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SS

ss》もしもサトシの精神性が無印1話からDP〜XYだったら

 ▼ 1 X夕虹X 25/09/13 20:18:20 ID:a6jkJHjo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サトシ「…zzz」

サトシ「っは!?おてんと…さん!?」


ある朝。

マサラタウンの少年、サトシは目を覚ました。

しかし今日は、彼がようやくポケモンをもらって、ポケモントレーナーとして旅立てる日のはず。

……なのに、とっくに日は昇っていた。

…………つまり、寝坊したのだ。



サトシ「行ってきまぁす!!」ヒュンッ

ハナコ「そんな格好でどこ行くn」
 ▼ 139 ニャヒート@フライングメモリ 25/11/08 08:01:31 ID:GV7Qv/2I NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 140 スカンプー@ゴーゴーゴーグル 25/11/10 20:13:26 ID:JEYsX0xo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 141 X夕虹X◆34j.QwNiVw 25/11/11 19:16:53 ID:AwiI2IyE [1/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
]4[
《サムライしょうねんのちょうせん!》





カスミ「きゃあああああああああ!!!」



サトシ「どうした?」

サトシがそちらを見ると、彼女はナマケモノのように木に掴まり、ぶら下がっていた。

カスミ「虫っ、虫ムシっ、無理ぃ」

それを聞いて、サトシとピカチュウは思わずため息をつく。この森に入ってから、この言葉を聞くのは何回目だろうか。


サトシ「無視すればいいんじゃないのか?」

カスミ「だってぇ、そこにいるじゃないそこに!」

カスミは地面を指差す。そこには、くりりとした目の虫ポケモンがいた。

サトシ「…牛ってか」

彼はそう呟き、「いい加減慣れたらどうだ」と続ける。しかし、カスミは ずてーん と木から落ちた。

カスミ「牛……牛って何よ、何が言いたかったのよ」

ダジャレ……? という考えが頭を掠めるが、まあそんなことないだろうと首を横に振るカスミだった。

サトシはそれを無視して、ポケモン図鑑を取り出す。

サトシ「ビードルだな」


ポケモン図鑑『ビードル。頭の上に鋭い毒針を持ち、外敵には それで威嚇する』


サトシ「毒針攻撃か……気をつけなきゃな」

カスミ「私が虫 嫌いなの知ってるでしょ〜! 早く追っ払ってよ!」

カスミにリュックを掴まれながらそう訴えられて、サトシは「分かってるって」と返した。

サトシ「勿論ゲットするぜ」

そしてサトシは腰のボールに手を伸ばすが――

サトシ(ぁっ、ゲットはポケモンバトルをしてからだった)

と思い出してその手を引っ込める。

サトシ「ピカチュウ、頼む!」
 ▼ 142 X夕虹X◆34j.QwNiVw 25/11/11 19:18:36 ID:AwiI2IyE [2/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しかしその視線の先でピカチュウは、

ピカチュウ「ぴかぴかぁ」スヤァ

布団に潜って寝たふりをしていた。


サトシとカスミは思わず ずっこけそうになる。

サトシ「っ……なんでそうなるんだよ」

サトシ「まあ、気が乗らないなら良いぜ。俺にはピジョンとトランセルもいるんだからな!」

カスミ「“運良く”ゲットできたポケモン達がね」

サトシ「っあのなあ……」

サトシは何か言い返そうとカスミの方を見る。しかし、その時カスミは自分の足下を見て固まっていた。

カスミ「ッ……!」

彼女の足に擦り寄るのは……、ビードルである。


カスミ「ぃいやあぁぁぁぁぁ!!」タッタッタッ

カスミ「早く捕まえなさいよおぉぉ」


サトシ「言われなくても!」

サトシは、逃げていくカスミを横目にモンスターボールを投げる。

サトシ「いけ! ピジョン!」


[ポンッ]


ピジョン「ぴじょ!」

サトシ「《かぜおこし》だ!」

ピジョン「ぴじょおお」バサバサ

ピジョンは そうしてビードルのバランスを崩し、空に舞い上がる。そこから一気に急降下して、ビードルの上すれすれを飛ぶ。

その勢いで風が起こる。

サトシ「いいぞ! その調子だ!」
 ▼ 143 X夕虹X◆34j.QwNiVw 25/11/11 19:20:03 ID:AwiI2IyE [3/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カスミ「こんな虫だらけの森なんて、大大大大だーいっきらい!」


