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SS

レントラー「気が付いたらシンオウ1週してたんだが……」

 ▼ 1 1◆J44kAZeDOM 16/02/19 23:22:55 ID:2dmTD7Vs [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
前スレ

俺「目が覚めたらポケモンになってたんだが……」
http://pokemonbbs.com/poke/read.cgi?no=141983

ルクシオ「気が付いたらシンオウ半周してたんだが……」
http://pokemonbbs.com/poke/read.cgi?no=186826
 ▼ 2 1◆J44kAZeDOM 16/02/19 23:27:05 ID:2dmTD7Vs [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
視点 アカリ

アカリ「アキラー、遅いよー」

アキラ「いや、仕方ないだろ! トリトドンとエンペルトじゃ、スピードの差が」

アカリ「先行って待ってるねー」

まあ、仕方ないとこはあるんだろうな。

うーん、にしても、もう夕方なんだよね。

間に合うかなぁ……。

アカリ「エンペルト、一旦上陸するよ」

エンペルト「えんっぺ」

浅瀬……。うーん、足が濡れちゃう……。
 ▼ 3 1◆J44kAZeDOM 16/02/19 23:30:03 ID:2dmTD7Vs [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アキラ「トリトドン、お疲れ。一旦戻れ!」

アカリ「出来るだけ浅瀬を歩いたら野生ポケモンに襲われる事もないのはわかるんだけど……」

アカリ「ほら、靴下が濡れたら、ぐじゅぐじゅになって気持ち悪いじゃん?」

アキラ「ここ抜けたらポケセンあるだろうし、我慢しろ。どうせ今夜はそこに泊まるんだろうし」

アカリ「そうなるね。あ、あっちに滝が見えるよ!」

アキラ「お、確かに。もうすぐだ。行こうぜ!」

アカリ「うん。エンペルト!」

アキラ「トリトドン、頼んだ!」
 ▼ 4 1◆J44kAZeDOM 16/02/19 23:34:04 ID:2dmTD7Vs [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
さあて。

アカリ「うわあ、すごいな……」

目の前の圧倒的な滝の流れに、ただ圧倒されるばかり。

アカリ「……でも、エンペルト、行くよ! 滝登り!」

アキラ「トリトドン、お前もだ! 滝登り!」

エンペルトは、しっかり捕まってろ、と言わんばかりにこっちをチラっと見て、それから、ものすごい勢いで滝を登り始めた。

轟音が聞こえる。

うーん、気持ちいい!

やっぱ、旅はこうじゃなくっちゃ!

……この旅が終わったら、自転車、買い直そうかな。お金も溜まったし。
 ▼ 5 日はここまで◆J44kAZeDOM 16/02/19 23:39:06 ID:2dmTD7Vs [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アカリ「ふう。エンペルト、お疲れ様」

アキラ「トリトドン、戻れ」

アキラ「……これが、チャンピオンロードの入口か」

アカリ「っぽいね。まあ、取りあえず、今は一旦ポケセンに行こう。ってか、もうそこで、作戦会議かな?」

アキラ「だな。もしかしたら、お前の手持ちたち、何かに気付いてるかもしれない。もっと詳しくな」

アカリ「だったらいいけどね。少し考えればわかるって言われた、プルートのキャラ変わり過ぎ問題とか」

アカリ「ロトムとの関係性とかね」

アキラ「まあ、まずはお前が聞いてみてくれよ。俺は後で、お前から聞く」

アキラ「まともにポケモンと会話出来るなんてちょっと信じきれないとこ、まだあるし、っつーか、変に俺とかと話したら、周りから怪しまれかねない」

アキラ「問題のシーンは、それを共有する人が少なければ少ないほどバレにくいからな」

アカリ「わかった、ありがとう」

アキラ「じゃあ、まずは、部屋取ろうぜ」
 ▼ 6 ロッパフ@いいつりざお 16/02/19 23:55:45 ID:XE44.zOw NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
乙!支援!
3スレ目おめ!
 ▼ 7 ングース@ディフェンダー 16/02/20 01:08:49 ID:s1SJco8. NGネーム登録 NGID登録 報告
今一番楽しみにしてます。支援!
 ▼ 8 ロリーム@つきのいし 16/02/20 09:49:38 ID:9/we05sQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
超楽しみだ支援
レントラーメガシンカかな?
 ▼ 9 チート@きんりょくのハネ 16/02/20 09:52:05 ID:oGHhdX1o NGネーム登録 NGID登録 報告
アカリのびしょぬれ靴下吸いたい
 ▼ 10 1◆J44kAZeDOM 16/02/20 19:55:07 ID:7/Aw88vc [1/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アカリ「ありがとうございます」

ジョーイ「ごゆっくり」

アキラ「にしても……なんだ。それっぽいっつーか、今までのポケセンとは雰囲気からして違うな」

アカリ「うん。エリートトレーナーとかばっかで、みんなやる気っぽいし」

アキラ「まあ、でも……実際に何人がチャンピオンロードを抜けられるのか、だよな」

アカリ「……でも、あたしたちは、行かないといけないから。だからアキラ! 頑張ろうね!」

アキラ「おう。じゃ、メシの時に」

それだけ言ってあたしたちは、それぞれの部屋に入った。
 ▼ 11 1◆J44kAZeDOM 16/02/20 19:58:20 ID:7/Aw88vc [2/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アカリ「ふうっ」

部屋の中は、他のポケセンと変わりなくって。

それが、あたしを安心させた。

アカリ「みんな出て来て! 少しくつろごう。後、レントラーとペラップ。ちょっと話したいんだけど」

ペラップ「え、何を?」

アカリ「プルートについて、何かわかった事ないかな」

ペラップ「それなら、レントラーとエンペルトも呼んだ方がいいかも」

アカリ「エンペルト? まあいいけど。じゃあ、ロトムリオルグレイシア、ちょっとそっちでくつろいでて」
 ▼ 12 1◆J44kAZeDOM 16/02/20 20:02:36 ID:7/Aw88vc [3/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
視点 レントラー

まあ、そうだろうなとは思った。

俺ならわかる。

そう思っても、なんらおかしくない。今までの旅の中で、俺は何度もアドバイスして来た。

元人間で、ギンガ団関連にも詳しいとなれば、そう信じたくなるのも無理はない。

だけど……この件に関しては、俺じゃ無くて、エンペルトなんだよな。まあいいけど。

アカリ「単刀直入に聞くよ。あなたたち、何か気付いてる? もしかしたら、そこに何かヒントがあるかもしれない」

ペラップ「あの、その件なんだけど……もう、答えが出てるの」

アカリ「……ふえ?」

ペラップ「もう、あたしたちは、みんなわかってる。エンペルトの推理のおかげで」

アカリ「へ?」
 ▼ 13 1◆J44kAZeDOM 16/02/20 20:06:30 ID:7/Aw88vc [4/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アカリ「あの……さ? わかってんの?!」

ペラップ「うん。じゃあ、話すよ。エンペルト、確認お願い」

エンペルト「わかった」

俺は空気だな。まあいいけど。

ペラップがアカリに説明する。

時々エンペルトが訂正する。

俺は、それをただ、黙って聞いていた。

そうしてないと、不意に、刈谷が、俺の頭の中で声をあげる。

それを忘れるために、俺は、一言も聞き逃すまいと言う態度で耳を傾けた。
 ▼ 14 1◆J44kAZeDOM 16/02/20 20:10:48 ID:7/Aw88vc [5/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エンペルト「終了」

ペラップ「ってな訳で、ここまで」

アカリ「プルートが……ロトムと」

アカリ「二重人格……。うーん、ダメ。頭がパンクしそう」

エンペルト「……」

ペラップ「もっかい説明……する?」

アカリ「いや、いい。なんとか飲み込んでみる」

アカリが、今さっき言った事をなぞる。

細かいとこの間違いはあったが、だいたい合っていた。

そこを俺たちで訂正する。

アカリ「オッケー、わかった。これなら、なんとかアキラに説明出来そうかな」

込み入った話なのはわかる。だけど、しっかり説明してもらわないと困る訳だ。

アカリ「あ、って事は! ……あの機械の対策……思い付いた、かも」
 ▼ 15 1◆J44kAZeDOM 16/02/20 20:13:29 ID:7/Aw88vc [6/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
レントラー「えっ」

エンペルト「あれの対策を」

ペラップ「何?」

アカリ「みんな! こっち来て! プルートのあの操る機械の対策、思い付いた」

グレイシア「え、ホント?!」

リオル「あの?」

グレイシア「うん」

ロトム「ナニナニー?」

3人も集まって来た。

アカリは口を開く。

アカリ「いい? この作戦のキモは、ロトム、あなたよ」
 ▼ 16 1◆J44kAZeDOM 16/02/20 20:19:02 ID:7/Aw88vc [7/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ロトム「エ、僕?」

アカリ「そう、ロトム。なんか、心の弱みにつけ込むみたいでヤなんだけど、そんな事言ってる場合じゃないし」

アカリ「ロトム、あなたがプルートに……ううん、キショウ? に近付けば、きっと諦めてくれる、ってのは都合良さ過ぎるけど」

アカリ「少なくとも、隙ぐらいは出来る。たぶん、ロトムを操ったりは出来ないはず」

アカリ「そこに、あたしとアキラでリアルファイト。ポケモンを操る、だから、もうそうするしかないと思うんだ」

アカリ「……相手はお年寄り。あたしたちは、まだ子どもだけど、2人がかりなら大丈夫でしょ」

リ、リアルファイト……。

まあ、でも実際そうするしかないのか。

俺たちじゃ、束になってかかって行っても操られて終わりだもんな。
 ▼ 17 1◆J44kAZeDOM 16/02/20 20:23:40 ID:7/Aw88vc [8/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
視点 アカリ

アカリ「うーん、そろそろごはんの時間。戻って、みんな」

アカリ「さあて、行きますか」

確か、プルートは……。

頭の中でさっき聞いた事を整理しながら、食堂に向かって歩いた。

……にしても、全部わかってたのか。

エンペルト、名探偵だな。

アキラ「おーアカリ、遅かったな」

アカリ「みんなと話してたの。アキラ、全部わかってたよ」

アキラ「え、何が?」

アカリ「だからさ、プルートの動機とか、その他もろもろ」

アキラ「……はあ?」

アカリ「取りあえず注文しちゃおう。すいませーん!」

アキラ「いやいやいや」
 ▼ 18 1◆J44kAZeDOM 16/02/20 20:31:38 ID:7/Aw88vc [9/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アカリ「でさ」

アキラ「おう」

アカリ「あ、来た来た。いっただっきまあす」

アキラ「……はぁ」

アカリ「で、本題だけど、プルートの動機」

アキラ「食べながら話すな」

アカリ「えー! だってアキラが話して欲しそうにしてるから!」

アキラ「……いいよわかった」

アカリ「うん。で、だけどね」

さっきペラップから聞いた話を、そのままアキラに伝えた。

その間に、お皿は空っぽになっていた。

アキラ「なるほどね……。って、納得はしたけど、唐突過ぎんだろ。事件に巻き込まれたーだ、だから世界を滅ぼすーだ」

アカリ「まあね。あたしだって、よくわかんなかったもん」
 ▼ 19 1◆J44kAZeDOM 16/02/20 20:37:43 ID:7/Aw88vc [10/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アカリ「あ、そうだ。あたし、さっきの話聞いて、あの機械の対処法、思い付いたの」

アカリ「ロトムで隙を作って、あたしたちでリアルファイト」

アキラ「な、リ、リアル……」

アカリ「ポケモン出したら操られて終わりじゃん」

アキラ「ううむ……」

アカリ「あ、みんな食べ終わったみたい。アキラ、あんたも速く食べなよ」

アキラ「いや、それどころじゃねえだろ」

アカリ「まあね。とにかく、あたしから言えるのはここまで」

アカリ「後は、もう、ぶっつけ本番。動機が合ってたら、プルートは、絶対あたしを……ってか、ロトムを待つだろうから、今日はもう、ゆっくり休もう」

アキラ「……まあ、そうだな。ごちそうさま」

アカリ「……早っ!」

アキラ「んじゃ、もう解散にしようぜ。また明日な」

アカリ「うん!」
 ▼ 20 1◆J44kAZeDOM 16/02/20 20:47:39 ID:7/Aw88vc [11/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
視点 レントラー

アカリ「んじゃ、お風呂わかしてくるね。昨日は入れなかったし」

それだけ言って、アカリは浴室に向かった。

レントラー「にしても俺たち、すげえ遠くまで来たよな」

エンペルト「ホントにね。あの時が懐かしいよ。レントラーがまだコリンクで、私もポッチャマだった」

グレイシア「確かにね。あたしはコリンク時代を知らないんだけど」

エンペルト「あ、そっか。あんたがメンバー加入したの、ヨスガジムの後だもんね」

グレイシア「次の水ジムで負けて」

ペラップ「え、負けてたの?」

グレイシア「うん。まあ、あのおかげで、今までほとんど負けずにここまで来られたってのはあるかもね」
 ▼ 21 日はここまで◆J44kAZeDOM 16/02/20 20:53:35 ID:7/Aw88vc [12/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
レントラー「いろいろあったな」

リオル「僕はほとんど何もしてないんですけど」

ペラップ「まあまあ」

レントラー「……どう転ぶのかわかんねえけど、少なくとも、ゆったり休めるのは、今日が最後になると思う」

レントラー「だから、少しでも力を蓄えとこうぜ、今日は」

エンペルト「そうね。もう考える事もないし」

そう。謎は、全部解かれた。

もう俺たちに残された仕事は、戦う事、それだけだ。

エンペルト「チャンピオンロード、きついらしいしね」

レントラー「ああ。普通に迷いかねない」

グレイシア「そのぐらいの方が燃えるってもんよ! あたし燃えちゃダメだけど!」

レントラー「ぷっ」

思わず噴き出した。

だが、なんとなく寂しさも感じた。

こんな風に笑えるのは、後どのぐらいなんだろう。
 ▼ 22 ノムッチ@ゴールドスプレー 16/02/21 00:03:52 ID:xpEngypw [1/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
支援ヌ
 ▼ 23 1◆J44kAZeDOM 16/02/21 20:18:53 ID:E8tBs.Ds [1/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アカリ「おーい、お風呂空いたよ。リオルはロトムと一緒に入れるかな……」

リオル「……まあ、ずらすかな」

ペラップ「ずらすだって」

アカリ「そう。って言うか、あたしたちと一緒に入る?」

げ、また俺1人でロトムの相手かよ。

怠。

まあでも、話せる事はあるし、先に主導権を握っちまおう。

ってか、あれ以来なんか静かだしこいつ。

リオル「うん。じゃあそうしようかな」

ペラップ「そうするだって」

アカリ「OK。それじゃ、行こう! 狭くなるけど、賑やかなぐらいが楽しいし」

そういや、アカリたちってエンペルトのあの大柄な体も混じってるあの状況で、どうやってあのサイズの風呂でくつろいでんだろ……。
 ▼ 24 1◆J44kAZeDOM 16/02/21 20:26:18 ID:E8tBs.Ds [2/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
まあ、そんな事どうでもいいか。

