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SS

「ブイズのパーティー」 【SS】

 ▼ 1 ッキング@かがやくいし 18/02/02 22:43:57 ID:RXwlpi1o [1/20] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「この度、カロス地方はアサメシティにてイーブイ族のための婚活パーティーを催すことになりました

是非ともご参加下さいますよう宜しく申し上げます」

ある日そんな手紙が各地方に届いた

主催者はとある大財閥で、パーティーは数日に渡って盛大にやるようだ

しかし奇妙な注意事項がいくつかあり、どうやらただのお見合いとはいかないらしい

それでも、招待された者たちは続々と参加を表明していった

“イーブイ族のための”というフレーズがとても魅力的だったのである

雌雄比が非常に偏ったイーブイ族の♂にとって、イーブイ族を伴侶とすることは憧れであり、同時に競争率の激しい夢である

そのような経緯から、大事にされるので♀の方もイーブイ族と結ばれることを望む傾向にある

怪しくもまたとないチャンスを求め、招待された十名が集まった

 ▼ 2 アル@ジュペッタナイト 18/02/02 22:45:52 ID:RXwlpi1o [2/20] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブラッキー「…………」

ブースター「……全員、ドレス?」

サンダース「……どういうことだ?」

グレイシア「一、二、三……九名、ですか」

イーブイ「みんなおんなのこってこと?」

エーフィ「いやいや、そんな奇跡ありえないってば」

リーフィア「こんなのお見合いが成り立たなくなっちゃうじゃん!?」

シャワーズ「ただのお見合いじゃないとは思ってたけどねぇ……」

イーブイ★「ん、もう1り来たみたいだ というか主役かな」

ニンフィア「お待たせして申し訳ありません ようこそお集まりくださいました
私が今回の催しの主催者のカロスの大財閥、の跡継ぎです」

サンダース「お前が主催者か! 説明してくれるんだろうな!?」

イーブイ「にんふぃあさんもどれすだね! みんなきれいだね!」

ニンフィア「すみません 主催者は私の義母でして 説明はこちらの……」

ピカチュウ「この度奥様から進行役を仰せつかりました執事のピカチュウです」

パチリス「同じくメイドのパチリスでございます」

ピカチュウ「ご納得の上かと思いますが事前にお知らせした注意事項を確認していきます」

パチリス「此れから三日間皆様には自由に交流して親交を深めて頂き、
最終的にはこの中から選んで頂いて、二人一組になって頂きます
     そして組になった相手とは財産等も含む、権利・義務・責任の共有契約
     つまり『結婚』をして頂きます。」
 ▼ 3 ンドパン@ポケじゃらし 18/02/02 22:51:22 ID:RXwlpi1o [3/20] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サンダース「は? 契約? おいおい、ちょっと意味判んねえんだが?」

シャワーズ「確かに結婚は諸々の共有契約だけどもさぁ」

グレイシア「態々そんな言い方をする辺り、裏の意図を感じますね」

エーフィ「はい、質問 組が作れずあぶれてしまったらなんかあるの?」

イーブイ「え? あまんないよね? 10にんでしょ?」

ピカチュウ「いえ 組むべき相手がいないと思われたならどうぞご自由に
      組まなかったからといってこちらからは何もございません
      このパーティーに於いては縁がなかったというだけになります」

パチリス「ただし、ニンフィア様に限っては話が異なります
     奥様は『この場で結婚相手を見つけなければ勘当する』と仰っております」

ニンフィア「わ、判ってますよ 今までの我が儘を聞いてもらって
こんな素敵なパーティーまで用意して下さったんですもの
      きっと素敵な伴侶を見つけてみせます」

リーフィア「つまりニンフィアに結婚相手を見つけさせるためなんだ……
      あれ? だったらなんでこんな変な条件があるの?」

ピカチュウ「『自らの性別を名乗らないこと』『こちらの用意した衣装を着ること』
      『ゆうわく・メロメロの禁止』などのことでしょうか」

リーフィア「うん そう 初めから誰が異性か解ってれば早いんじゃないの?」

パチリス「いえ もし性別を先に明かすとなるとこの企画が破綻する虞れがございます」
     私共の情報網では、お集まり頂く方の雌雄比を1:1には出来かねます]

ブラッキー「……♀を守るため?」

パチリス「万が一のためそのように愚考した次第でございます」

リーフィア「え? ちょ ついていけてない どういうこと?」

ブラッキー「……♂のが多いでしょ、絶対」

リーフィア「だからそれがなんなのさ! ちゃんと説明してよ!!」

イーブイ★「ええと、だね もしも君が女の仔だったとしてね?」

リーフィア「うえ!? あ、うん…… 仮定ね、仮定」

イーブイ★「女の仔だったとして、それが判ってた場合
      ♂はみんな君にしか目を向けなくなってしまう
      もしかしたら女の仔はひとりだけなんてこともあるかもしれない
      そうすると、『結婚』するのは一組だけとかいう寂しいことになるかも」

リーフィア「イーブイ族だし、ありえないでもないのか」

シャワーズ「♀を巡っての血で血を洗う争いもあるかもねぇ」

グレイシア「だからドレス(女装)を着用させられたのですね」

ニンフィア「イーブイ族って全員♀って言われても信じられる容姿ですしね」
 ▼ 4 ガスピアー@ようせいジュエル 18/02/02 22:53:19 ID:RXwlpi1o [4/20] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
パチリス「さて、その『結婚』ですが、
一般のものと違って破棄はできないものとお考え下さい
そういう契約書に連名で署名頂きます」

シャワーズ「えぇ〜……」

サンダース「書きたくない、となったら?」

ピカチュウ「『結婚』不成立、となりますね」
因みに、このパーティーにて『結婚』が成立なさった皆様には、
      財閥から最大で6000万P(ポケ)のご祝儀が送られます」

エーフィ「6000万!? 超大金じゃん!!?」

リーフィア「最大で、ってどういうこと?」

パチリス「最終的に『結婚』なされた方々で山分けという形にさせて頂きます。
     一組なら総取りですが、二組三組と増えていく度に額は減っていきますね。」

エーフィ「5組になると…… 1200か だいぶ減るね」

リーフィア「財閥から? ニンフィアには関係ないんじゃない?」

ニンフィア「いえいえ、強ち無関係と言う訳でもないんですよ」

イーブイ「かんどうされたらいやだもんね」

パチリス「各々に用意されたプライベートルームの、本人以外の方の入室や
     大浴場、プールなど今回に於いて封鎖された施設の利用
     深夜12時以降の敷地外への移動などは禁止させていただいております」

リーフィア「大浴場にプール…… 凄い設備だよね……」

エーフィ「プールいいなあ 行きたかった」

サンダース「性別隠す以上仕方ねえだろ」

イーブイ「あといっちゃだめなのは……ほんかん?」

グレイシア「あ、ここ別館なんですね。ここも凄い広いんですけど……」

シャワーズ「別館で既にすごいんだから、本館にも興味あるけどなぁ」

パチリス「『結婚』成立為されましたら本館で式を挙げることもできます
     焦らずともよろしいのではないでしょうか」

シャワーズ「逆に言えば、『結婚』しないと行けないんだねぇ」
 ▼ 5 ッサム@まんたんのくすり 18/02/02 22:55:16 ID:RXwlpi1o [5/20] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「屋外バトルフィールドの使用はご自由に
      しかしフィールド外でのバトルや技の使用は禁じさせて頂きます」

ブースター「バトル! 面白そう!! あとで誰かやろうよ!!」

リーフィア「遠慮しておこうかな 相性的に」

グレイシア「私も止めておきますね 相性的に」

イーブイ★「ぼくも遠慮するよ バトルは得意じゃないから」

ブースター「なんだ、詰まらん!」

シャワーズ「じゃあ私とやろっかぁ?」

ブースター「それは、遠慮願いたい……」

パチリス「更に招待状に記載した各種条件も守っていただきます。
     それから、招待状に書かれた内容は各々少しずつ違いますが、
その開示も禁則とさせて頂きます」

イーブイ「そーなんだ ないしょないしょだね」

リーフィア「性別と、招待状の内容は秘密…… 隠し事苦手…… どうしよ……」

ニンフィア「大丈夫ですよ いつでも監視してるわけじゃないそうですし
      判定もゆるいそうですから気楽にしてください」


サンダース「やっぱニンフィアって主催者側なのか……?」

ニンフィア「え…… ど、どうなんでしょう? 企画したのは義母で、
そりゃちょっとは聞いてますが、ほとんどは知らなくて
どちらかといえば参加者寄り、って感じでしょうか?」

ブースター「つまり参加者とあまり変わりがない、ということか」

ピカチュウ「その他倫理に悖る一切も禁止です
      もしこれら条件に抵触された場合、パーティーの参加権を剝奪し、
      元の地方へ強制的に送られることになります。」

シャワーズ「それは困るなぁ」

リーフィア「なにも為せず返されるわけにはいかないからね」

イーブイ「るーるをまもればいいんだよ それだけでしょ?」

パチリス「その通りでございます 違反者が出ないことを祈っております」

シャワーズ「ああ、あと聞いておきたいんだけどぉ
『結婚』しない相手との連絡先の交換ってのは無し?」

パチリス「いいえ パーティーより後の関係性はノータッチでございます」
 ▼ 6 ロスター@ヤドランナイト 18/02/02 22:57:14 ID:RXwlpi1o [6/20] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
パチリス「注意事項の確認も済んだところで
     まずは皆さんに自己紹介をして頂きましょう」

ピカチュウ「ではニンフィア様からどうぞ」

ニンフィア「はい 私はニンフィア この家で面倒を見て頂いているものです
      好きなものはドリの実のポフレ 趣味は」

サンダース「ちょっと待て どういうことだ?」

ニンフィア「ええと ポフレというのはお菓子のことで ドリの実を混ぜたものが」

エーフィ「いやいや そっちじゃなくて」

ブースター「ええと 君はこの家の仔供じゃないの?」

ニンフィア「この家の者ですよ? ただ 捨て仔だったんです
      といっても不幸だと思ったことはありません
      義両親には愛情持って育てて頂きましたし
      条件付きではありますが後継ぎとしても認めて頂いています」

リーフィア「条件?」

グレイシア「結婚すること ……でしょう?」

ニンフィア「はい、そうです だからこそこの場で素敵な伴侶を見つける所存です」

ブースター「じゃあ異性を見つけなきゃだから大変だね」

イーブイ★「ところで、メロメロは禁止だということだったけれど 君の特性は?」

ニンフィア「あっ、ごめんなさい 先に言うべきでしたね フェアリースキンです」

イーブイ「めろめろぼでぃはるーるいはんだもんね」

リーフィア「そういう問題かな? 変えられるものじゃないでしょ?」

シャワーズ「まあまぁ スキンだから問題なしってことで 続きどうぞぉ」

サンダース「趣味は?」

ニンフィア「趣味は、えっと、在り来たりかもですが歌うことですね
      大きな声を出してスッキリするのが好きです」

イーブイ「うたう? はいぼ?」

ニンフィア「ええと、どちらも得意、です
      跡を継ぐため、勘当されないためというのは一先ず置いておいて
      純粋に結婚に憬れてますゆえ、よしなにお願いします」
 ▼ 7 ックウザ@ブロムヘキシン 18/02/02 22:58:57 ID:RXwlpi1o [7/20] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブースター「次は誰? どっち周り?」

イーブイ★「じゃあ時計回りかな」

サンダース「お、俺か? 俺はサンダース カントー在住 発電所勤務の一般社員
      好きなものは仕事終わりのミックスオレ」

イーブイ「なにあじ? なにあじ?」

サンダース「ピンクフルーツだな」

イーブイ「ぼくもそれすき! みんなは?」

ニンフィア「みどぼんシェイカー味ですね」

グレイシア「厳選 極みの青ですわ」

リーフィア「うえ、あんな渋いのよく飲めるね…… ボクはパイルスカッシュかなぁ」

エーフィ「いいね あたしはどっちかといえばブリアンサワー派だけど
     ……まさかと思うんだけどこの中にレッドホット好きとかいないよね?」

イーブイ★「……美味しいんだけどなぁ」

エーフィ「うわ、勘弁 理解できないわ 何であんな舌がひりひりする奴……」

シャワーズ「はいはぃ、他人の好みにグチグチ言わない 私も辛いの苦手だけどぉ」

エーフィ「あんたも駄目なんじゃん 何が好きなの? サワー系?」

シャワーズ「極みの青」

エーフィ「うわ、この裏切り者――!」

シャワーズ「関係なくなぃ……?」

サンダース「勝手に盛り上がんな! まだ俺のターン!」

シャワーズ「ごめん、続きどうぞぉ」

サンダース「はあ、まあいいや 趣味は……
んー、最近仕事ばっかで趣味らしいことなんもやってねえな
そんな俺だが家庭に入って苦楽を共にしてくれるひと募集中 以上」

エーフィ「13点 好みじゃない」

サンダース「勝手に採点すんな!! てか低っ! 辛口か!!」

エーフィ「う…… 辛いのはだめだわ もうちょっと上げとく?」

サンダース「なんだその採点基準!? そんなんで点数貰いたくねえ!」

リーフィア「というか、辛口って味のことじゃないでしょ」
 ▼ 8 メグマ@こうらのカセキ 18/02/02 23:00:45 ID:RXwlpi1o [8/20] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
リーフィア「次はボクだね 好きなものはパイル、シュカ配合の黄色ポロックかな」

グレイシア「ポロック? ということはホウエンの方ですか?」

リーフィア「そう 今はホウエンに住んでるよ」

ブースター「今は?」

リーフィア「産まれはシンオウの森で、小さいときはジョウトの方にいて、
      あとはカントー行ったり、イッシュ行ったり色々」

イーブイ「すごいねー いっぱいいろんなとこいってるんだねー」

シャワーズ「いいなぁ 私も色んなとこ行ってみたいなぁ」

ニンフィア「私はカロスから出たことないので、遠出って憧れます」

イーブイ「みんなは、どこいきたい?」

ブースター「アローラいいな 一度行ってみたい」

サンダース「南国だったか? なんか時差呆けしそう……」

イーブイ★「カントーやジョウトからすると時間帯が真逆だからね」

エーフィ「……真逆ってつまり昼が夜? あたしブラッキーになっちゃう?」

サンダース「なるわけねえだろバカ」

エーフィ「ひどーい あたし馬鹿じゃないもん サンダースの馬鹿」

ニンフィア「はいはい 喧嘩しないで下さい
 リーフィアさんの自己紹介が終わらないじゃないですか」

リーフィア「ありがと、ニンフィア って言っても何を言っていいやら? 趣味とか?
      木の実採集と、あと料理は好きかな 特技は掃除」

ブースター「家庭的なんだね」

リーフィア「いやいやー それくらいしか取り柄がなくてね お恥ずかしい
      家事はできるけど他はあんまりで
      素敵な連れ添い様がいてくれたら楽しいのかな なんて夢見てます///」
 ▼ 9 イチュウ@クラボのみ 18/02/02 23:09:05 ID:RXwlpi1o [9/20] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エーフィ「次あたしね あたしはジョウトのコガネ住んでるの
     知ってる? コガネ すっごい都会でね ラジオ塔とか建ってるんだよ
      おしゃれでー きれいでー いい街よ」

リーフィア「知ってる知ってる リニアの駅もあるんだよね?
      ジョウトには行ったけどコガネは行かなかったんだよねー」

サンダース「有名な評論家兼発明家の出身地だったか?」

エーフィ「へ? 誰それ?」

サンダース「何でお前が知らないんだ…… 地元のことだろうが」

ブラッキー「……産まれは?」

エーフィ「タンバだよ? コガネには後から引っ越したんだよねー
     って 何で判ったの? コガネ産まれじゃないって」

ブラッキー「……喋り方」

リーフィア「えぇ? どういうことさ?」

イーブイ★「例外はあるかもしれないけどコガネ出身者は喋り方が独特だから
      普通のしゃべり方だから気になったんだろうね」

ブースター「それならそこ出身の有名人を知らなくてもしょうがない……のかな?」

サンダース「いや、知っとくべきだろ」

エーフィ「いいじゃん、別にー」

ニンフィア「大きな街なんですね ミアレとどっちが大きいんでしょう?」

エーフィ「そこと比べられたら勝てないよー ミアレ凄すぎない?」

グレイシア「カロスに来るにあたってミアレ空港を利用しましたけど
      確かにあの街は途轍もない規模でしたね」

リーフィア「一度はあんなとこ住んでみたいなー なんて」

シャワーズ「だったらニンフィアさんと『結婚』したらぁ?
      カロスに住めるよぉ?」

リーフィア「あ、確かに いや結婚相手ってそんなんで選ぶものじゃないでしょ」

ニンフィア「残念ながらミアレではなく、此処アサメに住むことになりますね」

エーフィ「ん、あと何? 好きなものでも言っとけばいいの?
     怒り饅頭、チョウジ煎餅、100%オボンジュース、とか?」

サンダース「急に話題変えたな……」

エーフィ「だって興味ないし あたしコガネ出る気ないし
     あ、でも玉の輿乗れるっていうならどこにでも行くよ」

ブースター「ニンフィアさんもお金持ちじゃない 興味なし?」

エーフィ「アサメいいとこだよね、マジで なんていうの? 自然豊か?」
 ▼ 10 ギアル@ぐんぐんこやし 18/02/02 23:11:03 ID:RXwlpi1o [10/20] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イーブイ「いーぶいだよっ しゅっしんちは、ふぇるむ よろしくっ」

ブースター「フェルム…… バトルの聖地だね! 憬れる!!」

リーフィア「競技場があるんだよね?」

イーブイ「まあねー でもきょうぎじょうとはなれたところにすんでて
せんしゅでもなければ きょうぎじょうかんけいしゃでもないから
そのわだいってこまっちゃうんだよね きょうみもうすいし」

ブースター「折角近くに住んでるのにもったいない……」

シャワーズ「地元に愛があるとは限らないからねぇ」

エーフィ「そうそう 変に食いつかれても困っちゃうっていうね」

サンダース「同じ穴のジグザグマ……」

エーフィ「なんか言った?」

サンダース「なんでもねえよ 悪うござんしたね」

グレイシア「はいはい、喧嘩しないでくださいな」

イーブイ「えーと たぽるのたるとがだいすきで おひるねもすきっ
     おにごっこもすきだし のんびりするのもすきかなっ
     あとあと えほんなんかも――」

ニンフィア「好きなもの一杯あるんですね そういうの素敵だと思います」

イーブイ「だからねっ あのねっ けっこんするなら
     わたしのすきなもの いっしょにすきになってくれるひとがいいなっ!」

イーブイ★「あはは そうなったらいいね」

エーフィ「興奮しすぎじゃない? ガキっぽ……」
 ▼ 11 ンド@こだわりスカーフ 18/02/02 23:13:17 ID:RXwlpi1o [11/20] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エーフィ「ハイ次」

シャワーズ「私だねぇ 私はぁ、フィオレ産まれ カゴのみが好きだよぉ」

グレイシア「フィオレ? レンジャー発祥の地でしたか?」

シャワーズ「そぅそぅ 私もレンジャーの資格取らされてさぁ」

イーブイ「とらされた?」

シャワーズ「回りが取ってるんだからお前も取れ、みたいなぁ? 流れで?」

グレイシア「それで取れるのは凄いじゃないですか 流石フィオレの方」

サンダース「俺は落ちたんだよな、レンジャー資格…… 羨ましい」

エーフィ「え? それで会社員やってんの? 私でも受かったのに? プークスクス」

サンダース「筆記は満点だったんだよ畜生!!」

エーフィ「負けガーディの遠吠えって言葉知ってる?」

サンダース「あーくそ……! 雷打ってやりてえ!!」

パチリス「打ったら強制送還でございます」

サンダース「……わかってるさ」

エーフィ「他にレンジャー資格取ってるひとー?」

ニンフィア「私、持ってます」

イーブイ★「 ノ 」

リーフィア「 ノ 」

グレイシア「(^^)ノシ」

エーフィ「半数以上取ってるんだね やっぱサンダース、負けガーディだって」

サンダース「ぐぬぬ」

シャワーズ「そろそろいぃ? まあ別に何でもいいけどさぁ? 何言うんだっけ?
      結婚するなら? 私のことちゃんとわかってくれる優しいひとがいいなぁ
      あんまり期待持てないかも、だけどねぇ」
 ▼ 12 ルトス@ゴーストジュエル 18/02/02 23:14:08 ID:TTFt/aYM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援する
 ▼ 13 ーベム@あかぼんぐり 18/02/02 23:14:58 ID:RXwlpi1o [12/20] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブラッキー「………………」

イーブイ「……?」

サンダース「さっきからほとんど喋ってねえけど……」

グレイシア「次、貴方の番じゃないですか? ブラッキーさん」

ブラッキー「……オーレ出身 ……ブラッキー」

エーフィ「オーレ?  ……どこ? ……知ってる?」

シャワーズ「聞いたことないねぇ」

ブラッキー「…………いいとこじゃ、ないよ」

ニンフィア「ええっと その……」

リーフィア「反応に困るような……」

エーフィ「話す気ある? もしもーし」

ブラッキー「………………」

ブースター「ど、どうすれば……?」

サンダース「おいおい、なんか話せよ 進まねえぞ?」

リーフィア「ちょっと そんな言い方ないでしょ」

ブラッキー「…………」

イーブイ★「何が好きなのかな?」

ブラッキー「……チーゴ ……と、コロン」

イーブイ★「コロンって、香水みたいなやつだっけ」

ブラッキー「……薄い、香水 …………香り、強くなくて ……好き」

グレイシア「すごいですねイーブイさん 聞き上手です」

リーフィア「私にはできないなあ つい焦っちゃう」

ブラッキー「…………」

エーフィ「そーね あたしにもできない つまり結婚には不向きじゃないの?」

サンダース「そもそも結婚する気があるのかどうかも怪し――」

ブラッキー「ある」

サンダース「……ならいいが」

ブラッキー「…………それは、本当 …………じゃなきゃ、来ない ……来れない」
 ▼ 14 ッシード@たいようのいし 18/02/02 23:16:15 ID:RXwlpi1o [13/20] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブースター「次オレの番かな! イッシュ出身で好きなのはモモン、趣味は観劇
      バトルは強くはないんだけど下手の横好き
      だけどここぞという時の“根性”は自信を持っている」

イーブイ「おー どこんじょう?」

グレイシア「ピンチをチャンスに変える力、ですね 素敵です」

リーフィア「そういえば“特性”ってみんな言ってなかったね」

ブースター「皆、アピールポイントしっかり言えてなかったんじゃない?」

エーフィ「そうかも あ、因みにあたし“マジックガード”
     周囲の変化にそうそう惑わされないのよ?」

イーブイ「おんなじだねっ わたしもどんなまくらでもねむれるんだよ
     “てきおうりょく”だから」

グレイシア「何か違う気が……」

サンダース「てか、お前らしれっと…… あー、俺は“蓄電”だ」

グレイシア「あ、じゃあ私も…… “雪隠れ”です」

ブラッキー「……“精神力”」

リーフィア「ボクは“葉緑素” 一緒にお日様に当たると気持ちいいよ?」

イーブイ★「ぼくは“危険予知”だね シャワーズは?」

シャワーズ「見てわかんない? この自慢の肌」

ブースター「“潤いボディ”? いや、“貯水”も似たようなものかと?」

シャワーズ「“貯水“なんかと一緒にしないで欲しいなぁ ピチピチ感が違うでしょ?」

エーフィ「わからん……」

シャワーズ「むぅ 今度からはちゃんと見分けてねぇ?」

ニンフィア「私は既に言いましたが、“フェアリースキン”です」

イーブイ★「“特性”一つで出来ることも変わってくるから面白いよね」

ブースター「そうそう 自分にできることをやりあって お互い補佐していくから面白い
      バトルも『結婚』も1りじゃできない チームプレーが大事だから
      是非、お互い手助けし合えるような相手と結婚したい」

サンダース「バトル脳……」
 ▼ 15 ルマッカ@カビチュウ 18/02/02 23:17:29 ID:RXwlpi1o [14/20] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グレイシア「さて、私の番ですかね 私はシンオウ地方、ヨスガシティに住んでいます
      ヨスガにはコンテスト会場があって、賑やかなんですよ
      私はそこでコーディネーターをやっているのです」

リーフィア「へえ じゃあコンテストスターに知り合いとか居たり?」

グレイシア「ええ、まあ、一応」

リーフィア「すごいなあ 羨ましい」

ブースター「コンテストってミュージカルとは違うの?」

グレイシア「そうですね みんなで楽しむという趣旨は同じですけれど
      ミュージカルとは違って、一番を目指してお互い張り合うものですから」

ニンフィア「トライポカロンみたいなものですよね」

イーブイ「きらきらすてーじ おもしろそう」

イーブイ★「そっちの地方にはそういうのがあるんだ うん 楽しそうだね」

サンダース「そういやお前ら家庭環境とか仕事の話とかしてないよな どうなんだ?」

エーフィ「普通の家で、普通の仕事よ? 文句ある?」

リーフィア「う、うちもそんなもんかなー?」

ブースター「……ノーコメントで」

サンダース「そここそアピールポイントじゃねえのかよ? 普通ってなんだ」

イーブイ「あんまりつっこんじゃだめかもだよ」

シャワーズ「強制送還させちゃうかもねぇ」

サンダース「…………すまん」

グレイシア「……? どういうことです?」

ニンフィア「話せない理由があのルールにあるということなのですか?」

イーブイ★「招待状、だよね 誰がどんな理由で呼ばれたかまでは解らないけど
      その理由の中に家のことや仕事のことがあるのかもしれない」

エーフィ「寧ろそれ以外には思いつかないね 何が書いてあるんだろう 気になる」

イーブイ「るーるいはんは だめー」

グレイシア「ええと、続けますね 好きなものはブリーのスコーンと渋いポフィン
      趣味は仕事というか…… コーディネートを考えることですね」

イーブイ★「仕事熱心なんだね 尊敬する」

グレイシア「ありがとうございます こんな私ですが皆様どうかよろしくお願いします」
 ▼ 16 チエナ@ルアーボール 18/02/02 23:18:34 ID:RXwlpi1o [15/20] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イーブイ★「アローラ〜 アローラの出身のイーブイ 好きなのはズリです よろしく」

リーフィア「色違い、なんだね 白くて綺麗……」

サンダース「珍しいよな 吃驚した」

イーブイ「いいなっ かっこいい!」

イーブイ★「あはは ありがとう 
      でも色違いであるってことはあまり気にしないでいて貰えると助かるかな」

シャワーズ「えぇ? 何でぇ? 折角なのに」

イーブイ★「どういう訳か、ぼくは普通とは違って産まれてきたけど
      でもそれは産まれついて『そう』だっただけ ぼくが選んだことじゃない
      変えようのない事実で、どうしても目に入ってしまうことだとしても
      それで評価を変えないでほしい ぼく自身を見て評価してほしい」

ニンフィア「産まれついて『そう』だっただけ……」

リーフィア「選んだ、訳じゃ……」

エーフィ「それ、今更言うこと? みんなそう思ってるでしょ? 
     確かにあんたはちょっと違うかもだけど」

ブースター「うん 『違う』ってことを特別扱いする理由にはしないよ ……約束する」

イーブイ★「ありがとう ぼくも一方的にお願いするだけじゃなくてちゃんと皆を見るよ
      ここには“結婚するために”来た訳だけど、そうじゃなくて
      皆自身を評価して、選び抜いて、いいなと思ったひとと“結婚する”」

グレイシア「そのひと自身を、ですか……」

ブラッキー「…………評、価 ……私も?」

イーブイ★「そのつもりだよ」

シャワーズ「面白いひとだねぇ」

イーブイ「いいねっ かっこいい!」
 ▼ 17 アコイル@スチールメモリ 18/02/02 23:25:59 ID:RXwlpi1o [16/20] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
パチリス「さて、自己紹介も一巡しましたところで丁度夕食時 お食事をお持ちします
     お飲み物も酒類からジュース、お茶系統など各種取り揃えておりますが」

イーブイ★「アルコールないのがいいな」

イーブイ「わたしも」

ニンフィア「お紅茶、お願いできます?」

サンダース「なんだ みんなして軟弱な 酒飲まねえの?」

グレイシア「無理に勧める者ではないと思います 亡くなる方もいるのですから」

エーフィ「それにこんな場で悪酔いしたら目も当てられない あたしオボンジュースね」

シャワーズ「私はシャンパンにしようかなぁ お酒強いし」

サンダース「お、イケる口か 俺はビールで 乾杯しようぜ」

シャワーズ「あのさぁ ところで、席替えとかはなし?」

パチリス「お互い納得の上でならばご自由に どうぞ交流をお楽しみください」

リーフィア「じゃあボク、シロイーブイの隣がいい!」

グレイシア「嫌です」

ニンフィア「私も断ります 私も色違いさんとお話しがしたいので」

リーフィア「えー…… まあしょうがないか じゃあ、ニンフィアの隣で」

イーブイ「わたしは しろちゃんのしょうめん んー、えんたくだととおいね」

エーフィ「皆、色のを理由にするんだね 色ののハーレムみたいじゃん」

シャワーズ「みんな女の仔に見えるけどねぇ」

サンダース「その実全員♂だったりしてな」

エーフィ「……それはそれでアリ!! むふー!!」

ブースター「ワインを頼もうかな で、サンダースの隣に」

シャワーズ「いらっしゃい 飲もう呑もう」

エーフィ「私はグレイシアの隣? あれ? ブラッキーがもう座ってる
     ならその隣ね イーブイ、失礼するわよ」

イーブイ「どーぞ どーぞ」

イーブイ★「ぼくの選ぶ余地は? 楽でいいけど あと呼び方統一してくれない……?」

エーフィ「いいじゃん、別にー あ、料理来た」

ピカチュウ「お待たせいたしました うちのシェフたちが腕を振るった料理の数々
      回転テーブルの上に置きますので、ご自由にお取りください」

みなそれぞれ思い思いのものを手に取り、食し、また歓談に花を咲かせた
そしてパーティー一日目が終わっていく
 ▼ 18 ーギラス@みかづきのはね 18/02/02 23:28:42 ID:RXwlpi1o [17/20] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
―――――各々、プライベートルームにて

エーフィ「ふいー 美味しかったー 楽しかったー」

エーフィ「うっわ プライベートルームも豪華だね! インターフォンまであるし」

エーフィ「ユニットバスもある! これ十部屋全部に? マジですごいわ」

エーフィ「このパソコンは? あ、これで中間投票するんだ」

エーフィ「気になる奴って言ったら…… うん、コイツとコイツと――」

エーフィ「そういえばなんでこのパーティー三日間なんだろ?」

エーフィ「婚活パーティーって普通一日で終わるもんだと思うけど」

エーフィ「一日目が夕方からってのも謎だね 初日は顔合わせだけ?」

エーフィ「考えてもしょうがないか 今度こそ絶対結婚相手見つけるぞん」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

サンダース「婚活なぁ…… ここの頭首は一体何を考えてんだよ」

サンダース「ただ…… チャンスであることも事実なんだよな」

サンダース「ここに書かれていることが本当なら…… 俺は――」

サンダース「くそ、一体誰が…… 見当もつかねえ」

サンダース「酒の席なら口を滑らせるかと思ったが、飲んだのあいつらだけだし」

サンダース「あんまり酔っちゃくれなかったし」

サンダース「……全員、そうかもと思えてきちまう」

サンダース「明日、もっとじっくり見極める必要がありそうだな」

サンダース「あー! すぐ解んねえのってイライラする!!」
 ▼ 19 ーダル@かいふくのくすり 18/02/02 23:30:47 ID:RXwlpi1o [18/20] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ブラッキー「……………………………………………………」

ブラッキー「……………………………………………………」

ブラッキー「…………結婚…………できるかな……………」

ブラッキー「……………………………………………………」

ブラッキー「……………………………………………………」

ブラッキー「………………………………すー……すー……」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

シャワーズ「『結婚』しなくてもいい、みたいなこと言ってたけどぉ」

シャワーズ「しなくてもいいひともいるってことなのかなぁ」

シャワーズ「だって帰ってからも連絡が取れるなら、そこでまた会えるし」

シャワーズ「この色々隠れた状態の時に、破棄できない契約を結ぶ必要性はないよねぇ」

シャワーズ「もしかしたら同性と『離婚できない結婚』をする羽目になるかもだしぃ」

シャワーズ「でもどーせなら『結婚』しない奴は罰金くらいのことがあればいいのにぃ」

シャワーズ「それだったらきっと、最後の最後には、余るくらいなら」

シャワーズ「こんなのとでも『結婚』してやるかって思ってくれるかもしれないのにぃ」

シャワーズ「『結婚』しないといけない者からしてみれば、死活問題だよぉ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

リーフィア「中間投票…… どきどき……」

リーフィア「第一印象で気になったのは、あのひととあのひとと――」

リーフィア「誰が誰に投票したんだろう? ……聞いちゃだめだよね」

リーフィア「解るのは、ボクに投票してくれたひとだけか……」

リーフィア「結婚できるといいなあ ううん、結婚するんだ! 絶対に!」
 ▼ 20 ルホッグ@ダークストーン 18/02/02 23:32:58 ID:RXwlpi1o [19/20] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

イーブイ「…………くぅ……くぅ…………」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ブースター「お互いの立場を隠すマスカレイドパーティーは聞いたことあるけど」

ブースター「♂か♀かすら分かんないって、面白いこと考えたね」

ブースター「婚活って雌雄間で行うもんじゃないの? 成り立たないでしょ」

ブースター「いやはや面白い いいじゃん 『結婚』してやろうじゃん」

ブースター「絶対に異性を見つけて そのひとと『結婚』してやる」

ブースター「ん? ……これって、アリ、かな?」

ブースター「でも、駄目とは言われてないし…… いや、でも……」

ブースター「…………最終手段、としておこうかな」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

グレイシア「自己紹介のとき、誰も核心的なことは言いませんでしたね」

グレイシア「といっても、私も言えないことがあるわけですけども」

グレイシア「これを隠したまま『結婚』するって、駄目なんじゃないでしょうか」

グレイシア「……卑怯、ですよね」

グレイシア「正直に打ち明けていたら、結婚なんて一生できないことが解るので」

グレイシア「これを好機として、隠し事をしたまま『結婚』してしまおうなんて」

グレイシア「それで幸せになろうなんて、烏滸がましいですよね……」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

イーブイ★「我ながらずるい言い方しちゃったかな」

イーブイ★「目に付きやすくて隠せない前提ばかり見ないで「ひと」を見て欲しいとか」

イーブイ★「まるで自分に自信があるみたいじゃないか 大言壮語も甚だしい」

イーブイ★「でも、深くまでちゃんと見せてもらうためにはそれぐらい言っとかないと」

イーブイ★「見て、『評価して、選び抜いて、いいなと思ったひとと“結婚する”』」

イーブイ★「明後日までに、絶対、意地でも『結婚』してやる」

イーブイ★「折角の機会なのだから」
 ▼ 21 イキング@ひみつのカギ 18/02/02 23:34:25 ID:RXwlpi1o [20/20] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
書き溜め終わり 支援感謝
また溜めてくる 遅筆ですまん
 ▼ 22 ガリザードンX@けいけんポン 18/02/03 01:32:48 ID:PRYTVfLQ NGネーム登録 NGID登録 報告
支援!
 ▼ 23 ギギアル@ともだちてちょう 18/02/03 20:47:12 ID:RuHCNA/E [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヤコー ヤコー ―――

リーフィア「朝食は八時ごろ食堂集合、って昨日言ってたな
      今は…… 6:30? 折角だし、起きて探検に行こうか!」

ニンフィア「あ、おはようございます、リーフィアさん」

リーフィア「おはようニンフィア 元気?」

ニンフィア「はい 早起きなんですね まだ寝ていても良かったですのに」

リーフィア「あまりだらしない姿を見せるわけにもいかないしねー」
      それに、昨日は食堂に集まった後すぐ解散しちゃったじゃん
      色々見て回りたいな、と思ってさ」

ニンフィア「それなら案内しますよ まずはホールから――」

ニンフィア「それから、食堂にキッチンですね あとは――」

ニンフィア「二階は皆さんも泊まったプライベートルームなどですね、書斎も――」

ニンフィア「そしてここがビリヤードなど色々なゲームのある遊戯室です」

リーフィア「ふんふん なるほど ……あれ? ひとがいる」

イーブイ★「アローラ〜 ニンフィア、リーフィア」

リーフィア「おは……アローラ! なんだ、色違いも起きてたんだ」

イーブイ★「目が覚めちゃってね ちょっと前からブラッキーと遊んでたんだ」

ニンフィア「ブラッキーさんも アローラ! です」

ブラッキー「………………(シュッ)」

リーフィア「何やってんの? ダーツ? ……って真ん中じゃん! 凄い凄い!!」

イーブイ★「さっきからこの調子 ……全然勝てない」

ブラッキー「……(グッ) …………?  !!  …………お、おはよう」

リーフィア「無視したわけじゃなくて、気付いてなかったんだ……」

ニンフィア「すごい集中力ですね あれ? “精神力”というべきですか?」
 ▼ 24 ガミミロップ@リュガのみ 18/02/03 20:54:08 ID:RuHCNA/E [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イーブイ★「疲れたからちょっと休んどくよ みんなも挑戦してみたら?」

リーフィア「よーし、1り三投ね 得点の高いひとが勝ち」

ブースター「OK まずはオレが投げるよ」

リーフィア「よろしく っていつの間に現れた!!」

ニンフィア「おはようございます よく眠れました?」

ブースター「勝負あるところにブースターありってね もうぐっすり おはよう
      じゃあ いくよ それ それ それ」

イーブイ★「得点は 18のダブルと16と3 55点だね」

リーフィア「それって高いの? ダーツはよくわかんないや
      ていっ とりゃっ あれー? 枠の外だ 最後、えいっ」

イーブイ★「当たったのは一つだけだね 7点 残念でした」

リーフィア「むぅ 結構難しいね」

ニンフィア「では私が はいっ はいっ ……はいっ」

イーブイ★「すごいな 15のトリプルに17のダブル、そしてシングルブル 104点」

リーフィア「ダブル? トリプル? 寝具る――? なにそれ」

ブースター「凄い誤字を聞いた気が……
      ボードの中に色の違うリングが二つあるでしょ?
      外側のがダブルリングで得点二倍 内側のは三倍
      ブルっていうのは中心の二つの円で、シングルは外側 25点」

リーフィア「なるほど そこを狙えばよかったんだね」

ブースター「それ以前の問題じゃなかったか?」

イーブイ★「じゃあ、最後 ブラッキー」

ブラッキー「……(シュッ) …………(シュッ) ……………………(シュッ)」

イーブイ★「ダブルブルが、三つ 150点」

ブースター「凄過ぎる こりゃ勝てないな……」

リーフィア「真ん中だ! これが最高得点? 凄い凄い!!」

ニンフィア「最高ではないですけど…… 真ん中を確実に射貫くのも凄いことです
      しかも三投全部なんて……」

イーブイ★「最高は20のトリプルが三つで180点までいくよ」

リーフィア「ふーん…… でもやっぱりブラッキーすごい!」
 ▼ 25 ーボック@すいせいのかけら 18/02/03 20:57:06 ID:RuHCNA/E [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブースター「まだ時間ありそうだしビリヤードやろうよ 今度は負けない」

リーフィア「この棒でついて自分以外の球をおとすんだよね たしか
      じゃあ ボクこの緑の6番ね みんなは何番にする?」

ニンフィア「待ってください え? 選ぶんですか? 聞いたことないですけど」

リーフィア「違うの? 自分の球を衝いて相手の球を落とすもんじゃないの?」

ブースター「何そのバトルロイヤル 楽しそうなんだけど!」

イーブイ★「白い球を衝いて数字の順番に当てていくんだよ
      基本は落とした数じゃなくて、9を落としたひとが勝ちかな
      普通1対1でやるゲームだけど……」

リーフィア「2台あるし、1対1でやろうよ ブラッキーは決勝シードね」

ニンフィア「決勝まで時間ないと思いますが…… まあ一戦くらいは」

ブースター「あれ? こっちの台おかしいぞ? 変な模様の球が色々」

リーフィア「ストライプ、ギンガム、アーガイル、ドット……」

ブースター「でもって数字がない ゲームにならなくない?」

ニンフィア「ど、どういうことでしょう 私、知らないんですけど」

イーブイ★「ニンフィアが知らないなら、今回のために用意されたんじゃない?」

リーフィア「でも、意味わかんなくない? なにこれ?」

ブラッキー「………………洒落?」

ニンフィア「シャレ、とは?」

ブラッキー「…………数 …………判らない球 …………今回の、ため」

リーフィア「解るように説明してよー! どーゆーことさ!?」

イーブイ★「洒落というか、比喩だね これは解り難いな……」

ブースター「球の数は、自球も含め10 ……10にん? オレ等のことか!?」

リーフィア「難しいことは考えたくない!! 衝いちゃえ!!」

ニンフィア「あ、球がばらけて下から何か出てきましたよ カードみたいな……」

ブースター「なになに……『弾いて落とす消去法もあり』 アドバイスか」

リーフィア「裏にも何か書いてあるよ?」

ブースター「ほんとだ…… ってなんだこれ? 『この中に1り、未成年者がいる!』?」

ニンフィア「仔どもってことですか? 誰のことでしょう?」

リーフィア「イーブイじゃない?」

イーブイ★「どうなんだろうね 少なくとも酒飲んでた3にんではないと思うけど」
 ▼ 26 ンゲラー@フシギバナイト 18/02/03 21:00:43 ID:RuHCNA/E [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
パチリス「皆様ここにおられましたか 朝食の準備ができております
     起きてこられた方は食堂に集まっておいでです
     今朝はバイキング形式での提供となっております」

リーフィア「もうそんな時間か 確かにお腹ペコペコかも」

ニンフィア「こんなカードがあったんですが メイドさん、何か知ってます?」

パチリス「いえ、存じ上げておりません 奥様が用意したのでしょう」

ブースター「昨日の料理も美味しかったし 今日も楽しみだなあ」

イーブイ「みあさん おあよぉごらいあふ……」

シャワーズ「おはよぉ 先に頂いちゃってるよぉ」

グレイシア「皆さんお揃いで 本日もよろしくお願いいたします」

サンダース「みんなで何してたんだ? 俺も部屋の外出ればよかったかな……?」

イーブイ★「遊戯室でちょっとね」

リーフィア「イーブイ、眠そうだね エーフィは?」

シャワーズ「見てない まだ寝てんじゃなぃ?」

ブースター「ミルタンチーズピザがある! オレこれ大好きなんだよね」

リーフィア「キンセツチャンポンがあるじゃん! ボクこれ!」

イーブイ★「朝からそんな重いの大丈夫なの? ぼくはビレッジサンドにしとく」

ニンフィア「私も軽いので リンドサラダとモコシスープと……ラッキーオムレツを」

イーブイ「んぅ…… もーもーしちゅー、おかあり……」

ブースター「気を付けてね あれ? 何か落としたよ?」

イーブイ「ふぇ? ……カード?」

シャワーズ「なんか書いてあるねぇ 『よく吟味して選びたまえ』 料理のこと?」

ブースター「婚活のことだと思う 遊戯室にもあったよ 裏は?」

リーフィア「…………!! え、怖!! 信じらんない!!」

グレイシア「『この中に1り、ひと殺しがいる』 ……これは」

イーブイ★「……なんかきな臭くなって来たね」
 ▼ 27 リゲイツ@バコウのみ 18/02/04 11:57:59 ID:WQR/O/AQ [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サンダース「ひと殺しって……誰だよこれ! 名乗れ! てかなんで捕まえねえ!?」

ブースター「も、餅衝け! 素直に名乗るわけないだろう! 警察呼んで、警察!」

シャワーズ「ブースターも落ち着いてぇ?
      『ひと殺し』ってだけで緊急性を想定するのは早計だよぉ」

サンダース「犯人の味方するのか!? いや、お前が犯人か!!」

シャワーズ「えぇ……? 何でそうなるのさぁ……?」

イーブイ★「暴論過ぎるよ 根拠薄弱で決めつけるのは関心しない」

サンダース「…………く」

イーブイ★「疑うなとは言わないけどね 誰がその『1り』なのか考えるのは大事
      でも、ぼくも焦る必要はないんじゃないかなって思うよ」

ニンフィア「緊急性がないかもしれないって、どういう……?」

シャワーズ「『ひと殺し』が誰を、何時、どうやって殺したか分からないからねぇ
      もしかしたら事故だったのかもとかぁ それを悔やんでいるかもとかぁ
      過去に間違いを犯したとして、それが現在も悪とは限らないでしょぉ?」

イーブイ「……ん まあ それならそれでいいんだけど そうじゃないかのうせいは?」

シャワーズ「少なくとも、主催者さんは知っていた訳でしょぉ?
      そのうえで呼んだんだもの ここで暴れる心配はないんじゃなぃ?」

ニンフィア「……そうかもしれません すみません 取り乱しました」

リーフィア「納得できちゃうんだ!?」

ニンフィア「義母はここで事件が起きることを本当に凄く途轍もなく嫌がると思うので
      下調べしていたり、安全対策していたりすると思います」

イーブイ「にんふぃあさん おかあさんにはしんらつだね……」

ブースター「愛情の裏返しって奴かな?」

ニンフィア「そ……そんなことないですよぅ///」

シャワーズ「逆に信頼し合ってるのが感じ取れていいと思うよぉ」

サンダース「……ひと殺しはひと殺しだろうが! 『結婚』なんてできねえよ!」
 ▼ 28 グラージ@ドラゴンメモリ 18/02/04 12:11:37 ID:WQR/O/AQ [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブースター「そう、かもね ちょっとこのまま『結婚』相手選びは難しいかも」

リーフィア「信頼できない相手と『結婚』、ってちょっと躊躇うかな……」

グレイシア「……でも『ひと殺し』さんにも事情があるかも、っていうのも判ります」

イーブイ★「重いね ことに殺害となってくると」

エーフィ「おふぁようみんな ご飯残ってる? …………何かあった?」

イーブイ「おはよう 実は、かくかくしかじか――」

エーフィ「ええっ!! 大変!! 警察、ジュンサーさん、ポケモンレンジャー!!」

シャワーズ「その下りまたやるの? 丸々馬々――」

エーフィ「え!? うん え? 安全なの? よかったー」

サンダース「お前も納得すんのかよ」

エーフィ「あんは、なっほくへきあいの? (ゴクン) 過去は過去でしょうが
     それとも何、自分は過去になんも後ろ暗いとこない聖人君子な訳?
     嘘ついたことは? ひとと喧嘩したことは?」

サンダース「いや、そりゃあるが……」

エーフィ「ひとの過去にとやかく言っていいのは君子か当事者だけよ」

サンダース「…………………………」

エーフィ「それで?  (あむ) この後の (むぐむぐ) 予定は? (ごくり)」

サンダース「喋るか食べるかどっちかにしろ!! ひとに説教できる立場か!!」

ピカチュウ「中間投票の結果が出ているので、各々プライベートルームのパソコンを
      一度確認頂ければと思います それからはお昼までフリータイムですね」

エーフィ「おk ご馳走様
     サンダースも1りになって落ち着いてきなさいな」

ブースター「ご馳走様 オレも一旦戻って ちょっと整理してくる」

リーフィア「……ちょっと衝撃の事実過ぎたなあ シャワーズ、エーフィ、大人だね」
 ▼ 29 チリス@エドマのみ 18/02/04 12:14:52 ID:WQR/O/AQ [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グレイシア「確認、してきましたが…… 喜んでいいのか、判断つきかねます」

イーブイ「なんで? ひょういれてくれたひと、きにいらなかった?」

グレイシア「気に入らないとかでは! 全然、なくて…… その…… なんていうか……
      相手の事情とか全然解らないですよね、って 先刻のを見てどうしても」

エーフィ「そりゃ 一朝一夕で全部理解させてくれるような簡単な奴なんているわけない
     理解できなくていいのよ 理解したいと思えれば、それがスタート
     お互い歩み寄って、お互い知っていくのが、結婚なんだから」

グレイシア「エーフィさん…… そうですね……」

シャワーズ「まるで達観したような言い方してるけどぉ 未婚じゃないのぉ?」

エーフィ「う…… わ、悪かったわね」

イーブイ★「いや、感動したよ ……やっぱり皆、訳ありなんだろうね」

ニンフィア「はい きっと、いえ絶対! そうだと思います」

イーブイ「だんげん!?」

ニンフィア「義母はそういうひとです 皆が困るのを見て楽しんでるんですよ もぅ!」

ブースター「ただいま ちょっと吃驚し過ぎた」

イーブイ★「お帰り どうすることにしたの?」

ブースター「続けるよ、婚活 『結婚』するために」

シャワーズ「ビビったんじゃなかったのぉ?」

ブースター「ビビってはいないよ!? 吃驚しただけ!
      相手の事情を気にし過ぎても仕方ないよなって思った
      それに、約束は守らなければいけない」

イーブイ「やくそく? けっこんが?」

ブースター「それもあるけど ほら、初日に言ったじゃないか
     『「違う」ってことを特別扱いにする理由にはしない』 良くも、悪くも」

イーブイ★「言ってたね、そういえば じゃあ、一緒に頑張って行こうか」
 ▼ 30 ポッコ@あかいビードロ 18/02/04 12:17:48 ID:WQR/O/AQ [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
リーフィア「ん…… 待たせちゃったかな?」

イーブイ「だいじょーぶ いまきたとこ」

リーフィア「あは、デートじゃないんだから」

ブラッキー「………………それで?」

リーフィア「さっきの、色々考えてみたんだけどね ――判ったのは
      ボク、難しいこと考えるの苦手だなあ っていうだけ」

ブラッキー「………………なにそれ」

リーフィア「解んなかったんだ 難しいことは何も でも判った
      結局ボクのやることは、やりたいことは変わらない
      『結婚』するんだ、絶対に」

グレイシア「そういう考え方もあるんですね ……私も、『結婚』したいです」

ブラッキー「……うん ……頑張れ」

サンダース「………………………………」

エーフィ「あ、戻って来た 落ち着いて来た?」

サンダース「……やっぱり、納得はできねえ」

エーフィ「あらそ 潔癖なのね」

ニンフィア「ここにいるのが辛いなら、棄権して帰ることもできるそうです
      寂しいですが、その方が良いのなら……」

サンダース「いや 俺にしちゃ気長だが、最後まで見届けてやる 
      どうせ明日までだろ?  ここで帰んのも癪だ」

ニンフィア「そうですか ……良かった」

イーブイ「うんうん これでぜんいんそろったね」
 ▼ 31 ンチャム@ガオガエンZ 18/02/05 15:18:34 ID:Rs7/PNCs [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブースター「フリータイムって話だったね 投票し合った同士で話せばいいのか?」

エーフィ「普通はそうだよ? でもこの状況じゃいい話とか出来そうにないじゃない」

サンダース「あんたがそれを言うか さっき散々上から物言ってきたくせに」

エーフィ「あんたみたいな疑心暗鬼がいるからでしょ」

イーブイ「さんだーすだけじゃなくて みんななっとくしたようなふりしてるけど
     ないしんふくざつだよね ……むつかしいからしょうがないんだけど」

グレイシア「難しいです ……頭で理解するのと心で納得するのは違いますもんね」

イーブイ★「だから、他にやることがある」

エーフィ「その通り このカード、2枚だけだと思う?」

ニンフィア「いえ 他にもあると思います 人数分か、それ以上に」

ブースター「探すんだね? 面白くなってきた!」

リーフィア「でも、ヒントがないとどこ探していいかわからないよ?
      隅々まで探すにはここは広過ぎだし」

ブラッキー「…………どこで見つけた?」

ブースター「ブラッキーも見てたじゃん、数字のないビリヤードの球の下にあったの」

リーフィア「ブラッキーは洒落、色違いは比喩って言ってたね よくわかんないけど」

イーブイ「こっちはね もーもーしちゅーのおなべのまえに おままごとのおもちゃが
     おいてあったの ばいきんぐみたいに そこにかーどもおいてあったよ」

エーフィ「それだ! カードの場所のヒントあるじゃん!」

サンダース「不自然なもの、普通じゃないものの傍、ってとこか」

グレイシア「カードの文言と合わせてみると、確かにどこか比喩的ですね」

シャワーズ「じゃぁ、玄関の方にあったガルーラ像も何かの比喩?」

ニンフィア「ガルーラ像? そんなの置いてありましたっけ?」

グレイシア「何か不自然なのですか?」

シャワーズ「昨日来たときはなかったかもねぇ 見ればわかるよぉ」

エーフィ「昨日はなかった? それは怪しい ぜひ行ってみよう」
 ▼ 32 ママ@もえぎいろのたま 18/02/05 15:23:52 ID:Rs7/PNCs [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イーブイ「あれのことだね ふしぜんながるーらぞう」

ニンフィア「……なんで覆面被ってるんでしょう?」

ブースター「ロイヤルマスク・ガルーラ像…… 格好ぇ……」

エーフィ「あれれ? 後ろにも回りにもカードないよ 絶対変なのに」

ブースター「変って言――! いや、なんでもない」

リーフィア「あ、そうだ 覆面取っちゃえばいいんじゃない?」

サンスター「「……や、やめろぉっ!!」」

エーフィ「なんでサンダースまで?」

サンダース「ロ、ロマンが……」

リーフィア「あ、あったよ! ガルーラ像の後頭部にカード!」

グレイシア「えと、『その正体を悟ったとて濫りに明かさないのがマナー』……
      す、すみませんでした!!」

エーフィ「像に謝ってどうすんの 比喩よ、比喩」

シャワーズ「つまり、誰がどの『1り』か解っても言っちゃダメってことかなぁ」

リーフィア「じゃあ、捲るよ ――!! 『この中に1り、王族がいる!』」

イーブイ★「これはまた、すごい情報でてきちゃったな」

イーブイ「はくばのおうじさま!? しんそうのおひめさま!? すごい! ゆめみたい!」

リーフィア「御伽噺の世界……? お忍びの王族とのロマンスだなんて……」

シャワーズ「本当にそんなことが起こり得るのぉ? 全然、信じられなぃ……」

エーフィ「お金持ち!? 玉の輿!? それとも逆玉!?」

サンダース「目を眩ませんな、意地汚え」

グレイシア「王族といえど分家筋とか色々あって、お金持ちとは限りませんよ」

ニンフィア「流石に本家筋の方をこのような催しに呼ぶのは無理だと思います」

エーフィ「現実的に考えて、そっか…… 残念」

ブースター「でも、『王族がいる!』っていうのが現実味を帯びてくるのかな?」

リーフィア「じゃあ、そのひとと『結婚』すればどこかの王家の血縁になるってこと?」

シャワーズ「それもまた魅力的な特権だねぇ」

ブースター「他に不自然なものは…… ここには無いのかな?」

イーブイ「じゃあ、べつのとこいこうよ おんなじとこさがしてもしょうがないって」

ニンフィア「では、もの置―― 収集品の美術館に行きましょうか」

サンダース「言い直した!?」
 ▼ 33 ネッコ@ふしぎなおきもの 18/02/05 15:28:17 ID:6H3kC14. NGネーム登録 NGID登録 報告
面白いなこういう謎解き系

支援
 ▼ 34 ガリザードンX@ざいりょうぶくろ 18/02/05 15:29:12 ID:Rs7/PNCs [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エーフィ「うわー! 広ーい! 色んなものがいっぱいあるー!」

リーフィア「もの―― 美術館っていってたから埃っぽいとこ想像してたけど
      綺麗なところだね」

ニンフィア「義母の趣味で色々掻き集めたものを放置しているだけのもの置きです
      メイドさんたちのお蔭で整理と掃除は行き届いてるようですが
      私は全容を知りません なにせ一階の半分以上は倉庫なんですもの
      というよりもともと倉庫だったものを改築して別館に拵えたのが実情です」

シャワーズ「ここ、そんな成り立ちで建ってたのぉ……?」

グレイシア「絵画に像、資料集 縫いぐるみが集められてる一角もあるんですね」

サンダース「ガラス細工や食器類はまだわかるんだが
      家具そのものがあちこちにあるのはどうなんだよ?」

ブースター「ガラクタもあるけど、歴史的価値のある物も結構ある!
      これ、アーティー氏の絵!? しかも本物!? これ、レプリカじゃない!!」

グレイシア「真贋って見て分かるものなのですか?」

ブースター「そういう勉強もしたから、なんとなく それに、ファンだし!!」

リーフィア「“白き炎”、“黒き稲妻”…… これってどれぐらい価値ある物なの?」

ブースター「時価数千万は下らないと思うよ 本物は もしかしたらもっと」

エーフィ「数千万より――!!? お宝!!」

イーブイ「じゃあ じゃあ こっちのかせきは!?」

ブースター「ちゃんと調べないと解らないけど、ぱっと見ほとんど偽物だね
      作りが雑だよ 質感も再現しきれてない」

ニンフィア「それ、義母に聞かせてやってください……
      どんどん訳分からない物増やすんですから……」

イーブイ★「となると、ここで不自然なもの探すのは難しいと思うのだけど
      例えば、そこの立派な鬣をした♂カエンジシがドレスを着た絵とか
      『これが芸術だ』って言われたらそうかもと思ってしまうし」

リーフィア「この絵? 確かに変だけど…… あ、裏にカードがあったよ!」

サンダース「不自然ってことで良かったのか 確かにここは判断つき難え……」

ニンフィア「他の所から探した方がよかったでしょうか……」

ブースター「見つけられたんだから結果オーライ 面白いの見せてもらったし」

リーフィア「『ドレスを着た♂ 男言葉の♀ 男であって女でもあるとはこれ如何に』
      この恰好かぁ…… 今更だけどすごい奇妙だよね」

イーブイ「おとこのこも おんなのこも みんなどれす でもきれいだよっ」

エーフィ「ありがと 君も綺麗だよ? それで、裏は?」

リーフィア「あ、うん ええと『この中に1り、高額負債者がいる!』」
 ▼ 35 ャオニクス@スーパーボール 18/02/05 15:33:08 ID:Rs7/PNCs [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グレイシア「……なんで態々教えるんでしょう?」

サンダース「どういう、意味だ?」

グレイシア「だって、知られない方が『結婚』し易いじゃないですか
      契約破棄できないのなら、尚更後から話した方が」

エーフィ「あんたそれ本気で言ってんの? 不誠実だと思わないの?」

グレイシア「思いますよ! でも、その方が確実なんです 『結婚』するなら
      ……私が読めないのは主催者の意図です このような催しで
     『結婚』することを勧めておいて、何でそれを躊躇させるような情報を?
     『結婚』させたいんですか? させたくないんですか?」

リーフィア「ぐちゃぐちゃしてきた…… 頭痛い……」

イーブイ★「主催者の思惑とか、考えてもしょうがないと思う
      ひとの心を読むことは、情報が揃っていても難しいから」

シャワーズ「多分、『よく吟味して選びたまえ』じゃないかなぁ
      そのための情報 まぁ、誰が誰だかは判然としないんだけどねぇ」

ブースター「『高額負債者が1りい』てそいつと『結婚』すれば負債は夫妻のものになる
      それだけ認識してれば今はいいのかな?」

ニンフィア「駄洒落です? 残念ながら、夫々か妻々かもしれませんので上手くないです
      普通に2りのものと言えばよかったのでは?」

エーフィ「添削しないで上げて!! 傷ついちゃうから!!」

ブースター「エーフィが一番酷い……」


>>33 ありがとう 頑張る

ぼちぼち書いてくけど 感想あったら言ってくれるとありがたい
多分今日はここまで
 ▼ 36 ズマオウ@きいろいバンダナ 18/02/05 17:23:13 ID:Z.Unl4U2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 37 ンガー@ドリのみ 18/02/05 19:50:04 ID:TzJxRNmY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 38 ットロトム@ポイズンメモリ 18/02/06 02:21:59 ID:PGi2mvAU [1/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニンフィア「ではやはりもの置きを探すのは後に回して、先に他の場所を探しましょう」

エーフィ「賛成ー ものが多すぎてごちゃごちゃしてるとこ もう探したくないー」

イーブイ★「一階から順に探していこうか もの置きの他には何が?」

ニンフィア「聖堂と食堂、あとキッチンですね」

リーフィア「聖堂? へー、そんなものがあったんだ 朝は行かなかったよね?」

ニンフィア「朝は、きっと礼拝に来た義母がいると思ったので、邪魔しないようにと」

サンダース「そういえば御頭首様に会ってないな」

ブースター「挨拶しなきゃと思ってたんだけど、顔見せてくれないよね」

ニンフィア「大丈夫です 義母は重度のヒキコ――ひと見知りですので
      寧ろ大勢が挨拶に来たら卒倒してしまうのではないでしょうか……」

リーフィア「うん、今なんて言いかけた?」

グレイシア「あ、それで本館立ち入り禁止なんですか? 会わないように」

シャワーズ「それでも朝の礼拝は欠かさないのぉ? 信心深いんだねぇ」

リーフィア「宗教ってなんかいっぱいあるんだよね 何を信じているの?」

ニンフィア「私達は、カロス正教ゼルネ派を信仰していますね
      聖堂もそれに合わせて、温かみのある形に造られています」

イーブイ★「ゼルネ派って命の恵みとそれを司どる神様が信仰対象だよね
      ……ちょっと祈っていこうかな」

ブラッキー「………………私、も …………」

ニンフィア「はい では私も一緒にお祈りしますね 着きました 開けますよ」

エーフィ「わー 綺麗…… 教会だー」

サンダース「いや、聖堂だって言ってただろ」

エーフィ「同じようなものじゃない? どう違うの?」

サンダース「え!? ……そ、それは」

グレイシア「聖堂とは、司教以上の役職の方が司牧する教会のことだそうです
      ニンフィアさんのお義母さんが司教位にいらっしゃるのではないでしょうか
      でも、教会と呼んでも強ち間違いではないと思います」

イーブイ「おー……」

ニンフィア「……知りませんでした 不勉強ですみません
      確かに、義母は自分を司教と名乗っていましたね」

リーフィア「グレイシアはどこか信じてるの?」

グレイシア「私は…… 無宗教ですね」
 ▼ 39 クーン@カチャのみ 18/02/06 02:23:14 ID:PGi2mvAU [2/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブラッキー「……………………」

イーブイ★「真剣だね うん ぼくも見習わなくちゃ …………」

ブラッキー「…………」

ニンフィア「……神の御加護が、ありますように」

ブースター「オレも、ちょっと ……」

サンダース「神なんて今更信じる気にならんな」

エーフィ「えー 願掛けしようよ、願掛け 素敵な結婚できますように、とか?」

イーブイ「ふしぜんをさがしにきたんじゃ なかったっけ?」

リーフィア「そうそう、本題忘れるところだった でも、多分」

グレイシア「あれ、ですよね ここにあるのは不自然な気がします」

ブースター「“爪弾くメガエルレイド像”と“歌うメガサーナイト像”……」

リーフィア「この2りが聖堂にいると、結婚を象徴してるみたいだよね」

サンダース「今回はそういう比喩だろ カード探すぞ ――――!!」

エーフィ「……え!? なにこれ!? 輪をかけて不自然!! どういう――!?」

グレイシア「並ぶ2りを、1本の手錠が繋いでいますね……」

イーブイ★「……カード、見つけたよ 祝言の筈なのに呪言のようだ
      ただ、ある意味一つの真理かな」

エーフィ「なんて書いてあるの?」

イーブイ★「『さあ言霊で縛ってやろう 【シガフタリヲワカツマデ】』

ブラッキー「―――― ひぅ…………!」

エーフィ「怖!!! あのブラッキーまで珍しい声出しちゃったよ!!」

サンダース「そっちに吃驚すんのかよ! 俺もちょっと思ったけど!」

シャワーズ「死が2りを分かつまで……」

イーブイ「しゅうげんの、はずだね そのはず、なのにね」

グレイシア「手錠を見た後で、そんな言い方されてしまいますと、もう……」

ブースター「結婚にはそういう側面もある、か」

イーブイ★「『つまみ食いは許さない 余所見でさえも赦せない』 そう読み取れる
      考えすぎかもしれないけどね」

イーブイ「しっとって こわいね」
 ▼ 40 ガディアンシー@しずくプレート 18/02/06 02:24:21 ID:PGi2mvAU [3/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イーブイ★「裏は、気にするほどでもないかな 『この中に1人、同性愛者がいる!』」

エーフィ「ちょちょっちょっ! 何流そうとしてんの?」

イーブイ★「いや、本当に気にするほどでもないかなと思っただけだけど……」

リーフィア「そうだね 今の時代そんなに珍しくもないんじゃないかな」

グレイシア「もしかして『結婚』相手がそうだったら気持ち悪いとか、思ったりします?」

エーフィ「違う違う、むしろ逆 夢のホモォだよ!! むふー!! (゚∀゚)
     まさか本当に会えるなんて!! 興奮しちゃうね!! むふー!! (゚∀゚)」

サンダース「腐った眼えしやがって……」

イーブイ「それはそれでめいわくなんじゃないかな……」

ブースター「落ち着いて! 男とは限らないんだから!!」

エーフィ「ホモ・セクシュアルとは性的マイノリティである同性愛者のことであり近年
     では普遍的な人権を尊重すべきという考え方が主流となっている男性同性愛
     者をゲイ女性同性愛者をレズと呼び細分化することもあるがそもそもホモで
     あることに変わりはなく故にその『1り』が♂か♀かなど些細な問題である!」

シャワーズ「すっごぃ早口だねぇ」

ニンフィア「素晴らしい無駄知識をありがとうございました」

エーフィ「無駄じゃないよ! トリビアだよ!」

サンダース「同じじゃねえか」

ニンフィア「や、本当に落ち着いてください」

ブースター「偏見で嫌うのも問題だけど、好み過ぎるのも考え物ではないかと」

グレイシア「同性愛者を好きすぎるひとっているんですね…… 知りませんでした」

リーフィア「割といるみたいだよ? 特に女性に」

イーブイ「しってる! ふじょしっていうんだよね!」

グレイシア「――婦?」

サンダース「…………腐」
 ▼ 41 バコイル@リバティチケット 18/02/06 02:26:16 ID:PGi2mvAU [4/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブラッキー「…………すごい ………………すごいね」

イーブイ★「……? ……ああ エーフィ、すごいよね」

イーブイ「なにが?」

イーブイ★「空気、変わったと思わない?」

リーフィア「――あ 確かに……」

ブースター「さっきまでのが嘘みたいに、緩んだ笑える雰囲気になってる……」

イーブイ★「暗い空間をぶち壊したかったんだよね 態々道化まで演じてさ」

エーフィ「な、何のことかなあ!! アタシ全っ然わっかんないやー!!」

サンダース「素じゃ、なかったってのかよ……?」

エーフィ「す、素に決まってんじゃんさあ!! アタシホモいの大好きだから!!」

ブースター「ふふ、判ってるって」

エーフィ「もう(ピ――――)とか(ピ――――)とか、(ピ――――)なんかも」

サンダース「もう自重しろ!! 全部台無しだよ!!」

グレイシア「ど、どういう意味か解りませんが、すごい言葉を聞いた気がします……」


煮詰まってきた(本来的な意味で) あとは書くだけ
 ▼ 42 ドリーノ@リバティチケット 18/02/06 12:08:57 ID:PGi2mvAU [5/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニンフィア「つ、次は食堂に行ってみますか?」

サンダース「あー、それなんだけどみんなちょっと先に行っててくれないか」

イーブイ「どうしたの?」

サンダース「ちょっとやることがあってな」

エーフィ「盗みに行くの? 手伝うよ?」

ブースター「え!? 狡い!!」

リーフィア「駄目だよ! そんなの!」

サンダース「ちげえよ! 狡いってなんだ!!」

エーフィ「じゃあ、美人メイドさんと駆け落ち? イケメン執事君の方?」

イーブイ「えぇ!? ずるい!!」

シャワーズ「駄目だよぉ そんなのぉ」

サンダース「それも違う!! お前ら、俺をなんだと……」

エーフィ「じゃあユーどこに行くのか白状しちゃいなよぅ」

サンダース「それは…… さ、察しろ……」

ニンフィア「そこまで隠されると、気になりますね 監視が必要でしょうか?」

サンダース「止めてくれ…… 判った、言うが…… も、催してきてんだよ」

ニンフィア「……!? そ、それは失礼しました///」

エーフィ「だと思った さっさと行けばよかったのに」

サンダース「お前が言うか!? ――く、俺はもう行く……」

エーフィ「いっといれー」

グレイシア「(ケフン)…… 女の仔の恰好でそういうこと言われるのはちょっと……」

ニンフィア「……配慮が足りませんでした 皆さんは大丈夫ですか?」

イーブイ「わたしはへいき ……いきたいひとー?」

グレイシア「手を挙げるのも恥ずかしいのでは…… 私も大丈夫です」

イーブイ★「さっきのやり取り観て素直にならない人はいないと思うよ」

ニンフィア「誰も挙げてないということは、皆さん大丈夫なんですね 安心しました」
 ▼ 43 クラビス@かわらのかけら 18/02/06 12:09:49 ID:PGi2mvAU [6/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イーブイ「いいにおいするー! まだおひるにははやいのに おなかすいちゃう」

エーフィ「隣の部屋から漂ってくる料理の匂いと音ってなんかいいよね
     あたしのために誰かが作ってくれてるって感じがして」

リーフィア「そういうものなの?」

ニンフィア「そうですね 自分の作る料理とはまた違って美味しく感じます」

エーフィ「ここに雇われてるのってプロのひとでしょ そりゃ美味しくない訳がない」

ブースター「ニンフィアも料理するんだ?」

ニンフィア「あまり巧くはないのですけどね」

リーフィア「……ふーん」

イーブイ★「リーフィアって、いつも作る側なの?」

リーフィア「まあね 家族で料理ができるのボクだけっていうか
      料理が趣味で特技でもあるっていうか 作ってもらうってピンと来ないなあ」

グレイシア「得意料理ってありますか?」

リーフィア「基本的には何でも作れるけど…… 良く作るのはマーボービスナかな?」

ニンフィア「料理上手って憬れます 素敵ですよね」

リーフィア「いやいやー 良かったら教えてあげようか? 料理」

ニンフィア「いいんですか? だったらできるだけ早く上手になって リーフィアに
      私の料理を振舞ってあげますね」

シャワーズ「そのときは私たちもご相伴に預かったらダメかなぁ……?」

ニンフィア「もちろんいいですよ! 早く上手にならないといけませんね!」

ブースター「楽しみに待ってる」
 ▼ 44 ーシャン@ヘビーボール 18/02/06 12:16:09 ID:PGi2mvAU [7/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イーブイ★「ところで、カードのことだけど」

ニンフィア「あ、すみません つい話に花が咲いてしまって」

リーフィア「う、うん ごめんね」

イーブイ★「気にすることじゃないよ ……カードなんだけど、食堂には無いと思う」

シャワーズ「なんでぇ? 変なところは見当たらないけど、確信できる理由はぁ?」

ブラッキー「…………もう、ない?」

リーフィア「もう?」

イーブイ「そっか あさ ここでみつけちゃったもんね」

イーブイ★「うん カードが人数分であると仮定すると、この広い豪邸なら
      1部屋に2枚はないんじゃないかな 或いは1枚もない部屋もあるかも」

ブースター「成程 筋は通ってる」

グレイシア「でも10枚である根拠はあるのですか?」

イーブイ★「勘、かな 根拠はないに等しいと思う だから一応ちゃんと探してみよう」

グレイシア「そうですね テーブルの下とか、棚の陰とか
      見落としてる場所もあるかもしれませんし」

エーフィ「ないと思っていても用心するその姿勢、嫌いじゃないわ
     それとも、空欄があるのが我慢ならない系?」

ニンフィア「……なんですか、それ?」

エーフィ「ゲームとかのコレクションボックスは何が何でも埋めたいって奴いるじゃん?」

ブースター「ああ、なんか判る気がする 折角用意されてるなら制覇したいよね」

シャワーズ「用意されてるなら、ねぇ このカードも同じようなものかぁ」

イーブイ★「……そうかもしれない とりあえず、全部見つけたいって気にはなってる」

イーブイ「ぜったい みつけようね」
 ▼ 45 ーメイル@ライブキャスター 18/02/06 21:18:00 ID:PGi2mvAU [8/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
リーフィア「色違いの言っていた通り、食堂にはもうないみたいね」

ニンフィア「では、奥に行きましょう 失礼します」

シェフ長「――新人、もっと早く手を動かせ!! ん、誰だ今入ってきたの!?」

ニンフィア「失礼します、ゴロンダシェフ長 少しお話しいいですか」

シェフ長「おお! ニンフィア様とお客人御一行じゃねえか!! どうした?」

ニンフィア「私たちは、義母が企画した宝探しゲームのようなものをやっているのですが
      これくらいのカードなのですが知りませんか?
      もしくはいつもとは違う不自然なものとか カードの在処のヒントなんです」

シェフ長「うーん、知らねえなあ 奥様が仕事の邪魔になる場所に置くとも思えんし」

ニンフィア「あ、ごめんなさい 邪魔をしてしまいましたか?」

シェフA「大丈夫っすよ シェフ長がこだわり過ぎなきゃ十分昼に間に合うっす」

シェフB「そうそう 偶に遊びに来てくれると助かりやす “鉄の拳”が減る」

シェフ長「うっせーぞ、お前ら!! 手ぇ動かせ!!」

シェフ達「「「かしこまった!」」」

イーブイ「おじさんたちがりょうりつくってくれてたんだね」

ブースター「美味しいお料理、有り難く頂きました」

イーブイ★「ご馳走様です 次も楽しみにしてますね」

エーフィ「それで、お昼はどんなのなの?」

新人シェフ「はい リストランテ・ド・キワミのレシピをシェフ長がアレンジなさった
      本格コース料理になる予定です」

シャワーズ「本場、カロスのコース料理かぁ 美味しいんだろうなぁ」

リーフィア「……あ、こういう感じか ……頂きます、ご馳走様って」
 ▼ 46 ベノム@アクロママシーン 18/02/06 21:20:35 ID:PGi2mvAU [9/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニンフィア「……失敗しました 少し考えれば判ることですのに
      シェフたちの邪魔をしてしまって、皆さんにも無駄足を……」

エーフィ「いやいや、あの人たちは結構本音で話してたと思うよ」

イーブイ★「無駄って訳でもないよ 料理してくれた方達に感謝を伝えられたし」

リーフィア「それにニンフィアが、なんていうか、この家の皆に愛されてるんだな
      っていうのが伝わって来たしね」

ニンフィア「皆さん、拾い仔の私にいつも良くして頂いて下さって、感謝し切りです」

グレイシア「それもニンフィアさんの人徳がなせる業だと思います」

リーフィア「ちょっと、いいなぁ、羨ましい、って思っちゃった
      うち、核家族だから 両親も忙しくて、家にいないことも多くて」

ニンフィア「リーフィア……」

リーフィア「あはは、何言ってんだろ…… 実の両親のもとで育ったのに、贅沢だよね」

ブースター「関係ないよ 家によって事情が違うのは当たり前で、比べてもしょうがない」

シャワーズ「いいことも悪いことも千差万別じゃないかなぁ……」

リーフィア「そう、かな…… そうかも……」

イーブイ「だから、さみしいならさみしいっていえばいいんだよ いっていいんだよ?」

リーフィア「寂しかった、のかな? ……だから『結婚する、絶対に』って言ったのかも
      自分のことなのに、自分じゃ判んないや」

イーブイ★「そうかもね 2りでいれば寂しくない そういうものだと思う」

リーフィア「ごめんね、湿っぽい話になっちゃって さあ、次行こう!」


役者がアドリブ利かせすぎ 喋りすぎ 全然展開進まない
――いいぞ もっとやれ
 ▼ 47 ロバンコ@ていきけん 18/02/07 11:50:31 ID:1G9DCaA6 [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イーブイ「いっかいはおわったから つぎは2かい?」

シャワーズ「遊戯室は、行かなくていいのぉ?」

リーフィア「そこはもう1枚見つけたから、もうないんじゃない?」

イーブイ★「他の部屋を回って、もし10枚揃わなければちゃんと見てみよう」

ブースター「だな ……あれ、階段の上に誰かいる?」

サンダース「……なんだ、お前らまだ1階探してたのか なんか見っけたか?」

エーフィ「ううん、何にも ところでなんで二階に?」

サンダース「……プライベートルームに行ってたんだよ」

エーフィ「落ち着いて用を足していた、と」

サンダース「だから、そういうこと言うな! 恥じらいを持て!!」

グレイシア「はわ…… そうですよ、聞いてるこっちが赤くなっちゃいますから……」

エーフィ「はいはい」

ニンフィア「次は応接室に行こうかと思います 端から順番でいいですよね
      あと、これは色違いさんの仮説なのですが――――」

サンダース「――1部屋1枚…… で、全部で10枚か
      成程 じゃああと4枚だな」

イーブイ「……5まいだよ?」

サンダース「え? ああすまん 数え違えた キッチンには無かったんだったな」

リーフィア「6部屋あったもんね 玄関ホールと美術館は1部屋って感じじゃないけど」

エーフィ「本当、広すぎだよね」

ブースター「なんで金持ちってこう、家を広くしたがるんだろうな?」

リーフィア「夢があるから! かなあ」

ブースター「単純だが、案外そういうもんだったりするのかもな……
      維持できる財力を保てればなんだけどな」

エーフィ「この財閥なら安泰でしょ?」
 ▼ 48 コザル@メンバーズカード 18/02/07 11:57:43 ID:1G9DCaA6 [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニンフィア「こちら、応接室です どうぞ」

イーブイ「おじゃましま―― あ、いきなりへんなものがあった」

サンダース「あのチェス盤か ……目立つな あんなに色があると」

グレイシア「普通、白と黒の2色ですよね……?」

ブースター「赤、橙、黄、黄緑、緑、青、藍、紫 列ごとに色分けされてる?」

リーフィア「虹色? でもないか 1色多いもんね」

イーブイ★「いや、虹であってるよ」

リーフィア「なんで? 8色あるのに?」

イーブイ★「色にはもともと、明確な境界が存在しないからね 虹が7色っていうのは
      ぼくらが勝手に決めた基準だ 地域によっては8色に増えたり
      逆に3色にしか分けないところもあるくらい
      そもそも、色を表す言語は『白』と『黒』の2種類で十分らしい」

グレイシア「こんなに色があるのに、それだけでいいんですか?」

ブースター「なんか物足りないよね」

イーブイ★「昔のひとも物足りないと感じていたんじゃないかな だから誰かが
     『白』と『黒』に加えて『それ以外』という言語を加えた
      虹の色が3色っていうのはここで止まった地域のことだと思う
      でも、さらに踏み込む誰かも現れた」

ニンフィア「3色じゃ足りませんものね」

イーブイ★「『白寄りのそれ以外=暖色(赤)』、『黒寄りのそれ以外=寒色(青)』
      前にできた1色を曖昧な境界で分けて2色にしたんだ
      それから、更に表現を増やすために、
      『赤』の範囲から『黄』という言葉も生まれた
      これがぼくらが今使っている言語の色の基準」

リーフィア「へ? まだ5色だよ? それに虹には白も黒もないじゃん」

イーブイ「どうやって7しょくになったの?」

イーブイ★「色の話の前に、まず言葉の話をしよう
      君たちは『緑』って何を表すか知ってる?」

ブースター「そりゃ当然、緑色じゃないか? リーフィアみたいな色」

イーブイ★「不正解 それは『緑色』であって『緑』の説明じゃないんだよ」

サンダース「……え? あっ!!」

イーブイ★「『緑』には若々しいや瑞々しい、植物の蒼さというような意味があった
      そこから、『緑』の色、若々しい植物のような色、という言葉になった
      『紫』という植物から採れる染料の色、『橙』という果実の色
      『茶』という植物の実の色、『黄』に近い『緑』の色
      範囲が狭くなった『赤』に近い『紫』の色 みたいな
      そのうち、“〜の色”が除かれて話されるようになった
      こういう風に色の表現は増えていったんじゃないかな」
 ▼ 49 トシゲッコウガ@バシャーモナイト 18/02/07 12:04:41 ID:1G9DCaA6 [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エーフィ「先生ー 講義長いです 早弁していいっすか?」

イーブイ★「ああ、ごめん ついどこかで読んだ本の受け売りを語ってしまったよ」

エーフィ「色違いが考えたことじゃないの? 盤面ひっくり返していいっすか?」

サンダース「お前さっきから何言ってんの!?」

イーブイ★「ぼくの考えでもあるさ 本を読んで影響受けても、自分の考えで
      補足したり正しくない気がするところを切り離したりできるから
      そうして自分の考えに落ち着くのは悪いことじゃない
      丸パクリは問題かもしれないけどね ――どうぞ やっちゃって」

エーフィ「許可が出るとは思わなかった!! えーい!!」ガンガラガシャーン!!

ニンフィア「……盤の下から、カードが出てきましたね」

グレイシア「『頑なな見方は身を亡ぼす 流された思考は身を落とす』ですか」

ニンフィア「チェスの戦術の話みたいですが、比喩なんですよね?」

イーブイ★「『偏見は持つな 然れど確在れ 而して中庸で在れ』……辺りかな」

ブースター「『偏見』と言われて真っ先に思いつくのは、『同性愛』だけど
      ……これはそれぞれのワケ、か」

イーブイ「ちゅうよう…… どっちつかず?」

シャワーズ「その言い方は語弊があるけどぉ そういうことじゃなぃ?」

リーフィア「色違い、解釈が上手いね 説明も上手 本読むから?」

エーフィ「ならあたしも本読む!! 何冊くらい読めばいい!?」

イーブイ★「沢山の本を読むより、少しの本をじっくり考えながら読む方がいいかな」

エーフィ「おk 頑張ってみる」

リーフィア「ボクも、やってみようかな それで色んなことが分かるようになるなら」

シャワーズ「そろそろ捲っていいかなぁ 裏が気になる」

ニンフィア「そうですね 今度はどんなワケなんでしょう?」

シャワーズ「えっとぉ……『この中に1り、偽物がいる!』 ……なにこれ」

グレイシア「経歴詐称、ですか? 意図的に偽りの情報を出しているひとが?」

エーフィ「それもそうかもしれないけど、これ、多分――――」

ブースター「とんだイレギュラーが混じり込んでたものだね」

ニンフィア「『経歴詐称者』ではなく、『偽物』と書くあたりそうとしか思えませんね」

リーフィア「え? え? どういうこと? みんな勝手に納得してないで教えてよぅ!」

サンダース「イーブイ族のためのパーティーのイレギュラー この『1り』は――」

            「「「『メタモン』だ!!」」」
 ▼ 50 ニーゴ@ラムのみ 18/02/07 20:50:12 ID:1G9DCaA6 [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
リーフィア「メ、メタモンって、あの……?」

イーブイ★「雌雄同体 どんな種族とでも繁殖することが出来る 別名『仔作り器』」

ブースター「まいったな、そんな相手がいるとは想像もしなかった」

イーブイ「だ、だれが……?」

サンダース「そこまでは解らんし、仮に解ったとして『明かさないのがマナー』だろ」

グレイシア「子孫を残すという観点からは彼(?)との『結婚』は合理的ですが……」

エーフィ「ここまで来てメタモンとの『結婚』は嫌! なんか負けた気分になる!」

シャワーズ「だねぇ…… 悪いことじゃないんだろうけどさぁ」

イーブイ★「イーブイ族同士での『結婚』を夢見て集まったわけだからね」

エーフィ「なんでそんなの混じってんの!? 他意はないよ!! ご免ねメタモン!!」

サンダース「いや、他意ありありだろそれ しかも相手不特定だし」

ニンフィア「義母の仕業ですか…… さしずめ私と『結婚』させて早く孫の顔を見る
      とか企んでいたんでしょうね」

イーブイ「ぜんぜんかくじつじゃないとおもうけど……?」

ニンフィア「可能性が増えればよかったんじゃないですかね?
      彼(?)らは雌雄どちらが相手でも大丈夫ですし それに…… 
      こんなこと言うのは憚られそうですが、すぐできるらしいですよ 子ども」

サンダース「/// な…… は……恥じらいを持てっ!!」

エーフィ「迂遠な言い回しに反応しちゃって…… ちょっと初心過ぎない?」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

作者コメと本文は分けた方が良いと言われ さもありなんとこうしてみる
今日は多分ここまで 支援本当に感謝
 ▼ 51 タチ@つきのいし 18/02/08 22:44:00 ID:M2oCFI.6 [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニンフィア「さ、さて/// 次は書斎に行きましょうか」

イーブイ「じぶんのはつげんではずかしくなっちゃった?」

ニンフィア「……言わないでください もぅ」

リーフィア「ここが書斎かー…… ――もはや図書館?」

エーフィ「ひっろー! すっごー!」

サンダース「探すのが大変そうだ……」

シャワーズ「すぐ見つかるんじゃなぃ? 今までは結構解りやすい不自然さだったしぃ」

イーブイ★「そうとも限らないよ 『♂カエンジシ』は偶然が大きかった」

シャワーズ「あぁ……あれね ……確かにぃ」

グレイシア「それに、必ずあるわけでもないんですよね? キッチンみたいに」

エーフィ「徒労に終わるかもしれないのかあ ……ダル」

イーブイ「まー そーいわないで たんさくかいしっ!」

イーブイ★「それにしても古今東西と色々揃ってるね 食指が動かされそう」

ニンフィア「義母の収集癖には困ったものですが、ここは私も良く利用するんです」

リーフィア「難しそう…… あれ? 「タウリナーΩ」の漫画版がある!
      「ブロムヘキサーΣ」も! 難しいのだけじゃないんだね」

ニンフィア「昔私が義母におねだりしたものです ……もう読まなくなっちゃったな」

リーフィア「ボクもこれ好きだったんだー 懐かしい」

ブースター「オレも オレも」

エーフィ「盛り上がってるねえ…… あたしは分かんないや それ」

サンダース「俺も見てたなー ……じゃなくて、見つからねえな 不自然な奴」

グレイシア「今回も分かりづらいものなのですかね」

イーブイ「かみをかくすなら としょかんのなか?」

ブースター「つまりハードモードってことか」

エーフィ「最初からない可能性もあるのだけど?」
 ▼ 52 ガサーナイト@ふといホネ 18/02/08 22:45:29 ID:M2oCFI.6 [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブラッキー「…………これ …………変、じゃない?」

ニンフィア「えと、なにか見つかりました?」

エーフィ「んー? 普通の本棚に見えるけど……」

リーフィア「……解らない お手上げ 何が変なの?」

ブラッキー「…………ここ …………この列」

ブースター「……本の並び、か」

サンダース「実用書、伝記、童話、料理本――」

グレイシア「台本集に歴史書、それに写真集――」

シャワーズ「評論、論文、参考書――と、ここまで並びが変だねぇ」

イーブイ★「10冊…… しかもそれぞれバラバラな地方のものと思われる内容……」

リーフィア「凄いじゃん! ブラッキー、よく見つけたね! お手柄だよ!」

ニンフィア「棚から抜いてみましょうか…… 棚の奥に、カードですね」

サンダース「『外側だけ見て中身を悟るなど出来よう筈も無い』……」

シャワーズ「隠れていて気付けなかったかもだもんねぇ 中までちゃんと見ないとぉ」

エーフィ「色違いが言ってたように、ちゃんとそのひと自身を見ないとよね」

リーフィア「あ、その比喩、この本達自体もそうみたいだよ」

グレイシア「カバーと中身が違いますね 全部小説のようです」

イーブイ★「地方ごとの神話が軸になった小説か 面白そうだ あとで読みたい」

サンダース「裏見るぞー 『この中に1り、性同一性障碍者がいる!』」

シャワーズ「これまた特殊な事情だねぇ……」

グレイシア「それは…… あの…… 『同性愛者』とは別のものなのですか?」

エーフィ「似て非なるもの 或いは似てすらいないかもしれない
     良く混同されるけど、別物だよ」

イーブイ★「セクシャル・マイノリティはよく『LGBT』と混ぜて言われるけど
      『LG』と『B』と『T』では抱えてる問題が全く別らしいね」

エーフィ「声高に『LGBT』を叫ぶひと程 そこを理解していないから困る」

ニンフィア「受け入れられないのは問題でしたけど、
      有名になったらなったで別の問題があるのですよね」

エーフィ「普通でいたいだけだというのに 偉い人にはわからんのですよ」

サンダース「それこそ『お前が言うな』だぞ あれだけ暴走しといて」

エーフィ「それはそれよ 腐腐っ……」
 ▼ 53 ニョニョ@サーナイトナイト 18/02/08 22:49:24 ID:M2oCFI.6 [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
今日はここまで
無駄に長くなるし伏線にもならんから本文には書かないけど
折角考えたし図書館の本「20タイトル」書いてみる


   (カバー)         (ノベル)
実用書『大地の奥義』→ 『破壊の遺伝子』   :カントー

伝記『時を超えた遭遇い』→『空と海が交わる時』 :ジョウト

童話『ひみつきちにあつまって』→『地球(ほし)を造るもの』 :ホウエン

料理本『簡単! ポフィンクック』→『宇宙の裏 精神の表』:シンオウ

台本集『マチコの町』 →『Ideal justice & tempestuous truth』:イッシュ

歴史書『人の戦争 ポケモンの受難』 →『生命の営みの秩序』 :カロス

写真集『見比べてアローラ』→『Guardians of Arolla, Aliens of Ultra Hole』:アローラ

評論『本当に強いポケモンとは』→『破壊の遺伝子U〜Mewtwo in the dark』:フェルム

論文『心閉ざさす方法、開かす手段 その利用』→『暗澹たる海 闇然たる空』:オーレ

参考書『ポケモンレンジャーになるために』→ 『蒼海の王子争奪戦』 :フィオレ
 ▼ 54 ケンカニ@においぶくろ 18/02/09 05:07:22 ID:dOUK2bCs NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 55 ガクチート@ピンクのリボン 18/02/09 18:16:31 ID:F2i/6oSk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 56 ラップ@かざんのおきいし 18/02/09 22:56:19 ID:PIBQik.E [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
リーフィア「これで、書斎にはもうないってことなのかな」

エーフィ「見つかってよかったよかった こんなとこ後で捜し直しなんてしたくないし」

グレイシア「ブラッキーさんが見つけてくれなかったら、解りませんでしたからね」

ブラッキー「……………………」

エーフィ「お、照れてる? このこの!」

サンダース「やめい! さっさか次行くぞ!」

ニンフィア「次は洋間ですね ……この部屋ももしかしたら解り難いのかもしれません」

イーブイ「ほえ? なんでー?」

ニンフィア「見れば気付けるかと こちらです」

ブースター「普通の部屋、だね」

リーフィア「何が解り難い、なのかな…… 確かに目立った不自然さはなさそうだけど」

エーフィ「なんで来る前に分かってたの? ……んー? なんかこの部屋、どこか変?」

シャワーズ「違和感があるねぇ…… どこか1ヶ所じゃなく、全体的にぃ?」

イーブイ★「……ここの家具、食器、小物類、ほとんどサウスポーだ」

ニンフィア「正解です 普通の方には何もかも不自然に見えてしまうのはないですか?」

ブースター「成程 ヒントじゃないものもヒントに見える……」

リーフィア「え? え? サウスポーって何? どういうこと?」

イーブイ★「左手で使うことを前提とした道具類 ちょっと特殊なものだよ」

リーフィア「左手で? それが特殊? よくわかんないな」

グレイシア「普通、道具って右で使うことが前提に作られるんですよ」

ブースター「……右利きの方が多数派だからか」

サンダース「左利きからしてみりゃ扱い辛いもんなんだな」

グレイシア「……こういうのもあるんですね 私も左利きですが、右に矯正されたので
      普段使いはあまり気にしてませんでしたけど、確かに便利そうです」

リーフィア「産まれついての特性は矯正されないのが最近の主流だって聞くけど
      グレイシアは矯正されたんだ?」

グレイシア「ええ、まあ でも両手使いとか出来て便利ですよ?」

ニンフィア「ここは私用で使う部屋で、執事さんもメイドさんも左利きなので
      基本道具を使う彼らが扱い易いようにと、ここにはサウスポーが多いんです」

エーフィ「左利きって優秀になるってよく聞くけど、実際どうなの?」

ブースター「大財閥の本家使用人が2りとも左利きなら無関係でもないのかもね」
 ▼ 57 ワガノン@サファリボール 18/02/09 22:57:41 ID:PIBQik.E [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
リーフィア「じゃあ、あの壁時計もサウスポーって奴?」

ブースター「手で扱わない時計にユースポーもサウスポーも――――何あれ?」

イーブイ「はりのうごきがぎゃく? じかん、もどってる?」

ニンフィア「いえ、動きが逆なら文字盤も逆で、ちゃんと進んでますね」

エーフィ「でも、読み辛い 非常に変」

イーブイ★「あれだね ちょっと外して見てみよう ……ビンゴ 裏にカードがある」

サンダース「『白えりか、ひとの手触れて地に果てる 時戻す術、探せども無し』……」

ブラッキー「…………哀しい、歌」

シャワーズ「歌? ……五・七・五・七・七、短歌かぁ」

エーフィ「先生ー、これどういう意味?」

イーブイ★「『自らの手で壊してしまったものを悔やんで止まない気持ち』?
      『願えども時は戻らぬ 故に後悔すること勿れ』という戒めにも読める
      季語はえりか 意味は…… ごめん、知識不足だ どんな花?」

ブラッキー「…………えりかは、『孤独』 ……でも、白いのは ……『幸福な愛』」

ブースター「花言葉? ……うん、『幸福な愛』の方が意味が通るね」

エーフィ「考えてみれば、『結婚』してそれで終わりじゃないもんね
     その後もずっと続いていくもん 選択間違っておじゃんとか嫌だねー」

ニンフィア「幸せを枯らさないように、ですね 頑張りませんと!」

シャワーズ「さて、裏はぁ? 『この中に1り、若作りがいる!』?」

サンダース「『若作り』? ……年増ってことか?」

イーブイ「としうえのひとがいるの? みんなだいたいおんなじくらいにみえるけど」

エーフィ「歳は上でも若く見える ……これってプラスポイントじゃない?」
 ▼ 58 ギルダー@あおいかけら 18/02/10 14:54:56 ID:zLnQ568A [1/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
リーフィア「順調に集まってきてるよね 難しそうなところも見つけられたし」

サンダース「確かに 頭いい奴と勘のいい奴がそれぞれいてくれて助かった」

ニンフィア「次の部屋は特に広いところなんですが、後回しにしましょうか?」

イーブイ「とりあえずいってみて、へんなのがわかんなかったらあとまわし、かな」

ニンフィア「では、行きましょうか ……あんまり、驚かないでくださいね」

ブースター「……? ――!!」

エーフィ「ひっっっろーーー!!! すっっっごーーー!!!」ッロー! スッゴー! ッゴー ッゴー…

サンダース「うるせ!! ――でも、これは凄え……」

ブースター「劇場だ…… オーケストラでもミュージカルでも呼べそうな」

イーブイ★「美術館の2階部分…… スペースはあるけど、いやはやこれは」

シャワーズ「吃驚したねぇ ここも探さなきゃいけないのぉ?」

リーフィア「想像よりも広かったけど、不自然さは一目見れば解るものかもしれないし」

イーブイ「このにんずうならみつけられるよ がんばろー!」

グレイシア「後ろにポスターとか張ってあるんですね ……怪しいものないですか?」

ニンフィア「多分当たりですね 宣伝ポスターに交じって、浮いているものがあります」

ブースター「随分古い紙だな…… 『WANTED 怪盗ニャース』……指名手配書か」

シャワーズ「発行年は ……200年は前かぁ もう生きてはいないだろうねぇ」

エーフィ「でも『Dead or Alive』ってあるよ? 見つけたらお金貰えるかも」

サンダース「流石に無理だろ…… よし 剥がすぞ ……あった 9枚目だ」

リーフィア「『報奨のみが目的か』 そんな訳ないよぅ!」

ブースター「最大6000万P だっけ そういえばあったね 報奨」

イーブイ「おかねだけがもくてきのひとなんていないよっ ぜったい!」

ニンフィア「皆さんちゃんと結婚について考えていらっしゃるかと それは判ります」

エーフィ「でも報奨欲しくないひとなんていないよね…… あたしも欲しい」

イーブイ★「それに、報奨っていうのがお金のことだけとは限らないんじゃないかな」

シャワーズ「ニンフィアさんみたいに、『結婚』することがそのまま別のことの条件
      っていうこともあるのかなぁ」

ニンフィア「私は、跡継ぎと認められるために…… 他の方にも何か……?」

リーフィア「『結婚』したら特別報奨! みたいのの方が気合が入るもんね」

エーフィ「なにそれ、聞いてない ずーるーいー!!」
 ▼ 59 ローゼル@ライブキャスター 18/02/10 14:55:53 ID:zLnQ568A [2/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブラッキー「………… (ぺらり) ――――!!」

エーフィ「ちょっとー カード捲る前に何か言ってよー」

ニンフィア「今度は…… 『この中に1り、余命宣告者がいる!』 ……!!」

ブースター「重い情報引いたね ……病気か何かかな?」

イーブイ「よめいせんこくっていうほどだから おもいびょうきなのかも……」

イーブイ★「……? ブラッキー? どうし―― 大丈夫!? ブラッキー!!」

ブラッキー「――――はぁっ…… ――――はぁっ……」

イーブイ★「どうしよう!? どうしたら!? いきなり苦しみ出して――」

サンダース「何があった――!?」

リーフィア「余命宣告…… まさか――!? し、死なないで!!」

シャワーズ「まずは君等が落ち着きなぁんせ!! メイドさん! 厚いタオルをお願い!」

パチリス「――!! はい! 只今!!」

シャワーズ「……ゆっくり ゆっくり息を吐いて そぅ 慌てることはないよ」

ブースター「何が、起きて?」

ニンフィア「私にできることはありますか?」

シャワーズ「回りを落ち着かせてぇ? 過呼吸患者の周りで一番やっちゃダメなのは
      『パニックになること』だからぁ」

イーブイ「かこ、きゅう? たいへんなびょうきの、ほっさとかじゃ……?」

パチリス「タオルをお持ちしました! 紙袋もございます!」

シャワーズ「紙袋はいらない! それは誤った方法だから!
      ほら、タオル口に当てて息をしてぇ ……ゆっくり ゆぅっくりね」

ブラッキー「ふっ…… はっ…… はっ…… はぁっ……」
 ▼ 60 ーホー@ふねのチケット 18/02/10 15:04:19 ID:zLnQ568A [3/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イーブイ★「ごめん ちょっと、どうしていいかわかんなくて 慌てちゃって」

ブースター「過呼吸のひとが紙袋使うイメージあったけど、駄目なのか……」

リーフィア「シャワーズ凄いね お医者さんみたいに、てきぱき動いて」

サンダース「すぐに動けたのはアイツだけだったな…………」

エーフィ「格好良かった! 何者?」

シャワーズ「ちょっと医療の道に携わってただけだよぉ それだけ
      ――そぅ ゆっくり 大丈夫、大丈夫だよぉ」

ブラッキー「ふう…… ふ……ぅ…… (ふらっ) ……」

イーブイ★「――ブラッキー!!?」

シャワーズ「大丈夫 気を失っただけみたいだよぉ
      ほら 息も安定しているし 脈も落ち着いてきた」

パチリス「では、ブラッキー様をプライベートルームまでお運びします」

イーブイ★「手伝うよ ……心配だから」

エーフィ「おやおや? 色違いってもしかして?」

サンダース「豪胆だな…… 俺らにゃ茶化す余裕なんざねえよ マジで……」

ニンフィア「本当ですよ…… お客様に何か問題があったら、申し訳も立ちません……」

グレイシア「でも良かったです 命に係わるようなことはないのですよね?」

シャワーズ「多分、今すぐはね でもブラッキーが余命宣告者だとしたら――」

グレイシア「どの道長くは生きられない、ですか そうではないことを祈ります」

エーフィ「ブラッキーかどうかは分からないとして、それもまた問題だよね」

リーフィア「『余命宣告者』の『1り』はいるはずだから、か……」

イーブイ「かみのごかごがありますように…… ついねがってしまうね……」
 ▼ 61 ェリム@もののけプレート 18/02/10 16:05:38 ID:pxuOTjOc NGネーム登録 NGID登録 報告
ふと「殺人者」と「余命宣告者」が結ばれてからの高瀬舟パターンを思い浮かべてしまった

パーティー終わった後は書くのかな?
 ▼ 62 クノシタ@ホエルコじょうろ 18/02/10 18:10:19 ID:zLnQ568A [4/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ブラッキー(――嫌だ 待って 置いていかないで ……ねえ、お願いだから――)キー…

ブラッキー「(ハッ!) ――――はぁ………… はぁ…………」ラッキー…

イーブイ★「――ブラッキー! 大丈夫? 魘されてたけど…………」

ブラッキー(……色違いの、イーブイ? ――ここは……プライベートルーム?)

