【SS】ポケモンコーディネーターセレナの日常:ポケモンBBS(掲示板) 【SS】ポケモンコーディネーターセレナの日常:ポケモンBBS

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【SS】ポケモンコーディネーターセレナの日常

 ▼ 1 めつのねがい◆5oP7VYU6fg 18/08/08 20:00:07 ID:6Hswv1Ms NGネーム登録 NGID登録 報告
『珍しく賑わう今日8月7日! ホウエン地方シダケタウンではポケモンコンテストが行われる!』

セレナ「急がないと! 参加の受け付け終わっちゃうわ!」

ニンフィア「ふぃあー!」

ヤンチャム「チャムチャ!」

テールナー「テナナ!」

セレナ「こら二人とも喧嘩しない! 参加できなくなっちゃうわよ!」

男「すいませんセレナさん。お時間よろしいですね?」

セレナ「さ、サイン? わかりました……」

男「いつもテレビで見ています。応援してます。あ、あと握手をお願いします」

セレナ「は、はい。これで大丈夫ですか? ごめんなさい。初めてで、あと急いでてちょっと雑に……」

男「はい。では握手を」

セレナ「あ、はい!」

銀髪の少女「ちょっと待ったぁー!!」


その瞬間、甲高い声がセレナの返答を遮った。そして重なろうとした二人の手をはたき落とすのもその声の主。
 ▼ 31 ガガブリアス@ひでんのくすり 18/08/10 16:49:43 ID:GCpAISMw NGネーム登録 NGID登録 m 報告
支援
 ▼ 32 めつのねがい◆5oP7VYU6fg 18/08/10 22:00:50 ID:HOmQmCxY [1/6] NGネーム登録 NGID登録 報告

8月10日
── 3日目

その日は、珍しく快晴のような屈託の無い笑顔で始まった。


アナウンス『おはようございます。時刻は午前6時、ロビーに朝食の準備が整っています』


セレナ「ふぁ〜よく寝た。なんだか甘い香り、朝からスイーツかしら?」

ニンフィア「ふぃあふぃあ〜!」

セレナ「楽しみね」
 ▼ 33 めつのねがい◆5oP7VYU6fg 18/08/10 22:05:09 ID:HOmQmCxY [2/6] NGネーム登録 NGID登録 報告

珍しくしっかりと寝れたセレナは上機嫌でパジャマから着替える。しかし血色のよかった表情は一瞬にして蒼白く塗り替えられる。気づいた異変とは、日記とコンテストノートが無くなっていることだ。


セレナ「あれ? 変ね。昨日の夜書いたばっかりなのに」

テールナー「てなー?」

ニンフィア「ふぃあ〜♪」

セレナ「バッグにいれてたはずのノートが二冊ともなくなっているの。テールナーとみんなも、探してくれない? 」

ヤンチャム「ちゃむ!」


ポケモンと協力して部屋中を探すが見つからず。汗をかいた体を手で扇ぎながらため息をついた。


セレナ「やっぱり見つからない……」

ニンフィア「ふぃあふぃあー」

セレナ「そうね。お腹すいたし、探すのも大変だし、一度ロビーに降りましょう」

ニンフィア「〜♪」
 ▼ 34 めつのねがい◆5oP7VYU6fg 18/08/10 22:09:54 ID:HOmQmCxY [3/6] NGネーム登録 NGID登録 報告

銀髪の少女「おはよう」

セレナ「おはようございます。あれ? 朝ごはんはスイーツじゃないんですか!?」

ジョーイ「おはようございます。……? はい」

セレナ「そうなんだ。ちょっとガッカリかも」

ニンフィア「ふぃ……」

ジョーイ「申し訳ありません。今度、検討しておきます」

セレナ「それよりも、昨日書いたばっかりの私のノートがなくなったの。心当たりない?」

銀髪の少女「……! ノートが?」

セレナ「なんか思い当たること、ある?」

銀髪の少女「もしかしたら、誰かに盗まれたんじゃ」

セレナ「えっ? 盗まれたって」

銀髪の少女「でもわからないから真に受けない方がいいわ」

ジョーイ「客室までは続いていませんが、ロビーにはカメラが取り付けられており警備は万全です。そういうことは考えにくいかと」

セレナ「でも部屋から外に持ち出してないのに、無くなるなんて変だわ……」

ジョーイ「まぁとりあえず先にお食事をすませましょう。そのあと、私も探すのを手伝いますよ」

セレナ「ありがとうございます」
 ▼ 35 めつのねがい◆5oP7VYU6fg 18/08/10 22:14:32 ID:HOmQmCxY [4/6] NGネーム登録 NGID登録 報告

