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【SS】リーグ挑戦者のバッジを数える仕事をやっています

 ▼ 1 ガニウム@クチートナイト 18/09/18 19:48:40 ID:.OKgF5n2 [1/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



「コールバッジ、フォレストバッジ、コボルバッジ、フェンバッジ……」


よく磨かれた金属面をコン、コン、カン、カンと爪で弾きつつ、バッジの名前を列挙していく。


少年「…………!」


俺より4つは年下であろう挑戦者と彼の手持ち3匹は、頭をずいっと突き出し、緊張の面持ちで俺の人差し指をガン見している。



ここはシンオウポケモンリーグ挑戦の入り口。

そして俺はその栄誉ある門番を務めるエリートトレーナー。

時給は最近30円アップして980円だ。
 ▼ 2 ラカラ@あくのジュエル 18/09/18 19:49:54 ID:.OKgF5n2 [2/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ジムバッジが本物であることを音で確かめながら、8つ数える。

勤務内容はただこれだけであり、やってることはフレンドリィショップのレジ打ちと大差ない。

しかし挑戦者がこうも真剣だと自然と気合が入ってしまう。


「レリックバッジ、マインバッジ、グレイシャバッジ……」


カン、カン、キン。

そして最後の一つの確認は運動会の玉入れよろしく、若干溜めて、


「……ビーコンバッジ!!」


クォン。

これまでより一際強く、しかし微妙に濁った低い音が響いた。

お前、さては途中でバッジ磨くの飽きたな……?
 ▼ 3 ーマンダ@リーフのいし 18/09/18 19:50:32 ID:.OKgF5n2 [3/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「よし。公認バッジ8つ確認! シンオウポケモンリーグ挑戦の資格を認める!」

少年「うあ…………!」


少年は目をいっぱいに輝かせてポケモンたちとしばし見合い、


少年「よしっ!!!!」


そして渾身のガッツポーズ。

んな大袈裟な、などとは思わない。

俺だって初めて挑戦しに来た時は、相棒コロトックとハイタッチを交わして流血したものだ。
 ▼ 4 レキブル@きぼんぐり 18/09/18 19:51:01 ID:.OKgF5n2 [4/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「キズぐすりは持ったか?」

少年「持ちました!」

「げんきのかけらは?」

少年「持ちました!」

「とっておき、ふくつのこころは?」

少年「えっ……急にどうしたんですか?」

「あ、いや……なんでもない」


シンオウ民のソウルソングだと思ってたのに……。
 ▼ 5 ロトック@オボンのみ 18/09/18 19:51:36 ID:.OKgF5n2 [5/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


頑張れよー、と少年を見送ったところで、左腕のポケッチがピピッと小気味良い音を鳴らした。

おっと、午後3時。終わりの時間だ。

ふはーっと息を吐き出しつつ振り向くと、シフト交代先の先輩がいた。


先輩「ふくつのこころ、ねぇ。確かに大事よね。ネタは通じなかったみたいだけど」

「ジェネレーションギャップっすねぇ……なんかショック」

先輩「あなたはいいの? 今年の挑戦権、まだ使ってないでしょ?」

「いいんすよ。それじゃ、上がりっす」

先輩「お疲れさま。それじゃ……これからバトル練? 頑張ってね」

「んー……まぁ、アイツの試合見たら、ぼちぼち。 おつかれさまでしたーっ」
 ▼ 6 ナアーラ@ハートスイーツ 18/09/18 19:52:39 ID:.OKgF5n2 [6/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

勤務地から徒歩6秒の位置にあるロビーのソファーの右端に、どさりと腰を落とす。

それを合図に俺の手持ちポケモンたち3匹がボールから飛び出し、たちまちソファーは満席になった。

そして俺と3匹の視線は目の前の画面に注がれる。

壁に埋め込まれたモニターには、先ほどの少年と、一人目の四天王であるむし使いのリョウが映っていた。

ポケモンリーグの試合は全て、ここからリアルタイムで観戦することができる。

バッジ確認バイトで送り出した挑戦者の試合を、手持ちポケモンとともに眺めるのが俺の日課だ。
 ▼ 7 ゾノクサ@ジュカインナイト 18/09/18 19:53:34 ID:.OKgF5n2 [7/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





