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【SS】ひと夏のレンジャースクール

 ▼ 1 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/19 00:53:58 ID:qb7EOz/Y [1/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

アルミア地方、ビエンタウン郊外。

ポケモンレンジャー養成学校、レンジャースクール。


 リーフ 「行くよチーちゃん! あなたに決めた!」

 チコリータ 「ちこー!」


緑と青の制服に身を包んだ彼女の名前はリーフ。

レンジャースクールの生徒で、パートナーポケモンはチコリータ。

ポケモンと気持ちを通わせるためにポケモンレンジャーが使用する道具――、キャプチャ・スタイラーを構え、彼女は動く。


チコリータのアシストを受けながら、野生のダグトリオをスタイラーでグルグル囲み……、キャプチャ――、ポケモンと気持ちを通わせることに成功した。


 ヒトミ 「凄いよリーフ! スピード記録更新したんじゃないの!?」

 リーフ 「えへへっ」

 ミナミ 「まったく。あんなに大人しかったリーフが、こんな立派になるなんてねー」

 ヒトミ 「うんうん。私もクラスメートとして嬉しいよ」

 リーフ 「大袈裟だよ2人とも」

 ハジメ 「いや、野生のダグトリオ相手に、今のキャプチャは凄いと思うよ」

 ナツヤ 「無駄がない動きだったぜ。オレも もっと特訓しないとな!」

 リーフ 「ふふっ。ありがとう」
 ▼ 2 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/19 00:55:01 ID:qb7EOz/Y [2/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ミナミ 「やっぱ“彼”の影響が強かったのね」

 ヒトミ 「だよねー。リーフったら、超が付くほど男子が苦手だったって言うのに」

 ハジメ 「確かにね」

 ナツヤ 「勿体ねぇよなー。リーフ、あいつと良いコンビだったのに」

 リーフ 「もー! その話は今は いいから! ///」



秋風が心地よく感じるようになった9月中旬。


クラスメートにも認められるほどの成長を遂げたリーフだが、その背景に“彼”の影響があったことは、誰の目にも明らかだった。

当然、リーフ自身が、それを強く感じているだろう。





リーフの、ひと夏の思い出。





その話は、レンジャースクールの夏休みに遡る――。




 ▼ 3 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/19 00:57:28 ID:qb7EOz/Y [3/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




   ◆   ◆   ◆



アルミア地方(画像1)

“ポケモンレンジャー・バトナージ”の舞台。北海道の渡島半島と青森県の一部がモデル。



ハジメとヒトミ(画像2)

“ポケモンレンジャー・バトナージ”の主人公。



ナツヤとミナミ(画像3)

“ポケモンレンジャー・光の軌跡”の主人公。




レンジャースクールの制服(画像4)

上下ブルー、緑のベストに黄色のネクタイ。


シンバラ教授(画像5)

レンジャーユニオンの技術最高顧問。スタイラーの開発者。



キャプチャ・スタイラー(画像6)

キャプチャディスクを射出し、ポケモンをグルグルと囲む事で心を通わせ、一時的にポケモンの力を借りるポケモンレンジャーの道具。



   ◆   ◆   ◆



 ▼ 4 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/19 00:58:12 ID:qb7EOz/Y [4/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 リーフ 「忘れ物なし……っと。じゃあママ、行ってくるね」

 母親 「まったく。夏休みくらい家で ゆっくりすれば良いのに」

 リーフ 「だめだよ。ちゃんと勉強しないと、レンジャーへの道は厳しいんだから」

 チコリータ 「ちこっ♪」



私はリーフ。

この子は私のパートナー、チコリータの“チーちゃん”。


ポケモンレンジャーになることを目指して、ポケモンレンジャー養成学校、レンジャースクールに通っている。

ちなみにレンジャースクールは全寮制。

今は夏休みだけど、休み中もレンジャーのことを学べる“特別講習”があって、これから私たちは、その講習に参加する。



 母親 「大人しくて内気だった貴方が、まさかポケモンレンジャーを目指すなんてね〜」

 リーフ 「私だって、いつまでも大人しいままじゃないもん」

 母親 「ちょっと前までは、男の子と話すのも ままならなかったのに。学校では ちゃんと話せてるの?」

 リーフ 「うっ……頑張ってるよ!」

 母親 「ちゃんと目を見て話すのよ。男の子を避けてばっかりだと失礼だからね」

 リーフ 「分かってるよ〜」

 母親 「まぁ、貴方が選んだ道なんだから。しっかり、気を付けて学んで来るのよ」

 リーフ 「はい!」

 母親 「定期的に連絡ちょうだいね」

 リーフ 「うん。……それじゃあ、行ってきます!」

 チコリータ 「ちこちこー!」


 ▼ 5 ワライド@なつきポン 21/08/19 00:58:17 ID:9JroZDdI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
レンジャーのssとは珍しい…
 ▼ 6 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/19 00:59:02 ID:qb7EOz/Y [5/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ママに見送られて、家を出発した。


夏休みが始まって1週間は自宅で過ごしたけど、これからまた、レンジャースクールでの生活が始まる。



 『アルミア地方、プエル港行きの連絡船アプライト号は、只今より乗船を開始いたします』



連絡船に乗り込んで、一段落。

アルミア地方までは長旅なので、ママが個室を確保してくれた。


 リーフ 「出て来てチーちゃん」

 チコリータ 「ちこっ!」

 リーフ 「アルミアに着くのは明日の朝だから、それまでのんびりしてようね」

 チコリータ 「ちこり〜」

 リーフ 「特別講習……、どんなこと学べるのかな〜」


特別講習――、授業カリキュラムとは別の、希望性のプログラム。

全員参加ではないけど、また皆と会えるのは嬉しいし、互いに成長するって、なんだかすっごく青春って感じだ。


……けど私は、ママも言ったけど、少しだけ、悩みの種がある。


私は小さい頃から、男の子が苦手だった。

男の子に いじめられた経験が、私をそうさせたんだと思う。


レンジャースクールにも当然、男子は居る。

同じ志を持つ仲間なんだけど、どうしても私は、男子と話すのが苦手だ。

いじめられてる訳でもないし、ふざけて悪戯される訳でもないけど、小さい頃の経験が、私を強張らせてしまうみたいで。

悪いとは思ってる。普通に接しなきゃって思ってる。

でもどうしても、少し距離を置く感じになっちゃって……。


幸いなことに、スクールの皆は、そんな私の性格を理解してくれている。

女子たちはフォローしてくれるし、男子たちも、無理に私に話しかけてくることはない。むしろ、気にかけてくれている。

嬉しいし有難いんだけど、このままじゃダメ。甘えてちゃダメ。

少しずつで良いから、男子とも普通に接するようにしないと……。
 ▼ 7 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/19 00:59:42 ID:qb7EOz/Y [6/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





 『長らくのご乗船、お疲れ様でした。ただいま当船は、アルミア地方、プエル港に入港いたしました。接岸作業終了しましたら再度ご案内いたしますので、どうぞ皆様、船内でお待ちくださいませ』



