【ポケダン超SS】入学式に

○

ピカチュウ「えっと……なんか仕事ないかなぁ」

ナエトル（まあ仕事がある事があんまりいい事とは言えないんだけどね。犯罪者がいるって事になるのも多いし）

ピカチュウ「あ、これ！　怖そうな森だって。懐かしいなぁ」

ナエトル（あれ？　怖そうな森は自分1人で行ったはずなんだけど……）

ピカチュウ「あ、そっか。ナエトルは私が行った事あるの知らないんだ」

ピカチュウ「ほら、私って、いろいろやんちゃだったじゃん？」

ナエトル（今も若干そんな気配はあるけどね）

ピカチュウ「それで、ダンジョンに行ってたじゃん？　その時に怖そうな森も行ったんだ」

ナエトル「……行っちゃ駄目って言われなかったの？」

ピカチュウ「何言ってるの？　言われたに決まってるじゃん」

ナエトル（やっぱりね……）

ピカチュウ「よし！　今日の依頼はここにしよう！　1月に行って以来だし、クッキーの反応も聞きたいじゃん！」

ナエトル「まあそうだね。わかった。じゃあ今日の依頼はこれに決定！」

チェリム「お日様が見たいのに……」

場所　こわそうなもり　3F

難しさ　★☆☆☆☆

ピカチュウ「カバルドン討伐か……。って事は、私の草結びで余裕かな」

ナエトル（まあ……重そうだしね）

ピカチュウ「よし！　行こう、おだやか村へ！」

ナエトル（うん！）

●

おだやか村

カモネギ「という訳で、みんなは今日から、1つお兄さんお姉さんになる」

カモネギ「特にヌメラは初めてだろう？」

ヌメラ「はい……」

ヌメラ（ドキドキするなぁ）

カモネギ「みんな、優しくしてあげる事！　それじゃあ、みんながそろそろ入って来るから、準備をしてくれ」

ヌメラ「なんか凄いドキドキする……」

シキジカ「大丈夫よ。ヌメラ、強いもの。ヌメラならしっかり優しいお兄ちゃんになれるよ」

ヌメラ「そうだといいけど……」

ニャスパー「まあ、あんまり硬くならない方がいいよ」

ヤンチャム「ビビってやんの！　ぎゃはは！」

チョボマキ「ぎゃはは！」

シキジカ「ふーたーりーとーもー？」

ヤンチャム「う、ご、ごめん……」

ヌメラ（それにしても……お兄ちゃんかぁ……）

ヒヤッキー「みなさん、新しいお友達です。と言っても、元々仲もいいでしょうけど」

ヌメラ（来たっ！）

ウパー「ヌメラ！　みんなも！」

トゲピー「学校楽しみだねー」

プクリン「ねー♪」

キャタピー「緊張するな……」

コラッタ（……何かかじりたいな……）

スボミー「よろしくね！」

ヒヤッキー「それでは、みなさん、お互いに助け合って、仲良くやって行きましょう！」

5匹「はい！」

カモネギ「それじゃ、明日から授業を始めるから、今日はしっかり寝て、明日元気に来る事！」

カモネギ「じゃあ、また明日！」

○

ピカチュウ「ふぅ……キリタッタ山脈、ちょっと疲れたな」

ナエトル（まあでも）

ピカチュウ「おだやか村に帰るんだもん！　元気も出て来るって物よ！　もうちょっとだよね、行こ！」

ナエトル（うん！）

――

ピカチュウ「着いたっ！」

ヌメラ「え……ナ、ナエトルにピカチュウ？！」

ナエトル「ただいま」

シキジカ「お帰りっ！　どうしたの2匹とも！」

ピカチュウ「今日は怖そうな森で依頼があって、それでついでに寄って行こうと思ってね」

ニャスパー「お帰り、ナエトル。ピカチュウも」

ピカチュウ「ニャスパー」

ナエトル（……なんか、怖いんだけど……）

ヤンチャム「おっ、帰って来たのかよ。うっｔ」

チョボマキ「無理矢理キャラ保とうとしなくても大丈夫だってば」

スボミー「お帰りなさーい！」

ウパー「お帰りー！」

ナエトル（わっ、みんな集まって来たね）

ピカチュウ「みんな、どうしたの？」

トゲピー「あのね、今日小学校に入学したんだよ！」

プクリン「うん♪」

コラッタ「記念にかじりっこしようよ」

……

ピカチュウ「って、小学校入学？！」

ヌメラ「うん、今日なんだ」

ピカチュウ「そっかぁ、ヌメラももうお兄ちゃんなんだ……」

シキジカ「これからは、あんたもしっかりしないと駄目よ、ヌメラ」

ヌメラ「わかってるよ！　僕、頑張る！」

ヤンチャム「ま、俺たちに頼りたくなったら、いつでも頼っていいんだぞ……？」

