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【SS】アシマリ「ポケモンサーカス団エクリプス!」

 ▼ 1 1◆J44kAZeDOM 16/09/24 21:29:45 ID:iVyHi1wg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







――太陽と月が交わる時、世界に滅びが訪れると言う。






 ▼ 155 1◆J44kAZeDOM 16/09/28 20:15:54 ID:5rkoB34Y [1/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アシマリ「うーん……。なんで、なんでそこまでストイックに出来るの?」

ニャビー「サーカスの裏側を知ってるから。それと……あたしには、空中ブランコしかない。他の何も、あたしは持ってない。だから、それを、二度と手放したくない」

――あたしの唯一のアイデンティティを、奪われたくないから。


聞いていて、苦しかった。

ニャビーは、サーカスに、全てを賭けている。

自らの魂すら削って空を舞う。

そんなの面白くないよ、と思う。

理由はわからないけれど、どうしてか、そう感じてしまう。

耐え切れずに、オイラは立ち去った。
 ▼ 156 1◆J44kAZeDOM 16/09/28 20:16:48 ID:5rkoB34Y [2/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
オイラの覚悟は、甘いのだろうか。

オイラは、サーカスを舐めていたのだろうか。

ニャビーの覚悟は、これほどまでに重かったのか。

ため息を吐く。


モクロー「どうかしたの? ため息なんか吐いて」

アシマリ「ううん、なんでもないよ」

モクロー「そ」
 ▼ 157 1◆J44kAZeDOM 16/09/28 20:17:10 ID:5rkoB34Y [3/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アシマリ「それより、ソルガレオとルナアーラって、結局なんだったの? 伝説のポケモンなのはわかるんだけどさ」

モクロー「あー、太陽の力と月の力を司るポケモンなんだ。伝説によると、日食で崩れる異世界とのバランスを保ってくれるらしいけど……まあ眉唾だね。所詮神話。現実に起こるとは思えないんだ、やっぱり」

アシマリ「うん……」


頭がごちゃごちゃして、何だか、何もマトモに聞けそうになかった。


アシマリ「ごめん、今日はなんか、頭の回転が、いつもより遅くって。ちょっと休ませて」

モクロー「なんか変だよ。ストレスが溜まってるなら、いつでも話してくれて構わないよ?」

アシマリ「ありがと」


それだけ言うと、オイラは、寝床まで行って、そのまま横になった。
 ▼ 158 1◆J44kAZeDOM 16/09/28 20:18:08 ID:5rkoB34Y [4/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
眠れない。

ニャビーの顔が、頭の中をグルグルと周り、オイラの意識は冴え渡って行く。

ゴロゴロと寝返りばかり打っていると、エーフィの声が聞こえた。


エーフィ「ねえ、アシマリ、なんか変なんだって?」

アシマリ「エーフィ」

エーフィ「モクロー、心配してたよ。アシマリさ、何かあったみたいだけど……ニャビーと話してからだよね」

アシマリ「えっ?!」

エーフィ「やっぱり。カマかけた甲斐があったよ」

アシマリ「か、カマ……」

エーフィ「そ。十中八九そうだとは思ったけど、やっぱりそうだった、って感じ」

アシマリ「うん。正解だよ。ニャビーの事。ニャビーの覚悟、重すぎて、辛いんだ。かわいそうって、思っちゃう。ニャビーは、自分で選んで、ああしてるってのに」

エーフィ「あー、まあ、確かにね。ニャビー、パフォーマンスは凄いけど、尖り過ぎてて、いつか、ポッキリ折れそうって心配では確かにある」

アシマリ「……オイラ、ニャビーに、何も言えなかった。ニャビーの覚悟、強すぎて、オイラ、絶対勝てないって、オイラ、オイラ……」
 ▼ 159 1◆J44kAZeDOM 16/09/28 20:18:44 ID:5rkoB34Y [5/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
泣き声で続けるオイラをふっと遮って、エーフィは言った。


エーフィ「アシマリ、あんまり気に病み過ぎる事ないよ。そりゃ、勝ちたいって思う気持ちは大切だし、そう言う気概がないと、どんどん劣化してくだけってのはわかるし。

      でもさ、アシマリ。勝ち負けじゃないでしょ、同じサーカスの仲間なんだから。一緒によりよくしていければいい話じゃん」

アシマリ「……」

エーフィ「まあ、いろいろと思う所はあるだろうし、ゆっくり悩めばいいよ。誰だって、スランプはあるし、あたしたちの事気にしちゃってるのかもしれないし」

アシマリ「エーフィのせいじゃないよ! それは、絶対に違うから!」

エーフィ「ありがと」
 ▼ 160 1◆J44kAZeDOM 16/09/28 20:19:19 ID:5rkoB34Y [6/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
思考がぐるぐると渦を巻く。

「うずしお」が使えたら、こんな悩みも超えられるのだろうか。

残念ながら、オイラは今の所、「うずしお」を覚える気配なんてないのだけれど。

オイラの演技は、贔屓目抜きに悪くないと思う。

けれど、ニャビーに遠く及ばないのは、やっぱり覚悟の差なのだろうか。


そんな風に臥せっていた時の事だった。



「なぁ! これ、見てくれよ!」


誰かがそう叫んでいる声が聞こえた。

そして、その内容は、さらにオイラを驚かせることになる。
 ▼ 161 1◆J44kAZeDOM 16/09/28 20:19:45 ID:5rkoB34Y [7/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「新聞に、太陽と月、世界が滅ぶうんぬんって! その時が、もうすぐだって、そんな記事がっ!」

「「ええっ!!」」


みんなが叫び声をあげる。


「世界が、滅ぶだぁ?」

「どう言う事よ……」


みんなの疑念の声が上がる。

けれど、オイラとモクロー、そしてエーフィ、ブラッキー、そして、ダンチョーの脳裏には、全く違う疑念が浮かんでいたはずだ。

どうして、それが漏れ出したのか。そして、これから、どうなってしまうのか。

ポケモンサーカス団エクリプスの苦難のステージは、この瞬間に幕を上げた。
 ▼ 162 1◆J44kAZeDOM 16/09/28 20:20:58 ID:5rkoB34Y [8/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
フーディン「太陽と月が交わる時、世界が滅ぶ……」

エーフィ「ミリスにしか伝わってないはずよ、この言い伝えっ! 誰かが伝えたのかもしれないけど、でも、ミリスから外に出るポケモンなんてそういるはず……」

フーディン「いたとしても、基本的に口外はNGだろ? 俺ぐらいだぜ、頓着せずに周りに伝えようと思ったの。

       それだって、エーフィたちがミリス出身だと聞かなかったら絶対言わなかった。

       しかも、アシマリとモクローには口止めまでした。よな?」

アシマリ「うん」


オイラたちは、5匹で集まる。

他の誰にも、話せなかった。


モクロー「門外不出も緩まって来てる、と考えられますけど……」

フーディン「でも、俺たちの誰も、言ってないんだろう? となると、それこそミリスの……ヤレユータンと、ヤングースの2匹組が漏らしたんじゃないか?」

モクロー「その可能性が一番高い……。でも、だとすると、狙いはなんだ?」


そう、モクローが呟いた時だった。

ニャビーがオイラたちの集まっているスペースに乱入して来たのは。
 ▼ 163 1◆J44kAZeDOM 16/09/28 20:21:25 ID:5rkoB34Y [9/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニャビー「団長、外が騒がしいから、対処して来て」

フーディン「ん、外?」

ニャビー「エクリプス……。なんでそんな名前にしたのよ」

フーディン「それはカクカクシキジカで……っと、とりあえず、行って来るわ。みんな、話し合いを続けといてくれ」

ニャビー「何の話?」

フーディン「あっと……とりあえず、みんな、任せた!」


そう言うと、ダンチョーは逃げるように去って行った。


モクロー「外がうるさいって、何の話?」

ニャビー「ったく、なんでよりにもよって、日食なんて名前を冠したのよ、このサーカス団は!」

エーフィ「ニャビー、答えてよ!」

ニャビー「エクリプス! 日食絡みでなんかしでかそうとしてるんじゃないのかってうるさいの!」

アシマリ「え?」

ニャビー「うちのサーカス団が、世界を滅ぼそうとしてるんじゃないかって、バカな奴らが騒いでんのよ!」

「「ええ〜っ!!」」
 ▼ 164 1◆J44kAZeDOM 16/09/28 20:22:39 ID:5rkoB34Y [10/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アシマリ「なんで?」

ニャビー「エクリプスって名前のせいよ。……世間ってのは、1回出来た風潮を、しつこく引きずる物。もう、うちはダメよ。潰される、社会に」

アシマリ「そんな……」

ニャビー「あんたらが何の話してんのか知らないけど、早いとこ無実証明しないとダメ。何よりもまず、それが大事。事実無根な噂でも、長引くとそれが事実になる」

モクロー「……うん。僕たちは、ちょうど、その話をしてた」

ニャビー「え?」

モクロー「エーフィも、ブラッキーも、ミリスの出身。あの文句は、知ってた。あの街から逃げて来たんだ、2匹は」

エーフィ「うん。……まさか、こんな事になるなんて……」

ブラッキー「運命、逆らえない」

モクロー「どうしてミリスの奴らが2匹を狙うのか、調べ――」

ニャビー「どう言う事よっ、あんたらのせいなの?!」
 ▼ 165 1◆J44kAZeDOM 16/09/28 20:23:53 ID:5rkoB34Y [11/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
叫ぶニャビー。

呆気に取られたようなみんなを後目に、オイラは叫んだ。

何も考えないままに、口から言葉が溢れ出す。


アシマリ「ニャビー! 違う、エーフィたちのせいじゃないっ!」

ニャビー「どう違うってのよ! ミリスのヒトにしかわからない文句で、うちを潰そうとしてるんなら、狙いはエーフィたち以外に考えられないでしょ!

