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【SS】ひと夏のレンジャースクール

 ▼ 1 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/19 00:53:58 ID:qb7EOz/Y [1/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

アルミア地方、ビエンタウン郊外。

ポケモンレンジャー養成学校、レンジャースクール。


 リーフ 「行くよチーちゃん! あなたに決めた!」

 チコリータ 「ちこー!」


緑と青の制服に身を包んだ彼女の名前はリーフ。

レンジャースクールの生徒で、パートナーポケモンはチコリータ。

ポケモンと気持ちを通わせるためにポケモンレンジャーが使用する道具――、キャプチャ・スタイラーを構え、彼女は動く。


チコリータのアシストを受けながら、野生のダグトリオをスタイラーでグルグル囲み……、キャプチャ――、ポケモンと気持ちを通わせることに成功した。


 ヒトミ 「凄いよリーフ! スピード記録更新したんじゃないの!?」

 リーフ 「えへへっ」

 ミナミ 「まったく。あんなに大人しかったリーフが、こんな立派になるなんてねー」

 ヒトミ 「うんうん。私もクラスメートとして嬉しいよ」

 リーフ 「大袈裟だよ2人とも」

 ハジメ 「いや、野生のダグトリオ相手に、今のキャプチャは凄いと思うよ」

 ナツヤ 「無駄がない動きだったぜ。オレも もっと特訓しないとな!」

 リーフ 「ふふっ。ありがとう」
 ▼ 2 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/19 00:55:01 ID:qb7EOz/Y [2/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ミナミ 「やっぱ“彼”の影響が強かったのね」

 ヒトミ 「だよねー。リーフったら、超が付くほど男子が苦手だったって言うのに」

 ハジメ 「確かにね」

 ナツヤ 「勿体ねぇよなー。リーフ、あいつと良いコンビだったのに」

 リーフ 「もー! その話は今は いいから! ///」



秋風が心地よく感じるようになった9月中旬。


クラスメートにも認められるほどの成長を遂げたリーフだが、その背景に“彼”の影響があったことは、誰の目にも明らかだった。

当然、リーフ自身が、それを強く感じているだろう。





リーフの、ひと夏の思い出。





その話は、レンジャースクールの夏休みに遡る――。




 ▼ 3 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/19 00:57:28 ID:qb7EOz/Y [3/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




   ◆   ◆   ◆



アルミア地方(画像1)

“ポケモンレンジャー・バトナージ”の舞台。北海道の渡島半島と青森県の一部がモデル。



ハジメとヒトミ(画像2)

“ポケモンレンジャー・バトナージ”の主人公。



ナツヤとミナミ(画像3)

“ポケモンレンジャー・光の軌跡”の主人公。




レンジャースクールの制服(画像4)

上下ブルー、緑のベストに黄色のネクタイ。


シンバラ教授(画像5)

レンジャーユニオンの技術最高顧問。スタイラーの開発者。



キャプチャ・スタイラー(画像6)

キャプチャディスクを射出し、ポケモンをグルグルと囲む事で心を通わせ、一時的にポケモンの力を借りるポケモンレンジャーの道具。



   ◆   ◆   ◆



 ▼ 4 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/19 00:58:12 ID:qb7EOz/Y [4/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 リーフ 「忘れ物なし……っと。じゃあママ、行ってくるね」

 母親 「まったく。夏休みくらい家で ゆっくりすれば良いのに」

 リーフ 「だめだよ。ちゃんと勉強しないと、レンジャーへの道は厳しいんだから」

 チコリータ 「ちこっ♪」



私はリーフ。

この子は私のパートナー、チコリータの“チーちゃん”。


ポケモンレンジャーになることを目指して、ポケモンレンジャー養成学校、レンジャースクールに通っている。

ちなみにレンジャースクールは全寮制。

今は夏休みだけど、休み中もレンジャーのことを学べる“特別講習”があって、これから私たちは、その講習に参加する。



 母親 「大人しくて内気だった貴方が、まさかポケモンレンジャーを目指すなんてね〜」

 リーフ 「私だって、いつまでも大人しいままじゃないもん」

 母親 「ちょっと前までは、男の子と話すのも ままならなかったのに。学校では ちゃんと話せてるの?」

 リーフ 「うっ……頑張ってるよ!」

 母親 「ちゃんと目を見て話すのよ。男の子を避けてばっかりだと失礼だからね」

 リーフ 「分かってるよ〜」

 母親 「まぁ、貴方が選んだ道なんだから。しっかり、気を付けて学んで来るのよ」

 リーフ 「はい!」

 母親 「定期的に連絡ちょうだいね」

 リーフ 「うん。……それじゃあ、行ってきます!」

 チコリータ 「ちこちこー!」


 ▼ 5 ワライド@なつきポン 21/08/19 00:58:17 ID:9JroZDdI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
レンジャーのssとは珍しい…
 ▼ 6 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/19 00:59:02 ID:qb7EOz/Y [5/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ママに見送られて、家を出発した。


夏休みが始まって1週間は自宅で過ごしたけど、これからまた、レンジャースクールでの生活が始まる。



 『アルミア地方、プエル港行きの連絡船アプライト号は、只今より乗船を開始いたします』



連絡船に乗り込んで、一段落。

アルミア地方までは長旅なので、ママが個室を確保してくれた。


 リーフ 「出て来てチーちゃん」

 チコリータ 「ちこっ!」

 リーフ 「アルミアに着くのは明日の朝だから、それまでのんびりしてようね」

 チコリータ 「ちこり〜」

 リーフ 「特別講習……、どんなこと学べるのかな〜」


特別講習――、授業カリキュラムとは別の、希望性のプログラム。

全員参加ではないけど、また皆と会えるのは嬉しいし、互いに成長するって、なんだかすっごく青春って感じだ。


……けど私は、ママも言ったけど、少しだけ、悩みの種がある。


私は小さい頃から、男の子が苦手だった。

男の子に いじめられた経験が、私をそうさせたんだと思う。


レンジャースクールにも当然、男子は居る。

同じ志を持つ仲間なんだけど、どうしても私は、男子と話すのが苦手だ。

いじめられてる訳でもないし、ふざけて悪戯される訳でもないけど、小さい頃の経験が、私を強張らせてしまうみたいで。

悪いとは思ってる。普通に接しなきゃって思ってる。

でもどうしても、少し距離を置く感じになっちゃって……。


幸いなことに、スクールの皆は、そんな私の性格を理解してくれている。

女子たちはフォローしてくれるし、男子たちも、無理に私に話しかけてくることはない。むしろ、気にかけてくれている。

嬉しいし有難いんだけど、このままじゃダメ。甘えてちゃダメ。

少しずつで良いから、男子とも普通に接するようにしないと……。
 ▼ 7 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/19 00:59:42 ID:qb7EOz/Y [6/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





 『長らくのご乗船、お疲れ様でした。ただいま当船は、アルミア地方、プエル港に入港いたしました。接岸作業終了しましたら再度ご案内いたしますので、どうぞ皆様、船内でお待ちくださいませ』



翌朝、連絡船は時間通りに、プエルタウンに到着した。

レンジャースクールへ行くには、、ここからビエンタウンと言う町まで、バスで移動する。



時刻は朝7時半。

私たちは夏休みでも、会社は関係ない。スーツ姿の通勤客で、バス停には長い列が出来ていた。

クラスメイトの誰かと一緒になるかと期待したけど、あいにく、その列に知り合いの顔は無かった。


 『お待たせしました。市役所方面です。ご乗車になりましたら、奥の方へとお詰め合わせお願いします』


ビエンタウンに向かうバスが こんなに混んでるのは、プエルシティの中心街を経由するから。

役所のバス停を過ぎれば空いてくるから、それまでの辛抱なんだけど……。


 『ご順に中の方までお願いしまーす。お待ちのお客様、次のバスも併せてご利用ください』


バスは すし詰め状態だ。

私はバスの真ん中くらいで立っているけど、後から乗り込んでくる人のせいで、体が持って行かれそうになる。


そうこうしているうちに、いい加減 満員になったのか、バスは ゆっくり発車した。
 ▼ 8 クデ@われたポット 21/08/19 00:59:46 ID:EU9ED6YQ NGネーム登録 NGID登録 報告
懐かしい
支援
 ▼ 9 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/19 01:00:35 ID:qb7EOz/Y [7/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 リーフ (うぅ……、嫌だなぁ……)


ギュウギュウ詰めの車内では、隣や後ろに立っている人と密着して気分が悪い。

特に男の人が苦手な私にとって、この空間は地獄だ。

外の景色を眺めながら、早く時間が過ぎ去ってくれることだけを考えるしかない。



そんな時だった――。



 リーフ (ひっ……!?)


お尻に、嫌な感触が走った。

満員だから、意図しない触れ合いかもしれないし、バッグか何かかもしれない。

でも その感触は繰り返す。

バスの揺れに合わせて、確実に、私の お尻を撫でている。断言できる。


 リーフ (やだっ……痴漢? うそっ……)


声が出ない……。

満員電車やバスに乗ったら、痴漢に遭うことがあるとは聞いていた。

でも、実際に遭遇したのは初めてで……、どうしよう。本当に声が出ない。


 リーフ (嫌っ……グスッ、こんなのっ……)


痴漢の手つきが激しくなった。

きっと、私が抵抗しないって分かったから、遠慮が無くなったんだと思う。

そんなの酷いよ……、私、嫌なのにっ。でも怖くて恥ずかしくて、抵抗できないのに……。


 リーフ (グスッ……誰かっ……。助けてっ……)







 「……きみ、大丈夫?」


 ▼ 10 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/19 01:01:40 ID:qb7EOz/Y [8/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 リーフ 「ぇっ……?」


不意に私に話しかけたのは、私の目の前の椅子に座っていた男の子だった。

私と同い年くらい……? 彼の膝にはピカチュウが座っていて、2人して、私の顔を見上げている。


 「気分悪いの? 良かったら座って」

 リーフ 「ぁっ……」


そして彼は立ち上がると、私の手を引いて、半ば強引に、椅子に座らせてくれた。


 「大丈夫?」

 リーフ 「ぅっ……はい」

 「なら良かった。辛かったら無理すんなよ」

 リーフ 「ありがとう……」

 「それと……、悪いけどピカチュウをお願いできる? これだけ混んでると、ピカチュウを肩に乗せてる訳にはいかないから」

 「ぴぃかぁ」

 リーフ 「あっ、はい……」

 ▼ 11 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/19 01:02:10 ID:qb7EOz/Y [9/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

小さく頷くと、ピカチュウは彼の肩から降りて、私の膝の上で大人しくなった。

確かに このポジションであれば、ピカチュウくらいのポケモンならボールに入れなくても大丈夫そうだ。


 「ありがとう。空いて来たらピカチュウ貰うからさ。それまで よろしく頼むよ」

 「ぴかぴぃか」


それだけ言うと、彼は目線を窓の外へ やった。

混んでいる車内、あんまり長く喋れるような雰囲気じゃないから、必要最低限の会話で済ませた、って感じだ。


 リーフ (ありがとう……)


彼が、私が痴漢に遭っていることに気付いたかは分からない。

でも、私を気遣って席を譲ってくれたのは事実で、それは素直に有難い。


 リーフ (このピカチュウ、すっごく良い毛並み……)


私の膝の上で丸まっているピカチュウの毛並みは、とても綺麗だった。

大切に育てられてることが一目でわかる。

ピカチュウと言えば、女の子が連れてるイメージが強いけど。


 リーフ (この人、なんだか不思議……)


赤の他人である私の異変に気付いて、席を譲ってくれて。

男の子なのに、可愛いピカチュウを連れていて。

それでいて、別に女々しくない、普通の男の子。


 リーフ (こんな人も居るんだ……)


私はピカチュウを眺めながら、安心のせいか、いつの間にか、眠りに落ちていた。




 ▼ 12 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/19 01:02:57 ID:qb7EOz/Y [10/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 運転手 「お客さん。終点だよ」

 リーフ 「……あっ! すみません」

 運転手 「忘れ物だけ気を付けてね」


いけない、寝ちゃった。

もともと終点までだから問題は無いんだけど、運転手さんに起こされちゃって、なんだか恥ずかしい。

それに……、私を助けてくれた男の子とピカチュウは、もう居なかった。


 リーフ 「あの……、ピカチュウを連れた男の子、ここまで乗ってましたか?」

 運転手 「あぁ、あのピカチュウの子ね。2つ手前で降りて、車に乗り換えてたよ。お迎えかな」

 リーフ 「そうですか……。ありがとうございました」


もしあの男の子が終点まで乗っていれば、探せたかもしれない。

でも、2つ手前で降りちゃって、しかも迎えの車に乗ったってことは、もう会える可能性はゼロだ。

ちゃんとお礼、言いたかったのにな。



 リーフ 「出て来て、チーちゃん」

 チコリータ 「ちこっ!」

 リーフ 「ビエンタウンに着いたよ。スクールまで歩こうね」

 チコリータ 「ちこー!」


 ▼ 13 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/19 01:03:57 ID:qb7EOz/Y [11/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ビエンタウンの郊外に出ると、海を貫く大きな橋が現れる。


ここを渡った先の島に、私たちの通うレンジャースクールがある。


長い階段を上った崖の上、広々とした校庭の奥にある建物が、私たちの学び舎だ。

決して良い立地とは言えないけど、島が丸ごとスクールの土地だから、自然豊かで伸び伸びと学べる――、と私は思っている。


校舎は2階建て。

1階に教室があって、2階は寝室や厨房、お風呂と言った生活空間。全寮制の学校ならではの設備だ。



 ヒトミ 「……あ、来たわねリーフ!」

 ミナミ 「おはよー」

 リーフ 「おはよう、ヒトミちゃん、ミナミちゃん。久しぶり」

 ミナミ 「久しぶりって程でもないでしょ。こないだの終業式以来だし」


校舎2階のフリースペースには、この講習に参加する生徒たちが集まっていた。

私と特に仲の良いのが、ヒトミちゃんとミナミちゃん。

この2人も参加してくれて、内心ホッとしている。まわりが男子ばっかりだったら肩身が狭いもん。


 ハジメ 「おぉ、リーフも参加するんだね」

 ナツヤ 「よろしくな。楽しい夏にしようぜ!」

 リーフ 「あっ、うん。よろしくね、2人とも」


そして、ハジメ君とナツヤ君は、クラスメートの中でも代表的な存在の2人。

キャプチャの成績も良いし、クラス皆のことを気にかけてくれている、学級委員のような男子だ。

男子が苦手な私に対しても、適度に声を掛けてくれる。



 教師A 「おはようさん。参加者全員揃ってるね?」



と、先生が顔を出すなり言った。

今このフリースペースに居るメンバーが全員……ってことは、この講習の参加者は全部で9人。

全生徒数から考えれば少ないけど、例年、参加者は2桁に届けば良い方らしい。やっぱり皆、夏休みは実家でゆっくりしたいのかな?
 ▼ 14 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/19 01:04:31 ID:qb7EOz/Y [12/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 教師A 「朝礼やるから体育館に集合ね」

 ナツヤ 「朝礼あるんですか〜」

 教師A 「まぁ、特別講習の開会式みたいなものだから、すぐ終わるよ」

 ナツヤ 「よっしゃ!」

 教師A 「喜ぶな」

 ナツヤ 「いや、オレは早くキャプチャの学習に取り組みたいんです!」

 ハジメ 「うそつけ」

 ミナミ 「まったくナツヤは面倒くさがりだもんねー」

 教師A 「面倒な気持ちは分かるけどな。……けど、ちょっとしたサプライズもあるぞ?」

 ナツヤ 「サプライズ!?」

 ヒトミ 「ゴーゴー4が来るとか!?」

 教師A 「無茶言うな。まぁ、とにかく10時に体育館に集合な」


それだけ言うと、先生は1階に戻って行った。


 ヒトミ 「サプライズってなんだろね!?」

 ミナミ 「普段さっぱりしてるA先生が言うんだから、ちょっと期待できることかもよ?」

 リーフ 「なんだろう。新型のスタイラーが出来た、とかかな?」

 ハジメ 「それを僕たちが使えるかって考えると微妙だけどね」

 リーフ 「あ、そっか……」

 ナツヤ 「サプライズって言うからには、少なからずオレたちにとってプラスのことだろうけど」

 ヒトミ 「あーあ。ゴーゴー4のサプライズ公演とか期待しちゃったのになー」

 ミナミ 「ヒトミは相変わらずゴーゴー4好きね」

 ヒトミ 「まぁね。ライブも毎回応募してるし」

 ナツヤ 「とにかく準備しよう。制服に着替えないといけないし」

 ミナミ 「そうね。……覗くんじゃないわよ」

 ナツヤ 「もう覗かねーよ!」


私たちは男女別のベッドルームに入って、制服に着替える。

青いシャツとズボンに、緑色のベスト。黄色のネクタイ。汚れが目立たなそうな配色だけど、女子はショートパンツだから汚れ云々は関係ないかも。

みんなで身形を確認し合って、朝礼が行われる体育館に向かった。
 ▼ 15 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/19 01:05:25 ID:qb7EOz/Y [13/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

全校集会では手狭に感じる体育館も、たった9人で占領すれば広く感じる。

校長先生の話が始まったけど、普段とは違って早々にスピーチを切り上げた。


 校長 「続いて、今日はシンバラ教授にお越し頂きました。教授、お願いします」


 ナツヤ (シンバラ教授来てるのか!?)

 ミナミ (嘘っ!? わざわざスクールに来てくれたの?)

 ハジメ (サプライズって このことだったのか)


ナツヤ君たちのテンションが上がる。

シンバラ教授は、キャプチャ・スタイラーなどを開発している、レンジャーユニオン技術最高顧問。レンジャー達にとって憧れの存在だ。

だって、教授が居なかったら、ポケモンレンジャーと言う役割は果たせないんだもん。

そんなシンバラ教授の登壇は、十分サプライズに値するものだった。


 シンバラ 「皆、夏休みだと言うのに、特別講習の参加、ご苦労様。……まぁ人数は少ないようだが、だからこそ、この講習は諸君らにとって、有意義かつ重要なものになるだろう」


みんな、教授の話を真剣に聞いている。もちろん私だって。

私たち生徒のモチベーションを上げてくれる、教授の有難い話に、皆は姿勢を正して、静かに耳を向けていた。



 シンバラ 「――以上になるが、最後に、体験入学生を紹介しよう」


 ▼ 16 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/19 01:06:09 ID:qb7EOz/Y [14/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ミナミ 「体験入学生!?」

 ハジメ 「そっか。この講習だけ参加する人間が居るってことか」

 ナツヤ 「なるほど。サプライズってこのことだったのか。女子が良いな〜」

 ハジメ 「可愛い子なら なお良いな〜」

 ミナミ 「まったく男子どもは。こんなに可愛い女子たちが居るって言うのに」

 ヒトミ 「ねー」

 リーフ 「あはは……」


転校生……って訳じゃないけど、この講習中、新しい仲間が増えるんだね。

私も、できれば女子が良い。

レンジャースクールに来るような子だから、男子でも悪い人は居ないと思うけど、苦手なことに変わりは無いし、上手く接することが出来るか分からないし……。


 教師A 「男子だぞ」

 ナツヤ 「えっ?」

 教師A 「男子だぞ」

 ハジメ 「チェッ」


 シンバラ 「それでは、入って来なさい」


教授の声がかかると、壇上の脇から、1人の男の子が登場した。

既に私たちと同じ制服に身を包んでいて、ピカチュウを連れている。



……あれ?


 ▼ 17 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/19 01:08:09 ID:qb7EOz/Y [15/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 シンバラ 「紹介しよう。この講習中に諸君らの仲間に加わる、サトシ君だ」

 サトシ 「初めまして。マサラタウンから来ましたサトシです。こいつは相棒のピカチュウです」

 ピカチュウ 「ぴかぴっか」


  ヒトミ 「へ〜、パートナーポケモンはピカチュウなんだ」

  ミナミ 「男子でピカチュウは珍しいわね」


間違いない。

さっきバスで私を助けてくれた人だ。

同じ声だし、何より あの毛並みの良いピカチュウ……、間違いない。


 シンバラ 「年々レンジャースクールの入学者数は減っておる。知っての通り、ポケモンレンジャーは ひとたび災害が起これば激務。このご時世、他に魅力的な職業が溢れておるし、就活は売り手市場じゃからな」


  ハジメ 「確かに、好きじゃないとレンジャーになる人は居ないよな〜」

  ナツヤ 「遣り甲斐は あるけど、なかなか大変な職だからね」


 シンバラ 「そこでじゃ。少しでも若者にレンジャーの魅力を知って貰おうと、この夏季特別講習に“体験入学”できるプログラムを検討しておる。そのモニターに、ワシの知り合いのツテで、サトシ君に協力して貰おうと言う訳じゃ」


  ヒトミ 「ふーん。そんな構想があるんだ」

  ミナミ 「モニターってことは、あのサトシって人の結果次第で、来年から体験入学を取るか決めるってことね」


 シンバラ 「当然サトシ君は、レンジャーについては素人じゃ。キャプチャも未経験。諸君らでフォローしてくれると有難い。何より、人に教えることは、自身の成長にも繋がるからの。……それではサトシ君。簡単に自己紹介でも」

 サトシ 「はい。……えっと、今回シンバラ教授に誘われて、ここに体験入学させて貰うことになりました。ポケモンレンジャーの人とは、ポケモンリーグに向けて旅してる時に何度か会っていて、キャプチャでポケモンと気持ちを通じ合うのとか、凄いなって思ってました。短い間ですが、よろしくお願いします」

 ピカチュウ 「ぴぃかぴか」

 シンバラ 「うむ。それでは諸君、有意義な講習にしてくれたまえ」

 教師A 「それでは朝礼終わり! 皆は教室へ。サトシ君は簡単に校内の説明するから、俺と一緒に来てな」

 サトシ 「はい!」



そうしてシンバラ教授、先生たち、サトシ君は、先に体育館から出て行った。


 ▼ 18 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/19 01:09:04 ID:qb7EOz/Y [16/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

私たちは、1コマ目の授業の教室に向かうけど……、雰囲気は、あまり良くなかった。


 ナツヤ 「あのサトシって奴、ポケモンリーグの旅してるって言ったよな」

 ミナミ 「言ってたわね」

 ナツヤ 「じゃあ あんまり信用できないな。あの自己紹介も、教授の前だから良いこと言っただけかもしれないし」

 ミナミ 「同感」

 ハジメ 「内心バカにされてるかもしれないしな」

 ヒトミ 「まぁ……、決めつけは良くないけどね」


実は、私たちレンジャースクールの生徒は、同年代のポケモントレーナーに、あまり良い感情を持っていない。

と言うのも、“バトルが弱いからレンジャーに逃げてる”と言うレッテルを張られて、馬鹿にされることが多々あるからだ。

勿論、全員がそうであるとは思わないけど、ここアルミア地方では、そういう風潮が強いように感じる。

だって、他の学校の生徒と会った時、絡まれることが多いんだもん。


 ナツヤ 「シンバラ教授にツテがあるらしいけど、オレたちを馬鹿にするような態度だったら、黙っちゃいられない」

 ハジメ 「そうだね。むしろトレーナーに、僕たちレンジャーの領域に踏み込んで欲しくないよ」

 ミナミ 「えぇ。私たちは私たちで団結して、馬鹿にされない立場を固めておかないと!」


みんな、サトシ君に対して敵意とも取れる感情を剥き出している。

レンジャースクールって言う環境から、無理は ないかもしれないけど……。

唯一、ヒトミちゃんは中立を装おうとしているように見える。

“装おうとしている”って言うのは、レンジャースクールの生徒である以上、やっぱりクラスメートたちの意見を重視したいもんね。


私はと言うと、とっても複雑な気持ち。

確かにポケモントレーナーに そこまで良い印象は無い――これも決めつけかもしれないけど。


でも、サトシ君は何処か違う気がする。


彼にその気は無かったかもしれないけど、私を助けてくれたし。

そもそも、“気分が悪そうだから席を譲ってくれる”なんて、普通、なかなか出来ることじゃ無いと思う。そういうことを考えても、サトシ君は、優しい心を持っていると思う。

それに、ピカチュウすっごい懐いてるし、毛並みも良いし。バトル一筋、って訳じゃないのかな。


なんだか、サトシ君を受け入れるような雰囲気じゃ無いのが悲しいな……。


 ▼ 19 マナッツ@ウイのみ 21/08/19 01:13:25 ID:9wT27AnU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
リーフはあのリーフでいいのか?
それともオリキャラ?
 ▼ 20 エトル@しらたま 21/08/19 01:15:36 ID:QqK6VUyE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
リーフだからレッドだと思ったけどサトシなのか
 ▼ 21 レベース@きちょうなホネ 21/08/19 06:15:29 ID:DDOw7n4. NGネーム登録 NGID登録 報告
サトシ×リーフだったら俺得
支援
 ▼ 22 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/20 00:08:50 ID:dfOES6H. [1/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


>>19
あのリーフです。
実は このSS、リーフがスマブラ参戦&公式登場を記念した2018年当時のネタだったりします(故に盾剣要素なし)。


 ▼ 23 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/20 00:14:38 ID:dfOES6H. [2/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



2時限目の授業が終わって昼休み。

スクールで私たちの生活を支えてくれている“世話やきおばさん”が作った お昼ご飯を皆で食べていると、先生とサトシ君が やって来た。


 教師A 「ちょうど良いタイミングでスクールの説明が終わったな。皆と昼飯食べて、午後の授業からサトシも出席な」

 サトシ 「はい。ありがとうございました」

 ピカチュウ 「ぴっか!」

 教師A 「そんじゃ、良いスクルールライフを。何か分からないことがあれば、職員室の誰かに聞いても良いし、こいつらに聞いても良いし。何にせよ、遠慮なく声かけてくれな」

 サトシ 「分かりました」


それじゃお前ら、サトシを頼むな――、と言い残し、先生は職員室に戻って行った。

サトシ君は先生を見送ると、私たちの方に向き合い、笑顔で口を開いた。


 サトシ 「改めて、オレ、サトシです。こいつは相棒のピカチュウ」

 ピカチュウ 「ぴっか!」

 サトシ 「キャプチャのこととか全然分からないけど、しばらくの間よろしくな!」

 ピカチュウ 「ぴかぴっか!」


 ハジメ 「あぁ、よろしく。僕はハジメ」

 ナツヤ 「オレはナツヤ。そっちに座ってるのがモブタとモブオ」

 モブX2 「どうも」

 ヒトミ 「私はヒトミ。よろしくね」

 ミナミ 「ミナミよ。そっちがモブコとモブエ」

 モブX2 「どうも」

 ヒトミ 「それと、この子はリーフ」

 リーフ 「リーフです。よろしくお願いします」

 ミナミ 「先に言っておくけど、リーフは男子が苦手だから、あんまり ちょっかい出さないであげてよ」

 サトシ 「そうなのか。みんなよろしくな!」
 ▼ 24 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/20 00:16:20 ID:dfOES6H. [3/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

気付かれて……ない?

そっか。バスの中は私服だったし、帽子も被ってたし。すぐ座っちゃったから あんまり顔も見られてないし、会話も ほとんどしてないし。

やっぱり制服だとイメージ変わるのかな。


 ナツヤ 「ところでさ。サトシ、さっきの自己紹介で、ポケモンリーグに出る旅をしたって言ったけど」

 サトシ 「あぁ。色んな地方を旅して、ポケモンリーグには何度も出場してるぜ」

 ハジメ 「ってことは、サトシはポケモントレーナー、なんだね」

 サトシ 「あぁ」

 ミナミ 「トレーナーがレンジャースクールに入るって、けっこう珍しいのよ」

 サトシ 「そうなのか?」

 ミナミ 「アルミア地方ではね。地方柄、って言うのかしら?」


うぅ……、みんなサトシ君に“探り”を入れている。

ここアルミア地方で、学生同士のレンジャーとトレーナーは、言ってしまえば水と油。

“バトルが弱いからレンジャーに逃げてる”と思ってるトレーナーが 一定数居ることが原因なんだけど――。



実は もう一つ、理由がある。



 サトシ 「そう言えば、この夏季講習の最後の方に、アルミアのバトル大会があるんだろ? それ楽しみなんだよな〜」

 ミナミ 「なっ……!?」

 ナツヤ 「バトル大会……。サトシ、それに出るつもりなのか?」

 サトシ 「あぁ。講習の一環で参加するって聞いて、オレそれが楽しみでさ! みんなもそうだろ?」
 ▼ 25 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/20 00:18:59 ID:dfOES6H. [4/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



バトル大会――。


アルミア地方では、夏の終わりに、各学校が参加してバトルの強さを競うバトル大会が、毎年開催されている。

正式名は、「アルミア学校選抜バトル大会」。

イメージとしては、高校野球みたいなものだ。


各学校からバトル好きな生徒が集結して、アルミア地方ナンバーワンの学校を決める、アルミアではポピュラーなイベント。

レンジャースクールも参加対象になっていて、例年、この夏季講習に参加した生徒が、講習の一環として出場することになっているんだけど――。


 ▼ 26 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/20 00:21:24 ID:dfOES6H. [5/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ナツヤ 「バトル大会には参加しない」

 サトシ 「えっ? だって、夏季講習の説明の資料貰ったけど、そこには参加するって書いてあったぞ?」

 ハジメ 「参加は、あくまで任意。生徒たちの希望が無ければ、参加しないんだ」

 サトシ 「希望って……。みんなバトル大会に出たくないのか?」

 ハジメ 「サトシ。レンジャースクールはね、その大会、棄権してるんだよ。毎年」

 サトシ 「棄権!?」

 ナツヤ 「つまり、誰も参加したくないってことだ」

 ミナミ 「サトシ。アンタは まず、レンジャースクールの置かれた状況を理解して。私たちはね、バトル大会に参加したくないの」

 サトシ 「なんでだよ? それに、状況……?」

 ナツヤ 「オレ達は、バトルするためにレンジャースクールに入学した訳じゃないんだよ!」

 サトシ 「えっ……」

 ヒトミ 「ちょっとナツヤ……」

 ナツヤ 「ポケモンと心を通わせて、ポケモンのため、人のため、自然のためにレンジャーを目指してるんだ!」

 ミナミ 「トレーナーはムカつくのよ! そういう私たちの気持ちを知らないで、バトルが弱いって馬鹿にして!」

 ヒトミ 「ミナミも……」

 ハジメ 「確かに僕らは、バトルに長けてないよ。他校の生徒たちは、それを馬鹿にする。そんな状況で、大会に出ようとは思わないね」

 ナツヤ 「オレ達の志を理解しないような奴らの元に、わざわざ行く理由なんて無いだろ。だから毎年、棄権してるんだ」

 サトシ 「そんな……」

 ミナミ 「アンタもトレーナーなら、内心私たちを馬鹿にしてるんでしょ。この年でバトルが出来ない私たちを!」

 ナツヤ 「正直言うと、なんでサトシが体験入学に来たのか分からないんだよ。ここは、バトル好きな人間とは決して交わらない学校なんだよ!」

 ヒトミ 「やめてよ2人とも! せっかく体験入学してくれてるサトシに、いきなりそんな喧嘩なんて!」



あぁ……、一番ダメな展開になっちゃった……。


私たちレンジャースクールは、長年、このバトル大会に参加していないって聞いている。

みんなバトルが得意じゃないから、当然、今年も棄権することになっていた。夏季講習の事前アンケートで、そう決まっていた。

私たちを馬鹿にするトレーナーと無駄に関わらないようにって、皆で話し合って決めたことだった。
 ▼ 27 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/20 00:22:42 ID:dfOES6H. [6/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 サトシ 「オレは皆を馬鹿にする気は無い! 旅の途中でポケモンレンジャーに助けて貰ってるし、未来のレンジャーを馬鹿にする理由なんて無いだろ!?」

 ミナミ 「ふん。どうだか」

 ナツヤ 「しょせんサトシもトレーナーだ。心の中では、バトルが苦手なオレたちにドン引きしてるんじゃないのか?」

 サトシ 「言わせておけば……! だいたい! 綺麗ごと言って棄権なんて話にならない! 結局はバトルから逃げてるだけじゃんかよ!」

 ミナミ 「はぁ!?」

 ナツヤ 「んだと!?」

 サトシ 「最初から諦めてどうすんだよ!? 馬鹿にされてるんなら、特訓して そいつらを見返してやろうって思わないのかよ!? そんなの“逃げ”でしかないと思うけどな!」

 ナツヤ 「ふざけんな! 教授の知り合いだからって調子乗ってんじゃねーぞ!?」


 ヒトミ 「もうやめてってば!」

 ハジメ 「言い争いは良くない!」


 ヒトミ 「ミナミ! ナツヤ! それにサトシも! せっかくの夏季講習を台無しにしないでっ!」

 ミナミ 「だって……ヒトミは何とも思わないの!?」

 ナツヤ 「やめようミナミ。オレ達は短気なトレーナーと違うんだ」

 ミナミ 「……クッ!」

 ハジメ 「サトシ。気持ちは分からなくも無いけど、今のレンジャースクールは、こういう感じなんだ。理解してくれ」

 サトシ 「……分かった。ごめん。熱くなりすぎた」

 ナツヤ 「終わりにしよう。お互い不愉快だ」

 ミナミ 「チッ! ホントなんでアンタが体験入学生なのよ」

 ヒトミ 「ミナミ!」

 ハジメ 「もうすぐ午後の授業だよ。準備しないと」

 ナツヤ 「そうだな」

 ヒトミ 「サトシ。教室は1階だから」

 サトシ 「あぁ。サンキュー」


 ▼ 28 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/20 00:24:26 ID:dfOES6H. [7/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


その後の授業は、とっても重い空気だった。


いつも通りの、和気あいあいとした授業とは程遠い……、先生も不審がるほど、暗い雰囲気の中、行われた。



悲しい。


サトシ君、良い人なのに。



“最初から諦めて、そんなの逃げでしかない”――か。



確かにその通りだもん。

私だってバトルは苦手だから、大会は棄権でいいって思ってるけど、確かにそれは、“逃げ”だもん。みんなだって分かってるよ。


それを、トレーナーであるサトシ君に指摘されて……、頭に来たんだろうな。

ナツヤ君もミナミちゃんも、普段、あんなに怒ることないのに。



初日から こんな雰囲気で、この先、どうなっちゃうんだろう……。



 ▼ 29 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/20 00:26:09 ID:dfOES6H. [8/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



夜――。


夕食を終えて、シャワーを浴びれば、消灯まで自由時間。

そんな一時を、女子部屋では やっぱり、サトシ君の話題で持ちきりだった。



 ミナミ 「なにが“逃げ”よ! アイツ、こっちの事情も知らないで!」

 ヒトミ 「まぁまぁ、落ち着いてよミナミ」

 ミナミ 「だってムカつくでしょ!? アイツも所詮トレーナーよ! 私たちのこと馬鹿にして!」

 ヒトミ 「分かるよ、みんなの気持ち。私だって良い気は しないし。でも、せっかく体験入学してくれたんだから、そんなに敵意を剥き出さなくても」

 ミナミ 「シンバラ教授のツテってだけでしょ。なんか見返り貰ってるんじゃないの? じゃなきゃトレーナーが わざわざレンジャースクールに入らないでしょ」

 ヒトミ 「それはそうだけど……」

 モブコ 「私も同感」

 モブエ 「レンジャースクールに体験入学して、笑いのネタにするんじゃないの?」

 ミナミ 「リーフも そう思うでしょ?」

 リーフ 「私は……」

 ヒトミ 「リーフは災難だよね。ただでさえ男子が増えるのはアレなのに、トレーナーだなんて」



 リーフ 「私は、あのサトシ君って人、そんなに悪い人じゃないと思うけどな」


 ▼ 30 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/20 00:26:38 ID:dfOES6H. [9/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ミナミ 「ちょっとそれ本気で言ってんの!? あんなこと言われたのよ!?」

 リーフ 「でもそれは……、どちらかと言うと、私たちの方から煽り立てたような感じだったし」

 ミナミ 「……まぁそれは否定できないけど」

 リーフ 「きっと、私たちが あんまりにも敵意を出してたから、サトシ君、カッとなっちゃったんじゃないかな」

 ヒトミ 「珍しいわね。リーフ、男子が苦手なのに」

 ミナミ 「言われてみれば。なんでアイツの肩持つの?」

 リーフ 「えっ? いや……、肩を持つって訳じゃ……」

 ヒトミ 「まぁでも、あえて敵意を向ける必要は無いよ、うん」

 ミナミ 「はぁ……。必要最低限の会話になりそうね」

 ヒトミ 「私たち、レンジャーを目指してるんだよ? 気に入らない相手だからって軽蔑するのはダメ。大人にならないと」

 ミナミ 「分かったわよ」



まだ“わだかまり”は残ってるけど、ひとまず女子グループは、サトシ君に敵対心を向けることは、やめようってことになった。


問題は男子たち。

いま男子部屋で、サトシ君とナツヤ君たちは、どんな風に過ごしてるんだろう。

喧嘩してなきゃいいけど、少なくとも、居心地が悪そうなのは、簡単に想像できる。


なんとかサトシ君が良い人ってことを皆に分かって貰いたいけど、それを皆の前で伝えるような勇気、私には……無い。

それに、その根拠である痴漢の話をするのも恥ずかしい。


なにか……、皆が一つになれるキッカケがあればいいんだけど……。


あぁ、ダメだな、私。いっつも誰か任せで。


 ▼ 31 ノンド@ちからのこな 21/08/20 19:16:14 ID:sfpQpQU6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 32 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/21 01:40:10 ID:WYR2Hs92 [1/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



翌日――。



 教師A 「――以上のように、ポケアシストのタイプ相性は、ポケモンバトルにおけるタイプ相性とは ちょっと異なってるので要注意だ。ここまで大丈夫か、サトシ?」

 サトシ 「はい。ポケアシストはキャプチャ・ディスクを強化するってことだから、“効果なし”の相性でも、効果自体は発揮するってことですね」

 教師A 「そうだな。まぁ、あとは実戦あるのみだ。座学は ここまで! 校庭で実技に移るぞー!」


 ハジメ 「サトシ、ひとまず僕がサポートするよ」

 サトシ 「おぉ、ありがとう」



早々に座学の授業は終わって、実技の授業に移る。

この夏季講習は、どちらかと言えば実技がメイン。島であるレンジャースクールの立地を生かして、広々とした敷地の中で、キャプチャの練習に取り組むことが出来る。


 ミナミ 「さすがハジメね。あんなにギスギスしてたのに、サポートしてやるなんて」

 ヒトミ 「なんだかんだでハジメって、面倒見が良いもんね」


どこか他人行儀な感じは否めないけど、ハジメ君はサトシ君のサポートを買って出てくれた。

サトシ君にとって、初めてのキャプチャ。

ひとまずサトシ君が授業で孤立することは無いようで、一安心だ。
 ▼ 33 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/21 01:42:25 ID:WYR2Hs92 [2/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ミナミ 「それよりナツヤ、どうだったの、昨日の夜?」

 ナツヤ 「どうもこうも、一触即発だぜ?」

 ヒトミ 「えぇ……。仲良く――とまでは言えないけど、平和に過ごそうよぉ」

 ナツヤ 「だってあいつ、まだバトル大会に出ようって言ってくるんだぞ。いい加減オレも頭来て、あいつの胸倉掴んで……」

 ミナミ 「やるわねナツヤ」

 ナツヤ 「そしたら あいつも“やるのか!?”って刃向って来やがって」

 ミナミ 「喧嘩になっちゃったの?」

 リーフ 「ダメだよ喧嘩しちゃ!」

 ナツヤ 「いや……」

 ミナミ 「いや――なによ?」

 ナツヤ 「その瞬間にさ、あいつのピカチュウが電撃ぶっ放したんだよ、あいつに」

 ヒトミ 「えぇ……」

 ナツヤ 「アレは強烈な電撃だったぞ。オレは巻き込まれなかったけど」

 ミナミ 「ふーん。ピカチュウが喧嘩を止めてくれたのね」

 ナツヤ 「聞こえなかったか? あいつの断末魔?」

 ヒトミ 「聞こえなかった……よね?」

 リーフ 「うん」

 ミナミ 「そこそこ防音しっかりしてるのね」

 ナツヤ 「それでまぁ、あいつは そのまま気絶したんだけどさ。その隙に男子で話し合って、ピカチュウ怒らせたらマズいって結論に至ったワケ」

 ミナミ 「なるほど。ある程度は関係を持とうって方針にしたのね」

 ナツヤ 「まぁ、ほぼほぼハジメが担当してくれるってことになったけどな」


経緯は どうあれ、男子たちとサトシ君は、一定の距離を取りつつも、険悪なムードからは脱出できたようだ。

でもサトシ君、ピカチュウの電撃を受けて大丈夫なのかな……?
 ▼ 34 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/21 01:43:55 ID:WYR2Hs92 [3/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


   ハジメ 「そう! そこでスタイラーを一定の速度で――」

   サトシ 「こう……あー頼むから動かないでくれビッパ!」



チラリと、サトシ君の様子を覗ってみる。

ハジメ君にサポートされて、野生のビッパをキャプチャしようと奮闘していた。彼の足元では、ピカチュウが笑顔で応援している。


 ミナミ 「あんなに可愛いピカチュウなのにね」

 ナツヤ 「いや。あいつは甘く見るとヤバいぞ。なんかこう……、歴戦の勇士って雰囲気、分かんないか?」

 ミナミ 「さぁ」

 リーフ 「私たちもさ……」

 ヒトミ 「なぁに?」

 リーフ 「サトシ君とピカチュウ、しっかりサポートしてあげた方が良いんじゃないかな?」

 ミナミ 「良いのよリーフ。そういうのはハジメに任せておけば」

 リーフ 「でもっ……」

 ミナミ 「ホントどうしたのよリーフ。男子のこと苦手なのに、やけに あいつのこと気にかけてない?」

 ナツヤ 「実は知り合いとか?」

 リーフ 「違うよ! ただ、せっかく体験入学に来てくれたのに、レンジャースクールに悪いイメージ持たせちゃうのは、嫌だなって」

 ヒトミ 「うん。それは私も同感」

 ミナミ 「けど、やっぱりトレーナーは信用できないわよ」

 ナツヤ 「そうそう。無駄な関わり合いはゴメンだな」


やっぱり、レンジャースクール生にとって、ポケモントレーナーへの信用はゼロに等しい。

トレーナーみんなが私たちを馬鹿にしている訳じゃないのに……。


サトシ君、良い人なのにな……。

 ▼ 35 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/21 01:46:03 ID:WYR2Hs92 [4/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


   サトシ 「くそっ……、上手くいかないな……!」

   ハジメ 「ピカチュウのアシストは“ほうでん”だから、キャプチャの手助けには ならないんだよ」

   ピカチュウ 「ぴか?」

   サトシ 「スタイラーとディスクの動きの時差って言うか……、あぁ難しい!」



サトシ君は、まだビッパのキャプチャに奮闘している。


 ミナミ 「って言うか、あいつ まだビッパのキャプチャ出来てないじゃん」

 ナツヤ 「大人しいビッパで こんなに時間かかるなんて、あいつセンス無いよ」

 ヒトミ 「もー。キャプチャが初めての人に そういうこと言わないの」

 ミナミ 「そもそもね、トレーナーがレンジャーの真似事なんて無理なのよ」

 ナツヤ 「ポケモンと心を通わせる気持ちが無きゃ、レンジャーは務まらない。バトルでポケモンを傷付ける奴なんかに、キャプチャは出来っこないね」


あぁ、ダメだな。ナツヤ君とミナミちゃん、完全にサトシ君を拒絶している。

2人とも本当は良い人なのに、サトシ君がトレーナーって理由で、壁を作ってしまっている。


 ミナミ 「さっ、私たちもキャプチャの特訓よ」

 ナツヤ 「そうだな。せかっくの特別講習、しっかり学ぼうぜ!」



ナツヤ君たちも、敷地に住み着いている野生ポケモン相手にキャプチャの練習を始めた。

そうだよ、今は授業時間なんだから、私も実習しないと。


 リーフ 「おいで、チーちゃん」

 チコリータ 「ちこりー♪」

 リーブ 「……ねぇチーちゃん。どうしたら、みんなとサトシ君、仲良くなれると思う?」

 チコリータ 「ちこ?」

 リーフ 「本当、どうしたらいいんだろう……」



 ▼ 36 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/21 01:47:39 ID:WYR2Hs92 [5/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 教師A 「――よし。今日の授業は ここまで!」



15時をまわって、この日の全ての授業が終わった。

ポケアシストを使ったキャプチャをメインに野生ポケモンと心を通わす、実戦型の授業。

時間の流れは あっという間だった。


 教師A 「諸注意! 消灯は21時。過ぎたらベッドルームから出ないこと。それまでは自由時間だけど、くれぐれも事故やトラブルの無いように。レンジャースクール生として恥じない行動を取ること! 毎日言ってるけど、そこだけは頼むぜ。じゃあ解散! 遊べ!」



A先生特有の、とっても簡単なホームルームが終われば、あとは自由時間。


掃除や食事は“世話焼きおばさん”が やってくれるから、本当に消灯まで自由時間。


クラスメートたちと自由に過ごせる時間が沢山あるのも、この特別講習の特徴の一つだ。

 ▼ 37 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/21 01:49:18 ID:WYR2Hs92 [6/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


   サトシ 「ふぃ〜。疲れた〜」

   ピカチュウ 「ぴかぴ……」


サトシ君、けっこう疲れてるみたい。

そうだよね。ほぼ1日、慣れないキャプチャを実戦してたんだもん。


   ハジメ 「消灯まで自由行動だよ。夕飯は18時から20時の間に食堂に行けば、おばさんが用意してくれるから」

   サトシ 「分かった。あと、この自由時間もキャプチャの練習して良いのか?」

   ハジメ 「あぁ、大丈夫だよ」

   サトシ 「そっか。ならもっと色んなポケモンをキャプチャして、早く慣れないとな!」

   ピカチュウ 「ぴか!」


サトシ君は、まだしばらくキャプチャの練習をするみたいだ。

ピカチュウも元気よく頷いて、サトシ君の肩に乗る。あの2人、とっても仲が良いみたい。


 ナツヤ 「休憩も大事だけどな」

 ミナミ 「そうそう。キャプチャは1日2日でマスターできるものじゃないし。ましてやトレーナーなんかがね」

 ヒトミ 「だからもぉ! なんで2人は そんな喧嘩腰なのよ」

 リーフ 「だめだよ2人とも。サトシ君、一生懸命キャプチャしてたのに」

 ミナミ 「ヒトミとリーフは甘過ぎよ! 私たちが今まで どんだけトレーナーにバカにされてきたのか忘れちゃったの!?」

 ヒトミ 「それは そうだけど……」





――と、そんな時だった。





   サトシ 「おい、あのチルット怪我してないか!?」

   ハジメ 「……本当だ。なんであんな所に!?」

 ▼ 38 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/21 01:52:48 ID:WYR2Hs92 [7/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

サトシ君とハジメ君の、慌てた声。

チルット? 怪我? あんな所?


