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SS

【ポケダン超連作SS集】ニャスパー「私には叱ってくれる親もいない」

 ▼ 1 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 11:26:36 ID:TJx0YDds [1/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ある少女の独白

???「ふう……誰もいないわね」

???「私、どうしてもしなきゃいけない事があるの」

???「ごめんね」

にっこり笑って彼女はそう言った。

そして少女は……コノハナの家に忍び込み、彼女の友人が眠る部屋を目指した。
 ▼ 2 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 11:27:02 ID:TJx0YDds [2/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
チョボマキ「俺、取り巻きやめるわ」
 ▼ 3 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 11:27:24 ID:TJx0YDds [3/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヤンチャム「はあ? いきなり何言ってんだよ!」

チョボマキ「言った通りだよ。俺もずっとこんなんじゃ良くないかな、と思って」

ヤンチャム「……そうか。ま、わかった。これからもいい友達でいような!」

チョボマキ「ヤ、ヤンチャム……」

ヤンチャム「うわっ、泣くなよ、気持ち悪いな! いや泣くな! ああもう……」
 ▼ 4 安の宇宙紅茶館◆G44lUgh2Zk 15/11/14 11:27:42 ID:mzKlBDIw NGネーム登録 NGID登録 報告
っナイフ
 ▼ 5 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 11:27:44 ID:TJx0YDds [4/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
チョボマキ「ってな事があってさ」

ヤンチャム「っつー訳で俺たちこれから普通に友達としてやって行きたいんだけどよ……」

ヌメラ「よかったね!」

シキジカ「いや、でも……どうしたの? なんか暗い顔してるよ?」

ニャスパー「なるほどね」

唐突に語るニャスパーに俺を含めて全員が短く驚く。

だってさっきまでこいついなかったんだぜ?

ヌメラ「い、いたんだ……」

ニャスパー「うん。で、チョボマキの悩みってさ……ヤンチャムへの依存をどうしても断ち切れないって事よね?」

はい? こいつ、何言ってるんだ?

ニャスパー「あ、難しかった? どうしても取り巻きやっちゃうって事よ」

うーん、やっぱこいつは苦手だ。心を完全に読まれるなんてやりづらいったらありゃしない。

ま、なんだかんだ言っても嫌いではないんだけどな。
 ▼ 6 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 11:28:05 ID:TJx0YDds [5/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
それはそうと。

チョボマキ「そうなんだよ。今までずっと一緒にいたからなあ……」

ヌメラ「そういやなんでずっと一緒にいるの?」

ヤンチャム「さあ? 改めて考えると、なんでだろうな?」

え……

ウソ……だろ?

チョボマキ「ホントに覚えてないのかよ!」

ヤンチャム「え……」

絶句するヤンチャムをそのままに語る。

チョボマキ「あの時、俺……ホントに忘れてんのかよ」

ヤンチャム「う……すまん」

その瞬間、何かが切れた気がした。

チョボマキ「……もう知らない」
 ▼ 7 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 11:28:27 ID:TJx0YDds [6/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
後ろからかけられる声を後目に俺は走り出す。

もっとも、その体つきのせいで、走ると言うより飛び跳ねて行く感じなんだが、そんな事はどうでもよかった。

ヤンチャムがあの事を忘れている。

その事がただただショックで。

だから俺は、後先考えずに村の出口から飛び出した。

誰かが制止してたかもしれないけど、正直全く聞こえなかった。

チョボマキ「なんだってんだよ……」
 ▼ 8 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 11:28:48 ID:TJx0YDds [7/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
記憶が過去へと舞い戻る。

懐かしいあの時の思い出。

当時はホント、死ぬほど怖かったけど。

それでも時間はその恐怖すら薄めてくれるらしい。

いや、でも。

もういいんだ。

ヤンチャムはもうその事を覚えてない。

そんなぐらいなら、俺、もう……友達どころか……













あいつの取り巻きですら……いられない。
 ▼ 9 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 11:29:13 ID:TJx0YDds [8/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
チョボマキ「ここ……どこだ?」

あてもなくフラフラ歩いてた。ら。

いつの間にやら見覚えのない場所に着いていた。

チョボマキ「不思議のダンジョンっぽいけど……」

まあいいさ。

どうせ俺は1人だ。

別に俺がいなくてもみんななんとかなるだろ。

足(なんて無いけど)が勝手にそっちに向かった。
 ▼ 10 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 11:29:35 ID:TJx0YDds [9/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
チョボマキ「虫のさざめき!」

なんだ。

ここの敵、たいして強くないじゃん。

むしろザコ?

ま、俺が強いからだな!

……そもそもあいつらがオーブの力で俺たちにも経験値くれてるからだけどさ。

チョボマキ「でもまあ、なんだかんだ先に行けそうだな!」

強がってはみるけど、先に行った後どうするのかなんて全く考えてなかった。
 ▼ 11 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 11:30:04 ID:TJx0YDds [10/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
うわっ、急に開けたな。

ってかなんか嫌な予感がするんだけど……

こう、開けた所は何か強敵が出て来るって相場は決まってる。らしい。

あいつらのセリフだけど。

とにかく。

チョボマキ「どうしよう……」

なんだかほとぼりも冷めて来た。

そんなぐらいじゃヤンチャムと仲直り出来る気はしないけど、そろそろおだやか村に……

――チョボマキ、聞こえる?

え? ニャスパー?

――ええ。今更テレパシー使えばいいって事に気付いて。今どこ?

答えらんねえよ、そんな事。

しまった! 意地張って俺……

――帰りたいのね?
 ▼ 12 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 11:30:46 ID:TJx0YDds [11/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ったく、これだからこいつは……

――じゃあ今どこか教えて。

わかったよ! と言っても……ここ、どこだ?

――え?

わかんねえんだよ。

――ウソ……

ホントだよ。

――じゃあ、そこの景色を説明して。

えっと……

今見える光景を頭の中に映し出す。

――わかった。じゃあ今から行くね。

……すま……

チョボマキ「ぎゃあああ!」

――チョボマキ? どうしたの? チョボマキ?

プツンと交信が途絶えた。

と言うより、断ち切った。
 ▼ 13 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 11:31:09 ID:TJx0YDds [12/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
だって……目の前に……

チョボマキ「カ、カブルモ……」

俺の潜在的恐怖を呼び起こすポケモン、カブルモ。

まだポケモンが文明を持っていなかった頃に天敵だった名残らしいが、どうしてもカブルモだけは本能的に恐ろしい。

体が情けなく震える。

俺、こんなどうしようもない奴だったんだ……

あいつらは、世界を滅ぼしかねないような奴に立ち向かったってのに、こんなザコなはずのこいつにすら、怯えて縮こまる事しか出来ないなんて。

カブルモが笑みを浮かべる。

その瞬間、確信した。

こいつもダンジョンにいるポケモンの常で、自我を失っている。

だとすると……余計まずい。

本能のまま俺は襲われ、食われるんだ……
 ▼ 14 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 11:31:40 ID:TJx0YDds [13/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
必死に逃げる、しかし敵は追跡の手を止めない。

次第に次第に、俺は隅に追い詰められていく。

はは、もうダメなのか……

途方もない恐怖に、あの時の事が脳裏にフラッシュバックする。

これがいわゆる走馬燈かあ、なんてぼんやり考えながら目を閉じた。
 ▼ 15 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 11:32:01 ID:TJx0YDds [14/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あの時も俺は襲われて、それをヤンチャムが追っ払ってくれたんだ。

そして俺は。

チョボマキ「あ、あの……と、友達になってください!」

内気だった俺はそのなけなしの勇気を注ぎ込んでそう言った。

その時の自分には、自分より強い存在であるヤンチャムがものすごく頼りになる……そう思ったから。

もちろん今だってその印象は変わってないけどな。

するとヤンチャムは。

ヤンチャム「んだようっとうしい。あいつがムカついたから倒しただけで、別にお前を助けた訳じゃねえよ!」

チョボマキ「それでも……お願いします!」

そう言った俺に、ヤンチャムは少し思案を巡らせると、こう言った。

ヤンチャム「友達じゃなくて……俺の子分になら……なってもいいけど?」

その時以来、俺はヤンチャムの取り巻きをやっている。

いや、やっていた。もう過去の話だ。

……だから俺は、ヤンチャムがあの事件を忘れていた事に、必要以上にショックを受けたのかもしれない。
 ▼ 16 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 11:32:25 ID:TJx0YDds [15/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
不意に意識が現実に引き戻される。

唐突な痛みと共に。

チョボマキ「うわあああ!」

ただ、その痛みは。














格闘タイプの技による物だったからか、それほどひどい物ではなかったのだが。
 ▼ 17 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 11:32:51 ID:TJx0YDds [16/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
チョボマキ「ヤ、ヤンチャム……」

ヤンチャム「取りあえずお前をあのカブルモから引き離しといた! ともえなげ!」

今度はカブルモに攻撃を食らわせる。

その攻撃は敵を容赦なく吹き飛ばした。

チョボマキ「な、なんで「話は後だ。逃げるぞ!」

チョボマキ「う、うん」
 ▼ 18 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 11:33:17 ID:TJx0YDds [17/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ダンジョンは行きはともかく帰りはよいよいだ。

行きと比べるとなんだこれ? と思うほどなんにもない。

取りあえず、先程の疑問をぶつけた。

チョボマキ「どうやってここが?」

ヤンチャム「ニャスパーがテレパシーで教えてくれたんだ」

チョボマキ「そっか……」

俺はあいつが苦手だ。

だけど、純粋にすごい。

あいつらが世界を救うのに一役買うのにも納得出来るほどに。
 ▼ 19 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 11:33:37 ID:TJx0YDds [18/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヤンチャム「ニャスパーの奴さ、全く焦ってなかったんだぜ?」

ヤンチャム「俺が一番近いから、急いでくれだってよ」

ヤンチャム「後、それと……」

チョボマキ「?」

ヤンチャム「さっきはごめん。俺も思い出したよ。ってかさ……」

そう言って先程までの表情とは一転、いつもの表情に戻って、

ヤンチャム「お前まあた襲われてやんの!」

その言いぐさに、「なんだよそれえ」と返しながら、こう思った。

俺、やっぱりヤンチャムと一緒がいいや!
 ▼ 20 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 11:34:00 ID:TJx0YDds [19/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
チョボマキ「俺、取り巻きやめるわ」 完
 ▼ 21 ロピウス@のんきのおこう 15/11/14 11:34:35 ID:TJx0YDds [20/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
今日はたぶんここまでです
 ▼ 22 ーナイト@ホイップポップ 15/11/14 11:39:50 ID:x/.pUeVk NGネーム登録 NGID登録 報告
 ▼ 23 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:26:59 ID:TJx0YDds [21/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ある少女の回想

私「ただいまー」

お母さん「お帰り」

そうやってお母さんは優しく笑う。

私にはお父さんはいないけど、それでも私にはお母さんがいるもん!

だから寂しくないんだもん!

お母さん「今日のごはんは……」


何気ない日常だった。

それが失われた今となっては、その大切さが痛いほどよくわかる。

後悔はしてないけどね。
 ▼ 24 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:27:19 ID:TJx0YDds [22/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シキジカ「みんなしっかりしてよ!」
 ▼ 25 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:27:39 ID:TJx0YDds [23/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カモネギ「ってな訳で……」

ヌメラ「へえ、ヤンチャムたちってそんな風に出会ってたんだあ」

カモネギ「ここはこうだから……」

チョボマキ「そうなんだよ。いやあ、あの時はかっこよかったなあ……」

カモネギ「で、あるからして……」

ヤンチャム「今はかっこよくないみたいに言うなよ!」

シキジカ「……」

カランコロンカランコロン

チャイムの音が鳴り響く。

でも、なんだか私の心はすっきりしない。

カモネギ「じゃあ、今日の授業はここまで!」

なんか、先生が見ててかわいそうになってくるの。
 ▼ 26 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:28:17 ID:TJx0YDds [24/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニャスパー「うん、その気持ちはわかるよ」

シキジカ「きゃ! ……なあんだ、ニャスパーか。脅かさないでよ……」

ニャスパー「ごめんごめん。いや、なんか浮かない顔してたから、どうかしたのかなあ? と思って」

シキジカ「で、私の心を覗いた訳ね」

ニャスパー「ごめん」

シキジカ「まあいいわ。その代わり、相談ぐらいしてもいいわよね?」

ニャスパー「もちろん。そのつもりで覗いたんだし」

シキジカ「で、相談なんだけど……」
 ▼ 27 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:28:38 ID:TJx0YDds [25/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニャスパー「なるほどねえ。まあ、正直シキジカがはっぱかけたらヤンチャムたちは真面目にやりそうな気がするけど」

シキジカ「え? なんで?」

ニャスパー「ううん、なんでもない」

変なの。なんかこう……時々私もニャスパーの言ってる事がわからなかったりするのよねえ……

まああの事件でもあそこまで活躍してたらしいし、そのぐらいじゃないとやってけないんだろうけどさ。

なんか私たちと比べて、ものすごく大人に近い、って感じ。

シキジカ「ふうん、で、なんでよ?」

ニャスパー「はあ……」

ため息をついた彼女。

その意味ありげな行為に余計好奇心が掻き立てられる。

シキジカ「ええ〜気になる!」

ニャスパー「ま、いつかわかるでしょ……」
 ▼ 28 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:29:00 ID:TJx0YDds [26/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニャスパー「それはともかく話を戻すよ。シキジカはみんなにもっと真面目に授業を受けて欲しい、と」

シキジカ「うん」

ニャスパー「じゃあ、そのために今足りないと思う物を考えてみたけどさ……」

シキジカ「うんうん!」

ニャスパー「私たちのクラス、団結力が足りないと思うのよね」

ニャスパー「あの肝試し事件以来ヤンチャムたちも割と大人しくなったじゃない?」

ニャスパー「でも、やっぱりバラバラなのよ」

ニャスパー「あの2人の事となると話は変わって来るけどね」

シキジカ「まあ……確かに。で?」

ニャスパー「だから、私たちで今度、一緒に何かしたらいいかなあ、なんて」

なるほど……

素晴らしすぎる提案に思わず息を飲んだ。
 ▼ 29 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:29:20 ID:TJx0YDds [27/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シキジカ「それいい! えっと……何する?」

ニャスパー「さあ? そこは自分で考えてよ」

シキジカ「えっ……いや、そりゃそうよね。ありがと! 相談に乗ってくれて!」

ニャスパー「いいのよ、私たち友達じゃない」

シキジカ「ふふ、ニャスパーもそういう事言うんだ」

ニャスパー「ちょっとどういう事?」

シキジカ「ううんなんでも。これでおあいこね。じゃ、また明日!」
 ▼ 30 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:29:42 ID:TJx0YDds [28/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
さて、と。

みんなで何かする……かあ。

何しよ……ううん……

ダンジョンに行く?

でもなあ……そうするには人数が多いし……

えっと、まずはメンバー確認しなきゃね。

私、ヌメラ、ニャスパー、ヤンチャム、チョボマキの5人か。

ううん……3×2にするには1人足りないし……

って言うかそもそも私たちが全員一緒じゃないと意味がないし……

となるとダンジョンって説は却下かあ……
 ▼ 31 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:30:05 ID:TJx0YDds [29/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
一晩中……とはいかないけど、割と夜通し考えて、寝不足。

その結果、当然と言えば当然なだけど、授業中にその足りない睡眠を補う事になる。

カランコロンと鳴り響くチャイムの音にはっと気付くと授業がいつの間にか終わっていた。

授業をちゃんと受けてもらおうと思ってした事がこの結果じゃあ、本末転倒ね……

ヌメラ「シキジカ、今日はどうかしたの? シキジカが居眠りなんて珍しいね」

シキジカ「うん……みんなでどこか行こうと思ってるんだけど、どこ行くか考えてたら夜遅くなっちゃって」

ヌメラ「え、みんなでどこかに?」

興奮した口調。私の提案に喜んでくれてるみたい。

シキジカ「そうだ。参考に、ヌメラはどこに行きたいとかある?」

そう軽い気持ちで尋ねてみた。

だから私、まさかヌメラからものすごいいい意見が返って来るなんて、考えもしてなかった。

ヌメラ「じゃあ……あの2人が入った調査団に行ってみたい!」
 ▼ 32 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:30:25 ID:TJx0YDds [30/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヌメラが話した言葉を頭の中で繰り返す。

調査団。2人が入った。

そこを見学するのか……

それいい!

シキジカ「それいい! ううん、最高よ!」

ヌメラ「え、そうかな?」

シキジカ「うん! ワイワイタウンならちょっとした観光も出来るし!」

ヌメラ「ちょっと遠いけどね。まあでも今の僕たちならなんとかなりそうだから」

ヌメラ「つながりオーブの力で僕たちも経験値が溜まってくからねえ」

シキジカ「えっと確か……キリタッタ山脈と後1個ダンジョンがあるのよね」

ヌメラ「らしいね。でも遠いから大きな休みがないと……」

シキジカ「そこは大丈夫よ。だってもうすぐ……」

シキジカ・ヌメラ「冬休み!」

2人顔を見合わせ、にっこり笑う。
 ▼ 33 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:30:45 ID:TJx0YDds [31/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニャスパー「なるほど。調査団見学ね」

シキジカ「それならみんな賛成してくれるでしょ?」

ニャスパー「でしょうね。なんたって私たちみんな調査団には恩がある訳だし」

それ、ニャスパーだけは言っちゃダメなんじゃ……

って言うか改めてすごいよね、ニャスパー。

私、クラスのリーダー的ポジションにいるけどニャスパーに敵う気がしないもん。

能あるウォーグルは爪を隠すってのをまさに体現してる感じ。

やっぱり父親がいなかった上に母親にまで死なれちゃったからこんなに強くなったのかな?

だとすると……なんか悲しい。

ニャスパー「心配しないでよ。私だってもう慣れてるんだし」

シキジカ「あ、ごめん」

うかつに考え事も出来ない。
 ▼ 34 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:31:07 ID:TJx0YDds [32/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニャスパー「この冬休みを使うのね」

ヌメラのアイデアをニャスパーに伝えたら、行けない可能性を全く気にしないでいつ行くかを聞いて来た。

まあ正直私も行けないなんて思ってないけど!

シキジカ「うん! ヤンチャムたちとも予定を合わせなきゃね……」

ニャスパー「あの2人ならあなたが誘えば絶対来ると思うけど……ま、そうしといた方がいいか」

シキジカ「だからなんでよ! それはともかく、任せといて! 場所もアイデアも出せなかったし、これぐらいは私がしないと!」

ニャスパー「頑張ってね」

シキジカ「もちろん!」
 ▼ 35 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:31:27 ID:TJx0YDds [33/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヤンチャム「調査団?」

シキジカ「うん! この冬休み、みんなで見学に行かない?」

ヤンチャム「めんどくせえなあ」

え、ウソ。

チョボマキ「素直じゃないなあ。行きたいなら行きたいって言いなよ」

ヤンチャム「うるさい! ……っと、そのう……行くよ。絶対行く!」

……なあんだ。ちょっとびっくりしちゃった。

シキジカ「家族に聞いといて。いついつは行けないとか」

ヤンチャム「わかった」

チョボマキ「オッケー」

よし。これでみんなに伝えた。

後は冬休みを待つだけ!

……ああ、今から楽しみだなあ。
 ▼ 36 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:31:50 ID:TJx0YDds [34/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
その後数週間後。

シキジカ「みんなちゃんと真面目に授業受けてよ!」

男3人「はーい」

不満気に声をあげる。

シキジカ「冬休みまでもうすぐだから最後ぐらいしっかりしなきゃね!」

ニャスパーも微笑みながらこっちを見ていた。

で、授業が始まって。

カモネギ「うん? お前たち、最近やけに静かだな。どうかしたのか?」

シキジカ「いいえ、なんでも?」

うるさいのが標準なんだね……
 ▼ 37 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:32:10 ID:TJx0YDds [35/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そしてついにその日がやって来た。

ヒヤッキー「みなさん、今日から冬休みです!」

4人「やったあああ!」

ヒヤッキー「体に気を付けて、カゼなどひかないように気を付けてくださいね」

5人「はーい(はい)」

ヒヤッキー「ではさようなら」

男3人「さよーならー!」

シキジカ・ニャスパー「さようなら」
 ▼ 38 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:32:42 ID:TJx0YDds [36/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヌメラ「ついに終わったね、学校!」

チョボマキ「楽しみだな!」

ヤンチャム「お、俺は別にそんな事……!」

シキジカ「強がっちゃって」

ヤンチャム「う、うるさい!」

ニャスパー「私行った事あるけどさ……」

あ、そうか。あの時に。

ニャスパー「結構遠いのよ。だから明日に備えて今日は早寝しときなさいよ?」

4人「OK・わかったー」

口ぐちに同意の声をあげた。
 ▼ 39 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:33:03 ID:TJx0YDds [37/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そして待ちに待った翌日。

出発の日。

シキジカ「みんな! ちゃんと準備した? オレンの実とか、リンゴとかピーピーエイダーとかプチ復活のタネとか!」

ヤンチャム「あ、ポケ預けるの忘れてた」

シキジカ「早くしてよ!」

ヤンチャム「はーい」

しばらくして。

ヤンチャム「じゃあ気を取り直して、しゅっぱーつ!」
 ▼ 40 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:34:11 ID:TJx0YDds [38/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キリタッタ山脈

ヌメラ「なんか落ちそうで怖いよ……」

って言うか……

シキジカ「なんで私がリーダーなの? ニャスパーでいいじゃない!」

ニャスパー「だってシキジカ近接技しかないからリーダーじゃないとなんにも出来ないし」

シキジカ「ヤンチャムだってそうじゃない!」

ふう……あきれ顔でため息をつくと彼女は、テレパシーでこう言って来た。

――ヤンチャムがリーダーって、なんか不安じゃない?

