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「ブイズのパーティー」 【SS】

 ▼ 1 ッキング@かがやくいし 18/02/02 22:43:57 ID:RXwlpi1o NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「この度、カロス地方はアサメシティにてイーブイ族のための婚活パーティーを催すことになりました

是非ともご参加下さいますよう宜しく申し上げます」

ある日そんな手紙が各地方に届いた

主催者はとある大財閥で、パーティーは数日に渡って盛大にやるようだ

しかし奇妙な注意事項がいくつかあり、どうやらただのお見合いとはいかないらしい

それでも、招待された者たちは続々と参加を表明していった

“イーブイ族のための”というフレーズがとても魅力的だったのである

雌雄比が非常に偏ったイーブイ族の♂にとって、イーブイ族を伴侶とすることは憧れであり、同時に競争率の激しい夢である

そのような経緯から、大事にされるので♀の方もイーブイ族と結ばれることを望む傾向にある

怪しくもまたとないチャンスを求め、招待された十名が集まった

 ▼ 400 400◆TOg35azcXc 18/08/12 00:34:02 ID:lRcQv7E. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
今日の依頼は、迷子の捜索だった

なんでも、お使いに出かけたきり戻って来なくなっていたとか

日を跨いでる訳でもあるまいに、どんな親バカなんだろう……

しかし依頼は依頼と探してみると、人気のない道で半泣きの子どもを見つけた

どうやら、本当に迷ってしまっていたらしく、心細かったのだそう

つい笑ってしまったことを反省をしながらも迷子を親の元へ届ける

母親「娘を探してくれて、本当にありがとうございました」

迷子「お兄ちゃん、ほんとうに、ありがとーございました!」

感謝の言葉を受けて一種複雑な思いをしてしまったのは自業自得か

ポチエナ「はは…… なんのなんの お嬢さんが無事でよかった」

約束の報酬を受け取った といっても大したものじゃない

依頼内容には見合ってるから文句は言えないけどね


昨日は落とし物探し 森の中に置き忘れたという木の実袋を拾うだけのもの

その前は旅のポケモンの道案内やメジャーな傷薬の原料の調達など

依頼には難易度と呼ばれる基準が設けられているのだけど
(依頼目的や依頼内容によって割り出され、労力や報酬の目安となる)

これらの仕事は、難易度がとても低い

更にはポチエナにしてみれば輪をかけて難しくない仕事なのた

なにせポチエナは鼻が利くし、お蔭で方向感覚は抜群

つまり、任される依頼は難なくできるのだけれども……

だからこそ、強くなれている気もしなくて、溜息が出てしまう

目標としているポケモン達に追いつけるときは来るのかな……

焦燥感ばかりが募って、ポチエナを悩ませるのである

 ▼ 401 TOg35azcXc 18/08/13 23:09:21 ID:ALng7gk6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エネコロロ「お帰りなさい お疲れ様」

ポチエナ「エ、エネコロロさん!? お、お疲れ様です!」

依頼解決の後、“ひみつきち”へと戻ってみると副長が労ってくれた

珍しく受付係のゴクリンも出かけていて二匹っきりになってしまう

エネコロロ「そんな緊張しないでよ 仲間じゃない」

副長は苦笑して気楽にするようにと求めてくる

ポチエナ「は、はいぃ!」

がちがちになりながら態度とは一致しない言葉が出てきてしまう

……いや、無理だ

そもそも彼女は憧れのポケモンの一匹で、逸話もある凄い存在

しかもギルドの副長 “ひみつきち”のNo.2 つまり自分の上司だ

加えて、なんというか、可愛い、のだ

シュッとしたシルエット 細く綺麗な脚 つやつやな毛艶は輝くようで

正直、♀慣れしていないポチエナの心臓に悪い 真っ赤になってしまう

エネコロロ「でも本当、よくやってくれてるわ
      ここ数日だけでも何件も依頼を解決したそうじゃない」

ポチエナ「いえ、それほどでも…… というか、あの」

エネコロロ「ん?」

ポチエナ「おれが受けてきた依頼って難度低いですよね?
     もっと難しいのにも挑戦していきたいっていうか……」

差し出がましいと思いながらも希望を口にする

副長は少し目を見開き、悩むように口を閉ざしてこちらを見た

……生意気だっただろうか

やっと軌道に乗ったところなのに何を言い出すと思われたかな

エネコロロ「……そうね いつまでも新入りって訳じゃないし
      少し難しい依頼も任せようかしらね」

ポチエナ「ありがとうございますっ!」

希望が通ったようで嬉しくなる 早速一つ依頼を受けた 頑張るぞ!


エネコロロ「……怪我、しないでよね」

副長が心配そうにつぶやいたけれど、依頼に気を取られたポチエナの耳に届かなかった
 ▼ 402 TOg35azcXc 18/08/17 23:57:14 ID:WancI7A. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
今度の依頼は、香る茸の採集

復活草と同じく、限定された環境でしか生育しない希少生体だ

採れる時期も限られていて、高額で取引されているようだ

といってもその時期というのは今である じゃなきゃ依頼にならない

ポチエナ「森の奥の日の当たる場所、ね ……大雑把過ぎないか?」

香る茸の生育場所について、あまり多くの情報はないらしい

それだけ範囲の特定も難しいということかもしれないけれども

そう考えれば、大雑把で解るだけでもありがたいものだ

とにかく、日の当たる場所となると森の中にいくつかある高台だろうか

上手く生えていて、見つけられればいいんだけどな

この鼻は茸を探すにはもってこいである

まるでダウジングマシンのように反応を探し回った

途中から、嗅覚に集中するために目を瞑っていたり

それがいけなかった 突然、浮遊感に襲われる

ポチエナ「――え!? う、うあああ!!」

踏み外した!

そう気づいた時にはもう既に身体は宙を舞っていて

転がり落ちながらも何か掴めるものはないかと必死に四つ足を延ばし

地面に背中を打ち付けたとき、偶然にも目的の茸を持っていたのは笑い話、かな


落ちるポチエナ、岩壁の茸をも掴む

ことわざになったりしないかな……
 ▼ 403 ガイドス@きりのはこ 18/08/19 15:35:33 ID:QWcgdHII NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 404 ンシカイオーガ@のこされたボール 18/08/21 22:13:41 ID:pfr.YAAk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 405 TOg35azcXc 18/08/22 00:47:28 ID:SMiEaEik NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
なんて、馬鹿げたこと考えてみても体の痛みは薄れてくれるわけもない

痛みを堪えつつ立ち上がり、納品のため“ひみつきち”を目指す

ダメージは受けたけど、依頼は完了させられそうで一安心だ


ポチエナ「……お邪魔、します」

マイナン「いらっしゃ……って、大丈夫か!? どうした、その傷!!」

ポチエナ「あはは、ちょっと失敗しちゃいまして
     あ、これ、依頼の香る茸です 誰に渡せばいいんでしたっけ?」

マイナン「いやいや、そんなのはいいから! 凄い傷だよ!?」

プラスル「ええと、薬、準備しますね こちらにいらしてください」

怪我をして帰ったら、プラマイ兄妹がいて慌てさせてしまった

申し訳ないと思いつつもお言葉に甘えて治療してもらう

なんたって、痛いのは本当だし

マイナン「なんだってそんな、痛々しい傷なんて作ったのさ」

ポチエナ「あー…… なんというか、前方不注意でちょっと」

プラスルに薬を塗ってもらいながら、質問に答える

失敗の模様を話すのはちょっと恥ずかしい

マイナン「落ちた結果茸を手に入れたと そりゃまた“塞翁ポニータ”な……」

ポチエナ「運が良かった……んですかね?」

プラスル「大事に至らなかったから良かったですよ
     でも、気を付けて下さいね ポチエナは飛べないんですからね」

ポチエナ「はい 面目ないです アイタタ……」

手を煩わせた上お叱りを受けてポチエナは尻尾を垂らして落ち込んでしまう
 ▼ 406 ニドリル@スキルコール 18/08/22 01:13:35 ID:K1b.u3OI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
さあ鶏になろう
これは真面目に支援する
 ▼ 407 で済まんの◆TOg35azcXc 18/08/23 01:11:07 ID:8SXUQHnc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
プラスル「それにしても、依頼は達成してしまうから凄いですよね」

こちらの様子を見て気を使ったのか、プラスルが呟いた

ポチエナ「……偶然なうえ失敗もしてますけどね」

それを受け自嘲すると、彼女は首を振って言葉を重ねてくる

プラスル「確かに、怪我したのは良くありません でも、
     気にし過ぎるのも駄目です 一度や二度の失敗なんてなんてことありません」

マイナン「ボクらは初依頼失敗してるしね」

ポチエナ「え!? そうなんですか!?」

意外だ…… 彼らだってポチエナにとっては凄いポケモンで、頼れる先輩なのに

プラスル「そうなのです それに比べればちゃんと成すこと成している貴方は凄いのです」

ポチエナ「なんか、反省してるところ慰められたり褒められたりって
     喜べばいいやら気を引き締めればいいやら判んないっす……」

マイナン「そうだね…… ポチエナを凄いと思ってるのは本当だし喜べばいいんじゃない?
     あ、でもまた怪我されたら困るし、そこは反省して?」

……やっぱりどちらか解らない どっちも、なのかな? うーむ

プラスル「要するに、『経験』ということでしょうね 成功も、失敗も
     結果を受け止めることは大事ですが、囚われ過ぎないことも肝要なのです」

悩んでしまっていると、補足するように付け足してくれる

『経験』か…… 難しくてよく判らなかったけれど 何か判った気がした

プラスル「はい 薬、塗り終わりました 患部を冷やしながら少し安静にしてて下さいね」

ポチエナ「あ…… ありがとうございます!」

話をしている内に治療が終わったらしい 余り痛くしない手際に感謝しきりだ
 ▼ 408 TOg35azcXc 18/08/26 21:21:16 ID:pAm6ERjY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エネコロロ「邪魔するわよ ……っと、その怪我どうしたのよ」

ポチエナ「お、お帰りなさい ええとですね――」

治療が終わって一息ついたところで帰って来た彼女に、説明する

やっぱり失敗について話すのは気まずい

注意を促して来た彼女だから尚更のことで、怒られるかとつい身構えてしまう

エネコロロ「ふーん 思ったより早かったわね」

しかし彼女の反応は思ったよりもあっさりとしたもので拍子抜けしたやら安心したやら

プラスル「……早かった? 予想していたんですか?」

しかしプラスルの呟きにドキリとさせられてついエネコロロに向き直る

エネコロロ「いつかやらかすんじゃないかと思っただけよ」

プラスル「解っていたなら言ってあげればよかったじゃないですか
     下手に怪我することもなかったのでは?」

エネコロロ「言葉で言って何とかなるものじゃないわ 怪我で済んでよかったじゃない」

だから言ったのに、と言われているようで非常に耳が痛い

確かに今回の事故は自業自得なのだけども

エネコロロ「それに私だって“未来予知”できるわけじゃないから」

プラスル「それもそうですね」

いつどこで、どのようにして怪我するかまでは解らなかったということかな……

でも、じゃあ

ポチエナ「……なんでこうなるって思ったんですか?」

確かにポチエナは未熟ではあったけれど、そこまで確信されていた理由は訊きたい

単純に疑問に思い質問したのだけれど

エネコロロ「……逆に訊いていいかしら 何をそんなに焦っているの?」

質問返しされて、目を白黒させてしまった
 ▼ 409 詰まらぬ◆TOg35azcXc 18/08/27 00:20:11 ID:McEMtr8c NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マイナン「焦ってるって?」

エネコロロ「そう見えるわ 妙に張り切っていて、危うくてしょうがない」

焦燥感に駆られていたのは事実だけど、指摘されるとは思わなかった

そんなに分かり易く危うかったのだろうか そうなのだろうな

ポチエナ「こんなんじゃ、駄目ですよね……」

指摘されたことで余計に、遣り切れない気持ちともどかしさが湧いてくる

エネコロロ「かもね さて、もう一度訊くわ 何をそんなに焦ってるの?」

ポチエナ「……おれは、強くなりたい 早く、立派なポケモンに
     ここに集まっているポケモン達のように、凄い存在に」

そんな風に気持ちが逸っていたからこその失敗であり、
失敗したことで更に気持ちが逸る悪循環なのだけれども思わずにはいられない

ポチエナは自身の至らなさに歯噛みして悔しがる

エネコロロ「うーん 気になってたんだけど、あんたの言う凄いポケモンって誰のこと?」

ポチエナ「へ?」

……彼女は一体何を言い出したのだろう 正直、意図を掴みかねる

ぽかん、と口を開けたまま固まってしまっていると、

エネコロロ「や、私は別に強くなんてないし、キノも否定するはずよ
      あんた達だってそうでしょ?」

マイナン「そりゃもう! ボクなんて全然!」


プラスル「はい 私も、というか、ここにはそんなに強いポケモンはいないと思いますが」

エネコロロ「そうよね? そんなにかしこまられる理由がないっていうか
      そのうち慣れると思って最初は気にしなかったけど、変わんないし」

重ねて言い募る彼女にみんな同調しだして、ポチエナはくらくらしてしまう
 ▼ 410 TOg35azcXc 18/09/02 17:52:14 ID:.OVIkFt6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ポチエナ「いやいやいや 皆さん凄いですって!」

なんでそんな謙遜するのやら そして何故こっちが必死になっているのやら

エネコロロ「だから『誰が』って訊いてるのよ」

ポチエナ「え? いや、だから」

エネコロロ「私たちはあんたの『理想』じゃないわ」

遮るように、彼女は言う

その目はどこか突き放すように冷たくて、二の句が継げなくなってしまう

押し黙ってしまい、若干重たい空気が流れた

マイナン「……これ、どういう状況? ついていけない……」

その空気を崩すように、マイナンが戸惑った声を発する

エネコロロ「この仔、目が曇っているのよ 何も見えちゃないわ」

プラスル「……つまり、それが『危うくてしょうがない』と言っていた理由、ですか?」

エネコロロ「見えてないから危ういのに、見えてないから言ってもしょうがなかった
      実際に痛い目に遭うのが一番よ いい薬だわ」

ポチエナ「……曇ってるって、そんな、ことは」

素直に認めることはできなかった だって、本当にみんな『凄い』から

エネコロロ「私たちなんかに憧れて『強くなる』だなんて言ってる時点でね……
      私たちは寧ろ弱い方よ? 何を見ているのかしら?」

ポチエナ「そりゃ、色んな依頼をこなしていて 沢山のポケモンを助けていて……」

エネコロロ「報酬があるもの 普通のことよ」

ポチエナ「……」

彼女は尚も厳しいことを言う 事実を告げているだけだというように淡々と
 ▼ 411 TOg35azcXc 18/09/09 23:35:59 ID:j8GwHKcQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「話は大体聞かせて貰ったよ」

と、唐突に“ひみつきち”の入り口から声がした

エネコロロ「あら、キノ 帰ってたの いらっしゃい」

キノガッサ「はいはい お邪魔しますよっと ロロは手厳し過ぎじゃない?
      言い方があるよ そんなにはっきり……」

いつから聞いていたのやら、飄々とフォローに回ってくれる

でも、それはつまり

マイナン「うえ? 所長も同意見なの?」

副長の言が的を射ていると彼も思っているということだ

キノガッサ「見えてないっていうのは言い得て妙だと思うよ
      遠くばかりに目が行っていて、足元が疎かだ
      気持ちばかりが先走っていて、不安定
      勿論、崖からの転落という意味でなくてね」

エネコロロ「それを自覚してないんだからはっきり言ってやった方が良いでしょ」

キノガッサ「だから、言い方ってものがだね……」

二匹の言い合いを始めてしまうが、ポチエナにはそれを止める余裕がなかった

痛烈に言われたのもそうだが、何を間違っていてどう直せばいいか解らなかったからだ

……これでは、見えてないって言われてもしょうがないか

ポチエナ「……どうすれば、いいですか」

だから、思い切って聞いてみる

『見えている」彼らに ポチエナの先を行く先輩方に

言い合っていた二匹はこちらの様子に少し驚き、微笑んだ

そして副長に促された所長が、真剣な口調で言う

キノガッサ「『強くなる手段は、なにもバトルに限らない』ってやつだよ」

僕も別に強い訳ではないけどね、と直後茶化すように呟いたけれど
 ▼ 412 イル@メガバングル 18/09/09 23:48:48 ID:sHgcsbIM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 413 TOg35azcXc 18/09/23 23:45:53 ID:SYAI7ms6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ポチエナ「『バトルに限らない』? バトルしているわけではないんですが……?」

エネコロロ「アハハ!」

単純に疑問になって口にしたら、副長に噴き出されてしまった

所長はその笑い声に気まずそうにしながら頭を掻く

変なこと言ってしまったかな……?

