▼  |  全表示851   | << 前100 | 次100 >> |  履歴   |   スレを履歴ページに追加  | 個人設定 |   ▼   
                  スレ一覧                  
SS

ルカリオ「……今までありがとう」ミミロップ「こちらこそ」

 ▼ 1 リムガン@きいろのバンダナ 18/06/01 22:04:59 ID:2k1QlQLE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
蒼黒く澄み渡った夜空に浮かぶ月が煌々と光を放ち、辺り一面を青い光の底に沈ませていた。

そこに佇む二匹のポケモン。

淡く優しい光に照らされて木々が眠りへと誘われる中、彼らはお互いが向ける強い視線をそれぞれ真摯に受け止め、気を張り詰めさせている。

風も、森も、空も、彼らの事を認め察しているのだろうか、物音一つ立てる事無く静かにそこで二匹の事を見守っているようだ。

普段は周辺で日々を過ごしているであろう者達の姿は見当たらない。また、新たにこの場へ立ち入って静謐を乱そうとする者も現れない。

森閑と静まり返ったこの舞台で、ただ彼らだけが存在を赦されていた。

ルカリオ「……悪く、思わないでね」

ミミロップ「うん」

やがて彼は凛とした声を以って、四隣の寂寞を破った。そして目を閉じ僅かに腰を落としつつ、その身に纏わせている空気を更に色濃くしていく。

再び訪れる無音。しかしその次の瞬間には、彼の踏み鳴らした跫音が、周囲の木々に木霊して大気に満ちる。

強い、とても強い、足音だった。
 ▼ 712 ビヨン@ゲンガナイト 18/11/09 23:26:42 ID:G70Ax0k. [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



アブソル「嘘でしょ……」

生きようと懸命に歩く二匹。しかし、そんな彼女達に天は笑いかけてなどくれない。

ミミロップ「ど、どうしたの……?」

アブソル「道が、無いの……」

ミミロップ「え……」

アブソルが足を止めたことで、ミミロップは彼女に追いついた。そして自分がしっかり地に足をつけている事を確認し、ゆっくりと前を向く。

ミミロップ「そ、そんな!」

そして、アブソルが足を止めた理由を彼女は理解した。

この雨のせいかいつからかそうなっているのか、彼女達のすぐ前に本来あるはずの道は、崩れ落ちてしまったようで存在していなかった。

ただ、全て崩れ落ちたというわけではなく、ほんの1メートルほど道が途切れている状態。ここを跳び越える事ができたなら、また険しい道を歩き頂上を目指す事ができそうだ。

普段の彼女達なら、このくらい何という事も無しに跳び越える事ができるだろう。だが、彼女達のコンディション、この悪天候、そして何より焦燥感と恐怖、今の彼女達にこの状況はあまりに酷だ。

アブソル「……行くしか、ないわ」

ミミロップ「こ、こんなの無理よ……だって、私足こんなだし、地面滑るし、高いし……」

アブソル「考えちゃダメ。今の状況なんて考えずに、いつもやってるみたいに、跳ぶの」

ミミロップ「無理よぉ……」

涙をぼろぼろ零すミミロップ。こんな足場でなければ、座り込んでしまっていることだろう。

生きるために逃げ延びると決めたとはいえ、想定していなかった恐怖に震えを止める事ができない。
 ▼ 713 シギダネ@きぼんぐり 18/11/09 23:27:05 ID:G70Ax0k. [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップの中で、今更にして「なんで、どうして」と理不尽への不満が募り始めている。こうなれば悪循環でしかなく、時間が経てば経つほど彼女の跳ぶ勇気はなりを潜めていってしまう。

それを感じたのだろうか、アブソルは首だけで振り返り、ミミロップをじっと見つめた。

アブソル「……私が跳ぶから、見てて。向こうへ渡ったら、貴女が跳んだのを受け止める」

自分も同じ恐怖を感じているだろうに、アブソルはミミロップを勇気付けるため、身体の震えを武者震いに変えた。

足に傷を負っていないとはいえ、彼女は四足、ミミロップよりも大きく跳ぶ必要がある。また、跳ぶことはできても、彼女の傷口は前足の付け根、前足を大きく広げれば激しい痛みが彼女を襲うだろう。そうなればきちんと着地できないかもしれない。

それでも、跳ぶしかない。アブソルはミミロップよりも先に覚悟を決め、前を向いた。

ミミロップ「とぶの……?」

アブソル「跳ぶわ……大丈夫、私達なら、跳べる」

アブソルは足を曲げ、ゆっくりと身を屈めた。

静寂。

アブソルはその姿勢のまま、何も言わず一切動かない。

雨の降る音だけが、辺りを支配する。ミミロップは、ただ黙って彼女を見ていることしかできない。

そうして、どれだけの時間が経過しただろうか。実際には一分も経ってはいないだろうが、ミミロップにはその時間が何十分にも感じられた。

アブソル「…………!」

そこからは、一瞬の出来事だった。

アブソルは素早く身体を起こし、歯を食いしばり前足を広げ、後ろ足で地面を蹴った。

肩から吹き出た血が辺りに舞う。だが次の瞬間には、彼女は危惧していた着地も成功させ、向こう岸へと辿り着いていた。

アブソル「……ミミロップ、跳んで!」

傷が痛むだろうに、アブソルは器用に反対側を向く。そしてしっかりと、ミミロップを見据えた。
 ▼ 714 ポポタス@イワZ 18/11/09 23:27:28 ID:G70Ax0k. [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「わ、わたし……」

アブソル「大丈夫。貴女なら、跳べる」

そう言ってはくれるものの、なかなか身体中の震えがおさまってくれない。

確かにこの程度の距離であれば、普段の彼女なら簡単に飛び越える事ができるだろう。しかしこの状況、失敗したときの事を考えてしまい、跳ぶ勇気が出ない。

ミミロップ「っ!?」

ずるり、と岩肌についていた右手が滑り、空を切った。

危うくバランスを崩しそうになるところを必死にこらえ、何とか体勢を整える。

ミミロップ「ふーっ、ふーっ、ふーっ……」

死ぬかとも思えた事態に、呼吸が荒くなる。鼓動がうるさいくらい早鐘を打ち、頭の中が混乱し始めてしまう。

アブソル「大丈夫よ、さっきのことは忘れて、大丈夫だから」

ミミロップ「っ、う、っく、うう……」

それでも何とか前を向き、着地点を、アブソルを見た。

ミミロップ「跳べる、跳べる、跳べる……」

無理にでも呼吸を整えながら、右手を岩から離し、跳躍の体勢に入る。

片足に深手を負っているとはいえ、もう地に足をつけるくらいのことはできる。地を蹴る際に幾らかそちらの足にも力を入れる必要があるが、その時の痛みを耐え切れば問題なく向こう岸へ辿り着く事ができるはずだ。

ミミロップ「っ!!」

足に力を込める。

が、彼女はどこまで不運を呼び寄せるのだろうか、丁度その瞬間、空が強く光り雷鳴を轟かせた。

ミミロップ「っ、あ……」

雷に気をとられ、満足に地を蹴る事ができずぬかるみに滑ってしまう。

その結果……ミミロップは向こう岸まで跳ぶ事ができず、その身を空へ投げ出してしまった。
 ▼ 715 ウカザル@フィラのみ 18/11/10 00:03:22 ID:W7sIpQZ. [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
クソ支援
 ▼ 716 リーラ@アンノーンノート 18/11/10 00:10:28 ID:W7sIpQZ. [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ガチ支援
 ▼ 717 バメ@ちかのカギ 18/11/10 22:22:32 ID:dhzgTw92 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ちえん
 ▼ 718 ゲデマル@カゴのみ 18/11/11 00:07:04 ID:74yod4f. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ほんま支援
 ▼ 719 ガレックウザ@トウガのみ 18/11/12 01:28:46 ID:o8YwhaPo [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


世界が揺れる。目の前の景色が、アブソルの姿がゆっくりと上へスライドしていく。きゅっと胸が締め付けられ、次の瞬間には側頭部へ血が一気に上っていくのがわかる。

不思議なもので、一瞬の出来事にも関わらず、ミミロップは「あぁ、もう自分は死んでしまうんだ」とぼんやりと理解していた。

アブソル「っ!!」

ミミロップ「!!」

全てを諦めてしまいかけたその刹那、突然肩が強く痛んだ。

左腕が引っ張られる感覚、はっとして見上げればアブソルが身を乗り出し、前足でミミロップの腕を掴んでいた。

アブソル「よかっ、た、間に合った……」

ミミロップ「あ、アブソル!」

ミミロップの喫驚に、アブソルは笑みを浮かべて応えてみせた。

彼女は後ろ足に力を入れて踏ん張り、前足でミミロップを引っ張りあげようとしている。しかしその度に彼女の肩から大量の血が噴き出し、雨に混じってミミロップへ降り注ぐ。

血が噴き出すたび苦痛に歪むアブソルの表情は、見ているだけで痛々しい。

ミミロップ「ねえ、もう、いいよ……このままじゃ、アブソルまで落ちちゃう……」

アブソル「そうね……でも、私だけ助かるくらいなら、私も一緒に、落ちるわ……」

ミミロップ「でも……」

彼女の気持ちは痛いくらい伝わってくるが、今アブソルは後ろ足と腹部だけで足場にしがみついている状態、このままでは共に空を舞うのも時間の問題だろう。現に彼女の身体は少しずつ前方に滑ってきており、状況は悪くなる一方だ。

アブソル「っ、ぐ……なんとか、引き上げて……」

後ろ足に力を入れる。だが、身体は前にずり落ちていくばかりで思うように動いてはくれない。

ミミロップもなんとか助かろうと岩壁に手を伸ばしてみたり足を引っ掛けられないか試したみたりするものの、全てうまくいかない。

そればかりか、彼女が少し動くたびにアブソルの身体も合わせて揺れ、一層状況を悪化させてしまう。

ミミロップ「もう……いいよ、ほんとに……こんなの、こんなの……」

――――自分が落ちてしまえば、彼女は助かるだろうか。

ミミロップの脳裏をそんな言葉が過ぎる。

爪を彼女の前足につきたてれば、思わず離してしまうのではないか。そうしたら、彼女はもろとも死なずに済むのではないか……

ミミロップ「…………」

だらりと揺れる手で、拳を握る。爪の感触を確かめ、ゆっくりと指を開いていく。

そして……
 ▼ 720 トベトン@しろいハーブ 18/11/12 01:29:14 ID:o8YwhaPo [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アブソル「っ!!」

ミミロップ「あ……」

アブソルの前足に突き刺さる、ミミロップの爪。

瞬間、アブソルの前足にこもる力が緩んで……

再び、強く、強くミミロップの腕を掴んだ。

ミミロップ「……どう、して」

アブソル「雪、見せてくれるんでしょ? 私、これでもとても楽しみにしてるんだから」

ミミロップ「そんなこと……」

顔を上げ、はっとする。

自分の血と雨に濡れたアブソルは見ているだけでとても痛々しく弱々しいが、彼女の目だけは違う。

ミミロップは彼女のあまりに真っ直ぐな瞳に、顔を伏せる。だが、すぐに再び顔を上げ、大きく頷いて見せた。

それを見て、小さく笑うアブソル。再び目にしたミミロップの瞳にも、彼女と同じ強い光がこもっていた。

ミミロップ「言っとくけど……めっちゃくちゃ寒いから」

つき立てた傷を包むように、降ろした腕を持ち上げ、アブソルの前足に掴まる。

アブソル「鬼火くらい、使えるようにならないとかな?」

そのぬくもりを受け、ミミロップの腕を掴む前足に一層力がこもる。

少しずつ、少しずつ彼女達の身体が後方へ、足場の上へ寄っていく。

一歩一歩、バランスを崩さぬよう細心の注意を払いながら、その身を安置していく。

彼女達の強い意志に打ち抜かれたのだろうか、あれほど降りしきっていた雨がようやく止んできて、雲の切れ間から太陽が僅かに顔を出した。

アブソル「いくわよ……っ!!」

渾身の力で、ミミロップを救い上げる。

ミミロップの身体が、ついに足場の上へ姿を現した。
 ▼ 721 ィ@りゅうのキバ 18/11/12 01:29:34 ID:o8YwhaPo [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アブソル「はぁ、はぁ、はぁ……」

ミミロップ「はぁ、はぁ……ありがとう。ほんと、しぶといわね私達」

アブソル「そう、ね、ふふっ」

肩で息をしながら笑いあう二匹。

いつの間にか雨雲は風に流され薄れていき、表に出てきた太陽がそんな二匹をまばゆく照らす。その光は、生存の喜びを祝福しているようだった。

アブソル「……さ、行きましょうか。まだ、これからが本番よ」

ミミロップ「そうね」

立ち上がり、歩き始める。

どうしてだろうか、あれほど怖かった崖の細い道も、今ではすいすいと歩くことができそうだ。

それはアブソルも同じのようで、実際これまでよりもかなり速いペースで山頂への道を進んでいた。

ミミロップ「(足、もう平気そうね……)」

相変わらず、地に足をつければ激痛が走る。だが、これまでと比べれば随分と痛みは弱くなったうえ、もう引きずらずともなんとか歩く事ができる。

単に感覚が麻痺しただけかもしれない。そもそも、痛みが激しかっただけで骨まで砕けていたわけではないのかもしれない。

ただ、実際のところどうであろうと、今彼女はそれなりに歩く事ができている。生きるために、前へ進む事ができている。

ミミロップ「……やっぱり、最初はハクタイシティかな」

アブソル「うん?」

ミミロップ「ううん、なんでもない」

足を止めるアブソルを見て、小さく微笑みミミロップ。

その向こうに、今回の脱走劇で一番の鬼門だという山頂が、いよいよ見えてきた。
 ▼ 722 イケンキ@ぼうごパット 18/11/12 01:29:54 ID:o8YwhaPo [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



アブソルの話では、山頂まで登るとそこにはぽっかりと空き地が広がっているらしい。彼女達が歩いている道は岩山の陰になっていて反対側からは見えない状態だったが、道は一度山頂へ辿り着いてしまう。そこから少し歩けば、地上へと伸びる狭い足場を通る事ができる。

距離にして、おおよそ百メートル程度。この間広場の隅っこを、そこにいるかもしれない誰かに見つからないよう通り抜けなければならない。無論、見つかれば追い回され、捕まれば地獄である。

アブソル「今は何がいるかわからない……でも、通るのは本当に端っこだし、下山ルートに入るまでの短い間だから……」

ミミロップ「誰もいないといいけど……」

アブソル「まぁ……いると思うわ」

先ほどまではありがたかった晴れ空も、こうなってくると恨めしくさえ感じる。雨天であれば、その広場には誰も来ていなかったかもしれない。

ただ、その広場に集まるポケモンは、性行為を目的としているらしい。つまりは、そのような必要がなければわざわざに立ち寄るような場所ではないのかもしれない。

ミミロップ「……何か聞こえる」

もしかして誰もいないのでは……そんな淡い期待を、彼女の優れた聴覚が断ち切った。

アブソル「……嬌声?」

ミミロップ「きょうせいって、その、えっちな声、よね?……でも、そんな気がする」

ミミロップが耳にしたのは、甘く蕩けた♀の鳴き声。おそらく広場では誰かと誰かが性行為を愉しんでいるのだろう、広場を抜ける際に見つかってしまう可能性が出てきてしまった。

アブソル「とにかく、様子を見てみましょう」

ミミロップ「そうね……」

もう、二匹とも山頂直前まで来ている。すぐ目の前に見える広場の地面から覗き込めば、そこに誰がいるかわかる事だろう。

アブソル「私が見るわ。物音を立てないようにね」

ミミロップ「う、うん」

ゆっくりとアブソルは山頂へ近づき、岩陰から広場の様子を確認する。

アブソル「あれって……!」

そして、彼女はそこで、衝撃的な場面を目撃した。
 ▼ 723 イーガ@カクトウZ 18/11/12 18:24:22 ID:mO1szQzw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 724 チエナ@こうてつプレート 18/11/14 00:28:16 ID:f9pgfUQU [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
広場では今まさに、雌雄による淫楽が繰り広げられていた。

交錯する嬌声、響き渡る甘美の音色。まだ雨があがって間もないというのに、彼らの行為はずっと以前から行われていたと思わせる程蕩けきっているように感じられる。

アブソル「…………」

いやに情熱的な愛情表現に、アブソルは彼らを覗き込んだ姿勢のまま固まってしまった。

その様子を不審に思うミミロップ。彼女がアブソルの背中にぽんと手を乗せたことで、アブソルは我にかえり、そさくさと岩肌の裏に顔を引っ込めた。

ミミロップ「ねえ、誰かいたの? 通るの、無理そう?」

アブソル「えっと、たぶん、無理ではないけど……」

返ってきた言葉は意外にも好感触のもの。しかし、それを話すアブソルの表情はとても曇っている。

ミミロップ「……何を、見たの?」

アブソル「……性行為をする、♂と♀を見たわ」

元々山頂の広場はそういう目的で作られていると聞いた。同じ事を聞いて驚くミミロップではない、彼女は黙って続きを促した。

アブソル「その……一匹の♀に、複数の♂が群がってたの」

ミミロップ「それって……」

簡単に言えば、複数による陵辱、輪姦が行われているという事なのだろう。

かなりショッキングな話ではあるが、これもアブソルの口からおおよそを聞いた話だ。しかし、こうなってくると、どうしてアブソルがこんな顔をしているのか、想像がついてくるというもの。

ミミロップはその理由に気づいたようで、恐る恐る自分から話を進めてみることにした。

ミミロップ「……まさか、一匹の♀、って……エネコロロ?」

アブソルは、言葉も無くゆっくりと頷いた。
 ▼ 725 コン@たてのカセキ 18/11/14 00:28:49 ID:f9pgfUQU [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



エネコロロ「ふにゃああぁあぁあ……にゅふ、んくっ、ん、んむぅ、ぷあ、あっ、あっ、あっ、んきゅうう」

エネコロロの甘い声が周囲に木霊する。

昂揚した様子で♂ポケモンの肉棒を陰部でくわえ込むその姿は、誰がどう見ても淫猥としか表現できそうにない……彼女は、性行為を愉しんでいるように見える。

彼女を貪っているのは自らの欲望を押し込み何度も腰を振っている者だけに留まらず、彼女の顔や口元に性器を押し付けている者や、腹部にこすり付けている者、更には耳の穴に押し込もうとしている者までいる。

もう何度も射精されたのだろう、自慢の毛並みも精液が絡まり所々毛玉となっている。首元などはあまりに大量の精液を流し込まれたせいか元の毛の色がわからない程穢されていた。

だがそれでも彼女から漏れる吐息は甘美なものばかりで、悲痛な叫び声は一切聞こえてこない。

♂ポケモン「さあ、エネコロロちゃんおちんちんちゅっちゅしましょうね〜」

エネコロロ「っぶぅ、んちゅ、じゅぶ、じゅぶぶ、っく、んふっ、んふぉあ……」

嬌声が止んだと思われれば、次に聞こえてくるのは何かをしゃぶる音。水気を含んだ吐息が艶かしい。

エネコロロは♂ポケモンの巨大な逸物を銜えさせられ、だが嫌がる素振りも見せず舌を使って必死に舐め回していく。尖端を、裏筋を、唾液を馴染ませ感じるポイントを探っていく。

