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SS

【旅SS】女「ポケモン達とぶらり旅」

 ▼ 1 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/13 19:50:23 ID:WB.XOoew [1/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
『さぁてスタートラインにならぶはそうそうたる面々。皆様レースへの意気込みがうかがい知れるというものです』
 
 
 
女(初めて参加する私にもわかる。ここにいる人たちの覚悟は、生半可なものじゃない)
 
女(でも、私がそれに負けているか、と聞かれれば、違うと言える)
 
女(そうだ、この日のためにリサーチを重ねたのだから)
 
女(選手達のコンディション、例年の記録、あらゆる場面での立ち回り。果ては日常のなかのささいなクセまでをも調べあげた)
 
女(すこしたりとも研究を怠るようなマネはしなかった)
 
 
 
『今年は例年よりも参加人数が多く、白熱の戦いが予想されます!』

 

女(ライバルがいくら多かろうと関係ない。私は私の持てる限りを尽くし、この戦いに勝利する)
 
 
 
『みなさんお待ちかね、ポケモン水上レースは間もなくスタートですよー!』

『栄えあるアルトマーレグラスの優勝メダルは誰の手に?』

 
 
女(優勝賞品がなにかなんてことはどうだっていい。私の目的はそんなところにあるのではないのだから)
 
女(メダルやトロフィー、杯よりも重要なものが、このレースの果てにはある) 
 
 
 
 
ネイティ「ポゥ」

ネイティ「ポゥ」
 
ネイティ「ポゥ」
 
ネイティ「ポゥ」
 
ネイティ「ヨォー!」
 


───水しぶきを上げ、水上レース参加者たちが飛び出していく。
 
 

こわもての男「始まったな」

こわもての男「アルトマーレ、ポケモン水上レースが!」

 ▼ 17 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/13 20:12:56 ID:WB.XOoew [2/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女(そしてこちらのスマホいじりをしている方は)チラリ
 
おとなりさん「……」ポチポチ
 
女(私の隣室に泊まっている男性)
 
女(チェックインから部屋を出るまでずっと、壁越しになにかの作業音が聞こえていた)

女(寝癖をまったく直さずにいるあたり、没頭して取り組んでいるんだろうけど)
 
女(何してるんだろう)
 
おとなりさん「ん」
 
宿屋さん「みなさん、お待たせしました。夕飯ができましたよ」
 
おねえさん「肉団子いっぱいですよぉー」ニハー
 
ギャンブラー「チッ」スッ
 
セーラー服「どーも♪」
 
女「」
 
女(てか、宿のスタッフさんはあの2人しかいないんだ……)
 
女(なら、お食事の仕組みがこうなのも当然か)
 
だんなさん「すみません、もう始まってますか?」ヌッ
 
宿屋さん「いいえ、これからです」ニッコリ
 
おくさん「あ」
 
おくさん「やっほー」フリフリ
 
女「」ペコリ
 
おねえさん「お客様がたー、ポケモンちゃんのごはんもありますからぁ、そちらのテラスに出してあげてくださぁい」
 
レパルダス「なぁん」
 
ビリリダマ「ジジジジ」



おくさん「サーナイト、デスカーン君つれてってあげて」
 
サーナイト「さぁ。さななないと」スイー
 
デスカーン「ですかん」



おとなりさん「いってきな」ポン
 
エレキブル「ぶっしゅるる」ノッシノッシ
 ▼ 18 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/13 20:13:51 ID:WB.XOoew [3/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ギャンブラー「出てこーい」ポポン
 
セーラー服「あらよっと」ブンッ
 
ニャース「みやあ」トテトテ
 
サイドン「シャアッイドン!」ノッシノッシ
 
サメハダー「シャッダァ!」ザプン
 

 
女「ほいっ、と」ポポポポポン
 
コータス「こぉ……」
 
ムクホーク「ぴぃーっ!」スイーッ
 
ドリュウズ「りゅうず!」
 
オノノクス「ふしゅう」ノビノビ
 
シザリガー「………じゃきっ」

 
女「」タッタッ
 
女「出ておいで」ポン
 
ラプラス「ぷらぁ♪」チャプン
 
女「相席だけど、なかよくね」
 
サメハダー「サッシャァ」
 
シザリガー「……おれは?」
 
女(君は歩けるでしょうが)ジトッ

「「「「「「「おぉー」」」」」」」
 
おくさん「あなた、大所帯なのね」ビックリ
 
女「え?」

だんなさん「すごいな……僕達はあんまりたくさん持てない方だったからうらやましいよ」
 
おくさん「1匹ずつでせいいっぱいだったものね」

女「ふたりとも旅をしていたんですか?」

だんなさん「うん、10歳になってから4年くらいかな」

おくさん「こう見えて、ジムバッジもけっこう集めたんだから」フフン
 
だんなさん「でも、結局リーグには1度も参加できなかったんだけどね」ハハハ
 
女「そうだったんですか……」
 
ギャンブラー「おっほ、オノノクスなんて初めて見た」ペタペタ
 ▼ 19 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/13 20:15:17 ID:WB.XOoew [4/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
オノノクス「??」
 
女「おわっ」
 
セーラー服「ごめん、あいつはバカなんだ。治らない方の」
 
女「えっ」
 
セーラー服「しかし君、いいトレーナーなんだな。みんなよく育てられてる」
 
女「ありがとうございます」ハニカミ
 
女「自慢の仲間なんです」
 
宿屋さん「みなさーん。座って座ってー!」
 
 

───にぎやかな夕食。
 
この日、※※※※※が一緒に食卓を囲んだ人数は、人生最多となった。
 ▼ 20 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/13 20:15:50 ID:WB.XOoew [5/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



2日目に続く。
 ▼ 21 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/13 20:20:30 ID:WB.XOoew [6/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「やっと見つけた」
 
男「?」
 
男「」クルックルリ
 
「こっちこっち」
 
男「????」
 
コータス「僕みたいなやつ知らない?」
 
男「えっ……しゃべってる?」
 
コータス「ねぇ。僕みたいなやつ知らない?」
 
男「え、えぇっ? お前みたいなやつ? ポケモン?」
 
コータス「あぁー、そうそれ。ポケモン」
 
コータス「僕みたいなやつ、いるんでしょ?」
 
男「し、知らないよ……」
 
コータス「あ、そう」ノソリノソリ
 
男「???????????」ボーゼン
 

 
コータス「ねぇねぇ」
 
トレーナー「!?」
 
コータス「僕みたいなポケモン知らない?」
 
トレーナー「しゃべってる……」
 
コータス「知らないの?」
 
トレーナー「し、知らねぇ。初めて見たな……」
 
コータス「あ、そう」ノソリノソリ
 
トレーナー(って、しゃべるポケモンとか、レアなんじゃないのか!?)
 
トレーナー「」キュル、キュルッ
 
トレーナー「行けっ!」
 
シャワーズ「しゃあわ!」ポンッ
 
トレーナー「ゲットするぞ! バブルこうせん!」
 
シャワーズ「しゃ、わぁーっ!!」ポポポポッ
 
コータス「おぶっ」 ベベベベベ
 
トレーナー「やっぱりほのおタイプか! いいぞシャワーズ!」
 ▼ 22 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/13 20:21:58 ID:WB.XOoew [7/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コータス「こぉ」ボォ
 
コータス「───ぉあ」ボオオオオオオオ!!
 
トレーナー「あちちちっ!」
 
トレーナー「かえんほうしゃか!」
 
トレーナー「だけどこっちはみずタイプ! そんな攻撃効くもんか!」
 
コータス「」ボオオオオオオオ
 
トレーナー「」
 
コータス「」ボオオオオオオオ!!
 
 
 
 
 
 
トレーナー「───長くない?」
 
コータス「」ボフッ
 
コータス「……ふぅ」ノソリノソリ
 
シャワーズ「」死ーん
 
トレーナー「シャワーズ!!」
 
 
 
コータス「ねぇ」
 
少女「はひゃっ?!」
 
少女「」ク ル
 
コータス「僕みたいなポケモン、知らない?」
 
少女「ポケモン、が……しゃべった……?????」
 
コータス「知らないのぉ?」
 
少女「えっ。えっと、あ。見たことある」
 
少女「西の方に廃坑があるんだけど、たしかそこにいっぱいいた、かも」
 
コータス「西ってどっち?」
 
少女「え、えぇっ? 西って言ったらそのぅ……ええっと……」
 

 
「見つけたぞ!!」
 
少女「えぇ!?」ビクッ
 ▼ 23 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/13 20:23:06 ID:WB.XOoew [8/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コータス「」クルリ
 
トレーナー「みんな、あいつだ!」
 
トレーナー「あいつが俺のシャワーズを!!」
 
「あれがしゃべるポケモンか!」
 
「俺がゲットしてやる」
 
「わたしのドククラゲで!」
 
「いけっ、ゴローン!!」
 
少女「な、なになになに!?」オドオド
 
トレーナー「おい、お前も見てないで手、かせよ!」
 
トレーナー「しゃべるポケモンなんて、なかなか手に入んないぞ!!」
 
少女「えぇ!?」
 
コータス「……」スッ
 
コータス「ふんっ!」ズドンッ!!
 
トレーナー「うおっ?」グラッ
 
「すげェパワー!ありゃ絶対強いぞ!」
 
コータス「〜…っ」ミシッ
 
コータス「もう、すこし……」バコンッ
 

ばきっ。
 
 
めきめきめきめきっ、みしみしっ、ごりっ!!
 
 
 
トレーナー「地面が、割れて……」
 
「うわぁあ!!ゴローーーン!!」
 
「うわっ、ああああ落ちるぅっ!!」
 
「いやぁぁああああ!!」ヒュウウウ
 
 
 
少女「」ガタガタガタガタ
 
コータス「で、西ってどっち?」
 ▼ 24 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/13 20:23:46 ID:WB.XOoew [9/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少女「あっち!」
 
少女「ひっ……」ダッ
 
 



 
コータス「あっちか」
 
コータス「……しゃべんない方がいいのかなぁ」ノソリノソリ
 ▼ 25 ニラン@たんけんセット 17/10/13 23:58:10 ID:VGGzmKBo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
待っていた
支援
 ▼ 26 テラ@ダークストーン 17/10/14 00:30:48 ID:jSWQHS2E NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
しえん(,,°^°,, * )です
 ▼ 27 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 21:32:04 ID:SnXzOk3Y [1/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女(あ、またこの夢だ)


 
───目がくらむほどの真っ白な世界。
 
光の差す方に向かって、彼女は歩いている。
 
足取りはしっかりとしていて、不安はあるが迷いはない。
 
しかし、ただひとつ確信しているのがこれだけ眩しい光に向かって歩いている自分の後ろには、取り返しのつかないほどに真っ黒の影が延びているんだろうな≠ニいうことだった。
 
取り返しのつかないほどに、という言い回しを選んでいる自分にイマイチ釈然としないのだが、そうとしか思えないのがうっすらと怖かった。
 
それでも歩を進めることに抵抗はなく、彼女は歩き続けた。
 
そんな恐怖すらも、胸に宿った希望に比べたらかすんでしまうようなものだったからだ。
 
この胸の奥で、炎のようにたぎる希望に比べれば。
 
 

女「」パチクリ
 
コータス「おはよー」

女「……おはよう」

コータス「最近、目覚めがいいねぇ」
 
女「うん、なんでだろうね」
 
コータス「手がかからなくなるのは助かるけどね。僕、手ぇないしさぁ」

 
 
───のそり、と顔を洗うために起き上がった。
 

 
 
寝癖を探して白髪を見つけて、げんなりとしてため息が出た。
 
よく見ると、全体的に髪の根元が色落ちしているように見える。
 
そろそろ染め直さなくては。
 
この状態だと、頭頂部が薄毛に見えることがあるのだ。
 
つくづく自分の髪が嫌になる。
 
と、鏡越しにそれとなくこちらを見ていたコータスに気付いた。
 
どことなく心配そうにしているように見えて、それが気にかかった彼女は、思わず訊いてしまっていた。
 
タイミングというのもあったのかもしれない。



女「……コータスって、いつからそんなだっけ」
 ▼ 28 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 21:34:16 ID:SnXzOk3Y [2/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コータス「はい?」
 
女「なんかさ……」
 
女「前は面倒見がいいってだけだったけど……今は、もう少し優しくなった気がする」
 
コータス「なにか違うの?それ」
 
女「……わからない」
 
コータス「はぁ?」
 
女「前の方が、コータスはよくわからない子だったから」

女「でも、実際は違うのかも」 
 
女「あなたのことを理解できなかった私が、最近はいくらかわかるようになった……ってだけの話なのかも」
 
コータス「……なんでもいいけどさぁ」
 
コータス「寝る前に開店時間ちょうどに駆け込むぞ≠チてはしゃいでたのは君じゃなかった?」
 
女「そうだったっ!」アタフタ
 
 

───アルトマーレの一角にある宝石屋。

 
 
女「こんにちは!」
 
店主「おや、昨日の」
 
女「はい。あれ≠ワだ残ってますか?」
 
店主「残ってるもなにも……仕入れてからかれこれ5年になるからねぇ」
 
店主「昨日今日で唐突に売れやしないさ」テクテク
 
店主「」ガラ、コトッ
 
女「」ホッ
 
店主「しかし、お金は……」
 
女「用意しました」スッ
 
店主「おお。これは……、ではお預かりします」
 
店主「ひぃ、ふぅ、み、よ……」パチパチ

女「」ドキドキ
 
店主「確かに。しかしおじょうさん、君みたいな子どもには大金だったろうに。」

店主「どうやって用意したんだい」
 
女「それはその……1発当てた、とだけ」
 ▼ 29 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 21:35:44 ID:SnXzOk3Y [3/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
店主「ふむ」チラリ
 
女「」ニガワライ
 
店主「……かしこまりました」 スッ
 
店主「はい、どうぞ」
 
女「ありがとうございます」
 
店主「チャレンジ精神はいいが……未成年なのだからね、ほどほどに」
 
女「!」ギョッ
 
店主「大きなお世話だろうがね」ニガワライ
 
女「……ありがとうございます。大事にします」ペコリ
 

 
───キーストーンを手に入れた。
 
 
 

 
 
コータス「買えてよかったね」
 
女「うん」
 
コータス「でもさぁ、僕らのメンツにメガシンカするのっていないんでしょ?」
 
コータス「極力荷物を減らすタイプの君が、そんなもの買うなんて、珍しいこともあるもんだねぇ」
 
女「ん、それは……」
 

 
───たしかに、必要品であっても可能な限りパソコンに預けているほど、自分は手荷物を厳選するタイプだ。
 
土産物屋に寄っても、消えものしか買わないようにしているくらいである。
 
しかし、今回は違った。
 
なんとなく引かれるようなものを感じて入ってみた店───しかも、ふだんだったら絶対見向きもしない宝石屋───そのかたすみにちょこんと置いてあったそれを見た瞬間。
 
鳥肌が立った。
 
そこまでの巡り合わせに、運命的≠ニしか言いようのないものを感じたからだ。
 
店主に話を聞いて、それが確信に変わった。
 
これは、私を待っていた





 ▼ 30 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 21:38:42 ID:SnXzOk3Y [4/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
店主『5年前に仕入れたんだけれど、全然買い手がつかなくてね』

店主『この石を持ってきた人は価値をわかっていたようだったが……』
 
店主『わたしも実際の用途は最近知ったんだがね、ほら、話題になってただろう』
 
店主『知っている人もたびたび来たのだが……結局ね。この通りさ』
 
店主『宝石としての価値はない、にしても、買い取ってしまった以上捨てるわけにもいかなかったから』
 
店主『来月までこのままだったら、博物館にでも寄贈しようかと思っていたところさ』

 

