▼  |  全表示182   | << 前100 | 次  |  履歴   |   スレを履歴ページに追加  | 個人設定 |   ▼   
                  スレ一覧                  
SS

【SS】 カロスの誓い、はじまりの日

 ▼ 1 甲州街道◆Np5ysP3gOE 25/09/25 21:54:04 ID:mRX.w486 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


【SS】 サトシ(18)「同窓会?」【リメイク】

https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=2394645

上記SSの続編です。


サトシのカロス旅から5年後をイメージしており、サトシ、セレナ、シトロンは18歳、ユリーカは13歳の設定です。

なお、以下の あらすじ をご覧いただければ、上記SSを読む必要はありません。

 ▼ 143 甲州街道◆Np5ysP3gOE 25/10/05 02:17:16 ID:q8Ckt2oI [1/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

水が――砲弾のように発射された水が、ピカチュウに直撃したのだ。


私たちの頭上から、一直線にピカチュウに放たれた鋭い水。

突然のことすぎて、流石のサトシとピカチュウも反応できなかった……。



 ユリーカ 「なに!? どうしたの!?」

 シトロン 「いまの……“ハイドロポンプ”です!」

 セレナ 「上から……!?」



振り返って上を見る。

古びた建物の窓が、一つだけ開いている。

あの窓から“ハイドロポンプ”を打たれたってこと!?



 スワミ 「今よミミロップ! “ピヨピヨパンチ”!」

 カイド 「たたみかけろ! “りゅうのはどう”!」

 ミミロップ 「ミミロォ!」

 ドラミドロ 「ドォゥ!」


 サトシ 「マズい……! かわせピカチュウ!」


 スワミ 「遅いわよ!」

 カイド 「これで終わりだ!」


 ピカチュウ 「びっ!? かっ……」 ドサッ


 サトシ 「ピカチュウ!?」



それは、一瞬の出来事だった。


“ハイドロポンプ”で不意打ちを喰らったピカチュウに、ミミロップとドラミドロの攻撃が連続で直撃。

身構えることも出来なかったピカチュウは大ダメージを受け、その場に倒れてしまう。
 ▼ 144 甲州街道◆Np5ysP3gOE 25/10/05 02:18:24 ID:q8Ckt2oI [2/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


 ピカチュウ 「っ……」 ググッ



けれど、流石サトシのピカチュウ。

これまで数多くの困難を乗り越えてきたピカチュウは、なんとか立ち上がった。



  ― カチャッ



 オカヤ 「凄いね。これでダウンしないのか」

 ゴルダック 「ゴゥル!」


 ユリーカ 「だれっ!?」

 シトロン 「まだ仲間が……!」



建物の扉が開き、出てきたのは、オカヤ。

ポケモンを強制的にメガシンカさせる薬を作る研究をしている、研究オタクと呼ばれていた、オカヤ。

隣には、“ハイドロポンプ”を放ったであろうゴルダックの姿も。



 オカヤ 「2階からバトル見てたよ。きみ、女の子なのに随分と良いピカチュウを持ってるね」


 サトシ 「っ……!」


 オカヤ 「けど、研究の邪魔はさせないよ」


 サミコ 「オカヤ……、もう終わりにしようよ! 私とカツマは……もう、これ以上はムリ! ムリだからっ……!」


 スワミ 「アンタたち裏切るって言うの!?」

 カツマ 「おいおい。たった今、形勢逆転したんだぜ? 今なら裏切りの撤回、認めてやってもいいんだぞ?」


 サミコ 「私はこれ以上、ポケモンを傷つけるのは見たくない……!」

 カツマ 「ごめんっ……僕も、もう、これ以上、苦しみたくないっ……!」


 スワミ 「チッ! 馬鹿な奴らね」

 ▼ 145 甲州街道◆Np5ysP3gOE 25/10/07 22:57:48 ID:ywvs3P5I [1/35] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

 サトシ 「……お前が、違法な研究を進めてるのか?」

 オカヤ 「いかにも。……って言うか、お前、男かよ」

 サトシ 「こんな研究やめろ! ポケモンたちを実験に使って、傷つけて! 許されると思ってるのか!?」

 オカヤ 「研究に犠牲は つきものさ」

 サトシ 「それに! メガシンカはポケモンとトレーナーの絆が生み出したパワーアップなんだ! それを薬で無理矢理やるなんて、絶対に間違ってる!」

 オカヤ 「ふん……。勘違いしてるようだけど、僕はパワーアップに そこまで興味は無い。パワーアップに拘ってるのは、カイドとスワミの方だ」

 サトシ 「……どういうことだ?」

 オカヤ 「僕はね、水タイプのポケモンの美しさに興味があるんだ。水のように滑らかで、しなやかで、変化に富んだ生態と能力。透き通るような声、透明感のある艶やかな佇まい、凛とした雰囲気。水タイプこそ、生命の幻術! そんな美しい水タイプのポケモンを、さらに美しく! さらに芸術的に! まさしく完璧な姿へと導くために、メガシンカの可能性を探っているんだ」

 サトシ 「……水タイプが美しいって気持ちは分からなくもないけど、無理矢理メガシンカさせるのは絶対にダメだ!」

 オカヤ 「うるさい! 僕は5年前に見た、あの美しいメガシンカを、どうしても もう一度見たいんだ! それが僕の研究の目的だ! 水タイプ以外とか、薬を高く売るとか、そういうのは どうだっていい。僕は僕の目指すものがある!」

 サトシ 「だったら! もっと正当な手段で研究するべきだろ!? 野生ポケモンを実験台にして何とも思わないのかよ!?」

 オカヤ 「安心しろよ。今は野生ポケモンの実験は していない。今は薬を改良する段階だからね」

 サトシ 「そういう問題じゃない!」

 オカヤ 「そもそも、博士課程も取っていない僕が研究を申し出たって、適当に遇われるのがオチだ。なら独自研究するしかない。カイド君たちに金銭面で協力して貰う代わりに、彼らの求める薬も作れないかと模索中なのさ」

 サトシ 「そんな理由で……!」


 スワミ 「ごちゃごちゃ うるさいわねぇ!」

 カイド 「時間稼ぎのつもりか? そのズタボロのピカチュウで、まだオレたち3人に刃向かおうって言うのか?」


 サトシ 「クッ……!」

 オカヤ 「あの2人は あぁ言ってるけど、僕は僕の研究が続けられれば それでいい。5年前に見た、あの美しいメガシンカの再現! 格好良さと神秘さと美しさが見事に調和した、まだ見ぬメガシンカを!」

 サトシ 「まだ見ぬメガシンカ……?」

 オカヤ 「そうなんだよ! これまで発見されていなかった、新たなメガシンカの姿! あの災害のせいで詳しい映像は残っていないし、話題からも消え去ってしまったけど、あれは明らかに新たなメガシンカ!」
 ▼ 146 甲州街道◆Np5ysP3gOE 25/10/07 22:58:34 ID:ywvs3P5I [2/35] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