キノガッサ「あー…… そこは言葉の綾というか、あれだよ、うん
      あれー? 使いどころ間違ったかな?」

エネコロロ「折角キメたのにキマってないじゃない ふふっ」

プラスル「エネコロロさん、笑い過ぎですよ……」

え、えーと…… おれ、なんかやっちゃいました?

なんか恥ずかしくなってくる

キノガッサ「コホン 依頼をこなすということは素晴らしいことだけど、
      無理してそれをして願いには直結するのかい?」

ポチエナ「え……と、それは」

どうなのだろう?

依頼を解決できる彼らは凄いポケモンだと思った

しかし、依頼を解決した自分は凄いポケモンになれたかというと、違う気がする

こうして、怪我もしている現状は駄目駄目だろう

つい深く考え込んでしまう そして

キノガッサ「更に言えば『凄いポケモンになること』よりも、
      『依頼を達成すること』の方が目的になっていないかい?」

続けられた言葉に、言葉が出なかった

それはつまり、図星だと思ったからで

キノガッサ「要するに、一つの手段に囚われてないかってこと
      そして、本末転倒してないかってことだよ」

優しくも厳しい言葉で締めた所長を、途方に暮れて見つめてしまった気がする
 ▼ 414 ノココ@ももぼんぐり 18/09/24 07:51:16 ID:uOg2cgyQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 415 TOg35azcXc 18/10/08 01:32:53 ID:nHC6H5C2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エネコロロ「私にはああ言っておいて、あんたも中々手厳しいじゃないの」

キノガッサ「ん…… そうだね 申し訳ない」

エネコロロ「結局あんたも目に余ってるってことじゃないの」

ポチエナ「……おれ、そんなに酷いですか?」

自覚してないとお二方に立て続けに言われてしまっては不安になるものだ

エネコロロ「正確には、酷くなりそう、ね まだなってはいないわ」

修正していけばいい、のだろうか …………どこを?

ポチエナ「……解ってないことが解りました ……どうも」

『見えてないから言ってもしょうがない』という副長の言葉が痛烈に突き刺さる

悔しいしもどかしいのに、解決策は見通せない……

キノガッサ「まあ、暫くはギルド休んで考えてみればいいんじゃないかな」

所長が気遣わし気に声を掛けてくる

ポチエナは歯噛みしてしまい、喋れなかった


マイナン「いいなー…… 所長! 僕にも休みを下さい!」

話しについてきていない様子だったマイナンが、先程の所長の発言だけを追って言う

エネコロロ「え、あんた働きたかったんじゃなかったの?」

マイナン「……前はそうだったけどさ、今は何か、引っ切り無しじゃんさー
     最後に休んだのがいつか思い出せない程じゃん……」

キノガッサ「そうは言っても…… 一気に手が抜けたら回んないし……」

ポチエナ「え…… いや、おれもやりますよ!?」

忙しいのは確かだ 寧ろこの頭数で回ってるのが凄い 休んでなんて……

エネコロロ「あんたは寧ろ休んでなさいな 大丈夫 マイナンが頑張るから」

マイナン「え、ちょっ、ひどっ!!」

しかしポチエナの想いとは裏腹に働かせては貰えないという

どうやら今のままでは戦力外通告されてしまうらしい


エネコロロ「何だったらプラスルも休む? 頑張れマイナン」

マイナン「えー……」

プラスル「い、いえ、私は大丈夫です! 大丈夫だよ、お兄ちゃん!」

マイナン「ありがとう、妹よ お前の“手助け”があればあと10年は戦えそうだ」

エネコロロ「シスコン乙」
 ▼ 416 TOg35azcXc 18/10/14 23:41:22 ID:0BmoDIMI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グラエナ「それで、どうすればいいか解らないということか」

“ひみつきち”から帰らされて棲み処に戻ると、姉が心配そうに声を掛けてきて
自分で整理するためにもと、彼女にも色々聞いてもらった

ポチエナ「『見えていない』らしいことは解ったけど、じゃあどうすればいいんだろう?」

自分だけで考えたところで、答えなんて出なかった

姉は暫し悩むように黙り込み、やがて言う

グラエナ「解らん」

がっくりきてしまう

ポチエナ「……まあ、だろうとは思ったけど」

グラエナ「ん? それは私を侮辱しているのか? 生意気な」

つい呟いた言葉を聞きとがめられて睨みつけられてしまった

防御力が下がりそうで冷汗が垂れる 慌てて弁明した

ポチエナ「や、そういうんじゃないよ!? ただ、難しいなってさ」

グラエナ「そうか 私もエネコロロが何を『見えていない』と言ったかまでは解らん」

ポチエナ「それはさっき聞いたって……」

グラエナ「しかしな? ポチエナが答えを出すことが出来るのだろうことは解るぞ」

繰り返して言う姉は解らないと言いながらもなぜか得意気だ



ポチエナ「へ?」

グラエナ「そもそもこれは自分で答えを出すべき問題だろう?
     ヒントも、一匹で考える時間も与えられたんだ
     なら、きっともっと頑張ってみれば答えは出せるはずだ」

私の弟なのだしな 姉は何故か自信満々でそう付け加える

ポチエナ「……本当に解っていないの?」

グラエナ「どうだろうな 私に聞いてもしょうがないと思う」

はぐらかされて教えては貰えないようだ

みんな自分で考えろと言う

解らないから訊いているのに……
 ▼ 417 TOg35azcXc 18/10/22 00:30:51 ID:RvLod/Ck NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ポチエナ「まあ、いいや 良くないけど、置いとく」

『見えていない』ものは、確かにポチエナが自分で見るべきなのだろう

それとは別に、副長たちを知っている姉に訊いてみたいことがあった

ポチエナ「何で副長たちは自分を弱いなんて言うのかな……」

ポチエナはあんなに立派なポケモン達を他に知らない

だというのに彼女らは彼女らを否定するようなことを言う

そこがどうしても解せないのだ



グラエナ「そうだな あのポケモン達は強い 私たちを助けてくれた」

姉はこちらの言葉に頷きながら肯定する

グラエナ「だが彼女らの言葉も間違いじゃないぞ? あたしでも勝てる」

しかし次の瞬間頓狂なことを言い出すのだ

ポチエナ「は? え? どういう意味?」

ポチエナにはもう訳が分からない

そんなポチエナに姉は教え導くように優しく語る

グラエナ「『強い』と『弱い』は対義語だ 言葉の上ではそうなる
     しかし、だからといって相反するかといわれればそうではない
     一匹の人物の中に両立することだってあるのだ」

ポチエナ「弱いのに、強い……? 強いけど、弱い……?」

グラエナ「そうだな 更に言えば『強さ』にだって種類がある
     『強い』という言葉面に惑わされているんじゃないか?」

種類? それは考えていなかったことだ

でもそう考えると確かに、引っかかっていた物がストンと落ち着く気がした
 ▼ 418 ゴーム@ヒールボール 18/11/09 23:49:31 ID:61xE9VRw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援(保守)
 ▼ 419 ギア@パワーアンクル 18/11/19 01:21:48 ID:V2qEb1es NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 420 TOg35azcXc 18/11/24 22:27:37 ID:..mERooQ NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
棲み処を出て、適当にふらつく

少し落ち着ける時間が欲しかった

先程掴みかけた何かを一匹になって捉え直したかった


ジグザグマ「あ! お兄ちゃんだー! “ひみつきち”のポケモンさんだー!」

と、横合いから元気な声を掛けられる えーと、確か……

ポチエナ「ああ この間の、迷子の仔だね こんにちは」

以前に捜索依頼で見つけ出した仔だ

ジグザグマ「むう ジグザグマだよぅ 変なおぼえ方されてる……」

ポチエナ「ごめんごめん あれから迷子になったりはしてないかい?」

ジグザグマ「うん なんかね 森で迷わなくなった! いつもの森に戻ってるの!
      ポケモンさんたちのお蔭だね!」

迷っていないなら良かった

ただ、不思議な言い回しをされたのが気になる

ポチエナ「いつもの森に? おれたちが何だって? どういう意味?」

ジグザグマ「えっとね えっとね なんかね 変だったの
      ポケモンさんがどうにかしてくれたんでしょ?」

……なんか買い被られてる いや、そもそも

ポチエナ「ポケモンさんってなに? そっちこそ変な覚え方じゃない?」

ジグザグマ「えー だって“ひみつきち”の方でしょ?」

ポチエナ「え? うん まあ そうだけど……」

ジグザグマ「エネコでもゴクリンでもルリリでもプラスルでもマイナンでもないでしょ?」

ポチエナ「何その質問? 確かにおれはポチエナだけども」

ジグザグマ「でしょー? じゃあやっぱりポケモンさんじゃない! 本の通り!」

頭の上の疑問符が増えていくこちらに対して、相手は勝手に納得して盛り上がっている

……全然話についていけない 本? 何のこと?
 ▼ 421 ュゴン@ファイトメモリ 18/12/12 04:44:10 ID:/pI6dOgA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 422 ガプテラ@こだいのおまもり 18/12/14 23:14:32 ID:hHQQBuys NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 423 ハコモリ@はつでんしょパス 18/12/15 03:02:14 ID:nE8MDkmA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
途中でちゃちゃ入れるのも悪いけど、最初の小説すっごく面白かった。
キャラクターが生きてて、アイデアとかも面白かった。イーブイ★とブラッキーのコンビが特にすき。
作者さんも博識だなと、その文才が欲しい。小説売ってたら買ってた。
長文失礼
 ▼ 424 ルキア@やすらぎのすず 18/12/21 02:23:52 ID:vKGgazGQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 425 リクリ◆TOg35azcXc 18/12/25 00:24:36 ID:N4YMySsY [1/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ジグザグマ「ちょっとまってね ……じゃーん! これです!」

彼女はなにやら懐を探ったかと思うと効果音と共に一冊の本を出した

ジグザグマ「最近お気に入りで持ち歩いてるんだー えへへ」

本を? ……まあ、子どもってお気に入りは持ち歩きたがるか

子ども向けらしくあまり厚くもないしね

折角だから借りて読むことにした

ふむ タイトルは『ひみつきちにあつまって』というのか

著者は…… あ 所長だ



最後まで読み切って本を閉じた

正直、圧倒されている

書かれているのは多分、本当に彼らがやったことなのだ

やはりすごいポケモン達なのだと思ってしまう



そして隣で一緒になって読んでいる彼女の勘違いの理由も分かった

童話の主人公である『ぽけもん』には肝心の種族名がない

種族特性から想像できるような描写もなく挿絵も特にはなくて、

『ぽけもん』がなんのポケモンなのかは解らないのだ

多分所長 ……キノガッサなのだろうけど

本を読むだけではそこまで想像できなさそうで

彼女が知っている“ひみつきち”のポケモンがポチエナだけなら

そう勘違いするのも分かる、かもね
 ▼ 426 想嬉しす 支援感謝◆TOg35azcXc 18/12/25 01:00:29 ID:N4YMySsY [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
こちらが読み終わったのを確認すると、彼女は円らな瞳でポチエナを見つめてきた

そこに憧憬の色が含まれているのを見てとって、少し複雑な気分になる

羨望を向けられることに嬉しい気持ちもなくはない

しかし本来の自身以上のそれでは、居心地の悪さの方が大きい

ジグザグマ「ね? これお兄ちゃんでしょ?」

無邪気に童話の内容を間違って信じている彼女に、ポチエナは言葉を選ぶ

「それは自分だ」と嘘を言えるほど図太くはないが、

折角ぼかして書いてあるのにそれを崩すほど無粋になるわけにもいかない

ポチエナ「……いや、おれじゃない奴だよ。おれはこの『ぽけもん』に憧れてる奴だ」

結局口から出たのは、本心に近いもので

『ぽけもん』と大きな差があることを示したようで、我ながらなかなか格好悪い



ジグザグマ「そうなんだ! お兄ちゃんもわたしとおんなじなんだね!」


彼女はそんなポチエナの気持ちとは裏腹に、ただただ朗らかに言った


ジグザグマ「でも、お兄ちゃんの方が凄いよ! 本当の“ひみつきち”の一員だもん
      わたしよりよっぽどずっと凄い!」


全然、足りていないって…… 『見えてない』って自覚したばかりだけど


ジグザグマ「なれるといいね 『ぽけもん』みたいに
      ううん 絶対なれるよ!」


なぜか彼女の純粋な目を見ていると本当にそうなれる気がした
 ▼ 427 けおめ◆TOg35azcXc 19/01/01 23:27:21 ID:NiFkd.OM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ポチエナ「……ありがとう」

