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【SS】オシャマリ「ポケモンサーカス団エクリプス!」

 ▼ 1 1◆J44kAZeDOM 17/01/02 21:42:26 ID:LvCDM3Hw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







プロローグ  0 アシマリは語る






 ▼ 359 1◆J44kAZeDOM 17/01/08 20:09:31 ID:0e8Z7aUk [1/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ガオガエン「無事か、ニャヒート……」

ニャヒート「お兄ちゃんは……」

ガオガエン「もう、駄目だ。アシマリ、こいつをバルーンで連れ出せ」

アシマリ「えっ、オイラ?」

ガオガエン「お前のバルーンなら、飛べんだろ1、2匹ぐらい」

アシマリ「でも……」


確かに、やろうと思えば、どこまでも空へ上るバルーンは作れなくもない。

けれど、その中に、ポケモンを入れて……?


ガオガエン「お前なら出来る。ニャヒートを助けてくれ。モクロー、アママイコを連れて、まずは逃げろ」
 ▼ 360 1◆J44kAZeDOM 17/01/08 20:10:02 ID:0e8Z7aUk [2/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
上空しか、逃げ道は残されていない。それは、確かだ。

モクローは、飛べる。アママイコを運べるかはともかく、それ自体は可能だ。

オイラのバルーンも飛べる。ニャヒートと、それからオイラを運べるかはともかく。

けれど――ガオガエンが助かる道は、もう残されていない。

飛べるバルーンにするのに、割れないタイプだと重すぎる。

最低限の硬さは、把握している。

けれど、2匹。どうだろう。ガオガエンが入ったら、まず無理だ。


モクロー「ガオガエン、お前は……」

ガオガエン「お前に俺を運べるか? バルーンで、俺を運べるか?」







アシマリ「……やるよ。オイラが、2個作ればいい話でしょ」
 ▼ 361 1◆J44kAZeDOM 17/01/08 20:10:43 ID:0e8Z7aUk [3/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニャヒート「アシマリっ!」

アシマリ「モクロー、先に逃げて。草タイプは、火事の中にいたら真っ先に死んじゃう。

      大丈夫。オイラは水タイプ。少しぐらいじゃ死なないよ」

モクロー「わかった。来たはいいけど足手まといみたいだったな。行くよ、アママイコ。覚悟してっ!」

アママイコ「うん!」


モクローが、足でアママイコをがっちりつかみ、その翼をはためかせた。

苦しげに歪むモクローの顔。

けれど、確かに、浮上していた。


アシマリ「これでよし。ガオガエン、行くよっ!」


オイラは、その浮くタイプのバルーンをガオガエンめがけて発射した。
 ▼ 362 1◆J44kAZeDOM 17/01/08 20:11:19 ID:0e8Z7aUk [4/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ガオガエンの体を問答無用で取り込んで、バルーンは浮上を始める。


アシマリ「出来た……最後は、オイラとニャヒート」

ニャヒート「……ありがとう、アシマリ」

アシマリ「そーいうの、無事助かってからにしてよ」

ニャヒート「それもそうね。来て」

アシマリ「行くよっ!」


オイラは、また同じバルーンを創り、ニャヒートをその中に取り込んだ。

オイラはそこに飛び込む。オイラが飛び込む程度で割れるバルーンではなく、浮きながら、バルーンはオイラも包み込んだ。
 ▼ 363 1◆J44kAZeDOM 17/01/08 20:11:51 ID:0e8Z7aUk [5/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
崩れゆくテントを、オイラはバルーンの中で、ニャヒートと眺めていた。

言葉は、なかった。

ただ、茫然と、その様子を眺めていた。

モクローが、苦しげに羽ばたいている。

落下を始めているが、今のペースだとテントの外には出られる。

オイラは、そちらの心配はしていない。

きっと、高く上がり過ぎる前にダンチョーが見つけて、サイコキネシスか何かで誘導してくれるだろう。

そう、油断していた。

綻びは、想定外の形で発生していた。

ガオガエンが、バルーンを、叩き割ったのだ。


アシ・ヒート「……え?」
 ▼ 364 1◆J44kAZeDOM 17/01/08 20:12:21 ID:0e8Z7aUk [6/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
浮力を失って、ガオガエンは落下していく。

