▼  |  全表示398   | <<    前    | 次100 >> |  履歴   |   スレを履歴ページに追加  | 個人設定 |   ▼   
                  スレ一覧                  
SS

【SS】オシャマリ「ポケモンサーカス団エクリプス!」

 ▼ 1 1◆J44kAZeDOM 17/01/02 21:42:26 ID:LvCDM3Hw [1/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







プロローグ  0 アシマリは語る






 ▼ 2 1◆J44kAZeDOM 17/01/02 21:42:46 ID:LvCDM3Hw [2/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
0-○0 

オイラの目には、ある1匹のポケモン――ニャヒートの姿が映る。

今、この世界に、オイラとニャヒート以外の存在はない。

そのニャヒートが、空を舞う。それ以外の物は、オイラの視界から、完全に消えていた。

纏う炎は、控えめな光に照らされて、飛び散る火の粉が煌めきを帯びる。

くるりくるりと空を舞い、そのポケモンは、あたかもそこが陸の上であるかのように、美しいパフォーマンスをしていた。

しかし、ニャヒートは、尻尾を滑らせる。

巻き付ける、その尾が、上手くブランコを捉えなかったのだ。

そのポケモンは、そのままの勢いで、落下した。

酷くスローに、その光景は映った。
 ▼ 3 1◆J44kAZeDOM 17/01/02 21:43:19 ID:LvCDM3Hw [3/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
喧噪が、オイラとニャヒートを追い越していく。

ざわめく観客。慌てる団員たち。

そんな中、ニャヒートは、自らの4つ足で、すっくと立ちあがり、舞台袖へと消えた。

オイラは、射すくめられたように、それこそ「かげぬい」を食らったように、動けなかった。

どこまでも気高いその姿は、オイラの目に、ただただ、美しく映った。

オイラの口は、何やら訳のわからない事を呟く。

震えていた。

ステージから歩き去ったニャヒートの、あまりの強さに、震えていた。
 ▼ 4 ィアルガ@キーストーン 17/01/02 21:44:59 ID:LvCDM3Hw [4/24] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
このSSは、
【SS】アシマリ「ポケモンサーカス団エクリプス!」(http://pokemonbbs.com/poke/read.cgi?no=404456)の続編となります

読まなくても支障はないようになっていますが、読んでいるとより楽しめると思いますのでよければどうぞ
 ▼ 5 1◆J44kAZeDOM 17/01/02 21:45:35 ID:LvCDM3Hw [5/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







1部 ニャヒート「ポケモンサーカス団エクリプス!」






 ▼ 6 1◆J44kAZeDOM 17/01/02 21:46:09 ID:LvCDM3Hw [6/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







1〜6 打ち上げの夜






 ▼ 7 1◆J44kAZeDOM 17/01/02 21:46:39 ID:LvCDM3Hw [7/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
1-△1

フーディン「お疲れ様。ここ、ケルンでの公演も、今日で終わりだ。みんな、今夜は打ち上げだぞ!」


目の前でこう語る、エクリプスの団長、フーディン。

それに対し、アシマリが「やったぁ!」なんてはしゃいでいる。

それをモクローがたしなめるのもいつもの事だ。

アシマリとモクローは、たぶん、あたしの恩ポケだ。

彼らのお陰で、あたしのブランコのパフォーマンスに、深みが出て来たのだから。


アシマリ「ニャビー、一緒にはっちゃけよう! 打ち上げぐらい、楽しまなきゃ損だよ!」

ニャビー「それもそうね」


あたしはそう応じ、皆が盛り上がるその中へ、身を投じた。
 ▼ 8 1◆J44kAZeDOM 17/01/02 21:47:34 ID:LvCDM3Hw [8/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブラッキーが腕によりをかけて作る料理は、それこそ天にも昇る心地だ。

この世の物とは思えない程おいしい。

あたしは生まれてこの方、サーカスばかりしてきた。

だから、料理、その他の事と言ったら、大概の事が出来ない。

もちろん、そういう特技を持ったポケモンの事は尊敬するし、羨ましくも思う。

けれど、サーカス以外の特技がない事を、あたしは、悪い事とは思っていない。

あたしは、過去に失敗した事がある。

その時の、周囲の視線は、それこそ痛い程だ。

その痛みは、スティグマとして、今でも残っている。

怖気づきそうな時、あたしはいつでも、その記憶を引きずり出し、それを噛みしめる。

そうすれば、あたしは負けない。

もう二度と、失敗してなるものか。そんな思いが、あたしを貫くから。

首元に、ひもを付けて掛けた、「かわらずのいし」に誓う。

あたしは、負けない。

絶対に、負けない。
 ▼ 9 1◆J44kAZeDOM 17/01/02 21:48:18 ID:LvCDM3Hw [9/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アシマリ「ふああ、眠くなって来ちゃった。お休み……」


アシマリが大あくびをしながら部屋へ戻って行く。

宴たけなわだが、まだ大人と共に遅寝出来る程にアシマリは大人じゃない。

そして、それはあたしも本来同様なのだ。

あたしも、眠る事にした。

こっそりと身を引き、自分用の寝床へと向かう。

アシマリの寝床とは、かなり近い。

あたしは1匹で寝ているが、それでも会話が出来ない程の距離ではないのだ。


ニャビー「ねえアシマリ」

アシマリ「何、どうしたの急に」

ニャビー「……ううん、なんでもない。お休み」


何を言いたかったのかはわからない。けれど、どうしてか、あたしはアシマリと、共に過ごしていたい。

だから、声を掛けた。内容は、どうでもよかった。

不意に睡魔が襲い、あたしは抗う事なく意識を放り投げた。
 ▼ 10 1◆J44kAZeDOM 17/01/02 21:49:11 ID:LvCDM3Hw [10/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
2-◇1

