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【クリスマスSS】黒いサンタクロースは少年にどんな夢を運ぶのか?

 ▼ 1 キノ◆zBLfAqPIVA 17/12/22 20:23:53 ID:/dTDEsLM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カロス地方北部のとある田舎では、既に雪が降り始めている。

飾り程度にしか植えられていないであろう街路樹は、その輪郭が見えなくなるほど白い綿のような雪に覆われていた。

────音も何もかも呑み込んでしまいそうなそんな冬景色の中、一人の少年の声が、凛と響いている。


ユキ「ジングルベール、ジングルベール、すずがーなるー」


母「……あら、ユキったら随分と気が早いのね。クリスマスはまだ来月なのに、もうその歌うたってるの?」


ユキ「だってだって、すごく楽しみなんだもん! お父さんもその日はお仕事休みだし、みんなで美味しいケーキを食べるんだ! サンタさんが来るのも、もちろん楽しみだよ!」


母「うふふ、サンタさんは良い子のところにしか来ないのよ。悪い子でいるとね、代わりに黒いサンタさんが来て、悪い子にお仕置きしちゃうんだって」


ユキ「え……嫌だよ。ボク、お仕置きされたくない……」


母「……クスッ、お母さん意地悪なこと言っちゃったわね。ユキ君はとーっても良い子だから大丈夫。お母さんが保証するわ」


ユキ「えへへ……」


母「それに、黒いサンタさんも悪い人じゃないのよ? 悪い子にはお仕置きするけど、悪くない子にはちゃんと祝福を与えてくださるんだって」


ユキ「へぇ、お母さん物知りだねぇ……」


手はかじかみ、震えてくる。頬は自然に赤くなり、痛みさえ覚える。
厳しい寒さを堪えながらも、ユキ少年は幸せを噛み締めながら歩いていた。

それもこれも全て、隣に大好きなお母さんがいるから……。
 ▼ 28 1◆zBLfAqPIVA 17/12/23 21:53:52 ID:87Nyx8ZY [1/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ユキ「へ?」

ダークライ「ライ……」


ダークライだ。
ユキのすぐ背後に、ダークライがいたのだ。


坊主頭「うわわ……」


ダークライ「ラァァァァァァァァイ!!!!」


坊主頭「うぎゃああああああああああぁぁぁぁ……」


ダークライはその儚げな風貌からは予想も出来ないような野性的な雄叫びを上げた。

一方でガキ大将は、女々しい悲鳴を上げながら、何度も雪に滑りつつズバットと共に退散する。
 ▼ 29 1◆zBLfAqPIVA 17/12/23 21:54:52 ID:87Nyx8ZY [2/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ユキは慌てて、ダークライの身体にしがみついた。


ユキ「ダ、ダークライ? 何でここに」


ダークライ『……キマグレでソトにでたら、たまたまオマエをミカケタだけだ』


ユキ「えへへ……ありがとう」


ダークライは気紛れとは言うが、多分ユキのことを気にかけて外に出てくれたのだろう。

────こんな、こんな温かい優しさを受け取ったのはいつぶりのことだろうか。


ユキの目の端にうっすらと水滴が浮かんだ。
 ▼ 30 1◆zBLfAqPIVA 17/12/23 21:55:48 ID:87Nyx8ZY [3/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そして、帰宅後。

ユキ少年はダークライに思いきってある質問をする。


ユキ「さっきダークライは僕に、自分のこと怖くないかって何回も聞いてきたよね」


ダークライ『ああ』


ユキ「……それは、君が危険なポケモンだからなのかい?」


ダークライ「……」


しばらく、沈黙。

まるでその場どころか時間そのものが凍ってしまったような感覚を覚えた。

このままでは話が進まない。
ユキは自らの最大限の勇気をもってして、口を開いた。
 ▼ 31 1◆zBLfAqPIVA 17/12/23 21:56:27 ID:87Nyx8ZY [4/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ユキ「さっきお店で君の話を聞いてしまったんだ。ダークライは『悪夢を見せて人を殺すポケモン』だって」