オカヤは得意気に話を続ける。

私が初めて ここに来たときも、オカヤ、そんなこと言ってたっけ。

自分の真の目的は、過去に見たメガシンカを、もう一度見ることだと。



 ユリーカ 「新しいメガシンカ……、ちょっとワクワクするけど……」

 シトロン 「5年前と言えば、フレア団の事件で、ミアレが壊滅的な被害を受けた時ですね」


 オカヤ 「そう、そうだんだよ! そのせいで、残っている映像と言えば、客席から撮られた遠く小さい画像や動画のみだ。そしてその後の目撃情報は一切無し!」


 シトロン 「客席……?」


 オカヤ 「あの美しい姿をどうしても見たいんだ! けどお前の言う通り、メガシンカは絆が重要だ。メガストーンも必要だ。手間がかかる。だったら薬でメガシンカできれば、より簡単に、より早く、その姿を見る事ができる!」


 サトシ 「絆を無視したメガシンカに、メガシンカの価値は無い!」

 ユリーカ 「そうだよ! メガシンカは、ポケモンとトレーナーの仲良しの証拠なんだから!」

 セレナ 「うん! メガシンカは、人とポケモンの心が通じ合って、はじめて出来るものなの! 簡単とか早くとか、そんなの根本的に間違ってるわ!」

 シトロン 「その通りです! しかも遺伝子操作に手を出すなんて、絶対的なタブーです! 生態系の秩序を乱す行為です!」


 オカヤ 「僕には僕の信念がある! 社会とか秩序とか! そんなの知ったこっちゃ無い!!!」



 サトシ 「―――!」



 カイド 「そろそろ お喋りは終わりだぜ?」

 スワミ 「もうちょっとで研究は形になるのよ。もうちょっとでね! 邪魔者は消えて貰うわ!」


 ユリーカ 「デデンネ、ピカチュウが休んでいる間だけ、1人で戦える……?」

 デデンネ 「でねぇ……」

 シトロン 「くっ……! 妨害電波さえ、なんとかできれば……!」
 ▼ 147 甲州街道◆Np5ysP3gOE 25/10/07 22:59:32 ID:ywvs3P5I [3/35] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

もう、これ以上は、待ってくれないらしい。

妨害電波を何とかできない以上、私とシトロンは、何の役にも立てない。

唯一外に出ているデデンネに、相手のポケモン3体の相手をさせるのは、いくらなんでも可哀相だ。



 サトシ 「―――」



サトシとピカチュウの方に目をやると――。

サトシは目を瞑り、無言で立っている。危機的な状況だと言うのに。



 セレナ 「……サトシ?」

 シトロン 「どうしたんですか?」




 サトシ 「秩序――か」



 セレナ 「えっ?」

 ユリーカ 「ねぇサトシってば!?」



 サトシ 「そうだよな! 秩序を乱すようなこと、お前たちは許せないもんな!」



サトシ、誰かと話をしているの……?


そんな疑問を、彼に問いかけようとした、その時――。


 ▼ 148 甲州街道◆Np5ysP3gOE 25/10/07 23:01:08 ID:ywvs3P5I [4/35] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



 ゲッコウガ 「こぅが!」 シュタッ!



 ジガルデ(Z-1)「おろろぉぉ!」

 ジガルデ(Z-2)「うろろぅぅ!」



 サトシ 「……へへっ。久しぶりだな、ゲッコウガ!」


 ユリーカ 「プニちゃん!!! お友達も!」

 シトロン 「ゲッコウガと、ジガルデ!」

 セレナ 「うそっ……ゲッコウガ!?」



颯爽と現れたゲッコウガ。

勿論、サトシのゲッコウガ。

カロスの地下深くに残った負のエネルギーを根絶するために、5年前にお別れした、サトシのゲッコウガ。



 サトシ 「来てくれたんだな!」

 ゲッコウガ 「こうが!」

 サトシ 「オレたちは、離れ離れになっても繋がってる――、あの時たしか、そんな話、したっけな」

 ゲッコウガ 「こぅ!」

 サトシ 「その通りだったな。今こうやって、オレとお前は再会できた。……秩序を乱す奴らを、止めるために!!!」

 ゲッコウガ 「こぅが!!!」
 ▼ 149 甲州街道◆Np5ysP3gOE 25/10/07 23:01:43 ID:ywvs3P5I [5/35] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

そして、プニちゃん こと ジガルデ。

私たちと一緒に旅して、ユリーカがお世話してあげてて。

世界や生態系の秩序を維持している、5年前のフレア団事件の時に大活躍したポケモン。



 ユリーカ 「プニちゃんっ……! 元気だった!? お友達も! 久しぶりだねっ! 会いたかったよ! 私、ポケモントレーナーになったんだよ! 旅もしたの!」

 デデンネ 「でねねぇ!」

 ジガルデ(Z-1) 『見ていたぞ、ユリーカ。立派に成長したのだな』

 ユリーカ 「えへへっ」



 スワミ 「なんだよその緑のヤツ……」

 カイド 「ゲッコウガ……、お前のポケモンなのか!?」


 サトシ 「あぁ。オレの大切な仲間だ!」

 ゲッコウガ 「こぉ!」



 オカヤ 「美しいっ……!」



 サトシ 「えっ?」


 オカヤ 「ゲッコウガ……、ゲッコウガこそ、僕の理想のポケモン! その忍者のようなフォルム、素早い身のこなし、細身から放たれる力強い攻撃! 奥深い艶やかさに、凜とした雰囲気を兼ね備える、まさに水ポケモンの神秘! 僕の研究目的は、ゲッコウガのメガシンカ!!!」


 サトシ 「ゲッコウガの?」


 オカヤ 「そう! 5年前のカロスリーグで見た、ゲッコウガのメガシンカ! 残念ながら優勝せず、その後の災害のせいもあって、公式な記録は残らずに、話題からも消え去ってしまった。その後の目撃情報も一切ない。僕は、あの姿をもう一度この目に焼き付けたいんだ! 会いたい……あの美しいメガゲッコウガに、もう一度会いたい! そのためにずっと研究してるんだ!」



待って。

オカヤが5年前に見て憧れていたポケモンって、ゲッコウガのことだったの?

しかも、カロスリーグって……!
 ▼ 150 甲州街道◆Np5ysP3gOE 25/10/07 23:02:24 ID:ywvs3P5I [6/35] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


 サトシ 「……そうか。そうだったのか」


 オカヤ 「だから……、たとえゲッコウガのトレーナーであっても、僕の研究の邪魔をする奴は排除するのみだ!」


 サトシ 「なら……、教えてやるよ」 バサッ!



