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ゴウ「最近、コハルの様子が……」

 ▼ 1 ガクチート@ずがいのカセキ 22/04/29 10:06:06 ID:z8FMeTQ2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 おかしい。
 コハルの、最近の態度はおかしい。

 俺に対する態度が変わった訳じゃない。変化したのは、俺の隣───サトシに対する態度だ。

 そのきっかけは明々白々だ。
 あの日の会話。コハルは天地がひっくり返ったかのような、大袈裟なリアクションをしたんだ。

「ええええぇ──!!? サトシってコンテストに出た事があるの!?」

 コハルのポケモンコンテストデビューの日の夜。カントーの研究所に戻り、サクラギ所長が録画していたコハルのパフォーマンスを見返しながら談笑していた時の事だ。

 なんで見に来てくれなかったのか。コハルは大遅刻をした俺達にねちっこく不満をぶつけ、俺達はしきりに謝罪を繰り返していた。
 そもそもサトシが……と俺が口にした事が、話の方向を決めてしまったと思う。

「急いでるっていうのに、バトルなんて始めるから……」

「悪い悪い。だって、売られた勝負は受けて立つしかないだろ? それに、あのコンテストマスターのミクリさんならなおさら…」

「コンテストマスター?」

 サトシの発言に目の色を変えるコハル。普段ならサトシの話には適当に相槌を打つだけだったのが、この時は違った。

 きっと、自らコンテストに出場した事で関心が高まっていたのだろう。コハルはそれがどんな人物で、どういった経緯でサトシとバトルする事になったのかを興味津々といった様子で尋ねた。

 すると、サトシの口から飛び出たのが「ミクリカップ」という大会の話だった。

「シンオウ地方を旅してた頃にミクリさんと出会って…」

「ヒカリと交換したブイゼルで参加することにしたんだ」

 ヒカリがかつてのサトシの旅仲間だという事は、既に周知のこと。俺はサトシがヒカリとポケモン交換をしていた事実に内心驚いていたが(サトシはそんな事は滅多にしない)、コハルはサトシのコンテスト出場にこそ目を皿にするのだった。
 ▼ 154 マゲタケ@マメよせだま 22/06/02 08:08:14 ID:uSc2zX/2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ……どうしてこんなに気がざわめくんだ……?

 コハルにサトシと同行するように勧めたのは、たしかに俺だ。けど今は、どこかでそれを後悔している自分がいた。

 コハルは、サトシに惹かれている……けどそれは、サトシのスペックの高さに気付いた故の感情だと思っていた。
 そう……彼氏にすれば自慢になるような、そんな打算に由来するものだとばかり思っていた。
 けど、そういった浅い感情だけで、あそこまで努力できるのだろうか……?
 俺は本当にコハルを理解しているのだろうか……?

 サトシの事も気がかりだ。
 花を贈ろうとしたり、一緒にいて楽しいと言ったり……あんなの、サトシじゃなかったら一発でコハルに気があると断定できる行動じゃないか。
 サトシは俺が思ってるほどに、ポケモン馬鹿じゃない、って事なのか……?
 もしサトシがコハルのあの笑顔を見ていたら、心動かされる事もあり得るのでは……?
 俺は本当にサトシを理解しているのか……?

 俺自身はどうだ。明らかに矛盾だらけだ。
 コハルを後押ししたように見えて、サトシがコハルに寄り添う事には納得していないような……。さっきのあれは、本当にそんな態度だった。
 俺は自分自身の本心すら、ちゃんと理解しているのか……?

 俺は毛布を頭までかぶり、煩い音もわずらわしい思考も遮断しようとした。
 寝れば忘れる。きっとそうだ。明日になればスッキリしてるだろう。
 明日はまた朝早くからウラウラ島へ移動だ。こんなリサーチは、さっさと終わらせてしまおう。もやもやした心なんて、夢の中に置いてきてしまおう。その一心で俺は目を強く瞑った。