ダークライ『……そうか』


ユキ「僕はそうは思わない」


ダークライ『え』


ユキ「だって君はさっき僕を助けてくれたじゃないか。君が危険じゃない理由なんて、それで十分だよ」


ダークライ『……ユキ』
 ▼ 32 1◆zBLfAqPIVA 17/12/23 21:57:36 ID:87Nyx8ZY [5/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ユキ「僕さ……お母さんがいないんだ。……事故で死んじゃったんだけど」


ダークライ「!」


ユキ「お父さんは仕事で留守が多いし、お母さんもいない。家で一人の時間が増えた。寂しくて仕方がなかった。明後日のせっかくのクリスマスだって全然楽しみに思えない」


ユキ「でも、そんな時にダークライが現れて話し相手になってくれた時。僕すごく嬉しくてさぁ……!」


ユキ「だからクリスマスは、その……ダークライがいてくれたらなって、そしたら楽しいクリスマスになるんじゃないかって思って────!!」


ダークライ『……そんなことをイわれたのは、ハジめてだよ』


その時、ダークライは初めて笑った────ような気がした。

彼の表情は依然として分かりづらかったが、思いきってこの話をした意味はあったのかもしれない。


少なくともユキ少年は、ダークライと仲良くなるための一歩を踏み出せたと感じたのだ。
 ▼ 33 1◆zBLfAqPIVA 17/12/23 21:58:27 ID:87Nyx8ZY [6/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
──
────
──────
────────

それから数時間後。

ユキとダークライはしばらく会話を交わした。

ダークライは世界中を放浪したことで体験した数々の興味深い話をした。

それをユキは熱心に聞いてくれた。


────こんな風にニンゲンと話をしたのは初めてかもしれない。


ダークライの心の中にはいつの間にか不思議な感情が生まれていた。



ユキ「スー、スー……」


ダークライ(眠ったか)


眠ったユキ少年を目の前に、ダークライはただ黙って佇む。
 ▼ 34 1◆zBLfAqPIVA 17/12/23 21:59:21 ID:87Nyx8ZY [7/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
────ニンゲンはオレのことを悪夢を見せるポケモンだと言う。

だがそれは、半分正しく半分間違いだ。

正確に言えば、オレ自身に悪夢を見せる力はない。オレに出来るのは夢に干渉することだけ。


つまりそれは、《その気にさえなれば》夢の内容を変えてしまうことも可能なのだが、逆に言えば《その気にならなければ》悪夢を人に見せるなんて絶対に有り得ないということなのだ。



────全てはニンゲンの勘違いと早合点が問題だ。

ニンゲンが悪夢を見るのは、心が不安や恐怖に押し潰されそうになっている影響からであって、決してオレたちの所為ではない。

しかしニンゲンという生き物は極めて愚かなもので、「悪夢は全てダークライの仕業だ」と短絡的にも、そう決めつけてしまったのだ。
 ▼ 35 1◆zBLfAqPIVA 17/12/23 21:59:59 ID:87Nyx8ZY [8/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
オレたち────少なくともオレは、ニンゲンに悪夢を見せたことはない。

しかし、ダークライは夢に関わるチカラを持つが故に、あらゆるニンゲンに嫌われている。

人の手によってしんげつじまという場所に閉じ込められてしまった仲間もいる。



……オレたちが一体何をした?


オレたちはただ、お前らと同じように生きてるだけなのに、こんなの理不尽じゃないか────
 ▼ 36 1◆zBLfAqPIVA 17/12/23 22:00:52 ID:87Nyx8ZY [9/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ユキ「おかあ、さん……」


ダークライ「……」


今、ユキという名のニンゲンが目の前にいる。

彼は今、母親を失くした悲しみから悪夢を見ているようだ。


……昔のオレなら、彼がどう苦しんでいようが無視したかもしれない。

だが今は……。



==========
ユキ「だって君はさっき僕を助けてくれたじゃないか。君が危険じゃない理由なんて、それで十分だよ」
==========




ダークライ(あんなことを言ったニンゲンは……ユキが初めてだよ)



