【SS】ひと夏のレンジャースクール:ポケモンBBS(掲示板) 【SS】ひと夏のレンジャースクール:ポケモンBBS

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【SS】ひと夏のレンジャースクール

 ▼ 1 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/19 00:53:58 ID:qb7EOz/Y NGネーム登録 NGID登録 報告

アルミア地方、ビエンタウン郊外。

ポケモンレンジャー養成学校、レンジャースクール。


 リーフ 「行くよチーちゃん! あなたに決めた!」

 チコリータ 「ちこー!」


緑と青の制服に身を包んだ彼女の名前はリーフ。

レンジャースクールの生徒で、パートナーポケモンはチコリータ。

ポケモンと気持ちを通わせるためにポケモンレンジャーが使用する道具――、キャプチャ・スタイラーを構え、彼女は動く。


チコリータのアシストを受けながら、野生のダグトリオをスタイラーでグルグル囲み……、キャプチャ――、ポケモンと気持ちを通わせることに成功した。


 ヒトミ 「凄いよリーフ! スピード記録更新したんじゃないの!?」

 リーフ 「えへへっ」

 ミナミ 「まったく。あんなに大人しかったリーフが、こんな立派になるなんてねー」

 ヒトミ 「うんうん。私もクラスメートとして嬉しいよ」

 リーフ 「大袈裟だよ2人とも」

 ハジメ 「いや、野生のダグトリオ相手に、今のキャプチャは凄いと思うよ」

 ナツヤ 「無駄がない動きだったぜ。オレも もっと特訓しないとな!」

 リーフ 「ふふっ。ありがとう」
 ▼ 155 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/31 00:26:52 ID:4GHwb6G. [1/6] NGネーム登録 NGID登録 報告



地面が、割れた。


ピカチュウ渾身の“10まんボルト”は、穴の水を伝ってボスゴドラを捉え続け――。


最大パワーに達した電撃は、穴を内部から破壊し、地割れの如く、フィールドを真っ二つにした。


電撃の黄色い閃光が、割れた地面から拡散し、耳が痛くなるほどの轟音とともに、ボスゴドラを呑みこんだ。



 ハジメ 「うわっ!?」

 ミナミ 「ちょっ……!?」

 ヒトミ 「きゃぁぁぁぁっ!?」

 ナツヤ 「っ……! 捕まれっ!」

 リーフ 「んっ……!?」



爆風と、爆煙が巻き起こる。


仮設テントは崩れ、広告看板は飛び、放送装置はハウリングを起こした後に電源が落ち、中継用の大型モニタは粉々に割れ――。


これが……“10まんボルト”なの?


サトシ君のピカチュウは、こんなにも凄まじい力を秘めていたの?


私たちは、こんなに凄い人から特訓を受けて、一緒に大会に出場していたの?





もう、全てが驚きだった。





 ▼ 156 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/31 00:27:35 ID:4GHwb6G. [2/6] NGネーム登録 NGID登録 報告



 『ガガッ……ザッ、ビィィ……あっ! あーあー、マイクテスト、マイクテスト』





爆煙が晴れる。


ボロボロだったフィールドは、もう原型を留めていない。


フィールドの四方八方が、まるで竜巻でも通ったんじゃないかってほど、荒れ果てていた。


そんな無残な景色の中で、ひときわ華やかに輝く、黄色い姿。


赤いホッペとギザギザ模様は傷だらけだけど、堂々と、しっかりと、そこに立っていた。



 実況 『凄い……凄いぞピカチュウ! 凄いぞレンジャースクール! プエル学園のボスゴドラを倒し! ピカチュウの勝利! 優勝は! レンジャースクールです!』



 サトシ 「ぃよっしゃあああぁぁぁぁぁ!」

 ピカチュウ 「ぴっかぁぁぁ!」



ウオオオオオオォォォォォ!

――と、耳が痛くなるほど大きな歓声が上がる。



勝ったんだ。

サトシ君とピカチュウ、勝ったんだ!


 ▼ 157 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/31 00:28:26 ID:4GHwb6G. [3/6] NGネーム登録 NGID登録 報告


 実況 『12年ぶり出場のレンジャースクール! 悲願の初優勝を飾りました! 強豪プエル学園を制すなど、誰が予想したでしょうか!? アルミア学校選抜バトル大会の歴史に名を残す勝利です!』



 ハジメ 「っしゃあああぁぁぁぁぁ!!!」

 ナツヤ 「やりやがった……! やりやがったよサトシ!」

 ヒトミ 「凄いよ凄いよ! 優勝だよ! 私たちのレンジャースクールがっ……優勝っ!」

 ミナミ 「ホントにもぉ……やるじゃんサトシ! ぁやばっ、涙っ……グスッ」

 リーフ 「凄すぎるよ、サトシ君も、ピカチュウも。私たちの想い、きっちり受け取ってくれてっ……!」

 ナツヤ 「行こうぜみんな!」



みんなで、思わず走り出す。

この激闘を制した、サトシ君とピカチュウの元へ。



 サトシ 「お疲れさん、ピカチュウ。よく頑張ってくれたな」 ナデナデ

 ピカチュウ 「ぴかちゃぁ〜」 グッタリ

 サトシ 「ははっ! 疲れちまったよな、さすがに」


 ▼ 158 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/31 00:29:41 ID:4GHwb6G. [4/6] NGネーム登録 NGID登録 報告


