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ポケモンSMのストーリーをゼンリョクで書く 第3章 戦乱のアローラ

 ▼ 1 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/08/16 18:16:28 ID:d6qUDUvs NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アローラ、皆さま。ガルーラJrと申します。
「ポケモンSMのストーリーをゼンリョクで書く」の第3章となります。この章ではアローラリーグのチャンピオン交代のストーリーが描かれます。
また、以下の点を予めご了承ください。

1:登場人物
ゲーム編では例えば男主人公を選ぶと女主人公は出てきませんが、このSSでは両方のキャラクターをヨウ、ミヅキとして登場させます。

2:登場人物の手持ち
登場人物の手持ちは基本的にゲーム本編に準拠しますが、中には1匹か2匹入れ替えを行ったり、また、ゲーム本編で例えば最大5匹しか手持ちを持っていない人物には1匹追加をしたりしています。

3:形式
地の文を用いた形式で書かせていただきます。


第1章(SMゲーム本編に準拠したストーリー)はこちらです。

Part 1(プロローグ〜エーテルパラダイス突入)
https://pokemonbbs.com/poke/read.cgi?no=1011593

Part 2(ポニ島〜エンディング)
https://pokemonbbs.com/poke/read.cgi?no=1196044

第2章(UB捕獲作戦)はこちらです。
https://pokemonbbs.com/poke/read.cgi?no=1227914

それでは、第3章もよろしくお願いいたします。
 ▼ 290 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/10/08 20:42:10 ID:ZxFQR3zk [1/8] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
Episode 30 勝者の義務


「…私の負けか…」

ミヅキはぽつりと呟く。そして、目を閉じて大きく深呼吸をした。
バトルの結果はハウの勝利。つまり、次のヨウへの挑戦権はハウが得たことになる。
だが、ハウの心にはバトルの前から予想していたとおり、何の喜びもなかった。
ミヅキはそのままハウの前から立ち去ろうとした。ハウはミヅキの姿を無言のまま目で追った。

「…ねえ、一つだけ教えて。ハウくんにとっても、私たち四人の島巡りの思い出は大切なものでしょ?なのになんで私の前に立ちはだかるの?」

ハウはミヅキの問いかけに大きく深呼吸してから答える。

「好きだから…。ミヅキもリーリエも、もちろんヨウも、おれの大切な人だから。だからそんな人たちがいがみ合って戦うなんて、してほしくない」

「………」

ミヅキはライドギアを取り出し、リザードンを呼ぶ。そして、そのままいずこかへと飛び去っていった。

「…ハウ…」

一人取り残されたハウの前にプルメリが現れる。プルメリは物陰に隠れてミヅキとハウのバトルを見ていた。

「…プルメリさん…」

「イベントの打ち合わせをしてたときからミヅキの様子がおかしかったから、ちょっとつけてみた。…どうしたの?」

「…次のリーグ戦、ミヅキがおれより先に挑戦したいから、バトルで決めようって」

ハウがそう言うと、そんな単純な問題ではないとプルメリはすぐに見抜いた。
 ▼ 291 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/10/08 20:42:54 ID:ZxFQR3zk [2/8] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…私にそんな低レベルな嘘が通用すると思ってる?仮に今の話が本当だとしても、ミヅキが怒ってる原因はそうじゃないんでしょ?」

「…うん…」

「…ヨウとこの前話したとき、自分のことを裏切り者だと言ってた。そのとき私は深く事情を聞かなかったけど、そのことが関係してるの?」

「………」

ハウはこれからどうするべきか考えていた。プルメリなら正直に話しても無闇に他言することはないだろう。ハウは自分達が戦った原因も含めてことの経緯をプルメリに話した。

「…そんなことが…」

プルメリはふっと小さくため息をついた。この四人には本当にいろいろとあるものだ。

「…ミヅキには勝ったけど、次のリーグ戦、おれが本当に挑戦していいのかな…」

プルメリはその言葉を聞き、ハウの肩をぽんと叩いた。

「…私はヨウがいいとか悪いとか言える立場じゃないし、ハウとミヅキの考え方もどちらも正しいと思う。けど、ハウ、あなたはこのバトルに勝った以上、義務がある」

ハウはプルメリの顔を見上げた。

「…私は、勝者は敗者に対して義務を負うと思ってる。ハウの場合は次のリーグ戦を全力で戦い抜くこと。そうじゃなきゃ負けたミヅキが惨めになっちゃうでしょ?勝者は敗者が惨めにならないようその後も全力で戦い抜かないといけない。…私の考え方だけどね」

「…プルメリさん…」

「…まあ、あなたなら言う必要もないとは思うけど、ミヅキのためにも、ヨウに勝つために全力を尽くしなさい」

「…うん…」

ハウはプルメリの目をまっすぐ見つめ、頷いた。飛び去っていくミヅキが自分に対して何を思っていたのかはわからない。だが、プルメリの言う通り、勝者に義務があるならばそれは敗者が惨めにならぬようその後も全力で戦い抜くことだろう。
 ▼ 292 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/10/08 20:43:20 ID:ZxFQR3zk [3/8] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
マリエシティに戻ってきたハウをヨウが待ち受けていた。

「…ハウ…。ミヅキと何を話したの?」

「…ミヅキが、次のリーグ戦は自分が挑戦したいから、順番を譲ってくれないかって…」

「…そう…」

ヨウはハウが譲ったのかどうか気になった。

「…次はミヅキが挑戦するの?」

ヨウの質問にハウは首を横に振った。

「…ミヅキにバトルを挑まれたんだ。次のリーグ戦、勝った方が先に挑戦するって。…勝ったのはおれだった」

ハウの言葉をヨウは黙って聞いていた。

「ヨウ、おれは次のリーグ戦までに戦力を整えて、必ずヨウに挑む。だからヨウも全力で戦ってほしい。おれはミヅキに勝ったから、ミヅキのためにも戦い抜かなきゃいけない。…それが、せめておれがミヅキにできることだと思うから…」

