeTQ2 [8/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>5
NO
 ▼ 10 ッタイシ@ゴージャスボール 22/04/29 10:46:18 ID:Q2HQAQmg [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
>>9
サトコハを書く人が増えて嬉しい
支援
 ▼ 11 カブ@だいしらたま 22/04/29 11:47:05 ID:RzhINWtk [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サトコハなら支援するしかなかろう
 ▼ 12 ドラ@のどスプレー 22/04/29 11:49:26 ID:alYUQfPM NGネーム登録 NGID登録 報告
現実には「へー…」の一言で流されそう😭
 ▼ 13 マシュ@フェアリーメモリ 22/04/29 12:24:45 ID:zPvMO4kE [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
>>12
コハルって明るくはなったけど基本ドライだからそこまで食いつくこと無さそうだよな
 ▼ 14 ガラティアス@ゆきだま 22/04/29 12:28:59 ID:0PDAkCys NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
スレタイ進化のときの効果音が流れてきたわ
 ▼ 15 リコオル@かなめいし 22/04/29 12:45:25 ID:tAF6NEVc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コハルの進化形見てみたい
 ▼ 16 グラージ@ミツよせだま 22/04/29 12:56:35 ID:LaRUMwIM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゴウ大人過ぎる、良い
 ▼ 17 チンキー@マグマブースター 22/04/29 13:02:15 ID:RzhINWtk [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
BBSで色々言われてるけどゴウの魅力はこういうとこだと思う
原作ゴウもサトシとコハル応援する側だと思うよ

じゃないとコンテスト回であんなしつこくサトシにコハル見ろって言わんよ
俺先に行くからーσ(゚∀゚ )で終わり
 ▼ 18 ローラライチュウ@ギガトンボール 22/04/29 13:17:45 ID:zPvMO4kE [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
>>17
それはコハルがサトシのこと好きだったらの話だろ?
コンテスト回のコハル見ろ見ろ!は、ただ単純に友達が出てるからって話なだけじゃん
あと、あれでサトコハゴウコハの話に結びつけたいなら、間違いなくゴウコハやん
 ▼ 19 スイジュナイパー@おだやかミント 22/04/29 13:24:44 ID:RzhINWtk [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>18
?あれでゴウコハに結びつく理由がわからん
ゴウコハならサトシ置いていくだろ…
置いて行かなかった、つまりゴウにとってサトシ>コハルなのか、
それともサトシにコハルをもっと知ってもらいたいかのどちらか
 ▼ 20 ムスター@あさせのしお 22/04/29 13:26:18 ID:zPvMO4kE [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
>>19
???
 ▼ 21 ローゼル@コイン 22/04/29 13:26:35 ID:RzhINWtk [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
理解できないなら仕方ない
 ▼ 22 ガース@みずのいし 22/04/29 13:31:04 ID:oCsQWDBw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゴウってコハルのコンテストよりチルタリスを選んでたよな
ミクリに止められるよりも先にチルタリスが現れたら逆になってただけだろ
 ▼ 23 レフワン@ピンクのバンダナ 22/04/29 13:31:55 ID:RzhINWtk [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>22
同意
 ▼ 24 リデプス@デボンのにもつ 22/04/29 14:08:27 ID:zwEgfCcw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援ン
 ▼ 25 ョロゾ@じゃくてんほけん 22/04/29 15:48:43 ID:9ku2yNnI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
せっかく面白いSSなんだから、アニメの論争は他所でやって欲しい
支援
 ▼ 26 ティオス@たんけんこころえ 22/04/29 19:08:37 ID:yX7Ml2lo NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 27 ワガノン@ロゼルのみ 22/04/29 22:21:18 ID:4KXM8S2Y NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 28 ラルヤドン@こないれ 22/04/30 03:01:00 ID:x0EsBle6 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 29 ーダル@チルタリスナイト 22/04/30 03:03:16 ID:KD7USn9. NGネーム登録 NGID登録 報告
これはだほれそう
 ▼ 30 ガミミロップ@ルームキー 22/04/30 09:25:10 ID:pLVQ2SZY [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



「あれはどう考えても"好き"っしょ」

 コハルがサトシに惹かれているのは、俺の中で確定事項となった。

 まさかこうなるなんて……。寝耳に水としか言いようがない現実に、俺は興奮とも動揺ともつかぬ心情に弄ばれていた。

 何しろサトシは元々、コハルにとって正反対とも言える存在。ポケモンが大好きで、ポケモンバトルに夢中な男子だ。そんなサトシに想いを寄せてしまうなんて、以前のコハルなら考えられない。あり得ない事だった。そのあり得ない事が実際に起きてしまった。ある意味大事件である。

「しっかし、コハルも随分現金じゃないか。サトシがスゴイやつって分かった途端、手のひら返して好きになるなんて…」

 コハルがサトシを好きになる分については、別段気にはならなかった。しかし、動機はいささか感心しない。あれでは人柄よりも地位に目を向けているみたいだというのが、率直な感想だった。

 どうせ好きになるなら、やっぱりサトシ自身の魅力を見てほしい。それがサトシの相棒として、そしてコハルの友人としての希望だ。

「ま、この数日でそこが変わってくれるといいんだけどな…」

 コハルは今度のゴールデンウィークを、俺たちのリサーチフェローの助手として同行する事にした。
 理由は長期休暇を勉強漬けで過ごすのも退屈だから、とのこと。……上手い言い繕いをするもんだなと、俺は苦笑を禁じ得なかった。

 言うまでもない事だが、サトシはその提案をソッコーで承諾した。サトシにしてみれば願ってもない展開というものであり、それこそ目をキラキラさせながらコハルの申し出を受け入れるのだった。

 あそこまで喜んでるのを見ると、サトシもコハルに気があるんじゃないか、なんて思ってしまいそうにもなる。実際コハルは赤面しながらも、期待を膨らませるような嬉しそうな顔をしていた。
 しかし悲しいかな、それはまず無いだろうと俺は確信していた。

 伊達に何時間も共に過ごしていない。サトシが異性として誰かを意識する事などただの一度も見た事は無いし、コハルの同行も純粋に仲間が多い方がいいと思ってるだけというのは、聞かなくても分かる事だった。コハルの下心なんて、欠片ほども勘付いてはいないだろう。

 それはある意味コハルにとって悪夢だ。普通の男の子なら察してくれそうな雰囲気にも、サトシは微塵も反応を示さないだろうから。
 コハルが想いを受け止めて貰うのに、どれほどの労力をかけなければならないのかを思うと、同情すら湧いてくる。

「…………ま、チャンスは作ってやったんだし、後はコハル次第っしょ」

 突き放すようで少し悪い気もするが、これはあくまで人の恋愛事だ。あまり世話を焼きすぎるのも良くないだろう。
 コハルだったら世話焼きしまくるんだろうけど……前にキクナさんの内心を誤解して恋人探しなんてしてたくらいだし。



 本心では、どうすればいいか決めあぐねていた。
 ▼ 31 ンボラー@レッドカード 22/04/30 09:26:40 ID:pLVQ2SZY [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「よし、それじゃあ出発だ!」

「おーっ!」

 サトシの快活な掛け声に、ノリ良くハモる俺とコハル。ついにゴールデンウィークの週が来た。
 サクラギ所長は娘がポケモンに関心を寄せるようになった事をとても嬉しく思っているようで、今回のコハルの同行を快く許可した。一方で内心相当心配もしており、俺やサトシには、くれぐれもコハルを危ない目に遭わせないようにと、こっそり念を押しに来ていた。
 特にサトシは突っ走ると周りが見えないからな…。そこは俺がよく注意すべき所だと思った。

 コハルは久しぶりの旅行に、イーブイともどもワクワクが止まらないという様子で、早く冒険をしたいという気持ちが顔一面に現れていた。眩しいくらいの笑顔だ。

 ……俺は少しコハルを観察する。コハルの普段の衣装選びは、比較的、機能性重視だ。特にこういう遠出の時には、動きやすそうなTシャツにオーバーオールという組み合わせをよく選んでいた気がするけど……。

 今日のコハルは、珍しく……私服にしては珍しくスカートだ。膝ぐらいまでのオレンジ色のスカートに、薄いベージュ色のYシャツを着て、小さいノースリーブのジャケットを羽織っている。
 どれも一度も見たことが無い。帽子に至るまで、全部新調したてのような綺麗さだった。

「……へ、変かな?」

 コハルが俺の視線に気付いて、照れくさそうに尋ねてくる。いやいや、お前……。これは正直……。

「気合い入れすぎじゃないのか…?」

 ちょっと言わずにはいられなかった。

 一応はリサーチフェローの手伝いという体で来てるのに、これじゃあデート気分丸出しだ。

 コハルは俺の感想にうっと動揺の色を見せ、顔を赤くしながら髪の毛をいじる。自覚あるんかい。

 一言フォローするなら、コハルの装いは普通の人の目にはそれほど派手には映らないとは思う。しかしコハルのセンスを知る者ならば、いかに本気か嫌でも分かるレベルだ。

 むしろサクラギ所長は、コハルのこの服を見て何も思わなかったんだろうか…?

 サトシは……まあ何も思う訳ないか。

「まあ、ほどほどにな〜」

 もじもじとするコハルに淡白に告げながら先に進む。

 幼なじみの気合いの入れようには呆れもあったものの、実際の所サトシの気を引こうとするなら、それくらいの意気込みは必要だろうな。

 効果があるかはさておき、コハルがどんなアプローチをかけていくか、今から楽しみになってきた。

 俺はすっかり高みの見物気分になっていた。
 ▼ 32 オチルドン@コオリZ 22/04/30 09:31:19 ID:pLVQ2SZY [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 俺達が今回リサーチに向かったのは、海の向こうの、連なる島々からなる地方、アローラ。
 この島にのみ生息するとされる希少種、オドリドリの生態を調査する為だ。

 もちろん俺はただ調べるだけでなく、この機会に図鑑未登録の種類をゲットするつもりでいた。サトシもせっっかくアローラに来た事だし旧友たちの顔を一目見たい、と思ってる様子だ。コハルもサトシの友達に会ってみたいと話す。

「へぇー、コハルはポケモンよりもサトシの友達かー」

「な、なに…? 変な意味で受け取らないでよ」

 どうやら戦略ではなく普通に興味本位だったようだ。早とちり過ぎたな…。


 アローラ地方は4つの島で成り立っており、オドリドリはいずれの島でも見かけられる。しかし特徴的なのがその姿だ。
 たった一つの地方でありながら、4つものフォルムを持つという。見た目違いと言えばシンオウのカラナクシが代表例だが、あちらは東西で2種類のみ。他にもカロス地方のフラベベもあるが、そちらもあくまで選んだ花の種類が違うだけである。そして極め付けは、これらの種類はずっとそのままの姿なのに、オドリドリは後天的に変化(フォルムチェンジ)してしまい、タイプまで変わってしまうのだ。

「そのフォルムチェンジの条件を見つけるのが、今回の課題って訳」

「へぇ〜……不思議だね、ポケモンって!」

 コハルは目を輝かせながら、資料のオドリドリを見つめる。関わりが増えたとはいえ、コハルはまだまだ新米のトレーナー。ポケモンという命が持つ奥深さには、知らない事、驚く事が盛り沢山だ。
 
「そうだろ? ポケモンって、すっげーんだぜ!」

 サトシはコハルの隣で大袈裟に両手を大きく広げてみせる。相変わらず、伝わるような伝わらないような表現の仕方に、俺は苦笑する。
 一方コハルは「うん、何となく分かるよ」と柔和な笑みで返す。昔はかなりギクシャクしてたコハルもサトシの“キャラ”に慣れて、対応もすっかり板についた様子だ。

「……でも俺、なーんかオドリドリのフォルムチェンジって見た事がある気がするんだよなー……」

「…………えっ?」

 サトシが漏らした一言に、俺とコハルは目を皿にした。聞き逃せない発言だった。

「えっ……サトシ、フォルムチェンジの条件知ってるのか?」

「いや、知ってるような知らないような……」

「どっちなのよ〜!」

 さすがのコハルもはっきりしないサトシの態度にもやもやが走るようだ。

「なんでか分かんないけど、思い出そうとするとすっげー美味しい料理食べた事しか思い出せなくて……」

「料理ってお前……」

「あっ! そうだ!」

 その時、不意にサトシがハッとしたように立ち上がった。

「マオの料理食べたんだ! 幻のアローラシチュー!!」
 ▼ 33 ンド@かけたポット 22/04/30 09:35:06 ID:pLVQ2SZY [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「幻の……」

「アローラシチュー?」

 俺とコハルはキョトンとしておうむ返しする。話が呑めない俺たちに構わず、サトシは興奮した様子で振り向いた。

「なあなあ! せっかくアローラに来たんだし、まずはさ! マオのレストランで腹ごしらえしようぜ!」

「来ていきなりご飯かよ……」

「……クスッ、サトシらしいね」

 呆れる俺と妙に納得するコハル。まあ、サトシの食欲は今に始まった事じゃないけど……。
 サトシが食事を後回しにするのなんて、バトルがある時ぐらいだろう。

 出鼻を挫かれるみたいでしかめっ面をする俺に、サトシは熱を込めた眼差しを向ける。

「そんな顔すんなよ、ゴウ。絶対旨いからさ!」

「私も……ちょっと興味あるかな。幻のシチューって……」

 サトシとコハルが、有無を言わせない目で見つめてくる。更にピカチュウとイーブイも何やらよだれっぽいものが見える……。
 4対1じゃ反対なんて出来ないっしょ……。

「……もう、しょうがないな! 食うか!」

「やったー!」

 満場一致。サトシとコハルは腕を上げて喜んだ。
 ▼ 34 ンガー@てんくうのせきばん 22/04/30 09:51:09 ID:x0EsBle6 [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 35 オガラス@ぎんのこな 22/04/30 10:25:38 ID:egbAiWdg NGネーム登録 NGID登録 報告
素晴らしい…
シエンネ
 ▼ 36 ラージェス@きいろいバンダナ 22/04/30 10:31:27 ID:5A2.cYpg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 37 ビシラス@イダイトウだんご 22/04/30 10:57:02 ID:WHcg76Tg NGネーム登録 NGID登録 報告
サトコハどうこうより、こうやって三人でワチャワチャしてるほうが良いな
 ▼ 38 リテヤマ@あなぬけのヒモ 22/04/30 19:19:15 ID:4h.wI5ps NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サトコハなんか?なら支援
 ▼ 39 ニプッチ@ピッピにんぎょう 22/05/01 04:00:59 ID:vbfc/F8E [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 40 ゲハント@きよめのおこう 22/05/01 08:06:34 ID:jpEMqBBc [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



「美味しぃ〜〜〜〜!!!」

 ほどなくして。
 俺たち3人は、サトシのスクールメイトだったマオの経営するレストランで、振る舞われた料理に舌鼓を打つのだった。

「どうもありがとう! 遠慮せずお代わりしていいからね!」

「それじゃあお代わり!」

 ガッツリと皿ごと食らう勢いで食べていたサトシが、早くも二皿目を要求する。コハルもピリピリと来る後味をじっくりと堪能する。
 俺も頬が落ちる美味さに文句の一つも浮かばない。少し悔しいけど、開幕の寄り道は大正解だった。

「この後のリサーチも、やる気が漲るってやつっしょ!」

 あ〜……うん……大正解っしょ〜……。

「へぇー、リサーチで来てるんだ?」

 マオが興味を惹かれたように問いかける。サトシはアマージョが持ってきてくれたお代わりにさっそく食いついてしまったので、俺から説明する。

「オドリドリってポケモンの、フォルムチェンジの条件を調べにな」

「あー! それ知ってる!」

「えっ……ええぇ───っ!?」

 サトシの次はマオまで!? またも証人の発見に、俺とコハルは騒然となる。そんなあっさり判明しちゃっていいのか……?