ジョーイ「セレナさん。それは?」

セレナ「えっ? あぁ、これは昔撮った写真で」

ジョーイ「これがセレナさん? 髪が長いですね」

セレナ「カロスで旅してたときのです。一緒に写ってるのは大事な仲間」

ジョーイ「旅、いいですね。楽しそう」

セレナ「はい。とっても……大事なものだから、無くならないようにしないと」

ジョーイ「本の中に隠すのはどうでしょう」

セレナ「本?」

ジョーイ「客室には必ず本がおいてあります。元々セレナさんの私物ではないので、少なくとも盗られたりする心配は薄いかと」

 ▼ 36 めつのねがい◆5oP7VYU6fg 18/08/10 22:15:05 ID:HOmQmCxY [5/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
──


セレナ「ダメ! 全然見つからない!」

ジョーイ「無いものは探しても無いものですね」

セレナ「絶対部屋にあるはずなのに……もしかして本当に盗まれたんじゃ?」

ジョーイ「大切なものなんですよね」

セレナ「はい。二冊とも、もし誰かに見られたら……」

ジョーイ「あまり最悪の場合を想像していると疲れてしまいますよ」

セレナ「でも……あ! ジョーイさん、もうお昼の準備始めないといけないんじゃ」

ジョーイ「あら、夢中で忘れてましたね。少し休憩にしましょう」

セレナ「時間をとらせてしまってすみません」
 ▼ 37 めつのねがい◆5oP7VYU6fg 18/08/10 22:16:47 ID:HOmQmCxY [6/6] NGネーム登録 NGID登録 報告


セレナ「はぁ〜」

ジョーイ「大丈夫ですか?」

セレナ「大丈夫じゃないかも……どうしよう」

ジョーイ「不安な気持ちもわかりますが、わからないことにそわそわしていても仕方がありません」

セレナ「そうでしょうか」

ジョーイ「なにか温かい飲み物でもどうですか?」

セレナ「じゃあエネココアで!」

ジョーイ「かしこまりました」


その日、結局見つけることのできなかった。


ジョーイ「どうしましょうか。不安でしょうし、今夜は部屋ではなく病室で過ごしますか?」

セレナ「いえ、大丈夫です。少し怖いけれど」


その顔には、必死に拭おうとしても拭いきれない。奥底にこびりついた不安が浮かび上がっていた。


8月10日── 3日目、終了
 ▼ 38 めつのねがい◆5oP7VYU6fg 18/08/11 22:03:23 ID:ixA.2LlE [1/32] NGネーム登録 NGID登録 報告

セレナ「んー、今日もよく寝れたわ……」

ニンフィア「ふぃあ!」

セレナ「はぁ……」

ニンフィア「ふぃあふぃあ〜!」

セレナ「あっ! ごめん! ノートのことであたまがいっぱいで」

ニンフィア「ふぃ……」

セレナ「一応今日も少しだけ見てからロビーに行こうか」

ニンフィア「ふぃあ!」

セレナ「さてと……あれ……?」

ニンフィア「?」

セレナ「机の下、なにか光ってない?」

ニンフィア「ふぃあ〜」

セレナ「なにかしら……?」
 ▼ 39 めつのねがい◆5oP7VYU6fg 18/08/11 22:03:52 ID:ixA.2LlE [2/32] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


セレナ「うそ……」

セレナ「どうして、ここに……」


ニンフィア「ふぃあ……?」

セレナ「……うん。ニンフィア、私は大丈夫よ」

ニンフィア「ふぃーあ!」

セレナ「昨日ずっと見かけなかったから、変だなって思ってて……ちょっとだけ疑ってたの」

セレナ「でも考えたくなくて」

セレナ「でもまだ決まったわけじゃないわ。だからたしかめるの! 会いに行こう!」

ニンフィア「ふぃあ!」

 ▼ 40 めつのねがい◆5oP7VYU6fg 18/08/11 22:04:40 ID:ixA.2LlE [3/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