「ハウ…。わかった」

ヨウはこくりと頷き、ハウの目をじっと見つめる。ハウはヨウの様子を見て穏やかに笑った。

「…よし、おれはミヅキとのバトルで戦った手持ちを預けてくるよ」

ハウはそう言ってヨウの傍を離れていった。そのときだった。

ピピピッ

ヨウの端末が着信を告げた。発信元はラナキラマウンテンのポケモンセンターだ。

「ラナキラのポケモンセンターから…。…もしかして…」

ヨウは恐る恐る電話に出る。ポケモンセンターの受付のお姉さんの声がした。

「チャンピオン?アシレーヌが目を覚ましましたよ」

「!!」

ヨウは思わず身体を硬直させた。アシレーヌが目を覚ましたと聞き、居ても立っても居られなくなった。ヨウはハウに一言だけ告げると、すぐにポケモンセンターを飛び出していった。
 ▼ 293 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/10/08 20:44:12 ID:ZxFQR3zk [4/8] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ハウ、アシレーヌが目を覚ましたって!僕行ってくる!」

ヨウは慌ててマリエシティのポケモンセンターを飛び出すと、すぐにリザードンを呼んでラナキラマウンテンへと向かった。


「アシレーヌ!」

ヨウはラナキラマウンテンのポケモンセンターへ飛びこみ、すぐにカプセルルームへと向かった。

「…よかったですね…」

ドクターがヨウの肩を叩き、ヨウは思わずアシレーヌに抱きついた。少し痩せたようだったが、ヨウは嬉しさのあまりその腕の力を緩められなかった。アシレーヌもヨウと再び顔を合わせられたのが嬉しいようで、ヨウの背中に前足を回していた。

「しゃる…」

「アシレーヌ…。本当にごめん…。僕は……」

思わず目から涙がこぼれ、ヨウはアシレーヌにリュウキ戦で無理強いをしたことを謝罪する。だが、アシレーヌはそんなことは気にしていなかった。ただまた会えただけで嬉しかった。

「しゃるな…」

アシレーヌはヨウとの抱擁を解くと、自分の鼻先をヨウの鼻先にちょんと触れさせる。彼女の愛情表現にヨウはまた涙をこぼした。

「先生…ありがとうございました…」

ヨウはそう言うと、アシレーヌをボールに戻した。
 ▼ 294 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/10/08 20:44:57 ID:ZxFQR3zk [5/8] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「しばらくバトルはさせないでください。そして、一度技などを出してみて異常がないか確認してください。前にも言いましたが、リハビリが必要ならプログラムは用意できますので」

「…はい…」

ヨウはドクターに向かって深々と頭を下げた。


ヨウはその後、ポケリゾートを訪れていた。アシレーヌを休ませたいということと、次に控えるハウ戦のメンバーを考えるためだ。

「おお、ヨウくん。次のリーグ戦の予定が決まったか?」

どこからともなくモーンが現れ、ヨウに声をかける。

「はい。…次はハウとのバトルになります。彼なら恐らく、四天王を突破してくると思います」

ヨウがそう言うと、モーンはうんうんと頷いた。そして、ヨウはモーンにアシレーヌのことを頼んだ。

「…モーンさん…、アシレーヌをしばらく預かってくれませんか?」

「え?どうして?君の一番の相棒だろう?」

モーンはヨウがハウ戦にアシレーヌを連れて行かないつもりだと知り、目を丸くした。

「…実は、アシレーヌはこの前のリーグ戦でダメージを負いすぎて…。しばらくポケモンセンターの生命維持カプセルに入ってたんです。だから、ハウ戦には連れていけません」

ヨウはそう言うと、アシレーヌをボールから出す。アシレーヌはハウ戦に自分は参加できないと知り、悲しんでいた。

「しゃるな…」

「ごめん、おまえは連れていけない…。でも、それも僕のせいなんだよな…。アシレーヌ、また一緒に戦うために今は休んでほしいんだ。それに、またおまえが無理して戦おうとしたら、きっと僕はおまえに甘えてしまうと思うから…」

ヨウはアシレーヌの首筋に手を回し、撫でる。アシレーヌは自分も行きたいという思いをぐっと飲み込んだ。
 ▼ 295 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/10/08 20:45:40 ID:ZxFQR3zk [6/8] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…ドスコイ…」

ヨウとアシレーヌの前にハリテヤマ、シャンデラ、フライゴン、トゲデマル、アブリボン、そしてソルガレオ、ほしぐもちゃんが姿を現した。

「…皆…」

ハリテヤマたちはアシレーヌに順に声をかけていく。それはきっと、自分たちがアシレーヌの分まで戦うので任せてほしいと言っているのだろうとヨウは思っていた。

「…しゃる…」

アシレーヌは渋々ではあるが自身のコンディションがバトルに耐えられるものではないこともわかっていた。全力のハウが相手となればなおさらだ。

「…よし、決めた。皆、頼むぞ」

ヨウは次のハウ戦のメンバーを決めた。その声に島巡りを共にした6体の目つきが変わる。そして、それぞれをボールに入れ、今の手持ちと入れ替えた。ヨウはハリテヤマ、シャンデラ、アブリボン、フライゴン、トゲデマル、ほしぐもちゃんのボールを腰のベルトにつけると、再びアシレーヌに向き合った。

「…アシレーヌが身体を張って守ろうとしてくれた座だもんな。そう簡単には明け渡せない。僕たちも全力でハウと戦うよ」

ヨウはアシレーヌに力強く笑いかけた。


そして、時間は流れていった。ハウも再び四天王を突破し、そして前回果たせなかった打倒ヨウをなすためにポケモンを育て、戦術を練った。ミツルやシロナ、トウコもハウのトレーニングに協力した。ハウはめきめきと新戦力も整え、ついにリーグ挑戦の日がやってきた。