……まあ確かに私が行った方がいいのかもね。
 ▼ 41 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:34:54 ID:TJx0YDds [39/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
それはいいんだけど……

シキジカ「飛行タイプ多くない? どこから攻撃されるかぜんっぜんわかんなくて怖いんだけど」

ヌメラ「遠くから攻撃してくるのは僕とニャスパーでなんとかするよ!」

チョボマキ「……なあヤンチャム?」

ヤンチャム「う、うるさい! お、俺は別に高いところが怖いとか、そ、そんなんじゃないからな!」

高所恐怖症なんだ……

ヤンチャム「なんだよシキジカ! そんな目で見んなよ!」

ニャスパー「しっ……あそこで敵が寝てるわ」

とりあえず隣1マスに入らなきゃ起きないらしいよね。

だから上手く避けて行きたいんだけど……

通路の入口の隣で寝ないでよ……
 ▼ 42 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:35:31 ID:TJx0YDds [40/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シキジカ「ねえ、階段まだ?」

1フロアの構造が複雑に入り組んでて全然階段が見付からない。

ニャスパー「えっと……たぶんあっちね」

ん?

シキジカ「ひょっとしてわかるの?!」

ニャスパー「うん」

ヌメラ「なら先に言ってよ……」

ニャスパー「だって今、私たちおんなじ所ぐるぐる回ってるじゃない」

え、ウソ。

ニャスパー「だから行ってない通路はあっち。たぶんあの先に階段はあるわ」

ヤンチャム「シキジカ! ぐるぐる回ってるってどういう事だよ!」

ニャスパー「ヤンチャムも気付いてなかったじゃない。お互いさまよ」
 ▼ 43 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:35:51 ID:TJx0YDds [41/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
それにしても。

これはうっかり下を見られないなあ。

見たら最後、怖くて動けなくなりそう。

少しずつ高くなっていくのを感じながらそう思う。

まあ幸いと言うかなんと言うか、私たちの実力なら敵にそこまで苦戦するって事はないのよね。

時々チルットが歌って来たりまあ面倒な事はあるけど。

ニャスパー「もうそろそろね。次辺りがラストフロアだと思うよ」

階段をのぼりながらの発言に聞き返す。

シキジカ「どっちの意味で? これが最後なの? それともこのフロアの次?」

ニャスパー「あ、ごめん。これで最後のフロアだと思う」

よかった。

なら……

シキジカ「みんな、頑張ろ!」
 ▼ 44 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:36:41 ID:TJx0YDds [42/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そして……

ヌメラ「あっ、なんか開けた所に出たよ!」

チョボマキ「これってもしかして……」

シキジカ「着いた……?」

ニャスパー「着いてはないけど、キリタッタ山脈は抜けたわね」

ヤンチャム「ああ……怖かったよう……」

もう隠す気もないみたい。

ニャスパー「どうする? 今から行こうと思うと、ワイワイタウンに着くのは深夜になりそうだけど……」

シキジカ「行かないとすると?」

ニャスパー「野宿するしかないわね」

シキジカ「うーん……みんなはどうしたい?」

ヌメラ「深夜に着いても行くとこなさそうじゃない?」

チョボマキ「調査団の人たちも寝てるだろうからなあ」

ニャスパー「私も今から突っ込むのは得策じゃないと思う」
 ▼ 45 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:37:01 ID:TJx0YDds [43/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
となると……

シキジカ「じゃあ野宿するから、男子は火起こして。私たちは食べ物なんかないか探してくるから!」

いろいろとする事はあるけど、こう言うのはしっかりと役割分担して。

うん! もともとの趣旨「団結力を高める」にもちゃんと合ってるし、サイコーじゃない!


ヤンチャムたちが枯れ枝を探していて、私たちもすぐそばで食べ物を探す。

だから男子とも簡単に話せる訳で。

ヌメラ「なんかいつも以上にシキジカが頼れるね」

シキジカ「え、そう?」

ヌメラ「うん。なんかやる気に満ち溢れてるって言うか……」

シキジカ「そう……かなあ?」

ヌメラ「まああの2人に久しぶりに会えるんだし、そりゃそうか!」

シキジカ「いよいよ明日だもんね」

ヌメラ「うん! だから今はちゃんと仕事しないと」
 ▼ 46 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:37:21 ID:TJx0YDds [44/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
――あ、シキジカ? こっちにリンゴがいっぱい落ちてるよ。

シキジカ「え? どこどこ?」

――こっち来て。

呼ばれるままについていくと。

シキジカ「わあ、確かに!」

ニャスパー「ね」

シキジカ「じゃあ持って帰ろっか!」
 ▼ 47 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:37:41 ID:TJx0YDds [45/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シキジカ「ただいまー!」

チョボマキ「あ、お帰りー!」

ヌメラ「待ってたよー!」

ヤンチャム「遅いぞ!」

ヌメラ「ホントは心配してたクセに」

ヤンチャム「う、うるさいっ!」

あははははっ。

みんなの笑い声がはじけた。
 ▼ 48 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:38:02 ID:TJx0YDds [46/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
翌朝。

シキジカ「んー! よく寝た!」

シキジカ「ほらみんな起きて! ……あれ? ニャスパーは?」

ニャスパーがいない。

えっと……とりあえず辺りを見回す。

うん。やっぱりいない。

シキジカ「どこ行ったんだろ……」

探しにいかなくちゃ。

……みんなに変に心配かけたくないし、私1人で探そ。
 ▼ 49 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:38:23 ID:TJx0YDds [47/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シキジカ「ニャスパー! どこにいるの!」

シキジカ「ニャスパー! ニャスパー!」

シキジカ「ダメ、いない」

どこに行ったの?

って言うかそもそもなんでいなくなっちゃったの?

って言うか……ここ、どこ?

……とりあえず来た道戻ろっと。
 ▼ 50 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:38:44 ID:TJx0YDds [48/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
で、なんでこうなるの?

私の方が迷子じゃないの!

心配かけないつもりが余計に心配かけてるし!

……ニャスパーはなんでどっか行っちゃってたの?

――シキジカ、聞こえる?

あ、ニャスパー。うん、聞こえるよ。

――よかった。みんな心配してるよ。

ニャスパーはなんでどっか行ってたの?

――え、ほら、私って登山が趣味じゃん? 朝の山なんて初めてだからどんな空気なのか気になって。

――すっごい気持ちよかったよ。

え、そんな理由?!

――うん。あ……ひょっとしてシキジカ、私を心配してくれて?

……うん。
 ▼ 51 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:39:10 ID:TJx0YDds [49/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
――ごめんね?

ううん、いいよ。でも私、迷子なんだけど……

――うん、わかる。とりあえず、今見えてる景色をそのまま頭に思い浮かべて。

わかった。

――なるほど。その景色から見るに、たぶん北にいるわ。私たち。

つまり私が北に向かえって事?

――そう。

わかった。

――絶対無事に帰って来てね。

――これ以上、私は誰かを失いたくない。

え? どういう事?

――ううん、なんでも。気にしないで。
 ▼ 52 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:39:39 ID:TJx0YDds [50/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
強引にテレパシーが断ち切られた。

どうかしたのかな?

えっと……太陽があっちで今は朝だから北は……あっちね。

よし。

シキジカ「急がなきゃ。みんなにこれ以上迷惑かけられないし」
 ▼ 53 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:39:59 ID:TJx0YDds [51/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
で、しばらく歩いた頃。

――どう?

わわっ! ちょっと、急に話しかけないで!

――ごめんごめん。で、今どの辺?

さあ? ずっとまっすぐ北に向かって歩いてるけど……

――時間から考えても、もうすぐそこね。

だといいんだけど……

ヌメラ「うわああああっ!」

ん? 今なんか物理的にヌメラの悲鳴が聞こえた気がするんだけど……

ニャスパー? ニャスパー大丈夫?

テレパシーは途切れていた。

……これ、まずくない?
 ▼ 54 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:40:51 ID:TJx0YDds [52/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シキジカ「みんなっ!」

声が聞こえた方に全力疾走。

何もかも気にせずただひたすらに走った。

もしこれでみんなが倒れてたりしたら……

私のせいよね。

私が勝手にニャスパーを探しに行ったせいよね。

そんなのヤダ! 私、絶対ヤダ!

みんながいなくなるぐらいなら私もいなくなる!

だから……無事でいてっ!

シキジカ「はあっ、はあっ……」

シキジカ「お願い……みんな……」

無事でいて……

目から温かい物が流れ落ち、頬を伝う。
 ▼ 55 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:41:31 ID:TJx0YDds [53/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シキジカ「みんなっ!」

チョボマキ「遅かったね、シキジカちゃん」

え……

最悪の事態まで想定していただけに、みんなの笑顔が、いつもの笑顔がやけに眩しかった。

ヌメラ「いきなり現れてびっくりしたけど……」

ニャスパー「ちょっと集中すれば余裕だったもの」

シキジカ「みんな……よかった……無事で……うっ……うわああああん!」

ヤンチャム「え、ちょ、泣くなよ! うっとうしい!」

チョボマキ「よく言うよ、一番心配してたクセに」

ヤンチャム「う、うるさいっ!」

よかった……みんな無事で……ホントによかった……

みんながいる、その事実だけで心の底から嬉しくて。

不安、恐怖が一気にほどけたその反動が、目から溢れて来て。

ニャスパー「とりあえず、みんな無事。だからなんにも問題ないよね」

ニャスパー「シキジカが落ち着いたら行こう!」
 ▼ 56 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:41:55 ID:TJx0YDds [54/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
なだらかな洞窟も簡単に突破して……

ヌメラ「わあ、すっごーい!」

ニャスパー「懐かしいわね、ここも。あのどや顔はホント変だった」

シキジカ「何の話?」

ニャスパー「たぶんもう少ししたら本物拝めるから今はないしょ」

シキジカ「えー! そればっかり!」

チョボマキ「あれがワイワイタウンかあ……」

ヤンチャム「おだやか村とは比べ物にならないぐらい都会だな」

ホント、初めて来たけどすごすぎでしょ。

まず海を初めて見た。

綺麗……
 ▼ 57 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:42:17 ID:TJx0YDds [55/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニャスパー「さて。ここでぼーっとしててもなんにも始まらないよ。みんな、行こ!」

そうね、賛成!

誰からも反対意見なんて出なかった。

ニャスパー「ここまで来たらもうすぐよ。危険な所もないわ」

ヤンチャム「じゃあみんなで競争しようぜ!」

シキジカ「ダメ!」

不満気に口をとがらせるヤンチャム。

ヤンチャム「なんでだよ!」

だって……私……

シキジカ「みんなと一緒に行きたいの!」

ヌメラ「うん。僕もシキジカに賛成!」

チョボマキ「一緒にいた方が楽しいじゃん?」

ヤンチャム「わかったよ、わかった! 仕方ない、一緒に行ってやるよ!」

チョボマキ「とか言ってホントは嬉しいクセに〜」
 ▼ 58 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:42:38 ID:TJx0YDds [56/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニャスパー「前来た時はホント辛い時だったからね。なんかこうして見るとやっぱりにぎやかなんだなあって」

ワイワイタウン入口で、ニャスパーがふと呟いた。

ヌメラ「そっか、みんな石になってた時だっけ……」

ニャスパー「うん」

ふっと表情を緩めたニャスパーはそのまま言った。

ニャスパー「そんな暗い顔しないのでよ。あの2人が事件は解決してくれたんだから」

シキジカ「そうよね。よーし。じゃ、調査団目指して、レッツゴー!」
 ▼ 59 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:43:04 ID:TJx0YDds [57/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニャスパー「こっちよ」

一応この町の地理に詳しいニャスパーに先導されて調査団の本部へ。

ニャスパー「すいませーん! 誰かいませんかー?」

???「この声……ニャスパーですか?」

ニャスパー「あ、デンリュウ団長、お久しぶりです」

デンリュウ「ええ」

この人が……ってかどっかで見た事があるような……

デンリュウ「今日はどうかしたんですか? 見慣れない子もいますが……」

ニャスパー「今日は村のみんなと調査団を見学にきました」

シキジカ「ああああああ!」

みんな「うわっ!」

ヌメラ「どうしたの急に!」

シキジカ「そうだ、この人……前1回村に来てた!」
 ▼ 60 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:43:25 ID:TJx0YDds [58/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
デンリュウ「……ああ! そういやそんな事ありましたね。確かにこの子たちもいたと言うのに……」

デンリュウ「忘れてしまうとは、私のアンポンタン」

チョボマキ「え、誰だっけ?」

ニャスパー「ほら、あのぶつかりまくってた!」

3人「ああ! あの人が……ダンチョー?」

デンリュウ「ええ。君たちには恥ずかしい所を見せてしまいましたが、これでも調査団の団長を務めている、デンリュウです」

シキジカ「まさかあの話に出て来たデンリュウとあのデンリュウが同じ人だったなんて……」

びっくりした。

あの人全然そんな感じじゃなかったもん!
 ▼ 61 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:43:45 ID:TJx0YDds [59/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
デンリュウ「調査団の見学ですか……普段ならお断りする所ですが……」

デンリュウ「あの2人……チームポケダンズの友達でしかも、ニャスパーまでいるとなると無下に断れませんね……」

デンリュウ「わかりました。寝床などは提供しますよ」

デンリュウ「と言ってもただ見学と言うのも面白くないですね……一度実際に仕事してみます? 見習いとして」

ヤンチャム「え、いいのか?」

デンリュウ「はい。体験ですが、ポケダンズと一緒になら」

みんな「やった!」

その時。

「ただいまあ」
 ▼ 62 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:44:57 ID:TJx0YDds [60/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
デンリュウ「あ、ブイゼルですか。お帰りなさい」

ブイゼル「お? 調査団に入りたいのか?」

シキジカ「あ、いえ、私たちは見学しに……」

デンリュウ「おだやか村の子どもたちですよ」

ブイゼル「おだやか村……ああ、あいつらの! ってかよく見るとニャスパーがいるな」

ニャスパー「お久しぶりです」

ブイゼル「久しぶり。さあて、腹減って来たな……」

ブイゼルが歩き去る。

デンリュウ「さて、もうそろそろみんなが帰って来る時間です。そろそろあの2人も「ああああ!」

ブイゼル「つまみ食いしただろ、おめー!」

デンリュウ「え、また……」

ペロッパフ「に、逃げろおおおお!」

ブイゼル「逃がすかっ、アクアジェット!」

ペロッパフ「ぐはっ……」
 ▼ 63 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:45:19 ID:TJx0YDds [61/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
デンリュウ「お見苦しい所をお見せしました。このアンポンタン!」

ペロッパフ「ごめんなさあい」

「ただいまあ」

ん?

懐かしい声。

もしかして!

「あれ? もしかして……みんな?」

やっぱり!

シキジカ「ピカチュウ! ナエトル!」

ピカチュウ「やっぱりそうだ! みんな、久しぶり!」

ヌメラ「久しぶり!」

ヤンチャム「うっとうしい。あ、いやそのう……」

チョボマキ「素直になりなよ、ヤンチャム」

ニャスパー「久しぶり、2人とも」
 ▼ 64 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:45:39 ID:TJx0YDds [62/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
感動の再開も束の間。

どこかのつまみ食い魔のせいで、あっという間にその雰囲気はぶち壊される。

ピカチュウ「ええっ! ペロッパフがごはんを?!」

ナエトル「ウソだろ……」

続々と集結する調査団の面々が、空腹を訴える。

ペロッパフ「あれ? なんかお腹が空いて来た……」

ペロッパフが崩れ落ちた。

ブイゼル「お前が倒れるのかよ! なんで! そんな事言ったら俺も……」

ホルビー「オイラも……」

アーケン「俺だって……」

デンリュウ「……やれやれ。申し訳ありませんが食料を集めていただけませんでしょうか?」

次々と疲労と空腹のダブルパンチに襲われて倒れ込む調査団メンバー。

そんな状況を見かねてデンリュウは私たちに言った。
 ▼ 65 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:46:11 ID:TJx0YDds [63/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
みんな優しくて、事情を説明したら少しずつ食料を分けてくれた。

調査団のためなら仕方ないね。

そんな感じ。

やっぱり世界を救うのに1役買った訳だからかな。

信頼感? がすごい。


デンリュウ「ありがとうございます」

ニャスパー「なんなら私、料理しましょうか? 1人暮らしも長いんで」

デンリュウ「お願いしてもいいですか?」

シキジカ「手伝うよ」

ニャスパー「ありがとう」

そんな中、ある2人が階段から下りて来た。

クチート「ん? この状況……まさか」

デンリュウ「そう、そのまさかです」

デデンネ「ペロッパフ! もうっ! 自分1人でいつもいつもおいしい物ばっかり食ってえええ!」

返事はなかった。まるで死んでるみたい。
 ▼ 66 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:46:31 ID:TJx0YDds [64/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニャスパー「さて。こんなに食材があったらいろいろ作れるね」

シキジカ「私は何すればいい?」

ニャスパー「じゃ、このオレンの実をみじん切りにして」

シキジカ「わかった」

ニャスパーに指示された通り淡々と作業する。

ニャスパー「ねえシキジカ」

シキジカ「何?」

ニャスパー「確かに内のクラスは団結力が足りない。だからそれを補うにはリーダーがいるの」

少し間を開けて彼女は続けた。

ニャスパー「……普通はね」

シキジカ「え? どういう事? ってかそもそも何の話?」

ニャスパー「私たちのクラスには、別にリーダーなんていなくてもいいの」

ニャスパー「その役割は、ナエトルたちが持ってるから」
 ▼ 67 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:46:52 ID:TJx0YDds [65/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シキジカ「え?」

ニャスパー「私たちのクラスってさ。あの2人の事となるとちゃんと団結出来るじゃん? 今回だって、誰も反対しなかったし」

シキジカ「うん。で? 何の話をしてるの?」

みじん切りを終え、ニャスパーにそれを渡しながら尋ねた。

ニャスパー「シキジカ。あなたはね、クラスのリーダーになろうとしてるんじゃない? たぶん……無意識に」

シキジカ「え? そんな事思ってないよ!」

ニャスパーは鍋にオレンとかクラボ、モモンをぶっ込みながら話す。

ニャスパー「何のために私がいちいち無意識って付け足したかわかって言ってる?」

わからないよ。なんでそうなるの!

シキジカ「じゃあどういう事よ」

ニャスパー「シキジカは……なんでもかんでも1人で抱え込もうとしてない?」
 ▼ 68 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:47:12 ID:TJx0YDds [66/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シキジカ「……え?」

言われてみれば、確かにそんな感じはあった。

ヌメラに相談してみた時も、ほんの気分転換のつもりだった。

ニャスパーが迷った時も、私1人でなんとかしようとして。

ニャスパー「あなたが責任感の強いリーダー気質なのはわかってる。でもさ……」

ニャスパー「困ったら相談してよ。私たちみんな、あなたの友達なんだからさ」

ニャスパーの言葉が心にすっと沁み込んで来る。

自分でも不思議な程、今のニャスパーの言葉に安心感を覚えるの。

シキジカ「……ありがと」

ニャスパー「どういたしまして」
 ▼ 69 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:47:33 ID:TJx0YDds [67/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シキジカ・ニャスパー「出来たよー!」

みんな「わーわーわー!」

勢いよくかき込んで行く調査団のメンバーたち。

男3人も負けじと食べている。

シキジカ「こ、これ早く食べないと私たちの分なくなっちゃうよ!」

ニャスパー「みたいね。ま、これもまた一興かな?」

シキジカ「ほらニャスパー、食べないと!」

いやもう半分なくなってるし!

……まあ私たちが作った料理をここまでおいしそうに食べてくれるってのも、作った側からしたら嬉しい事なのかもね!

ニャスパーはにっこり笑ってその光景を見ている。

シキジカ「みんな! もっとゆっくり食べてよ!」
 ▼ 70 1◆J44kAZeDOM 15/11/14 21:48:01 ID:TJx0YDds [68/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シキジカ「みんなしっかりしてよ!」 完
 ▼ 71 ラーチ@ふしぎなタマゴ 15/11/14 21:48:22 ID:TJx0YDds [69/69] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
今度こそ今日はここまでです
 ▼ 72 ライガー@だいちのプレート 15/11/14 23:53:59 ID:YfBwTPeE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙です
 ▼ 73 ガバクーダ@ガブリアスナイト 15/11/15 11:08:06 ID:HeVFX536 NGネーム登録 NGID登録 報告
おつです
もしかして某スレの人かな?
支援
 ▼ 74 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:21:25 ID:zKcYXcLQ [1/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ある少女の回想

今日はね!

私みんなと遊んだの!

お母さん「そう。よかったわね! 何して遊んだの?」

私「探検隊ごっこ!」

お母さん「え……そ、そう」

私「私がリーダーやったのよ!」

すごいでしょ!

お母さん「すごいわね」


たぶんこうして、漠然とした父への憧れを胸に育んで行ったのだろう。

ただ、純粋に尊敬するのは、やっぱりまだ、無理だけど。
 ▼ 75 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:21:45 ID:zKcYXcLQ [2/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヌメラ「調査団のお手伝い!」
 ▼ 76 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:22:09 ID:zKcYXcLQ [3/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
調査団のみなさんが部屋を開けてくれて、僕たちは男と女に分かれて寝る事になった。

もちろんナエトルも一緒で、ヤンチャム、チョボマキ、僕の4人で。

チョボマキ「ヤンチャム、一緒に話そうよ」

ヤンチャム「……仕方ないなあ」

嫌そうに言ってるけど、絶対嫌がってないよね、これ。

ナエトル「うーん……明日に備えて早寝しなきゃならないんだけど……ま、いっか!」

ヌメラ「じゃあ聞いていい? 調査団の仕事って何するの?」

ナエトル「それは明日のお楽しみ」

ヤンチャム「なんだよそれ!」

ナエトル「そっちはどうなの? 村のみんなは元気にしてる?」

ヌメラ「うん! 元気過ぎるぐらい元気だよ!」

ナエトル「コノハナは……?」

チョボマキ「問題ないよ! あの事件の後も、みんなと上手くやってるよ」

ナエトル「よかったあ……」
 ▼ 77 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:22:30 ID:zKcYXcLQ [4/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトルからいろんな話を聞きながら、夜は過ぎて行く。

ヌメラ「なんかピカチュウがずっと調査団に憧れてたのがわかる気がするよ」

ナエトル「まあ大変だけどね。楽しいのは楽しいよ。みんな優しいし……ふああ、眠くなって来ちゃった。明日も仕事だし、もう寝るよ」

チョボマキ「おう、お休みー」

ナエトル「お休み」

そう言うとあっという間に眠りの世界へ。

ホントに疲れてるんだなあ……

って言うか、明日は僕たちもそんな仕事するんじゃん!