女「運命を感じた」
 
コータス「その運命に、君のお財布事情は噛んでなかったみたいだけどねぇ」クククッ
 
女「い、いいんだよ、結果オーライでしょこういうのはっ」アセッ
 
女「それに、いつか見つかるかもしれないよ? コータスナイト、とか。ムクホークナイト、とか。メガシンカするポケモンとか仲間になるかも」
 
コータス「……いつか≠ヒぇ」
 
コータス「君の口から、そんな言葉が出てくるようになるとは思わなかったよ」ボソッ
 
女「……クリップが付いてるのがグッド」イソイソ
 
女「ポーチの内ポケにでも付けとこう」ホクホク
 
 
 
───旅立つときにもらったウエストポーチ。
 
かさばらず、それでいて物のおさまりがいい。
 
とても重宝している。
 
 
 
女「ってあれ? 何か言った?」
 
コータス「今日のお昼はどうするの?≠チて」
 
女「どうしよっか」



───昨日と同じ店に来た。
 
 
 
女「王道のカルボナーラをいただく」パク

女「嗚呼、なんて美味しいのかしら!」
 
女「これに比べたらレトルトのカルボナーラなんて……なんであんなドゥルドゥルなんだろ」
 
女「麺も嗚呼……嗚呼……いちいちおいしいっ」
 ▼ 31 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 21:40:13 ID:SnXzOk3Y [5/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コータス(あー嗚呼あー嗚呼字面と音感がうっさいなー)モグモグ

女「山椒がいいアクセントになってる!ベーコンとソーセージのサイズがちょうどいい!おいしい大きさ!」
 
女「おいしいっ!///」
 
客1(……カルボナーラ食べよう)
 
客2(ボロネーゼの気分だったけどカルボナーラにしよう)
 
客3(カルボナーラ食べたくなってきた)
 
客4「(子ども舌ってのもかわいいもんだな)カルボナーラにするか」
 

 
───これには店員も半笑い。
 
 
 
女「さてさて、デザートはっと……」
 
女?「……」コトッ
 
女(さすがに軽めのにしないとな……ジェラートにしよう)
 
女?「??」
 
女「あ、見る?」
 
女「私決めたからどーぞ」
 
女?「〜!」フムフム

シザリガー「あり?」
 
ラプラス「(汗)」
 
女「」
 
女「………………」
 
女「…………ん?」

女「ん? んんん?」
 
 
 
───メニューを見たそうにしていたので、なんの気なく渡したのだが。
 
鏡にメニューを渡していたらしい、とか思ったら、そいつ≠ヘメニューを受け取って興味津々にページをめくっている。
 
顔つき、髪型から服装まで何もかも自分とまったく同じの人間が。
 
 
 
女「そっ……くり、ていうか……」

女?「〜♪」ニコニコ
 ▼ 32 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 21:42:40 ID:SnXzOk3Y [6/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「私だ(滝汗)」ブワッ


 
───そっくりさんにはとりあえず注文したジェラートを与えて、彼女はポケモン図鑑を開いた。
 
このそっくりさんについて調べるためである。



女(最初はメタモンが化けてるのかと思ったけど……)

女「あなた、しっかりしてそうだもんね」

女?「〜?」ニコニコ

 
 
───器用にスプーンを持ってジェラートを食べている。
 
なぜか、ついてきたスプーンは器の横においたままなのだが。

そっくりさんはいつのまにかもう一本スプーンを持っていて、それを使って食べているのだ。

  
  
女(それにメタモンだったら、もっと間の抜けた雰囲気をかもし出してる)

図鑑『へんしん≠ヘ、メタモンだけが覚えるわざではありません』

図鑑『えかきポケモンドーブルは、スケッチという技を使うことで、へんしんができるようになります』

図鑑『また、特殊な手順を踏むことによって、へんしんを覚えるポケモンはいます』
 
図鑑『未発見のポケモンのなかにへんしん≠ナきるポケモンがいる可能性もあるでしょう』

女「へぇ……」チラ

女?「〜……///」パクパク

女(『備考……へんしんを使わなくとも、特性で他の姿に化けるポケモンはいます』)

女(『ばけぎつねポケモンのゾロアークは、特性イリュージョンによって五感を狂わせ、あたかもへんしんしているかのように見せるだけでなく……』)

女(『周囲の風景なども錯覚させることが可能です』)
 
女(『遠近感を狂わせたり、平衡感覚を狂わせ、彼らは人を騙すことがあるのです』)

女(『このように、外界の情報を操作して、自分の姿を変化させるポケモンも、多数いることでしょう』)

女「やっぱり、メタモン以外にも、人間のふりができるポケモンはたくさんいるんだね」

 
 
───目の前のそっくりさんにしても、実際にスプーンを使っているのではなく、そのように見せているだけなのかもしれない。
 
人間らしさの表現として。
 ▼ 33 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 21:43:54 ID:SnXzOk3Y [7/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「ていうか……」
 
そっくりさん「?」ニコニコ

女(屈託のない笑顔でまじまじと見られると恥ずかしくなってくる)

女(しかも、自分の顔でだなんて)カァア
 
女「あの。私に変身するのはいいんだけど、せめて格好変えてくれないかな?」

女「ちょっと照れくさいから……」ソワソワ
 
そっくりさん「!」

そっくりさん「」コクン

そっくりさん「」クルッ

そっくりさん「」クルリ

女(周りを見回してる)

そっくりさん「」アハッ


 
───そっくりさんが見ていたのは、お向かいのブティックのショーウィンドウだった。


 
そっくりさん「」ユラッ

女「まさか」

そっくりさん「」パラパラパラパラ…

女「………ッ」


 
───間近で見ると見事なものだった。

そっくりさんが眼を閉じた直後、顔以外の箇所がミリ単位で反転するかのように変質していき、1秒と経たずに彼女は着替えを終わらせてしまったのだ。


 
女「……便利そう」


 
───そしてその格好は、ピンクのワンピースに、赤のパンプスというものになっていた。涼しげ。

ワンピースは、アクセントに白のフリルが縫い付けられており、パンプスにはかわいらしいリボンがついていた。

いつの間にか、こじゃれたイヤリングまで着けている。
 
キャスケットは気に入ったのか、かぶったままだ。

その上───
 ▼ 34 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 21:46:23 ID:SnXzOk3Y [8/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女(コンタクト外して、髪の色抜いてる……ッ!!)クワッ

女「な、なんでそんなかっこなの!?」カァア

そっくりさん「?」クビカシゲ

そっくりさん「」ニハー

女「恥ずかしい////」



───所作がかわいい、と思いかけて全力でブレーキを踏んだ。
 
自分で自分(の艶姿)をかわいいと表現してしまうのは、あまりにも背徳的だ。
 
同時に、これはヤバイ、という一言が頭のなかで弾幕をはる勢いでリフレインしていた。
 
なにせ、目の前に現在進行形で自分の黒歴史製造に励む刺客がいるのだ。
 
どうにか、どうにかせんとくん。
 
彼女はその思いに囚われていた。
 
結果、そっくりさんがジェラートを完食するのを待ったのち、逃げるように会計を済ませて、店を出たのだった。
 
 

女「ついてくる……」
 
そっくりさん「♪〜♪」ルンルン
 

 
───フリフリな装いに身を包んだ自分が、童女のようなふるまいで歩いている。
 
すさまじい心労がそこにあった。
 
不思議なもので、店の片隅で起きていたこんな珍事を、誰も気に止めていないようだった。
 
店で、と思い返して。
 
───私に変身するのはいいんだけど、せめて格好変えてくれないかな?───
 
恥ずかしさのあまり口走った内容には瓜二つ状態から離れてくれれば、あとは好きなようにしていいから≠ニいうニュアンスを含んでいたように思う。
 
そのニュアンスを正確に把握して、抜け道を通るようにこの服装にチェンジしたのなら、だいぶしっかり(ちゃっかり?)した知能である。
 
 
 
女(なまじ要求をひとつ通してしまってるだけに、それに重ねてもっと地味な格好にして≠ニも言いづらい)
 
 

───格好を変えてから上機嫌なのも、言いづらさに拍車をかけている。

だがしかし、だがしかし。
 
ストレッサーでしかない。
 ▼ 35 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 21:48:11 ID:SnXzOk3Y [9/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
というか、ここまでどれだけこの姿をさらした?

と思い返してしまったのが運の尽き。

久しく忘れていた諦めが、泥のように覆い被さってきたような気がした。
 
いろーんなひととすれちがったよなぁ。
 
なんかもう、いまさらかなぁー。
 
 

女「……まぁいーか」ガックシ

そっくりさん「?」ドシタノ?
 
女(ポケモンに化けられる、とか、こんな経験、そうそうないだろうし)
 
女「あなた、トレーナーはいるの?」
 
そっくりさん「」ウウン
 
女「アルトマーレには詳しい?」
 
そっくりさん「♪」コクンコクン
 
女「それじゃあ、あなたの好きなところを見せてくれるかな?」
 
そっくりさん「!」オッケー
 
女(ここはひとつ、観光ガイドをやってもらうとしよう)

女(もうそれくらいやってもらっチャオ!!)ヤケクッッソ
 
 

女「」テクテク
 
そっくりさん「〜♪」テッテッ
 
女(かれこれもう1時間。きまぐれに角を曲がったり、道を乗り換えたりしながら、路地を歩いている)

女(いったい、どこにつれていこうとしてるのやら)
 
そっくりさん「」ピタッ
 
そっくりさん「!」アレアレ
 
女「どれどれ?」
 
女(……洗濯物を干してる女の人?)
 
そっくりさん「」オーイ
 
おばさん「ん………おや、おんなじ顔」ピコーン
 
おばさん「ちょっと待っててー!」
 
女「……知り合い?」
 ▼ 36 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 21:49:23 ID:SnXzOk3Y [10/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 
そっくりさん「」ワクワク
 
おばさん「お待たせ」
 
おばさん「はい、どうぞ」
 
そっくりさん「♪〜♪」ウッヒョー
 
おばさん「おじょうちゃんも、どうぞ」
 
女「あ、ありがとうございます」ペコリ
 
おばさん「ま。どういたしまして」ニッコリ
 
おばさん「今日のお友だちはずいぶんお行儀のいい子なんだねぇ」
 
おばさん「気をつけてねぇ」チャオ〜
 
そっくりさん「」バイバーイ
 
女「……なして?」
 
 
 
かごいっぱい の マドレーヌ を てにいれた!
 
 
 
女「そしてまた散歩再開」
 
そっくりさん「」ルンルン
 
女「いったいどこに向かってうっまっ」モグッ
 
そっくりさん「」デショ?
 
女「魔性の味なのだわ……」モグモグ
 
そっくりさん「」アレアレ
 
女「ん、なに……だ、あれ……っ?」
 
コータス(どっかで見たことある)
 
女「地面に、縦一列にマスが描かれて……ときどき左右二つになってる……? 一定の法則にしたがって……ない? なに、これ?」
 
コータス(……おもしろいくらいに動揺してるからこのままほっといてみよう)
 
そっくりさん「」トウッ
 
 
ぴょんっぴょんっぱっ。ぴょんっぴょんっぱっ。
 
 
女「!」
 
女「マスがひとつのところでは片足。左右に並んでるところでは両足をつく。これを一定リズムで進行するゲーム……!!」
 ▼ 37 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 21:49:59 ID:SnXzOk3Y [11/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 

 
───けんけんぱともいう。
 ▼ 38 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 21:51:31 ID:SnXzOk3Y [12/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そっくりさん「〜!」オイデオイデ
 
女「…………ほっ!」ピョンッ
 
 
ぐきっ。
 
 
女「ン゙ア゙ーーーーーーっ!!!!」ジタバタ
 
コータス「弱っわぁ……」
 

 
女「ちょっと休んだら治る」
 
女「私は若いから!!」フンガーッ
 
そっくりさん「(苦笑)」
 
女「……とうっ」ピョンッ
 
女「おあっ……へぁ……ほおっ」グラグラ
 
女「ていっ」トンッ
 
コータス「そこ両足」
 
女「くっそお!」クズレオチル
 
コータス「wwwwww」ケラケラケラ
 
女「」クルッ
 
コータス「」スンッ
 
女「」ジトー……
 
女「………ふんだ」ツーン
 
女「こうなりゃとことんやってやるかんな……」
 
 
 
───めらめらぼーぼー炎が燃え上がってしまったのであった。
 
30分後。
 
 
 
女「ふん、ふんっ、はっ! とお! やっ、はっ! てい、たあ、はっ!」

コータス(武道家かこの娘は)
 
女「どうだ!!」
 
コータス「最低限できただけだからね、それ」
 
そっくりさん「(困惑)」
 ▼ 39 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 21:53:44 ID:SnXzOk3Y [13/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コータス(※※※※※ちゃんはときたまポケモンすら困惑させる)

コータス「次はけんけんぱって言いながらやるんだよぉ」
 
女「KEN・KEN・PA……?」
 
コータス「異国の料理みたいな言い方すんな。片足のとこでけん@シ足のとこでぱ≠セからねぇ。はいがんばれぇー」
 
女「けん、けん、けん=Aアッ」

コータス「えぇー……」
 
コータス「ゲームはさておき、運動がちょっとでも絡むとてんでダメなんだから……」ボソッ
 
そっくりさん「?」
 
コータス「そりゃそうだよぉ」
 
コータス「人間って新しいことに挑むときが一番楽しいもんだからねぇ」
 
コータス「……やっぱあの子もそうなんだな」

そっくりさん「???」
 
コータス「まぁねぇ。最近、ようやくマシになってきたんだ」

コータス「だってあの子は当たり前にいるこどもなんだからさぁ」
 
コータス「何するにも無感動じゃ、気持ちわるいよ」

コータス「それに、才能皆無でも練習すりゃ少しはマシになるもんだからねぇ」
 
そっくりさん「〜?」
 
コータス「無用な面倒をいっぱい負った分、より真っ当になってくれるなら万々歳だよ」
 
そっくりさん「」フリフリ
 
コータス「……そりゃあね」
 
 
 
女「けん、けん、ぱ。けん、けん、ぱ。けん、けん、けん、ぱ。けん、ぱ、けん、ぱ、けんけんけんぱ、ぱぱけんぱけんぱけんけんけんぱ」
 
女「けんぱぱぱぱけんぱぱけんけんけんけんぱけんぱけんけんぱぱぱぱぱぱけんけんぱけんけんぱんけんけんけ」
 
コータス「長い長い長い長い」
 
そっくりさん「」クスクス
 
 

女「このゲームたのしい!」プハー

コータス(長いコースだったなぁ……)
 
女「これ、ここから発展できそうだよね……両端からスタートしてじゃんけんで負けたらスタート地点から。相手のスタート地点に踏み込んだら勝ち、とか」
 
コータス「ある」
 ▼ 40 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 21:55:09 ID:SnXzOk3Y [14/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「片足跳び固定で曲線型ルートの上を行くとか」