「…いよいよですね…」

ラナキラマウンテンのポケモンセンターにて、ミツルがハウに声をかける。シロナとトウコもハウに笑いかけていた。

「ハウくん、きっと勝てるよ。君みたいなトレーナーがチャンピオンになったら、きっとアローラリーグはもっと楽しくなると思う」

トウコがにかっと笑う。隣ではベルも笑っていた。
 ▼ 296 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/10/08 20:46:07 ID:ZxFQR3zk [7/8] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ハウくん、私が言うまでもないとは思うけど、ポケモンと共にバトルを楽しむこと。ヨウくんと君の間にはいろいろな事情があるとは思うけど、それだけは忘れないでね」

最後にシロナが少しハウを心配するように言った。ハウは自分が観光大使となってから出会った人を思い出す。本当に素晴らしい人たちに出会えた。今ここに見送りに来てくれている4人もそうだが、ここにはいないウルップにしても、エーテル財団のミライにしても、廃棄物処理プラントでバトルした3人にしても。

「…行ってくるよ」

ハウはアローラリーグの扉を目指して一歩一歩進んでいく。

「ようこそ、ポケモンリーグへ。一度中に入ると、中にいるトレーナー全員に勝ち抜くか負けるまで外には出られない。それでも君は先に進むか?」

ポケモンリーグの門番の男性がハウに尋ねる。ハウの答えは決まっていた。

「…もちろん」

ハウはそう言ってポケモンリーグの扉をくぐる。ハウがくぐり終えると、リーグの扉は固く閉ざされた。
 ▼ 297 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/10/08 20:46:42 ID:ZxFQR3zk [8/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
第30話はここまでです。
次回からヨウVSハウ、この章の最終決戦となります。
それではまた。
 ▼ 298 ェローチェ@ようせいジュエル 20/10/08 20:56:51 ID:OV0AtPLk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 299 マシュン@バンジのみ 20/10/08 22:04:55 ID:yU5YWfnY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ▼ 300 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/10/09 23:22:08 ID:h.pAoNf6 [1/8] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
読んでくださっている皆様、いつもありがとうございます。
第31話ができましたので投稿します。
 ▼ 301 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/10/09 23:22:44 ID:h.pAoNf6 [2/8] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
Episode 31 太陽と月に一番近い場所


チャンピオンの間。ここはアローラ地方で太陽と月に一番近い場所。ヨウは玉座には座らず、チャンピオンの間をうろうろしながら風の音に耳を傾けていた。
ここは伝説のポケモン、ソルガレオ、ルナアーラに捧げるバトルを行う場所でもある。そう言えば、とヨウは思わずほしぐもちゃんの入ったボールを手に取った。

「…ほしぐもちゃんを防衛戦に連れてきたのは初めてだね」

ヨウはほしぐもちゃんをボールから出す。ほしぐもちゃんはラナキラマウンテンの頂上から周囲を見渡し、風の音に耳を澄ませた。

「知ってる?ここはさ、アローラで一番太陽と月に近い場所。ポケモンリーグの前身の大々試練は、伝説のポケモンソルガレオ、ルナアーラに捧げるバトルって意味合いもあったんだって」

「ラリオ…」

ほしぐもちゃんがヨウの言っていることを理解したかはヨウにはわからなかった。ただ、バトル前に自分をボールから出したのは何かしら理由があってのことだろうとは思ってくれているようだった。

「…ソルガレオ…。つまり、今のほしぐもちゃんに捧げるバトルってこと。そこでソルガレオがバトルに出てくるのもおかしな話かもね」

ヨウはそう言うと、チャンピオンの間の床に寝転がった。ほしぐもちゃんもヨウの視線の先に自分の視線を向ける。
ヨウはそのまま大きく鼻で息を吸い、吐き出した。今日は快晴。太陽がやたらと近くに見えた。

「…何してるのー?」

ヨウは声をかけられ、身を起こした。

「…太陽を見てたんだ。ほしぐもちゃんと一緒に」

「椅子に座ってなきゃ。床に寝転がってちゃお行儀が悪いよー」

「…ごめん。なんとなく、あの椅子に座るのは落ち着かないんだ」

ヨウはそのまま立ち上がり、やってきた挑戦者と向き合う。
 ▼ 302 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/10/09 23:23:37 ID:h.pAoNf6 [3/8] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…チャンピオンの間にようこそ、ハウ」

「…うん。ヨウ、おれたち、あれからずっとヨウに勝つために頑張ってきた。どっちが勝っても負けても悔いのないように、ゼンリョクでいこうね」

「…ああ。…ミヅキのためにも」

ヨウはそう言ってほしぐもちゃんをボールに戻し、一つめのボールを構える。それを見たハウも一つめのボールを手に取った。

「ライチュウ、頼むよ!」

「行くぞ、シャンデラ!」

「ライッ!」

「シャンッ!!」

ハウはライチュウを、ヨウはシャンデラを繰り出し、二体が対峙する。ハウはゴーストタイプのシャンデラとエスパータイプのライチュウが対峙したことでどうすべきか考える。

…ライチュウじゃシャンデラを一撃で倒すのは難しい…。ここは交代するのがいいか…

「ライチュウ、ボルトチェンジ!」

「ライッ!」

ハウはライチュウにボルトチェンジを指示し、シャンデラの体力を削りながら交代しようと試みる。だが、ヨウはそれを許さなかった。

「シャンデラ、交代!フライゴン、頼む!」

「フリャッ!」

ヨウはボルトチェンジを読んでいた。ここは電気技が効かないフライゴンを繰り出し、ライチュウの攻撃しながらの交代を防いだ。

「くっ!仕方ない、ライチュウ、交代して!」

ハウは仕方なく直接ライチュウを回収する。そして、ケケンカニを繰り出した。

「ケケン!」

ヨウはそれを読んでいたかのようにフライゴンを交代させる。
 ▼ 303 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/10/09 23:24:30 ID:h.pAoNf6 [4/8] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「フライゴン、とんぼ返り!」

「フリャッ!!」

フライゴンはケケンカニに一撃を浴びせて離脱する。ケケンカニにとっては大きなダメージではなかったが、ハウにとっては手の内を読まれているようで精神的に揺さぶられていた。