レントラー「なあロトム」

ロトム「何?」

レントラー「お前は……プルートについて、どう思ってる? いや、キショウについて」

ロトム「エット……大好きダヨ! 世界デ一番!」

レントラー「だよな」

心配なのは、こいつだ。

ぎりぎりでなびかないか、それが一番の不安。

もしそうなった時、機械の対処法はなくなり、全てが意味を失う。

そうなれば、世界崩壊にまっしぐらだ。

レントラー「世界を壊すって計画については?」

それも不安の種だ。

殺人を犯した男を、テレビの中に閉じ込める程の歪んだ正義感。

幼さの中に、そんな危うい感情が潜んでいる。それがロトムだ。
 ▼ 25 1◆J44kAZeDOM 16/02/21 20:33:29 ID:E8tBs.Ds [3/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そんなこいつなら、世界を壊すって言うプルートの思想に共鳴するかもしれない。

いや、共鳴と言うより、もともとは全く同じ物だ。

ロトム「……ワカンナイ。キショウガ何シヨウトシテルノカ、イマイチ」

レントラー「ホントに?」

ロトム「ウン」

本当だろうか。

これに関しては、嘘を吐いてもおかしくはない。

それが出来る程精神が成熟してる訳じゃないかもしれない。だけど。

子どもだからこそ、吐ける嘘がある。

子どもしか持たない、特有の残酷さ。

それが刈谷を襲った訳だが、今はそれは置いとこう。

事件が解決したら、たぶん、反省する機械なんていくらでもある。

問題は、ロトムが本心を隠したいがために気付いてないフリをしている可能性。

もしそうだとしたら、極めて不利な材料だ。
 ▼ 26 1◆J44kAZeDOM 16/02/21 20:41:46 ID:E8tBs.Ds [4/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
天真爛漫に飛び回るロトムの笑顔が、どことなく悲しげに見えた。

最悪、機械の、ロトムに頼らない対策を考えないといけない……かもしれない。

でも……何をどうしろってんだよ……。

こればっかりは、シロナたちがメガストーンを持ってくるのに間に合うか、ロトムを説得しきるかしかない。

俺が出来る事と言えば、ロトムを説得する手助け。それだけだ。

いつもみたいに、考えても仕方ないと割り切る訳にはいかない。

この世界に俺の知らない要素がある以上、この世界も実際に存在する世界なんだ。

もしこの世界が崩壊して、俺たちが巻き込まれた時、向こうに帰る事は不可能になる。

……だけど、本当に帰りたいのか。俺は……俺は、いっその事、消えてしまいたい。

だけど、それで悲しむ人がいる。いる……のか?

レントラー「はは……はははははは!」

結局、俺の生きる意味なんて、この世界の崩壊を食い止める事ぐらいだ。

それが終わったら、俺なんて、どうなっても構わない。

どうせ一度は無くした命なんだから。
 ▼ 27 1◆J44kAZeDOM 16/02/21 20:47:44 ID:E8tBs.Ds [5/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
だったら、全力で考えないと。

それは、俺の義務だ。

あの機械は……ポケモンの行動に干渉するけど、心理には干渉しない。

それは、俺自身の体で確認済みだ。

だからなんだって話だけど……もしかしたら、俺なら強引に突破出来るかもしれない。

元はニンゲンだ。そこを突いたら、機械がバグるんじゃないか?

それは普通にあり得そうだ。じゃないと、わざわざニンゲンをポケモンにして送り出す意味なんてないし。

そのためだけに、俺は……生き永らえた、って訳だ。

上等じゃねえか。絶対、この世界の崩壊は食い止めてみせる。

そんな決意を知らないアカリの、間の抜けた声が響いた。

アカリ「お風呂空いたよー」
 ▼ 28 1◆J44kAZeDOM 16/02/21 20:52:44 ID:E8tBs.Ds [6/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
リオル「ねえ……どうしたのレントラー、怖いんだけど」

グレイシア「え、何が?」

リオル「うーん、内面的な話」

俺の決意、気付かれたかもしれない。

だけど、そんな事どうでもよかった。

リオル「どうでもいいとか言ってるけどさ……危ないよ、その尖り方」

リオル「1つの支えに寄りかかってる感じ。ほら、僕たちもいるんだから、辛い事があったら相談に乗るよ」

レントラー「サンキュ。だけど、大丈夫。心配すんな」

少なくとも、この戦いが終わるまでは、だけどな。

リオル「……そう」

エンペルト「え、何?」

リオル「いやさ……」

最後までは聞かなかった。
 ▼ 29 1◆J44kAZeDOM 16/02/21 20:59:20 ID:E8tBs.Ds [7/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
風呂に入って体を温める。

ロトムも、もういろいろ自分1人でやるし、そこは気にしてない。

正直、電気風呂になる事だけだ。こいつと一緒に風呂に入る時の問題は。

それも、俺なら全然気にならないし。

レントラー「ふう、さっぱりさっぱり」

久々の風呂に、疲れが溶け切ったのか、体が軽かった。

アカリを呼んで、体を拭いてもらった。
 ▼ 30 1◆J44kAZeDOM 16/02/21 21:08:13 ID:E8tBs.Ds [8/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アカリ「んじゃ、明日は早起きしてチャンピオンロードを抜けるから、みんな、お休み」

そう言うと、アカリは、3秒もしない内に眠りの世界に引き込まれた。

グレイシア「……早っ!」

エンペルト「疲れが溜まってるのよ。昨日はミオジム戦にVSアキラ、槍の柱のバトルもあったし」

エンペルト「今日も今日とてナギサジム戦だもんね」

ペラップ「改めて考えてみても、ハードワークが過ぎるよね」

エンペルト「つまり私たちも疲れが溜まってるって事だよ。寝よ」

レントラー「だな。お休み」

5人「お休みー」

6人全員、あっという間に睡魔に襲われ、抗う事なく敗退した。
 ▼ 31 1◆J44kAZeDOM 16/02/21 21:14:54 ID:E8tBs.Ds [9/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
視点 アカリ

おーい、起きろアカリ!

……アキラ?

アカリ「って、もうこんな時間?!」

アキラ「朝飯の時間そろそろだぞ!」

アカリ「わ、わかってる! みんな起きて!」

――

アカリ「アキラおはよっ! 急ごう!」

アキラ「ったく、寝坊すんなよな」

アカリ「ごめんごめん、疲れが溜まってて」

アキラ「まあ、そりゃそうか。じゃ、行くか!」
 ▼ 32 1◆J44kAZeDOM 16/02/21 21:18:57 ID:E8tBs.Ds [10/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アカリ「いただきます!」

アキラ「あんま急いで食うなよ? ……下手したら、最後の……晩餐じゃねえな」

アカリ「だーいじょーぶ。最後になんてならないし、させないから」

アキラ「そうだな。んじゃ、チャンピオンロードを元気に抜けるためにも、いっただっきまあす」

会話はなかった。

いい意味で緊張してた。

やっぱり、普通の人たちとは事情が違うとしても、この場所の空気は平等に緊張を与えるんだろうなー。

アカリ「ごちそうさま」

アキラ「ごっそさん。みんな食い終わってんな。戻れ!」

アカリ「みんなも!」
 ▼ 33 日はここまで◆J44kAZeDOM 16/02/21 21:25:31 ID:E8tBs.Ds [11/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
……

アキラ「チャンピオンロード」

アカリ「うん。なんか……怖いね」

アキラ「だけど、怖がってる場合じゃない。行こうぜ。ゴールは目の前だ」

アカリ「うん!」

あたしたちは、遂に、「終わり」の始まりに向けて、一歩を踏み出した。
 ▼ 34 ッポウオ@サーナイトナイト 16/02/21 23:26:15 ID:xpEngypw [2/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
支援
 ▼ 35 1◆J44kAZeDOM 16/02/22 20:23:42 ID:8EvzerYk [1/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アキラ「ゴウカザル! ロッククライム!」

アカリ「リオル、まねっこ!」

ゴウカザル「ごうっ!」

リオル「くわんぬ!」

アカリ「お疲れ様リオル」

アキラ「サンキュゴウカザル!」

アカリ「うーん、立体的で入り組んでるね」

アキラ「迷いそうだよな……お、トレーナーだ」

アカリ「避けられないかな……」

アキラ「なーにバカ言ってんだ。自分を鍛えなきゃ、だろ? 俺たちは、創造神と戦わないといけないんだぞ」

アカリ「わかってるけどさ……」
 ▼ 36 1◆J44kAZeDOM 16/02/22 20:29:36 ID:8EvzerYk [2/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アキラ「ふう、疲れた……」

アカリ「やったねアキラ!」

エリトレ♂「ちっ、ここまでか……」

エリトレ♀「せっかくここまで来たのに……。修行のし直しかぁ」

エリトレ♂「あ、それなら一緒にしませんか? 修行」

エリトレ♀「あ、いいかもそれ」

なんか恋が芽生えてる気がするのは気のせいだろうけど、それを抜きにしても、今までの普通のトレーナーと比べて、強さが桁違いだった。

これからの厳しい戦いを予感して、なんか、体が震えた。

アキラ「どうした?」

アカリ「武者震いって奴かな……」

アキラ「なーにカッコいい事言おうとしてんだよ」

アカリ「ホントなんだから仕方ないじゃん!」

アキラ「はいはい。あ、階段発見。これは登る一択かな」

アカリ「だね。行こ!」
 ▼ 37 1◆J44kAZeDOM 16/02/22 20:35:09 ID:8EvzerYk [3/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アカリ「リオル、岩砕き!」

アカリ「レントラー、怪力!」

これ、パズル?

変に動かしたら詰みそうなんだけど……。

アキラ「よしアカリ、一旦落ち着け。こう言うのは、焦ってもいい事ない」

アキラ「急がば回れだ。ちょっと違うけど」

アカリ「わかってる。レントラー、気を付けて行くよ!」

レントラー「がう」

アカリ「あ、リオル! 岩砕き!」
 ▼ 38 1◆J44kAZeDOM 16/02/22 20:39:34 ID:8EvzerYk [4/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アカリ「はあっ……頭がパンクするー!」

アキラ「ごめん、そんな言う程難しくなかったと思うんだけど……」

アカリ「まあ、とにかくクリア出来たんだし、よしとしよう! さあて、階段下りますか!」

アキラ「おうよ」

アカリ「にしても登ったり下りたり、なんでこんな面倒な作りにしたんだろ……。アホなのかな」

アキラ「いや、明らかに最後の試練って意味だと思うんだけど……」

アカリ「そんな事気にしないの! 行こ!」

アキラ「はいはい」
 ▼ 39 1◆J44kAZeDOM 16/02/22 20:44:09 ID:8EvzerYk [5/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アカリ「うーん、わかってはいたけど、戻ってるよねやっぱ」

アキラ「まあ、下見てみろよ。構造的に、段差で区切られてるとこを抜けて、さっきは行けなかったとこに行ける」

アカリ「まあそうよね! よし!」

アキラ、速くして。

アキラ「……やっぱお前、自分のポケモンに覚えさせるべきだったと思う。ロッククライム」

アカリ「エンペルトしか覚えないし? しかもエンペルト技の空きないし?」

アキラ「はいはい。ゴウカザル! ロッククライム!」

アカリ「リオル、まねっこ!」
 ▼ 40 1◆J44kAZeDOM 16/02/22 20:46:50 ID:8EvzerYk [6/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
今度は地下に下りて来た。

アカリ「わ、水だね」

アキラ「お前はもっと言葉を選べ」

アカリ「え? 放送禁止用語は言ってないけど」

アキラ「あのさあ?」

アカリ「エンペルト、波乗り!」

アキラ「はあ……。トリトドン、波乗りだ!」
 ▼ 41 1◆J44kAZeDOM 16/02/22 20:49:45 ID:8EvzerYk [7/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アカリ「また回避不能じゃん」

アキラ「だかr」

アカリ「わかってる。サイキッカーと空手王……ブレイン&パワーズだっけ」

アキラ「だな。あ、目が合った」

アカリ「対戦よろしくお願いします」

空手王「押忍! よろしく!」

サイキッカー「……やめておいた方が……彼らのオーラ、強すぎる」

空手王「そのぐらいの方が燃えるじゃねえか!」
 ▼ 42 1◆J44kAZeDOM 16/02/22 20:51:08 ID:8EvzerYk [8/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
結果は、あたしたちの勝ち。

アキラ「よし。ドンカラス、サンキュ」

アカリ「ペラップ、お疲れ様」

サイキッカー「だから言ったのに……」

空手王「いい修練になった! ありがとう!」

アカリ「こちらこそ!」

アキラ「対戦ありがとうございました。んじゃ、行こうぜ」

アカリ「うん。エンペルト、波乗り!」

アキラ「トリトドン、頼んだ!」
 ▼ 43 1◆J44kAZeDOM 16/02/22 20:55:55 ID:8EvzerYk [9/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アカリ・アキラ「滝登り!」

アカリ「うーん、こんな小さい滝じゃ、爽快感が足りないよ」

アキラ「いや、それを求める物なのか……」

アカリ「ほーら、気にしない! あ、あっちに階段があるっぽいよ! 行こう!」

アキラ「……はあ。なんか、いつも以上にアカリのバカさが……」

アカリ「なんか言った?」

アキラ「なんでもねえよ!」

アカリ「それならいいんだけど。お疲れエンペルト」

アキラ「トリトドン、サンキュ。上り階段だ。行こうぜ!」

アカリ「うん!」
 ▼ 44 1◆J44kAZeDOM 16/02/22 21:00:32 ID:8EvzerYk [10/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
さっきはああ言ったけど、アキラのセリフ、ちゃんと聞こえてるんだからね!

あたしだって、怖いんだもん。

それを無理にでも隠したい、だから、能天気天然を演じてるの!

いつも以上って何よ、全くもう……。

アキラ「あ、トレーナーだ」

ベテラントレーナー♂「ほう、まだ若いのにここまでやって来よったぞ」

ベテラン♀「ええ。でも、それもここまででしょうね。なんたって、私の大好物なんだもの……」

ベテラン♀「こういう若い子の希望をへし折るの!」

ベテラン♂「……怖い」

ベテラン♀「なんか言った?」

いや、普通に怖いよ?

まあでも、こんなおばさんにへし折られるほどヤワじゃないもん!