ジョーイ「それが昨日の昼前に出ていったきり、まだ帰ってきていません」

セレナ「やっぱり! ジョーイさん耳貸して小さい声で!」

ジョーイ「は、はい……」

セレナ「私の部屋から彼女の髪の毛が見つかったの。光ってる銀色の髪が」

ジョーイ「もしやセレナさん……」

セレナさん「コンテストノートがなくなってるのも、彼女なら、とる理由もあるかもしれない」

ジョーイ「それはそうですが」

セレナ「もちろんまだ決まったわけじゃないし、私も信じたくないです。だからどうにかしてたしかめないと!」

ジョーイ「待って! 落ち着いてください!」

セレナ「へ?」

ジョーイ「それ、いつどこで見つけたんですか?」

セレナ「き、今日の朝みたら机の下にありました……」

ジョーイ「ではおかしいじゃないですか!」

セレナ「っ!?」

ジョーイ「二冊のノートが無くなったことに気づいたのは昨日の朝」

ジョーイ「それなら昨日、一日中二人で何度も探し回ったのに、そのときは頭髪どころか手がかり一つ見つからなかったんですよ?」

セレナ「たしかに、で、でもじゃあこれはいったい……?」

ジョーイ「セレナさん。今日他になくなったものはないか確認を!」

セレナ「は、はい!」
 ▼ 41 めつのねがい◆5oP7VYU6fg 18/08/11 22:05:34 ID:ixA.2LlE [4/32] NGネーム登録 NGID登録 報告



セレナ「多分、なにもおかしなところはないと思うんだけれど…………きゃあ!」

ジョーイ「どうしましたか?」

セレナ「あ、あれ……あれ!」


部屋に入った二人を待ち構えているのは床に座り、二人の方向を向いているプラスルのぬいぐるみ。

だがその目はえぐれ、体には切り刻まれた無数の傷、両耳とと右足は縫い目から引きちぎられており、綿が溢れ出す。
新品のかわいらしさは見る影もない無惨な姿。


ジョーイ「あれはたしか」

セレナ「彼女にもらったぬいぐるみです! だけど、なんであんな姿に」

ジョーイ「酷いですね。セレナさん、大丈夫ですか?」

セレナ「あんまり大丈夫じゃないかも。い、今動かなかった!?」

ジョーイ「動かないですよ。ただのぬいぐるみですよ?」

セレナ「わかってても怖いんです!」
 ▼ 42 めつのねがい◆5oP7VYU6fg 18/08/11 22:06:01 ID:ixA.2LlE [5/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


ジョーイ「やっぱり知らない間に誰かがこの部屋に侵入しているってことですよね。それも今度は盗み目的ではなく」

セレナ「や、やめてください……」

ジョーイ「それと気になったのですが、自分から贈ったプレゼントを、こんな風に切り刻んだりするでしょうか?」

セレナ「言われてみれば、たしかに」

ジョーイ「ずっと気になっていたんです。セレナさんの怪我に責任を感じてここに残った人が、ノートを盗むだなんて。あれが嘘だとも思えません」

セレナ「はい。私の早とちりだったみたいです……ごめんなさい」

ジョーイ「いえ、ですが、それならまた心配なことが出てきます」

セレナ「そういえば、どうして出ていったきりのあの子の髪の毛がこの部屋にあったんだろ?」




二人が疑問に思った時、ポケモンセンターの自動ドアが開き、叫ぶ。


── 誰か! 彼女を助けてくれ!!!
 ▼ 43 めつのねがい◆5oP7VYU6fg 18/08/11 22:06:31 ID:ixA.2LlE [6/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


ジョーイ「!!」

セレナ「今の声、ロビーから!?」

ジョーイ「行きましょう!」


男「ジョーイさんはいますか!?」


ジョーイ「はい! どうされましたか。…………うっ!?」

男「この子、傷だらけで倒れてて! 早く治療を!!」

セレナ「そ、そんな……!」


人気の少ないポケモンセンターに珍しく人がたかっていき、その全員が注目したのは銀色の髪が特徴的な少女。

注目したがもれなく目を背けるような巨大な傷口の数々、そのなかには明らかに人の手でつけられた刺傷や打撲傷もあった。

血で赤く塗り固められた体、髪は短くボサボサになっていた。


ジョーイ「す、すぐにこちらへ! あなたも一緒に来てください」

男「はい!」

セレナ「あ、あの、ジョーイさん」

ジョーイ「大丈夫です。セレナさんはそこで待ってて!」

セレナ「はい……」
 ▼ 44 めつのねがい◆5oP7VYU6fg 18/08/11 22:10:56 ID:ixA.2LlE [7/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


