▼  |  全表示762   | << 前100 | 次100 >> |  履歴   |   スレを履歴ページに追加  | 個人設定 |   ▼   
                  スレ一覧                  
SS

【SS】摂理の中の神秘

 ▼ 1 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/08 00:01:00 ID:eFtUh1Ow [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シンオウ地方の外れにあるこの町。

車を走らせること数時間.....


(・・やっと着いたか・・)


たった今、俺はこの地に降り立った。

俺はカロマ29才、単身フリーでポケモンの生態調査、研究をやっている。

ポケモンは生命の神秘に包まれた謎多き生き物。

生物学、遺伝子工学の面で見ても謎だらけで解明できてない部分が殆どと言える。

そんな謎を少しでも解明すべくこうして活動している。


(・・お前とは随分走ったよな・・・)


思わず自家用車の黒いステーションワゴン相手にそっとそう呟く。

今までこの活動の為にカントー、ジョウト、カロス、アローラなど色んな地方を転々としてきた。
 ▼ 13 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/08 23:12:44 ID:eFtUh1Ow [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
不動産屋に案内され、ドアを抜けて階段を降りるとそこは結構広い地下室があった。

コンクリートむき出しの空間に天井にはむき出しの水道管や排水管のパイプ類、そして照明の裸電球という無機質で薄暗い感じの空間が広がっていた。

どこか独房を彷彿とさせる。

地下室特有の湿ったひんやりした空気が身を包む。

(まさかこんな広いとはな・・)

前もって予約の段階でこの物件には地下室があることは聞いていたがこんなに広いとは。

俺「これはこれは広いですね」

男「そうでしょう。これだけ広い地下室があるのはこの物件だけかと」

俺「全くですよ」

前もって物件はいくつも調べたがこんな広い地下があるのはここぐらいだろう。

俺「しかしこんな広い地下室何に使ったらいいんですかねェ?」
 ▼ 14 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/08 23:28:10 ID:eFtUh1Ow [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
男「これだけ広ければ収納以外にも使い方は様々です。どう使うもカロマ様次第ですよ」

俺「確かにその通りで」

研究場所としても使えるだろうとこの地下室のある物件を選んだわけだが全くいい意味で裏切られた。

これだけ広ければポケモンの研究場所としても十分だ。

男「そしてこの物件は今なら駐車場と庭もお付けします。いかがでしょう?」

俺「ほぉそれはなかなか」

その後不動産屋に駐車場と庭付きであることも初めて知らされる。

俺「でも庭と駐車場までついてるのは聞いてませんが?」

男「今回は特別サービスでやらせて頂きます。カロマ様にはわざわざ遠くからお越し頂けたのですから」

俺「そうですか。それはどうも」
 ▼ 15 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/09 00:02:26 ID:wfF2SdFk [1/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
これまた嬉しい意味で想定外だ。

不動産屋の計らいっていったとこか。

俺「じゃああの値段で庭と駐車場もつけてくれるわけですね」

男「もちろんでございます」

あの値段と言うのは前もって予約の段階で知らされた家賃のことだ。

すなわちこの物件は借家で俺はそれを借りるわけだ。

俺は永住するわけじゃないから他に移るときにすぐ引き払えるよう借家を選んだ。

そしてなによりここを選んだのはこの家賃の安さ。

下調べの段階でわかったことだがシンオウの平均的な相場の半分ほどなのだ。

俺「それはいいですね」

男「ありがとうございます」
 ▼ 16 ヤルキモノ@あくのジュエル 21/07/09 00:10:54 ID:q.OIw6AM NGネーム登録 NGID登録 報告
いいっすね
支援
 ▼ 17 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/09 00:21:40 ID:wfF2SdFk [2/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
駐車場といっても車一台分で、庭もこじんまりとしてて大して大きくないが俺一人なら問題ない。

むしろ家賃の値段考えれば上出来だ。

男「お気に召して頂けて何よりです」

「ええ。ただ・・」

男「・・他に何か気になさる点などありますか?」

俺の顔色をうかがう感じでそう尋ねる男。

これだけ安いと何かあるのではと逆に疑ってしまうのが人間の心理というもので。

現に(安物買いの銭失い)、(安いものには訳がある)・・・そんな言葉が存在するように。

こんな時にあまりこういう余計な心理には至りたくないもの。

せっかくの気分が萎えてしまう。

だが、自分の中で無意識に自己防衛が働いでこういう心理に駆り立てるのだろう。
 ▼ 18 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/09 00:40:49 ID:wfF2SdFk [3/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
嘘や詐欺から身を守るために。

俺「安いうえにこれだけサービス満点なのはいいんですが、これって何かあるんですか?」

男「何かあると言いますと?」

俺「失礼ですが、これだけ安いと逆に何かその、裏があるのでは?と思ってしまいましてね」

男「そうでしたか、わたくしもそのお気持ちは分かりますよ。確かにこれだけ安いと疑いたくもなりますよね」

俺「ええ、まぁ」

無礼を承知の上で言ったが男はすんなりと分かってくれた感じだ。

俺「それでこんなに安い理由は?」

男「まず一つはこの物件自体は20年近く前に建てられたもので建物自体少し古いんです」

俺「なるほど」

男「もう一つは見ての通り開けた場所にぽつんと建っていてあまり立地条件が良くないんですよ。低い土地で水はけも良くないので大雨が降るとたちまち水たまりだらけにもなってしまうんです」

俺「そうですか」
 ▼ 19 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/09 00:53:34 ID:wfF2SdFk [4/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
男「でも建物自体はきちんと修繕メンテナンスは行っておりまして雨漏りなどの心配はまずございませんのでその点はご安心下さい」

俺「それは良かったです」

確かに建物は若干くたびれた感じはあるもののメンテナンスが行き届いているのは見て分かった。

メンテナンスがされてる、されてないは建物の雰囲気を見れば大体分かる。

メンテナンスが不十分な物件はまず部屋の隅に埃やクモの巣が見られ、窓際にカビが生えてることすらある。

だがこの物件はまずそう言うのが一切見られない。

だからこの不動産屋の言うことはハッタリではないと確信する。

それに大雨で周りが水たまりだらけになったってそれが何だって感じだ。

別に気になるとこでもない。

俺「とにかくその理由でこの値段なんですね」
 ▼ 20 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/09 01:07:18 ID:wfF2SdFk [5/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
男「はい。そういうわけでなかなかご入居者様が決まらなかったんです。それでこれだけ値下げさせて頂いたんです」

男からはどこか哀愁も漂っている。

俺「なるほど。こんなにいい物件なのに。もったいないですね」

男「恐れ入ります。でも今回カロマ様にこうしてこの物件を予約して頂けて嬉しい限りです。ですから目一杯サービスさせて頂きました。物件も喜んでいますよ」

俺「いやぁそれは何よりで」

不動産屋の男からは誠意も感じられた。

それにこの値段でこのサービス、この物件、ここまで来ればもう答えは一つ。

俺「気に入りました!この物件、今日決めますよ!」

男「本当ですか!ありがとうございます!」

不動産屋の男は”本物の”笑顔で喜んだ。

決して営業スマイルなどのうわべだけの笑顔なんかではなく。


男「・・それでは早速こちらの契約書にサインの方よろしいでしょうか!」

俺「もちろんですよ」
 ▼ 21 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/09 01:16:42 ID:wfF2SdFk [6/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
俺は契約書にサインをし、必要な手続きを済ませた。

男「それでは手続きは以上になります」

俺「はい」

男「こちらの物件は我が社の方で管理しておりますので家賃は我が社のこの指定口座にお納め下さい」

俺「はい。つまりあなた方が大家さんってわけですね」

男「そんなところですね。それでは以上になります。今回は本当にありがとうございました」

俺「いやぁこっちこそこんないい物件が見つけれらて嬉しいですよ」

男「それは何よりです。どうぞごゆっくりこの物件でお過ごし下さい」

俺「ええ!」

男「それではわたくしはこれで失礼致しますので。物件のことで何かありましたらいつでもご連絡下さい」

俺「はい。どうも!」

そういって不動産屋の男は帰って行った。
 ▼ 22 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/09 01:31:17 ID:wfF2SdFk [7/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
(・・・さて。今日からここで新たな生活か)

仮住まいのつもりだが自分だけの城がこうして手に入ったわけだ。

それに今まで色んな地方を転々とし、色んな物件に住んできたが今回のは特に上モノと言えよう。

それが手に入り、ひとまずホッとし満足感に浸る。

ま、手放したくないというのが正直なとこだ。


(・・よしやるか!)