サトシが、ウィッグを外す。ブラウスを脱ぎ捨てる。


黒インナーとデニム、スマートなサトシの体つきが際立ち、その動作は まるで、主人公が登場した漫画のクライマックスのようで。


女装を解いたサトシは、本当に……本当に、格好良い。



 スワミ 「えっ!? ねぇ、コイツって……!」

 カイド 「おまえ、何年か前のWCSで優勝した……!?」

 
 カツマ 「……マジか」

 サミコ 「あなたは……!」



 サトシ 「オカヤ……って言ったな。お前が会いたがってたのは――」



 オカヤ 「ぁっ……あぁぁっ!?」



 サトシ 「オレたちのことだ! 行くぜゲッコウガ! うおおおぉぉぉぉ!!!」

 ゲッコウガ 「こうがぁぁぁぁ!!!」


 ▼ 151 甲州街道◆Np5ysP3gOE 25/10/07 23:02:53 ID:ywvs3P5I [7/35] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

サトシとゲッコウガが雄叫びを上げる。


2人の想いがシンクロする。


2人の心が重なり合う。


あの時と同じ。あの時と変わらない。


5年の時が経っても、2人の絆は、あのときのまま。



水柱が立ち上り、その中から現われたのは――。



 サトシ 「……へへっ。オレたちの絆、簡単には弱まらないってことだよな!」

 サトシゲッコウガ 「こぅがぁ!」



サトシゲッコウガ――。

どことなくサトシの雰囲気を感じられる姿。背中の大きな水手裏剣。

サトシとゲッコウガの絆が極限まで高まって生まれた、唯一無二の姿。



 オカヤ 「おっ、お前たち、だったのか……! 災害の後、5年もの間、なに一つ手がかりを掴めなかった、ゲッコウガのメガシンカ……!」


 サトシ 「メガシンカ……とは、ちょっと違うんだよな」


 オカヤ 「違う? じゃあ、その美しい姿は、いったい……!?」


 サトシ 「キズナ現象。オレとゲッコウガだけの、オレたちだけの、パワーアップだ!」

 ゲッコウガ 「げこぉぅ!」



キズナ現象――。

サトシとゲッコウガの絆が極限まで高まり、2人の想いがシンクロした時に変化することができる、2人だけの進化。

こんな事例は ほとんど無く、数百年前に一度だけ起きたことがあると、古い文献には載っていたらしい。

 ▼ 152 甲州街道◆Np5ysP3gOE 25/10/07 23:03:36 ID:ywvs3P5I [8/35] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


 カイド 「っ……! 出ろクロバット! ドラミドロに加勢だ!」

 クロバット 「ロバッ!」

 ドラミドロ 「ドロォ!」

 スワミ 「怯むんじゃないわよミミロップ! 出てきてコジョンド!」

 ミミロップ 「ミッロォ!」

 コジョンド 「コジョ!」



4対1――。

普通なら圧倒的な不利な状況だ。普通なら。



 スワミ 「ミミロップ“でんこうせっか”で牽制して! コジョンドは隙を見て“とびひざげり”!」

 カイド 「ドラミドロは“りゅうのはどう”! クロバットは上空で待機!」

 ミミロップ 「ロップ!」

 ドラミドロ 「ドッロォォォ!」


ミミロップが目にもとまらぬスピードで、ゲッコウガに迫る。

それに続いて“りゅうのはどう”が打ち込まれる。

コジョンドは攻撃の構えを作り、クロバットは大きく羽ばたいて上空へ。


これらが一瞬で動く。

バトルに慣れていない私には、とてもじゃないけど反応しきれない。

 ▼ 153 甲州街道◆Np5ysP3gOE 25/10/07 23:04:07 ID:ywvs3P5I [9/35] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

 サトシ 「……遅いぜ! そこだゲッコウガ! “いあいぎり”!」

 ゲッコウガ 「こぅ!」 バキッ!

 ミミロップ 「ミ゙ッ!?」


ゲッコウガが水エネルギーを手に纏わせると、高速で迫り来るミミロップの脇腹に、寸分の狂いも無く打ち込んだ。

シンクロしたサトシとゲッコウガの、力強い攻撃。


 サトシ 「ジャンプだ! 次はクロバット!」

 ゲッコウガ 「げこぉ!」 シュバッ!

 クロバット 「バッ!?」

 サトシ 「“つばめがえし”!」

 ゲッコウガ 「こぅがぁ!」 ズガガッ!

 クロバット 「っ!?」


大きくジャンプしたゲッコウガは、“りゅうのはどいう”を回避するとともに、上空のクロバットに急接近。

その想定外の脚力、瞬発力に、クロバットは不意を突かれたようで。

ゲッコウガの脚と拳にエネルギーが纏い、クロバットに連続で打撃を与える。まさに燕返し。


 カイド 「クソッ! 狙えドラミドロ! “ヘドロばくだん”!」

 サトシ 「“かげぶんしん”!」

 ゲッコウガ 「こぅ!」 ババッ!


ゲッコウガの分身が、上空に生み出される。

10……、20……、30……、数えられない分身が、四方八方に広がって、もうどれが本体かなんて分からない。



 サトシ 「これが……、オレとゲッコウガの! キズナの力だ! “みずしゅりけん”!」

 ゲッコウガ 「げこっ! こぅがぁぁぁ!」

 ▼ 154 甲州街道◆Np5ysP3gOE 25/10/07 23:04:53 ID:ywvs3P5I [10/35] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

ゲッコウガが背中の水手裏剣を構える。


分身全ても、背中の水手裏剣を構える。


全ての水手裏剣のエネルギーが、ゲッコウガ本体の水手裏剣に凝縮されていく。


増大したエネルギーの水手裏剣は、より大きく、より青く、より美しく躍動する。



 サトシ 「打ち込めぇぇぇぇぇ!!!」

 ゲッコウガ 「こうがぁぁぁぁぁ!!!」


 ドラミドロ 「ドロッ……!」

 コジョンド 「ジョッ……!」



巨大な水手裏剣が、ドラミドロとコジョンドを呑み込んだ。

もはや光線のような“みずしゅりけん”。

当時カロスリーグでも最後の一撃に使われた、強力な威力を誇る、サトシとゲッコウガの渾身のワザ。



 カイド 「なっ……馬鹿な!?」

 スワミ 「うそ、でしょ……。だって私たち、一撃も喰らわせてないのよ!?」



サトシとゲッコウガの力は、全く衰えていなかった。

2人のポケモン、ドラミドロ、クロバット、ミミロップ、コジョンドは、戦闘不能だ。

スワミの言う通り、ゲッコウガは、一撃もダメージを受けていない。



これが、サトシとゲッコウガの力。


カロスを旅して手に入れた、2人の力。


出会いは必然だった2人の、キズナの力。


 ▼ 155 甲州街道◆Np5ysP3gOE 25/10/07 23:05:31 ID:ywvs3P5I [11/35] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