 もしかして、アローラ地方にいる人達には普通に知られているのか……?
 ▼ 41 ガイドス@しんぴのしずく 22/05/01 08:08:18 ID:jpEMqBBc [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「詳しく教えてくれないか!? どうやって!? 場所!? 時間!?」

「あ、いや、そこまで詳しいって訳じゃ……」

 思わず迫りすぎた俺に、マオは若干引き気味に苦笑いを返した。

「知ってるというか、見た事があるだけなんだ…」

「それでも貴重な情報になるよ! どこで見たんだ? いつ?」

「確か、サトシと見たんだよね? あの時……」

「ごほっ! ごほっ!」

 マオがサトシに話を振ろうとした矢先、サトシは急に咳き込み始めた。どうやら誤嚥をしたようだ。

「サトシ、大丈夫!?」

 コハルがすぐに横に回り、背中をさする。サトシは安心させようと弱々しい笑みで返した。

「だ、大丈夫ダイジョーブ…」

「もう。そんなに勢いつけすぎたら大丈夫もだいじょばないでしょ? はい、お水」

「わ、わりぃ…」

 コハルからコップを受け取り、喉に流し込むサトシ。ぷはーっと息を吐くと、ようやく安堵の表情を示した。

「助かったー…」

「良かった」

 サトシの咳が収まったのを見て、安心したように微笑むコハル。

「全く、サトシはいつも慌てん坊だな〜」

 俺はサトシの不注意さにくっくと笑ったが、その時……目の端で奇妙なものを見た。

 マオが……思いもしない珍しいものを見たかのように、目を見開き口をつぐんで、二人を見つめていた。
 ▼ 42 ワパレス@ドラゴンのホネ 22/05/01 08:11:47 ID:jpEMqBBc [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「それで、何の話だっけ?」

「あっ……だから……」

 サトシに問われたマオは、ハッと我に返って途切れた箇所を思い出そうとする。

「オドリドリのフォルムチェンジの事。アローラシチューの材料探しの時、見たよね?」

「あっ……ああぁー!そうだった!!」

 サトシはようやく記憶がはっきりしたように大声を上げる。マオと二人で、当時の状況を確認し合う。

「アローラシチューに必要な、ヤマブキの蜜を探しに行ったんだよな!?」

「そうそう! それで、簡単には見つからないから、ヤマブキの蜜が好きなオドリドリを誘い出そうって決めて、アマカジに手伝って貰って……」

 二人だけの思い出を振り返るサトシとマオ。とても楽しそうに語らっていた。
 俺はその話からフォルムチェンジの条件になり得る要素を聞き逃さないよう注意深く聞きに徹していたが、ちらりと横目で見たコハルは、こころなしか不満そうな目でサトシを見つめていた。
 ……ほんと、顔に出やすいんだから……。

「……洞窟を抜けると、辺り一面がヤマブキの花でいーっぱいだったの! そこに追っていったオドリドリとは別のオドリドリがやってきて……」

「ヤマブキの蜜を吸った途端、めらめらスタイルから、ぱちぱちスタイルに変わったんだ!!」

「……とすると、条件ってその花の蜜?」

 コハルが冷静に分析する。一応ちゃんと聞いてたようだ。

「間違いないっしょ! ……けど、ぱちぱちスタイル以外のフォルムになる方法は?」

「そこまでは流石に見た事はないんだ〜…」

 マオは申し訳無さそうに告げた。しかしまあ、ヒントとしては大いに意義があった。

 花の蜜によってフォルムを変える。ならば他のフォルムも、花が関係してる可能性が高い。後はその花の種類を特定するだけだ。

 これは思った以上に、幸先のいいスタートだ。
 ▼ 43 デカバシ@やさいパック 22/05/01 08:16:28 ID:jpEMqBBc [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「よぉし! それじゃあお腹も膨れたし、探しに行こう!」

「おう!」

「あ、ちょっと待って!」

 意気込んで立ち上がった俺とサトシに、マオが慌てて制止を入れた。

「ヤマブキの花は、旬は過ぎかけてるとはいえ、まだあちこちに生えてるから見つけにくい事は無いとは思うけど……」

 言い淀んでから、マオはコハルに目を向ける。

「慣れてない人がアローラの野山に行ったら、やっぱり草木や泥で怪我したり汚れたりすると思うんだ。特に……コハルちゃんだっけ? せっかく綺麗なお洋服着てるのに、台無しになっちゃったら……」

 ああ、なるほど。マオはコハルの服を見て、探索には向かないと判断したんだ。
 それは出発前から俺も思っていた。一時とはいえここの大自然を体験したものとして、マオの意見には賛同せざるを得ない。コハルも自分の服を改めて見直し、うっと喉をつまらせるのだった。

「で、でもせっかく来たんだし、私も……」

「確かに今日のコハル、オシャレだもんなー。そんな服じゃ……」

 コハルが異を唱えようとするが早いか、サトシがマオに共感の言葉を出す。その瞬間……

 3人の目がぎょっとサトシに向けられた。

「えっ……なに……?」

 サトシが、いきなり3人に驚愕の眼差しを向けられて狼狽える。本人は何気なく言ったのだろうが、俺からしてみれば驚天動地の一言だった。

「さ、サトシ……今、オシャレって言ったか…? コハルを……」
 ▼ 44 カチュウ@ピントレンズ 22/05/01 08:18:36 ID:jpEMqBBc [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「えっ?」

「言った…! 言ったよね、コハルちゃんがオシャレって!」

「い、言ったけど……なんでそんなに驚くんだよ?」

「驚くに決まってるっしょ! サトシの口からそんな言葉が出るなんて!」

 まさかまさかの展開だ。サトシはコハルの服装について、何も思ってないだろうと思っていたのに、実は良いと思っていたというのか。

「コハルちゃん! 良かったね、おめかしして。サトシはこんな事滅多に言わないんだよ?」

 マオは満面の笑みでコハルを祝う。あの様子だと、もうコハルの気持ちに気付いてしまったようだ。
 当のコハルは恥ずかしさにしおらしくなって俯く。しかし、こらえようがない嬉しさが顔にはっきりと現れていた。

「コハル?」

「さ、サトシ……私の…服……」

 たどたどしく、言葉を紡いでいくコハル。

「ど、どうだった…かな…?」

 今頃になって感想を聞く。けど、ひょっとしたら最初から気になっていたのかもしれない。
 俺が冷やかしを入れてしまったばかりに、コハルは自分の今日のファッションについて、サトシに聞くのを躊躇ってしまったのだろう。ちょっと悪い事をしたな……。

「え、どうって……すごく似合ってんじゃん! 恥ずかしがる事ないぞ!」

 コハルの照れてる理由を完全に勘違いしたサトシが遠慮なしのベタ褒めをする。そしてコハルは……

「♭@#|×€[$₱≫;':£R%‰∆§~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!」

 一瞬で、湯気立つアマカジになった。
 ▼ 45 クシー@おおきなしんじゅ 22/05/01 11:03:47 ID:OKa.HHvY NGネーム登録 NGID登録 報告
甘酸っぺえなぁ…
 ▼ 46 スモウム@バックのかんづめ 22/05/01 16:53:47 ID:vbfc/F8E [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あらかわいい
支援
 ▼ 47 メノデス@カクトウZ 22/05/01 16:58:30 ID:PFqQF/lY NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
これは良いss
 ▼ 48 ップリュー@ひかえめミント 22/05/01 17:57:43 ID:LddomDIc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
当事者じゃなくて第三者を視点に物語が進んでいくssもいいね。
 ▼ 49 ガジュカイン@ヒールボール 22/05/01 20:12:48 ID:tUGwUb22 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 50 ンプク@カゲブンシメジ 22/05/01 20:18:35 ID:9vTMgZ8Q NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援するっきゃねえな
 ▼ 51 イアント@にんじんのタネ 22/05/02 11:59:55 ID:3n1c9AkM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 52 ブトプス@くろいビードロ 22/05/02 19:21:46 ID:5IRYB58s NGネーム登録 NGID登録 報告
今の所コハル→サトシは確定っぽいけどマオもサトシに気がありそうな描写もあるから一波乱ありそう。
 ▼ 53 ィアルガ@ていきけん 22/05/03 09:03:56 ID:QrHYD3so [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「私にいい考えがあるよ!」

 マオの提案により、俺たちは2チームに分かれる事になった。
 実際にフィールドワークに行くのは体力のある俺とサトシだけにし、コハルとマオは、マオの友達のスイレンと一緒に、町で聞き込みをするという寸法だ。

「え、手伝ってくれるの? お仕事があるんじゃ…?」

 コハルは意外そうに尋ねる。そんなコハルにマオは心配無用だと手を振って答えた。

「もう少ししたらお客さんもどっと増えて大賑わいになるから、サービスついでに聞いてみる事は出来るから!」

 なるほど。実際に出歩かなくても、マオは聞き込み相手に困りはしないという事だ。

「スイレンに頼んでコハルちゃんの案内係をやってもらうからさ、コハルちゃんは聞き込みついでにアローラの観光をしていってね!」

「え…なんか、申し訳ないな…」

「いいよ〜! 気にしなくて!」

 そんなに手厚くして貰って、迷惑になると気を揉むコハルに対して、マオは快活に答えた。
 コハルはここへ来るのは初めてだから知らなくても無理ないが、アローラの人々はみな、とにかく親身だ。友達の頼み事は断らず、困り事は放っておかない。そんな、人情に溢れた人々が暮らす場所なのだ。

 中でもマオはお節介好きで、何かと世話を焼いてくれると俺もサトシやカキから聞いている。

「いい案だな。役割分担した方が効率的だし…」

「コハルも、スイレンとナギサに会ういい機会になるしな!」
 ▼ 54 ーナイト@ぎんのナナのみ 22/05/03 09:06:33 ID:QrHYD3so [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 俺とサトシはすぐにその案に賛成した。サトシの一言にコハルはキョトンとする。

「ナギサ?」

「ああ、スイレンが連れてるイーブイだよ」

 サトシの返事を聞いたコハルが目の色を変える。

「その子もイーブイを連れてるの!? だったら私、会ってみたい!」

 コハルは元より、コハルのイーブイもウキウキで飛び跳ねる。イーブイが関わると途端に積極的になるのは、相変わらずだな。

「ふふ、それじゃあ決まりね!」

 かくして俺たちは話がまとまった。俺とサトシのフィールドワーク、コハルとスイレンのタウンワークだ。

 スイレンの家を目指して店を出ようとした俺たちに、マオは激励を送った。

「それじゃあ3人とも、頑張ってね! 特製のアイナ・コロッケ作って待ってるから!」

「おっほ! コロッケ!?」

 マオの発言にまたも歓喜するサトシ。まーだ食い意地が収まらないのか。やれやれ…。

「はいはい帰ったらなー」

 サトシを引っ張って店を後にする俺。苦笑しながらついてくるコハル。
 そのコハルに、マオがこっそり耳打ちするのを俺は見逃さなかった。
 

「早めに帰ってきてね。サトシの分はコハルちゃんに作らせてあげるから♪」

「えっ!? えっ!? えっと……はい! 行ってきます!」


 何を言われたのか、ドギマギした様子でコハルは駆け足で俺たちの後に続いた。
 ▼ 55 ニリュウ@アクアスーツ 22/05/03 09:10:12 ID:ekh6RCsU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 56 ラッタ@ズアのみ 22/05/03 09:11:47 ID:QrHYD3so [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 スイレンと再会し、事情を話した後。

 快く承諾したスイレンは、コハルと一緒に町へと出かける事にした。同じイーブイを連れてる者同士ゆえか、二人はすぐに打ち解けて、談笑しながら町への道を歩き出していった。

「これで一安心だな」

「ああ!」

「じゃ、俺たちも行こうぜ!」

 俺とサトシはコハルとスイレンを見送った後、ヤマブキの花が見つかるという野山へと赴いた。
 人の手に侵されない大自然に足を踏み入れた時、俺は我慢していたウズウズが一気に弾けた。

「よーし! ヤマブキの蜜も珍しいポケモンも、みんなゲットだぜ!!」

「燃えてるなぁ、ゴウ!!」

 サトシが俺のテンションにははっと笑う。そりゃあもう、俺としては本音はご飯よりもこっちが一番の楽しみだったからだ。
 それに、予めマオから話を聞いておいたおかげで、ヤマブキの花を見つける算段も既につけていた。まず一匹目は……

「見つけた! アマカジ! モンスターボール、GO!!」





 アマカジをゲットし、甘い香りで鳥ポケモン達を誘き寄せて。
 ほどなくして、俺たちは黄色い姿のオドリドリを見つけた。ぱちぱちスタイルだ。

「ゴウ! オドリドリは素早いぞ! 見失わないように気をつけろ!」

「だったらゲットするのが早いっしょ!」

 俺はこちらも当然ゲットするつもりでいたが、これが思いの外手を焼いた。

 サトシの言う通り、オドリドリは目を見張るほど俊敏だった。サトシがかつて、追いかけるだけでいっぱいいっぱいになったというだけの事はある。

 しかし、サトシと連携して上手く逃げ場の少ない場所に追い込む事で、どうにかゲットに成功したのだった。
 ▼ 57 ートロトム@がんせきプレート 22/05/03 09:14:44 ID:QrHYD3so [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 その後は順風満帆。オドリドリに案内して貰い、ヤマブキの花はあっさり見つかった。マオに借りたフラスコに蜜を入れて確保。これで一つ目は完了した。

「これでよしっと! じゃあサトシ、一旦戻ろう……」

 ぜ、と言い切る前に、俺の口が固まる。ヤマブキの花のそばで、しゃがんで何やらしてるサトシの背中を見たのだった。何をしているのだろう?

「あ、ちょっとこの花、持っていこうと思って…」

「サンプルならもう取ったぞ? 別にそんなに持っていかなくても……」

「いや、コハルに持っていこうと思ってな」

 サトシがにっと白い歯を見せて笑うと……俺は、頭を鉄板で打たれたような騒々しい衝撃を覚え、目を見開いて花を摘む相棒を凝視した。

 サトシがコハルに花を……!?!?!!!!

「な、なあサトシ……?」

「ん?」

「いや、その……」

 どうしようか……。さっきのオシャレ発言といい、これといい、サトシらしからぬ行動が続いてるような気がした。

 まさか……まさかとは思うが。サトシ……本当にコハルに気があるのか!?
 いや、そんなはず……しかし聞かずにはいられない……。

 コハルからサトシへの矢印も相当だが、逆となると比較にならないほどの一大事だ。
 ▼ 58 ローラコラッタ@リーフのいし 22/05/03 09:16:37 ID:QrHYD3so [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「さ、サトシ……今日は随分気にかけてるな、コハルの事……」

「えっ?」

「い、いやほら……オシャレって言ったり、花をあげようと思ったり……さ」

 自分でもなんだかたどたどしい言い方になっていると思う。俺とサトシの仲なんだから、すぱっと直球で「コハルの事好きなのか?」と聞けばいいのに……。そう心の中で訴える声があったが、なんだか返事が怖くてそんな風には聞けなかった。

「う〜ん…まあ、最近コハルには良くして貰ってるからな〜。今回も一緒に行きたいって言ってくれたし、お礼もかねてな」

 そう答えるサトシの顔には、下卑た思惑は一切見られなかった。
 そう…好きな女の子に構って貰いたいといった時のクラスの男子のような顔ではない。どこまでも純粋で仲間思いな、サトシらしい顔……。

 けど、なんだかサトシらしくないじゃん……。



「……や、やめておいた方が、いいんじゃないか……?」



「えっ……」

 サトシが思いもしない言葉に振り向く。俺は……俺自身の発言に頭が真っ白になりそうになった。

 何を言ってるんだ、俺は……?
 ▼ 59 ラブ@きんのいれば 22/05/03 09:18:45 ID:QrHYD3so [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「い、いやほら、コハルって都会っ子だし、こういう所の花って好かないかな〜と思ってな……」

 自分でも理解不能なまま、筋を通そうと取り繕う俺。

「サトシも、せっかくの贈り物を嫌な顔されたら、残念だろ?」

 そんな事がある訳ない。コハルは普通に女の子らしく花は好きだし、ましてサトシからの贈り物に嫌な顔なんてするはずがない。好きな人からプレゼントをされて、嬉しくないなんてあり得ないじゃないか。

 じゃあ、なんで俺は……?