 ナツヤ 「どうした!?」

 ミナミ 「野生のチルット? 怪我してんの!?」


私たちは、急いで2人の元に駆けつける。

サトシ君とハジメ君は、高い木の上を見つめていた。


 サトシ 「この木の上にいるチルット、震えてて動こうとしないんだ!」


木の上を見上げると、確かに、震えるチルットがいた。

よーく見ると、翼に傷がある。大きな鳥ポケモンに襲われたのかもしれない。


 ナツヤ 「高いな」

 ミナミ 「10メートルくらいかしら」

 ハジメ 「それに、場所も悪い」


場所も悪い――。

ここレンジャースクールは、起伏のある島に建てられていて、いま私たちが居る校舎と校庭は、長い階段を上った崖の上にある。

チルットがいる木は、崖のすぐそばに生えていて、さらにチルットが止まっている枝は、崖の外側に張り出している。


 ヒトミ 「マズいよ! もしチルットが足を滑らせたら……!」

 ナツヤ 「大怪我じゃ済まないぞ!」

 サトシ 「おーいチルット! いま助けてやるから、そこ動くんじゃないぞー!」

 ピカチュウ 「ぴっかー!」

 ミナミ 「ちょっと大声出さないでよ! 驚いちゃうでしょ!」

 サトシ 「けどっ!」

 ハジメ 「とにかく! キャプチャして助けよう!」


この木はカラマツ。低い位置に枝が無いから、登って助けに行くのは難しい。

仮に登れたとしても、もし足を滑らせたら崖の下に真っ逆さまだ。そんな危険なことは出来ない。

チルットをキャプチャして、落ち着かせたところで助け出す――。それしか方法は無いはずだ。
 ▼ 39 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/21 01:54:07 ID:WYR2Hs92 [8/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 サトシ 「よし。キャプチャ、オン!」

 ナツヤ 「いや待て! 素人が手を出せることじゃない!」

 ミナミ 「そうよ! アンタは邪魔しないで下がってて!」

 サトシ 「なっ……、そんな言い方ないだろ!」

 ハジメ 「喧嘩してる場合じゃない! サトシ、今は僕たちに任せて!」

 サトシ 「……分かった」


ナツヤ君とミナミちゃんの言い方はキツ過ぎだけど、一理ある。

今は、キャプチャの経験が全く無いサトシ君の出る幕じゃない。サトシ君もそれを理解してか、引き下がってくれた。


 ヒトミ 「でも、この高さだとキャプチャも難しそうね」

 ナツヤ 「やるっきゃないだろ! キャプチャ・オン!」


早速、ナツヤ君がスタイラーを握る。

木の上のチルットを目がけ、ディスクを発射した。

キャプチャするには、スタイラーでディスクを操り、チルットを囲み続ける必要がある。

チルットに気持ちが通じるよう、丁寧な、繊細な操作が必要だけど――。



 ナツヤ 「……クソっ! 枝と葉っぱが けっこう邪魔だな」

 ハジメ 「高くて見にくいか……」


生い茂る葉が、ディスクの軌道の邪魔をする。

さらに、10メートルも頭上でのキャプチャとなると、目視で確認も しづらい。
 ▼ 40 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/21 01:56:19 ID:WYR2Hs92 [9/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


  チルット 「ちるるっ……!」 バキッ!


 ナツヤ 「うわっ……!?」

 ミナミ 「“みだれづき”かしら。ヤバいかも、チルット興奮してるわよ!」

 ナツヤ 「分かってる! ちょっとだけ大人しくしてくれると助かるんだけど……!」


ただでさえディスクの操作が難しいのに、興奮したチルットが、ディスクを攻撃し始めた。

ディスクが攻撃を受けると、スタイラーのエネルギーが削られてしまう。エネルギーがゼロになったら、もうキャプチャは出来ない。


 ハジメ 「翼を怪我してるから、派手な動きは出来ないはず。チルットから距離を取って囲めば、とりあえず攻撃は防げるはずだ!」

 ミナミ 「そうね。“みだれづき”――、チルットの口ばしが届かない位置取りでキャプチャよ!」

 ヒトミ 「頑張ってナツヤ!」

 ナツヤ 「分かってるけど……、見にくくてライン取りが……」


  チルット 「ちー!」 バキッ!


 ナツヤ 「ヤバッ!?」


チルットの攻撃が、またディスクに直撃した。


 ナツヤ 「クソっ! このままだとエネルギーが持たない! ミナミ、行けるか?」

 ミナミ 「オッケー! キャプチャ・オン!」

 ハジメ 「僕のディスクを囮に使おう! キャプチャ・オン!」


ナツヤ君に代わって、ミナミちゃんとハジメ君もスタイラーを握る。

チルットに向けてディスクを発射して、チルットと距離を取り、口ばしが届かない位置取りでラインを描いて行く。


 ヒトミ 「その調子……!」

 ナツヤ 「良いぞ……。ハジメのディスクに注目させて、ミナミのディスクは距離を取りながら……上手いぞ!」

 ▼ 41 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/21 01:57:52 ID:WYR2Hs92 [10/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ハジメ君のディスクを、チルットの目線の少し先で動かして、チルットの気を引く。

その隙に、ミナミちゃんのディスクでキャプチャしてしまおうという作戦だ。


 ハジメ 「上手いぞミナミ。そのまま!」

 ミナミ 「えぇ!」


  チルット 「ちるぅっ……!」


 サトシ 「……マズい! 一旦 引かないと!」

 ミナミ 「はぁ!?」

 ナツヤ 「お前このタイミングで何を……」


  チルット 「る゙ぅぅぅぅぅ!!!」 ゴォォォォ!
 
  ― バキッバキッ!


 ハジメ 「あっ……!?」

 ミナミ 「うそっ!?」


サトシ君が叫んだ、次の瞬間。

チルットが、雄叫びと共に紫色の旋風を発射した。


2人のディスクは、成す術なく巻き込まれて……。
 ▼ 42 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/21 01:59:09 ID:WYR2Hs92 [11/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ハジメ 「ミナミ、エネルギーは!?

 ミナミ 「今ので半分以上 持ってかれたわ」

 ハジメ 「僕のは直撃したせいで4分の1も残ってない……!」

 サトシ 「“りゅうのいぶき”だよ、今のワザ」

 ナツヤ 「特殊ワザも使えるのか……」

 ヒトミ 「かなり興奮してるみたいだし、これじゃあキャプチャするの厳しいよ」

 ハジメ 「諦めちゃダメだ! きっと気持ちは通じるはずだよ!」

 ナツヤ 「あぁ! 皆で協力すれば、キャプチャは不可能じゃない!」


諦めちゃダメ――、確かにそうだ。

キャプチャを諦めるってことは、チルットと心を通わせるのを諦めるってことだもん。


でも、現実は厳しい。

“りゅうのいぶき”を使えるってことは、たとえチルットから距離を取っていても、ディスクを攻撃されてしまう。

普通なら、攻撃が当たらないように、スタイラーを操作してディスクを逃がす。けど、10メートル頭上、生い茂る葉で目視しづらい状況となると、簡単には いかない。


 ミナミ 「とにかく、私たちはスタイラーの回復よ」

 ナツヤ 「あぁ。その間、ヒトミとリーフでキャプチャにトライして。交代交代で行けば、そのうちチルットも疲れてくるはずだ」

 ヒトミ 「うん。みんなで力を合わせれば……」



 サトシ 「そんなの違うだろ!」



えっ……、サトシ君?

突然叫んだサトシ君に、皆が注目する。
 ▼ 43 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/21 02:01:48 ID:WYR2Hs92 [12/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ミナミ 「なによ急に!?」

 ナツヤ 「今は緊急事態なんだ。素人が口出しするな!」

 サトシ 「チルットを見てみろよ! あんなに興奮して……、早く助けなきゃいけないのに、交代でキャプチャして疲れさせるだと? そんなの、チルットのこと何にも考えてないじゃんかよ!」

 ナツヤ 「仕方ないだろ! 状況が状況なんだ。可哀想だけど、それしか方法は無い!」

 ヒトミ 「ビエンタウンのレンジャーさんを呼んでくるって手もあるけど、それじゃ時間かかっちゃうもん」

 ハジメ 「サトシの気持ちも分かるよ。けど、みんな同じ気持ちだ。その上で、交代交代でキャプチャするって方法を採るんだ」

 ミナミ 「そうよ! ポケモンと心を通わせるのは難しいの! 素人が出しゃばらないで貰えるかしら!」

 サトシ 「確かにオレは、キャプチャは素人だ。じゃあ逆に聞くけど、皆はポケモンと旅したことあるのか?」

 ミナミ 「は? そんなの関係ないでしょ!」

 サトシ 「関係ある! ポケモンと心を通わせる方法は、キャプチャだけじゃない!」

 ピカチュウ 「ぴか!」


そう言うとサトシ君は、チルットがいる木に足をかけ、登り始めた。ピカチュウを肩に乗せたまま。

太い幹のカラマツの木。

木肌はゴツゴツしてるけど、枝が少ないから簡単には登れない……はずなんだけど。


 ナツヤ 「おい危ねーぞ!」

 ハジメ 「下りるんだ! そっち崖だから落ちたら大怪我だぞ!」


サトシ君は、軽々とした身のこなしで、どんどん登っていく。

すぐ横は崖、もし足を滑らせたりしたら、大怪我どころか、命だって危ないのに……!



 リーフ 「すごい……」

 ヒトミ 「あっ、もうすぐチルットの枝だよ!」

 ナツヤ 「なんつー運動神経だよアイツ……」

 ▼ 44 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/21 02:03:21 ID:WYR2Hs92 [13/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ほどなくして、サトシ君はチルットが止まっている枝に到達した。

崖側に突き出した枝の先で、チルットはサトシ君のことを激しく威嚇している。



  サトシ 「チルット、怖がらなくて良いんだぜ。オレ、お前のこと助けに来たんだ」

  ピカチュウ 「ぴか! ぴかぴぃか!」
 
  チルット 「ぢるぅぅぅ……!」

  サトシ 「翼、痛いんだよな。大丈夫だから、一緒に下りよう。なっ?」

  チルット 「ちるっ! ちるぢぃぃぃっ!」

  ピカチュウ 「ぴぃか、ぴかちゅぅ」

  サトシ 「大丈夫。今そっちに行くからな」



サトシ君は枝に跨ると、少しづつ、少しづつ、チルットに近付いて行く。

ピカチュウと一緒に、チルットに優しく声を掛けながら。

太い枝だから折れる心配は無いだろうけど、崖に突き出した枝、真下は崖の下。足がすくむような高さのはずなのに。


 ミナミ 「ヤバいわよアイツ。落ちたら死ぬかもしれないのに……!」

 ハジメ 「サトシの安全を考えないと! ディスクを発射して、チルットの気を……」

 ナツヤ 「いや、下手に動くと逆にチルットを刺激しちまう。今はアイツに任せるしかない」

 ハジメ 「けど! もしサトシが落ちたら……!」


 リーフ 「サトシ君を信じてあげて」


 ヒトミ 「リーフ……?」

 リーフ 「サトシ君のピカチュウ、綺麗な毛並みだったでしょ? 大切に育てられてる証拠だよ」

 ハジメ 「あぁ、うん。確かに」

 リーフ 「すっごくポケモン想いな人なんだよ、サトシ君って。だからきっと、チルットも、心を開いてくれる……気がするの」

 ヒトミ 「……そうだね。ポケモン想いじゃなかったら、こんな危ないこと、普通できないよ」

 ナツヤ 「ヤバいな、サトシ」

 ミナミ 「あー、頑張って あと ちょっと!」
 ▼ 45 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/21 02:05:15 ID:WYR2Hs92 [14/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

気付けばサトシ君は、チルットの すぐ傍まで到達していた。

手を伸ばせばギリギリ届く距離。残り1メートルくらいだろうか。


  サトシ 「大丈夫……、ほら、掴まって」
 
  ピカチュウ 「ぴぃか」

  チルット 「ぢぃ……」 



サトシ君は、チルットに手を差し伸べる“だけ”。捕まえようとはしない。

チルットを怖がらせないように、チルットが自分から近寄ってきてくれるのを待っている。



  サトシ 「安心しろよ。ちゃんと手当したら、野生に返してやるからさ」

  ピカチュウ 「ぴぃかちゅぅ」

  チルット 「ぢる゙ぅぅぅ……」



チルットは、なかなかサトシ君に掴まろうとしない。

怪我を負った野生ポケモンなら、人間を警戒するのは当然だ。


けど、サトシ君に攻撃を仕掛けないのを見ると、チルットはサトシ君のことを敵とは思っていないはずだ。

サトシ君は自分の危険を顧みずに、野生のチルットと、心を通わせようとしている――。



  サトシ 「ほら、チルット」

  チルット 「っ……」



遂に、チルットは威嚇を止めた。


 ナツヤ 「マジか……」

 ヒトミ 「凄い……、キャプチャしてないのに……!」

 ミナミ 「やるじゃんアイツ」
 ▼ 46 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/21 02:06:21 ID:WYR2Hs92 [15/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

そしてチルットは、サトシ君の元へと、足を踏み出し――。



  チルット 「ちっ……?」 ヨロッ



  サトシ 「あっ……チルット!?」

  ピカチュウ 「ぴか!?」



――よろけてしまった。



 リーフ 「あっ!?」

 ハジメ 「危ないっ!」

 ミナミ 「うそっ!?」

 ヒトミ 「掴まってチルット!」


チルットは羽ばたいてバランスを取ろうとするけど……。

翼を怪我しているせいでバランス感覚が狂っているのか、体勢を持ち直すことは、出来なかった。


チルットは、枝から足を踏み外し、崖の下に――。







  サトシ 「チルット!」 バッ!




 ▼ 47 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/21 02:07:40 ID:WYR2Hs92 [16/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ハジメ 「サトシ!?」

 ナツヤ 「おい何やってんだ!?」



サトシ君が、枝から飛び降りる。

落ちていくチルットの後を追って。



 ミナミ 「バカっ……!」

 ヒトミ 「だめだよサトシ!」



そしてサトシ君は、チルットに手を伸ばし……。



  サトシ 「捕まえたっ!」 ガシッ!

  チルット 「ちる……」

  サトシ 「もう大丈夫だからなっ」



サトシ君は、チルットを守るように抱きかかえた。


そのまま崖の下へと落ちていく。

サトシ君は、自分を盾にしてチルットを助けるつもりなんだ……!



 リーフ 「出て来てチーちゃん! “つるのムチ”でサトシ君を捕まえて!」

 チコリータ 「ちこっ!?」

 ナツヤ 「ダメだ間に合わないっ!」

 ミナミ 「せめて頭を守ってぇ!」


 ▼ 48 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/21 02:08:33 ID:WYR2Hs92 [17/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


  チルット 「ちるっ……るぅぅぅぅぅ!」 ボフッ!

  サトシ 「おっ!」



皆が最悪の結末を覚悟した、その時。



チルットが、崖の下の地面に向かって、大量の綿を発射した。



 ハジメ 「あれは……」

 ヒトミ 「綿……、“コットンガード”!?」





  ― ボフン!





崖の下を覗き込むと、何重にも積み重なった綿の上に、サトシ君とチルットが落ちていた。

ここからだと、それ以上のことは分からない。


 ナツヤ 「行くぞ!」


ナツヤ君が走り出す。

私たちも彼に続いて、崖下への階段を駆け下りる。


いくら綿の上に落ちたからと言っても、この高さ、無事である保証はない。

サトシ君とチルットは……!




 ▼ 49 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/21 02:10:05 ID:WYR2Hs92 [18/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



  サトシ 「はははっ、くすぐったいだろ〜!」

  チルット 「ちるっ! るるー♪」

  ピカチュウ 「ぴぃかぁー」



 ハジメ 「サトシっ!」

 ナツヤ 「おいサトシ! 大丈夫……なのか?」

 サトシ 「おぉみんな! “コットンガード”のお陰で、オレもチルットも、この通り無事さ!」

 チルット 「ちるっ♪」


そこには、楽しそうに じゃれ合うサトシ君とチルット、ピカチュウの姿があった。

あんなに高い所から落ちたのに、みんな無事のようだ。


 ミナミ 「は〜〜〜もぉ! 心配かけないでよホント」

 ナツヤ 「一緒に落ちるなんて無茶し過ぎだろサトシ……」

 サトシ 「いやぁ、思わず体が動いちまってさ」

 ハジメ 「だからって……。もしチルットが“コットンガード”を覚えてなかったら どうするのさ」

 サトシ 「だとしたら、オレが守るしかないだろ」

 ナツヤ 「……はははっ! サトシ、おまえ凄ぇよ!」

 ミナミ 「そうね。チルットを守るために自分を犠牲にするなんて、普通できないわよ」

 ヒトミ 「でも無茶しすぎ! 死んじゃうかもしれなかったんだよ……!」

 リーフ 「そうだよサトシ君! ホントっ、無事で良かった……」

 サトシ 「ごめんな。心配かけちまって」

 チルット 「ちるるー♪」

 サトシ 「はははっ。オレは お前を信じてたぜ?」 ナデナデ
 ▼ 50 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/21 02:12:14 ID:WYR2Hs92 [19/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

崖に飛び込んだと言うのに、何事も無かったかのように笑うサトシ君。

そんな彼に、チルットが楽しそうに じゃれつく。


 ナツヤ 「キャプチャしてないのに、チルットと心を通わせた、か……」

 ハジメ 「ある意味、レンジャーの目指す姿だよね。スタイラーに頼らないで、ポケモンと心を通わすって」

 ミナミ 「けど、毎回こんな危なっかしいことしてたら、身が持たないわよ」

 ヒトミ 「そのためのスタイラーだもんね。安全に、確実に、ポケモンと心を通わせるサポートをしてくれる」

 リーフ 「ポケモン想いなサトシ君だからこそ、出来たんじゃないかな」



勿論、私たちだってポケモンは大好きだし、ポケモンのことを考えて行動している。


けど、今回みたいな危機に直面した時、自分の身を犠牲にしてまで、ポケモンを守れるかな?


サトシ君みたいに、チルットのために迷うことなく飛び込める勇気、今の私には……。



 ハジメ 「サトシ。そのチルットは、ビエンタウンのレンジャーベースに連れて行こう。回復と、野生復帰をサポートしてくれるよ」

 サトシ 「レンジャーベース……?」

 ヒトミ 「そっか。アルミアのこと、サトシは まだ全然分からないもんね」

 ミナミ 「安心してよ。これから案内してあげるわ」

 ナツヤ 「サトシ。悪かったよ、いろいろ酷いこと言って」

 ミナミ 「ごめんね。トレーナーって聞いて、どうしても良いイメージが湧かなかったのよ」

 サトシ 「いや、オレの方こそ、ムキになって言い返しちまって。ごめん」

 ヒトミ 「仲直り……だねっ!」

 リーフ 「うん!」


 ナツヤ 「改めて……、ようこそ、レンジャースクールへ!」


 ▼ 51 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/21 02:13:34 ID:WYR2Hs92 [20/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

この一件を機に、みんながサトシ君を受け入れてくれた。


特にサトシ君に敵対心を持っていたナツヤ君とミナミちゃんは、サトシ君の行動に心を打たれたみたい。

この辺のポケモントレーナーとは明らかに違う、ポケモン想いで、ポケモンのために躊躇いなく体を張るサトシ君。

2人が心を開いてくれたのも当然……かな。



 サトシ 「ところで、その……石碑? ってなんだ?」


皆で談笑している中、サトシ君が言った。

ここは校舎の崖の下。スクールの敷地で一番海に近い場所、“ふなでのひろば”。その名の通り、小さな桟橋がある。


 ヒトミ 「これはね、“誓いのオブジェ”って言うの」


広場の中央に佇む、私たちの身長くらいある石のオブジェ。

ポケモンをキャプチャする軌跡をモチーフにした、大きなオブジェだ。


 ハジメ 「この場所で仲間と固く誓い合ったことは必ず現実になる――、そんな風に校長先生は言ってたね」

 サトシ 「へー」

 ナツヤ 「じゃあ一丁、誓い合いますか!」

 ミナミ 「なによ急に」

 ナツヤ 「この特別講習、サトシを迎えたこのメンバーで、最高の思い出を作ろうぜ!」

 ヒトミ 「わはっ! 良いね良いね そういうの!」

 リーフ 「うん! 誓いのオブジェにピッタリだよ!」

 ハジメ 「よしっ! 現実にしよう! 夏は あっという間だからね!」

 ミナミ 「そうね。サトシの歓迎の意味も込めて」

 サトシ 「なんか照れくさいな〜」

 ピカチュウ 「ぴっかぁ!」
 ▼ 52 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/21 02:14:39 ID:WYR2Hs92 [21/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ナツヤ 「よし! そんじゃ皆、スタイラーを用意!」


誓いのオブジェの前で、皆は、スタイラーを空に掲げる


 ナツヤ 「この夏! 特別講習! レンジャースクールでの夏休み! 勉強して、遊んで、最高の思い出を作るぞっ!」


 「「「 オー!!! 」」」





この日、私たちは一つになった。


サトシ君という、優しくてポケモン想いなトレーナーを迎え入れて、やっと、一つになれた。





これからが、本当の特別講習のスタートだ。





 ▼ 53 ガエルレイド@ソニアのほん 21/08/21 08:38:14 ID:yAxQ/eU. NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
いい…
 ▼ 54 ヤコマ@なつきポン 21/08/21 18:36:07 ID:Cv3U9OWk NGネーム登録 NGID登録 報告
王道ストーリー良いね!
 ▼ 55 チミル@ヤチェのみ 21/08/21 23:53:31 ID:jGnkmZME NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 56 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/22 01:46:48 ID:Htnk8FCY [1/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



皆がサトシ君と打ち解けたお陰で、授業は もっと楽しく、もっと刺激的なものになった。


サトシ君はセンスがあるみたいで、キャプチャの腕は どんどん上達していく。


競い合える仲間が増えたことで、皆のヤル気も一段と上がって、スクールでの生活は、より充実したものとなっていった。





そうして迎えた、初めての日曜日。





 ナツヤ 「流石に日曜日は完全に休みだ。休息も大事だからね」

 サトシ 「いやー、長いようで短かったなー」

 ミナミ 「サトシの成長ハンパないわよ。ポケアシストも使いこなせてるし」

 サトシ 「へへっ。みんなのサポートのお陰さ!」

 ハジメ 「ほら、今日くらいは授業のことは忘れてさ。プエルに遊びに行こうよ」

 サトシ 「プエル……あの大きい港町か」

 ミナミ 「そっ。この辺で遊ぶんなら、やっぱりプエルまで行かないとね」

 ヒトミ 「ビエンタウンも田舎だもんねー」

 ナツヤ 「よし! じゃあサトシをプエルに案内してやるか」

 ▼ 57 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/22 01:51:47 ID:Htnk8FCY [2/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


と、言うことで。
 
私たちは、プエルタウンへと繰り出した。



途中、ビエンタウンのレンジャーベースに寄って、あのチルットの様子を確認。

リーダーレンジャーのバロウさんによると、怪我はほとんど治って、今は飛ぶ練習中。もうすぐ野生復帰できるそうだ。



ビエンタウンからプエルタウンへはバスでも行けるけど、時間があるから歩いて行くことに。

ビエンの森を抜けることになるけど、街道を外れなければ整備された森なので、安全にプエルまで行くことが出来る。



 サトシ 「うぉっ!? カメックス……野生か!?」

 ハジメ 「野生だよ」

 サトシ 「あっちはピンプクとウソハチ! あーロズレイド! ミミロップ!」

 ミナミ 「ちょっとサトシ、野生ポケモンで興奮し過ぎでしょ」

 サトシ 「だって、野生じゃ あんまり見られないポケモンばっかりだからさ。な、ピカチュウ!」

 ピカチュウ 「ぴっかぁ!」

 ナツヤ 「ホント、ポケモンが好きなんだな」

 ハジメ 「ビエンの森は結構広いからね。豊かな生態系が出来てるのさ」

 サトシ 「へぇ〜。あ、ビーダル!」
 ▼ 58 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/22 01:54:06 ID:Htnk8FCY [3/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

サトシ君は、ポケモンを見つけるたびに、小さな子供みたいに目を輝かせていた。

本当に、ポケモンのことが好きなんだな、サトシ君って。


 リーフ 「……ふふっ」


 ヒトミ 「どうしたのよリーフ。ご機嫌ね」

 リーフ 「えっ……、ううん、なんでもないよ」

 ヒトミ 「ま、見慣れたビエンの森で あんな新鮮な反応されたら、思わず笑っちゃうわよね」

 リーフ 「あはは……」

 ヒトミ 「でもホント、サトシって純粋よね」

 リーフ 「だよね」

 ヒトミ 「男子が苦手のリーフも、彼となら話が弾むんじゃない?」

 リーフ 「えっと……、どうかなぁ」

 ヒトミ 「リーフ、最初からサトシのこと気にかけてたじゃん。もしかして……、タイプだったり?」

 リーフ 「そそそそんなんじゃないよ! 私はただ……!」

 ヒトミ 「……ふふっ。焦っちゃって可愛い。何かあったら相談乗るからねっ」

 リーフ 「もぉ〜」


 ▼ 59 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/22 01:56:55 ID:Htnk8FCY [4/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 サトシ 「……お、なんかココ見晴らし良いじゃん」

 ハジメ 「あぁ。その名の通り、ここは“みはらしとうげ”って言うんだ」


ビエンタウンとプエルタウンの中間地点、みはらしとうげ。

小高い丘からは、海と山々、そしてプエルタウンを眺めることが出来る。


 ミナミ 「ここ、けっこう穴場のスポットなのよ。峠越えになるから、通る人って少ないし」

 ナツヤ 「アルミアで絶景を楽しむんならココが一番だろうね。夜はプエルの夜景と星空が綺麗だぞ」

 サトシ 「へぇ〜」

 ハジメ 「さぁ、プエルまで あと半分だ。下りだから あっという間だよ」

 サトシ 「よーし、ポケモン探しながら行くぞー!」

 ピカチュウ 「ぴっぴかちゅ!」

 ▼ 60 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/22 01:59:34 ID:Htnk8FCY [5/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


たくさんの野生ポケモンたちを観察しながら、なだらかな丘を下って行く。



もうすぐプエルタウンの入口――。

そんな所に来て、街道脇の空き地から、威勢の良い声が飛び交って来た。



   『そこだアブソル! “つばめがえし”!』

   『避けろハッサム! “こうそくいどう”!』



 サトシ 「……お、バトルやってる! ちょっと見て行こうぜ!」

 ミナミ 「待ってサトシ……!」



   『おぉ。誰かと思えば、レンジャースクールの皆さん』

   『そっちは……見ない顔だな』

   『ま、レンジャースクール生ならザコに変わりないでしょ』

   『今日もポケモンと お友達ごっこ かしらー?』



バトルを中断して私たちの元にやってくる、男子2人と女子2人。

私たちを小馬鹿にするような発言を聞いて、サトシ君は何かを察したようだ。


 サトシ 「……こいつらが?」

 ハジメ 「そう。僕らレンジャーを馬鹿にする、他校のトレーナーだよ」


 ホクト 「僕はホクト。以後、お見知りおきを」

 ソウヤ 「オレはソウヤだ」

 スラン 「私、スラン。良い名前でしょ?」

 エルム 「エルムよ。よろしくね、新入り おザコさん」


彼らは、私立プエル学園の生徒。

ポケモンバトルの授業に力を入れている学校で、皆、バトルの腕前は かなり高い。

だからなのか、私たちレンジャースクール生に対して、“バトルが弱いからレンジャーに逃げてる”と馬鹿にしてくるのだ。
 ▼ 61 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/22 02:03:03 ID:Htnk8FCY [6/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 サトシ 「オレはサトシ。お前たち、なんでレンジャースクールを悪く言うんだ!?」

 エルム 「クスッ。なーに格好付けちゃってんのよ、ザコのクセに」

 ソウヤ 「事実だろ? オレらの年代でバトルが弱いとか話になんねー。レンジャーになってポケモンと仲良し小好しが お似合いじゃん」

 サトシ 「ふざけるな! レンジャーってのは、ポケモンと心を通わせて、自然と治安を守ってるんだ! 誇れる立場なんだ! お前ら そんなことも分からないのか!?」

 ナツヤ 「やめろサトシ。相手にするだけ無駄だ」

 ミナミ 「そうよ。無視が一番」

 サトシ 「けど!」

 ホクト 「バトルも出来ずに、自然と治安を守れるんですか?」

 スラン 「そうよねー。ハンターとかに襲われたらどうするのかしら」

 ソウヤ 「頼りにならねーレンジャーより、優秀なトレーナーの方が、よっぽど治安は守れるんじゃねーの?」

 エルム 「ホントホント!」


 ハジメ 「クッ……!」

 ヒトミ 「ホント、嫌な奴らね」

 リーフ 「うん……」


 ホクト 「見て下さい。僕の美しいアブソルを。強さと美しさを秘めた純白の戦士! 僕たちのようなトレーナーに、レンジャーが太刀打ちできる訳が――」

 サトシ 「その割に角の輝きは ちょっと鈍いな」

 ホクト 「……は?」

 サトシ 「もうちょっと丁寧に手入れしてあげないと。アブソルの角は大事な武器なんだからさぁ」

 ホクト 「お前っ……、ザコの分際で僕のポケモンを馬鹿にするのか!?」

 サトシ 「いやバカには してないよ。世話の問題」


 ハジメ 「サトシって、ポケモンを見る目もあるんだね」

 サトシ 「前に、ブリーダー目指してる奴と旅しててさ。そいつの受け売りだよ」

 ハジメ 「なるほど」

 ミナミ 「言われちゃったわねー。プエル学園ともなる名門校の生徒が、ポケモンの世話も満足に出来ないんなんて」

 ナツヤ 「所詮バトルだけってことか」

 ヒトミ 「ちょっと2人とも……」
 ▼ 62 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/22 02:04:21 ID:Htnk8FCY [7/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ホクト 「ふざけるな! ザコ如きが僕のアブソルを貶すのは許さない! 僕とバトルしろ!」

 ソウヤ 「面白そうじゃん! ダブルバトルと行こうぜ!」

 サトシ 「のぞむところだ! オレたちは絶対に――」


 ハジメ 「待てサトシ! 無駄なバトルに付き合うな!」

 サトシ 「いや、バトルにはバトルで分からせないと!」

 ヒトミ 「サトシ。気持ちは嬉しいけど、私たちはバトルを望んでないの。分かるでしょ?」

 ハジメ 「僕たちはレンジャーだ。バトルで自分たちの意思を押し通す訳にはいかないんだ」

 サトシ 「……そうか」


 ソウヤ 「ごちゃごちゃ言ってるようだけど……、逃がさねーぞ?」

 スラン 「デカい口 叩いたんだから、バトルして貰わないとねー」

 エルム 「言っとくけど、手加減しないから」


いつの間にか、4人は私たちを取り囲んでいた。

今までバトルしていたアブソルとハッサムも加わって、私たちの逃げ道をブロックする。


 ミナミ 「……やられたわね」

 ヒトミ 「ほらもー!」

 ナツヤ 「バトル……するしかないのか」

 サトシ 「安心しろ。オレは負けるつもりは無い」

 ピカチュウ 「びかちゅう!」

 ホクト 「ピカチュウって……。さすがレンジャースクールですねぇ!」

 エルム 「男のクセに、可愛いポケモンと お友達ごっこかしら」

 サトシ 「言わせておけば……!」
 ▼ 63 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/22 02:05:58 ID:Htnk8FCY [8/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ナツヤ 「待てサトシ。ここはオレたちが」

 ハジメ 「うん」

 サトシ 「ナツヤ、ハジメ。どうしてだよ。あいつらはオレが……!」

 ナツヤ 「プエル学園とのイザコザは、オレたちの問題だ」

 ハジメ 「体験入学のサトシを巻き込む訳には いかないんだ」

 サトシ 「そんなの気にすんなよ。オレたちもう仲間だろ?」

 ハジメ 「仲間だ。だからこそ、サトシに関わらせる訳には いかない!」

 ヒトミ 「サトシ、ここはナツヤとハジメに任せて」

 ミナミ 「私たちのことは、私たちでケリを付けないとダメなのよ」

 サトシ 「けど! 2人のバトルの腕は……」

 ナツヤ 「例え負け試合でも、ここはオレたちが引き受ける。サトシを巻き込みたくないんだ」

 サトシ 「……そこまで言われちゃ、仕方ないか」

 ピカチュウ 「ちゃぁ……」


みんなの言う通りだ。

プエル学園の生徒とのトラブルに、体験入学のサトシ君を巻き込む訳には いかない。

これは、元はと言えば、バトルが出来ない私たちが抱えている、レンジャースクールとプエル学園の問題だから……。



 ホクト 「スタンバイですアブソル!」

 ソウヤ 「行くぞハッサム! ほら、早くポケモン出せよ!」


 ナツヤ 「頼むぞサンドパン!」

 サンドパン 「さん!」

 ハジメ 「行ってくれブイゼル!」

 ブイゼル 「ぶぶぃ!」
 ▼ 64 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/22 02:08:54 ID:Htnk8FCY [9/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ナツヤ君のサンドパンと、ハジメ君のブイゼル。

キャプチャでは、的確なアシストで2人をサポートしてくれているけど、ポケモンバトルは全くの別次元だ。



 ナツヤ 「サンドパン、ハッサムに“きりさく”だ!」

 ソウヤ 「ハッサム、“シザークロス”で押し返してやれ!」

 ナツヤ 「クッ……大丈夫かサンドパン!?」


サンドパンの攻撃は、いとも簡単にハッサムに打ち消され、さらに余波を受けてしまう。

爪と鎌の違いはあるけど、力の差は歴然だ。


 ハジメ 「ブイゼル“かわらわり”!」

 ホクト 「“みきり”です!」

 ハジメ 「なっ……!?」

 ホクト 「瞬足の“つばめがえし”です!」

 ハジメ 「あぁっブイゼル!? 立て直せるか!?」

 ホクト 「させませんよ! “つじぎり”ですアブソル!」


ブイゼルの攻撃は見切られ、隙を突かれてアブソルに攻め入られる。

間髪入れず降りかかる攻撃に、対応しきれない。



 ヒトミ 「マズいよ2人ともっ……」

 ミナミ 「っ……! やっぱプエル学園の奴らにバトルなんて……」

 サトシ 「………」


私たちは、見守ることしかできない。

ナツヤ君とハジメ君より、バトル経験もバトルの腕前も無い私たち女子に出来ることは、何一つない……。


 ▼ 65 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/22 02:10:15 ID:Htnk8FCY [10/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 ナツヤ 「戻れサンドパン。ご苦労さん」

 ハジメ 「ありがとうブイゼル。ゆっくり休んでね」


バトルの決着は、あっという間だった。

でも、ナツヤ君とハジメ君が弱いとは思わない。プエル学園の2人が強すぎるのだ。


 ホクト 「……相変わらず、大したことないですね」

 ソウヤ 「デカい口 叩いたわりに瞬殺だったな。面白くねぇ」

 スラン 「ザコ過ぎて笑えるわね。こんなレベルじゃ私でも余裕よ」

 エルム 「レンジャースクールなんて、所詮この程度ってことね」


 ハジメ 「………」

 ナツヤ 「……クソッ!」


悔しそうな2人。

当然だ。ほとんど一方的に、反撃のチャンスすらなく、負けてしまったのだから。


 ソウヤ 「へへっ。なんとか言ったらどうなんだよザコ!」

 ホクト 「無理ですよ。こんな無様な負け方をしては、何を言っても負け犬の遠吠え。お似合いですよ」


勝ち誇った顔で挑発を続ける、プエル学園の生徒たち――。



 サトシ 「ちょっと黙ったらどうだ!」



 ▼ 66 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/22 02:12:05 ID:Htnk8FCY [11/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

それを打ち破ったのは、サトシ君だった。


 スラン 「なにアンタ?」

 ソウヤ 「新入りザコが口挟んでんじゃねーよ!」

 サトシ 「お前たち! あんまりレンジャースクールを馬鹿にしてると、いつか痛い目 見るからな!」

 エルム 「は?」

 ホクト 「プッ。痛い目……そんなこと有り得ないですね。負け惜しみですか?」

 サトシ 「今は弱くても、一生弱い訳じゃない! ポケモンたちは、オレたちの頑張りに しっかり応えてくれるんだ!」

 ナツヤ 「やめろサトシ。オレたちは別にいいから……!」

 サトシ 「お前たちもトレーナーなら、ポケモンの成長の凄さは知ってるだろ! いつか足元掬われても知らないからな!」

 ナツヤ 「サトシっ!」


 スラン 「なにコイツ」

 ホクト 「しらけましたね。学校に戻りますか」

 ソウヤ 「あーあ! ザコの相手して時間の無駄だったぜ」

 エルム 「ま、今日のアンタたちのことは、しっかり学校で広めてあげるから。じゃあねー」



4人は、プエルタウンの方へと帰って行った。

私たちのことを馬鹿にしながら。高笑いしながら。



 サトシ 「なんだよアイツら!」

 ピカチュウ 「びかちゅう!」

 ハジメ 「……サトシ。これが僕らに課せられた現実さ」

 ヒトミ 「あんなに絡まれたの、久々だったね」

 リーフ 「うん……」

 ミナミ 「プエルで遊ぶ気分じゃないわね」

 ナツヤ 「……サトシ。悪いけど、プエルの案内は今度で良いか?」

 サトシ 「あぁ。オレも気分悪い」

 ハジメ 「ごめん。せっかくの休日なのに」


 ▼ 67 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/22 02:15:04 ID:Htnk8FCY [12/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



私たちは、“みはらしとうげ”まで戻って来た。



高台から見下ろすプエルの町、広大な山々、広く青い海。

心地良い風が吹き抜け、野生ポケモンたちが伸び伸びと過ごしている。


 ヒトミ 「はー。ここは癒されるよねー」

 リーフ 「うん。ここなら のんびりできるね」


 ナツヤ 「サトシ。さっきは恥ずかしいとこ見せちまったな」

 サトシ 「気にすんなよ。あの……プエル学園? の奴らが おかしいんだ」

 ナツヤ 「分かっただろ。オレたちの、ポケモントレーナーに対するイメージ」

 サトシ 「……あぁ」

 ナツヤ 「オレたちのバトルの実力は、あんなもんだ。プエル学園の奴らに馬鹿にされるのも当然だ」

 ハジメ 「もう何年も馬鹿にされてきたらしいよ。レンジャースクールって」

 サトシ 「そっか」

 ミナミ 「けど、サトシがアブソルの角のこと言って、ちょっとスッキリしたわ。あいつらも所詮バトルだけって分かったし」

 ナツヤ 「そうだよな。サンキュー、サトシ。事実で反撃出来たのは、オレたちにとって――」


 サトシ 「みんなは それで良いのかよ!?」


 ミナミ 「えっ……」

 ナツヤ 「サトシ……?」

 サトシ 「オレは……、皆の意見を尊重して、手出ししなかった。けど! あんなに馬鹿にされて、普通だったら黙っちゃいられない!」

 ピカチュウ 「ぴっか!」

 ハジメ 「けど……、僕たちが弱いのは事実だ」

 ヒトミ 「うん。対抗しても、勝てっこないし……」

 サトシ 「オレたちじゃない! サンドパンやブイゼル――、大事なポケモンたちを馬鹿にされて、それで良いのかって聞いてるんだ!」

 ナツヤ 「っ……!」

 ハジメ 「ブイゼル……」
 ▼ 68 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/22 02:17:24 ID:Htnk8FCY [13/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

サトシ君の言葉が、私たちの胸に刺さる。


馬鹿にされるのは、私たち。

でも、それは即ち、ポケモンたちを馬鹿にされているのと同じこと。私の大切なチーちゃんが、あんな人たちに……。


 サトシ 「悔しくないのかよ!? 自分たちが弱いで片付けていいのかよ!? ポケモンたちの気持ち、考えたことあるのかよ!?」


 ナツヤ 「悔しいに決まってるだろっ!」

 サトシ 「ナツヤ!」

 ナツヤ 「オレたちは! ポケモンのため、人のため、自然のためにレンジャーを目指してるんだ! サンドパンも一緒に頑張ってくれてるのに……、それを馬鹿にするなんて許せねぇ!」

 サトシ 「当然だ! みんなも そうだろ!?」

 ミナミ 「えぇ。悔しいわよ! なにも知らないくせに、私のカメールを馬鹿にして!」

 リーフ 「私だって。大切なチーちゃんを貶すなんて、プエル学園の人たち、許したくない……!」

 ヒトミ 「サトシ、こんな風にリーフが怒るのって珍しいんだよ。私も同じ気持ち。私のゴンベは、あんな奴らに馬鹿にされるような子じゃないもん!」

 ハジメ 「僕たち皆、内心は悔しいんだ。でも、抵抗する手段が無い……。あいつらを黙らせる方法が無くて……、余計、悔しいんだ……!」



そう――、私たちは、悔しくても、抵抗できる術がない。



バトルが出来ないから、バトルで反抗は出来ない。

バトルが出来ないから、どんな反論も、負け惜しみになってしまう。

無視して聞き流していれば、図星だから反論できないと更に馬鹿にされる。



そうして私たちレンジャースクール生とトレーナーとの間には、どんどん溝が出来ていった。

私たちの先輩の代から、何年もの間、ずっとずっと積み重なって来た、深い溝が――。
 ▼ 69 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/22 02:19:11 ID:Htnk8FCY [14/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 サトシ 「……あるんじゃないか?」


 ハジメ 「えっ?」

 サトシ 「抵抗する方法……、オレたちのポケモンを馬鹿にした あいつらを、黙らせる方法」

 ヒトミ 「そんな方法……ある?」

 ミナミ 「あったら とっくに試してるわよ」

 ナツヤ 「あぁ。トレーナー共に反抗するには、バトルで力を見せつけるしか……ん?」

 リーフ 「えっ、もしかして?」

 ハジメ 「まさかサトシ……?」

 サトシ 「前に言ってた、アルミアの学校が参加するバトル大会。これ以上の舞台は無いだろ?」


アルミア学校選抜バトル大会――。

アルミア地方の全ての学校が参加権を持ち、選抜された生徒が参加して、アルミア地方で一番バトルが強い学校を決めるトーナメント。

毎年夏休みに開かれる、アルミア地方の夏の風物詩とも言える大イベントだ。


 ハジメ 「確かに。そこで良い成績を修めれば、奴らを見返してやることができるけど……」

 サトシ 「良い成績? オレは優勝を目指すつもりだぞ」

 ミナミ 「サトシ……。気持ちは嬉しいけど、そんなの無茶よ。大会まで、あと2週間くらいしかないのよ」

 ナツヤ 「しかも、出場するには10人の登録が必要なんだ。特別講習はサトシ入れて ちょうど10人だけど……」

 ヒトミ 「私たちの実力で、優勝なんて……」



 サトシ 「オレが みんなを特訓する!」

 ピカチュウ 「ぴかちゅぴか!」



サトシ君は、威勢よく言った。

それに続いて、ピカチュウも“自分に任せろ”と言わんばかりに頷いた。
 ▼ 70 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/22 02:21:48 ID:Htnk8FCY [15/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 サトシ 「みんなはオレに、キャプチャのサポートやコツも教えてくれたんだ。だったらオレは、みんなにバトルを教える!」

 ミナミ 「サトシ……」

 ナツヤ 「けど……、出来るのか? あと2週間で、優勝するだけの実力を付けるなんて」

 サトシ 「出来るって信じるんだ! 最後まで諦めなければ、きっと結果は ついてくる!」


サトシ君は、自信を持って断言した。

まるで、過去に そうした経験が あるかのように。


 サトシ 「……勿論、無理にとは言わないよ。大会は辞退するって、みんなで話し合って決めたんだろ? そもそも、辞退した後に“やっぱり参加”が認められるか分からないし」


 ナツヤ 「どうする?」

 ハジメ 「急に言われても……。サトシの気持ちは有難いけど、バトル初心者の僕たちが、大会で どこまで通用するか……」

 ミナミ 「けど! プエル学園の奴らをギャフンと言わせてやりたいわよね」

 ヒトミ 「でもそのためには、トーナメントでプエル学園と当たるまで、勝ち進まなきゃいけないんでしょ?」

 ハジメ 「うん。それに、中途半端に初戦敗退なんてしたら、余計に馬鹿にされるネタを与えることになる……」



みんな悩んでいる。


当然だ。みんなバトル初心者なのに、バトル大会に出場するなんて、普通じゃ考えられないもん。


でも、私は――。



 リーフ 「私は、参加したい……!」

 ヒトミ 「えぇっ!?」

 サトシ 「本当かリーフ!」

 リーフ 「うん!」

 ミナミ 「どうしちゃったのよリーフ!? 柄でもない」

 ハジメ 「気持ちは凄いけど、無茶にも ほどがあるよ」

 リーフ 「私、悔しいもん。チーちゃんや、みんなのポケモンを馬鹿にされて。私たちは弱くないんだって、知らしめてやりたいの」

 ヒトミ 「それは私も同じだけど……」

 リーフ 「それに……」

 ハジメ 「ん?」
 ▼ 71 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/22 02:26:34 ID:Htnk8FCY [16/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 リーフ 「“無茶”かもしれないけど、“無理”とは限らないもん!」


 サトシ 「よく言ったリーフ!」 ポン!