イーブイ★「良かった…… 目を覚まして 気分はどう? どこか悪いところはない?」

ブラッキー「……ルール、は?」

イーブイ★「君を介抱したいって申し出たら、特例として、情報管理をしっかりすれば
      君をぼくの部屋に入れてもいいってことになった」

ブラッキー(私の部屋じゃない? 本当だ 荷物が違う)

イーブイ★「君の部屋には入ってない ルール違反もない そこは安心していいよ」

ブラッキー(私、どうして倒れたんだっけ? ――そうだ、『余命宣告者』 あれが)ブルブル

イーブイ★「落ち着いて 君が何を怖れているのか ……今はあえて聞かない
      まずはスープでもどうだい? さっき貰って来たんだ」

ブラッキー「……ん (こくん) …………温かい ……美味しい」

イーブイ★「君は頭がいいから、つい先読みして考えすぎるきらいがある
      そういう時はお腹の中から温めて、悪い考えを飛ばしてしまった方が良い
      そして楽しい話をしようじゃないか 一寸先を怖がってもしょうがない」

ブラッキー(このひとには、お見通しみたい……? なんでなのかな?)

ブラッキー「…………私、どれくらい寝てたの?」

イーブイ★「3時間かな もうそろそろお八つ時だ」

ブラッキー「……そんなに …………カードは?」

イーブイ★「君が倒れた後はずっと看ていたから、知らないな」

ブラッキー「…………よかった、の?」

ブラッキー(だって、あなた、『全部見つけたい』って)

イーブイ★「気にしなくていいよ 9枚見つかったなら上々 あとは皆が見つけてくれる
      それに、さっき見つけた小説読んでたから 楽しい3時間だったよ」

ブラッキー「………………そう」

ブラッキー(嘘つき 椅子じゃなくて、10冊全部積んだ上に座って、どうやって読むの?)

イーブイ★「……もう一度聞くけど、身体は大丈夫かい? 寝てなくていい?」

ブラッキー(心配、掛けちゃったな 本当にいいひと このひとなら 私を――)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ▼ 63 リキテル@ブリーのみ 18/02/10 18:57:14 ID:zLnQ568A [5/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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リーフィア(ブラッキーが倒れ、色違いと共に離脱してからというもの
      みんな気も漫ろで、結局10枚目のカードは見つけられなかった
      美味しい筈があまり味のしない昼食の後、劇場でオーケストラを見たけれど)

リーフィア「ちょっと集中出来ないかなぁ 大丈夫かな、ブラッキー」

ニンフィア「心配ですよね でも、こちらで気を揉んでいても仕方ないと言いますか」

エーフィ「そうそう 良くなることを信じながらこっちはこっちで楽しんどけばいいの
     ブラッキーだって自分の所為でパーティーが台無しになるのは望まないでしょ」

リーフィア「そうかも、しれないけど ……ううん」

リーフィア(気持ち切り替えるのって苦手だなあ)

ニンフィア「早く、元気な顔見せて欲しいです あなたも ほら」

リーフィア「うぇ? ひょっと ほっへふねあないで……」

イーブイ「たのしそーだね! わたしにもやって!」

ニンフィア「ふふ 暗い顔してたってしょうがないですよ そういう顔の方が良いです」

リーフィア(そっか 皆も心配じゃない筈ないよね でもこうして笑おうとしてる)

エーフィ「……うん ほら、サンダースも!」

サンダース「ちょ! 止めろ! 痛え! 痛え! 力加減てもん考えろ!」

グレイシア「わ、私も混ぜて下さい! えいえい!」

シャワーズ「みんな元気だねぇ 私は見てるだけでいいや いけいけぇ!」

リーフィア(凄いなあ ボクも見習わなくちゃ ――あ)

ブースター「……曲変わった これ、『心のファンファーレ』 ……いい曲だ」

イーブイ「なかないことがつよいことなんてだれーがいったのー♪」

ニンフィア「音楽には前を向かせてくれる力ってありますよね
      だから私、歌が好きなのかもしれません」

リーフィア(元気が出る曲 うん 後ろ向いたってしょうがないもんね)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ▼ 64 リッパー@ライボルトナイト 18/02/10 21:31:47 ID:zLnQ568A [6/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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シャワーズ(ブラッキーが恢復し、色違いと共に合流したのは夕食前で
      一緒にオーケストラを聞けなかったのは残念だったけど
      ブラッキーの恢復をみんな素直に喜んでいた もちろん私も
      夕食は朝と同じ立食形式で それぞれ思い思いの席で語らっていて)

サンダース「よう 隣いいか? やっぱ美味いよな、ここの料理」

シャワーズ「どぅぞ どぅぞ ……あと一日だねぇ 相手は決まったかぃ?」

シャワーズ(私の隣には、なんとなく粗野な印象のこいつが座っていて
      遠回しにするのも好まれそうにないので直球で訊いてみた)

サンダース「それなんだが…… なんつうの? 今日のお前見てて、格好いいなあって」

シャワーズ「ありがとぅ 褒めてもらえるとは思わなかったぁ」

シャワーズ(おっと、いきなり好感度急上昇のようだ でもちょっと慎重に探りを入れる)

シャワーズ「でも、確か君にすごぉく懐いてるような仔、いなかったぁ?」

サンダース「エーフィか? あれはそういうんじゃねえだろ」

シャワーズ(自覚があるのかないのかよく分からない反応だな)

サンダース「それに…… あれは駄目だ 煩さすぎる 仮に選んでくれたとしても無理」

シャワーズ「ふぅん…… そういうものなの」

シャワーズ(これは千載一遇のチャンス? 最後の最後にツキが回って来た?)

シャワーズ「だったら私、サンダースに唾付けとこっかなぁ」

サンダース「俺を選んでくれんのか? よっしゃ! これで『結婚』は目の前だぜ!」

シャワーズ(それはこちらの台詞 ふふ……)

シャワーズ「じゃぁ 明日は宜しくねぇ」

シャワーズ(『報奨のみが目的か』これは私のことだろう 相手が誰であるかなど関係ない
      サンダースには悪いが、私の目的の贄になってもらおうじゃないか
      ただ『結婚』したという事実を残すためだけに)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ピカチュウ「さて、皆様 本日の催しはこれにて終了とさせていただきます
      あとは好きにお過ごしいただいても構いませんが1つ注意事項があります」

パチリス「各々のプライベートルームのパソコンで、誰か一人を決め 日が変わる前に
     投票を行い下さい それを最終投票とし 明日に活かさせて頂きます」

ピカチュウ「勿論、無投票という選択も選んでもらって構いません」

パチリス「それでは皆様 お休みなさいませ ごゆっくりどうぞ」
 ▼ 65 ードラン@アイスメモリ 18/02/10 21:34:06 ID:A.nkddaA NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
キモ
 ▼ 66 ンテイ@サイコシード 18/02/10 21:38:57 ID:zLnQ568A [7/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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二日目終了 割と長かった
三日目は答え合わせ ちょっと書き溜めるかもしらん



言霊遊び まとめ

数字のないビリヤード 『弾いて落とす消去法もあり』

おもちゃのバイキング 『よく吟味して選びたまえ』

覆面をつけた像 『その正体を悟ったとて濫りに明かさないのがマナー』

女装させられた絵『ドレスを着た♂ 男言葉の♀ 男であり女でもあるとはこれ如何に』

手錠でつながれた新郎新婦 『さあ言霊で縛ってやろう 【シガフタリヲワカツマデ】』

色取り取りなチェス『頑なな見方は身を亡ぼす 流された思考は身を落とす』

表紙と中身の違う本棚『外側だけ見て中身を悟るなど出来よう筈も無い』

鏡写し時計『白えりか、ひとの手触れて地に果てる 時戻す術、探せども無し』

古ぼけた指名手配書『報奨のみが目的か』

Something 『No Data』



『1り』 まとめ
未成年者 ひと殺し 王族 高額負債者 同性愛者 偽物 
性同一性障碍者 若作り 余命宣告者 ―Unknown
 ▼ 67 ルシェン@けいけんポン 18/02/11 11:29:40 ID:hYdsBEGk NGネーム登録 NGID登録 報告
この「一人」が偏ってる可能性が否定されてないな

未成年者で王族で高額負債者で……なーんてことがあるのかな?

支援
 ▼ 68 ールル@フレンドボール 18/02/11 11:33:52 ID:QC1KDr2E NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 69 タチマル@しらたま 18/02/11 11:36:46 ID:1ww8BWaE [1/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

エーフィ(三日目 最終日 朝食の席では誰もがあまり口を開けずに黙々と……
     今日は結果発表 皆緊張しているのかな
     かく言うあたしも、『結婚』出来るかどうか気が気じゃない訳で)

ピカチュウ「それでは皆様、これより最終投票の結果発表を行いたいと思います」

エーフィ「――――!!」

エーフィ(来た あたしは投票したけど あたしに投票した人っていたのかな?)

パチリス「その前に、少々ルール変更をお伝え申し上げます」

リーフィア「ルール? 何かな?」

エーフィ(えぇ…… なに、肩透かし? 心臓バクバクだよもぅ 早くして!)

パチリス「この三日目に於いては、情報封鎖のルールは解禁なさって結構です
     性別、招待状の内容、そして御自分がどの『1り』かなどですね」

イーブイ「いいの……?」

ブースター「今まで通り、『結婚』してから明かす方針でもいいんだよね?」

パチリス「勿論でございます では発表致します 
     『無投票』の方が3名 『両想い』が3組 そして『横槍』が1名ですね」

サンダース「『横槍』ってなんだ? 誰だ?」

ピカチュウ「文字通り、『両想い』の組の片割れに横から投票した者ですね」

ブースター「考えてみれば、そういうこともあるのか」

イーブイ★「寧ろ両想いばかりで票が被ったのが1名という方が驚きだと思うけど」

ニンフィア「ここまでスムーズにいくものでは中々ないですよね」

パチリス「では、まずその御3方から解決していきましょうか
     エーフィ様、シャワーズ様、サンダース様 どうぞ前へ」

エーフィ(えええ!! あたし達!? 横槍はどっち!? あたし!? それとも――)

サンダース「エーフィ…… お前……」

シャワーズ「やぁやぁ 横槍さん ご愁傷様だねぇ」

エーフィ「……何よ? そっちが横槍なんじゃないの?」

エーフィ(シャワーズなの!? う…… なんか負けてる気がする どことなくお淑やかで
     昨日の活躍もあって…… サンダースってこういうのがタイプなのかしら……)
 ▼ 70 ラカッチ@もうどくプレート 18/02/11 11:38:09 ID:1ww8BWaE [2/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
パチリス「では、思いの丈をぶつけあって、組むべき相手を決めて下さい」

シャワーズ「じゃあ、私からねぇ
      サンダース どうか、私と『結婚』してくれないかなぁ
      あなたが昨日言ってくれたように 私もまたあなたを好ましく思うよ
      きっと私達上手くやっていけると思うんだぁ
      変に言葉を重ねると、逆に嘘っぽくなる気がするからここで切るねぇ
      あとは横槍さんに譲るよ でももう一度だけ 私と『結婚』して欲しいなぁ」

エーフィ(昨日!? なにそれ ……負けられない 絶対負けたくない
     小手先の技は自身ないし 直球勝負で行くしかないわ)

エーフィ「……あたしは サンダースが好き 好き 好き
     なんでかな 一緒にいてすごく楽しかったんだ
     面倒臭いあたしにもずっと付き合ってくれたサンダースが好き
     不躾なようでいて繊細なあんたが好き 優しいあんたが好き
     何抱えてんのか知らないけど、あたしにちょっと肩代わりさせてくれないかな
     だから、どうか…… あたしと『結婚』して欲しい です///」

サンダース「………… お前、そんな…… 俺は……
      エーフィ…… く…… ごめんな 俺はお前を選べない
      どうか俺の我が儘を、許してくれ」

エーフィ(――そんな ……ううん サンダースがそういうなら 受け入れないと……)

サンダース「本当に ……本当に嬉しいよ 俺だって本当だったら
      ――いや、これは言うべきじゃないよな
      こんなこと、俺に言う資格はないのだろうけど、言いたいから言う
      お前が幸せになってくれることを願っている」

エーフィ(やめてよ そんな気持ちが揺らぐようなこと言うの)

エーフィ「ばか 男が女を振る時は、もっと毅然としてるものよ」

エーフィ(そんな悲しい顔しないでよ 諦めがつかないじゃないの……)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ▼ 71 ータクン@ヤゴのみ 18/02/11 11:39:38 ID:1ww8BWaE [3/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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サンダース(そんな後ろ髪惹かれる顔すんなよ 毅然と出来ねえだろうが)

サンダース「ほら、選んだぞ! 次はどうするんだ!?」

シャワーズ「本当に良かったのぉ? 彼女、必死だったけど」

サンダース「いいんだよ これが俺の我が儘だ お前にとっても都合がいいんだろう?」

シャワーズ「まぁ、それはそうだけどぉ…… ? 都合?」

サンダース「見てりゃ分かるさ お前、『結婚』するだけが目的だろ」

シャワーズ「ふふ…… そこまで判っていて、私を選んでくれたんだねぇ
      あなたとだったら、本当に上手くやっていけるかもねぇ」

サンダース「そりゃ光栄」

シャワーズ「気持ち籠って無いねぇ これから『結婚』する仲だっていうのに」

サンダース「あんた、タマムシ大学病院にいただろ 確か」

シャワーズ「会ったことあったぁ? うん、いたよぉ」

サンダース「そうか 合ってるならいいんだ こっちの話だ」

パチリス「では、こちらの誓約書に連名で署名頂きます
     こちらは最初に説明いたしましたように、諸々の共有契約に同意する旨を
     記したものに成ります故、しっかりと呼んでご確認いただきたいです」

シャワーズ「……確かに、言われた通りのものみたいだねえ どっちから書く?」

サンダース「お前から書いてくれ 俺はもうちょっと読み込む」

シャワーズ「はいはぃ りょぉかい 【シャワーズ】、と」

サンダース「……時にお前、結婚不成立だった場合って、招待状になんか書いてあったか?」

シャワーズ「……え? い――いきなり何の話さぁ? 書いてあったら、何?」

サンダース「2りで署名しなければ結婚不成立 そんなルールもあったなあ」

シャワーズ「……言ってた、けど」

サンダース「いやすまん、独りごとだ ただ――茶番は終わりだよ」

シャワーズ「へ? 何言って――」

サンダース(察し悪いな イライラする…… つまりは)

サンダース「『ひと殺し』と『結婚』する気なんざねえって言ってんだよ」
 ▼ 72 ラッタ@まんたんのくすり 18/02/11 11:40:33 ID:1ww8BWaE [4/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シャワーズ「――なぜ、それを?」

エーフィ「ど、どういうことなの?」

サンダース(そうだな こいつらには訳が分からんだろう 当のシャワーズも知らねえ)

サンダース「俺は、こういうもんだ どうぞ宜しく……ってか」

エーフィ「カード? ……!! 『選び得るは十ノ一』ってこれ!」

シャワーズ「見たことがないもの……!? 10枚目!?」

リーフィア「へ? え!? どこにあったの!?」

ニンフィア「見つからない訳ですね 既に見つかっていたとは……」

グレイシア「……一体、何時? いえ、あの時しかありませんか」

ブースター「離脱したときだね 嘘ついてたってこと?」

サンダース「いや、俺はあの時嘘は言っちゃいねえ はぐらかしたがな」

リーフィア「ど、どういう意味? どこにあったの!?」

ブラッキー「……『……プライベートルームに行ってた』」

イーブイ「さんだーすのへや? ううん それはふこうへいすぎる」

サンダース「初めは普通に自分の部屋で用を足すだけのつもりだったよ
      だが部屋から出ると、ふと不自然さが鼻を掠めた
      参加者は10名だろ? じゃあ、11部屋目のプライベートルームは何だ?」

イーブイ★「ああ ……見落としていたな」

サンダース「部屋が11なら、参加者も11じゃないのか? 小さな違和感でしかなかったが
      入ってみると勘が当たってたようで、それがあったよ」

ブースター「教えてくれたらよかったのに」

サンダース「そのつもりだったさ 1りで見つけたぜって自慢したかった
      だが、書かれていたのは偶然にも俺のことだった
      知られない方が良いと思って、つい隠した」

エーフィ「サンダースの……? ちょ 裏見せて ――!」

シャワーズ「『この中に1り、被害者遺族がいる!』 ――あなたは……」

サンダース「事情は判ってくれたか? シャワーズ 俺はあんたを断罪するために来た」

シャワーズ「断、罪?」

サンダース「――悔やんでるだ? だったら自首して俺の前で頭下げろよ……!
      事故だ? ふざけんな!! 医療過誤は……事件だろうが!!」
 ▼ 73 チニン@いわのジュエル 18/02/11 11:42:14 ID:1ww8BWaE [5/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シャワーズ「――――………… 申し訳、ない 申し訳ない――!! 許してくれ!!」

サンダース「今更だな 今謝ったってどうしようもねえ 時間も戻らねえ……!
      地に果てた花は咲き戻ったりしない! お前さえいなければ!!
      3年前…… 彼女は――妻は死なずに済んだかもしれないのに……!」

エーフィ「――妻 ……既婚者だったの?」

サンダース「……離婚者だよ 『死が2りを分か』ったんだから」

イーブイ★「医療過誤は、『ひとの手』によるもの……」

ニンフィア「なんで解ったのですか? カードだけでは情報不足ではないかと」

サンダース「それは、ブラッキーのお蔭だ
      こう言っちゃなんだが、倒れてくれたこと、感謝してる」

ブラッキー「…………『医療の道に携わっていただけ』」

サンダース「それだ 昨日気付いて、あの時の自己弁護を思い出すたび反吐が出た」

イーブイ「じこべんご? ……しょくどうでのこと?」

グレイシア「そういえば、『ひと殺し』をまず庇ったのはシャワーズでしたね」

エーフィ「あれが誰かを庇う言葉じゃなくて、自分を庇う言葉だったなら……」

ブースター「胸糞悪い、かもな」

シャワーズ「――――それは、こっちにも事情が……」

サンダース「上からの圧力か? 散々調べたよ お前は若く、しかも他所からの客員
      腐った医療界はお前の不祥事をひた隠しにし、揉み消すために尽力した
      そしてお前は真っ当な罰を受けることもなく懲戒免職処分と相成った」

サンダース(それがお前の意思など及ばないものであったとして ――俺は)

サンダース「起こってしまったことは仕方ねえ 今はそう思えるようになった
      ただ――謝罪が欲しかった 彼女が浮かばれるために
      いや、俺が過去と決別するためだな ずっと、待ってたんだよ」

シャワーズ「――申し訳、なかった……」

サンダース「財閥の力はすげえな 知った上で催しの一つとして演出してみせるんだから
      『ひと殺し』が誰かも、俺が探してることも 全部
      ……俺の招待状に書いてあったのは
      『あの時の加害者が結婚したなら、金の力であの事件を完全に揉み消す』旨
      だが、『結婚不成立なら、余罪も洗って則逮捕』とも
      誰が『ひと殺し』かは書いてなかったから、必死だったぜ」

リーフィア「そして見事に、見つけてみせた?」

サンダース「何か言いたいことあるか?」
 ▼ 74 ネズミ@ヘルガナイト 18/02/11 11:43:12 ID:1ww8BWaE [6/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シャワーズ「まず謝罪を 本当に――本当に申し訳なかった
      私は捕まるわけにはいかなかったんだ それで今回のパーティーに参加した」

グレイシア「『ひと殺し』にも事情はある、のですよね……」

シャワーズ「さっき言われたように、あの事件の隠匿は私の意思じゃなかった
      そこは信じて欲しい…… ずっと、謝りたかった……」

サンダース「……続けろ」

シャワーズ「――うちは、兄弟がとても多いんだ 私よりずっと年下の仔も、いる
      でも親はいない 毎月カツカツで生活してる
      私が一番の稼ぎ頭なんだよ 私が働かなきゃ、あの仔たちが路頭に迷う
      捕まっている時間なんて ないんだよ……」

リーフィア「生活、大変なんだね……」

ニンフィア「事情も分かりますが―― しかし」

サンダース(それがお前の事情か ……同情の余地はあるかもな だが)

サンダース「そんなの、知るか!」

イーブイ「え、ちょっ ちょちょっ」

ブースター「そんな言い方――」

サンダース「知らねえよ 『被害者遺族』の感情を汲まねえ『ひと殺し』の事情を
      汲む必要なんざ端からねえだろうが」

シャワーズ「それは―― そう、かも」

サンダース「だから捕まって、罪を償ってくれよ」

シャワーズ「でも…… ――あの仔たちはどうすれば!?」

サンダース「『ひと殺し』の家族だからといって、責はねえ そこら辺の分別はある
      大丈夫だ ちゃんと面倒見てもらえるようにするよ
      俺、実は凄えとこにコネ持ってるから 仔どもの食い扶持ぐらい余裕だろ」

シャワーズ「――それは、一体?」

サンダース「世界を股に掛ける大財閥」

シャワーズ「あ―― ……そのコネなら、私にもあるよ
      ニンフィアさん、私が捕まった後、あの仔達をお願いいたします」

ニンフィア「かしこまりました 力を尽くすことを誓いましょう」

エーフィ「まさか、最後のキメはひと任せ? 格好いいんだか格好悪いんだか」

サンダース「それを言われると弱いんだが……
      一応、転職の内定は貰ってんだよ 財閥傘下の企業に」

エーフィ「下から支えるって……? 責任持つなら、よし、かな」
 ▼ 75 ルミル@おまもりこばん 18/02/11 11:44:31 ID:1ww8BWaE [7/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サンダース「ところでシャワーズ、お前♂だろ? なんでそんな話し方なんだ?」

エーフィ「そ、そうだったの!? あたしてっきり……」

シャワーズ「あぁ…… これぇ? だってイーブイ族って♂ばっかりでしょぉ?
      女の仔の振りしてた方が『結婚』しやすいかなぁって」

サンダース「♂がやってると思うと反吐が出るわ 止めろ」

リーフィア「ボクも女の仔だとずっと思ってた……」

エーフィ「でも、そっか…… そっかぁ……
     サンダースの我が儘って、これで終わり?」

サンダース「ん? そりゃ、そうだが……」

エーフィ「じゃあこの書類に名前書いて? ほら、【エーフィ】って書いたよ?」

サンダース「……! お前、これ、いいのかよ……? 俺なんかで?」

エーフィ「いいの! それとも、あたしが『幸せになってくれることを願っている』
     って嘘だったの?」

サンダース「嘘なわけない…… じゃあ、改めて 『結婚』しよう!
      絶対幸せになってくれ いや、幸せにしてやる!!」

エーフィ「ふふ…… それはお互い様 あたしと『結婚』して下さい
     おじいちゃんおばあちゃんになっても、ずっとあたしと一緒に」

グレイシア「おめでとうございます! 御2りとも!」

エーフィ「あ、言い忘れてたけどあたし『若作り』よ? 多分7つ8つ離れてるんじゃない?」

サンダース「姉さん女房か…… こりゃ尻に敷かれそうだ」

エーフィ「あたしの方が先に老衰するかもだけど、宜しくね?」

サンダース「老衰してくれるなら万々歳だ ……2りで生きよう」

サンダース(絶対幸せにしてやる そう誓う)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ▼ 76 ラーミィ@ひかりのいし 18/02/11 11:46:10 ID:1ww8BWaE [8/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
―――――――――――――――――――――――――
はい 一番伏線盛ったサンダースパート 終了
引き続き書き溜める

沢山の支援ありがとう 展開予測は無視るので宜しく
 ▼ 77 ングラー@ラブラブボール 18/02/12 10:30:29 ID:3OGSeHiE [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ニンフィア(あとは、無投票者と両想い ならば 必然的に――)

パチリス「続きまして、ニンフィア様とリーフィア様 こちらへ」

ニンフィア(私たちは、両想い、なのですね)

リーフィア「ボクを選んでくれてありがとうね ニンフィア」

ニンフィア「こちらこそ、ありがとうございました 嬉しいです」

リーフィア「……えへ 改めてこうやって向き合うと、照れちゃうね」

ニンフィア「……そうですね 私も、ちょっと真正面からは顔見れなさそうです」

ニンフィア(私が、少年チックで女の仔のようなこのひとが気になりだしたのは
      ……いつからだったでしょうか? 第一印象は、違った気がします)

リーフィア「意識しちゃう……? それって嬉しいことだよね
      ニンフィアもボクのこと好きになってくれたんだ、って判る」

ニンフィア「……不意打ち、ずるいですよ ニンフィア『も』って……」

リーフィア「じゃあ、この紙に二人で名前書いたら『結婚』できるんだよね
      好きなひとと『結婚』かぁ 夢みたい ――いいのかな……?」

ニンフィア「……いいのかな、とは?」

リーフィア「ボクの、事情の話 このパーティーに参加した理由とか まだ話してない」

ニンフィア「隠したままでも、良いのですよ? 私としては」

ニンフィア(いつ、何を話されても私は――)

リーフィア「そうだよね 変に言っても困らせるだけかもしれない でも――
      さっきの3にんのやり取りさ 難しくてついてくのがやっとだったけど
      ……みんな納得できるようにまとまったんだよね 良かったよ
      ボクらもさ 納得したうえで『結婚』するべきだって思わない?」

ニンフィア(――ああ、そうです 多分2日目の朝 考えるのは苦手だと公言しながら
      ちゃんと考えて、自分なりに納得して、前を向いて笑う顔を見て
      そこに、私はどうしようもなく惹かれてしまったのでした)

ニンフィア「……あなたが、それがいいというなら 依存はありません」

ニンフィア(あなたがどんな事情を抱えていても受け入れる自信はあるつもりです)

リーフィア「ありがとう 隠し事しながら喋るのも苦手で、ちょっと困ってたんだ
      ……じゃあ、打ち明けるよ ボクは、1億と2千万の『高額負債者』だ」
 ▼ 78 ロアーク@ドリームボール 18/02/12 10:31:50 ID:3OGSeHiE [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニンフィア「1億2千万…… 大金、ですよね」

リーフィア「何故、どんな借金があるのかは、把握してない 2年前両親が死んだとき
      難しいことを知り合いに任せてたら、全部引き継がれてただけだから
      知ってる? 相続放棄って3ヶ月以内に申請しないと認可されないらしいよ
      ボクが負債のことを知らされたのは、葬式から4ヶ月目のことだった」

ニンフィア「……そんな」

ニンフィア(――ご両親、亡くなっていらしたのですか……?
      『寂しかった』というのは、孤独だったからなのでしょうか?)

リーフィア「大金だよね 毎日いろんな仕事を掛け持っても利息だけで首が回らなかった
      困ってたんだ 本当に そんなときに舞い込んできたのがパーティーの話
      ボクの招待状の文は、『結婚』したら負債を半額財閥が受け継ぐってこと
      そして残りは『結婚』相手と分け合える、ってことだった」

ニンフィア「それで、参加したのですか」

ニンフィア(1億2千万の半額? ……半額は絶対じゃないじゃないですか 義母の嘘つき
      『最大』奨金のことでしょう? それは)

リーフィア「飛びついたよ 神の慈悲かとも思った ボクには利しかないからね
      ……でも、実際3日過ごしてみて 好きになったのはニンフィアだった
      投票して、いいのかなってすごく迷った 結局しちゃったけどね」

ニンフィア「……何故? 私を想ってくれたなら、気にする必要もなく嬉しいことですのに」

リーフィア「君が、財閥のひとだから」

ニンフィア(――――そんなこと……)

リーフィア「ニンフィアと『結婚』すれば多分負債問題は解決するだろうね……
      でも、そうなると全部を財閥に押し付けた形になる
      本当にいいのかな? ボクは財閥に甘えちゃって? まだ迷ってる」

ニンフィア(私を想えばこそ、迷うのですか? どうか迷わないでください だって)

ニンフィア「いいのですよ 私が――あなたと『結婚』したいのですから
      あなたもそう想って頂けるなら、他のことなど些事です」

リーフィア「そこまできっぱり言えちゃうのは凄いなあ
      ……小難しいこと考えるのは性に合わないけど どうしても考えちゃうのに
      でも、うん そうだね もっと簡単なんだ ボクはニンフィアが好き
      それだけ判ってれば十分なんだね」

ニンフィア「はい!」
 ▼ 79 ンシカイオーガ@ブルーカード 18/02/12 10:33:58 ID:3OGSeHiE [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
リーフィア「君がボクを想ってくれるのは嬉しいけど…… どうしてボクなの?
      自分で言うのもどうかと思うけど、頭も悪いしあまりいいとこない気が……」

ニンフィア「そんなことないです!! あなたは素敵なひとです!!」

リーフィア「ど……どこら辺が?」

ニンフィア「説明するのは、難しいかもしれません……
      最初に感じたのは、悩んで、迷って、決意する姿が美しいってことでしたね
      それが一つの理由でした」

リーフィア「でした? 今は違うの?」

ニンフィア「今もそれはありますよ? でも、それだけじゃないというか
      一つ一つ思い付きはしますが、どれも明確な理由ではないのです
      些細な理由が重なってできるのが『リーフィアが好き』という大きな気持ち
      そういうことなんです きっと」

ニンフィア(『ひと』を見て、『ひと』を好きになる 前提など、関係なしに)

リーフィア「……判る気がする ボクも、同じような気持ちだと思う 説明が難しいの       全体的に『ニンフィア』が好き ……気持ちの説明って難しいね
      同じように、一つ挙げるとしたら、劇場でのことかな
      ブラッキーが倒れた後も明るく振舞っていて、元気を貰えた、から」

ニンフィア「いえ、そんな ……嬉しいです」

ニンフィア(本当に両想いなんですね ……胸がいっぱいです 私も、覚悟を決めないと)

ニンフィア「……これを聞いても気持ちは変わらないと断言しますが
      あなたはどっちなんですか? ……性別、は?」

リーフィア「ボク? そういえば名乗って無かったね ♀だよ 『男言葉の♀』」

ニンフィア「……そうですか」

ニンフィア(私の気持ちは変わりません あなたが♂でも、♀でも
      でも、あなたはどうなのでしょうね……? 私は――)

ニンフィア「では、私も名乗りましょう 私は、『男であり女でもある』……
      『性同一性障碍者』、なんですよ M for F ♂から♀になった者です」

ニンフィア(身体は♂のもので 心は女の仔 そんな歪な存在、なんですよ)
 ▼ 80 マルス@しろいハーブ 18/02/12 10:35:05 ID:3OGSeHiE [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
リーフィア「『性同一性障碍者』……? ……そうなんだ」

ニンフィア「私は心だけ普通の女の仔でしたから、今まで好きになった相手は、皆♂で
      私が想いを伝えると、皆気味悪がって離れていくんです
      当然ですよね ♂が♂に告白なんて、普通だったらおかしいと思いますもの
      同一性の乖離なんていう面倒な付録まであるのですから仕方ないと思います」

リーフィア「そんな――ことは……」

ニンフィア「……かといって、義母が持ってくるような知らない♀とのお見合い話にも
      乗り気にはなれなかったんです 私は女の仔なのに、どうして…… って」
      義母が孫の顔を見るのを楽しみにしていたのは知っていましたのに
      結婚する気にはなれなくて ……とんだ親不孝者です 私は」

リーフィア「……………………」

ニンフィア「このパーティーは、あなたの言う通り、『私のため』だと思います
      性別を隠させたのは、元々私を隠すためだったのでしょう
      それと、私が選んだ相手が♂でも♀でも、私自身が納得するように
      ワケありを集めたのもまた、カモフラージュのためです 
      私だけ気後れしないようにという意味もあったのではないでしょうか」

イーブイ★「……そういうこと 納得がいった」

サンダース「そんなんに巻き込まれたってのか ……複雑だな」

エーフィ「結果オーライだからいいじゃない あたしは感謝してるな」

シャワーズ「私も、来てよかったって思える 思い通りにはならなかったけどね」

ニンフィア「これが私の事情です どうです? 見損ないました?」

リーフィア「……解んない 分かんなかった 分からないことが判った
      ……同じかな? でもいいんだ ボクの気持ちは変わらない
      『結婚』してくれる? ――ニンフィア」

ニンフィア「え――? いい、のですか?」

リーフィア「勿論 ボクにとっては、ニンフィアが『ニンフィア』であることが大事で
      どんな事情を抱えていようと、どんな前提だろうと、些事でしかない」

ニンフィア「――リーフィア……」
 ▼ 81 ューラ@りゅうのキバ 18/02/12 10:35:50 ID:3OGSeHiE [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
リーフィア「それに……説明下手だから言いたいこと言えるかわかんないけど
      ニンフィアのワケってつまり、『左利き』みたいなものでしょ?」

イーブイ「『ひだりきき』?」

グレイシア「成る程ですね ……ふふ、その心は――?」

リーフィア「産まれついて『そう』だったんだもんね ボクは右利きだから判んないけど
      多数派と違うっていうのはそれなりに苦労することがあるんだろうね
      でも、だからと言って『変』という訳ではないよね 特別視する理由はない
      産まれついての『それ』を、無理に矯正して欲しいとも思わないよ
      ボクが君に合わせればいい あの部屋の、サウスポーみたいに」

ニンフィア「そんな、そんなこと言われたの――初めて、です……」

ブースター「……凄いな リーフィアって本当は頭いいんじゃない?」

リーフィア「まさか みんなの受け売りだよ この3日で聞いたことを取捨選択して
      自分の言葉で纏めただけ それでもボクの考えって胸張っていいのかな
      ねえ 色違い?」

イーブイ★「いいんだよきっと 丸パクリではないようだしね」

エーフィ「あの時の台詞?」

サンダース「みんなが言っていた言葉、か それでも凄えよ 胸を張っていい」

リーフィア「だから ニンフィアと一緒になることに依存はないよ
      ボクと『結婚』してくれますか? ニンフィア」

ニンフィア「はい ――末永く、宜しく、お願いじますぅ……」ポロポロ…

リーフィア「わぁ! 泣くの早いよ! ちょっと落ち着いて!」

ニンフィア「ぐすっ…… 夢じゃ、ないですよね ちょっとほっぺ抓って下さい……」

リーフィア「え? こう? (ぐにー) あはは、昨日と立場反対だ」

ニンフィア「いふぁいれふ……」

ニンフィア(夢のようだけど、夢じゃないんだ 胸が、一杯です)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ▼ 82 ルマッカ@メカニカルメール 18/02/12 10:40:12 ID:3OGSeHiE [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
―――――――――――――――――――――――――――――

ニンフィアパート終了 対照的で風刺的なペア
プリティでフィアフィア マックスハートでお送りします

作者は「LGBT」ではないが「LGBT」が好きだ というか「ひと」が好きだ
 ▼ 83 ピアー@ラグラージナイト 18/02/12 11:09:04 ID:8hJGUD4k NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 84 ルタンク@パワーアンクル 18/02/12 19:04:28 ID:K4CZI482 NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 85 イケンキ@たんちき 18/02/13 00:10:50 ID:VMfr9pvY [1/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

グレイシア(――やっぱり、皆さん、眩しいです 私ではとても、釣り合えませんよ)

グレイシア「『結婚』おめでとうございます リーフィアさん、ニンフィアさん

エーフィさん、サンダースさんも」

ニンフィア「ありがとうございます」

サンダース「……照れるな 改めて言われると」

エーフィ「どうもね ……? グレイシア、相手は?」

グレイシア「私は、投票してないんです この場での『結婚』は、諦めました」

リーフィア「え? な、何で……」

グレイシア「私が投票しても、相手を困らせるだけで、振られるだけなのはみえますから
      誰も私に票を入れていないのが、何よりの証拠です」

エーフィ「う…… それは」

サンダース「……なんて言っていいやら」

グレイシア「あ、誤解しないでください 恨み言を言うつもりでは、全然なくて」

リーフィア「……でも」

グレイシア「……本当にいいんです 『結婚』はできませんでしたが
      このパーティーに来れて本当に良かったと思っているんですよ
      皆さんのお陰です ありがとうございました」

ニンフィア「そんな、感謝なんて……」

グレイシア「私、今までずっと、本当の自分を知られないようにひた隠して
      俯いて生きてきたんです 誰にも悟られないようにって
      仕事は何とかやってきましたけれど それ以上にひとと関わることがなくて
      ここで対等に触れ合ってもらえて、嬉しかったです
      それに、皆さんの言葉に希望を貰えました」

サンダース「……本当の、自分?」

グレイシア「はい 私は“ゲイ” ♂の『同性愛者』なんです」

シャワーズ「グレイシアも♂だったんだ」

グレイシア「……この話し方は、素ですよ? 一応言っておきますが」
 ▼ 86 ルッグ@ブルーカード 18/02/13 00:11:48 ID:VMfr9pvY [2/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
リーフィア「『同性愛者』…… それがグレイシアの事情?」

グレイシア「そうです 私もまた産まれついて“違う”ものだったんです
      小さい頃、虐められたこともありました ♂のくせになよなよで」

エーフィ「そりゃ酷い! ホモは悪いことじゃないのに!」

サンダース「突っ込むとこそこかよ いや、言ってることは正しいんだが」

グレイシア「悪くはなくても、“違う”ことは虐める理由になるのだそうです
      私も当時はそう思って、甘んじていました 辛かったですが、力もなくて
      苛めがなくなっても、卑屈なまま 自分を出す勇気もなくて」

シャワーズ「心的外傷は中々、治らないものだよねぇ」

グレイシア「好きな人は何度か、できたことはありましたが、告白なんてできなくて」

ニンフィア「♂同士、なんですよね ……それは躊躇しますよね」

グレイシア「結婚なんてできるわけない、と絶望していたところで、今回の話でした
      性別を隠し、性格や所感だけで『結婚』相手を決めるパーティー、と」

ブースター「グレイシアはそういう説明を受けたんだ?」

イーブイ★「嘘ではないのだよね 核心的でもないけど」

グレイシア「ここに来て初めて、『LGBT』に嫌悪感を抱かない方もいることを知りました
      それも一つの収穫です そして何より――先程のやり取りが、
      リーフィアさんの演説が、胸を打ちました そんな考え方もあるんだって」

リーフィア「演説って…… 恥ずかしいな……///」

グレイシア「いえ、感動しました 私、これからは自分を出して行けそうです
      この、『右利きの世界』で、『左利き』と手を繋ぐために」

リーフィア「ボクの言葉、そんな何度も引用しないで/// 恥ずかしくなってきた……」

ニンフィア「頑張ってください 私で良かったら、相談くらい、いつでも乗りますよ」

エーフィ「勿論、あたしたちもね 折角知り合えたんだから」

グレイシア「本当に、ありがとうございます いつか、頼らせてもらいますね」

グレイシア(――そうだ これからは、顔を挙げて、前を向いて生きていこう)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ▼ 87 ノプス@ものしりメガネ 18/02/13 00:14:13 ID:VMfr9pvY [3/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
―――――――――――――――――――――――――――――
流れに任せて トランスジェンダーからのゲイ
グレイシアパート終了

『結婚』はしなかったけど幸せになって欲しい
こんな結末もありかな

支援感謝感謝
 ▼ 88 ィグダ@ねらいのまと 18/02/13 13:21:27 ID:jh6Q.kCY [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
がんばれ!支援
 ▼ 89 ターミー@あおぞらプレート 18/02/13 13:54:36 ID:jh6Q.kCY [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
早く見たいです
 ▼ 90 クスロー@ネコブのみ 18/02/13 17:24:02 ID:VMfr9pvY [4/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

イーブイ★(誰かと共に生きることを望めるとは思えなかったけど――)

ピカチュウ「では、最後の『両想い』組 イーブイ(色違い)様 ブラッキー様」

エーフィ「やっぱりそうなんだ なんとなく予想はしてたけど ……ふふ」

サンダース「色違いの方は判りやすかったが、両想いとはな おめでとう」

ニンフィア「想いが届いたのですね お似合いだと思います」

リーフィア「『白』と『黒』見た目にも素敵なペアだよね」

シャワーズ「大丈夫? ブラッキーの方は……」

ブースター「いや、それはこっちが口を出すことじゃない 皆各々事情があるのだし」

シャワーズ「……ん そうだね」

ピカチュウ「こちら、誓約書です 納得しているなら御署名下さい」

ブラッキー「……………………」

イーブイ★「ちょっと待って このまま『結婚』することはできない」

ブラッキー「…………? ……どうして?」

ブースター「……何か問題が?」

イーブイ★「『結婚』が嫌だというのではないよ ……ぼくはブラッキーに惚れている
      でも、このまま『結婚』したら 後悔する気がしてしょうがないんだ
      これはぼくのエゴだけど、全部知ってから、納得したうえで選んで欲しい
      勿論、君のことをもっと知りたいというのもあるよ
      ……君が何を怖れているのか 今こそ聞かせて欲しい ……いいかな?」

ブラッキー「……………………」

イーブイ★「――ぼくは、『余命宣告者』だ」

ブラッキー「…………!!?」

エーフィ「え!? 色違いの方が……!?」

ブースター「そうだったのか…… いや、それは……」

グレイシア「確かに、それを黙ったままの『結婚』は…… 出来ないかもしれません」

イーブイ★「卑怯だよね それは嫌だったんだ
      例え結婚できなくなろうとも、後悔の残る選択よりはマシ そう思う
      だから全部話すよ ぼくのことを」
 ▼ 91 ジュマル@きんのいれば 18/02/13 17:24:45 ID:VMfr9pvY [5/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イーブイ★「初日の自己紹介の時、ぼくもはぐらかしたんだよね
      嘘は言わなかったつもりだけど、核心的なことも言ってない
      『普通とは違って産まれてきた』っていうのは、毛色のことだけじゃない
      先天性の難病持ちだったんだ あと1年も生きられないと言われてる
      それでも『結婚』したいと思った 折角機会を与えられたのだから」

ニンフィア「それは…… 自由意思、ですか……? それとも報奨を約束されてですか?」

イーブイ★「……報償のため、だったな ぼくの病気は所謂不治と言われていてね
      実は産まれたときに教えられたという寿命はもう過ぎてるんだよ
      医療技術の進歩に支えられて、こうして大人になれるまで延命されてる」

シャワーズ「凄い 中々あることじゃないよ」

イーブイ★「『結婚』できれば、財閥が研究している最新鋭の医療技術を提供してくれる
      優先的に享受できるんだって そう書かれていた」

リーフィア「……そんな じゃあ」

イーブイ★「いつ命尽きるともしれないこんなぼくが『結婚』することに悩みはあった
      『報奨のみが目的』の『結婚』も躊躇する理由の一つだった」

グレイシア「…………そうだったの、ですか」

イーブイ★「なのに、パーティーにきてみればどうだろう そんなの関係なくなった
      一目惚れだったよ こんなにも歪な状況なのに、すべて吹き飛んだ」

エーフィ「おやおや、それはそれは」

イーブイ★「ぼくは『ブラッキー』が好きだ 本気で思うよ
      君と『結婚』したい 君と一緒に生きていきたい 最期まで」

サンダース「おお! じゃあ!」

イーブイ★「どうか、ぼくと『結婚』してくれませんか ――ブラッキー」

イーブイ★(どうか―― どうか 君と一緒に生きることを許してほしい)

ブラッキー「―――――――――
      …………ち、近づかないで!!!!!!」

イーブイ★(――――え?)
 ▼ 92 ドリーナ@ふうせん 18/02/13 17:25:47 ID:VMfr9pvY [6/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エーフィ「なんで!? どういうこと!?」

ブースター「……予想外の展開」

ブラッキー「あ―――― ……ご、ごめんなさい ……でも、私 ……私!!」

イーブイ★「……落ち着いて ……深呼吸、して ……聞いてるから 聞きたいから」

ブラッキー「――はっ ――はっ ……ふぅ ……ふぅ …………私、は」

イーブイ★「うん」

ブラッキー「……私は ……“忌仔”、だから! …………あなたと一緒には――」

イーブイ★「どういうことなの? その、“いみご”というのは?」

ブラッキー「……呪い、なの ……ずっと ……ずっと」

イーブイ★「“のろい”?」

ブラッキー「……最初は、お父さん …………事故に遭って!
      ……次にお母さん、病気で! ……叔父さんも! 友達も!」

イーブイ★(断片的で要領を得ない それだけトラウマなのか?)

イーブイ★「落ち着いて 回りのひとが次々亡くなってしまったということ?」

ブラッキー「…………私が ……呪われてるんだ、って ……私は
      ……私と家族になろうとしたひとは ……死んじゃうの
      ……なのに ……『結婚』したいなんて思って――ごめんなさい」

イーブイ★(謝るな 君の所為でなど、あるわけがない)

イーブイ★「……聞いて 呪いだなんて、そんなもの実在しない
      重なった不幸はあたかも繋がっているように思えるかもしれないけども
      出来事は断片的で繋がらないもの そうであるはずなんだ
      『繋がっているという勘違い』こそが呪いと言えるかもしれない
      どうか言霊に縛られないで 言霊の力はそう使うものじゃない」

イーブイ★(呪いが縛るのは、呪いを信じる者だけなんだ 回りには関係ない
      ――呪いを解くには、頑なな見方を解く必要がある、のだけど)

イーブイ★「呪いなんて存在しない!」

イーブイ★(そう断言しただけで解けるようなら苦労はないわけで どうしようかな)
 ▼ 93 タチマル@じゃくてんほけん 18/02/13 17:26:34 ID:VMfr9pvY [7/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブラッキー「――呪いなんて、ない……? ……でも ……だって!」

イーブイ★(一度信じたものを覆すのは大変だ ……ゆっくりやるしかないかな
      目には目を 言霊には、言霊 それで解ける筈)

イーブイ★「信じられないことかもしれないけど、そうなんだよ
      君が直接手を下したひとは? いないだろう? すべては偶発なんだよ
      この世界では常にひとが死んでいく それが偶々偏っただけなんだ」

ブラッキー「…………ん ……それは、考えたこと、なかった ……確か、に」

イーブイ★「それに、“のろい”がもしも本当にあったとして、それは相手には掛からない
      君は悪タイプなのだから 足を鈍らせはすれど、武器とし鎧と出来るものだ
      ……ぼくにトリックルームを張る力があったら、背中を推せるのだけどね」

ブラッキー「(びくっ) ……“のろい” ……私 ――忘れられない……
      ……本当は忘れたいのに ……秘伝のように ……心から離れなくて!」

イーブイ★(もっと青くなっちゃった!? 地雷踏んだ!?)

イーブイ★「それは 辛いだろうけど、ほら ひとには掛からないから……」

ブラッキー「……お父さんと、お母さんね ……命日が同じなの」

イーブイ★「え? それは一体――」

ブラッキー「……10月の、31日」

イーブイ★(――それは ――その符合は)

ブラッキー「……知ってる? ……ハロウィンは ……ひとを幽霊にする効果があるって」

イーブイ★(呪いの根は…… 深いのか…… どうすれば どうすれば? ――ああ)

ブラッキー「……私と家族になったら ……呪われちゃうの ……だから」

イーブイ★(『結婚』出来ないって? そんなの厭だ さっきはああいったけど
      一度決めたこと、曲げたくない ぼくは“意地っ張り”だから!)

イーブイ★「もう一度言うよ 呪いなんて、ない 絶対に掛からない!」
 ▼ 94 コルピ@ゴーストジュエル 18/02/13 17:27:16 ID:VMfr9pvY [8/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブラッキー「……で、でも」

イーブイ★「それでも不安だというのなら、『仮装』すればいい」

ブラッキー「…………『仮装』?」

イーブイ★「ハロウィンっていうのは、元々お化けに見つからないように仮装する催しだ
      君が“ハロウィン”を怖れるなら、仮装してしまえばいい」

ブラッキー「……そんなこと、で」

イーブイ★「エーフィ、君、“スキルスワップ”って使えるかい?」

エーフィ「使える、けど ……そっか その日は『仮装』に付き合えばいいの?」

ブラッキー「――ど、どういう……?」

イーブイ★「君がエーフィに『仮装』すれば、“マジックミラー”になる
      ……幽霊には、ならなくて済むんだ」

ブラッキー「…………あ」

イーブイ★「“のろい”のことは、心配する必要がなくなる」

ブラッキー「……頭では判る、けど …………」

イーブイ★「ぼくはそう易々と死んでやるつもりもない
      君と生きていきたいから 精々しぶとく生きてやるさ
      いや、君とじゃなきゃ生きていけない 『結婚』してくれないか」

ブラッキー「……そこまで言われたら、断れない ……ううん
      …………断る理由が、なくなっちゃった
      ……私も、あなたが良かった ……私でいいなら
      ……末永く、宜しくお願いします」

イーブイ★(まだ完全に解けた訳ではないだろうけど まず一歩から、かな)

ブラッキー「……あ ……私、『未成年者』 ……まだ、結婚可能年齢じゃ、ない」

イーブイ★「え? じゃあ、しばらくは婚約者ってことになるのかな?」

ブラッキー「……“フィアンセ” ……好い響き」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ▼ 95 ンチュラ@ビスナのみ 18/02/13 17:29:32 ID:VMfr9pvY [9/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
―――――――――――――――――――――――――――――
呪いって解釈難しいよね 書いててよく分かんなくなった

一番「ポケモン」なペア
イーブイ★パート終了

もうちょっとだ 頑張る
 ▼ 96 ガチルタリス@ねらいのまと 18/02/13 19:40:02 ID:9KzFN8F2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 97 タグロス@こおりのいし 18/02/13 23:27:40 ID:VMfr9pvY [10/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イーブイ★「そういえばなんで君は、結婚に拒絶感があったのにここに参加していたの?」

ブラッキー「……抜け出し、たかった ……誰かに嫁いで、あの場所を」

イーブイ★「いいところじゃないって言ってたもんね もう大丈夫だよ」

ブラッキー「………………うん」

エーフィ「いきなり惚気出しおって このこの」

サンダース「そう絡んでやんなって ……俺がいるだろ」

エーフィ「ちょ いきなりそういうのは///」

シャワーズ「君たちも大概だと思うけど」

リーフィア「コレは負けてられないぞ ボクたちも惚気よっか?」

ニンフィア「……ひと前でやることではないでしょう お預けです (むに)」

リーフィア「とか言いながら、ほっぺ抓るのは何なの 甘えてるの?」

ニンフィア「は/// つい手が///」

イーブイ「……ごちそーさま」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ブースター(――ついさっき、確信が持てた オレの選択は……)

パチリス「それでは、3組ともが無事『結婚』契約に同意致しましたところで
     投票結果の発表を終わりに――」

ブースター「――待った」

パチリス「……? どう致しましたでしょうか?」

エーフィ「『両想い』も『横槍』も発表したんだから、ブースターは無投票者だよね?」

ブースター「うん オレは誰にも投票しなかった
      ……でも、それは選なかったということじゃない
      選べなかったんだ 投票画面には、選択肢がなかった」

リーフィア「あのパソコンの外の選択肢? そんなのあった?」

ニンフィア「画面に映っていたのは、自分を除いた9名でしたよね……?」

シャワーズ「9名以外? それは――」

ブースター「オレが選ぶのは ……『結婚』相手として望むのは貴女です
      ――――パチリスさん」
 ▼ 98 ッコウガ@インドメタシン 18/02/13 23:28:17 ID:VMfr9pvY [11/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
パチリス「え? え? えええぇ!? ///」

サンダース「……それは、アリ、なのか?」

イーブイ★「……『選び得るは十ノ一』って、そういうこと?」

エーフィ「え? 10にんの中の1りじゃなくて?」

イーブイ「じぶんをのぞいた9めい + しようにん2めい = 11めい」

ブースター「だと思う つまりこれはイレギュラーじゃなく、用意されていた選択肢だ」

パチリス「そ、そうなのですか!? 確かに私は、未婚ですが……」

ブースター「確信を得たのは10枚目が出てからだけど、一日目の終わりごろから考えてた
      それで、みんなと交流しながらも、ずっとパチリスを目で追っていた」

パチリス「……気付きませんでした まさか選ばれるだなんて可能性も、貴方の視線も」

ブースター「毛艶の綺麗な美人さんだなっていうのは 最初から思っていた
      キビキビと動いて真面目に職務を全うする姿も格好いいと思った
      この3日貴女を見ていて、自分でも予想外なほどに魅せられていたんだ
      だからどうか、オレと『結婚』して欲しい 駄目かな?」

パチリス「……その、私は、イーブイ族じゃありませんが」

ブースター「そんなの判り切っているさ それでもオレは貴女が良いんだ
      元々オレは、『イーブイ族』と『結婚』するために来たわけじゃない
      『財閥の催しの中』で『異性』と『結婚』するために来たんだ」

ニンフィア「どういう意味、でしょうか?」

ブースター「オレは家のために、力のある財閥と懇意になる必要があった
      そのためには、今回の催しで『結婚』することが一番で
      しかし『結婚』するというなら、相手は異性でなければならない
      子孫を残す必要があるから」

グレイシア「……貴方の、家とは……?」

ブースター「……古い古い家柄だ もはや歴史しかなく、地位も力も失った古代の王家
      オレはその末裔 つまりは『王族』なんだよ」
 ▼ 99 ウオウ@ふしぎなおきもの 18/02/13 23:29:13 ID:VMfr9pvY [12/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
パチリス「王子、様……?」

ブースター「……そういうことに、なるのかな?」

リーフィア「えー! すごーい! ブースター、王子様だったんだ!」

エーフィ「ロマンスだね…… お忍びのプリンスからの求婚 憬れる」

サンダース「……白馬の、って感じじゃねえけどな」

エーフィ「あら? 嫉妬? 心配しなくてもただの夢の話よ?」

サンダース「……誰が嫉妬なんて///」

パチリス「私は、ただのメイドで パーティーでは脇役の立ち位置で
     ですから、いきなりそう言われましても……
     そもそも私ごときが王子様なんかとは釣り合うはずもなく……」

ブースター「王子『様』なんて そんな柄じゃあない そしてそれは置いておいて欲しい
      この血を次世代に繋ぐことだけが使命みたいなものだから、嫁に来ることも
      余り重く考えないで欲しい オレのこと気にいるかどうかで判断して欲しい
      ここに来たのは家のためではあったけれど、貴女を選んだのはそうじゃない
      オレが貴女を好きになったから オレはオレのためにプロポーズしている」

パチリス「え、えっと…… ですから…… その……」

ブースター「それにそんな、自分を卑下するようなことは止めて欲しい
      貴女は素敵な女の仔だ 『ごとき』なんかで表しちゃだめだよ」

パチリス「はう…… はわ…… えと……」

ブースター「この世界には『脇役』なんて役柄は存在しない みんなちゃんと主役なんだ
      オレにとっては、貴女は『主演女優』なんだ もっと自信をもって」

パチリス「……………………///」

ニンフィア「押しすぎです! 焦り過ぎないで、ちゃんとメイドさんの答えを待って下さい」

シャワーズ「メイドさん、真っ赤になっちゃった」

ブースター「あ…… す、済まない」

パチリス「……いえ、大丈夫です/// (こほん) そ、それでその、私の答えですが……
     プロポーズ お受けしようと思います///」

ブースター「……い、いいの? やった!!」

パチリス「……こんなにも想われて、嬉しくないものなどおりましょうか
     王子様に熱烈に求婚されて、胸がときめいたのも事実ですし
     私は幸せ者でございます これからどうぞ、宜しくお願いいたします」

イーブイ★「めでたしめでたし 絵本のようだ」

ブースター(ああ 宜しく もっともっと、幸せにして見せる)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ▼ 100 リーラ@ながながこやし 18/02/13 23:33:18 ID:VMfr9pvY [13/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
――――――――――――――――――――――――――――――
この物語の主役は誰かと言ったら、「みんな」なのだろうと思ふ
ブースターパート終了

ピカチュウさんェ……

支援ありがとー

あとあれ、最初エーフィ”マジックガード”って書いてたね すまんち
 ▼ 101 メテテ@カイロスナイト 18/02/14 06:38:22 ID:VC7HCCJo NGネーム登録 NGID登録 報告
更新 楽しみです!
こちらこそ、描いてくださって ありがとう
 ▼ 102 ノノクス@ふっかつそう 18/02/14 14:31:59 ID:obueobYA [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

イーブイ(『しょうきょほう』てきに わたしのしょうたいもわかったろうけども)

イーブイ「さあさあ みなさま おたちあい! いまからこの “むじゃき”ないーぶいを
     たちどころにけしてごらんにいれましょう 3…… 2…… 1……」

メタモン(イーブイ)「――――はい っと大仰な言い方してみましたけど、
          単純に“変身”を解くだけの話でありまして 
          御覧の通り私が『偽者』です どうも」

サンダース「お前だったのか…… 結局最後まで判らなかったぜ」

グレイシア「イーブイが2りいる時点でちょっと疑うべきではありましたけど」

ニンフィア「皆さんそれぞれ隠し事をしていらっしゃったので、確信はありませんでした」

メタモン「おやおや、お気づきではなかったと? だとすれば僥倖
     誰の選択肢からも『弾いて落と』されていて、良かったと思います
     私、誰にも選ばれないで済んで心底ほっとしておるのです」

ブースター「『結婚』する気はなかったと? じゃあなんでパーティーに参加を?」

メタモン「私、奥様に雇われてここにいるのです 所謂サクラ、『主催者側』ですね
     万が一選ばれたとするならば、『結婚』を拒否することになりましたでしょう
     このような催しで、それは余りにも悲しい 故に安心したのです
     私、奥様と同じようにポケ模様の観察を至上の喜びとする者です故
     こんなに近くで色々なドラマを観させて頂き、恐悦至極でございます」

エーフィ「素になったらすっごい喋り出した! なんかウザい!」

リーフィア「『結婚』する気ないの? それはそれで悲しくない?」

メタモン「いやはや、いやはや、心配して下さるのですか? それは嬉しい
     しかし残念ながら見当外れでございます
     皆様『メタモン族』の通称は知っておいででしょう?
     『仔作り器』 ……それが揶揄であることなど重々承知ですが
     それは同時に、我々の誇りでもあるのですよ お分かりですか?」

シャワーズ「……判らない どういう意味?」

メタモン「誰とでも繁殖可能な我々は、様々なひとの手助けができるのです
     相手のいない♂、不妊に悩む♀、仔どもの欲しい性別不明、と
     そのためには『結婚』などに縛られるわけにはいかない
     そういう意味で『メタモン族』は結婚にはそもそも不向きなのでございます
     私を選ばせずに済んだこと、皆様の御多幸を願えることが本当に嬉しいのです」

イーブイ★「10人目、イレギュラー 面白いひとだね ……ありがとう」

メタモン「いえいえ、感謝など ――こちらから述べさせて頂きたいものです
     今回のパーティー、お楽しみ頂けましたでしょうか?」

ブラッキー「………………うん」

メタモン「ならば重畳 これにてパーティーはお開きとなります」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ▼ 103 ピンロトム@メガリング 18/02/14 14:46:26 ID:/5VIrQsM [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 104 ンリキー@ナゾのみ 18/02/14 15:15:36 ID:obueobYA [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
リーフィア「終わり? なんかちょっと寂しい気がしない?」

ブースター「そうだね まだ解散したいとは思えない」

エーフィ「……折角聖堂もあるし、司教さんもいるんだよね? ――なら」

ニンフィア「式を挙げませんか? 披露宴はそれぞれでやるとしても、式は皆で」

サンダース「いいな それ」

イーブイ★「賛成 じゃあ頭首さんを呼ばないと」

義母「頭首さんを呼ばないと――の声を聴き、光の速さでやって来た……」

メタモン「風よ! 大地よ! 大空よ!」

ニンフィア「……何をやってるんですか?」

義母「ん……敵役ごっこ? ――おめでとう ニンフィアちゃん、皆」

グレイシア「ニンフィアさんのお義母様って、ニンフィアなんですね」

ブラッキー「……ありがとう、ございます」

ニンフィア「――もう! 普通にして下さい! こんな時くらい!」

義母「すまんちー それで、式ってどういうのにする? 神様の前で誓うだけの簡単な奴?」

エーフィ「準備とか何もないだろうし、あたしは直ぐできるのでいいよ」

サンダース「なんでそんな適当なんだよ もっと考えるとこじゃねえの?」

エーフィ「いいのよ、なんでも 相手があんたで、式を挙げるという事実さえあれば」

サンダース「それを言われると……」

イーブイ★「ぼくたちもそれでいい、よね?」

ブラッキー「…………勿論」

ブースター「依存なし」

パチリス「そう、ですね」

リーフィア「言われちゃったねえ ボクも同じ気持ち ニンフィアとだったら、なんでも」

ニンフィア「…………私も、です」

義母「ではでは皆様、聖堂へご案内」
 ▼ 105 オル@ヒコウZ 18/02/14 15:16:32 ID:obueobYA [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「――――病める時も、健やかなるときも 喜びの時も、悲しみの時も 
――――富める時も、貧しき時も これを愛し、これを敬い、これを慰め
――――いつ如何なる時も、お互いに真心を尽くすことを誓いますか」

ニンフィア・リーフィア・エーフィ 『『『『
サンダース・ブースター・パチリス       はい、誓います
  イーブイ★・ブラッキー                   』』』』

「――――宜しい これをもって誓いとし、あなた方の結婚を認めましょう
 ――――主の御名の下に その命続く限り 心と心を結ばんが故に」



                           ――――fin.
 ▼ 106 メモース@シャラサブレ 18/02/14 15:18:21 ID:obueobYA [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
―――――――――――――――――――――――

これにて終了

SSは初めてだ 至らないところあったかもしれないがゆるしてくれ
 ▼ 107 ンド@マトマのみ 18/02/14 15:21:18 ID:/5VIrQsM [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
よかった
 ▼ 108 ノハナ@あかぼんぐり 18/02/14 15:32:30 ID:/HZu4aYM NGネーム登録 NGID登録 報告
乙!
面白かった
 ▼ 109 ンデツンデ@けいけんポン 18/02/14 17:03:31 ID:RyItsuwI NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 110 ットロトム@エルレイドナイト 18/02/15 14:05:25 ID:gpTswWXU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
――――――――――――――――――――――――――――――――

終わったスレってどうすればいいんですかね?
教えてもらえると助かります
あと感想貰えたりするとありがたいです

毎日更新を目標として頑張りましたが、いかがでしたでしょうかtha

答え合わせの3日目、予想通りではなかったというなら推理物書きとして嬉しいです
各々の選んだ結末に、どこか温かくなって頂けたら恋愛物書きとして恐悦です
LGBTや犯罪歴、貧富や余命宣告など考えさせられたというなら風刺物書きとして至福です
ただ単純に読んでもらえたというだけでも、1人の物書きとして幸せなことです

書いている方は楽しかったけど、読んでいる方はどうだったのかなと

THANK YOU FOR READING !
 ▼ 111 バメ@あおぞらプレート 18/02/15 19:39:53 ID:MQpWDxA2 NGネーム登録 NGID登録 報告
個人的な我儘になるが後日談みたいなの気になる
 ▼ 112 ードラン@かいがらのすず 18/02/16 10:03:02 ID:boK7s4Ac NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>111
ごめん しばらく考えてみたけど後日談とか思いつかなかった

そもそも『ブイズがわいわいするだけ』というコンセプトで始めただけのアドリブ劇
こうして無事クランクアップまで持って行けたのが奇跡みたいなもので
作者も役者も限界だよぅ すまん
いずれ 書き足し書き増し書き直しするかもしれんが またの機会ということで
 ▼ 113 ボツボ@ジメンZ 18/02/16 10:15:45 ID:PnbMWkeE NGネーム登録 NGID登録 報告
お疲れさまでした
 ▼ 114 ケニン@カチャのみ 18/02/18 10:18:50 ID:y4uTwPqY [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
――――――――――――――――――――――――――――
駄目だ 完結させてから投稿するより 投稿しながら完結に向かう方が筆が乗る

このスレをこのまま放置しておくのも忍びない
作者が立てたスレなのだから作者が好きに使っていいよね?

と言う訳で適当に始めます 「ひみつきちにあつまって」
なおタイトルくらいしか決まって無くて今後どう展開して終結するかは作者も知らんので
悪しからず
 ▼ 115 イル@サイコソーダ 18/02/18 10:19:47 ID:y4uTwPqY [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
(――おーい、弱虫 守ってばっかじゃ勝てないぞー)

(――攻撃してきたら本気でやっちまうけどな ハハッ)

(――あ、逃げやがった おい待てサンドバック)

キノココ「いてて…… 何とか今日も逃げ出すことが出来た」

キノココ(……僕より強いからって、いつもいつも虐めてきてさ やってらんないよ)

この森で一番弱いキノココは、他のポケモンにとっては格好の経験値の元

毎回毎回バトルに付き合わされて、痛い目を見るのはこちらばかり

しかし反撃しようにも、力を持たないキノココが使う技は梨の礫のようで

最近はもう、逃げるが勝ちというように誰にも見つからない場所へ隠れ潜むようになっていた

キノココ「ちょっとお邪魔するよ」

チリーン「また来たのですか? ここは私の場所だといったはずですが……」

キノココ「そんなこと言わないで お願い ここ位しか隠れられる場所を知らないんだ」

森の外れの泉の傍の、ある纏まった草の陰

どういう訳かそこには広い空間が存在していた チリーンが作ったらしい

理屈は解らないが、森の中でこの場所を知っているのはキノココくらいで

これ幸いと、キノココはよく匿って貰っていた

チリーン「仕方ないですね ……あら? 毒も受けているのですか? 診せて下さい」

いつも怪我して逃げてくるキノココを、チリーンは優しく癒してくれる

チリーン「さあ 怪我が治ったならお行きなさい 皆飽きて帰ったようですよ」

ここからなら森の様子が一望できる どうやらチリーンの言うとおりらしい

チリーン「あなたが早く強くなって、ここにはもう来ないことを祈っています」

キノココがいなくなる時に、チリーンは毎回そういう

しかし次に訪れたときは温かくもてなしてくれるのだから不思議だ

ある種の激励なのだろうか? 虐められなくなるように頑張れって?

そんな日がくるとはキノココ自身にも思えなかったけれど

キノココ「ありがとう 頑張ってみるよ でも、駄目だったときはまたよろしく」

いつものやり取りだ 次もきっと駄目だろう

臆病な性根はそうそう変わらない キノココ自身が一番判っている
 ▼ 116 ノガッサ@まんたんのくすり 18/02/18 11:27:09 ID:y4uTwPqY [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
翌日キノココは、森のポケモンに見つかった後、少しだけ勇気を振り絞っていつもより強く反撃に臨んだ

しかし待っていたのは遠慮容赦のない――昨日までは容赦をしてくれていたらしい
それでも辛かったのだが……――袋叩きだった

限界まで痛めつけられ、ボロボロの瀕死になって、なんとかチリーンの元まで歩いた

チリーン「また来たの―― まあ! 酷い怪我! すぐ治療しますね!」

こちらの様子に気付いたチリーンは、いつもの台詞を言う間もなく慌てだす

彼女が木の実で作った薬を処方してくれる間、キノココはずっと苦しそうに笑っていた

キノココ「やっぱり駄目だったよ 彼らにとって僕はサンドバックだった
     一方的に叩くための存在が、反撃なんて考えちゃいけなかったんだ」

笑みの理由は諦観だった 一番弱いキノココは、戦っても勝った経験などなく

どんどん強くなる回りに比して、どんどん弱くなっていくような自分が、惨めで仕方なかった

チリーン「そんなことありません あなただって一匹のポケモンなのです
     強いとか弱いとか、バトルすること自体に関係ないじゃないですか」

キノココ「要するに一杯バトルして一杯ボコられて来いって? 酷いな」

先程のバトルで進化したポケモンもいたことが決定打となったのだろうか
いっそこのまま死んでしまおうかなんて、キノココは自暴自棄な考えに囚われていた

チリーン「……怪我が治るまでは、ここにいて下さっても構いません
     ささくれ立った気持ちも落ち着かせていくとよいでしょう
     幸い、ここには他のポケモンは近づきませんので」

彼女は今日も癒しの鈴を鳴らしてくれる キノココは少しの間聞き惚れていた

いつの間にか、身体の痛みも和らいでいた

それと同時に、心の奥に溜まった毒気も抜けていることに気付く

キノココ(ああ、いい音色だ 気分も軽くなっていく やっぱりこの音が好きだな)

とどのつまり、キノココがここにやってくる理由は、チリーンだった

どれだけ虐げられても、この場所で彼女と過ごせれば、明日も頑張れる気がした

チリーン「もう大丈夫でしょう さあ、お行きなさい
     あなたがここに来ないことを祈っています」

いつものやり取り それは彼女の本心なのだろうか いつか聞いてみたい

チリーン「……強くなる方法は、なにもバトルに勝つだけではありませんよ」

彼女が最後につぶやいた言葉が耳に残った アドバイスらしきことを言われたのは初めてだった
 ▼ 117 ュプトル@ロメのみ 18/02/21 22:37:29 ID:bsZK6WC6 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キノココ「よっと、お邪魔するよ」

チリーン「また来たのですか? ここは私の場所ですよ?」

キノココはまた、チリーンの元を訪れる しかし今日はどこか様子が違っていて

チリーン「今日は怪我、してないんですね」

そう キノココは今日は怪我をする前にこの場所を訪れた というのも

キノココ「昨日の今日で皆に会うのは怖かったから、見つかる前に逃げてきちゃった」

昨日のバトルを思い出し、身が竦んでいたからだ

チリーン「……そうなのですか 怪我もないのにここにいるなんて、ちょっと不思議ですね」

キノココ「いつもここに来るときは怪我してたもんね やっぱり迷惑だった?」

チリーン「怪我人に対して迷惑だなんて言えませんよ」

キノココ「怪我してないなら迷惑ってこと? ……ごめん」

勝手にお邪魔してるのはこっちだ なのに彼女はキノココに対して優しい

申し訳なくなってしまい項垂れると、チリーンは鈴のようにコロコロと笑った

チリーン「いえいえ、大丈夫です こう何度も訪れる方は初めてなだけですよ」

厚かましい、と言われているような気分だ 少し恥ずかしくなる でも

チリーン「あら、森の方たちはあなたを探すことを諦めたようですよ
     各々好きなように修行を始めていますね 帰っても大丈夫なのでは?」

キノココ「もうちょっとだけ、ここに居させて もし見つかったらボコられそうだ」

逃げているのは本音だけど、建て前みたいなもので

そばに居たかった 心地いい音色に癒されたかった

それを彼女は判っているのかいないのか

チリーン「了解しました 日が暮れるまでならごゆっくりどうぞ」

そう答えてくれた
 ▼ 118 グロコ@バグメモリ 18/02/21 23:06:25 ID:bsZK6WC6 [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
チリーン「そこに座っていてください 何か淹れますね?」

キノココ「あ、ありがとう」

勧められた場所は、やわらかくて暖かそうな絨毯の上この場所に椅子はないらしい

透き通っていて綺麗な机にふわふわの布団のベッド、収納と思わしき棚の上にはなぜか
身代わり人形が置いてあったりして 中々いい感じの部屋に見える

しかしながら やはり奇妙な違和感を覚えるものだ

チリーンがコップを持って戻って来た

チリーン「お待たせしました エネココアとロゼリティーどちらが良いですか?」

キノココ「じゃあ、エネココアで ……あのさ、ちょっと聞きたいんだけど」

チリーン「なんでしょうか?」

キノココ「ここって、いったいどういう仕組みなの?」

先程覚えた違和感について少し聞いてみようと思った

キノココ「あの茂みの下にこんな広い空間があるとは思えないんだけど
     明らかに広いし、以前からこうだったわけじゃなかったはずだけど」

記憶はあいまいだが、昔ここらに立ち寄った時はこんな場所なかった気がした

チリーン「はい ここは“ひみつのちから”によって形作られた、所謂普通でない場所です」

キノココ「秘密の、力? じゃあやっぱり昔からあったわけじゃないのか」

チリーン「いいえ?」

キノココ「え?」

チリーン「空間自体はずっとあります ただ、入れるかどうかは別の話です」

キノココ「? ? ?」

チリーン「不思議そうな顔してますね でもあなたの言うことも間違いではありません
     私が入り口を開いてここを模様替えしたのは最近ですから」

ここ(空間)は昔からあったが、今の形で入れるようになったのが最近ということか

キノココ「道理で 隠れ家に最適な割に誰も見つけたことがなかった訳だ」

チリーン「“ひみつきち”ですからね 寧ろあなたに見つけられてしまったのが驚きです」

キノココ「う…… ごめん やっぱり出てった方が良い?」

チリーン「いえ、“ひみつきち”は入って来られた方を持て成すのも楽しみの内ですから」

その割には『もう来ないことを』云々と言っているけれど、どうなのだろう

喜ばれているのか煙たがられているのか、判断つきづらい
 ▼ 119 クフーン@ラブタのみ 18/02/22 00:05:57 ID:r09bTgds [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キノココ「昨日の話、だけどさ ちょっと考えてみたけど、全然解らなかった」

出してもらったココアをちびちびと飲みながら、彼女に尋ねてみる

チリーン「どこが解らなかった、ですか?」

キノココ「バトル以外の、『強くなる方法』って?」

今日ここを訪れたのは、それを訊きたかったからでもある

キノココは今まで、自分の弱さに甘んじていたところもあった

しかし、酷い目に遭って現状を打破したいと思い始めていた

その為には、強くなることが一番で しかしただバトルしたのでは勝てなくて
力量を上げる手段がバトル以外にあるのならぜひ知りたかった

チリーン「………… では、ちょっと外に出てみましょうか」

彼女は少し何か考えて、そう言った キノココは指示に従い、外に出る

チリーン「先に言っておきますと、私はあなたの望む答えを教えられません」

キノココ「――――え?」

チリーン「私は、『キノココ』について詳しく知りませんから
     あなたの方が詳しいでしょう? 自分で見つけるしかないのです」

キノココ「ちょ、そんな それって……」

丸投げという奴ではなかろうか チリーンらしくもない
いや、らしいとからしくないとか語れるほどに彼女に詳しいわけではないのだが

チリーン「あとは、考えることですね ほら、森をご覧なさい」

彼女が指した方向を見てみると、誰かがバトルしているようだ

遠くて見るのに苦労するが、あれはキノココをよく虐めてくる奴らだろうか

激しい技の応酬が繰り広げられているらしい

あれがもしこちらを襲ってきたらと思うと、足が竦み震えてくる

チリーン「目を逸らさないで あそこに立つことをイメージしてみて下さい」

言われた通りにしてみるが、するとキノココの震えはさらに激しくなってしまう

チリーン「……バトルが終わったようですね 大丈夫ですか?」

キノココ「…………あんまり、大丈夫じゃないかも」

観てるだけで怖くて震えてしまう自分の弱さに、ほとほと呆れてしまった

こんな様で本当に強くなることなんてできるのだろうか
 ▼ 120 クノシタ@メガリング 18/02/22 01:30:23 ID:pc0e84C6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
さっき全部読みました
面白かったです!
新しい方も支援
 ▼ 121 ースト@グラスメモリ 18/02/22 21:26:45 ID:r09bTgds [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
結局何も答えが出せないまま日が暮れる時間になり帰ることになった次の日も

キノココは森のポケモンに見つかる前にチリーンの元へと訪れた

キノココ(あれ? 誰かいる…… 誰?)

どうやらチリーンは一匹でいるわけではないらしい

一瞬森のポケモンに場所を突き止められたかと思って身が竦むが、すぐに勘違いに気付く

キノココ(あれは…… ゴクリン? 森にはいなかったポケモンだったはず)

チリーンはゴクリンの傍で何やら作業をしているようだ しかし様子がおかしい

キノココ「やあやあ、お邪魔するよ」

気になったキノココは声を掛けて姿を見せることにした

チリーン「また来たのですか? あら、今日も怪我はないようですね」

突然現れたキノココにゴクリンは少々驚いたようだったが、あまり大きな動きは見せない

どうやら怪我をしているらしい 見る限りでは辛そうだ

チリーン「怪我がないのなら、丁度良かったです あの、お願いを聞いてもらっても?」

キノココ「いいよ 何かな?」

チリーン「力の根っこ、白いハーブ、モモンの実が必要なのですが今手元にないのです」

薬の材料が足りないということらしい しかし懸念することもある

キノココ「……全部森で取れそうだね」

それらの材料を取ってくるには、森へ行くしかない訳で

キノココとしては正直、今森に行くのは不安である

チリーン「はい 私はゴクリンの介抱をしなくてはいけません 採って来て頂けますか?」

キノココ「……………………」

頼んできたチリーンを見て、傷ついたゴクリンを見て、決心する

キノココ「……分かった 行ってくるよ すぐ戻ってくるから待ってて」

辛そうなゴクリンを放っては置けない そう思い、“ひみつきち”から外に出る
 ▼ 122 ードル@ヒメリのみ 18/02/22 21:46:31 ID:r09bTgds [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キノココ「さてさて、すぐ戻るって言ってしまったけれど……」

虐めっこ達に見つかってしまうことを怖れて歩みが自然、慎重になって遅くなる

一応のこと、森に入る前には彼等がいる場所を確認してきたものの

当然ながらずっとそこにいるわけもなく、鉢合わせる危険はずっと付きまとっていて

キノココ「怖いなぁ…… 会いたくないよぉ……」

急ぐべきだ それは判っているが、身体は強張ってしまう

キノココ「……でも、白いハーブと力の根っこはもう手に入れられたんだ あと少し」

モモンの実のある場所は分かっていた あとはそこで採って森を出るだけ

キノココ「よし、行こう ゴクリンが心配だ」

モモンの木がある場所へ足を速める しかしそこにいたのは

虐めっこA「――ん? よぉ 弱虫君じゃないか」

キノココ「ヤル…… キモノ…… な、なんで……?」

今一番会いたくないと思っていた相手だった

虐めっこA「ドクケイルにちょっと毒貰っちまってな 今回復してるとこ
      ……そういや彼奴、お前が進化させたんだったな なんか苛々してきた」

先日、バトルという名目でキノココを攻撃していたとき、マユルドが進化していた

しかし今の状態はキノココの所為ではない筈だ
いきなりの八つ当たりにキノココは青くなる

キノココ「ちょ、ごめん、今僕急いでて……」

虐めっこA「知らねえよ 弱虫のくせに生意気だぞ ちょっとバトルに付き合
      ――――あ! 待て! 逃げんな!」

キノココは木から落ちていたモモンの実を拾うと、一目散に逃げだす

虐めっこA「ドクケイル!! 聞こえるか!! キノココだ!! 挟み撃ちにして逃がすな!!」

虐めっこB「合点! おいキノココ! 逃げられると思うなよ!」

片方の叫びに反応してもう一匹がキノココの前に躍り出てくる
挟み撃ちにあったキノココは、足を止め怯えて震えながら

キノココ「えい! “痺れ粉”!!」

麻痺効果のある粉をまき散らし、視界を奪ってしまう そしてそのまま駆けだした

虐めっこA「グ…… 身体が…… くそ……!」

虐めっこB「弱虫のくせに……!」

虐めっこ達「「覚えてやがれ!! 次は許さねーぞ!!」」
 ▼ 123 モネギ@アイテムコール 18/02/22 22:22:44 ID:r09bTgds [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キノココ「く…… はあ…… はあ…… ごめん、遅くなった!!」

三種類の材料を集めることができ、痺れて動けなくなった彼らを撒くことも成功

急ぎ足で“ひみつきち”まで戻る

チリーン「お帰りなさい お疲れさまでした 材料は採って来れましたか?」

キノココ「うん! 集めてきたよ! ゴクリンは!?」

“ひみつきち”の中のゴクリンは倒れたままだ 瀕死か、それともまさか――

チリーン「寝ているだけですよ では材料を下さい すぐ薬を作ります」

最悪の想像は、しかしチリーンの言葉によって杞憂だと解った

キノココ「はあ…… 良かった…… はい、材料」

それからチリーンは、材料を煎じたり擦り潰したりして薬を作っていた

そして完成した薬をゴクリンに飲ませると

ゴクリン「――――う、ううん………… あれ? ここは……」

どうやらちゃんと効いてくれたらしい まだ傷はあったが、意識を取り戻した

チリーン「ここは私の“ひみつきち”です あなたは偶然ここまで来たのですよ」

ゴクリン「え? あ、そ、そうなんだ 助けてくれてありがとう」

チリーン「お礼なら、そちらのキノココに 彼がいなければ、薬が作れませんでした」

キノココ「いやいやそんな 薬を作ったのはチリーンだから」

ゴクリン「それじゃあ 二匹ともにお礼を言わないとね ――本当にありがとう」

面と向かってお礼を言われると照れてしまう それに、本当にチリーンこそ功労者なのだ

少々の気拙さを感じながら、話題を逸らそうと質問してみる

キノココ「ところで、君はどうしてそんな怪我を?」

ゴクリン「――あ…… えっと…………」

質問が拙かったのか、ゴクリンは固まって口を噤んでしまった

どうやら何か事情があるらしい
 ▼ 124 ドグラー@ずがいのカセキ 18/02/22 22:31:59 ID:r09bTgds [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
―――――――――――――――――――――――――――
うん 今日は多分ここまで

>>120
そういうこと言ってもらえるのは嬉しい 頑張る

でもまあ正直に言ってもらっても構わん
「ブイズの」前半ペラいぞー みたいな

うん 裏話として言うと、『煮詰まった』っていうまで本当に何も考えず書いてたんだ
誰と誰がくっ付くか、或いは結婚しないかも考えず キャラ設定もブレブレ
これはアドリブ劇の弊害だね

でもアドリブのお陰で適当に投げた線もあとで絵の味になったし
10の比喩とか名言っぽい何かとか色々面白くなった よね?

そのうち改稿する(多分)のでもし見かけたら宜しく
 ▼ 125 チャブル@こだいのおまもり 18/02/23 22:20:16 ID:c9anxkM6 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゴクリン「……ぼくはね、最近、この近くに引っ越して来たんだよ」

少し待っていると、ゴクリンが話し出す

ゴクリン「新しい場所での生活に、不安はあったけど期待もしていたんだ
     回りのポケモンにも挨拶回りしたりしてね 頑張っていこうと思った
     でも、彼らは僕のことを受け入れてはくれなかった」

キノココ「そんな怪我をさせられる程なんて ……理由は?」

ゴクリン「さあね 彼らが言うには『毒タイプ』だから、らしいのだけど」

キノココ「――え? どういう……」

ゴクリン「『醜悪で汚らしい毒タイプは近くにいることすら耐えられない』……そうだよ」

余りにも酷い理由に、絶句した

だってそんなの、偏見だ 彼自身のことなんて一顧だにしない、横暴なのだ

ゴクリン「ぼくだってそんなの、すぐ受け入れられるわけじゃない 反論もした
     でも、彼らはそんなの聞いてくれなかった 続いて来たのは攻撃の雨あられ
     ……力のないぼくはそうなったら逃げるしかなかった」

チリーン「成る程…… それでそんなに傷だらけだったのですか」

ゴクリン「ぼくは足も遅いから 攻撃全部はよけきれなかったよ ……はは」

なんで、笑えるんだろう…… いや、笑うしかないのかもしれない
キノココにはとても笑えなくて 流せなくて つい怒声を上げてしまう

キノココ「……なんだよ、それ どっちが醜悪だよ……!
     勝手な差別をして、排斥するために、逃げても後ろから攻撃する?
     そっちの方がよっぽど汚らしいじゃないか!!」

チリーン「……気持ちはわかりますが、少し落ち着いて下さい」

彼女が鳴らす鈴の音を聞いて、少し冷静さを取り戻す

腸はまだ煮えていたが、加害者がいないのにぶちまけてもしょうがなかった

ゴクリン「……ぼくのために怒ってくれるなんて、君は良いポケモンだね」

キノココ「ええ!? 良いポケモンだなんてそんな!」

褒められて悪い気はしない その提案も嬉しい でも

キノココ「え、えーと…… 実は僕も外れ者、なんだけど……」

キノココとしては、自分などと友達になっていいのかと悩むところだ

ゴクリン「そんなの…… こんなこと言うのも何だけど、寧ろ親近感を覚えるくらいだ
     気になんてしないよ ぼくは君と友達になりたい 駄目かな?」

キノココ「そう言ってくれるなら、嬉しい ――じゃあ、これから宜しくね」

キノココとゴクリンは握手をして、二匹で笑った
 ▼ 126 レイシア@シュカのみ 18/02/23 23:15:13 ID:c9anxkM6 [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
チリーン「仲の良いところ恐縮ですが、そろそろ夕刻です お帰り頂いても?」

二匹の世界を作っていたところで、横からチリーンが声を掛けてくる

ゴクリン「ご、ごめん もうそんな時間なのか ――か、帰らなきゃ、なのか……」

彼は申し訳なさそうに言いながらも、動き出そうとはしない
帰るとなると、また怪我を負わせた奴らに会うことになるということだろうか ……

キノココ「僕も今日戻るのは怖いなあ ねえ、チリーン、泊っていくのは――」

チリーン「駄目です」

キノココ「――!?」

なんとなく駄目な気はしたが、思ったよりも強い拒絶を受けてしまい怯む

チリーン「……何度か言いましたが、ここは私の場所なのです
     夕暮れ以降は私の時間とさせて頂きたいので、長居は禁物でお願いします」

ゴクリン「う、うん しょうがないよね 助けてくれてありがとう 失礼するよ」

キノココ「――待って」

ゴクリンの背中が辛そうに見えて、キノココはつい声を掛けてしまう

キノココ「え、ええと、その、あの、そうだ 僕は一匹暮らしで寂しいんだ
     今日は、ちょっと泊って行かないか?」

ゴクリン「い、いいの? その、確かにあそこに戻ったらまたやられそうで怖いけども……」

キノココ「勿論 遠慮することなんてないよ というか僕の方が来てくれると助かる
     その、今日色々あって、一匹でいるのが怖いっていうか……」

虐めっ子達に少し反撃してやれたことを誇らしく思いながらも、今更後が怖くなってくる

ゴクリン「じゃ、じゃあお邪魔させてもらうね」

チリーン「さあ、お行きなさい もうここに来なくなることをお祈りします」

いつもの台詞を聞き、“ひみつきち”を後にする

ゴクリン「最後、変なこと言ってたけど、嫌われちゃったのかな……?」

キノココ「いいや、いつもああいうんだ 多分挨拶みたいなものじゃないかな」

キノココも始めて言われたときは、何か失態を犯したのではないかとひやっとしたものだ

キノココ「でも大丈夫 また会ったときはちゃんと歓迎もしてくれるから」

ゴクリン「そ、そうなんだ ちょっと安心した」

キノココ「うん あ、着いたよ 僕の棲家 彼奴等に会わずに済んでよかった」

ゴクリン「お、お邪魔します」

それから夜が更ける頃まで、キノココ達は他愛のないおしゃべりで楽しく過ごした
 ▼ 127 ートロトム@フェアリーZ 18/02/24 21:29:39 ID:tpPI4jYU [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キノココ「ん…… お、はようゴクリン」

翌日キノココが目を覚ますと、既にゴクリンは起きていた

ゴクリン「お、おはようキノココ 勝手に朝ごはん用意しちゃったけど……」

キノココ「ありがとう 頂きます ……昨日は眠れたかい?」

ゴクリン「……実は、悪夢を観ちゃってね あんまり眠れなかった」

それは、昨日あんな目に遭って、熟睡なんてできないだろう

キノココ「……ん 朝食まで用意させちゃって悪かったね」

ゴクリン「大丈夫 寧ろ何かしていた方がいいから じゃあ、頂きます」

キノココ「(ぱく) 美味しい! 酸味も味のスパイスになるんだね!」

ゴクリン「あ、ごめん ぼくの好みで作ってたよ でも、美味しいならよかった」

キノココ「実は日中、あんまりここに居たくないんだ “ひみつきち”に行こうよ」

ゴクリン「……? う、うん、分かった」

食事の後片付けをして、外に出る――と、

虐めっ子B「よう おはよう この間は随分と嘗めたことしてくれたじゃあないか」

キノココ「ドク、ケイル? な、何で……?」

先日の虐めっ子が待ち伏せていた 突然の出来事に身体が固まる

虐めっ子B「お前の棲家ぐらいとっくに把握してたよ まあ、進化してからだがな」

その答えを聞き血の気が引いた

確かドクケイルの触角には周囲を探る能力が備わっていたはず

つまり彼には近づかれただけで場所を把握されてしまうのだ

虐めっ子B「態々ヤルキモノには声を掛けずにきてやったんだ 感謝しろ?
      まあその分俺が痛めつけてやるけどな」

彼の顔は嗜虐的に歪む 身体が震えるが、気付かれないようにするそっと息を吐く

もう一匹の虐めっ子、ヤルキモノはいないようだ ……そっちよりは怖くない

虐めっ子B「ところでそいつは何だ? お前のお友達か? だったら――」

キノココ「いいや 無関係さ ちょっと宿を貸しただけ」

虐めっ子B「そっかそっか お前に友達なんかできる訳ねえもんな
      こりゃ失礼した――な!」

彼は笑い、そして急に風を起こしてキノココを攻撃してきた

キノココ「――!! “まもる”!! ゴクリン! 巻き込まれないよう隠れてて!!」
 ▼ 128 ガピジョット@シルフスコープ 18/02/24 21:30:40 ID:tpPI4jYU [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キノココ「――く もう一回、“まもる”!」

虐めっ子B「だから守ってばっかじゃバトルにならねえよ 弱虫!」

何とか攻撃を凌ぐ ダメージはない 少し後ろに下がる

虐めっ子B「おっと、逃げようとしたって無駄だぜ? オレには触角がある」

そのアドバンテージは正直痛いところだ 鬼ごっこや隠れんぼは明らかに不利

虐めっ子B「解ってるだろうけど、“まもる”は連発すると失敗するぜ? “毒針”連弾!」

キノココ「――やっ! ほっ! ……当たらなければ、どうということも!」

虐めっ子B「この! ちょこまかと! 待て!」

キノココ「こっちまでおいでー ほらほらー」

余裕のあるふりをしているがキノココは必死である ダメージを受けては意味がないのだ

虐めっ子B「なら、これでどうだ!“サイケ光線”!!」

キノココ「“複眼”じゃない君の攻撃なんて当たらないってば」

虐めっ子B「てめえ、他人が気にしてることを!! もう容赦しねえ!!」

なにやら逆鱗に触れてしまったのかもしれない 攻撃がより激しくなる でもそれは

キノココ「“まもる”」

防いで見せる そろそろフラストレーションも溜まったころだろうか

キノココ「……ふん 効かないよ 僕は未だノーダメージだ ねえ今どんな気持ち?」

虚勢だ 怖くて仕方がない でも“威張る” 威張ってみせる

どうか、効いてくれ そう祈って相手の様子を伺う

虐めっ子B「この!!! きhぉ!! くぁwせdrftgyふじこlp!!」

――成功 攻撃力を上げてしまったが、混乱して相手は正常な判断が出来なくなった

あとは自ら傷付いて退散してくれればいうことがないのだけど

虐めっ子B「オマエ……! ユルサン! “タいあタり”!!」

キノココ「そううまくはいかないよね……」

相手は我武者羅に突っ込んでくる 今の威力で技を受けたら堪ったものじゃない

しかし“まもる”はもう頼れそうにない キノココは急速に近づいてくる相手を見据え

キノココ「――今なら当たる!! “眠り粉”!!」

睡眠効果のある粉を撒き散らし、急いで回避行動をとった

キノココの横をすり抜けた虐めっ子Bが地面に落ち、動かなくなって辺りが静かになった
 ▼ 129 ャンデラ@オボンのみ 18/02/24 21:31:31 ID:tpPI4jYU [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キノココ「――やっ……た…………?」

倒れた相手を見て、実感もないまま呟く まだキノココの体は震えていた

ゴクリン「す、すごいよキノココ! あんな怖いポケモンを一匹で倒しちゃうなんて!」

先刻指示して隠れさせていたゴクリンが興奮した様子で駆け寄ってくる

キノココ「静かに……! 寝かせただけだ 下手に起こしたら不味い」

ゴクリン「あ…… ごめん…… でもすごいよ、キノココ……!」

キノココ「……ありがとう ……さあ、今のうちに“ひみつきち”へ行ってしまおう」

彼奴が目覚める前にできれば触角の探索範囲から逃れたい

暫し慎重に移動して、追ってくる気配がないことを確認すると、安堵の息を吐いた

そしてゴクリンに向き直る

キノココ「……さっきは『無関係』だなんて言ってごめんよ」

ゴクリン「ううん、大丈夫 あのポケモンに狙わせないために行ってくれたのは判るから
     すごいな、キノココは ぼくなんて彼奴を前にして、怖くて動けなかったのに
     回りにちゃんと気を配って作戦立てて実行して ぼくまで心配してくれて」

キノココ「買いかぶらないでよ…… 僕は僕の身を守るのに必死だっただけだ」

実際、勝てそうになかったから、眠らせて逃げるという選択をしたわけで

褒められるようなことじゃないと思う それに、怯えて震えていたのはキノココも同じだ

ゴクリン「……でも、結果としてぼくも助かったんだ やっぱりすごいことだよ
     それに、君が守ったのはぼくだけじゃないじゃないか!」

キノココ「自分の身を守ることが第一だった 無傷で済んで本当によか――」

ゴクリン「ぼくを先に逃がさなかったのも、倒せないまでも眠らせて意識を奪ったのも
     逃げるのに選んだ方向が南方面だったのさえも
     あのポケモンに “ひみつきち”の場所を悟らせないためだろう?」

……気付かれてる 偶然ってことにしておきたかったのに

ゴクリン「君はチリーンも守ったじゃないか もっと誇るべきだよ!」

キノココ「…………///」

キノココは赤くなる顔に気付かれないように足を速めていく
 ▼ 130 スマス@モンスターボール 18/02/25 23:56:57 ID:TlJeYsUs [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キノココ「またまたお邪魔するよ」

チリーン「また来たのですか? 私の場所と――あら? あなたもですか」

ゴクリン「し、失礼します……」

チリーン「やれやれ、今日は千客万来ですね あまりお構いできませんよ?」

キノココ「…………?」

千客万来? キノココ達以外にも来たということだろうか?