      あんたらが、あんたらが……また、あたしから、奪うんだ……空中ブランコを、奪うんだ……あたしの、あたしのサーカ――」


その瞬間、オイラの中で、何かが弾けた。

そのまま、口から「みずてっぽう」を放つ。


ニャビー「な、何すんの?!」

アシマリ「……ニャビー、それは違うよ。サーカスは、君だけの物じゃない。オイラたち、みんなの物なんだっ!

      エーフィたちのせいにするなっ! エーフィたちは、何も悪くないっ!」
 ▼ 166 1◆J44kAZeDOM 16/09/28 20:24:23 ID:5rkoB34Y [12/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニャビー「あたし、別に悪いとは言ってな――」

アシマリ「言ってる! ニャビー、オイラ、君の演技に憧れてここを選んだんだ。だけど……がっかりだよ。もう、ニャビーなんて、大っ嫌いだっ!」

ニャビー「……わかったわよ。勝手にすれば。あたしは、別のサーカス団を捜すから」

アシマリ「見付かるの? 2回もサーカス団を追いやられたニャビーを、雇ってくれるサーカス団なんて、あるの?」

ニャビー「……」

アシマリ「失敗して首になって、唯一雇ってくれたエクリプスはあんな騒動で潰れ、ニャビー、君は、呪われてるとか言われるんじゃないの? ニャビーを雇ってくれるとこなんて、もう、どこにもな――」

ニャビー「ふざけんなっ! あんたに何がわかるっ! あたしには、ブランコしかないのっ! あたしはっ! あたしは……」


それだけ言うと、ニャビーは走り去る。

オイラは、その背中を見届ける事なく、エーフィたちの方を向き直って、言った。


アシマリ「オイラ、疲れた。……もう、寝るね、お休み」
 ▼ 167 1◆J44kAZeDOM 16/09/28 20:25:07 ID:5rkoB34Y [13/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
翌朝、モクローがその後の展開を説明してくれた。

曰く、ダンチョーはリフレクターとひかりのかべでテントを護っているのだと言う。

一部暴徒化したポケモンたちが、テントを襲ってきているらしいのだ。

そのガードだってあまり長時間は持ちそうにないらしい。

ニャビーは、結局部屋にいたらしい。

泣いていて、声すらかけられなかったと言う。


モクロー「今後どうするかは、団長が決めてるらしい。たぶん、今朝のごはんの後で発表だと思う」

アシマリ「わかった、ありがとう、モクロー」
 ▼ 168 1◆J44kAZeDOM 16/09/28 20:25:33 ID:5rkoB34Y [14/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「「ごちそうさまでした」」


ごはんの味は相変わらずだけど、おいしいとは感じられなかった。

ただ、淡泊に、舌の上を滑り落ちて行く。


フーディン「……みんなに、話があるんだ」


反応は、なかった。

みんな、各々に事情を察し、真剣にダンチョーの声に耳を傾けている。


フーディン「とりあえず、一時的に、エクリプスは解散する事にした。もちろん、ただ解散する訳じゃない。俺たちは、絶対に事実を見付け出し、俺たちの無実を証明する。

       だから、今は、一度エクリプスと言う名前を外して、自由に動きたいんだ。

       みんなは、どうしてくれようと構わない。辞めようが、俺は止めないし、残るのなら、それでもいい。一旦帰って戻って来るのでもいい。

       とにかく、俺は、エクリプスの潔白を社会に示す。そのために、エーフィ、ブラッキー。それからモクローたち。お前たち4匹にだけは残って欲しい」


オイラたちは、揃って頷く。
 ▼ 169 1◆J44kAZeDOM 16/09/28 20:26:00 ID:5rkoB34Y [15/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
と、周りから質問が飛んだ。


「なんでその4匹なんだよ」

フーディン「彼らは、独自に別の情報を持っているらしいからだ。その情報が、絶対に役立つ。だから、引き留めた」

「わかった」

フーディン「みんな、エクリプスは絶対に復活する。だから、サーカス団に残ると言うのなら、その時まで、耐えてくれ。辞めるヒトは……エクリプスの今後の活躍を、その目に焼き付けてくれ」

「やめるはずねぇだろ? 俺たちも協力するぜ。な、みんな?」

「おうよ!」

「当たり前でしょ!」


みんなが、口ぐちにそう言う。

オイラは、少し感動して、モクローにささやいた。


アシマリ「みんな、優しいね……」

モクロー「うん。みんなの分まで、絶対に謎を解いて見せないと」

アシマリ「だね」
 ▼ 170 1◆J44kAZeDOM 16/09/28 20:27:49 ID:5rkoB34Y [16/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
フーディンが、今までの事情を、全て説明した。


モクロー「言い伝えでしかないよ。ないけど……世間が信ぴょう性を感じたんだったら、早いとこそれを否定しないと」

「本当にただの言い伝えなのか? ダークマター事件とか、言い伝えが重要になってたんじゃねぇの? 古代の文字が、調査団の2匹に真実を伝えたとかうんぬん」

モクロー「それを言われると弱いけど……」

フーディン「……確かに、そろそろ本格的に、それが真実である可能性も考慮に入れないとマズイと思う。違えばいい。けれど、そうだった場合、エクリプス復活どころの話じゃない」

アシマリ「じゃあ、一旦信じてみようよ。その上で、考えよう」

エーフィ「うん。あたしたちも、言い伝え自体は、事実だと思う」


エーフィが締めくくり、モクローも、しぶしぶと言う体で頷いた。


モクロー「わかった。嘘だったら、嘘だった時に考えればいい、か」
 ▼ 171 1◆J44kAZeDOM 16/09/28 20:28:12 ID:5rkoB34Y [17/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
フーディン「よし。方針は決まった。さて、と。モクロー、アシマリ。お前たちを、テレポートで、街外れに飛ばす。の前に、変装しないとダメか……顔が割れてる」

エーフィ「変装なら、ブラッキーに任せて! そこらへんの物で、見事に別物に生まれ変わらせるから」


ブラッキーも、こくりと頷いた。

え、と止める間もなく、エーフィのサイコパワーが、オイラたちを締め付ける。


エーフィ「じっとしててね」

アシマリ「じっとするから……離して……」

エーフィ「ダーメ。少しでも動くと、ズレて、違和感が出て来るの」

モクロー「痛いよ……」

エーフィ「甘えないの、♂でしょ?」


そんな事を言ってる間に、モクローの姿は、まるきり別物になっていた。

と、オイラにもブラッキーが変装を掛ける。


ブラッキー「出来た」

エーフィ「お疲れ様」
 ▼ 172 1◆J44kAZeDOM 16/09/28 20:29:43 ID:5rkoB34Y [18/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
オイラたちは顔を見合わせると、その姿に思わず噴き出した。


アシマリ「うわっ、君誰?」

モクロー「アシマリこそ、全然わかんないよ、凄い!」


ここでも自慢気に笑うのはエーフィ。ブラッキーは、ただそこに佇むのみだった。

ハハハ、と笑った後で、フーディンが言う。


フーディン「よし。じゃあ、飛ばすぞ。1、2、3!」
 ▼ 173 1◆J44kAZeDOM 16/09/28 20:30:07 ID:5rkoB34Y [19/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グラリと大地が歪み、思わず目を閉ざす。

そして、気が付いた時には、茂みの中だった。


アシマリ「凄いっ!」

フーディン「はあっ……疲れたぜ……。調べ終わったら、俺んとこに戻って来い。テントの中に戻すから」

モクロー「はい」
 ▼ 174 1◆J44kAZeDOM 16/09/28 20:30:28 ID:5rkoB34Y [20/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アシマリ「で、調べるったって、どこ行くの?」

モクロー「まずは、ソルガレオとルナアーラだ。太陽と月の化身。異世界とのバランスを保ってくれるはずのその2匹が、一体今、何をしてるのか」

アシマリ「で、どうやって調べるの?」

モクロー「……わからないんだ。ヤレユータンたちに聞ければ一番楽なんだけど、まず見付かるのか……」

アシマリ「居場所がわからないのか」

モクロー「うん。図書館でばっか調べても、事実はわかっても今の現象についてはわからない。……世界が滅ぶ、か。出来る事は、2匹を捜す事だけみたいだ」

アシマリ「……わかった。捜そう」
 ▼ 175 1◆J44kAZeDOM 16/09/28 20:30:51 ID:5rkoB34Y [21/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
結果的に、オイラたちに、捜す必要はなかった。

