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【スワップSS】揺蕩う深海でしあわせに出会う

 ▼ 1 マコブシ化粧品◆aDRuGd/3Lw 20/04/10 23:59:19 ID:2eU2j6U2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
私たちが暮らしている地上世界の、下の下の下。そんな世界のこと、意識したこともなかった。
そんな海の底深くに、私はいる。

「初めまして、ピカチュウ。君がここに来てくれたこと、心から感謝するよ」

周りのポケモン達から王子と呼ばれたポケモン、マナフィはそう言っていかにも育ちの良さそうなお辞儀をしてみせた。

私は、普通のポケモンだ。普通のライチュウの親から生まれ、普通の陸上での暮らしを営んでいた。
普通の友達に囲まれ、普通の恋をし、普通にタマゴを作る。
普通のポケモン人生を送る。そう思っていた。
けど、違った。私の、普通のピカチュウとしてのポケモン人生は突然終わりを告げた。海の近くを通りかかった際、突如として海からポケモンが飛び出し、私を深海の底へ拐ってしまったのだ。海の底のはずなのに、何故か息が出来る海の底の都。そして、その中心にそびえ立つ大きな神殿のような建物。その中を私を拐ったポケモンと共に、マナフィの下へ通されたのだった。

「突然ここへ連れてきてしまったこと、本当にすまないと思っているよ。でも……ある日、地上の海で君を見てから……僕は君に恋をしてしまって……」

彼は真剣な表情で私を見つめる。

「全ては貴方の意思を尊重する。もし君が今すぐ帰りたいと言えば、すぐにでも地上へ帰そう。」

「でも…… 君がもし僕を受け入れてくれるなら……僕の妃になってもらえないかな?」

私は……どうすればいいのだろう。
 ▼ 2 マコブシ化粧品◆aDRuGd/3Lw 20/04/11 00:02:05 ID:/MkcCYOQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
このSSはSSスワップ企画の参加作品となっています
https://pokemonbbs.com/sp/poke/read.cgi?no=1189712&l=1-
続きは他の方に執筆していただきます
 ▼ 3 フレシア@おとしもの 20/04/13 20:55:14 ID:I5pAisK. [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
このssの続きは自分が執筆することになりました
よろしくお願いします
 ▼ 4 bZuZBTxC.M 20/04/13 20:55:41 ID:I5pAisK. [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
コテ付け忘れ
 ▼ 5 bZuZBTxC.M 20/04/15 21:38:26 ID:W5bEcEPQ [1/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
とりあえず返事は少し待ってもらうことにした。いきなりのことで頭が混乱していて気持ちを整理する時間が欲しいと伝えた。

「もちろんそれは構わないよ。…というより最初からそのつもりだったんだ。すぐに答えを聞かせてもらえるなんて思ってないよ」

「せっかくだからこの神殿を少し見て行ってほしい。ただしあまり遠くには行かないで。呼吸が出来なくなってしまうから」

それから私はこの海中神殿を歩き回ることにした。綺麗な装飾が施された柱や屋根、泳ぎを楽しむ色とりどりのポケモン達。一生退屈しないであろう光景だけど私の心は落ち着かない。
 ▼ 6 bZuZBTxC.M 20/04/15 21:47:13 ID:W5bEcEPQ [2/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
どうして私なのだろう。自分で言うのも何だけれど私は至って普通のピカチュウだ。腕っぷしが強いわけでもなく、特別容姿が優れているということもない。

「王子がお呼びです。」
そんなことを考えながら歩いていると不意に背後から声を掛けられた。声の主はマナフィのお付きのポケモン、マンタインだった。

「こちらです。着いて来て下さいまし。」

マンタインの後をついて歩いていると力なく海中を漂うポケモンが視界の端に写った。……私は無我夢中でそのポケモンを目指して泳いだ。

「んぅ…ううっ……」

マナフィに限りなく近いそのポケモンは苦しそうにうめき声を上げていた。私はそのポケモンの鼻を手で塞ぎ、口を介して息を吹き込んだ。

水中で人工呼吸なんておかしな話で効果があるのか疑問だけれど、混乱した私の頭ではそれ以外に打開策が思い付かなかった。
 ▼ 7 bZuZBTxC.M 20/04/15 21:53:50 ID:W5bEcEPQ [3/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ごほっ……ごほっ……お姉さん誰?」

どうやらそんな人工呼吸にも効果があったようで息を吹き返してくれた。私は胸をほっと撫で下ろした。

「フィオネ様。全く困りますな。王子の言い付けはしっかり守って頂かないと」

いつの間にか私の横に来ていたマンタインが仏頂面でそう言った。

「ごめんごめん。…お姉さん。助けてくれてありがとう!今度一緒に遊ぼうねー!」

フィオネと呼ばれたポケモンは私達に明るく手を振ってから凄い速度で水中を突っ切って神殿の入り口に吸い込まれていった。

「フィオネ様の命を助けて頂きありがとうございます。あのように何かと問題を起こしやすい方なので私めや王子も手を焼いているんです。決して本人に悪気があるわけではないのですが」

申し訳なさそうに頭を下げるマンタインに私はお礼を言われるようなことはしていないと言った。

「なんと慈悲深い。流石は王子が見初められたお方です。…改めて王子の元へご案内致します」

彼のその一言で私はマナフィに呼ばれていることを思い出した。
 ▼ 8 bZuZBTxC.M 20/04/15 22:02:06 ID:W5bEcEPQ [4/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
私はマンタインの案内で神殿の奥深くのマナフィの寝室に通された。部屋には彼と私の二人きり。