アカリ「アキラ、頑張ろうね! 今の言い方からして、もうゴールも近いよ!」

アキラ「言われなくても!」
 ▼ 45 1◆J44kAZeDOM 16/02/22 21:06:53 ID:8EvzerYk [11/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アカリ「なーんだ、口ほどにもない」

アキラ「希望をへし折るのが好きとか言ってた割に、そんなだったな。むしろ、男の人のが強かった」

ベテラン♂「……それを言うな」

ベテラン♀「……」ゴゴゴ

アカリ「あっ……、し、失礼しましたー」

アキラ「……逃げるが勝ちだっ!」

ベテラン♂「あっ、ちょっと待……」

その後彼がどうなったのか、あたしたちは知らない。
 ▼ 46 1◆J44kAZeDOM 16/02/22 21:10:42 ID:8EvzerYk [12/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アカリ「年齢のコンプレックスとか、いろんなコンプレックスって、怖いね……」

アキラ「まあ、そんなもんだろ。ゴウカザル、ロッククライム!」

アカリ「あっ! リオル、まねっこ!」

アキラ「よし、お疲れ様ゴウカザル」

アカリ「リオルも、お疲れ」

アキラ「おっ、アカリ! あっちから明かりが!」

アカリ「あたしはここにいるけど」

アキラ「あーもう、そうじゃなくて、光が!」

アカリ「要するに出口って事?」

アキラ「ああ!」

アカリ「ホント?! やった! 行こうアキラ!」

アキラ「おう!」

あたしたちは走った。

出口をくぐったら最終決戦が始まる。それはわかってる。

それでも、達成感のような物が、あたしたちを動かした。
 ▼ 47 1◆J44kAZeDOM 16/02/22 21:13:58 ID:8EvzerYk [13/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アカリ「ゴール!」

アキラ「よっしゃ! アカリ、行こうぜ」

アカリ「……うん」

アキラ「ん? どうした?」

アカリ「もう、ここまで来たんだなって」

アキラ「……だな。でも、思い出に浸ってる場合じゃない。速く行かないと、回復の時間がなくなるかもしれないし」

アカリ「うん。わかってる。でも、まずは、あの大きな滝だね」

アキラ「だな。トリトドン! 頼むぞ!」

アカリ「エンペルト! ラストはよろしくね!」

2人「滝登り!」
 ▼ 48 1◆J44kAZeDOM 16/02/22 21:19:23 ID:8EvzerYk [14/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アカリ「……いよいよだね」

アキラ「ああ。でもまずは、回復だ。元気がないと、戦えないし」

アカリ「うん。行こう!」


リーグ内ポケモンセンター


ジョーイ「それでは、ポケモンをお預かりします!」

アカリ「お願いしますね。あ、そこの人! すいませーん!」

アキラ「だから日本語もっと考えろよ……」

バッジチェックの人「ん? 挑戦か? それなら、ジムバッジが揃っているかの確認を……」

アカリ「いや、そうじゃなくて……ここに、誰か入って来てないですか?」

バッジチェックの人「いや、今は誰も」

アカリ「そうですか、ありがとうございます」
 ▼ 49 1◆J44kAZeDOM 16/02/22 21:21:29 ID:8EvzerYk [15/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アカリ「セーフ。プルートよりは先に来られた」

アキラ「……ってか、どうやって入る気なんだろうな。はいアカリ。回復、もう終わったぞ」

アカリ「ありがt」

???「こうやるんだよ」

アカリ「えっ?」

不意に聞こえた声に振り返る。

そこには、プルートが立っていた。

プルート「待ってたんだよ。遅かったじゃないか」

チェックの人「え、どう言う……」

プルート「アルセウス!」

そう言うと、プルートは、マスターボール? を取り出し、放り投げた。

あたしは、咄嗟に叫んだ。

アカリ「危ない伏せてっ!」
 ▼ 50 ノズ@こうかくレンズ 16/02/22 21:22:21 ID:8EvzerYk [16/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
今日はここまでです

いよいよクライマックスですが、それに向けて書き溜めます
テストも相まって、更新がしばらく出来ないかもしれません
ご容赦ください
 ▼ 51 サナン@ねっこのカセキ 16/02/22 22:41:18 ID:w3FtYqq2 NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
乙。待ってます!
 ▼ 52 イパム@ひかるおまもり 16/02/23 19:28:46 ID:sOOQQY5U NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援!
 ▼ 53 ンド@ナナのみ 16/02/23 22:34:16 ID:F5eCg1jA NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
支援
 ▼ 54 ッギョ@なぞのすいしょう 16/02/24 17:39:37 ID:IBbO3SRc NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
支援
 ▼ 55 1◆J44kAZeDOM 16/02/26 19:39:32 ID:I3HQsEcI [1/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
後はエピローグを残すのみと言う所まで書き溜めましたので、少しずつ更新を再開します
 ▼ 56 1◆J44kAZeDOM 16/02/26 19:40:03 ID:I3HQsEcI [2/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アカリ「そんな……捕獲してただなんて」

その巨体が天井を貫き、パラパラとかけらが落ちて来る。

プルート「戻って。行こう」

あたしは、恐怖に立ちすくんでいた。

思わずアキラの方を見る。

アキラも、あたしを見返して来ていた。

アキラ「あれ……なんだよ」

アカリ「あれが、アルセウス。……やっぱプルート、あたしたちを待ってたんだ。行こう! 速くしないと、世界がっ!」

アキラの顔を見て、不意に驚きは消えた。

そして残されたのは、焦りと使命感。

あたしは、大地を蹴った。
 ▼ 57 1◆J44kAZeDOM 16/02/26 19:40:23 ID:I3HQsEcI [3/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アカリ「リフト……ペラップ、よろしく!」

アキラ「アカリっ! ……ドンカラス!」

今コウキ兄ちゃんは、奥の部屋にいるのか。

いるとしたら、たぶん、来てくれるんだろうけど。

でも、間に合うかはわからない。

アカリ「プルートっ! 待てっ!」

プルート「待てと言われて待つバカがいると思ってるの? よっぽどのバカだよ」

とまあ、向こうは煽って来るけど、中身はともかく、体はもうおじいちゃん。

必死で走れば、追い付けない事はなかった。

そして、3人は、ほとんど同時に、リョウさんの部屋に到着した。
 ▼ 58 1◆J44kAZeDOM 16/02/26 19:40:46 ID:I3HQsEcI [4/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
リョウ「やあ、よく来たねチャ……ん?」

プルート「ヤドキング! 波乗り!」

……やっぱり、レントラーは間違ってなかったんだ。

信じられないよ……。だけど。

アカリ「行くよエンペルト! 波乗りっ!」

アキラ「リョウさん、プルートが壁に消えたってコウキ兄ちゃんたちに伝えて! 俺が10秒経っても戻らなかったら戻らない物だと……」

アキラの声は、最後まで聞こえなかった。

壁に突っ込んで、あたしは、ただ漆黒が広がる場所にいた。

気付けば、そこに。

音は、聞こえない。

アカリ「エンペルト、戻って。レントラー、透視でプルートを探して!」

アキラ「……ドン、お疲れ。ちっ、ドアも消えんのか」

アキラ「俺たち、たぶん戻れねえ。だけど、やるしかない。プルートは、ここにいる」

レントラー「がう!」

アカリ「あっちね! アキラ、行くよっ!」

アキラ「おう!」
 ▼ 59 1◆J44kAZeDOM 16/02/26 19:41:15 ID:I3HQsEcI [5/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あたしたちは、必死で走った。

地面を踏みしめてる、なんて感じはない。それでも、前にはちゃんと進んで行く。

アカリ「……なんか、変な感じ」

アキラ「あっ、いた!」

プルート「……遅かったね。待ちくたびれたよ」

そう言って微笑むプルートに向けて、あたしは叫んだ。

アカリ「プルート! 考え直して! 世界は、悪い人間だけじゃない!」

プルートは、悲しげに、笑った。

そして、無言でアルセウスをボールから繰り出す。
 ▼ 60 1◆J44kAZeDOM 16/02/26 19:41:39 ID:I3HQsEcI [6/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
プルート「これで……やっと『終わる』。世界が……」

アカリ「……自分の家族が殺されたからって、全てが悪いって決め付けないで!」

プルート「……気付いてたんだ。まあ、そりゃそうか」

アキラ「……アカリ、とにかく俺は、アルセウスの気を惹く。お前はプルートをなんとかしてくれ。たぶん、捕獲すればいい」

アキラ「だから、プルートのマスターボールを壊すんだ!」

アカリ「了解。みんな! アキラを手伝って!」

あたしは、ロトム以外のみんなを、ボールから出した。

アキラ「サンキュ! んじゃ、ファイト!」

プルート「させないよ。やっとここまで来たんだから」

プルート「だから……ロトムを、速くボールから出してくれない?」
 ▼ 61 1◆J44kAZeDOM 16/02/26 19:42:18 ID:I3HQsEcI [7/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ここは、駆け引きするべきだよね。

失敗は許されない。

何とかしてプルートを止めないと。みんなが操られる前に。

アカリ「ねえ、嫌な事があったんなら、あたしが全部聞くよ。だからさ……一回、落ち着こ?」

プルート「そんな事どうでもいい! 僕は……ロトムといたい! それだけなんだ!」

アカリ「そう。それなら、ちょっと待って。今、ここにロトムがいる」

アカリ「ロトムをボールから出すのにあたって、条件があるの」
 ▼ 62 日はここまで◆J44kAZeDOM 16/02/26 19:42:38 ID:I3HQsEcI [8/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
プルート「何? 速くロトムを返して!」

アカリ「待って。ロトムは、あなただけの物じゃない。1匹の、ちゃんと自分の意志を持ったポケモン。あたしだって、ロトムに、友達と認められてるはずだよ」

プルート「例えそうだとしても! ロトムは、僕とも、会いたいはずだよ」

こうしている間にも、崩壊は進んでってるのよね。

……こうやって、取引きなんてしてるヒマないのかもしれない。

アカリ「だから! その機械を、壊してくれない? そうすれば、あたしも、納得してロトムをボールから出せる」

プルート「……嫌だ。僕は、ロトムと一緒に、新しい世界に行く。どれだけ厳しくても、僕は、ロトムがいればそれでいいんだっ!」

……仕方ない。作戦決行!

リアルファイトしてでも、速く機械を壊さないと。

アカリ「……わかった。ロトムっ!」
 ▼ 63 トツキ@ばんのうごな 16/02/26 23:37:59 ID:QMnEac0U NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
支援
 ▼ 64 ノワール@ダークボール 16/02/27 13:03:16 ID:a35a0Vdk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 65 1◆J44kAZeDOM 16/02/27 17:35:35 ID:NNnnTmss [1/23] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
視点 レントラー

アキラ「アルセウス! 止まれっ!」

アルセウスは、無感動な目をこちらに向けた。

そして、一声咆哮をあげる。

グレイシア「うぐっ……」

それだけで、吹き飛ばされそうになる。

アキラ「ちっ、まあいい。俺の仕事は、あくまでも気を惹く事だ……! みんな出て来いっ!」

アキラは、「6つ」のボールを虚空に放り投げた。

……ん? 6つ?

ボールから出て来たのは、ゴウカザル、トリトドン、ドータクン、ドンカラス、ユキノオー。そして……。

レントラー「な、なんで……、なんで……」

なんで……アキラの手持ちに、あんなポケモンが?

アキラ「みんな! とにかくアルセウスを攻撃するんだ! お前もっ!」

アキラは、そのポケモンを指さして言った。

たぶん、アキラはまだ、気付いてない。

そのポケモンが、幻のポケモン、セレビィだと言う事に。
 ▼ 66 1◆J44kAZeDOM 16/02/27 17:36:04 ID:NNnnTmss [2/23] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
俺は、驚きを無理矢理押し隠して、少し考えを巡らせる。

カンナギのあの出来事。


村長「そして、ここカンナギにあるほこらもそのほこらと全く同じ作りをしておるのじゃ!」

アカリ「それで……どう言う事なんですか?」

村長「まだ可能性の段階でしかないが……セレビィはここ、シンオウにもやって来るのではないか? そしてその時、ここに第一に降り立つのではないか……」


アキラが鋼鉄島の後行ったのは……カンナギ!

そう言う事か。ポケダンでも世界を救うために戦ってた。

アルセウスを止めるためにアキラの手持ちになったって、何もおかしくはない。
 ▼ 67 1◆J44kAZeDOM 16/02/27 17:36:37 ID:NNnnTmss [3/23] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
そう自分で自分を納得させた時、不意にアカリの声が聞こえた。

アカリ「……わかった。ロトムっ!」

あっ、遂に向こうも行動を起こしたのか。

……だけど、大丈夫だろうか。

まだ俺しか知らない疑惑。

ロトムはまだ、なびく可能性がある。

俺は、アルセウスに攻撃を仕掛けながら、アカリの方へ耳をそばだてた。
 ▼ 68 1◆J44kAZeDOM 16/02/27 17:36:58 ID:NNnnTmss [4/23] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
プルート「やっと……やっと会えた、ロトム……」

ロトム「エ? 僕、結構一緒ニイタジャン」

その言葉は、通じない。

プルート「ねえ、こんな世界、壊したいよね?」

アカリ「ロトム! 違うよね? そりゃ、壊したいような、最低な人間だっているのは事実。だけどっ! それ以上にっ!」

アカリ「この世界はまだまだ、捨てたもんじゃないっ!」

アカリ「うぉぉぉおおおおおお!」

プルート「……なっ!」

……やっぱ、リアルファイトは規格外だって。

でも、その規格外は、今この状況に限っては有効なのかもな。

こうなりゃアカリの勝ちだろ。
 ▼ 69 1◆J44kAZeDOM 16/02/27 17:37:35 ID:NNnnTmss [5/23] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
……とまあ、こんな発言したら、エンペルトは言うだろう。

それ、フラグになりかねないよ、と。

そして、その不吉な幻想は。




アカリ「きゃっ!」



プルート「ロ、ロトム……」







ロトム「……僕、ヤッパリキショウノ事ガ好キダッ! イクラアカリデモ、キショウヲ殴ルノハ許セナイッ!」



と、現実になる事になる。
 ▼ 70 1◆J44kAZeDOM 16/02/27 17:38:21 ID:NNnnTmss [6/23] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
レントラー「なっ! すまん! みんな、俺、アカリの方行って来るっ!」

エンペルト「えっ? なんで?」

レントラー「それは――」

答えようとした瞬間、眩い光が辺りを包み込んだ。

アキラ「ぐっ……。クソッ! ペラップ! おしゃべりで混乱させるんだっ!」

ペラップ「了解っ!」

エンペルト「……ヤバい気がする。本格的に……」

それには俺も同感だ。だが、今は恐らく、それどころではない。

レントラー「あのさ、ロトムが、なびいた。だから、俺が行く。多すぎてもあれだから、俺だけでいい」

エンペルト「……わかった。アルセウスは、絶対に止めとく。だから……レントラー、絶対、アカリを助けてあげて」

レントラー「おう」

首にかかった石ころが、熱を持った気がした。
 ▼ 71 1◆J44kAZeDOM 16/02/27 17:38:47 ID:NNnnTmss [7/23] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
レントラー「アカリっ!」

アカリ「はあっ? な、なんでレントラーが……」

プルート「そうか! 遂に! 遂に来たんだこの時が!」

プルート「世界が、再構成を始めたんだ! 神話によると、始めはニンゲンもポケモンも同じだった! 今がその、始まりの時なんだ!」

アカリ「なっ……」

ロトム「……」

……通じてんのか? まあいいや、好都合だ。

レントラー「プルート! お前、もう取返し付かねえぞ!」

プルート「そんな事わかってるさ。その覚悟はあるし」

……それを言われると、俺も弱い。

やり直せる。それが、俺には言えない。

レントラー「……とにかく! 世界を壊させはしないっ!」

プルート「そっか。でも、残念ながら、君は僕に操られる運命にある訳だ」

レントラー「ちっ……。やられる前にやるだっ! アカリ、ロトムは俺が引き付けるっ!」

アカリ「う、うん! あたしがプルートだねっ! レントラー、ワイルドボルトっ!」

レントラー「了解っ!」
 ▼ 72 1◆J44kAZeDOM 16/02/27 17:39:07 ID:NNnnTmss [8/23] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
言葉が通じる。ニンゲンと。

それだけで、なんか、ものすごく懐かしく感じた。が、それどころじゃないのもわかっている。

体に電気をまとった。

レントラー「ロトムっ! プルートは……キショウは、間違ってる!」

ロトム「……ワカッテルヨッ! ダケド……ダケド……」

プルート「さあ、レントラー。君は、今からその電気を、自分の主人にぶつけるんだ……」

プルートが、機械を手に持った。
 ▼ 73 1◆J44kAZeDOM 16/02/27 17:39:51 ID:NNnnTmss [9/23] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
アカリ「待てやこらぁぁぁああああっ!」

アカリが、プルートめがけてダイブした。


俺の体は、それを受け止めていた。


電気を身にまとったまま。


自分の意志に関わらず。


アカリ「ぐっ、ぐぬぬ……」


アカリ!
 ▼ 74 1◆J44kAZeDOM 16/02/27 17:41:01 ID:NNnnTmss [10/23] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
苦しげな声が、俺を、なおさら焦らせる。

アカリ「……だ、大丈夫だよレントラー……」

クソッ。

俺から……俺から離れろバカっ! このままじゃ、お前が持たない!

