思いつくままにポケモンの恋愛系SSを書いていくスレ:ポケモンBBS(掲示板) 思いつくままにポケモンの恋愛系SSを書いていくスレ:ポケモンBBS

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思いつくままにポケモンの恋愛系SSを書いていくスレ

 ▼ 1 ブネーク@マトマのみ 18/01/28 00:19:23 ID:WjjhBx2U NGネーム登録 NGID登録 報告
・『進化』(イーブイ♀×リザードン♂)

イーブイ「うーん・・・やっぱりニンフィアかなぁ」

リザードン「どうしたんだイーブイ、悩み事か?」

イーブイ「あ、リザ君!あのね、私もそろそろ進化の頃合いかなって思って」

リザードン「へぇ、進化の」

イーブイ「うん!で、私たちイーブイって進化先がたくさんあるでしょ?」

リザードン「ああ、色々あって羨ましいぜ」

イーブイ「え、リザ君は今の姿、気にいってないの?」

リザードン「そういうわけじゃないけどよ・・・」

イーブイ「私はリザ君カッコよくて好きだけどなぁ!」

リザードン「そ、そうかよ・・・//」

イーブイ「って、そうじゃなくて、何に進化すればいいか悩んでたの。リザ君は、何になってほしい?」

リザードン「あ?俺に聞くのかよ」

イーブイ「もともと聞こうと思ってたよ?」

リザードン「そうかい。そうだな・・・」
 ▼ 518 メテテ@カビチュウ 18/03/29 13:20:51 ID:qOPNypTc NGネーム登録 NGID登録 m 報告
支援
 ▼ 519 aSS341n256 18/03/29 13:50:24 ID:oqrP8xWk [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「はぁ、はぁ・・・」

「どうしたのケルディオ、今日は随分と動きが悪いようだけど・・・」

「そんなこと・・・!」

結果、翌日のケルディオは寝不足でビリジオンらとの訓練でも満身創痍。

昨晩の相談なんて知る由もないビリジオンはケルディオの様子を不審がるが、悩みの種の本人に話せることなど何もない。

「うーん・・・今日はもうやめにしましょ」

「え・・・っ、まだまだできる!」

「そんな状態で続けても効果は薄いわよ。やるだけ無駄」

「くっ・・・」

何もないと言い張るケルディオを制して、特訓の切り上げを提案するビリジオン。

彼女に失望されたような気がして、ケルディオの心情は穏やかではない。

「・・・何か悩み事?」

「何もないって!」

「そんな片意地張らないで、私のことも頼ってくれてもいいのに。あなたはまだ子供なのだから――」

「五月蠅い!!」

ビリジオンから見た自分はやはり、あまりに幼いのだという現実に、胸が張り裂けそうになる。

頭が痛くなる。

「え、ちょっと、ケルディオ!?」

いわば地雷と化していたその言葉を放たれ、ケルディオは思わずビリジオンの元から逃げ出してしまった。


「なるほど、そういう事情が・・・」

「ま、そういうお年頃ってこったな」

「・・・そんな軽々しく話してしまっていいのか?」

「あ?あー・・・まあ、本人に言わなきゃ別にいいだろ」

そのころ、コバルオンはテラキオンから昨晩の二人の話の内容を聞いていた。

テラキオンの話のとおりなら、ビリジオンの前でだけケルディオの態度が変わったのも道理がいく。

「しかし、難儀なものだな」

一番素直でありたい人に対して、一番素直であれない。

堅物のコバルオンには恋など全く分からなかったが、ケルディオの苦悩を察することはできた。

「コバルオン!!!」

そこへ、ケルディオに逃げられたビリジオンがやってくる。
 ▼ 520 aSS341n256 18/03/29 14:09:14 ID:oqrP8xWk [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「はぁ・・・」

「まぁ、なんだ、その、そう鬱々とするな」

ケルディオの捜索をテラキオンに託し、コバルオンは完全に心折られたビリジオンを例の如く慰める。

昨日の今日でこれだから、ビリジオンは相当のダメージを受けたのだろう、

少々気の毒であったが、やはりケルディオはビリジオンのことを嫌ったわけではないと確認できているのでコバルオンの方は少し気が楽であった。

「テラキオンが言っていた。ケルディオは、子供扱いされることを好まないと」

「え?」

なるべく当たり障りのないように、コバルオンはビリジオンにケルディオの現状を伝えていく。

「やはり、必要以上に干渉されることをよしとしないのだろうな。私たちから見ればまだまだ幼いのかもしれないが、彼の気持ちも分かってやってほしい」

「うーん・・・そういうものなのかしら」

ビリジオンも、とりあえず解決の糸口が見えたことに安堵して落ち着きを取りもどす。

これで、ひとまずは大丈夫そうだな。

コバルオンは一息ついて、テラキオンの方もうまくやっていればいいが、と願った。


ついカッとなってビリジオンにあたってしまったことは、ケルディオの中でも大きなダメージとなっていて。

最近の自分の態度もよくない者であったと把握しているだけに、嫌われてしまったんじゃないかと気が気でない。

「戻って謝らなくちゃ・・・」

だが、そうは言っても素直になれない年頃で、次に顔を合わせるのも気まずくて仕方がない。

「おっ、こんなところにいやがったか」

「テ、テラにぃ・・・」

突然声をかけられてひどく驚いたが、その正体がテラキオンであったことにひとまずほっとする。

ビリジオンと対面する心の準備なんて、できていない。

「ビリジオンと喧嘩したんだってな」

「喧嘩じゃないよ、僕が勝手に怒って逃げて来ちゃっただけ・・・」

ビリジオンから話を聞いていたのだろうか、今頃心配かけてるんだろうな。

ケルディオの中で罪悪感がどんどん膨らんでいく。

この心の中にあるもの、全てちゃんと吐き出してしまえたら楽なのに。

「さ、帰ろうぜ、ケル。二人とも心配してる」

「・・・うん・・・」

まだ戻りたくないな、そう思う自分もいたが、

これ以上戻らずにいる理由もなくて、ケルディオは素直に従ってテラキオンの後に続いた。
 ▼ 521 aSS341n256 18/03/29 14:24:47 ID:oqrP8xWk [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「帰ったら仲直りしないとな」

「うん・・・」

「お前が随分素っ気無いもんだから、ビリジオンも最近不機嫌だったんだよ」

「ビリねぇが?」

自分がビリジオンに辛く当たるから、彼女が不機嫌。

ケルディオの中でその二つの事象がうまくつながらなくて、テラキオンの言葉の意味をよく理解できないでいたが、

「あいつも寂しがってるってことだよ、ケルと、前みたいに仲良くできないことを」

テラキオンがそう続けて、なんとなく分かった。

彼女も自分のことを好きでいてくれてるのだ。

きっと、僕のそれとはまったくの別物だろうけど。

「・・・うん」

ケルディオにとって、それは悲しくもあったけど、今はそれでいいのかなと、そう思えた。

これからも長い時間一緒だ。

彼女に、大人に見てもらえるまではまだ時間がかかりそうだけど、

まずはそれまでの一緒にいられる時間をもっと大切にしなきゃいけない。

大人になることを急いで、彼女との距離が離れてしまっては意味がないから。


「戻ったか」

「ケルディオ・・・」

二人の元へ戻ると、ビリジオンは少し気まずそうな顔をしていて。

「ビリねぇ!!」

だからケルディオは、以前の様に元気よくビリジオンの元へ駆けて行って、

「さっきはごめんね・・・僕、寝不足みたいでさ。眠たいから、一緒にお昼寝してくれないかな・・・」

「!!」

自分が無下にしてきた提案を、そのまま彼女に返す。

「・・・問題なさそうだな」

「ああ!この俺が相談に乗ってやったんだから、バッチリよ!!」

「随分調子がいいんだね」

「うるせぇ、少しくらい言わせてくれたっていいだろ?」

仲良さげに一緒になって眠る二人の顔は穏やかで、

この分なら心配はいらないかとコバルオン達も一息つくのだった。
 ▼ 522 aSS341n256 18/03/29 14:46:26 ID:oqrP8xWk [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ビリねぇなにそれ!!美味しそう!!」

「珍しい木の実でしょ?分けてあげる、はいあ〜ん♪」

「あーん・・・うん、甘くておいひぃね!!」

「でしょ〜?」

「・・・仲が元に戻ったのは良かったが・・・」

それ以来、ビリジオンとケルディオの関係性は以前のように戻り、

「子ども扱いされるのは嫌だ、ということではなかったのか?」

「・・・・・・まぁなぁ」

寧ろ、反動でお互いそれまで以上にデレデレになって。

褒める時は頭をなでたり、

眠るときもじゃれあうことが増えたり、

より親子や姉弟といった雰囲気が増したのはコバルオンの気のせいなどではない。

「冷静に考えると、こんな感じの方が立場的に美味しいって、気づいたんだとよ」

「な、なるほど・・・」

「くらえ!ビリねぇ!!」

「ちょっともうくすぐったい!!この、仕返しよ!!」

「アハハハハごめんごめんビリねぇゆーるーしーてー!!」

「・・・なるほど」

以前と違って、そこに下心が混ざっていることなど、ビリジオンは当分気づかないのだろう。

第三者的な立ち位置から見て、コバルオンは少し微妙な気持ちにならずにはいられなかったが、仲がいいのは良いことだと無理やりに納得した。

「ビリねぇ大好き!!」

「ふふっ、もう何?急に。私も好きよ、ケルディオ」

その好きの意味合いが違くても、前のように悩んだりぎこちない二人であるよりは、数倍マシだ。

「・・・本当に、マシだろうか・・・」

「なんだ?急に」

「・・・なんでもない、忘れてくれ」

「なんだよそれ、変な奴」

大人になれなくたってこうして隣に居られる時間を満喫するケルディオに、

これ以上余計な口出しをするようなことも、きっと野暮なのだろう。


『あなたの隣』・・・おしまい
 ▼ 523 チゴラス@するどいキバ 18/03/29 14:52:45 ID:SGeWJ9XM NGネーム登録 NGID登録 m 報告
この組み合わせいいな、支援
 ▼ 524 ニドリル@メンバーズカード 18/03/30 02:59:54 ID:iuQsyUBY NGネーム登録 NGID登録 m 報告
支援
 ▼ 525 ビルドン@プロテクター 18/03/30 10:03:26 ID:2stXTn2o NGネーム登録 NGID登録 報告
ニャヒート♂とアローラロコン♀でアニメみたいにお願いします。
 ▼ 526 ンジュモク@こだいのせきぞう 18/03/30 11:26:12 ID:rac9iuBw NGネーム登録 NGID登録 報告
こちらもアニメっぽく
ドーブル×イーブイで
 ▼ 527 チャモ@ビアーのみ 18/03/31 10:23:41 ID:3mZCaKCM NGネーム登録 NGID登録 m 報告
オンバーン×ルチャブルお願いします
 ▼ 528 aSS341n256 18/03/31 20:03:34 ID:/dzuzq6A [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
『バケモノノウタ』(デンジュモク×ズガドーン)

「コードネームBURST・・・ズガドーン・・・」

マスターの目の前でゆらゆらと揺れるソイツは、確かに俺たちと同じで、決して俺とは違う生命体。

「タイプは、炎・ゴースト・・・頼んだぞ、アシレーヌ」

「任せてください」

ソイツと相性のいい相棒のボールに手をかけ、マスターは繰り出す。

アシレーヌが呟いたその声は決してマスターに届かないが、マスターは彼女の気持ちも理解しているのだろう。

気持ちを重ねて、敵に立ち向かう。

それが、この世界の『トレーナー』と『ポケモン』の在り方。

「ウォォオオオオオオオ!!!」

怖がることはない、お前もすぐに楽になれる。

怖かったろう、辛かったろう、訳が分からなくてひどく傷つけられて、傷つけて、傷ついて。

もう、そんなこと、終わるんだ。

だから――

「ズガドーンのデータは既に聞いてる、攻撃技は自身の体力を削って放つ大技だ、全力で反撃してしまうと、倒してしまうかもしれない」

「威力の低い技で追い詰めてから、捕獲ですね」

「備えろ!!」

ズガドーン特有の自爆攻撃、凄まじい威力のそれをアシレーヌはなんなく耐え、捕獲を完了するための控えめな反撃。

「素直に入ってくれよ・・・!」

攻撃を受けズガドーンがよろけたのを見て、マスターはウルトラボールを投げる。

ボールがズガドーンにあたって、ソイツの姿がボールに吸い込まれて、

一回。

二回。

三回。

「・・・ふぅ」

「捕獲、完了ですね」

「お疲れ様、アシレーヌ・・・ありがとう」

カチッと音が鳴ってマスターはホッと一息をつく。

アシレーヌに労いの声をかけボールに戻し、ズガドーンの入ったボールを拾い、しまう。

「これで、ひとまず安心だな」
 ▼ 529 aSS341n256 18/03/31 20:34:16 ID:/dzuzq6A [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「お疲れ様、ありがとな」

「デンジュモクさん」

沢山のポケモンを持つマスターは、定期的に手持ちのポケモン達を入れ替えながら旅を続けている。

ゲットしたポケモン達には、なるべく平等の愛を注げるように。

「ズガドーンさんは・・・」

「・・・まあ、すぐにとはいかねぇだろ」

パソコンの中で合流したアシレーヌに礼を言って、俺はズガドーンを見やる。

この世界でどうやらウルトラビーストと呼ばれる俺たちは、やれ害獣だやれ危険生物だと敵視され、右も左も分からないこの世界で人間に見つかっては攻撃を受けてきた。

俺たちが自ら周りの生物を傷つけることなんて、ただの一度もなかったのに。

「・・・まあ、俺に任せとけ」

「デンジュモクさん・・・」

「恩は返さねぇと」

いや、一度もないなんてことはなかったな。

周りへの警戒や戸惑い故の防衛、それだけじゃなくて、俺はマスターにはとりわけ強い攻撃性を示した。

自身の体質故だと俺を許して受け入れてくれたマスターにも、俺はしばらく心を開くことができなかった。

それでもマスターは俺を見捨てなかったし、アシレーヌや仲間たちも俺のことを受け入れてくれた。

そうして、仲間になることができたから、あいつだって。

「あいつの気持ちを分かってやるのは、俺の仕事だ」


「よっ」

「・・・オ前ハ・・・」

「まあ、なんだ、お前も大変だったな」

パソコンの中では暴れることはできない。

俺以上に錯乱し、ゲットされた後もなおマスターに攻撃を加えようとしたズガドーンは、今ここで少しは落ち着いたようで、

「・・・一体何ノ様ダ」

共にパソコンで預けられる仲間達からも少し距離を取って孤立していた。

「別に、なんの用もないけどな」

俺はソイツの傍で、特に何をするでもなくボ〜っと時を過ごした。

時には何でもない世間話をふっかけたり、

時には独り言をつぶやいてみたり。

怪訝そうな顔をするズガドーンを気に留めずに、隣で時が流れるままに任せた。
 ▼ 530 aSS341n256 18/03/31 20:56:57 ID:/dzuzq6A [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「俺もさ」