「……そっか」

 サトシは手に集めた花を足元に落とし、空を見上げる。

「ゴウはコハルの事よく分かってるもんな。そうするよ」



 ズキン、と胸の中を刀で突かれるような痛みが走った。



 サトシに対して、嘘をついた。嘘をついて行為をやめさせようとしてしまった。

 それはサトシの純粋を、親友を、裏切る行為だった。

「今日のコハルに似合うかなと思ったんだけど……やめとくか」

 そう言って、サトシは少し残念そうな笑みを浮かべながら立ち上がった。

 俺はドクンと脈打つ鼓動に焦燥を覚え、咄嗟にサトシの手を掴んだ。

「ま、まあでも! サトシからプレゼントして貰う事自体は喜ぶと思うよ! だから、その…ちょっと町の方に寄って、何か買い物してから店に戻ろうぜ!」

「……ああ、そっか! それがいいな! そうしよう!」

 サトシの顔の影が払われる。いつもの眩しい笑顔が戻る。
 俺の憂いを吹き飛ばす、爽やかな風が駆け抜けた。

 さすがに、サトシを悲しませちゃいけないよな……。俺はそう思った。
 ▼ 60 ノムッチ@いいつりざお 22/05/03 09:52:10 ID:d3x6TnYE NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 61 ーリキー@グラウンドメモリ 22/05/03 11:13:10 ID:H/6s3DrY NGネーム登録 NGID登録 報告
複雑な関係で面白くなってきた
 ▼ 62 チム@こだいのきんか 22/05/03 12:24:57 ID:ATNsSZFA NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 63 ルンゲル@タマゴふかポン 22/05/04 00:58:18 ID:kWqcFkLQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゴウも関わってくるのか。あくまで傍観者として進めて欲しかったけどこれはこれで…
 ▼ 64 メックス@ふっかつそう 22/05/04 04:41:44 ID:9BkQ0s.I NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>63
個人的には気持ちわかるがサトコハなら支援
 ▼ 65 ャタピー@キズナのタヅナ 22/05/04 07:18:53 ID:KN36gRIU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しえん
 ▼ 66 ノクラゲ@おおきなねっこ 22/05/04 18:37:17 ID:DvqosVyo NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 67 ャラランガ@あなぬけのヒモ 22/05/05 11:41:45 ID:c3TUNyYc [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 町へ寄った俺たちは、商店街を通って色々な品物を見て回った。

 綺麗な色合いの石や貝殻で出来たネックレス、ポケモンを象ったちょっと風変わりな置物など、観光所というだけあって様々な珍しい土産物が並んでいた。
 サトシはどれがいいのかな〜と頭をかきながら、視線をあちらこちらに飛ばす。俺はただひたすら、サトシが何に注意を取られるか、心配でそわそわしていた。

「おーい、サトシ君。マラサダ買ってかねぇか。今日のはしこたまでっけーぞぉ!」

「お、マラサダ!?」

「サトシ。食い物はやめとけ」

 案の定これである。サトシからのプレゼントに嫌な顔はしないだろうと言っても、これからマオのレストランで食べるという時に食べ物を貰ってもさすがにコハルも困るというものだろう。

「はは、ごめんごめん。ゴウはどう思う?」

「……ん? あっ…そうだな…」

 促されて、思案する。食べ物は取らないならアクセサリーなんかは…と思うも、それもまた慎重に選ばなくてはならない。

 サトシは、コハルの気持ちなら俺の方がよく理解していると思っている。さっきのやり取りでそれは十分に分かった。だから、俺の選ぶものなら一切の疑いもなく決めるだろう。

 サトシがどう思われるか。その結果は、俺の手の中にある、という事だ…。

 ……本当に、何がいいだろうか……。

 さっきはサトシがコハルに花を贈ろうとしてる事にパニックになって冷静さを失ったが、よくよく考えるとあのサトシの事だ。男子が女子に花を贈る意味を理解してなかった可能性は十分にある。誤解されかねない事を未然に防いだという意味では、さっきの行動はあながち間違いでもないんだ、と今は思っていた。

 あくまで感謝を伝える。その主旨ならば、やめさせる道理は無い。今は落ち着いて、サトシの為に真面目に協力する事に抵抗は無かった。

 それはそうと、贈り物をするなら高すぎず安すぎず、重荷にならない記念品的なものぐらいが丁度いいだろう。いきなり高価なものは畏れ多くて受け取れないだろうし、感謝を伝えるにしては大袈裟すぎる。かといって安っぽすぎると、コハルの中のサトシへの好感度に悪影響を与えかねない。

「ゴウ?」

 俺がう〜ん……と唸りながら熟考しているので、サトシが不安そうに声をかけてきた。

「あはは…いや〜、いざとなるとなかなか思いつかないな〜」

 俺は笑って誤魔化す。サトシがあまり深く考えないタイプなのは玉に瑕だと思うが、俺の深く悩みすぎる癖も考えものだ。
 そろそろ日も傾きかけている。コハルはスイレンと一緒にとっくに店に戻って、俺たちが帰るのを待っているだろう。あまり時間はかけていられない。

 その時、目の端に鮮やかな色彩が映った。少しこじんまりしてるが、手製のグッズを取り扱ってる小物店だった。

「……サトシ、あそこにしようぜ」

 そろそろ決めないと…と思っていた俺は、直感でその店を選ぶ事にした。

 ▼ 68 ラス@デボンスコープ 22/05/05 11:43:59 ID:c3TUNyYc [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「急ごうぜ、サトシ。もう夕暮れになっちまった」

「ああ。コハル達、待ってるだろうな〜」

 買い物を済ませた俺たちは、マオのレストランへの道を急いでいた。思ったよりも時間をかけてしまったな…。

 サトシの手には、先程の店で選んだ贈り物が綺麗に包装されて抱えられている。

 ……買う店を選んだのは俺だったが、最終的に買うものを決めたのはサトシ自身だ。俺の考える"丁度いい"に当てはまる代物ではあるものの、それを受け取ったコハルがどんな反応をするか。どう思うか……密かに俺は不安を募らせていた。

「二人ともおっそーい!」

 ようやくたどり着くと、コハルが店の前でイーブイを抱えて待っていた。よく見るとエプロンをしている。料理の手伝いでもしていたのだろうか。

「悪い悪い。ちょっと、寄り道しちゃってさ〜」

 サトシが申し訳無さそうに弱った笑みで謝る。俺も続いて謝罪。コハルはわざとらしくふくれっ面をしてから、ぷっと吹き出して笑った。

「怒ってないよ。もうサトシ達が遅れるのも慣れっこになってきたし」

 ……あ、それは多分コハルのコンテストの日の事を言ってるなと悟った。そう言えば、待ってるコハルに二人して追いつくというのはなんだかシチュエーションが似てる。
 運命のいたずらのようなものを覚えて、俺はとほほといった気持ちになる。

「……ところで、それは?」

 コハルがサトシの手荷物に目を向ける。サトシが答えようとした時……

「ほーら! そんな所で立ち止まらない! せっかくのコロッケが冷めちゃうよ? 入って入って!」

 マオが入り口の向こうから俺達に入るように促す。サトシの気があっさり流された。

「そうだった! コロッケ! もう腹ペコだよ〜!」

 空腹を示すようにお腹をさするサトシ。用意したものをコハルに渡すタイミングは完全に逸してしまったな…。

「う、うん…沢山あるから、お腹いっぱい食べてね…」

 一方のコハルも、何故か急に緊張したような小さい声になって、サトシの手荷物への関心はあっさり消え去った。妙にもじもじしながら店内に入っていく様子に、俺は不審感を覚えた。

 ……エプロン姿な事といい、何かあるのか……?


 ▼ 69 レセリア@ノメルのみ 22/05/05 11:46:21 ID:c3TUNyYc [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「いっただっきま〜す!!」

 芳ばしい香りが立ち上るコロッケに、サトシはこの時を一日千秋で待ちわびたと言わんばかりに食らいついた。
 一番の好物だけあって、サトシの食べっぷりはすさまじい。しかし俺は元より、マオもスイレンも慣れてるのか、いつもの事のように気にせず自分の皿にスプーンを伸ばしていた。

 コハルだけが、妙にサトシを真剣な眼差しで見つめていた。まるで自分のテストの採点が今まさに行われるかのように、固唾をのんで見守っている。

 そして……

「うんめー!! やっぱこの味、最高だよ! マオ!」

 サトシは大満足の感想を声高に出した。その瞬間、コハルの表情が花開くように明るくなった。

 このコロッケ……もしかして……。

「んふふ、サトシ〜。このコロッケを作ったの、私じゃないよ?」

 マオが、しめしめと笑いながら打ち明けた。サトシは虚を突かれたように目を丸くする。

「え? じゃあ、マオのお父さんが?」

「ぶっぶー。私とお父さんは、作り方を教えただけ。作った人は〜……」

 マオがトコトコとコハルの後ろに移動する…。

「ここにいま〜す♪」

 そしてマオは、照れて目線を下に向けるコハルの両肩に手を置くのだった。やはり。
 ▼ 70 バニア@ミミッキュZ 22/05/05 11:51:54 ID:c3TUNyYc [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「…………え、コハル!?」

 思いもしなかった人物にサトシはすっ転びそうな勢いで驚いた。サトシほどではないが、俺も内心かなり驚いた。食べたコロッケの味は、アイナ食堂独特の味をかなり正確に再現していたからだ。

「だって、この味……本当に?」

 サトシもやはり同じ考えのようだ。いくら作り方を教わったからといって、そう簡単に同じ味を再現なんて出来たら、誰だって料理のプロになれるというものだ。

 しかし、マオの態度に嘘をついてる空気は無い。何より当のコハルの反応を見れば、疑いが無いのは明らかだった。

「マ、マオに、作ってみたら?って提案されて…け、結構時間あったから…いっぱい、練習できたおかげ…かな…?」

 コハルは寄せた腕をそわそわさせながら上手く出来た理由を述べようとする。しかし、肝心なことを言ってないとばかりにマオとスイレンが続けた。

「コハルちゃんはね、サトシに絶対喜んで貰うって、すごく真剣だったんだよ!」

「コハルの熱意、すごかった。美味しくなれって気持ち、いっぱい込めたと思う」

「ふ、二人とも! それは……!!」

 自分の影の努力を赤裸々にされて、コハルは顔の赤みを深めて慌てふためいた。俺はその様子に思わず吹き出してしまう。今日捕まえたアマカジに、コハルというニックネームでもつけたい気分になった。

「そうなのか……? コハル……俺の為に……?」

 話を聞いたサトシは、さっきとは打って変わり、静かな驚きを見せる。スプーンを置くと、改まったようにコハルに向き合った。



「ありがとうコハル! すごく美味しいよ!」


「§,✓$♭゜}¢^=×@||×€\™₱≫;':£R%\¶~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!」

 本日二度目の、アマカジコハルだった。
 ▼ 71 ロモリ@ミミロップナイト 22/05/05 12:16:28 ID:m.SE7hyc NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
最近サトシ関連の良いssが増えて嬉しい
 ▼ 72 リボーグ@むしよけスプレー 22/05/05 13:16:00 ID:RXiUvRWE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
かわいいのう
 ▼ 73 ガフシギバナ@ポロックケース 22/05/05 14:01:03 ID:eW1oURQw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
良い
 ▼ 75 ドグラー@ぎんのはっぱ 22/05/06 18:13:36 ID:5PI6KMBw NGネーム登録 NGID登録 報告
はい、支援
 ▼ 76 ガルカリオ@まんぷくおこう 22/05/06 19:13:26 ID:S3mso/Yc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
良いぞ良いぞ
ゼンリョク支援
 ▼ 77 ーランス@あくのジュエル 22/05/07 11:18:38 ID:4H9QPFcU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 78 リーザー@セシナのみ 22/05/08 09:05:32 ID:NAOEeg1g NGネーム登録 NGID登録 報告
先が気になる
 ▼ 79 ラチーノ@チーゴのみ 22/05/08 21:30:10 ID:m25ocBvU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しえん
 ▼ 80 レシー@のんきのおこう 22/05/08 23:55:15 ID:yxL60LbA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ▼ 81 ンプジン@しつもんメール 22/05/09 08:37:57 ID:h6FIR2cU [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 みんなで食べて、大笑いして。
 すっかりお腹も心も満たした頃に……。

「……それじゃあ、そろそろ成果報告を始めるか」

 俺は頃合いだと思い、本旨の話を切り出した。オドリドリのフォルムチェンジの条件の調査に関する事だ。

「俺たちはオドリドリをゲットして、無事にヤマブキの蜜を見つけて採集できた。残り3種類のオドリドリについて、コハル達は何か分かった?」

「あ、うん。えっとね……」

 コハルは脇に置いたバッグを持ち上げ、中を漁る。2つばかりの大きな画用紙を取り出した。

「お絵描きしてる女の人と出会ってね。その人にオドリドリの事聞いたの。そしたら、オドリドリを描いた事あるって言うから、その絵を見せて貰ったら……」

 コハルは机の上にそれらを置く。そこには、花園の中で優雅に舞う鳥ポケモンの姿が描かれていた。

「おお! これは……!!」

「めらめらフォルムと……見たことないフォルムだ!」

 俺とサトシは目を輝かせて2つの絵に魅入った。姿は全く違うが、一目でオドリドリだと分かる風貌。そして傍にある花は……

「これはクレナイの花。こっちは、ウスモモの花。どっちもアローラだけにある花だよ」

 スイレンが指さしながら解説してくれる。更にマオが続いた。

「私もお客さんに色々聞いたら、ウラウラ島から来たお客さんは赤いオドリドリをよく見かけて、アーカラ島から来たお客さんはこっちのピンクのオドリドリをよく見かけるって!」

「まとめると、赤いオドリドリに変わる為の花はウラウラ島に、ピンクのオドリドリに変わる為の花はアーカラ島って所にある可能性が高いって事だよ!」

 最後にコハルが要訳した。俺はよっしゃ!と心の中でガッツポーズをした。
 たった一日で、課題の4分の3ほどが進んだ。別々行動を取ったのは大正解だった。
 ▼ 82 クジキング@でんきだま 22/05/09 08:39:49 ID:h6FIR2cU [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「やるじゃん、コハル! マオもスイレンも、ありがとな!」

「どういたしまして」

「友達の為だもん! お安い御用!」

 スイレンとマオは笑顔で応じる。恩着せがましい事など何も言わない辺りが、アローラの人らしさが出てる。
 それに比べて……

「ゴウもちょっとは私を見直したでしょ?」

 どうだと言わんばかりに、得意げな顔をするコハル。期待されてないと思っていたのだろうか。見返してやったというようなドヤ顔に、別に全くアテにしてなかった訳でもないと言いたくなった。
 まあ、長年の付き合いだ。こういう他愛無いマウント取りが出来るのも俺とコハルの仲だ。

「コハルはマオとスイレンに手伝って貰ってようやくだろ〜?」

「それを言ったらゴウだってサトシに手伝って貰ってるでしょ?」

「俺は自分でアマカジとオドリドリを捕まえて、サトシがいなくても自力で見つけてたしー」

「サトシー? ゴウのポケモンゲット手伝わなかった?」

「あー……ま、まあな……」

「ほらーっ!」

「うっ……」

 やられた。確かにオドリドリのゲットはサトシの協力なしには骨が折れたに違いない。
 俺が苦笑いで目を泳がせた事で一同はまた爆笑するのだった。
 ▼ 83 ワパレス@げんきのかたまり 22/05/09 08:41:38 ID:h6FIR2cU [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「…そ、それはそうと、なんでコハル、この絵持ってきてるんだよ。描いた人のものなんだろ?」