♂ポケモン「うっ、だ、射精すぞ!」

エネコロロ「んちゅ、んふぅっ、んぶぐっ」

そして訪れる射精。彼女の口内へ陰茎を押し込んでから、僅か数十秒のことだった。

早漏なのか彼女の舌使いが上手すぎるのか、♂ポケモンは我慢することもできず彼女の口の中に大量の精液を注ぎ込む。吐き出させないようにするためか彼は性器をより深い所まで押し込み、何度も何度も身体を震わせた。

巨大な逸物と吐き出された精液によって口内が埋め尽くされていく。エネコロロはもう溜め込めないとばかりに、静かに咽喉を動かし始めた。

だが、どれだけ飲み込んでも精液が無くなる事はない。容赦なく次々と放出される精子に、休む暇など与えてはもらえない。

♂ポケモン「こっちが留守になってるぞおらぁ!」

エネコロロ「んぐふっ」

急に激しく腰を打ち付けられ、思わず膣をきゅんと収縮させるエネコロロ。

それが気持ちよかったのか、彼女の下の口を犯していた彼はにやりと口角を吊り上げる。そして先ほどと同じように、陰茎を尖端ぎりぎりまで引き抜いて、そこから一気に奥まで押し込んだ。

脳天まで突き抜ける程の快感に、エネコロロは目を白黒させ、精子を飲む事も忘れ膣をきゅうきゅう締め付ける。次に密壷が緩んだときには、思うように力が入らず彼女の秘部からは薄黄色の液体がちょろちょろと漏れ始めた。
 ▼ 726 ゲチック@きよめのおこう 18/11/14 00:29:09 ID:f9pgfUQU [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



アブソル「っ……」

その場に崩れ落ちるアブソル。頭が痛むのか、彼女は眉間に皺を寄せ、短い呼吸を繰り返した。

ミミロップ「大丈夫……?」

アブソル「うん、ごめんなさい……ちょっと、色々、思い出しちゃって……」

ミミロップ「いろいろ、って……」

今度は、過呼吸を起こすのではないかというくらい大きく胸を上下させるアブソル。ただ、痛みは一過性のものだったのか、呼吸が整ってきた頃には落ち着きを取り戻していた。

アブソル「私も……あんな目に、何度も遭っていたの……」

ミミロップ「そんな……」

アブソル「記憶を奪われ森に放り込まれて……散々、犯されたの……」

言葉を失うミミロップ。こういう時、なんと声をかけていいものかわからない。

そんな彼女を見てか、アブソルは苦しみながらも笑みを浮かべてみせる。

アブソル「いいのよ、私はもう……慣れた、から」

ミミロップ「そんなこと……」

アブソル「それより……あの様子だと、エネコロロはもう、堕ちてるわね……」

ミミロップ「おちて……?」

アブソル「エネコロロ、元からああいう事が好きだったと思う?」

聞かれて、グラエナとの行為を思い出す。

だがあの行為は、グラエナとエネコロロの愛の営みだったように思う。それは彼との性交渉だからこそ成立するものであって、このように複数の♂に嬲られることと同義にはできまい。

となると、陵辱が続いたせいで嫌悪が快楽へと変わってしまったか、何か特別な理由があったのか。ミミロップが答えるより先に、アブソルは言葉の続きを話し始める。

アブソル「あれはたぶん、白い玉の影響よ……彼女達、口にしていたでしょう?」

ミミロップ「甘い匂いのしたやつ……?」

アブソル「そう……あれは、催淫剤なの。それも、かなり強力な……食べてしまえば、身体の疼きが止まらなくなるわ」

まだ記憶を取り戻していないうちから、食べない方がいいと言っていたアブソル。空腹にも関わらず食べられそうなものを拒否した彼女の、その判断は正しかったのだ。
 ▼ 727 クシー@ネコブのみ 18/11/14 00:29:39 ID:f9pgfUQU [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アブソル「あの玉を食べ続けたエネコロロは、性的快楽に脳を支配されていって……堕ちたの」

ミミロップ「…………」

何度か、ミミロップもあの玉を食べようと考えた。

餓死も見えていたあの時、甘い匂いに誘われ涎が垂れそうになった時……もしあの玉を口にしていたら、今広場で陵辱を受けていたのは自分だったかもしれない。そう思うと、背筋が凍るどころではない、得体の知れないレベルの恐怖が彼女を襲う。

この森に食料となりそうな植物が無いのも、自分達の他に生物が見当たらないのも、全ては空腹の状態を招かせるため。そして、森中にばら撒いた白い玉を、催淫剤を食べさせるため。

彼らは森に放り込まれたポケモンの様子を覗いて楽しむだけでなく、陵辱へつなげる道筋を立てて待ち構えていたのだ。

アブソル「ああなったら、残念だけど、もう彼女は戻ってこれない……何度も性欲の捌け口にされて、何度も孕まされて、そして最後には……」

ミミロップ「もういい、もういいよ……」

彼女の言葉を遮って首を横に振るミミロップ。その目尻からは涙が零れている。

陰惨な事実を耳にしたくないからというわけではない。そんな状態にアブソルが何度も陥っていたこと、それを全て思い出してしまってもなお自分に事実を話そうとしてくれていること、それを考えると胸が痛くなったからだ。これまでずっと痛み続けてきた彼女に、辛かった出来事を話させる事などできるはずもない。

アブソル「……正直に言うわ。エネコロロは、助けてあげたいけど、あの様子ではもう無理よ」

ミミロップ「……やっぱり、無理なのね」

アブソル「連れ出せば、きっと彼女は騒ぎ出す。そして、ここへ戻ろうとする。隠密行動が絶対の私達には……連れ出せないの」

胸が痛む。

ほんの僅かな時間だったとはいえ、彼女とは行動を共にしていた。見ず知らずの相手ならまだしも、少しでも関わった者であれば多少の情はわくというもの。

しかし、悲しいが、共倒れになっては困る。自分達としても、連れ出した者を守りきる自信などあるはずもない。胸が苦しくなるが、状況を考えれば仕方の無い話だ。
 ▼ 728 ユルド@ピーピーリカバー 18/11/14 00:30:01 ID:f9pgfUQU [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アブソル「そろそろ行くわよ……行為に夢中なら、気づかれずに行けると思うわ」

ミミロップ「うん……」

それでも何度も心の中でエネコロロに謝りつつ、ミミロップも前を向く。

この位置から広場の向こう側は見えない。状況を見回すには、一度広場に顔を出さなければならないため、ここから飛び出してしまえば咄嗟の判断が必要になってくる。

アブソルが言うには、この斜面を登りきれば広場の隅っこに出るらしい。そこを真っ直ぐ突っ切れば、下山する道に辿り着けるとのこと。

その間に性行為をしているポケモン達が何かの拍子でこちらを見ない事を祈りつつ、可及的静かに通り抜けなければならない。

アブソル「だいぶ離れてはいるけど、草木も無いし、こっちを向かれたらそれで終わり。こんな道だもの、慌てて降りれば足を滑らせる事は目に見えてるわ」

ミミロップ「大丈夫かな……」

アブソル「祈るしかないわね」

大分癒えてきたとはいえ、ミミロップもアブソルも手負いの状態。走ることはおろか、物音を立てずに移動することさえ難しいかもしれない。

アブソル「準備はいい? もう、行くわよ」

ミミロップ「うん……」

先頭はアブソルが歩いてくれるようだ。道を見失う事はなさそうだが、それでも見つかってしまった時の事を考えると落ち着いてはいられない。

アブソル「……今よ」

広場の様子を窺っていたアブソルは、小さな掛け声と共に広場の隅へと身体を乗り出した。それに続き、ミミロップも山を登りきる。

ミミロップ「あ……」

ふと広場の方を見れば、エネコロロが甘い声を漏らしながら複数の♂の欲望を全身で受け止めていた。

足を止めそうになり、慌てて首を振る。今は見つからないよう向こう側にたどり着くことだけを考えなくてはと、心を鬼にして、次の一歩を踏み出した。
 ▼ 729 ョンチー@ガルーラナイト 18/11/14 00:30:34 ID:f9pgfUQU [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
一歩、また一歩と歩みを重ねていく二匹。誰かそのうちこちらの方を向くのではないかと気が気ではない。

特に、♂が精を放った後などは注意が必要だ。性行為に夢中になっている時は周囲のことなど気にも留めないだろうが、一旦区切りついてしまえばその瞬間から切り替わるのが♂。

プロラクチンの働きにより♂にはいわゆる賢者タイムが訪れるわけだが、俗説によれば♂は性行為後すぐに周囲が警戒できるようこのホルモンが分泌されると言われている。

そのため、賢者タイムを迎えた♂が周囲を見回し、ミミロップ達を見つけてしまうという可能性も充分考えられる。

ミミロップにそういった知識はないため細かい事はわからないが、アブソルはこの点について一番の心配を募らせていた。

何せ、連中は惜しむ事無く欲望をターゲットにぶつけている。そういう体質なのか彼らは一回の機会に何度も射精を行う事ができるため、その度に見つかってしまう可能性があるのだ。

エネコロロ「あうぅ、う、う、ふ、ふかいよぉ……」

♂ポケモン「まだまだ感度良好だな、この淫乱猫が!」

エネコロロ「んひぃぃぃいい」

途切れる事無く聞こえてくる、淫楽の声。まだ、気づかれている様子はなさそうだ。

足取りは遅いものの、特に危なげなく歩く事ができている二匹。この調子なら、誰かに見つかる事もなくなんとか下山できそうな隘路まで辿り着く事ができるのではないだろうか。

声「おい、お前ら」

しかし、事態はそう優しいものではない。突然後ろから声をかけられ、心臓が止まるかと思うほど驚くことになった。
 ▼ 730 ツボット@やすうりポン 18/11/14 20:34:12 ID:WxqAAJGE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しえん
 ▼ 731 サキント@タウンマップ 18/11/17 00:14:58 ID:Ab1g0QxA NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 732 アームド@クラボのみ 18/11/18 18:41:47 ID:jbYAf.W2 NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
続きが楽しみです
 ▼ 733 ハコモリ@いいつりざお 18/11/21 16:40:00 ID:pf9kUKs2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 734 ンムー@やけたきのみ 18/11/24 00:00:47 ID:ercwXntA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援!
 ▼ 735 ブキジカ@エスパーZ 18/11/24 03:16:03 ID:nrJsn/RY [1/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


動きを止める二匹。暫くその状態のまま固まってしまい、振り向くことさえできない。

見つかってしまったのか、もう助からないのか、これから散々なことをされてしまうのか……色んな思いがほんの数秒の間にぐるぐると何度も頭の中で木霊する。

???「騒ぐんじゃない。とにかく、前へ進め」

張り詰めた声で前進を促される。

人間で言う所の、銃を突きつけられ歩けと命令されるような感覚。ミミロップもアブソルもその声に逆らうことができず、言われた通り静かに歩き出す。

全身が恐怖に震え声をあげてしまいそうになるのを何とか我慢し、二匹は少しずつ広場を抜けていく。

まるで死刑台への道を歩かされているような気分。二匹とも、これからどうなってしまうのかと気が気ではない。こういう時に限って、長く感じられた道のりがとても短く感じてしまう。

広場の隅っこを通り抜ければ、そこで自分たちは捕まるのだろう。殺されてしまうのか、その場で犯されてしまうのか、どこかへ連れて行かれ輪姦(まわ)されてしまうのか……

やがて岩場の下山路まで辿り着いた頃、後ろにいる声の主はどんと軽くミミロップの背中を押した。

ミミロップ「きゃっ」

アブソルにさえ聞こえるかどうかわからない程か細い声が漏れる。そして反射的に、ミミロップは後ろを振り向いた。

ミミロップ「あ、あなたは!」

グラエナ「よう、お前ら無事だったのか」

アブソル「え……? グラエナ?……あなたも、無事に逃げてたのね」

果たして、そこに立っていたのはグラエナだった。

彼も島を出るために逃走経路を考えてこの道を選んだのだろう、いつの間にかミミロップ達に追いついてきたらしい。

彼の登場に安堵する二匹。この状況、若干隠密行動が難しくなるも、気持ちの上では一匹でも多く仲間がいる方が安心できる。

グラエナ「再会を祝うのはもうちょい後だ。とりあえず、この岩山を降りるぞ」
 ▼ 736 ロアーク@ライブスーツ 18/11/24 03:16:55 ID:nrJsn/RY [2/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



登るときはあれほど苦労した岩山も、下山に苦労する事はほとんどなかった。

天候が回復したこともあるが、それ以上に、下山路は道幅もそれなりに広く落下する危険もあまりなさそうだったため、順調に麓まで降りる事ができた。

毒草に覆われ険しい足場しか存在しないこの周辺には育て屋連中も近寄らないのだろう、辺りに見張りなど他のポケモンの姿は見当たらない。

グラエナ「この辺なら大丈夫か……」

アブソル「そうね。ここまで来れば毒草も少ないし、ちょっと落ち着けそう」

ミミロップ「ふぅ……やっと、休めるのね……」

張り詰めていた空気が少しずつ緩んでいく。

一刻も早くこの島を出たいところではあるが、負傷した状態で足場の悪い道を歩き続けたのだ、多少は休息を取らなければ結果として逃亡に時間がかかってしまうことだろう。

グラエナ「さて……早速本題だが、島を出る道は知ってるのか?」

アブソル「おぼろげだけど、私が知ってるわ」

グラエナ「ほう」

グラエナにも事情をかいつまんで話す。アブソルの境遇にグラエナも驚きの表情を浮かべていたが、最後には「辛かったんだな」と何度も小さく頷いていた。

ミミロップ「グラエナは、どうしてたの?」

グラエナ「俺は……あの時、俺だけ少し奥の木の実を採りに行ったとき、実はオノノクスの気配を感じてたんだ」

ミミロップ「やっぱりそうだったの」

グラエナ「ああ。あのままだと遭遇しそうだったんで、さりげなくやつを誘導することにした。最初はうまくいってたんだけど、霧が深すぎて途中で迷ってな……まぁ木の実は逃したが、玉が残ってたから空腹はなんとかなった。おかげで、ここまで逃げて来れたってわけだ」

あの時はミミロップ達も立ちこめる霧のせいでそれぞれがはぐれてしまった。エネコロロとははぐれ、オノノクスと遭遇し大怪我を負わされてしまった。

アブソル「お互い逃げ切れてよかったけど、その……」

アブソルは言葉を途中で濁してしまう。

三匹はなんとかこうして集まることができたが、エネコロロは相手の罠にかかってしまい助け出す事も難しい。彼女と仲良くしていたグラエナには特に辛い事実だろう。そう思うと、その先を言葉にするのは躊躇われた。
 ▼ 737 マカジ@ヒコウZ 18/11/24 03:17:25 ID:nrJsn/RY [3/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
グラエナ「……とにかく、島を出よう。道を案内してくれ」

アブソル「……そうね」

後ろ髪を引かれるような思いはあれど、もう自分たちを優先することしか彼女達にはできない。無事逃げ延びるためには、後戻りなど赦されない。

もう一度、心の中で謝るミミロップ。アブソルもそうしていたのだろう、ミミロップが顔を上げたタイミングでアブソルは今後について話し始めた。

アブソル「経路としては、ここを突っ切って行けば川に出るわ。それを海に向けて辿れば、本土と島を結ぶ浅瀬に出られるはずよ」

グラエナ「敵はいないのか?」

アブソル「私の記憶通りであればだけど、海の方に出るまで誰もいないはず」

ミミロップ「川にも誰もいない?」

アブソル「探しに来てたらわからないけど……こっちの方面は基本的に誰もいないし、罠もないはずよ」

グラエナ「とにかく、行ってみないとわからねぇな。先頭歩いて様子を見るから、何か気づいたことあれば教えてくれ」

アブソル「助かるわ」

流石は♂といったところだろうか。彼は意気込みを新たに、しっかりとした足取りで彼女達の前を歩き始めた。

アブソル「なんとか、なりそうね」

ミミロップ「うん。グラエナと合流できてよかった」

現状、これほど心強い味方はいない。ミミロップとアブソルは前を歩いてくれるグラエナに感謝して、その代わり周囲の物音や気配に集中することにした。
 ▼ 738 ルチャイ@かおるキノコ 18/11/24 03:17:57 ID:nrJsn/RY [4/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告




鬱蒼とした森を歩く三匹。

やはりこの辺りには誰も立ち寄らないのか、他のポケモンの気配さえ感じることはない。育て屋連中としても、森全体を敷地内としているわけではないのかもしれない。

ミミロップ「寒いわね……」

アブソル「そうね……」

両手で自分を抱くようにして歩くミミロップ。

いつからか再び降り出した小雨が、まるで彼女達をこの森から逃がすまいと敵対しているようにさえ思えてならない。

本来であれば天の恵みと言える、雨。この雨を、彼女たちは何度恨めしいと思ったことだろう。

アブソル「……川が見えてこないわね」

グラエナ「……そうだな」

岩山を降りてから、随分と歩いた気がする。

もうかれこれ一時間は森を彷徨っているのではないだろうか。アブソルの記憶では、岩山から川まではそう遠くないはずだった。

ミミロップ「まさか……迷ってる?」

誰もが思い始めていたことを口にするミミロップ。

そしてそれに対する答えはなく、答えないことこそ肯定の意に他ならない。

何より、ミミロップは耳が良い。もし川が近くにあるならばせせらぎの音が聞こえてくるはずだ、少なくとも目的としている地点に近づけていない事は確かだった。

ミミロップ「(……あれ?)」

ふと、違和感を覚え、立ち止まる。

アブソル「……? どうしたの?」

ミミロップ「あ、いや……」

自分でも、何が引っかかったのかよくわからず言葉にできない。

ただ漠然と、何か変だ、とそう思った。
 ▼ 739 ラキオン@デルダマ 18/11/24 03:18:34 ID:nrJsn/RY [5/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
グラエナ「……変わった場所に出たぞ」

と、先頭をずんずん歩いていたグラエナが立ち止まる。

ミミロップ「え、ここって……」

何事かと見てみれば、見覚えのある光景が彼女達の目に飛び込んできた。

それは、白い柵。彼女達が出口を求めて彷徨い始めた頃に見つけた、違和感だらけの人工物。草原地帯を取り囲んでいる様子、雨に濡れてもなお漂う血と何かの臭い、彼女達が一度通った場所に違いないようだ。

アブソル「嘘でしょ……」

つまりは、戻ってきてしまったということ。

海の方に向けて歩いているはずが、いつの間にか再び森の奥の方へと歩いていたのだ。

アブソル「戻らなきゃ……」

グラエナ「おい待てって。引き返すつもりか?」

アブソル「ここは森の奥の方だもの、完全に道を間違ってるわ」

グラエナ「間違ってるったって、引き返しても仕方ないと思うぞ」

アブソルがそう訴えかけるも、グラエナは怪訝な表情を浮かべるばかり。

彼の言うように、来た道を戻ったとして岩山の麓まで辿り着くとは限らない。ここから更に迷ってしまう可能性も充分に考えられる。川を目指して歩いていたつもりがここまで来てしまったのだ、引き返しているつもりがより奥の方へと歩いてしまうかもしれない。

ミミロップ「…………」

試しに後ろを振り返ってみるミミロップ。

彼女の視界には鬱蒼とした森が広がるばかりで、どの辺りからここまで歩いてきたか全くわからない。そもそも道無き道を歩いてきている以上、どこをどう歩けば真っ直ぐ歩いたことになるのかさえ定かではないのだ。

仮に引き返すことにしたとして、ならば今視界に映っているどの木の横を通って来たのかと訊かれても正確な返答をする事はできない。
 ▼ 740 タッコ@ギンガだんのカギ 18/11/24 03:19:11 ID:nrJsn/RY [6/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
アブソル「だけどここが川の近くじゃない事は確かよ」

グラエナ「だからって無闇に歩くのはだな」

アブソルとグラエナは意見が対立してしまったようで、ミミロップをよそに言い合いが始まっている。

戻ろうにも戻る事ができるかわからない状況。ミミロップはどちらの意見に加担する事もできず、ただおろおろと二匹のやり取りに困った表情を浮かべるばかり。

ミミロップ「(あの時、どっちに行ったっけ……)」

ミミロップ達がここへ初めて来たとき、柵の中へは入らず迂回して進むことにした。そこから少し歩いて白い玉を見つけた岩場に辿り着き、そこでグラエナたちと出会った。

ミミロップ「(それって、もしかして……)」

嫌な予感が徐々に現実味を帯びて実体化していくのを感じる。

もし、玉を見つけた岩場の裏側がさっき通った険しい岩山だとしたら、彼女たちは岩山を挟んでぐるりと一回りしただけということになる。

ミミロップ「(……?)」

しかし、その結論に至りかけるも、ミミロップは小首をかしげることになった。

仮に岩山の周りをぐるぐる回っているとしても、この岩山はかなり高く広い。一回りするだけでも相当歩かなければならないはずで、結果として同じ場所に戻ってしまったとはいえ、それは何か外的要因を理由に強いられた事ではない。

早い話が、この場所はそもそも海に続く川の近くだったというだけの話。そう思えば、この場所はそもそも森の奥などではないのかもしれない。

では、ミミロップが覚えた違和感の正体は何なのだろう?