俺の叫びは、しかし、言葉にならない。

アカリ「レントラー……大丈夫だから。だから、しっかりして。自分を……取り……戻して……」

プルート「逃げなくていいの? 死んじゃうよー?」

アカリ「ぐっ、あああああっ!」

ロトム「ア、アカリッ!」
 ▼ 75 1◆J44kAZeDOM 16/02/27 17:41:21 ID:NNnnTmss [11/23] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

アカリ「ほら、大丈夫だからさ……レン……トラー……あた……し……」

頼む! 俺から離れろっ!

俺は……。


エンペルト「……わかった。アルセウスは、絶対に止めとく。だから……レントラー、絶対、アカリを助けてあげて」


クソッ! 俺は、俺は……!


アカリ「レン……トラー……」


アカリっ! アカリ……。頼むから……俺から、離れてくれっ!
 ▼ 76 1◆J44kAZeDOM 16/02/27 17:41:58 ID:NNnnTmss [12/23] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告











その時、


奇跡が起こった。










 ▼ 77 1◆J44kAZeDOM 16/02/27 17:42:21 ID:NNnnTmss [13/23] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
な、なんだこれ……。

首が……熱い。

アカリ「……」

なんだこれ……力が……。

今までの記憶が、アカリと過ごした時間が、溢れ出して来る……。
 ▼ 78 1◆J44kAZeDOM 16/02/27 17:42:45 ID:NNnnTmss [14/23] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
出会い。

いやいや入った風呂。

自転車。

特訓。

コンテスト。

進化。

イーブイ。

敗北。

豪華な食事。

リベンジ。

ペラップ。

アキラ。
 ▼ 79 1◆J44kAZeDOM 16/02/27 17:43:06 ID:NNnnTmss [15/23] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
カンナギの戦い。

遭難。

森の洋館。

ソノオの戦い。

鋼鉄島の戦い。

槍の柱。
 ▼ 80 1◆J44kAZeDOM 16/02/27 17:43:30 ID:NNnnTmss [16/23] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
……全部、俺の、最高の思い出だった。

その思い出が、力に変わる。

自分の体が、光に包まれているのを見た。

もう進化しないはずなのに、俺は、また進化しようとしていた。

首飾りが澄んだ音を奏でた。
 ▼ 81 1◆J44kAZeDOM 16/02/27 17:43:51 ID:NNnnTmss [17/23] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
メガレントラー「……アカリ。お前の敵は、俺が取る」

メガレントラー「プルートっ! ……絶対に、絶対に許さないっ!」

プルート「なっ! メ、メガシンカ?!」

俺の目を、涙が伝っていた。

プルート「支配が……解けている……。ヤドキングっ! ゴチルゼルっ! レントラーを止めろっ!」

メガレントラー「ふん」

俺は、電気を身にまとう。

そして、そのまま、2匹に向けて走った。
 ▼ 82 1◆J44kAZeDOM 16/02/27 17:44:11 ID:NNnnTmss [18/23] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
2匹のポケモンが、いともたやすく吹っ飛ばされる。

それを見もせず、俺は、プルートに向き直る。

プルート「つ、強い……」

メガレントラー「ロトム。なあ、プルートは、こんな奴だ。俺を使って、アカリを殺した」

メガレントラー「それでも、お前は……お前は、プルートに味方をするってのかっ!」

俺の叫びが、ロトムに届いているのかはわからない。

それでも、俺の口は止まらなかった。

メガレントラー「プルート……」

死ね。

その言葉に、ロトムが顔をあげた。

そして、俺とプルートの間に立ちふさがる。

ロトム「……キショウ」

そう言って呼びかけたロトムは、不意に、レンジを下に落とした。

そして、プルートが手に持つ機械の中に入り込む。

プルートが何か言っているのが目に入る。

だが、俺の耳には何も届かなかった。
 ▼ 83 1◆J44kAZeDOM 16/02/27 17:44:35 ID:NNnnTmss [19/23] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
メガレントラー「……」

ロトムの力か、機械が弾け飛ぶ。

俺は、それを、かみ砕いた。

プルートの顔が恐怖に歪んで行くのを見た気がする。

それでも、俺は、プルートの方へ歩く。

プルートの服の中からマスターボールを見付けだす。

俺は、それをくわえた。

プルートは、ただ震えているだけだった。

アカリ「……うぐ……」

まだアカリは生きている。

それだけを頼みに、俺はアルセウスの方へと走り出した。
 ▼ 84 1◆J44kAZeDOM 16/02/27 17:44:57 ID:NNnnTmss [20/23] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
――

ロトムは、懐かしの友に話しかける。


僕ハネ? キショウ、君ヲ探スタメニアカリト旅ヲ始メタ。

ソレダケダッタ。

ダケド……ソレデモ。

ミンナト一緒ニイラレテ、僕ハ楽シカッタ。

ソレデ、思ッタンダ。

世ノ中ニハ、イイニンゲンモイルンダッテ。

ネエキショウ。イヤ、プルート。

アカリハ、イイニンゲンナンダ。

ソレナノニ……ナンデコンナ事ヲ……。
 ▼ 85 1◆J44kAZeDOM 16/02/27 17:45:19 ID:NNnnTmss [21/23] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
プルートはうなだれてしまう。

目の前で涙を溜める旧友に、かける言葉が見付からなくて。

その心に、少し、暖かい物が生まれた。

自分とロトム。アカリとレントラー。

そこにある想いに、差はなかった。

突然に、それがわかった。

――
 ▼ 86 1◆J44kAZeDOM 16/02/27 17:45:46 ID:NNnnTmss [22/23] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
走っている内に、だんだん冷静さを取り戻していく。

それと同時に、焦りが生まれて来るのも感じた。

体が光に包まれて、元の姿に戻る。

アルセウスをボールの中に!

そうすればまだ可能性はある!

自分で自分をそう信じ込ませて、俺は走った。

エンペルト「レントラー!」

マスターボールをアルセウスにぶつけようと、飛びかかる。

アルセウスが、俺を、驚愕の目で見詰めていた。
 ▼ 87 日はここまで◆J44kAZeDOM 16/02/27 17:46:29 ID:NNnnTmss [23/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



その時



セレビィが、間に割って入った。



俺の口からボールがこぼれ、言葉が漏れた。




レントラー「な、なんで……?」





セレビィ「勝手な事しないで。世界が壊れるよ」
 ▼ 88 マタマ@リュガのみ 16/02/27 19:50:28 ID:a8d1S/ao NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
いいところで…乙支援
 ▼ 89 ュシュプ@タポルのみ 16/02/27 20:45:05 ID:wjF0ttz2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 90 イリキー@マックスアップ 16/02/28 00:17:21 ID:LgVjrBxc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サンムーンでレントラーのメガ進化こねえかな…

支援!!
 ▼ 91 1◆J44kAZeDOM 16/02/28 16:35:14 ID:JVdcvoC6 [1/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
アルセウスが咆哮をあげる。

その体から、光が溢れ出した。

セレビィ「安心して。あなたたちの世界は終わらない」

光の筋が、さながら1000本の腕のように見えた。

エンペルト「レントラーっ!」

アキラ「おまっ、何してんだ!」

俺は着地した。地面もないのに着地と言っていいのかは知らないが。

それでも、俺の中の疑問は消えてくれなかった。


どう言う事だ、セレビィ。俺たちの世界は、終わらない?
 ▼ 92 1◆J44kAZeDOM 16/02/28 16:35:35 ID:JVdcvoC6 [2/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
アキラ「どうして……」

セレビィ「事情は、ちゃんと話す。だけどまずは、そっちの方で倒れてる子を助けないと」

そう言ってセレビィはアカリたちの方に飛び出した。

グレイシアが、弾かれたようにこっちを見た。

グレイシア「レントラー、アカリがどうかしたのっ?!」

俺は、向こうであった事を全部説明した。

アキラ「うーむ、やっぱ慣れねえ。今この瞬間ではポケモンの話が通じるってのはわかったけど」

の割にこいつはそこまで動揺してない感じなんだが。

まあそれはともかく。

レントラー「セレビィ曰く、俺たちの世界は終わらない。どころか、アルセウスを止めたら世界が終わるらしい。とにかく、アカリ見て来る」

リオル「あ、いや……。アカリの波導を感じる。たぶん、大丈夫」
 ▼ 93 1◆J44kAZeDOM 16/02/28 16:36:32 ID:JVdcvoC6 [3/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
はたしてその言葉通り、アカリはセレビィを連れて走って来た。

アカリ「おーい! みんな!」

ロトムとプルートはいない。

今は、2人でどうしてるのだろう。

アキラ「アカリ、大丈夫だったか?!」

アカリ「大丈夫じゃないよー。でも、セレビィの癒しの願いのおかげで、無事」

アカリ「一応元気のかけらの持ち合わせもあったしね」

そう言ってにこりと笑い、セレビィの方を見た。

少し苦しげな表情のセレビィも、つられて笑った。

レントラー「よ……良かったぁ……」

アカリ「プルートとロトムは、今、話してる。2人なりの結論を探すって。でも、とにかく今は、安心していいんだよね?」

セレビィ「うん」

アカリ「でさ、セレビィ。もう少しちゃんと聞かせてもらおうか。世界のためだけじゃ、何もわかんないもん」

セレビィ「オーケー。」
 ▼ 94 1◆J44kAZeDOM 16/02/28 16:37:25 ID:JVdcvoC6 [4/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
まずね、この謎の場所には時間が流れてないんだけど……。

でも、あえて言うなら。

今この時は、宇宙が生まれるよりも前なんだ。

アキラ「なっ」

アカリ「どう言う事?」

セレビィが すがたを けした もりのおくに のこされた タマゴは みらいから もってきたもの らしい。
(セレビィ:銀・FR・SS図鑑より)

って言うじゃん?

なにも ない ばしょに あった タマゴのなかから すがたを あらわし せかいを うみだしたと されている。
(アルセウス:Pt、BW、BW2図鑑より)

とも言うじゃん?

ここまで言えばもうわかるわよね?
 ▼ 95 1◆J44kAZeDOM 16/02/28 16:37:53 ID:JVdcvoC6 [5/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
レントラー「あっ」

アカリ「ねえレントラー、どう言う事?」

レントラー「つまり……、今アルセウスが作っている世界が即ち、俺たちの世界だ……って事か?」

セレビィ「そうそう! だから、邪魔されちゃ困ったんだけど」

でね? あたしは、アルセウスを過去に戻す役目を担ってる。

だから、カンナギであいつの手持ちになろうとしてたんだけど……そっちの子のせいで、プルートが逃げちゃったから。

アカリ「あ、あたしのせい?!」

セレビィ「言っちゃうとね」
 ▼ 96 1◆J44kAZeDOM 16/02/28 16:39:36 ID:JVdcvoC6 [6/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
アルセウスの光が収束した。

そしてそこに現れたのはディアルガ、パルキア、ギラティナ。

湖の3匹のポケモンもいる。

レントラー「終わっ……たのか?」

セレビィ「後は、アルセウスから話してもらった方がいいか。アルセウス! あんた、ここまで巻き込んどいて、説明しない訳にはいかないんだからね!」

アルセウス「わかってるよもー」

……

神の威厳って何だっけ?