カスミは、サトシ達の元を離れて、足早に森を歩いていた。しかし、


――突然。


誰かが刀を抜く音が聞こえ、カスミは後ろを振り向く。

すると、後方から刀を持った侍のような人がジャンプして来た。

カスミ「ひぃっ」

斬られる――と思ったが、その刀は頭を打ち据えることはなく、カスミの目の前で止められた。


???「横ちょんまげ娘、お主はマサラタウンから来たポケモントレーナーか?」

少し高い、いかにも少年といった感じの声で話しかけられるが、刀に目が行っているカスミはそれどころではない。

カスミ「っち、違うわよ」

???「そうか……すまなかった」

カスミが首を横に振ると、彼は刀をしまう。それからカスミに背を向け、こう一言告げた。

???「この森は、娘が1人で歩くには危ない」

???「悪いことは言わぬ。早々に立ち去れ」


そう言い残して、彼は姿を消した――


その途端、カスミは体の力が抜けて地面に座り込んだ。

カスミ「はぁ……」

カスミ「何なのよ、あれ。マサラタウンから来たトレーナーがどうしたっていうのよ…」


そこでカスミは はっ とした。

カスミ「ぁっ、サトシ!」
 ▼ 144 X夕虹X◆34j.QwNiVw 25/11/11 19:23:13 ID:AwiI2IyE [4/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
一方のサトシ達。

ピジョン「ぴじょお!」

ピジョンは、すんでのところでビードルの《どくばり》を躱した。

サトシ「良いぞ、ピジョン!」

サトシ(そろそろか…)

彼はタイミングを見て、ボールを掴んだ。

サトシ「今だ――」


突然、後ろから問いかける声が聞こえる。

???「お主、マサラタウンから来たポケモントレーナーか?」

サトシ「そうだけど、俺に用があるならちょっと待ってくれないか?」

サトシにそう聞いた侍のような少年は、きらーん と目を輝かせる。

そして刀に手をかける。


後ろなど全く見ていないサトシに、カスミの叫ぶ声が聞こえた。


カスミ「サトシーーー!!」


サトシ「?」


侍のような少年は刀を振り上げて……


思わず振り返ったサトシの鼻先に向けた。


サトシ「っ…! 俺っ、金なんて持ってないぜ」

流石の彼でも焦っているようだった。


しかし、侍のような少年は きっぱり と断言した。

???「拙者は強盗ではござらんっ」

駆けてきたカスミが問う。

カスミ「だったら何なのよ」

すると、返ってきたのは予想外の答えだった。


「拙者はサムライ。この森で、ポケモントレーナーの修行をしている」


いや、確かに衣装自体は侍を彷彿とさせるものである。しかし、森の中で侍のコスプレ(?)をしている子供などそうそう見ないものだろう。
 ▼ 145 X夕虹X◆34j.QwNiVw 25/11/11 19:24:47 ID:AwiI2IyE [5/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
侍少年「拙者と、ポケモン勝負をするでござる」

言いながら彼は刀を仕舞った。これで安心できる。

サトシはといえば、そんなことを言われるとは思っていなかったらしく、「ポケモン勝負?」と反芻した。

侍少年「いざ、尋常に勝負っ」


少しだけ、沈黙が訪れた。

ピカチュウが「ぴっかー?」と鳴く。


サトシ「っあ、ビードル!」

慌てて後ろを振り返るサトシだが、そこには既に“けむしポケモン”の姿はなかった。

ピジョン「ぴじょ〜」

呆けたように滑空するピジョンを、「戻れ、ピジョン」と言ってモンスターボールに戻す。


サトシ「…逃げられちゃったじゃないか」

サトシは恨めしそうに、しかしどこか あっけらかん とした態度でそう言った。

言われた侍少年は、「拙者のせいではござらん」と明るく返す。

侍少年「お主の腕が未熟だっただけでござる」

これは、分かりやすい挑発だ。

それに気づいたのか気づいていないのか、サトシは「まっ、そーだな」と呟く。それからこう続けた。

サトシ「だけど、俺で良いならポケモン勝負は受けるぜ」

侍少年「…」

侍少年は、少し誤算とばかりに顔を翳らせる。しかし、すぐに切り替えたようだった。

侍少年「臨むところでござる!」


ピカチュウ「ぴかぴかあ」

ピカチュウはニコっと笑った。
 ▼ 146 X夕虹X◆34j.QwNiVw 25/11/11 19:27:51 ID:AwiI2IyE [6/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サトシ「ピジョン、もう一回行ってくれ!」


