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【SS】アシマリ「ポケモンサーカス団エクリプス!」

 ▼ 1 1◆J44kAZeDOM 16/09/24 21:29:45 ID:iVyHi1wg [1/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







――太陽と月が交わる時、世界に滅びが訪れると言う。






 ▼ 2 1◆J44kAZeDOM 16/09/24 21:30:10 ID:iVyHi1wg [2/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







プロローグ






 ▼ 3 1◆J44kAZeDOM 16/09/24 21:30:34 ID:iVyHi1wg [3/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ねえ、アシマリ」


音も立てずに背後に近寄って来た、声の主はモクローだ。

わざと気配を消している訳ではなく、ただ習性でそうなってしまう、そんなオイラの友達。

その事を知っていたオイラは、驚きもせずに振り返った。


アシマリ「ん? どうしたのモクロー」


モクローは、ニコニコと笑ってオイラを見詰めていた。

首をくるりと回すと、オイラに声を掛けて来る。
 ▼ 4 1◆J44kAZeDOM 16/09/24 21:30:59 ID:iVyHi1wg [4/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
モクロー「ずっとサーカスに行ってみたいって言ってたよね? いつかサーカスに入りたい、そのための勉強だって」

アシマリ「うん」


確かに、オイラはいつも、サーカス団に入りたいって言って来た。

それは間違いない。そして、モクローもそれを知っている。

けれど、話の流れが読めなくて、オイラは続きを促した。
 ▼ 5 1◆J44kAZeDOM 16/09/24 21:31:26 ID:iVyHi1wg [5/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アシマリ「それでそれで?」

モクロー「じゃじゃーん!」


モクローは、チケットを2枚、その羽の下から取り出す。

それを見たオイラは、浮かんで来た疑問をそのまま口に出した。


アシマリ「何それ?」

モクロー「エクリプスってサーカス団のチケットだよ! 2枚ゲットしたんだ!」


え……!

サーカスダンノチケットヲ、ニマイゲットシタ。

モクローの言葉が、右から左へと通り抜けて行った気がした。

慌てて掴み、そして言葉を脳内で漢字に変換して、ようやく意味を理解する。


アシマリ「ホントに?!」
 ▼ 6 1◆J44kAZeDOM 16/09/24 21:31:54 ID:iVyHi1wg [6/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
モクロー「嘘かどうか、自分で確かめてみなよ」


モクローは、オイラにそのチケットを1枚手渡す。

その手触りを、何度も何度も確かめる。

本物だ、これはここに実在する。そう確信して、オイラの口から言葉が漏れた。


アシマリ「本当だ……本当にある……。モクロー、オイラに向かって『このは』よろしく」

モクロー「え? あ、夢かどうか確かめるため、か。やめといた方がいいと思うけど」

アシマリ「お願い」

モクロー「わかった。覚悟してよ……『このは』!」
 ▼ 7 1◆J44kAZeDOM 16/09/24 21:32:54 ID:iVyHi1wg [7/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アシマリ「するんじゃなかった……」


痛い。

このはは草タイプの攻撃。水タイプのオイラには効果は抜群だ。


モクロー「ほら、言ったでしょ。やめといた方がいいって」

アシマリ「でも、これでハッキリした! これは夢じゃない! 本物なんだ! ありがとうモクロー大好き!」


だけど、痛みなんて物は、一瞬で吹き飛んでしまった。

本当にサーカスが見られるんだ。その喜びが、痛みの何倍も大きい。

僕は、思わずモクローに抱き着いた。


モクロー「どういたしまして、きつい……」

アシマリ「あっ、ご、ごめんつい……。で、サーカスっていつ?」

モクロー「来週。こんなギリギリでチケットが取れるって、正直嫌な予感もするけど、とりあえず大安売りしてたから買ってみたんだ」
 ▼ 8 1◆J44kAZeDOM 16/09/24 21:33:23 ID:iVyHi1wg [8/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アシマリ「オイラの分のチケット代払うよ」

モクロー「いや、いいよ。ほんっとに安かったし、これはプレゼントって事で」

アシマリ「……ありがとう!」


オイラは、感動で震えた。

ありがとうモクロー、君は最高の友達だよ!
 ▼ 9 1◆J44kAZeDOM 16/09/25 07:16:27 ID:nDKBNwL6 [1/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告







1章 空中ブランコ乗りのニャビー






 ▼ 10 1◆J44kAZeDOM 16/09/25 07:17:47 ID:nDKBNwL6 [2/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
アシマリ「おはよ……」