 リーフ 「ひゃっ!?」 ビクッ

 サトシ 「ぁ……ごめん。男子が苦手なんだっけ」

 リーフ 「あっ、ううん、大丈夫! ちょっとビックリしただけ」 ドキドキ

 ミナミ 「もぉサトシっ!」


ビックリした……。

急に肩を叩かれるなんて。深い意味は無いことくらい分かるけど。


 ナツヤ 「大人しいリーフがそう言うんなら、オレたちも覚悟を決めなきゃな」

 ミナミ 「そうね。リーフ、貴方の勇気、無駄には しないわよ!」

 リーフ 「ナツヤ君、ミナミちゃん……」

 ハジメ 「それと、サトシの気持ちも受け取らないとね!」

 ヒトミ 「うん! 私たちレンジャースクールの実力発揮と行こうじゃないの!」

 リーフ 「ハジメ君、ヒトミちゃん……!」

 サトシ 「ぃよっしゃ! 決まりだな!」

 ナツヤ 「まぁ、帰ってからモブオたちに話さなきゃだけど、あいつらもオッケー出すだろ」

 ミナミ 「そうね。なんたってリーフが乗り気なんだから」

 リーフ 「ぁっ、私って、そんなに責任重大……?」

 ヒトミ 「身構えないの! みんなリーフに勇気を貰ったんだから」

 ハジメ 「あとは……、出場辞退の撤回を、先生に相談しないとね」

 ナツヤ 「よし! じゃあ急いでスクールに戻ろう!」

 サトシ 「戻ったら早速バトルの特訓だ!」

 リーフ 「うん!」



みんな、さっきとは うってかわって、明るく前向きになった。


目標が出来たんだもん。

バトル大会で優勝して、プエル学園の人たちを見返してやるって言う、大きな大きな目標が――!


 ▼ 72 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/22 02:27:46 ID:Htnk8FCY [17/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





 教師A 「バトル大会? 本部に連絡すれば出れるけど……」

 ナツヤ 「よしっ!」

 教師A 「大丈夫か? あと2週間しか無いんだぞ?」

 ミナミ 「大丈夫です。みんな覚悟は出来てるんで」

 サトシ 「オレがバトルの特訓します。目指すは優勝ですよ!」

 教師A 「はははっ! よし分かった。大会本部に伝えておくよ。レンジャースクールは久しぶりに参加します、ってな!」

 ナツヤ 「お願いします」


 校長 「皆さん、良いチームになってきましたねぇ」


 ミナミ 「あ、校長先生」

 校長 「レンジャースクールが“アルミア学校選抜バトル大会”に出場するのは、実に12年ぶりです。悔いの無いよう、頑張ってくださいね」

 ナツヤ 「はい!」

 サトシ 「絶対に優勝してみせます!」

 ミナミ 「優勝したら体育館にクーラー付けて下さいね!」

 教師A 「おいコラ」

 校長 「はははっ。考えておきましょう」




 ▼ 73 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/22 02:29:25 ID:Htnk8FCY [18/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 ナツヤ 「参加辞退の取り消し、オッケーだったぜ!」

 サトシ 「レンジャースクールは12年ぶりの参加だってさ」

 ミナミ 「ついでに、優勝したら体育館にクーラー付けて貰えるわよ!」


職員室から戻って来たナツヤ君たちは、笑顔で言った。

体育館のクーラーの話は初耳だけど……。


 ハジメ 「ありがとう。大会まで2週間、みっちり特訓しないとね」

 リーフ 「うん!」

 ヒトミ 「お願いね、サトシっ」

 サトシ 「おう、任せとけ!」

 モブオ 「バトル大会なんて初めてだな」

 モブタ 「しかも12年ぶりの出場だろ?」

 モブコ 「けっこう注目されそうね」

 モブエ 「しっかり特訓して、アッと言わせてやりましょうよ」


みんな張り切っている。

不安は あるけど、ワクワク感の方が強いのは、きっとみんなで一致団結できたから。


優勝と言う目標に向かって、みんなの心が一つになった証拠だと思う。



 ハジメ 「じゃあ、早速今日から特訓を始めるけど、サトシ、これ大会のルールブック。印刷しておいたよ」

 サトシ 「お、サンキュー!」

 ナツヤ 「サトシ、この大会のルール、ちょっと特殊なんだ」

 サトシ 「特殊?」 

 ハジメ 「僕たちにとって、少し不利かもしれない。まぁ読んでみてよ」


 ▼ 74 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/22 02:33:01 ID:Htnk8FCY [19/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


   ― アルミア学校選抜バトル大会 ―


◆アルミア地方の各学校が、トーナメント方式でポケモンバトルを行う。

◆事前に選抜メンバーを10人登録する。10人未満の学校は参加不可。


 サトシ 「オレたち ちょうど10人だから参加できるって訳か」

 ハジメ 「サトシの体験入学が無かったら参加できなかったね」


◆1人つき3匹まで、大会で使用するポケモンを登録する。登録期間終了後は、止むを得ない事情がある場合を除き変更不可。


 サトシ 「……なるほど。ここが不利って訳か」

 ナツヤ 「あぁ。他の学校の奴ら――、バトルに力を入れてるトレーナーたちは、当然3匹登録するだろ?」

 ミナミ 「私たちはトレーナーじゃないから、パートナーポケモンしか居ないの」

 サトシ 「他の学校はポケモン30匹のチームなのに、オレたちは10匹で戦うことになる、ってことか」

 ヒトミ 「サトシだけでも3匹登録したら? ピカチュウ以外にも持ってるんでしょ?」

 ピカチュウ 「ぴかぁ?」

 サトシ 「あぁ。けどオレは今、レンジャースクール生だ。みんなと同じように、オレの最高のパートナーだけで参加してやるぜ!」

 ピカチュウ 「ぴっかぁ!」

 ハジメ 「流石だよ、サトシ」

 リーフ 「……ふふっ」
 ▼ 75 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/22 02:33:33 ID:Htnk8FCY [20/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

◆準決勝までは、チームで3人を選出、3人はそれぞれ1匹のポケモンを選出し、3対3のシングルバトルを行う。


 サトシ 「これは……、3本勝負、って訳じゃないよな?」

 ハジメ 「うん。先に相手のポケモンを3匹とも戦闘不能にした方の勝ちだね」

 サトシ 「じゃあ誰が出るかも重要になってくるよな〜」


◆決勝戦は、チームで6人を選出、6人はそれぞれ1匹のポケモンを選出し、6対6のダブルバトルを行う。


 サトシ 「お、決勝はダブルバトルなのか」

 ナツヤ 「しかも6人選出だ。決勝戦こそ戦略が求められるぞ」

 サトシ 「先に6匹を倒した方の勝ち……。フィールドワザとか、能力アップの引継ぎとか、色んな戦略がありそうだな」

 ヒトミ 「チームワークも大切ってことね」

 サトシ 「そう言えば、ポケモン選出のタイミングとかは……」

 ハジメ 「あぁ、次の項目だよ」


◆対戦では、最初の対面のみ、両者同時にポケモンを選出する(決勝戦のダブルバトルも同様)。

◆2人目以降は、状況に応じ、登録したポケモンを自由に選出できる。


 サトシ 「ふーん。ってことは、最初の対面の相性は運次第ってことか」

 ナツヤ 「けど、相性が悪かったら交代しちまえば良いんだろ?」

 サトシ 「そうだけど、1試合で1人1匹しか使えないってことは、最初から交代しちまうと、相手に手の内を明かすことになる」

 ミナミ 「そっか。相手に弱点を教えることになっちゃう」

 ハジメ 「まぁ、僕たちは1人1匹しか登録できないから、その辺は関係ないけどね」
 ▼ 76 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/22 02:34:45 ID:Htnk8FCY [21/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 サトシ 「……よし。ルールは分かった」


 ナツヤ 「それで、どんな特訓方法で行くんだ?」

 ミナミ 「2週間で、出来るだけパワーアップしなきゃいけないからね」

 サトシ 「2週間しかないんだ。難しいことは考えないで、ひたすら実戦練習が良いと思う」

 ハジメ 「そうなるよね。僕たちに足りないのは、圧倒的にバトル経験だ」

 ヒトミ 「うん。こう……バトルの基礎を磨くより、実戦でコツを掴んだ方が上達しそうね」

 サトシ 「オレたちが頑張れば、ポケモンたちも頑張ってくれる。結果は必ずついてくる。自信持って特訓しようぜ!」



サトシ君の言葉は、みんなを奮い立たせる。

ポケモンたちも頑張ってくれる。結果は必ずついてくる――か。

本当にサトシ君は、ポケモンのことを信頼してるんだね。



 サトシ 「じゃあみんな、校庭で特訓開始だ!」


 「「「 オーーー!!! 」」」





 ▼ 77 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/22 02:37:17 ID:Htnk8FCY [22/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


この日は夜20時頃まで、皆でバトルの特訓に取り組んだ。



実戦形式、実際にバトルして流れやコツを掴む、シンプルかつ確実な方法。


バトルに慣れてないチーちゃんは、最初は戸惑ってたけど、みんなと一緒に頑張ってくれた。


頑張り屋なチーちゃんなら、きっと、2週間で大きく成長してくれるよね。私も頑張るよ!





ちなみに、みんなのパートナーポケモンは__。


 ナツヤ君 : サンドパン

 ハジメ君 : ブイゼル

 モブオ君 : コロトック
 
 モブタ君 : グレッグル

 ミナミちゃん : カメール

 ヒトミちゃん : ゴンベ

 モブコちゃん : ニャルマー

 モブエちゃん : ムウマ


 ▼ 78 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/22 02:40:40 ID:Htnk8FCY [23/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



消灯後、女子ベッドルーム。



 ヒトミ 「ふー。今日は良い汗かいたなー」

 ミナミ 「ホントね。ポケモンバトルなんて、いつ以来かしら」

 モブコ 「バトルも、やってみると案外面白いわね」

 モブエ 「うん。ムウマが頑張ってるとこ見て、思わずキュンとしちゃったもん」


みんな、バトルの感想で持ち切りだ。

まだ初日、まだまだ勝手は分からないけど、そのぶん私たちには、伸びしろがある。

大会までの2週間で、他校のトレーナーに通用するほどの実力を付けなきゃいけないけど、私たちならきっと出来るはずだ。



 ミナミ 「それにしてもサトシ――、あいつ凄いわよね」

 リーフ 「!」

 ヒトミ 「うん。みんなの心を一つにしてくれたもんね」

 リーフ 「ふふっ。サトシ君が来た初日は、あんなに重い雰囲気だったのにね」

 ミナミ 「あんなトレーナー初めてよね。命がけでチルットを助けて、キャプチャしないで心を通わせたし」

 リーフ 「うん。それで今は、私たち みんなの心を通わせてくれた――。本当に凄いよね、サトシ君って」

 ミナミ 「絶対レンジャーに向いてるわよ、サトシ」

 リーフ 「私も そう思うな」


 ヒトミ 「……ねぇ。やっぱりリーフって、サトシのこと気になってるでしょ」


 ▼ 79 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/22 02:41:37 ID:Htnk8FCY [24/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 リーフ 「えっ……?」

 ヒトミ 「男子が苦手なのに、サトシの話題になると、なんだか活き活きしてるもん」

 リーフ 「えっ、えっ……と、そんなこと無いよ?」

 ミナミ 「そう言えばリーフ。最初の時も、なんだかサトシのこと庇ってたわよね。もしかして……サトシのことタイプ?」

 ヒトミ 「じゃあ一目惚れ!?」

 リーフ 「ちっ違うよぉ! 私はただ単純に、サトシ君のこと、凄いなぁって……!」

 モブコ 「ふーん」

 モブエ 「ちょっとは気にしてるんだねー」

 リーフ 「気にしてるって言うか……、だってチルットを助けた時とか凄かったし、ピカチュウのこと大切にしてるし、今回のことだって――」

 ヒトミ 「ふふっ、冗談よ。本気にしちゃダメ」

 リーフ 「……もぉ」

 ミナミ 「けどさリーフ。そんなにサトシのこと興味あるんなら、ちょっと話してみたら?」

 ヒトミ 「そうだよ。男子が苦手なの、克服できるかもしれないよ」

 リーフ 「でもっ、それはちょっと……、恥ずかしい……」

 ミナミ 「バトルと同じ! 特訓して慣らしていかないと」

 リーフ 「えぇ……」

 ミナミ 「ま、そこはリーフ次第よ。何かあったらサポートするからねっ」

 リーフ 「うん……」

 ヒトミ 「………」


サトシ君のことは、凄いと思ってる。

みんなの心を一つにしてくれたし、ポケモン想いだし、そして何より、バスで私を助けてくれたし。


でもだからって、気になってるとか、ましてや一目惚れだなんてそんなっ……。


ヒトミちゃんもミナミちゃんも、私がサトシ君のこと気になってるって勘違いしちゃってる。

それとも――、もしかして私、知らないうちにサトシ君のこと、意識しちゃってる……のかなぁ。


 ▼ 80 ーイーカ@ふしぎなきのみ 21/08/22 10:00:49 ID:PJjEcSuQ NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
描写もわかりやすくストーリーもしっかりしてる
これは名作の予感…
 ▼ 81 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/23 01:14:11 ID:J.3I4sz2 [1/26] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



それから、私たちの特訓の日々は続いた。





授業では、私たちがサトシ君に、キャプチャのコツやポイントを教えて。


放課後は、サトシ君が私たちに、バトルの特訓をしてくれて。


実戦練習を中心に、戦略やワザのタイミング、効果的な立ち回りなどもレクチャーしてくれた。


私たちのポケモンの特性やワザを活用した、大会のルールに適した戦い方なんかも考えてくれて。まるでバトルの先生だ。


  サトシ 『今のブイゼルの動き良い! 良いけどもっとこう……ズバー!って突っ込んで、ドバーン!って勢いよく!』


たまに よく分からない説明になるけど、それもサトシ君のキャラってことで、みんな楽しむようになっていた。

と言うより、サトシ君の説明擬音の意味を考えて、みんな自分なりの解釈で、バトルを組み立てていく。

そういう意味では、サトシ君は決して教えるのが下手って訳じゃないんだと思う。



キャプチャとバトル。



遊ぶ間も無く大変な日々。

だけど とっても充実した日々。





そんな日々は、あっという間に流れて行った。




 ▼ 82 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/23 01:19:01 ID:J.3I4sz2 [2/26] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 ヒトミ 「ねぇサトシ。今日はリーフにマンツーマンで付いてあげてよ」

 サトシ 「リーフに?」

 リーフ 「えっ?」



特訓も順調に進んで、大会まで残り5日に迫った日の放課後。

ヒトミちゃんが、とんでもないことを言いだした。


 サトシ 「けどリーフは……」

 ヒトミ 「いつまでも男子が苦手なんて言ってられないよ。大会では男子ともバトルするんだし、慣らす意味でも、ねっ?」

 リーフ 「ヒトミちゃんっ!」


うぅ……、ヒトミちゃん、私とサトシ君を2人きりにさせようとしてる。


あぁ、向こうでミナミちゃんがニヤニヤしてる。

これ絶対、女子のみんなに仕組まれてるよ……。


 サトシ 「どうだリーフ。今だけオレと特訓するか?」

 リーフ 「あっ、うん。じゃあ今日は……お願い、しても良いかなっ」


 ▼ 83 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/23 01:20:52 ID:J.3I4sz2 [3/26] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


実戦形式の特訓は、流れ弾が当たらないように、みんな校庭に散らばって練習している。


それは要するに、私とサトシ君は、みんなの目が届かない、ほとんど2人きりでの特訓になると言うことだ。



 サトシ 「ピカチュウ、“でんこうせっか”で逃げ回れ!」

 ピカチュウ 「ぴかぴかぁ!」 シュババッ!

 リーフ 「落ち着いて! よーく見てチーちゃん……そこっ! “つるのムチ”!」

 チコリータ 「ちこぉ!」 シュン!

  ― ガシッ!

 ピカチュウ 「ぴかっ!?」

 リーフ 「よしっ……! 上手いよチーちゃん!」


“でんこうせっか”で逃げ回るピカチュウを、チーちゃんのツルが捕まえた。

凄いよチーちゃん。あんなに素早いピカチュウを、ちゃんと追えてるんだね!


 サトシ 「捕まえて油断はダメだぞ! そのまま“10万ボルト”!」

 ピカチュウ 「ぴぃぃぃかぁぁぁぁぢゅぅぅぅぅぅ!」 バリバリッ!

 チコリータ 「ちこぉぉぉぉっ!?」

 リーフ 「あっ……チーちゃん!?」


チーちゃんの反射神経に喜んだのも束の間。

ツルで繋がっている状態のせいで、チーちゃんはピカチュウからの電撃を浴びてしまった。


 サトシ 「さぁどうするリーフ!?」

 リーフ 「チーちゃんっ……!」
 ▼ 84 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/23 01:22:03 ID:J.3I4sz2 [4/26] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 チコリータ 「ちっ……こぉぉぉぉっ!」


強力な電撃を浴びても、チーちゃんの目には闘志が宿っている。

チーちゃんは、まだ戦えるって訴えている!


 リーフ 「うん! 投げつけてチーちゃん!」

 チコリータ 「ちっ……こりぃ!」 ブンッ!

 サトシ 「あっ……ピカチュウ!?」

 ピカチュウ 「びかっ……」 ドカッ!


チーちゃんは電撃を浴びながらも、ピカチュウを投げ飛ばし、背後の木に叩きつけた。

 
 リーフ 「良いよチーちゃん! そこで“はっぱカッター”!」

 チコリータ 「ちこりっ!」

 サトシ 「“エレキネット”で受け止めろ!」

 ピカチュウ 「ちゅぴっか!」


チャンスだと思ったけど、ピカチュウの立て直しは、思った以上に早かった。

チーちゃんが繰り出した“はっぱカッター”。

鋭利な葉の刃のはずなのに、ピカチュウの“エレキネット”は、葉っぱ全てを受け止めてしまった。


 リーフ 「っ……! やっぱり凄いな、サトシ君とピカチュウ」

 チコリータ 「ちこぉ……」

 サトシ 「今の“はっぱカッター”が どうすれば通ったか――。それを考えるのも立派な特訓だぜ」

 リーフ 「うん!」

 サトシ 「じゃあ、ちょっと休憩するか。 おーいピカチュウ!」

 リーフ 「チーちゃんも! 休憩だよー!」

 ▼ 85 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/23 01:25:28 ID:J.3I4sz2 [5/26] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

サトシ君は、隅にあった木箱に腰掛ける。

ピカチュウも木箱に上って、サトシ君の隣に。チコリータがピカチュウの隣に。

そんな流れで、私はチコリータの隣に腰掛けた。



 サトシ 「リーフのチコリータ、バトルの素質あると思うよ」

 リーフ 「本当?」

 サトシ 「あぁ。ピカチュウの動きについてこれてるし。それに“10万ボルト”受けながら投げ飛ばすなんて、なかなか根性あるよな!」 ナデナデ

 チコリータ 「ちこり〜♪」


チーちゃんのことを褒めてくれたサトシ君は、チーちゃんの頭、葉っぱの付け根あたりを優しく撫でる。

すると、気持ち良さそうに目を細めるチーちゃんから、ほのかに甘い香りが。喜んでる証拠だ。


 リーフ 「そこ撫でてあげるとね、チーちゃん喜ぶの。サトシ君、知ってたの?」

 サトシ 「あぁ。オレもチコリータを持っててさ。今はベイリーフだけど、あいつもココを撫でられるのが好きだったんだ」

 リーフ 「そうなんだ。サトシ君は凄いね。バトルも出来て、こういうポケモンの知識もあって」

 サトシ 「いや、ゲットしたポケモンのことしか知らないよ。良い香りだな、チーちゃん」 ナデナデ

 チコリータ 「ちぃこりぃ〜♪」

 リーフ 「ふふっ。チーちゃん、サトシ君のこと気に入ったみたい」

 サトシ 「ホントか? サンキューな、チーちゃん」 ナデナデ

 チコリータ 「ちこっ♪」


 リーフ 「ふふっ。……おいで、ピカチュウ」

 ピカチュウ 「ぴか? ぴっか!」 ピョン


ピカチュウを呼ぶと、私の膝の上に乗ってくれた。

こうして眺めると、やっぱり綺麗な毛並み。


――バスの時と同じだ。


 ▼ 86 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/23 01:27:25 ID:J.3I4sz2 [6/26] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 リーフ 「サトシ君。あの時は、ありがとう」

 サトシ 「ん?」

 リーフ 「ほら。バスの中で、私に席を譲ってくれて」

 サトシ 「……あぁ! えっ? あれリーフだったのか!」

 リーフ 「うん。ごめんなさい。なかなか言い出す機会が無くて、今頃になっちゃって」

 サトシ 「そんなの全然いいよ。あのあと具合は大丈夫だったのか?」

 リーフ 「あ……うん。眠ったら治ったみたいで」


私が痴漢に遭ってたことは、黙っておくことにした。恥ずかしいもん。

そして、やっぱりサトシ君は あの時、私が体調悪いと思って、席を譲ってくれたみたいだ。


 サトシ 「そっか。良かった」

 リーフ 「優しいんだね、サトシ君。ピカチュウも良い子だし」 ナデナデ

 ピカチュウ 「ちゃぁ〜♪」

 サトシ 「困ってる人を助けるのは当たり前だろ?」

 リーフ 「その当たり前を出来る人って、実は少ないんだよ。サトシ君、レンジャーに向いてるかもねっ」

 サトシ 「へへっ」

 リーフ 「そう言えばサトシ君、あの時バスから降りて何処に行ったの?」

 サトシ 「あぁ、実はシンバラ教授が迎えに来てくれたんだ」

 リーフ 「教授が?」

 サトシ 「スクールまで迷うといけないから、ってさ」

 リーフ 「ふーん。サトシ君、教授と知り合いなの?」

 サトシ 「直接の知り合いって訳じゃないんだ。この特別講習のことを知ったのも、オーキド博士からで――」





   *   *   *



 ▼ 87 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/23 01:29:09 ID:J.3I4sz2 [7/26] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



7月下旬。

マサラタウン、オーキド研究所――。



 サトシ 「レンジャースクールですか?」

 ピカチュウ 「ぴか?」


これから夏も真っ盛りと言う、とある日。

オーキド研究所に呼ばれたサトシは、早速、オーキドから聞きなれない言葉を受ける。


 オーキド 「そうじゃ。実はワシの知り合いに、シンバラと言う奴がおってな」

 サトシ 「シンバラ?」

 オーキド 「レンジャーユニオン技術最高顧問と言って、まぁ、ポケモンレンジャーを管轄する偉い奴なんじゃ」

 サトシ 「へぇ〜」

 オーキド 「奴は、レンジャースクールと言う、ポケモンレンジャー養成学校にも携わっていてのぉ。レンジャーに興味のある若者を、広く募集しておるんじゃ」

 サトシ 「でも、オレはポケモンマスターを目指してるから、レンジャーには なりませんよ」

 オーキド 「分かっておる。じゃが、お前さんのことをシンバラに話したら、是非とも会ってみたい、レンジャーの素質を図りたいと言いおってな。良ければ会ってみてくれんか?」

 サトシ 「それは構いませんけど……」

 オーキド 「ふむ。あまり乗り気でないようじゃな」

 サトシ 「バレました?」

 オーキド 「もし、バトル大会に参加できる、と言ったら?」

 サトシ 「大会!?」

 オーキド 「レンジャースクールは、夏休み中、特別講習というものがあってな。当然、レンジャーに関する勉学が主目的じゃが、締めにアルミア地方のバトル大会に出場するんじゃ。サトシには、その特別講習に参加して欲しいんじゃよ」

 サトシ 「行きます行きまーす!」

 オーキド 「単純な奴め」

 ピカチュウ 「ぴかぴ……」

 オーキド 「詳しい資料を貰っておるから、読んでおくんじゃぞ」

 サトシ 「はーい!」
 ▼ 88 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/23 01:30:10 ID:J.3I4sz2 [8/26] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

バトル大会というワードで、二つ返事で参加を決めたサトシ。

さっそく家に帰ると、渡された資料を元に、出かける準備を始めた。





――― レンジャースクール夏季特別講習 ―――


この講習は、夏季休暇中の生徒の生活、勉学をサポートし、自主自立の精神育成を目的とするものである。

夏季休暇中の開催のため、参加は自由。夏季休暇に予定のある生徒は それを優先し、この講習に参加しないことによる不利益は一切ないものとする。

短縮授業形式を採り、授業時間外は自由な学習、フィールドワーク等を推奨することで、自主的な行動、想像力の育成を目指す。

アルミア学校選抜バトル大会に参加し、協力と結束、仲間との深い繋がりを育む。





 サトシ 「なんか小難しい事ばっか書いてあるなぁ」

 ピカチュウ 「ぴか」


要約すると、この講習は、“夏休みを有意義に過ごしましょう”と言う目的で開かれる。


レンジャースクールは全寮制なので、生徒は夏休み中、実家に帰ることになる。

そこを、スクールは解放するから使って良いよ。ちょっと授業も開くよ。でも自主的な学習が基本だよ。というものだ。

そしてレンジャースクールとして、アルミア地方のバトル大会に出場するらしい。



 サトシ 「これ読む限りだと、スクールの生徒向けのはずなんだけど……、オレが参加して良いのかな?」

 ピカチュウ 「ぴぃかぁ」

 サトシ 「まぁ、シンバラ教授って人が誘ってるんだから、ダメな訳ないか」

 ピカチュウ 「ぴかちゅぅ」

 サトシ 「何はともあれ、目的はバトル大会だ! 頑張ろうぜピカチュウ!」

 ピカチュウ 「ぴっぴかちゅう!」




 ▼ 89 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/23 01:32:06 ID:J.3I4sz2 [9/26] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



   *   *   *





 サトシ 「って感じでさ。バトル大会に釣られて来たんだ」

 リーフ 「そうだったんだ。じゃあ、最初はビックリしたよね。バトル大会に参加しないって言われて」

 サトシ 「ははっ。まさか棄権なんて夢にも思わなかったな」

 リーフ 「ごめんね。初日、みんな あんな感じで……」

 サトシ 「気にすんなよ。あいつら――プエル学園の奴らと会って、みんながトレーナー嫌いってのは、痛いほど分かったからさ」

 リーフ 「女子たち、みんな言ってるよ。サトシ君みたいなトレーナーは初めてだって。私たちがトレーナーと こんなに仲良くなれるの、奇跡に近いもん」

 サトシ 「よせよ恥ずかしい。けど、トレーナーだからってレンジャースクールをバカにするか普通?」

 リーフ 「地方柄ってやつかな。特にプエル学園の人たちは酷いもん。そのせいでみんな、トレーナーに対して疑心暗鬼になっちゃって」

 サトシ 「なるほどなぁ」

 リーフ 「ずっとバトル大会に参加してこなかったのも、そのせいらしいよ。トレーナーと関わりを持ちたくないって」

 サトシ 「悲しいな。一部の酷いトレーナーのせいで、そういう溝が出来ちまうのは」

 リーフ 「うん。でも、溝を埋めようとしない私たちにも、問題はあると思うんだ。あの時サトシ君が言った通り、“逃げ”だもん、私たちの行動って」

 サトシ 「あ……いや、それ本気にしないでくれよな。あの時は つい熱くなっちまって、みんなの気持ちも考えずに……」

 リーフ 「ううん。むしろ感謝してる、かな。お陰でみんな、バトル大会に挑戦しようって気持ちになれたし。……もしかしたら、誰かに指摘して欲しかったのかもしれないな」

 サトシ 「そうか?」

 リーフ 「私ね、見ての通り、大人しい性格だから、昔イジメられたこともあって……。自分を変えなきゃってレンジャースクールに入ったんだけど、全然ダメで……」

 サトシ 「リーフ……」
 ▼ 90 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/23 01:33:42 ID:J.3I4sz2 [10/26] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 リーフ 「サトシ君のこと、尊敬しちゃうな。自分を犠牲にしてチルットを助けてくれたし。バトル大会に出ようって、私たちの絆を深めてくれたし」

 サトシ 「大袈裟だなぁ。オレなんて まだまだ未熟だよ」

 リーフ 「サトシ君で未熟なら、私なんて生まれたての赤ちゃんだよ。サトシ君みたいに、私にも勇気があればな……」

 サトシ 「なに言ってんだよ。バトル大会に出ようって最初に言ったのリーフじゃん」

 リーフ 「それは、サトシ君が特訓してくれるからで」

 サトシ 「いや。バトル経験が無いのにバトル大会に出るのって、けっこう勇気がいると思うぜ。それをナツヤたちより先に決めたの、一つの勇気のカタチだと思うけどな」

 リーフ 「そう……かなぁ」

 サトシ 「そうそう。リーフは実は強いんだ。クヨクヨしちゃダメだぞ!」

 ピカチュウ 「ぴかぴっかぁ!」

 チコリータ 「ちこりー!」

 リーフ 「ピカチュウ、チーちゃん……。ふふっ、ありがとう、みんな」


 サトシ 「さて! そろそろ特訓スタートだ。チーちゃんの根性、見せてくれよな!」

 チコリータ 「ちっこ!」 フンス!



実は私は強い――か。


サトシ君にそう言って貰えたのは嬉しいけど、私、全然そんなことないのに。

いつも誰かに頼って、誰か任せで、なかなか自分じゃ判断できない、ダメな性格なのに。


サトシ君みたいな勇気、私、全然持ってないのにな。



 ▼ 91 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/23 01:36:14 ID:J.3I4sz2 [11/26] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



その日の夜。女子ベッドルーム。



 ヒトミ 「うーーーん! バトルの特訓で疲れるせいかな。ベッドでゴロゴロできるだけで幸せー♪」

 ミナミ 「ポケモンバトルって、意外と頭も体も使うみたいね。疲れるのも無理ないわ」

 リーフ 「みんな成長してるってことだね。チーちゃんも頑張ってるし、サトシ君のレクチャーも上手いし」

 ヒトミ 「リーフさぁ……」 ニヤニヤ

 リーフ 「えっ、なに?」

 ヒトミ 「随分サトシと仲良くしてなかった〜?」

 リーフ 「そう……かな?」

 ミナミ 「とぼけちゃダメよ。サトシと2人で仲良く話し込んでたじゃない」

 リーフ 「あっ」

 モブコ 「あー見てた見てた! 2人でピカチュウとチーちゃん撫でながら」

 モブエ 「同じ木箱に腰掛けてさ、青春漫画みたいな感じで!」

 ミナミ 「リーフさ、やっぱりサトシに惚れてない?」

 リーフ 「ちっ、違うよぉ!」

 ヒトミ 「でもでもー。男子が苦手なリーフが、サトシと2人きりで、あんなに楽しそうに話してるとこ見ちゃったらね〜」

 ミナミ 「分かるわよ? サトシって格好良いもんね。チルットを助けた時も、大会に出ようって切り出した時も。あれは惚れる女子、多いわよ」

 ヒトミ 「白状しなさいリーフ! サトシのこと……好きでしょ?」

 リーフ 「そっ、そんなことっ……、私、まだっ……///」

 ミナミ 「 ま だ ? 」

 リーフ 「ぁぅぅ……/// ちょっ、トイレ行ってくるね!」

 ヒトミ 「あっ……」



私は慌てて部屋を飛び出した。


私が、サトシ君に、惚れてる……?

私が、サトシ君のこと、好き……?


そんなことっ! そんなことはっ……!


 ▼ 92 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/23 01:38:13 ID:J.3I4sz2 [12/26] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



  ― バシャバシャッ


 リーフ 「はぁ……」



思わずトイレに逃げ込んじゃったけど、特に行きたくもなかったので、顔を洗って深呼吸。



私が、サトシ君に、惚れてる――。


違う違う違う! そんなんじゃない!

確かにサトシ君は優しいし、勇気があって凄いけど……。



 リーフ (……ホント、不思議な人だよね、サトシ君って)



思い返してみると、自分でも驚くほど、サトシ君とは自然と会話することが出来ていた。

男子が苦手な私は、いまだにナツヤ君やハジメ君と話すときも、少しぎこちない会話になっちゃうのに。


なんでサトシ君は……大丈夫なんだろう。



 リーフ (もしかして、これが――)


 ▼ 93 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/23 01:40:27 ID:J.3I4sz2 [13/26] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


   ― ガラガラッ


と、外で引き戸の開く音がした。

校舎の2階は、テーブルやパソコンが置かれたフリースペースを中心に、男女ベッドルームと、男女トイレの扉がある。

引き戸なのはベッドルームの扉だから、誰かが出てきたってことになる。


ヒトミちゃんあたりが様子を見に来たのかな、なんて思ったけど――。



   ナツヤ 『戦略的には、犠牲も止むなしってことか』

   サトシ 『あぁ。競合揃いだろうから、オレたちが確実に勝つためには、それも考えなきゃいけないと思う。ちょっと気が引けるけどな』



聞こえてきたのは、サトシ君とナツヤ君の声だった。



   ナツヤ 『で、サトシ的にどうなんだよ。リーフは』

   サトシ 『いやぁ、やっぱ可愛いよな〜』



 リーフ (えっ……!?) ドキッ


えっ……、可愛い?

聞き間違い? 可愛い? サトシ君が、私のこと……?



   ナツヤ 『いやそういうこと聞いてんじゃねーよ』

   サトシ 『だってそれが一番の印象だもん。可愛いよな〜ホントに』


   ― ガチャッ



2人の会話は、隣の男子トイレの中へと消えた。

聞き間違いなんかじゃない。サトシ君、確かに、可愛いって……。



 リーフ 「っ〜〜///」 ドキドキ


 ▼ 94 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/23 01:44:45 ID:J.3I4sz2 [14/26] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

私は、サトシ君とナツヤ君がトイレから出てくる前に、急いでベッドルームに戻った。

そんな会話を聞いちゃって、いま顔を合わせるのは気まずいもん!



 ミナミ 「あ、おかえりリーフ」

 ヒトミ 「ごめんねー。ちょっと突っ込み過ぎちゃったよね」

 リーフ 「ううん、大丈夫だよ」

 ミナミ 「って言うかリーフ、なんか顔……赤くない?」

 リーフ 「ふぇっ!?」

 ヒトミ 「ホントだ」

 リーフ 「あっ……そのっ、気にしないで! ちょっと暑いなーって。ほら、トイレはクーラー無いから!」

 ミナミ 「そう?」

 リーフ 「私、もう寝るから。おやすみっ!」

 ヒトミ 「おやすみー?」



みんなの反応も確認せず、私はベッドに入って、布団に包まった。

あぁ、私やっぱり、赤くなっちゃってたんだ。当然だよね、顔が熱かったもん。


 リーフ (はぁ……) ドキドキ


まだ、ドキドキしてる。

サトシ君に、可愛いって言われて。サトシ君が私のこと、そんな風に見てくれて。



 リーフ (……ふふっ)



とっても恥ずかしいのに、内心、喜んでいる私がいる。


なんでだろう。


なんなんだろう、このドキドキ。





 ▼ 95 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/23 01:47:09 ID:J.3I4sz2 [15/26] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




   *   *   *



 ハジメ 「――あとはモブエとリーフか」

 ナツヤ 「モブエのムウマだけど、どういう立ち回りが良いんだ?」

 サトシ 「オレたちのメンバーで唯一のゴーストタイプだし、ここぞって時に使いたいよな」

 ハジメ 「“あやしいひかり”で有利に持って行くか?」

 サトシ 「それもアリだけど、オレ的には“みちづれ”も考えてるんだ」

 ナツヤ 「“みちづれ”ねぇ……。ごめん、オレちょっとトイレ」

 サトシ 「あ、オレも行く」


   ― ガラガラッ


 ナツヤ 「戦略的には、犠牲も止むなしってことか」

 サトシ 「あぁ。競合揃いだろうから、オレたちが確実に勝つためには、それも考えなきゃいけないと思う。ちょっと気が引けるけどな」

 ナツヤ 「で、サトシ的にどうなんだよ。リーフは」

 サトシ 「いやぁ、やっぱ可愛いよな〜」

 ナツヤ 「いやそういうこと聞いてんじゃねーよ」

 サトシ 「だってそれが一番の印象だもん。可愛いよな〜ホントに」


   ― ガチャッ


 ナツヤ 「まったく。本当にサトシってポケモンが好きなんだな」

 サトシ 「あぁ。オレもチコリータ持ってたからさ。チーちゃん、葉っぱのとこ撫でてやったら気持ち良さそうにしてさ〜。ホント可愛くて!」

 ナツヤ 「それは分かったから。リーフとチコリータの立ち回り」

 サトシ 「チーちゃん、ああ見えて根性あるし、“はっぱカッター”の遠距離攻撃は大事にしたい。特訓の成果も出てるし、決勝戦の参加は確実だな」

 ナツヤ 「なるほど。“あまいかおり”も使えるのか――って、トイレで話すことでもないな」

 サトシ 「ははっ、確かにな」



   *   *   *



 ▼ 96 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/23 01:48:11 ID:J.3I4sz2 [16/26] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





私たちの特訓の日々は続き――。







いよいよ、バトル大会当日を迎えた。





 ▼ 97 チエナ@ひかえめミント 21/08/23 22:03:27 ID:X/8A7VB6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
これは良SS
シエンネ
 ▼ 98 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/23 22:05:38 ID:J.3I4sz2 [17/26] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



プエルタウンの北西、海を見渡せる高台の一角に設けられた特設バトルコート。

ここが、アルミア学校選抜バトル大会の会場だ。

アルミア中から大会参加者と応援者、観客たちが集まって、アルミア最大の都市は、普段より増して賑わっている。



 ヒトミ 「いよいよなんだね」

 ハジメ 「あぁ。いよいよだ」


私たちは、学校ごとに用意された仮設テントの控室で、開会の時を待っている。


外の雑踏、波の音、船の汽笛、野生ポケモンたちの鳴き声、場内アナウンス。

煩いくらいのはずなのに、緊張のせいで、それらは全然、私の耳に入って来ない。


 モブコ 「あぁ……緊張するなぁ……」

 モブエ 「こんなに沢山の人の中でバトルなんて……」

 モブタ 「バトルの特訓は してきたけど、こういう雰囲気までは流石に……」

 モブオ 「きききき気にすることないぜ! ととと特訓の成果を、他校の奴ららららららら」

 モブタ 「緊張し過ぎて逆ららららの人みたいになってるぞ」

 モブオ 「!?」


当然みんなも緊張してる。

バトル大会に出るのは初めてだし、レンジャースクールの参加が12年ぶりってこともあって、注目は避けられない。
 ▼ 99 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/23 22:07:20 ID:J.3I4sz2 [18/26] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 ナツヤ 「大会エントリー終わったぞ」

 サトシ 「この名札みたいなの、大会中は付けとくんだってさ」


そう言ってサトシ君は、皆に首掛けの名札を渡した。

ちなみに私たちは、制服で参加している。制服がある学校は制服で参加する決まりらしい。


 ミナミ 「トーナメント表、出てたわよ」

 ハジメ 「おっ、どうだった? 因縁のプエル学園と当たるのは……」


トーナメント表……これは重要だ。

私たちが大会に参加する一番の目的は、私たちを馬鹿にしたプエル学園の人たちに、バトルで勝利すること。

私たちのポケモンを馬鹿にしたプエル学園の人たちに、私たちの強さを思い知らせて、見返してやることだ。


何回戦でバトルすることになるのか――。

それによって、私たちのモチベーションも変わってくる。


 ミナミ 「ふふっ。決勝戦で当たる組み合わせよ」

 ハジメ 「本当か!?」

 ヒトミ 「よーし! じゃあ絶対に決勝まで勝ち進まないとねっ!」


決勝戦……!