向こうから、オイラたちを捜してくれていたらしいのだ。


ヤングース「あいつですか?」

ヤレユータン「ああ。太陽の光の加護を受けておる」

アシマリ「あっ、いたっ! モクロー、あの2匹!」

モクロー「えっ!」


偶然の巡り合わせ、ではなさそうだ。

明らかに、オイラたちを指さして、捜していた、と言わんばかりの発言をしたのだから。

オイラたちは、2匹に駆け寄る。

「お前」とオイラを示し、ヤングースは言う。「太陽の加護を受けているな。こっちに来い」


ヤレユータン「光、の加護じゃ」

ヤングース「細かい事は気にしないでください」
 ▼ 176 1◆J44kAZeDOM 16/09/28 20:31:41 ID:5rkoB34Y [22/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アシマリ「お、オイラ?」

ヤレユータン「ああ。質問に答えてくれないか?」

アシマリ「いいけど……その前に、オイラたちの質問に答えてよ」

ヤングース「ああん? お前、誰に口聞いてるんだよ」

アシマリ「そこのヤレユータンにだよ。どうしても、聞きたい事があるんだ。なんで、なんで太陽と月の伝説をむぐっ!」

「すいません、こいつ、ちょっと慌ててて。でも、質問があるのはホントです」と、モクローが普段と全然違う口調で話を引き取った。

ヤングース「……お前ら、どうして太陽と月の伝説を知ってる」

モクロー「……答えは、あなた方が、僕らの質問に答えてからです。ソルガレオとルナアーラは、今、何をしているのですか?」

ヤングース「お前、絶対エーフィとブラッキーを知ってるだろ!」

モクロー「ソルガレオとルナアーラは、どうしてるんだ!」

ヤレユータン「……眠ってらっしゃるよ。エネルギー不足じゃ」

モクロー「なるほど……」
 ▼ 177 1◆J44kAZeDOM 16/09/28 20:32:08 ID:5rkoB34Y [23/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヤングース「ど、どうして教えてしまわれるのですか?」

ヤレユータン「今さら構わんじゃろ。既に、世間は大騒ぎじゃ。主の企みのせいでの」

ヤングース「なっ……」

ヤレユータン「気付いとらんとでも思っちょったのか? 主が、あのサーカス団からエーフィたちをあぶり出そうとしていた事を。解散になれば、行き場を失い、戻って来ると。

        浅はかな考えじゃ」

ヤングース「でも、あいつらは間違いなくあそこに!」

ヤレユータン「ああ、おるよ。じゃがな、主は浅はかじゃ。世間に広めるべきでも、まして無関係なポケモンを巻き込むべきでもなかった」

ヤングース「でも……」

アシマリ「……何の話してるのかわからないけど、オイラに聞きたい事があるんだよね」

ヤングース「あ、ああ。エーフィとブラッキーを知らないか?」
 ▼ 178 1◆J44kAZeDOM 16/09/28 20:32:35 ID:5rkoB34Y [24/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アシマリ「……どうする?」


オイラは、モクローに問い掛ける。

自分ではどうすべきか、判断が付かない。


モクロー「あなたたち、もう既に知ってるみたいですけど」

ヤレユータン「察しは付いておる。が、確証はないのじゃ。主」


ヤレユータンはオイラを指さして、続けた。


ヤレユータン「エーフィの光を浴びた事があるじゃろ?」

アシマリ「……どうして」

ヤレユータン「あのエーフィは、ソルガレオの力の一端を持っておるのじゃ。色違いである事が、その証拠じゃ。あやつの光は、その加護を、他者に分け与えられる。

        そして、主はその加護を受けておる」

モクロー「ブラッキーも捜してるみたいですけど」

ヤレユータン「ルナアーラの力の一端を持っておるからの」

モクロー「なるほど、そういう事か……」

ヤングース「知ってるんだろやっぱり! 俺らを案内しろっ!」
 ▼ 179 1◆J44kAZeDOM 16/09/28 20:33:12 ID:5rkoB34Y [25/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
はやるヤングースに、モクローは逆に落ち着きを取り戻し、問い掛ける。


モクロー「エーフィたちをどうするか、それだけ教えてください」

ヤングース「知って――」

ヤレユータン「黙れ、ヤングース。主は少し、性急が過ぎる。急いては事を仕損じるのじゃぞ」

ヤングース「うぐぐ……」
 ▼ 180 1◆J44kAZeDOM 16/09/28 20:34:14 ID:5rkoB34Y [26/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヤレユータン「わかった。主らは、事情を求めておるのじゃな。こちらとしても、無闇に巻き込んだ責任がある。教えよ――

        ん? 待つのじゃ。気配が……」

アシマリ「気配?」


そう尋ねるオイラに、ヤレユータンは、わなわなと震えながら、呟いた。


ヤレユータン「世界に、滅びが訪れようとしておる……日食に向け、敵の前衛が来襲してくるのじゃ……」

ヤングース「なっ!」

ヤレユータン「……あそこのひずみが見えるか?」

アシマリ「ひずみ? あっ、前見た奴っ!」

モクロー「えっ」

ヤングース「つ、ついに来てしまったのか……」

ヤレユータン「慌てるな、じゃが……戦わねばなるまい」
 ▼ 181 1◆J44kAZeDOM 16/09/28 20:34:36 ID:5rkoB34Y [27/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ひずみはどんどん拡大し、ついに、ぽっかりと穴が開いた。

そこから、赤い体躯の、鋭く伸びた口を持つ、4本足の謎の生き物が舞い降りる。


アシマリ「な、何あれ……」

ヤレユータン「ウルトラビーストじゃ……。ついに、来おった……」

モクロー「ウルトラビースト」

ヤングース「ポケモンではない生き物だ! 異世界からの侵略者! あいつらは、俺らを滅ぼすんだ!」

ヤレユータン「主ら! とりあえず、我が指示に従ってもらうぞ! 『さいはい』!!」

アシマリ「えっ、うわ、なんか体が勝手にっ!」


体の自由が奪われ、脳が、勝手に指示を出す。

ヤレユータンの声が、直接脳内に響いて来るようだった。
 ▼ 182 1◆J44kAZeDOM 16/09/28 20:34:58 ID:5rkoB34Y [28/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
とりあえず、オイラは「みずてっぽう」で攪乱する。

そこに、モクローが「このは」で切り込む。

その2つが目くらましとして機能した所に、ヤングースが「かみくだく」を決めた。

けれど。


ヤングース「ぐああっ!」


ウルトラビーストが腕を1振り、ヤングースはあっさりと地面に叩き付けられた。


ヤレユータン「むう、対抗するには少々力が及ばんか……」

アシマリ「どうするの?!」
 ▼ 183 1◆J44kAZeDOM 16/09/28 20:35:51 ID:5rkoB34Y [29/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヤレユータン「……仕方あるまい、もとより我ら通常のポケモンでは敵うはずもない敵じゃ。追い払えれば御の字じゃわい」

モクロー「答えてよ質問にっ!」

ヤレユータン「……わしもエスパーの端くれ、この程度であれば……トリックルーム!」


その瞬間、摩訶不思議な空間が形成される。

歪んだ時空の中、ウルトラビーストの行動は、著しく遅くなっていた。


ヤレユータン「あやつは素早さが高い。であるなら、こうしてしまえば、狙いも定まりやすいじゃろうて。そして……」


ヤレユータンは立ち上がり、行動を起こせずにいるウルトラビーストを、抱き抱えた。

そして。


ヤレユータン「テレポートっ! 時空の狭間へと消えるのじゃっ!」


そう叫び、ヤレユータンの姿が、消えた。

ウルトラビーストとともに。

歪んだ時空も、ヤレユータンが消えた事で再び元に戻る。

ひずみも、消えていた。
 ▼ 184 1◆J44kAZeDOM 16/09/28 20:36:24 ID:5rkoB34Y [30/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
オイラの声は、震えた。


アシマリ「き、消えたよね……。大丈夫だよね? ヤレユータンは、無事に、戻って来るよね? 時空の狭間とか言ってたけど……大丈夫だよね?」

モクロー「た、たぶんそうだよ」


そう言うモクローの声も震えていた。

いろんなことが起こり過ぎて、脳がまだ、追い付かない。


アシマリ「どう言う事なのモクロー……」

モクロー「わかんないけど……急がないと、本当に、世界が終わるって事だけはハッキリした……」

アシマリ「ってヤングースっ!」

モクロー「団長にこの事を伝えないと!」


オイラたちは、同時に別の事を思い出す。


アシマリ「モクロー、ダンチョーに伝えて来て! オイラはヤングースの面倒見るからっ!」

モクロー「わかった!」
 ▼ 185 1◆J44kAZeDOM 16/09/28 20:37:18 ID:5rkoB34Y [31/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
それからのてんやわんやは、ほとんど覚えていない。