ミミロップ「(何があったんだっけ……)」

柵を見つけ、警戒して迂回し、岩場に辿り着き、白い玉を見つけ、グラエナ達と出会い、休息をとり、木の実畑に向けて歩き出し……

ミミロップ「あっ」

そのとき、くぅ、とミミロップの可愛らしいお腹が鳴った。

頬を赤らめアブソルとグラエナを見るも、彼女達はまだ言い合いを続けていてミミロップの恥じらいなど気づきもしていない様子。

いらぬ心配をしたことでなんだかより恥ずかしくなり、ミミロップはぎゅっと自分のお腹を両手で抱いた。
 ▼ 741 ンダース@いいキズぐすり 18/11/24 03:20:06 ID:nrJsn/RY [7/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
木の実畑でつまみ食いしたとはいえ、あの時集めた木の実は全て落としてしまった。そのとき以来何も口にしていないため、寒さに加え再び空腹が彼女を襲い始めている。この調子では、出口に辿り着く前に餓死してしまうかもしれない。

そうなると、何か食料を探す必要がある。何かといっても木の実か白い玉くらいしか食べられそうなものはなく、玉は有害である事がわかったため空腹を満たすならもう一度オノノクスがいるであろう木の実畑まで行かなければならない。

ミミロップ「(行くしかないか……提案しようかな?)」

鳴き声を発するほど、自分のお腹はすいている。一度は食料の確保を行わなければ、怪我が回復しようとも満足に走ることはできないかもしれない。

更に考えれば、玉を食べていたグラエナはまだしも、つまみ食いすらしていないアブソルはいよいよ空腹に耐えられなくなってきているのではないだろうか。

ミミロップ「(……あれ?)」

ふと、何かが再び引っかかった。

近い。先ほど感じていた違和感より強いものを感じる。

ミミロップ「(玉を……食べていた?)」

点が線になる感覚。そこではっきりと、彼女は違和感の正体を感じ取った。

ミミロップとアブソルは空腹に耐えながらも、木の実畑まで何も口にする事はなかった。しかし、グラエナとエネコロロは森で見つけた白い玉を食べることで空腹を幾らか満たしていた。

しかし、その玉は有害なもの。催淫剤がふんだんに含まれていて、口に入れれば淫楽に溺れずにはいられなくなってしまう。

だからあの時、岩場で休息を取っていた際、グラエナとエネコロロは性行為に耽っていたのだ。今にして思えば彼らの行動は理性的なものではなく、催淫剤によって誘発されていたものだったとわかる。

ならばなぜ、玉を食べ続けていたグラエナは、今こうして平気な顔をしていられるのだろう?

アブソルは、あの玉を食べ続ければ脳が侵食され性的快楽のことしか考えられなくなってしまうと言っていた。となると、エネコロロと同じようにグラエナも症状がかなり進行しているはずだ。

効力は直後のみなのか? 一度でも発散してしまえば治まるのか? 輪姦されていたエネコロロはその際により多くの玉を食べさせられていたのか? そもそも♀にしか効果が無いものなのか?

わからない。だが少なくとも、ここにいるグラエナは至って正常、迫り来る淫楽の波に耐えているようには見えない。

ミミロップ「…………」

色んな思考がぐるぐると頭の中を駆け巡る。

ミミロップは深呼吸をして気を落ち着けた後、まだ言い合いをしている二匹を……険しい顔をして反論しているグラエナを見た。
 ▼ 742 ネッコ@ねばねばこやし 18/11/24 03:20:35 ID:nrJsn/RY [8/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
状況はわからない。だが、確かめなくてはならない。

自分の勝手な思い込みかもしれない、的外れな違和感かもしれない。だがそれでもと、ミミロップは口を開いた。

ミミロップ「ねえ」

アブソル「うん?」

グラエナ「なんだよ」

ミミロップ「私、おなかすいちゃった……」

アブソル「それは、私もだけど……でも、食べるものなんて何もないわ」

グラエナ「お前らなぁ……素直にこれ食べろよ。餓死は免れるぞ」

ころん、とどこから出したのかグラエナは玉の欠片を地面に転がした。

疑惑が確信に変わっていく。

ミミロップ「……それは食べたくない」

グラエナ「はぁ? この状況でそんな事言ってる場合か? 死ぬかもしれないんだぞ」

ミミロップ「だってそれ、毒だし」

グラエナ「毒だって? 何でそうなるんだよ。じゃあこれ食べてる俺はなんで生きてるんだよ」

苛立ちを隠しきれず、グラエナはぐるぐる唸りながらミミロップに反論する。その表情に気圧されそうになりながらも、ここが正念場とミミロップはぐっと堪え、グラエナを睨み返した。

アブソル「……それ、ずっと食べてるって言ったわね」

グラエナ「あ? そりゃな、オノノクスの所へ行くなんてごめんだし」

アブソル「そう……」

そして、アブソルも違和感に気づいたようだ。

♂には効かないのかもしれない、本当にただ何も知らないだけかもしれない。色々疑問は残れど、この状況、彼への疑念がぬぐいきれないものとなった。

アブソル「あなたはその玉を、私達に食べさせたいの?」
 ▼ 743 ターミー@ドリのみ 18/11/24 03:21:03 ID:nrJsn/RY [9/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
雷鳴が轟く。

稲光を背に受け、グラエナの表情がはっきりと照らされる。

グラエナ「…………」

彼の口角は、不自然な程大きくつりあがっていた。

グラエナ「疲れた」

アブソル「は? きゃっ!!」

ミミロップ「!」

べしゃっと音を立て、アブソルが地に転がる。

グラエナ「あー疲れた疲れた。やっぱ疲れるわぁ、こういうの」

アブソル「あっ、ぐ、や、やめて……」

グラエナ「本当に小賢しい、気持ち悪い、虫唾が走る、汚らしいだけの下等生物が!!」

グラエナはアブソルを強く押し倒し、前足で身体を殴打し始めた。無抵抗に倒れこむアブソルへ何度も何度も前足をぶつけ、痛々しい傷を残していく。

ミミロップ「やめなさい!」

グラエナ「うるさい!!」

止めに入るも、大きく振り上げた彼の右前足に顔を殴られ、ミミロップも地面に倒れてしまう。

ミミロップ「え……?」

すぐに立ち上がる事ができずせめてと彼を睨みつけるも、そこに映るあまりにおぞましい光景にミミロップは言葉を失ってしまった。

アブソルにのしかかり、罵詈雑言と共に彼女の身体や顔を何度も殴打するグラエナ。

彼は二本足で立っていて、頭からは真っ赤な毛が生え地面にまで伸びていた。
 ▼ 744 ルバット@ゴールドスプレー 18/11/24 03:21:49 ID:nrJsn/RY [10/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ミミロップ「ぐ、グラエナ……?」

グラエナ?「はぁ? まだあたしがあんな屑犬だと思ってるわけ? おい糞兎、お前から淫獣共の肉便器にしてやろうか」

アブソル「あぐっ」

突如本性を表したグラエナではない何者かはアブソルの角を持ち地面へ叩きつける。そして彼女に興味を失ったように立ち上がり、尻餅をつくミミロップの前にやってきた。

グラエナ?「二足歩行するし、あんたは幅広い層に高く売れるかもねぇ。ちょっと股開いてみなよ」

ミミロップ「あっ、や、やめ」

ミミロップの両足を掴み、開脚させにかかる何者か。開かせまいと抵抗はするものの、怪我をした足には力がほとんど入らないうえ、相手の力はかなり強い。

抵抗は不可能と判断した彼女は、右手で泥水を掬い上げ相手の顔めがけてぶつけてやった。

言葉も無くそれを顔面で受け止める相手。しかし思わぬ反撃だったのか両手の動きを止め、心底不機嫌そうな顔をしてミミロップを睨みつけた。

グラエナ?「あーあしらけたしらけた。あたしこういう♀大嫌いだわ。空気くらい読めよ、な!!」

ミミロップ「っ、か、は……」

相手のポケモンは掴んでいた足を放り、今度は腹部に強烈な一撃をお見舞いする。

すっぱいものがこみ上げてくる感覚に顔をしかめるミミロップ。堪えきれずそれを口外へぶちまけてしまい、ぽろぽろと涙がこぼれてきた。

それを見て再び口角を吊り上げる何者か。ミミロップが苦しんでいる様子を見る事ができたからだろうか、先ほどまでは苛立ちを露にしていた表情も、今では満足そうに笑みが浮かんでいる。

グラエナ?「ふう……たまにはあたしが遊ぶのもいいと思ったけど、やっぱり退屈だわぁ。もういいや、さっさとレイプされてしまいなさい」

何者かはアブソルとミミロップの片足を持ち、柵の中へ引きずり込んでいく。

グラエナ?「あんた達と合流したのも、ここに連れてきたかったからなのよ。ほんとは最初会った時に玉食べさせてつれて来たかったけど……泳がせるのも面白いと思ってね?」

アブソル「ああああああ!!!!」

相手のポケモンは何でもないような顔をしてアブソルを地面に放り投げ、右後足に乗ってじわりじわりと体重をかけていく。

やがて重さに耐えられなくなった足の骨が悲鳴をあげ、鈍い音と共に可動域を大きく超えて曲がってしまった。
 ▼ 745 デンネ@ハバンのみ 18/11/24 03:22:29 ID:nrJsn/RY [11/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
グラエナ?「おなかすいたでしょう? 力が出ないでしょう? 白い玉も、オノノクスのいる木の実畑も、全部誘導できるように設置してるのよ? 人間もポケモンも、食べないと死ぬからね。本能には逆らえないからね」

何者かは彼女達の手足を、地面に生えている草で縛り付けていく。丈夫な草なのか専用に作られたものなのか簡単に解けることはなさそうで、完全に身動きを封じられてしまった。

グラエナ?「ふう。これで目的の一部は達成したし……れじゃ、後は無様に慰み者になっててね」

アブソル「こ、この、化け狐……」

グラエナ?「へぇ……あたしの事知ってたんだ。会った事は無いはずなんだけどねぇ……ふん!」

アブソル「っぐぎぎっ!!」

立ち去る素振りを見せていた何者かは急に踵を返し、流れるような動作でアブソルの左後足を折り曲げ、勢いに任せて骨を折る。

アブソルはまだ何かを言いたいようだったが、あまりの激痛に声が出なくなり白目を向いてしまった。

グラエナ?「どの道あんたは今回で『苗床』よ。大人しく夜空の星でも数えてなさい」

そして、今度こそ歩き出し、去って行く。ミミロップはそれを、恐怖しながらただ見ていることしかできなかった。

強い雨が二匹の身体を激しく打ち付ける。

大怪我を負わされ、地面に縛り付けられ、ただいつ来るともわからない♂の集団に怯えながら死を待つだけの時間。

もう、自分たちに残された時間は長くない。地獄を見るまで、もしかしたら生命が終焉を迎えるまで、もう幾許も無いのかもしれない。

アブソル「…………ミミロップ」

だけど、どうしてだろう。彼女は、アブソルは、力強くミミロップの名前を呼んだ。

アブソル「シンオウは……とても、寒いのよ、ね……」

ミミロップ「……そうね。初めて来るなら、すごく、すごく驚くと思う」

アブソル「ふふ……そっか……」

彼女はまだ、こんな状況でも、シンオウの地に立つことを夢見ているのか。生きることに希望の炎を燃やし、まだ見ぬ未来へ期待を膨らませているのか。

だが、それは少しだけ違っていた。
 ▼ 746 バゴーラ@まがったスプーン 18/11/24 03:23:11 ID:nrJsn/RY [12/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
アブソル「……動かないで、ね」

ミミロップ「えっ……?」

鋭い音が鳴り響く。

アブソルの繰り出したサイコカッターが、ミミロップを束縛していた草を切り裂いた。

身体の自由が利くようになり、すぐさまアブソルの所へ駆け寄る。そして彼女を縛り付けている草を解きにかかった。

アブソル「ねえ……お願いが、あるの」

ミミロップ「なに……?」

どんな風に結び付けられているのだろうか、アブソルを縛る草は硬く、雨に濡れるミミロップの手では解けそうにない。

アブソル「私を……シンオウに、連れてって」

ミミロップ「なに言ってるの。最初からそういう約束になってたでしょ、何を今更……」

アブソル「ううん、違う、違うの。そうじゃない」

ミミロップ「違うって、何が……」

アブソルは痛みに頬を痙攣させながらも、両の目でしっかりとミミロップを見た。

アブソル「私はもう、逃げられない……後足は動かないし、血も沢山流しすぎてる……意識だって、もう、薄れてきてる……」

ミミロップ「何言ってんのよ。歩けないなら、私がおぶってでも連れていくから、だから」

そのとき、森のどこかで何かの鳴き声が響いた。この雨でも聞こえるくらいだ、そう遠くからというわけでもないだろう。

アブソル「ここから海までは、まだまだ遠い……敵のいる近くを、通ったりも、しないといけなくなるわ……」

ミミロップ「そうだけど、今までもそうだったじゃない」

アブソル「もう、時間がないの……ここからは、できるだけ万全の状態でしか、逃げることなんて、できない、っぐ、ごほっ、ごほっ……」

アブソルの口から赤いものが吐き出される。殴打された時に内臓が破裂したのかもしれない。
 ▼ 747 パー@スターのみ 18/11/24 03:23:51 ID:nrJsn/RY [13/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
アブソル「わかるでしょ……? ここから、逃げ延びるには……もう、あなただけで、行くしかないの……」

ミミロップ「そんなの……そんなのダメ! シンオウ行くんでしょ? 雪、見てみたいんでしょ? だったら、だったら……ああもう、解けてよ! なんで解けないのよ、解けてよ!!」

あまりに硬く結ばれている草の枷。結び目を探し解くのを諦めた彼女は、指や爪で何度も草を掻き毟る。

皮が切れ、爪がはがれても、彼女は手を止めない。

アブソル「シンオウには……行くつもり、よ……ほんの数日前にできた夢だけど、雪はまぁ、もう見れなくても仕方ないけど……それでも、そうしたいと強く、思ったもの……」

ミミロップ「意味わかんないよ……行くなら、一緒に逃げなきゃ……逃げ」

アブソル「ねえ、ミミロップ……お腹、すいてるでしょ?」

ミミロップの言葉を遮って、アブソルは彼女に声をかけた。そして、より強く、ミミロップをしっかり見つめる。

想いを視線に乗せるように、自らの意思を認めてくれと頼み込むように。強く、強く。

彼女が何を言おうとしているか察するミミロップ。途端に、顔が青ざめていくのが自分でもわかる。

ミミロップ「……い、いや、そんなのだめ、一緒に、隣で一緒じゃないと」

アブソル「自分で、わかるの……私は、もうすぐ……死んでしまう……だから」

ミミロップ「だったら私も、私もここで、一緒に……」

ぽろぽろと、水滴がアブソルの身体に零れ落ちる。

冷たい雨とは違う、温かい涙。アブソルは自分のために泣いてくれる彼女に柔らかな笑みを浮かべ、そして再び強い視線を彼女に向ける。

アブソル「短い間だったけど……こんな変な場所で、変な出会いからだったけど……私、あなたに会えて、本当に良かった……ありがとう」

ミミロップ「うっ、ううう……」

アブソル「だから、お願い。雪の事までは、忘れてくれてもかまわないから……私を、シンオウに、連れてって……」
 ▼ 748 ジョッチ@きちょうなホネ 18/11/24 03:24:17 ID:nrJsn/RY [14/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告





それからすぐに、アブソルは眠ってしまったわ。

さっきまで話してたのに、それがまるで全部嘘だったみたいに、アブソルは動かなくなってしまった……




何故、どうしてこうなるの?

こんな運命に、誰がしたっていうの?