ダークライは、ユキ少年の頭にそっと手をかざした。
彼を、母親を亡くした悪夢から救うために────

 ▼ 37 1◆zBLfAqPIVA 17/12/23 22:01:13 ID:87Nyx8ZY [10/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
本日はここまで。
明日、完結予定。
 ▼ 38 オノンド@パークボール 17/12/23 22:02:12 ID:biLr.DPY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 39 テッカグヤ@ぎんのこな 17/12/23 22:29:41 ID:zCx1t0fM NGネーム登録 NGID登録 報告
支援あげ
 ▼ 40 ヒードラン@デルダマ 17/12/23 22:31:16 ID:79NAkZqU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 41 アゲハント@エフェクトガード 17/12/23 23:54:32 ID:eqMjRU0M NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 42 1◆zBLfAqPIVA 17/12/24 23:30:12 ID:3yImXz12 [1/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
=翌朝=
〜クリスマス前日〜

父「ユキー、お父さん仕事に出るからなー」


ユキ「むにゃ……?」


ユキ少年は父親の声で目覚めた。

寝ぼけたまま、出勤の支度をする父の背中を見つめる。


父「いつも忙しくて構ってやれなくてすまんな。明日はクリスマスだ。お父さんも明日は仕事休みとれたし、二人でパーティでもやろう」


ユキ「え、あ……うっ、うん!」


父「じゃあ……また夜に帰ってくるから」ニコッ

ユキ「い、いってらっしゃーい!」


────お父さんは優しい。

仕事で疲れているはずなのに、お父さんはいつもユキ少年のことをいの一番に考えてくれている。
 ▼ 43 1◆zBLfAqPIVA 17/12/24 23:30:49 ID:3yImXz12 [2/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そんな父を見送った後、少年は辺りを見回した。


ユキ(ところで……ダークライは?)


そうだ。ダークライが見当たらない。
もしかして何処かに行ってしまったのでは?
それとも────

少年は慌てて、パジャマのまま外に出た。

肌を突き刺すような寒さを感じながら、彼はダークライを捜索する。


幸い、ダークライはすぐに見つけることができた。


彼はユキの家のすぐ裏手にある物置に、たった一匹で眠っていたのだ。


ユキ「こんなところにいたぁ……。駄目だよ、こんな寒いところで寝ちゃ」
 ▼ 44 1◆zBLfAqPIVA 17/12/24 23:31:29 ID:3yImXz12 [3/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ダークライ『……あまりヒトメにつくわけにはいかないからな。キミのオトウさんにもみつかりたくなかった』


ユキ「……とにかく暖炉で暖まって! 今、火付けてくるから!」


パタパタと忙しなく少年は走り出す。

その少年の小さな姿を見つめつつ、ダークライはため息をついた。



ダークライ(まだ……ユキから微かに悪夢のエネルギーを感じる)


ダークライは夢に干渉する力を持っている。

そう、彼は悪夢を見せるポケモンとして恐れられているが、事実は全くその逆でもあり、彼は人を悪夢から救う力さえ持っているのだ。


昨日の夜、ダークライはユキ少年の父親が帰ってくる直前まで、少年の悪夢の除去をずっと試みていたのである。
 ▼ 45 1◆zBLfAqPIVA 17/12/24 23:32:40 ID:3yImXz12 [4/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ダークライ(昨日……かなり長い時間をかけたが、ユキの悪夢はまだ完全に消せてはいないようだ。随分と根深い悪夢だな……。今日こそユキが眠ってる間に何とかせねば……)


しばらく、冷えた身体を暖炉の前で暖めつつ、ダークライはユキのことを考え続けた。

そして、数十分が経った頃……。



ユキ「───じゃあちょっと出かけてくるよ」


ユキが突然立ち上がったのである。


ダークライ『ドコへ?』


ユキ「……お母さんのお墓。お参りに行くんだ。……そんな遠くないから、ダークライも来る?」


ダークライはユキについていくことにした。

特に大きな理由があるわけではない。

だが、本当に何となく、そういう気分になったのだ。
 ▼ 46 1◆zBLfAqPIVA 17/12/24 23:33:28 ID:3yImXz12 [5/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
=霊園=