しばらくしたのち、固く閉ざされた扉は開く。


男「ふぅー」

セレナ「あ、あの! 中の様子は?」

男「ジョーイさんが必死に手当てをしてくれている。ただ見た通りかなりの重傷のようだから、まだしばらくはかかりそうだ」

セレナ「そうですか。いったい誰があんな酷いことを」

男「君がやったんじゃないのか?」

セレナ「……え?」

男「君が彼女をあんな姿にしたんじゃないかって言ってるんだよ」

セレナ「ち、違います! なんで私がそんなこと!」


思わず声を張り上げる。人だかりからまだらに視線が刺さるのを感じた。


男「セレナさん。今朝彼女を探してたよね。ノートを盗られたから」

セレナ「えっ! えっと、あれは……ただ私が勘違いしてて」
 ▼ 45 めつのねがい◆5oP7VYU6fg 18/08/11 22:11:34 ID:ixA.2LlE [8/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


男「それにあの子のせいで右足を怪我して、ここで生活しているんだろ」

セレナ「そ、そうだけど……怪我はあの子のせいじゃなくて!」

男「あの子の怪我、右足が特に酷かった。骨折ところじゃない。もう一生使えないかもしれない」

セレナ「そんな……!」

男「なぁ。どうなんだよ」

セレナ「ち、違います……私は……」


気づけば、周りの人々の目はもれなくセレナに向けられていた。

その視線の冷たさに気づいた瞬間、体のパーツが徐々に凍っていく。声が出なくなり、表情はガチガチと震え始めた。


氷でできたダイヤの瞳が揺れ、あふれそうになる涙を隠すために瞼を下ろし俯いた。



男「ずっと昔から彼女のことが好きだったんだ」

セレナ「……!」

男「君が犯人だと言うのなら、僕は君を許さない」

セレナ「わ、私は……」


唇をギュッと結び、震えた手を強く握りしる。


セレナ「彼女に助けられたんです……! だ、だから……私は!」


重く張り付く恐怖に任せて垂れ下がった顔は酷く惨めで、助けを訴えかけるよう。
 ▼ 46 めつのねがい◆5oP7VYU6fg 18/08/11 22:14:39 ID:ixA.2LlE [9/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


ジョーイ「そこまでです!」

セレナ「……ジョーイさん?」

男「もう大丈夫なんですか?」

ジョーイ「大丈夫とは言えませんが。今できるだけの処置はしました」

ジョーイ「そして体についた血や傷の様子を見ると、新しいものと古いものがありました。おそらく長い時間をかけて少しずつ増えていったのではないかと」

男「どういうことですか?」

ジョーイ「セレナさんは昨日から今までの時間のほとんどを私と行動していました。なので彼女の仕業だとは考えにくいです」

男「……」

ジョーイ「はい。今私からは以上です。それと用の無い方はなるべく長居しないでいただけると助かります」

セレナ「ジョーイさん!」

ジョーイ「……大変でしたね」


歩み寄ったジョーイにすがりついた途端体の力が抜け、肩にもたれかかった。足をまた痛めないようしっかり受け止める。
 ▼ 47 めつのねがい◆5oP7VYU6fg 18/08/11 22:17:46 ID:ixA.2LlE [10/32] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


ジョーイ「私、昔はパフォーマーに憧れていたんですよ」

セレナ「えっ、パフォーマーに?」

ジョーイ「小さい頃から両親がこの家に生まれたからにはジョーイさんになれ!ってうるさくて、本当はうんざりしてて」

ジョーイ「それでカロスに旅行に行ったとき、向こうで活躍してるパフォーマーの人と出会ったの。見てるだけで笑顔と夢を抱かせてくれる。私もそんな人になりたいって」

セレナ「……私と同じ。けど私は、全然ダメですね」

ジョーイ「そうかしら? 少なくともこんなところでこもってる私なんかよりはずっと近いと思うわ」

セレナ「……そう、かな」

ジョーイ「自信を持ってください」

セレナ「はい。なんだか、助けてもらってばかりですね……」

ジョーイ「心の手当てはジョーイの仕事にないのだけれど」

セレナ「ありがとうございます」
 ▼ 48 めつのねがい◆5oP7VYU6fg 18/08/11 22:18:56 ID:ixA.2LlE [11/32] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