モクロー「あれ、アシマリたちはどこだろ」


僕はそう呟く。

けれど、と目の前のバカ騒ぎを見て思う。

きっと、2匹は、この喧噪に付き合うには、疲れすぎてるんだ。

何しろ、サーカス団エクリプスの二大巨頭。疲れの比は、僕たちとは比べ物にならないはずだ。

けれど、それを気にしていてもしょうがない。

僕の司会の仕事だって、とても重大なのだ。

2匹に及ばない訳ではない。

全てが重要で、それこそがポケモンサーカス団エクリプス。

それを、僕は知っている。だから、間違えない。
 ▼ 11 1◆J44kAZeDOM 17/01/02 21:50:09 ID:LvCDM3Hw [11/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
フーディン「どうかしたのかモクロー」

モクロー「いや、なんでもないです」

フーディン「ならいいんだ。ところでさ……打ち上げが終わったら、ちょっといいか?」

モクロー「はい、いいですけど、どうかしました?」

フーディン「少し相談したい事があるんだ」

モクロー「はあ。まあ、いいですよ」

フーディン「サンキューな。じゃ、まあ楽しんでくれ」


そう言って、団長は再び喧噪に身を投じて行った。
 ▼ 12 1◆J44kAZeDOM 17/01/02 21:50:55 ID:LvCDM3Hw [12/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
団長の相談したい事、とは一体なんだろう。

なんてタイミングで伝えてくれたんだ、と恨めしく思う。

団長は、さっき言った事などなかったかのように楽しんでいる。

けれど、僕は、駄目だった。一度気になりだすと、止まらない。

大人ぶってるように見えても、僕は、好奇心の権化だ。

悶々として過ごしていると、エーフィが心配そうな顔で覗き込んで来た。


エーフィ「モクロー、なんかあったの? 変だよ」

モクロー「ああ、まあね。ちょっと、好奇心が疼いててさ」

エーフィ「あー、出ました、モクローの好奇心。いいんじゃない? そのまま突き進めば。で、何に好奇心が?」

モクロー「わからないんだ。団長が相談したいって言って来て、それっきり。疼いてるのは、知らないからだよ」

エーフィ「それもそうね。ま、頑張れ。手に負えない感じなら、あたしも協力を惜しまないから」

モクロー「ありがと」


追及しないでくれる、エーフィの優しさに感謝しながら、僕は寝床に戻った。

この喧噪に、今の自分は乗っかれない。
 ▼ 13 1◆J44kAZeDOM 17/01/02 21:51:37 ID:LvCDM3Hw [13/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
3-○1

オイラが眠ろうとしていると、隣にモクローが潜り込んで来た。


アシマリ「もう寝るの? モクロー、まだまだ元気そうだったのに……」


眠たげな声でそう問い掛けると、モクローは首を横に振った。

その動作が、モクローの常で180度を超える程回転するという見ていて微妙にグロデスクさを醸し出す物だったりして、オイラはクスリと笑う。


モクロー「なんで笑ってるんだよ。まあ、それはいいや。なんか、ちょっと疲れて来てさ。休憩しに来たんだ」

アシマリ「へえ」

モクロー「まあ、僕はしばらくしたら戻るけどね」

アシマリ「うん。オイラはそろそろ寝るね」

モクロー「あ、ごめん起こしちゃった?」

アシマリ「ちょっとね……でも、大丈夫だよ。お休みー」

モクロー「お休み、アシマリ」
 ▼ 14 ーナイト@ひみつのコハク 17/01/02 21:51:54 ID:B5c9jNzo [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
続きやんけ!
支援!
 ▼ 15 1◆J44kAZeDOM 17/01/02 21:52:40 ID:LvCDM3Hw [14/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
4-◇2

アシマリは、すぐに軽い寝息を立ててしまう。

その向こう、布団1つ分ぐらいを隔てた場所で、ニャビーは既に眠っている。

2匹は、朝から練習したりするのだろうか。

アシマリも、ニャビーも。本当にサーカスを愛している。

その愛し方にこそ違いはあれど、かける思いの深さは本物だ。

一方で、僕は。

サーカスに入れば、ごはんには少なくともありつける。それより何より、アシマリと一緒にいたい。

そんな動機だけで、入団を決めてしまった。

初期の頃こそ、ダメダメサーカス団を立て直すという役割が持てた。

けれど、今ではエクリプスももう立派なサーカス団と呼べる。

そんな中、僕のサーカスにかける思いって何なのだろう、と考えてしまうのだ。

もちろん、そんな悩みなどお構いなしにサーカスは始まるし、観客はそれを見るし、僕は司会をする。

重要度に差はない。そこは理解している。

けれど、かける思いの差は圧倒的で、僕は、どうしてもそこに劣等感を抱いてしまう。
 ▼ 16 1◆J44kAZeDOM 17/01/02 21:53:14 ID:LvCDM3Hw [15/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
すやすやと眠るアシマリは、そんな悩みに気付いているだろうか。

僕は、意外にわかりやすい性質らしく、簡単に見破られてしまう。

アシマリはきっと、「気にする事ないよ」と笑ってくれるだろう。

けれど、僕はどうしても、そんな思いを拭えなかった。


モクロー「ま、とにかく今は、団長の相談事だ」


僕は首を回して振り返り、喧噪の収まりつつあるそこへ戻って行った。
 ▼ 17 1◆J44kAZeDOM 17/01/02 21:54:11 ID:LvCDM3Hw [16/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
戻ってみると、打ち上げはほとんど終わっていた。