頃合いを見て、自分の話を聞かす。

「お前と同じように、故郷から飛ばされてきたんだよ」

「・・・・・・」

「だからなんだって話だけどな」

わかるぜ、なんて軽々しく言うのも相手の気持ちに立てていないかもしれない。

だから俺はその言葉を軽々しく使わない。

アシレーヌも一度も俺に対して安っぽい共感の態度なんかは示さなかった。

「人間ってのは勝手だよな。てめぇらの都合で呼んできて、てめぇらの都合で排除だなんて」

「・・・全クダ」

「・・・マスターは、あいつらとは違うっていっても、まだ信じられないか?」

マスターは俺たち異界の存在に理解を示してくれる。

マスターは俺たちを救ってくれる存在だ。

彼のことを受け入れるだけで、どれだけ楽になれるか計り知れないのだ。

「・・・何トナク分カルサ。分カッテイル」

とはいっても、人への不信はそう簡単に拭い去れるものではない。

俺だって、マスターが慕う人々のことまでも信頼することはできないし、

コイツにとってマスターとその同種である別人の違いなんて分かりやしない。

「・・・ま、どのみち一人で、こんな世界で生きていくよりは楽だろ。仲良くやってこうや」

俺はお前と同じ立場の存在だ、ということだけを端的に伝えて後はゆっくりと。

時間はあるのだから焦る必要もない。

コイツの心の傷を癒せるように、俺は俺にできることをやっていこう。

いずれは、コイツも胸を張ってしっかりと俺たちのことを仲間だと言えるように。


「デンジュモク、10万ボルト!!」

「ハァァァァァァアアア!!!」

自慢の電圧をマスターのために奮う。

ただ自分のためだけに持て余すような力を垂れ流していたあの頃とは違う充実感を得られるこの瞬間が、俺は好きだった。

「今日も絶好調ですね、デンジュモクさん」

「ああ、まだまだ暴れたりないくらいだ!」

「頼もしい限りです」
 ▼ 531 aSS341n256 18/03/31 21:15:23 ID:/dzuzq6A [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「・・・デンジュモク」

「なんだ?」

ふと、俺のバトルを見ていたズガドーンが話しかけてきた。

コイツが手持ちメンバーに入ってマスターと共に旅をするのは、今日が初めてで。

マスターも不安定なズガドーンをバトルに使うようなことはせず、まずは自分に、旅に慣れさせるために手持ちのメンバーに入れたようだ。

「・・・ソンナニ、楽シイカ?」

「バトルがか?」

「人間ニ命令サレルコトダ」

はたから見れば支配と隷属の様にも思えるトレーナーとポケモンの関係。

この世界の文化に馴染めないズガドーンにとって俺の様子は少し怪に思えたのだろうか。

「ああ、いいもんだぜ、ポケモンバトルは」

俺は少しの淀みもなく言ってのける。

「トレーナーはポケモンを信頼して技を指示する、ポケモンはその信頼に応える。俺には、その信頼が心地いいよ」

バトル以外にも。

ズガドーンの捕獲の際に、俺を手持ちに入れていたのもきっとそうだったのだと思う。

マスターが俺のことを信頼して、ズガドーンのことを託したんだ。

「私たちは、みなマスターと確かなキズナで結ばれています。仲間なんです」

「仲間・・・カ?」

俺たちの話を黙って聞いていたアシレーヌも入ってくる。

「そして、ずれはあなたともそうなれることを、私たちは望んでいますよ」

「・・・・・」

凍てついた心を溶かすような優しい笑みで、アシレーヌはズガドーンに救いの手を差し伸べる。

「・・・ウルサイ」

ズガドーンはまだその声に応えることはできないでいたが、

「・・・ダガ、オ前ノ言葉ハ信ジテヤランコトモナイ」

それでも顔を背けながら俺にそう言った。

「お前・・・」

「フフ、ちゃんと、デンジュモクさんの気持ちは届いているんですね」

ありがとうございます、と俺を労ったアシレーヌの声に、俺は少し照れながらも力強く頷いた。


『バケモノノウタ』・・・おしまい
 ▼ 532 ローゼル@さざなみのおこう 18/03/31 23:59:12 ID:CCdDE9a. NGネーム登録 NGID登録 報告
ケルディオ×ビリジオンありがとうございます!
 ▼ 533 ゲキ@マッハじてんしゃ 18/04/01 02:56:13 ID:FXPfKBo6 NGネーム登録 NGID登録 報告
コバルオンとビリジオン
 ▼ 534 ードラン@ハスボーじょうろ 18/04/01 07:05:14 ID:to6XBids NGネーム登録 NGID登録 報告
この嘘?真? ゾロア♀×ゾロアーク♂
 ▼ 535 aSS341n256 18/04/01 13:38:18 ID:WEZwfSQE [1/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
『4月の馬鹿』(リザードン♂×グレイシア♀)

「はぁ・・・はぁ・・・」

「・・・さぁ、来やがれ!猿!!」

「おう!引いてやらぁ!!」

「・・・なんでババ抜きでこんなに息絶え絶えの死闘になってんだよ、おい」

「お前がえげつない罰ゲーム持ってくるからだろ、バシャ」

4月の頭にある最初の登校日。

クラス替えが発表されて、それを見るために各々学校に集まって。

今年は同じクラスだとか、別れてしまって寂しいとか、そういうお決まりの流れがあって。

今年からはクラスが分かれるやつもいて遊ぶ機会も減るからと、口実を作って友達同士で集まって。

どうせクラスが離れたところで、これまでと変わらずに遊ぶのだが、いつものメンツで遊ぶことは自身も楽しいリザードンはこの日もバシャーモの誘いを受けた。

バクフーンとゴウカザルと、エンブオーとガオガエン。

同じタイプの野郎6人、おなじみの面子だ。

飯に行ってボウリングに行って、また飯に行って。

その晩飯の最中だった。バシャーモが口を開いたのは。

「今日ってエイプリルフールだよな」

「4月1日・・・まあ、そうだな。それがどうしたんだ?バシャ」

興味なさげに問い返すバクフーンに、バシャーモは答える。

「折角だからなんか関連付けて遊びてぇなと思ってよ!例えば、ゲームして負けた奴が、罰ゲームで告白とか!」

我ながらいい考えだ、なんて顔をして言い放ったバシャーモに対する反応はそれぞれ様々で。

「何馬鹿なこと言ってんだ、俺は降りるぞ」

「なんだよガオガエンノリ悪いな!!自分は彼女がいるからって」

「そ、それは関係ねぇだろ!!」

「マフォクシーだよなぁ・・・うらやましいぜ」

「わざわざ名前出す必要ねぇだろこの豚!!」

彼女持ちであることも相まってか難色を示すガオガエンと、ひそかにその彼女を以前狙っていたという背景もあって少し落ち込むエンブオーをしり目に、

「面白そうじゃねぇか!!俺はやってやるぜ!!」

「おう!お前ならそう言うと思ってたぜゴウちゃん!!」

負けなければいいんだろと勝気なゴウカザルはバシャーモの案を支持する。

「お前なぁ・・・大体、ガキじゃねぇんだからよぉ」
 ▼ 536 aSS341n256 18/04/01 13:51:54 ID:WEZwfSQE [2/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
「なんだよ、負けるのが怖いのか?ガオガエンさんよぉ!!」

「なはぁんだと!?俺様が負けるわけねぇだろうが!!表出るか!?あ!?」

「表には出ねぇけどこのゲームで蹴りつけようや!」

「上等だ!!」

ゴウカザルの安っぽい挑発にまんまとのせられたガオガエンが参加を表明するともうゲームの開催は決定的になり、

「まだなにで勝負するかも言われてないのに・・・リザードンもなんか言ってやってよ」

「いいんじゃねぇか?こういうのも、童心に帰って面白そうじゃねぇか」

「・・・ああ、そう。エンブオーもやるの?」

「付き合ってやらぁ」

「仕方ないな・・・何で勝負するの?バシャーモ」

リザードンとエンブオーもゲームに肯定的で、諦めた様にバクフーンがバシャーモにゲームの内容を聞く。

「シンプルに、これでいこうや」

「そ、それは・・・」

バシャーモが取り出したのは、何の変哲もないトランプ。

「おい軍鶏お前それはお前、伝説の、伝説の賭爛腐じゃぁねぇか!!」

「知ってるのか豚!!そうだぜ、こいつはかつてこれを巡って2億の人の首が飛んだと言う・・・伝説のアレだ!」

「初めてみたぜ・・・実在しやがったとは・・・このゴウカザル、人生に一片の悔いなしだ・・・」

「面白くなってきやがった!!俺がソイツを使ってチャンピオンになってやる!!」

「・・・バカやってないで、そのトランプでなんのゲームで勝負するか教えてよ」

学生の馬鹿なノリを一定すませて、バクフーンが軌道修正を行って、

「うーん・・・何がいい?」

「決めてないのな・・・もうババ抜きでよくね?」

「そうだな!」

ノープランで突き進んだバシャーモに代わって、リザードンがゲームの種類を決めて、

「じゃあ、6人でババ抜きやって、負けた奴が誰かに電話で告白な!ま、エイプリルフールだし、冗談の分かるやつにすれば問題ないだろ!」

かくして始まった罰ゲームババ抜き。

「じゃあこれ・・・おっ」

「マジで!?」

「あがりだ・・・じゃ、みんな頑張って」

まずはバクフーンが、リザードンから引いたカードをそろえて一抜け。
 ▼ 537 aSS341n256 18/04/01 14:07:00 ID:WEZwfSQE [3/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
「よっと・・・おっしゃ!揃った!!」

「おま、マジかよ!?」

「ん?豚がそろったってことは・・・俺が引く奴がいねぇから・・・」

「俺がガオガエンから取って・・・?」

「俺も上がりだ!!」

続いてエンブオーとガオガエンが連鎖式に上がり、

「うおぉぉぉぉぉぉ!!!」

「うるせぇよ!!ちょっとは静かにできねぇのかよ!!」

「そろぼちやべぇじゃねぇかよ!!絶対揃えたい絶対揃えたい頼むぞリザードン!!」

「俺に頼まれても」

「はぁぁぁぁ!!・・・よっしゃぁぁぁぁぁ!!!」

「は!?お前ふざけんなよふっざけんなよお前揃ったら残り一枚俺がひかなきゃじゃねぇかよ!!」

「それで俺は上がり!!」

「んなことどうでもいいんだよ軍鶏てめぇの最後の一枚絶対ジョーカーじゃねぇか!!」

「バレてた?」

「顔と態度に出てんだよぉぉぉぉおおお!!!」

ポーカーフェイスができないバシャーモがそれでも運よく4番目にあがって、いよいよ残り二人。

そこからが長く、

「ちっ、ジョーカー・・・」

「おらぁ!!・・・クッソ!!」

「決めるぞ!!・・・あああこの猿てめぇ!!」

「くたばれトカゲ!!・・・っだぁぁぁもう!!」

「いや仲良しか」

バクフーンの鋭い突っ込みが入るほど二人はジョーカーをひき続け、1対1に入ってから早6週目。

「ふぁぁぁ・・・・早く決まんねぇかなぁ」

「おい軍鶏あくびしてんじゃねぇよ」

「お前も退屈だろ?ガオガエン」

「まあなぁ・・・」

発案者のバシャーモがもはや飽き始めたころ、

リザードンとゴウカザルのボルテージもMAXになって、遂に――
 ▼ 538 aSS341n256 18/04/01 14:17:39 ID:WEZwfSQE [4/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
「・・・うっしゃぁぁぁあああああ!!!」

「アアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

「おっ、ゴウカザルの勝ちか」

ゴウカザルがジョーカーをかわし、長い戦いに決着がついて。

「・・・・・」

「リザードン、燃え尽きてるぞ」

哀れ、リザードンの罰ゲームが決行されることとなった。


「いやぁ、言い出しっぺの法則ですなぁ」

「言い出しっぺはお前だろ!!」

「ババ抜きの発案はリザードンだったけどね」

リザードン的にも、ババ抜きが得意だからとかそういった意図もなく、てきとーに決めただけであったが、ものの見事に負けてしまった。

こうなっては逃れることも不可能なので、告白の相手を誰にするか決めなければならない。

「・・・もう、マフォクシーでいいか?」

「ふざけんな」

同じ炎タイプで♀ながら自分達とも仲がいいマフォクシーなら冗談を言う相手にも丁度いいだろうと、逃げの提案をするがやはりガオガエンがそれを拒否。

「俺的にはもっとガチなやつが見たいなぁ」

「ガチなやつってなんだよ・・・」

バシャーモの要求は留まるところを知らず、

「早く決めないと、どんどん条件盛られるよ?」

「そんな冷静に怖いこと言うなよ・・・」

バクフーンの御尤もだが怖い助言を聞き入れて、リザードンは仕方なく告白の相手を決めた。

「・・・グレイシアにする」

「おお!ガチっぽい!!」

「うるせぇガチっぽいってなんだ!!」

「幼馴染だったっけ」

「まあ、そうだよ」

それこそヒトカゲとイーブイの頃からの付き合いであるグレイシア。

昨年はリザードンらとクラスが同じであったこともあり、バシャーモらも知っている存在であった。

「・・・・・」

コールをかけて、その場には謎の緊張感が生まれる。
 ▼ 539 aSS341n256 18/04/01 14:33:31 ID:WEZwfSQE [5/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
「おい、リザードン、スピーカーにしてくれよ?」