寝とかないとダメだよね。

ヌメラ「じゃあ僕ももう寝るね。お休み……」
 ▼ 78 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:22:50 ID:zKcYXcLQ [5/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヌメラ「く、ふああ……」

もう朝かあ。

みんなまだ寝てるな……

よし。ちょっと散歩してみよっと。

部屋から出てみた。

他の部屋を覗く。

うん。まだ起きなくても大丈夫みたい。

ダンチョーさんが寝てるんだもん。

えっと……なんかメモ出来そうな紙はっと……

よし、あった!

「ちょっと外を散歩してきまーす!」

置き手紙を書いとけば昨日のシキジカたちみたいな事にもならないでしょ、きっと。
 ▼ 79 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:23:29 ID:zKcYXcLQ [6/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヌメラ「うーん」

大きく1つ伸びをしてワイワイタウンの町を歩く。

さすが都会だなあ。建物の雰囲気からもう全然違うもん。

でもやっぱり朝だし、静かではあるけどね……

???「あらっ? 見慣れない子ね」

ヌメラ「えっ……あっと……誰ですか?」

ミルタンク「牛乳配達のミルタンクよ。よろしくね!」

こ、こんな朝から働いてるんだ……

おだやか村とは全然違うなあ。

ヌメラ「朝から大変ですね」

ミルタンク「うーん、まあでもその分やりがいもあるからね。いい物よ! 自分の仕事にやりがいを持てるのは」
 ▼ 80 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:23:50 ID:zKcYXcLQ [7/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミルタンク「ところで、君は?」

ヌメラ「あ、調査団のナエトルたちの友達なんです」

ミルタンク「へえ。じゃあ今日は遊びに来たの」

ヌメラ「今日じゃなくて昨日ですけどね」

ミルタンク「なるほどねえ」

デデンネ「あ、ミルタンクさん。おはようございまあす……ヌメラ?」

ヌメラ「あ、はい。なんか目が覚めちゃって。そう言うデデンネさんはなんで?」

ミルタンク「デデンネはね。毎朝調査団に通ってるのよ」

デデンネ「そうなの。家が近いから」

ミルタンク「じゃ、調査団の分のミルク配達しに行きますか!」

デデンネ「そういやバイトの……今日は見ませんでしたけど」

それを聞いたミルタンクさんの顔が、なぜか赤くなっている。

ミルタンク「あ、いや……今日はちょっとお休みしてもらってるんだ。たまにはいいかなって……」

デデンネ「どうかしました?」

悪戯めいた表情を浮かべながら聞くデデンネにミルタンクが答える。

ミルタンク「な、なんでもないよ!」
 ▼ 81 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:24:11 ID:zKcYXcLQ [8/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミルタンク「おはようございまあす」

ペロッパフ「はあい! いつもありがとうございます!」

ミルクを受け取りにっこりと微笑んだ。

ミルタンク「じゃあ私はこれで」

なんだか焦ったようにそそくさと出て行った。

ヌメラ「ミルタンクさん、どうかしたんですか?」

デデンネ「子どもにはまだ早いかなあ?」

ペロッパフ「え? どうかしてました?」

デデンネ「……鈍いなあ」

デンリュウ「あ、おはようございます」

デデンネ「あ、ダンチョー! おはようございます」
 ▼ 82 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:24:37 ID:zKcYXcLQ [9/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
その後みんなも続々と現れて……

デンリュウ「みなさん! 今日も頑張って行きますよ!」

おー!

調査団での一日が始まった。
 ▼ 83 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:24:58 ID:zKcYXcLQ [10/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
デンリュウ「さてと。ダンジョンを調査するのは基本3人1組なんですが……」

うん。僕たちは7匹。

授業の時もそうだったけど、どうしても1匹余っちゃう。

ピカチュウ「とりあえず私とナエトルが行くのは確定として……あれ? だとするとせっかく来てくれたのに誰か1人が調査出来なくなっちゃうか」

ヤンチャム「そりゃないぜ! 俺たちみんな調査しに行きたいんだからよ」

みんなそうなんだろうな。

もちろん僕だって!

ニャスパー「となると、ナエトルかピカチュウのどっちかはここで待機になるのかな」

ナエトルが頷いて同意を示した。

そんな時、不意に横から声が聞こえた。
 ▼ 84 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:25:23 ID:zKcYXcLQ [11/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
クチート「それならピカチュウ、今日は残ってくれないか?」

ピカチュウ「え? なんで?」

クチート「どうしても読めない古代文字があるんだけど……解読を手伝って欲しいんだ」

ピカチュウ「なるほど。そういう事ならわかりました! じゃ、私そういう事だから!」

ピカチュウ、行っちゃった……

デンリュウ「と言う事なので、この6人から3人編成を組んでもらいたいんですが……」

デンリュウ「ナエトルとニャスパーは別のチームにしてもらいます」

シキジカ「え? なんでですか?」

デンリュウ「この中でも今の2人は実力が別格だからです。少なくとも信頼に足る物なのは私自身が知ってますからね」

そっか。ニャスパーはあの事件の時、デンリュウと一緒にダンジョンを調査した事があるんだっけ。

ヤンチャム「なんだよ! 俺たちだって充分強いんだぞ!」

チョボマキ「ニャスパーにも負けないよ!」

シキジカ「私は別にいいですけど」

ヌメラ「僕もデンリュウさんに賛成かな」
 ▼ 85 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:25:44 ID:zKcYXcLQ [12/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニャスパー「みんながいいって言うなら私は別にいいよ」

なんだかいつもより声に感情がこもってなくない?

どうかしたの?

ヤンチャム「まあ……別にいいけどよ。俺はシキジカちゃんと一緒に行きたい!」

チョボマキ「あ、俺も!」

シキジカ「2人は無理よ。ニャスパーかナエトルが確実にいるんだから」

ナエトル「シキジカ、ヤンチャム、チョボマキか……どうなんだろ、場所によっては大丈夫だろうけど……」

デンリュウ「みんなの安全が大事なんです。わかってください」

ヤンチャム「……しょうがねえなあ」

ニャスパー「じゃ、私チームとナエトルチームに適当に分かれて」

うーん……どっちにしよ……なあんて、もう決まってるんだけどね。
 ▼ 86 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:26:06 ID:zKcYXcLQ [13/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニャスパー「予想はしてたけど、やっぱりみんな、ナエトルの方に行ったね」

ヌメラ「ナエトルとダンジョンに行くのって、やっぱりレアだもん!」

ニャスパー「私もその気持ちはわかるけど……そう言う訳にもいかないから誰か2人こっち来て」

シキジカ「うーん、じゃ、私はそっち行くかな」

ヤンチャム「シキジカちゃんが行くなら俺も!」

チョボマキ「あ……やられた」

シキジカ「じゃ、これで決定ね」

まとめると、チームNは……両方Nか、ナエトルもニャスパーも。

ナエトルのチームは僕とチョボマキ、ニャスパーのチームにはシキジカとヤンチャムって事だね。

ナエトル「じゃあ、準備しよう。っと、その前に……依頼受けないと」

デンリュウ「では私はこれで。ナエトル、お願いしますね」

ナエトル「はあい」
 ▼ 87 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:26:29 ID:zKcYXcLQ [14/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「つながりオーブはっと……あったあった」

ナエトル「これで依頼受けられるんだ」

シキジカ「どんな感じなの?」

ナエトル「あ、みんな見る?」

そう言ってナエトルはつながりオーブ? を見せてくれた。

ナエトル「ほら、呟きが見えるでしょ?」

ニャスパー「あ……うん」

あれ? ニャスパーどうかしたのかな?

なんか声が震えてる気がする。

誰も気付いてないみたいだけど。

ナエトル「出来れば簡単な依頼の方がいいかなあ。強さはともかく、慣れてないだろうし、ニャスパー」

ニャスパー「え、まあ……あんまり難しいのは勘弁かな。ちょっと貸してよ」

ナエトル「え? まあいいけど」
 ▼ 88 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:26:49 ID:zKcYXcLQ [15/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「はい」

オーブを受け取ると、そのまま画面を凝視する。

今までに見た事ないぐらい真剣な眼差しで。

ナエトル「この依頼……モンスターハウス臭がするな。悪戯好きらしいし」

ナエトル「つながりを辿って行って。この依頼はちょっと難しいよ」

ニャスパー「え、うん」

ナエトル「水の大陸……今いるここの事だよ? が全体的に一番楽なんだけど」

ニャスパー「ラプラスさんには乗らない方向ね。わかった。やっぱり私たちは別行動になるのよね」

ナエトル「じゃないとなんのために分けたのか分からないしね」

ニャスパー「はあ……」

シキジカ「どうかした?」

ニャスパー「なんでも」
 ▼ 89 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:27:10 ID:zKcYXcLQ [16/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「この依頼なんかいいんじゃない?」

ニャスパー「なるほどね。わかった。じゃあそれにしようかな」

あれ? なんか2階から誰か下りて来た……相当慌ててるよね。

え? なんかこっちにすごい勢いで走って……

ヌメラ「うわあああっ!」

ニャスパー「危ない! 念力!」

ニャスパーがエスパーでそれを止めてくれた……ってデンリュウさん?!
 ▼ 90 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:27:42 ID:zKcYXcLQ [17/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「ダンチョー……どうしたんですか」

あきれ顔で尋ねるナエトルにこう答えた。

デンリュウ「やれやれ、私とした事が、大切な事を忘れていました。このアンポンタン」

シキジカ「大切な事?」

デンリュウ「つながりオーブがないと上手く依頼をこなせないんです。なぜかはわかりませんが」

ヤンチャム「へ?」

デンリュウ「ですから、つながりオーブがもう1個必要なんです」

チョボマキ「なんだよ、その変なシステム……」

ヌメラ「たぶんそれ。調査団だってわからないと不安だからだよ」

デンリュウ「どういう事でしょう?」

ヌメラ「前僕が怖そうな森で迷子になった時、ナエトルが助けに来てくれたけど、その時、僕びっくりしてたでしょ?」

ナエトル「ああ、確かに」

ヌメラ「いきなり見た事ないポケモンが現れたら救助待ち中でも不安になるんだもん。だからオーブがいるんだよ」

デンリュウ「なるほど。昔年の疑問がようやく解けました」
 ▼ 91 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:28:03 ID:zKcYXcLQ [18/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
デンリュウ「と、言う訳で」

ここでなんか変なポーズを決める。

デンリュウ「ニャスパー、このつながりオーブ(見習い)を受け取ってください」

デンリュウ「(見習い)ですが、本物と同じ効果があります」

ナエトル「実際僕らも学校が終わった後(見習い)のオーブ使っていろいろ仕事してたしね」

デンリュウ「はい。使い方を説明しちゃいましょう! ……と言っても、依頼まで決めたら後はダンジョンに行くだけなんですけどね」

ニャスパー「なるほど。じゃあ、これお借りしますね」

デンリュウ「頑張ってくださいね。気を付けて!」

ナエトル「ダンチョー、ガシェットは?」

デンリュウ「画像を見る必要がないのでなくても大丈夫です」
 ▼ 92 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:28:25 ID:zKcYXcLQ [19/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヌメラ「よくわかんないけど……」

シキジカ「まあ、もうこれで私たちは何も気にせず依頼をこなせばいいって事じゃないかしら?」

ニャスパー「だと思う。じゃあ私たちは依頼も決めた事だし、先準備してくるね」

ナエトル「あ、うん! じゃあまた!」

シキジカ「頑張ってね!」

ヤンチャム「ま、まあ……頑張れよ?」

ヌメラ「もちろんだよ!」

チョボマキ「わかってるよ」
 ▼ 93 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:28:48 ID:zKcYXcLQ [20/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「さあて、僕たちも依頼を決めないと」

ヌメラ「あれ? ところでさっきのつながりオーブでさっきの依頼の人とつながってるの?」

ナエトル「あーそれ? たぶん僕たちのとあのオーブがつながってるから大丈夫じゃない?」

ナエトル「実際何回もつながりを辿らないと行けない人の依頼もよくこなすしね、最近は」

ヌメラ「へえ」

チョボマキ「で、結局どこに行くんだ?」

ナエトル「えっと……これなんかよさそうかな」

ヌメラ「どれどれ?」
 ▼ 94 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:29:10 ID:zKcYXcLQ [21/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マルマイン「腹が減って……動けない……」

あばれるダンジョン3F 水の大陸

難しさ★☆☆☆☆
 ▼ 95 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:29:39 ID:zKcYXcLQ [22/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「うん! これなんか簡単そう!」

チョボマキ「あばれるダンジョン? 物騒な名前だな」

ヌメラ「うん……ホントに大丈夫?」

ナエトル「まあね。名前ははあばれるだけど、実際出て来る敵はあばれるほど強くないけどね」

ヌメラ「ふうん」

ナエトル「お腹が空いてるみたいだからリンゴは何個か持って行くとして……一応準備もしなきゃ」

チョボマキ「じゃ、出発だな?」

ナエトル「うん!」

ヌメラ「頑張るぞー!」

簡単らしいけど、それでも調査団の仕事なんて初めてだし。

やっぱり楽しいのかなあ。
 ▼ 96 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:29:59 ID:zKcYXcLQ [23/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
新鮮なリンゴを売りたいんですが……

100Pで買い取らせていただきます!

ありがとうございます!

…………

ナエトル「ってな訳で一応枝とかプチ復活のタネ5個とか引き出して来たし……行こう!」

チョボマキ「わかった」
 ▼ 97 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:30:20 ID:zKcYXcLQ [24/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
足(無いけど)が震える。

あれ? なんで?

ナエトル「ヌメラ大丈夫?」

チョボマキ「びびってんじゃねえの?」

ヌメラ「そ、そんな事ないよ! むしろ楽しみなぐらいだもん!」

ナエトル「まあ、そんな緊張する事でもないから大丈夫だよ」

え、緊張?

言われてみれば確かに……

ヌメラ「なんで緊張してるってわかったの?」

ナエトル「見てればわかるって」
 ▼ 98 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:30:43 ID:zKcYXcLQ [25/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あばれるダンジョン1F

ケムッソの糸を吐く!

ナエトル「遅い! はっぱカッター!」

うわあ……すごい……

効果いまひとつな技なのに、一発で敵倒してるし。

しかも敵の攻撃避けてるし。

当たりそうですらないし。
 ▼ 99 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:31:06 ID:zKcYXcLQ [26/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヌメラ「強いね!」

ナエトル「レベルはみんなに負けてるけどね、僕とピカチュウ」

チョボマキ「なんだよなあ、ホント信じられないや」

ヌメラ「やっぱ慣れるとみんなそんな感じになるの?」

ナエトル「えっと……」

なんで目をそらすの?

ナエトル「まあ、例外はいるけどね。あのつまみ食い魔め……」

あ、うん。なんとなくわかった。って言うか怖いよナエトル……
 ▼ 100 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:31:26 ID:zKcYXcLQ [27/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
結局ナエトルが強すぎて、僕とチョボマキはほとんど何にも出来なかった。

マルマイン「助かったよ! ありがとう! ……出来ればもう1k」

つながりオーブが言葉を遮るように光を放つ。

ナエトル「よし、コネクト完了っと」

マルマイン「もう1k」

ナエトル「じゃあダンジョンを脱出……ちょっと待って」
 ▼ 101 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:31:46 ID:zKcYXcLQ [28/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトルがつながりオーブを覗き込んだ。

ナエトル「まだ誰かいるのか……行く? 2人とも」

ヌメラ「どういう事?」

ナエトル「依頼受けて無くてもたまに困ってるポケモンだったり旅してるポケモンだったりお尋ね者だったりがいる事があってさ」

ナエトル「今回もありそうなんだ」

ヌメラ「なるほどね」

チョボマキ「そんなの行くに決まってるよ。なあ? ヌメラ」

そりゃそうだよ。せっかくなんだから、もっと一緒に調査したい!

ヌメラ「うん!」

ナエトル「わかった。じゃ、マルマインさんはこれで帰れますね?」

マルマイン「m」

ナエトル「行こ! みんな」

うん……

なんか、かわいそう。
 ▼ 102 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:32:12 ID:zKcYXcLQ [29/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「さあて、と」

ナエトル「嫌な予感がするんだ。一応PPは回復しておいたけど……」

ヌメラ「どういう事?」

ナエトル「なんか次のフロアで倒れるとどうやっても救助してもらえないような気がするんだ」

チョボマキ「え?」

ナエトル「気にしないで。そう言う時はだいたいいるのはお尋ね者だから気を付けてってだけ」

ヌメラ「う、うん」

どういう事だろ、救助してもらえないような気がするって……
 ▼ 103 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:32:41 ID:zKcYXcLQ [30/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
で、実際次のフロアに来た訳だけど……

ヌメラ「わわっ! でっかい!」

すごく大きなポケモンがいたんだ。

しかも怖い。

ナエトル「ギャラドスか……」

ギャラドス「あ? なんだ? なんだガキか……調査団バッジだあ?」

ギャラドス「ははは、面白い! こんなガキが調査団ってか」

ギャラドス「お前らに俺が捕まえられるかな?」

チョボマキ「ガキとか言うな! こいつはs」

ナエトル「今は世界を救ったとか関係ないから。確かに僕たちは子どもだ。でも……子どもで何が悪い!」

うん! 怖くても、僕らにはナエトルがいるんだ!
 ▼ 104 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:33:01 ID:zKcYXcLQ [31/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ギャラドス「こんなガキに世界が救えるかっての! にしてもまあ、威勢のいいガキだ」

ギャラドス「食らえッ! 破壊光線!」

ナエトル「え、やばっ……みんな避けろっ!」

え? いきなりそんな?

え、えええええ!

ヌメラ・チョボマキ「うわああああ!」
 ▼ 105 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:33:36 ID:zKcYXcLQ [32/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「いてて……プチ復活のタネ何個も持って来ててよかった……」

ヌメラ「こ……怖かったあ……」

チョボマキ「いきなりこんな強力な技聞いてねえよ!」

ギャラドス「どうだ? 怖いだろう? お前たちは弱いんだ。かつての俺のようにな」

でも痛くないよね。これもタネのおかげかあ。

ん? ナエトル……痛い?
 ▼ 106 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:33:56 ID:zKcYXcLQ [33/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「まあ……そういう事にしとこう。みんな! レンケイ覚えてる?」

うん。教頭先生をみんなでぼっこぼこにしたあれだよね?

ナエトル「それを使うんだ!」

チョボマキ「わかった!」

ヌメラ「了解!」

ギャラドス「ザコがどうあがこうと変わらねえよ!」

ナエトル「動けないのに無理するなよ。ギガドレイン!」

新緑で威力があがった!

チョボマキ「虫の抵抗!」

ギャラドスの特攻が下がった!

ヌメラ「竜の波動!」
 ▼ 107 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:34:20 ID:zKcYXcLQ [34/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ギャラドス「し、新緑だあ?」

ナエトル「強いと言っても、こんなザコの僕を一撃で倒せないんだね」

ギャラドス「うるさいっ! うるさいうるさいうるさいっ!」

ギャラドス……なんか苦しそう。

ナエトル「どうしたの? 攻撃しないの? しないならこっちから行くよ?」

ギャラドス「黙れザコどもおおおおお!」

ひゃっ!

怖いよ……

ギャラドス「もう許さねえ、破壊光線!」

ナエトル「みんな危ないっ!」

そう言ってこっちに突進してくると、ナエトルは僕たちを突き飛ばした。
 ▼ 108 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:34:43 ID:zKcYXcLQ [35/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヌメラ「えっ」

そして目に映ったのは、激しすぎる光に飲まれるナエトルの姿。

ナエトル……大丈夫だよね?

チョボマキ「大丈夫だと思う。ギャラドスの特攻は俺が下げた」

あ、確かにそうだった、なら大丈夫かな。

ギャラドス「油断してるらしいが……この手ごたえは……」










ギャラドス「急所だな」
 ▼ 109 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:35:05 ID:zKcYXcLQ [36/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヌメラ・チョボマキ「えっ?!」

ギャラドス「急所だ。さすがにこれは耐えないだろうな」

ウソ。ウソウソウソ!

確かにナエトルはずたぼろだけど……ナエトルだよ?

世界を救ったんだよ?

ヌメラ「ナエトル、起きてよ。ねえ、起きてよ!」

ギャラドス「ムダだ! この反動が消えたら次はお前らだ」

その顔には……笑顔が浮かんでいる。

それは、僕たちにとっては、絶望の笑みだった。
 ▼ 110 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:35:25 ID:zKcYXcLQ [37/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
チョボマキ「なあ……これやばくないか?」

ヌメラ「う、うん……」

怖い。

怖い。

どうすればいいの?

また僕は弱虫で終わるの?

そんなのヤダよ……

その時だった。
 ▼ 111 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:35:59 ID:zKcYXcLQ [38/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「なあん……ちゃって」


え?

ナエトル?