そう思い奥を覗いてみると、成程、二体のポケモンの影がある

ゴクリン「エネコ、と、ルリリ、みたいだけど……?」

チリーン「今朝早くに訪れたのです まだ詳しいことは聞けていません」

キノココ「……何が、あったの?」

どちらも毛並みが乱れている ルリリに至っては大怪我だ

エネコ「……聞いてどうするっていうの? ……ふん」

キノココ「……ごめん」

出会ったばかりなのだから仕方ないのかもしれないが、彼女は心開いてはくれないらしい

彼女の言うとおり、気になるからというだけで訊くのは失礼だろう

そうするとみな口籠ってしまい、沈黙が場を制す なんか気不味い……

ルリリ「――う、んん…… ――え? ここ、は…… 何処? ……あ、痛っ」

と、ルリリが目を覚ました 声を聴く限り大事には至らなそうだ

チリーン「おはようございます 薬が効くまでもう少し時間がかかると思いますので、
     安静にしていてくださいね」

ルリリ「あ、えと、ありがとう? 貴女が助けてくれたの?」

チリーン「いいえ 私はここに来たあなたに薬を使っただけですよ」

ルリリ「……? それは、貴女が助けてくれたということじゃないの?」

不思議そうな顔をしているルリリ だが、キノココにはなんとなくわかった

『来なければ関わらなかった』とでも言いたいのだろう 偽悪的でチリーンらしい

彼女も、褒められたり感謝されたりというのが苦手なのかもしれない

エネコ「……あんた、何でそんな大怪我をしてたの? ちょっと普通じゃなかったわ」

ゴクリン「えぇ!? 君は訊くの!? だってさっき――」

エネコ「黙れ」

理不尽だ…… ゴクリンは呆気に取られている

しかしルリリの事情を知りたいのはキノココだって同じで つい見つめてしまった
 ▼ 131 ベルタル@きんりょくのハネ 18/02/25 23:59:08 ID:TlJeYsUs [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルリリ「…………私、森を出た辺りにある泉に棲んでるの 水が綺麗に澄んでいて
    静かでよいところだったんだけど、最近、荒くれ者が棲みついてしまって」

キノココ「喧嘩に巻き込まれた、とか?」

荒くれ…… 怖い奴らなのだろう キノココは相手を想像して震える

ルリリ「そうじゃなくて 私、彼らが許せなくて」

エネコ「……喧嘩売ったの? あんたバカ? 勇敢と無謀は別よ?」

ルリリ「そう、だよね 敵うはずなかった ……でも」

エネコ「……許せなかった? そりゃまた何で」

ルリリ「彼ら、自分たちの棲み易いようにってあの泉を汚し始めたの
    態々『毒タイプ』のポケモンにヘドロを作らせて 泉に流し込んで」

キノココ「…………酷い」

ルリリ「でしょ?  余所者が増えたことで治安も酷くなって
    綺麗な水を好んであそこに棲んでいたポケモン達は体調を崩してて
    ……姉のマリルリもずっと臥せったままで」

家族にも被害が出ているのか 彼女が怒る理由も判る

ルリリ「なのに彼らは少しも気にせず我が物顔で連日騒いでいて
    流石の私も、堪忍袋の緒が切れたんです 文句を言うことにした」

皆のために怒り、怖い奴らにも怖じ気付かず意見を言いに行く

確かに無謀とも謗られそうだが、彼女は勇敢なのだとキノココは思う

ルリリ「聞き入れられる訳、なかったんだけどね……
    『俺様に命令するなら、俺様にバトルで勝ってからにしろ』なんて言われまして」

エネコ「コテンパンの返り討ちに会ったのが今朝、ね」

ルリリ「うん…… 恥ずかしいことに……」

あの大怪我はそういうことだったらしい 無理をするものだ

チリーン「大変だったのですね いえ、過去形にはできないでしょうか」

その言葉に緊張が走る そうだ、ルリリは助かったが、問題は現在進行形である

泉の汚れも、荒くれ者もなくなったわけではないのだ

ルリリ「……やっぱり、何とかしないといけないよね」

キノココ「ど、どうやって?」

ルリリ「それは…… 解らない、けど…… やらない訳には……!」

『命に変えても』 ……などと言い出しそうな危なっかしさが彼女に目に宿っていた
 ▼ 132 ーフィア@きのみジュース 18/02/26 00:00:25 ID:.dEYZ1wA [1/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キノココ「でも、本当にどうすればいいんだろうね……?」

ゴクリン「『四匹寄ればメタグロスの知恵』ってよく言うじゃない
     ここには五匹もいる 皆で考えればきっといい考えも浮かぶはず」

チリーン「私も頭数に入ってます? まあいいですけど、ではゴクリンの意見から」

ゴクリン「え!? ええっと…… うーん…… ん…… ……パスで」

チリーン「パスありルールなんですか?」

エネコはゴクリンたちのやり取りを剣呑な目で見つめ、少し考え口を開く

エネコ「泉を汚したヘドロ、『毒タイプ』…… ――まさか……」

少し後退りながら彼女はゴクリンを睨む どうやら彼を疑っているらしい

ゴクリン「ち、違うよ!! ぼくじゃない!! そんな酷いことやらない!!」

エネコの視線に耐えきれないように、慌てて言葉を紡ぐ

ゴクリン「それに、ぼくだって最近越して来たばかりなんだ 神に誓って無実だ!」

エネコ「……何の証拠になるっていうの? ヘドロのために来たのかもしれないじゃな
い?」

ゴクリン「――えぇ!? 邪推だ! そんなの何とでも言えるじゃないか!! 水掛け論だ!!」

エネコ「……つまり証拠能力がないことは認めるんでしょう ――近づかないで」

彼女は自分の身を守るように尾を前に出しながら下がっていく ルリリも同様に下がった

ゴクリン「ぼくが犯人みたいな扱いやめて!! ど、どうすればいいかな、キノココ」

ゴクリンは困ったようにこっちを見てくる どうすればいいか、と言われても……

彼が悪い奴じゃないのは、キノココだって判っている しかし昨日より前の彼の行動は
把握していないし、証言のしようがない もしかしたら本当に――いや、やめよう

友達を疑うなんてことはしたくない 何か彼の無実につながるような証拠は――

チリーン「確かに証拠はないですよね でも、疑わしきは罰せずと言いますし
     少し落ち着いてはいかが? 私も彼がそんなことをするとは思えません
     昨日も傷だらけになってここに来たのですよ?」

エネコ「昨日? ……何それ、知らなかったわ ――でも悪い奴じゃない証拠じゃない」

ルリリ「仲間割れでも傷は付きますものね…… まさか――」

ルリリも疑いの目を向けだす始末 ゴクリンはひどく狼狽えている

ゴクリン「ぼ、暴論だ! みんな酷いよ! ぼくがやったって証拠もない!!」

エネコ「……犯人は皆そういうのよ」

ゴクリン「いや、ぼくは犯人じゃないって……! 助けてキノココ!」
 ▼ 133 ディアン@たべのこし 18/02/26 00:04:05 ID:.dEYZ1wA [2/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
皆の話を聞きながら暫し考えていたキノココは、言った

キノココ「――うん、やっぱりゴクリンは、泉のことには関係ない」

徐に口を開いたキノココに、回りは驚いた顔をする

エネコ「……いきなり何? 証拠がないっていうのにお友達を庇おうとしても無駄よ」

ルリリ「彼が無関係って、どういう、こと? なんで解るの?」

目に見える証拠は出せない それにもしかしたら証拠にもならないかもしれない

でも、多分これで合っている筈だ さあ、答え合わせをしようじゃないか

キノココ「何が引っ掛かっているのかちょっと考えていたんだけどね 解ったよ
     『最近』って、いつ? そこに答えがある」

ゴクリン「へ? 引っ越してきたのは、“5日前”だけど……」

ルリリ「泉が汚されたのは、”2週間”は、前…… え、ええと」

二匹ともが使ってた言葉 問題はそれが示す範囲が広いこと

その所為で決定的な勘違いが中々解けなかった

ルリリ「――ご、ごめんなさい! 無実の貴方を疑ったりなんかして……!」

ゴクリン「い、いや いいんだよ、濡れ衣だって判れば」

エネコ「……私も、謝るわ ごめん ……でも何で解ったの? 明言してなかったのに」

キノココ「昨日ゴクリンが怪我を負ったって話はしたね? 僕はその理由も聞いていた
     『引っ越し後の挨拶回りで受け入れられず迫害された』って」

エネコ「それが何よ こいつが悪かったんじゃないの?」

辛辣なこと言うな 流石に理由もなく新しい隣人を傷つけるような輩はそういないと思う

逆に言えば、理由があればそういう輩も増える いいことじゃないんだけど

キノココ「――つまり、ゴクリンが引っ越して来た時には既に、『毒ポケモンは悪し』
     という風潮があったように思う そんな風潮になったのは事件の所為だろう
     確証はなかったけど 君たちの答えを聞いて、間違ってないことが解った」

ゴクリン「キノココ…… 信じてくれて、ありがとう」

ルリリ「本当に、済みませんでした」

彼の疑いが晴れてよかった ……答え合わせ、合っていて本当によかった
 ▼ 134 レザード@するどいツメ 18/02/26 17:25:57 ID:.dEYZ1wA [3/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エネコ「こいつが関係ないのは解ったけど、根本はそこじゃないわよね
    どうすんのよ、泉の件……?」

キノココ「ううん…… そこだよね……」

正直、全然思いつかない いくつかの問題が一偏に重なっているのだ

キノココ「せめて一つずつなら、いや、それでも手に余りそうなのに……」

エネコ「……頼りならないわね」

ルリリ「でもそうだよね いろいろ問題で、どれも一筋縄じゃなさそう」

まず、泉に棲みついたという荒くれ 彼らがいる限り問題は終わらないだろう

きっと強くて怖いのだろう 足を震わせるしかないキノココはルリリの勇敢さに舌を巻く

そして泉に流し込まれたヘドロ 誰が作ったか、は大した問題ではない

問題は流し込まれたという事実とどうやって除去するか

……環境を元に戻すのは難しい 少なくとも時間がかかってしまうだろう

更にはヘドロの毒素にやられて体調を崩したというポケモン達も心配だ

彼女らの治療には泉を元に戻すのが有効だと思われるが、先程言ったようにそれは難しい

だからと言って別に綺麗な水のある移住先なんてすぐ見つけられるとは思えない

エネコ「そう、ね 難しいわ…… 発端は一つだと思うのに問題は一つじゃないのね」

問題を纏めて考えてみるが、解決策は出てこない

チリーン「そういえば、荒くれ者とはどういう方達なのですか?」

悩むキノココ達に横からそんな質問が飛んでくる

ルリリ「……あ、うん 言ってなかったっけ? シザリガー、ナマズンとヘイガ二だよ」

ゴクリン「ああ、なんだ それなら簡単じゃない」

彼は呑気な声を出して、キノココを見る …………え?

ゴクリン「バトルに勝てばいうことを聞かせられるんでしょ? こっちにはキノココがいる」

キノココ「え ちょ! 無理無理! 何で僕? バトルなんて無理だって!!」

ゴクリン「またまた、そんな謙遜しちゃって」

そんな、ぼくは判ってるよ、みたいな顔されても…… なんでこうなるの!?

エネコ「……え? キノココって強いの? 弱そうに見えるのに……」

ルリリ「相性は最高、だよね? なら……」

やめて そんな期待に満ちた目で見ないで 見た目通りに弱いんだよ本当に

ルリリ「私が代表なんて烏滸がましいけど……
    お願い!! 私達のために、泉を彼らから取り返して!!」
 ▼ 135 ズマオウ@かえんだま 18/02/26 17:29:51 ID:.dEYZ1wA [4/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エネコ「荒くれを追い出せたとして その後も問題ね」

ルリリ「どうすれば、いいのかな?」

真っ青になるキノココを尻目に、話は進んでいく

ゴクリン「汚れた水を清めてくれるポケモンは伝承の中で確認されてるっていうけど」

エネコ「伝説でしょ? そんなのに頼れるの?」

ゴクリン「探し出せばいい そしてお願いするんだ」

エネコ「……馬鹿らしい 会えるわけないじゃない だから伝説なんでしょう?」

ルリリ「それに、そのポケモンは凄く脚が速いそうだよ 私達じゃ追いつけない」

ゴクリン「罠を張って、待ち伏せすれば……」

エネコ「伝説がどこにいてどんなルート通るか誰も解らないんだから無意味ね」

ゴクリン「うーん…… 無理か」

キノココ「いや…… いやいや、ちょっと待ってよ!」

なんで荒くれたちを斃せてる前提なのか

方針決めるうえで一つの問題にとらわれないのは悪いことではないのだが、それでも

ルリリ「え……? キノココ、助けて、くれないの……?」

彼女はショックを受けたような顔で目を潤ませる

キノココ「え、いや、そういうことじゃなく…… 僕じゃ役者不足だと思うから……」

『痛いのは嫌だし、勝てない勝負はしたくない』

そんな心の隅にあった気持ちを読み取られた気がしてドキリとする

ゴクリン「そんなことないって、大丈夫 キノココなら勝てる」

何の根拠もないじゃないか そんな澄み切った眼で言われても困る

キノココは臆病で そして弱いのだ 勝てる保証なんてない

エネコ「こいつもこう言ってることだし、ルリリも期待してるし
    相性的にもこの中ではあんたが一番期待持てるでしょ ♂なら肚決めろ!」

それは関係ないのではないかな 男女差別と言われかねないでしょ?

ゴクリン「武者震いなんてしちゃって、頼もしいなぁ じゃあ泉に行ってみようか
     あとのことは荒くれを斃してから考えよう!」

チリーン「応援しています 頑張ってくださいね はい、これ」

そう言ってチリーンが何かを渡して来た お守りのつもりだろうか

うん、でもこれは効果ありそうだ ありがたく受け取る
 ▼ 136 ッパ@かざんのおきいし 18/02/26 17:31:18 ID:.dEYZ1wA [5/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
結局、皆に連れられる形になって泉に来てしまった

ゴクリン「た〜〜〜の〜〜〜も〜〜〜!!」

荒くれA「ああん? 何もんだ?」

ゴクリン「やいやい、お前ら!! 綺麗な泉を自分の勝手で汚しやがって!
     皆が困ってるだろう! 絶対許さん!! 覚悟しろ!」

荒くれB「あんまり大口叩くもんじゃね〜ぞ〜? 弱そうなのが集まって〜よ〜?」

ゴクリン「弱くなんかないさ! ここにおわすキノココ様が貴様らを成敗してくれるわ!!」

そしてキノココが戦うことで話が進んでいる なんでゴクリンが強気なんだろう……?

荒くれA「キノココぉ?  ……ハハ! コイツはお笑い草だ 雑魚連れてきてどうすんだ!
     タイプ相性だけで勝ったつもりかよ! それとも馬鹿にしてんのか?」

荒くれC「兄貴の言う通りだぜ しっしっ 帰れ帰れ」

エネコ「……カチーン ムカつくやつね キノココ! やっておしまい!」

ルリリ「帰らないよ 泉は、返してもらう」

荒くれB「ん〜? な〜んだ〜 誰かと思ったら今朝のお嬢ちゃんじゃな〜いか〜」

荒くれC「散々叩いてやったのに、懲りずに助っ人読んで再挑戦ってか?
     ぷぷっ…… 随分頼りなさそうな助っ人だな!」

ルリリ「そんなことない! キノココは凄いんだ! お前らなんかに負けない!」

何を知っていっているのやら なんでそこまで信じてくれるんだろう

荒くれA「嘗めやがって…… さっさとかかってきやがれ! ぶちのめしてやる!」

荒くれは怖い顔で凄んでくる ……正直帰りたい 戦うのは怖い

でも、ここで帰るのも怖いな ここで逃げたら格好悪いじゃないか

事実でも、臆病と謗られるのは良い気分じゃない ええい、ままよ!

キノココ「……一つ確認させて バトルに勝った相手の言うことは聞くって話だったよね
     そこに嘘はないかい? 僕が勝ったらここを出て行って貰いたいのだけど」

荒くれA「ハッ まるで勝てるみたいな発言じゃねえか ……だがそこは約束する
     『敗者は勝者に従う』 これバトルの鉄則だ お前も覚悟しろよ?」

キノココ「……容赦はして欲しいけど うん、文句は言わないよ」

シザリガー「……ふん、じゃあ、バトルスタートだ 先手ぐらいは譲ってやるよ」

普通に戦っても分が悪い これは嬉しい提案だ
 ▼ 137 ハコモリ@ポイントマックス 18/02/26 17:33:25 ID:.dEYZ1wA [6/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キノココ「じゃあ、先に撃たせてもらうよ “宿り木の種”!」

荒くれA「なん…… いきなり“宿り木”かよ! くそ! ちょっと絡まった!」

少し外れてしまったが、上々の成果だ これで相手の体力は少しずつ奪える

荒くれC「ズルいぞ、コノヤロー!!」

エネコ「別にズルじゃないわよ ちゃんと“技”なんだから」

ルリリ「そうだよ! これも戦略のうち!!」

外野は盛り上がっているようだ 弁護してくれてありがたい

キノココ「続けて、“成長”――」

荒くれA「しゃらくせえ! これでも喰らえ! “噛砕く”!」

キノココ「ぐあっ」

荒くれA「“スピードスター”!!」

キノココ「う、うわあっ!」

荒くれA「おいおい、どうした? その程度かよ? 張り合いなさすぎるぞ?」

キノココ「く―― まだだ “毒のこ――――!?」

粉が、出ない しまった 先刻の発言は、技効果のある“挑発”だったか……

荒くれA「あん? やっぱり変化技に頼るしかなかったのか? そんなんで勝てるとでも?」

にやにやと下卑た笑みを浮かべて相手はこちらの様子を伺っているようだ

確かに、挑発されてしまうとキノココはほとんど技が使えなくなる

ダメージも蓄積してるし、“成長”も積めない これは万事休す――

キノココ「――“メガ、ドレイン”」

――でも、ない こちらのアドバンテージは、潰せるようなものじゃないんだ

タイプ相性は、そうそう覆せない 更には技効果で体力も奪ってしまえる

先に体力が尽きた方の負けというバトルのルール上、これは大分有利な要素になる

……先刻渡された『大きな根っこ』を“叩き落とす”か“泥棒”されてたら辛かったけど

それは言わぬが花だろう

荒くれA「くそ!! “スピードスター”!!」

避けきれない けれど

キノココ「“メガドレイン”」

それ以上に回復してしまえばいい 相手の体力は後少しで尽きる 一気に決めてしまおう
 ▼ 138 ィアンシー@かがやくいし 18/02/26 17:34:35 ID:.dEYZ1wA [7/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キノココ「“メガ――――」

荒くれA「くっそ! ――おい、ナマズン!!」

荒くれB「承知した〜! とりゃ〜! “暴れる”〜!!」

突然ナマズンが飛び込んでくる 高威力の攻撃の前にキノココはなす術もなく吹き飛んだ

エネコ「な―― 何よそれ! 酷すぎる!」

ゴクリン「ズルいっ!! それこそルール違反だ!!」

ルリリ「いきなり横からなんて、あんまりだよっ!!」

皆の抗議の声が殺到した しかし荒くれはどこ吹く風

荒くれA「ズルはねえよ 最初から俺らはダブルバトルのつもりだった
     ただ相方が動かなかっただけだ ルールはちゃんと確認しような?」

荒くれC「流石兄貴! 負けない方法、考えていたっすね!」

詭弁を並べ立ててせせら笑い、

荒くれA「おっと、2対2の勝負の最中だった そっちの相方は誰だ?
     まあ、今出てきたらこいつの“暴れる”の餌食だがな ハハハ!」

全く悪びれた様子もなくそう続けた

ゴクリン「う…… それは……」

ルリリ「私、今朝、あれにやられたの…… 足が竦んで、前に出れない……」

エネコ「えげつないわね……」

荒くれB「な〜に〜? 降参なの〜?」

荒くれC「そうそう 早くしろよ! ほら、10…… 9……」

いつでも攻撃が始められるようキープしながら、急かしてくる

それに対して三匹は完全に怖じ気付いていて声を発せず……

チリーン「いいえ! 相方は私です! ――“癒しの波動”」

――ただ一匹、チリーンだけが動いた 動けた

荒くれB「へ〜…… 態々斃れに来るとは関心、関心 喰らえ〜 “暴れる”〜!」

そんな彼女に向かって、荒くれが突っ込む ――寸前に



キノココ「――“メガドレイン”!!!」



キノココはチリーンの前に立ち、全力で技を放っていた
 ▼ 139 ワルン@でかいきんのたま 18/02/26 17:35:44 ID:.dEYZ1wA [8/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
荒くれB「くあ…… な、にが?」

彼はキノココの、能力上昇中かつ4倍威力の攻撃には耐えられなかったようで

一気に戦闘不能に追い込まれていた そして、キノココの方はといえば体力満タン

キノココ「さあ、決着を付けよう といってももう一発で終わるけど 降参するかい?」

出来るだけ不遜に見えるように、キノココは降伏を勧告する

荒くれは、先刻とは逆の立場になって脂汗を流している

荒くれA「なんだ? ど、どうなってやがる!? 何でお前は斃れてねえ!?」

キノココ「簡単な話だよ 僕はナマズンの攻撃をギリギリで耐えた
     そして彼女の技に助けられて、バトル場に戻って来た それだけ」

危ないところだった 本当にギリギリだったんだ

最初に“宿り木”を植え付けておかなかったら耐えられなかったかもしれない

そのぐらいの重傷で、耐えたといってもすぐには動くことが出来なかった

“癒しの波動”味方の体力を回復させる技だ あれのお蔭で体が動かせるようになった

そう考えると、『ダブルバトルだ』という詭弁は、彼らにとって墓穴だったのかもしれない

荒くれA「……仕方ねえ 認めるよ 俺らの負けだ」

思ったよりあっさりと降参してくれてほっと息を吐く

もっと粘るかと思ったが杞憂のようだ

キノココは強張っていた体を解しながら仲間の元へ

荒くれA「なんて――言うと思ったか!! “騙し打――――」

油断したキノココの無防備な背中を狙ってくる 気付いた時には鋏がもう目前に……



チリーン「――“マジカルシャイン”!!!」



荒くれA「ぐあっ く……そ……」

そして予断なくそれを見ていたチリーンに助けられる 

キノココ「うあ! た、助かった…… ありがとう、チリーン」

チリーン「いえ、怪我がなくてよかったです 悪足掻きは怖いですよね まったく」

エネコ「あんたたち、すごいわね…… 本当に勝っちゃった……」

ルリリ「二匹とも、すごかったよ! 本当にありがとう!!」
 ▼ 140 イーガ@ウタンのみ 18/02/27 21:53:27 ID:WlUBQJeo [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
荒くれC「そ、そんな…… 兄貴たちが……」

ゴクリン「さて、これでぼくらは勝者ということになるのかな?
     『敗者は勝者に従う』って言ってたの、忘れてないよね?」

何でお前が偉そうなんだ、と言いたげな表情の荒くれは、しかし

荒くれA「……約束は、約束だからな 解った、出ていく
     この泉にはもう関わらねえ ……それでいいのか?」

ルリリ「待ってよ このヘドロはどうしたらいいの?」

エネコ「汚すだけ汚してさよならなんて許せないわ」

荒くれB「そうはいってもさ〜 汚れた水を元に戻すなんてできな〜いよ〜?」

荒くれA「俺らがやったことではあるが、これはどうしようも……」

荒くれC「そのうち自然に浄化するのを待つしかないっす」

強気なこちらの面々に対したじたじになっているが、出てくる答えは否定的だ

かの伝説ポケモンでなければ水の浄化なんてできないのだから、仕方ないのかもしれない

チリーン「……では、できる範囲のことをお願いできますか?
     シザリガーさん達は陸を行けるので、薬の材料集めを
     ナマズンさんは、その間に泉の底のヘドロをできるだけ纏めて下さい」

荒くれC「く、薬? いいすけど、一体何に?」

チリーン「あなた方が水を汚した所為で病に臥せった方がいらっしゃるそうです
     奇跡の種と、モモン、クラボ、ラム、それから復活草が要ります」

荒くれA「俺らの所為で、か…… 了解した ちょっと行ってくる」

キノココ「ぼ、僕もいくよ」

荒くれA「んあ? 勝者はどっしり構えてていいんだぞ?」

意外にも彼は、義理堅いらしい でも、そういうのじゃなくて

キノココ「森に材料採りに行くなら僕の方が詳しい それに僕も何かしていたいんだ」

荒くれC「そっすか じゃあ、案内して貰っちゃいましょうか ねえ、兄貴?」

荒くれA「お、おう、宜しく頼む ……さっきは、悪かったな 頭に血が上ってた」

キノココ「う、うん 大丈夫 怪我もないし……」

思ったよりもいいポケモンなのかもしれない、なんて思ってしまうのは単純過ぎだろうか

ゴクリン「行ってらっしゃ〜い」

荒くれA「(イラッ) ……お前も来い 荷物持ちくらいにゃなるだろ」

ゴクリン「え…… えぇ!? な、何でさ〜?」

うん、短気ではあるのかもしれないけれど ……気を付けよう
 ▼ 141 チャモ@いいつりざお 18/02/27 21:54:20 ID:WlUBQJeo [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルリリ「あ、じゃあ、私も行くよ! 少しでも多く薬作らないとだもんね!」

彼女も荷物持ちに来てくれるようだ

家族が臥せっている彼女からすると、もし足りなかったらと思うと切実なのかもしれない

エネコ「……あたしはどうすれば?」

チリーン「“癒しの鈴”使えましたよね? こっちを手伝ってください」

エネコ「……応急処置? 病人の介抱? 判ったわ じゃあ、待ってるから」

キノココ「うん ……行ってきます」

チリーン「宜しくお願いしますね」


ルリリ「あ、あったよ! ラムの実!」

荒くれA「森、嘗めてた…… こいつがいなかったら材料探しどころじゃなかった……」

キノココ「結構入り組んでるからね それぞれの材料が取れる場所もバラバラだし」

木の実は順調に集まった 奇跡の種も採集済み

確かに、キノココがいなかったら彼らも迷っていたのかもしれない

そう思うと地の利があるだけなのだが、誇らしい気持ちになる

少し心配していた森のポケモンとの遭遇もないようで一安心

ゴクリン「最後、復活草だけだよね どこにあるのかな?」

キノココ「復活草は、確か、あっちの崖の下辺りにあった筈……」

ルリリ「崖? やっぱり採り辛いとこに生えてるんだ……」

復活草は効果も覿面だが、厳しい環境でないと生えてこず入手が困難な材料である

しかし今の時期なら多分生えているだろう

荒くれC「お、遠目に見えるは、聞いた通りの草っぱ! あれすね!?」

ちゃんと生えていてくれたことに安堵を覚える しかしそうなってくると、問題は

荒くれA「どうやって採りゃいいんだ、あれ?」

ゴクリン「見えてるのに、遠い……」

復活草が生えているのは、垂直に近い崖の下 一筋縄じゃ行かない
 ▼ 142 ルミーゼ@じしゃく 18/02/27 21:55:14 ID:WlUBQJeo [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
荒くれA「下にいったら最後、戻ってこれないんじゃないか? 他のとこにはねえのか?」

キノココ「残念ながら、他に生えているところは知らないんだ 多分この森ではここだけ」

ルリリ「珍しい品種だもんね 寧ろあってよかった」

ゴクリン「この丈夫そうな蔦を命綱にすれば下りられるんじゃない?」

近くの木に巻き付いた蔦を剥がしながら、ゴクリンがいう

確かに長さは申し分ないのかもしれないが……

荒くれC「本当に丈夫なんすか? それ」

ゴクリン「丈夫そうだよ?」

キノココ「ぎ、疑問形……?」

荒くれA「しかし、下に降りられそうな道もねえし、こりゃどうしたもんか……」

皆顔を見合わせ、しばし何も言えずいると

ルリリ「わ、私が行くよ!!」

手を挙げて立候補を表明する

キノココ「えぇ!! あ、危ないよ!! もっと安全な方法を探して――」

ルリリ「だって! ……あれはお姉ちゃんたちのために必要なんでしょう?」

今も苦しんでいる人がいる 余り悠長なことを言える余裕がないのかもしれない

キノココ「……そう、だね 薬のためには復活草が必要だって言ってた」

それに危険だって決まったわけでもないのだ 見守るべきかもしれない

ルリリ「大丈夫 私は軽いから きっと蔦だってもってくれるよ」

荒くれA「解った しっかり縛るから、きつかったら言えよ」

ルリリ「お願い」

準備が整うと、彼女は復活草を入れるための籠を持ち崖際に立った

荒くれA「ゆっくり下すぞ 無理はすんな」
 ▼ 143 ンクルス@くろいメガネ 18/02/27 21:56:13 ID:WlUBQJeo [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
時間をかけて、足場を確認しながら下りていき

ルリリ「やった!! 下りれたよ!! 復活草、一杯取らなきゃ!!」

下から彼女のはしゃいだ声が聞こえてきたことで、こちらの空気も緩む

荒くれA「なんだ、杞憂だったか……」

ゴクリン「言ったじゃない 『丈夫そう』だって」

荒くれC「そりゃ言ってたっすけど、本当に丈夫かどうかなんて解んないすし」

荒くれA「……復活草って、結構高級品だよな ちょっとちょろまかしても……」

キノココ「だ、駄目だよ! 薬にするとき足りなかったらどうするのさ!」

軽口をたたいて時間を潰していると ルリリの声が聞こえてくる

ルリリ「集め終わったよ! 引き上げて!!」

荒くれA「OK 引っ張るぞー!」

復活草の入った籠を抱えたルリリを引き上げる 途中

――――ブチリ……

ルリリ「え!? う――あああっ!!」

不吉な音が聞こえたと思ったら、彼女は落ちてしまった

キノココ「ルリリ!? 大丈夫!?」

ルリリ「――ビックリしたー! でも怪我はないよー! 大丈夫ー!」

崖下からは元気そうな声が響く ……良かった

荒くれC「……切れっちまいましたよ どうするんすか?」

ゴクリン「あ、あれー? じょ、丈夫そうだったのになー?」

キノココ「呑気なこと言ってないで! ど、どうしよう?」

荒くれA「長くて丈夫そうな蔦を探すか? さっきのみたいなのは中々ねえか……」

ダメもとでも探しに行こうか? いや、そうだ 崖下のルリリに聞こえるよう声を張る

キノココ「ねー ルリリって確か、結構ジャンプ力あったよねー?」

ルリリ「えー? あるけどー、流石に上までは届かないよー!?」

うん、ルリリ自身は届かないだろう でも

キノココ「ジャンプして投げたら、その復活草ここまで届くかなー?」

材料だけなら 話は違ってくるのではないだろうか
 ▼ 144 ンリュウ@フェスチケット 18/02/27 21:56:57 ID:WlUBQJeo [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルリリ「うんー 多分大丈夫ー! 私、こう見えて“力持ち”だからー!」

ゴクリン「ちょ、キノココ、彼女のことは諦めるの? 復活草だけって……」

キノココ「そんな訳ないよ でも、ルリリと復活草、同時に引き上げるのは難しいから」

荒くれA「バラバラに、まずは復活草からってか」

ルリリ「じゃあ、投げるよー? 6株くらいあるから、ちゃんと受け止めてねー?」

キノココ「じゃあ、皆宜しくね? 僕は飛んでくるものを取るのとか苦手だから」

荒くれA「あ? 言い出しっぺが何言って…… いや、『勝者様』の仰せのままに
     キリキリやるか そっち頼んだぞ、ヘイガニ」

荒くれC「へいっ!」


ルリリの言う通り復活草は危なげなくここまで届いた

彼女のコントロールは中々よかったらしく取りやすい位置に投げてくれたようだ

ルリリ「全部投げ終わったよー! 次はどうすればー?」

キノココ「お疲れさまー!! じゃあ、崖を登って来てくれないかなー!!」

荒くれA「な、何無茶言ってやがる? こんな崖を登れ!?」

ルリリ「そ、そうだよー! 無理だって! 登れそうなとこなんか……あれ?」

彼女は何かに気付いたように崖に近づいていく

ルリリ「なんか、崖からひげ根? みたいなの出てる…… 登れそうかも」

ゴクリン「キノココ、なにしたの?」

キノココ「崖の側面に飛び出るように根を張っただけだよ」

ひげ根を使えばルリリも登って来れるだろうと踏んで“根を張る”を使った

荷物を持ったままでは登るのは大変だろうと思い、先に投げることを指示した

投げ終わる頃に登れるまでの量を張り巡らし終わったのは嬉しい誤算だろう

ルリリ「よい、しょっと! ただいま 助けてくれてありがとうキノココ
    本当に感謝してもしきれない ありがとう!」

キノココ「え? いやいやそんな、感謝するのはまだ早いって」

全ては泉の問題を片付けてからにするべきだ

まあその時も照れくさくて感謝なんていらないというんだろうけど
 ▼ 145 ンベ@トウガのみ 18/02/27 21:58:06 ID:WlUBQJeo [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルリリ「さあ、ほら、泉に行こうよ」

材料も五種類全部集まった ここにいる理由はもうない、と彼女が急かす

キノココ「えと、皆、先に行っててくれるかな……?」

ゴクリン「えー? 何言ってるの? 早く行こうよー」

キノココだってここにいる心情的な理由はない それでもここは離れられない

泉に急ぐべきであることは判っている でも足は重い “物理的”に

荒くれA「根を張ったって言ってたな…… つまり動けねえのか?」

ルリリ「あ―― わ、私の所為で? ごめんなさい!」

キノココ「いや、大丈夫大丈夫 すぐ動けるようになるし」

荒くれC「動けるようになるまで待ってやしょうか?」

キノココ「いいや、先行って 薬を待ってる人がいるのだし 僕は大丈夫だから」

本当は、動けないでいるのは不安なのだけど強がって見せた

彼女はキノココを見て暫し逡巡していたようだったが、やがて

ルリリ「――じゃあ、先行くね すぐ来てよ?」

薬を必要とする身内のためにキノココを置いていくことを決心した

荒くれA「五匹で運ぶ予定だった材料運ぶのに、誰も残ってやれねえみたいだ」

キノココ「気にしなくていいってば すぐ追いつくよ」


足が地面にくっついて動けないキノココは 久しぶりの一匹の空間でぼんやりとしていた

ここ数日、なんだかんだで一匹になる機会はなかった気がする

チリーン、ゴクリン、ルリリにエネコ、そして荒くれ達

想えば随分知り合いが増えたものだ しかもこの数日で

キノココ「ほんの少し前は想像してなかったな」

濃い日々、いろいろ大変だったけど、思い返せば楽しかった

つい頬が緩みそうになって


「こんなとこにいい感じのサンドバックが転がってやがる 技の練習さしてもらおうかな」


凍り付く ――この声、この台詞は

キノココ「キミ、たちは…………」

虐めっ子達「「よう 久しぶり」」

虐めっ子A と 虐めっ子B が 現れた !!
 ▼ 146 ンプラー@ふたのカセキ 18/02/28 23:18:41 ID:qpCwRNU. [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
虐めっ子A「ここ数日見掛けなかったけど、どこ行ってたのかなあ?」

虐めっ子B「この間みたいに卑怯なこと出来ないように再教育してやらんといけないな」

キノココ「えう………… あ……」

膝が、笑う まともに喋れもしない 怖い 怖い

動け 集中しろ どうにかして助かる方法を……

キノココ「“眠り――」

虐めっ子A「とりあえず“挑発”しとくわ あんま抵抗すんなよ? 弱虫」

封じられてしまった これでキノココにはほとんどなす術がない

虐めっ子B「じゃあ、オレから行くわ ちょっと試したかったんだよね
      本当にこれで積めるのか 喰らえ! “銀色の風”」

キノココ「うあ…… わ……」

虐めっ子B「能力上昇の気配は無し…… まあ一発じゃこんなもんか」

虐めっ子A「おいおい、いきなり弱点攻撃はねえだろ? すぐ斃れっちまうぜ?」

虐めっ子B「大丈夫だって 加減してやってるし ヤルキモノも遊べば?」

虐めっ子A「おう “切り裂く”の練習 と行きたいとこだが斃れられちゃ困る
      加減に加減して、“引っ掻く”」

キノココ「痛っ…… やめ……」

虐めっ子B「よーし、もう一回“銀色の風”」


――どれだけの攻撃を受けたことだろう もう体はボロボロだ

嫌味のように執拗に弱い攻撃ばかり使ってきて、終わりが見えない

その所為で精神的にも疲弊していた

虐めっ子A「……思ったよりタフだな おかげで思う存分技を試せたが」

虐めっ子B「そうだな 飽きてきちゃったしな ……“銀色の風”、積めるって詐欺だ
ろ」

虐めっ子A「そんなにショックだったのかよ 確率低いのは判ってたろうに
      じゃあ、最後にこれだけやって終わりにするわ 中々使えないんだよね」

そう言って集中するモーションを取る やめてくれ もうボロボロなのに

虐めっ子A「――“気合パンチ”!!」

キノココ「か―――― ふ…………」

キノココ は たおれた !!
 ▼ 147 ガルカリオ@しろいハーブ 18/02/28 23:19:24 ID:qpCwRNU. [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
虐めっ子A「……はー、疲れた疲れた、いい汗流した じゃあ帰るか」

虐めっ子B「そうだなー お、いいもの持ってんじゃん オレにもよこせよ」

虐めっ子A「ばっか このクラボは俺のだ お前はカゴでも食ってろ」

虐めっ子達はおやつを食べながらキノココのもとを去っていく

その場に残されたキノココは もぞりと動いて

キノココ「……これ、動けるようになるのにあとどれくらいかかるかな……」

嘆息する 散々嬲られた割に体力はもう余裕ができている

キノココ「“挑発”かかる前に根を張り直したのは、良かったのか悪かったのか……」

お蔭でこうしてすぐに回復できているわけだが、このせいで戦闘が長引いた感は否めない

戦闘中も回復していたから、タフになって、受ける技数も増えてしまった

キノココ「でも、一度斃れるポーズを取った方がいいよね」

今回、抵抗らしい抵抗を見せなかったのは、何も“挑発”されたからだけじゃなかった

先に封じられてしまったが最初に“眠り粉”を使おうとしたのだってそう

『抵抗する意思はある』と見せかけるための虚仮威しだ

そもそも“やるき”は眠らないのだし、片方寝かせても起こされるだけ でもそれでいい

二匹でキノココを成敗したなら彼らの怒りも収まるだろうと考え

後々を考えるとそれがいいと思った

爆弾は、大きくなる前に爆発させてしまった方が安全なのだ

と、いっても

キノココ「……怖かった ……怖かったよ」

覚悟していたとして、攻撃を受けるのはやはり苦しいし、何より怖い

先の出来事を思うと 今更震えが止まらなくなる

皆に見られたら笑われるだろうか 心配させてしまうかもしれない

キノココ「……大丈夫 どうせすぐには動けない」

張った根がなくなるまで深呼吸して落ち着こう きっとその頃には怪我も無くなっている
 ▼ 148 ローニャ@イアのみ 18/02/28 23:20:18 ID:qpCwRNU. [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
さらに時間が経って 根の切り離しも進み、体力もほぼ満タンになる

気持ちも十分落ち着いて来た これなら皆の前に顔を出しても大丈夫だろう

キノココ「……でも もうちょっとは動けないかなあ もどかしい」

まだ根は残っている この技は使いどころが難しいと再認識する

    「そこの方、少し聞きたいことがあるのですが、よろしいですかな?」

キノココ「――? え? 誰?」

突然、声が降ってくる しかし見渡せど相手の姿はない

回りをきょろきょろと見回してしまう

    「ひょひょ、申し訳ない 日があるうちは見え辛いのかもしれませんが
     私は今ちゃんと目の前にいますよ ほら、よく見てごらんなさい」

キノココ「え……? う――うわあっ!!」

吃驚した こちらに話しかけてくる相手が幽霊だったこともそうだが

言葉の通り目と鼻の先、至近距離に相手が立っていたためである

キノココ「ヨ、ヨマワル!? な、何でそんなとこにいるのさあ!!」

    「ひょひょひょ ゴーストポケモンの性というもの いい反応です」

キノココ「ま、まあいいけど それで、聞きたいことって?」

    「それが、二つ程 まず聞きたいのは、カゲボウズをお知りでないか」

カゲボウズ? 彼と同じ幽霊のポケモンだ キノココは見かけたこともないと思う

    「ひょひょ まあ、日のあるうちに見え辛いのはあの子も同じ
     ダメもとで訊いてみましたが やはり見てませんか」

彼は特に落胆した様子もなく、軽い調子で言う それにしても不気味な笑い方だ

    「ではもう一つの質問を ここらに“ひみつきち”の入り口はありませんかね」

キノココ「え……? “ひみつ、きち”?」

    「そうです 最近巷では『願いの叶う“ひみつきち”』とかいう噂があるそうで
     少々気になったもので調べてみますと、普通ではない場所があるそうで」

チリーンがいたところ? でもそんな呼び名は聞いたことがない

キノココ「あなたはその噂、信じてるんですか?」

何者なのだろう、と少し警戒を強める
 ▼ 149 マルルガ@しんかのきせき 18/02/28 23:21:39 ID:qpCwRNU. [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
    「ひょひょひょ いいえ 噂の真実を知っているだけです」

キノココ「真実?」

    「あそこは、『願いの叶う』などという夢のような場所ではないのです
     ただ、“行き場を亡くした傷付いた魂”が集まる場所なのです」

傷付いた、魂? どういうこと、なのだろう 彼は何を、何故知っているのか

あの“ひみつきち”のことなのか 教えて、いいのだろうか

キノココ「どういう意味なの? そこに何をしに?」

    「言葉通りの意味ですよ ひょひょ いえ、知らないのならよいのです」

慇懃な物腰だが、笑い方も相まって奇怪な印象を受ける

    「失礼 傷付いた魂を持っているので、もしかしたらと思ったまで
     あなたは不思議なポケモンですね そんなにも傷付いた魂を持っているのに
     しかし決して脆くなく強固な様子 あなたはもしかしたら
     “ひみつきち”に辿り着けないのかもしれませんね」

キノココ「? 僕は弱いのだけど? どういう意味?」

    「いえいえ、こっちの話です では、カゲボウズを見かけたらご一報ください」

そう言って彼はその場を去っていく 何か胸騒ぎがした 気の所為かな?


ルリリ「キノココ! 遅いよ! もー!」

泉に行くと、いきなりお叱りを貰ってしまった

キノココ「ごめんごめん 思ったより“根を張る”の効果が長引いちゃってさ」

荒くれA「いや、割とジャストタイミングだぜ? 薬が完成したのがついさっきで
     俺ら材料調達組は何ができるでもなく待ちぼうけだったからな」

荒くれC「あっし等はナマズン兄貴の手伝いしてたっすけど ルリリの姐さんは無理すから
     手持無沙汰でずっと気を揉んでやしたからね 『キノココが来ない!』って」

ルリリ「ちょ…… い、言わないでよ!」

赤くなって怒る彼女 どうやら心配かけてしまったらしい

キノココ「遅くなって、本当にごめん」

ルリリ「ん、大丈夫だよ シザリガーの言う通り、早く来てもやることなかった訳だし」

キノココ「それで…… どうなったの? 薬、効きそう?」

ルリリ「今飲ませてるとこ 効くかどうかはまだ…… ううん、絶対効く!
    みんなで頑張ったし、私はチリーンを信じる!」

後は信じるしかない、か どうか効いてくれますように……
 ▼ 150 シボン@こだいのおうかん 18/02/28 23:22:59 ID:qpCwRNU. [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルリリ姉「う…… ううん…… あれ? 私……」

ルリリ「お姉ちゃん! 大丈夫? 調子は? 何か食べられそう?」

ルリリ姉「ルリリ おはよう そうね、大分調子よくなってきた気がする? どうして?」

ルリリ「えっとね あのね こっちのキノココ達が薬の材料を集めてくれてね
    それからチリーンとエネコが薬作ってくれたの あと“癒しの鈴”も」

ルリリ姉「あらあら、荒くれさん達まで? どうもお世話になりました」

どうやら無事に効いてくれたらしく、顔色の良くなってきたルリリのお姉さんは腰を曲げ
礼を示す 荒くれ達は少々気不味そうだ


荒くれB「よいしょ〜 こっちも大分纏め終わったよ〜」

泉の中から荒くれの一匹が顔を出して報告する

水底にはヘドロが溜まっているのだろう さて、どうやって除去するか

ゴクリン「お疲れ様 ついにぼくの出番だね よーし
     『毒タイプ』の名誉挽回! いや、面目躍如といったところかな!」

荒くれA「あん? お前にどうにかできるってのか?」

エネコ「水の浄化は伝説にしかできないって言ってなかったっけ?」

皆して疑問を顔に浮かべる しかしゴクリンは自信ありげだ

ゴクリン「ふふん まあ見てなって 時にマリルリさん、病み上がりで悪いけど」

ルリリ姉「はい、なんでしょう?」

ゴクリン「あなたは、水の中で呼吸ができるように空気の泡が作れるそうだけど
     それをぼくに作ってくれないかい?」

ルリリ姉「? はい かしこまりました ではこちらへ来て下さい せーの (ぷくー)」

ゴクリン「おー、ほんとに空気の泡が出来た じゃあ、ちょっと行ってくるね」

チリーン「はい 行ってらっしゃい」

そして彼は水底へと移動して、大きな口を開けると

ゴクリン「溜まったヘドロを、“蓄える” そして、“飲み込む”」

見る見るうちに底にあったヘドロはその量を減らしていき 最後には無くなった

一連の作業を終えると、ゴクリンは水面へと上がってくる

ゴクリン「ただいま これでヘドロはなくなって、浄化も進んだよね?」

そしてあっけらかんと言うのだ ……呆気に取られてしまうのも無理ないだろう
 ▼ 151 ラブ@プレミアボール 18/02/28 23:58:06 ID:qpCwRNU. [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エネコ「あ、あんた…… それ、大丈夫なの?」

ゴクリン「ヘドロを飲み込んだこと? 平気、平気 胃袋ポケモンの名は伊達じゃない
     それにぼく、『毒タイプ』だからね 寧ろ新しい技のヒントになったくらい」

キノココ「技? 何か覚えたの?」

ゴクリン「うん、“毒々”と、“ダストシュート”を覚えた気がする 要練習だけど」

ルリリ「ちょ、それ、今やらないでよ!?」

ゴクリン「やらないよ!? 折角綺麗にしたのに そこまで常識はずれじゃないよ!?」

荒くれA「……おい、それ、俺等をディスってんのか?」

ゴクリン「いやいや、そんなつもりはないって そんなにカッカしないで」

エネコ「事実でしょうが いまさら何言ってんの?」

荒くれC「なんだって? このアマぁ 口を慎みやがれ」

喧嘩が始まってしまいそうな雰囲気になり、キノココは慌てふためいてしまう

チリーン「“癒しの鈴” 皆さん落ち着きましょう? 問題自体は解決したみたいですし」

彼女が鳴らす鈴の音はやはりいい音で、それを聞いた皆は心和ませていく

荒くれA「……悪かった 色々好き勝手やってよ」

荒くれB「僕も〜 迷惑かけて、ごめんね〜?」

荒くれ達は素直に謝りだし

エネコ「反省した? ……こっちも、棘のある言い方して悪かったわ」

ルリリ「全部問題解決した今となっては、いいんだけどね でも、次はないよ?」

ルリリ達もなんだか和やかで、仲直りできそうだ


荒くれA「今まで勝手気ままに生きてきたが、今日お前らと出会って一緒に過ごしてみて
     こういうのも悪くねえなって思った なあ、最初の約束を違えることになるが
     これからもここに遊びに来るのって、やっぱり駄目か?」

荒くれB「僕も〜 また来たいな〜 お願い〜」

荒くれC「あっしからもお願いするっす! 今日、楽しかったすもん!」

荒くれ達は頭を下げて頼んできた

朝の時点からは考えられない態度にこちらは顔を見合わせ

ルリリ「ふふ いいよ 勿論、また悪いことしたら出禁にするけどね」

泉のルリリが代表して答える みんな笑っていてこれが総意であることは明白だ

荒くれA「本当か!? ありがてえ!! そっちの約束は絶対守る!!」

皆が笑顔になれるなら それはとてもいいことだろう
 ▼ 152 タチマル@ネコブのみ 18/03/01 01:24:53 ID:QYy065sI NGネーム登録 NGID登録 報告
まじかよチリーン育ててくる
 ▼ 153 ビルドン@ライブスーツ 18/03/01 01:48:54 ID:mxWB84Tw NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 154 ロスター@ガルーラナイト 18/03/01 15:09:21 ID:/l9UQdew [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヘドロがなくなったとて一朝一夕で水質が戻るわけではなかったが、

ゴクリンの活躍によりそれが早まったのも事実で

森とその周辺に蔓延していた、『毒ポケモン』への偏見は収まっていくだろうと思えた

また、泉に現れた荒くれ達の改心も伝わっていって、キノココ達は大変褒め殺され

照れくさくも温かい気持ちに包まれたのだった


チリーン「……もう、大丈夫なのですか?」

彼女がキノココに声を掛けてくる まだ鈴の音が鳴り響いていた

キノココ「え? 何の話かな ……うーん、今日はちょっと疲れちゃったかなあ
     シザリガー達と戦ったり、材料集めに奔走したりでね」

チリーン「……いえ、大丈夫ならよいのです でも、少し休んでいてはいかが?」

鈴の音が止む 彼女はまだ心配そうな顔だったが、納得してくれたようだ

キノココ「そうだね もうちょっとのんびりしていこうかと思う チリーンは?」

チリーン「私は、そろそろ夕刻ですし、先に帰ろうと思います」

ルリリ「……二匹して、何の話してるの?」

先程まで姉と話していた彼女が、こちらの様子をみて近寄ってくる

チリーン「いえ、私はもうじき帰りますよって話してただけです」

ゴクリン「そっか、もう日も落ちそうな時間だもんね」

エネコ「……ねえ、チリーン あたしを“ひみつきち”に泊めてくれない?
    家具とか広さとか気に入っちゃった ねえ、いいでしょ?」

チリーン「……すみません 無理です いえ、あなたが駄目と言う訳ではなく
     あの場所には誰も泊める気がないのです 諦めて下さい」

ゴクリン「この間ぼくらも断られちゃったんだよね」

エネコ「……そう、なら仕方ないわ じゃあ、ルリリ、泉はどう?」

ルリリ「へ? 泊ってもいいけど…… ねえ? お姉ちゃん」

ルリリ姉「ええ、大丈夫だけど 帰らなくていいの? エネコちゃん?」

一瞬彼女の顔に影が差した、気がした

ルリリ「じゃ、じゃあ、お泊り会? やった!」

エネコ「ありがたく泊まらせてもらうわね ふふ、夜更かししちゃおっか?」

しかし次の瞬間には彼女は気取った笑顔でいて 見間違いだったのかな?


チリーンが帰っていったのを契機として、キノココ達もまた各々解散していった
 ▼ 155 ラミドロ@ポロックキット 18/03/01 15:22:03 ID:/l9UQdew [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
―――――――――――――――――――――――――
正直、泉編を書き終えて気が抜けてる しばらく筆進まないかも 頑張るけども

支援ありがとう

>>152 頑張って
チリーン(♀) 浮遊 穏やか まで揃えてくれると作者が喜ぶ
技構成は自由

キノココを見て分かる通り、そのポケモンが覚えるなら何でも使う
ただ、シザリガー戦のように正式な(つもりの)バトルは技4つ固定という
現実的にポンポン忘れるのはないだろってことで そういう設定

種族名じゃない奴らはモブ 出番はそんなない、つもりだった
そもそもポケモンの選出基準も適当なんだ 色々赦せ

ここまで付き合ってくれてる読者の皆様に感謝を もうしばらく宜しく
 ▼ 156 ルビル@あおいビードロ 18/03/01 15:25:24 ID:WcaMFfkQ NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 157 詞抜け 訂正 18/03/01 17:37:34 ID:/l9UQdew [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヘドロがなくなったとて一朝一夕で水質が戻るわけではなかったが、

ゴクリンの活躍によりそれが早まったのも事実で

森とその周辺に蔓延していた、『毒ポケモン』への偏見は収まっていくだろうと思えた

また、泉に現れた荒くれ達の改心も伝わっていって、キノココ達は大変褒め殺され
照れくさくも温かい気持ちに包まれたのだった


チリーン「……もう、大丈夫なのですか?」

彼女がキノココに声を掛けてくる まだ鈴の音が鳴り響いていた

キノココ「え? 何の話かな ……うーん、今日はちょっと疲れちゃったかなあ
     シザリガー達と戦ったり、材料集めに奔走したりでね」

チリーン「……いえ、大丈夫ならよいのです でも、少し休んでいてはいかが?」

鈴の音が止む 彼女はまだ心配そうな顔だったが、納得してくれたようだ

キノココ「そうだね もうちょっとのんびりしていこうかと思う チリーンは?」

チリーン「私は、そろそろ夕刻ですし、先に帰ろうと思います」

ルリリ「……二匹して、何の話してるの?」

先程まで姉と話していた彼女が、こちらの様子をみて近寄ってくる

チリーン「いえ、私はもうじき帰りますよって話してただけです」

ルリリ「そっか、もう日も落ちそうな時間だもんね」

エネコ「……ねえ、チリーン あたしを“ひみつきち”に泊めてくれない?

    家具とか広さとか気に入っちゃった ねえ、いいでしょ?」

チリーン「……すみません 無理です いえ、あなたが駄目と言う訳ではなく
     あの場所には誰も泊める気がないのです 諦めて下さい」

ゴクリン「この間ぼくらも断られちゃったんだよね」

エネコ「……そう、なら仕方ないわ じゃあ、ルリリ、泉はどう?」

ルリリ「へ? 泊ってもいいけど…… ねえ? お姉ちゃん」

ルリリ姉「ええ、大丈夫だけど 帰らなくていいの? エネコちゃん?」

エネコ「……ええ、気にしなくて良いわ 大丈夫」

一瞬彼女の顔に影が差した、気がした

ルリリ「じゃ、じゃあ、お泊り会? やった!」

エネコ「ありがたく泊まらせてもらうわね ふふ、夜更かししちゃおっか?」

しかし次の瞬間には彼女は気取った笑顔でいて 見間違いだったのかな?

チリーンが帰っていったのを契機として、キノココ達もまた各々解散していった
 ▼ 158 ーボック@ウオーターメモリ 18/03/02 22:39:06 ID:b66epq6s [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キノココ「今日も、お邪魔するよ」

チリーン「あなたもよく来ますね ここは私の場所だと言っていますのに」

あの泉の騒動から数日たった今も、キノココは“ひみつきち”に顔を出す

キノココ「森にとどまっていると、ヤルキモノとドクケイルがよく絡んできてね……」

虐めっ子達はまた前のようにキノココを練習台として技を繰り返すようになった

下手に抵抗したのが拙かったらしく、あれ以来彼らは木の実の準備を怠らなくなり
こちらの反撃はあまり効果を示さなくなってしまった

チリーン「あらあら、それは大変ですね でも、それなら何もここじゃなくとも
     例えば、泉などでもよいのでは?」

キノココ「それも、そうなんだけどね…… いや、居づらくてさ」

泉のポケモン達はキノココにも温かく接してくれるのだが、行き過ぎというか
キノココを「大恩人」と呼んで非常に持て囃してくるのだ

キノココがやったことなど、結局、相性に頼っただけの最初のバトルだけで

皆がいたからこそここまでうまくいったのだと思うのだけど

一体ルリリ達がどう話したのか、「キノココこそ立役者!」みたいになっている

“ひみつきち”に来るのは、勿論チリーンに会うためでもあったが
そう言った事情も大きかった 非常に居心地が悪い それに

エネコ「まあ、しょうがないんじゃない? 実際あんたが担った役割は大きかったのよ?」

キノココ「そうでもないでしょ? ゴクリンがいなかったらヘドロも無くならなかったし
     チリーンがいなかったら臥せっていたポケモン達を救えなかった」

エネコ「ま、そういうことにしておきましょ ……自己評価が低いって問題よね」

ここは、ここに来た者たちだけの秘密で 少人数で集まれるので居心地がよかった

キノココ「ええと 今日はルリリは?」

あの日から、エネコはずっと泉にいるらしい ルリリとも仲良くしていた

エネコ「用事があるって言ってたわ そっちこそ、ゴクリンはどうしたの?」

キノココ「また泉の底の様子を見に行ってくれてると思う」

一度底のヘドロは片づけたけれど、時を経てまた不純物が溜まっていたらしい
ゴクリンは定期的にそれを“飲み込む”ために泉に行く

エネコ「ああ、ルリリの用ってそれ…… それであんたは一匹でこっち来たと」

ルリリのお姉さんのお蔭で水中作業ができると言っても、ゴクリンは水ポケモンではなく
効率的に作業は出来ない それで誰かが彼のサポートのために一緒に潜るという

今回はルリリがその役目を買って出たと言う訳か

最近キノココはゴクリンと技の練習をよくしている だから訊いて来たのだろうけど

生憎今日は一緒じゃない 前述の通り、泉に行くのは遠慮したかったためだ
 ▼ 159 ベルタル@つきのふえ 18/03/02 22:39:52 ID:b66epq6s [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キノココ「泉は、大分綺麗になったのかな 見に行きたくもあるんだけど……」

エネコ「足が重い? そうよね 大丈夫よ 思ったよりも早く透明度を取り戻してるから」

キノココ「そっか、良かった……」

エネコ「みんな凄いわよね あたしなんて泉の一件ではほとんど何もできなかった……」

チリーン「そんなことありませんよ いい“癒しの鈴”だったじゃありませんか」

彼女はチリーンと共に臥せった者たちを看てくれていた

出来ることをやってくれたのだから、何も負い目に思う必要なんてないと思う

エネコ「そう言ってくれるとありがたいわ でもやっぱり…… ね」

チリーン「キノココもゴクリンも大活躍でしたもんね 気持ちはわかります」

エネコ「……あんただって活躍してたくせに 嫌味?」

チリーン「いえいえ そんなつもりは毛頭ございません 飲み物でもいかが?」

エネコ「ちょ! そんなんじゃ誤魔化されな――いい香り エネココア?」

チリーン「二匹とも甘いので良かったですよね?」

キノココ「うん、ありがとう」

エネコ「い、頂くわ」

彼女も大分打ち解けてくれたようで何より


チリーン「……あら? 誰かいらしたようですね ――!!」

“ひみつきち”の入り口付近から音がして、顔を上げたチリーンの様子が変わる

キノココ達もつられてそっちに顔を向けると

エネコ「え!!? 酷い怪我!! どうしたの!? 大丈夫!?」

明らかに瀕死の重傷を負った何者かが斃れていて あれは、マイナンだろうか

急いで担ぎ上げ、柔らかい場所に運ぶ すぐにチリーンは薬の調合を始めた

エネコも鈴を鳴らし、介抱を開始する

キノココには何も手伝えることはなさそうでもどかしかった

マイナン「…………て、ろ …………ル に……ちゃん、が……」

何事か譫言を呟いているようだった
 ▼ 160 クリン@ピカチュウZ 18/03/03 23:10:29 ID:j4vFtW7s [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マイナン「……く ……あ ……い、いかなく、ちゃ ――あだっ!!」

治療も一段落してほっと息を吐いていると、意識を取り戻した彼が急に身を起こし、
激痛に身を捩った

チリーン「安静にしていてください 治るまで時間がかかります」

マイナン「そんな、こと…… 言ってられな、い! 早くしないと!」

チリーンが優しく抑える しかし彼は気にせず立ち上がった

そしてふらつきながら数歩進んで 倒れてしまう

マイナン「――あっ ……かぅ く、そ……」

エネコ「……事情があるのは見れば判るけど、落ち着きなさい
    そんな怪我で、何を為せるつもりなの? 急がば回れというでしょう?」

マイナン「何を……? 知ら、ない でも行か、なきゃ…… 妹が!!」

エネコ「妹? どういうことよ 事情が掴めないわ」

マイナン「そんなこと、言ってる場合じゃ……」

チリーン「“癒しの波動”、“癒しの鈴” 落ち着きましょう ね?」

チリーンが出す波動によって、彼の傷は大方塞がる
同時に、傷の痛みによる錯乱も解けていったようだ


マイナン「……そ、その 助けてくれて、ありがとう」

彼は姿勢を正し、こちらに向き直った

エネコ「妹がどうとか言ってたけど 何があったの?」

マイナン「……突然、変な奴らに襲われて 抵抗しても敵わなくて、
     最初は二匹で逃げてたんだけど 攻撃されて、追い詰められて……
     もう駄目だって時に 妹はボクだけ逃がして、捕まってしまった……
     ……何も! できなかった! 奴らは強く、一匹で逃げるだけで精一杯だった!!」

彼は自分のふがいなさに歯噛みする ……何やら話の雲行きが怪しくなってきた

キノココ「襲われた、ってどういうこと?」

マイナン「知らない奴らだった 闇シンジケートとか名乗ってて ボクらを見ると
     『海の向こうでは高値がつくらしい』『丁度セットで居る』とか言い出して
     無理やり捕まえようとしてきたんだ……」

エネコ「それって……! 人攫いじゃない! ポケモン売買だなんて!」

キノココ「警察とかに連絡した方が……」

マイナン「駄目だ! 組織が動けば、奴らは妹を連れたまま雲隠れしてしまうかもしれない!
     それに! 奴らはあの子を海外に売ろうとしてる! 急がないと!」
 ▼ 161 ロトック@いいつりざお 18/03/03 23:14:43 ID:j4vFtW7s [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
確かに、彼の心配も判る 彼の妹は人質としても使われてしまうかもしれない

エネコ「気が急くのは判るけど、でも、敵わなかったんでしょ?」

マイナン「う…… それは、そうだけど……」

エネコ「無理に焦ったって状況は好転しないわ さっきも言ったでしょ?
    急がば回れって 私達で良かったら、力になるから ね?」

マイナンはしばらくそわそわと落ち着き無さ気にしていたが、エネコの説得が功を
奏したらしく、勢いに任せて飛び出していこうとするのは止めてくれた

エネコ「さて、とすると何から始めるべきでしょうかね どう思う?」

キノココ「情報収集、からかな まず確認 マイナン、君の妹って?」

エネコ「へ――? マイナンの妹なんだから、マイナンじゃないの?」

マイナン「いや、異母兄妹でさ プラスルなんだ」

エネコ「へー、珍しい でもそれが?」

キノココ「ただの確認だよ でもやっぱり、今すぐどうにかされることはないと思う」

マイナン「ど、どういうこと? 妹は安全なの? 何で解るの?」

彼は目を白黒させて尋ねてくる なんか最近こういう展開多い気がする……

キノココ「相手は『セットで』って言ってたんでしょ
     なら片方だけ先に移送するというのは考え難い
     更には彼らにとってプラスルは商品なわけだから必要以上には手を出さない筈」

エネコ「なるほど、ね 少しは準備する猶予はあると思っていいのね」

キノココ「まあ、この予想が当たっているなら、相手方は君を探すのに躍起になってる
     ということでもあるのだけどね つまり、下手に動くのは危険ということ」

マイナン「う…… もう飛び出したりしないよ、ごめん」

責めているように聞こえただろうか? そんなつもりじゃなかったんだけどな

キノココ「……あとは、プラスルがどこにいるのか 相手方はどんな布陣でいるのか」


……キノココ等の手に負えるのか 本当に他に頼らないでやるのか

本当に聞きたいのはそちらだったかもしれないが それは口に出さないでおく

全て聞いてから判断することにしよう キノココだって彼らを助けたいのだ

でも、どうしても足が震えてしまって 武者震いなんかじゃなくて

……義憤は燃えている でも、それ以上に臆病風があってキノココは揺らいでいた
 ▼ 162 ッタイシ@モモンのみ 18/03/04 01:50:43 ID:8r5esUNg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 163 ワパレス@うしおのおこう 18/03/04 02:32:35 ID:dzxnHdSI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 164 ゴラス@ヘルガナイト 18/03/04 17:28:35 ID:3is3J.1w [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マイナン「プラスルは多分、迷路山にいる 奴らが根城にしているらしい」

山中に洞窟がいくつかあり、また、入り口が複数に分かれている場所だ

隘路も多く、そういう組織が秘密裏に活動するには向いているのかもしれない

キノココ「迷路山…… とても包囲なんてできないし、大勢で動けば、上からバレバレ
     その間に逃げられてしまうか ……確かに、警察は頼れなさそう」

もしかしたら少数精鋭で動いてくれるかもしれないから頭には残しておくけれど

エネコ「でも、よくそんなとこ棲んでられるわね 迷わないのかしら?」

キノココ「マップがあればきっと大丈夫だとは思う 多分配られてるんじゃないかな」

エネコ「マップね…… あたし、マップあっても迷いそう……」

マイナン「どちらにせよ、ボクらの手元には無いのだけどね」

中の様子が解らないのは痛い 警察の方だって知っているとは限らない

どうにかマップを手に入れる手段はないものだろうか

チリーン「山のどこに目的の人物が居るのかも、事前には解らないですよね」

……広い山の中をむやみに駈けずり回るのも無理がある それも問題か

マイナン「それは行ってみれば解ると思う ボクとあの子は特別な繋がりがあって
     ある程度の距離ならお互いが居る方向が解るんだ」

エネコ「は? まさか兄妹愛の力とでもいうつもりじゃないでしょうね?」

マイナン「流石にそれはないよ でも判るんだ 信じて欲しい」

彼は迷路でも迷わずプラスルと合流できる自信があるという

しかしそれを作戦に組み込むかどうかは賛否が分かれそうだ

エネコ「俄かには信じ難いけど、信じたとして、『行きはよいよい、帰りは怖い』
    って奴じゃないの? それ 息の目標はあっても帰りの迷路もあるのよ?
    道を覚えてられる自信、ある?」

マイナン「メモ、しておけば……」

エネコ「そんな余裕、あったらいいわね」

無事に帰るまでが救出作戦 さてどうしたものか
 ▼ 165 ゲハント@ライブキャスター 18/03/04 17:29:26 ID:3is3J.1w [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マイナン「相手の布陣、って どんなポケモンがいるかってことでいいんだよね?
     ええと、コータスとハブネーク、オニゴーリはいたと思うけど
     あとテッカニンがリーダーって呼ばれてたかな 総数はちょっと解らない」

リーダーはテッカニンか キノココにとっては相性最悪だ

他のメンバーも相性が悪い この間みたいな戦いはできそうにない

エネコ「闇シンジケートとか言うだけあって、強そうな面々ね ……やっぱり、無茶よ」

相手の戦力とこちらの戦力、改めて見なくても大きな隔たりがある

マイナン「そんな…… 何とか…… ならないの……?」

エネコ「無理ね あたしらは戦闘向きじゃない 強力な助っ人の心当たりもないわ
    探してみる? このヤマに手を貸そうという物好きはどのくらいいるかしら」

冷たく聞こえるが、彼女の言うことももっともである

相手は強者で、しかも組織立って動いている犯罪者

下手につつけば『藪の中からハブネークが出る』ことになりかねない

……こんな悪足掻きに近い救出作戦に乗ってくれる手合いなどそうそういない

となるとやはり、ここにいる『物好き』だけで何とかしなくてはいけないのか

駄目だ、どれだけ頭を悩ませても、勝つ手段なんて思いつかない

エネコ「ここで息を詰まらせてるのも時間の無駄ね 実際迷路山を見てみましょ?
    何か思いつくかも 或いは助っ人が見つかるかも」


彼女の言葉に従い、迷路山の近くまで慎重に近づく

洞窟の入り口には見張りと思われるポケモンがいて、何か独り言を喋っている

見張りA「遅いな、アイツ…… もう交代の時間だろ……」

此方には気付かれていないようだが、かといって洞窟の中の様子を調べるのも難しい

マイナン「……アーマルド やっぱりボクが見てない奴もいるのか」

チリーン「プラスルはどこにいるのか、解りますか?」

マイナン「え? うん、やっぱりここみたいだ 山頂の方向だね」

エネコ「……本当? どうやって助けたものかしら?」

ひそひそと作戦会議していると、洞窟からもう一匹のポケモンが出てきた

見張りたちの会話が漏れ聞こえてくる
 ▼ 166 チュル@パークボール 18/03/04 17:30:54 ID:3is3J.1w [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
見張りA「おいコータス、遅刻だぞ」

見張りB「すまん、すまん ちょっと道に迷ってた」

見張りA「はあ? マップ貰ってねえの?」

見張りB「いや、貰ったは貰ったけど、俺こういうの苦手でね」

見張りA「おいおい、大丈夫かよ」

見張りA「あー、疲れた いつもは見張りなんてないのに何考えてんだ?」

見張りB「ああ、なんか商品が届くらしいぞ 上にいる奴のセット商品が」

見張りA「相手、届け先解ってんのかよ 一応この場所は機密だろ?」

見張りB「ちゃんと『迷路山にいる』とは言ったぜ? 来るかどうかは知らんが」

見張りA「来ないかもしれないのかよ そりゃ気の長い話で」

見張りB「一応今日までは待つつもりだって言ってたな 来なかったらその時はその時
     値段は落ちるが片方だけ売っちまうってよ」

見張りA「じゃ、頑張れよ 俺は上に戻る」


エネコ「今の…… あんたのことよね?」

会話の内容から類推してエネコは確認を取る

どうやら、マイナンに居所を教えたのはわざとだったようだ

マイナン「そんな…… プラスル…… ああ、どうしよう……」

ショックな内容だったからか、マイナンはその言葉も聞こえないくらいに動揺していた

エネコ「落ち着きなさい! あんたがそんなんでどうするの! 助けたいんでしょ!?」

マイナン「ん…… うん ごめん……」

チリーン「しかし、時間がないのも確かなようですし、
     かといってこの牙城を崩すのも容易なことでもなさそうです
     他人に頼っても見張りがいる以上大っぴらに動かせません やはり……」

エネコ「何かないの!? 何か…… 何か……?」

色々考えて、頭を悩ませて、結局諦観が皆を包む

此方の手札、彼方の布陣、地の利、情報、どれを取ってみても、結局


――穴凹の空いた作戦しか、思いつけない
 ▼ 167 ートロトム@めざめいし 18/03/04 17:31:51 ID:3is3J.1w [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キノココ「これは賭けだ 絶対上手くいくとは言えない それでも乗るかい?」

この件は100%の自信がなければ取り組むべきではないのかもしれない

そのぐらいに危険なヤマだ 上手くいかなかったらと思うと怖くて仕方がない

それでも 出来るかもしれないと思ってしまった

マイナン「あの子を助けられるなら何でもする! どうすればいいの!?」

エネコ「私も乗るわ 信頼してるわよ?」

チリーン「……聞いてみましょうか あなたの作戦を」

仲間たちもこう言ってくれる やるしかない

チリーンは最初不安そうだったが、話を進めるうちに納得してくれたみたいだ


――10分後 キノココ達はマップを片手に、洞窟の中にいた

ゆっくり、慎重に 先の状況を判断しながら進んでいく

エネコ「……通路を曲がった先、さっきのアーマルドがいるわ こっちに来てる」

マイナン「またしばらく身を潜めてないといけない、か ……うう、ドキドキする」

見張りを交代して気持ちが緩んでいるらしい彼が角から顔を出す

――そして、此方に気付く前に

キノココ「えい! “眠り粉”!」

見張りA「……な! 何……が…… Zzz……」

キノココ「更に、“宿り木の種” ……ふう これで彼もしばらく動けない」

寝かせた彼を“宿り木”の蔦で縛り、近くにあったロッカーのような箱に閉じ込める

洞窟の前にいた見張りも、同じ方法で無力化した マップはその時に拝借したものだ

今頃はチリーンの手によって警察に連れていかれているだろう

一時間後、キノココ達がどうあれ突入してもらう手筈になっている

その時までできるだけ騒ぎを起こさず、かつ複数人を無力化させるのが目標だ

キノココ「次はどっち?」

マイナン「ええと、あの子がいるのはあっちで、そこに行くためには…… こっち!」

更にはプラスルを安全な状態に保護できているのが望ましい

マップをもとにしたマイナンの案内で今のところ迷ってはいないようだ

このまま順調に進めばよいのだが
 ▼ 168 ノハナ@ムシZ 18/03/04 17:32:54 ID:3is3J.1w [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キノココが思いついたのは、単純なハイド&シーク作戦

相手方のポケモンと正面からやり合っても敵わないのは想像に難くない

しかし、こちらの目的はバトルに勝つこと、ではないのだ

プラスルの救助が第一目標で、次に身の安全の保障

犯罪集団の逮捕まで行けば御の字だが、別に逃がしてしまっても構わないつもりだ

後は警察機関の仕事 キノココ達の出る幕ではないと思っていた


更に2,3体無力化し、拍子抜けするほど順調に進むと、広まったスペースに出た

壁にはいくつかの檻があり、その一つの中にはプラスルがいて

マイナン「!! プラスル! 今助けるからな!!」

飛び出していく彼を止めることが出来なかった

プラスル「う…… お兄、ちゃん……? だ、だめ……!!」

マイナン「え……? ――――がっ!!」

牢屋番「“ニードルアーム”! まさかリーダーの言う通り本当に来るとはねえ!」

マイナン「ノク…… タス……? くそっ 居て欲しくなかった奴が出た!」

牢屋番「んん? 俺が居て何が悪い? ああ、成程、どうやってここまで来れたかと思えば
    “粉”か“胞子”でも持ってきたかな? 残念、俺には効かないんだ
    鍵を渡す気はない さあ、大人しく牢屋に入りな、坊や」

もし『草タイプ』がいたなら、即座に無力化は出来ないため仲間を呼ばれる危険がある

道の途中にいた場合、進路をふさがれてしまう危険があった

最初に言った上手くいかない可能性とはそれだ

油断はしてないつもりだったが、マイナンが見たというポケモンの中には
『草タイプ』がいなかったため、楽観視していた部分もある

しかも鍵守の役目を担っているという 無視するわけにもいかない

――考え事をしている場合じゃない マイナンを助けなければ

キノココ「――当たれ! “毒々”!」

牢屋番「な――! くそ! お前が“胞子”か!! 苦しまず逝けると思うんじゃないよ!!」

不意を打って上手く命中させることに成功 しかし強そうな相手を怒らせてしまった

怖い、怖い でも今は、こっちを目標にしてくれるのはありがたい じわじわいこう
 ▼ 169 ゴジムシ@ソクノのみ 18/03/04 17:34:01 ID:3is3J.1w [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
牢屋番「“騙し討ち”」

キノココ「“まもる”」

牢屋番「く…… “毒針”!!」

キノココ「“まもる”!!」

牢屋番「逃げんな! 隠れんな!! この、臆病者があ!! “毒突き”!!」

キノココ「“まもる”!!! ――――くぅ……!」

相手の攻撃が頬を掠った “まもる”の制度が落ちている

相手の身体は毒が回ってきている筈だが、こちらの様子を見て嘲笑う

牢屋番「じっくり嬲ってやろうと思ったが、予定変更だ 一発で斃す
    そんでもってマイナン共々閉じ込めてやんよ さあ、行くよ “毒突き”」

もう少しの辛抱で相手は猛毒で動けなくなるだろう

しかし“まもる”には頼れない あの迫力の“毒突き”は一発でも耐えられそうにない

迫りくる腕に戦々恐々としながら、キノココは自らの体力を削って

キノココ「――“身代わり”!」

素早く人形と入れ替わった

キノココの代わりに攻撃を受けた人形は掻き消えるがキノココは無事

キノココ「もう止めないか? 君はもう斃れる 僕だけやったって無駄だ
     それに、ここにはもうじき警察が来る 君たちはお縄にかかるだろうね
     もう一度言う 無駄な抵抗は終わりにするんだ」

保険のつもりで降伏を勧告した きいてくれるとありがたい

牢屋番「キノココ風情が、嘗めるな!! これなら避けられまい! “ミサイル針”」

渾身の一撃、いや、連撃を放ってきた “身代わり”では受けきれない

此方に向かってきているなら、の話だが

牢屋番「む…… ぎゃ……! ――ふ」

相手は自身の攻撃を自身で受け、訳も分からずという様子で地に伏した

懐から鍵束が転がり落ちた
 ▼ 170 ダンギル@ぎんいろのはね 18/03/05 16:24:07 ID:CVNdIeeQ [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キノココ「ふう…… 焦った…… ノクタスが出るとは……」

瀕死になった牢屋番を縛りながら安堵の息を吐く 背中を嫌な汗が流れた

やはり行き当たりばったりの博打はするべきじゃない

エネコ「や―― やった! 凄い、凄い!! でも何で!?」

キノココ「“威張る”さ 混乱させただけ 確率的にこっちがやられててもおかしくない」

物事を行う前にはやはり入念に準備した方が良い

想定外の事態が重なると、やはり危険度は格段に上がってしまう

卑怯と言われようと、臆病と言われようと、安全に物事を進めるに越したことはないのだ

今回は時間がなかったからしょうがないのだが、ほとんど準備できず心許ない

マイナン「あ、あれ? おかしいよ! この錠に合う鍵がない!!」

突然、マイナンが叫んだ 鍵がない? そんなバカな……

マイナン「プラスルの牢だけ開かない…… 折角、ここまで来たのに!!」

牢屋はとても強固で、鍵も無しには開けられそうもない

成す術のない遣る瀬無さに打ちひしがれそうになっていると


「ようこそ諸君 お探しのものはこれかね?」

この場所に続く唯一の通路から声が聞こえた

キノココ「テッカニン…… オニゴーリと、ハブネークまで……」

シンジケートのリーダーと呼ばれていた者が部下を連れてそこに立っていた

その手にあるのは、――恐らくプラスルを閉じ込めている檻の――鍵

リーダー「何やら音がすると思ったら、いやはやステキなお客さんじゃないか
     カモ君とネギちゃん そしてネズミ君だね」

複眼でこちらを値踏みするように見てくる 奇妙な呼ばれ方に怖気が走る

エネコ「あんたがこの組織の頭ね!? 大人しく鍵を渡してプラスルを返しなさい!!」

彼女は義憤に燃え、奮い立っているらしい キノココは手をかざして彼女を抑える

……奴は危険だ 直感的にそう感じる

リーダー「元気があってよろしい いいネギちゃんだ しかし跳ねっ返りは頂けない
     しっかり教育しないといけないかな」

エネコ「何なの、その呼び方…… 気持ち悪いわ」

リーダー「ふふ エネコは愛玩用として人気があってね 高く売れるのだよ
     餌を置いてカモを待っていたら、まさかネギを背負ってきてくれるだなんて
     今日はなんてラッキーデーなのだろうか この気持ち、分かるかい?」

……こいつ、ポケモンを商品としてしか見ていないのか?
 ▼ 171 ャヒート@ポロックキット 18/03/05 16:25:05 ID:CVNdIeeQ [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マイナン「この…… 鍵を渡せえええ!!」

部下A「おっと、行き止まりだ カモ君は餌の傍で大人しくしてナァ」

マイナン「……うあっ ……く、そ」

エネコ「マイナン!! 大丈夫!?」

突き飛ばされ、檻の方へ飛ぶマイナン しかしキノココは動けない

圧倒的な強者の貫禄に気圧されて 足が震える

餌、カモ、ネギ…… 成程、解り易く反吐が出るセンスだ じゃあ、ネズミは?

リーダー「ノクタスがやられるとは思わなかったな どんな手品を仕込んでいたんだい?
     でも、君等のラッキーもここまでだよ キノココには価値がない
     要らないものは嫌いなんだ ネズミは牙蛇に食べられてしまいなさい」

部下B「あいよ ……てめえは目障りなだけらしい 弱っちいのによく頑張ったな
    大人しく去ね “毒々の牙”!!」

キノココ「“身代わり”! くあ…… 危なっ……」

相手の力量が如何ほどなのか、挙動が早く、もう半テンポ遅かったら今頃瀕死だった

心胆に冷たい棒を差し込まれたような悪寒が走る 一回の攻防だけで悟ってしまう

勝てるわけがない 最初から分かっていたことではあるけれど、痛烈に感じる

部下B「“身代わり” 自分の体力を削って緊急回避する技だろ? あと何回避けれるかな?
    くくっ “噛み付く” “噛み砕く” “毒々の牙”」

キノココ「“身代わり” “身代わり”! ……くっ ――“まもる”!!」

それに対して相手は余裕の表情で、嘲笑うように連撃で追い詰めてくる

壁際まで来て下がれなくなり そこで更に相手は

部下B「“蛇睨み”」

麻痺、させてきた やばい これは、もはや『奥の手』も間に合わな――

部下B「チェックメイト、だ お休み、ネズミ君 “ポイズンテール”」

エネコ「“堪える”! ――キャアッ!!」

終わりだ そう思った瞬間目の前にエネコが飛び出してきてキノココを庇う

キノココ「な……! 何をしてるんだ! 僕を庇って大怪我なんて!! ――うぐ……」

エネコ「大、丈夫よ  “猫の手” ……“光合成”、借りるわ ほら“癒しの鈴”も」

彼女はキノココの技を使い、自己治癒してみせる 更に麻痺も解いてくれた

エネコ「ほら、貴方も回復して まだ戦えるでしょ? ……行くわよ」

そして気丈に笑って言うのだ
 ▼ 172 ァイヤー@カゴのみ 18/03/05 16:25:59 ID:CVNdIeeQ [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キノココ「……“光合成” エネコ、君 ――本当に大丈夫?」

回復したとはいえ、致命的な一撃を態と受けてみせたのだ

並の恐怖じゃない キノココはそれをよく知っている なのに

エネコ「心配してくれるの? ありがと でも大丈夫 まだまだ“奮い立てる”わ」

冗談交じりに技を使いながら返してくる 別の意味で敵わないなと思った

キノココ「そっか 僕も怯えてばっかじゃ駄目だな ちゃんと“成長”しないと」

予断なく構えながら、真似して技を使ってみる しかし、相手は動かない

部下A「どうしタァ、ハブネーク? アイツら色々やってるみたいだが、何で攻撃しネェ?」

部下B「…… ん、そうだよな 攻撃、しなきゃだよな ……なんで攻撃しなきゃなんだ?
    俺は何で彼女に牙を向ける? あんなに可愛いのに あれ?」

部下A「本気でどうしタァ!?」

相手の様子がおかしい それを見てエネコは苦虫を噛み潰したような表情を作る

エネコ「……この体質、嫌いなんだけどね 今だけは感謝するわ」

体質? ……メロメロボディか だからさっき態と攻撃を受けて……

エネコ「気付くのが遅れてくれたおかげで色々できたわ さあ、反撃よ」

部下A「ハッ その程度でどうにかなるとデモ? 力量が違ェんだヨ
    そっちが二匹なら、こっちは俺が混ざってもいいだロ? リーダー」

リーダー「いいよ ネズミ掃除とネギちゃんの教育 宜しく」

部下A「だ、そうダァ 片方がお荷物状態でも安心すんなヨ?」

言われないでも分かっている

強烈な冷気を発する彼からはもう一人の部下に勝るとも劣らない気迫を感じる

喩え最大に積んだとて分が悪いと思われる

更に言えば隣の彼も完全に行動不能になったわけではない

攻撃してくる可能性は十分残っていて、片時も注意は外せない

部下A「小手調べダ いくゼェ? “吹雪”!」

エネコ「いきなり!? “まもる”!!」

キノココ「“まもる”」

二匹同時攻撃だ 相手が一匹だからと油断はできない
 ▼ 173 ーピッグ@ぎんのこな 18/03/05 16:27:06 ID:CVNdIeeQ [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
部下A「そうだよなァ これで斃れたら面白くねェ もっと長引かせロ! “冷凍ビーム”」

エネコ「ギリギリ、当たらないわ! この! “アイアンテール”!! ――え!?」

――ガキン

エネコのしっぽは鈍い音を出して弾かれる 彼女の能力は上がっている筈

更には鋼の一撃は奴には抜群だというのに ……何故?