気付いたら、声に出していて

ジグザグマ「ふえ? なんでお兄ちゃんが『ありがとう』なの?」

不思議そうな顔をさせてしまった

ポチエナ「や、頑張ろうって思えたから」

落ち込み気味だったのが上向きになったのは確かだ

素直な気持ちでそう言った

ジグザグマ「ふふ 変なお兄ちゃん」


それから、棲み処に変えるという彼女を送った

もう森で迷うことはなくなったという話だったが、一応

仔ども扱いされたと思ったのか、顔を赤くして俯いていたけど、勘弁してほしいな


実際彼女はポチエナよりは下だし

この間迷子になっていたのは事実だし

仮にもポチエナは“ひみつきち”の者だから

見過ごすわけにもいかないんだよね


という言い訳は言わなかったけど

道中は童話についての話に花を咲かせた

他愛もないことだったけど楽しかったかな
 ▼ 428 ンバドロ@しんぴのしずく 19/01/02 00:23:39 ID:0zHYvr76 NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 429 TOg35azcXc 19/01/09 23:43:57 ID:jUi6qKBA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジグザグマと別れてポチエナは自分の棲み処を目指し森を歩く

先程聞いた童話が頭の中を占めているから、ゆっくり

自分がどうすれば、彼らに辿りつけるというのだろうか

目指すものは遠く、何をすればいいか判らずに悩みながらゆっくり

そうして歩いていると、何やら先の方にポケモンがいるのが見える


ドクケイル「……ぐぅ くそっ! 彼奴どうしちまったんだよ……」

独り言のように悪態を吐いている

ふらついて飛んでいて、危なっかしい

ポチエナ「怪我をしているようだけど…… 大丈夫か? どうした?」

事情は判らないが、見過ごすのも気が引けるため声を掛けた

相手は驚いたように振り返り、訝しげな顔になり身体を強張らせた

ドクケイル「なんだてめえ? 追い打ちか!? ……っく、テテ」

ドクケイルは攻撃しようとしたようだったが、痛みに顔を顰めて蹲る

ポチエナは駆け寄って支えてやる

ポチエナ「何を言ってる? 怪我してんだから落ち着け」

事情は判らないが、一先ず害意はないと示して落ち着かせようとした



ドクケイル「・・・・・・や、済まなかったな」

おやつにと持っていたオレンを渡すと少しは痛みも引いたらしい

敵対意思がないこともどうやら伝わってくれたらしく落ち着いている
 ▼ 430 ングマ@おおきなしんじゅ 19/01/10 06:31:08 ID:jDxs5Qf. NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 431 TOg35azcXc 19/01/11 22:20:32 ID:eg2AwUUs [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ポチエナ「それで? なにがあってそんな状態に?」

タイミングを見計らい、そもそもの疑問を切り出した

傷付いているのに見境なく攻撃しようとする辺りただ事じゃなさそうな

……怪我をしている時点でただ事じゃないが

ドクケイル「何があったかって こっちが聞きてえんだけどな……」

彼はどうも戸惑っているらしい

先程の独り言もそうだった気がするが

しかし、それだけ言われてもこっちはもっと戸惑うばかりだ

そのことに気付いてくれたのか、説明し始めた

ドクケイル「なんつうかな ダチが変なんだよ」

ポチエナ「変、というと?」

ドクケイル「いや、解んなくもねえんだ ただ、少し行き過ぎてるっつーか
      少々荒っぽいとこもあったが気のいい奴だったんだけどな……」

ポチエナ「……いや、何の話だ」

ドクケイル「経験値にされたんだよ それも瀕死から治る度繰り返して」

ポチエナ「だからなんの話だって 要点抑えろ」

ドクケイル「遠出できることに気付いて、より経験値求めて飛び出していきやがった」

ポチエナ「本気で待ってくれ 訳分からん」

前言撤回 気付いてない 理解させる気ないな

ドクケイル「はあ!? なんで解んねーんだよ!? 解れよ!?」

キレられた

この説明で分かる奴いるのか? こっちの理解力が悪いのか?
 ▼ 432 TOg35azcXc 19/01/11 23:26:09 ID:eg2AwUUs [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
その後も話が飛んだり前後したり、関係ない話がちょくちょく挟まれたり
まあ聞きづらかった

それでも、何とか地道に聞き出して頑張ってまとめる

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ドクケイルのダチであるヤルキモノは以前から強さには執着していた

だが、つるんでいる時は気が置けなくて楽しい奴だった

しかしある日から様子がおかしくなった

酷くイラついた感じで、花や木の実などに八つ当たりしていた

何があったのかと訊くと、バトルでえらくやられたらしい

それも、普段は逆らってこない“弱い奴”に

ドクケイルはそいつがヤルキモノに一杯食わせたことは面白いと思った

ただ、ヤルキモノ的にはどうも憤懣遣る方ないらしい

逆恨みじゃねえかって思ったが、気持ちは解らないでもなかった

だからそいつよりもっと強くなってまた打ち負かしてやりゃいいだろって笑い飛ばした

ダチらしく、一緒に強くなる方法を探してやるつもりだった

それで、森の中を歩いている時、小さなポケモンを見つけた

顔見知りとかじゃなかったから、普段は無視するはずだった

なのに、ヤルキモノはいきなり目の色変えて襲い掛かろうとした

さすがにそれはいかんだろと思って止めたんだが、なんかスイッチ入ったみたいで

大暴れしてドクケイルに爪を向けてきた

見境なくポケモンを襲いだす酷い奴に成り下がったわけだ

以前はそんな奴じゃなかった

だから変なんだ
 ▼ 433 TOg35azcXc 19/01/11 23:26:49 ID:eg2AwUUs [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
変といえば、森も変だった

いつものように進んでいる筈なのに、いつの間にか同じ所をグルグルして

迷ったあげく元の場所に戻るようになっていた

あれは一体何だったんだろうな


ともかくそのお陰で、変になったヤルキモノは一つ所に留まった

その所為で、ドクケイルもその場を離れられず、標的にされ続けた

瀕死しては治されて 治っては瀕死にされて

本当に地獄のような日々だった

何度も逃げようと試みて、その内、なんでかは解らないが森が元に戻ったことに気付いた

ヤルキモノも解ったようで、ドクケイルを置いて外に向かっていった

瀕死から復活までのスパンが掛かるドクケイルより多くの経験値を求めて

だから、もしヤルキモノに会ったら気を付けろ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ポチエナ「……ということか?」

ドクケイル「そうだよ! ずっとそう言ってんだろ!?」

……そういうことらしい

ここまで聞きだすのにどれだけの時間がかかったことやら

頭が痛くなる……


しかし苦労した甲斐はあったのかもしれない

ポチエナ「それが本当なら…… 大変じゃないか!?」

誰彼構わず襲い掛かる暴君が今、森を徘徊しているということ

早く皆に知らせて避難誘導、或いは捕縛要請をしなくてはいけない
 ▼ 434 フォクシー@たまむしプレート 19/01/12 20:00:10 ID:C/Lcopkc NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 435 TOg35azcXc 19/01/25 01:00:30 ID:BehwCLVQ [1/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ドクケイル「ああ、そうだな そうなんだろうけどな」

こっちの意見を聞いて、相手はどうも躊躇ったような声を出す

ドクケイル「あんな奴だが、警察のお世話にならせるっつうのは気が引けるっつうか……」

ポチエナ「いや、そうは言っても」

ドクケイル「本当に変なんだよ彼奴 なんかに憑りつかれてる感じっつうの?
      警察に言ったら、普段との違いなんて気にされず処分されちまわね?」

ポチエナ「……つまりそれだけ普段の行いも悪いと」

ドクケイル「それは言わない約束だろ」

そんな約束した覚えはない というか本気で酷いのか

頭が痛くなるな

しかし本当に友人を思っているらしい

それは汲んでやりたい、かな

ポチエナ「だったら、あまり大事にしないようにうちで早急に片付けるとか?」

ドクケイル「それが出来ればありがたいが…… 『うち』ってのは?」

ポチエナ「私営ギルド“ひみつきち” 依頼解決のスペシャリストだよ」

この案件だってきっと解決に導けるはずだ

そう思って提案したのに



ドクケイル「駄目だ!」

予想外に拒絶され面食らう

ドクケイル「そこには頼れねえ 頼っちゃいけねえだろうが」

ポチエナ「何故?」

毎度言葉が足りなくて訳が分からない

ドクケイル「とにかく駄目なもんは駄目だ!」

ポチエナ「じゃあどうしろって言うんだ?」

拒否するなら代案を提示して欲しい ことは一刻を争うかもしれないのだから
 ▼ 436 TOg35azcXc 19/01/25 01:02:13 ID:BehwCLVQ [2/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ドクケイル「そうだ! オレの触角はレーダーになってて、誰がどこにいるか解るんだよ」

しばらく悩んでいたかと思うと、名案を思いついたかのようにそういった

ドクケイル「オレさえいればヤルキモノの居場所は筒抜けって訳だな だが」

確実な居場所を掴むためにはドクケイルの協力が必要

しかし他の組織に頼るとその協力は拝めない、と

ポチエナは溜息を吐き、決断する


ポチエナ「じゃあ、さようならということで 後は警察に頼もう」

ドクケイル「ちょ! 話聞いてたか!? お前には情がねえのか!?」

ポチエナ「いや、だって、暴徒自身か回りのポケモンかで言ったらそりゃ……」

ドクケイル「そりゃそうだな! チクショウめ!」

納得したようだ 本当になんなんだこいつ

ポチエナ「大体本当に友達のことを思うなら一刻も早く止めてやるべきだろう」

友人とはいえ悪行に手を染めているのなら止めるべきだ

しかもそれが本意でなさそうだというなら尚更

ドクケイル「くそう…… 正論ばっか言いやがって」

解ってはいるらしい しかし納得してはいないようだ

ドクケイル「“ひみつきち”の奴なんだろう? お前が止めるとかは言わねえのか」

ポチエナ「……それは」

ドクケイル「へっ 実力不足の下っ端かよ 目に物見せたいとは思わねえのか」

実力不足 その言葉は図星であるからこそカチンときた

ポチエナ「……わかった おれが抑えてやる 案内しろ」

売り言葉に買い言葉

つい乗っかってしまった
 ▼ 437 TOg35azcXc 19/01/27 17:51:56 ID:Qjfog192 NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ドクケイル「……この先だ 他のポケモンはいねえな」

森の奥地の平野部 この先にヤルキモノがいるらしい

他にポケモンがいないというのは、朗報か

経験値にされているポケモンはいないらしい

ドクケイル「まあ、今あんな危ない奴に近づく物好きはいねえわな」

野性の勘という奴だろうか、森のポケモン達は上手く出会わずに逃げおおせているらしい

ポチエナ「その危ない奴に今から近づくんだけど……」

ドクケイル「そいつぁあ物好きなこって」

ポチエナ「お前な……」

……まあ、言う通りだ 物好きにも危険に飛び込もうとしている

木々の隙間からは何かが暴れている音がした



ヤルキモノ「ウグルルァッ!!」

ポチエナ「うあっ…… 危なっ!」

いきなり襲い掛かって来られる

先に見境がなくなっていると聞いていなければ、一撃目でやられていたかもしれない

ヤルキモノ「……避けやがるか ……まだまだか」

爪持つ白い獣は獰猛に吠える

随分荒々しい雰囲気を振りまいているものだ

ポチエナにこれを抑えて捕縛できるのか?

少し不安になってきてしまった
 ▼ 438 ロア@ライブキャスター 19/02/09 20:41:58 ID:OQVAoFUQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 439 ーロット@トロピカルメール 19/02/11 00:11:44 ID:cXu2XB4Y NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ドクケイル「おいおいおい…… 本当にどうしちまったってんだよ!?」

猛然と爪を振るい続けるヤルキモノ

ポチエナは間合いを読みながら歯噛みする

駄目だ 抑えるのは愚か、攻撃を加えることも難しい

同じように攻撃から逃げながら、ドクケイルが叫ぶ

ドクケイル「お前、今ぜってー変だって! オレが解んねーのか!?」

ヤルキモノ「るせぇ…… 俺はもう…… 負けるわけにゃいかねえんだ……
      大人しく…… 経験値を寄越せ……!! グルァッ!!」

ポチエナ「危ないっ!!」

横合いからドクケイルを突き飛ばし、辛くも爪を避けた

今のは本気で危なかったな…… 相手の攻撃の鋭さに肝が冷える

普段の彼をポチエナは知らないが、“ダチ”にも容赦のない辺り、成程、狂気的だ

こいつは直ぐに捕らえないと拙そうだな

ドクケイル「助かったぜ…… ただ、不味いな、近づけねえよ……」

ポチエナ「それどころか避けるので手一杯だ 遠距離技とかないの?」

ドクケイル「お、おう! あるぜ!」

ポチエナ「それ最初から使ってよ!」

なんで馬鹿正直に“体当たり”とかで攻めようとしてんのかな

ドクケイル「うおおお! “サイケ光線”!」

ヤルキモノ「……!」

ドクケイル「うし! 当たった!」

やっと、効果的な攻撃が出来たらしい

しかし混乱させるには至らずといったところ

まだまだ気を抜ける状況じゃない
 ▼ 440 ガジュカイン@ひみつのコハク 19/02/12 00:50:00 ID:t.0ICuqE NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ドクケイル「ははっ! 近づかなきゃ怖くねえな! “サイケ光線”!」

相手の腕の届く範囲から大きく脱したドクケイルは光線を打ち続ける

ヤルキモノは当然ドクケイルを仕留めに向かおうとするが、ポチエナが邪魔する

付かず離れずの位置を保って食らいつく

攻撃を受けてはいないが結構きつい ポチエナからの攻撃は当てられもしない

ドクケイルの方が楽そうでいいが、適材適所だ

ポチエナは近接戦しか能がないため囮役しかできないから仕方ない

しかし、もう何発も入ってるはずだが、全然効いた気配がない

ヤルキモノ「うぜえな…… いい加減に、しろ……!」

相手は流石に焦れたのか、苛立った声を出し明確にドクケイルを睨んだ

そして足元の石礫を拾い上げるなり大して振り被りもせず――

ドクケイル「“サイ―― うおぉっ!!」

ノーモーションで投げた割に勢いのあった投石は、狙い過たずドクケイルを捉えたらしい

悲痛な声に振り替えると、翅を大きく傷つけたドクケイルが墜落していく

近接だけしかないと思いきや、そんな手段に出るとは、考えが甘かった

ヤルキモノ「余所見とは…… ありがたい……なぁっ!!」

ポチエナ「ぐあぁぁっっ!!」

他者の心配をしている場合ではなかったらしい

隙を突かれ大きなダメージを喰らい吹っ飛んでしまった

拙い…… あんな奴の前で戦闘不能晒したら……

延々経験値の種にされることを既に聞いているだけに、身体が震える

勝ち目は見えない上に大怪我を負い、捕縛するという目的も無理だ

勇んで挑んで、この体たらく 自分が情けないし悔しい

それでも、この状況を打開するため、“吠える”

ポチエナ「うぅ…… ――ワオオオォォンッッ!!」

相手の戦意を強引に奪い、強制的に退かせる“技”