住まいが決まったら次は生活の準備だ。

俺は愛車の黒のステーションワゴンから引っ越しの荷物を下ろして住まいに運び入れ、整理した。

荷物と言っても全て折りたたみ式のテーブルと椅子、机、ノートパソコン、研究に使う備品、資料、その他生活雑貨ぐらいでそれほどの量はなく整理はそんなに時間かからなかった。

これも日ごろから余計なものは持たないようにしているお陰だろう。

拠点を転々とし引っ越しが多い俺にとって物が多いのは致命的だからな。
 ▼ 23 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/09 12:33:33 ID:IkbArPaA [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
夕方〜

(・・こんなもんか)

ひとまず荷物の整理を終える。

見渡しても書斎は折り畳みの机と椅子と資料の入った小さい棚と机のノートパソコン、その他研究に使う備品。

リビングもまた折り畳みのテーブルとイス、小さい液晶テレビ、その他生活雑貨ぐらい。

キッチンには皿と鍋という必要最低限のものだけ。

我ながら物が少なく生活感があまり感じられない。

シンプルと言いたいとこだがちょっとシンプル過ぎるとこか。

よく引っ越しをする俺には物が少なくて都合いいが普通に暮らすにはちょっとシンプル過ぎて寂しく思えるかもしれない。


(・・ま、いいか)

この方が整理も掃除も楽で何かと都合がいいし、第一質素なインテリアはいつものことだ。
 ▼ 24 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/09 12:45:47 ID:IkbArPaA [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
嫌でも慣れてる。

それにここも一時的な住まいに過ぎないのだろうから今更インテリアにこだわる必要もないだろう。

元々見た目より実用性を重視する俺にはインテリアとかそういうのは性に合わないしあまり興味ないとこだ。

(・・・腹減ったな)

時間も時間だから腹が減り始めた。

特に今日は引っ越しやらでバタバタしてたからなおさらだ。

嵐のようなまでは行かないがなかなか忙しない一日だったといえる。

(そういやなにか持ってきてたか?)

食べる物を持ってきてないか改めて引っ越しの荷物を確認する。

(これだけか・・・)

だがあるのは非常用のクラッカーと水とスープの缶詰が2缶だけ。
 ▼ 25 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/09 22:28:50 ID:wfF2SdFk [8/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
流石にこれでは心もとない。

(仕方ない、買い出し行くか・・)


俺は徒歩で町に食料の買い物に出かけた。

町の商店が並ぶメインストリートまでは徒歩で30分ほど。

少し距離はあるが気晴らしに歩くのも悪くない。

いくつか店でとりあえず適当に持てる分だけ食料品を買い込む。

その帰り道〜

(・・ちょっと買い過ぎたか)

そんなことを呟きながら両手に買い物袋を抱える。

徒歩での買い物の大変さを思い知らされた気がした。

帰りのことを考慮して考えて買わなきゃいけないことも。
 ▼ 26 ヒヤップ@ギンガだんのカギ 21/07/09 22:30:34 ID:V9O.n0yE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
新キャラとか出て欲しい
 ▼ 27 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/09 22:42:12 ID:wfF2SdFk [9/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
特に徒歩の場合は・・・

そんなことも思いながら夕日で赤く染まった田舎道を歩む。

ふと空を見上げると______

(おぉ、なかなかだな)

丁度赤く燃える夕日が遠くのシンオウの山々に隠れようとしていた。

まるで顔を赤めて恥ずかし気に。

更にその夕日は空を赤、オレンジ、深青の絶妙なグラデーションに染め上げていた。

雲もまだらなその空を・・・どこまでも

そしてそれらに重なるように空を飛ぶ鳥ポケモンたちのシルエットの数々。

皆一斉に帰路につくかのように飛ぶポケモンたちの。


(・・・・・・・・)

気が付くと俺はそれらの美しさに無言になって見とれていた。
 ▼ 28 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/09 22:55:44 ID:wfF2SdFk [10/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
夕日はいつも見ているはずだが場所が変わるだけでこんな美しくなるとは___


・・いや、こういう日常の中の美しさを無意識に忘れてしまっていただけなのかもしれない。

当たり前の何気ない毎日を過ごしているうちにこういう美しさも”当たり前”、”普通”になってしまって___

だが今回場所が変わったことで改めてその美しさに気が付けたと言えよう。

この自然の摂理の中に存在する神秘の美しさに。

この何気ない夕日だって立派なそれの一つだ。

何だか初日にして大きな収穫が得られた気がした。


・・早速この感動を忘れないうちに写真に収めようとしたが

(くそ、持ってきてなかったか・・)

ポケットを探ってスマホもカメラも家に置いてきたことに気付く。

今のこの瞬間を写真に収められないことを少し悔やむ。
 ▼ 29 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/09 23:08:29 ID:wfF2SdFk [11/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
(・・ま、いいか)

俺はこの肉眼で捉えて脳裏に焼き付けることにした。

何も無理して写真に捉えることもない。

”心の写真”に焼き付けてこそより真価を発揮するのだろうから。

なんだか簡単に写真に収めてしまってはかえって価値が薄まってしまう気もした。


(・・今日は休んで明日から頑張るか)

俺は余韻に浸ったまま帰路につく。

そしてその夜はお酒を飲みながら簡単に食事を済ませ、床についた。


翌朝〜〜

(さぁて、やるか!)

俺はシンオウのポケモンたちの観察をすべく道具をもって近隣の森に出かけた。

何事も観察から入るのが大切だ。
 ▼ 30 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/10 00:31:13 ID:.d3oFTAE [1/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ガサ・・ガサ・・・・・

新緑の緑に足を踏み入れる。

すると


(おおぉ!)

木の上ではムックルやオニスズメなどの鳥ポケモンがさえずり、清流ではビッパやコイキングなどの水ポケモンが気持ちよさそうに泳いでいた。

さらに見渡すと向こうでは数匹のコロトックがバイオリンのような美しい音色を奏でている。

また向こうではハヤシガメがのんびりと歩き回っている。

花の周りには数匹のアゲハントが可憐に飛び回り、木からはミノムッチやミノマダムがぶらさがり、モウカザルが木々の間を忍者のようにすり抜け華麗に駆け回る。

まさに”ポケモンの楽園”だった。

意外なのはシンオウ以外の他の地方のポケモンもいること。

自然に包まれ生き生きとしたポケモンたちで溢れる平和な世界がまさに広がっていた。
 ▼ 31 ヒトツキ@オレンのみ 21/07/10 01:15:27 ID:RqPwee4E NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ポケモンが出てきて安心した
 ▼ 32 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/10 12:29:52 ID:BpdwSqEk [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
今まで研究所や保護施設なんかで色んなポケモンは見てきた。

だがポケモンの生き生きとした自然な姿はやはり自然の野生でしか見れないだろう。

トレーナーたちには申し訳ないがトレーナーの手持ちポケモンよりもどこか生き生きしているようにも感じた。

これがあるべき本来の姿なのだろう。

(見事だ・・)

終始見とれそうになるほどだ。


(これはやるしかないだろ!)

俄然モチベーションがあがる。

俺はまず手始めにコロトックが奏でる音色を分析すべく音の周波数とデシベルを分析できる測定器を取り出す。
 ▼ 33 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/10 12:38:59 ID:BpdwSqEk [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
こいつは高性能のコンデンサー式集音マイクを搭載していてどんな音も拾って測定することができる。

早速美しい音色に耳を傾けながら測定する。

すると

(おお、なかなかこれは!)

測定器には13Hzから32kHzの数値が表示された。

人の耳の可聴域、つまり人の耳が聞くことができる音は一般的に20Hzの低音から20kHzの高音と言われてるからそれ以上の幅広い音を奏でていることになる。

つまりあの体で重低音から超高音までの幅広い音色を奏でてるわけだ。

(こんなに音色のレンジが広いとは・・・)

正直驚きでしかない。

少なくとも一つの楽器やスピーカーでこれほどのレンジの音を奏でるのは至難の業だろう。
 ▼ 34 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/10 22:12:38 ID:.d3oFTAE [2/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
さらに測定を続けると瞬間的ではあるが時折最高50kHz近くの超高音域も奏でていた。

さらに周波数ごとのデシベルも測定してみる。、

するとどの周波数もどれかが突出することなく全てフラットにバランス良く奏でていることも判明した。

これがこの癖のない美しい音色の秘密と言えよう。

ヒーリング効果すら感じられるほどの。

まさに計算された音色。

驚異的と言える。

だが謎なのは

(・・あれほどの重低音どうやって奏でてんだ?)