モクロー「寝られなかったんだ」


そうやって問いかけるモクローに、オイラはちろりと舌を出した。

けれど、それも半分眠っているような状態ででしか出来ない。

瞼が下へ降りようとして、その度に意志の力で無理矢理持ち上げる。


アシマリ「寝られなかった。だって楽しみなんだもん……」
 ▼ 11 1◆J44kAZeDOM 16/09/25 07:18:18 ID:nDKBNwL6 [3/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
モクロー「あ、あそこが入口みたい……行列、0匹」

モクロー「閑古鳥が行列作ってるね」

アシマリ「閑古鳥なんて鳥いないよ……」

モクロー「誰もいないって事」

アシマリ「そうなんだ……ふああ」


確かに、言われてみると、オイラたち以外には誰もいなかった。

耐えがたい眠気を強引に押し隠し、僕は前を向く。


モクロー「でも、大丈夫なのかな。なんか心配になって来た」

アシマリ「まあまあ。気にしたら負けだって。行こ……」
 ▼ 12 1◆J44kAZeDOM 16/09/25 07:18:46 ID:nDKBNwL6 [4/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
しかし、モクローの悪い予想は、的中する事になる。

閑古鳥で大繁盛するのも納得の酷さだった。

炎タイプの特権を活かし、どうせ触れても熱くないのだからとカエンジシは炎に直撃しながら火の輪をくぐる。

ボールの上で転がるドンファンのモーションも極めて鈍重で、誰かを楽しませると言うのには無縁だった。

ただ、ライトワークだけが、まだサーカスの体裁を保たせている。


アシマリ「ZZZ……ハッ、ダメダメ、寝たら」

モクロー「何と言うか、全体的に覇気がないよね」


司会のフーディンが、ぼそぼそと言う。


フーディン「つ、次はささ、最後の演目とな、なります。ど、どうぞ」

アシマリ「まあ、せっかくここまで来たんだし、最後まで見ようか……」

モクロー「あんな司会じゃそりゃ駄目だよ」
 ▼ 13 1◆J44kAZeDOM 16/09/25 07:19:14 ID:nDKBNwL6 [5/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
最後の演目は空中ブランコ。

ここでも、ライトワークは絶妙な仕事をする。


アシマリ「わっ、なんか急に暗くなった……眠い……」

モクロー「最後まで見るんじゃなかったの?」

アシマリ「わかってる。『このは』お願い」

モクロー「ハイハイ」

アシマリ「いって! ふう、目が覚めた。空中ブランコかぁ……」


頭を振って、オイラはステージに集中した。

スタート台に、ポケ影が映る。


モクロー「あれは……ニャビーだな。4足歩行なのに空中ブランコ?」
 ▼ 14 1◆J44kAZeDOM 16/09/25 07:19:48 ID:nDKBNwL6 [6/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
そんなモクローの疑問を意にも介さず――声が届かないのだから当然なのだが――ニャビーは、飛んだ。

そのままくるりと1回転すると、ブランコには目もくれず、その身に炎をまとう。

差し込む光に照らされて、その姿は輝いた。

しかし、ブランコより下に、ニャビーの体は落ちている。

その危うさにアシマリは思わず息を呑む。が、ニャビーはなんと、しっぽを使ってブランコにぶら下がった。
 ▼ 15 1◆J44kAZeDOM 16/09/25 07:20:23 ID:nDKBNwL6 [7/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
>>14
ミス

最後のアシマリは〜〜のとこ、オイラは〜〜に脳内変換してください
 ▼ 16 1◆J44kAZeDOM 16/09/25 07:20:48 ID:nDKBNwL6 [8/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ニャビーはなおも自由に飛び回る。

あたかも翼をその身に持つような軽やかさで、ブランコから飛び上がったと思ったら、ゆったりと、3回回った。

煌めく炎が輝きを放って、再びブランコにぶら下がった時には、もう、オイラは完全に魅了されていた。


アシマリ「凄い凄い凄い!」

モクロー「静かにしよう」


オイラは、謝っておいてから、再び意識をニャビーの方に向けた。
 ▼ 17 1◆J44kAZeDOM 16/09/25 07:21:08 ID:nDKBNwL6 [9/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
この夢のような時間は、まさしく一瞬で過ぎ去った。