 翌日。アローラは朝から大雨だった。

 ▼ 155 ローラダグトリオ@しんかいのキバ 22/06/02 12:28:22 ID:tCAYirtI NGネーム登録 NGID登録 報告
このssを読んでると文学を読んでるきになる。
支援
 ▼ 156 オチルドン@ガンバリのすな 22/06/02 19:35:00 ID:Eax6fk9E NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 157 ノガッサ@ラティオスナイト 22/06/03 21:25:59 ID:JyoIZtI6 NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
支援
 ▼ 158 モリ@ピントレンズ 22/06/04 14:23:43 ID:opzMoBcU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
面白くなって来たじゃないの
 ▼ 159 ライオン@どろだんご 22/06/05 14:35:31 ID:T5pUipM2 NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 160 ガイドス@ヒコウZ 22/06/06 10:11:07 ID:UXVUibP6 [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



「こりゃあ、船は出せないだろうな……」

 カキが重い口調で告げた。
 激しい豪雨はけたたましく屋根を叩き、強風が雄叫びを上げながら吹き荒ぶ。昨日までの快晴が嘘のような大嵐だった。

「台風が近付いてるのかな、これ…?」

「嘘…そんなの気象情報に載ってなかったよ…?」

 サトシとコハルが窓の外を見ながら弱った顔をする。どう見ても、船どころか出かける事も叶わない天気だ。
 俺もはぁ、と深くため息をつく。

「まさかの足止めだなぁ…」

「仕方がない。自然というのは、人間の都合を考えたりなんてしないからな」

 うなだれる俺をカキが宥める。アローラに住む人々は、都会に住む人々以上に自然への畏敬の念が強い。こういう悪い状況にも、冷静で達観的な見方を取る。ことにカキはその傾向が強いアローラの男子だ。

 ……それにしてもこんな寒い日でもカキは半裸なのか。
 ▼ 161 ワシ@けいけんポン 22/06/06 10:13:56 ID:UXVUibP6 [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「とにかくやむまで待機していた方がいい。遭難しては元も子もないだろう」

 至極もっともなカキの提案。しかしサトシは机に肘をついて愚痴たれた。
 
「でも、暇だな〜…」

「じっとしているのが苦手な性分は、変わってないみたいだな」

 カキがふっと笑う。サトシの親友兼ライバルなだけあって、対等で気の置けない間柄を匂わせるやり取りだ。

「カキだって熱くなったら一番勢いつけるタイプだろ?」

 人の事言えたもんかとばかりにカキの軽口に反論するサトシ。

「俺はお前と違って、冷静さは失わないがな」

「へぇー、本当か〜?」

「……試してみたいようだな?」

「えっ!? えっ!?」

 ニヤリと笑いながら視線で火花を散らす二人に、コハルが何事か分からず戸惑いだす。まあ、コハルは知らないだろうが…ポケモントレーナーというものは、こういうもんだ。
 目と目があったら……

「ポケモンバトルだ!!」

「この天気でぇ!?」

 そしてサトシとカキは、大雨吹き荒ぶのも構わず表でバトルに興じるのだった。
 ▼ 162 ノココ@すくすくこやし 22/06/06 10:15:58 ID:UXVUibP6 [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


「サトシってやっぱりポケモンバトルはとことん好きなんだね…」

 全身びしょ濡れになりながらも愉快そうにバトルするサトシとカキを窓から眺めて、コハルは苦笑を漏らした。

 まさかこんな悪天候でもバトルをおっ始めるなんて……言葉にこそしないが、こればかりはとても付き合えないという内心が如実に出ていた。サトシの事を好いていても、サトシのバトルへの情熱をコハルが理解するには、まだまだかかるだろうな。

「本当、最近は特に訓練に余念が無いんだぜ。もうすぐマスターズトーナメントだもんな」

 先日の事。ワールドチャンピオンシップスの今シーズン最後の入れ替え戦で強敵キバナを倒して、マスターズエイトに名を連ねるに至ったサトシ。いよいよ世界最強の座をかけて、各地方のチャンピオンクラスの人達と激戦を繰り広げる予定だ。

 サトシの目標は無敗の王者ダンデさんとのバトル───いや、ダンデさんに勝つ事だ。生半可な努力では到底成し遂げられない偉業。気合が入るのも無理もない事だ。

「…………そうだよね」

 コハルは窓の方を向いたまま、静かに呟いた。
 ……? 俺はその顔に違和感を覚えた。コハルの雰囲気はどこか寂しそうな、しかしそれを押し殺そうとしてるような、複雑な感情を垣間見せていた。何か気になるのだろうか……?