えらくフレンドリーと言うかなんつーか……。

アルセウス「とにかく、世界が完成したし、後はもう、みんなに任せるよ」

6匹が頷き、それぞれの世界に消えて行く。

アルセウス「初めにレントラー、君には謝っとかないとね。ホント、君の物語を全否定するような結末になるから」

レントラー「……は?」

アルセウス「言った通り。でもまずは、全体の説明をするから。と言っても、大筋はほとんどセレビィが話してくれた通り」

アルセウス「セレビィが僕たちみんなを過去に戻した。世界が生まれる前のね」

アルセウス「だから、僕がいま創ったのは、君たちの世界なんだ」
 ▼ 97 ガヘルガー@ポイントアップ 16/02/28 17:57:15 ID:XdO6mGkY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
いっちはフレンドリーなアルセウス好きだな
支援
 ▼ 98 1◆J44kAZeDOM 16/02/28 19:56:43 ID:JVdcvoC6 [7/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アルセウス「ここからは」

それだけ言うと、アルセウスは俺の方を見た。

アルセウス「君にだけ話したいんだ、レントラー。みんな、ちょっといなくなってくれない?」

レントラー「……俺は構わない」

アカリ「えっ、なんで?! あたしがいちゃいけないの?!」
 ▼ 99 1◆J44kAZeDOM 16/02/28 19:57:04 ID:JVdcvoC6 [8/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
それはたぶん。

レントラー「俺の……過去についての事だからだと思う」

アルセウス「大正解! するどいね!」

そう褒められても、嬉しくもなんともない。

エンペルト「ねえレントラー。いや、アルセウス。レントラーの過去についてなら、私たちみんな、知る権利があると思う。私たちみんな知ってる訳だし。よね? みんな」

グレイシア「うん!」

ペラップ「だって……レントラーの過去に重ね合わせて、私たちも変われたんだからさ」
 ▼ 100 1◆J44kAZeDOM 16/02/28 19:57:27 ID:JVdcvoC6 [9/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アルセウス「そっか。わかった! あっ、それなら、ロトムも呼ばなきゃ。……うん。アカリちゃんの手持ちも、みんな聞いていいか」

アキラ「とにかく、俺は聞かない。それでいいか?」

アルセウス「ごめんね」

アキラ「アカリ……、言いたくなければ言ってくれなくていいからな」

アカリ「うん……」

アルセウス「じゃあ、行こう。ロトムも連れてね」
 ▼ 101 1◆J44kAZeDOM 16/02/28 19:57:48 ID:JVdcvoC6 [10/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
一瞬世界が歪んだと思ったら、アルセウスを含めた俺たち7匹と1人は、見た事もないような空間にいた。

アカリ「何……ここ」

アルセウス「まあ、誰にも邪魔されない、僕だけの領域ってとこかな」

アルセウス「レントラーはだいたい気付いてるかもしれないけど、でも、ちゃんと説明するね」

レントラー「ああ」

ロトム「エット……キショウハ?」

レントラー「大丈夫。また会える。よな?」

アルセウス「うん! だから安心して聞いてね」

アルセウスの口からいよいよ語られる事実。

たぶん、これを聞いたら、俺の生きる意味も終わる。

リオル「……レントラー、あんま思いつめないでね」

レントラー「ああ」

不思議な程、心は静かだった。

何が語られるのか。それを知りたくて、興奮してもおかしくないのに。

俺はただ、じっと、アルセウスが口を開くのを待っていた。
 ▼ 102 1◆J44kAZeDOM 16/02/28 19:58:15 ID:JVdcvoC6 [11/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
まず初めにね。レントラー、君がいなかった場合の話をするよ。

もしそうなった場合、プルートは、絶望に苛まれたままだけど、ロトムを見付けだして、カンナギでセレビィを手に入れて、それから僕も手に入れて、謎の場所で以下略。

で、世界はめでたく創られましたー! ちゃんちゃん♪ になるはずだったんだよね。

そうして出来た世界がつまり、君たちのいる世界、だからさ。

だから、それを妨害するのは自分の首を絞める行為だし、そう言う事はさせないように調整してたんだけどさ……。

現に、謎の場所の場所だって、レントラーがいなかったらわからなかったでしょ?

レントラー「……なあ、ちょっと待て! それなら……俺を、俺をここに呼んだ理由はなんだ? 俺が、いない方が良かったってのに!」
 ▼ 103 1◆J44kAZeDOM 16/02/28 19:58:39 ID:JVdcvoC6 [12/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アルセウス「黙ってるつもりだったんだけど……鋭いな」

レントラー「はぐらかすな。俺は……なんで、なんで素直に俺を殺させてくれなかった! グレイシアも、ペラップも、傷付けずに……変な期待をさせずに済んだのに……」

グレイシア「ちょ、あたし、レントラーの事……」

アルセウス「事故だよ」


レントラー「……え?」






アルセウス「だから、事故。僕はね、君をこっちに呼び寄せる気なんてさらさらなかった」


レントラー「……は?」
 ▼ 104 1◆J44kAZeDOM 16/02/28 19:59:15 ID:JVdcvoC6 [13/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
それって、どう言う事だ?

俺がここに来た事になんて、まるで意味がなかった……。

アルセウス「ある事件でね、カロスの人を1人、ポケモンとして転生させないといけなくなって、で、その時についうっかり」

うっかり。

俺は、うっかりでここに来た。









俺の、生きる意味なんて、なかった。


アルセウス「ホントにごめん!」
 ▼ 105 1◆J44kAZeDOM 16/02/28 19:59:37 ID:JVdcvoC6 [14/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
レントラー「……ハハ、ハハハハハハっ!」

乾いた笑いが漏れ出す。

そうかそうか、つまり俺は、ムダだったんだ。

俺なんて、生きる価値もなくて……。

俺なんて、俺なんて……。

笑いは、止まらなかった。
 ▼ 106 1◆J44kAZeDOM 16/02/28 20:00:07 ID:JVdcvoC6 [15/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
視点 エンペルト

え……。

レントラー、どうしたの?

アカリ「レントラー! しっかりして!」

レントラーは、まだ笑い続けている。

グレイシア「アルセウス! あんた、そんな言い方ないでしょ!」

アルセウス「そうは言っても、事実なんだし」

レントラー「そうだよな。俺なんかに、生きる意味があるはずない。な?」

レントラーが、壊れた。

それしか、思い浮かばなかった。

否定の言葉すら、あたしは言えなくて。

そんな自分が、苦しかった。
 ▼ 107 1◆J44kAZeDOM 16/02/28 20:00:28 ID:JVdcvoC6 [16/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
リオル「言わんこっちゃない。でも、まさかここまでとはね……」

グレイシア「あんた、心が読めるんでしょ! どうすればいいのか教えなさいよっ!」

リオル「……うーん、生きる意味を見付けだせれば、あるいは」

グレイシア「……生きる……意味……。あの時あたしが、あんなにきつく言わなかったら……」

ペラップ「違う。グレイシアがあそこできつく言うのは、当然の事だよ」

グレイシア「……でも! 肝心な時に、またあたしは、黙って見過ごすしか……」

苦しげな表情のグレイシア。

私はそれも、黙って見る事しか出来ない。
 ▼ 108 1◆J44kAZeDOM 16/02/28 20:00:54 ID:JVdcvoC6 [17/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ロトム「レントラー! 僕ハ、君ガイテクレテ、ヨカッタヨ!」

ロトムの必死な叫び。

でも、レントラーは頑なだった。

アカリ「どうしてそうなってるのかイマイチわからないけど……でも、そんな事、生きる意味がないなんて事絶対にないっ!」

レントラー「それは、俺が俺じゃなくって、ただのレントラーでも言えるよな?」

アカリ「そんな事っ!」

レントラー「俺以外の奴が同じ状況になっても、たぶんアカリは言うよ。そうやって」

グレイシア「……あーもう! エンペルトっ! あんたも何かいいなさいよっ!」

エンペルト「……でも」

グレイシア「何がでもよ! 何が私に出来るのは推理だけよっ! そんなの、無責任だよっ!」

エンペルト「……私じゃ、レントラーを止められない。レントラーを止めるには、心が必要だから。あたしには、それがわかる」

グレイシア「その結果がロトムだよ? もう、理性的に止めるしかないよ! それは、あんたにしか出来ないのっ!」
 ▼ 109 1◆J44kAZeDOM 16/02/28 20:01:16 ID:JVdcvoC6 [18/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エンペルト「私……」

わかっている。私に足りないのは、感情。

推理は出来ても、それ以上の事は出来ない。

理解して、同情までは出来る。

だけど、共感は出来ない。

でも、例えそうだとしても、必死に思い出そう。

レントラーを止めるのが、私にしか出来ないのなら。
 ▼ 110 1◆J44kAZeDOM 16/02/28 20:01:36 ID:JVdcvoC6 [19/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
旅の記憶。

コリンクが、夢を見たって言って、それからだっけ。推理を始めたのは。

コリンクは、私の話にちゃんとついて来てくれた。

今までは、誰も私の話を理解してくれなかった。それなのに、出会ってばっかりのコリンクにすぐ打ち解けられたのは、それのおかげだろう。

それからも私は、いろいろと推理して来た。

時にはレントラーのヒントも借りて、私はいつも、正解に辿り着いて来た。間違える事もあったけど、それでも、最後にはちゃんと。

レントラーは、最後までついて来てくれた。

どんなに苦しい現実に直面しても、私の推理を理解して、信じてくれた。

それが、こんな結末を引き起こした。


グレイシア「何がでもよ! 何が私に出来るのは推理だけよっ! そんなの、無責任だよっ!」


わかってる。

私が、誰よりもそれを。

だから、私が、レントラーを止めないと。
 ▼ 111 1◆J44kAZeDOM 16/02/28 20:01:58 ID:JVdcvoC6 [20/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
思考が急速に晴れて行く。

レントラーでなければならない事。

私は、それを見付けださないといけない。

しかも、私の言葉で説得する以上、私の中から

そして、それを効果的に使うには、

誰か1人だけの想いで納得出来るようにしないといけない。

頭の中で、説得の道筋が形成される。

普段なら楽しいはずのこの感覚も、今は、なぜか辛かった。

私の弱い面を見せ付けられているようで。

それでも、私は、続けた。

まずは、私1人の生きる意味で、レントラーに意味がある、それを伝える。

次に、私の思い出を……楽しかった事を語る。

……よし。
 ▼ 112 1◆J44kAZeDOM 16/02/28 20:02:20 ID:JVdcvoC6 [21/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告






エンペルト「ねえレントラー」


レントラー「……何だ?」


エンペルト「生きる意味なんてないって言いたいんだよね」


レントラー「言いたいんじゃない。事実だ……」







エンペルト「それは違うよ、レントラー」


 ▼ 113 クケイル@プテラナイト 16/02/28 20:03:06 ID:JVdcvoC6 [22/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
今日はここまでです
 ▼ 114 ロンダ@こだいのうでわ 16/02/28 21:38:49 ID:Yv5aYyaE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援あげ
 ▼ 115 ラージェス@カードキー 16/02/29 00:50:52 ID:1nkBxIbo NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
支援
 ▼ 116 ボミー@ボロのつりざお 16/02/29 02:08:10 ID:swL2o.LU [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援!
 ▼ 117 1◆J44kAZeDOM 16/02/29 19:58:04 ID:XkSf7HUc [1/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
視点 レントラー

違う?

何言ってんだ。

俺に生きる意味なんてあるはずない。

エンペルト「聞いて」

エンペルト「まず、誰かにとって、あなたが、他でもないあなたがいて良かった。それが示せればいいんだよね?」

エンペルト「例え、たった1人でも、そう思ってたら、それは生きる意味になる」

レントラー「まあ、そうなるな。そんなの、あるはずないけど」

本心だった。それはたぶん、口調を聞いてもわかるはず。

それでもエンペルトは、ニコリと笑った。

エンペルト「そう。それなら、私の勝ち。あなたに生きる意味は存在するわ」


レントラー「……は?」


グレイシア「エンペルト!」
 ▼ 118 1◆J44kAZeDOM 16/02/29 19:58:31 ID:XkSf7HUc [2/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グレイシアの喜びの視線を感じながら、私は言葉を紡いだ。

エンペルト「うん。私、あなたがいてよかった。あなたじゃないといけなかった。ただのレントラーじゃ、どうにもならなかったような事よ」

どう言う事だ?

エンペルトに、悩みなんてないはず……。

エンペルト「ほら、私ね? 推理が好きじゃん」

エンペルト「だけど、研究所では、ナエトルも、ヒコザルも、私の話を理解してくれなかった」

エンペルト「難しすぎたのかもしれないけどね。私も、わかるように説明するのは苦手だったから、余計に」

エンペルト「で、そんな中、私はアカリと旅に出た。そこで初めて仲間になったのが、あなたよ、レントラー」

レントラー「それはそうだけど、それがどうした?」

エンペルト「あなたは、私に、夢の話をして来た。そして、推理した」

エンペルト「その時、あなたは、すぐに、私の話を理解してくれた」
 ▼ 119 1◆J44kAZeDOM 16/02/29 19:59:03 ID:XkSf7HUc [3/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



ポッチャマ「ここまで言えばもうわかるわよね?」

確かに。そう言われればわかる。

コリンク「かばったせいで……か」

ポッチャマは静かに微笑んだ。

ポッチャマ「その通り」

 ▼ 120 1◆J44kAZeDOM 16/02/29 19:59:35 ID:XkSf7HUc [4/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エンペルト「野生だとこうはいかないってのは、グレイシアで証明済みよね」

グレイシア「まあ……確かにあたしはついては行けなかった」

ペラップ「そう言えば、私もわからない事が多かったし」

エンペルト「ロトムはいつでもあんな調子。リオルは、もともとトレーナーのポケモンだったし」

リオル「まあね。でも、エンペルトの推理が理解出来た事なんて、ほとんどないけど」

エンペルト「それは、加入が遅すぎただけよ。で、レントラー。あなたは、元ニンゲン。ね? そうじゃなかったら、わからなかったはず」

レントラー「……」

エンペルト「私の推理が初めて誰かに通じた。それが、すっごく嬉しかった」

エンペルト「あなたがいたから、私は、楽しかった。だから、私は、あなたがいてくれて良かった」

エンペルト「私にとって、他でもない、あなたがいて良かった。だから、あなたに生きる意味がある」

エンペルト「以上! 証明完了!」

そう言って、エンペルトは微笑んだ。

エンペルト「何か反論があればどうぞ。私は、何度だって、あなたを……レントラーを論破して見せる」

エンペルト「それが、私の責任よ。グレイシア」

グレイシア「……気にしてたのかよ」
 ▼ 121 1◆J44kAZeDOM 16/02/29 19:59:56 ID:XkSf7HUc [5/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
俺は、必死で反論を組み立てる。

レントラー「俺がいなかったら、推理する必要なんてなかったんじゃないのか?」

エンペルト「それは関係ない。推理するのは好きだし、それを共有出来たってとこに意味があるんだから」

レントラー「俺じゃなくて、誰かわかる奴がいたら、そいつに同じ事言うだろ?」

エンペルト「うん。でも、少なくとも今、私は私の話を理解してくれるポケモンやニンゲンを知らない」

エンペルト「それに、その理論を適用するなら、あなたの事を理解してくれる人が他にいるかもしれないんだよ? ね、破綻しない?」

その内、反論を組み立てるのが馬鹿らしくなって来た。

俺は、俺には、生きる意味がある。

それを、こいつは、こんなに肯定してくれていると言うのに。

俺は、それを、なんとかやり返そうとしている。

その姿が、ひどく哀れな物に思えた。

それより何より。

エンペルトの姿が、無理に笑うその顔が。

何よりも俺に、その事実を告げていた。

レントラー「俺の……負けだ」
 ▼ 122 1◆J44kAZeDOM 16/02/29 20:00:56 ID:XkSf7HUc [6/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
自然と言葉が口から漏れた。

レントラー「エンペルト……」

ありがとう。

……どういたしまして。

 ▼ 123 1◆J44kAZeDOM 16/02/29 20:01:17 ID:XkSf7HUc [7/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アルセウス「終わった?」