プエル学園の人たちとの直接勝負は、決勝と言う最高の舞台らしい。


 リーフ 「決勝戦か……。これも運命なのかな」

 ヒトミ 「そうだね。因縁の対決を決勝の舞台で出来るなんて、ホントに凄いことだよ!」

 ハジメ 「あぁ! 特訓の成果を、最高の形で ぶつけられるって訳だな!」
 ▼ 100 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/23 22:11:24 ID:J.3I4sz2 [19/26] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ミナミ 「あー、盛り上がってるとこ水を差すようで悪いけど、決勝で当たるってのは、まぁ、既定事項と言うか……」

 リーフ 「えっ?」

 ヒトミ 「そうなの?」

 ナツヤ 「強豪校のプエル学園は、トーナメント表の1枠目、一番左に入ることになってて――」

 サトシ 「レンジャースクールは、辞退からの参加だから、トーナメント表の最後の枠、一番右に入ったんだ」

 ハジメ 「あ、そういうことか」


決勝戦で当たるのは、単純に、トーナメント表の一番端っこ同士だったから。

運命でもなんでもない、至極単純な理由だった。


 ナツヤ 「理由は どうあれ、オレたちは決勝でプエル学園の奴らとバトルできる!」

 ミナミ 「ちなみに、決勝まで全部で5試合よ」

 ハジメ 「5試合……。4回勝って、ようやくプエル学園と対戦できるってことか」

 ヒトミ 「大丈夫。私たちなら出来るよ!」

 リーフ 「うん。みんな頑張って特訓してきたんだから」

 サトシ 「そうだぜみんな! 今日までの特訓は絶対に無駄じゃない! この2週間で見違えるほど強くなれたんだ!」

 ナツヤ 「目指すは優勝! プエル学園の奴らに、オレたちの強さ、見せつけてやろうぜっ!」

 「「「 オーーー!!! 」」」



私たちは、心を一つに、決意を一つに、みんなで拳を突き上げた。


2週間の特訓の日々。


遊ぶ間もなく、ひたすらポケモンバトルの特訓に打ち込んだ日々。


みんなで汗を流して、バトルの研究をして、ポケモンたちと向き合って、みんなで絆を深め合った、かけがえのない日々。


その成果を、いよいよ発揮する時だ。





 アナウンス 『間もなく、第1試合の、開始時刻となります。トーナメント表に従い、指定のバトルコートに、お集まりください』




 ▼ 101 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/23 22:14:04 ID:J.3I4sz2 [20/26] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



   *





 モブタ 「チャンスだコロトック! “いやなおと”……からの“シザークロス”!」

 コロトック 「こぉぉぉん♪ ろっく!」 ザシュッ!


 *** 「……くそっ! よくやったなラッタ」


 実況 『決まったぁ! 12年ぶり出場のレンジャースクール、ハルバ第二を打ち破り、2回戦進出です!』





 ハジメ 「良いぞモブター!」

 ヒトミ 「まずは初戦突破ねっ!」

 サトシ 「あれだけ特訓したんだ。コロトック、真っ向勝負で負ける訳がないよな!」



 ▼ 102 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/23 22:15:12 ID:J.3I4sz2 [21/26] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



   *



 

 *** 「チルタリス“りゅうのはどう”よ!」

 モブコ 「飛びこんでニャルマー! “ふいうち”!」

 ニャルマー 「にゃぶっ!」 ドスッ!

 *** 「うそっ!?」

 モブコ 「続いて〜“じゃれつく”よ!」

 ニャルマー 「んにゃぁぁぁぁぁ!」 ポカポカポカポカ


 *** 「そんなっ、私のチルタリスが、ニャルマーなんかにっ……!」


 実況 『勝負あったぁ! レンジャースクール止まらないっ! 西プエル商業を征し、3回戦へ駒を進めます!』





 リーフ 「凄いよモブコちゃん!」

 サトシ 「今の、よくチルタリスの懐に突っ込んだな! モブコとニャルマーのファインプレーだぜ!」

 ミナミ 「特訓の成果、きっちり出てるわね!」


 ▼ 103 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/23 22:16:26 ID:J.3I4sz2 [22/26] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



   *



 

 *** 「ルカリオ、とどめの“インファイト”!」

 ルカリオ 「ガルゥゥゥァァァァァァァァァァ!」 ドドドドド!

 グレッグル 「っ……!」 ギリッ

 *** 「なっ!?」

 モブタ 「よく耐えたグレッグル! 反撃の“リベンジ”! 喰らわせてやれぇ!」

 グレッグル 「んぐぅ!」 ズドッ!

 ルカリオ 「カッ……」 バタッ


 実況 『グレッグル意地を見せたぁ! 凄いぞレンジャースクール! ボイル温熱専門学校に勝利し、4回戦へと挑戦だぁ!』





 ナツヤ 「今の よく耐えたなグレッグル!」

 ヒトミ 「凄いよ! ルカリオに勝っちゃうなんて!」

 サトシ 「グレッグル本気で勝負したかったんだな。同じ格闘タイプとして!」


 ▼ 104 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/23 22:21:21 ID:J.3I4sz2 [23/26] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



   *



 

 *** 「まさか追い込まれるなんてね。ドンカラス! 俺たちなら残り2体でも勝てる!」

 ドンカラス 「ガァ!」

 モブエ 「ムウマ、まだ行けるわね!」

 ムウマ 「むん……!」

 *** 「へっ……虫の息じゃねーか! まず1体……“つじぎり”だ!」

 ドンカラス 「ガァァァ!」 シュッ……

 モブエ 「……ふふっ。“みちづれ”よ!」

 ムウマ 「……!」 クワッ!

 *** 「だめだ止まれドンカラス!」

 モブエ 「もう止まらないタイミング……でしょ?」

 ドンカラス 「ンガッ……!?」 ザシュッ!

 ムウマ 「………」 バタッ

 ドンカラス 「………」 ドクン……ドサッ


 実況 『ムウマ、ドンカラス、共に戦闘不能! この時点でレンジャースクールの勝利です! 12年ぶり出場のレンジャースクール、プエル国際大付属を破り、とうとう決勝進出だぁ!』





 ナツヤ 「ぃよっしゃぁぁぁっ!」

 ヒトミ 「決勝! ついに決勝だよ!」

 サトシ 「作戦通りだな。モブエとムウマ、よくここまで耐えてくれた!」



私たちは遂に、決勝の舞台に駒を進めた。

特訓の成果を存分に発揮して、みんなとポケモンの持てる力の全てを発揮して、遂に、決勝戦に挑むんだ。



 アナウンス 『決勝戦、プエル学園VSレンジャースクールは、この後、午後3時開始となります』


 ▼ 105 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/23 22:22:58 ID:J.3I4sz2 [24/26] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





 ナツヤ 「ついに来たな」

 ミナミ 「えぇ」

 ハジメ 「なんだか信じられないね。今までバトル初心者だった僕たちが、アルミア学校選抜バトル大会の決勝戦に挑むなんて」

 ヒトミ 「ホントね。しかも、今まで馬鹿にされてきた、プエル学園とのバトルなんて」

 リーフ 「サトシ君のお陰だよ。大会に出ようって雰囲気にしてくれたのも、ここまで勝ち進んで来れたのも」

 サトシ 「オレは背中を押しただけさ。今日まで みんなで頑張って来れたから、決勝の舞台に立てたんだぜ?」

 ナツヤ 「それでもオレたち、サトシには感謝してるぜ」

 ハジメ 「サトシ、本当にありがとう。僕たちをここまで導いてくれて」

 ミナミ 「サトシが居なかったら、プエル学園の奴らにバカにされっぱなしだったわよ」

 サトシ 「へへっ。けど礼を聞くのは、優勝してからにしたいかな」

 ナツヤ 「ははっ、確かにな!」


サトシ君には、感謝してもしきれない。

でもサトシ君は、それを“私たちの頑張り”だと褒めてくれて、得意気になったりはしない。

本当に凄いな、サトシ君って。
 ▼ 106 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/23 22:25:33 ID:J.3I4sz2 [25/26] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 サトシ 「さて。決勝戦まで1時間近くあるな。なんか屋台いっぱい出てるし、ちょっと見に行こうぜ!」


サトシ君は陽気に言う。

確かに、このバトル大会はアルミアの夏の風物詩、お祭りのようなもの。屋台の出店が沢山あって大賑わいだけど――。


 ハジメ 「いや……ごめん。流石に緊張で そういう気分にはなれない……かな」

 ヒトミ 「あー、私も」

 サトシ 「なんだよー。そう言う時こそ気分を変えてリフレッシュだぞ?」

 ナツヤ 「そりゃそうだけど、オレたち、サトシと違ってバトル大会なんて初めてなんだ。しかも決勝戦」

 ミナミ 「ちょーっと遊べる雰囲気じゃないわね、私でも」

 ヒトミ 「リーフ、サトシと一緒に行って来れば?」

 リーフ 「無茶言わないでよぉ! 私だって緊張してどうしようって気分なんだから!」

 サトシ 「そっか。じゃあピカチュウ、見に行こうぜ」

 ピカチュウ 「ぴっか!」

 サトシ 「すぐ戻るよ」


それだけ言って、サトシ君とピカチュウは控室から出て行った。


 ミナミ 「なんでサトシ、あんなに余裕で居られるのよ」

 ナツヤ 「場慣れしてるんだろうな。尊敬するぜ」

 ヒトミ 「って言うか、サトシの経歴とか……誰も聞いてないよね?」

 リーフ 「うん。ポケモンリーグに出るための旅をしてた――、ってことしか」

 ハジメ 「どんな経歴でも、サトシが凄いことに変わりはないよ。僕たちをここまで成長させてくれたんだからね!」

 ヒトミ 「そうね。バトルができて、ポケモン想いで、キャプチャのセンスもあって」

 ナツヤ 「みんな、絶対に優勝しようぜ。優勝こそ、オレたちにバトルの特訓してくれた、サトシへの恩返しだ!」

 ミナミ 「そうね。絶対優勝よ!」



私たちは、誓い合う。


プエル学園の人たちを見返してやるために優勝を目指して来たけど、今となっては、サトシ君への恩返しのために、優勝したい――。

仕返しよりも、感謝の気持ちの方が、勝りつつあるのだ。


 ▼ 107 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/23 22:26:58 ID:J.3I4sz2 [26/26] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 サトシ 「お待たせ! 塩焼きそばとコイキング焼、みんなのも買って来たぜ!」

 ピカチュウ 「ぴっかぁ!」


両手に袋を抱えて、サトシ君が戻って来た。

みんなのも、ってことは、10人分ずつ買って来たの!?


 ナツヤ 「決勝前って、こんなガッツリ食うもんなのか!?」

 サトシ 「腹が減っては戦は出来ぬ、って言うだろ」

 ナツヤ 「けどコイキング焼って……、これデカいやつじゃん! 30センチくらいあるやつじゃん!」

 サトシ 「甘いモノは頭と体をリフレッシュしてくれるんだぞ」

 ナツヤ 「そうだけどさぁ……」

 ミナミ 「ま、有難く頂こうじゃないの」

 ハジメ 「そうだね。決勝前、確かに気分転換も必要だしね」

 ヒトミ 「食べれるかなぉ、こんな大きいの」

 リーフ 「かぶりつくの、ちょっと恥ずかしいね」

 サトシ 「気にすんなって。いただきまーす!」



緊張に包まれていた控室は、いつの間にか、和やかなムードに変わりつつあった。

もしかしてサトシ君は、私たちの緊張を解すために、美味しいものを買って来てくれたのかな。



本当に凄いよね、サトシ君。

ポケモンのことも、みんなのことも、しっかり考えてくれていて。


サトシ君みたいに、私も なれたらな……。


 ▼ 108 ォレトス@ナゾのみ 21/08/24 05:41:02 ID:OF1opcOw NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 109 ドイデ@ダイミツ 21/08/26 22:17:31 ID:t8RsWv.g NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 110 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/28 02:39:59 ID:mJUkENVE [1/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 実況 『さて皆様、お待たせいたしました。アルミア学校選抜バトル大会、決勝戦! いよいよスタートです!』



午後3時。ついに、決勝戦の幕開けだ。

実況の放送に、ギャラリーたちからワーッと歓声が上がる。

その歓声の大きさに、この大会が いかに大規模なものなのか、改めて実感させられた。


 実況 『まずは青コーナー! 4年連続優勝の強豪校、私立プエル学園! 5年連覇を目指します!』


プエル学園の人たちが入場する。

やっぱり、この間の4人は全員が決勝戦のメンバーだった。


 実況 『対する赤コーナー! 12年ぶりの参加で怒涛の決勝進出、レンジャースクール! この勢いで初優勝を狙えるのか!?』


 サトシ 「みんな、堂々と行こうぜ!」

 ナツヤ 「勿論だ!」

 リーフ 「うん!」

 ヒトミ 「ここまで来たら勢いよ!」

 ハジメ 「それにしても凄い歓声だね」

 ミナミ 「当然よ。優勝候補のプエル学園と、ポッと出のレンジャースクール。盛り上がらない訳ないじゃない!」



ミナミちゃんの言う通り、盛り上がらない訳が無い組み合わせ。

順当に勝ち進んだ強豪校と、まさかの善戦で勝ち上がった無名の学校。


誰もが予想しなかった決勝のカードに、観客たちは大興奮だ。


 実況 『決勝戦は6対6のダブルバトル! ルールはシンプル! 先に6体とも戦闘不能にした方が優勝です!』


先に相手の6匹を倒した方が優勝――。

それだけ聞けば単純だけど、相手は、4年連続優勝の強豪校、プエル学園。

私たちは特訓で大きく成長したとはいえ、4回戦までとは訳が違う。一筋縄では行かないはずだ。
 ▼ 111 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/28 02:41:35 ID:mJUkENVE [2/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

  ホクト 「まさか、レンジャースクールが決勝まで勝ち進んでくるとは。少し予想外でしたね」

  ソウヤ 「2週間前は あんなザコかったのにな。4回戦まで弱い学校と当たったんじゃねーの?」

  カムイ 「オレは初めて相手するけど、どんなものなのか、お手並み拝見と行こうじゃないか」

  エルム 「ふふっ。決勝まで登り詰めて いい気になってる奴らを、圧倒的な力の差で打ち負かす――、すっごく楽しそうじゃない?」

  スラン 「エグーイ。あいつらのプライド、ズタズタに圧し折ってやるんだから」

  ライラ 「そのための私の選出……ふふっ、みんなも酷なことするわね〜」



対面したバトルコート。

プエル学園の人たちは、どこか不穏な笑みを浮かべている。


 ミナミ 「驚いてるでしょうね。私たちが決勝まで勝ち進んで」

 ナツヤ 「けどあの表情を見ると……、余裕そうだな」

 ハジメ 「勝とう。勝ってやろう、絶対に!」

 ヒトミ 「うん!」

 サトシ 「ダブルバトルは、個々の力より、どれだけお互いをサポート出来るかが重要だ。今のオレたちなら、あいつらにも十分通用するはずだぜ」

 リーフ 「そうだよね! 私たちの絆、プエル学園の人たちなんかに負けっこないんだから!」


私たちは、もう緊張していない。

していない――って言うと嘘になるかな。心地良い緊張感。


大勢のギャラリーに見守られて挑む、決勝の舞台。


アルミアで一番注目されている舞台で繰り広げられる、決勝戦。私たちは今、そこに立っている……!
 ▼ 112 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/28 02:42:35 ID:mJUkENVE [3/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 実況 『両チーム最初の2名、同時にポケモンを選出します。準備は良いですか――?』


 ハジメ 「僕たちからだね」

 ヒトミ 「うん。良い流れ、作って来るよ!」


 実況 『――それでは! アルミア学校選抜バトル大会、決勝戦! バトル、開始っ!』


 ハジメ 「行くよブイゼル!」

 ブイゼル 「ぶぃ!」

 ヒトミ 「お願いゴンベ!」

 ゴンベ 「ごーん」


  カムイ 「行って来いゲンガー!」

  ゲンガー 「ゲンガァ!」
 
  ライラ 「美しく舞いなさい、フワライド!」

  フワライド 「フッ……」


最初の対面は運だけど、これは私たちが不利だ。

相手はゲンガーとフワライド。2匹ともゴーストタイプで、ゴンベを活かすことが出来ない。

かと言って、交代は隙を見せることになるから悩みどころだ。


 ヒトミ 「行くよゴンベ! フワライドに“れいとうパンチ”!」

 ゴンベ 「ごんっ!」

 ハジメ 「続けブイゼル! ゲンガーに“アクアテール”!」

 ブイゼル 「ぶいぶぃ!」


交代は無しで行くようだ。

“れいとうパンチ”という有効打がある以上、まずはそれで攻め込んで――。

 ▼ 113 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/28 02:43:57 ID:mJUkENVE [4/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

  ライラ 「お疲れさまっ。“だいばくはつ”!」

  フワライド 「フッ……」 カッ!


   ― ドゴォォォォォォォォォォォォォォン!!!


 ハジメ 「なっ……!?」

 ヒトミ 「いきなり“だいばくはつ”……!?」


 実況 『あぁっと! 初手“だいばくはつ”とは、なんということでしょう!? ブイゼルとゴンベ、成す術なく戦闘不能だぁ!』


  ライラ 「ふふっ。最初に出る2人って、切り込み隊長じゃないけど、ある程度、重要なポジションでしょ? それを一瞬で崩される……ねぇ今どんな気持ち?」



 ハジメ 「くそっ! ごめんブイゼル……、何も出来なくて……」

 ヒトミ 「戻ってゴンベ。ごめんね、いきなりこんな形で……」



始まって早々“だいばくはつ”。

こんなの全くの予想外だ。やる気に満ち溢れていたハジメ君とヒトミちゃんが、一瞬で……。


  エルム 「さぁ、こっちのペースよ! 行ってマリルリ!」

  マリルリ 「るり!」

  カムイ 「ほら早く次のポケモン出せよー!」


ゲンガーに“だいばくはつ”は関係ない。

私たちは、いきなり5対4の不利なバトルを強いられることになってしまった。
 ▼ 114 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/28 02:47:26 ID:mJUkENVE [5/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 サトシ 「出鼻 くじかれちまったな」

 ハジメ 「ごめん、みんな」

 ヒトミ 「もっと向こうの出方を見てれば……」

 サトシ 「いや。あの威力の“だいばくはつ”じゃ、守らない限り どうにもならなかったと思うぜ。2人が気にすることじゃないよ」

 ナツヤ 「あぁ。これも向こうの戦略ってことだ」

 サトシ 「次はオレとピカチュウ行く」

 ミナミ 「待ってよ。サトシは切り札に残しておきたいわ」

 ナツヤ 「そうだ。こんな初っ端から出るのは……」

 サトシ 「時間的には初っ端かもしれないけど、戦況的には もう中盤だぞ」

 ヒトミ 「けど……」

 サトシ 「大丈夫。流れを変えてやるのさ」

 リーフ 「流れを……変える?」

 サトシ 「ゲンガーは、ナツヤのサンドパンで対応してくれ」

 ナツヤ 「分かった」



サトシ君とナツヤ君が、フィールドに立つ。


プエル学園側は、奇襲が決まったことで得意気になっている。

客席からも、プエル学園の戦略を流石だと言う声援が聞こえてくる。


気持ち的に、勝敗が見え始めてしまった決勝戦。

サトシ君は……、サトシ君は、この雰囲気を変えられるってこと?


 ナツヤ 「頼んだぞサンドパン!」

 サンドパン 「さん!」

 サトシ 「行くぜピカチュウ!」

 ピカチュウ 「ぴっかぁ!」
 ▼ 115 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/28 02:49:44 ID:mJUkENVE [6/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

  エルム 「サトシ、って言ったわね。あの時、私たちに生意気な口 叩いてくれた」

  カムイ 「あー、アレがホクトの言ってたピカチュウの奴か。さすが、レンジャースクール生は持ってるポケモンが違うな〜」

  エルム 「男でピカチュウとか可愛いわね。ナメてんのかしら」


  ソウヤ 「やっちまえカムイ! エルム!」

  スラン 「この流れで完封しちゃいなさいよ〜!」


  エルム 「マリルリ、まずは“アクアリング”よ」

  マリルリ 「るっりりー」 ザブン


“アクアリング”――、少しずつ自分の体力を回復していくワザ。

これじゃあダメージを与えても、モタモタしてたら帳消しになっちゃう。


 サトシ 「ピカチュウ、マリルリに“10まんボルト”だ!」

 ピカチュウ 「びかぁぁぁ……ぢゅぅぅぅぅぅ!」 カッ!

  ― バリバリ チュドォォォォォォォォン!



  マリルリ 「り゙っ゙……」 バタッ



  エルム 「……えっ?」

  カムイ 「は?」


 実況 『マリルリ倒れたぁ! ピカチュウの“10まんボルト”炸裂! なんと一撃! 凄まじい威力です!』



  ヒトミ 「見た……今の」

  ハジメ 「なんか閃光がーと思ったら、一瞬でマリルリに電撃が……」

  ミナミ 「ちょっとヤバくない あの威力!?」


みんなが驚くのも無理はない。と言うより、私もビックリしている。

だって、特訓の時のピカチュウ、あんな威力の電撃を出したこと無かったもん。

これが、サトシ君とピカチュウの、本気……?
 ▼ 116 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/28 02:51:02 ID:mJUkENVE [7/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ナツヤ 「この隙に“つるぎのまい”」

 サンドパン 「しゃう!」 シャキーン!

 サトシ 「ナツヤ、ゲンガーの特性は“のろわれボディ”だ。一気に決めるぞ」

 ナツヤ 「あぁ!」


  エルム 「戻ってマリルリ。……なによ、今の“10まんボルト”!?」

  ソウヤ 「油断してんじゃねーよエルム!」

  エルム 「うるさいわねぇ! 今の見たでしょ! ヤバい威力だったわよ!」

  ホクト 「タイプ相性が悪かったにしても……、一撃は情けないですね」

  エルム 「……ちっ」


あれだけ余裕そうだったプエル学園側に乱れが生まれた。

サトシ君は、たった一撃で、有言実行、このバトルの流れを変えてくれたのだ。


  ソウヤ 「次はオレだ! 行けハッサム!」

  ハッサム 「はっ!」

  カムイ 「ゲンガー! 勝負は これからだ!」
 
  ゲンガー 「げん!」


 ナツヤ 「もう1発“つるぎのまい”!」

 サンドパン 「しゃーう!」 シャキーン!


  カムイ 「させるな! サンドパンに“シャドーボール”!」

  ソウヤ 「ハッサムはピカチュウに“シザークロス”だ!」


 ナツヤ 「耐えてくれサンドパン!」

 サンドパン 「さんっ……!」
 ▼ 117 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/28 02:52:56 ID:mJUkENVE [8/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ゲンガーとハッサムの攻撃が、サンドパンとピカチュウに迫る。

“つるぎのまい”を発動中のサンドパンは、もう避けられる体勢じゃない。

“のろわれボディ”の金縛り効果を避けるためには、強化した攻撃で一気に攻め込まなきゃいけないから。ここは耐えるしか……。


 サトシ 「ピカチュウ“アイアンテール”だ! “シャドーボール”をハッサムに打ち付けてやれ!」

 ピカチュウ 「ちゅぴっか!」 ガキン!

 ハッサム 「さむっ!?」 バキッ


 実況 『凄いぞピカチュウ! “アイアンテール”で“シャドーボール”を打ち返し! それをハッサムに当てたぁ!』


  ヒトミ 「ねぇなに今の!? なに今の!?」

  リーフ 「凄い……、あんなこと、出来るの!?」

  ハジメ 「って言うかサラッと凄い指示出して、それを実行するピカチュウも凄いぞ……」


 ナツヤ 「“つるぎのまい”2回成功っ! サンドパン、ゲンガーに“あなをほる”!」

 サンドパン 「ぱぁん!」 ボコッ

 カムイ 「はっ……来るぞゲンガー!」

 ゲンガー 「げんっ!?」


驚きの裏では、ナツヤ君とサンドパンが行動に出ていた。

2回の“つるぎのまい”で、大幅に強化された攻撃力。ゲンガーに効果抜群の地面ワザ。


  ソウヤ 「ハッサム、ゲンガーの傍に行け! サンドパンが出て来た瞬間に“シザークロス”だ!」

 サトシ 「させるかっ! ピカチュウ“エレキネット”!」

 ピカチュウ 「ちゅぴぃ!」 ビュン!

  ハッサム 「さむ!?」 バチバチッ


ゲンガーを庇うために動いたハッサムを、“エレキネット”が捕えた。


  ソウヤ 「なにやってんだハッサム! 断ち切れ!」

  ハッサム 「はぁっ!」 ジャキーン!


ハッサムの自慢の鎌で、“エレキネット”は一瞬のうちに断ち切られてしまったけど――。

 ▼ 118 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/28 02:54:18 ID:mJUkENVE [9/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 サンドパン 「さっぱーん!」 ドゴッ!

  ゲンガー 「んげがぁ!?」


地面タイプのサンドパンが、地中を掘り進むスピードは早い。

“エレキネット”は、ハッサムの足止めには十分すぎるほど時間を稼いでくれた。


  カムイ 「チッ! 流石に2回も舞われたら一撃か」

 
  スラン 「だらしないわねぇ! 行きなさいメタグロス!」

  メタグロス 「メタン」


 実況 『倒れたゲンガーに代わって、プエル学園、ここでメタグロスを投入だぁ!』



  ハジメ 「これで4対3。数の上では僕たちがリードだ」

  ヒトミ 「頑張ってー! ナツヤー! サトシー!」


確かに、数で言えば私たちが有利。

マリルリとゲンガーを一撃で倒して、バトルの流れは私たちに向いている。

けど、相手はメタグロス。体格差は大きいし、見るからに強そうな雰囲気。余裕は全く無い。


 ナツヤ 「このまま行くぞ! メタグロスに“あなをほる”!」

 サンドパン 「さぱぁ!」 ボコッ!


  スラン 「させないわよ! メタグロス“こうそくいどう”!」

  メタグロス 「メタン」 シュッ

  ソウヤ 「お前も“こうそくいどう”だ!」

  ハッサム 「はっ!」 シュッ


 ナツヤ 「なっ……2匹とも!?」

 サトシ 「落ち着け! 狙いを定めるんだ!」
 ▼ 119 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/28 02:55:49 ID:mJUkENVE [10/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

フィールドを、目にも とまらぬ速さで駆けまわるハッサムとメタグロス。

ただでさえ攻撃を当てるのが難しいのに、地面に潜っているサンドパンは、どうやって攻撃を当てろと言うのだろうか。


 サンドパン 「さぁん……っ!?」 スカッ

 ナツヤ 「ダメかっ……!」


地面から飛び出したサンドパンだけど、そこにメタグロスは居なかった。

その巨体からは想像出来ないような俊足で、サンドパンの攻撃を回避したのだ。


  スラン 「飛び出したとこは隙だらけっ。“しねんのずつき”!」

  ソウヤ 「ハッサムはピカチュウに“シザークロス”!」


敵2匹は、“こうそくいどう”によって素早さが上昇。

そのスピードのまま、サンドパンとピカチュウに攻撃を仕掛けてくる。


 ナツヤ 「ヤバッ……! 地面に逃げ込めサンドパン!」

 サンドパン 「っ!」

  ― ドゴッ!


 サトシ 「よけろピカチュウ!」

 ピカチュウ 「ぴっ……!」

  ― スカッ


 実況 『あぁ〜っとメタグロスの“しねんのずつき”が直撃っ! サンドパン耐えられなかったぁ!』


 ナツヤ 「よくやってくれた、サンドパン」


  スラン 「口ほどにもないわね」

  ソウヤ 「良いぞスラン。これで追いついたぜ」
 ▼ 120 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/28 02:57:32 ID:mJUkENVE [11/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

この一撃で、サンドパンは倒れてしまった。

元々能力の高いメタグロスが、“こうそくいどう”の勢いを利用して繰り出した“しねんのずつき”。

あんな鋼の塊に突撃されては、サンドパンは ひとたまりもなかったはずだ。


一方、ピカチュウはハッサムの攻撃を、しっかり避けていた。

ここはサトシ君とピカチュウ、ナツヤ君とサンドパンの経験の差が現れたんだと思う。



 ナツヤ 「悪ぃ。オレは ここまでだ」


待機スペースに戻って来たナツヤ君は、申し訳なさそうに言った。

これで私たちも残り3体。数の有利は、あっという間に無くなってしまった。


 ハジメ 「いや、ゲンガーを倒したのは大きいよ」

 ヒトミ 「そうだよ。ナイスファイト!」

 ミナミ 「残りは私とリーフね」

 リーフ 「向こうのポケモン、ハッサムとメタグロスと、まだ出てない もう1匹……」

 ナツヤ 「強いポケモンが控えてるんだろうな」

 ミナミ 「……よしっ。私、行ってくるわ」

 リーフ 「えっ、私が最後……!?」

 ミナミ 「えぇ。最後にサトシのサポート、しっかり頼むわよ!」

 ヒトミ 「そうだね。リーフとチーちゃんなら、サトシとピカチュウを上手くサポートできるよ!」

 ナツヤ 「……あー、うん。なるほど、そういうアレね」

 リーフ 「えっ、なにナツヤ君?」

 ナツヤ 「なんでもない」

 ミナミ 「ふふっ。さぁ、どうにかして有利にさせるわよ!」



ミナミちゃんが、フィールドに向かう。


私が最後のサトシ君のサポート役か……。

そんな大役、私に務まるのかな。

 ▼ 121 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/28 02:58:44 ID:mJUkENVE [12/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ミナミ 「お願いカメール! “あまごい”よ!」

 カメール 「かーめ!」 カッ

  ― ポツッ、ポツ、ポツポツ……ザァァァァァァァァァ!


 サトシ 「“あめうけざら”発動だな」

 ミナミ 「えぇ。それに、濡れてれば電気も通しやすいでしょ」

 サトシ 「サンキュー」


ミナミちゃんのカメールは、特性“あめうけざら”を持った珍しい個体。

雨が降っている間、少しずつ体力を回復できる。


  スラン 「メタグロス、もっと“こうそくいどう”よ!」

  メタグロス 「メタ!」 シュバッ!

  ミナミ 「まだスピード上げる気なの……!? カメール“アクアテール”よ!」

  カメール 「かめぇっ!」


メタグロスは“こうそくいどう”を追加して、さらに素早さを上げる。

ただでさえ強敵なメタグロス。これ以上スピードが上がったら、手が付けられなくなってしまう。


 ミナミ 「……当たらない」

 カメール 「っ!」

  スラン 「ふふっ。さらに“こうそくいどう”!」

  メタグロス 「メタ!」 シュババッ!


現にミナミちゃんとカメールは苦戦している。

ここから見ている私たちでさえ、メタグロスの動きを捉えるのは難しい。
 ▼ 122 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/28 03:00:03 ID:mJUkENVE [13/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

  ソウヤ 「ハッサム! ピカチュウに“つじぎり”!」

  ハッサム 「ハッ!」

 サトシ 「“アイアンテール”で向かい打て!」

 ピカチュウ 「ちゅぴっか!」


ピカチュウとハッサムの攻撃が ぶつかり合って、鈍い音が響き渡る。


  ソウヤ 「オレたちも“こうそくいどう”だ!」

  ハッサム 「サム!」 シュバッ!

 サトシ 「逃がすか! “でんこうせっか”!」

 ピカチュウ 「ぴっか!」 シュバッ!


“こうそくいどう”で素早く動くハッサムに対し、ピカチュウは“せんこうせっか”で後を追う。

ピカチュウの元からの素早さを活かせば、高速移動中のハッサムも射程圏内ということか。


ピカチュウはジリジリとハッサムとの距離を詰めていく。

 ▼ 123 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/28 03:02:12 ID:mJUkENVE [14/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

  ソウヤ 「……そこだ! 背後を取れ!」

  ハッサム 「!」 シュン

 サトシ 「なにっ!?」

 ピカチュウ 「ぴっ!?」


ハッサムが、羽を広げた。

空気抵抗を利用したのか、ハッサムは急減速。ピカチュウを やり過ごす形で、指示通りピカチュウの背後を取る。


  ソウヤ 「“シザークロス”!」

  ハッサム 「ハッ!」 ザシュッ!

 ピカチュウ 「びかぁっ……!」


“シザークロス”が、ピカチュウに命中。

ガラ空きの背後から、モロに直撃してしまった。


  ソウヤ 「畳みかけろ! 連続で“シザークロス”!」

  ハッサム 「ハァァァッ!」


 サトシ 「真上に“10まんボルト”!」

 ピカチュウ 「ぢゅうううぅぅぅぅぅ!」 バチバチバチッ!

 ソウヤ 「チッ! 止まれハッサム!」



隙だらけのピカチュウに集中砲火――かと思いきや、流石サトシ君、そんなことは許さなかった。


真上に“10まんボルト”、それは、ピカチュウ自身を守る電気の防御壁のような役割を果たしたようだ。

電気を纏ったピカチュウへの直接攻撃なんて自殺行為。ハッサムの攻撃を止めることに成功した。
 ▼ 124 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/28 03:04:24 ID:mJUkENVE [15/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 スラン 「メタグロス、“かみなりパンチ”で決めるわよ!」

 メタグロス 「メタガァ!」

 ミナミ 「避けてカメール! “こうそくスピン”で!」

 カメール 「かめめぇ!」 シュルッ!


ミナミちゃんの方に目を向けると、メタグロスの“かみなりパンチ”が、今まさにカメールに繰り出されるところだった。

“こうそくスピン”――、カメールは甲羅に身を隠し、水を噴射しながら高速回転して回避行動に出る。


 スラン 「甘いわよ! 追ってメタグロス!」

 メタグロス 「メタ!」 シュバッ!

 カメール 「!?」

 ミナミ 「うそっ……」

 スラン 「“こうそくいどう”3回をナメすぎよ! “かみなりパンチ”!」

 メタグロス 「タグァ!」 バキッ!

 カメール 「っめ……」


 実況 『あぁーっと! とうとうカメールも戦闘不能! レンジャースクール、残り2体です!』


  ミナミ 「……ごめん。強かったわ、あのメタグロス」

  ヒトミ 「頑張ったよミナミもカメールも! しっかり“アクアテール”当ててたし!」

  ナツヤ 「そうだぞ。ある程度“こうそくスピン”で対抗できたのも、特訓した お陰だな」


ミナミちゃんとカメールは、思った以上に善戦したようだ。

ダメだな私。無意識に、サトシ君とピカチュウのバトルばっかり見ていたようだ。
 ▼ 125 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/28 03:07:32 ID:mJUkENVE [16/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ミナミ 「頼んだわよリーフ」

 ヒトミ 「特訓を思いだして! リーフなら大丈夫!」

 ナツヤ 「サトシとピカチュウのサポート、任せたぞ!」

 ハジメ 「数の上では不利だけど、まだ負けるって決まった訳じゃないからね!」

 リーフ 「みんな……」


特訓を思いだして――か。


サトシ君と2人きりで特訓した日。

チーちゃんが、意外にもバトルで根性を発揮する性格だと知った。

チーちゃんが、私が思っていた以上に、バトルのセンスがあることを知った。


そんなチーちゃんの実力を、今、ここ、本番で、しっかり発揮させてあげるのが、私の役目だ。


 リーフ 「……うん。行ってくるね!」




待機スペースから、足を踏み出す。


歓声が降り注ぐ、バトルフィールドへ。



 サトシ 「オレたちで最後だ。リーフ、勝ってやろうぜ!」

 リーフ 「うん!」
 

隣には、サトシ君。

優しくて、ポケモン想いで、勇気のある、私の尊敬する人。

そんな彼の隣に、私は今、立っている。


私なんかが、サトシ君の隣に立つのに相応しいかは分からないけど。

でも私は、こうしてサトシ君の隣に立って、同じ目標のために、一緒に戦える……!。


 リーフ 「行っておいで、チーちゃん!」


 ▼ 126 プラス@キーのみ 21/08/28 08:49:38 ID:4aYQwCiQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 127 ワシ@デンキZ 21/08/29 09:47:39 ID:7VJ2l.fs NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
シエンネ
 ▼ 128 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/30 00:04:39 ID:tZGwW1vk [1/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



  ソウヤ 「ラストがピカチュウとチコリータとか」

  スラン 「笑っちゃうわね。さすがレンジャースクール」



チーちゃんを出すなり、向こうは余裕そうな表情を見せる。

心なしか、観客たちの盛り上がるも少ないような気が。


 サトシ 「やっぱ、決勝戦がピカチュウとチコリータって異質なんだろうな」

 リーフ 「そうだよね、やっぱり」

 サトシ 「でもオレたちは、このメンバーで決勝まで勝ち進んで来たんだ」

 リーフ 「うん。みんなで頑張った結果が、今この舞台だもんね」

 サトシ 「ハッサムもメタグロスも“こうそくいどう”を積んで、攻撃を当てにくい。厳しいバトルになるぞ」

 リーフ 「厳しい……か」

 サトシ 「不安か?」

 リーフ 「ちょっとだけ。でも……絶対勝てるよね?」

 サトシ 「あぁ! その意気なら勝てるさ!」


サトシ君は、こんな不利な状況でも、優勝する気でいる。諦めなんて全く感じられない。

だから――、だから私も、前向きに頑張れるんだよ、サトシ君。


 チコリータ 「ちこっ!」

 ピカチュウ 「ぴか、ぴかちゅう!」

 チコリータ 「ちこりっ!」


チーちゃんも、やる気だ。

チーちゃんも、勝てるって信じてるんだ。
 ▼ 129 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/30 00:05:12 ID:tZGwW1vk [2/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 ― ザアアアァァァァァァァ……パラパラ……ポタッ、ポタッ



 サトシ 「“あまごい”終了か。チーちゃんには良いタイミグだな」

 リーフ 「うん。お日様が出てた方がチーちゃん嬉しいもんね」

 チコリータ 「ちこ♪」


  スラン 「呑気に お喋りしてる余裕あるのかしら? ピカチュウに“コメットパンチ”!」

  メタグロス 「メタッ」

  ソウヤ 「チコリータに“シザークロス”!」

  ハッサム 「ハァ!」


 サトシ 「“アイアンテール”で向かい打て!」

 ピカチュウ 「ちゅぴっか!」

 リーフ 「チーちゃん“あまいかおり”よ! それから避けて!」

 チコリータ 「ちこりぃ!」 フワッ


ハッサムは“こうそくいどう”の効果で、かなり素早くなっている。

けど“あまいかおり”を浴びたことで、少しだけ動きに遅れが生まれた。

虫タイプに甘い香りは効果覿面。チーちゃんはハッサムの動きを見て、しっかりと回避した。


 リーフ 「“はっぱカッター”!」

 チコリータ 「ちこっ! ちこぉ!」 バシュッ!

 ハッサム 「ハッ……」


“はっぱカッター”はハッサムに直撃。

甘い香りの効果は思った以上。虫タイプだから――と言うより、たまたま あのハッサムの好みの香りだったのかもしれない。
 ▼ 130 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/30 00:05:46 ID:tZGwW1vk [3/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

  ソウヤ 「調子乗ってんじゃねーぞ! もう1発“シザークロス”!」

 サトシ 「ハッサムに“10まんボルト”!」

 ピカチュウ 「ぴかぁぁぁちゅぅぅぅ!」


  ソウヤ 「ッ! 避けろハッサム!」

  ハッサム 「ハッサ……!?」 バチッ


完全にチーちゃんに気を取られていたハッサム。

隙を突くタイミングだったけど、ハッサムは咄嗟に回避、ピカチュウの電撃は かすめた だけだった。


  ソウヤ 「かすった だけなのに、そこそこのダメージだな……!」

  スラン 「あのピカチュウ侮れないわね。先に潰すわよ!」

  ソウヤ 「おう! ハッサム、“こうそくいどう”からの“シザークロス”!」

  ハッサム 「サム!」


また“こうそくいどう”。

今は まだ対応できてるけど、これ以上素早くさせる訳にはいかない。


 リーフ 「チーちゃん! “あまいかおり”で……」

  スラン 「アンタは引っ込んでて! メタグロス! チコリータに“しねんのずつき”!」

  メタグロス 「メタ!」

 リーフ 「あっ……来るよチーちゃん! “はっぱカッター”で向かい打って!」

 チコリータ 「ちこっ!」
 ▼ 131 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/30 00:06:57 ID:tZGwW1vk [4/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

メタグロスが突撃して来る。

ナツヤ君のサンドパンを一撃で倒してしまうほどの強敵。しかも“こうそくいどう”3回でスピードは最高潮。


 チコリータ 「ちこぉっ! ちこっ!」 シュバババッ!


避ける――という選択肢は、多分通用しないと思う。なら、威力を弱めるしかない。

チーちゃんの繰り出す“はっぱカッター”は、迫りくるメタグロスに直撃している。無数の葉は確実にメタグロスを傷付けている。


  スラン 「そんな攻撃で止められると思わないことね!」


けど、メタグロスは止まらない。

タイプ相性的にダメージは小さいんだろうけど、メタグロスは葉を振り払い、強引に突っ込んでくる。大量の葉がフィールドに散らばる。


 リーフ 「頑張ってチーちゃん!」

 チコリータ 「ちこりぃぃぃ!」


  スラン 「無駄よ! やりなさいメタグロス!」

  メタグロス 「メタン!」


  ― ドバキッ!