[ポンッ]


ピジョン「ぴじょぉ…」ホー


あれ、と驚くサトシ。ボールから出てきたピジョンは、くたくた のようだった。

カスミ「何度も入れたり出したりするから、疲れちゃったのね」

カスミは心配そうに言った。サトシは頷く。

サトシ「悪い、ピジョン」


しかし、一度出してしまったので、今からポケモンを変えることは出来ない。そういうルールだと、サトシの頭には刻まれている。


侍少年「自分のポケモンの体調も分からないなんて、まだまだでござるな!」

サトシ「……」

侍少年「いけぇっ、カイロス!」


[ポンッ]


カイロス「がぃ〜」

サトシ「っこれは、カイロス」

彼は、ポケモン図鑑をポケットから出した。そしてカイロスにカメラを向ける。

ポケモン図鑑『カイロス、くわがたポケモン。2本の 長いパワフルな角を持っていて、一度挟んだら相手が千切れるまで離さない』


サトシ(“千切れるまで離さない”ってのは流石に言い過ぎだろ)

あまりの誇張ぶりに眉をひそめるサトシだが、一応信じない訳にはいかない。「あの角に気をつけるんだ、ピジョン」と警戒する。

ピジョン「ぴじょー」

侍少年が、「そっちから来たらどうだ」と挑発する。一方サトシがそれを断る訳もなく、「じゃー行くぜ」と言った。


サトシ「《すなかけ》だぁ!」

ピジョン「ぴじょ!」バサー

侍少年「そんな技は効かん! カイロス、《たいあたり》だ!」

カイロス「かいっ」ドンッ

ピジョン「ぴじょおぉ」
 ▼ 147 X夕虹X◆34j.QwNiVw 25/11/11 19:30:17 ID:AwiI2IyE [7/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カイロスの 長い2本の角 で、ピジョンは突き飛ばされてしまう。

彼はそのまま起き上がれない。

それを見て、侍少年は笑い声を上げた。

侍少年「ははははっ! 勝負あったでござるな」

それは負け犬の遠吠えでもなんでもない、ただの事実。つまり、このままではピジョンは負けてしまう。

サトシ「まずい、戻れっピジョン」

サトシは、咄嗟に手に持ったボールにピジョンを戻した。

侍少年「さーぁ、降参するでござる」

侍少年は揶揄うように言う。サトシは むっ として言い返す。

サトシ「まだまだ、俺にはこいつがいる」

サトシ「いけ、トランセル」

侍少年「動かないポケモンなどカイロスの餌食でござる」

彼の言う通りだ。サトシがなぜピカチュウを出さないのかは分からないが、それなりの理由はあるのだろうか?

そして、“カイロスの餌食”と言われてサトシはリアルな想像をしてしまう――あの角に挟まれて、トランセルの体が真っ二つになったら――。

嫌でも考えてしまうものだ。


カスミ「…サトシ、早くトランセルを戻した方が良いんじゃないの?」

流石にカスミもそう言った。しかし、侍少年は待ってくれない。

侍少年「もう遅いでござる!」

カイロスも、トランセルをロックオンして突っ込んでいく。

サトシは指示を出した。

サトシ「トランセル、《かたくなる》っ」

八方塞がりの中での唯一の選択肢だ。


トランセルが体に込める力を強くする。

カイロスも、角の挟む力を強くする。

トランセルに角が食い込む。大丈夫か、とサトシは歯を食いしばる。いや、大丈夫だ。あいつなら。
 ▼ 148 X夕虹X◆34j.QwNiVw 25/11/11 19:31:38 ID:AwiI2IyE [8/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
やがて、カイロスの角の細かいトゲが砕けた――。


ピカチュウ「ぴかちゅー!」

カスミ「やるぅ!」

サトシ「へへっ」

サトシは思わず にやけた。


半ば放心状態のカイロスを、侍少年が戻した。

侍少年「カイロス戻れ!」

[ピュウウ]