部下A「オレはムラッケがあってヨォ 調子が上がったり下がったり忙しいんダ
    不幸にも今は凄く硬ェ お前らの攻撃は効かネェんダ」

エネコ「な…… そんなの、アリ? むちゃくちゃじゃない……」

部下A「そしてドンドン早くなル “冷凍ビーム”! “氷の礫”!」

エネコ「ひあっ! そんな!? ……まだまだ、“まもる”」

相手が怒涛の攻撃を仕掛けてくるのを、必死に回避して見極めようとする

相手の調子がどう変わったのか どう戦えばいいのか

部下A「オ、攻撃の調子が上がって来た気がするゼ! 上手く避けろよ?
    今度は先刻の比じゃないゼ “吹雪”!!」

先程打ったそれと比べて、明らかに威力の高い“吹雪”が吹き荒れた

確かに調子の変動は恐ろしい しかし、だからこそキノココは

キノココ「――こっちだ! エネコ!! 走って!!」

抜け道を、見つけた

エネコ「え――? これ、どういうこと?」

あれだけの技の後だというのに、二匹ともが無傷でいる 彼女は不思議そうにしている

先刻エネコに“冷凍ビーム”を打った時も照準がぶれていたように見えたが
間違ってはいなかったようだ 彼の能力は

キノココ「『上がったり下がったり忙しい』ってことでしょ
     技の威力は上がっても、命中精度が下がってれば意味がない
     更には“吹雪”なんて大ぶりな技、当たんないよ」

部下A「なんダ ばれてたのカ まあいい 命中が上がるまで時間稼げバ……」

キノココ「ごめん そんなに待ってられないよ これで終わらせる」

時間を置けば、奴はどんどん強くなる 穴も塞がってしまうかもしれない
 ▼ 174 ジャンボ@ライブキャスター 18/03/05 16:28:26 ID:CVNdIeeQ [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
部下A「アん? はったりもいい加減にしロ? どうやって終わらせるっテんダ?
    力量! 相性! 能力! 全部俺のが圧倒的だっつうのに、どう覆すっテ!?」

更に速度を上げて飛び回りながら、幾度も攻撃を打つ相手

一撃でもその身に受けたら瀕死になってしまいそうなそれらを必死にかいくぐる

キノココ「命中精度が下がっているのに、遠距離攻撃なんて当たらない 近づいてこい!」

……準備してきた『奥の手』は使い切り 確実性が必要だ 

あの素早い相手にも当てられる距離が そのためには

キノココ「そんなに近づくのが怖いのか! それでも♂か!? いや、♂だからこそか
     ……エネコ! ハブネークを抑えて、僕から離れてて!」

エネコ「え!? ……う、うん 判った! 絶対、勝ちなさいよ!!
    “捨て身タックル”! 」

技でメロメロ状態の敵を押しやりながら、彼女はキノココと距離を取る

これでさっきの手は警戒から外れたとみていいだろう

部下A「てっきりメロメロを狙ってくる作戦かと警戒しちまってたガ、思い過ごしカ
    いいのカ? ここまで挑発された以上、俺も本気出すゼ?」

キノココ「当然だ 真っ向勝負と行こう さあ来い!!」

身の竦みを懸命に押し殺して叫ぶ ……今しかないのだ

相手の能力は随時変わる 時間を掛ければ手に負えなく成る

部下A「ハハッ! 良く言ったァ!! 叩き潰してやる!! “氷の牙”!!」

今度は外さない、とばかりに接触系の物理技を繰り出してくる

お互い避けようのない距離まで迫りくる恐ろしい大口に

キノココ「“自然の恵み”!!!」

懐にしまっていた木の実を豪炎に変え、打ち込んだ

弱点を突く不意打ちに、相手は後ろへ飛び 地面に落ちて動かなくなった


――速度、攻撃力、物理防御など、時間が経つごとに調子が上がっていくのは脅威だ

――だが、何事にもデメリットが存在するらしく、彼の場合、特に顕著だった

――技の命中精度のように下がる能力もあるということ

――物理に強くなったとして、特殊までカバーできているということではないのだ

――その穴も時間とともに埋められてしまう危険性がある

――相手を煽って短期決戦に持ち込んだのはこのためだった
 ▼ 175 ルキー@ホノオZ 18/03/05 16:33:39 ID:YeD5OPFM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 176 ラセクト@ロメのみ 18/03/05 18:38:31 ID:PFIbM9B. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あげ
 ▼ 177 ラルバ@ピジョットナイト 18/03/06 00:03:08 ID:LksC66eY [1/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
――パチ パチ パチ……

通路の方向から拍手が聞こえてくる 余裕の表情をした複眼に、改めて戦慄する

リーダー「いやはや、いやはや 生きのいいネズミ君だ 頭も切れるらしい
     キノココから炎が飛び出すとは、実に見事な手品だった 面白かったよ
     君の評価も上方修正することにしよう 君には価値がありそうだ
     どうだい? ピエロとしてサーカスに斡旋される気はないかい?」

部下が一匹やられて、もう一匹もまともに行動できないというのに 奴は動じない

まるで一匹でもこの場の制圧は容易である、とでもいうようだ 底が見えない

リーダー「オニゴーリまで落とすとは見どころがあると思うよ
     ノクタスが敵わなかったのも頷ける ……報酬もはずもうじゃないか
     普通、9:1の所を8:2でいい しかも歩合制だ 悪い話じゃないだろう?」

楽し気な口調で交渉のようなことをしてくる どういうつもりなのか

キノココ「……それ、少ない方が僕ってことだろ 悪い話でしかない」

リーダー「欲張りだねえ 7.5:2.5ならどうだい? 流石にそれ以上は負けられない」

エネコ「ちょちょ……! キノココ! 何の話を……!?」

キノココが気の乗ったような発言をすると、相手も話を進めてくる

彼女が慌てたような声を出す しかし、折角交渉してくれようというのだ

なら、話に付き合って好条件を引き出していった方が キノココにとっては良い

何せ、リーダーが誰かを聞いて、その対策にと持ってきた「奥の手」も使ってしまった

部下たちでさえ相手が油断していて、それでも紙一重で打ち破れたのだ

戦ったって勝負になることは愚か、時間稼ぎさえも怪しい そんな迫力がある だから

キノココ「いや、額の話をしたいんじゃない 9:1でも上等だよ

それより、僕の目的は知っているだろう? プラスルを開放しろ」

リーダー「ふうん 自己犠牲か 素晴らしいね で? 仲間にも手を出すな、と?」

キノココ「……そうだ」

キノココはキノココにできることをやるしかない


リーダー「――話にならないよ “シザークロス”」


キノココ「――え……?」

斬られた それは判る でも、いつの間に? 奴は一瞬前まで数mは離れた場所にいた筈

……ああ、痛い 致命傷だ  意識が、飛びそ――
 ▼ 178 レイハナ@しんかのきせき 18/03/06 21:51:22 ID:LksC66eY [2/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
リーダー「折角善意で雇ってやろうかと思ったのだが、やめだ 余り調子に乗るでないよ
     高々ネズミ一匹のために大事な商品を三つ手放せと? 馬鹿を言っちゃいけない
     こっちは慈善事業をしているわけじゃないのさ 等価交換を覚えたまえよ
     といっても、君に三匹の中の一匹分の価値もないのだがね」

嘲りに満ちた声が聞こえる 意味までは…… 今のキノココには解らない

意識が朦朧としていた このまま目を瞑ってしまえば楽になるだろうか

エネコ「キノココっ!! この…… よくも―― “捨て身タックル”!!」

彼女の叫ぶ声が聞こえる まだ戦えるくらいには奮い立っているらしい でも

リーダー「おお、怖い、怖い 能力の上がった一撃は下手すれば痛い目に遭いそうだ
     だが、どれだけ能力が上がっていても、命中精度がなければ話にならない
     ワタシに当てることが出来ないならば、無駄に終わる」

一瞬で移動してしまう奴に攻撃を当てるのは至難

エネコ「“猫の手”―“眠り粉”! “猫の手”―“痺れ粉”!」

リーダー「ふむ、見張りを突破できたのはそれのお蔭かね 状態異常を狙うとは芸達者な
     最初にワタシが現れたときに奇襲をかけていれば、或いは成功したかもね」

エネコ「この! 余裕綽々って口調で! なら、これでどう!? “チャームボイス”!」

回避不能の一撃を部屋中に響き渡らせる その成果を確認するため相手を見るも

エネコ「ノー、ダメージ…… “見切”られた……?」

リーダー「うーん お転婆過ぎるのは問題かな 従順な方が受けがいい
     さて、邪魔者は気絶してくれてるようだし ――教育の時間だ “峰打ち”」

エネコ「きゃ…… ああっ!!」

リーダー「“峰打ち” “峰打ち”」

エネコ「――ひぁっ! や…… やめ……」

リーダー「“峰打ち”」

エネコ「…………く ……あ!」

“峰打ち”では瀕死にならない どれだけの痛みがあろうとも気絶できないのだ

それを利用して、彼女の心を砕こうというのだろう ……下衆が

――こんな状況で、目を閉じて休むなんて、できるはずがない


キノココ「――“光、合成”!」


キノココ は エネコ を 悲しませまい と 立ち上がった !
 ▼ 179 ーランド@サイキックメモリ 18/03/06 21:52:26 ID:LksC66eY [3/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
どうすればいいか 必死に考える このままではじり貧 一発逆転の一手は……

キノココ「“身代わり”!!」

回復した体力を即座に削って、攻撃を避けるための土台を先に作る

相手の動きをしっかり見ながら、慎重に移動する

それと同時にエネコの様子も確認した 彼女も辛そうだが、瀕死じゃない ならば

キノココ「エネコ!! ちょっと無理するよ! 付き合って!!」

アイコンタクトで指示を出す 軽く身振りも加えるが、敵の手前、余り詳しくはやれない

これで、伝わっただろうか ……いや、信じよう

リーダー「しぶといな 先刻の一撃はちゃんと狙って急所に当てたつもりだったのだが
     まだ受け足りないのか? もう君に興味はないというのに
     まあいい、どうせ逃がすつもりもない さっさと処分してしまおうじゃないか
     何を企んでいるのやら知らないが、これで終われ ――“虫のさざめき”」

キノココ「な…… ぐぅっ……!」

“身代わり”を無視して届く技に、キノココは大ダメージを受け、吹き飛ぶ

でも、それでいいのだ “さざめき”を使うと見越したうえでの“身代わり”

奴は予想通りその場ですぐに技を使う 技の前後、一瞬は硬直するものだ そこで

エネコ「……! “欲しがる”! 鍵よこしなさいっ!」

リーダー「ほう、取られるとは思わなかった 油断したな だが、取り返せばいいだけ
     鍵だけ取ったところでどうしようもない 牢に近づく隙なんて与えるとでも?」

エネコ「……そうでしょうね あたしは近づけない でもよく見なさいな
    ――牢の近くに、あたしの仲間がいるわ “猫の手”―“摩り替え”!」

彼女の手の中の鍵が、木の実の燃えカスに変わった

先程態と牢屋の方へと吹き飛ばされたキノココは、最後の力を振り絞り、鍵を開ける

キノココ「……選手交代、だ ……プラスル ……(ぼそっ)」

そして意識を手放す 瀕死状態に陥った
 ▼ 180 ンキー@ちりょくのハネ 18/03/06 21:53:28 ID:LksC66eY [4/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
プラスル「……あ あう その ええと……」

足が竦んだ 今見せられた戦いは、プラスルなんかが逆立ちしても届かなさそうだ

だというのに自分を檻から出したキノココは、プラスルを戦闘に出すという

当のキノココは瀕死になってしまって、逃げようにも逃げられない

そしてさっきの指示 “まも”っているだけで良いとは、どういう意味なのだろうか

リーダー「ああ、檻から出てしまうなんて、悪い子だ すぐまた閉じ込めてあげよう
     ――それ “峰打ち”」

プラスル「……ひっ “まもる”!」

ギリギリで攻撃から身を守った ダメージは受けずに済んだが、身体は瘧のようだ

やはりプラスル程度がどうにかする何て無理だ 泣きそう…… 助けて……

エネコ「ふ、うん? “峰打ち”とは随分優しいじゃない それで十分? 馬鹿にしないで
    それ、傲りって言うのよ? あたしを戦闘不能にしなかったこと、後悔なさい
    いつまでも気絶してんな!! 起きなさい! “バトンタッチ”!!」

彼女が叫んだ声に反応して、兄が目を覚ました 大丈夫、なのだろうか

マイナン「うぅ…… く、何が ――今、どういう状況?」

エネコ「……部下は何とかなったわ 後は頭を斃せば終わりよ」

こんな状況なのに彼女は楽観的に言う 斃す? そんなこと、できるの?

リーダー「おやおや、ワタシの苦手な『電気タイプ』に能力移譲ときましたか
     しかし当たらなければどうということもないと言っているでしょうに
     “影分身” “影分身“ さあ、大人しく檻に帰りなさい」

何処までも余裕そうに笑う 力量が違い過ぎる プラスルたちでは――

マイナン「関係ないよ キノココとエネコが繋いでくれた襷だ 無駄になんてしない」

リーダー「ほざけ!! 貴様ごとき低レベルのポケモンに何ができる! “シザークロス”」

プラスル「ま、“まもる” うあ!」

兄の前に立ち、指示通りに、“まもる” 怖いけれど、言われたことはやらないと

マイナン「うおおおお!! “電撃波”!!!」

上手く攻撃から逃れた兄は、見たこともないほどに強大な電撃を放つ

縦横無尽に飛ぶ電撃は相手の分身を悉く掻き消し、ついには本体も貫いた

リーダー「が…… そんな、馬鹿な…… ワタシ、が……」

電撃に焼け焦がれたリーダーは、体力を尽きさせ、倒れ伏した
 ▼ 181 ルンゲル@すごそうないし 18/03/06 21:54:26 ID:LksC66eY [5/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
――力量が低いとはいっても 能力が移譲されてる上に弱点属性

――さらに言えば“プラス”と“マイナス”がこの場に揃っている

――どれだけ力量に差があろうと、耐えきれるはずもない

――当たらなければ、などと考えていたようだが“電撃波”は実質回避不能

――エネコかマイナンが先に戦闘不能になっていれば、避けられたかもしれない結末

――まさに傲り、慢心が奴の敗因となったのである


プラスル「凄い! 凄いよ、お兄ちゃん! 勝っちゃった! 彼奴に! テッカニンに!」

マイナン「あ――ああ…… ちょっと自分でも信じられない……
     ……よく頑張ったな、プラスル」

エネコ「キノココ! 大丈夫!?」

彼女の声が耳に届き、キノココは目を覚ます

どうやら敵のリーダーを討ち取ることに成功したらしい

エネコ「バカ!! 自分を犠牲になんて、考えんじゃないわよ!! こんなボロボロになって!!」

怒られてしまった 涙の滲んだ目をする彼女の様子に罪悪感と反省の気持ちが込み上がる

キノココ「……賭けではあったけど、ちゃんと助かる算段はあったのだけどね
     君が僕の意図を理解してくれて本当によかった
     あの焼け焦げたテッカニンは、マイナンの力だろう?」

マイナン「う、うん 皆のお蔭 ……ボク一匹じゃ何もできなかった
     プラスルを助けるのに協力してくれてありがとう キノココ、エネコ」

まるですべて終わったような会話 だが、気を抜くのはまだ早かった


部下B「“ぶん回す”」

マイナン「――なっ!」

プラスル「――うああっ!」

エネコ「――きゃあっ!」

キノココ「……! “まもる”」

部下B「おいおい、こりゃどういうことだ? 俺はさっきまで何してた?
    リーダーもオニゴーリも倒れてやがる 手前らの仕業か? 答えろ」

敵は、まだ残っている 先程の攻防の影響でメロメロも解けているようだ

回りの惨状を見て、酷く冷静な声を発する相手にはもはや油断も隙も見えない

今度こそ、万事休す もう、戦う気力など残っていない
 ▼ 182 タフリー@タブンネナイト 18/03/06 21:55:15 ID:LksC66eY [6/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キノココ「君は、彼女の体質に触れてメロメロ状態になっていた
     オニゴーリもテッカニンも、僕たちが斃した 他に訊きたいことは?」

皆、気を失ってしまった 逃げることは出来ない しかし戦っても勝てないだろう

なら、どうするか 言葉を弄するしかない 少しでも長く、動いていられるように

部下B「どう見ても弱っちい様にしか見えんが、目の前の現実を否定してもしょうがない
    見事、見事だよ 知恵と小手先でここまでのことがやれるとはな
    見誤ってた それは謝る もう、容赦はしねえ 仲間も全部潰してやった
    リーダーじゃねえがこれ以上のラッキーがあるんなら見せてみろ! “毒々の牙”!!」

“身代わり”を出す体力は残っていない “まもる”は打ち過ぎている

迫る大顎 回避行動にも移れない でも、やるべきことは十分やった 悔いはない

ただ、あれを受けたら痛いのだろうな 怖いな そう思って――


チリーン「“金縛り”! 皆さん、大丈夫ですか!?」

これ以上ないというタイミングで、彼女は現れた


刑事「全員動くな!! 国際警察だ!! 誘拐、監禁の現行犯で逮捕する!!
   貴様らには違法売買の容疑も掛かっている! 大人しくして貰おう!!」

部下B「インターポールだと!? くっ…… 動けねえ くそ、くそおぉぉぉ!!」

彼は金縛りで動けない一匹と、倒れ伏した二匹を素早い手際で縛り上げていく

キノココ「助……かっ、た?」

もう一度瀕死になることも覚悟していたが、その前に事が済みそうだ

時間を稼いだ甲斐はあった、ということか いや、皆は――

刑事「彼らは復活草による応急手当の後、すぐに搬送させてもらう 心配することはない
   君もこのオボンの実を使いたまえ 指名手配中の彼ら相手によくやってくれた
   民間の協力、本当に本当に感謝する」

敬礼して話す彼の言葉はまっすぐで嘘は感じられない 良かった、皆助かるんだ

チリーン「無茶はしないと、言ったじゃないですか 嘘を言わないでください
     あなたが居なくなってしまったら、悲しむ者も居るのですよ
     あなたが思っているよりもずっとずっと、多く 私だって……」

キノココ「ごめ、ん…… 色々、気を付ける、よ……」

彼女に抱えられていると、安心感があって、気が抜けたことで疲労感も襲ってきて

――良い音色だな そう思いながら、キノココは眠りに落ちて言った
 ▼ 183 リン@カビゴンZ 18/03/06 22:03:29 ID:LksC66eY [7/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
――――――――――――――――――――――――
迷路山編 終了 今日はここまで

あんまり流れのまま書いてるとまた失敗しそうだから
今回は伏線盛ってみたらどうなるかっていう実験だった
でもあれだ、先に伏線考えると筆が進まなくて困る
そのくせ木の実を準備する下りとか書き忘れてたり

伏線は仕込むものじゃない 適当に投げて後から拾うものだ by作者

しかし塩梅が難しい 流れのまま書くとどうしても薄くなったり辻褄が合わなくなったり
書いときゃよかったなあと思うネタも多々あったり

そもそもなんで小説書いてんだろ? 最初童話って書いてなかったっけ?
まあとりあえず完結まで頑張るので
 ▼ 184 タモン@こわもてプレート 18/03/07 22:04:04 ID:cbFyZLvA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キノココ「……う、ん ……ここは?」

目を覚ますと、知らない天井が目に入り戸惑う 壁も天井も岩肌だ

何をしていたんだっけ? 何で知らない場所で寝ているんだろう ――そうだ

キノココ「皆は!? 彼奴等は、どうなったんだ!?」

寝起き特有の記憶混濁から覚め、慌てて飛び起きる と

エネコ「あ、起きた 体調は大丈夫?」

心配そうな表情のエネコが傍にいて、また驚く

エネコ「あんた、三日も寝てたのよ? 無茶のしすぎよ、もう」

キノココ「三日……? そうなのか…… えと、あれからどうなったの? ここは?」

エネコ「ここは、警察の人が用意した岩場の“ひみつきち”らしいわ
    あの後、気絶した私たちをこの場で手当てしてくれたのよ
    プラスル、マイナンはそこまで酷い怪我じゃなかったし、すぐ治ったわ
    私も、一応一日掛かったけどこうして元気よ 後はあんただけだったけど
    こうして目が覚めたなら大丈夫ね」

皆は無事、か お粗末な作戦だったけど、最悪の事態になったひとがいないなら良かった

エネコ「シンジケートの連中は踏み込んだ警察隊が軒並み逮捕したようよ
    迷路山もしばらくは封鎖でしょうね 今も警察の方が出入りしてるわ
    大手柄だって言うことで、感謝状みたいなものの授与もあるそうよ」

キノココ「感謝状……? そんな話になってるんだ なんか実感わかないな
     僕らはただ友達を助けに行っただけで 必死だっただけなのに」

エネコ「貰えるものは貰っときましょうよ それだけのことはしたと思うわ
    ああ、いけない あんたが起きたこと、皆に伝えないとね 行ってくるわ」

事件の顛末をある程度語ったところで、彼女は席を立つ

暫くして、彼女と一緒にあの時の刑事と医者らしき人物が入って来た

刑事「おお、気が付いたか この度は誠によくやってくれた 君たちのお蔭で……」

キノココ「いえいえ、そういうのいいです 僕達は友達を助けたかっただけです
     寧ろこっちが助けて貰ったことをお礼言いたいくらいで」
刑事「む…… 謙虚なのだな しかし本当に感謝している ありがとう」

医者「起きられたなら、一応念のため、検査しますよ 見た感じ、大丈夫そうですが一応」

キノココ「あ、はい お願いします」

簡単な検査や問診があったが 異常は特にないらしく 即日の帰宅も許可が出た
 ▼ 185 ルネロス@ヒコウZ 18/03/08 22:05:28 ID:.fY3oAm2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キノココ「助けて頂いて、ありがとうございました 失礼します」

刑事「こちらこそ 後日感謝状を進呈するので また連絡させてもらう」

エネコ「さあ、目が覚めたならあっち行くわよ」

キノココ「あっち……って?」

エネコ「茂みの“ひみつきち”よ 心配してたのはあたしだけじゃないんだから」

そう言われて気付く チリーンにも助けられたんだっけ

感謝の言葉も言わなきゃだし、元気な顔見せに行かなきゃ、か

キノココ「判った 行こうか」


キノココ「お邪魔します」

チリーン「あら、もう起きても大丈夫なのですか? キノココ」

キノココ「うん、大丈夫、だと思う お医者様からも太鼓判貰ったし
     ただ、そんなに長く寝てたとか実感なくてさ 戸惑いも大きい」

チリーン「ふふ、つまり異常は感じられないってことですね 元気なら良いのです
     お帰りなさい いらっしゃいませ」

穏やかに笑むチリーン 歓待の台詞を聞いたのはもしかしたら初めてじゃないだろうか

チリーン「先程エネコから連絡を貰いましたので、皆さんも集まってくると思います
     あ、ほら、早速」

マイナン「失礼するっ! ……あ! キノココ! 平気!? 元気!?
     ボクの所為で君が斃れて、起きないでいる間、ボクは、本当に、ボクは……」

入り口から、矢継ぎ早に言葉が飛んでくる マイナンだ 少し涙ぐんでいる

彼も無事だったとエネコが先程言っていたが、やはり聞くと見るとでは安心感が違う

キノココ「うん、ごめん 寝過ぎたよ 君も無事でよかった」

マイナン「この度は、妹を助けてくれて、ボクに助力してくれて、本当にありがとう!」

そう言って頭を下げる彼 しかしすぐに姿勢を戻し、声を出す

マイナン「ほら、お前もちゃんと前に出て 彼が助けてくれたんだぞ」

気付かなかったが、彼の背後に隠れているもう一匹のポケモンがいたらしい

礼は要らないが、顔は見せてもらいたいと、キノココは彼の背中をのぞき込む

プラスル「……/// あう/// あの、えっと……あの/// あ、ありがとう、ございました///」

キノココの視線に気づいた彼女は、真っ赤になってしまい、それでも何とかという感じで

感謝の言葉を口に出した 相当な恥ずかしがり屋さん、なのかな?
 ▼ 186 スモウム@バコウのみ 18/03/09 04:15:56 ID:4h8M5WLI [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 187 ュウ@がくしゅうそうち 18/03/09 07:27:28 ID:4h8M5WLI [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
早く見たい
 ▼ 188 ワムラー@たべのこし 18/03/09 23:55:39 ID:l8kklZm2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
プラスル「キノココさんって、お強いんですね…… そ、尊敬します///
     本当に、本当にありがとうございました 私、怖くて怖くて……」

キノココ「いやいや、そんな尊敬されるような者じゃない 無茶をし過ぎてしまった
     結果的にはみんな無事だったけど、そうじゃない可能性も大きくて
     反省しないと…… それに、僕も怖くて仕方なかったよ 平気にはなれない」

何であんな怖い奴らに立ち向かえたのか、キノココ自身判らなくなる

勇者なんて程遠い、ちっぽけな存在だ 尊敬される部分なんて見当たらない

キノココ「僕一匹じゃ何もできなかったよ、寧ろ君たちに助けて貰ってた
     だからありがとうは要らない 皆が無事ならそれでいいんだ」

感謝しなきゃいけないのはキノココの方だと素直にそう思う

プラスル「…………はい///」

そう告げると、彼女は真っ赤になって

しかし先程のようにマイナンに隠れるでもなく何か言いた気にもじもじとしていたが

ルリリ「お邪魔しまーす! キノココが起きたって本当!? あ、起きてる!! キノココ―!
    心配したんだよ! 今度は盗賊も退治しちゃったんだって!? すごいすごーい!」

キノココが彼女に声を掛ける前に、新たな闖入者が現れた

ゴクリン「やあ、キノココ、おはよう お疲れ様」

ルリリ「あ、その子が話題のプラスル? こんにちは 宜しくね あれ?」

プラスルはすぐにマイナンの背後に隠れてしまう

ルリリ「あらら、嫌われちゃった?」

マイナン「大丈夫だと思うよ “控え目”でちょっと人見知りの気があるだけ」

プラスル「………… 宜しく、お願いします」

ゴクリン「まあ、仲良くやろうよ 折角集まって、知り合えたんだからさ」

エネコ「そうね 最近は知り合いがどんどん増えて、ちょっと楽しいわ」

ゴクリン「そーだねー キノココには感謝しないと」

不思議と、この集まりはキノココが中心なのだ 恐縮である


チリーン「ここも、大分賑やかになってしまいましたね…… ……」

キノココ「僕の所為、かな ごめん ここは君の場所なのにね」

チリーン「ふふ、大丈夫ですよ 夕刻までなら、自由にどうぞ」
 ▼ 189 イティ@ピンクのバンダナ 18/03/10 06:37:24 ID:uXsQZ4A6 NGネーム登録 NGID登録 報告
支援

おもしろいです
 ▼ 190 直、どう書くか、悩んでる 18/03/10 22:58:02 ID:Sf8jeNBA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キノココ「そういえば、“ひみつきち”ってここだけじゃないんだね」

チリーン「そうですね 色々なところにこの空間はありますよ」

キノココ「へえ、そうなんだ 刑事さんの所とこっちでは大分違った気がしたから
     ちょっと不思議に思っちゃって」

エネコ「そうね なんかこっちは、ふわふわ? してる」

マイナン「材質の違いなのかな? あっちは岩で、こっちは植物だし」

二匹も話に混ざってくる キノココとしても少し気になっていたことだ

チリーン「それはまあ、木の上、岩壁の奥、土塊の中、茂みの下、と
     空間によって違いはあります 間取りも違いますしね
     更には家具など配置物によって“ひみつきち”の様子は千差万別でしょうね」

エネコ「“秘密の力”とやらがあれば、誰でも開けるって言ったかしら?」

チリーン「ええ、既に他者が開いた場所でなければ、大体どこででもできますよ」

エネコ「あたしにも教えてくれない? “秘密の力”って奴を」

チリーン「ええ、まあ、構いませんが」

ルリリ「え? “秘密の力”ってそんな簡単に教えていいものなの? 秘伝とかじゃなくて?」

技名からしてシークレットなものかと思いきや

チリーン「結構誰でも覚えられるみたいですよ? 何が“秘密”なのやら判りませんが」

とのことで

ルリリ「それなら、私も覚えたいな いいでしょ?」

ゴクリン「ずるい ぼくも覚えたい」

チリーン「それでは、皆さんに教えるとしましょうか  技の使い方は――」


彼女の講義は夕暮れ前で終わり、誰も技を覚えきれないまま解散した

エネコ「中々難しいものね すぐに覚えて自分の“ひみつきち”を作るつもりだったのに」

ルリリ「回りの自然を利用するだとか、珍紛漢紛だよね まだ覚えるの先になりそう」

泉の組は反省会をしながら帰るらしい 女の子同士仲良さそうだ でも、あれ?

キノココ「エネコってずっとルリリのとこにいるの? 元々は別の場所に棲んでたんだよね?」

エネコ「んー その話はあまりしたくないわ 勘弁して?」

キノココ「え? あ、うん ……ごめん」

エネコ「気にしなくて良いわよ 私は大丈夫 暗くなる前に帰りましょ?」
 ▼ 191 りま、書いてみる 18/03/11 23:09:19 ID:1XRf2DNU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そういえば、彼女はあの時、傷ついて“ひみつきち”に辿り着いたんだっけ

ルリリと泉の話題に囚われてしまって、プラスルと迷路山の話題が続いて

未だに彼女の話は聞きそびれていた こちらから聞くべきなのだろうか?

それとも、お節介などせず自分から話してくれるのを待つべきだろうか

どちらにせよ キノココ等に解決できる話とは限らないのだけれど……


モヤモヤと考え事をしながら、彼女たちを泉まで送っていく道中

なにやら此方を向いて驚いた顔をしたポケモンが居て

「……エネコ、様? エネコ様じゃないですか!! 今までどこに!?
 いえ、良いです ご無事でいらしたのですね!! ああ、良かった 良かった……」

何やら感極まったように泣き出してしまった それなのに

エネコ「……知らないわ 人違いじゃないの? さあ、行きましょう」

彼女はそっけなく立ち去ろうとする 苦虫を嚙み潰したような表情は、
明らかに無関係なんかではありえないだろうに

ルリリ「へ? ええと、これどういう状況? 貴方は誰? エネコとどういう関係?」

小間使い「すみません、申し遅れました 私、小間使いをしているヤジロンと申します」

ルリリ「小間使い? エネコの? もしかして、エネコって実はお嬢様?」

小間使い「いえ、私はエネコ様の婚約者で在らせられるブーピッグ様の下で働いています」

ルリリ「ブーピッグって…… 貴族様じゃない!? 大金持ちの!! 婚約者だったの!?」

初めて明かされた話に、仰天を隠しきれないルリリ それに対してエネコは

エネコ「……そっちが勝手に決めただけじゃないの あたしの意思なんて関係なく」

やはり暗い顔をしたまま、顔を逸らして苦しそうに呟く

小間使い「お屋敷を出てから行方不明になられたと聞いて、心配しておりました
     我が主様もずっと、食事も喉を通らない程でして
     エネコ様、どうかお戻りください 主様が待っておられます」

彼の懇願に対し、彼女は拒絶を繰り返す 一体、何があったのだろう 一先ずは

キノココ「……すみません お引き取り願えますか 貴族様が心配してるのは判りますが
     彼女の気持ちを無視するのは違うと思うんです」

状況が解らない以上、下手なことは言えないがこれくらいなら許されるだろうか

小間使い「ですが! ……すみません 焦り過ぎは良くありませんね 判りました
     後日、またお話させて頂こうと思います 今度はブーピッグ様も」

どうやら、引き下がってくれるらしい

先延ばしでしかないのかもしれないけど これでいい、のかな?
 ▼ 192 ブンネ@めざめいし 18/03/13 23:56:59 ID:erhhgk7s [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エネコ「…………さっきはありがと、キノココ」

泉まで行ってようやく腰を落ち着けた辺りで、彼女が口を開く

いや、それはいいのだけれど 礼などより

キノココ「ええと…… 説明してくれると嬉しいのだけど……?」

ルリリ「そうだよ! 全然ついていけなかったよ! どういうことなの?
    さっきの、どこまで本当のことなの?」

飲み込めない状況にモヤモヤは強くなる一方

色々、聞きたい 訊いていいものかどうか迷っていたけれど……

エネコ「……彼の言っていたことは、事実よ あたしは、貴族に見初められた婚約者
    すごいでしょ? 玉の輿よ? 財産を約束されたようなもんよ 羨ましい?」

ルリリ「羨ましい、けど…… なんていうか、その言い方だと……」

凄いこと、なのだろう しかし彼女に嬉しそうな様子はない

キノココ「逃げ出した、ってことでいいのかな 君はその待遇から ……どうして?」

小間使いは行方不明だと言っていた ずっと探していたと

しかし彼女は寧ろ意図的に雲隠れしていた様に見える 状況と言葉が擦れ違っているのだ

エネコ「誰も彼も、勝手なのよ だからあたしも勝手させてもらうことにしただけ」

彼女はそう答えるが

ルリリ「どういう意味? 難しくて、何言ってるか判んないよ?」

エネコ「……何から話したものかしら――」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

あたしは孤児院の出身で、余り裕福とは言えない環境の中育ってきたの

お嬢様なんかじゃないのよ 残念ながらね

ああ、別に不幸だったって意味ではなくてよ? そこそこ幸せだったわ

といっても勿論、孤児院というからには、ずっとはいられないのよ

いつか、里親になってくれるという大人が現れた

悪いポケモンではなかったわ 血の繋がらないあたしも大事にしてくれた

優しくて、ありがたかった

あたしは、そんな彼らの負担にならないようにって、親の仕事を手伝うことにしたのよ
 ▼ 193 オッキー@トポのみ 18/03/13 23:58:07 ID:erhhgk7s [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
うちの親は、貴族様の家に奉公していて、あたしが手伝いたいって言ったら喜んでくれた

それで、あたしも見習いとしてそこに奉公させてもらった

仕事をする上では特段問題らしい問題はなかったの ある程度は何でもこなせたのよ

仕事仲間にも恵まれた 親にも褒められたし、親の負担も減らしてやれた

何より、他者のためにできることがあるって言うのが結構嬉しかったりもしたんだ

貴族様も悪いポケモンじゃなくて 使用人たちもちゃんと気に懸けてくれる方で

順風満帆って感じだった でも、ある日を境にそれがちょっと変わっちゃったの

その日もいつものようにご奉公に出ていたのよ 仕事も慣れてきたし、楽しくやってた

貴族様は単純に労ってくださろうとしたんでしょうね 何の気なくあたしに触れて

メロメロ状態になった まさかそれで発動してしまうなんて油断していたわ

油断してなかったら避けられたかは判らないのだけれど……

兎に角、一介の使用人に過ぎないあたしが貴族様に求婚されてしまった

あたしは怖くなって一度彼の前から逃げ出したわ 『メロメロ』はそれで解けた筈だった

なのに、次に会った時も彼はあたしに執着を示した 「初恋」だった そう言って

勘違いだってことを必死に説明するのに、彼は聞き入れず

あたしに何度も声を掛けてきて、あたしに何度も触れようとしてきて

……触れようと、してくるのよ 何かおかしいと思うでしょう?

それで悟った 彼はあたしが好きなんじゃなくて この体質に魅せられているんだって

知ってる? メロメロ状態になると脳内快楽物質の分泌が促進されるらしいわ

要は天然の麻薬ね 彼はそれに取りつかれた

なのに、恋愛なら良いものと捉えられるから不思議よね 周りの大人たちは祝福ムード

あたしの親も、例外ではなかった 貴族様が良い方だっていうのはそうなのだし

経済的にも何不自由なく過ごせる未来が約束されているのだから 当然
それが幸せだって考えも判るわ 彼や親たちの意向で婚約が結ばれたわ

素敵よね 孤児院出身の普通の娘が由緒正しき貴族様に見初められるの

絵本になってもおかしくないロマンス 本当にあたしを愛してくれるのだったら、だけど
 ▼ 194 ガボスゴドラ@ラティオスナイト 18/03/14 00:04:43 ID:IcGyP5SU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
それに、貴族様は高貴でありながら誰に対しても紳士的で、多くの方から人気があって

勿論、異性からもよ 彼のお嫁さんになることを夢見ていた少女は多くいたらしいわ

なのに当の貴族様がぽっと出の使用人風情にお熱になって

彼女らからすればこんなに面白くない事態はないわ あたしは目の敵にされることになる

始めは、ただの蔭口だった 気にしないでいると、直接文句を付けられて

そのうち、仕事場にも影響が及んできた あたしの仕事だけやけに面倒なものにされたり
量を増やされたり、悪意的な邪魔が入ったり

身に覚えのない失敗を押し付けられたこともあったわ

どんどんと嫌がらせは苛烈になり、あとの方になると直接的な私刑とそう変わらない物に

ただ、目立つようなことは一切なく陰湿にやられたせいで貴族様は気付いてなったみたい

そりゃそうよね 彼や大人たちに気付かれるようでは彼女らも本末転倒だもの

……助けを求められないくせに、助けがないことに絶望していたわ

何でこんな目に遭わなくちゃいけないのか 直接訊いたこともあったわ

色々誹謗中傷も交じってたけど、返ってきた答えを要約すると

「地位が低いくせに彼の婚約者に収まったから」らしいわ

あたしが選んだことじゃないのに、勝手に好かれて、勝手に嫌われて 追い立てられて

もう何もかも厭になって 逃げだして

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

エネコ「それで、あの日“ひみつきち”に辿り着いたって訳
    結局、だれも『あたし』を見てくれる奴なんていなかったのよ
    詰まらない話を 態々ご清聴ありがとうございました なんてね?」

重い話をしたという自覚があるらしく、彼女は態と軽くおどけて言う

でも、こっちは圧倒されて、言葉を失ってしまう

ルリリ「泉に留まる時、元の棲み処のことを話さなかったのってそういうことだったんだ」

エネコ「まあね 辛いこともあったし、勝手に逃げた負い目もあるわ」

彼女は気丈に振舞う しかし平気なわけではないのだろう 震えていた

彼女は苦しんでいるのだ キノココには何ができるだろうと考え、悩み、

エネコ「なんか難しい顔してるわね やっぱり話すべきじゃなかったかしら?」

逆に心配させてしまった ……申し訳ない

けど、後日と彼は言っていた いずれ彼女にはその問題が突きつけられるらしい

キノココは、仲間の重荷を背負ってやりたいと思うのだ
 ▼ 195 コッチ@するどいキバ 18/03/14 00:09:15 ID:WNLOQ/Sc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 196 ノンド@インドメタシン 18/03/16 00:07:59 ID:LxIUiYvg [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
結局、その日は辺りも暗くなっているということもあって帰された

一夜悩んでみても、答えらしい答えを見いだせず、翌日を迎える

心配はしていたが、一日ですぐに貴族の使者が現れることはなかった

時間は、ある 考えを纏める時間は 十分だ

キノココ「と、言う訳で 『メタグロスの知恵』を借りようか」

チリーンの“ひみつきち”にまたみんなで集まって来た

エネコの了承の元状況も説明済み 少数で考えていい案が浮かばないならどうするか

複数で考えればいい 単純だが合理的な話だ

ルリリ「エネコ自身はどう思ってるの? って聞きそびれていた気がする」

エネコ「え? あたし?」

ルリリ「エネコの気持ちが解らないと行動方針も決まらないでしょ?」

エネコ「……ええ、そうね あたしは正直、関わりたくないわ 傷つくだけだもの」

マイナン「誰も『エネコ』を見ない、だっけ 当の婚約者は体質に目が行って
     他の者は貴族の婚約者とだけ見てるのか…… 確かに、辛いね」

プラスル「でも、会いに来ちゃうんですよね? その、貴族の方……」

エネコ「……勘弁してほしいわ あたしはただ平和に生きたいだけなのに……」

キノココ「ブーピッグについては? 想いを寄せられて、どうなのかな?」

エネコ「……迷惑よ 雇い主だから、感謝はしてるけれど、それ以上はないわ」

キノココ「エネコの方からは恋愛感情はないんだ 良かった」

プラスル「……え!? そ、それどういう意味ですか!?」

キノココ「いや、単純に、そういう気持ちがあったなら、問題が複雑化するなあ、と」

プラスル「あ、そ、そうですよね…… ちゃんと問題を確認して、
     一つ一つ解いていかないとですもんね…… すみません 話の腰を折って」

キノココ「まあ、いいんだけど となると問題は基本的に『婚約してること』になるかな?」

エネコ「関わらなければそれで解決と思っていたけど、婚約破棄ってのも一つの手段ね」

チリーン「……あなたが“秘密の力”を覚えたがったのは、逃避のためですか?」

エネコ「“ひみつきち”があれば彼らに見つからずにいられるかしら、と考えたのは事実よ
    その前に見つかっちゃったけどね」

自嘲気味に笑う彼女 それに対し、チリーンは穏やかに笑う

チリーン「それはそれで一つの解決法ですよ」

エネコ「ありがと でも逃げるのも諦めるけどね 皆もいるし きっと何とかできるわ」
 ▼ 197 リミアン@あおいかけら 18/03/16 23:33:18 ID:LxIUiYvg [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キノココ「けど、どうしたものなんだろうね」

チリーン「婚約って、つまり契約ですから、一方的に破棄ってできませんからね」

プラスル「エネコさんの方は結婚する意思がなかったのに、
     婚約が結ばれたのって不当じゃないですか? そこを突けばよいのでは」

エネコ「そうかもしれないけどね 回りが盛り上がってしまっていて
    あたしの一存では覆せるかどうか……」

色々考えてはみるものの、やはりいい考えはすぐには出てこない

ゴクリン「婚約者、婚約破棄…… 逃避? うむむ、難しい言葉ばっかり……」

マイナン「簡単な解決方法ってないかな…… こう、ぱあっとやれそうな」

ルリリ「そんな簡単に行けたらいいんだけどね 難しい問題だから……」

エネコ「一筋縄じゃ行かないわよね 変なことに巻き込んじゃってごめんね」

ルリリ「友達のために一肌脱ぐのは当たり前でしょ そんなかしこまらないで」

プラスル「私達はエネコさんに助けて貰いました 御恩返しをさせて下さい」

マイナン「勿論、ボクも といってもなんか力になれてない感…… 無念」

暫し沈黙が落ちる 考えは巡る 巡る そして不意に彼が匙を投げたように呟いた

ゴクリン「もう、エネコには他の連れ添いがいるってことにしない?」

ルリリ「……え? それってどういう? ってか、アリなの?」

マイナン「嘘も方便とは言うけど…… そんなやり方で婚約者が納得するかな?」

ゴクリン「相手次第でしょ そりゃそんじょそこらのポニータの骨じゃ納得しないかもね
     でも泉の荒くれを退けて、闇のシンジケートの逮捕にも貢献した英雄なら?」

え、ちょ? ゴクリン? どっかで聞いたようなフレーズ並べ始めたけど…… まさか?

エネコ「……諦めてくれるかも そうね 元々あたしに好意はなかった訳だし
    その嘘を押し通したうえでそこを突けば、婚約破棄ぐらいは……
    ねえ! キノココ! あたしの我が儘だけど、付き合って!」

キノココ「………… はあ、やるしかない、か」

正直、騙すようなやり方はしたくないんだけど 代案があるわけでもない

それに、第一に考えるべきは見知らぬ貴族ではなく仲間の彼女だ

覚悟、決めようか
 ▼ 198 ジョフー@ひみつのカギ 18/03/16 23:33:58 ID:6WH2Y1oc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
根気よく生きよ
支援
 ▼ 199 ジアイス@れいかいのぬの 18/03/17 22:56:40 ID:tDh.ga/A [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
翌日、善は急げとばかりに、使者を待つまでもなく

キノココとエネコは二匹だけで貴族の邸宅へ向かった 

下手に外野を増やさない方が、真摯な感じがして良いだろうと思ったのだ

ただ、気にかかるのは隣に立つエネコの顔色が悪いことだ

キノココ「……やっぱり、無理してるんじゃない? 日を改めようか?」

エネコ「いえ、だ、大丈夫よ ここが正念場、逃げないって決めたもの」

口では強がっているが、やはり、心的外傷に向き合うのはすごく辛いことだ

逃げたとして責めるつもりはないのだけど……

キノココが決断を見守っていると、彼女は一つ深呼吸を置いた後、来客用の鐘を鳴らし

エネコ「お邪魔するわ 挨拶に来たのだけど、ブーピッグはいらっしゃる?」

震えを押し隠しながらも気丈に言い放った

その声を聴き、邸宅の大きな門から飛び出して来たのは

貴族紳士「エネコ!! 今までどこに!?  心配したぞ!!」

エネコ「ブー、ピッグ…… ごめんな、さい でも…… あたし……」

執事や使用人ではなく、誰あろう主本人だった

貴族紳士「――心配、したんだ……!! エネコ…… 俺は……」

エネコ「――――ひぅ……!」

キノココの背に隠れて縮込まった彼女を前に固まった

貴族紳士「済まない…… …………だな」

何かしら小さな声で呟き複雑そうな顔をして、こちらに目を向けた

貴族紳士「ところで、そちらの彼は?」

エネコ「え、えっと、こっちはキノココ、よ 最近色々事件を解決してる……」

貴族紳士「ああ! 噂は予々、お会いできて光栄だ」

キノココ「お初にお目にかかります、ブーピッグ様 少々折り入った話がありまして……」

キノココが話し出そうとすると、貴族は手をかざして苦笑する

貴族紳士「あまり客人を立たせておくわけにはいきません こちらへどうぞ」

案内に従い キノココ等も邸宅の中へ入った
 ▼ 200 ルトロス@はっきんだま 18/03/17 22:57:54 ID:tDh.ga/A [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
貴族紳士「さて、先程は失礼したね お恥ずかしい」

応接間と覚わしき豪華な部屋で落ち着けたところで、話に入る

キノココ「ブーピッグ様 貴方はエネコさんの婚約者、でしたよね?」

貴族紳士「…… その通り 婚約者なのだよ それが?」

キノココ「僕はエネコさんとブーピッグ様の、婚約を解消して頂きたいのです」

貴族紳士「ふむ? それは一体、どういった理由があってかな?」

キノココ「そもそも、エネコさんには婚姻の意思はなかったらしいのです ですから……」

出来る限り、嘘を吐かない範囲で話が進められればいいと思う
気分の問題もあるが、単純に収拾が付かなくなる危険を避けるために

貴族紳士「……それは本当かい、エネコ? 俺のことは好きじゃない、と?」

エネコ「……ええ あなたのことは嫌いではないわ でも、『そういう』相手には、
    見れない 婚約したのは回りが大きく動き過ぎた所為で、あたしの意思じゃない」

その発言に、彼はその顔に衝撃を浮かべた

貴族紳士「そんな…… …………
     ……こんな言い方は狡いかも知れないが 婚約のことは周知されている
     今更間違いでしたと言って取り消せるものでもない 考え直す気は……?」

エネコ「……! ブーピッグ……?」

貴族紳士「体面というものがある 取り分け俺みたいな立場だとね ……それに
     俺はやっぱり、君を諦められない 既成事実に頼ってでも、繋ぎ留めたい
     この気持ちを偽るのは、難しい」

駄目か…… 単純な交渉ではどうにもならないらしい

はてさて、彼の気持ちは本物か、作り物か これは、見極めるのは難しいかもしれない

もし本物だとしたら…… いや、どちらにせよ諦めて貰わないと、か

第一に考えるのは、貴族でなくエネコにすると決めたのだから

キノココ「……実は、僕とエネコさんは恋仲にあるんです 黙っていて申し訳ありません」

貴族紳士「……そうきたか いや、成程 それで二匹並んできたわけだ」

キノココ「婚約中に不躾で申し訳ない しかしながら、狡い言い方ですが
     彼女に婚約の意思はなく、ならば無効であると言える
     ただ、体面上は婚約中に別の異性と浮名を流すのはよろしくないでしょう
     それで、この度は不躾なりに筋を通そうと思い参上した次第
     どうか、エネコさんのために婚約を解消して頂けませんか」
 ▼ 201 援感謝 頑張る 18/03/17 22:59:24 ID:tDh.ga/A [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
貴族紳士「筋の話を持ってくるか…… こちらの良心に期待してるつもりかな?
     でも俺の方の体面は気にかけてくれてないんだよね 一方的だ
     先程も言ったように、既成事実も利用するような男に良心の呵責は屁でもない」

エネコ「つまり、……認めないってこと? そんな……」

キノココ「……判りました そっちの方向は諦めましょう
     では、『メロメロ依存』について話しましょうか」

貴族紳士「依存? これまた穏やかでない話だね 俺がそうだって?」

キノココ「違うのですか 彼女はその可能性があると怯えているのですが……」

貴族紳士「君はどうなんだい? 君も♂だろう?」

エネコ「な!? あたしは、キノココをこの体質でなんか――」

まるでキノココを操っているかのように言われて激昂する彼女
しかしキノココは手を翳し抑える

貴族紳士「済まない 意地悪なことを言ったね ただ少し気になっただけだ
     ふむ、質問に答えるとするなら、判らない だね
     確かに、メロメロになった時の幸福感は忘れられない
     でも、エネコに対する気持ちは嘘ではない 本気で好きだと言える」

キノココ「好きなのに、彼女の意向は無視して結婚する、と?」

貴族紳士「好きだからこそ、俺の手で幸せにできる可能性を模索したいのだよ」

キノココ「依存心で作られた虚構の愛でないという証明は?」

貴族紳士「どう証明しろと? 形のないものを取り出して示せとはまた難解な
     何をもって本物とするかなど、他者に決められる謂れはないぞ」

それもそうだ 心の奥底なんて分かりっこない でも

キノココ「……エネコさんに本気で拒絶されたら、どうしますか?」

貴族紳士「悲しいことだが、離れるしかあるまいな」

不意の質問に即返される言葉

こうして言葉を交わすことで、なんとなく、彼のことは判った気がした

しかしそうなってくると、やれることは一つになってくる


キノココ「よろしい ならば戦争だ!」

結局、バトルするのがポケモン、なのかもしれない
 ▼ 202 援感謝 頑張る 18/03/18 04:50:39 ID:ROcTOOwg [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エネコ「え、ちょ……!? な、何でそうなったの……!?」

余りにも脈絡なく発せられたキノココの言にキノココの言に彼女は慌てだす

貴族紳士「……もう話す必要はないってことかな?」

キノココ「はい ブーピッグ 貴方にエネコを懸けての決闘を申し込みます」

貴族紳士「ふむ、受けて立とうじゃないか 英雄の手腕、拝見させていただく」

しかし、それでもやはり彼は乗って来た

エネコ「……全然、ついていけない 何でそんなに血気盛んに……?」

キノココ「お互い譲れないものがあるというなら、ポケモンバトルしかないでしょう?
     『敗者は勝者に』って奴ですよ これほど解り易い理屈もない」

貴族紳士「一匹の♀を巡って二匹の♂がぶつかったら、当然の話だ」

エネコ「あたしには判んないわ、その理論 ♂じゃないし
    っていうかキノココ、勝てる前提で話してない? やけに自信あり気だけど……」

貴族紳士「ほう……? 俺もそこそこ鍛えている方だと自負しているが?」

キノココ「……さあ? こればかりはやってみないと解りませんね」

エネコ「ちょっと! 負けたらどうすんのよ! あたしはあんたと…… そ、その……
    こ、恋仲……なのに/// け、結婚だって考えてるんだからね!」

うん 照れないで欲しいな 『設定』だって判っていても照れちゃうから

エネコ「(あんた、バトル苦手だったんじゃないの!?)」

それはそうなんだけど、このバトルはやらなきゃならないのだと思う エネコのためにも

貴族紳士「話は終わった? あんまり俺の前で仲良くしないで欲しいな 妬けちゃうよ?」

キノココ「すみません それで、バトルのことなんですが、ここでじゃなくて……」

貴族紳士「ああ、今すぐは止めておこう 君にも準備があるだろうし
     折角だからギャラリーもいた方が盛り上がる 明日ならいいかな?」

キノココ「急ですね 僕は何時でもいいですけど、集まりますか?」

貴族紳士「明日は休日だ 来て欲しい面々は多分予定開いてるだろうし
     『有力貴族VS話題の英雄』という企画だ しかも♀を巡っての争い
     集まらない方が不思議なくらいだね」

キノココ「そっちのことは任せますよ ……戦闘形式について詰めましょうか」

貴族紳士「と、いっても、公式戦の通りではあるのだけどね」

キノココ「真剣勝負なんですから、少しの勘違いもなくしておきたいですね」
 ▼ 203 ゲハント@ていこうのハネ 18/03/18 08:56:08 ID:EHydCa9w NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 204 ンターン@ライトストーン 18/03/18 16:16:06 ID:ROcTOOwg [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
貴族紳士「バトルは、決闘の名の元に1VS1のシングルバトルで、参加者は二匹だけだよ
     このとき、道具の持ち込みは一つに限り有りとしよう
     うん、後は技の数だね 規定通り先に申請した4つに固定」

………… 確認は大事だ 齟齬があってはいけない

彼の話を聞く限り、大体公式ルールそのままらしい 違うのは本当に1VS1であるくらいか

貴族紳士「――といったところかな 判ったかい?」

時折区切りながらも、明日について打ち合わせていく

さて、どう切り出して、どう話せばいいのやら…… こう、かな

キノココ「本当ならシングルは3VS3ですが、決闘ですしね……
     嘘偽りなく、当事者同士の一騎打ちですから……
     しかし、折角集まって頂くのに盛り上がりに欠けるかも知れない……」

エネコ「心配するとこそこぉ!? 何でキノココが企画倒れを気にするの!?」

彼女はもはや理解不能な生物を見るような眼をしている……

キノココの発言はやはりおかしいと思えたのか貴族も意外そうに笑った

貴族紳士「まあ、そうなんだろうけど、別に気にする必要は……
     実際、俺と君で彼女を掛けて決闘ことが最優先事項となる
     この際、回りの反応はあくまで二次的な要素だね」

……バトルが最重要項目となるか これは、技選択も吟味しないといけなさそうだ

エネコ「……あたしの人生の分岐点を、そんなことに……?」

彼女は納得いかないというように俯いてしまった

気持ちは判らなくもない こんな茶番めいた形で見世物にされるのはキノココなら嫌だ

しかし、ここまで話が大きくなっている以上、仕方ないと諦めて欲しいところだ


――――そして、翌日 宣言通り大勢のギャラリーが集まっていた

キノココも貴族紳士も準備を済ませてフィールドに向かう

負けた方はエネコから手を引くことになるのだ 彼女のためにも負けられない
 ▼ 205 ガレックウザ@ブロムヘキシン 18/03/19 16:34:52 ID:DsJA0h0E [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
司会「レディーース!! エーーン!! ジェントルメーーン!!
   急な開催にも関わらずこんなにも集まってくれて本当にありがとう!
   さてさて、これから始まるのは一匹の♀を懸けた雄と雄のぶつかり合いだー!!」

マイクを持ち客を煽るような台詞を叫ぶ男に回りから沢山の声が返る

一試合しかないというのに、大変盛況なようだ ……申し訳なく思ってしまう

やはり、対戦カードの特殊さが客寄せに繋がったのか

司会「ではまず、当のレディたる彼女から紹介しましょう!
   彼女こそ、彼らがぶつかり合う定めとなった原因! 罪深き♀! エネコ!!
   エネコは元々貴族邸宅で働いていて、そこで主の貴族たるブーピッグに見初められ
   婚約を結ぶことになったが、逃亡 長いこと行方知れずになっていて――」

長口上が続く 観客の反応は上々なようだが、こちらとしては複雑だ

あまり色々明かすのはよろしくないのではないだろうか

24時間もなかったと思うのに、3匹分も口上作って来たのだろうか

早く試合を終わらせてしまって立ち去りたいというのが本音であり
名が知られ過ぎたり上がったりするのは望まないのだけど……

司会「では、そろそろ参加者にも登場して貰いましょう! 言わずと知れた有力貴族!
   財も才も持っている羨ましいあんちくしょう!! ブーピッグだー!!」

歓声はより大きくなる 彼の関係者も多く呼んであるといったけど、それ以上だと思う

やはり彼は民衆にも人気があるだろうなと感じた

主催者であり貴族である彼の紹介は短く、代わりにこの試合することになった経緯などを

司会の口上は告げていく そしてそれが終わり、やっとキノココが呼ばれる

司会「そしてもう一匹、貴族と彼女を取り合う存在! キノココだ―!」

上がる歓声 しかし今度は疑問の声も多く飛んでくる

何でこんな弱そうで小さなポケモンが、と 苦笑してしまう

しかし、司会の口上がキノココの功績を語っていくうちに完成はどんどん強くなってくる

それを聞き流しながら客席を見渡す 特に盛り上がってる席に泉の面々やゴクリンがいる

貴族側の方たちは少し詰まらなそうだ キノココに期待してるものは誰もいない

らしくもなく緊張してしまいそうになり、深呼吸した 大丈夫だ


貴族紳士「力量差があるのに逃げずに来てくれてありがとう」

キノココ「……判ってるなら、お手柔らかにしてくれると助かりますね」

貴族紳士「くく 謙遜しないでいいよ さあ、堂々と戦って見せようじゃないか」

キノココ「……上手く勝って見せますよ」


司会「心の準備も終わったかな!? さあ、真剣なる勝負!! 正々堂々と!! ――開始だ!!」
 ▼ 206 マコブシ@こだわりハチマキ 18/03/19 23:02:51 ID:DsJA0h0E [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
目論見は成功 相手の“飛び跳ねる”はキノココから外れた位置に当たった

先程言われたように、キノココと彼では力量が違う

キノココは一先ず相手の隙を見つけようとじっと動かずに見極める

緊張感からか、回りの声が遠くなった気がした

貴族紳士「来ないのか? ならばこちらから攻めさせてもらうぞ “サイコウェーブ”」

キノココ「――!!」

迫ってくる波のような攻撃を辛くも回避する しかし相手は手を休めない

貴族紳士「“サイコウェーブ” そら、もう一発!」

二発目、三発目と続けざまに撃ってきて、そのうちの一発はキノココを捕らえた

キノココ「――ぐ、う…… まだまだ!」

貴族紳士「ほう、耐えるか 運がいいな あまり強くない波に当たったようだ」

“サイコウェーブ”は威力が変動する不思議な技 動きも変則的で避けるのも難しそうだ

そう何度も幸運は続かない こちらからも攻めなくては

麻痺効果で相手の動きを制限することを狙い粉を出す

キノココ「“痺れ粉“!! ――え!? わ!!」

が、相手に掛かった粉は何故か弾かれてキノココに降り注ぐ

貴族紳士「“マジックコート” 君みたいに攪乱する技を多く覚える相手には覿面の技だ
     君と戦うにあたって一応と思い申請したが 正解だったようだね
     これを警戒して変化技は撃って来ないものと思っていたが、浅はかだな」

キノココ「申請してない可能性に賭けたのですが…… 失敗ですね
     だったら、そちらにかけるのを止めるだけです “成長”!!」

粉が戻ってきたのには少々驚かされたが、キノココは草タイプだ 粉は効かない

すぐに立ち直り、技を出す 今度は自分に掛ける変化技だ

貴族紳士「ほう それなら“マジックコート”は関係がないな
     どんどん行くぞ “サイコウェーブ” “サイコウェーブ”」

キノココ「……くぅ、はっ! 当たって、堪るか!」

二連続で飛んでくる攻撃を後ろに飛んだり逆に前に走ったりして何とか避けてみせる

キノココ「ちょっと掠った…… けど、まだいける! “成長”!」

そして間隙を見て技を使い、力を積む 力量差を埋めることが重要だ

貴族紳士「ちょこまかと…… 的が小さくて“サイコウェーブ”が当たり辛いな
     力量の差は有れどあまり積まれるのはよろしくない これで終わらせよう
     弱点の攻撃が、君に耐えられるかな? “飛び跳ねる”」

相手の ブーピッグ は 空高く 飛び上がった
 ▼ 207 ルジーナ@エドマのみ 18/03/19 23:04:12 ID:DsJA0h0E [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キノココ「“飛び跳ね”てる間に積ませてもらいますよ “成長”!」

彼の使った技は攻撃するまでに大きな間がある 更には大振りだ

ちゃんと見ていれば避けるのは容易だろうと考えた

貴族紳士「――そんな余裕があると思ったかね?」

キノココ「――っ!! な! うあああっ!!」

いつの間にか空高く飛び上がった筈の相手の攻撃が、キノココを打ち抜いていた

予想より速かったとかそんなレベルじゃない これは、短縮された?

貴族紳士「気が付いていなかったようだね 持ち物は一つ有りだといったじゃないか
     俺が持っていた道具はパワフルハーブ “飛び跳ねる”などの技を短縮する
     ……これは、やり過ぎてしまったかな?」

効果抜群の技を受けたキノココは大分突き飛ばされてしまった ダメージが大きい だが

貴族紳士「何!? まだ動けるのか!! 効果は抜群だったはずだぞ!」

キノココ「痛かったですよ でも、持ち物は一つ有りですよね 使っちゃいました
     抜群な飛行技を半減する、バコウの実をね それと、良かったんですか?
     僕に対して直接攻撃なんかして……」

貴族紳士「バコウか やられた…… く…… あ……れ……? Zzz……」

悔しそうに歯噛みした相手は、しかし何の脈絡もなく眠りだしてしまった

いや、その言い方は正しくない キノココの特性が発動したのだった

“胞子”は接触攻撃してきた相手を襲う “マジックコート”があったとて関係なく

キノココ「さて、眠っている間に攻撃させて貰いますよ これも戦術の内です
     卑怯とか言わないでくださいね “ギガドレイン”!」

安全なうちに確実なダメージを与えつつ回復を狙う

だが、倒しきることも回復しきることもないままに相手は目を覚ましてしまった

貴族紳士「ぐ…… 特性の効果か 見落としていたよ……
     だがそれも倒しきってしまえば関係ない バコウの実ももうないのだから!!」

相手はそう言い、飛びあがる ハーブももう使ってしまっているため普通のモーションだ

貴族紳士「さあ、とどめの一撃だ! “飛び跳ねる”!!」

回復したとはいえこの攻撃を当てられたら、立っている自身はない よく見極めて

そして下りてきたところを見計らい、技で迎える

キノココ「“飛び跳ねる”中に“マジックコート”はないでしょう! “痺れ粉”」

少し多めに粉を吹き出す 麻痺させる目的もあるが、視界を晦ませて避けるためでもある
 ▼ 208 ロア@たんけんこころえ 18/03/19 23:05:09 ID:DsJA0h0E [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
目論見は成功 相手の“飛び跳ねる”はキノココから外れた位置に当たった

更には相手は麻痺して動き辛そうにしている

キノココ「さあ、次で本当に終わらせましょう 僕の勝ちで」

貴族紳士「なめ、るな 最後の一撃は本気で行く! 俺が勝つ!!」

キノココ「――“頭突き”!!」 貴族紳士「――“思念の頭突き”」

両名渾身の一撃を打ち合う 相手は麻痺しているというのに気迫が凄い 押し負けそうだ

両者「「――――うぅぅおおおおぉぉぉぉ!!!」」

裂帛の気合を込めて叫ぶ 叫ぶ 力負けなんてしてない あとは――――

お互いの力は緊迫して、故にどちらも大きく弾き飛ばされた

両者倒れたまま暫しの間があって もぞり と立ち上がったのは


司会「――ブーピッグ、戦闘不能! よって勝者、キノココ!!!」


歓声が、爆発した

そう表現してもいいような熱狂だった

まさか、こんなにも白熱した戦いになるとは誰も予想していなかったに違いない

ましてや、キノココのような弱いポケモンが勝つなどと

キノココ自身、こんな死闘を演じることになるなんて思ってもいなかった


エネコ「キノココ!! あんた、凄い!! 勝った! 勝っちゃった!! あのブーピッグに!!」

勝利の余韻に浸っていた、というより単純に呆けていたら

特別席に座っていた筈のエネコに飛び着かれてしまった

キノココ「――うっ! 痛たたた!!」

エネコ「あ! ご、ごめん 傷だらけだもんね…… なにやってんだろ、あたし……」


そんな様子を冷やかされたり、勝利者インタビューなどを受けたり

バトルの後観客たちの盛り上がりが冷めず、そのまま祭りになったり 色々あった

中々なかなか大変だったけど、無事、約束通り勝って見せることが出来たのだ

めでたしめでたし、かな
 ▼ 209 ジアイス@ヒウンアイス 18/03/20 18:53:25 ID:Uiu7CvzY [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
祭りは大盛り上がりで、夕を過ぎるまで続いた

キノココやエネコといった主役たちは引っ切り無しにポケモン達に囲まれ

宴も酣になる頃にはもうへとへと ただ、悪いことばかりではなかった

皆、キノココ達のバトルを興奮した面持ちで褒め称えてくれた

それに エネコと貴族の婚約が解消されたのは公然の事実となった

その影響か、或いはその前の行方不明騒動があったからか、

エネコに、意地悪を働いた使用人仲間たちが謝りに来たりして

エネコ「今は許せるかどうか判らないけど、いつかまた仲良くできるといいと思うわ」

そう彼女が呟いていた言葉が印象に残った

辺りが暗くなったころ、ようやく解放されて一息つく

気を使ってくれたのか、ルリリやゴクリンたちは先に帰っていて二匹きりになる

エネコ「本当、よく勝てたわね 彼奴、結構実力あって強いのに……
    例えあんただとしても、キノココが勝つなんて思わなかった
    きっと皆そうだったでしょうね 痛快だったわ」

キノココ「そりゃそうだよ 力量的に勝てないのは事実だったんだから」

あっさり言ってしまうキノココに、彼女は不思議そうな顔をする

エネコ「……? でも勝ったじゃないの 何でそんな弱気なの?」

純粋な目で疑問を口にする彼女に、寧ろキノココの方が疑問になる

キノココ「弱気とかそんなんじゃなくて、事実だよ 僕は彼より弱い 圧倒的にね
     少なくとも、試合形式で真正面からぶつかったところで敵わないのは明白
     まあ、色々やりようがある場合はその限りじゃないけどね」

キノココの言葉に、彼女はまるで謎掛けされたように首をひねる

エネコ「? ? ? 真正面から正々堂々と戦ってたよね……? なのに勝った……?」

……気付いて、いなかったのか それでは今回のバトル、勝率の薄い博打に見えただろう

だからあんなに不安そうな顔をしていたのか 反省

全て終わった後だけど、いや、終わった後だからこそ種明かしと行こう


キノココ「――初めからブーピッグは、勝つ気なんてなかったんだよ」
 ▼ 210 マルス@あかいビードロ 18/03/20 19:12:08 ID:JtgInDa2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 211 ャランゴ@アンノーンノート 18/03/20 23:42:55 ID:Uiu7CvzY [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エネコ「えぇぇ!? 何それ!? 聞いてない! ていうか! え!? 何それぇ!!?」

エネコ は 混乱 している

エネコ「……えぇと、どういうことなのか、解り易く説明してくれない?
    あたしでもついていけるように、簡潔に、宜しく」

……そんなに自分を卑下して皮肉されると怖いのですが

キノココ「……真正面から正々堂々と戦ったら勝ち目がないというのはさっき言ったね
     なのに僕は勝った 試合形式で、真正面から
     それは何故かといえば、単純な話、正々堂々なんてやってないからだ」

エネコ「それが解んないわ あれだけの戦いの中で、どこら辺に細工があったのか」

キノココ「バトル中の細工なんて大したことないよ ただゼンリョクに見せるだけ」

エネコ「見せる? 演技だったって言うの!? あれが!?」

キノココ「……途中から僕は本気でゼンリョクになってたけどね 容赦ないな、あの方」

エネコ「……まあ、いいわ 良くないけど ゼンリョクに見せて戦ったのは解った」

彼女は頭が痛そうに顔を顰め、しかし先を促す

キノココ「バトルが始まってからは細工なんてそんな出来ない 回りには沢山
     ポケモンが囲んでるからね じゃあどうするかといえば、戦闘前しかない」

エネコ「戦闘、前……? ど、どういうこと?」

キノココ「僕等はバトルが始まるよりも前に、お互いの手札を晒しあった
     そしてある程度ゼンリョクに見えるよう戦いながら僕が勝つ筋書きを組んだ」

エネコ「八百長? でも、あんたと彼が二匹きりになったところなんてなかったわよね?
    何か企てる暇なんてなかったように思うのだけど?」

キノココ「昨日の打合せだよ 今日の企画のことを話しながら手の内を打ち明けてくれた
     『飛行技を打つからバコウを用意しろ』とか
     『“マジックコート”張るけどいいよね』とかね」

エネコ「い、いつの間に!? どうやって!?」

キノココ「暗号のような形で 僕もちょっと真似したけど、話しながら作るのは難しいね
     『特性“胞子”狙います 突っ込んで下さい』って あの時の、態とだよ」

エネコ「…………あの、“サイコウェーブ”なんかも?」

キノココ「出力抑えても、余り違和感のない技だよね 威力の変動の範囲だろうって
     しかも命中精度も甘くしてくれたし それでも結構きつかったんだよ」

キノココは自身の弱さを痛感する

エネコはもう、開いた口が塞がらないといった表情だ
 ▼ 212 イバニラ@ぼうごパッド 18/03/21 16:47:37 ID:Md3cnbY6 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エネコ「なんというか感心して損したって言おうとしたけど 別の意味で感心したわ……」

褒められた、というより呆れられてしまったようだ

エネコ「あれ? でも何で暗号なんて使ってたの? 別に普通に打ち合わせても良くない?
    あの場所にはあたしたちの他には誰もいなかった 使用人も下がっていたでしょ?」

キノココ「『壁のミミロル障子のメラルバ』を警戒してたって言うのもあるだろうけど、
     僕を試したっていうのが一番なのかな」

エネコ「試した?」

キノココ「エネコの相手役として、及第点に達しなかったら叩きのめされてたかもね
     それぐらいの気持ちだったんだと思う」

解読して、かつ即興で暗号を返して見せたことで認められたらしいのだけど

エネコ「何故? 勝つ気がなかったんでしょ? それってつまり、あたしのことなんて
    どうでもよかったんじゃないの? そもそも、何でこんな大事にしたの?」

疑問符が並ぶ 全部話すよ 君は知っておくべきだろうしね

キノココ「それは違う 彼が負けようとしたのは、君のためだよ エネコ」

エネコ「………… それって、どういう?」

キノココ「君が婚約の解消を望んだから、彼もそうしようとした
     でも、沢山の人に婚約をたたえられて、今更解消なんてできなくなった
     無理に強行しようものなら体面が立たなくなると考えたのだろうね

     この世界には、バトルの結果なら従う風習がある 何故かは知らないけども

     僕等にとっては幸いだった これで彼が立派に戦って、もし負けたら
     体面を潰すことなく円満に君との婚約は解消できる だから僕は勝負を挑んだ

     当然、彼は受ける そして『負ける』という既成事実を広めるため、
     ポケモンを集めようと企画を催した 堂々たる姿で負けて見せたんだ」

エネコ「そこまで考えて……? なんで、そこまでするの……?
    『負ける』っていいことじゃないでしょう? しかもキノココになんて
    そっちの方が面子が潰れるんじゃないの?」

キノココ「僕は『話題の英雄』らしいからね それに負けても恥ずべきじゃない
     って観客達には解釈されるんじゃないかな それも僕と戦った理由かな」

そうでなければこんな企画立てなかっただろう

キノココ「それに、彼の面子が潰れるのは、彼自身気にしてなかった」

エネコ「……? 体面とか気にしてたのに? どういう、こと?」

いつもの彼女らしくなく察しが悪い 誰しもそうなのかもしれないけど

キノココ「さっきも言ったろう? 全ては君のためだよ エネコ」

割に、自分のことは判らないものなのかもね
 ▼ 213 ルトロス@デボンのにもつ 18/03/21 16:48:09 ID:Md3cnbY6 [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エネコ「? ? ? な、何で?」

本当に、訳が分からないという顔をする 貴族の紳士がちょっと哀れになる

キノココ「一時的にメロメロ中毒になってた可能性は捨てきれないけど
     それ以上に、彼は、エネコのこと、本気で好きだったんだと思うよ
     だからこそ、君の意に添うようにしたいと願った 婚約の解消でさえも」

エネコ「ふぇ? な……何を言って――///」

キノココ「君が行方を晦ませた後、偶然小間使いに会うまで消息を捉えられなかったのは
     本気で捜索隊を組まなかったから
     というのも、彼は彼が原因で君が居なくなったのに気づいていたから
     無理に探さず、君を追い込まないようにしていたんだと思う
     でなければ、そこまで遠くもない距離で、彼の力で、見つからない筈もない」

エネコ「……そう、かも」

キノココ「エネコが拒絶したなら、離れるしかないと答えた
     つまりそういうことじゃないかな 彼は君のために行動する紳士だった」

それは彼がエネコのことを想っていたから そう思う

キノココ「まあ、彼の印象を総合して考えた結果であって、言質取った訳じゃないけど」

エネコ「何それ でも、筋は通ってるのよね ……そっか そうだったんだ」

暫く沈黙が落ちた しかし色々考えていることは判ったからキノココは口を開かずにいた

エネコ「……そうね 色々あったお蔭でぐちゃぐちゃしてたのが何となくすっきりしたわ
    肩の荷が下りた感じ? って言うのも変だけど、平気って言えるわ
    だからといってもう一度ブーピッグと、っていうのはないけどね」

キノココ「それは、ご愁傷様なことで いいポケモンなんだけどなあ……」

エネコ「判ってるわよ あたしも彼には感謝してる でも……
    さ! もう暗いし、帰りましょ! エスコートして下さる?」

キノココ「エネコお嬢様の仰せのままに ……泉に泊まるの?」

軽口を叩き合って笑い合い、帰り道を進む

一朝一夕で割り切れる問題じゃないんだろうけれど 確かに彼女は平気そうだった

もう大丈夫 そう言えそうだ
 ▼ 214 シャーナ@きれいなハネ 18/03/23 14:39:35 ID:hFdO5CU. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 215 編になるお でも詰まってる 18/03/23 23:54:17 ID:fJ7gTVYM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キノココ「ふあ〜 疲れた、疲れた 今日もまた濃い一日だったな」

エネコを泉まで送り届け、キノココは自らの棲処まで歩く

視界はすっかり真っ暗闇に覆われてしまっている

大立回りをしたのもそうだが大勢に囲まれたせいで疲労感が蓄積していた

さっさと戻って寝てしまいたい そう思っていた

「お兄ちゃん、お兄ちゃん ねえお兄ちゃん ちょっといいかな、お兄ちゃん?」

そこへ、あどけない感じの声が掛かった 誰だろう? こんな夜なのに

声の聞こえた方へと振り向く しかし誰もいない

キノココ「……?」

聞き間違いだった? いや、はっきり聞こえたと思ったのだが……

「どっち向いてるの〜? こっちだよ お兄ちゃん」

また、子どもの声 先程よりも近い距離から聞こえたその声に振り向くと

キノココ「――!!? うああっ!!?」

不気味な火に照らされた謎のポケモンの影が目と鼻の先に現れていて

闇に包まれた現状も相まって非常に慄いてしまう 怖すぎる

「きゃはは いい反応だよ、お兄ちゃん」

謎のポケモンは笑って逆立ちしていた状態から元に戻った そして鬼火も消していく

謎だと思っていたのは、見慣れない姿勢の所為だったらしい 最近聞いた種類だ

カゲボウズ「こんばんは お兄ちゃん」

あんなに全力で怖がらせに来たかと思えば、普通に好意的に話しかけてきた

……ゴーストポケモンの性、というのは本当らしい 挨拶感覚なのだろう

キノココ「ええと…… 何かな?」

キノココに何の用があって話しかけてきたのだろう 面識はなかったと思うが

カゲボウズ「うんと、あのね ……あ、ちょっと隠れて」

キノココ「わ! な、何!? どういう――」

訳も分からないまま木の陰へ押し込まれた

と、遠くに赤い瞳を灯す黒いポケモンの影が通るのが見えた あれは、ヨマワル?

カゲボウズ「何日か前から、あの顔の怖いおじちゃんに追われてるの
      口の悪いお兄ちゃんにも追っかけられてて、なんでかな?」

キノココに訊かれても困る どういうことなんだろう?
 ▼ 216 メルゴン@カムラのみ 18/03/24 08:42:07 ID:SCPIL2CQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 217 ラマネロ@まんまるいし 18/03/25 00:16:38 ID:m3C3bl.2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キノココ「ええと、僕は数日前ヨマワルにあった時君のことを知らないかと
     そう訊かれたのだけど 知り合いではないの?」

カゲボウズ「よまーる……って?」

キノココ「さっき通り過ぎて行った…… 顔の怖いおじちゃんだけど……」

カゲボウズ「うーん…… わかんない…… 何だろ…… わかんないや……」

目の前のポケモンは本当に見当を付けられず困っているようだ

ただ、この子に分からなければキノココにだって何も解りやしない

キノココ「……それで、何で僕に声を掛けてきたの?」

カゲボウズ「怖くなかったから!」

キノココ「いや、何で……?」

カゲボウズ「……?」

キノココ「ええと、何か僕に用があったとかではなく?」

カゲボウズ「わかんないや なんか、なんとなく?」

特に理由はないということだろうか 追われているというのに悪戯を優先するとは
能天気なことだ…… 目の前のことに夢中になってしまうやんちゃ盛りという奴だろうか

口調にも見た目にも幼い印象を受ける

キノココ「どうしてこんな森の中に一匹で? お父さんか、お母さんは?」

カゲボウズ「ううん? ……わかんない!」

キノココ「え…… じゃあ、何処から来たの?」

カゲボウズ「わかんない!」

キノココ「……名前は?」

カゲボウズ「わかんない!」

本気で困ってしまう 子どもってこんなに自分のこと解ってないものなのだろうか? 

キノココ「いつから、一匹でいるの?」

カゲボウズ「うーんと、えっと、7日くらい前かなぁ……」

キノココ「そっかぁ…… え?」

あまり期待はしていなかっただけに、答えが返ってきて驚く

思ったよりも長い時間を告げられたことも驚きに拍車をかけた
 ▼ 218 援ありがとー 18/03/27 01:07:54 ID:hqHSF3H. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キノココ「ええ? 君みたいな小さな子どもが? 一週間も?」

普通はまだ親元に居てもおかしくないだろうに、大丈夫だったのだろうか?

キノココ「君、棲み処は?」

カゲボウズ「わかんない!」

キノココ「それも? じゃあ、ずっとふらふらとその日暮らしみたいな感じ?」

カゲボウズ「ゴーストだからねー 割と生きて(?)いけるんだ」

あっけらかんと答える 心配になる子だな……

キノココ「いや、それにしてもだよ ……宛てはあるの?」

カゲボウズ「……わかんない」

キノココ「……?」

言葉は同じだが、少し言い淀んだのが気になってすこし見つめてしまった

カゲボウズ「ずっとね、森の中にいるの でも、ここに居ちゃいけない気もする
      お兄ちゃんはどう思う? わたしはどこに行くべきかな?」

そんなことを聞かれても、キノココにも見当は付けられない

キノココ「……なんで、僕に訊くの?」

カゲボウズ「なんとなく?」

疑問形か ふわふわしてるなあ

キノココ「いや、僕には解んないけど…… つまり宛てがないというか
     宛てがあるかどうかも判らないっていうこと?」

カゲボウズ「そうなる、のかな でも――」

「よう こんな夜中に何やってんだ?」

突然、横合いから声が飛び込んでくる 驚いたカゲボウズはキノココの陰に隠れる

キノココはその声に、反射的に固まってしまった 全身が震える

虐めっ子A「こんな時間に会うなんて奇遇だな 弱虫 あん? そこに居んのは……
      おお! 探してたんだよ! カゲボウズ!」

彼は出会い頭に予想外なことを言った 知り合い、なのだろうか?

背後のカゲボウズに目を向けて尋ねてみると、首を振って縮こまってしまった

本当に、状況が読めなくなってきた 物事を把握しきれない

キノココ「ど、どういうことだい、ヤルキモノ?」

虐めっ子A「聞いて驚け! ここらには願いの叶う“ひみつきち”とやらあるという!!
      そんで、そこのカゲボウズはその手掛かりらしい!
      そんなこと聞いちまったら探さない手はねえよなあ!? だからそいつよこせ!」
 ▼ 219 ンダース@メタルコート 18/03/27 05:28:27 ID:tGe7zKGE [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
きずいたら一気見してた
支援
 ▼ 221 々絵まで ほんまにありがと 18/03/28 00:25:35 ID:2JXhIe7g [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
『願いの叶う“ひみつきち”』? 最近聞いたフレーズだ それを探しているのか

しかしそもそもその噂が正しいわけじゃないということを聞いた

それに、カゲボウズが手掛かりだということも初耳だ 疑問を顔に浮かべると

彼奴は自分の考えを自慢気にひけらかし始めた

虐めっ子A「“ひみつきち”は普通に探すだけじゃどうやら辿り着けねえらしい
      しばらく探したが見つからねえ そこで俺は考えたよ
      俺に“ひみつきち”の存在を教えてくれた奴はカゲボウズも探してた
      だったらそこに関連性がないと考える方が変だろ? 手掛かりに違いねえ!」

彼が言っているのはヨマワルだろう 多分、キノココと同じように尋ねられたのだ

そしてヨマワルの発言から噂を信じ、そういう考えに至ったのか

虐めっ子A「案内しやがれ! “ひみつきち”って奴によ! 俺の願い叶えてもらおう!」

カゲボウズ「……わかんない 口の悪いお兄ちゃんが何を言ってるのか
      わたし ぜんぜんわかんないよ!」

虐めっ子A「嘘を吐け!! ……まあいい じっくり訊いてやろうじゃないか
      痛めつけながら、じっくりとな!」

どうやら彼奴が数日追いかけてきたという「口の悪いお兄ちゃん」らしい

酷く怯えた様子でいる こんな子どもに対して強引な手段に及んだのだろう

『真偽も不確かな噂に惑わされて』 そう考えると遣る瀬無い

キノココ「………………」

虐めっ子A「? おい、どけよ それとも何か? 庇うってのか? 無関係だろうによぉ!!」

確かに、会ったばかりの他人だ 余計なことに首を突っ込むべきではないのかも知れない

それに、睡魔にも襲われている 夜も遅いし、見なかったことにして帰るのが賢いのかも

更には、心的外傷の原因と対峙するなんて怖くてしょうがない

だけど、怯えている小さな迷子を放り出すのは、やっぱりできなくて

キノココ「“痺れ粉”! “眠り粉”! “毒の粉”! ――行くよ!」

沢山の粉を煙幕のように広げ、カゲボウズを押しやりながら、闇に紛れるように逃げ出す

虐めっ子「くそっ! 待て!! てめえ! 覚悟はできてやがんだろうな!!」

後ろから怒声が響く 足が震えて、ともすれば止まってしまいそうになる

覚悟なんてできるわけもない それでも、走る
 ▼ 222 ョロボン@きのみ 18/03/28 00:26:46 ID:2JXhIe7g [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カゲボウズ「で、でも、逃げるって、どこに?」

キノココ「判らない! でも、捕まったら、只じゃ、済まなそうだし、一先ず、撒く!!」

虐めっ子A「待てこら! お前ら! くそ! ぶっ潰す!!」

先程仕掛けた状態異常煙幕のお蔭で、相手とはうまく距離が取れたらしい

麻痺や毒が効いてくれていたなら普通に逃げられるだろうけれど、それは望み過ぎか

後ろの相手を確認している余裕はない 一直線に全力で逃げ――

――危機感知でもないのに嫌な予感に身を押され思い切り横に飛ぶ

寸前までキノココがいた位置を何かが凄い速さで飛んで行った

虐めっ子A「ヤルキモノには接触技しかねえとか油断してねえだろうなぁ? おい!」

背後から嗜虐的な声が響く ……“投げ付ける”か 普通は使い切りの筈の技

しかし先程飛んできた物は、森にならいくらでもある木の枝

つまり相手の弾は無尽蔵だということ ただ逃げるだけではいずれ追い詰められてしまう

虐めっ子A「逃げ切れると思うなよ? まず瀕死にさせてから捕まえてやるからな?
      “投げ付け”て“投げ付け”て“投げ付け”まくる!!」

いくつも飛んでくる枝を辛くも躱す いくつか掠った枝もあるが何とか駆ける

キノココ「カゲボウズ! 大丈夫!?」

カゲボウズ「だ、大丈夫! まだ当たってないよ! でも、どうするの!? お兄ちゃん!?」

逃げるだけじゃ駄目だ かといってまともに戦おうとしても分が悪いだろう

どう戦えばよいのか…… 走りながら頭を巡らせる ――そうだ、この先には

キノココ「……ねえ、カゲボウズ 君、“――――――”って使えるかい?」

カゲボウズ「え? う、うん! 使えるよ! でも、どうするの?」

キノココ「良かった なら、合図を出したら使って! ――てぇい!!」

キノココは思い切ってカゲボウズを引っ張る

虐めっ子A「……は? 消えた!? くそ、どこ行った!!」

相手の視界から上手く外れることが出来たようだ

やがて走って来た相手の姿が“上”に見えて

虐めっ子A「おいおい、弱虫のくせにやってくれんじゃねえか……」

離れていく相手の声は、良く聞こえなかった
 ▼ 223 ロリーム@さざなみのおこう 18/03/28 00:27:48 ID:2JXhIe7g [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
どうやって一瞬でそこまでの距離を離すことが出来たのか、といえば

単純な話 この間復活草を採りに来た断崖の下へと飛び込んだだけだ

勿論、何の準備もなくそんなことをしては致命傷を受けてしまうけれど

キノココ「今だ!! お願い、カゲボウズ!」

カゲボウズ「テ、“テレキネシス”!!」

先程指示していた技を使ってもらうことで崖底の茂みにふわりと着地した

カゲボウズ「……無茶するね、お兄ちゃん わたしは大丈夫だけど、
      お兄ちゃんが失敗したらぐちゃってなっちゃうよ?」

……ぞっとすること言わないで欲しい 失敗したときのことは考えないようにしたい

キノココ「……上手くいったから結果オーライってことにしておいて」

お互いに声を掛け合ってほっとしたのもつかの間

カゲボウズ「ね、ねえ! 上見て! あのお兄ちゃん、崖伝いに降りてきてるよ!?」

彼にとってはこの程度の崖は造作もないらしい 諦めてくれることは期待できなかった

カゲボウズ「ど、どうするの!? わたし達、逃げられないよ!? 袋小路だよ!?」

崖に囲まれたこの場所には、隠れられる茂みがあるくらいで逃げられる脇道などない

近づいてくる背中を見上げて慌てたように叫ぶカゲボウズに、そっと諭した

キノココ「僕が何とかする 君はそこの茂みの中に隠れてるんだ」

カゲボウズ「ええ!? でも、あのお兄ちゃん、強そうだよ!?」

キノココ「大丈夫だよ 僕もこう見えて結構修羅場乗り越えてるんだ」

カゲボウズ「どういうこと?」

キノココ「うーんと…… 強くなくても、いくらでもやり方があるってこと
     ちょっと卑怯かもしれないけどね でもなりふり構ってたら、酷い目に遭う
     それが嫌なら、どんな手段で在れ、抵抗するのは当然のことなんだ」

キノココのやり方は余り褒められるような方法じゃない

でも、綺麗なやり方ができるほど強くはないから、やるしかないのだ

子どもに見せるには泥臭い だからせめて反面教師であることを先に伝えておこう

カゲボウズに作戦を伝え、二匹とも茂みに隠れて相手を待った
 ▼ 224 ネブー@ふねのチケット 18/03/28 01:34:05 ID:2JXhIe7g [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
相手は軽々と崖を降りてきて、意気揚々とファイティングポーズをとった

虐めっ子A「さて、態々壁に囲まれた袋小路に逃げてくれてありがとうな くく……
      これで思う存分ストレス発散できるぜ お前、Mだったのか?」

相手はキノココに対し嘲るように笑って言葉を紡ぐ その気持ちも判らないでもない 

何故ならば、彼が降りてくるなり茂みの中からキノココの姿が飛び出して来たのだから

相手からすれば、格下のポケモンが態々殴られに来たようなものだ

虐めっ子A「おっと、また変なことされたら堪ったもんじゃねえからな “挑発”!」

キノココ「…………」

やはり、まず“挑発”を撃ってくるか 積めないのは辛いな

虐めっ子A「こうなるのは解ってただろうにあっさりと出てくるなんてよ?
      馬鹿じゃねえの? それとも本当にMか? 黙ってないでなんか言えよ」

キノココ「………………」

虐めっ子A「どうした? 声も出せない程怯えてんのかよ?」

キノココ「………………」

虐めっ子A「まあ、いいか ところで、カゲボウズは? 飛んでったとこは見てねえから
      その茂みン中か? 出てきやがれ!! 早く出てこないとコイツ甚振んぞ!?」

どっちにしろ甚振るつもりだろうに 理不尽なことだ

それに、下手な脅しである こちらの関係性について詳しくなってから出直すべきだ

カゲボウズにとっては無関係のそれが甚振られようと痛くも痒くもないのだから

虐めっ子A「3…… 2…… 1…… 時間切れだ お前の所為だぞ? ――“燕返し”」

相手は草タイプに通りの良い属性を纏わせた爪をキノココ目掛けて振るう

その攻撃で一気に体力を尽きさせられた“それ”は掻き消えた

虐めっ子A「“身代わり”……だと!? くそ! 騙された!! 本物は!?」

相手は慌てて周りを見渡す 今がチャンスだ

“身代わり”に誘われて茂みに近づいてきた相手に、キノココは茂みの中から狙いを定め

キノココ「僕はここだ!! 喰らえ!! “気合……パンチ”!!!!」

裂帛の気合を持って、効果抜群の攻撃を打ち出した

虐めっ子A「か―――― ふ…………!!」

泡を吹いて横たわった相手を暫し呆然と見つめて、動き出す気配がないことを確認して

キノココ「勝った……? 勝てた……? あのヤルキモノに? 本当に?」

実感もないままだったが、やっと肩の力が抜けた
 ▼ 225 ルガレオ@じゅうでんち 18/03/28 16:47:33 ID:oej8j3Xc NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 226 ブライカ@ブレイズカセット 18/03/28 23:53:38 ID:2JXhIe7g [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カゲボウズ「お兄ちゃんすごーい!! 一発だ! 一発! かっこいい!!」

座り込んでしまったキノココの隣で喝采が上がる しかし

キノココ「格好良くなんか、ないよ……」

斃れている相手を、一応の意味を込めて“宿り木”で軽く縛りながらキノココは自嘲する

キノココ「相手が構えるよりも前に“身代わり”を使っていたこと
     “身代わり”だけを出して本体は隠れたままだったこと
     そして相手の隙を狙って不意打ちに大技を打ち込んだこと
     全部狡だ 褒められるようなことじゃない」

気分は複雑だ 本当なら真っ向から勝負するべきなのだろうけれど

キノココは臆病者で、強くなどないから こうした手段に頼るよりない

キノココ「まあ、形振りなんて構ってられなかったのはそうなのだけどね……」

カゲボウズ「……ええと、つまり、お兄ちゃんが作戦考えて、お兄ちゃんが戦って、
      お兄ちゃんが勝ったんでしょ? じゃあ、やっぱりすごいことだよ!」

キノココ「いや、だからね…… 僕は狡をしたんだ 凄くなんか――」

カゲボウズ「ずるなんかじゃないよ! ちゃんとポケモンバトルだもん!
      わたし達『ゴーストタイプ』だって、あざむいたり不意をうったり、
      そういう“技”が多いけど、ずるなんかじゃぜったいないもん!!
      “威嚇”みたいなものもある お兄ちゃんはぜんぶずるだって言うつもり?」

キノココ「……それは」

カゲボウズ「それに、一方的に“技”を使ってきたのは向こうも同じでしょ?
      あと、崖の上でバトルが始まってたんだからいったん離れたといっても
      それは戦略? っていうやつで、お兄ちゃんがずるなんてことはないんだよ!」

……狡をしたという自覚、罪悪感を否定されるとは思わなかった

そして不覚にも、返す言葉を見失ってしまう 筋の通った理屈だと思えてしまった

カゲボウズ「ねえ、お兄ちゃん そんなに自分を卑下しないで お兄ちゃんはわたしを
      守ってくれたんだよ! お兄ちゃんの力で彼奴も斃せたんだよ!!」

子どもの純粋な言葉って、こういう時強いんだなって思う

キノココ「斃した? 僕が……、ヤルキモノを……?」

口から出るのは、疑問ではなく確認

ようやっと、実感が湧いてくる

今度はすんなりと、自分で自分を認めることが出来そうな気がした


 ▼ 227 ゴラス@いしょうトランク 18/03/29 23:50:18 ID:JmYojVz6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カゲボウズ「ところで、どうやって登るの? わたしは飛べるけど、流石にお兄ちゃんを
      背負って飛ぶのは無理だと思うんだけど……」

この場所から上へ登るための道などないし、崖もとっかかりが少ないのが見て取れる

確かに、このままでは登れなさそうだ

キノココ「ん、と…… “テレキネシス”の助けを借りたいかな」

カゲボウズ「いいけど、それじゃちょっとうかすていどで、上まではとんでいけないよ?」

キノココ「浮いてられるならそれで十分 補助があれば、こうして……」

言いながらキノココは、崖に向かっていくつか“宿り木の種”を飛ばし、蔓を伸ばさせる

キノココ「僕でも登ることはできなくもない “テレキネシス”、お願い」


カゲボウズ「ほんとに登り切っちゃった…… お兄ちゃん、凄いね!」

キノココ「……“テレキネシス”があっても、中々キツイもんだな、崖登り
     ルリリはこれを補助なしでやったんだから凄い……」

カゲボウズ「え? なんて?」

キノココ「や、こっちの話」

思わず独り言を呟いてしまった

それはそうと、これからどうするべきだろうか カゲボウズには宛てが無いようである


「やあっと見つけましたよ ひょひょ おや、いつぞやのキノココじゃないですか
 カゲボウズを見つけて下さったんですね ありがとうございます
 さあ、こっちに来てください、カゲボウズ」

不気味な声が唐突に聞こえて、背筋が凍る 赤い瞳を揺らしてこちらに近づいて来た

こんな夜中に会う彼は、恐怖の権化のように思えてしまう

同じ『ゴーストタイプ』であるカゲボウズでさえ固まってしまっている

カゲボウズ「う……! お、お兄ちゃん! 走って! 逃げなきゃ! 怖い!!」

だが、固まっていたのは一瞬で キノココを引っ張りながら彼とは反対方向に飛び退る

カゲボウズにつられて、キノココも駆け出した 一体どこへなのかは本人たちも判らない

    「ちょ、な、何故逃げるのです!? 待ちなさい!!」

暗闇の追いかけっこが始まってしまった
 ▼ 228 クレオン@ポロックケース 18/03/30 11:50:17 ID:nuhqOOds NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 229 ャタピー@トポのみ 18/03/30 16:59:01 ID:koDPGnI6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
視界が黒く塗りつぶされている中、二匹一緒になって赤く揺れる光から逃げ惑う

というよりも主にカゲボウズが我武者羅に逃げるのを

キノココが近く、ヨマワルが遠く追いかけているというのが実情だ

キノココ「……ねえ、カゲボウズ 本当に、彼と、面識、ないの?」

走りながら質問を投げかける

何故追われて、何故逃げているのか 判らなくてモヤモヤする しかし

カゲボウズ「わかんない! わかんないよ! でも、追いかけてくるんだもん! 怖い!!」

明確な答えは帰って来ない そこに何か違和感を覚えた気はしたが……

今の状況が考え事に没頭することを許さない

暗闇の中の森というのは走ることに適してはいないのだ 足場は凸凹 乱立する木々は

一寸先に近づくまで気付けなくて、何度もぶつかりそうになる

かといって減速したら置いて行かれそうで、また、追いつかれそうで

更に言えば、背後から迫る幽霊に恐怖を覚えているのはキノココだって同じだ

何処か、身を隠せる場所はないだろうか…… 少し落ち着きたい……

キノココ「カゲボウズ! 待って! こっちに行こう!」

カゲボウズ「え? お兄ちゃん、何か思いついたの!?」

キノココ「いや、思いついたって訳じゃないんだけど……」

休める場所、と考えたときに真っ先に考え付いた場所は一ヶ所だった それに結構近い

何度も出てきたキーワード そこに行けば何か判る気がした

キノココ「と、その前に一先ず後ろの彼を撒かないといけないかな
     ――“痺れ粉” “眠り粉” “毒の粉”」

先程のように数種類の粉を思い切り撒き散らして状態異常を狙いつつ見当を晦ませる

    「は!? な、なんです、これ!? ちょ! どこに行きました!? 待って!!」

後ろから聞こえた声を確認して駆けていく 上手くいった、かな?

さて、こんな時間にお邪魔するのはさすがに無礼かな 彼女には悪いことをする

それに約束も破るみたいになる ……こんな状況なのだから許してほしいものだ

キノココ「ここだよ! 茂みの“ひみつきち”! ちょっと非難させてもらおう!」
 ▼ 230 ギルダー@こうらのカセキ 18/03/31 23:15:55 ID:5cQ8Nh4w NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
『夕暮れ以降は私の時間』と彼女は何度も言っていて

そしてそれ以降に誰かが“ひみつきち”に居ることは嫌がっていた

忘れていたわけではないのだけど 深い意味なんて全然、考えていなくて

だから、彼女の言に反することも深い考えもなく行ってしまった



キノココ「……これは、どういうことなのだろう?」

いつものように入った“ひみつきち”は日中の様相とは全く異なっていた

屋内であるにもかかわらず霧が立ち込めていて空気は冷えている

肌寒いというのではなく、心胆から凍り付くような感じのする、嫌な寒気だ

チリーンの鳴らす音は聞こえてくるが、反響して何処から聞こえてくるのか判然としない

……反響? ここはそんなに広かっただろうか

部屋の中を見回してみると、どうやら床に穴が開いているらしい

覗いてみるも、暗くて中の様子はよく分からず

ただ、奥まで続いているのが反響具合から解るのみ

カゲボウズ「……? なんかここ、懐かしい感じがする ……なんで?」

キノココ「……そうなの? 僕には、なんというか、底冷えする感じしかしない……」

キノココとカゲボウズには感じ方に差があるらしい

その差異は何を意味しているのだろうかと考える

……考えても仕方ないのかもしれない 可能性は思いつけど確信が持てるわけもない


カゲボウズ「ねえ、お兄ちゃん この先に行くのって、駄目かな……?」

キノココの様子を見て、遠慮がちに尋ねてくる

子どもに心配掛けさせるのは我ながら情けない

キノココ「……なにか、宛てになるのかもしれない、ね」

この先に踏み込むのは正直、キノココにとっては足が重い

帰り道が用意されていないのではないかというそこはかとない恐ろしさを感じる

キノココ「『乗りかかったラプラス』だ 付き合うよ」

それでも、迷子を放っておくという選択肢はキノココからはなくなっていた
 ▼ 231 ツベイ@ぎんのおうかん 18/04/01 05:52:47 ID:mtWH.Xok NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 232 ソクムシャ@ラブタのみ 18/04/01 17:58:45 ID:tChjw0Dg [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カゲボウズ「……やっぱり、何か懐かしい感じがするよ、ここ」

キノココ「どこから来たかは判らないって言ってたね もしかしたら手掛かりがあるかも」

洞穴の中は霧の所為か足場の確かさがなく、不安定で躓きそうになる

気温は下がっていくし、相変わらず先が見通せないほど暗くて不安になる

キノココ「とにかく、チリーンがいることは確かだと思うし…… 彼女を探そう
     ……反響してて位置が掴み辛いけど」

鈴の音は聞こえてくる 彼女はカゲボウズについて知っているだろうか?

……少なくとも、この場所については詳しい筈だ

暗順応を待って、奥へと進もうとしていると

    「ひょひょ、追いつきましたよ 自らここに来られるとは有り難いことです」

洞穴の入り口の方からヨマワルが顔を出し、声を掛けてきた

先程引き離したと思ったのは早計で、気配を消してつけていたのかもしれない

カゲボウズ「こんなとこまで追ってくるの!? お兄ちゃん、急いで!!」

    「おっとと、“黒い眼差し”を使わせてもらいます 何故逃げるのですかな?」

ヨマワルとは反対方向へ慌てて逃げようとするが、相手の“技”の効果で動けなくなる

せめてと、怯えるカゲボウズを背後に庇い相手と向き合う

     「ひょひょ さっきは気付きませんでしたが、貴方はいつぞやのキノココ
      ちゃんとカゲボウズを見つけて、ここまで連れてきて下さったのですね
      本当に感謝してもしきれませんが、生憎と貴方はここには相応しくない
      お帰りになられた方がよいと進言させていただきますよ?」

彼はそう言うと、キノココだけ“黒い眼差し”を解いて、道を開けるように端へ寄った


    「お礼は後日ちゃんとさせて頂きますよ 今は手持ちが少ないのでね
     カゲボウズのことは私に任せて どうぞお帰りなさい」

……このまま帰ってしまえば面倒ごとには巻き込まれずに済む?