 チコリータ 「ぢこっ……」

 リーフ 「チーちゃんっ!?」



メタグロスの勢いを、止められなかった。


“しねんのずつき”はチーちゃんに直撃。

自分より遙かに大きい鋼の塊に激突されて、チーちゃんは弾き飛ばされる。

フィールドに打ち付けられ、転がって、フィールドの隅で、ようやく止まった。
 ▼ 132 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/30 00:07:53 ID:tZGwW1vk [5/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 リーフ 「大丈夫チーちゃん!? しっかりして!」

 チコリータ 「ち……こぉ……」


大ダメージだ。

傷だらけのチーちゃんを見れば、どれだけの衝撃だったのか、痛いほど分かる。


  スラン 「ふふっ。ザコが出しゃばる場面じゃないのよ。メタグロス、ハッサムに加勢よ! “コメットパンチ”!」

  メタグロス 「メタ!」


見ると、ピカチュウは“アイアンテール”で、ハッサムは“つじぎり”で真っ向勝負中。

鈍い音が響き、一歩も譲らない ぶつかり合いが繰り広げられていた。


メタグロスが、それに加勢に行く。倒れたチーちゃんは眼中に無い、と言わんばかりに。





 チコリータ 「っ……」 ヨロヨロ

 リーフ 「チーちゃんっ!」


けどチーちゃんは、立ち上がった。

ふらふらと、全身傷だらけで、ダウンしてもおかしくないのに。


 リーフ 「チーちゃん、よく頑張ったね。でももう……大丈夫だよ」

 チコリータ 「ちぃ……!」


歯を食いしばり、呼吸も荒く、足元も おぼつかない。

立っているのが精一杯、むしろ、立ち上がれたのが奇跡に近いほど、チーちゃんはボロボロだった。
 ▼ 133 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/30 00:09:01 ID:tZGwW1vk [6/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 リーフ 「戻って、チーちゃん。これ以上はダメ」

 チコリータ 「ちこっ……ちこっ!」 ブンブン


チーちゃんは首を振る。


 リーフ 「負けたくない気持ちは分かるよ。でも、もうダメ。決勝まで勝ち進めて、もうじゅうぶん。じゅうぶん頑張ったから、ね?」

 チコリータ 「ちぃ! ちこぉ!」 ブンブン


チーちゃんは、じゅうぶん頑張ってくれた。

第1試合と第3試合に出場して、“あまいかおり”と“はっぱカッター”で、相手をダウンさせた。

バトル経験がほとんど無かったチーちゃんは、レンジャースクールの進撃に、大きく貢献してくれたんだ。だからもう――。


 リーフ 「チーちゃん! これ以上無理しちゃダメ。私、チーちゃんのためを――」

 チコリータ 「ちこりぃ! ちこっ……グスッ、ちっこぉ!」 ポロポロ

 リーフ 「チーちゃん……」


チーちゃんは、泣いていた。


傷の痛さ?

ボロボロにされた悔しさ?


ううん、違う。

きっと、諦めたくないっていう意思の表れ。

まだ戦いたい。まだ戦わせてほしい。そんな必死の訴えだと思う。


 チコリータ 「ちこ!」


チーちゃんは、目線と頭の葉っぱをフィールドに向けて、訴える。

そこにはピカチュウの姿。

たった1匹で、ハッサムとメタグロスを相手している、サトシ君のピカチュウの姿。
 ▼ 134 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/30 00:09:41 ID:tZGwW1vk [7/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


  ソウヤ 「ほらどうした! 追いついてねーぞ!」

  スラン 「“コメットパンチ”撃ちまくって!」


 ピカチュウ 「ぴかっ……、ぴっ……!」

 サトシ 「負けるなピカチュウ! “10まんボルト”で薙ぎ払え!」

 ピカチュウ 「びかぁぁぁちゅぅぅぅぅぅ!」 バチバチバチッ!


  ソウヤ 「おっと避けろハッサム!」

  スラン 「メタグロスも!」


 サトシ 「クッ……! 当たらない……!」

 ピカチュウ 「ぴかぁ……!」



サトシ君とピカチュウは、苦戦していた。

強さは秘めているはずなのに、攻撃がなかなか当たらないようだ。

ハッサムもメタグロスも、分かってるだけで“こうそくいどう”を3回、手に負えない素早さ。

素早さはピカチュウも負けてないけど、2体を同時に相手する疲労からか、だんだんと動きが鈍っている。


 リーフ 「このままじゃ、流石のサトシ君とピカチュウでも……」

 チコリータ 「ちこぉ……!」
 ▼ 135 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/30 00:10:56 ID:tZGwW1vk [8/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

でも、この状況で、私たちが出来ることって……。


チーちゃんは諦めていない。私だって諦めたくない。

けど、サトシ君でも苦戦している相手に、私たちは、いったいどうやって加勢すればいいんだろう。


 リーフ 「どうすれば……」


私とサトシ君、チーちゃんとピカチュウの強さは、一目瞭然。

逆にそのお陰で、プエル学園の人たちは、チーちゃんをノーマーク。

“しねんのずつき”でダウンした、もしくは もう戦う力は残ってないと思い込んでいる。


そんなの――悔しいよ。

サトシ君とピカチュウの隣に立って、彼らと同じ舞台でバトルしているのに、私とチーちゃんは蚊帳の外だなんて――そんなの悔しすぎるよ。


でも、どうすれば――。



  『頼んだわよリーフ』

  『特訓を思いだして! リーフなら大丈夫!』

  『サトシとピカチュウのサポート、任せたぞ!』

  『数の上では不利だけど、まだ負けるって決まった訳じゃないからね!』



フィールドに立つ前、みんなが背中を押してくれた。

私とチーちゃんの活躍を期待して、暖かい言葉で送り出してくれた。


 リーフ 「特訓……、サトシ君との特訓……、思いだして、私っ……!」


特訓は、絶対に無駄じゃない。

サトシ君との特訓は、私とチーちゃんを大きく成長させてくれた。


なにか……、なにか無いの?

この状況をガラッと変える、なにか突破口は……!


 ▼ 136 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/30 00:12:39 ID:tZGwW1vk [9/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 チコリータ 「ちこりっ!」


と、チーちゃんが私を呼ぶ。


 リーフ 「チーちゃん?」

 チコリータ 「ちこっ……!」 シュルッ


そして、“つるのムチ”を出してみせる。



  つるのムチ――。


  特訓――。


  ピカチュウ――。



 リーフ 「……そっか。その手なら!」

 チコリータ 「ちこっ♪」

 リーフ 「でもっ……、それじゃあチーちゃんが……!」

 チコリータ 「ちーこ! ちこりっ!」 シュルッ

 リーフ 「覚悟……できてるんだね?」

 チコリータ 「ちこっ!」 フンス

 リーフ 「じゃあ、やろっか!」

 チコリータ 「ちこっ!」



正直言うと、こんな方法、気が進まない。


でも、この状況を打破するため。この勝負に勝つため。

そして、チーちゃんの決意と覚悟をカタチにするため!



私たちは、サトシ君とピカチュウを、全力でサポートする!


 ▼ 137 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/30 00:13:24 ID:tZGwW1vk [10/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 サトシ 「“でんこうせっか”!」

 ピカチュウ 「ちゅぴぃ!」


  スラン 「遅いわよ! 連続で“コメットパンチ”」

  メタグロス 「メタ!」

  ソウヤ 「“つじぎり”だ! 逃げ場を無くせ!」

  ハッサム 「サム!」


 ピカチュウ 「ぴかぁ……」

  メタグロス 「メッタング!」 ドバキッ!

 ピカチュウ 「びかっ……」

 サトシ 「あっ……ピカチュウ!?」

 ピカチュウ 「ぴっ……、かぁ……」 ヨロッ


フィールドでは、ピカチュウにメタグロスの“コメットパンチ”が直撃。

大きく弾き飛ばされたピカチュウは、なんとか立ち上がったけど、かなり体力を消耗していた。


  スラン 「ふふっ。そろそろ諦めたら〜?」

 サトシ 「誰が諦めるか!」

  ソウヤ 「勝ち目なんて ねーよ。そのピカチュウじゃ、もうオレたちのポケモンには追いつけない。これ以上は無駄だぜ?」

 サトシ 「オレたちは最後まで諦めない! ピカチュウ!」

 ピカチュウ 「びがぁ……!」 グッ





 リーフ 「今だよ、チーちゃん!」

 チコリータ 「ちこぉっ!」 シュルッ!


 ▼ 138 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/30 00:14:26 ID:tZGwW1vk [11/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

  スラン 「メタグロス、軽〜く避けて……って何アンタ!?」

  ソウヤ 「チコリータ!? こいつ、いつの間に!?」


油断大敵、だよ。

チーちゃんが繰り出した“つるのムチ”は、ハッサムとメタグロス、それぞれをギュッと締め付けることに成功した。


  スラン 「その程度の攻撃で調子乗らないで貰えるかしら!」

  ソウヤ 「振りほどけハッサム!」


ダメージなんて、ほとんど無いと思う。

でもこれは、攻撃が目的じゃない。

じゃあ何が目的かって? サトシ君なら、気付いてくれるよね?



 リーフ 「今よサトシ君っ!」

 サトシ 「えっ!?」

 チコリータ 「ちこー! ちこっ、ちこりー!」


 サトシ 「……ははっ。そうか! そういうことか!」


 リーフ 「うん! お願いっ!」

 チコリータ 「ちこっ……!」

 サトシ 「リーフ! チーちゃん! 2人の覚悟、しっかり貰ったぜ!」

 ピカチュウ 「ぴっかぁ!」


 サトシ 「行くぞピカチュウ! チーちゃんに“10まんボルト”!」

 ピカチュウ 「びぃぃぃぃぃかぁぁぁぁぁぁ……!」
 ▼ 139 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/30 00:15:31 ID:tZGwW1vk [12/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

そう、そうだよサトシ君。

2人での特訓がヒントになったんだ。


あの時――、チーちゃんがピカチュウを“つるのムチ”で捕まえて。

そしたらピカチュウ、そのまま“10まんボルト”を繰り出して、ツルを伝って、チーちゃんが電撃を浴びちゃって。



 ピカチュウ 「ぢゅうううううぅぅぅぅぅ!!!」 バリバリバリッ!

 チコリータ 「ぢぃっ……!」



それと同じ原理。

いくら素早い相手でも、いくら素早く動いていても、“繋がって”さえいれば、そんなの関係ない。

チーちゃんのツルは、ハッサムとメタグロスを、しっかりと捕えている。振り解かれないように、しっかりと。



  ハッサム 「ハッ……サァァァ……!?」

  メタグロス 「メダァァァァァ……!?」



だから、チーちゃんが電撃を浴びれば、その電撃は当然、2匹にも流れる。


  ソウヤ 「んな馬鹿な!?」

  スラン 「嘘でしょ!? 仲間を犠牲に……!?」



 リーフ 「犠牲? 違うよ。犠牲なんかじゃない!」


これは、チーちゃんの提案。

負けたくない、諦めたくないって言う、チーちゃんの強い想い。

自分をバカにするな、自分だってバトルで大きな役割を果たすんだぞって言う、チーちゃんの決意。

勝つために出来ること、勝つためにしなければならないこと、その唯一の方法を実行に移す、チーちゃんの覚悟。



 リーフ 「これは……私とチーちゃんの覚悟! あなたたちなんかに負けないって言う……、私たちの決意のカタチなんだから!」


 ▼ 140 エトル@とくせいカプセル 21/08/30 00:16:33 ID:uUVsqUzQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 141 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/30 00:17:12 ID:tZGwW1vk [13/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 ― バチバチッ……バリッ、ビシッ……



  チコリータ 「っ……」


  ハッサム 「ハッ……」


  メタグロス 「メ……ダ……」



 実況 『ハッサム、メタグロス、そしてチコリータ、戦闘不能! なんと……なんという戦法! チコリータの捨て身の覚悟は! プエル学園を残り1体に追い詰めたぁ!』


 ▼ 142 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/30 00:19:10 ID:tZGwW1vk [14/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 リーフ 「チーちゃんっ!」

 チコリータ 「ち、こ……」


私はチーちゃんに駆け寄って、抱きしめる。

ピカチュウの電撃の中継を無謀にも買って出たチーちゃんは、今までにないくらいボロボロで――。


今までにないくらい、輝いていた。



 リーフ 「頑張ったね……グスッ、ホントにっ、頑張ったね……」 ギュッ

 チコリータ 「ちこ、りっ……」 ニコッ

 サトシ 「チーちゃん、ありがとな」

 リーフ 「サトシ君……」

 サトシ 「やっぱりチーちゃんは根性あるよ。よくやってくれたな、チーちゃん」 ナデナデ

 チコリータ 「ちぃ……♪」

 サトシ 「ゆっくり休んでてくれよ。あとはオレに任せとけ」

 リーフ 「うん」


サトシ君に促され、私はチーちゃんを抱いて、待機スペースへと向かう。



 サトシ 「リーフとチーちゃんの覚悟、絶対に無駄にしないからな!」



 リーフ 「あっ……」


背中に受けた、サトシ君の声。

振り返ると、サトシ君は既にフィールドを見据えていた。


彼の堂々とした背中、逞しい背中は、あまりにも眩しくて、頼もしくて、格好良くて。


やっぱり私は、彼のことが――。




 ▼ 143 レシー@きんのたま 21/08/30 08:53:24 ID:4hsE9EbE NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 144 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/31 00:13:02 ID:4GHwb6G. [1/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 ヒトミ 「お疲れさま。リーフ、チーちゃん」

 ミナミ 「あなたたち凄いわよ、ホント」

 リーフ 「そうかな……」

 ナツヤ 「凄いに決まってんだろ。ハッサムとメタグロスを突破できたんだぜ!」

 ハジメ 「リーフとチコリータの覚悟、しっかり実を結んだね」

 リーフ 「うん。チーちゃん、本当に よく頑張ってくれたよ」

 ヒトミ 「ふふっ。しっかりサトシのサポートできたわねっ」

 ミナミ 「そうね。こんな大役、リーフにしか務まらないわよ?」

 ナツヤ 「サトシとリーフ、なかなか良いコンビだな!」

 リーフ 「うん……///」

 ミナミ 「ほら、始まるわよ。最後のバトル」





 ホクト 「とうとう最後、僕の出番ですね。行きますよボスゴドラ!」

 ボスゴドラ 「グオォォォォォ!」


 サトシ 「頼むぜピカチュウ! これがラストだ!」

 ピカチュウ 「ぴかぁ!」


 実況 『決勝戦、ついに両者ラスト1体! これで勝負が決まります!』


 ホクト 「君のピカチュウの強さは認めましょう。けど僕のボスゴドラには届かない! “ボディパージ”!」

 バンギラス 「ゴアァァ!」 キュィィィン


ついに、最後のバトルが始まった。

残りは1体ずつ。泣いても笑っても、これが最後。勝った方が優勝だ。
 ▼ 145 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/31 00:13:46 ID:4GHwb6G. [2/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ヒトミ 「“ボディパージ”って、素早さがグーンと上がるワザだよね?」

 ハジメ 「うん。プラス、自分の体重が軽くなるワザだ」

 ナツヤ 「プエル学園の奴ら、“こうそくいどう”といい“ボディパージ”といい、素早さを上げる戦法を貫いてるな」

 ハジメ 「厄介だね。メタグロスにボスゴドラ。ただでさえ強敵なのに、素早さまで上げられたら……」

 リーフ 「大丈夫。サトシ君ならきっと――絶対、勝てるよ!」

 ヒトミ 「そうだよね。サトシとピカチュウなら……!」



 ホクト 「さぁ行きますよ! “すてみタックル”!」

 ボスゴドラ 「ドァァァァ!」


 サトシ 「“でんこうせっか”で避けろ!」

 ピカチュウ 「ぴかっ!」



 ハジメ 「でも実際問題、ピカチュウは不利だよ」

 ナツヤ 「あぁ。今までのバトルで、かなり消耗してる。対してボスゴドラは、まだ無傷」

 ヒトミ 「誰もサトシ君とピカチュウをサポートできないのも……悔しいよね」

 ミナミ 「せめてフィールドが味方してくれればね。“あまごい”の水、ほとんど捌けちゃったし」

 ナツヤ 「そうか。ボスゴドラは岩タイプも入ってるし、フィールドに水が残ってれば、少しは有利になったかもしれないのか……」

 リーフ 「私たちが考えても仕方ないよ。今はサトシ君を信じよう」

 ヒトミ 「そうだね。それしかないよね!」


もう手出しできない私たちは、サトシ君を信じて見守るしかない。

大丈夫、サトシ君なら、絶対に勝ってくれるはずだ。



とは言ったものの――。



 ▼ 146 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/31 00:14:41 ID:4GHwb6G. [3/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ホクト 「“ストーンエッジ”!」

 ボスゴドラ 「ドァァァァァ!」 ザシュッ!

 ピカチュウ 「ぴかぁっ……」

 サトシ 「ピカチュウ!?」


 実況 『ボスゴドラ強いぞ! ピカチュウ疲れがでてきたか!? ボスゴドラに押されっぱなしだぁ!』


考えてみると、ピカチュウは ほぼ最初からバトルに参加している。

それなりにダメージも受けていて、疲れが出ない訳が無い。


 ピカチュウ 「ぴっ……、ぴかっ、ぴかっ……」

 サトシ 「クッ……! どうする? ボスゴドラのスピードに ついていけない……!」


 ホクト 「“アイアンヘッド”!」

 ボスゴドラ 「グォォォ!」 ダッ!

 サトシ 「“アイアンテール”で向かい打て!」

 ピカチュウ 「ちゅぴっかぁ!」


迫りくるボスゴドラの巨体。

ピカチュウは鋼の尻尾をボスゴドラの頭に叩きつけるけど……。


 ボスゴドラ 「ドォォァァァ!」

  ― バキャッ!

 ピカチュウ 「びがっ……」


 実況 『“アイアンヘッド”が炸裂ぅ! ピカチュウ、“アイアンテール”で勝負に出るも敵いません!』


ピカチュウは、ボスゴドラに押し負けてしまう。

もう体力は ほとんど残っていない。相打ちすらできない、厳しい状況だ。
 ▼ 147 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/31 00:15:56 ID:4GHwb6G. [4/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ヒトミ 「頑張ってー! サトシー! ピカチュウー!」

 ハジメ 「行けサトシ! まだ負けた訳じゃない!」

 ナツヤ 「最後まで諦めるなよー!」



 サトシ 「ピカチュウ……、まだ行けるか?」

 ピカチュウ 「ぴっか……!」


 ホクト 「まだ立つか。やはり君は、少しは違うようですね」

 サトシ 「オレたちは絶対に最後まで諦めない!」

 ピカチュウ 「ちゅぴぃ!」

 ホクト 「ほぉ。他のザコたちとは大違いですね」

 サトシ 「ザコ……だと?」

 ホクト 「振り返ってみたらどうです? なにも出来ずに散ったブイゼルとゴンベ。サンドパン、カメール、チコリータも、結局はピカチュウのサポートだけで、満足に戦ったと言えますか?」

 サトシ 「ふざけるな! オレとピカチュウは! みんなのサポートを受けたからここまで戦えたんだ! みんなを馬鹿にするのは許さないぞ!」

 ホクト 「ザコをザコと言って何が悪いんですか。所詮はレンジャースクール、ポケモンと仲良く遊んでるのが お似合いですよ」

 サトシ 「仮にザコだったとしたら! ここまで勝ち進んできたことは どう説明するんだよ!」

 ホクト 「たまたま弱い学校と当たったんでしょうね。僕たちから見て! お前たちレンジャースクールはザコだって言ってるんですよ!」

 サトシ 「こいつ……!」



酷いよ、あんなこと言うなんて。

みんな頑張って……、チーちゃん、あんなに頑張って、場を繋げたって言うのに!


 ミナミ 「サトシー! そんな奴っ……、ぶっ潰してやって!」

 ナツヤ 「オレたちは……、サトシの特訓のお陰でここまで来れたんだ!」


 リーフ 「頑張ってサトシ君! ピカチュウ! 私たちの想いっ……、私たちの絆っ! 届いてぇ!」


 ▼ 148 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/31 00:16:55 ID:4GHwb6G. [5/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 サトシ 「………」


サトシ君は、無言のまま、フィールドを見つめている。

震える握り拳は、怒りなのか、悔しさなのか、それとも両方なのか、私たちには分からない。


6対6のバトルを行ってきたフィールドは、改めて見ると、かなり荒れていた。

最初の“だいばくはつ”から始まり、サンドパンの掘った穴や、電撃で焦げた跡、抉られた跡、チーちゃんが放った葉っぱが散乱している。

これがポケモンリーグなら、途中でフィールドチェンジが行われるらしいけど、こういう特設フィールドの大会では、そこまでは出来ないらしい。


その無残なフィールドは、まるで、馬鹿にされた私たちの心を表しているかのようで……。



 サトシ 「“私たちの想い”――か。へへっ!」



えっ?


サトシ君……笑った?



 サトシ 「届いたぜリーフ! みんなの想い!」 グッ!

 リーフ 「あっ……」 ドキッ


サトシ君はチラッと私の方を振り向くと、そう言って、ガッツポーズを見せた。

届いた、って……?

サトシ君、この状況をひっくり返す方法を、思いついたってこと……?


 ナツヤ 「サトシ、まだ何か手があるって言うのか?」

 ヒトミ 「そんなことより! 今のサトシのアピール! リーフに向けたアピールっ!」

 ミナミ 「これ案外、サトシもリーフのこと意識してるんじゃないの〜?」

 リーフ 「えっ!? そっ、そんなことはっ……!」

 ハジメ 「ほら! サトシが動くぞ!」
 ▼ 149 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/31 00:17:50 ID:4GHwb6G. [6/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 サトシ 「ピカチュウ“でんこうせっか”だ! フィールドを走りまくれ!」

 ピカチュウ 「ぴか? ちゅぴぃ!」 ダッ!

 ホクト 「なにかと思えば……素早さで翻弄する気ですか? 無駄です! もう一度“ボディパージ”!」

 ボスゴドラ 「ドラァ!」 キュィィィン



なにをする気なの、サトシ君?


ピカチュウが“でんこうせっか”でフィールドを駆けまわる。

舞い上がる砂埃。舞い上がる葉っぱ。でも、ボスゴドラに攻撃する訳では無く、駆けまわるだけ。


 ホクト 「“すてみタックル”です!」

 ボスゴドラ 「ドァァァァァァ!」

 サトシ 「かわせ!」

 ピカチュウ 「ぴっか……!」

 ホクト 「猪口才な! 連続で“すてみタックル”!」

 ボスゴドラ 「ダァァァァァ!」

 サトシ 「飛べピカチュウ! 右だ!」

 ピカチュウ 「ぴっ!」

 サトシ 「下がって……左っ!」

 ピカチュウ 「ぴかぁ!」


 実況 『身軽になって素早く打ち出されるボスゴドラの“すてみタックル”! ピカチュウ、避けるしか ありません!』



 ナツヤ 「どうするんだサトシ!?」

 ミナミ 「避けてばっかりじゃ、そのうちピカチュウも限界が……!」


確かに、避けてばっかりだ。

でも、避けるだけなら、あんなに具体的に方向を指示するかな?

なんだか、ボスゴドラを誘導しているような……?
 ▼ 150 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/31 00:19:41 ID:4GHwb6G. [7/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 サトシ 「よし! “でんこうせっか”だ! あの緑の広告の所へ回り込め!」

 ピカチュウ 「ちゅぴぃ!」


また、具体的な指示が出た。

フィールドのまわりを囲む、スポンサーの広告。その一つを指定して、サトシ君はピカチュウを動かす。


 ホクト 「“ストーンエッジ”です!」

 ボスゴドラ 「ドラァァァァァ!」 バシュッ!


発射される、無数の尖った岩。

ピカチュウは“でんこうせっか”の勢いを利用して、器用に避けて行くけど……。


 ― ザシュッ!


 ピカチュウ 「ぴっ……!」


何発かが、ピカチュウを かすめる。

鋭利に尖った岩、例え かすっただけでも、深い傷を追ってしまう。


 ― ズザザッ! ブワッ!


 ピカチュウ 「ぴかっ!?」

 サトシ 「あっ!」


 実況 『おぉっと! 地面に ぶつかった岩が砂埃を巻き上げ! ピカチュウの目にぃ!』


 ヒトミ 「うそっ!?」

 ハジメ 「なんで今!? この状況で視力まで奪われたら……!」
 ▼ 151 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/31 00:21:17 ID:4GHwb6G. [8/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

荒れたフィールドが、こんな形で不利な状況を作り出すなんて。


巻き上がった砂埃は、運悪くピカチュウの顔に、ピカチュウの目に降りかかる。

痛そうに目を擦るピカチュウだけど、水で洗わないと、目を開くことなんて……!



 ホクト 「残念でしたね。トドメですボスゴドラ! “すてみタックル”!」

 ボスゴドラ 「ドアァァァァァァァァ!」 ダッ!



 ヒトミ 「危ないピカチュウ!」

 ミナミ 「避けてっ! あんなの喰らったら!」

 リーフ 「ピカチュウ……、頑張ってピカチュウ!」










 サトシ 「……ニヤリ」










  ― ズボッ!



 ボスゴドラ 「ダッ!?」

 ホクト 「なんだ!?」


 ▼ 152 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/31 00:22:43 ID:4GHwb6G. [9/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


みんなが諦めかけた、その時。奇妙なことが起きた。

ボスゴドラの右足が、ガクンと、地面に吸い込まれたのだ。


 サトシ 「ピカチュウ! お前の正面だ! その穴に尻尾を!」

 ピカチュウ 「ぴっ!」



ボスゴドラは、突然のことに焦っているようだ。


穴に……落ちたの? 右足だけ? ピンポイントで?


突然のこと過ぎて、バランスを崩した体勢の立て直しに戸惑っている。



 サトシ 「行くぜ……“10まんボルト”!」

 ピカチュウ 「びぃぃぃぃがぁぁぁぁぁぁ! ぢゅううううううぅぅぅぅぅぅぅ!!!」


  ― ゴゴゴゴゴッ……バリバリバチバチバチバチッ!


 ボスゴドラ 「ボッ……ダァアアッァァァァァッァァァ!?」

 ホクト 「なっ……なんだ!? なにが起きたって言うんです!?」



本当に……何が起きてるの!?


ピカチュウが、傍にあった穴に尻尾を入れたかと思うと、そこで“10万ボルト”を放って。

それが、遙か先で穴に嵌っているボスゴドラに、直撃したのだ。
 ▼ 153 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/31 00:24:44 ID:4GHwb6G. [10/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 サトシ 「ホクト……って言ったっけ。オレたちの絆を馬鹿にして貰っちゃ困るぜ?」

 ホクト 「なっ……」

 サトシ 「この穴、なんだと思う? サンドパンが掘った穴だ」



ボスゴドラがハマったのは、ナツヤ君のサンドパンが掘った穴――。

ゲンガーとメタグロスを相手した時に掘った穴が、こんな形で役に立つなんて。

サトシ君は、この穴にボスゴドラを誘導していたんだ。



 ホクト 「っ……! だが! 単なる穴がなぜ電気を!?」

 サトシ 「このフィールド、仮設の割に、水捌けが良いとは思わないか?」

 ホクト 「水捌け? 何を言って……」

 サトシ 「オレ気付いたんだよ。カメールの“あまごい”で降らせた雨水、全部この穴に流れ込んでるってな!」

 ホクト 「っぐぅ!?」



そうか……、水捌けの良さは、そういうことだったんだ。

サンドパンが掘った穴に、ミナミちゃんのカメールが呼び寄せた“あまごい”の水が流れ込む。穴の中は水で満たされる。

そこに右足を突っ込んだボスゴドラ。

“10まんボルト”は、穴の中の水を伝って、ボスゴドラに直撃したってことだ。



 サトシ 「普通に“10まんボルト”打っても避けられちまうからな。穴の位置さえ分かれば、目を瞑ってても攻撃は可能さ」



サトシ君がピカチュウに細かい指示を出していたのは、ボスゴドラの攻撃の軌跡を穴の位置に合わせるため。

そして、ピカチュウ自身を、反対の穴の位置に、正確に導くため。確実に攻撃を決めるため――!
 ▼ 154 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/31 00:25:40 ID:4GHwb6G. [11/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ホクト 「なんで穴を避けなかったんだボスゴドラ!?」

 サトシ 「見えなかったから――、だろ」

 ホクト 「なにっ?」

 サトシ 「まさかオレが、ただ逃げるためだけに“でんこうせっか”を指示したと思ったのか?」

 ホクト 「どういうことだ……!?」

 サトシ 「巻き上げたんだよ。チーちゃんが“はっぱカッター”で出した、たくさんの葉っぱを」

 ホクト 「巻き上げた……まさか!?」

 サトシ 「葉っぱで穴を隠したのさ! 落とし穴みたいにな!」

 ホクト 「こんの野郎っ……!」



サトシ君は、チーちゃんの“バトルした証”も、しっかり活用してくれた。

迫りくるメタグロスに放ち続けた、大量の“はっぱカッター”。

結果的にチーちゃんは押し負けちゃったけど、その葉っぱをも、サトシ君はバトルに役立ててくれたのだ。





サトシ君は“みんなの想い”を、しっかり受け取ってくれて――。





 サトシ 「これが! オレたちレンジャースクールの! 絆の結晶だ! ピカチュウ! 最大パワー!!!」

 ピカチュウ 「びぃぁびかびかびかぁぁぁぁ……ぢゅびいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」


  ― バリバリバチバチバチッ……ピシッ、ピシャッ、バチバチッ……ドゴオオオオオォォォォォォォォン!!!


 ▼ 155 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/31 00:26:52 ID:4GHwb6G. [12/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



地面が、割れた。


ピカチュウ渾身の“10まんボルト”は、穴の水を伝ってボスゴドラを捉え続け――。


最大パワーに達した電撃は、穴を内部から破壊し、地割れの如く、フィールドを真っ二つにした。


電撃の黄色い閃光が、割れた地面から拡散し、耳が痛くなるほどの轟音とともに、ボスゴドラを呑みこんだ。



 ハジメ 「うわっ!?」

 ミナミ 「ちょっ……!?」

 ヒトミ 「きゃぁぁぁぁっ!?」

 ナツヤ 「っ……! 捕まれっ!」

 リーフ 「んっ……!?」



爆風と、爆煙が巻き起こる。


仮設テントは崩れ、広告看板は飛び、放送装置はハウリングを起こした後に電源が落ち、中継用の大型モニタは粉々に割れ――。


これが……“10まんボルト”なの?


サトシ君のピカチュウは、こんなにも凄まじい力を秘めていたの?


私たちは、こんなに凄い人から特訓を受けて、一緒に大会に出場していたの?





もう、全てが驚きだった。





 ▼ 156 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/31 00:27:35 ID:4GHwb6G. [13/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 『ガガッ……ザッ、ビィィ……あっ! あーあー、マイクテスト、マイクテスト』





爆煙が晴れる。


ボロボロだったフィールドは、もう原型を留めていない。


フィールドの四方八方が、まるで竜巻でも通ったんじゃないかってほど、荒れ果てていた。


そんな無残な景色の中で、ひときわ華やかに輝く、黄色い姿。


赤いホッペとギザギザ模様は傷だらけだけど、堂々と、しっかりと、そこに立っていた。



 実況 『凄い……凄いぞピカチュウ! 凄いぞレンジャースクール! プエル学園のボスゴドラを倒し! ピカチュウの勝利! 優勝は! レンジャースクールです!』



 サトシ 「ぃよっしゃあああぁぁぁぁぁ!」

 ピカチュウ 「ぴっかぁぁぁ!」



ウオオオオオオォォォォォ!

――と、耳が痛くなるほど大きな歓声が上がる。



勝ったんだ。

サトシ君とピカチュウ、勝ったんだ!


 ▼ 157 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/31 00:28:26 ID:4GHwb6G. [14/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 実況 『12年ぶり出場のレンジャースクール! 悲願の初優勝を飾りました! 強豪プエル学園を制すなど、誰が予想したでしょうか!? アルミア学校選抜バトル大会の歴史に名を残す勝利です!』



 ハジメ 「っしゃあああぁぁぁぁぁ!!!」

 ナツヤ 「やりやがった……! やりやがったよサトシ!」

 ヒトミ 「凄いよ凄いよ! 優勝だよ! 私たちのレンジャースクールがっ……優勝っ!」

 ミナミ 「ホントにもぉ……やるじゃんサトシ! ぁやばっ、涙っ……グスッ」

 リーフ 「凄すぎるよ、サトシ君も、ピカチュウも。私たちの想い、きっちり受け取ってくれてっ……!」

 ナツヤ 「行こうぜみんな!」



みんなで、思わず走り出す。

この激闘を制した、サトシ君とピカチュウの元へ。



 サトシ 「お疲れさん、ピカチュウ。よく頑張ってくれたな」 ナデナデ

 ピカチュウ 「ぴかちゃぁ〜」 グッタリ

 サトシ 「ははっ! 疲れちまったよな、さすがに」


 ▼ 158 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/31 00:29:41 ID:4GHwb6G. [15/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 ナツヤ 「サトシー!」

 ハジメ 「ありがとう! 本当にありがとう!」

 ミナミ 「やったわねサトシ! アンタ本当に凄いわよ!」 ダキッ

 サトシ 「ちょっ……」

 ヒトミ 「ほらミナミちゃん! 抱き付かないの!」

 ミナミ 「ふふっ。まったく、ハラハラさせてくれるじゃない。ホント凄いわよ、サトシ!」

 ナツヤ 「感動したよオレ! あんな戦法、どうやったら思いつくんだよ!?」

 ハジメ 「穴を活用したのは分かるよ。でも、葉っぱを巻き上げて穴を隠す――、そんな落とし穴みたいなこと、あんな極限状態で思いつくものなの?」

 サトシ 「へへっ。まぁ強いて言うなら、今まで何度も落とし穴には落ちてきたからな」

 ハジメ 「えっ?」

 ヒトミ 「旅の経験、ってことだよね。バトルの強さも、サトシの戦略も!」

 サトシ 「そういうこと、だな!」

 ピカチュウ 「ぴっか!」


みんな、興奮してサトシ君を囲み、祝福する。

嬉しいもん。12年ぶりに出場したレンジャースクールが、初優勝を飾れて。

今まで私たちを馬鹿にしてきたプエル学園の人たちに、決勝という舞台で勝つことができて。


 ヒトミ 「ほーら、リーフも」 グイッ

 リーフ 「あっ……」

 サトシ 「リーフ。ありがとな。勝利の流れを作ってくれたのは、間違いなく、リーフとチーちゃんだぜ?」

 リーフ 「……ふふっ。ありがとうサトシ君。凄かったよ。本当に、本っ当に凄かった! 格好良かった!」

 サトシ 「へへっ。リーフの声、しっかり聞こえたぜ。“みんなの想い”!」

 リーフ 「うんっ! 私たちの頑張り、しっかり繋いでくれて……、本当に嬉しいっ」

 ヒトミ 「あーらら、とっても良い笑顔ね、リーフ」

 ナツヤ 「ミナミみたいに抱き付いちゃえよ」

 リーフ 「ふぇっ!? わっ、私は無理だよそんなのっ……///」

 ミナミ 「あははっ。リーフ、バトルは凄い気合いと覚悟だったのに、こっちはダメね〜」

 リーフ 「もぉっ……///」

 ヒトミ 「ふふっ。とにかく優勝だよ! 優勝!」
 ▼ 159 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/31 00:30:54 ID:4GHwb6G. [16/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

バトル大会で優勝――。


私たちに全く縁の無かったことが、今こうして、現実になった。

皆で掴んだ優勝。サトシ君が導いてくれた優勝。ポケモンたちが頑張って実現させてくれた優勝。


こんなに嬉しくて、楽しくて、刺激的で、泣きたくて、叫びたくて、とっても気持ち良い気分、生まれて初めてだな。





 記者1 「レンジャースクールの皆さん、初優勝おめでとうございます! 集合写真良いですか?」

 記者2 「あー、こっち向いて下さい! そう自然な笑顔で!」

 記者3 「強豪のプエル学園を破った感想とか、みなさん全員から貰いたいですね」

 記者4 「出来ればポケモンたちにも出て貰って。バトルの振り返りとかも」



喜びも束の間、私たちは、記者の人たちに囲まれた。

強豪校を破って初優勝、それも、12年ぶりの出場で、ポケモンバトルに縁のないレンジャースクールとなれば、注目度は高いに決まっている。


あーあ、しばらく動けないかもね、この様子だと。ふふふっ。





 実況 『レンジャースクール、おめでとう! 本当におめでとう! 皆様、いまいちど、大きな拍手と歓声を!!!』


  ― ウオオオオオオオオォォォォォォォ!!!



 実況 『さてこの後は、第2フィールドにて、3位決定戦を行います。スタッフは、所定の位置へと―――』










 ▼ 160 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/31 00:31:41 ID:4GHwb6G. [17/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



   *   *   *



大会会場の外れ、倉庫街――。


 カムイ 「畜生! レンジャースクールの奴ら、良い気になりやがって!」

 エルム 「マジムカつく! 3位決定戦のメンバーから外されるし! 恥ずかしいったらありゃしない!」

 ゲンガー 「ゲン……」

 マリルリ 「ルリ……」

 カムイ 「だいたいゲンガー! お前っ、もうちょっと耐えろよ! ザコに負けてんじゃねーぞ!」

 ゲンガー 「ンガァ!?」

 エルム 「ちょっと。ポケモンに当たるのはトレーナー失格よ」

 カムイ 「……チッ! お前は二軍だ。一から鍛え直しやがれ」

 ゲンガー 「ゲンッ!」 キュィィィン

 カムイ 「なに“シャドーボール”打とうとしてんだよ!? 不貞腐れてんのか!?」

 エルム 「やめなってカムイ!」

 カムイ 「あーあ! つまんねぇな!」

 ゲンガー 「……ゲン!」 バシュッ!

 エルム 「こらゲンガー。気持ちは分かるけど、空に“シャドーボール”打つのは――」



  ― バキッ!

 「ふりゃあぁぁぁぁっ!?」



 カムイ 「んっ!?」

 エルム 「ちょっ……ほらぁ!」

 カムイ 「ヤベェ。戻れゲンガー! こんなトラブル起こしたのバレたら、それこそプエル学園の恥だ」

 エルム 「戻ってマリルリ。行くわよ。私たち、なんにも見てないんだから!」



   *   *   *



 ▼ 161 ンガー@シルバースプレー 21/09/01 18:11:48 ID:Sw5gJNUE NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
バトルがアニポケっぽくて好き
 ▼ 162 イコウ@ボイスチェッカー 21/09/04 00:18:43 ID:2BJ./yO2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 163 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/09/06 01:27:01 ID:sYKI8RII [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 ミナミ 「はぁ〜ぁ。インタビューってこんなに疲れるものなのね〜」

 ナツヤ 「嬉しいことだけどな」

 サトシ 「ははっ。やっぱ疲れるよな、こういうインタビューって」


控室で記者に囲まれていた私たち。

ようやくインタビューが終わって、一息つくことが出来た。


 ハジメ 「けど……、実感湧かないね、正直」

 ヒトミ 「うん。優勝かぁ……私たちが」

 リーフ 「サトシ君のお陰だよ」

 サトシ 「いや、これはみんなで掴んだ優勝だぜ。みんなのバトルが無かったら、最後のボスゴドラは倒せなかったと思うしな」

 リーフ 「そうかもしれないけど、みんなをここまで成長させてくれたのは、やっぱりサトシ君の お陰だよ。本当にありがとう、サトシ君」

 ハジメ 「そうだよ。優勝に導いてくれたサトシには、本当に感謝してる」

 ナツヤ 「あぁ。サンキューな、サトシ」

 サトシ 「へへっ」

 ミナミ 「あとリーフ。あなたとチーちゃんの活躍も凄かったわよ」

 ヒトミ 「そうそう! あんな判断、なかなか出来ないわよ」

 リーフ 「うん。……本当は、普通のバトルでチーちゃんを勝たせてあげたかったけどね」

 ナツヤ 「悔しいけど、サトシくらいのレベルがなきゃ、僕たちにプエル学園の奴らを倒すのは無理だったよ。そう考えれば、リーフとチコリータの捨て身の作戦は、最適解だった思うぞ」

 サトシ 「リーフとチーちゃんの覚悟が、バトルの流れを変えてくれたんだ。あの状況で あんな作戦思いつくの、ホントに凄いことだぜ?」

 リーフ 「ふふっ。サトシ君との特訓の成果、かなっ」

 ▼ 164 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/09/06 01:28:54 ID:sYKI8RII [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ヒトミ 「あっ、ねぇねぇ! 閉会式まで時間あるからさ、サトシとリーフ、ちょっと遊んでくれば?」

 ミナミ 「あー良いわね! 大活躍の2人で楽しんで来なさいよ。ピカチュウたちの回復は私たちに任せてさ!」

 リーフ 「えっ!?」


ねぇ待ってミナミちゃんヒトミちゃん。なんてこと言いだすの!?


 サトシ 「いや、そんな悪いよ。みんなが活躍した訳だし、遊び行くんならみんなで……」

 ナツヤ 「サトシ、行って来い。リーフも行きたがってるぞ」

 リーフ 「ぇっ、あのっ、私はっ……///」


ナツヤ君まで!

行きたくない――って言ったら嘘になるけど、そんな2人きりだなんて。


 ヒトミ 「おいでピカチュウ。わーフサフサー、可愛いー!」 ギューッ

 ピカチュウ 「ぴかぁ♪」

 ミナミ 「ね、サトシ、リーフ。私たちを優勝に導いてくれた2人に お礼したいのよ。楽しんで来てよ」

 サトシ 「そうか? どうするリーフ?」

 リーフ 「あっ、えっと、サトシ君さえ良ければ……うん」

 ナツヤ 「そうこなくっちゃな!」

 ヒトミ 「ふふっ。いってらっしゃい」



もぉ、みんなして、私とサトシ君を2人きりにさせようとするんだから……。

しかも、チーちゃんもピカチュウも居ない、完全な2人きり。

私はそのっ、全然良いんだけど、サトシ君はどうなんだろう。女の子と2人きり――私と2人きりで出かけること、どう思ってるんだろう。


あぁどうしよう、緊張しちゃうよぉ……。


 ▼ 165 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/09/06 01:31:57 ID:sYKI8RII [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 サトシ 「決勝戦前にピカチュウと回ったけどさ、けっこう色んな屋台が出てたぜ。ホントお祭りなんだな」

 リーフ 「あっ、うん。アルミア地方ってポケモンリーグとか無いから、このバトル大会が一番のバトルの祭典なの」

 サトシ 「へぇ〜。お、アイス食おうぜ!」

 リーフ 「ふふっ、うん!」



私とサトシ君は、屋台街の散策を楽しんだ。

アイスを食べながら、射的をやったり、金魚すくいをしたり、ストラックアウトに挑戦したり。


  『お、レンジャースクールさん! 優勝おめでとう!』

  『凄かったよ! チコリータとピカチュウ!』

  『可愛いのに強くて感動しちゃった! 私もチコリータ育ててみる!』


巡る先々で、祝福の言葉をかけられる。

地元、プエル学園を破っての優勝というのは、それだけ偉大なことなんだと、改めて実感した。


 サトシ 「綿飴も いってみるか?」

 リーフ 「うん。綿飴なんて、食べるの何年ぶりだろう?」


始めは緊張していた、サトシ君と2人きりの時間。でもそんな緊張は、すぐに消えていた。

思いっきり楽しんでいるサトシ君を見ていると、私も笑顔になって、私も心から楽しい気分になって。


信じられないな。

男の子と話すことも苦手だった私が、サトシ君と2人きりで、自然体で楽しむことができるなんて。

傍から見ればデートみたいな、2人だけの時間。それを、緊張せずに、こんなに楽しむことができるなんて。


サトシ君の強さと、優しさと、格好良さ。それに、ポケモンを想う純粋な心。

そんなサトシ君の全てに、私は惹かれていった。日を追うごとに、惹かれていった。


これは、きっと――。





  「ふりゃああぁぁぁぁぁ!」 バサッ!