翌朝、連絡船は時間通りに、プエルタウンに到着した。

レンジャースクールへ行くには、、ここからビエンタウンと言う町まで、バスで移動する。



時刻は朝7時半。

私たちは夏休みでも、会社は関係ない。スーツ姿の通勤客で、バス停には長い列が出来ていた。

クラスメイトの誰かと一緒になるかと期待したけど、あいにく、その列に知り合いの顔は無かった。


 『お待たせしました。市役所方面です。ご乗車になりましたら、奥の方へとお詰め合わせお願いします』


ビエンタウンに向かうバスが こんなに混んでるのは、プエルシティの中心街を経由するから。

役所のバス停を過ぎれば空いてくるから、それまでの辛抱なんだけど……。


 『ご順に中の方までお願いしまーす。お待ちのお客様、次のバスも併せてご利用ください』


バスは すし詰め状態だ。

私はバスの真ん中くらいで立っているけど、後から乗り込んでくる人のせいで、体が持って行かれそうになる。


そうこうしているうちに、いい加減 満員になったのか、バスは ゆっくり発車した。
 ▼ 8 クデ@われたポット 21/08/19 00:59:46 ID:EU9ED6YQ NGネーム登録 NGID登録 報告
懐かしい
支援
 ▼ 9 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/19 01:00:35 ID:qb7EOz/Y [7/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 リーフ (うぅ……、嫌だなぁ……)


ギュウギュウ詰めの車内では、隣や後ろに立っている人と密着して気分が悪い。

特に男の人が苦手な私にとって、この空間は地獄だ。

外の景色を眺めながら、早く時間が過ぎ去ってくれることだけを考えるしかない。



そんな時だった――。



 リーフ (ひっ……!?)


お尻に、嫌な感触が走った。

満員だから、意図しない触れ合いかもしれないし、バッグか何かかもしれない。

でも その感触は繰り返す。

バスの揺れに合わせて、確実に、私の お尻を撫でている。断言できる。


 リーフ (やだっ……痴漢? うそっ……)


声が出ない……。

満員電車やバスに乗ったら、痴漢に遭うことがあるとは聞いていた。

でも、実際に遭遇したのは初めてで……、どうしよう。本当に声が出ない。


 リーフ (嫌っ……グスッ、こんなのっ……)


痴漢の手つきが激しくなった。

きっと、私が抵抗しないって分かったから、遠慮が無くなったんだと思う。

そんなの酷いよ……、私、嫌なのにっ。でも怖くて恥ずかしくて、抵抗できないのに……。


 リーフ (グスッ……誰かっ……。助けてっ……)







 「……きみ、大丈夫?」


 ▼ 10 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/19 01:01:40 ID:qb7EOz/Y [8/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 リーフ 「ぇっ……?」


不意に私に話しかけたのは、私の目の前の椅子に座っていた男の子だった。

私と同い年くらい……? 彼の膝にはピカチュウが座っていて、2人して、私の顔を見上げている。


 「気分悪いの? 良かったら座って」

 リーフ 「ぁっ……」


そして彼は立ち上がると、私の手を引いて、半ば強引に、椅子に座らせてくれた。


 「大丈夫?」

 リーフ 「ぅっ……はい」

 「なら良かった。辛かったら無理すんなよ」

 リーフ 「ありがとう……」

 「それと……、悪いけどピカチュウをお願いできる? これだけ混んでると、ピカチュウを肩に乗せてる訳にはいかないから」

 「ぴぃかぁ」

 リーフ 「あっ、はい……」

 ▼ 11 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/19 01:02:10 ID:qb7EOz/Y [9/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

小さく頷くと、ピカチュウは彼の肩から降りて、私の膝の上で大人しくなった。

確かに このポジションであれば、ピカチュウくらいのポケモンならボールに入れなくても大丈夫そうだ。


 「ありがとう。空いて来たらピカチュウ貰うからさ。それまで よろしく頼むよ」

 「ぴかぴぃか」


それだけ言うと、彼は目線を窓の外へ やった。

混んでいる車内、あんまり長く喋れるような雰囲気じゃないから、必要最低限の会話で済ませた、って感じだ。


 リーフ (ありがとう……)


彼が、私が痴漢に遭っていることに気付いたかは分からない。

でも、私を気遣って席を譲ってくれたのは事実で、それは素直に有難い。


 リーフ (このピカチュウ、すっごく良い毛並み……)


私の膝の上で丸まっているピカチュウの毛並みは、とても綺麗だった。

大切に育てられてることが一目でわかる。

ピカチュウと言えば、女の子が連れてるイメージが強いけど。


 リーフ (この人、なんだか不思議……)


赤の他人である私の異変に気付いて、席を譲ってくれて。

男の子なのに、可愛いピカチュウを連れていて。

それでいて、別に女々しくない、普通の男の子。


 リーフ (こんな人も居るんだ……)


私はピカチュウを眺めながら、安心のせいか、いつの間にか、眠りに落ちていた。




 ▼ 12 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/19 01:02:57 ID:qb7EOz/Y [10/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 運転手 「お客さん。終点だよ」

 リーフ 「……あっ! すみません」

 運転手 「忘れ物だけ気を付けてね」


いけない、寝ちゃった。

もともと終点までだから問題は無いんだけど、運転手さんに起こされちゃって、なんだか恥ずかしい。

それに……、私を助けてくれた男の子とピカチュウは、もう居なかった。


 リーフ 「あの……、ピカチュウを連れた男の子、ここまで乗ってましたか?」

 運転手 「あぁ、あのピカチュウの子ね。2つ手前で降りて、車に乗り換えてたよ。お迎えかな」

 リーフ 「そうですか……。ありがとうございました」


もしあの男の子が終点まで乗っていれば、探せたかもしれない。

でも、2つ手前で降りちゃって、しかも迎えの車に乗ったってことは、もう会える可能性はゼロだ。

ちゃんとお礼、言いたかったのにな。



 リーフ 「出て来て、チーちゃん」

 チコリータ 「ちこっ!」

 リーフ 「ビエンタウンに着いたよ。スクールまで歩こうね」

 チコリータ 「ちこー!」


 ▼ 13 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/19 01:03:57 ID:qb7EOz/Y [11/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ビエンタウンの郊外に出ると、海を貫く大きな橋が現れる。