ナイフのような腕を巧みにこすり合わせればこれほどの高音域が奏でられるのは納得だ。
 ▼ 35 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/10 22:28:57 ID:.d3oFTAE [3/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
だが20HZ以下の重低音は奏でるのは簡単ではないはず。

(一体どうやって・・・・)

俺は秘密を探るべく双眼鏡を使ってコロトックの体のより細部を観察する。

頭の中でコロトックの体の構造を照らし合わせながら。

すると


(・・なるほど。そういうことか・・)

その体のつくりを見てピンときた。

どうやら腕から放出された音を一度体内の空洞で反響させ、さらにヘルムホルツ共鳴の原理を応用して増幅した上で放出することであれほどの低音域を奏でていることに気付いた。

ちなみにヘルムホルツ共鳴とは瓶の口に息を吹きかけるとボーっと低い音がでるあれだ。

(恐れ入ったな全く・・)
 ▼ 36 ザルード@エレクトロメモリ 21/07/10 22:35:47 ID:XbrordC. NGネーム登録 NGID登録 報告
最近一番楽しみなSS
支援
 ▼ 37 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/10 22:40:09 ID:.d3oFTAE [4/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
改めてポケモンの体の完成度の高さを思い知らされる。

しかもこれは一般的には知られていない事実。

下手したら新発見かもしれない。

俺はすぐさまこの事実やさっきの測定データを観察データとしてまとめた。

(いいよ、いい感じだ)

なかなかの収穫だ。

だがコロトックにはまだ謎もある。

それはコロトックの奏でる音色にはある一定の規則性、法則があると言われてることだ。

だがその気息性、法則が何なのか、それ自体すらが謎だ。

俺も含め色んな学者が解明しようと奮起になってるが今だに解明されてない。
 ▼ 38 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/10 22:51:54 ID:.d3oFTAE [5/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
結局今回のコロトックの観察ではそこまでは解明できなかった。

流石に未だに解明されないだけあって一筋縄ではいかないか。

それに簡単に解明できてしまったら、何というか、ロマンがないだろう。

(だがいつか俺が解明してみせるぜ。音色の法則と規則性を)

そう心に誓う。

なかなか解明できないからこそ探求心が燃え血が騒ぐってものだ。

皆そうだろう__特に研究者ならなおさら。

これがモチベーションの源でもあるだろう。


音を奏でることに特化した体をもつコロトック。

音響学的に見ても洗練された計算高い体を持っているのは確かだ。

何しろヘルムホルツ共鳴などのハイレベルな小技を組み合わせてるのだから。
 ▼ 39 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/10 23:05:58 ID:.d3oFTAE [6/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
音響学者と生物学者を同時に唸らせること間違いない。

(よっしゃガンガン行くか)

その後も俺はこんな感じで


ムックルなど鳥ポケモンの鳴き声の習性__

ドダイドスなど草タイプの光合成とエネルギー変換の関係性__

モウカザルの運動能力の効率の高さ___

炎タイプの体内エネルギーから炎エネルギーへの変換の仕組み___

ミノムッチとミノマダムの巣に使わっる材質の種類___

アゲハントの好む花の種類の傾向__


などに至るまで幅広く観察し研究しまくった。

どれだけ考察に考察を重ねただろうか。
 ▼ 40 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/10 23:17:15 ID:.d3oFTAE [7/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そして夕方〜


・・気が付けば一冊の白紙だったノートは文字や記号や計算式の類で埋め尽くされ、すっかり観察、研究データの塊と化していた。

最も半ば殴り書きで書いたからアンノーンが躍っているような文字だがな。

(・・我ながら汚い字だな・・)

自分でもちょっと呆れるほどに・・

ま、人に見せるわけじゃないからよしとしよう。

自分さえ読めれば問題ないのだから。


(・・今日のとこはこれで十分だろう)

そう判断した俺はここで切り上げた。

これなら十分すぎるほどの収穫と言えよう。
 ▼ 41 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/10 23:38:18 ID:.d3oFTAE [8/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
それに帰ってからまだやることはある。

研究は決してこれで完成ではないのだ。

ここから先も肝心といえる。

帰ったらこれらの雑然とした膨大な量の観察記録データをまとめなおし、改めて修正を加えながら分かりやすく書き直して一つの論文、研究レポートとして作成しなければならない。

この半ば乱雑に書いた観察データはそれらのベースになるわけだ。

この作業もデスクとの睨めっこで地味に大変な作業だ。

だが研究機関やマスコミなどに提出するものだから疎かにするわけにはいかない。

これには俺の生活が懸かっているのだから。

ベースが同じでもレポートの完成度によって売れる売れないの差が大きく出る。


つまり俺は単身フリーで独自にポケモンの観察、研究を行い論文やレポートを作成してそれを数々の研究所やマスコミに売って生計を立てているわけだ。

ま、情報や特ダネを売っているのに近い部分はあるかな。
 ▼ 42 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/11 12:35:00 ID:1NxEdJys [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
当然レポートの質が良ければ高く買ってくれる可能性は高い。

まして新発見、新事実のような特ダネものだったりすると言い値で買ってくれることすらある。

だが逆に質が良くなければ当然なかなか買ってくれない。

門前払いもいいとこ。

これもお金が絡む以上シビアだ。

だが一人で何事にも縛られずポケモン研究をするのが好きな俺にとってこの仕事は天職でやりがいがあると言えよう。


お金の為にこの研究をやってるわけではない。

ポケモンが好きで興味があるからやってるまでだ。

正直お金は二の次。

お金目的だったら少なくとも俺はここまで研究に情熱を持てないだろう。
 ▼ 43 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/11 13:05:22 ID:1NxEdJys [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
とはいえこれだけでは金銭面で心もとない。

だから他にもポケモン関連のブログを書いてそれの広告収入のアフィリエイトや、ポケモン関連の本を出版してそれの印税やらでちょこちょこ収入を得るようにしている。


(さて帰るか・・)

観察の道具とノートを片手に帰路につく。

昨日と同じ美しい燃えるような夕日を横目にしながら___

(今日も綺麗な夕日だな・・・・)


その夜〜

俺は今日の観察記録ノートをベースにノートパソコンでレポートを作成した。

練り直して書き直して修正に修正を加えながら____

数千、数万という文字や数式で構成された文章と向き合いつつ____


数時間後、

(・・やっとできた)
 ▼ 44 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/11 22:47:20 ID:kOvIhaWk [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
今回のも無事レポートを書き終えることができた。

パソコンのワード10ページ以上にもなる量のレポート。

まさに集大成といえる。

(久しぶりにこんな書いたな)

これほどの量のレポートを書けたのはいつぶりだろうか。

それはここシンオウでの観察がいかに刺激的で収穫も大きいものかを意味している。


(・・もうこんな時間か)

気が付けば時計はもう既に夜中の12時を過ぎていた。

レポートは徹夜して書いたことすらあるからこんなのは序の口だ。

(・・寝る前に一杯やるか)
 ▼ 45 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/11 22:56:57 ID:kOvIhaWk [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
俺はウイスキーで一杯やることにした。

ほんのささやかだがレポートが無事完成したお祝いだ。


(・・静かだな)

ウイスキー片手に窓越しに眺める外は漆黒と静寂に包まれている。

数時間前までは聞こえた虫ポケモンの鳴き声すら聞こえない。

まさに全てが眠りについた時と言えよう。

自分以外の全てが_____

空に目をやると漆黒に月が浮かんでいた。

まるで誰かにかじられたように欠けた月が___
 ▼ 46 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/11 23:10:26 ID:kOvIhaWk [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
夜空に光一点と言わんばかりに。

パチッ・・・・

月に導かれるように試しに部屋の電気を消してみる。

すると

(ほぅ・・・)


漆黒だと思っていた窓の外は月の柔らかい光で一面が僅かに照らされていた。

と同時に月の光は部屋の電気の人工的な光で打ち消されていたことに気付く。

弱く冷たい光を放つ月。

だがその月の光にはどこか温もりのようなものも感じ取れた。

人工の光には決してないものが___

そしてそんな月の光に照られ僅かに風でなびく草や木々たち。
 ▼ 47 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/11 23:21:51 ID:kOvIhaWk [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
見事なまでの静寂____

聞こえるのは風の音と気配くらい____


これも町から少し離れた開けた場所にあるからこそ見れる光景だろう。

そして電気を消さなかったら気づけなかったかもしれない光景。

(・・・・・)

終始言葉を忘れその光景に見とれる。

そっと身をゆだねるように・・

さっきまでの疲れも忘れそうになるほどに・・

ふと手にするグラスのウイスキーに目をやる。

すると

(おぉ・・・)
 ▼ 48 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/11 23:32:54 ID:kOvIhaWk [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グラスの中のウイスキーに反射した月が浮かんでいた。