侍少年「なるほど、ならば……これで勝負だ!」

[ポンッ]


そうして現れたのは、まさかの――


トランセルだった。


サトシ「…何だって……」

侍少年「《かたくなる》だっ」

サトシ「こ、こっちも《かたくなる》」

侍少年「……もっと かたくなれっ」

サトシ「……こっちも、もっとだ」

侍少年「もっともっと かたくなれ」

サトシ「…………」


向き合う2匹のトランセルの影が動く。少しずつ、東に、東に……


そして、サトシは思い始めていた。

サトシ(これ……勝負つかないだろ)

と。
 ▼ 149 X夕虹X◆34j.QwNiVw 25/11/11 19:33:36 ID:AwiI2IyE [9/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コジロウ「疲れたよ」

紙で作られた車を背負って走りながら、コジロウは愚痴を垂れた。

ムサシ「文句言わないの」

同じく紙で作られた車を背負って走りながら、ムサシはその愚痴を咎めた。

ニャース「〜♪」

ニャースは、紙で作られた車の上に、優雅に腰掛けていた。


コジロウ「この装甲車、なんか意味あるの?」

ムサシ「この辺りには、スピアーの巣があるわ。それの用心よ」

ニャース「ぐだぐだ言ってないで急ぐニャ〜」

ムサシ「うるさいよ、お前はぁ」

ムサシが頭上を睨みつける。

コジロウ「自分だけ楽してるくせに」

コジロウも、ニャースの姿は見えなくとも頭上を睨む。

ニャース「おいらの足じゃ、届かないニャあ」

ニャースは頭の後ろで腕を組む。

その途端、2人は息を揃えて頭で頭上を叩いた。

ムサシ「…だったら走れ!」

ニャース「何するニャーー」

ニャースは無様に落っこちた。

それから、置いてけぼりにされないように必死で走る。
 ▼ 150 X夕虹X◆34j.QwNiVw 25/11/11 19:35:48 ID:AwiI2IyE [10/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
侍少年は顔をしかめる。

侍少年「まだまだでござる」

もう耐えきれないといった風にサトシは口をへの字にした。

サトシ「…あのさ、これいつまで続けるんだ?」

侍少年「決着がつくまででござるよ!」

サトシ(なんでポケモンバトルじゃなくて、忍耐勝負が始まるんだよ…)


カスミ「男の子って強情なんだから。いい加減にしなさいよ」

カスミが呆れたように言う。

――その時だった。


[ザワザワ……]

カスミ「…何の音?」

疑問を呈するカスミ。一方侍少年は何かを察したようで、「いかん、この勝負、一旦中止にするでござる」とボールを握った。

侍少年「戻れ、トランセル」


その音は、空からするようだった。

サトシとカスミが音に釣られて空を見ると、そこには大量に むしポケモンがいた……

サトシ「あれは……っ」

ポケモン図鑑『スピアー、どくむしポケモン。コクーンの進化系で、お尻の針は、極めて危険である』

侍少年「さっき逃したビードルが、仲間に知らせたのでござる」

彼は、そう言い残して逃げた。

侍少年「御免っ」


侍少年の行動にサトシ達が気を取られている間に、スピアーがトランセルに近づいていた――

スピアーは、トランセルを抱えて飛んでしまう。

サトシ「あぁっ!」

サトシ「戻れ、トランセルッ」

モンスターボールをトランセルにかざすサトシだが、それから出る光線のようなものは上手く当たらない。

サトシ「っダメだ、届かねぇ」
 ▼ 151 X夕虹X◆34j.QwNiVw 25/11/11 19:37:59 ID:AwiI2IyE [11/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そうする間にも、トランセルを抱えたスピアーの姿は森に消えてしまう。