それを真正面から受けたヤルキモノは戦闘を離脱し森の奥へと消えていった
 ▼ 441 ンメル@タブンネナイト 19/02/27 12:51:30 ID:OGs./6Zk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 442 TOg35azcXc 19/02/27 22:52:45 ID:8xPYwRk6 NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ヤルキモノが去った後の茂みをじっと見て、戻ってこないことを確認し息を吐く

これ以上戦闘は続けられそうにない

失敗したな やっぱり安易に売り言葉に乗っかってはいけなかった



ドクケイル「何やってんだよ、お前…… 逃げんのかよ」

と、辛辣な声が響きポチエナはびくりと震える

ドクケイル「オレに向かってあんだけ大口叩いてよぉ」

友達なら止めてやれだの、抑えてやるだの、確かにポチエナが言ったのだった

ドクケイル「本当に下っ端だったのかよ 使えねえ 期待外れだ」

非難されても仕方ない 実力以上の大言壮語だった

鎮圧対象にこっぴどくやられて 逃がして おまけに依頼者も守れていなくて

余りの無力感に打ちひしがれてしまう



ポチエナ「……とにかく、安全なところへ 治療できるとこへ行こう」

お互い瀕死は免れているが、ダメージは大きい

一先ず退散 話はそれからだ

ドクケイル「それって、何処のことだよ? なあ、オレ、言ったよな?」

……聞いてはいた だが

ポチエナ「選り好みする状況じゃない 頼りたくない理由は解んないけど、我慢して」

ポチエナは翅を怪我したドクケイルを背負い、傷を押して“ひみつきち”へ向かった
 ▼ 443 TOg35azcXc 19/03/02 23:56:10 ID:/5vgvsq. NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
辿り着いた“ひみつきち”には副長とゴクリンがいて

副長はこちらの様子を見るなり何も言わずに薬の準備を始めてくれた

それはそれでありがたい対応ではあったものの

散々指摘を受けておきながら、短い期間にまた大怪我をしている身として

その沈黙は、責められているように感じられて何とも居心地が悪いものだった



ゴクリン「これはまた派手に怪我したものだねえ そちらはどなた?」

と、治療が終わりあとは安静にするだけという段になって呑気な声が掛けられる

ポチエナ「えっと…… なんていうか……」

口籠ってしまう どこまで話すのが良いんだろうか

ドクケイルの事情を把握していないため取捨選択が難しく

上手くやれなかったことに対する気後れもあり、なかなか気が重い

そういった気持ちを込めてドクケイルに目配せを送る

ドクケイル「……おう あんたらんとこの下っ端勝手に借りて悪かったな」

ゴクリン「休みの日のやんちゃまでは口出すつもりないよ 自己責任、自己責任」

ドクケイル「そうか? じゃあ、悪くなかったな」

ゴクリン「でもまあ、事情は聴きたいね 喧嘩でもした? 依頼する?」

ドクケイル「それがよう ダチがここ最近変で……」

ポチエナ「ちょ、ちょ、いいの? 話しちゃって」

ドクケイル「あん?」

先程あんなに“ひみつきち”に拒否感を示していたのに、どういうことなのだろうか?

ドクケイル「いーんだよ アイツじゃねえんなら」

ポチエナ「アイツって……?」

ドクケイル「ああ、それで、ダチの話だったよな いや、これがよう……」

軽く発した疑問は答えられず流され、森の暴君に対する情報共有に移ってしまった
 ▼ 444 ラベベ@ライブキャスター 19/04/03 15:06:20 ID:HeUQ9nhM NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 445 ブラーバ@ポケモンずかん 19/04/16 00:39:10 ID:3lYEqHfE NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ゴクリン「なるほどねぇ そんなんでも庇いたいわけだ」

ドクケイル「そりゃあな あんなんでもダチだ」

ポチエナの言も交えながら一通り経緯すると、頷きながらゴクリンは言った

どこか呆れた雰囲気である

ゴクリン「そんな酷いことするのが、ダチなのかい?」

ドクケイル「だーかーらー 変なんだって言ってんだろ」

ゴクリン「へえ」

さっきから同じようなやりとりでらちが明かない感じがする

ゴクリンはこっちを見てドクケイルを見て、困ったような顔をする

ゴクリン「まあでも、その旨言ってくれたらうちでもそうするよ?」

もはや流すことにしたらしく、話を進めた

ドクケイル「そうか じゃあそういうことで頼む」

ゴクリン「……代価用意してくれるんなら承るけど」

ドクケイル「解ってらあ 金でいいんだろ?」

一応払う気はあったのか なんかなあなあで流されそうに見えたのに

ゴクリン「ま、まあね〜 了解 承っとく」

ドクケイル「おう! しっかりやれよ? あ! 解決報告は下っ端にやらせろ」

ゴクリン「ん? それはまた何で?」

ドクケイル「なんでも!! とにかく、任せたかんな!!」

そこまで言うと、ドクケイルは“ひみつきち”の外へ飛び出してしまった

なんで頑なに理由を言わないのだろうか……

というか、翅はもう大丈夫なんだろうか? まだふらついていたようだったが……
 ▼ 446 TOg35azcXc 19/04/21 23:48:04 ID:18/gESgo NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ゴクリン「気に入らないな なに、あれ」


釈然としない、という顔をしてゴクリンが呟く

呑気な彼はそうそう悪し様に言うことはないと思ったが ……珍しい

呆と見つめてしまっていると憮然とこちらを見返してくる

ゴクリン「何で君がそんな反応なのさ もっと怒ってもいいと思うけど


……怒る? ドクケイルに?

本気で解らないという顔のこちらに対しゴクリンは溜息混じり

ゴクリン「仕事の内容の確認もしっかりせずに勝手に連れ出して、
     失敗したら一方的に攻め立てて、挙句下っ端扱い」

ドクケイルがやったことを論ね始め、最後に吐き捨てた

ゴクリン「そんなんやられたら気分悪くもなるさ」



エネコロロ「……でも依頼は受け付けるのね」

ゴクリン「そりゃ、突っぱねるわけにもいかないでしょ 公平性が大事でしょ」

エネコロロ「確かに、放っていい案件じゃないものね」

ゴクリン「ふっかけてもいいくらい ていうかふっかけてやる」

エネコロロ「……公平性は?」

ゴクリン「隠し事して依頼する奴に異議申し立てる権利はない
     喩え依頼内容と関係なかろうとね」


ゴクリンは図々しい奴、だの腹立つ、だのとぶつぶつ呟いていた

ドクケイルが頑ななことに何か心当たりでもあるのだろうか
 ▼ 447 TOg35azcXc 19/05/03 15:14:53 ID:x4pEZvKg NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
それから程なくして所長が入ってきた

キノガッサ「お邪魔する――って何この空気?」

ゴクリンは先程からピリピリしていて、副長はご機嫌斜めに黙り込んで

ポチエナはそんな二者の間で縮こまっていて息が詰まるような空気が立ち込めている

所長は理由を知らないのだから疑問にも思うだろう

キノガッサ「エナ君もいるし というか怪我してるし どうしたの?」

ポチエナ「いらっしゃい、所長 これは、えーと、失敗してですね……」

どうも言い辛くて言葉が濁る ただ不甲斐ないというだけではない

依頼主が頼りたくない『アイツ』が所長であるという懸念もあって――

ゴクリン「ん 大体ドクケイルの所為なんだけどね?」

ポチエナ「――って 言っていいの!?」

ゴクリン「異議申し立てる権利はない!」

つまり、言っちゃダメだったってことじゃないですか

キノガッサ「ドクケイル? 彼奴がどうかしたの?」

しかし当の所長に思うところはないようで、普通に促してきた

気にし過ぎ、なんだろうか



結局、依頼のあらまし、ドクケイルとヤルキモノについての話を洗いざらいした

かつてキノココを虐めていたという二匹の話も聞いた

そんな事情があるからこそゴクリンが怒っている、ということも

でも

ポチエナ「一応、負い目はあるという話だったのでは?」

だから所長、ひいては“ひみつきち”に頼る気はないということを言っていた

そのことについてゴクリンが怒るのは見当違いだと思ったが……

ゴクリン「そこだよ なんでアイツ所長にだけ配慮してんのさ
     ぼくも会ったことあるっていうか良くない因縁があるのに」

ということらしい

キノガッサ「なるほど、それで君は怒ってるんだ」

所長は苦笑いしていた
 ▼ 448 ロッパフ@キーストーン 19/05/16 23:06:17 ID:uoKo9ZcE [1/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
キノガッサ「で、ロロは落ち込んでる、と」

ポチエナ「……え、落ち込んでいたんですか、あれ」

次いで言われた言葉に、ポチエナは目を丸くしてしまう

キノガッサ「何その目 何だと思ってたのさ」

ポチエナ「いえ、てっきり怒っているものかと……」

キノガッサ「……むしろなんでそんなビクビクしてるのやら」



何故って、それは

ポチエナ「依頼はうまく行かなくて、性懲りもなく怪我して、迷惑ばかりかけて……」

強くもなれず、弱いままだから きっと呆れられてしまうのだろう、と

こんな情けない『ぽけもん』が“ひみつきち”に相応しいとは思えないから――



エネコロロ「……はぁ ……莫迦なんじゃないかしら」

心底呆れ返った声を聞いて、身を竦ませる やっぱりおれは……

自分のふがいなさにドツボに落ち込んでいきそうになる

エネコロロ「違うわよっ! ああ、もう! キノ! どうにかして!」

キノガッサ「なんでそこで意地張るかなあ…… いや、解んなくもないけど」

その様子を見た副長は何故か慌てだす

ポチエナ「……えっと?」

つられて顔を上げてみると、どうもこちらを責めるような感じではなくて困惑する

副長はどこか拗ねたようで、所長は相変わらず苦笑したまま溜息を吐いていた

キノガッサ「何て言ったらいいかな…… うん……」

所長は暫く考えて、一つ思いついたように質問を投げかけてきた



キノガッサ「エナ君は、何が悪かったと思う?」
 ▼ 449 ーシャン@ゴーストジュエル 19/05/16 23:51:01 ID:uoKo9ZcE [2/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ポチエナ「何が、って……?」

抽象的なその質問の意図を掴めなくて、或いはそう思いたくて、言葉を詰まらせた

キノガッサ「リンが怒って、ロロが落ち込んでる一番の原因 何だと思う?」

しかし所長は、追撃するようにより具体的に言い直してくる


身体が震える

散々突きつけてられてきたというのに、まだ足りないのだろうか

未だ曇った眼でしかいられない事実に項垂れながら、自嘲を吐く

ポチエナ「…………そんなのおれが、弱いのが一番――」



キノガッサ「違うでしょ」

ポチエナ「――え?」

途中遮るように否定され、顔を上げ所長の目を見る

穏やかな目で見返されて身体の強張りが解けていく気がした



キノガッサ「違うよ そんな理由で君を下には見ていない」



キノガッサ「第一、弱さが理由ならリンに怒る権利なんてないし」

ゴクリン「」

キノガッサ「というか、“ひみつきち”の誰も、ね」

ほら、僕ら弱いし そういって肩をすくめる所長

真っ先にゴクリンを下げたことに関してお茶を濁した……?

ポチエナ「えっと…… そうなると、一番の原因って?」

色々な可能性は思いつけども、『弱さ』以外はしっくりこない

自分で考えるべきとは判っているが、解答を求めてしまう

所長は鷹揚に頷いて

ゴクリン「そりゃ当然、ドクケイルめが――」

キノガッサ「それも違うね」

出鼻を挫かれ、ばっさり切った

ゴクリン「 (´ω` )\ 」
 ▼ 450 着◆TOg35azcXc 19/05/19 00:49:52 ID:rXgQ7x52 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
……少し気拙い間が空き、



仕切り直すように所長が咳払いをして話し出す

キノガッサ「――まあ、間が悪かったというか、色々重なっちゃって見づらいけどさ」



キノガッサ「今回の件で一番って言ったら、エナ君が一匹で突っ走ったことじゃないかな」

ねえ、ロロ? と所長はそっぽを向いたままの副長に微笑みかける

ポチエナ「……やっぱり、おれですか? 考えなしってことで?」

キノガッサ「ああ、そういう意味じゃない これは僕らが悪いし ……言葉って難しいな」

歯痒そうに呟いているが、こっちも結局どういうことなのやら

ポチエナが悪いが所長たちも悪くて? ……えと

こちらの困惑を見かねたのか、ぽつりと

エネコロロ「…………仲間、でしょうが」

ポチエナ「え?」

更に聞き返したら、副長は顔を赤くして捲し立てた



エネコロロ「だからっ! 私たちは仲間でしょ! なんで頼ってくんないのよ……!
      確かに先輩だけど、それ以上に変に上に見て、遠慮して、
      それで勝手に怪我されてたら、どうしたらいいか判んないわよ!」



――『霧払いされた』、気がした

エネコロロ「私たちはあんたの『理想』じゃない 対して強くもないわよ
      だから、集まってるんじゃないの 皆でやるから、凄くなるんじゃないの」

つまり目が曇っていた、ということの意味はそういうことなのだ

勝手に思い込んで、だからこそ焦って、『交換読みカウンター』してて

空回っていたんだな、おれ


ゴクリン「まあ、しばらくみんな個々に動いてたし、わかんないよねぇ
     僕ら親睦会やってなかったし お互いの性格掴めてないっしょ?」

キノガッサ「……僕にも責める資格なかったかも ごめん」

ポチエナ「い、いえそんなっ!」
 ▼ 451 話◆TOg35azcXc 19/05/20 17:50:34 ID:aMXo5rW2 NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ゴクリン「まあ、これから知っていけばいいんだけどね」

エネコロロ「そもそもポチエナの理想が高すぎるっての 私たちはちっぽけなのに」


……そうは言っても、ポチエナにとってはヒーローであるという認識はそう変わらない

だって、誘拐事件から颯爽と助けてくれたのは、彼らなのだから

キノガッサ「そういえば、童話読んでくれたって言ってたよね?」

ふと、依頼のあらましを伝えるときについでに言った話を持ち出してきた

キノガッサ「どう思った?」

ポチエナ「え、や、凄いポケモン達だなって 自分との差に感服するばっかりで……」

散々言ってるが、同じ言い方しかない 自分の語彙のなさが悔しい

キノガッサ「んー…… じゃなくて、態と書いてないものに気付いてくれたのかなって」

『自編自賛』っぽいかな 所長はそういって頭を掻いた


なんのことだろう 読み込んだわけでないポチエナには解らない

ポチエナ「書いてないもの、ですか? ……なんですか?」

キノガッサ「バトルさ あの『ぽけもん』は一度だってそれで勝っていない」



ゴクリン「あれわざとだったんだ…… てっきり恥ずかしいからかと」

キノガッサ「それもあるけど…… まあ、なんというかあの作品では
      強くなくともやり方次第、ってことの方が伝えたかったかな」

今日何度目の衝撃だろう 確かに そういえば

キノガッサ「だからさ そもそも僕らが強くて凄いっていうのは間違いなんだよ」

ようやっと全てが腑に落ちて、ポチエナは感嘆の意を示すしかない



そんなポチエナらを横目に、ジト目な彼女はぽつり

エネコロロ「……童話全てが『真実』ってのも語弊があるでしょ」
 ▼ 452 エルオー@ネットボール 19/05/24 00:33:40 ID:hy.MBJ22 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
久々に来たら残ってた
支援
 ▼ 453 TOg35azcXc 19/06/06 23:59:16 ID:uUBk5UJM NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ゴクリン「……とまあ、いいこと言った風ではあるけれども、キノさんや」