気が付いたら、オイラとモクローは、テントの中で、変装のメイク跡を落としていた。


エーフィ「……ありがとう、そんな事が……」


オイラたちが情報を伝えると、エーフィは茫然とそう呟く。


エーフィ「あたしがソルガレオの、ブラッキーがルナアーラの加護を……」

モクロー「少なくとも、ヤレユータンはそう言ってました」


ヤングースは、眠っている。

とりあえず、よくなるまではここにいる事になったらしい。

今もまだ、意識は戻らない。


エーフィ「……世間では、色違いが迫害されたり、そう言った事もある中で、ミリスは優しいなって思ったら、そういう事か……」

アシマリ「ううん、きっと、そうじゃない。それは、エーフィたちがいいポケモンだったからだよ」

エーフィ「ふふ、ありがとう」
 ▼ 186 1◆J44kAZeDOM 16/09/28 20:38:10 ID:5rkoB34Y [32/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アシマリ「ところで、ニャビーは?」

エーフィ「ああ、ニャビーはね……」

――

アシマリ「ニャビー、なんでまだ、練習を続けてるの」


ニャビーは答えない。

オイラがそこにいる事にすら、気付かないようだった。


アシマリ「世界が、終わるかもしれないんだよ? それなのに、どうして、ニャビーは練習出来るの」


無駄とは知りながら、問い掛ける。

ニャビーとは即ち、空中ブランコ乗りだ。彼女には、それしかなくて、オイラなんかが入り込む隙はもちろん、世界の安全、という大きな問題すら入り込めないのは、わかっている。

けれど、それでも尋ねた。

どうしても、そうせずにはいられなかった。
 ▼ 187 1◆J44kAZeDOM 16/09/28 20:38:52 ID:5rkoB34Y [33/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アシマリ「怖くないの――」

ニャビー「怖いよ! 怖いに決まってるでしょっ?!」


不意に、ニャビーは叫んだ。


ニャビー「怖いよ。もう、サーカスが出来なくなるかもしれない!

      あたしは、怖いよ! 怖いから、飛ぶの! 

      飛ばなきゃ、あたしは潰されるから! 

      飛んでなきゃ、あたしは、死んじゃうから!

      あたしは、死にたくないの! 死にたくないよ……」


ブランコにぶら下がりながら、ニャビーは、泣いた。

ポツリ、と水滴が落ち、ステージで跳ねる。
 ▼ 188 1◆J44kAZeDOM 16/09/28 20:39:36 ID:5rkoB34Y [34/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アシマリ「……ニャビー、君は、空中ブランコだけじゃない。ねえ、ニャビー。一緒にいて、楽しかったよ?

      一緒にリンゴを探しに行ったのは、どうだった? オイラは、楽しかった。ニャビーと話せて、楽しかった」

ニャビー「……しばらく、1匹にさせて」

アシマリ「わかった。ニャビー、オイラは、待ってるから。

      だから、待ってて。オイラたち、エクリプスを、絶対に立て直すから。

      だから……」

ニャビー「アシマリ」

アシマリ「うん?」

ニャビー「……ありがと」


オイラは、ニコリと笑った。


アシマリ「どういたしまして」
 ▼ 189 1◆J44kAZeDOM 16/09/28 20:39:59 ID:5rkoB34Y [35/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







4章 異変 完






 ▼ 190 レザード@シルバースプレー 16/09/28 22:30:32 ID:zSZBeUqY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ついにビースト登場か、ヤレユータン無事でいてくれ…
 ▼ 191 ーダル@ピッピにんぎょう 16/09/28 22:57:51 ID:tB3UlmhY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 192 シツブテ@まるいおまもり 16/09/28 23:16:28 ID:Zujd4JY2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
他作と世界観共有してたりするのかな?
 ▼ 193 ンムー@ハートのウロコ 16/09/29 07:17:18 ID:f/YTf4yE NGネーム登録 NGID登録 報告
>>192
ポケダン時闇空と同じ世界だと思う
違う大陸みたいだけど
 ▼ 194 1◆J44kAZeDOM 16/09/29 19:43:35 ID:qarz5JhY [1/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







5章 名探偵モクロー






 ▼ 195 1◆J44kAZeDOM 16/09/29 19:44:04 ID:qarz5JhY [2/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アシマリ「ただいま、モクロ……」


オイラは声を掛けかけて、やめた。

モクローが、首をぐるぐると回していたのだ。

モクローは、考え事をする時に、首をゼンリョクで回すクセがある。

何を考えているのか、オイラには想像も付かなかったけれど、それでもオイラは、祈らずにはいられなかった。

お願いモクロー、真実を見付け出して。世界を救うための真実を。


エーフィ「ごはん出来た……モクロー、何して」

アシマリ「しーっ! モクロー、考え事してるんだから!」

エーフィ「あ、うんわかった。でもごはんが……」


そう言った瞬間、モクローの首が止まった。
 ▼ 196 1◆J44kAZeDOM 16/09/29 19:45:03 ID:qarz5JhY [3/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エーフィが申し訳なさそうに問い掛ける。


エーフィ「あっ、邪魔しちゃった? 考え事の」

モクロー「え? あ、いや違うよ」

アシマリ「じゃあ、わかったの?!」

モクロー「ごめん、そういう訳でもない」

アシマリ「そっか……」

モクロー「ごめんね」

アシマリ「いいよいいよ。オイラだって何も出来てない訳だし」

モクロー「……」

エーフィ「まあ、そういう事なら、腹が減っては戦は出来ぬ、食べよう、晩ごはん」

アシマリ「だね、モクロー。モクロー?」

モクロー「ん? ああ、ごめん、今行くよ」


モクローは、未だにぼんやりしていて、現実と思考の狭間を彷徨っているようだった。
 ▼ 197 1◆J44kAZeDOM 16/09/29 19:45:42 ID:qarz5JhY [4/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「「ごちそうさまでした」」


食事を終え、オイラたちは、ヤングースが眠っているスペースを見る。

彼は、未だに目を覚ましていない。


アシマリ「大丈夫かな……」

モクロー「うん。みんなの手当てを信じよう」

アシマリ「だね」
 ▼ 198 1◆J44kAZeDOM 16/09/29 19:46:51 ID:qarz5JhY [5/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
その後、ダンチョー、エーフィ姉弟、オイラ、モクローの5匹で集まる。


フーディン「アシマリ、モクロー。危険な目に遭わせてすまなかった」

アシマリ「いいんです、オイラたちは無事だったから」

モクロー「そんな事より、目の前の問題です」

フーディン「それもそうだ……」
 ▼ 199 1◆J44kAZeDOM 16/09/29 19:47:13 ID:qarz5JhY [6/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
フーディン「……エーフィがソルガレオの、ブラッキーがルナアーラの力の一端を持っている。それは、色違いである事実が示している」

エーフィ「ソルガレオ、ルナアーラの力が今、弱まっている」

ブラッキー「僕たち、狙われてる」

アシマリ「日食の時に起こるひずみ」

モクロー「襲い来るウルトラビースト」


わかった事実を次々と挙げて行くのみ。

それで何かが進歩するとは思えなかった。

けれど、だからと言って、何をすべきなのか。

エーフィとブラッキーは、何をすれば、世界を救えるのか。

全くわからなかいのだ。


モクロー「でも、なんで、このサーカス団はエクリプスなんて名前を冠してるんだろう……」


ポツリと呟かれた疑問に、応える者はいなかった。
 ▼ 200 1◆J44kAZeDOM 16/09/29 19:48:48 ID:qarz5JhY [7/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
疲れた体を癒すべく、オイラたちは、議論を早い時間に切り上げて、眠りに就く。

そう、確かに、眠りに就いたのだ。

横には確かにモクローがいて、すぐそばには確かに、エーフィとブラッキーが眠っていたはずなのだ。

目が覚めた時、だから、オイラの衝撃は、とんでもなく大きかった。


アシマリ「うーん……おはよ、モクロー……。まだ寝てるの? 起きなよ……、モクロー。モクロー?」


隣には、ただ、空間があるのみだ。

モクローの姿は、影も、形もなかった。


アシマリ「ってぇぇぇぇえええええ?!」
 ▼ 201 1◆J44kAZeDOM 16/09/29 19:49:11 ID:qarz5JhY [8/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「うるさいよ……」と寝ぼけた、けれど怒った声が聞こえる。

アシマリ「ご、ごめん、だけど、モクローがいないんだっ!」


そう言えば、いつもは鼻孔をくすぐるあの匂いがしない。

決まった時間を超えると、えげつない程の大声が飛び交うはずなのに、それもない。


アシマリ「エーフィ、ブラッキーっ!」
 ▼ 202 1◆J44kAZeDOM 16/09/29 19:49:46 ID:qarz5JhY [9/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
いなくなったのは、3匹だけだった。

けれど、今一番いなくなられては困る3匹。

モクロー、エーフィ、ブラッキー。


フーディン「何が……何があったんだ……」

アシマリ「……とりあえず、オイラ、朝ごはん作るね」

フーディン「あ、ああ。頼む」
 ▼ 203 1◆J44kAZeDOM 16/09/29 19:50:08 ID:qarz5JhY [10/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「「ごちそうさまでした」」