もうさすがに疲れたのか、みんなして片付けを始めている。

僕もそれに加わる。

そんな中、ブラッキーが声を掛けて来た。


ブラッキー「ありがと、手伝ってくれて」


例のエクリプス事件以来普通に喋るようになったとはいえ、どちらかというと寡黙な方である事に変わりはない。

そんなブラッキーだが、実はエクリプスの家事担当係でもあったりする。


モクロー「そりゃ、楽しんだからね。まだ元気もあるし、片付ける義務があるのは当然だよ」

ブラッキー「なんだけどねぇ。それをしないポケモン、多すぎでしょ」


目線の先には、彼の双子の姉、エーフィ。

彼女は、緑の体躯を横たえていた。

この双子は、2匹そろって色違いなのだ。
 ▼ 18 1◆J44kAZeDOM 17/01/02 21:54:53 ID:LvCDM3Hw [17/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
フーディン「まあ、みんな疲れてるからな。ブラッキーも、無理して今片付けなくてもいいんだぞ」

ブラッキー「いや、あんまり放置してるとこびり付いて余計に面倒だから」


そう淡々と返し、黙々と仕事を進めるブラッキー。

僕は団長と見合わせ、頷いた。


モクロー「ブラッキー、僕たちはお皿を運ぶから、洗う方に専念してよ。その方が効率的でしょ」

ブラッキー「え、いいの?」

モクロー「もちろん。洗い場がそう何個もないから、そっちはまかせっきりになっちゃうけどさ、どうせ、運んだ後に洗うんでしょ?」

ブラッキー「まあね、ありがと。じゃ、行って来る」

フーディン「ったく、ホント、あいつがいない時って、俺らどう生活してたんだろ……」


エーフィブラッキー姉弟は、かなりの新参だ。僕たちが一番新参なのだが、エーフィたちは僕らが入団するまでその座を持っていたポケモンなのだ。

僕はだから、その時分の生活を知らない。

けれど、本当に、どうしていたのかさっぱりわからない。

家事担当を、どうしていたのか。ううむ、謎だ。
 ▼ 19 Popplioの夫◆afNbRfS6VA 17/01/02 21:55:33 ID:kIS8DYTs NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援です!
 ▼ 20 1◆J44kAZeDOM 17/01/02 21:55:50 ID:LvCDM3Hw [18/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
片付けも終わり、ブラッキーはすぐに「お休み」と寝床へ戻った。

その場で横になっていたポケモンたちに団長がサイコパワーで布団を掛けると、その疲れで少し荒くなった息を宥めながら、団長は僕を見据えた。


フーディン「さて、モクロー。ちょっとばかり相談したい事があるんだ」

モクロー「なんですか、気になって眠れません」

フーディン「ああ、それなんだが……どうしてニャビーが進化したがらないのか、って話だ。

       そもそも、その話を知らないだろうから、少し説明するぞ」
 ▼ 21 1◆J44kAZeDOM 17/01/02 21:57:21 ID:LvCDM3Hw [19/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
5-△2

あたしの過去の話をしよう。

あたしは、エクリプスに来るまでに、とあるサーカス団で働いていた。

けれど、とある事情……つまり、失敗してしまった事から、あたしはそこを追い出された。

その時の仲間たちは、頭を抱えた。

失敗が続き、人気が少し衰えてきているのだ。

普段はあり得ないような失敗を、あたしはしてしまった。

どうしても、逃れようのないトラウマが、当時のあたしにはあったのだ。

それは、今も消えずに残っている。

今では乗り越えたといえるが、それでも、消えてしまいはしない。

ただ、隠しているだけだ。
 ▼ 22 1◆J44kAZeDOM 17/01/02 21:57:58 ID:LvCDM3Hw [20/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エクリプスにやって来たのは、成り行きだ。

別のサーカス団に再就職しようとあたしはアテもなく旅をしていた。

しかし、どのサーカス団でも、一度失敗したあたしを雇い入れてくれる事はなかった。

そして、今まで一度も旅なんてものをした事がない以上、行き倒れるのも時間の問題だった。

幸い、あたしは近所の親切なポケモンに拾われ、しばらくをそこで過ごした。

そんな中、その街に、サーカス団エクリプスがやって来ると聞いた。

耳にした事もないサーカス団だった。

こんなサーカス団ならもしかして、と淡い期待を込めて、まずはそこを見る事にした。

悲惨な出来だった。

あたしの失敗なんて、これと比べれば小さい物だと思わせる程の雑さ。

もちろん、熱意だけは感じられた。

けれど、適切な指導がなっていないのが、ありありと見て取れる。

こんなサーカス団でなら、あたしでも入れるかもしれない。

期待は、確信に変わった。
 ▼ 23 プ・コケコ@ガブリアスナイト 17/01/02 21:58:06 ID:uE.PoJWw NGネーム登録 NGID登録 報告
ニャビーちゃんもし最終進化まで行ったら何か似合わないなぁ
悲しいなぁ
 ▼ 24 1◆J44kAZeDOM 17/01/02 21:58:34 ID:LvCDM3Hw [21/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
フーディン「え、ここに入りたい? だってお前、あの……」

ニャビー「あたしの事、知ってるんですか」


団長、フーディンにそう持ち掛けると、フーディンの反応は、あたしの事を知っているような口ぶりだった訳で。

当然、落胆も激しかった。けれど、知っている、というのは、また違った意味であるらしかった。


フーディン「知ってるも何も、この業界じゃお前、有名だぞ。空中ブランコ乗りのニャビー」

ニャビー「え……」


あたしは茫然と、フーディンを見詰めた。


フーディン「なんだってこんなとこに1匹でいて、それでエクリプスなんかに入りたいのかは知らない。けど、ニャビーがそう言うなら、俺としては大歓迎だ」


その日の夜、あたしは拾ってくれたポケモンにお礼を言って、エクリプスに入った。

それ以来、こうしてここで、なんとかサーカスにしがみついている。
 ▼ 25 1◆J44kAZeDOM 17/01/02 21:59:42 ID:LvCDM3Hw [22/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
6-◇3

