【短編SS】キミに決めて、ホント良かった。

　ここはアローラ地方、ウラウラ島にある図書館。


　おや……？


　なにやらサトシとポケモンたちが、図書館の前に集まってなにかやっているみたい。


　いったい、なにをやっているのかな？



サトシ「よーし、みんな！　クチナシさんの試練に向けての特訓、頑張ろうぜ！」


ルガルガン「ガウ！　ガウ！」

ニャヒート「にゃひぃ！」

モクロー「クロ！　クロォ！」

ベベノム「ベベ♪」

ピカチュウ「……………………」


『進化して格好は変わったかもしれないけど、お前はお前だ』


『"がんばりや"で』


『人懐っこくて』


『ちょっとドジなところもあって……』


『俺はそんなお前のことが"大好き"だよ！』


ピカチュウ（ピカピ……）

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　……ｽﾞｷｯ

サトシ「じゃあ、まずは……」

サトシ「ルガルガン！　キミに決めたッ！！」

ルガルガン「ガウ♪」


ピカチュウ「！」


サトシ「で、相手は……」

サトシ「ニャ「ピカピ！！」ヒー……ト……」

サトシ「……ピカチュウ？」

ニャヒート「…………にゃ？」

ピカチュウ「ピカピ！　ピカピィカァ！」

サトシ「もしかして……」

サトシ「ピカチュウ、お前がバトルしたいのか？」

ピカチュウ「ピカッ！」ｺｸｯ

サトシ「…………よし！　お前の意気込み、買ったぜピカチュウ！」ﾆｶｯ

ピカチュウ「ピカ♪」


サトシ「よっしゃ！　早速特訓、始めるぞ！」

ロトム「記録はボクにお任せロト！」

支援

ピカチュウ「ピカピカッ！」

サトシ「……あ、ゴメン！　ピカチュウ！」

ピカチュウ「？」

サトシ「今回は新しく技を覚えた、ルガルガンとモクローを中心に特訓してやりたいんだ」

サトシ「だからお前は向こうに回って、ルガルガンの相手をよろしくな！」

ピカチュウ「ピ、ピカ……」


　ｽﾞｷｯ

サトシ「――頑張ろうぜ！　ルガルガン！」

ルガルガン「ウガウ！」

サトシ「……それじゃ、頼んだぜ！　ピカチュウ！」


ピカチュウ「ピカ……」

サトシ「よーし！　まずはルガルガン、"アクセルロック"！」

サトシ「ピカチュウは"でんこうせっか"だ！」


ルガルガン「ウガァッ！！」

ピカチュウ「ピッカァ！！」


　ﾄﾞｺﾞｵｫｯ！！


サトシ「！」

サトシ「……いいぞ！　ルガルガン！」

ロトム「スピードが以前と比べて10％上がっているロト！」

サトシ「カプ・ブルルとの特訓の成果か……」

サトシ「スッゲーじゃん！　ルガルガン！」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

ルガルガン「ガウ♪」


ピカチュウ「ピ、ピィカァ……」


　ｽﾞｷｯ

サトシ「じゃあ、今度は新技だ！」

サトシ「ルガルガン……"ストーンエッジ"！！」


　ｷｨｨｨｨﾝ！


ルガルガン「ガウ！」ﾀﾞﾝｯ

　ﾎﾞｺﾞｫｯ！


　ﾎﾞｺﾞｫｯ！


　ﾎﾞｺﾞｫｯ！


ピカチュウ「…………ッ！」


サトシ「――"10まんボルト"だ、ピカチュウ！」

ピカチュウ「！」

サトシ「迎え討て！」

『俺の一番"好き"な技でいきます！　"10まんボルト"！』


ピカチュウ「…………！」


ピカチュウ「ピカ……」ﾊﾟﾘｯ！ﾊﾟﾘｯ！


ピカチュウ「チュウゥゥゥゥ！！！」


　ﾊﾞﾘﾊﾞﾘﾊﾞﾘｨｯ！！

　ﾊﾟﾘﾝｯ！


　ﾊﾟﾘﾝｯ！


　ﾊﾟﾘﾝｯ！


ルガルガン「！？」


サトシ「……ッ！　"10まんボルト"が"ストーンエッジ"を貫きながら進んで……！？」

ロトム「普段よりも威力が25％上昇している……」

ロトム「スゴいロト！」

サトシ「！」

ルガルガン「……ガ……ァ……ッ！」ﾊﾞﾁﾊﾞﾁｨｯ！


　ﾄﾞｻｯ


サトシ「…………ルガルガン！」


ピカチュウ「ピカッ！」ﾋﾟｮﾝ


ロトム「ピカチュウの尻尾が白く光って……あれは"アイアンテール"ロト！？」

サトシ「！？」