今までおいしく食べられていたオイラの料理が、どことなく味気ない。

気持ちの問題ばかりじゃないだろうけれど、それでも、ショックも大きかった。


アシマリ「ブラッキー……どこ行っちゃったの……」


何気ない1コマに、3匹の面影を見てしまう。

そして、悲しみが襲うのだ。
 ▼ 204 1◆J44kAZeDOM 16/09/29 19:51:48 ID:qarz5JhY [11/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
思い返せば、昨日、首を止めた後のモクローは、どことなくおかしかった。

少しずつ冷静さを取り戻して行って、ごはんを食べ終わった頃には完全に戻ってたけれど、それでもどこか、変だった。

もしかして、あの時、何か気付いていたんじゃないか。

モクローは、あの時既に、気が付いていたんじゃないか。

フーディンに、そんな思い付きを伝えた所、フーディンは思索に潜って行った。


フーディン「少し考えてみる。目的地は、ミリスだと思うんだが……世界を救うには、エーフィとブラッキーを、か。どうして、モクローは、何も言わずに消えたんだ?」


オイラは何も言えずに立ち去った。
 ▼ 205 1◆J44kAZeDOM 16/09/29 19:53:05 ID:qarz5JhY [12/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バルーンを膨らませる。

それを跳ね上げて、落ちて来たそれを、また跳ね上げて。

手持無沙汰な気持ちを、それにぶつけるように、イライラと跳ね上げた。

オイラは、どうすればいいの。

言葉が溢れ出して、だけど、何も外には漏れ出しては来ない。

苦しかった。

モクロー、帰って来てよ。
 ▼ 206 1◆J44kAZeDOM 16/09/29 19:53:30 ID:qarz5JhY [13/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
フーディン「……とにかく、ミリスに行くのが最安定だ」


ダンチョーがそうオイラに言う。

わかってはいた。

エーフィたちの故郷。全てを終わらせるのは、そこ以外あり得ない。

ソルガレオとルナアーラは、そこに祀られているのだ。


フーディン「小回りが利くポケモンが行った方がいい。俺たちは後から追い掛けるが、まずはアシマリ、1匹でミリスまで向かってくれないか?」

アシマリ「……うん。地図はある?」

フーディン「ああ。これだ」

アシマリ「ありがとう」
 ▼ 207 1◆J44kAZeDOM 16/09/29 19:53:54 ID:qarz5JhY [14/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミリス。天文台の街イスカーからは、ダンジョンを1つ抜けるだけ……つまり、1日歩けば到着する。それほど離れた街ではなく、だからこそヤングースたちがここに来たとも言える。

だが、テレポートでミリスに直接飛ばすのは、さすがに厳しいらしい。

フーディンは、すまなさそうな顔で、言った。


フーディン「テレポートで、テントの外に飛ばす。準備が出来たら、声を掛けてくれ」

アシマリ「うん!」


準備、と言っても外に出られない現在、トレジャーバックを取る以外に何が出来る訳でもない。

それでもダンチョーは、その間に、みんなに事情を説明していた。

しかし、その場にニャビーはいない。

昨日からずっと、その姿を見ていなかった。
 ▼ 208 1◆J44kAZeDOM 16/09/29 19:54:54 ID:qarz5JhY [15/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アシマリ「準備、出来た」

フーディン「そうか。俺たちは、荷物ごと運ばないと。放置してはいけないからな、テントを。ただの迷惑だから」

アシマリ「うん。……行こう」

「待って」


不意に、背後から声が聞こえた。

振り返るまでもなく、オイラには、その声が誰の物かわかった。


アシマリ「ニャビー、どうしたの」

ニャビー「あたしも連れてって、アシマリ、団長。あたしだって、小回りが利くポケモンだよ」
 ▼ 209 1◆J44kAZeDOM 16/09/29 19:55:36 ID:qarz5JhY [16/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ビックリした。

ニャビーは、事情を知っていた。

どこにもいなかった。聞いてなんて、いなかったはずだ。

けれど、ニャビーは確かに、その情報を知っていた。


ニャビー「あたしだって、サーカス団エクリプスの一員なんだから、話はちゃんと聞いてる。ねえ、団長、あたしも、何かしたい。お願い、あたし、自分で戦うから。

      空中ブランコは、誰にも奪わせないから」


フーディンは、ニャビーを見据えて、頷いた。


フーディン「わかった。2匹とも、地図は持ったか? 忘れ物はないか?」

アシマリ「大丈夫!」

ニャビー「大丈夫です。団長、急いで」

フーディン「わかった。しっかりしろよっ!」
 ▼ 210 1◆J44kAZeDOM 16/09/29 19:56:06 ID:qarz5JhY [17/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
気が付くと、茂みの中、オイラとニャビーだけで佇んでいた。


アシマリ「オイラもニャビーも、エクリプスの一員だって事は街中に知られてる。隠れながら行こう」

ニャビー「わかってる」


物陰を隠れながら、こっそり移動する。

誰にも見付からないように、けれど、なるべく急いで。

街外れにやって来た時、オイラたちは、ほっとため息を吐いた。


アシマリ「つ、疲れたぁ」

ニャビー「休んでるヒマはないよ、行こう」

アシマリ「だね」
 ▼ 211 1◆J44kAZeDOM 16/09/29 19:56:31 ID:qarz5JhY [18/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
街から続く、長い道のり。

オイラたちは、歩きながら、話をする。


アシマリ「ニャビー、来てくれて、ありがとう」

ニャビー「お礼を言われる筋合いなんかない。あたしは、あたしでいたいだけ」

アシマリ「それでも、オイラ、嬉しいんだ。ニャビーが一緒に来てくれて。

      ニャビー、ごめんね。オイラ、怒り過ぎた。ニャビーが凄過ぎて、オイラ、悔しくて……怖かった、ニャビーの覚悟が」

ニャビー「別に気にしてない。周りのやっかみなんて、別に特別な事じゃないし。それよりも、謝られた方がビックリよ」

アシマリ「だって、オイラ、本当は……ニャビーの事が好きだから」
 ▼ 212 1◆J44kAZeDOM 16/09/29 19:57:50 ID:qarz5JhY [19/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニャビーの空中ブランコに惹かれたオイラ。

だけど、ニャビーを構成するほとんどの要素が空中ブランコなのだから、オイラは、ニャビーの事が好きなんだ。

ううん、違う。

1匹のポケモンとしての、ニャビーが好きだ。

それは、もう、間違いなく。


アシマリ「モクローがいなくなって、やっと気付けたんだ。いなくならないで欲しい。いつまでも、一緒にいたい。そう思えたんだ」

ニャビー「……告白なんか、してる場合じゃないでしょ」

アシマリ「そうだよね、ごめん」

ニャビー「……」
 ▼ 213 1◆J44kAZeDOM 16/09/29 19:58:13 ID:qarz5JhY [20/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
それでも、オイラたちは歩く。

モクローと、エーフィとブラッキー。

3匹が、ミリスの街で待ってるから。

オイラは、モクローに、話を聞く権利が、いや、義務があるはずだ。

オイラたちは、いつでも一緒だった。

オイラは、迷惑をかけっ放しで、いっつもモクローに甘えて来た。

だから、オイラは、聞くべきだ。

モクローが辛いなら、その話を聞くべきなんだ。
 ▼ 214 1◆J44kAZeDOM 16/09/29 19:59:03 ID:qarz5JhY [21/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニャビー「食料の調達しないと。ダンジョンがあるんでしょ? ミリスまでの道中に」

アシマリ「うん。もうすぐだよ」

ニャビー「そこで、リンゴを探そう。大丈夫、あたし、高いとこだけは得意だから」

アシマリ「わかった。採るとこは任せるね」

ニャビー「あれ入り口じゃない?」

アシマリ「うん、あれが入口っぽい。急ごう!」


オイラたちは駆け出した。
 ▼ 215 ンバドロ@きいろのバンダナ 16/09/29 19:59:15 ID:pCDumZP6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 216 1◆J44kAZeDOM 16/09/29 19:59:44 ID:qarz5JhY [22/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
辺りを見回しながら、リンゴの生っている木がないか探す。

探しながら、階段を見付けたら即座に降りて行く。


アシマリ「あっ、あった!」

ニャビー「採って来るね」

アシマリ「うん!」


リンゴが零れ落ち、地面に音を立てて転がった。

オイラはそれを素早く集め、かばんに放り込んだ。


ニャビー「ダンジョンを抜けてからにするべきね、食べるのは。行こう」
 ▼ 217 1◆J44kAZeDOM 16/09/29 20:00:26 ID:qarz5JhY [23/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
結局、ダンジョンの中で、リンゴは3つ見付かった。

ダンジョンを抜け出して、夕暮れの中、リンゴ1個半で食事を済ませる。


アシマリ「うん、行ける。ニャビー、頑張ろう!」

ニャビー「うん」


その後も必死に走った。

ミリスまで、モクローたちを追い越せるように。

モクローたちより、先に着かないと。

何か、そうしないといけないような、予感があった。

オイラは、その訳のわからない予感に急かされながら、走る。


そして……。
 ▼ 218 1◆J44kAZeDOM 16/09/29 20:01:02 ID:qarz5JhY [24/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アシマリ「あ、街の明かりだ……」