コータス「似たようなのある」
 
女「……コータスよく知ってるね」キョトン
 
コータス「ブロッケン現象だのイマジナリーフレンドだのを知ってるのにけんけんぱを知らないのはさすがにおかしい」
 
女「どんな感じのルールなの? 教えてよ」ウズウズ
 
コータス「バリバリの観光地に来て、なんでけんけんぱにハマってんのさぁ」グッタリ
 
そっくりさん「」アハハハハハ

女「腹抱えて笑ってんじゃん……ん?」
 
ハネッコ「ねっはー」
 
女「……ハネッコ?」

女の子A「おねーちゃんたち、ここで何してんの?」キョトン

女「君たち、このハネッコの?」
 
女の子A「そうだよ。で、何してんの?」
 
女「マスがひとつのところでは片足をついてけん=B左右に並んでるところでは両足をついてぱ=Bこれを一定リズムで進行するゲーム」
 
女の子B「おねえさん、けんけんぱするには老けすぎてない?」
 
女「始めるには遅すぎるなんて人生にはないんだよ。正しいより楽しいだよ」
 
女の子A「やらなかったことやってみよう。失敗も思い出≠チて?」
 
少年「人生とかけんけんぱで論じる題材じゃねえよ……なんだよ俺たちまだこどもだぜ」
 
少年「モラトリアム楽しんでる身空に、未来のにおいをただよわせないでくれよ」
 
そっくりさん「???」
 
女の子A「うわ、そっくり……あ、きのうの子か」
 
女の子B「今日のカッコすごいじゃん。なんで?」
 
女「い、いいじゃんそれは!」
 
コータス「こぉ……」
 
女「そ、それよりホラ、この子もけんけんぱ好きみたいだから!みんなでやろう!///」

女「おやつもあるよ!」
 
ガールズ「「ギブミーギブミー」」
 
男の子(装いがちがうけど顔立ちがおんなじ……あっ(察し)




 ▼ 41 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 21:56:19 ID:SnXzOk3Y [15/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
───けんけんぱをはじめ、かけっこやハネッコさかし、ゴーリおににソーナンスおに、といった初めての遊びをたくさんやった。
 
童心にかえって(おぼえている限り童心に満ちていた幼少期などないが)、外遊びに興じて、馴れない遊びにボロ負けしまくって。
 
もらいもののマドレーヌをふるまって。
 
くたくたになりながら、しかしさわやかな気持ちで子どもたちと別れた。


 
女「……つっ、かれた」トボトボ
 
そっくりさん「?」
 
女「いつも、あんな風に子どもと遊んでるの?」
 
そっくりさん「」コクン

コータス「おじさんと一緒にとびこみ遊びすることもあるって」
 
女「不穏なんだけど。そのおじさんただのダイバーなんだよね?」
 
女「普段着のままだったりしない?手すりの手前に靴そろえて脱いでたりしないよね?」

そっくりさん「」
 
女「……えっ」
 
そっくりさん「!」ピクッ
 
女「ど、どうしたの?」
 
そっくりさん「」アレアレ
 
女「どれどれ?」
 
女「……なんか飛んでったな」
 
女「そっち行ってみようか」
 
そっくりさん「」コクン
 
そっくりさん「」テッテッテ
 
女「……なぜだろう、心にすこし後味のよくないものが残るのは」

 
 
───行ってみた先には、殺風景な広場があった。人もあまりいない。

というか、ひとりとポケモン1匹しかいない。 
 
意外なことに、近くに水場は見当たらなかった。
 
 
 
女「アルトマーレにもこういうところはあるんだね」

女「あれ?」
 ▼ 42 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 21:59:46 ID:SnXzOk3Y [16/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
おとなりさん「」ゴソゴソ

女(となりの部屋の)
 
女(昨日夕飯の時にいたけど、あんまりしゃべらなかったんだよな……)
 
そっくりさん「」アハッ
 
そっくりさん「♪」テッテッテ
 
女「アッ」

 

おとなりさん「130度の時に3翼がちゃんと回ってないな……なんでだ? 重心殻の移動にちゃんと連動してるのは確認したのに……4翼だって対応してる……0Gプラマイ.35くらいまで遊ばせた方がいいか」ブツブツ
 
そっくりさん「???」ソワソワ
 
おとなりさん「……あれ? 君は」
 
女「こんにちは」
 
おとなりさん「えっ、そっち!?」
 
おとなりさん「あれ……宿ではひとりだったよね?」
 
女「」
 
女「妹です」

コータス「」
  
女「アルトマーレの学校で寮生活してるんで、会いに来てるんです」
 
おとなりさん「え? でも家族はいないってきのう言ってなかった?」
 
女(スマホいじいじしてる割に周りの話聞いてるタイプ)
 
女「いや、その……両親が亡くなったとき、別々に引き取られたので……」シュン

女「旅の道すがらですけど……会ってみたいな……って」フシメガチ
 
おとなりさん「! ごめんね。無神経に首をつっこんでしまった」

女「そんな。気にしないでください」
 
女「私もいまだにこんな似ているとは思わなくて……顔を見たとき少しぎょっとしたくらいです」
 
女「別に双子でもないのに……」
 
コータス(嘘を事実で和える高等テクニック……)ドンビキ

コータス(この子最近、息をはくように嘘つくときあるよなぁ。どこでそんなの覚えたんだろ)
 
女「それより、お兄さんはここで何を?」
 
おとなりさん「ああ。俺はここでドローンの調整をやってるんだよ」

おとなりさん「人もいなけりゃ水場もないし、木も植えてない。テスト飛行にはもってこいなんだ」
 ▼ 43 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 22:01:18 ID:SnXzOk3Y [17/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そっくりさん「!」
 

 
───彼の前には、10センチ四方ほどの4脚4翼のドローンがあった。
 

 
女(あの子が見つけたのはこのドローンかな)
 
 
 
そっくりさん「」オホー
 
エレキブル「ぶるぁあ」
 
 
 
───ドローンをしげしげと見ている、と思ったら、いつの間にかはなれた場所にいたエレキブルにからんでいた。
 
腕に掴まってふりまわされている。
 
 
 
女(気移りが早い)
 
おとなりさん「エレキブル、やさしくな!」
 
女「これ、自作ですか?」
 
おとなりさん「そ。いちから作ってるんだ。こいつはここまで進めるのに1ヶ月くらいかかった」
 
女「これを1ヶ月……早いですね」
 
おとなりさん「お、よくわかったね。これはけっこう早くできた方なんだ」
 
おとなりさん「実はこいつの前にも作ってたんだ。そっちは合計で1年くらい使った」
 
女「それは完成したんですか?」
 
おとなりさん「うん。でも、誤操作で失くしちゃって」ヘヘヘ

女(辛い話)ガビーン
 
おとなりさん「たいあたりでやってたところも多かったから、ログも断片的にしか残してなかったんだ」

おとなりさん「いやぁ、まいったまいった」ヘラヘラ
 
女(見るからにハートが強い)
 
女「断片的なログと記憶をたよりに2号機をより早く組み上げるなんて……すごいですね」
 
おとなりさん「いやいや……こんなの全然だよ」
 
女「またまた」ニハ
 
おとなりさん「いやいや」ニマニマ
 
女(満更でもなさそうなのが好感もてる)
 ▼ 44 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 22:02:44 ID:SnXzOk3Y [18/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「……でも、アルトマーレじゃ、地形的にドローンの製作は不向きじゃありませんか?」
 
女「実際紛失してるみたいですし……なんでここでやってるんですか?」
 
おとなりさん「うっ、それを言われるとこたえる」
 
おとなりさん「……まぁ、なりゆきみたいなもんだよ。そもそも俺、ここには病気療養で来たんだ」
 
女「病気」
 
おとなりさん「仕事で適応障害になっちゃってね。休職中」
 
女「技術系なんですか?」
 
おとなりさん「いいや、営業職だよ。ただのサラリーマン」
 
女「それじゃあドローンは……」
 
おとなりさん「ただの趣味。アルトマーレに来るまではずいぶんご無沙汰だったし」

女「趣味でこのクオリティって……やっぱりすごい」
 
おとなりさん「ありがとう。でもまだまだ無駄は多いと思うし、完成にはほど遠いよ」
 
おとなりさん「まだまだかかりそうだ」ニッ

女「」
  
女「……飛ぶところを見てもいいですか?」
 
おとなりさん「はいはい。ちょっと待ってね」
 













 




 ▼ 45 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 22:03:45 ID:SnXzOk3Y [19/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女(飛んでいるあいだ、脚部がプロペラ部のガードになるとか……理にかなってたなぁ)テクテク
 
そっくりさん「〜♪」スキップスキップランランラン
 
女「さすが元気だな……」
 
女「私はスキップができない」
 

 
───そっくりさんはエレキブルとじゃれたり、飛んでいくドローンを追いかけたりと、きまぐれに好き放題やっていた。
 
さすがポケモンは体力が違う。
 

 
女(あのエレキブル……常にドローンからは一定の距離をおいているみたいだった)
 
女(でんきタイプだから電磁波や静電気を気にしてのことなんだろうけど)
 
女(ボールに入ってもらわずに外に出していたのは、きっとそういうこと≠ネんだろうな)
 

 
───彼は、エレキブルを邪険に扱うようなことはしなかった。
 
ドローンに熱中しているのと負けず劣らず、あのエレキブルに愛着があるであろうことは、自然と理解できた。
 
それを考えていると、やはり。
 
 
 
女(ご無沙汰だったドローンに、わざわざ療養先で再燃した理由が気になる)
 
女(……けど、そこに突っ込むのはダメだよね)
 
女(適応障害の病気療養って言ってるくらいだし、デリケートな事情なのはわかりきってるんだから)
 
女(見境ない知的好奇心は悪徳だ)パチン
 
そっくりさん「?」ドシタノ?

女「いましめ」
 
女「そういえば、水場のあるとこに出たね」
 

 
───建物に面して川があるようなタイプの水路ではない。
 
道路沿いに川が流れている、という一般的な川≠ナある。
 

 
女「ここはゴンドラ……」チラッ
 
女「一隻だけいるね」
 
女「……あんまり観光向きな風景じゃないもんな」
 ▼ 46 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 22:04:55 ID:SnXzOk3Y [20/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「一見風情が言えたことじゃないけど、民家が見える程度じゃね……」
 
女「あと目につくものっていったら、せいぜい男の子が流され男の子が流されてる!!!」ガバッ
 
 

男の子「がぼっ……あぶ……」バチャバチャ
 
 

女「超おぼれてる!!」ガーン
 
そっくりさん「」ヨッコラセッ
 
女「ばかばかばかミイラ取りがミイラになるステイステイステイ!」ガシッ
 
女「ラプラス!」ポンッ
 
ラプラス「らぁす?」ザブン
 
女「その子の支えになってあげて!」

ラプラス「ぷらら!」スイーッ
 
男の子「あぅ…………っば」ガシッ
 
女「」ホッ
 
そっくりさん「」ホッ
 
男の子「うおぼっ」ズルッ
 
女「あっ!」
 
ラプラス「?!」
 
女(すべって甲羅に上がりそこなった。水に体力奪われて消耗してるんだ)

そっくりさん「〜?」ドウスルノ?
 
女「大丈夫考えてる!」
  
女「ラプラス!水中に潜って、下からすくいあげるかんじで!」
 
ラプラス「ぷーらら!」ザブン
 
ラプラス「」ザバァン
 
男の子「おぅっへ!ごぼっごほっがはふ……」ゴホゴホ
 
ラプラス「」ホッ
 
女「岸につけて! 落とさないようにね!」ピポパ
 
女「あっ、もしもし……はい、子どもが川でおぼれてて……はい、はい……今、手持ちのポケモンで岸まで運びました。でも、だいぶ衰弱してるみたいで……はい、はい……」
 
そっくりさん「」キョトン
 ▼ 47 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 22:06:14 ID:SnXzOk3Y [21/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





女「たすかったぁ〜……」グッタリ


コータス「なんで君が腰抜かしてるのさ」

女「イヤイヤイヤ、ここで助けそこなってたらもう……死んでた」
 
コータス「死にはしないでしょぉ」 
 
女「救急隊に運ばれていったし、もう私たちの出る幕はない……よね」
 
ラプラス「らぷらぁ?」
 
女「あとでおいしいのあげるね、ありがと」ナデナデ
 
そっくりさん「……」
 
そっくりさん「」ニッコリ
 
女「……もう日が暮れてきたな」ポシュン
 
女「私たち、もう帰ろうと思うんだけど、あなたはどうするの?」
 
そっくりさん「?」ドウシテ?
 
女(しかし、ほんとにボディランゲージがわかりやすいな……まるで書いてあるみたいだ)
 
女「トレーナーがいるわけじゃないんだよね」
 
女「帰るところあるの?」
 
そっくりさん「!」ナルホド
 
そっくりさん「♪」ダイジョブ
 
女「そっか」
 
女「それじゃ……」

 
 
───それにしても、いろいろなことがあった。
 
自分に化けたポケモンと一緒に遊んだり。
 
自分に化けたポケモンにジェラートをおごったり。
 
自分に化けたポケモンと散策したり。
 
化けられた羞恥心や、男の子の川流れといったアクシデントこそあれど、結果的にはトップランクで楽しい日だったかもしれない。

なんだか、このままわかれるのは惜しいな。

そう思ったが、しかし。
 ▼ 48 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 22:08:26 ID:SnXzOk3Y [22/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女(この子は好き勝手にアルトマーレを巡遊して、気まぐれに人間と遊んでるだけだ)
 
女(この自由がこの子のライフサイクルなんだから、それを私が縛るのはよくない)


 
 
 
───後ろ髪を引かれる思いはあったが冷静に思考。
 
そして心をフラットにする。
 
名残惜しさは振り払った。
 
バイバイ、と言おうとした。
 

 
そっくりさん「」ニギ
 
女「おわっ」ビクッ
 
そっくりさん「」ズイッ
 
女(近い)
 
 
 



そっくりさん「」パク、パク、パク、パク、パク
 
 



 
女「……え」
 
そっくりさん「」ニッコリ

そっくりさん「〜!」ダーッ
 
女「………………」
 













女「ま、た、あ、し、た……?」
 ▼ 49 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 22:09:53 ID:SnXzOk3Y [23/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



3日目に続く。
 ▼ 50 ツドン@ボイスチェッカー 17/10/16 22:12:57 ID:PrSvF92E NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
かこつです。
いつもながらとても面白いです。
 ▼ 51 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/19 16:05:46 ID:dMdxHyGk [1/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
そっくりさん「〜!」モグモグ
 
セーラー服「妹さん、よく食べるね」
 
女「(苦笑い)」
 
 

───自分の姿に化けたポケモンと遊んだ翌日。
 
そっくりさんは早朝にやってきて、宿の朝食を遠慮なくいただいていた。
 

 
女(宿まで突き止められてるとは思わなかった) 
 
セーラー服「髪の色とかちがうけど、顔つきなんかほんとそっくりだよね」
 
セーラー服「これで双子じゃないんでしょ?」
 
女「ま、まぁ……」
 
セーラー服「ほら、ケチャップついてる」フキフキ
 
そっくりさん「」テレテレ
 
セーラー服「んー、かわいいやつ」ホホエミ
 
女(いとおしげにそっくりさんの食事をながめるセーラー服さんの横顔には、なぜか陰があるようにみえた)
 
女(何の事情があるのか、無神経に聞くことはできないけど、でも)
 
 
 
───いったい何が、と考えてしまうような雰囲気が、彼女の横顔にはあった。
 

 
女「そういえば、一緒にいたギャンブラーのお姉さんはどうしたんですか?」
 
セーラー服「夜ふかししてて、まだ寝てる」
 
女「なるほど」
 
セーラー服「君は、彼女のこと嫌い?」
 
女「えっ? いや……その……嫌いではないです」
 
女「ギャンブルも、たしなむ程度なら何も問題ないと思います」
 
セーラー服「あいつは賭け狂いなんだよなぁ」ハハハ

宿屋さん「失礼。コーヒーのおかわりをお持ちしましたよ」
 
セーラー服「そういえば宿屋さん、バイトの子どうしたの?」
 
宿屋さん「あぁ。あの子ならデートですよ」ニコニコ
 
宿屋さん「どうぞ」
 ▼ 52 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/19 16:08:56 ID:dMdxHyGk [2/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
女「ありがとうございます」