心なしか表情筋が柔らかくなったセレナが部屋に戻ってきたとき、一瞬でも緩んだ心がキュッと引き締まる。


セレナ「……どうして……」


セレナが見たのは机の上で何枚かに破かれた写真。そしてそこに写っているセレナ以外の人物の顔がすべて黒く塗りつぶされていた。


セレナ「誰がこんなこと……」


サトシたちとの大切な思い出の一枚であり、大事に隠しておいたその場所を知っている者。それは彼女にとって隠し場所を提案してきたもっとも近い人。


セレナ「ジョーイ、さん?」


口にした瞬間、ハッと我に帰る。


セレナ「ダメ。何考えてるの、私……」


体を支えられなくなり、力無く床に崩れ落ちる。


セレナ「そんなことあるわけないのに……でも……!」


髪を指でかきあげてワシャワシャと頭をかき、大きくため息をついた。

 ▼ 49 めつのねがい◆5oP7VYU6fg 18/08/11 22:19:48 ID:ixA.2LlE [12/32] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告


ジョーイ「あら、セレナさん。この時間帯にロビーに出るのは珍しいですね」

セレナ「あ、の……」

ジョーイ「どうかされましたか?」

セレナ「い、いえ……なんでも、ないです」

ジョーイ「本当ですか? なんでも話していいんですよ?」

セレナ「はい。ありがとうございます……」

ジョーイ「……そうですか。では、良い夜を」

 ▼ 50 23時から更新再開◆5oP7VYU6fg 18/08/11 22:20:33 ID:ixA.2LlE [13/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


部屋にはセレナの心配をして駆け寄るポケモンたち。ベッドに座り込むセレナはボーッとしたような表情でうなだれながら、強く握りこぶしを作る。


ニンフィア「ふぃー?」

セレナ「いつも優しくしてくれたジョーイさんが、さっきだけはすごく冷たく感じて怖かったの」

セレナ「どうしよう……どうしよう……!」

テールナー「てなな……」

セレナ「テールナー……私、もう……」



テールナーの暖かい手が丸くなった背を優しくさする。その手が固く締めていた栓をこじ開け、はち切れんばかりに堪えていた思いが声と滴になってあふれだした。

幼いながらも女性らしい美しさが垣間見え始めるセレナの表情。だが瞼にギュッと力をこめて声をあげるその姿は赤ん坊のようだった。

一度漏れだしたそれは止めどなく、蛇口を締め直すこともせず解放する。


ニンフィア「ふぃあー?」


しばらくして落ち着いたセレナにポケモンたちが寄り添う。


テールナー「てなな!」

セレナ「ありがとう……みんな」


不安と恐怖で満たされた表情の上でひきつった笑顔を作る。その日、セレナはポケモンたちをそばに抱いて腫れたまぶたを下ろした。
 ▼ 51 めつのねがい◆5oP7VYU6fg 18/08/11 23:00:17 ID:ixA.2LlE [14/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


セレナの部屋は、女子が一人で生活するには少し贅沢な広めの部屋だった。しかし広い割には置いているものはいつも少ない。


セレナ「……! ……今、物音が……」


足の痛みと寝づらい不自由さで浅い眠りになっていたセレナ。そんな彼女は甘い香りによって今度こそ深い眠りの底へと引きずり下ろされる。
 ▼ 52 めつのねがい◆5oP7VYU6fg 18/08/11 23:11:37 ID:ixA.2LlE [15/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


ベッドは寝転んだ体を受け入れるように沈む低反発なマットレスにバケツ一杯のペンキで塗りつぶされたように真っ白なシーツ。ほどよい重さの掛け布団が苦しくない程度に包み込んでくれる。寝心地の良いもの。

机にはバッグが立て掛けられている。その中にあるのはお金や着替えなど旅に必要なものに加え、ポケモンを世話するための餌やブラシなど。

机の上には破かれた写真が丁寧に繋ぎ直されていた。


そのとき、時刻は午前3時。
朝までは相当な時間があった。
 ▼ 53 めつのねがい◆5oP7VYU6fg 18/08/11 23:19:53 ID:ixA.2LlE [16/32] NGネーム登録 NGID登録 報告

8月11日
── 4日目

その日は昨日に続きよく眠ることができたセレナだが、どこかスッキリしない不安さが垣間見える笑顔から始まった。


朝、昨日と同じくよく眠ったセレナだが、その表情は今だ眠る前のスッキリしないものと変わらない。ノートのことで頭がいっぱいのようだ。

立ち上がって捜索を始めようと辺りを見回したとき、おかしな方向から光がさしていることに気づいた。
 ▼ 54 めつのねがい◆5oP7VYU6fg 18/08/11 23:31:56 ID:ixA.2LlE [17/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