モクロー「あ、そういう事だったのか。ニャビーがここにいる理由。あっちゃー、前、マズい事言っちゃってたな、僕」

フーディン「エクリプス事件の後、俺だけがそれを聞いた。あいつが話してくれたからな。そして、こうも言われたんだ」

ニャビー『それはそうと、たぶんあたし、進化そろそろなんです。けど、あたし、進化したくないから……』

フーディン「進化したくない、だぜ? 何があったのかは教えてくれなかったけどさ、何かあると思うだろ?」

モクロー「まあ、ですね」


大概のポケモンは、進化をしたくてしょうがないはずだ。

強くなり、大きくなり、出来る事が様々に広がる。

大人に近付いて行く、という意味では、ある意味エッチと言えなくもないってのは、誰のセリフだったっけ。

とにかく、進化したくないポケモンなんて、そう数多くいるはずもない。

もっとも、個人の思考なのだから、そういうポケモンがいてもおかしくはない。が、確かに気になる。

彼女は強い。そんな彼女が進化を拒む理由。

僕の好奇心は、収まってくれないようだった。
 ▼ 26 1◆J44kAZeDOM 17/01/02 22:00:48 ID:LvCDM3Hw [23/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
フーディン「かわらずのいしを、あいつにあげた。だから心配する必要はない。

       けど……団員の心配事を取り除くのも、俺の、団長としての務めなんじゃないかと思うんだ」


そう言って、団長は、僕の方を見やる。

別に、そんなチラチラ見なくとも、僕の答えは決まっていたのだけれど。


モクロー「わかってます。いいですよ、協力します」

フーディン「ありがとう。ニャビーは……きっと、聞かれたくないんだ。だから」

モクロー「わかってますよ。そろそろ眠いんで、寝ていいですか」

フーディン「ああ。明日はここで休みだから、ゆっくり寝てくれ」

モクロー「わかりました。お休みなさい」

フーディン「お休み」
 ▼ 27 こまで◆J44kAZeDOM 17/01/02 22:01:27 ID:LvCDM3Hw [24/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
僕は、寝床に戻った。

みんな、もう眠っている。

ふああと1つあくびをし、僕も布団に潜り込んだ。

アシマリには、秘密にしていよう。

集中を、削ぎたくないし……。

そんな事を考えながら、いつしか僕は、眠りに落ちていた。
 ▼ 28 ョロトノ@ボロのつりざお 17/01/02 22:03:55 ID:B5c9jNzo [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ▼ 29 ララッパ@ヨロギのみ 17/01/02 22:17:09 ID:6r3guzTo NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 30 パー@チャーレムナイト 17/01/02 23:14:31 ID:rXxx.Hsk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アシマリ男の子なのにあの姿に
 ▼ 31 ンホロウ@おおきなキノコ 17/01/03 19:14:32 ID:2PtHu9OY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 32 1◆J44kAZeDOM 17/01/03 20:14:40 ID:OvBdZ3n2 [1/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







7〜16 ポケモンサーカス団ルテー






 ▼ 33 1◆J44kAZeDOM 17/01/03 20:15:16 ID:OvBdZ3n2 [2/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
7-○2

光が差し込んでいる。

眩い、朝の陽ざしが、テントの隙間から覗く。

オイラたちは、大きなテントで寝泊まりをしている。

食事やら、その他さまざまな事も、その場で組み立てるタイプのキッチンで作り、持ち運んでいるお皿で食べているのだ。

ふああと1つあくびをし、オイラは布団から起き上がる。

ふと見ると、ニャビーがいない。

きっと、サーカスの練習だ。前は夜型だったのだけれど、最近は朝も練習している。

まったく、ニャビーは凄い。

なんて苦笑しながら、オイラはサーカス会場のテントへと向かった。
 ▼ 34 1◆J44kAZeDOM 17/01/03 20:15:59 ID:OvBdZ3n2 [3/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
案の定、ニャビーはそこで飛んでいる。

ニャビーの首飾りが揺れ動き、殊更動きを盛り立てていた。

動きにくくないか、と前に尋ねた事がある。すると、慣れるまで練習するから、と言われた。

なんのために、なんで首飾りをしているのだろうか。

サーカスに不要な物はあたしにとっても「不要」。

そうやってすべてを切り捨てて来たニャビーが、初めて付けた――と思われる飾りだ。

なんでかと聞いてみても、ただ曖昧に言葉を濁すのみ。

疑問は残ったが、そうなるともう絶対に答えは帰って来ないだろうからと諦めた。

オイラはただ、ニャビーの練習を眺めている。

本番でも素晴らしいパフォーマンスを見せるが、ニャビーが真に輝くのは、1匹で練習している時だ。

過去の失敗を引きずり、未だ、見られる事に若干の抵抗があるという。

オイラだけが、ニャビーのゼンリョクをお目に掛ける事が許されている……のだと思う。


アシマリ「おはよ、ニャビー」


そう声を掛けるが、彼女は返事をしなかった。
 ▼ 35 1◆J44kAZeDOM 17/01/03 20:16:30 ID:OvBdZ3n2 [4/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
オイラは外に出て、朝の陽ざしを体に浴びる。