宿屋さん「ゆっくりしていってくださいね」
 
そっくりさん「〜!」パァァ

女「すみません、突然おじゃましたのに……」
 
宿屋さん「いいんですよ。お客さんはお客さんですから」イソイソ
 
女「」ペコリ
 
セーラー服「宿屋さん、ほんといい人っていうか、おひとよしっていうか」ヤレヤレ
 
女「気持ちのいい人ですよね」
 
セーラー服「ふつうだったら、朝食前に従業員をデートに行かさないって……」
 
女「娘さんだからかわいいんじゃないですか?」
 
セーラー服「でも彼女、あくまでバイトの子だよ?」
 
女「ご家族じゃないんですね」
 
セーラー服「そんな風に思ってるところもあるんだろうけどね。宿屋さん、バツイチらしいから」
 
セーラー服「娘さんがいるって話だよ」
 
女(重ねてるとこもあるのかな)
 
セーラー服「バイトの子といえばほら、彼女、君の隣の部屋の彼といい仲らしいじゃん?」ニマニマ
 
女「え、じゃあ、あのお兄さんと?」
 
セーラー服「けっこうこんな風にデートとか行ってるし、わかるよ。暇があったら見ててみ」
 
女(おぼえとこう)
 
ギャンブラー「……おはよう」

セーラー服「おそいよ。てかひどい顔だな……夜遅くまでどこ行ってたのさ」
 
ギャンブラー「……そのへん」
 
女&セーラー服((テキトー言ってんな))
 
ギャンブラー「おなかすいた」









 ▼ 53 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/19 16:09:59 ID:dMdxHyGk [3/11] NGネーム登録 NGID登録 報告


女「朝食を終えて、今日も今日とてアルトマーレ散策に繰り出したのでした」

女「今度はどこにいくの?」
 
そっくりさん「〜♪」スキップスキップ
 
女「……聞いてねえし」ガクッ

女「……あ、ここの水路。あそこのと繋がってるのか」
 
女「じゃあ道のり的に……ふむ」
 
そっくりさん「!」アレ

女「?」
 
女「ベランダでコーヒー飲んでるおじさんと、エイパム?」
 
そっくりさん「」ニコニコ
 
女「?」
 
そっくりさん「」オホー
 
女(と思ったら川を流れていく笹舟を眺めてる)
 
子どもたち「うわーい!!」
 
女「うわっとと」
 
そっくりさん「」バイバーイ
 
女「………」
 
女(さっきからこんなのばっかだな)
 

 
───Y字路に当たったらどちらにしようかな≠ニテキトーに曲がり、人を見かけたらニコニコしながらそれを眺め、ときおり所作を真似する。
 
階段を軽やかに駆けあがって、手すりをすべり降りたり、なんてこともする。

道なりに進んでいた、と思いきや、道路沿いの塀に飛びついて、いいものを見つけた≠ニばかりにこちらの手を引いてくる。
 
ひいこらいいながら壁を乗り越えたら、当然のごとく人の家の庭で、きょとんとしている住人をよそにそっくりさんは駆け抜けていく。
 
必然、すみません、と頭を低くするのは自分で、ながらも後を追うことになる。
 
すれ違う人に彼女が手を振れば、それに気づいた人は笑顔で振り返してくるし、チャオ、と挨拶してくれる人までいる。
 
しかし、意外なことに彼女の突飛な行動にあっけにとられることこそあれど、怪訝な顔をする人は誰もいないのだ。
 
妙な空間に取り込まれたような気分だった。



 ▼ 54 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/19 16:11:04 ID:dMdxHyGk [4/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
女「あなた、ホント何者?」
 
そっくりさん「!」アハッ
 
女「こんどは停止ですか………ん?」
 

 
───そっくりさんの見上げた先では、大工さんが作業をしている様子だった。
 
屋根の雨漏りでも直しているのだろうか。
 
手慣れた様子であぶなげもなく、なんの変哲もない、日常風景。
 
しかし、それを眺めるそっくりさんは、とても幸せそうな笑顔を浮かべている。
 
 
 
女(……あぁ、そうか)

女「あなたは、この街の人々がいとおしいんだね」
 
そっくりさん「?」クルリ

女「アルトマーレに住むみんなの暮らしが、あなたにとっての幸せなんだね」
 
そっくりさん「」コクン
 
そっくりさん「」テッテッテ
 
女「うわっいきなりどうしたの!?」
 
女「待ってよ!」タッタッ
 

 
 
 
 
女「……うわっここ」
 
女(いい景色)
 

 
───眼下に広がるアルトマーレの町並み。
 
隙間を縫うようにのびる水路の反射が、きらきらと景色をもり立てている。
 
手前の広場をはじめ、街の中を行き交う人々。
 
広い運河を悠々と流れていくゴンドラ。
 
空を飛んでいく鳥ポケモンたちや、屋根づたいに走っていく陸上ポケモンたち。
 
この風景にはきっと、彼女≠ェ愛しているもののすべてが息づいている。
 
そう思うと、胸の中を気持ちのいい風が吹き抜けていくようだった。
 ▼ 55 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/19 16:11:45 ID:dMdxHyGk [5/11] NGネーム登録 NGID登録 報告

 
 
 
そっくりさん「」クイクイ
 
女「どうしたの?」
 
そっくりさん「」アレアレ
 
女「???」ドレドレ
 
 

───そっくりさんが指差す広場の一角を見て、合点がいった彼女は失笑した。
 ▼ 56 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/19 16:13:11 ID:dMdxHyGk [6/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
 
 
 
そっくりさん「」ペロペロ
 
女「こういう移動販売で売ってるアイス、おいしそうだもんね」
 
女(ほんと、ちゃっかりしてる)
 
シザリガー「ぺろぺろ」

女「君もねー」パク

 

───見知らぬ少年に、唐突に(それも熱く)バトルをしかけられたので、シザリガーに出撃してもらった。
 
クラブハンマーでかったるそうにラッタを殴り飛ばしている絵面が、妙にコミカルだった。
 
あっさり負けた少年は、不思議とあっさり引き下がり、どこかに駆けていった。
 
子どもなんて、どこでもあんな感じなのだろうか。

 
 
女(男の子ってもっと、負けず嫌いな生き物だと思ってたけどなぁ……)
 
女「……おいし。」 
 
そっくりさん「」ニマニマ
 
女「? なぁに?」
 
そっくりさん「〜」ナンデモナーイ
 
女「変な子」フフッ

「あ!やっほー!」
 
女「?」
 
女(あ。このカップルは)
 
だんなさん「こんにちは」ニコッ

そっくりさん「〜!」ピース
 
おくさん「ここのアイス、おいしいでしょ?」

女「はい。ほっぺたが落ちそうです」ニコリ
 
おくさん「わたしたち、2回目なの」
 
女(……おくさんの方、少し苦手なんだよな)



───夕飯のとき、初日も2日目も、彼女に会話のペースを握られっぱなしだった。
 
だんなさんが手綱を握っていなければ、まるでタネマシンガンのように絶えることなく話のネタが涌き出て止まらないのだろうな、と思うと、少し気疲れした。
 ▼ 57 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/19 16:14:28 ID:dMdxHyGk [7/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
一方で、これだけ話していられるのもすごいな、と素直に感心もした。
 
スキンシップが過多なところも、決して嫌いではない。
 
ただ、いかんせん苦手意識が首をもたげてしまうのだった。 
 
 
 
おくさん「この子が話に聞いた妹さん=H」
 
女「は、はい」
 
おくさん「ほんっ、とそっくりね!」

おくさん「君もこういうかっこすればいいのに」
 
女「い、いや私はちょっとその……照れくさいっていうか……」
 
女「ここまで振り切れるほど自信がないので」アハハ
 
おくさん「きっとかわいいよ」
 
女「///」
 
おくさん(困ってるのかわいい)
 
おくさん「……旅の恥はかきすて≠チて言葉、どう思う?」
 
女「かいてもいいって思える恥なら、捨てていけますけど……でもだいたいの恥は覚えてるので、あとで思い出して悶えることも多いです」
 
おくさん「悶える恥は、たまたまかいてしまったの? それとも、捨てていこうって決めた恥?」
 
女「両方、ですけど……思い返してみると、たまたまかいてしまったのの方が多いです」
 
おくさん(素直に答えてくれる……いい子だなぁ)
 
おくさん「そっか……でも、それって、きっと今のうちにしかできないことのはずよ」
 
おくさん「恥をかくようなことって、わたしはもうできないもの」
 
おくさん「昔は屁でもなかったんだけどね。今はもう……ちょっとキツいかな」アハハ
  
女「キツいっておっしゃるほど、老けてないと思います」
 
おくさん「あー、スッゴく嬉しい。うん、だよね、わたしまだ25だし」フン
 
女(のせられやすいタイプ?)
 
おくさん「それを言ったら、やっぱり君もよ」

女「ッ」
 
 
 
───優しく肩を抱かれて、驚く、とともに。
 
くすぐったいような気持ちになってうつむいてしまう。
 ▼ 58 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/19 16:16:31 ID:dMdxHyGk [8/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
おくさん「かわいいんだもん。だいたいの失敗なんて、笑って許してもらえるよ」
 
女(ひいき目だよ……それ)
 
 
 
───そう。

この女性はどうも、自分にかなり肩入れしてくれているところがある。
 
自分の経歴を洗いざらい話したわけではないから、同情されていたりだとか、そんなことはないはずなのだが。
 
いったい、どうして。
 
 
 
おくさん「あーん、もー!かわいいかわいいかわいいほんとかわいい!」

女「むぎゅう」
 
おくさん「2人まとめてうちの子にしたいぃー!」
 
そっくりさん「」ムギュウ
 
だんなさん「こらこら」ヒキハガシ
 
女「」プハー
  
おくさん「……そういえば君、ひょっとしてこっち≠フが素なの?」

 
 
───唐突に。

そっくりさんを指しながら、そう訊かれた。
 
 
 
女「……え?」
 
おくさん「ほら、君、コンタクトしてるし、髪も染めてるでしょ?」

女「!」
 
だんなさん「! ……さーちゃん」
 
おくさん「最初は妹さんの方が、おしゃれで目立つカッコしてるのから、白く染めてるのかなぁって思ったんだけど、違うみたいじゃない?」
 
おくさん「てことは、君の素顔がこっちなのかなーって」

女「」
 
おくさん「素材がスッゴくいいのに、全部殺しちゃってるんだなって思ったら、やっぱりもったいないなぁって」
 
だんなさん「さーちゃん!」
 
おくさん「」ビクッ
 ▼ 59 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/19 16:18:15 ID:dMdxHyGk [9/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
だんなさん「わるいクセが出てる」
 
おくさん「あ……ごめんなさい」シュン


 
 
 
 
女「……えっと、す、すごい洞察力ですね!」
 
女「いつごろ気付いたんですか?」
 
女「なかなかバレないんですけど……びっくり!」アハハー
 
だんなさん「……ごめんね」
 
そっくりさん「?」






───あたりさわりのないお喋りを交わして、アイスに舌鼓を打ったのち、カップルと姉妹(偽)は別れた。 
 
 
 
だんなさん「さーちゃん、少し考えればわかるだろ」
 
だんなさん「あーやって黒一色にしてるってことは、コンプレックスにしてるってことだ」
 
おくさん「……うん、だよね」
 
おくさん「はしゃいじゃって失敗しちゃった……はぁ」ドヨーン
 
おくさん「こんなにかわいくなるのに、もったいないなぁ≠チて思ったら……つい」
 
だんなさん「わからんでもないけど……さーちゃんはいつも前のめりすぎだ」
 
おくさん「きらわれちゃったかなぁ」

だんなさん「……大丈夫だよ」
 
だんなさん「さとい子のようだし、きっと反省してるのは伝わったよ」
 
だんなさん「……びっくりしただろうに、フォローまでしてくれて。優しい子だよね」
 
おくさん「あぁー………もぉ」スコン
 
 
 

 

女(見境のない好奇心は悪徳、とか思った翌日にこれだからなぁ)
 
女(世知辛い)
 ▼ 60 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/19 16:20:27 ID:dMdxHyGk [10/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
───苦手意識、ほんのり強化。

と思いきや。
 

 
女(でも、あれだけねこかわいがりされるってのも、悪くないなぁ)
 

 
───そう思う自分がいたのが不思議だった。
 
 
 
そっくりさん「」コッチコッチ
 
女「……なんだろ」テクテク
 
女(ここ、変)


───もうそろそろ昼も過ぎる、という頃合い。
 
アイスを食べたのち、午前中のようにいざなわれながら遊び歩いていた彼女は、いつのまにか妙な場所にいた。
 
道程を忘れないことに自信のある彼女にとって、いつの間にかここにいた≠ニいう感覚は、非常に気持ちの悪いものだった。
 
冷静にここまでの道のりを思い出そうとしても、思考にかすみがかかったような気分で、全く思い出せない。
 
見渡す限り、なんの変哲もない、アルトマーレの路地なのだが。

 
 
女(居心地悪いな……)
  

 
───バードバスで行水しているポッポ達の姿が、妙に幻想的に見える。
 
昨日一日遊んだからと気を許して、正体の知れないポケモンに誘われるまま、どこかもわからない場所に来てしまったのはさすがにうかつだったのでは。
 
そんな考えが首をもたげた。
 
以前、人当たりの良さそうな体で、ゴーストポケモンにあの世(めいた場所)につれていかれそうになったことがあるというのに。
 
 

女(でも、あのときとは違う)
 
女(今はひとりぼっちじゃない)



───ポケモン達が一緒にいてくれている。
 
危ないと感じたなら、とうに警告のためボールを揺らしているはず。
 
シザリガーなんかは勝手に出てくるだろう。

それに。
 ▼ 61 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/19 16:21:25 ID:dMdxHyGk [11/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
 
 
 
女「私、あなたのこと疑いたくないもん」スタスタ
 
そっくりさん「!」
 

















 
 
───真っ暗闇。
 
何者かに手を引かれて進んでいる。
 ▼ 62 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/19 16:23:41 ID:WhyJnBBo [1/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
頭もぼんやりとして、考え事もままならない。
 
時間の感覚が溶けていきそうだ。
 
自分の手を引く者の姿は、闇のせいでまったく見えない。
 
手を握ったときは、指のか細さに少し驚いた。
 
わずかに残る危機意識が手の主のぞっとするような想像図を脳裏によぎらせるが、それはするりとほどけるようにして消えた。
 
だってこれ、あの子≠フ手だし。

温かいし。
 
だから、手を引かれるままに任せて、だまって歩いていく。

相手がポケモンでもたとえ視界ゼロでも、ごきげんなのはわかるんだな、と思って、暗闇のなか、顔をほころばせていた。
 
───どれだけ歩いた頃か。
 
唐突にぱっ、と、視界と頭がクリアになった。
 
 
 
女「う………わ───」
 
 

───暗順応してしまっていた目をゆっくり開けると。
 
そこには、アルトマーレのどんな観光ガイドにも載っていないような、静謐な庭園が広がっていた。
 
人の産み出す一切の喧騒がなく、風と水の流れる音と、自然のポケモン達の営みが産み出すのどかな環境音だけが、庭園を包んでいた。
 
神聖な場所だ、と。
 
直感的に悟った。
 
 
 
女「……私、場違いじゃないかな」
 
そっくりさん「」オイデオイデ
 

 
女「プールだ」
 
女「ここにつれてきたかったの?」
 
そっくりさん「」コクン
  
女「……ねぇ、私のポケモン達を出してもいいかな?」
 
女「ここの空気を吸わせてあげたいっていうか……」
 
そっくりさん「」コクン
 
女「ありがとう」
 ▼ 63 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/19 16:25:51 ID:WhyJnBBo [2/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「」ポポポポポポン
 