 ▼ 166 イリュー@ホズのみ 21/09/06 12:18:44 ID:FXqsO3I. NGネーム登録 NGID登録 報告
青春やな
支援
 ▼ 167 タシラガ@くさのジュエル 21/09/08 07:55:27 ID:MX1ElleI NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
続き期待ンネ
 ▼ 168 ットロトム@イーブイZ 21/09/10 16:15:45 ID:IwDMgOk2 NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 169 モー@ピンクのリボン 21/09/17 00:06:44 ID:ecIwtcFw NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 170 ルビー@どくどくだま 21/09/24 10:33:16 ID:rJdk/qwg NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 171 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/09/29 23:47:37 ID:6IH6KQ4M [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 リーフ 「えっ!?」

 サトシ 「なんだ今の鳴き声!?」


それは、突然のことだった。


小さな広場でサトシ君と綿飴を食べている時。

サトシ君と2人きりで居ることを心地良く感じていた、まさにその時。

尋常じゃないような、ポケモンの叫び声が聞こえたのだ。


 サトシ 「向こうからだ!」

 リーフ 「あっ、待ってサトシ君!」


走り出したサトシ君。私も彼に ついて行く。


この大会の会場は、物流・海運の倉庫街に、夏休み限定で作られたもので、特設フィールドや屋台で賑わっているのは、一部の区画のみ。

そんな区画の外に出ると、人気のない、静まり返った物流倉庫が立ち並んでいる。



そんな静寂を、打ち破るかのように。



 フライゴン 「ふりゃぁぁ! ふりゃあ!」 バキッ! バキッ!



 サトシ 「あいつだ!」

 リーフ 「すごい興奮してる……!」


そこに居たのは、興奮して木箱や塀を破壊している、1匹のフライゴンだった。おそらく野生。

これだけ激しく暴れているのに、逃げ惑う人も居なければ、通報された雰囲気も無い。


 サトシ 「かなり暴れてるな。怪我してる人とかは……!」

 リーフ 「たぶん居ないと思うよ。この倉庫街も夏休みのはずだから」


物流作業が止まる、倉庫街の夏休み。

倉庫街の夏休みに合わせて大会が開催されるくらいだから、人は居ないはずだ。
 ▼ 172 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/09/29 23:51:32 ID:6IH6KQ4M [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 フライゴン 「りゃああぁあ! ふりゃっ!」 バキャッ!


 サトシ 「落ち着けフライゴン! なにがあったんだ!?」

 リーフ 「……あ、サトシ君あそこ! 左の翼の付け根!」

 サトシ 「付け根……あ、怪我してるのか!」


フライゴンは、左の翼の付け根を怪我していた。

フライゴンほどの大きなポケモンが、別のポケモンに襲われたとは考えにくい。

同格ポケモン同士のバトルをしたのか――、誰かがゲットしようとして失敗した、って可能性もある。


 フライゴン 「ふぎゃあああぁぁぁぁぁ!」 ゴォォォッ!


 サトシ 「伏せろっ!」 グイッ!

 リーフ 「きゃっ!?」 ドサッ!


サトシ君に手を引っ張られ、2人して地面に転がった。

そんな私たちの上を、鈍い音を立てながら突風が吹き抜ける。その先にあったブロック塀が、木端微塵に崩れ落ちた。


 サトシ 「大丈夫か!?」

 リーフ 「ぁっ、ありがとう、サトシ君……」

 サトシ 「“むしのさざめき”だ。フライゴン、かなり気が立ってるぞ!」

 リーフ 「早く落ち着かせてあげないと! もし会場の方に行ったら大変だよ!」

 サトシ 「ピカチュウ居ないし、キャプチャするしかないな!」

 リーフ 「うん!」


時は一刻を争う。

もしフライゴンが人々で賑わう会場で暴れたら、とんでもない被害が出てしまう。

私たちがキャプチャするしかない。私たちが大人しくさせるしかない!
 ▼ 173 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/09/29 23:52:15 ID:6IH6KQ4M [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 サトシ 「キャプチャ・オン!」

 リーフ 「キャプチャ・オン!」


私たちは、キャプチャ・スタイラーを取り出す。


ちなみに私たちが使うのは“スクール・スタイラー”と言う、いわゆる教習用のもの。

現役のポケモンレンジャーが使うスタイラーとは、キャプチャの性能に差は無いけど、ボイスメールなどの一部の機能が搭載されていない。

本来、レンジャースクールの敷地外で使うのは禁止されてるけど、この緊急事態、そんなこと気にしている場合じゃない。


 サトシ 「オレのディスクを囮にする! 頼んだぜリーフ!」

 リーフ 「うん。やってみる!」


 サトシ 「ほらフライゴン! これ見えるかー!」 シュッ

 フライゴン 「ふりゃっ!」


サトシ君はディスクを発射し、フライゴンの目線の先、少し上で細かに動かす。

そうすることで、フライゴンの目線は上向きになり――。


 リーフ 「ゆっくり……、確実に……!」


その隙に、私は慎重にディスクを操作する。

フライゴンの下半身のまわり、出来るだけフライゴンの目線に入らない位置を狙って、ゆっくりとフライゴンを囲んで行く――が。



 フライゴン 「ふぎゃぁ!」 バキッ!


 サトシ 「あっ……と!?」

 リーフ 「っ……!?」


フライゴンが私のディスクに気付いて、“ドラゴンクロー”を繰り出した。


間一髪のところでディスクを回避させたけど、フライゴンの爪は地面を大きく抉っていた。

あんなのが直撃したら、スタイラーのエネルギーは すぐに底を尽きてしまう。
 ▼ 174 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/09/29 23:53:04 ID:6IH6KQ4M [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 フライゴン 「ふぎゃああぁぁぁぁぁ!」 ゴォォォォ!


 サトシ 「マズい隠れろ!」

 リーフ 「うん……!」


再びフライゴンが繰り出した“むしのさざめき”。

我を忘れているのか、苦しみのあまりなのか、その威力は相当なもので、轟音とともに物流倉庫に大きな穴をあけた。


 サトシ 「あんな暴れ方されたら、本当にマズいことになるぞ」

 リーフ 「あの感じだと、ゆっくり慎重にキャプチャするより、素早くキャプチャする方が良いかもしれない」

 サトシ 「けど、フライゴンの攻撃を避けながらだと難しいぞ」


ポケモンをキャプチャするには、そのポケモンをディスクで囲み続ける必要がある。

けど、攻撃を避ける時などは、どうしても“囲む動作”を中断しなくては ならない。

そうすると、それまで囲んだ分――私たちは気持ちゲージって呼んでるけど――、それが徐々に減ってしまい、振り出しに戻ってしまう。


 リーフ 「どうしよう……」


あれだけ暴れているフライゴン。


キャプチャと中断を ひたすら繰り返せば、いずれキャプチャ出来るだろうけど、とてもじゃないけど集中力が持たない。

それに、それまでフライゴンが、この人気のない場所に留まっていてくれるとも思えない。


 サトシ 「なにか……、サッとキャプチャ出来る方法があれば……」

 リーフ 「そんな都合の良い方法なんて――」



そんな都合の良い方法なんて無いよ――、そう言おうとして、私は思い出す。



教科書の最後の方に載っていた項目。

スクールでも教わるのは まだまだ先、当然この講習でも扱わない、上級者向けのキャプチャの方法。



 リーフ 「協力キャプチャ……」

 サトシ 「えっ?」
 ▼ 175 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/09/29 23:54:39 ID:6IH6KQ4M [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 リーフ 「2つのディスクで、1匹のポケモンをキャプチャするの。応用編みたいな方法で、カリキュラムの ずっと後に習うことなんだけど……」

 サトシ 「ってことは、難しいのか?」

 リーフ 「うん。2人の息がピッタリ合わないと、協力キャプチャは出来ないって」

 サトシ 「そうだよな。別々にディスクを操る訳だし」

 リーフ 「でもね、成功すれば、一気にポケモンに気持ちを伝えることが出来るの!」

 サトシ 「一気にか……。まさに今、うってつけの方法だな」

 リーフ 「成功するかは分からないよ。まだ習ってないことだし……」

 サトシ 「オレだって初めて聞いたよ。けど……、やるしかないよな、リーフ!」

 リーフ 「うん!」



協力キャプチャは、簡単なことでは無い。


1人なら、自分の感覚やタイミングでディスクを操作できるけど、2人だと、相方のディスクの動きを読んで、自分のディスクを操作しなくてはならない。

2人の息をピッタリ合わせて、2人の心を一つにして、相方の気持ちになって、ディスクを操作しなくてはならない。

トップレンジャーでも難しいと言われるキャプチャ方法――。



 サトシ 「よし。次にフライゴンが背中を向けたら」

 リーフ 「うん。一気に決めちゃおう!」



でも、なんでだろうね。


サトシ君となら、何故だか成功するような気がするんだ。


サトシ君となら、息をピッタリ合わせられるような気がするんだ。


サトシ君となら、どんな困難でも、乗り越えられるような気がするんだ。





 フライゴン 「ふりゃぁっ……」 クルッ



 サトシ 「行くぞ!」

 リーフ 「うん!」
 ▼ 176 ルケニオン@ひかりのこな 21/09/30 06:18:14 ID:HGrsy352 NGネーム登録 NGID登録 報告
待ってた
支援
 ▼ 177 モネギ@ブレイズカセット 21/09/30 07:22:04 ID:K13su.WA NGネーム登録 NGID登録 報告
通信協力プレイも拾ってくれるのか
支援
 ▼ 178 ニリュウ@ヤゴのみ 21/10/02 20:51:16 ID:d4LI3ojI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
良SSシエンネ
 ▼ 179 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/10/05 23:43:25 ID:f31Alr2. [1/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

私とサトシ君は、同時にディスクを発射した。


右手に構えたスタイラーを操作して、ディスクをフライゴンの元へ。

2つのディスクの軌跡を合わせて、2人で1つの軌跡を描く、協力キャプチャ。


 サトシ 「オレは右から行く。リーフは左を頼む!」

 リーフ 「左ね!」


興奮して攻撃を繰り出すフライゴンをキャプチャするには、スピード重視で行くしかない。

フライゴンに気付かれること前提で、私たちはディスクを素早く走らせる。


  ― カツン!


 リーフ 「あっ……!」


と、2つのディスクが ぶつかり合い、軌跡が途切れてしまった。


 サトシ 「失敗上等! もう1回だ!」

 リーフ 「うん!」


上級者向けのキャプチャ方法と言われるだけあって、やっぱり簡単には行かない。

2つのディスクを衝突させることなく、軌跡だけを交差させて、暴れるフライゴンをキャプチャする。


 フライゴン 「ふりゃぁ!」 シュッ!


 リーフ 「避けて!」

 サトシ 「っ!」
 ▼ 180 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/10/05 23:44:09 ID:f31Alr2. [2/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

フライゴンが攻撃を繰り出すたびに、キャプチャは中断させられるけど――。


 サトシ 「動いたら左から頼む!」

 リーフ 「サトシ君は背中を追う感じで!」


だんだんコツを掴めてきた。


幸い――って言ったらダメだけど、フライゴンは翼の付け根を怪我しているせいで、空を飛ぶ動きは鈍っている。

攻撃にさえ気を付ければ、フライゴンの動きを、ある程度なら予測出来るようになった。



 サトシ 「次に飛び上がる瞬間が勝負だ!」

 リーフ 「うん! 絶対に成功させるよ!」


攻撃による中断は多いけど、もう何回も、ディスクはフライゴンを囲み続けている。

フライゴンに私たちの気持ちは、少しずつ、確実に届いているはずだ。


あとは一気に――、フライゴンが飛び立つタイミングで、一気に決める――!



 フライゴン 「ふりゃああぁぁぁっ!」 ゴォォォッ!


フライゴンが“むしのさざめき”を繰り出した。

地面を抉り、フェンスを薙ぎ倒す、その強力な攻撃を終えたタイミングで……。


 フライゴン 「ふりゃっ」 バサッ


 サトシ 「ここだ!」

 リーフ 「うん!」

 ▼ 181 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/10/05 23:44:58 ID:f31Alr2. [3/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

予想通り、フライゴンが飛び立った。


すかさず私たちは、ディスクをフライゴンに向かわせる。

怪我した翼で、少し よろけながら羽ばたくフライゴンは、ゆっくりと上昇。



 サトシ 「フライゴン! もう大丈夫だからな!」

 リーフ 「私たちの想い、届いてっ!」



上昇するフライゴンを、私とサトシ君のディスクが包み込む。

2つの軌跡は、螺旋を描くように交ざり合い、暖かな光を放ちながら、フライゴンを包み込む。


難しいはずの協力キャプチャ。

気付けば私たちは、それを完璧に物にしていた。


フライゴンを助けたい一心で。

サトシ君も また、フライゴンを助けたい気持ちが大きかったんだと思う。


そうじゃなかったら、こんな短時間で協力キャプチャをマスターするなんて有り得ないもん。


サトシ君は体験入学の はずなのに、私に負けないくらい、キャプチャの腕が上達していた。

それはきっと、ポケモンが大好きで、ポケモンのことを第一に考えてるからだと思う。今この場のフライゴンも、あの時のチルットも。



ねぇフライゴン。


私たちの気持ち、通じたかな?


私もサトシ君も、貴方を助けたいだけなの。


だからお願い、もう暴れないで……!


 ▼ 182 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/10/05 23:45:52 ID:f31Alr2. [4/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 フライゴン 「ふりゃっ……」 ゴゴゴゴゴ……



 リーフ 「えっ……フライゴン?」

 サトシ 「……ダメだ。伏せろ!」



 フライゴン 「ふぎゃああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


  ― ゴゴゴゴゴオオオオオォォォォォォ!



 リーフ 「きゃっ!?」

 サトシ 「クッ……! “すなあらし”だ!」



フライゴンを中心に発生した、砂嵐。


当然キャプチャは中断。そして私たちも、慌てて地面に伏せる。

突風に混じる砂がパチパチと体に当たり、目も開けられない状況だ。


 サトシ 「クッ……! 落ち着いてくれフライゴン!」

 リーフ 「大丈夫だから! 私たち、貴方のこと助けるだけだから!」


けれど、砂嵐は収まる気配が無い。

まわりを高い倉庫に囲まれているせいで、砂嵐の威力が なかなか落ちないんだと思う。


目を開けられないし、砂嵐の轟音が響いているせいで、視覚と聴覚が奪われてしまっている。

つまり、今どんな状況なのか、全く分からないのだ。

 ▼ 183 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/10/05 23:46:32 ID:f31Alr2. [5/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 サトシ 「大丈夫かリーフ? そこに居るよな?」

 リーフ 「うんっ……、大丈夫。サトシ君は?」

 サトシ 「大丈夫だ。けど、これじゃフライゴンの様子が……!」

 リーフ 「あっ……でも! 少しずつ砂嵐が弱まってるよ」

 サトシ 「フライゴンの体力が限界なのか、オレたちのこと分かってくれたのか……、それとも」

 リーフ 「どこかへ逃げちゃった――か」

 サトシ 「そうじゃないことを祈るしかないな」

 リーフ 「うん……」





砂嵐は徐々に弱まっていき、砂が体を打ち付ける感覚も ほぼ無くなった。



私たちは、ゆっくり目を開ける。



起き上がり、周囲を見回す。





 サトシ 「クッ! やっぱり……!」

 リーフ 「フライゴン……」


そこに、フライゴンの姿は無かった。


 サトシ 「フライゴーン! 居たら返事してくれ! フライゴーン!」



静まり返った倉庫街に、サトシ君の声が響く。


フライゴンの攻撃で崩れた塀、抉れた地面、壁が破壊された倉庫、風に舞う大量の砂。


まるで廃墟に迷い込んだかのようにさえ思える。
 ▼ 184 リジオン@やさいパック 21/10/05 23:46:43 ID:S0iMNIwA NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 185 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/10/05 23:47:26 ID:f31Alr2. [6/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 リーフ 「砂嵐が止むまで……、多分5分くらいかかったよね?」

 サトシ 「あぁ」

 リーフ 「もしフライゴンが、“すなあらし”を繰り出してすぐに移動してたら……」

 サトシ 「会場の方に行ってるかもしれない!」


最悪の事態を、嫌でも想像してしまう。


あのフライゴンは、我を忘れて暴走しているような状態。

そして、“むしのさざめき”や“すなあらし”の威力を見るに、そこそこレベルが高い個体だ。


 サトシ 「急がないと……!」

 リーフ 「でも、会場に行ったとは限らないよ。二手に分かれようよ!」

 サトシ 「いや、単独行動は危ない。ひとまず2人で会場の方に」

 リーフ 「ダメ。フライゴン、苦しんでるんだよ!? 少しでも早くキャプチャしてあげないと!」

 サトシ 「けどリーフを1人で行かせる訳には……!」

 リーフ 「大丈夫だよ。私もサトシ君も、同じ誇りあるレンジャースクール生でしょ!?」



そう、私もサトシ君も、ポケモンたちの平和を願う、レンジャースクールの生徒。

ポケモンのことを第一に考えて行動しなければならない。


もしサトシ君が、私のことを心配して単独行動を避けるのなら、それは間違いだ。

私もサトシ君も、立場・責任は同じなんだから――!

 ▼ 186 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/10/05 23:48:17 ID:f31Alr2. [7/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 サトシ 「……よし分かった! じゃあオレは会場の方に行く」

 リーフ 「私は倉庫街を探してみるね」

 サトシ 「頼んだぞ。会場にフライゴンが居なさそうだったら、すぐ戻って来るからな!」

 リーフ 「うん。私も、こっちにフライゴンが居なかったら会場に向かうね!」

 サトシ 「あぁ! じゃあ後でな!」



サトシ君は会場の方へと走って行った。


会場は人がたくさん居るから、フライゴンが向かったとしたら、今頃パニックになっているはず。

でも逆に考えると、会場は警備の人やポケモンレンジャーさん、それに強いトレーナーも居る訳だから、そこまで心配する必要は無いかもしれない。



 リーフ 「……よしっ!」



もしフライゴンが会場に行っていなかったら――。

私が探し出して、ここで足止めさせなければならない。

人が居ない、暴れても安全な この倉庫街に、フライゴンを留まらせなければならない。


不安は無い――って言ったら嘘になる。


でも、私はレンジャースクール生、ポケモンレンジャーの卵。

会場に集まるたくさんの人々の安全のために、苦しんでいるフライゴンを助けるために。


これは私に課せられた、重要なミッションだ――!


 ▼ 187 ンムー@オッカのみ 21/10/06 18:37:28 ID:i.psr0Og NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 188 ブリアス@こだいのせきぞう 21/10/14 13:23:16 ID:R3vIvBWc NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 189 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/10/19 00:36:16 ID:xLNEgO3E [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 リーフ 「はぁっ……、はぁっ……」



倉庫街を走り回って、10分くらい経ったかな。

なかなかフライゴンは見つからない。暴れているような音や気配も感じない。


こうなると、やっぱりフライゴンは会場の方へ行ってしまったのかもしれない。


けど、怪我をしているフライゴンは、私たちのキャプチャに抵抗して体力を消耗しているはず。

どこか人目の付かない場所で、息を潜めて休んでいるのかもしれない。


 リーフ (休んでるだけなら良いけど、もし――)


もし、怪我と体力の消耗で、倒れてしまっていたら――。

早く見つけて保護してあげないと、手遅れになってしまう可能性がある。

そう考えると、中途半端な捜索で、会場へ行ったサトシ君に合流する訳にはいかない。


 リーフ (こんなに広い倉庫街……、どこから探せばいいの……)



静まり返った倉庫街。

フライゴンが破壊した塀や看板、外壁が散乱していて、物悲しい雰囲気に包まれている。


それはまるで、災害や戦争が起こったかのようだ。



静かだ。



私の足音だけが、この誰も居ない空間に響き渡る。


私1人だけが、世界から取り残されたかのような――。

 ▼ 190 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/10/19 00:37:07 ID:xLNEgO3E [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 リーフ (……ダメだよ私。弱気になっちゃ)


さっきまで一緒だったサトシ君は、もう居ない。

頼れるサトシ君と別行動を提案したのは私なんだ。私が しっかりしなくちゃいけないんだ。



考えて、私。


フライゴンの気持ちになって。


フライゴンが今、何を思って、何をしているのか。


考えて、私。



 リーフ 「あっ……」



ふと、思いつく。


翼を怪我しているフライゴンは、上手く羽ばたくことが出来ない。さっきのキャプチャ中の様子を見ても明らかだった。


美しい翼を持った、ドラゴンタイプのフライゴン。


その幼体、ナックラーは、長らく砂の中で生活していて。

進化したビブラーバは羽が生えたものの、まだ未熟で、空を飛ぶより超音波発生に特化していて。

そうして辿り着いた、フライゴンという姿――。


 リーフ (空……)


大空への憧れ――。

いつだったか、ナックラーに関する、そんなレポートを読んだ記憶がある。

最終形態まで成長して、ついに手に入れた、大空を羽ばたく翼。



 リーフ 「空を目指してるかも!」


 ▼ 191 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/10/19 00:37:59 ID:xLNEgO3E [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

翼を怪我して羽ばたけないフライゴン。

そんなフライゴンが、空を目指して行動するのは十分に有り得る話だ。


 リーフ (地図……!)


首掛けの参加証の裏面が、地図になっていることを思いだす。

会場がメインだけど、一般的な地図を流用しているおかげで、プエルタウン東部の地理もバッチリ載っていた。


いま居るのが、会場から外れた北側の倉庫街。

その先は、海に張り出すような形の丘になっていて、先端には小さな灯台があるようだ。


 リーフ (空を目指すなら、丘の頂上!)





私は走る。自分の直感を信じて。





倉庫街の終端まで来ると、その先には、なだからな丘が続いている。

そこは柵が設置されていて、「これより灯台管理用地・立入禁止」との看板が。


けどその柵は、私でも簡単に乗り越えられる高さだ。

いくら翼を怪我しているとはいえ、きっとフライゴンも、難なく越えられたはずだ。



 リーフ 「よいしょっ……と!」



柵を乗り越えて、私は走る。



会場から どんどん離れていくけど、迷うつもりはない。

私の直感が、フライゴンは この先に居ると言っているから。


大空への憧れが実ったフライゴンは、きっと、この丘の頂上に――。




 ▼ 192 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/10/19 00:38:51 ID:xLNEgO3E [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





 リーフ 「はぁっ、はぁっ……、はぁっ……」



走って、走って、ようやく丘の頂上が近づいてきた。


ゴールとも言える白い灯台は、思ったより低く、小さなものだった。

丘に建っている分、高さを稼げているので、小さくても問題ないのだろう。この大きさであれば、恐らく無人だ。



 リーフ 「あっ!」



私は思わず声を上げる。

その灯台の足元に、緑色の影が佇んでいたから。



私の直感は、正しかった。



そこに居たのは、まさしく先ほどのフライゴン。

丘の頂上、灯台の足元で ぐったりと地に伏せている。

けれど目線は青い大空に向けられていて、時折り翼をピクピクと動かしては、顔をしかめていた。



 リーフ (飛びたいんだね、フライゴン……)



翼の怪我の痛みなのか、自由に羽ばたけない もどかしさなのかは分からない。

でもフライゴンは、悲しそうな顔をしていた。


ポケモンは人間と同じように、喜怒哀楽の表情を見せる。

トレーナーにゲットされたポケモンほど表情が豊かになると言われているけど、この野生のフライゴンは、どこからどう見ても、悲しんでいた。



 リーフ 「……ねぇ。フライゴン」



 ▼ 193 グラージ@オニゴーリナイト 21/10/19 10:10:40 ID:okhQ1xpo NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
続きktkr!
 ▼ 194 ゲキ@サファリボール 21/10/19 16:48:47 ID:nwxwWtBU NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 195 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/10/29 02:03:24 ID:bM2QY6uQ [1/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 フライゴン 「!? ふりゃぁぁぁ!」


少し離れた場所から声をかけると、フライゴンはビクッと反応する。そしてすぐに威嚇を始めた。

ただ、首を持ち上げて激しく吠えるだけで、逃げ出したり、ワザを出そうとする様子は無い。


 リーフ 「落ち着いてフライゴン。私、なにもしないから」


多分フライゴンは、かなり体力を消耗しているんだと思う。

怪我をしている野生ポケモンにとって、近付いてくる人間は脅威そのもの。にも関わらず抵抗の動きを見せないのが、その証拠だ。


 フライゴン 「ふりゃぁぁぁっ!」

 リーフ 「大丈夫だよ。怪我、辛いよね。もう大丈夫だから、落ち着いて」



私は優しく語り掛けながら、少しずつ、フライゴンに近付いて行く。


一歩一歩。目線をフライゴンに合わせ。姿勢を低くして。敵意が無いことをアピールしながら。


 フライゴン 「ふぎゃぁぁぁっ……!」

 リーフ 「貴方の怪我を、治してあげたいの。私は貴方の味方だよ。だから安心して?」



灯台の陰に隠れるように、フライゴンは ぐったりとしている。首を持ち上げて威嚇するだけでも辛いはずだ。


傷付いた野生ポケモンは、落ち着いて隠れられる場所に留まって、傷を回復させるという。


海を見渡せる小高い丘の頂上。

ここがフライゴンが選んだ場所。大空への憧れが実ったフライゴンが、本能的に辿り着いた場所――。
 ▼ 196 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/10/29 02:04:31 ID:bM2QY6uQ [2/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 リーフ 「良い所だね」

 フライゴン 「ふぎゃぁっ……!」


フライゴンまで あと10メートルくらいって所まで近付けた。

ここまで来ても、フライゴンは逃げない、攻撃を繰り出さない。けれど威嚇は止めない。


 リーフ 「私には翼が無いから分からないけど……、空を飛ぶって、やっぱり気持ち良いの?」

 フライゴン 「ふりゃぁぁ!」

 リーフ 「大丈夫だよ。私は何もしないから」

 フライゴン 「ふぎゅぅぅぅ!」

 リーフ 「ただ、私は貴方の怪我を治すことが出来るの。怪我が治れば、また空を飛べるようになるよ」

 フライゴン 「ふぎゃああぁぁ!」



……ダメだ。


フライゴンは威嚇を止めない。なかなか心を開いてくれない。

当然と言えば当然だ。怪我をしている状況、近付いてくる人間への警戒心は最高レベルのはず。



 リーフ (ここまで来れば、一気にキャプチャ出来るかも)



ふと、そんなことを思いつく。

これだけフライゴンと接近できていて、フライゴンは体力の消耗で攻撃を出せない。キャプチャするには最高の条件だ。
 ▼ 197 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/10/29 02:06:06 ID:bM2QY6uQ [3/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 リーフ (でも……)


フライゴンに目をやる。

激しく威嚇しているけど、体は地面に横たわったまま。

その表情もどこか辛そうで、最後の力を振り絞って精一杯威嚇しているようにも見える。


 フライゴン 「ふりゃぁぁっ……!」


こんな状態で、スタイラーを操作したら。ディスクを発射したら――。


最悪、フライゴンはパニックに陥りかねない。


さっきのサトシ君との協力キャプチャを“すなあらし”で逃れたフライゴン。多分、ディスクを敵と認識しているはずだ。

怪我して動けないなか、敵が近付き、自分のまわりをグルグルと取り囲まれるなんて、恐怖でしかない。

逃れようと無理してワザを出してしまう可能性もある。



 リーフ (……そんなのダメよ。きちんとフライゴンと向き合わないと)



ポケモンと心を通わす方法は、キャプチャだけではない。

レンジャースクール生にとって基本を覆されるようなことだけど、キャプチャが全てでは無い。


サトシ君が教えてくれたんだ。

キャプチャに頼らず、丸腰でチルットを助け出したサトシ君が、私たちに教えてくれたんだ。
 ▼ 198 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/10/29 02:06:59 ID:bM2QY6uQ [4/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 リーフ 「ねぇフライゴン。私ね、貴方を助けたいの。翼の付け根の……その怪我、痛いでしょ?」

 フライゴン 「ふぎゃぁっ……」

 リーフ 「私ね、レンジャースクールって言う、ポケモンレンジャーになるための学校に通ってるの。ポケモンレンジャーって分かる?」

 フライゴン 「ふりゃぁぁ!」

 リーフ 「ポケモンレンジャーはね、地域のパトロールや、自然の保護活動、困ってる人やポケモンを助けるのが仕事なの」

 フライゴン 「ふぎぃゃぁぁぁ!」

 リーフ 「勿論、貴方みたいな、怪我してる野生ポケモンを助けるのも、大切な仕事なんだ」

 フライゴン 「ふりゃぁぁ……」

 リーフ 「フライゴン。私を信じて貰えないかな……?」

 フライゴン 「ふりゃ……」

 リーフ 「貴方の怪我、しっかり治してあげる。約束する。だから……」

 フライゴン 「………」



フライゴンは、威嚇を止めてくれた。



私の想い、通じたんだ。


フライゴン、私を信じてくれたんだ。



 リーフ 「ありがとう、フライゴン。じゃあ、ちょっとの間だけ、キャプチャするね」



私はスタイラーを起動する。

フライゴンをポケモンセンターに連れていくために、一時的にキャプチャは必要だ。

モンスターボールを使った方が楽だけど、ポケモンレンジャーはゲットはしない。あくまで一時的に一緒に行動するだけ。


 リーフ 「じゃあ、行くね」



大人しくしていてくれれば、キャプチャは一瞬で終わる。


ディスクを発射して、フライゴンを囲もうとした、その時――。


 ▼ 199 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/10/29 02:08:07 ID:bM2QY6uQ [5/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 フライゴン 「ふりゃっ……!?」 バサッ!


 リーフ 「あっ!?」



ディスクを目にしたフライゴンが、飛び立ったのだ。

翼を動かせないはずなのに。体力は消耗しきっているはずなのに。



 リーフ 「ダメだよフライゴン!」



あぁ……、ダメだな私。浅はか過ぎるよ。


心を開いたのは私に対してで、ディスクへの抵抗が無くなった訳じゃないのに。


そもそも、威嚇を止めた=心を開いてくれた、とは限らないのに。



ディスクから逃げるように飛び立ったフライゴン。

きっと、かなり強引に翼を動かしたんだと思う。

少しだけ上空を舞ったフライゴンだけど、体力の消耗と怪我のせいで、当然、上手く羽ばたくことが出来ない。



 フライゴン 「ふりゃっ……!」 グラッ


 リーフ 「あぁぁっ……!?」



本当に、私は愚かだったと思う。


フライゴンがディスクから逃げるように飛び立った先は――崖。

海が見渡せる丘の頂上、灯台の先にあるのは、断崖絶壁。下は海。


私は、最悪な位置でディスクを発射してしまい、最悪の方向へと、フライゴンを導いてしまったのだ。

 ▼ 200 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/10/29 02:09:49 ID:bM2QY6uQ [6/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 フライゴン 「りゃっ……」


 リーフ 「フライゴン羽ばたいてっ!」



咄嗟に叫んだけど、それは無理な話だ。



怪我で羽ばたけないフライゴンは、重力に従って、落ちていく。



崖の下で荒波を上げる青い海に、落ちていく。



成す術なく、落ちていく。







私のせいで。



私の勘違いのせいで。



私の浅はかさのせいで。



私の勝手な行動が、フライゴンを、危険な目に……。



 ▼ 201 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/10/29 02:10:40 ID:bM2QY6uQ [7/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 リーフ 「フライゴンっ!」 ダッ!



走る。


丘の先端、崖に向かって走る。



 リーフ 「フライゴーーーーン!」 バッ!



飛ぶ。


走った勢いのまま柵に飛び乗って、思いきり蹴り出して、海に向かって飛ぶ。



 リーフ 「っ……届いた!」 ガシッ



捕まえる。


上手くタイミングを合わせられた。落ちていくフライゴンの首を、しっかりと捕まえる。



 フライゴン 「ふりゃぁ……」

 リーフ 「大丈夫っ……、私も一緒だからっ……!」 ギュッ



抱きしめる。


フライゴンの頬に、私の額をピッタリと当てて。不安にならないように、ギュッと抱きしめる。



 リーフ 「……ごめんね」

 フライゴン 「………」



落ちていく。


フライゴンと一緒に、崖下の海へと真っ逆さま。私たちは成す術なく、落ちていく。

 ▼ 202 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/10/29 02:12:32 ID:bM2QY6uQ [8/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 リーフ 「ごめんね。私のせいで……」

 フライゴン 「りゃぁ……」

 リーフ 「ずっと一緒にっ、居てあげるからっ……!」 ギュッ



フライゴンを強く抱きしめ、私は自然と目を瞑った。



あと数秒で、私とフライゴンは、海面に叩きつけられる。


荒波の立つ深い海。

足は付かない、掴まる物も無い、恐ろしいほど広い広い海。



海に落ちたら、どうやってフライゴンを岸まで連れて行こう。

そもそも岸って どっちなんだろう。

でもその前に、海に叩きつけられて……、無事なのかな。意識、保っていられるかな。



 リーフ 「ごめんね、フライゴン……」







 フライゴン 「ふりゃっ……りゃぁぁぁっ!」 バサッ!


  ― バッシャァァァァァン!





     【 * 】



 ▼ 203 ガハッサム@はっきんだま 21/10/30 20:55:16 ID:XtpUO4xg NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 204 アームド@カセキのサカナ 21/11/01 19:32:54 ID:dHkg5c0k NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 205 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/02 01:47:48 ID:MmnkGbAE [1/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




     【 * 】





 サトシ 「はぁっ……! はぁっ……!」



リーフと別れたサトシは、会場に向かって全力で走っていた。


怪我をして興奮しているフライゴン。ワザの威力を見る限りレベルの高い個体だ。

そんなフライゴンが会場で暴れたら、大惨事になってしまう。


フライゴンが会場に来ていなければ一安心だが、そうするとリーフが心配だ。


リーフは、レンジャースクール生の使命感からか、サトシに対して単独行動を提案。

安全を考えれば2人でフライゴンを探すべきだが、フライゴンのことを第一に考えた彼女の行動に、サトシも賛成した。



それが吉と出るか、凶と出るか……。





 ピカチュウ 「ぴかぴー!」

 ナツヤ 「あっ! おいサトシ!」

 ミナミ 「ちょっと何してんのよ!」



 サトシ 「ピカチュウ! みんな!」
 ▼ 206 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/02 01:49:44 ID:MmnkGbAE [2/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ピカチュウが、サトシの元に駆け寄ってきた。

少し遅れてナツヤとミナミ、さらに遅れてハジメとヒトミも。

みんなポケモンたちを出している。リーフのチコリータも一緒だ。


 サトシ 「ピカチュウ! 回復はバッチリだな!」

 ピカチュウ 「ぴっか!」

 ナツヤ 「探したぞサトシ!」

 ハジメ 「サトシ! スクールの外でスタイラーの使用は厳禁って習っただろ!?」

 サトシ 「えっ? なんで分かるんだ?」

 ヒトミ 「スクールスタイラーにはね、スクールの外で起動したら、先生に連絡が行くようになってるの」

 ナツヤ 「サトシとリーフがスタイラーを使ったって、先生から電話があったんだ」

 ミナミ 「驚いたわよ。サトシもそうだけど、真面目なリーフまで校則を破るなんて。何があったの?」

 ヒトミ 「って言うか、リーフは一緒じゃないの?」

 チコリータ 「ちこぉ?」

 サトシ 「それなんだけど! こっちに暴れてるフライゴン来てないか!?」

 ナツヤ 「フライゴン? 暴れてる?」

 ミナミ 「見てないわよね?」

 ハジメ 「うん。もし来てるなら、いまごろ会場はパニックだよ」

 ヒトミ 「……もしかしてサトシ!」

 サトシ 「あぁ。オレとリーフ、暴れてるフライゴンを見つけて! なんとかキャプチャしようとしてたんだ!」
 ▼ 207 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/02 01:51:12 ID:MmnkGbAE [3/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


サトシは皆に、これまでのことを話す。



翼を怪我したフライゴンを、この先の倉庫街で見つけたこと。

怪我した理由は不明だが、ひどく興奮して暴れており、もし会場へ行ったら危険ということ。

ピカチュウを連れていなかったため、キャプチャして大人しくさせるしか方法がなかったこと。

あと一歩のところで逃げられてしまったこと。

リーフと手分けして探していること。



 ナツヤ 「そんなことが……!」

 ヒトミ 「ねぇ待って! フライゴンが こっちに来てないってことは……!」

 サトシ 「あぁ! リーフが1人でフライゴンを相手してるかもしれない!」

 チコリータ 「ちこり!?」

 ミナミ 「マズいわよ! いくらキャプチャの基本をおさえてるからって、リーフ1人じゃ!」

 ヒトミ 「しかもフライゴン暴れてるんでしょ!? 早くリーフを探さないと!」
 
 チコリータ 「ちこ! ちこちこぉ!」

 サトシ 「大丈夫だチーちゃん。リーフなら上手くやってるはずだ」

 ナツヤ 「とにかく急ごう!」

 ハジメ 「サトシ、案内してくれ!」

 サトシ 「あぁ!」



サトシとピカチュウを先導に、皆は走り出す。

リーフのチコリータが不安そうな顔で、ピカチュウの後に続く。


ナツヤも、ハジメも、ミナミも、ヒトミも。サンドパン、ブイゼル、カメール、ゴンベも。

1人で戦っているかもしれないリーフのことを心配し、表情は険しくなる。
 ▼ 208 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/02 01:53:14 ID:MmnkGbAE [4/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 サトシ 「大丈夫。リーフなら絶対に大丈夫だ。フライゴンのこと、すっごい気遣ってたからな!」

 チコリータ 「ちこぉ……」

 サトシ 「チーちゃんも知ってるだろ、リーフの優しさ。きっとフライゴンも、リーフに心を開いてくれるはずさ!」

 ナツヤ 「確かにリーフの優しさはオレ達も知ってる。けど……楽観視は出来ない!」

 ミナミ 「そうね。リーフのことは信頼してるけど、怪我した野生ポケモン――しかもフライゴンでしょ。そんなの……」

 ヒトミ 「レンジャーさんだって手こずる相手だよ! もしリーフになにかあったら……」

 サトシ 「変なこと考えるな! オレはリーフを信じてる!」

 チコリータ 「ちこぉ!」



一行は、フライゴンが暴れていた倉庫街まで やってきた。

夏休みで非稼働状態の倉庫街は、外壁やフェンスが崩れ、破壊された木箱やコンテナが転がり、地面は抉れ、砂埃が舞い上がる。


不気味なほど静まりかえっている倉庫街に、ナツヤたちは思わず言葉を失う。



 サトシ 「リーフ……、どっちに行ったんだよ」

 ナツヤ 「……ひでぇ」

 ハジメ 「無人なのが、不幸中の幸いだね」

 ミナミ 「ちょっとした災害レベルよコレ……」

 ヒトミ 「サトシとリーフは……、こんな状態で、フライゴンを相手してたの?」

 サトシ 「あぁ。2人でキャプチャしようとしたけど……無理だった。フライゴン、あんなに苦しんでたのにっ」


サトシは悔しそうに握り拳を震わせながら、あたりを見回す。耳を澄ます。

けれど、近くにフライゴンの気配は無いし、暴れているような音も聞こえない。


 サトシ 「どこなんだよリーフ! フライゴンっ……!」

 ピカチュウ 「ぴかぴ……」

 チコリータ 「ちぃこぉ……」
 ▼ 209 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/02 01:54:36 ID:MmnkGbAE [5/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ミナミ 「あっそうだ! みんな! 名札の裏!」

 ナツヤ 「名札……あぁ、参加証か」

 ミナミ 「そう! この裏、地図になってるでしょ」

 ヒトミ 「うん。プエルの郊外まで載ってる……」

 ミナミ 「今が……ここ。この会場の北の倉庫街。で、フライゴンは会場に来てないんだから……」

 ハジメ 「ここが こんなに静かってことは、さらに北に行った可能性が高い、ってことか」

 ヒトミ 「うん。ここに居ないなら、この先の……、海に突き出してる……これ丘?」

 ナツヤ 「灯台があるってことは、丘だろうな」


皆で地図を確認し、一つの仮説が生まれた。


 サトシ 「そう言えばフライゴン、怪我で上手く羽ばたけてなかった」

 ミナミ 「そんなに酷い怪我なの?」

 ナツヤ 「痛みで暴れるほどの怪我……ってことか」

 サトシ 「普段は空を飛べるポケモンが、飛べなくなったら……!」

 ヒトミ 「そうだよ! 空に近い場所に行くかもしれない!」

 ハジメ 「なら丘の上の可能性は高いね!」

 サトシ 「あぁ! そこにリーフとフライゴンが居る!」


仮説は、確信に変わる。

サトシたちレンジャースクール生の答えは、ポケモンの習性を理解しているからこそ導き出せたものだった。


 サトシ 「行くぞ!」

 ピカチュウ 「ぴか!」

 チコリータ 「ちこぉ!」


 ▼ 210 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/02 01:56:41 ID:MmnkGbAE [6/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



皆は走る。

倉庫街を突っ切って、地図で確認した丘へ。



 ナツヤ 「“これより灯台管理用地・立入禁止”か」

 ミナミ 「この先にも誰も居ないってことね」


倉庫街の終端に辿り着いた一行は、そんな柵に足止めされる。

柵の向こうに続くのは、なだらかな丘。


 ヒトミ 「見て! ここ……足をかけた跡がある!」

 ハジメ 「泥の付き方からして、まだ新しい。リーフで間違いないね!」


柵に付いていた跡は、どう見ても柵を乗り越える際に付いたもの。

リーフは、この柵を乗り越えて丘の頂上に向かったに違いない。


 サトシ 「もう少しだ!」 バッ!