「……サトシって……」

 躊躇いがちに、コハルが言葉を紡ぐ。俺に向かってというより、独り言を零すかのように。

「ワールドチャンピオンシップスが終わったら……どうするんだろう?」
 ▼ 163 ールー@あやしいパッチ 22/06/06 10:17:42 ID:UXVUibP6 [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「えっ?」

 俺は机に肘をついた姿勢を崩し、呆然とコハルを見つめた。突然何を言い出すのだろう?

「だって、もし……もし仮にだよ? サトシが優勝して、世界で一番強いトレーナーになったら……どうするのかなって」

 コハルは今度は明確に俺に向かって話した。サトシの将来について、真面目に意見を聞きたいという面持ちで。

「……別に、最強のトレーナーになっても、変わらないんじゃないか? サトシはサトシっしょ」

 とりあえず受け答えをする。コハルが何か不安にしている風に思えたので、いたずらにそれを助長するような回答は避けた。しかし……

「そりゃあ、今とあまり変わらないとは私も思うけど……私達の所に留まってくれるのかなって……」

 コハルの目に、確かな憂いを見つけて。

 俺は、ハッと気付かされた。

 サトシが、いずれいなくなる───コハルはそれを危惧しているんだ。

 サトシの目標は、今のところは打倒ダンデだ。けど本当の夢は"ポケモンマスター"。
 サトシが提唱するその肩書が具体的に何なのかはイマイチ明瞭じゃないけど、世界一のポケモントレーナーよりも更に遠い先にあるのだけは確かだ。

 その夢を達成する為に、サトシがどうするか───"立ち止まる"なんて選択肢がサトシに無い事は、言うまでもない事実だ。

「…………」

 俺は言葉に詰まった。答えは嫌になるほど明確だった。ただ、答えるのが嫌だった。

 その可能性について今まで考えた事が無い訳じゃない。けど、それはもっと先の話だとずっと思ってきた。無意識に、考えないようにしていた……。
 けど、たった今コハルに指摘されて、それがそう遠くない未来に迫ってきているかもしれないと、気付かされたのだ。

 ───サトシが夢の実現の為に、俺たちと袂を分かつ日が、来るかもしれない事を……。

 俺とコハルは再び窓の方に目を向けた。窓の外で、雨の寒さを感じさせずに熱く昂ぶるサトシの姿がある。
 急に、その窓がテレビジョンのように思えた。どこか遠くで活躍するサトシの姿を、俺たちは離れた所から見守るだけになる……そんな妄想が頭をよぎった。
 ▼ 164 シャーモ@むしよけスプレー 22/06/06 20:21:37 ID:bzJMQ5aE NGネーム登録 NGID登録 報告
このssに会えて幸せ
 ▼ 165 コン@オリジンボール 22/06/09 18:12:16 ID:65Jch8.. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マジで本編でやって欲しい会話だな
 ▼ 166 バコイル@にじいろのはね 22/06/10 01:05:46 ID:jSsM6HgM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 168 クバリス@ずぶといミント 22/06/15 19:51:51 ID:WS/YKAQI NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 170 ガヤミラミ@そらいろたまいし 22/06/18 22:47:41 ID:87Z2PNrc [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「ひゃあ〜〜……濡れた濡れた……ッくしゅん!」

「さ、さすがに少し、寒くなって、きたな…へっくし!」

 バトルを終えて、全身ずぶ濡れになって戻ったサトシとカキはぶるぶると震え、くしゃみをした。

「結局勢いついたらどっちも冷静じゃないってオチだったな」

 「うっ……」

 俺の皮肉にぐうの音も出ない二人。コハルも呆れ混じりにため息をついた。

「もう、無茶するんだから……はい、タオル」

 小言を言いながら、ホシが用意したタオルを手渡すコハル。サトシとカキは有り難みを顔一面に浮かべながらそれを受け取った。

「へへっ、サンキュ、コハル」

「悪いな…。あ、ちなみに俺は呼び捨てで構わないぞ」

 二人してガシガシと体の水気を拭き取る。しかし、半裸のカキはともかく、サトシは服着のままバトルしてしまった。そちらは脱いで乾かす必要がある。

「サトシ。服を脱いで暖房のそばに置いておけ。そのままじゃ風邪引くぞ」

「そうだな」

 カキの注意に了承し、サトシはシャツの裾に手をかけ……

「えっ!? えっ、ちょっと待って!」

 コハルが慌てて背を向けた。
 ▼ 171 ィオネ@フーディナイト 22/06/18 22:50:40 ID:87Z2PNrc [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「え、どうしたコハル?」