そっくりさん「」ゴソゴソ
 
そっくりさん「!」ジャジャーン
 
女「サンドイッチ? どこでそんなの……………あ」

女(……あとで宿屋さんにお礼言わないと)
 
そっくりさん「」ハイドーゾ

女「ありがと」
 
そっくりさん「」ペタン
 
女「それじゃ、失礼して」ペタッ
 
 
 
───謎の庭園ピクニック。
  
コータス、オノノクスはひとかたまりになって木陰でうつらうつらとしている。
 
ラプラスはプールに浮かんで水面をちゃぷちゃぷと揺らし、目をつむっている。
 
眠っている、というより、庭園を包む音に聞き入っている、という感じ。知的。
 
ムクホークは風通しのいい場所なのか、人工の滝が流れる水場で風を受けて滑空。同じ高さを維持する、という訓練のようなことをしている。
 
シザリガーは風車のオブジェを眺めていて、ハサミでちょん、と触って止め、離して回転が勢いづいたらまた触って止め、という遊びをやっている。
 
お手をふれないでください、とか、普通の観光地だったら貼り紙がありそうだよな、と思った。
 
 
 
女「おいしいな……」ムゥ

ドリュウズ「りゅう」ハムハム
 
女「ごめんね、こんなおやつしかなくて」
 
ドリュウズ「ぐるるっ。どりゅどりゅ」
 
 

───お弁当がサンドイッチだけ、というのもなんだか寂しいので、小腹サポートなおやつの風呂敷を広げていたのだが、ドリュウズが目をつけて混ざりこんでいる。
 
ラインナップはいつものドライフルーツと塩アメに加えて、非常食の乾パンや、しるこサンドといったメンツ。
 
そっくりさんはあまり食べる機会のないものなのか、物珍しそうに口にしている。
 
それにしても、宿屋さんお手製のサンドイッチには遠く及ばない、と思うと先に食べてしまったのが悔やまれた。
 
パテに和えられていたマトマソースはじっくりと煮込まれたもので、強烈な辛味を和らげるためにノメルのみをすりおろして入れていたらしい。

味覚がまだまだ途上の身にはとてもちょうどいいピリッと感だった。

自分であんなおいしいものを作れるようになったなら、毎日がもう少し豊かになるのではないだろうか。
 ▼ 64 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/19 16:27:49 ID:WhyJnBBo [3/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
とか、そんなことを考えて、プールを眺めていたときだった。
 
既視感を覚えたのは。



女「??」
 
女(プールのそばに立ってる木……これって)
 
 

───まさか、と思いのぞきこむと、そこには枝から吊るされたブランコがあった。
 
 
 
女「……博物館の絵」

女「」スック
 
女「……」ギッ
 
 
 
───腰かけて、思う。
 
絵に描かれていた少年はいったい、どんな風に思ったのだろう。
 
こうやって庭園に足を踏み入れて、おごそかな空間に身を包まれて。
 
 

そっくりさん「」トンッ
 
女「うわっとっ」ユーラユーラ

女「どうしたの?」
 
そっくりさん「〜」フフン
 
女「わかんないよ」ユーラユーラ
 
 
 
───2人乗りで揺られながら、思考を戻す。
 
こんな風に<宴eィアスと遊んで。
 
あの少年は、どんな気持ちになったのだろう。
  
 

女(こんな時間が、ずっと続けばいいのに……)
 
 
 
───彼女は、そんな気持ちになった。
 ▼ 65 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/19 16:30:25 ID:WhyJnBBo [4/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



女(庭園からなかなか出られなくて、気付いたら結構遅くなってしまった)スタスタ
 
女(昨日と同じように、またあした、と口パクで告げられて別れた)
 
女(昨日と違って、ちゃんとまたね≠ニ返せてよかった)
 

 
───とっぷり日も暮れ、アルトマーレは闇に包まれている。
 
いささかの恐怖心はあるが、道のりはすっかり覚えたので、帰り道には難儀しないで済んでいた。
 
一昨日忠告してくれた船頭の男性には申し訳ないが、ショートカットも頻繁にしながらの帰路だった。
 

 
女(夕飯残ってるかな……あ、その前に宿屋さんにお礼言わなきゃ)
 
 
 
 
 
 
女「」ガチャ
 
一同「!」
 
女「遅くなりました。すみません、夕飯の時間」
 
 
 
───を過ぎてしまって、と言おうとして、言わせてもらえなかった。
 

 
おくさん「」ギュッ
 
女「んぐっ」

おくさん「よかった……無事で」
 
 
 
───抱き締められている。
 
なぜか玄関に集まっていたらしい宿屋さんとお客さんたち一同が、一斉に安堵の溜め息をつくのを耳にしながら、現状把握。
 
いや全然把握できない。なぜ全員集合しているのか。
 
 
 
おくさん「こんな遅い時間になっても戻らないから、みんな心配してたのよ!」

女(な、なんで半泣き?)
 ▼ 66 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/19 16:33:17 ID:WhyJnBBo [5/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「え? いや、その……別に珍しいことじゃないですし……ポケモンたちもいますから」
 
女「あ。ひょっとして私が遅れたから夕飯まだ始められてなかったですか? すみません、そ」
 
だんなさん「そういうことじゃない」
 
女「……え?」

 
 
───穏和なものしか見たことがなかっただんなさんの表情は今、初めて見る険しいものになっていた。
 
 
 
だんなさん「君みたいな女の子が、何の音沙汰もなく夜遅くまで帰ってこない、なんて」
 
だんなさん「みんな心配で、いてもたってもいられなかったんだよ」

女「」
 
宿屋さん「……君は旅馴れして、夜遅い帰りにも馴れているのかもしれないが、それで感覚がマヒしちゃいけませんよ」
 
宿屋さん「もっと、自分を大事にしなさい」
 
女「」
 
 
 
───言葉が出てこなかった。
 
そんな風に心配されて───こんな風に叱られたことは、今まで一度もなかったからだ。
 
一時的に住まわせてもらっていた家では門限を当然のことのように守っていたし、ポケモンセンターに泊まるときジョーイさんはこちらの事情をいちいち関知しないことが多い。
 
多少遅くなっても、1日の職務の疲れからか、気だるげにしているだけだ。
 
いままで泊まった宿も、おおむねそんなかんじだった。
 
だから、旅に出て以来、こんなことは初めてで、どうすればいいのかわからなくて、困ってしまった。
 
 
 
セーラー服「とにかく、大事ないようでよかった」

ギャンブラー「これでやっと夕飯始められるわー。お腹、すいてるでしょ?」
 
おとなりさん「今日はカレーだそうだよ」

おねえさん「お料理出しますねぇ」

宿屋さん「ありがとう、助かるよ」
 
だんなさん「さ、ごはんだ。みんなで食べるのがここのきまりだからね。行こう」

女「……はい」
 
女「私のせいで、ごめんなさい」

おくさん「あなたが無事に帰ってきて、なによりよ」ニッコリ
 ▼ 67 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/19 16:34:15 ID:WhyJnBBo [6/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 
おくさん「行こ。みんな、あなたのこと……好きで待ってたんだから」ニッコリ
 
 
 

 
 
女「」ダキッ
 
おくさん「?」

おくさん「どうしたの?」
 
女「……ごめんなさい、心配かけて」女「ごめん……なさい」
 
おくさん「わかってくれればいいの」ギュ
 

 
───抱き止められていたのをいいことに、顔を見られたくなかった彼女はおくさんの胸に顔を埋めていた。

泣きそうになってしまった、ので。
 
 

 ▼ 68 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/19 16:34:39 ID:WhyJnBBo [7/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



4日目につづく。
 ▼ 69 ンジュモク@とくせいカプセル 17/10/19 18:09:29 ID:ASuaXGfU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
かこつです。
 ▼ 70 ケニン@アイテムコール 17/10/19 18:35:10 ID:ld/4tpg6 NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
ほんと大好きだこの作品
 ▼ 71 ャオブー@こないれ 17/10/21 12:39:38 ID:KwG1QKzw NGネーム登録 NGID登録 報告
素敵 支援
 ▼ 72 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/22 00:19:58 ID:eh7BId2M [1/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コータス「……なんか、薄暗いとこだなぁ」
 
コータス「でもあの女の子が言ってたの、ここっぽいしなぁ」
 
コータス「……行ってみよぉっと」ノソノソ
 
 
 
ゴルバット「キバッテイクゼェwww」
 
コータス「こっ」ガキンッ

ゴルバット「グエェエッ」ドシャッ
 
コータス「こんなんばっか」ノソノソ
 
コータス「ほんとにいるのかなぁ」クルリ
 
コータス♀「」
 
コータス♀「こ、こぉ!?」
 
コータス「……うわ」
 
コータス♀「こ、こぉ(あ、あなた、外から来たの?)」
 
コータス「そうだけど」
 
コータス♀「???」キョトン
 
コータス「……」
 
コータス(そういえば、人間以外と話すの初めてだ)
 
コータス「こほん、こふっ」
 
コータス「こぉあ(うん、外から来た)」
 
コータス♀「こ、ここぉ?こーたす!(ど、どうして? わざわざこんなところに!)」
 
コータス「ここぉ?(こんなところ=H)」
 
コータス♀「こぉあ!(説明してる時間なんてないわ! あいつが来ちゃう!)」
 
コータス♀「たす、たす!(あなたもこっちに来て! はやく!)」……ゴゴゴゴ
 
コータス「こ、こぉ……?(いや、無理だよそんなの。ちょっと待ってよ)」ノソノソ
 
コータス♀「!!!」
 
コータス(何で固まってんだ?)……ゴゴゴッ
 
コータス「……こぉ?」クルリ
 
 
 
イワーク「グゥウォオオオオ!」
 
コータス「」
 ▼ 73 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/22 00:22:17 ID:eh7BId2M [2/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コータス「」クルッ
 
コータス♀「」ガタガタガタガタ
 
コータス(あ、こいつがここのボスなのか)クルリ
 
イワーク「」フスーッ
 
コータス「こぷっ……」プクゥ
 
コータス「こぉおおお!」ボオオオオオオオ!!
 
イワーク「!」ジュウウウウ
 
コータス♀「こぉ!(無茶よ!そいつに私たちの炎は効かないの!!)」
 
コータス(え?そうなの?)ボォォオオオオオオオ
 
コータス(前見たやつは、こうやってたら……)ボオオオオオオオ!!
 
 
 
コータス♀「!?」
 
イワーク「ウウォーッ!」ジュウウウウ
 
イワーク「ウオオン!!」スタコラサッサ
 
 
 
コータス「こふっ」
 
コータス「こぉたす(あんな風に逃げてったけど)」



コータス♀「こぉ……(なんて……こと)」
 
コータス「こーぉたす(君、ひとりなの?)」
 
コータス♀「こぉ…(いえ、奥に仲間がいるわ)」
 
コータス♀「たす(ありがとう。あいつを追い払ってくれて)」
 
コータス♀「こぉー!(あなたのこと、きっとみんな歓迎するわ!)」ニッコリ
 
コータス「」
 
コータス「」ポッ
 


コータス♀「みんな!」
 
コータス達「無事だったか!」
 
コータス達「そいつは誰だ?」
  
コータス「!」
 ▼ 74 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/22 00:25:33 ID:eh7BId2M [3/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コータス(こいつら、みんな……僕の同族か)
 
コータス♀「彼があいつを追い払ってくれたの!」
 
コータス♀「私たち、もう怯えて暮らさなくていいのよ!」
 
コータス達「なんだって」
 
コータス達「ほんとうなのか?」
 
コータス達「そういえば、いつになく静かになっている……」

コータス「……」
 
コータス♀「ねぇあなた、どうしてきたの?」
 
コータス♀「あいつがいたせいで、ここには人間も近づかなかったのよ」
 
コータス♀「どうして、危険をかえりみず、ここまで?」
 
コータス「ここに、僕と同じようなやつ───ポケモンがいる、って聞いた」
 
コータス「だから来た」
 
コータス「本当にいたから、驚いてるよ。すこしだけ」
 
コータス♀「そう……ひとりぼっちだったのね」
 
コータス♀「でも、もう大丈夫よ」
 
コータス♀「私達はおんなじだもの。あなたはもう、ひとりじゃないわ!」
 
コータス「そう」
 
 
 
───1年ほどさまよって、ようやく、コータスは同族を見つけた。イワークを追い払ったという手土産があったおかげか、コータス達は彼を歓迎した。
 
余所者に対して、いささか警戒を見せていた者もいたが、じきに打ち解け、コータスはいつからともなく、このコロニーの一員として、すっかりなじむようになっていた。

元来、温厚な気質のコータスである。
 
同族たちにかこまれ、穏やかに、何のいさかいもなく、きままに、彼は過ごした。

ほんの少しのひとときを。
 




 
コータス達「人間が戻ってきた」
 
コータス達「俺たちを追い出そうとしているらしい」





 ▼ 75 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/22 00:27:32 ID:eh7BId2M [4/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



イシツブテ「らっしゃぁー!」スゴスゴ
 
抗夫「ほれーほれー、逃げろ逃げろー」
 
ゴーリキー「りっきりっき!」ブンッブンッ
 
コータス「」
 
抗夫「お前も逃げないと、ぶっとばしちゃうぞー」
 
ゴーリキー「」ブンッ
 
コータス「」ゴスッ
 
コータス「こぉ」ボォ
 
コータス「」ボオオオオオオオ!!
 
抗夫「おぉう?!」
 
ゴーリキー「」死ーん
 
抗夫「な、なんだこいつ!?」
 
コータス「ねぇ、なんで僕らのこと追っ払おうとしてんの?」
 
抗夫「な、なんだこいつ……」
 
コータス「ねぇってば」
 
抗夫「うるせぇな、こいつは……」ブンッ
 
「おい、待て」パシッ
 
抗夫「親方!」
 
親方「しゃべるポケモンか……今でもいたんだな」
 
親方(こういうのは力任せに追い払うと、ろくなことにならん)
 
コータス「で、なんで?」

親方「なにがだ?」
 
コータス「僕らを追っ払おうとしてるんだよね?」
 
コータス「人間はここから出てったって聞いたけど。」
 
親方「戻ることになったからだ」

親方「俺たちが出てかざるを得なかった原因───イワークがいなくなったことがわかったからな」
 
コータス「!」
 
親方「だが、戻ってきてみれば、ポケモンがやたらに増えている」
 
親方「これじゃあ作業に支障が出るってんで、追っ払ってんだ」
 ▼ 76 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/22 00:28:50 ID:eh7BId2M [5/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「おい、何をしている!」

親方「ん。いや、こいつは……」
 
コータス「なに、君」
 
若い男「なんだこのポケモン、しゃべってるのか?」

若い男「気持ちが悪い……さっさと追い払え」
 
親方「いや、しかしですねぇ」
 
若い男「おいお前らも! 手を止めてるんじゃあない!」
 
若い男「ここに俺が立ち会っていることの意味を、わからんわけじゃないだろう!」
 
若い男「こいつを早く、追い払え!」
 
抗夫たち「」チッ
 
抗夫たち「……ドテッコツ、たのむ」
 
ドテッコツ「でっ、とつ!」ノシッ
 
抗夫たち「ワンリキー」
  
コータス「こぉっ」ガキンッ
 
 
ひゅんっ。
 
 
若い男「」ヒュオッ
 
若い男「………え?」キョトン
 
親方(岩の塊を専務に向かってぶっぱなしやがった)ゾッ
 
コータス「君を黙らせたらぁ、みんな帰ってくれるの?」
 
若い男「??????」ブワッ
 
コータス「イワークだっけ」
 
コータス「あいつを追い払ったのは僕なんだけどぉ」
 
コータス「君たちがやって来るのはお門違いじゃない?」
 
コータス「言うこと聞きたくないやつに従って、わざわざやることなのぉ?」
 
若い男「」プツーン
 
若い男「ポケモンのくせに、人間のように口を利くんじゃない!」
 
若い男「気色悪いんだよ! おい、誰か! こいつをどうにかしろッ」ガシッ
 
親方(キレてやがる)