 サトシ 「オカヤ! あとはお前だけだ!」


 オカヤ 「……戻れ、ゴルダック」


 サトシ 「んっ?」


 オカヤ 「この通り、僕はもう、戦う気は無い。だから……だから! そのっ、ゲッコウガを、もう少し、近くで見せて欲しいんだ……」


ゴルダックをボールに戻したオカヤは、よろよろと、ゲッコウガに歩み寄っていく。

ゲッコウガから視線を逸らすことなく、まるで、ゲッコウガしか見えていないかのように。


 サトシ 「待て! 何か企んでるんじゃないだろうな!?」


ゲッコウガまで、残り3メートルくらいかな。サトシが制止する。

それを聞いたオカヤは、律儀に制止し、そして、その場に へたりと座り込んだ。


 オカヤ 「美しい……、格好良い……、神秘的だ……」


 サトシ 「オカヤ……?」


 オカヤ 「君は……、メガシンカじゃなくて、キズナ現象と言うんだね。凄い……道理で5年も目撃情報が無いわけだ」


 ゲッコウガ 「げこぅ」


 オカヤ 「君に、ずっと……ずっと、会いたかった!」


オカヤは、拝むようにゲッコウガのことを見つめる。

その姿に、もはや敵意は感じられない。


 オカヤ 「感動だ……。ずっと憧れていた、特別なゲッコウガに会えて……。美しい……、本当に、芸術作品のような美しさだ……」


 ゲッコウガ 「げこ……」

 ▼ 156 甲州街道◆Np5ysP3gOE 25/10/07 23:06:11 ID:ywvs3P5I [12/35] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

 オカヤ 「最高の日だよ。……僕の目的は達成した。研究は、終わりにする」


 サトシ 「オカヤ……本当か!?」


 スワミ 「はぁぁぁぁ!?」

 カイド 「オカヤおいテメェ! どんだけテメェの研究に金出したと思ってんだよ!?」


 オカヤ 「すまないね。けど、僕の会いたかったゲッコウガは、メガシンカした姿では無かった……。この研究を続ける理由なんて、もう無いんだよ」


 スワミ 「そんなこと通用すると思ってんのかよ!?」


 オカヤ 「なら、僕は研究を放棄する。カイド君たちで好きに続けて貰って構わない。当然、分け前なんて不要だよ」


 カイド 「ふざけるなよ! テメェの独自研究を応用しろって始めたことだろ! テメェが抜けたら、何も出来ねーじゃねーかよ!?」


 オカヤ 「サトシ。ありがとう。君と出会えたこと……、君のゲッコウガに再び会えたことに、心から感謝する」

 サトシ 「……信じて、良いんだよな」

 オカヤ 「あぁ。僕の研究は終わったよ」

 サトシ 「……研究のテーマ自体は、すげぇ良いと思う。罪を償ったら、ちゃんとした手順で研究してみたらどうだ?」

 オカヤ 「まぁ、今後のことは、ゆっくり考えるよ。時間は たっぷり、あるんだろうからね」



オカヤは、今回の違法な研究を辞めると宣言した。


サトシゲッコウガという、オカヤがずっと追い求めていた存在に、再会することが出来たから。

こうして潔く研究から手を引くあたり、オカヤの信念を感じられる。やってきたことは、決して許されないけれど。


 ▼ 157 甲州街道◆Np5ysP3gOE 25/10/07 23:06:50 ID:ywvs3P5I [13/35] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

 シトロン 「さぁ、あとは君たちです!」

 サトシ 「カイド! スワミ! もう諦めろ!」

 ユリーカ 「もう戦えるポケモンも居ないんでしょ!」


 スワミ 「ッ……! なんだよなんだよ! どいつもこいつも裏切りやがって!」


 サトシ 「オカヤが居なきゃ研究は続けられないんだろ? もう終わりだ!」

 シトロン 「大人しく諦めるのなら、まだ自首として処理することも出来ます!」


 スワミ 「くっそ……! この研究が形になれば……! 一生遊んで暮らせるほど儲かったって言うのによぉ……!」

 カイド 「……まだだ」


 シトロン 「この期に及んで抵抗するんですか!?」


 カイド 「テメェらが“この違法研究の場に居た事実”は変わりねぇ! オレたちを捕まえるって言うんなら、テメェらの人生メチャクチャにしてやっからな!」


 サトシ 「まだそれを言うのか!」

 シトロン 「調べれば分かることです! 無駄な抵抗は控えるべきですよ!」


 カイド 「確かに調べられたら不利だ。テメェはミアレのジムリーダー。そっちはWCS優勝者。社会的地位がある」

 スワミ 「じゃあどーすんのよ!?」

 カイド 「……だが、セレナ。テメェは別だ」


 セレナ 「えっ!?」


 カイド 「元カロスクイーンが違法研究に手を染めていた――。ネットとマスコミに売り込んでやるよ!」


 セレナ 「そんなっ……」

 サトシ 「ふざけるな! そんなすぐバレる嘘が通用する訳ないだろ!」

 シトロン 「そうです! 僕たちが否定する声明を出せば、それで終わりです!」



 カイド 「それはどうかな」


 ▼ 158 甲州街道◆Np5ysP3gOE 25/10/07 23:07:12 ID:ywvs3P5I [14/35] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

 サトシ 「なにぃ?」


 カイド 「テメェらはセレナの仲間なんだろ? 声明を出したところで、その場は収まったとしても、“仲間を庇ってるんじゃないか”って疑惑は残るぜ」


 サトシ 「そんな脅しに乗るか!」


 カイド 「芸能関係はスキャンダルとか うるさいんだよなぁ? 疑惑持ちの奴が、カロスクイーンになれると思うか?」


 サトシ 「なっ……」

 シトロン 「デマで脅すつもりですか!?」


 カイド 「オレたちを捕まえるんなら、セレナは道連れだ。テメェらは、大事な仲間の夢を奪うことになるんだよ!」

 スワミ 「……あははっ、ナイスねカイド!」
 


カイド……、ただでは終わらせないみたいね。


大丈夫、きちんと否定すれば大丈夫。

サトシとシトロンも味方してくれる。


でも……もし、もし、これが変な週刊誌やワイドショーに取り上げられたら……。

“疑惑”を何倍にも膨らませて話題作りされて、トライポカロンの出場資格に影響が出たら……。





 ユリーカ 「ふざけないでよ!!!」





 ▼ 159 甲州街道◆Np5ysP3gOE 25/10/07 23:07:41 ID:ywvs3P5I [15/35] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