「もう出るかもしれねぇだろ黙っとけ!!」

リザードンは仕方なくバシャーモの要求に応え携帯をスピーカーとし、グレイシアの応答を待った。

「・・・もしもし?」

「お、おう。グレイシアか?」

「私に決まってるでしょ。どうしたの?こんな時間に用事?」

普段から少しツンとした感じのあるグレイシアだが、電話ごしだと尚更不機嫌なように思える。

冗談が通じないような関係性ではないとは思っているが、怒ったりしないだろうか。

・・・もし、告白して、向こうが満更でもなかったら、そのまま・・・

「あ、あのさ!!」

そんな風に考えると、ただの罰ゲームには思えなくなってリザードンの緊張は声に表れる。

裏返った声に思わず笑いそうになるバシャーモをバクフーンが制して、リザードンは続きの言葉を口にした。

「俺・・・さ、昔からお前のことが好きで・・・俺と付き合ってくれないか?」

言った。

淀みなく言い切った。

さぁ、どう出るか・・・構えるリザードンの様子を知ってか知らずか、グレイシアは間をおいて話した。

「・・・ほんとに?」

口調も氷タイプらしく少し冷たかったグレイシアの声の調子が、心なしか柔らかくなる。

「・・・ほんとだ」

芳しくない感じならエイプリルフールに逃げれるし、あわよくばそのまま付き合える。

少し狡いなと思いながらもリザードンは頭をフル回転させグレイシアの出方を伺う。

別に、電話をかけた時点ではそこまで付き合いたいだとか、思っていなかったのに、

声にだすと、言葉にすると、考えてしまうと途端に恋に落ちたかのように彼女とのこれからを考えてしまう。

「・・・嬉しい」

「!!」

その言葉を聞いてリザードンの目が見開いて、周りが少しざわつく。

「私もずっと好きだったよ」

電話越しのグレイシアに聞こえないように、どうするんだといった声をあげるバシャーモ達。

もうそのまま付き合ってしまえとけしかけるガオガエンや、ネタばらしをしないのかと責めるエンブオーをよそに、リザードンは愛おしい彼女の声に応える。

「・・・じゃあ――」
 ▼ 540 aSS341n256 18/04/01 14:43:30 ID:WEZwfSQE [6/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
「なーんて」

「・・・は?」

「騙そうったって、そうはいかないんだから」

声に棘が戻ってきて、一気にその場が凍り付いて、

「ハッピーエイプリルフール。そういう趣味悪いこと、しないほうがいいと思うよ」

「あ、ちょ、グレ――」

「じゃね」

突如態度を変え、一方的に電話を切ってしまったグレイシアに唖然とする一同。

「・・・バレてた・・・のか」

「・・・ドンマイ」

「ドンミアってなんだよ軍鶏!!」

「だってお前今明らかそのまま付き合ってやろうって・・・」

「思ってねぇ!思ってねぇよ!!」

グレイシアに怒られ、明らかに気落ちするリザードンを慰め、からかいながらその日の野郎どもの宴は終わりを迎えた。


「・・・・・はぁ」

「あ、おねぇ・・・大丈夫?顔真っ赤だけど」

「は?なんのこと?全然赤くなんてないんですけど」

「赤いよ!!電話でしょ?誰からだったの??」

「べ、別に・・・宗教勧誘よ!!」

「嘘でしょ!?宗教勧誘とこんなに話し込んでたの!?何してるのさ!!」

「うるさいちょっとほっといて!!」

電話をぶった切ってリビングに戻ったはいいけど、妹のリーフィアの追求から逃れるように再び自室にこもるグレイシア。

リザードンとの交流は今でも続いていたが、電話をされることなんてそうそうなかった。

「・・・もう」

何か特別な用事かと思ったら、電話越しに彼は、こんな日に告白をしてきて。

「・・・どうせ、罰ゲームよね」

実際のところ、グレイシアにはリザードンが本気か否かなんて全く分かっていなかった。

なんだかんだ騒いでいた周りのクラスメートたちの声も、電話越しには聞こえていなかったし、自分の反応がバシャーモ達にも聞こえていたなんてことも彼女は知らない。

「・・・嘘よ、うん、どうせ、嘘」

グレイシアは自分に言い聞かせるように繰り返す。
 ▼ 541 aSS341n256 18/04/01 14:56:20 ID:WEZwfSQE [7/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
「だって、本気だったら、わざわざこんな日選ばないわよ!!」

彼に好きだと言われた瞬間に、どうせ罰ゲームか何かだと瞬時に悟った。

だが、「もしかすると、本気かもしれない」という可能性に縋りたくて、彼女はそこで話を打ち切らなかった。

言うまでもなく、グレイシアはリザードンに恋をしていたから。

電話が続いて、ネタバラシをする気配がなくて彼女の疑念が無くなっていって、

そうして自分の思いを彼に伝えて、

「・・・ああ、もう!!!!!」

でも今度はそこで恥ずかしさにまけてしまった。

エイプリルフールであることをいいことに強引に告白を打ち消してしまったのは、

それでもやはり嘘だったら恥ずかしいという思いが消えていなかったから。

「・・・ほんと、もう・・・」

次にどんな顔をして会えばいいのだろう。

結局何度考えても、彼が本気だったのかどうかは分からないな。

こうなるなら、あんなことを言ってしまったのは少し迂闊だったのでは?
しばらくは「
頭の中をぐるぐる回る思考回路は落ち着かない。

「・・・私の、バカ・・・」

結局は自室にこもってのたうち回って、赤くなった顔の熱はしばらくは引くことはなかった。


『お前のことが好きでさ・・・』

『私もずっと好きだった』

その日の夜、二人が考えていたのは全く同じことで。

決して嘘だったとしても、彼が、彼女が言ったその言葉が頭から放れなくて。

「・・・ああ、くっそ・・・」

「・・・・・もう・・・」

夢にも見そうなほどに、

その言葉を何度もかみしめた。

「どうするかなぁ・・・」

「これからどうしよう・・・」

どちらかが、素直に踏み出せば一瞬で解決するその問題も、暫くは解決の糸口をつかめなさそうであった。


『4月の馬鹿』・・・おしまい
 ▼ 542 ネネ@ぼうけんノート 18/04/01 20:23:42 ID:tF4TdNtM NGネーム登録 NGID登録 m 報告
支援
 ▼ 543 ナフィ@ダイゴへのてがみ 18/04/02 01:34:00 ID:FhXS3t6U NGネーム登録 NGID登録 報告
支援

ルクシオ×ロコンお願いします
 ▼ 544 ーブイ@カゴのみ 18/04/03 01:00:28 ID:mz6TyCg2 NGネーム登録 NGID登録 報告
>>543です
すみませんルクシオ→コリンクで
素で間違えた
 ▼ 545 ーフィア@ねばねばこやし 18/04/03 23:46:00 ID:CSkG7vzs NGネーム登録 NGID登録 m 報告
支援
 ▼ 546 aSS341n256 18/04/04 14:08:09 ID:rZGwtipY [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
『6世代の話』(クチート♂×ラティアス♀)

「ねぇクチート、知ってる?」

「何をだ?サーナイト」

「次のワールドアップデートの話」

「ああ・・・そういえばもうそろそろだったか。今回は少し早い気がするが」

俺たちが住むこの世界では、時折俺たちには関与できない、いわば「神」のような存在によって世界が一新されることがある。

新たな地方が発見され、今まで見たことのなかったようなポケモンが多数姿を現す大々的な革新、「ワールドアップデート」もあれば、そこまで大きくはないが、確実に環境に変化を及ぼす、いわば「マイナーチェンジ」もある。

通説では、交わることのなかった異世界や並行世界と意図的に交わらせることによって起こっているとされ、俺たちもかつてその革新によって今の世界に編入された身だ。

2度目のワールドアップデートの時だったらしい、その時の革新は特別大層混乱を及ぼしたらしいが。

今では、その革新による変化を、「出所も分からない噂」によってある程度は事前に内容を把握できるようになっている。

勿論ガセに振り回されることも、たまにある。

「なんでもフェアリータイプっていう新しいタイプが追加されるらしくてね?」

「新タイプだぁ?」

タイプというと、俺たちの特徴の一つでタイプ間の相性はバトル、ひいては俺たちの生活に直結する。

「でも、タイプなんてずっと17種類でやってきたじゃねぇか」

「そう思うじゃない?はがねタイプとあくタイプは最初のワールドアップデートで追加されたタイプなんだって!」

「マジか」

俺の知る限りタイプの追加なんて事例はなかったが、サーナイトが言う通りならありえない話ではないのだろうか。

例えば・・・

「・・・コイルやレアコイルはどうなるんだ?確かあれは、最初のワールドアップデートの前からいただろ?」

「ワールドアップデート時に自身に鋼タイプが追加されたそうなの」

「・・・・・・」

覚える技が変わったり、特性が変わったり、進化先、果ては進化前まで追加されたりすることがあったアップデートだ、個体のタイプが変わることもありえなくはないということか。

「でも、みんな歓迎してるわよ?ほら、最近ドラゴン共がブイブイ言わせてたじゃない?フェアリータイプはドラゴンに強いって噂で、神様も面白くないのかもしれないわねぇ」

「なんだって神様が俺たちのタイプ相性のバランスとるようなことするんだよ、目的はなんだ?」

「さぁ?」

バトルを生業としているポケモン達は、このアップデートの度に新たに現れたポケモン、新たな道具、新たなシステムに振り回される。

場合によっては、一気に環境から引きずり降ろされることもあるのだから、これが神様のせいだと言うのなら神様も残酷な人だ。

「ともかく、ここからが大事な話でね?」

「ん?」
 ▼ 547 aSS341n256 18/04/04 14:25:37 ID:rZGwtipY [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「お邪魔します」

「・・・ああ、クチートか・・・確認するが、君はまだフェアリータイプでは・・・」

「ないよ、アップデートもまだじゃないか」

「ああ、そうだな・・・」

この様子だと、彼も噂を聞いたのだろうか。

「クチート!いらっしゃい、待ってたわ!」

「ああ、お邪魔するよラティアス」

「クチートは聞いた?フェアリータイプの噂!」

「ああ」

「羨ましいなぁ・・・私もなりたいよぉ、フェアリータイプ!」

『今までのポケモンがフェアリータイプに新しく属されるなんて噂があってね、私やクチートもその中の一匹らしいの!』

サーナイトから聞いた噂。

そのフェアリータイプに自身が属されるという噂。

正直自分のタイプが変わるなんて全く想像ができない。

「・・・お兄さんは、大丈夫か?」

「ここんとこバトルで調子よかったからね、フェアリータイプの噂にビビりまくり」

同期、なんて言い方をされる同じ時期にこの世界に姿を現した面々は、それまでも元の世界で共に暮らしていた面々で。

だから少し希少な存在であるラティ兄妹とも、俺は仲がいい。

特に人懐っこい性格のラティアスはの俺によくしてくれた。

愛らしい見た目で人気なラティアス、確かにフェアリータイプが似合いそうだ。

「でもクチート族って確かにフェアリータイプが似合いそうね」

「そうか?」

「可愛いもん!」

「ああ、そうかい」

俺自身のことを言われているわけではないと理解しつつも、内心複雑になる。

♀のクチートは♂人気の高いポケモンの一匹だ。

ならオスはどうかというと、人気ではあるのだが、

やはり個人的にはカッコイイと言われた方が嬉しい。

「どうしたの?クチート、難しい顔して」

「なんでもない」
 ▼ 548 aSS341n256 18/04/04 14:48:26 ID:rZGwtipY [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「クチートクチートクチート!」

「どうした、サーナイト。また何か噂か?」

「メガシンカよメガシンカ!!」

それから数日、日に日にアップデートへ向けて情報が出回る中で、サーナイトが興奮気味に持ち出した情報がメガシンカ。

「なんだそれ、また新しい進化系か?」

「詳しくは知らないけど、私とクチートにも追加されるらしいの」

「またか。神様はずいぶん俺たちのことを気に入ってるみたいだな」

メガシンカの噂は日に日に情報が細やかになってきて、

タイプが変わる者もいるとか、期限付きの進化だとか、特性が変わるとか、

姿が変わるとか。

「・・・なるほど、これがメガシンカ」

そして行われたワールドアップデート。

俺はまっさきにそのメガシンカというものを試して。

鏡で自らの姿を見て驚いた。

これは、これは・・・

「カッコイイじゃないか!!」

禍々しささえ感じさせる容姿に、

より攻撃的になった大あご、

おまけに特性はちからもちだ。

タイプがフェアリーになったことは、まあ、今のところ実感はないが、

この姿は今までにない雄々しさを感じさせる!