オイラたちの根源にある、あの瞬間よりも、激しい勢いで。


ニャヒート「嘘……でしょ?」

アシマリ「ガオガエン、どうして……」


ガオガエンが、こちらをチラリと見やった……気がした。


ニャヒート「お兄ちゃん……お兄ちゃんっ!」

アシマリ「落ち着いてニャヒート、暴れないでっ! バルーンが割れるっ!」

ニャヒート「わかってる……お兄ちゃん……おにいちゃあああああああん!」


オイラは、何も言えないまま、バルーンが引っ張られて行くのを感じていた。

ただ、ぼうっと、そこに座り込んだまま。
 ▼ 365 1◆J44kAZeDOM 17/01/08 20:13:04 ID:0e8Z7aUk [7/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
55-△18

お兄ちゃんが、落ちていく。

お兄ちゃんが、落ちていく。

お兄ちゃんが、落ちていく。

おにいちゃんが、おちていく。

おにいちゃんが、おちていく。

おにいちゃんが、おちていく。

オニイチャンガ、オチテイク。

オニイチャンガ、オチテイク。

オニイチャンガ、オチテイク。

オニイチャンガ、オチテイク。

オニイチャンガ、オチテイク。






 ▼ 366 1◆J44kAZeDOM 17/01/08 20:13:52 ID:0e8Z7aUk [8/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あたしは、茫然自失なまま、バルーンから助け出された。


フーディン「大丈夫かアシマリニャヒートっ?!」

アシマリ「オイラたちは大丈夫だけど、ガオガエンがっ! バルーンから逃げて、テントに落ちて……」

フーディン「なっ……」

アシマリ「もう、無理だもんね。こんな燃えてたら、もう、入れないし、もう、生きてるはずないし……」


アシマリが、ショックを受けたような、小さな声で話す。

あたしは、正しく、ショックを受けていた。


ニャヒート「どうして……どうしてよお兄ちゃん……」


ポツンと呟いた言葉。しかし、それに応えるポケモンは、いなかった。

あまりに悲しいと、涙もこぼれないらしい。ただ、誰に届くでもない、どうしてを繰り返していた。
 ▼ 367 1◆J44kAZeDOM 17/01/08 20:14:29 ID:0e8Z7aUk [9/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
56-◇19

どうして。

ニャヒートの問い掛けに、けれど僕は、確かに答えていた。

どうしてなんだ、ガオガエン。

どうして、死なないといけなかったんだ。

ネメシーから解き放たれて、妹の成長も確かめて、死ぬような事が、あったのか。

あった、のだろう。どうしてか、僕にはわかる。理由はわからないけれど、そう行動する感情は、僕にもわかる。わかってしまう。

疲れた体はけれど、集中した思考を妨げる。

まずは、休まないといけない。


アママイコ「モクロー……」

モクロー「ごめん、少し、休ませて……」


僕は、倒れ込み、眠りへと落ちて行った。
 ▼ 368 1◆J44kAZeDOM 17/01/08 20:15:03 ID:0e8Z7aUk [10/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
気が付くと、僕たちは、エクリプスのテントにいた。

隣で、アシマリとアママイコが、アシマリのひとつ向こうでニャヒートが眠っていた。

疲れは、取れている。

結構な時間が経っているはずだが、空腹は感じない。

外では、満月が、空の真上に昇っていた。

僕は、ただ、ガオガエンの事を考えたかった。

僕に出来るのは、考える事だけだから。

僕は、首を回し始めた。

手掛かりなんて何もない。何もないけれど、それでも、答えを出す事は出来るはず。

だって、どうしてだかはわからないけれど、僕は、共感しているのだ。

きっと、僕は、知っている。本当は、知っているのだ。
 ▼ 369 1◆J44kAZeDOM 17/01/08 20:15:34 ID:0e8Z7aUk [11/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
――もし、アシマリたちとの会話中に自殺を思い立ったとしても、炎を撒き散らすという行為そのものは、アシマリたちの前では出来ない。