 セレナ 「ぁっ……」

 シトロン 「ユリーカ……?」


 ユリーカ 「アンタたちのせいで! セレナがどれだけ悲しんできたか……、悩んできたか……、アンタたち分かってんの!? これでも まだセレナを脅すなんて、私、絶対に許せない!!!」



ユリーカが力強く怒鳴る。


こんなに怒ったユリーカを見るのは、初めてかもしれない。

私のために こんなに怒ってくれるなんて……、今まで私を励ましてくれたりと、本当にユリーカは、私の心の支えだ。



 スワミ 「ガキは黙ってな!」

 カイド 「面白いじゃねーか。許さないって、テメェみたいなガキが、どうするつもりだよ?」



 ユリーカ 「“ここに居た事実”で脅されちゃうなら……」



 カイド 「おう。どうするんだよ」



 ユリーカ 「こんなところ、無くなっちゃえばいいんだ! プニちゃんたち! お願い……私に力を貸して!」


 ジガルデ(Z-1)『うむ! 余はユリーカの味方だ!』

 ジガルデ(Z-2)『よかろう。余も こやつらを 許せぬ!』


 ▼ 160 甲州街道◆Np5ysP3gOE 25/10/07 23:08:21 ID:ywvs3P5I [16/35] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

プニちゃんたちが光り出す。


緑色の衝撃波が、鼓動のように広がっていったかと思うと――。



 ジガルデ−セル 「!」

 ジガルデ−セル 「!」

 ジガルデ−セル 「!」



 カイド 「うっ!?」

 スワミ 「なんだこのキモいの!?」



今まで見えなかったセルが、淡く緑色に輝き、実体化する。


木に、岩に、地面に。


無数のセルが姿を表し、緑色の軌跡となって、ジガルデに吸収されていく。


地から、空から、四方八方から集結する緑色の光に包まれ、ジガルデは巨大化していく。





 ジガルデ 『この世界の秩序を乱す者、余が成敗してくれる!』





降臨する、ジガルデ・パーフェクトフォルム。


セルの集合率が100%となった、ジガルデの究極完全体。


元のプニちゃんの姿からは想像できないような巨体。ロボットようなフォルム。

黒い体に、幾何学的にも見える緑色の模様。翼には赤と青のアクセントが入る。


フラダリが操る巨石の暴走を止めた、あの時の姿――。


 ▼ 161 甲州街道◆Np5ysP3gOE 25/10/07 23:09:55 ID:ywvs3P5I [17/35] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

 サトシ 「すげぇ……!」

 シトロン 「ジガルデの、真の姿……!」


 スワミ 「なんだよ……なんだよコイツ!?」

 カイド 「ジガルデ……、こんなポケモンが、この世に存在するのかよ……!?」



 ユリーカ 「プニちゃんは! カロスの平和を守ってるの! アンタたちみたいな奴! 私たちが やっつけるんだから!!!」


 ジガルデ 『うむ。 ゆくぞ!』


 ユリーカ 「プニちゃん! こんな研究所……無くしちゃえ! “コアパニッシャー”!!!」


 ジガルデ 『はぁぁぁぁぁぁ!!!』



ジガルデは雄叫びと共に上空へ。

5色に光る胸部の口が解放したかと思うと――。


緑色の衝撃波と、青白い光線が、発射された。



 ユリーカ 「プニちゃん! 行っけぇぇぇぇぇぇ!!!」



光線は、研究所を裂くように、「Z」の文様を地面に刻み込む。

直後、文様から緑色の光が溢れ出て、拡散して、大爆発を引き起こした。



視界が緑一色に眩しく染まり、一瞬遅れて轟音と爆風が なだれ込む。



地面は大きく揺れ、まるで、地脈のエネルギーが解き放たれたかのようだ。


 ▼ 162 甲州街道◆Np5ysP3gOE 25/10/07 23:10:30 ID:ywvs3P5I [18/35] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

 セレナ 「きゃぁっ!」

 サトシ 「くっ……!」

 シトロン 「ユリーカ伏せてっ!」

 ユリーカ 「んっ……プニちゃん凄いっ!」



地面が抉れ、岩が飛び散る。


木々が揺れ、木枝が落ちる。


大気が荒れ、衝撃波となって拡散する。



緑色の爆風が上空を突き抜け、大爆発は終わりを迎える。



静寂。



攻撃が収まると、不気味なほどの静寂が、森を支配する。





ようやく起き上がって、目を開けると――。





 サトシ 「うぉ……」

 セレナ 「凄い……」

 シトロン 「ぉー……、綺麗さっぱり、ですね」

 ユリーカ 「あはっ! やったねプニちゃん! 凄い! 凄いよ!」

 ▼ 163 甲州街道◆Np5ysP3gOE 25/10/07 23:11:02 ID:ywvs3P5I [19/35] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

研究施設の古い屋敷は、跡形も無く、消えていた。


屋敷があった場所には、まるで隕石が落下したかのような、大きなクレーターができている。


本当に、跡形も無く消えていた。


残骸すらも残っていない。


ジガルデのワザのエネルギーによって、屋敷全てが消滅してしまったのだ。



 スワミ 「ぁっ……ぁぁっ……」ガクガクガク

 カイド 「っ……」



 ユリーカ 「アンタたち! あんなふうに なりたくなかったら、大人しく降参して!」


 ジガルデ 『さもなくば、秩序を乱す者、余は容赦しない!』



腰を抜かしたのか、しゃがみ込んでいるカイドとスワミに、ユリーカが怒鳴った。

プニちゃんもユリーカに同調し、2人を睨み付ける。



……ふふっ。本当にユリーカ、強くなったのね。


度胸もあるし、良い意味で無茶苦茶なことをする。


旅をして成長したのもあるけど、やっぱり、少なからずサトシの影響を受けてるんだろうな。

 ▼ 164 甲州街道◆Np5ysP3gOE 25/10/07 23:12:28 ID:ywvs3P5I [20/35] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

 セレナ 「ありがとね、ユリーカ」

 サトシ 「凄かったぜ!」

 シトロン 「まったく……、無茶しすぎですよ」
 
 ユリーカ 「えへへっ」



研究施設は消滅した。


消滅したのだから、“ここに居た事実”で私たちを脅すのは、もう不可能ということだ。


無茶苦茶だけど、それが事実だ。



 ユリーカ 「格好良かったよ、プニちゃん!」

 ジガルデ 『うむ。 ユリーカの想い、余に十分に伝わった。そなたたち、良き仲間を持ったな』


 セレナ 「ふふっ……はい!」

 サトシ 「ユリーカとプニちゃんには驚かされるぜ!」

 シトロン 「兄としては、今後が心配ですけどね」

 ユリーカ 「うふふっ。私も、みんなのこと大好きだよ! もちろんプニちゃんも!」


 ジガルデ 『ありがとう、ユリーカ。またこうして共に戦えたこと、嬉しく思うぞ』



カイドとスワミは、魂が抜けたかのように、大人しくなっていた。

こんな攻撃を見せられて、ユリーカとジガルデに怒られたんだから、当然だ。



これで――、一件落着、だよね。





     *   *   *



 ▼ 165 甲州街道◆Np5ysP3gOE 25/10/07 23:13:25 ID:ywvs3P5I [21/35] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告