チョボマキ「え、ウソだろおい!」

ナエトル「ウソじゃ……ない……今のはさすがに効いたかな」

ギャラドス「な……なんで?」

ナエトル「そもそもおかしいと思わない? なんで僕が復活しないのか」

ヌメラ「あ」

そうだ。確かにプチ復活のタネは5個あった。

体力が完全になくなれば、それが発動するはずなんだ。
 ▼ 112 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:36:19 ID:zKcYXcLQ [39/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ギャラドス「ウソ……だろ?」

ナエトル「ホントだってば……行けるよ、みんな」

ヌメラ「え、うん。じゃあ、レンケイ行くよ! 竜の波動!」

チョボマキ「虫の抵抗!」

ナエトル「ギガドレイン!」

ギャラドス「うがあっ!」

ナエトル「やったか?!」

はたして、ギャラドスはその巨体を横たえた。
 ▼ 113 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:36:41 ID:zKcYXcLQ [40/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「ふうっ……急所はさすがに焦ったあ。チョボマキが特攻下げてくれたおかげだよ」

チョボマキ「そ、それほどでも……」

ヌメラ「照れちゃって」

と、ふっと後ろに気配を感じた。

ギャラドス「俺は……負けたのか、こんなガキに」

ヌメラ「うわっ!」

ナエトル「びっくりしなくても大丈夫だよ、ヌメラ」

そう言って振り向くとナエトルはこう言い放った。

ナエトル「はい。こんなガキに、です」

ギャラドス「俺もまだまだ弱かった……って事かよ」

ナエトル「はい」
 ▼ 114 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:37:00 ID:zKcYXcLQ [41/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ギャラドス「ちっ、なんなんだよ! 俺はずっと……ずっと最強目指して……」

ギャラドス「弱いと言われ続けて……それが……それが……」



なんだろう……すごく……かわいそう。

ナエトル「コイキングだった時、ですか」
 ▼ 115 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:37:21 ID:zKcYXcLQ [42/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ギャラドス「ああそうだよ! だから俺は強くなりたかった! それだけだったんだよおおおお!」

ギャラドスの目から大粒の涙が滴り落ちる。

ギャラドス「それがなんだよ! こんなガキにバカにされてよお!」

ヌメラ「バカになんか……してない」

あれ? 思わず声が……

ヌメラ「僕もずっと弱い弱いってバカにされててね」

チョボマキ「……すまん」

ヌメラ「まあどうしようもないとは思うよ。ヌメラって最弱のドラゴンらしいし」

ギャラドス「は?」

ヌメラ「だからさ……そんな風に強くなったあなたの事、尊敬してる。でもさ……」
 ▼ 116 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:38:10 ID:zKcYXcLQ [43/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告












ヌメラ「その強さ……寂しいよ……」








 ▼ 117 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:38:33 ID:zKcYXcLQ [44/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ギャラドス「は?」

ヌメラ「こんな風にみんなを襲ってさ。俺は強いんだ! ってさ。強くなって、何がしたいの?」

ギャラドス「俺を見下してた奴を見返す。これ以外になんかあるか?」

ヌメラ「それが寂しいんだよ。僕は目的のない強さなんていらない」

ヌメラ「困った時に誰かを守れる、そんな強さが欲しい」

ヌメラ「ってナエトルとピカチュウを見て思ったんだ」

ナエトル「なんか照れるな……」

ヌメラ「そりゃ復讐したい気持ちもわかるけど、でも怒ってばっかりじゃどうしようもないんだし」

ヌメラ「それならいっそ、その強さを活かして、認めてくれる友達を作ればいいんだよ」

ギャラドス「認めてくれる……友達なんていない」

ヌメラ「なら、僕がなってあげるよ。ね?」

ギャラドス「な……」

ヌメラ「だってホントに強かったし」

ギャラドス「う……うああああああ!」
 ▼ 118 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:38:55 ID:zKcYXcLQ [45/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヌメラ「え、ちょっと! 泣かないでよ!」

ナエトル「ヌメラ」

静かな口調でナエトルが言う。

ナエトル「泣かせといてあげよう」

チョボマキ「さっきのお前……ちょっとかっこよかったよ、ヌメラ」

ヌメラ「ありがとう」

つながりオーブが輝いた。

ナエトル「よし、コネクト完了。見られるのも恥ずかしいだろうし、僕たちもう帰りますね」

ギャラドスはまだ泣いていた……
 ▼ 119 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:39:16 ID:zKcYXcLQ [46/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「ふうー疲れた」

チョボマキ「ったく、簡単な依頼って聞いてたのにあんなのないぜ」

ヌメラ「まあでも楽しかったよね!」

チョボマキ「だな」

ナエトル「毎日やってると楽しいとか言ってられないんだけどね」

ナエトル「ま、でもやりがいがあるのは確かだよ」

ナエトル「ところでさ……みんないつまでこっちにいるの?」

うーん……出来るなら帰りたくないけど。

そんな事出来るはずもなくて。

チョボマキ「えっと……今日はこっちに泊まって、明日朝一で帰る事になってたよな……」

ナエトル「そっか……」

沈黙。

誰も何にも話さなかった。
 ▼ 120 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:39:37 ID:zKcYXcLQ [47/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
沈黙がなんだか苦しくて、つい言っちゃった。

ヌメラ「今度はさ……ナエトルたちがおだやか村に帰って来てよ。みんな会いたがってるよ」

無理かもしれない。仕事が忙しいんだから。

でもどうしても言わずにはいられなかった。

ナエトル「うん。いつになるかはわからないけど、タイミングを見計らって行くよ、絶対」

チョボマキ「待ってるよ〜!」

ナエトル「あんまり期待はしないで欲しいんだけど……よし、ワイワイタウンに到着っと!」
 ▼ 121 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:39:59 ID:zKcYXcLQ [48/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「ただいま〜」

ピカチュウ「お、お帰り……」

チョボマキ「大丈夫か?」

ピカチュウ「頭がパンパンだよ……」

クチート「慣れない仕事を任せ過ぎたせいだと思う。すまない」

ピカチュウ「い、いえ、役にたてたなら……読めるけど、意味わかんないよ〜!」

チョボマキ「お前成績ひどかったもんなあ」

ピカチュウ「あんたたちには言われたくない」
 ▼ 122 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:40:21 ID:zKcYXcLQ [49/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「たち?」

ピカチュウ「ヤンチャムとチョボマキよ」

そんな中シキジカたちが帰って来て……

シキジカ「あ! みんなもう帰ってたんだ」

ヌメラ「僕たちも今帰ったとこだよ」

ヤンチャム「余裕だったな!」

ニャスパー「……一回やられてたクセに」

ヤンチャム「言うなよお!」

みんな「あはははは!」

ヤンチャム「ったくもう……」

クチート「ふふふ、無事で何よりだな」
 ▼ 123 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:41:02 ID:zKcYXcLQ [50/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そしてその夜。

ペロッパフ「今日はつまみ食いしてませんよ!」

ホントかなあ。なんか口の周りに食べかすがついてる気がするんだけど……

デンリュウ「みなさんどうぞ召し上がれ」

ってかあの人誰?

ジラーチ「なんか寝てる間に新しいメンバーが増えてたんだけど……たぶんナエトルたちの友達だよね?」

シキジカ「なんでわかったんですか?」

ジラーチ「だって僕天才だし♪」
 ▼ 124 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:41:22 ID:zKcYXcLQ [51/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヤンチャム「お前昨日いなかったよな、誰だ?」

アーケン「こいつはジラーチ。調査団のメンバーなんだが昨日はずっと寝てたんだな」

デデンネ「ジラーチは一回寝ちゃうとなかなか起きないのよね。昨日は寝てたから起こさなかったのよ」

ジラーチ「寝ぼけて襲っちゃう事もあるから気を付けてね。まあ起こそうとしなきゃ問題ないけど」

ナエトル・ピカチュウ「うああ……」

ホルビー「どうかしたの?」

ピカチュウ「な、なんでも……」

なんかいいなあ、この空気。

明日にはお別れかあ……うん。
 ▼ 125 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:41:54 ID:zKcYXcLQ [52/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
みんな「ごちそうさま(でした)!」

ブイゼル「さあて、今日も疲れただろうし、みんな早寝しろよ!」

シキジカ「はあい」

デデンネ「ところでさ、みんな、勉強は大丈夫なの?」

デデンネ「なんならナエトルたちと一緒に勉強しない? 私が教えてあげるよ」

ヤンチャム「うげっ」

ピカチュウ「今日はもう頭動かしたくないよお!」

デデンネ「嫌でもちゃんとやるの! ピカチュウホントに勉強出来ないんだから!」

ピカチュウ「……はあい」
 ▼ 126 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:42:15 ID:zKcYXcLQ [53/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「今日ぐらい手加減してよ……せっかくみんないるのに」

ニャスパー「まあいいじゃない。私たちも教えるの手伝わない? シキジカ」

シキジカ「あ、それいいかも! ヤンチャムたちの分教える量が増えるしね」

ヤンチャム「なんでやる前提なんだよ!」

チョボマキ「たちってまさか俺もカウントされてる……?」

シキジカ「もちろん」

チョボマキ「うげえ……」
 ▼ 127 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:42:36 ID:zKcYXcLQ [54/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヌメラ「僕は?」

シキジカ「ヌメラは別にしなくていいと思うけど……どうする?」

まあ、出来る事なら勉強なんてしたくないけど……それよりもみんなといたい。

ヌメラ「僕もここにいるよ。勉強はしないけど……」

ヤンチャム「ずるいぞ!」

チョボマキ「そうだそうだ!」

ナエトル「まあまあ」

ピカチュウ「せっかくだし一緒に勉強しようよ」

ニャスパー「ピカチュウは少しでも負担を分散しようとしてるでしょ、バレバレよ」

ピカチュウ「ちぇ」

デデンネ「こら! 舌打ちなんてしないの!」

ピカチュウ「ごめんなさあい」

なんだろう、世界を救ったって感じがしないよね。

そこらへんにいる子どもと何にも変わらないって言うか……

デデンネ「じゃ、今日は……」
 ▼ 128 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:42:56 ID:zKcYXcLQ [55/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
うん、いるだけじゃやっぱりヒマだ。

教えられる必要もないぐらいには勉強出来るけど、教えるほど頭よくないし。

教わればいい話だけどやっぱりそれは嫌だし……

ヤンチャム「ここはこうだ!」

デデンネ「残念!」

ヤンチャム「マジかよ……」

ナエトル「たぶんこうだと思うよ」

シキジカ「ホントに勉強する時間私たちより少なかったの? 普通に正解なんだけど……」

ヌメラ「まあ学校でも頭よかったじゃん。一緒に授業受けた時間は短かったけどさ」

ニャスパー「やっぱりニンゲンって頭いいのかしらね」

ピカチュウ「私なんてさ、結局頭悪いままだし。ホントなんでこうなんだろ……」

ナエトル「まあ勉強して来なかったんじゃないの? 前からずっと」

ピカチュウ「そうだけどさあ……」

チョボマキ「にしてもやっぱりすげえなナエトル」

ナエトル「照れるな……」
 ▼ 129 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:43:18 ID:zKcYXcLQ [56/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
一緒にはいたいけど、僕がここにいても邪魔になるかな?

だったらちょっと外に出ようっと。

ヌメラ「勉強頑張ってね。僕またちょっと散歩行って来る!」

ヤンチャム「ったく、俺も行きたいっての」

ピカチュウ「暗いから気をつけてね! ……私も行きたいよお」

ヌメラ「いや外には出ないけど……」

僕が散歩しようと思ってるのは、調査団の中だ。
 ▼ 130 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:43:38 ID:zKcYXcLQ [57/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ガショエタワーかあ。

ピカチュウたちが調査したダンジョンのデータがこれに刻まれてくんだよね。

って事は、もうこんなにいろんなダンジョンを巡ったって事かあ。すごいなあ。

ん? なんか声が聞こえる……デンリュウさんにクチートさん?

デンリュウ「それにしてもあの子たちが無事でよかった」

クチート「だな。まあしっかりした子たちだったし、何より絆があった」

デンリュウ「絆? まああるでしょうが……それとどんな関係が?」

クチート「ああ、すまない。まだ報告してなかったな。今日ピカチュウのおかげであの古文書の解読が進んだんだけど……」

クチート「その中に、絆の力が戦う力を生み出す、との描写があったんだ」

クチート「メガシンカに似た事例もあったな。一時的に姿が変化し、戦う力が増強される、と」

デンリュウ「なるほど……つまり絆の力がそのまま戦う力へと変わった、だから無事にダンジョンを調査出来た……と」

クチート「ああ」

デンリュウ「あの子は1人だった……それが原因なんでしょうか」
 ▼ 131 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:43:59 ID:zKcYXcLQ [58/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
何の話してるんだろ……

クチート「一概にそうとも言えないけどね。まあまだ情報が足りないし。ただまあ……もう何匹かで行った方が安全だったのは確かね」

デンリュウ「今度こそちゃんとあの子たちを調査団のメンバーとして……」

クチート「まああの子たち、ドーピングアイテムを大量に使ってるみたいだし、もうそんじょそこらのダンジョンじゃやられる事はないんじゃいか?」

デンリュウ「そうですね……今やってる事があの子への罪滅ぼしになるとは思いませんが、全力でサポートしていきましょう」

クチート「だな。私はもう少し調べたい事があるからこれで」
 ▼ 132 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:44:19 ID:zKcYXcLQ [59/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
クチートさん行っちゃった。

って言うかどういう事だろ……?

ヌメラ「あのお……すいません」

デンリュウ「わっ! なんだ、ヌメラですか」

ヌメラ「すいません、さっきの話ずっと聞いてました。それで……何の話してるんですか?」
 ▼ 133 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:44:42 ID:zKcYXcLQ [60/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
デンリュウさんは口を開いた。

デンリュウ「聞かれてたのならある程度察しがついていると思うのですが……気になりますか?」

ヌメラ「もちろん! あ、はい……」

敬語が飛んじゃった。

デンリュウ「わかりました」

そう言って軽く息を吸い込むと言った。

デンリュウ「この調査団が始まってすぐ、1人の子どもが調査団に入りたいとやって来ました」

デンリュウ「彼女は、自分の父親への反抗心と尊敬をどちらも抱えていました」

デンリュウ「そして彼女は……つながりオーブでつながりを辿り、まだ見ぬ父親を探し当ててしまったのです」

ヌメラ「まだ見ぬ?」

デンリュウ「ああ。その父親は、世界を飛び回る有名な探検家でしたから」

ヌメラ「へえ」
 ▼ 134 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:45:04 ID:zKcYXcLQ [61/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
デンリュウ「そして彼女は……父親に会いに行きました」

デンリュウ「しかし、そのダンジョンは、彼女にはまだ難しすぎたんです」

デンリュウ「結局彼女は足に深刻な傷を負い、今も入院生活を送っています」

デンリュウ「こんなもんです」

ヌメラ「へえ……」

デンリュウ「だからまあ、あの2人を、その子に重ね合わせてるんでしょうね、結局私は」

沈黙。いきなりの重たい話に、僕は口を開けなかった。

ナエトル「おーい! ヌメラ! 勉強会終わったよ!」

デンリュウ「あの2人には内緒でお願いしますね」

ヌメラ「はい。今行くよ! ナエトル!」
 ▼ 135 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:45:26 ID:zKcYXcLQ [62/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
みんなの所に行く途中、ナエトルが口を開く。

ナエトル「僕、ヌメラからは何も聞いて無い。ダンチョーが言ってただけだから」

ヌメラ「聞いてたの?!」

ナエトル「うん。そんなつもりはなかったんだけどね」

ヌメラ「で、どう思った?」

ナエトル「どうも何も……ダンチョーが僕らの事をどう見てようとも、僕はピカチュウといられればそれで」

ヌメラ「やっぱり2人ってホント仲いいよね」

ナエトル「まあね」

ナエトル「おっと……着いた。ただいま!」

ヌメラ「ただいま!」

ヤンチャム「ふうっ、疲れたぜ……」

ピカチュウ「ずるいよ! 1人だけサボってえ!」

ヌメラ「ごめんごめん」

シキジカ「でも……明日には帰らなきゃダメなのよね」

ふっと呟いたその言葉に、みんなが言葉をなくした。

ピカチュウ「そっか……いつまでもこっちにいられる訳じゃないもんね……」
 ▼ 136 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:45:47 ID:zKcYXcLQ [63/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
静まり返った部屋に、ある1人の声が響いた。

ナエトル「そおんな暗い顔しないでよ。またヒマを見付けておだやか村に行くからさ! ね、ピカチュウ」

ピカチュウ「うん……そうよね。今度は私たちが行くよ! ってか、帰るよ! 他のみんなとも会いたいしね」

ヤンチャム「え! マジで!」

ナエトル「いつになるかはわかんないけどさ……トレジャーシリーズの調査ももうすぐ終わりそうだし、それが終わったら辺りかな?」

ピカチュウ「待ちきれないね!」

ナエトル「でもまあ難しいダンジョンばっかりだから、そう先の事ばっか考えてると足元掬われるぞ」

ピカチュウ「わかってるってば!」

シキジカ「じゃあ、私たちはそろそろ寝よう。疲れたよ……」

デデンネ「それじゃあ私はこれで。みんな、またどこかで会えたらいいね!」

ヌメラ「さよなら〜!」
 ▼ 137 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:46:21 ID:zKcYXcLQ [64/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>136
誤字

さよならじゃなくてお休みです

書き溜めしといて何ミスってんだ俺……
 ▼ 138 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:46:41 ID:zKcYXcLQ [65/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
いろいろ話したい事があったけど、疲れはそんな事気にして手加減してくれたりはしない。

ヌメラ「眠くなって来ちゃったや……」

ナエトル「疲れただろうしね」

ヤンチャムとチョボマキはもういびきをかいている。

ナエトル「もう寝よ」

ヌメラ「うん……」
 ▼ 139 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:47:00 ID:zKcYXcLQ [66/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
翌朝。

ヌメラ「ふああ……」

ナエトル「くああ……もうこんな時間か。そろそろ行かなきゃ」

ナエトル「ヤンチャム! チョボマキ! 起きて!」

ヤンチャム「シキジカちゃん……」

チョボマキ「ん……ふああ……」

ナエトル「ヤンチャム!」

ヌメラ「起きないね」
 ▼ 140 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:47:20 ID:zKcYXcLQ [67/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
チョボマキ「あ、ヤンチャム起こそうとしてんの?」

ナエトル「うん」

チョボマキ「なら……」

チョボマキ「あ! シキジカちゃん!」

ヤンチャム「え! シキジカちゃん?!」

チョボマキ「ほら起きt」

シキジカ「あ、おはよチョボマキ。どうしたの?」

チョボマキ「うええ?!」

ヌメラ「ヤンチャムを起こそうとしてたんだよ」

シキジカ「それでなんで私の名前が出て来るのよ! まあいいけど」

ピカチュウ「おはよー。みんな、急いで!」
 ▼ 141 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:47:40 ID:zKcYXcLQ [68/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
デンリュウ「それでは、今日も頑張って行きましょう!」

おー!

デンリュウ「まずは今日子どもたちが帰るみたいなので、見送りましょうか」
 ▼ 142 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:48:14 ID:zKcYXcLQ [69/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シキジカ「いろいろとありがとうございました」

デンリュウ「なんならナエトルたちを同行させてもいいんですが……」

ヤンチャム「大丈夫だって! 俺たちも充分強いんだからな!」

クチート「まあダンジョンは帰りは楽だと相場が決まっているからな。おだやか村だっけ? に帰るのも簡単だろう」

デンリュウ「それもそうですね」

ピカチュウ「また今度ね……」

ニャスパー「泣かないで、ピカチュウ」

ヌメラ「楽しかった! みんなありがとうございました!」

デンリュウ「いえいえ」

チョボマキ「また来たいなあ……なんて」

アーケン「いつでも大歓迎だぜ!」

シキジカ「じゃあ、みんな行こ。ありがとうございました」

ナエトル「気をつけて! みんなによろしく!」

調査団のみんなに見送られながら、帰り道をゆっくり歩いた。

ピカチュウ「元気でねー!」

その声が、いつまでも、いつまでも、僕たちの耳に届いていた。
 ▼ 143 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:48:35 ID:zKcYXcLQ [70/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
だけど、その時は誰も考えてもなかったと思う。


まさかあんなにすぐに再開する事になるなんて。
 ▼ 144 1◆J44kAZeDOM 15/11/15 18:48:56 ID:zKcYXcLQ [71/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヌメラ「調査団のお手伝い!」 完
 ▼ 145 ゲピー@まんまるいし 15/11/15 18:49:16 ID:zKcYXcLQ [72/72] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
今日はここまでです
 ▼ 146 ンプク@あさせのかいがら 15/11/15 21:55:58 ID:PntoMi3I NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙です
 ▼ 147 1◆J44kAZeDOM 15/11/16 20:01:39 ID:0XQ9LrUg [1/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ある少女の回想

え……今なんて言った?

お母さんが……入院?