「い、いや、その〜……///」

 しどろもどろに答えるコハルと、そんなコハルの急な動揺に訳が分からず疑問符を浮かべるサトシ。サトシからは見えないだろうが、コハルは顔を赤くしてしまっていた。
 ああ、そういう……。

「コハルー、サトシの裸ぐらいで照れんなよー」

「ちょ、ちょっとゴウ!?」

 俺の冷やかしに一気に沸騰を始めるコハル。今にやかんのようにヒーッ! と悲鳴を上げるんじゃないかと思えて、俺は頬が吊り上がるのを禁じえなかった。
 サトシに気がなかった頃ならともかく、今のコハルはサトシの素肌を直視できないという訳だ。

 その一方で、全く分からないとばかりにカキが首をかしげていた。

「男の裸が見慣れないのか? 俺はずっとこの格好だったんだが……」

「いや、カキも初めて見た時はビックリしたんだけど……」

 コハルは横目でカキに振り返りながらちょっと呆れ顔で突っ込んだ。確かに昨日のカキとの初対面でコハルはぎょっとしてたし、挨拶の時もぎこちない愛想笑いだったのを俺は覚えている。

「まあ、その、なんだ。着替えるまで部屋の外に出たらいいんじゃね?」

「う、うん……そうするね」

 弱りきった苦笑を顔に貼り付けて、コハルはいそいそと部屋を出た。そして黙って静かになりゆきを見ていたサトシがその後にぽつり。

「別に恥ずかしがる事無いと思うけどな〜」

「分からん。女心というものは全く分からん」

 サトシに同調するようにカキも呟く。この二人、本当に何から何まで似た者同士だなと思った。
 ▼ 172 ルッグ@たまむしプレート 22/06/18 22:52:25 ID:87Z2PNrc [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 午後に差し掛かる頃に、ようやく雨は静まる兆候を見せ始めた。
 俺たちの朝は、牧場の仕事の手伝い(主にポケモン達の世話や掃除)に終始したのだった。

 カキは風がやわらいだのを見るや、かっぱを着てリザードンに跨った。朝一で届けるはずだったモーモーミルクを配りに行くのだ。これが彼の生業である以上、遅れはしても欠かす訳には行かないという。

 俺たちはポケモンたちの健康チェックや、ミルタンクの乳搾りの様子などを見せて貰った。思いもよらぬ酪農体験にコハルはロマ〜ンを感じたようで、興味津々で身を乗り出して仕事を手伝っていた。ただし……

「あ…う…いたた……」

 時折たまりかねるように屈んでしまう。何事か聞くまでもなく、サトシが側に寄って支えた。

「無理するなよコハル。昨日の探索で、相当脚にきてるんだろ?」

 筋肉痛だ。ただでさえ俺やサトシほどに運動慣れしてないコハルが、あれほどの山道を無理して歩いたのだ。負荷の反動が来るのも無理はないというものだ。

「ご、ごめん……なんか、助けて貰ってばっかりだね……」

「気にすんなって!」

 申し訳なさそうにするコハルに、快活な笑顔で答えるサトシ。サトシに差し出された手をおずおずと取りながら、コハルは痛みを我慢して立ち上がった。

「……」

「……」

「……あの、コハル。手……」

「……あ、ごめん!」

 言われてはっとしたように、コハルは繋いだままの手をようやく離す。両の指で数えるほどの時間、コハルはサトシの手を取ったまま彼を見つめていたのだ。自分を気遣ってくれるサトシに、見惚れていたのだ。
 ▼ 173 リンク@ハートアメざいく 22/06/18 22:54:22 ID:87Z2PNrc [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「……」

 サトシは気付いてないだろうけど、あれは絶対にわざとだと俺は思った。その証拠に、コハルは離した手を名残惜しそうに両手でぎゅっと握りしめ、頬を赤く染めながら微笑んでいた。ラッキーな出来事を喜ぶ顔。