彼女に、雪が本当に白い事を実際に見せてあげたかった。

彼女に、雪が本当に冷たい事を感じさせてあげたかった。

全てを諦めかけていた彼女に、頑張って生きようと思いなおした彼女に、私はお礼がしたかった。

ただ、生きたい。普通に生きたい。本当にそれだけだったのに……


ポケモンの一生なんて、本当に不公平だ。

だけど、いくら恵まれなかったといったって、こんな仕打ちってないよ……


でも、もう泣かない。貴女との約束、無駄にしない。

ただ、貴女は忘れてと言ったけど、その約束だけは守れないわ。

いつかね、故郷に戻って、本物の雪を見せてあげる。

これは、私からの約束よ?
 ▼ 749 メイル@リピートボール 18/11/24 03:25:04 ID:nrJsn/RY [15/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告




――――――――
―――――
―――

ミミロップ「……彼女の肉を食べたおかげで、私は元気を取り戻したわ。足はまだ痛んだけど、逃げるには充分なほど回復できたの」

ルカリオ「それで、ポケモンを食べたことあるって……」

ミミロップ「うん……森を抜けて川を下って海に出て……必死に、逃げて逃げて……それでね。浅瀬を逃げてる途中で、本土の方から人間がやってきたの」

ルカリオ「えっ」

思わぬ登場人物にルカリオは表情を強張らせる。

だがミミロップはくすりと笑ってみせ、ルカリオの手に自分の手を重ねた。

ミミロップ「その人間は……よくわからないけど、良い人間だったの。エンブオー一匹連れて海を渡ってて、私は彼女に保護された……」

ルカリオ「なんだ、良かった」

ミミロップ「その後本土のポケモンセンターに預けられて、治療に専念したわ。一ヶ月くらい入院してたんじゃないかしら」

ルカリオ「それで足が治ってるのか」

野生のポケモンにとっては複雑な話でもあるが、やはり専門の人間による治療が一番効果的だ。自然治癒ではどうにもならない怪我であっても、ポケモンセンターなら治療ができるかもしれない。少なくともミミロップの怪我については、人間のおかげで完治したといえよう。

ミミロップ「後で知ったことなんだけど、私を助けてくれた人間がその島の育て屋を壊滅させてくれたみたい。なんでも、エンブオー一匹であそこにいたポケモン全部倒しちゃったみたいよ?」

ルカリオ「とんでもないコンビがいたもんだな……」

ミミロップ「まぁ、退院した後は逃がしてもらえたからその先どうなったのかはわからないけど……」

ルカリオ「復讐、とは違うけど、カタはついた感じか」

ミミロップ「そうね」

ミミロップにしてみれば、複雑な思いを抱かずにはいられない。

その人間がもう少し早く来てくれていれば、復讐を自分の手で行う事ができれば、そもそももっと自分に力があったなら……

ミミロップ「その後私は真っ先にシンオウに帰ったの。それで、雪を見に行った……ハクタイでもよかったけど、どうせだからキッサキシティに行ったわ」

ルカリオ「おお、雪を見るには一番良い場所だ」

ミミロップ「うん。そこのね、小さな丘の上で、じーっと、雪を見たわ。じっと、じーっと……」
 ▼ 750 ガアブソル@ヒコウZ 18/11/24 03:25:35 ID:nrJsn/RY [16/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告





アブソル『わぁ……本当にすごい雪ね……思ってたより寒いし、冷たいし、ふわっふわ』

ミミロップ『ふわふわかなぁ。踏んだら潰れるのは確かだけど』

アブソル『それに、やっぱり不思議。雪って触ると解けてしまうのに、どうしてこんなに積もるのかしら』

ミミロップ『寒いからでしょ?』

アブソル『そうだけど、ひとつひとつはこんなに小さいのに、解ける前に積もるって事でしょ?』

ミミロップ『そう、なのかな?』

アブソル『沢山積もったらこんなに白くなるのね……寝転がったらどうなるのかしら、えいっ』

ミミロップ『あ、ちょ』

アブソル『冷たいー! こっ、これ思った以上に、冷たいし、寒く、なる……』

ミミロップ『当たり前でしょ……はぁ、あなたって思った以上にはしゃいだりするのね。意外だわ』

アブソル『私だって、それなりにこういう感情を持ち合わせてはいるわ。ただ、あまり出す機会がないだけで……』

ミミロップ『ふふっ、そうなの。でも……私がホウエンに行ったら、同じような反応するのかも』

アブソル『あっちは温暖な気候だから、そう驚くことはないと思うけど』

ミミロップ『暑い暑い唸ってるかもよ?』

アブソル『あー、それは、うん、あるのかもしれないわね』

ミミロップ『む、そう返されると意地でも我慢したくなるわねぇ……ふふ』

アブソル『ふふ、その時が楽しみね』

ミミロップ『そうね〜。ほんとに、本当に……』




 ▼ 751 ッスグマ@ニニクのみ 18/11/24 03:26:00 ID:nrJsn/RY [17/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告




もしかしたら、辿り着いていたかもしれない未来。

アブソルと共に、それぞれの故郷で自然を肌に感じ、お互いに感覚の違いを言って笑い合う。

そんな、なんでもない日常の、ほんの小さな幸せを噛み締める時間。


だけど、もし赦されるのなら、少しだけでも願いを叶えてもらえるのなら……

夢ででもかまわない。

こんな穏やかな日を、アブソルと共に過ごしたい。

何かに怯える必要も無い世界で、ただ当たり前の事に驚いたり、笑ったり、悩んだり。

そんな当たり前の日常を、あなたと共に味わいたい。


あれからね、私、強くなったの。

修行して身体を鍛えて、どんな事があっても負けないように、もう二度とあんなことにならないように、毎日必死に頑張ったの。私の中で見てきたから、知ってるでしょう?

あの時は守られてばかりの私だったけど……もしまた、夢の中でも会う事ができればそのときは……



 ▼ 752 ネネ@きのみ 18/11/24 03:27:02 ID:nrJsn/RY [18/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




ミミロップ「……あ、雪」

ルカリオ「うお、いつの間に……」

小ぶりになっていた雨はいつの間にか雪へと姿を変え、ハクタイの森を白く彩り始めていた。

日も暮れ気温が下がってきたのだろう、暖をとる段取りを始めた方がいいかもしれない。

ミミロップ「さ、長くなっちゃったわね。聞いてくれてありがと。だいぶ、気が楽になったわ」

ルカリオ「それならよかったけど……無理しちゃだめだよ?」

ミミロップ「大丈夫だって。今はもうあの時とは違うし、それになにより、ルカリオがいるでしょ?」

ルカリオ「おう! 何があったって、俺が何とかしてみせるぜ」

ミミロップ「ふふっ、まぁまぁ、心強いこと」

ルカリオ「なんで笑うかな〜」

ひとしきり談笑した後、彼らは薪に火をつけ夜を明かす準備をした。

やっと雨風を凌げる程度のそう広くない岩陰であるため、小さな焚き火でも問題なく夜を過ごす事ができそうだ。

そもそも彼らはシンオウ出身。寒い地での夜の過ごし方に困る事はないだろう。

ルカリオ「じゃあ、いつものように俺は半睡してるから」

ミミロップ「うん。ありがと」

ルカリオには、色々と訊きたい事や言いたい事もあるだろう。だが彼は何も言わず、いつも通り眠る支度をした。ミミロップは、今日ばかりは素直に甘えることにし、彼の腕の中で目を閉じる。

長い話で疲れたせいもあるだろう、ミミロップの意識はすぐにぼんやりとし始めた。

と、風も無いのに焚き火の炎がゆらりと揺れる。

『ふふ、ほんとに寒い……鬼火なら、少しは足しになるかしら?』

薄れゆく意識の中、ミミロップはそんな声を聞いた気がした。

いつからか降り出した雪はもう薄っすらと地面や木々に白い化粧を施し始めていたが、不思議と寒いと思うことはなく、むしろ暖かな心地に包まれて眠る事ができた。
 ▼ 753 バメ@エレクトロメモリ 18/11/24 16:42:55 ID:vRnYLQKU [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
もしかしてこれ書いた人だったりする?違ったらスルーして
http://pokemonbbs.com/sp/poke/read.cgi?no=824351
私怨
 ▼ 754 ーナンス@うみなりのスズ 18/11/24 19:53:52 ID:nrJsn/RY [19/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
>>753
私が書いたやつです
 ▼ 755 トウモリ@プラスパワー 18/11/24 23:35:31 ID:vRnYLQKU [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イェーイ!当たったぜ!
あと余計な世話かもしれないけどトリつけた方がいいんでない?
 ▼ 756 ゲキ@プラスパワー 18/11/25 20:20:24 ID:1uE2A13M NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
>>755
余計なお世話だなんてとんでもない。ありがとうございます。

こだわっているわけではありませんが、私の中では必要性を特に感じていないのでつけておりません。
つける理由ができたときでいいかなと。
 ▼ 757 ロッパフ@リニアパス 18/11/26 03:18:02 ID:C78QxAuc [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



白く薄い霧がハクタイの森を包み込み、何とも幻想的な朝が彼らの前に姿を現す。

昨晩降った雪は積もる事無く静かに姿を消していったようだ。もしかしたら、昔を思い出したミミロップのために神様が降らせてくれたのかもしれない。そんな小さな奇跡くらい、あってもいいだろう。

さて、この森では早朝でも多くのポケモン達が日々の生活を忙しくしているのだが、ルカリオ達が一夜を過ごした近辺では物音はおろか、草木のざわめきさえ聞こえてこない。まるで自分たちだけがこの場所に存在することを赦されているような、そんな感覚。

ルカリオ「……?」

その妙な状況を感じ取ったのだろう、ルカリオは半睡から覚醒し、片目を開いて辺りの様子を窺った。

太陽が昇り始めているというのに薄暗い周囲。心なしか昨晩より気温が低いように感じられる。そして何より、立ち込める薄い霧が彼の気を引く。

ルカリオ「……マジか。まいったな」

普段の森ではあまり見られない光景、とても不気味で歪な状態。しかし彼には、現状への心当たりがあるようだった。

ルカリオ「ミミロップちゃん、起きて」

ミミロップ「……う、ん?」

昨日は話し疲れたのだろう、いつもと比べて目覚めの反応がやや鈍い。

だが、ルカリオの予想が正しければ、この状況、厄介な事態に巻き込まれつつある。ルカリオは申し訳ないと思いつつもミミロップの両肩を優しく掴み、しっかり起きるよう軽く揺らしてやる。

ルカリオ「ちょっとまずいことになったかも」

ミミロップ「まずいことって……?」

過去を思い出したせいで夢見が悪かったのだろうか、ミミロップはルカリオに言葉を返すもまだ寝惚け眼だ。

そんな彼女の表情にルカリオは思わず心臓を高鳴らせるも、首を振って煩悩をなんとか追いやり、ミミロップの目をしっかりと見る。

ルカリオ「霧だよ。ハクタイの森東部で、霧に囲まれた」

ミミロップ「霧……霧!?」

ミミロップは彼の言葉に周囲の不審な状態を感じ始めると、顔色を一変させルカリオを見る。ルカリオはそれに、頷いて答えて見せた。

ルカリオ「どうも、森の洋館が近いみたい」
 ▼ 758 ルビアル@メタグロスナイト 18/11/26 03:18:22 ID:C78QxAuc [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





何故だ、何故こうなる。

こんな運命に、誰がしたんだ。

こんなつもりじゃ、こんなはずじゃなかったんだ。

俺はただ、真相が知りたかっただけだ。

本当にただそれだけだったのに、どうして、どうしてこんなことに……

もしかして、これが「ヤツ」の望んだことだったのか?

だとしたら、そのために、あいつは、あいつは……


でも、わかってる。

こんなことを続けても、どうにもならないこと。それであいつが戻ってくるわけじゃないこと。

それに、こんなやり方、きっと他の連中に迷惑がかかる。それは、本当に、申し訳ない……

それでも俺は、何かをせずにはいられないんだ。


できることなら、もう一度だけ、もう一度だけでいい。

あいつと一緒に、この森を歩きたいなぁ……





 ▼ 759 クラビス@ホエルコじょうろ 18/11/26 03:18:47 ID:C78QxAuc [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




薄っすらと霧の残る明け方の森を歩くルカリオとミミロップ。

できればミミロップに無理をさせたくないルカリオだが、状況に心中で舌を打ちながらも、彼女を守るようにして先頭を進み、移動を急ぐ。

ミミロップは怯えた様子を見せているわけではないが、昨晩の話で過去を思い出した事もあるのだろう、いつもより警戒を強くして足を踏み出している。

ルカリオ「ミミロップちゃん、大丈夫?」

ミミロップ「今のところは」

何より、この状況が彼女をそうさせていた。ルカリオはそれを察し、できるだけ彼女の体調の変化にすぐ気づけるようこまめに様子を確認している。

ルカリオ「くそ、やっぱり霧が濃くなってきやがった……」

薄かった霧も、彼らが歩みを進めるごとに深くなっていく。気がつけば、すぐ目の前さえ満足に見る事ができない程に濃く広がっていた。

ミミロップ「これってやっぱり……」

ルカリオ「ああ……洋館に誘われてしまったみたいだ」

ぎりっと歯を鳴らすルカリオ。

『ハクタイの森の洋館では、不思議な事が起きる』

シンオウ出身者ならおおよそ誰もが噂程度にでも知っている話。人間達の間では少し違う話として流れているようだが、ポケモン達の間ではこのように伝わっている事が多い。

時期によって起きる事が様々異なっているらしいのだが、その多くは淫楽関係のものだとルカリオは聞いている。ミミロップもその認識でいるらしく、過去の経験も相俟って、警戒心を強くせざるを得ないようだ。

ルカリオ「大丈夫、俺がついてる。絶対に俺が守るから」

ミミロップ「うん、ありがとう」

ぎゅっとルカリオの腕を抱くミミロップ。警戒を解くことまではしないが、彼のぬくもりを肌で感じ、気持ちはかなり落ち着いた。

ルカリオ「あ……」

できれば巻き込まれたくない……そう思う二匹の望みも空しく、彼らは噂になっている洋館に辿り着いてしまう。

深い霧に包まれ淡い朝日に照らされたその建物は、ただ見ているだけでも吸い込まれて自我を失ってしまいそうな程に不気味で恐怖を駆り立てるものだった。
 ▼ 760 ザンドラ@フリーズカセット 18/11/26 07:21:06 ID:5yxAOMs. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 761 トベター@ファイトメモリ 18/11/28 00:31:53 ID:Cffs/zxA [1/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




ハクタイの森のどこかに建っているという、無人の洋館。人間達にとってはホラースポットであり、幽霊が出ると噂されている怖ろしい場所。しかしその正体の多くはゴーストポケモン達によるもので、人間の見ている恐怖はポケモン達にとっては取るに足らないものである事がほとんど。

だが、そのポケモン達でさえ恐怖に身を震えさせる何かがこの洋館では起きると言われている。

例えばある者は幻覚に惑わされ自ら命を絶ち、ある者は享楽の限りを尽くし気を狂わせ、ある者は怨念にとり憑かれ永遠に生死を彷徨う……内容は様々あれど、どれも洒落にならないものばかり。

そんな不思議な現象が起きるハクタイの森の洋館だが、誘われる時には必ず薄い霧に包まれるのだという。そのまま歩き続けていると霧が深くなっていき、どこをどう歩いても洋館に辿り着いてしまうらしい。

ルカリオ「できれば避けて通りたいけど……」

ミミロップ「またここに戻ってきちゃうのよね……」

噂通り霧に包まれ洋館へ辿り着いてしまったルカリオ達は、関わらないようにと洋館の前から移動してみるのだが、どういうわけかどこに向かって歩いても同じ場所に戻ってきてしまう。

各所で耳にしていた話と同様の現象に冷や汗を垂らす二匹だが、内心実はそう恐怖しているわけではない。というのも、彼らの住んでいる町にはゴーストタイプのポケモンも多く存在し、彼らと交流があるおかげでこの手の恐怖にはある程度慣れているのだ。

繰り返しになるが、森の洋館で起きる様々な現象はポケモンによるものと噂されている。相手がポケモンであれば、ルカリオ達が恐怖する事は何も無い。話が通じる相手ではない事もあるだろうが、ポケモン同士であれば会話がなくともバトルで決着できる。

ただ、問題があるとすれば……

ミミロップ「これ、中に入って元凶倒さないと抜け出せないってやつ?」

ルカリオ「たぶん……」

大会までまだ日があるとはいえ、もうそろそろトレーニング以外の事に時間を割きたくないというのが正直なところ。一筋縄ではいかないであろう事態に、苦い顔をするしかない。
 ▼ 762 ゲツケサル@ラッカのみ 18/11/28 00:32:14 ID:Cffs/zxA [2/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「(……なんかむずむずする)」

この現象を引き起こしているポケモンと戦うのなら、さっさと洋館に入っていけばいい。そう思うのだが、それとは別に、ある感情がじわりじわりとルカリオの中でわきあがってきて、その存在を彼に知らしめつつあった。そしてそれはあっと言う間に彼の思考を侵蝕していき、今度は理性を奪いにかかっている。

ミミロップ「? どうしたの?」

ルカリオ「っ、な、なんでもないよ……」

笑って誤魔化すルカリオ。

だかそれを言う彼の頬はほんのり紅く高揚しており、心なしか吐息も熱く扇情的だ。表情もどこか悩ましく蕩けていて、一部を除いた身体中から力が僅かに抜けている。唯一力の抜けていない部分は反対に存在を強く主張しており、ぴくぴくと苦しそうに小さく跳ねていた。

何より、すぐ隣にいる最愛の妻ミミロップを見ると、どうしようもないくらいに気持ちが昂ってしまう……早い話が、彼は発情してしまっていた。

ミミロップ「何でもないようには見えないけど……」

ルカリオ「あっ、だ、だめ、触っちゃ」

ミミロップ「きゃっ!?」

不審な動きを見せるルカリオを心配し、ミミロップは彼の身体に身を寄せる。すると、ただそれだけでルカリオはびゅくびゅくと夥しい量の精を彼女の身体にぶちまけてしまった。

ルカリオ「ご、ごごごめん、俺も何がなんだかわからなくて……」

ミミロップ「…………」

いきなり精子の雨を浴びせられ、呆然とするミミロップ。この状況でこんなこと、流石に怒られるかと思ったが、先ほどまで冷静だった彼女の様子にも変化が見られた。

身体にかかった精子を手で掬い取り、恍惚とした表情でそれを眺めている……触発されてしまったようだ。
 ▼ 763 レセリア@チーゴのみ 18/11/28 00:32:45 ID:Cffs/zxA [3/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「んちゅ、ぺろ……こんな状況だけど、でも……」

指についた精子を丁寧に舐め取り、濡れた目でルカリオを見る。

妖艶淫靡なその光景に、ルカリオは思わず生唾を呑み込んだ。

ルカリオ「で、でもこんなところ、誰が見てるかわからないよ……」

口ではそう言うものの、身体は行為を否定しない。ルカリオは両手をミミロップの背中に回し、抑え切れない感情を爆発させるように強く抱きしめる。

そもそも、先に欲望を爆発させてしまったのはルカリオの方だ。彼が何を言った所で説得力など皆無、増してやそのせいで同じように欲情し始めてしまった彼女を享楽無くして落ち着かせるなどできるはずもない。

ミミロップ「ふふ、まだ硬いね」

ルカリオ「んあっ」

ミミロップの指が、精を放出してもなお主張を続ける彼の肉棒に優しく触れる。それだけでルカリオは全身を震わせ、恍惚に甘い吐息を漏らした。

その反応がとても悦ばしく、ミミロップは得意げにぺろりと舌なめずりをして彼の逸物を握りゆっくりと上下させていく。

ルカリオのそれは精子と先走りでぬるぬるになっており、少し手を動かされるだけでもどかしい刺激に襲われる。ルカリオはそんな微弱な快感に悩ましげな表情を浮かべ、顎を上げて口をぱくぱくさせた。