新雪をサクサクと踏みながら、ユキ少年とダークライは人目につかないよう移動した。


ユキ「……お母さん、明日はクリスマスだよ。本当はお母さんもいてほしかったけど……。これ、クリスマスプレゼント」


そしてようやくお母さんの墓の前に着いたユキ少年は、どうやら家から持ってきたのであろうビニール袋をそこに置いた。

中身はどうやら食べ物のようだ。

ダークライは質問を投げかけた。



ダークライ『……それは、どうしたんだ』


ユキ「これはフエンせんべいって名前のお菓子。昨日買い物の最中、店で安売りしてるの見つけて買ったんだ。お母さんが大好きなお菓子だったんだよ」


少年は笑顔を浮かべつつ、ダークライの質問に応えた。


しかし、その笑顔は心からのものではないということをダークライは直感的に感じた。
 ▼ 47 1◆zBLfAqPIVA 17/12/24 23:34:36 ID:3yImXz12 [6/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ダークライ『……キミのオカアさんはイダイだな』


ユキ「?」


ダークライはそこで口を閉ざした。



こんなに優しいユキという子を育てたのだから、偉大な母親だ────本当はそんなことを言いたかったのだが、それは照れ恥ずかしくてどうにも口には出せなかったのだ。

 ▼ 48 1◆zBLfAqPIVA 17/12/24 23:35:11 ID:3yImXz12 [7/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ユキ「……あ、そうだ」

沈黙の中、ユキ少年が何かを唐突に思い出したように口を開く。


ダークライ『む?』



ユキ「これ、受け取って」


────チリン。


ユキ少年は、ツギハギだらけのズボンの左ポケットから何かを取り出す。

それは、小鳥の唄よりも美しくさえ感じる音を生み出す、鈍く光る銀色の鈴であった。
 ▼ 49 1◆zBLfAqPIVA 17/12/24 23:36:11 ID:3yImXz12 [8/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ダークライ『……これは?』


ユキ「やすらぎのすず。昔から大切にしてる僕の宝物なんだ。ダークライにも何かプレゼントしたいけど、今はこれくらいしか持ってなくて」


少年ははにかむ。

ダークライは困ったような顔をして、少年の瞳を見つめた。


ダークライ『こんなダイジそうなもの……オレなんかがモラっていいのか?』


ユキ「もちろんだよ! むしろダークライだからそれを渡すんだ。ほら、すずにヒモがついてるだろ? それを首からかけて……」


ダークライ『……ニアウか?』


リーン、リーン……


天高く、鈴の音が鳴る。
 ▼ 50 1◆zBLfAqPIVA 17/12/24 23:36:48 ID:3yImXz12 [9/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ユキ「うん、すっごく似合う。まるで……」


────まるで、サンタさんみたいだ。


ダークライの姿を見て、少年はそんなことを連想した。


サンタさんと呼ぶには、赤色が少なくてちょっと黒すぎるけど────。


その時、少年はふと、お母さんが話してくれた黒いサンタクロースの話を思い出した。


==========
母「それに、黒いサンタクロースさんも悪い人じゃないのよ? 悪い子にはお仕置きするけど、悪くない子にはちゃんと祝福を与えてくださるんだって」
==========



ユキ(黒いサンタクロースさんはね、すごく優しいんだよ。お母さんにも教えてあげたかったな────)
 ▼ 51 1◆zBLfAqPIVA 17/12/24 23:37:35 ID:3yImXz12 [10/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
その後、家に帰った一人と一匹は、またも長く楽しい会話を続けた。

いくら話しても話し足りない。

そんな経験はお互い初めてだった。


ユキ「……ZZZ」


ダークライ(寝たか……さて、昨日の続きだ。今日こそ、ユキの悪夢を完璧に取り除かなければ……)




──
────
──────
────────



父(今日は早く仕事が終われた……ユキはどうしてるかな。急いで帰らないと、ケーキも買えたことだし……!)


主婦「あらぁ、ユキ君のお父さんじゃないかい! お久しぶりだよぉ」


父「あ、ああ。近所の……何か御用ですか?」


主婦「何かご用ですかじゃないよぉ。アンタんとこのユキ君、噂になってるの知らないのぉ?」


父「ウワサ?」


主婦「昼間、ユキ君が不気味なポケモンを連れ歩いてたとか、何だか元気がなさそうだったとか。あんまり口に出したくないんだけど……あの凶悪なポケモン、ダークライに憑りつかれてたんじゃないかって!」


父「え……」
 ▼ 52 1◆zBLfAqPIVA 17/12/24 23:38:12 ID:3yImXz12 [11/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ダークライ(もうすぐで悪夢を完全に消せる……。もう少し、もう少しで……)


ユキ「スー…スー…」


ユキ少年の呼吸が落ち着いた。

悪夢のエネルギーも欠片さえ感じない。

どうやら……試みは成功したようだ。



ダークライ(……な、何とかなった。これで、ユキが母親の悪夢に悩むこともないはず────)


ガタァン!!