会場中が明るさを取り戻し、その中でフーディンが言う。


フーディン「これにてささ、サーカスの演目はす、全て終了とな、なります。ごごご、ご来場くださりあ、ありがとうございました」

モクロー「終わったか……。最後の空中ブランコは凄かったね、アシマリ。アシマリ?」

アシマリ「……」

モクロー「どうしたのアシマリ」

アシマリ「オイラ、このサーカス団に入る」

モクロー「……はぁ?!」


モクローは、叫んだ。
 ▼ 18 ッコアラ@きんのたま 16/09/25 09:49:40 ID:YRc6fEVo [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
遂にアローラ御三家のSSが…!
支援
 ▼ 19 ドキング@ふっかつそう 16/09/25 12:45:20 ID:5qJm03pY [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
久々の良作の予感
支援
 ▼ 20 1◆J44kAZeDOM 16/09/25 13:33:59 ID:nDKBNwL6 [10/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
モクロー「いや、ちょっと待ってよ。よく考えよう。あのサーカスに入りたいの?」

アシマリ「うん」

モクロー「今の暮らしはどうなるの?」

アシマリ「モクローさえ納得してくれればいいよね?」


オイラとモクローは2匹で暮らしている。

ごはんの調達は、ダンジョンに潜って新鮮なリンゴを入手、それを売ってやりくりしている。

だから、失う仕事はない。

それに、オイラがサーカスに入って迷惑をかけるかもしれないのは、モクローだけだ。

だから、オイラはモクローに持ち掛けた。

モクローの了承さえ得れば、後は入るだけだと判断して。


モクロー「まあそうだけどさ……」
 ▼ 21 1◆J44kAZeDOM 16/09/25 13:34:21 ID:nDKBNwL6 [11/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
それでも、モクローの表情から驚きは消えてなくなりはしない。

当然だろう。

むしろ、簡単に受け入れられると言うヒトがいたら、そちらの方がおかしいと言っても過言ではない。

モクローは、オイラの目をじっと見詰めた。

オイラは、普段は絶対しないような真剣な目で、それを見詰め返す。

モクローはため息を吐く。

そして、首をぐるぐると回し始めた。

考え事をする時にゼンリョクで首を回すのはモクローのクセだ。

オイラは、それをじっと見つめていた。


モクロー「よし、決めた」
 ▼ 22 1◆J44kAZeDOM 16/09/25 13:34:45 ID:nDKBNwL6 [12/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
アシマリ「どう?」

モクロー「わかったよアシマリ……。僕も付いて行く」

アシマリ「えっ?!」


モクローは、ニコリと笑って言った。


モクロー「君と違って、僕はちゃんと考えてるよ。

      今の家に1匹で住むのは広すぎるし、それにサーカスに入れば食糧の調達は簡単だろうし。

      それより何より、君を1匹にしておくのは不安過ぎるし」

アシマリ「なんだよそれぇ」

モクロー「君は母性本能をくすぐる才能があるって事だよ。僕♂だけど」

アシマリ「わかんないってば。って言うか、モクローここに入って何か芸出来るの?」

モクロー「芸って言うか……いろいろ改善点がありまくりだから、このサーカス。僕がそこを指摘したら、だいぶマトモになると思う」

アシマリ「そっかあ。モクロー、頭いいもんね。よーし、そうと決まればレッツゴー!」
 ▼ 23 1◆J44kAZeDOM 16/09/25 13:35:47 ID:nDKBNwL6 [13/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
***

ニャビー「はぁ?」


フーディンに、サーカス団に入りたいと持ち掛けた。

しかし、それに真っ先に反応したのは、ニャビーだった。


ニャビー「何バカな事言ってんの? あんたたちみたいな奴ホントイラつくんだけど」

アシマリ「な、なんでさ!」

ニャビー「なんでわざわざこんな落ち目なサーカス選んで入ろうとするの? やる気があるなら、もっと凄いとこ行けばいいじゃない。

      練習はここよりずっと厳しい。だけど――」

フーディン「ストップストップ。さすがにそこまで言われたら俺傷付くよ?」


司会をしていた時にはどもりがちだったフーディン。

しかし今、フーディンは、ハッキリと話している。


フーディン「ああ、俺、舞台に上がるとそれだけであがる性質でさ……」
 ▼ 24 1◆J44kAZeDOM 16/09/25 13:36:21 ID:nDKBNwL6 [14/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
そんなオイラたちに向けた補足の間にも、ニャビーは毒を吐き出す。