 話題逸らしに俺は絵の所有について問いかける。コハルは涼しい顔で答えた。

「この絵、くれるって言ってくれたの。これが大切な人の為に役立てられるなら、って」

「大切な人?」

 コハルの発言にサトシがキョトンとする。しまった、とコハルは蒼白になる。

「あ、えと…それは…あの…」

 サトシを見ながら、あたふたと手を動かすコハル。すると今度はスイレンが疑問を口にする。

「あれ、コハル。もしかしてサトシにまだ、こくは───」

「ダメーッ!!!!」

 死に物狂いでスイレンの口を塞ぐコハル。飛び込む勢いで手を当てられて、スイレンはうっかり椅子ごとのけぞってしまった。

「あわわ! ご、ごめんスイレン!」

 やってしまったとコハルは慌ててスイレンを起こそうとしたが、スイレンは驚異的な反射神経でブリッジ体制で手を床につき転倒を回避していた。

「……ビックリした」

 事もなげに呟くスイレン。サトシが前に言っていた「オレより凄いぜ」という言葉は誇張ではなさそうだと思った。

「もう、コハルちゃんはそそっかしいね」

「ご、ごめんなさい…」

 マオがコハルに注意する。しかしその顔に非難の色はなく、むしろ更に楽しい事を求めるかのような含み笑いを湛えていた。

「それで〜? 大切な人って、誰かな〜?」
 ▼ 84 ニョニョ@がんせきプレート 22/05/09 08:44:37 ID:h6FIR2cU [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「誰? 大切な人」

マオと共に、元通りに起き上がったスイレンがコハルに問い詰める。二人の分かりきってる事を敢えて聞いてるという態度に、俺はスイレンもお察しか…と息を吐いた。

「そ、それは今は関係ないでしょ!」

「え〜? むしろ今が絶好のチャンスじゃない?」

「コハルのコロッケ、美味しかった。そうだよね、サトシ?」

「え? そりゃあ美味しかったけど……」

 受け答えはするも、何故急にそんな確認を取られるのか理解できない様子のサトシ。その間にもコハルは緊張を高め、また顔を赤らめていく。そんなコハルにお構いなしに、マオとスイレンはここで成就しろと迫るかのようにコハルを追い込む。あのスイレンの仏頂面が見た事ないほど興奮に色めき立っていた。

「コハルちゃんの大切な人、聞きたいな〜」

「ファイトだよ、コハル!」

「う…うぅ〜〜……」

 俺は頭をかきたい気分だった。やれやれ…アローラの人の親身さは、必ずしもいい事ばかりではないという訳か。
 ひとまず、ここは俺が動く事にした。

「ストーップ! 二人とも、その辺にしといてやってくれよ」

 突然制止の声をかけられて、マオとスイレンが目をぱちくりさせて俺に振り向く。俺はごほんと一つ咳をした。

「この場でそのムードにされても困るっていうか……まだ明日の調査があるんだ。その予定も今決めておきたいんだけど……」

「……そそそ、そーだよ! まだ調査報告の途中だったんだから!」

 俺の抗議に、渡りに船だと飛びつくコハル。マオとスイレンは、しょうがないかと素直に引き下がった。

 …真面目な話に戻したかった訳じゃない。ただ、まだ"告白"なんてステップには持っていって欲しくなかったのが本音だ。
 まだ1日目が終わったばかり。コハルはサトシと殆ど一緒に過ごしていない。これくらいでコハルのサトシへの見方が変わったとは思えなかった。

 告白…それはサトシの地位ではなく、内面を好きになってから。俺の希望はそれだけだ…。










「なあ、ゴウ」

「ん? なんだ、サトシ?」

「明日の予定の前に、いいかな? このまま、流されて忘れちゃいそうだし…」

 やっと静まったかと思った矢先に、サトシの急な申し出。何の事かと尋ねる間もなく、サトシは……

 側に置いておいた小包を手に取った。
 ▼ 85 ルガー@キングリーフ 22/05/09 17:48:54 ID:.2VkeVas NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 86 スモッグ@ねがいぼし 22/05/09 18:32:00 ID:sP2kjE3I NGネーム登録 NGID登録 報告
流れ的にゴウ→コハル→サトシ→ゴウに向かってるような…
 ▼ 87 タマロ@どくけしのみ 22/05/10 13:38:31 ID:jHkYCbUo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 88 ードリオ@ガンバリのいし 22/05/11 13:17:22 ID:90U.DqUk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しえん
 ▼ 89 サイハナ@ようきミント 22/05/12 18:35:16 ID:POLscGMI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 90 オチルドン@ひそやかスプレー 22/05/12 18:45:08 ID:4nt.6IKA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しえん
 ▼ 91 ガニウム@ぎんのズリのみ 22/05/12 21:21:49 ID:4SlIuLY6 [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


「コハル」

「ん?」

 サトシの呼びかけに、コハルが応える。窮地から脱して、コハルは今は安心した顔つきになっている。そんなコハルに、サトシはにかっと笑ってみせた。

「今日さ、俺、コハルの服がオシャレって言ったろ?」

「えっ? あ、うん、そうだったね…」

 コハルの顔が少し照れた笑顔になる。恥ずかしいけど、何度言われても嬉しい言葉といった様子だ。

「それでさ、俺、今日のコハルに似合うかなと思って、花を摘もうと思ったんだけど……コハルが気に入るかどうか分からなくて……」


 さ、サトシ……、待ってくれ……。


 焦った。サトシが、今ここでこの行動に出るとは思わなかった。

 空気が読めてるのか、読めてないのか……。
 よりによって、あんなムードがあった次の瞬間だとは……

「さ、サトシ……」

 絞り出そうとした声は、しかし声にならず喉奥へと押し戻される。
 サトシとコハルを取り巻いた空気に、マオとスイレンが静かに見守る空間に、割って入る事が出来なかった…。

「ゴウと一緒に、コハルに気に入って貰えそうなものを町で探してきたんだ。今回一緒に来てくれたお礼と、いつも世話になってるありがとうの気持ちを一緒に伝えたくて……」

 サトシは、綺麗に包装されたそれを、コハルに差し出した。

「これ、受け取ってくれ」

 サトシの純粋無垢な笑顔に、コハルは……

 奇跡を目の当たりにしたような、呆然とした表情でそれを受け取った。
 ▼ 92 ャヒート@おかえしメール 22/05/12 21:23:00 ID:4SlIuLY6 [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「わぁ、すごい! サトシからプレゼントだよ、コハルちゃん! 良かったね!」

「すごい。お互い用意してた。相手への贈り物」

 コハルの横で、マオとスイレンが感動的だという風にはしゃぐ。一応サトシの話は“俺と一緒に買ったもの”という事実を伏せずに打ち明けているが、まあ当然ながら女子達の受け止め方は“コハルの想い人であるサトシからの贈り物”となっていた。
 二人とは打って変わって、コハルは静かだった。思いもしない展開にどうリアクションしたらいいのか分からない、そんな感じだ。

「ねえねえ、開けてみてよ、コハルちゃん!」

「私も見たい。サトシからのプレゼント」

「え…その…」

 二人の催促に逡巡しながら、コハルはサトシに尋ねた。

「開けても……いいかな……?」

 本当は聞くまでもなく今すぐ開けたいという欲求でいっぱいだろうに、あえて許しを請うコハル。少しだけ呼吸が荒く、興奮と期待で胸がドキドキしてるのだろう事が伝わってくる。
 そんなコハルへのサトシの返事は、分かりきっていた。

「勿論だよ。コハルの為に持ってきたんだからな」

 な、ゴウ? とサトシは俺に振り返った。いやなんで俺に振るんだサトシ……。
 コハル達3人の視線も俺に一点集中する。この流れで駄目だなんてどう考えても言えなかった。コハルは元より、マオとスイレンにまで“空気読め”と白い目で見られるに違いない。

「……ま、まあ、コハルがど〜してもすぐ開けたいようだし? 別にいいっしょ?」

 もしかしたらこれが状況を止める最後のチャンスだったかもしれないと思いつつ、俺はリスクの重さに折れる事にした。

「やったぁ! じゃあ、早く開けよ? コハルちゃん!」

「ワクワク…」

「う、うん……」

 さも自分達も当事者かのように、コハルと一緒に喜びと期待感を剥き出しにするマオとスイレン。こういう時の女子の一体感はすごいな、と思った。

 コハルはゆっくりと、丁寧に包みを解き始めた。
 ▼ 93 チニン@ラムのみ 22/05/12 21:24:20 ID:4SlIuLY6 [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 俺はサトシがコハルに花を贈るのを止めた。

 それはサトシがその意味を理解していないのを、無意識に悟ったから……なんだと思う。

 けど……商店街でサトシが選んだ品は……もしかしたら……。

 場合によっては、結果は変わらない……そう思った。



「わぁ……!」

 包装を取り払い、小さな箱を開けたコハルの目に飛び込んだのは……ブレスレットだった。

 アローラのポケモン“キュワワー”を象った、色とりどりの花が連なったブレスレットだった。

 花ではないが、ある意味では花と変わらない……そんな代物だった。

「あー! これ! 私知ってるー!」

「私も。気になってた」

 マオが黄色い声を上げ、スイレンが身を乗り出す。地元民だけあって、商店街の売り物もチェック済みなようだ。
 コハルは恐る恐るそれを手に取り、目に近づけて眺めた。

「可愛い…」

 コハルがまた顔を真っ赤にする……かと思ったが、そうはならなかった。
 コハルは恍惚とした表情でキュワワーのブレスレットを見つめていた。サトシからの初めてのプレゼントという記念品を、思い出に刻むかのように……。

「コハル……つけてみなよ」

 サトシが言う。マオとスイレンもうんうんと頷く。

「今のコハルちゃんに絶対似合うよ!」

「え……うん……」

 促されて、コハルはブレスレットの包みを取り、左手に通した。
 ブレスレットは驚くほどピッタリと収まり、コハルの華奢な手首の上で喜ぶように4色の花を揺らした。

 コハルはその手首を、大事に、大事に胸に当て、サトシの温もりを感じるかのように目を瞑って微笑んだ。


 それはコハルの、照れた表情でも、恥ずかしい表情でもなかった……。


 幸せの表情だった……。
 ▼ 94 ンタロス@ルカリオナイト 22/05/12 21:26:36 ID:4SlIuLY6 [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「コハル。それ、ただのブレスレットじゃないよ」

 ひとしきりコハルが幸福を噛み締めた後で、スイレンが告げた。
 コハル、そしてサトシと俺が「えっ?」と驚く。呆然とする俺たちをよそに、スイレンはコハルの手を取った。

「キュワワーの、顔のこの部分を押すとね……」

 スイレンはブレスレットをコハルの顔に近づけながら、実際にキュワワーの顔の謎の出っ張りを押し込んだ。すると……

 かすかにシュッという音が弾けた。

「わっ……いい匂い」

 コハルが目を煌めかせる。どうやら香水が出るからくりが隠されていたらしい。コハル以上に、俺とサトシが仰天した。

「え!? そんな機能あったの!?」

「……知ってて買ったんじゃないの?」

「いや、その……急いでたからさ……」

 サトシは店でのやり取りを説明した。時間がなくて、店に飛び込んでミネズミよろしくキョロキョロと品物を素早く物色した挙句、買う物を決めたら店主を急かせて包装して貰った経緯。おかげで丁寧に商品説明をして貰ういとまが無かったのだ。

「えぇ〜!? 一番大事なところを知らないで買っちゃったの? もう、サトシは〜……」

 マオがやれやれと首をふる。せっかくいいものを選んだのに、マオかスイレンがいなかったらきちんと魅力を伝えきれずに終わっていたかもしれない。それを呆れていると言いたげだった。

「……クスッ。サトシらしいね」

 しかし、コハルはそんな事は全然気にしないという風に笑った。そして手をかざしてブレスレットを見つめると、改めてサトシに尋ねた。

「本当に……いいのかな……こんな物貰っちゃって……」

「いいって! これからもよろしくな、コハル!」

 サトシは太陽のように眩しい笑顔を見せた。その陽光に花開くように、コハルもまた笑顔で頷いた。





 見ているこっちが恥ずかしくなるくらいの、甘美なムードに……

「コハル。サトシはあくまで感謝の印として渡してるんだぞ? 早とちりするなよ?」

 とうとう俺の言いたかった事がつい口をついて出てしまった。
 ▼ 95 ーロット@ポテトパック 22/05/12 21:30:31 ID:4SlIuLY6 [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「え……あっ……そ、そうだよね! 感謝、なんだよね! うん……」

 俺の一言に、コハルは図星だったというように急にしおらしくなる。照れて、顔が赤くなる。
 案の定、マオとスイレンが異を唱えた。

「えぇー? ゴウ、何急に水差す事言ってるのー?」

「台無し。二人のムード……」

 険しい目で俺を睨む二人。俺だってこうなるのは分かってたから、精一杯我慢していたんだけど……。

 それでもやはり、サトシの本意が曲がって伝わるのは嫌だった。

「別に変な意味は含んでないもんなー? サトシ?」

 俺は相棒の背に手を当てて確認を取る。サトシはきょとんとして答える。

「え? 変な意味……? そりゃ勿論、無いけど……」

 その答えに、どうだという風に俺はにやけ顔をマオとスイレンに向ける。二人は口をへの字にした。

「なにそれ? 誘導尋問じゃないの?」

「サトシ、分かってない。変の意味」

「えっ……そうなの?」

 俺とマオ達の間でなんだかピリピリし始めた空気に、サトシが落ち着きを失う。そりゃ、サトシには何が起こってるか理解できないよな……。

 そして、このままにさせてなるものかと、スイレンがずいっと真剣な顔で乗り出し……

「実際どうなの? サトシ。コハルの事」

「え? どうって……」

「だから、す───」

「待ってぇええええええええ!!!」

 決定的一言を言いかけたスイレンを、コハルが決死の形相で引っ張り戻した。物凄い勢いにバランスを崩したスイレンは……

 今度は完全に倒れて(倒されて)しまうのだった。
 ▼ 96 ラエッテ@くろいたてがみ 22/05/12 22:19:06 ID:p7jAtzfo NGネーム登録 NGID登録 報告
スイレンやマオの気持ちが分かる。見てるこちらがもどかしくなってくる。
でもそれだけ感情が揺さぶられるこのssは素晴らしい。
 ▼ 97 ックル@きんのいれば 22/05/12 23:31:37 ID:W1hUVb3k NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
心情の動きがうまいなあ
支援
 ▼ 98 バニー@スピーダー 22/05/12 23:48:30 ID:cuQgUii2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 99 テルグマ@ちりょくのハネ 22/05/13 20:53:00 ID:ObqYHa5s NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 100 レキブル@こだわりハチマキ 22/05/14 20:11:15 ID:fES29nWg NGネーム登録 NGID登録 報告
次の更新が待ち遠しい
 ▼ 101 ースバーン@ギャラドスナイト 22/05/14 22:09:35 ID:sH9YGeP2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
2集連続コハル出るし、マスターズエイト回の応援とコハカス回、コハハル回もありそうだから
アニメも期待
 ▼ 102 ルレイド@ボイスチェッカー 22/05/16 21:10:16 ID:Of2g2yVU [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
来てくれ
 ▼ 103 ネズミ@くろのきせき 22/05/16 21:17:06 ID:GixkuiYk [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 104 マヨール@たんけんセット 22/05/16 21:24:25 ID:VMg.n8PY [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 風が冷える頃合いに、俺たちは報告会を終えた。
 コハルの再三の懇願により、マオとスイレンは根負けして“サトシの返事”を保留にする事を承諾。そしてようやくスムーズに明日の予定を立てる事が出来たのだ。
 
 明日は朝早くにアーカラ島へ。そしてウスモモの花を採集出来たら、当日中にウラウラ島へ移動。そこでサトシの友人の宅に泊めてもらおうという三段となった。

「いいの? そんな急に…?」

 コハルが当然の疑問を漏らしたが、サトシは心配無用の顔だった。いわく、アセロラというその人物は、例に漏れず気さくで面倒見が良く、サトシが島巡りでウラウラ島に寄った時ももてなしてくれたという。
 ……ほんと、アローラの人って頼りになりすぎだよな〜、としみじみ思った。足を向けて寝られないとはこの事だろう。

「後は、コハルがどうするかだけど……」

 島を移る以上、マオやスイレンについてきて貰うという訳には行かなくなってくる。二人とも私生活がある。
 マオは元より、スイレンも明日は都合がつかないという。そして俺とサトシがフィールドワークに行く関係で、当日のコハルはイーブイとだけ、一人にならざるを得なくなってしまう。観光でもしてて貰うか…?