まるで夜の湖畔に反射した月のように。

どこか儚くも美しい月がまるで手元にあるように。

そんな具合に束の間のロマンチックに浸っていた。

だが時計に目をやると

(もうこんな時間か・・)

時計は既に夜中の1時半を回っている。

こんなロマンチックに浸っていても完全には時間を忘れられない。

忘れたころに”時間”という概念が頭の片隅にひょっこり姿を現すのだ。

自分の意思とは関係なく。

これが何かと時間に縛られやすい現代人の悲しい宿命なんだろうか・・・
 ▼ 49 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/12 12:34:12 ID:F4wYvJq2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
いづれもウイスキーを飲み終えて程よく酔いが回ってきたころ。


(・・寝るか)

俺は眠気に誘われるように床についた。

普段徹夜も慣れている俺だがこの時はウイスキーの酔いのお陰もあって眠りに落ちた。

すうっと、音もなく吸い込まれるように___


やっぱり現代社会で完全に時間と決別するのは簡単なようで意外に難しいのかもしれない。

”時間”というものは何だがロマンチックな雰囲気にも水を差すみたいだが、生活において時間とは切っても切れない関係にあるんだろう。

こればかりは仕方ないのは分かる。

だが時々時間というものを綺麗さっぱり忘れたい時もある。

時間という概念のない生活に時々憧れを感じるものだ。

あの森の生き生きとしたポケモンたちのように、時間を感じさせない____
 ▼ 50 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/13 22:30:53 ID:L14wqwcI [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
翌朝〜〜

ピーッ!ピーッ!ピーッ!

デジタル目覚ましのけたたましい電子音で目が覚める。

耳に突き刺さるようなこの音じゃ嫌でも目が覚めるものだろう。

(んんっ!)ピッ!

寝ぼけまなこで現実と夢の中間を彷徨う中少し雑に目覚ましを止める。

今朝はいつもよりやや目覚めが悪かった。

いつもはもう少しキリッと起きれるとこだが。

原因はすぐ判明する。
 ▼ 51 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/13 22:40:36 ID:L14wqwcI [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
(痛っ・・・)

頭の片側をズキッとした鈍い痛みが襲う。

二日酔いだ。

(飲むんじゃなかったか・・)

レポート完成祝いとかいって寝る前にウイスキー飲んだのがまずかったのだろう。

昨日のロマンチックさなど微塵ものこってない。

そのせいもあって今朝は目覚ましの音が一段とこたえた。


(こういう時は・・)

俺は物件に備え付けの冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、コップ一杯喉に注ぎ込む。

二日酔いには水が一番。
 ▼ 52 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/13 22:50:58 ID:L14wqwcI [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゴク、ゴク・・・

凍えるほどに冷えた水が喉を通り抜け体に吸い込まれていくのが分かる。

間もなく体の内部からこみ上げてくる清涼感。

(っはぁ!・・)

先ほどよりは目が覚め生き返った感じだ。

一時間後〜〜

(・・マシになってきたか)

頭痛もやっと収まってきた。


(今度から夜は控えなきゃな・・)

朝からそう心に誓った。

頭痛も収まったとこで俺はPCを立ち上げ、昨夜作ったレポートをオンラインでいくつかの研究所に送信した。

作ったレポートは遅くても翌日には送るのが俺のこだわりだ。
 ▼ 53 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/13 23:04:02 ID:L14wqwcI [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
何事も作りたて、できたてが一番だろう。

レポートを送って2時間ほど経った時____

少し遅めの朝食を摂っていると


ピロ〜ン♪ ピロ〜ン♪


電源を入れっぱなしのPCからいくつか通知音がなる。

(お!来たな!)

レポートを送った研究所から返信のメールが来た証だろう。

俺は重要なメールとかが届きそうな時は通知を見逃さないようにPCの電源を入れっぱなしにしている。

こういうのはなかなか見逃すわけにはいかないからな。

俺はすぐPCに駆け寄り確認する。
 ▼ 54 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/13 23:18:37 ID:L14wqwcI [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
(どれ・・・)

見ると先ほど送った研究所全てから返信が来ていた。

内容は全てレポートを買ってくれるという趣旨の契約成立のものだった。

金額も研究所によって若干波はあるがなかなかの金額だ。

昨日の観察の段階で手ごたえを感じてただけあった。

(よし!いい感じだ!)

今回のは悪くない。

こういう感じで俺はいつもレポートを各マスコミや研究所にレポートを売っている。

そして売上金はネット銀行のオンライン講座に振り込まれる仕組みだ。

初めてのシンオウだが出だしは上々といえる。

(よし!これからもやるか!)
 ▼ 55 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/13 23:29:00 ID:L14wqwcI [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
思ずとモチベーションも上がる。

俺はその後も近隣の森などに出かけではポケモンたちを観察しレポートを作成した。

その度にシンオウの新しいポケモンに出会え、生き生きとした”自然”の姿を目の当たりにした。

自然の中で自然のありのままのポケモンたち____

これ以上ない組み合わせだろう。

都会の喧騒、雑踏とは無縁のこの田舎だからこその光景だ。

(なんて平和な光景なんだろうか・・)

ここでは平穏な時間がゆっくり流れているのが肌で感じた。


だが観察を始めて7日目、ここシンオウに来て8日目のこと。

(う〜〜ん・・・・)
 ▼ 56 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/14 16:47:01 ID:245cqXOA [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
新たな問題が浮き出てくる。


(・・代り映えしないな)

すちわちマンネリ化だ。

平和で平穏なのは凄くいいこと。

だが、観察研究という面では平和過ぎて初日と代わり映えしないのだ。

平穏すぎて変化がなく、結果観察研究も変わり映えしないものになってしまう。

(ちょっとマズいな・・・)

今までの7日分の観察記録を見返してもそれは顕著に表れてきている。

(もう少し何かあれば・・)

事件が起きろなんていわない。

ただ・・何というか、もう少し波が欲しいとこだ。
 ▼ 57 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/14 17:01:59 ID:245cqXOA [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
一週間ほどでマンネリしてしまうなんて研究家としてまだ未熟な部分もあるかもしれない。

だがやはり限られた場所と時間では限界もある。

いづれも研究家としてこの代り映えしないマンネリ化はなかなか問題だ。

変わり映えしないレポートでは研究所もマスコミもまともに買ってくれないだろう。

一歩間違えれば死活問題。

この辺一体の森は昼間大体散策した。

ちょっと場所を変えたぐらいでは大きな変化はないと見た俺は


(・・時間を変えてみるか)

昼がダメならと夜観察してみることにした。

その夜〜〜

早速俺は普段の道具に加えて、赤外線の暗視スコープに記録用の暗視カメラ、懐中電灯など夜の装備を整えて森に入る。
 ▼ 58 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/14 17:18:14 ID:245cqXOA [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
同じ森でも昼と夜ではその表情をガラリと変える。

新緑の緑に覆われていた森は漆黒の黒に覆われ、木々は不気味なシルエットを醸し出しながら聳え立つ。

どこか不気味さも醸し出す。

正直昼より夜の方がなにかとリスクはある。

だが研究観察に多少のリスクはつきもの。

(これも観察のためだ)

俺は意を決してさらに森の奥に踏み入れる。

森の中では木々に遮られ月の光すらさしこまない。

頼りになるのは暗視スコープと懐中電灯の光だけ。

その時!
 ▼ 59 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/14 17:29:28 ID:245cqXOA [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
(おおっと!)

数十メートルほど先からヨノワールがこっちに向かってくるのが分かった。

まるで重力など感じさせないようにその体を浮遊させながら音一つたてずに。

ヨノワールは生きている人間を霊界に引きづり込むとも言われている。

出くわせば何されるか・・・・


(ッ!!)ザザッ!!

俺は素早く近くの茂みに身を隠す。

そこでできるのはヨノワールが過ぎ去るのをじっと待つのみ。

冷静に息を殺して___

とにかくこういう時は冷静でいるのが一番だ。

パニックになっては逆効果。
 ▼ 60 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/15 12:24:09 ID:n9VgWOgc [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
(ッ・・・・)

ドッ・ドッ・ドッ・・・

茂みの中で鼓動の波打つ単調な音だけがこだまする____


・・間もなくヨノワールはそのまま過ぎ去って暗闇に消えた。

こちらに気づく様子もなく。

(ホッ・・・)

ひとまず一安心、身の危険さえ感じた瞬間であった。

だが冷静に対応できたのは今までポケモン相手に研究観察を重ねてきたおかげもあるだろう。

改めて夜の危険さを思い知らされる。

だが同時に
 ▼ 61 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/15 12:31:35 ID:n9VgWOgc [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
(・・一体どうやってしてんだ?)