アシマリは水タイプ。初期消火ぐらいなら容易なはずだ。

それが出来なかった以上、実行の瞬間は捉えていない。

けれど、初めから燃やしていて、ずっと炎の中で元来の説得を続けていた、となると時間が合わない。

僕とアママイコは、アマージョと話していた。それなりに時間を取って。

だから、説得を終えて戻った後、炎に気が付き、あるいは他の理由でも、ガオガエンの所に再び行ったのだ。そこで、気が付いた。

この順序である以上、直接の原因は、ニャヒートとアシマリの言葉にある事がわかる。

抱え込んでいた何かが爆発したのだともいえるけれど、それだってきっかけがないと始まらない。

ガオガエンの問題はどこにある。
 ▼ 370 1◆J44kAZeDOM 17/01/08 20:16:15 ID:0e8Z7aUk [12/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
僕は、首を回す。

ただ、首を回す。

思考が、ぐるぐると巡って、唐突にひとつの、ありえるかもしれない解を導く。

――ガオガエン、もしかして君は。

僕の頬を、涙が伝った。

ガオガエン、もしかして、君は。
 ▼ 371 1◆J44kAZeDOM 17/01/08 20:16:45 ID:0e8Z7aUk [13/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
瞬間、僕は、光に包まれた。

ああ、そうか。

僕も、そうなんだ。

僕も、おんなじだ。君と、おんなじだ。

そう気付いたその時、僕は、進化を始めていた。

翼にその力が集まり、光の粒は僕の体を離れ、再構成を始める。

力が溢れ、僕は、ただ、その快楽に身を任せていた。

荒い息。

光が弾けたその時、僕は、フクスローになっていた。
 ▼ 372 1◆J44kAZeDOM 17/01/08 20:17:45 ID:0e8Z7aUk [14/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
57-△19

朝焼けに目を覚まして、あたしは、条件反射のように歩き始めた。

目指す場所は、テント。

あたしの練習が始まる。

今日も、あたしの一日が始まる。

例え、お兄ちゃんが消えようと、あたしの一日は、変わらない。

お兄ちゃんを乗り越えたあたしにとって、もう、どうでもいい事なのだ。

どうでもいい、事なのだ。
 ▼ 373 1◆J44kAZeDOM 17/01/08 20:18:16 ID:0e8Z7aUk [15/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あたしは、ブランコの階段を昇った。

そこに、手紙が置いてあるのに気が付いた。

そこには、ニャヒートへ、と書かれている。

え、と呟いて、あたしはそれを前脚に取った。


ニャヒート「ニャヒートへ……」
 ▼ 374 1◆J44kAZeDOM 17/01/08 20:18:51 ID:0e8Z7aUk [16/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
――

やっぱりここに来る。ニャヒートは、どんな事があっても、ここに来る。

凄いよ。本当に、凄い。あんな事があった直後でも練習出来る。尊敬するよ。

僕には、絶対無理だ。

前置きはこのぐらいにして、僕、ガオガエンの謎、解いたと思うから、ここにメッセージを残した。

ガオガエンは、きっと、君に依存してたんだ。正確には、君に依存されているという事実に、依存していたんだ。

だから、君が、それを断ち切った瞬間、怖くなったんだ。

自分のいる意味が、わからなくなって。

だから、消えた。

どうしようもなかったんだ。君が悪い訳じゃない。誰が悪いって言えば、やっぱり、君たちの運命を狂わせた、両親とネメシーなんだと思う。

だけど、責めちゃ駄目だ。君には、サーカスがある。サーカスで、見返すだけだ。それ以上は、しちゃいけない。

止めないといけないんだ。負の連鎖は。

気負いすぎないで、ニャヒート。

君のブランコは、正しく世界一だ。間違いない。

フクスローより。
 ▼ 375 1◆J44kAZeDOM 17/01/08 20:19:33 ID:0e8Z7aUk [17/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
――