ニャビー「あそこが……ミリス」

アシマリ「もうちょっとだよ、頑張ろう」


荒い息を抑え、必死に士気を上げる。

走りは出来なかったけれど、それでもしっかりと、歩みを進める。

少しずつ近付いて行く街灯り。

オイラたちは、それを目指して、進む。

太陽は沈み、月の見えない夜が始まる。

星だけが、煌々と煌めいていた。
 ▼ 219 1◆J44kAZeDOM 16/09/29 20:01:26 ID:qarz5JhY [25/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アシマリ「とうちゃーく!」

ニャビー「でも、安心するには早過ぎる。モクローたちを捜さなきゃ」

アシマリ「うん」


関所でボディーチェックをされたが、危険物の「ばくれつのタネ」を自己申告で係のポケモンに渡すと、他の物は確認されはしたが、そのまま通行の許可が下りた。


「どうしてミリスまで?」と関所のポケモンが聞く。

アシマリ「モクロー、来てませんか?」

「いや、まだだが……」


オイラたちは、顔を見合わせ、頷いた。

モクローたちは、まだ来ていないらしい。


アシマリ「ありがとうございます! それなら、ここで待ちます」

ニャビー「事情はいろいろあるんで、待ちながらここで説明しますね」
 ▼ 220 1◆J44kAZeDOM 16/09/29 20:02:11 ID:qarz5JhY [26/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「なるほど、いろいろとあったんだな」


どうせバレるのだから、エーフィとブラッキーの事も、伝えておく。

モクローは、きっと、ここに来る。

「確かに、ミリスにその2匹が来ないと、世界は崩壊すると言われている。……ヤレユータン、そんな事を……」

アシマリ「助かり……ますよね?」

「ああ。ひずみを封じれば、彼はこっちへ戻って来られる。だから、とにかく、エーフィたちがここに来るって言葉を信じるしか……」

「あっ、アシマリ……?」


不意に、声が聞こえた。

ずっと、ずっと聞いて来た、懐かしい声。


アシマリ「モクローっ!」

モクロー「な、なんで君がここに……」

アシマリ「モクローの方こそ! なんで黙って、エーフィたちを連れ去ったりしたんだ!」


モクローを前にして、溜まっていた言葉が、流れ出す。

歯止めがかからなかった。
 ▼ 221 1◆J44kAZeDOM 16/09/29 20:02:32 ID:qarz5JhY [27/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アシマリ「モクロー! オイラを頼ってよ! オイラに相談してよ! 1匹だけで悩まないでよ! オイラ、ずっと頼りっぱなしだったけど……だったから!」

モクロー「アシマリ、落ち着いて!」


いつの間にやらエーフィとブラッキーも現れて、オイラを宥めていた。

関所のポケモンは、2匹の登場を伝えるべく、走り去ったらしい。

ここには、見知ったポケモンしかいない。

そう思うと、涙が零れた。

どうしても、止まらなかった。
 ▼ 222 1◆J44kAZeDOM 16/09/29 20:04:53 ID:qarz5JhY [28/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アシマリ「ごめん、落ち着いた」

エーフィ「全く、いきなり泣き出したりしないでよね。……泣きたいのはあたしたちだってのに」

アシマリ「……モクロー、オイラたちは、ダンチョーがたぶんここだからって言われて」

ニャビー「前衛としてやって来た。モクロー、あんた、1匹で考えるのは、違うよね。サーカスはみんなで創り上げる物。あんたが言ってたんだよ。

      確かに、そんなの綺麗事。だけどさ、綺麗事を信じてみてもいいんじゃないの?

      少なくとも、あたしが知ってるあんたは、そんな単独プレイに走るようなポケモンじゃなかった」

アシマリ「モクロー、オイラにも、苦しみを分けてよ。いっつも迷惑ばっかり掛けて来たんだもん、このぐらいさせてよ」

モクロー「……このぐらい、なんてもんじゃない。最悪、エーフィたちが死ぬかもしれないってのに、そんな事、言える訳ないよ」


今の発言で、オイラの口は、「よ」の形で固まった。

それはニャビーも同様だったようで、「え」と小さく漏らした。


アシマリ「今……なんて?」

モクロー「エーフィたちは、生贄にされるかもしれないんだ! それでも、エーフィたちは、世界を救うために戻って来たんだ!」

エーフィ「……モクロー、あたしから話すよ、あなたの推理を」
 ▼ 223 1◆J44kAZeDOM 16/09/29 20:07:01 ID:qarz5JhY [29/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
***

あたしたちがソルガレオとルナアーラの力を持ってる事。

そして、2匹の力が今、弱まっている事。

この2つを総合して、あたしたちは、自分の力を2匹に捧げないといけないんだって。だから、あたしたちは狙われていた。

そう考えるのが自然なの。

そして、不憫な目に遭う……。

最悪の光景しか見えなかったんだって。

あたしたちは、2匹のための生贄なんだって。

世界を救うには、あたしたちの命を、犠牲にしないといけないかもしれない。

モクローはね、あたしたちだけに伝えてくれた。他のみんなに知られてあたしたちが辛い気分にならないように、って。

バレたら、みんな、かばってくれるとは思うけど、どうなるかわからない。怖がって、生贄にすべきだなんて、言われるかもしれない。

世界を救うための別の方法を考える時間も、まだあるはずだって。
 ▼ 224 1◆J44kAZeDOM 16/09/29 20:07:30 ID:qarz5JhY [30/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
だけど……あたしたちのワガママのせいで、世界が危機に晒されるのなら……耐えられなかった。あたし、そのぐらいなら、死んだ方がマシだって、本当にそう思えた。

モクローは、そんなあたしたちについて来てくれた。

最後まで、誰でもいいから、サーカス団の誰かといたかった。

出来る事ならみんなでいたかったけど、これを伝えて、どうなるかわからない。

止められるのも、止められないのも、怖いから。

だから、あたしたちは、モクローだけと一緒にミリスに来たの。

……でも、あたし、幸せだったよ。最後の時に、こうして、みんなと会えて。

サーカス団エクリプスで時を過ごせて。

***
 ▼ 225 1◆J44kAZeDOM 16/09/29 20:07:58 ID:qarz5JhY [31/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アシマリ「エーフィ、なんで……なんで……」

エーフィ「言ったよね。世界を、あたしたちの気持ちだけで無駄に危険に晒すのが、辛いって。ブラッキーも、同意してくれてる。だよね?」


ブラッキーはこくりと頷いた。

それを確認して、エーフィは続ける。


エーフィ「他のみんなと、最後に会いたかったけど、でも、いいの。世界を、早く救いたいから」

アシマリ「待ってよ……みんなの気持ちは、どうなるの?」

エーフィ「それは、ホントに申し訳なく……」

アシマリ「でもっ! オイラ、寂しいよ……」

エーフィ「……お願いだから、止めないでよ。あたしは、決めたの! これ以上、覚悟を揺るがせさせないでっ!」

アシマリ「いいや、止める。まだ、手段は……あるよ。ソルガレオとルナアーラが力を取り戻せばいいんだよね」

モクロー「だと思うけど、どうやって」
 ▼ 226 1◆J44kAZeDOM 16/09/29 20:08:19 ID:qarz5JhY [32/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
オイラの脳裏に、様々な景色がフラッシュバックする。

サーカス団に入団して、サーカス団を盛り上げた事。

必死で荷物を運び移動したあの道のり。

エーフィの大声。

ブラッキーの料理。

ニャビーのパフォーマンス。そして、ニャビーの覚悟。

舞台に贈られた、温かい拍手。








アシマリ「……ソルガレオとルナアーラに、サーカスを見せよう。オイラは、サーカスに、元気をもらった。きっと、伝説のポケモンだって、元気になれるよ」
 ▼ 227 1◆J44kAZeDOM 16/09/29 20:08:56 ID:qarz5JhY [33/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エーフィ「えっ!」

モクロー「なっ……」

ニャビー「あんた、何言ってんのっ?!」

アシマリ「オイラ、本気だよ。世界のために犠牲になるのは、それからでも遅くない。日食まで、まだ何日かあるんでしょ? 明日の夜には、フーディンたちもこっち来るはずだよ」

エーフィ「で、でも……」

アシマリ「覚悟は、決まってるんでしょ? だったら、もうやめろとは言えない。だけどさ……最後の悪あがきぐらい、してもいいでしょ?