ピカチュウ「チュウ〜……」

サトシ「……よせ！　ピカチュウ！　ルガルガンはもう――」

ピカチュウ「ピッカァ！！」

サトシ「……クソッ！」

　ｽﾞﾊﾞｧｧｧｧﾝ！！








サトシ「ぐあっ…………！」

ピカチュウ「……………………………………ピカ」ﾊｯ

ピカチュウ「ピ……ピカピ！！？」


　ﾄﾞｻｯ

すぃえん

サトシ「い、いってぇ〜〜……！」


ピカチュウ「ピカピ……ピカピカァ……」


サトシ「……大丈夫か！？　ルガルガン！」ﾀﾞｷｯ

ルガルガン「……ッ！」


ピカチュウ「ピカ！　ピィ……ピィカァ……！」


サトシ「……ッ！　ダメージが大きい……」

サトシ「早くアセロラに頼んで応急手当てしてもらわないと！」


ピカチュウ「……………………ピカ」


サトシ「……ピカチュウ！　お前も大丈――」

サトシ「……………………………………ピカチュウ？」

ロトム「い、いなくなってるロト〜〜！！？」

サトシ「ピカチュウ……なんで……？」


　ﾊﾞﾀﾝｯ


アセロラ「……大丈夫？　なんか大きな音が――」


アセロラ「！」

アセロラ「サトシ！　ルガルガンも！……いったいどうしたの！！？」

サトシ「あ、アセロラ！　ルガルガンの応急手当てを頼む！」

サトシ「……俺はピカチュウを探しに――」ｽﾞｷｯ


サトシ「いっ！？！？！？！？」


アセロラ「……なにがあったのか知らないけど、とりあえず落ち着いてよサトシ。それに……」

アセロラ「その足の怪我じゃ、どこにもいけないでしょ？」

アセロラ「ルガルガンと一緒に手当てしてあげるから、入った入った！」


サトシ「クソッ、ピカチュウ……」


サトシ「…………うん。ありがとう、アセロラ」

＿＿＿＿＿＿＿＿
＿＿＿＿
＿＿
＿


アセロラ「……そっか。ピカチュウがそんなことを……」

サトシ「ああ……」


アセロラ「……はい！　手当て完了！」

アセロラ「まだ痛みはあるけど、これで動けるハズだよ」

サトシ「サンキュー！」

サトシ「……よし！　ピカチュウを探しに――」

アセロラ「……ストップ！」

サトシ「な、なんだよアセロラ！？　まだなにか――」

アセロラ「サトシ、ピカチュウがどこにいったのかわからないでしょ？」

サトシ「あ……」

アセロラ「それに――」

サトシ「？」

アセロラ「それに話しを聞く限り、ピカチュウ……なにか理由があってこんなことしたんだと思うの」

サトシ「……当たり前だろ！　ピカチュウが理由もなくこんな――」

アセロラ「なら！」

サトシ「ッ……！」

アセロラ「……なら、その理由がわからなきゃ見つけても戻ってきてくれない……」

アセロラ「きっとまた逃げられちゃうよ？」

サトシ「くっ……！」

アセロラ「……だから落ち着いてその理由、考えようよ。アセロラもピカチュウ探すの手伝うから、ね？」


サトシ「……………………」


サトシ「…………うん、ゴメン……」

支援

サトシ「……っていっても、なんのヒントもなしじゃなぁ……」

アセロラ「うーん……行き先の心当たりならあるんだけど、理由の心当たりは……」


幼女「ピカチュウ……昔のラプーみたいに暴れん坊になっちゃったのかなぁ」

少年「俺たちと遊んでくれた時はおとなしかったのに……」


サトシ「…………ラプー？」

アセロラ「あ、うん。ラプーはね――」

＿＿＿＿＿＿＿＿
＿＿＿＿
＿＿
＿


アセロラ「――はい。これで『欲しがりラプー』の新しいお話はおしまい」

サトシ「へぇー、欲しがりじゃなくて、ホントは"さみしがり"なゲンガーの話かぁ……」


サトシ「……ん？」

アセロラ「どうかした？」


サトシ（"さみしがり"……）

『だからお前は向こうに回って、ルガルガンの相手をよろしくな！』


『ピ、ピカ……』


サトシ（……そういえば今日のピカチュウ、今思えば妙に寂しそうだったような……）

サトシ（それに――）


『ピカチュウ、お前がバトルしたいのか？』


『ピカッ！』


サトシ（――あの時バトルを買って出たのも、気合いが乗ってるからだと思ってたけど……）