ヨノワールが浮遊するメカニズムが気になったとこ。

これも「研究家」という職病病といったとこか。


ヨノワールには重力が働いてないのは確かか__

だとしたら実体がないからか・・・いやだがヨノワールの重さは106.6kg。

確かに質量はもっている__

だとしたら反重力か、はたまた別の能力か___


そんな考えを張り巡らせる。

(・・いや今はそんなこといいか)

ヨノワールのことは後でチャンスがあったときにじっくり調べればいい。
 ▼ 62 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/15 23:42:34 ID:1xScn2Mk [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ガサ・・ガサ・・

気を取り直して歩みを進める。

ここで

(・・消しておくか)カチッ

懐中電灯の光で目立ってしまうと判断した俺は懐中電灯を消す。

懐中電灯の光がなくてもこの赤外線の暗視スコープがあれば大丈夫だ。

下手に目立ってしまってはすぐにポケモンたちに気付かれ、逃げられるどころか逆に襲われる危険だってある。

さっきのヨノワールの時は幸い身を隠して事なきを得たが、夜はヨノワール以外にも危険なポケモンは多い。

例えばヘルガーやグラエナなんかだ。
 ▼ 63 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/15 23:54:20 ID:1xScn2Mk [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
この2匹は鼻が利くから視界の悪い夜でも獲物を見つけることができる。

ちょっと隠れたとこで無意味だろう。


(・・こいつも使っておくか)

シューッ・・シューッ

俺は念には念を入れ自分の体に特殊な消臭剤を吹きかける。

少しでも自分の臭いを消すためだ。

間違っても芳香付きのは厳禁だ、それでは臭いを消す意味がない。

この消臭剤は銀イオンなど数種類の金属イオンの作用で強力な消臭力を発揮しもちろん無味無臭だ。

ナノレベルのにおい分子まで分解することができる。

まさにこの場にうってつけと言えるだろう。
 ▼ 64 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/16 00:05:55 ID:dUqc9GM. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
試しに臭気測定器という臭いを測定する装置を自分の体に当ててみる。

すると数値はほぼ0を指し示した。

(よしOKだ)

これで完全に自分の臭いを消したと言える。

こうして臭いを消せば鼻が利くポケモンにも気づかれる心配はないだろう。

かくしてできるだけ姿、気配、臭いを消した上で一歩一歩歩み入れる。

目の前は赤外線による赤い世界__

更に片手には高感度のサーモグラフィカメラまで仕込んでいる。

赤外線のカメラやスコープだけでは見つけにくいものもサーモグラフィなら温度で一目瞭然だ。

我ながらなかなかの装備。
 ▼ 65 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/16 12:29:06 ID:1alIX.j2 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
いやこのぐらいの装備でないと心もとないと言える。

そんな具合で森の深くまで来ると___


(おおぉ・・)

昼ではなかなかお目にかかれないポケモンで溢れていた。

(時間が変わるだけでこんなにポケモンたちが変わるとは・・)

昼間とはまるで違う表情に思わず見入る。

木々の合間をズバットやコルバット、ヤミカラスが飛び交い__

また草原をブラッキーが駆け回り___

ムウマやバケッチャ、ヨマワルにゴース、ゴーストに至るお化けポケモンが音もなく浮遊し漂う。

そうと思えばデスカーンが茂みに紛れて獲物を待ち伏せしているよう__
 ▼ 66 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/16 12:35:32 ID:1alIX.j2 [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
また枝の上ではヨルノズクが首を回しながらじっと周りの様子を偵察している__

夜はみな寝静まっているとばかり思っていたがとんでもない。

森の中は夜でもこんなに賑やかだ。

物陰からそっと伺いながらそう実感させられる。

その時

(ッ!!)

ヴゥ〜〜〜・・・

何やら獣の唸り声のような鳴き声がどこからか響き渡る。

重低音の効いた不気味な声。


(・・これは!)

俺はその鳴き声にすぐにピンとくる。
 ▼ 67 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/17 00:38:31 ID:LHeQmFog [1/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
(ヘルガーだ!)

近くに居るのは間違いない。

今までの経験から鳴き声で何のポケモンかは大体見当がつく。

(くそ、またか!・・)

またもや身の危険。

ザザッ!

俺はそばの茂みに素早く身を隠す。

すると間もなく

ガウ・・ガルルルル・・・・・・ガウ・・

3〜4頭ほどのヘルガーが前を横切っていった。
 ▼ 68 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/17 00:47:18 ID:LHeQmFog [2/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
臭いを消していたおかげで気付かれずに済んだ。

(・・危なかった)

ヘルガーは人間の1万倍の嗅覚をもつと言われている。

臭いを消してなかったら気づかれててもおかしくなかっただろう。

さっきのヨノワールの次はヘルガーときた。


やはり夜の森は危険度も高い。

だが今までの研究で今回のような危ない目に遭うのは幾度となくあった。

本当に命の危険すら感じたこともある。

そのかいあって今回のような多少のことぐらいは一応冷静に素早く対処できる。

が、一瞬のスキが命取り___

決して油断するわけにはいかない。
 ▼ 69 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/17 12:31:47 ID:0rbAY9H. [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
茂みなどに身をかくしつつまずはズバットやコルバットが放つ超音波を分析してみる。

ズバットやコルバットは独自の超音波を発し、それが障害物などにぶつかり反射した超音波を捉えることで障害物の正確な位置や距離、大きさを把握することができる。

そういうわけで見えない暗闇でも障害物にぶつからずに飛べるわけだ。

コルバットも視力は良い方ではなくズバットに関しては目は退化しているためもっぱらこの超音波を頼りに飛んでいる。

この技術は近い将来AIを使った自動操縦ドローンの夜間飛行などに活用が期待されている。

俺は周波数測定器に加えスペクトラムアナライザーをズバットとコルバットに向ける。

スペクトラムアナライザーとはあらゆる周波数を波形として表示し可視化することができる機械だ。

ピピッ

小さくアラームが鳴り測定器には88kHzから102kHzと表示された。

ズバットやコルバットは80〜100kHZの超音波を出していることになる。
 ▼ 70 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/17 12:43:35 ID:0rbAY9H. [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
(なるほど・・)

超音波にしては特に特色のある周波数でもない。

だがスペクトラムアナライザーの波形を見て少し言葉を失う。

(ッ!?)


周波数の面でみれば普通の超音波と特に変わりはない。

だが波形は何とも形容しがたい複雑な形状をしていた。

一種の放射線に似ても似つかないような形状をしている。

(不具合か?)

最初はアナライザーの不具合とも思ったが装置はなんら正常。

間違いなくあの超音波の波形を示している。
 ▼ 71 ベトベター@ミミッキュZ 21/07/17 12:45:09 ID:s3jwKHbw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ゴ」ルバットだぞ
 ▼ 72 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/17 22:46:18 ID:LHeQmFog [3/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>71
すいません間違えました・・


(こんなことが・・・)

こんな奇妙な波形の超音波など初めてだ。

超音波を出していること自体は前から知られている。

だが今回アナライザーを使ってみて初めてその奇妙さが明るみになったわけだ。


(放射線か何か帯びているのか?)

この超音波はほかに放射線か不可視光線、あるいは電磁波の類をまとっていると仮定する。

でなければこんな波形などありえない。
 ▼ 73 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/17 22:55:40 ID:LHeQmFog [4/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
俺はさらに特殊な測定器を向けてみる。

この測定器は放射線、不可視光線、電磁波、X線など特殊な光線を測定することができる。

完全研究所向けの業務用だ。

今まで色んな機械、測定器を買いそろえてきたがいづれもこのような形で役には立っている。


まもなく測定結果が表示された。

が、どの特殊光線の項目も0を示している。

すなわち出ているのは純粋な超音波。

(こんなことって・・・)

だが波形は放射線、不可視光線、電磁波、X線のどれとも似つかない奇妙な形。
 ▼ 74 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/17 23:07:46 ID:LHeQmFog [5/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
科学的にはあり得ない波形だ。

こんな超音波は人工的にも作れないだろう。

だが純粋な超音波という測定結果には少し納得できる。

ましてや放射線など出ていたら近くの人間は無事では済まないだろう。

(ゴルバットとズバット特有の特殊な超音波。だが実態は全く謎)

そうとしか言えない。

流石謎多き生物、ポケモンだけある。

(これは俺だけじゃ解明は難しいとこか・・・)