      もう、他に打つ手なし、PP切れだ。だから、HPが切れるまで、悪あがきしたい」

モクロー「でも、そんな事言ったって……」

アシマリ「お願いだよ、モクロー。

      ニャビー、ニャビーのパフォーマンスは、誰かに力を与えられる。

      オイラは、ニャビーのお陰で、エクリプスに入ろうと思えた。

      ニャビーの演技が、オイラに力をくれたんだ」
 ▼ 228 1◆J44kAZeDOM 16/09/29 20:09:26 ID:qarz5JhY [34/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニャビー「あたしが……」

アシマリ「うん。ニャビーは、自分の魂を削って観客にそれを見せる。それって凄い事だよ。

      オイラは絶対にマネできないし、しないけど。

      そんなパフォーマンスが誰かの力になるのは間違いないよ」

モクロー「でも、伝説ポケモンだよ? 僕たちの常識が通用するとは思えないんだけど……」

アシマリ「通用しなかったら、オイラの負け。エーフィたちは救えない。でも、初めから何もしないより、絶対マシだ!」

エーフィ「……でも、違うの。あたしたちは、速く世界を救いたいんだって――」

ブラッキー「乗った」

エーフィ「え?」

ブラッキー「だから、アシマリの案に、乗った」


そう言って、ブラッキーは、信じられない程長々と、言葉を紡ぎ始めた。

真剣な表情で、エーフィを見据え、強く、ハッキリと、言う。
 ▼ 229 1◆J44kAZeDOM 16/09/29 20:09:48 ID:qarz5JhY [35/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブラッキー「アシマリが言ってる事は、何も間違ってない。

       姉ちゃん、何も、死に急ぐ事はないと思う。

       残されたポケモンたちは、きっと悲しむ。

       それなのに、僕たちが辛いからなんて勝手な理由で、死に急いじゃ、いけないと思う。

       誰かが僕たちの事を思ってくれてる限り、僕たちが諦めちゃ駄目だ。

       ニャビーのパフォーマンスは、確かに凄い。

       それだけじゃない。アシマリのだって、それは凄いと思った。

       モクローの司会だって、普通に上手い。

       それに、僕たちのライトワークも上手いってよく言われるじゃん。

       それだけじゃない。

       みんな、やる気を出して、少しずつでも上達してる。

       姉ちゃん、エクリプスは、もう、へっぽこサーカス団じゃないよ。

       立派な、誰かを楽しませる事が出来る、エンターテイメントだ。

       ルナアーラとソルガレオが楽しんでくれない理由が、どこにある?

       力を取り戻してくれないと断言出来る?

       証拠は、何もない。だけど、やってみる価値はあるよ」
 ▼ 230 1◆J44kAZeDOM 16/09/29 20:10:47 ID:qarz5JhY [36/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブラッキー「僕は、アシマリの言う通り、悪あがきをしたい。

       PPが切れても、体力が切れるまで。

       時間切れの、その瞬間まで。

       悪あがきをしたい。生贄になんか、なりたくない。

       みんなと、もっといたい。

       みんなで、サーカスを創りあげたい。

       エクリプスを復活させたい。

       姉ちゃん、僕は、間違ってる?

       こう思うのは、僕のワガママ?」
 ▼ 231 1◆J44kAZeDOM 16/09/29 20:11:38 ID:qarz5JhY [37/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エーフィが、戸惑った表情で、呟いた。


エーフィ「ぶ、ブラッキー、そんな長いセリフ、話せたんだ……生まれて初めて聞いた」

ブラッキー「うん。話す必要を今まで感じなかったから。エーフィが代わりに話してくれたし、喋ると余計区別が付かなかったからね、イーブイ時代」

エーフィ「そ、そんな理由で……」

ブラッキー「それはともかく、いいよね、姉ちゃん。僕からの、一生のお願い」


エーフィは、一瞬の躊躇いを見せる。

ブラッキーは、そんなエーフィを、力強い眼差しで見詰めた。


エーフィ「……わかった。ブラッキー、あんたがそう言うなら、あたしは、それを叶えたい。

      ブラッキーの、生まれて初めての、願いだから、ううん、絶対に、叶えてみせる!」


エーフィは、決然と叫んだ。
 ▼ 232 1◆J44kAZeDOM 16/09/29 20:12:38 ID:qarz5JhY [38/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アシマリ「ブラッキー! エーフィ!」


オイラは嬉しくて、2匹を見回す。


ニャビー「ったく、あたしにはこれしかないって、知ってるクセに。サーカス、やるよ。あたし、空中ブランコに乗ればいいのね」

モクロー「……」


戸惑ったように首を回すモクローに、オイラは声を掛ける。

ニコリと、いつもと同じ笑顔で。


アシマリ「モクロー、もっと、楽に行こうよ。何にも考えてないみたいなオイラに言われるってのも癪だとは思うけど!」

モクロー「……違うよ、アシマリは、ちゃんと考えてる。わかったんだ、なんで、なんでエクリプスなのか」

アシマリ「え?」

モクロー「なんでうちは、エクリプス……日食を冠した名前なのか。その理由の、1つの可能性が」
 ▼ 233 1◆J44kAZeDOM 16/09/29 20:13:02 ID:qarz5JhY [39/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







5章 名探偵モクロー 完






 ▼ 234 リゴン2@スペシャルガード 16/09/29 20:31:36 ID:UpbfnrCs NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 235 ェイミ@しんじゅ 16/09/29 22:31:56 ID:D1hsi9Ks NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 236 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:22:33 ID:t1tIRUws [1/18] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







6章 サーカス団のアシマリ






 ▼ 237 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:23:25 ID:t1tIRUws [2/18] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
――団長、ってな訳で、なるはやでお願いしますよ、なるはやで!

アシマリ「エーフィ、どう?」

エーフィ「今日中には到着出来そうだって」


エーフィは、エスパーの特権を生かして、ダンチョーにテレパシーで連絡を取った。

エーフィの顔には、笑みが浮かぶ。


ブラッキー「エクリプスは、まだ明後日。時間に余裕はあるよ」

エーフィ「うん。……モクローとニャビーは、今何してるの?」

アシマリ「ニャビーは、器具もないのに、練習してる。木の上で、バランスを取る練習。モクローは、街のポケモンたちに、事情を説明して回ってるよ」

エーフィ「なるほど……よし、ブラッキー。あたしたちも、照明の練習しよう!」

ブラッキー「うん」

アシマリ「オイラも、練習して来るよ。……少し、考えてる事があるんだ」

エーフィ「え、何?」


オイラは、ニコリと笑った。
 ▼ 238 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:24:07 ID:t1tIRUws [3/18] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あのヤレユータンの後継者らしいヤレユータンが、オイラたち3匹に寝床と練習場所を提供してくれている。

もちろん3匹の中に含まれないのはエーフィとブラッキー。

実家があるのだから、そこで寝泊まりするのは、当然だろう。

けれど、今は実の両親との時間よりも、サーカスの練習に付き合ってくれている。

オイラのワガママで家族団欒の時間を奪って、2匹の親たちには、申し訳ない事をしたとも思う。

だけど、両親は、この子たちが最後の時まで幸せなら、それが一番だと泣き笑いの表情で送り出してくれた、らしい。

オイラは、甘えてばっかりだ。

だから、絶対に成功させる。

オイラたちに、エーフィたちの命がかかっている。

失敗させる訳にはいかない。

そして、モクロー。

オイラは、モクローに、恩返しをしたい。

モクローの、頭が良すぎる故の悩みを、なんとかして取り除いてあげたかった。
 ▼ 239 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:25:45 ID:t1tIRUws [4/18] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そんなオイラを見かねたのか、不意にニャビーが声を掛けて来た。


ニャビー「集中しなよ。……今考え事をする理由はわかるけど、あんたの悩みはサーカスに関係ない」

      サーカスにとって、悪い物はハッキリしてる。悩みと怠慢。これを感じさせる奴は、失格」


確かに、オイラの悩みは、誰にもいい感情を与えない。

ソルガレオとルナアーラを楽しませるためにも、そして、モクローを励ますためにも。

オイラは、普段通り、舞台に上がり、パフォーマンスを見せるだけ。

そう、普段通りだ。

普段通り、今まで通り、楽しめばいい。

それはわかっている。

けれど、怖かった。

万が一オイラが上手く出来なかった時の事を思うと、普段通りの気持ちで舞台に上がれるとは、到底思えない。

その現実を見詰めるのが怖くて、オイラは、練習に打ち込んだ。
 ▼ 240 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:26:44 ID:t1tIRUws [5/18] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
モクロー「どう? 調子は」

アシマリ「うーん、最悪。まだ、迷いが消えなくて。こんな気分じゃ、誰かを楽しませるなんて、まず無理だよ」


ヤレユータンとともに事情報告に回っていたモクローは、帰って来た時、オイラたちに差し入れを持って来てくれた。

オレンの実だ。疲れた体にその果汁は本当に沁み渡る。

ヤレユータンが、モクローの背後から現れて、確かめるようにこう言った。


ヤレユータン「エーフィさんとブラッキーさんも、照明の練習をしているそうですね」

アシマリ「うん。ごめんね、オイラのワガママで、世界の危機を、伸ばす事になっちゃって。だけど、絶対に、止めるから。安心して」

ヤレユータン「はい。今日、サーカス団のみなさんが到着したら、ソルガレオ様とルナアーラ様のおわします祠を開きます。

        そこで、みなさんには、サーカスを披露していただきます。

        ソルガレオ様とルナアーラ様の力がお戻りになられたら、そこから先は、我々にお任せ下さい」

アシマリ「うん」
 ▼ 241 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:27:25 ID:t1tIRUws [6/18] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
モクローが不安気に問い掛ける。