チョボマキ「いいんだぞ！」

ヌメラ「うん！」

ニャスパー「取りあえず、コノハナさんとアバゴーラさんにも顔を見せて来たら？」

ナエトル（そうだね）

ピカチュウ「そうするよ。そしたらダンジョンに行こ！　ナエトル！」

ナエトル（うん）

ピカチュウ「それじゃ、しばらく別行動ね！」

ナエトル（うん）

――

コノハナ「おお！　お帰り！」

ナエトル「ただいま。でも、すぐ行くけどね」

コノハナ「うっ、まあ仕方ないか。頑張るだど！」

ナエトル「うん！」

コノハナ「それで、最近どうだど？　ニャスパーとか、ピカチュウとか」

ナエトル「？　なんでニャスパー？」

コノハナ（……うぶだど……）

――

ピカチュウ「ただいまおじい！」

アバゴーラ「ん？　ピカチュウか！　お帰り！」

ピカチュウ「とは言っても、仕事があるからすぐ行かなくちゃだけどね……」

アバゴーラ「ハッハッハッ！　仕方あるまい！　それがピカチュウの夢への一歩なのじゃからな！」

ピカチュウ「おじい……」

アバゴーラ「とにかく、昼ご飯でも食って行かんか？　ナエトルも一緒に。振るうぞ」

ピカチュウ「うーん、ごめんだけど、そんな時間はないかも。夜までには戻らなきゃだし」

アバゴーラ「そうか……。ピカチュウ、頑張るんじゃぞ！」

ピカチュウ「うん！」

――

ピカチュウ「おーい！」

ナエトル（あ、ピカチュウ）

ピカチュウ「おっはよー！　なぁんて、懐かしいなぁ……」

ナエトル「さあ、仕事に行かないと」

ピカチュウ「そうだよね。頑張って行こう！」

●

スボミー「えっ、ダメだよ！　ダンジョンは危ないんだよ？」

コラッタ「でもさー、ちょっとぐらいいいじゃん。僕たち、もうかなり強いんだし」

トゲピー「そーだよね。だけど、お父さんはいいの？　怒ると怖いんじゃないの？」

プクリン「楽しそう。行こ♪」

ウパー「いや、怖そうな森なんでしょ？　……おっかないよ」

キャタピー「しかも仕事なんでしょ？　もっと危ないよ！」

コラッタ「でも、僕たちだって、授業でダンジョンに行かないとダメなんだろ？　それなら、今行ってもいいじゃん！」

トゲピー「それもそっか。なら行こ！」

プクリン「おー♪」

スボミー（うー……）

コラッタ「みんなには秘密で頼むぞ！」

○

ピカチュウ「あれ？　コラッタとプクリンとトゲピーは？」

ナエトル（確かにいないね……）

シキジカ「それが、いないのよ」

ヌメラ「遊んでたら、いつの間にか……」

ヤンチャム「今まではこんな事なかったってのによ」

スボミー「いや、知らないよ……」

ウパー「……僕も」

キャタピー「私も……」

ニャスパー「……小学校に入って、根拠のない自信に満ち溢れてる」

スボミー「え？」

ニャスパー「なんでもない。でも、友達が危険な目に遭おうとしてる時には、約束なんて破ってもいいのよ。

　　　　　　　それが、正しい事だと思うなら」

ウパー「……」

ニャスパー「あの時は結局、ヤンチャムたちは連れ去られたんだよね」

ヤンチャム「お、思い出させるなよ……」

チョボマキ「あ、あれは怖かった……」

キャタピー「え？　何の事？」

ニャスパー「とにかく、2匹はそのまま調査の仕事に行って。この子たちの事は、私たちでなんとかするから」

ピカチュウ「えぇっ？！　心配だよ！」

ナエトル（……ニャスパーは、何か気付いてるんだ）

ナエトル（手掛かりはさっきのセリフ）

ニャスパー『……小学校に入って、根拠のない自信に満ち溢れてる』

スボミー『え？』

ニャスパー『なんでもない。でも、友達が危険な目に遭おうとしてる時には、約束なんて破ってもいいのよ。

　　　　　　　それが、正しい事だと思うなら』

ナエトル（そして、自分たちをそのまま調査に向かわせた……）

ナエトル「ニャスパー、わかった」

ピカチュウ「ナエトル！　なんで？！」

ナエトル「大丈夫！　ニャスパーを信用して」

ピカチュウ「わかったよ……」

ニャスパー「ありがとう」

●

ニャスパー「さぁて、と。結局ほとんど活動出来てなかった子ども調査団な訳だけど、今がその時って事ね」

ヤンチャム「ホントか？！」

シキジカ「それ、つまり……みんなの場所がわかったって事？」