あの後――、やっぱりと言うか、通報があったみたいで、ジュンサーさんたちが駆けつける騒ぎとなった。


あんな爆発があったのだから、当然と言えばと当然だ。



プニちゃんは すぐに元の姿に戻って、ゲッコウガと一緒に、再び、負のエネルギー根絶に出発した。


カロスの地中深くに根付く負のエネルギー。

あれから5年経った今も、まだ根絶できていないらしい。


けれど、着実に数は減らしている。根絶も、あともう少しらしい。

カロスの完全な平和が訪れるのも、もう間もなく。

そうしたら、ゲッコウガはサトシの元に帰れるし、ユリーカは、今度はプニちゃんも旅に連れて行くらしい。


そう遠くない未来、サトシやユリーカの、新たな物語がスタートする。



お別れは寂しいけれど、私たちは笑顔で、ゲッコウガとプニちゃんを見送った。





 ▼ 166 甲州街道◆Np5ysP3gOE 25/10/07 23:14:22 ID:ywvs3P5I [22/35] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



     *   *   *





 サトシ 「ふー疲れたー」

 ユリーカ 「やっと終わったね……」

 セレナ 「夕方まで かかるとは思わなかったわね……」

 シトロン 「仕方ないですよ。大きな事件ですし、あの爆発ですし」



夕方、時刻は5時半をまわっている。


あの後、駆けつけたシュンサーさんたちに、事のあらましを説明して――、そのまま警察で事情聴取となった。


カロスで問題になっていた、野生ポケモンの遺伝子異常の事件の真相。

カイドとスワミの犯罪。

カツマとサミコは十分に反省していて、途中から抜けたくても抜けられない精神状態だったこと。

オカヤが進めていた研究だったけど、彼の真意は別の所にあって、もう研究は辞めると誓っていること。

それらを私たちの口から、しっかりと説明した。


問題の研究施設が、バトルの過程で跡形もなく消滅してしまったことは、証拠物件の観点から実は非常にマズかったらしい……。

そのせいで解放まで こんなに時間が掛かったとも言えるけど、カツマ、サミコ、オカヤが調査に協力的ということもあって、なんとか厳重注意で済ませてくれた。

今後、シトロンも調査チームに加わって、これまでの経緯や余罪を洗い出すらしい。



 ユリーカ 「あ! ねぇお兄ちゃん、ジムの……プリズムタワーの屋上行こうよ!」

 シトロン 「屋上に……そうですね。ちょうど良い時間ですもんね」

 サトシ 「プリズムタワーの屋上?」

 シトロン 「はい。普段は施錠していますが、絶好の夕日スポットなんです」

 ▼ 167 甲州街道◆Np5ysP3gOE 25/10/07 23:15:06 ID:ywvs3P5I [23/35] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


ユリーカの提案で、私たちは、プリズムタワーへと向かった。


エレベーターでタワーの最上階へ行き、そこから業務用階段で、さらに上へ。


最上階の屋根にあたる部分に出ると、目に飛び込んできたのは、大きな夕日と、美しいカロスの街並み。



 セレナ 「わぁ……!」

 サトシ 「すっげぇ!」



遮るものがない、広く澄み渡る夕焼け空は、夕日のオレンジ色と、夜の藍色のグラデーション。

カロスの街は明かりが灯り始め、カラフルなネオンや流れる車のライトが、彩りを添えている。



 セレナ 「もう……、終わったんだよね」



こんな平和な街並みを見て、思わず、心の声が出てしまった。


ずっと脅されてきた悩みの種は、今日、無くなった。

ユリーカやマフォクシーたちに心配をかけて、パフォーマンスの練習にも身が入らない、不安で不安で仕方なかった日々は、今日、終わったんだ。



 ユリーカ 「うん。もう大丈夫だよセレナ」

 シトロン 「そうですよ。あの連中は逮捕されましたし、研究施設も、もうありません」

 セレナ 「ありがとう、みんな。みんなに相談して、本当に良かった」

 ユリーカ 「ううん。セレナが元気になってくれて、私も嬉しい!」

 シトロン 「はい。防衛戦の時から ずっと心配していましたが、もう大丈夫ですね」

 セレナ 「ふふっ。サナたちにも、きちんと話さないとな」
 ▼ 168 甲州街道◆Np5ysP3gOE 25/10/07 23:15:50 ID:ywvs3P5I [24/35] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


 サトシ 「終わった……は、ちょっと違うかもな」


 セレナ 「えっ?」


 サトシ 「これからが、はじまりさ」


 セレナ 「はじまり……?」


 サトシ 「セレナ、これで全力でカロスクイーンを目指せるんだろ? クイーンに帰り咲く……、セレナの新しい挑戦の、はじまりさ」 ニコッ


 セレナ 「サトシっ……///」 ドキッ



終わりじゃなくて、はじまり――。


サトシ……、貴方はそんな風に、私のこと、見てくれてるんだね。


終わりじゃなくて、はじまり――。


どん底に落ちた私が、カロスクイーンに再挑戦する。

再び夢に向けて動き出すのを、“はじまり”って。

 ▼ 169 甲州街道◆Np5ysP3gOE 25/10/07 23:16:34 ID:ywvs3P5I [25/35] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

 サトシ 「オレも……頑張るよ。ジムリーダーの仕事。大変だけど、みんなの期待に応えられるように!」

 ピカチュウ 「ぴっかぁ!」

 サトシ 「しっかり勉強して。ピカチュウたちと、もっともっと成長して。オレにとっても“はじまり”さ」


 ユリーカ 「ユリーカもユリーカも! また旅に出て、いっぱい成長して! 今度こそリーグで優勝して! 私の挑戦も“はじまり”だよ!」

 デデンネ 「でねねぇ!」


 シトロン 「僕にとっても、これからが“はじまり”です。もうすぐミアレの都市再開発が完了します」

 サトシ 「人とポケモンが共存できる街――だよな」

 シトロン 「はい。実際に運用を開始して、問題点や改良点を洗い出し、より良いミアレシティにする――、更なるビジョンの“はじまり”なんです」



私だけじゃない。


サトシも。ユリーカも。シトロンも。


みんな、夢に、目標に、将来に向かって、歩き出す。



 セレナ 「ふふっ。今日は みんなの“はじまり”なんだねっ!」

 サトシ 「あぁ!」

 ユリーカ 「えへへっ。今日は すっごく素敵な日だねっ!」

 セレナ 「うん!」

 ▼ 170 甲州街道◆Np5ysP3gOE 25/10/07 23:17:17 ID:ywvs3P5I [26/35] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