 ナツヤ 「サトシー!」

 ハジメ 「ありがとう! 本当にありがとう!」

 ミナミ 「やったわねサトシ! アンタ本当に凄いわよ!」 ダキッ

 サトシ 「ちょっ……」

 ヒトミ 「ほらミナミちゃん! 抱き付かないの!」

 ミナミ 「ふふっ。まったく、ハラハラさせてくれるじゃない。ホント凄いわよ、サトシ!」

 ナツヤ 「感動したよオレ! あんな戦法、どうやったら思いつくんだよ!?」

 ハジメ 「穴を活用したのは分かるよ。でも、葉っぱを巻き上げて穴を隠す――、そんな落とし穴みたいなこと、あんな極限状態で思いつくものなの?」

 サトシ 「へへっ。まぁ強いて言うなら、今まで何度も落とし穴には落ちてきたからな」

 ハジメ 「えっ?」

 ヒトミ 「旅の経験、ってことだよね。バトルの強さも、サトシの戦略も!」

 サトシ 「そういうこと、だな!」

 ピカチュウ 「ぴっか!」


みんな、興奮してサトシ君を囲み、祝福する。

嬉しいもん。12年ぶりに出場したレンジャースクールが、初優勝を飾れて。

今まで私たちを馬鹿にしてきたプエル学園の人たちに、決勝という舞台で勝つことができて。


 ヒトミ 「ほーら、リーフも」 グイッ

 リーフ 「あっ……」

 サトシ 「リーフ。ありがとな。勝利の流れを作ってくれたのは、間違いなく、リーフとチーちゃんだぜ?」

 リーフ 「……ふふっ。ありがとうサトシ君。凄かったよ。本当に、本っ当に凄かった! 格好良かった!」

 サトシ 「へへっ。リーフの声、しっかり聞こえたぜ。“みんなの想い”!」

 リーフ 「うんっ! 私たちの頑張り、しっかり繋いでくれて……、本当に嬉しいっ」

 ヒトミ 「あーらら、とっても良い笑顔ね、リーフ」

 ナツヤ 「ミナミみたいに抱き付いちゃえよ」

 リーフ 「ふぇっ!? わっ、私は無理だよそんなのっ……///」

 ミナミ 「あははっ。リーフ、バトルは凄い気合いと覚悟だったのに、こっちはダメね〜」

 リーフ 「もぉっ……///」

 ヒトミ 「ふふっ。とにかく優勝だよ! 優勝!」
 ▼ 159 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/31 00:30:54 ID:4GHwb6G. [5/6] NGネーム登録 NGID登録 報告

バトル大会で優勝――。


私たちに全く縁の無かったことが、今こうして、現実になった。

皆で掴んだ優勝。サトシ君が導いてくれた優勝。ポケモンたちが頑張って実現させてくれた優勝。


こんなに嬉しくて、楽しくて、刺激的で、泣きたくて、叫びたくて、とっても気持ち良い気分、生まれて初めてだな。





 記者1 「レンジャースクールの皆さん、初優勝おめでとうございます! 集合写真良いですか?」

 記者2 「あー、こっち向いて下さい! そう自然な笑顔で!」

 記者3 「強豪のプエル学園を破った感想とか、みなさん全員から貰いたいですね」

 記者4 「出来ればポケモンたちにも出て貰って。バトルの振り返りとかも」



喜びも束の間、私たちは、記者の人たちに囲まれた。

強豪校を破って初優勝、それも、12年ぶりの出場で、ポケモンバトルに縁のないレンジャースクールとなれば、注目度は高いに決まっている。


あーあ、しばらく動けないかもね、この様子だと。ふふふっ。





 実況 『レンジャースクール、おめでとう! 本当におめでとう! 皆様、いまいちど、大きな拍手と歓声を!!!』


  ― ウオオオオオオオオォォォォォォォ!!!



 実況 『さてこの後は、第2フィールドにて、3位決定戦を行います。スタッフは、所定の位置へと―――』










 ▼ 160 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/31 00:31:41 ID:4GHwb6G. [6/6] NGネーム登録 NGID登録 報告



   *   *   *



大会会場の外れ、倉庫街――。


 カムイ 「畜生! レンジャースクールの奴ら、良い気になりやがって!」

 エルム 「マジムカつく! 3位決定戦のメンバーから外されるし! 恥ずかしいったらありゃしない!」

 ゲンガー 「ゲン……」

 マリルリ 「ルリ……」

 カムイ 「だいたいゲンガー! お前っ、もうちょっと耐えろよ! ザコに負けてんじゃねーぞ!」

 ゲンガー 「ンガァ!?」

 エルム 「ちょっと。ポケモンに当たるのはトレーナー失格よ」

 カムイ 「……チッ! お前は二軍だ。一から鍛え直しやがれ」

 ゲンガー 「ゲンッ!」 キュィィィン

 カムイ 「なに“シャドーボール”打とうとしてんだよ!? 不貞腐れてんのか!?」

 エルム 「やめなってカムイ!」

 カムイ 「あーあ! つまんねぇな!」

 ゲンガー 「……ゲン!」 バシュッ!

 エルム 「こらゲンガー。気持ちは分かるけど、空に“シャドーボール”打つのは――」



  ― バキッ!