ここを渡った先の島に、私たちの通うレンジャースクールがある。


長い階段を上った崖の上、広々とした校庭の奥にある建物が、私たちの学び舎だ。

決して良い立地とは言えないけど、島が丸ごとスクールの土地だから、自然豊かで伸び伸びと学べる――、と私は思っている。


校舎は2階建て。

1階に教室があって、2階は寝室や厨房、お風呂と言った生活空間。全寮制の学校ならではの設備だ。



 ヒトミ 「……あ、来たわねリーフ!」

 ミナミ 「おはよー」

 リーフ 「おはよう、ヒトミちゃん、ミナミちゃん。久しぶり」

 ミナミ 「久しぶりって程でもないでしょ。こないだの終業式以来だし」


校舎2階のフリースペースには、この講習に参加する生徒たちが集まっていた。

私と特に仲の良いのが、ヒトミちゃんとミナミちゃん。

この2人も参加してくれて、内心ホッとしている。まわりが男子ばっかりだったら肩身が狭いもん。


 ハジメ 「おぉ、リーフも参加するんだね」

 ナツヤ 「よろしくな。楽しい夏にしようぜ!」

 リーフ 「あっ、うん。よろしくね、2人とも」


そして、ハジメ君とナツヤ君は、クラスメートの中でも代表的な存在の2人。

キャプチャの成績も良いし、クラス皆のことを気にかけてくれている、学級委員のような男子だ。

男子が苦手な私に対しても、適度に声を掛けてくれる。



 教師A 「おはようさん。参加者全員揃ってるね?」



と、先生が顔を出すなり言った。

今このフリースペースに居るメンバーが全員……ってことは、この講習の参加者は全部で9人。

全生徒数から考えれば少ないけど、例年、参加者は2桁に届けば良い方らしい。やっぱり皆、夏休みは実家でゆっくりしたいのかな?
 ▼ 14 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/19 01:04:31 ID:qb7EOz/Y [12/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 教師A 「朝礼やるから体育館に集合ね」

 ナツヤ 「朝礼あるんですか〜」

 教師A 「まぁ、特別講習の開会式みたいなものだから、すぐ終わるよ」

 ナツヤ 「よっしゃ!」

 教師A 「喜ぶな」

 ナツヤ 「いや、オレは早くキャプチャの学習に取り組みたいんです!」

 ハジメ 「うそつけ」

 ミナミ 「まったくナツヤは面倒くさがりだもんねー」

 教師A 「面倒な気持ちは分かるけどな。……けど、ちょっとしたサプライズもあるぞ?」

 ナツヤ 「サプライズ!?」

 ヒトミ 「ゴーゴー4が来るとか!?」

 教師A 「無茶言うな。まぁ、とにかく10時に体育館に集合な」


それだけ言うと、先生は1階に戻って行った。


 ヒトミ 「サプライズってなんだろね!?」

 ミナミ 「普段さっぱりしてるA先生が言うんだから、ちょっと期待できることかもよ?」

 リーフ 「なんだろう。新型のスタイラーが出来た、とかかな?」

 ハジメ 「それを僕たちが使えるかって考えると微妙だけどね」

 リーフ 「あ、そっか……」

 ナツヤ 「サプライズって言うからには、少なからずオレたちにとってプラスのことだろうけど」

 ヒトミ 「あーあ。ゴーゴー4のサプライズ公演とか期待しちゃったのになー」

 ミナミ 「ヒトミは相変わらずゴーゴー4好きね」

 ヒトミ 「まぁね。ライブも毎回応募してるし」

 ナツヤ 「とにかく準備しよう。制服に着替えないといけないし」

 ミナミ 「そうね。……覗くんじゃないわよ」

 ナツヤ 「もう覗かねーよ!」


私たちは男女別のベッドルームに入って、制服に着替える。

青いシャツとズボンに、緑色のベスト。黄色のネクタイ。汚れが目立たなそうな配色だけど、女子はショートパンツだから汚れ云々は関係ないかも。

みんなで身形を確認し合って、朝礼が行われる体育館に向かった。
 ▼ 15 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/19 01:05:25 ID:qb7EOz/Y [13/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

全校集会では手狭に感じる体育館も、たった9人で占領すれば広く感じる。

校長先生の話が始まったけど、普段とは違って早々にスピーチを切り上げた。


 校長 「続いて、今日はシンバラ教授にお越し頂きました。教授、お願いします」


 ナツヤ (シンバラ教授来てるのか!?)

 ミナミ (嘘っ!? わざわざスクールに来てくれたの?)

 ハジメ (サプライズって このことだったのか)


ナツヤ君たちのテンションが上がる。

シンバラ教授は、キャプチャ・スタイラーなどを開発している、レンジャーユニオン技術最高顧問。レンジャー達にとって憧れの存在だ。

だって、教授が居なかったら、ポケモンレンジャーと言う役割は果たせないんだもん。

そんなシンバラ教授の登壇は、十分サプライズに値するものだった。


 シンバラ 「皆、夏休みだと言うのに、特別講習の参加、ご苦労様。……まぁ人数は少ないようだが、だからこそ、この講習は諸君らにとって、有意義かつ重要なものになるだろう」


みんな、教授の話を真剣に聞いている。もちろん私だって。

私たち生徒のモチベーションを上げてくれる、教授の有難い話に、皆は姿勢を正して、静かに耳を向けていた。



 シンバラ 「――以上になるが、最後に、体験入学生を紹介しよう」


 ▼ 16 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/19 01:06:09 ID:qb7EOz/Y [14/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ミナミ 「体験入学生!?」

 ハジメ 「そっか。この講習だけ参加する人間が居るってことか」

 ナツヤ 「なるほど。サプライズってこのことだったのか。女子が良いな〜」

 ハジメ 「可愛い子なら なお良いな〜」

 ミナミ 「まったく男子どもは。こんなに可愛い女子たちが居るって言うのに」

 ヒトミ 「ねー」

 リーフ 「あはは……」


転校生……って訳じゃないけど、この講習中、新しい仲間が増えるんだね。

私も、できれば女子が良い。

レンジャースクールに来るような子だから、男子でも悪い人は居ないと思うけど、苦手なことに変わりは無いし、上手く接することが出来るか分からないし……。


 教師A 「男子だぞ」

 ナツヤ 「えっ?」

 教師A 「男子だぞ」

 ハジメ 「チェッ」


 シンバラ 「それでは、入って来なさい」


教授の声がかかると、壇上の脇から、1人の男の子が登場した。

既に私たちと同じ制服に身を包んでいて、ピカチュウを連れている。



……あれ?


 ▼ 17 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/19 01:08:09 ID:qb7EOz/Y [15/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 シンバラ 「紹介しよう。この講習中に諸君らの仲間に加わる、サトシ君だ」

 サトシ 「初めまして。マサラタウンから来ましたサトシです。こいつは相棒のピカチュウです」

 ピカチュウ 「ぴかぴっか」


  ヒトミ 「へ〜、パートナーポケモンはピカチュウなんだ」

  ミナミ 「男子でピカチュウは珍しいわね」


間違いない。

さっきバスで私を助けてくれた人だ。

同じ声だし、何より あの毛並みの良いピカチュウ……、間違いない。


 シンバラ 「年々レンジャースクールの入学者数は減っておる。知っての通り、ポケモンレンジャーは ひとたび災害が起これば激務。このご時世、他に魅力的な職業が溢れておるし、就活は売り手市場じゃからな」