無理もない、この2匹の超音波の波形を調べたのはおそらくは俺が初なのだから。

だが小さな一歩に過ぎないだろうが、それでもポケモンの謎解明に一歩近づいた証だろう。
 ▼ 75 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/17 23:19:19 ID:LHeQmFog [6/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
俺はこのことを観察ノートに記録する。

(これが少しでもポケモンの謎解明に役立てば・・)

そんな思いを込めて。

いずれにせよ知られてない事実だろうからレポートのネタにも悪くないとこ。

(確かこの2匹は互いにコミュニケーションを取るときもこの超音波を使っているわけか)

ゴルバットとズバットは超音波でコミュニケーションを取ったりもする。

となると単純に考えてこの特殊な波形の超音波で互いに会話をしているわけだ。

人間には想像もつかない世界がポケモンにはある。

と、ここで

(・・待てよ、普通の波形の超音波を出してみたらどう反応するだろうか)
 ▼ 76 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/17 23:30:04 ID:LHeQmFog [7/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そんな疑問がひょっと湧いてくる。

小ネタ的ではあるがオマケに少し試してみても悪くないか。

俺は超音波発信機を取り出して、ゴルバットとズバット目掛けて放ってみる。

この超音波発信機は好きな周波数の超音波を発生させることができる。

しかも強さと周波数は細かく調節できる。

いきなり強いのは酷だから弱いのから少しづつ強めていく。

まず弱い段階では特に変化はなかった。

だが中以上に強めたところで


ズバッズバッ・・シャッ!・・シャッ!

ズバットとゴルバットの様子がおかしくなった。
 ▼ 77 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/17 23:44:27 ID:LHeQmFog [8/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
方向感覚を失ってパニックになっているように。

他のポケモンたちは何事もない様子。

明らかにズバットとゴルバットだけが影響を受けている。

中には木などの障害物にぶつかるのさえ居た。

(マズいな!)

流石に可哀想に思った俺はすぐに発信機のスイッチを切った。

するとズバットとゴルバットたちは何事もなかったかのように平静を取り戻す。

結果を見ても普段とは異なる超音波をもろに捉えて混乱してしまったのは明らか。

方向感覚を失ったのも。

総じて超音波を頼りに生きる彼らにとってこの実験は酷だったと言えよう。

小ネタでは済まされない。
 ▼ 78 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/18 00:28:32 ID:77JcA2KM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
(悪いことしてしまった・・・)

ポケモン研究家としてあるまじきことをしてしまったことを反省した。

結果としてポケモンを弄んでしまったことを___

軽はずみな言動が時に相手を傷つけることもあることを___

(本当にすまない・・・・)


気を取り直して俺は赤外線スコープを外し、サーモグラフィで観察してみることに。

ヨルノズクやブラッキーなど普通のポケモンは熱を示すオレンジから赤で表示された。

30度半ばから40度半ばほどの体温がある証拠だ。

いづれも人間と同じくらいか人間より高いくらいだ。

特に驚くほどの数値でもない。
 ▼ 79 ジュラルドン@コイン 21/07/18 00:31:31 ID:mrkcYW3g NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
一応言っておく
「いづれ」は歴史的仮名遣いで、これた現代仮名遣いになって「いずれ」になった
いづれのまま使うのは俳句とか短歌の世界が多い

いずれにしろ支援
 ▼ 80 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/18 12:34:28 ID:O7PAxAAI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>79
ありがとうございます。
勉強になります。



と、そこにゴースとゴーストも現れた。


ゴース・・ゴス・ゴス・・・・ゴーースゥ・・


そんな低音の鳴き声と共に。

いかにもお化けと言わんばかりのその鳴き声はあの世から響いているような不気味ささえ感じられる。

早速サーモグラフィで見てみると


(・・なるほど、こう出るか)

低い温度を示す青から紺色で表示された。

サーモグラフィ越しでは青く表示された周りの冷たい空気と同化していて、パッと見ではわかりづらいほどに。

いや、言われなければ気づかないかもしれない。

近くを浮遊するムウマとヨマワルも見てみるが結果は同じだった。
 ▼ 81 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/19 01:05:17 ID:NKEozYSQ [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
つまりは体温を持っていないことになる。

そして同時にそれは生物学的にあり得ないことを意味している。

通常生物は外部から取り込んだ栄養分を燃料にして体内でエネルギーに変換し必要に応じて生命活動に利用して生きている。

この点は人間もポケモンも同じだ。

最もポケモンには太陽光で光合成する草タイプや体の一部に無機物をまとった岩タイプ、鋼タイプなど一部例外はいるが。

そしてこのエネルギーを消費する際には熱エネルギーが生じ、それが体温となる。

だから通常ポケモンにも体温がある。

だが生きているのに体温を持たないゴーストタイプのポケモンは以上の常識が通用しないことになる。


(・・お化けで実体を持たないからか?)

お化けタイプという点を考えれば体温がないのも何となく納得できる気がするとこ。
 ▼ 82 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/19 01:17:28 ID:NKEozYSQ [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
だがお化けタイプの彼らでも木の実を食べたりして確かに外部から栄養を取り込んでいるのは確認されている。

(それなら普通に体内でエネルギー変換のサイクルが起きていてもおかしくないはずだよな・・)

にも関わらず体温がない。

そしてお化けで実体はなく一見生物という概念には当てはまらいように思える。

だが「何かを食べる」という生物特有の概念は持っている。

矛盾しているようだが現にそうだ。

あえてまとめるなら

(お化けだが一部生物としての概念は持ち合わせている。だが体温といい不可解な点だらけ)

と言ったとこか。

謎を解明するはずが、かえって謎が謎を呼んでしまう。
 ▼ 83 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/19 12:36:28 ID:1s16DE4g [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
(待てよ)

そういえばゴーストタイプのポケモンは他のポケモンと比べて食べる量がさほど多くないことに気づく。

(・・そういうことか)

体温を持たない→体内のエネルギー変換で熱エネルギーというロスが発生していない→それだけエネルギーの変換効率がよく無駄がない→少ない燃料(食べ物)で済むからさほど食べなくても大丈夫

といった具合に頭の中で考えが繋がった。

点と点を結ぶように。

そして

(特殊な体内構造でエネルギー変換の際に熱エネルギーが生じないから体温がない。すわなちゴーストタイプはエネルギー変換効率に優れている)

アバウトかつざっくりで根拠に浅いがそんな仮説に至った。
 ▼ 84 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/19 12:46:46 ID:1s16DE4g [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エネルギーの変換で生じる熱はまさしく変換ロスと言えるからだ。

詳しいメカニズムは不明で俺個人の仮説にすぎないが、俺の中では今のところこれが有力だろう。

そしてその詳しいメカニズムは今回の観察、そして今の俺の実力では解明は無理だろう。

ある意味ゴーストタイプ特有の科学では説明できない生命の神秘の領域なのかもしれない。

オカルトチックにも思えるが実際にそう感じる。

そう考えるとどこかロマンさえ感じる。


(ロマンはロマンのままでいた方がいいかな・・)

かえってこの領域は深入りしない方がいいのだろうか___

そんな考えさえ浮かんでくる。

(・・今はここまでにしておくか)
 ▼ 85 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/20 00:16:22 ID:uigkcJgs [1/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
今のとこ、この仮説以上のものは収穫できそうもない。

俺はこの仮説までの段階をノートに記録した。


(そういやアレも気になるな・・)

さっきヨノワールに見つかりそうになった時に疑問に思った「ゴーストタイプの浮遊するメカニズム」がふと再び気になりだす。

気になったら確かめずにはいられないのか研究家というもので。

(何かヒントはあるはず・・・)

所詮俺の実力では限界はあるが、気になったらそのままにはしておきたくない。

もはや完全な職業病。

俺は赤外線スコープに双眼鏡を組み合わせてヨマワル、ムウマ、ゴース、ゴーストのより細部を観察し始めた。

が・・
 ▼ 86 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/20 00:26:32 ID:uigkcJgs [2/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
(う〜ん・・・)

特にこれと言って新発見はおろかヒントになりそうなものすら見当たらない。


これらのゴーストタイプにも確かに重さという質量はもっている__

だが浮遊していて重力というものをまるで感じされられない___

体が「気体」でできているからか?実体がないからか?___

それとも彼らには重力というものが働いてないのか__

いやこの星ではあらゆるものに重力が働くはず___

重力がない、じゃ何で重さがあるんだ・・・・

ゴーストにおける重さと重力の概念って・・・


そんな考えが次々浮かぶが結論には至らない。

むしろ考えれば考えるほど謎が深まるばかり。

頭がこんがらがりそうになるほどに。
 ▼ 87 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/20 00:40:44 ID:uigkcJgs [3/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
第一あのヨノワールと遭遇しそうになった時に浮かんだ考え方と大差ない。