そしてもう1匹のスピアーが近づいてくる。

ピカチュウが咄嗟に動き、電撃を放った。

そのスピアーは撤退して、サトシはその場に留まろうとする。

サトシ「トランセル……っ!」

しかし、カスミがサトシの手を取ってその場を離れた。

カスミ「早く逃げなきゃ」

サトシ「っそんな……」



侍少年、サトシ、カスミ、ピカチュウは、ひたすらスピアーから逃げていた。

カスミ「もうやだぁ」

ピカチュウ「ぴかちゅー…」

突然 侍少年が曲がって茂みに隠れたので、カスミとサトシもそれに倣った。

すると、スピアーはこちらには来ずに真っ直ぐ行った。3人は ほっ と息をつく。


……だが…

ふと前を見ると、そこには木にぶら下がった大量のコクーンがいた……

侍少年「…ここは、コクーンの巣でござるか…」

カスミ「ひぇぇぇ……」

サトシはポケモン図鑑をかざす。

ポケモン図鑑『コクーン、ポケモン。この姿は、ビードルが更に進化するための一時的な状態』

ポケモン図鑑『自分では殆ど動かないが、その進化系、スピアーになると極めて危険である』

スピアーの説明は“極めて危険”としか言っていないような気がする。それほど危険なのだ。

サトシは、その中にトランセルの姿を見つけた。

サトシ「あぁっ、トランセル! 良かっ――」

彼は喜んで声を上げるが、その口は隣にいたカスミに塞がれた。

カスミ「大声出さないでっ」


だが、それはもう遅かったらしい。

[ギロッ]

そんな声が、聞こえたような気がした。
 ▼ 152 X夕虹X◆34j.QwNiVw 25/11/11 19:40:11 ID:AwiI2IyE [12/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そして、コクーンの背中にヒビが入る。入ってしまう。

カサカサと嫌な音を立てながら、“彼ら”は殻から姿を現す――


カスミ「――嘘。進化しちゃった」


そうして、一行は まーたスピアーに追われる。

3人と1匹、全員が必死で走る。

少しして、先頭を走っていた侍少年がこう言った。

侍少年「ぁ、あれは拙者の家。飛び込むでござるっ」

彼らは迷わずに突入した。

直ぐに扉を閉める――。

[グサッ]

スピアーの針が、木造の家の扉に刺さった。しかしスピアーは中に強引に入ってくることはしなかった。

サトシ「はぁ……」


侍少年「お主がビードルをゲット出来なかったせいで、酷い目にあったでござる」

兜を外しながらそう言う彼に、サトシは反論した。

サトシ「君が邪魔したからじゃないか」

しかし、侍少年は正論を返した。

侍少年「自分のポケモンを見捨てるような奴に、文句を言われる筋合いは ないでござる」

サトシ「!!」

サトシ「…俺は、トランセルを見捨てたりなんてしない」

彼は拳を握る。ピカチュウは、心配そうに「ちゅう?」と鳴いた。


侍少年「お主の前にこの森を通っていったマサラタウンのトレーナー達は、3人共すごい奴らだったでござる」

サトシは「3人?」と反応した。

サトシ「シゲル達だ……その3人とも戦ったのか?」

侍少年「ああ。素晴らしい勝負をしたでござる」
 ▼ 153 X夕虹X◆34j.QwNiVw 25/11/11 19:42:56 ID:AwiI2IyE [13/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
侍少年「3人とも、自分のポケモンを立派に育てていたので、流石の拙者も3連敗をしてしまったでござるよ」

侍少年「だから今度マサラタウンのから来るトレーナーには、絶対に勝つと心に決めたのでござる」

カスミ「それでマサラタウンのトレーナーに拘ってたのね」

彼はそれには答えなかった。正解だということだろう。

それからサトシを見て、見下すように言った。

侍少年「彼らに比べて、お主はまだまだでござるな」

サトシ「っ……」

歯を食いしばる。でも、言い返せなかった。



夜。

カスミは静かに、侍少年はイビキをかきながら寝ていた。

そんな中、サトシは1人仰向けになっていた。

サトシ「…トランセル……」

そう、見捨てる訳などないのだ。

たとえ、その時の判断のせいで独りぼっちにさせてしまったとしても。
 ▼ 154 X夕虹X◆34j.QwNiVw 25/11/11 19:45:42 ID:AwiI2IyE [14/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


朝になった。

スピアーもコクーンも寝ているようだ。

その中にトランセルがいるのを確認して、サトシは草の中を匍匐前進す r ――

[ドゴッ]