 ミナミ 「ちょっとサトシ早い!」

 ナツヤ 「立ち入り禁止……、緊急事態だから仕方ないよな……っと!」 バッ



柵を乗り越え、丘の頂上へと走る。


管理用地と書かれていただけあって、丘の頂上、灯台への道は、程よく整備されている。

高い木は伐採され、見通しが悪くならない程度に間引かれた低木が立ち並ぶ。


しばらく進めば、そんな低木も無くなり、一面に緑の絨毯を敷き詰めたかのような草原に。白い灯台も確認できる。



その灯台の近くに、2つの影が見えた。


 ▼ 211 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/02 01:58:45 ID:MmnkGbAE [7/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 サトシ 「居た! リーフとフライゴンだ!」

 チコリータ 「ちこりっ!」

 ハジメ 「大丈夫そうか!?」

 ヒトミ 「ここからじゃまだ……」

 ミナミ 「けど、フライゴン暴れてないわよ?」


まだ距離はあるが、フライゴンが暴れている様子は無い。そして、リーフが焦っている様子も無い。


 ナツヤ 「リーフのやつ……、キャプチャ成功させたのか?」

 サトシ 「流石リーフだぜ!」

 ヒトミ 「とにかく、早く合流して……あっ!?」

 ミナミ 「あれっ……ちょっと様子が……?」



リーフが動いたかと思うと、フライゴンが空に飛び立った。

怪我をして上手く羽ばたけないはずのフライゴンが、まるでリーフから遠ざかるように、空に……。



 ナツヤ 「おいバランス!?」

 ハジメ 「えっ!? 向こう側って崖だろ!?」



皆の心配通り、フライゴンはバランスを崩す。

そして、丘の頂上のさらに奥、すなわち、崖下へと落ちて行ったのだ。



そして、リーフは――。



 サトシ 「おいリーフ!?」

 ピカチュウ 「ぴかぁ!?」

 チコリータ 「ちこぉぉぉぉ!?」



フライゴンの後を追って、崖下に飛び込んだのだ。



 ▼ 212 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/02 21:17:13 ID:MmnkGbAE [8/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ミナミ 「ちょっと何してんのよリーフ!?」

 ヒトミ 「いやあぁぁぁぁぁっ!」

 サトシ 「くそぉっ!」

 ナツヤ 「この高さっ……いくらなんでも無茶だぞリーフ!」

 ハジメ 「フライゴンを助けるため……だとしても! だとしても!」


灯台まで、頂上まで、まだ50メートルはあるだろうか。

どう頑張っても、どんなに頭を使っても、飛び込んだリーフを止めることは不可能だった。



 サトシ 「カメール! 頂上に着いたら! “こうそくスピン”を使って海に向かってくれ!」

 ミナミ 「っ……! お願いカメール! リーフを助けに行って!」

 カメール 「かめぇ!」

 サトシ 「それとハジメ! ブイゼル貸してくれ!」 ガシッ

 ブイゼル 「ぶい?」

 ハジメ 「えっ……、サトシなにする気だ?」


サトシはブイゼルを抱え、走り続ける。


ようやく到達した、丘の頂上。

この場に争った形跡が無いことから、恐らくリーフは平和的にフライゴンと接していたはずだ。



そんな状況を読み取る間もなく――。



 サトシ 「行くぞブイゼル! 飛べカメール!」

 ブイゼル 「ぶい!? ぶぃぶぃぶぃぃぃぃ!?」

 カメール 「かぁぁめぇぇぇぇ!」 シュババッ!



サトシは、崖から飛び降りた。

ブイゼルを抱えて。カメールを引き連れて。
 ▼ 213 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/02 21:18:26 ID:MmnkGbAE [9/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



  ミナミ 「ちょっ……嘘!?」

  ナツヤ 「ぅえええっ!? あいつなに考えて!?」

  ヒトミ 「ダメだよサトシ!?」

  ハジメ 「無茶だ! この高さ……ってかブイゼル!」





そんな彼らの声は届くこともなく。サトシは崖下の海へと落ちていく。

そして――、海面に浮かぶフライゴンの姿を、リーフの姿を、発見した。


 サトシ 「居た! ブイゼル! 海に向かって“みずてっぽう”! 思いっきり頼む!」

 ブイゼル 「ぶぃっ……ぶいいいいいぃぃぃぃぃ!」 シュゴォォォォォォォ!


サトシに抱えられたブイゼルは、海面に向かって“みずてっぽう”を放つ。

それは あたかも逆噴射のような役割を果たし、落下するサトシとブイゼルのスピードを抑え、そして、ゆっくりと海に着水した。

少し遅れて、螺旋のような円を描きながら、“こうそくスピン”で飛び込んだカメールも着水した。





  ナツヤ 「サトシ……、やっぱ無茶苦茶過ぎるぞアイツ……」

  ハジメ 「ブイゼルの“みずてっぽう”を、あんな使い方するなんて」

  ミナミ 「感心してる場合じゃないでしょ! 私たちも海へ……って海に下りる道は無さそうね」

  ヒトミ 「助けを呼ばないと! ポケモンレンジャーさんと! あと先生たちにも!」

  ナツヤ 「分かってる!」



 ▼ 214 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/02 21:19:40 ID:MmnkGbAE [10/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 サトシ 「ぷはっ! カメールとブイゼルは、フライゴンを助けてくれ!」

 カメール 「めぃる!」

 ブイゼル 「ぶぃ!」


着水したサトシは、まず2匹にフライゴンの救助を指示。

緑色の巨体、先ほどまで必死にキャプチャしようとしていたフライゴンは、力なく海面を漂っていた。

幸いなことに、広がった翼が ある程度 浮力を稼いでいるのか、沈む心配は無さそうだ。



 サトシ 「リーフっ!」 バシャバシャ


リーフの救助へはサトシ自らが向かった。

フライゴンを追うように飛び込んだリーフ。

灯台のある崖上からは、かなりの高さがる。30メートルは あるだろうか。この高さから飛び込んで、海面に打ち付けられたとしたら……。



 サトシ 「リーフ! しっかりしろリーフ!」

 リーフ 「………」


波に揉まれるリーフを抱き寄せ、彼女の名を呼びかける。



 サトシ 「リーフ! 大丈夫かリーフ! 返事してくれリーフ!」

 リーフ 「………」


体を揺すり、必至に呼びかけるサトシ。



 サトシ 「リーフ! 起きろ! 起きてくれリーフ! リーフ!」


 リーフ 「んっ……」





     【 * 】



 ▼ 215 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/06 02:30:08 ID:j9DMEmhQ [1/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




     【 * 】





 『リーフ! しっかりしろリーフ!』



誰かの声が聞こえる。



 『リーフ! 大丈夫かリーフ! 返事してくれリーフ!』



冷たい……。

全身が冷たい。水の中?

でも、誰かが私のことを支えてくれている――と思ったけど、激しく揺すられている。



 『リーフ! 起きろ! 起きてくれリーフ! リーフ!』



この声……、サトシ君、だよね?

そうだ、私、フライゴンと一緒に海に飛び込んで……。



 リーフ 「んっ……」

 サトシ 「リーフっ!」
 ▼ 216 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/06 02:31:41 ID:j9DMEmhQ [2/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 リーフ 「けほっ! けほっ! んっく……はぁっ、はぁっ、はぁっ……」


 サトシ 「良かった……。怪我は無いか!?」

 リーフ 「サトシ君……ぁっ ///」


気が付くと、予想外の近さに、サトシ君の顔があった。

顔が――と言うより、私はサトシ君に、しっかりと抱き留められていたのだ。


 サトシ 「どっか痛んだりしないか?」

 リーフ 「ぁっ……うん。そうだそれより! フライゴンは!?」

 サトシ 「カメールとブイゼルが支えてくれてるよ」

 カメール 「かめっ!」

 ブイゼル 「ぶい!」

 リーフ 「そっか……。良かった……」

 サトシ 「リーフ、本当に怪我とか大丈夫か? こんな高さから落ちたのに」

 リーフ 「うん。フライゴンが、助けてくれたんだ」

 サトシ 「フライゴンが……?」


私は あの時、フライゴンを抱きしめて、フライゴンと一緒に落ちて行った。

海面に叩きつけられることを覚悟して目を瞑ったけど、そのあと一瞬だけ訪れた浮遊感。

あれはきっと、フライゴンが羽ばたいてくれたんだと思う。

翼を怪我しているのに、私の重みも加わっているのに、フライゴンは、海面に叩きつけられる その瞬間、羽ばたいてくれた。

飛び続けることは出来なかったけど、その羽ばたきのお陰で落下速度は ある程度 抑えることが出来て、結果、私とフライゴンは無事で済んだのだ。


 サトシ 「そっか。フライゴン、頑張ったんだな」


サトシ君は、チラリとフライゴンに目をやる。

カメールとブイゼルに支えられているフライゴンは、波に揉まれながらも、しっかりと浮いている。

翼の他に怪我は無さそうだ。
 ▼ 217 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/06 02:33:17 ID:j9DMEmhQ [3/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 サトシ 「それにしてもさ」

 リーフ 「ぁっ……」


サトシ君は、私を抱き留めていた手を離す。

私は無事で、ちゃんと1人で浮いていられるって分かったんだから、当然と言えば当然だけど。



 サトシ 「凄いぜリーフ! フライゴンに、ちゃんと気持ちが通じたんだな!」 ガシッ

 リーフ 「わっ!? サトシ君っ……///」


その直後、サトシ君は私に向き合って、私の両肩を、しっかりと掴んだ。

そして、眩しい笑顔で会話を続ける。


 サトシ 「フライゴン、あんなに暴れてたのに。キャプチャした……訳じゃないんだろ?」

 リーフ 「……ふふっ。サトシ君のお陰、かなっ」

 サトシ 「オレの?」

 リーフ 「私ね、最初はキャプチャしようとしたの。フライゴン、かなり体力を消耗してて、抵抗されなさそうだったから」

 サトシ 「そうなのか」

 リーフ 「でも、ディスクを怖がると思ったから……語り掛けたんだ、フライゴンに。あの時チルットを助けた、サトシ君みたいに」

 サトシ 「そっか。でも、チルットとフライゴンじゃレベルが違いすぎるぞ。成長してる分、素直に人間の言うこと聞くとは限らないし」

 リーフ 「でも私は、フライゴンを信じたんだ」

 サトシ 「リーフがフライゴンを信じたから、フライゴンもリーフを信じてくれた、ってことか」

 リーフ 「でも、ミスしちゃった。フライゴン大人しくなってくれたのに、念のためキャプチャしようとしたら……」

 サトシ 「あぁ、なるほど。それでフライゴン、驚いて崖の方に飛んじまったのか」

 リーフ 「うん。私の判断ミスで、フライゴンを危険な目に遭わせちゃって……。それで、気付いたら私も、飛び込んでて」

 サトシ 「いや、そういう場面なら、キャプチャすると思うぜ。リーフは悪くないよ。タイミングが悪かっただけさ」

 リーフ 「でも……」
 ▼ 218 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/06 02:35:53 ID:j9DMEmhQ [4/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

結果的に、フライゴンも私も無事だった。

けど、もしフライゴンが羽ばたけなかったら――。もし私がフライゴンに届かなかったら――。

状況はガラッと変わっていたと思う。


 サトシ 「……前にさ、リーフ、自分にも勇気が欲しいって言ってただろ?」

 リーフ 「えっ? あ……うん」


大会前、サトシ君と2人きりで特訓した時に、そんな話をしたっけ。

サトシ君、そんな何気ない会話、覚えててくれたんだ。


 サトシ 「リーフ、すげぇ勇気あるじゃん!」

 リーフ 「ううん。そんなこと……」

 サトシ 「いや、勇気あるよ。フライゴンを助けるために崖から飛び降りるなんて、普通じゃ出来っこないぜ?」

 リーフ 「それは、咄嗟に体が動いたからで……。それに、サトシ君だってチルットを助けるために飛び降りて……」

 サトシ 「ならリーフは、オレと同じくらい、勇気があるってことさ!」

 リーフ 「あっ……」

 サトシ 「オレさ、ポケモンのこと考えると周りが見えなくなっちまって、けっこう無茶なことしてきたんだ。そのたびにピカチュウや仲間に怒られてさ」

 リーフ 「そうなんだ」

 サトシ 「それを“勇気がある”って言えるかは微妙だけど、ポケモンが好きだから、いつもオレ、無茶なことしちまうんだ」

 リーフ 「うん。なんだか分かるかも」

 サトシ 「リーフは、オレと似てるのかもな」

 リーフ 「サトシ君と……?」

 サトシ 「フライゴンを助けるために崖から飛び降りる――、普通じゃ出来ないよ。……まぁ、オレなら飛び込むけどな!」

 リーフ 「……ふふっ」

 サトシ 「チルットを助けたオレを、みんな凄いって言ってくれたけど、それと同じことをリーフは やったんだ。凄いに決まってる。勇気があるに決まってるよ」

 リーフ 「そっか。私、サトシ君と同じこと……」

 サトシ 「ポケモンのために行動できるって、ホントに凄いと思うんだ。そういう人、オレは好きだぜ」 ニカッ


 リーフ 「っ……///」 ドキッ

 ▼ 219 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/06 02:37:21 ID:j9DMEmhQ [5/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



サトシ君の笑顔に、私の体を衝撃が突き抜けた――ような気がした。



私が ずっと欲しかった“勇気”。

私は それを、いつの間にか手に入れていた。


それは間違いなく、サトシ君のお陰。

サトシ君と出会って、話して、触れ合って。私は間違いなく、サトシ君から良い影響を受け取って。

だからこそ手に入れることが出来た勇気。


優しくて、ポケモン想いで、みんなの心を一つにする力を持っていて、バトルが強くて格好良い、サトシ君。

尊敬する彼と同じ勇気を、私は手に入れることが出来た。



 サトシ 「……ん、どうした?」

 リーフ 「ぁっ、ううん、そのっ……///」 ドキドキ



そんなサトシ君が、私のことを、褒めてくれた。私みたいな人を、好きだと言ってくれた。


……勿論分かってる。

その“好き”は、“ポケモンのために行動できること”を指してるってことくらい。



 リーフ 「……ふふっ。ありがとう ///」



でも、嬉しい。


すっごく嬉しい。


サトシ君から“好き”という言葉を聞けて、本当に、本当に嬉しい。


なんでこんなに嬉しいんだろうな……ふふっ。


 ▼ 220 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/06 19:52:25 ID:j9DMEmhQ [6/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





  「おーい! お前たち大丈夫かー!?」





 サトシ 「おっ?」

 リーフ 「フローゼル……に乗ったバロウさんだ」



遠くからフローゼルが物凄い勢いで近付いて来たかと思えば、フローゼルの背中にバロウさんが乗っていた。

彼らの後ろからは、モーターボートも近づいてくる。


 サトシ 「バロウさんって確か……」

 リーフ 「ビエンタウンのリーダーレンジャーだよ」

 サトシ 「そうそう! あのチルットを預けた時に会った人!」

 リーフ 「リーダーのバロウさんが来てくれるなんて」



そんな会話をしていれば、あっという間にバロウさんは私たちの前に到着した。

やっぱりフローゼルの泳ぐスピードは凄い。



 バロウ 「お前たち、よく頑張ったな! ほら、救命胴衣だ」

 サトシ 「ありがとうございます!」

 リーフ 「ありがとうございます。あと、フライゴンを!」

 バロウ 「分かってるさ。 おーいクラム! ボートゆっくりな!」

 クラム 「了解! やぁ未来のレンジャー。大活躍だねっ」


ボートを操縦していたのは、ビエンタウンのポケモンレンジャー、クラムさん。

レンジャースクールを卒業した、私たちの先輩だ。
 ▼ 221 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/06 19:53:33 ID:j9DMEmhQ [7/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 バロウ 「よーしマクノシタ。フライゴンをボートに引き上げるぞ。優しくな」

 マクノシタ 「もい!」

 バロウ 「カメールとブイゼルもご苦労さん。ボートに上がって休んでくれ」

 カメール 「かめぇ」

 ブイゼル 「ぶいっ」


バロウさんとマクノシタが、フライゴンをボートに引き上げた。

フライゴンは抵抗せず、目を閉じたまま、身を任せているようだった。


 バロウ 「ほら、最後は お前たちだ」

 サトシ 「上がれよリーフ」

 リーフ 「うん」

 クラム 「レディーファースト。きみ、出来る男だねぇ」

 サトシ 「いやぁ、当然ですよ」

 クラム 「ははっ。 これで海に落ちたのは全員だね?」

 サトシ 「はい!」

 バロウ 「よし。プエルに帰還だ。頼むぞクラム」

 クラム 「了解! クラスメートたちも心配して待ってるよ」



これで……一安心、だよね。


よく頑張ったね、フライゴン。

すぐポケモンセンターに連れて行ってあげるから、もう少しの辛抱だよ。


 ▼ 222 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/06 19:55:16 ID:j9DMEmhQ [8/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 バロウ 「それにしてもお前たち、本当に よく頑張ったな。連絡受けて驚いたぞ。フライゴンを助けるために、2人が海に飛び込んだーなんて」

 サトシ 「オレは、ブイゼルの“みずてっぽう”を使ったので、飛び込んだ訳じゃないんです。本当に凄いのはリーフですよ」

 バロウ 「そうなのか」

 リーフ 「あっ……いえ。咄嗟に体が動いてしまって……。それに、サトシ君が助けに来てくれなかったら、今頃どうなっていたか……」

 サトシ 「自信持てよリーフ! フライゴンを助けられたのは、リーフの気持ちがフライゴンに通じたからだぜ?」

 リーフ 「……うん! フライゴンが、心を開いてくれたんです。だから私たち、みんな無事で!」

 サトシ 「カメールとブイゼルも頑張ってくれたしな!」

 カメール 「かめぇ!」

 ブイゼル 「ぶいぶい!」


 バロウ 「サトシとリーフか。はははっ! 大した奴らだ、まったく!」

 クラム 「フライゴンと心を通じ合うなんて――しかも、キャプチャしてないんだろ? 本当に凄いことだよ」

 バロウ 「傷付いたフライゴンを救出する……。サトシ! リーフ! ミッションクリアだ!」

 サトシ 「ミッション……」

 リーフ 「クリア……?」

 クラム 「……バロウ。2人は まだスクール生」

 バロウ 「はははっ! そうだったな。いやぁけど、卒業が楽しみだな。ビエンタウンに配属されるよう祈ってるぜ!」

 クラム 「僕も同感。君たちみたいな勇気ある後輩、是非とも欲しいよ、うん」


 サトシ 「へへっ」

 リーフ 「ふふっ」



私とサトシ君は、顔を見合わせて、笑った。


現役のレンジャーさんに こんなに褒めて貰えるなんて、ちょっとくすぐったい感じだ。


フライゴンを助けることが出来て、私とサトシ君も無事で。


私たち、本当に凄いことを成し遂げたんだね。




 ▼ 223 ナバァ@タンガのみ 21/11/07 11:40:07 ID:FnZkv2BU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 224 クシー@はかせのふくめん 21/11/17 13:59:37 ID:6.C.gXpU NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
それよりプエル学園の奴らの名前が北海道の特急列車で草
 ▼ 225 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/20 23:21:53 ID:9v.w8xm2 [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



ボートはプエルタウンの水路を進み、ポケモンセンターの すぐ近くに着岸した。

そこには――。

 
 ハジメ 「サトシ! リーフ!」

 ヒトミ 「良かった……」

 ナツヤ 「心配かけやがって」

 ミナミ 「ホントよ。でも凄かったわ、2人とも」

 ピカチュウ 「ぴかぴ!」

 チコリータ 「ちこちこぉぉぉ!」


 サトシ 「おっと。へへっ、心配かけたなピカチュウ!」

 ピカチュウ 「ちゃぁ〜」

 リーフ 「ごめんねチーちゃん。心配かけちゃって」

 チコリータ 「ちこっ……グスッ、ぢこりぃ……」


チーちゃんが、みんなが、出迎えてくれた。

特にチーちゃんには心配かけちゃったね。こんなに泣いて……、可愛い顔が台無しだよ?


 バロウ 「マクノシタ。フライゴンを頼む」

 マクノシタ 「もい!」

 バロウ 「みんな ご苦労だったな。後のことは こっちに任せておけ」

 クラム 「スクールスタイラーの学外使用とか、僕らでスクールに説明しておくよ」

 サトシ 「ありがとうございます」

 リーフ 「お願いします」


 バロウ 「サトシ、リーフ。お前たち、良いコンビだな!」

 リーフ 「えっ?」

 バロウ 「今後の活躍に期待してるぜ! あばよ!」

 クラム 「たまにはレンジャーベースに遊びにおいでよ。じゃあね未来のレンジャーたち!」
 ▼ 226 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/20 23:23:42 ID:9v.w8xm2 [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


フライゴンをジョーイさんに引き継いだバロウさんとクラムさんは、ボートに乗って去って行った。

大会イベント中だから、警備とかで忙しいんだと思う。そんななか私たちを助けに来てくれて、感謝しかないな。


 ミナミ 「良いコンビ――、確かにバロウさんの言う通りね〜」

 ヒトミ 「うん。サトシもリーフも、ポケモンのためにあんなに体を張れるんだもん。本当に良いコンビだよ」

 リーフ 「そっ、そうかなぁ……」

 ナツヤ 「普通じゃ出来ないことしたんだよ、サトシとリーフは」

 ハジメ 「そうそう。少なくとも僕たちじゃ無理だよね。ポケモンを助けるために、崖から飛び降りるなんて」

 ヒトミ 「うん。助けたい気持ちは当然あるけど、飛び降りる勇気、私には無いかな」

 ミナミ 「見直したわ。リーフの勇気!」


 リーフ 「みんな……」


 サトシ 「言っただろ。リーフは勇気あるって」

 リーフ 「サトシ君……」

 サトシ 「みんなも認めてくれてるんだ。自信持ってさ。もっと誇って良いんだぜ!」


そう言って、サトシ君はニカッと笑った。


自信――か。


普段の私は、ミナミちゃんやヒトミちゃんの影に隠れてしまっている。みんなを頼ってしまっている。

それは、自信が無いから。弱い自分に、自信が無いから……。

積極的に行動する勇気が無かったから……。
 ▼ 227 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/20 23:25:16 ID:9v.w8xm2 [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 リーフ 「私……、大丈夫なのかな?」

 サトシ 「ん?」

 リーフ 「大人しくて、人見知りで、いっつも皆を頼ってばっかりで……。こんな私が、自信を持って、良いのかな……?」

 サトシ 「良いに決まってるだろ!」 ポンッ!

 リーフ 「ぁっ……?」 ドキッ

 サトシ 「オレが保証する。リーフは強いし勇気もある!」

 ミナミ 「フライゴンのために崖から飛び降りといて、自信が無いなんて矛盾してるわよ〜?」

 ナツヤ 「あぁ。リーフは、オレたちに出来ないことを したんだ。自信持って良いに決まってるだろ!」

 ヒトミ 「それに、さっきの決勝戦も。ちゃんとサトシのサポートしてたじゃん。チーちゃんと一緒に!」

 ハジメ 「リーフもチコリータも、僕たちから見れば すっごく強くて勇気あるんだよ。羨ましいくらいにね!」

 チコリータ 「ちっこりぃ♪」

 リーフ 「みんな……。チーちゃん……」


あぁ……、嬉しいな、本当に。

みんなが、私のことを褒めてくれた。認めてくれた。


私、自分自信に全く自信が無かったのに。

大人しくて、人見知りで、こんな性格でポケモンレンジャーに向いてるかどうかも心配だったのに。



 リーフ 「ありがとう……」



こんな私でも、みんなは認めてくれた。

自信や勇気とは無縁だと思っていた私のことを、みんなは、認めてくれた……!



 リーフ 「本当にありがとう、みんなっ!」 ニコッ

 ▼ 228 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/20 23:27:08 ID:9v.w8xm2 [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 サトシ 「良い笑顔じゃん、リーフ」

 リーフ 「えっ……ぁっ、ふふっ……///」


 ミナミ 「あらあら、良い雰囲気だとこ〜」

 ヒトミ 「ホントにね〜」

 リーフ 「ちょっ……そんなんじゃ!」

 ナツヤ 「まぁでも、リーフが自信を持てたのは、間違いなくサトシの お陰だね」

 ミナミ 「そうね。リーフが崖から飛び降りたの、サトシがチルットを助けた姿を見たからでしょ?」

 リーフ 「ぁっ、えっと……うん。体が勝手に動いたんだけど、あの時のサトシ君を見てなかったら、あんなこと、出来なかったと思う」

 ヒトミ 「そういう意味でもさ。サトシとリーフは良いコンビだよね」

 ハジメ 「だね。ポケモン想いなコンビ、良いと思うよ」

 ミナミ 「サトシとリーフって、性格的には反対なのに、こう……なんて言うか、芯の強さが似てるんじゃないの?」

 ナツヤ 「あぁ。だからこそ良いコンビ……。お似合いだと思うぜ?」

 リーフ 「お似合いってそんな……///」


 サトシ 「良かったな。リーフの勇気と強さ、みんな認めてくれてるんだぜ」

 リーフ 「うんっ!」


 ミナミ 「いやサトシ、そういうことじゃ……」

 サトシ 「ん?」

 ピカチュウ 「ぴぃか?」


サトシ君と良いコンビ、お似合いだって言われて、私は嬉しくて恥ずかしい。

一方サトシ君は、顔色一つ変えていない。

鈍感なのか、恋愛ごとに興味が無いのか、私をただの友達と見ているのか――、それは私には分からない。


でも、いいの。


サトシ君と良いコンビだって思われるほど、私には勇気があるみたい。

そのことを こうして分かっただけで、私は満足……かなっ。

 ▼ 229 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/20 23:29:47 ID:9v.w8xm2 [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 サトシ 「あ、そう言えば閉会式は大丈夫なのか?」

 リーフ 「えっ……あ、ホントだ。とっくに始まっちゃってる」

 ハジメ 「大丈夫。モブオたちに任せたよ」

 ヒトミ 「全員参加って決まりがある訳じゃないから、問題ないって」

 サトシ 「そっか。良かった」

 ナツヤ 「オレたちとしては、優勝に導いてくれたサトシとリーフに、表彰台に上って欲しかったけどな」

 サトシ 「いや。みんなで掴んだ優勝だよ。表彰台に上るんなら全員揃って、だろ?」

 リーフ 「あっ……ごめんねみんな。私たちを探しに来てくれたばっかりに……」

 ナツヤ 「いやいや、そういう意味じゃないから安心して!」

 ミナミ 「そうよ。それに……、サトシとリーフの行動は、表彰台に上るより価値があったんじゃないかしら?」

 ハジメ 「そうだね。レンジャースクールの生徒が、暴れるフライゴンから会場を守った――、凄いことだよ」

 ヒトミ 「うん。チームメートとして嬉しいよ!」

 サトシ 「へへっ。ありがとな、みんな!」

 ピカチュウ 「ぴっか!」

 リーフ 「ふふっ」


私とサトシ君が良いコンビであるように、サトシ君とみんなもまた、良いチームだ。

それは やっぱり、サトシ君の強さ、優しさ、ポケモン想いの心が、そうさせたんだと思う。


サトシ君が来た初日は、これからどうしようって心配になるくらい険悪なムードだったのにね。

本当に凄いよ、サトシ君。本当に尊敬しちゃうな、サトシ君……。

 ▼ 230 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/20 23:31:29 ID:9v.w8xm2 [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 ジョーイ 「リーフさん、いるかしら?」

 リーフ 「あっ、はい」

 サトシ 「あ、ジョーイさん! フライゴンは大丈夫ですか?」

 ジョーイ 「えぇ。みんなの救助のお陰よ。すぐに元気になるわ」

 サトシ 「良かった。ありがとうございます、ジョーイさん」

 リーフ 「よろしくお願いします。それと、私がリーフですけど……」

 ジョーイ 「貴方がリーフさんね。バロウさんから聞いたわ。フライゴンを助けるために、崖から飛び降りたんでしょ?」

 リーフ 「はい。でも、フライゴンが頑張ってくれたお陰で、怪我とかは何にも……」

 ジョーイ 「けど、念のため検査させてね。あんまり無茶しちゃダメよ」

 リーフ 「分かりました」


 ミナミ 「リーフ。私たち、ここで待ってるわね」

 ヒトミ 「頑張ってね〜」

 リーフ 「うん。ごめんねみんな」


 ナツヤ 「そろそろ閉会式終わる頃だけど……、モブオたちには先に帰っててもらうか」

 ハジメ 「そうだね。トロフィーと優勝旗は早くスクールに届けたいし、優勝校が あんまりウロウロしてると、またマスコミに捕まりかねないしね」

 サトシ 「なら、フライゴンの回復まで待ってようぜ。野生に帰るまで見守ってやりたいし」

 ナツヤ 「そうだな」

 ハジメ 「じゃあ、モブオたちと先生に連絡しておくよ」





みんなに見送られて、私は検査へと向かった。


でも、ジョーイさんに説明した通り、フライゴンが頑張ってくれたお陰で、海に飛び込んだ衝撃は ほとんど無かった訳で。


1時間ちょっとで無事に検査は終了した。




 ▼ 231 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/23 01:15:52 ID:/F1ksX0w [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 リーフ 「お待たせ みんな」


 ヒトミ 「あ、おかえりー」

 ミナミ 「検査結果は?」

 リーフ 「問題なしだよ。フライゴンのお陰でねっ」

 ヒトミ 「そっか。良かった」


 サトシ 「そのフライゴンも、回復終わってるよ」

 フライゴン 「ふりゃっ!」

 リーフ 「フライゴン!」


フライゴンは元気に鳴くと、私の元に寄って来てくれた。

暴れていた時の険しい表情が嘘のように、穏やかな、優しそうな笑顔だ。


 リーフ 「良かった……、フライゴン……」 ギュッ

 フライゴン 「ふりゃぁ」

 リーフ 「ありがとね、フライゴン。あの時、私を守ってくれて」

 フライゴン 「ふりゃぃ。りゃぁ!」

 ナツヤ 「フライゴンも お礼言ってるんじゃないか?」

 ミナミ 「そうね。リーフ、一緒に崖から飛び降りてくれたんだし」

 リーフ 「ううん。それは私の判断ミスのせいだもん。ごめんねフライゴン、怖い思いさせちゃって……」

 フライゴン 「ふりゃ」

 ハジメ 「怒ってないってさ」

 ヒトミ 「ふふっ。リーフ、キャプチャ無しで、完璧にフライゴンと心を通わせたね」

 サトシ 「やっぱり凄いよ、リーフは」


 ナツヤ 「じゃあ帰るか。レンジャースクールへ!」

 ミナミ 「早く全員で優勝報告したいもんね」

 ハジメ 「モブオたち、もう着いてるんじゃないか?」

 ヒトミ 「主役を差し置いて優勝報告なんて許さないよ。ねっ、サトシ! リーフ!」

 サトシ 「だからー、みんなで勝ち取った優勝だろ? みんなが主役だぜ!」

 リーフ 「ふふっ。そうだよね!」
 ▼ 232 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/23 01:16:36 ID:/F1ksX0w [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



私たちは、ポケモンセンターを後にした。


あたりは すっかり暗くなっていて、あれだけ盛り上がった大会の賑わいも、すっかり薄れていた。



 リーフ 「フライゴン。ひとまずビエンの森で良いかな?」

 フライゴン 「りゃい!」

 ハジメ 「このフライゴンの縄張りが何処かは分からないけど、ひとまずビエンの森なら確実だろうね」


レンジャースクールへの帰り道。

私たちは、フライゴンをビエンの森まで送ってあげることに。こんなプエルの街中で放す訳には いかないもんね。



 フライゴン 「ふりゃぁ♪」

 ヒトミ 「ふふっ。フライゴンご機嫌ね〜」

 ミナミ 「それに、リーフの傍ピッタリだし」

 サトシ 「リーフ、フライゴンに気に入られたんだな」

 リーフ 「そうなの? ありがとうフライゴン」

 フライゴン 「ふりゃ!」


フライゴンは、私の右隣を、私の目線の高さで、私の歩みに合わせて飛んでいる。

こんなに立派なドラゴンタイプのポケモンでも、こんなに可愛い仕草を見せてくれるんだね。


 ナツヤ 「ほら、もうすぐビエンの森の入口だ」

 ミナミ 「“みはらしとうげ”あたりまで連れて行ってあげる?」

 リーフ 「うん。眺めの良い場所なら、フライゴンも自分の住処が分かりやすいんじゃないかな」


フライゴンの怪我は もう治っている。

ビエンの森やプエルタウンを見通せる“みはらしとうげ”に行けば、フライゴンは自分の住処に飛んで行けるはずだ。


 ▼ 233 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/23 01:17:04 ID:/F1ksX0w [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





 「やっと来やがったな!」





 リーフ 「えっ!?」

 サトシ 「誰だ!?」

 ナツヤ 「この声……」



ビエンの森に入ってすぐ、不意に私たちは呼び止められる。


振り向くと、茂みの中から現れる、5人の影。


この状況、声の主は、おおかた想像がつく。



 ソウヤ 「待ちくたびれたぜまったく」

 ホクト 「閉会式にも参加せず、どこで油を売っていたんでしょうねぇ」


 ナツヤ 「お前ら……!」

 ハジメ 「何の用だ。僕たちはスクールに急いでるんだ。邪魔しないで貰えるか?」


 カムイ 「まぁ待てよ。ちょっと話そうぜ」

 エルム 「大会じゃ随分と調子乗ってたじゃない。何様かしら」

 スラン 「私たちプエル学園に泥を塗ってくれちゃって、タダで済むと思ってんの?」



プエル学園の生徒たち――、決勝戦という大舞台で戦った相手。

そのうちの5人が、私たちの行く手を阻んできたのだ。
 ▼ 234 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/24 22:37:59 ID:ZY0wcr.Y [1/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ミナミ 「泥を塗るって……、正々堂々バトルした結果でしょ!」

 ヒトミ 「そうよ!」

 ソウヤ 「黙れ! ザコの分際で優勝とか許されねーんだよ!」

 ナツヤ 「逆ギレもいいとこだなオイ」

 ハジメ 「情けないね」

 ソウヤ 「んだと!?」

 ソウヤ 「とにかく! 僕たちは納得できないんですよ。まぐれ で優勝して、それが記録に残ってしまうことが」

 エルム 「だから もう1回ここでバトルして、さっきの優勝が まぐれ だって証明させて貰うわ」


プエル学園の人たち、酷い言いがかりだ。

自分たちが負けたことを認めないで、もう1回バトルしろだなんて。

それに、私とチーちゃん、サトシ君、みんなの頑張りを、“まぐれ”だなんて……!


 ソウヤ 「お前らに拒否権はねーぜ」

 スラン 「言っとくけど、今度は手加減しないから覚悟して」

 ミナミ 「あら? 決勝戦は手加減してくれてたんだ」

 スラン 「黙りなさい!」

 エルム 「アンタたちが優勝なんて有り得ないのよ! どーせイカサマしたんでしょ」

 ホクト 「その通り。でなければ僕のボスゴドラが、貴様らみたいなザコに」





 リーフ 「ふざけないでよ!」





 ミナミ 「えっ?」

 ヒトミ 「リーフ……?」
 ▼ 235 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/24 22:39:59 ID:ZY0wcr.Y [2/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

気付けば、私は怒鳴っていた。

自分でもビックリするほど、大きな声で。


 リーフ 「まぐれとか、手加減とか、イカサマとか! 私たちの頑張りをバカにするのは許さないよ!」

 フライゴン 「ふりゃぁ!」


フライゴンも、私に加勢してくれた。

みんなで掴んだ優勝と言うカタチをイカサマだなんて、絶対に許せない。

私たちとポケモンたち みんなの頑張りを、活躍を、覚悟を、否定するなんて絶対に許せない!


 カムイ 「ん? そのフライゴン……」

 エルム 「……あら」

 リーフ 「なっ、なによ……!」

 フライゴン 「ふぎゃぁ!」

 カムイ 「へっ!」


 サトシ 「……まさか。フライゴンを怪我させたの、お前たちの仕業なのか!?」

 リーフ 「えっ!?」

 フライゴン 「りゃぁぁっ……!」

 エルム 「さぁ。なんのことかしらね」

 カムイ 「言い掛かりすんじゃねーよ」

 ソウヤ 「お喋りは終わりだ! さっさとポケモン出せよ!」

 ホクト 「仲良くボコボコしてやりますよ。優勝が まぐれ だと証明するためにね!」



プエル学園の人たちは、モンスターボールを構え、ジリジリと迫って来る。

私たちは茂みの方へと追いやられ、逃げ道を塞がれてしまった。
 ▼ 236 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/24 22:41:41 ID:ZY0wcr.Y [3/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ハジメ 「またバトルすんのかよ……!」

 ナツヤ 「あの時と――サトシをプエルに案内しようとした日と同じじゃねーか」

 ミナミ 「カメールたち回復は終わってるけど、今日は休ませてあげたいし……」


そうだ。ここでまたバトルするのは出来れば避けたい。

チーちゃんも、みんなのポケモンたちも、今日は初めての大会で疲れている。

こんな状況で再びプエル学園とバトルだなんて……。



 サトシ 「みんな。ここはオレに任せてくれ」

 ピカチュウ 「ぴかちゅぅ!」

 ナツヤ 「サトシ!?」

 ハジメ 「けど、ピカチュウだって疲れてるだろ?」

 サトシ 「大丈夫さ。……あの時は、みんなの意見を尊重して、オレは手出ししなかった。でも今は手出しする!」

 ミナミ 「サトシ……」

 サトシ 「みんなで掴んだ優勝を! まぐれとか! イカサマとか! みんなの想いを踏み躙るようなこと言われて! オレはお前らを許さない!」

 ピカチュウ 「びかびかぁ!」


 ホクト 「ふん。威勢だけは良いですね」

 エルム 「ウザっ」


 ヒトミ 「なら私たちも戦うよ!」

 ナツヤ 「そうだ! サトシにばっか頼る訳にはいかないからな!」

 サトシ 「いや。みんなのポケモンたちは慣れない大会で疲れてるだろ? オレとピカチュウに任せてくれ」

 ピカチュウ 「ぴっか!」

 ハジメ 「そんな訳には!」

 リーフ 「サトシ君……」


チーちゃんたちが疲れているのは事実。それはサトシ君にも分かっていた。

けど、だからってサトシ君とピカチュウに任せちゃうなんて……。


 ▼ 237 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/24 22:42:45 ID:ZY0wcr.Y [4/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 フライゴン 「ふりゃぁぁぁぁ!」



そんな時、フライゴンが雄叫びを上げた。


 サトシ 「おっ!」

 リーフ 「フライゴン……?」


 フライゴン 「ふりゃっ!」 キッ!


そしてフライゴンは、プエル学園の人たちをキッと睨みつける。



そっか。


一緒に戦ってくれるんだね、フライゴン。


疲れているチーちゃんたちの代わりに、フライゴン、貴方が……。



 リーフ 「サトシ君! 私とフライゴンも加勢するよ!」

 フライゴン 「りゃい!」

 サトシ 「よっしゃ! 頼むぜフライゴン! リーフに良いとこ見せてやれよ!」

 フライゴン 「ふりゃ!」
 ▼ 238 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/24 22:47:08 ID:ZY0wcr.Y [5/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 カムイ 「野生のフライゴンに何が出来るって言うんだ?」

 エルム 「そうよ。私たちの育成に対抗できると思ってんの?」

 サトシ 「……なんでコイツが野生って分かるんだ?」

 リーフ 「ぁ、確かに」

 カムイ 「っ……黙ってろ!」


サトシ君の指摘で確信した。

フライゴンを傷付けたのは、この人たちだ。

理由は分からないけど、フライゴンを苦しめたのは、間違いなく この人たちだ。


 サトシ 「フライゴン! お前の力、あいつらに見せつけてやろうぜ!」

 ピカチュウ 「ぴかぴっか!」

 リーフ 「頑張ろうねフライゴン!」

 フライゴン 「ふりゃあ!」


けどサトシ君は、そのことを問い詰めようとはしない。

バトルでフライゴンの強さを証明することが、フライゴンにとっての最善だと考えたようだ。

こういう所でも、サトシ君の優しさやポケモン想いの心を感じられる。


 カムイ 「黙れザコの分際で!」

 ソウヤ 「男のクセにピカチュウなんて使ってよぉ!」

 サトシ 「オレのピカチュウに負けたくせに、その言い方は哀れだぞ」

 ホクト 「チッ! だいたい……貴様、これまで見かけなかった顔ですね。転校生ですか?」

 エルム 「そうよ! ぽっと出が調子乗ってんじゃないわよ!」

 スラン 「誰よアンタ。ホントにレンジャースクール生なの?」



 サトシ 「オレは――」



 ▼ 239 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/24 22:48:31 ID:ZY0wcr.Y [6/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

サトシ君は、体験入学生。

厳密に言えば、レンジャースクール生ではないかもしれない――けど。



 ナツヤ 「サトシはレンジャースクールの一員だ!」


 ハジメ 「そうだ! 紛れもなくレンジャースクール生だ!」


 ミナミ 「私たちの大切な仲間よ!」


 ヒトミ 「キャプチャもマスターしてるし、バトルも強い、私たちの自慢の仲間!」


 リーフ 「優しくて、勇気があって、ポケモン想いで! 私たちの かけがえのない存在だよ!」



私たちは、叫んだ。

自信を持って、本気で叫んだ。



 サトシ 「みんな……」



今やサトシ君は、私たちレンジャースクール生の、大切な仲間であると!



 サトシ 「そうだ。オレはレンジャースクール生の一人! マサラタウンのサトシだ!」

 ピカチュウ 「ぴか! ぴかぴっかぁ!」



サトシ君とピカチュウも、そう叫んだ。

自信に満ちた、誇りを持った、とっても堂々とした叫びだった。


 ▼ 240 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/24 22:49:20 ID:ZY0wcr.Y [7/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 ホクト 「マサラタウンの、サトシ――?」

 エルム 「なに調子乗っちゃってんの恥ずかしい」

 スラン 「ホント。ウザいんだけど」

 ソウヤ 「そのピカチュウとフライゴンでオレ達に勝てると思ってんのかよ」

 カムイ 「笑わせんじゃねーぞ!」


 サトシ 「オレたちは負ける気なんて無いぜ!」

 ピカチュウ 「ぴかぴかぁ!」

 リーフ 「あなたたちみたいな人に、絶対に負けないもん!」

 フライゴン 「ふぎゃあぁ!」


 カムイ 「せいぜい粋がってな! 行くぞゲンガー!」

 ソウヤ 「出ろリザードン!」

 エルム 「出番よロズレイド!」

 スラン 「やるわよメタグロス!」





 ホクト 「待て!」





 ▼ 241 ップリュー@しめったいわ 21/11/25 17:42:39 ID:AYQI.k5o NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
来てた
支援
 ▼ 242 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/27 02:29:15 ID:xxdMnKSM [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


これからバトルが始まる――、まさにそんなタイミングで、プエル学園側の1人が叫んだ。



 カムイ 「なんだよホクト?」

 ソウヤ 「お前も早くポケモン出して……」


 ホクト 「マサラタウンのサトシ、そう言いましたね」

 サトシ 「それがどうした」

 ホクト 「しかもピカチュウを連れている」

 ピカチュウ 「ぴか?」

 サトシ 「それがどうしたって言うんだよ?」

 ホクト 「なるほど。……気付くべきでしたね。僕のボスゴドラを倒した、奇抜な戦法を見たタイミングで」

 サトシ 「気付く?」


 エルム 「ちょっとどうしたのよホクト!?」

 スラン 「さっさとコイツらの相手!」

 ホクト 「マサラタウンのサトシ――、この人は、一時期ネットで話題になった、カロスリーグ準優勝者ですよ」

 カムイ 「は!?」

 ソウヤ 「……マジ? こいつが!?」


サトシ君が……カロスリーグ準優勝?


 ナツヤ 「リーグ準優勝……マジ!?」

 ミナミ 「それって……凄いことよね?」

 ハジメ 「当然だよ! 8つのジムバッジを集めたトレーナーの、その中の さらに2位ってことだからね」

 ヒトミ 「サトシ、そんなに凄い人だったんだ……」


みんなも驚きを隠せない様子。

当然だ。私たちにバトルを教えてくれたサトシ君は、実は とんでもない実力者だったんだから。
 ▼ 243 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/27 02:33:34 ID:xxdMnKSM [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ホクト 「カロスリーグ直後の謎の災害のせいで、話題は続きませんでしたが……」

 スラン 「あったわね、変な植物が街を襲ったやつ」

 ホクト 「600族であるバンギラスとメタグロスに打ち勝ったピカチュウ。大いに注目されていましたよ」

 カムイ 「……思いだした。優勝した奴より話題になったよな、そのピカチュウ」

 ホクト 「えぇ。そんな凄いピカチュウを育てたサトシ……、気になって過去の戦績を調べたことがあります」

 ソウヤ 「オレも調べた。最初はセキエイ大会のベスト16から始まって……」

 ホクト 「ジョウト、ホウエン、イッシュの各リーグでベスト8、シンオウリーグではベスト4まで勝ち進んでいます」

 ソウヤ 「あとアレだ。アローラに作られたポケモンリーグっぽいイベントで優勝してるんだっけ」

 ホクト 「マサラタウンのサトシ。まさか、こんな所で出会えるとは……」



待って、ちょっと頭が追いつかない。

サトシ君は今まで、6つの地方のポケモンリーグに出場しているの?