モクロー「体力はどうします? 着いてすぐにサーカスは、少し厳しいと思いますが」

ヤレユータン「え……」

アシマリ「オレンの実、大量に用意してあげて。みんな、それで元気になれるはずだから」

ヤレユータン「わかりました! ……いかんせん、まだ僕は修行中の身、上手く祠を開けるかすら定かではない上に、こんなイレギュラーな事態。

        不安は残りますが、ゼンリョクで務めさせて頂きます」

アシマリ「こちらこそ、よろしくね!」
 ▼ 242 ローニャ@メトロノーム 16/09/30 22:27:54 ID:dHbDGDRE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
生きてたのかヤレユータン!
 ▼ 243 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:27:58 ID:t1tIRUws [7/18] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヤレユータンが帰って行き、オイラ、モクロー、ニャビーの3匹が残された。

ニャビーは、オイラたちのやりとりなんて意にも介さず、練習を続ける。

たゆまぬ努力。ニャビーは、努力する才能に、恵まれ過ぎている。


アシマリ「……やっぱり凄いよ、ニャビーは」

モクロー「だね。こんな状況でも、普段と何も、変わらない」

ニャビー「あー、誤解しないで。あたしには、変わるだけの自分がないの。それだけよ」


平然とそう言い切るニャビー。

それが、どうしても、辛かった。


アシマリ「……ニャビーが頑張れる理由はわかってる。だけど、オイラには、無理だよ。

      そこまで、全てを捨てられない。全部、全部大事。

      その上で、だけど、ニャビーに追い付きたい。

      無理だよね、バカだよね。だけど、どうしようもない……」


オイラは、ニャビーの事が、好きだ。

好きだからこそ、なおさら辛く、悔しい。
 ▼ 244 ゲキ@きよめのおこう 16/09/30 22:28:34 ID:t1tIRUws [8/18] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
>>242
>>238見ればわかる通り、別個体です
 ▼ 245 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:29:07 ID:t1tIRUws [9/18] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そんなオイラに向かって、ニャビーは木のてっぺんから、言う。


ニャビー「……あたしに拘るの、やめなよ。そりゃ、あたしは、ずっと待ってる。あたしをこっぴどく打ち負かしてくれる奴を、ずっと。

      あんたは、そいつになれる可能性がある。だから、あたしも、あんたの事が好き。

      でも、あたしを追い越せるのは、あたしより捨てたポケモンだけじゃない。

      あたしより、持ってるポケモンでも、あたしを超えられる。

      アシマリ、お願い、気付いて。あんたの武器は、その優しさだって」

アシマリ「武器が……優しさ?」

ニャビー「あたしを失望させないで。そっから先、あたしにだけは頼らないで。

      あたしは、間違ってない。サーカスを1度奪われて、あたしは、誰よりもサーカスに打ち込んだ。

      それは、絶対に正しい。だからこそ、あたしと同じじゃ、絶対にあたしを超えられない。

      可能性があるのは、あんただけなの。あたしに染まるな、アシマリ。

      待ってるから。空中ブランコのてっぺんで、あんたを待ってるから」

モクロー「……ニャビー、余計にアシマリを迷わせるような事言わないでよ」


ニャビーは、ついと顔を背け、再び自らの世界に潜り込む。
 ▼ 246 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:29:49 ID:t1tIRUws [10/18] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
モクロー「どういう意味だろ、優しさが武器になる……」


オイラは、ぐるぐると、思考の渦に沈む。

あたしに拘るのはやめなよ。

この言葉が、脳内をエンドレスでリピートする。

――あたしに染まるな。

――あたしを超えろ。

――あたしより持ってる奴でも、あたしを超えられる。

――可能性があるのは、あんたしかいない。

オイラは、どうすればいいの?

ニャビーはオイラに、何を期待してるの?


モクロー「……アシマリ、とりあえず、お昼にしよう。ブラッキーが作ってくれてるよ」

アシマリ「だね」
 ▼ 247 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:30:25 ID:t1tIRUws [11/18] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「「ごちそうさまでした」」


こんな時でもごはんは美味しくて、なんだか泣きそうになった。

オイラは、どうすればいいのか。

迷いを振り切るには、どうすればいいのか。

教えて欲しい。けど、ニャビーには訊けない。


アシマリ「モクロー、どうすればいいの? オイラは、どうすればいいの?」

モクロー「……わからないよ。僕には、わからない。……こればっかりは、アシマリ、自分で見付け出すしかないよ」

アシマリ「……」
 ▼ 248 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:31:07 ID:t1tIRUws [12/18] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
わからない。

オイラは、ニャビーよりもサーカスに賭ける事は、絶対に無理だ。

だけど、それでも、オイラが勝てるとしたら。

オイラが勝てる所は……どこだ。

ニャビーに無くて、オイラにある物。

ニャビーは……サーカス以外の全てを捨てた。

オイラは、いろいろと、持っている。

優しさが、オイラの武器。

ニャビーとは違う道。

オイラにだけある物、ニャビーに無くて、オイラは……。


そうか、わかった。

そんな、単純な事だったんだ。
 ▼ 249 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:31:40 ID:t1tIRUws [13/18] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
――――

――

――

――――
 ▼ 250 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:32:26 ID:t1tIRUws [14/18] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
フーディン「おーい! 到着したぞ!」

アシマリ「ダンチョー!」

モクロー「やっと来た」

エーフィ「遅いよ!」

フーディン「すまんすまん」

ヤレユータン「来ましたか。とりあえず、しばらく休んで体力の回復をしてください。

        夕方には、祠を開きます」

フーディン「ああ。みんな! 各自休憩を取る事!」

ヤレユータン「このオレンの実も、みなさんでどうぞ」

フーディン「ありがとうございます」

ヤレユータン「いえいえ。僕たちだって、犠牲を払いたい訳ではありません。誰も死なずに解決出来るなら、それが一番ですから」
 ▼ 251 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:33:30 ID:t1tIRUws [15/18] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
それもそうだ、と頷いて、フーディンは続けた。


フーディン「ああ、それと」


フーディンが、サイコキネシスでもってヤングースを連れて来た。


フーディン「彼を、どこかで看病してやってください。この街のポケモンでしょう?」

ヤレユータン「はい。それでは、また夕方に、ここに戻ってきます。『テレポート』!」


そう言うと、ヤレユータンは、ヤングースと共に消え去った。
 ▼ 252 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:34:43 ID:t1tIRUws [16/18] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
それを見届けたフーディンは、オイラたちに視線を移し、言った。


フーディン「ん? アシマリ、えらく吹っ切れた顔してるな。モクローは……辛かったんだろ? わかるぞ」

モクロー「……ぜんっぜんわかってない」

フーディン「なんか言ったか?」

モクロー「いえ」

アシマリ「モクロー、心配しないでよ。オイラ、わかったよ。オイラの答えを、ソルガレオとルナアーラにぶつけてくるから、だから、悩まないで」

モクロー「……うん」

フーディン「何かあったのか?」

アシマリ「ううん、なんでもない。事情は、テレパシーでエーフィから聞いてるよね?」

フーディン「ああ。とにかく、今は休んで、本番に備えよう。ったく、世界の明暗を賭けたサーカスなんて、信じらんねぇよ」

アシマリ「……でも、いいじゃん。このぐらいの方が、むしろ楽しいよ。

      世界が、オイラたちにかかってる。世界中が、オイラたちの観客みたいなもんだよ? 

      ワクワクしない? オイラは、そのぐらいの方がやる気でるな」

フーディン「ハハハ、お前、凄いなアシマリ。出ない俺ですら、心臓バクバクだぞ。まあ、とりあえず、本番前だ。ゆっくり休んでおけ」

アシマリ「はぁい」
 ▼ 253 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:35:37 ID:t1tIRUws [17/18] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
オイラは、そのまま眠りに就く。

体力を回復させるには、やっぱり、「ねむる」だ。もっとも、オイラは「ねむる」の技を覚えている訳じゃないけれど。

目が覚めた時、周りではみんなが雑談していた。

エーフィとブラッキーは、2匹で瞑想をしている。

覚悟を決めているのだろう。

モクローは、ダンチョーと何やら話していた。

そんな中、ニャビーはなお、孤独を貫いている。


アシマリ「ニャビー」

ニャビー「何?」

アシマリ「わかったよ、オイラの武器が。オイラの武器は……優しさと言うより、楽しさ、だよね?

      みんなを切り捨てられない優しさってのが言いたかったんだろうけどさ。

      オイラの武器は、サーカスを楽しんでる事。そんな気持ちが、みんなに伝われば、みんな楽しんでくれる。だよね?」
 ▼ 254 1◆J44kAZeDOM 16/09/30 22:37:33 ID:t1tIRUws [18/18] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニャビーは、驚愕の表情を浮かべ、オイラを見詰める。

その顔は、徐々に納得に彩られて行き、最後には、深く頷いた。


ニャビー「……その通り。やっぱり、あんただった。あたしを超えられるのは、あんただった」

アシマリ「それだけど、オイラは、超えたりなんか、しないよ。一緒に、サーカス団エクリプスを作る仲間なんだから、競い合うのもまた違うでしょ」

ニャビー「……かもね。でも、吹っ切れてよかったじゃん」

アシマリ「うん。ありがとうニャビー。お陰で、1つ成長出来たよ」

ニャビー「お礼なんか、言わないで。あたしは、あたしに出来る事をするだけだから」

――空中ブランコで、空を舞うだけだから。
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