いつもノートを書くときに向かっていた机と椅子の屋根が影を作った真下。長い銀色の髪の毛が強い輝きを放っている。

眉を潜め、目と口を半開きにしたまま手にもつ光源を見つめる。しばらくしたあと、顔をあげたセレナは、唇を緩く縛りながらも、遠くを見据えるような目をしていた。


そして数分後、部屋にはボロボロになったプラスルのぬいぐるみ。それをみたセレナは、氷塊を首に当てられたようにビクリと体を跳ねさせてジョーイにしがみつく。
目を見開き、怯えるセレナの顔は今まで彼女がしてきた表情のどれよりも愛おしく映った。
 ▼ 55 めつのねがい◆5oP7VYU6fg 18/08/11 23:32:50 ID:ixA.2LlE [18/32] NGネーム登録 NGID登録 報告



8月12日
── 5日目

その日は、全く知らない一室で目覚めるところから始まる。

セレナ「ん……うーん……」


セレナが目を覚ましたのは不衛生にものが散乱した。ポケモンセンターの客室とはどう見比べても似ない薄暗い部屋。

起き上がり、辺りを見回す。
眠そうに目を擦りながら何度かキョロキョロと首を動かしたのち、自分が見知らぬ場所にいることに気づき、目を見開く。


セレナ「え……?」

セレナ「だれか、いますかー? ジョーイさん……?」


返答があるはずもなく。立ち上がろうとするが、いつもそばに置いてある杖がなくなっており、片足では満足に歩けもしない。
 ▼ 56 めつのねがい◆5oP7VYU6fg 18/08/11 23:34:22 ID:ixA.2LlE [19/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


壁を支えにしながら自立したあと、壁になにかが貼ってあることをようやく認識した。だがそれと同時に驚き、尻餅をつく。


セレナ「え……?」


そこに、いや、部屋の四面の壁に隙間なく貼られているのはセレナの顔写真。同じように見えて全て違うシチュエーション、違う表情。

コンテストで優勝が決まったとき、
ポケモンと抱き合って笑う顔。
信じがたいものへの不安そうな顔。
ポケモンたちを抱き締めたまま眠りにつく安堵した顔。


セレナ「な、なに……? どうなって……」


そして四方自らの顔に囲まれ、どこに目線をおけば良いのかもわからないようすのセレナの顔が少しずつ曇っていく。


セレナ「っ!?」


立ち上がれないでいるセレナの背後から光が指した。
 ▼ 57 めつのねがい◆5oP7VYU6fg 18/08/11 23:35:05 ID:ixA.2LlE [20/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


振り向くと誰もいないはずの部屋でついてなかった、いくつものモニターが光を放っている。

画面の数は合計で九つ。
そこに映ったものは、
目覚める前までセレナが生活していた部屋。
毎晩入っていたシャワールーム。
そして今セレナがいる部屋と、もう一つ。

それぞれの場所がいくつもの視点で別々の方向から映されていた。


セレナ「嘘……これって……」


モニターに釘付けになっていた手元にノートがあることに気づく。


セレナ「……?」


すぐに手に取り、ページをめくる。

 ▼ 58 めつのねがい◆5oP7VYU6fg 18/08/11 23:36:30 ID:ixA.2LlE [21/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


8月8月
── 観察1日目

今日から僕はセレナとともに生活を送る。

その日は空に厚い雲がかかっており、夜ほどではなくとも太陽を感じないほどに暗い。
それと同じようにセレナの一日も、夜を越えたあととは思えないほどに疲れきった表情から始まった。


8月9日
── 観察2日目

その日は空一面にかかった雲の奥から陽が主張するのと同じように、昨日の疲れきった表情とは近いようで遠い。
明らかに寝不足で休めていないはずの奥にどこか希望が見えるような、そんな表情から始まった。


8月10日
── 観察3日目

その日は、珍しく快晴のような屈託の無い笑顔で始まった。


8月11日
── 観察4日目

その日は昨日に続きよく眠ることができたセレナだが、どこかスッキリしない不安さが垣間見える笑顔から始まった。


8月12日
── 観察5日目

その日は、全く知らない一室で目覚めるところから始まる。
 ▼ 59 めつのねがい◆5oP7VYU6fg 18/08/11 23:38:02 ID:ixA.2LlE [22/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