「嫌だよ…どうせならやっぱり、サトシ達といたいよ」

「サトシ“たち”〜?」

「サ・ト・シ…だよね」

「もう、二人とも! 怒るよ?」

 さすがに冷やかされ過ぎてコハルも堪忍袋の尾が切れかかっていた。

「でも、その服じゃな〜…」

「うぅ…」
 ▼ 105 ガライボルト@メンバーズカード 22/05/16 21:25:10 ID:VMg.n8PY [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 俺のツッコミにコハルが萎れる。お守りに縋るように手首のブレスレットをいじり出す様は、何とも忍びないものだった。

「やっぱり、こんな服で来るんじゃなかったかなぁ…」

 しゅんとするコハルに、元気出せよと励ますサトシの言葉も弱々しい。仕方ないものは仕方ないのだ。
 しんと沈みかかる空気。そこに一石を投じたのは、スイレンだった。

「ねえ。服が問題なら、着替えればいいんじゃないの。別のに」

「着替えるったって、野外向けの服なんて持ち合わせてないんだろ?」

「う、うん…持って来てたら、すぐ着替えてたし……」

「ああ! それなら!」

マオが突然黄色い声を上げてコハルの手を取った。

「買いに行こうよ! コハルちゃんの新しい服!」

「ええ!?」

「あ、そっか! その手があったな!」

 それは妙案だというようにサトシが合意する。スイレンもすかさず頷いた。

「買いに行こ、コハル。そしたら明日、一緒に行ける。サトシと」

 ……そこで倒置法なのは癖なのか意図してなのか、スイレン……?

「……っていうと、今から!?」

「そうだよ? サトシ、こんな時サトシなら、何て言う?」

「そりゃあ勿論、善は急げだ!」

 急展開に困惑するコハルに、マオもサトシもノリノリで促した。まあ確かに、明朝早くに出発する以上、のんびりショッピングなんてする時間は無かった。
 3人もその気になってるなら、もう多数決だ。俺が下手な事を言う意味は無い。

「……みんなそう言ってるなら、行くっきゃないっしょ、コハル?」

「え、ええ〜〜〜〜………?」

 こうして、マオを除く4人はすぐに町のブティックへ赴き。
 明日のフィールドワークは、コハルを含めた3人で行う事になった。
 ▼ 106 ミツルギ@ゆきだま 22/05/16 21:26:35 ID:VMg.n8PY [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「ん〜! 風が気持ちいい〜!」

「ああ〜! この感じ、島巡りしてた頃を思い出すなぁ!」

 朝日が照らす海上を進む船の上で、サトシとコハルは身を打つ潮風を堪能していた。アローラへは飛行機で来たが、島間の移動は船を使うのが習慣だ。

「あ、見ろよコハル! ヨワシの群れだ!」

「え、群れ? どこ?」

「あの大きな黒い影だよ!」

「え、群れなの!? 一つの大きなポケモンじゃなくて!?」

 サトシもコハルも、旅の景色に大はしゃぎだった。サトシはポケモンを見つけるやすぐにコハルに教え、コハルは殆どが初見のポケモン達に歓声を上げていた。イーブイも楽しさに弾けるかのようだ。

 そのコハルの服は、スカートをやめて長ズボンに半袖の白シャツという機能的な装いとなっていた。昨日閉店間近のブティックに押しかけ、時間ギリギリまで使って皆で選んだ一式だ。

 すっかりオシャレの気はなりを潜めたとはいえ、コハルの普段の衣装選びはむしろこちらの方が近いから似合ってないなんて事は全然なかった。それに、サトシから貰ったキュワワーのブレスレットだけは譲れないとばかりにしっかり身につけて来ている。

「はしゃぎすぎて大事なもん失くすなよー?」

「な、失くさないよ! 勿論!」

 注意する俺に、浮かれてる気持ちを引き締めるように手首を押さえるコハル。その反応が面白くて、俺はくっくと笑った。
 ▼ 107 マケロ@おおきなキノコ 22/05/16 21:27:38 ID:VMg.n8PY [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 いいもの貰ったな、コハル……。

 心の中で、自分でも意外なくらい素直に俺はコハルを祝った。昨日の事は、なんだかもう気にならなくなっていた。

 喉元過ぎれば熱さ忘れるとでも言うか。サトシがコハルに花をあげようとした事への動揺も、サトシからのプレゼントにコハルがどう思うかへの不安も、マオやスイレンがコハルとのカップル成立を無性に後押ししていた事への反抗も。
 一晩経って、綺麗サッパリなくなっていた。むしろ、肯定的に捉えてる自分がいた。

 どうせ好きになるなら、サトシの内面を。その想いでコハルを俺達に同行させたのは自分自身だ。それを踏まえればこの出来事はむしろプラスだろう。サトシの何気ない気配りと優しさ。それをコハルに示すきっかけになったんだ。
 そう考えたら、神経質になってる自分がなんだか馬鹿らしくなった。

 それに、何より……

「あぁ〜! もう一度ライチさんやクチナシさんとバトルしたいなぁ〜! そうだ! それにハラさんやハプウとも!」

 当のサトシは相変わらずのバトル脳ぶりで、いつも通りの様子を見せていた。昨日あれだけコハルといいムードになっていたのは気にも留めていないという風に、コハルへの接し方に変化が見られなかった。

 ……やっぱ、サトシはサトシだよな。

 この分では、コハルはまだまだ努力しなければ、サトシの心を射止める事は無理だろう。当初の想像通り。

 サトシが変わらない事が、俺に安心感をもたらしていた。
 ▼ 108 スイゾロアーク@アクアカセット 22/05/16 21:39:11 ID:Of2g2yVU [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
来てくれて有り難う。
小説を読みながら自然と映像が浮かんでくる位違和感が無い書き方。
本当に尊敬する。
 ▼ 109 ガミミロップ@ストレンジボール 22/05/16 21:39:24 ID:GixkuiYk [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 110 ースター@コオリZ 22/05/17 22:15:09 ID:B7DoGx56 NGネーム登録 NGID登録 報告
こういうss少なくともサトシ関連のssではありそうでなかったな。
 ▼ 111 ルタン@ていこうのハネ 22/05/18 20:54:34 ID:W/CI6Z1Q NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
先が気になる
 ▼ 112 マゼンタ@おだんごしんじゅ 22/05/18 21:53:11 ID:Uls6w6cQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゴウ→コハル→サトシというか、ゴウ→コハル、サトシみたいな微妙な関係性だな
 ▼ 114 クデ@スペシャルアップ 22/05/21 08:55:57 ID:.JIAVpaA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しえん
 ▼ 115 シェード@きんのはっぱ 22/05/21 20:33:22 ID:KnzI7GzU NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 116 チンウニ@リリバのみ 22/05/22 09:40:23 ID:dicwDaTE NGネーム登録 NGID登録 報告
描写が丁寧で琴線にふれる表現も多いから今最も先が気になるssだけど少しずつ進んでいくから先が気になって辛い…
 ▼ 117 ミラミ@ちりょくのハネ 22/05/23 05:25:41 ID:Qc3IFRH6 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
未完に終わりそうな雰囲気があるんだけど最後迄展開は考えてあるんだろうか?
 ▼ 118 ルノリ@ピンクのバンダナ 22/05/23 09:36:32 ID:HlBQPPN2 [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 誤算だったのはコハルの足の遅さだった。

 最初から分かりきっていた事だが、ただでさえ旅慣れしてないコハルにとってアローラの大自然は到底楽な道のりではなかった。一応コハルは運動オンチという訳では決してないものの、一日の長がある俺やサトシに合わせるのは土台無理というもので。
 ちょっと進むのにも、かなり時間を食ってばかりだった。

「コハル〜。そんなペースじゃ、あっという間に夜になっちゃうぞ?」

「ご、ごめん…だって…」

 急かす気はないものの、明らかに予定が遅れてしまう進行具合に、俺はつい口を尖らせてしまうのだった。

 ゼロから始めた昨日とは違って、今日は最初からオドリドリがいる状態でのスタートだ。オドリドリなら好物の花を容易に見つけられる。だから今日は昼前にはノルマを終わらせられるはずだったんだが……。

「もしウスモモの花が山の奥深くにあったら、戻りも相当大変だぞ?」

「うん…分かってるけど…」

 肩で息をするコハルは、ちらりとサトシの方に目を向ける。サトシはコハルが追いつくのを待つ間、周りをウロウロしていた。ウスモモの花が無いか探しているのだろうか。しかしオドリドリの様子を見れば、近くには無いだろう事は想像に難くない。

 コハルの気持ちは手に取るように分かった。

「はぁ……、あのなぁコハル? 昨日の今日で、サトシについていけるようになんて絶対ならないぞ?」

「うっ……」

 図星。コハルは弱々しく膝をつき、大きなため息をついた。
 ▼ 119 トーボー@こんごうだま 22/05/23 09:38:53 ID:HlBQPPN2 [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「やっぱり私、このままじゃ迷惑かな……」

 うなだれるコハル。せっかくサトシと一緒に活動して親密度を深めようと思ってやってきたのに、これほど過酷だとは思いもしなかった様子だ。

 俺は腕組して考える。コハルの気持ちは分からなくもないが、無理はさせられない。サクラギ所長にもコハルは大事に扱うようにと言われている。心苦しいが、ここはコハルの為にも引き返させるのが正解じゃないだろうか……?
 決心してコハルにそう言おうとした所に……

「ゴウ! コハル!」

 サトシが戻ってきた。その手には何やら抱えている。

「ちょっとお腹すいたからさ! 小休憩にしないか? これでも食べながらさ!」

 その手にあるのは、美味しそうに熟した果実だった。
 サトシはウスモモの花じゃなくて、これを探していたのか…? 全く、食いしん坊なんだから………


 ……………………いや、違う。


「ほら、コハル。これとかすごく美味いぞ」

「う、うん……ありがと、サトシ」

「へへっ」

 真っ先にコハルに駆け寄ったサトシを見て、俺はその予想は大外れだと確信した。

 ……サトシは、コハルを休ませる口実に木の実を持ってきたんだ!

「ほら、ゴウも座ろうぜ」

 そう言いながら、倒れた木の幹に腰掛けるサトシ。コハルも並んで座り、木の実を頬張る。途端に疲労の色が顔から取れた。

「わぁ、美味しい〜!」

「だろ? 俺、よく木の実を取りに来てたんだ」

 むしゃむしゃと果実を咀嚼しながらコハルに述べるサトシ。一見本当に自分が食べたかっただけにも見えるが、ちっとも汗をかいてない様子を見て、やはりこんな早くに休憩なんてサトシには要らないはずだと推測を確定させた。

「……やるじゃん、サトシ」

「え……何が?」

 サトシから果実を受け取りながら俺はそう言った。どう考えてもコハルを労っての行動を冷やかすつもりだったが、サトシは何を言ってるんだという顔で返した。

 ……サトシは素で出来ちゃうんだよな〜……。

 いとも自然に、周りを気遣える心。普段はどこか能天気で幼稚さで振る舞うのに、急に年不相応な大人な対応を見せることがある。ギャップを感じずにはいられなかった。
 ▼ 120 ドラン@マッハじてんしゃ 22/05/23 09:41:54 ID:HlBQPPN2 [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 俺も素直に果実を食べる事にした……が、隣には座らなかった。二人とは向かいの石に腰を落とし、食べながら二人の様子を眺める事にした。

 ……こうして見ると、案外お似合い…かもな。

 並んで座り、満面の笑みでフルーツを味わう二人は、どこか絵になるような自然で調和の取れた魅力を醸していた。
 花や鳥ポケモンは綺麗ではあるが、それが一緒の時"ただ綺麗なものが2つ"ではなく、もっと素晴らしい何かを感じさせる時と似ていると思った。

 あんなに違う二人なのにな……。

 ポケモン大好き少年と、ごく普通の女子学生。全く異なる個性でありながら、妙にしっくり来るのに何だか苦笑が漏れる。奇妙な感覚だった。

 俺がサトシとコハルを観察してる間にも、コハルはサトシと話を弾ませる。
 サトシはコハルにアローラでの思い出を聞かせてあげていた。島巡りや、島キングの大試練。初めてのアローラリーグでの優勝に、ウルトラビーストと呼ばれるポケモンの襲来まで……。
 数々のエピソードにコハルは逐一表情を変えつつも、サトシの話を心の底から楽しんでいた。

 一緒に食べて、一緒に話をして、一緒に笑って……。
 なんだか、段々と本当にカップルのように思えてきていた……。

 ───ちょっと、自分達だけで盛り上がりすぎっしょ…。

 渡された木の実も食べ終えた事だしと、俺は立ち上がった。まぁー、疑似カップルはここまでだ。コハルにはこの先へ進むのはただただ辛いだけだから、ここらで戻ってもらわなくちゃいけない。
 万一、疲れから事故に遭われたりしたら、事だしな。

 俺は意を決した。

「さてと…サトシ、そろそろ進もうぜ。このままだと日が暮れちゃうっしょ」

「あ…そうだな。そろそろ進むか、コハル」

「いや、サトシ。コハルはここまでだ」
 ▼ 121 ークイン@スチールメモリ 22/05/23 09:53:35 ID:HlBQPPN2 [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「えっ?」

 予期せぬ発言に、サトシは驚きの表情で俺を見つめた。コハルも虚をつかれた風に呆然と固まる。俺は説明した。

「コハルはもうバテバテなんだ。これ以上引っ張ってっても、帰りがつらくなるだけだ。サクラギ所長にも、コハルを危険な目に遭わせるなって言われたろ? 今ならまだ一人でも安全に戻れる」

「……」

 淀みない俺の説明に、先程の明るさを失い沈黙してしまうサトシとコハル。議論するまでもなく、それが正しいと分かってくれていた。
 サトシはコハルが疲れてる事に気付いているからこそ休憩を持ちかけたのだし、コハルも現実の苦労を身を以て知った以上、易易とついていきたいとは言えなくなっていた。

「コハル……もう、来れないか?」

「……それは……」

 コハルに確認を取るサトシ。コハルは気まずそうに目を伏せた。
 ついていきたい本心と、足手まといになっている自覚の板挟み。コハルの葛藤は俺でなくても伝わってくるものだった。