「コハル。歩くのもままならないくらいなら、もっと休んでた方がいいんじゃないか?」

 俺はやましさを隠すコハルに苦言をこぼしたい気持ちをこらえながら、やんわりと提案した。好意ゆえとはいえ、あんまりズルい事してサトシを困らせるのも考えものだ。

「うぅ……でも、せっかくの機会なのになぁ……」

「それじゃあいっそ、残るか? そんなに痛むんじゃ、どの道今日明日は花探しについてこれないだろ」

「そ、それは……自分でも分かってるけど……」

 さすがにこんな調子のコハルを連れて行くのは無茶だろう。今度ばかりはサトシも否とは言えなかった。

「コハル、どうする? ここでゆっくりしててくれてもいいんだけど……」

「……でも、二人は花探しのあと、どうするの?」

 コハルの疑問。予定では、今日は朝にウラウラ島へ行きクレナイの花を採集するはずだった。雨ですっかり遅れてしまった今、花を探すだけの時間しか残されていないだろう。もしかしたら今日中には見つからないかもしれない。その場合は……

「場合によっては、最初の予定にあったアセロラって人の所に泊まらせて貰う事になるかな……」
 ▼ 174 マタナ@きのはこ 22/06/18 22:55:16 ID:87Z2PNrc [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「でも、それだとコハルとは合流できなくなっちゃうな……」

 コハルと離れ離れになる事は避けたいと言いたげなサトシの発言。俺は複雑な気持ちを感じながらも、あくまで平静に努めた。

「だから、コハルがカキん家に残りたいか、俺たちと一緒にウラウラ島へ来るかって話だろ? どっちみち、一緒に探しに来れないのは変わりないんだし」

「そりゃあ勿論、行きたいよ」

「いいのか? せっかくの牧場体験の機会だぞ?」

「ゴウの意地悪。置いてけぼりにされても、ちっとも楽しくないよ」

 コハルがふくれっ面をする。サトシも「そうだぞ」と同意を示す。まあ、そりゃそうだろうな。

「悪い悪い、冗談だよ。それなら俺とサトシは船がもう出てるか確かめに行ってくるから、コハルはその間、無理せずに休んでるんだぞ」

「う〜ん、しょうがないよね……分かったよ」

 少し残念そうな顔をしつつも、コハルは了承した。




 別に、確認すらだけならサトシを連れて行かずとも俺一人で行けた。それをわざわざサトシも同行させたのは……。

 サトシをコハルから遠ざけたい気持ちが、心の奥底のどこかにあったからだ……。
 ▼ 175 ッポウオ@ガンバリのじゃり 22/06/18 22:56:39 ID:87Z2PNrc [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
(最近忙しさが集中して筆が取れる時間が少ないので更新遅くなってて申し訳ない)
 ▼ 176 ドキング@はがねのジュエル 22/06/18 23:03:16 ID:dlzwEa3c NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 177 シガリス@スターのみ 22/06/19 00:00:04 ID:HqEctUac NGネーム登録 NGID登録 報告
筆がとれる時間が少ないのに更新してくれて有り難う。
少しずつでも続きが観れる事が嬉しい。
支援
 ▼ 178 ルーグ@コンペボール 22/06/24 15:31:17 ID:2hy2nyK. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゆっくりで全然大丈夫ですので最後まで書き切って頂きたい
支援&保守
 ▼ 179 ングドラ@でんきのジュエル 22/06/24 18:08:59 ID:3DtMVGyo NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 180 モ@ふしぎのプレート 22/06/25 21:21:15 ID:/8G6G4r. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
紫煙
 ▼ 183 ャラコ@まんたんのくすり 22/07/07 20:18:05 ID:1O7wVgIQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゆっくりでいいでっせ
 ▼ 184 ェローチェ@おだんごしんじゅ 22/07/19 22:00:20 ID:mtMk9EVo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
失踪しないで
 ▼ 185 ルメタル@レトルトバーグ 22/07/21 06:11:49 ID:WsBgBLds [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 分厚い雲も遠ざかり、すっかりいつも通りのアローラの天気に戻った頃。
 俺たちは昼食までご馳走になったカキの家にお礼を言い残し、ウラウラ島へと向かった。一日の残り時間は僅かだが、絶対に今日中にオドリドリの好物の花を見つけてやると、俺は熱意を高めていった。

「先に、アセロラん家に行こうぜ。コハルにそこで休んでて貰う為にさ」

「うん」

 まずはアセロラという人の自宅へと向かう。道中は時間を無駄にしないよう、コハルにはゲンガーの背中に乗ってもらったが、町中をポケモンに乗って渡り歩くのはちょっと恥ずかしいのか、コハルはそわそわしていた。