さすがはヨウ…。おれの手を読んでる…

ヨウはさらにハウを追い込むように、ケケンカニに対して圧倒的に有利なポケモンを繰り出した。

「ラリオーナ!!」

「ソルガレオ?…ほしぐもちゃん!?」

ハウはリーグ戦でほしぐもちゃんの姿を見ることになるとは思っていなかったため驚いていた。

「そうだよ。ハウ、ポケモンリーグの前身の大々試練は元々はソルガレオ、ルナアーラに捧げるゼンリョクバトルという意味合いがあった。その場でソルガレオとバトルするのは、ハウなら燃えてくるシチュエーションじゃない?」

ヨウはニヤリと笑う。ハウもつられてニヤリと笑った。ヨウはハウの表情を見て、ここはケケンカニの交代はないと読んだ。

「ほしぐもちゃん、思念の頭突き!」

「ケケンカニ、交代!ガオガエン!」

ハウは素早くケケンカニをボールに戻し、ガオガエンを繰り出す。ガオガエンは突っ込んできたほしぐもちゃんの攻撃を平然と受け止めていた。

「…ラリオ…!」

「ガウ…」

ほしぐもちゃんはガオガエンを振りほどき、一旦距離を取る。ハウはヨウの驚いた様子を見て笑っていた。
 ▼ 304 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/10/09 23:25:38 ID:h.pAoNf6 [5/8] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…さっきの大々試練の話、おれを乗せてケケンカニを交代しないようにしたつもりだったんでしょ?」

ハウはヨウの考えを読んでいた。

「…おれはヨウに勝つためにいろいろシミュレーションしたよ。…その中に、ヨウなら相手を言葉で乗せて、あえて不利な真っ向勝負を挑ませるってのもあった。まさか本当にしてくるとは思わなかったけど」

ヨウはハウを乗せようとしたことを読まれていたのには驚いていたが、だがまだ自分はポケモンを倒されたわけではない。ほしぐもちゃん、ソルガレオでガオガエンと戦うのは不利である。アシレーヌがいない今、ガオガエンを倒すのに最も適したポケモンと言えば…

「ほしぐもちゃん、交代!フライゴン、もう一度頼む!」

ヨウは再びフライゴンを戦場に送る。ハウはここで黒いZクリスタルをはめ、一度上半身をガクッと折り、その後内股気味になりながら腕を斜め上に広げるようなポーズを取った。

ここでZ技…!?

ヨウとフライゴンは交代に合わせてZ技を仕掛けられたことに目を丸くする。ハウのZリングからガオガエンにエネルギーが注がれ、ガオガエンがオーラを身にまとう。

「ヨウ、おれたちは本気でヨウたちに勝ちたいからここに来たんだ。行くよ、ガオガエン!ブラックホールイクリプス!!」

「ガウオォォッ!!」

ガオガエンの咆哮とともにフライゴンが発生した悪エネルギーの球体に飲まれる。フライゴンはその中で力尽き、バトル場の床に落下した。

「フライゴン!」

ヨウはフライゴンに声をかけるが、フライゴンは起き上がれなかった。

「…フライゴンはヨウの得意なテクニカルな戦い方を支えるポケモンだからねー。真っ先に倒せたのはラッキーだったよ」

ハウはフライゴンをボールに戻すヨウを見ながら言った。ヨウはハウをじっと見つめていた。
本気で自分に勝ちに来たというその言葉に一切の偽りはない。ヨウはハウの決意に気圧されそうになるも、自分もアシレーヌのめにも簡単に負けるわけにはいかなかった。
 ▼ 305 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/10/09 23:26:19 ID:h.pAoNf6 [6/8] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ハウ…。君の決意はよくわかった…。けど、僕たちだって簡単にはやられない!

ヨウはハウをにらみつけるように見据えながら次のボールを手に取った。

「ドスコイ!」

ガオガエンの前にハリテヤマが立ちはだかる。ハウはガオガエンが苦手とする格闘タイプのハリテヤマを警戒した。

「ハリテヤマか…。ガオガエン、ここは頼んでいい?」

ハウは今度こそ交代させる気はないようだった。おそらくガオガエンが先制してくるだろう。しかし、既にハウはZ技を使っており、ガオガエンがタフなハリテヤマを一撃で倒せる技があるとも思えなかった。

ここは確実にガオガエンを倒すべきだ。

ヨウはそう考え、ハリテヤマの攻撃でガオガエンの弱点を突こうとする。

「ハリテヤマ、インファイト!」

「ガオガエン、とんぼ返り!」

ヨウにとっては予想だにしなかった技だった。まさかガオガエンにとんぼ返りを覚えさせているとは。
ガオガエンはハリテヤマに一撃を入れるとそのまま離脱する。ハウは入れ替わりにライチュウを繰り出した。

「ライッ!!」

「ドスコイッ!!」

ライチュウにハリテヤマのインファイトが直撃する。ライチュウはハリテヤマの攻撃を受けて後ずさるが、エスパータイプであるライチュウにとってはダウンするほどのダメージとはならなかった。

「くっ…」

ヨウはハウがしっかり自分を研究し、対策を立ててきているのだと知り、心の中に焦りが生まれてきていた。

ここはハリテヤマを交代させるべきだ…。でも誰に…?