 俺は膝をつき、コハルに目線を合わせた。

「俺もまさかこんな大変な場所での調査になるとは思わなかったけどさ。何も今回が最後のチャンスじゃないっしょ? また次の機会があるさ」

 慰める為の言葉。しかしコハルはますます悲しさが顔に溢れた。まだ割り切る事が出来ないでいた。

 困ったな…どうしたら説得できるだろうか……。
 次に出すべき一言に迷いが生じた、その時……。

「コハルはさ、どうしたい?」

 サトシが、穏やかな声色でコハルに問いかけた。
 ▼ 122 ラガラ@パワーアンクル 22/05/23 09:57:51 ID:HlBQPPN2 [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>117
あるよ
 ▼ 123 ーフィア@ウイングボール 22/05/23 18:33:45 ID:Qc3IFRH6 [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
>>122
それを聞いて安心した。そして今回の更新分も本当に良かった。
 ▼ 124 ガディアンシー@まんまるいし 22/05/23 18:44:27 ID:xwNAOWGU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
サトシのイケメンぶりに惚れた。
 ▼ 125 ェイミ@リゾチウム 22/05/23 19:12:01 ID:TpI63b1g NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援支援
 ▼ 126 ゾノクサ@くちたたて 22/05/24 21:53:21 ID:XQNEpxOU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
ホント良い所で終わる
 ▼ 128 リキリ@クリティカッター 22/05/25 19:51:41 ID:r9ZAEPKk [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
今日は来ないかな…
 ▼ 129 ジリガメ@カンポーやく 22/05/25 19:52:06 ID:r9ZAEPKk [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
今日は来ないかな…
 ▼ 130 ガユキノオー@しんかのきせき 22/05/25 22:35:15 ID:H7vAVNU2 [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 優しげながらも真剣な眼差しに覗き込まれたコハルは、複雑な思いを声に込めて答えた。

「ごめん……分かってるよ……私がいたんじゃ、今日の予定が狂っちゃうよね……」

「違うよコハル。俺が聞いてるのは、コハル自身はどうしたいのかさ」

 コハルの遠慮を感じ取ったかのように、言葉を遮って再び尋ねるサトシ。


 嫌な予感がした……。


「私は……そりゃあ、二人と一緒に……行きたいよ……でも……」

「そっか!」

 その言葉を聞くが早いか、サトシは立ち上がり、コハルの両手を手に取った。

「だったらさ、行こうぜ! 一緒にさ!」

 力強い、安心させるような笑顔で、サトシはコハルを後押しした。
 コハルは驚きのあまり、開いた口が塞がらない状態になった。


 やっぱり、こう来たか……!
 ▼ 131 ナッキー@すごいつりざお 22/05/25 22:36:04 ID:H7vAVNU2 [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「さ、サトシ……気持ちは分かるけど、コハルに無理させる訳には行かないっしょ?」

「大丈夫大丈夫! 俺たちがコハルのペースに合わせればいいじゃんか!」

「それだと今日中にウラウラ島に行けるかどうか分からなくなるぞ? 予定が……」

「いいじゃんか。予定なんて、予定なんだし」

 事もなげに言い切るサトシは、反発しようなんて様子ではなく、純粋にコハルの望み通りにしたいように見えた。
 それは濁さず言えば、ちょっとたちが悪かった。いくら何でも、コハルの都合に合わせすぎるのは適当じゃない。
 それにそもそも、コハルは助手としてではなく、本当は……。

「コハルが疲れて、事故に遭ったらどうするんだよ?」

「そうならないようにちゃんとフォローするさ。勿論、イーブイもな」

「帰りはどうするんだ? コハルはきっとバテバテになってるぞ?」

「それは……あ、そうだ! カイリューに頼んで、コハルを乗せてって貰えばいい!」

 理詰めで説得しようとする俺に、サトシは尽く反論した。ああ言えばこう言うとはこういう事なのか……? いやに強情なサトシに、ちょっと苛立ちが募りかけていた。

「あ、あの、サトシ……わ、私はいいよ。そ、その、やっぱり迷惑だから……」

 次第に剣呑な空気になりつつあるのを察してか、ここへ来てコハルが大人しく引き下がる意向を示す。しかし……

「迷惑なんかじゃないって! それに……」

 コハルに振り向き、拳を握りしめてサトシは力説の言葉を述べた。

「コハルといると、俺だってすごい楽しいし!」







 は……?
 ▼ 132 ックラー@サイキックメモリ 22/05/25 22:36:55 ID:H7vAVNU2 [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 サトシ、今なんて……?



「………えっ………」

 その一言に、俺とコハルは、まるで時が止まったかのように固まった。
 聞き間違いだったのではないかという疑念が頭を埋め尽くし、鼓動がにわかに早打ちを始める。

 サトシは……コハルと一緒にいたがってる……?

「だからさ! まだ諦めないで行こうぜ! 絶対ウスモモの花見つけられるって!」

 衝撃に呆然とする俺たちを知ってか知らずか、サトシは押せ押せとばかりに訴えを続ける。正直、もうまともに耳に入っていなかった。

 …………そうかよ…………。

「分かった分かった。サトシがそ・こ・ま・で・言うなら、俺からはもう何も言わないし、どうなっても知らないぞ」

 俺は腕を組み、顔を背けながら淡白に言った。腹の底がごろごろと渦巻くような、嫌な気分を感じていた。

 そんな事は知る由もなく、サトシはコハルの手を掴み立たせる。ちらりと横目で見たコハルの顔は───

 好きな人がこんなにも自分の為に一所懸命になってくれた事が、すこぶる嬉しいような顔だった。
 ▼ 133 ーケオス@しっぽのくんせい 22/05/26 01:06:41 ID:6jKY.q22 NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 134 ラルマッギョ@ものしりメガネ 22/05/26 01:12:45 ID:4MQcZTlQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しえん
 ▼ 135 ガフーディン@メタルコート 22/05/26 19:47:40 ID:d2b2lNlA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
一つ一つの言葉の選び方が本当に好き。コハルがサトシにドキドキする度こちらもキュンキュンしてくるけどいまだに片想いか両片想いか判断がつかない演出がされてるからモヤモヤする。

そしてこのssの続きが書かれない日は残念な気持ちになり書かれているとテンションが上がる。
このssを書いてくれて有り難う。
 ▼ 136 ガバシャーモ@ヒメリのみ 22/05/26 22:53:20 ID:SvbsxolU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
3人の形容し難い感情が渦巻く複雑で絶妙な関係が最高
こういうの読みたかった!
 ▼ 138 ールル@きょかしょう 22/05/27 01:51:10 ID:2sSESTEU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゴウがサトシの厄介オタクみたいになってるのめっちゃ解釈一致
 ▼ 139 ーブル@バシャーモナイト 22/05/28 16:09:43 ID:K94AOqDg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
良い意味で先が読めない
 ▼ 140 ボツボ@だいすきメール 22/05/29 09:20:49 ID:D3UwOqGY [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



「あ! あった! あれだ! ウスモモの花!」

 数時間後。
 牛歩のペースで進み続けた俺たちは、やっとの思いでウスモモの花を見つける事が出来た。

 やっとの思い…と言っても、体は大して疲れていなかった。小休憩をこまめに取っていたから、時間はかかったが昨日より疲労は少なかった。

「良かった…やったね! サトシ、ゴウ!」

 目的の物を見つけられて、汗だくのコハルがほっと安心するように言った。
 コハルのペースに合わせて探索したとはいえ、コハルはコハルなりに努めて早く進もうとしたのだ。

 そのコハルを常に支えていたのがサトシだ。
 有言実行。コハルをフォローすると決めたサトシは、片時もコハルから離れる事はしなかった。

 俺はというと…くすぶる気持ちを持て余してはいたものの、野生のポケモンに3人とも襲われたのを機に吹っ切れて、サトシ共々ポケモンを駆使して難を逃れた。

 ……もう決まった事だ。いつまでもふてくされてちゃ、大人気ない。

 そう自分に言い聞かせて、俺はコハルの同行による予定遅延を無視する事にした。サトシと共に、コハルの負担を減らす事を心がけながら道選びをするのだった。

 ……サトシは、仲間を見捨てないもんな……。

 俺はサトシと出会った頃の事を思い出していた。二人でリサーチフェローをやる事になったあの頃、俺は自分の未熟さを思い知った。
 珍しいポケモンを見るために一人で様々な場所へ出掛け、それなりに体力と行動力が身についてると自負していた俺の自尊心は、サトシの驚異的な運動能力の前に、あっけなく打ち砕かれた。俺がどんなにしても、サトシには全く追い付けなかったのだ。

 しかしサトシは、遅れる俺を嘲るでも悪態をつくでもなく、手を差し伸べたのだ。

 友達、助け合い……そういうものを知らずに避けていた自分を、サトシは変えたんだ。
 ▼ 141 ローララッタ@イダイトウだんご 22/05/29 09:22:19 ID:D3UwOqGY [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ……それなのに、さっきの自分はどうだろうか?

 コハルが遅い事に機嫌を損ね、コハルの気持ちを知りつつ無下にするように、帰らせる事を提案して……。
 サトシがその案に反対の姿勢を示したら、ムキになって我を通そうとして……。

 なんか、器が違うな……。

 今ではすっかり、さっきの自分を恥じる想いでいっぱいだった。これでサトシの一番の相棒を名乗る資格があるのかと、自己嫌悪の念にまとわりつかれてもいた。

 しかし、腹の奥底にべったりと張り付いた感情は、完全に消えてはいなかった。

 コハルと一緒だと楽しいと言ったサトシ……。

 コハルに帰ってほしくなかったサトシ……。

 サトシの、コハルへの接し方は変わってない……そう思っていたのは、見当外れだったんだろうか…?
 本当はやはり、サトシはコハルに……だから花を……?

 分からない……。

「どうしたの、ゴウ?」

 突然声をかけられて、思考に沈みかけていた意識を引っ張り戻される。コハルは目当ての花の発見を俺が喜びもせずテンションが低いのを不思議に思ったのだろう。俺ははは…と愛想笑いをした。

「なんか、まだ見つからないだろうな〜と思ってたら普通に見つかっちゃって、拍子抜けした気分」

 下手な嘘だ。こんなものコハルにはすぐ見破れるだろう…。そう思ったが、案に反してコハルは深読みする素振りも見せずに笑った。

「私も、このまま永遠に見つからなかったらどうしよう〜って、ちょっと思ってた」

「いや、さすがに暗くなりそうだったら引き返すっしょ」

「って、それもそうだね…」

 至極単純な答えが全く頭に浮かばなかったのか、コハルは俺の返事に目から鱗が落ちたような態度を見せた。

 もしかして疲れてるのか…? あ、疲れてるんだったな…。
 ▼ 142 ガボーマンダ@おうえんポン 22/05/29 09:24:26 ID:D3UwOqGY [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「ご苦労さん、オドリドリ。褒美に、好きなだけ蜜を吸っていいぞ」

 俺は長いあいだ道案内してくれたオドリドリを労った。黄色のオドリドリは褒美を貰える喜びに空中で踊り歌い、そのまま花へ急降下して蜜にありついた。

 すると、たちまちオドリドリは体が光に包まれ、気がつくと、その姿は黄色からピンクへと変わっていた。
 昨日、コハルに見せてもらった絵にあったあの姿だ。

「これが……フォルムチェンジ……」

 コハルが目を大きく見開いて、ぼつりと漏らす。初めてその眼で見るポケモンの生態の神秘に、心を動かされたように魅入っていた。

 俺はスマホロトムをかざし、図鑑に読み取らせた。
 図鑑はそれが"ふらふらスタイル"であると解説してくれた。

「踊っている時は、トレーナーの指示が聞こえないほどマイペース……か」

「ほんと…なんだかすっかり、キャラ変わったって感じだね」

 さっきまで、チアリーダーよろしく陽気に俺たちを応援していたぱちぱちスタイルのオドリドリが、フォルムチェンジした途端に別個体のように大人しくなった。吸った蜜の甘さに表情がとろけ、何やらのら〜りとした踊りを始めていた。

「おい、オドリドリ? おーい……」

 試しに声をかけてみるも、図鑑の言った通り本当に耳も貸してくれぬ状態だった。フォルムチェンジとはこうも個性レベルでポケモンを変えてしまうのか……。
 感心すべきか呆れるべきか迷っている所に……

「俺も何だか踊りたくなってきた〜!」

 サトシが一緒になって踊りだした。
 ▼ 143 ブクロン@きょうかポケット 22/05/29 09:25:32 ID:D3UwOqGY [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「お、おいサトシ!?」

「ゴウも一緒に踊ろ〜ぜ〜」

「踊らねーよ!」

「ならコハル〜」

「え!? えっと、その…つ、疲れてるから…」

 俺もコハルもさすがに恥ずかしくて拒否した。オドリドリと一緒に踊りだしたサトシは妙ちくりんな動きで足や手を動かし、顔は何とも言えない(はっきり言えばだらしない)表情になっていた。

 絶句するほどシュールなサトシとオドリドリのダンスシーンに……

「…………ぷっ」

 コハルがぷっと吹き出し……

「くっ……くく……」

 俺が湧き上がるものをこらえられなくなり……


「あっはははは!! なにそれおっかしー!!」

 二人とも大笑い。ピカチュウも、イーブイも、サルノリも爆笑。
 みんな、疲れも、沈んだ気分も忘れて抱腹絶倒するのだった。

 ▼ 144 イリュー@とうめいなスズ 22/05/29 09:33:14 ID:gi1ANZCw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
尊い
 ▼ 145 ガース@めざめいし 22/05/29 09:36:37 ID:D3UwOqGY [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 一緒に踊ればどんどん元気が湧いてくる、とは誰の言葉だっただろうか。

 オドリドリのサイコパワーがそうさせたのか、それとも謎の引力が働いたのか。気付けば俺たちはオドリドリと一緒になって踊りだしていた。

「ダンスはもっとこう、ノリノリでやるべきっしょ!」

 俺とサルノリは、スローな動きのサトシとオドリドリに見せつけるように、無駄に激しく体を動かした。我武者羅に動いてると、さっきまでの嫌な気分が熱で蒸発して消えていくかのような、スッキリした気分になれた。

 一方、休んで俺たちを見ていたコハルもついに釣られて立ち上がり、俺とサトシが注目する中、両手を上げてクルクルと回り始めた。

「それってダンスなのかよ〜!?」

 これまた変わったスタイルのコハルの踊りに思わず俺がツッコむ。

「う、うるさいな! あんまりこういうの、慣れてないし!」

 コハルが照れ隠しの反論をする。イーブイも真似してクルクル踊っていた。

「いいぞ〜!コハル〜! イーブイ〜!」

 サトシとピカチュウは何でも構わないとばかりに声援を送る。そして俺たちは最後に、三者三様の踊りを一緒になって踊り倒した。
 デコボコでまとまりの無い踊りを、時間を忘れて夢中で楽しんだ……。

 ▼ 146 ガリザードンY@ジュペッタナイト 22/05/29 20:41:02 ID:Eo3oybhk NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
opか!
 ▼ 147 イリキー@ズアのみ 22/05/29 20:53:53 ID:fXN.IbNw NGネーム登録 NGID登録 報告
ずっと見続けていたい。
 ▼ 148 スラオ@グランドコート 22/05/31 09:43:31 ID:1YAsdh4g NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 149 ガヤンマ@くろいメガネ 22/05/31 22:19:02 ID:z2VIThpA NGネーム登録 NGID登録 報告
好き
 ▼ 151 ッタ@せいれいプレート 22/06/02 08:01:52 ID:uSc2zX/2 [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



「あぁ〜……楽しかった!」

 すっかり夕暮れになり、踊り疲れた俺達はようやく本来の目的を思い出して、ウスモモの花の蜜を採集。町への帰路についた。

 さすがにあの時間から歩いて帰る訳には行かず、三人ともサトシのカイリューで空をひとっ飛びする事になった。……フライゴンを連れてこなかったのは失敗だったと後悔した。

 俺とコハルがカイリューの背に、サトシがカイリューに抱きかかえられる格好となった。俺は自分が下でいいと申し出たが、サトシは「いいっていいって」とやんわり断り、この形で帰る事になった。

 上空から登った野山を見渡すと、思った以上に俺達は奥深くまで来ていた事にハッとさせられた。こんなに長い道のりを、コハルは……。

「なあ、コハル……」

「うん?」

 前に座るコハルに声をかける。ギリギリ、サトシに聞こえない程度の声で。

「さっきは、ごめんな……」

「……えっ、何の事?」

 コハルは思いがけない言葉に振り向く。俺はコハルを見ずに、景色に視線を向けたまま続けた。

「帰った方がいいって、言った事だよ。コハルはサトシと一緒にいたいって、思ってたのにさ」

 慣れない冒険。しかも大変なこのアローラの自然の中を、コハルは最後まで歩き通したんだ。サトシと一緒にいたいが為に。
 そう思ったら、さっきの自分がいかに野暮だったか。いかにコハルの気持ちを考えていなかったかに気付いた。
 あそこでコハルを帰らせていたら、あの可笑しくも楽しい時間を過ごせなかった事を考えさせられて、どうしても謝りたい気持ちになった。
 ▼ 152 スマス@ピカチュウZ 22/06/02 08:03:36 ID:uSc2zX/2 [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「……なんだ、そんな事」