(・・やはりゴーストタイプ特有の能力で自分に働く重力を打ち消して無効化しているのだろうか)

やがてそんな「超能力説」まで頭に浮かぶ。

正直科学研究に超能力などのオカルト的なのは似合わないだろう。

だがこれに関してはむしろそういうオカルト説のほうが有力に思える。


(もしくは体は何かガス状で構成されていて重力は働かないが質量はもっている。というわけか・・)

のどちらかだろうか。

いずれもオカルトの方の説が有力。

(・・分からないな、やっぱり)

これに関してもこんな具合だから今の段階ではメカニズムの解明は無理だろう。
 ▼ 88 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/20 00:54:18 ID:uigkcJgs [4/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
なにしろ殆どが科学で説明できない部分だらけなのだから。

ゴーストタイプの浮遊も神秘と謎というロマンで構成されているのかもしれない。

(ポケモンは科学的ではないのだろうか・・)

そんなことを思いつつ俺はゴーストタイプの浮遊に関しては自分なりの仮説と考察をとりあえずノートにつづった。

この「未知の領域」はどこか深入りしてはいけない気もするし、第一深入りしたとこで謎しか出てこない。

(もう今夜はここまでにするか・・)

間違っても夜の森は安全ではない。

こんなとこに長居は無用、というより危険にすぎない。

俺はいい加減切り上げ、道具や機材をまとめて帰ろうとした。

まさにその時
 ▼ 89 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/20 22:49:22 ID:uigkcJgs [5/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
(んん?・・)

森の奥から青白い光が目に入る。

(何だ?こんな森で)

冷たく弱い青白い光___

どこからともなくぼんやり広がる__


(・・・気味悪いな)

一種の気味悪ささえ感じる。

やがて

モシ・・ヒモシ、モシ・・・モシ

かすかにそんな鳴き声が聞こえてきた。

(ん、これって)
 ▼ 90 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/20 22:59:48 ID:uigkcJgs [6/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
この青白い光にこの鳴き声___

俺はすぐにピンとくた。


まもなくその正体が露になる。

(・・やっぱりこいつか)

そう、ヒトモシだ。

まるで垂れた前髪のような形の溶けたロウから垣間見えるつぶらな左の瞳___

どこか幼い少女を彷彿とさせるようなその顔つき__

そんな姿に


(・・ちょっと可愛いな)

__思わずそんな感情が出る。

これを見て俺と同じ感情を抱く人はほかにもいるだろう。
 ▼ 91 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/20 23:08:41 ID:uigkcJgs [7/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
不気味さと、どこかあどけない可愛さを持ち合わせたその姿。

思わず惹かれそうに。

(・・締めに少し観察してみるか)

ちょっとだけならと思い取り合えずサーモグラフィで見てみる。

するとヒトモシの炎の部分がサーモグラフィには低い温度を示す青で表示された。

(こんな・・)

燃えているのは青白いが確かに炎。

だがその炎は熱を持っていないのだ。

ゴーストタイプが体温を持たないのはさっきの観察で確認済みだがまさかヒトモシの炎まで冷たいとは・・・
 ▼ 92 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/20 23:19:13 ID:uigkcJgs [8/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
完全に想定外だ。

(じゃああの炎は一体・・・)

こうなると嫌でも気になるのはその炎の正体。

全く熱を持たない冷たい炎なんて科学的にはまずあり得ない。

だが非科学的でオカルトそのままのその炎を見たとこでメカニズムなんて解明できそうもない。

(魂か呪いでも燃やしているからか?お化けだからな)

もはやざっくり過ぎで根拠の欠片もないそんな仮説が一番しっくりくる気がする。

ポケモンの7割は謎に包まれているといわれているのも納得。

(これも未知の領域か・・)

そんなことを考えながらしばし見入る。
 ▼ 93 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/20 23:26:10 ID:uigkcJgs [9/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
だがそれも束の間___

まもなく


(うっ!・・・・)

いきなり体が少し重くなったようなそんな感覚に襲われる。

(これは、まさか・・・・)

嫌な予感が脳裏をよぎる。

少し離れた先にはあのヒトモシ__

(・・間違いない、マズいぞこれは)

俺にはすぐ分かった。

その「嫌な予感」が的中したことに___
 ▼ 94 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/20 23:44:16 ID:uigkcJgs [10/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
恐れていた事が起きたことに___

この体の不調の原因はあのヒトモシ。

ヒトモシの頭部の炎には周囲の生き物の魂を吸い取るという恐ろしさがあるのだ。

嘘みたいなオカルトじみた話だろうがこれは紛れもない事実。

現に他の研究者たちによって科学的に証明されている。

最もメカニズムなどは解明されておらず全く謎だが。

一説では頭の炎で吸い取った魂をエネルギーにして生きているのではとも言われている。

魂も一気に吸い取るのではなく気付かれないよう徐々に吸い取っていくという点にも生々しい恐ろしさを感じる。

まるで少しづつ命を削るように___

症状としては人の場合最初は軽い倦怠感のようなのに襲われ、さらに吸われると重い脱力感、倦怠感に襲われ、さらに吸われれば昏睡状態に陥って意識不明になる。

そして最悪の場合魂を吸い尽くされれば死に至るわけだ。
 ▼ 95 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/21 00:25:28 ID:7TlkHAdY [1/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
まさに今の俺はこの初期症状。

完全に危険信号だった。

言い方悪いが魂を食う死のポケモンといえる。


俺は少し重くなった体で立ち上がり何とかすぐその場を去る。

(クソ、重いな・・)

こういう時は両手と背中に背負った機材が一段と堪える。

(はぁ・・はぁ・・・)

それでも暗闇の森の中を赤外線スコープ越しに足早に進む。

魂なんか吸い取られては元も子もないとこだ。

それにしても赤外線スコープが醸し出す赤色一色の世界がより不気味さを煽る。

しばらく行ったとこで
 ▼ 96 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/21 00:35:48 ID:7TlkHAdY [2/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
(はぁ・・よし、居ないな)

ヒトモシが見えなくなったのを確認する。

(ひとまずこれで・・)

ここまで来れば大丈夫か。

それにさっきの体の重さも嘘みたいに治った。

助かったことにひとまず安心する。

なにしろ魂を吸い取られかけていたんだ。

下手したら死んでいた、いや殺されていたと思うとゾッとずる。

それに恐ろしいのはヒトモシはいつも魂を吸い込んでいるわけではない点。

だから前兆もなくいつどんな時に魂を吸い取るか見当もつかない。

そういうわけで気が付いたら魂を吸われていた、ということも珍しくないのだ。
 ▼ 97 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/21 22:54:28 ID:7TlkHAdY [3/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
魂を吸い取るメカニズムはおろか、いつどんな時にどんなきっかけで魂を吸い取るかすら分からない。

これほど恐ろしいのはないだろう。


(・・とりあえず早く抜けよう)

そう言ってさっさと森を抜けようとする。


が・・そうは問屋が卸さないといったとこか・・・

(ッ!!)ゾクッ

何やら背後に気配を感じる。

背中に一瞬寒気を感じるほどの。

(いや気のせいだ・・気のせい・・)

自分にそう言い聞かせる。
 ▼ 98 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/21 23:00:58 ID:7TlkHAdY [4/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
気のせいだと思いたい。

だがこのただならぬ気配は拭えない。

(何だ・・一体・・・)

この状況で背後を振り向くなどどれほど恐ろしいか___

(だが”気配の正体”を確かめないわけには・・)

そう言い聞かせ恐る恐る背後を振り向く。

心臓が潰れんばかりの恐怖を押し殺して。

すると___

(ッ!!)

”気配の正体”がそこにいた。

「・・ヨ〜マァ!」
 ▼ 99 パッチラゴン@ひかるおまもり 21/07/21 23:04:11 ID:GDMYqdRI NGネーム登録 NGID登録 報告
とことことことこしてる気がする
 ▼ 100 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/21 23:07:29 ID:7TlkHAdY [5/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
目の前の丁度自分の顔と同じ位置にヨマワルがいたのだ。

一瞬で血の気が引いたのが自分でも分かった。

まったく気が付かなかったのだ。

確かにさっきのでホッとして一瞬油断したせいもあるだろう。

それでも気配を消して音もなく忍び寄るゴーストタイプというだけある。

これがまた恐ろしいとこ。


(逃げなきゃ!!)