「サイコキネシス!」

ヨウは迷った挙句、ハリテヤマをボールに戻してトゲデマルを繰り出した。
 ▼ 306 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/10/09 23:26:48 ID:h.pAoNf6 [7/8] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「トゲデマル、頼む!」

「マキュッ!!…キュ…!?」

トゲデマルは戦場に出た瞬間ライチュウのサイコキネシスをくらう。トゲデマルは吹き飛ばされ、床に転がるが、すぐに体勢を立て直した。

「トゲデマル、びりびりちくちく!!」

「まきゅ!!」

ヨウは反撃にびりびりちくちくを指示する。ライチュウは突っ込んできたトゲデマルの一撃をくらい、のけぞった。ヨウはそれを見逃さず、トゲデマルに連続攻撃を指示した。

「トゲデマル、ライチュウに確実にダメージを与えてる!そのまま連続攻撃で追い込むんだ!」

「マキュッ!!」

トゲデマルは再び身体を丸め、針を逆立ててライチュウめがけて突っ込む。その単調なコースの攻撃にライチュウは手痛い反撃を見舞った。

「ライチュウ、気合玉!!」

「ライッ!!」

ライチュウは気合玉を発射し、トゲデマルがその一撃に吹き飛ばされた。

「トゲデマル!!」

トゲデマルは地面に落下したが、なんとか身を起こした。ヨウはトゲデマルがまだなんとか戦えそうなことに安堵するとともに、ハウとライチュウを険しい目で見つめた。ハウとライチュウも気を抜くことなく自分とトゲデマルの様子を見ていた。
これまで共に島巡りをし、そして自分を支えてくれた親友は、今最大の敵として自分の前に立ちはだかっていた。
 ▼ 307 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/10/09 23:27:47 ID:h.pAoNf6 [8/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
第31話はここまでです。
次回で決着まで持っていくつもりですが、もしかすると
もう一話使うかもしれません。
それではまた。
 ▼ 308 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/10/10 19:20:38 ID:ip1sUXjw [1/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
読んでくださっている皆様、いつもありがとうございます。
第32話ができましたので投稿します。
 ▼ 309 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/10/10 19:21:14 ID:ip1sUXjw [2/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
Episode 32 友情の玉座


「トゲデマル、びりびりちくちく!!」

トゲデマルが再びライチュウめがけて突っ込むが、ライチュウは宙を舞ってひらりと攻撃をかわす。そして、トゲデマルはライチュウの反撃を受けることになった。

「ボルトチェンジ!」

「ライッ!!」

ライチュウはトゲデマルを攻撃しながら離脱する。トゲデマルは戦闘不能となり、ヨウは苦い表情でトゲデマルをボールに戻す。ハウのポケモンたちに決定的な一撃を与えられぬまま2体の手持ちを倒されてしまった。ヨウはハウの戦法に翻弄されつつあった。

「よし、もう一度頼むよ!ガオガエン!」

「ガウッ!!」

ハウは再びガオガエンを繰り出す。ヨウはそれを見て、この場を託すポケモンを決めた。

「…ほしぐもちゃん、頼む!」

「ラリオーナ!!」

ヨウは再びほしぐもちゃんを繰り出す。ガオガエンはほしぐもちゃんを威嚇するように唸り声を上げるが、ほしぐもちゃんは怯むことはなく咆哮を返した。

「威嚇が効かないのか…。ガオガエン、フレアドライブ!!」

「ガウア!!」

ガオガエンの腹部の炎のベルトから前身に炎が走る。それを見たヨウはハウの勢いを挫くべく、ガオガエンを仕留めようと考えた。ヨウはここでジメンZをZリングにはめ、その場で一回転して右手を地面につく。

「ほしぐもちゃん、Z技いくよ!ライジングランドオーバー!!」

「ラリオーナ!!」

ほしぐもちゃんは後ろ足だけで立ちあがり、そのまま両前足を地面につく。ガオガエンめがけて地面に衝撃波が走り、ガオガエンは上空に投げ出されてバトル場の床に落下した。
 ▼ 310 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/10/10 19:21:42 ID:ip1sUXjw [3/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「どうだ…」

ヨウとほしぐもちゃんはガオガエンの様子を固唾を飲んで見つめる。ガオガエンは起き上がりかけたが、それは叶わず倒れた。

「…よし…」

ヨウとほしぐもちゃんはガオガエンを倒しほっと一安心していた。しかし、ハウはまだ5体のポケモンを残している。勝負はこれからだ。

「やるねー、ヨウ。ネッコアラ、頼むよ!」

「zzz…」

ハウはネッコアラを繰り出した。これでハウの手持ちは4体が明らかになった。残りはライチュウ、ケケンカニ、そしてヨウがまだ見ぬ2体。
ヨウはここから可能な限りハウの手持ちを倒していこうと考えていた。ほしぐもちゃんのパワーならそれができるはずだ、と。

「ほしぐもちゃん、メテオドライブ!!」

「ラリオーナ!!」

ほしぐもちゃんの額に第3の目が浮かび上がり、全身が白くまばゆい光を放つ。ほしぐもちゃんはネッコアラに向かって渾身の突撃を敢行し、ネッコアラはバトル場の柵に叩きつけられた。

「……zzz……」

ネッコアラはまだ戦闘不能とはなっておらず、ハウは意外な技で反撃してきた。

「ネッコアラ、あくび!!」

「ふあぁ…」

ネッコアラはあくびでほしぐもちゃんの眠気を誘う。ヨウは思わぬ手にどうするか迷った。ここでネッコアラに攻撃を仕掛けることは可能たが、その後ほしぐもちゃんが眠れば決定的な隙をさらすことになる。
ヨウは仕方なくほしぐもちゃんを交代させ、あくびの効果を解くことにした。
 ▼ 311 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/10/10 19:22:58 ID:ip1sUXjw [4/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ほしぐもちゃん、一度戻るんだ!アブリボン、頼むぞ!」

「ブリッ!」

ヨウはほしぐもちゃんを回収し、入れ替わりにアブリボンを繰り出す。ネッコアラはそこに攻撃を合わせてきた。

「ネッコアラ、恩返し!」

ネッコアラはボールから出てきたアブリボンへ飛びかかり、後ろ足でアブリボンを蹴飛ばした。しかし、アブリボンはすぐに態勢を立て直すと、ネッコアラの上を取り、攻撃を仕掛けた。

「アブリボン、ムーンフォース!!」

「ブリッ!!」

ネッコアラはムーンフォースの光に飲まれる。ネッコアラが倒れ、ハウはネッコアラを労いながらボールへ戻した。

「…ネッコアラ、よく戦ったよ」

ハウはネッコアラのボールを腰のベルトへと戻しながらヨウの残りの手持ちに考えを巡らせた。これでヨウの残りの手持ちはシャンデラ、ハリテヤマ、アブリボン、そしてソルガレオである。ハウはそろそろヨウを一気に追い込もうと、ヨウがこのバトルでまだ見ていない手持ちを繰り出した。