親方(なれない手つきでシャベルなんか掴んじまって……何するかわからんぞこの人)タジッ
 ▼ 77 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/22 00:32:38 ID:eh7BId2M [6/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
親方「専務さん!」
 
親方「こういうポケモンには手出ししない方がいい!」
 
親方「昔から、このテのけもの≠ノはかかわっちゃいけねぇって、相場が決まってんだ!」
 
若い男「もういい! お前らがやらないなら俺が……ッ」ブンッ
 
コータス「」ボオッ
 
親方「やべぇっ」
 
親方「お前ら、専務さん守れ!」
 
 
 
───人の言葉を話すようなポケモンに手を出すと、ろくなことにならない。

幼少期にそんな経験をしたことがあったのか、はたまた、親か誰かが彼にそう説いたからなのかはわからないが、男はそれを信じていた。
 
だから、目の前の喋るコータスに対して、いくらかの畏れを抱いていた、のだが。
 
周りの人間はそうではなかった。
 
親方、と呼ばれるだけあって、彼は周りの人間よりもふたまわりほど年齢が高く。
 
周りは当然、彼よりもずっと年若いので、コータスに対しての認識はずいぶんと違うものだった。
 
ポケモンがしゃべるなんて、気持ちが悪い
 
そう思っている抗夫たちは少なくなかった。
 
そして、彼らは親方の「専務さん守れ!」という指示に、実に素直に従った。
 
自分たちとそう歳の変わらない、いけすかない専務の言うことを聞くのは癪だったが、普段から世話になっている親方の言うことであれば、異存はない。
 
専務を守れ、というなら、この場合。
 
コータスを袋叩きにした方が手っ取り早いだろう。
 
と、みんなそう思ってしまったのだ。




ドテッコツ「てっこぉつ!!」ゴスッ
 
コータス「でッ」
 
ワンリキー「アチョォーゥ!」ベキッ
 
コータス「ん゙ッ」
 
ゴーリキー「リッキィ!!」ドゴッ
 
ニョロボン「ロッボン!!」バシャンッ
 
コータス「───」チリッ
 
親方「バカッ、やめろお前ら───」
 ▼ 78 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/22 00:35:52 ID:eh7BId2M [7/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 
 
 
 
コータス「───こぉ……」
 
コータス「ぉお!」ズドン!!
 

 
ばきっ、めきめきめきめきめきっ!!!!



親方「地面を割りやがった!!」
 
親方「言わんこっちゃねぇ!」
 
親方「お前ら逃げろ逃げろ逃げろ!!」ダッ
 
抗夫「あああああ!! 坑道が崩れる!!!」オタオタ
 
抗夫「うわああああ!!」スタコラ
 
若い男「ぎやああああ!!」ヘロヘロ
 
 
 
 
 
 
コータス「……ふぅ」
 
コータス「」ハッ
 
コータス「」クルリ
 
 


 
コータス達「「「「「「」」」」」」ガクガクブルブル
 



 
コータス「……みんな」
 
コータス達「「「「「!!」」」」」ビックゥ
 
コータス「あいつらは、帰っていったよ」 
 
コータス♀「」フルフル
 
コータス♀「あ、あああ、ありがとッ」ビクビク

 ▼ 79 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/22 00:38:00 ID:eh7BId2M [8/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 
 

















コータス「───僕は、ここにいないほうがいいねぇ」
 
コータス「みんなとは、違うみたいだしねぇ」ノソリノソリ
 
 






 
コータス「……あいつら、じきに戻ってくるだろうから、みんな、逃げるんだよ?」
 
コータス「……じゃあね」ノソリノソリ


 
───彼を呼び止めるコータスは、いなかった。

 ▼ 80 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/26 20:42:50 ID:h5Z8Zr3Y [1/21] NGネーム登録 NGID登録 報告
女「………」モグ
 
おくさん「………」モキュモキュ

女「」チラッ
 
おくさん「」チラッ
 
女&おくさん「」ニヘラ
 
だんなさん(愛想笑いが硬い)
 
女&おくさん(きまずい)
 
 

───昨夜のあと。
 
別に、口喧嘩をしたとか、誰かと険悪なムードになった、なんてこともなかったのだが。
 
不思議なもので、日をまたぐとお互いにきまずい雰囲気になっていた。

 
 
おくさん(思ったより甘えられてしまったのが、少しびっくりだったわ……)

おくさん(嫌われてないみたいで安心したけど)
 
おくさん(……どうしたものかしら)ムゥ

 
女(苦手、と思ってたのに、なんでか甘えてしまった……)
 
女(悪くなかった……むしろ安心した)
 
 
 
───気まずさってか、てれくささって感じぃ?
 
 
 
女(思い返してみると、ゆうべは申し訳ない気持ち7:嬉しさ3くらいだった)

女(3あったのが、自分でも不思議だ)
 
女(それだけみんなに心配されていたことが嬉しかった、んだよな……)





───そう思うくらいには、みなのことを好いているし。
 
このおくさんに好かれているのが、とても喜ばしいのだった。
 
とはいえ。



 ▼ 81 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/26 20:43:30 ID:h5Z8Zr3Y [2/21] NGネーム登録 NGID登録 報告
女(なにか言いたい……けど、出てこない)
 
おくさん(やっぱり……うーん……でも……)





───きまずいものはきまずい。
 ▼ 82 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/26 20:49:25 ID:h5Z8Zr3Y [3/21] NGネーム登録 NGID登録 報告
コータス「こぉ(ねえねえ)」
 
デスカーン「ですかん(どうしました)?」
 
コータス「こぉー(君んとこのふたり、なんか言いたそうにしてるけど、どうしたのさ)?」
 
デスカーン「でぇす(あぁ。ほら、ふたりとも、おたくのお嬢さんを気に入ってらっしゃいますから)」

デスカーン「でっすで。かあん(ふたりなりに少し考えてることもあるんです。ただ、やっぱり時期尚早かな、というのもあるみたいで)」
 
コータス「こぉー(どういうこと)?」
 
デスカーン「ですです(というのもですね)……」
 
 
 

女(朝食、食べ終えてしまった)
 
そっくりさん「」ヌッ
 
女「狙ったかのようなタイミング」ギョッ
 
そっくりさん「」イコーイコー
 
女「」チラッ
 
おくさん「ん」
 
おくさん「い、いってらっしゃい」ソワソワ
 
女「い、いってきます」ソワソワ
 






───ばしっ、ばきっ、と。
 
にぶい音を立ててぶつかり合うポケモンが2体。
 
翼はばたかせ、敵を見据え、肉薄し、撃ち抜けて、また睨みあう。
 
爪は皮膚をえぐり、振り抜いた翼は喉を打ち据え、勢いに任せたたいあたりは捨て身の一撃となって、相手の脳天を震わせる。
 
交錯するたびに、身を削るようにして繰り出される一撃は、そのひとつひとつが、重い。



女(今日は、そういう日≠ンたいだから、とは思ったけど)
 
 

───上空で繰り広げられるドッグファイトを、しかし苦い顔で見上げていた。
 
高所の彼に聞こえるよう、声を張り上げて指示をしながら、ここまでの戦績≠思い返す。
 ▼ 83 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/26 20:51:36 ID:h5Z8Zr3Y [4/21] NGネーム登録 NGID登録 報告
対かんこうきゃくの男性・バオッキー戦。
 
オノノクスの勝ち。
 
 
対たんぱんこぞう・ゴビット戦。
 
シザリガーの勝ち。
 

対ホープトレーナーの少年・ドレディア戦。
 
ドリュウズの勝ち。
 

対かんこうきゃくの女性・キュウコン戦。
 
コータスの勝ち。
 

対ふなのりの男・ローブシン戦。
 
ムクホークの勝ち。
 
 
対かんこうきゃくの女性・ヤドラン戦。
 
シザリガーの負け。
 

対スキンヘッドの男・プリン戦。
 
ドリュウズの負け。
 

対かんこうきゃくの女性・デデンネ戦。
 
オノノクスの勝ち。
 
 

女(宿を出て2時間足らずでこれだけバトルした)

女(どうしてこんなに挑まれるのか全然わからないけど、皆さん楽しそうにやってるから、私もそういう日≠セと割り切ってる)
 
 

───現在の相手・エリートトレーナーの青年とファイアロー。
 
相手が相手なので、ムクホークを繰り出し、空中戦と相成っている。
 
 
 
女(空中にいられる飛行タイプ相手に、まさか地に足つけた鈍足ポケモンをくり出す人もいまい)

女(ムクホーク……楽しそうだな)
 
 
 
───ムクホークの生き急ぎすぎたバトルスタイル上、旅の道中では積極的に繰り出さないということもあって、空中で殴り合う機会はなかなかない。
 ▼ 84 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/26 20:53:27 ID:h5Z8Zr3Y [5/21] NGネーム登録 NGID登録 報告
それだけに、今空を飛ぶムクホークはかなりアツくなっているように見える。
 
 
 
エリトレ「はがねのつばさ!」
 
女「もらってもいいけど一撃で落とせるほどじゃないからね!少し手前!」
 
エリトレ「?」
 

 
───意図のわからない指示に青年が疑問符を浮かべたその上空で、ファイアローとムクホークがまた交錯する。
 
硬質化したファイアローの翼は、ムクホークの胴をとらえていた。
 
が、ムクホークは勢いを止めず、そのままファイアローに肉薄。
 
横っつらをひっぱたく。
 

 
エリトレ(浅かったのか!)
 
エリトレ(クリーンヒットしたと思ったが、最大インパクトの少し手前で……)ハッ
 
エリトレ(手前≠チてそういうことか!?)
 
エリトレ「ファイアロー、体勢を立て直せ!ラッシュが来るぞ!」
 

 
───ファイアローとて、決まった、と一瞬は思ったものの、ムクホークの眼光にすぐさま気づいていた。
 
自分の攻撃は失敗していないが、成功もしていないことに。
 
しかし、その一瞬がこの展開の明暗をわけた。
 
続けざまに蹴りを3発入れられ、完全に体勢を崩したファイアローは退がるに退がれずなすがまま、インファイトをフルコースでもらうこととなってしまった。
 
顔に翼に腹に、蹴りとはたきとついばみをもらいながらしかし、ファイアローは折れない。

切れかけていたはがねのつばさを続行し、正面からはさむようにチョッピング。
 
防御を捨てていたムクホークはさすがに泡を食って手が止まる。
 
……が足は止まらない。顔を思いっきり蹴飛ばして距離を取った。



エリトレ(助かった)
 
エリトレ(効果はいまひとつだろうが、ファイアローには臨戦に使える技は採用してない。はがねのつばさだってせいぜいインファイトを少しとどめるのがせいいっぱい)
 
エリトレ(間合いを詰められている限りはあちらに軍配が上がってしまう)
 
エリトレ(だが、こうして距離をとればそうはいかない)
 
エリトレ(ブレイブバードにフレアドライブ、有効打はいくらでも……)
 ▼ 85 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/26 20:55:32 ID:h5Z8Zr3Y [6/21] NGネーム登録 NGID登録 報告
───そう、距離を取った分有効打になる技。
 
それを持っているのはファイアローに限った話ではない。
 
そして、間合いをとってにらみ合い。
 
そんな空気になっているものと、青年はほんの少し、たった少しだけ息をついて、仕切り直す策を考えていた。
 
ファイアローを蹴り飛ばしてそのまま、ブレイブバードの体勢をとったムクホークの姿を目に捉えながらも 。
 

 
エリトレ「ファイアロー!」
 
 
 
───息をつくヒマもないのか、と心のなかで毒づきながら相棒の名を呼ぶも、すでにムクホークはファイアローを勢いまかせにぶっとばしていた。
 
力なく放物線をえがいて落ちていくファイアローの姿を見、青年は顔を歪ませながら、モンスターボールを掲げた。
 
 

女「ぶえっ」ドサッ
 
そっくりさん「!?」
 
女「だい……じょうぶ」
 
ムクホーク「」死ーん
 
女「これは……引き分けだな……」シュポン
 
エリトレ「いいや、俺の敗けだよ」テクテク
 
女「え」

女「………でも、同時にノックアウトですよ」
 
エリトレ「ムクホークはブレバの反動で気絶したんだろ」
 
エリトレ「ファイアローの攻撃でじゃなく、だ」
 
エリトレ「なら、君の勝ちだ」

女「そう……ですか」

エリトレ「あぁ……悔しいな……君のような子どもに負けるなんて」ボソッ
 
エリトレ「俺なら勝てる、と思っていたんだが………」
 
女「……っ」
 
エリトレ「まったくこれだから……ポケモンバトルってのはやめられないよな」フフッ
 
女(あ、ヤっバイ人だ)
 


 ▼ 86 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/26 20:57:18 ID:h5Z8Zr3Y [7/21] NGネーム登録 NGID登録 報告



───エリートトレーナーとのバトルのあと、直近のポケモンセンターに立ち寄った。
 
さすがにこれ以上の連戦はこたえる。
 
 
 
女「どーしてこんなにバトルしてるんだろ………」ゲンナリ
 
コータス(そういう日って割りきったんじゃなかったの)
 
女「しんどいものはしんどい」ゴキュゴキュ
 
そっくりさん「」ゴキュゴキュ
 
女「ぷはぁ〜」
 
そっくりさん「」プハー
 
ギャンブラー「よいーっす」
 
女「あれっ」

女「どうしてここに?」
 
ギャンブラー「さっきの試合でちょっとね」ニコニコ
 
ギャンブラー「おかげさまで……エヘヘヘ」チャリーン
 
女(うわぁ)
 
ギャンブラー「てか、妹ちゃんはバトルしないんだね」
 
女「手持ちがいないみたいで。」
 
ギャンブラー「なら自分で戦わんとだね」アハハ
 
女(ギャグだよな?)
 
そっくりさん「」シュッシュッ
 
ギャンブラー「ノリいいんだー」ハハッ
 
女「あはははー」
 
ギャンブラー「そんじゃあ次はうちとやろうか」

女「はは……は?」
 
ギャンブラー「いやぁ、見てたらうちもなんかやりたくなってきちゃってさ」
 
ギャンブラー「今日めっちゃバトルしてるんだよね?」
 
女「いや、まぁ、その……今はポケモンたちを回復してるので、もう少し休憩を……」
 
ラッキー「らっきー!」
 
ジョーイ「お待たせしました」ガラガラ
 ▼ 87 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/26 21:01:10 ID:h5Z8Zr3Y [8/21] NGネーム登録 NGID登録 報告
女「あ」
 
ジョーイ「ポケモンたちはすっかり元気になりましたよ」
 
ギャンブラー「お、タイミングばっちり!」
 
ギャンブラー「ポケセン裏でいいよね!?」
 
女「……オネガイシマース」
 
そっくりさん「」ニコニコ



ギャンブラー「よぉし、ここで!」
 
女(確か、ギャンブラーさんが連れてたのは、ニャースとサイドンだったな)
 
女「」クルリ
 
女(……水場のないフィールド。そりゃあそうか)

 
 
───手持ちの情報はお互いに割れている。
 
ここでは、ラプラスは戦いづらい。
 
 
 
ギャンブラー「カモン!」
 
サイドン「ドッシェエイ!!」ドシン
 
女(でも、ラプラスじゃなくてもこの子なら……)
 
女「シザリガー!」ポン
 
シザリガー「ザリッ」ドンッ
 
ギャンブラー「だよね」

女(アクアジェットで機動力も確保できるし、何よりタイプ相性がいい)
 
ギャンブラー「こっちからいくよ!」
 
ギャンブラー「ロックブラスト!」
 
女「アクアジェットで避けて!」
 
シザリガー「シェシイッ」ドッ

女(相性有利でも、あっちの攻撃はいまひとつじゃないから、ヘタに食らってられない)
 
シザリガー「」シュンッ
 
ギャンブラー「かわすね!」

ギャンブラー「サイドン!打って撃って射ちまくれぇ!」
 ▼ 88 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/26 21:02:39 ID:h5Z8Zr3Y [9/21] NGネーム登録 NGID登録 報告
サイドン「」ドンッドンッドンッドンッ
 
シザリガー「」ザッ
 
女(ぎりぎりかわしてくれてる)
 
女(そのまま、少しずつ間合いを詰めて……)
 
シザリガー「じゃりっ!」パッ
 
女(入った!)
 