ニャース「こんなとこでこそこそ何をしてるニャ?」

ニャースが、急に上から降ってきてサトシの頭を踏みつけた。

サトシ「ニャース、何するんだ」

サトシが体を起こしてニャースを退かすと、ニャースに引っ掻かれた。

ニャース「ニャース“様”ニャ!」

サトシ(理不尽……)ヒリヒリ


•••「そして!」

+++「忘れちゃいけない」

•••「この2人」

サトシは驚いて崖の上を見る。


ムサシ「世界の破壊を防ぐため」

コジロウ「世界の平和を守るため」

ムサシ「愛と真実――」

そこで、サトシが耐えきれずに口を挟んだ。

サトシ「静かにしてくれよ…!」

ムサシは いらっ とする。

ムサシ「これやんないと気分が乗らないのよ!」

サトシ「っで、でも」

サトシは後ろの木を気にする。
 ▼ 155 X夕虹X◆34j.QwNiVw 25/11/11 19:48:38 ID:AwiI2IyE [15/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ムサシ「愛と真実の悪を貫く」

コジロウ「ラブリーチャーミーな敵役」

ムサシ「ムサシ!」

コジロウ「コジロウッ」

サトシ「大声出すなよ、目ぇ覚まされちゃうだろ…!?」

しかしその言葉は逆効果で、さらに声を張り上げる2人。

ムサシ「銀河を駆ける、ロケット団の2人には!」

コジロウ「ホワイトホール、白い明日が待ってるぜ!」

ニャース「にゃーんてニャ!」

とどめに、あろうことか演出用の爆弾が爆発した。

案の定スピアーが目を覚ます……


サトシ「くそ……」

だが、何故か彼らは異常事態に気付いていないようだ。

ムサシ「ジャリボーイ、お前のピカチュウを大人しく渡しな。そうすりゃ、お仕置きは勘弁してやっても良いよ」

サトシ(なんでそんな上から目線なんだよ。それよりお前ら、今ピンチだぞ?)

サトシ「ここにはピカチュウはいないぜっ」

それから挑発するようにこう付け加えた。

サトシ「まー、いても絶対渡さないけどな」

彼は走り出す。ロケット団がそれを追う。

サトシは密かにこんな計画を立てていた――ロケット団を囮にして、正面突破をしよう、と。

スピアーが向かってくるが、サトシは走る。


ロケット団も走る。
 ▼ 156 ラプラス@ネクロプラスソル 25/11/11 19:50:15 ID:N0ZolZvc NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
(……これ、アニポケの展開をダラダラ書いてるだけでは?)
 ▼ 157 X夕虹X◆34j.QwNiVw 25/11/11 19:50:42 ID:AwiI2IyE [16/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

サトシ「うらぁぁぁ!」

スピアーに触れる直前――、サトシは前転をして躱した!

当然そうなればヘイトが集まるのは……

ロケット団「「「!?」」」

この3人組である。


だが、彼らは余裕そうだ。

ムサシ「こういう時の 装甲車!」

コジロウ「持ってて安心 装甲車」

コジロウは地面にあった装甲車を持ち上げる。

が、そこには大量にビードルが付いていた。

ニャース「にゃぜ、にゃぜ……食われてるニャ!」

ムサシ「軽くするために紙で作っていたのね…」

コジロウ「どーだ、参ったか」

ニャース「アホー!!」


ロケット団「「「やーなカンジー!!」」」

3人は、スピアーに追われながら走っていった。
 ▼ 158 X夕虹X◆34j.QwNiVw 25/11/11 19:53:56 ID:AwiI2IyE [17/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サトシ「ごめんな、トランセル」

一方こちらは特に何事も起きず、目的のトランセルの元へ辿り着いていた。

サトシ「さ、一緒にみんなの所に戻ろうぜ」


――しかし、返ってきたのは否定の言葉だった。

トランセル「イヤ、イヤンセル」

サトシ「トランセル……っ」


そこに、残っていたスピアーが襲いかかってくる。サトシはトランセルを抱えて逃げた。

サトシ「確かに俺はお前を置き去りにした。ごめん……でもあれは――」

言葉を続けようとすると、サトシはつまずいてしまった。トランセルが手から離れる。

トランセルが転がる。その顔にはなんの感情も示されていない、そう感じる。


サトシ「……なんか、言い訳ばっかりだな」

突然サトシは、完全に体を起こさず、帽子に顔を隠しながらそう喋り始めた。

サトシ「言い訳はもうしない」

サトシ「…昨日お前が攫われたのは、俺に力が無かったからだ……俺のせいだ」

どことなく声が震えているようだ。

サトシ「これからは、仲間を置き去りにして逃げることなんて絶対にしない。絶対……」

それを聞いたトランセルには、心に響くものがあったらしい。目が潤んでいる。
 ▼ 159 X夕虹X◆34j.QwNiVw 25/11/11 19:56:02 ID:AwiI2IyE [18/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サトシは立ち上がり、トランセルに近づく。