サトシ（ホントは、俺に構ってほしくて……？）

サトシ（いや、でも――）

サトシ（なら、なんで俺の前からいなくなるんだ？）

サトシ（俺に構ってほしいんなら、俺の前からいなくなる理由はないハズ……）


サトシ「…………」ｳｰﾝ、ｳｰﾝ


アセロラ「…………サトシ？」

サトシ「…………駄目だ！　わからなーい！」

アセロラ「！」ﾋﾞｸｯ

サトシ「こうなったら――」

アセロラ「……こうなったら……？」

サトシ「こうなったら、困った時の『論理的結論』だ！」

アセロラ「？」

幼女「？」

少年「？」

「「「ろんりてきけつろん？？？」」」

　――メレメレ島、ポケモンスクール。


　prrrr……


リーリエ「はい、リーリエです」ｶﾞﾁｬｯ


『アローラ！　リーリエ！』


リーリエ「！」

リーリエ「……サトシからです！」


マオ「え！　サトシ！？」

カキ「おお！　サトシからか！」

スイレン「サトシ、元気かな」

マーマネ「試練に挑戦するって意気込んでたけど……どうなったんだろ？」


リーリエ「え……は、はい。わかりました」

リーリエ「……なんでも、わたくしに話しがあるそうなのでいってきますね」

　ﾀｯﾀｯﾀｯ……




マオ「リーリエに話しかぁ……あたしたちにわからない、難しい問題かな？」

カキ「うおおおおお！！！　サトシよ……」

カキ「友であり好敵手であるこの俺にも話せないことなのかぁ〜！！？」

スイレン「カキ、大げさ……」

マーマネ「暑苦しいよ……」

＿＿＿＿＿＿＿＿
＿＿＿＿
＿＿
＿


サトシ「……ってわけなんだ！」

サトシ「リーリエなら俺より頭もいいし、パートナー交換の授業でピカチュウを預かってくれたこともあっただろ？」

サトシ「それでなんかわかるんじゃないかって思って連絡したんだけど……」


『なるほど……』


サトシ「……どうかな？　なになわからないか？」

『……わたくしも本でしか読んだことがないのですが――』


サトシ「……わかるの！？　さっすがリーリエ！」

サトシ「じゃあ、いつもみたいにズバッと『論理的結論』を――」


『いえ……』


サトシ「？」

『この問題に関しては論理的結論を出すことはできません』


サトシ「え……どうして……」


『なぜなら、これは――』

『なぜならこれは、サトシ、そしてピカチュウ……』

『二人の心の問題だからです』


サトシ「心の、問題……？」


『……ええ。落ち着いてよく聞いてください、サトシ』

『ピカチュウは――』

『………………………………おそらく、ピカチュウはサトシのことが"好き"なのです』

サトシ「…………へ？　好き？」


『ええ』


サトシ「なら、俺もピカチュウのことが大好きだよ！」


『……いいえ』

『サトシの言う好きとピカチュウの"好き"――』

『――同じ『好き』でも、二人の『好き』はまったく異なるものです』


サトシ「同じでも、違う『好き』……？」


『ええ』


サトシ「…………！」

サトシ（それって、ひょっとして……！？）

サトシ（けど……ピカチュウが俺のことを……？）


『……サトシ』


サトシ「！」


『ピカチュウの気持ちに応えてあげられるのはあなただけ……ピカチュウのこと、よろしくお願いしますね』

『今のあなたの"すなお"な気持ち……それをピカチュウに届けてあげてください』


サトシ「……………………」

サトシ「……わかった、やってみる」

サトシ「ありがとな！　リーリエ！」


『はい！　がんばリーリエです！』


　ｶﾞﾁｬｯ

＿＿＿＿＿＿＿＿
＿＿＿＿
＿＿
＿


サトシ「……アセロラ！」


アセロラ「あ……お帰り、サトシ」

サトシ「ピカチュウがあんなことした理由、そして――」

サトシ「――俺の前から姿を消した理由。……答え、出た」

アセロラ「！」

アセロラ「……なら、早速一緒に――」

サトシ「いや」

サトシ「これはたぶん、俺が一人でいかなきゃならないことなんだ」

サトシ「だからさっき言ってた心当たり、その場所だけ教えてくれないか？」

アセロラ「え、けど――」

サトシ「……頼むよ」