「ナッシー、頼むよ!」

「ナッシ!」

「ナッシー!?」

ヨウはハウが繰り出してきたナッシーに驚く。ナッシーは高くそびえる巨木ように立ち、アブリボンを見下ろしていた。

「おれの新戦力だよー」

ハウは自慢げに口を開くが、ヨウはナッシーのタイプを思い出して心を落ち着かせる。
ナッシーは草、ドラゴンタイプ…。フェアリータイプのアブリボンなら先制して大ダメージを与えられる。
 ▼ 312 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/10/10 19:23:35 ID:ip1sUXjw [5/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「アブリボン、ムーンフォースだ!」

「ブリッ!!」

アブリボンはムーンフォースを放つ。巨大な光の柱がナッシーを飲み込み、ナッシーは体をぐらつかせた。

「やったか!?」

ヨウとアブリボンはナッシーを倒したかと様子をうかがう。しかし、ナッシーは足を踏ん張らせた。

「気合いの襷を持たせてるからねー。ナッシー、トリックルーム!」

「!」

ヨウはまずいと思ったがもう遅かった。ナッシーの目が怪しく光り、周囲の時空が歪んでいく。

「トリックルーム…。くそっ、アブリボン、ナッシーを倒せ!もう一発ムーンフォースだ!」

ヨウはアブリボンにムーンフォースを指示する。しかし、アブリボンよりも先にナッシーが動いた。

「ナッシー、大爆発」

「!?」

「ナッシ!」

アブリボンはニヤリと笑ったナッシーの顔を見た。ナッシーの体が光を放ったかと思うと、巨大な爆発が起きる。アブリボンは爆風に飲まれて力尽き、バトル場の床に落下した。

「…ナッシー…、ありがとう…」

ハウはナッシーをボールに戻す。ヨウはなんとなくハウは大爆発などの自爆技を使ってくるイメージがなかったので、本当に驚いていた。

「ハウ…。まさかそんな戦法を使ってくるとは思わなかったよ…」

「…ヨウに勝つために研究したんだ。それに、観光大使をやって出会った人たちが応援してくれてるからね…。さあ、勝負だ!」

ハウはそう言って次のボールを投げる。ヨウもそれに合わせて次のボールを投げた。
 ▼ 313 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/10/10 19:24:15 ID:ip1sUXjw [6/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ブオオッ!!」

「シャンッ!」

ヨウはハウが見たこともないポケモンを繰り出してきたので再び驚きに目を丸くする。ただ、このポケモンがウルップとのバトルで使っていたポカブの進化した姿なのだろうとは予想がついた。

「…このポケモン、ウルップさんとのバトルで使ってた…」

「…そうだよー…。エンブオーっていうんだ」

エンブオーの炎の顎ひげが風に揺らめく。ヨウはそれを見ながら考えていた。炎タイプなのは間違いない。炎技ならシャンデラの特性、貰い火で無効化できる。あとはどんな技を使ってくるかだが…。

「シャンデラ、シャドーボール!」

「シャッ!」

シャンデラはシャドーボールを形成し、エンブオー目掛けて放とうとする。だが、エンブオーは目にも留まらぬスピードで突っ込んできた。

「諸刃の頭突き!」

エンブオーの強力な頭突きがシャンデラを捉える。シャンデラは一撃でバトル場の床に転がり、動けなくなった。

「…なんて威力だ…」

ヨウはエンブオーのあまりのパワーに驚いていた。残りの手持ちはハリテヤマとほしぐもちゃんだが、果たしてエンブオーを倒せるのか。

「…ハリテヤマ、ここは頼むぞ!」

「ドスコイ!」

ハリテヤマがエンブオーと対峙する。幾多の危機を受け止め、跳ね返してきたハリテヤマならとヨウは考えていた。だが、ハウのエンブオーの攻撃はヨウの予想以上の威力だった。

「エンブオー、フレアドライブ!!」

「ブオォッ!」

エンブオーの顎から全身へ炎が走り、エンブオーは巨大な火の玉と化した。エンブオーはそのままハリテヤマへと突撃し、ハリテヤマを一撃のもとにノックアウトした。
 ▼ 314 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/10/10 19:25:26 ID:ip1sUXjw [7/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ハリテヤマ!」

「…ドスコイ…ッ…」

ハリテヤマは立ち上がろうとしたが、立ち上がれない。そのとき、ヨウの耳に再びリーリエの声が聞こえた。

…ヨウさんは世界一のポケモントレーナーです…

ヨウはふと聞こえたその声を、首を横に振って振り払った。

…リーリエ…。僕は世界一のトレーナーなんかじゃない…。君から預かったほしぐもちゃんの力をもってしても、それを乗り越えてきたトレーナーがいる…

ヨウはほしぐもちゃんのボールを投げる。ほしぐもちゃんには申し訳ないが、このバトルは最後まで戦い抜かなければならなかった。
ヨウにはもう目の前にいるハウの声も聞こえない。リーリエの声も聞こえなくなった。
ヨウはほしぐもちゃんに攻撃を指示し、ほしぐもちゃんの体がまばゆい光を放ち始める。しかし、エンブオーは再び爆炎をまとい、ほしぐもちゃん目掛けて突撃してきた。

いつかはこの座を離れる日が来るのだろうとはなんとなく思っていた。それが今日になる可能性も十分あることも。ほしぐもちゃんはエンブオーの攻撃によって吹き飛ばされる。エンブオーも反動ダメージが限界に達したようで、ほしぐもちゃんに一撃を加えるとそのままバトル場の床に崩れ落ちた。
ハウはほしぐもちゃんにとどめを刺したかと様子をうかがっている。ヨウはなんとか立ち上がってくれないかと祈ったが、ほしぐもちゃんは立ち上がれそうな雰囲気ではなかった。
ヨウは倒れ伏すほしぐもちゃんを見て、なんだか全てを失ったような気になった。ただ、その中で彼に救いがあったとすれば、新たにその座に着く人物は彼が慕い、チャンピオンとして相応しいと思える人物であったことだ。