みんなはまだ眠っている。

秋も、そろそろ終わりに近付いて、朝の空気は冷え込んでいた。


アシマリ「寒っ」


思わず声が出る。オイラはのびをして、練習を始めた。

体を動かせば、あったまる。

鼻からバルーンを吐き出し、それを地面に設置。

それに飛び乗って、トランポリンの要領で飛び跳ねる。

そんな動作を繰り返し、思った。

オイラのパフォーマンスは、水だ。

当然、濡れると寒い。


アシマリ「はっくしゅん!」
 ▼ 36 1◆J44kAZeDOM 17/01/03 20:17:47 ID:OvBdZ3n2 [5/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
8-△3

ニャビー「で、何カゼ?」

アシマリ「かもしれないっくしゅん!」


呆れた。

まあ、水使うんだから、寒いのは当然かもしれないけれど、体調管理ぐらいはしっかりして欲しい。

あたしなんか、カゼなんかとは次元の違う体の悩みを抱えているというのに……。

年頃のポケモンなら、種類にもよるが経験する変化。

あたしは、それを恐れる。

体が大きくなる、つまり、バランスが取りづらくなるという事。

進化は、空中ブランコ乗りにとって、命取りだ。

団長は気付いていないらしいけど。

まあ、そんなとこがエクリプスらしいと言えばエクリプスらしいのだが。
 ▼ 37 1◆J44kAZeDOM 17/01/03 20:19:32 ID:OvBdZ3n2 [6/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アシマリは鼻ぐずつかせている。バルーンを作るのに、一番重要な部位だ。

幸いというかなんというか、今は公演のない期間。

だからまあ、ゆっくり治す事に専念してもらえばいいのだけれど……。


アシマリ「どうしよっしゅん!」

ニャビー「とりあえず、あたしにうつさないでよ。体あっためる?」

アシマリ「お願い」

ニャビー「すぅ……『ひのこ』っ!」


息を吸い込むと、朝の毛づくろいで舐めとった毛に点火し、一気に放出した。


アシマリ「うわっちぃ!」


温まる、というよりどちらかというとダメージを食らっているような気がしなくもないが、まあアシマリは水タイプだ。大丈夫だろう。


アシマリ「あったまった……かなあ?」

ニャビー「もっと行く?」

アシマリ「遠慮しとく……」
 ▼ 38 1◆J44kAZeDOM 17/01/03 20:20:23 ID:OvBdZ3n2 [7/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
9-◇4

アシマリの叫び声で目が覚めた。

何匹か、起きだしてきている。

そんな事をぼんやりと眺めている内に、アシマリの叫びという物の意味を把握し、慌てて駆け出した。


モクロー「アシマリどうかしたっ?!」

アシマリ「いや、カゼひいちゃって……あっためてもらおうと思ったら、炎技ってやっぱ痛いね……っしゅん!」

モクロー「……とりあえず、治療しよう。お薬とかはあるはずだから」


心配して損した。

炎技は僕には効果抜群でもアシマリにはいまひとつ。それほど苦しい物じゃないはずだ。

叫び声の緊急性はそんな物でしかなかったのだ。

と、ここで思い直す。

カゼの方は、充分問題だ。

こちらは速く治さなければならない。


アシマリ「たはっ、まさかカゼひくとはねっくしゅん!」
 ▼ 39 1◆J44kAZeDOM 17/01/03 20:21:11 ID:OvBdZ3n2 [8/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
10-○3

オイラはベッドに寝かされた。看病は、エーフィが買って出てくれている。


エーフィ「ブラッキー、子どもの頃病弱でさ。よく看病してたんだ」

アシマリ「そうなんだ……」

エーフィ「うん。落ち着いたら病院に行かないとね」

アシマリ「うんっくしゅん!」

エーフィ「まあ、最近気温差激しいもんね。それなのにずぶ濡れで外出歩いてたら、いくら水タイプでもそりゃカゼひくよ」

アシマリ「はぁ……。辛いなあ」


要するに、今の時期、朝は練習ができないって事なのだ。

オイラのパフォーマンスには水が付き物で、つまりはそういう事だ。

ため息が零れるが、そこに咳が紛れ込んだ。
 ▼ 40 1◆J44kAZeDOM 17/01/03 20:21:43 ID:OvBdZ3n2 [9/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エーフィ「行く前に……変装した方がいいよね。アシマリ、一応エクリプスの売れっ子な訳だし」


世界を救ったサーカス団、エクリプス。

そこの中でも特に目立っているのは、たぶんオイラとモクロー、そしてニャビーの3匹だ。

だから、自分で言うのもなんだけれど、かなり周りの注目を集めてしまう。よくも悪くも。

オイラ自身、注目されるのは大好きなのだけれど、目的地まで急ぎたい時とかはたまに煩わしく感じてしまう事もある。

そんな時のために、ブラッキーは変装を施してくれるのだ。

本当に手先が器用で、オイラ、正直羨ましい。


ブラッキー「じっとしててね……」

アシマリ「くしゃみが出るかもしれないけど……」


頑張ってこらえる、しかない。


ブラッキー「わかった。なるべく急ぐ」
 ▼ 41 1◆J44kAZeDOM 17/01/03 20:22:33 ID:OvBdZ3n2 [10/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブラッキーは言葉に違わず手早くオイラの変装を終わらせた。

モクローに確認してもらうと、「やっぱ凄いな……。手早くやってこれか」と感嘆のため息。

つまり、大丈夫という事だ。


エーフィ「じゃ、行こっか、アシマリ」

アシマリ「うんっくしゅん!」


オイラはエーフィと2匹、テントから出て、病院への道を辿り始めた。

秋の陽ざしは、うららかに輝いていた。

冷え込んだ体を温めるような、そんな明るさだった。
 ▼ 42 1◆J44kAZeDOM 17/01/03 20:23:09 ID:OvBdZ3n2 [11/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キュワワー「カゼですか。まあ、季節の変わり目ってのは、かかりやすい時期ですしね」