と言うことは、ジムバッジは48個? 48人ものジムリーダーに実力を認められてるってこと?



 サトシ 「オレたち、けっこう知られてるんだな」

 ピカチュウ 「ぴか?」


 エルム 「ヤバい奴ってことは分かったわ。けど! 私たち5人で かかれば余裕でしょ!」

 カムイ 「だな。ビビることねーぜ!」

 スラン 「そうよ。私たちから優勝を奪った恨み! しっかり晴らさせて貰うわよ!」


 ホクト 「待てと言ってるだろ!」

 ▼ 244 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/27 02:37:37 ID:xxdMnKSM [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 エルム 「なによ……」

 カムイ 「ビビるなよホクト。数の差で負ける訳ねーだろ」

 ホクト 「馬鹿者! ポケモンリーグ準優勝……、実力あるトレーナーに対しては、敬意を払い正々堂々バトルするべきです!」

 スラン 「敬意とかマジで言ってんの?」

 ホクト 「当然です。……そして、我々の実力では、サトシには及ばないでしょう」

 ソウヤ 「悔しいけど、その通りだな。さっきの決勝戦で見ただろ。オレたちとは、戦略の立て方が まるで違う」

 カムイ 「どうしたんだよホクト! ソウヤ! このまま引き下がるって言うのかよ!?」

 エルム 「私たちプエル学園に泥を塗られたのよ!?」

 ホクト 「泥を塗ったのが彼――サトシであるのなら、それは名誉なことでしょう」

 カムイ 「はぁ!?」



そう言うと、ホクトと呼ばれている彼は、サトシ君の元へ歩み寄る。


サトシ君は、多少は身構えているものの、無言で彼の様子を伺っている。



 ホクト 「サトシ、ピカチュウ。一度会ってみたかった」

 サトシ 「それはどうも」

 ピカチュウ 「ぴか」

 ホクト 「僕らプエル学園は、アルミア地方で最もバトルが強い学校であると自負しています」

 サトシ 「確か、4年連続優勝……だったか」

 ホクト 「えぇ。しかし、アルミア地方には、ポケモンリーグと言う制度が存在しません。優勝と言えど、ジムリーダーに実力を認められた訳ではなく、あくまでアルミア地方独自の文化です」

 サトシ 「アローラと同じ感じか」

 ホクト 「僕らにとって、ポケモンリーグ出場者というのは、それだけで尊敬に値します。そのうえ準優勝となれば、僕らとは格が違う。実力は天と地の差です」

 サトシ 「そうか」

 ホクト 「サトシ。君と決勝戦を戦うことができたこと、光栄に思います」
 ▼ 245 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/27 02:40:29 ID:xxdMnKSM [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 サトシ 「ホクト……だよな。お前のボスゴドラ、強かったぜ。オレだけの力じゃ、とても勝てなかった」

 ホクト 「有難い言葉です」

 サトシ 「オレが勝てたのは、ここに居る みんなの頑張りがあったからだ。お前たちが散々バカにしてきた、レンジャースクールみんなの力があったからだ」

 ホクト 「えぇ。フィールドを活用したサトシとピカチュウの戦略、見事でしたよ」

 サトシ 「……みんなの頑張りを、認める気は無いってことか」

 ホクト 「残念ながら、弱いトレーナーには興味ありません」

 サトシ 「オレのこと尊敬してくれることは、素直にサンキューな。けど、スクールのみんなを認めないって言うんなら、これ以上、お前と話すことは無い」

 ホクト 「それは残念ですね」

 サトシ 「みんなは、決して弱い訳じゃない。ポケモンレンジャーになるために、日々勉強してるんだ。バトルより、ポケモンたちの平和を望んでるんだ」

 ホクト 「そうですか」

 サトシ 「そんな みんなをバカにする奴、オレは絶対に許せない。それが友達であっても、尊敬してくれる人であってもだ」


サトシ君は、力強い口調で言った。

怒りを露わにするような素振りは見せず、淡々と、けど言葉には重みを込めて。


 ホクト 「僕らは、バトルが弱い奴らと仲良くする気はありません」

 サトシ 「これ以上、話しても無駄ってことか」

 ホクト 「……しかしサトシ。君のレンジャースクールに対する想いは、少しだけ理解しました」

 サトシ 「どういうことだよ」

 ホクト 「今後、レンジャースクールとは関わらないことを約束します。僕らだけでなく、プエル学園の全生徒に徹底させます」
 ▼ 246 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/27 02:42:33 ID:xxdMnKSM [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 カムイ 「おいホクト!?」

 スラン 「そんな勝手な約束しないでよ!」

 エルム 「だいたい私たちの口約束で、全生徒が守るワケ……」

 ソウヤ 「守るだろうな。他の生徒たちも」

 エルム 「はぁ!?」

 ソウヤ 「あの決勝戦を見れば、レンジャースクールに対する意識も変わるはずだ。サトシのことに気付いた生徒も多いだろうな」

 カムイ 「その程度のことで……!」

 ソウヤ 「それに加えて、学園でトップレベルの実力のホクトが呼びかければ、案外簡単なことだぜ?」

 スラン 「そんなの認めないわよ!」

 エルム 「そうよ! そんな勝手なこと!」

 ソウヤ 「お前ら勘違いしてるぞ。学園でバトルが強い奴ほど、サトシの名前は知ってるし、ホクトの呼びかけにも応じるはずだ。お前ら敵に回ることになるけど、それで良いのか?」

 カムイ 「っ……!」

 スラン 「なによそれっ……! こんな生意気な奴にっ……!」

 エルム 「はぁぁ。従えば良いんでしょ従えば」

 ソウヤ 「別に仲良くする必要ねぇよ。関わらなければ それで良い。簡単なことさ」


 ホクト 「サトシ、約束します。今後プエル学園は、レンジャースクールを馬鹿にしたり、喧嘩を吹っ掛けることは ありません。ただし、仲良くすることも ありません」

 サトシ 「……分かった。今はそれで十分だ」

 ホクト 「では……失礼しますよ。またいつか、君とバトルできることを楽しみにしています」

 ソウヤ 「あばよサトシ。次は負けねーからな」



プエル学園の人たちは、プエルの街へと去って行った。


私たちは、そんな彼らの背中を、無言で見つめることしか出来なかった。





 ▼ 247 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/28 22:39:47 ID:n8mo53Go [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 サトシ 「これで一件落着……かなぁ?」

 ピカチュウ 「ぴぃか?」



ビエンの森に静けさが戻ると、サトシ君は そっと呟いた。

そんな彼の声を聞いて、ようやく私の、私たちの緊張の糸が ほぐれてくれた。


 リーフ 「一件落着だよ、サトシ君」

 フライゴン 「りゃぁ!」

 サトシ 「けどコレ、プエル学園の奴らとは、もう和解できない感じだぞ……」

 ミナミ 「いいのよサトシ。あんな奴らと、今さら仲良くなんてゴメンよ」

 ヒトミ 「うん。関わらないのが一番。最高の落としどころじゃないかな?」

 ナツヤ 「って言うかサトシ! カロスリーグ準優勝? そんな凄いことしてたのかよ!?」

 ハジメ 「他のリーグでも凄い成績残してて……、あいつらが言ってたこと、全部本当なの!?」

 サトシ 「へへっ。カントー、ジョウト、ホウエン、シンオウ、イッシュ、カロス。今まで旅して、ジムを巡って、ポケモンリーグに挑戦して。成績も、あいつらが言ってた通りさ」

 ナツヤ 「すげぇ……!」

 ミナミ 「もぉ〜! なんて教えてくれなかったのよ〜!」

 サトシ 「いや、自慢するみたいでアレかなって」

 ハジメ 「道理で決勝戦まで進めた訳だよ。僕たち、とんでもないトレーナーに特訓して貰ってたんだから」

 ヒトミ 「うんうん! 凄いよサトシ! 本当に!」

 サトシ 「いや、それは みんなの実力だぜ? みんなの想いに、ポケモンたちが応えてくれた――、それだけさ」

 ピカチュウ 「ぴっかぁ!」
 ▼ 248 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/28 22:40:35 ID:n8mo53Go [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

そう言ってサトシ君は、ピカチュウを撫でた。


私たちの想いに、ポケモンたちが応えてくれた――か。

そうだよね。チーちゃんも、みんなのポケモンたちも、しっかり特訓に ついてきてくれたもんね。

バトル経験なんてほとんど無かったのに、決勝戦まで勝ち進んで、優勝まで掴んで。みんな頑張てくれたもんね。


本当に、サトシ君って凄いな。

私たちのこと、ポケモンたちのこと、しっかり考えていてくれて。

プエル学園の人に尊敬されるほどのバトルの実力を持っていて、それでいて、毅然とした態度で話し合いを進めて。



 リーフ 「格好良いよ、サトシ君……」



 サトシ 「そうか?」

 リーフ 「えっ? ぁっ、そのっ……!」


嘘っ、今の、私、声に出しちゃってた?


 ミナミ 「あらあらリーフ、素直になったわねー」

 ヒトミ 「そうだよね。サトシ、格好良かったもんねー」

 リーフ 「ぁぅぅ……///」

 サトシ 「サンキューな、リーフ」

 リーフ 「あっ……うん。えへへっ ///」

 フライゴン 「ふりゃっ♪」
 ▼ 249 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/28 22:41:35 ID:n8mo53Go [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 サトシ 「そうだ。さっきからフライゴン、リーフに凄い懐いてるじゃん?」

 リーフ 「うん。一緒に戦ってくれる流れだったし、ありがとね、フライゴン」

 フライゴン 「ふりゃ!」

 サトシ 「ゲットしてあげたらどうだ?」

 リーフ 「えっ? 私が……フライゴンを?」

 フライゴン 「ふっりゃ!」 コクッ


フライゴンを見ると、笑顔で頷いてくれた。

確かに私は、フライゴンを助けてあげたけど……。


 ナツヤ 「良いじゃん! ゲットしてやれよリーフ!」

 ミナミ 「あなたが助けて、心を通わせたんだもん。ゲットしてあげないと!」

 リーフ 「でも、フライゴンって最終進化系で、レベルも高いんだよね。今さら私なんかにゲットされたら、窮屈な思いしちゃうよ」

 サトシ 「もしフライゴンが窮屈に思ってるなら、ポケモンセンター出た時点で、どっかに飛び立ってると思うぜ?」

 リーフ 「ぁっ……」

 ハジメ 「そうか。わざわざ僕たちが送らなくても、フライゴンくらいのポケモンなら、問題なく野生に帰れるはずだよね」

 ヒトミ 「うん。なのにフライゴン、今までずっとリーフにピッタリだったもんね」

 サトシ 「そう。フライゴン、リーフのこと気に入ったんだよ、きっと」


 リーフ 「私のことを……。そうなの……かな?」

 フライゴン 「ふっりゃぁ♪」


嬉しそうな表情で、ふわりと舞ったフライゴン。

これは……、そういうことで良いんだよね?
 ▼ 250 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/28 22:42:44 ID:n8mo53Go [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 サトシ 「ほら。このモンスターボール使えよ」

 リーフ 「えっ、良いの?」

 サトシ 「あぁ。たくさん持ってるし」

 ナツヤ 「さすがポケモントレーナーだな」

 ミナミ 「ホントね。私たちボールなんて持ってないわよ」

 リーフ 「ありがとうサトシ君」

 サトシ 「ほら。フライゴン待ってるぞ」


モンスターボールを使うなんて、いつ以来だろう。

チーちゃん以外のポケモンは持っていないし、ポケモンを捕まえると言ったら、キャプチャのイメージだし。



 リーフ 「えっと……」



投げるんだよね?

でも、フライゴンに ぶつけるのは可哀想じゃないかな……。



そんなことを考えながら、ボールを持って焦っていると――。



 フライゴン 「りゃぁ!」 カチッ!

 リーフ 「あっ!?」


フライゴンが自ら、ボールのボタンにタッチした。


赤い光となってボールに吸い込まれたフライゴン。

私の手の中で数回揺れたかと思うと、ボールは すぐに大人しくなった。
 ▼ 251 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/28 22:44:06 ID:n8mo53Go [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 リーフ 「これで……ゲット、だよね?」

 サトシ 「あぁ! フライゴンの奴、相当リーフのこと気に入ったんだな!」

 ヒトミ 「ホントね。自分からボールに入ったし」

 ハジメ 「バトルで弱らせて〜ってイメージだけど、こんなゲットもアリなんだな」



自分からゲットされに行く――、そんなことあるんだね。


私の人生で2匹目のポケモンは、とっても素敵な出会いとなった。



 リーフ 「出ておいで、フライゴン」

 フライゴン 「りゃぁ!」

 リーフ 「なんだか情けないゲットの仕方だったけど、こんな私と一緒に居てくれるかな?」

 フライゴン 「ふりゃぃ♪」

 リーフ 「……ふふっ。これからよろしくねっ、フライゴン!」

 フライゴン 「ふりゃ!」


フライゴンは、ふわりと舞って元気よく鳴いた。


ありがとうフライゴン。

あなたに相応しいトレーナーになれるように、私、頑張るからねっ。
 ▼ 252 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/28 22:50:18 ID:n8mo53Go [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ナツヤ 「さてと。リーフの戦力が爆上がりしたところで、スクールに急ぐとしますか!」

 ミナミ 「そうね。全員揃って優勝報告!」

 ハジメ 「プエル学園との関係も一段落ついたし、最高の1日だったね」

 ヒトミ 「全部サトシのお陰だよ、ホントに!」

 リーフ 「うん!」

 サトシ 「オレは大したことしてないって」

 ミナミ 「なに言ってんのよ。サトシの存在自体が、プエル学園をギャフンと言わせてやったのよ。ねっ?」

 ナツヤ 「確かにな!」

 サトシ 「へへっ。まさか体験入学のオレが、こんなに役に立てるとはな〜」

 ピカチュウ 「ぴぃか!」


 ナツヤ 「ほら行こうぜ! 帰ったら祝賀パーティーだ!」

 ミナミ 「先生たち、そろそろ待ちくたびれてるわよ」

 ヒトミ 「しっかり報告しないとね。サトシとリーフの大活躍!」

 ハジメ 「そうそう!」

 サトシ 「じゃあオレは、みんなの本気のバトルを熱く報告するぜ!」

 ミナミ 「“バーン!”とか“ズドーン!”とか禁止よ」

 サトシ 「ぇ、それ厳しくないか……?」

 ナツヤ 「はははっ!」


 リーフ 「ふふっ。行こうフライゴン。私たちのレンジャースクール、紹介してあげるね」

 フライゴン 「りゃぁ!」



私たちは、賑やかに駆けだした。


夕闇に染まる大空のもと、私たちの学び舎、レンジャースクールへ。



 ▼ 253 ラルポニータ@もえぎいろのたま 21/11/29 09:53:22 ID:ZWQodKLk NGネーム登録 NGID登録 報告
とても好き支援
 ▼ 254 ナアーラ@ラッカのみ 21/11/29 10:50:49 ID:VOssUB3. NGネーム登録 NGID登録 報告
俺も好き
支援
 ▼ 255 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/30 23:09:03 ID:DkLgb1BY [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



     【 * 】



レンジャーユニオン・アルミア地方本部――。



 シンバラ 「もしもし」

 ― オーキド 「おぉ、シンバラ君。レンジャースクール優勝おめでとう」

 シンバラ 「ありがとう。ユキナリの言う通り、サトシ君は凄いトレーナーじゃな」

 ― オーキド 「あいつはバトル好きじゃからの。そっちの生徒たちを上手く まとめてくれると思ったが――大成功だったようじゃな」

 シンバラ 「あぁ。本当にありがとうユキナリ。お前さんに相談して正解じゃったわい。生徒たちを大会に出場させる方法をな」

 ― オーキド 「限られた時間であれば、同年代のトレーナーをコーチ役に するのが一番じゃからな」

 シンバラ 「体験入学制度を活用できたのも大きかったな。一時は どうなるかと思ったが……」

 ― オーキド 「確か、生徒たちとアルミアのトレーナーは、何やら溝があったらしいな。サトシは すぐに打ち解けたのか?」

 シンバラ 「最初は折り合いが悪かったと聞いておる。じゃが、すぐに仲良くなったそうじゃ。サトシ君のコミュニティ能力の高さには脱帽じゃよまったく」

 ― オーキド 「トレーナーもレンジャーも、ポケモン好きに変わりはない。サトシは人一倍ポケモン好きじゃからな、きっと生徒たちにも伝わったんじゃろう」

 シンバラ 「そうじゃろうな。お陰で生徒たち、バトルに関しても自信が付いたようじゃ」

 ― オーキド 「それは素晴らしい。サトシの奴、大活躍じゃな」

 シンバラ 「それと、優勝したお陰で、レンジャースクール入学の問い合わせを十数件貰っておる。この時期に問い合わせがあるなんて普通は有り得んのに」

 ― オーキド 「普通は願書受付の……12月頃か? レンジャースクールの優勝は、それだけインパクトがあったんじゃな」

 シンバラ 「ユキナリ、改めて礼を言う。本当にありがとう」

 ― オーキド 「礼ならサトシに言ってやってくれ。ワシは何もしとらんよ」

 シンバラ 「サトシ君には、最終日に きちんとお礼させて貰おう」

 ― オーキド 「そうか。講習の最終日まで、あと2日……。あっという間じゃのぉ」

 シンバラ 「この短い期間で、優勝を掴むほどにまで生徒たちを特訓してくれたサトシ君……、いま考えてみると、只者では無いな」

 ― オーキド 「それもあるが、若いほど成長が早いと言うじゃろ。生徒たちの伸びしろも、相当なものだったようじゃな」

 シンバラ 「これだから若者の成長を見るのは楽しみじゃな!」

 ― オーキド 「うむ」

 シンバラ 「それじゃあユキナリ、近いうちに礼を兼ねて呑みに行こうではないか」

 ― オーキド 「よし来た。後でスケジュールをメールしておく」

 シンバラ 「よろしく頼むぞ。じゃあな」
 ▼ 256 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/11/30 23:09:28 ID:DkLgb1BY [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 イマチ 「……教授。お電話終わりましたか」

 シンバラ 「おぉ、イマチ広報担当。待たせたの」

 イマチ 「なんだかご機嫌ですね。やっぱりレンジャースクールの優勝は嬉しいですよね!」

 シンバラ 「うむ。優勝した生徒たちの自信に満ち溢れた表情……、あれは良い」

 イマチ 「広報担当の僕にも取材の申し込みが ひっきりなし なんですよ〜」

 シンバラ 「入学の問い合わせも、既に十数件来ておる。しばらく忙しくなりそうじゃな」

 イマチ 「そうそう、それで、取材の日程のことで、教授にご相談がありまして」

 シンバラ 「分かった。すぐに向かおう」

 イマチ 「よろしくお願いします」


 シンバラ 「夏季講習の終了まで――、サトシ君がスクールに居るのも、あと2日か」

 イマチ 「生徒さんたち、寂しいでしょうね」

 シンバラ 「うむ。優勝に導いてくれたコーチじゃからな、サトシ君は」

 イマチ 「……取材は、サトシ君が帰ってからの方が良いですかね?」

 シンバラ 「……そうじゃな。ゴタゴタ取材を受けるより、生徒たちには、残り短いサトシ君との時間を大切にして欲しいのぉ」

 イマチ 「では、その方向で調整しましょう」

 シンバラ 「頼んだぞ」

 イマチ 「おまかせあれ。それと、広報誌に使えそうな写真を、レンジャースクールから貰いたいんですが――」

 シンバラ 「うむ、なら事務担当の――」





     【 * 】




 ▼ 257 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/12/05 00:16:35 ID:.hxARvk2 [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





アルミア学校選抜バトル大会は、この特別講習の、言わば締めのイベントだ。


元々この講習は、大会の出場に合わせてスケジュールされていたらしい。

レンジャースクールは もう長いこと出場辞退してきたから、日程は いくらでも変えられたはず。

にも関わらず日程が変更されなかったのは、いつか大会に参加する年が訪れることを、先生たちは願ってたんだと思う。きっと。


お陰で私たちは、一旦は出場辞退を決めていたのに、大会に参加することが出来た。

そして、優勝と言う最高の栄誉を掴むことが出来た。


サトシ君と、チーちゃんと、仲間たち、ポケモンたちと掴んだ、優勝と言う宝物。

特別講習を、最高の形で終えることが出来たのだ。





最高の形で終える――。



そう、終わってしまう――。





大会から2日経って。


とうとう、講習の最終日が訪れてしまった。




 ▼ 258 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/12/05 00:21:58 ID:.hxARvk2 [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 校長 「――大会の優勝も含めて、講習の経験は、必ずや、皆さんの成長をサポートするでしょう。この経験を活かし、週明けからの新学期の授業も、頑張って行きましょう」

 教師A 「気を付け! 礼!」



講習の修了式。

校長先生の長い話が終われば――。



 教師A 「以上で終了式を終わります。あとは自由行動だ。しっかり休んで しっかり遊んで、万全の状態で新学期を迎えるようにな!」

 教師B 「明日から他の生徒たちが帰って来るから、部屋の片付け、ちゃんと しておいてね」



特別講習は、幕を閉じた。


長いようで短かった、私たちの特別講習。

夏の終わりの入道雲が、なんとなく、寂しげに見えた。



 教師A 「じゃあサトシ、荷物まとめて来い」

 サトシ 「はい!」

 ピカチュウ 「ぴっか」


 ▼ 259 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/12/05 00:25:18 ID:.hxARvk2 [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

今日は金曜日。

私たちは、土曜と日曜の休みを挟んで、来週の月曜日から新学期。普段通りのスクールライフが再開する。


サトシ君とは、今日で お別れだ。

明日になれば、休んでいた他の生徒たちがスクールに戻って来るから、今日お別れしなければならないんだ。



 ミナミ 「ねぇ。プエル港まで行きましょうよ。サトシの見送り」

 ナツヤ 「おう。そのつもりさ」


サトシ君が荷物を纏めに行っている間に、プエル港まで お見送りすることを決めた。

みんな、サトシ君には感謝している。少しでも長くサトシ君と一緒に居たいよね、やっぱり。



 ヒトミ 「……リーフ。このままで良いの?」

 リーフ 「えっ? このまま……って?」

 ヒトミ 「サトシに伝えること、あるんじゃないの?」

 リーフ 「ぁっ……///」

 ミナミ 「まったく。大会終わって2日間あったのに、リーフったら、なんにも しないんだから」

 リーフ 「それはっ……! だって……」

 ナツヤ 「オレは良いコンビだと思うけどな。リーフとサトシ」

 ミナミ 「そうよ。ポケモン想いの2人、お似合いよ?」

 リーフ 「でも……」

 ヒトミ 「ふふっ。あとはリーフ次第だよっ」

 ハジメ 「そうだね。僕たちは これ以上、なにも出来ないよ」

 リーフ 「うん……///」



私次第、か――。

私は、どうしたいんだろう。


講習を通じて、間違いなく私は、サトシ君に惹かれていった。


この気持ちを、私は、どうしたら良いんだろう……。


 ▼ 260 チゴラス@ほのおのジュエル 21/12/06 07:41:07 ID:SuVkAFZo NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
もうすぐラストか…
 ▼ 261 ブキジカ@イリマのノーマルZ 21/12/09 16:18:48 ID:jVAQ0Zbg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シエンネ
 ▼ 262 オガラス@ラブタのみ 21/12/12 15:13:55 ID:yEPgaNY. NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 263 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/12/13 01:45:22 ID:PGR6D.co [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



サトシ君とピカチュウは、先生たちや世話焼きおばさんに、丁寧に挨拶してまわった。


講習の短い間だけだったけど、サトシ君はレンジャースクールの大切な一員だ。

みんな別れを惜しんでいた。

先生たちは“いつでも転校してきて良いんだぞ?”なんて、冗談か本気か分からないこと言ってたし、本当にサトシ君は、レンジャースクールの みんなに親しまれていたんだね。





スクールを出発して、ビエンタウンへ。

あんまり時間が無いから、プエル港まではバスで向かう。



このバスの中で、私は初めてサトシ君と出会ったんだよね。



バスで私を助けてくれたサトシ君。

思い返せば、あの時から私は、サトシ君に惹かれていたような気がする。

その当時は“普通の男の子とは違うな〜”程度の印象だったけど、講習の日々を共に過ごすにつれて、サトシ君の優しさとポケモン想いの心を知れて。

いつの間にかサトシ君のことを、“格好良いな”って思っていて――。


大会の決勝戦で見せてくれた、サトシ君の決して諦めない闘志。

私の中で芽生えていた“格好良いな”って感情は、もっと別の、深く、暖かい感情だと気が付いて――。



男子が苦手な私にとって、そんな感情が生まれるのは奇跡みたいなものだった。


こんなに素敵な人と出会えたのに、もうすぐ お別れになってしまう。


サトシ君と、お別れになってしまう……。



 ▼ 264 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/12/13 01:47:14 ID:PGR6D.co [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



プエル港に到着し、サトシ君は乗船手続きを済ませた。


船の出航まで、あと1時間くらい。

私たちは時間まで、客船ターミナルの屋上で過ごすことにした。



澄み切った青空と、穏やかに揺れる青い海。

キャモメは悠々と空を舞い、マンタインは放物線を描くように飛び跳ねる。



そんな穏やかな光景を眺めながら、私たちは、サトシ君との最後の時間を過ごす。



 ナツヤ 「あっという間だったよな」

 ミナミ 「ホントね」

 サトシ 「キャプチャの授業以外は、ほとんどバトルの特訓だったもんな〜」

 ハジメ 「充実した日々だったよ」

 ヒトミ 「うん。バトルも案外悪くないかなーって」

 サトシ 「へへっ。ポケモンたちが頑張ってる姿を見るのも、けっこう良いものだろ?」

 ナツヤ 「だな。サトシの特訓、忘れないようにするぜ」

 ハジメ 「優勝校に恥じないように、これからもバトルを続けるよ」

 サトシ 「おう。頑張れよ!」

 ピカチュウ 「ぴっかぁ!」


 ミナミ 「でも、寂しくなるわね」

 ヒトミ 「うん……。ピカチュウとも会えなくなっちゃうの悲しいよ」 ギュー

 ピカチュウ 「ちゃぁ〜♪」

 ミナミ 「リーフも寂しいでしょ?」

 リーフ 「うん……。サトシ君には、色んなことを教えて貰ったのに。もう お別れなんて……」
 ▼ 265 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/12/13 01:48:04 ID:PGR6D.co [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ミナミ 「……あ! ねぇ、サトシのお土産! みんなで買いに行きましょうよ!」

 ナツヤ 「お、そうだな。アルミア名物をサトシに持たせてやらないと!」

 サトシ 「お土産なんて……、そんな気にしなくていいんだぜ?」

 ミナミ 「ううん。私たちの ほんの気持ちだから」

 ナツヤ 「そうそう。みんなで選んでくるから、サトシは ここで待っててくれよ」

 ヒトミ 「あ、リーフは残ってててね。サトシの お話相手で」

 リーフ 「えっ!?」

 ミナミ 「サトシに話したいこと、あるんじゃないの〜?」

 ヒトミ 「そうだよ〜」

 リーフ 「それはっ……///」

 ハジメ 「まぁ現実問題、決勝戦のラストを飾ったサトシとリーフは、ちょっとした有名人だからね。あんまり人が多い所に行かない方が良いよ」

 ヒトミ 「そういう訳だからさっ。サトシとリーフは、ここで待っててね」

 ナツヤ 「アルミアらしいの選んでくるから、楽しみにしといてくれよ」
 
 サトシ 「おう。サンキューな!」

 ヒトミ 「ピカチュウも一緒に行こっ。好きなポケモンフーズ買ってあげるよ」 ダキッ

 ピカチュウ 「ぴっか♪」

 ミナミ 「頑張ってねリーフ」

 リーフ 「もぉ……///」
 ▼ 266 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/12/13 01:50:23 ID:PGR6D.co [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

まるで示し合わせていたかのように、みんなはターミナルの売店へ行ってしまった。

確かに、サトシ君への お土産は必要だし、決勝戦で話題になった私とサトシ君は大人しくしてるべきだけど……。



 サトシ 「お! 見ろよリーフ! あそこ、ホエルオーが居るぞ!」



サトシ君は、私と2人きりになることに特に疑問は抱いていないみたい。

遠くの海上に顔を出すホエルオーを見つけて、子供のように はしゃいでいた。


 リーフ 「本当だ。ここから見ても大きいね」

 サトシ 「あんなのゲットしたら、世話するの大変だろうなぁ」

 リーフ 「ふふっ。場所も無いし、ご飯いっぱい食べそうだもんね」


みんなでビエンの森を通った時も、サトシ君、こんな感じだったっけ。

ポケモンが大好きで、ポケモンのことに夢中になって、ポケモンのために動ける――、それがサトシ君。



そんな素敵なサトシ君と、いま私は、2人きり。



みんなが作ってくれた、サトシ君と2人だけの時間。

みんなが用意してくれた、サトシ君と2人だけの舞台。



みんな気付いちゃってるんだよね。私がサトシ君のこと、どう思っているか。


ピカチュウも居ない、みんなから貰ったチャンス、無駄にするわけには いかないよね。
 ▼ 267 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/12/22 22:34:25 ID:AvHA3d8o [1/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 サトシ 「なぁ」
 リーフ 「あのっ……」


 サトシ 「ん? どうした?」

 リーフ 「あっ……ううん。サトシ君こそ どうしたの?」

 サトシ 「いや、チーちゃんとフライゴンにも、サヨナラしたいなって」

 リーフ 「うん、そうだよね。出て来て」


 チコリータ 「ちこっ」

 フライゴン 「ふりゃぁ」


 サトシ 「2人とも、今日で お別れだな。リーフのこと、しっかり支えてやってくれよ」

 チコリータ 「ちこりっ」

 フライゴン 「りゃぃ!」

 サトシ 「チーちゃん、決勝戦よく頑張ったな。お前のガッツと芯の強さがあれば、これから もっと成長できるぜ」 ナデナデ

 チコリータ 「ちこりぃ♪」

 サトシ 「フライゴン。リーフに ついていこうって お前の判断、正しいと思うぜ。リーフすげぇ良い奴だから、よろしく頼むぜ」

 フライゴン 「ふりゃ!」



サトシ君は、チーちゃんとフライゴンに語り掛けている。

2匹と目線を合わせ、優しく語り掛けるその姿は、本当にポケモン好きなんだなと改めて感じた。
 ▼ 268 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/12/22 22:36:53 ID:AvHA3d8o [2/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 リーフ 「……ふふっ」

 サトシ 「ん? どうした?」

 リーフ 「ぁっ、ううん。サトシ君、本当にポケモンが好きなんだなぁって」

 サトシ 「あぁ! 色んなポケモンと出会って、仲良くなって、そのポケモンの特徴とか性格を知るの、すげぇ楽しいからな」

 リーフ 「分かるな、そういうの。私がポケモンレンジャーを目指すキッカケも、そういうところだったもん」

 サトシ 「そうなのか」

 リーフ 「うん。私って元々ね、大人しくて、内気で、男子と喋るのも苦手で……。でもポケモンは大好きで、将来はポケモンに関わる仕事がしたいって、ずっと思ってたんだ」

 サトシ 「へぇ〜。でも、それでレンジャーを目指そうって思うのは凄いな」

 リーフ 「そう?」

 サトシ 「ポケモンに関わる仕事なら、ブリーダーとか、研究者とか、ドクターとか、色々あるだろ?」

 リーフ 「うん」

 サトシ 「なのに、知識とか体力が必要で、危ないミッションもあるレンジャーを選ぶってのは、かなり勇気がいることだと思うぜ?」

 リーフ 「うーん……、いま考えてみると、確かに私、無茶な選択だった……かな?」

 サトシ 「ははっ。やっぱりリーフは勇気あるよ。フライゴンを助けた時も言ったけどさ、もっと自信持った方が良いぜ」

 リーフ 「ふふっ。ありがとうサトシ君」

 サトシ 「それにリーフ、男子と喋るの苦手――とは感じないけどな」

 リーフ 「それは……」



それは、相手がサトシ君だからだよ。


内心ドキドキだけど、サトシ君となら、なぜか普通に話せるんだ。

男子と話すことがこんなに楽しいなんて、サトシ君が初めてだもん。



ねぇサトシ君。

サトシ君は、私のことどう思ってるの?

今の私は、ドキドキが止まらない。恥ずかしいけど、嬉しくて、楽しくて。


サトシ君も、私と話すことを楽しいって感じてくれてるのかな。

私みたいに、ドキドキしてるのかな。
 ▼ 269 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/12/22 22:38:40 ID:AvHA3d8o [3/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 サトシ 「リーフなら これからも大丈夫さ。チーちゃんとフライゴンも一緒だしな」

 チコリータ 「ちこり!」

 フライゴン 「りゃぃ!」



 リーフ 「サトシ君は……、これからどうするの?」

 サトシ 「オレか……」

 リーフ 「サトシ君、ポケモン想いだし、キャプチャも上手いし、ポケモンレンジャーに向いてるよ。先生たちも言ってたけど、ポケモンレンジャーの道とか……、どうかな?」

 サトシ 「確かに、レンジャーの道も興味あるよ。ポケモンと一緒に自然とか平和を守るって、すげぇ遣り甲斐あると思う」

 リーフ 「うん。大変だけど、本当に遣り甲斐は大きいよね」

 サトシ 「けど、オレには夢があるんだ」

 リーフ 「夢……?」

 サトシ 「世界一のポケモンマスターになる。それがオレの夢なんだ」

 リーフ 「ポケモンマスター……」

 サトシ 「あぁ。もっともっと強くなって、リーグで優勝して、チャンピオンを超えてさ」

 リーフ 「サトシ君、今でも すっごく強いのに」

 サトシ 「まだまだだよ。ポケモンマスターになるには、もっと特訓して、強くなって。ピカチュウたちと一緒に、更なる高みを目指すんだ!」

 リーフ 「そっか。凄いんだね、サトシ君の夢――!」


サトシ君の夢は、とってもスケールの大きいものだった。

ポケモンリーグで優勝、チャンピオンを超える強さまで登り詰めると言う、男の子らしい、大きな大きな夢。


あわよくばサトシ君が、このままポケモンレンジャーを目指してくれないかな――、なんて考えた私が失礼だった。

まだサトシ君と一緒に居たいと言う私の我儘は、サトシ君に対して、あまりにも失礼なことだった。


ダメだよ私。


サトシ君に告白する勇気が無いからって、サトシ君をポケモンレンジャーの道に引きずり込んじゃ。

サトシ君は、とっても大きな、とっても素敵な夢を持ってるんだから。
 ▼ 270 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/12/22 22:40:46 ID:AvHA3d8o [4/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 サトシ 「リーフは夢とかあるのか?」

 リーフ 「夢か……。まずはポケモンレンジャーになること……だけど、その先のことは分からないな」

 サトシ 「そっか。けど、夢は焦って決めるモノじゃないからな。色んなこと経験して、じっくり考えて、リーフなりの道を見つけてくれよ」

 リーフ 「うん。ありがとうサトシ君」

 サトシ 「ポケモンレンジャーになるんなら、やっぱり最初の目標はトップレンジャーとか?」

 リーフ 「うーん……、私に出来るかなぁ」

 サトシ 「出来るよ、リーフなら。フライゴンを助けた、あの勇気があるんだからさ!」

 フライゴン 「ふりゃ!」

 リーフ 「……ふふっ。もぉ〜、あんまりそのこと言われると恥ずかしいよ」

 サトシ 「誇れることだよ。なぁ?」

 フライゴン 「りゃっ!」

 チコリータ 「ちこりぃ♪」

 サトシ 「ほら!」


サトシ君の問いかけに、チーちゃんとフライゴンは、笑顔で頷いた。

サトシ君もまた、笑顔を私に向けてくれた。

純粋で眩しい彼の笑顔は、いつも私をドキドキさせてくれる。



 リーフ 「ありがとう、サトシ君。本当に、今まで」

 サトシ 「オレの方こそ。リーフが居てくれたから、大会で優勝できたんだ。ありがとな、リーフ」 スッ

 リーフ 「ぁっ……///」 ドキッ



サトシ君が差し出した右手。


私は恐る恐る、自分も右手を差し出した。


 ▼ 271 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/12/22 22:44:04 ID:AvHA3d8o [5/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 サトシ 「リーフの勇気、きっと みんなに良い影響を与えると思うぜ」 ギュッ

 リーフ 「ありがとう。サトシ君も、ポケモンマスターの夢、頑張ってね」 ギュッ



サトシ君の手は、私よりも大きくて、ガッチリしてて、とっても男の子らしくて。

ギュッと握りしめてくれた温もりに、私の鼓動は早くなる。


好きな人と触れ合うことの嬉しさ、恥ずかしさ、心地よさ、少しの緊張。

それらが私の体を駆け巡って、顔を赤くする。体を熱くする。ドキドキが止まらない。



サトシ君は、私に勇気があるって言ってくれたけど、全然そんなこと無いよ。


もし私に勇気があったら、今ここで、サトシ君に、私の想いを伝えてるもん。





貴方のことが好きです――って。


異性に好きという感情を抱いたのは、貴方が初めてです――って。





 サトシ 「頑張れよ、リーフ!」

 リーフ 「うん。私もサトシ君の夢、応援してるからねっ」



告白する勇気は私には無かったけれど――。


私はサトシ君に、たくさんの勇気を貰った。

勇気だけじゃない。自信、誇り、強さ。そして、フライゴンと言う新しい仲間。



ありがとう、サトシ君。


私を変えてくれて、本当にありがとう、サトシ君。





 ▼ 272 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/12/22 23:00:32 ID:AvHA3d8o [6/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





     *





  ― ボ オ オ オ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ !





別れを惜しむかのような、長い長い汽笛。


サトシ君を乗せた船は、アルミアから去って行った。



みんなで手を振って。


サトシ君とピカチュウも、船のデッキから手を振ってくれて。



船が見えなくなるまで、私たちは、サトシ君とピカチュウを見送った。





 ▼ 273 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/12/22 23:01:07 ID:AvHA3d8o [7/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 ナツヤ 「行っちまったか」

 ミナミ 「あっという間だったわね」

 ハジメ 「なんかさ、講習の間だけだったけど、サトシを中心に回ってたよね、僕たち」

 ヒトミ 「うん。最初は あんなに険悪なムードだったのに」

 ナツヤ 「そりゃぁ、命がけでチルットを助ける姿を見せられたからな」

 ミナミ 「あれには感動したわ。大会の出場と優勝も、サトシの特訓のお陰だし」

 ヒトミ 「あんなに凄い人、なかなか出会えないよ」

 ハジメ 「だね」

 ヒトミ 「リーフは……、良かったの?」

 リーフ 「えっ?」
 
 ヒトミ 「サトシに気持ち、伝えなかった……よね?」

 リーフ 「うん。ちょっと勇気、足りなかったかな……」

 ミナミ 「せっかくリーフが心を開いた男子だったのに」

 ナツヤ 「サトシみたいな凄ぇ奴なら、リーフが惚れてもおかしくないよな、うん」

 ハジメ 「僕は割と最近になって知ったけど、相手がサトシなら納得だよ」

 リーフ 「もぉ……、恥ずかしいよぉ……///」

 ミナミ 「ふふっ、ごめんねリーフ。でも私たち、リーフが一歩成長できたこと、ホントに嬉しいんだから」

 ナツヤ 「そうだな。男子が苦手なリーフが、サトシと一緒だと、あんなに楽しそうだったもんな」

 リーフ 「ぇ……、そんなに分かりやすかったの?」

 ミナミ 「うん」

 ナツヤ 「少なくとも、オレたちクラスメートの男子には見せたこと無い雰囲気だったぞ」

 ヒトミ 「そうそう。バレバレだったよリーフ。……なかなか気付かなかった人も居るみたいだけどー」 チラッ

 ハジメ 「うるさいなぁ」

 リーフ 「ごっ、ごめんなさい。ナツヤ君たちが嫌いって訳じゃないから……!」

 ナツヤ 「ははっ。分かってるよ、そんなこと!」

 ミナミ 「サトシは特別よね〜」

 ヒトミ 「うんうん!」

 ハジメ 「サトシには敵わないよ、まったく」
 ▼ 274 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/12/22 23:02:10 ID:AvHA3d8o [8/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ヒトミ 「って言うか、サトシも鈍感だよ。こんなに分かりやすいのに、リーフの気持ちに気付かないなんて」

 ミナミ 「ホントそれ。教えちゃえば良かったかしら?」

 リーフ 「だっ、ダメだよそんなこと……!」

 ミナミ 「冗談よ」

 ヒトミ 「勿体ないなぁサトシ。こんなに良い子が好きになってくれたのに」

 リーフ 「もぉ……///」





私の気持ちが みんなに ばれちゃってたのは恥ずかしいけど――。


サトシ君との出会いは、私を大きく変えてくれた。


勇気や強さだけじゃない。

誰かを好きになると言う、私にとって初めての気持ちを、私に教えてくれた。





素敵な出会いだったな。



そして、素敵な時間だったな。



サトシ君と過ごした、新鮮で、楽しくて、刺激的な夏――。





 リーフ 「私の ひと夏の思い出――。絶対に忘れないもん」

 チコリータ  「ちこりぃ♪」





   ―――   完   ―――



 ▼ 275 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/12/22 23:02:51 ID:AvHA3d8o [9/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



当SSは、夏のコンビSSコンテストに参加していました(大遅刻)

【SS企画】夏のコンビSSコンテスト!【7/24(土)〜8/22(日)】

https://pokemonbbs.com/poke/read.cgi?no=1485181


ポケモンレンジャー・バトナージは個人的名作ですので、興味のある方は是非プレイしてみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。



 ▼ 276 ポエラー@あさせのしお 21/12/22 23:35:05 ID:x77o/sfw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙です!
リーフちゃん可愛いしサトシがいい塩梅にカッコいいです
サトシが出てくる話でこのクオリティはありがたい…
また作者さんのお話が見たいです
 ▼ 277 ッタイシ@ナナのみ 21/12/23 07:45:03 ID:9tLEhr6c NGネーム登録 NGID登録 報告
乙!
 ▼ 278 ンドロス@ダウジングマシン 21/12/25 10:59:04 ID:2cIsSkXQ NGネーム登録 NGID登録 報告

リーフSS少ないから面白かった
 ▼ 279 ーナイト@かわらずのいし 22/01/14 16:16:05 ID:DJNIlroQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
otu
 ▼ 280 ワムラー@ずぶといミント 22/01/14 21:46:24 ID:fSG6dh9Q NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
完結してたのか
おつ
 ▼ 281 シャマリ@イワZ 22/02/08 00:51:07 ID:tPDgI6y2 NGネーム登録 NGID登録 報告
良いSSを見つけた。乙
 ▼ 282 ロア@だいちのプレート 22/02/11 20:02:19 ID:0BQo94Nc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ようやく全部一気読み出来た。このssは上手いなぁと思う反面オチが最初から予想できる作りで最後までドキドキする展開もない所がちょっと物足りなかった。
このページは検索エンジン向けの機能制限版の旧ページです。
下URLから閲覧下さい。
https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=1500881
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