セレナ「やっぱり……ずっと、誰かに観られて……」


観察日記にはその日彼女の身の回りで起きたこと、言動や表情。その全てが事細かに記されている。

セレナの顔が青白い色の恐怖に染まる。そしてすぐに足を動かした。杖もなく片足だけでは不格好で体力も時間も食う。

だが目には部屋の唯一の出口であると扉しか見えていないようだった。そして扉の前まで来て立ち止まる。


セレナ「みんなは……?」


みんなとは、ポケモンのことだろう。振り返った先に目にはいったのはモニター。そこに映してあったのは銀髪の少女が使っていたマニューラというポケモン。
が身体中から血を垂れ流し、真っ白な体で倒れている姿。
 ▼ 60 めつのねがい◆5oP7VYU6fg 18/08/11 23:39:20 ID:ixA.2LlE [23/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


セレナ「うそ……まさか……!」


手もとが安定せず、普通の扉をガチャガチャと音をたてて開く。廊下に前のめりになって飛び出すが踏み出す片足がなくそのまま支えることもできずその場に倒れた。

拍子に右足を強く床にうってしまう。


セレナ「いったッ!」


無様に転び、あの日のように右足を抱えるセレナ。その顔は今まで観察してきた中でも一番魅力的な表情だった。

立ち上がろうとするところを、君の重い右足を押さえつける。


セレナ「うあああ……!!」


足はまだだいぶ痛むようだ。


セレナ「……やっぱり……あなたが!」


歯を食い縛り、悔しそうにこちらを睨み付ける。
だがそれは威圧どころか更に自らを苦しめる引き金にしかならない。


セレナ「うっ! いやああああ……!!」


踏みつける力を少しずつ強く。
床で足をすり潰すように力を加えていく。

喉から絞り出した悲鳴は誰にも届かず、逃れることできない痛みだとわかっているはずだが勝手に体が動くようで、暴れ、もがく。
 ▼ 61 めつのねがい◆5oP7VYU6fg 18/08/11 23:40:23 ID:ixA.2LlE [24/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


セレナ「はあっ、はあっ、はあっ」


身体中からじんわりと溢れる汗、息も絶え絶えに倒れたままセレナの顎を持ち上げ、壁を背に座らせる。


セレナ「うう……」


ずっと観ていた。
考えていたんだ。

嬉喜び、そして楽しみ笑う顔、
眉間にシワを寄せ怒る顔、
そのダイヤの瞳を潤ませ悲しむ顔、

どれもが美しく、愛らしく。

しかしそのどれもが違った。


やはり始まりはこの足だった。


右足に何重にも巻かれた包帯が血で滲んでいく。


ずっと見たかった。

君がまたあの日のようにもだえる表情を、
経験したことのないほどの苦痛に歪む君の顔を。
 ▼ 62 めつのねがい◆5oP7VYU6fg 18/08/11 23:41:49 ID:ixA.2LlE [25/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


セレナ「は、離して……!」


そうだな。
なるべく屈せず意識をしっかり保っていてほしい。

人は極度の痛みを加えられると苦痛を通り越して意識がトんでしまうようなんだ。
この前失敗したから僕もやりすぎないように気を付けようと思う。


セレナ「失敗…………?」


そう。派手な銀髪の……あの子で試してみたんだ。
気の強そうな割にすぐ気を失ってしまって、楽しむどころじゃなかった。

やはり君以外じゃダメみたいだ。
まぁ本命で失敗をおかさないための予行練習にはなったかな。


セレナ「……そんな簡単な理由で、彼女を……!」


最初はそのつもりはなかったんだよ。
だけど君のノートを盗んだ辺りで鋭く僕の存在に気づいて追ってきたから、仕方なくさ。


セレナ「なら、どうしてわざわざ彼女をポケモンセンターに……? 自分で傷つけたくせに」


君が混乱する姿を生で見たかったのさ。
君を追い込むためには偶然そこに居合わせる必要があったからね。


セレナ「……っ!!」
 ▼ 63 めつのねがい◆5oP7VYU6fg 18/08/11 23:42:23 ID:ixA.2LlE [26/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


だけど我ながらリスキーな遊びだった。

君は覚えてないだろうけど、僕と君は以前一度会ってるんだよ。だから顔を覚えられているとまずかったとドキドキしたよ。


セレナ「覚えてるわ。だから、おかしいと思ってた……」


おや、それは嬉しいね。


セレナ「サインを頼まれたのなんてあの日が初めてだったし。好きだって言ってくれる人を忘れることなんてない……」

セレナ「あなたが彼女に握手を止められた時、あなたは彼女のことを知らなかった。なのにずっとファンだった。だなんて」


あいにく髪には美しさこそ感じても興味がなくてね。しかし危ない橋を渡ったかいはあったよ。


セレナ「今までのこと……全部……」


あの日、僕の手の上で振り回される君の表情は最高だったよ。

だけどそのすべて理想には及ばなかった。

だから見せてくれ、もっと、君の顔を……!