「大丈夫だよコハル。アローラではポケモンライドって、珍しくないから」

「そ、そうなの…?」

「ほら、あっちにムーランドに乗った女の人もいるじゃん」

「あ、本当……」

 都会ではあまり見られない光景がごく自然に目の前に広がっている事実に、コハルは目から鱗が落ちる気持ちのようだった。

「なんなら、ケンタロスに乗ってかっ飛ばすか?」

「それは流石にできないよ!」

 俺の冗談に大慌てでノーと答えるコハル。サトシが大いに笑った。


 ……いつも通りの他愛無い会話に見えて、俺は少し無理をしていた。早くアセロラという人の家につきたかった。
 ▼ 186 ータクン@ももいろはなびら 22/07/21 06:12:30 ID:WsBgBLds [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 やがて辿り着いた場所は、図書館。件の人はここに住み込みで働いてるという
 サトシが大声で呼びかけると、中から小柄な女の子が満面の笑みで出迎えてくれた。

「サトシ、久しぶり〜!」

「アセロラ〜!」

 想像とはえらい違いの人物に、俺とコハルは面食らって立ち止まってしまった。

「え……アセロラさんって……その子?」

「そうだよ! あれ、どうかしたのか?」

「いや……サトシが世話になったって言ってたから、てっきり大人の人かと思ってて……まさか同年代だったとは……」

「あはは! ビックリしちゃったんだね! サトシがちゃんと説明しないから〜!」

 アセロラがサトシのうっかりを察して愉快そうに笑い、サトシが腕を組んで悩み顔になる。

「えぇ〜……言ってなかったっけ〜……?」

「……ま、まあ私達も、どんな人かとか詳しい事聞きそびれたのもあるから……」

 コハルがサトシのフォローをする。しかしサトシが言ってなかった事を証明する形になり、アセロラはやっぱりと言いたげにサトシの背を叩いた。

「ほらね〜! サトシは相変わらずだ〜!」

「う、う〜ん……そうみたいだ……」

 がっくりとうなだれる。そんなサトシを尻目に、アセロラはさあさあと中へ案内する。俺とコハルがその後に続いた。

「サトシとアセロラさん……仲がすごく良さそうだね……」

 コハルがぼそりと小声で呟いた。俺も今しがたのやり取りを見ただけで二人の気の置けない間柄は伝わってきた。けど……。

「コハル……マオの時といい、簡単にヤキモチやきすぎだろ……」

「なっ!? ち、ちが……!! そういうんじゃ……!!」

 たちまち取り乱して否定する。その慌てぶりが図星だと物語ってるというのに、本当に誤魔化しが下手な幼馴染だと思う。

 俺はそれほど憂慮してなかった。何故ならサトシはヒカリやアイリスともこういった仲の良さを見せてきたからだ。どんなに関係が良くても、サトシの接し方に男女意識はほぼ見られない……。

 怪しいのは、コハルに対してだけなんだ……。
 ▼ 187 ルノズク@はいぶくろ 22/07/21 06:14:42 ID:WsBgBLds [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 リビングでお茶を出してもらい、俺たちは事情を説明。……しようとしたが、アセロラは既にマオ達から話は伝え聞いていた。
 オドリドリの生態調査。フォルムチェンジの条件の発見。そして極めて重要な、花の場所……。

「実はね、あたし、赤色のオドリドリがよく見られる場所を知ってるよ!」

「え、本当!?」

「うん!」

 そう言ってアセロラが取り出したのは、ウラウラ島の地図。現在地を指し示した後、アセロラは近くの森に指を滑らせた。

「この辺に行くと、いっつも赤色のオドリドリが見れるんだ! だからきっと、ここに花があると思うの!」

「へぇ〜、近いじゃん!」

「これなら今日中に見つかりそうだぜ!」

 俺とサトシは棚からぼた餅とばかりに舞い上がった。どうやら今朝の遅れは取り戻せそうだ。

「じゃあ、早速出発だな! 早いうちに見つけられたら、今日中にポニ島に行けるかもしれない!」

 俺は興奮したままにまくし立てた。現状はオドリドリの4つ目のフォルムへの鍵となる情報は何も無いが、法則から考えれば、最後の一つはポニ島にあると見ていいだろう。

 そんな俺にアセロラが釘を差した。

「今日の分のポニ島行きの船はもうないんだ〜」

「…………そっか〜〜〜………」
 ▼ 188 ルマユ@くろおび 22/07/21 06:16:48 ID:WsBgBLds [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 心底落胆してしまった俺に、サトシが慰めてくれた。