フクスロー。

モクローの、進化形。

モクローは、一体どうしたというのだろう。

いつ、進化したのだろう。

あたしは、練習する気も失せて、ベッドに戻った。

あいつに問い質す。なんで直接言わない。もっと、ちゃんと説明しろ。あたしじゃ、呑み込めない。そんな事。

ベッドに辿り着き、あたしは、ふと気が付く。

アシマリは、まだ眠っている。けれど、モクローと、アママイコがいない。

昨日は本当にイレギュラーだった。もしかしたらもう、ごはんを食べに出ているのかもしれない。

あたしは踵を返し、食堂に向かった。
 ▼ 376 1◆J44kAZeDOM 17/01/08 20:20:14 ID:0e8Z7aUk [18/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブラッキーが、料理を作っているだけだ。

そこには、まだ、他に誰もいない。

当然だ。ベッドには、2匹とブラッキ―以外、全員眠っていたのだから。


ニャヒート「ブラッキー」

ブラッキー「どうしたの、ニャヒート」

ニャヒート「アママイコ、知らない?」

ブラッキー「アママイコ……そういや今日、疲れてるのかな。来ないんだけど」

ニャヒート「そう、ありがとう」


食堂にもいない。となると、団長のとこか?

アマージョたちルテーメンバーは、テントを失って、寝床がない。まさか野宿させる訳にもいかないし、どこかで眠っているはず。

そうか、2匹は、きっとそこだ。


ニャヒート「ブラッキー。ルテーメンバー、どこで寝てんの?」

ブラッキー「団長の部屋。他に場所がないからって」

ニャヒート「ありがとう」
 ▼ 377 1◆J44kAZeDOM 17/01/08 20:20:53 ID:0e8Z7aUk [19/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あたしは、団長の部屋に向かった。

そこで、フーディンは困惑したように立っていた。

ルテーの面々が寝ている部屋で、眠れるようなポケモンじゃないからだろう。


ニャヒート「団長。モクロー、いや、フクスロー知りません?」

フーディン「ああ……知ってる。あいつから、手紙を預かってる。これを、アシマリに渡してくれ」

ニャヒート「手紙……」

フーディン「頼む。説明は、全部それに書いてるはずだ」

ニャヒート「わかりました……けど」


あたしは、再び練習用テントへ向かった。

アシマリも、きっとそこにいる。
 ▼ 378 1◆J44kAZeDOM 17/01/08 20:21:44 ID:0e8Z7aUk [20/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
思った通り、アシマリはそこにいた。

所在なさげにバルーンを飛ばしている。

そこに、あたしは声を掛けた。


アシマリ「ニャヒート」

ニャヒート「団長が、モクロー……ううん、フクスローから手紙を預かったって」

アシマリ「え、手紙? なんでそんな事……」


あたしは手紙を渡す。アシマリは、それを広げて読んだ。


アシマリ「アシマリ、ごめん……」
 ▼ 379 1◆J44kAZeDOM 17/01/08 20:22:17 ID:0e8Z7aUk [21/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
58-◇20

フーディン「え、なんでだ? なんで、いきなり……」

フクスロー「ごめんなさい」

フーディン「いや、謝らなくていいんだ。けど、どうして」

フクスロー「……僕、気付いたんです。僕は、ここにいちゃ、駄目だって」

フーディン「そんな事ないぞ? お前は、うちの大事な副リーダーだ。実質のリーダーは、お前だし」

フクスロー「それでも、僕は、駄目なんです。僕が、駄目なんです」

フーディン「どういう事だ?」

フクスロー「……僕は、サーカスにゼンリョクを尽くせてません。本当は、アシマリの夢でしかなくて、僕は、違ったんです」

フーディン「……それで?」

フクスロー「僕は、ずっと、アシマリに依存されて来ました。だけど、僕だって、依存してたんです。アシマリに依存されている、って事実に。

       ガオガエンも、そうなんだと思います。ニャヒートが依存を断ち切って、依存を断ち切れないまま、自ら命を投げ出した。

       僕、痛い程、わかったんです。その事実が、僕を責めた。

       だから、僕は、自分を見付けたいんです。お願いします」
 ▼ 380 1◆J44kAZeDOM 17/01/08 20:22:48 ID:0e8Z7aUk [22/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
フーディン「そうか。……残念だが、俺はお前を止めないよ。お前がそう思うなら、それがお前にとっての真実だ。