女「クラブハンマー!」

シザリガー「シェイッ!」ジャワッ…
 
ギャンブラー「つのドリル」
 
サイドン「」ギュリリリリリリ
 
シザリガー「!」
 
女「ッ……頬叩いて横っ飛び!」
 
シザリガー「!」パァンッ
 
シザリガー「」ザザザザッ
 
女「あっぶな……」
 

 
───一撃必殺わざ。
 
普段自分が使っていると使いにくい、当てづらい、などと思うが、いざ相手にやられると、万が一にももらってしまった場合の可能性を考えてしまってぞっとする。
 
強力なわざを相手に使われる、というのは脅威だ。
 


シザリガー「ざり……」ヨタッ
 
女「? シザリガー?」
 
女「!」
 
女(ハサミにかすったのか)
 

 
───右腕を重そうに構えている。
 
完全に方向転換できなかったか、あるいは。
 
 
 
女(サイドンが方向転換についてきた?)

ギャンブラー「」フフン
 ▼ 89 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/26 21:04:36 ID:h5Z8Zr3Y [10/21] NGネーム登録 NGID登録 報告
女「……シザリガー、まだやれる?」
 
シザリガー「……もち」
 
女「」コクン
 
女「アクアジェット!」
 
ギャンブラー「ロックブラスト!」
 
女(つのドリルにかち合わない背面……とはいかないまでも、側面に回り込めれば!)
 
シザリガー「シッザァ!」ダンッ
 
女「そこだ!」
 


ギャンブラー「」ニヤッ
 
ギャンブラー「メガホーン!」
 
女(効果抜群だけど、この位置ならどのみち食らわない!)
 
 
 
───シザリガーがクラブハンマーを振りかぶり。
 
サイドンがシザリガー向けてメガホーンを放つ。

右腕で。
 
 

シザリガー「ザリッ!?」
 
サイドン「シャッドン!!」ズドン
 
 
こうか は ばつぐんだ!
 

 
ギャンブラー「やぁーりぃっ!」パチンッ
 
 
 
女「なっ!?」
 
シザリガー「」死ーん

女「メガホーンをツノじゃなく、右手で……?」

ギャンブラー「うちのサイドン、手刀じゃないとメガホーンが撃てないんだ」アハハ
 
女「えぇ……」


 
───とはいえ、納得がいかないわけではない。
 ▼ 90 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/26 21:07:41 ID:h5Z8Zr3Y [11/21] NGネーム登録 NGID登録 報告
同じわざでも、個々のポケモンによって使い方が違うことは多いのだ。
 
短刀のようになって殴り合いに使われるいあいぎり。
 
遠隔だと思ったら殴りかかってきたはっぱカッター。
 
持続時間を伸ばし、リーチのある得物として機能するボーンラッシュ。
 
そういった、特殊なわざの使い方をするポケモンは、彼女も身に覚えがあった。
 
そもそも、アクアジェットだって機動性を高めるために使うわざではない。 
 
 
 
ギャンブラー「張った張ったの大博打はもちろん大好きなんだけど」
 
ギャンブラー「こういう風に、勝つべくして勝つよう立ち回るってのも、けっこー好きなんだよね」ヘヘッ
 
女(……たしかに)
 
女(ロックブラストで牽制、近付いてきたらつのドリルをちらつかせる)
 
女(警戒させて絶好のポイントに誘い込んでから、メガホーンで仕留める……)ハッ
 
女(それとなく、ラプラスを繰り出せない陸地のフィールドに来て、それでも私が相性有利のシザリガーを繰り出すことを見越した上での作戦)
 
女(ここまでずっと、ギャンブラーさんのてのひらの上だったんだ)クッ
 
ギャンブラー「」ドヤァ
 
女(……腹立つぅ)
 
女「……ありがとう、シザリガー」シュポン

ギャンブラー「サイドンまだ元気だけど、もう1回やる?」
 
女「お願いします」キッ
 
ギャンブラー「おっ、やる気ぃ」ニヤリ
 
女(今日は……そういう日=I)メラッ
 
女「ドリュウズ、君に決めた!」
 
ドリュウズ「ドッリュウズ!」ダンッ
 
女「つのドリル撃ってくるからね。気を付けて」
 
ドリュウズ「りゅう」コクン
 
ギャンブラー「ネタバレされちゃった」

ギャンブラー(ロックブラストもメガホーンもいまひとつのはがねタイプだから……)
  
ギャンブラー&女「「じしん!!」」
 
ギャンブラー「!」
 ▼ 91 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/26 21:10:34 ID:h5Z8Zr3Y [12/21] NGネーム登録 NGID登録 報告
ドリュウズ「ドッ!リュウズ!!」ズドン!!


サイドン「サイッ……ドオン!!」ドカン!!
 
 
 
───地面を駆け抜けたふたつの衝撃は真正面から衝突。
 
そのまま、お互いに雲散霧消した。
 
 
 
ギャンブラー「打ち消された!?」
 
女(打ち消しになるのか)

女「ドリュウズ! 走って!」
 
ギャンブラー「ロックブラスト!」
 
女「なるべくかわして! 当たるのは切り捨てて!」
 
ギャンブラー「それ、困るなっ!」
 
ドリュウズ「ドリュッ、ドリュッ!」ダッダッ
 
ギャンブラー(潜らずに走らせてるのは、じしんに対応できなくなるからか)
 
ギャンブラー「その分遅いけどね!」
 
女(じしんの撃ち合いになってたらドリュウズの方が速いぶん分があった)
 
女(でも、そうならなかったから、もうこれ≠ナいくしかない)
 
ドリュウズ「…ッ」ガッ
 
女「ドリュウズ……ッ」クッ
 
女(いや……今は勝負に集中!)
 
女(ドリュウズだって、前を見ているんだから!)
 
ギャンブラー「サイドン、じしん!」
 
女「つのドリル!!」
 
ギャンブラー「!?」ギョッ

ドリュウズ「!!!」ジャキンッ
 
ギャンブラー「サイドン退がれ!」
 
サイドン「ドウッ!」
 
ドリュウズ「ドリュウッ!」ギュルルルルルルル


ずどん!!
 ▼ 92 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/26 21:12:24 ID:h5Z8Zr3Y [13/21] NGネーム登録 NGID登録 報告
女(ハズレた!)

ドリュウズ「〜ッ!」ギャギャギャギャッ!!!
 
サイドン「サァイ……」
 
ギャンブラー「あ、あぶなかったッ……」
 
女「とびかかれッ!」
 
ドリュウズ「」パッ
 
ドリュウズ「リュウズ!」ダンッ

女「もう……1発!!」
 
ドリュウズ「!!!」ジャキンッ
 
ギャンブラー「なっ……ふざけんっな! じしん!」
 
サイドン「ドォン!!」ドカン!!
 
ギャンブラー「ッ……あ!?」
 
 

───自分で指示しておいて、間抜けさにハッとした。
 
 
 
ギャンブラー(今、浮いてる……!)
 
ドリュウズ「」ギュルルルルルルル!!
 
ギャンブラー「ころがれ!」
 

ギャアンッ!!
 
 
サイドン「どんっ…」ハラハラ
 
ギャンブラー(なんとか、かわしてる!)
 
ドリュウズ「〜!」ギュルルルルルルル
 
女「その、ままっ!!」
 
ドリュウズ「!!」
 
ドリュウズ「リュウウッ!」グルンッ
 
サイドン「!!!!」

ギャンブラー「メチャクチャかよッ!」

 ▼ 93 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/26 21:13:53 ID:h5Z8Zr3Y [14/21] NGネーム登録 NGID登録 報告
ギャンブラー「つのドリル!!」
 
サイドン「!!」ギュリリリリリリ

女「ぃぃぃいっけぇ!!」
 
ドリュウズ「ドォォオオッリュウ!!」ギュルルルルルルル!!!!
 

ガチンッ!!!!
 
 
ギャンブラー(なんつう音ッ)ギリッ
 
 

サイドン&ドリュウズ「」ギュルルルルルルルギャギャギャギャリギュリリギャギャギャ!!!!!!!!
 

 
女「〜………ッ!!!」カッ
 
 













 
女「つ」
 
 
女「ら」
 
 
女「ぬ」

 
女「け」
 
 
女「 ぇ」
 
 
女「 ッ」
 
 
女「!!」
 


ドリュウズ「!」ギラッ
 ▼ 94 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/26 21:15:46 ID:h5Z8Zr3Y [15/21] NGネーム登録 NGID登録 報告
ばこんっ!!!!!!
 
 


 
女「!」ハッ
 
ギャンブラー「あっ!!」
 
 
 





































 
サイドン「…………ッ」グラァ
 
ドリュウズ「……りゅうず」
 


サイドン「」バタン、キュー
 
 
いちげきひっさつ!! 
 ▼ 95 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/26 21:18:36 ID:h5Z8Zr3Y [16/21] NGネーム登録 NGID登録 報告
ギャンブラー「……………………はぁ」ガックシ
 
ギャンブラー「」シュポン
 
ギャンブラー「一撃必殺……好きなんだね」
 
女「」
 
女「…………はい」ドキドキ
 
女「勝つべくして勝つよう立ち回るのは、当然なんですけど」
 
女「……張った張ったの勝負も好きみたいです」
 
ギャンブラー「なぁんだ。ギャンブラーじゃん」ニヤッ
 
ギャンブラー「なりふりかまわない感じ、うち、好きよ」
 
ドリュウズ「どりゅ」イテテ
 
女「あっ」
 
女「ボロボロ」
 
ドリュウズ「りゅ、りゅうず。ドリュウ」
 
女「ゴメンね、無理させちゃった」シュン
 
女「ありがとう。ゆっくり休んでね」シュポン
 
ギャンブラー「」
 
ギャンブラー「……君、遠慮とか取り越し苦労で損するタイプでしょ」
 
女「え」
 
女「い、いや、そそそそそんなことは」
 
ギャンブラー「見境なくなんでもかんでもおぶろうとしないで、これだけ≠チてなにかに集中したほうがいいかもよぉ〜」
 
女「」

女「……はい、すごく、そう思います」
 
ギャンブラー「あの夫婦のこととかもさ」
 
女「うぐ」
 
ギャンブラー「好きなんでしょ?」
 
女「………///」

ギャンブラー「ふたりも、君のこと好きだろうし」
 
女「そんなこと……」
 
ギャンブラー「わかるに決まってんじゃん、あからさまだもんよー」

ギャンブラー「両思いなんだからさ、その気持ちに素直になっときゃいいんだよ」ニヘラ
 ▼ 96 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/26 21:20:52 ID:h5Z8Zr3Y [17/21] NGネーム登録 NGID登録 報告
ギャンブラー「君はそれが許される歳で、それを望まれているんだから」
 
女「?」
 
女(どうして……)
 
ギャンブラー「うーし。ポケセンにとんぼがえりだー。お茶しよお茶ー」
 
女「」
 
女(どうして今、表情が翳ったんだろう)
 
女(……この人が秘めてる気持ちが、どんなものなのか、誰に対してのものなのか、私にはわからないけれど)
 

 
───あんな、なにも考えていなさそうな爛漫な笑顔なのに。
 

 
女(この人は、その気持ちが許されるものじゃない、と思ってるってことなのかな)
 
ギャンブラー「……お、何あれ」
 
女「?」
 
女「あ、ドローンだ」ボソッ
 
ギャンブラー「アルトマーレでよくあんなもん飛ばせるよね」
 
ギャンブラー「なくしそう」
 
女「あれ、たぶん……」
 
ギャンブラー「え。彼、そんなことしてんだ」ビックリポン
 
女「はい、ここら辺で飛んでるのなんて、あれくらいですし」
 
女(こんなとこまで飛んでこれるくらい仕上がってきてるのか……)
 
ギャンブラー「へぇ、ドローン製作か。そんなことやってたとはねぇ」
 
ギャンブラー「宿の人、誰も知らないんじゃない?」

女「かもですね」

そっくりさん「」ヒョコッ
 
女「かまえってか」
 
そっくりさん「」コクンコクン
 
ギャンブラー「なかよしー」イェーイ
 
女「」アハハ
 
そっくりさん「」エヘヘー


 ▼ 97 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/26 21:22:25 ID:h5Z8Zr3Y [18/21] NGネーム登録 NGID登録 報告
 
 
 
───ひと休みしてから、すぐ宿に戻った。
 
早めに戻ったのは、昨日の一件もあるからだ。
 
あまり遅く帰るのもばつが悪い。
 
 
 
ギャンブラー「ただいまー」バタン!
 
女「戻りました」
 
おねえさん「あらまぁ、おかえりなさぁい」
 
女(バイトの)
 
おねえさん「今日は……良い子なんですねぇ」フフフ
 
女「うぐっ」
 
ギャンブラー「意外と言うよね」アッハッハ
 
ギャンブラー「……ほら、行ってきな」ポン
 
女「えっ」
 
ギャンブラー「ふたり、たぶん部屋でしょ」
 
女「いや、でも、その……」
 
ギャンブラー「いいからいいから」

ギャンブラー「思った通りにしてみな」
 

 

 
女「」
 
女「……どうしよう」
 

 
───部屋の前に来たものの、何をどうすればいいかわからず、ノックをしようとしては手を引っ込める、というようなことを繰り返していた。
 
 
 
女(話を……するのだとして、何を?)
 
女(どう切り出す?)
 