 「ふりゃあぁぁぁぁっ!?」



 カムイ 「んっ!?」

 エルム 「ちょっ……ほらぁ!」

 カムイ 「ヤベェ。戻れゲンガー! こんなトラブル起こしたのバレたら、それこそプエル学園の恥だ」

 エルム 「戻ってマリルリ。行くわよ。私たち、なんにも見てないんだから!」



   *   *   *



 ▼ 161 ンガー@シルバースプレー 21/09/01 18:11:48 ID:Sw5gJNUE NGネーム登録 NGID登録 m 報告
支援
バトルがアニポケっぽくて好き
 ▼ 162 イコウ@ボイスチェッカー 21/09/04 00:18:43 ID:2BJ./yO2 NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 163 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/09/06 01:27:01 ID:sYKI8RII [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告



 ミナミ 「はぁ〜ぁ。インタビューってこんなに疲れるものなのね〜」

 ナツヤ 「嬉しいことだけどな」

 サトシ 「ははっ。やっぱ疲れるよな、こういうインタビューって」


控室で記者に囲まれていた私たち。

ようやくインタビューが終わって、一息つくことが出来た。


 ハジメ 「けど……、実感湧かないね、正直」

 ヒトミ 「うん。優勝かぁ……私たちが」

 リーフ 「サトシ君のお陰だよ」

 サトシ 「いや、これはみんなで掴んだ優勝だぜ。みんなのバトルが無かったら、最後のボスゴドラは倒せなかったと思うしな」

 リーフ 「そうかもしれないけど、みんなをここまで成長させてくれたのは、やっぱりサトシ君の お陰だよ。本当にありがとう、サトシ君」

 ハジメ 「そうだよ。優勝に導いてくれたサトシには、本当に感謝してる」

 ナツヤ 「あぁ。サンキューな、サトシ」

 サトシ 「へへっ」

 ミナミ 「あとリーフ。あなたとチーちゃんの活躍も凄かったわよ」

 ヒトミ 「そうそう! あんな判断、なかなか出来ないわよ」

 リーフ 「うん。……本当は、普通のバトルでチーちゃんを勝たせてあげたかったけどね」

 ナツヤ 「悔しいけど、サトシくらいのレベルがなきゃ、僕たちにプエル学園の奴らを倒すのは無理だったよ。そう考えれば、リーフとチコリータの捨て身の作戦は、最適解だった思うぞ」

 サトシ 「リーフとチーちゃんの覚悟が、バトルの流れを変えてくれたんだ。あの状況で あんな作戦思いつくの、ホントに凄いことだぜ?」

 リーフ 「ふふっ。サトシ君との特訓の成果、かなっ」

 ▼ 164 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/09/06 01:28:54 ID:sYKI8RII [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告

 ヒトミ 「あっ、ねぇねぇ! 閉会式まで時間あるからさ、サトシとリーフ、ちょっと遊んでくれば?」

 ミナミ 「あー良いわね! 大活躍の2人で楽しんで来なさいよ。ピカチュウたちの回復は私たちに任せてさ!」

 リーフ 「えっ!?」


ねぇ待ってミナミちゃんヒトミちゃん。なんてこと言いだすの!?


 サトシ 「いや、そんな悪いよ。みんなが活躍した訳だし、遊び行くんならみんなで……」

 ナツヤ 「サトシ、行って来い。リーフも行きたがってるぞ」

 リーフ 「ぇっ、あのっ、私はっ……///」


ナツヤ君まで!

行きたくない――って言ったら嘘になるけど、そんな2人きりだなんて。


 ヒトミ 「おいでピカチュウ。わーフサフサー、可愛いー!」 ギューッ

 ピカチュウ 「ぴかぁ♪」

 ミナミ 「ね、サトシ、リーフ。私たちを優勝に導いてくれた2人に お礼したいのよ。楽しんで来てよ」

 サトシ 「そうか? どうするリーフ?」

 リーフ 「あっ、えっと、サトシ君さえ良ければ……うん」

 ナツヤ 「そうこなくっちゃな!」

 ヒトミ 「ふふっ。いってらっしゃい」



もぉ、みんなして、私とサトシ君を2人きりにさせようとするんだから……。

しかも、チーちゃんもピカチュウも居ない、完全な2人きり。

私はそのっ、全然良いんだけど、サトシ君はどうなんだろう。女の子と2人きり――私と2人きりで出かけること、どう思ってるんだろう。


あぁどうしよう、緊張しちゃうよぉ……。


 ▼ 165 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/09/06 01:31:57 ID:sYKI8RII [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告