 コハルは大した事でもないとばかりに笑い、前に向き直した。

「何にも気にしてないよ。ゴウは私を思って言ってくれてた訳だし。……実は私も、諦めた方がいいかなってちょっぴり思ってたんだ」

 前を向いたコハルの顔は見えなかった。ただ、声音はとても穏やかで、本音で言ってくれているのだと思えた。許してくれていた。

「でもね、来てよかった。すごく疲れたけど、色々なものが見れたし、色々な事が知れたし……本当に楽しかった。サトシのおかげ……そして、ゴウのおかげだよ」

「……俺のおかげ?」

 ちょっと意外な言葉に聞き返す。サトシはともかく、俺はコハルにこれといった事はした覚えは無いのだが……。

 しかし、コハルははっきりと口にした。

「私は、ゴウが言ってくれなかったら、ここに来ていなかった。サトシと一緒に活動なんて、思いもしなかったよ。誘われても、無理だって、いつも引っ込み思案だった……勇気を出せた。あのままだったら、プレゼントなんて、絶対にして貰えなかったと思う…今日のような楽しい時間を一緒に過ごせなかった」

 コハルの左手首のブレスレットの花びらがゆらゆらと揺れる。そして不意にコハルは再び振り向いた。
 風に長い髪が靡き、夕日に照らされたコハルの顔は……

「私の背中を押してくれて、ありがとうね」

 その微笑みは、今まで見たどのコハルよりも。

 綺麗で、可愛らしかった……。








 ドクンと、大きな音がして───



 俺は、寒気とざわめきを覚えた。
 ▼ 153 ドラ@れいせいミント 22/06/02 08:05:09 ID:uSc2zX/2 [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 大丈夫だ。何も変わらない。
 

 あのサトシなんだ。コハルがいくら想い慕ったとしても……。
 

 届かない。
 サトシを夢中にさせるのは、いつだってポケモンと、バトル。異性じゃない。


 それに、何より、俺がいる限り………………


「俺がいる限り…………って、何だ?」

 暗くて見えない天井を見つめながら、俺は自問していた。
 
 アーカラ島の辺境の、大きな牧場。当日のウラウラ島への移動を断念せざるを得なかった俺たちは、予定を変えて友達のカキの所に泊めて貰う事にした。

 カキの家族は暖かく迎えてくれて、美味しい夕食と快適な寝床を用意してくれた。コハルはカキの妹のホシと親しくなり、彼女の部屋で寝る事にした。そして俺とサトシは、一緒の部屋で床についた。
 
 俺は眠れなかった。そう遠くない距離から海の波音が響いてきて、意識がまどろむのを妨げていた。潮騒が俺の胸の内を表すように荒ぶっていた。
 カチカチと鳴り続ける時計の針は、嵐の訪れをカウントダウンしているようにすら思えた。落ち着かない夜だった。

「なあ、サトシ……」

 隣にいる相棒に声をかける。しかし返事は単なるいびき。俺の憂鬱をよそに、サトシはさっさと寝てしまったようだ。
 俺はため息をつき、また虚を見つける。サトシに何を問いかけるつもりだったのか、もう忘れていた。
 ▼ 154 マゲタケ@マメよせだま 22/06/02 08:08:14 ID:uSc2zX/2 [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ……どうしてこんなに気がざわめくんだ……?

 コハルにサトシと同行するように勧めたのは、たしかに俺だ。けど今は、どこかでそれを後悔している自分がいた。

 コハルは、サトシに惹かれている……けどそれは、サトシのスペックの高さに気付いた故の感情だと思っていた。
 そう……彼氏にすれば自慢になるような、そんな打算に由来するものだとばかり思っていた。
 けど、そういった浅い感情だけで、あそこまで努力できるのだろうか……?
 俺は本当にコハルを理解しているのだろうか……?

 サトシの事も気がかりだ。
 花を贈ろうとしたり、一緒にいて楽しいと言ったり……あんなの、サトシじゃなかったら一発でコハルに気があると断定できる行動じゃないか。
 サトシは俺が思ってるほどに、ポケモン馬鹿じゃない、って事なのか……?
 もしサトシがコハルのあの笑顔を見ていたら、心動かされる事もあり得るのでは……?
 俺は本当にサトシを理解しているのか……?

 俺自身はどうだ。明らかに矛盾だらけだ。
 コハルを後押ししたように見えて、サトシがコハルに寄り添う事には納得していないような……。さっきのあれは、本当にそんな態度だった。
 俺は自分自身の本心すら、ちゃんと理解しているのか……?

 俺は毛布を頭までかぶり、煩い音もわずらわしい思考も遮断しようとした。
 寝れば忘れる。きっとそうだ。明日になればスッキリしてるだろう。
 明日はまた朝早くからウラウラ島へ移動だ。こんなリサーチは、さっさと終わらせてしまおう。もやもやした心なんて、夢の中に置いてきてしまおう。その一心で俺は目を強く瞑った。



 翌日。アローラは朝から大雨だった。

 ▼ 155 ローラダグトリオ@しんかいのキバ 22/06/02 12:28:22 ID:tCAYirtI NGネーム登録 NGID登録 報告
このssを読んでると文学を読んでるきになる。
支援
 ▼ 156 オチルドン@ガンバリのすな 22/06/02 19:35:00 ID:Eax6fk9E NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 157 ノガッサ@ラティオスナイト 22/06/03 21:25:59 ID:JyoIZtI6 NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
支援
 ▼ 158 モリ@ピントレンズ 22/06/04 14:23:43 ID:opzMoBcU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
面白くなって来たじゃないの
 ▼ 159 ライオン@どろだんご 22/06/05 14:35:31 ID:T5pUipM2 NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 160 ガイドス@ヒコウZ 22/06/06 10:11:07 ID:UXVUibP6 [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



「こりゃあ、船は出せないだろうな……」

 カキが重い口調で告げた。
 激しい豪雨はけたたましく屋根を叩き、強風が雄叫びを上げながら吹き荒ぶ。昨日までの快晴が嘘のような大嵐だった。

「台風が近付いてるのかな、これ…?」

「嘘…そんなの気象情報に載ってなかったよ…?」

 サトシとコハルが窓の外を見ながら弱った顔をする。どう見ても、船どころか出かける事も叶わない天気だ。
 俺もはぁ、と深くため息をつく。

「まさかの足止めだなぁ…」

「仕方がない。自然というのは、人間の都合を考えたりなんてしないからな」

 うなだれる俺をカキが宥める。アローラに住む人々は、都会に住む人々以上に自然への畏敬の念が強い。こういう悪い状況にも、冷静で達観的な見方を取る。ことにカキはその傾向が強いアローラの男子だ。

 ……それにしてもこんな寒い日でもカキは半裸なのか。
 ▼ 161 ワシ@けいけんポン 22/06/06 10:13:56 ID:UXVUibP6 [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「とにかくやむまで待機していた方がいい。遭難しては元も子もないだろう」

 至極もっともなカキの提案。しかしサトシは机に肘をついて愚痴たれた。
 
「でも、暇だな〜…」

「じっとしているのが苦手な性分は、変わってないみたいだな」

 カキがふっと笑う。サトシの親友兼ライバルなだけあって、対等で気の置けない間柄を匂わせるやり取りだ。

「カキだって熱くなったら一番勢いつけるタイプだろ?」

 人の事言えたもんかとばかりにカキの軽口に反論するサトシ。

「俺はお前と違って、冷静さは失わないがな」

「へぇー、本当か〜?」

「……試してみたいようだな?」

「えっ!? えっ!?」

 ニヤリと笑いながら視線で火花を散らす二人に、コハルが何事か分からず戸惑いだす。まあ、コハルは知らないだろうが…ポケモントレーナーというものは、こういうもんだ。
 目と目があったら……

「ポケモンバトルだ!!」

「この天気でぇ!?」

 そしてサトシとカキは、大雨吹き荒ぶのも構わず表でバトルに興じるのだった。
 ▼ 162 ノココ@すくすくこやし 22/06/06 10:15:58 ID:UXVUibP6 [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


「サトシってやっぱりポケモンバトルはとことん好きなんだね…」

 全身びしょ濡れになりながらも愉快そうにバトルするサトシとカキを窓から眺めて、コハルは苦笑を漏らした。

 まさかこんな悪天候でもバトルをおっ始めるなんて……言葉にこそしないが、こればかりはとても付き合えないという内心が如実に出ていた。サトシの事を好いていても、サトシのバトルへの情熱をコハルが理解するには、まだまだかかるだろうな。

「本当、最近は特に訓練に余念が無いんだぜ。もうすぐマスターズトーナメントだもんな」

 先日の事。ワールドチャンピオンシップスの今シーズン最後の入れ替え戦で強敵キバナを倒して、マスターズエイトに名を連ねるに至ったサトシ。いよいよ世界最強の座をかけて、各地方のチャンピオンクラスの人達と激戦を繰り広げる予定だ。

 サトシの目標は無敗の王者ダンデさんとのバトル───いや、ダンデさんに勝つ事だ。生半可な努力では到底成し遂げられない偉業。気合が入るのも無理もない事だ。

「…………そうだよね」

 コハルは窓の方を向いたまま、静かに呟いた。
 ……? 俺はその顔に違和感を覚えた。コハルの雰囲気はどこか寂しそうな、しかしそれを押し殺そうとしてるような、複雑な感情を垣間見せていた。何か気になるのだろうか……?

「……サトシって……」

 躊躇いがちに、コハルが言葉を紡ぐ。俺に向かってというより、独り言を零すかのように。

「ワールドチャンピオンシップスが終わったら……どうするんだろう?」
 ▼ 163 ールー@あやしいパッチ 22/06/06 10:17:42 ID:UXVUibP6 [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「えっ?」

 俺は机に肘をついた姿勢を崩し、呆然とコハルを見つめた。突然何を言い出すのだろう?

「だって、もし……もし仮にだよ? サトシが優勝して、世界で一番強いトレーナーになったら……どうするのかなって」

 コハルは今度は明確に俺に向かって話した。サトシの将来について、真面目に意見を聞きたいという面持ちで。

「……別に、最強のトレーナーになっても、変わらないんじゃないか? サトシはサトシっしょ」

 とりあえず受け答えをする。コハルが何か不安にしている風に思えたので、いたずらにそれを助長するような回答は避けた。しかし……

「そりゃあ、今とあまり変わらないとは私も思うけど……私達の所に留まってくれるのかなって……」

 コハルの目に、確かな憂いを見つけて。

 俺は、ハッと気付かされた。

 サトシが、いずれいなくなる───コハルはそれを危惧しているんだ。

 サトシの目標は、今のところは打倒ダンデだ。けど本当の夢は"ポケモンマスター"。
 サトシが提唱するその肩書が具体的に何なのかはイマイチ明瞭じゃないけど、世界一のポケモントレーナーよりも更に遠い先にあるのだけは確かだ。

 その夢を達成する為に、サトシがどうするか───"立ち止まる"なんて選択肢がサトシに無い事は、言うまでもない事実だ。

「…………」

 俺は言葉に詰まった。答えは嫌になるほど明確だった。ただ、答えるのが嫌だった。

 その可能性について今まで考えた事が無い訳じゃない。けど、それはもっと先の話だとずっと思ってきた。無意識に、考えないようにしていた……。
 けど、たった今コハルに指摘されて、それがそう遠くない未来に迫ってきているかもしれないと、気付かされたのだ。

 ───サトシが夢の実現の為に、俺たちと袂を分かつ日が、来るかもしれない事を……。

 俺とコハルは再び窓の方に目を向けた。窓の外で、雨の寒さを感じさせずに熱く昂ぶるサトシの姿がある。
 急に、その窓がテレビジョンのように思えた。どこか遠くで活躍するサトシの姿を、俺たちは離れた所から見守るだけになる……そんな妄想が頭をよぎった。
 ▼ 164 シャーモ@むしよけスプレー 22/06/06 20:21:37 ID:bzJMQ5aE NGネーム登録 NGID登録 報告
このssに会えて幸せ
 ▼ 165 コン@オリジンボール 22/06/09 18:12:16 ID:65Jch8.. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マジで本編でやって欲しい会話だな
 ▼ 166 バコイル@にじいろのはね 22/06/10 01:05:46 ID:jSsM6HgM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 168 クバリス@ずぶといミント 22/06/15 19:51:51 ID:WS/YKAQI NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 170 ガヤミラミ@そらいろたまいし 22/06/18 22:47:41 ID:87Z2PNrc [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「ひゃあ〜〜……濡れた濡れた……ッくしゅん!」

「さ、さすがに少し、寒くなって、きたな…へっくし!」

 バトルを終えて、全身ずぶ濡れになって戻ったサトシとカキはぶるぶると震え、くしゃみをした。

「結局勢いついたらどっちも冷静じゃないってオチだったな」

 「うっ……」

 俺の皮肉にぐうの音も出ない二人。コハルも呆れ混じりにため息をついた。

「もう、無茶するんだから……はい、タオル」

 小言を言いながら、ホシが用意したタオルを手渡すコハル。サトシとカキは有り難みを顔一面に浮かべながらそれを受け取った。

「へへっ、サンキュ、コハル」

「悪いな…。あ、ちなみに俺は呼び捨てで構わないぞ」

 二人してガシガシと体の水気を拭き取る。しかし、半裸のカキはともかく、サトシは服着のままバトルしてしまった。そちらは脱いで乾かす必要がある。

「サトシ。服を脱いで暖房のそばに置いておけ。そのままじゃ風邪引くぞ」

「そうだな」

 カキの注意に了承し、サトシはシャツの裾に手をかけ……

「えっ!? えっ、ちょっと待って!」

 コハルが慌てて背を向けた。
 ▼ 171 ィオネ@フーディナイト 22/06/18 22:50:40 ID:87Z2PNrc [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「え、どうしたコハル?」

「い、いや、その〜……///」

 しどろもどろに答えるコハルと、そんなコハルの急な動揺に訳が分からず疑問符を浮かべるサトシ。サトシからは見えないだろうが、コハルは顔を赤くしてしまっていた。
 ああ、そういう……。

「コハルー、サトシの裸ぐらいで照れんなよー」

「ちょ、ちょっとゴウ!?」

 俺の冷やかしに一気に沸騰を始めるコハル。今にやかんのようにヒーッ! と悲鳴を上げるんじゃないかと思えて、俺は頬が吊り上がるのを禁じえなかった。
 サトシに気がなかった頃ならともかく、今のコハルはサトシの素肌を直視できないという訳だ。

 その一方で、全く分からないとばかりにカキが首をかしげていた。

「男の裸が見慣れないのか? 俺はずっとこの格好だったんだが……」

「いや、カキも初めて見た時はビックリしたんだけど……」

 コハルは横目でカキに振り返りながらちょっと呆れ顔で突っ込んだ。確かに昨日のカキとの初対面でコハルはぎょっとしてたし、挨拶の時もぎこちない愛想笑いだったのを俺は覚えている。

「まあ、その、なんだ。着替えるまで部屋の外に出たらいいんじゃね?」

「う、うん……そうするね」

 弱りきった苦笑を顔に貼り付けて、コハルはいそいそと部屋を出た。そして黙って静かになりゆきを見ていたサトシがその後にぽつり。

「別に恥ずかしがる事無いと思うけどな〜」

「分からん。女心というものは全く分からん」

 サトシに同調するようにカキも呟く。この二人、本当に何から何まで似た者同士だなと思った。
 ▼ 172 ルッグ@たまむしプレート 22/06/18 22:52:25 ID:87Z2PNrc [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 午後に差し掛かる頃に、ようやく雨は静まる兆候を見せ始めた。
 俺たちの朝は、牧場の仕事の手伝い(主にポケモン達の世話や掃除)に終始したのだった。