時折、早く強い刺激が欲しいとばかりにミミロップを見るも、彼女は悪戯な笑みを浮かべるだけで願う通りにはしてくれない。

まるで、女王様とそのしもべ。修行に出てからはあまり行ってこなかった、普段の彼らが家でよく行う主従プレイ。ドSなミミロップとドMなルカリオの、狂おしい愛の形が今ここに展開されている。
 ▼ 764 ャオブー@バコウのみ 18/11/28 00:33:02 ID:Cffs/zxA [4/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「どうしてほしい?」

ルカリオ「お、おちんちん、しごいて欲しいでしゅ……」

ミミロップ「ふふ……なら、もっとおねだりしてみなさい?」

ルカリオ「おちんちん、もっと弄ってくだしゃい、お願いしまふ!」

ミミロップ「どうしようかなぁ……」

くにくにと指先で淡い刺激だけを与え続けるミミロップ。彼女に触れられる度に逸物はぴくんと反応して見せるが、あまりに弱い刺激しか与えてもらえないため射精はおろか快感に身を委ねることさえ叶わない。かといって、自分から腰を突き出したり、彼女を取り押さえて快楽を貪ることはできない。

それはまるで、訓練された犬のよう。

ルカリオという忠犬は、ミミロップという主人に逆らう事などできるはずもないのだ。

ミミロップ「じゃあ、三回まわってワンって言ったら」

ルカリオ「わん!」

ルカリオはミミロップが言い終わるより早く、その場でぐるぐる回って声高らかにそう叫んだ。

あまりの忠誠ぶりに流石のミミロップも僅かに驚く。

この様子、友人達に見られたらなんと思われるだろうか。とても情けない姿であることは間違いないのだが、それだけこの二匹の世界は深く尊いというもの、生ぬるい関係では成しえない何かを感じさせる。良し悪しは別にして。

ミミロップ「まだ私が喋ってる最中なのに、悪い仔ね」

ルカリオ「はうっ」

ミミロップ「そんな仔は、どうしようかしら?」

ミミロップはルカリオの顎に手を当て、不機嫌そうに厳しい視線を投げかける。

ルカリオは主の機嫌を損ねてしまったと視線を彷徨わせ、くぅんと本物の犬のように短く悲鳴をあげた。
 ▼ 765 ンバドロ@たつじんのおび 18/11/28 00:33:24 ID:Cffs/zxA [5/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「ん……」

ルカリオ「ふぇ……」

しかし、こんな関係を築いていながらも、ミミロップは完全な女王様になれるタイプではない。

ルカリオの事をいじめればいじめる程股は熱くなり、とろとろと淫らな液体を垂らしていく。それが太ももを伝って流れ落ちる頃には、彼をいじめている方とは反対の手で自分の割れ目をくちゅくちゅと触り始めてしまうのだ。

二匹とも、本質はあくまで淫乱。性行為の際にプレイとして構築する関係も即席のものでしかなく、最終的には自身の快楽を優先させてしまう。動物的と言われればそれまでだが、それが彼らの性の形なのだ。

ルカリオ「ミミロップちゃん、めっちゃお汁垂れてる……」

ミミロップ「そんな所見て、本当に悪い仔ね!」

ルカリオ「あおぉん!」

我慢がきかなくなりそうな所をルカリオに指摘され、思わず彼の肉棒をぎゅっと握る。それで一瞬浮かんだ彼の得意げな表情はリセットされたが、かといって自身の疼きが治まるわけではない。

自らも気持ちよくなりたいとはいえ、最低でも主導権は渡すつもりなどない。ミミロップは厳しい表情を崩す事無く、彼の逸物から手を離し、両手を広げた。

ルカリオ「う、わっ」

ミミロップ「な・ま・い・き」

ぺろりと舌で口元をなぞるミミロップ。

自らの淫乱ぶりを隠すよりむしろ見せつけてやろうと決め、ルカリオを押して地面に尻餅をつかせる。そして彼を地面に完全に押し倒し、ゆっくりと顔の上にまたがった。
 ▼ 766 ナップ@どくけし 18/11/28 00:33:45 ID:Cffs/zxA [6/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
すぐ目の前に、愛する妻の性器が見える。それも愛液でどろどろに濡れそぼっていて、ルカリオの頬に、鼻に、たらりと水滴が垂れ落ちてくる。時折きゅっと割れ目が締まり、押し出された愛液がいっそう彼の顔を淫らに汚していく。

普段は体毛に覆われぴっちり閉じているそこも今は蕩けて緩んでおり、ひくひくといやらしく動いている様子は淫靡そのもの。これまで幾度となく行為を重ねて見慣れているとはいえ、この光景には恍惚とした表情を浮かべる他ない。

ルカリオ「すごい、すごいよ……ミミロップちゃん」

ミミロップ「ふふ、そう?」

あまりにも淫猥な光景に、ルカリオの理性は爆発寸前。彼の逸物は今にも射精してしまいそうなくらい大きく膨れ上がり、すぐにでもこの淫らな穴へ、その奥に広がる秘密の花園へ種を植え付けにいきたいと、強く強く主張する。

ミミロップ「とりあえず、舐めて」

ルカリオ「んむっ!」

ルカリオが恍惚としているのも束の間、ミミロップは彼の上あごを押し上げ、ぐっしょりと濡れた秘部を押し付け始める。それも、ただ押し付けるだけではない。彼の口で自慰行為をするように、敏感なところをこすり付けるようにして小刻みに動かしている。

状況がそうさせるのだろうか、ミミロップももう我慢ができなくなってきたようだ。自分が彼のご主人であるという設定も忘れ、愛する夫の口を使って気持ちよくなる事に集中し始めている。

だが、こうなってくるとルカリオもただされるがままではない。彼女の割れ目が接触するや否や、キスをするように口を強く押し付け、流れてくる淫らな液体を少しでも多く味わおうと大きく吸い上げる。

大好物の味に表情を蕩けさせるルカリオ。だがそれだけでは飽き足らず、より彼女の愛を貪ろうと舌を使って陰唇や尿道口を舐め回し、彼女が感じる手助けをし始めた。

ミミロップ「んっ、んあっ、ひゃう!」

ルカリオ「んちゅ、ぺろれろ、じゅるっ、ちゅるるるっ」

舐めれば舐めるほどミミロップの陰部からは愛液が噴き出し、ルカリオをミミロップ色に染めていく。もうルカリオはミミロップの愛を受け止める事と自身の欲望を爆発させることしか頭にない。
 ▼ 767 ャヒート@エフェクトガード 18/11/28 00:34:08 ID:Cffs/zxA [7/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「んふ、ふぁああああっ、イっ、く……!」

耐え切れず、ミミロップが潮を吹く。より多くの液体がルカリオの口内へ流れ込んでいくも、彼は待ってましたとばかりにすぐさま飲み干してしまう。そして休む間も無く、彼の舌攻めが再開する。

そんな事を、もう何度繰り返しただろう。ルカリオの顔はミミロップの愛液でびしょ濡れになり、ミミロップは足に力が入らないほど何度も膣を痙攣させた。

ルカリオ「もう、いいだろ?」

ミミロップ「うん、して」

だがそれでも、彼らにはまだやりたい事がある。

極限まで我慢を強いられ大きく膨らんだルカリオの男根、極限までイき尽くし彼専用に仕上がったミミロップの膣内。

いま繋がったら、どうなってしまうのだろう……答えなどわかりきっている。わかりきっているからこそ、もうすぐ迎える最上の恍惚に気が狂いそうなくらい期待がかかる。

ルカリオ「じゃあ、いくよ……っぐ、ふぁあ、あうあっ」

ミミロップ「んあ、は、はいって、くるぅううんっ」

身体をずらし、ミミロップの割れ目に陰茎を押し込むルカリオ。

まだ、人間で言うところの、亀頭部分が膣内へ入り込んだだけ。だがただそれだけで、その尖端からは大量の白い液体が彼女の膣内へと吐き出された。

普段から一度の行為で何回も射精するルカリオ。今回はまだ始まりに一度出しただけだ、無理もない。

ルカリオ「おあああああ、これ、やっばい……」

ミミロップ「んふうううう」

無論、それで終わるルカリオではない。彼は射精を行いつつ腰を更に押し上げ、硬さの全く衰えない自身の象徴を彼女の奥深くへと埋め込んでいく。

そんな彼の逸物が奥まで届くのが待ち切れないのだろう、ルカリオに挿入を任せつつもミミロップは少しずつ腰を落とし、より深いところへと彼のものを誘い込む。

射精を伴わせながらの挿入。敏感になる性器に甘く強い刺激が加わることで、ルカリオは射精を止める事ができない。

同様に、彼の肉棒が入り込んでくる感覚、そして愛する彼の精液という何よりも強い媚薬に、ミミロップは膣の収縮を止められない。

まさに相乗効果。一度始まってしまえば、お互いがイき合って快楽に溺れ続ける。もはや、ルカリオの精が尽きるまで行為は終わらない。
 ▼ 768 ャランゴ@ドラゴンメモリ 18/11/28 00:34:25 ID:Cffs/zxA [8/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「うっ、うっ、うああ、はっ、はっはっ、っく、はぁ」

ミミロップ「んんっ、あんっ、あっ、あはぁ、んふぅ」

霧が立ち込める中、お互いの愛をぶつけ合う二匹。彼らの悦楽の音だけが、この界隈を支配する。

箍が外れたように何度も腰を突き出すルカリオ。それに合わせて腰を上下させるミミロップ。

もう一生、永遠にこのままでもいい。二匹だけの世界で、誰にも邪魔されないこの場所で、死ぬまでこうして繋がっていよう……そんな甘言が二匹の脳裏を通りかかる。

ルカリオ「!!」

ミミロップ「きゃっ」

突然、ルカリオはミミロップの手を引いて抱き寄せた。

倒れこむようにして彼の胸に身体を預けるミミロップ。瞬間、ルカリオの逸物からより多くの精液がミミロップの子宮目掛けて発射される。

一定の間隔で何度も吐き出される精子。ルカリオは腰の動きを止め、ただ愛の結晶を届けることに専念している。

その様子にミミロップも大人しく身体を落ち着かせ、彼の愛を搾り取って受け止める事に集中した。

ルカリオ「…………」

ミミロップ「…………」

やがて、長い長い射精が終わり、激しかった性行為の余韻が彼らを包む。

繋がったまま、ぎゅっと抱き合う二匹。本来であれば最も尊い時間として流れに身を委ねるのだが、今回はルカリオもミミロップも息を整えるや否やその身に緊張を纏わせ始める。

そして訪れる、沈黙。

愛の語らいが終わりを迎えたこの場に、響く音など何も無い。

だからこそ、確信する。ルカリオは充分に周囲を警戒した後、ミミロップにしか聞こえない程度の小さな声で呟いた。

ルカリオ「……やられた。噂通りだ」
 ▼ 769 ガミミロップ@つきのいし 18/12/01 19:03:14 ID:LLXgYqcw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 770 オラント@かいのカセキ 18/12/03 02:08:41 ID:TjTE0sb6 NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 771 チャブル@ふしぎなきのみ 18/12/05 01:31:39 ID:QOt6kYFQ [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
夫婦揃って快楽に溺れかけてから数分。警戒して辺りを窺うも何かが襲ってくるような様子はなく、誰かに見張られていたり、行為を覗き見されていたような気配もない。

広がるは、無音の世界。

自分たちの吐息や心臓の鼓動しか耳に届くものはなく、まるで異世界にでも連れてこられてしまったようにさえ錯覚する。いや、実際既に誘われてしまっているのかもしれない。

ルカリオ「……誰もいそうにないな」

このままじっとしていても仕方が無い。ルカリオはミミロップの手を握り、洋館を見上げる。中へ入ってこの現象を引き起こした原因を討とうと考え、意を決して傷だらけの扉に手をかけた。

ミミロップ「暗く……ない?」

ルカリオ「電気が通ってるのか……? いや、しかしここは廃墟のはず……」

ぎぎぎと扉が軋む音を耳にし玄関を潜り抜けると、そこは想像とは全く異なる世界。

床には立派な絨毯が敷かれていて、各所にはポケモンの石像や絵画が飾られている。エントランスを進んだ先には左右に大きな階段があり、その奥には大きく立派な窓が少し見えた。

あちらこちらにスポットライトや電気スタンドが設置され、天井にはシャンデリアまである。掃除が行き届いているのだろう、エントランスはそれらに照らされきらきらと輝いていた。

森の奥にひっそりと佇む廃屋に入ったのだから真っ暗でボロボロの内装が広がっていると想像していたが、実際には驚くことに、館内は今も人が住んでいると断言できる程に明るく綺麗だった。

ルカリオ「なんだここ……」

ミミロップ「まさか、今でも誰か住んでるの……?」

ぽかんとする二匹。ボロボロの外観からは想像さえできない光景が広がっていたのだから、無理もない。
 ▼ 772 ーゴヨン@ふしぎなアメ 18/12/05 01:31:57 ID:QOt6kYFQ [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しかし、すぐにこれは幻覚の類ではないかと気づく。

外観と内装のギャップ云々以前に、そもそもこれだけ明るければ少しでも光が外に漏れているはずだ。増してや、この洋館の窓は一見して大きいものが多く、この状態、外から中の様子がわからなかったなど考えられない。

つまり、これは何者かが作り出した世界、ルカリオとミミロップに見せている幻影。現実であって、そうでないもの。

しかし、既に敵の術中にとらわれてしまっているならば、この幻覚から抜け出すのは容易ではないだろう。場合によっては、幻覚の中で術者を探し出して中断させる必要がある。ただ逃れるだけであれば幾分は楽であるが、状況から考えるにそれは叶わなさそうだ。

ミミロップ「とりあえず……襲われたりはしないわね」

ルカリオ「今の所危険はなさそう、かな? まぁ霧に包まれた時点でアウトなのかもだけど」

もしかしたら眠らされるなりしていて、今ここに居る自分たちは自分たちであってそうでない不安定な存在なのかもしれない。例えばリーフィアの時のように、自分たちは夢の中にいるのかもしれない。

何にせよ、こうなってしまったのだ、二匹はとにかくこの奇妙な世界から抜け出すために行動する必要がある。

ルカリオ「とりあえず、見て回るか。何かいるかもしれないし」

ミミロップ「外には出てみないの? もしかして、そのまま出ていけるかもよ?」

ルカリオ「そう簡単にいくといいけど……」

首だけで振り返り、入ってきた玄関扉を見る。

ミミロップ「開けてみましょ」

ルカリオ「あっ、うん」

何か起きる可能性もあるのではないかと考え始めていたルカリオだが、ミミロップは彼の心配をよそにすぐさま扉を開けにかかった。
 ▼ 773 レキブル@もえぎいろのたま 18/12/05 01:32:20 ID:QOt6kYFQ [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
壮麗な見た目とは裏腹に、重く錆び付いた音を立てて扉が開く。途端感じる肌寒さ、室内に入り込んでくる白い霧、広がる薄気味悪い森の光景……どうやらルカリオの心配は杞憂のようだった。

ミミロップ「どうする? 出ていく?」

ルカリオ「でも、どこを歩いても洋館の前に戻ってきちゃったよね」

ミミロップ「そういえばそうか……」

言うなれば、洋館とその周辺の森まで全てが幻想。森を歩き続けても元の世界へ戻る事ができないのなら、行き先はやはり洋館の中ということになる。

ルカリオ「……やっぱり中で手がかりを探そう」

ミミロップ「それしかないか……なんか、変な感じだから気持ち悪いのよね」

ルカリオ「まぁ、中には誰もいなかったしね」

トウカの森でも感じた、正反対のイメージが混在することによる気味の悪さ。

煌びやかな室内であるにも関わらず、そこにはポケモンの姿も人間の姿も見当たらない。特に、生活が感じられる景色に命あるものがいないという光景は、ミミロップにとって「頭の中がもぞもぞする」ものだった。

ルカリオ「俺がいるから、大丈夫だよ」

ミミロップ「今日はえらく心配してくれるわね? でも、ふふ、ありがと」

ミミロップの心境を察し、手をぎゅっと握るルカリオ。

昨晩聞いた彼女の過去を考えると、今は片時でも彼女を離したくない、そんな気持ちになっているのだろう。今は隣に自分がいる、もう辛い思いなんて絶対にさせないと、そう言うように彼は彼女を抱き寄せた。

ミミロップ「じゃあ、一部屋ずつ見ていきましょうか」

ルカリオ「そうだね。左から順に歩いていくよ」

やはり幻覚を見せている何者かを探そうと、もう一度玄関の重い扉を開けて中へ入る二匹。

そんな彼らを、真っ暗な森の向こうから何者かがじっと覗き見ていた。
 ▼ 774 イボルト@ピッピにんぎょう 18/12/05 01:32:43 ID:QOt6kYFQ [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



ルカリオ「さて……洋館に戻ってきたわけだが」

再度洋館に入ればまた違った光景が広がっているかもしれないとも思ったが、最初に入ってきたときと同じ内装が見えるのみだった。

術者は近くにいて常時何かを仕掛けている、というわけではないらしい。

ミミロップ「左っていうと早速階段になるけど……」

ルカリオ「エントランスには何もいないし、不審な点も見当たらないしな……」

玄関を潜り抜けて見える範囲に部屋は一つしかない。一見して、階段の前を通り過ぎた真正面だけだ。

見えないだけで部屋はあるのかもしれない。隠し扉みたいなものがあるのかもしれない。いくらでも可能性は考えられるが、とりあえず二匹は今見えているところから探索を開始することにした。

正面に見える、大きなドア……食堂である。

ミミロップ「ん」

ルカリオ「どうかした?」

忙しなく辺りを見回しながら、ぎゅっと手を繋いで食堂のドアへ近づく。正面に立ちさあドアを開けようかというとき、ミミロップは左右を見回して小さく首を傾げていた。

ミミロップ「これ、石像? 銅像? わかんないけど、片方しかないのね」

ルカリオ「ほんとだ。なんでだろ、壊れちゃったのかな?」

何とも暢気なことを考えているルカリオだが、予想が正しいのであればここは幻想の中、たとえ壊れたのだとしても一瞬で元に戻すことさえ容易いだろう。

ルカリオ達は気づいていないが、この洋館の内装は左右対称に作られている。オブジェの配置も、階段の位置も、絵画の内容や設置場所も、部屋の数や場所も、全てシンメトリー。つまり、ミミロップの抱いた疑問は、彼女達が思っている以上に不自然なものなのだ。

ルカリオ「何か意味があるのかも……」

ミミロップ「ここを抜け出すヒントとか?」

ルカリオ「まさかそんな、ゲームじゃないんだし……」

そう言いつつも気がかりなのか、ルカリオはぽつんと一つだけ設置された像をまじまじと眺めている。
 ▼ 775 ジーロン@タマゴふかポン 18/12/05 01:33:04 ID:QOt6kYFQ [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「あ」