だって……お母さん、今朝、すっごく元気で……

私「ウソつかないでよ……なんでそんな事!」

お隣さんのお母さん「1人で子どもを育てて、疲れも溜まっていたんでしょうか……病気に対する抵抗力が弱ってて……」

私「わかんないよ! そんな難しい事! お母さん、大丈夫だよね? 絶対大丈夫だよね?」

おじさん「それはわからないけど……」


いっつも仲良くしてくれたご近所さんだけど、この時だけは憎らしくて仕方なかった。

でもまさか、あれがホントに致命傷になるだなんて、思ってもなかった。

お母さん、結局もう元気にならなくってそのまま……

ダメダメ! そんな悲しい事思い出しちゃ!
 ▼ 148 1◆J44kAZeDOM 15/11/16 20:02:00 ID:0XQ9LrUg [2/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「ダンチョーの過去?」
 ▼ 149 1◆J44kAZeDOM 15/11/16 20:02:38 ID:0XQ9LrUg [3/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「そうなんだ。昨日ヌメラとダンチョーが話してるのを聞いたんだけど……葉っぱカッター!」

ピカチュウ「私たちの前に、そんな人がいたんだ……放電!」

ナエトル「放電のPPもったいないから敵がまだ遠くにいる内は使わないでって何回も言ってるじゃんか……」

ピカチュウ「ごめんごめん。でも私の技遠くまで届くの放電しかないんだよ?」

ナエトル「まあね。でも基本僕だけでもなんとかなるし節約したかったら場所変わるから」

でもダンチョーにそんな過去があるなんて知らなかったなあ……そうだ。

ピカチュウ「ねえナエトル。ダンチョーの過去について調査しない?」

ナエトル「別にいいよ。って言うか、たぶんピカチュウならそう言うと思ってた」

記憶がなくったって、ナエトルは昔と変わらないよね。

いっつもなんか私の考えてる事を先読みしてるって言うか……

ピカチュウ「あ、敵だ。放電! ……あ」
 ▼ 150 1◆J44kAZeDOM 15/11/16 20:03:00 ID:0XQ9LrUg [4/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「よし、依頼完了っと! 帰ろ」

ピカチュウ「そうね! あーお腹空いたー」

ナエトル「ペロッパフつまみ食いしてないだろうな……」

ピカチュウ「してない……って信じよ、ね?」

信じる……しかないし。うん。大丈夫だよね。

大丈夫……かなあ?
 ▼ 151 1◆J44kAZeDOM 15/11/16 20:03:21 ID:0XQ9LrUg [5/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「ただいまあ」

ピカチュウ「お腹空いたあ!」

ペロッパフ「私もです! 今日はつまみぐいはしてませんよ!」

ナエトル「ホントに?」

ペロッパフ「ホントのホントです!」

ナエトル「正直に言うと?」

ペロッパフ「食べました! おいしかったです!」

なんかどっかでそっくりなやりとりをおじいとした気がする……

ってか食べた?

ペロッパフ「でも、でもみなさんの分はちゃんと残ってますから!」

ナエトル「よかった……」


ぱくぱく ぱくぱく
ぱくぱく ぱくぱく


ピカチュウ「ふう……おいしかったあ」
 ▼ 152 1◆J44kAZeDOM 15/11/16 20:03:53 ID:0XQ9LrUg [6/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「で、どうやって調査するの? ダンチョーの過去」

えっと……どうしよ……

いろいろと依頼をこなしてきたけどこう言う調査は初めてなのよね……

ミュウだった時もこんな事した事ないし……

ナエトル「なんとなくだけど、クチートは知ってる気がする。ジラーチも可能性がある。でも他のメンバーは知らなさそう」

ピカチュウ「なんで?」

ナエトル「子どもが入団出来ないってルールをダンチョーが撤回した事に対してもっと反応しないとおかしいから」

ピカチュウ「なるほど……」

ナエトル「すぐにやめるとか言う話に移ったあの5匹は知らない……と思うんだ」
 ▼ 153 1◆J44kAZeDOM 15/11/16 20:04:16 ID:0XQ9LrUg [7/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「じゃあクチートに聞けば……」

ナエトル「でもデンリュウは僕たちには聞かれたくないみたいだった。たぶんクチートも教えてくれないと思う」

ナエトル「可能性があるとすればジラーチだけど……起こしてまで聞きたいとは思わないでしょ?」

ピカチュウ「それは絶対ヤダ」

ナエトル「だから……昔からワイワイタウンに住んでる人に聞くのが一番だと思う」

ナエトル「それか……ミルタンクかな。昔から住んでるかはともかく、今ここの住民について一番詳しいのはたぶんミルタンクだから」

ピカチュウ「なるほどー」

ナエトル「じゃ、今日はもう寝ちゃおう。明日からいろいろ調べるんだしさ」

ピカチュウ「そうよね。お休みー」
 ▼ 154 1◆J44kAZeDOM 15/11/16 20:04:37 ID:0XQ9LrUg [8/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「ふああ……」

ナエトル「おはよ、ピカチュウ」

ピカチュウ「よーし! 今日も調査の仕事頑張ろっ!」

ナエトル「だね。ダンチョーの過去についてもね……」


デンリュウ「それではみなさん、今日も頑張って行きましょう!」

おー!
 ▼ 155 1◆J44kAZeDOM 15/11/16 20:04:58 ID:0XQ9LrUg [9/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「ミルタンクは……あっちだな」

ピカチュウ「すいませーん!」

ミルタンク「ん? どうかした?」

ナエトル「ちょっと聞きたい事がありまして」

ミルタンク「へえ……仕事が後ちょっとで終わるから、もうしばらく待ってもらえない?」

ナエトル「わかりました。じゃあカフェでしばらく待ってますね」

ミルタンク「ごめんね」

ピカチュウ「いえいえ! 私たちが質問するんだからいくらでも待ちますって!」
 ▼ 156 1◆J44kAZeDOM 15/11/16 20:05:29 ID:0XQ9LrUg [10/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「ふうっ……あ、ガルーラさん、ホットミルク1つと……」

ピカチュウ「モモンジュースください!」

ガルーラ「はいはい。これどうぞ!」

ナエトル「じゃあ代金を……」

ガルーラ「確かに受け取ったわよ!」
 ▼ 157 1◆J44kAZeDOM 15/11/16 20:05:50 ID:0XQ9LrUg [11/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「ふう……冬はあったかい物に限るよね」

ピカチュウ「そう? 私ちょっと猫舌だから……でもずっと思ってるんだけど、猫ってなんだろうね?」

ナエトル「さあ?」

ピカチュウ「ま、いっか。ミルタンクさんまだかなあ……」

ワルビアル「ぶっ」

ナエトル「どうかしました?」

ワルビアル「な、なんでもねえよ」

ワルビル「兄貴、ミルタンクの事……」

ワルビアル「うっ、うるさい!!」

ナエトル「なんて言うかその……」

ワルビアル「あーそうだよ! 俺はフラれたよ!」
 ▼ 158 1◆J44kAZeDOM 15/11/16 20:06:27 ID:0XQ9LrUg [12/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「えっ」

ピカチュウ「えっ」

ワルビル「……えっ?」

ワルビアル「ちょっと考えさせてくれだとよ」

ナエトル「考えてるんならまだ可能性はありますよ」

ワルビアル「でもよお……考えさせては男を振る時の常套文句だぜ?」

ワルビル「兄貴の魅力ならきっとわかってますって!」

ワルビアル「とは言うけどよお……」

ミルタンク「お待たせ……ってワルビアル……」

ワルビアル「あ、仕事さぼってすいません」

ミルタンク「いやいいけど……正直私もどうすればいいのかわかんないし」

ミルタンク「告白なんてされたの……初めてだったから」
 ▼ 159 1◆J44kAZeDOM 15/11/16 20:07:45 ID:0XQ9LrUg [13/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミルタンク「だから、すっごく嬉しかった。でもね……どうすればいいかわかんない。だから、もう少し考えさせて」

ワルビアル「そうか……」

ミルタンク「ごめんね。今はこの子たちの話を聞かないと」

そう言って、ミルタンクはにっこり笑った。

ミルタンク「だから後少し残ってる配達の仕事、終わらせてきて」

ワルビアル「え……わ、わかった」

そう言ってワルビアルたちは立ち去った。
 ▼ 160 1◆J44kAZeDOM 15/11/16 20:08:06 ID:0XQ9LrUg [14/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミルタンク「って訳で話って何?」

ピカチュウ(なんか聞き辛いムードだけど……)

ピカチュウ「あの……ダンチョーが昔子どもに関する事で失敗したって聞いたんですけど、何か知りませんか?」

ミルタンク「ああ、その事」

ナエトル「はい」

ミルタンクは少し思案するような表情を見せた後、言った。

ミルタンク「それなら私、知ってるわ」

ピカチュウ「ホントですか?!」

ミルタンク「うん。なんなら案内してあげよっか? その子どものとこ」

ピカチュウ「いいんですか?!」

ミルタンク「うん!」

ナエトル「ありがとうございます」

ナエトル「正直ここまでとんとん拍子で行くとは思って無かった……」

ピカチュウ「まあ上手く行くのはいい事じゃん! 行こ!」
 ▼ 161 1◆J44kAZeDOM 15/11/16 20:08:31 ID:0XQ9LrUg [15/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
とまあ、ある程度上手く行ってる時って言うのはだいたいその後に落とし穴があるって、私知ってたのに。

かんっぜんに忘れてた。

あの時だって、ナエトル……ううん、ニンゲンは。

作者注
どんなポケモンにも固有の名前がないのと同じで、古代のポケモンたちは主人公の人間の事もニンゲンと呼んでいたのです

私の想いを……受け取ってくれなかった。

何が近すぎて無理よ! あんなに一緒に頑張ったのに!

ダークマターを上手く食い止めたら、その時は告白しようと思ったのに!

実際上手く食い止めたのに! それなのに!

……もう覚えてないんだよね。私と違って古代の記憶はなくなってるままだもん。

ナエトル「どうかした?」

ピカチュウ「なんでも」

声に不機嫌をにじませたまま言った。
 ▼ 162 1◆J44kAZeDOM 15/11/16 20:08:52 ID:0XQ9LrUg [16/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミルタンク「ここよ。私はもう行くね。君たちだけで話した方がいいと思うから」

ピカチュウ「ありがとうございました!」

ミルタンク「あなたたちならあの子に元気を出させてあげられるかもしれないしね……」

ナエトル「え? どういう事ですか?」

ミルタンク「ううん! なんでもないよ。頑張ってね!」

何を頑張るんだろ……
 ▼ 163 1◆J44kAZeDOM 15/11/16 20:09:36 ID:0XQ9LrUg [17/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「すいませーん! ポケモン調査団のピカチュウでーす!」

にしても私ってピカチュウって言えばいいのかミュウって言えばいいのか……

あーもう、ややこしい!

ナエトル「病院なんだから静かにしなって」

ピカチュウ「あ、ごめん」

ハピナス「お見舞いですか?」

ピカチュウ(私たちが来ただけでお見舞いってわかったって事は……調査団の誰かがお見舞いに行ってるって事?)

ピカチュウ「はい!」

ハピナス「あら? 見た事ない子ね。って子どもじゃないの! ホントに調査団なの?」

ピカチュウ「はい!」つ調査団バッジ

ナエトルもバッジをハピナスに見せた。

ハピナス「あらそう……わかった。ついて来て」

ナエトル「わかりました」
 ▼ 164 1◆J44kAZeDOM 15/11/16 20:10:18 ID:0XQ9LrUg [18/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ハピナス「ここよ。じゃあ私はこれで」

ピカチュウ「ありがとうございました!」

ナエトル「行こう」

ピカチュウ「うん! 失礼しまあす」

???「……誰?」

目の前にいたのはキルリアだった。

ピカチュウ「調査団の新入りピカチュウです」

ナエトル「同じくナエトルです」

キルリア「子ども……信じらんない、ダンチョー、子どもは入れないって決めたはずなのに……」

ピカチュウ「案外あっさり撤回してくれましたよ。キルリア先輩」

キルリア「ったく、ダンチョーのアンポンタン! 子どもには危険だってわかってるクセに!」

実際、私たち子どもでもなんでもないんだけどね、中身は。
 ▼ 165 1◆J44kAZeDOM 15/11/16 20:10:38 ID:0XQ9LrUg [19/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キルリア「……なんでこうなるのよ。私は今も、こうしてるってのに」

吐き捨てるように言うと目を閉ざした。

ピカチュウ「危ないっ! サイコキネシスが来る!」

エスパーなら私もわかる。でも、それでもなんでこんなに敵意を向けて来るのかはわからなかった。

ナエトル「ごめんなさい! 帰ります!」
 ▼ 166 1◆J44kAZeDOM 15/11/16 20:11:06 ID:0XQ9LrUg [20/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「はあ……失敗だったね」

ナエトル「うん。でもなんであそこまで怒ったのかは想像がつくよ。推理なんて代物じゃないけどね」

ピカチュウ「え? どういう事?」

ナエトル「まず、僕たちが世界を救ったって事は結構有名だと思う」

ナエトル「それを知ってても、僕たちが子どもだから直接見たポケモンには信じられないって事もあるだろうけどね」

ナエトル「現にこないだ僕とヌメラたちで倒したギャラドスも子どもだからって僕がその救世主だって信じて無かったし」

ピカチュウ「私といるとさすがに説得力も増すんだろうけどね。確かに1人だと他にも調査団にナエトルの子どもがいるって勘違いするかも」

ピカチュウ「私たちはずっと一緒にいるってのも有名だからね」

ナエトル「うん。まあそれはともかく、キルリアもそれは知ってるはずだ。だから、僕たち自体はもうそんな危険な目に遭う事もないってわかるはずなんだよ」

ナエトル「でも、僕たちが子どもだって事は知られてない。だから、キルリアは、世界を救ったナエトルとピカチュウのペアが子どもだった事に愕然としたんだ」

ナエトル「僕たちが危険な目に遭う事を心配してダンチョーにキレたんじゃない」

ナエトル「ここまではいい?」

ピカチュウ「な、なんとなく……」
 ▼ 167 1◆J44kAZeDOM 15/11/16 20:11:27 ID:0XQ9LrUg [21/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「と、考えると想像出来る事がある」

ピカチュウ「何?」

ナエトル「子どもを調査団に入れたダンチョーに対して怒ったのなら、それが僕たちへの攻撃になった理由」

ナエトル「サイコキネシスの直前のセリフを思い出してみて」

えっと……確か……


キルリア「……なんでこうなるのよ。私は今も、こうしてるってのに」


ナエトル「うん。キルリアがまだ入院してる。それなのにダンチョーは僕たちを入団させた」

ナエトル「たぶん……それに嫉妬してたんだと思う」

ピカチュウ「ああ! なるほど!」

ピカチュウ「でも……だとすると……」

ナエトル「うん。僕たちに出来る事は何もない」

ピカチュウ「って事よね……」

私たちには何も出来ない……か……
 ▼ 168 1◆J44kAZeDOM 15/11/16 20:11:57 ID:0XQ9LrUg [22/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「まあでも、仕方ないか! 調査の仕事頑張ろっ!」

ナエトル「立ち直り早いのっていいと思うよ」

ナエトル「うん。僕たちには何も出来ないし……出来る事をやるしかないよね」

ナエトル「えっと……呟き呟き……えっ?」

ピカチュウ「どうかした?」

ナエトル「いや……みんなどうしたんだ?」

ピカチュウ「訳わかんないよ! 見せて!」

覗き込んだその画面には、ヤンチャムの顔が映っていた。
 ▼ 169 1◆J44kAZeDOM 15/11/16 20:12:18 ID:0XQ9LrUg [23/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「ダンチョーの過去?」 完
 ▼ 170 ォッコ@くっつきバリ 15/11/16 20:12:39 ID:0XQ9LrUg [24/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
今日はここまでです
 ▼ 171 1◆J44kAZeDOM 15/11/17 20:31:03 ID:OXlz7Yd6 [1/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ある少女の回想

私「お母さん……うわああああ……」

お母さん……なんで死んじゃったの?

お父さん……こんな事になったんだから……帰って来てよ……

私……私にはもう……親はいないの?

私……どうすればいいの?

お父さん……帰って来てよ……


結局、お父さんは帰って来なかった。

あの時依頼、もうお父さんを尊敬するのはやめた。

それでも……お父さんを見付けだしたいって思いだけは変わらなかった。
 ▼ 172 1◆J44kAZeDOM 15/11/17 20:31:26 ID:OXlz7Yd6 [2/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヤンチャム「どうしたんだよニャスパー!」
 ▼ 173 1◆J44kAZeDOM 15/11/17 20:31:48 ID:OXlz7Yd6 [3/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
調査団から帰って来たその日。

ヌメラ「楽しかったね」

チョボマキ「あんな強い奴と戦うのはもうごめんだけどな」

シキジカ「あれ? なんかもともとなんか目的があったような気がするんだけど……ま、いっか」

ヤンチャム「なあ」

ふっと思いついて、言ってみた。

ヤンチャム「俺たちで、調査団しようぜ!」
 ▼ 174 1◆J44kAZeDOM 15/11/17 20:32:09 ID:OXlz7Yd6 [4/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
みなが少し押し黙る。

ヤンチャム「な、なんだよ! 嫌ならそうはっきり言えよ!」

ヌメラ「嫌な訳ないじゃん! 最高だよ!」

チョボマキ「ヤンチャムがそう言うなら俺もやる!」

シキジカ「楽しそうね! 私も賛成!」

ほっ、よかった……

ヤンチャム「だよな! ニャスパーもそう思うよな?」

だけど、こいつ、誰も思いもしないような答えを返してきやがった。

ニャスパー「ごめんだけど……私はしばらくパスさせて」
 ▼ 175 1◆J44kAZeDOM 15/11/17 20:32:30 ID:OXlz7Yd6 [5/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
沈黙。絶句したってのが合ってんのか?

しばらく口がきけなかった。

ヤンチャム「う……ウソだろおい」

ようやく出て来た声もところどころかすれがちで。

ニャスパー「ごめんだけど、私、やらなきゃいけない事が出来たから。この冬休みの間にね」

そう言ってニャスパーは歩き去る。

なんだよ……

なんだよ!

ヤンチャム「ああそうかよ! なら俺らで勝手に楽しませてもらうぞ!」

俺はあいつとも一緒にしたい、せっかくそう思ったってのに……

なんだよ……なんだってんだよ!
 ▼ 176 1◆J44kAZeDOM 15/11/17 20:32:50 ID:OXlz7Yd6 [6/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シキジカ「ちょっとヤンチャム!」

シキジカちゃんの声で我に返った。

シキジカ「なんで止めなかったのよ!」

ヤンチャム「あ……」

ヌメラ「と、取りあえず僕、ニャスパー呼んで来る!」

シキジカ「ありがと、ヌメラ」

やっちまった……

怒りに我を忘れていつもみたいに拒絶しちまった……

どうにかしたいってのによ……俺のこの性格……
 ▼ 177 1◆J44kAZeDOM 15/11/17 20:33:10 ID:OXlz7Yd6 [7/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヌメラ「ダメだった……みんなには迷惑かけたくないんだって」

シキジカ「うーん、急にどうしちゃったんだろ? まずはそれがわかんないとどうにもならないわよね」

シキジカ「さっきまでは普通に話してたのに……」

ヌメラ「その事なんだけど……ニャスパー、ちょっとおかしいところがあったよ」

チョボマキ「え? どういう事だ?」

ヌメラ「つながりオーブを見た時、なんか震えてた。なんか知ってるポケモンでもいたのかな?」

チョボマキ「ふうん……でもだとすると俺たちにはどうしようもなくない?」

シキジカ「つながりオーブか……ニャスパーの知り合いがいたとすると確かに私たちには……私も説得してくる!」

いたたまれなくなったのかシキジカちゃんが駆け出した。
 ▼ 178 1◆J44kAZeDOM 15/11/17 20:33:33 ID:OXlz7Yd6 [8/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シキジカ「なんでよ……1人で抱え込むなって言ってくれたの、ニャスパーじゃないの……」

チョボマキ「無理だったの?」

シキジカ「うん……」

ヌメラ「ホントどうしちゃったんだろうね? しなきゃいけない事ってなんだろう……」

ニャスパーの奴、どうしたんだよ。

俺は……

ヤンチャム「俺も行って来る!」
 ▼ 179 1◆J44kAZeDOM 15/11/17 20:34:06 ID:OXlz7Yd6 [9/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヤンチャム「ニャスパー!」

扉を開けてニャスパーが出て来た。

ニャスパー「今度はヤンチャムね。でも私の答えは変わらないよ。ごめんね」

ヤンチャム「別に俺はお前がしたくないってんならそれでいいんだけどよ……せめて、なんでこんな事するのか教えろよ」

ニャスパー「ごめん」

ヤンチャム「なんだよ! 俺がせっかく聞いてるってのに!」
 ▼ 180 1◆J44kAZeDOM 15/11/17 20:34:27 ID:OXlz7Yd6 [10/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
違う! 俺が言いたいのはこんな事じゃない!

ヤンチャム「……ごめん、ウソついた」

ヤンチャム「俺、やっぱりお前とも一緒にしたい。お前もいないと、楽しめないんだよ!」

ヤンチャム「全員そろってなきゃ、意味なんてねえんだよ!」

ヤンチャム「だからさ……頼むよ……」

ニャスパー「……ホントにごめん。巻き込みたくないの。これは私の……私だけの問題だから……」

ニャスパー「お願いだから、1人でやらせて」

そう言って扉が閉ざされた。

扉だけじゃなく心まで閉ざされたように感じた。

ヤンチャム「くそっ……」

ヤンチャム「どうしちまったんだよ……ニャスパー……」
 ▼ 181 1◆J44kAZeDOM 15/11/17 20:34:50 ID:OXlz7Yd6 [11/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
その呟きは……

つながりオーブを通してナエトルたちの元に届く事になる。
 ▼ 182 日はここまで◆J44kAZeDOM 15/11/17 20:35:15 ID:OXlz7Yd6 [12/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヤンチャム「どうしたんだよニャスパー!」 完
 ▼ 183 ガカメックス@ガブリアスナイト 15/11/17 21:00:18 ID:h/WMmm8o NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙です
 ▼ 184 1◆J44kAZeDOM 15/11/18 20:18:15 ID:f7r01YyM [1/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ある少女の回想

私「すいませーん! 調査団に入りたいんですけどー!」

デンリュウ「入団希望者ですか。やれやれ」

私「私まだ……子どもですけど大丈夫ですか?」

デンリュウ「ええ、大丈夫ですよ、キルリア」

私「よかった……」


そうして私は、調査団に入団した。

お父さんを見付けるため。初めはそれだけのつもりだったけど、いろいろ調査している内に、だんだん楽しくなっていって……

少しずつ、笑えるようになっていった。

そんなある日の事だった。

つながりオーブにお父さんの顔を見付けたのは。

私、後先考えずに突っ走って、こんな事になっちゃった。

それは私のせい。わかってる。

でも……あの2人には私、なんて言うんだろ、嫉妬したのかな?