 サトシ 「決勝戦前にピカチュウと回ったけどさ、けっこう色んな屋台が出てたぜ。ホントお祭りなんだな」

 リーフ 「あっ、うん。アルミア地方ってポケモンリーグとか無いから、このバトル大会が一番のバトルの祭典なの」

 サトシ 「へぇ〜。お、アイス食おうぜ!」

 リーフ 「ふふっ、うん!」



私とサトシ君は、屋台街の散策を楽しんだ。

アイスを食べながら、射的をやったり、金魚すくいをしたり、ストラックアウトに挑戦したり。


  『お、レンジャースクールさん! 優勝おめでとう!』

  『凄かったよ! チコリータとピカチュウ!』

  『可愛いのに強くて感動しちゃった! 私もチコリータ育ててみる!』


巡る先々で、祝福の言葉をかけられる。

地元、プエル学園を破っての優勝というのは、それだけ偉大なことなんだと、改めて実感した。


 サトシ 「綿飴も いってみるか?」

 リーフ 「うん。綿飴なんて、食べるの何年ぶりだろう?」


始めは緊張していた、サトシ君と2人きりの時間。でもそんな緊張は、すぐに消えていた。

思いっきり楽しんでいるサトシ君を見ていると、私も笑顔になって、私も心から楽しい気分になって。


信じられないな。

男の子と話すことも苦手だった私が、サトシ君と2人きりで、自然体で楽しむことができるなんて。

傍から見ればデートみたいな、2人だけの時間。それを、緊張せずに、こんなに楽しむことができるなんて。


サトシ君の強さと、優しさと、格好良さ。それに、ポケモンを想う純粋な心。

そんなサトシ君の全てに、私は惹かれていった。日を追うごとに、惹かれていった。


これは、きっと――。





  「ふりゃああぁぁぁぁぁ!」 バサッ!


 ▼ 166 イリュー@ホズのみ 21/09/06 12:18:44 ID:FXqsO3I. NGネーム登録 NGID登録 m 報告
青春やな
支援
 ▼ 167 タシラガ@くさのジュエル 21/09/08 07:55:27 ID:MX1ElleI NGネーム登録 NGID登録 [s] m 報告
続き期待ンネ
 ▼ 168 ットロトム@イーブイZ 21/09/10 16:15:45 ID:IwDMgOk2 NGネーム登録 NGID登録 m 報告
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 ▼ 169 モー@ピンクのリボン 21/09/17 00:06:44 ID:ecIwtcFw NGネーム登録 NGID登録 m 報告
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 ▼ 170 ルビー@どくどくだま 21/09/24 10:33:16 ID:rJdk/qwg NGネーム登録 NGID登録 m 報告
支援
 ▼ 171 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/09/29 23:47:37 ID:6IH6KQ4M [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告


 リーフ 「えっ!?」

 サトシ 「なんだ今の鳴き声!?」


それは、突然のことだった。


小さな広場でサトシ君と綿飴を食べている時。

サトシ君と2人きりで居ることを心地良く感じていた、まさにその時。

尋常じゃないような、ポケモンの叫び声が聞こえたのだ。


 サトシ 「向こうからだ!」

 リーフ 「あっ、待ってサトシ君!」


走り出したサトシ君。私も彼に ついて行く。


この大会の会場は、物流・海運の倉庫街に、夏休み限定で作られたもので、特設フィールドや屋台で賑わっているのは、一部の区画のみ。

そんな区画の外に出ると、人気のない、静まり返った物流倉庫が立ち並んでいる。



そんな静寂を、打ち破るかのように。



 フライゴン 「ふりゃぁぁ! ふりゃあ!」 バキッ! バキッ!



 サトシ 「あいつだ!」

 リーフ 「すごい興奮してる……!」


そこに居たのは、興奮して木箱や塀を破壊している、1匹のフライゴンだった。おそらく野生。

これだけ激しく暴れているのに、逃げ惑う人も居なければ、通報された雰囲気も無い。


 サトシ 「かなり暴れてるな。怪我してる人とかは……!」

 リーフ 「たぶん居ないと思うよ。この倉庫街も夏休みのはずだから」


物流作業が止まる、倉庫街の夏休み。

倉庫街の夏休みに合わせて大会が開催されるくらいだから、人は居ないはずだ。
 ▼ 172 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/09/29 23:51:32 ID:6IH6KQ4M [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告

 フライゴン 「りゃああぁあ! ふりゃっ!」 バキャッ!


 サトシ 「落ち着けフライゴン! なにがあったんだ!?」

 リーフ 「……あ、サトシ君あそこ! 左の翼の付け根!」

 サトシ 「付け根……あ、怪我してるのか!」


フライゴンは、左の翼の付け根を怪我していた。

フライゴンほどの大きなポケモンが、別のポケモンに襲われたとは考えにくい。

同格ポケモン同士のバトルをしたのか――、誰かがゲットしようとして失敗した、って可能性もある。


 フライゴン 「ふぎゃあああぁぁぁぁぁ!」 ゴォォォッ!


 サトシ 「伏せろっ!」 グイッ!

 リーフ 「きゃっ!?」 ドサッ!


サトシ君に手を引っ張られ、2人して地面に転がった。

そんな私たちの上を、鈍い音を立てながら突風が吹き抜ける。その先にあったブロック塀が、木端微塵に崩れ落ちた。


 サトシ 「大丈夫か!?」

 リーフ 「ぁっ、ありがとう、サトシ君……」

 サトシ 「“むしのさざめき”だ。フライゴン、かなり気が立ってるぞ!」

 リーフ 「早く落ち着かせてあげないと! もし会場の方に行ったら大変だよ!」

 サトシ 「ピカチュウ居ないし、キャプチャするしかないな!」

 リーフ 「うん!」


時は一刻を争う。

もしフライゴンが人々で賑わう会場で暴れたら、とんでもない被害が出てしまう。

私たちがキャプチャするしかない。私たちが大人しくさせるしかない!
 ▼ 173 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/09/29 23:52:15 ID:6IH6KQ4M [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告