  ハジメ 「確かに、好きじゃないとレンジャーになる人は居ないよな〜」

  ナツヤ 「遣り甲斐は あるけど、なかなか大変な職だからね」


 シンバラ 「そこでじゃ。少しでも若者にレンジャーの魅力を知って貰おうと、この夏季特別講習に“体験入学”できるプログラムを検討しておる。そのモニターに、ワシの知り合いのツテで、サトシ君に協力して貰おうと言う訳じゃ」


  ヒトミ 「ふーん。そんな構想があるんだ」

  ミナミ 「モニターってことは、あのサトシって人の結果次第で、来年から体験入学を取るか決めるってことね」


 シンバラ 「当然サトシ君は、レンジャーについては素人じゃ。キャプチャも未経験。諸君らでフォローしてくれると有難い。何より、人に教えることは、自身の成長にも繋がるからの。……それではサトシ君。簡単に自己紹介でも」

 サトシ 「はい。……えっと、今回シンバラ教授に誘われて、ここに体験入学させて貰うことになりました。ポケモンレンジャーの人とは、ポケモンリーグに向けて旅してる時に何度か会っていて、キャプチャでポケモンと気持ちを通じ合うのとか、凄いなって思ってました。短い間ですが、よろしくお願いします」

 ピカチュウ 「ぴぃかぴか」

 シンバラ 「うむ。それでは諸君、有意義な講習にしてくれたまえ」

 教師A 「それでは朝礼終わり! 皆は教室へ。サトシ君は簡単に校内の説明するから、俺と一緒に来てな」

 サトシ 「はい!」



そうしてシンバラ教授、先生たち、サトシ君は、先に体育館から出て行った。


 ▼ 18 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/19 01:09:04 ID:qb7EOz/Y [16/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

私たちは、1コマ目の授業の教室に向かうけど……、雰囲気は、あまり良くなかった。


 ナツヤ 「あのサトシって奴、ポケモンリーグの旅してるって言ったよな」

 ミナミ 「言ってたわね」

 ナツヤ 「じゃあ あんまり信用できないな。あの自己紹介も、教授の前だから良いこと言っただけかもしれないし」

 ミナミ 「同感」

 ハジメ 「内心バカにされてるかもしれないしな」

 ヒトミ 「まぁ……、決めつけは良くないけどね」


実は、私たちレンジャースクールの生徒は、同年代のポケモントレーナーに、あまり良い感情を持っていない。

と言うのも、“バトルが弱いからレンジャーに逃げてる”と言うレッテルを張られて、馬鹿にされることが多々あるからだ。

勿論、全員がそうであるとは思わないけど、ここアルミア地方では、そういう風潮が強いように感じる。

だって、他の学校の生徒と会った時、絡まれることが多いんだもん。


 ナツヤ 「シンバラ教授にツテがあるらしいけど、オレたちを馬鹿にするような態度だったら、黙っちゃいられない」

 ハジメ 「そうだね。むしろトレーナーに、僕たちレンジャーの領域に踏み込んで欲しくないよ」

 ミナミ 「えぇ。私たちは私たちで団結して、馬鹿にされない立場を固めておかないと!」


みんな、サトシ君に対して敵意とも取れる感情を剥き出している。

レンジャースクールって言う環境から、無理は ないかもしれないけど……。

唯一、ヒトミちゃんは中立を装おうとしているように見える。

“装おうとしている”って言うのは、レンジャースクールの生徒である以上、やっぱりクラスメートたちの意見を重視したいもんね。


私はと言うと、とっても複雑な気持ち。

確かにポケモントレーナーに そこまで良い印象は無い――これも決めつけかもしれないけど。


でも、サトシ君は何処か違う気がする。


彼にその気は無かったかもしれないけど、私を助けてくれたし。

そもそも、“気分が悪そうだから席を譲ってくれる”なんて、普通、なかなか出来ることじゃ無いと思う。そういうことを考えても、サトシ君は、優しい心を持っていると思う。

それに、ピカチュウすっごい懐いてるし、毛並みも良いし。バトル一筋、って訳じゃないのかな。


なんだか、サトシ君を受け入れるような雰囲気じゃ無いのが悲しいな……。


 ▼ 19 マナッツ@ウイのみ 21/08/19 01:13:25 ID:9wT27AnU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
リーフはあのリーフでいいのか?
それともオリキャラ?
 ▼ 20 エトル@しらたま 21/08/19 01:15:36 ID:QqK6VUyE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
リーフだからレッドだと思ったけどサトシなのか
 ▼ 21 レベース@きちょうなホネ 21/08/19 06:15:29 ID:DDOw7n4. NGネーム登録 NGID登録 報告
サトシ×リーフだったら俺得
支援
 ▼ 22 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/20 00:08:50 ID:dfOES6H. [1/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


>>19
あのリーフです。
実は このSS、リーフがスマブラ参戦&公式登場を記念した2018年当時のネタだったりします(故に盾剣要素なし)。


 ▼ 23 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/20 00:14:38 ID:dfOES6H. [2/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



2時限目の授業が終わって昼休み。

スクールで私たちの生活を支えてくれている“世話やきおばさん”が作った お昼ご飯を皆で食べていると、先生とサトシ君が やって来た。


 教師A 「ちょうど良いタイミングでスクールの説明が終わったな。皆と昼飯食べて、午後の授業からサトシも出席な」

 サトシ 「はい。ありがとうございました」

 ピカチュウ 「ぴっか!」

 教師A 「そんじゃ、良いスクルールライフを。何か分からないことがあれば、職員室の誰かに聞いても良いし、こいつらに聞いても良いし。何にせよ、遠慮なく声かけてくれな」

 サトシ 「分かりました」


それじゃお前ら、サトシを頼むな――、と言い残し、先生は職員室に戻って行った。

サトシ君は先生を見送ると、私たちの方に向き合い、笑顔で口を開いた。


 サトシ 「改めて、オレ、サトシです。こいつは相棒のピカチュウ」

 ピカチュウ 「ぴっか!」

 サトシ 「キャプチャのこととか全然分からないけど、しばらくの間よろしくな!」

 ピカチュウ 「ぴかぴっか!」


 ハジメ 「あぁ、よろしく。僕はハジメ」

 ナツヤ 「オレはナツヤ。そっちに座ってるのがモブタとモブオ」

 モブX2 「どうも」

 ヒトミ 「私はヒトミ。よろしくね」

 ミナミ 「ミナミよ。そっちがモブコとモブエ」

 モブX2 「どうも」

 ヒトミ 「それと、この子はリーフ」

 リーフ 「リーフです。よろしくお願いします」

 ミナミ 「先に言っておくけど、リーフは男子が苦手だから、あんまり ちょっかい出さないであげてよ」

 サトシ 「そうなのか。みんなよろしくな!」
 ▼ 24 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/20 00:16:20 ID:dfOES6H. [3/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

気付かれて……ない?