       俺的には、お前にもいて欲しいんだが、こっちの都合でお前を曲げる事は出来ない」

フクスロー「……ありがとう、ございます」

フーディン「けど、これだけは約束してくれ。自分を見付けたら、エクリプスの公演に来てくれ。そして、もっかい俺たちに、結論を教えてくれ」

フクスロー「……はいっ!」
 ▼ 381 1◆J44kAZeDOM 17/01/08 20:23:49 ID:0e8Z7aUk [23/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
僕は、エクリプスをやめる。

ガオガエンも、僕と同じだ。

僕は、だから、断ち切らないといけない。

自分をしっかり見付けたい。

そうしないと、僕は、壊れてしまう。

いつか、アシマリの成長に、壊れてしまう。

アシマリは、もう、僕がいなくても大丈夫だから。エクリプスも、もう僕がいなくても大丈夫だから。

アシマリの事を最後に一目見ようとして、やめた。

きっと、アシマリを見たら、僕は、駄目だ。アシマリは、母性本能を掻き立てる才能がある。

僕は、それに囚われて、やめる事をやめてしまうだろうから。

僕は、誰にも声を掛けず、ただ、フーディンに手紙を預けるだけで、僕は消えるつもりだった。


けれど、アママイコは、気付いていた。
 ▼ 382 1◆J44kAZeDOM 17/01/08 20:24:25 ID:0e8Z7aUk [24/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アママイコ「モクロー……ううん、もうフクスローだね」

フクスロー「うん。アママイコ、どうして……」

アママイコ「いなかったから、探しちゃった。どうしたの」

フクスロー「僕、エクリプスをやめるんだ」


先程の説明を、僕は繰り返した。

僕の不安を、嘆きを知っていたアママイコは、頷きながら聞いてくれた。

アママイコは、そして言う。


アママイコ「そっか。フクスローは、やめるんだ」


アママイコは、それから少しの沈黙の後、僕に向かって微笑みながら、こう言った。


アママイコ「あたしも連れてって。あたし、あなたを支えたいから」
 ▼ 383 1◆J44kAZeDOM 17/01/08 20:25:02 ID:0e8Z7aUk [25/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
フクスロー「え?」

アママイコ「お願い、あたしも連れてって」


微笑みを消して、真剣な顔で続ける。


アママイコ「あたし、あなたが好きなの。お母さんも優しくなって、もう、ルテーは心配ないから」

フクスロー「え、でも……」


来てくれて、嬉しいのは間違いない。

けれど、アママイコは、いいのか。

せっかく、せっかくアマージョに声が届いたというのに。


アママイコ「お願い、フクスロー。あたしを、連れてって」
 ▼ 384 1◆J44kAZeDOM 17/01/08 20:25:58 ID:0e8Z7aUk [26/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
真剣な目で上目遣いをしてくるアママイコに、僕は、もう、自制の限界だった。

思わずアママイコを掴み、その唇に、乱雑に自らの唇を寄せた。

そして、強く、キスをした。強く、強く。

僕とアママイコは、しばし、そのまま佇んでいる。

溶けあい、混ざり合い、僕は、快感の波に襲われた。

アママイコも僕に腕を回し、力強く引き寄せる。

ずっと、そうしていたかったけれど、朝焼けに、僕は我に返り、唇を離した。


フクスロー「アママイコ……大好きだ」

アママイコ「あたしも……」

フクスロー「君は、後悔しないの? 僕と来て、後悔しない?」

アママイコ「うん。あたしのファーストキス、奪った責任取ってもらうからねっ」


アママイコは、ニッコリと微笑んだ。

僕は、アママイコと顔を見合わせ、頷く。

そして、テントから離れる道を、進み始めた。
 ▼ 385 1◆J44kAZeDOM 17/01/08 20:26:34 ID:0e8Z7aUk [27/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
僕は、ふと振り返る。