「うおっ! いいの入った!!」


少年の手持ち、フローゼルのアクアジェットがついにドクケイルを沈めた。


ムクホーク「くぉーっ! くっくっ!」

レントラー「とらー!!」


少年の善戦に俺の手持ちたちも盛り上がる。
 ▼ 8 ザードン@れいかいのぬの 18/09/18 19:54:16 ID:.OKgF5n2 [8/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

だが少年の不利は明らかだった。

片や、3匹中2匹を失い、残るフローゼルもどく状態かつダメージあり。

片や、5匹中の3匹を無傷で残し、エースも見せていない四天王・リョウ。


「はぁー……流石にキツいな。でもま、よくやった方……」

コロトック「ちちっ! ころろろろっ!」


鎌を振り上げるコロトック。
どうやら俺のため息がお気に召さなかったようだ。


「まだフローゼルの目は死んでねーってか」

コロトック「……ちちっ」
 ▼ 9 ルッグ@リリバのみ 18/09/18 19:55:24 ID:.OKgF5n2 [9/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

そう言っている間にも、ドラピオンのシザークロスがフローゼルに迫る。

しかしフローゼル、これを超反応の横っ飛びで回避。


「おおー!」「くぉー!」「とらー!」


これには俺たちも揃って嘆息。


コロトック「ころろっ!」


どうだ見たか、とコロトック。

お見それしました。
 ▼ 10 ブト@プテラナイト 18/09/18 19:56:11 ID:.OKgF5n2 [10/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

横っ飛びで流れた姿勢だが、フローゼルの顔はドラピオンを正面に捉えている。


「おーすげぇ体幹。流石に鍛えてんな」


シザークロスの空振りでできたドラピオンの僅かな隙。
そこを逃さずフローゼルから放たれる渾身の大技。

ハイドロポンプ!


「かませぇ!!」


……が、外れた。


コロトック「ころォーーーー!?」


流石は手練れのドラピオン。
咄嗟の判断で頭を下げていた。
 ▼ 11 ルーグ@きれいなハネ 18/09/18 19:57:49 ID:.OKgF5n2 [11/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「ここでの外しはキツい……ってかあんだけ攻めたハイポンじゃなくて、まず当てに行くべきだったろ……!」

先輩「いや、ここは攻めざるを得ない場面よ。毒状態で残り3匹相手にするんだもの。
   外すリスクなんて考えてられないわ。あと、ハイポンじゃなくてドロポンね」

「いんや、どのみちハイポン1発じゃ落とせないでしょ。 っていうか先輩シフトはどうしたんすか」

先輩「一日3人くらいしか来ないのにずっと立ってるのってバカバカしくない?
   ねーレントラー?」

レントラー「とらぁー」


いつのまにかソファーに座っていた先輩は、膝に乗せたレントラーを撫でながら試合を観戦していた。

……そいつ、42kgなんですけど……。
 ▼ 12 ラブ@ながねぎ 18/09/18 19:58:39 ID:.OKgF5n2 [12/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



結局あのハイポン外しから流れが変わることはなく、試合は四天王の圧勝で幕を閉じた。


先輩「んー、残念。また来年ね……」


先輩が眉をハの字にしてため息を漏らす。

リーグへの挑戦は1年に一人一度と決まっている。
四天王やチャンピオンからの推薦でもあれば話は変わってくるが、あの試合展開では期待できそうもない。

というか、そもそも。


「……アイツ、まだ続けられますかね……?」


こんなにも高い壁を知って、心は折れないものだろうか。
 ▼ 13 ザード@なぞのすいしょう 18/09/18 19:59:24 ID:.OKgF5n2 [13/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

先輩「はぁ……。あのねぇ」


深いため息をついて、先輩が話し始めた。
何かを察知したのか、レントラーがそそくさと先輩の膝から飛び降りる。


先輩「あなたが根性なしだからって、あの子まで根性なしとは限らないでしょ」

「誰が根性無しですか。俺が去年リーグ挑戦権使わなかったのは──」

先輩「──『情報を四天王に与えないため』……だっけ?」


せせら嗤いを浮かべ立ち上がり、どうしようもない人間を見る目でこちらを見下す先輩。

このアマ……会話の主導権を握ってやがる……!
 ▼ 14 ゾノクサ@ぎんのはっぱ 18/09/18 20:00:10 ID:.OKgF5n2 [14/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「う……。そうっすよ。まだ勝てないの分かってて、わざわざ策を晒しに行くのは無意味であって……」