そうすると、カゲボウズはどうなるのだろうか 彼は何故カゲボウズを追っていたのか

キノココには判断つかない されど選択は迫られているわけで

迷子を見捨てるという選択は既に捨てた なら――

    「ひょ!? 何故臨戦態勢を取るのです!? な、何か勘違いしていますか!?
     ええと、ええと、 義姉さん、ちょっと来てください!!」

相手の ヨマワル は 仲間を 呼んだ !
 ▼ 233 ーシャドー@イアのみ 18/04/01 17:59:09 ID:tChjw0Dg [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
新手が洞穴の奥から近づいてくる気配に、背中を嫌な汗が流れる

カゲボウズを背後に庇いながら戦うなんてキノココには難しい 敵が強かったら猶更だ
さて、オニゴーリが出るかハブネークが出るか……

「ヨーマーワールー!! やっと帰って来た!! それで!? 見つかったかい!!?」

奥から出てきたのは、縫いぐるみのような姿をしたポケモンだった

心配の色を多分に含んだ大声を出して慌ただしい

    「ひょひょ ええ ええ 一週間も経ってしまいましたが、無事なようです
     こちらのキノココが見つけて下さったのですよ」

ヨマワルはキノココとその背後にいるカゲボウズを彼女に示す

彼女はこちらを見ると涙ぐみ、キノココの横を素通り カゲボウズに抱き着いた

縫いぐるみ「――――心配したよ…… 姿が見えなくなってからずっと……
      此岸にいたんだねえ 念のためヨマワルに探させて良かった
      怪我はないかい? 身体は大丈夫? 何か怖い目には遭わなかったかい?」

語りかける言葉は温かく、柔らかい

カゲボウズ「………… マ、マ……? ……ママ! ママぁ!!」

抱き着かれた当初驚きに固まったカゲボウズは、温もりに触れ次第に表情を崩してく

不意に訪れた感動的なシーンに、少々呆気に取られてしまう

拍子抜けしてしまった 変に構えてしまったのが恥ずかしい

    「義姉さんに言われて探しに出たのは良いものの、逃げられてしまって
     本当に困ってしまいましたよ 私のこと、まさか覚えてなかったのです?」

カゲボウズ「思い、出した ついさっきまで何もわかんなかったけど……
      えっと…… 叔父ちゃん、だよね パパの弟の……」

    「ほ、本当に忘れていたとは…… ショックですよ!?」

どうやら本当の所は血縁で、ただ心配から迷子を捜していた、というのが落ちらしい

始めからそれが解っていれば逃げずに済んだのかもしれない

しかし責めるわけにもいかないのだろう さっきの反応や言葉の端々を鑑みるに
どうやらこの子、軽い健忘状態に陥っていたようだ

縫いぐるみ「およよ!? それで帰ってくるのに時間かかってたのかい? 苦労掛けたね……
      君がここまで連れてきてくれたんだってね! 本当に、本当にありがとう!!」

迷子の母親は、キノココに向かって頭を下げる
 ▼ 234 リープ@おいしいみず 18/04/01 22:29:44 ID:tChjw0Dg [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
迷子を無事送り届けることが出来て、問題解決だ

そう思ったらどっと疲れてきて、瞼が落ちそうになってくる

今日は本当に色々あってもう限界だった 睡魔に導かれるまま、倒れ――


チリーン「ここで寝ないでください!! “騒ぐ”!!」


キノココ「――うあ! な、何!? 何!?」

奥から現れた彼女が出した騒音で、強制的に覚醒させられる

チリーン「『引っ張られないように』気を強く持って下さい!」

引っ張られる? どういうことなのやら……

チリーン「眠ってはいけませんよ 帰りましょう さあ」

何をそんなに慌てているのかは判らない でも、彼女の言葉に抗う気は起きなかった

説明して欲しいところではあるが、“技”を使ってまで眠らないようにしてきたのだ

意味は何かあるのだろう キノココはカゲボウズ達に振り返る

キノココ「うん 帰らなくちゃいけないみたいだ バイバイ カゲボウズ 二匹も」

カゲボウズ「お兄ちゃん、今日はありがとうね いっぱい助けてくれて、
      いっぱい付き合わせちゃって 嬉しかったよ 本当に」

別れを惜しみながらも笑顔でサヨナラできる彼女はいい子だなと思った

キノココも明るく返しながら、先を行くチリーンを追った



“ひみつきち”まで辿り着き、息を吐く

出てみて改めて、洞穴の中を流れる異質な空気に震える

チリーン「いえ、まだ落ち着かないでください 一旦“ひみつきち”も出ましょう」

不思議な指示をされた が、言われた通り外に出る

空は白み始めていた 涼しい風が心地いい

もうじき日が昇りそうだ この場所からならばさぞかし景色がいいのだろうな

そんな期待と共に大きく息をして眠気を追いやった
 ▼ 235 ウワウ@ギネマのみ 18/04/02 13:14:45 ID:7ajGv6b6 NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 236 モリ@ボロのつりざお 18/04/03 00:05:31 ID:398Yafps [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そして 二匹並んで遠くに見える地平線を眺めて日の出を待つ

丘の上にあるここから一望する森は、闇夜の漆黒から暁の赤に染まっていき

まるで秋真っ盛りであるかのような絶景が広がった

紅葉したような森と朝焼けに染まる空とのグラデーションが綺麗で、言葉を奪われる

時間と共に空は青く、森は蒼くなっていく様子も引き込まれそうな美しさがあって


チリーン「……そろそろ“ひみつきち”に戻りましょうか もう大丈夫なはずです」

どれくらい見惚れていただろうか 日も十分昇った頃、隣から声を掛けられて我に返る

そうだ、聞きたいことは沢山ある 彼女に次いで“ひみつきち”へ戻った


キノココ「本当に、どうなってるの? ここ……」

先程のような霧は既になく、“ひみつきち”はいつも通りの
温かくふわふわした雰囲気を取り戻していた 心胆から冷えるような空気もない

そして最も驚くべきなのはあんなに存在感のあった床の洞穴が跡形もなく消えていたこと

まるで初めからそこには何もなかったように まるで悪い夢を見ていたように

チリーン「……『送りの泉』という場所はご存知でしょうか?」

キノココ「……聞いたことないや」

チリーン「彼岸と此岸の境目、とでも言いましょうか 特殊な場所なのです」

キノココ「あの世に近い場所、ってこと?」

チリーン「はい そう捉えて貰って構いません
     そこは、いつも霧が煙っていて、空気もひんやりとした静かな場所なのです」

……霧 ……ひんやりした空気 ……そしてこの話しようからして

キノココ「さっきまでいた、あの場所、みたいな……?」

チリーン「そうです あそこは『黄泉の道』 本来生者が居てはいけない場所です
     ……本当に危ないところだったのですよ? あそこで意識を手放せば
     『引っ張られ』て此岸に戻って来られなくなるところですよ」

眠ってはいけないとは、そういうことだったらしい

知らぬ間に忍び寄っていた危機を知らされて、今更ぞっとしてしまう
 ▼ 237 ミッキュ@いいキズぐすり 18/04/03 23:58:15 ID:398Yafps [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キノココ「……何でここに『黄泉の道』なんてものが? 何で消えてるの?
     彼岸と此岸の境目で、生者は『引っ張られる』? そうだけど、じゃあ君は?
     何で大丈夫なの? カゲボウズはちゃんと帰れたってことでいいんだよね?」

あの穴の正体は解った でも、まだまだ判らないことはある

最後の質問には笑んで頷くことで肯定を返してくれた ほっと息を吐く

チリーン「何から説明しましょうか…… そうですね、私たちチリーン族のことから
     本来私たちは、ある役目を持って『送り火山』か『送りの泉』に棲んでいます」

キノココ「さっき言ってたところだね? ……役目って?」

チリーン「『タワーオブヘブン』という場所はご存知でしょうか?」

キノココ「……いいや」

また、新しい場所の名前が出てきた 今度はどんな場所なのか

チリーン「その場所もまた彼岸と此岸の境目なのです 頂上に、彼岸に辿り着けぬ魂を
     導くための鎮魂の鐘が据えられているのです」

キノココ「鎮魂の鐘、か…… あれ? 他の二ヶ所には無いの?」

『タワーオブヘブン』だけ特筆するということはそういうことじゃないだろうか

キノココ「そうなると、迷っちゃわない? その、死者の魂って奴が……」

チリーン「その通りです それがチリーン族が棲むことや役目に繋がってくるのです
     チリーン族は鐘と同じく鎮魂の音を持っています
     魂の水先案内人といったところでしょうか」

キノココ「『黄泉の道』でも平気なのは、そういう関係だったのか」


チリーン「あの穴があったから私が引き寄せられたのか、私が来たから開いたのか
     それは実ははっきりとは判っていないのですが……
     あの場所がここに繋がるのは、日の入りから日の出までの時間だけ
     その影響からか、日中には傷付いた生者がここに辿り着くようになりました」

キノココ「『行き場を亡くした傷付いた魂が辿り着く場所』…… 
     やっぱりここは、『願いの叶う“ひみつきち”』なの?」

チリーン「『願いの叶う』? 何ですかそれ?」

彼女の言葉からヨマワルの言葉を思い出して、そう聞いてみるが彼女の方は怪訝そうだ

チリーン「確かにここは普通とは違いますが、『願いの叶う』なんてことはありません
     ここで治療したポケモンの誰かが流した噂に尾鰭がついたのでしょう」

噂は噂でしかなかったということか ちょっと残念な気もする
 ▼ 238 マシュン@きちょうなホネ 18/04/04 01:04:29 ID:xlOlkRZ6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 239 ンメン@タブンネナイト 18/04/04 06:09:06 ID:br2nAjBk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
チリーン「それにしても、貴方は本当に不思議なポケモンですね
     “ひみつきち”に辿り着いてしまうくらいに傷付いていたのに
     ここに夜中に来ても、あそこまで『黄泉の道』に入り込んでも
     『引っ張られず』に居られたのですから
     流石に眠ってしまってはどうなるかは判りませんでしたけれど」

褒められている、のだろうか それとも責められているのだろうか

キノココ「引っ張られたら、戻ってこれない…… 死んじゃうってこと?」

チリーン「端的に言えば、そうなります あなたのような傷付いて弱った者は、
     引っ張られ易いようです 現に、“ひみつきち”には引き寄せられてますしね」

ここに来たのも、傷ついていたから?

キノココ「あの、『早く強くなって、もうここに来ないことを』って言ってたのは
     そういうことだったの? 強くなれば引っ張られることも無くなるから?」

チリーン「はい」

やはり、嫌っているからではなく、善意から出た言葉だったらしい 良かった 本当に

チリーン「強くなっていたんですね ちゃんと」

キノココ「そうなのかな 自分ではよく判らないや 弱いままな気もする」

チリーン「だったら、心的外傷を乗り越えられたのではありません? 心当たりは?」

心的外傷……? そういわれて思い浮かぶのはずっと虐めてきた彼奴のことだ

昨夜、自分たちの身を守るため必死だったとはいえ、斃すことが出来たのだった

それが、心的外傷を乗り越える切っ掛けとなっていた、ということか

チリーン「ふふ 心当たりがあるみたいですね」

キノココ「実感はそんなにないけどね 確かになんというか うん 平気って感じがする」

チリーン「そうですか なら きっと大丈夫なのだと思います」

彼女に太鼓判を押されて、不思議と自信と安心感が湧いてくる

キノココ「――く ふあぁ…… 流石に、もうフラフラだ……」

チリーン「徹夜明け、ですもんね 棲家に戻って眠ることを勧めますよ?」

キノココ「え…… ここで寝かしてはくれないの?」

チリーン「“ひみつきち”で寝るのは危ないって言ったばかりじゃないですか」

キノココ「えぇ? それは夜中の話じゃ? 今日中……」

チリーン「駄目です さあ、お帰りなさい?」

彼女の悪戯っこい笑みに押されてキノココは棲み処へ戻る

そして、疲れと睡魔に身を任せ、惰眠を貪ることになったのであった
 ▼ 240 ンガー@まるいおまもり 18/04/04 14:28:04 ID:B0KXwAoY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 241 編いっくよー 18/04/05 21:22:50 ID:dygckmZk [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「――――ノコ! …………て! ……、起きて! キノココ!!」

キノココ「――へ? な、何? あ、おはようございます?」

身体を揺すられながら大声で名前を呼ばれて眠りの淵から一気に浮上した

エネコ「おはようじゃないわよ 今お八つ時よ? 呼びに来てみれば死んだように眠ってて
    心配したわよ もう」

キノココ「え? もうそんな時間なの? ……って、いやいや、何でエネコがここに?」

寝起きで状況がつかめない エネコってここの場所知ってたっけ?

ゴクリン「ぼくもいるよ ついでに言うと、プラマイ兄妹とルリリも
     そしてなぜか警察の方も なんか、キノココ達に渡すものがあるんだって」

刑事「勝手にお邪魔して申し訳ない 感謝状が出来たので持ってきたのだよ」

キノココ「お久しぶりです…… 態々どうも……」

成程、ゴクリンに訊いて来たらしい 態々呼びに来てくれた理由は、刑事さんの関係か

ルリリ「なんでまたこんな時間まで寝てたの?」

プラスル「なにかご体調が優れないとかですか?」

キノココ「いや、ただ昨夜寝れなかったってだけだよ」

マイナン「へえ、何か悪い夢を見たとか?」

キノココ「いや、そういうんじゃなくて――」

刑事「……そろそろよろしいですかな? いや、急かして申し訳ないのだが」

キノココ「あ、ごめんなさい」

刑事「うむ、では改めて キノココ殿 貴殿のこの度の功績に対して我々警察団体から
   感謝状を進呈する どうか受け取ってくれたまえ」

キノココ「ありがとうございます あれ? エネコ達には?」

マイナン「ボクたちはもう貰ったよ キノココが最後」

刑事「無事全員に渡し終えたことだし、本館はこれにて失礼させてもらう」

エネコ「せっかちなのね」

刑事「まあ、非合法なならず者や組織というのはまだまだいるからな 忙しいのだよ
   あのシンジケートを捕まえられたのは大きかった 本当に感謝している では」

そう言って彼は去っていく 本当に忙しそうだ 頑張って欲しい
 ▼ 242 ルキモノ@いかずちプレート 18/04/05 23:13:55 ID:dygckmZk [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キノココ「……それで、皆はどうしたの? 八つ時ってことはまだ日中だよね
     態々全員で来る必要とかないと思うけど…… “ひみつきち”には行かないの?」

エネコ「……あんたも知らないの? そうなると、お手上げね」

ゴクリン「キノココなら何か知ってるかと思ったけど、見当違いだったか」

キノココ「……知らないって、何が?」

話しについていけない 何だというのだろうか

マイナン「“ひみつきち”に入れなくなってるんだよ」

キノココ「――へ?」

ルリリ「いつもの茂みの所に行っても、穴もないし“ひみつきち”の空間もなかったの」

エネコ「なんでいきなりそうなっているのか訊こうにもチリーンもいなくなってるのよ」

ゴクリン「それで、何か知ってるかと思ってキノココのとこに来た訳」

キノココ「“ひみつきち”が、ない……? 朝まではあったのに?」

エネコ「朝まで……? 日中がどうとか言ってたし、やっぱり何か知ってるの?」

キノココ「いや、僕も“ひみつきち”がなくなっている理由までは知らないけども――」

――それから キノココは周りの面々に昨夜の騒動とあの“ひみつきち”の秘密を話した


ルリリ「彼岸と此岸の境目…… なんというか、突拍子もない話だね」

そう思うのは無理もない あの空気を実際に体感しないと信じ難い話だと思う

エネコ「でも、筋は通ってるわね チリーンの発言とか雰囲気とかとも矛盾してない」

プラスル「キノココさんが嘘を言っているようには見えません 私は信じます」

ゴクリン「それに、ここで嘘を言う理由もない訳だしね」

ルリリ「あ! わたしも信じてるよ!! ただ不思議な話だなって思っただけで!!」

だというのに、その話を信じてくれるという 有難いことだ

マイナン「キノココの話から考えると…… うん? どういうことだろう?」

エネコ「そうね みんな心的外傷を乗り越えたから辿り着けなくなった可能性が一つ
    でも全員同時に、なんておかしな話だわ だからこれは無しね」

そしてキノココの話を基にして推理が始まるのだ 信頼されてるようで嬉しくなる

 ▼ 243 イタラン@エレベータのカギ 18/04/06 22:48:41 ID:TbL4CBLM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
推論を重ねると、彼女が居なくなった意図の可能性が見えてくる

魂を呼び込む『黄泉の道』はやはり危ない だからそこに通じる“ひみつきち”も
閉ざしてしまったのではないか

なぜ今になって、というのは、キノココがそこのことを知ってしまったからか
此岸に迷い込んだカゲボウズが彼岸に帰ったからか 後者の方がそれっぽいかな

キノココ「――と色々考えてはみるけれど、結局答えはチリーンにしか判らないんだよね」

エネコ「そうね それに、“ひみつきち”に行けなくなったことには変わりないわ」

ルリリ「納得するためにはこうやって考えたのもよかったんじゃないかな?」

エネコ「納得いくわけないでしょ せっかく仲良くなったのに、別れの挨拶も無しなんて」

マイナン「かといって文句を言う相手もここには無し、か」

皆複雑な表情をして黙り込んでしまう 各々思うところがあるようだ


ゴクリン「チリーンがいなくなったのもそうだけど、“ひみつきち”がないのも残念だね」

プラスル「……と、言いますと?」

ゴクリン「ほら、あそこって丁度各々が棲んでいる場所の真ん中あたりにあったじゃん?
     溜まり場としては大分ありがたい地理だったなあって」

確かに、毎回お邪魔して申し訳なくはあるが、立地的に丁度いい場所だった

ルリリ「あそこがなくなったとなると、集まれる場所って誰かに負担になりそうかも」

マイナン「次からはどこに集まろうか……?」

皆で地図を書いて、それを囲み頭を捻る

考えに詰まっていると、エネコが思いついた、というように口を開いた

エネコ「ないなら作ればいいんじゃない? 誰かマスターしてないの? “秘密の力”」

プラスル「それが使えれば誰でも“ひみつきち”が作れるんでしたね……
     生憎と、私はまだ覚えきれてません お兄ちゃんも……」

マイナン「うん…… 珍紛漢紛だよ……」

しかし全員顔を曇らせる どうやら全滅らしい

キノココ「先生はいないけど、基礎は学んだ訳だし、頑張ってみようか
     自主練するしかないけど、きっとマスターしてみせよう!」

ゴクリン「なるはやでお願い ぼくは身体構造的に移動が得意ではないから」

キノココ「いや、君も頑張ろうよ 何で諦めてるのさ」

寧ろそういう理由ならあの場所の一番近くに棲むゴクリンこそ頑張るべきでは……

ゴクリン「だってさ…… わかんないもんさ……」

エネコ「そんな奴放っといてやる気ある者だけで練習しましょうよ
    どうせ、誰かが覚えればいいって話でしょ? 勿論覚えられるなら覚えたいけど」
 ▼ 244 イリキー@ポケトレ 18/04/06 23:08:13 ID:qWZqaIk2 NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 245 援本当にありがと 18/04/07 22:40:58 ID:KQIDIDzI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キノココ「それもそうかもね 覚えとくに越したことはないけど、難しい訳だし」

独学に近い形で今まで知らなかった感覚を掴むのは、それをものにするのは難しい

それに皆で覚える必要もないというのも彼女の言う通り

“ひみつきち”を誰かが一つ作って、そこに集まればいい

折角なら皆で一緒に頑張りたいところだったのだが…… まあ、いいか

プラスル「わ、私も一緒に練習します 頑張って覚えましょう!」

ルリリ「負けないよ! 私も頑張る!! む、難しいけど……」

彼女たちはやる気満々な様子

マイナン「ボクは…… うん 向いてない気がするから任せた」

対して彼らは既に匙を投げている

エネコ「♂共は情けないわね あれ? っていうことは、キノココって実は♀?」

キノココ「何でそうなるの…… ♂だよ、ちゃんと」

まあ、キノココ以外は雌雄でやる気が大きく違うようだけど

エネコ「“秘密の力”を使えるようになるにはイメージが大事だって話だったわよね」

ルリリ「なんだっけ、自然自体が持っている“秘密の力”を借りる? うーん……」

キノココ「チリーンが何でかやってみせてくれたのをイメージすればいいのかな?」

プラスル「と、言われましても…… 中々……」

兎に角、身に着けるために見様見真似から始めないと、か

そうして暫く試行錯誤を繰り返していたら、横から呟きが聞こえてくる

ゴクリン「あ〜、キノココなんかハーレムみたい? 羨まし〜」

マイナン「何だと!! 妹は渡さん!!!」

プラスル「ちょっと!? お兄ちゃん!?」

キノココ「いや、そんなつもりはない――っていうかそう言うなら君等も練習しなよ」

エネコ「……いきなりなによ そのシスコンキャラ ……元々か」

マイナン「おいなんだその認識!? くそ、ボクが真っ先に覚えてぎゃふんと言わしてやる!!」

エネコ「ぎゃふん」

ルリリ「あはは 誰が一番早く覚えられるか競争だね」

ゴクリン「マイナンもやるならぼくもやろうかな ……難しそうだなあ」

こうして全員で“秘密の力”習得の特訓をすることになり、数日

結局最初に習得したのはエネコで、得意げな彼女と悔しそうなマイナンが対照的だった
 ▼ 246 ママ@デルダマ 18/04/11 16:16:20 ID:MpGIY5kA NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 247 IpYfymK.Tw 18/04/12 00:23:12 ID:OWvZpYl. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ごめんなさい 詰まってるのです(そこそこ煮詰まってはいるのです)


自分で読み返してて今更修正 その1 >>125台詞抜け

ゴクリン「……ぼくのために怒ってくれるなんて、君は良いポケモンだね」
キノココ「ええ!? 良いポケモンだなんてそんな!」
ゴクリン「ううん 本当にそう思うんだよ ねえ、ぼくと友達になってくれないかな?」 ←
褒められて悪い気はしない その提案も嬉しい でも
キノココ「え、えーと…… 実は僕も外れ者、なんだけど……」

その2 >>206
一行目余計な一文アリ 無視してください

稚拙さが目立つけど赦して欲しいのです


そして>>211で言った暗号について

>>204の会話より 頭と尻の縦読みでした
バ   バトルは――――だけだよ   ヨ
コ   このとき――――としよう   ウ
ウ   うん、後――――つに固定   イ


ホ   本当なら――――ですしね…… ネ
ウ   嘘偽りな――――ですから…… ラ
シ   しかし、――――知れない…… イ


マ   まあ、そ――――る必要は…… ハ
ジ   実際、俺――――項となる   ル
コ   この際、――――要素だね   ネ

思い付きでこの三文のみです
それ以上書く気は起きませんでした


とりあえず投げるつもりはないという宣誓としてトリップを
 ▼ 248 IpYfymK.Tw 18/04/13 22:28:06 ID:6h605/.6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
先に覚えたエネコの指導もあって、キノココも“秘密の力”の習得が出来た

マイナン「凄いなあ…… 全然解らない…… 覚えられる気がしない」

しかしながら、容量を掴むのが難しい技であるため、他の皆は覚えきれていないらしい

ルリリ「難しいよねぇ ま、最初に言ってたように貴方たちが覚えられたならそれでもね」

ゴクリン「そうだね 一匹が“ひみつきち”を作れるのならいいんだもんね」

エネコ「じゃあ、早速作りましょうか “ひみつきち”」

キノココ「……どこに作るのがいいのかな?」

エネコ「へ? あの茂みの所じゃないの? そのつもりだったけど」

エネコの言葉に皆も頷く

彼女らからしてみればキノココが違う意見だったほうが想定外だったらしく怪訝そうだ

キノココ「チリーンがいなくなった理由が僕等の思ったとおりだったとしたら、
     あそこを再び開くのはどうなのかな……って」

プラスル「『黄泉の道』、でしたっけ…… 魂を引っ張る危険性のあるという……」

キノココ「そうそれ」

エネコ「……私達はあんたから聞いただけだからよく想像できてないのかもしれないけど
    そんな危険なものなの? 少なくとも、昼中は大丈夫なんじゃないの?」

キノココ「判らない 怖気の走る空気だったけど、実際僕は危険な目には遭ってないしね
     でも判らないからこそ誰も近寄れない現状を保っておくべきなんじゃないかな」

ルリリ「『障らぬアルセウスに裁き無し』っていうもんね」

ゴクリン「でも、皆が集まるのに最適だっていう高台付近にはあの茂みくらいしか
     “ひみつきち”に繋がりそうな場所はないよ?」

キノココ「ないこともなさそうだけど…… 高台の下とか……」

ゴクリン「それにさ、“秘密の力”って割と誰でも覚えられるっていうじゃん?
     あそこの危険性を知らないで開けてしまう奴が現れるかもしれないじゃん
     それだったら先に“ひみつきち”作って領有していた方が良いと思う」

キノココ「ん…… そういう考えもあるか すでに他者が作ってるとこに
     上書きはできないって話だったもんね」

ゴクリン「でしょ? 昼中は安全だと知っているわけだし、仮に夜中でも
     キノココは大丈夫みたいじゃないか 何とかなるって」

エネコ「あんた、思ってたより考えてるのね…… なんか意外」

ゴクリン「それに、あそこの茂みが一番近いし 移動したくないでござる」

エネコ「それが一番の理由じゃない 感心して損したわ」

キノココ「ゴクリンらしいと言えるけどね うん じゃあ、茂みに作ろうか
     本当に安全かどうかもちゃんと調べないとだけどね」
 ▼ 249 IpYfymK.Tw 18/04/14 00:52:03 ID:8jHD/1UY [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そんな話の後、茂みの元へ行き実際に“ひみつきち”を開いてみることに

キノココ「さて、と じゃあ行くよ “秘密の力”!!」

自然に宿る力を使うことをイメージしてやると茂みの一部が動き出し、

ポケモンが通るための穴が開いてくれた 成功、みたいだ

キノココ「……………………」

ルリリ「? 入らないの?」

あの時の底冷えのするような空気を思い出して足を竦ませていると、後ろから声がかかる

……今は日中だ 大丈夫 そう自分に言い聞かせてやっと“ひみつきち”へ足を踏み出す

中に入り、軽く見まわし、深呼吸 空気に不穏なものは混ざっていない

杞憂であったことを確認して皆を招く

エネコ「もう入っていいの? ……やっぱりここが危険な場所だとは思えないけれど」

ルリリ「そうだよね 暖かい雰囲気で いいとこだよね」

ゴクリン「“ひみつきち”は閉ざされてたのに、綺麗な机と棚は残ってるんだね」

マイナン「空っぽになってる訳じゃないんだな 元の持ち主はいないのに」

キノココ「“秘密の力”で作成するのは入口だけらしいからね
     チリーンが片付けなかったら残ったままだよ 使っていいってことなのかな」

エネコ「ベッドがなくなっているのは使われたくなかったからだろうし
    逆説的に言えば 他は使っていいと解釈してもいいんじゃないかしら」

ゴクリン「あれ? 棚の上に何かあるよ ……ほら」

“ひみつきち”の奥に置いてある棚の上には紙のようなものがあった

プラスル「便箋…… 置手紙ですね チリーンさんからでしょうか」

ルリリ「裏には……【キノココ達へ】って書いてあるね」

エネコ「読んでみれば判るわよ 貸して」

エネコ は ドリームメール を 受け取った !
 ▼ 250 IpYfymK.Tw 18/04/14 23:00:04 ID:8jHD/1UY [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

拝啓、皆様如何お過ごしでしょうか

この度は碌に挨拶もせず慌ただしくいなくなってしまい申し訳ございません

魂を引き込み命を奪うあの場所はやはり危険であると判断しました故

此岸に迷い出たカゲボウズが無事彼岸へ辿り着いたのを機に、

『黄泉の道』を内側から封じさせて頂きました

この“ひみつきち”に『黄泉の道』が繋がることはもうない筈です

彼岸の方から道を閉ざすので戻ることは難しいですので私は暫し離れます

茂みの“ひみつきち”と残してある家具類はご自由にお使い下さって構いません


私がここ、茂みの“ひみつきち”を離れる決心が出来たのは、

あんなにも傷付いて弱っていたあなた方がちゃんと強くなっていたことを確認できたから

ということもあります

皆で支え合うことによって得られる強さというのもきっとあるのだと思います

その繋がりをどうか大事にしてくださいね そして無理はなさいませんよう


彼岸に行くと書きましたが、今生の別れを示したわけではありません

魂の水先案内人たるチリーン族は『黄泉の道』でも平気なのです

『送りの泉』等からいずれ此岸に戻ることもきっとあるでしょう

その時にまたお会いできることを楽しみにしております


決して会いにこようなどとは思わないでくださいね では

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

エネコ「……だってさ」

ゴクリン「最後の一行、何? どういう意味?」

キノココ「『早死にしないでくださいね』ってことじゃない? ほら、向こうは彼岸だし」

ゴクリン「解りづらいし、ジョークにしちゃ黒くない?」

エネコ「でもチリーンらしいわね お茶らけるのに慣れてない感じっていうか」

ルリリ「えっと つまりここの“ひみつきち”はこの後も安全に使えるし
    チリーンにもいつかまた会えるってことだよね? 良かった!」

ここ を キノココたち の ひみつきち に しますか ?

→ はい
  いいえ
 ▼ 251 ングドラ@インドメタシン 18/04/16 22:38:23 ID:iqfxgAl2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 252 IpYfymK.Tw 18/04/17 17:04:56 ID:r.yWmzvg [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
茂みの“ひみつきち”を譲り受けて数日経ち、皆好きな時に集まるようになった

キノココ「やあやあ、お邪魔するよ」

エネコ「今日も来たのね ていうかその挨拶する必要があるの?」

マイナン「いらっしゃいキノココ ……ってボクらが返すのも変だよね?」

キノココ「『お邪魔する』っていう挨拶は変か ……でもなんか習慣着いちゃったんだよね
     この場所に来るときはいつもそう言ってたから」

エネコ「……まあいいわ 気にするほどでもないものね」

プラスル「挨拶はあった方がいいですしね いっそそれに統一しますか?」

キノココ「『お邪魔する』 『いらっしゃい』って? それもいいね」

プラスル「いらっしゃい、キノココさん えへへ」

エネコ「こうして何気なく過ごしていると、ここが危険な場所だったって言われても
    どうも実感湧かないわよね や、信じてないわけじゃないんだけど……」

キノココ「まあ、ちょっと突拍子のない話ではあるよね 傷付いた魂を引き込むなんてさ
     でも、僕は素敵な場所だと思うよ ここのお陰で僕等はここに集まったわけで
     皆と知り合えたから色んな経験を得られた 少しは強くなった実感もある
     チリーンは否定したけど、『願いの叶う“ひみつきち”』っていうのも
     僕にとっては強ち間違ってもなかったんじゃないかなって思うよ」

エネコ「へえ 言うじゃない ……私もあんたに会えたのは幸運だったわ」

キノココ「……『傷ついていたから集まった』 なら、皆心的外傷があったんだよね
     チリーンが言うに、僕はもう乗り越えられてるらしいけど、皆は大丈夫?」

マイナン「んー、ボクはここに来た原因が『妹を助けられない無力感』だったから
     ここに来たお蔭でそれも解決してるし大丈夫じゃない?
     そういえば僕にとっても『願いの叶う』って言うのは当てはまるのか」

エネコ「それなら私もね ここに来て、キノココにあったお蔭で『平気』になったもの」

キノココ「あれから貴族様とも折り合いついた? っていうか会った?」

エネコ「まあね 一応挨拶はしたわよ 迷惑かけたのは事実だしね
    といっても『正式に仕事を辞めてきた』っていうのが正しいところなんだけど」

キノココ「あー、やっぱり戻る気とかはないんだ?」

エネコ「まあね」

プラスル「私は兄に連れられてきただけで傷がどうこうではなかったので
     こう言っては何ですが、皆さんが少し羨ましいです」

キノココ「羨ましい?」

プラスル「はい その、傷つくというのは良いことではないのでしょうけど
     それを乗り越えられたなら大きく成長すことと同義だと思うので
     私は…… 皆さんのように強くなれないのかなって……」

エネコ「……ああ そういう見方もあるのね 大丈夫よ 早いか遅いかの違いだけだもの
    それに、傷付かないと強くなれない訳で無し 経験値はどこでだって得られるわ」
 ▼ 253 IpYfymK.Tw 18/04/17 23:46:44 ID:r.yWmzvg [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
プラスル「そう、ですね そうなんでしょうけど…… 難しいです」

キノココ「……僕も前はバトルに勝つことだけが経験値を得る手段だと勘違いしてた
     それで、それが達成できなくて、諦めて、腐っていたんだよ」

エネコ「そういえばゴクリンに聞いたけど、あんた虐められてたんだっけ」

マイナン「え? キノココが? ……想像つかない だって凄いでしょ? キノココって」

キノココ「その凄いって言うのが何を指しているのかは判らないけど、そうだったんだよ
     ほら、僕、対面でのバトルとか全然だから いつも痛めつけられてさ」

プラスル「そうだったんですか…… その…… 今は大丈夫何ですか……?」

キノココ「どうなんだろね? 絡まれることはなくなったかな 会わないし」

エネコ「……その割には口調が軽いわよね 平気ってことでしょ」

キノココ「僕もちゃんと成長してるってこと 彼らに対する恐れは乗り越えてる気がする
     これはさっき言ったように皆のお蔭 僕は僕のやり方でいいんだって判った」

マイナン「…………その心は」

キノココ「『強くなる方法は、なにもバトルに勝つだけではない』ってことかな」

マイナン「うん? 実際バトルで得られる経験値って目に視えて顕著じゃない?」

キノココ「それもそうだけど 勝つことだけじゃなくて、観ることも経験になるんだ
     また、戦い方を考えることも、長所を生かす手段を講じるのも大事でさ
     寧ろ強くなるためには、よく考えることの方が重要らしいね」

プラスル「なるほど…… 考えること、ですか」

キノココ「まあ、受け売りなんだけどね」

エネコ「何よそれ」


ゴクリン「やっ、と お邪魔するよー キノココ居る?」

キノココ「いらっしゃい どうしたの?」

キノココを名指ししながらゴクリンが“ひみつきち”に入って来る 何の用だろう?

ゴクリン「うん なんかキノココにお客さんだよ」

「し、失礼します キノココという方にお頼み申したく存じる次第で、あの……」

ゴクリンの後ろから現れたのは何やら慌てた様子の♀ポケモンの方だった

キノココに頼み事? どういうことなのだろう……
 ▼ 254 ロンダ@れいかいのぬの 18/04/18 02:47:23 ID:fBNzc2aU NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 255 IpYfymK.Tw 18/04/19 00:11:05 ID:nfrMVyl6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エネコ「いらっしゃい 一先ず落ち着いてもらいましょうか 話はそれからね
    エネココアとロゼリティーどっちがいいかしら?」

お客さんに椅子代わりのクッションを差し出し、飲み物を用意しながら彼女は言う

このクッションはエネコ達が用意した女子陣の私物である ……余談だが

「あ、いえ お構いなく …………」

客として訪れた彼女は、そわそわと落ち着かない様子でいる

綺麗な方なのだがポケモンに慣れていないのか ……頼み事というのが性急なものなのか

キノココ「いらっしゃい どういうご用件なのかな? あ、キノココは僕だよ 貴女は?」

グラエナ「こ、これは失礼した 名乗ってなかったな あたしはグラエナ じ、実は……」

そこで彼女は一旦言い淀んだ 何か苦悩しているようにも見えるが……

グラエナ「…………実は、弟があるポケモンに誘拐されてしまったのだ」

マイナン「ゆ、誘拐だって!?」

プラスル「た、大変じゃないですか!! ええと ええと……」

打ち明けられた内容は想定以上に深刻なもので、少したじろいでしまう

エネコ「……警察には言ったかしら? そういうのって彼らの仕事だと思うけど」

グラエナ「――それが、警察に言ったら弟の命はないと脅されていてな……」

エネコ「ふうん ありがちね…… それで、犯人側の要求は?」

グラエナ「金だ あたしなどにはとても用意できないような額のな……」

キノココ「人質を取られていて警察にも相談できず、要求された物の用意もできない……」

ゴクリン「そのポケモンってお姉さんより強かったの? 戦った?」

マイナン「ちょ、ゴクリン、自分で何とかしなかったのかみたいな言い方……」

グラエナ「いや、あたしだって黙ってたわけじゃない 弟を取り返そうと必死に戦ったさ
     ……だが、彼奴は強かった 敵わなかったんだ 悔しいがな
     ここには警察も手を出せないシンジケートを壊滅に追い込んだ市民ポケモンが
     いると聞いた 更にはあの実力のある貴族も打ち破ったとも聞く
     それで、あたしはその力を是非とも借りたいと思い 馳せ参じたのだ」

……事実ではあるのだけど、過大評価されてるようで弱ってしまう

実際キノココはそこまで凄腕というような実力はない 運が良かっただけのところもある

キノココ「……それで、あるポケモンって? どういう相手だったの?」

でも、聞いてしまった以上は 頼られてしまった以上は
見捨てるという寝覚めの悪い選択肢を取るつもりなんて更々なくて

キノココ「……作戦会議と行こうじゃないか どうやらまた負けられなさそうだしね」
 ▼ 256 ルマユ@ウッディメール 18/04/20 23:32:52 ID:zTJ8XluE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グラエナ「それって…… ひ、引き受けてくれるってことか!? ありがとう!」

キノココ「できることなら助けたいね 無論僕等の手に負えないと判断したなら別だけど」

グラエナ「……え? ひ、引き受けてくれないのか?」

キノココ「いや、そうじゃなくて……」

エネコ「誰かの命も掛かってるっていうのに、手に負えないことまで引き受けるような
    無責任なことはしたくないっていう話でしょ
    私達はシンジケートの時だって最終的に警察に頼ったもの
    というかそれ前提で動いたわ それでもキノココは大分無茶してたけどね」

話に入り込んできたエネコはキノココの言いたいことを言ってくれる

が、呆れたような半眼でキノココを睨んでくるのは止めて欲しい……

グラエナ「む…… 済まない そうだな 考えが浅はかだった」

エネコ「はい どうぞ 分けるの面倒だったからみんなエネココアだけど」

グラエナ「ありがとう 頂くよ こうして弟を助ける方法を考えてくれるのは凄い助か
る」

ゴクリン「『サント・アンヌに乗ったつもりで』いい なんたってキノココだもん」

キノココ「……それは何の保証なのかな?」

そして何で君が偉そうなんだい? ゴクリン……

キノココ「まあ、それは置いておいて 君が戦ったという誘拐犯について教えて欲しい」

グラエナ「…………それが、あまり解らなかったんだ」

エネコ「え? 戦ったのよね?」

グラエナ「……ああ 弟の臭いを追って彼奴の元まで追跡したんだ
     だが、あたしが金を持ってきたわけじゃないことを見て取ると彼奴は
     不意打ち気味に“砂掛け”を繰り出しあたしの視界を奪った
     あたしは鼻が利くからまだ戦うことはできたが、目をやられたのはでかい
     ……完敗だったよ いきなり陰から襲われたから姿も拝めていないんだ
     倒れ伏したあたしを彼奴は嘲笑い 今度は金を持ってこいと言った」

エネコ「……情報が少ないわね 会話はそれだけ?」

グラエナ「そういえば、キノココ達のことを聞いたのは嘲笑われてる時だったんだ
     比較してあたしを揶揄するようにね ……だからここに来たんだけど」

キノココ「何の技を受けたの? 何でやられた?」

グラエナ「あ、ああ “ミサイル針”だったと思う 弱点を突かれたんだ」

キノココ「『虫タイプ』か…… いや…… ――ごめん、グラエナ」

……相手はキノココのことを知っている 多分、この問題はグラエナだけのものじゃない

キノココ「弟君のこと 僕が何とかしなくちゃみたいだ」

キノココにも責任の一端があるのかもしれない
 ▼ 257 IpYfymK.Tw 18/04/22 15:24:11 ID:YBFtkUDk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
誘拐犯が身代金の受け渡し場所として指定した森の一角

グラエナから聞いた時間通り、キノココはそこへと足を延ばす 一匹で

不意打ちでやられてしまわないように回りの様子を確認しながらゆっくりと

誘拐犯「お、来たな あの雌が馬鹿正直に来るのかと思ってたが……
    どうやら招待状はちゃんと届いたらしい 待っていたぜ」

どうやら待ち合わせ相手は既に来ていたらしく声を掛けてくる

陰に隠れて相手の姿は確認できないが、親切にも不意打ちはしないでくれるらしい

キノココ「僕に用があるんだったら直接呼んでくれればいいじゃないか
     あの姉弟を巻き込む必要なんてなかっただろう?」

誘拐犯「馬鹿言うな 直接呼ぶ伝手もなきゃそれで来る保障も必然性もねえ
    一芝居打つ必要があったんじゃないか 現にそれで来たのだから成功だ」

キノココ「芝居する必要がなくなったなら彼女の弟を放してくれてもいいと思うけどね」

誘拐犯「馬鹿言うな お前を呼んだのはこれはこれで俺の趣味
    金をたんまり頂くのそれはそれで俺の仕事だ なんだかんだ仕事のが大事だろ
    もし伝わって無くて雌が来たら金だけもらってさよならするつもりだったよ
    ……そんな詰まらないことにはならなくてよかったぜ」

キノココ「何でこんな判り辛いことするのかと思ったらそういうことか
     僕が来なくても何ら問題はなかった 来ない可能性の方が高かっただろう?」

誘拐犯「実際来たからいいんだよ それにそこそこ確信してたぜ?
    『あの時』と似たような状況、絶対お前が来るってな」

弟君を攫ったのもそのため…… ますますグラエナに申し訳ない

キノココ「そこまでして僕を求めるなんて、厄介な奴に好かれたもんだ いい迷惑だよ」

誘拐犯「俺は負けっぱなしが気に食わねえだけだ 一回圧したらそれで済む
    大人しくしてボコられやがれ」

キノココ「それが嫌だからここに来たんだよ 返り討ちにしてやる お金を払う気もない
     弟君も返してもらう ……そして今度こそお縄に付け! ノクタス!!」

木の影から姿を現した誘拐犯はこちらの言葉にうすら笑いを浮かべてい返してくる

誘拐犯「ほざけ! てめえみたいな雑魚に負けたのは裏社会に生きる者としての俺の汚点だ!
    ここですっきり雪ぎ落させてもらう!!」


元牢屋番 の ノクタス が 勝負 を 仕掛けて きた !
 ▼ 258 r.TpafL6X6 18/04/26 23:07:14 ID:.Z/yW5aQ [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
誘拐犯「“ニードルアーム”! おらっ!!」

相手は鋭い棘を備えた腕を振りかぶり、キノココに向かって突き出してくる

キノココ「――“まもる” ……ぐぅ」

鋭い一撃 “技”の影響でダメージはないが、実際に受けてみて悟る

力量差の所為か、一発でも致命傷になりかねないな ……これは拙い

誘拐犯「まだまだ “ニードルアーム” “毒突き”」

キノココ「……うあっ! 危なっ!! ふう…… 何とか……」

相手の動きをよく見て、バックステップで避ける 躱す

“まもる”ばかりに頼っていては直ぐに精度が落ちる そうしたらやられるだけだ

キノココ「……そもそもお前、何で、捕まっていない? 
     シンジケートは、軒並み捕まった、って聞いたけど……?」

相手を戦闘ばかりに集中させまいとトラッシュトークめいたことも試す

実際疑問に思っていることでもある 彼らは壊滅したと思っていたが……?

誘拐犯「あん? バトル中に無粋な奴だな…… まあいい
    単純な話だ『シンジケートの構成員は軒並み捕まった』が
    俺は『構成員じゃなくフリーランスの何でも屋』だった それだけだ」

攻撃を緩めることはなかったが、律義に返答してくれる

誘拐犯「中々に金払いの良い客だったが、お前の所為で全部おじゃんだよ
    毒にやられて職務は失敗、毒を治すために持ち場を離れて捕まるのは免れたが
    損失は馬鹿にならん キノココ程度に嘗められちゃ腹の虫が治まらねえんだよ!」

聞いた話と辻褄が合わないと思ったらそういうことか 警察も見落としがあるらしい

キノココ「元々はお前らが悪いんじゃないか 僕等は友達を返してもらいに行っただけだ」

相手の攻撃を右に左にと避けながら、淡々と答える

勝手な理屈に呆れてしまう 逆恨みも甚だしいではないか

誘拐犯「知るか! てめえだけは生かしておかねえ!! 朽ち果てろ!!」

相手はキノココに対する怒りに任せるように大きく振りかぶって渾身の一撃を放ってきた

キノココはバックステップで避ける動きをしながら

キノココ「――“毒々”!!」

技を使い、毒液を相手に打ち込む

これで相手は猛毒状態になり、時間さえ稼げばキノココの勝ちとなる

更に言えば相手は毒の回りと共に動きが鈍くなる

動けば動くほど毒の回りも早くなるから、少しは牽制になる筈
 ▼ 259 r.TpafL6X6 18/04/26 23:08:54 ID:.Z/yW5aQ [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
誘拐犯「……馬鹿にしてんのか? 前回の焼き増しがそのまま効くとでも?」

……流石に、そうは問屋が卸してはくれないか

攻撃の間隙を見て“毒々”を当てたというのに相手は素知らぬ顔

猛毒状態になっていない いや、一瞬で治したというのが正しいか

誘拐犯「俺はお前が来るのを待っていたんだぜ? 一度負けた相手をだ
    その対策ぐらいしていて当然だろ? 同じ戦法じゃやられねえよ」

相手は先程何かを口に放り込んだ 恐らくモモンの実 解毒効果のある木の実だ

勿論、木の実は使い切りで一個につき一回しか使えない

しかしここは森の中だ モモンの木などいくらでも生えている

どれだけ毒を与えようと解毒薬の補充はいくらでもできてしまう

……受け渡し場所を森の中に指定したのはその為らしい 用意周到なことだ

しかしそうなってくると、キノココにできることは大分なくなってしまう

相手は『草タイプ』だ 粉も胞子も、種さえも効かない

キノココの得意とする“草技”も効きづらく、多少覚えている“格闘技”は抜群だが
“気合パンチ”は集中する時間が必須となる

そんな暇を与えてくれるような相手ではないため、自然、その選択肢は却下される

決定打に欠ける此方に対して彼方の攻撃は一発でも致命傷になりかねないと来た

……これは本当にどう動くべきか 分が悪いにも程がある

あの姉弟が狙われた理由がキノココに会ったのが判ってしまったからと
たった一匹で来たのは失敗だったのかもしれないが……

しかし今更悔やんだところで状況は好転したりしない

結局、キノココはできることをやるしかないのだ

キノココ「“毒の粉”! “痺れ粉”! “眠り粉”! “茸の胞子”!」

誘拐犯「今度は何のつもりだ 悪足掻きは止めろよ 効かねえっつってんだろ」

攻撃を右に左にと避け、逃げ回りながら粉系の攻撃を出しまくる

効かないことは重々承知 “技”の狙いは別に相手を状態異常にすることではない

誘拐犯「ぐ…… どこ行った!? 粉が多すぎて…… くそ!!」

相手の視界を遮り隠れるためだ どうやらうまくいったらしい

キノココ「……“身代わり”」ボソッ

そして身代わりだけ置き土産にして急いで森の中を駆ける

さて、どの程度時間稼ぎができるだろうね……
 ▼ 260 r.TpafL6X6 18/04/26 23:10:04 ID:.Z/yW5aQ [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
誘拐犯「てめえ!! 待ちやがれ!! あんま嘗めた真似してんじゃねえ!! “毒針”!!」

幸い、この森のことはキノココには馴染み深い 何せ元々棲み処とする場所である

地の利を活かして木々の隙間や段差などの凸凹を縦横無尽に逃げ回る

誘拐犯「さっきの言葉は何だったんだよ腰抜け! 守って逃げてじゃ勝てねえだろが!?」

返り討ちにすると大言吐いておきながらキノココは逃げるしかない

相手からしてみれば非常に苛立たしく見えるだろう

誘拐犯「だ・か・ら! 逃げんな!! 隠れんな!! うざってえわ!! “ミサイル針”!!」

後ろから言葉と共にいくつもの攻撃が飛んでくる

それらはキノココにとっては弱点のもので 一発でも受けるわけにはいかない

キノココ「――! く、“まもる”」

当然、“技”にも頼るわけだが、そのたびに足を止めてしまって

誘拐犯「はあ、はあ…… やっと追いついたぞ そろそろ観念しやがれ!!」

遂に、すぐ背後まで迫られてしまった とっさに横に飛び攻撃を躱す

キノココ「随分追いつくまで掛かったじゃないか それに息も切れてる
     実はお前、全然大したことないんじゃないの?」

虚勢を張って相手を煽る 出来ることはすべてやる意気で“威張る”

しかし 上手く 決まらなかった !

誘拐犯「ハ! だから焼き増しは効かねえって言ってんだろうが
    空威張りは虚しいだけだぜ 追い込まれた雑魚が何言おうと締まらねえよ」

駄目か…… “威張る”は相手の頭に血を上らせてこそ効果を出す技

こんな状況では戯言として流されるだけ…… 効かないらしい

誘拐犯「さあ、もう悪足掻きはしないでくれよ “毒突き”」

キノココ「“まも――”う、ぐあっ!!」

もうあまり精度が良くないらしい 逃げることももはやできそうもない

キノココ「……ここで僕が『お金はあげるので降参します』って言ったら?」

誘拐犯「……見苦しいな どっちにしろお前は生かしてはおかねえよ」

キノココ「……だよね」

それはそうだ 判ってた

……どうせ受け入れられないなら 足掻くしかないじゃないか

キノココ「……“秘密の力”!! 『引け』ぇ!!!」

“ひみつきち”を作るためではない 攻撃としての自然の力を引き出してやる
 ▼ 261 IpYfymK.Tw 18/04/26 23:56:24 ID:.Z/yW5aQ [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
誘拐犯「無駄な足掻きは寄せって…… んあ……? 何だ、これ……? ――Zzz……」

“秘密の力”程度はさしてダメージがないと油断したのか、こちらの攻撃をまともに受け

相手は唐突に糸が切れたように眠りこけてしまった

キノココ「『引い、た』……? 上手く、行ったのか?」

悪足掻きにしかならないと半ば諦めながら打った一撃が、こうも成功してしまうと

自分でやっておきながら信じられない気持ちで呆然としてしまう


――“秘密の力”には場所によって違う追加効果が存在する

――こういった森や草むらでは、相手を深い眠りへ誘うことがあるという

――その効果を引く可能性は1/3の満たないものなのだが……

――とにもかくにもキノココは相手を眠らせ無力化することに成功したのだ


キノココ「……ふう こっちはなんとかなった、のかな? 後は、縛っておくか……」

眠ってしまった相手を、態々放置しておく道理もない

キノココは相手を行動不能にしておこうと思い 用意してきたロープを持ち近づく


誘拐犯「……Zzz ……ぐぅ ……グガー ……グオオオォォォ!!!」

突然、相手のいびきが強くなる こちらの体力もガリガリ削ってくる程に

キノココ「……な!? く、酷い“いびき”だ…… 眠らせても厄介だなんて……」

眠っていても出せる“技”というものも確かに存在するが、まさかこんなところで……

眠らせることが出来たのも想定外だが、“いびき”も想定外

このままではこちらの体力が尽きてしまう

キノココ「くぅ…… 不本意だけど仕方ない 起きてもらうよ “目覚ましビンタ”!!」

誘拐犯「がはっ……! 痛ぇな!」

……この一撃で斃しきれたらと一瞬期待してしまったが、そう何度も奇跡は続かない

相手はまだまだ戦闘不能には陥っていなくて こちらは正直体力がギリギリ

今度こそまさに万事休すと言えるのかもしれない
 ▼ 262 イチュウ@こだいのツボ 18/04/28 20:57:54 ID:ULgu5caQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 263 ルガー@うしおのおこう 18/04/29 22:35:07 ID:1Di9p1jI [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
守る、躱す、逃げる、隙を見ては“ドレイン”を使い体力回復を図る

そして“身代わり”でまた削り、躱し、逃げる

ギリギリの体力を尽きてしまわないようにギリギリで立ち回る

相手はまだ倒れない ならばキノココだって斃れるわけにはいかない

此方が先に力尽きてしまったら ……最悪の未来は想像に難くない

どれぐらいの時間だっただろうか ほんの数秒だった気もするし何時間も経った気もして

脚が棒になりそうなほど走って、とうとう足がもつれてしまい

『下手なミサイル針』の一発が、キノココの背中に直撃した


誘拐犯「はあ…… はあ…… やっと…… 止まったか……」

後ろから、疲労に息が切れながらも怖気の走る声が飛んでくる

生存本能が脳から必死に命令を送るけれど、もはや身体は言うことを聞かず

誘拐犯「くく…… くはは……! 全く……! キノココ程度の雑魚助が……!!
    この俺様に、こんな苦労させやがって!! さあ、もう『俎上のコイキング』だ
    どっから料理してくれようか!? 精々苦しんで果てて見せろ!!」

今日は何度も同じような台詞を聞いた気がする

その度にキノココは足掻き、何とか今まで引き延ばしたけれど

疲労困憊で、身体が動きそうもない 悪足掻きも、もう品切れ状態だ

……キノココには、もう



エネコ「“猫騙し”!!!!!」

誘拐犯「――――!! なん、だと!?」


何処からか駆け込んできたエネコが、出会い頭に怯み効果のある“技”を打ち込んだ

それで相手は一瞬の硬直を余儀なくされ その隙にと

巡査「“ねばねばネット” 警察です ノクタス、貴方を誘拐と恐喝の現行犯で逮捕します」

新たな顔が現れ、あっという間に拘束してしまった

誘拐犯「アメモース!? 警察だと!? ぐ…… く……! うおぉっ!!」

誘拐犯は縛られた状態から何とか抜け出そうともがく

巡査「無駄です! 大人しくしなさい!」

警察の方は倒れた誘拐犯に“飛びかか”って抑え込んだ
 ▼ 264 ザンドラ@チーゴのみ 18/04/29 22:35:32 ID:1Di9p1jI [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
誘拐犯「……あんのアマァ 結局警察にチクりやがったのかよ……
    クソ…… 散々警告してやったのによ」

巡査「警告? 聞き捨てなりませんね 彼女に何を言ったと?」

誘拐犯「あのガキ…… 人質の命は俺の掌の上ってことだよ……!
    こうなっちゃ俺はもう御終いだ……
    だが折角終わるならてめえらに後悔を植え付けるのも一興だよなぁ!!」

不気味に笑ったそいつは、何とか動かせる手先だけで懐から何かの機械を取り出す

誘拐犯「お前ら!! これを見やがれ!!
    これはな…… あのガキを閉じ込めた場所に仕掛けた爆弾のリモコンだ!!
    商品に疵をつける気はなかったが、約束が破られたならしょうがないよなぁ!!」

巡査「な!! そんな危険物……!! 渡しなさい!!」

警察の言葉を無視して相手はその機会のボタンに指をかける――

誘拐犯「くッははは! 全部全部ぶっ壊れちまえば――」


エネコ「哀れね もはや何の意味もないことに気付きなさい」

誘拐犯「――あん?」

――寸前、エネコの声がかかり動きが止まる

エネコ「何で警察に頼れたと思ってんの? その問題が解決したからよ?」

誘拐犯「何言って…… そんな、馬鹿なことが……」

グラエナ「ありえてしまうみたいですね 乗せられたと知った時は焦りましたが
     キノココ氏に頼って本当によかった 紹介下さったことだけは感謝致します」

ゴクリン「だから言ったじゃない『サント・アンヌに乗ったつもりで』いいってさ」

いつの間にか、人質にされていた筈の弟君を連れて皆がそろっていた

それを見た相手は口が塞がらず、声も出せないでいるらしい

エネコ「……もう、また無茶して こっちは大した人数いなかったから楽だったけど
    その所為で余計心配だったわよ 一匹で主犯格を留め置くとか言い出しちゃって
    ……馬鹿」

プラスル「本当に、間に合ってよかったですよ ボロボロじゃないですか キノココさん」

責められてしまう…… しかし今回は本当に危なかったため何も言い返せない

誘拐犯「なんだ、これ……? なんだ、それ……?」

最後の手札も封じられた誘拐犯は呆然と呟くだけだ
 ▼ 265 IpYfymK.Tw 18/04/29 23:16:37 ID:1Di9p1jI [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
さて、誘拐犯が爆破スイッチから力なく手を放し項垂れたところで種明かしと行こう

といっても、難しいことは特に何もしていない

キノココが元牢屋番に雪辱を果たすため指名されていることに気付いたから

それを一匹で相手した ……まあ、一匹で行くことは当然反対されたけど

そしてその間に別動隊を組んで人質解放のため動くことにした

人質の問題さえ解決すれば公的機関に遠慮なく頼れるといった意味もあったが

やはり捕まって怖い思いしているだろう弟君が心配だったから

人質の居場所については誘拐犯は当然何も言ってはいなかったが、

此方には超嗅覚を備えるグラエナがいたため容易に知ることが出来た

……この姉弟で誘拐騒動など起こしたのは奴らの最大の失敗と言えるかもしれない

しかし主犯が解っているからといって仲間の有無も数や力量は全くの未知数である

その為念を入れてほぼ全員で助けに行くことになった

……キノココが一匹になることを押し切れた理由でもある

兎に角、人質を救出して、警察も呼び、全員で誘拐犯を抑えるつもりでいた訳だ

つまり初めから、時間稼ぎ=勝利条件という話だったわけだ

まあ、キノココの方で無力化できるならそれに越したことはなかったというのも事実だが

誘拐犯「……するとなんだ? また俺は独り相撲させられてたって訳かよ!!
    ちゃんと戦えよ!! この! 臆病者の雑魚助がぁ!!!」

相手は倒れているというのに、勇ましく叫ぶ

エネコ「……負け惜しみとか うわ」

エネコはついには憐れむような声を出し始める 回りの皆も似たような表情だ

ただ、キノココは思う それは違う

キノココ「いいや、その通り 僕は臆病だ そして弱い でもそれがなんだ?
     弱くたって勝てる やり方はいくらでもある」

そしてお前は負けた それだけだよ

それは言葉にはしなかったが、十分伝わっていることは憎々しげな眼から判った



会話はそこで終わり、奴は巡査さんに警察署に連行されていった

キノココは“ひみつきち”に連行され、暫くの絶対安静を命じられたのは、余談だ
 ▼ 266 IpYfymK.Tw 18/05/02 11:53:41 ID:cPnTWQ9A NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
あれから数日が経ち、キノココの安静命令も解除された

といってもキノココは草タイプだから治癒力が高く、傷はもっと前に完治していたのだが

皆の心配性は嬉しいけれど、少し辟易する

エネコ「だったらもうちょっと自嘲してくれると助かるんだけど?」

頭が痛そうに呻くエネコ キノココとしては言いたいこともあるのだが

この数日、キノココに付きっきりで看病してくれたのは彼女であるから

あまり強くは言えない いや、もう大丈夫なのに安静にさせられたのは不満だが

キノココ「警察の方はなんて言ってたんだっけ?」

キノココが安静にしている間、警察機関がまた現れて謝礼やらなにやら色々あったらしい

面会謝絶みたいな形にされていたため、キノココは詳しいことを知らないんだけど

エネコは少しの間言い辛そうに口籠っていたけれど、やがて決心したかのように話し出す

エネコ「あんたの活躍を認めたお偉いさんが、自警団として公的権限を与えたいんだって
    あ、言っとくけど、あたしは反対だかんね! また無茶が増えるじゃない!」

本当に心配してくれていると解るエネコの様子に、自然と口元が緩んでしまう

エネコ「ちょっと、何笑ってんのよ……!」

キノココ「ごめん、ごめん なんか嬉しくなっちゃって
     認められるって嬉しいことだよね なんか、報われたなあって感じがして」

エネコ「まあ、公に手柄を立てたことは判ってもらえたからね。
    ……自警団の話、受けるの?」

キノココ「いいや」

評価されて嬉しくはある でも、それとこれとはやっぱり別の話で

キノココ「僕は強くない そんな重たい肩書、背負えないよ
     それに、僕は友達だから助けたいと思えたんだ 赤の他人のためとなると
     どうだろうってなっちゃう だからそういうの、向いてないんだよね」

エネコ「……あんたの友達の定義が知りたいわ ルリリは会ったその日に助けたじゃない
    マイナン達もそうよね」

キノココ「あはは…… それを言われると…… うん でもやっぱり公は性に合わない」

責任を与えられてしまったら、きっと重たくて潰れてしまう

今のままで、丁度良いのだと思う
 ▼ 267 IpYfymK.Tw 18/05/03 23:19:00 ID:GCyB2Wts NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
その後、自警団や公的権限の話は正式に断りを入れて

偉い人には残念がられてしまったけれど、こちらの意思を超えて無理強いはされなかった

でも、民間としての範囲内での協力は要請されることになるのかな、と思ったり

そのくらいのことだったら、協力するのも吝かではないかなと思いもするけど


そしてキノココはいつものように“ひみつきち”へと足を向ける

なんだかんだと、あそこは居心地が良いのだ 皆もいる

今日は誰が来ているかな 何をしようかな

楽しみに思って、つい早足になりかける “胞子”なんだけどね


「アノ、すみません アナタ、ここら辺に棲んでいるポケモンですか……?」

道中、どこか異邦の雰囲気を持ったポケモンに声を掛けられる

キノココ「うん、そうだけど…… どうしたの?」

「えと、ワタシ、ある場所を探しているのですが……
 『願いの叶う“ひみつきち”』ってご存知ではアリませんか……?
 ここらにあると聞いて、目指しているのですが……」

どうやらこのポケモンは噂に惑わされてきてしまったようだ

キノココ「“ひみつきち”を探してるの? つまり、何か叶えたい願いがあるということ?」

相手に何と答えるべきかとキノココは悩み、質問に逃げる

「エエ、実はワタシ―――――」

何気なく質問をして返って来た答えに、キノココは何と言っていいか判らなくなった

相手の願いは、確かに叶ったら喜ばしい類のもので

しかし残念ながら『願いの叶う』なんて、都合のいい夢物語は存在しない

キノココ「ごめん そんな神様みたいな場所は知らない
     ……でも、いいところを知っているんだ きっと力になれると思う」


『願いの叶う』場所ではなく、『願いを叶える』力が集まる場所

困った時の『メタグロスの知恵』 さあ、作戦会議と行こうじゃないか

いつものようにまた皆で



『“ひみつきち”に集まって』

                                  ――Fin
 ▼ 268 r.TpafL6X6 18/05/06 22:48:15 ID:JBKc2CMA [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
昔々 ある森の奥深くに 弱虫な『ぽけもん』が 棲んでいました

『ぽけもん』は 森に棲んではいましたが 回りのポケモンには馴染めず

いつも 独りぼっちでした



弱虫で 力のなかった『ぽけもん』は 森に棲むポケモンからいじめられていました

こづかれたり インネンを付けられたり 散々に

『ぽけもん』はろくに抵抗できずに いつも逃げ回っていたのでした



しかし そんなある日 『ぽけもん』はいじめっ子に 大けがをさせられてしまいます

『ぽけもん』は 傷の痛みに 泣きそうになりながらも 自分のすみかへと歩きました



しかし けがの所為で 道を間違ってしまったのか

『ぽけもん』は 気付くと 知らない場所に 辿り着いていました

森の外れの 高台の上 そこにある茂みには 入り口と思わしい穴が開いていました

中からは 涼し気で 綺麗な音が 鳴り響いています

不思議と その音色が 『ぽけもん』を ここに呼んでいるような気がしました



けがの所為もあり 疲れていた『ぽけもん』は

そこで休ませてもらいたいと 茂みの中へ入りました



「あら けがをしていらっしゃるのですね どうぞ みせてください」


茂みの中で『ぽけもん』を出迎えたのは 一匹の チリーンでした

チリーンは 『ぽけもん』の けがの具合を みてとると

鈴の音を 鳴らしながら いくつかの 木の実を 混ぜ始めました



チリーンは 『ぽけもん』に 薬を 作ってくれました

チリーンの薬を 『ぽけもん』の 傷に塗ると 魔法のように 痛みが引いていきました

『ぽけもん』は びっくりして 沢山 お礼を 言いました
 ▼ 269 r.TpafL6X6 18/05/06 22:49:05 ID:JBKc2CMA [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ここは 私の場所です

 太陽のあるうちなら どうぞ ごゆっくり していってください」

チリーンは 『ぽけもん』に そう言ってくれました

『ぽけもん』は その言葉に甘えて ゆっくり休ませてもらいました



そして日が傾き始め 『ぽけもん』の 疲れも和らいだころ

「さあ もうすぐ 日暮れです 良い子は お帰りなさいな」

チリーンが そう言って 『ぽけもん』を 茂みの外へ 追いやります

『ぽけもん』は 暖かい時間が 惜しくありましたが

確かに 夜に居座るのも良くないと 別れを告げ 帰り道を急ぎます



それから 『ぽけもん』は よく チリーンの場所へ 遊びに行きました

森にいると いじめられてしまう というのもありましたが

何よりも 茂みの中は 居心地の良い場所だったからでした



チリーンは 『ぽけもん』が訪れると 嫌な顔一つせず もてなしてくれます

しかしやはり 日が沈むまで ということは 何度も言いました

「夜は 私の時間なので そのときここに 来てはなりませんよ」

チリーンは どうやら 夜にお仕事を しているようです

「ただ 太陽のあるうちは 好きにしていて かまいません」

チリーンは 居心地の良い場所に 『ぽけもん』が 居ることを 許してくれます
 ▼ 270 ロマツ@はつでんしょパス 18/05/06 23:14:38 ID:FSj6Qu5k NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 271 IpYfymK.Tw 18/05/06 23:28:38 ID:JBKc2CMA [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ある日 『ぽけもん』が チリーンの場所を訪れると

いつもと 少し 様子が違っていました

何匹か ポケモンがいたのです

ルリリと エネコと ゴクリンの三匹でした

気になって 様子をうかがうと そのポケモン達は けがをしている様子でした



チリーンは ポケモン達に 薬を作っていました

『ぽけもん』は 苦しんでいる ポケモンたちをみて 自分にも何か出来ないかと

チリーンを 手伝いました



チリーンの薬のおかげで ポケモン達は 元気になりました

でも いったいどうして そんなけがをしていたのか 『ぽけもん』は皆に尋ねました

「じつは 私たちは 泉にすんでいる ポケモンなんです」

ルリリが 言います

「そこに 悪いポケモンが やってきて あたしたちを こうげき してきたのよ」

エネコはそう続けました

「ぼくたちは バトルが 得意ではないから やられてきちゃったんだ」

ゴクリンが 最後に ため息をつきながら 諦めたように 言いました



悪いポケモンに やられた だって?

『ぽけもん』は 悪いポケモンの 姿を 想像して 身ぶるい しました

怖いと思う気持ちと 許せないと思う気持ちとが 『ぽけもん』の中にうまれました
 ▼ 272 IpYfymK.Tw 18/05/07 21:08:46 ID:Ru/00aMs [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「あの 悪党 なんとか しないと あたしたち 泉に 帰れないわ」

エネコが 言いました

「なんとかって どうやって ?」

ゴクリンが 不安そうに 尋ねます

「それは わかんないけど」

エネコも 不安そうに 答えます

「戦っても 勝てなさそうだもんね」

ルリリは 気弱に 続けました



悪党を どうにかする方法を みんなで 考えました

しかし なかなか いい考えは 浮かびません

「戦って 勝てないなら 戦わないで 追い出せば いいんじゃない ?」

『ぽけもん』は ふと 思い付きで そう 言いました



「戦わないで って どうやってだい ?」

ゴクリンが 興味深そうに 聞きました

「君たちは おばけと 戦おうと 思うかい ?」

『ぽけもん』は みんなに そう 聞きました

「いやだ」

ゴクリンも

「戦いたくない」

ルリリも

「そんなのが 相手なら 迷わず 逃げるわ」

エネコも 否定的な 答えを 返します



「そうだろう ? 戦いたくない きっと 悪党も いっしょだ」

『ぽけもん』は 自分の考えを 言いました

「僕たちで おばけを つくってやろう」

みんなに そう 提案するのでした
 ▼ 273 変えます◆TOg35azcXc 18/05/07 21:11:27 ID:Ru/00aMs [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「面白そう !」

ルリリは すぐに 『ぽけもん』の 考えに 乗ってくれました

「どうやって つくれば いいのかな ?」

ゴクリンも 考えてくれます

「みんなで 影を作れば 大きい おばけに 見えるんじゃない ?」

エネコは より具体的な 案を 出してくれました



それから 『ぽけもん』たちは

「泉には 大きな おばけが すんでいる」

という うわさを あちこちで 広めました

泉の 悪党にも 届くようにと 色んなポケモンに 話しました



『ぽけもん』たちは うわさを広げた後の夕方 悪党に 見つからないように

こっそり 悪党の 居る場所へ 向かいました

「この泉に おばけが いるなんて うわさが 流れているが 俺様は 信じない」

悪党は ぶつぶつと 独りごとを 呟いていました

どうやら ねらい通り 悪党の元へと うわさは 届いたようです



「やい 悪党 ! お前 なんで 泉のポケモンを 追いやって

 泉を 独りじめになんか するんだ !」

『ぽけもん』が まず 悪党の前に立って 問いただします

「ここが 気に入った そして 邪魔な奴らを 追い出した それだけだ」

悪党は 悪気もなさそうに そう答えます

「ところで お前は何だ ? 俺様に意見するとは いいどきょうだ

 ワザワザ やられにきたのか ?」

悪党は 『ぽけもん』なんかには やられないと 自信満々です
 ▼ 274 TOg35azcXc 18/05/07 21:16:15 ID:Ru/00aMs [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「いいや 戦うのは 僕じゃない

 じつは お前の所為で 泉のおばけが おこってるんだ」

『ぽけもん』は 悪党に 言いました

「おばけ ? そんなもの 信じないぞ いるなら 出てきやがれ」

悪党は 強気に そう 言い放ちます

それを聞いた ゴクリンたちは みんなで協力して 大きな影を 作りました



たくさん たくわえて 大きく 膨れた ゴクリンに

ルリリと エネコが 乗っかって しっぽを 左右に 思い切り 伸ばします

夕日に照らされて のびる影は まるで 食いしん坊の 王様

とても 大きくて 恐ろしいものに 見えました

悪党は それを見て うわさは本当だったんだ と思い ふるえ出しました



「「「ネー ! ゴー ! ルー !」」」

突然 おばけが この世のものとは思えぬ声で どなりだすので

悪党は たまったものではありません

「うひゃー ! 出たー ! 助けて― !」

悪党は 泉から 逃げ出しました



おばけを信じた 悪党は 二度と 泉に 近づこうとしないでしょう

『ぽけもん』たちの力で 泉には 平和が 戻ったのです

泉から 悪党が いなくなったことを みんなで 喜び合いました
 ▼ 275 ガラティオス@ほしのかけら 18/05/12 23:13:18 ID:YNwGfojU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 276 TOg35azcXc 18/05/12 23:37:10 ID:8.umdRFw [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
泉に 平和が 戻った後も 『ぽけもん』たちは チリーンの場所に 集まります

居心地の良い場所で 遊んだり くつろいだり 勉強したりと 思い思いに過ごしました

いつしか みんな 誰が言いだすでもなく お昼ごろに集まって

夕方 日が暮れる前に お開き という決まりを守って 帰るようになりました



ある日 いつものように 『ぽけもん』が チリーンの場所に 行こうとしたとき

森の いじめっ子に 見つかってしまいました



「おい お前 最近 見かけないが どこに 行っているんだ ?」

いじめっ子は 『ぽけもん』に そう尋ねました

「俺は 今 宝探し しているんだが お前 なにか知らないか ?」

『ぽけもん』が 何か答える前に いじめっ子は 別の質問を してきました



「宝探し ?」

『ぽけもん』が 聞き返します

「聞いて驚け なんと 何でも願いを叶えてくれる まほうのひみつきちが あるんだ」

いじめっ子は じまんげに そう言いました



「まほうのひみつきち ? 知らない 聞いたことも ないよ」

『ぽけもん』は 本当に 初めて聞いたものですから そう答えます

「本当か ? 嘘だったら 承知しないぞ」

いじめっ子は 『ぽけもん』に すごみますが 答えは 変わりません

 ▼ 277 TOg35azcXc 18/05/12 23:37:25 ID:8.umdRFw [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「そうだ お前も 宝探しの 仲間に 入れてやろう」

いじめっ子は いいこと思いついた というように 提案してきます

「俺の願いを 叶えるために お前も ひみつきちを 探すんだ」

いじめっ子は 『ぽけもん』を 無理やり したがえるつもりのようです

「いやだ ! 勝手な命令なんて 聞きたくない !」

『ぽけもん』が そう答えると いじめっ子は 目を吊り上げて 怒りだしました

「何 ? 俺に 逆らうっていうのか ? 生意気だな 承知しないぞ !」

いじめっ子は 攻撃の かまえを取りました

もちろん 『ぽけもん』は すぐに逃げ出します

遊びじゃない 追いかけっこが 始まってしまいました



結局その後 『ぽけもん』は 上手く逃げおおせることが できませんでした

いじめっ子に 捕まって 攻撃された後 強い口調で 命令されます

「ひみつきちは 岩壁や 木の上 茂みの中なんかに あるらしい

 まほうのひみつきちを 俺のために ちゃんと探せよ !」

それだけ言って いじめっ子は 去って行きました

けがをした 『ぽけもん』には 目もくれません



『ぽけもん』は 痛みに耐えて また チリーンの場所へ 歩きました

「あら けがをしていらっしゃるのですか どうぞ こちらへ みせてください」

チリーンは 以前と同じように 『ぽけもん』のけがをみて 木の実を混ぜ始めました

「ありがとう チリーン」

『ぽけもん』は 一つお礼を言って 静かに座りました
 ▼ 278 TOg35azcXc 18/05/13 00:26:05 ID:U982686I [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「え ちょっと あんた そのけが どうしたのよ ?」

エネコは 心配そうに そう尋ねてきます

「何が あったの ? 私で良かったら 話ぐらい 聞くよ ?」

ルリリも 優しく 続けてくれます

「君が困っているなら 僕も 力になるよ !」

ゴクリンも 力強く 意気込みます



「あはは ただ転んだだけだよ」

しかし 『ぽけもん』は 誤魔化します

あまり いじめられていることは 言いたくありませんでした

特に ここにいるみんなには 知られたくないと そう思ってしまいます

『ぽけもん』の様子に みんな 何か言いたそうでしたが

あまり 追及したりは しないでくれました



「はい お薬 できましたよ どうぞ おつかいください」

チリーンが 作った薬を 『ぽけもん』が 自分の傷に塗ると

また 魔法のように 痛みが引いていきます

「本当にありがとうね だいぶ良くなったよ まるで魔法みたいだ」

痛みが和らいだ『ぽけもん』は もう一度お礼を言い 思ったままを口に出します

「魔法なんかじゃ ありませんよ でも 良くなったなら よかったです」

チリーンは 何でもないことのように 返します



『ぽけもん』は 体力の回復のため またこの場所で ゆっくりさせてもらいました

回りの皆も 気をつかって 静かに過ごしてくれたようです

ゆっくりしている間 『ぽけもん』は いじめっ子の言っていたことについて考えました

まほうのひみつきち というのが どういうものなのか よく分かりません

なのに それを探せとは なかなか 難しいことのように思います
 ▼ 279 TOg35azcXc 18/05/13 23:01:20 ID:U982686I [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
まほうのひみつきちについて 考えている内に いつの間にか時間が過ぎ

何かしら 思いつきそうになった頃 夕方になってしまいました

「そろそろ 日も暮れます みなさん もう お帰りなさいな」

チリーンの合図で この場所は お開きになります



「じゃあ 気を付けて帰んなさいよ」

エネコが 別れの挨拶を言いました

「また明日ね」

ルリリも

「バイバイ」

ゴクリンも挨拶をしてくれます

「うん さよなら 君たちも 気を付けてね」

『ぽけもん』も挨拶して 泉に帰る三匹と別れました



自分のすみかに向かって 『ぽけもん』が歩いていると

「よう 弱虫 あの後 ちゃんと 探しただろうな ?」

突然 『ぽけもん』の前に いじめっ子が 現れました

「な なんで こんな時間に こんなところに ?」

『ぽけもん』は いじめっ子に 尋ねます

「そりゃ まほうのひみつきちを 早く見つけたいからだよ

 自分でも探すが お前が見つけたなら 早く知りたいからな」



しかし 『ぽけもん』は困ってしまいます

けがをさせられたせいで 探せていませんし そもそも 見つかる気もしていません

ただ それを正直に言ったら また 一方的に攻撃されそうです

「ええと ひみつきちって どんなところに あるんだっけ ?」

『ぽけもん』は 苦し紛れに 話を長引かせようとします
 ▼ 280 TOg35azcXc 18/05/13 23:01:35 ID:U982686I [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「なんだ 聞いてなかったのか ? ダメダメだな まあ許してやろう

 ひみつきちは 岩壁や 木の上 茂みの中なんかにあるんだ

 まほうの とつくからには きっと なんかすごくて 違うんだろうけどな」

いじめっ子の説明を受け 『ぽけもん』は もしかして と思ってしまいます



茂みの中の 魔法のような場所

そこに 『ぽけもん』は心当たりがありました

しかし これをいじめっ子に教えていいのか 悩んでしまいます

だって あそこは チリーンの場所

『ぽけもん』たちにとっての 居心地のいい場所 なのですから



「なんだ その顔 ? もしかして 心当たりが あるんじゃないだろうな ?」

『ぽけもん』が そうやって悩んでいるのを いじめっ子に見とがめられてしまいました

『ぽけもん』は とっさにはうそが言えず 黙ってしまいました

「まじかよ ! どこだ ? 教えろ ! うそついたら 承知しないぞ !」

いじめっ子は 攻撃の構えをとりながら 『ぽけもん』に尋ねました



いつでも攻撃できるという 相手の様子を見て

『ぽけもん』は 黙っていることも うそをつくこともできず

いじめっ子に チリーンの場所のことを 話してしまいました

 ▼ 281 TOg35azcXc 18/05/14 23:13:39 ID:FXQytZoU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「よく見つけたな お手柄だ ! さっそく 行くぞ ! 案内しろ !」

いじめっ子は 『ぽけもん』の話を聞くと 喜んで 言います

『ぽけもん』は 攻撃されずに済んで ほっと 息を吐きます

「でも もう夜になるよ 夜には 来ないで欲しいって 言われてるよ」

『ぽけもん』は チリーンが言っていたことを思い出し 一応 言ってみます

「そんなの 知ったことかよ」

しかし いじめっ子は 聞く耳を持ちません



「それに よく考えてみろ そいつは 夜に何をしてるってんだ ?」

いじめっ子は 何かを思いついたように 『ぽけもん』に尋ねます

「ええ ? それは 仕事って聞いたけど ?」

『ぽけもん』は 戸惑いながら 答えます

「そう 仕事だ 仕事ってなんだ ?

 ひみつきちに来たポケモンの 願いを叶える魔法を使うことだ ! そうに違いない !」

『ぽけもん』の答えを聞いたいじめっ子は そう言いました



「そ そうなの ?」

『ぽけもん』は いじめっ子の言葉に 面食らってしまいました

「きっと そうだ もう夜になるのは 丁度いい ほら 急ぐぞ」

いじめっ子は 自分の考えを 疑いません

『ぽけもん』に 道案内を 迫ってきました

『ぽけもん』は その考えに 違和感を抱きながらも ちゃんと 道案内をしました

攻撃されるのは いやでしたし なにより 『ぽけもん』も

願いが叶えられるなら 叶えて欲しいと 思ってしまったのかも しれません
 ▼ 282 スボー@クチートナイト 18/05/15 22:23:39 ID:siVau2PY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 283 援感謝◆TOg35azcXc 18/05/15 22:56:43 ID:ZJX1HG6A [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「おい 本当に ここなのか なんか 暗いぞ」

いじめっ子を案内して いつもの茂みまで たどり着きました

中に入ってみると その様子は 日中のそれとは 全く異なっていました

「空気も重々しいし なんつーか イメージと全然違う だましたんじゃ ないだろうな」

いじめっ子は すごみますが 『ぽけもん』も 訳が分からず 怯えるばかり



夜中のこの場所には 暗くて 肌寒い空気が 満ちています

そして 日中には見たことがない 長細く 不思議な通路が あるのです

『ぽけもん』は なぜか それを とても恐ろしく 感じるのです



「おやおや こんな時間に いったい誰だい ?」

通路の奥から 突然 声が聞こえてきました

『ぽけもん』は それを聞き 更に不安になります

チリーンの声ではありません もっと 不気味な声でした



「お 誰かいる たのもー 早速 俺の願いを 叶えてくれ !」

チリーンを知らない いじめっ子は 喜び勇んで 声のもとへ 走りました

『ぽけもん』には とめる間も ありませんでした

「はあ ここに 夜に来てはいけないって 誰かに 言われなかったかい ?」

通路の奥の声は 『ぽけもん』たちに 確認するように 尋ねました



「ああ そういえばこいつが言ってたな チリーンがどうとかって でもそれは」

いじめっ子がそう答えて 何か続けようとしますが その前に声が話し出します

「なんだ 知ってたのか 知らなかったなら 許してあげなくもなかったんだけど

 じゃあ 君たちは 『悪い子』 だよね うん」

そういって 声は 暗がりから 姿を現しました

「ひいっ ! うわあああ !」

その姿を見て いじめっ子は 腰を抜かしてしまいました

『ぽけもん』も 足がすくんで 動けません

姿を現したのは サマヨールでした 世にも恐ろしい 幽霊のポケモンです

 ▼ 284 TOg35azcXc 18/05/15 23:24:47 ID:ZJX1HG6A [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ねえ 君たちは 知ってたって言ったよね なのに 約束をやぶった

 約束を破るのは いいことなんだっけ ? どうなのかな ?」

サマヨールは まるで先生のように そう言いながら いじめっ子に迫っていきます

「し 知らない ! 俺は こんなことになるなんて 知らなかった !

 許してくれ ! 助けてくれ !」

いじめっ子は 叫びながら ふるえる足で それでも 逃げ出します



しかし 逃げ出すいじめっ子の前に もう一匹 幽霊が現れます

「きゃはは 逃がさないよ 夜に出歩く 『悪い子』も

 約束をやぶる『悪い子』も お仕置きに合うんだよ ? 知ってるでしょ ?」

ジュペッタでした こちらもまた 恐ろしい見た目をしています

どうやら 囲まれてしまって 逃げ出すことはできないようです



「なんだよ ここは 願いの叶う まほうのひみつきちじゃ ないのかよ ?

 なんで こんな目に あわなきゃ いけないんだよ ?」

いじめっ子は 力なく そうつぶやきます

「泉に おばけが 本当にはいないように そんな夢のような場所も

 本当にはないんだよ 残念だったね」

サマヨールは 聞き分けのない子供に言い聞かせるように 話します

「じゃあ 先に連れていかれたいのは どっち ?

 それとも ここでおねんねしてからにする ? そっちの方が 怖くないかも」

ジュペッタは 攻撃の準備をしながら 笑ってそう言いました

『ぽけもん』は これからのことを考えると 震えが止まらなくなってしまいました
 ▼ 285 TOg35azcXc 18/05/16 23:00:20 ID:Ti4ye5Qg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「や やだ こっちくんな ! これからは いい子にするから !

 だから 許して ! た 助けて ママぁ !」

幽霊たちに せまって来られたいじめっ子は あまりの恐怖に 混乱してしまいました

「おやおや あまりうるさくしないで貰いたい まずおねんねさせた方が良いかな」

サマヨールは 呆れた顔をしながら いじめっ子に近づいていきます

何をする気なのかは まだよく分かりません

それでも 何か良くない気がした『ぽけもん』は

いじめっ子を背中に庇うように サマヨールの前に 立ちました



「おや ? 君が先に おねんねしたいのかな ?」

相変わらず サマヨールは 恐ろしい声を出して 言います

そして 攻撃の準備を 始めるのでした

『ぽけもん』は 反撃なんて考えられませんでした

足が震えて 逃げることすらも ままなりません

だけど 後ろにいるポケモンは 守りたいと 必死に サマヨールと向き合い続けます



「きゃはは じゃあ 二匹とも おねんね しちゃおうか 大丈夫 怖くないよ ?」

サマヨールの 隣に立ったジュペッタが 言いました

『ぽけもん』は 観念したように 目をつむります

そして そのまま 深い眠りへと おちていくのでした

眠る寸前 涼し気で 綺麗な音を 聞いた気がしました
 ▼ 286 TOg35azcXc 18/05/17 23:37:30 ID:nfbqIK3I [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
『ぽけもん』が 強い光に 目を覚ますと 青い空が 目に入りました

「あれ 僕は どうなったの ? 幽霊たちは ?」

急いで 回りを確認すると どうやら 見知った場所のようです

高台の上の 茂みの前に放り出されているようです

近くには いじめっ子も 倒れていました

けがは見受けられませんが 心配になって

『ぽけもん』は いじめっ子を 揺り起こしました

「ううん はっ ! ここは 外 ? 俺は 生きているのか ?」

いじめっ子は すぐに 起きてくれました どうやら 平気な様子です



「茂みの中に入って 幽霊に襲われて 何で 外にいる ? 夢だったのか ?」

いじめっ子は 混乱するまま 言葉を並べました

「夢じゃ ないと思う 僕らは 昨日 確かに 茂みの中に入っていったもの」

『ぽけもん』に対して言った言葉じゃなさそうでしたが 一応 答えました

「ああ 確かに そんな覚えはあるが だが どうやって ?」

いじめっ子は 確かめるように 言いました

「今 その茂みには 入れそうなところがないぞ ?」



『ぽけもん』は いじめっ子の言葉に驚き 茂みの方をよく見てみました

確かに 昨日まであった 入口のような穴は どこにも 見当たりません

「そんな なんで ? 入れなくなってる」

あったはずのものがなくなって 『ぽけもん』は うろたえてしまいました

「やっぱり 夢だったんだろ くそ 怖い夢見せられて ろくでもねえぜ

 お前のせいだ ! もう お前と関わるのはやめた じゃあな !」

そう言って いじめっ子は 『ぽけもん』の前から 去って行きました
 ▼ 287 TOg35azcXc 18/05/17 23:56:18 ID:nfbqIK3I [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
『ぽけもん』は その後 どうにかして 茂みの中に入れやしないかと

いろいろ 試してみました

しかし やはり 茂みの中には何もなく あの場所には続いていないようでした

『ぽけもん』は なんで 入れなくなったのか いろいろ 考えてみました

思い当たるのは やはり 約束を破ってしまったこと でしょうか

これは つまり 『ぽけもん』のせい ということなのでしょうか



「あら あんた 一番乗りなんて めずらしいじゃない」

日も高く昇ってきた頃 エネコがやってきました

「何で 外にいるの ? 待っててくれたの ?」

ルリリもやってきて 不思議そうに言いました

「それなら もう入ろうよ あれれ ? 入り口がないぞ ?」

ゴクリンは 『ぽけもん』の横を抜けて 頭をひねりました



「みんな 覚えてるよね ? やっぱり 夢なんかじゃないよね ?」

『ぽけもん』は 確認するように みんなに尋ねました

「何言ってるの ? チリーンの場所に 入れなくなったことと 関係あるの ?」

エネコは よく分からないと 問い返しました

しかし その言葉の中に チリーンの場所が 確かにあったことを感じ取れて

『ぽけもん』は 安心しました



そして おそらく 『ぽけもん』のせいで チリーンの場所に

入れなくなった ということを みんなに 話しました

『ぽけもん』は 申し訳ない気持ちで いっぱいでした
 ▼ 288 TOg35azcXc 18/05/18 23:14:22 ID:4GixYIhk [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
みんなは 『ぽけもん』の話を 黙って聞いてくれました

「大変な目に あったんだね 大丈夫なの ?」

ルリリは 心配そうに 『ぽけもん』の身を 気づかってくれます

「約束やぶったのは まあ 良くないけど でも

 悪いのは いじめっ子の方で 君じゃないじゃないか」

ゴクリンは 『ぽけもん』を せめないで いてくれます

「これから どうする ? 集まれる場所 なくなっちゃったけど ?」

エネコも 『ぽけもん』については 何も言いません

代わりに これからのことを 話し始めました



「ありがとう みんな」

『ぽけもん』は 感謝の気持ちを 言葉にしました

みんな 笑って返してくれます



『ぽけもん』たちは 色々話しあいました

いろいろな意見を みんなでまとめます

「そういえば 茂みのしたや 木の上に 特別な場所をつくれる 力があるらしい」

ゴクリンが 思い出したように 言いました

「それって チリーンの場所も 同じ力で できていたって ことかしら ?」

エネコは それを聞いて 疑問を 口に出します

「じゃあ その力があれば また 茂みのしたに 入れるように なるのかな」

ルリリは 期待のこもった目をして 言いました

「その力は どこにあるんだろう ?」

この疑問には 答える声が ありません

どうやら 誰も わからないようです
 ▼ 289 TOg35azcXc 18/05/18 23:48:55 ID:4GixYIhk [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
みんなで話し合いをしているところに 一匹のポケモンが 近づいてきました

「大変 大変なんだ ! 君たち ちょうどいいところに ! 助けてくれないか ?」

そのポケモンは マイナンでした

どうやら ひどく慌てているようです

「一体ぜんたい どうしたの ? なにか 困っているの ?」

『ぽけもん』は かけよって来たマイナンに 尋ねました

「実は 妹のプラスルが あの山に行ったきり 帰って来ないんだ !」

マイナンが 困っている理由を みんなに言いました



「朝からいなくて もう おやつの時間なのに 戻ってこない 心配だ !」

マイナンは 早口に そう言いました

しかし 『ぽけもん』たちには なんとなく 危機感が伝わりません

そのくらいなら 大丈夫じゃないか ?

そう思ってしまいます

「あの山には 怪物がすんでいるらしい 早くしないと プラスルが 食べられちゃう !」

マイナンは そんな『ぽけもん』たちの表情に じれったくなったのか

どうしてそんなに心配するのか 訴えました



それを聞いて 『ぽけもん』たちも 黙ってかまえてはいられません

「それなら 早く 行かなきゃね 場所を 教えてくれる ?」

『ぽけもん』は どうにかして プラスルを助けたいと おもいました

そのためには 早くプラスルの所まで行って 状況を知ろうと 考えたのです

マイナンの案内に 『ぽけもん』だけでなく エネコ達もついてきました

みんな 助けたい気持ちは 一緒のようでした
 ▼ 290 TOg35azcXc 18/05/19 23:13:01 ID:bDtGd23A NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そうして意気込んで 『ぽけもん』たちは 山へ向かいました

マイナンの指示に従って 山を進むと 開けた場所に 出ました

そこでは プラスルと 不気味なポケモンが 向かい合っていました



「プラスル ! 大丈夫か ! お兄ちゃんが 助けに来たぞ !」

マイナンは そう叫ぶと 不気味なポケモン ヌケニンの前に 飛び出しました

余りの勢いに 『ぽけもん』たちは 出遅れてしまいました

「ええと お兄ちゃん ?  そんなにあわてて どうしたの ?」

勢い込んでやってきたマイナンに プラスルが 不思議そうに尋ねました

そののんびりとした口調は マイナンが思っていたものと 違っていました

「え あれ 大丈夫 なの ? だって 今 プラスル 怪物に 襲われそうに」

マイナンは とたんに勢いをなくして しどろもどろに なってしまいました

「怪物 ? なんのこと ? ヌケニンは お友達よ ?」

プラスルは なんとなしに 答えました

「『お弁当持って 友達の所に遊びに行きます 夕方には帰ります』 って

 メモに残したよね ? お兄ちゃん 気づかなかった ?」

どうやら 怪物がどうとか 妹が危ないとかは マイナンの早とちりだったようです



「オ客サン イッパイダナ マア ユックリシテイクト イイ」

ヌケニンが 木の実を用意しながら どこか嬉しそうに言いました
 ▼ 291 TOg35azcXc 18/05/21 23:40:10 ID:EvLDg9kA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「みなさん お兄ちゃんの早とちりで ご迷惑 おかけしました」

プラスルが マイナンに代わって 謝ってきました

「みんな ごめん ボクの勘違いだったみたいだ つき合わせちゃって 悪かった」

マイナンも 続いて 頭を下げました

「迷惑なんかじゃないよ 大丈夫なら良かったよ

 それに 山に来て 君たちと仲良くなれたのも 結果的には良かったなって」

『ぽけもん』は 思ったままを口に出します

エネコ達も うなずいていて 気持ちは同じなようでした



「そうね 折角だから聞きたいのだけど 茂みの下などに

 特別な場所を作れる力について 何か知っていることは あるかしら ?」

エネコは 思いついたように プラスルたちに 尋ねました

「場所を 作る ? それって ひみつの力の ことかしら ?」

プラスルは 少し考えて 思い当たることがあったらしく 言いました

「うん 多分 それだ ぼくたち また集まれる場所を 作りたくてね」

ゴクリンは 今までの いきさつを 話しました



「そういうことなら 私 みなさんのために 場所を つくりましょうか」

プラスルが なんとなしに そう言いました

「え ? できるの ? というか やってもらっちゃって いいの ?」

ルリリが 確認を取るように 尋ねました

「はい 力を使うのは それほど 難しいことじゃないですし

 今回の件のおわび といいますか 単純に 心配して貰えたのも 嬉しかったので」

プラスルは ほほえんで 力を使うことを うけおってくれました

「もちろん ボクも 頑張るよ どこに つくるのかな ?」

マイナンも うけおってくれるようです

それならと 『ぽけもん』たちは 高台の茂みについて 話しました
 ▼ 292 TOg35azcXc 18/05/22 00:01:40 ID:aT0BUVhQ [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヌケニンに 再開の約束をして 『ぽけもん』たちは 山を下りました

そして いつもの茂みの場所へ プラスルたちと共に向かいます



「ここだよ この場所に みんなで集まれる場所を つくりたいんだ

 お願いして いいかな ?」

『ぽけもん』は プラスルたちに 目的の場所についたことを 教えました

「はい お任せください 頑張ります」

プラスルが 明るく答えました

「ちょっと 時間かかるかもしれないけど 任せてよ」

マイナンもまた 力強く 答えました

そして 二匹で 力を使ってくれました



「よし できた どうお ? こんなものかな ?」

しばらくして マイナンが 『ぽけもん』たちに 声を掛けてくれました

茂みを見ると 前のように 入り口のような 穴が開いています

中に入ってみると こちらも前と同じく 暖かくて 広々とした空間がありました

「すごい ! ありがとう ! 完璧だよ !」

『ぽけもん』たちは 二匹に 感謝の気持ちを いっぱい 伝えました



「感謝とか いいですよ おわびで お礼なので」

プラスルは 恥ずかしそうに ほほえみました

「そうそう そういうのなしにしようよ

 ここは良い場所だね ねえ ボクたちもここに来ちゃ だめかな ?」

マイナンも 似たようなことを言って その後に お願いのようなことも言いました



「それこそ 言うまでもないよ もちろん 歓迎する ねえ ? みんな ?」

『ぽけもん』がそういうと みんなも 同意の声を 発します
 ▼ 293 TOg35azcXc 18/05/22 00:05:47 ID:aT0BUVhQ [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
『ぽけもん』たちは 今日もまた 集まります


いつものように 暖かくて 居心地の良い場所へ みんなで



                           おしまい






                     ホウエン童話『ひみつきちにあつまって』
 ▼ 294 TOg35azcXc 18/05/22 00:11:21 ID:aT0BUVhQ [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
―――――――――――――――――――――――――――――――
と言う訳で 童話調で 再編?