「クチート、早速試してるのね?」

「ああ、どうだ?カッコいいだろ!!生まれ変わった気分だ!!」

「ええ、なんだかとってもワイルドよ!!」

「だろ?・・・はぁ、はぁ」

「体力消費が多いから気を付けてね、私も試したのだけど疲れちゃった」

確かにかなり疲れる、だが気分もかなり高揚する。

この姿なら、ラティアスも俺のことを♂だと意識してくれるかもしれない。

「・・・あいつのところに行くのは明日にするかな」

新たに現れたポケモンの情報などもてきとうに流しながら、俺は明日ラティアスに会うのを楽しみにして眠りについた。
 ▼ 549 aSS341n256 18/04/04 15:04:57 ID:rZGwtipY [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「いらっしゃ、クチート!」

「おじゃまします、お兄さんはいないのか?」

「うん、フェアリータイプに負けないために特訓だって」

かくして訪れたラティアス家。

ラティオスの留守は、あいつには悪いがとても都合がよかった。

彼女の前でメガシンカして見せて、変わった自分をアピールして、あわよくば・・・

「えいっ」

「??」

「うわぁ、ほんとに効かないんだね!!」

考え事をしていた俺にラティアスが何やら技を放つ。

どこかくすぐったく思えるが、ダメージはない。

「ラティアス?」

「ごめんごめん、竜の波動!ほら、フェアリータイプにはドラゴン技が効かないって言うから試してみたくて」

エヘヘ、と笑う彼女の顔が愛しくて思わずキュンとする。

その笑顔が自分にだけ向けられたなら、これほどうれしい事はない。

「そうだ、ラティアス。みてほしいものがあるんだ」

「なぁに?」

「ハァァアアアア!!!」

俺は目的通り、メガシンカをして見せる。

「わぁぁ、凄い!!」

派手なエフェクトの中から姿を変えた俺が現れて、ラティアスは驚きの声をあげる。

「どうだ?」

「そっか、メガシンカだね!」

「ああ」

カッコいいだろ?なんて得意げな顔をして見せる俺の目を見たラティアスは、一言。

「なんだか、巫女さんみたい!」

「ははは、照れるな・・・え、巫女?」

「うん、綺麗!!」

巫女・・・神様に仕える、袴を身に着けた女性。

女性・・・
 ▼ 550 aSS341n256 18/04/04 15:21:10 ID:rZGwtipY [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「・・・ラティアス」

「なぁに?」

「俺は、♂なんだが」

「そうだけど、その恰好は巫女装飾みたいだなぁって」

悪気のない彼女の発言が胸に刺さる。

「・・・はぁ」

「あれ、解いちゃうの?」

「メガシンカは体力を使うんだ」

「へぇ〜」

なんだか自分でカッコイイなんて息巻いていたのが恥ずかしくなって、気が抜けた俺はメガシンカを解除する。

「でも、いいなぁ、メガシンカ。すっごい強くなるんでしょ?」

「まあ」

「私もやりたい!!メガシンカ!!」

純粋無垢な願いを唱えるラティアスは少し気落ちした俺に気づく様子もない。

メガシンカを用いて口説き落とす作戦は、哀れ失敗に終わってしまった。


月日は流れ、

「じゃーん!!」

「・・・おお」

マイナーチェンジが行われ、ラティアスの願ったメガシンカが可能になった。

「どう?どう!?」

「・・・まぁ、いいんじゃないか?」

「でしょ〜?お兄ちゃんとお揃いな感じなの!!」

無邪気に喜ぶラティアスは、メガシンカして少し勇ましくなってもやはり可愛い。

わざわざ俺の元へと出向いてこの姿を見せてくれたことを嬉しく思う。

「そうだ、クチートもメガシンカしてよ!」

「仕方ないな・・・はぁぁ!!!」

「ふふふ、こう並んでると、私たち無敵のコンビみたい!!」

彼女が俺のことをどう思っているのかはわからないが、この先何度のアップデートがあってもこうして隣で並ぶことができたら、ひとまずはそれでいいのかもしれない。


『6世代の話』・・・おしまい
 ▼ 551 ザリガー@カチャのみ 18/04/04 21:47:21 ID:wpE0hk2A NGネーム登録 NGID登録 m 報告
ゲームの世界の話とは発想が凄い!支援!
 ▼ 552 aSS341n256 18/04/06 11:38:02 ID:me6Dz6Ek [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
『君はモミの木』(ウツロイド×デンジュモク)

「ねぇ、クリスマスって何?」

12月も中旬になって、町では装飾された木々が夜を彩り赤服白髭の叔父様のモチーフがそこら中で見受けられるころ、

人が話すのを聞いて覚えたのか、ウツロイドがそんな疑問を抱えた。

「今はクリスマスシーズン、というものらしいが」

「ああ、そうだな!お前はまだこの世界の文化には疎いもんな!!」

ケララッパがそう言ってウツロイドを茶化す。

異世界からこの世界に迷い込んだ「異端者」、ウツロイド達のことも仲間として皆と変わらず受け入れるこの森で、好奇心の強いケララッパはとりわけウツロイドのことを気に入っていた。

「人間たちの文化でな、神様の誕生を祝うとか、色々起源はあるらしいけど・・・まぁ、盛り上がる日だよ!」

「ポケモン達も人間のことをまねてね、クリスマスの日を祝ったりするのよ?」

割かし雑な説明を勢いでおこなったケララッパに次いで、オドリドリが補足する。

「そうね、最近は恋人と一緒にすごすのが定番よね〜」

「恋人?」

愛しき誰かのことを思いながら惚気るように語るオドリドリに、ウツロイドは再び疑問をぶつける。

「恋人とはなんだ?」

「なんだ、知らねぇのか」

「恋人って言うのはね?」

ケララッパとオドリドリは何も知らないウツロイドの疑問をいつものように解決してあげようとしたが、

「・・・なんていうのかしら」

「なんか、冷静にそう問われると難しいもんだな」

そのような概念を当たり前のように認識していた二人にとって、0から「恋人」を説明するのは案外難しい。

「そうねぇ・・・お互いに、この人のことが大切!好き!この人と一緒にいたい!!って思えるひとのことかしら?」

「なら、私とケララッパやオドリドリは恋人なのか?」

「なっ!?」

「うーん・・・そうねぇ・・・」

「私はケララッパやオドリドリや、みんなのことが大切だし、好きだし、一緒にいたいと思っているが」

オドリドリの定義はウツロイドに恋人を理解させるには不十分だったようで、ウツロイドの天然の不意打ちにケララッパは思わず顔を赤くする。

「う、嬉しいこと言ってくれるじゃないか・・・」

「うーん、でもね?相手の人もそう思ってくれてないとダメなのよ?」

言葉を選びながら慎重に、オドリドリはウツロイドの思考を修正する。
 ▼ 553 aSS341n256 18/04/06 12:05:39 ID:me6Dz6Ek [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「二人は、私のことが嫌いか?」

「そ、そういうことじゃねーけど!」

「そうね、私もみんなのことが大切だけど、その中でも一番特別な人が私の恋人なの」

「一番特別?」

傷つけてしまわぬよう焦るケララッパをよそに、ウツロイドに恋人を熱く語るオドリドリ。

ウツロイドはオドリドリの熱弁を聞いて、徐々にその意味を理解していき、

「つまり、私にとって一番特別で、最も大切な人が、同じように私を一番特別だと言ってくれたなら、私とそいつは恋人だということか?」

「まぁ、そんなところね」

「なるほど、クリスマスにはそいつと一緒にすごせばいいのだな」

「絶対ってことはないけどね」

「わかった、ありがとう二人とも」

遂にウツロイドなりに答えをだして一人納得した。

「・・・なんか不十分な気もするんだが、性別の話とかどうなんだよ」

「だって、そもそもあの子たちの世界に性別って概念がないみたいだし、それに愛があれば同性でも大丈夫よ!!」

「そういうもんか?」

少し怪訝そうな顔をするケララッパをよそにオドリドリは非常に満足気であった。


「と、いうことで、私はお前のことを恋人だと思うのだが、お前も同じだろうか?」

「・・・は?」

オドリドリの話を聞いたウツロイドが向かったのは、デンジュモクのところ。

この世界とは違う別々の世界からやってきた同じような境遇の二人。

戸惑うことも多かった現世界来訪当初、たまたま巡り合った二人は互いに心の支えとなっていた。

「・・・まあ、お前のことは大切だと思ってるし、一緒にいたいと思ってるけどよ」

「好きか?」

「・・・その、ほんとに恋人ってそんな感じなのか?」

ただ、羞恥心というものに元来疎い傾向にあるウツロイドに対し、デンジュモクの方は並みに恥ずかしいという感情を持っていた。

ウツロイドの方は、この世界に疎いから、というだけでなく欲望に忠実な種の本能の影響もあるのかもしれない。

「オドリドリはそう言っていた」

「そ、そうか」

デンジュモクとてこの世界について詳しくはない。

オドリドリに頼ることも多く、そう言われるとそうなのか、と納得するしかなかった。
 ▼ 554 aSS341n256 18/04/06 12:53:10 ID:me6Dz6Ek [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
さて、時は流れて12月24日。

イブがどうだとか、詳しい話はウツロイド達に分かるわけもなく、

デンジュモクとの約束を取り付けたウツロイドがオドリドリに報告した結果、

「クリスマスの祝い事は12月24日に行うのよ」

と言われたため、この日に二人ですごすこととなった。

「見ろ、デンジュモク。町中が光り輝いている。行き交う人々もみな、幸せそうだ」

「ああ、そうだな」

手を組み、仲良さげにあるく人間たち。

普段はこれほど多く見かけることはなくて、デンジュモクもやはりこの日が特別な日なのだと言うことをなんとはなしに理解した。

「あの人間たちも、みな恋人なのか?」

「そうなのだろうな。オドリドリはそう言っていた」

この日は町中が恋人たちであふれるのだ、ウツロイドがオドリドリから聞いた通りの光景に、何故か嬉しくてウツロイドは心を躍らせる。

ふと視線をよそに向けると、ポケモン達も同様で、

自分達もその中の一つなのだと二人は思い知る。

「恋人というのは」

ウツロイドはデンジュモクに顔を向けて言う。

「とても、素晴らしい関係だな」

「・・・まあ、みんな幸せそうだな」

照れながら、濁すように言うデンジュモクに対して、

「私も幸せだ」

ウツロイドは真正面からそう伝える。

「・・・そうかよ」

「お前はどうだ?」

「そうやって何でもストレートに聞く癖は直してくれないか!?」

「聞きたいから聞いてるんだ」

照れ屋なデンジュモクはいつも純粋なウツロイドにうまくしてやられる。

ウツロイドには悪気も何もないと言うことを知って、だからこそデンジュモクにはなすすべがない。

「・・・ま、幸せだよ」

「よかった」

今こうして顔を真っ赤にしている意味も、こいつには分からないのだろうなと思うと、デンジュモクは少し癪だった。
 ▼ 555 aSS341n256 18/04/06 13:07:35 ID:me6Dz6Ek [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「綺麗だな・・・」

「ああ・・・」

日が落ちて、イルミネーションがより一層輝きを放つ。

幻想的な雰囲気も、いいムードというものも、ウツロイド達には分からない。

「なんだか、こうして歩いていると、デンジュモクに囲まれているみたいだ」

「なんだ、それ」

「似ているだろ、クリスマスツリーというらしい」

イルミネーションを纏う、てっぺんに星をかぶった木々。

言われてみれば、確かに電気を用いて発光する自分の姿に似ていないこともない。

「中でもあの大きなツリーは・・・原寸大のお前と瓜二つだと思わないか?」

「瓜二つってことはないだろ・・・」

「なあ、デンジュモク。あれは、何をしているんだろうな」

「あ?」

デンジュモクに似た、周りより大きなツリーも下には一組の男女が向かい合って、

お互いを抱き寄せ、その唇を重ねていた。

再び顔を離して、幸せそうに笑う光景にウツロイドは惹かれたのだろうか。

「さぁ・・・人間のやることなんざわかんねぇよ」

「でも幸せそうだ」

「・・・ああ、もう!」

そんなウツロイドを見かねて、デンジュモクはウツロイドを抱きかかえて顔を寄せる。

「やってみたら分かるだろ」

そう言って例の人々の行為をまねてみた。

「・・・どうだ」

「・・・なんだろう、これは・・・」

「ウツロイド?」

ウツロイドの反応が今まで見たことのなかったようなもので、デンジュモクは面食らう。

デンジュモクだって、この行為の意味など知る由もなかったが、

「・・・思っていたより、恥ずかしいな」

「恥ずかしい・・・っ!」

ウツロイドの反応に釣られて、自身もまた顔を赤くする。
 ▼ 556 aSS341n256 18/04/06 13:19:55 ID:me6Dz6Ek [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
今までにもこれ以上に恥ずかしいことを平然と言ってきた癖に、今更こんなことで恥ずかしがるのか。

それよりも、この行為は何よりも恥ずかしい行いだったのだろうか。

よくわからなくなって、頭も回らないデンジュモクをおいて、

「でも・・・やはり、とても幸せな気分だよ」

ウツロイドはとても満足気であった・


「デートは楽しかった?」

「?・・・ああ、昨日は楽しかったぞ」

翌日、イブを満喫したオドリドリは同じく幸せな一日を過ごしたウツロイドに関そうを求める。

話を聞く前からウツロイドはなんだかご機嫌で、昨日はうまくいったのだろうということは推測できたが、

「人間のマネをして、二人で口元を合わせたんだ。とても幸せな気分になった、オドリドリは知ってるか?」

「え?・・・まぁ、そんなこと」

キスまですましていたとは思いもよらず、大層驚いた。

「そうね、知ってるわよ。最高の愛情表現ね・・・恋人としか、しちゃダメよ?」

「そうなのか、分かった」

「どちらからしたの?」

「デンジュモクからだ」

「まあ、あの子も意外と大胆なのね」

デンジュモクもきっと、その意味は知らなかったのだろうな。

教えてあげたらどういう反応をするかしら。

純粋無垢なウツロイドと違い、からかい甲斐のあるデンジュモクにも、キチンとこの話をしてやらねばならないと、

オドリドリはその瞬間を思うと楽しみで仕方がない。

「何を笑っているんだ?オドリドリ」

「いいえ、何も?あなたが幸せそうでよかったなと思っただけよ」

「ああ、幸せだ。またあいつを誘って二人で出掛けたいな」

「それはいいわね」

一方で、恋を初めて覚えた少女の様なことを言うウツロイドも愛らしい。

優しく見守ってあげなければ。

保護者のようなことを思いながら、オドリドリは早速デンジュモクのことを探すのであった。


『君はモミの木』・・・おしまい
 ▼ 557 グノム@バトルレコーダー 18/04/06 13:26:47 ID:5C6/Lm/U NGネーム登録 NGID登録 報告
>>483 の者です。ありがとうございます!
 ▼ 558 オラント@いわのジュエル 18/04/06 19:57:08 ID:jYfP767M NGネーム登録 NGID登録 報告
>>528
難しいリクエストに答えてくれてありがとう!
 ▼ 559 グトリオ@ねむけざまし 18/04/06 22:26:55 ID:qWZqaIk2 NGネーム登録 NGID登録 m 報告
支援
 ▼ 560 aSS341n256 18/04/09 10:22:49 ID:aWX4qMgc [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
『ポニの夜明け』