つと、混ぜっ返すような毒のある声を出した

キノガッサ「……なんだい、リンさんや」

所長もまた演技臭い返しをして繋げるのが、ポチエナは納得がいかない

風ってなんだ いいこと言ってくれたじゃないか

そんな反発の気持ちを抱くものの、続いた言葉に黙り込んでしまう

ゴクリン「実際問題、依頼はどうするんだい?」



ポチエナ「……う」

そうだ 解決しなければいけない問題は、何一つ進展していない

キノガッサ「ヤルキモノね…… アレは強いね しかも凶暴化してるって話だし」

所長は腕を組み、悩まし気に唸った

暴れ回る『経験値狩り』 対してこちらは強くない者ばかり

『強くなくともやり方次第』とはいうものの、弱くてなせることは、じゃあ何だろう

ゴクリン「ポチエナに何とかできるの、アレ」

エネコロロ「ポチエナに何とかさせるの? 私の言ったこと聞いてた?」

ゴクリン「そうは言っても、請けたのはポチエナだし」

エネコロロ「だからって手を貸さないのも違うじゃないの」

ゴクリン「責任の問題だよ 最後までやり遂げないなら依頼受けるものじゃない」

エネコロロ「この…… 正論風に言いおって……!」

ゴクリン「『自分で蒔いた菱』ならケツ持ちぐらいしっかりするべきだ」

エネコロロ「……何でそんな頑ななのよ」

二者の間で方針が割れたようで、なぜか言い争いに発展してしまう

ポチエナは板挟みで縮こまってしまう



しかし様子を見守っていた所長は、何やら呆れ顔で

キノガッサ「リン、本音は?」

ゴクリン「毒蛾めに嘗められっぱは面白くないじゃん!」

……さいですか
 ▼ 454 イリュー@ライブスーツ 19/06/08 16:40:26 ID:citgvYWo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 455 TOg35azcXc 19/06/15 17:31:35 ID:L4UQu4nU NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ゴクリン「奴の鼻を開かしてやるためにも依頼受けた者がやるのが一番なんだよね」

なぜか強情に意見を曲げないゴクリン

言っていることは解るのだけど……

ポチエナ「あの、やっぱりおれには難しいのではないかと思うのですが……」

折角先輩たちがいるのに、力量の足りないポチエナが出張る意味はあるのだろうか

ポチエナが立ち向かっても、失敗して大惨事になる未来しか見えない

それとも何か深い意味でもあるのかな

エネコロロ「……意地が悪い 徹底しろって言いたいんでしょ」

考え込んでしまうと、副長がゴクリンを非難しながら答えを出した

ポチエナ「……どういうことでしょう?」

キノガッサ「出来ないことは出来ないっていうのが大事っていうこと
      あとから、やっぱり出来ませんでしたなんて言ったら面目立たないだろう?」

ゴクリン「どうしようもなくなったら仲間を頼るのもいいよ
     ただ、それに頼って自分で処理できない仕事を請け負うのは違う」

始めから上に任せるような気持ちになりかけていたことに気付き、恥ずかしくなる。



キノガッサ「……新メンバーの加入って今までなかったし、僕らにも課題多いなあ」

ゴクリン「そーだよ 所長がちゃんと教育してくれないからだよ」

エネコロロ「まだ手探りじゃないの なのにネチネチと 男らしくないわね」

ゴクリン「痛い目見た方が覚えもいいって言うじゃん 言うじゃん?」

エネコロロ「……また正論っぽいことを」

ゴクリン「それに失敗処理とか手続きとか受付の仕事じゃんさ めんどい」

エネコロロ「そっちが本音? あんたってのは……」

キノガッサ「まあまあ、リンなりに“ひみつきち”のこと考えてくれてる訳だから」

ゴクリン「そうそう、大事なことだよ?」

ポチエナを置いて、副長たちが言い合いを始めた

……喧嘩のようだけどどこか楽しそうで、真剣なのに険悪じゃないのが興白い
 ▼ 456 TOg35azcXc 19/06/22 17:03:11 ID:c2wEAzKk NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ゴクリン「だから、依頼受けた奴がやるのが一番なんだよ」

ゴクリンの言葉は一理あるために強く反論し辛い

勝ち誇ったような顔が少々腹立たしい

「ひょひょ、その主張でしたらキノガッサさんにやってもらっても構わないかと」

ポチエナ「……!! だ、誰!?」

と、ポチエナのごく近くで声が響いた 聞いたことのない声……

その得体の知れなさに鳥肌が立ってしまった



ゴクリン「いつの間にいたのさ」

「キノガッサさんと一緒に来ましたよ? まあ、気配は消してましたが」

ゴクリン「何故に」

「ひょひょひょ、ゴーストの性ですので」

エネコロロ「だから何なのよその理由は ポチエナが怯えちゃったでしょうに」

ポチエナは身構えてしまったが、回りは呆れただけの反応である

キノガッサ「ああ、ごめん 彼は僕の客で、サマヨールっていうんだ
      エナ君は会ったことなかったっけ 悪いポケモンじゃないよ」

サマヨール「ひょひょ、お初にお目にかかります サマヨールでございます」

ポチエナ「サマヨール…… っていうと、童話にも出てた……?」

確か、恐ろしい存在として描かれていなかっただろうか

思い出し、身を固くする

キノガッサ「悪役だと思った? 別に作中の幽霊も何もしてないんだけどね」

しかし所長はあっけらかんとしたものだ

サマヨール「何の話ですかな?」

キノガッサ「実はこんなのを書いてね――」

所長は“ひみつきち”の備え付けの棚から童話を引き出した



所長によると、童話の幽霊は『ぽけもん』たちを追い返しただけで酷いことはしていない

ただ、読んだ仔どもに内容を印象付けるため、わざと怖がらせようとはしていて

曖昧に描いてミスリードは狙っているんだとか……

確かにそれを聞いてから読むとそう見えてくる、かな
 ▼ 457 TOg35azcXc 19/07/01 01:51:24 ID:kijUtZx6 NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ゴクリン「それはそうと、依頼の件だけど 所長でも構わないってどういう?」

と、ゴクリンが一度逸れた話を戻す

サマヨール「対象が被っているんですよ 私の依頼と、そちらの依頼とで」

ポチエナ「そっちもヤルキモノが?」

そういうこともあるのか…… この場合は、ポチエナがするべきはなんだろう



ゴクリン「あ、やっぱそうなんだ」

質問をしておきながら解っていたような口調だ 所長も苦笑して頷いている

ゴクリン「で、対象確定したのはどして?」

サマヨール「匂い、ですね ポチエナさんの傷から同族の残滓が匂います」

同族? どういうことなんだろうか

キノガッサ「……というと、あれ斃さないといけない感じ? 厄介な……」

サマヨール「ひょひょ 面倒かけて申し訳ない」

ゴクリン「大丈夫 引き受けた以上ちゃんとやるから」

キノガッサ「いや、だからなんで君が偉そうなのさ…… まあ、頑張るけどね」

サマヨール「よろしくお願いします 恐らくそれで全部かと」


抱いた疑問は、話が流れて訊きそびれてしまった

まあ、流されるくらいなら知らなくてもいいってことかも知れないけど
 ▼ 458 TOg35azcXc 19/07/08 01:41:39 ID:Oh2sCu1w NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
エネコロロ「そうとなれば、善は急ぐべきじゃないの?
      よく解んないけど、抑えがなくなって暴れ出してるんでしょ?」

そういえば、森が変(?)なお蔭で彼等は動けなかったと言っていたか

よく解んなかったけど ……よく解んないんだけど

キノガッサ「えー…… 片付ける順番間違えたのかな?」

サマヨール「すみません 先にそちらを見つけるべきだったようですね」

キノガッサ「まあ、今言ってもしょうがないよね やるしかないんだから」

なんと、所長には解っているらしい 流石だ



キノガッサ「で、追える?」

所長は客だというサマヨールに視線を向け質問を投げた

サマヨール「……難しいかも知れません 捕捉するには気配が濃すぎます」

しかし相手は申し訳なさ気に項垂れるのみ それにゴクリンが疑問を挟む

ゴクリン「? 濃いのに駄目なの?」

確かに、不思議な発言かもしれない 濃くて駄目とはこれ如何に?

サマヨール「濃霧の発生源を探るようなものです 似たような濃さの気配が広がっている」

なるほど 中に入ってしまえば右も左もないのか

ゴクリン「じゃあ、毒蛾めをとっ捕まえるのは? 彼奴レーダーでしょ?」

エネコロロ「協力しそうにないじゃない どこに行ったかも解んないし」

ゴクリン「それもそっか」

早々に意見を取り下げたゴクリン そしてそのまま黙ってしまった


ポチエナ「あの、おれ、追えますよ? ヤルキモノ」

行き詰った議論の中、少し怖じ気付きながらも発言する

キノガッサ「本当かい、エナ君?」

所長はゆっくりとした口調で尋ねてきて

ポチエナ「ええ 一度会ってますし」

おれは、力を込めたつもりで答えた

ポチエナ「この鼻なら、間違いなく」
 ▼ 459 TOg35azcXc 19/07/13 00:54:10 ID:VQyAq6As [1/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
啖呵を切った後、ポチエナは副長と一緒に森を駆けていた

覚えた臭いの元へまっすぐ できるだけ最短距離で

副長は当たり前という顔をして後ろにぴったりついてくれている

これから勝てそうにない相手の下へ向かうというのに、平静でいるのは流石だと思う

それに、ポチエナがちゃんと目標に辿り着くことを信じてくれているのも嬉しい

ポチエナ「近づいてきました 間もなく接敵します」

エネコロロ「他に誰かいる?」

ポチエナ「いないと思います 臭いはヤルキモノだけ」

エネコロロ「そう じゃあ、予定通りにいくわよ」

走りながら会話している内に、獰猛な獣の姿が見えてきた

距離を詰めるのもためらうような近づき難い刺々しい気配がビンビンする

前に対面したときより酷い 知らず唾を飲み込んでしまった

エネコロロ「実際見ると予想以上の迫力ね
      でも、そのお陰で誰も荒れに近づかなかったようだし、それは助かるわ」

こちらの様子に気付いたのだろう副長が、気を紛らわすように言ってくれる

確かに、それだけ犠牲者が少ないと思えるのは不幸中の幸いかも知れない



ヤルキモノ「グルルルル……!! ガゥルッ!!」

相手はこちらの姿を目にするなり、唸りながら攻撃を仕掛けてくる

ヤルキモノ「ミツケタ……! ケイケンチダ……!」

ポチエナたちはそれを確認すると二方向に別れて駆け出す

相手から離れるように しかし副長とは離れ過ぎないように

近すぎず遠すぎず、距離を保って逃げに徹する
 ▼ 460 TOg35azcXc 19/07/13 01:10:42 ID:VQyAq6As [2/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ヤルキモノ「……!! マテ!! ケイケンチィッ……!!」

鬼気迫る、という言葉が似合うような表情をして突っ込んでくる

やっぱり以前より気迫が増している気がする

追いかけてくるのは想定内だったし、攻撃してくるなんて当たり前なんだけども

これは予想以上に危険というか、本当に注意していかないといけなさそうだ

ダメージを受けないために必死で駆け

ヤルキモノ「ヨコセ……! ケイケンチ……!!」

ごく近くで凶悪な風切り音が聞こえて肌が粟立つ

そこそこ全力で走っているというのに、距離を詰められている……!

エネコロロ「こっち見なさい! ほら!」

副長が少しこちらに近づいて“鳴き声”を出す

相手の注意はポチエナから逸れ、副長に向かった

その視界から外れるように動いたポチエナは、ペースを落としながら前へ進む

奴が副長に攻撃を当てそうな距離に近づいたら、今度はポチエナが声を上げる

更には尻尾を振って見せたりもして敵対心を煽った

相手はまさに暴走状態というに相応しく、冷静な判断もできないらしい

易々と挑発に乗った相手は目標を変更して襲ってくる

お蔭でこちらはダメージらしいダメージも受けていないままだ

そうして何度もスイッチを行いながら、徐々にだが順調に目的地へ向かう



そう ポチエナたちの役目は奴を倒すことでも、捕らえることでもない

ただ指定された場所に連れていくだけ

強くなくとも、それならできる いや、やり遂げて見せる!
 ▼ 461 TOg35azcXc 19/07/19 23:58:20 ID:HyA.3K06 NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
背後から迫る圧力は相当 致命傷ではないとはいえど生傷も増えてくる

自分たちよりも速い異常な怪物の攻撃をかいくぐりながらの走り続き

緊張感と乳酸の所為でもう疲労困憊

ポチエナ「…………!!」

また、敵の爪が身を掠めた

いや、血が滲みだした 浅いが切られているようだ

つい足がもつれそうになり、ぞっとする 足を止めたら、なんて考えたくもない

砂を撒いてフォローしてくれる副長に感謝しつつ気力を振り絞り駆ける

必死で走った甲斐もあって、所長が待っている筈の場所はもう目と鼻の先

この急傾斜を下れば、回りが切り立った崖に囲まれた天然の袋小路に着く

あと、もう一息……


ポチエナ「…………?」

ふいに圧力が消えた気がした

副長も気付いたのか、足を止めないまま振り返り

エネコロロ「な……!? ど、どこに行く気よ!?」

相手の予想外の行動に叫び声をあげた

ポチエナも慌てて振り返ると、傾斜路から外れていく相手の背中が見えた

ポチエナ「まさか、狙いに気付かれた?」

今まで愚直に行動してたのに、急に? どうやって?

……兎に角、理由が何であれ野放しにできるわけもない

突然の方針変換に頭を痛めながらも奴を追いかける

 ▼ 462 TOg35azcXc 19/07/20 02:13:38 ID:xRUQ1saI [1/4] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「……きゃあぁぁぁっっ!!!」


ポチエナ「!!」

奴が走っていったその先から、まだ幼い仔どもの叫び声

どうやらより仕留めやすそうな相手に標的を代えたようだ

エネコロロ「しくった……! 間に合え……!!」

焦燥感に駆られながら、スパートを掛けるように全力で足を前に出す

捨て身のつもりで踏み込み、爪を振り下ろす直前の背中を突き飛ばすことに成功

相手と共にもんどり打って転がる

「お、お兄ちゃん!? え、な、何が起きてるの!?」

身体の痛みを我慢しながら振り返るといつぞや会ったジグザグマが目を丸くしていた

怪我はないようで、一息つく

しかし状況は相変わらず拙いまま

所長との合流も先送りにされたし、保護対象も現れた

そもそも、奴の行動指針が読めない

目の前の獲物だけを狙うものだと思えば、仔どもへ向かった

あの袋小路に近づくのを避けたように見えたのは気の所為なのだろうか?