小説版 思ったより延びたね(文字数的に 期間的に)

上手に書けてるかな……

書いてる方はたのしいけど



質問 感想などあったら書いてくれると嬉しい
 ▼ 295 レディア@トポのみ 18/05/22 02:03:52 ID:hyTA/jFI [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
支援、
 ▼ 296 チャブル@ポケモンのふえ 18/05/22 03:36:25 ID:u5qbXGB2 NGネーム登録 NGID登録 報告
ひみつきちのSS好き、キノココが好きになった、
みんながいつかチリーンと再会できるといいなぁ…
 ▼ 297 ンナ@パークボール 18/05/22 21:13:23 ID:B9T7lH5. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
お疲れ様でした〜
バトルの戦術とか思い付きもしない所があったりしてとても面白かったです
 ▼ 298 イタラン@フォトアルバム 18/05/22 21:26:09 ID:hyTA/jFI [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 299 バゴ@ガルーラナイト 18/05/23 01:12:54 ID:U11/fkOI NGネーム登録 NGID登録 報告
登場させるポケモンはある程度決めから書いてるの?
 ▼ 300 TOg35azcXc 18/05/23 10:52:48 ID:XbDlpEbc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
――――――――――――――――――――――――――――――
>>296 >>297
そう言ってもらえると嬉しいな〜
別の話書こうと思ったけど その前に後日談書こうかな……

>>299
そだよー というか書き始めるときそのくらいしか決めてない……

『ブイズの』は10匹の性別性格どの『ひとり』かぐらいで

『“ひみつきち”』はキノココ、ゴクリン、ルリリ、エネコ、マイナンは出す
って決めてたくらいかな

『ひみつきち』の方は↑書いてる途中で考えた程度だよ?
童話調で、子どもに読み聞かせることを意識したんだ どうかな?
 ▼ 301 ラージェス@カプZ 18/05/23 14:52:48 ID:UNElwGC. NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 302 リゴン@キズぐすり 18/05/23 23:09:57 ID:hJyoGZV. NGネーム登録 NGID登録 報告
>>300
童話調の方もいいと思った
 ▼ 303 TOg35azcXc 18/05/25 01:00:29 ID:Ew6xm6HY [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
―――――――――――――――――――――――
>>302 なら よかった

好きなssを ってスレにあげられてるし 感動
感想を貰うスレではなんか褒められちゃったし 恐縮



後日談というか、追加エピソードを何となくだけ考えたのだけど

「ルリリが空気な話」

「異邦の依頼者の話」

「プラスルが強くなる話」

「童話についての話」

「ある夏の終わりの話」

の5本になるよ あれ? 割と多い……

でも多分ちゃんと書くよ 多分……
 ▼ 304 TOg35azcXc 18/05/25 01:01:02 ID:Ew6xm6HY [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
大昔、この地域を大規模な日照りと干ばつが襲い、皆が苦しんだことがあったそうな

川は流れを止めて、木々も枯れていき、ポケモン達は渇きと飢えに身を震わせた

そんな中、その場所に痩せ細った若者がふらりと立ち寄ったという



ひどく弱った様子のその若者を、その場所に棲むポケモン達は

自分たちが苦しいのにもかかわらず、献身的に介抱したそうな

若者は、ポケモン達の介抱の甲斐あってか、やがて元気を取り戻した

そして、元気になった若者はポケモン達に恩義を感じ、願いを一つ叶えることを約束した

ポケモン達は、半信半疑ながらも、若者に雨を願う

若者はその願いを快諾し、懐から綺麗な宝石を取り出すと窪地の真ん中にそれを置き

ポケモン達に高台まで登るよう告げた

ポケモン達が全員高台に辿り着いて暫くした後、何とも摩訶不思議なことが起こった

あれだけ日照りが続いた空に、黒雲が現れ、天から水が降り注いだ

同時に、地の底からも水が現れ、見る見るうちに窪地に溜まっていく

そのうちに日が暮れ、夜が明ける頃には、窪地は澄んだ水を湛える泉になっていたそうな

感謝の言葉を継げようと若者を探すが、若者の姿はすでになくなっていて

悪狐に抓られたように泉を眺めていると、中心に若者の置いた宝石が浮いていたという



その時の摩訶不思議のお蔭で泉が出来、回りの森も復活

皆はまた豊かに生きられるようになったという

ポケモン達はあの若者を神の化身と捉え、彼の残した宝石を

“水のフロート”と名付け、後生大事にした

この地域に伝わる、民話伝承である
 ▼ 305 デンネ@がくしゅうそうち 18/05/25 01:12:54 ID:.05Um2TE NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 306 イドン@メンタルハーブ 18/05/25 13:59:57 ID:UaQQs1S2 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>303
それ自分も上げたけど
自分とは評価大違いでワロタ
支援します
コツってありますか?
参考にしたいです
 ▼ 307 TOg35azcXc 18/05/25 15:34:03 ID:Ew6xm6HY [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
―――――――――――――――――――――――――――
>>306
コツって言われてもわからんよぅ……

「好きこそものの上手なれ」かな……
書くことだけじゃなく、読むこと、聞くこと、見ること、感覚全般?
「言葉」自体も好きだからなぁ そういう感じ?

兎に角「楽しい」が一番

物語の作り方については、参考にならんと思う
その日その日で流れのまま書いとうし ほぼアドリブ劇だよ

この書き方でいえば、「勝手に動くキャラ」ができるかどうかは大事

あと、「ワトソン君」も重要 読み物である以上は読者も意識するべき
かといって説明口調が多すぎるとくどいので、自然な説明を演出したいね
話についていけない「ワトソン君」がいるとその子に対して説明できる

どっかのスレで言った話だけど
「筆者と読者は目線が違う」し「作者と登場キャラは視点が違う」というのもあるかな

文章力は基本、傍目八目だから…… 見てもらうしかないかな……
私は自分の文にはそこまで自信ないよ……

あとこれは関係ない話なんだけど、何かしら文を読むときって、棒読みだと意味がない
朗読することを心がけるべきだね 特に学生は

持論の展開失礼

参考になるのかなこれ……
 ▼ 308 TOg35azcXc 18/05/25 15:34:48 ID:Ew6xm6HY [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
別に歴史学者でも民俗学者でもないルリリがその話を知っているのは

単に泉で生まれ育ち、大人たちに聞かされていたからというだけのこと

今となっては真実かどうかもわからないし、別に信じる気はない

ただ、“水のフロート”と呼ばれる宝石が実在することは知っていた

泉の畔に、まるで人目を忍ぶように開いた洞穴の奥深くに安置されていて

信心深い老ポケモンなんかはよく祈りに行っているみたい


その宝石が、近ごろ何者かに狙われていると噂になっていた

ルリリは、泉に棲むポケモンとして聞き過ごせまいと思った

しかし、ルリリは勿論、泉の仲間だって決してバトルが得意と言う訳ではない

自分たちで悪党と戦うのは無理があると思えた

泉の警備力を上げるため、ルリリは少し遠出してある宛てに接触した

かつては泉を襲ってきたが、ルリリの仲間たちによって改心し、今は頼れる味方となった

あの元荒くれ達である

『昨日の敵は、今日の友』という言葉の通り、彼らは泉の警備を快諾してくれた


ルリリ「まあ、その所為で誘拐騒動があったことに気付けなかったんだけどね……
    手助け出来なくてごめんね……」

エネコ「気にすることないわ こっちは何とかなったのだし そっちも大事だもの
    ……大変そうね 私たちもなにか手伝うわよ?」

ルリリは、自分が留守にしていた間のことを、エネコと話し合っていた

困っていた姉弟に何もしてあげられなかったことを申し訳なくも思うが

解決した今となっては考えても仕様がないのかもしれない

ルリリ「うん みんなが助けてくれるなら、『10万馬力』 悪党なんかには負けないよ!」

シザリガー達にも来てもらったが、やはり“ひみつきち”の仲間も手伝ってくれるのは
とても心強いとルリリは思った
 ▼ 309 ョンチー@ルナアーラZ 18/05/25 15:37:32 ID:UaQQs1S2 [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>307
スゲー

なんか一味違う感じがする
説教臭くないし。
読者に楽しく読んで貰えるように心がけてか...
ありがとうございます!
頑張ります!
 ▼ 310 イバニラ@ニニクのみ 18/05/25 21:14:08 ID:ACbpt9qU NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 311 ワパレス@いんせき 18/05/26 22:52:28 ID:JJqBEh5Y [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エネコ「あ! この話、キノココには聞かれないようにね……?」

ルリリ「……? どうして?」

エネコ「キノココ、今絶対安静だから 聞いたら絶対じっとしてらんないでしょアイツ」

ルリリ「え!? だ、大丈夫なの!? え? 病気とか?」

エネコ「怪我よ 命には別状ないようだわ ……でも、また無茶してボロボロになって
    本当、全くよ 反省して欲しいわ……」

どうやらルリリ達が最も頼りにしている彼は、安静にしなくてはならない状況らしい

エネコ「……なんて顔してんのよ アイツは大丈夫 すぐ治るわ
    “チリーンの薬”もあるもの 致命傷と言う訳でもないしね」

そう言ってエネコは笑う

因みにこの“チリーンの薬”というのは、“ひみつきち”がまだチリーンのものだった頃

エネコが彼女に直伝で教えてもらった調合薬のことである

まるで魔法のように覿面に効くその薬に、ルリリ達は助けて貰ったこともある

それがあるなら、確かに彼は安心なのだろう


しかし、ルリリに顔色が優れないのはそうではないのだ

勿論彼のことは心配なのだが、それよりも

迫る危機に彼無しで対応できるのかとルリリは不安に思ってしまう

エネコ「まあ、心配する気持ちも判るけどね ずっと助けて貰ってきたし」

エネコは溜息を吐きつつそう言って

エネコ「――でも、私たちだけでもちゃんと危機に立ち向かえるって示すべきだわ
    キノココが『私たちのために』無茶するところなんて、もう見たくないもの」

しかし、すぐに目に強い意志を込めて宣言するのだ

ルリリは、彼女のその強さが羨ましくなる

ルリリ「そう、だね いつまでも頼ってばっかじゃ駄目だ 頑張らなきゃ!」

同時に、自分も強くなろうと決心するのであった


エネコ「あ、ごめん もうこんな時間だわ キノココに薬作ってやらないと」

ルリリ「うん 行ってらっしゃい お大事にって伝えといて」

キノココの元へ向かう彼女を、ルリリは見送った
 ▼ 312 ャモメ@たまむしプレート 18/05/26 22:53:03 ID:JJqBEh5Y [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
それから、ルリリ達は交代で泉を見張ることになった

ゴクリン「エネコに聞いたよ またなんか大変なんだって?」

プラスル「私達も微力ながら手伝わせていただきます」

マイナン「何やら貴重な宝石が狙われてるんだっけ?」

“ひみつきち”の仲間たちも泉を守るための警備を買って出てくれて感謝し切りである

エネコも手伝ってくれるとはいうが、薬が作れるのは彼女だけだし

キノココの世話など彼女が買って出てくれているためルリリとしては忍びなく

出来るだけ遠慮して欲しいところであるが

エネコ「私も泉にはお世話になって来たしね 恩返ししなきゃ」

と、当のエネコが張り切ってしまっていて、止めても無駄なようだ


ゴクリン「そういえば、思ったんだけど ここの宝石が狙われてるって、どこ情報?」

ヘイガニ「へ? そりゃ 噂っすよ、噂 あんなに綺麗な宝石、狙われてもおかしくねっす」

ゴクリン「いや、まだ見てないからどんなものかわかんないんだけど……」

マイナン「確かに噂とか不確かなものを信じ込んで無意味なことしてたら馬鹿みたいか
も」

エネコ「いえ、所詮噂と流さないで警戒することに越したことはないわ」

ナマズン「噂が間違っていても〜 笑い話で〜 済むもんね〜」

シザリガー「逆に、噂が正しくて警戒を怠ったら、笑い話じゃ済まねえよ」

ゴクリン「それもそうなんだよね…… それで? 噂ってどんなものなの?
     ぼくらはどこのだれを警戒すればいいの?」

シザリガー「そういえば俺らも聞いてなかったな どうなんだ、ルリリ?」

噂について、うっかり相談するのを忘れていた

確かに、その真偽の可能性を先に考えた方が建設的だったかもしれない

ルリリ「ん、と 知ってるかどうかは知らないけど、最近名前が上がって来た
    “怪盗ロゼリア”っていう奴が狙ってるって噂が――」

元荒くれ達「「「ロゼリア!?」」」

ルリリが説明の途中に出した名前に、彼らは何故か過剰な反応を見せた
 ▼ 313 クジキング@かなめいし 18/05/27 23:25:18 ID:IXRvHEWs NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 314 TOg35azcXc 18/05/28 00:06:53 ID:3YhCYTUk [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エネコ「――!? 何よ、いきなり大声出さないで…… 知り合いなの?」

大声を出した彼らに対して、エネコは不満そうにしながら疑問をぶつけた

ナマズン「ん、ん〜? 知り合いというか、なんというか〜……」

ヘイガニ「いや、知らない仲じゃないっすけどね? なんというか……」

しかし、彼らの答えはどこか歯切れ悪い

ルリリ「何? 言いにくいことなの?」

エネコ「判断材料は多い方が良いわ 悪いけど、思い当たることはできるだけ言って」

彼らはしばらく顔を見合わせていたが、やがてシザリガーが代表して口を開いた

シザリガー「隠しても仕様がねえよな 俺等は最近、ロゼリアに会った」

ルリリ「やっぱり、近くに潜んでるのかんだね? じゃあ、噂の信憑性も……」

エネコ「話しにくい理由って何よ? 隠す意味は特にないかと思うんだけど?」

シザリガー「俺等がアイツに会ったのは、ここに来るほんの少し前なんだよ――」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

俺等がもともと棲んでいたのは、こことは違って小さな池だった

適度に汚れた水質で、俺等の種族には棲み易く、静かでいいとこだったよ

だが、ある日騒々しい事態が起こっちまった

どこの馬鹿だか知らねえが池のすぐそばで技の練習なんぞ始めやがった奴がいたらしい

とっ捕まえてやろうと出向いたところでもう既にいなくなってたから犯人は判らんがな

全く、逃げ足の速い奴だぜ……

更に悪いことに、そいつが使ってたのは炎技でよ

水温が上がるわ水量が減るわで散々だった

俺等は棲み処を荒らされたことに苛立ちながらも、これからどうするかを話し合った

正直、俺等が自分でやったわけでもないのに池を元に戻すために努力するってのが癪でよ

どっかいいとこに引っ越そうかと、ナマズンを担いで適当にうろついてたんだ

ロゼリアに会ったのは、その時だったな
 ▼ 315 TOg35azcXc 18/05/28 15:45:42 ID:3YhCYTUk [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
俺がナマズンを担いで、水場を探してはいたが宛てもなく歩いていると

偶然通りかかったロゼリアに声を掛けられた

まあ、普通水中に棲んでいるべきポケモンを担いで歩いてんだから不審に思うよな

ロゼリアはこっちを怪しむような口ぶりでよ 困っちまった

攻撃を仕掛けてくる素振りまで見せられたから、慌てて弁明したりしてよ

池に何者かが炎攻撃を撃ち込んだせいで引っ越しを余儀なくされたってな

ロゼリアは俺等の話を聞いて、涙ぐむほど憐れんでくれてな

近くに泉があることを教えてくれたんだ

「あなたたちには泉は澄みすぎていて暮らしにくいでしょうから」

と、ロゼリアは手土産もくれた

なんだっけな…… ああ、そう “持ち運び用濃縮型ヘドロ爆弾”とかだったかな?

俺等はそれをありがたく頂戴して、一路この泉へやって来たんだ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

シザリガー「要するに、俺等が一番いきってた時の話に繋がってくるわけだ」

ヘイガニ「あの時は、本当にすんませんっした!」

ルリリ「へえ、そういう事情があったんだ」

エネコ「……あたしたちが泉から追い出した後って、大丈夫だったの?」

そういえばそうだ 大丈夫だったのだろうか?

彼らは居場所を失って泉まで来たのに、泉から追い出してしまったのだから

ナマズン「それは心配ないよ〜? 僕らはあの後〜 ちゃんと池に戻ったから〜」

ゴクリン「え? 池に棲めなくなったんじゃなかったの?」

シザリガー「……俺等が汚した泉を、お前らが何とかするのを見ちまったからな
      負けてらんねえなって思ったんだよ」

ヘイガ二「オレらも自分たちの池ぐらい何とかしようと思ったっすよ」

エネコ「そう なら良かったわ」

ナマズン「今では〜 すっかり元通り〜 ぜひ遊びに来てね〜?」

マイナン「うん 考えてくおくよ」
 ▼ 316 ツドン@つららのプレート 18/05/28 15:46:48 ID:YW1xmfDY NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 317 援感謝◆TOg35azcXc 18/05/28 22:32:58 ID:3YhCYTUk [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
プラスル「しかし、そうなると“怪盗ロゼリア”の噂の信憑性は増しますよね……」

マイナン「まあ、実際ロゼリア種が近くにいるってなったらね」

ヘイガ二「へ? そっすか? 別個体かもしれないじゃないっすか」

ナマズン「涙もろくて親切そうなロゼリアだったけどな〜
     怪しい僕等にわざわざ声を掛けてきた辺り、正義って感じで〜」

エネコ「よく考えて見なさいな 本当に正義のポケモンが泉を汚すことを勧めるかしら?」

プラスル「それに、偶然近くを歩いていただけのポケモンが、
     そんな危険物持ち歩くでしょうか? しかも用途が限定的なものを」

泉を汚すのに最適で しかし明らかに持ち歩くには危険な“爆弾”

丁度そのタイミングで持っているなど、普通ありえないだろう

シザリガー「……こうして振り返ると、片棒担がされた感が否めないな」

ヘイガ二「な、何のためにっすか……?」

ルリリ「泉からポケ払いするためかな まあ、結果的にそれは失敗してるけどね」

エネコ「あれから時間結構立ってるのにまだ手を出してないってことは
    ポケモンがまだいて仕事に支障があるってことかしら」

ゴクリン「なんとも言えないね そうなのか、それとも気を狙っているのか……」


ナマズン「ちょっと待って〜……? 気づいちゃったんだけど〜
     僕等の池を襲ったのは〜 実はロゼリアだったりするのか〜な〜?」

シザリガー「……どういう意味だ?」

ナマズン「だって〜 僕等のことよく把握してたじゃな〜い?
     “爆弾”渡したのが偶然じゃないのなら〜
     僕等が池を抜けた原因もそうなんじゃ〜ないかな〜 って〜……」

ヘイガ二「そうかもっすけど…… だからって『草タイプ』が“炎技”って無理じゃ?」

マイナン「……いや、『草タイプ』だからこそ使える“炎技”があるよ」

プラスル「はい 私も知ってます ……見たことがあります」

ヘイガ二「無理じゃないんすか!? それって一体?」

エネコ「“自然の恵み”という技 あれなら出せるわ 炎だって、なんだって」

シザリガー「……つまり、なんだ 俺らは彼奴に最初から謀られてたってことかよ」
 ▼ 318 ガディアンシー@ウルトラネクロZ 18/05/29 01:58:53 ID:AvdrNKio NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 319 TOg35azcXc 18/05/29 23:25:00 ID:J/Vu/2PU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ポケモン達の間に、少々の間重い沈黙が流れた

エネコ「じゃあ、私そろそろ行くわね キノココの面倒見てやらなきゃ」

それに耐えかねたのか単純に時間なのか、エネコが立ち上がる

エネコ「あんたらも暗くなる前に解散しなさいよ もうすぐ新月で夜道暗いんだから」

キノココは順調に良くなってはいるようだが、今回は無理させまいと
こちらのことについては何も聞かせず大人しくして貰っている

相手がロゼリアだとすると、彼は相性が悪すぎるというのもある


ルリリ「そっか 新月…… そろそろ真っ暗になっちゃうんだね」

プラスル「暗くなったら、悪いポケモンも動きやすいんじゃないですか?」

マイナン「奴が狙ってる期って、新月かもね 夜は特に厳重にしとくべき?」

ヘイガ二「そっすね 任せてくださいっす! 夜更かしはオレら得意なんで!」

ルリリ「それ、威張って言えることなの? ……でも、ありがたい 宜しくね」

ヘイガ二「うおお! やる気出て来たっすよ!」

シザリガー「草タイプ相手ってのはちょっときついな…… やるけどよ」

ナマズン「相性って〜 そうそう覆せないもんね〜……」

プラスル「そうですよね…… 私たちも『草タイプ』に強い訳じゃないですし……」

マイナン「相性いいのはゴクリンくらい? これは随分苦しいかもね……」

ルリリ「いや…… いるよ! 草に強いポケモン! 警備隊に加わってもらおうよ!」

シザリガー「……誰だ? そいつは泉の問題に関わってくれんのかよ?」

ルリリ「そこは大丈夫 意外に身近なポケモンで、みんなびっくりするかもね?」

ルリリがいたずらっこく笑って、みんなにそのポケモンのことを話した

みんな最初は驚いていたが、すぐに納得したような顔になり歓迎してくれたようだ


そしてその二日後 月の昇らない深夜に、泉に招かれざる客がやって来たのだった
 ▼ 320 ロスター@かおるキノコ 18/05/30 01:06:42 ID:rlpn.2vg NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 321 TOg35azcXc 18/05/30 23:56:24 ID:iXWdLCdU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そのポケモンは、夜闇に紛れて迅速に駆けていた

光源がなく漆黒が視界を覆う中、しかし確実に泉の洞穴へ足を進める

それを待ち構えていたシザリガーは、予め準備していた松明に火をつけ相手を照らし出す

シザリガー「よう こんな時間に奇遇だな “怪盗ロゼリア”」

いけしゃあしゃあと、気安いようにもとれる言い方で話しかける

ロゼリア「あら、本当 奇遇ですね あなたは、いつぞやの……」

それに対し、ロゼリアも優雅に返し

ロゼリア「おバカさんじゃないですか」

嘲笑った


シザリガー「――っ!!」

見事に煽り返されたシザリガーは頭に血を上らせてロゼリアに“突進”を仕掛ける

しかし楽々躱されてしまった

ロゼリア「あらあら、折角泉を紹介して“ヘドロ爆弾”まで持たせたというのに、
     恩を仇で返すというのです?」

シザリガー「何が恩だよ 全部てめえの所為でてめえの都合じゃねえか」

ロゼリア「気付かれちゃいましたか  だから待ってたんでしょうけどね」

ロゼリアは肩をすくめ、嘆息すると

ロゼリア「あなた一匹で、何ができると? “マジカルリーフ”」

自らが生み出した葉々を凶刃へと変え、シザリガーを仕留めにかかる

シザリガー「今だ、お前ら! 抑えてしまえ!」

ヘイガ二「へいっ!」

ナマズン「足を抑えるよ〜 “マッドショット”〜!」

攻撃を一点に集中させた隙に、仲間に指示を出しロゼリアを抑え込む

作戦通りに行き、シザリガーは攻撃を受けながらも笑みをこぼす


ロゼリア「囲まれてたのね これは失敗 でも、あなたたち程度、怖くないわ」

しかし相手には狼狽えた様子もなく、背筋に嫌な汗が走る

シザリガー「お前ら、離れろ! そいつ、なんか企んで――」

ロゼリア「舞いなさい “花吹雪”!」

離れる暇もなく、全員に対して、弱点かつ高威力の技を撃ち放った

ロゼリア「邪魔しないで頂戴 みんないい子でおねんねしていてね?」
 ▼ 322 TOg35azcXc 18/05/31 23:05:51 ID:TRsIVl6. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
倒れ伏したシザリガー達に一瞥もくれず、ロゼリアは洞穴へ向かう

全員を同時に襲った“花吹雪”の所為で俺らは動くことが出来そうにない

シザリガー「態々俺らを利用したのは…… そういうことかよ、畜生……!」

不甲斐ない姿を晒したことに歯噛みしながら、呟く 気付いた


俺らは汚れた水こそが棲み易いという生態を持つ

それ故、泉を汚せる“爆弾”を『親切』と受け取り起動した してしまった

汚染によって起こる先住のポケモンの弱体化、或いはポケ払い

それこそがロゼリアの目論見だと気付かずに


泉を狙ったロゼリアが、何故離れた池に棲む俺らを利用したのか

余り本人が目立たずに事を進めるために、自分以外のポケモンに仕事をさせるためだろう

親切を装って他者を動かし、自分の都合のいいようにする

成程、反吐が出るが確かに合理的だ

仮に俺らが利用されたことに気付き反旗を翻そうとも、相性の都合上奴には勝てない

今現在の状況のように、な


ヘイガ二「失敗しちまいやしたね……」

ナマズン「しょうがないよ〜 相性不利だし〜 ……あとは真打さんたちに任せよ〜」

シザリガー「ああ ……俺らで何とかしたかったんだがな ……力不足か」

泉のポケモン達に負担をかけずに終わらせられたら良かったのだが、高望みだったようだ

ナマズン「相性だってば〜 ……でも〜 なんか悔し〜ね〜」

ヘイガ二「役に立ちたかったっすもんね 罪滅ぼしの意味でも 感謝の意味でも」

シザリガー「それは言うな こっ恥ずかしい だが、なんだ…… 強くなるぞ!
      次は負けねえように 役に立てるように」

ナマガニ「「へいっ!」」
 ▼ 323 TOg35azcXc 18/06/01 00:23:37 ID:OCS5iyFc [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マリルリ「夜分遅く、良くいらっしゃいましたね お茶でもいかが?」

ロゼリア「手荒い歓迎があったかと思えば、態々お出迎えまでありがとうございますわ
     “水のフロート”を頂戴しに来たものです 渡してくださいます?」

洞穴の奥深く、こんな状況なのにどこか和やかなやり取りをする二匹

マリルリ「あらまあ、貴女が怪盗さんなのね ルリリちゃんたちの言ってた通りね」

ロゼリア「ええ、まあ ところで、“水のフロート”はどこに? 見当たりませんが?」

しかしお互い予断なく相手のことを観察し合う

マリルリ「残念ながら、貴女が盗れない所ですよ 貴女自身もここで終わりです」

ロゼリア「あなたが私を捕まえる、と? 見たところ水タイプのようですが、敵うとでも?」

マリルリ「さあ? それはやってみないと解りません――」

ロゼリア「“リーフストーム”」

下らないやり取りにまどろっこしさを感じたのか、ロゼリアは急に両腕を突き出し

目の前の相手に強烈無比な草木入り混じる嵐を繰り出す

そして隠された宝石の在処をどう探すかと思案を始めたらしい

マリルリ「……もぅ いきなりなんてびっくりするじゃないですか」

そこへ、先程吹き飛ばした筈のマリルリが平然と声を掛けたため目を丸くした

ロゼリア「本気で吹っ飛ばしてやったと思ったのだけれど?」

ロゼリアは身構えながら、当然の疑問を口にする

それに対しマリルリは、軽く手を打ち鳴らしながら律義にも答えた

マリルリ「残念ながら、そういうの効かない体質なんですよ」

おっとりとしたその言葉に相手も何か気づいたらしく、言葉を紡ぐ

ロゼリア「“草食”ですか そういえばマリル種にはそんなのもいましたね
     しかし、マリル種は毒には耐性がないんじゃないですか?
     これでどうです? 苦しみなさい “ヘドロ爆弾”」

そして的確な分析の元、マリルリを倒すための技を宣言した
 ▼ 324 TOg35azcXc 18/06/01 01:38:03 ID:OCS5iyFc [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しかし、彼女の両腕から放たれたのはまたしても“リーフストーム”で

マリルリはどこ吹く風と余裕の表情だ 対してロゼリアは顔に焦燥を浮かべた

ロゼリア「な!? 何故“ヘドロ爆弾”が出ない!? ……何をしたのです?」

マリルリ「“アンコール〜” “アンコール〜”」

ロゼリアの疑問に、マリルリが呑気に技名を告げることによって答える

マリルリ「……もう止めません? 貴女の技は私には効きません
     それに、“リーフストーム”は反動の大きい技 負担も大きいでしょう?」

打つ手をなくしたように見える相手に、マリルリは気遣わし気な声を掛けた

マリルリ「大人しく足を洗うというなら、見逃しますよ?」

ロゼリア「……情けをかけようなんて甘いですね 諦められるわけないじゃないですか
     “リーフストーム”! “リーフストーム”!」

説得を無視したロゼリアは、技を重ねて打ち出し極大の嵐を巻き起こし

ロゼリア「ここは戦略的撤退とさせていただきます では」

それを目くらましとして即反転


相手の ロゼリアは 逃げ出した !

マリルリ「いいえ、逃がしませんよ “アクアジェット”」


しかし 回り込まれて しまった ようだ !

ロゼリア「逃げることもできないですか…… ふふ、でも私には奥の手がありますのよ?」

逃げられなかったというのにロゼリアは不敵に笑い、懐から何かを取り出した

マリルリ「……なんですか、それ?」

ロゼリア「これは“白いハーブ” 下がった能力値をリセットするものですよ
     使い捨てですが、一度きりでも十分ですわ」

相手は取り出したハーブを自身に使い、今までの反動をなかったことに

ロゼリア「そして、気付いてます? “アンコール”の効果時間はもう終わってますのよ?
     さあ、今度こそ苦しみ果てなさい “ヘドロ爆弾” ! !」

勝利宣言と共に腕をマリルリへ向け、今度こそ“ヘドロ爆弾”を撃ち放つ
 ▼ 325 TOg35azcXc 18/06/01 22:54:59 ID:OCS5iyFc [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
起死回生の一手とばかりに、マリルリへ向けて猛毒のヘドロが飛んだ

彼女にとって弱点を突かれるこの攻撃は、当たれば致命傷になる

……当たれば、の話であるが

ゴクリン「頂きます! “蓄える”! “飲み込む”!」

ロゼリア「……は?」

マリルリの前へ大口を開けて飛び出したゴクリンが、相手のヘドロを口に含み無効化する

ロゼリアの呆気にとられたような声が耳に心地いい

ゴクリン「君の作るヘドロは散々消化した ぼくには効かないよ 彼女にも当てさせない」

見得を切るように思い切りキメ顔で言った

ロゼリア「いえ、効かなかった理由は大体想像つきますが……
     あなた、いつの間に現れました? あれ?」

……ずっといたんだけどなぁ

道理で二匹だけで話が進んでるわけだ気付かれていなかったらしい

ちょっと寂しい

等と感傷に耽っている間に、ロゼリアはこちらを観察しそれに気付いたらしい

ロゼリア「あなた、その手に持っているの、“水のフロート”じゃありませんこと?」

ゴクリン「え? うん そうだよ 綺麗だね、これ みんなが大事にするのも判る」

美しく輝く宝石を、ゴクリンは見せつけるようにかざす

ロゼリア「泥棒の前で宝石を見せびらかすとかおバカさんなんですか?
     よこしなさい! “欲しがる”!」

呑気に構えていたゴクリンに、ロゼリアは“強制的に持ち物を奪う技”を当て

すぐさま逃げに入ろうとした が

ゴクリン「痛いなあ 攻撃してくるなんて酷い そんなにこれが欲しいの?」

まだゴクリンの手の中に収まっている宝石を見て、硬直してしまった

 ▼ 326 TOg35azcXc 18/06/01 22:55:41 ID:OCS5iyFc [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゴクリン「残念ながら、ぼくは“粘着”で ぼくから持ち物は奪えない」

マリルリ「だから言ったじゃないですか 『貴女が盗れないところにある』って」

ゴクリン「さっきマリルリさんの言う通りにしていればよかったのに
     ぼくはもう君を許す気はないよ 警察に突き出してやる」

ロゼリア「嘗めるな! まだやれる! “自然の――”」

ゴクリン「――“ダストシュート”」

ロゼリアが往生際悪く行動することはもはやわかり切っていたため

ゴクリンは機先を制し技で抑え込む 効果はまずまずのようだ



日が昇った翌朝、拘束されたロゼリアは警察に送られることになった

泉からはここ数日の緊迫感は消え去り、いつもの穏やかな調子に

結局、ゴクリンとお姉ちゃんの活躍で事件は解決

唯一被害らしい被害を受けたシザリガー達は、今はもう傷も治ったみたい

今回の事件でも思うことがあったのか、奮起して修行に励んでいるようだ

世は全てことも無し ただ一つ思うことは

ルリリ「……あれ? 私、今回もあまり活躍できてない?」

……まあ、いいか

こうして平和に過ごせるのなら、些細なことなのだ きっと


                           ――――fin.
 ▼ 327 バット@きちょうなホネ 18/06/02 00:03:23 ID:5f7RNxmg NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 328 邦の依頼者の話◆TOg35azcXc 18/06/05 21:20:32 ID:Y0PgE/iQ [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キノココ「お邪魔するよー」

“ひみつきち”に元気な声が響く

絶対安静命令を解除するや否や朝早くから来るなんてどれだけここが好きなのやら

それよりも先に“ひみつきち”にいるエネコには言えたことではないのかも知れないが

とにかく、元気になって本当によかった

出迎えてやろうと立ち上がる と

「お、お邪魔シマス……?」

キノココの後ろから知らない♀ポケモンが入ってきて

エネコ「いらっ……しゃ、い? えーと、どちら様?」

エネコは戸惑ってしまう 何せ、ここらの地方では見かけないポケモンなのだ

キノココとはいったいどういった関係性なのか?

キノココ「うん、困ってるようだから連れてきた モンメンっていうんだって
     珍しいよね なんか、遠い地方からやって来たそうだよ」

モンメン「初メマシテ アナタも“ひみつきち”の方なのデスネ」

エネコ「ええ、まあ そうね、初めまして どうしたのかしら?」

困っているというなら、手を延ばしたいとは思う

しかし、安静命令が解除されるや否やで厄介ごとに首を突っ込むとは

エネコはキノココにほとほと呆れてしまう


モンメン「実は、デスネ…… ワタシが棲んでいた地域であるヤマイが流行りマシテ
     しかしながら、それを治せるお医者サマがいなかったんデス
     アチラでは余りメジャーなヤマイでなく、薬が出来ないようデシタ
     なので、薬か、それを作る手段を求めて、父とコノ地方にやって来たのデス」

エネコ「お父さんと……?」

話しに割り込むのはどうかと思いながらも、エネコは疑問を投げた

彼女の父らしきポケモンの姿が見受けられなかったからである

モンメン「コノ地方に来た当初は精力的に活動していた父デシタガ、
     数日前、体調を崩しだし、寝込んでしまいマシタ……
     ミンナと同じ症状デス 父はミンナのために無理してたのデス」
 ▼ 329 TOg35azcXc 18/06/05 22:28:56 ID:Y0PgE/iQ [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エネコ「成る程、それで、一匹だけで動いてるのね」

遠い地方で流行り病 それを何とかするために態々別地方まで来るとは立派なことだ

モンメン「ハイ…… でも、そういうのの専門は父で、ワタシには……
     父が倒れた今どうすればいいか判らず、願いの叶う“ひみつきち”の噂を聞き
     藁にもスガル思いで探していたところ、キノココに出会ったところで……」

泣きそうな表情で話す彼女は、本当に切羽詰まっているのだろう

確かに、そんな時に願いが叶うなんて枕詞を聞いたら縋ってしまうのも判る

しかしエネコには気がかりもあり、キノココに対し呆れの溜息をつく

エネコ「それで連れてきちゃったわけ?」

キノココ「え? うん…… そうだけど あれ? なんかいけなかった……?」

エネコの様子にしどろもどろになるキノココ それに対しエネコは

エネコ「あのね…… その病が私たちの手に負えないものだったらどうすんのよ
    更には、その子も今は元気そうだけど、キャリアである可能性もあるのよ?
    “ひみつきち”の皆に感染すつもりだったの? 幸い、今私しかいないけど」

あくまで現実的なリスクについて説明する

モンメン「あ……! そうデスヨネ…… もしかして、感染しちゃいマシタ……?」

当のモンメンも考えが足らなかったようで 今更慌てだすし

エネコは呆れて物も言えなくなりかけてしまう

エネコ「……まあ、それは今は良いわ というかどうしようもないわ
    一先ず置いておいて、モンメン、あなた達のねぐらに案内して貰うわよ?」

モンメン「へ? ねぐらに? ヤマイの父が寝てるだけデスガ……」

モンメンは考えることが多いと話についてこれなくなるタイプなのだろう

エネコの発言の意図を上手く掴めず呆けている

エネコ「そのお父さんを診るのよ これでも私、薬師よ なりたてだけどね」

だからエネコは、彼女に解り易いようにそう言う

モンメン「え…… あ! ハイ! 宜しくお願いシマス! お医者サマ!」

すると、途端に顔を輝かせて彼女は言って来た

……だから、医者じゃないって ……まあ、いいか
 ▼ 330 ンギラス@あやしいカード 18/06/06 21:28:55 ID:DqEMzZ4w NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 331 TOg35azcXc 18/06/06 22:51:24 ID:OCK3jb6k [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エネコ達は、抗菌効果のある木の実の果汁を使って一応の予防措置を取り

モンメンに案内されるまま、木の洞を利用したねぐらへとやって来た

モンメン「タダイマ! お父さん、大丈夫!? お医者サマを連れてキタよ!」

彼女は洞の中に入るや否やそこに寝込んだポケモンの元へ飛んでいく

多分モンメンの進化系なのだろう見慣れないポケモンは、息も荒く苦しそうにしている

エネコ「はい、ちょっと失礼 診させてもらうわよ」

この場所に来るまでに、大体の病状はモンメンから聞いていた

その上で彼を聴診、触診などして彼らのかかっている病気にあたりを付け考える

どういう薬を処方すればいいのか しかし、これは……

エネコ「……言い難いのだけど、今の私では手に負えないかもしれないわ」

絶望的とも捉えられかねないことを、エネコは苦渋の表情で口に出す

しかし、事実は事実と認識してもらわなくてはならない 何よりも患者のために

モンメン「エ…… そ、そんな……」

エネコ「残念だけど、重症化し過ぎているわ 症状を和らげる程度の薬なら作れるけど
    完治させるのは、すぐには無理ね」

悔しい気持ちは隠して、あくまで淡々とした口調になるよう言葉を紡ぐ

エネコ「ただ、症状の出始めだったら抑えることはできそうだわ
    私やキノココ、ついでにモンメンに対する懸念は杞憂で済むわね」

モンメンはそれを聞き、安堵の息を吐きかけるが、すぐ苦し気な顔になる

モンメン「父と、ミンナと…… 何か、助ける方法はないのデスカ……?」

エネコ「手は、ないことはないわ でも、言ったでしょう? すぐには無理なのよ
    でも、重症の彼の前で悠長にしてられないじゃない どうしたものかしら……」

時間が限られているのに時間が必要という二律背反 悩みどころである

キノココ「とりあえず、できることをやろう その手って奴を教えてよ
     何か手伝えるかもしれない みんなで考えれば何とかなるかもしれない」

……彼の言う通り 苦しんでいるポケモンの前で“スプーンを投げる”訳にはいかない

大丈夫 きっと何とかなる

エネコ達は今までだって“メタグロスの知恵”に頼って来たのだから
 ▼ 332 TOg35azcXc 18/06/06 23:40:45 ID:OCK3jb6k [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エネコ「そうね じゃあまず、絶対必要な復活草の採集に向かうことにしましょう
    道中で話すわ すぐ出来ない理由とか、これからのこととかね」

キノココ「復活草ね 案内するよ あ…… でもどうやって採ろう?」

エネコ「そこはほら、ふわふわ飛べるモンメンに任せようじゃない」

モンメン「ハイ! ワタシにできることなら、なんでも!」

キノココ「ああ、モンメンなら大丈夫……かな?」

そんな会話をしている内に、復活草が生えている場所である崖に到着する

モンメン「この下デスカ…… 確かに、アナタたちでは大変デスネ
     では、イッテキマス! 頑張りマス!」

復活草を採るため、モンメンは崖下へ向かう

しっかり宣誓までするのだから気合が入っているといえよう

キノココ「……それで? さっき言ってた、薬を作るのが難しいっていうのは?」

モンメンをしっかり見送ってから、キノココは尋ねてくる

エネコ「……薬自体は、多分作れるわ 勉強したもの
    ただ、今の私ではそれに十分な効力を付与することが出来ない」

キノココ「……えっと、どういうこと?」

作れるのに出来ないという言い方が少々判り辛かったらしく、キノココは首をかしげる

エネコ「えっとね、私がチリーンに習った薬は、基本的に特殊な作り方をするのよ
    あの症状に効く薬もあるにはあるのだけど、重症化してるのがネックね
    多分、今の私じゃ完治にはとても届かない」

キノココ「……その、製法って奴が問題なの?」

エネコ「“願い事”や“癒しの鈴”を込めるの」

それこそがこの特殊な薬の最も重要な部分なのだ

エネコ「勿論、力量が上がれば届かせることもできるでしょうね
    でも、そんなの一朝一夕じゃどうにもできないでしょう?」

これをどうにかする手段は、何かないものだろうか……
 ▼ 333 ディアン@グラウンドメモリ 18/06/07 22:07:43 ID:l18p7N0g NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 334 TOg35azcXc 18/06/07 23:29:57 ID:LxtKJalE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
モンメン「取ってきマシタ! ……どうシマシタ?」

二匹で悩んでいると、思いの外早くモンメンが上がってきて

エネコ達の様子を見て戸惑ったような声を上げた

エネコ「お帰りなさい 随分採って来たのね…… ありがとう
    ――あ、でも復活草じゃない草も結構入っているわね……」

モンメン「ふぇ!? す、すみません、間違ってマシタ!?」

エネコ「大丈夫よ 十分な量の復活草はあるみたいだしね
    それに、こっちの草もいらない訳じゃないもの」

使えない雑草があることも否定はできないが、薬の材料になる種類もある

それらはあって困るようなものではないのだ

エネコ「ただ、材料だけあっても、私に力量がない以上、完璧な薬はできないのよね……」

力量を上げるには、沢山のバトルを超える必要がある そう とても沢山の

キノココ「一先ず和らげる薬だけでゆっくりやる ……って訳にもいかないもんね
     海の向こうでは同じ症状で苦しんでいるポケモンがいっぱいいるんだもんね」

……悠長に構えていたら、助けられる命も助けられない 八方塞がりだ

考えて、しかし出ない答えに諦めの溜息をついてしまう

モンメン「力量が足リナイ…… 太陽の石があれば、いいのデショウカ……?」

そんなところに、モンメンが何やら思いついたように発言した

が、意味はよく分からなかった 何故太陽の石……?

キノココ「どういう意味……?」

モンメン「エ? ダッテ、太陽の石があればエルフーンになって、力量も上がるデスヨネ?」

……素っ頓狂な返答が返って来た モンメンの常識の話をされても、こちらには通じない

エネコ「あのね、太陽の石で進化できるのは限られたポケモンだけで、私たちは違うのよ」

モンメン「そうなんデスカ!? チュリネ、ドレディアさんもそうナノデ、ワタシてっきり……」

うん よく判らない単語が頻出して話についていけない

キノココ「でも、それはありかも エネコって確か月の石で進化だよね」

エネコ「そ、そうだけど でも、月の石なんて貴重品、持ってないわ
    どこにあるのかもわからないし、宛てなく探すなんて無理よ……」

月の石は、とても希少な物品である

地道に力量上げする方が現実的 そう思ってしまう程に
 ▼ 335 TOg35azcXc 18/06/08 23:57:38 ID:SZ.s459I NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キノココ「でも、可能性があるんだったら…… できることがあるなら、探したい
     成功しない確率は一旦考えないで、やれるだけやってみようよ」

モンメン「そうデス! やらない後悔ヨリ、やった後悔デスヨ!」

難しいということは解っているのに、楽観とも取れる調子で彼らは言う

キノココを頼もしく感じると共に、エネコは恥ずかしくなる

先程、“スプーンを投げる”訳にはいかないと自戒したばかりだというのに……

エネコ「そうね 悲観ばっかりしてもしょうがないものね
    試せることは全部やらなくちゃ 頑張るわ」

早急には、症状を抑える薬を作る必要がある

それと同時に、今の力量のままでも十分な効力を出す改良法の開発だ


エネコがエルフーンの介抱、薬の製作をしている間

キノココたちには月の石の入手情報を得るため駆けまわってもらうことに

症状を抑えるまでは上手く行った エルフーンの調子は落ち着いている

しかし開発の方はと言えば、手詰まりだ ただでさえ手探りである

経験の足りなさ故か、上手くいくビジョンはなかなか見えない


キノココ「月の石自体はまだ手に入ってはいないけど、有力な情報は手に入れた
     滝のある洞穴 月の石はそこで採れることが多いそうだよ」

そして時間は流れ日が傾き始める頃、キノココ達が朗報を引っ提げ戻って来た

キノココ「僕らはこれから採りに行ってくるよ 君は――」

エネコ「私も行くわ」

――待っていてくれ とでも言おうとしたのだろうか その前にエネコは口を挟んだ

エネコ「希少な月の石だもの 一筋縄じゃ手に入らないわよね 手伝うわよ」

薬は作り置きもしたし、効果は暫く続く で、今の薬以上のものは、エネコには出来ない

つまり、この場に残ったとてできることなどないに等しい

それよりも進化するための道具が見つかる可能性に賭けた方が合理的というものだ
 ▼ 336 ヤコマ@ライブスーツ 18/06/09 00:44:09 ID:6JHhK5ns NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 337 ミカラス@タウンマップ 18/06/09 15:22:00 ID:l4uo8aEk NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 338 TOg35azcXc 18/06/11 00:01:51 ID:Hfkwv2hg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少し準備を整えてから、エネコ達は洞穴へと向かい、神秘的な光景に息を呑んだ

壁や鍾乳石がキラキラと光っていて、洞穴内は松明が不必要なほど明るい

外はすっかり日が落ちて闇に包まれているというのに、である

エネコ「綺麗…… 不思議な光景ね……」

「うむ、この洞穴にはヒカリゴケが多く自生していて光源には事欠かず
 加えて壁に含まれる鉱石は光を反射するときに少量増幅させるという不思議なもの
 よってこの洞窟は夜でも明るいのだよな」

エネコが感嘆していると、聞きなれない野太い声が応える

エネコ「……ええっと 誰?」

キノココ「ああ、ごめん 紹介してないね こちら、トレジャーハンターの方
     月の石の情報を提供してくれたポケモンで、今回手伝ってくれるらしい」

ダーテング「うむ ダーテングである 短い間だがよろしく頼む」

モンメン「トレジャーハンター!? すごいデス! 格好いいデス!」

彼女は目を輝かせてはしゃぐ 

希少な物品や未踏の地の情報などを求めて世界中を駆け巡る仕事

それがトレジャーハンターという仕事らしい

エネコは正直知らなくて、凄さはよく分からなかったが

エネコ「頼りにしていいってことかしら」

そう解釈することにした

ダーテング「任せるのである ……と、言いたいところだが、誠に情けないことに
      この洞穴は自分の力だけで攻略したことはないのである
      少しだけ先輩のポケモンがチームに加わった、程度に考えてほしいのである」

しかし返って来たのは歯切れの悪い返答 ……大丈夫だろうか?

キノココ「まあ、僕等は探検初心者なんだし、頼りにしてもいいんじゃないかな」

モンメン「そうデスヨ! ダーテングサン 宜しくお願いシマス!」

苦笑混じりのキノココ、相変わらず能天気なモンメン

……大丈夫、なのだろうか
 ▼ 339 イガニ@ユキノオナイト 18/06/11 23:12:38 ID:DTIUVCWQ NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 340 TOg35azcXc 18/06/12 22:42:29 ID:RtNkNsNg [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
洞穴攻略において、どうやらエネコのしていた心配は不要のものであったらしい

成程、トレジャーハンターというだけあって、ダーテングは道の選択が的確だ

エネコとキノココは既に迷路山を攻略したという実績がある

凸凹道を踏破するぐらい苦にはならなかった

モンメンは元々ふわふわと浮いているからより問題が少ない

進んでいるうち、余裕が出てきたのか雑談も始まる始末

キノココ「ダーテングは、この洞穴には何度か来ているの?」

ダーテング「うむ 進化の石は需要があるからな
      採集依頼というのも多く出されるものなのである」

モンメン「チームで探索! なんか格好いいデス! 憧れます!」

ダーテング「最も、毎回上手く入手できるかと言ったらそうでもないのである
      希少であるが故、見つからなかったり他のハンターと取り合いになったり」

エネコ「それは困るわね 絶対に手に入れたいのに……」

ダーテング「ふむぅ 事情は知らんが、必要というなら絶対に見つけてみせよう
      それが我らトレジャーハンターの―― うおぉっ!?」

油断していたのが災いか、ダーテングが地面に開いてた穴に気付かず落ちた

前言撤回 やっぱり心配だ……


モンメン「ダーテングサン 大丈夫デスカ? ケガとかしてマセンカ?」

ダーテングが落ちた穴を覗き込みながら声を掛ける

ダーテング「……ケガはないのである が、これはまずいことになったのである」

エネコ「まずいことって――」

穴の中から不穏な言葉が返ってきて、直後爆発音が響いた

エネコ「――な、何!? どうしたっていうのよ!?」

つい、予想外の事態に足が竦んだ しかしキノココは音を聞くなり穴へと飛び込んでいく

キノココ「解らない!! でも、彼が危ない!」

エネコ「ちょ! 危ないわ―― ああ、もう私も行く!」

一匹が助けに行ったって何とかなるかは分からないっていうのに……

また無茶させることにならないといいけど
 ▼ 341 メックス@せんせいのツメ 18/06/12 22:43:33 ID:RtNkNsNg [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エネコ達が下に降りると、ダーテングの前に奇妙なポケモンが二匹浮いていた

どうやら先程攻撃を仕掛けてきたのは彼奴らのようだ

「いい加減懲りぬか『悪』よ 下らない事ばかりしよってからに」

「今度の連れはそこの小さいのらか 難儀なことだ」

二匹はエネコ達に視線を向け、憐れむような声を出す

『悪』? それはタイプのことだろうか それとも――

モンメン「あの! ワタシたち、月の石が必要なんデス! 貰えませんデショウカ!」

異様な雰囲気を放っている相手に、モンメンは気後れせず要求を伝えた

「何やら事情があるようだな、童 しかしながら今この洞穴にある月の石は一つのみ」

「無駄にされるのは我らとして看過できん まして『悪』などに渡せぬ」

浮かぶ二匹は、その威圧感を増して凄んでくる

無駄になんかしないと言っても聞いてくれなさそうだ ……何故だろう?

キノココ「一個はあるってことか 良かった」
     どうすれば渡してもらえる? 戦って、実力を示せばいい?」

エネコが考えを巡らせていると、キノココが前に出て笑った

「ほっほ 我らに勝てるつもりかえ? 無駄なことはせんことだ」

「しかし確かに機会を与える程度は必要か 見抜けぬ愚鈍では無駄になるからな」

モンメン「ど、どういうことデス? 月の石は手に入りマスカ?」

「童らの頑張り次第と言ったところかの」

「一つ頓智を出すとしよう 実力勝負ではお前らには荷が勝ち過ぎているからな」

キノココ「それはありがたいね バトルは苦手だから」

話はどんどんと進んでいく エネコは正直ついて行けていなかった

ソルロック「我は太陽の番人 ソルロック」

ルナトーン「我は月の番人 ルナトーン では、出題させて貰おうか」
 ▼ 342 リジオン@ナゾのみ 18/06/12 23:33:49 ID:RtNkNsNg [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ソルロック「この洞穴の奥は東西に二股に分かれた作りになっておる」

ルナトーン「生成された月の石はその突き当りに現在保管されているのだ」

ソルロック「片方だけ通行許可を出してやる もう片方を通ることは許さぬ」

ルナトーン「どうしても通るというなら、本気の我らを退けてからになるな」

番人たちの実力は未知数だが、威圧感や雰囲気から察するに相当の実力だろう

戦っても退けることが出来るとはとても思えない

キノココ「つまり、一発で正解を当てないといけないってことか」

ダーテング「確率は半分であるか ……俺の所為でこんなことになって済まないのである」

ソルロック「これこれ 慌てるでない まだ話は終わってないぞよ」

ルナトーン「出題と言っただろう 完全な運勝負をさせる気はない」

ソルロック「月の石に辿り着くため一つだけ質問することを許そうぞ」

ルナトーン「ただし、我らはその質問に、完全なる嘘と完全なる真実で返答する」

ソルロック「よく考えて質問するがよいぞ 気長に待つのは苦ではないからな」

ルナトーン「勿論、質問しないで行くという選択もよかろう 運に自信があるのならな」

完全なる嘘と、完全なる真実 どういう意味なのだろうか

ダーテング「普通に質問するだけではだめということであるか?」

モンメン「月の石はどこにあるの? って聞いちゃダメなの?」

キノココ「それだと『東側』と答える奴と『西側』と答える奴に分かれてしまう
     そして、どちらが真実を言ったのか判らないまま質問権は尽きる」

モンメン「え、ジャア、嘘を吐いているのはどちらデスカ? と聞くのは?」

キノココ「その質問じゃ解らないよ そして月の石の場所が解らないままだ」

一つの質問でどちらが嘘つきか見極めつつ月の石の場所を確定させろということか

……ううむ、難しい
 ▼ 343 TOg35azcXc 18/06/14 00:22:56 ID:Isd2Z5xE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
嘘と真実 どう見極めればよいのやら エネコ達はああでもないこうでもないと頭を捻る

キノココ「……じゃあ、質問させてもらおうかな」

そんな中、何かを閃いたのか、キノココが口を開いた

ダーテング「大丈夫なのであるか?」

キノココ「うん ソルロック、ルナトーン、質問だ
     『月の石は西にあるかと訊いたら、YESと答えるか?』」

キノココが口にしたのは、予想外に短く、回りくどい質問 はてさて……

ソルロック「ほう…… では答えよう NOじゃ」

ルナトーン「NO だな その質問にYESとは答えない」

キノココ「だってさ 東を目指そう 月の石はそっちだ」

答えを聞くなり、キノココは先に進もうとする

エネコ「いやいや、ちょっと待ってよ どういうことなの?
    何で答えが一緒? そして東が真実である根拠は?」

奴らは正反対のことを言うと宣言していたのではなかったのだろうか?

キノココ「ええと…… あの質問では嘘吐きも正直者も同じ答えにならざるを得ないんだ
     少しややこしいんだけどね」

モンメン「どういうことデス? 解りまセン……」

キノココ「月の石が東にあるのに、『西にあるか?』と訊かれたら
     真実を言う方はNOと答え、嘘を吐く方はYESと言う ここまではいいよね?」

ダーテング「当然であるな」

キノココ「そこで質問に『YESと答えるか?』を付ける
     真実はNOなのだから、そのままNOと答える
     嘘はYESと答えるところを嘘に変えNOと言ってしまう」

……結果、答えは真実だけになる 反対の反対は正面、ということか

ソルロック「正解じゃ 良く見抜いたな では行くがよい」

ルナトーン「有益に活用することを期待するぞ 我らには関係ないがな」

エネコ達は二匹に見送られ、洞穴の東奥へと足を進めた
 ▼ 344 TOg35azcXc 18/06/15 23:41:18 ID:eGFwBsvg [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エネコ「……ようやっと、突き当りみたいね ――わあ……!」

モンメン「なんというか、良いところデスネ…… 美しヤ……」

狭い場所、天井の低い場所、極端な上り下りなど困難な道程を抜け、

エネコ達は番人らの言っていた場所へと辿り着いた

とても澄んだ水が湛えられていて、ヒカリゴケの放つ淡い光のお蔭でとても神秘的

当初の目的を一時忘れて、見惚れてしまう

ダーテング「ここに月の石があるのであるな」

キノココ「洞穴だから仕方ないけど、石がゴロゴロ転がってるね……
     この中から特定のものを見つけ出すのは中々、骨かな……」

モンメン「頑張りマス!」

意気込んで探し始めたものの、なかなか見つからず水中をさらうところまでやって

最終的には天井近くのくぼみにはまっていたのを、モンメンが見つけ出してくれた

皆、徒労感があってぐったりしてしまう

ダーテング「ここにある、というのが事前に判って無ければ諦めるところであるな……」

エネコ「本当、キノココに感謝ね…… あれに正解してなかったらと思うと気が滅入るわ
    モンメンもありがとうね あんたがいなきゃ見つからなかったわ」

モンメン「光栄デス これでミンナ助かるのデスヨネ! ソノ…… 早速――」

ダーテング「ここで進化するのはやめておくがよいのである
      進化すると体長や体格が変わり、慣れるのが大変故
      このような安定しない帰り道が控える中では危険である」

モンメンがエネコに月の石を差し出そうとすると、ダーテングが言葉で遮って来た

流石探検に慣れてるだけあって一理ある話である

エネコ「まあ、そうね 進化するのは洞穴を抜けてからにしましょうか」

ダーテング「うむ それまで月の石は俺が預かっておこうか」

エネコ「いえ ここは浮いてるモンメンに任せましょう 落とさないでね?」

モンメン「任されマシタ 大事に持ってマス」

ダーテング「成る程 それも良いな 俺が持つより確実そうだ」
 ▼ 345 ガハッサム@ノメルのみ 18/06/15 23:41:48 ID:IBlEgc7I NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 346 TOg35azcXc 18/06/15 23:41:48 ID:eGFwBsvg [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
通って来た道を帰るだけでも結構過酷ではあったが、目的を終えた達成感と
外へ向かっているという安堵感から、来る時よりは気持ちが楽だったように思える

といっても疲労感はやっぱりあって、ヒカリゴケのそれとは違う眩しい光を見たときは
思わず歓声を上げてしまったのだけれど

エネコ「やっと、外が見えてきたわ! いつの間にか、夜が明けてる!」

キノココ「はは 大冒険って感じだったね もう、僕もくたくただよ」

モンメン「本当デス…… ワタシたち、徹夜しちゃってたんデスネ」

エネコ「まあ、一休みしたらもう一仕事あるんだけどね ダーテングも、お疲れ様」

朝焼けの空の下、開放感に満たされながら成功を讃えあおうと声を掛ける


ダーテング「ああ、お疲れ様だ よく俺様のために月の石を採ってくれた」

突然、ダーテングの声色が変わった 傲岸不遜に 尊大に


エネコ達はそれを聞き、モンメンを背中に隠すように身構えた

ダーテング「大人しくよこせ 月の石」

モンメン「ど、どういうことデス……?」

突然に向けられた悪意に、彼女はついて行けていないようだ

エネコ「……そっちが本性? 『悪』とやらの」

ダーテング「くっそ、番人どもめ 余計なこと言いやがって
      お前、途中から俺のこと警戒してたろ 面倒臭え」

エネコ「そりゃあれだけ言われたらね と言っても、洞穴内では何も言えなかったけど」

狭い空間ではお互い逃げ場もなく、下手に糾弾しても何ができるわけでもない

月の石を預けなかった程度か ともかく、刺激しないのが吉と見ただけ

モンメン「わ、渡しマセン……! コレは、必要なのデス!」
 ▼ 347 TOg35azcXc 18/06/16 00:27:07 ID:XtH2Cgu. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キノココ「何故? 何のために僕らを?」

ダーテング「そりゃ、月の石は需要があるからさ かなり値を張っても買い手がつく
      一個でも取れればぼろ儲けっつう寸法よ」

相手は下卑た笑いを浮かべて力説する 毒タイプじゃないのに反吐が出そうだ

ダーテング「だが、俺が一匹で行っても番人とやらが出張ってきて上手くねえ
      損が増えるばっかりだ そんで思いついたのよ
      他のポケモンに採らせてきて、あとから横取りするっつうビジネスをよ」

キノココ「清々しい程の『悪』だね 態々ついて来たのは?
     そのビジネスなら待っていても良かったように思うけど?」

ダーテング「それはあれだ お前らのチームにエネコがいるからだよ
      進化石は使い捨て 勝手に使ってゴミにされんのを妨害するためだ」

キノココはダーテングから情報を引き出しながら、こちらにアイコンタクトを送って来る

……そうだ キノココが気を引いている内に、使ってしまえば――

ダーテング「させるかよ “差し押さえ”」

――封じられた 道具を思うように使えない

ダーテング「邪魔者が、俺の前を塞ぐんじゃねえよ “吹き飛”べ」

相手が両手の扇を器用に振ると、キノココとエネコだけ押しやられてしまう

そして、残って震えているモンメンへ手を伸ばし

ダーテング「“泥棒” さて、確かに頂きましたよ ご協力感謝 ってか」

あっさりと石だけ奪って、皮肉気に呟きながらこちらに背を向けた

エネコ「待ちなさい! “欲しがる”!!」

ダーテング「おっと、危ない危ない もう戻ってきやがった」

くぅ、不意打ち気味に技を放ったというのに、余裕綽々と躱されてしまった

ダーテング「盗るもん盗ったし、もうズラからせてもらうぜ じゃあな」


相手の ダーテングは 空高く 跳びあがった !
 ▼ 348 ルマイン@むしよけスプレー 18/06/17 17:33:37 ID:FrP26XBo [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
“飛び跳ねる”

その名の通り強靭な筋力や体の一部の弾力、反発力で空高く跳び上がり、

落下の勢いに乗せて強力な攻撃を仕掛ける技だ

そしてその特性上、降りてくるまで地上からの干渉は断たれる

ある意味では、一時避難の技ともいえよう


勿論、鳥や龍でもなければ重力に逆らうことが出来ずいずれ降りてくるはずである

エネコ達はその時を、相手を見上げながら虎視眈々と待つが

エネコ「移動、してる? ……嘘 飛んで逃げるなんて!!」

いくら待てども、相手は降りてこない

それどころか、まるで羽でも生えているかのように軽やかに移動していく

どうやら、両手の扇で風邪を巻き起こし、それを推進力としているらしい

……そういえば、そんな伝承を持つ生物がどこかで語られていたっけ

それを“技”を使って再現するとは

 ▼ 349 行ni◆TOg35azcXc 18/06/17 17:35:02 ID:FrP26XBo [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エネコ「くっ! 待ちなさい! 月の石、返せぇぇぇ!!」

慌てて駆けだす 必死になって追いかける

しかし、地上を走るのと空中を移動するのでは明らかに速度が違って

……駄目だ 引き離される

キノココ「ハァッ ハッ 諦め、られるか! あれがあれば、皆助けられる!
     絶対、追いついて、取り返してやる! うおぉぉぉ!!」


突然、キノココの身体が光り出す まるで彼の気合に、願いに応えるように

光はどんどん強くなり、彼の身体を一回り大きくして、ぐんぐん加速していく


キノガッサ「届けぇぇぇ!! “スカイ、アッパー”ァァァ!!」


そして天高く打ち上げた“拳”は見事相手を捕らえ、撃ち落とした
 ▼ 350 0行に戻ってる◆TOg35azcXc 18/06/17 17:36:58 ID:FrP26XBo [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
モンメン「凄いデス! キノココサン! いえ、進化したから、アレ? なんていうのデス?」

エネコ「キノガッサ、よ それにしてもこのタイミングで進化なんて 凄いわね」

すっかり置いていかれる形になったエネコ達は、彼の元へ駆けていく

キノガッサ「取り返したよ、月の石 それと、コイツは警察、かな」

キノガッサは、落下の衝撃で目を回していたダーテングを縛っているところだった

エネコ「お疲れ様 じゃあ、早速使わせてもらうわね」

モンメン「お願いシマス そして、ミンナを……」

月の石に含まれる月光線を自らの体に当てる

次の瞬間、何とも言えない感覚と激しい光がエネコを包み――


おめでとう !

エネコは エネコロロに 進化した !




ダーテングを、もはや馴染みとなった警察に引き渡した後

エネコロロたちはエルフーンの待つ木の洞まで戻り、薬を処方する

進化したてで上手くできるか不安もあったが、幸いよく効いてくれた

しっかり効くことが解ると、エネコロロは奮起し特効薬を沢山生産した

この病に苦しむポケモンは沢山いるのだという 全員に行き渡るようにと

そうして処方した薬を動いても大丈夫なほどまで回復したエルフーンに持たせた

エネコロロ「足りなかったらまた言ってね すぐ作るわ」

エルフーン「本当に、こんなに良くして貰って忝い 本当に感謝する」

エネコロロ「お大事にね 感謝はちゃんと皆治ってからにして頂戴」

モンメン「本当に本当に、ありがとうゴザイマシタ! このご恩は忘れマセン!」

そして自分たちの地方へと帰っていく彼らを見送る

これで、この騒動は終わり、かな
 ▼ 351 TOg35azcXc 18/06/17 18:24:40 ID:FrP26XBo [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キノガッサ「お疲れ様、ロロ」

一仕事終わったと息を吐くと、隣から労いの声が掛かった

エネコロロ「そうね 今回はちょっと疲れたかも あんたこそお疲れ様
      ……ところでその呼び方は?」

キノガッサ「んー…… なんとなく」

エネコロロ「そう じゃあ、私はキノとでも呼ぼうかしら」

キノガッサ「ガッサじゃなくて? まあ、いいけど」

どことなく気怠い雰囲気でなんともない話を始めてしまった

何とはなしにしばらく言葉を交わす 中身がなくてすぐ忘れてしまうようなことを

しかし、こんな話を切り上げもせず続ける辺り

エネコロロ「キノ、なんか話したいことでもあるの?」

キノガッサ「うん、まあね ロロは今回のこと、どう思った?」

エネコロロ「抽象的ね…… そうね 大変だったけど……」

キノガッサ「楽しかった? 誰かのために何かできることが、嬉しかった?」

こちらの考えを先取りして言葉にされ、少し目を見開いてしまう

キノガッサ「うん 僕もそういう気持ちなんだ」

エネコロロ「ふうん…… それで?」

キノガッサ「だから、自分から積極的に活動できる場所がほしいな、って
      自分でギルドを作ってしまうのはどうだろうかって、ね」

エネコロロ「偉い人の誘い、蹴ったじゃない あんた」

キノガッサ「公が向かないって考えは変わらないからね……
      だから、『私営ギルド“ひみつきち”』 なんて ……どうかな?」

公営ではなく、私営 成る程 らしいかもしれない

エネコロロ「……いいんじゃない?」

彼には合っているだろうし、なかなか面白そうだ
 ▼ 352 TOg35azcXc 18/06/17 18:25:13 ID:FrP26XBo [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キノガッサ「それで、良かったら、なんだけど」

キノガッサ「君も、そこのメンバーになってくれないか」

キノガッサ「その、ロロとは、これからも一緒に行動していきたいから」

勇気を絞り出す、という感じで、つっかえつっかえ彼は言う

彼の顔が赤く染まって見えるのは、決して日差しの所為だけではない筈だ

それに対するこちらの答えは、勿論

エネコロロ「馬鹿」

キノガッサ「――ええっ!?」


エネコロロ「訊くまでもないじゃない 私たちの仲でしょ」

エネコロロの返答に、彼は嬉しそうに頬を緩ませる

断られると思っていたのだろうか この馬鹿は

エネコロロ「まあ、これからもよろしくね」

キノガッサ「ああ 宜しく!」

二匹で顔を見合わせて笑い合う




キノガッサ「よし! 次はゴクリンを誘うぞ! 皆もね!」

エネコロロ「……馬鹿!」

まあ、そんなことだろうとは思ったけどね……

ともかく、これからも騒がしくなりそうだ

きっと楽しくなってくれることだろう 期待してしまうね

                                    ――fin.

 ▼ 353 ノココ@シールぶくろ 18/06/17 21:59:58 ID:ox.gQy.c NGネーム登録 NGID登録 報告
乙!
 ▼ 354 ラスルが強くなる話◆TOg35azcXc 18/06/23 00:45:23 ID:1fxsPCrA NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
私営ギルドを立ち上げることになったようです

困っているポケモン達から依頼を受けて、こちらで解決を図るという組織です

勿論、公平のため解決時には報酬を払ってもらうのです

難しい案件ほど必要な報酬は多く、或いは貴重になるため依頼解決にもやりがいが出ます

誰かを助けることが出来て、自分たちにも利することもあって

とても素敵なことであると思うのです


マイナン「でも、あんまり依頼来ないね……」

目下の問題は、そこなのです

ギルドが新設であまり知名度がない所為なのか、余り依頼が来ないのです

全く、と言う訳ではないのですが……

プラスル「キノガッサさんかエネコロロさんだけで手に負える依頼ばかりで、
     あの二匹が片付けちゃうのですよね……」

ルリリ「なんか、張り切っちゃってるよね まあキノガッサが言い出したことなんだけど」

プラスル「私たち、あんまりやることないですもんね」

ゴクリン「いいんじゃない? それだけ平和ってことでしょ」

ゴクリンの言うことも一理あって、確かに、喜ぶべきなのかもしれませんが

プラスル「なんというか、手持無沙汰といいますか……
     できることがあるなら、していたいといいますか……」

ルリリ「だよねー 私たちに仕事残してくれてもいいのに……」

ゴクリン「まあまあ、キノコ ……ガッサもなり立てで張り切ってるだけだから
     あんまり責めないであげてよ」

マイナン「ちょ 呼び間違い……」

ゴクリン「だって急に変わんだもんさ あんまり責めないであげてよ
     もう『所長』って呼ぼうかな ギルドの言い出しっぺだし」

マイナン「ああ、確かに リーダーは誰かって言われたらキノ――ガッサだし
     いいんじゃないかな」

ルリリ「マイナンも間違いそうになってるし まあ、賛成」
 ▼ 355 ンボラー@つきのいし 18/06/23 19:38:34 ID:.Saw2TOI NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 356 クレー@カムラのみ 18/06/23 23:47:03 ID:e1OcPLUQ NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 357 TOg35azcXc 18/06/24 00:07:30 ID:U3RAs3qY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キノガッサ「お邪魔するよっと 新しい依頼とか来たかい?」

噂をすれば影、といいましょうか キノガッサが“ひみつきち”へと丁度入ってきました

ゴクリン「いらっしゃい おめでとう 君はたった今所長に任命されたよ」

キノガッサ「へ? 僕が? 長だなんて、そんなそんな」

突然の宣告に、彼は目を丸くします

エネコロロ「妥当じゃないの キノが立ち上げたいと言ったのだし ……お邪魔するわ」

キノガッサ「向いてないと思うけどなぁ じゃあ、副長はロロね」

エネコロロ「……巻き込まれたわ まあいいけど」

ルリリ「エネコロロが副長ね なんかしっくりくるよ」


マイナン「それはそうと、依頼が少ないねって話をしてたんだよ」

ルリリ「そうそう 所長と副長だけで片付けないで、私たちも何かしたいんだよって話」

先程話していた内容を、後から来た二匹にも話します

というか、彼らにこそ言いたい不満なのです

キノガッサ「う…… 確かに、ギルドを立ち上げておいて独りで先走るのは良くなかった
      ごめん でも、設備投資してくれた貴族様のためにも頑張らなきゃと思って」

依頼掲示板やカウンターなどギルドとして必要な器具等を態々用意して下さったのは

いつぞや所長と決闘をした有力な貴族であるブーピッグでした

これから広告周知も行ってくださるとか 本当に感謝してもしきれない方です

エネコロロさんは思うところがあるらしく複雑そうな顔をしていましたが

そういう事情もあって頑張ってしまうのは判りますけれど……

プラスル「それでも、私達にも仕事残しておいてくださいよ……」

マイナン「ボクらだってやる気はあるんだぞ!」

やることがない、戦力外であるというのも辛いものがあるのです
 ▼ 358 ャース@しずくプレート 18/06/24 00:08:19 ID:RJ7EbtrA NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 359 TOg35azcXc 18/06/28 23:59:06 ID:YaikuqM2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルリリ「何かない? 何でもやるよ?」

マイナン「依頼じゃなくてもいいから」

キノガッサ「ううん…… やること、ねえ」

やる気満々の二匹に対して、キノガッサさんは腕を組み悩んだような顔をしました

エネコロロ「あの調査は? その内ちゃんとやんなきゃって話してたじゃない?」

プラスル「調査 ……ですか?」

エネコロロ「迷路山の、なんだけどね ……やる?」

色々な意味で気遣いが込められた複雑な声でした

いつぞやシンジケートが占拠した場所であり、

プラスルたち兄妹にとっては複雑な感情を抱かざるを得ない場所です

ルリリ「私はいなかったんだよね…… どういうことを調べるの?」

エネコロロ「前回乗り込んだ時、地図を奪ったのよ
      で、その地図が未完成、というか 書かれてない場所があるみたいなの」

ルリリ「未開の地の開拓ってこと? なんていうか、冒険だね!」

キノガッサ「うん 冒険だ つまり危険だよ 何があるかなんて解らないし
      迷ったら帰って来れるかもわからない 洞窟だから閉塞的で暗いだろうしね」

マイナン「……暗いなら、電気で明るくすればいい ボクらのボンボンで」

キノガッサさんの心配そうな声に、マイナンが言葉を返しました

その瞳にはやる気が満ち溢れています

エネコロロ「ええ まあ それを期待してたところはあるのだけど…… 大丈夫?」

マイナン「大丈夫さ シンジケートはもういないのだし
     そもそもボクがやりたいと言い出したのだから」

エネコロロ「まあ、あんたは大丈夫そうね でもプラスルはどうなのかしら?
      勝手に一纏まりにされてるようだけど?」

プラスル「ふぇ!? わ、私は……」

話題を振られて困ってしまいました ……自分が情けなくなります

あの時のことを考えて身を竦ませてしまっているのを見抜かれてしまったようです
 ▼ 360 ンターン@フォーカスレンズ 18/06/29 00:01:48 ID:Hkjsn4wI NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 361 TOg35azcXc 18/06/29 23:13:22 ID:WcYoinio NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エネコロロ「あとね、折角のやる気にまた水を差すようだけど、話はまだあるのよ」

気まずい空気になりかけたところで、エネコロロさんが言葉を重ねました

エネコロロ「未踏エリアの開拓も目的の一つではあるけれど
      それよりも、今回調査しようとなったのは最近聞いた噂の方が原因なの」

プラスル「……噂、ですか?」

こちらの質問に彼女は少し躊躇ったような表情を見せた後、急に声を潜めました

エネコロロ「……出る、らしいわよ」

ルリリ「…… ……で、出るって ……何が?」

その様子から、嫌な予感は察していても聞かずにはいれないというようで

こちらも構えてしまう中、彼女は続く一単語を口に出しました

エネコロロ「お化け」

ルリ+−「「「ひゃあああぁぁ!!?」」」

三匹は、遂には身を寄せ合って震えてしまいます


エネコロロ「兎に角そういう話が出たからこれは調査しなきゃなあってなったんだけど」

さっき迄の口調はどこへやら、エネコロロさんはいつも通り淡々と話し始めます

マイナン「待て待て待て! 何でそんな冷静なんだよ!?」

エネコロロ「よくある噂だもの これから調べようっていうのに及び腰でどうするの
      私が調査してもいいんだけど、どうする? やめとく?」

どこか気遣いの色を見せる彼女の前で、プラスルたちは少々顔を見合わせてしまいました

ゴクリン「ぼくはパスねー おばけなんかと関わり合いになりたくないし」

そんな中、まず真っ先に辞退の意を示したのは先程悲鳴を上げなかったゴクリンさんで

キノガッサ「……本音は?」

ゴクリン「動きたくないでござる!」

エネコロロ「あんたね……」

キノガッサ「だったら、リンは依頼受付とかやってくれないかな
      僕らが出払ってても“ひみつきち”に残る人員がいてくれると嬉しい」

ゴクリン「かしこまり! 任せてよ!」
 ▼ 362 TOg35azcXc 18/07/01 00:14:08 ID:/wkgmDTE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エネコロロ「……で? あんたたちはどうするの?」

別に自分でやってしまっても構わないけど、とやはり気遣いが籠る声で彼女は言います

何かしたいという気持ちは変わらずありますが、迷路山というのがどうにも……

それに、お化けの話にも尻込みしてしまっています しかし……

ルリリ「じょ、上等じゃん! おおお化けがなんだっていうのさ!」

マイナン「そそそうだよ! 全ぜん然大丈夫だよ! う、噂でしょどうせ!」

ルリリ達は一度言った手前、引くに引けなくなっているところもありました

ゴクリン「嫌なら嫌って言っても誰も怒らないのに…… そう思うでしょ?」

そんな彼女らを横目に、ゴクリンさんはこちらに話しかけてきました

プラスル「え? あ、はい ……そう、ですよね」

どうやら、気を遣われたみたいです

プラスル「申し訳ありませんが、私も留守番させてもらいたいと思います
     迷路山の調査は、私には荷が重そうです……」

エネコロロ「そう まあ、無理はしない方が良いわ じゃあ、迷路山はそっちに任せて
      プラスルは木の実採集に付き合ってもらおうかしら」

マイナン「…………マジ?」

ルリリ「……マイナンと二匹だけ?」

エネコロロ「あら あんたたちが言ったことでしょう? 頑張ってね
      判ってはいると思うけど、十分気を付けるのよ? 地図はなくさないようにね」

蒼褪めた二匹の様子は少々気の毒でした…… 口は禍の元、ですね


そんな二匹が更に蒼褪めて戻って来たのはその日の夕暮れのことで

マイナン「ほほ本当にでたぁぁぁぁ!!」

ルリリ「何あれ!? 何あれ!?」

はてさて、どうやら恐ろしい目に遭ったようで混乱しているみたいです
 ▼ 363 TOg35azcXc 18/07/02 00:05:12 ID:cIpw66bU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エネコロロ「お帰りなさい で、出たって、何が?」

ルリリ「お化け! お化けだよ! 暗くてはっきりとは判んなかったけど!」

マイナン「ぼうっと浮いてて! がらんどうな目でこっちを見たかと思うと、
     すーって平行移動してきて! あんなん見たことないよ!」

エネコロロ「それで逃げてきたの…… 無理しないでって言った手前責め辛いのだけど、
      それを調べるのがあなたたちの役目だったって判ってる?」

ルリリ「う…… それは面目ない ……けど、あれは無理!」

マイナン「そうそう! この世のものとも思えない! あれに立ち向かおうなんて無理!」

得体の知れない『何か』の存在を語る彼女らは本当に怯えていました

……情けないことに、自分が行かなくてよかったなんて思ってしまいます

エネコロロ「まあ、無事でよかったわ じゃあ、地図の方は?」

マイナン「それは一応やったよ ちゃんと」

ルリリ「まああいつに出くわすところまでで、書けてない所もあるんだけどね……」

そういって取り出した地図は、確かに以前に見た時よりは書き込まれていました

ただ、依然未完成であることは事実で、エネコロロさんは溜息を吐きます

エネコロロ「得体の知れない『何か』がいることは解ったのだし、よしとしましょう
      次に調査に行くまであまり立ち入らないように周知しておかなくちゃね」

マイナン「大きなこと言っといて、すぐには行かないの? ……副長も怖いんじゃ」

エネコロロ「馬鹿言わないで 泉の方で病気の方がいて、薬を作らなきゃいけないのよ」

プラスル「あ、それで木の実採集だったんですか?」

エネコロロさんは異邦から来た病気に関する依頼を解決した実績があり

このギルドには薬についての依頼が結構入ってきたりもしているようです

しかし、薬を作れるのは現状彼女だけで こちらとしてはもどかしいのですが

図らずも今回、依頼完遂の一助が出来ていたと知れて、嬉しくなります

マイナン「エネコロロも結構忙しくしてるよね…… んー、なんか悔しい!」

ルリリ「私も薬について勉強しようかなぁ……」

エネコロロ「別に教えても構わないけど まずはお知らせ宜しくね?」
 ▼ 364 クリュー@デボンスコープ 18/07/02 23:44:13 ID:qVegsDjg NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 365 TOg35azcXc 18/07/05 16:44:55 ID:vHgclZbQ [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
迷路山の立ち入り制限について勧告して
その日の内にそれは多くのポケモン達の間に広まりました

さて、その翌日キノガッサさんもエネコロロさんも出払っている中
とある一匹のポケモンが“ひみつきち”へとやって来たのです


依頼者「スみません 最近できたギルドってここナンスか?」

ゴクリン「いらっしゃい どちら様? 依頼でも持ち込まれたのかな?」

依頼者「ソ、ソーッスね まず名乗るべきスか あっしはソーナンスっス
    相談というのは妹のことナンス…… あ、妹ってのはソーナノナンスけど」

マイナン「依頼? なになに? 今なら手の空いた人員がいるからすぐ解決しちゃうよ?」

依頼者さんが来るなりそわそわしていたマイナンは、遂に話に割り込みます

依頼者「ソーナンスか! 有難いっス 最近妹は勝手にどっかいくことが多くなってスね
    問い詰めてみたら、なんと迷路山だっていうじゃないスか!
    危ないからあまり行かないように何度か注意したスけど聞かなくて……」

ゴクリン「ふむふむ」

依頼者「そんな時に、迷路山の立ち入り制限の話スよ 昨日散々言って聞かせたのに
    また勝手に出かけたみたいで 多分迷路山ス あっしもう心配で心配で……」

マイナン「えぇ…… め、迷路山、スか……」

しかしその内容を聞くなり顔を引きつらせ始め、及び腰になってしまいました

依頼者「勧告出したのもここだし調査するのもここスよね? どうか妹を助けて欲しいっス」

ゴクリン「成る程 妹さんの捜索と保護を依頼したいわけだね」

依頼者「ソーナンス! 勿論報酬は弾みまス どうかよろしくお願いしまっス!」

ゴクリン「まいどありがとうございましたー」

そんなやり取りを残して依頼者さんは“ひみつきち”を去って行きました
 ▼ 366 度支援どうも◆TOg35azcXc 18/07/05 16:45:29 ID:vHgclZbQ [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゴクリン「で、どうするのさマイナン ルリリも聞いてたよね?」

ルリリ「え!? う、うん…… 迷路山、だよね……」

ゴクリン「そう すぐ解決するとか言っちゃったけど? この馬鹿が」

マイナン「う…… そんなに言うんならゴクリンが行けばいいじゃないか」

ゴクリン「ぼくは所長直々に受付担当を任されてるからね」

ルリリ「そんなの、私たちがやるから! 行ってきてよ!」

ゴクリン「いやいや、任された仕事を投げ出すなんてぼくにはできないな」

マイナン「ズルっ! どうせ本音は『動きたくないでござる』だろうに……!」

ゴクリン「だから何だ! ぼくが任された事実は変わらない 暇なら行ってきなよ!」

ルリリ「そ、そうだ 所長が帰ってきたら事情説明してそれで……」

得体の知れない存在を直接見た二匹も、聞いただけのゴクリンもすっかり怯んでしまって

しばらく醜い押し付け合いが続きます 続いて、仕舞います

プラスル「……何、やってるんですか 皆さん」

情けなくなります 三匹のやり取りも それを眺めていただけの自分自身も

プラスル「一番に考えるべきはソーナノさんのことじゃないですか?
     確かに、今迷路山には不穏な影は有りますよ 正直、私も恐ろしいです
     でも、いえだからこそソーナノさんを早く捜索して、安全を確認しなくては」

こちらの言葉に、三匹は黙り込み、しかしだったらどうするのかと目配せをし合います

プラスル「私が、行きます ソーナノさんの捜索に 迷路山へ」

マイナン「な、なにを!? 本気か!? あそこにはお化けがいるんだぞ!!?」

ルリリ「プラスル、本当に大丈夫? 震えて、るよ? やっぱり……」

……駄目ですね あの場所を思うとどうにも体は震えてしまいます

けど、それじゃ駄目なんです しっかりしないと

プラスル「いえ、行きます ソーナノさんのために 私が依頼を受けても大丈夫ですよね?」

ゴクリン「ギルドのシステム的には問題ないよ ……でも、気を付けてね?」

プラスル「はい 頑張ります」
 ▼ 367 TOg35azcXc 18/07/06 00:26:35 ID:OzgU1gvk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マイナン「参ったな…… これじゃなんかすごく格好悪いじゃないか……
     ――ボクも、行くよ やってやろうじゃん 捜索依頼」

ルリリ「……本気? だって、迷路山には、あなたたちは…… それにあいつが……
    ああ、もう! 私も行く! 二匹に全部任せるわけにはいかない!」

先ほどまで山にはいくまいと依頼を押し付け合っていた二匹は

それでも、プラスルと共にその場所へと向かってくれると言います

プラスル「お兄ちゃん…… ルリリ…… ありがとう」

気付いたら、素直に感謝の言葉が出ていました

迷路山のお化けを直接見て、まだ恐怖から立ち直れていないでしょうに……

本当は一匹で挑むことは、怖くて仕方なかったのです

ルリリ「みんなで行けば、怖くないし! そもそも、お化けを退治しろってんじゃないしね」

マイナン「それもそうだ! 危険な奴に態々近づくこともない ソーナノさえ保護できれば」

……強気なのか弱気なのか判りません

しかし、考えてみれば合理的な選択です

依頼解決に向けて少し希望も見えてきたでしょうか


ゴクリン「皆も行くんだ? まあ、その方が良いよね 行ってらっしゃい」

マイナン「君は相変わらずなんだね……」

ルリリ「もっとこう、自分も行くーみたいなことはないの?」

ゴクリン「そりゃもう 受付離れるわけにはいきませんから ……頑張って」

プラスル「はい 行ってきます」


 ▼ 368 ルミル@ディフェンダー 18/07/06 01:54:22 ID:KDNAMNZA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 369 TOg35azcXc 18/07/07 22:27:50 ID:svMoIjAU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルリリ「さて、迷路山入り口についたのは良いけど……」

マイナン「この中を捜索、か 気が遠くなりそうだ アイツもいるし……
     前は“プラス”“マイナス”の引力で目標の位置を何となく把握してたけど
     それもないし 本当、どうしよう……?」

迷路山は地図があっても迷ってしまう程広大です

宛てもなくうろついても目標に会えるとは思えません

更には、地図にはまだ描かれていない場所があり、その先にはお化けもいるそうで

その中でソーナノさんを助けるために動くというのなら……

プラスル「……いっそ、そのお化けとやらの元へ向かうのがいいのでしょうか」

ルリリ「へ!? え? な、なんでそんな考えに至るの!? あんなに怖いのに!?」

マイナン「そうそう! 退治する必要なんてないんだって! 近づかない方が……」

あんなに、と言われましても聞いただけでは測り切れませんし それに

プラスル「だからこそ、じゃないですか? お化けが危険だというなら、
     そのもとにソーナノさんがいるなら助けなくては」

依頼者さんの話からするに、彼女は何度も迷路山に来ていて、ここに慣れていますから

お化けの元にいないとなれば、無事である可能性も高くなります

寧ろお化けをプラスルたちが引き受けることで、彼女への危険を減らせるかもしれません

ルリリ「それもそうだけど…… ううん……」

マイナン「判った 行こう 気は進まないけど、調査は元々ボクらの仕事だったわけだし」

ルリリ「……そうだった うう…… でもなぁ……」

マイナンもルリリも足が震えています プラスルだって、怖くないといえば嘘になります

しかし、今度は逃げるわけにもいかないのです

助けなくてはいけない相手が、居るのですから

無事を保証して、安心させなくてはいけないのですから
 ▼ 370 TOg35azcXc 18/07/08 00:18:07 ID:XBwUXHhY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
地図を見ながら、前回彼女らがお化けに出会ったという未踏地帯を目指します

勿論、耳を澄ましてソーナノさんやそのほかの気配を探ることも怠りません

しかし、自分たち以外の気配は感じられなくて 不気味なほどに静かなものでした

マイナン「……この先から未踏地帯、だね 迷わないように地図を描きながら行こう」

ルリリ「ソーナノ、大丈夫かな…… もしこっちにいたら……」

この先は、正に未知です どんな危険があるか解りません

それでも、進むしかないのです できることは、やりたいですから


ルリリ「しっ! ストップ……! いた……!」

しばし進んでいると、突然ルリリが立ち止まるよう制してきました

マイナン「いた、って ……ど、どっちが?」

背筋に冷たいものを感じながらも尋ねずにはおれないというように声を出します

ルリリの後ろから曲がり角の向こうを覗きますと、浮遊している存在がありました

翅はあるように見えるのに、全く動かす気配のないそれはまるで生気の感じられず

洞窟の暗さと相まってか、とても不気味に見えて仕方がありません

そしてそれは、がらんどうの目でこちらを見たかと思うと、ゆっくり近づいてくるのです

マイナン「ひ…… ど、どうする? どうしよう?」

ルリリ「ちょ、マイナン! 明かり付けっぱ! そりゃバレルって! ああ……」

マイナン「うぇ! ご、ごめん に、逃げなきゃ? でも、あれ?」

怪しい光もないままに、二匹は混乱しているようです

訳も分からなくなっていたところに、とうとう相手は目の前まで来てしまいました

お化け「珍シイナ コンナトコロニコンナニポケモンガ来ルナンテ」

プラスル「……こんにちは お尋ねしたいのですが、ソーナノさんを見てませんか?」

見つかってしまったものはしょうがありません 気さくに見えるよう、挨拶します

さて、吉と出るでしょうか、凶と出るでしょうか……
 ▼ 371 ンテイ@あなぬけのヒモ 18/07/08 00:55:50 ID:aRsMLGg2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 372 ンバドロ@クロスメール 18/07/08 00:57:58 ID:HW428ieo NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 373 ズマオウ@ボーマンダナイト 18/07/10 00:29:25 ID:lzPEQSdU NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 374 ブンネ@アップグレード 18/07/10 02:41:39 ID:UZyszK1k NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 375 ルマッカ@あおぼんぐり 18/07/10 03:23:27 ID:oS.Mwa3I NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 376 TOg35azcXc 18/07/12 18:14:35 ID:4R3gOQmU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
この相手が、もし危険だとしたら戦うことも覚悟しなくてはいけません

その時にプラスルたちが敵う相手であるとは限らないわけでして 果たして

相手の感情を映さない瞳を見ながら、内心戦々恐々として答えを待ちます

お化け「オ前タチ、そーなのノ知リ合イカ?」

プラスル「! 知っていますか? この山にいるのでしょうか?」

お化け「アア、コッチダ ツイテ来イ」

相手はそう答えるなり洞窟の奥へ移動していきます

やはり翅を動かさない平行移動で、どうにも不気味です

マイナン「ど、どうしよう アイツについていくべき? 危なくない?」

ルリリ「それに、前回は判らなかったけど、アレ、ヌケニンだよ? ヌケニン」

見たことのないポケモンでしたが、ルリリには相手の種類の見当がついているようです

プラスル「ヌケニン……ですか? それってどういうポケモンなのです?」

ルリリ「私もよく知らないんだけど…… テッカニンに関係した種類だった気が……」

マイナン「テッカニンに……!?」

それを聞いて、マイナンが顔を歪ませます プラスルも足が震えてしまいました

テッカニン そして迷路山

これらの単語が揃うと、どうしても思い出してしまうのです

プラスルたちを襲った、悪党の集団を 恐ろしい目に遭ったことを

……ヌケニンというポケモンがここにいるというのはどういう意味になるのでしょう

もしかしたら、また何か危険な目にさらされるというのでしょうか?

プラスル「……しかし、行くしかないでしょう 元々そういう予定だったはずです」

ソーナノさんを助けるために 逃げるわけにもいかないのですから

マイナン「それもそうか ……解った 行こう」

ルリリ「了解 こうなったらもうなるようになるってことで」
 ▼ 377 ジャンボ@そうこのかぎ 18/07/13 02:26:21 ID:h5XQcYdg NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 378 ニータ@フレンドボール 18/07/13 06:21:52 ID:WtaM77xY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 379 TOg35azcXc 18/07/13 23:54:51 ID:n.vo6vyQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少し構えながらもついていくと、まるで入り口のような穴がぽっかりと開いていました

お化け「そーなの 機嫌ハ治ッタカ? オ前ニオ客人ダゾ」

穴に入りながら、それは声を掛けます 中でポケモンが動く気配がしました

ソーナノ「誰? もしかして――」

声に気付いた様子でこちらを見る彼女は、続いて入ったプラスルたちを見て

ソーナノ「って、本当に誰よ…… 何? 何の用?」

不機嫌そうに言いました ……あれ? 今、いきなり顔が曇ったような?