グレイシア「元はと言えばあんたが悪いんでしょ! 何を今さらぬけぬけと!」

アルセウス「ごめんごめん。……まさかここまで思いつめてるとは思わなかったんだ」

レントラー「……俺、おかしかった。アカリも、みんなも、安心してくれ」

レントラー「リオル、やっとわかった。お前が言ってた事の意味」

リオル「うん。僕たちもいるって、言ってたのにね」

レントラー「それと、みんな。きつい事言ってごめん」

アカリ「大丈夫だよ。にしても……なんでそんな思い詰めてたの?」

エンペルト「事情は後で説明する。だから、今は、とにかく、アルセウスの話を聞こう」

アルセウス「うん。ごめんね、レントラー」

レントラー「……まあ、これを許す気はないけど。話は聞く。最後まで」

アルセウス「えー、許してくれないの?!」

レントラー「当たり前だろ!」

アルセウス「僕がミスしなかったら死んでたのに」

レントラー「……そんな事より! 続きを速くしろ!」

アルセウス「はいはい。ったく、あの世界のニンゲンって、なんでこうもせっかちなんだろ……。まあいいや続けるね」
 ▼ 124 1◆J44kAZeDOM 16/02/29 20:03:03 ID:XkSf7HUc [8/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
君がこっちの世界に来て、いろいろ見て、いろいろあったと思う。

こっちからしたら、もしかしたら計画が失敗するかもしれないからハラハラだったけど、それでも、君は、ここまでやって来た。

こっちとしても、元の世界に戻してあげないとと思ってね。

いろいろ会えるように画策はした。んだけど、どれもこれも、プルートの方が先に見付けちゃってね。まあ、始めからその予定ではあったんだけど。

で、やっと会えたと思ったら、それは槍の柱で、しかもあの状況。

僕はもう、謝るしか出来なかったよ。

で、今。

こうやって会えたって訳。

アルセウス「だから、言うよ」

アルセウス「レントラー、今なら、君は、帰れる。だけど、帰りたくないのなら、それでもいいよ」

アルセウス「選んで」
 ▼ 125 1◆J44kAZeDOM 16/02/29 20:04:11 ID:XkSf7HUc [9/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
……えらく唐突だな。

まあ、覚悟はしてたけど。

グレイシア「なっ、い、いきなり?!」

アカリ「……いろいろ大変だったんだよね、レントラー」

レントラー「え、ああ、まあな。いきなりどうした?」

アカリ「あたしたちを気にして帰れないのなら、その心配はないよ」

……アカリ、状況を理解出来てるのだろうか。

唐突過ぎて、よくわからなくてもなんらおかしくはない。

アカリ「あたしだって、状況は理解してるつもり。レントラー、元ニンゲンで、で、今を逃したら帰れないかもしれないんだよね?」

アルセウス「僕なら、いつでも帰してあげられるけど。あっ、でも、君たちの世界に、今から僕はいないんだ!」

アカリ「……だって。ホント、創造神が聞いて呆れるよね」

アルセウス「まあ……会えない事はないと思うよ。結局、未来永劫、僕はずっと、世界とともにあるんだし」

アカリ「まあ、それはいいの。レントラー。あなたは、自分で決めるの。私たちが決めるんじゃなくて」

……アカリ。
 ▼ 126 1◆J44kAZeDOM 16/02/29 20:04:33 ID:XkSf7HUc [10/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アカリ「あのね、あたし、気絶してる間に、あなたの夢を見たの」

アカリ「楽しかった思い出が、いっぱい蘇って来て……って、これじゃ走馬燈じゃん! 死ぬじゃんあたし!」

そう言って、アカリは笑う。

アカリ「だから、さ」

アカリ「あたしは、レントラーが決めた事なら、応援するから。どんな過去があったのかあたしは知らないけど、応援するから!」

アカリ「だから、さ」

そう言ってアカリは周りを見回す。

それにつられて、俺も見た。

リオルも、ロトムも、ペラップも、グレイシアも、エンペルトも、俺たちを見ている。

無言で、じっと。

その表情は、名残惜しいと言った物じゃなかった。

その顔を見て、俺は、言葉を紡いだ。

そうせずにはいられなかった。
 ▼ 127 1◆J44kAZeDOM 16/02/29 20:04:54 ID:XkSf7HUc [11/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
レントラー「リオル……。俺の心を読んでくれてありがとう。お前の忠告はムダにしちまったけど、それでも、嬉しかった」

リオル「……ど、どういたしまして」

レントラー「ロトム。プルートと……キショウとどんな話をしたのかは知らない。だけど、せっかくまた会えたんだ。しっかり仲良くやれよ?」

ロトム「モチロンダヨ!」

レントラー「ペラップ。グレイシアがいてくれる。俺なんかより、よっぽど頼りになる。それに、お前ももう、頼る必要もないだろ?」

ペラップ「……うん。私、たぶんだけど、強くなれた。この旅で。だから、絶対、乗り越えてみせるよ」

レントラー「グレイシア。誇れるような俺じゃなくて、ごめん。俺は、最低なゴミだ。だけど、それでも、前に進んで行けたらと思ってる。だから、お前も」

グレイシア「……バカ。自分の事、そんな風に言うなよ。あんたは! あんたは、ゴミなんかじゃないからっ! そんな風に言うなっ!」

レントラー「……ありがとう」

レントラー「……エンペルト。お前が、俺をそんな風に思ってるなんて、考えてもみなかった。だけど、お前のおかげで、俺は、事実と向き合えた」

今までの記憶が、蘇って来る。

頬を、涙が伝う。

レントラー「ほんっとうにありがとう」

エンペルト「こちらこそ。私が言いたい事は、さっき全部言ったから」

レントラー「ハハッ、お前らしいや」
 ▼ 128 1◆J44kAZeDOM 16/02/29 20:05:13 ID:XkSf7HUc [12/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
レントラー「……アカリ! 俺を拾ってくれたのが、お前で良かった! 楽しかった! ……ありがとう!」

アカリ「……うん」

旅の記憶は止まる事を知らない。

ひたすらに、俺の目から涙を落とし出す。

それでも、俺は、涙ににじんだ声で、最後まで言った。
















レントラー「元の世界に戻っても、俺は、お前らの事、一生忘れない」
 ▼ 129 1◆J44kAZeDOM 16/02/29 20:06:02 ID:XkSf7HUc [13/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アルセウス「……それはつまり、帰る、って事だね?」

レントラー「ああ」

アルセウス「それじゃ」

と言って示した先に、変な空間が出来た。

歪んだ穴。ポケダンで言う、時空ホールみたいな物だ。

アルセウス「その中に飛び込めば、元の世界に戻れる。で、一生ここには戻って来ない」

アルセウス「そうなるけど、いい?」

レントラー「ああ」

アルセウス「それじゃあ、元気で。ホントにごめんね」

俺は、振り返る。

そして、1つ、言い切った。

俺が、改めて一番言いたかった事。
 ▼ 130 1◆J44kAZeDOM 16/02/29 20:06:22 ID:XkSf7HUc [14/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告






レントラー「ありがとう!」





 ▼ 131 1◆J44kAZeDOM 16/02/29 20:06:43 ID:XkSf7HUc [15/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そして、まっすぐに時空ホールを見据える。

全力で、俺は、その中に飛び込んだ。

意識が遠くなる……。
 ▼ 132 1◆J44kAZeDOM 16/02/29 20:07:10 ID:XkSf7HUc [16/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
視点 アカリ

レントラーが飛び込んだ、その瞬間。

視界が、爆発した。

悲鳴を上げる事すら出来ないまま、あたしは、いきなり現れた奔流に弄ばれ、流された。

その中で、意識が遠くなって行く……。
 ▼ 133 1◆J44kAZeDOM 16/02/29 20:08:20 ID:XkSf7HUc [17/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アキラ「……リ! アカリっ!」

アカリ「う、うーん?」

アキラ「良かった、起きたんだ……」

辺りを見回す。

見慣れない場所だった。

アカリ「あれ? ここは?」

アキラ「槍の柱だ。アルセウスを巡る事件の決着には、やっぱ、ここがふさわしいのかもな」

そう言えばそうだ。

言われてみれば辺りの景色は、確かに見た事がある。

じっくり見る機会がなかったから気付かなかったけど。

向こうで、プルートも倒れている。

アカリ「良かった……。みんな無事だったんだ」
 ▼ 134 1◆J44kAZeDOM 16/02/29 20:08:54 ID:XkSf7HUc [18/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アキラ「にしてもだ。お前、レントラーどうした?」

アカリ「え……」

アキラ「お前の手持ち、そこに倒れてるけど、5匹しかいないぞ」

言われて思い出した。

レントラーとの別れを。

アカリ「あ、それなら……人間に戻って、元いた世界に戻った」

アキラ「……は?」

アカリ「あたしもよくわかんないんだけど……」

不意に、悲しみが込み上げる。

突きあげるように、涙が、奥の方から出て来る。

あたしは、そのまま泣き出した。

アカリ「……もう……ひっく、レン、レントラーとは……うぐ……会え、会えない……えっぐ、会えない……うあああああ……」

アキラ「アカリ……」

アキラは、あたしの肩にそっと手を添えた。

槍の柱を照らし出した朝日に、あたしに涙が、きらりと輝いた。

静寂に、あたしの泣き声だけが、ただ響いていた。
 ▼ 135 ンパッパ@ダウジングマシン 16/02/29 20:09:51 ID:XkSf7HUc [19/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
今日はここまでです

また、本編はこれにて終了です
ここからエピローグに入って行きます
今週中の完結を予定しております
 ▼ 136 ロア@するどいツメ 16/02/29 22:22:15 ID:8GbxmHK. NGネーム登録 NGID登録 報告
乙です!
個人的にはレントラーとグレイシアの関係がどうなるのか気になるw
 ▼ 137 ネブー@がくしゅうそうち 16/02/29 23:40:36 ID:swL2o.LU [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 138 ードラ@ボーマンダナイト 16/03/01 00:06:10 ID:RIgE989. NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
レントラー…乙です
 ▼ 139 ージュラ@ザロクのみ 16/03/01 16:31:50 ID:RHs22Y2g NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 140 1◆J44kAZeDOM 16/03/01 20:05:18 ID:LdXuCq7s [1/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エピローグ
0:事後処理

ヒカリ「アカリっ!」

アカリ「お姉ちゃん……」

ヒカリ「良かった……良かった、無事で……」

お姉ちゃんは、半泣きになっている。

アカリ「ごめんね、心配かけて」

ヒカリ「もう……戻って来られないのかと思って」

アカリ「ごめん」

コウキ「アキラ君も、お疲れ様。ごめんね、何も出来なくて」

アキラ「いいんですよ」

ジュン「おら! プルート!」

ジュン「てめえを警察に連れて行k」

アカリ「待って!」
 ▼ 141 1◆J44kAZeDOM 16/03/01 20:06:00 ID:LdXuCq7s [2/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジュン「……は?」

ジュン「こいつ、悪人だぞ? なんだってんだよ!」

アカリ「プルートは、悪人だけど……それでも、それでも」

プルート「いいんだ。その覚悟はもう、とっくに出来てる」

アカリ「プルート……」

プルート「出来れば、ロトムと一緒に、たまに来てくれるとありがたいけどね」

アカリ「……でも、おかしいよ」

アキラ「アカリ、おかしい事は何もない」

アカリ「アキr」

アキラ「でもっ」

唐突にアキラは言った。

アキラ「おかしくはない。だけど、でも……。プルートは、ロトムと一緒にいたいだけなんだ」

アキラ「その思いは本物だ。だから、逮捕、しなくていいんじゃないかって」

ジュン「アキラ、お前……」
 ▼ 142 1◆J44kAZeDOM 16/03/01 20:06:23 ID:LdXuCq7s [3/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コウキ「いいんじゃない?」

ジュン「コ、コウキ?!」

コウキ「おいらたち、みんなポケモンの事が好きなんだよね? だったら、それでいいじゃん!」

コウキ「プルートだって反省してるし。ね? ジュン」

ジュン「……ちっ、二度とこんな事すんなよ!」

プルート「わかってる」

アカリ「コウキ兄ちゃん!」
 ▼ 143 1◆J44kAZeDOM 16/03/01 20:06:52 ID:LdXuCq7s [4/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コウキ「うん。あ、そうだ。アカリちゃんでもアキラ君でも、挑戦なら、いつでも受けて立つよー! バッジ8個の実力はある訳だし!」

アキラ「……はい!」

アカリ「……はい」

コウキ「それじゃ、待ってるよー」

ジュン「んじゃ、俺も行くか! コウキ待て! 俺も挑戦する。それで、今度こそ、お前に勝ーつ!」

コウキ「うん! 楽しもうね!」

ヒカリ「それじゃ、あたしはマサゴに帰るよ。博士もいらっしゃるし、シロナさんもいるから」

アカリ「うん」

そう言うと、3人は、それぞれ飛び去った。
 ▼ 144 1◆J44kAZeDOM 16/03/01 20:07:15 ID:LdXuCq7s [5/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アキラ「アカリ、これからどうする?」

アカリ「決めてない。……やっぱ、辛いよ」

アキラ「そうか。俺、お前が決めるまでは、お前といる。お前が道を見付けだすまではな」

アカリ「……ありがとう」

アキラ「とは言っても、俺もまだ決まってねえんだけどな」

アキラ「たぶん、今のままじゃコウキ兄ちゃんには敵わないだろうし、どっか別の地方に行って修行しようと思ってんだけど」

アキラ「そもそも、セレビィがいなくなっちまったし、俺の手持ち、5匹だからな」

アキラ「まあでも、とにかく一旦マサゴに帰ろうぜ」

プルート「……僕は、ギンガハクタイビルにでもいるよ」

アカリ「うん。それじゃあ。ロトムも、元気でね。たまに遊びに行くから」

ロトム「ろと!」

アキラ「さよなら!」

プルート「ああ。さよなら!」
 ▼ 145 1◆J44kAZeDOM 16/03/01 20:07:35 ID:LdXuCq7s [6/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
視点 ポケモンたち

1:リオルの場合

グレイシア「……」

あの事件以来、グレイシアは、ずっと塞ぎ込んでいる。

まあ、グレイシアに限った話でもないんだけど。

ただ、グレイシアは、いじめって言う過去が絡んで、一番レントラーに依存してた。

だからか知らないけど、特に傷が深い。

とにかく、一番別れの傷が小さいのは僕だ。

僕が励ましてあげないと!