先輩「あーはいはい。そんで今年も来年も出ないんでしょう? そーいうのを根性無しっていうのよ」


下唇を噛んだ。

ぐうの音は出そうと思えば出せそうだが、即座にパーを出されるのは目に見えている。

反論はしまっておくのが賢明だろう。
 ▼ 15 クフーン@エレベータのカギ 18/09/18 20:00:48 ID:.OKgF5n2 [15/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「なんなんすかさっきから……辛辣っすね」

先輩「だって、コロトックたちが見ててかわいそうだもの。こんなエリートフリーターに付き合わされるなんて」

「エリートフリーターてなんすか」

先輩「ポケモンリーグ諦めてる人がエリートトレーナーなんて名乗れるもんですか。あなたは今やバトルが趣味のフリーターよ」

「…………」


……今度はぐうの音も出せそうにない。

エリートトレーナー。
バトルで結果を出そうとする者、バトルで生計を立てようとする者の総称だ。

今の俺はバッジ8つ止まりで、四天王を1人すら突破できない程度の実力で、現実も限界も見えていて。

──けれど、それに絶望しているわけでもなく、抗っているわけでもない。

むしろ、このまま気ままにやって行くのもいいかな、なんて思っている。
 ▼ 16 デンネ@しろいハーブ 18/09/18 20:01:46 ID:.OKgF5n2 [16/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「……はは」


思わず乾いた笑いが漏れた。


「エリートフリーター。いいっすねその呼び名。名乗っていきましょうか」

先輩「はぁ!?」

「いいじゃないっすか……趣味でも」

先輩「……自白したわね根性無し。この……ヘタレフリーターッ!」

「はっ、なんとでも言ってくださいよ! 俺は根性無しのヘタレフリーター! バッジを数えて生きる者!! 」
 ▼ 17 ンパン@ムーンボール 18/09/18 20:02:44 ID:.OKgF5n2 [17/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


どうしようもない宣言がポケセンに響いたっきり、誰も喋らない。

途端に、ポケセンの陽気なBGMが嫌にうるさく感じる。
 ▼ 18 ディバ@ブルーカード 18/09/18 20:03:17 ID:.OKgF5n2 [18/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

俺をキツく睨みつける先輩。
その目尻には涙が滲んでいる。

レントラーは俺の足元に隠れて怯えている。

コロトックは先輩と一緒にこちらを睨みつけている。

ムクホークは激しい光に包まれてい……

……ってこれゴッドバードの前動作じゃねぇか!


「ストーップ!」


慌ててムクホークをモンスターボールに戻す。

危ねぇ、両成敗されるところだった。
 ▼ 19 ガフシギバナ@ギネマのみ 18/09/18 20:04:30 ID:.OKgF5n2 [19/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「……喧嘩は、やめましょうか。ムクホークが怒ってる」

先輩「……っ! もう、勝手にすればいいじゃないっ!」


先輩はそう叫んで走り去る──

──ということはなく、バッジ確認バイトの定位置に着いた。

……そうね。今バイト中っすもんね。
 ▼ 20 ーバーン@いでんしのくさび 18/09/18 20:05:32 ID:.OKgF5n2 [20/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ここは俺たちがポケセンを離れるのが筋だろう。


「……チャンピオンロード、行くか。野良バトルでもしよう」

レントラー「とらぁ……」

コロトック「ころろろ……」

「…………。ごめんな」


思わず目を背け、謝った。

何を謝っているのかは、自分でもよく分からなかった。
 ▼ 21 ジョッチ@かなめいし 18/09/18 20:06:34 ID:.OKgF5n2 [21/21] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



──拝啓、バトルの神様。


もうかれこれ4年くらいになりますかね。

リーグ挑戦者のバッジ数える仕事をやっています。

最初は週2だったこのバイトも、今じゃ週5になりました。

バトルの神様、俺はそんなにダメですか。

何かを諦めることは必ずしも悪いことですか。

あの少年は報われますか。

先輩はあと何度の挑戦でチャンピオンにたどり着きますか。

……俺は、これでいいんですよね?
 ▼ 22 もリー◆woBJ.2LDUY 18/09/18 20:35:36 ID:PZ6ECQbc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援です
 ▼ 23 aIiv212DRk 18/09/19 22:03:54 ID:Kux2B80k [1/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