彼は、真剣な目でトランセルを見つめる。トランセルは、ただサトシを見つめ返している。


だが、そんな瞬間を邪魔する者が現れた――スピアーだ。サトシは はっ とする。


カスミ「危ない!」

網の傘のような物の中で、カスミがそう叫ぶ。侍少年もピカチュウも、それの中で心配そうな表情だ。

侍少年「スピアーの《ダブルニードル》でござる」

ピカチュウ「ぴかぁ!」


スピアーはサトシとトランセルに近づく。サトシは動けない。


――その時だった。

トランセルの目元が きりっ とし、それからスピアーに体当たりをしたのだ。

スピアーはすぐに退散した。

宙に浮いたトランセルを、サトシが受け止める。

サトシ「トランセル!」

スピアーを追い払ったものの――、トランセルの背中の辺りに、大きく切り裂かれたような傷がついていた……。

サトシはただトランセルの名前を呼ぶ。カスミ達が、網の傘に入りながら近づいてきた。


突然、トランセルの身体が光る。

それは、進化の光――

カスミは息を呑み、ピカチュウは「ぴかぴぃか」と感心したような声で鳴いた。
 ▼ 160 X夕虹X◆34j.QwNiVw 25/11/11 19:59:40 ID:AwiI2IyE [19/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そしてトランセルという名の殻から、何者かが姿を現す。それは、

サトシ「ッ!!」

サトシ「……バタフリー……!」

バタフリー「ふりぃぃぃぃ」


カスミ「進化したんだわ!」

ピカチュウ「ぴっか〜」

侍少年も、ぱぁっ と顔を輝かせている。

ポケモン図鑑『バタフリー、ちょうちょポケモン。バタフリーは、トランセルから一週間で進化する』

ポケモン図鑑『雨の日でも飛ぶことのできる羽を持っている』


きょとん と図鑑を見ていたサトシだが、バタフリーが彼の周りを飛んだので、サトシも思わず微笑んだ。


……しかし、スピアーとは本当に執念深いポケモンである。

カスミ「またスピアーが来るわ…」

サトシ「っ!? またか!」

そう、また来たのだ。集団で。

その時、バタフリーがサトシの横に並んだ。

サトシ「…バタフリー…」

バタフリー「ふりぃぃ、ふりぃふりぃ」

バタフリーは、サトシと一緒に戦う、そう言っているようだった――。

サトシは顔を輝かせた。純粋に、彼は喜んでいた。

サトシ「いいのか……?」

バタフリー「ふりぃ!」コクリ
 ▼ 161 X夕虹X◆34j.QwNiVw 25/11/11 20:00:54 ID:AwiI2IyE [20/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サトシ「っよし…」

サトシ「バタフリー、《ねむりごな》だ!」

バタフリー「ふりぃぃぃぃぃ!」


バタフリーは、体から粉を撒き散らす。

それを浴びたスピアーは、1匹、また1匹と落下していく。

バタフリー「ふりぃぃぃぃ」

スピアーがまた落ちる。

ビードル達も、紙の装甲車と共に眠る。

ロケット団も、地面に倒れ込んでいた。


サトシ「よっしゃ、みんな眠ったぞ!」

サトシ「っへへへっ!」


既に網の中から出ていた侍少年は、こう呟いた。

侍少年「進化したばかりのバタフリーを使いこなすとは、サトシ殿、やるでござるな」

ピカチュウ「ぴかぁちゅぅ!」
 ▼ 162 メロエッタ@アクアスーツ 25/11/11 20:02:53 ID:ntnANbmM [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
今初めて見つけて全部読んだけど面白い、支援
クソみたいなレス多すぎて見てるこっちが腹立ったわ、ああいうのは無視していいからね
 ▼ 163 X夕虹X◆34j.QwNiVw 25/11/11 20:04:34 ID:AwiI2IyE [21/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