ニャスパー「うん」

ヌメラ（みんなを……助けなきゃ！）

チョボマキ「それで、どこにいるんだ？」

ニャスパー「それは……」

支援

○

ピカチュウ「えぇ？！　怖そうな森にいるぅ？！」

ナエトル「間違いないと思う。ニャスパーは、スボミーたちの心を読んで、自分たちに仕事を続けてって言ったんだ」

ナエトル「それで考えられる事なんて、そのぐらいしかない」

ナエトル「たぶん、3匹は、怖そうな森に調査に行くって言った僕たちに影響を受けたんだよ。調査って仕事に。そして」

ナエトル「それをしてる、自分たちに、憧れていた」

ピカチュウ「そっか……」


ナエトル「自分にない物に憧れる物だからね、ポケモンって」

●

ニャスパー「みんな、ナエトルやピカチュウに憧れてた」

ニャスパー「2匹とも、勇気があった。実力も、経験も」

ニャスパー「あの子たちには、勇気や実力はともかく、経験が足りてない」

ニャスパー「だから、それをたくさん持ってるナエトルたちに、嫉妬したんだと思う」

ニャスパー「みんながこんな風に調査団のマネしてるのだって、そんな気持ちの表れなのよ」

ヤンチャム「なんだと！」

ニャスパー「怒らないで。でも、憧れってのは、そう言う所から来る物なの」

ヌメラ「そんな事より！　今は、3匹を助けに行かなくちゃ」

ニャスパー「うん。いい？　今から作戦を伝えるね」

――ナエトル、聞こえる？

――やっぱり来た。うん。聞こえるよ。

――作戦を伝えるから、ちょっと、こっちに集中して。

○

ナエトル「……了解」

ピカチュウ「ふうっ！　敵、うっとうしいなぁ。どうだった？」

ナエトル「ニャスパーを中継係に待機させて、他のみんなが2匹1組で探す」

ピカチュウ「単純だね……」

ナエトル「居場所を探すなんて、推理で出来る訳ないじゃん」

ピカチュウ「ま、そっか。カバルドンの討伐もあるし……」

ナエトル「最悪なのは、カバルドンと対峙してる場合。とにかく僕たちは、早くカバルドンを倒さないといけない」

ピカチュウ「そうね！」

●

ヌメラ「……どこにいるの！」

シキジカ「コラッター！」

ヌメラ「……いないね」

シキジカ「……うう、ちょっと怖いな……」

ヌメラ「……でも、石になった時のあの世界に比べたら、全然マシだよ！　頑張ろ！」

シキジカ「……そうね」

ヌメラ「それにしても、どこにいるんだろ……階段は見付かるのに」

ヌメラ「」

シキジカ「」

ヌメラ「」

シキジカ「」

ヌメラ・シキジカ「うわあああああっ！」

天気が砂嵐になった！

カバルドン「うるせぇなぁ、ちょこまかちょこまかと！」

ヌメラ「！　って事は……」

コラッタ「うわあああああん！」

トゲピー「そんな泣かないでよ……」

プクリン「あ！　ヌメラとシキジカだ！　おーい♪」

カバルドン「あーもう！　イライラする！　地震っ！」

ヌメラ「危ないコラッタっ！」

シキジカ「トゲピープクリンもっ！」

コラッタ「ヌメラ……うわわわわーん！」

ヌメラ「良かった、無事みたいだ……」

シキジカ「セーフ……だけど、部屋の隅に追いやられちゃった……」

カバルドン「さぁて、袋のネズミだな……。あいにく俺は今、気が立ってんだ。悪く思うなよ！」

シキジカ「ど、どうしよ……」

プクリン「どうしたの？」

ヌメラ（僕は……お兄ちゃんなんだ）

ヌメラ（みんなを……守らなきゃ！）

ヌメラ「シキジカ！　みんなを守って。……泡っ！」

カバルドン「ちっ、ってぇなぁ！　かみ砕く！」

シキジカ「ヌメラっ！」

ヌメラ「だ、大丈夫……。シキジカ、逃げて！」

シキジカ「そんな、ヌメラだけ置いて逃げられないよ！」

ヌメラ「大丈夫だから。みんなを守れるのは、シキジカだけだもん」

シキジカ「ヌメラ……」

ヌメラ「カバルドン！　落ち着いて！　なんで暴れてるの？！」

カバルドン「ぐぉぉおおおお！」

シキジカ（……）

カバルドン「地震！」

○

ピカチュウ「3Fに到着っと」

ピカチュウ「……あれかな、ってうわあっ！　いっててて……」

ナエトル（地震だ……天気も天気。間違いない！）

ナエトル「カバルドン！　暴れるのはやめろっ！」

カバルドン「どんどん増えやがるっ！　なんだってんだよ！」