「あ"っづぅ……」


まだ夕方というにも早い時間、外はかんかん照りだった。

いくらシンオウの最果てとはいえ、やはり夏は暑い。

俺は逃げ込むようにチャンピオンロードの中へ駆け込み、そのまま手頃な岩に腰を下ろした。
 ▼ 24 aIiv212DRk 18/09/19 22:05:13 ID:Kux2B80k [2/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



洞窟の中は幾分か快適だった。

奥の方からはバトルの指示やら炸裂音やらが聞こえてくる。

ここには居られないと思った。


「……なぁ。今、戦うって気分じゃねーよな」


我ながらクソみたいな質問をしていると思う。

その証拠にムクホークはボールから出てこないし、コロトックは洞窟の奥を見つめたまま目を合わせてくれない。


レントラー「……とらぁ……」


少し間を開けて、レントラーがおずおずと頷いた。
もしかすると俺に気を遣ったのだろうか。
 ▼ 25 aIiv212DRk 18/09/19 22:06:33 ID:Kux2B80k [3/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「……戻ろう。目と目があったら最悪だ」


嫌に重い体を持ち上げて立ち上がり、出口へと歩き出す。

……足音が足りない。


「コロトック。……戻るぞ」

コロトック「…………」


強情かよ。

……って、俺が言えたことじゃねぇわな。


動かないコロトックと、それを気にかけるレントラーを半強制的にボールに引き戻し、洞窟を出た。
 ▼ 26 ローン@かみなりのいし 18/09/19 22:07:29 ID:ZYG2NAd. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
題名で笑わせに来たかと思ったらシリアスなのか・・・
 ▼ 27 aIiv212DRk 18/09/19 22:07:29 ID:Kux2B80k [4/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

結局すぐ戻ってきてしまったポケセンには、当然バイト中の先輩がいた。

今まで適当にはぐらかしていたが、いざ自分に戦う気がないことを言葉にして認めてしまうと、やはり後ろめたい気持ちが募る。

極力先輩と目を合わせないようにして、二階の宿泊スペースに直行した。

同じバイトをやってる都合上今後も会うことは避けられない。

折り合いつけないとなぁ、と思うし、折り合いなんかつけてやんねぇ、とも思う。
 ▼ 28 aIiv212DRk 18/09/19 22:08:30 ID:Kux2B80k [5/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



大部屋に2段ベッドが8組詰め込まれたポケセン宿舎には、挑戦前のトレーナーや、挑戦を終えたトレーナーがめいめいに陣を取っている。

闘志を燃やしているのが挑戦前のトレーナーで、絶望してるのが挑戦後のトレーナー。

どちらでもない場合は、惰性でここにいるトレーナーである。

どちらでもない人間であるところの俺は、周囲と比較して圧倒的な生活感が漂ういつものベッドに仰向けに寝転んだ。
 ▼ 29 aIiv212DRk 18/09/19 22:09:46 ID:Kux2B80k [6/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

2段ベッドの上の段からは、ペンを走らせる音に混じり、押し殺したような涙声が聞こえてくる。


少年「勝てない、相手じゃなかった……っ。攻撃は……っ通用、してたから」

フローゼル「……ぜるっ」

少年「後手に、回りすぎたんだ。ミミロップ の速さなら、後ろを……っ取れたはずで……」

ミミロップ 「みぃろ……!」



ここで暮らすうちに慣れてしまって気にも留めなくなった、敗北者の涙。

それなのに今日は耳を塞ぎたくなってしょうがない。
 ▼ 30 aIiv212DRk 18/09/19 22:12:07 ID:Kux2B80k [7/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

少年は、来年もまだ挑戦する気なのだろうか。

まだ諦めていないと、自分自身の頭に言い聞かせているようにも聞こえる。

……それは昔の俺がそうだったからか。

だから、苛立ってしまうのか。
 ▼ 31 aIiv212DRk 18/09/19 22:14:28 ID:Kux2B80k [8/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