アセロラ「…………うん、わかった」

サトシ「サンキュー！」ﾆｶｯ

　――森。


　ﾀｯﾀｯﾀｯ……


サトシ「ハァ……ハァ……」


サトシ「どこだ……ピカチュウ……」


サトシ「……ピカチュウーー！！」

サトシ（今日ピカチュウが寂しそうだったのは、俺がルガルガンばっかり構うのに嫉妬してたから――）


サトシ（あの時バトルを買って出たのは、その嫉妬心ゆえ――）


サトシ（そしてあんなことしてしまったのは、気持ちが爆発しちまったからだったのか……）


サトシ「クソッ……なんで俺は気がついてやれなかったんだ……」


サトシ「ずっと一緒にいた、かけがえのないパートナーだってのに……」


サトシ「ピカチュウ……」


　ﾋﾟﾀｯ


サトシ「……ピカチュウーーッ！！！」

　ｶﾞｻｶﾞｻ


「……………………！」


（ピカピ……）ﾁﾗｯ



サトシ「……………………」ｷｮﾛｷｮﾛ


サトシ「！」


サトシ（あの足跡……！）

サトシ「…………いるんだろ！？　ピカチュウ！」


「！」


サトシ「姿を現さなくてもいい……だから！」


サトシ「だから、俺の話しを聞いてくれ！」


「…………」

サトシ「ゴメンな、俺……そういうこと、全然、わかんなくて……」


サトシ「だから全然、お前の気持ち……気がついてやれなくて」


「！」


（ピカピ、ピカピカ……）ﾌﾙﾌﾙ


サトシ「今日だってお前の様子がおかしいこと、真っ先に気がついてやるべきだったのに……」


サトシ「けど、俺……ルガルガンが、みんなが」


サトシ「どんどん強くなっていくのが嬉しくて」


サトシ「それでお前の変化に、気がついてやれなくて……」

サトシ「……こんな俺は、お前のトレーナーとして失格なのかもしれない」


「！」


（ピカ、ピィカァ……）ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ






サトシ「………………………………けど！」

サトシ「今日のことでわかった！」


サトシ「たとえ、そういうことがよくわかんなくても」


サトシ「たとえ、トレーナー失格でも」


サトシ「たとえ、お前の気持ちに気がついてやれなくても……」


サトシ「やっぱり、お前は俺の大切な相棒だ！」


サトシ「だから……」

サトシ「だからこれからもずっと一緒にいたい！！」


「！」


（ピカ、ピ……）ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ



サトシ「だから――」








サトシ「――この質問に答えてくれ！」

サトシ「キミは俺が嫌い？」

「！」


『キミは俺が嫌い？』


「……………………」

　ｶﾞｻｶﾞｻ


ピカチュウ「……………………」


サトシ「…………ピカチュウ……」


ピカチュウ「ピカピ、ピカピィカァ……」ﾌﾙﾌﾙ


　　　　　　……ﾎﾟﾀｯ


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　……ﾎﾟﾀｯ


サトシ「……ありがとう、ピカチュウ……」

サトシ「俺"も"キミが"好き"だよ……！」ｷﾞｭｯ……

　　　　"出会えて、良かった"



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　"キミに決めて、ホント良かった"

　世界一のポケモンマスターを目指す少年、サトシ。


　そしてその相棒、ピカチュウ。


　長い長い冒険の末、また新たな絆へと発展した二人。


　二人の冒険はまだまだ……


　……そしてどこまでも続いていく。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　――to be continued.

乙　です

……と、いうわけで終わりです。サトシ × ピカチュウのカップリングSSでした。見てくださった方々、ありがとうございました！

良いですね！乙！

>>60
期待

乙

サトピカええぞ〜
乙