……だとするなら、このままそちらへ向かっても追っては来ないのでは

ヤルキモノ「Grrrrrrr……!!」

ポチエナ「あぶなっ!! ゆっくり考えてもいられないか!」

どちらにせよ、傾斜路からは離れてしまっている

距離的にはすぐ傍なのに……

エネコロロ「こっちよ!! この化け物!!」

副長が相手の気を引きつけて、傾斜路とは別方向へ走り出す

走り出す前にアイコンタクトを送ってきたところから見て何かを思いついたようだ

取り残されていたジグザグマを背後に庇いながら後を追う

とうとう白い獣に追い詰められた副長が、こちらを見て笑みを浮かべているのが見えた

その意図を読み取って、ポチエナは
 ▼ 463 TOg35azcXc 19/07/20 02:14:04 ID:xRUQ1saI [2/4] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告





ポチエナ「うぅぅ…… うおおおぉぉぉぉんっ!!!」





“吠え”た

それはもう全力で



対象として狙い定めた相手は、ポチエナから反射的に距離を取ろうと飛び退る

その先に地面がなかったとしても、だ

ヤルキモノ「……urrrruaaaa!!!」

奇妙な断末魔を上げながら相手は崖から真っ逆さま

勢い付けて跳んだようだから、途中で何かに掴まることもないだろう

エネコロロ「……お見事」

ポチエナ「副長の作戦通り、です」

改めて尊敬の意を込めて言うが、副長は何故か首を振った

エネコロロ「いいえ、作戦以上よ 私の考えでは私も今頃崖下にいるもの」

なんでも、副長ごと奴を突き落とせという指示だったらしい

ポチエナ「え? そ、そんな危ないこと……」

エネコロロ「やらないに越したことはないのだけどね」

必要ならやる、と 流石だ
 ▼ 464 TOg35azcXc 19/07/20 02:44:08 ID:xRUQ1saI [3/4] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
エネコロロ「お疲れ様 私達の仕事は終わりよ」

ポチエナ「あ! お、お疲れさまでした!!」

副長に言われ、ようやく実感が込み上げてくる

ヤルキモノを指定された場所へ送るという役目は、確かに果たしたのだ

エネコロロ「そんな固くならなくて良いわよ もっと自信を持ちなさい」

ポチエナ「は、はい! そうですね!?」

エネコロロ「後のことはキノに任せればいいわ アイツ、やるときはやるから」

ポチエナ「それは、はい 信じています」

後顧の憂いなど、ポチエナがするのは烏滸がましいというものだ

エネコロロ「……本当に、自信持ちなさいな」

ポチエナ「え……?」

エネコロロ「あんたはしっかり仕事を成し遂げた それも、私が思った以上の成果で」

ポチエナを諭すように目を向ける副長は

エネコロロ「もう、誰にも下っ端だの力不足だの言わせないわ」

優し気に微笑みながら温かい言葉をくれた



エネコロロ「それに、あなたはもう一つ成し遂げたことがあるでしょう?」

副長は続けて悪戯っぽく笑いながら見落としを指摘する

エネコロロ「ねえ? お嬢ちゃん?」

副長に水を向けられた仔どもは、しばしもじもじと口籠って

ジグザグマ「あのね、あのね 怖いのから守ってくれて、ありがとうお兄ちゃん!」

感謝の言葉を送ってくれた

彼女は、怖い思いはしたかもしれないが、傷一つない

もしも、ポチエナが間に合っていなかったならば、どうなっていたか

ポチエナ「そっか…… ちゃんと守れたんだ」

ジグザグマ「うん! お兄ちゃんは、ヒーローさんだよ!」
 ▼ 465 TOg35azcXc 19/07/20 02:59:13 ID:xRUQ1saI [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
憧れていたんだ 誰かを守れる強さに

守ろうと思える優しさに その勇気に

童話によくある 万能の英雄のような何かに



少しでも近づこうと目指してみて よくわかった

道のりは遠い とてもなれやしない

おれはまだまだ弱いまんま



でも 弱くたってできることはある

こんなおれでも 誰かを助けることが出来るんだ



大きいことなんかできないけれど

少しは自信を持って 前を向いて

出来ることだけやればいい

それでいいんだって 今は判った





――fin.

 ▼ 466 TOg35azcXc 19/08/11 23:13:14 ID:JWTkICcA [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





「ある夏の終わりの話」




 ▼ 467 TOg35azcXc 19/08/11 23:14:41 ID:JWTkICcA [2/3] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「いやぁ、本当にありがとうございましたス」

「世話になったわ じゃあね」

プラスル「はい! こちらこそありがとうございました!」

“ひみつきち”から依頼者が笑顔で帰っていく
それを見送る彼女も嬉し気に微笑んでいる

その光景を見て、この組織を始めてよかったなと感慨を覚えつつ近づいた

プラスル「あ、キノガッサさん いらっしゃいませ」

キノガッサ「邪魔するよ お疲れ様」

いつも通りの挨拶を交わし、“ひみつきち”の中へ

ゴクリン「所長、いらっしゃい」

キノガッサ「ああ、うん なんか雰囲気いいね?」

ゴクリン「納得いく形で一段落したみたいだよ、マイナンたち」


キノガッサ「へえ、迷路山の調査は上手くいったんだ」

ある種確信しつつ言うが、

マイナン「……えっと、それは」

ルリリ「解決はした、というか……」

しかし返って来たのは曖昧な表情と返事で

キノガッサ「どういうこと?」

責めるつもりではなくただ単純に疑問に思い、問い質してみる



プラスル「マップは埋まり、噂の正体も確認し、問題も残さず依頼を終えました」

一匹晴れやかな表情のプラスルから状況を聞き、納得する

ゴクリン「依頼は失敗扱い 報酬はパァで反省点も多いけどね」

わざとらしく呆れるようにグチグチと小言を呟いている

それがマイナンたちの顔が晴れない理由になっているようだ

キノガッサ「そっか ……今回については不問にしとこうよ、ねえ」

ゴクリン「失敗ばかりは組織的には問題だろうに はあ…… まあ、いいや」

労う態で水に流すように言うと、溜息を吐きながら引いてくれた

マイナン「所長…… ありがとうございます」

感激した目を向けられたが、苦笑いで返すしかない
 ▼ 468 TOg35azcXc 19/08/11 23:33:55 ID:JWTkICcA [3/3] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
リンって難儀な性格してるよね…… 普段呑気なくせに


最初から受け止めていたのだろうに、怒った振りなんてして



……まあ、こっちの所為だと思うけど 頼りない所長で申し訳ない

ロロもそうだけど、“ひみつきち”についてリンにも甘えっぱなし、だなぁ

一匹でつい反省してしまった



ゴクリン「……適材適所ってやつでしょ 所長は所長、ぼくはぼくだ」

見透かされているようだ 本当に、敵わないな

キノガッサ「そうかもね よろしく頼むよ」

ゴクリン「受付係でいいなら、のんびりやってくよ」



マイナン「あれ? 何の話?」

ルリリ「所長とゴクリンって時々念話でもしてるんじゃないかと思うんだけど」

プラスル「エスパーじゃあるまいし、それはないでしょう?」

ルリリ「や、判ってるけど 副長もそうだけど、なんか阿吽の呼吸って感じで羨ましい」

プラスル「そうですね 言葉にしなくても通じる仲っていいですよね」

マイナン「僕たちもそういう仲になれるように頑張らないと ね! プラスル!」

プラスル「う、うん 頑張って何とかなる、のかな……?」

ルリリ「あとなんで『プラスル』の語気強めてるの? 私も頑張るけど」

マイナン「まあ、そこは何というか、仲深めたい相手だし?」

プラスル「そうだね! お兄ちゃんと阿吽の呼吸もいいかもね!」

ルリリ「……兄の方に残念臭がするのは何故?」
 ▼ 469 TOg35azcXc 19/08/12 23:05:26 ID:qtQ2d3FE NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
キノガッサ「リン、新しい依頼とか来てる?」

ゴクリン「うーん…… 今溜まってるのは薬関係だけだね」

キノガッサ「ロロの専売特許か…… またしばらく依頼待ちかな」

仕事がないと不安になってしまう 薬学の勉強でもしようかな?

ゴクリン「まあまあ 寧ろ所長は働き過ぎなくらいでしょ」

キノガッサ「そうは言っても、始めた以上はしっかりやりたいじゃないか」

言い出しっぺは自分なのだし、特にその思いは強い


マイナン「しっかりやりたいのはこっちも同じだって」

ルリリ「そうそう 一匹で片付けないでこっちにも仕事回してよ」

しかし返されてきたのはやる気に満ちた反応で
自分が始めた活動にやりがいを感じてくれているのだと判った

キノガッサ「……そっか、ごめん」

そのことを嬉しく思いながらも、一匹で片付けてることに申し訳なさを感じる

キノガッサ「じゃあ、次来た依頼は一緒にやろうか」



マイナン「……そこはこっちに任せる、とかじゃないの?」

キノガッサ「そうしたら僕の方が暇になっちゃうじゃないか」

そこはそれ 譲れないかな

キノガッサ「まあ、依頼内容によって応相談かな」

寧ろ一匹で取り組んだ方が早い可能性もあるし その時は任せてみようかな

プラスル「なんにしても、依頼が来ないと始まりませんけどね」
 ▼ 470 TOg35azcXc 19/08/13 01:36:01 ID:AoMQ6pjs NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

「すみません お邪魔してもよろしいでしょうか?」


噂をすればなんとやらというように、誰かが“ひみつきち”の前にやってきた

マイナン「僕が出る……! はーい! いらっしゃいませー!」

ルリリ「あっ! ズルい! 私も!」

競うように出迎えにいく二匹 どれだけ待ち遠しかったのやら

プラスル「じゃあ、私ロズレイティーでも入れてきますね」

「いえいえ、お構いなく」

プラスル「そういう訳にもいきませんよ ちょっと失礼しますね」

さらにプラスルもお茶汲みのために席を立った

秘書然としてきたのは喜ぶべきなのだろうか?

「ひょひょ 微笑ましいですね」

キノガッサ「あはは そう言ってもらえるとありがたいよ」

本当 いい仲間に恵まれたものだ

他者に言われてしみじみと ――ってあれ?

プラスルも席を立ったわけだし、今この場にはキノガッサ一匹じゃ?



疑問と旋律を覚えながら周りを見渡せば、キノガッサのすぐ後ろに黒い影が

肌が粟立つのを感じながら急いで飛び退り、誰何する

キノガッサ「――な、何者……!?」

こちらの緊張にも関わらず相手は悠然と佇んでいて、場違いなほどゆったりと声を出した

「お久しぶりです、キノココさん 以前は姪がお世話になりました」

その声と言われた内容から、遅ればせながら相手の正体に気付けた


キノガッサ「もしかして、ヨマワル!?」

サマヨール「はい 進化しまして サマヨールにございます」

姿が変わってたから、何なのか解らなくて本当に怖かった というより

キノガッサ「心臓に悪いよ…… 普通に現れてよ……」

出迎えをスルーしていきなり背後に現れるのは止めて欲しい……

サマヨール「ひょひょ ゴーストの性でございますので」

だからなんなのその論理……
 ▼ 471 ードラン@ラブタのみ 19/08/15 03:31:47 ID:KXacW4Z6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 472 ッサム@フライングメモリ 19/08/15 08:04:04 ID:4DLgm6Yo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 473 TOg35azcXc 19/08/16 02:19:05 ID:e0zwd5oY NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
マイナン「あれー? 誰か来てたよね? 誰もいなかった――って、わひゃあ!」

ルリリ「なに、変な声出し――っきゃあ!」

あ、戻ってきた うんうん、それは驚くよね

サマヨール「わざわざ出迎えありがとうございます 依頼しに来た者です」

平然と言うことじゃないと思う 普通に入ってきて欲しい

マイナン「なんっ……! なん、ななな……! い、依頼者か!!?」

慄いていたと思ったら急に目を輝かせるマイナン それでいいのか?

ルリリ「歓迎するよ! どんな案件を持ってきたの?」

そんなに仕事がやりたいのか いいことだけども

プラスル「お茶が入りました ……ところでさっき私、誰と会話してたんです?」

反応が遅いっ

サマヨール「では、ありがたく頂きます あと話してたのは私ですね」

プラスル「ああ、そうなんですか 幻聴じゃなくてよかったです」

そして反応が変っている ほのぼのしてる 驚かないのか……



プラスル「それで、依頼にいらしたのですよね?」

サマヨール「ひょひょ そうです 是非ともキノココさんに手伝いを頼みたいのです」

ルリリ「え? 所長だけ?」

サマヨール「そのつもりでしたが ひょひょひょ 皆さんも手伝ってくださるので?」

マイナン「勿論! やるやる!」

サマヨール「ひょひょ 内容も知らずに安請け合いしていいのですか?」

マイナン「あ…… う、うん! 大丈夫だって!」

ルリリ「前それで失敗したじゃない…… で、どんな仕事なの?」

サマヨール「ひょひょ 別に聞いた後取り消しても構いませんよ」



サマヨール「なにしろ、皆さんにやってもらいたいのは、幽霊退治なのですから」



 ▼ 474 ージュラ@ゴッドストーン 19/08/17 06:43:50 ID:B41kTK2Q NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 475 TOg35azcXc 19/08/18 00:52:26 ID:u0IUJdw6 NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
マイナン「お化け退治? また?」

サマヨール「ひょひょ 以前にもご経験が?」

マイナン「や、この前のもそういう依頼だったなって ちょっと違うか」

迷路山の調査のことだね お化けが出るという噂は真であり偽だったということで

ヌケニンはいたけど、特段悪さをする個体じゃなくて、問題はないとか

ルリリ「幽霊ってそれ、迷路山のヌケニンのことじゃないよね?」

プラスル「彼は退治されなくてはならないような方ではありませんよ?」

ルリリたちも庇うように言葉を重ねた

サマヨール「ひょひょ いえ、その方はずっと前からいるのではありませんか?」

ルリリ「う、うん そう言ってたけど」

サマヨール「では違うのでしょう ひょひょひょ」

依頼内容的にはヌケニンは対象外らしい

サマヨールのその言葉に、三匹は安心した顔を見せる

キノガッサ「となると、僕らが追うべき幽霊ていうのは?」

しかし依頼の話はまだ途中 まず最後まで聴いてみなければ

……話の腰を折ったのはこちらだというのは突っ込まない方向で



サマヨール「夏も盛りを過ぎ始めた今の時期、私達には特に意味のある時期です」

仕切り直すようにサマヨールが改めて話し出した

キノガッサ「……ああ、お盆か」

プラスル「なるほど 御先祖様の魂たちが一時戻ってくるんですね」

サマヨール「ええ 通常認可された魂だけが此岸に戻るのですが、不手際がございまして
      悪しき魂たちも勝手にこちらに流れ込んでしまったみたいなのです」

マイナン「ええ!? ちょっと、何やってんのさ!!?」

サマヨール「お恥ずかしながら抑え込められず…… 申し訳ない」

目に見えて落ち込む姿は本気で遺憾だと告げているようだ



ルリリ「ちょ…… ちょっと待ってよ…… 悪しき魂ってことは、それ……」

サマヨール「ひょひょ 文句なしの悪霊でございます」

プラスル「…………ひっ!!」
 ▼ 476 TOg35azcXc 19/08/20 02:43:14 ID:bRAkfnK2 NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
マイナン「あ、悪霊…… お化け…… ほ、本物の……?」