「…ハウ…。バトルしてくれてありがとう…。君が新しいチャンピオンだ…」

ハウへの賛辞はヨウの心の奥底から湧き出た本心だった。だが、なぜか彼はハウに笑顔を見せながら目から涙をこぼしていた。
 ▼ 315 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/10/10 19:26:56 ID:ip1sUXjw [8/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
第32話はここまでです。
次回が第3章の最終話となります。
それではまた。
 ▼ 316 イドン@ドラゴンジュエル 20/10/10 19:33:24 ID:MD1.GymQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 317 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/10/10 23:34:55 ID:ip1sUXjw [9/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
読んでくださっている皆様、いつもありがとうございます。
第33話ができましたので投稿します。
 ▼ 318 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/10/10 23:35:29 ID:ip1sUXjw [10/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
Episode 33 さよならアローラ地方


勝った…

ハウはヨウの手持ちを全員倒し、拳を握って身体を震わせていた。乗り越えたいと思ってきたライバルに勝利したこと、これからは自分がチャンピオンとなることへの緊張など、ハウの中に様々な思いが駆け巡る。
ハウは思わずその場に尻餅をついた。ヨウは驚き、ハウに駆け寄った。

「ハウ?どうしたの?」

ヨウはハウの手を取り、立ち上がらせる。ハウは緊張の糸がほどけ、小さく笑いながら立ち上がった。

「はは…。ヨウに本当に勝ったんだと思うと、なんか脚から力が抜けちゃって…」

ハウはここでヨウの顔を見つめる。そして気づいた。ヨウの表情は自分への祝福の思いと、それと同時にリーリエと掴んだ座を手離すことになった喪失感とが入り交じっていると。

「…ヨウ…。泣いてる…?」

「…え…?あ……」

ハウに言われ、ヨウは思わず顔を背けた。

「ごめん…。カッコ悪いよね…。…負けて泣いちゃうなんてさ…」

ヨウはそう言うが、ハウは首を横に振った。

「…負けて悔しいから…じゃないんでしょ?」

「……」

ハウがそう言うと、ヨウはハウには本当に敵わないなと思いながら自分の気持ちを吐露し始めた。

「…ハウには本当に敵わないな…」

「…今ヨウが思ってること、おれに教えてくれるー?」

ヨウは風の音に耳を澄ませ、大きくため息をついた。
 ▼ 319 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/10/10 23:36:42 ID:ip1sUXjw [11/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…負けて悔しい思いがないわけじゃないんだ。ただ、リーリエに世界一のトレーナーって言われて、そんな存在に程遠い自分がいて…。これまではリーリエのためにせめてこの座を守ろうって思ってたつもりだった。でも、いざ負けてみたら喪失感だけじゃなくて、この座にいつまでも自分がいなくてよかったと思ってる部分もあって…。何より…」

ヨウはここでハウの方へとくるりと向き直った。

「…新しいチャンピオンがハウでよかったと思ってる…。この座に着くのが、僕みたいな奴にも優しくて、心から支えようとしてくれる人で…」

「…ヨウ…」

ヨウは涙でハウの顔がはっきりと見えてはいなかった。だが、ハウはヨウをぎゅっと抱きしめ、背中をさすって落ち着かせた。

「…ヨウ、おれはヨウがチャンピオンの座に着くまでに苦しい戦いを勝ち抜いてきて、その後もたくさんの人を助けてきたって知ってる。だからヨウも胸を張ってほしいんだ。ミヅキはヨウのことを許せないのかもしれないけど、おれはヨウが優しくてすごいトレーナーだってよく知ってる。だから、またリーグに挑戦してほしいんだ。そのときのチャンピオンがおれかはわからないけど、おれは待ってるからね」

「ハウ…、ありがとう…」

ヨウはハウの前で涙をぬぐう。そして、風の音を聞きながら呼吸を整えると、笑顔を見せた。


次の日、チャンピオン交代はアローラでは大きなニュースになっていた。ハウがクローズアップされるのを見ていると、喪失感もある反面、何か肩の荷が降りたような感覚もあった。

「…残念だったわね、ヨウ。でも、あんたならまたチャンピオンを目指せると思う。…今まで大変だったんだから、少し休んだらいいわ」

自宅に戻ったヨウを彼の母は優しく迎えてくれた。ヨウはさんざん心配をかけたことを謝ると、母にこれからどうしようと思っているかを話した。
 ▼ 320 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/10/10 23:39:17 ID:ip1sUXjw [12/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…ママ、僕、少しアローラを離れてゼロからトレーナー修行をしようと思う」

「ヨウ…?」

「…リーリエもカントーで頑張ってるし、僕も環境を変えてみるのもいいかと思って」

彼の母はまた息子が何かよくない理由でそのようなことを考えたのではないかと危惧するが、ヨウは彼の母に穏やかな笑顔を見せた。ヨウの母はそれを見て、息子を信じることにした。

「そう…。あんたがそうしたいなら、そうすればいいわ。…どこか行きたいところがあるの?」

母に尋ねられ、ヨウは考える。なんとなく、温暖なアローラとは異なる、冷涼な地方に行きたいと思った。

「そうだな…。アローラとは違う、涼しいところがいいかも…。シンオウ地方とか…」

「…そう…」

ヨウの母は息子をぎゅっと抱きしめる。ヨウは突然のことに戸惑うが、彼の母のすすり泣く声を聞いて動きを止めた。

「…本当に心配ばっかりかけるんだから…。今度は辛くなったらちゃんと帰ってきなさい。…それだけ約束して」

「…ママ…。うん。…ごめん…」

ヨウは母親の身体を抱きしめ返す。そして、その後自分の部屋に戻ると、三人の人物に宛てた手紙を書き始めた。


さらに次の日、ヨウはポケリゾートを訪れ、モーンに会っていた。自分がアローラを離れる間に自分のポケモンたちの面倒を見てもらえないかと頼むためだ。アローラを離れようと考えているというヨウの言葉にモーンは初めは驚いたが、すぐに笑顔を見せた。