ニャビー「いいじゃない別に。どうせ傷付くプライドもないんだし、こんなカスみたいなサーカス団」


モクローがオイラに、小声で話し掛ける。


モクロー「やっぱ駄目みたいだね」

アシマリ「そんなぁ……」

ニャビー「とにかく、本気でサーカスやりたいならここ以外にもいい場所はある。わざわざここを選んで入りたいだなんて、楽して稼ぎたいとか、そんな風に思ってるんでしょ、どうせ」

アシマリ「違うよ!」

ニャビー「違わない。あたしはね、サーカスを舐めてる奴がほんっとに嫌いなの。いるだけで不快。消えてくれない?」
 ▼ 25 1◆J44kAZeDOM 16/09/25 13:36:45 ID:nDKBNwL6 [15/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
モクロー「わかりました」

アシマリ「モクロー!」

モクロー「だけど、1ついいですか?」

ニャビー「何よ」

モクロー「じゃあなんで、ニャビーはこのクソみたいなサーカス団にずっといる訳? 言っちゃ悪いけど、ニャビーと照明以外、このサーカス、ダメダメだった。

      そう言うニャビーこそ、ここを出てやってけばいいんじゃないの?」

ニャビー「……出てけ。

      出てけっ! 『ひのこ』ッ!」

モクロー「うわったぁ!」
 ▼ 26 1◆J44kAZeDOM 16/09/25 13:37:14 ID:nDKBNwL6 [16/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
モクロー「なんだよ……炎は苦手なのに」

アシマリ「オイラがいなかったらまずかったね」


モクローが「ひのこ」を食らった後、オイラの「みずてっぽう」で慌てて鎮火。

ニャビーは背中を向け、後には困惑気味のフーディンとオイラたち2匹が残された。


フーディン「まあ、君も言ってくれるね……」

モクロー「あっ、す、すいません……」

フーディン「いや、いいんだ。俺も親から唐突にこのサーカス団を押し付けられて、困ってんだから。

       後、ニャビーについてだが……俺たちにもわからん。ニャビーがなんでわざわざうちを選んだのか……。ずっと謎なんだがな」

ニャビー「まだいたの? とっとと出てってよ」


と声が飛ぶ。


アシマリ「行こ、モクロー。もういいよ」

モクロー「……そうだね」
 ▼ 27 1◆J44kAZeDOM 16/09/25 14:17:05 ID:nDKBNwL6 [17/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
モクロー「なんなんだよ、あのニャビー」


そう言ってモクローは、首を回転させようとしたが、すぐにやめた。


モクロー「どうせ考えても情報が足りないし」

アシマリ「他のサーカス団に入れ、って言われても……」

モクロー「アシマリ、他のサーカス団じゃ嫌なの?」

アシマリ「うん。オイラはあそこがいい。ニャビーのいる、あそこが」

モクロー「一目惚れか、なるほど」

アシマリ「ち、違うよ! ニャビーのパフォーマンス、ホントに凄かったんだもん!」

モクロー「わかるよ。わかった。アシマリ、必死に練習して。そうすればニャビーを説得出来る。ニャビーさえ説得すれば後は余裕っぽいし。

      だから、練習して」

アシマリ「今まで以上にって事だよね。うん、わかった。オイラ、頑張るよ!」
 ▼ 28 1◆J44kAZeDOM 16/09/25 14:17:45 ID:nDKBNwL6 [18/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
それからと言う物、オイラは寝食も忘れ……はしなかったけど、そう言ってもいいぐらいに練習をした。

水のバルーンを創り出しては、それを跳ね上げる。

地上に創り出して、それをジャンプ台に飛び跳ねる。

そうやって腕を磨いた。

もちろん、こうした練習は、今までも充分行って来た。

だけど、今までと間違いなく変わっている所がある。

練習にかける熱意。

エクリプス入団と言う具体的な目標を手に入れて、オイラは今まで以上に熱心に練習に打ち込んだ。
 ▼ 29 1◆J44kAZeDOM 16/09/25 14:18:08 ID:nDKBNwL6 [19/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
そして、その間、モクローはと言うと……。