 サトシ 「キャプチャ・オン!」

 リーフ 「キャプチャ・オン!」


私たちは、キャプチャ・スタイラーを取り出す。


ちなみに私たちが使うのは“スクール・スタイラー”と言う、いわゆる教習用のもの。

現役のポケモンレンジャーが使うスタイラーとは、キャプチャの性能に差は無いけど、ボイスメールなどの一部の機能が搭載されていない。

本来、レンジャースクールの敷地外で使うのは禁止されてるけど、この緊急事態、そんなこと気にしている場合じゃない。


 サトシ 「オレのディスクを囮にする! 頼んだぜリーフ!」

 リーフ 「うん。やってみる!」


 サトシ 「ほらフライゴン! これ見えるかー!」 シュッ

 フライゴン 「ふりゃっ!」


サトシ君はディスクを発射し、フライゴンの目線の先、少し上で細かに動かす。

そうすることで、フライゴンの目線は上向きになり――。


 リーフ 「ゆっくり……、確実に……!」


その隙に、私は慎重にディスクを操作する。

フライゴンの下半身のまわり、出来るだけフライゴンの目線に入らない位置を狙って、ゆっくりとフライゴンを囲んで行く――が。



 フライゴン 「ふぎゃぁ!」 バキッ!


 サトシ 「あっ……と!?」

 リーフ 「っ……!?」


フライゴンが私のディスクに気付いて、“ドラゴンクロー”を繰り出した。


間一髪のところでディスクを回避させたけど、フライゴンの爪は地面を大きく抉っていた。

あんなのが直撃したら、スタイラーのエネルギーは すぐに底を尽きてしまう。
 ▼ 174 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/09/29 23:53:04 ID:6IH6KQ4M [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告

 フライゴン 「ふぎゃああぁぁぁぁぁ!」 ゴォォォォ!


 サトシ 「マズい隠れろ!」

 リーフ 「うん……!」


再びフライゴンが繰り出した“むしのさざめき”。

我を忘れているのか、苦しみのあまりなのか、その威力は相当なもので、轟音とともに物流倉庫に大きな穴をあけた。


 サトシ 「あんな暴れ方されたら、本当にマズいことになるぞ」

 リーフ 「あの感じだと、ゆっくり慎重にキャプチャするより、素早くキャプチャする方が良いかもしれない」

 サトシ 「けど、フライゴンの攻撃を避けながらだと難しいぞ」


ポケモンをキャプチャするには、そのポケモンをディスクで囲み続ける必要がある。

けど、攻撃を避ける時などは、どうしても“囲む動作”を中断しなくては ならない。

そうすると、それまで囲んだ分――私たちは気持ちゲージって呼んでるけど――、それが徐々に減ってしまい、振り出しに戻ってしまう。


 リーフ 「どうしよう……」


あれだけ暴れているフライゴン。


キャプチャと中断を ひたすら繰り返せば、いずれキャプチャ出来るだろうけど、とてもじゃないけど集中力が持たない。

それに、それまでフライゴンが、この人気のない場所に留まっていてくれるとも思えない。


 サトシ 「なにか……、サッとキャプチャ出来る方法があれば……」

 リーフ 「そんな都合の良い方法なんて――」



そんな都合の良い方法なんて無いよ――、そう言おうとして、私は思い出す。



教科書の最後の方に載っていた項目。

スクールでも教わるのは まだまだ先、当然この講習でも扱わない、上級者向けのキャプチャの方法。



 リーフ 「協力キャプチャ……」

 サトシ 「えっ?」
 ▼ 175 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/09/29 23:54:39 ID:6IH6KQ4M [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告

 リーフ 「2つのディスクで、1匹のポケモンをキャプチャするの。応用編みたいな方法で、カリキュラムの ずっと後に習うことなんだけど……」

 サトシ 「ってことは、難しいのか?」

 リーフ 「うん。2人の息がピッタリ合わないと、協力キャプチャは出来ないって」

 サトシ 「そうだよな。別々にディスクを操る訳だし」

 リーフ 「でもね、成功すれば、一気にポケモンに気持ちを伝えることが出来るの!」

 サトシ 「一気にか……。まさに今、うってつけの方法だな」

 リーフ 「成功するかは分からないよ。まだ習ってないことだし……」

 サトシ 「オレだって初めて聞いたよ。けど……、やるしかないよな、リーフ!」

 リーフ 「うん!」



協力キャプチャは、簡単なことでは無い。


1人なら、自分の感覚やタイミングでディスクを操作できるけど、2人だと、相方のディスクの動きを読んで、自分のディスクを操作しなくてはならない。

2人の息をピッタリ合わせて、2人の心を一つにして、相方の気持ちになって、ディスクを操作しなくてはならない。

トップレンジャーでも難しいと言われるキャプチャ方法――。



 サトシ 「よし。次にフライゴンが背中を向けたら」

 リーフ 「うん。一気に決めちゃおう!」



でも、なんでだろうね。


サトシ君となら、何故だか成功するような気がするんだ。


サトシ君となら、息をピッタリ合わせられるような気がするんだ。


サトシ君となら、どんな困難でも、乗り越えられるような気がするんだ。





 フライゴン 「ふりゃぁっ……」 クルッ



 サトシ 「行くぞ!」

 リーフ 「うん!」
 ▼ 176 ルケニオン@ひかりのこな 21/09/30 06:18:14 ID:HGrsy352 NGネーム登録 NGID登録 m 報告
待ってた
支援
 ▼ 177 モネギ@ブレイズカセット 21/09/30 07:22:04 ID:K13su.WA NGネーム登録 NGID登録 m 報告
通信協力プレイも拾ってくれるのか
支援
 ▼ 178 ニリュウ@ヤゴのみ 21/10/02 20:51:16 ID:d4LI3ojI NGネーム登録 NGID登録 報告
良SSシエンネ
 ▼ 179 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/10/05 23:43:25 ID:f31Alr2. [1/7] NGネーム登録 NGID登録 報告