エクリプスは、僕にとって、いろいろな事を教えてくれた場所だ。

心安らぐ、実家のようなもの。

皆の暖かさを、僕は、一生忘れないだろう。

けれど、行かないといけない。

僕の居場所は、もうないのだ。


フクスロー「ありがとうっ!」


思わず、叫んだ。

近所迷惑も考えず、僕は叫んだ。


フクスロー「ありがとうっ――!」
 ▼ 386 1◆J44kAZeDOM 17/01/08 20:27:11 ID:0e8Z7aUk [28/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







フクスロー「ポケモンサーカス団エクリプス!」






 ▼ 387 1◆J44kAZeDOM 17/01/08 20:28:23 ID:0e8Z7aUk [29/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アママイコ「スッキリした?」

フクスロー「うん。行こう」


僕たちは、朝焼けに向かって、歩き始めた。

これからのビジョンなんて、わからない。

けれど、アママイコがいれば、僕は、きっと見付け出せる。

僕の答えを。アママイコとの、幸せを。

何しろ僕は、考えるのが得意なんだから。
 ▼ 388 1◆J44kAZeDOM 17/01/08 20:28:53 ID:0e8Z7aUk [30/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
59-○20

アシマリ「フク……スロー?」


オイラの目を、涙が滴る。

オイラは、フクスローからの手紙を読んでいた。

オイラは、フクスローを縛り付けていたの?

フクスローは、そんなに気に病んでいたの?


ニャヒート「アシマリ……」

アシマリ「ううん、泣いちゃ駄目、だよね。フクスローは、これから、幸せになってくんだもん。

      今いないって事は、きっと、アママイコも一緒だよね、手紙にはないけど、一緒にいるんだよね」

ニャヒート「たぶん」

アシマリ「だったら、幸せになるんだもん……喜ばないといけないのに、そのはずなのに……うわああああ……」


オイラは、泣いた。

ただただ、泣いた。
 ▼ 389 1◆J44kAZeDOM 17/01/08 20:29:37 ID:0e8Z7aUk [31/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
フクスロー。

君の分まで、オイラ、エクリプスで、頑張るよ。

君が答えを見付けた時、誇れるオイラでいられるように。

オイラ、頑張るから。だから、フクスロー。

頑張って。

オイラたちは……

ポケモンサーカス団エクリプスの一員であり……

そして何より……

親友なんだから!

親友、なんだから……。
 ▼ 390 1◆J44kAZeDOM 17/01/08 20:30:41 ID:0e8Z7aUk [32/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エピローグ 60 オシャマリを語る

60-△20

あたしから見た、アシマリの話をしよう。

アシマリの今と、これから未来のオシャマリの話を。

彼は、あれからも努力を重ね、今や、あたしに追い付け追い越せの、破竹の勢いだ。

サーカスは楽しくて、フクスローとの別れも乗り越えて、アシマリは、進化した。

あれ以来、オシャマリは、バルーンの実力に磨きを掛け、「いつか帰って来たフクスローに、見せるんだ。オイラのゼンリョクを。オイラの答えを」と笑う。

きっと、引きずってはいない。あの時以来、涙は見せていない。

――けれど、時折、あたしの前で、悲しげな表情を浮かべる事がある。

それでも、オシャマリは、きっと、大丈夫。

オシャマリは、あたしとは真逆。全てを受け止め、別れを直視し、出会いを喜び、そんな中で自らの技術を伸ばす。それがオシャマリだ。

すべてを捨てて打ち込むあたし。すべてを取り込み打ち込むオシャマリ。いいじゃない、こういうのも。

別れさえ、悲しみさえ糧に変えて行けるのが、オシャマリだから。

――そして、それは、あたしには到底たどり着けそうにない境地だ。お兄ちゃんを振り切ったように見えるなら、それはただ、記憶を押しやってるだけでしかない。

あたしたちは、同じ経験をしようと正反対で、だからこそ、最高のライバルなのだ。
 ▼ 391 1◆J44kAZeDOM 17/01/08 20:31:19 ID:0e8Z7aUk [33/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ところで、あの事件の後、ルテーは解散し、エクリプスに吸収合併された。