モクロー「ニャビーについて知りませんか?」


とこの通り、ニャビーの過去を探ろうとしていた。

実力のあるニャビーが、へっぽこサーカス団にずっと留まっている訳。

それがわかれば、突破口も開けるのではないか。

そんな期待もあったが、それより何よりモクローを突き動かした物。それは。

溢れる好奇心。モクローにとって、知らない事があると言う事実は極めて不快な物だった。


モクロー「またスカかぁ。エクリプス、しばらくはあそこで公演するだろうけど、急がなきゃどっか行っちゃうしなぁ」
 ▼ 30 1◆J44kAZeDOM 16/09/25 14:18:34 ID:nDKBNwL6 [20/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
モクローが(一応食料も調達して)帰った時、オイラはちょうど、水のバルーンで飛び跳ねて、着地を決めている所だった。

ドヤ顔で振り向くと、「お帰り」と声をかける。


モクロー「ただいま。調子はどう?」

アシマリ「絶好調だよ! オイラ、本気なんだけどなぁ」

モクロー「大丈夫。絶対ニャビーにも伝わるよ」

アシマリ「……だよね、オイラ頑張るよ!」

モクロー「エクリプスは明後日がここでの最後の公演になるみたいだね。だから、明後日、最後の舞台が終わってから、突撃するよ!」

アシマリ「モクロー、ホントにいろいろありがとう……!」

モクロー「いいのいいの! なんだかんだ言って、楽しそうだし。あのサーカス団を変えるのはね」


モクローが笑顔を浮かべ、オイラもそれに対しほっと溜息を吐く。


モクロー「だけど、ニャビーに関しては何にもわかんなかった。悔しいけどね……」
 ▼ 31 1◆J44kAZeDOM 16/09/25 14:19:49 ID:nDKBNwL6 [21/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
その翌日も、2匹がする事に変わりはない。

ただひたすらに、オイラは練習し、モクローは情報収集を行った。

そして、その結果、オイラの実力は間違いなく上達した。

少なくともエクリプスのニャビー以外のメンバーと並べても引けを取らないどころか実力的には勝っているであろうレベルに達したと思えるぐらいに。

まあ、それはあまりに低い目標であるのだが、とにかくエクリプスに入る事が出来る程度の実力は付けられたと言う事だ。

そして、モクローにも収穫はあった。

ニャビーが、どこかのサーカス団で派手に失敗した事があると言う事を調べて来たのだ。

情報を提供してくれたヒトが知っていたのはそこまでだったが、それでも大きな収穫である事に変わりはない。


モクロー「他のとこで失敗した……いろいろと考えられるけど、1つに確定させるのはまだ早過ぎるかな」

アシマリ「えっ、オイラ1つも思い付かないんだけど」

モクロー「いや、アシマリは別に考えなくていいよ。こう言う頭脳労働は僕に任せて、ね?」
 ▼ 32 1◆J44kAZeDOM 16/09/25 14:20:14 ID:nDKBNwL6 [22/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
アシマリ「そうだね。とうっ!」

モクロー「わっ、何するんだよ!」

アシマリ「へへっ、楽しいかなと思って」


モクローを取り囲むようにバルーンを創った。

そして、それを軽く跳ね上げる。

モクローは慌てて水を振り払うと、怒ったような顔をして言った。


モクロー「別にこんな事しなくたって、僕はいつでも飛べるよ……」

アシマリ「あっ、そっか。ごめんね」

モクロー「ま、いいよ」

アシマリ「じゃ、ごはん食べよ!」
 ▼ 33 1◆J44kAZeDOM 16/09/25 14:20:56 ID:nDKBNwL6 [23/40] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
モク・マリ「いただきまぁす」

アシマリ「うん、おいしい」

モクロー「練習で疲れただろうし、塩分補給もちゃんと出来るようなメニュー考えたからね」


メニューを考えるのはモクローがしているが、実際に調理するのはオイラの担当である。

手先が器用なオイラは、だから、料理もそこそこ得意だった。


モクロー「明日はいよいよ本番だね」

アシマリ「だね。なんか今から緊張して来た」

モクロー「大丈夫だよ、アシマリなら」


励ますモクローに、オイラは笑顔で返した。
 ▼ 34 1◆J44kAZeDOM 16/09/25 14:21:31 ID:nDKBNwL6 [24/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
緊張して眠れない時の中を、オイラは悶々として過ごした。