私とサトシ君は、同時にディスクを発射した。


右手に構えたスタイラーを操作して、ディスクをフライゴンの元へ。

2つのディスクの軌跡を合わせて、2人で1つの軌跡を描く、協力キャプチャ。


 サトシ 「オレは右から行く。リーフは左を頼む!」

 リーフ 「左ね!」


興奮して攻撃を繰り出すフライゴンをキャプチャするには、スピード重視で行くしかない。

フライゴンに気付かれること前提で、私たちはディスクを素早く走らせる。


  ― カツン!


 リーフ 「あっ……!」


と、2つのディスクが ぶつかり合い、軌跡が途切れてしまった。


 サトシ 「失敗上等! もう1回だ!」

 リーフ 「うん!」


上級者向けのキャプチャ方法と言われるだけあって、やっぱり簡単には行かない。

2つのディスクを衝突させることなく、軌跡だけを交差させて、暴れるフライゴンをキャプチャする。


 フライゴン 「ふりゃぁ!」 シュッ!


 リーフ 「避けて!」

 サトシ 「っ!」
 ▼ 180 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/10/05 23:44:09 ID:f31Alr2. [2/7] NGネーム登録 NGID登録 報告

フライゴンが攻撃を繰り出すたびに、キャプチャは中断させられるけど――。


 サトシ 「動いたら左から頼む!」

 リーフ 「サトシ君は背中を追う感じで!」


だんだんコツを掴めてきた。


幸い――って言ったらダメだけど、フライゴンは翼の付け根を怪我しているせいで、空を飛ぶ動きは鈍っている。

攻撃にさえ気を付ければ、フライゴンの動きを、ある程度なら予測出来るようになった。



 サトシ 「次に飛び上がる瞬間が勝負だ!」

 リーフ 「うん! 絶対に成功させるよ!」


攻撃による中断は多いけど、もう何回も、ディスクはフライゴンを囲み続けている。

フライゴンに私たちの気持ちは、少しずつ、確実に届いているはずだ。


あとは一気に――、フライゴンが飛び立つタイミングで、一気に決める――!



 フライゴン 「ふりゃああぁぁぁっ!」 ゴォォォッ!


フライゴンが“むしのさざめき”を繰り出した。

地面を抉り、フェンスを薙ぎ倒す、その強力な攻撃を終えたタイミングで……。


 フライゴン 「ふりゃっ」 バサッ


 サトシ 「ここだ!」

 リーフ 「うん!」

 ▼ 181 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/10/05 23:44:58 ID:f31Alr2. [3/7] NGネーム登録 NGID登録 報告

予想通り、フライゴンが飛び立った。


すかさず私たちは、ディスクをフライゴンに向かわせる。

怪我した翼で、少し よろけながら羽ばたくフライゴンは、ゆっくりと上昇。



 サトシ 「フライゴン! もう大丈夫だからな!」

 リーフ 「私たちの想い、届いてっ!」



上昇するフライゴンを、私とサトシ君のディスクが包み込む。

2つの軌跡は、螺旋を描くように交ざり合い、暖かな光を放ちながら、フライゴンを包み込む。


難しいはずの協力キャプチャ。

気付けば私たちは、それを完璧に物にしていた。


フライゴンを助けたい一心で。

サトシ君も また、フライゴンを助けたい気持ちが大きかったんだと思う。


そうじゃなかったら、こんな短時間で協力キャプチャをマスターするなんて有り得ないもん。


サトシ君は体験入学の はずなのに、私に負けないくらい、キャプチャの腕が上達していた。

それはきっと、ポケモンが大好きで、ポケモンのことを第一に考えてるからだと思う。今この場のフライゴンも、あの時のチルットも。



ねぇフライゴン。


私たちの気持ち、通じたかな?


私もサトシ君も、貴方を助けたいだけなの。


だからお願い、もう暴れないで……!


 ▼ 182 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/10/05 23:45:52 ID:f31Alr2. [4/7] NGネーム登録 NGID登録 報告


 フライゴン 「ふりゃっ……」 ゴゴゴゴゴ……



 リーフ 「えっ……フライゴン?」

 サトシ 「……ダメだ。伏せろ!」



 フライゴン 「ふぎゃああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


  ― ゴゴゴゴゴオオオオオォォォォォォ!