 カキは風がやわらいだのを見るや、かっぱを着てリザードンに跨った。朝一で届けるはずだったモーモーミルクを配りに行くのだ。これが彼の生業である以上、遅れはしても欠かす訳には行かないという。

 俺たちはポケモンたちの健康チェックや、ミルタンクの乳搾りの様子などを見せて貰った。思いもよらぬ酪農体験にコハルはロマ〜ンを感じたようで、興味津々で身を乗り出して仕事を手伝っていた。ただし……

「あ…う…いたた……」

 時折たまりかねるように屈んでしまう。何事か聞くまでもなく、サトシが側に寄って支えた。

「無理するなよコハル。昨日の探索で、相当脚にきてるんだろ?」

 筋肉痛だ。ただでさえ俺やサトシほどに運動慣れしてないコハルが、あれほどの山道を無理して歩いたのだ。負荷の反動が来るのも無理はないというものだ。

「ご、ごめん……なんか、助けて貰ってばっかりだね……」

「気にすんなって!」

 申し訳なさそうにするコハルに、快活な笑顔で答えるサトシ。サトシに差し出された手をおずおずと取りながら、コハルは痛みを我慢して立ち上がった。

「……」

「……」

「……あの、コハル。手……」

「……あ、ごめん!」

 言われてはっとしたように、コハルは繋いだままの手をようやく離す。両の指で数えるほどの時間、コハルはサトシの手を取ったまま彼を見つめていたのだ。自分を気遣ってくれるサトシに、見惚れていたのだ。
 ▼ 173 リンク@ハートアメざいく 22/06/18 22:54:22 ID:87Z2PNrc [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「……」

 サトシは気付いてないだろうけど、あれは絶対にわざとだと俺は思った。その証拠に、コハルは離した手を名残惜しそうに両手でぎゅっと握りしめ、頬を赤く染めながら微笑んでいた。ラッキーな出来事を喜ぶ顔。

「コハル。歩くのもままならないくらいなら、もっと休んでた方がいいんじゃないか?」

 俺はやましさを隠すコハルに苦言をこぼしたい気持ちをこらえながら、やんわりと提案した。好意ゆえとはいえ、あんまりズルい事してサトシを困らせるのも考えものだ。

「うぅ……でも、せっかくの機会なのになぁ……」

「それじゃあいっそ、残るか? そんなに痛むんじゃ、どの道今日明日は花探しについてこれないだろ」

「そ、それは……自分でも分かってるけど……」

 さすがにこんな調子のコハルを連れて行くのは無茶だろう。今度ばかりはサトシも否とは言えなかった。

「コハル、どうする? ここでゆっくりしててくれてもいいんだけど……」

「……でも、二人は花探しのあと、どうするの?」

 コハルの疑問。予定では、今日は朝にウラウラ島へ行きクレナイの花を採集するはずだった。雨ですっかり遅れてしまった今、花を探すだけの時間しか残されていないだろう。もしかしたら今日中には見つからないかもしれない。その場合は……

「場合によっては、最初の予定にあったアセロラって人の所に泊まらせて貰う事になるかな……」
 ▼ 174 マタナ@きのはこ 22/06/18 22:55:16 ID:87Z2PNrc [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「でも、それだとコハルとは合流できなくなっちゃうな……」

 コハルと離れ離れになる事は避けたいと言いたげなサトシの発言。俺は複雑な気持ちを感じながらも、あくまで平静に努めた。

「だから、コハルがカキん家に残りたいか、俺たちと一緒にウラウラ島へ来るかって話だろ? どっちみち、一緒に探しに来れないのは変わりないんだし」

「そりゃあ勿論、行きたいよ」

「いいのか? せっかくの牧場体験の機会だぞ?」

「ゴウの意地悪。置いてけぼりにされても、ちっとも楽しくないよ」

 コハルがふくれっ面をする。サトシも「そうだぞ」と同意を示す。まあ、そりゃそうだろうな。

「悪い悪い、冗談だよ。それなら俺とサトシは船がもう出てるか確かめに行ってくるから、コハルはその間、無理せずに休んでるんだぞ」

「う〜ん、しょうがないよね……分かったよ」

 少し残念そうな顔をしつつも、コハルは了承した。




 別に、確認すらだけならサトシを連れて行かずとも俺一人で行けた。それをわざわざサトシも同行させたのは……。

 サトシをコハルから遠ざけたい気持ちが、心の奥底のどこかにあったからだ……。
 ▼ 175 ッポウオ@ガンバリのじゃり 22/06/18 22:56:39 ID:87Z2PNrc [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
(最近忙しさが集中して筆が取れる時間が少ないので更新遅くなってて申し訳ない)
 ▼ 176 ドキング@はがねのジュエル 22/06/18 23:03:16 ID:dlzwEa3c NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 177 シガリス@スターのみ 22/06/19 00:00:04 ID:HqEctUac NGネーム登録 NGID登録 報告
筆がとれる時間が少ないのに更新してくれて有り難う。
少しずつでも続きが観れる事が嬉しい。
支援
 ▼ 178 ルーグ@コンペボール 22/06/24 15:31:17 ID:2hy2nyK. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゆっくりで全然大丈夫ですので最後まで書き切って頂きたい
支援&保守
 ▼ 179 ングドラ@でんきのジュエル 22/06/24 18:08:59 ID:3DtMVGyo NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 180 モ@ふしぎのプレート 22/06/25 21:21:15 ID:/8G6G4r. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
紫煙
 ▼ 183 ャラコ@まんたんのくすり 22/07/07 20:18:05 ID:1O7wVgIQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゆっくりでいいでっせ
 ▼ 184 ェローチェ@おだんごしんじゅ 22/07/19 22:00:20 ID:mtMk9EVo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
失踪しないで
 ▼ 185 ルメタル@レトルトバーグ 22/07/21 06:11:49 ID:WsBgBLds [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 分厚い雲も遠ざかり、すっかりいつも通りのアローラの天気に戻った頃。
 俺たちは昼食までご馳走になったカキの家にお礼を言い残し、ウラウラ島へと向かった。一日の残り時間は僅かだが、絶対に今日中にオドリドリの好物の花を見つけてやると、俺は熱意を高めていった。

「先に、アセロラん家に行こうぜ。コハルにそこで休んでて貰う為にさ」

「うん」

 まずはアセロラという人の自宅へと向かう。道中は時間を無駄にしないよう、コハルにはゲンガーの背中に乗ってもらったが、町中をポケモンに乗って渡り歩くのはちょっと恥ずかしいのか、コハルはそわそわしていた。

「大丈夫だよコハル。アローラではポケモンライドって、珍しくないから」

「そ、そうなの…?」

「ほら、あっちにムーランドに乗った女の人もいるじゃん」

「あ、本当……」

 都会ではあまり見られない光景がごく自然に目の前に広がっている事実に、コハルは目から鱗が落ちる気持ちのようだった。

「なんなら、ケンタロスに乗ってかっ飛ばすか?」

「それは流石にできないよ!」

 俺の冗談に大慌てでノーと答えるコハル。サトシが大いに笑った。


 ……いつも通りの他愛無い会話に見えて、俺は少し無理をしていた。早くアセロラという人の家につきたかった。
 ▼ 186 ータクン@ももいろはなびら 22/07/21 06:12:30 ID:WsBgBLds [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 やがて辿り着いた場所は、図書館。件の人はここに住み込みで働いてるという
 サトシが大声で呼びかけると、中から小柄な女の子が満面の笑みで出迎えてくれた。

「サトシ、久しぶり〜!」

「アセロラ〜!」

 想像とはえらい違いの人物に、俺とコハルは面食らって立ち止まってしまった。

「え……アセロラさんって……その子?」

「そうだよ! あれ、どうかしたのか?」

「いや……サトシが世話になったって言ってたから、てっきり大人の人かと思ってて……まさか同年代だったとは……」

「あはは! ビックリしちゃったんだね! サトシがちゃんと説明しないから〜!」

 アセロラがサトシのうっかりを察して愉快そうに笑い、サトシが腕を組んで悩み顔になる。

「えぇ〜……言ってなかったっけ〜……?」

「……ま、まあ私達も、どんな人かとか詳しい事聞きそびれたのもあるから……」

 コハルがサトシのフォローをする。しかしサトシが言ってなかった事を証明する形になり、アセロラはやっぱりと言いたげにサトシの背を叩いた。

「ほらね〜! サトシは相変わらずだ〜!」

「う、う〜ん……そうみたいだ……」

 がっくりとうなだれる。そんなサトシを尻目に、アセロラはさあさあと中へ案内する。俺とコハルがその後に続いた。

「サトシとアセロラさん……仲がすごく良さそうだね……」

 コハルがぼそりと小声で呟いた。俺も今しがたのやり取りを見ただけで二人の気の置けない間柄は伝わってきた。けど……。

「コハル……マオの時といい、簡単にヤキモチやきすぎだろ……」

「なっ!? ち、ちが……!! そういうんじゃ……!!」

 たちまち取り乱して否定する。その慌てぶりが図星だと物語ってるというのに、本当に誤魔化しが下手な幼馴染だと思う。

 俺はそれほど憂慮してなかった。何故ならサトシはヒカリやアイリスともこういった仲の良さを見せてきたからだ。どんなに関係が良くても、サトシの接し方に男女意識はほぼ見られない……。

 怪しいのは、コハルに対してだけなんだ……。
 ▼ 187 ルノズク@はいぶくろ 22/07/21 06:14:42 ID:WsBgBLds [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 リビングでお茶を出してもらい、俺たちは事情を説明。……しようとしたが、アセロラは既にマオ達から話は伝え聞いていた。
 オドリドリの生態調査。フォルムチェンジの条件の発見。そして極めて重要な、花の場所……。

「実はね、あたし、赤色のオドリドリがよく見られる場所を知ってるよ!」

「え、本当!?」

「うん!」

 そう言ってアセロラが取り出したのは、ウラウラ島の地図。現在地を指し示した後、アセロラは近くの森に指を滑らせた。

「この辺に行くと、いっつも赤色のオドリドリが見れるんだ! だからきっと、ここに花があると思うの!」

「へぇ〜、近いじゃん!」

「これなら今日中に見つかりそうだぜ!」

 俺とサトシは棚からぼた餅とばかりに舞い上がった。どうやら今朝の遅れは取り戻せそうだ。

「じゃあ、早速出発だな! 早いうちに見つけられたら、今日中にポニ島に行けるかもしれない!」

 俺は興奮したままにまくし立てた。現状はオドリドリの4つ目のフォルムへの鍵となる情報は何も無いが、法則から考えれば、最後の一つはポニ島にあると見ていいだろう。

 そんな俺にアセロラが釘を差した。

「今日の分のポニ島行きの船はもうないんだ〜」

「…………そっか〜〜〜………」
 ▼ 188 ルマユ@くろおび 22/07/21 06:16:48 ID:WsBgBLds [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 心底落胆してしまった俺に、サトシが慰めてくれた。

「がっかりするなよゴウ。ゆっくりでいいじゃん」

「そうそう。ゆっくりしていってよ!」

 アセロラも屈託ない笑顔で勧める。

「それに〜……あたしも二人といっぱいお話ししたいし!」

 アセロラはそう言って、俺とコハルに視線を向ける。俺はドキリとした。

 ───まさか、アセロラまで……?

 マオ達から予め話を聞いていたアセロラ……という事は、コハルのサトシへの気持ちも告げ口されてる可能性が高い。そしてこういう時の女子の一体感は、もう嫌というほど見せられている。

 ───アセロラもコハルを後押しする気かよ……!?

「……ま、まあいいけど! ゆっくりな話はせめてクレナイの花を見つけてからな! あくまで調査に来たんであって、遊びに来た訳じゃないし!」

 瞬時に駆け抜けた嫌な予感に駆られて、俺はくつろぎムードを払いのけた。またアローラの人特有のお節介でサトシとコハルに距離を縮めろと迫られるのは勘弁だった。
 しかし意外にも、アセロラは態度を曲げず、むしろ感心したようにへぇ!と声を上げた。

「ゴウ、真面目だね! クチナシおじさんに見習って貰いたいよ!」

 そう言ってクスクスと笑う。反発されると思いきや褒め称えられる展開に、俺は拍子抜けして呆然としてしまった。
 ▼ 189 ガラグラージ@アクロママシーン 22/07/21 06:18:33 ID:WsBgBLds [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「クチナシさんって?」

「ああ。ウラウラ島の島キングだよ」

 コハルの素朴な質問に応えるサトシ。島キングであり交番所に務める警察官とのことだが、結構不真面目でちょいワルな性格だという。

「島巡りで大試練の挑戦に来た時も、なかなか勝負受けてくれなくてさー」

「サトシだけじゃないんだー。面倒くさくて追い返そうとしちゃったチャレンジャー」

「そんな人が島キング務めてていいのか……?」

 サトシとアセロラはあっけからんと話すが、俺からすればそんな大人はあり得ないというものだった。コハルも冷や汗を浮かべている。

「むしろ、サトシはどうやって挑戦受けて貰ったの……?」

「ああ、それは〜……」

 ……あ、あれ? 結局雑談ムードになってないか……?

 危うく流されそうになった。サトシは何の気無しに当時のいきさつを説明し始め、コハルは興味深げに聞きに回ったが、俺は出発のタイミングを逃した事に内心動揺していた。

 ま、まさか……アセロラの作戦……なんて事ないよな……?

 俺はこっそり横目でアセロラを見やる。机に肘を付き、にこにこと笑顔を湛えるアセロラは、まるで裏表を感じさせない。しかしどうにも巧妙に誘導されたような印象を拭えず、俺は底知れないものを見る時のような、畏怖に似た感情を抱かずにはいられなかった。

 こう見えて、人を思い通りに動かす計算高さをこの女の子は持っているのかもしれない……。
 ▼ 190 ティオス@やさいパック 22/07/21 07:15:17 ID:tbksKTgA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 191 ドキング@こだいのどうか 22/07/25 18:28:31 ID:d9/24V0c NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しえん
 ▼ 192 マスジョー@アップグレード 22/07/29 18:14:52 ID:TQogqfV6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
次も楽しみ
 ▼ 193 ドラン@つららのプレート 22/08/07 08:44:52 ID:/fCQ3pIE NGネーム登録 NGID登録 報告
シエンネ!!
 ▼ 194 ノプス@れいかいのぬの 22/08/07 09:26:53 ID:4YWc1ySs NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 195 ノノクス@くちたたて 22/08/16 03:40:21 ID:umQMCd6U NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 196 ンクルス@イダイトウだんご 22/08/24 07:59:09 ID:aUmgWs2w NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 197 レイシア@ポイントカード 22/08/24 08:23:35 ID:F.tsJV/c NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
公式化も近いなやれやれ
このページは検索エンジン向けページです。
閲覧&書き込みは下URLよりお願いします。
https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=1670997
(ブックマークはこちらのページをお願いします)
  ▲  |  全表示197   | << 前100 | 次  |  履歴   |   スレを履歴ページに追加  | 個人設定 |  ▲      
                  スレ一覧                  
荒らしや削除されたレスには反応しないでください。

. 書き込み前に、利用規約を確認して下さい。
レス番のリンクをクリックで返信が出来ます。
その他にも色々な機能があるので詳しくは、掲示板の機能を確認して下さい。
荒らしや煽りはスルーして下さい。荒らしに反応している人も荒らし同様対処します。




面白いスレはネタ投稿お願いします!

(消えた画像の復旧依頼は、お問い合わせからお願いします。)
スレ名とURLをコピー(クリックした時点でコピーされます。)
新着レス▼