「ああ、任せてくれ。…それに、ボックスシステムは別の地方でも繋がってる。君のポケモンたちはいつでも君のそばにいるからな」

モーンがそう言うと、ヨウは深々と頭を下げた。

「…モーンさん、ありがとうございます。…最後に僕のポケモンたちと会ってきてもいいですか?」

「…ああ、もちろん」

ヨウはその後ポケリゾートの中を歩き回り、自分のポケモンたちとしばしの別れの挨拶をして回った。そして、最後に彼はアシレーヌのもとを訪れた。
 ▼ 321 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/10/10 23:40:14 ID:ip1sUXjw [13/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…アシレーヌ、体の具合はどう?」

「…しゃるな」

アシレーヌは少し体がふっくらとしていて、体力は少し戻っているようだった。だが、ヨウの様子がおかしいと思ったのか、あまり元気いっぱいにアピールすることはなかった。

「…アシレーヌ、僕、ハウに負けたんだ」

「!」

アシレーヌはそれを聞き、自分がその場にいればそんなことはなかったのにと悔やんだ。

「…アシレーヌ、おまえのせいじゃない。誰のせいでもない。ただハウが僕に勝つためにあらゆることを研究して、今の僕より強くなったってだけのこと」

「…しゃる…」

「ハウからさ、またリーグに挑戦しに来いって言われた。自分は待ってるって」

ヨウはアシレーヌと海を見つめながら続けた。

「…アシレーヌ、リーグに再挑戦するのはいいんだけど、その前にもう一度自分を鍛えようって思う」

アシレーヌはそれを聞き、嫌な予感がしていた。

「…一度アローラを離れようと思うんだ。ゼロからもう一度、トレーナーとして自分を鍛えようと思う」

「しゃる!しゃるな!」

アシレーヌはヨウの目の前でわめき始めた。アシレーヌが自分と離れ離れになりたくないからだというのはすぐにわかった。ヨウはそこまで想ってくれる彼女をぎゅっと抱きしめた。

「…アシレーヌ…。ごめん…。でも、このアローラで出会って、一緒に戦った皆に恥じないトレーナーになりたいんだ…。だから…許してほしい…」

その瞬間、ヨウは至近距離から強烈な水流を浴びせられて浜辺に転がった。ヨウが身を起こすと、アシレーヌがヨウをにらみつけるように見ていた。
 ▼ 322 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/10/10 23:40:58 ID:ip1sUXjw [14/15] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…しゃる…」

ヨウはアシレーヌが涙を流しているところを見てしまった。胸が締め付けられるような思いがしたが、アシレーヌはそのままぷいっとヨウから顔を背けると、海に飛び込んでどこかへ行ってしまった。

「…アシレーヌ…」


そして、ヨウがアローラを発つ日がやってきた。ヨウはアローラを離れることを彼の母以外には言わなかったため、見送りはなかった。ヨウはアローラを発つ前にポストに3通の手紙を入れた。一つはハウ、一つはハプウ、最後の一つはミヅキに宛てたものだ。

「…さよなら、アローラ地方。…僕にとっては本当に夢みたいな日々だったな…」

ヨウはアローラで過ごした日々を思い出す。いつのことでも、誰と過ごしたものでも、彼にとっては大切な思い出だ。
ヨウは投函したポストの前で深呼吸をする。
今日の空は憎いくらいに青い。
ヨウはそんなことを思いながら空港行きのバスに乗るために歩き出した。
 ▼ 323 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/10/10 23:48:36 ID:ip1sUXjw [15/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
第3章はこれで終了となります。
これでようやく折り返し地点ですね。
第1章を始めてから1年3ヶ月経ってますが、ここまで読んでくださった皆様に本当に感謝です。

次回からは第4章、リーリエの物語の開始となります。
カントーでジム挑戦をしてバッジを8つ集めるまでを描くつもりです。
(章が変わるの新スレッドにて始めようと思います)

その後、第5章で第2〜第4章までの物語のまとめをやって、第6章で物語の完結となります。

引き続きよろしくお願いいたします。
 ▼ 324 ブリム@ちりょくのハネ 20/10/11 07:44:05 ID:XwQU4xAI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


そして支援
 ▼ 325 ンバス@かわらのかけら 20/10/11 13:37:01 ID:ms/YK/7E NGネーム登録 NGID登録 報告
シンオウ編も見てみたいです。
 ▼ 326 リーン@ホロキャスター 20/10/11 18:05:18 ID:9cxw0w4M NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
3章もお疲れ様でした。
大支援!

4章の更新も楽しみにしてます!
 ▼ 327 レセリア@くろおび 20/10/11 18:08:26 ID:am22nEbo NGネーム登録 NGID登録 報告
ヨウが浮気したことだしリーリエにも浮気させましょう

乙支援
 ▼ 328 ルーラJr◆D7AV4ilbZg 20/10/11 18:30:18 ID:pePArFdE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
読んでくださっている皆様、いつもありがとうございます。
新スレッドにて第4章を開始しましたのでお知らせします。
引き続き楽しんでいただければ幸いです。

ポケモンSMのストーリーをゼンリョクで書く 第4章 リーリエの物語
https://pokemonbbs.com/poke/read.cgi?no=1302379


>>325
第5章はシンオウ地方に行ったヨウをある人物がアローラへ連れ戻しに行く章になりますので、実質シンオウ編と言ってもいいかもしれません。
そして、ヨウが再びアローラリーグへ帰ってくる章でもあります。
第4章を読みながら楽しみにしていただければ幸いです。
 ▼ 329 メノデス@ももぼんぐり 20/10/12 07:04:05 ID:GcNMC2Lk NGネーム登録 NGID登録 報告
325の者ですが、楽しみにしています。
このページは検索エンジン向けの機能制限版の旧ページです。
下URLから閲覧下さい。
https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=1270113
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