ダークライ「!?」


その時、玄関から爆発したかのような大きな音がした。
その音と共に、家に入ってきたのは……。
 ▼ 53 1◆zBLfAqPIVA 17/12/24 23:38:51 ID:3yImXz12 [12/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
父「ユキ、だっ、大丈夫か!!」


他でもない、ユキの父親だったのである。

ユキの父親はダークライを思いきり両手で突き飛ばし、ユキを思いきり抱き締めた。

今までにないくらい精一杯の力で……。


ユキ「え……?」


父「ユキ、もう大丈夫だからな。……おいダークライ!! よくも俺の息子を襲いやがって……許さねぇ!!」


ダークライ「……ッ」


あまりにも急なことにユキも戸惑ってばかりだ。

だけど、このままでは確実に大変なことが起きる。
 ▼ 54 1◆zBLfAqPIVA 17/12/24 23:39:49 ID:3yImXz12 [13/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ユキ「え、お、お父さん……お父さんってば」

今にも泣きそうな震え声を出しながら、少年は父の服の袖を引っ張る。

しかし、今の父には息子の言葉さえ届いていなかった。

彼の目は血走り、ありったけの憎しみと殺意を込めた視線をダークライに向けている。


父「愛する息子まで失うわけにはいかないんだ!! 出ていけぇダークライ!!!!」


ダークライ「ライ……」


ユキ「ねぇ止めてよお父さん、暴れないで!ダークライは、悪いポケモンじゃな────」


父「うおおおおおおおおっ!!」


父の暴走は止まらない。

彼は咄嗟に逃げ出すダークライを追いかけ、裸足のまま外に出た。

無論、ユキ少年も慌ててその後を追いかける。



父「はぁ、はぁ、はぁっ……逃げられたかっ!!」


どうやら父はダークライを見失ったようだ。

もし捕まっていたら、ダークライがどんな目に遭っていたか分からない。

そういう意味では、ダークライが無事逃げ出せたのは喜ばしいことなのかもしれない。

しかしそれは、ユキ少年にとっても悲しい結末しか生まなかったのである。



ユキ「ダークライ……ダークライ? ねぇ、何処に……行ったの?」



ダークライはその後、ユキ少年の前に姿を現すことはなかったのである。
 ▼ 55 1◆zBLfAqPIVA 17/12/24 23:40:22 ID:3yImXz12 [14/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜数年後〜

カロス大学研究発表会で、一人の青年が、自らの導きだした研究について語っていた。


ユキ「────つまりダークライというポケモンは悪夢を見せるわけではなく、悪夢を見る生物の下に集まる習性があるだけ。そうは考えられるのではないでしょうか」


学者「……つまり何が言いたいのかね」


冷めた顔で複数人の学者がユキ青年を睨む。
中には嘲笑するような表情をした者もいた。


ユキ「ダークライというポケモンは危険なポケモンではありません。あらぬ誤解を受けています。いえ、ダークライだけではありません。様々なポケモンが人々から偏見を持たれている。図鑑説明文などを見てもそうです。中には偏った主張や知識が書かれた文章もありますし────」


学者「……ポケモン図鑑の説明文は全て、ポケモン研究学会が熟考の末に決めたものだ。それに文句を付けるとは、君はポケモンに関わる全ての研究者に喧嘩を売ってるのと同じことなのだぞ!」


ユキ「ち、違います! 学会に喧嘩を売っているのではなく、間違った知識を素直に認めて訂正していかなければ、人は進歩しないと」


学者「君の意見は全面的に却下する! さぁ次の方、研究発表の準備を────」
 ▼ 56 1◆zBLfAqPIVA 17/12/24 23:40:55 ID:3yImXz12 [15/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ユキの主張は半ば強制的に終了させられた。

まさに、のれんに腕押し。ぬかに釘。

どうにも出来ない高く大きな壁が目の前にあるような感覚を得る。


ユキ(……クソ、またこの展開だ。これで却下は何度目だ! 学会は自分たちの利権のことばかり考えて、失敗には全く目を向けない。……これじゃ、現実は何も変わらないのに)