ナエトル「葉っぱカッター！」

カバルドン「なっ……ぐああっ！」

ナエトル「ピカチュウ今だっ！」

ピカチュウ「草結びっ！」

カバルドン「」

ピカチュウ「ふぅ……それほどでもないじゃん」

ナエトル（……それはちょっと違うと言うか……）

ヌメラ「た、助かったぁ……」

ナエトル「間に合って良かったよ」

シキジカ「……ありがとう、怖かった……」

ピカチュウ「どういたしまして。コラッタ！　ダメでしょ！　勝手にダンジョンに行ったりしたら！」

コラッタ「ごめんなさぁい……」

シキジカ（それ、ピカチュウが言えるセリフなのかしら……）

カバルドン「あれ？　俺は今まで……」

ナエトル「大暴れしてましたよ」

カバルドン「そうか、すまない。桜を見たかったんだが、俺のせいで枯れて、そのショックでな……」

ナエトル「なるほど……。そうだ。それなら、はいこれ。日照り玉です。ちょっと暑くなるけど、砂嵐は収まりますよこれで」

カバルドン「そうか……ありがとう！」

ナエトル「よし、カバルドンコネクトっと」

ピカチュウ「まあ、ホント、無事でよかったよ」

●

――見付かった？

――見付かったよ。みんな無事。今から戻るから、ヤンチャムたちにも伝えて。

――了解。

――シキジカたちとは合流してるから。

――うん。

ニャスパー「ふぅ……」

ニャスパー（何にせよ、無事でよかった）

――ヤンチャム、見付かったから、帰って来て。

――ホントか？！

――ええ。

――良かった……。って、べ、別に心配してた訳じゃないからな！

――ふふふ。

ニャスパー「みんな、無時に見付かったよ」

スボミー「よかった……」

ニャスパー「そういや、去年の夏だっけ。ナエトルがこっち来てすぐだから」

スボミー「うん」

キャタピー「あの時も怖かったよね」

ウパー「ホントだよ。急にいなくなっちゃって」

スボミー「ごめんね」

ニャスパー（それにしても、自分が持ってない物を持っているポケモンに憧れる……か）

ピカチュウ「おーい！　みんなー！」

ヌメラ「ただいま！」

ヤンチャム「おーっす！」

スボミー「あ！　みんなが帰って来た！　お帰りー！」

キャタピー・ウパー「お帰りー！」

ニャスパー「お帰り。どうだった？」

ヌメラ「すごいんだよ、もう。僕たちが手こずってたカバルドンを、ピカチュウたちはすぐ倒しちゃったんだ！」

シキジカ「でも、ヌメラも……かっこよかったよ？　みんなを守ろうって、1匹で戦おうとして」

ヌメラ「え、そうかな？　ありがとう！」

ヤンチャム「ちょっ、ヌメラ、ズルいぞ！」

チョボマキ「ズルいぞ！」

ヌメラ「えっ、何が？」

ニャスパー「とにかく、これにて一件落着だね」

ナエトル「うん」

ニャスパー「今日はもう帰っちゃうの？」

ナエトル「ごめんね。告白されて、うんって言ったのに、全然そんな感じに出来なくて」

ニャスパー「気にしてないよ、私」

ナエトル「それでも、さ。離れてて、何が変わるって訳でもないしね」

ピカチュウ「おーいナエトルー！　そろそろ帰らなきゃだよー！」

ナエトル「あ、はーい！」

ナエトル「ニャスパー、またね。元気で！」

ニャスパー「離れてても変わらない、か……」

ニャスパー（だけど、あなたって、近くにいても変わらないじゃないの……）

シキジカ「どうしたの？　ニャスパー」

ニャスパー「ううん、なんでもない」

シキジカ「みんなを家まで送り届けてあげなくちゃ」

ニャスパー「そうね」

シキジカ「にしても懐かしいね。肝試し事件。あれ、もう去年の夏休みだよ？　あんな風に戦いに行ってた私たちが、止める側って、凄いよね」

ニャスパー「うん」

シキジカ「……ニャスパー、何か変だよ」

ニャスパー「気にしないで」

ニャスパー（ま、ウジウジ考えてたって仕方ないか）

ニャスパー（ピカチュウ、あなたは私に宣戦布告して来たけど……）

ニャスパー「でも、私だって」

ニャスパー（私だって、負けない。気持ちまでは、さすがに制御出来ないから）

【ポケダン超SS】入学式に　完

当SSはこれにて完結です
お読み下さりありがとうございました

質問等ございましたらお気軽にどうぞ

このシリーズ大好きです。また次の話を楽しみにしてます