そっか。バスの中は私服だったし、帽子も被ってたし。すぐ座っちゃったから あんまり顔も見られてないし、会話も ほとんどしてないし。

やっぱり制服だとイメージ変わるのかな。


 ナツヤ 「ところでさ。サトシ、さっきの自己紹介で、ポケモンリーグに出る旅をしたって言ったけど」

 サトシ 「あぁ。色んな地方を旅して、ポケモンリーグには何度も出場してるぜ」

 ハジメ 「ってことは、サトシはポケモントレーナー、なんだね」

 サトシ 「あぁ」

 ミナミ 「トレーナーがレンジャースクールに入るって、けっこう珍しいのよ」

 サトシ 「そうなのか?」

 ミナミ 「アルミア地方ではね。地方柄、って言うのかしら?」


うぅ……、みんなサトシ君に“探り”を入れている。

ここアルミア地方で、学生同士のレンジャーとトレーナーは、言ってしまえば水と油。

“バトルが弱いからレンジャーに逃げてる”と思ってるトレーナーが 一定数居ることが原因なんだけど――。



実は もう一つ、理由がある。



 サトシ 「そう言えば、この夏季講習の最後の方に、アルミアのバトル大会があるんだろ? それ楽しみなんだよな〜」

 ミナミ 「なっ……!?」

 ナツヤ 「バトル大会……。サトシ、それに出るつもりなのか?」

 サトシ 「あぁ。講習の一環で参加するって聞いて、オレそれが楽しみでさ! みんなもそうだろ?」
 ▼ 25 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/20 00:18:59 ID:dfOES6H. [4/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



バトル大会――。


アルミア地方では、夏の終わりに、各学校が参加してバトルの強さを競うバトル大会が、毎年開催されている。

正式名は、「アルミア学校選抜バトル大会」。

イメージとしては、高校野球みたいなものだ。


各学校からバトル好きな生徒が集結して、アルミア地方ナンバーワンの学校を決める、アルミアではポピュラーなイベント。

レンジャースクールも参加対象になっていて、例年、この夏季講習に参加した生徒が、講習の一環として出場することになっているんだけど――。


 ▼ 26 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/20 00:21:24 ID:dfOES6H. [5/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ナツヤ 「バトル大会には参加しない」

 サトシ 「えっ? だって、夏季講習の説明の資料貰ったけど、そこには参加するって書いてあったぞ?」

 ハジメ 「参加は、あくまで任意。生徒たちの希望が無ければ、参加しないんだ」

 サトシ 「希望って……。みんなバトル大会に出たくないのか?」

 ハジメ 「サトシ。レンジャースクールはね、その大会、棄権してるんだよ。毎年」

 サトシ 「棄権!?」

 ナツヤ 「つまり、誰も参加したくないってことだ」

 ミナミ 「サトシ。アンタは まず、レンジャースクールの置かれた状況を理解して。私たちはね、バトル大会に参加したくないの」

 サトシ 「なんでだよ? それに、状況……?」

 ナツヤ 「オレ達は、バトルするためにレンジャースクールに入学した訳じゃないんだよ!」

 サトシ 「えっ……」

 ヒトミ 「ちょっとナツヤ……」

 ナツヤ 「ポケモンと心を通わせて、ポケモンのため、人のため、自然のためにレンジャーを目指してるんだ!」

 ミナミ 「トレーナーはムカつくのよ! そういう私たちの気持ちを知らないで、バトルが弱いって馬鹿にして!」

 ヒトミ 「ミナミも……」

 ハジメ 「確かに僕らは、バトルに長けてないよ。他校の生徒たちは、それを馬鹿にする。そんな状況で、大会に出ようとは思わないね」

 ナツヤ 「オレ達の志を理解しないような奴らの元に、わざわざ行く理由なんて無いだろ。だから毎年、棄権してるんだ」

 サトシ 「そんな……」

 ミナミ 「アンタもトレーナーなら、内心私たちを馬鹿にしてるんでしょ。この年でバトルが出来ない私たちを!」

 ナツヤ 「正直言うと、なんでサトシが体験入学に来たのか分からないんだよ。ここは、バトル好きな人間とは決して交わらない学校なんだよ!」

 ヒトミ 「やめてよ2人とも! せっかく体験入学してくれてるサトシに、いきなりそんな喧嘩なんて!」



あぁ……、一番ダメな展開になっちゃった……。


私たちレンジャースクールは、長年、このバトル大会に参加していないって聞いている。

みんなバトルが得意じゃないから、当然、今年も棄権することになっていた。夏季講習の事前アンケートで、そう決まっていた。

私たちを馬鹿にするトレーナーと無駄に関わらないようにって、皆で話し合って決めたことだった。
 ▼ 27 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/20 00:22:42 ID:dfOES6H. [6/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 サトシ 「オレは皆を馬鹿にする気は無い! 旅の途中でポケモンレンジャーに助けて貰ってるし、未来のレンジャーを馬鹿にする理由なんて無いだろ!?」

 ミナミ 「ふん。どうだか」

 ナツヤ 「しょせんサトシもトレーナーだ。心の中では、バトルが苦手なオレたちにドン引きしてるんじゃないのか?」

 サトシ 「言わせておけば……! だいたい! 綺麗ごと言って棄権なんて話にならない! 結局はバトルから逃げてるだけじゃんかよ!」

 ミナミ 「はぁ!?」

 ナツヤ 「んだと!?」

 サトシ 「最初から諦めてどうすんだよ!? 馬鹿にされてるんなら、特訓して そいつらを見返してやろうって思わないのかよ!? そんなの“逃げ”でしかないと思うけどな!」

 ナツヤ 「ふざけんな! 教授の知り合いだからって調子乗ってんじゃねーぞ!?」


 ヒトミ 「もうやめてってば!」

 ハジメ 「言い争いは良くない!」


 ヒトミ 「ミナミ! ナツヤ! それにサトシも! せっかくの夏季講習を台無しにしないでっ!」

 ミナミ 「だって……ヒトミは何とも思わないの!?」

 ナツヤ 「やめようミナミ。オレ達は短気なトレーナーと違うんだ」

 ミナミ 「……クッ!」

 ハジメ 「サトシ。気持ちは分からなくも無いけど、今のレンジャースクールは、こういう感じなんだ。理解してくれ」

 サトシ 「……分かった。ごめん。熱くなりすぎた」

 ナツヤ 「終わりにしよう。お互い不愉快だ」

 ミナミ 「チッ! ホントなんでアンタが体験入学生なのよ」

 ヒトミ 「ミナミ!」

 ハジメ 「もうすぐ午後の授業だよ。準備しないと」

 ナツヤ 「そうだな」

 ヒトミ 「サトシ。教室は1階だから」

 サトシ 「あぁ。サンキュー」


 ▼ 28 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/20 00:24:26 ID:dfOES6H. [7/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


その後の授業は、とっても重い空気だった。


いつも通りの、和気あいあいとした授業とは程遠い……、先生も不審がるほど、暗い雰囲気の中、行われた。



悲しい。


サトシ君、良い人なのに。



“最初から諦めて、そんなの逃げでしかない”――か。



確かにその通りだもん。

私だってバトルは苦手だから、大会は棄権でいいって思ってるけど、確かにそれは、“逃げ”だもん。みんなだって分かってるよ。


それを、トレーナーであるサトシ君に指摘されて……、頭に来たんだろうな。

ナツヤ君もミナミちゃんも、普段、あんなに怒ることないのに。



初日から こんな雰囲気で、この先、どうなっちゃうんだろう……。



 ▼ 29 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/20 00:26:09 ID:dfOES6H. [8/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