 リーフ 「きゃっ!?」

 サトシ 「クッ……! “すなあらし”だ!」



フライゴンを中心に発生した、砂嵐。


当然キャプチャは中断。そして私たちも、慌てて地面に伏せる。

突風に混じる砂がパチパチと体に当たり、目も開けられない状況だ。


 サトシ 「クッ……! 落ち着いてくれフライゴン!」

 リーフ 「大丈夫だから! 私たち、貴方のこと助けるだけだから!」


けれど、砂嵐は収まる気配が無い。

まわりを高い倉庫に囲まれているせいで、砂嵐の威力が なかなか落ちないんだと思う。


目を開けられないし、砂嵐の轟音が響いているせいで、視覚と聴覚が奪われてしまっている。

つまり、今どんな状況なのか、全く分からないのだ。

 ▼ 183 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/10/05 23:46:32 ID:f31Alr2. [5/7] NGネーム登録 NGID登録 報告

 サトシ 「大丈夫かリーフ? そこに居るよな?」

 リーフ 「うんっ……、大丈夫。サトシ君は?」

 サトシ 「大丈夫だ。けど、これじゃフライゴンの様子が……!」

 リーフ 「あっ……でも! 少しずつ砂嵐が弱まってるよ」

 サトシ 「フライゴンの体力が限界なのか、オレたちのこと分かってくれたのか……、それとも」

 リーフ 「どこかへ逃げちゃった――か」

 サトシ 「そうじゃないことを祈るしかないな」

 リーフ 「うん……」





砂嵐は徐々に弱まっていき、砂が体を打ち付ける感覚も ほぼ無くなった。



私たちは、ゆっくり目を開ける。



起き上がり、周囲を見回す。





 サトシ 「クッ! やっぱり……!」

 リーフ 「フライゴン……」


そこに、フライゴンの姿は無かった。


 サトシ 「フライゴーン! 居たら返事してくれ! フライゴーン!」



静まり返った倉庫街に、サトシ君の声が響く。


フライゴンの攻撃で崩れた塀、抉れた地面、壁が破壊された倉庫、風に舞う大量の砂。


まるで廃墟に迷い込んだかのようにさえ思える。
 ▼ 184 リジオン@やさいパック 21/10/05 23:46:43 ID:S0iMNIwA NGネーム登録 NGID登録 m 報告
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 ▼ 185 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/10/05 23:47:26 ID:f31Alr2. [6/7] NGネーム登録 NGID登録 報告

 リーフ 「砂嵐が止むまで……、多分5分くらいかかったよね?」

 サトシ 「あぁ」

 リーフ 「もしフライゴンが、“すなあらし”を繰り出してすぐに移動してたら……」

 サトシ 「会場の方に行ってるかもしれない!」


最悪の事態を、嫌でも想像してしまう。


あのフライゴンは、我を忘れて暴走しているような状態。

そして、“むしのさざめき”や“すなあらし”の威力を見るに、そこそこレベルが高い個体だ。


 サトシ 「急がないと……!」

 リーフ 「でも、会場に行ったとは限らないよ。二手に分かれようよ!」

 サトシ 「いや、単独行動は危ない。ひとまず2人で会場の方に」

 リーフ 「ダメ。フライゴン、苦しんでるんだよ!? 少しでも早くキャプチャしてあげないと!」

 サトシ 「けどリーフを1人で行かせる訳には……!」

 リーフ 「大丈夫だよ。私もサトシ君も、同じ誇りあるレンジャースクール生でしょ!?」



そう、私もサトシ君も、ポケモンたちの平和を願う、レンジャースクールの生徒。

ポケモンのことを第一に考えて行動しなければならない。


もしサトシ君が、私のことを心配して単独行動を避けるのなら、それは間違いだ。

私もサトシ君も、立場・責任は同じなんだから――!

 ▼ 186 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/10/05 23:48:17 ID:f31Alr2. [7/7] NGネーム登録 NGID登録 報告

 サトシ 「……よし分かった! じゃあオレは会場の方に行く」

 リーフ 「私は倉庫街を探してみるね」

 サトシ 「頼んだぞ。会場にフライゴンが居なさそうだったら、すぐ戻って来るからな!」

 リーフ 「うん。私も、こっちにフライゴンが居なかったら会場に向かうね!」

 サトシ 「あぁ! じゃあ後でな!」



サトシ君は会場の方へと走って行った。


会場は人がたくさん居るから、フライゴンが向かったとしたら、今頃パニックになっているはず。

でも逆に考えると、会場は警備の人やポケモンレンジャーさん、それに強いトレーナーも居る訳だから、そこまで心配する必要は無いかもしれない。



 リーフ 「……よしっ!」



もしフライゴンが会場に行っていなかったら――。

私が探し出して、ここで足止めさせなければならない。

人が居ない、暴れても安全な この倉庫街に、フライゴンを留まらせなければならない。


不安は無い――って言ったら嘘になる。


でも、私はレンジャースクール生、ポケモンレンジャーの卵。

会場に集まるたくさんの人々の安全のために、苦しんでいるフライゴンを助けるために。


これは私に課せられた、重要なミッションだ――!