 シトロン 「では……、ちょっとベタですが、僕たちの“はじまり”、この夕日に誓いましょうか」

 ユリーカ 「良いね良いね! 私たち……大切な仲間の誓い!」

 サトシ 「あぁ。この先どんなことがあっても諦めない! 夢や目標に向かって、みんなで突き進もうぜ!」

 セレナ 「うん! 私たち、これからもずーっと繋がっていようね!」



私たちは皆、自然に拳を突き出し合う。



 シトロン 「では――、カロスの夕日に誓います。僕たちは、決して諦めない心で! 新たなスタートをきります! 今日が僕たちの“はじまり”の日です!」

 サトシ  「おー!」

 セレナ  「おー!」

 ユリーカ 「おー!」

 シトロン 「おー!」





大きな夕日に、ミアレの街並みに、美しい夕焼け空に見守られながら。



私たちは、誓い合った。



私たちの、“はじまり”を。





     *


 ▼ 171 甲州街道◆Np5ysP3gOE 25/10/07 23:18:28 ID:ywvs3P5I [27/35] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



 ユリーカ 「あぁ……、もうすぐ夕日、沈んじゃうね」

 セレナ 「綺麗な夕日だったわね」

 サトシ 「あぁ。やっぱ、これだけ高いと景色も格別だな」

 ユリーカ 「ふふっ。ここ私たちの特等席だよねっ」

 シトロン 「そうだね。小さい頃、パパに怒られたとき、ここで2人で夕日を眺めてたっけ」


 サトシ 「オレが初めてカロスに来たとき――、プラターヌ博士のガブリアスが暴走して、ここまで追ってきたんだよな」

 ユリーカ 「そうそう! あの時のサトシ、凄かったよね!」

 セレナ 「うん! テレビで中継されて……、私、そのニュースを見て、サトシを思いだしたんだ」

 シトロン 「あれは僕も肝が冷えましたよ。サトシ、ガブリアスを助けるために飛び降りるなんて……」

 サトシ 「いやぁ、体が勝手に動いちまってさ」

 ユリーカ 「ホント、サトシってば無茶ばっかりなんだから」

 セレナ 「でも、あの時のサトシ、格好良かったなぁ」

 サトシ 「そうか? ありがとな、セレナっ」

 セレナ 「んっ……ふふっ」


 ユリーカ 「セレナ〜、自然とサトシに“格好良い”って言えるんだね〜」

 シトロン 「そうですね〜。昨夜、さぞ2人は親睦を深めたのでしょうね〜」

 サトシ 「おいシトロン……」

 セレナ 「なっ……なに言ってるのよぉ ///」


 ユリーカ 「私たち、お邪魔だよね」

 シトロン 「そうですね。2人は もう少し、景色を楽しんでいて下さい」


そう言って、シトロンとユリーカは立ち上がる――と。



 サトシ 「あっ! ちょっと待ってくれないか?」



それをサトシが制止した。

 ▼ 172 甲州街道◆Np5ysP3gOE 25/10/07 23:19:00 ID:ywvs3P5I [28/35] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

 シトロン 「どうしました?」

 ユリーカ 「なになに? サトシ、いまさら恥ずかしくなっちゃったの〜?」


 サトシ 「いや。2人にお礼……言いたくてさ。ありがとな。シトロン。ユリーカ」


 シトロン 「えっ?」

 ユリーカ 「ありがとうって……? 空気読んで2人にしてあげること?」

 サトシ 「ほら、カロスに来るまでの間。いろいろ、オレの背中を押してくれて」

 シトロン 「背中を?」

 ユリーカ 「私たちが?」


 サトシ 「それに、セレナも」

 セレナ 「えっ? 私も?」

 サトシ 「セレナにも、背中を押して貰ったよ」

 セレナ 「んっと……私は何も。むしろ、私の方がサトシに元気を貰って……」


 サトシ 「そうじゃなくってさ――」スッ

 セレナ 「ぁっ……///」



そう言うと、サトシは立ち上がって、私に手を差し出す。


そんな彼の手を、思わず私は、何も考えずに握る。


グイッと優しく、サトシは私を立ち上がらせる。


 ▼ 173 甲州街道◆Np5ysP3gOE 25/10/07 23:20:27 ID:ywvs3P5I [29/35] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


 サトシ 「あの日――、旅の終わりの日。セレナはオレに、キスしてくれた」


 セレナ 「ふぇっ……!? ちょっ……、そんな恥ずかしいこと、なんでいまっ……?」


 サトシ 「その思い出が、オレの背中を押してくれたんだよ」 グイッ



そう言うとサトシは、握ったままの私の手を、グイッと引っ張って。、


そのまま私は、サトシに抱き寄せられて――。





   ― chu ♡





 サトシ 「……好きだよ。セレナ」



 セレナ 「ぁっ……/// ぁぁぁっ……!?!?!?」



 ユリーカ 「わはっ!」

 シトロン 「おやおや。見せてくれますね〜」


 ▼ 174 甲州街道◆Np5ysP3gOE 25/10/07 23:21:32 ID:ywvs3P5I [30/35] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


さささ、サトシ……。


いま、私に、ききき、キス……!?


サトシから……? あの鈍感な、サトシから……!?


それに、私のこと、“好き”って……!?





 サトシ 「オレの気持ちを伝えるのに……、みんなに勇気を貰ったよ。ありがとう」


 セレナ 「さっ、サトシっ……///」


 サトシ 「だから、シトロンとユリーカが見てる前で……したかったんだ。セレナもあの時、2人が見てる前で してくれたし、そういうルールかな〜って」


 セレナ 「……ふふっ。なによ〜ルールって ///」


 ユリーカ 「おめでとう! おめでとうセレナ! サトシ!」

 シトロン 「待ってユリーカ。まだセレナの返事を聞いてませんよ?」

 ユリーカ 「返事なんて聞かなくても分かるでしょ!」

 シトロン 「はい、セレナ。どうぞ。僕とユリーカも聞くルールなんですよね?」


 セレナ 「……もぉ。そんなルールに覚えは無いけど」 チラッ

 サトシ 「へへっ」



 セレナ 「私も……、サトシのこと、好き。大好き! サマーキャンプで出会ったときから、ずーっと!」 ギュッ


 サトシ 「ありがとう。嬉しいぜ」 ギュッ


 ▼ 175 甲州街道◆Np5ysP3gOE 25/10/07 23:22:15 ID:ywvs3P5I [31/35] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