私には出来ない事をしている。それが、ただただうらやましくて……
 ▼ 185 1◆J44kAZeDOM 15/11/18 20:18:37 ID:f7r01YyM [2/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニャスパー「私には叱ってくれる親もいない」
 ▼ 186 1◆J44kAZeDOM 15/11/18 20:18:57 ID:f7r01YyM [3/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヤンチャムが諦めて帰って行った。

ホントは私だって一緒にしたいよ……でも……

未だに心の奥底では疑ってる自分がいる。

まさかつながりオーブに……お父さんが映っているなんて。

しかも……またいたずらをしようとしてるなんて。

信じたくなかった。

もう反省はしてるはずだって、信じてたのに……

ニャスパー「お父さん……」
 ▼ 187 1◆J44kAZeDOM 15/11/18 20:19:20 ID:f7r01YyM [4/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あの瞬間から、私は心に決めていた。

絶対、あの人に会いに行く。

あんなのお父さんじゃない。でも。それでも。

私はあの人に会いに行かなくちゃいけない。そう思った。

そのために、私はある計画を立てていた。

自分の感情ですら利用した作戦を……
 ▼ 188 1◆J44kAZeDOM 15/11/18 20:19:43 ID:f7r01YyM [5/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
翌日。

ヤンチャム「やっぱり来ないのか?」

ニャスパー「ごめん。私、みんなに迷惑はかけたくないから」

シキジカ「そんな事気にしないでよ! そう言ってくれたの、ニャスパーだったよね?」

ニャスパー「ごめん。お願いだから、しばらく1人にさせて」

ヌメラ「そんな事言わないでよ。寂しいよ……」

チョボマキ「お前がそんなんだと俺らも楽しめないんだよ!」

みんなの寂しさが、痛いほど伝わって来る。

だからこそ、みんなにあの事は知られたくない。

結局私は、心のどこかで、信じきる事が出来ないでいるのかも。

あいつのせいで。

私のお父さんのせいで。
 ▼ 189 1◆J44kAZeDOM 15/11/18 20:20:04 ID:f7r01YyM [6/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
みんな諦めて帰って行った。

後でみんなに謝らないと。

言いたくないのはホントだけど、それでも、これも作戦のうちだから。

あの2人に、おだやか村に帰って来てもらうための……
 ▼ 190 1◆J44kAZeDOM 15/11/18 20:20:24 ID:f7r01YyM [7/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ふっと脳裏にあの記憶が蘇る。

――お前の父ちゃんサイッテーだな!

――きっとその娘のこいつもそうなんでしょうね……

――なあ、みんなでこいつハブにしようぜ?

――さんせーい!

ダメダメ!

頭を振って記憶を追い返す。

みんなが、そんな風に私をいじめるはずがないよ。

前いたあそこの学校みたいなホントの悪いポケモンは、おだやか村にはいない。

コノハナさんだって操られてただけでホントはいい人なんだし。

だけど……今だけは言うべきじゃない。

言いたくないじゃなくて、言ったらダメ。

あの2人が来ないと、計画が始まらない。
 ▼ 191 1◆J44kAZeDOM 15/11/18 20:21:04 ID:f7r01YyM [8/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
それから何時間かたっただろうか。

おだやか村に夜の帳がおりだした頃、

ドアを叩く音がした。

???「ニャスパー、どうしたの?」

その声……ナエトル!

ニャスパー「ナエトル、帰って来てたんだ……」

ナエトル「みんなが、ニャスパーがおかしくなってるって心配してつながりオーブに依頼を出してたからね。だからこれは調査の仕事」

ナエトル「対象はニャスパー、君だけど」

ニャスパー「みんな、そんなに心配してくれてたんだ……」

これは掛け値なしの本音。

ここまで早くにナエトルたちを呼んでくれるとは思っても無かった。

みんなが2人を呼ぶのはわかってた。でも、やっぱりちょっと、嬉しかった。
 ▼ 192 1◆J44kAZeDOM 15/11/18 20:21:24 ID:f7r01YyM [9/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「ダンチョーから許可はもらってるんだ。しばらくこの仕事にじっくりと取り組む許可をね」

ナエトル「だから、しばらくはここにいられると思う」

ピカチュウ「ニャスパー、みんな心配してるんだよ? 事情はヤンチャムたちから聞いたけど、ほとんど何にもわかんなかった」

ピカチュウ「ねえ、私たち、友達でしょ? 一緒に世界を救った仲じゃない」

ピカチュウ「だから……ね? 話してよ」

ニャスパー「取りあえず今日はもう遅いから、明日にしたら? アバゴーラさんとコノハナも2人が帰って来たとなったら、すっごい喜ぶと思うよ」

ナエトル「まあ、それもそうだね」

ニャスパー「歓迎パーティーでもするんだったら、私も行くから」

あの時以来だもの。特にアバゴーラさんはすっごく会いたいだろうな。
 ▼ 193 1◆J44kAZeDOM 15/11/18 20:21:58 ID:f7r01YyM [10/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
だって……急に消えちゃって、それっきりなんだもの。

ナエトルがおだやか村に1回帰って来て、その日に私がピカチュウの無事を確認出来たからよかったけど、もし見付からなかったら……

今考えても恐ろしい。

アバゴーラさん、ホントどうにかなりそうなぐらい落ち込んでたからさ。


まあ、私にはそうしてくれる親もいないんだけどね。
 ▼ 194 1◆J44kAZeDOM 15/11/18 20:22:24 ID:f7r01YyM [11/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
予想通り、アバゴーラさんの家でパーティーをするって話をナエトルから聞いて、

ニャスパー「わかった」

とだけ答えた。

ナエトル「じゃ、行こう」

ニャスパー「……うん」

なんか、気恥ずかしい。

理由はなんとなくわかってるけどさ……

2人きりでアバゴーラさんの家まで歩く。

ナエトル「ねえ」

ニャスパー「何?」

ナエトル「言わなかったら僕たちが帰らないとか考えて言わないってのは無しにしてね」

ニャスパー「え……ああ。もちろん……わかった。明日話す」

言葉が上手く出て来なかった。思いが右へ左を揺れ動いて。

ニャスパー「その代わり……2人だけで……お願い出来る?」

ナエトル「え? なんで?」

ニャスパー「ナエトルになら……話せる気がするから」
 ▼ 195 1◆J44kAZeDOM 15/11/18 20:22:46 ID:f7r01YyM [12/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「おじい……いいかげん離して! きついよ!」

アバゴーラ「そんな事言われても、嬉しい物は嬉しいのじゃ!」

えっと……まあそりゃそうよね……

ピカチュウ「ナエトルぅ。助けてよ……」

ナエトル「いきなり消えて悲しかったのは僕だけじゃない。諦めて」

ピカチュウ「そんなあ……おじい、私は元気だから! 安心してよ!」

ニャスパー「まあ、そりゃ相当心配してたからね。アバゴーラさんがおかしくなりそうなぐらい」

ニャスパー「ようやく会えて、安心してるの。それを考えてあげて」

コノハナ「仕方ねえ。オラが料理の準備をしておくだど」

ピカチュウ「誰か助けてええええ!」

その声に応える者は誰もいなかった。
 ▼ 196 1◆J44kAZeDOM 15/11/18 20:23:09 ID:f7r01YyM [13/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アバゴーラ「とにかく……無事でよかったピカチュウ」

ピカチュウ「おじいのせいで無事じゃないけど……」

???「おーい! アバゴーラさーん!」

ニャスパー「あ、シキジカ」

シキジカ「ってえっ?! ニャ、ニャスパー?!」

ニャスパー「うん。ごめんね、話してあげられなくて」

シキジカ「ホントよ。何があったの? ピカチュウたちまで呼ぶ事になっちゃったのよ!」

ヌメラ「落ち着いてシキジカ」

シキジカ「あ、ごめん」

ニャスパー「とにかく、私、みんなに迷惑をかけたくない。だからごめん」

シキジカ「そんな事気にしないのに……」

ニャスパー「事が終わったら……全部話すから。だから待って。お願い」

シキジカ「……わかった」
 ▼ 197 1◆J44kAZeDOM 15/11/18 20:23:44 ID:f7r01YyM [14/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
パーティーは夜まで続いた。

あの時急に消えたピカチュウが今日の主役。

正直、ナエトルは少し蚊帳の外にいた。

だから、話しかけてみた。理由なんて特にないし、話す事もなかったけど。

それでも、なぜか無性にナエトルの声を聞きたかった。

ニャスパー「あのさナエトル」

ナエトル「うん。何?」

ニャスパー「その……さ。ピカチュウの事、好きになったりしないの?」
 ▼ 198 1◆J44kAZeDOM 15/11/18 20:24:04 ID:f7r01YyM [15/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
え、ちょっと。何言ってんの私。

ナエトル「どうしたの急に。いやさ、好きだけど……友達と言うか、相棒と言うか……少なくとも恋愛感情じゃないかな」

え、そうなの?

ナエトル「うーん、何と言うかさ……ずっと一緒にいすぎて、恋愛には発展出来ないって言うか……」

ニャスパー「そう……なんだ」

ナエトル「まあ、そもそも僕、あんまし恋愛に興味もないんだけどさ」

ニャスパー「ふうん。そろそろ私、帰るね」

ナエトル「え、なんで? まだいればいいのに」

ニャスパー「今日はなんかもう疲れちゃった。じゃあね」

ナエトル「そっか。お休み」

ニャスパー「お休み」
 ▼ 199 1◆J44kAZeDOM 15/11/18 20:24:25 ID:f7r01YyM [16/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニャスパー「とは言ったけど」

ごめんね、あれはウソ。

私、ぶっつけ本番で上手くあの事を伝えられるか自信がない。

だから……今からまとめておこうと思ったの。

ニャスパー「ノートは……OK。じゃあ、書こう」

封じ込めていた記憶の扉に手をかける。

それが引き金となって、記憶の奔流が私を流していく。

ダメ、私。ここでちゃんと耐えないと。

じゃないと、あいつに会うなんて無理だよ。

……

……よし、落ち着いた。
 ▼ 200 1◆J44kAZeDOM 15/11/18 20:24:45 ID:f7r01YyM [17/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
私、前叱ってくれる親なんていないって言ったよね?

あれはウソじゃない。私には、叱ってくれる親はいない。

でも、そうじゃないような、最低な父親ならいるの。

お母さんは、そいつに殺されたと言っても過言じゃないわ。

私が今1人で暮らしてるのも確実にあいつのせい。

そいつの事、たぶんナエトルは知ってる。

だって、あいつ、つながりオーブに映ってた。しかも、あいつの事、ナエトルは知ってる口振りだったし。
 ▼ 201 1◆J44kAZeDOM 15/11/18 20:25:18 ID:f7r01YyM [18/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
覚えてる?


ナエトル「この依頼……モンスターハウス臭がするな。悪戯好きらしいし」


って言ったの。私たちの依頼を探してる時ね。

あのニャオニクスが私の父親よ。認めたくないけど。

信じられないでしょ。あんなのの娘がこんなになるなんて。

でもね。あんなのの娘だったから、今の私があるの。

そう考えるとあいつも世界を救うのに少しは役に立ったって事かな。

一応私も協力した訳だし。世界を救うのにね。

まあ自分でこんな事書いちゃうってのもどうかとは思うけど。

脱線しちゃった、ごめんね。話を続ける。
 ▼ 202 1◆J44kAZeDOM 15/11/18 20:25:39 ID:f7r01YyM [19/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あいつ、ナエトルも知っての通り、悪戯が大好きなのよ。

それで、いっつも周りに迷惑かけてばっかりだった。

わかる? こんなバカな親持った気持ち。まあ、ナエトルに言ってもしょうがないか。

ニンゲンだった時の記憶は知ってはいるけど戻ってはないんだし、コノハナさんについては私もよく知ってるからね。

それがいい加減、うざがられたの。

あいつだけじゃない。私とお母さんまでね。

ひどい話でしょ? なんで私たちまで。

まあそれはともかく、私たちはうざがられて、周りから粛清! みたいな感じでひどい事、いろいろされた。

どんな事されたかは思い出したくないし、関係ないから無視して。


字、むちゃくちゃね。少し落ち着こう。

頬を涙が伝っているのを感じながら、私はしばらく待った。

うん……大丈夫。行ける。

私が思った事をそのまま書き写す。それがこんなに大変だなんて思いもしてなかった。

でも……口で言うよりは絶対楽。だから、私、頑張れ。
 ▼ 203 1◆J44kAZeDOM 15/11/18 20:25:59 ID:f7r01YyM [20/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
で、お母さんは、私を連れて逃げた。

お母さんがまだあいつを好きだったのかはわかんない。

でも、あいつといると、いずれ私が殺される。そう思ったの。

だからあいつと別れて、おだやか村にやって来た。

それが私とこの村の出会いよ。

私とみんなの、出会いの時でもある。

それから、お母さんはシングルマザーとして働き始めた。

私を育てるために、必死で働いた。

でもね、あんまり働きすぎると、ポケモン、どこかぼろが出る。

お母さんの場合、過労で免疫力が下がってたのかな。

勝気な性格のせいか、誰にも頼らず1人でずっと頑張ってさ。

それで、病気になって、死んじゃった。

おしまい。私に叱ってくれる親がいないのはそう言う訳。

後は1人暮らしで、村のみんなにも支えられながら暮らしてたら、あなたがやって来た。それ以降は、説明しなくていいよね。
 ▼ 204 1◆J44kAZeDOM 15/11/18 20:26:19 ID:f7r01YyM [21/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニャスパー「あ……」

書き終わった安心感のせいで、寝ちゃってた。

ノートは読み返さなかった。

見るのも辛いし、私のありのままの考えを、ナエトルに受け取って欲しかったから。
 ▼ 205 日はここまで◆J44kAZeDOM 15/11/18 20:26:41 ID:f7r01YyM [22/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニャスパー「私には叱ってくれる親もいない」 完
 ▼ 206 ュペッタ@バンギラスナイト 15/11/19 04:12:16 ID:lUA3WOOY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 207 1◆J44kAZeDOM 15/11/19 21:00:46 ID:52qLvXtA [1/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ある少女の対話

キルリア「ダンチョー……なんで子どもを」

デンリュウ「あ、ばれちゃいましたか? やれやれ」

キルリア「だーかーらー! そんな風にごまかそうとしても無駄! あんたが許可したんでしょう!」

デンリュウ「……そうです」

キルリア「ったく、ダンチョー! なんで! なんで私がこんな事になってるってのに、あんな子どもたちを……」

そんなに怒る必要がないのもわかってる。

でも、どうしようもない怒りが込み上げて来て、それを必死にぶつけている。

デンリュウ「なんででしょうね」

キルリア「そもそもダンチョーは!」

デンリュウ「あれ?」

窓を見て、ダンチョーは呟きを漏らした。

キルリア「なーによそ見してるんですか!」

デンリュウ「いや……見覚えのあるポケモンが通り過ぎた物でして……」
 ▼ 208 1◆J44kAZeDOM 15/11/19 21:01:06 ID:52qLvXtA [2/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「つながりオーブが盗まれた!」
 ▼ 209 1◆J44kAZeDOM 15/11/19 21:01:34 ID:52qLvXtA [3/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「あああああ!」

少なくともこの姿になってから、1回も出した事がないぐらいの大声が出た。

でも、それも仕方ないだろう。

だって……

目が覚めたらつながりオーブがなくなってた、なんて笑い話にもならない。

コノハナ「なんだど! どうしただど!」

ナエトル「つながりオーブが……ない……」
 ▼ 210 1◆J44kAZeDOM 15/11/19 21:02:05 ID:52qLvXtA [4/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
よし、落ち着け、自分。

1回冷静になろう。

昨日寝る前、どこに置いた?

あそこだよね、うん。

ない。

どこにもない。

隠れるような隙間もないし、だとすると考えられる可能性は1つしかない……

ピカチュウ「どうしたの〜朝からあんな大声出して」

ナエトル「あの……言い辛いんだけどさ……つながりオーブが盗まれた」
 ▼ 211 1◆J44kAZeDOM 15/11/19 21:02:37 ID:52qLvXtA [5/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「へ?」

ナエトル「だから……」

ピカチュウ「えええええええ!」

ナエトル「」

そりゃそうだ。うん。

ピカチュウ「それ、まずいよ……」

ナエトル「うん」

ピカチュウ「ま、まだ盗まれたとは限らないよね! 探してみよ!」

でもなあ……

もしかすると、ピカチュウが犯人の可能性も、否定は出来ない。

昨日の事に意識が飛んだ。
 ▼ 212 1◆J44kAZeDOM 15/11/19 21:03:01 ID:52qLvXtA [6/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
回想

パーティーの翌朝。

ピカチュウ「さて、おじいも寝てるけど、私たちは仕事だもんね」

ナエトル(ニャスパーは僕にだけなら話すって言ってたけど……僕はずっとピカチュウと一緒にいる)

ナエトル(だから、2人きりになるなんて、たぶん無理だろうな)

ピカチュウ「まずはニャスパーに何か変わった様子が無かったか、みんなに聞いてみよっ!」
 ▼ 213 1◆J44kAZeDOM 15/11/19 21:03:22 ID:52qLvXtA [7/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「で、結局」

ピカチュウ「村のみんなは全滅かあ。まあなんとなくそうだとは思ってたけどさあ」

ピカチュウ「ニャスパーって、思ってる事が全然外に出て来ないんだもん。海底遺跡だっけ? あそこでも完全に騙されたもんね」

ナエトル(あれはホントびっくりしたよね)

ピカチュウ「シキジカたちにわかれば私たちには頼まないだろうしさあ。はあ……」

ナエトル「まあ、元気出して行こう」

ピカチュウ「そうよね。うん。頑張って行こう!」

その時だった。
 ▼ 214 1◆J44kAZeDOM 15/11/19 21:03:45 ID:52qLvXtA [8/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アバゴーラ「こらっ! ピカチュウ!」

ピカチュウ「げ、お、おじい……」

ナエトル(まさか……また何かしたの?)

アバゴーラ「せっかくワシが収穫したオボンの実を食べたじゃろ!」

ピカチュウ「食べてない!」

アバゴーラ「食べた!」

ピカチュウ「食べてない!」

アバゴーラ「正直に言え!」

ピカチュウ「食べた! おじいのオボンの実、普通のよりもすっごくうまかった!」

アバゴーラ「そうかそうか……じゃない! 高級食材なんじゃぞ!」

ピカチュウ「ってな訳でナエトルごめん! 高速移動!」

アバゴーラ「こらっ! 待たんか!」
 ▼ 215 1◆J44kAZeDOM 15/11/19 21:04:05 ID:52qLvXtA [9/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル(なんだったんだ? 今の……)

ナエトル(まあでも、これで1人になれたな)

ナエトル「……」

後で元気のタネでも弁償にあげよっと。

ってかオボンの実って……HPドーピングする気全開じゃんか。まあいいか。
 ▼ 216 1◆J44kAZeDOM 15/11/19 21:04:26 ID:52qLvXtA [10/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「ニャスパー。上手い事1人になれたよ」

ニャスパー「ウソ。正直ピカチュウに聞かれるのは諦めてたのに……」

ナエトル「なんか、アバゴーラさんの収穫物を食べちゃったみたいでさ」

ニャスパー「ふふっ、自分の前世を思い出したってのに、ピカチュウは変わらないね」

ナエトル「ホントだよ」

ニャスパー「入って。今から私の過去について説明するから」

ナエトル「わかった」

ニャスパー「……いやごめん。やっぱりこのノート、受け取るだけにしてくれない? 昨日全部書いたんだけど、口で言うのはやっぱりしんどい」

ナエトル「そっか。わかったよ」

ニャスパー「ごめんね」

ナエトル「全然大丈夫。でもこれ……みんなに言っちゃダメなの?」

ニャスパー「うん。もうすぐ決着をつけるから、それまでは」

ナエトル「……わかった」

そして、僕はそのノートをコノハナの家に隠した後、あの丘に向かった。

たぶん、そこにピカチュウが隠れていると踏んで。
 ▼ 217 1◆J44kAZeDOM 15/11/19 21:05:48 ID:52qLvXtA [11/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「おーいピカチュウ! いるんだろ?」

ピカチュウ「よくわかったね。おじい連れて来たりしてないよね?」

ナエトル「大丈夫だよ。たぶんこの村でピカチュウについて行けるポケモンは誰もいないだろうし、僕別にピカチュウを売りたい訳でもない」

ピカチュウ「ほっ」

ピカチュウが木から降りて来た。

ナエトル「やっぱりそこか」

ピカチュウ「ナエトルってホント、私が考えてる事全部お見通しよね」

寒空を見上げ、呟いた。

ピカチュウ「ねえ、覚えてる? 私たち、ここでいろいろ話したよね」

ピカチュウ「私の夢を話した場所。絆のスカーフを付けた場所。私が記憶を取り戻して、あなたと別れた場所。全部ここだった」
 ▼ 218 1◆J44kAZeDOM 15/11/19 21:06:11 ID:52qLvXtA [12/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「ねえ。私、ナエトルと……あなたと一緒にいられて、あなたと一緒にここに来られて、本当に幸せだった」

ピカチュウ「私たちは世界を救うためだけにこの世界にやって来た。でも……そんな私たちにも、今は大きな夢がある」

ピカチュウ「あなたと……あなたと出会えて……本当によかった……」

ピカチュウ「あれ? おかしいな……目から汗が……」

ナエトル「ピカチュウ……」

ピカチュウ「うん。そうよね。いつまでも泣いても仕方ない。だからさ……お願いがあるの」









ピカチュウ「私の恋人になれ! ううん、なって! いや違うな……」


ピカチュウ「私の恋人になってください!」
 ▼ 219 1◆J44kAZeDOM 15/11/19 21:06:32 ID:52qLvXtA [13/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
え……

えっと……

どうしろと?