ユキ青年はカロス大学から自宅へと帰った。

タクシーに揺られ、冷たい雪が静かに降るのを窓から見つめながら、一人夢想する。


ユキ(いつか、僕の主張が世間に認められたら良いのに。たくさんのポケモンが救えたら良いのに……)


ユキ(それにしても今日は疲れたな……。もう、瞼が重く……)


そして、ユキ青年は悪夢を見た。
具体的な内容は思い出せない。
でも、とても悲しく、冷たく、残酷で……。

覚えていることと言ったら────どこかで見覚えがある黒いシルエットの前で、ユキ青年がひたすら涙を流しつづけていたこと────ただそれだけだった。
 ▼ 57 1◆zBLfAqPIVA 17/12/24 23:42:41 ID:3yImXz12 [16/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
タクシー運転手「────お客さん、起きてください。お客さん!?」


ユキ「……っ!?」ガバッ



タクシー運転手「目的地に着きましたよ、お客さん」

ユキ「あ、ああ……申し訳ないです」


────少しでもお金を節約したいから、タクシーで移動するのも最小限だ。

帰路の途中で降ろしてもらい、残りの何の音もしない人影一つすら見当たらない道を、一人歩き続ける。


ユキ(悪夢なんて見たのは……いつぶりだろうか。そうだ、『彼』が消える前。お母さんがいなくなる悪夢をいつも見てたような……)


ユキ(『彼』と出会ったのは、こんな寒い冬の日、ちょうどクリスマスの二日前だったか)

 ▼ 58 1◆zBLfAqPIVA 17/12/24 23:43:36 ID:3yImXz12 [17/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
優しい母親の記憶が蘇る。

手を繋いで、定番のクリスマスソングを歌っていたんだっけ……。

ユキ「ジングルベール、ジングルベール、すずがーなるー……」




リーン……リーン





ユキ「鈴の、音……?」





ユキ(この、鈴の音……聞いたことがある。これって、確か────)




そうだ。
間違いない、『彼』だ。

『彼』は悪夢を見せるポケモンだと言われていて、多くの人から嫌われていた。

でも、僕は知っている。

『彼』ほど優しいポケモンはいない。
『彼』ほど愛のあるポケモンはいない。
『彼』ほど僕を助けてくれたポケモンはいない。


僕は振り返る。
すると、『彼』は首にやすらぎのすずをぶらさげながら佇んでいた。

ああ、ずっと君に言いたいことがあったんだ。
ありがとうとか、おかえりなさいとか。

でも、今は何よりも……これを言いたい。


ユキ「……メリークリスマス、ダークライ」
 ▼ 59 1◆zBLfAqPIVA 17/12/25 07:12:30 ID:wsjLeCmw [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
これは、クリスマスの日。

彼は再び、夢を運ぶ黒いサンタクロースと出会った。



ーおわりー
 ▼ 60 1◆zBLfAqPIVA 17/12/25 07:14:37 ID:wsjLeCmw [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
こちらのSSはこれにて完結です。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
 ▼ 61 1◆zBLfAqPIVA 17/12/25 07:17:18 ID:wsjLeCmw [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
http://pokemonbbs.com/sp/poke/read.cgi?no=721326

なお、こちらの作品はクリスマス企画に参加しております。
他にもたくさんのSSが参加しておりますので、是非とも読んでください。
 ▼ 62 ジュゴン@あかのはなびら 17/12/25 07:47:45 ID:RG5uH6rY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙
 ▼ 63 メノクラゲ@ゴーストZ 17/12/25 08:00:48 ID:vcWdjzsA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙
いい話だった
 ▼ 64 ココドラ@サファイア 17/12/25 13:23:40 ID:/E10JgoQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙
 ▼ 65 ニョロボン@ジュカインナイト 17/12/25 13:29:27 ID:Y4Fp0tXM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙
 ▼ 66 アバゴーラ@ポイントカード 17/12/26 19:58:39 ID:PUnrDLr6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
投票対象外か、残念だけど乙でした
 ▼ 67 ディアルガ@もりのヨウカン 17/12/26 22:50:45 ID:dVqIF1tE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
流石やわ
乙
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下URLから閲覧下さい。
https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=739917
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