真っ先に浮かぶのはその言葉。

身の危険を感じ逃げようとする。

が・・

(おかしい!・・)

自分の意志と反して体が言うことをきかない。
 ▼ 101 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/21 23:21:31 ID:7TlkHAdY [6/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
石みたいに固まって動けないのだ。

金縛りにでもあったかのように__

(まさか”かなしばり”か?)

とも思ったが

(・・そういえば)

他にも恐ろしいことを思い出す。

その一つ目に睨まれると大人でも恐怖ですくんで動けなくなるということを・・

(これは技のせいか・・いやそれとも恐怖で無意識に・・)

もはやどっちがどっちでもおかしくない。

(って場合ではない!)

いずれにしても最悪の状況に変わりはない
 ▼ 102 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/21 23:32:21 ID:7TlkHAdY [7/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
(ンッ!!)

それでも俺は何とか気力でその動けなくなった体を振り切った。

石になった体を中から打ち破るように。

すると

(・・よし!これで!)

体が動けるようになり言うことを聞くようになった。

やっぱり単に恐怖ですくんでいただけなのか__

「かなしばり」など技によるものならまず自力で解くのは至難の業だろう。

ってそんなことはどうでもいい!

ダッ!!

・・俺は間髪入れずに全速力で疾走し、逃げる。
 ▼ 103 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/21 23:43:32 ID:7TlkHAdY [8/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
両手に機材類を担ぎながら。

(はぁ!あぁ!はぁ!はぁ!・・)

ダッダッダッダッダッダッダッダッ!

暗闇の中、赤外線スコープが示す赤い森を駆け抜けるように__

ダッダッダッダッダッダッダッダッ!


__気が付けば自分でも信じられないほどの速さで疾走していた。

普段ならこんな機材を担いだ状態でこれほど早く走れないだろう。

(火事場の馬鹿力・・)

この極限の中その言葉が一瞬頭をよぎる。

まさにそれが俺の今の状態だった。

人間は身の危険を感じた時「火事場の馬鹿力」と呼ばれるとてもつない力を発揮すると言われているが、それの力をまさに今思い知らされる。
 ▼ 104 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/22 00:16:10 ID:Q7n.HqGQ [1/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
この力はパワーのリミッターが身の危険で解除された時に発揮される。

だがその代償として体には大きな負荷がかかるのも事実だ。

気が付けば骨折など思いもよらぬ怪我をしていることすらあるという。

無理もないだろう、リミッターという力の安全装置が解除されるわけだから。

だがそんなの気にしてられるか。

命の方が!

ザッ!・・ザシュッ!

木の枝が時折顔や体をかすめる。

だがそんなのお構いなしに走る。

それでも
 ▼ 105 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/22 12:31:13 ID:R1AkM/gw [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
チラ・・・

後ろを一瞬振り返れば___


「ヨオォマァ!・・・」

そこには依然ヨマワルの姿。

こっちがいくら逃げようがお構いなしに追いかけてくる。

音もたてずに、空中を滑るように浮遊しながら___


(はぁ!あぁ!はぁ!はぁ!・・)

ダッダッダッダッダッダッダッダッ! ザッザッ!

いくら疾走しようが迫ってくるのは赤く濁った一つ目___

完全に目をつけられてしまったようだ。
 ▼ 106 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/22 12:40:52 ID:R1AkM/gw [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
相手は疲れを知らないお化け・・・

いくら逃げようが無駄なのは明白だった。
く
むしろこっちが限界を迎えるのも時間の問題___

こんな夜の森の中でローブをまとったような骸骨面の一つ目に追いかけられるのがどれほど恐怖か・・

言うまでもないだろう。

ポケモンとは言っても見た目は死神そのもの・・いや存在自体も死神そのものと言っていい。

大人でもトラウマものだろう。


(このまま逃げてては助からない!)

そう確信した俺は極限の中なんとか頭の中で突破口を模索する。

生き延びるための、助かるための突破口を___
 ▼ 107 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/22 21:58:52 ID:Q7n.HqGQ [2/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
この魔の手から逃れる為の__

捕まったら何されるか・・・

あの世に連れていかれるか・・はたまた呪われるか・・・

見当もつかない。

ただこれだけは確かだろう。

捕まったらタダじゃ済まされないことは___


(はぁ!はぁ!たしか・・ヨマワルは・・)

その突破口の欠片、ヒントでもいいから見つけるべくヨマワルの特徴を思い返す。

まさに今は先の見えない真っ暗なトンネルの中__

だが
 ▼ 108 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/22 22:11:51 ID:Q7n.HqGQ [3/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
(・・待てよ)

その中で一筋の光を見いだす。

(確か・・ヨマワルの視野の範囲は・・160〜190°くらいだから・・)

状況が状況だからはっきりとまではいかないが何とかヨマワルの目の視野の範囲を思い出した。

そこから突破口へのヒントを引き出す。

(・・よし!このヨマワルの視界の死角を突けば!)

俺はヨマワルの視界から一瞬で消えるように素早く身を隠すことを思いつく。

素早くヨマワルの死角に隠れるようにして。

(一瞬で視界から消えてしまえばこっちのものだ)

こんなので上手くいくか、これがベストな方法か___

そんなの分かんない。

でも今の俺にできるのはこれだけ。
 ▼ 109 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/22 22:23:30 ID:Q7n.HqGQ [4/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
一か八か懸かてみる。

下手したら生死が懸かっているかもしれないのだから。

ダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッ!・・・・

(はぁ!はぁ!はぁ!はぁ!はぁ!はぁ!はぁ!・・・・)

走りながらタイミングを見計らう。

タイミングといっても自己流に過ぎないが。

そして俺は一つの岩を飛び越え、大きくジャンプした。

そして飛んでいる自分の真下に茂みが一瞬目に入る。


(今だっ!!)

ザザッ!!

その瞬間俺はここぞとばかりに飛んでいる自分の真下に見えたその茂みに勢いよく落下した。
 ▼ 110 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/22 22:34:57 ID:Q7n.HqGQ [5/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
一瞬でも早く身を隠し、ヨマワルの視界から消える為に___

重力に身をゆだねて____

ガザンッ!!

(ぐぅっ!!)

尻餅をつくつもりが背中から落ちてしまった。

落下時の計算までしておくべきだったか・・

いや、そんな余裕などあるわけないか。


だがそのかいあって

「ヨォーマァ!」スーーッ!

ヨマワルは俺の頭上を猛スピードでかすめると、そのまま森の奥の闇へと消えていった。

音もなく、空中をすべるように___
 ▼ 111 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/22 22:45:15 ID:Q7n.HqGQ [6/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そして俺に気付く様子もなく__

(はぁ・・はぁ・・行ったか?)

ホッとしそうになるが


(・・いや、まだだ)

油断はできない。

執念深い一面を持つヨマワルのことだ。

引き返してくる可能性もある。

俺は茂みの中でうつ伏せになり、両腕の肘を地面について顔を少し上げたままのその姿勢で少し様子を伺った。

まさにほふく前進のようなそんな姿勢だ。

当初より明らかに警戒心が強くなっているのが自分でもわかる。
 ▼ 112 ノルマン1◆H1T.Z50ZTQ 21/07/22 22:54:40 ID:Q7n.HqGQ [7/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
無理もない。

ヘルガーとヨノワールに遭遇しかけ、ヒトモシに魂を吸い取られそうになり、挙句こうしてヨマワルに追いかけられたんだ。

嫌でも警戒心だって強くなる。

泣きっ面に蜂、一難去ってまた一難とはよく言ったものだ。

二度あることは三度ある・・はまたちょっと違うか。

ま、似たようなものだからいいだろう。

いずれにせよ夜の森の危険性というものをまざまざと思い知らされた一晩だ。


(・・・・・・)

とにかく俺はそのまま様子を伺った。

微動だにせず、無言のまま気配を消して・・・

自然と同化し、自然に溶け込むように___
  ▲  |  全表示762   | << 前100 | 次100 >> |  履歴   |   スレを履歴ページに追加  | 個人設定 |  ▲      
                  スレ一覧                  
荒らしや削除されたレスには反応しないでください。
書込エラーが毎回起きる方はこちらからID発行申請をお願いします。(リンク先は初回訪問云々ありますがこの部分は無視して下さい)

. 書き込み前に、利用規約を確認して下さい。
レス番のリンクをクリックで返信が出来ます。
その他にも色々な機能があるので詳しくは、掲示板の機能を確認して下さい。
荒らしや煽りはスルーして下さい。荒らしに反応している人も荒らし同様対処します。




面白いスレはネタ投稿お願いします!
(消えた画像の復旧依頼は、問い合わせフォームからお願いします。)
スレ名とURLをコピー(クリックした時点でコピーされます。)
新着レス▼