ピカチュウ……そんな目で見つめられてもなあ……

ナエトル「ごめん。僕、恋愛には興味ないんだ。でも、それ以上に……」

ナエトル「ピカチュウ、君だけは恋愛対象にはなれないと思う。あまりにも近すぎて、もはや恋愛とか、無理なんだよ」

ナエトル「ホントごめん」

ピカチュウ「え……」

ナエトル「僕、ピカチュウとはずっといる。例え死んでも、永遠にね」

ナエトル「でも、恋愛だけは、たぶん生まれ変わっても、ないと思う」

ピカチュウ「そう……あは、あははははは!」

ピカチュウ「ナエトルって、ニンゲンの時と変わらないね! うん、そうだよね! そうだよね……ごめんね、変な事言っちゃって」

ピカチュウ「私、わかってたはずなのにな……」

そう言ってピカチュウは歩き去った。

どういう事? つまり自分は……古代でもミュウをふった、って事?

回想終わり
 ▼ 220 1◆J44kAZeDOM 15/11/19 21:07:00 ID:52qLvXtA [14/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あの後結局ピカチュウは見付かって、こっぴどく怒られたんだっけ。

にしても、昨日の事がなかったみたいな顔してる。でも……

あんなにこっぴどくふっちゃったんだ。

ピカチュウが怒っても無理は……


いや、違う!

今思い出した事に、犯人を特定するヒントが……いや、答えがある!




犯人は……ニャスパーだ。
 ▼ 221 1◆J44kAZeDOM 15/11/19 21:07:25 ID:52qLvXtA [15/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
証拠はノート。家に隠してるのに、こんなに探しても見付からないなんて、普通おかしい。

つながりオーブを持って逃げるようなポケモンがいるのか知らないけど、そのポケモンがニャスパーのノートを盗って行く理由なんてどこにもない。

あるとすれば……ニャスパー自身が泥棒な場合。

ピカチュウも探すのを手伝う事まで読んで、知られないようにって事だ。

ただ、なぜそんな事をするのか。それはさっぱりだった。

つながりオーブを盗む理由がわからないとどうにもならない。

ただ、その理由は……たぶんだけど、ニャスパーの過去の中にあるんじゃないか?

偶然がいくつも重なると、必然になる。

だからこそ、ニャスパーの過去こそがこの事件のトリガーなんじゃないか?

ナエトル「取りあえず……みんなに遅れてごめんって言って来る!」

ニャスパーの事について話し合うためにみんなと待ち合わせてた。

それに遅れちゃ、申し訳ない。

でも。それ以上に。

確かめたいんだ。

ニャスパーが、今、家にいるかどうか。
 ▼ 222 1◆J44kAZeDOM 15/11/19 21:07:51 ID:52qLvXtA [16/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「おーい! ニャスパー! いる?」

……やっぱりね。

間違いない。

取りあえずは広場に行こう。

みんなに伝えないと。


シキジカ「遅い!」

ナエトル「みんなごめん。でもそれどころじゃないんだ」

ヤンチャム「は? どういう事だよ」

ナエトル「ニャスパーが消えた。僕の……つながりオーブを持って」

みんな「ええっ?!」

ナエトル「ピカチュウは今もオーブを探してるけど、ムダなんだよね。取りあえず呼んで来る!」
 ▼ 223 1◆J44kAZeDOM 15/11/19 21:08:11 ID:52qLvXtA [17/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
さあて、と。

ニャスパーがどこに逃げたのか、推理するのは無理だ。

でも、どこに逃げたか知る方法はある。

調査団まで戻って、誰かのつながりオーブから僕たち経由であのニャオニクスの所までたどればいい。

ニャスパーは……そうか。だからオーブを。

僕にも居場所を知られたくないって事か。

それほともかく、ニャスパーは……

ナエトル「ああっ!」

そうだ。あの依頼、遊びに来てだったけど、性格的にどう考えてもモンスターハウスだ。

ニャスパーは、あの時あれを見て……父の存在に気付いたんだ。

知っていたのかもしれない。でも。それでも忘れる事には成功してた。

あの瞬間までは。
 ▼ 224 1◆J44kAZeDOM 15/11/19 21:08:31 ID:52qLvXtA [18/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
それがあの時偶然に父親の顔を見付けて、それでだ。

それでニャスパーはおかしくなったんだ。

ヤンチャムの依頼はこれで解決になる。

でも……こっから先は。


絶対止めないと。

これが出来るのは、たぶん僕たちだけだ。

もしかしたら……もっと言うと僕だけなのかもしれない。

理由はわからないけど……
 ▼ 225 1◆J44kAZeDOM 15/11/19 21:09:03 ID:52qLvXtA [19/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「ないなあ……」

コノハナ「もう全部探したのに……もしかして、本当に盗まれたのか?」

ナエトル「うん。間違いないよ」

2人「うわっ!」

コノハナ「びっくりしただど! で、どういう事だ?」

ナエトル「犯人はニャスパーだよ。今、村のどこにもいなかった……ごめん。まだ可能性はあったんだ……でも、たぶんあってる」

ナエトル「少なくとも家にはいなかった」
 ▼ 226 1◆J44kAZeDOM 15/11/19 21:09:24 ID:52qLvXtA [20/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「ナエトル」

そりゃ怒るよね。

ピカチュウ「私、ニャスパーを疑いたくない。前あんな事があったけど」

コノハナ「う……すまんだど」

ピカチュウ「もういいの。でも、あの時もニャスパーは最後まで私たちの味方だった」

ピカチュウ「私……ニャスパーを疑いたくないの。もっと他の可能性はないの?」

ナエトル「……ないとは言い切れない。だけど、ほぼ間違いない」

……仕方ない。言おう。

じゃないと、どうにもならない。

ナエトル「コノハナ、ごめんだけどちょっと部屋から出てくれない? ピカチュウにだけなら話していいと思うんだ」

コノハナ「ナエトル、オラは……わかっただど」

少しためらったけど、結局は出て行ってくれた。

僕たちには負い目があるから。まあそうだよね。
 ▼ 227 1◆J44kAZeDOM 15/11/19 21:09:51 ID:52qLvXtA [21/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「で、昨日あそこに行くまでにあんな事があって……」

ピカチュウ「あんなってどんな?」

ナエトル「あ、ごめん。つまり……」
 ▼ 228 1◆J44kAZeDOM 15/11/19 21:11:42 ID:52qLvXtA [22/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「ウソ……信じられない。ニャスパーって……」

ナエトル「うん。僕だって信じられないよ。たぶんニャスパーは、僕たちにも居場所を悟られないようにオーブを、僕以外に理由を気付かれないようにノートを」

ナエトル「僕の部屋に忍び込んで、盗って行ったんだと思う」

ナエトル「動機はその話自体。でも、動機があるからニャスパーが犯人って訳でもない。でも、残念な事に、今度は物質としてのノートが証拠になる」

ナエトル「ない事自体、ニャスパーが犯人な証拠なんだよ」
 ▼ 229 1◆J44kAZeDOM 15/11/19 21:12:06 ID:52qLvXtA [23/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「……ナエトルはすごいね。どんな時でも事実を積み重ねて結論にたどり着ける」

ピカチュウ「古代にいた時から、ずっと」

ピカチュウ「こっちでは手掛かりが足りなくて、あいつに関する推理は無理だったけどさ」

ピカチュウ「それ以外の場所ではすごかったじゃん」

ピカチュウ「肝試し事件の時も三叉路の南、誰も捜索してないって2つを合わせて戒めの骨跡が誘拐された場所だって言い当ててた」

ナエトル「あれは推理じゃなくて推測だよ。証拠が足りないもん」

ピカチュウ「それでも! 私は聞いたもん! ナエトルは間違いなく正解だった!」

ピカチュウ「まあ、わかっても怖い物は怖いんだけど……」

ピカチュウ「だから私……ナエトルを信じるよ。古代でも、こっちでも。あなたといると、私まで力が湧いて来るから」

ピカチュウ「例えそれが、恋愛じゃなかったとしてもね」
 ▼ 230 1◆J44kAZeDOM 15/11/19 21:12:26 ID:52qLvXtA [24/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「さて、信じてもらったところで、僕たちは調査団までいかないといけない」

ピカチュウ「え、なんで?」

ナエトル「誰かのつながりオーブさえあれば、ニャスパーがどこに向かったのかは特定出来るから」

ピカチュウ「なるほどー」

ナエトル「後……基本はみんなに秘密にしないといけないんだ。ニャスパーと約束したから」

ナエトル「だから、どうにかしてこっそり抜けて行きたいんだけど……」

ピカチュウ「私は反対よ。みんなに隠し事なんてしたくない」

ナエトル「だと思った。よし、行こう。みんなに納得してもらって……絶対にニャスパーを止める!」
 ▼ 231 1◆J44kAZeDOM 15/11/19 21:12:48 ID:52qLvXtA [25/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「……と、言う訳なの」

みんな「……」

ナエトル「僕たちなら、ニャスパーを止められる。だから行って来る」

ナエトル「もしかしたらって可能性もあるからみんなは村を捜して。もしいたら、僕たちにテレパシーで伝えて」

ヤンチャム「俺たちの誰がテレパシー使えるんだよ!」

シキジカ「あのさあ。ニャスパーが見付かったらの話をしてるのよ。ニャスパーに決まってるじゃない」

ヌメラ「ナエトル、ピカチュウ。絶対、ニャスパーを助けて!」

ピカチュウ「あったりまえよ!」

チョボマキ「もしあいつが無事じゃなかったら……」

ナエトル「絶対助けるから。だから泣かないで」

ヤンチャム「絶対だぞ! 約束破ったら許さないからな!」

ピカチュウ「わかってるって!」

シキジカ「お願い。ニャスパーを……2人とも、頑張ってね」

ナエトル「ありがとう。行って来る!」

ピカチュウ「絶対助けるから! 心配しないで!」

みんなの声援を背中に感じながら、村の出口を進んだ。
 ▼ 232 1◆J44kAZeDOM 15/11/19 21:13:09 ID:52qLvXtA [26/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キリタッタ山脈、なだらかな洞窟。

正直、余裕だった。

満腹リングルってホントすごい。

まあ僕たちが成長したってのも絶対あるけどね。

ピカチュウ「よし着いた……ワイワイタウン!」

ナエトル「急ごう。今日がまだ今日な内に!」

坂道を駆け下りて行った。
 ▼ 233 1◆J44kAZeDOM 15/11/19 21:13:29 ID:52qLvXtA [27/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「はあっ……はあっ……この体で素早い動きはやっぱきついわ」

ピカチュウ「先行ってる! 後から追いついて来て!」

ナエトル「わかった」

さて……ニャスパーはどこに行ったのか。

水の大陸なら話は楽だ。ニャスパーでも絶対余裕で突破出来る。

でも違う大陸に行ってたら……

考えたくはない。でも、あの時の事を思い出すと、確実に水の大陸じゃない。

ニャオニクスは霧の大陸の住人。

十中八九霧の大陸に行く事になる。

ナエトル「あの大陸結構きついんだよなあ……」
 ▼ 234 1◆J44kAZeDOM 15/11/19 21:14:14 ID:52qLvXtA [28/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「はあっ……着いた!」

ピカチュウはデデンネと話をしていた。

ナエトル「ピカチュウ!」

ピカチュウ「ナエトル! あっと……私に説明は無理だった。たはは」

ナエトル「……だろうね」

デデンネ「うん。ピカチュウの話よくわかんなくって」

ナエトル「今から事情を説明します。どこまでわかってます?」

デデンネ「つながりオーブが盗まれたとこまでよ」

ナエトル「それでしたら……」
 ▼ 235 1◆J44kAZeDOM 15/11/19 21:14:36 ID:52qLvXtA [29/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「……ってな訳です」

適切なタイミングで相槌を打ってくれるから、すごく話しやすかった。

さすがに大人は違うな……

デデンネ「それで、オーブのつながりを辿ればどこに行くべきかわかるって事ね」

ナエトル「はい。たぶんあの5人は僕たちと一番近くにつながってますから、すぐです」

デデンネ「わかったわ。これ貸してあげる」

ナエトル「ありがとうございます!」

ピカチュウ「さっそく確かめよっ!」

ナエトル「うん」
 ▼ 236 1◆J44kAZeDOM 15/11/19 21:14:56 ID:52qLvXtA [30/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
依頼詳細

ニャオニクス「遊びに来ないか?」

霧の大陸 すばらし岬 4F

難しさ ★★★★★
 ▼ 237 1◆J44kAZeDOM 15/11/19 21:15:29 ID:52qLvXtA [31/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
星5か。厳しいな……

ピカチュウ「わかった。ありがとうデデンネ! これ返す! 行ってきまあす!」

ピカチュウ「すばらし岬よ。行こっ! ナエトル」

ナエトル「うん」

デデンネ「行っちゃった……まあいいか」


でも。僕たちは。

まあいいやでは済まない問題に直面する事になる。
 ▼ 238 1◆J44kAZeDOM 15/11/19 21:15:49 ID:52qLvXtA [32/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「ウソ……ラプラスさんがいない……」

ナエトル「しまった……」

そりゃそうだ。

ニャスパーが使ってる。

今ここにラプラスさんがいるはずないのに……

ピカチュウ「どうしよ……」

???「お困りのようですね! おっとっと……」

???「私を抱えたままあのポーズ取れるはずないでしょ! アンポンタン!」

ナエトル「その声……ダンチョー!」

ピカチュウ「キルリアも!」
 ▼ 239 1◆J44kAZeDOM 15/11/19 21:16:11 ID:52qLvXtA [33/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「でも、なんでここに?」

デンリュウ「病室からニャスパーを見かけて、それでキルリアが何かを感じたらしいんです」

キルリア「うん。あれはなんかヤな予感がした。で、そこであんたたちが来る事まで予想がついたの」

キルリア「私、未来予知も出来るらしくって」

デンリュウ「彼女のエスパーには目を見張る物があります。つらい過去、つらい現在を乗り越えたエスパータイプだけが手に入れられるんでしょうかね?」

デンリュウ「ニャスパーにもそれと同等の、あるいはそれ以上の力を感じました」

キルリア「あの子に何があったのか聞いてるヒマはない。ただ、私なら、あなたたちを目的地まで連れて行ける」

ピカチュウ「えっ? どう言う事?」

キルリア「いいから!」

ナエトル「霧の大陸、すばらし岬」

キルリア「ノエだっけ? あそこに飛ぶよ!」

キルリア「テレポート!」
 ▼ 240 1◆J44kAZeDOM 15/11/19 21:16:34 ID:52qLvXtA [34/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「うわっ」

ピカチュウ「きゃっ!」

キルリア「ふう……着いた、きゃ!」

ピカチュウ「あれ? ダンチョーは?」

キルリア「私が連れて来られるのは2匹まで。ダンチョーはきつかった」

それで支えを失って……

キルリア「私は大丈夫よ、行って! 不吉な事が起きる前に!」

ナエトル「わかった。ありがとう!」

ピカチュウ「行こっ!」

ナエトル「うん!」
 ▼ 241 1◆J44kAZeDOM 15/11/19 21:16:57 ID:52qLvXtA [35/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「葉っぱカッター!」

ピカチュウ「放電!」

ナエトル「倒すのはいいけど……僕たちは急がないといけないんだ。高速移動でサポートしてくれないか?」

ピカチュウ「わかった。ナエトル、敵は任せたよ!」

ナエトル「オッケー」

ピカチュウ「高速移動!」


ピカチュウ「よしっ、着いた」

ナエトル「2手に別れよう。そっちの方が効率がいい」

ナエトル「向こうは任せた、だよ」

ピカチュウ「りょーかい! 気を付けて!」

ナエトル「そっちこそ」
 ▼ 242 1◆J44kAZeDOM 15/11/19 21:17:17 ID:52qLvXtA [36/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「ニャスパー! ニャスパーいるか!」

返事はなかった。

くそっ、どの部屋だよ。

ニャスパー、どこにいるんだ……

まさか追い越した……とか?

効率を最優先した結果……ニャスパーよりも先に着いたかもしれない……

いや、ニャスパーはこんなところでやられるほどヤワじゃない。

やられるとしたらモンスターハウスぐらいだよ。

絶対にここまでは来る。

だから……信じよう。
 ▼ 243 1◆J44kAZeDOM 15/11/19 21:17:46 ID:52qLvXtA [37/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「いた。あそこだ」

やたらと敵が1か所に集まってる場所を発見。

間違いない。あれはどう考えてもモンスターハウスだ。

ナエトル「ニャスパー! ニャスパー!」

敵との応戦に必死になって耳に届いてないのかな。

ナエトル「大地のちk……」

ピカチュウ「放電!」

ナエトル「……大地の力!」

確かここナマズン辺りもいた気がする。気のせいかもしれないけど、念のために打っといて損はない。

ピカチュウ「ナエトルもいるんだ!」

ナエトル「そっちこそ!」

驚愕の表情を浮かべるニャスパーに歩み寄る。
 ▼ 244 1◆J44kAZeDOM 15/11/19 21:18:07 ID:52qLvXtA [38/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニャスパー「2人とも……なんで……?」

ナエトル「なんでじゃないよ! つながりオーブを盗んだの、ニャスパーだろ!」

ニャスパー「……ごめんね」

ピカチュウ「ニャオニクスもニャオニクスよ! 悪戯が原因であんな事になったのに、なんでまだやってるの!」

ニャオニクス「楽しいから……だが、どうもそんな理由は通用しなさそうだな」

ニャスパー「知ってるの?」

ピカチュウ「ナエトルから聞いた。みんな知ってるよ。シキジカたち」

ニャスパー、そんな目で見ないで。

って言うかそもそも勝手に盗んだニャスパーが悪いんじゃないか!

ニャスパー「でもなんでここが……」

ナエトル「いろいろある。でも、まずはお父さんと話を付ける所からだと思うよ」

ニャスパー「お父さん……?」

ニャオニクス「そうだ」
 ▼ 245 1◆J44kAZeDOM 15/11/19 21:18:31 ID:52qLvXtA [39/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





























ニャスパー「私にはお父さんなんていないよ?」
 ▼ 246 1◆J44kAZeDOM 15/11/19 21:18:54 ID:52qLvXtA [40/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
3人「えっ」

ニャスパー「そりゃいたんだろうけど……今の私にはいないよ?」

ナエトル「目の前に……」

ニャオニクス「俺がその父親なんだが……」

ニャスパー「大丈夫ですか? 私の父親なんて、あり得ないんですけど」

ピカチュウ「そんな……」

ニャスパー「ありがとう。これ、返すね。盗んでごめんね」

ナエトル「ちょっと待ってよ……なんでここに来たんだよ!」

ニャスパー「……」

ナエトル「真正面から向き合うため、じゃないの? 何のために会いに来たんだ! ニャスパーは、逃げるの? あんな状況でも逃げずに立ち向かっていったニャスパーが?!」

ナエトル「そんなのおかしいよ! ニャスパーなら向き合う事だって出来る!」

ナエトル「脅しが効かないのに、こんな所で逃げてどうするんだっ!」

気付けば叫んでいた。
 ▼ 247 1◆J44kAZeDOM 15/11/19 21:19:17 ID:52qLvXtA [41/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニャスパー「……うるさい」

ニャスパー「うるさい……うるさいうるさいうるさいっ!」

ニャスパー「私の勝手でしょ! こんなの私の父親じゃない! こんなポケモンのクズ……父親だなんて認めないっ!」

ニャスパー「私たちがあんなに苦しんだってのに、まだ悪戯を続けてる、サイッテーなクズなんて……私の父親なんかじゃない!」

ニャオニクス「それは……」

ニャスパー「何が楽しいからよっ! あんたの楽しみのせいで、私たちは苦しんだの! お母さんは死んだのっ!」

ニャスパー「あんたがっ! あんたが殺したんだ! うわわわああああん!」

泣きじゃくるニャスパーを、ただただ見つめるしかなかった。

誰も、何も声をかける事が出来ないでいた。
 ▼ 248 1◆J44kAZeDOM 15/11/19 21:19:45 ID:52qLvXtA [42/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「つながりオーブが盗まれた!」 完
 ▼ 249 ュウ@しらたま 15/11/19 21:20:05 ID:52qLvXtA [43/43] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
今日はここまでです
明日完結になります
 ▼ 250 ローニャ@サイコソーダ 15/11/20 00:42:58 ID:6iB24yOE NGネーム登録 NGID登録 報告
神す
 ▼ 251 1◆J44kAZeDOM 15/11/20 20:54:50 ID:.rXmwNYU [1/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エピローグその1

あ、帰って来た。

2人とも、上手くあの子を助けられたかな……?