「やはり、コケコのお気に入りだけのことはあるようだな」

「例の子が、大試練を突破したの?」

「ああ、じきにポニ島へ行くだろうさ」

カプ・コケコに見初められ島巡りを始めた、遠くの地からやって来た少年。

メレメレ、アーカラの試練を全て突破し、カプ・ブルルはウラウラ島にやってきた彼を一目見た瞬間から彼の素質に気づいていた。

「ありゃ、いずれ島キングにだってなれる器だ・・・ま、本人にその気があるかはわからんけどな」

「随分高く買うのね」

「ああ」

クチナシは、あんな感じではあるがポケモントレーナーとしての腕は確かだ。

嫌々ながらも島キングとしての役目はしっかり果たしてくれている。

だが、本人もいつまでもその座にとどまることを願わないだろう。

「後任も、ボチボチ探さなきゃならねぇからなぁ。あいつの気がいつ変わっても、おかあしくねぇ」

「まさか、あなたの頼みとあればいつまでも続けるわよ。一応忠義を誓っているようだし」

「ま、念のためだよ。念のため」

自身の信頼する島キングのことを思い返して、カプ・ブルルはカプ・レヒレに問う。

「お前も、そろそろ託さなきゃなんねぇんじゃねぇの?」

「・・・分かってるわよ」


島キングと土地神は、共にある。

その心は、その思いは、いつも同じにある。

どんな島の危機だって、島キングはカプの思いを胸に戦い、

キングの守りたいものを守るため、カプはその力を開放する。

その関係に、例外などはない。

「分かっているわ・・・もう、暫くあけたままだものね」

先代島キングが亡くなってから、ポニ島の島キングは欠番になっていた。

理由は一つ、その座にふさわしい人物が現れなかったからだ。

『カプ・レヒレ様!わしは先代島キングが孫、ハプウ!島キングの座を、継承しにまいりました!』

「・・・冗談じゃないわ」

島キングの孫を名乗るその娘は、孫である自身が認められぬわけがないと驕っていた。

その姿が、先代島キングと比べひどく矮小に思え、レヒレは認めることができなかったのだ。
 ▼ 561 aSS341n256 18/04/09 10:39:57 ID:aWX4qMgc [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「そうか、彼が・・・」

「全く、人というものはとても脆い生き物ですわね。ほんの少ししか生きることができないなんて」

「まあ、俺たちと比べれば、生きる時間は短いがな・・・」

悠久の時を生きる守り神たちにとって、人の死とは当然のように起こるもの。

島キングの死に伴う代替わりも、珍しいものなどではなかった。

「寿命だったのだろう、わかっていたことだ。レヒレ、後任は誰に任せるんだ?」

だから、その時コケコも当然の様に、レヒレにそう聞いたのだろう。

「・・・後任なんて、いないわよ」

「なっ、レヒレ!?」

「後任がいないなんて、どういうことですの?」

それが、レヒレの心を傷つけた。

彼女はコケコ達から逃げるように、島へと帰ってしまった。


「珍しいじゃないか、お前がそうやって感情をむき出しにするなんてよ」

「・・・ブルル」

昔から、レヒレの気持ちを汲んでくれるのはブルルだった。

時に『破壊神』として恐れられる彼の怒りなどは、レヒレにとって縁のあるものではなく、

いつだって温厚な彼の優しさに救われてきたのだ。

「コケコ達には、俺が言っておいた。急ぐ必要はないさ」

きっと、当時のコケコやテテフには分からなかったこの感情も、ブルルだけは理解してくれた。

「ひどく入れ込んでいたもんな、島キングに」

「私、とちがみ失格ね」

自嘲気味に笑うレヒレの傍に寄り添って、ブルルは涙を流す彼女を慰めた。

『カプ・レヒレ様・・・今までありがとうな』

今まで、そんなことはなかったなと、自分でも不思議に思うのだ。

『わしは、あんたに島キングに選ばれて、幸せだった』

自分も幸せだった、今までのどんな時よりも幸せだった。

『この座にふさわしくない、未熟者であったが、あんたと戦うことはわしの誇りだった』

そうだ、彼のために力をふるうことが自分にとっての誇りだった。

『ありがとう、わしの命に、意味を与えてくれて、ありがとう』

そうして自身の人生を思い返し、彼が最期に遺した言葉が、
 ▼ 562 aSS341n256 18/04/09 11:00:21 ID:aWX4qMgc [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
『カプ・レヒレ様・・・わしの孫は、わしよりも清く、強い目をした素晴らしい子だ、きっと、良い島クイーンになる・・・ハプウのことを、よろしく頼む』

「・・・はぁ、馬鹿らしいわね」

ブルルに泣きついたあの日から、数年たって、逝った彼の最期の言葉も今では大分受け止められるようになっていた。

今になってブルルが後任の選定を急かすのも、ウラウラ島の大試練を突破したから、などではなく、

本当は既にハプウのことを島クイーンとして認めていると、自分で理解していることをている察しているから。

だから、背中を押してくれようとしているのだろう。

「時が経って、思い出が色あせてしまったからかしら」

そんなことはない、自分でも分かる。

彼を島キングに選んだ瞬間も、

共に危機を乗り越えた時も、

とちがみに悪事を働こうとした愚か者に涙を流して説教する彼の姿を見たことも、

一緒に笑いあったことも、

どんな些細な思い出だって決して色褪せてはいないのだ。

「気のせいかもしれないが」

いつか、ブルルが言っていた。

「ハプウという少女は、やはりどこかポニの先代島キングに似ているよ」

「あの小娘が?嫌な冗談ね」

「はは、お前は嫌がると思ったがな。どちらも俺は少ししか知らないが、彼女はいい目をしている。いつか、その時が来たらちゃんと向き合ってやってくれないか」

彼と彼女が似ていることなど、初めから言われなくても分かっていたのだ。

自分が片意地を張って、彼女の島クイーンへの就任を認めなかった後、

彼女はめげることなく島巡りによって己を磨き始めた。

そうして、時間はかかったが、結果的に今の彼女からは、未熟さを感じられなくなった。

「・・・はぁ、ほんと、嫌になるわ」

恐らく、恐れているのだろうな。

彼女のことを受け入れてしまう自分を。

彼女と、彼のことを重ねてしまう自分を。

そして、彼女を受け入れた時に、

またいつか彼女を喪って深く傷つくことを。

「なあ、レヒレ」

そう言えば、はるか昔に、ブルルが言っていたっけか。
 ▼ 563 aSS341n256 18/04/09 11:16:22 ID:aWX4qMgc [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「俺は、どうしても寂しいと思っちまうんだ」

「何が?」

「島キングが、島クイーンが、死んじまう度に寂しいと思っちまうんだよ」

そうだ、私がそんな当たり前なことに気づけるずっと前から、彼はその心の痛みを知っていて。

「仕方ないじゃないの、世の理よ、いずれ割り切れるようになるわ。それに・・・」

その時私はなんて言った。

レヒレは、思い出す。

「寂しくなんてないわ。私たちがいるじゃないの」


「各島にウルトラビーストが襲来した。それぞれ撃退に向かってくれ!!」

「りょーかい!腕が鳴るわね!!」

「任せとけ」

久しぶりに、アローラが危機に見舞われて、こんな時いつだって、自分たちは島キングと、島クイーンと共に戦った。

「レヒレ」

「なに?ブルル。急がないと、島が危ないわ」

「いつだって俺たちがいる。寂しくなんてないさ」

「・・・そうね」

いつだって彼は、私が欲しい言葉をくれる。

同じように、自分も彼を支えてきたのだろうか。

助け合ってきたのだろうか。

「・・・わしを、認めてくれるのか?」

ああ、その少女は、やはりあの人に似た強い目をしている。

強くなったのだな、やはり、認めざるを得ない。

「・・・では、いくぞ、我らはおぬしを歓迎するわけにはいかんのでな」

ここまで来るのにあまりに時間をかけすぎてしまった。

今は、彼女の思いに、心を重ねて。

彼女のために、島のためにこの力をふるうのだ。

あの時と同じように。

守り神としての、責務を果たすのだ。


『ポニの夜明け』(カプ・ブルル×カプ・レヒレ)・・・おしまい
 ▼ 564 イル@ファイヤーメモリ 18/04/09 11:59:32 ID:EMBpFa6U NGネーム登録 NGID登録 m 報告
>>483 です。ありがとうございました!
 ▼ 565 ッスグマ@フォーカスレンズ 18/04/09 21:04:13 ID:ZoaH55Hw NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 566 イロス@ポケモンずかん 18/04/10 23:06:37 ID:34ICVBdo NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 567 ディアン@くろいヘドロ 18/04/11 00:32:59 ID:eErYk.KY NGネーム登録 NGID登録 報告
ラティアスと名前欄
 ▼ 568 ガラティオス@でんきのジュエル 18/04/11 20:31:31 ID:mkXFAnFA NGネーム登録 NGID登録 m 報告
支援
 ▼ 569 ュプトル@こだいのおまもり 18/04/11 21:27:27 ID:669q8.rI NGネーム登録 NGID登録 報告
ケンタロスとミルタンク
 ▼ 570 エルコ@ライドギア 18/04/12 20:33:20 ID:F0wbS9Ws NGネーム登録 NGID登録 m 報告
支援
 ▼ 571 カーフマスキッパ◆aSS341n256 18/04/12 21:42:30 ID:NIWvrLFM [1/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
『Ms.Actress』

「ほっといて・・・あなたには関係ないでしょう?」

「関係なくなんてねぇよ!!俺は、アンタのこと・・・アンタの・・・ことを・・・」

「はいカットォ!!」

また一つ、シーンを撮り終える。

まだまだ慣れない撮影は、既に佳境を迎えていて、

クランクアップのその瞬間が来るのが、嫌で嫌でたまらない。

「いいわね、ダイケンキ君。日に日に芝居に気持ちがこもっていくのが分かるわ」

「ありがとうございます・・・」

「次のシーンもよろしくね?」

「うす・・・」

次のシーンは、キスシーン。

俺の憧れの人と、キスをするのだ。

「おーうダイケンキちゃ〜んどこいくの〜?」

「ちょっと、顔洗ってきます」

「さては緊張してるな?若いね〜羨ましいなこんにゃろ」

「キスシーンとか初めてなんすよ。大事なシーンだし、うまくやんないと」

この作品がヒットすれば、俺の人生は変わる。

劣情よ、去ってくれ。

きっと、これからこんなこと何度だってあるんだ。

俺たち俳優にとって、キスなんてなんでもないことだと思え。

「・・・あ〜!!」

それでも俺は、顔の火照りを静めることができない。

こうして夢をかなえてここにいる、

夢にも見なかった世界にだって、いけるかもしれない。

こんなとこでつまずいていたら、そこまでで終わってしまうぞ。

でも、仕方ないじゃないか。

心の中でそう叫ぶ俺もいる。

だって、俺の夢の始まりは、

ほかでもないこの人だったじゃないか。
 ▼ 572 カーフマスキッパ◆aSS341n256 18/04/12 22:04:02 ID:NIWvrLFM [2/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
ジュニアスクール時代、俺はテレビで初めて見た時から彼女に夢中になっていた。

「みんな〜!今日は楽しんでいってね!!」

『わぁぁぁあああああ〜!!』

3人組のアイドルユニット、「アクアリオス」。

マリル・タマンタ・オシャマリの三人組、

その中でもオシャマリはひときわ目立つセンターで。

周りの男子も、みんな彼女たちに夢中だった。

「今日は来てくれてありがとう!!またみんなに会える日を楽しみにしてます!!」

何千人ものファンの前で、堂々と挨拶をするオシャマリは、流石アイドルポケモンというだけあって俺たちの心を一度つかんで離さなかった。

「フタチマル君か・・・あれ、もしかして前も来てくれたっけ?」

「はい、大ファンです!!」

「フフフ、いつも応援ありがとうね!同種の別の子だったらどうしようかって思った♪」

俺はライブにも握手会にも何度も何度も参加して、青春の全てを彼女に費やす勢いで。

だからこそ、

「私たち、アクアリオスは・・・本日をもって解散します」

「これからはそれぞれ別々の道を行きます。皆さんと過ごした楽しい日々は、決して忘れません!!」

彼女達の解散の知らせは、生きがいを無くしたかのような衝撃を受けて。

その後、進化して歌手や女優として活動する彼女の姿を見た時は涙を流すほどに嬉しかった。

「俺、俳優になろうと思ってるんだ」

「俳優?」

「ああ、沢山の人たちに、感動を与えられる、そんなポケモンになりたいんだよ」

「大きな夢を持つことはいいことよ、私は反対しないわ」

大層な大義名分を掲げて家族に賛成してもらって、

でも、その実、俳優を目指したきっかけも彼女。

彼女に会いたい、出きることなら彼女と共演したり、近づきたい。

そんな不純な、親になんてとても言えない動機からだった。

幸い、俺は俳優になることができて、それなりの下積み時代を経てからちょくちょくドラマやバラエティにも出させてもらえるようになって。

でも、努力を絶やさなかった彼女はもう押しも押されぬ大女優。

売り出し中というにはまだ弱いひよっこ俳優の俺が共演できるような人物ではない。

それに、きっかけこそ不純ではあったが、演技に触れるにつれて俺は俳優という仕事に思いっきりのめりこんでいった。
 ▼ 573 カーフマスキッパ◆aSS341n256 18/04/12 22:22:56 ID:NIWvrLFM [3/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
脇役ばかりだけど演技の仕事が楽しくて、