 ▼ 187 ンムー@オッカのみ 21/10/06 18:37:28 ID:i.psr0Og NGネーム登録 NGID登録 m 報告
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 ▼ 188 ブリアス@こだいのせきぞう 21/10/14 13:23:16 ID:R3vIvBWc NGネーム登録 NGID登録 m 報告
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 ▼ 189 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/10/19 00:36:16 ID:xLNEgO3E [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告



 リーフ 「はぁっ……、はぁっ……」



倉庫街を走り回って、10分くらい経ったかな。

なかなかフライゴンは見つからない。暴れているような音や気配も感じない。


こうなると、やっぱりフライゴンは会場の方へ行ってしまったのかもしれない。


けど、怪我をしているフライゴンは、私たちのキャプチャに抵抗して体力を消耗しているはず。

どこか人目の付かない場所で、息を潜めて休んでいるのかもしれない。


 リーフ (休んでるだけなら良いけど、もし――)


もし、怪我と体力の消耗で、倒れてしまっていたら――。

早く見つけて保護してあげないと、手遅れになってしまう可能性がある。

そう考えると、中途半端な捜索で、会場へ行ったサトシ君に合流する訳にはいかない。


 リーフ (こんなに広い倉庫街……、どこから探せばいいの……)



静まり返った倉庫街。

フライゴンが破壊した塀や看板、外壁が散乱していて、物悲しい雰囲気に包まれている。


それはまるで、災害や戦争が起こったかのようだ。



静かだ。



私の足音だけが、この誰も居ない空間に響き渡る。


私1人だけが、世界から取り残されたかのような――。

 ▼ 190 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/10/19 00:37:07 ID:xLNEgO3E [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告

 リーフ (……ダメだよ私。弱気になっちゃ)


さっきまで一緒だったサトシ君は、もう居ない。

頼れるサトシ君と別行動を提案したのは私なんだ。私が しっかりしなくちゃいけないんだ。



考えて、私。


フライゴンの気持ちになって。


フライゴンが今、何を思って、何をしているのか。


考えて、私。



 リーフ 「あっ……」



ふと、思いつく。


翼を怪我しているフライゴンは、上手く羽ばたくことが出来ない。さっきのキャプチャ中の様子を見ても明らかだった。


美しい翼を持った、ドラゴンタイプのフライゴン。


その幼体、ナックラーは、長らく砂の中で生活していて。

進化したビブラーバは羽が生えたものの、まだ未熟で、空を飛ぶより超音波発生に特化していて。

そうして辿り着いた、フライゴンという姿――。


 リーフ (空……)


大空への憧れ――。

いつだったか、ナックラーに関する、そんなレポートを読んだ記憶がある。

最終形態まで成長して、ついに手に入れた、大空を羽ばたく翼。



 リーフ 「空を目指してるかも!」


 ▼ 191 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/10/19 00:37:59 ID:xLNEgO3E [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告

翼を怪我して羽ばたけないフライゴン。

そんなフライゴンが、空を目指して行動するのは十分に有り得る話だ。


 リーフ (地図……!)


首掛けの参加証の裏面が、地図になっていることを思いだす。

会場がメインだけど、一般的な地図を流用しているおかげで、プエルタウン東部の地理もバッチリ載っていた。


いま居るのが、会場から外れた北側の倉庫街。

その先は、海に張り出すような形の丘になっていて、先端には小さな灯台があるようだ。


 リーフ (空を目指すなら、丘の頂上!)





私は走る。自分の直感を信じて。





倉庫街の終端まで来ると、その先には、なだからな丘が続いている。

そこは柵が設置されていて、「これより灯台管理用地・立入禁止」との看板が。


けどその柵は、私でも簡単に乗り越えられる高さだ。

いくら翼を怪我しているとはいえ、きっとフライゴンも、難なく越えられたはずだ。



 リーフ 「よいしょっ……と!」



柵を乗り越えて、私は走る。



会場から どんどん離れていくけど、迷うつもりはない。

私の直感が、フライゴンは この先に居ると言っているから。


大空への憧れが実ったフライゴンは、きっと、この丘の頂上に――。




 ▼ 192 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/10/19 00:38:51 ID:xLNEgO3E [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告





 リーフ 「はぁっ、はぁっ……、はぁっ……」



走って、走って、ようやく丘の頂上が近づいてきた。


ゴールとも言える白い灯台は、思ったより低く、小さなものだった。

丘に建っている分、高さを稼げているので、小さくても問題ないのだろう。この大きさであれば、恐らく無人だ。



 リーフ 「あっ!」



私は思わず声を上げる。

その灯台の足元に、緑色の影が佇んでいたから。



私の直感は、正しかった。



そこに居たのは、まさしく先ほどのフライゴン。

丘の頂上、灯台の足元で ぐったりと地に伏せている。

けれど目線は青い大空に向けられていて、時折り翼をピクピクと動かしては、顔をしかめていた。



 リーフ (飛びたいんだね、フライゴン……)



翼の怪我の痛みなのか、自由に羽ばたけない もどかしさなのかは分からない。

でもフライゴンは、悲しそうな顔をしていた。


ポケモンは人間と同じように、喜怒哀楽の表情を見せる。

トレーナーにゲットされたポケモンほど表情が豊かになると言われているけど、この野生のフライゴンは、どこからどう見ても、悲しんでいた。



 リーフ 「……ねぇ。フライゴン」



 ▼ 193 グラージ@オニゴーリナイト 21/10/19 10:10:40 ID:okhQ1xpo NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
続きktkr!
 ▼ 194 ゲキ@サファリボール 21/10/19 16:48:47 ID:nwxwWtBU NGネーム登録 NGID登録 m 報告
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