いかにも高級そうな壷や絵画が並んでいる。きらびやかな光で埋め尽くされたこの空間に庶民の自分が居ることが場違いに思えて無性に緊張してしまう。

マナフィ「そんなに緊張しなくて大丈夫だよ。フィオネを助けてくれたこと感謝する。本当にありがとう」

私の緊張をほぐすように彼は親しみやすい笑みを浮かべた。

マナフィ「君をここに呼んだのは誰にも邪魔されず話がしたいからなんだよ。僕のことを知ってほしいし僕も君のことを知りたい」

部屋の中央に設置された巨大な円形のベッド。その上の彼の隣に腰掛けるよう促された私は少し躊躇してから座らせてもらうことにした。

「フィオネは僕の弟なんだ。…生まれつき呼吸器官に障害を抱えていてね。だから神殿から離れないように注意しているんだけど中々聞いてくれなくてさ」

彼は弟の将来を憂えるような表情で語り出した。その様子から彼がいかに弟を大切に思っているのかが強く伝わって来る。
 ▼ 9 bZuZBTxC.M 20/04/15 22:09:51 ID:W5bEcEPQ [5/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
弟。……私にも弟が居た。ギザみみがトレードマークのピチュー……いつも他のポケモンを笑わせようと一生懸命なお調子者の彼は不慮の事故でこの世を去ってしまった。

もう何年も前のことだけれど、彼のことを思い出すと胸が痛む。

「表情が暗いけどどうかしたの?」

何でもないと慌てて平静を取り繕う。けれども彼はそんな私に怪訝な視線を投げる。

「君を地上の海で最初に見た時すごく寂しそうに見えたんだ」

夕暮れの海で一人黄昏ていた時のことを言っているのだろう。あの時も私は弟のことを思い出して暗い顔をしていたから。

「僕はそんな君の横顔にどうしようもなく惹かれてしまったんだ。君の寂しさを僕が埋めてあげたいって……そう思ったんだ」

プロポーズと取れなくもないその言葉にドキッとした。頬が熱を帯びていくのを感じて彼の顔から目をそらす
 ▼ 10 bZuZBTxC.M 20/04/15 22:18:32 ID:W5bEcEPQ [6/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
「それともう一つ言っておきたいことがあるんだ。これは僕の推測なんだけど…君は自分に自信がないように見えたんだ」

図星だった。

「もっと自分に胸を張って生きていいと思うんだ。君はフィオネを助けてくれた。あれは誰にでも出来ることじゃない」

私が最も欲していた言葉を彼は平然と言ってのけた。まるで自分の心を見透かされているようだ。不思議とそれを不気味だとか不快だとか思うことはなかった。

それが彼だから……なのだろうか

「あと今回のは仕方ないけど人工呼吸はもうしないでくれないかな」

マナフィは少し拗ねたような顔つきだった。嫉妬してくれているんだろうけれどそのむくれた顔はどこにでも居そうな子供の物で、彼の存在が一気に身近に感じられた気がした。そんな彼が可愛らしく思えて私は微笑んだ。

「やっぱり笑っている君はとても綺麗だね。誰にも渡したくないよ」

彼は私の両頬に手を添えて私の瞳を覗き込むように強く見つめて来る。
 ▼ 11 bZuZBTxC.M 20/04/15 22:25:41 ID:W5bEcEPQ [7/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
彼の真剣な顔が迫る。私は顔を真っ赤にして動けずにいた。

やがて彼の顔が目の前に来た所で私は固く目を結び拳を握りしめる。緊張で全身が震えている。彼の吐息が私の唇にかかりまさに重なろうとした時、寝室のドアが騒々しい音と共に放たれた。

「王子に会いたいという方がいらしています」

「はぁ……。分かった。すぐに行くよ」

マナフィは見るからに不機嫌そうな態度で部屋に入って来たマンタインに返答した。

「ごめんね。7時頃に戻って来るからそれまでここでくつろいで居てほしい。その時に答えを聞かせてもらえるかな?」

彼は何事も無かったように冷静に振る舞っていた。私はその質問に黙って頷いた。頷くことしか出来なかった。さっきの迫って来る彼の顔が脳裏をよぎってしまい恥ずかしくて言葉を発することが出来なかった。

部屋に私だけが残された。……あのまま唇を奪われたかった。そう言いかけて口を抑える。私は何を言っているんだろう。
 ▼ 12 bZuZBTxC.M 20/04/15 22:33:01 ID:W5bEcEPQ [8/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
マナフィの顔が近付いて来た時からずっと心臓の鼓動がうるさい程高鳴っている。今分かった。……自分は彼に心を奪われてしまったのだと。

会って間もない彼に私は恋をしてしまったのだ。いや、会って間もないからこそだろう。僅かな時間で自分の悩みを見抜き優しい言葉をかけて励ましてくれた。

いきなり海の底に私を拐ったり、さっきのように多少強引な所もあるけれどそんな一面さえも今の私にとっては魅力的に思えた。

当たり前のように普通のピカチュウとして一生を終えるという私の空想は砕かれた。けれども、後悔も恨みもしていない。

妃なんて私には馴染みの無い言葉だしこれから何をすればいいのかよく分からない。それでも乗り越えていけるだろう。……彼が自信を与えてくれたから。

海の底でこんなにも素敵なポケモンと出会えた幸せに今はただ感謝したいと思う。

ふと部屋の壁に掛けられた時計を見やる。彼がここに戻って来るまで30分程度。

もう……答えは決まっている。


終わり
 ▼ 13 aDRuGd/3Lw 20/04/19 16:03:38 ID:dM7EKHnc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ありがとうございます!
最高でした!!
このページは検索エンジン向けの機能制限版の旧ページです。
下URLから閲覧下さい。
https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=1191338
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