バラエティは少し苦手だったけど徐々に顔を覚えてもらえるのが嬉しくて、

そんな日々の中にあって、偶然の出来事。

「ダイケンキ、ハンテール監督の新作のオーディションの話があるんだけど、受けるよね?」

「勿論です!」

「当たればデカいよ〜これ。まあ、倍率も高いからダメで元々で、なんか役取ってきな!!」

この業界のビッグネーム、ハンテール監督のオーディションの話を、事務所の重役のニョロトノさんからいただいて、

「君いいねぇ!自分の強みを分かってる!ダイケンキ種のような凛々しいタイプには、そういう荒々しいくらいの勢いがある方がいいよ!!」

「あ、ありがとうございます!」

緊張しすぎて荒くなったような演技が、ハンテール監督のツボにはまって、

「おい!ダイケンキ!!大変だ!!オーディションの結果なんだけど、主演男優だそうだ!!」

「ええ!?」

主演格に大抜擢されて、それから、

「ダイケンキ君だっけ、今回はよろしくね?」

「は、はい!!」

相手の女優としてキャスティングされたのがアシレーヌ、あこがれのその人であること知った。


「緊張してる?」

「アシレーヌさん・・・」

「フフフ、もう水臭いわね。撮影始まってから長いんだから、今更二人のシーンで緊張とか、そういうの無しよ?」

すっかり大人の女性になったその人は、余裕ある振る舞いで今まで何度も俺のことを支えてくれた。

この作品にかかるところが大きいい若手俳優と、その地位を確立した有名女優。

そういう形になるのは、言わば当然であったが、カッコ悪いところをいくつも見せてしまって恥ずかしいという思いもある。

今もこうして、気を遣わせてしまっている。

「疲れたでしょ?主演って、今回が初めてだものね」

「そうですね、思ってた以上に撮影もハードで」

「そうそう、特にハンテール監督は一つのシーンで何通りも試すから、一緒に泳ぐシーンとか特にしんどかったわ・・・」

大海原のなかに二人だけ、印象的なBGMをバックに優雅に泳ぐシーンは監督がこの作品で最も大切にしていたところで、そのシーンから逆算して俺が選ばれたという側面もあると、後から話を聞いたほどだ。

そんな時だって、「大丈夫?」「少し休憩にしてもらおうか」と、優しく俺を気遣ってくれていた。本人はしんどそうな様子なんて全く見せていなかった。

「でも、あともうちょっとで撮影も終わるし、ここが踏ん張りどころよ!頑張りましょう」

「・・・アシレーヌさん」
 ▼ 574 カーフマスキッパ◆aSS341n256 18/04/12 22:40:52 ID:NIWvrLFM [4/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
「どうした?」

「俺、終わるの嫌だなって思ってます。撮影、楽しいから」

俺は、心境をこの道の大先輩に吐露する。

一つ一つの作品への思い入れも、どうしたって俺とこの人とでは違う。

今この日々の中でも、彼女は他にもいくつかの作品に参加していて、仕方ないことだ。

「一つの作品に執着してるうちはまだまだね。あなたはきっと、そんなこと思ってる暇ないくらい忙しい俳優さんになれるわよ」

「・・・ありがとうございます」

憧れの人がそう褒めてくれていても、俺は素直に喜ぶことができない。

「・・・でも、まあ、そうね。私も寂しいわ」

「そうなんですか?」

「あなたの演技初々しくてとても気持ちいいもの。でも、情熱的で、『私』のことを好きになってくれてるんだなって分かる」

「えっ・・・」

「恋の演技って難しいわよね、相手の役のことをちゃんと好きになってやれるのも、いい俳優の証」

彼女の発言に、思わずドキリとさせられる。

俺は、寧ろ彼女に夢中だった自分のことを消して撮影に臨もうとしていた。

そんなものは、演技の邪魔だと。

役としての「彼女」を見なければならないのに、彼女本人のことを思って演技をしていてはいけないと。

でも、きっと消せてはいなかったのだな。

彼女の目を見るとつい見惚れてしまったり。

彼女の声を聴いていて幸せな気持ちになったり。

手の届かないアイドルが、手を伸ばせば触れられる距離にいて、

きっと、憧れが恋になって。

「なーんて、アイドルあがりの私が偉そうにこんなこと言っても、ちゃんと自分で分かってるのかもわかんないけどね。ほとんど誰かの請け売り――」

「俺は、そんないい俳優なんかじゃないんです」

「ん?どうして?」

「っ!」

思わず口を滑らしてしまった。

共演関係にあるのに、こんなこと、こんなことは。

「俺は、きっと、あなた本人のことが好きだったから・・・」

こんなことを伝えたら、いけないのに。
 ▼ 575 カーフマスキッパ◆aSS341n256 18/04/12 22:56:01 ID:NIWvrLFM [5/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ほ、ほら!アイドルやっていらっしゃった頃からのファンで!!」

「へぇ、ほんとに!?なんか照れるなぁ、ふ〜ん、そっかぁ」

言ってしまって必死でごまかす俺をニヤニヤと見つめながら、

「嬉しい、それで私のこと追っかけてこの世界に来てくれたんだ」

俺にそんなことを聞いてきて。

「はい・・・あ」

「もう!冗談のつもりだったのにぃ!!嘘、ちょっと怖いよ?」

「あああああ違う!いや、違わないですけどなんていうかそのっ!!」

そんなことは本人に伝えるつもりなんてなかったのに、口を滑らして更に顔を赤くして、彼女にも引かれてしまっただろうか。

「・・・ハハハ!キミ案外からかいがいあるね、怖いって言うのも冗談だから。でもそんな人いるなんて思わなかったから驚いちゃった」

「い、今はちゃんとこの仕事のこと真剣に考えて・・・」

「分かってるよ、真剣じゃない子が監督のお眼鏡にかなうわけないでしょ」

やっぱり彼女は、大人の余裕だ。

「あんなに楽しそうに演技できる子が、この仕事のことどうでもいいなんて思ってるわけないもんね」

「・・・ありがとうございます」

「さ、緊張もだいぶ解けたでしょ。そろそろ次だから準備しなよ?」

「!!・・・はい!」

俺はというと、まだまだ未熟で、彼女との仕事がどれだけいい経験になっているか分かる。

彼女を追いかけて俳優になって、彼女のおかげで俳優として成長して、

きっと、これ以上を望むことは贅沢だ。

いつかは、なんて淡い期待も消して、

それでも消えてくれないなら、せめて彼女の相手役として恥ずかしくないキャリアを積んでから――


「どう?憧れのアイドルとキスする気分は」

「考えないようにしてるんだから言わないでください!!」

「・・・じゃ、よろしくね」

「はい・・・」

水タイプの2体のポケモンが夕日を背に口づけるの様は、あまりに美しいのだとか。

ならば、俺がもし別の種族であったなら、ここにはいられなかったのだろう。

いくつもの偶然と奇跡と、努力が重なって得られたこの経験を、

俺は一生忘れない。
 ▼ 576 カーフマスキッパ◆aSS341n256 18/04/12 23:09:47 ID:NIWvrLFM [6/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
「クランクアップです!皆さんお疲れ様でした!!」

撮影が終わってしまってからも、彼女にまつわる思い出は増えていった。

打ち上げで彼女の生歌を聞いたときには思わず感動して涙を流してしまい、

「泣くことはないでしょ?いくら撮影スタッフで集まることが亡くなるのが寂しいからってさ〜、ね?」

「わ、分かってます!」

その涙の意味が彼女にだけ知られているのがどうしようもなく恥ずかしかったり、

「はいではダイケンキさんにまつわるタレコミ・・・じゃん!学生時代はアイドルオタクだった!!」

『えぇ〜!?』

「これはまた意外でなんですけど、この情報は・・・」

「あ、これ私なんですけど皆さん『アクアリオス』っていうアイドルがいたの知ってます?」

『キャアァァァァアアアア!!!』

「ちょ、ちょっとアシレーヌさん!?」

番宣のバラエティ番組で自分が彼女のアイドル時代からのファンであったことを本人の口からばらされたり。

「これで・・・もう番宣の収録は最後かな」

「そうですね・・・」

いざ、いよいよ本当にもう会う機会がなくなろうと言う時には、

「今回評判かなりいいから、また会えるかもね〜」

「ぞ、続編ですか!?」

「それも可能性あるし、ほら、賞とかも、色々あるわよ?映画は」

「!!」

アシレーヌさんがそんなことを匂わすものだから、俳優としても、男としても期待せずにはいられない。

「まあ・・・別の機会で会うことがあれば、それも楽しみだけどね」

「俺もです」

続編ということでなければ、同じキャストと別の作品で相手役とになるということは、そうそうない。

それでも、いつかはもう一度共演したいと心から願う。

その時までに、俳優としてもっともっと成長しなければ。

かんろくポケモンにふさわしい貫禄ある演技を身に着けて、

俺の全てのきっかけになったこの人に、成長を喜んでほしいのだ。


「Ms.Actress」・・・おしまい
 ▼ 577 カーフマスキッパ◆aSS341n256 18/04/12 23:15:12 ID:NIWvrLFM [7/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
【些細なお知らせ】

コテハン付けました、パッと頭に浮かんだ語感のいいフレーズがこれでした。

別にマスキッパに愛着があるとかそういうわけではありません。

これから愛着持っていこうと思います。

なお拘りスカーフには愛着があります。

シルクのスカーフには愛着がありません。

気軽にスカマスとでもなんとでも呼んでください。

別に呼ばなくてもいいです。


相変わらぬ沢山の支援ありがとうございます。

数日開けての更新が続いていくと思いますが、これからもまったりお付き合いくださいませ。
 ▼ 578 レザード@プラズマカード 18/04/12 23:23:21 ID:7gcHZNN6 NGネーム登録 NGID登録 報告
スカマスさん
支援
 ▼ 579 ンシカイオーガ@リザードナイトX 18/04/12 23:33:40 ID:Q7YKV93c NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 580 ーピッグ@たつじんのおび 18/04/13 00:05:25 ID:m4Jnqucc NGネーム登録 NGID登録 報告
ゼルネアス×イベルタル
 ▼ 581 銭拾い◆HhALzJguXE 18/04/13 22:52:07 ID:h/jMQqv. NGネーム登録 NGID登録 報告
支援

恋愛…ねぇ…
@エロss作者 小銭拾い
 ▼ 582 ナップ@しんかのきせき 18/04/13 23:25:21 ID:iJRyNETM NGネーム登録 NGID登録 報告
パルキアとアグノム
 ▼ 583 ッフロン@なつきポン 18/04/13 23:31:39 ID:nRejMYJY NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
スカマスさんか、ええな
支援
 ▼ 584 ンジャラ@ほしのかけら 18/04/15 17:25:49 ID:.OuJbQn. NGネーム登録 NGID登録 m 報告
支援
 ▼ 585 ュプトル@とつげきチョッキ 18/04/17 07:16:46 ID:PE5coAdM NGネーム登録 NGID登録 報告
私援
 ▼ 586 ピナス@よごれたハンカチ 18/04/17 11:45:53 ID:NNo3PvFQ NGネーム登録 NGID登録 m 報告
スカマスさんか!いいね
 ▼ 587 カーフマスキッパ◆aSS341n256 18/04/17 15:49:28 ID:NI4EpcIQ [1/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
『Come to pick me up』(ディアルガ×エムリット)

「エムリット!一体何があったんだ!」

「シンジ湖のあたりから、不穏な空間の乱れを察知しましたが・・・」

「ええ・・・何かある・・・ようなのだけど、まだ分からないの」

シンオウ地方の各所にある湖を住処とする、ポケモンの中でもひときわ不思議な力を持つ3体。

そんな彼女たちだからこそ、時の神の来訪を、時空の歪みを察知することができたのかもしれない。

「表面上異変はないようだけど・・・」

「警戒を怠ってはいけません。並みならざる力が、どうやら働いている様子ですよ・・・」

少しホッとするアグノムにユクシーが声をかける。

エムリットも、ただ冷静に状況を分析していた。

池は静か、周りのポケモン達も何も感じる様子はない。

だが、アグノムとユクシーがここに集ったように、異変が起こっているのは確かだ。

そして、何よりも、

今、何かを訴える自分の感情。

原因も分からぬ胸騒ぎ。

「来る!!」

「!?」

エムリットが叫んだ次の瞬間、

「グワァァァァァ!!!」

はるか上空、何もない空間から突如大きなポケモンが現れ、そのまま地面に降ってくる。

「くっ、はぁぁぁ!!!」

エムリットはサイコキネシスでそのポケモンを受け止めようとする。

「・・・ッッ!!」

「手伝います!」

エムリット一体の力ではどうやら上がらないのを見て、それに驚きながらもアグノムとユクシーも加勢する。

3体がかりの力でなんとか落下を食い止め、ゆっくりその巨躯を地面に下ろすと、

「・・・嘘でしょ・・・このポケモンは」

「ええ、間違いありません」

「・・・ディアルガ・・・」

その姿はシンオウ時空伝説に語られる「時間の神」、ディアルガそのものであった。
 ▼ 588 カーフマスキッパ◆aSS341n256 18/04/17 16:08:45 ID:NI4EpcIQ [2/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「はぁ・・・はぁ・・・助かった」

「助かったじゃないわよ、随分傷ついてるみたいじゃない」

息絶え絶えになりながらも礼を言うディアルガを叱責して、エムリットは、

「・・・はぁぁぁぁあああ!!!」

「ちょ、エムリット!!」

「あなたはまた急にそんな無茶を!!」

「・・・はぁ・・・はぁ・・・」

癒しの願いをディアルガにかける。

自らは体力を使い果たしディアルガの隣に倒れるが、ディアルガはそのおかげもあって力を回復したようだ。

「これは・・・」

「エムリットの癒しの願い、自身の体力と引き換えに対象者の傷をほぼ完全に癒す技です・・・エムリットは、数時間休めばまた元気を取り戻しますよ」

「そうか、よかった」

「エムリットがわざわざ身体を張って治したんだ、どうしてこんなところに降ってきたのか訳を聞いてもいいよね?」

「ああ」

死んだように倒れ伏すエムリットを少し心配しながらも、ディアルガはアグノムに言われた通りここへ来た経緯を話すのだった。


「私は過去、未来の時間の流れを見ることができる。移動することもできるが、複数の時間軸への干渉は神の力をもってしても危険でよほどのことがなければそんなことはしないんだ」

「でも、突然何もないとっから降ってきたってことは、その力を使ったってことだよね?」

「遥か、遥か未来の世界で、タイムマシンが完成した」

「タイムマシンですか!?」

誰もが一度は夢に見たことがある、時間旅行。

それを可能とさせるタイムマシンは、今の科学力では到底作られるとは思えない代物で、ユクシーとアグノムは目を丸くする。

「ああ、決して自然の流れではない、異界の者の介入があってタイムマシンの作成がなされてしまった。それを用いて、開発した人間は悪事を働こうとしたので私はそれを止めるために時を超えたんだ」