お化け「何ダ 知リ合イジャナイノカ?」

ソーナノ「知らないよ 誰?」

プラスル「は、初めまして 最近できたギルドの者です ソーナノさんですよね?」

ルリリ「私たち、貴女を探しに来たの お兄さんのソーナンスに――」

ソーナノ「知らないっ! 帰れっ!!」

プラスルたちが自己紹介をしますと、何が気に障ってしまったのか

ソーナノさんは壁を向いて拒絶の意思を示します

お化け「済マンナ 今日ハココニ来タトキカラコンナ調子ダ」

プラスル「い、いえ 大丈夫です ……何があったのですか?」

お化け「分カラン ズットダンマリダ マア、ユックリシテイクトイイ」

そういうと、ヌケニンはプラスルたちを残して奥の部屋らしき場所へと消えていきます

ルリリ「……はあ 一先ずの危険はないとみていいのかな? どうする?」

マイナン「ゆっくりしていけって言われたけど、あまり長居はしたくないよね
     ねえ、ソーナノ ボクらは君を連れ戻しに来たんだ 帰ろう」

ソーナノ「…………」

マイナンが声を掛けても、頑としてこちらを向いてくれません。

……状況把握、出来ないことばかりですね
 ▼ 380 ベルタル@ゴスのみ 18/07/14 05:47:47 ID:a4/IpGD2 NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 381 TOg35azcXc 18/07/14 23:42:45 ID:X9CoKmv2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルリリ「ソーナノっ ねえ 帰ろうよ みんな心配してるよ?」

マイナン「そうだよ! 迷路山は暗いし迷いやすいし、危険だよ!」

ソーナノ「うるさい! うちは何度も来てるもん! 一匹でも危ないことなんてない!」

二匹が説得を仕掛けますが、ソーナノさんは聞く耳を持ちません

マイナン「でも! 今ここは何があるか判らないからしばらく立ち入り制限だし!」

ルリリ「そうそう! 恐ろしいポケモンも確認されてるっていうし!」

それ故マイナン達はさらに言葉を重ねますが効果は薄いようで

というよりもむしろ彼女を頑なにさせているように見えます

プラスル「……お兄ちゃん、ルリリ、ちょっと落ち着いて」

マイナン「そうも言ってらんないじゃん 早くしないとアレが戻ってくる!」

彼らが必要以上に焦っていたのは、ヌケニンに対する恐怖心で

あれが戻ってくる前にソーナノさんを連れ出したいという魂胆にあったようです

しかし、どうやら何か不用意な発言だったらしく、ソーナノさんはこちらを睨み

ソーナノ「――あんたらなんか信用できない! ギルドも兄貴も大っ嫌いだ!」

そう叫んで、あとはもう何も聞きたくないとばかりにヌケニンのいる部屋らしき場所へ
駆け込んでいってしまいました

それと入れ替わりにヌケニンがプラスルたちの方へ戻ってきて

ついつい身を固くしてつばを飲み込んでしまいますが

お化け「ナニガアッタ? そーなのガ急ニ飛ビ込ンデ来タガ……
    ア、全員おれんじゅーすデヨカッタカ?」

いくつかの陶器を運んできたその姿に、プラスルたちは毒気を抜かれ構えを解くのでした
 ▼ 382 ゲキ@ガルーラナイト 18/07/15 04:33:40 ID:YbJ.xxRo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 383 TOg35azcXc 18/07/16 02:09:23 ID:ZSfUxNmw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
プラスル「なにがあった、と言われましても 私たちも状況が掴めませんで……」

判らないことがいくつもあって、少し処理が追いつきません

……判らないといえば、このヌケニンにしてもそうです

見た目の恐ろしさから警戒していましたが、意外に友好的というか

お化け「オ前タチモ判ラナイカ 困ッタナ……
    そーなの、今日ハドウモ不機嫌トイウカ アマリ話シテクレン」

そう呟きながら陶器の一つに口を付ける姿は、とても悪意のあるようには感じられません

プラスル「あ、私も頂きますね 好きなんです オレンジュース」

ルリリ「ちょ! 飲んで大丈夫なの!? 毒とかじゃ……!」

お化け「気ニナッテイタノダガ、何ヲソンナニ警戒シテイル?
    顔ノ所為カ? ソレトモワタシガ『ヌケニン』ナノト関係ガアルカ?」

ルリリ「あ…… いや…… その……」

語調が変わらないので判り辛いのですが、どうやら傷つけてしまったようです

プラスル「こ、これは失礼しました 実は私たち、テッカニンに因縁がありまして……」


この山でプラスルたちが体験した大体のあらましを話すと相手は納得したように頷きます

お化け「一時期騒ガシカッタノヲ解決シテクレタノハオ前タチダッタノカ 感謝スル
    災難ダッタナ 同族ノ不始末、謝罪シヨウ」

そして丁寧に首を垂れてくるので、こちらとしては困ってしまいます

プラスル「い、いえ 関係ないならいいのです こちらこそ失礼しました」

マイナン「……あのテッカニンとは無関係ってことなのか?」

お化け「アア、ワタシハ十何年モココニ棲ンデイルノダ
    対シテ奴ラガココニ居ツイタノハホンノ数ヵ月前程度ダ 関係アル筈ガナイ」

プラスル「成る程 それを聞いて安心しました」

迷路山に巣くう危険は、どうやらマイナン達の早とちりだったようです
 ▼ 384 TOg35azcXc 18/07/21 18:06:11 ID:mleQ5lwk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マイナン「そうだったのか…… ボクたち、てっきり……」

つい決めつけてしまっていたことに気付いて、マイナンたちは罰が悪そうにしました

お化け「気ニスルナ ソウイウ事情ガアルノナラ仕方ナイ」

それに対し、ヌケニンはゆったりした口調で答えます

表情や語調が変わらなくて判り辛いですが、こうしてみるとちゃんと感情がありますね

ルリリ「いえ、本当に済みませんでした
    “坊主憎んでマダツボミまで憎む”なんてしてはいけなかったのに……」

お化け「ウム 今後嫌ワナイデイテクレルナラ充分ダ 良イ付キ合イヲシタイモノダナ」

マイナン「判った 懐の深さに感謝する」

お化け「……懐ガ深イワケデハナイ」

マイナンの素直な言葉を受け、ヌケニンは否定を返します

少し俯いてしまいました これは…… 恥ずかしがっているのでしょうか?

プラスル「……?」

お化け「イヤ、ワタシハコンナ成リデハアルガ、“寂シガリ”ナノダ……」

続いて言われたことに一瞬呆けてしまった後、悪いと思いながらも笑ってしまいます

お化け「似合ワナイダロウ?」

プラスル「い、いえ そんなことはないのですが なんか、安心しちゃいまして」

ルリリ「うん なんていうか ちゃんとポケモンなんだなって」

マイナン「ごめん 化け物と勘違いした自分を本当に殴ってやりたい」

ヌケニンに対しては、大分和やかに接せられるようになりました

最初にここへ来るとなった時には想像もしていませんでしたね

迷路山の調査に対する障害はなくなりました

というよりも調査する必要性自体がなくなったと言いましょうか

これも一つの前進です しかし……

プラスル「ソーナノさん…… どうすればよいのでしょう?」

今回の依頼は、彼女を無事に連れ戻すこと、なのでした
 ▼ 385 チム@こんごうだま 18/07/21 21:08:46 ID:WMJUTF.g NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 386 TOg35azcXc 18/07/23 01:11:41 ID:V7SgqMRU [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マイナン「……そうだった どうしよう?」

プラスル「え? 忘れてたんですか?」

マイナン「い、いや そういう訳じゃないけど…… ヌケニンのことが大きすぎて」

非難の目を向けると、マイナンは慌てたように言います

ルリリ「ソーナノ、奥の部屋に引っ込んじゃって、出てこないね……」

お化け「話シテル間ニ家具デばりけーどヲ作ッテシマッタミタイダナ
    コチラカラ入ルコトガデキナイ 籠城サレテシマッタ……」

ヌケニンの言う通り、いつの間にか箪笥などが動かされていて奥へ行けなくなっています

こちらからはとても動かせそうにありません

マイナン「声は届くでしょ ねえ、ソーナノ! ソーナンスが待ってる! 戻ろうよ!」

バリケード越しにソーナノさんへ声を掛けます しかし

ソーナノ「うるさい、うるさい! 帰れ! お前らとは話したくもない!!」

相手の方はこちらに不信感があるらしく素直には出てきてくれません

マイナン「確かに、不機嫌というか癇癪起こしてるね 引きずり出すのは大変かも」

ルリリ「そもそもなんでこんな意固地なのかな……?
    私たち今までソーナノと関わりなかったよね?」

ルリリが自分の認識に間違いはないかとこちらを伺ってきました

プラスルたちも身に覚えはないと首を振ります

キノガッサさん達はどうなのでしょう?

彼らがソーナノさんに対して何か害を及ぼしたとは考えにくいですし……

やはり、ギルドが嫌われる理由は思いつきません

お化け「今日ハ来タトキカラ不機嫌デハアッタガ、確カニ変カモナ
    イツモハ偏見デ誰カヲ嫌ッタリシナイ優シイ娘ナノダガ」

……『ギルドも兄貴も大っ嫌いだ』 彼女はなぜそんなことを言ったのでしょうか
 ▼ 387 ルシェン@ガブリアスナイト 18/07/23 03:24:26 ID:LBMUXDX6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 388 TOg35azcXc 18/07/23 23:34:21 ID:V7SgqMRU [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
プラスル「ヌケニンさんってソーナノさんとはどのような関係なのでしょうか?」

疑問を解く取っ掛かりになるのではないかと思い、ふと質問を投げかけます

お化け「ン? ドノヨウナ、トハマタ曖昧ナ質問ダナ」

少し抽象的過ぎましたかね もう一度問い直します

プラスル「ええと、例えば知り合った切っ掛けですとか、どれぐらいの付き合いですとか
     そういうことを聞いてみたいな、と」

お化け「フム 初メテ合ッタノハ結構最近ダッタナ 騒ガシカッタノガ収マッタ頃ダロウ
    そーなのガワタシノ“ヒミツキチ”マデヤッテ来タノダヨ」

ルリリ「シンジケートがいなくなった後は普通に入れたんだっけ、ここ」

マイナン「そりゃ、誰かの私有地って訳でもなさそうだし、自由なんじゃ?」

お化け「ワタシモ勝手ニ居ルダケデヨクハ知ラナイガ、勝手デキル時点デソウナノダロウ
    トモカクそーなのハ唐突ニヤッテキテ、ワタシガ居ルコトニ気付クト言ッタノダ」

マイナン「何て?」

お化け「『迷ッタ 助ケテ下サイ』」

マイナン「本気で?」

色々と衝撃的な出会いをしていたようで、こちらは少々唖然としてしまいます

お化け「ヨクモマアコンナ奥マデ来タモノダト思ッタモノダ 尋常ナ迷イ方デハナイト」

プラスル「そ、そうですね こんなに奥まで…… 何ででしょう?」

お化け「そーなの曰ク、『悪党ノ根城ダッタトコニハオ宝ガアルモノ』ダトカデ
    ソレヲ求メテ勘デ進ンデイルウチ帰リ道ガ解ラナクナッタラシイ」

ルリリ「なんと破天荒な…… それで偶然会ったヌケニンに助けを求める辺りも……」

お化け「ソウダナ ナニセコノ見テクレダ ナノニ物怖ジセズ声ヲカケテクレタ」

ルリリ「あ、ごめん なんていうか……」

お化け「イヤ、誤解サレヤスイノハ事実ダ ワタシハ喜ンデ出口マデ案内シタシ
    話スナド久シブリダッタカラナ 案内スル間そーなのトオ喋リヲ続ケタモノダ」

ヌケニンは本当に嬉しそうに語ります

ソーナノさんが、ヌケニンに対して何の気負いもなく接したことが嬉しかったようです

『久しぶり』という言葉と“寂しがり”だと言っていたのも併せて考えると、一入

プラスル「それで、ソーナノさんと仲良くなられたのですね」

ヌケニンはどうやら、本当に善良なポケモンであるみたいです
 ▼ 389 TOg35azcXc 18/07/24 23:53:55 ID:CYloboOs NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
お化け「外マデ送ッテ別レテ、ソレデ終ワリダト思ッテイタノダガ 翌日マタヤッテ来テ
    『宝探シニ付キ合ッテ』ト ドウヤラワタシガ案内役ニ適役ト判断シタラシイ」

ルリリ「一日二日で!? 随分不躾な……」

お化け「ワタシモ驚イタガ、嬉シイ方ガ勝ッテイタカラ二ツ返事デ了承シタ
    迷路山中ヲ探索シ回ッテ日暮レニハ出口ヘ送ルトイウノガ昨日マデノ流レダッタ
    シカシ今日ハ“ヒミツキチ”ニ来テカラむっつりシタママダ」

ヌケニンはソーナノさんのいる部屋へ目を向け、少し俯きます 心配なのでしょう


ルリリ「迷路山の探索って、迷ったりしないの? 大丈夫?」

お化け「慣レテイルカラナ 危険ナドナイ そーなのガ求メル様ナ宝モナカッタガナ」

マイナン「あ、じゃあ、地理とか教えてもらえないかな この地図なんだけど」

お化け「ム? 未完成ナ地図ダナ 貸シテクレ 知ッテル範囲デ埋メヨウ」

マイナンから地図を受け取ったヌケニンは、嬉々としてどんどん加筆します

あっという間に地図が完成しました この“ひみつきち”の場所まで示されていました

こうして見ると見掛けに寄らず感情豊かでいて、優しい方です

迷路山に一匹で棲んでいるけれど、“寂しがり”で、気さくな…… と、なりますと

プラスル「これは、嫌われてしまっても仕方ありませんね……」

ルリリ「え? なにか判ったの?」

プラスル「はい ギルドを嫌っている原因は想像がつきました
     迷路山の立ち入り制限をしたことです 彼女には許せなかったのでしょう」

間違った理由で今まで遊び場だった場所を封鎖しようとしたこと

更には、いいポケモンであるヌケニンに対する偏見から来たものだとするなら

マイナン「確かに、『大っ嫌い』って言われもするか……」
 ▼ 390 テラ@コスメポーチ 18/07/25 01:45:41 ID:.2YY53Fw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 391 TOg35azcXc 18/07/26 00:13:54 ID:/DjIIZ9s [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルリリ「でも待って、『兄貴も』っていうのはどう繋がるんだろう?」

プラスル「……想像するしかありませんが、喧嘩してしまったのではないでしょうか」

ルリリ「喧嘩? ソーナンスと? 何で? よく判らない……
   だって、ソーナンスはソーナノを心配するようないいお兄ちゃんじゃない」

ルリリは頭を捻り疑問符を浮かべます

喧嘩と心配の両立という事態に得心が行っていないようですね

こういう、感情的なことの説明って結構難しいです そうですね……

プラスル「……ねえ、お兄ちゃん 私がさっき迷路山へ行くって言ったとき止めたよね?」

マイナン「当たり前だ! 危険な場所になんて行かせらんないさ! 勘違いだったけど……」

プラスル「うん そうだよね それは、なんで?」

マイナン「そりゃ勿論心配だから 危ない目に遭って欲しくないから、全力で止めるよ」

ルリリ「……そっか 頭ごなしに否定しちゃったのか で、喧嘩と」

プラスル「はい 当たらずとも遠からずだと思います」

きっと、それぞれの想いがすれ違いを起こしてしまっているのでしょう

本当に嫌っているのではなく、少し意固地になっているということだと推測されます

お化け「不機嫌ダッタノハ、ソウイッタ理由カラダッタノカ 少シ安心シタ
    タダノ行キ違イナラ、深刻ナ問題トイウワケデモナイダロウ?」

ルリリ「でもこうして籠られてしまったら、解決するものも解決しないよ……」

ソーナノさんはバリケードを作って奥の部屋です

こちらからは視認できないため様子は伺えません

しかし、声は届きそうです 反応を返してくれるかは判りませんが

プラスル「私が、説得します 彼女と同じ、妹という立場の私が」
 ▼ 392 TOg35azcXc 18/07/26 22:18:40 ID:/DjIIZ9s [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あまり大勢での説得は返って拗れてしまいかねないと皆には下がってもらい
プラスル一匹でバリケードの近くに立ちます

プラスル「ソーナノさん 聞こえますか? 私、ギルドのプラスルという者です」

ソーナノ「…………」

呼びかけに対して、返事は返ってきません

しかし、奥でポケモンが動く気配はしました 聞いてくれていると信じましょう

プラスル「私たちはソーナンスさんの依頼で貴女を探しに来たのです
     迷路山に行っているのではないか、と
     ギルドが立ち入り制限を出したような場所にいるのなら連れ戻して欲しい、と」

ソーナノ「…………! うちは大丈夫! 放っといて!!」

プラスル「はい 迷路山に危険などありませんでした ヌケニンと話してよく解りました」

ソーナノ「……?」

『ギルドの者』が彼女の言葉を、そしてヌケニンを肯定したことで

彼女は拍子抜けたというように言葉を止め怪訝そうにします

プラスル「ごめんなさい 私たちの所為で事態がこんがらがってしまったようですね
     きちんとした調査もせずに規制しようとして申し訳ありませんでした」

きっと彼女は、ヌケニンが寂しがらないようにとここに通っていたのでしょう

だというのにまるでいけないことのように押さえつけられたら、反発もしますよね

プラスル「でも、もう帰りませんと日も暮れてしまいます
     ソーナンスさんも心配してますから戻りましょう?」

ソーナノ「……そんなの、嘘だ 兄貴は、言いつけ破ったから怒ってる
     全然、うちの言うことも聞いてくれなかったし だから 帰らないもん」

やはり、喧嘩をしてしまったという予想は合っていたようです

プラスル「はい 怒っているでしょうね
     でも、それはソーナノさんを嫌ってるわけでは決してありませんよ」

ソーナノ「なんでお前が断言するんだよ? 兄貴じゃないじゃん」

プラスル「判りますよ 私も『妹』ですから
     私のお兄ちゃんは、お節介で、たまに疎ましくて、喧嘩することもあります
     でも、とっても優しくていつも私を心配してくれるんです」

多分、どこも同じです ソーナンスさんだって

そういった想いを込めて告げた後、返事を待つために少し待ちました

やがて、バリケードにされていた家具たちが動き始め、ソーナノさんが顔を出しました

ソーナノ「……兄貴も、そういう奴だった しょうがない 帰ってやろう!
     心配かけっぱにはできないもんね!」
 ▼ 393 TOg35azcXc 18/07/28 00:08:17 ID:kZTAzMYk [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
お化け「マタ、遊ビニ来ルトイイ トイウカ、是非来テクレナ」

プラスル「はい ありがとうございます お邪魔しました」

マイナン「勘違いしてごめん 立ち入り制限はなくしていくよ」

ルリリ「また会いに来るよ! バイバイ!」

暮れなずむ中、迷路山の麓でヌケニンに再開の約束と別れを告げます

そしてソーナンスさんへ連絡を送り、プラスルたちは“ひみつきち”へ移動しました


依頼者「ソーナノ!! お前! なにしてるンスか! 迷路山に行くなんて! 全く!!」

ソーナノ「…… ……!」

ソーナンスさんの第一声は、ソーナノさんに対する叱声でした

ソーナノさんは顔を顰めますが、次の瞬間目を見開きました

ソーナンスさんが思い切り彼女を抱きしめたからです

依頼者「本当に…… 心配したンスよ? 無事でよかったス」

ソーナノ「兄貴…… ごめん……」

怒られた後に抱きしめられて、最初目を白黒させていたソーナノさんでしたが
やがてその身をソーナンスさんに預けて、素直な言葉を口にしました

どうやら和解できたようで何よりです

依頼者「プラスルさん、ルリリさん、マイナンさん 本当にありがとうございまス!
    依頼達成スね これ、約束の報酬ナンスが」

ソーナンスさんがポケといくつかの品物をこちらに差出してきました でも

プラスル「これは受け取れません 取っておいてください」

報酬の受け取りは、拒否します これは、皆で決めたことでした
 ▼ 394 TOg35azcXc 18/07/28 01:21:38 ID:kZTAzMYk [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
依頼者「ど、どういうことナンスか? だって、依頼は達成されたじゃないスか
    それに対して報酬を払うのは当然で…… ええ……?」

事情をよく知らないソーナンスさんは、当然戸惑います

そんな依頼者に対し、プラスルたちは深く腰を折って謝罪の意を示しました

プラスル「そもそもが私たちの不手際から始まったことだったんです 申し訳ありません」

“マメパトが水鉄砲喰らった”ような顔をしたソーナンスさんに事情を話します

ソーナノさんのこと ヌケニンのこと 迷路山のこと

立ち入り制限のこと ギルド側の勘違いのこと ソーナンスの依頼のこと

そして、思いやりから生まれてしまったすれ違いのことなどです

プラスル「だから、貴方たちが喧嘩をしてしまった理由なども私たちなのです」

こちらが余計なことをしなければ、依頼を出すこともなかったでしょうから

それを聞いたソーナンスさんは腕を組んで唸ります

依頼者「ソーナノを助けてくれたのは確かナンスから受け取ってくれてもと思うンスが」

プラスル「私たちは彼女に会っただけで、ソーナノさんは『自分で戻って』きました
     それに、そもそも危険がなかったのですから『助けようがなかった』のです」

決してプラスルたちが助けた訳ではなく、つまりは依頼失敗であるのだと
少し強引な論理で主張をします

何故ならここで報酬を受け取っては、所謂マッチポンプというもので
いけないことだと思いますから

そういった話をすると、相手は納得したように苦笑しました

依頼者「そこまで言うのなら、お言葉に甘えて」

プラスル「また困ったことがありましたらどうぞご相談ください」

 ▼ 395 TOg35azcXc 18/07/28 02:30:38 ID:kZTAzMYk [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ソーナノさん達が帰られた後、“ひみつきち”に何とも言えない暖かな空気が満ちました

マイナン「はあ〜 これでボクらの初依頼は失敗か〜」

ルリリ「まあ、しょうがないよね 今回のは」

報酬を受け取らないという選択をしたため、そうなるのでしょうか でもきっと

プラスル「失敗としたことは正解だったと思います」

成功とするよりもずっと気持ちは晴れやかです

この度の冒険は、大変なことも沢山でしたが、素敵なものでした

ルリリ「依頼は失敗だったけど収穫はあったよね これ以上報酬なんて貰えないよ」

マイナン「そうだよね ヌケニンやソーナノたちと知り合えたこともそうだし
     迷路山が安全な場所であることも判った 地図も完成した
     ボクらが調査しなきゃいけなかったことなんだけどね」

ルリリ「失敗だけど、大成功! かな? 早とちりが駄目だってことも身に染みたし」

マイナン「それは言わないで! てか誰だって勘違いするっしょ! あれは!!」


二匹が下らない事を言って笑い合うのを聞きながら、この度の冒険を振り返ります

大変なこともありましたし、恐怖に竦むこともありましたが、とても素敵な経験でした

それに、こういってはなんですが『報酬』は十分に受け取らせて貰っちゃいましたから

ソーナノさんが、“ひみつきち”を去る時に

ソーナノ「なんていうか…… ありがと またね!」

そう言ってくれたことが嬉しくて 胸がいっぱいになったのです



……私、少しは強くなれたでしょうか?



                                 ――――fin.
 ▼ 396 TOg35azcXc 18/08/04 22:31:21 ID:pF6.vdMM NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ずっと憧れていたんだ

誰かを守れる強さに 誰かを守ろうと思える優しさに

その 勇気に


かつて自分を助けてくれた彼らのようなポケモンになりたかった

弱虫な自分にはなれっこないと諦め欠けたこともあったけど

それでも、少しでも近づきたくて 少しだけ勇気を振り絞ってみたんだ



キノガッサ「弟子入り志願?」

ポチエナ「はい! おれ、皆さんのようになりたくて!」

依頼を受け、困っているポケモン達を助ける仕事 ギルド“ひみつきち”

かつて世話になり憧れた場所へ、おれは是非入りたいと思い、やってきた

ゴクリン「へえ、見る目あるんじゃん ねえ、所長?」

キノガッサ「同意を求められてもね…… 僕はそんな大した存在じゃない
      だから、弟子を取るとかは考えてないし……」

ポチエナ「そ、そうですか……」

しかし、返ってきた反応は思わしくないもので、落胆してしまった

ゴクリン「えー 断っちゃうの? 折角来てくれたのにそれはないんじゃない?
     ほら 彼もがっかりしちゃってるよ?」

キノガッサ「リン、茶々入れないで 君もちょっと早合点が過ぎるかな」

ポチエナ「え? ど、どういう?」

キノガッサ「弟子になるとかじゃなくて、一緒に働く仲間になろうよ
      依頼が増えてきて人手不足だからさ そうしてくれると嬉しい」

そう提案してくれた彼に、おれは当然、二つ返事で了承した

憧れを胸に頑張っていこうと、そう思った
 ▼ 397 話についての話◆TOg35azcXc 18/08/08 00:21:45 ID:PSa63AHs NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ここのギルドは設立したのは結構最近なのだけど、かなりの実績があるらしい

例えば迷惑行為をしていた輩を退治したりとか

環境汚染に悩まされた土地の問題を解決したりとか

指名手配されている悪の組織を捕まえてしまったりとか

遠くの地方で流行っていた疫病を治すことに貢献したりとか

逸話には事欠かない

やっぱり凄いポケモン達なんだなと委縮してしまう


そんな彼らがいる場所だから、依頼は引っ切り無しに来る

「泥棒退治」や「薬求ム」、「落とし物探し」に「未開探索」などなど

大から小まで千差万別の依頼があり、人手不足というのも納得の忙しさだ

ポチエナもまた所長や先輩たちといくつか依頼をこなし少しずつギルドに慣れていった

持ち前の良く利く鼻が幸いし、捜索系の依頼を上手くこなせることが判ると
一匹で受けられる依頼が増えて大分自信も付いた気がする

といっても、やっぱり所長たちに比べたらまだまだなのだけども

いつか凄いことを成し遂げて彼らに認められるようになりたい

ポチエナ「まあ、そうそう大きな事件なんて起きないし、
     起きたとしておれの手に負えるかって言ったら微妙なんだけどさ」

つい独り言ちて、今日も依頼に励むのだ

出来ることをやるしかないのだから
 ▼ 398 トム@むらさきはなびら 18/08/08 10:11:02 ID:aC4ENS52 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 399 ガチルタリス@キトサン 18/08/08 10:52:41 ID:4dBwOO9. NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 400 400◆TOg35azcXc 18/08/12 00:34:02 ID:lRcQv7E. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
今日の依頼は、迷子の捜索だった

なんでも、お使いに出かけたきり戻って来なくなっていたとか

日を跨いでる訳でもあるまいに、どんな親バカなんだろう……

しかし依頼は依頼と探してみると、人気のない道で半泣きの子どもを見つけた

どうやら、本当に迷ってしまっていたらしく、心細かったのだそう

つい笑ってしまったことを反省をしながらも迷子を親の元へ届ける

母親「娘を探してくれて、本当にありがとうございました」

迷子「お兄ちゃん、ほんとうに、ありがとーございました!」

感謝の言葉を受けて一種複雑な思いをしてしまったのは自業自得か

ポチエナ「はは…… なんのなんの お嬢さんが無事でよかった」

約束の報酬を受け取った といっても大したものじゃない

依頼内容には見合ってるから文句は言えないけどね


昨日は落とし物探し 森の中に置き忘れたという木の実袋を拾うだけのもの

その前は旅のポケモンの道案内やメジャーな傷薬の原料の調達など

依頼には難易度と呼ばれる基準が設けられているのだけど
(依頼目的や依頼内容によって割り出され、労力や報酬の目安となる)

これらの仕事は、難易度がとても低い

更にはポチエナにしてみれば輪をかけて難しくない仕事なのた

なにせポチエナは鼻が利くし、お蔭で方向感覚は抜群

つまり、任される依頼は難なくできるのだけれども……

だからこそ、強くなれている気もしなくて、溜息が出てしまう

目標としているポケモン達に追いつけるときは来るのかな……

焦燥感ばかりが募って、ポチエナを悩ませるのである

 ▼ 401 TOg35azcXc 18/08/13 23:09:21 ID:ALng7gk6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エネコロロ「お帰りなさい お疲れ様」

ポチエナ「エ、エネコロロさん!? お、お疲れ様です!」

依頼解決の後、“ひみつきち”へと戻ってみると副長が労ってくれた

珍しく受付係のゴクリンも出かけていて二匹っきりになってしまう

エネコロロ「そんな緊張しないでよ 仲間じゃない」

副長は苦笑して気楽にするようにと求めてくる

ポチエナ「は、はいぃ!」

がちがちになりながら態度とは一致しない言葉が出てきてしまう

……いや、無理だ

そもそも彼女は憧れのポケモンの一匹で、逸話もある凄い存在

しかもギルドの副長 “ひみつきち”のNo.2 つまり自分の上司だ

加えて、なんというか、可愛い、のだ

シュッとしたシルエット 細く綺麗な脚 つやつやな毛艶は輝くようで

正直、♀慣れしていないポチエナの心臓に悪い 真っ赤になってしまう

エネコロロ「でも本当、よくやってくれてるわ
      ここ数日だけでも何件も依頼を解決したそうじゃない」

ポチエナ「いえ、それほどでも…… というか、あの」

エネコロロ「ん?」

ポチエナ「おれが受けてきた依頼って難度低いですよね?
     もっと難しいのにも挑戦していきたいっていうか……」

差し出がましいと思いながらも希望を口にする

副長は少し目を見開き、悩むように口を閉ざしてこちらを見た

……生意気だっただろうか

やっと軌道に乗ったところなのに何を言い出すと思われたかな

エネコロロ「……そうね いつまでも新入りって訳じゃないし
      少し難しい依頼も任せようかしらね」

ポチエナ「ありがとうございますっ!」

希望が通ったようで嬉しくなる 早速一つ依頼を受けた 頑張るぞ!


エネコロロ「……怪我、しないでよね」

副長が心配そうにつぶやいたけれど、依頼に気を取られたポチエナの耳に届かなかった
 ▼ 402 TOg35azcXc 18/08/17 23:57:14 ID:WancI7A. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
今度の依頼は、香る茸の採集

復活草と同じく、限定された環境でしか生育しない希少生体だ

採れる時期も限られていて、高額で取引されているようだ

といってもその時期というのは今である じゃなきゃ依頼にならない

ポチエナ「森の奥の日の当たる場所、ね ……大雑把過ぎないか?」

香る茸の生育場所について、あまり多くの情報はないらしい

それだけ範囲の特定も難しいということかもしれないけれども

そう考えれば、大雑把で解るだけでもありがたいものだ

とにかく、日の当たる場所となると森の中にいくつかある高台だろうか

上手く生えていて、見つけられればいいんだけどな

この鼻は茸を探すにはもってこいである

まるでダウジングマシンのように反応を探し回った

途中から、嗅覚に集中するために目を瞑っていたり

それがいけなかった 突然、浮遊感に襲われる

ポチエナ「――え!? う、うあああ!!」

踏み外した!

そう気づいた時にはもう既に身体は宙を舞っていて

転がり落ちながらも何か掴めるものはないかと必死に四つ足を延ばし

地面に背中を打ち付けたとき、偶然にも目的の茸を持っていたのは笑い話、かな


落ちるポチエナ、岩壁の茸をも掴む

ことわざになったりしないかな……
 ▼ 403 ガイドス@きりのはこ 18/08/19 15:35:33 ID:QWcgdHII NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 404 ンシカイオーガ@のこされたボール 18/08/21 22:13:41 ID:pfr.YAAk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 405 TOg35azcXc 18/08/22 00:47:28 ID:SMiEaEik NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
なんて、馬鹿げたこと考えてみても体の痛みは薄れてくれるわけもない

痛みを堪えつつ立ち上がり、納品のため“ひみつきち”を目指す

ダメージは受けたけど、依頼は完了させられそうで一安心だ


ポチエナ「……お邪魔、します」

マイナン「いらっしゃ……って、大丈夫か!? どうした、その傷!!」

ポチエナ「あはは、ちょっと失敗しちゃいまして
     あ、これ、依頼の香る茸です 誰に渡せばいいんでしたっけ?」

マイナン「いやいや、そんなのはいいから! 凄い傷だよ!?」

プラスル「ええと、薬、準備しますね こちらにいらしてください」

怪我をして帰ったら、プラマイ兄妹がいて慌てさせてしまった

申し訳ないと思いつつもお言葉に甘えて治療してもらう

なんたって、痛いのは本当だし

マイナン「なんだってそんな、痛々しい傷なんて作ったのさ」

ポチエナ「あー…… なんというか、前方不注意でちょっと」

プラスルに薬を塗ってもらいながら、質問に答える

失敗の模様を話すのはちょっと恥ずかしい

マイナン「落ちた結果茸を手に入れたと そりゃまた“塞翁ポニータ”な……」

ポチエナ「運が良かった……んですかね?」

プラスル「大事に至らなかったから良かったですよ
     でも、気を付けて下さいね ポチエナは飛べないんですからね」

ポチエナ「はい 面目ないです アイタタ……」

手を煩わせた上お叱りを受けてポチエナは尻尾を垂らして落ち込んでしまう
 ▼ 406 ニドリル@スキルコール 18/08/22 01:13:35 ID:K1b.u3OI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
さあ鶏になろう
これは真面目に支援する
 ▼ 407 で済まんの◆TOg35azcXc 18/08/23 01:11:07 ID:8SXUQHnc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
プラスル「それにしても、依頼は達成してしまうから凄いですよね」

こちらの様子を見て気を使ったのか、プラスルが呟いた

ポチエナ「……偶然なうえ失敗もしてますけどね」

それを受け自嘲すると、彼女は首を振って言葉を重ねてくる

プラスル「確かに、怪我したのは良くありません でも、
     気にし過ぎるのも駄目です 一度や二度の失敗なんてなんてことありません」

マイナン「ボクらは初依頼失敗してるしね」

ポチエナ「え!? そうなんですか!?」

意外だ…… 彼らだってポチエナにとっては凄いポケモンで、頼れる先輩なのに

プラスル「そうなのです それに比べればちゃんと成すこと成している貴方は凄いのです」

ポチエナ「なんか、反省してるところ慰められたり褒められたりって
     喜べばいいやら気を引き締めればいいやら判んないっす……」

マイナン「そうだね…… ポチエナを凄いと思ってるのは本当だし喜べばいいんじゃない?
     あ、でもまた怪我されたら困るし、そこは反省して?」

……やっぱりどちらか解らない どっちも、なのかな? うーむ

プラスル「要するに、『経験』ということでしょうね 成功も、失敗も
     結果を受け止めることは大事ですが、囚われ過ぎないことも肝要なのです」

悩んでしまっていると、補足するように付け足してくれる

『経験』か…… 難しくてよく判らなかったけれど 何か判った気がした

プラスル「はい 薬、塗り終わりました 患部を冷やしながら少し安静にしてて下さいね」

ポチエナ「あ…… ありがとうございます!」

話をしている内に治療が終わったらしい 余り痛くしない手際に感謝しきりだ
 ▼ 408 TOg35azcXc 18/08/26 21:21:16 ID:pAm6ERjY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エネコロロ「邪魔するわよ ……っと、その怪我どうしたのよ」

ポチエナ「お、お帰りなさい ええとですね――」

治療が終わって一息ついたところで帰って来た彼女に、説明する

やっぱり失敗について話すのは気まずい

注意を促して来た彼女だから尚更のことで、怒られるかとつい身構えてしまう

エネコロロ「ふーん 思ったより早かったわね」

しかし彼女の反応は思ったよりもあっさりとしたもので拍子抜けしたやら安心したやら

プラスル「……早かった? 予想していたんですか?」

しかしプラスルの呟きにドキリとさせられてついエネコロロに向き直る

エネコロロ「いつかやらかすんじゃないかと思っただけよ」

プラスル「解っていたなら言ってあげればよかったじゃないですか
     下手に怪我することもなかったのでは?」

エネコロロ「言葉で言って何とかなるものじゃないわ 怪我で済んでよかったじゃない」

だから言ったのに、と言われているようで非常に耳が痛い

確かに今回の事故は自業自得なのだけども

エネコロロ「それに私だって“未来予知”できるわけじゃないから」

プラスル「それもそうですね」

いつどこで、どのようにして怪我するかまでは解らなかったということかな……

でも、じゃあ

ポチエナ「……なんでこうなるって思ったんですか?」

確かにポチエナは未熟ではあったけれど、そこまで確信されていた理由は訊きたい

単純に疑問に思い質問したのだけれど

エネコロロ「……逆に訊いていいかしら 何をそんなに焦っているの?」

質問返しされて、目を白黒させてしまった
 ▼ 409 詰まらぬ◆TOg35azcXc 18/08/27 00:20:11 ID:McEMtr8c NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マイナン「焦ってるって?」

エネコロロ「そう見えるわ 妙に張り切っていて、危うくてしょうがない」

焦燥感に駆られていたのは事実だけど、指摘されるとは思わなかった

そんなに分かり易く危うかったのだろうか そうなのだろうな

ポチエナ「こんなんじゃ、駄目ですよね……」

指摘されたことで余計に、遣り切れない気持ちともどかしさが湧いてくる

エネコロロ「かもね さて、もう一度訊くわ 何をそんなに焦ってるの?」

ポチエナ「……おれは、強くなりたい 早く、立派なポケモンに
     ここに集まっているポケモン達のように、凄い存在に」

そんな風に気持ちが逸っていたからこその失敗であり、
失敗したことで更に気持ちが逸る悪循環なのだけれども思わずにはいられない

ポチエナは自身の至らなさに歯噛みして悔しがる

エネコロロ「うーん 気になってたんだけど、あんたの言う凄いポケモンって誰のこと?」

ポチエナ「へ?」

……彼女は一体何を言い出したのだろう 正直、意図を掴みかねる

ぽかん、と口を開けたまま固まってしまっていると、

エネコロロ「や、私は別に強くなんてないし、キノも否定するはずよ
      あんた達だってそうでしょ?」

マイナン「そりゃもう! ボクなんて全然!」


プラスル「はい 私も、というか、ここにはそんなに強いポケモンはいないと思いますが」

エネコロロ「そうよね? そんなにかしこまられる理由がないっていうか
      そのうち慣れると思って最初は気にしなかったけど、変わんないし」

重ねて言い募る彼女にみんな同調しだして、ポチエナはくらくらしてしまう
 ▼ 410 TOg35azcXc 18/09/02 17:52:14 ID:.OVIkFt6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ポチエナ「いやいやいや 皆さん凄いですって!」

なんでそんな謙遜するのやら そして何故こっちが必死になっているのやら

エネコロロ「だから『誰が』って訊いてるのよ」

ポチエナ「え? いや、だから」

エネコロロ「私たちはあんたの『理想』じゃないわ」

遮るように、彼女は言う

その目はどこか突き放すように冷たくて、二の句が継げなくなってしまう

押し黙ってしまい、若干重たい空気が流れた

マイナン「……これ、どういう状況? ついていけない……」

その空気を崩すように、マイナンが戸惑った声を発する

エネコロロ「この仔、目が曇っているのよ 何も見えちゃないわ」

プラスル「……つまり、それが『危うくてしょうがない』と言っていた理由、ですか?」

エネコロロ「見えてないから危ういのに、見えてないから言ってもしょうがなかった
      実際に痛い目に遭うのが一番よ いい薬だわ」

ポチエナ「……曇ってるって、そんな、ことは」

素直に認めることはできなかった だって、本当にみんな『凄い』から

エネコロロ「私たちなんかに憧れて『強くなる』だなんて言ってる時点でね……
      私たちは寧ろ弱い方よ? 何を見ているのかしら?」

ポチエナ「そりゃ、色んな依頼をこなしていて 沢山のポケモンを助けていて……」

エネコロロ「報酬があるもの 普通のことよ」

ポチエナ「……」

彼女は尚も厳しいことを言う 事実を告げているだけだというように淡々と
 ▼ 411 TOg35azcXc 18/09/09 23:35:59 ID:j8GwHKcQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「話は大体聞かせて貰ったよ」

と、唐突に“ひみつきち”の入り口から声がした

エネコロロ「あら、キノ 帰ってたの いらっしゃい」

キノガッサ「はいはい お邪魔しますよっと ロロは手厳し過ぎじゃない?
      言い方があるよ そんなにはっきり……」

いつから聞いていたのやら、飄々とフォローに回ってくれる

でも、それはつまり

マイナン「うえ? 所長も同意見なの?」

副長の言が的を射ていると彼も思っているということだ

キノガッサ「見えてないっていうのは言い得て妙だと思うよ
      遠くばかりに目が行っていて、足元が疎かだ
      気持ちばかりが先走っていて、不安定
      勿論、崖からの転落という意味でなくてね」

エネコロロ「それを自覚してないんだからはっきり言ってやった方が良いでしょ」

キノガッサ「だから、言い方ってものがだね……」

二匹の言い合いを始めてしまうが、ポチエナにはそれを止める余裕がなかった

痛烈に言われたのもそうだが、何を間違っていてどう直せばいいか解らなかったからだ

……これでは、見えてないって言われてもしょうがないか

ポチエナ「……どうすれば、いいですか」

だから、思い切って聞いてみる

『見えている」彼らに ポチエナの先を行く先輩方に

言い合っていた二匹はこちらの様子に少し驚き、微笑んだ

そして副長に促された所長が、真剣な口調で言う

キノガッサ「『強くなる手段は、なにもバトルに限らない』ってやつだよ」

僕も別に強い訳ではないけどね、と直後茶化すように呟いたけれど
 ▼ 412 イル@メガバングル 18/09/09 23:48:48 ID:sHgcsbIM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 413 TOg35azcXc 18/09/23 23:45:53 ID:SYAI7ms6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ポチエナ「『バトルに限らない』? バトルしているわけではないんですが……?」

エネコロロ「アハハ!」

単純に疑問になって口にしたら、副長に噴き出されてしまった

所長はその笑い声に気まずそうにしながら頭を掻く

変なこと言ってしまったかな……?

キノガッサ「あー…… そこは言葉の綾というか、あれだよ、うん
      あれー? 使いどころ間違ったかな?」

エネコロロ「折角キメたのにキマってないじゃない ふふっ」

プラスル「エネコロロさん、笑い過ぎですよ……」

え、えーと…… おれ、なんかやっちゃいました?

なんか恥ずかしくなってくる

キノガッサ「コホン 依頼をこなすということは素晴らしいことだけど、
      無理してそれをして願いには直結するのかい?」

ポチエナ「え……と、それは」

どうなのだろう?

依頼を解決できる彼らは凄いポケモンだと思った

しかし、依頼を解決した自分は凄いポケモンになれたかというと、違う気がする

こうして、怪我もしている現状は駄目駄目だろう

つい深く考え込んでしまう そして

キノガッサ「更に言えば『凄いポケモンになること』よりも、
      『依頼を達成すること』の方が目的になっていないかい?」

続けられた言葉に、言葉が出なかった

それはつまり、図星だと思ったからで

キノガッサ「要するに、一つの手段に囚われてないかってこと
      そして、本末転倒してないかってことだよ」

優しくも厳しい言葉で締めた所長を、途方に暮れて見つめてしまった気がする
 ▼ 414 ノココ@ももぼんぐり 18/09/24 07:51:16 ID:uOg2cgyQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 415 TOg35azcXc 18/10/08 01:32:53 ID:nHC6H5C2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エネコロロ「私にはああ言っておいて、あんたも中々手厳しいじゃないの」

キノガッサ「ん…… そうだね 申し訳ない」

エネコロロ「結局あんたも目に余ってるってことじゃないの」

ポチエナ「……おれ、そんなに酷いですか?」

自覚してないとお二方に立て続けに言われてしまっては不安になるものだ

エネコロロ「正確には、酷くなりそう、ね まだなってはいないわ」

修正していけばいい、のだろうか …………どこを?

ポチエナ「……解ってないことが解りました ……どうも」

『見えてないから言ってもしょうがない』という副長の言葉が痛烈に突き刺さる

悔しいしもどかしいのに、解決策は見通せない……

キノガッサ「まあ、暫くはギルド休んで考えてみればいいんじゃないかな」

所長が気遣わし気に声を掛けてくる

ポチエナは歯噛みしてしまい、喋れなかった


マイナン「いいなー…… 所長! 僕にも休みを下さい!」

話しについてきていない様子だったマイナンが、先程の所長の発言だけを追って言う

エネコロロ「え、あんた働きたかったんじゃなかったの?」

マイナン「……前はそうだったけどさ、今は何か、引っ切り無しじゃんさー
     最後に休んだのがいつか思い出せない程じゃん……」

キノガッサ「そうは言っても…… 一気に手が抜けたら回んないし……」

ポチエナ「え…… いや、おれもやりますよ!?」

忙しいのは確かだ 寧ろこの頭数で回ってるのが凄い 休んでなんて……

エネコロロ「あんたは寧ろ休んでなさいな 大丈夫 マイナンが頑張るから」

マイナン「え、ちょっ、ひどっ!!」

しかしポチエナの想いとは裏腹に働かせては貰えないという

どうやら今のままでは戦力外通告されてしまうらしい


エネコロロ「何だったらプラスルも休む? 頑張れマイナン」

マイナン「えー……」

プラスル「い、いえ、私は大丈夫です! 大丈夫だよ、お兄ちゃん!」

マイナン「ありがとう、妹よ お前の“手助け”があればあと10年は戦えそうだ」

エネコロロ「シスコン乙」
 ▼ 416 TOg35azcXc 18/10/14 23:41:22 ID:0BmoDIMI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グラエナ「それで、どうすればいいか解らないということか」

“ひみつきち”から帰らされて棲み処に戻ると、姉が心配そうに声を掛けてきて
自分で整理するためにもと、彼女にも色々聞いてもらった

ポチエナ「『見えていない』らしいことは解ったけど、じゃあどうすればいいんだろう?」

自分だけで考えたところで、答えなんて出なかった

姉は暫し悩むように黙り込み、やがて言う

グラエナ「解らん」

がっくりきてしまう

ポチエナ「……まあ、だろうとは思ったけど」

グラエナ「ん? それは私を侮辱しているのか? 生意気な」

つい呟いた言葉を聞きとがめられて睨みつけられてしまった

防御力が下がりそうで冷汗が垂れる 慌てて弁明した

ポチエナ「や、そういうんじゃないよ!? ただ、難しいなってさ」

グラエナ「そうか 私もエネコロロが何を『見えていない』と言ったかまでは解らん」

ポチエナ「それはさっき聞いたって……」

グラエナ「しかしな? ポチエナが答えを出すことが出来るのだろうことは解るぞ」

繰り返して言う姉は解らないと言いながらもなぜか得意気だ



ポチエナ「へ?」

グラエナ「そもそもこれは自分で答えを出すべき問題だろう?
     ヒントも、一匹で考える時間も与えられたんだ
     なら、きっともっと頑張ってみれば答えは出せるはずだ」

私の弟なのだしな 姉は何故か自信満々でそう付け加える

ポチエナ「……本当に解っていないの?」

グラエナ「どうだろうな 私に聞いてもしょうがないと思う」

はぐらかされて教えては貰えないようだ

みんな自分で考えろと言う

解らないから訊いているのに……
 ▼ 417 TOg35azcXc 18/10/22 00:30:51 ID:RvLod/Ck NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ポチエナ「まあ、いいや 良くないけど、置いとく」

『見えていない』ものは、確かにポチエナが自分で見るべきなのだろう

それとは別に、副長たちを知っている姉に訊いてみたいことがあった

ポチエナ「何で副長たちは自分を弱いなんて言うのかな……」

ポチエナはあんなに立派なポケモン達を他に知らない

だというのに彼女らは彼女らを否定するようなことを言う

そこがどうしても解せないのだ



グラエナ「そうだな あのポケモン達は強い 私たちを助けてくれた」

姉はこちらの言葉に頷きながら肯定する

グラエナ「だが彼女らの言葉も間違いじゃないぞ? あたしでも勝てる」

しかし次の瞬間頓狂なことを言い出すのだ

ポチエナ「は? え? どういう意味?」

ポチエナにはもう訳が分からない

そんなポチエナに姉は教え導くように優しく語る

グラエナ「『強い』と『弱い』は対義語だ 言葉の上ではそうなる
     しかし、だからといって相反するかといわれればそうではない
     一匹の人物の中に両立することだってあるのだ」

ポチエナ「弱いのに、強い……? 強いけど、弱い……?」

グラエナ「そうだな 更に言えば『強さ』にだって種類がある
     『強い』という言葉面に惑わされているんじゃないか?」

種類? それは考えていなかったことだ

でもそう考えると確かに、引っかかっていた物がストンと落ち着く気がした
 ▼ 418 ゴーム@ヒールボール 18/11/09 23:49:31 ID:61xE9VRw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援(保守)
 ▼ 419 ギア@パワーアンクル 18/11/19 01:21:48 ID:V2qEb1es NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 420 TOg35azcXc 18/11/24 22:27:37 ID:..mERooQ NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
棲み処を出て、適当にふらつく

少し落ち着ける時間が欲しかった

先程掴みかけた何かを一匹になって捉え直したかった


ジグザグマ「あ! お兄ちゃんだー! “ひみつきち”のポケモンさんだー!」

と、横合いから元気な声を掛けられる えーと、確か……

ポチエナ「ああ この間の、迷子の仔だね こんにちは」

以前に捜索依頼で見つけ出した仔だ

ジグザグマ「むう ジグザグマだよぅ 変なおぼえ方されてる……」

ポチエナ「ごめんごめん あれから迷子になったりはしてないかい?」

ジグザグマ「うん なんかね 森で迷わなくなった! いつもの森に戻ってるの!
      ポケモンさんたちのお蔭だね!」

迷っていないなら良かった

ただ、不思議な言い回しをされたのが気になる

ポチエナ「いつもの森に? おれたちが何だって? どういう意味?」

ジグザグマ「えっとね えっとね なんかね 変だったの
      ポケモンさんがどうにかしてくれたんでしょ?」

……なんか買い被られてる いや、そもそも

ポチエナ「ポケモンさんってなに? そっちこそ変な覚え方じゃない?」

ジグザグマ「えー だって“ひみつきち”の方でしょ?」

ポチエナ「え? うん まあ そうだけど……」

ジグザグマ「エネコでもゴクリンでもルリリでもプラスルでもマイナンでもないでしょ?」

ポチエナ「何その質問? 確かにおれはポチエナだけども」

ジグザグマ「でしょー? じゃあやっぱりポケモンさんじゃない! 本の通り!」

頭の上の疑問符が増えていくこちらに対して、相手は勝手に納得して盛り上がっている

……全然話についていけない 本? 何のこと?
 ▼ 421 ュゴン@ファイトメモリ 18/12/12 04:44:10 ID:/pI6dOgA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 422 ガプテラ@こだいのおまもり 18/12/14 23:14:32 ID:hHQQBuys NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 423 ハコモリ@はつでんしょパス 18/12/15 03:02:14 ID:nE8MDkmA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
途中でちゃちゃ入れるのも悪いけど、最初の小説すっごく面白かった。
キャラクターが生きてて、アイデアとかも面白かった。イーブイ★とブラッキーのコンビが特にすき。
作者さんも博識だなと、その文才が欲しい。小説売ってたら買ってた。
長文失礼
 ▼ 424 ルキア@やすらぎのすず 18/12/21 02:23:52 ID:vKGgazGQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 425 リクリ◆TOg35azcXc 18/12/25 00:24:36 ID:N4YMySsY [1/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ジグザグマ「ちょっとまってね ……じゃーん! これです!」

彼女はなにやら懐を探ったかと思うと効果音と共に一冊の本を出した

ジグザグマ「最近お気に入りで持ち歩いてるんだー えへへ」

本を? ……まあ、子どもってお気に入りは持ち歩きたがるか

子ども向けらしくあまり厚くもないしね

折角だから借りて読むことにした

ふむ タイトルは『ひみつきちにあつまって』というのか

著者は…… あ 所長だ



最後まで読み切って本を閉じた

正直、圧倒されている

書かれているのは多分、本当に彼らがやったことなのだ

やはりすごいポケモン達なのだと思ってしまう



そして隣で一緒になって読んでいる彼女の勘違いの理由も分かった

童話の主人公である『ぽけもん』には肝心の種族名がない

種族特性から想像できるような描写もなく挿絵も特にはなくて、

『ぽけもん』がなんのポケモンなのかは解らないのだ

多分所長 ……キノガッサなのだろうけど

本を読むだけではそこまで想像できなさそうで

彼女が知っている“ひみつきち”のポケモンがポチエナだけなら

そう勘違いするのも分かる、かもね
 ▼ 426 想嬉しす 支援感謝◆TOg35azcXc 18/12/25 01:00:29 ID:N4YMySsY [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
こちらが読み終わったのを確認すると、彼女は円らな瞳でポチエナを見つめてきた

そこに憧憬の色が含まれているのを見てとって、少し複雑な気分になる

羨望を向けられることに嬉しい気持ちもなくはない

しかし本来の自身以上のそれでは、居心地の悪さの方が大きい

ジグザグマ「ね? これお兄ちゃんでしょ?」

無邪気に童話の内容を間違って信じている彼女に、ポチエナは言葉を選ぶ

「それは自分だ」と嘘を言えるほど図太くはないが、

折角ぼかして書いてあるのにそれを崩すほど無粋になるわけにもいかない

ポチエナ「……いや、おれじゃない奴だよ。おれはこの『ぽけもん』に憧れてる奴だ」

結局口から出たのは、本心に近いもので

『ぽけもん』と大きな差があることを示したようで、我ながらなかなか格好悪い



ジグザグマ「そうなんだ! お兄ちゃんもわたしとおんなじなんだね!」


彼女はそんなポチエナの気持ちとは裏腹に、ただただ朗らかに言った


ジグザグマ「でも、お兄ちゃんの方が凄いよ! 本当の“ひみつきち”の一員だもん
      わたしよりよっぽどずっと凄い!」


全然、足りていないって…… 『見えてない』って自覚したばかりだけど


ジグザグマ「なれるといいね 『ぽけもん』みたいに
      ううん 絶対なれるよ!」


なぜか彼女の純粋な目を見ていると本当にそうなれる気がした
 ▼ 427 けおめ◆TOg35azcXc 19/01/01 23:27:21 ID:NiFkd.OM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ポチエナ「……ありがとう」

気付いたら、声に出していて

ジグザグマ「ふえ? なんでお兄ちゃんが『ありがとう』なの?」

不思議そうな顔をさせてしまった

ポチエナ「や、頑張ろうって思えたから」

落ち込み気味だったのが上向きになったのは確かだ

素直な気持ちでそう言った

ジグザグマ「ふふ 変なお兄ちゃん」


それから、棲み処に変えるという彼女を送った

もう森で迷うことはなくなったという話だったが、一応

仔ども扱いされたと思ったのか、顔を赤くして俯いていたけど、勘弁してほしいな


実際彼女はポチエナよりは下だし

この間迷子になっていたのは事実だし

仮にもポチエナは“ひみつきち”の者だから

見過ごすわけにもいかないんだよね


という言い訳は言わなかったけど

道中は童話についての話に花を咲かせた

他愛もないことだったけど楽しかったかな
 ▼ 428 ンバドロ@しんぴのしずく 19/01/02 00:23:39 ID:0zHYvr76 NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 429 TOg35azcXc 19/01/09 23:43:57 ID:jUi6qKBA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジグザグマと別れてポチエナは自分の棲み処を目指し森を歩く

先程聞いた童話が頭の中を占めているから、ゆっくり

自分がどうすれば、彼らに辿りつけるというのだろうか

目指すものは遠く、何をすればいいか判らずに悩みながらゆっくり

そうして歩いていると、何やら先の方にポケモンがいるのが見える


ドクケイル「……ぐぅ くそっ! 彼奴どうしちまったんだよ……」

独り言のように悪態を吐いている

ふらついて飛んでいて、危なっかしい

ポチエナ「怪我をしているようだけど…… 大丈夫か? どうした?」

事情は判らないが、見過ごすのも気が引けるため声を掛けた

相手は驚いたように振り返り、訝しげな顔になり身体を強張らせた

ドクケイル「なんだてめえ? 追い打ちか!? ……っく、テテ」

ドクケイルは攻撃しようとしたようだったが、痛みに顔を顰めて蹲る

ポチエナは駆け寄って支えてやる

ポチエナ「何を言ってる? 怪我してんだから落ち着け」

事情は判らないが、一先ず害意はないと示して落ち着かせようとした



ドクケイル「・・・・・・や、済まなかったな」

おやつにと持っていたオレンを渡すと少しは痛みも引いたらしい

敵対意思がないこともどうやら伝わってくれたらしく落ち着いている
 ▼ 430 ングマ@おおきなしんじゅ 19/01/10 06:31:08 ID:jDxs5Qf. NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 431 TOg35azcXc 19/01/11 22:20:32 ID:eg2AwUUs [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ポチエナ「それで? なにがあってそんな状態に?」

タイミングを見計らい、そもそもの疑問を切り出した

傷付いているのに見境なく攻撃しようとする辺りただ事じゃなさそうな

……怪我をしている時点でただ事じゃないが

ドクケイル「何があったかって こっちが聞きてえんだけどな……」

彼はどうも戸惑っているらしい

先程の独り言もそうだった気がするが

しかし、それだけ言われてもこっちはもっと戸惑うばかりだ

そのことに気付いてくれたのか、説明し始めた

ドクケイル「なんつうかな ダチが変なんだよ」

ポチエナ「変、というと?」

ドクケイル「いや、解んなくもねえんだ ただ、少し行き過ぎてるっつーか
      少々荒っぽいとこもあったが気のいい奴だったんだけどな……」

ポチエナ「……いや、何の話だ」

ドクケイル「経験値にされたんだよ それも瀕死から治る度繰り返して」

ポチエナ「だからなんの話だって 要点抑えろ」

ドクケイル「遠出できることに気付いて、より経験値求めて飛び出していきやがった」

ポチエナ「本気で待ってくれ 訳分からん」

前言撤回 気付いてない 理解させる気ないな

ドクケイル「はあ!? なんで解んねーんだよ!? 解れよ!?」

キレられた

この説明で分かる奴いるのか? こっちの理解力が悪いのか?
 ▼ 432 TOg35azcXc 19/01/11 23:26:09 ID:eg2AwUUs [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
その後も話が飛んだり前後したり、関係ない話がちょくちょく挟まれたり
まあ聞きづらかった

それでも、何とか地道に聞き出して頑張ってまとめる

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ドクケイルのダチであるヤルキモノは以前から強さには執着していた

だが、つるんでいる時は気が置けなくて楽しい奴だった

しかしある日から様子がおかしくなった

酷くイラついた感じで、花や木の実などに八つ当たりしていた

何があったのかと訊くと、バトルでえらくやられたらしい

それも、普段は逆らってこない“弱い奴”に

ドクケイルはそいつがヤルキモノに一杯食わせたことは面白いと思った

ただ、ヤルキモノ的にはどうも憤懣遣る方ないらしい

逆恨みじゃねえかって思ったが、気持ちは解らないでもなかった

だからそいつよりもっと強くなってまた打ち負かしてやりゃいいだろって笑い飛ばした

ダチらしく、一緒に強くなる方法を探してやるつもりだった

それで、森の中を歩いている時、小さなポケモンを見つけた

顔見知りとかじゃなかったから、普段は無視するはずだった

なのに、ヤルキモノはいきなり目の色変えて襲い掛かろうとした

さすがにそれはいかんだろと思って止めたんだが、なんかスイッチ入ったみたいで

大暴れしてドクケイルに爪を向けてきた

見境なくポケモンを襲いだす酷い奴に成り下がったわけだ

以前はそんな奴じゃなかった

だから変なんだ
 ▼ 433 TOg35azcXc 19/01/11 23:26:49 ID:eg2AwUUs [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
変といえば、森も変だった

いつものように進んでいる筈なのに、いつの間にか同じ所をグルグルして

迷ったあげく元の場所に戻るようになっていた

あれは一体何だったんだろうな


ともかくそのお陰で、変になったヤルキモノは一つ所に留まった

その所為で、ドクケイルもその場を離れられず、標的にされ続けた

瀕死しては治されて 治っては瀕死にされて

本当に地獄のような日々だった

何度も逃げようと試みて、その内、なんでかは解らないが森が元に戻ったことに気付いた

ヤルキモノも解ったようで、ドクケイルを置いて外に向かっていった

瀕死から復活までのスパンが掛かるドクケイルより多くの経験値を求めて

だから、もしヤルキモノに会ったら気を付けろ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ポチエナ「……ということか?」

ドクケイル「そうだよ! ずっとそう言ってんだろ!?」

……そういうことらしい

ここまで聞きだすのにどれだけの時間がかかったことやら

頭が痛くなる……


しかし苦労した甲斐はあったのかもしれない

ポチエナ「それが本当なら…… 大変じゃないか!?」

誰彼構わず襲い掛かる暴君が今、森を徘徊しているということ

早く皆に知らせて避難誘導、或いは捕縛要請をしなくてはいけない
 ▼ 434 フォクシー@たまむしプレート 19/01/12 20:00:10 ID:C/Lcopkc NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 435 TOg35azcXc 19/01/25 01:00:30 ID:BehwCLVQ [1/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ドクケイル「ああ、そうだな そうなんだろうけどな」

こっちの意見を聞いて、相手はどうも躊躇ったような声を出す

ドクケイル「あんな奴だが、警察のお世話にならせるっつうのは気が引けるっつうか……」

ポチエナ「いや、そうは言っても」

ドクケイル「本当に変なんだよ彼奴 なんかに憑りつかれてる感じっつうの?
      警察に言ったら、普段との違いなんて気にされず処分されちまわね?」

ポチエナ「……つまりそれだけ普段の行いも悪いと」

ドクケイル「それは言わない約束だろ」

そんな約束した覚えはない というか本気で酷いのか

頭が痛くなるな

しかし本当に友人を思っているらしい

それは汲んでやりたい、かな

ポチエナ「だったら、あまり大事にしないようにうちで早急に片付けるとか?」

ドクケイル「それが出来ればありがたいが…… 『うち』ってのは?」

ポチエナ「私営ギルド“ひみつきち” 依頼解決のスペシャリストだよ」

この案件だってきっと解決に導けるはずだ

そう思って提案したのに



ドクケイル「駄目だ!」

予想外に拒絶され面食らう

ドクケイル「そこには頼れねえ 頼っちゃいけねえだろうが」

ポチエナ「何故?」

毎度言葉が足りなくて訳が分からない

ドクケイル「とにかく駄目なもんは駄目だ!」

ポチエナ「じゃあどうしろって言うんだ?」

拒否するなら代案を提示して欲しい ことは一刻を争うかもしれないのだから
 ▼ 436 TOg35azcXc 19/01/25 01:02:13 ID:BehwCLVQ [2/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ドクケイル「そうだ! オレの触角はレーダーになってて、誰がどこにいるか解るんだよ」

しばらく悩んでいたかと思うと、名案を思いついたかのようにそういった

ドクケイル「オレさえいればヤルキモノの居場所は筒抜けって訳だな だが」

確実な居場所を掴むためにはドクケイルの協力が必要

しかし他の組織に頼るとその協力は拝めない、と

ポチエナは溜息を吐き、決断する


ポチエナ「じゃあ、さようならということで 後は警察に頼もう」

ドクケイル「ちょ! 話聞いてたか!? お前には情がねえのか!?」

ポチエナ「いや、だって、暴徒自身か回りのポケモンかで言ったらそりゃ……」

ドクケイル「そりゃそうだな! チクショウめ!」

納得したようだ 本当になんなんだこいつ

ポチエナ「大体本当に友達のことを思うなら一刻も早く止めてやるべきだろう」

友人とはいえ悪行に手を染めているのなら止めるべきだ

しかもそれが本意でなさそうだというなら尚更

ドクケイル「くそう…… 正論ばっか言いやがって」

解ってはいるらしい しかし納得してはいないようだ

ドクケイル「“ひみつきち”の奴なんだろう? お前が止めるとかは言わねえのか」

ポチエナ「……それは」

ドクケイル「へっ 実力不足の下っ端かよ 目に物見せたいとは思わねえのか」

実力不足 その言葉は図星であるからこそカチンときた

ポチエナ「……わかった おれが抑えてやる 案内しろ」

売り言葉に買い言葉

つい乗っかってしまった
 ▼ 437 TOg35azcXc 19/01/27 17:51:56 ID:Qjfog192 NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ドクケイル「……この先だ 他のポケモンはいねえな」

森の奥地の平野部 この先にヤルキモノがいるらしい

他にポケモンがいないというのは、朗報か

経験値にされているポケモンはいないらしい

ドクケイル「まあ、今あんな危ない奴に近づく物好きはいねえわな」

野性の勘という奴だろうか、森のポケモン達は上手く出会わずに逃げおおせているらしい

ポチエナ「その危ない奴に今から近づくんだけど……」

ドクケイル「そいつぁあ物好きなこって」

ポチエナ「お前な……」

……まあ、言う通りだ 物好きにも危険に飛び込もうとしている

木々の隙間からは何かが暴れている音がした



ヤルキモノ「ウグルルァッ!!」

ポチエナ「うあっ…… 危なっ!」

いきなり襲い掛かって来られる

先に見境がなくなっていると聞いていなければ、一撃目でやられていたかもしれない

ヤルキモノ「……避けやがるか ……まだまだか」

爪持つ白い獣は獰猛に吠える

随分荒々しい雰囲気を振りまいているものだ

ポチエナにこれを抑えて捕縛できるのか?

少し不安になってきてしまった
 ▼ 438 ロア@ライブキャスター 19/02/09 20:41:58 ID:OQVAoFUQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 439 ーロット@トロピカルメール 19/02/11 00:11:44 ID:cXu2XB4Y NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ドクケイル「おいおいおい…… 本当にどうしちまったってんだよ!?」

猛然と爪を振るい続けるヤルキモノ

ポチエナは間合いを読みながら歯噛みする

駄目だ 抑えるのは愚か、攻撃を加えることも難しい

同じように攻撃から逃げながら、ドクケイルが叫ぶ

ドクケイル「お前、今ぜってー変だって! オレが解んねーのか!?」

ヤルキモノ「るせぇ…… 俺はもう…… 負けるわけにゃいかねえんだ……
      大人しく…… 経験値を寄越せ……!! グルァッ!!」

ポチエナ「危ないっ!!」

横合いからドクケイルを突き飛ばし、辛くも爪を避けた

今のは本気で危なかったな…… 相手の攻撃の鋭さに肝が冷える

普段の彼をポチエナは知らないが、“ダチ”にも容赦のない辺り、成程、狂気的だ

こいつは直ぐに捕らえないと拙そうだな

ドクケイル「助かったぜ…… ただ、不味いな、近づけねえよ……」

ポチエナ「それどころか避けるので手一杯だ 遠距離技とかないの?」

ドクケイル「お、おう! あるぜ!」

ポチエナ「それ最初から使ってよ!」

なんで馬鹿正直に“体当たり”とかで攻めようとしてんのかな

ドクケイル「うおおお! “サイケ光線”!」

ヤルキモノ「……!」

ドクケイル「うし! 当たった!」

やっと、効果的な攻撃が出来たらしい

しかし混乱させるには至らずといったところ

まだまだ気を抜ける状況じゃない
 ▼ 440 ガジュカイン@ひみつのコハク 19/02/12 00:50:00 ID:t.0ICuqE NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ドクケイル「ははっ! 近づかなきゃ怖くねえな! “サイケ光線”!」

相手の腕の届く範囲から大きく脱したドクケイルは光線を打ち続ける

ヤルキモノは当然ドクケイルを仕留めに向かおうとするが、ポチエナが邪魔する

付かず離れずの位置を保って食らいつく

攻撃を受けてはいないが結構きつい ポチエナからの攻撃は当てられもしない

ドクケイルの方が楽そうでいいが、適材適所だ

ポチエナは近接戦しか能がないため囮役しかできないから仕方ない

しかし、もう何発も入ってるはずだが、全然効いた気配がない

ヤルキモノ「うぜえな…… いい加減に、しろ……!」

相手は流石に焦れたのか、苛立った声を出し明確にドクケイルを睨んだ

そして足元の石礫を拾い上げるなり大して振り被りもせず――

ドクケイル「“サイ―― うおぉっ!!」

ノーモーションで投げた割に勢いのあった投石は、狙い過たずドクケイルを捉えたらしい

悲痛な声に振り替えると、翅を大きく傷つけたドクケイルが墜落していく

近接だけしかないと思いきや、そんな手段に出るとは、考えが甘かった

ヤルキモノ「余所見とは…… ありがたい……なぁっ!!」

ポチエナ「ぐあぁぁっっ!!」

他者の心配をしている場合ではなかったらしい

隙を突かれ大きなダメージを喰らい吹っ飛んでしまった

拙い…… あんな奴の前で戦闘不能晒したら……

延々経験値の種にされることを既に聞いているだけに、身体が震える

勝ち目は見えない上に大怪我を負い、捕縛するという目的も無理だ

勇んで挑んで、この体たらく 自分が情けないし悔しい

それでも、この状況を打開するため、“吠える”

ポチエナ「うぅ…… ――ワオオオォォンッッ!!」

相手の戦意を強引に奪い、強制的に退かせる“技”

それを真正面から受けたヤルキモノは戦闘を離脱し森の奥へと消えていった
 ▼ 441 ンメル@タブンネナイト 19/02/27 12:51:30 ID:OGs./6Zk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 442 TOg35azcXc 19/02/27 22:52:45 ID:8xPYwRk6 NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ヤルキモノが去った後の茂みをじっと見て、戻ってこないことを確認し息を吐く

これ以上戦闘は続けられそうにない

失敗したな やっぱり安易に売り言葉に乗っかってはいけなかった



ドクケイル「何やってんだよ、お前…… 逃げんのかよ」

と、辛辣な声が響きポチエナはびくりと震える

ドクケイル「オレに向かってあんだけ大口叩いてよぉ」

友達なら止めてやれだの、抑えてやるだの、確かにポチエナが言ったのだった

ドクケイル「本当に下っ端だったのかよ 使えねえ 期待外れだ」

非難されても仕方ない 実力以上の大言壮語だった

鎮圧対象にこっぴどくやられて 逃がして おまけに依頼者も守れていなくて

余りの無力感に打ちひしがれてしまう



ポチエナ「……とにかく、安全なところへ 治療できるとこへ行こう」

お互い瀕死は免れているが、ダメージは大きい

一先ず退散 話はそれからだ

ドクケイル「それって、何処のことだよ? なあ、オレ、言ったよな?」

……聞いてはいた だが

ポチエナ「選り好みする状況じゃない 頼りたくない理由は解んないけど、我慢して」

ポチエナは翅を怪我したドクケイルを背負い、傷を押して“ひみつきち”へ向かった
 ▼ 443 TOg35azcXc 19/03/02 23:56:10 ID:/5vgvsq. NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
辿り着いた“ひみつきち”には副長とゴクリンがいて

副長はこちらの様子を見るなり何も言わずに薬の準備を始めてくれた

それはそれでありがたい対応ではあったものの

散々指摘を受けておきながら、短い期間にまた大怪我をしている身として

その沈黙は、責められているように感じられて何とも居心地が悪いものだった



ゴクリン「これはまた派手に怪我したものだねえ そちらはどなた?」

と、治療が終わりあとは安静にするだけという段になって呑気な声が掛けられる

ポチエナ「えっと…… なんていうか……」

口籠ってしまう どこまで話すのが良いんだろうか

ドクケイルの事情を把握していないため取捨選択が難しく

上手くやれなかったことに対する気後れもあり、なかなか気が重い

そういった気持ちを込めてドクケイルに目配せを送る

ドクケイル「……おう あんたらんとこの下っ端勝手に借りて悪かったな」

ゴクリン「休みの日のやんちゃまでは口出すつもりないよ 自己責任、自己責任」

ドクケイル「そうか? じゃあ、悪くなかったな」

ゴクリン「でもまあ、事情は聴きたいね 喧嘩でもした? 依頼する?」

ドクケイル「それがよう ダチがここ最近変で……」

ポチエナ「ちょ、ちょ、いいの? 話しちゃって」

ドクケイル「あん?」

先程あんなに“ひみつきち”に拒否感を示していたのに、どういうことなのだろうか?

ドクケイル「いーんだよ アイツじゃねえんなら」

ポチエナ「アイツって……?」

ドクケイル「ああ、それで、ダチの話だったよな いや、これがよう……」

軽く発した疑問は答えられず流され、森の暴君に対する情報共有に移ってしまった
 ▼ 444 ラベベ@ライブキャスター 19/04/03 15:06:20 ID:HeUQ9nhM NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 445 ブラーバ@ポケモンずかん 19/04/16 00:39:10 ID:3lYEqHfE NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ゴクリン「なるほどねぇ そんなんでも庇いたいわけだ」

ドクケイル「そりゃあな あんなんでもダチだ」

ポチエナの言も交えながら一通り経緯すると、頷きながらゴクリンは言った

どこか呆れた雰囲気である

ゴクリン「そんな酷いことするのが、ダチなのかい?」

ドクケイル「だーかーらー 変なんだって言ってんだろ」

ゴクリン「へえ」

さっきから同じようなやりとりでらちが明かない感じがする

ゴクリンはこっちを見てドクケイルを見て、困ったような顔をする

ゴクリン「まあでも、その旨言ってくれたらうちでもそうするよ?」

もはや流すことにしたらしく、話を進めた

ドクケイル「そうか じゃあそういうことで頼む」

ゴクリン「……代価用意してくれるんなら承るけど」

ドクケイル「解ってらあ 金でいいんだろ?」

一応払う気はあったのか なんかなあなあで流されそうに見えたのに

ゴクリン「ま、まあね〜 了解 承っとく」

ドクケイル「おう! しっかりやれよ? あ! 解決報告は下っ端にやらせろ」

ゴクリン「ん? それはまた何で?」

ドクケイル「なんでも!! とにかく、任せたかんな!!」

そこまで言うと、ドクケイルは“ひみつきち”の外へ飛び出してしまった

なんで頑なに理由を言わないのだろうか……

というか、翅はもう大丈夫なんだろうか? まだふらついていたようだったが……
 ▼ 446 TOg35azcXc 19/04/21 23:48:04 ID:18/gESgo NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ゴクリン「気に入らないな なに、あれ」


釈然としない、という顔をしてゴクリンが呟く

呑気な彼はそうそう悪し様に言うことはないと思ったが ……珍しい

呆と見つめてしまっていると憮然とこちらを見返してくる

ゴクリン「何で君がそんな反応なのさ もっと怒ってもいいと思うけど


……怒る? ドクケイルに?

本気で解らないという顔のこちらに対しゴクリンは溜息混じり

ゴクリン「仕事の内容の確認もしっかりせずに勝手に連れ出して、
     失敗したら一方的に攻め立てて、挙句下っ端扱い」

ドクケイルがやったことを論ね始め、最後に吐き捨てた

ゴクリン「そんなんやられたら気分悪くもなるさ」



エネコロロ「……でも依頼は受け付けるのね」

ゴクリン「そりゃ、突っぱねるわけにもいかないでしょ 公平性が大事でしょ」

エネコロロ「確かに、放っていい案件じゃないものね」

ゴクリン「ふっかけてもいいくらい ていうかふっかけてやる」

エネコロロ「……公平性は?」

ゴクリン「隠し事して依頼する奴に異議申し立てる権利はない
     喩え依頼内容と関係なかろうとね」


ゴクリンは図々しい奴、だの腹立つ、だのとぶつぶつ呟いていた

ドクケイルが頑ななことに何か心当たりでもあるのだろうか
 ▼ 447 TOg35azcXc 19/05/03 15:14:53 ID:x4pEZvKg NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
それから程なくして所長が入ってきた

キノガッサ「お邪魔する――って何この空気?」

ゴクリンは先程からピリピリしていて、副長はご機嫌斜めに黙り込んで

ポチエナはそんな二者の間で縮こまっていて息が詰まるような空気が立ち込めている

所長は理由を知らないのだから疑問にも思うだろう

キノガッサ「エナ君もいるし というか怪我してるし どうしたの?」

ポチエナ「いらっしゃい、所長 これは、えーと、失敗してですね……」

どうも言い辛くて言葉が濁る ただ不甲斐ないというだけではない

依頼主が頼りたくない『アイツ』が所長であるという懸念もあって――

ゴクリン「ん 大体ドクケイルの所為なんだけどね?」

ポチエナ「――って 言っていいの!?」

ゴクリン「異議申し立てる権利はない!」

つまり、言っちゃダメだったってことじゃないですか

キノガッサ「ドクケイル? 彼奴がどうかしたの?」

しかし当の所長に思うところはないようで、普通に促してきた

気にし過ぎ、なんだろうか



結局、依頼のあらまし、ドクケイルとヤルキモノについての話を洗いざらいした

かつてキノココを虐めていたという二匹の話も聞いた

そんな事情があるからこそゴクリンが怒っている、ということも

でも

ポチエナ「一応、負い目はあるという話だったのでは?」

だから所長、ひいては“ひみつきち”に頼る気はないということを言っていた

そのことについてゴクリンが怒るのは見当違いだと思ったが……

ゴクリン「そこだよ なんでアイツ所長にだけ配慮してんのさ
     ぼくも会ったことあるっていうか良くない因縁があるのに」

ということらしい

キノガッサ「なるほど、それで君は怒ってるんだ」

所長は苦笑いしていた
 ▼ 448 ロッパフ@キーストーン 19/05/16 23:06:17 ID:uoKo9ZcE [1/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
キノガッサ「で、ロロは落ち込んでる、と」

ポチエナ「……え、落ち込んでいたんですか、あれ」

次いで言われた言葉に、ポチエナは目を丸くしてしまう

キノガッサ「何その目 何だと思ってたのさ」

ポチエナ「いえ、てっきり怒っているものかと……」

キノガッサ「……むしろなんでそんなビクビクしてるのやら」



何故って、それは

ポチエナ「依頼はうまく行かなくて、性懲りもなく怪我して、迷惑ばかりかけて……」

強くもなれず、弱いままだから きっと呆れられてしまうのだろう、と

こんな情けない『ぽけもん』が“ひみつきち”に相応しいとは思えないから――



エネコロロ「……はぁ ……莫迦なんじゃないかしら」

心底呆れ返った声を聞いて、身を竦ませる やっぱりおれは……

自分のふがいなさにドツボに落ち込んでいきそうになる

エネコロロ「違うわよっ! ああ、もう! キノ! どうにかして!」

キノガッサ「なんでそこで意地張るかなあ…… いや、解んなくもないけど」

その様子を見た副長は何故か慌てだす

ポチエナ「……えっと?」

つられて顔を上げてみると、どうもこちらを責めるような感じではなくて困惑する

副長はどこか拗ねたようで、所長は相変わらず苦笑したまま溜息を吐いていた

キノガッサ「何て言ったらいいかな…… うん……」

所長は暫く考えて、一つ思いついたように質問を投げかけてきた



キノガッサ「エナ君は、何が悪かったと思う?」
 ▼ 449 ーシャン@ゴーストジュエル 19/05/16 23:51:01 ID:uoKo9ZcE [2/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ポチエナ「何が、って……?」

抽象的なその質問の意図を掴めなくて、或いはそう思いたくて、言葉を詰まらせた

キノガッサ「リンが怒って、ロロが落ち込んでる一番の原因 何だと思う?」

しかし所長は、追撃するようにより具体的に言い直してくる


身体が震える

散々突きつけてられてきたというのに、まだ足りないのだろうか

未だ曇った眼でしかいられない事実に項垂れながら、自嘲を吐く

ポチエナ「…………そんなのおれが、弱いのが一番――」



キノガッサ「違うでしょ」

ポチエナ「――え?」

途中遮るように否定され、顔を上げ所長の目を見る

穏やかな目で見返されて身体の強張りが解けていく気がした



キノガッサ「違うよ そんな理由で君を下には見ていない」



キノガッサ「第一、弱さが理由ならリンに怒る権利なんてないし」

ゴクリン「」

キノガッサ「というか、“ひみつきち”の誰も、ね」

ほら、僕ら弱いし そういって肩をすくめる所長

真っ先にゴクリンを下げたことに関してお茶を濁した……?

ポチエナ「えっと…… そうなると、一番の原因って?」

色々な可能性は思いつけども、『弱さ』以外はしっくりこない

自分で考えるべきとは判っているが、解答を求めてしまう

所長は鷹揚に頷いて

ゴクリン「そりゃ当然、ドクケイルめが――」

キノガッサ「それも違うね」

出鼻を挫かれ、ばっさり切った

ゴクリン「 (´ω` )\ 」
 ▼ 450 着◆TOg35azcXc 19/05/19 00:49:52 ID:rXgQ7x52 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
……少し気拙い間が空き、



仕切り直すように所長が咳払いをして話し出す

キノガッサ「――まあ、間が悪かったというか、色々重なっちゃって見づらいけどさ」



キノガッサ「今回の件で一番って言ったら、エナ君が一匹で突っ走ったことじゃないかな」

ねえ、ロロ? と所長はそっぽを向いたままの副長に微笑みかける

ポチエナ「……やっぱり、おれですか? 考えなしってことで?」

キノガッサ「ああ、そういう意味じゃない これは僕らが悪いし ……言葉って難しいな」

歯痒そうに呟いているが、こっちも結局どういうことなのやら

ポチエナが悪いが所長たちも悪くて? ……えと

こちらの困惑を見かねたのか、ぽつりと

エネコロロ「…………仲間、でしょうが」

ポチエナ「え?」

更に聞き返したら、副長は顔を赤くして捲し立てた



エネコロロ「だからっ! 私たちは仲間でしょ! なんで頼ってくんないのよ……!
      確かに先輩だけど、それ以上に変に上に見て、遠慮して、
      それで勝手に怪我されてたら、どうしたらいいか判んないわよ!」



――『霧払いされた』、気がした

エネコロロ「私たちはあんたの『理想』じゃない 対して強くもないわよ
      だから、集まってるんじゃないの 皆でやるから、凄くなるんじゃないの」

つまり目が曇っていた、ということの意味はそういうことなのだ

勝手に思い込んで、だからこそ焦って、『交換読みカウンター』してて

空回っていたんだな、おれ


ゴクリン「まあ、しばらくみんな個々に動いてたし、わかんないよねぇ
     僕ら親睦会やってなかったし お互いの性格掴めてないっしょ?」

キノガッサ「……僕にも責める資格なかったかも ごめん」

ポチエナ「い、いえそんなっ!」
 ▼ 451 話◆TOg35azcXc 19/05/20 17:50:34 ID:aMXo5rW2 NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ゴクリン「まあ、これから知っていけばいいんだけどね」

エネコロロ「そもそもポチエナの理想が高すぎるっての 私たちはちっぽけなのに」


……そうは言っても、ポチエナにとってはヒーローであるという認識はそう変わらない

だって、誘拐事件から颯爽と助けてくれたのは、彼らなのだから

キノガッサ「そういえば、童話読んでくれたって言ってたよね?」

ふと、依頼のあらましを伝えるときについでに言った話を持ち出してきた

キノガッサ「どう思った?」

ポチエナ「え、や、凄いポケモン達だなって 自分との差に感服するばっかりで……」

散々言ってるが、同じ言い方しかない 自分の語彙のなさが悔しい

キノガッサ「んー…… じゃなくて、態と書いてないものに気付いてくれたのかなって」

『自編自賛』っぽいかな 所長はそういって頭を掻いた


なんのことだろう 読み込んだわけでないポチエナには解らない

ポチエナ「書いてないもの、ですか? ……なんですか?」

キノガッサ「バトルさ あの『ぽけもん』は一度だってそれで勝っていない」



ゴクリン「あれわざとだったんだ…… てっきり恥ずかしいからかと」

キノガッサ「それもあるけど…… まあ、なんというかあの作品では
      強くなくともやり方次第、ってことの方が伝えたかったかな」

今日何度目の衝撃だろう 確かに そういえば

キノガッサ「だからさ そもそも僕らが強くて凄いっていうのは間違いなんだよ」

ようやっと全てが腑に落ちて、ポチエナは感嘆の意を示すしかない



そんなポチエナらを横目に、ジト目な彼女はぽつり

エネコロロ「……童話全てが『真実』ってのも語弊があるでしょ」
 ▼ 452 エルオー@ネットボール 19/05/24 00:33:40 ID:hy.MBJ22 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
久々に来たら残ってた
支援
 ▼ 453 TOg35azcXc 19/06/06 23:59:16 ID:uUBk5UJM NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ゴクリン「……とまあ、いいこと言った風ではあるけれども、キノさんや」

つと、混ぜっ返すような毒のある声を出した

キノガッサ「……なんだい、リンさんや」

所長もまた演技臭い返しをして繋げるのが、ポチエナは納得がいかない

風ってなんだ いいこと言ってくれたじゃないか

そんな反発の気持ちを抱くものの、続いた言葉に黙り込んでしまう

ゴクリン「実際問題、依頼はどうするんだい?」



ポチエナ「……う」

そうだ 解決しなければいけない問題は、何一つ進展していない

キノガッサ「ヤルキモノね…… アレは強いね しかも凶暴化してるって話だし」

所長は腕を組み、悩まし気に唸った

暴れ回る『経験値狩り』 対してこちらは強くない者ばかり

『強くなくともやり方次第』とはいうものの、弱くてなせることは、じゃあ何だろう

ゴクリン「ポチエナに何とかできるの、アレ」

エネコロロ「ポチエナに何とかさせるの? 私の言ったこと聞いてた?」

ゴクリン「そうは言っても、請けたのはポチエナだし」

エネコロロ「だからって手を貸さないのも違うじゃないの」

ゴクリン「責任の問題だよ 最後までやり遂げないなら依頼受けるものじゃない」

エネコロロ「この…… 正論風に言いおって……!」

ゴクリン「『自分で蒔いた菱』ならケツ持ちぐらいしっかりするべきだ」

エネコロロ「……何でそんな頑ななのよ」

二者の間で方針が割れたようで、なぜか言い争いに発展してしまう

ポチエナは板挟みで縮こまってしまう



しかし様子を見守っていた所長は、何やら呆れ顔で

キノガッサ「リン、本音は?」

ゴクリン「毒蛾めに嘗められっぱは面白くないじゃん!」

……さいですか
 ▼ 454 イリュー@ライブスーツ 19/06/08 16:40:26 ID:citgvYWo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 455 TOg35azcXc 19/06/15 17:31:35 ID:L4UQu4nU NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ゴクリン「奴の鼻を開かしてやるためにも依頼受けた者がやるのが一番なんだよね」

なぜか強情に意見を曲げないゴクリン

言っていることは解るのだけど……

ポチエナ「あの、やっぱりおれには難しいのではないかと思うのですが……」

折角先輩たちがいるのに、力量の足りないポチエナが出張る意味はあるのだろうか

ポチエナが立ち向かっても、失敗して大惨事になる未来しか見えない

それとも何か深い意味でもあるのかな

エネコロロ「……意地が悪い 徹底しろって言いたいんでしょ」

考え込んでしまうと、副長がゴクリンを非難しながら答えを出した

ポチエナ「……どういうことでしょう?」

キノガッサ「出来ないことは出来ないっていうのが大事っていうこと
      あとから、やっぱり出来ませんでしたなんて言ったら面目立たないだろう?」

ゴクリン「どうしようもなくなったら仲間を頼るのもいいよ
     ただ、それに頼って自分で処理できない仕事を請け負うのは違う」

始めから上に任せるような気持ちになりかけていたことに気付き、恥ずかしくなる。



キノガッサ「……新メンバーの加入って今までなかったし、僕らにも課題多いなあ」

ゴクリン「そーだよ 所長がちゃんと教育してくれないからだよ」

エネコロロ「まだ手探りじゃないの なのにネチネチと 男らしくないわね」

ゴクリン「痛い目見た方が覚えもいいって言うじゃん 言うじゃん?」

エネコロロ「……また正論っぽいことを」

ゴクリン「それに失敗処理とか手続きとか受付の仕事じゃんさ めんどい」

エネコロロ「そっちが本音? あんたってのは……」

キノガッサ「まあまあ、リンなりに“ひみつきち”のこと考えてくれてる訳だから」

ゴクリン「そうそう、大事なことだよ?」

ポチエナを置いて、副長たちが言い合いを始めた

……喧嘩のようだけどどこか楽しそうで、真剣なのに険悪じゃないのが興白い
 ▼ 456 TOg35azcXc 19/06/22 17:03:11 ID:c2wEAzKk NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ゴクリン「だから、依頼受けた奴がやるのが一番なんだよ」

ゴクリンの言葉は一理あるために強く反論し辛い

勝ち誇ったような顔が少々腹立たしい

「ひょひょ、その主張でしたらキノガッサさんにやってもらっても構わないかと」

ポチエナ「……!! だ、誰!?」

と、ポチエナのごく近くで声が響いた 聞いたことのない声……

その得体の知れなさに鳥肌が立ってしまった



ゴクリン「いつの間にいたのさ」

「キノガッサさんと一緒に来ましたよ? まあ、気配は消してましたが」

ゴクリン「何故に」

「ひょひょひょ、ゴーストの性ですので」

エネコロロ「だから何なのよその理由は ポチエナが怯えちゃったでしょうに」

ポチエナは身構えてしまったが、回りは呆れただけの反応である

キノガッサ「ああ、ごめん 彼は僕の客で、サマヨールっていうんだ
      エナ君は会ったことなかったっけ 悪いポケモンじゃないよ」

サマヨール「ひょひょ、お初にお目にかかります サマヨールでございます」

ポチエナ「サマヨール…… っていうと、童話にも出てた……?」

確か、恐ろしい存在として描かれていなかっただろうか

思い出し、身を固くする

キノガッサ「悪役だと思った? 別に作中の幽霊も何もしてないんだけどね」

しかし所長はあっけらかんとしたものだ

サマヨール「何の話ですかな?」

キノガッサ「実はこんなのを書いてね――」

所長は“ひみつきち”の備え付けの棚から童話を引き出した



所長によると、童話の幽霊は『ぽけもん』たちを追い返しただけで酷いことはしていない

ただ、読んだ仔どもに内容を印象付けるため、わざと怖がらせようとはしていて

曖昧に描いてミスリードは狙っているんだとか……

確かにそれを聞いてから読むとそう見えてくる、かな
 ▼ 457 TOg35azcXc 19/07/01 01:51:24 ID:kijUtZx6 NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ゴクリン「それはそうと、依頼の件だけど 所長でも構わないってどういう?」

と、ゴクリンが一度逸れた話を戻す

サマヨール「対象が被っているんですよ 私の依頼と、そちらの依頼とで」

ポチエナ「そっちもヤルキモノが?」

そういうこともあるのか…… この場合は、ポチエナがするべきはなんだろう



ゴクリン「あ、やっぱそうなんだ」

質問をしておきながら解っていたような口調だ 所長も苦笑して頷いている

ゴクリン「で、対象確定したのはどして?」

サマヨール「匂い、ですね ポチエナさんの傷から同族の残滓が匂います」

同族? どういうことなんだろうか

キノガッサ「……というと、あれ斃さないといけない感じ? 厄介な……」

サマヨール「ひょひょ 面倒かけて申し訳ない」

ゴクリン「大丈夫 引き受けた以上ちゃんとやるから」

キノガッサ「いや、だからなんで君が偉そうなのさ…… まあ、頑張るけどね」

サマヨール「よろしくお願いします 恐らくそれで全部かと」


抱いた疑問は、話が流れて訊きそびれてしまった

まあ、流されるくらいなら知らなくてもいいってことかも知れないけど
 ▼ 458 TOg35azcXc 19/07/08 01:41:39 ID:Oh2sCu1w NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
エネコロロ「そうとなれば、善は急ぐべきじゃないの?
      よく解んないけど、抑えがなくなって暴れ出してるんでしょ?」

そういえば、森が変(?)なお蔭で彼等は動けなかったと言っていたか

よく解んなかったけど ……よく解んないんだけど

キノガッサ「えー…… 片付ける順番間違えたのかな?」

サマヨール「すみません 先にそちらを見つけるべきだったようですね」

キノガッサ「まあ、今言ってもしょうがないよね やるしかないんだから」

なんと、所長には解っているらしい 流石だ



キノガッサ「で、追える?」

所長は客だというサマヨールに視線を向け質問を投げた

サマヨール「……難しいかも知れません 捕捉するには気配が濃すぎます」

しかし相手は申し訳なさ気に項垂れるのみ それにゴクリンが疑問を挟む

ゴクリン「? 濃いのに駄目なの?」

確かに、不思議な発言かもしれない 濃くて駄目とはこれ如何に?

サマヨール「濃霧の発生源を探るようなものです 似たような濃さの気配が広がっている」

なるほど 中に入ってしまえば右も左もないのか

ゴクリン「じゃあ、毒蛾めをとっ捕まえるのは? 彼奴レーダーでしょ?」

エネコロロ「協力しそうにないじゃない どこに行ったかも解んないし」

ゴクリン「それもそっか」

早々に意見を取り下げたゴクリン そしてそのまま黙ってしまった


ポチエナ「あの、おれ、追えますよ? ヤルキモノ」

行き詰った議論の中、少し怖じ気付きながらも発言する

キノガッサ「本当かい、エナ君?」

所長はゆっくりとした口調で尋ねてきて

ポチエナ「ええ 一度会ってますし」

おれは、力を込めたつもりで答えた

ポチエナ「この鼻なら、間違いなく」
 ▼ 459 TOg35azcXc 19/07/13 00:54:10 ID:VQyAq6As [1/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
啖呵を切った後、ポチエナは副長と一緒に森を駆けていた

覚えた臭いの元へまっすぐ できるだけ最短距離で

副長は当たり前という顔をして後ろにぴったりついてくれている

これから勝てそうにない相手の下へ向かうというのに、平静でいるのは流石だと思う

それに、ポチエナがちゃんと目標に辿り着くことを信じてくれているのも嬉しい

ポチエナ「近づいてきました 間もなく接敵します」

エネコロロ「他に誰かいる?」

ポチエナ「いないと思います 臭いはヤルキモノだけ」

エネコロロ「そう じゃあ、予定通りにいくわよ」

走りながら会話している内に、獰猛な獣の姿が見えてきた

距離を詰めるのもためらうような近づき難い刺々しい気配がビンビンする

前に対面したときより酷い 知らず唾を飲み込んでしまった

エネコロロ「実際見ると予想以上の迫力ね
      でも、そのお陰で誰も荒れに近づかなかったようだし、それは助かるわ」

こちらの様子に気付いたのだろう副長が、気を紛らわすように言ってくれる

確かに、それだけ犠牲者が少ないと思えるのは不幸中の幸いかも知れない



ヤルキモノ「グルルルル……!! ガゥルッ!!」

相手はこちらの姿を目にするなり、唸りながら攻撃を仕掛けてくる

ヤルキモノ「ミツケタ……! ケイケンチダ……!」

ポチエナたちはそれを確認すると二方向に別れて駆け出す

相手から離れるように しかし副長とは離れ過ぎないように

近すぎず遠すぎず、距離を保って逃げに徹する
 ▼ 460 TOg35azcXc 19/07/13 01:10:42 ID:VQyAq6As [2/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ヤルキモノ「……!! マテ!! ケイケンチィッ……!!」

鬼気迫る、という言葉が似合うような表情をして突っ込んでくる

やっぱり以前より気迫が増している気がする

追いかけてくるのは想定内だったし、攻撃してくるなんて当たり前なんだけども

これは予想以上に危険というか、本当に注意していかないといけなさそうだ

ダメージを受けないために必死で駆け

ヤルキモノ「ヨコセ……! ケイケンチ……!!」

ごく近くで凶悪な風切り音が聞こえて肌が粟立つ

そこそこ全力で走っているというのに、距離を詰められている……!