その事が余計にオイラをイライラさせて、眠れない。

いわゆる悪循環だ。

モクローはそんなオイラを見かねたのか、声をかける。


モクロー「駄目だよ、寝ないと。明日寝ぼけて失敗したらどうするの?」

アシマリ「だって眠くない物は眠くないんだもん……」

モクロー「うーん……あったかなぁ」

アシマリ「何が?」

モクロー「睡眠のタネ」

アシマリ「なるほど! あっ、それならあるよ! あそこに!」

モクロー「えっ? あっ……」

アシマリ「これを食べれば……ぐぅ」
 ▼ 35 1◆J44kAZeDOM 16/09/25 17:59:05 ID:nDKBNwL6 [25/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
モクロー「……起きて、起きてよアシマリ」

アシマリ「うーん、おはよ……」

モクロー「ほら、急がないとサーカスが行っちゃうよ!」

アシマリ「え? ああっ! 急がなきゃ!」

モクロー「リンゴ切っといた! 急いで!」

アシマリ「いただきますっ!」


大慌てでオイラは朝の用意を済ませる。

その間にもモクローは首をぐるぐると回していた。


アシマリ「考え事してる場合じゃないって! 行かなくちゃ!」

モクロー「あっ、終わったか。じゃ、行こう」
 ▼ 36 1◆J44kAZeDOM 16/09/25 17:59:42 ID:nDKBNwL6 [26/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
必死に走って、オイラたちはエクリプスのテントの前に到着した。

正確に言うと、テントだった物、と言うべきかもしれない。

現在、テントは解体されている。

最初にオイラたちに目を留めたのは、ニャビーだった。


ニャビー「また来たの?」

アシマリ「……オイラ、本気だから」

モクロー「友人の贔屓目抜きに、アシマリは頑張ってると思いますけど」

ニャビー「贔屓目抜きって、基準もないクセに何バカな事言ってんのよ」
 ▼ 37 1◆J44kAZeDOM 16/09/25 18:00:03 ID:nDKBNwL6 [27/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そんな時、ダンチョーであるフーディンが、ニャビーに声をかける。


フーディン「ニャビー、お前は少し、頑なが過ぎる。試しに、一度アシマリのパフォーマンスを見てみればどうだ?

       前回は、それすらもしなかったじゃないか」

ニャビー「そんな事しなくたって、ここに来る時点で実力なんて……」

フーディン「勘違いしているようだが……ここの団長は俺だ。実力があるのはお前だけかもしれないが、俺だって実力の有無がわかるぐらいの目は持ってる。

       いいか? 一応俺だって、やるからには少しはマシなサーカス団にしたい。そのために、実力があるかもしれない奴を見て、何がいけない?」

ニャビー「……」
 ▼ 38 1◆J44kAZeDOM 16/09/25 18:00:31 ID:nDKBNwL6 [28/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
モクロー「アシマリは、ずっと練習してました。

      確かに、僕には実力があるかどうかも確かによくはわかりません。

      だけど、アシマリはサーカスを舐めてなんかいない。その事だけは僕にもよーくわかります」

フーディン「だろうね。わざわざここにまた来る時点で、その熱意は認められるよ」

ニャビー「……でも、どうせ失敗したら、逃げ出すんだ。あんたが見てるのは、華やかな世界だけ。あんたに、この世界の闇が、耐えられるとは思えない!」

アシマリ「そんな事な――」

ニャビー「そんな事あるっ!」


叫ぶニャビー。

オイラは、戸惑うばかり。

けれど、モクローは違った。
 ▼ 39 1◆J44kAZeDOM 16/09/25 18:01:04 ID:nDKBNwL6 [29/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
モクロー「……わかるよ、自分がそうだったんだよね」

ニャビー「なっ……」

モクロー「今もエクリプスに留まってるのは、また失敗するのが怖いから。違う?」

ニャビー「違う! ……あんた、なんであたしが失敗したって……」

モクロー「調べた。でも、また失敗するのが怖いんじゃないのか……」


ニャビーはわなわなと震え出す。

苛立ちが溢れ出るように。

そして、そのまま立ち去った。

オイラは声をかけようとしたけど、モクローに止められる。


モクロー「アシマリは、自分の事に集中して」

アシマリ「わ、わかったよ……」
 ▼ 40 1◆J44kAZeDOM 16/09/25 18:01:54 ID:nDKBNwL6 [30/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
フーディン「とにかく、君の熱意は、少なくとも俺には伝わった。向こうでテストしてみるか?」