「なるほど・・・」

「・・・その目論見をつぶすことは成功した。だが、タイムマシンを既に使った人間と、時の狭間で衝突し戦闘になったため道中で力尽きてしまってな」

「それであんなことに・・・」

「・・・私には、私のあるべき時間軸がある。早く戻らねば・・・ッ!!」

「ディ、ディアルガさん!?」

目的を果たしたため、また時を戻って自らの世界へ戻ろうとするディアルガだったが、その力を使おうとすると体に痛みが走り、うまく制御することができない。

サイコキネシスの時もそうであったが、自分達一匹では神と呼ばれる存在に対し十全な力を発揮することができないのだとアグノムとユクシーは思い知った。
 ▼ 589 カーフマスキッパ◆aSS341n256 18/04/17 16:22:40 ID:NI4EpcIQ [3/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「・・・う、うぅ・・・」

「目が覚めた?」

エムリットが目を覚ますと、その傍にはユクシーとアグノム、それに、

「・・・ディアルガ。よかった、治ったのね」

「ああ、ありがとう。お前のおかげだ」

ディアルガの姿があって。

「少し、心配してたのよね、あなたみたいなポケモンにも、ちゃんと力が通用するのか」

ふぅ、と息をつくエムリットに、

「その件なんだけど・・・どうも、完全ではないらしくてね。時渡りができなくなってしまったそうなんだ」

「えっ・・・」

アグノムはディアルガの現在の状態を簡潔にエムリットに伝えた。

「私たちもいつまでもこうしてここにいるわけにはいきません。彼のことは、とりあえずあなたに任せてもよいでしょうか?」

「分かったわ、責任もって――」

「でももう癒しの願いはなしだよ。体に負担が行くんだから」

「・・・はいはい、分かってますよ!」

「本当だろうね・・・」

「迷惑かけるな・・・よろしく頼む」

こうして、ディアルガは少しの間シンジ湖に滞在することとなった。


「それにしても災難だったわね・・・言ってしまえば自分の家に帰れない、みたいなことでしょ?」

「ま、まあ・・・そうなるのか?」

随分とざっくりした要約ではあるが、まあ当たらずしも遠からずかと、ディアルガはエムリットに同意する。

いつまでゆうたりと、ここにお世話になっている訳にはいかない。

「うーん・・・まあ、焦っても仕方ないものは仕方ないのだろうし、ひとまずゆっくり、楽しくやっていきましょ?」

「・・・分かった」

「いやぁ、珍しいお客さんだから、なんか嬉しいなぁ。って、そんなこと言ってる場合じゃないんだろうけどさ」

エムリットは随分明るくて、ディアルガにも親しみを持って接した。

そんなエムリットに釣られて、ディアルガも徐々にエムリットに心を開いていった。

「いいところでしょ?ここ」

「ああ、綺麗な場所だ」

静かなシンジ湖で二匹は、時を超えた友情をはぐくんでいったのだ。
 ▼ 590 カーフマスキッパ◆aSS341n256 18/04/17 16:34:18 ID:NI4EpcIQ [4/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「・・・・・・いつまでも、こうしているわけにはいかない」

数日間のシンジ湖での療養生活で、ディアルガは力を取り戻しつつあった。

その力が治った時こそが、エムリットとの別れを示すものであって、それが少し名残惜しいなんて思えたが、一神様がそれでは困る。

「感情の神、エムリットか・・・」

自身が生まれた時に、時間を生み出したように、エムリットが生まれたことで感情が生まれたのだと言われる。

エムリットもまた、生きる物の感情を自在に操れる神であった。

「・・・いっそのこと、惜しいと思う気持ちを消してもらえばいいだろうか」

何の後腐れなく帰れるなら、それはそれでいいことだ。

でもきっとエムリットはそんなこと嫌がるのだろうな。

「・・・はぁ」

ディアルガは悩みながらもどうにもならないので、大方戻ってきて力を使って『未来』を覗いた。

無数に流れる未来のビジョンを流し見するかのように、

人智を超えた力を持つ神に許される、あまりに贅沢な暇つぶし。

だがそこに、ひとつ不穏なものを見つけて。

安らかに眠るエムリット、それを抱きしめ涙を流すアグノム、無念そうな面持ちのユクシー。

「なんだ、これは・・・」

ディアルガはそのビジョンに耳を傾ける。

『だから、あれほどその技は使うなって言ったんだ!!』

『アグノム・・・落ち着いてください・・・』

『どうして、どうして僕のために・・・』


「癒しの願いの技を、忘れることはできないか」

「なに?急に」

そのビジョンで見た彼女の死因が、「癒しの願い」であることは濃厚だった。

使うたびに自らを瀕死に追いやり、まるでその命を誰かに分け与えるように他者を回復する。

一度使うたびに体への負担も大きいとアグノムも言っていた。

「・・・エムリットが、その技で力を使い果たして、死ぬ未来を見たよ」

「・・・・・」

ディアルガは正直にその旨を告げた。

「心配には及ばないよ」

ヘラっと笑って、エムリットはまるで他人事のよう。
 ▼ 591 カーフマスキッパ◆aSS341n256 18/04/17 16:49:56 ID:NI4EpcIQ [5/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「エムリット・・・」

「私、この技好きなんだもん。誰かに自分の力を分け与えて、その人の中で自分が生きる。きっと、それで死んじゃっても、本望だよ」

なんのてらいもなくそう言ってのけるエムリットに、ディアルガは少しもどかしい思いを抱える。

「それにん、その未来って結構近いんじゃない?」

「!!」

「やっぱり、サイコキネシスも、癒しの願いも、ディアルガには効力がバッチシってわけじゃなかったからさ」

そこまでは言えなくて、伏せてあったエムリットの死の未来。

それさえも、エムリットは近いものだと確信していて。

「そりゃディアルガは凄いんだろうけど、私も仮にも神だし、こっち側の問題もあるよなぁって、思ってたよ?」

「どうしてそんな風に明るく振るまえるんだ。死ぬのが怖くないのか?」

「なんでだろ、わかんないや・・・さっきも言ったけど、『私』は色んなみんなの中で生き続けられるから」

ディアルガには、そんな彼女の感情は全く理解できなくて、

神だろうとなんだろうと等しく訪れる自らの「死」という事象。

自分が恐れる物など、逆にそれくらいしかないのだ。

「ディアルガに私をあげられたのはラッキーだよね!時を超えるなんて、なんだか凄いもの!」

「・・・エムリット」

「なに?」

「あまりよくないと、思うぞ。お前を失うのを恐れる者がいることを忘れるな」

「あれ、怒られちゃった」

ああ、自分が帰っても帰らなくても、エムリットに会えなくなるのは近い話なのだな。

そう思うと、ディアルガはエムリットのことで悩むのが少し馬鹿らしくなってしまった。


「帰るんだね」

「ああ、世話になったな」

「いいよ、そんなの。私も楽しかったし」

「一つ、いいか」

「なに?」

いざ、力を万全に回復して、ディアルガは結局エムリットに一つの頼みごとをすることを決めた。

「お前といて、楽しかったという感情を、消してくれはしないか」

「どうして?」

驚くでも悲しむでもなく、純粋に興味があるといった様子でエムリットはそう聞いてくる。
 ▼ 592 カーフマスキッパ◆aSS341n256 18/04/17 17:00:37 ID:NI4EpcIQ [6/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「どうしてって・・・寂しいからだが」

「あはは、なによ、もう、可愛いなあ。嫌だよ、私はディアルガに覚えててほしいもん」

「別にお前のことを記憶ごと失うわけではないだろう?」

「楽しかったって、思ってくれたことも覚えといてほしいの」

やはりエムリットは自らの願いを聞き入れてくれない。

仕方ないと、ため息をついてディアルガは力を開放しようとする。

「あなたの戻るところにも、きっと『エムリット』はいるでしょ?」

「・・・それが、どうした?」

いざ発とうと言う時に、エムリットが口を開いた。

「迎えに行ってあげてよ」

「なんで」

「きっと、会いたいと思ってるよ」

「なんだ、それ」

今のエムリットと過去のエムリットは、まったくもって別物だ。

その逆ならいざ知らず、過去のエムリットが自分のことを知っている訳も、特別な感情を抱くわけもない。

「分かるよ、私のことだもん。今の私がそう思ってるんだから、きっと過去の私もディアルガのこと好きになるよ」

「・・・・・分かったよ」

結局は、彼女の願いだけを聞き入れてしまうことになる。

さらりと伝えられた気持ちと、そのくせ隠しきれない顔の赤みが、ディアルガにそれを断らせてはくれなかったのだ。

「じゃあ、元気で」

「あなたもね!」

時が二人を分かって、自分の中に彼女がいるなんて、とてもそんな風には思えなくて、

それでも、自ら言っておきながら、彼女が自分の頼みを断ってくれてよかったと、時を戻りながらディアルガは思っていた。


「・・・誰?あなた」

「・・・ディアルガ、時の神だ」

「へえ、また大層な神様がいらっしゃったものね。何しに来たの?」

「お前に会いに来たんだよ、エムリット」


『Come to pick me up』・・・おしまい
 ▼ 593 スボー@あまいミツ 18/04/17 19:23:22 ID:0glklt6k NGネーム登録 NGID登録 m 報告
意外な組み合わせが多い
支援
 ▼ 594 ルリア@こぶしのプレート 18/04/17 22:44:53 ID:I1S7o/Qc NGネーム登録 NGID登録 m 報告
支援
 ▼ 595 ードル@ライブスーツ 18/04/18 08:11:24 ID:IJNBTJIk NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 596 ヤッキー@ウオーターメモリ 18/04/18 08:13:26 ID:9V1J2UPc [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
精神異常者達のスレッド
 ▼ 597 ュワワー@エレキシード 18/04/18 08:19:15 ID:9V1J2UPc [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
>>591
スカーフマスキッパって誰?
 ▼ 598 ガラティアス@あおぞらプレート 18/04/18 10:32:20 ID:fBNzc2aU NGネーム登録 NGID登録 m 報告
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 ▼ 599 ギアル@リュガのみ 18/04/18 14:49:04 ID:Ukmc/jNs NGネーム登録 NGID登録 m 報告
>>596
いきなりどうした?
 ▼ 600 モルー@ねばねばこやし 18/04/18 19:15:01 ID:p2uBHS/U NGネーム登録 NGID登録 m 報告
>>597
ここのスレ主ですよ
 ▼ 601 スブレロ@ねばりのかぎづめ 18/04/18 19:16:55 ID:9V1J2UPc [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
少し読んだけど主女やんな
 ▼ 602 ンゲラー@フライングメモリ 18/04/18 19:42:04 ID:jCg8mvh6 NGネーム登録 NGID登録 m 報告
>>601
別のスレ立ててまで批判するのはやめとけよ
 ▼ 603 ントラー@にじいろのはな 18/04/19 02:44:33 ID:dooSR6XQ NGネーム登録 NGID登録 m 報告
支援
 ▼ 604 オップ@しんぴのしずく 18/04/19 12:42:05 ID:3RN3.Mlk NGネーム登録 NGID登録 m 報告
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 ▼ 605 キノオー@デボンスコープ 18/04/19 23:42:38 ID:O6ZWZv/M NGネーム登録 NGID登録 m 報告
支援
 ▼ 606 カーフマスキッパ◆aSS341n256 18/04/20 14:55:09 ID:tjvxDC8o [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
『貴方に照らされて』(ライボルト♂×ブラッキー♀)

「夜は嫌いなんだ」

隣を歩くあなたが、不意にそんなことを呟いたのは、

一日を共に過ごした日没後の帰り道。

「なに、それ、夜が形を成したみたいな私に対するあてつけ?」

「そんな風には言っていないだろ」

私も少しからかうように、あなたにそう返してみる。

「この体が目立ちすぎるからってだけだ」

「そうね、電気タイプのあなたのその体は、この闇には眩しすぎるわ」

シャイなあなたにはあまり似つかわしくない、自己主張の強い発色は、

道行く人々の視線を私たちに集めるためのようなもので、

少し距離が離れているのもきっとそのせいね。

「夜が嫌いというか、この体が嫌いというか。進化しなければもう少しマシだったんだけどな」

緑色の、目に優しいなんて言われる体色は、それでも時々バチバチ光ってこの景色には似合わない。

「まあ、あなたのおかげで私の姿が映えるから、私はその体が好きよ?」

「なんだそれ」

闇に紛れて照らされる私の姿は、誰もが振り向いてしまうほどに美しい、なんて自惚れてしまうほど、

あなたに光らされて綺麗になる。

「他の男の目を集めたいと、言ってるように聞こえるぞ」

「あなただって誇らしいでしょう?」

「お前は俺のステータスじゃない」

「ふふ、そのとおりね」

他の男の目が気に入らないのなら、もう少し寄ればいいのに。

こいつは俺の所有物だって態度で示せば、もう少しはマシになるかもしれないわ。

「ねえ、ライボルト」

「・・・なんだ」

仕方なく私の方から寄ってあげると、赤くなった顔がよく見える。

本当に初心なんだから。

「なんでもないわ」

私にとっては、夜も、その体も、あの日を思い出せる大切な一部なのだけどね。
 ▼ 607 カーフマスキッパ◆aSS341n256 18/04/20 15:36:34 ID:tjvxDC8o [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
自分でいうのもなんだけど、昔から人並み以上にモテた方だと思ってるの。