お医者さんのキュワワーが、オイラを見てそう言った。

彼女の目は、真剣そのものだ。


アシマリ「どのぐらいで治りますか?」

キュワワー「とりあえず……『いやしのはどう』で回復しますので、後は一晩眠ればすぐかと」

アシマリ「よかったぁ……」

エーフィ「大丈夫そうだね。もうしばらくここに滞在する事になりそうだし」

キュワワー「まあ、後はあなたの回復力次第ですね。では行きますよ……」


キュワワーの体から穏やかなオーラが発せられる。

それにあてられたオイラは、なんだか元気になって行くように感じた。


キュワワー「はい、おしまい。それじゃ、待合室で待っててくださいね」

アシマリ「はあい」
 ▼ 43 1◆J44kAZeDOM 17/01/03 20:24:03 ID:OvBdZ3n2 [12/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
待合室のイスに座って、会計を待つ。

その時間が退屈で、ボーっと周りの話に耳を傾けていた。

と、オイラの耳が「サーカス」という単語を拾い上げ、その会話に一気に引き込まれて行った。


「……ス団ルテー、だったっけ」

「あー、そんな名前だったような気が……」


親子の会話は、そのままサーカスに関する話へと移って行った。
 ▼ 44 1◆J44kAZeDOM 17/01/03 20:24:34 ID:OvBdZ3n2 [13/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「なんか、ケルンって最近サーカスの誘致に力を入れてるらしいのよ。ほら、エクリプスだって来たでしょう?」

「うん。凄かったって、友達が言ってたよ」


こそばゆい。オイラたちのパフォーマンスを見て凄いと言ってくれたポケモンが、確かにいる。

その事実が誇らしくて、オイラはエーフィと目を合わせ、微笑んだ。


「どうする? カゼ治ったら、行く?」

「いいの?! やったー!!」


サーカス団ルテー。

初めて聞いた名前だけど、オイラたちのライバルになる訳だ。覚えておこう。

はっくしゅん!
 ▼ 45 1◆J44kAZeDOM 17/01/03 20:25:04 ID:OvBdZ3n2 [14/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
11-◇5

さて、アシマリも病院に向かった事だし、僕は僕で、ニャビーに関して少し調べてみよう。

と言っても、僕にできる事なんて、そう多くはない。

情報が出揃えばそれを考えるのはできるけれど、あいにく僕は、情報収集がそれほど得意ではない。

今の今まで、かなり打ち解けた今でも、ニャビーの過去を正確にはとらえていなかったのだから。

一応、前いたサーカス団の名前は、エクリプス入団前に調べが付いている。

ネメシー。それが、ニャビーが元いたサーカス団の名前だ。

そこで、ニャビーはミスを犯した。

そのミスが原因で追いやられ、エクリプスに流れ着く。

そんな流れなのだが、進化を拒む理由は見えて来ない。

本来なら喜ばしい物を、頑ななまでに拒む彼女は、一体何なのだろう。

思い返せば、ニャビーには謎が多い。

生まれた頃からサーカスばかりと言っているが、どうしてそんな事になっているのか。考え出すとキリがない。
 ▼ 46 1◆J44kAZeDOM 17/01/03 20:26:10 ID:OvBdZ3n2 [15/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そう考えると、僕の今までって平凡極まりないよな、なんて考えてしまう。

そりゃ、両親との死別なんて出来事はあったけれど、それだって劇的な物があった訳ではない。ただの病死だ。

まだ幼かった自分は、それでも懸命に事実を消化して、受け入れた。

死別した両親は、それでも僕に遺産を残してくれていた。

生活は楽ではなかったけれど、劇的に悲惨な目にも遭っていない。

それに、僕は、そんな生活をしていたからこそ、アシマリに出会えた。

アシマリとの出会いは、たぶん、これから先注がれるはずであった両親の愛を埋め合わせるには充分な出来事だろう。

結局、通り一遍の楽な暮らしではないけれど、ニャビー程の波乱万丈なポケ生を送っている訳ではないのだ。


モクロー「進化を嫌がる、か」


とりあえずは、ネメシーについて、もっと調べるのが先決だろう。

ニャビーの過去は、そして憂いは、きっと、そこに収束する。
 ▼ 47 1◆J44kAZeDOM 17/01/03 20:26:42 ID:OvBdZ3n2 [16/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
12-△4

サーカス団ルテー。

名前は知っている。それどころか、たぶんあたしは、ネメシー時代、何度かその公演を見ているはずだ。

だから、不意にアシマリがその名前を出した時、あたしの胸をよぎったのは一抹の懐かしさだった。


アシマリ「知ってる?」

ニャビー「知ってるも何も、見た事あるよ。有名だし、ルテー。アシマリはないの?」

アシマリ「実はオイラ、サーカスを見たの、エクリプスのを除いて1回だけなんだ。確か……なんだったっけなぁ。小さい頃だったから、よくは覚えてないんだけど」

ニャビー「そう。それであんた、ずっとサーカスに憧れてた訳?」

アシマリ「うん。あの時の強烈なイメージが忘れられなくて。あのイメージのお陰で、オイラはモクローと出会うまで生き延びられた」


生き延びる。その単語の強烈さを、あたしは一瞬スルーしかけた。

慌ててそれを掴み直し、そして問う。


ニャビー「生き延び……あんた、何があったのよ」
 ▼ 48 1◆J44kAZeDOM 17/01/03 20:27:13 ID:OvBdZ3n2 [17/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アシマリ「ああ、いやさ、パパが夜逃げして」