「がっかりするなよゴウ。ゆっくりでいいじゃん」

「そうそう。ゆっくりしていってよ!」

 アセロラも屈託ない笑顔で勧める。

「それに〜……あたしも二人といっぱいお話ししたいし!」

 アセロラはそう言って、俺とコハルに視線を向ける。俺はドキリとした。

 ───まさか、アセロラまで……?

 マオ達から予め話を聞いていたアセロラ……という事は、コハルのサトシへの気持ちも告げ口されてる可能性が高い。そしてこういう時の女子の一体感は、もう嫌というほど見せられている。

 ───アセロラもコハルを後押しする気かよ……!?

「……ま、まあいいけど! ゆっくりな話はせめてクレナイの花を見つけてからな! あくまで調査に来たんであって、遊びに来た訳じゃないし!」

 瞬時に駆け抜けた嫌な予感に駆られて、俺はくつろぎムードを払いのけた。またアローラの人特有のお節介でサトシとコハルに距離を縮めろと迫られるのは勘弁だった。
 しかし意外にも、アセロラは態度を曲げず、むしろ感心したようにへぇ!と声を上げた。

「ゴウ、真面目だね! クチナシおじさんに見習って貰いたいよ!」

 そう言ってクスクスと笑う。反発されると思いきや褒め称えられる展開に、俺は拍子抜けして呆然としてしまった。
 ▼ 189 ガラグラージ@アクロママシーン 22/07/21 06:18:33 ID:WsBgBLds [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「クチナシさんって?」

「ああ。ウラウラ島の島キングだよ」

 コハルの素朴な質問に応えるサトシ。島キングであり交番所に務める警察官とのことだが、結構不真面目でちょいワルな性格だという。

「島巡りで大試練の挑戦に来た時も、なかなか勝負受けてくれなくてさー」

「サトシだけじゃないんだー。面倒くさくて追い返そうとしちゃったチャレンジャー」

「そんな人が島キング務めてていいのか……?」

 サトシとアセロラはあっけからんと話すが、俺からすればそんな大人はあり得ないというものだった。コハルも冷や汗を浮かべている。

「むしろ、サトシはどうやって挑戦受けて貰ったの……?」

「ああ、それは〜……」

 ……あ、あれ? 結局雑談ムードになってないか……?

 危うく流されそうになった。サトシは何の気無しに当時のいきさつを説明し始め、コハルは興味深げに聞きに回ったが、俺は出発のタイミングを逃した事に内心動揺していた。

 ま、まさか……アセロラの作戦……なんて事ないよな……?

 俺はこっそり横目でアセロラを見やる。机に肘を付き、にこにこと笑顔を湛えるアセロラは、まるで裏表を感じさせない。しかしどうにも巧妙に誘導されたような印象を拭えず、俺は底知れないものを見る時のような、畏怖に似た感情を抱かずにはいられなかった。

 こう見えて、人を思い通りに動かす計算高さをこの女の子は持っているのかもしれない……。
 ▼ 190 ティオス@やさいパック 22/07/21 07:15:17 ID:tbksKTgA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 191 ドキング@こだいのどうか 22/07/25 18:28:31 ID:d9/24V0c NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しえん
 ▼ 192 マスジョー@アップグレード 22/07/29 18:14:52 ID:TQogqfV6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
次も楽しみ
 ▼ 193 ドラン@つららのプレート 22/08/07 08:44:52 ID:/fCQ3pIE NGネーム登録 NGID登録 報告
シエンネ!!
 ▼ 194 ノプス@れいかいのぬの 22/08/07 09:26:53 ID:4YWc1ySs NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 195 ノノクス@くちたたて 22/08/16 03:40:21 ID:umQMCd6U NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 196 ンクルス@イダイトウだんご 22/08/24 07:59:09 ID:aUmgWs2w NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 197 レイシア@ポイントカード 22/08/24 08:23:35 ID:F.tsJV/c NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
公式化も近いなやれやれ
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