ルリリ「へ、へえ…… 今、そんなものが溢れてるんだ……」

プラスル「あうう……」

ゴーストポケモンの口から出た「悪霊」の単語に、皆蒼褪めてしまう

マイナン辺りは先の発言を後悔しているかもしれないな



ゴクリン「依頼したいのはそれらへの対処ってことでいいのかな?」

サマヨール「ええ そうなります 私だけでは手に余るもので」

ゴクリン「ふむふむ、具体的にどんなのなの? ヨマワルとか?」

サマヨール「いえ、ゴーストタイプもいないことはないのですが、それとは別でして」

ゴクリン「別ねぇ…… ポケモンじゃないとか?」

サマヨール「そうですね イメージとしては近いかと」

キノガッサ「それって僕たちに対応できる案件なの?」

サマヨール「むしろ、キノココさんだからこそ――」

マイナン「ちょ……! ちょっと待って……!」

慄いたような声でマイナンが、というより三匹を代表して、という風に待ったをかける

マイナン「何でそんな淡々と話進めてんの!? 怖くない!?」

まるで理解できないという顔で声を出す ……気持ちは判らなくもないけどね

キノガッサ「怖くないわけがない 僕は“臆病”なんだよ?」

ルリリ「え…… じゃあ、なんで……?」

キノガッサ「怖いからこそだよ 情報がないのが一番怖い だから訊きたいのもある」

『解らない』ものほど怖いものはない 逆に、解っていれば対処できることもある

だから情報は集めるべきだ 仲間ごと共有できるのはこの上ないだろう

勿論、解ったからと言って恐怖がなくなるものとは限らないけど

キノガッサ「それに、私営ギルドは僕が始めたことだ これは僕のやりたいこと
      聴きもせず依頼を突っぱねるなんて、できるはずもないだろう?」

最後に逃げださずにいられるのは、意地、みたいなもののお蔭かな





ゴクリン「いやだって、実働はぼくじゃないし」

…… 台無しじゃない?
 ▼ 477 ーパ@がんせきプレート 19/08/24 02:55:15 ID:P99k0R4M NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 478 ッチャマ@メガペンダント 19/09/03 23:59:24 ID:DCucGQXc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 479 イプ:ヌル@おだんごしんじゅ 19/09/06 21:41:03 ID:b4TU3pKA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 480 リキザン@やわらかいすな 19/09/06 22:13:05 ID:MlEQfTVw NGネーム登録 NGID登録 報告
>>477
>>478
>>479
支援ありがとうございます
 ▼ 481 援有難う 代弁有難ね◆TOg35azcXc 19/09/07 00:55:36 ID:CEF2802c [1/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
マイナン「なんだよそれ! もっとやる気出せないのか?」

ゴクリン「ぼくにはぼくの役目がある!」

ルリリ「それズルいよ! もう!」

プラスル「ちゃっかりしてますよね…… いえ、必要な役目ではあるんですけど」

ゴクリン「ふふん この役目は譲らないもんね」



キノガッサ「……ん リンのことは置いといて、説明続けて」

微妙な空気が流れる中一つ咳払いをし、軌道修正してもらう

サマヨール「キノココさんの心配はご尤も なにしろ幽霊に技は効きません」

あまり良くない情報にこちらは少し騒めいてしまう

ゴクリン「効かないの? じゃあどうすればいいっての?」

プラスル「所長に何とかできるんですよね?」

心配そうにする彼女らに対し、サマヨールは悠然とどこからか中身の詰まった袋を出した

中には何やら紅白の球が詰まっている

サマヨール「ひょひょ 抜かりは有りません 対応策を準備しております」

マイナン「は? い、今どこから?」

ゴクリン「ていうかそれなに?」

サマヨール「これは幽霊を異空間に閉じ込めるための道具、“精霊球”です」

手渡されたそれは奇妙な材質で出来ている

しかしこれをどう使うのだろう?

 ▼ 482 TOg35azcXc 19/09/07 01:06:57 ID:CEF2802c [2/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
サマヨール「その“精霊球”は、霊に投げてぶつけるとその霊体を吸い込みます」

キノガッサ「へえ 投げればいいのか」

サマヨール「ええ しかし霊たちも大人しくするとは限りません 抵抗もあるでしょう
      普通に使っても出てきてしまうことがあります」

キノガッサ「普通に、ってことは大人しくさせる方法もあるんだね」

サマヨール「はい 逃がさず捕らえるために、こちらを使います」

そう言って彼はまたどこからか二つの袋を取り出す

マイナン「いや、だからどっから」

ゴクリン「ふむ こっちの白い粉は“塩”だね?」

サマヨール「ひょひょひょ それを使うことによって霊を弱らせることが可能です」

プラスル「こっちの袋は“ドール”……ですか? いっぱい入ってますね」

サマヨール「ひょひょ それは霊をおびき寄せる効果があります」

“ドール”で誘き寄せ、“塩”で弱らせる そして“精霊球”に閉じ込める、と

キノガッサ「これらを使って送り返すんだね?」

サマヨール「ひょひょ その通りでございます」

その認識で間違っていないと頷かれ、少し胸を撫で下ろす

幽霊という得体の知れない存在でも、対処できるのだと解れば落ち着ける

サマヨール「ちなみに、“精霊球”ですが、ポケモンには効きませんので悪しからず」

キノガッサ「あくまで幽霊だけってこと?」

プラスル「……では、ゴーストポケモンには?」

サマヨール「残念ながら効きませんね」

キノガッサ「なるほど…… でも普通のポケモンなら技も効くだろうし大丈夫かな」

 ▼ 483 TOg35azcXc 19/09/25 17:49:54 ID:yrDA7J6U NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
サマヨール「あとは、幽霊の分類にもお気を付けください」

ゴクリン「何種類? 難易度順にどうぞ」

サマヨール「ひょひょ 大まかには4種類かと 難易度はまちまちですね」

ゴクリン「ええー じゃあ上位下位の区分では?」

サマヨール「それでしたら――」

マイナン「ねえ待って なんでそんなふざけられるの? ゲームじゃないんだよ?」

ゴクリン「似たようなものじゃない 法則に則って課題を満たしてクリア 違う?」

ルリリ「……そう言われると、そう、かも?」

ゴクリン「単純に考えた方が良いでしょ その上でルール確認が大事 ――続けて」

サマヨール「ひょひょ 一つ目は“浮遊霊”になりますね」

ゴクリン「それが下位?」

サマヨール「はい 此岸へ来た時の幽霊はほぼこの形態です」

ゴクリン「すると、上位形態に変わってしまうことがあると? 時間との勝負じゃない?」

サマヨール「ええ “地縛霊”化したり“憑依霊”化したりすると厄介だと思われます」

ゴクリン「うあ 字面から考えても面倒そう……」

ルリリ「いや、面倒とかそれ以前に……」

プラスル「普通に怖いですよ……」

サマヨール「“浮遊霊”は行動に縛りがない代わりに捕獲難度は低めだと思います」

キノガッサ「碇を下ろしてないようなもの、なのかな?」

ゴクリン「踏ん張りが効かない、と じゃあ上位種は真逆な訳だ」

サマヨール「ひょひょ 土地に憑くか生命に憑くかの違いはありますがね」

ゴクリン「憑いてるときはまず引き剥がす工程もいるの?」

サマヨール「理解が早くて助かりますね」

キノガッサ「……確かにちょっと厄介かも 急ぐべきか」

サマヨール「“浮遊霊”は“浮遊霊”で注意して欲しいですがね」

ゴクリン「どういうふうに?」

サマヨール「不用意な接触は危険です 憑かれたり飛ばされたりされる恐れがあります」

マイナン「何それ怖い……」

 ▼ 484 TOg35azcXc 19/10/06 23:27:19 ID:rVmg1LXs NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
浮遊霊、地縛霊、憑依霊…… どれも一筋縄ではいかなそう――

キノガッサ「あれ? 4番目って何?」

ふと疑問が出てきた 上位の霊よりも厄介なのだろうか

サマヨール「それは別枠のようなものですね 厄介ではあると思います」

ゴクリン「別枠ねえ…… それは?」



サマヨール「ひょひょひょ “ゴーストポケモン”です」



平然と言われた言葉にみんな体を強張らせ、身構えたり後退ったりしてしまった

ルリリ「あ、貴方…………」

サマヨール「あ、いえ、私ではないですよ 悪意あるポケモンもいるという話です」

マイナン「紛らわしいっ! 怖いわっ!!」

叫んだのはマイナンだけだったけど、大体皆同じ気持ちだったと思う

勘違いを恥ずかしく思いながら体制を解き、誤魔化すように呟く

キノガッサ「倒し方が違うのも相手にいるってことだよね」

ゴクリン「何それ面倒い」

サマヨール「ひょひょ 迷惑かけます」

ゴクリン「いいよいいよ 依頼だし」

……いや、だから実働は君じゃないだろうに



サマヨール「それと、幽霊は日中では見え辛いものであることもお気を付けください」

ルリリ「…………つ、つまり?」

ゴクリン「夜間の方が確実ってことでしょ」

幽霊退治は夜に 成程、道理だ

ただ、その組み合わせが好ましいかどうかは別であるが

プラ・ルリ「「―――――ひぅっ……!」」

マイナン「ちょっ 無理無理無理!」

キノガッサ「…………参ったね」

抱き合ったり首を振ったり首を振ったり蒼褪めたりと皆それぞれ拒否反応を示す
 ▼ 485 ブンネ@たてのカセキ 19/10/11 19:40:45 ID:cN.wq2Dg NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 486 TOg35azcXc 19/10/26 23:15:52 ID:mW8M3TzI [1/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
――落ち着くまでしばらくかかってしまった

いや、まだ震えは止まってないけれど

そんなこちらを見て少し申し訳なさそうな声でサマヨールは言う

サマヨール「残念ながら日中の幽霊は見え辛いだけでなく、気配が希薄なのです」

ゴクリン「気配? 分かるの?」

サマヨール「はい 夜間であれば私には大体の位置が解ります」

ゴクリン「ふうん 闇雲に探す必要がないなら安心だね」

……確かに、全く情報なしで探すよりかはマシではあるけれど

マイナン「い、意味判って言ってる? よ、夜だぞ?」

マイナンが震える声でどれだけ剛毅なのかと問う

想定されるシチュエーションが怖くないのか、と しかし

ゴクリン「ごめーん その時間起きてらんない それにぼくは受付だし」

なんのことはない 直面する気がないだけだったようだ

ゴクリンらしくて呆れてしまう

マイナン「……お前って奴は はあ……」



ゴクリン「っていうか、皆“幽霊”退治に出たら昼の業務どうすんのさ」

どれだけやる気があろうとも、不眠で活動など出来ないだろうと言う

今ここにいないロロには昼動いてもらうけれど、手が足りなさそうだ

ゴクリン「嫌なら嫌って言えばいいんだよ 役割分担――」

マイナン「一抜け! お化けは、ない! 無理!」

ルリリ「あ! ずるい! 私もお昼が良いよ!」

プラスル「えっ えっ あうぅ……」

マイナンとルリリの反応が神速である どれだけ嫌なんだ

プラスルが出遅れてしまって涙目だ それでいいのか君ら

恐怖を前にチームワークがガタガタになっている……
 ▼ 487 TOg35azcXc 19/10/26 23:40:18 ID:mW8M3TzI [2/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ゴクリン「だ、そうだけど、プラスルはどうするんだい?」

プラスル「えっ わ、私ですか? え、えっと……?」

狼狽えていたところに声を掛けられて、プラスルはさらに慌ててしまった

ゴクリン「抜けるんなら今だよ どうする?」

プラスル「え、えと…… 私は、あの…… あの……」

声を震わせた彼女は、しかし言い淀んだ

そして皆を見回して遂に黙り込み、俯いてしまう

マイナン「プ、プラス――「シャラップ」――うえっ?」

心配そうな声を掛けかけたマイナンの声を、リンが遮る

しかしそれ以上は何も言わず悠然としたままプラスルを見つめている

機先を制されたマイナンはそわそわしているが目線で黙らされているようだ

ルリリ「……なんか、ゴクリンってプラスルには優しいよね 贔屓?」

沈黙と雰囲気に耐えられなくなったようにルリリが疑問を口に出した

マイナン「そ、そういえば確かに…… ――ハッ! まさかうちの妹に気があったり!?」

ゴクリン「一回死んでから言って?」

マイナン「酷すぎない!!?」

……つまり、気がある云々は言いがかりだと言いたいらしい

マイナン「勘違いならいい いや、良くない なんでこんなに扱いに差があるんだ」

マイナンはぞんざいな扱いに抗議の声を漏らす

ゴクリン「同じに扱われたかったらもっと控え目になりなよ それで平等だ」

しかしそれに対するリンの受け答えもぞんざい極まりないものだ
 ▼ 488 TOg35azcXc 19/10/27 00:39:52 ID:61FAQQkk NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
マイナン「こんの…… ヤな奴だよ、本当に……」

リンの態度に対し、マイナンは苛立たし気に呟く

ゴクリン「そうかい 照れるね」

対し、黙っとけばいいのにリンもからかうように返す

マイナン「褒めてないよ!? 何なんだ、お前は!?」

ゴクリン「受付担当のゴクリンですが、何か?」

マイナン「知ってる!! このヒキコモリめ!!」

ゴクリン「失敬な ちゃんと出勤してるじゃないか」

マイナン「偶には実働もしてみたらどうだよ!? 大変なんだぞ!?」

ゴクリン「やだよ 大変なんだし」

案の定、口論に発展

マイナン「うがー!! この……! この……!」

いや、マイナンが一方的に噛み付くのをリンが柳のように受け流しているだけか





プラスル「あの! 私!!」



外野がごたごた話し込んでいる間に、プラスルは考えをまとめたらしい

意を決したように声を出して注目を集めた 

そして



プラスル「……行きます ――幽霊退治」

身体を震わせながら、しかしプラスルははっきりと声に出す





ゴクリン「そう」

プラスル「はい」

リンの端的な確認に同じく端的に答えた彼女は、強い目をしていた
 ▼ 489 ッカグヤ@トポのみ 19/10/29 16:48:18 ID:ytmsSb/c NGネーム登録 NGID登録 報告
プラスルちゃん、この中で最年少っぽいけど、強くてかわいい、大好き
 ▼ 490 TOg35azcXc 19/11/02 17:02:27 ID:xtgQUjW. NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
マイナン「プ、プププラスル!? 本気!!?」