エネコロロ「こっち見なさい! ほら!」

副長が少しこちらに近づいて“鳴き声”を出す

相手の注意はポチエナから逸れ、副長に向かった

その視界から外れるように動いたポチエナは、ペースを落としながら前へ進む

奴が副長に攻撃を当てそうな距離に近づいたら、今度はポチエナが声を上げる

更には尻尾を振って見せたりもして敵対心を煽った

相手はまさに暴走状態というに相応しく、冷静な判断もできないらしい

易々と挑発に乗った相手は目標を変更して襲ってくる

お蔭でこちらはダメージらしいダメージも受けていないままだ

そうして何度もスイッチを行いながら、徐々にだが順調に目的地へ向かう



そう ポチエナたちの役目は奴を倒すことでも、捕らえることでもない

ただ指定された場所に連れていくだけ

強くなくとも、それならできる いや、やり遂げて見せる!
 ▼ 461 TOg35azcXc 19/07/19 23:58:20 ID:HyA.3K06 NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
背後から迫る圧力は相当 致命傷ではないとはいえど生傷も増えてくる

自分たちよりも速い異常な怪物の攻撃をかいくぐりながらの走り続き

緊張感と乳酸の所為でもう疲労困憊

ポチエナ「…………!!」

また、敵の爪が身を掠めた

いや、血が滲みだした 浅いが切られているようだ

つい足がもつれそうになり、ぞっとする 足を止めたら、なんて考えたくもない

砂を撒いてフォローしてくれる副長に感謝しつつ気力を振り絞り駆ける

必死で走った甲斐もあって、所長が待っている筈の場所はもう目と鼻の先

この急傾斜を下れば、回りが切り立った崖に囲まれた天然の袋小路に着く

あと、もう一息……


ポチエナ「…………?」

ふいに圧力が消えた気がした

副長も気付いたのか、足を止めないまま振り返り

エネコロロ「な……!? ど、どこに行く気よ!?」

相手の予想外の行動に叫び声をあげた

ポチエナも慌てて振り返ると、傾斜路から外れていく相手の背中が見えた

ポチエナ「まさか、狙いに気付かれた?」

今まで愚直に行動してたのに、急に? どうやって?

……兎に角、理由が何であれ野放しにできるわけもない

突然の方針変換に頭を痛めながらも奴を追いかける

 ▼ 462 TOg35azcXc 19/07/20 02:13:38 ID:xRUQ1saI [1/4] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「……きゃあぁぁぁっっ!!!」


ポチエナ「!!」

奴が走っていったその先から、まだ幼い仔どもの叫び声

どうやらより仕留めやすそうな相手に標的を代えたようだ

エネコロロ「しくった……! 間に合え……!!」

焦燥感に駆られながら、スパートを掛けるように全力で足を前に出す

捨て身のつもりで踏み込み、爪を振り下ろす直前の背中を突き飛ばすことに成功

相手と共にもんどり打って転がる

「お、お兄ちゃん!? え、な、何が起きてるの!?」

身体の痛みを我慢しながら振り返るといつぞや会ったジグザグマが目を丸くしていた

怪我はないようで、一息つく

しかし状況は相変わらず拙いまま

所長との合流も先送りにされたし、保護対象も現れた

そもそも、奴の行動指針が読めない

目の前の獲物だけを狙うものだと思えば、仔どもへ向かった

あの袋小路に近づくのを避けたように見えたのは気の所為なのだろうか?

……だとするなら、このままそちらへ向かっても追っては来ないのでは

ヤルキモノ「Grrrrrrr……!!」

ポチエナ「あぶなっ!! ゆっくり考えてもいられないか!」

どちらにせよ、傾斜路からは離れてしまっている

距離的にはすぐ傍なのに……

エネコロロ「こっちよ!! この化け物!!」

副長が相手の気を引きつけて、傾斜路とは別方向へ走り出す

走り出す前にアイコンタクトを送ってきたところから見て何かを思いついたようだ

取り残されていたジグザグマを背後に庇いながら後を追う

とうとう白い獣に追い詰められた副長が、こちらを見て笑みを浮かべているのが見えた

その意図を読み取って、ポチエナは
 ▼ 463 TOg35azcXc 19/07/20 02:14:04 ID:xRUQ1saI [2/4] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告





ポチエナ「うぅぅ…… うおおおぉぉぉぉんっ!!!」





“吠え”た

それはもう全力で



対象として狙い定めた相手は、ポチエナから反射的に距離を取ろうと飛び退る

その先に地面がなかったとしても、だ

ヤルキモノ「……urrrruaaaa!!!」

奇妙な断末魔を上げながら相手は崖から真っ逆さま

勢い付けて跳んだようだから、途中で何かに掴まることもないだろう

エネコロロ「……お見事」

ポチエナ「副長の作戦通り、です」

改めて尊敬の意を込めて言うが、副長は何故か首を振った

エネコロロ「いいえ、作戦以上よ 私の考えでは私も今頃崖下にいるもの」

なんでも、副長ごと奴を突き落とせという指示だったらしい

ポチエナ「え? そ、そんな危ないこと……」

エネコロロ「やらないに越したことはないのだけどね」

必要ならやる、と 流石だ
 ▼ 464 TOg35azcXc 19/07/20 02:44:08 ID:xRUQ1saI [3/4] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
エネコロロ「お疲れ様 私達の仕事は終わりよ」

ポチエナ「あ! お、お疲れさまでした!!」

副長に言われ、ようやく実感が込み上げてくる

ヤルキモノを指定された場所へ送るという役目は、確かに果たしたのだ

エネコロロ「そんな固くならなくて良いわよ もっと自信を持ちなさい」

ポチエナ「は、はい! そうですね!?」

エネコロロ「後のことはキノに任せればいいわ アイツ、やるときはやるから」

ポチエナ「それは、はい 信じています」

後顧の憂いなど、ポチエナがするのは烏滸がましいというものだ

エネコロロ「……本当に、自信持ちなさいな」

ポチエナ「え……?」

エネコロロ「あんたはしっかり仕事を成し遂げた それも、私が思った以上の成果で」

ポチエナを諭すように目を向ける副長は

エネコロロ「もう、誰にも下っ端だの力不足だの言わせないわ」

優し気に微笑みながら温かい言葉をくれた



エネコロロ「それに、あなたはもう一つ成し遂げたことがあるでしょう?」

副長は続けて悪戯っぽく笑いながら見落としを指摘する

エネコロロ「ねえ? お嬢ちゃん?」

副長に水を向けられた仔どもは、しばしもじもじと口籠って

ジグザグマ「あのね、あのね 怖いのから守ってくれて、ありがとうお兄ちゃん!」

感謝の言葉を送ってくれた

彼女は、怖い思いはしたかもしれないが、傷一つない

もしも、ポチエナが間に合っていなかったならば、どうなっていたか

ポチエナ「そっか…… ちゃんと守れたんだ」

ジグザグマ「うん! お兄ちゃんは、ヒーローさんだよ!」
 ▼ 465 TOg35azcXc 19/07/20 02:59:13 ID:xRUQ1saI [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
憧れていたんだ 誰かを守れる強さに

守ろうと思える優しさに その勇気に

童話によくある 万能の英雄のような何かに



少しでも近づこうと目指してみて よくわかった

道のりは遠い とてもなれやしない

おれはまだまだ弱いまんま



でも 弱くたってできることはある

こんなおれでも 誰かを助けることが出来るんだ



大きいことなんかできないけれど

少しは自信を持って 前を向いて

出来ることだけやればいい

それでいいんだって 今は判った





――fin.

 ▼ 466 TOg35azcXc 19/08/11 23:13:14 ID:JWTkICcA [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





「ある夏の終わりの話」




 ▼ 467 TOg35azcXc 19/08/11 23:14:41 ID:JWTkICcA [2/3] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「いやぁ、本当にありがとうございましたス」

「世話になったわ じゃあね」

プラスル「はい! こちらこそありがとうございました!」

“ひみつきち”から依頼者が笑顔で帰っていく
それを見送る彼女も嬉し気に微笑んでいる

その光景を見て、この組織を始めてよかったなと感慨を覚えつつ近づいた

プラスル「あ、キノガッサさん いらっしゃいませ」

キノガッサ「邪魔するよ お疲れ様」

いつも通りの挨拶を交わし、“ひみつきち”の中へ

ゴクリン「所長、いらっしゃい」

キノガッサ「ああ、うん なんか雰囲気いいね?」

ゴクリン「納得いく形で一段落したみたいだよ、マイナンたち」


キノガッサ「へえ、迷路山の調査は上手くいったんだ」

ある種確信しつつ言うが、

マイナン「……えっと、それは」

ルリリ「解決はした、というか……」

しかし返って来たのは曖昧な表情と返事で

キノガッサ「どういうこと?」

責めるつもりではなくただ単純に疑問に思い、問い質してみる



プラスル「マップは埋まり、噂の正体も確認し、問題も残さず依頼を終えました」

一匹晴れやかな表情のプラスルから状況を聞き、納得する

ゴクリン「依頼は失敗扱い 報酬はパァで反省点も多いけどね」

わざとらしく呆れるようにグチグチと小言を呟いている

それがマイナンたちの顔が晴れない理由になっているようだ

キノガッサ「そっか ……今回については不問にしとこうよ、ねえ」

ゴクリン「失敗ばかりは組織的には問題だろうに はあ…… まあ、いいや」

労う態で水に流すように言うと、溜息を吐きながら引いてくれた

マイナン「所長…… ありがとうございます」

感激した目を向けられたが、苦笑いで返すしかない
 ▼ 468 TOg35azcXc 19/08/11 23:33:55 ID:JWTkICcA [3/3] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
リンって難儀な性格してるよね…… 普段呑気なくせに


最初から受け止めていたのだろうに、怒った振りなんてして



……まあ、こっちの所為だと思うけど 頼りない所長で申し訳ない

ロロもそうだけど、“ひみつきち”についてリンにも甘えっぱなし、だなぁ

一匹でつい反省してしまった



ゴクリン「……適材適所ってやつでしょ 所長は所長、ぼくはぼくだ」

見透かされているようだ 本当に、敵わないな

キノガッサ「そうかもね よろしく頼むよ」

ゴクリン「受付係でいいなら、のんびりやってくよ」



マイナン「あれ? 何の話?」

ルリリ「所長とゴクリンって時々念話でもしてるんじゃないかと思うんだけど」

プラスル「エスパーじゃあるまいし、それはないでしょう?」

ルリリ「や、判ってるけど 副長もそうだけど、なんか阿吽の呼吸って感じで羨ましい」

プラスル「そうですね 言葉にしなくても通じる仲っていいですよね」

マイナン「僕たちもそういう仲になれるように頑張らないと ね! プラスル!」

プラスル「う、うん 頑張って何とかなる、のかな……?」

ルリリ「あとなんで『プラスル』の語気強めてるの? 私も頑張るけど」

マイナン「まあ、そこは何というか、仲深めたい相手だし?」

プラスル「そうだね! お兄ちゃんと阿吽の呼吸もいいかもね!」

ルリリ「……兄の方に残念臭がするのは何故?」
 ▼ 469 TOg35azcXc 19/08/12 23:05:26 ID:qtQ2d3FE NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
キノガッサ「リン、新しい依頼とか来てる?」

ゴクリン「うーん…… 今溜まってるのは薬関係だけだね」

キノガッサ「ロロの専売特許か…… またしばらく依頼待ちかな」

仕事がないと不安になってしまう 薬学の勉強でもしようかな?

ゴクリン「まあまあ 寧ろ所長は働き過ぎなくらいでしょ」

キノガッサ「そうは言っても、始めた以上はしっかりやりたいじゃないか」

言い出しっぺは自分なのだし、特にその思いは強い


マイナン「しっかりやりたいのはこっちも同じだって」

ルリリ「そうそう 一匹で片付けないでこっちにも仕事回してよ」

しかし返されてきたのはやる気に満ちた反応で
自分が始めた活動にやりがいを感じてくれているのだと判った

キノガッサ「……そっか、ごめん」

そのことを嬉しく思いながらも、一匹で片付けてることに申し訳なさを感じる

キノガッサ「じゃあ、次来た依頼は一緒にやろうか」



マイナン「……そこはこっちに任せる、とかじゃないの?」

キノガッサ「そうしたら僕の方が暇になっちゃうじゃないか」

そこはそれ 譲れないかな

キノガッサ「まあ、依頼内容によって応相談かな」

寧ろ一匹で取り組んだ方が早い可能性もあるし その時は任せてみようかな

プラスル「なんにしても、依頼が来ないと始まりませんけどね」
 ▼ 470 TOg35azcXc 19/08/13 01:36:01 ID:AoMQ6pjs NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

「すみません お邪魔してもよろしいでしょうか?」


噂をすればなんとやらというように、誰かが“ひみつきち”の前にやってきた

マイナン「僕が出る……! はーい! いらっしゃいませー!」

ルリリ「あっ! ズルい! 私も!」

競うように出迎えにいく二匹 どれだけ待ち遠しかったのやら

プラスル「じゃあ、私ロズレイティーでも入れてきますね」

「いえいえ、お構いなく」

プラスル「そういう訳にもいきませんよ ちょっと失礼しますね」

さらにプラスルもお茶汲みのために席を立った

秘書然としてきたのは喜ぶべきなのだろうか?

「ひょひょ 微笑ましいですね」

キノガッサ「あはは そう言ってもらえるとありがたいよ」

本当 いい仲間に恵まれたものだ

他者に言われてしみじみと ――ってあれ?

プラスルも席を立ったわけだし、今この場にはキノガッサ一匹じゃ?



疑問と旋律を覚えながら周りを見渡せば、キノガッサのすぐ後ろに黒い影が

肌が粟立つのを感じながら急いで飛び退り、誰何する

キノガッサ「――な、何者……!?」

こちらの緊張にも関わらず相手は悠然と佇んでいて、場違いなほどゆったりと声を出した

「お久しぶりです、キノココさん 以前は姪がお世話になりました」

その声と言われた内容から、遅ればせながら相手の正体に気付けた


キノガッサ「もしかして、ヨマワル!?」

サマヨール「はい 進化しまして サマヨールにございます」

姿が変わってたから、何なのか解らなくて本当に怖かった というより

キノガッサ「心臓に悪いよ…… 普通に現れてよ……」

出迎えをスルーしていきなり背後に現れるのは止めて欲しい……

サマヨール「ひょひょ ゴーストの性でございますので」

だからなんなのその論理……
 ▼ 471 ードラン@ラブタのみ 19/08/15 03:31:47 ID:KXacW4Z6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 472 ッサム@フライングメモリ 19/08/15 08:04:04 ID:4DLgm6Yo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 473 TOg35azcXc 19/08/16 02:19:05 ID:e0zwd5oY NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
マイナン「あれー? 誰か来てたよね? 誰もいなかった――って、わひゃあ!」

ルリリ「なに、変な声出し――っきゃあ!」

あ、戻ってきた うんうん、それは驚くよね

サマヨール「わざわざ出迎えありがとうございます 依頼しに来た者です」

平然と言うことじゃないと思う 普通に入ってきて欲しい

マイナン「なんっ……! なん、ななな……! い、依頼者か!!?」

慄いていたと思ったら急に目を輝かせるマイナン それでいいのか?

ルリリ「歓迎するよ! どんな案件を持ってきたの?」

そんなに仕事がやりたいのか いいことだけども

プラスル「お茶が入りました ……ところでさっき私、誰と会話してたんです?」

反応が遅いっ

サマヨール「では、ありがたく頂きます あと話してたのは私ですね」

プラスル「ああ、そうなんですか 幻聴じゃなくてよかったです」

そして反応が変っている ほのぼのしてる 驚かないのか……



プラスル「それで、依頼にいらしたのですよね?」

サマヨール「ひょひょ そうです 是非ともキノココさんに手伝いを頼みたいのです」

ルリリ「え? 所長だけ?」

サマヨール「そのつもりでしたが ひょひょひょ 皆さんも手伝ってくださるので?」

マイナン「勿論! やるやる!」

サマヨール「ひょひょ 内容も知らずに安請け合いしていいのですか?」

マイナン「あ…… う、うん! 大丈夫だって!」

ルリリ「前それで失敗したじゃない…… で、どんな仕事なの?」

サマヨール「ひょひょ 別に聞いた後取り消しても構いませんよ」



サマヨール「なにしろ、皆さんにやってもらいたいのは、幽霊退治なのですから」



 ▼ 474 ージュラ@ゴッドストーン 19/08/17 06:43:50 ID:B41kTK2Q NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 475 TOg35azcXc 19/08/18 00:52:26 ID:u0IUJdw6 NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
マイナン「お化け退治? また?」

サマヨール「ひょひょ 以前にもご経験が?」

マイナン「や、この前のもそういう依頼だったなって ちょっと違うか」

迷路山の調査のことだね お化けが出るという噂は真であり偽だったということで

ヌケニンはいたけど、特段悪さをする個体じゃなくて、問題はないとか

ルリリ「幽霊ってそれ、迷路山のヌケニンのことじゃないよね?」

プラスル「彼は退治されなくてはならないような方ではありませんよ?」

ルリリたちも庇うように言葉を重ねた

サマヨール「ひょひょ いえ、その方はずっと前からいるのではありませんか?」

ルリリ「う、うん そう言ってたけど」

サマヨール「では違うのでしょう ひょひょひょ」

依頼内容的にはヌケニンは対象外らしい

サマヨールのその言葉に、三匹は安心した顔を見せる

キノガッサ「となると、僕らが追うべき幽霊ていうのは?」

しかし依頼の話はまだ途中 まず最後まで聴いてみなければ

……話の腰を折ったのはこちらだというのは突っ込まない方向で



サマヨール「夏も盛りを過ぎ始めた今の時期、私達には特に意味のある時期です」

仕切り直すようにサマヨールが改めて話し出した

キノガッサ「……ああ、お盆か」

プラスル「なるほど 御先祖様の魂たちが一時戻ってくるんですね」

サマヨール「ええ 通常認可された魂だけが此岸に戻るのですが、不手際がございまして
      悪しき魂たちも勝手にこちらに流れ込んでしまったみたいなのです」

マイナン「ええ!? ちょっと、何やってんのさ!!?」

サマヨール「お恥ずかしながら抑え込められず…… 申し訳ない」

目に見えて落ち込む姿は本気で遺憾だと告げているようだ



ルリリ「ちょ…… ちょっと待ってよ…… 悪しき魂ってことは、それ……」

サマヨール「ひょひょ 文句なしの悪霊でございます」

プラスル「…………ひっ!!」
 ▼ 476 TOg35azcXc 19/08/20 02:43:14 ID:bRAkfnK2 NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
マイナン「あ、悪霊…… お化け…… ほ、本物の……?」

ルリリ「へ、へえ…… 今、そんなものが溢れてるんだ……」

プラスル「あうう……」

ゴーストポケモンの口から出た「悪霊」の単語に、皆蒼褪めてしまう

マイナン辺りは先の発言を後悔しているかもしれないな



ゴクリン「依頼したいのはそれらへの対処ってことでいいのかな?」

サマヨール「ええ そうなります 私だけでは手に余るもので」

ゴクリン「ふむふむ、具体的にどんなのなの? ヨマワルとか?」

サマヨール「いえ、ゴーストタイプもいないことはないのですが、それとは別でして」

ゴクリン「別ねぇ…… ポケモンじゃないとか?」

サマヨール「そうですね イメージとしては近いかと」

キノガッサ「それって僕たちに対応できる案件なの?」

サマヨール「むしろ、キノココさんだからこそ――」

マイナン「ちょ……! ちょっと待って……!」

慄いたような声でマイナンが、というより三匹を代表して、という風に待ったをかける

マイナン「何でそんな淡々と話進めてんの!? 怖くない!?」

まるで理解できないという顔で声を出す ……気持ちは判らなくもないけどね

キノガッサ「怖くないわけがない 僕は“臆病”なんだよ?」

ルリリ「え…… じゃあ、なんで……?」

キノガッサ「怖いからこそだよ 情報がないのが一番怖い だから訊きたいのもある」

『解らない』ものほど怖いものはない 逆に、解っていれば対処できることもある

だから情報は集めるべきだ 仲間ごと共有できるのはこの上ないだろう

勿論、解ったからと言って恐怖がなくなるものとは限らないけど

キノガッサ「それに、私営ギルドは僕が始めたことだ これは僕のやりたいこと
      聴きもせず依頼を突っぱねるなんて、できるはずもないだろう?」

最後に逃げださずにいられるのは、意地、みたいなもののお蔭かな





ゴクリン「いやだって、実働はぼくじゃないし」

…… 台無しじゃない?
 ▼ 477 ーパ@がんせきプレート 19/08/24 02:55:15 ID:P99k0R4M NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 478 ッチャマ@メガペンダント 19/09/03 23:59:24 ID:DCucGQXc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 479 イプ:ヌル@おだんごしんじゅ 19/09/06 21:41:03 ID:b4TU3pKA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 480 リキザン@やわらかいすな 19/09/06 22:13:05 ID:MlEQfTVw NGネーム登録 NGID登録 報告
>>477
>>478
>>479
支援ありがとうございます
 ▼ 481 援有難う 代弁有難ね◆TOg35azcXc 19/09/07 00:55:36 ID:CEF2802c [1/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
マイナン「なんだよそれ! もっとやる気出せないのか?」

ゴクリン「ぼくにはぼくの役目がある!」

ルリリ「それズルいよ! もう!」

プラスル「ちゃっかりしてますよね…… いえ、必要な役目ではあるんですけど」

ゴクリン「ふふん この役目は譲らないもんね」



キノガッサ「……ん リンのことは置いといて、説明続けて」

微妙な空気が流れる中一つ咳払いをし、軌道修正してもらう

サマヨール「キノココさんの心配はご尤も なにしろ幽霊に技は効きません」

あまり良くない情報にこちらは少し騒めいてしまう

ゴクリン「効かないの? じゃあどうすればいいっての?」

プラスル「所長に何とかできるんですよね?」

心配そうにする彼女らに対し、サマヨールは悠然とどこからか中身の詰まった袋を出した

中には何やら紅白の球が詰まっている

サマヨール「ひょひょ 抜かりは有りません 対応策を準備しております」

マイナン「は? い、今どこから?」

ゴクリン「ていうかそれなに?」

サマヨール「これは幽霊を異空間に閉じ込めるための道具、“精霊球”です」

手渡されたそれは奇妙な材質で出来ている

しかしこれをどう使うのだろう?

 ▼ 482 TOg35azcXc 19/09/07 01:06:57 ID:CEF2802c [2/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
サマヨール「その“精霊球”は、霊に投げてぶつけるとその霊体を吸い込みます」

キノガッサ「へえ 投げればいいのか」

サマヨール「ええ しかし霊たちも大人しくするとは限りません 抵抗もあるでしょう
      普通に使っても出てきてしまうことがあります」

キノガッサ「普通に、ってことは大人しくさせる方法もあるんだね」

サマヨール「はい 逃がさず捕らえるために、こちらを使います」

そう言って彼はまたどこからか二つの袋を取り出す

マイナン「いや、だからどっから」

ゴクリン「ふむ こっちの白い粉は“塩”だね?」

サマヨール「ひょひょひょ それを使うことによって霊を弱らせることが可能です」

プラスル「こっちの袋は“ドール”……ですか? いっぱい入ってますね」

サマヨール「ひょひょ それは霊をおびき寄せる効果があります」

“ドール”で誘き寄せ、“塩”で弱らせる そして“精霊球”に閉じ込める、と

キノガッサ「これらを使って送り返すんだね?」

サマヨール「ひょひょ その通りでございます」

その認識で間違っていないと頷かれ、少し胸を撫で下ろす

幽霊という得体の知れない存在でも、対処できるのだと解れば落ち着ける

サマヨール「ちなみに、“精霊球”ですが、ポケモンには効きませんので悪しからず」

キノガッサ「あくまで幽霊だけってこと?」

プラスル「……では、ゴーストポケモンには?」

サマヨール「残念ながら効きませんね」

キノガッサ「なるほど…… でも普通のポケモンなら技も効くだろうし大丈夫かな」

 ▼ 483 TOg35azcXc 19/09/25 17:49:54 ID:yrDA7J6U NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
サマヨール「あとは、幽霊の分類にもお気を付けください」

ゴクリン「何種類? 難易度順にどうぞ」

サマヨール「ひょひょ 大まかには4種類かと 難易度はまちまちですね」

ゴクリン「ええー じゃあ上位下位の区分では?」

サマヨール「それでしたら――」

マイナン「ねえ待って なんでそんなふざけられるの? ゲームじゃないんだよ?」

ゴクリン「似たようなものじゃない 法則に則って課題を満たしてクリア 違う?」

ルリリ「……そう言われると、そう、かも?」

ゴクリン「単純に考えた方が良いでしょ その上でルール確認が大事 ――続けて」

サマヨール「ひょひょ 一つ目は“浮遊霊”になりますね」

ゴクリン「それが下位?」

サマヨール「はい 此岸へ来た時の幽霊はほぼこの形態です」

ゴクリン「すると、上位形態に変わってしまうことがあると? 時間との勝負じゃない?」

サマヨール「ええ “地縛霊”化したり“憑依霊”化したりすると厄介だと思われます」

ゴクリン「うあ 字面から考えても面倒そう……」

ルリリ「いや、面倒とかそれ以前に……」

プラスル「普通に怖いですよ……」

サマヨール「“浮遊霊”は行動に縛りがない代わりに捕獲難度は低めだと思います」

キノガッサ「碇を下ろしてないようなもの、なのかな?」

ゴクリン「踏ん張りが効かない、と じゃあ上位種は真逆な訳だ」

サマヨール「ひょひょ 土地に憑くか生命に憑くかの違いはありますがね」

ゴクリン「憑いてるときはまず引き剥がす工程もいるの?」

サマヨール「理解が早くて助かりますね」

キノガッサ「……確かにちょっと厄介かも 急ぐべきか」

サマヨール「“浮遊霊”は“浮遊霊”で注意して欲しいですがね」

ゴクリン「どういうふうに?」

サマヨール「不用意な接触は危険です 憑かれたり飛ばされたりされる恐れがあります」

マイナン「何それ怖い……」

 ▼ 484 TOg35azcXc 19/10/06 23:27:19 ID:rVmg1LXs NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
浮遊霊、地縛霊、憑依霊…… どれも一筋縄ではいかなそう――

キノガッサ「あれ? 4番目って何?」

ふと疑問が出てきた 上位の霊よりも厄介なのだろうか

サマヨール「それは別枠のようなものですね 厄介ではあると思います」

ゴクリン「別枠ねえ…… それは?」



サマヨール「ひょひょひょ “ゴーストポケモン”です」



平然と言われた言葉にみんな体を強張らせ、身構えたり後退ったりしてしまった

ルリリ「あ、貴方…………」

サマヨール「あ、いえ、私ではないですよ 悪意あるポケモンもいるという話です」

マイナン「紛らわしいっ! 怖いわっ!!」

叫んだのはマイナンだけだったけど、大体皆同じ気持ちだったと思う

勘違いを恥ずかしく思いながら体制を解き、誤魔化すように呟く

キノガッサ「倒し方が違うのも相手にいるってことだよね」

ゴクリン「何それ面倒い」

サマヨール「ひょひょ 迷惑かけます」

ゴクリン「いいよいいよ 依頼だし」

……いや、だから実働は君じゃないだろうに



サマヨール「それと、幽霊は日中では見え辛いものであることもお気を付けください」

ルリリ「…………つ、つまり?」

ゴクリン「夜間の方が確実ってことでしょ」

幽霊退治は夜に 成程、道理だ

ただ、その組み合わせが好ましいかどうかは別であるが

プラ・ルリ「「―――――ひぅっ……!」」

マイナン「ちょっ 無理無理無理!」

キノガッサ「…………参ったね」

抱き合ったり首を振ったり首を振ったり蒼褪めたりと皆それぞれ拒否反応を示す
 ▼ 485 ブンネ@たてのカセキ 19/10/11 19:40:45 ID:cN.wq2Dg NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 486 TOg35azcXc 19/10/26 23:15:52 ID:mW8M3TzI [1/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
――落ち着くまでしばらくかかってしまった

いや、まだ震えは止まってないけれど

そんなこちらを見て少し申し訳なさそうな声でサマヨールは言う

サマヨール「残念ながら日中の幽霊は見え辛いだけでなく、気配が希薄なのです」

ゴクリン「気配? 分かるの?」

サマヨール「はい 夜間であれば私には大体の位置が解ります」

ゴクリン「ふうん 闇雲に探す必要がないなら安心だね」

……確かに、全く情報なしで探すよりかはマシではあるけれど

マイナン「い、意味判って言ってる? よ、夜だぞ?」

マイナンが震える声でどれだけ剛毅なのかと問う

想定されるシチュエーションが怖くないのか、と しかし

ゴクリン「ごめーん その時間起きてらんない それにぼくは受付だし」

なんのことはない 直面する気がないだけだったようだ

ゴクリンらしくて呆れてしまう

マイナン「……お前って奴は はあ……」



ゴクリン「っていうか、皆“幽霊”退治に出たら昼の業務どうすんのさ」

どれだけやる気があろうとも、不眠で活動など出来ないだろうと言う

今ここにいないロロには昼動いてもらうけれど、手が足りなさそうだ

ゴクリン「嫌なら嫌って言えばいいんだよ 役割分担――」

マイナン「一抜け! お化けは、ない! 無理!」

ルリリ「あ! ずるい! 私もお昼が良いよ!」

プラスル「えっ えっ あうぅ……」

マイナンとルリリの反応が神速である どれだけ嫌なんだ

プラスルが出遅れてしまって涙目だ それでいいのか君ら

恐怖を前にチームワークがガタガタになっている……
 ▼ 487 TOg35azcXc 19/10/26 23:40:18 ID:mW8M3TzI [2/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ゴクリン「だ、そうだけど、プラスルはどうするんだい?」

プラスル「えっ わ、私ですか? え、えっと……?」

狼狽えていたところに声を掛けられて、プラスルはさらに慌ててしまった

ゴクリン「抜けるんなら今だよ どうする?」

プラスル「え、えと…… 私は、あの…… あの……」

声を震わせた彼女は、しかし言い淀んだ

そして皆を見回して遂に黙り込み、俯いてしまう

マイナン「プ、プラス――「シャラップ」――うえっ?」

心配そうな声を掛けかけたマイナンの声を、リンが遮る

しかしそれ以上は何も言わず悠然としたままプラスルを見つめている

機先を制されたマイナンはそわそわしているが目線で黙らされているようだ

ルリリ「……なんか、ゴクリンってプラスルには優しいよね 贔屓?」

沈黙と雰囲気に耐えられなくなったようにルリリが疑問を口に出した

マイナン「そ、そういえば確かに…… ――ハッ! まさかうちの妹に気があったり!?」

ゴクリン「一回死んでから言って?」

マイナン「酷すぎない!!?」

……つまり、気がある云々は言いがかりだと言いたいらしい

マイナン「勘違いならいい いや、良くない なんでこんなに扱いに差があるんだ」

マイナンはぞんざいな扱いに抗議の声を漏らす

ゴクリン「同じに扱われたかったらもっと控え目になりなよ それで平等だ」

しかしそれに対するリンの受け答えもぞんざい極まりないものだ
 ▼ 488 TOg35azcXc 19/10/27 00:39:52 ID:61FAQQkk NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
マイナン「こんの…… ヤな奴だよ、本当に……」

リンの態度に対し、マイナンは苛立たし気に呟く

ゴクリン「そうかい 照れるね」

対し、黙っとけばいいのにリンもからかうように返す

マイナン「褒めてないよ!? 何なんだ、お前は!?」

ゴクリン「受付担当のゴクリンですが、何か?」

マイナン「知ってる!! このヒキコモリめ!!」

ゴクリン「失敬な ちゃんと出勤してるじゃないか」

マイナン「偶には実働もしてみたらどうだよ!? 大変なんだぞ!?」

ゴクリン「やだよ 大変なんだし」

案の定、口論に発展

マイナン「うがー!! この……! この……!」

いや、マイナンが一方的に噛み付くのをリンが柳のように受け流しているだけか





プラスル「あの! 私!!」



外野がごたごた話し込んでいる間に、プラスルは考えをまとめたらしい

意を決したように声を出して注目を集めた 

そして



プラスル「……行きます ――幽霊退治」

身体を震わせながら、しかしプラスルははっきりと声に出す





ゴクリン「そう」

プラスル「はい」

リンの端的な確認に同じく端的に答えた彼女は、強い目をしていた
 ▼ 489 ッカグヤ@トポのみ 19/10/29 16:48:18 ID:ytmsSb/c NGネーム登録 NGID登録 報告
プラスルちゃん、この中で最年少っぽいけど、強くてかわいい、大好き
 ▼ 490 TOg35azcXc 19/11/02 17:02:27 ID:xtgQUjW. NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
マイナン「プ、プププラスル!? 本気!!?」

ルリリ「お、お化けだよ!? しかも夜! こ、怖くないの!?」

予想外に過ぎるプラスルの答えに、二匹は慌てふためく

その声に滲むのは心配と恐怖と、ある種の焦りと

そんな彼らに、プラスルは困ったように笑いながら

プラスル「怖いですよ?」

あっけらかんとそう答えるのだった



マイナン「じゃ、じゃあなんで!?」

本当に理解できないとばかりにマイナンが声を出す

発言の内容と起こそうとする行動が繋がらず混乱の極みといった表情だ

リンの言じゃないが、怖いなら抜けてもいいし、抜けるなら今だろうに

そんな気持ちでいるこちらに対し、プラスルは更に困ったように笑って

プラスル「だって、私まで抜けたらキノガッサさんだけになるでしょう?」

落ち着いた声音で自らの発言の理由を述べた



マイナン「ん? うん そうなる、ね?」

しかし今一前後が繋がらず困惑する

そんな様を見て取った彼女は苦笑しながらも続ける

プラスル「幽霊も、夜闇も、怖いです きっとみんなそうでしょう?」

確認するように皆を見回し

最後の一匹のところで悪戯っこく微笑んだ

プラスル「キノガッサさんだって、そうなんじゃないですか?」

……まいったね ほんと


 ▼ 491 TOg35azcXc 19/11/11 00:16:06 ID:e2DMlk7U NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
マイナン「え? 所長が? まっさかー」

ルリリ「そうそう まさかそんなわけないじゃない」

プラスルの台詞を笑い飛ばす二匹

今までの実績に対する信頼からか、まるで疑わないらしい

しかしだからこそというべきか、リンは呆れた溜息を吐きだす

ゴクリン「君等はそんなんだからそんなんなんだよ」

マイナン「何が言いたい?」

ゴクリン「さっき言ったじゃん 控え目さが足んないって」

マイナン「は? 悪かったね、せっかちな性分で!」

また喧嘩になる…… なんで煽るんだか……



ルリリ「ま、まあまあ えっと、つまり所長も乗り気じゃないの?」

少し落ち着かせたところで話の矛先が再度こちらを向いた

キノガッサ「……まあ でも、依頼だし、放って置けそうでもないでしょ」

彼岸から悪霊があふれ出すなんて事態なのだ



キノガッサ「って、あれ? 具体的に何があるの?」

そういえば幽霊が出るまでは訊いたが、その後話は進んでいなかった

サマヨール「予測できかねますね」

しかし返って来たのは曖昧な情報だった

サマヨール「此岸に勝手に出でた魂は少々歪むのが解っていましてね」

キノガッサ「歪む?」

サマヨール「はい 無理に理に反した反動なのか、多かれ少なかれ変質するようでして」

霊というのは彼岸では生前と同じような形態でいられるらしい

そしてその変質は記憶の混濁や自我の喪失、姿や能力の変化など多種多様だという

サマヨール「そのため、彼らが何を思いどんな行動をするのかは解りません」

キノガッサ「……なんにせよ、此岸にいい影響はなさそうだね」


 ▼ 492 TOg35azcXc 19/11/11 01:11:07 ID:QdrMoFyw NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
プラスル「先ほど挙げられた事例って、凄い幽霊っぽいですよね……」

ルリリ「イ、イメージ通りっていうか、だからあんなイメージがあるのかっていうか……」

聞かされた話に彼女らはまた震えだしてしまう

確かに、そういう話ではどうしても良い感情にはなり得ない

勝手に怖いイメージばかりが頭を占め始めてしまう

そのうち、何かに気付いたように息を呑む音がした

マイナン「……お、お前は歪んでないのか?」

若干身体を強張らせながらマイナンが問いかける

皆、また身構えてしまい、サマヨールに注目してしまった

だがやはり彼は飄々としたまま

サマヨール「ひょひょ いいえ 私は今回の件に当たるために来てますしね」

どうやら歪まずに行き来する方法があるらしい そりゃそうか

サマヨール「なのでこの件、しっかりやらないと上に怒られるんですよ
      いやはや、下っ端は辛いですね ひょひょひょ」

彼岸にも色々あるんだな そりゃそうか ……大変だな



サマヨール「まあ、此岸担当になったのも私情が大きいですから仕方ありませんね」

ゴクリン「私情?」

サマヨール「ええ その節はお世話になりましたね、キノココさん 今回もお願いします」

リンが零した疑問に肯定しつつこちらに礼を取ってくる

感謝と信頼の言葉に、嬉しさが込み上げてくるとともに肩の力が抜ける

キノガッサ「承ったよ ……あの仔は元気?」

サマヨール「ええ 元気も元気ですよ 私たち、死んでますけど」

そういえば夜の森なんて以前も駆け回ったなあ、などと思い返して苦笑してしまう

 ▼ 493 TOg35azcXc 19/11/23 14:01:30 ID:wWCA3Uo. NGネーム登録 NGID登録 報告
キノガッサ「さて、基本的な情報はこれくらいかな」

幽霊退治の準備はそこそこ、といったところか


プラスル「……本当に、大丈夫なんですか?」

ふと、心配の声がこちらに向けられた

彼女の言葉に軽く黙考した後

キノガッサ「確実なことは言えないね」

正直なところを答える

当然、物言いたげな視線を向けられることになるが

キノガッサ「まあ、詳しいのは居るだろうし」

それは傍らの依頼者へと流した

サマヨール「ええ、私はご一緒しますとも 元々、私がやるべき仕事なのですから」

キノガッサ「だろう? 後は実地で追々だね」

依頼者には悪いが、どうにもならないなら手を引くつもりだ

キノガッサ「なんなら君も休んでても――」

プラスル「――そういうことじゃ、ないです」

慮ったつもりで放った言葉には不服が返ってきた

彼女も怖がりで降りたがっていたように思ったのだが……

プラスル「いえ、私も行きます ……必要でしょう? 明り取り」

しかしこちらの想定に反して彼女は微笑んで続けた

……確かに 暗い夜道にその存在は有難い


ゴクリン「話は纏まったかい? ぼちぼち日暮れだけど」

キノガッサ「もうそんな時間なのかい」

気付けば、話しているうちに大分時間が経っていたらしい

ゴクリン「無事に戻ってこれることを祈っておくよ」

キノガッサ「まさか 無茶はしないさ」

ゴクリン「ふーん……」

キノガッサ「……何だいその顔 ……とにかく、行って来るよ」

プラスル「行ってきます」

ゴクリン「はいはい 副長にはぼくから言っておくよ」
 ▼ 494 ロバレル@キトサン 19/11/25 07:04:29 ID:ADM.yYWs NGネーム登録 NGID登録 報告
シエンネ
 ▼ 495 TOg35azcXc 19/12/08 13:13:35 ID:f6GsaJvc [1/6] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
キノガッサ「異様な雰囲気だな……」

黄昏に暮れる森は既に暗く、妙な気配が騒ついている

先の話を聴いた所為か、まだなにも起こっていないにも関わらず身構えてしまう


プラスル「……! で、電気、点けますね」

彼女も辺りに満ちる怖気に気圧されているようで震えている

それでも、己の役目を忘れずに果たそうと懸命に電気を出そうとする

サマヨール「ひょひょ 光量は最小限にしてください」

が、急に発せられた注文に驚き、手を止めてしまった

恐らく、不安を消す意味も込めて大幅に明るくしようとしていたのだろう

表情に困惑の色が強く出ている

プラスル「……な、何ででしょう?」

指示の理由を問い掛けるのは、やはり納得するためだろう

得体の知れない闇に囲まれる状況はそれだけ恐怖が襲ってくるのだ

意に反した注文に答えるには納得のいく理由がいる


サマヨール「いえ、あまり一気に幽霊が集まっても大変でしょう?」

あっけらかんと、寧ろこちらを心配する声音で出された答えに、彼女は頬を引きつらせ固まった



プラスル「ゆゆ、幽霊って、光に集まって来るんですか!?」

驚愕の事実に衝撃を受ける

幽霊は光に弱く、恐れているイメージがあるのだが

サマヨール「いえ、光に、というのは少し違います 彼らは生者の気配に寄ってくるのです」

光の元には生者がいるという発想らしい 成る程、道理だ

どちらにせよ光に弱いわけではないのか

というか、その言い方だと

キノガッサ「僕らは囮だった訳だ」

サマヨール「おや、人聞きの悪い 効率的な手段を選んだまでですよ」

……確信犯か
 ▼ 496 TOg35azcXc 19/12/08 13:18:11 ID:f6GsaJvc [2/6] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
プラスル「え? え? ……ど、どういうことなんでしょうか?」

彼女はこちらのやり取りについてこれなかったらしい

キノガッサ「こいつは今生者に引き寄せられると言ったよね」

プラスル「は、はい」

キノガッサ「そして、幽霊が集まってくること事態は問題視してなかった」

プラスル「そう、ですか? あ、確かに『一度に沢山は困る』みたいな言い方でした、ね?」

キノガッサ「そう で、僕らは生者だ」

プラスル「えっと…… 幽霊は、私たち目掛けて、集まって……くる?」

そういうことになるのだろう まるで活き餌だ


キノガッサ「……聞いてないんだけど?」

先の説明の中に含まれていてもいい内容だと思う

サマヨール「やや! 話していませんでしたか!? これはうっかりしました……」

指摘に対して、本気で申し訳なさそうな反応が返ってきた

こっちは確信犯じゃないらしい

というか、この説明があったなら受け取り方も変わってたのだろう

そもそも確信犯のつもりはなかったのかな?

とはいえ、無意味に驚かされたのは事実だ

心臓に悪いことは止めて欲しい

対応できる筈のところが知識不足で対応できないのでは敵わない


キノガッサ「……他にもうっかりしてなきゃいいけど」

疑いを込めたジト目で睨むと、目を逸らし慌て出す

サマヨール「……誘引の話をしてないとなると、もしや存在値の話もしていませんか?」

まだうっかりはあったようだ

先に気付けて良かった

 ▼ 497 TOg35azcXc 19/12/08 13:21:06 ID:f6GsaJvc [3/6] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
サマヨール「幽霊というものは、自然と彼岸へ導かれる性質を持つものなのです」

やはり幽霊が此岸に留まることは、摂理に反するのだそう

無理を通し、此岸に干渉するにはエネルギーが必要で

それが尽きれば、干渉が弱まり、自ずと還されるのだそうだ

サマヨール「我々は、そのエネルギーを存在値と呼んでいます」

先程言った言葉の意味はこれか

存在値、干渉力ね……

キノガッサ「存在値と行動の影響は比例するのかい?」

サマヨール「ええ、ええ 流石、理解力が高い」

気づいた点を口にしたら当たってたらしく煽てられた

混乱はしない


プラスル「えっと、放っておけば自然に弱くなるんですか?」

彼女もまた気になったところを口に出すが、こちらは首を振って返した

確かに勝手に消耗していくなら、そう思えるものであるのだが……

キノガッサ「……存在値を高める手段もある、と?」

サマヨール「ご明察です」

放っておいても解決するなら、態々出向することもない

解決に向けて働きかける者がいるなら、そうもいかないということだろう


プラスル「その、方法とは?」

彼女の尋ねる声には不安がありありと浮かんでいた

そもから恐ろしい存在が強化されるというのだから当然かも知れない

ともあれ、強化を妨げるためにも手法は知っておくべきであるが

或いは不吉な言葉しか返ってこない予感がしていながらも訊かねばならなかったためか

サマヨール「憑依です」

果たして、出てきた回答は予感通り

こちらとして、苦々しい表情になることは致し方ないだろう
 ▼ 498 TOg35azcXc 19/12/08 13:29:59 ID:f6GsaJvc [4/6] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
曰く、憑依の対象は土地や物など多岐にわたるという

土地や残留思念に憑けば地縛霊、物や生者なら憑依霊だ

憑くものによって存在値の高まりも変わってきて、

取り分け生者に憑くのが存在値を高めるのに効果的だという

キノガッサ「生者に寄ってくるってそういう……」

サマヨール「ひょひょ 隙あれば乗っ取りを狙ってくるのでお気をつけください」

脅かすように言うが、確かにそれは重要な注意事項だな

プラスル「は、はいぃ……!」

ただ、腰を抜かしかねない程たじたじになる者もいる


サマヨール「一度憑いたら簡単に剥がれず――と、話しているうちに来ましたね」

なにかに気づいて話を途中で止めた

その視線を追うと

プラスル「……ひっ!」

キノガッサ「これはまた……!」

見たこともない半透明な何かが、そこに浮いていた

手足はなく、大きな目が一つだけ

生前どんな姿だったのかすら判然としない何か

不気味な容姿もさることながら、明らかにこちらを狙って迫ってくる様子に怖気が走る

プラスル「ひっ……! あぁ……!?」

キノガッサ「……!」

驚きに怯み、つい立ち竦んでしまい

サマヨール「"ドール"を!!」

横から聞こえた声に気がついて、言われるがままのものを投げつけた

 ▼ 499 TOg35azcXc 19/12/08 13:36:20 ID:f6GsaJvc [5/6] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
子どもに好かれそうな可愛らしい玩具は、見事相手に当たった

途端、幽霊は進行を止め踞る

状況が読めないまでも、操作権を取り戻した足を動かし下がった

一時撤退、危機回避だ


サマヨール「"ドール"は生体のダミーです あれに憑かせることにより生者を守ります」

これは誘き寄せるためだけの道具ではなかったらしい

一応、こちらに対する安全策は採られているらしい


ただ、憑依させるので多少存在値が上がってしまうとか

まあ、生者に憑かれたときよりは余程低いそうだが

それに、生者が犠牲になるより物の方が被害がない

サマヨール「更に、一度憑いた霊は他に憑き直すことがそうできません」

さっき言い掛けてた内容はそれか

"ドール"は二重で安全策になっているようだ

サマヨール「ただ、それは剥がし辛くなることと同義」

プラスル「"精霊球"に入り難くなる、と?」

捕らえにくくなるのは困るな

キノガッサ「その分"塩"で弱らせればいいんじゃ?」

サマヨール「いえ、"塩"は幽霊共には苦痛なのです」

単純な話だと思ったが、反応は芳しくない

キノガッサ「苦痛から逃げようとするのは当然のこと、か」

要はそういうことだ

そして、逃げた先で何をされるのか予想もできない

ならば逃がさない方がいいだろう

いい塩梅を見極めつつ捕らえなければいけない

 ▼ 500 TOg35azcXc 19/12/08 13:45:01 ID:f6GsaJvc [6/6] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
渡された道具を手に幽霊に向き直る

相手は体に馴染んだのか、踞っていた姿勢から立ち上がり

鋭く『腕』を突き出し攻撃を始める

プラスル「す、姿が変わりました!?」

眼だけのお化けは、先程投げた"ドール"に似た姿に変貌していた

キノガッサ「……何か凄い強そうなんだけど」

ただし、何倍も巨大で禍々しく凶悪にした姿にだ

サマヨール「えぇ…… 適応しちゃうんですか……」

困惑した声で不穏な単語が聞こえる

キノガッサ「……適応?」

サマヨール「稀にあるんですよ 霊と波長の合う物が
しかし初っ端からとは運の悪い」

キノガッサ「先に聞いておきたかったなぁ!!」

今更言っても仕方ないが、叫ばずにいられない

身振りでプラスルを下がらせ、自分は前に出る

インファイトに出れば目標を集中してくれるだろう

そう思い、相手の腕を避けつつ攻撃を仕掛けるが

キノガッサ「く…… 影を殴ってるみたいだ」

一応試してみるものの、すり抜けるばかり

こちらの技を受け付けないというのは本当らしい

あちらの攻撃は今にもこの身を引き裂きそうだというのに



プラスル「あ、悪霊退散!!」

放心から立ち直れたようで、後方から"塩"が送られてきた

幽霊の動きが目に見えて鈍く、大雑把になる

お陰でじり貧状態が緩和され、隙を狙いやすくなった

キノガッサ「そらっ! "精霊球"!!」

ここぞというところで投げた紅玉に、幽霊が吸い込まれた

抵抗するように何度も揺れる

しかしやがて静まり、後には"精霊球"と"ドール"が残された

キノガッサ「……捕獲、完了?」
 ▼ 501 TOg35azcXc 19/12/08 19:31:08 ID:o2A6KegQ NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
サマヨール「ひょひょ いきなりの想定外でしたね」

サマヨールは落ちた道具を回収しながら言う

適応による超強化は、本来起こり得ない確率らしい

だというのに、いきなりぶつかったのは本気で不運だった

サマヨール「初めてなのにあれに対応出来ていたのは上々です」

キノガッサ「…………」

お褒めの言葉を頂いたが、余り喜べそうもない

サマヨールがいなければ早々に脱落していたのだから

霊が適応する以前の初接触でさえまともに動けなかった

気を抜いてはいけないと、先に注意されたにも関わらずだ

もしかすれば、自分かプラスルが憑依されていたかも知れない

そう考えると震えが止まらなくなってしまう

乗っ取られると、果たしてどうなってしまうのか

あれに…… あんな気味の悪いものに……

そんなのって



プラスル「キノガッサさん!!」

名前を呼ばれて、恐ろしい想像から引き戻された

俯いていた顔をあげ、プラスルの方を向く


プラスル「次は、大丈夫です」

強い目をした彼女は、震えながらも確と宣言する


プラスル「初めてだったから、怯んだだけです」

それはどちらに言い聞かせる言葉なのか

こっちか、それとも彼女自身だろうか


プラスル「次は、動けますよ」

ただ一つ言えるのは、彼女の言う通りだということだ

 ▼ 502 ビルドン@ピーピーエイダー 19/12/13 07:41:01 ID:oeHUBvSE NGネーム登録 NGID登録 報告
シエンネ
 ▼ 503 TOg35azcXc 19/12/14 10:34:16 ID:Dk.MbahE [1/6] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
サマヨール「また浮遊霊が接近しています」

幾許の間も置かずに告げられた

騒めく気配が近づいて来るのが解る

笑いそうになる膝を叱咤して、息を詰めて待ち

キノガッサ「……さっきのとは、姿が違うんだな」

姿を現したのは大口が特徴的な何か

これまた生前の面影はなく非常に不気味

目は見受けられず、小さな手はあるがやはり足もない

地につかれずふわふわと浮いているそれに、鳥肌が立ってしょうがない

奴の喉奥から響く音声は低く耳障り

全ての要素が生理的嫌悪感を刺激する

この世にあるべからざる存在なのだとよく知らしめてくれる



だがしかし一度目と違い怯むことはない

怯んでなどやるものか

プラスル「……! ……!」

震えながら悲鳴を出すまいと力む気配がする

プラスルが気丈なのに府抜けているわけにはいかない

深呼吸をして、身構え直す

彼女もまた覚悟を決めたようで、

プラスル「何かに取り憑く前に……お"塩"!!」

早速幽霊を弱らせに掛かった

相手の動きが鈍り隙が生まれる

キノガッサ「そして逃がさず"精霊球"だ!」

間髪を入れず紅玉を投げつける

あっという間に球は幽霊を収め、静まった

サマヨール「お見事でございました」

幽霊入りの"精霊球"を回収し労ってくれる

大丈夫、ちゃんとやれる

巧くいった実感と共に、彼女とハイタッチした
 ▼ 504 TOg35azcXc 19/12/14 10:43:00 ID:Dk.MbahE [2/6] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
サマヨール「本来、ただの浮遊霊はあんなものなのです」

幽霊入りの"精霊球"を回収しつつそいつは言う

確かに、息込んでいた割にはあっけなかったかも

幽霊自体に耐性のないこちらとして、拍子抜けとはいかないけど

それでもやはり最初の奴とは比べ物にならない

適応強化はそれだけ危険なのだ

サマヨール「先程奴等が厄介なのは適応だけではありません
ひょひょ 丁度来たようですよ」

プラスル「ま、また!? そんなすぐですか!?」

息を整えるインターバルはそんなに与えられないらしい

こちらが引き寄せてるという話だから、仕方ないのかもしれないけれど


次に姿を現したのは、首から上のないサーナイトと覚しき影

その後ろから、尻尾が腹を突き抜けたボスゴドラらしいもの

更に骨と腐肉だけの魚系

どの霊も、原型を留めていて生前が想像付く

キノガッサ「うぇ……」

言っては悪いのかもしれないが、気持ち悪い

生前がわからないタイプの方が易しかったかも

それに

プラスル「さ、三体も……!?」

そう、同時に複数体なのだ

奴らの厄介さとはそれか

想定して然るべきだったかも知れないが油断してた

サマヨール「お二方は首無しを あとは私が」

思考停止しかかったところで横からの声が聞こえる

指示を出したそいつは、魚に"ドール"を投げつける

と、同時にボスゴラに突っ込んでいった

キノガッサ「……オーケー、仕事しないとか」

その勇姿のお陰か、首無しとはまだ距離のあるうちに立ち直れた

 ▼ 505 TOg35azcXc 19/12/14 10:55:11 ID:Dk.MbahE [3/6] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告

「取り憑かれちゃ堪んないから、ね!」

顔もないのに睨んでくる幽霊に怖気を覚えるが、"ドール"を投げつけ足止めをする

しかし、巧く当たらなかった!

テレポートのように一瞬で横にずれて避わされてしまう

キノガッサ「そ、そんなのあり!?」

予想外の行動に絶句してしまった

その隙に霊は一気に距離を詰め覆い被さろうとしてきて

プラスル「――所長、危ない!!」

間一髪、彼女の投げたものが霊にぶつけられる

不意打ちを受けた霊は瞬く間に姿を消した



難を逃れて慌てて下がりつつ辺りを見回す

また、テレポートか? 奴はどこへ……?

プラスル「あ、あれ? 今私が投げたの、"精霊球"?」

彼女の戸惑った声が上がる

どうやら無我夢中でそのとき持っていたものを投げただけらしい

急いで先程霊が来た地点に目を向ける

そこには、動かない"精霊球"が一つ転がっていた

キノガッサ「"塩"無しでも、捕獲できるん、だ?」

プラスル「そ、そうみたい……ですね?」

気を張り詰めていただけに、今度は拍子抜けした



キノガッサ「! そうだ、他の二体は!?」

気がついて慌ててサマヨールを探す

サマヨール「ひょひょ 終わりましたよ」

丁度、幽霊入り"精霊球"を押さえ込んでいるところだったようだ

ていうか、それで抵抗を無力化するのか……

 ▼ 506 TOg35azcXc 19/12/14 20:38:40 ID:Dk.MbahE [4/6] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
キノガッサ「これ、僕ら、要る?」

一匹で二体を軽々片付けてしまった様を見て、つい弱音が口から零れた

足手纏いにしかなれていないような気がする

だったら、いない方がいいのかも、とか

サマヨール「いえいえ、お二方のお陰で対処出来ているようなものです」

相変わらず煽てるような口調だ

本気で言っているのか怪しいものである

サマヨール「それに、先に言ったように生者がいた方が効率がよいのです」

足手纏いでも結果として早く片付くということか、

そう言われてしまうと納得するしかない



その後も次々に霊が現れた

見た目がバグった奇怪なもの

樹木や石に憑依していて、普通動かない物体が襲いかかってくるもの

極小さく素早くて"精霊球"を当てるのに苦労したもの

数体纏めて襲ってくることも何度もあった


どれもこれも恐ろしく、油断はできなかった

それでも、どんなことでも慣れてくるもので、動きはどんどん良くなる

しかし本当に沢山いる

中には苦戦を強いられたものもいた

三匹がかりでも捕獲し損なって逃がした個体もいた

確かにこれはサマヨールだけで対応するのが難しい

依頼してきた理由もよく解った
 ▼ 507 TOg35azcXc 19/12/14 20:44:25 ID:Dk.MbahE [5/6] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
疲れを圧し殺しつつ動き続けて、丑三つ時の頃ようやく小休止が訪れる

キノガッサ「……いや、多、過ぎない?」

もう息も絶え絶え

プラスルに至っては近くの木に凭れてぐったりしている

サマヨール「本当、こちらの不徳の致すところで」

サマヨールは気拙そうにするばかり

起きてしまったことに文句をいってもしょうがないんだけど

事前になんとかする術はなかったのかと考えてしま





キノガッサ「ーー!!」

不意に背筋が凍った

何かが見えたわけでも、聞こえたわけでもない

強いて言えば、第六感が告げたといおうか

途轍もなく危険な何かが近づいてくるのが解った

恐らく、この日一番

あの"ドール"に適応した奴よりもだ

サマヨール「何が起きるかわかりません! 固まってください!」

倒れているプラスルの方へ行きながらサマヨールが言う

指示にしたがい、竦みかけた足をなんとか動かした

短い距離なのにうまく進めずもどかしい



プラスル「はっ……! かっ……!」

辿り着いた先で彼女は威圧に当てられて過呼吸になっていた

だがそれをどうにかする猶予もなく





「O-ro-ro-ro-ro-ro-ro-ro-ro!!」

気配の主が、その姿を現した

 ▼ 508 TOg35azcXc 19/12/14 20:49:02 ID:Dk.MbahE [6/6] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
目の前に出た相手は、強烈な存在感を放っていた



余りにも強大で、凶悪で、狂暴な気配はそれだけでこちらを押し潰しそう



その姿は悍ましく歪なもので



獣の体に竜の翼、角付きの頭に蛇の尾に種々雑多な七本脚


身体中あちこちにある目玉は感情が読めず気色悪い


薄気味悪い靄に包まれたそれはこれまで以上に異常そのもの



膝が笑って仕方ない



あんなもの、どうすればいいっていうのだ






サマヨール「霊憑依とはまた悪趣味な……
存在値が三乗……いえ、四乗?」

そいつでさえ呆然としたように呟き

サマヨール「ここは一時退却します!」

叫ぶや否や、プラスルを担ぎ上げ、こちらの腕を掴み走り出す

縺れそうな脚をそれでも振り上げ、一目散に逃げ出す
 ▼ 509 リバード@あおいビードロ 19/12/15 01:00:29 ID:Bb2EAhcI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 510 TOg35azcXc 19/12/15 15:10:11 ID:EXHokJVs [1/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
キノガッサ「プラスル、大丈夫、なの」

サマヨールの背中で苦しそうに目を瞑ったままの彼女を見遣る

乱暴に駆けているためすごく揺れていて、苦悶しているようだ

サマヨール「気を失っていますね 大丈夫、責任を持って守りますとも」

あちらから巻き込んできた手前義務感はあるようだ

それをいえば、こちらも所長としての義務感に苛まれてしまう

やっぱり、無理にでも止めておけばよかったかな

怖い思いをするのは目に見えていたのだから

……トラウマになってなきゃいいけど



キノガッサ「ところで、なぜ、真っ直ぐ、走らない?」

キメラ霊の巨大な気配が迫る中、頻繁に曲がったり大回りさせられる

それが気になって尋ねた

真っ直ぐ行った方が速い上に疲れないと思ったのだが……

サマヨール「それが、地縛霊共が待ち構えているのです」

……中々そうもいかないらしい

サマヨール「奴等も片付けなければいけませんけれども」

相手にしている余裕はないということだ

確かに今は逃げるのだけで必死である

同時に処理などできようはずもない

キノガッサ「……そういう、こと」

任せればいいと理解してそいつの誘導を追いかける
 ▼ 511 TOg35azcXc 19/12/15 15:16:05 ID:EXHokJVs [2/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
質問ついでにもう一つ

キノガッサ「霊憑依、ってなに」

少しでも現状を打破する手段が知りたくて問い掛けた

サマヨール「あれは一体の霊ではありません
幾体もの霊が溶け合い、混ざりあったなれの果てです」

霊は何にでも憑くと言っていたな

つまり霊同士でも例外ではないようだ

サマヨール「霊憑依は二者の適応に依るので、存在値が非常に高まります
あれは、四者のようなのであれだけ巨大になったのでしょう」

一体の適応でも恐ろしかったのに……

複数体分などとても手に終えたものじゃない

酸欠の所為だけではなく血の気が引く

後ろの気配がぐんと大きくなった気がした


サマヨール「ただ、霊憑依には我々にとって利となる欠点もあります」

サマヨールは努めて明るい声で切り出す

サマヨール「憑依の厄介なところは、此岸との繋がりを持つところです
しかし霊憑依ではそれがないのです」

それはつまり、此岸に留まる力が働かないと言うこと

なら

キノガッサ「……勝手に、弱、まる?」

彼岸に引っ張られ続け、存在値は消費されるということだ

サマヨール「ええ 一時的に強くなりますが、それきりです」

キノガッサ「……やっと、朗報、だね」

走っていて弾んだ息と、見えた光明に弾んだ気持ちと

二重の意味で弾んだ声が出た

しかしサマヨールはというと思案顔

サマヨール「意思持つものに憑依するので、混在し混乱し歪みが加速します
混濁した意識は意志が統一されず動きが鈍るものです
また、一度憑いてしまった以上剥がれるときにも存在値を必要とします
要するに割に合わないのですよね
だから早々起きないし起きても意味のない現象なのです
それがあんなにも膨れ上がって脅威になるとは……」

独り言のような説明を続けていた

 ▼ 512 TOg35azcXc 19/12/21 20:06:32 ID:v/VkuNBE [1/4] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
時間を稼ぐのだと疲労が貯まった脚に鞭打ってどれくらいか

何度目か大きく曲がっていたときとうとう距離を詰められきってしまった

まあ仕方ない

こちらが右往左往しているうち相手は直進してくるのだから

元々逃げ切る算段ではなかったからそれは良いのだけど……

キノガッサ「これ、最初から逃げるべきじゃ、なかったんじゃ?」

相対した霊を見て疑問が口をついて出る

だって話と違う



「「「Gya-a-a-a-a-a-o-o-o-oh!!」」」



キノガッサ「さっきより随分、でかくなってるんだけど!?」

始めに目に入ったときの何倍にもなっている

しかも形姿まで大きく違う

部位ごとにはあくまで何かしら動物らしかったはずが、いまや見る影もない

全体的に、肉塊と呼ぶべき醜いブヨブヨになっていた

そのくせあちこちにある眼はギラギラしてるし大小様々な脚が変な位置でうごうごしてる

気迫も強まってるし、これは存在値が下がっている気がしない

キノガッサ「なんでこんな膨れ上がってんの!?」

サマヨール「そ、想定外です 理解ふの……あっ!?」

視界の端に新たな浮遊霊が現れる

そしてこちらに突っ込んでこようとし



肉塊に呑み込まれ消えた


「「「Do-ka-gu-u-u-i-i-i-i-i!!」」」


途端、肉塊の気配が大きくなった
 ▼ 513 TOg35azcXc 19/12/21 20:10:16 ID:v/VkuNBE [2/4] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
キノガッサ「……そういうカラクリね」

理屈は単純っぽい

ただ霊憑依が繰り返されているだけ

それでも消費より加速の方が上回っているのだから堪らない

弱体化が狙えなくなるどころか追い詰められるばかりだからだ

サマヨール「一ぃ二ぅ三ぃ…… これは浮遊霊だけじゃないですね
地縛霊まで貪欲に呑み込むとは……」

もはや呆れるしかない

只管強くなっているのを恐れるべきか、バラバラだったのが一つに纏まっているのを喜ぶべきか

結局、やるしかないってことは変わらないんだ

負けたときのことなど考えたくもないが

キノガッサ「立ち向かわなきゃならない、かな」





「Ba-ri-ba-ri-dha-a-a-a-ah!!」



キノガッサ「でかいってのは、脅威だな、っと!」

幸い、相手の動きは単調だった

突っ込んで来るだけ

特に奇策や行動パターンの変化などもないようだ

お陰で行動の先読みは簡単

しかし巨体であるが故に全力で駆けなければ直撃コースから逃れられない

もし当たってしまったら、怪我をするだけじゃ済まなそうだ

一度でも受けたらお仕舞いと考えて、慎重に

焦らず、しっかり隙を見つけて

キノガッサ「取り敢えず、"塩"、喰らえ!」

逃げる合間に何発か攻撃を加えてみるも

キノガッサ「……あんまり、効いているように見えないな」

どうやら焼け石に水のよう

"精霊球"は既に投げたが弾かれている

他に有効な手立てはないものだろうか
 ▼ 514 TOg35azcXc 19/12/21 20:15:59 ID:v/VkuNBE [3/4] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
サマヨール「一応、霊は霊に弱いというのが通例ですが……」

新たな弱点の開示は、しかし苦々しい声である

サマヨール「……これは私の方が圧しきられるでしょうね」

そりゃそうか

先程呑まれた霊を思い出せば納得だ

サマヨールに太刀打ちできる範囲はとうに越していた



敵の攻撃は当たらないようにして

相手が更に霊を呑み込むのを避けるため一ヶ所に留まって

新たな浮遊霊は近づく前に処理して

無理しない範囲で"塩"をかけて

ミスできないプレッシャーに疲れも合わさって体力がガリガリ削られる



それでも必死に刃向かい続け

"塩"を投げたつもりで"ドール"を投げてしまった

キノガッサ「あっ……!? 」

遂に犯してしまったミスに途方に暮れかけ

キノガッサ「…………!?」

相手の気迫が弱まったことに驚く

奴もまた戸惑ったのか、進行方向を変えて"ドール"へ突っ込んでいく

"ドール"を呑み込んだ霊はまた力を増していたが、これは……

キノガッサ「引き寄せ、られる? いや、一体引き剥がせる、かな?」

偶然だったが、これこそ光明だった
 ▼ 515 TOg35azcXc 19/12/21 20:22:48 ID:v/VkuNBE [4/4] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
考えてみれば単純な攻略法だった

霊は此岸への繋がりを求める

生者は特に引き寄せ易い

"ドール"は生体のダミー

そして剥がれるときにも存在値が減る

あと、複数体の適応は一体の適応より厄介という理解もしてた

で、一体の適応はそうそう起きないというのも忘れていた

一番最初に"ドール"に適応した個体がいた所為か、失念してしまっていたようだ



そうと決まれば、

キノガッサ「これで、いけるでしょ!!」

十個纏めて"ドール"をぶつける

肉塊はたちまち分裂し、十体の憑依霊と一体の浮遊霊になる

一体一体の存在値は、極小規模で

……浮遊霊は勝手に消えてしまった

サマヨール「では、"精霊球"を!!」

そして十体とも"精霊球"に収める

拍子抜けしてしまう程抵抗は全くなかった

キノガッサ「捕獲、完了、と」

サマヨール「なるほど、これは…… すみません、全然思い付きませんでした……」

気付いてみれば、なんであんなに苦労したのかという感じだ

本当にヘトヘト もう動きたくない……

 ▼ 516 ロア@ざいりょうぶくろ 19/12/23 09:55:25 ID:UNPkTs1s NGネーム登録 NGID登録 報告
シエンネ
 ▼ 517 TOg35azcXc 19/12/27 22:53:26 ID:tMxoUwqc NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
「おいおい、俺のエントリー、何してくれちゃってんのさあ!?」

唐突に聞いたことのない声が響き渡る

驚き、慌てて声の方を向き構える

何やら妖しい奴が猫背気味に立っていた

キノガッサ「………………何者?」

ヤミラミ「けひゃひゃ 俺はヤミラミだ てめえこそ何者だ、邪魔立てしやがって」

名前を答えられたが、よく解らない

少なくとも敵意を向けてきている以上、味方ではなさそうだが

キノガッサ「……霊を捕らえることが邪魔立てになるのかい」

ある種確信を持ちつつ尋ねる

ヤミラミ「そりゃそうだ 俺が折角でかくしたってのに、お前らと来たら……」

肩を竦めて大袈裟にため息を吐かれた

……どうにも、嫌な感じがする奴だ

サマヨール「……おかしいとは思いましたよ
霊憑依なんて珍しい現象があれだけ重複するなんて」

サマヨールが、ヤミラミを睨みながら呟く

自然に起こることが少ないらしい現象

それがあれだけ続くのは、やはり不自然だったようだ

自然でなく起こったのなら、納得もいく

ヤミラミ「おう、面白かったろ?
もっと一杯集めたらもっと強くなる そう思わねーか?」

暗に事実だと認める供述

その内容は此岸にとって危険極まりないものだ

相容れない思想に身震いする

 ▼ 518 TOg35azcXc 19/12/28 16:41:45 ID:ll2cJkMA NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
サマヨール「ーー此岸に非認可の霊を手引きしたのも貴方ですね?」

相手の主張は無視して、サマヨールは追求を続ける

その口調は疑問ではなく、確認だった

ヤミラミ「けひゃひゃ おう、俺たちだ」

対して相手は至極あっさりと答える

別に隠すことでもないと言うようだ



元々の原因からして作為が絡んでいたということか

……サマヨールばかり責めるのは筋違いのようだ

しかも奴は今、俺『たち』と言った

つまり、単独犯ではないということ

話の規模がどんどん膨れる…… 厄介な……



ヤミラミ「けひゃひゃ 誰が一番強いのを作れるか競争なんだ
それで俺ぁ霊憑依で最強を目指そうってな」

理由まで自供しだした奴はまたもやケタケタ笑う

ヤミラミ「俺が、一番、強いってこと、思い知らせてやるんだぜ? 最高だろ?」

何が可笑しいのか笑い続け

ヤミラミ「それを手前ぇら、台無しにしやがって!! 絶対ぇ赦さねぇ!!」

突然感情を振り切り、怒りの雄叫びをあげる

ヤミラミ「手前ぇらの魂引きずり出して、ぐちゃぐちゃにして新たな核にしてやるよ!!」



ヤミラミ が 襲いかかってきた !!


 ▼ 519 ルチャイ@こだわりスカーフ 19/12/28 19:24:05 ID:DMZAgl.k [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
ヤミラミ「おぅらっっ!! "シャドークロー"!!」

キノガッサ「ぐ……! "まも、る"……!!」

奴は鋭い爪を武器に突っ込んでくる

一方こちらは度重なる戦闘と逃走の所為で膝が笑っている

それでも一撃目はなんとか受けて凌ぐ

流石に力量差で押し込まれそうになるが、それでも

ヤミラミ「おうおう! フラフラじゃねぇかよ?」

続け様に相手は腕を振るってきた

これは避けきれなさそうだ

咄嗟の判断で相手の腕を白刃取りの要領で掴む

受けきれもせず爪が食い込むが裂かれるよりはましだ

ついでに抑え込み振るえなくした

ヤミラミ「は!! 姑息な真似しやがって!!」

鬱陶しそうにこちらを振り払ってくる

それにあわせて距離を取ろうとするが脚がうまく動かない

ヤミラミ「けひゃひゃ! もらったっ!!」



サマヨール「させま……せん! "シャドーボール"!」

まごついていたら、味方が援護してくれる

意識外だったのか、敵が姿勢を崩した

キノガッサ「"塩"、と"精霊球"、喰らえ!!」

生じた隙を見逃さず攻めに出る

これで、捕まってしまえばいい

駄目なら、繰り返すまで
 ▼ 520 TOg35azcXc 19/12/28 19:29:54 ID:DMZAgl.k [2/4] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
ヤミラミ「あん? 何のつもりだ?」

しかし"精霊球"はいとも容易く弾かれた

"塩"も不快感を催させただけのよう

ヤミラミ「ああ、そうか 実体ねぇ奴と同じ対応かよ」

しまったと思った

疲れの所為か先に言われていたことを失念している

効かない相手もいたのだった

ヤミラミ「あんま嘗め腐ってんじゃねぇぞ!!」

無意識の失敗だったが、それが敵の神経を逆撫でしたらしい

ヤミラミは全力を込めて向かってきた

その速度は俊敏で、かつ隙がない

走馬灯のような感覚で、避けられる筈もない攻撃を眺めて



サマヨール「ぐ……あ……」

苦痛の呻き声を、『聞いていた』



 ▼ 521 TOg35azcXc 19/12/28 19:40:06 ID:DMZAgl.k [3/4] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
キノガッサ「ーーな、なんで……?」

いつの間にか相手の爪を免れていることに驚く

しかも、代わりに味方が傷付いているなんて

二重の意味で理解ができなくて、目を見開く

サマヨール「"サイドチェンジ"です ひょひょ ご無事、ですか?」

深い傷を負ったそいつは、しかし飄々と言う

サマヨール「私の方で巻き込んだのです
せめて貴方がたが怪我ないよう努めるのは当然です」



キノガッサ「そんなの、意味ない……!」

依頼人が怪我したら本末転倒だ

こちらは、依頼人の安全も請け負ってたつもりだったのに

そういうつもりで発した言葉は

ヤミラミ「けひゃひゃ その通り、無意味さ
順番が変わっただけだぜ?」

字面だけで敵に同意される

反駁したくはなるが、しかし事実であろうことはどこかで認めていた

こちらの三者はほぼ瀕死

ゆっくりと弄ぶように迫ってくる敵から逃げることも儘ならない

せめてなんとか抵抗しようと、やられるのは先伸ばしにしようと力を込める

ヤミラミ「は! 無駄無駄ぁ!! 碌に身体がついてきてねえよ!!」

挑発するような嘲りの声が響く

右へ左へと撹乱するように動く敵を、必死で狙う

技が出せるかも怪しい体力だが、諦めるわけにはいかない
 ▼ 522 TOg35azcXc 19/12/28 19:45:49 ID:DMZAgl.k [4/4] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告



プラスル「"手助け"!!!」



後方から声が聞こえると同時に力が湧いてきた

その力に身を任せるように腕を挙げ

キノガッサ「"種、爆弾"!!」

丁度目の前に来たヤミラミの横っ面に撃ち込んだ

更に

キノガッサ「"タネマシンガン"!!」

ヤミラミ「んなっ……! タンマ! タンマ!!」

キノガッサ「"エナジーボール"!!!」

ヤミラミ「んなっ!!? ぐあぁ……!!」

とことん、撃ち込む

相手の懇願など聞く耳持たない

こっちはさっきも言ったように瀕死一歩手前

ここでしっかり抑えなければ、後がない

もはや死に物狂いである

プラスル「所長、ストップ! ストップです!!」

言われて手を止めてみれば、相手の意識を奪うことに、すでに成功していた

ああ、何て卑怯な戦闘だったろう

自分の行いに反吐が出る
 ▼ 523 TOg35azcXc 19/12/28 22:01:05 ID:viB.RUmM [1/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
サマヨール「……任せてしまってすみません」

サマヨールは、自らの傷を応急処置しながら言う

それはどの事を言っているのだろう

ヤミラミを気絶させるまでのことか

或いはこうしてヤミラミをヤドリギで縛っていることか

いずれにせよ、やらなきゃいけないことだ

キノガッサ「君が謝ることはないよ いや、誰も」

やれる者が行うべきことであり、それが誰でも問題あろう筈もない

サマヨール「あいててて…… これは中々キツイ……」

プラスル「あ、私、手伝います 薬、少しは教えてもらってるので……」

なんでも、ロロの手腕を見習っているらしい

プラスルは森の中の木の実を見繕ってペーストを作ってしまった

サマヨール「おお、これはありがたい」

さっそくとばかりにそれを傷に塗り込む

 ▼ 524 TOg35azcXc 19/12/28 22:01:40 ID:viB.RUmM [2/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
キノガッサ「……目、覚めたんだね」

倒れた敵の拘束を終え、彼女に声をかける

プラスル「は、はい なんとか……」

キノガッサ「助かったよ 支援ありがとう」

プラスル「間に合って、良かったです」

感謝の言葉を告げれば、ほっと息を吐いて言う

だが、その視線は何か物言いたげで

キノガッサ「それで、こいつどうするの
"精霊球"に入らないみたいだけど」

目を逸らしながら話を逸らす

実際気になっていたことでもあるけど

サマヨール「そのまま直接"黄泉の道"経路で彼岸へ連行します」

キノガッサ「"黄泉の道"があるんだ? "ひみつきち"じゃないよね?」

サマヨール「ええ、以前のは閉じたままです」

彼岸と此岸を繋ぐ場所、"黄泉の道"

以前は今の拠点たるギルドの場所にあった

夜間の"黄泉の道"は生者には危険らしいから、前と同じ場所でないのはありがたい

キノガッサ「急いで連れていくとしようか そろそろ、夜明けちゃうよ」

"黄泉の道"は朝になると閉じるものではなかったか

移動することも考えれば時間がない気がする

サマヨール「いえいえ、盆の時期はいつでも通れるんですよ
無論、誰でもではなくーーなかった筈なんですがね」

急ぐ必要はないと、やんわりと言う

敵の所業を考えて苦々しい口調になったのは仕方ないか

 ▼ 525 TOg35azcXc 19/12/29 19:31:04 ID:6MQ2pIFU NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
キノガッサ「ヤミラミ、どこに運べば?」

疲れてはいるが、怪我はしていないため、手伝う意思を表明する

サマヨール「ひょひょ これはありがたい
今回の"黄泉の道"は崖下にありましてね」

先に立って案内してくれるのを、気絶した敵を背負って追う

そして辿り着いたのは復活草が自生している崖だった

プラスル「あれ? ここって……」

キノガッサ「……なんか縁深いよね」

薬の材料を良く採りに来る場所だ

……何度か落ちている場所でもある

いつの間にか崖の一部が崩れて、急斜面とはいえ歩ける道が出来ていた



サマヨール「さあ、ここです」

崖下の茂みのそばに立ち止まった

覗いてみると、茂みの陰に霧立ち込める空間が開いていた

以前の"黄泉の道"と同じ感じがする

サマヨール「ここからは私だけで行った方がいいでしょう」

生者は引き込まれる危険があるのだったか

頷いて敵の身柄を引き渡す

サマヨール「では、私は一度戻り、此奴らに厳重に閉じ込めを施します
それと、霊共の流出量が多いので再度システムの確認もして参ります」

システムに不具合が起きているのなら、直すことで霊を制限できるだろうと言う

確かに、それは助かる

今日の騒動は明らかに許容量オーバーだった

キノガッサ「忙しいかもだけど、宜しく」

サマヨール「はい お休みなさい 辿るまた今夜」

依頼の解決は未だだが、一旦小休止



そして空が白み始める

死者の時間は終わり、霊は息を潜めてしまったようだ
 ▼ 526 ュラルドン@クチートナイト 19/12/29 20:56:06 ID:1yQU.AuU NGネーム登録 NGID登録 報告
シエンネ
 ▼ 527 系列◆TOg35azcXc 19/12/30 17:36:27 ID:DqP6NMqs NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
キノガッサ「弟子入り志願?」

一眠りしたあと"ひみつきち"に顔を出すと、依頼者とは違った訪問者が来た

どうやらギルドの仕事に興味を持ってくれたらしい

そして、是非ともキノガッサに師事したいという

ポチエナ「はい! おれ、皆さんのようになりたくて!」

訪問者は元気良くアピールする

尻尾まで振って遣気満々なようだ

ゴクリン「へえ、見る目あるんじゃん ねえ、所長?」

リンは気に入ったらしく、頻りに頷くが

キノガッサ「同意を求められても……」

こちらとしては困ってしまう

自分が大層な者ではないことは自分で判っているのだ

キラキラした眼差しを向けられるのが居たたまれない

キノガッサ「弟子とか、取る気ないし……」

気まずい思いをしつつ期待には添えないと率直に告げる

訪問者は露骨に肩を落としてしまう

ゴクリン「断っちゃうの? 折角来てくれたのにそれはないんじゃない?」

リンはがっかりした相手を見て、茶化してくる

意外と気遣い屋なんだよね

キノガッサ「じゃなくて、仲間になろうよ」

リンの促しもあってスムーズに言葉になる

師弟ではなく、仲間がいい

そっちの方が気詰まりがない

キノガッサ「依頼が増えてきて人手不足だからさ そうしてくれると嬉しい」

折角来てくれたのだから、歓迎しよう

仲良く働けたらいい
 ▼ 528 系列◆TOg35azcXc 19/12/30 18:37:07 ID:3fBYfGl2 NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
ちなみに、手が足りないというのは大袈裟じゃない

少し前まで暇を持て余してたのが信じられない程に

夜動く者と昼動く者で分かれただけじゃない

今は、森全体が不安定になっているそうだ

それ故、依頼もかなり舞い込んでいるという

……全部リンからの又聞きだ



一応、"猫の手も使いたい"なら手伝うと申し出たものの

ゴクリン「この事態を解決するためにも所長は体力温存して」

と言われてしまった

問題の原因は彼岸からの闖入者にあると思われた

そのため夜の依頼に支障なくする方が結果的にいい

理屈では判っても、もどかしいものである

そうやって悩んでいれば

ゴクリン「それとも、下りる? あいつの依頼」

リンはいとも簡単だというように提案してくる

……耳を疑う提案だ

キノガッサ「下りれるわけない 最優先事項だよ?」

とても放っておける問題ではない

それはリンも解ってるだろうに



キノガッサ「第一、僕が下りたら誰がやるんだい」

薬を完璧に作れるロロには回せず

プラスルにも無理させられない

新入り君にいきなりこの依頼を託すのも可哀想だ

あとは早々に下りた面々だけ

サマヨールは手が足りないと言っているのに、この現状では

キノガッサ「下りるわけないじゃない」

言い直すように、宣言した
 ▼ 529 TOg35azcXc 20/01/10 04:11:16 ID:mAuw.L/. NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
ポチエナ「……? なんの話ですか?」

ゴクリン「こっちの話さ!」

ポチエナ「……?」

新入り君は首を傾げてしまう

そして伺うようにこちらに目を向けてくる

なんと言うべきか判らず、手振りでなんでもないと誤魔化した

キノガッサ「君は掲示板に貼られた依頼をこなしてもらえるかい」

"ひみつきち"の壁に設置してある掲示板

そこに今解決待ちの待機依頼が張り出されている

手空きの者で片付けて貰わなくてはいけない

ポチエナ「は、はい!」

いい返事が返ってくる 素直でよろしい

……実は昨日まで日の目を見なかった代物なのは内緒だ

大変なときに来てしまった彼に少し申し訳なく思う

キノガッサ「困ったらなんでも聞いていいからね」

できることはそれぐらいだけど、便宜は図ろう

と思ったのだが

ゴクリン「所長、君は下りないんだろうに」

呆れ果てた声で言われてしまう

暗に顔を合わせないだろうと言われて後ろめたくなる

キノガッサ「……僕は勿論、リンでもロロでも、ねえ?」

たじたじになってつい付け足した

ゴクリン「ま、いいんだけど」

ポチエナ「はい! よろしくお願いします!」

元気良く頭を下げる新入り君

初々しくてちょっと眩しい

そんなキラキラな目で見ないでと言いたくなってしまう
 ▼ 530 ネコ@サイコシード 20/01/11 07:57:59 ID:JkawFVCA NGネーム登録 NGID登録 報告
シエンネ
 ▼ 531 TOg35azcXc 20/01/11 22:57:11 ID:QlQYLmP. NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
ポチエナ「行ってきます!!」

ゴクリン「頑張ってきてね〜」

依頼を受注して新入り君が出掛けていく

ルリリ「お邪魔するねー」

プラスル「今擦れ違った方も依頼者ですか?」

エネコロロ「今度はどんな依頼かしら」

マイナン「ひー 忙しすぎて混乱しちゃうよ」

と、入れ替わるようにして残りのメンバーがやって来た

ゴクリン「おー お揃いで」

キノガッサ「いらっしゃい さっきの仔はーー」

丁度よいので新入り君の加入と経緯を説明する

キノガッサ「だから、よろしく頼むよ」

マイナン「やった! 後輩だ!」

キノガッサ「しかもなんか皆に憧れてくれてるらしい」

ルリリ「本当!? これはもう可愛がっちゃうよ!」

どうやら、好意的に受け入れてくれるようだ

独断で許可したが、間違いじゃなかったようで安心

手が増えれば依頼も片付くし仲良くなれれば楽しいし

いいことづくめだ



エネコロロ「それよりキノ、あんたまた無茶してるわね?」

ーーぎくり

ジト目を向けられ、つい目を逸らしてしまう
 ▼ 532 TOg35azcXc 20/01/13 19:57:38 ID:Fk1wSDyw NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
キノガッサ「む、無理は、しない、つもりで……」

視線から逃れようと一応主張する

その主張こそ無理があることは半ば自覚がある

当然、見逃されるわけもない

エネコロロ「この仔、魘されてたわよ?」

キノガッサ「ーーそれは……」

……他者を引き合いに出されると弱い

というか、やっぱり深い傷になってしまったのか

力不足が身に沁みる

プラスル「えっ!? あの、副長さん……
それは、私が行くって言ったので……」

エネコロロ「それは聞いたわ」

弁明するように言ってくれたが一言のもと黙らされた

エネコロロ「ねえ、キノ 止めにしない?」

始めから無理難題なのだとロロがいう

キノガッサ「でも、放っておける問題じゃない」

実際ぶつかってみて尚更そう思う

そして

キノガッサ「僕がやらなかったら、誰がやる?」

交替要員がいないことはさっきも確認した事実だ

ロロはそれに苦々しい顔をして

エネコロロ「こんなことならこの仔に皆伝しとくんだったわ」

自分を責めるように呟く

プラスル「……物覚え悪くてすみません」

エネコロロ「ああ、勘違いしないで 貴女が悪いんじゃないの
……タイミングが合わなかったわね」

ロロは、もう少し遅く起きていれば、と歯噛みした
 ▼ 533 TOg35azcXc 20/01/25 18:46:11 ID:gzJUfmGE NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ゴクリン「よしっ! マイナン、君に決めたっ!!」

マイナン「えっ!? な、何!?」

ゴクリン「いけ!! いけよ!! いけってば!! チクショー!!」

マイナン「いやだから何!?」

ゴクリン「だから、代われって話」

マイナン「いやだからなんで!?」

キノガッサ「……ちょっとリン、なんでそんなマイナンに手厳しいの」

彼も相当怖がっていたのに……

ゴクリン「やー、だって受けちゃった以上投げ出すのもないじゃない?」

マイナン「お前は最初から投げっぱだろうが!!」

ゴクリン「だから、キノの代わりに行ってよ ねえ 依頼達成しなさいよ」

マイナン「無理無理!! 無理だって!! お化けとか、ない!!」

首と手を振って必死にお鉢が回ってくるのを拒否している

……気持ちはわかる



エネコロロ「でも、それがいいかもね」

キノガッサ「ロロまで?」

マイナン「ゴクリン側っ!?」

なんでまたマイナンに手厳しいのかと思えば、

エネコロロ「……プラスルが駄目なのよ」

なんのことはない、より弱い立場の味方だっただけらしい

……確かに、彼女に無理させないとなると負担が大きくなる

キノガッサだけでは厳しいのは“火に当たるより明らか”か



エネコロロ「妹が頑張ったのにあんたはそれでいいの?」

マイナン「……うっ」

エネコロロ「それで、いいの?」

ロロは繰り返して尋ねる マイナンは口籠ってしまった

 ▼ 534 TOg35azcXc 20/01/26 00:43:03 ID:aYPwgV9U [1/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
マイナン「……分かった、分かりましたよ! 行きますよ!」

やけくそ気味にマイナンが言う

マイナン「ただ、所長は一緒!! じゃなきゃ嫌だ!!」

そして懇願するように言うのだ

ゴクリン「あらやだ、♂同士でまーお熱いこと」

マイナン「違うっ!!」

また始まった……

揶揄いの言葉に過剰反応するから、また揶揄われるんだけどな……

キノガッサ「大丈夫だよ 始めから下りるつもりもないし」

マイナン「所長……!!」

マイナンの円らな瞳が輝いてこっちを向く

ゴクリン「やっぱそっち系なの……」

マイナン「だ・か・らぁ!! お前は!!!」

ゴクリン「おお、怖い怖い ライバル続出じゃんね ね?」

エネコロロ「そこでなんで私を見るの……?」

ゴクリン「こっちの話さ!」

プラスル「ま、まあまあ……」

マイナン「…… ――ふんっ!!」

マイナンの喧嘩腰はプラスルが仲裁に入りやっと収まった





ルリリ「……ぉ ……たし、も」

会話に混ざっていなかったルリリが何か呟いた

キノガッサ「え?」

回りの会話にかき消されてしまったため、聞き返してしまう


ルリリ「……私も! ……行く」


身体を震わせて尻すぼみ気味だが、彼女は確かに意思を表明したのだった

 ▼ 535 TOg35azcXc 20/01/26 01:52:00 ID:aYPwgV9U [2/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
キノガッサ「え、でも、君……」

参加したくないから先にリタイアしていたのではなかったか

ルリリ「う…… だ、だって…… マイナンが足引っ張るじゃん絶対!!」

マイナン「何をぉ!?」

ゴクリン「言っていいことと悪いことがあるんだけどなぁ」

マイナン「何をぉ!!!? それお前もそう思ってるってことかぁ!!?」

プラスル「ど、どうどう…… 私は頼りにしてるよ、お兄ちゃん」

マイナン「なら良し!」

ゴクリン「いいのかそれで」



エネコロロ「はいはい それよりルリリよ」

脱線しかけた話をロロが戻す

エネコロロ「本当にいいの? 私的には有り難いけど」

ロロの視線が痛い そんなに頼りないかなあ……

昼の手が減ってでも夜の人員を厚くするなんて

エネコロロ「あ、それは大丈夫よ プラスルがこっちだから」

マイナン「ちょ…… それって」

ゴクリン「どうどう」

エネコロロ「プラスルが有能なのよね」



ルリリ「……その有能なプラスルが駄目なら、皆でやらないとでしょ」

エネコロロ「あら、僻んじゃった? ごめんなさいね」

ルリリ「……別にいい 私たちが弱いのは今更だもん」

マイナン「たち? ……なんか引っかかるけど、確かに手が多い方がいいよね」

いやはや、メンバーに助けられてばっかりだ

カゲボウズ「じゃあ、そろそろ幽霊退治出掛けちゃおっか」


 ▼ 536 TOg35azcXc 20/02/17 01:56:54 ID:idLA5UN. [1/3] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
キノガッサ「ああ、もうそんな時間なんだ」

話してるうちにいつの間にかまた時間が経っていたか

プラスル「あ、あの、気を付けて下さいね」

カゲボウズ「はーい 気を付けるよー」

皆で“ひみつきち”を出てくれ始めた森へ向かう

今日こそ全部片づける……は、無理でもできるだけ進めたいものだ



マイナン「って…… うあああああ!!?」

キノガッサ「……!!?」

ルリリ「な、何々!?」

いきなり傍で叫ばれて驚く まさかもう襲ってきたのか

カゲボウズ「もー、いきなりさけばないでよ、びっくりするなあ」

呑気な声を聞く限りどうやら安全は保たれているらしいが……?

マイナン「いや、お前だお前!! いつからそこに!?」

ルリリ「うあ! 本当だ!!」

……今日の案内役に気付いていなかったらしい

カゲボウズ「えへへ おじさん、今手がはなせないからかわりにきたよ!!」

キノガッサ「へえ、そうだったの カゲボウズが来たのはちょっと驚いた」

マイナン「いやなんでちょっとで済むのさ!!」

何度も驚かされて慣れてしまったのは自分だけだったか……



ともかく、夕闇に染まる森へ出る

やはり異常な気配が揺蕩っていて不気味だ

ルリリ「く、暗い…… ねえ、な、なにかでそうじゃない?」

マイナン「や、止めろよそういうこと言うの……!!」

二人共随分と怯えたようで足が竦んでしまっていた

こちらが促しても、動かない いや、動けないようだ

キノガッサ「いや、これから出てくる幽霊を何とかしなきゃいけないんだけど……」

……先が思いやられる
 ▼ 537 TOg35azcXc 20/02/17 02:38:18 ID:idLA5UN. [2/3] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
――――ガサガサッ



ルリリ「ひっ……!!」

カゲボウズ「おねえちゃん! “塩”かまえて!!」

今宵も早速とばかりに幽霊が現れる



しかし対処法は心得ている

まず“ドール”を投げ、“塩”で弱らせ、“精霊球”に閉じ込める

昨日相応の修羅場をくぐっているお蔭か流れるように動けた

そして残ったのは、転がった“精霊球”のみ

カゲボウズ「いっちょあがり! だね!」

弾んだ声が響く



が、その声は一つだけで

キノガッサ「君たち……大丈夫?」

残る二匹はと言えば……

マイナン「――あ…… ああ……」

ルリリ「――う…… う……」

震えあがって蹲ってしまった

……初体面なら仕方ないだろうとは思うけど



ルリリ「な、なにあれ…… やだ……! 怖い……!」

カゲボウズ「だ、だいじょうぶだよ! ちゃんとたおせるんだから!」

恐怖に震える二匹をカゲボウズがなだめようとする

しかしあまり効果はないようだ……


 ▼ 538 TOg35azcXc 20/02/17 03:04:24 ID:idLA5UN. [3/3] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
キノガッサ「これは、慣れるしかないんだよね……」

少なくとも、それ以外の手段は知らない

……やっぱり無理に連れてくるべきじゃなかったんじゃないかな

ルリリ「う…… な、慣れるかなあ……?」

マイナン「無理無理!! 絶対無理!! こんな暗い中であんなん見たら――」

そこでマイナンは何かに気付いたように言葉を止め

マイナン「……そうだ! 暗いのがいけないんだ!!」



まるで名案でも思いついたかのように叫ぶ

マイナン「――よし! そうとなれば」

カゲボウズ「!! まって! それは」



マイナン「“フラッシュ!!!”」



カゲボウズが生死の言葉を掛けようとした瞬間、眩い光があたりを照らす


それと同時に、そこかしこからこの世ならざる気配の存在が溢れ出した

奴らは雪崩うつようにこちらに向かってきて


カゲボウズ「ああ!! ちょ、おおすぎ――」

ルリリ「うあああああああ――」

マイナン「な、な、なんじゃこりゃああ――」

キノガッサ「み、みんな――」




キノガッサ の めのまえ は まっくらに なった ……
 ▼ 539 TOg35azcXc 20/03/14 00:37:41 ID:HfQAqwd2 NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ゴクリン.「だから下りたら? って聞いたじゃない」

気付いたら“ひみつきち”にいた

キノガッサ「――み、みんなは!?」

部屋の中にはゴクリンの姿しか見えない あれからどうなったのか

ゴクリン.「慌てなさんな みんな眠ってるよ 夜だし」

キノガッサ「無事、なの? どうして……」

ゴクリン.「覚えてないか ま、寝てたもんね 彼岸からサマヨールが駆け付けたんだよ」

キノガッサ「そっか…… 結局助けられちゃったか」

依頼を受ける側としてあまりにも情けない

やっぱり、強がってもまだまだか

ゴクリン.「あ、大丈夫だよ 始めから期待なんかしてないし」

キノガッサ「――え?」

ゴクリン.「所長は臆病だからね いつかこうなるんじゃないかと思ってさ」

キノガッサ「そりゃ、まあ……」

ゴクリン.「だから再三背伸びし過ぎないように苦言を呈していたじゃないの」

キノガッサ「…………」

何も言い返せない いや、言い返すべきではないのだろう

ただ焦燥感に駆られる どう逃れるべきだろうか

ゴクリン.「まあ、これも一つの教訓だよね」

キノガッサ「…………」

ゴクリン.「どうせ何もできないんなら出しゃばらない方が良いってことさ」

キノガッサ「…………」

ゴクリン.「ついでに私設ギルドとかいうごっこ遊びも止めにしようよ」

キノガッサ「……なるほど、判ったよ」

ゴクリン.「あ、判ってもらえた? じゃ、早速看板畳んで」



キノガッサ「もうリンの顔で喋るな! ……怨霊!!」



キノガッサ は “塩” を 使った !

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