どこの馬の骨かもわからない♂に言い寄られたことだって一度や二度ではないし、

誰だって男はみんな優しくしてくれるから調子に乗ってるところもあった。

だから、ある日痛い目を見た。

「待ちやがれこのクソアマ!!」

「くっ、しつこい男は嫌われるわよ!?」

「うるせぇ!!」

その日も、プライドが高い男をうっかりいつもの調子でからかっちゃって、

本気になって追いかけてくるその男をまくのに随分苦労した。

昼に私でもまくことができたくらいだから、決して足が速かったわけではないのよね。

でも、

「くらえ!」

「キャッ!?」

少し攻撃を受けちゃって。

なんとか物陰に隠れて逃げ切ったころには私も動けないくらいへとへと。

陽が落ちてくれたおかげで、きっと逃げ切れたのだけど、

こうなると私の体は闇に埋もれて目立たない。

体を光らせる体力も残ってないから、

このまま死んじゃうのかなって少しは思ったりするほどに心も体も弱ってた。

そんな時に、

「おい、大丈夫か?」

「え・・・?」

あなたは私を見つけてくれた。


「そうか、それは災難だったな・・・」

「うん、助かったわ。ほんとありがとう」

自分に都合のいいことだけを言って、彼に慰めてもらって、

流石にこたえて一人でいるのが怖かった私は、

「ねえ、今日一日だけでいいの。一緒にいてくれない?」

「・・・仕方ないな」

彼の厚意に甘えた。
 ▼ 608 カーフマスキッパ◆aSS341n256 18/04/20 16:03:43 ID:tjvxDC8o [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「あなたがもし、そんな明るい色をしていなかったら、私はあの時死んでいたのかしら?」

「まさか、そんなやわなたちじゃないだろう」

あの時のあなたは、きっと当然のことをするように私を助けたのだろうけど、

私にはその時の紳士的なあなたの態度が新鮮に映って、あまりにも単純に恋に落ちたのよね。

「いつのことだったか、覚えてる?」

「忘れたよ」

「そうね、忘れるくらい、もうずっと一緒にいた気分」

「・・・相変わらず口がうまいな」

「フフッ」

必死になってアタックを仕掛けて、それであなたに気づかせて、

『なぁ・・・付き、あうか?俺たち』

その言葉を引き出すのには、かなり骨が折れた。

「ねえ、ライボルト」

「なんだ」

「好きよ。あなたのその体」

「気が合わないな」

照れ臭そうに顔を背けるライボルト。

私みたいな夜を愛する住人には、あまりにも眩しいものだけど。

「その体があるから、私がどこにいたってあなたは私を見つけてくれるでしょ?」

「・・・頼むから、俺の手の届くところに居てくれよ」

「勿論よ」

あなたの隣がこんなにも心地いいと思うのは、

その光が、とても、とても温かいから。

「それに、あなたと歩く夜も私は好きなの」

「どうしてだ?」

「あなたを、私を羨む視線に晒されて、私は幸せ者だって思いに浸れるからよ」

「・・・俺も、幸せだ」

「そう言ってくれて嬉しいわ」

私に触れるあなたの心が、何よりも温かいから。


『貴方に照らされて』・・・おしまい
 ▼ 609 クオング@みずのジュエル 18/04/20 16:55:49 ID:zTJ8XluE NGネーム登録 NGID登録 報告
ライボルト♂×ブラッキー♀
本当にありがとうございます

いつも楽しみにしています

支援 と リク

ニンフィア♂×名前欄♀
 ▼ 610 ロバンコ@メトロノーム 18/04/22 00:27:23 ID:dWmbg486 NGネーム登録 NGID登録 m 報告
支援!
 ▼ 611 カーフマスキッパ◆aSS341n256 18/04/25 20:59:00 ID:nnmal.0I [1/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
『帰り道』(ガブリアス♂×フライゴン♀)

「あっ・・・」

「ガブリアス、奇遇ね。今帰り?」

「お、おう」

なんでもない日の帰り道、偶然フライゴンと会った。

同じスクールだし、家も近い。

別に何も不思議はない。

「・・・何?その顔。まるで会いたくなかったみたいな」

「別に、んなこと思ってねーよ」

たく、昔から変なところで鋭いな、

隠し事も何もできないようで、嫌になる。

こいつとの付き合いはもう長く、俗に言う幼馴染という奴で。

こうやって隣を歩いて帰ることも、昔は日常茶飯だった。

最近は、会話を交わすことも少ない。

お互いに大きくなって、兄弟同然に遊んだ過去の記憶が、かえって俺たちを気まずくさせる。

歩く距離も、昔はもっと近かった。

どちらとはなしに、一定の距離感を取って、

同じ空間にいるというのにかわす言葉も少なく。


それにしたって、タイミングが悪いと思うのだ。

「隣のクラスのフライゴンってさ」

今日の昼休み。

「お前の幼馴染だったよな?」

「それがどうしたんだよ」

「羨ましいなぁ、あんな綺麗な子が幼馴染だなんて」

クラスメイトのボーマンダがそんなことを俺に言うから。

変に意識してしまうのか、まともに顔を見ることもできない。

綺麗だとか、可愛いだとか言われて男子から人気なことぐらい、元々知っていたつもりだったけど。

ナックラーの頃から知っている身としては、そういうのにも全く馴染めない。

やんちゃで、泣き虫で、弱っちかったころの面影なんて、

今の凛としたこいつからは全く感じられない。
 ▼ 612 カーフマスキッパ◆aSS341n256 18/04/25 21:14:23 ID:nnmal.0I [2/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
「一緒に遊んだりしねーのか?」

「するかよ、ガキじゃあるまいし」

最後にスクールの外で一緒に遊んだのなんて、それこそ今のスクールに入る前だ。

「付き合ったりとかしなかったのかよ?同じドラゴンでお似合いだろ?」

「うるせぇな」

そんなこと考えたこともねぇよ。

別に俺は綺麗だとも思わねぇし。

「じゃあさ、じゃあさ!俺のこと紹介してくれよ!前からいいなぁって思ってたんだよな!!」

「それが本題かよ、断る」

「なんでだよ!別にいいだろ?」

「俺自身今は別に仲良くねえんだよ」

それに、ボーマンダがあいつと付き合うとか冗談じゃねえ。

・・・あれ、なんで今、あいつに彼氏ができるのが嫌だって思ったんだ?


そうやって、心の中に浮かび上がった疑問の答えなんて、考えずとも明白じゃないか。

きっと、いつかから綺麗になっていくあいつのことを、そういう目で見たことがないなんて嘘で、

多分関係を変えたくなくて逆にあいつをさけて、結果自分が望まない方向に関係が変わったこちにが違いがなくて。

「・・・じゃね」

「ああ・・・」

結局、一度も目を合わせないままあいつの家の前について。

こうして、過去を思い出されるこの道でこうして他人のような二人でいると、

嫌って程、自分が物足りない現状というものに気づかされる。

彼女が家に帰って行って、俺もそこから1分と経たず家に着いて。

小さい頃はよかったな、なんて思う。

同じタイプで、なんだかんだ気が合って、

家もすぐ側だから家族がらみの付き合いもあった。

砂漠に行ってかくれんぼしたり、

進化したての時は一緒に空を飛んだり、

手料理をふるまってくれたこともあったっけ。

「・・・くそっ」

どうして、こんな風になっちまうかな。
 ▼ 613 カーフマスキッパ◆aSS341n256 18/04/25 21:28:56 ID:nnmal.0I [3/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
「・・・・・・」

「・・・偶然、ね」

「ああ・・・」

次の日も、帰り道にフライゴンと出会って。

クラスも違うのに、今までは一緒になることなんてなかったのに、

偶然にしたって妙なことがあるものだな。

「・・・ねぇ、ガブリアス」

「・・・なんだ?」

「昔は、こうしてよく一緒に帰ったなぁって」

俺もずっと考えていたことだ。

「そうだな」

あの頃みたいに戻れたらいいのに、なんて言えたら楽なんだけど。

「懐かしいよね、お互い大きくなって」

「大きくなったっていうか、姿形が変わってるしな」

「そうね、あの頃よりもカッコよくなったわ」

「お前だって、綺麗だとか、言われてるそうじゃねぇか」

今日は、昨日と比べてよく話しかけてくるフライゴンに、俺は少し戸惑う。

カッコよくなったってなんだよ、そんなこと意味もなく言ってくれるな。

「ふふ、あのね・・・ガブリアス」

少し、顔が赤く見えるのは気のせいか。

フライゴンがうつむきながら俺を呼ぶ。

「・・・おう」

「偶然だなんて言ったけど、今日はあなたを待っていたの」

「え・・・?」

「ほら、昨日、たまたま一緒だったでしょ?」

昨日はたまたまで、今日は俺を待っていて・・・

「折角一緒になったのに、あんまり話ができなかったから、今度はちゃんと喋れたらいいなと思って、待ち伏せしてたの。ごめんね?」

「あ、謝ることはねぇよ」

「じゃあガブリアスも、おしゃべりしたかったってことでいいの?」

悪戯っぽく、そう笑うフライゴンは、久しぶりに昔の彼女と重なって。
 ▼ 614 カーフマスキッパ◆aSS341n256 18/04/25 21:45:57 ID:nnmal.0I [4/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
「・・・まあ、な」

「なんだ、そうだったの!」

「な、なんだよ急に」

俺がその声に同意すると、急に中途半端な距離を詰める彼女。

「なんかさ、いつからかそっけなかったから、嫌われたのかなぁとか思ってたんだよね」

「なんだそれ、俺が悪いのか?」

「悪いでしょ!挨拶無視したりしたよね!?」

「わ、悪かったよ・・・聞こえてなかったんじゃねぇの?」

「そんなことなかったもん!!」

そして、口数も増えて昔みたいな砕けた口調になって、

ああ、彼女も俺と同じように、あの頃みたいに戻りたかったのかと悟る。

「久しぶりにまた砂漠とか行ってみない?今行くとまた違った楽しみがあるかも!」

「いやだよ、お前、砂隠れでもう見つからないからって俺のことほおって行ったことあったろ!!」

「あったね!かくれんぼとか!!流石に今の図体だと隠れられないでしょ」

「あったねじゃねぇよ、マジで怖かったんだかんな」

「そんな昔のことネチネチと言わないの、男でしょ?」

思い出話に花が咲く。

フライゴンが一歩を踏み出してくれて、俺も少し心を開いて、

それだけでいとも簡単に、まるであの頃のよう。

「ああ、もう家ね。また明日も一緒に帰りましょう?そうだ寄り道とかしたりさ!!」

「寄り道って、ガキじゃねーんだからさ・・・」

「いいでしょ?お願い!!」

「・・・しゃーねぇな」


こうして、俺とフライゴンの関係が再び始まった。

止まってた時が動き出したようで、心底嬉しかった。

「なあ聞いたかガブリアス!」

でも、なにも全く変わらず、とはいかないようで。

「隣のクラスの男子がフライゴンに告白したらしいぜ!」

「は・・・?」

俺自身も、変わってしまったことを自分自身でよくわかっていて。
 ▼ 615 カーフマスキッパ◆aSS341n256 18/04/25 22:07:49 ID:nnmal.0I [5/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
「それでね、ヌメルゴンったら・・・」

綺麗だと評判のフライゴンのことだ。

告白なんて別に、一度もなかったようなことではないのだろう。

「告白した」という事実のみが広がったということは、恐らく付き合ったというわけではないのだろうな。

それでも、嫌な気分になってしまうのは、言うまでもなく。

「・・・どうしたの?なんか不機嫌じゃない?」

「ああ」

「ああって・・・」

こうして一緒に帰るようになったのは、フライゴンがきっかけをくれたから。

一歩を踏み出したのは、フライゴンだったな。

この思いを告げることは、戻りたかったフライゴンの思いを踏みにじるものかもしれない。

でも、

「私、何かした?」

「寄り道、していこうぜ。ほら、昔よく遊んだ公園で」

俺も、俺のための一歩を踏み出したい。


「懐かしいね、ほら、砂場で、あの子たちみたいに遊んだよね」

「ああ・・・あのさ」

「うん・・・」

急かしはせずに、何気ない会話を振ってきたフライゴンに、俺はあまり待たせるのもと思い、本題を切り出す。

彼女の反応を見て、俺が言わんとしていることがなんなのか、分かっているのだろうなと感じる。

「俺が、お前のことを避けたりしたのは、お前のことが異性として気になり始めてたからだ。嫌いになったわけじゃない」

「うん」

「今日不機嫌だったのも、お前が告白されたって聞いて、少し嫌な気分になったからだ」

「ま、まいっちゃうな・・・そんな風に噂になっちゃうんだもんね」

「・・・まあ、分かると思うけど・・・」

「うん・・・」

ここまでで、すでにもう言ってしまっているようなものなのに、

それでも肝心の一言を言うのはとても勇気が要ることなのだなと思い知る。

「あの、さ・・・」

「なぁに?」
 ▼ 616 カーフマスキッパ◆aSS341n256 18/04/25 22:35:03 ID:nnmal.0I [6/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
「俺は、あなたのことが好きです。恋人になってください」

「・・・うん、実はね、私も・・・そう言ってもらえるの、期待してた」

「じゃ、じゃあ・・・」

「うん、よろしくね!!」

ああ、これも、同じ気持ちだったのか。

言ってしまえば楽なもんだな、なんてこればっかりはうまくいったから言えるのだけど。


「なんか、お前最近明るいよな」

「そうか?」

「自覚なしかよ、なんか花が飛んでるというか、なんというか」

自覚ならある、あれ以来毎日楽しくて仕方がない。

時が、止まってた分すら取り戻すかのように、胸の鼓動が高鳴る毎日なのだ。

「そういえばよぉ、フライゴンに彼氏ができたって話聞いたか?」

「あ?ああ、らしいな」

「お前、なんだかんだ言って好きだったろ。大丈夫か?」

「別に、大丈夫だぜ?」

そんなことまで、すぐに噂になって流れてしまうのか。

別に嫌だというわけではないけど、確かにこれは、

「ちょっと参るな」

「ん?何がだ?」

「あ、いや、なんでもない。じゃ、俺帰るわ」

「お、おう」

彼女からの連絡が来て、校門の側で待ち合わせて、

「待たせたか?」

「うん、待った!」

「悪かったよ」

「冗談だよ、冗談」

今までとは違う、恋人として通る帰り道も、案外劇的に変わるものではなくて、

でも、今までと同じで、それでも今までと違う、そんな空気感が、今の俺にはとても幸せだ。


 ▼ 617 カーフマスキッパ◆aSS341n256 18/04/25 22:35:52 ID:nnmal.0I [7/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
『帰り道』・・・おしまい

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