火災に関して、消えたモクローに疑いがかかりかけたけれど、アマージョがアリバイを証明し、だからエクリプスは無罪放免。

ルテーのあたし監禁事件に関しても、あたしはあんな手紙があったから、咎めたてはしなかった。だから、ルテーも無罪だった。

けれど、テントは失われ、指導者もこの世を去った。

結果として、フクスローが抜けた穴をアマージョの司会が補うという、とんでもない贅沢な事になっている。

エクリプスの人気はその影響もあってかどんどんと高まり、今やネメシーを軽く追い越しかねないレベルに達していた。

あたしの復讐が完成する時も近い。

ささやかな意趣返しでしかないけれど、あたしは、それで満足だ。

オシャマリも、笑顔であたしを祝福した。

あたしは、お礼を言って、そのまま日常に戻って行く。
 ▼ 392 1◆J44kAZeDOM 17/01/08 20:32:07 ID:0e8Z7aUk [34/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
――

2匹で朝練をしていた。

そんな時、不意にオシャマリが、叫ぶ。


オシャマリ「フクスローぉぉおおおおお!」


オシャマリ「オイラは、オイラは元気だよぉぉおおおお!」


オシャマリ「元気にやってるぅぅううううう!」


オシャマリ「オイラ、待ってるからねぇぇええええ!」


あたしは、驚いてそちらを見詰めた。

オシャマリは、こちらを見て、笑顔で言った。


オシャマリ「……ありがとね、いっつも、オイラの目標でいてくれて」

ニャヒート「いいよ別に。あたしだって、追いかけてくれるあなたの事、感謝してるよ」
 ▼ 393 1◆J44kAZeDOM 17/01/08 20:33:32 ID:0e8Z7aUk [35/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
オシャマリは、あたしを見据え、真顔で言った。


オシャマリ「オイラ、君の事、大好きだ。いっつも、オイラの目標でいてくれる、君の事が、大好きなんだ」


あたしも、それに応えて、真剣な顔で言う。


ニャヒート「あたしもよ、オシャマリ。あなたの事、あたしも好き。あたしを追いかけてくれる、あなたの事が、大好き」


互いに、顔を見合わせたまま、笑う。

そして、少しずつその距離を近付け、そして――






慌てて離し、言った。


ニャヒート「こういうのは、全部終わってからだよ。ね?」

オシャマリ「そっか。それもそうだよね。よーし! 練習頑張るぞ!」


オシャマリの笑顔に、あたしも頷いた。
 ▼ 394 1◆J44kAZeDOM 17/01/08 20:34:05 ID:0e8Z7aUk [36/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







【SS】オシャマリ「ポケモンサーカス団エクリプス!」 完






 ▼ 395 ウオウ@ミックスオレ 17/01/08 20:35:46 ID:0e8Z7aUk [37/37] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
当SSはこれにて完結です
最後までお読み下さり、ありがとうございました


以下サーカス団の名前の由来
ネメシー(ネメシア)の花言葉:正直・過去の思い出

ルテーはエーテルを逆から読んだだけです
エクリプスの由来は前スレにて
 ▼ 396 ルチャイ@バトルレコーダー 17/01/08 21:05:36 ID:3nOmt1yA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙です!
めっちゃ良かったです!
 ▼ 397 ードリオ@ゴーストジュエル 17/01/08 22:14:37 ID:Trfmc1z2 NGネーム登録 NGID登録 報告
乙ァマリでした
 ▼ 398 ータクン@しろぼんぐり 17/01/08 22:39:26 ID:7c/KuCsQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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