僕に見せてくれ、誰にも見せたこともないような君の魅力を!


セレナ「いやあああああっ!!」


町から外れた誰もいないはずの小屋に悲痛な叫びが響いた。
 ▼ 64 めつのねがい◆5oP7VYU6fg 18/08/11 23:42:41 ID:ixA.2LlE [27/32] NGネーム登録 NGID登録 報告



──── 二日後


 ▼ 65 めつのねがい◆5oP7VYU6fg 18/08/11 23:43:09 ID:ixA.2LlE [28/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


彼女の名前はシブル。
ポケモンセンターに勤めていた。


静寂が漂うロビーをやることもなく眺め続けるだけの仕事終える。
仕事が終わったところで、退屈なものは変わらないため、そこに歓喜や安堵の表情はなかった。

いや、それはつい先月までは普通のことだった。

しかし普通のはずだった日々でも彼女の顔に暗い表情が浮かび続けた理由は、数日間だけとは言えその時間の多くの割合をともに過ごした話し相手を失ってしまったことだろう。
 ▼ 66 めつのねがい◆5oP7VYU6fg 18/08/11 23:43:31 ID:ixA.2LlE [29/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


シブル「はあー……」


重い扉の取っ手に力なく手をかける。
扉を開けた刹那、彼女は小さくなっていた目を見開いた。


セレナ「うーん……」

シブル「セレナさん……!?」

セレナ「あっ……ジョーイさん。おはようございます」

シブル「〜っ!! よかった……よかった……!」


胸からこみ上げる熱い涙をこらえて笑う。


シブル「おはようございます! セレナさん」


病室のベッドに横たわる患者のセレナは、元々足を怪我しておりポケモンセンターで生活しており、暇をもて余していたシブルとはかなり友好的な関係になっていた。

そんな少女が二日前行方不明になったところをシブルが気づき、即座に警察に連絡。同じく被害者である銀髪の少女の証言をもとに捜索し、迅速な犯人逮捕と被害者の保護に成功したと言う。

しかしそれでも被害者の負傷は激しく命を落とす可能性すらあったらしい。

そんな中なんとか一命をとりとめ、彼女が再びその声を聞かせてくれたことはさぞ嬉しかったことだろう。
 ▼ 67 めつのねがい◆5oP7VYU6fg 18/08/11 23:44:37 ID:ixA.2LlE [30/32] NGネーム登録 NGID登録 報告




8月15日
── 76日目


空は快晴。
輝くホウエンの海。
そして安心したような二人の表情。

しかしその奥には人々が目を背けてるうちにも暗く、くすぶり続ける恐怖が垣間見えた。






──────────────── 完。
 ▼ 68 めつのねがい◆5oP7VYU6fg 18/08/11 23:49:45 ID:ixA.2LlE [31/32] NGネーム登録 NGID登録 報告


読んでくださった方ありがとうございました。
このSSはホラーSS企画に参加します。一応。
http://pokemonbbs.com/sp/poke/read.cgi?no=857602
 ▼ 69 めつのねがい◆5oP7VYU6fg 18/08/11 23:51:51 ID:ixA.2LlE [32/32] NGネーム登録 NGID登録 報告
更新ミスで>>47の前のレスが抜けてしまっていました。

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──────


ジョーイ「結局昼食はとれずじまいで夕食になってしまいました」

セレナ「いえ、大丈夫です。あまりお腹すいてないので……」

ジョーイ「お陰さまでなんとか命は無事ですみそうです」

セレナ「それはよかった」

ジョーイ「お味も……わからないですか?」

セレナ「ううん。おいしいです」

ジョーイ「そうですか?」

セレナ「はい。さっきは、ありがとうございます……」

ジョーイ「真実を言っただけですよ。だって、セレナさんは本当になにもしてないですし」

セレナ「でも! 私が怪我したのと同じ、右足が特に酷かったのは本当でしょう? それにプラスルのこともあるし……」

セレナ「もしかしたら本当に私のせいなのかも」

ジョーイ「そんなことより、気分転換に外出でもどうでしょう」

セレナ「……今は外に出るのも不安です」

ジョーイ「そうですよね。あ、TVでグランドフェスティバルのことが、丁度明日なんですね」

セレナ「見たくないです」


──────
──────
 ▼ 70 トウモリ@ゲンガナイト 18/08/12 06:42:28 ID:nRFUeZn2 NGネーム登録 NGID登録 報告
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