ナエトル「あの……こっちにニャスパー来ませんでしたか?」

ピカチュウ「ふっと気付いたら、ダンジョンを脱出してて……」

キルリア「ウソ……一緒にいるんじゃないの?!」

キルリア「事情はわかんないけど……よかったら話してくれない? どうせテレポートしたら先回り出来るんだし」

ナエトル「それなら、先向こう行ってからにしてください。万が一って事もあるので」

キルリア「わかったわ。……あんたたち、しっかりしてるのね」

ダンチョーが認めるのもわからないでもない。

結局、私には足りなかった冷静さをこの子たちは持ってた。そう言う事かな……
 ▼ 252 1◆J44kAZeDOM 15/11/20 20:55:13 ID:.rXmwNYU [2/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キルリア「はあっ……はあっ……さすがに2人を連れて、2回もテレポートするのはしんどいな……」

デンリュウ「お疲れ様でした。お帰りなさい」

キルリア「ただいま……」

ナエトル「ありがとうございました。じゃあ、話しますよ」
 ▼ 253 1◆J44kAZeDOM 15/11/20 20:55:34 ID:.rXmwNYU [3/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
話を聞いてる内に、1つ、確信出来る事があった。

キルリア「その子……私にそっくりね。まあ、私より悲惨なのかもしれないけど」

無理矢理に封じ込めていた記憶の扉をこじ開けられた気分。

キルリア「ねえ。ニャスパーが帰って来たら、まずは私と話をさせて。私なら、ニャスパーを説得出来る……かも」

何を説得するのかもわからない。

純粋に、私はその子と話がしてみたかった。

ナエトル「そっくり……」

デンリュウ「はい。彼女の境遇は、驚くほど、ニャスパーの過去に似ています。何の偶然でしょうか。運命と言わざるを得ませんね」

ピカチュウ「はあ……」

ナエトル「キルリアさん、わかりました。ダンチョー、教えてください。キルリアの過去についても」

デンリュウ「わかりましたよ。よろしいですね」

キルリア「ええ。もう私、大丈夫だと思う」

私は、ニャスパーと話す事で、救われる。

訳もなく、そんな気がした。
 ▼ 254 1◆J44kAZeDOM 15/11/20 20:56:16 ID:.rXmwNYU [4/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
私は待った。

ただひたすら待った。

立つ事は出来ないから、座って。

じっと、ラプラスさんの帰りを待った。

キルリア「あ、来た」

ラプラスさんの姿を視界に捉える。

恐らくその背には、ニャスパーが乗っている。

いよいよね。

ふうっと息を吸い込んだ。
 ▼ 255 1◆J44kAZeDOM 15/11/20 20:56:48 ID:.rXmwNYU [5/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ラプラス「お疲れ様でした。水の大陸、ワイワイタウンに到着です!」

ニャスパー「……ありがとうございます」

キルリア「あなたがニャスパーね」

ニャスパー「うわっ! そ、そうですけど……どちらさまですか?」

キルリア「私はキルリア。これでも調査団のメンバーよ!」

ニャスパー「そんなポケモンいなかった……」

キルリア「あ、ごめん。元って付けるの忘れてた」

ニャスパー「そう……なんですか」

キルリア「唐突だけどさ、聞いてくれる? 私の思い出」

ニャスパー「え、なんでいきなり見ず知らずのポケモンの話を?」

キルリア「いいから」
 ▼ 256 1◆J44kAZeDOM 15/11/20 20:57:10 ID:.rXmwNYU [6/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
私の父親はね、レイダースのリーダー、エルレイドなの。

それで、世界中を飛び回ってた。

え? 父親がしっかりしててうらやましい?

全然だよ! そんな事ない!

私の父親、世界を探検するばっかりで、自分の家族の事は気にも留めなかったの。

お母さんは、その分1人で頑張って、それで、疲れが溜まって、死んじゃった。

うん。あなたのお母さんと一緒。

私ね……あなたとなら、仲良くなれると思うんだ。

でもさ……やっぱり乗り越えては欲しい訳。

目を背けるんじゃなくってね。

私は、父親を見返してやりたかった。

1人であんな難しいダンジョンでも行けるんだって……お父さんに見せたかった。

お母さんが死んじゃっても、私は強く生きてる。あんたが見捨てた子どもは、こんなに成長したんだ! ってね。

でもまあ、結局それが祟ってこんな足になっちゃったんだけどね。
 ▼ 257 1◆J44kAZeDOM 15/11/20 20:57:47 ID:.rXmwNYU [7/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キルリア「だからさ……私、あなたに協力する」

キルリア「あなたが父親に対して何かを仕掛けるんなら、それが犯罪じゃない限り私は協力する」

キルリア「だからさ……あなたには、逃げないで欲しい」

ニャスパー「……強いんですね」

キルリア「ぜんっぜんだよ。私がクリアした事ないダンジョンを1人で突破したんだよ? あなたは」

ニャスパー「そう言う事じゃなくって……まあいいや」

ニャスパー「ありがとうございます。なんか、踏ん切りがつきました」

ニャスパー「そうよね……逃げてばかりじゃ仕方ない。復讐。そうよ。復讐ね……」

その顔に笑みが浮かんでいて、なんか怖かった。

もしかして、私、逆ベクトルにまずい方向に誘導しちゃった?

ニャスパー「協力してくれるんですよね?」

キルリア「犯罪はダメだよ」

ニャスパー「わかってます。いい作戦を思い付いたんで……聞いてください。大人は、この事にショックを受けるのか」

ニャスパー「それを確かめたいので」
 ▼ 258 1◆J44kAZeDOM 15/11/20 20:58:10 ID:.rXmwNYU [8/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エピローグその2

ニャスパー「みんな、ごめん。今から、事情を話すね」

学校のみんなに向かって言った。

何もかも。包み隠さず。

シキジカ「うん。ごめん。ピカチュウたちから聞いた」

ニャスパー「え、そうなんだ……」

ヤンチャム「盗んだ理由は全然はずれだったけどな!」

ヌメラ「つながりオーブがないと依頼をこなせない……そんな事にまで気が付くなんて、さっすがニャスパーだよ!」

チョボマキ「正直、お前凄すぎてちょっと怖いわ」
 ▼ 259 1◆J44kAZeDOM 15/11/20 20:58:30 ID:.rXmwNYU [9/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
村のみんなにも話した。

私の過去。私がこれからしようとしている事。

用は、私が父を驚かせるための作戦について。

そして、作戦の一番のカギとなるナエトルには、あえて最後に話した。
 ▼ 260 1◆J44kAZeDOM 15/11/20 20:58:51 ID:.rXmwNYU [10/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「はあ?」

ニャスパー「何もホントにそうしてくれって頼んでる訳じゃないの。あくまでも偽装なんだから」

ナエトル「いやまあそうだけど……」

ピカチュウ「いいんじゃない?」

ナエトル「ピ、ピカチュウ……」

ピカチュウ「大丈夫。ナエトルがしばらくこっちにいる事になっても、私1人で調査の仕事はぐらい出来るから」

ナエトル「そりゃそうだけど……」

ナエトル「それに、ニャオニクスをキルリアに接触させないといけないし、それが出来るのは私だけだもん」

ニャスパー「うん」

ナエトル「でもだからってなんで自分?」

ピカチュウ「ニャスパー、後で確認したいから少し話そう。2人きりで!」

ニャスパー「わかった」

ナエトル「質問に答えてよ……」
 ▼ 261 1◆J44kAZeDOM 15/11/20 20:59:11 ID:.rXmwNYU [11/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「はあ……コノハナにも伝えないとね」

ニャスパー「私も行くよ。今回の作戦で、コノハナさんもかなり重要な位置を占める」

ニャスパー「今この状態で上手く演技を続けられる保証はないからさ」

ナエトル「わかった」
 ▼ 262 1◆J44kAZeDOM 15/11/20 20:59:34 ID:.rXmwNYU [12/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「……ってな訳で今日からしばらくニャスパーの家に泊まる事になるんだけど」

コノハナ「おおそうか! 頑張るんだど!」

ナエトル「頑張るって何を……」

ピカチュウ「もしかしてエッチな?!」

ニャスパー「念力」

ピカチュウ「うぐっ、やめてよっ!」

ニャスパー「ふざけないでよ。そんな事ないから」

ナエトル「何の話?」

ニャスパー「知らなくていい」

コノハナ(2人とも無垢でかわいいだど……)

ニャスパー「考えてる事丸見えですよ」

ピカチュウ「えっ、そんな事出来たっけ?」

ニャスパー「コノハナさんに騙されて以来、相手の心が読めるようになった」

コノハナ「う……すまんだど」

ナエトル「すごいな……」

ピカチュウ「なんかどんどんニャスパーが強くなってくよー!」
 ▼ 263 1◆J44kAZeDOM 15/11/20 20:59:55 ID:.rXmwNYU [13/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「ってな訳で、作戦の準備は整った。後は、みんな、しっかりやろう!」

ピカチュウ「それだけど、ナエトル、少し席をはずしてくれない? 2人で話したいの」

ナエトル「そう。別に問題ないよ」

ピカチュウ「ありがと!」

ニャスパー「じゃあ、もっかい説明するね」
 ▼ 264 1◆J44kAZeDOM 15/11/20 21:00:19 ID:.rXmwNYU [14/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「でさ、いろいろと手順は確認出来た。でも、一番確認したかったのはそんな事じゃない」

ピカチュウ「ねえ、ニャスパー。あなた……本気でナエトルの事が好きなんでしょ?」

ニャスパー「ッ……!」

好き。恋愛感情。

なるほど。私のナエトルに対する気持ちって、そう言う事だったんだ。

だから私は、今回の作戦にナエトルを選んだ。そう言う事だったんだ。

ピカチュウ「図星みたい。ねえ、ニャスパー。あなたなら、絶対ナエトルを幸せに出来る」

ピカチュウ「ナエトルは何があっても私と調査団を続ける。それは変わらない」

ピカチュウ「でもね、私たち、恋愛は出来ないの」

ピカチュウ「私……ナエトルの恋人にはなれないの……」
 ▼ 265 1◆J44kAZeDOM 15/11/20 21:00:40 ID:.rXmwNYU [15/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニャスパー「待ってよ! なんでそうなるの! あなたたち2人とも! あ」

ピカチュウ「なんだニャスパー……知ってたんだ。私がフラれた事」

ピカチュウはあははと笑うと、言った。

ピカチュウ「ワイワイタウンにミルタンクさんって人がいるの。今はワルビアルたちの上司をしてるわ」

ピカチュウ「わかるわよね? ワルビアルの事」

ピカチュウ「それでワルビアルは、どうしてか、ミルタンクさんに恋しちゃたの」

ピカチュウ「その時見たのよ。お互いがお互いに真剣に好きだったからこそ、少しすれ違ってるのを」

ピカチュウ「だから私、気付いたの。好きってのは、相手の幸せを願う事なんだ、って」

ピカチュウ「理由はわかんない、でもなんとなくそう思った」

ピカチュウ「私はナエトルが好き。でも、私が恋人になるのをナエトルが嫌がるなら、私は身を引く」

ピカチュウ「私はナエトルと近すぎる。だから、ナエトルは私と恋愛関係になる気はないの」
 ▼ 266 1◆J44kAZeDOM 15/11/20 21:01:26 ID:.rXmwNYU [16/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「だから。ニャスパーにしか出来ないの。ナエトルの相手は」

ピカチュウ「私の出る幕じゃない。ナエトルの恋人は……」

涙をこらえたまま、ピカチュウは笑顔で言った。

ピカチュウ「私は……ナエトルが幸せになれるなら、それでいいから。だからニャスパー。お願いっ!」

そしてそのまま走り去って行った。

呼び止めたりなんて出来ない。

一昨日実際に私は聞いたから。

ピカチュウは恋愛対象じゃない、って。

ピカチュウ「頑張ってね!」
 ▼ 267 1◆J44kAZeDOM 15/11/20 21:01:48 ID:.rXmwNYU [17/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニャスパー「ピカチュウ、ワイワイタウンに戻ったわ」

ナエトル「そっか……わかった。後はピカチュウが首尾よくニャオニクスを連れてこっちまで来てくれれば……」

ニャスパー「うん。私の復讐は完成する。ありがとうね。付き合ってくれて」

ナエトル「お安い御用だよ」

ニャスパー「……」

何にも言えなかった。

必死で言葉を探すけど、何も思い付かない。

ナエトル「……ヒマだね」

ニャスパー「うん」

ナエトル「みんなと遊ぶ? 久々に」

ニャスパー「うん」
 ▼ 268 1◆J44kAZeDOM 15/11/20 21:02:10 ID:.rXmwNYU [18/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シキジカ「あ! ナエトルにニャスパー!」

ヤンチャム「おーおーお熱いなあ」

ナエトル「だから偽装だってば……」

ヌメラ「で、どうしたの?」

ナエトル「いや、さ。ヒマだから前みたいに遊ぼうかなあって」

チョボマキ「大歓迎だよ!」

ニャスパー「そうだ。なんなら、前言ってた子ども調査団でもしない? 今なら私も出来るよ」

ヤンチャム「よしっ! あっと……べ、別に嬉しくなんかないぞ!」

ヌメラ「ウソつかなくて大丈夫だよ」

ヤンチャム「う、うるさい!」

みんなの笑い声が弾けた。

ピカチュウ、お願いね。

私、ナエトルとどうなるのかはわからないけど、取りあえず、あいつとの過去を清算しないとどうにもならないから。
 ▼ 269 1◆J44kAZeDOM 15/11/20 21:02:33 ID:.rXmwNYU [19/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エピローグ3

ニャスパーの作戦はもう、すごいなんて物じゃない。

あれをあの年で思い付いたんだとすると、これからが楽しみどころか、ちょっと怖い。

でもまあ、私も似たようなもんか。

ふふっ。

私も、あの子と一緒に戦う。

それで私も、たぶん過去を乗り越えられる。

私はもう戦える。それを示したいだけだから。

あの子には人の心が見える。

でも、たぶん、これだけは気付かれてない。

これは私が私自身の許しを得るための戦いなんだって事を。
 ▼ 270 1◆J44kAZeDOM 15/11/20 21:03:04 ID:.rXmwNYU [20/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「キルリア」

キルリア「何?」

ピカチュウ「行って来るよ。ニャオニクスを連れて来るから、その時になったら……」

キルリア「わかってる。テレパシーで伝えて、テレポートであなたたち2人を飛ばすんだよね? まあ、私も行かざるを得ないんだけど」

ピカチュウ「そ。よろしくね!」

それだけ言うと、ピカチュウは歩き去った。

よろしくは、こっちの方だよ。
 ▼ 271 1◆J44kAZeDOM 15/11/20 21:04:29 ID:.rXmwNYU [21/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
気が付いたら、眠ってたみたい

夢を見たの久々だな。

お母さんと、お父さんと、私。

当たり前の、でももう帰っては来ない日常。

私には、もう父親はいないのかもしれない。

でも、それでも私は生きて行ける。

お父さんなんていらない。

私は……

自分1人でやって行ける!

いや違う。

私にはみんなが必要。だけど、それでも。

私はしっかりやって行ける。やって行く。それが私の目標だった。

それを改めて確かめた時、空気が動いた。
 ▼ 272 1◆J44kAZeDOM 15/11/20 21:04:57 ID:.rXmwNYU [22/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「……ニャスパーが言いたい事があるですって!」

ニャオニクス「今更無理だって……」

ピカチュウ「あきらめるな、ですよ」

ニャオニクス「だが……」

ピカチュウ「あーもうじれったい! いいから行きますよ!」

ニャオニクス「で、なんで病院なんだ? もしかして……」

ピカチュウ「あー違う違う! ニャスパーじゃなくて、テレポートしてくれる人がいるのよ」

声が漏れ聞こえて来る。

さて、連絡を入れよう。

ツー、ツツツ

――ニャスパー、聞こえる?

――ええ、聞こえます。あいつは来ましたか?

――ええ。心の準備をしといて。たぶんすぐだから。

――了解です。
 ▼ 273 1◆J44kAZeDOM 15/11/20 21:05:19 ID:.rXmwNYU [23/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「キルリア! 来たよ!」

キルリア「わかった。ごだごだ言う前に行くよっ! テレポート!」

ニャオニクス「え、ちょま……」
 ▼ 274 1◆J44kAZeDOM 15/11/20 21:05:41 ID:.rXmwNYU [24/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ふう、着いた。

キルリア「ねえピカチュウ。肩貸して」

ピカチュウ「いいですけど……」

ニャオニクス「……今ニャスパーはこんなところに住んでいるんだな」

ピカチュウ「ええ。いい所ですよ」

ニャオニクス「今更……俺にニャスパーと会う資格なんてあるんだろうか……」

ピカチュウ「ありません。それでも、向き合わないといけないんです。あなたも、ニャスパーも」

ニャオニクス「向き合う……か。そう……だよな。わかった。行くよ」

ピカチュウ「やっと覚悟決めてくれた」

キルリア「で、ニャスパーの家ってどっちなの?」

ピカチュウ「あっちよ!」
 ▼ 275 1◆J44kAZeDOM 15/11/20 21:06:04 ID:.rXmwNYU [25/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「おーい! ニャスパー! ニャオニクス連れて来たよ!」

扉が開かれた。

ニャスパー「お疲れ様、ありがとう。お父さん、折り入って話があるの」

くくくっ。

笑いをこらえるのに必死だった。

自分が大好きな悪戯に、自分が引っかかる気持ちを楽しんで!

ニャオニクス「お父さん……か。認めてくれt」

ニャスパー「認めてなんかない。でもさ。産みの親である事に変わりはないからさ」

ニャスパー「だからあんたにだけは言わないと……って思って」
 ▼ 276 1◆J44kAZeDOM 15/11/20 21:06:26 ID:.rXmwNYU [26/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




















ニャスパー「私、結婚する事にしたから」
 ▼ 277 1◆J44kAZeDOM 15/11/20 21:06:50 ID:.rXmwNYU [27/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニャオニクス「はあ? 子どもにそんな事出来るはずがないだろ?!」

ニャスパー「お父さん、反対するんだ……」

ニャスパーは目に涙をためている。

この子、ホントに策士ね。

ニャスパー「せっかく打ち明けたのに……あんなに嫌いだったあんたに頑張って打ち明けたのに……」

自分の罪を自覚させつつそれでも歩み寄った事をアピールする……恐ろしい子。

ニャオニクス「いや、俺はそれでいいんだが……周りは……」

ニャスパー「周りはみんなOKって言ってたよ」

ニャオニクス「はあ?!」
 ▼ 278 1◆J44kAZeDOM 15/11/20 21:07:12 ID:.rXmwNYU [28/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「あ、ニャスパーのお父さん」

ニャオニクス「君か……」

ナエトル「あいにくですけど、僕の保護者も認めてくれてます。それだけじゃない。村中がOKしてくれたんです」

ニャオニクス「この村……狂ってる……」

ニャスパー「狂ってるのはあんたの方だから」

ニャオニクス「ああそうだ。俺は確かに異常だ。でも、それとこれとは関係ない! あんたもそう思うだろ、キルリアさん」

いやさすがにここは……

キルリア「お互いに愛さえあればいいんじゃないかな」

ニャオニクス「ピカチュウ……」

ピカチュウ「私? 私はナエトルさえ幸せになってくれればそれでいいの」

ニャスパー「正直に言いなよ。私に結婚して欲しくないって」

ニャオニクス「だが……」

ニャスパー「構わないよ。あんたが反対しようと私は絶対に結婚するんだから。ね、ナエトル」

ナエトル「うん」
 ▼ 279 1◆J44kAZeDOM 15/11/20 21:07:35 ID:.rXmwNYU [29/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニャオニクス「そうか……そうか。わかった。俺の出る幕じゃないんだな」

ニャスパー「……」

ニャオニクス「俺、帰るよ。もうお前にとって、俺はいてもいなくても変わらないただの通りすがりなんだから」

ニャスパー「……」

ニャオニクス「君の母親には悪い事をしたと思っている。これだけは伝えておくよ」

ニャスパー「……どっきり大成功」
 ▼ 280 1◆J44kAZeDOM 15/11/20 21:07:58 ID:.rXmwNYU [30/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニャオニクス「……は?」

ニャスパー「バカなの? こんな子どもが結婚出来る訳ないじゃない! ねえ、今どんな気持ち?」

ニャスパー「自分がずっとやって来た悪戯を、自分がされる気持ちは?」

ニャオニクス「悪戯……これが?」

ニャスパー「残念だけど、これでも私にはあんたの血が流れてる。悪戯の才能はあるわ」

ニャオニクス「これが悪戯……か。はははっ!」

ニャオニクス「俺の負けだ! 悪かった! ニャスパー!」

ニャスパーは、そっと息を吸い込む。

ニャスパー「私、もうあんたに関わる事はないと思う。でもね」

ニャスパー「私、あんたを許す。ピカチュウもそうしたみたいに。私、あんたを許すから」

ニャオニクス「……わかった。悪戯はもうやめる。そして……お前に顔向け出来る俺になるまで、お前とは会わない事にするよ」

ニャスパーは、にこりと笑うと言った。

ニャスパー「ごめんね」
 ▼ 281 1◆J44kAZeDOM 15/11/20 21:08:44 ID:.rXmwNYU [31/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エピローグ4

キルリア「ふうっ、すっきりしたあ」

ピカチュウ「いやあ、すごかったよ。なんかもう、知ってる私も騙されそうだったもん」

ナエトル「取りあえず、復讐は成功だね。ニャオニクスも反省したみたいだし」

ニャスパー「まだわかんないけどね。現に、私たちがあいつから逃げた後もこうやって悪戯してた訳だし」

キルリア「ありがとね、ニャスパー」

ニャスパー「え、なんでですか?」

キルリア「私も父親とは因縁があるから。それで、なんかすっきりした」

ニャスパー「ああ、そうでしたね……重ね合わせてたんだ」

キルリア「うん。これでなんか乗り越えられそうだよ」

そっか。これは私1人の復讐に見えて実はそうじゃなかったんだ。
 ▼ 282 1◆J44kAZeDOM 15/11/20 21:09:08 ID:.rXmwNYU [32/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キルリア「じゃあ、私はこれで帰るね」

ピカチュウ「私も連れてって!」

ナエトル「あ、自分m」

キルリア「行くよ! テレポート!」

ナエトル「……置いてかれた」

もしかして……ピカチュウ、私のために?

ピカチュウは、本気で言ってるみたいだった。

ナエトルが幸せならそれでいいって。
 ▼ 283 1◆J44kAZeDOM 15/11/20 21:09:28 ID:.rXmwNYU [33/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「ったく、こんな時間だからもう調査団にも帰れないしなあ……泊まっていい?」

ニャスパー「うん」

ナエトル「ありがとう」

そっか。

そうだよね。

これも私1人の恋に見えて、実はそうじゃないんだ。

私の事を、涙をこらえて応援してくれる人がいる。

私は……だから、怖気づいてなんていられないよね。

ニャスパー「ねえ、ナエトル。1つだけ、いい?」

ナエトル「何?」

ニャスパー「私……ナエトルの事……!」
 ▼ 284 ルキー@プレミアボール 15/11/20 21:10:08 ID:.rXmwNYU [34/34] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
当SSはこれにて完結です
お読みくださりありがとうございました
 ▼ 285 ーナンス@トライパス 15/11/20 22:04:17 ID:oTnrgrsw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ▼ 286 ノワール@おおきなしんじゅ 15/12/02 05:45:18 ID:uRONqBlA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
保守
 ▼ 287 ルセウス@2ごうしつのカギ 15/12/15 15:54:51 ID:/BTm/Q2M NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
お疲れ様
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