ルカリオ「え、なに? 何か見つけた?」

ミミロップ「ううん、像っていえば、まだ私達が付き合いたてくらいの頃に帰り道で見た像を思い出して」

ルカリオ「……それ、記念日の夜の話?」

ミミロップ「そうそう」

ミミロップは当時を思い出してか嬉しそうにくすくす笑っている。対してルカリオは、なんだかあまり面白く無さそうな表情を浮かべていた。それもそのはず、その話はルカリオにとって恥ずかしい話でしかないからだ。

彼らが付き合い始めて一ヶ月、その記念にと一日中デートをした日の帰り道でそれは起きた。

どこかで性的な夜を過ごそうとも話していたが、外食を済ませ草原で手を繋いでぼんやりと空を見上げていたら、今日はこのまま穏やかに過ごすのもいいかもしれないという所に落ち着いた。そしてそれから、すっかり日も暮れ月明かりだけが頼りになった町外れを、彼らは家に向かって歩いていた。

ルカリオの両手にはその日ショッピングで購入した荷物。ミミロップの両手には帰りがけに買ったケーキの箱。周りには彼ら以外誰もおらず、二匹の幸せそうな話し声ばかりが周囲の音を支配している。

調子よく歩いていた二匹だったが、突然ルカリオの前に大きな石像が現れ……否、現れたのではない。知らず知らずのうちに、彼が石像に向かって歩いていただけだった。

ミミロップ「話に夢中で周り見てなかったのよね」

ルカリオ「だってあれ、あんな所に石像あるなんて気づかないじゃん。誰だって驚くよ」

ミミロップ「声に出して笑ったわ、ふふ、今思い出してもおかしい」

ルカリオ「くそう……」

ただ驚いただけではない。ルカリオは思わぬ事態に持っていた荷物を放り投げ、盛大にすっ転んでしまったのだ。
 ▼ 776 ルビル@よごれたハンカチ 18/12/05 01:33:21 ID:QOt6kYFQ [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「でも、ケーキ持ってるの俺じゃなくてよかったよ」

ミミロップ「まぁコップは割れたけどね」

ルカリオ「そ、そうだけどさ……」

先ほどまで感じていた緊張感などどこへやら。彼らにかかれば、ひとたびのろけが始まれば幻覚など気にもならないのかもしれない。

しかし、だからこそ気づく。これは、幻覚ともまた少し違った現象なのだと。彼らの意識に働きかけているのであれば、この思い出し笑いで壮麗な洋館の景色は消えてなくなるはずだ。

ルカリオ「も、もういいでしょその話は。さ、中に入るよ」

ミミロップ「えーまだ色々あるでしょ、ルカリオ驚きシリーズ」

ルカリオ「そんなシリーズいらないよ……ほら、行くよ!」

ミミロップ「ふふっ、はいはい」

今となっては確かに楽しい思い出の一つではあるが、自分の恥ずかしい話はできれば思い出したくないもの。ルカリオは複雑な気持ちを誤魔化すように、そさくさと食堂の扉を開けた。

だが、その話でだいぶ気が楽になったのも事実。得体の知れない状況に内心感じていた恐怖も薄れ、ミミロップはそんな自分の心境を読み取り気を遣ってくれたのだと思うと、今度は愛しさがぐっとこみ上げてきた。

だから彼は、ぎゅっと彼女を抱きしめた。

ミミロップ「えっちょ、急にどうしたの」

ルカリオ「いや、その、うん……ねえ?」

ミミロップ「ねえって言われても……まぁいいけど。じゃあ私も、ぎゅー」

見ず知らずの洋館で抱き合う二匹。こんな状況ではあるものの、彼らは今日も問題なく幸せらしい。

だから彼らは気づかなかった。中途半端に開いた扉の向こう、食堂の奥の方を何かが通って行ったことに。
 ▼ 777 ルガー@コイン 18/12/05 16:54:17 ID:iqssmYyE NGネーム登録 NGID登録 報告
シエンネ
 ▼ 778 ンタロス@のこされたボール 18/12/05 17:59:38 ID:5uwABXeI NGネーム登録 NGID登録 報告
ベルが出てきたってことはプラズマ団か?あれは
支援
 ▼ 779 ツドン@みずのジュエル 18/12/09 21:48:20 ID:tyrEqNhs [1/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




エントランス最奥にある大きなドアの向こうには、やはり荘厳な風景が広がっていた。

豪華絢爛な椅子や長机、大きな絵画、各所に置かれた美しい観葉植物……どれをとっても高級品と思われるものばかりで、この洋館には相当なお金持ちが住んでいると想像できる。これらを取り揃えるのに一体どれくらいのお金を稼がなければならないのだろう、ルカリオ達には想像も難しい。

尤も、ここは幻想の中、どんなに高級な品物であっても一瞬のうちに再現する事ができるはず。それどころかそもそも、モデルとなるものさえ存在しないのかもしれない。

ルカリオ「ここは……食堂?」

ミミロップ「そうみたいね。テーブルクロスかかってるし、蝋燭立てみたいなのもあるわ」

まるで今にも、テーブルにつけばカロスのコース料理が出てきそうな雰囲気。あまりにも場違いな空気に、二匹は少々息を詰まらせている。困窮した暮らしを送っているわけではないが、豪華な生活など雲の上なのだ。

とはいえ、相変わらず人の気配もポケモンの気配もしない。居慣れない空気にたじろぐのも僅かな時間のこと、すぐに不気味さや奇妙さがそれらを食い尽くしてしまう。

ルカリオ「ぱっと見何もなさそうだけど……」

ミミロップ「誰もいないし、ここははずれ?」

ルカリオ「術者を見つけないとだし、そうっぽいね」

自力で逃げる事ができないとすれば、ここから脱出する方法はただひとつ、幻想を仕掛けている何者かを討つなりするしかない。となれば、誰の気配もしない場所は、迷路でいうところの行き止まりみたいなもの。立ち止まっていても時間を浪費するだけである。

この手の術にかかっている間は、長居すればするほど危険度が高まる。できるだけ早急に対処したいところ。

ルカリオ「ううっ……なんか寒くない?」

ミミロップ「そう? いつものシンオウの気候って感じだけど」

ルカリオ「なんか身の毛がよだつというか、頭の先まで震えるというか……」

ミミロップ「もしかして怖いの?」

ルカリオ「んなっ……こ、怖くなんてないぞ! ただ、なんか変な感じがするんだ」

ミミロップ「あーらあら、顔赤くしちゃって」

ルカリオ「うぅ……」

怖いというのも確かに嘘ではないのだが、ルカリオが感じているものは恐怖のそれとはまた別な感情。彼は波動を読み取る事ができる分、他のポケモンよりも感覚が敏感なのだ。

勿論ミミロップはそれをわかっていて、冗談半分に彼をからかっている。これも、雰囲気に呑まれてしまわないようにという、彼女なりの配慮だ。
 ▼ 780 オップ@フィラのみ 18/12/09 21:48:55 ID:tyrEqNhs [2/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「とにかく、次の部屋に行ってみよう」

ミミロップ「次は二階だっけ?」

いつの間にか閉まっていた出入り口のドアノブに手をかけるルカリオ。しかし、彼の手はそこで止まることになる。

ミミロップ「あれ、どうしたの?」

ルカリオ「……開かない」

ミミロップ「ええっ!?」

食堂のドアノブは握って下げるとボルト部分が引っ込み、そのまま押すなり引くなりするとドアが開く、よくあるタイプのもの。

いまルカリオはそのドアノブを下げようとしているのだが、どういうわけかがっちり固まっているようで全く動いてくれない。

ルカリオ「鍵がかかったのか……? 誰か外にいるのかな」

ミミロップ「でもこれ、鍵穴みたいなのないわよ? つまみも無さそうだし」

おおよそのドアはサムターンと呼ばれるつまみをひねってデッドボルトを押し出すことで、ドアを開かなくする。ドアをロックしてもドアノブを下げることができるものとできないものがあるが、どうやらこのドアは後者らしい。

ミミロップ「壊す?」

ルカリオ「あんまり物を壊したくはないけど、仕方ないね」

ミミロップ「そうよね」

ドアノブから手を離し、身構える。対象を最大効率で破壊できるよう神経を集中させていく。

ルカミミ「覇っ!!」

二匹のタイミングは完璧。ぴったり揃った二匹の脚と拳が、ドアの一部に炸裂した。
 ▼ 781 ジュマル@ミクルのみ 18/12/09 21:49:27 ID:tyrEqNhs [3/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「……全く効いてない」

ミミロップ「罅ひとつ入ってないわね……」

二匹とも、全力ではないものの厚手のドア程度なら破壊しても有り余るくらいの攻撃を叩き込んだつもりだった。しかし、この有様である。

ルカリオ「でも、全く痛くない。普通のドアじゃなさそうだ」

ミミロップ「こういうのも全部幻覚や幻想だからってこと?」

ルカリオ「たぶんね。俺達には鍵がかかったドアに見えてるだけで、実際には全く違う何かを殴ったり蹴ったりしてるのかも」

自分の拳を見つめるルカリオ。そこに何の傷跡も汚れもついていないところを見ると、殴った感触さえ幻なのかもしれない。

ルカリオ「仕方ない、ここでどうにかするしかなさそうだ」

ミミロップ「どうにかって言っても……どうするの?」

ルカリオ「……さあ?」

最悪、単に閉じ込められただけで外へ出るための仕掛けなど全くないのかもしれない。術者がここではない別な場所にいるとすれば、ルカリオ達は永遠にここから出られない可能性もある。無論、そのような可能性など考えたくもないが。

ルカリオ「とにかく、手がかりを探そう。何か見つかるかもしれない」

ミミロップ「そうね。じっとしてても仕方ないし」

再び食堂をぐるりと見回してみる。

お金持ちの住む家というものが普通どのようになっているのか二匹にはわからないが、見たところ違和感を覚えるような所は何も無い。庶民的な生活しか知らないために、気づけないのかもしれないが。
 ▼ 782 メルゴン@ミュウツナイトX 18/12/09 21:50:33 ID:tyrEqNhs [4/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ドアを離れ、食堂を探索すべく歩き始める。

ミミロップ「あれ、これって……」

すると程なくして、ミミロップが足を止めて目を凝らす。

ルカリオ「う、これは、血だ」

ミミロップ「やっぱりそうよね」

彼女が見つけたのは、床に敷かれたカーペットに広がる赤い模様。既に乾ききっているため赤と言ってもかなり黒ずんだ色で、触らずとも固体化していることは見てよくわかる。

ここで誰かが怪我でもしたのだろうか。カーペットを染める赤の色はそれなりに広く、例えばナイフで指を切ってしまったという程度ではなさそうだ。

ミミロップ「ここで誰か死んだりしたのかな」

ルカリオ「ええっ、まさかそんな……ねえ?」

そういう話は否定したい。だが、現実はひたすら残酷かもしれない。

ただ、カーペットに血液がこびりついているこの状態のみから真実を知ることはできそうにない。

ミミロップ「でも、こういう洋館ってそういう事件的な事が起きてそうじゃない?」

ルカリオ「そんなの、ドラマやゲームの見すぎだよ」

ミミロップ「でもこの血の量よ? もしかしてこういうの解いていく必要があるのかもよ?」

ルカリオ「そんなまさか……」

流石にそれはと少々呆れるルカリオ。しかし、そんな彼を笑うような現実が直後に待っていた。

やれやれと顔を上げたルカリオの視線の先、何も置かれていなかったはずのテーブルに一冊の手記のようなものが出現していた。
 ▼ 783 ドラン♂@レンズケース 18/12/09 21:51:07 ID:tyrEqNhs [5/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「……こんなの、さっきなかったよね?」

ミミロップ「たぶん……でも、見落としてただけかもよ?」

ルカリオ「そうかなぁ……」

強い不信感を覚えつつも、この手記を手に取らなければ先へ進むことはできないと、何故かそんな気がしてくる。

理屈ではない。不思議と、そう思えてならないのだ。

ルカリオ「……何が書いてあるんだろ」

ミミロップ「え、あけてみるの?」

ルカリオ「こんな状況だし、あるものは確認していかないとね」

ミミロップ「急に勇敢になったわね」

ルカリオ「腹括ったの」

実際は大して心持ちが変わったというわけではないのだが、いい加減嫁に惨めな姿を晒し続けるわけにもいかない。新たな展開にルカリオは気合を入れなおし、状況を打開すべく強く息を吐いた。

ルカリオ「……あれ、ほとんど真っ白だな」

ミミロップ「なんだ、何も書いてないのね」

ルカリオ「そうみたい……いや、最初らへんのページに何か書いてある」

罫線すらない真っ白な手記。その一ページ目には、意味深な言葉が書き綴られていた。



『先輩もついにやられてしまった。残ったのは、俺だけ? じゃあ一体、誰が犯人なんだ? ありえない、こんなことは認められない。俺は何もやってない。ありえない、ありえない、ありえ』
 ▼ 784 ローゼル@きいろのバンダナ 18/12/09 21:51:43 ID:tyrEqNhs [6/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「…………」

ミミロップ「…………」

誰かの残した言葉だろうか、そこに書かれていたものは理解が難しいものだった。

ルカリオ「誰かの日記か何か、かな?」

ミミロップ「わかんない。けど……この血と、何か関係があるのかも」

ルカリオ「他のページには何も書かれてないみたい……」

ぺらぺらとページをめくって見せるルカリオ。手がかりを期待するも、彼の言葉通り、ひたすらに真っ白なページばかりが彼らの目に飛び込んでくるだけだ。

たったこれだけのよくわからない内容を書きとめる理由とはいったい何なのだろう。この文字列に何か意味があるのではないか? この部屋のどこかにこの言葉が当てはまる何かがあるのではないか? 色々考えてみるも、全くぴんと来ない。

ルカリオ「とりあえずこれを考えるのは置いといて、もっと色々探してみよ」

ミミロップ「そうね。ん〜……あら、向こうにも部屋があるわ」

再びぐるりと辺りを見回したミミロップは、食堂の西側に比較的小さなドアがあるのを見つける。小さいといっても玄関や食堂の出入り口に比べればというだけで、一般家庭にあるようなドアの倍程の大きさはあるが。

ルカリオ「お手柄だね。向こうから別な場所に行けるかもしれない」

そもそも鍵がかかっていて開かないかもしれない。破壊しようとしても、傷一つつかないかもしれない。

だが不思議と、そのドアからは難なく別な部屋へ行く事ができるような気がした。

ルカリオ「お、開いたぞ」

ドアノブに手をかけ、移動が可能か確認する。果たしてドアは、彼らの期待通り開いてくれた。
 ▼ 785 ノセクト@こだいのせきぞう 18/12/09 21:52:22 ID:tyrEqNhs [7/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




開いたドアの向こう、そこは調理室だった。

入ってすぐのところに細長い調理台が三つ並んでいて、奥の方には大型冷蔵庫と大型冷凍庫がそれぞれ一つずつ、その隣に調理器やシンクがある。分別に厳しかったのだろうか、シンクの横にはゴミ箱と思われる青い大きなポリバケツが沢山設置されていた。

食堂の広さの割に小ぢんまりとした調理スペース。あれだけ広い長机に料理を出すとなると調理場も結構な施設でなければ厳しいと思われるが、とてもではないがここはそれが満足にまかなえるようには見えない。

そんな部屋に入ってきたルカリオ達だが、ドアを開けて中入ると同時に耳を立てることとなる。

ルカリオ「……何の音だ?」

ミミロップ「これ、水の音?」

はっとして、シンクの方に視線を向ける。

蛇口からは、どういうわけか結構な勢いで水が流されていた。

ルカリオ「何で水が……」

ミミロップ「止める?」

ルカリオ「そうだね、なんかこの音がしてるのも気味悪いし……」

恐る恐るシンクへ近づく二匹。部屋の中が明るいのは幸いだが、何の気配もしない明るい洋館でどういうわけか水が出しっぱなしになっているというのも随分と奇妙な光景である。

ルカリオ「……普通に止まったな」

シンクの前に立ち、身構えながら蛇口をひねる。すると水は次第に勢いを失っていき、最後には蛇口がきゅっと音を立てて閉まった。それで、水は全く流れなくなった。

ミミロップ「なんていうか……流石にちょっと怖いわね」

ルカリオ「得体の知れない恐怖っていうのかな。こういう、意味がわからない系俺苦手だよ」

二匹にしてみれば、幽霊や怪物が出てくる事に恐怖は感じない。ただ、理由も根拠もわからないような、ただただ奇怪な現象ばかりが起きるという状況には気味の悪さを感じる。
 ▼ 786 ーボ@タンガのみ 18/12/09 21:52:51 ID:tyrEqNhs [8/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「シンクに何かあるわけでもなさそうね」

ルカリオ「あったらあったで嫌だけどね」

綺麗な銀色のシンク。新品同様にも見えるそれは、天井から降り注ぐ白いライトを反射してキラキラと輝いている。

もしここに何かあったとしたならば……誰かの生首でも置かれていたのだろうか。

ルカリオ「(ううん、なんでそんな方向に考えちゃうんだ俺)」

ぶんぶんと首を横に振るルカリオ。ミミロップも似たような事を想像したからか、彼女はルカリオのそれに首を傾げることはなかった。

ルカリオ「ここにも手がかりは無さそうかな?」

ミミロップ「たぶん、無いとおも」

ゴトン

ルカリオ「…………」

ミミロップ「…………」

食堂へ戻ろうと二匹がシンクに背を向けたその瞬間、後方から物音がした。

振り返ることを躊躇う二匹。ただ、生物的な何かが後ろに出現したような気配は感じない。

ルカリオ「っ!」

ミミロップ「!」

まるで示し合わせたように、二匹は同時に振り返る。

ルカリオ「……何もいないな」

ミミロップ「今の、どこから聞こえたのかしら」

シンクや調理器具の辺りを見回すも、先ほど見ていた状態から何かが変化したようには思えない。となると、物音がした場所は彼らがまだ見ていない部分ということになる。その場所とは……

ルカリオ「……バケツの中か、冷蔵庫の中か」
 ▼ 787 メルゴン@まひなおし 18/12/09 21:53:28 ID:tyrEqNhs [9/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ここに設置されている冷蔵庫や冷凍庫は業務用のそれくらい大きなもので、かなりの量のものを収納する事ができるだろう。ポリバケツもひとつひとつがそれなりに大きく、ルカリオくらいであればすっぽりと入っても蓋は閉まると思われる。

ミミロップ「……開けるの?」

ルカリオ「どうしよう……正直迷ってる。さっきから波動で探ってみてるけど、何も感じないんだ」

通常であれば、冷蔵庫の壁やバケツ程度なら波動で中身を探る事ができる。しかしここは幻想の中、ルカリオの能力も思うように通用してくれない。

仕方がないので、ルカリオは恐る恐る大型冷蔵庫に近づき耳を寄せて気配を窺う。

ルカリオ「何も聞こえない」

ミミロップ「思い切ってあけてみましょ」

ルカリオ「うえ、まじ?」

ミミロップ「ここでまごついてても仕方ないでしょ」

ルカリオ「あっ」

慎重に慎重を重ねているルカリオをよそに、ミミロップは思い切って冷蔵庫の取っ手を掴む。

ミミロップ「えいっ」

そして一呼吸置くことさえせず、一気に扉を開け放った。

ルカリオ「…………空か」

果たして、冷蔵庫の中は空だった。それどころか、冷気が漏れ出てくることもない。どうやら、そもそも電源が入っていないらしい。

そしてそれは冷凍庫も同じで、やはり容赦なくミミロップはその扉を開け放ってみたが、中に何かが潜んでいる様子も物が置かれていることも無い。

ミミロップ「ってことは、バケツ?」

ルカリオ「そうなるけど……」

シンク横のポリバケツを見る。数えてみればそれらは全部で六つあり、丁寧に縦横そろえて設置されていた。
 ▼ 788 ーバーン@クオのみ 18/12/09 21:54:06 ID:tyrEqNhs [10/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「待って。中にポケモンがいたら、急に飛び出してくるかも」