グレイシア「……リオル」

リオル「グレイシア……。あんまり塞ぎ込んでも、レントラーは喜ばないよ」

グレイシア「……わかってるよそんな事ぐらい」

リオル「無理しなくていいよ」

グレイシア「わかってる。わかってんのは事実だよ。だけど、それとこれとは、話が別」

グレイシア「……ねえ、ほっといてくれない? 心が読めるんなら、そのぐらいわかるでしょ?」
 ▼ 146 1◆J44kAZeDOM 16/03/01 20:08:01 ID:LdXuCq7s [7/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グレイシアの問題は、レントラーに、強く依存し過ぎた事だ。

レントラーの事を忘れないのはいい。だけど、このままじゃ、おかしくなるのも時間の問題だ。

ああ言って別れたとしても、その言葉が心の底から言ってたとしても、やっぱり傷付いている。

リオル「……グレイシア。同じよーな悩みを抱えたポケモンが、自分とレントラーだけだと思ったら大間違いだよ」

グレイシア「……え?」

リオル「グレイシアの親、捨てられたんでしょ? ブースター、だったから」

グレイシア「あたし、言ってない……。まあ、あんたならわかんのか」

リオル「うん。で、僕、その理由、だいたいわかるよ。僕も、似たような理由で捨てられたから」

グレイシア「……?」

リオル「三値、って知ってる?」

グレイシア「知らない……けど」

リオル「先に言っとくと、弱いからって、存在価値がない訳でもなんでもないよ。まあ、それは、一番わかってる事なんだろうけど」

グレイシア「……いいからとっとと本題に入りなさいよ」

リオル「うん」
 ▼ 147 1◆J44kAZeDOM 16/03/01 20:08:23 ID:LdXuCq7s [8/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
リオル「まず基礎ポイント……。これは自由に振り分けられて、これを振れば振るほどにその能力が伸びて行く」

リオル「まあ、これは関係ない。でもね、ここから先、自分で変えられないような能力が問題なんだ」

リオル「個体値って言って、ポケモン毎に、伸びやすい能力と、伸びにくい能力があるんだけど、最近、それを意図的に高くする『厳選』ってのがあってね」

リオル「僕は、それの失敗作」

グレイシア「……え?」

リオル「それに苛立ったトレーナーから、僕は逃がされた」

リオル「次に、種族値ってのがあって、種族毎に伸びやすい能力、伸びにくい能力があるんだ。もちろん、個体差はあるけどね」

リオル「ブースターってのは、ニンゲンからしたら、その種族値があんまりよくないんだ」

リオル「だから、それを知ったトレーナーが、捨てたのかなって」

リオル「……強さを追い求める、ただそれだけのニンゲンに、捨てられたのかなって」

グレイシア「……あんた、今、なんでそんな話を?」

リオル「だってさ。さっきも言ったじゃん」

リオル「同じ悩みを抱えてるのは君だけじゃないんだって」

グレイシア「そ。お気遣いありがと」

うーん、失敗かな……。
 ▼ 148 日はここまで◆J44kAZeDOM 16/03/01 20:10:10 ID:LdXuCq7s [9/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バトルリゾートで捨てられた僕は、とある施設に引き取られた後、ゲンに巡り合った。

ホント、ラッキーだったと思う。

ゲンも優しかったし、何より、みんなと出会えた。

だけど……。

同じ境遇ってだけで心に踏み込むのは難しいのかな。

そう考えると、レントラーってすごいよね。

そこまで苦労せずに、グレイシアの心に踏み込んで。

……まだまだ僕、修行不足って事か。

まあいいや。

僕は、もっと……もっと強くなる。

そのためには、まず、もっと、誰かを励ませるようにならないとね!
 ▼ 149 ベルタル@くろいてっきゅう 16/03/01 23:12:24 ID:gEVEbGqA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
まさかのポケダンssと重なった
支援
 ▼ 150 ンノーン@いいつりざお 16/03/02 16:23:40 ID:ivjrMkFE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 151 bx30JbqxUc 16/03/02 18:06:32 ID:dP4py6yM NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
支援
 ▼ 152 1◆J44kAZeDOM 16/03/02 20:01:50 ID:5PEOKArM [1/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
2:ペラップの場合

うん。わかってる。

逃げる訳にはいかない。

ここは213番道路。

私の故郷であり、因縁の土地。

私は、過去を乗り越える。

レントラーとの約束だから。

ペラップ「うおおおおおおおおお!」

力いっぱいに叫ぶ。

「私はニンゲンの言葉が話せる!

それが……それがなんだぁぁぁああああ!」

「おま、ペラップじゃねえの。死んだのかと思ったぜ」

ペラップ「死ぬ訳ないでしょ。私、約束したから」

「おえっ、やっぱきめえ。ニンゲンの言葉なんか話しやがってよ」

ペラップ「きもくても、誰かが私を想ってくれてる以上、私は負けない」
 ▼ 153 1◆J44kAZeDOM 16/03/02 20:02:13 ID:5PEOKArM [2/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
いじめっ子。

私が、今も許せないでいる相手。

それが、今、私の目の前にいる。

「お前みたいな奴の事、誰も思ってなんかくれねえって」

笑いながらそう言うこいつに、私は言い切った。

ペラップ「そ。そんなの、寂しいポケ生だね」

「はあ?」

ペラップ「言った通りの意味よ。誰かの生きる意味を否定しないと生きてけないなんて」

ペラップ「あんたの方がよっ……ぽど、しょーもないよ」

「ちっ、なんだよ。ペラップのクセに」

ペラップ「私は変わった。あんた、いつまで変わんないの? ただのアホだよ、それ」

「ほう、そんなに言うならやるか?」

ペラップ「別にいいよ。私だって、強くなった。なんなら勝負する? 1対1で」

私の「気」に当てられて、ビビったのかもしれない。

いじめっ子は、こう言った。

「いや……。ちょっと今日は体調が悪いの思い出した。今は見送る事にする」
 ▼ 154 1◆J44kAZeDOM 16/03/02 20:02:33 ID:5PEOKArM [3/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あ、こいつ、逃げた。

こんな奴に為すがままにされてたのかと思うと、泣きたくなる。

でも、まあいいや。

ペラップ「そう。ならいいわ。また今度。私、何度だってここに来る。あんたが私とバトルしてくれるまで」

「お、おう……」

レントラーは、俺じゃなくてグレイシアのおかげだって言うだろうけど、でも、レントラーじゃないとダメだったと思う。

理由はわからないけど、なんとなくそう思う。

だから聞くよ。

レントラー。私、強くなれたよね?
 ▼ 155 1◆J44kAZeDOM 16/03/02 20:03:16 ID:5PEOKArM [4/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
3:グレイシアの場合

リオル……あいつ、何言ってんのよ。

わかってるってば。こうしてうつむいてても、いい事なんて、何もない。

あたしには、乗り越えないと行けない過去がある。

向き合わないといけない未来がある。

ペラップだって、乗り越えようと頑張ってる。

あたしがへたれてたら、合わせる顔もない。

だけど……やっぱり辛い。

どんなに1人じゃないって言われても、レントラーの代わりはいない。

あたしは……やっぱりレントラーが好きだった。

ペラップ「グレイシア!」

グレイシア「ん、ペラップどした?」

ペラップ「私、勝ったよ! いじめっ子に!」

グレイシア「おお、おめでとう!」

ペラップ「……グレイシア、ちょっと来て」

グレイシア「え?」
 ▼ 156 1◆J44kAZeDOM 16/03/02 20:03:39 ID:5PEOKArM [5/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
外を散歩しながら、あたしはペラップと話していた。

ペラップ「ねえグレイシア。やっぱりさ……私とその、自殺したポケモンっての、重ね合わせてたんでしょ?」

グレイシア「え、ああ、まあ。ごめん」

ペラップ「いいよ別に。でもさ。……うーん、そうだ。グレイシア、私に乗って!」

グレイシア「え?」

ペラップ「いいからいいから」

グレイシア「う、うん」
 ▼ 157 1◆J44kAZeDOM 16/03/02 20:04:11 ID:5PEOKArM [6/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ペラップ「ほら、空って、気持ちいいでしょ?」

グレイシア「まあね。普通に暮らしてたら一生感じられないだろうし」

ペラップ「……グレイシアは、いつも、私の事、気にかけてくれてた。ホントにありがとう」

グレイシア「……うん」

ペラップ「私、変われたよ。いじめられてた私が」

ペラップ「ねえグレイシア。そのいじめられてた子が自殺したのはどこ?」

ペラップ「グレイシアに必要なのは、その子の許しだと思うの」

グレイシア「……」

ペラップ「こればっかりは、私で代わりって訳にもいかないから」

グレイシア「……わかった。場所は……214番道路」

ペラップ「了解! しっかり掴まっててね!」
 ▼ 158 1◆J44kAZeDOM 16/03/02 20:04:31 ID:5PEOKArM [7/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グレイシア「あ、ストーップ!」

ペラップ「OK」

グレイシア「ここよ」

ペラップ「わかった。それじゃ、下りるよ」

――

ペラップ「とうちゃーく」

グレイシア「ありがとう」

ペラップ「行って来なよ。2人だけで話したいだろうし」

グレイシア「うん」
 ▼ 159 1◆J44kAZeDOM 16/03/02 20:04:54 ID:5PEOKArM [8/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グレイシア「久しぶり。最近来られなくてごめんね」

ねえ。

あたしがあんたから許してもらえるなんて、まだ思ってないよ。

どれだけあたしがいい事をしても、やっぱり、あたしがあんたを守り切れなかったってのは、変わらない。

だけどさ。

「いいかな? あたしが前を向いたって。

あなたの分まで、強く生きたって。

あたしは……」

約束したから。レントラーと。

前を向いて進んで行くって。

あんたの分まで生き抜いてやる。それが、あたしの義務だから。

いつかあたしが向こうに行く時は、話そう。思いっきり。

その時までに、あんたに誇れるあたしになってられるように。

グレイシア「あたし、頑張るから。だから、ごめん」
 ▼ 160 日はここまで◆J44kAZeDOM 16/03/02 20:05:30 ID:5PEOKArM [9/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グレイシア「……ありがとう、ペラップ」

ペラップ「いいのいいの。それじゃ、帰ろっか!」

グレイシア「うん!」

これからだって、辛い事はあるだろうけど。

それでも、あたしは頑張れる。

レントラー、あたし、前に進むよ。

だから……。

あんたも頑張れ。

もし後ろ向いてうじうじしてるんだったら、あたし、絶対許さないから!
 ▼ 161 ガピジョット@パイルのみ 16/03/02 20:58:44 ID:rbCWtKNw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 162 ラッタ@くろいメガネ 16/03/03 15:42:42 ID:9e62qEsA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 163 1◆J44kAZeDOM 16/03/03 20:01:55 ID:xIix2ugM [1/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
4:エンペルトの場合

私は、ああ言ってレントラーを納得させた。

だけど、自分は本当に、あの言葉に納得出来ているのだろうか。

あの説得すら、自分の思考の末生み出された物。

心の底からの叫びじゃない。

それは、もしかしたら、自分の意見じゃないのかもしれない。

私は、正しかったのだろうか。

ゴウカザル「エンペルト、どうしたんだ?」

エンペルト「いや、ちょっと、ね」

ナエトル「2人とも! せっかく久しぶりに会ったんだし、前みたいに、シンジ湖で話さない?」

ゴウカザル「お、それいいな!」

ナエトル「せっかくだし、旅の思い出、いろいろ聞かせてよ!」

エンペルト「うん。それじゃ、行こうか」
 ▼ 164 1◆J44kAZeDOM 16/03/03 20:02:20 ID:xIix2ugM [2/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
私たちは、ゆっくりと、湖に向けて歩いた。

ゴウカザル「でな? 信じらんねえ事に、こいつらが初めて捕まえたコリンク、元はニンゲンってんだよ」

ナエトル「へえー」

エンペルト「まあ、もういなくなっちゃったけどね」

不自然な程、心は静かだった。

涙の一滴すら零れない。

私は、本当に、悲しみを感じているのだろうか。

ナエトル「いいなぁ。僕も、旅に出たかった」

ゴウカザル「大丈夫だって。次誰かがお前を選んでくれっから」

エンペルト「……」
 ▼ 165 1◆J44kAZeDOM 16/03/03 20:02:46 ID:xIix2ugM [3/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「……エンペルト?」

エンペルト「え、何?」

ナエトル「レントラーがいなくなって、悲しいの?」



それが、一番聞かれたくなかった事だ。

自分の、暗い一面を見せつけられるようで、だから、その問に向き合うのが、辛い。

ナエトル「……エンペルトなら、本気で悲しんでないのかもね。頭での理解がすごすぎて、感情が追い付いてかない感じ?」

エンペルト「……うん」

ゴウカザル「なっ、おまっ、悲しんでねえのかよ! このポケモンでなし!」

ナエトル「ゴウカザル。ダメだよ。たぶん、一番気にしてるのは、その事だから」

ゴウカザル「……は?」

エンペルト「よくわかったね、ナエトル。大正解」

ナエトル「まあでも、いいんじゃない?」

エンペルト「え?」

ナエトル「それがエンペルトなんだよ。ポッチャマの頃からそうじゃん」

エンペルト「まあ……」
 ▼ 166 1◆J44kAZeDOM 16/03/03 20:03:08 ID:xIix2ugM [4/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「エンペルトが悲しくないなら、それも、1つの感情だよ」

エンペルト「……」

ゴウカザル「なんかおめー、今すごくいい事言った気がするぜ……」

ナエトル「そうかな?」

エンペルト「……ちょっとごめん」

それだけ言って、私は、湖に飛び込んだ。

ゴウカザル「あっ、おい!」

制止の声が聞こえたけれど、私は気にしなかった。
 ▼ 167 1◆J44kAZeDOM 16/03/03 20:03:29 ID:xIix2ugM [5/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ただ、気分に任せて、泳いだ。

縦横無尽に。

何も考えず。

ただ、「私」がそこにある。それだけだった。

……

…………

………………


その時。

不意に、小島が光を放った。
 ▼ 168 1◆J44kAZeDOM 16/03/03 20:03:53 ID:xIix2ugM [6/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エンペルト「うっ」

眩しい。

だけど、なぜか、その眩しさから、魅入られたように目を離せなかった。

その光の中に、ある1つのシルエットを見て取った……気がした。

……!