女(いきなりとか不自然だよね)
 
女(どうでもいいこと話しても実にならないし)
 ▼ 98 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/26 21:24:23 ID:h5Z8Zr3Y [19/21] NGネーム登録 NGID登録 報告
女(無駄な時間をとらせるのも……)
 

キィィ……
 
 
女「あ」
 
おくさん「」パチクリ
 
おくさん「」ニッコリ
 
おくさん「おかえり」

女「……た」グッ
 
女「ただいま、戻りました」
 
おくさん「かたいよー」フフッ
 
女「えっ、えっと、じゃ、その……」
 

 
女「ただいま」
 
おくさん「お茶、淹れてたの」
 
おくさん「のんでく?」
 
女「いただきます」
 
 
 
───部屋にお邪魔して、お茶をいただくかたわら。
 
話をした。
 
今日の話。
 
これまでの旅の話。
 
アルトマーレに来てからの話。
 
そして、これまでの自分の話を。
 
それを静かに聞いていたおくさんとだんなさんは、彼女の話が終わってから言った。
 
「話してくれて、ありがとう」
 
そして話してくれた。
 
自分たちの話を。
 
そして、※※※※※と出会って考えていたこと。
 
今、彼女の話を聞いて、その上で思っている、あることを。
 
彼女にとって、願ってもない申し出を。
 ▼ 99 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/26 21:25:37 ID:h5Z8Zr3Y [20/21] NGネーム登録 NGID登録 報告



5日目につづく。
 ▼ 100 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/26 21:38:44 ID:h5Z8Zr3Y [21/21] NGネーム登録 NGID登録 報告
過去スレのURLを貼り忘れていたのでここで貼ります。

つたない展開やらケアレスミスやら多々ありますが、ここまで読んでいただけたなら幸いです。


1本目【旅SS】女「コータス達とぶらり旅」
http://pokemonbbs.com/poke/read.cgi?no=144905

2本目【旅SS】女「コータス達とぶらり旅〜!」
http://pokemonbbs.com/poke/read.cgi?no=367023
 ▼ 101 ッフロン@ブリーのみ 17/10/26 21:41:56 ID:Y5oUHiRs NGネーム登録 NGID登録 報告
>>100
全部リアタイで読んでるよ( * ,,>ω<,,)b
投稿お疲れ様!!
 ▼ 102 メハダー@どくけしのみ 17/10/27 01:12:47 ID:wjS.GQdY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>100
自分も一番最初から読ませてもらってます。
楽しみにしてますので今後も頑張ってください。
 ▼ 103 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/05 13:49:35 ID:868XwIos [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
おじいさん「」ペラリ
 
コータス「……zzz」
 
おじいさん「」ペラリ
 
コータス「……zzz」
 
おじいさん「」ペラリ
 
コータス「……zzz」
 

 
 
おじいさん「……ふむ」パタン
 
おじいさん「そろそろ朝御飯にしようか」
 
コータス「」ムクリ
 
コータス「こぉ」
 

 
───数年前から、コータスはこの老人と暮らしていた。
 
きっかけは記憶に残るほど大したことではなかったように思う。
 
「ウチ来る?」「いくいくー」くらいのものだ。
 
別に急ぐ旅でもなし、ゆったりとくつろぐことができるし、で、お世話になっていたのだが。
 
気づけば数年、老人とポケモンは一緒に暮らしていた。
 
老人は妻に先立たれて久しいらしく、たまに親族が様子を見に来るものの、基本的にひとり暮らしだ。
 
歳の割に元気なほうで、生活で必要なだいたいのことは自分でやっているし、没頭する趣味もある。
 
コータスもそれに付き合って、山を登ったりしたものだ。
 

 
おじいさん「この花はクラボの仲間らしい。人間では実を食べられないようだが、君はどうだい?」
 
 
 
───そんな風に話しかけてくるのだが、コータスはそれに答えたことはない。
 
人間と会話することのリスクを、彼はとっくの昔に学んでいたからだ。

ただ、すっぱい実だったらいいのになぁ≠ニ、聞かれたことについて考えを及ばせたりはする、のだが。
 


コータス「」モグモグ
 
コータス(家、広くなったな)
 ▼ 104 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/05 13:50:43 ID:868XwIos [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
───最近、老人は身辺整理と言って、家にあるものを引き払っている。
 
昔にコータスが見知っていた人の暮らしとはずいぶん様変わりしていたものの、それでも、こんなにものを減らしてしまって……と思ったりはする。
 
豊かになって物が増えると、自分が死んだ後のことを考えなくてはいけなくなるらしいから、人間というのは難儀な生き物だ。
 
身辺整理にかかりきりで、ここ最近は登山にも行っていない。

 
 
おじいさん「〜♪」
 

 
───階段を上っていく老人を見送りながら、考えてみる。
 

 
コータス(彼が死ぬのは僕よりもずっと早いだろうな)
 
コータス(片付けが終わって、彼が逝って……そしたら、どうしようかな)
 
コータス(モンスターボールとかいうヤツにも入ってないから、僕はいつでも出ていける)
 
コータス(また、旅に出るか)
 
老人「うわっ」ズルッ
 
コータス「あ」
 

 
どたっ、どん、ごきっ。
 
 
 
「お父さん、わたしー」ガチャリ
 
「お父さん……?」
 
「お父さん!!」ドタドタ
 
 













 
───肩と股関節周辺を骨折した彼は入院。
 
手術を受けて、なんとか事なきを得た。
 ▼ 105 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/05 13:51:51 ID:868XwIos [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「心配をかけてすまないねぇ」
 
 
 
───苦笑いでそんなことを言っていたのもつかの間。
 
その体はどんどん弱っていった。
 
傷が治るまで時間がかかり、その間に足腰の筋力が著しく衰えていくのだ。
 
衰弱は徐々に全身にいたり、言葉も弱々しくなっていく。
 
ほんの少し前まで、あんなに元気だったのに。
 
1年も経った頃には、すっかり寝たきりになってしまっていた。
 
そして、気管に少しもの≠ェ入っただけで、弱った呼吸器官はそれを押し返すことができず、肺炎に発展した。
 
呼吸器をつけて、次第に、会話の機会もなくなり、大事の頻度が増していく元同居人を、コータスはずっとそばで見守っていた。
 
 
 
老人「す──は──」
 
コータス「」ジー
 

 





























 
 
コータス「起きてんのか寝てんのか、わかんないねぇ」
 ▼ 106 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/05 13:55:42 ID:868XwIos [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
おじいさん「───」
 
コータス「君たちって、こういう死に方もするんだねぇ」
 

コータス「こんなにゆっくり死んでいくのを、ゆっくり見送ることになるなんてねぇ」
 

コータス「何があるか、わかんないもんだ」


コータス「───僕、昔は人間とよくしゃべってたんだぜ」
 

コータス「山に住んでてさ」
 

コータス「かみさま、とか、呼ばれてたんだよねぇ」
 

コータス「人間には友達もいたんだ」


コータス「あっという間に死んだけど、あの子が遊びに来るの……うっとうしかったなぁ」ホロリ

 
コータス「君と登った山はどれも、僕の住んでたところとは違ったけど」
 

コータス「なんだか、昔を思い出しちゃった」
 

おじいさん「────」
 

コータス「───君のご飯、好きだったよ」
 

コータス「それが食べられないのは、ちょっとだけ残念だけど」
 

おじいさん「──────」ポロ


コータス「じゃあね、ばいばい」
 

 






───老人の呼吸が止まった。
 ▼ 107 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/05 13:57:12 ID:868XwIos [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
彼の目元からこぼれた涙が、まぶたが薄く開いていたことからの生理現象なのか。
 
はたまた、最期にコータスの声を聞き取っていたからなのかは、わからなかった。
 
けれど、コータスは前回よりもすっきりとした気分でいた。

友人を見送って、最期に別れを告げることができたことはもちろん、ここ数年リスクがあるから≠ニ我慢していたことを実行できたのだから。




コータス「───いくか」
 ▼ 108 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/05 13:59:03 ID:868XwIos [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
───亡くなった老人の葬儀の後。
 
遺産相続についての整理が終わっていなかったということもあり、遺族はもめにもめた。
 
やれ、俺が子どものとき、親父は俺を放逐していた≠セのわたしが飼いたいとポケモンを連れてきたのに一蹴された≠セの、もめにもめすぎて、各々が胸にしまっていた不平不満の類いまでが取りざたされ始め、もはや会議などとっくの昔に忘れ去られ、ただの口論会の様相を呈していた。

引っ張りあいに押し付けあい。
 
登山具なんか誰が使う、とか。
 
一流企業の重役のくせに金を欲しがるのか、とか。
  
最期に飼っていたポケモンの面倒なんか見たくない、とか。
 

 
そんな遺族のみにくいいざこざが起きるよりもずっと前に、コータスはまた旅立っていた。
 
すっきりとした、いい気分で。
 ▼ 109 ンプジン@ハンサムチケット 17/11/05 15:00:23 ID:kXbW1sIU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
いつも楽しみにしています。
 ▼ 110 ドゼルガ@ヘルガナイト 17/11/05 23:33:19 ID:KHpXWDbc NGネーム登録 NGID登録 報告
支援( ,,°^°,, * )
 ▼ 111 ッシード@ライブドレス 17/11/06 23:20:10 ID:4DbU5LKY NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 112 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/14 21:09:50 ID:DYiiEyI. [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コータス「いつまで、ここにいるつもりなの?」
 
 

───昼過ぎ。
 
昨日ほどではなかったが、今日もそこそこにバトルを挑まれた。
 
そっくりさんやポケモン達とならんで、現在休憩中である。
 
ここまであまり触れ合っていなかったからか、そっくりさんはオノノクスやムクホークにじゃれついていた。

同じ顔の別人であるからか、ムクホークはあいまいな表情でなすがままになっている。
 
そんな穏やか(?)な空気のなか、コータスが唐突にそう訊ねてきたのだ。
   
 
 
女「……いつまでって?」
 
コータス「さすがに長すぎだよ。そろそろ、1週間経っちゃうよぉ?」
 
女「まだ5日だよ」
 
コータス「でも、今日立つ気はないでしょ?」
 
女「………」
 

 
───今日。
 
そっくりさんは宿に来なかった。
 
それでも、待ち合わせをしたわけでもないのに、宿を出てぶらぶらと街を散策していたらいつの間にか彼女≠ニ合流できていたのだから、不思議なものだ。
 
その後、いままでと同じように街を巡り、ウィンドウショッピングしたり、持ち物を見せたり、だとか。
 
……そんな、年相応のなんてことのない行楽をした。
 
そっくりさんは光り物に目がないらしいこともわかった。
 
生き物のさがなのだろうか。

それは、無用の長物と化していたものだったので、どうせなら、とすっぱり諦めて、あげてしまった。

もらいものではあったが、そっくりさんがご満悦だったので、彼女もいい気分でのプレゼントになった。

都合6回ほど、通りすがりにバトルもした。

しかし、宿にとった予約はもともと3泊4日。
  
本来であれば、昨日の段階でアルトマーレを去るはずだったのだ。

  
 
女「宿泊の延長手続き、あっさりしてるよね」
 
女(だからみんな、ここにいるの長いんだろうか)
 ▼ 113 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/14 21:11:55 ID:DYiiEyI. [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コータス「どうするの?」
 
女「どうするの、って?」

コータス「旅をやめるのかって聞いてるんだよ」
 
女「な、なんでそういう話になるの」
 
コータス「だって昨日、あの夫婦と話してたじゃん」
 
コータス「サーナイトとデスカーンから事情も聞いたよ」
 
コータス「君、まんざらでもないんでしょ?」
 
女「……うん」
 
女「私がそうしたら、コータスはどうする?」
 
コータス「別にどうもしないけどぉ?」
 
コータス「いまさら、1人でも旅を続けるなんて言いやしないよ」

コータス「いい加減、旅をする元気も無くなってきたし」
 
女「……って、なんでそうしたら旅はやめる、みたいな話になってるの?」
 
コータス「そりゃそうでしょぉ」
 

 
コータス「あの2人に引き取ってもらう手続きが終わったら、すぐにでも旅に出るつもり、なんて言わないよねぇ?」

 
 
コータス「その言い分はメチャクチャだ。僕ですらわかるよ」

女「……でも、旅は続けたいの」
 
コータス「どうして?」
 
女「だって、ここまで旅をしてきたから……」
 
 
 
───いろんな人に出会ったから。
 
いろんな考え方を知ったから。
 
自分に与えられた機会に気付けたから。
 
ずっと諦めていたものを、諦めなくていいのかもしれない、とやっと実感することができたから。
 
あと、ほんの少しで、見つけられそうな何かがある気がするから。



コータス「でも、君がずっと焦がれていたものが、あっちのほうからやって来たんだよ」
 
コータス「それを不意にするの?」
 ▼ 114 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/14 21:14:35 ID:DYiiEyI. [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「……意地の悪い言い方しないでよ」

女「どのみち、今日いっぱいは泊まることになってる」
 
女「ちゃんと考えるから」
 

 
───ちゃんと考える。
 
あの2人の娘になるか。
 
もう少しで見つかりそうな何か≠フために、旅を続けるか。

あるいはその両立はできまいか。
 
それに加えてもうひとつ。
 

 
女「いて」ピクッ
 
 
 
───手の甲の皮が少しだけむけて、血がにじんでいた。
 
この傷は、自分の過失によるものだ。
 
宿を出る前、こんな風に考えごとにふけっていたせいか、廊下の曲がり角で正面衝突を起こしてしまったのだ。
 
バイトのおねえさんと。
 
 
 
女『痛だっ』
 
おねえさん『あわわわわっ』ドテッ
 
女『あ、すみません! ケガとかないですか?』
 
おねえさん『ばたんきゅ〜』グルグル
 
女『目を回している……』

 
 
おねえさん『ごめんなさぁい、前方不注意でしたぁ……』
 
女『前方不注意』

女『いえ、私の方こそ前方不注意でした。すみません』
 
女『お怪我とか……』
 
おねえさん『ないですよぉ』ニコニコ
 
女『そうですか』

おねえさん『……ん? どうしたのかしら』
 ▼ 115 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/14 21:16:34 ID:DYiiEyI. [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
おねえさん『おでかけでしょ?』
 
おねえさん『いかないの?』

女『え?』
 
女『ほんとに大丈夫ですか?』
 
おねえさん『だいじょうぶって、言ってるじゃないですかぁ』コロコロ
 
おねえさん『変わった子』フフフ
 
女『』ニガワライ
 
 
 
 
 
 
女(変な人だった……)
 

 
───そんなことがあった、のだ。

バイトのおねえさんとは、あまり話せてはいない。
 
従業員だから当然ではあるのだが、いまいちそのひととなりが読めない。
 
隣室の男性に聞いたところによると。
 
 
 
『彼女、半年くらい前からここで働き始めたんだ』
 
『わたしはどんくさいから、その分がんばらないと≠チてよく言ってる』
 
『俺の趣味にも寛容的っていうか……むしろ関心もってくれてるくらいでさ』
 
『本当に素敵な人なんだよ』
 
 

女(ベタ惚れなのがよくわかった)
 
女「」チラリ
 
そっくりさん「」フカフカ
 
ムクホーク「〜……」モミクチャ
 
 

───ムクホークにちゅっちゅしているそっくりさんに目が向いていた。

彼女の今日の格好は初心に立ち返ったのか、出会ったときの姿だった。
 
要するに、鏡写し。
 
いまさら羞恥はない、のだが。
 ▼ 116 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/14 21:17:31 ID:DYiiEyI. [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女(格好だけじゃあきたらず、ちょくちょく私の物真似をしてくる)
 


───ほんのちょっとした所作を繰り返したりするので、ひょっとして、と思ったらそのとおりだった。

立ち止まったときに腕を左右に少し広げたりだとか。
 
辺りを見回すときに下くちびるを尖らせていたりとか。
 
小走りになるとき帽子とウエストポーチをおさえているところだとか。

細かすぎて最初はピンと来なかったがしかしなるほど、考えてみると自分はよくそんな風にしているかもしれない、と思った。
 

 
女「なんで物真似してるの?」
 
「」ニッコリ

女(意味なんかないか) 
   
 
 
───そっくりさんはいつもどおり。
 
とても自然な不思議ちゃん。
 
いつもどおりなそっくりさんにくらべて、しかし※※※※※はいささか不自然に過ぎた。
 
とはいえそれも無理からぬ話だった。
 
なにせ、今までなかったような巡り合わせがいっぺんに来ていたのだから。
 
どれも彼女にとっては至上の機会で、そのうえ。
 
パッと考える限りでは、その全部を総取るのはとても難しそうだったからだ。
 
彼女はここ数日、今までになく満たされた時間を過ごしているのと同じくらいに。
 
生まれて初めて、これからの人生を左右するほどの大きな悩みに直面していたのだった。
 
 
 
「?」パクパク
 
女(唐突な口パク)
 
 

───休憩を終了して数分後。
 
現在、ひとけのない水路脇の小道を歩いていたところ。
 
歩きながらも、考え事をしていた彼女に、そっくりさんが詰め寄ったのだった。
 
 
 
女「どうしたの?≠チて……どうもしないよ」
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