肝が据わったミミロップのことだ、またぽんぽんと蓋を開けるのではと思い、ルカリオは彼女が動くより先に制止の言葉を投げる。彼女の気の強さに救われる場面は多いが、この状況、ずっとその調子では正直ついていける自信がない。

ミミロップ「開けるのやめとく?」

ルカリオ「う、うーん……」

できれば、何も聞かなかったことにしてこの場を去りたい。だが、それではおそらくこの洋館を出ることはできないだろう。自由に行動できるように見えて、その実選択肢はほとんどない。

ルカリオ「今度は俺が開けるよ」

ミミロップ「六つとも?」

ルカリオ「うん。あけるのは一個ずつだけど」

なんとなく足音をしのばせ、ゆっくりとバケツの前まで移動するルカリオ。

ルカリオ「うわっ!」

足の裏に冷たい感触。

液体を踏む感触に、思わずその場から飛び退くルカリオ。見れば、バケツの回りは水浸しになっていた。

ミミロップ「水だらけね……全然気づかなかった」

ルカリオ「俺も……水道流しっぱなしになってたからかな」

栓はされていなかったためシンクに水は溜まっていなかったが、しぶきがシンクを飛び越え床を濡らしていたのだろう。かなり長い時間水が流れていたのか、床は水溜りができるくらいに濡れていた。

ルカリオ「よし、手前からあけてくよ……」

水溜りを踏まないようにして、ルカリオはバケツの前に立つ。

彼が言ったように、開けた途端何かが飛び出してくるかもしれない。あるいは、想像もしたくないようなものが詰め込まれているかもしれない。

ルカリオは何が起きてもすぐさま対応できるよう体勢を整え、ゆっくりと一つ目のバケツの蓋に手をかける。
 ▼ 789 ガヘルガー@ぼうごパット 18/12/09 21:54:51 ID:tyrEqNhs [11/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「……空だ」

果たして、彼が新たに行動を起こす事はなかった。

バケツの中にはゴミ袋すらなく、ただただがらんとしているのみ。衛生面は特にしっかりしているようで、バケツには汚れのひとつさえ見当たらない。

ミミロップ「あと五つね……」

ルカリオ「うん……」

短く息を吐き、改めて気合を入れなおす。そしてすぐにルカリオは二つ目のバケツに手を伸ばした。

ルカリオ「……これも空」

ミミロップの方を見て首を横に振るルカリオ。ミミロップはそれに対し首を傾げてみせる。

ルカリオ「あと四つ……」

ルカリオも多少は状況に慣れてきたのだろう、それからすぐに三つ目四つ目とバケツの蓋を次々に開けていった。

ルカリオ「五つ目も空か……」

ミミロップ「ってことは、そこに何か入ってるのね」

最後に残ったバケツを見る。

綺麗に並べられたうちの、左奥にあるバケツ。どのバケツも全く同じデザインのものだが、不思議と残ったバケツだけは違って見えた。

ルカリオ「あけるぞ……」

もしかしたらこの中にも何も入っていないのかもしれない。だが、彼らは確かに何かが落ちるような音を聞いた。他に物が入ってそうな場所が見当たらない以上、何かがあるとしたらもう最後に残ったバケツの中しかない。

相変わらず、波動で探っても中の様子は窺えない。少なくとも、何者かが中に潜んでいて蓋が開いた瞬間襲い掛かろうとしている、というようには思えない。

かといって、幻想であれば急に何かを出現させることなど造作も無いだろう。考えるだけ、時間の無駄なのかもしれない。

ルカリオ「……よし!」

唾を飲み、蓋の取っ手を握る。そして短く息を吐き、勢いよく蓋を持ち上げた。
 ▼ 790 キジカ@ハンサムチケット 18/12/13 21:21:02 ID:5ZAQKdRI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 791 リバード@こないれ 18/12/18 04:32:42 ID:edSM6X7Y NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 792 ンドパン@あおぞらプレート 18/12/19 02:21:07 ID:xn5MqP5I [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「…………?」

静まり返る空間。蓋を開けてすぐ臨戦態勢を整えるも、何かがバケツから出てくる様子は無い。

とりあえず急襲されることはなかった。ルカリオはミミロップを見て頷いた後、恐る恐るバケツの中を覗き込む。

するとそこには……

ルカリオ「……小瓶?」

他のバケツ同様、中にはゴミ袋一枚さえ入っていなかった。ただ、一つだけ他のものとは違い、中には手のひらサイズの瓶が転がっていた。

ミミロップ「その瓶、中身が入ってるわね」

ミミロップもバケツを覗き込み、それを確認する。

ルカリオ「ん……何か書いてある」

瓶にラベルが貼ってある。手にとって見てみると、そこには「毒消し」と書かれていた。

ルカリオ「解毒剤か……なんでこんなところに」

ミミロップ「間違えて捨てちゃったとか?」

ルカリオ「なら、やっぱりここには誰か住んでるのか……」

幻想の中の住人か、あるいは術者か。どちらにせよ、消耗品が見つかった以上、ここには誰かがいるという期待が持てた。

ルカリオ「あっ」

ミミロップ「あ、ごめん」

ルカリオが振り返るのと同時に、ミミロップはバケツの中をもう一度覗こうと身を乗り出した。

二匹がぶつかり、床に手記が落ちる。

ルカリオ「わわ、濡れちゃう」

慌てて手記を拾い上げるルカリオ。手記は丁度水が広がっていない所へ落ちたようで、ほんの僅かも濡れていなかった。

ミミロップ「……あれ?」

ルカリオ「ん、どうかした?」

ミミロップ「その手記……なんか書いてること増えてない?」

丁度開かれたページを見て、ミミロップが首を傾げる。

ルカリオ「え、そんなまさか……」

言われて、確認する。

すると確かに、食堂で見たよくわからない文章に加え、違うページに新しく別な文章が浮かび上がっていた。
 ▼ 793 ガルガン@ナナシのみ 18/12/19 02:21:42 ID:xn5MqP5I [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
『何故だ、何故………に毒……が…る?……まさか……前の…件を……ているのか……』


ルカリオ「……わからん」

ミミロップ「今回にいたっては所々かすれて読めないしね」

何か新しい手がかりになるかと期待したが、空振りに終わる。それどころか、どうして何も無かったページに新たな文字が浮かび上がってきたのかという疑問が増えた。

ルカリオ「やっぱりミミロップちゃんの言うように、謎解きみたいなことしなきゃなのかな……」

ミミロップ「まぁ状況としては整ってるわよね。食堂の血といい意味深な手記といい、ここで何かあったのは間違いなさそう」

しつこいようだが、ここはおそらく幻想の中。だとしても、いや、だからこそ、食堂の血や手記、毒消しなどは幻想として再現されるべきもので、それらには何らかの意味が含まれているはずだ。意味があるのなら、それがここを脱出する鍵になる可能性も否定できない。

ルカリオ「でも、これだけじゃ何にもわかんないよね」

ミミロップ「まぁ、そうなんだけどさ」

二匹して首を傾げ、頭を悩ませる。

と……

カラン……カラン……

突然、どこかから鉄製の何かが床や壁にぶつかる音が聞こえてきた。

ルカリオ「……気のせいじゃないよね?」

ミミロップ「嫌と言うほどはっきり聞こえてるわ」

急な展開に、二匹は思わず顔を見合わせる。

カラン……カラン……

突如として聞こえ始めた謎の物音は一度や二度で鳴り止まず、何度も何度も定期的に不気味な音を響かせている。

まるで鉄パイプのようなものを引きずる音。もしかすると、誰かが洋館のどこかで鉄製の何かを動かしているのかもしれない。

ルカリオ「どの辺から聞こえてきてるかわかる?」

ミミロップ「あんまり正確にはわからないけど……あっちね」

ミミロップは難しそうな顔をして食堂の方の天井を見上げる。音源はどうやら、洋館二階の東側のようだった。
 ▼ 794 ーベム@デボンのにもつ 18/12/19 02:22:21 ID:xn5MqP5I [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



厨房を出て、食堂の出入り口まで戻る。

物音のする方へと向かいたいのは山々だが、食堂の出入り口は硬く閉ざされている。先ずは食堂から出る事を考えなければならないが……

ルカリオ「あれ、開いてる」

ドアノブを掴んでガンガン押してみようとするルカリオだったが、手をかけるとノブが下がり、押せばドアが当たり前のように開いてくれた。

当然、あれからルカリオ達はドアに触れることはおろか、ドア周辺に近寄ってすらいない。となれば、鍵をかけた何者かが今度は鍵を開けていったと考えられる。

ミミロップ「遊ばれてるわね」

ルカリオ「相手がいれば、だけどね」

依然として、波動で探れる範囲には何の生物反応も感じられない。いつ開錠されたかはわからないが、何者かが近づいていたにも関わらず全く感知できなかったとも思えない。途中水音や物音に気をとられていたとはいえ、洋館に入ってからは常に緊張を身に纏わせ、周囲の変化にはいつもより敏感になっているというのに。

ルカリオ「とにかく、先へ進もう。道が開けたということは、物音のする方へ行けって事かもしれない」

ミミロップ「誘導されてるみたいでちょっと嫌だけど……状況的に仕方ないわね」

ドアを開けてエントランスへ出る。心なしか、二匹を迎えた空気は初めてここを訪れた時よりも冷たいように思えた。

そして相変わらず、何の気配も感じられない。それでも二匹は念には念を入れ、注意深く周囲を目視しながら東側の階段へ近づいた。

カラン……カラン……

階段を上る直前に、再び金属のこすれる音が聞こえる。先ほど厨房で聞いたものよりも大きい。

ルカリオ「階段を上った先から聞こえるな……」

ミミロップ「でも、だいぶ音が反射してる。たぶんどこかの部屋の中よ」

いつ襲われても対応できるように、気を配りながらゆっくり段を踏みしめていく。

まるで自ら死地へ赴こうとしているような、そんな感覚さえ覚えながら、二匹はゆっくりと階段を上りきった。
 ▼ 795 ンキー@おおきなキノコ 18/12/19 02:23:16 ID:xn5MqP5I [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


さっきまで規則的に聞こえていた物音はいつの間にか止んでおり、静けさだけが辺りを支配し尽くしている。それからは、どれだけ耳を澄ませても金属のこすれる音は聞こえてこない。

もしかして、自分達が二階へ上がってくるのを待っていたのだろうか……そんな事さえ思えてしまう。

ミミロップ「前に部屋があるわね」

ルカリオ「ああ。ドアもちょっと開いてる」

階段を上りきると、広い廊下が垂直に交わった。真正面には大きな窓があり、真っ暗な夜の森の景色を映し出している。もう夜になってしまったのか、外の景色さえも幻想や幻覚によるものなのか、何にせよ窓の外を眺めても何も手がかりは見つかりそうにない。

彼らの言う部屋は、その大きな窓のすぐ隣にあった。その部屋は電気がついていないらしい、ドアが開いているものの中の様子は真っ暗でほとんど何も見えない。

ルカリオ「ん……ミミロップちゃん、見て」

ミミロップ「どうしたの?」

ドアを開け放とうとしたルカリオはある事に気づき、手を止める。

ルカリオ「このドア、鍵が二重についてる。しかもこれ、外側からしかかけられないみたい」

ミミロップ「外側から?」

そのドアは廊下側にサムターンや鍵穴があり、内側にはロックを開錠できる仕組みが一切見られない。また、通常ドアは人間達の掟として外開きになっている事がほとんどだが、この部屋のドアは逆、部屋の内側に向けてドアを押す形になっている。

どうしてそのような作りになっているのか、用途は様々考えられるが、目的は一つしか浮かばない。部屋に何かを閉じ込めて出られないようにするために、こうなっているのだろう。

ルカリオ「きな臭くなってきたな……」

ミミロップ「何を閉じ込めておく必要があったのかしらね」

ルカリオ「中を見てみればわかるかもしれない」

視線を真っ暗な部屋の中へ向け、ドアを開け放つ。廊下から差し込む光に照らされ、中の様子が少しばかり窺い知れた。
 ▼ 796 ニスズメ@じしゃく 18/12/19 02:23:52 ID:xn5MqP5I [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
部屋に入り、眉をひそめる。

豪華絢爛だったエントランスや食堂と違い、この部屋は薄汚く埃臭かった。

ミミロップ「うわっ、なにここ……」

ルカリオ「なんていうか……すごいね」

薄っすらと見える部屋の壁は黒く汚れており、所々に亀裂が入っている。壁紙もあちらこちらが剥げ散らかしていて、もう何年も手入れされていないであろうことが素人目にもわかってしまう。

また、家具や荷物がたくさん置かれているのかとても窮屈な感じがした。それもそのはず、この部屋には本がぎゅうづめにされた書架が各所に設置されているのだから。

目が慣れてきたことで、ルカリオ達はそれを視認する。思ったよりも狭い部屋に所狭しと置かれた書架に、二匹は更に息苦しさを覚えた。

ルカリオ「なんか、思ってたのと違うね」

ミミロップ「うん。私てっきり牢屋みたいなところかと思った」

見たところ、ここは書斎だった。しかし、どうして書斎のドアは外側からしか鍵がかけられないのだろう。そういう作りにしなければならない理由が、何かあったのだろうか。妙なつくりのドアと書斎、全く繋がるものがない。

ルカリオ「俺、ちょっと奥まで見てくるから、ドアお願いしていい?」

ミミロップ「わかったわ」

ミミロップにドアを預け、ルカリオは慎重に部屋の中へ足を踏み入れる。

狭い部屋だ、奥まで行ってみるといってもミミロップの視界からルカリオが消えることはない。薄暗いため奥まで行けばはっきりと姿を確認する事は難しくなるが、それでも彼のシルエットが動く様子はよくわかった。

ルカリオは足音をさせないよう忍び足で書架と書架の間を歩き、辺りを見回している。時折何かを見つけたように背伸びしたり、本棚を覗き込んだり、何かを探すような動きをするルカリオを見るのはどこか楽しい。こんな状況にも関わらず、ミミロップは思わず口元に片手をあてた。

ミミロップ「あれ?」

と、横に並ぶ書架の間を移動するほんの一瞬だけ、彼の姿が見えなくなる。書架の高さは彼の身長よりも高いため、書架の向こう側を移動すればそれは当然のこと。

だが、その間を移動する時間など1秒にも満たない。それどころか、両手を振っていれば書架の両端から彼の両手が見えるためその姿を見失うことさえないはずだ。

しかし、ルカリオは消えてしまった。

ほんの一瞬、書架の向こうへ入っていったきり、全く姿が見えなくなった。
 ▼ 797 マカジ@りゅうのキバ 18/12/20 01:11:28 ID:R5iscJr. [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「ちょ、ちょっと、ルカリオ?」

思ってもみない事態に、ミミロップは不安そうな声を出す。

彼の名を呼ぶも、返事はない。

こんな狭い部屋だ、どの辺りにいるとしても小さな声で充分届くはず。だが、彼女の言葉に対する反応は何もない。

ミミロップ「嘘でしょ……どうなってるのよ」

姿が見えない、呼んでも返事がない。となれば、考えられることは一つ。ルカリオは、どういうわけかこの部屋から姿を消してしまったということ。

ミミロップ「どうしよう……」

自分も書架へ駆け寄りたくとも、ドアから離れるわけにはいかない。離れた途端ドアが閉まり、食堂の時のように鍵をかけられてしまうかもしれない。

それでも、ルカリオが見つかるのなら彼女はそれでいいと思っている。だがこの状況、おそらくドアを離れたところでルカリオを見つける事はできないだろう。確証があるわけではないが、そう思う。

とはいえ、このままじっとしていても事態は好転してくれないだろう。いつ戻るかわからない彼を何もせずただ待つのも、辛いものがある。

どちらを選んでも、悪い未来しか見えない。ならば、どちらを選ぶべきか……彼女の中で、答えは既に決まっていた。

ミミロップ「ルカリオ、ドア離すわよ」

ミミロップはドアを支えていた手を離し、躊躇う事無く薄暗い部屋の中へとその身を滑り込ませていく。

まだ、ドアは閉まらない。閉まってしまえばおそらく出られなくなるばかりか、足元さえ見えない真っ暗闇に覆われることになるだろう。電気のスイッチも一緒に探してはいるが、見当たらない。

仕方が無いので、このままルカリオが消えてしまった書架の向こう側へ近づいていく。まだ、ドアは閉まらない。
 ▼ 798 クケイル@ひみつのカギ 18/12/20 01:11:56 ID:R5iscJr. [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




ルカリオ「……何もなさそうだな」

書架の裏側を覗き込み、深くため息を吐く。

緊張しているというわけではないが、視界が悪い中どことも知らない場所をどこにいるのかそもそも存在するかどうかさえわからない何かを警戒するのだ、そう易々と気を抜くことはできない。

ルカリオ「どの棚も本も埃がすごいな……動かしたりなんかしたら咽喉やられそうだ」

それはつまり、ここに置かれている物はしばらく動かされた形跡がないという事。こんな場所で、本当に金属を引きずるような音を鳴らしていたのだろうか。

ルカリオ「床にもそれらしき跡は見当たらない……」

こうなってくると、あの時聞いた物音は本当に実在したのだろうかと疑いたくもなってくる。無論、自分だけでなく愛する妻も一緒に聞いているのだから疑う余地もないのだが。

ただ、幻想の中でなら何も無い所で突然物音を鳴らすことなど朝飯前というやつだ。例えば、今まさにルカリオの耳元で物音を鳴らす事も可能であるはず。それを思えば、物音がした形跡の無い事など取るに足らない問題なのかもしれない。

ルカリオ「……一旦戻るか。特に何もなさそうだし」

もう一度辺りを見回して特に気になる所は無いと頷き、出入り口へと歩いて行く。

距離にしてほんの十数メートル程度。埃だらけの書架を抜けた先に、エントランスからの光に照らされた彼女の影が見える。

痺れを切らしたのかミミロップはドアから少し離れ部屋に入ってきていた。そしてルカリオが戻ってきたのを確認するや否や、彼の元へ飛び込むようにして駆けてきた。

ルカリオ「わっ、ど、どうしたの?」

ミミロップ「どうって、無事に戻ってきたからお出迎えしたの」

ルカリオ「う、うん、ありがと」

ほんの数分離れただけでも寂しかったのだろうか、ミミロップはルカリオの背中に手を回してぎゅっと抱きついた。
 ▼ 799 ングラー@4ごうしつのカギ 18/12/20 01:12:26 ID:R5iscJr. [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「何もなかったでしょ?」