突如として、涙が突きあげて来る。

私は、それを垂れ流した。
 ▼ 169 1◆J44kAZeDOM 16/03/03 20:04:13 ID:xIix2ugM [7/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
いきなり現れた「感情」。

それは、どんどん大きくなって行く。

怒り、悲しみ、楽しみ、喜び。

旅の記憶が、意識せずとも、自然に頭の中を駆け巡った。

自分の中が、徐々に彩られて行くのがわかる。

そして、不意に気付いた。
 ▼ 170 1◆J44kAZeDOM 16/03/03 20:04:35 ID:xIix2ugM [8/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告














私は、レントラーの事が、好きだった。













 ▼ 171 1◆J44kAZeDOM 16/03/03 20:05:18 ID:xIix2ugM [9/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エンペルト「……うぐっ、ひっく、うわあああああ」


こんな大事な事に、今さら気付くなんて。

私は、私は……。


どうにもならない感情が溢れ出して、私は、ただ、ひたすらに泳いだ。

いつまでも、いつまでも、泳ぎ続けた。
 ▼ 172 1◆J44kAZeDOM 16/03/03 20:06:07 ID:xIix2ugM [10/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
視点 アカリ

5:アカリの場合

……

レントラー……。
 ▼ 173 1◆J44kAZeDOM 16/03/03 20:07:49 ID:xIix2ugM [11/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
窓の外から、アキラの声が聞こえた。

アキラ「おーい、アカリ!」

アキラに聞こえるように、あたしも、大声で返す。

アカリ「アキラ、何ー!」

アキラ「あのさー! いつまで引きこもってんだ! お前、立ち直るんじゃねえのかよ!」

アカリ「わかってるよー!」

アキラ「あのさー!」

アカリ「何よー!」

アキラ「バトルしようぜ! ゴウカザルとエンペルトで! 鋼鉄島の決着、まだ付いてねえしな!」

アカリ「……わかった。いいよ!」

アカリ「一応、ロトム以外はみんな帰って来たしね!」

帰って来ただけじゃない。ペラップも、グレイシアも、その顔は冴えている。

エンペルトは、なんだか、自由行動させる前より落ち込んでる気もするけど、でも、悪い表情じゃない。

むしろ、いい方に向かってる。そんな気がした。

アキラ「そうと決まれば! 219番道路の砂浜集合な!」

アカリ「わかった!」
 ▼ 174 1◆J44kAZeDOM 16/03/03 20:08:09 ID:xIix2ugM [12/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
わかってる。

アキラが、あたしを励まそうとしてくれてる事ぐらい。

だから、あたしも、しっかりと、それに応えてあげないと。

ママ「お、どうしたアカリ? 久しぶりに外に出る気になった?」

アカリ「うん! 行ってきます!」

ドアを開けた。

外の空気が、えらく懐かしかった。

アキラが待ってる。

行かなくちゃ!
 ▼ 175 1◆J44kAZeDOM 16/03/03 20:09:28 ID:xIix2ugM [13/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
219番道路

アキラ「よー、来たな」

アカリ「うん」

アキラ「わかってると思うけど、俺は、お前を励まそうとしてる」

アキラ「けどな」

アキラ「俺、手加減はしない。だからアカリも、全力で来い!」

アカリ「わかってるよ。お願い、エンペルトっ!」

アキラ「ゴウカザル、頼んだっ!」
 ▼ 176 1◆J44kAZeDOM 16/03/03 20:09:49 ID:xIix2ugM [14/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
始められないのは、終わっていないから。

アカリ「エンペルトっ! まずはアクアジェット!」

アキラ「マッハパンチで迎え撃て!」

だから、この戦いが終わったら……。

アカリ「波乗り!」

アキラ「フレアドライブで掻き消せっ!」

あたしとアキラの、ポケモンバトルが終わったら。

アキラ「そのまま飛び上がれっ!」

アカリ「滝登りで追尾っ!」

あたしは、前へ進める。

アキラ「インファイトで迎え撃て!」

アカリ「そのまま行けっ!」

そんな気がした。
 ▼ 177 1◆J44kAZeDOM 16/03/03 20:10:10 ID:xIix2ugM [15/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アカリ「エンペルトっ! 頑張れ!」

アキラ「ゴウカザル、負けるな!」

エンペルトと……ポッチャマと始めたこの旅は、エンペルトと終わる。

それでいい。

あたしは……。

爆発音が響く。

煙が立ち込めた。
 ▼ 178 1◆J44kAZeDOM 16/03/03 20:11:14 ID:xIix2ugM [16/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
煙が晴れた時、あたしの目には、ある1つの光景が飛び込んで来た。

アカリ「お疲れ様、エンペルト。戻って」

アキラ「戻れ、ゴウカザル。お疲れ様」

潮風が強く吹いている。

それが、あたしの悩みを吹き飛ばしてくれるような、そんな気がした。

アキラの方に歩きながら、言う。

アカリ「うん。やっぱ、アキラ強いよ」

アキラ「サンキュ。でも、やっぱりお前だって強いわ」

アカリ「ありがとう……」

あたしは、言葉を続けた。
 ▼ 179 日はここまで◆J44kAZeDOM 16/03/03 20:12:00 ID:xIix2ugM [17/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



アカリ「あたしの負け。アキラ……」



アキラ「ん?」


にっと笑う。


アカリ「ありがとう!」


アキラ「ハハッ」


アキラは、笑って言った。


アキラ「そうやって笑ってる方が、お前らしいや」
 ▼ 180 ートロトム@タンガのみ 16/03/03 21:01:26 ID:jsWjWGlY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 181 ガギャラドス@プテラナイト 16/03/03 22:18:48 ID:.lKfI/vQ NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
支援
 ▼ 182 ガタブンネ@サファリボール 16/03/03 23:04:53 ID:iHjEUOO6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 183 ェークル@おおきなしんじゅ 16/03/04 18:48:39 ID:wdtPLvhs NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 184 1◆J44kAZeDOM 16/03/04 19:56:51 ID:rhJdrSQE [1/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
6:ロトムの場合

アカリ「ロトムー!」

あたしは、次の旅の目的を見付けた。

だから、ロトムに会いに来た。

ロトムはキショウと一緒にいたいって言って、だからあたしは、ロトムをプルートと一緒にいさせてあげた。

だけど、これだけは言いたくて。

アカリ「ペラップ、通訳よろしくね」

ペラップ「うん!」

プルート「……何?」

ロトム「ろと?」

アカリ「ねえ、ロトム……」
 ▼ 185 1◆J44kAZeDOM 16/03/04 19:57:15 ID:rhJdrSQE [2/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あたしの次の旅の目的。

エンペルトたちから話は全部聞いた。

レントラーの過去。グレイシア、ペラップの過去。

ほんっと、あの時の驚きったらなかったよ。

でも、納得した。

いろんな事が、1つにまとまった気がした。

それで、あたしは決めた。


アルセウス「ある事件でね、カロスの人を1人、ポケモンとして転生させないといけなくなって、で、その時についうっかり」

 ▼ 186 1◆J44kAZeDOM 16/03/04 19:57:37 ID:rhJdrSQE [3/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あたしは、カロスに行く。

それで、その人を見付けだす。

そして……。

パラレルワールドの行き来。

それが、あたしの目標。

だから、その人の話を聞く事から始める。

そして、いつかは……。いつかは、レントラーに会いに行く。

このメガリングがある限り、あたしは、迷いなくレントラーを見付けだせる。そんな気がするから。

とにかく、カロスに行くのにあたって、仲間は、多ければ多いほどいい。

そう思って、ロトムに会いに来た。

もちろん、ロトムの気持ちが一番だけど。
 ▼ 187 1◆J44kAZeDOM 16/03/04 19:57:57 ID:rhJdrSQE [4/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アカリ「という訳で、あたし、カロスに行こうと思ってるんだけどさ、ロトム。一緒に来る?」

ロトムは、悩むように小首をかしげた。

アカリ「別に、プルートといたいならそれでもいい。怒らない。でも、あたし、せっかくだし、ロトムともっと仲良くなりたい!」

アカリ「だから、さ?」

プルート「まあ、ロトムが行きたいのなら、僕も止めないよ」

ロトム「ろと……。ろと!」

ペラップ「え、ホント?」

ロトム「ろーとととw」

ペラップ「アカリと一緒に行くだって!」

アカリ「ホント?! ロトム、ありがとう!」
 ▼ 188 1◆J44kAZeDOM 16/03/04 19:58:20 ID:rhJdrSQE [5/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ロトム「ろと。ろーととと」

ペラップ「キショウ。君の事も大好きだから。だから、今度は、カロスの冒険を話してあげるから……って、また私引っ張り出す気?」

ロトム「ろと」

可愛らしく舌を出すロトムに、ペラップは呆れた声を出す。

ロトム「ろと! ろーととと!」

ペラップ「だから、それまで、絶対生きて! だって」

プルート「言われなくても! そう簡単には死ねないよ!」

アカリ「ロトム……ありがとう。それじゃ、戻れ!」

ありがとう、ロトム。

ありがとう、みんな。

あなたたちと出会えて、ホントに良かった。
 ▼ 189 1◆J44kAZeDOM 16/03/04 19:58:48 ID:rhJdrSQE [6/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
レントラー、待っててね。

あたし、絶対あなたを探し出して見せる!

例え何年かかったとしても!

絶対に! ぜぇぇええええったいに!

だから、レントラー。

その時まで。

バイバイ。
 ▼ 190 1◆J44kAZeDOM 16/03/04 20:00:27 ID:rhJdrSQE [7/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
視点 レントラー改め……

7:「俺」の場合

はっと気が付いた。

見下ろすと、地面が遥か遠くに見える。

そうだ。

ここは……廃屋の屋上。

俺が……自殺するはずだった。

そう考えると、不意に背筋が凍り、俺は、慌てて後ろに飛び退いた。

二足歩行の感覚がわからないままに。

結果どうなったかなんて言うまでもない。

俺「お、っとっと……うわあっ!」

どすんと尻もちをついた。

俺「いっててて……」

「手」で頭を押さえる。

妙に懐かしい感覚だった。
 ▼ 191 1◆J44kAZeDOM 16/03/04 20:01:21 ID:rhJdrSQE [8/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>190
なんか書き溜めを書き直したらおかしな事になったので訂正

×「手」で頭を押さえる。

○「手」で尻をさする。
 ▼ 192 1◆J44kAZeDOM 16/03/04 20:01:41 ID:rhJdrSQE [9/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
こうなると、まずするべき事は決まってる。

刈谷と仲直りする事。

刈谷の事を守る。

それが、俺の生きる意味。少なくとも、今は。

それしかない訳じゃない。だけど、それでも。

生きる意味は、少しでも多いに越した事はない。
 ▼ 193 1◆J44kAZeDOM 16/03/04 20:02:01 ID:rhJdrSQE [10/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
歩き出そうとして、思わず苦笑した。

今の俺は、人間だ。

4つ足を付く必要なんてどこにもない。

自分の2本の足で、しっかりと立ち上がる。

首飾りを、少し強引に取り、上着のポケットにしまった。

これだけが、今までの「夢」が、夢でない事の証明だ。

小さな石ころを頼りに、俺は、向こうの事を思い出す。

……いや、今はそれどころではない。

後ろを見て、くよくよしていたら、グレイシアに氷漬けにされる。そんな気がした。

まずは、歩く事から始めよう。

1歩、2歩、3歩、4歩。

少しずつ、感覚が戻って来る。

体に擦れる服の感覚が、多少の違和感を残したが、それも一瞬の事だった。

俺「よし。行こう」
 ▼ 194 1◆J44kAZeDOM 16/03/04 20:02:22 ID:rhJdrSQE [11/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
俺は走った。

刈谷の家まで。

息が切れるのにも構わず、全力で。

ポケモンと人間の体力の差を実感しながら、俺は、刈谷の家まで辿り着いた。

俺「はあっ……はあっ……」

乱れた息を少しだけ整えて、俺は、インターフォンを押した。
 ▼ 195 1◆J44kAZeDOM 16/03/04 20:02:47 ID:rhJdrSQE [12/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
刈谷「何?」

……君。

俺の名前だ。

だが、あまりにも長い事呼ばれなさ過ぎて、それが一瞬、自分以外の誰かを指しているような錯覚を覚えた。

俺「あ、そうだ、俺だ。あの……さ」

俺「謝った所で、許してもらえるとは思ってない。俺は、お前に、最低な事をした」

刈谷「ホントだよー。僕、ショックだったんだよ?」

底抜けに明るいその声に、俺は、黙っているしか出来なかった。

刈谷「……それで?」

その声に不意に我に返り、俺は、慌てて口を開いた。

俺「あの……さ、ごめん。俺が悪かった」

刈谷「……いいよ」

刈谷「その代わり、これから、ずぅぅぅうっと、友達でいてね!」

俺「……ああ」
 ▼ 196 1◆J44kAZeDOM 16/03/04 20:03:07 ID:rhJdrSQE [13/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
俺の心を、いろいろな物が渦巻いている。

俺に生きる意味があるように、お前にもきっとある。

いや、違う。そんな上から目線な言葉じゃない。

俺は、お前といたい。お前と、また一緒に、「ポケモン」で遊びたい。

だけど、安っぽくなる。どれだけ言葉を尽くしても、俺のこの気持ちをそのまま伝える事なんて、出来やしない。

刈谷「……どうしたの?」

俺「あ、いや……」

なら、どうすればいいのか。

俺は、必死で考えを巡らした。

……そうだ。

簡単な事じゃないか。
 ▼ 197 1◆J44kAZeDOM 16/03/04 20:03:28 ID:rhJdrSQE [14/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
俺「あのさ、刈谷、聞いて欲しい事があるんだ」

刈谷「いいけど。何々?」

俺「すげえ長くなるけど……」

刈谷「うん」

俺「あり得ない話だけど、笑わずに聞いてくれるか?」

刈谷「わかったよ。速く聞かせて!」

俺「わかった」

刈谷の澄んだ瞳を見詰めて、俺は、息を吸い込んだ。

明るい月の光が、俺たちの立つ場所を眩しく照らし出していた。
 ▼ 198 1◆J44kAZeDOM 16/03/04 20:03:50 ID:rhJdrSQE [15/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


俺「目が覚めたらポケモンになってたんだが……」



 ▼ 199 ュレム@シルクのスカーフ 16/03/04 20:05:23 ID:rhJdrSQE [16/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
当SSはこれにて完結です
ここまで長い物語を最後までお読みくださり、ありがとうございました

当SSに関連しているSSは1スレ目>>32に掲載しております

その他質問等ございましたら、お気軽にどうぞ
 ▼ 200 ンバット@ヒールボール 16/03/04 20:29:49 ID:qDuIQ8rI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
完結おめでとうございます!
次回作があるなら楽しみにしてます。これからも頑張ってください!
 ▼ 201 タッコ@デンリュウナイト 16/03/04 21:07:04 ID:AvX0ZaqI NGネーム登録 NGID登録 報告
乙!本当に面白かったです。続編もぜひ書いてください!
 ▼ 202 ラミドロ@みずのジュエル 16/03/04 22:36:32 ID:NdBXe5yE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙!!面白かった!!
次回作期待!!
 ▼ 203 ルジーナ@ハイパーボール 16/03/05 00:04:03 ID:NPImkTGU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙!
 ▼ 204 オタチ@ものしりメガネ 16/03/05 00:14:12 ID:1Ax1rAfk NGネーム登録 NGID登録 報告
乙です!面白かったです!
ポケダンみたいにレントラーが戻ってくるようなアフターストーリーが書いて欲しいです!
 ▼ 205 1◆J44kAZeDOM 16/03/06 22:47:29 ID:.kio2rP. NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
当SSの続編は厳しい所があります
申し訳ありません


説明を忘れていたので補足

キショウブ(=キショウ)の花言葉
幸せをつかむ
信じる者の幸福
私は燃えている、消息、友情
 ▼ 206 ャノビー@タウンマップ 16/03/07 19:23:49 ID:y4QdrlN2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>205
まあ、だよな
続編じゃなくても次回作期待
 ▼ 207 ミカラス@でんきだま 16/03/07 20:10:55 ID:zwgEUo0s NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
なんか夏からずっと読んでたから終わったってのが信じられない。寂しい
でも乙でした!
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