なんでもない事のように話すアシマリ。

けれど、さすがのあたしも、衝撃に撃たれた。

夜逃げ。その不穏な単語が、ふつふつと胸に迫る。


アシマリ「まあ、それでもなんとかやって来られたのは、その時の思い出のお陰かな」

ニャビー「なるほど……。あんたの原動力は、そんなとこにあったんだ」

アシマリ「うん。オイラ、サーカスの力を知ってる。だから、オイラも、誰かにそれを与えたいんだ。

      もちろん、サーカスはたぶん、オイラに向いてたんだと思う。やってて楽しいのは間違いないし」

ニャビー「……ありがとね、話してくれて」

アシマリ「え、なんでお礼言うの? ねえなんで?」


あたしはそれを無視した。

当のアシマリがそれを辛いと思ってないのなら、そう決め付ける理由なんてどこにもない。

ありがとう、なんて、必要ないのだ。
 ▼ 49 1◆J44kAZeDOM 17/01/03 20:28:24 ID:OvBdZ3n2 [18/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
13-○4

エーフィにサイコキネシスでベッドに強制連行された。

ニャビーとの会話もだから、それで切り上げになった。

ボーっと思考を巡らせる。オイラが昔見たサーカスって、どこの誰だったっけ……。

ん、誰?

自分の思考の言葉尻を捉えて、オイラは首を捻る。

サーカス団全体ではなく、個人の事を考えている。

一体どういう事だろう。サーカスは全体で紡ぐもの。誰か1匹だけのものじゃないのに、それをわかっているはずなのに。

過去の事となると、誰かぼんやりとした1匹のシルエットが脳裏によぎる。

せめてそのポケモンの種族だけでも特定しようと試みたけれど、1つの像を結ぶ事はなかった。


アシマリ「まあ……無理だよね」


幼い頃の記憶なんてないに等しい。

それだけを頼りにオイラが考えるだけで真実を掴めるとは思えない。

モクローならなんとかなるかもしれないけれど、オイラの推理なんてテキトーなのだから。
 ▼ 50 1◆J44kAZeDOM 17/01/03 20:29:00 ID:OvBdZ3n2 [19/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
結局、そのまま眠ってしまい、目覚めた時にはもう、オイラは完全に元気になっていた。

1つあくびをすると、オイラは立ち上がり、外を眺める。

辺りは暗く、風が吹きすさぶ。

もう夜だ。まだ夜と言うべきか。


エーフィ「あっ、起きたんだ」


オイラの様子を見に来たのか、エーフィが近付いて来て、そう言った。


アシマリ「うん。もう元気だよ」

エーフィ「よかった……。凄いね、お医者さんも明日には治るとしか言ってなかったのに……」

アシマリ「たはは」

エーフィ「ごはんできてるよ。ほら、早く食べちゃって」

アシマリ「はーい」
 ▼ 51 1◆J44kAZeDOM 17/01/03 20:29:43 ID:OvBdZ3n2 [20/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
14-◇6

アシマリが病院に行っている間、僕はネメシーについて調べていた。

図書館に行って、新聞で調べてみた。

ニャビーがやって来たのはもう10年近く前なのだという。年齢を聞いた事はないけれど、恐らく当時まだ5歳だ。

その時期の、サーカスに関する記述を調べてみた。

新聞に載るような事かはわからない。けれど、10年前と言えば、僕もまだ5歳(つまり、目算では僕とニャビーは同い年。ちなみにアシマリは2つ下だ)。

その頃の事なんて、ほとんど覚えていない。その時代について知る事が、全くの無駄になるとも思えなかった。

想定外の当たりを引き当てるなんて淡い期待は、だからしていなかった。

して、いなかったのだ。


モクロー「えっ」


あわや叫ぶところであった。幸いそれは押し止めたが、僕の目は、物凄い記事を見付けていた。


『サーカス団に勤めるニャヒート氏(12)が一昨日を最後に消息を絶っている事がわかりました』


そこから、僕は慌てて記事を読み込んだ。
 ▼ 52 1◆J44kAZeDOM 17/01/03 20:30:35 ID:OvBdZ3n2 [21/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サーカス団のニャヒート。

ニャヒートと言えば、ニャビーの進化形だ。

そんなニャヒートが、ニャビーのエクリプス入りと同時期に失踪――

奇妙な符合だ。気にせざるを得ない。

記事からは、あまり詳しい事は読み取れなかった。ニャビーとの関連も、ネメシーの文字も見当たらない。

けれど、全くの偶然であり得ようか。


モクロー「調べるっきゃないな」


そう呟いて、僕は顔を上げる。

10年前となると、覚えているポケモンも限られているだろう。

相当サーカスに詳しい、大人だ。
 ▼ 53 1◆J44kAZeDOM 17/01/03 20:31:12 ID:OvBdZ3n2 [22/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
となると……。

エクリプスの面々の顔を思い浮かべてみるも、首を横に振らざるを得ない。

ニャビーとアシマリは年齢的にも精神的にも訊けない。

団長は、ニャビーの失敗の事すら当時は知らなかったという。

エーフィとブラッキーがいたミリスの街は、そういった情報からは相当疎い街だ。知っているとは到底思えない。

他のメンバーだって、サーカスの詳しさで言ったら団長と似たり寄ったりだ。

生憎、僕のコネはそれほど広くない。

故郷、ラサーシャならそれなりに知り合いぐらいはするのだけど、ここはラサーシャから遠く離れているし、そもそも別れを告げようとも思わないぐらいの遠い関係じゃ、尋ねる気にもなれない。

となると、誰がいいだろう。
 ▼ 54 1◆J44kAZeDOM 17/01/03 20:32:24 ID:OvBdZ3n2 [23/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルテーの話題を聞いたのは、そんな悩みを持て余している時だった。