ルリリ「お、お化けだよ!? しかも夜! こ、怖くないの!?」

予想外に過ぎるプラスルの答えに、二匹は慌てふためく

その声に滲むのは心配と恐怖と、ある種の焦りと

そんな彼らに、プラスルは困ったように笑いながら

プラスル「怖いですよ?」

あっけらかんとそう答えるのだった



マイナン「じゃ、じゃあなんで!?」

本当に理解できないとばかりにマイナンが声を出す

発言の内容と起こそうとする行動が繋がらず混乱の極みといった表情だ

リンの言じゃないが、怖いなら抜けてもいいし、抜けるなら今だろうに

そんな気持ちでいるこちらに対し、プラスルは更に困ったように笑って

プラスル「だって、私まで抜けたらキノガッサさんだけになるでしょう?」

落ち着いた声音で自らの発言の理由を述べた



マイナン「ん? うん そうなる、ね?」

しかし今一前後が繋がらず困惑する

そんな様を見て取った彼女は苦笑しながらも続ける

プラスル「幽霊も、夜闇も、怖いです きっとみんなそうでしょう?」

確認するように皆を見回し

最後の一匹のところで悪戯っこく微笑んだ

プラスル「キノガッサさんだって、そうなんじゃないですか?」

……まいったね ほんと


 ▼ 491 TOg35azcXc 19/11/11 00:16:06 ID:e2DMlk7U NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
マイナン「え? 所長が? まっさかー」

ルリリ「そうそう まさかそんなわけないじゃない」

プラスルの台詞を笑い飛ばす二匹

今までの実績に対する信頼からか、まるで疑わないらしい

しかしだからこそというべきか、リンは呆れた溜息を吐きだす

ゴクリン「君等はそんなんだからそんなんなんだよ」

マイナン「何が言いたい?」

ゴクリン「さっき言ったじゃん 控え目さが足んないって」

マイナン「は? 悪かったね、せっかちな性分で!」

また喧嘩になる…… なんで煽るんだか……



ルリリ「ま、まあまあ えっと、つまり所長も乗り気じゃないの?」

少し落ち着かせたところで話の矛先が再度こちらを向いた

キノガッサ「……まあ でも、依頼だし、放って置けそうでもないでしょ」

彼岸から悪霊があふれ出すなんて事態なのだ



キノガッサ「って、あれ? 具体的に何があるの?」

そういえば幽霊が出るまでは訊いたが、その後話は進んでいなかった

サマヨール「予測できかねますね」

しかし返って来たのは曖昧な情報だった

サマヨール「此岸に勝手に出でた魂は少々歪むのが解っていましてね」

キノガッサ「歪む?」

サマヨール「はい 無理に理に反した反動なのか、多かれ少なかれ変質するようでして」

霊というのは彼岸では生前と同じような形態でいられるらしい

そしてその変質は記憶の混濁や自我の喪失、姿や能力の変化など多種多様だという

サマヨール「そのため、彼らが何を思いどんな行動をするのかは解りません」

キノガッサ「……なんにせよ、此岸にいい影響はなさそうだね」


 ▼ 492 TOg35azcXc 19/11/11 01:11:07 ID:QdrMoFyw NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
プラスル「先ほど挙げられた事例って、凄い幽霊っぽいですよね……」

ルリリ「イ、イメージ通りっていうか、だからあんなイメージがあるのかっていうか……」

聞かされた話に彼女らはまた震えだしてしまう

確かに、そういう話ではどうしても良い感情にはなり得ない

勝手に怖いイメージばかりが頭を占め始めてしまう

そのうち、何かに気付いたように息を呑む音がした

マイナン「……お、お前は歪んでないのか?」

若干身体を強張らせながらマイナンが問いかける

皆、また身構えてしまい、サマヨールに注目してしまった

だがやはり彼は飄々としたまま

サマヨール「ひょひょ いいえ 私は今回の件に当たるために来てますしね」

どうやら歪まずに行き来する方法があるらしい そりゃそうか

サマヨール「なのでこの件、しっかりやらないと上に怒られるんですよ
      いやはや、下っ端は辛いですね ひょひょひょ」

彼岸にも色々あるんだな そりゃそうか ……大変だな



サマヨール「まあ、此岸担当になったのも私情が大きいですから仕方ありませんね」

ゴクリン「私情?」

サマヨール「ええ その節はお世話になりましたね、キノココさん 今回もお願いします」

リンが零した疑問に肯定しつつこちらに礼を取ってくる

感謝と信頼の言葉に、嬉しさが込み上げてくるとともに肩の力が抜ける

キノガッサ「承ったよ ……あの仔は元気?」

サマヨール「ええ 元気も元気ですよ 私たち、死んでますけど」

そういえば夜の森なんて以前も駆け回ったなあ、などと思い返して苦笑してしまう

 ▼ 493 TOg35azcXc 19/11/23 14:01:30 ID:wWCA3Uo. NGネーム登録 NGID登録 報告
キノガッサ「さて、基本的な情報はこれくらいかな」

幽霊退治の準備はそこそこ、といったところか


プラスル「……本当に、大丈夫なんですか?」

ふと、心配の声がこちらに向けられた

彼女の言葉に軽く黙考した後

キノガッサ「確実なことは言えないね」

正直なところを答える

当然、物言いたげな視線を向けられることになるが

キノガッサ「まあ、詳しいのは居るだろうし」

それは傍らの依頼者へと流した

サマヨール「ええ、私はご一緒しますとも 元々、私がやるべき仕事なのですから」

キノガッサ「だろう? 後は実地で追々だね」

依頼者には悪いが、どうにもならないなら手を引くつもりだ

キノガッサ「なんなら君も休んでても――」

プラスル「――そういうことじゃ、ないです」

慮ったつもりで放った言葉には不服が返ってきた

彼女も怖がりで降りたがっていたように思ったのだが……

プラスル「いえ、私も行きます ……必要でしょう? 明り取り」

しかしこちらの想定に反して彼女は微笑んで続けた

……確かに 暗い夜道にその存在は有難い


ゴクリン「話は纏まったかい? ぼちぼち日暮れだけど」

キノガッサ「もうそんな時間なのかい」

気付けば、話しているうちに大分時間が経っていたらしい

ゴクリン「無事に戻ってこれることを祈っておくよ」

キノガッサ「まさか 無茶はしないさ」

ゴクリン「ふーん……」

キノガッサ「……何だいその顔 ……とにかく、行って来るよ」

プラスル「行ってきます」

ゴクリン「はいはい 副長にはぼくから言っておくよ」
 ▼ 494 ロバレル@キトサン 19/11/25 07:04:29 ID:ADM.yYWs NGネーム登録 NGID登録 報告
シエンネ
 ▼ 495 TOg35azcXc 19/12/08 13:13:35 ID:f6GsaJvc [1/5] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
キノガッサ「異様な雰囲気だな……」

黄昏に暮れる森は既に暗く、妙な気配が騒ついている

先の話を聴いた所為か、まだなにも起こっていないにも関わらず身構えてしまう


プラスル「……! で、電気、点けますね」

彼女も辺りに満ちる怖気に気圧されているようで震えている

それでも、己の役目を忘れずに果たそうと懸命に電気を出そうとする

サマヨール「ひょひょ 光量は最小限にしてください」

が、急に発せられた注文に驚き、手を止めてしまった

恐らく、不安を消す意味も込めて大幅に明るくしようとしていたのだろう

表情に困惑の色が強く出ている

プラスル「……な、何ででしょう?」

指示の理由を問い掛けるのは、やはり納得するためだろう

得体の知れない闇に囲まれる状況はそれだけ恐怖が襲ってくるのだ

意に反した注文に答えるには納得のいく理由がいる


サマヨール「いえ、あまり一気に幽霊が集まっても大変でしょう?」

あっけらかんと、寧ろこちらを心配する声音で出された答えに、彼女は頬を引きつらせ固まった



プラスル「ゆゆ、幽霊って、光に集まって来るんですか!?」

驚愕の事実に衝撃を受ける

幽霊は光に弱く、恐れているイメージがあるのだが

サマヨール「いえ、光に、というのは少し違います 彼らは生者の気配に寄ってくるのです」

光の元には生者がいるという発想らしい 成る程、道理だ

どちらにせよ光に弱いわけではないのか

というか、その言い方だと

キノガッサ「僕らは囮だった訳だ」

サマヨール「おや、人聞きの悪い 効率的な手段を選んだまでですよ」

……確信犯か
 ▼ 496 TOg35azcXc 19/12/08 13:18:11 ID:f6GsaJvc [2/5] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
プラスル「え? え? ……ど、どういうことなんでしょうか?」

彼女はこちらのやり取りについてこれなかったらしい

キノガッサ「こいつは今生者に引き寄せられると言ったよね」

プラスル「は、はい」

キノガッサ「そして、幽霊が集まってくること事態は問題視してなかった」

プラスル「そう、ですか? あ、確かに『一度に沢山は困る』みたいな言い方でした、ね?」

キノガッサ「そう で、僕らは生者だ」

プラスル「えっと…… 幽霊は、私たち目掛けて、集まって……くる?」

そういうことになるのだろう まるで活き餌だ


キノガッサ「……聞いてないんだけど?」

先の説明の中に含まれていてもいい内容だと思う

サマヨール「やや! 話していませんでしたか!? これはうっかりしました……」

指摘に対して、本気で申し訳なさそうな反応が返ってきた

こっちは確信犯じゃないらしい

というか、この説明があったなら受け取り方も変わってたのだろう

そもそも確信犯のつもりはなかったのかな?

とはいえ、無意味に驚かされたのは事実だ

心臓に悪いことは止めて欲しい

対応できる筈のところが知識不足で対応できないのでは敵わない


キノガッサ「……他にもうっかりしてなきゃいいけど」

疑いを込めたジト目で睨むと、目を逸らし慌て出す

サマヨール「……誘引の話をしてないとなると、もしや存在値の話もしていませんか?」

まだうっかりはあったようだ

先に気付けて良かった

 ▼ 497 TOg35azcXc 19/12/08 13:21:06 ID:f6GsaJvc [3/5] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
サマヨール「幽霊というものは、自然と彼岸へ導かれる性質を持つものなのです」

やはり幽霊が此岸に留まることは、摂理に反するのだそう

無理を通し、此岸に干渉するにはエネルギーが必要で

それが尽きれば、干渉が弱まり、自ずと還されるのだそうだ

サマヨール「我々は、そのエネルギーを存在値と呼んでいます」

先程言った言葉の意味はこれか

存在値、干渉力ね……

キノガッサ「存在値と行動の影響は比例するのかい?」

サマヨール「ええ、ええ 流石、理解力が高い」

気づいた点を口にしたら当たってたらしく煽てられた

混乱はしない


プラスル「えっと、放っておけば自然に弱くなるんですか?」

彼女もまた気になったところを口に出すが、こちらは首を振って返した

確かに勝手に消耗していくなら、そう思えるものであるのだが……

キノガッサ「……存在値を高める手段もある、と?」

サマヨール「ご明察です」

放っておいても解決するなら、態々出向することもない

解決に向けて働きかける者がいるなら、そうもいかないということだろう


プラスル「その、方法とは?」

彼女の尋ねる声には不安がありありと浮かんでいた

そもから恐ろしい存在が強化されるというのだから当然かも知れない

ともあれ、強化を妨げるためにも手法は知っておくべきであるが

或いは不吉な言葉しか返ってこない予感がしていながらも訊かねばならなかったためか

サマヨール「憑依です」

果たして、出てきた回答は予感通り

こちらとして、苦々しい表情になることは致し方ないだろう
 ▼ 498 TOg35azcXc 19/12/08 13:29:59 ID:f6GsaJvc [4/5] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
曰く、憑依の対象は土地や物など多岐にわたるという

土地や残留思念に憑けば地縛霊、物や生者なら憑依霊だ

憑くものによって存在値の高まりも変わってきて、

取り分け生者に憑くのが存在値を高めるのに効果的だという

キノガッサ「生者に寄ってくるってそういう……」

サマヨール「ひょひょ 隙あれば乗っ取りを狙ってくるのでお気をつけください」

脅かすように言うが、確かにそれは重要な注意事項だな

プラスル「は、はいぃ……!」

ただ、腰を抜かしかねない程たじたじになる者もいる


サマヨール「一度憑いたら簡単に剥がれず――と、話しているうちに来ましたね」

なにかに気づいて話を途中で止めた

その視線を追うと

プラスル「……ひっ!」

キノガッサ「これはまた……!」

見たこともない半透明な何かが、そこに浮いていた

手足はなく、大きな目が一つだけ

生前どんな姿だったのかすら判然としない何か

不気味な容姿もさることながら、明らかにこちらを狙って迫ってくる様子に怖気が走る

プラスル「ひっ……! あぁ……!?」

キノガッサ「……!」

驚きに怯み、つい立ち竦んでしまい

サマヨール「"ドール"を!!」

横から聞こえた声に気がついて、言われるがままのものを投げつけた

 ▼ 499 TOg35azcXc 19/12/08 13:36:20 ID:f6GsaJvc [5/5] NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
子どもに好かれそうな可愛らしい玩具は、見事相手に当たった

途端、幽霊は進行を止め踞る

状況が読めないまでも、操作権を取り戻した足を動かし下がった

一時撤退、危機回避だ


サマヨール「"ドール"は生体のダミーです あれに憑かせることにより生者を守ります」

これは誘き寄せるためだけの道具ではなかったらしい

一応、こちらに対する安全策は採られているらしい


ただ、憑依させるので多少存在値が上がってしまうとか

まあ、生者に憑かれたときよりは余程低いそうだが

それに、生者が犠牲になるより物の方が被害がない

サマヨール「更に、一度憑いた霊は他に憑き直すことがそうできません」

さっき言い掛けてた内容はそれか

"ドール"は二重で安全策になっているようだ

サマヨール「ただ、それは剥がし辛くなることと同義」

プラスル「"精霊球"に入り難くなる、と?」

捕らえにくくなるのは困るな

キノガッサ「その分"塩"で弱らせればいいんじゃ?」

サマヨール「いえ、"塩"は幽霊共には苦痛なのです」

単純な話だと思ったが、反応は芳しくない

キノガッサ「苦痛から逃げようとするのは当然のこと、か」

要はそういうことだ

そして、逃げた先で何をされるのか予想もできない

ならば逃がさない方がいいだろう

いい塩梅を見極めつつ捕らえなければいけない

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