アシマリ「はい!」

フーディン「わかった。じゃあ、ついて来なさい」

アシマリ「……はい」


オイラは、フーディンと連れたって、物陰に向かった。

フーディンの優しそうな表情が、みるみるうちに真剣な物に移り変わる。

ただ、ぼんやりと、司会映えはしなさそうだなと思う。

恐怖は感じない。

少し震えてはいるが、武者震いだろう。

オイラは、まっすぐに、フーディンの目を見詰めた。


フーディン「では、テストを開始する。アシマリ、君が思うパフォーマンスを見せてくれ」

アシマリ「はい!」
 ▼ 41 ャローダ@モモンのみ 16/09/25 20:37:51 ID:5qJm03pY [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
モクローさんの大人な感じが好き
アシマリ頑張れ〜‼
 ▼ 42 メノデス@ゴージャスボール 16/09/25 21:11:10 ID:My1WWTOg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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この前のやつにもツンケンした猫ポケモンがいたなあかわいい
 ▼ 43 1◆J44kAZeDOM 16/09/25 21:48:03 ID:nDKBNwL6 [31/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
まずは、目を閉ざして気持ちを集中させる。

ふうっと息を吐き、吸い込む。

それを2、3回繰り返し、オイラは、目を見開いた。

フーディンの顔は、しっかりとオイラを見据えていた。

鼻先でバルーンを膨らませる。

オイラは、それを軽く跳ね上げた。

受け止めると、今度はモクローの首よろしくくるくる回し始める。

そして、再び跳ね上げると、オイラはその中に飛び込んだ。

そこで、大きくぐるりと淵にそって泳ぐと、オイラは上の端から飛び上がり、バルーンを散らした。

そこに、わずかな雨が降り注ぐ。

それは煌めき、虹を生み出した。

オイラは、バルーンを地面めがけて創り出し、それをジャンプ台にしてさらに飛んだ。

空中でくるりと1回転し、オイラは見事着地を決めた。

ドヤ顔でフーディンを振り向くと、彼はその顔を穏やかな物に変じた。


フーディン「お疲れ様」
 ▼ 44 1◆J44kAZeDOM 16/09/25 21:48:25 ID:nDKBNwL6 [32/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少しだけパフォーマンスを振り返ってみる。

なかなか上手に出来たんじゃないだろうか。


フーディン「なるほど……。本当に未経験だったのか?」

アシマリ「ああ、はい。オイラ、今まで趣味ではやって来ましたけど……」

フーディン「ほう、自力だけでここまでか……。ちゃんとした環境さえあればまだまだ伸びそうだな。

       よし、わかった! 入団を認めよう!」


オイラは、その言葉を聞いても、一瞬理解出来なかった。

言葉をゆっくりと脳内でリフレインさせて、意味を咀嚼する。

そうしてようやく理解した時に、オイラの口から出たのは、こんな言葉だった。


アシマリ「ほ、ホントですか?」

フーディン「冗談でこんな事言わねぇよ」

アシマリ「や……やったぁ!」

フーディン「これからよろしくな」

アシマリ「うん!」
 ▼ 45 1◆J44kAZeDOM 16/09/25 21:48:59 ID:nDKBNwL6 [33/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
僕たちは、連れたってみんなの前に出た。

そこでは、モクローがみんなと話していた。

何を話しているのか聞き取ろうとしたら、聞こえて来たのは――


モクロー「なるほど……。もっと目立てると思ったんですね」

カエンジシ「だけどよう。俺たちの実力じゃ、目立つ事すら出来ねぇんで、やる気なくしちまってよぉ」

モクロー「だけど、それじゃいつまでたっても上手くなりませんよね?」

ドンファン「ニャビーみたいな才能見せ付けられたら、もうどうにも――」

モクロー「……甘えるなっ! ニャビーは、いつだって本気なんだ! 才能だけじゃない! 努力してるはずだっ!」

アシマリ「モ、モクロー?」

モクロー「目立ちたいなら、やる! 負けたくないなら、やる! それが出来ないのに、サーカス団なんて笑わせんな!」

アシマリ「モクロー……」


オイラ、正直ちょっと感動した。

モクローが、ここまで本気でサーカスの事を……オイラの夢の事を考えてくれていると言う事に、オイラの目からは思わず涙がこぼれた。
 ▼ 46 1◆J44kAZeDOM 16/09/25 21:49:24 ID:nDKBNwL6 [34/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ダンチョーが、ここで咳払いした。