サトシ達は、場所を移動していた。

侍少年「この道を行けば、ニビシティでござる」

サトシは、ありがとう、とお礼を言う。いかにも子供といった性格ではあったが、きちんとした優しい子だった。

それから、サトシは付け加える。

サトシ「だけど、ポケモン勝負……決着、ついてないぜ」

侍少年「拙者は負けと分かっている勝負は せぬ主義。バタフリーを使いこなせるようになるまで、この森で修行を続けるでござる」

彼は、そう返した。

サトシ「またポケモン勝負 しようぜ」

侍少年「是非 するでござる!」

カスミ「その時は、トランセル対トランセルだけは やめてよね」

ピカチュウ「ぴか、ぴか」コクコク



サトシ「じゃ、またな、サムライ」

カスミ「バイバーイ!」

ピカチュウ「ぴかちゅ〜」

侍少年「……さらば」

彼は、感慨深そうに、でもどこか決別したような表情でそう告げた。




そしてサトシ達は、トキワの森を抜け、ニビシティを目指すのだった――
 ▼ 164 X夕虹X◆34j.QwNiVw 25/11/11 20:06:53 ID:AwiI2IyE [22/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

コジロウ「…どうやって脱出するんだよ」

ムサシ「今それを考えてる所じゃない!」

ニャース「にゃんとかしろニャあ」

ムサシ「うるさいわよ!」

彼らは、何故か紙で作ったミノに体を包み、木からぶら下がっていた。

カモフラージュのためだろうか。

しかし、その話し声は勿論のことコクーンに届いている。

コクーン「ギロッ」キラッ

スピアー「」ピカーン

コジロウ「…もしかして」

ムサシ「もしかして…」

スピアー「」ブゥゥン

ロケット団「「「やなカンジーーぃ」」」



3人は、いつまでこの森にいることになるのだろうか……?
 ▼ 165 X夕虹X◆34j.QwNiVw 25/11/11 20:08:54 ID:AwiI2IyE [23/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

僕のペースが遅すぎるので、個人的に12話まで行ければいいかなと思います

始めたのは僕なのに中途半端ですみません。
 ▼ 166 ヒスイマルマイン@ひかりのねんど 25/11/11 20:10:20 ID:ntnANbmM [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
>>165
自分がやりたい回とかセレクション入りしてる評価高い回だけやるとかどう?
 ▼ 167 ゾウドウ@やけどなおし 25/11/11 21:01:41 ID:.mPIXOKI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ss速報とかハーメルンやpixivとかでやることも考えておくとか
 ▼ 168 セレビィ@パワーアンクル 25/11/13 18:19:17 ID:/Rsgnkec NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 169 ジガルデ@もえぎいろのたま 25/11/15 16:40:53 ID:b6Y6zN.o NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 170 メガカイリュー@もうどくプレート 25/11/19 17:52:48 ID:CXtEKtHE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 171 グライオン@せんせいのツメ 25/11/23 18:58:07 ID:ptGI9K/g NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 172 フリーザー@ダウジングマシン 26/01/05 00:43:18 ID:0cX.DgZQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 173 夕虹◆UifOI6C1RA 26/01/05 12:21:49 ID:g572sf.w NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
たくさんの支援ありがとうございます。
このSSの続きはハーメルンで書くことにしました。
>>165で「12話まで」と言っているんですけど、ハーメルンの方ではそうはならないと思います。更新は遅いものの……
 ▼ 174 アルクジラ@いじげんウタンのみ 26/01/05 12:32:42 ID:M1RkZieg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>173
りょ
見に行くわ
 ▼ 175 ニャビー@サファリボール 26/01/06 01:18:24 ID:kQ7st3i6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
楽しみにしとく
 ▼ 176 メガレックウザ@メリープのけだま 26/01/10 08:53:13 ID:cE0gpy/Y NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
もうハーメルンに投下したんか?
 ▼ 177 カイロス@てんくうのせきばん 26/01/15 20:49:28 ID:2NpEIcwk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>176
少しづつ投下していきます

遅くなりましたが、今まで支援してくださった皆様、本当にありがとうございました! これからも頑張りますっ
 ▼ 178 ハネッコ@キノコよせだま 26/01/16 08:49:18 ID:qucIC/6Q NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙
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