少年「“むしのさざめき”も、正面じゃなきゃ、大したダメージ、は出ない……っ」


少年はなおもペンを走らせ、作戦を並べ立てる。


少年「相手は、大した……っ速さじゃない」


まるで、思考の隙間に絶望が入ってくるのを拒むように。


少年「スピードで、裏を……取るんだ……っ」

「速度で勝てても裏は取れねーぞ」

少年「へっ!?」

「っあ……」


思わず口をふさいだ。
何余計な口出ししてんだ俺は。
 ▼ 32 aIiv212DRk 18/09/19 22:15:59 ID:Kux2B80k [9/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

少年「あ、バッジ確認の……」


少年が上のベッドの淵からひょこりと頭を出した。


「……よう」


目をそらしつつ、雑に挨拶する。


少年「……裏は取れないって、どういうことですか」

「自分で考えろい」

少年「えー……」


まぁ、いきなり口出ししといてそりゃねぇわな。
えーってなるのも分かる。
 ▼ 33 aIiv212DRk 18/09/19 22:19:23 ID:Kux2B80k [10/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「あー……。スピードで勝ってても、複眼の視野とか触覚のセンサーで反応されんだよ」


仕方ないのでざっくりと答える。


少年「確かに……攻撃が全然当たりませんでした。こっちの方が明らかに速いのに」

「アイツらに死角はないからな。スピードを活かすなら、変に位置取り考えるよりは単純に攻撃回数増やした方がいい」


そうしないと挑戦2回目の時の俺みたいになる。


「なるほど……」


そんな苦々しい俺の体験談など知る由もなく、少年は熱心にペンを走らせていた。
 ▼ 34 aIiv212DRk 18/09/19 22:22:54 ID:Kux2B80k [11/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

少年「じゃあ……“さざめき”はどうやっても避けれないってことですか?」

「んー……まぁ基本そうだな。お前、メスのポケモンは持ってるか?」

ミミロップ 「みぃろ?」


ベッドの淵からミミロップが顔を出した。


少年「こいつがメスですけど……」

「んじゃ、“ゆうわく”とか。ドクケイルもアゲハントもオスだから、“むしのさざめき”の威力が下がる」

ミミロップ 「みー……」


すげぇ露骨に嫌そうな顔すんなぁ、オイ。


少年「嫌、だそうです」

フローゼル「ぜる、ぜる」


見りゃ分かるよ。
 ▼ 35 aIiv212DRk 18/09/19 22:24:17 ID:Kux2B80k [12/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

少年「っていうか、あのドクケイルメスじゃありませんでした?」

「え、嘘」

少年「嘘じゃないですよ。ほら」


そう言って少年が再生したバトルビデオには、確かに頭の触覚が短めのドクケイルが映っていた。


「あら? っかしいな……。おーい、コロトックー」


同じくむしポケであるコロトックに聞いてみようと、ボールの中を覗き込む。

……って寝てる。なんだよ、ふて寝か?


少年「見間違いじゃないですか? まぁ、どっちにしろ“ゆうわく”は使わないですけど」

ミミロップ 「みみろっ」
 ▼ 36 aIiv212DRk 18/09/19 22:25:43 ID:Kux2B80k [13/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



結局、少年とのバトル反省会は夜まで続いた。


どちらかといえば速やかに諦めて普通の人生のレールに戻って欲しいと思っていたはずなのに、
いつになく長々と語ってしまった。

……やっぱ諦めて欲しくないかもしれない。

なんにせよ、来年も挑戦するかどうかは少年自身が決めることではあるのだが。
 ▼ 37 aIiv212DRk 18/09/19 22:27:57 ID:Kux2B80k [14/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



ポケッチの目覚ましが鳴り響いた。

同室に泊まっている何人かのトレーナーに配慮すべく、アラーム音を瞬時に止める。

そして再び目を閉じる。


ムクホーク「ほーくくっ!」

「ぐへっ!?」


直後、ムクホークに枕を引きぬかれた。


「あーもう、いつも言ってんだろ! あと5分って言うために5分前に目覚ましかけてんの!!」


ムクホーク「くくっ! むくくっ!」


ムクホークは俺の言い分など御構い無しに、ベッドに転がっているボールをつついて残り2匹も起こしていく。
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