フーディン「あー、みんな。やる気を出した所で俺の話を聞いて欲しい。

       ここにいるアシマリは、うちに入る事に決まった」

「へぇ! そうかい!」

「どんな子なんだ?」

アシマリ「どうも、アシマリです!」

フーディン「なかなかどうして、結構いいパフォーマンスをする奴なんだ。みんなこいつから、いい刺激を受けられると思う」

モクロー「! よかったねアシマリ!」

アシマリ「うん! ……ところで、ニャビーは?」

モクロー「……まだ帰って来ないんだよね」

フーディン「ったく、あいつ、実力は誰よりもあるんだけどなぁ……」
 ▼ 47 1◆J44kAZeDOM 16/09/25 21:49:58 ID:nDKBNwL6 [35/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ため息を吐くフーディン。

けれど、その姿は、すぐに見えなくなる。

みんながオイラたちを取り囲んだから。

「モクローはどうするんだ?」とか、「アシマリはどんな事が出来るんだ?」とか、いわゆる質問攻めって奴。

オイラたちはそれにいちいち答えて行く。

そんな時、鋭い声が響いた。


???「こらっ、みんな、仕事は終わってないんだよ!」
 ▼ 48 1◆J44kAZeDOM 16/09/25 21:50:20 ID:nDKBNwL6 [36/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アシマリ「ねえ、あれ……」

「エーフィと、弟のブラッキー。照明係やってる。色違いみたい」と、いつの間に把握していたのか、モクローが答える。

エーフィ「ん? 新入りさんか」

ブラッキー「……姉ちゃん、俺たち、一番新参」

エーフィ「知らないよそんな事。これであたしたちも念願の先輩なんだよ?」

ブラッキー「態度、デカ過ぎ」

アシマリ「あの、よろしくお願いします! アシマリです!」

エーフィ「うん。よろしくね! さっそくだけど、そこの2匹と、後みんな、テントの解体終わらせないと!」

フーディン「……なんか、俺の仕事取られてんな……」


そう言って、フーディンは苦笑したが、すぐにモクローの指示が飛んだ。


モクロー「じゃあ、ニャビーを探して来てください」
 ▼ 49 1◆J44kAZeDOM 16/09/25 21:50:56 ID:nDKBNwL6 [37/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
すぐに見付かったニャビーと、オイラたち2匹は対面する。

オイラが正式にサーカス団の一員として認められてから、初めての出会い。

フーディンから、オイラがサーカス団に入ったと言う事は聞かされていたらしい。

けれど、ニャビーの視線は、オイラ以外に向けられていた。


ニャビー「なんで……。なんでみんながやる気出してるの……?」

アシマリ「モクローが凄いんだよ。いつの間にやら言葉巧みにみんなを説得してさ」

ニャビー「……」
 ▼ 50 1◆J44kAZeDOM 16/09/25 21:51:24 ID:nDKBNwL6 [38/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
モクロー「ニャビー。ちょっといい?」

ニャビー「……何よ」

モクロー「ニャビー、確かに君は凄い。実力はあるし、覚悟もある。

      だけどさ? サーカス、ううん、サーカスに限らずだけど、自分1匹で作る物じゃないんだよ。

      みんなで力を合わせて作る物だよね?」

ニャビー「……そんなの綺麗事だ――」

モクロー「何があったのか詳しくはわからないけど! 誰かを信じないといい演技ってのは出来ないんだよ!

       僕に何がわかるのかっていいたいんだろうけど! でも、そのぐらい、少し考えればわかるよ!」


そう勢いよく言い切ると、モクローは、プイと首を後ろに向けた。

体はそのままに。


ニャビー「……」
 ▼ 51 1◆J44kAZeDOM 16/09/25 21:51:46 ID:nDKBNwL6 [39/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アシマリ「ニャビー、よろしく。オイラ、頑張るから。いつか絶対、ニャビーに追いついて見せるから」

ニャビー「……そ。勝手にすれば」


ツイと頭を向こうにやるが、この発言には、少なくとも拒絶の意思は含まれていない。

オイラは、顔を綻ばせた。

これで、正式に、サーカス団の一員になれた。

そんな気がした。
 ▼ 52 1◆J44kAZeDOM 16/09/25 21:52:09 ID:nDKBNwL6 [40/40] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







1章 空中ブランコ乗りのニャビー 完






 ▼ 53 レユータン@エスパージュエル 16/09/25 22:03:04 ID:YRc6fEVo [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
面白い!!!支援支援!
 ▼ 54 メパト@スペシャルアップ 16/09/26 17:40:04 ID:UqVJ7Jkk NGネーム登録 NGID登録 報告
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