ルカリオ「え? うん、埃だらけの本棚があるだけで、そもそも誰かが入った形跡すらなかったよ」

甘えてくるミミロップの頭を撫でながら、ルカリオは出入り口に目をやる。

ドアは開きっぱなしになっていて、隙間から入り込んだ光が抱き合うルカリオ達を優しく照らす。それが覗き見されているように思えて、なんだか少し恥ずかしかった。

ミミロップ「ねえルカリオ……」

ルカリオ「うん、なに? わっ」

不意に名前を呼ばれ、視線を彼女へ戻そうとする。しかしそれより先に頬を両手でつかまれ、強制的に彼女の顔を向くようぐいっと引っ張られた。

急にどうしたのだと驚くルカリオ。そんな彼に向ける彼女の目は、いつもより水分を含んでいるように見える。

ミミロップ「キス、して?」

ルカリオ「えっ」

どこかで期待していた言葉に、思わず顔を紅くするルカリオ。これまで数え切れないくらい口付けを交わしてきた二匹だが、面と向かって言われるといまだに照れてしまうのがルカリオの可愛いところ。

ミミロップ「ね?」

どぎまぎしながら頬を染める彼をよそに、ミミロップは目を閉じほんの少し顎をあげた。

軽く咳払いをし、小さく息を吐くルカリオ。一旦彼女から少し離れ体勢を整え、彼女の両肩に両手を添える。そして少しずつ身を寄せ、彼女の顔に自分の顔を近づけていく。

やがてルカリオの視界いっぱいがミミロップの顔に覆われて……彼は彼女の口元を通り越し、耳元までそっと近づいて言った。

ルカリオ「誰だ、お前」
 ▼ 800 ックウザ@リゾチウム 18/12/20 01:12:48 ID:R5iscJr. [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
凄みを利かせた重い言葉。ルカリオはミミロップからその身を離し、臨戦態勢をとり始める。

ミミロップ「えっ?」

突然のルカリオの言葉に戸惑いを隠せないといった仕草を見せるミミロップ。だがルカリオは目を細め、彼女を睨むばかりだ。

ミミロップ「きゅ、急にどうしちゃったの?」

ルカリオ「臭い芝居はいらん。ミミロップちゃんのフリしやがって、覚悟できてんだろうな」

ミミロップ「…………」

拳に力を入れるルカリオ。その様子を見てか、ミミロップ……否、ミミロップの姿をした何者かは口角を吊り上げ大きく息を吐いた。

ミミロップ?「……とう」

ルカリオ「……?」

ミミロップ?「おめでとおおおおおおおおう!! 大正解、大正解! いやぁ、すごいわねあんた、あたしの変身術をこんなにも早く見破るなんて、意外だわぁ」

突然態度を豹変させる何者か。中身は全く違うとわかっていても、容姿はミミロップのそれであるためルカリオは不快感を隠せない。

ルカリオ「何者だ? お前がこの洋館の幻想を作り出しているのか」

ミミロップ?「幻想? あぁ、この薄汚い事件の再現? やぁねぇ、こんなレベル低いのあたしじゃないわよ。それをさせてるだけ」

ルカリオ「させてる……?」

腹部に手を当て、げらげらと大笑いする何者か。嫁のミミロップならあり得ない言動に、ルカリオは更に苛立ちを募らせていく。

ルカリオ「何でもいいが、いい加減その姿をするのは止めろ」

ミミロップ?「あら、あなたの大好きな姿でしょう? なら別にいいじゃないの、その方が目の保養にもなるってもんでしょうに」

ルカリオ「悪いけどミミロップちゃんのことなら何でもわかる。だから、いくら姿を似せたところで全く別の誰かだってすぐにわかるんだ。だから、ただただ気持ち悪いだけだ」

ミミロップ?「はぁ、はぁ、そうですかそうですか。なんというか、ええ、強い愛で結ばれた的な? ふはっ、あたしが一番嫌いなやつだわ」

それまで大笑いしていた何者かはルカリオの言葉に表情を一転させ、冷たい視線を彼に向ける。そして次の瞬間、ルカリオの目の前の空間が歪み、そこから誰かが姿を現した。

ゾロアーク「どうも〜ゾロアークちゃんで〜す」
 ▼ 801 ングース@ゴツゴツメット 18/12/21 10:12:25 ID:sKUgAL6Q NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
ゾロアーク……
 ▼ 802 ンナ@ガブリアスナイト 18/12/22 02:48:33 ID:z.8cwOsM [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
幻術の使い手ゾロアーク。

ゾロアークの作り出す幻はどんな者でも騙す事ができると言われ、彼らにかかれば対象の現実と幻想の境目を有耶無耶にして精神を破壊する事も可能だという。

ただ、ゾロアークという種族は個体によってその力の使い道が様々で、悪意を持って悪戯をするために使う者もいれば、ただ外敵から身を守るためだけに使う者もいる。今ルカリオと対峙している固体は、どうやら前者のようだ。

ゾロアーク「初めまして、じゃないわね。あんたの事は以前に見てるわ」

ルカリオ「なんだと……?」

彼女の言葉に、過去を思い返してみる。

しかし、仮に遭遇していたとしてもおそらくゾロアークの姿として出会ってはいないだろう、どれだけ考えても思い当たる節は無い。

ゾロアーク「あら、そっちはわからないの。愛する彼女のことだけかしら、あたしのイリュージョンを見破れるのは」

ルカリオ「ミミロップちゃんのことなら何でもわかるって言っただろ」

ゾロアーク「のろけんなや吐きそうになるわ」

にやにやと笑っていたと思えば、一瞬で冷たい表情を浮かべる。情緒不安定なのかルカリオを惑わすためにわざとそうしているのか、変化に忙しい。

ゾロアーク「ま、あたしたちの邪魔するわけじゃないっていうなら、別にあんたたちに興味なんてないけどさ」

ルカリオ「邪魔も何も、そもそも関わろうって予定は無い」

ゾロアーク「バンギラスは殺してくれたのに?」

それはトウカの森の事を言っているのだろうか。誰かに化けてそれを見ていたのか、後で話を聞いたのか。ともあれ、このゾロアークはあの件に何か関わりがあったようだ。

ルカリオ「……俺達じゃない」

ゾロアーク「そうかしら。まぁ、それも私には興味の無い話なんだけど」

厳密に言えばルカリオ達が殺したわけではないのだが、ばっちり関わってしまってはいる。興味無いと言ってはいるが、彼女達にしてみれば同じことなのかもしれない。
 ▼ 803 ルシアン@ボーマンダナイト 18/12/22 02:49:20 ID:z.8cwOsM [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「……俺達に興味無いっていうなら、ひとつ話したい」

ゾロアーク「あら、何かしら?」

ルカリオ「俺達は格闘大会に出るため各地を回ってるだけだ。お前達が何をしているかは知らないが、関わる気もなければ興味だって全く無い」

ゾロアーク「まぁ、そうでしょうね」

ルカリオ「ああ。だから、ここはお互いに剣を納めて背を向けないか?」

できれば無駄な戦いはしたくない。ゾロアークたちがルカリオたちの目標を妨げるようならば話は別だが、様子を窺う限り少なくとも彼女はルカリオ達に好き好んで何か仕掛けようとしているわけではなさそうだ。

以前に多少関わってしまっていたとしても、今後はお互い見向きしないということでこの場をおさめようとルカリオは考えた。

ゾロアーク「……まぁ、正直なところあんた達の存在は邪魔になりつつあるのよ」

ルカリオ「邪魔に、だと……?」

不穏な言葉に、緊張の色を濃くするルカリオ。

ゾロアーク「だからこそ、関わらないのであればこちらとしてもやりやすい所ではある。実際、ボスゴドラに危害は加えられていない。まぁ出会わなかっただけなのかもしれないけど? 報告じゃ近くを通ったらしいと聞いてるからねぇ」

ルカリオ「ボスゴドラだって……?」

ボスゴドラといえば、つい最近その姿を見た。ピカチュウと共に木の実を探したあの丘の上、それも、全身を漆黒の色に染め上げた個体だ。

もしその個体の事を言っているのだとしたら、ある仮説が出来上がる。ゾロアークの言葉、そしてフライゴンが話してくれたこと、全てを一つの線に繋げてみるなら、怖ろしい事実が浮かび上がってくる。

今、目の前にいるゾロアークは、ポケモンの生体実験を行っているという組織のポケモンなのではないか。

ルカリオ「(それに、ゾロアークってもしかして……)」

更に、思い当たるものがある。ミミロップから聞いた話に、見た目と中身が違うポケモンの話があった。もしかしたら、このゾロアークこそが、ミミロップ達に地獄のような日々を味わわせたポケモンなのではないか。
 ▼ 804 シレーヌ@フィラのみ 18/12/22 02:49:52 ID:z.8cwOsM [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
もしそうであれば、ルカリオはゾロアークを赦すことはできない。愛する妻を酷い目に遭わせたポケモンだ、殺しても殺しきれない、そういう思いがこみ上げてくる。

だが、確証は無い。それを確かめる事が悪手であることも、充分わかっている。

ルカリオ「(落ち着け、俺……)」

隙を見せない程度に大きく呼吸するルカリオ。

わからないなら、わからないままでいい。今彼が優先すべき未来は、愛妻と共に無事この洋館を出ること。そのために、妙な勘繰りは止め、大人しく引き下がること。

ゾロアーク「まぁ少なくとも、私は興味無いから。いいわ、その話乗ってあげる」

ルカリオ「……助かる」

意外とすんなりルカリオの提案を呑み込んだゾロアーク。そうやって隙を誘っているのではないかとも思えたが、とりあえず素直に彼女の同意を受け取っておく。

ただ、彼女は「私は」と言った。それはつまり、彼女ではない他の組織の連中による接触については感知するところではない、というようにも聞こえる。

無論現状ではこのゾロアークがフライゴンの言っていた怪しい組織の一員であることさえ定かではないが、その可能性を考慮して今後動いても損はないだろう。というかむしろ、それについてくらいしか思い当たる節もないためそれ以上は気をつけようがない。

ゾロアーク「あぁ、そうそう。この洋館だけど、ひとつ良い事を教えておいてあげる」

ルカリオ「……なんだ」

ゾロアーク「ふふ、いちいち警戒しちゃって、カワイイ」

にやりと鋭い笑みを浮かべてルカリオを嘲笑するゾロアーク。今の笑みをあまり不快に思わないのは、彼女の幻術のせいかもしれない。

ゾロアーク「あなた達を迷い込ませているポケモンはね、未練があるの。強い強い未練よ。ここを出るには、その未練を晴らしてあげる必要があるの」
 ▼ 805 ードラ@リニアパス 18/12/22 02:50:19 ID:z.8cwOsM [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「と言われても、俺達にはさっぱり何が未練なのかわからないし、そもそもそいつがどこにいるのかもわからない」

ゾロアーク「ふふ、そうね、そこはあたしが面白くなるよう中々会えないようにしてるもの。迷い込んできたのがあなた達でなければ、もっと状況を楽しんでいたわ」

なんとも悪趣味なポケモンだ。だが、相互不干渉という事で話が纏まったことを考えると、結果として彼女に目をつけられていて良かったのかもしれない。つけられていなければ、今も洋館内部をぐるぐる歩き回っていたかもしれない。

ルカリオ「……で、そいつはどこにいる」

ゾロアーク「関わらないって約束しちゃったし、そうねぇ、すぐにでも会わせてあげようかしらねぇ」

どこか状況を楽しむように彼女は顎に手をあて、にやにやと笑いながらルカリオに視線を投げる。

あからさまな挑発。勿論そんなものに乗っかってしまうルカリオではない。彼はゾロアークの視線を受け流しつつ、機嫌を損ねぬよう落ち着いて言葉を続ける。

ルカリオ「頼む。そいつを何とかしたら、すぐにでも出ていくから」

ゾロアーク「まぁ、あんた達をとどめておくより新たな来客を待つ方がいいかしら。また、表でやってたみたいに盛られても困るし」

ルカリオ「っ!」

誰もいないと思っていたが、どうやらゾロアークには見られていたようだ。恥ずかしい思いと、ミミロップと同性とはいえ愛する嫁の淫らな姿が自分以外の者の目に晒されてしまった事実に激しい怒りを覚える。

おそらく、この洋館に関する淫楽の噂はゾロアークの仕業によるものだろう。どの程度覗かれていたのかはわからないが、これには牙をむき出しにするしかない。

ゾロアーク「唸っちゃって、あんたっていちいちカワイイわねぇ。むしろ気に入ってきたかも」

ルカリオ「そいつはどうも。まぁ、誰に気に入られようと俺はミミロップちゃんしか見ないけどね」

ゾロアーク「まぁまぁ、はぁはぁ、秒でふられちゃったわ。くっそどうでもいいけども」

またのろけはやめろと言って睨まれると思い身構えていたが、どうやらゾロアークは上機嫌のようでやれやれと両手を持ち上げるだけだった。

ゾロアーク「ま、教えといてやるか。あんた達を洋館へおびき寄せたポケモンと、その目的を」
 ▼ 806 ツベイ@すいせいのかけら 18/12/24 16:42:38 ID:pVK2lIIM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 807 クロー@つりざお 18/12/24 23:23:40 ID:fliM28gI NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 808 ャノビー@ねっこのカセキ 18/12/28 19:52:56 ID:UrdIZAus NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 809 リル@エレクトロメモリ 18/12/29 07:41:11 ID:vhvYEM2I NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 810 シャマリ@ちからのハチマキ 18/12/31 00:18:45 ID:L3hcfcpk [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゾロアーク「ヤツ……ゴーストがいるのは、二階の右端の部屋。ふふ、殺人事件があった場所よ」

ルカリオ「殺人事件?」

それはまた物騒な話が出てきたと、ルカリオは眉間に皺を寄せる。

ゾロアーク「ええ。この洋館は、謎が多いの。噂では、心中事件があったとか殺人事件があったとか、まぁ色々人間達の中で噂になってるわね、ただ、ゴーストが持っている未練はその事件についてじゃなくて、それよりもっと後で起きた事件についてよ」

ルカリオ「また何か起きた、ってことか?」

ゾロアーク「まぁ、そうなるわね。というか、昔の事件を調査しにきた警察の手持ちが、そのゴーストなの」

未だに謎の多く残る、この未解決の事件を捜査しに来たのだろうか。しかし、その警察の手持ちが未練を残してこの地に留まっているとくれば、何があったか想像に難くない。

ルカリオ「再捜査で殺されたのは、その警察官ってことか」

ゾロアーク「そういうこと。でもただの殺人事件じゃなかったのよね。非常に不可解で、ありえない事件だった」

ルカリオ「ありえない事件……」

ふと、食堂で見つけた手記のことを思い出す。この手記の持ち主はもしかしてその警察官で、浮かび上がってくる文字は彼が書き記したものなのではないか。

そして、ゴーストの未練を晴らす事が、ここ洋館からの脱出に直結する。つまり、ミミロップの言っていたことはあながち間違いではなかったということだ。

ゴーストはおそらく、事件の真相が知りたいのだろう。何がどうなっているかわからないまま事件が起き、主は巻き込まれて被害者となってしまった。事件を解決することで、彼の未練は消えていく。

ルカリオ「……だけど、それは過去の話じゃないか。今の俺たちがどうにか知ることなんてできるのか」

ゾロアーク「馬鹿ね。だから、あたしがいるんじゃない」

ゾロアークは両手を広げて挑発的に笑う。

彼女がゴーストの持つ記憶を幻想化し、迷い込んできた者の目に幻覚として具現化する。この幻覚を見ていくことで、事件の真相を読み解く事ができるかもしれないという話だろう。

ならばこの状況はゾロアークの悪戯というより、彼女の優しさのようなものなのではないか。そう思えば、このゾロアーク、そう悪いやつではないのかもしれない。
 ▼ 811 ンジャラ@きょうせいギプス 18/12/31 00:19:11 ID:L3hcfcpk [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゾロアーク「ま、詳しくは本人に聞きなさいな。なんなら幻想の中を歩いて手がかりを探してもいいし?」

ルカリオ「お前は真相を知らないのか?」

ゾロアーク「はぁ? あたしはただゴーストの未練を利用して幻想を作り出しているだけ。それにポケモンや人間を迷い込ませているだけよ」

それは、無理矢理ではあるが事件を解決できそうな誰かを探している、とも聞く事ができる。そういうことなのだろうと問うたところで彼女が頷くとは思えないが。

ルカリオ「(いや、それよりも、だ)」

彼女が良心的に幻想を作っているかはさておき、ゴーストの未練を晴らすヒントになる事はできるだけ知っておきたい。もし幻想を作り出しているゾロアークにしかわからないような事実があるのなら、事件解決に役立てたいところ。

ルカリオ「どういう事件だったんだ?」

ゾロアーク「いや、だからそれは本人に訊きなさいってば」

ルカリオ「それは勿論なんだが、お前が知ってる事もヒントになるかと思ってな」

ゾロアーク「はぁ、そうですか。まぁまぁ、確かにあたしなりの? 推理じゃないけど、思う所がないわけでもないですけどねぇ、はい」

もったいぶっているのかゾロアークはにやにやと下品な笑みを浮かべながら、ルカリオを品定めするようにじろりと見回す。ここまで長らく話しておいて品定めも何もあったものではないのだが、彼女の言動はどうにも理解が難しそうだ。

ゾロアーク「あたしも答えは知らないのよ? ただ、どういう事件があってどういう状況だったかを知ってるだけで。もっと言えば、ゴーストが見たり聞いたりしたものしか再現できないからねぇ」

ルカリオ「それでもかまわない。一から話さなくてもいいから、見解だけでも教えてくれればと思う」

ゾロアーク「仕方ないわねぇ……」

そういう話をするのは嫌いではないのだろうか。ゾロアークは上機嫌に腕を組み、ポーズを決めてルカリオを見た。

ゾロアーク「はっきり言って、これは不可能犯罪。だけど、確実に人間の手によって引き起こされたもの。そう、あたしは思うね」
このページは検索エンジン向けの機能制限版の旧ページです。
下URLから閲覧下さい。
https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=832156
  ▲  |  全表示851   | << 前100 | 次100 >> |  履歴   |   スレを履歴ページに追加  | 個人設定 |  ▲      
                  スレ一覧                  
荒らしや削除されたレスには反応しないでください。
書込エラーが毎回起きる方はこちらからID発行申請をお願いします。(リンク先は初回訪問云々ありますがこの部分は無視して下さい)

. 書き込み前に、利用規約を確認して下さい。
レス番のリンクをクリックで返信が出来ます。
その他にも色々な機能があるので詳しくは、掲示板の機能を確認して下さい。
荒らしや煽りはスルーして下さい。荒らしに反応している人も荒らし同様対処します。




面白いスレはネタ投稿お願いします!

(消えた画像の復旧依頼は、お問い合わせからお願いします。)
スレ名とURLをコピー(クリックした時点でコピーされます。)
新着レス▼