夜――。


夕食を終えて、シャワーを浴びれば、消灯まで自由時間。

そんな一時を、女子部屋では やっぱり、サトシ君の話題で持ちきりだった。



 ミナミ 「なにが“逃げ”よ! アイツ、こっちの事情も知らないで!」

 ヒトミ 「まぁまぁ、落ち着いてよミナミ」

 ミナミ 「だってムカつくでしょ!? アイツも所詮トレーナーよ! 私たちのこと馬鹿にして!」

 ヒトミ 「分かるよ、みんなの気持ち。私だって良い気は しないし。でも、せっかく体験入学してくれたんだから、そんなに敵意を剥き出さなくても」

 ミナミ 「シンバラ教授のツテってだけでしょ。なんか見返り貰ってるんじゃないの? じゃなきゃトレーナーが わざわざレンジャースクールに入らないでしょ」

 ヒトミ 「それはそうだけど……」

 モブコ 「私も同感」

 モブエ 「レンジャースクールに体験入学して、笑いのネタにするんじゃないの?」

 ミナミ 「リーフも そう思うでしょ?」

 リーフ 「私は……」

 ヒトミ 「リーフは災難だよね。ただでさえ男子が増えるのはアレなのに、トレーナーだなんて」



 リーフ 「私は、あのサトシ君って人、そんなに悪い人じゃないと思うけどな」


 ▼ 30 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/20 00:26:38 ID:dfOES6H. [9/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ミナミ 「ちょっとそれ本気で言ってんの!? あんなこと言われたのよ!?」

 リーフ 「でもそれは……、どちらかと言うと、私たちの方から煽り立てたような感じだったし」

 ミナミ 「……まぁそれは否定できないけど」

 リーフ 「きっと、私たちが あんまりにも敵意を出してたから、サトシ君、カッとなっちゃったんじゃないかな」

 ヒトミ 「珍しいわね。リーフ、男子が苦手なのに」

 ミナミ 「言われてみれば。なんでアイツの肩持つの?」

 リーフ 「えっ? いや……、肩を持つって訳じゃ……」

 ヒトミ 「まぁでも、あえて敵意を向ける必要は無いよ、うん」

 ミナミ 「はぁ……。必要最低限の会話になりそうね」

 ヒトミ 「私たち、レンジャーを目指してるんだよ? 気に入らない相手だからって軽蔑するのはダメ。大人にならないと」

 ミナミ 「分かったわよ」



まだ“わだかまり”は残ってるけど、ひとまず女子グループは、サトシ君に敵対心を向けることは、やめようってことになった。


問題は男子たち。

いま男子部屋で、サトシ君とナツヤ君たちは、どんな風に過ごしてるんだろう。

喧嘩してなきゃいいけど、少なくとも、居心地が悪そうなのは、簡単に想像できる。


なんとかサトシ君が良い人ってことを皆に分かって貰いたいけど、それを皆の前で伝えるような勇気、私には……無い。

それに、その根拠である痴漢の話をするのも恥ずかしい。


なにか……、皆が一つになれるキッカケがあればいいんだけど……。


あぁ、ダメだな、私。いっつも誰か任せで。


 ▼ 31 ノンド@ちからのこな 21/08/20 19:16:14 ID:sfpQpQU6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 32 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/21 01:40:10 ID:WYR2Hs92 [1/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



翌日――。



 教師A 「――以上のように、ポケアシストのタイプ相性は、ポケモンバトルにおけるタイプ相性とは ちょっと異なってるので要注意だ。ここまで大丈夫か、サトシ?」

 サトシ 「はい。ポケアシストはキャプチャ・ディスクを強化するってことだから、“効果なし”の相性でも、効果自体は発揮するってことですね」

 教師A 「そうだな。まぁ、あとは実戦あるのみだ。座学は ここまで! 校庭で実技に移るぞー!」


 ハジメ 「サトシ、ひとまず僕がサポートするよ」

 サトシ 「おぉ、ありがとう」



早々に座学の授業は終わって、実技の授業に移る。

この夏季講習は、どちらかと言えば実技がメイン。島であるレンジャースクールの立地を生かして、広々とした敷地の中で、キャプチャの練習に取り組むことが出来る。


 ミナミ 「さすがハジメね。あんなにギスギスしてたのに、サポートしてやるなんて」

 ヒトミ 「なんだかんだでハジメって、面倒見が良いもんね」


どこか他人行儀な感じは否めないけど、ハジメ君はサトシ君のサポートを買って出てくれた。

サトシ君にとって、初めてのキャプチャ。

ひとまずサトシ君が授業で孤立することは無いようで、一安心だ。
 ▼ 33 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/21 01:42:25 ID:WYR2Hs92 [2/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ミナミ 「それよりナツヤ、どうだったの、昨日の夜?」

 ナツヤ 「どうもこうも、一触即発だぜ?」

 ヒトミ 「えぇ……。仲良く――とまでは言えないけど、平和に過ごそうよぉ」

 ナツヤ 「だってあいつ、まだバトル大会に出ようって言ってくるんだぞ。いい加減オレも頭来て、あいつの胸倉掴んで……」

 ミナミ 「やるわねナツヤ」

 ナツヤ 「そしたら あいつも“やるのか!?”って刃向って来やがって」

 ミナミ 「喧嘩になっちゃったの?」

 リーフ 「ダメだよ喧嘩しちゃ!」

 ナツヤ 「いや……」

 ミナミ 「いや――なによ?」

 ナツヤ 「その瞬間にさ、あいつのピカチュウが電撃ぶっ放したんだよ、あいつに」

 ヒトミ 「えぇ……」

 ナツヤ 「アレは強烈な電撃だったぞ。オレは巻き込まれなかったけど」

 ミナミ 「ふーん。ピカチュウが喧嘩を止めてくれたのね」

 ナツヤ 「聞こえなかったか? あいつの断末魔?」

 ヒトミ 「聞こえなかった……よね?」

 リーフ 「うん」

 ミナミ 「そこそこ防音しっかりしてるのね」

 ナツヤ 「それでまぁ、あいつは そのまま気絶したんだけどさ。その隙に男子で話し合って、ピカチュウ怒らせたらマズいって結論に至ったワケ」

 ミナミ 「なるほど。ある程度は関係を持とうって方針にしたのね」

 ナツヤ 「まぁ、ほぼほぼハジメが担当してくれるってことになったけどな」


経緯は どうあれ、男子たちとサトシ君は、一定の距離を取りつつも、険悪なムードからは脱出できたようだ。

でもサトシ君、ピカチュウの電撃を受けて大丈夫なのかな……?
 ▼ 34 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/21 01:43:55 ID:WYR2Hs92 [3/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