私はサトシに、抱きついた。


サトシは私を、抱きしめ返してくれた。


サトシの鼓動を感じる。


サトシの吐息を感じる。


サトシの温もりを感じる。



きっと私の鼓動も、吐息も、全部サトシに伝わってると思う。


赤くなった顔も、嬉しくて嬉しくてニヤニヤが止まらない顔も、全部全部、サトシに伝わってると思う。



 ユリーカ 「ふふっ。やーーーーっと2人、くっついたねっ!」

 シトロン 「だね。お似合いですよ、サトシ。セレナ」



ふふっ。そうだよね。お待たせ。

2人とも、ずっと私たちのこと、見守ってくれてたもんね。


あぁ、サナやミルフィにも報告しないとな。


 ▼ 176 甲州街道◆Np5ysP3gOE 25/10/07 23:22:52 ID:ywvs3P5I [32/35] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


 サトシ 「オレ、頑張るよ。セレナに恥ずかしくないようなジムリーダーになる。それで、いつかはポケモンマスターに!」


 セレナ 「私も! 絶対にカロスクイーンに帰り咲いて、サトシの隣に相応しい女性に なってみせるね!」





道のりは、長かったかもしれないけれど――。



私は、私の憧れの人と、結ばれることが出来た。



スマートで、格好良くて、ドキドキが止まらない、サトシからの告白。



そんなサトシに相応しい女性に、私は ならないと。



ポケモンマスターの夢に向かって頑張るサトシを支える存在に、私は ならないと。



私とサトシの新たな関係が、今日、はじまった。





       ―   完   ―



 ▼ 177 甲州街道◆Np5ysP3gOE 25/10/07 23:25:18 ID:ywvs3P5I [33/35] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告





     *   *   *





新婚さん、いらっしゃーい!


本日は特別編、1時間スペシャルです!


今回のゲストは……、トウエツ地方イフクジム・ジムリーダーの、サトシさん、25歳。

サトシさんは、カロスリーグ準優勝、ポケモンワールドチャンピオンシップス優勝という偉業を成し遂げ、18歳という若さでジムリーダーに就任しました。

まさに一般トレーナーの希望の星。熱いバトルに可愛いピカチュウというギャップが印象的で、人気ジムリーダーランキング、一緒に働きたいジムリーダーランキングで、常にトップ3にランクインしています。


そしてお相手は……、セレナさん、25歳。

セレナさんは、ポケモンの魅力を競い合うトライポカロンで優勝し、18歳から5年間、カロスクイーンに君臨。その後、若きチャレンジャーにクイーンの座を譲り、ポケモンスタイリストとして雑誌やCMで活躍。

そして今年。ヤシオプロダクション・トウエツ支店の責任者となり、今もなお注目される存在です。


 サトシ 「よろしくお願いします!」

 セレナ 「よろしくお願いします……」

 ▼ 178 甲州街道◆Np5ysP3gOE 25/10/07 23:25:52 ID:ywvs3P5I [34/35] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

う〜ん。セレナさんほどの方でも、やっぱり緊張しちゃいますよね。


 セレナ 「はい……。友達が勝手に応募ハガキ出しちゃいまして。そうしたら1時間スペシャルになってて……」


いやいや、番組スタッフもね、サトシさんとセレナさんってハガキを見て、「えーっ!?」ってなりましたよ。

それで、「これはもう特別編で2人にクローズアップや!」ってなりまして。本当に、このたびはスペシャルへの出演、ありがとうございます。


 サトシ 「いやぁ、絶対に視聴者の皆さんが喜ぶからって聞いたら、断るわけには行きませんよ。なっ?」

 セレナ 「うん。だって、サトシがけっこう乗り気だったから、断るのも何か、申し訳なくて……」


はははっ。仲の良い新婚さんですね!

告白は、やっぱりサトシさんの方から?


 セレナ 「はい。18歳のとき、綺麗な夕日を見ながら、抱き寄せられて……、好きだよ、って」


ヒューヒュー!

良いですね良いですね甘酸っぱいですね!


 サトシ 「でも、告白の決意って言うか、セレナとは一緒に旅してたんですけど、旅の最後の日、セレナの方から、オレにキスしてくれて。あ、もちろん“口づけ”ですよ。それがあったから、オレも告白し易かったって言うか」

 セレナ 「ちょっとサトシ! そんな恥ずかしいこと いきなりテレビで言わないでよぉ〜」


おぉ〜っとこれはっ。

セレナさんは意外と大胆ってことで。これから根掘り葉掘り聞かせて貰いますよ〜。





       ― 終わり ―



 ▼ 179 甲州街道◆Np5ysP3gOE 25/10/07 23:27:28 ID:ywvs3P5I [35/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


これにて完結です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

このSSは、ポケモンBBS ファイナルラストSS企画に参加しています。

【SS企画】ポケモンBBS ファイナルラストSS企画 【投票期間 〜10/13】

https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=2381088



     *



2014年10月から、ここポケモンBBSでサトカノ・サトセレSSをメインに書かせていただき、早11年。
近年は多忙のためSSを書いていませんでしたが、BBSが終了と聞いて、未完で流れてしまった このサトセレSS(構想2017年、投稿2020年)を、なんとか完結させることができました。

これまで私のSSをお読みいただいた沢山の読者の皆様と、
SSを投稿する場を提供し、これまで管理・運営していただいた管理人様に、心より感謝申し上げます。


 ▼ 180 キテルグマ@コジオのしお 25/10/07 23:50:51 ID:3COgIm.U NGネーム登録 NGID登録 報告
乙
やっぱり良いなあ
 ▼ 181 イワンコ@プレミアボール 25/10/08 19:54:48 ID:zkvofrKw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙!
最高だった
 ▼ 182 バオッキー@かたいいし 25/10/09 09:09:04 ID:humEp/t. NGネーム登録 NGID登録 報告
乙
面白かった
甲州街道も最後か〜と思って感慨深くなっちゃった
  ▲  |  全表示182   | << 前100 | 次  |  履歴   |   スレを履歴ページに追加  | 個人設定 |  ▲      
                  スレ一覧                  
荒らしや削除されたレスには反応しないでください。
書込エラーが毎回起きる方はこちらからID発行申請をお願いします。(リンク先は初回訪問云々ありますがこの部分は無視して下さい)

. 書き込み前に、利用規約を確認して下さい。
レス番のリンクをクリックで返信が出来ます。
その他にも色々な機能があるので詳しくは、掲示板の機能を確認して下さい。
荒らしや煽りはスルーして下さい。荒らしに反応している人も荒らし同様対処します。




面白いスレはネタ投稿お願いします!
(消えた画像の復旧依頼は、問い合わせフォームからお願いします。)
スレ名とURLをコピー(クリックした時点でコピーされます。)
新着レス▼