エーフィ「ってな訳で、ルテーってサーカス団がもうすぐケルンに来るんだってさ」

フーディン「へえ。ううん、後学のために見てみるかな……」


そう団長が呟いたのを、僕は聞き逃さなかった。


モクロー「それ、どういう事ですか?」

フーディン「ああ、お帰りモクロー。いや、ここケルンに、サーカス団ルテーってのが来るらしくてな。俺もちょっと見ておこうかなって思ったんだ」

モクロー「そうなんですか……。よし、僕も連れてってください」
 ▼ 55 1◆J44kAZeDOM 17/01/03 20:32:58 ID:OvBdZ3n2 [24/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
即決即断は、僕の美学とは反するのだけれど、(しっかり考えて、最高の状態で進めるのがポリシーだ。いわゆる完璧主義である)これに関しては強ち間違えでもないだろう。

ルテーの面々に会えるかもしれない。何しろ僕たちは「世界を救ったサーカス団エクリプス」なのだ。

サーカス団同士、面識を増やすのはいい事であろう。

そう踏んでくれれば、話を聞くのも容易い。

きっと、ネメシーの事も知っているだろう。エクリプスがそういう情報に疎すぎるのは、ニャビーの件で証明されている。

普通のサーカス団なら、知っている可能性も高い。


フーディン「ああ、大歓迎だ。もう何匹か連れて行こうと思ってたしな」

モクロー「ありがとうございます!」

エーフィ「あたしは……いいかな。練習してるよ」

フーディン「了解。俺もモクローも外すから、エーフィが残ってくれるのはありがたいよ」


真面目さでは、おそらく今話してる3匹がトップクラスだろう。ニャビーとアシマリは全体についてほとんど考えないし。


エーフィ「まあ、いなくても大丈夫だとは思いますけどね」


苦笑いを浮かべたエーフィ。僕も首を1周巡らせた。
 ▼ 56 1◆J44kAZeDOM 17/01/03 20:33:47 ID:OvBdZ3n2 [25/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
15-○5

ごはんを食べながら、オイラはモクローから、ルテーの公演を見に行く? と尋ねられ、二つ返事で頷いた。


アシマリ「だってもぐもぐ他のサーカス団とかもぐもぐほとんどもぐもぐ見た事ないしもぐもぐ」

モクロー「食べながら喋らない」

アシマリ「あっ、ごめん……」


慌てて飲み込んで、続けた。


アシマリ「他のサーカス団がどんななのか、気になるんだ。もしかしたら、何か思い出すかもしれないし」

モクロー「思い出す?」

アシマリ「オイラがエクリプスに入る前に1回だけ見た本物のサーカス」

モクロー「あー、そういやそんな事言ってたね」

アシマリ「うん。全然思い出せなくってさ。今日、ニャビーと話してて、ふっと気になったんだ」
 ▼ 57 1◆J44kAZeDOM 17/01/03 20:34:38 ID:OvBdZ3n2 [26/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
モクロー「何話したの?」


そう問うモクローに、オイラは答えて言う。


アシマリ「そう、それがちょうど、ルテーの話だったんだ。今までに見たサーカスが、エクリプスのとそれだけだなって話につながって」

モクロー「へー。まあ、何にせよ好都合だね。よし。一緒に行こう!」

アシマリ「うん!」


と、オイラはふと気になった事を尋ねた。


アシマリ「で、いつ見に行く?」

モクロー「アシマリとエーフィが聞いて来た以上の情報はないし、明日にでも団長が調べて来ると思う。初公演を見る事になるのかな」

アシマリ「了解。じゃ、食べるね」


それだけ言うと、オイラは勢いよくごはんをかきこみ始めた。

ブラッキーの料理は本当においしくて、病み上がりの体に沁みわたって行くような感じだった。

思わず顔がニヤつく。おいしいのだから仕方がない。
 ▼ 58 1◆J44kAZeDOM 17/01/03 20:35:08 ID:OvBdZ3n2 [27/27] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニャビー「ルテーの公演か……。行く。他のサーカス見るのって勉強になるし」

アシマリ「そう言うと思ったよ。他のみんなにも聞いたらしいけど、結局行くのはオイラ、ニャビー、モクロー、ダンチョーの4匹だけみたい。

      みんな見た事あるんだって。エーフィたちは除くけど」

ニャビー「……これでさすがに誰も見た事ないじゃ、サーカス団として恥ずかしいしね。うん、よかった」


頷くニャビー。オイラはどう返事をすればいいのかわからず、曖昧に微笑んだ。

見上げると、月が煌々と輝いている。

風が吹き抜け、オイラは1つ、くしゃみした。
このページは検索エンジン向けの機能制限版の旧ページです。
下URLから閲覧下さい。
https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=491425
  ▲  |  全表示398   | <<    前    | 次100 >> |  履歴   |   スレを履歴ページに追加  | 個人設定 |  ▲      
                  スレ一覧                  
荒らしや削除されたレスには反応しないでください。
書込エラーが毎回起きる方はこちらからID発行申請をお願いします。(リンク先は初回訪問云々ありますがこの部分は無視して下さい)

. 書き込み前に、利用規約を確認して下さい。
レス番のリンクをクリックで返信が出来ます。
その他にも色々な機能があるので詳しくは、掲示板の機能を確認して下さい。
荒らしや煽りはスルーして下さい。荒らしに反応している人も荒らし同様対処します。




面白いスレはネタ投稿お願いします!

(消えた画像の復旧依頼は、お問い合わせからお願いします。)
スレ名とURLをコピー(クリックした時点でコピーされます。)
新着レス▼