   ハジメ 「そう! そこでスタイラーを一定の速度で――」

   サトシ 「こう……あー頼むから動かないでくれビッパ!」



チラリと、サトシ君の様子を覗ってみる。

ハジメ君にサポートされて、野生のビッパをキャプチャしようと奮闘していた。彼の足元では、ピカチュウが笑顔で応援している。


 ミナミ 「あんなに可愛いピカチュウなのにね」

 ナツヤ 「いや。あいつは甘く見るとヤバいぞ。なんかこう……、歴戦の勇士って雰囲気、分かんないか?」

 ミナミ 「さぁ」

 リーフ 「私たちもさ……」

 ヒトミ 「なぁに?」

 リーフ 「サトシ君とピカチュウ、しっかりサポートしてあげた方が良いんじゃないかな?」

 ミナミ 「良いのよリーフ。そういうのはハジメに任せておけば」

 リーフ 「でもっ……」

 ミナミ 「ホントどうしたのよリーフ。男子のこと苦手なのに、やけに あいつのこと気にかけてない?」

 ナツヤ 「実は知り合いとか?」

 リーフ 「違うよ! ただ、せっかく体験入学に来てくれたのに、レンジャースクールに悪いイメージ持たせちゃうのは、嫌だなって」

 ヒトミ 「うん。それは私も同感」

 ミナミ 「けど、やっぱりトレーナーは信用できないわよ」

 ナツヤ 「そうそう。無駄な関わり合いはゴメンだな」


やっぱり、レンジャースクール生にとって、ポケモントレーナーへの信用はゼロに等しい。

トレーナーみんなが私たちを馬鹿にしている訳じゃないのに……。


サトシ君、良い人なのにな……。

 ▼ 35 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/21 01:46:03 ID:WYR2Hs92 [4/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


   サトシ 「くそっ……、上手くいかないな……!」

   ハジメ 「ピカチュウのアシストは“ほうでん”だから、キャプチャの手助けには ならないんだよ」

   ピカチュウ 「ぴか?」

   サトシ 「スタイラーとディスクの動きの時差って言うか……、あぁ難しい!」



サトシ君は、まだビッパのキャプチャに奮闘している。


 ミナミ 「って言うか、あいつ まだビッパのキャプチャ出来てないじゃん」

 ナツヤ 「大人しいビッパで こんなに時間かかるなんて、あいつセンス無いよ」

 ヒトミ 「もー。キャプチャが初めての人に そういうこと言わないの」

 ミナミ 「そもそもね、トレーナーがレンジャーの真似事なんて無理なのよ」

 ナツヤ 「ポケモンと心を通わせる気持ちが無きゃ、レンジャーは務まらない。バトルでポケモンを傷付ける奴なんかに、キャプチャは出来っこないね」


あぁ、ダメだな。ナツヤ君とミナミちゃん、完全にサトシ君を拒絶している。

2人とも本当は良い人なのに、サトシ君がトレーナーって理由で、壁を作ってしまっている。


 ミナミ 「さっ、私たちもキャプチャの特訓よ」

 ナツヤ 「そうだな。せかっくの特別講習、しっかり学ぼうぜ!」



ナツヤ君たちも、敷地に住み着いている野生ポケモン相手にキャプチャの練習を始めた。

そうだよ、今は授業時間なんだから、私も実習しないと。


 リーフ 「おいで、チーちゃん」

 チコリータ 「ちこりー♪」

 リーブ 「……ねぇチーちゃん。どうしたら、みんなとサトシ君、仲良くなれると思う?」

 チコリータ 「ちこ?」

 リーフ 「本当、どうしたらいいんだろう……」



 ▼ 36 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/21 01:47:39 ID:WYR2Hs92 [5/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 教師A 「――よし。今日の授業は ここまで!」



15時をまわって、この日の全ての授業が終わった。

ポケアシストを使ったキャプチャをメインに野生ポケモンと心を通わす、実戦型の授業。

時間の流れは あっという間だった。


 教師A 「諸注意! 消灯は21時。過ぎたらベッドルームから出ないこと。それまでは自由時間だけど、くれぐれも事故やトラブルの無いように。レンジャースクール生として恥じない行動を取ること! 毎日言ってるけど、そこだけは頼むぜ。じゃあ解散! 遊べ!」



A先生特有の、とっても簡単なホームルームが終われば、あとは自由時間。


掃除や食事は“世話焼きおばさん”が やってくれるから、本当に消灯まで自由時間。


クラスメートたちと自由に過ごせる時間が沢山あるのも、この特別講習の特徴の一つだ。

 ▼ 37 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/21 01:49:18 ID:WYR2Hs92 [6/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


   サトシ 「ふぃ〜。疲れた〜」

   ピカチュウ 「ぴかぴ……」


サトシ君、けっこう疲れてるみたい。

そうだよね。ほぼ1日、慣れないキャプチャを実戦してたんだもん。


   ハジメ 「消灯まで自由行動だよ。夕飯は18時から20時の間に食堂に行けば、おばさんが用意してくれるから」

   サトシ 「分かった。あと、この自由時間もキャプチャの練習して良いのか?」

   ハジメ 「あぁ、大丈夫だよ」

   サトシ 「そっか。ならもっと色んなポケモンをキャプチャして、早く慣れないとな!」

   ピカチュウ 「ぴか!」


サトシ君は、まだしばらくキャプチャの練習をするみたいだ。

ピカチュウも元気よく頷いて、サトシ君の肩に乗る。あの2人、とっても仲が良いみたい。


 ナツヤ 「休憩も大事だけどな」

 ミナミ 「そうそう。キャプチャは1日2日でマスターできるものじゃないし。ましてやトレーナーなんかがね」

 ヒトミ 「だからもぉ! なんで2人は そんな喧嘩腰なのよ」

 リーフ 「だめだよ2人とも。サトシ君、一生懸命キャプチャしてたのに」

 ミナミ 「ヒトミとリーフは甘過ぎよ! 私たちが今まで どんだけトレーナーにバカにされてきたのか忘れちゃったの!?」

 ヒトミ 「それは そうだけど……」





――と、そんな時だった。





   サトシ 「おい、あのチルット怪我してないか!?」

   ハジメ 「……本当だ。なんであんな所に!?」

 ▼ 38 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/21 01:52:48 ID:WYR2Hs92 [7/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

サトシ君とハジメ君の、慌てた声。

チルット? 怪我? あんな所?


 ナツヤ 「どうした!?」

 ミナミ 「野生のチルット? 怪我してんの!?」


私たちは、急いで2人の元に駆けつける。

サトシ君とハジメ君は、高い木の上を見つめていた。


 サトシ 「この木の上にいるチルット、震えてて動こうとしないんだ!」


木の上を見上げると、確かに、震えるチルットがいた。

よーく見ると、翼に傷がある。大きな鳥ポケモンに襲われたのかもしれない。


 ナツヤ 「高いな」

 ミナミ 「10メートルくらいかしら」

 ハジメ 「それに、場所も悪い」


場所も悪い――。

ここレンジャースクールは、起伏のある島に建てられていて、いま私たちが居る校舎と校庭は、長い階段を上った崖の上にある。

チルットがいる木は、崖のすぐそばに生えていて、さらにチルットが止まっている枝は、崖の外側に張り出している。


 ヒトミ 「マズいよ! もしチルットが足を滑らせたら……!」

 ナツヤ 「大怪我じゃ済まないぞ!」

 サトシ 「おーいチルット! いま助けてやるから、そこ動くんじゃないぞー!」

 ピカチュウ 「ぴっかー!」

 ミナミ 「ちょっと大声出さないでよ! 驚いちゃうでしょ!」

 サトシ 「けどっ!」

 ハジメ 「とにかく! キャプチャして助けよう!」


この木はカラマツ。低い位置に枝が無いから、登って助けに行くのは難しい。

仮に登れたとしても、もし足を滑らせたら崖の下に真っ逆さまだ。そんな危険なことは出来ない。

チルットをキャプチャして、落ち着かせたところで助け出す――。それしか方法は無いはずだ。
 ▼ 39 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/21 01:54:07 ID:WYR2Hs92 [8/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 サトシ 「よし。キャプチャ、オン!」

 ナツヤ 「いや待て! 素人が手を出せることじゃない!」

 ミナミ 「そうよ! アンタは邪魔しないで下がってて!」

 サトシ 「なっ……、そんな言い方ないだろ!」

 ハジメ 「喧嘩してる場合じゃない! サトシ、今は僕たちに任せて!」

 サトシ 「……分かった」


ナツヤ君とミナミちゃんの言い方はキツ過ぎだけど、一理ある。

今は、キャプチャの経験が全く無いサトシ君の出る幕じゃない。サトシ君もそれを理解してか、引き下がってくれた。


 ヒトミ 「でも、この高さだとキャプチャも難しそうね」

 ナツヤ 「やるっきゃないだろ! キャプチャ・オン!」


早速、ナツヤ君がスタイラーを握る。

木の上のチルットを目がけ、ディスクを発射した。

キャプチャするには、スタイラーでディスクを操り、チルットを囲み続ける必要がある。

チルットに気持ちが通じるよう、丁寧な、繊細な操作が必要だけど――。



 ナツヤ 「……クソっ! 枝と葉っぱが けっこう邪魔だな」

 ハジメ 「高くて見にくいか……」


生い茂る葉が、ディスクの軌道の邪魔をする。

さらに、10メートルも頭上でのキャプチャとなると、目視で確認も しづらい。
 ▼ 40 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/21 01:56:19 ID:WYR2Hs92 [9/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


  チルット 「ちるるっ……!」 バキッ!


 ナツヤ 「うわっ……!?」

 ミナミ 「“みだれづき”かしら。ヤバいかも、チルット興奮してるわよ!」

 ナツヤ 「分かってる! ちょっとだけ大人しくしてくれると助かるんだけど……!」


ただでさえディスクの操作が難しいのに、興奮したチルットが、ディスクを攻撃し始めた。

ディスクが攻撃を受けると、スタイラーのエネルギーが削られてしまう。エネルギーがゼロになったら、もうキャプチャは出来ない。


 ハジメ 「翼を怪我してるから、派手な動きは出来ないはず。チルットから距離を取って囲めば、とりあえず攻撃は防げるはずだ!」

 ミナミ 「そうね。“みだれづき”――、チルットの口ばしが届かない位置取りでキャプチャよ!」

 ヒトミ 「頑張ってナツヤ!」

 ナツヤ 「分かってるけど……、見にくくてライン取りが……」


  チルット 「ちー!」 バキッ!


 ナツヤ 「ヤバッ!?」


チルットの攻撃が、またディスクに直撃した。


 ナツヤ 「クソっ! このままだとエネルギーが持たない! ミナミ、行けるか?」

 ミナミ 「オッケー! キャプチャ・オン!」

 ハジメ 「僕のディスクを囮に使おう! キャプチャ・オン!」


ナツヤ君に代わって、ミナミちゃんとハジメ君もスタイラーを握る。

チルットに向けてディスクを発射して、チルットと距離を取り、口ばしが届かない位置取りでラインを描いて行く。


 ヒトミ 「その調子……!」

 ナツヤ 「良いぞ……。ハジメのディスクに注目させて、ミナミのディスクは距離を取りながら……上手いぞ!」

 ▼ 41 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/21 01:57:52 ID:WYR2Hs92 [10/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ハジメ君のディスクを、チルットの目線の少し先で動かして、チルットの気を引く。

その隙に、ミナミちゃんのディスクでキャプチャしてしまおうという作戦だ。


 ハジメ 「上手いぞミナミ。そのまま!」

 ミナミ 「えぇ!」


  チルット 「ちるぅっ……!」


 サトシ 「……マズい! 一旦 引かないと!」

 ミナミ 「はぁ!?」

 ナツヤ 「お前このタイミングで何を……」


  チルット 「る゙ぅぅぅぅぅ!!!」 ゴォォォォ!
 
  ― バキッバキッ!


 ハジメ 「あっ……!?」

 ミナミ 「うそっ!?」


サトシ君が叫んだ、次の瞬間。

チルットが、雄叫びと共に紫色の旋風を発射した。


2人のディスクは、成す術なく巻き込まれて……。
 ▼ 42 州街道◆IVIG1YNTZ6 21/08/21 01:59:09 ID:WYR2Hs92 [11/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ハジメ 「ミナミ、エネルギーは!?

 ミナミ 「今ので半分以上 持ってかれたわ」

 ハジメ 「僕のは直撃したせいで4分の1も残ってない……!」

 サトシ 「“りゅうのいぶき”だよ、今のワザ」

 ナツヤ 「特殊ワザも使えるのか……」

 ヒトミ 「かなり興奮してるみたいだし、これじゃあキャプチャするの厳しいよ」

 ハジメ 「諦めちゃダメだ! きっと気持ちは通じるはずだよ!」

 ナツヤ 「あぁ! 皆で協力すれば、キャプチャは不可能じゃない!」


諦めちゃダメ――、確かにそうだ。

キャプチャを諦めるってことは、チルットと心を通わせるのを諦めるってことだもん。


でも、現実は厳しい。

“りゅうのいぶき”を使えるってことは、たとえチルットから距離を取っていても、ディスクを攻撃されてしまう。

普通なら、攻撃が当たらないように、スタイラーを操作してディスクを逃がす。けど、10メートル頭上、生い茂る葉で目視しづらい状況となると、簡単には いかない。


 ミナミ 「とにかく、私たちはスタイラーの回復よ」

 ナツヤ 「あぁ。その間、ヒトミとリーフでキャプチャにトライして。交代交代で行けば、そのうちチルットも疲れてくるはずだ」

 ヒトミ 「うん。みんなで力を合わせれば……」



 サトシ 「そんなの違うだろ!」



えっ……、サトシ君?

突然叫んだサトシ君に、皆が注目する。
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